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政府委員(熊谷善二君)
特許協力条約に基づく
国際出願等に関する
法律案につきまして、ただいま
大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。
本
法律案は今国会において御承認をいただきました一九七〇年六月十九日にワシントンで作成された
特許協力条約を円滑かつ、適切に実施するために必要な手続を定めるとともに、特許法等
関係国内法の
整備を図ろうとするものであります。なお、本
法律案につきましては、
昭和五十一年六月から工業所有権に関する有識者等から成る工業所有権
審議会において慎重な審議を重ねた結果、本年二月に
特許協力条約への加盟に伴う特許法等の改正に関する
答申が提出され、この
答申に基づいて作成したものであります。
本
法律案におきましては、第一に、
特許協力条約の
規定を受けて、国際出願、国際
調査及び国際予備審査についての特許庁と出願人との間の手続を定めることとしております。具体的には、国際出願の出願手続に関し、
日本国民または
日本国内に住所もしくは居所を有する外国人は
日本語で
特許庁長官に国際出願をすることができることとし、国際出願をしようとする場合には願書、明細書、請求の範囲、必要な図面及び要約書を提出しなければならないこと、それらの手続に欠陥がある場合には
特許庁長官は手続の補完または補正をすべきことを命じなければならないこと、所定の
要件を満たしている国際出願については
特許庁長官はその国際出願が特許庁に到達した日を国際出願日として認定しなければならないこと、所定の期間内に手数料を納付しない場合等においては
特許庁長官は国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならないこと等について
規定しております。また、先行技術についての事前
調査いわゆる国際
調査に関し、
特許庁長官は審査官に国際
調査報告を作成させることとし、所定の事由に該当する国際出願については国際
調査報告を作成しないこと、国際出願が発明の単一性の
要件を満たしていない場合には追加して手数料を納付すべきことを命ずること等について
規定しております。
次に出願人からの請求に基づいて行う国際出願が新規性、進歩性及び産業上の利用
可能性を持つか否かについての予備的な審査いわゆる国際予備審査に関し、
特許庁長官は審査官に国際予備審査報告を作成させることとし、国際
調査の場合に準ずる
規定を設けるとともに、出願人は補正書、答弁書を提出することができること等について
規定しております。なお、特許庁が受理する国際予備審査の請求の件数については、当分の間、これを制限することができることとしております。そのほか、国際出願の手続の正確かつ円滑な遂行の
確保が強く要請されていることにかんがみ、特許庁に対する手続の代理を行う者の資格につき必要な
規定を設けております。
第二に、
わが国の特許または実用新案登録を取得しようとする国際出願について、これを現行法の
国内手続につなぐために必要となる特許法及び実用新案法の改正を次のとおり本
法律案の附則において行うこととしております。
すなわち、
わが国を指定国に含む国際出願は、その国際出願日に
わが国にされた特許出願または実用新案登録出願とみなすこととし、また、出願書類が外国語で作成されている国際出願については、
原則として最初の出願の日から二十ヵ月以内に所定の翻訳文を
特許庁長官に提出しなければならないこととし、その提出がないときは、その国際出願は取り下げられたものとみなすこととしております。また、原語の国際出願に記載されている事項であっても翻訳文に記載されていないものについては初めからなかったものとみなすこととしております。この
段階以降はこの翻訳文を
国内法上の出願書類とみなし、この翻訳文に基礎を置いて出願の処理または審査を行うこととしております。なお、国際出願が正確に翻訳されなかったために、出願に係る発明、この出願に基づいて与えられた特許等の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる場合については、審査の
段階においては異議申し立てにより拒絶することにより、また、特許または実用新案登録後においては無効審判の請求とそれに対する権利者の訂正審判の請求とを組み合わせることによって
措置することとしております。そのほか、国際
段階においてされた補正については、所定の期間内に翻訳文の提出等がなかった場合は、補正がされなかったものとみなすこととしております。また、出願人から提出された翻訳文については
国内公表を行うこととし、外国語で作成されている国際出願についての補償金請求権は、この
国内公表を基礎として発生することとしております。
さらに、国際出願についての
国内段階における補正、出願の変更、出願審査の請求については、所要の手続をした後でなければすることができないこととしております。
第三に、特許出願または実用新案登録出願とみなされた国際出願の意匠登録出願への変更については、所定の手続をした後でなければすることができないこととすることに伴う意匠法の改正を本
法律案の附則において行うこととしております。
第四に、弁理士の業務に本
法律案の
規定による国際出願に関する事務を追加することに伴う弁理士法の改正を本
法律案の附則において行うこととしております。
第五に、特許庁が国際
調査及び国際予備審査に関する事務を行うことに伴う通商産業省設置法の改正を本
法律案の附則において行うこととしております。
以上、この
法律案の趣旨及び要点につきまして補足して御説明を申し上げた次第でございます。
何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。