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1978-04-27 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十七日(木曜日)    午前十時四十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 片山 甚市君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 石本  茂君                 上原 正吉君                 亀長 友義君                 斎藤 十朗君                 福島 茂夫君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 安恒 良一君                 小笠原貞子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        労 働 大 臣  藤井 勝志君    政府委員        労働大臣官房長  石井 甲二君        労働省職業安定        局長       細野  正君        労働省職業訓練        局長       岩崎 隆造君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        経済企画庁調査        局内国調査課長  横溝 雅夫君        文部大臣官房審        議官       鈴木  勲君        資源エネルギー        庁公益事業部火        力課長      木内 貞夫君        運輸省船舶局検        査測度課長    辻  栄一君        労働省労働基準        局安全衛生部安        全課長      津沢 健一君        労働省職業訓練        局訓練政策課長  守屋 孝一君        建設省計画局労        働資材対策室長  楢崎 泰道君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  玉置和郎君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。  これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) つきましては、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事遠藤政夫君を指名いたします。     —————————————
  6. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 職業訓練法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 安恒良一

    安恒良一君 これから私は、許された時間の範囲で、職業訓練法の一部を改正する法律案について二、三の質問を行いたいと思いますが、その前にまず労働大臣並びに経企庁にお伺いをしたいのであります。  まず、労働大臣につきましては、最近の雇用失業情勢ですね、できるだけ新しいやつ。それから、それらに対する対策。  それから、経企庁には、一月から四月——四月はまだ終わってませんが、いわゆる経済情勢景気動向、それと雇用との関係、こういう問題について、これは労働省との関係があると思いますか。  以上のことについてまず明らかにしていただきたいと思います。
  8. 細野正

    政府委員細野正君) お尋ねございました雇用失業情勢でございますが、先生も御存じのように、本年二月における完全失業者の数が百三十六万、季節調整済み失業率で二・〇八という状況でございまして、非常に深刻な状況にあるわけでございます。なお、求人倍率は、これは有効求人倍率で見ますと〇・五四ということで、一時に比べて若干上がりぎみ、つまり最近の公共事業の実施、それに伴う、やや経済の一部に上向き情勢が見えてくることを反映しまして、求人が若干ふえる傾向が出てまいりましたので、一時に比べましてやや上向きかげんという状況になっているわけでございます。  なお、こういう全般的に依然として深刻な状況が続いているという事態を踏まえまして、労働省といたしましては、従来からやっております、一つには失業者をできるだけ出さないというための雇用安定資金制度中心とする失業予防対策、それから現に離職をされた方に対する再就職促進のための各種の施策の強化、さらには、こういう情勢でございますので求人を何としても確保しなければならぬという意味での求人開拓、及び雇用機会を刺激するための中高年齢者等を採用する方々に対する助成金の支給という制度を新設するというふうなやり方で、全力を挙げて事態に対処いたしておるわけでございます。
  9. 横溝雅夫

    説明員横溝雅夫君) 経済企画庁でございますが、お答えいたします。  一−三月と申しますか、一−四月の景気情勢ということでございますが、ただいまお話がありましたように、新規求人等にはやや明るい面も見られておりますが、雇用情勢そのものは依然厳しい情勢と、それから国際収支面では黒字がなかなか減らないというような基本的な問題はあるんですが、御承知のとおり、政府といたしましては第一次、第二次、五十二年度でございますが、補正予算等を組んだ関係もございまして、公共事業が非常に順調に出ております。そういうこともありまして、たとえば鉱工業生産で申しますと、昨年の十一月から連続増加し続けておりまして、数日前に発表されました三月の鉱工業生産前月比一・六%増と、先月鉱工業生産が発表されました段階では三月はマイナス〇・八%と予測されておったんですが、それがプラスになり、さらにそのプラスも一・六と非常に大きな実績値になったんでございますが、こういうようなことで一−三月をならしますと鉱工業生産前期此二・七%増加しておりまして、十−十二月期の一・二%の増加に引き続き二期連続いたしております。ここにあらわれておりますように、徐々に景気は明るさを増しつつあるという状況ではないかと思います。他方では、物価面では御承知のとおり卸売物価は前年を下回っておる、あるいは消費者物価が前年と比べまして四%台の上昇ということで物価は落ちついております。まあ大体以上のような状況かと存じます。
  10. 安恒良一

    安恒良一君 まず、経企庁にお伺いしたいんですが、私の調べました限りにおいて一−三の景気動向というのが、いま鉱工業生産指数その他をとりましても上向いているということはよく承知をしていますが、これは去年、おととしも率直に言って一−四は上向いたわけですね。やれやれと思ったんですが、御承知のように、それが終わりまして落ち込みが、去年もおととしも同じようなパターンでいわゆる景気動向が悪くなっているわけです。ですから、ことしの一−四というものは、いわゆる本物だろうかどうだろうか、去年やおととしのようなことになりはしないだろうかと。そうじゃないという説がかなり多いようですが、いわゆる四月はまだ今月入っていますから、この傾向がずっと五月、六月と去年、おととしのようにある場合には夏口からある場合には秋口からダウンしていく、こういうことになる心配はことしはないんでしょうか。そこのところについてまず経企庁の方にお聞きします。
  11. 横溝雅夫

    説明員横溝雅夫君) 確かに御指摘のとおり、昨年、一昨年とも年の前半景気が明るさを見せながら、後半中だるんだということは御指摘のとおりでございますが、これには輸出が年の前半出て後半伸びが鈍化したとか、あるいは財政が前半かなり出て後半が伸びが鈍化したとかいうようなこともございますけれども、基本的にはオイルショック後、非常にたくさんの在庫企業が抱えちゃっていて、需要がふえても在庫を食いつぶしで生産拡大になかなかつながらない、公共事業をいろいろやってもそれがちゃんと経済活動につながっていかないという面が無視できないと思いますが、今回の場合は、先ほど説明から落としてしまったんですけれども、在庫かなり減っております。たとえば、二月も前月に比べてマイナス一・二%でありますし、三月も二%減っておりまして、在庫率かなり急速に下がっております。ということもあって、公共事業の効果が民間活動に浸透するというのを在庫が消してしまうという側面が、いままでと比べて弱くなっている。したがって、まあわれわれその経済の先行きを確実に見通すということは容易ではございませんけれども、いままでとは違ってことしは着実にこのいまの勢いがこれから先も続いていくということを期待しております。
  12. 安恒良一

    安恒良一君 私もいろいろな指数を調べてみましたら、いま言われたような傾向があることはよくわかるんですが、まあ期待をしているということなんですから、これより以上この経済問題の論争やってもあれだと思います。  そこで私、ぜひ労働大臣にお聞きをしたいんですが、局長の答弁というのはもう耳にたこができるように各委員会で聞いておって、一つも新味がないから局長には聞きません。大臣に聞くんです。同じことどの委員会でもおっしゃる。というのは、私は、いまの状況の中でも雇用問題についてなるほど新規求人については若干の明るさがある、しかし雇用情勢というのは大変やはりまだ憂慮すべき状態にあると思うんですね。そこで私は、失業予防、再就職促進と同時に、雇用創出というものがないと問題は片づけられないと思うんです。そこで私は、雇用創出問題についてこの前一般質問のときに各省にいろいろお聞きをしましたが、これは大臣もお聞きくださったと思いますが、余り意欲的な雇用創出というものがないわけです。それと同時に、商工委員会の中におきましても、この特定不況産業離職者がどの程度——離職者とまでいかないで余剰人員がどの程度あるかということについても、これまた労働省運輸省、それから通産省、直接関係のある省について聞いても、これも具体的な、どの程度特定不況産業から離職者が出るであろうか、余剰人員が出るであろうか、こういうことについても的確なお答えが返ってこないんです。  そこで、この雇用創出を具体的にどういうふうに大臣としてはやろうとされているのか。この点は、これは率直に申し上げて、後からお話しします職業訓練法の一部改正ともいろいろ関係をいたしますから、雇用創出について担当大臣としてどのような積極的な意欲的なお考えをお持ちなのか、これはぜひ大臣から、もう局長お話は耳にたこができるほど聞いておりますから、どうぞひとつ。
  13. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) この問題は、すでに御案内のとおりでございますけれども、現在日本産業経済社会が質的に変化をしておるという、その中身につきまして私は次のように考えておるわけでございまして、やはり高度成長から低成長転換をしなければならぬというその状況から言いますと、従来産業投資的な事業というのは、これはやはりこの成長を支える設備投資型産業というのは、これはある程度方向を変えなければならぬということが第一点。  それから第二は、エネルギーをたくさん使う産業というのは、これまた転換を余儀なくされなきゃならぬ。たとえば、平電炉であるとかアルミ産業とか、こういった問題。それから、先進国の追い上げ、いわゆる人手をたくさん使う産業から知識集約型産業への移行ということ。  それともう一つは、日本社会自体高齢化社会に入ったわけでございますから、高年齢者の問題と、こういうようなことが頭に浮かぶわけでございますが、それに対応して、ちょっとまた角度が違いますけれども、私は雇用対策として当面造船地帯とかあるいは地場産業地帯円高で困る中小企業地場産業、こういったことを考えますと、まず特定産業特定地域に集中的に多発する失業にどう対応するかと、こういったことが第一。  それから、やはりこれから日本社会構造が何といいますか質的に向上していくためには、国際的に見て立ちおくれている部面に対してある程度人員を配置して、日本人の生活の質を向上するための人的配置によって雇用拡大をするという、こういったいわゆる福祉部門、こういった面、あるいは教育面であるとか、あるいは保険医療関係と、こういう分野。それからやはり長期的な観点から考えますと、技術開発、こういった面で、いわゆる新エネルギー開発であるとか、あるいは省エネルギー開発であるとか、あるいは深海の開発のための技術革新と、こういうふうな面、あるいは私は飛行機産業あたりは大いに、YX技術開発がこれからやりますが、そういう分野における開発というのは、自動車産業伸びたごとく、民間の私は飛行機産業というのは日本人の非常に手先の器用な技術水準の高い、教育程度の高い労働力を持っている国には大いに伸びていく産業ではないか、こういう意味において、いわゆる長期的に企業化促進を図る研究開発というこういう面、それから今後やはり国際的なスケールで私は雇用問題も考えるべきであって、発展途上国への大いに日本のすぐれた技能労働者の進出というか、そういうことによって、単なる移民的なことでなくて、共に共存する道を考えていくべきではないか、こういった点。  それから最後は、これは消極的な面でありますけれども、いわゆるワークシェアリングという、仕事を分かち合うという面における時間短縮の問題、こういうことによって雇用拡大雇用機会創出を図っていくという、こういつたまだ十分練っておりませんけれども、頭に浮かぶ考え方でございますが、そういう問題をひとつ専門雇用政策研究会あるいはそのほかの機関にいろいろお話を伺って、何といっても御指摘のように雇用機会拡大なくして雇用の安定はないと、雇用政策の展開はないと、このように心得ておるわけでございます。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 いま大臣いろいろ言われましたけれども、この問題だけをやっておると時間がありませんから。  一つは、いま大臣が言われたように、第三次雇用対策基本計画というのが、これは五十一年の六月につくられているわけですね。その当時もいろんなことを、低経済成長の問題なり、たとえばいま大臣が言われましたように、素材型産業から加工型付加価値産業への転換などということ、いろんなことを想定されておったと思いますが、しかし、今日の情勢というのは当時よりもより厳しい状況にありますから、一つは、私は雇用対策基本計画についてもう一遍いまの現状に合うように、さらに補強するところを補強しなきゃならぬのじゃないだろうか、これが一つあると思います。このことがどうか。  それから、第二番目には、私はぜひともこれをひとつ大臣、閣議の中で御相談願いたいと思いますのは、雇用創出についていろんな提起が野党からもされてます、私どもも提起をしている。そこで、これをやる場合には、労働省だけでは縦割り行政でできないんです。そこで私は、できればこれだけ深刻な雇用問題がありますから、雇用安定対策本部とか——これは仮称です、名前は皆さんでお考えくださればいいんですが、そういうものにできれば内閣総理大臣みずからが座わる。そして、そこの中心的な事務局長労働大臣がされまして、それに関係閣僚以下関係各省担当を網羅する。これはなぜそういうことを言うかというと、結局いま縦割り行政ですから、農林農林通産通産運輸運輸ということで、必ずしも国務大臣である労働大臣命令一下、雇用創出問題が総合的に話し合える機関になってないと思うんですね。それがためには、やはりこれは総理直属総理が責任をとられて、しかし何といったって雇用問題は労働省中心なんですから、そこの大臣総理のもとで事務局長なら事務局長に座られて、そして縦割り弊害を改めて労働省の指示のもとに各省から資料も出させるし、対案も出さして、それを雇用対策本部閣僚会議といいますか、そういう中でやっていかないと、とても間尺に合わないんじゃないだろうか。私はつくづく予算委員会の中の質問であるとか、商工委員会質問、さらに本委員会一般質問雇用創出についていろんなことをお聞きをしましたが、どうも一番、一つ弊害は、いま申し上げた縦割り行政にある。だから、それを本来なれば、雇用というのは労働省が主官庁ですから、私はいろんな権限があると思うんですが、いまの行政ではできない。それを克服するためには、そういう雇用安定のための特別——というのは、皆さん方公共事業推進のためには特別対策委員会が設けられて、それぞれ大臣地域担当されているわけですね。これは一つ公共事業をやることによって景気が上向く、上向くことによって雇用問題も解決できるという配慮があると思いますが、しかしそれだけでは雇用問題は解決しません。そこで、いま言ったようなことについての大臣のお考え、ぜひ私は総理に進言をされて、そういういわゆる縦割りじゃなくて、総理労働大臣、これを基軸にしまして、あと関係大臣関係各省の協力を得て、雇用創出について問題が解決できるようなことを臨時的にお考えくださったらどうかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  15. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘趣旨は私も全く同感でございます。すでに、内閣におきましては雇用問題閣僚懇談会がございますけれども、実際言って現在の雇用機会を新しくつくり出すという、こういう対応をするのには運営上まだ工夫しなきゃならぬというふうに思っております。実は私もいま先ほど断片的に申しましたけれども、いろいろ考え方をまとめて、ひとつ雇用問題閣僚懇談会の場に提言をし、いま御指摘趣旨も踏まえてひとつ雇用機会をつくり出すという、こういう面においては労働省が、関係各省にまたがっておりますから、よく連絡をとって、そして世話役をしろと言われれば私は進んでやりたいと、このように考えておりまして、御指摘の点はまさに今後労働省としてもがんばらなきゃならぬ大切な問題だというふうに認識をいたしております。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 ぜひ雇用問題関係閣僚会議では、やはり関係閣僚会議の域を出ないわけですよね。ですから、どうしても私はやはり総理みずからが中心となられ、そしてそれを労働大臣中心に、そういう機構になれば、ある程度労働省縦割り行政の弊を改めて各省にいろんなことが私は、まあ命令というのは悪いんですが、お願いをできるし、よくできるようになると思うんです。それがないと、私はどうも、たとえば一つの例を言いますと、時間短縮問題にしても、これは金融機関の問題であれば、大蔵省ともうすぐ関係するわけですね。それから、造船不況の問題を議論すると、これはすぐ運輸省関係するわけです。そうすると、各省各省で自分の縄張り縄張りでいまやってますから、その意味から言うと、これは特別な委員会がつくられて、それを縦割りじゃなくて横に全体が網羅できるという機構にしない限り、私はもうどうもうまくいかないような気がします。その意味でぜひその中心労働省が座って、そして総理直属でありますから、労働大臣かなり権限が与えられて、国務大臣閣僚は同列といっても、雇用問題に関する限りかなり権限労働大臣に与えられて、その権限のもとに各国務大臣以下各関係各省に御協力願う、こういう立体的なものができないと、なかなかむずかしいように思いますから、もうぜひ大臣も意欲的なお考えのようでありますから、まず雇用問題関係閣僚会議の中で、そういう立体的に問題がやれるような委員会をつくるについて御努力をぜひお願いをしたいと思います。  そこで、次に今回のいわゆる改正、これはかなりの大きな改正でありますが、私はその中でも一つは、やはり今回の職訓法改正の中で一番いま問題になるのは、新規学卒の問題も一つありますが、一つ離転職の問題だと思います。離転職者をどういうふうに職業訓練をやり、そして新しく雇用の方に結びつけていくかということが、今回の改正一つの大きなポイントだというふうに思っています。ですから、そのことに関して衆議院でいろいろ御説明くださったことはまあ議事録で読んでおりますが、そこの点だけに限って、今回の改正の中で特にこの離転職問題について、こういうふうに意欲的にやるんだということについてごく簡単に説明をしてください。
  17. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 今回の改正一つのねらいが、こういった厳しい雇用情勢の中での特に中高年齢者中心といたしました離転職者の再就職のための訓練、その体制整備を図ろうということにあるわけでございますが、現在の職業訓練体制はどちらかと申しますと、まあ高度経済成長時代における技能労働者の育成、確保ということに中心的視点が置かれて施設が整備されておったように思いますが、現在並びに今後の雇用情勢の中において、第一に、まず第二次産業から第三次産業的なものへの雇用吸収というものを図らなきゃいかぬ。離転職者の再就職のための職業訓練というものも、そういうものに対応していかなければならない。それから、公共訓練施設が、先ほども御指摘もありました養成訓練中心的であったものを、やはり離転職者訓練中心あるいはまた成人訓練ということも考えておりますが、そういうものに再編整備をして体制を整えていかなければならぬと、このように考えます。  と同時に、公共訓練施設再編整備によりまして、訓練科目転換とか、その地域地域における雇用需要に対応する訓練というものを推進すべく、編成変えをしてまいりたいと存じておりますが、当面の問題として、そういった必ずしも転換が、言ってみれば対応できず、実際に訓練需要が非常に出ているという問題につきましては、今回の改正で広く民間教育訓練施設に対して委託をするというような形で、第三次産業的なものへの雇用吸収を図るための訓練を推進してまいりたいというように考えております。また、施設内での訓練につきましても、部外の講師を大いに活用して新しい訓練科目転換していく。また従来、どちらかというと、養成訓練に引きずられてか、入校時期が非常に硬直的でありましたものを、できるだけ各月入校というような、離転職者がいつでも訓練を受けられるような体制に持っていくために、モジュール訓練方式なども導入しながら、そういった訓練需要に対応してまいりたい、このように考えております。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、現在失業者が何人いるのか、その中で離転職訓練を受けている人は何人いますか、そのことについて。
  19. 細野正

    政府委員細野正君) 離職者のつかまえ方には、いろいろ統計のベースでもって違いがあるわけでございますが、まずその一番はっきりしております離転職の方で能力再開発訓練を受けている方は、昭和五十一年度におきまして約四万七千人でございます。これを雇用保険ベースで見ました場合の割合で見ますと、いわゆる会社都合というかっこうでやめたという方の約一割強に該当いたしますし、それから雇用動向調査ベースで、いわゆる解雇というかっこうでやめられた方の比率と対比しますと、二割弱というぐらいの割合になります。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 離転職訓練を受けている人の率が、非常に低いわけですね。  そこで、今度はお聞きしたいんですが、五十一年度における公共職業訓練入校状況、いわゆる充足率はどうなっているのか。そのことについて、養成訓練能開発訓練成人訓練等関係の、簡単に充足率がどうなっているのかということについて少し聞かしてください。
  21. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) 養成訓練につきましては、県立の訓練校あるいは事業団立の訓練校、両方合わせまして八二・四%の充足率になっております。  次に、離転職訓練——能力再開発訓練でございますが、これは七三・二%でございます。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 まあ、私の手元にも資料あるんですけれども、いま県訓校と総訓校みんな合わせてこう言われたんですが、総訓校が低いから、これ隠すために言われたんじゃないかと思いますけれども、たとえば当初言われた養成訓練は八二・四ですが、中身を見ますと、県訓校の場合が八六・三だと、総訓校が七七・四、能開発ですね、いま一番問題にしようとしている能開発の場合なんかは、いわゆる総訓校の場合には六九・八ですね、七〇%切っていますね。県訓校が七五・三だと、こういうふうに非常に充足率が悪い。しかし一方、失業者はたくさんいる。この原因はどこにあるんでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。そのことについて聞かしてください。その原因を、なぜこんなに、まあ特に雇用促進事業団がこうやっています総訓校ですね、非常にこれ余りよくありませんね、これ。そこの原因はどこにあるんでしょうか。
  23. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 私ども離転職者の再就職のための職業訓練は、当然職業安定機関と密接な連携をとりながら進めているわけでございますが、まあ先ほども申し上げましたとおり、現在の公共職業訓練施設自体が、やや入校時期の問題あるいは訓練職種の問題等につきまして硬直的であるということが一つあると思います。したがいまして、先ほど申し上げましたように、そういった職種転換を図りあるいは委託訓練というような道、あるいはまた入校時期の多様化というような方策で進めていきたいと、このように考えておるわけでございます。
  24. 安恒良一

    安恒良一君 まあそれも一つの原因でしょうが、そのほかにもこの原因があるんじゃないでしょうか。  それじゃ、いま離転職訓練を受けている人の数が言われましたが、その中で、いわゆる雇用保険の給付を受ける、たとえばまあ三百日の人もあればいろいろありますね、これは年齢。それが終了後受けている人と、雇用保険の支給を受けながら離転職訓練を受けている人はどういう状況になっていますか、そのことについて答えてください。   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕
  25. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) いま手元に細かいデータを持っておりませんが、私どもが承知しておりますのでは、大体訓練受けられる方の多くの方が雇用保険の受給期間の後半でお受けになる、そういうことで訓練延長という形になっておるという実態は承知しておるつもりでございます。また、その場合の就職状況について見ますと、大体能開訓練の場合に、終了までの間に雇用予約といいますか、就職先が決まるという方の割合が七〇%程度というような状況であるというのが現状でございます。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕
  26. 安恒良一

    安恒良一君 私はこれぜひ正確な実情を調べてほしいと思うんです。私どもが調査した限りにおいては、雇用保険の給付が途中とあなたは言われましたけれども、途中じゃないんですよ。ほぼ終わって、それから職業訓練に行く、こういう状況がほとんどのように私どもの関係の調査では出てきてます。ここのところを大臣、これはやはり何か方法を考えなきゃいけないのじゃないでしょうか。というのは、私は失業したら直ちに、特にこの離転職訓練をやはり本人が受ける。そして、できるだけ早く再就職の方向にいくのがいい方法だ。ところが、これは現在の制度上の欠陥でありますが、雇用保険の給付を受けているうちに離転職訓練を受けますと、その分は雇用保険の方からそこの期間だけ差っ引かれてしまうわけです。それならば、率直に言って、雇用保険を十分に受けた後で、今度は職業訓練延長と、こういう考え方を持つに至っていると私は思います。  ですから、私はこれはやはり制度に関することでありますが、私はできるだけ最初に訓練を受けた方がいい、離職したら最初に訓練を受けた方がいいと、こう思います。ですから、その訓練を受けている間、雇用保険の給付を差っ引くというところをやめれば、そのことは私はできると思うんです。そういう意味でこの問題は、これもまた、いやいまの法律はこうなってますからできませんなどという事務的な答弁なら結構です、そんな答弁聞きたくないわけですから、私はこういういまのような特に離転職者というのは、主として中高年層が非常に多いわけですね。そういう人のやり方については、せっかくこの二つの制度がある。一つ失業期間中一定の日数を限って雇用保険の給付が受けられる。一方、職業訓練を受ける場合には、いわゆる職業訓練を受けるに当たっていろいろなことが受けられる、こういう二つの制度があります。そういうことについてのことをこの際、ひとつぜひ考えてほしいと思いますが、その点はどうでしょうか。
  27. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) いま御指摘のような事情があって、うまくこの制度趣旨が生かされていないかどうか、この事実関係については局長の方から答弁させますけれども、まず、私の方から、特に離職者の再就職の場合には、できるだけ早く就職口が探せるような職業訓練を新たに身につけるという場合は、従来の経験値から申しますと半年が適当な期間であるというふうに承知しておるわけでございまして、その期間、職業訓練が終了する前には、訓練校と職業安定所と本人と三者が新しい職場を見つけるということで、おおむね順調に再就職の道がついておると、このように承知しておりますが、ただこういう非常に社会産業構造、雇用構造が変化しておるときでありますから、その実情に応じて検討しなければならぬ点も出てくれば、やはり検討は怠ってはいけないと、このように考えております。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 どうも大臣、私の質問と的のはずれた先の方のことを答えられて、想定問答がたくさんつくってあるからときどきそういうことがあると思いますけれども、先の方のことじゃ困る。私がいま聞いているのは、いわゆる離転職者の場合に、会社を失業した、雇用保険の給付が始まる、始まったら直ちにやはり離転職者職業訓練を受けて、できるだけ早い機会に再就職の方がいいだろう。ところが、これは調査しなくても、現状はどうなっているかというと、いわゆる目いっぱいといいますか、法で許されている範囲内のまず雇用保険の給付を受けて、それが終わる瞬間もしくは終わったときに、それから今度は離転職訓練の方に入っていっている。そしていま、離転職訓練に入っていった場合の就職状況は、いまあなたが言われたように、ほぼ訓練が終わるまでの間に七割ぐらいは決まる、こういう現状になっているわけです。そのことは、やはり間違いじゃないだろうか。少なくとも、失業したら直ちにいわゆる離転職訓練に入っていくと、こういうふうにやはり制度を直した方がいいんじゃないでしょうか。でなければ、国家的に見てもこれは大きな損失なんですね。率直なことを言うと、失業保険を三百日なら三百日もらえる間はある程度もらっておって、それが終わるごろから直ちに今度は職業訓練制度を利用して、それから訓練を受けるという実態が非常に多いわけなんです。そのことについて、じゃあ、なぜそういうことをするかというと、それはいま申し上げたように、失業保険の給付を受けている期間中に離転職訓練を受ける場合には、その期間が差っ引かれるといういまのこの制度になっているから、こういうような雇用情勢が厳しく、特に中高年齢層の離転職が多い場合における制度の運用として、そこのところをやはり改めていく、検討すると、こういうことがないと、いかに精神的に、いや、失業したらすぐまず受けた方がいいよ、いいよと言っても、これは利害得失の問題なんですよ、現実に。そういう問題がありますから、そこのところを私はお聞きをしているのでありまして、六カ月がいいのかどうかというのは、これは次のことでいろいろまたお聞きをしますからそのことはあれにして、いま言っているところについて、私は、いや、現行制度がこうなっているからむずかしいという話はよく知っている。現行制度は私も全部勉強しています。そのことでなくて、いまの現実を踏まえてそういう問題の処理について大臣はどうお考えでしょうかと、こういうことをお聞きしているわけです。
  29. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 問題は、やはり財源というようなものも考えなきゃなりませんが、雇用保険の財政状況というのが最近の非常に厳しい雇用情勢から考えますと、いろいろいまの御指摘の点、私もやはり制度改正について検討しなきゃならぬ点もあるというふうに一つの御提言として認識をいたします。  ただ、問題は、やはりこれは財政制度の絡み、いわゆる保険料率の問題、こういうことと勘案をしてひとつ検討すべき問題ではないかと、このように思います。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 私は財政との絡みのあることも承知をしております。しかし私は、今日のように中高年齢者離転職が多いときに、私はそういう問題についていつまでもこういう雇用失業状況が続いてはいけないのでありますから、その間に特別にやはり時限的にでも私はそこのところ、雇用保険の給付が終わってから離転職訓練に入るというような状況を直すためにもいわゆる差っ引かない。併給をしていくなら併給をしていくと、こういう中身をいまここで細かく議論をする時間がありませんが、どうかその点について速やかに関係審議会等に諮問をされて、また、財政当局とのお話も進められて、いわゆる前向きに検討を始めていただきたい、こういうことを、この点については大臣もまあ検討項目だと、こう言われましたから、ひとつお願いをしておきたいと思います。  そこで、今度はさらに含めまして、この離転職の教育の期間の問題であります。まあこれも衆議院かなりのやりとりがされているようでありますが、私自身も、その後いろいろこの問題について検討してみましたら、大体六カ月という訓練がいいんだろうかどうか。それはなぜかというと、いま大臣も言われましたように、たとえば産業構造から言いますと、素材型産業から加工型高付加価値産業へというふうに転換をしていかなきゃならぬ、もしくは第二次産業から第三次産業へというふうに離転職者転換をしていかなきゃならぬと、こういうことにこれはなるわけですね。そういたしますと、たとえば私は、ここに北九州の例を持っているわけですが、これも、この前労働省に北九州の雇用状況についてはよく勉強しておいていただきたい、御調査願いたいと言って、もうすでに何カ月かたってますから、あれしていただいたと思いますが、これも一々お聞をしておったら時間がないので、私の方から言いながらお聞きしたいんですが、たとえば北九州の場合には非常に生産性の低い、古い工場が多いわけですね。それから、鉄鋼とか化学、セメントなどの素材型産業中心になっています、北九州の場合は。そして、いま失業者がたくさん出ているわけです。そしてさらに、炭鉱からの離職等もして、そしてすでにもう、北九州の工業地帯の工業地盤が低下をしています。かつては、日本の重化学工業地帯ということで、たとえば鉱工業生産指数を見ましても、出来高額を見ましても、たとえば鉱工業出来高額で見ますと、全体の八%、こういう時代があったのでありますが、三十年代になると五ないし六%、五十年代になりますと一・三%と、こういうふうに鉱工業の出来高につきましても、出荷額にいたしましても、低くなっているわけですね。ですから、こういうような北九州の場合には、いわゆるいまのままではとても離転職はきかないわけです。ですから、まず一つは、その産業構造自体を素材型産業から加工型高付加価値産業へというふうに転換をしていかなきゃならぬ、産業構造自体を。これはこれなりでまあ進められる。ところが、いまの場合にいわゆる技能、技術の蓄積がないんです。まず、北九州にはそういう工場もありません。まあただ、たとえばあえて言うなら、加工型高付加価値産業というのは重電機があります。しかし、ここ自体が人が余っているというような問題があります。そういう工場もありませんが、いわゆる産業構造転換をしていくと同時に、そこに働いている労働者のいわゆる技能や技術の蓄積がないんですよ、これは。ですからまず、そこで働いている、離転職労働者の技能、技術を改めた、いま申し上げたようなところに転換をしていかなきゃならぬ、そういうやはり教育が必要になる。そうしますと、そういう教育というのが六カ月ということでできるんであろうか。これは衆議院における質問の中で、兵庫におけるいわゆる実態調査の中で、多くの現在受けている人が、できれば一年、経済情勢が許せば一年八カ月ぐらいの訓練を受けたいと、こういうことが言われて、これは衆議院でやりとりがされていますが、私は北九州の実情だけを実態調査をしましても、もともと素材型産業で働いておった労働者を、今度は加工型高付加価値産業転換をさしたり、もしくは第三次産業転換させる場合、しかも中高年齢層でありますから、これは若い高校を出たり、大学を出た、中学校出た人、これは適応能力早いわけです、率直なことを言って。ところが、中高年齢層ということは大体かなり頭は固まってます。たとえば、第三次産業へ移すということになると、サービス産業へ移すというと、いままでは主として肉体労働、もしくは若干いわゆる素材型技能を持っておった、技術を持っておった、それを今度はまるっきり第三次産業転換をしていくために、新しくするために、六カ月というこの離職職者の期間については私は非常に問題があると、こう思いますが、これらの問題点について、いま申し上げたように一つの例を北九州で私は挙げながら質問をいたしましたので、そういうことについての考え方を明らかにしてもらいたい。
  31. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まあこの六カ月というのは、一応の基準といいますか、でございますが、御指摘のような事情がこれから私は発生するというふうに考えます。まさに、産業構造の質的な変化に伴う雇用構造の変化に対応して、再就職の道をつけるための職業訓練でありますから、その職業訓練の仕方というものが年齢あるいは職種、こういった面においてその実情に沿うように、すでに九カ月、一年という、こういった訓練期間の職種も現にございますから、十分弾力的に対応していきたいと、このように考えます。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 まあ、弾力的に対応するというのは衆議院でもお答えですが、私は少なくともこの離転職訓練の場合には、まあ今度新しくやはり一応この訓練期間というのがここに、たとえば一級技能士訓練課程は一ないし六カ月とか、それからまあいろいろ、ここに表をいただいてます、すでに。——失礼しました、離転職のやつは一応この表で見ると六カ月ということに、これはまあ一応今度能力再開発訓練改正後はいわゆる六カ月と、こういうことに、これは職業訓練校もそれから技能開発センターもそうなってるわけですね。そうしますと、まあ大臣は弾力的と言われてますが、往々にして、これはまた財政とも絡むことなんですから、そこのところが具体的になかなか弾力的にならぬわけです。よほどここは、たとえばどうしても試験を、いわゆる再就職するに当たっては一つの国家的な試験を受けて、国家的な資格を取らなきゃできない仕事もあるわけですね。そういうような問題等いろいろありますから、いま少し——ただ単に一応弾カ的にということじゃなくて、きめ細かく私はこの六カ月をこういう仕事の場合にはこれだけだというふうに、むしろ延ばすという方向でこれやっていただかないと、せっかく大臣がここで弾力的にと言われても、改正後も一応は具体的に能力開発訓練は六カ月と、訓練期間六カ月と、こういうふうになってますから、ここのところはぜひ再検討してもらいたい。でなければ、現場で実際やるときには、いや、法律で六カ月と、こういうことになってるからできませんということが往々にして返ってくる。私はそういう点は——まずそこのところについていま一遍大臣、弾力的にとおっしゃいましたが、いま私が申し上げたような趣旨が生かされるような運営についてお約束をぜひいただきたい。
  33. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) ちょっと恐縮です、事務的なことだけ私からお答えさしていただきたいですが、いま先生御指摘のとおり、たとえば電気工事士とか、あるいは自動車整備士と、従来でも法的資格に結びつくものはそういった資格が取れるような訓練期間を設けてやっておる、そのことを大臣がおっしゃったと思います。それから、訓練基準はいま、まあこれは法的と申しますよりも、むしろ訓練基準は省令段階と申しますか、そういうことで実際、運営でやってまいりますので、先ほど大臣からも弾力的という御答弁がございましたが、そういうことで今後実情に即するような検討をしてまいりたいと思います。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 じゃあぜひ、そういうことができるということであれば——というのは、私は率直に言って、中高年齢層がいままで働いておった仕事とこれから希望する仕事には、これは画一的にはいかないと思うんですよ。いわば個人個人の過去のやはり経歴、経験によって非常に違ってくると思うんですね。それから、率直なことを言って、ある程度の年齢にもよると思うんですよ、ざっくばらんなことを言いまして。まあ四十代の後半から五十代になってまいりまして、まるっきり違った産業に行くと。たとえば、一つの例を挙げますならば、少し簿記なら簿記を勉強する。若い人が勉強する簿記というのはこれは早いんです、複式簿記でも。ところが、いままで主として肉体労働をやっておった人が、今度第三次産業へ行くために簿記なら簿記を、複式簿記を勉強するのに、普通の簿記を勉強するための期間と同じように考えられてもそれは無理がある。本人がいままでは主として肉体労働をやっておった、これががらっと変わったところをやるんですね。ですからどうしてもそういう、率直に言って個人差もありますし、過去の経歴、学歴等いろいろ違いがありますから、そこらのことは十分に、そういうことをお出しくださるときにこの六カ月というところにこだわらなくて、実際にその人がいわゆる再就職の道が開けるような十分な訓練が行われるように、ぜひやっていただきたいということを重ねてお願いをしておきます。  それから、第二番目にお聞きしたいことですが、これは民間に委託するからいいじゃないかという話になるんじゃないかと思いますが、しかし私は、たとえば長崎なら長崎におきまして造船の関係から、四国の今治なら今治におきまして造船関係から大量の失業者が出た、もしくは繊維地帯において大量の失業者が出た、その人が今度新しくやられるところの職業訓練——短期大学校とか技能開発センター等に行って訓練を受けるといっても、造船地域なら造船地域、繊維地域なら繊維地域においては、その者に対する技能開発の教育施設なり指導員なりというのはきちっとおるわけですね、それに関連するところは。ところがまるっきり、いま言われたようにもう素材型産業からいわゆる加工型高付加価値産業転換するとか、もしくはいわゆる第三次産業転換するということになると、まず学校の施設そのものがそれに適応していない。また指導員が、率直なことを言って、それに適応できる人も中にはあると思います。ありますが、大体いま言ったような指導員もいないと、こういうことで、ただ単に、たとえば雇用促進事業団の行っているやつをこっちにこういうふうに持ってくると、都道府県で行っているやつをこういうふうに持ってくるというこの改正案だけでは、私は実体が伴わないんじゃないか。どうしても、わが国のいままでの産業構造の分布に応じて、やはり職業訓練校とか技能開発ですね、そういうものが全部分布しておると思うんです。ところが、なぜかというと、技能開発センターというのはいままで一つしがなかったわけですから。それからたとえば雇用促進事業団だったら高等職業訓練校が八十八校ある。以下都道府県のやつも数はわかっていますが言いませんが、それが今度の新しい法によって移行するわけですから、そういう場合に施設、それから指導員、それから産業の分布に応じていままでつくられておったというやつがなかなかうまくいかないと思いますが、それらの点についてどうするか。  それから、私は率直に言って、この転換はどのぐらいの期間をお考えになっておるか。簡単に私は転換ができないと思うんですね。まあ、法律を改正したり、こういうふうに地図だけ書くのはだれでも簡単に転換できるんですが、現実にはいま言った隘路があると思いますね。ですから、その転換はどのくらいの年限をお考えになっているのか。いろんなことを私は聞いていますが、具体的にいま言ったことについてひとつお答えをお願いをしたいと思います。これは離転職だけでありませんね。転換問題は全体の問題です。
  35. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 先生御指摘のように、今回の法律改正公共訓練施設の再編成、転換ということを考えているわけでございますが、この法律の条文にも書いておりますんですが、転換につきましては、関係地域における雇用情勢地域産業動向、こういったものに十分配慮いたしますとともに、その地域における職業訓練の実施状況等も十分勘案しながら、それぞれ無理のないような形で転換を図っていこう、こう考えるわけでございます。  総合高等訓練校につきましては、それぞれ県単位に大体三校ぐらいずつあるわけですが、これは必ずしも先生御指摘のようなことばかりと限りませんで、比較的各産業に共通な、非常に基幹的な技能職種というものを選んでやっております。むしろ、あるいは県の訓練校におきましては、その産地産業向きのものをその産地にあります訓練校において訓練職種をやっているというようなことが多かろうと存じますが、いずれにいたしましても先生御指摘のような点があることも事実でございます。したがいまして、もちろん私ども施設設備の拡充あるいは改善、特に雇用促進事業団の訓練校につきましては、それぞれ先端の機械設備と申しますか、そういうようなものを整備いたしまして、成人訓練なりあるいは離転職訓練というものにも対応していきたい、このように考えているわけでございます。  それで、同時に、先ほど離転職訓練だけの問題ではないとおっしゃいましたが、離転職訓練について当面まず問題になりますものにつきましては、委託とかあるいは部外講師の活用というようなことで、それぞれ現在並びに近い将来における雇用需要に対応すべき離転職者訓練というものを推進してまいりたい。この施設転換につきまして、それぞれの先ほど申し上げましたような地域のいろいろな事情というものを勘案しながら位置づけて転換を図っていくものでございますから、必ずしも期限をいつまでというふうに申し上げることはかえって適当でないかと存じますが、できるだけ速やかにそういった転換を図って、現在並びに将来に備えてまいりたい、このように考えております。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 どうも大変答えが抽象的で、じゃ聞き方を変えましょう。  転換に当たっては二つの隘路がありますね。一つは、現在おられるところのいわゆる指導員の質の向上の問題がありますね。これも再教育しなければなかなかうまくいかないんですね。そうすると、再教育ということになると、ある程度のやっぱり年限もかかると思うんですね。まさか、労働省ですからいまおる人を首を切ることなどはゆめゆめお考えないと思いますから、そうすると現在おられる指導員自体の質を向上さしていかなきゃならない、これが一つある。  それから第二番目には、これだけの多くの学校の施設の改善をやっていかなきゃならぬわけですね。そこで私は、重ねてお聞きしますが、それならば転換に当たっての予算はどのくらいかかるんでしょうか。これらのことを——いま申し上げたように、いままでの施設はどちらかというと高度経済成長時における施設であったし、それから非常に陳腐化しているのもあるし、それから、どちらかというと、いままで日本が代表的に誇っておったいわゆる素材型産業、重化学を中心にする技能教育訓練に向く施設が多かったわけです。ところが、今回からはいわゆる付加価値の高い産業へと転換をしていかなきゃいけないし、さらに、全体の雇用構造から言うと第一次産業や第二次産業から第三次産業へというふうに転換をしていかなきゃならぬ。これはもう大臣も認められておる。そういう学校の施設にするためには、私はやっぱりかなりの予算がかかると思うんです。そういうものについても全然見通しがないまま、まさかあなたたちが法律改正をお出しになるとは思いませんし、また大蔵省とても、金の話になりますから、ある程度、どのくらいの年限がかかるのか、どのぐらいの金が——何もことしや来年の話じゃありませんよ。そういう話がないまま、こんな法律改正が審議の場に上がってくるはずがない。ですから、転換にどの程度の年限が必要なのか、それから大まかにどの程度の予算が要るのか。もちろんそれは、年次計画によって転換をしていくための予算が組み立てられると思いますが、お考え——あなたはいまできるだけ速やかになんて、そんな子供だましのようなこと言ったってだめですよ。私自身も雇用促進事業団で、ある程度こういう仕事も手伝わさせていただいて現地も見ていますから、どんな状況になっているかというのは百も承知をしてお聞きをしているわけですから、その意味から言いますと、そう簡単にいま言われた指導員の質の向上の問題なり、さらにそれに適応するための施設の改廃なりということが、そう簡単に一年や二年でぱっぱっとできれば非常に結構なことですが、私はなかなかそうはいかないと思う。ですから、ある程度の年次計画をお持ちだと私は思うのです。そういうことを当然大蔵省を初め、関係官庁ともお話し合いの上でこの法律が出てきていると思いますから、そこらをひとつ正直にお話しを願いたいと思う。
  37. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 先生御指摘の第一点の、職業訓練指導員の問題につきましては、お話しのとおり職種転換をするにつきまして、現在おります指導員を再訓練をし、あるいは向上訓練をするということが当然必要になります。現在、訓練大学校が指導員の養成確保の機関として相模原に設けられておるわけですが、数年前から単なる高校卒の四年ものだけでなしに、現在指導員としてやっております人たちの再訓練、向上訓練のための仕事をやっております。これが大体年間、長期、短期という訓練期間がありますが、一千名程度の規模でやっております。そのほか、訓練指導員の再訓練につきましては、それぞれその地域におきます工科大学あるいは民間施設というものも利用して再訓練をして、そしてその転換に備えてまいりたい、このように考えております。  それから、施設転換についての予算の規模でございますが、私ども雇用促進事業団の総合高等訓練校の転換につきましては、短期大学校または技能開発センターというふうに方向づけをしておりますが、短期大学校につきましては大方八億ぐらいの、一校につきまして。それから、技能開発センターについては二億程度。これはもちろんそれぞれの現在の訓練校の実情、それから今後のあり方の方向づけ等によりまして、区々ではございましょうけれども、大方そういうことで考えまして、なお先ほどのことを繰り返すようでございますが、それぞれの地域の実情に応じて、できるだけ速やかにという考え方でそれぞれ転換を図ってまいりたい、このように考えております。
  38. 安恒良一

    安恒良一君 なかなか年限を言われないんですが、私がこれ調査したところでは、どうも労働省と大蔵省の話の中では、大体この転換に十年内外がかかると、こんな話が——これは私がある方面から聞いた話ですが、ということを実は聞いているわけです。やはり十年ぐらい転換にはどうも年限がかかる。私も最短距離で見ても、やはりそれぐらいはかかるんじゃないだろうかというふうに、こう思うわけです。ですから、なかなかこういう席上で言いにくいのかもわかりませんが、私はやはり転換をすること、改正案そのものには反対でありません。しかし、どうしてもいま言ったような問題。  それから、予算措置についても約十億程度のことを言われていますが、果たして十億程度でできるかというのは、これも大変私はやや考えがお粗末のように思います。そんないま新しい機械器具を買うのに、一つ買うだけでも一億や二億の機械幾らでも要るんですから。というのは、いままでのやり方をやるならまた別ですけれども、いま申し上げたように、産業構造の転換に伴って、それに対応できる訓練ということになりますと、それはもうずっと、そしてこの種の機械というのは次から次にいわゆる開発をされているわけでしょう。そういうものを買い込むのに二億や八億の金で私はできるとは思いません。これは来年度というなら、まあその程度のことか、来年ぐらいのことで言われたのかもわかりませんが、そういう点から考えますと、この転換問題については私は思い切ったやはり財政措置、それから指導員のやはり訓練、それからいわゆるいままでの既成観念を離れた現在の産業構造に適応するやはりやり方、こういうことについてぜひこれまた積極的に取り組んでもらいたいと思いますが、もうこれより以上ここのやりとりしますと、また時間がありませんから、そういう点についてひとつ大臣の意欲的なお考えをお聞かせを願いたいと思います。
  39. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 全く御指摘のとおりと私は考えております。やはり、何といってもこの訓練教育、これは人であります。指導員の質の向上ということについては本当に魂を入れなければならぬ、このように考えております。  第二の施設関係、これまた非常に大切な問題でありますが、これは私は施設を購入してそれを設置するという方式は従来の方式であって、日進月歩技術開発が進みますから、リース制度でやっていくという、こういうことによってひとつ比較的財政的に負担が少なくて、しかも時代の先端をいけるような施設の整備をやっていけると、このように考えておりますが、ともかく思い切ったひとつ線をぜひ意欲的に出したい、このように考えております。
  40. 安恒良一

    安恒良一君 次に、大臣から、——そういうことでありますからぜひお願いしたい。  それから、今度これまた今回の改正で、現在、中央、地方にあります検定協会、それから訓練法人連合会ですか、これを統合して、よりこの法律の趣旨が生きるような方向にしたいと、こういうことで新しい構想が出されていますが、私はひとつそこでお聞きしたいのですが、たとえば訓練法人連合会等の年間予算は大体どのくらいになっているのか、それから人の配置はどうなっているんだろうか。どうも、そういうのをただ単純に統合しただけで、この法律に書かれているような——統合の理由がいろいろ書かれていますが、所期の目的を達することになるんだろうか、それを少し説明してください。
  41. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) 現在ございます職業訓練法人連合会、技能検定協会につきましては、各県によりまして、先生御承知のとおり、活動状況その他、特に法人連合会の場合は区々ばらばらな状況である事態でございます。全般的に平均してみますと、大体一連合会当たり三名前後の専従職員がおりまして、年間予算は平均しますと三百万から五百万ぐらいということでございます。ただ、これはもう御承知だと思いますので申し上げますが、特定県ではたとえば年間予算六十万というのがございます。しかし、ここの県につきましては、これは法人連合会が昨年十二月に発足をしたばかりでございまして、そういう関係から予算が少ないということもございますので、この点はお含み置きいただきたいと思います。  なお、技能検定協会につきましては、大体一県当たり平均三千万前後ぐらいの予算でございまして、専従職員はほぼ六名ないし七名というのが現状でございます。
  42. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ一遍それ、ちょっと一覧表を後で出してもらいたいと思いますけれども、私は平均三百万と言われましたけれども、平均本当に三百万かどうかで、後で四十六——四十七ですか、都道府県の検定協会の予算と人員訓練法人連合会の予算と人員を出してもらいたい。たとえば一つの例を、いまあなたが言われたように、人が一人しかいない、年間予算六十万だと。たとえば三人おる、三人おって年間予算三百万。人件費だけで飛んじゃうんじゃないですか、人件費だけで。どんな活動をやりますか。ですから問題は、これとこれを足すと、一足す一は二じゃなくて、今度は三にも四にもしようということで統合ということでしょう。統合する場合には大臣、やはりいま言ったような予算と人というものが伴わないと、いまの現状を、県に二つあるやつをひっつけたからといって、ここに書かれているような所期の目的を達することにならぬわけです。大臣、そうでしょう。三人おって年間予算三百万だというんです。一人おって年間予算六十万ですよ。人件費だけでも足らぬぐらいです、これは、いまの世の中だと。そうでしょう。ですから、どうもこれは私から言わせると、皆さんたくさんお役人がおいでになるところで悪口言いたくないんですが、何かいわゆる退役の古手役人の老後の安息場所になっておるんじゃないかというような気もするわけです。それではこれは意味ないわけです。  今回も、今度は意欲的にここにいろいろなことを果たしてもらおうということから、時間がありませんから中身は言いませんが、書いてあるわけです。そういう点について、ひとつ今回統合を契機にどういうふうにされようとするのか。予算の点、人の点。それから、本当に統合した以上、りっぱな仕事をやっぱりしていただかなきゃいかぬと思いますが、それらの点はどうでしょうか、大臣
  43. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 今度の統合の趣旨というのが、やはり民間の力を大いに生かして、職業訓練の中核的存在としてこの職業能力開発協会というものを大いに育てていかなければならぬ。現状の問題点、御指摘のとおりでありますから、それをただ継ぎ合わしただけでは意味を十分発揮できません。問題は、しかしそれを担う担い手の人の問題でありますけれども、理想と現実はなかなか思うようにまいりません。しかし、やはり今度の新しいこの協会の発足を契機に、できるだけひとつ所期の目的に沿うような人的構成、予算措置、こういったものを年を追うて整備していきたいと、充実していきたいと、このように考えております。
  44. 安恒良一

    安恒良一君 ぜひ統合された以上、それの所期の効果を上げるように、いま大臣も前向きにと。人ですね、いわゆる第二の人生を送るなどということじゃなくて、そういう人、それから予算、こういうことについて中身を充実させていただきたいと思います。  次に、最後の質問になるんですが、わが国のいわゆる現状というのは、学歴別尊重といいますか、いわゆる学歴社会と言われておりまして、大学出、高校出、中学校出、こういうものが、もう数字を細かく聞く時間がありませんが、初任給のときから格差がある。そして、その格差が年限がたつにしたがって逆に拡大をしていく、こういう状況で、学歴偏重社会弊害があります。  一方、職能訓練というのは、生涯訓練ということで、労働者が生涯訓練としていろいろ技能訓練を受けなければならぬと思う。ところが、技能訓練を受けた場合にそれが賃金につながってないんであります。私、手元に資料をいただいておりますけれども、たとえば中卒で技能訓練を受けた人が六万九千七百円。一般訓練を受けてないような人が六万六千六百円。高卒の場合には一般の人が七万九千八百円で、訓練を受けた人が八万六百円と、こういうふうになっていますね。これは何も技能訓練が評価されたのじゃなくて、訓練期間で年数がたっていますから、わが国の場合は年功序列賃金ですから、それだけふえている。だからほとんど何にも、技能訓練を受けたからといって、賃金や労働条件の方にはね返らない。どうもわが国の場合は、技能べっ視、技能を余り重要視しない。そうして学歴偏重、学歴社会、こういう弊害がある。これを直さないと、いかにこのような職業訓練法を大々的に改正してみたところで、実効は上がらぬと思うんです。  そこでこれは、文部省もおいでになっておりますが、これらの技能検定を受けた人とそうでない人の扱い、たとえば賃金の問題、こういうような問題点についてどのように今後扱っていこうとされるのか。いわゆる訓練法を改正をして、訓練法の改正が実際に世の中で生きるためには、ここのところを解決しないと、私は、いわゆる絵にかいたもちにほぼなってしまうと思いますが、こういう二つの点について、学歴社会のいわゆる偏重問題について、これは文部省の教育方針とも大きく関係いたしますから、こういう点について、それぞれ労働大臣並びに文部省の方からお考えを聞かしていただきたい。
  45. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、いままでの日本社会の風潮というのは、やはり学歴偏重であり、腕に技術の覚えがあり、額に汗して、本当にまじめに働く労働者の処遇ということについて反省しなければならぬ点があると思います。そういうことについてはもうすでに、やはり社会の風潮は、これを反省するという、こういう方向に転換をしつつあると思います。  私は、実は就任直後、文部大臣といま二度目の会談をしておりますけれども、本当にこの社会が求める人材の養成と同時に、その適正な評価と位置づけということについて、真剣に相互にひとつ力を合わして考えようではないかと、こういった提言をいたし、これを実行に移すべく準備を進めておるわけでございまして、やはり本当に技術を身につけた技能労働者というのは、やはり給与の面においてもこれが正しく評価されるということ、同時にまた、そういった方々がやはりこの職域それぞれの場において正しく位置づけられると、こういった方向に向かって、私は、今後行政指導の面において、あるいはそのほか制度面において考えられる点を十分改善をしていきたいと、このように考えるわけでございます。
  46. 鈴木勲

    説明員(鈴木勲君) 先生御指摘のとおり、学歴偏重社会の是正の問題は、人間の意識の問題とかいろいろとむずかしい問題がございまして、文部省だけでこれをどうこうするというような課題でないことは御承知のとおりでございます。  ただ、文部省といたしましては、学歴偏重社会というものがあって、学校教育におきましては、進学の際に、特定校の集中だとかあるいは受験競争が激化をするということが学校教育の上で好ましくない、そういう課題がございますので、何とかしてこれを是正するための措置を、ただいま労働大臣もおっしゃいましたけれども、労働大臣とも協力をして努力を続けてまいりたいということでやっているわけでございます。  たとえば、最近四月の初旬に、両大臣お話し合いの成果も受けまして、学歴が社会的にどういう評価を受けているかという調査を企業に依頼いたしましてしたわけでございますが、そういうものを公表いたしまして、企業における学歴の取り扱いが、学歴と能力が正しく評価されるようでなければならないという観点から、そのような実態を明らかにして、今後企業にもその努力を要請し、学校側に対しましても、正しい学歴と能力とがつり合うような、そういう力をつけて社会に送り出すように文部省としても努力をしなければならない、そういう観点から、学歴偏重社会の是正の問題、非常に大きな課題でございますけれども、努力を続けているところでございます。
  47. 安恒良一

    安恒良一君 どうも大変中身が抽象的で、満足いたしませんが、この問題だけでもまだ時間かかりますから、これはぜひ労働大臣、文部省の中において、いま私が問題点を指摘をしておきましたから、さらに御検討願って、いずれまた機会を改めてこの問題で論争をしたい。  最後ですが、結果的に言いますと、私は、いままでの日本職業訓練というのは、公的訓練もありますが、かなり企業訓練をやっている。ところが、各企業訓練というのは、好況、不況の状況によって違ってくるわけですね。好況で人手がほしいときにはいろいろやる、不況になると企業自体がやめるという場合も出てくる。それから、各企業のやる訓練というのは、主として自分のところで使えるようにと。訓練後その労働者が自分のところにとどまって自分のところを中心にやるわけです。ところが、今日のような不況状態になりますと、それで間に合うかというのは、たとえばいま私が北九州の例を挙げたように、間に合わない。たとえば産業構造の転換をどうしても北九州の場合に、これは日本全国でありますが、素材型から高付加価値型産業転換をしなきゃならぬ。それから今日の、いまの雇用問題というのは単なる景気循環ではないんだ、構造的な不況状況にあるわけです。ですから、ちょっと景気が上向いたからといって失業者の増大が食いとめられるかといったら、なかなかそう食いとめられない。いわゆる新しい失業者が出てくる。こういう状態で、そうしますとこれはもういままでのような企業中心の技能訓練ではなくて、社会的な広い技能訓練、教育水準の向上というのが必要だと。その意味で今回この法律を出したと、こういうことだろうと思いますが、しかし、私はたとえば北九州の場合においては、これは国がやると同時に自治体みずからが、地方自治体みずからもこういうものに積極的に取り組んでもらわなきゃならぬと思うんです。ところが、地方自治体自体は財政が赤字なんですよね。だから、わかっておきながら地方自治体自体が取り組めない、こういう問題もある。そういう場合には、国全体としてやっぱりやる以外はないんじゃないか。そういたしますと、いわゆる職業訓練に使っている金を雇用保険の中から見ますと、イギリス、フランス、ドイツ、これは台湾ですら、日本の場合には千分の一いま使われているわけですが、諸外国では百分の一を労働者の教育に、職業訓練教育に使う、こういう積極的な国もあるわけですね。ですから、私はこういう状況になればなるほど、企業主導の縦型社会的な訓練からいわゆる横型に国自体がいま言ったような、実情に合うような職業訓練教育をしていかなきゃならぬと思います。それがためには、私は社会訓練と、私は私なりに言うんですが、これは財源問題も出てくるわけですから、私はせっかくこの法律の改正を出されてすぐまた抜本改正と言うと、いやなお気持ちを持たれると思いますが、どうしても私は財源問題を含めて抜本改正というものをできるだけ関係審議会の中で議論をしてもらいたい、関係審議会の中でぜひ議論を、これは財源問題を含めて議論をしないと、率直なことを申し上げて今回のこの改正で、いま言ったような問題ができるかというと私はできないと思います。ですから、どうかその点について最後に労働大臣にいま申し上げた、どうしても国家的、社会的な訓練が必要なんだ、教育が必要なんだ。そこで財源問題等も含めて、制度を含めて抜本的な改正についてさらに着手をする、関係審議会等で速やかに議論を始めると、こういう点についてどうでしょうか。
  48. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、これからやはりいわば生涯訓練体制を整備、充実するという面において、これが財源の面においても、いま御指摘のようなことも踏まえて私は検討しなければならぬと。これには関係審議会の意見も十分聞きまして前向きでひとつ検討さしていただきたいと、このように思います。
  49. 安恒良一

    安恒良一君 以上をもって終わります。
  50. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私は、ちょっと安恒委員から指摘もされましたから、角度を変えまして、まず労働大臣関係当局にお伺いをいたしたいと思いますが、最近の雇用情勢と年次雇用計画について伺いたいと思います。  完全失業者は、恒常的に百万人を超えて二月末には百三十六万人に達している。日経の経済研究センターの発表によりますと、年平均六・三%の実質成長を遂げても、五十三年から五十五年にかけては失業者は百五十万人を上回ることは確実だろうと、こう述べています。したがって、まず雇用、労働需給など失業のこれからの、大臣、その見込みと言いますか、見通し、これについてまずお聞きをしていきたいと、こう思います。
  51. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 大変厳しい雇用情勢が不況のもとで続いておりまして、まだ現在のところ二月の失業者の数字でありますが、百三十六万人完全失業者と。そして、この失業率は二・五%であり、有効求人倍率は〇・五四倍という、こういう状態が続いておるわけでございまして、今後の見通しとしてはやはりわれわれは思い切った財政政策を展開をし、公共事業中心に不況の脱出を図る。それを背景にして雇用の安定というこの考え方が、いま進められているわけでございまして、かくすることによりまして、そしてこの五十三年度の見通しとしては大体五十五万人は雇用者がふえる、そして合計三千八百三十五万人の雇用者数ということになり、完全失業者は五万人減って百十万人というのが現在の雇用情勢の見通しでございます。  このような背景を踏まえまして、このたびやはりこの雇用の安定は職業訓練と表裏一体である。特に、この不況業種の離職者雇用対策あるいは高齢者社会になりました中高年齢者の再就職の問題と、こういうふうな時代の要請にこたえた職業訓練のあり方として、先ほどからいろいろお話を申し上げておるわけでございまして、やはり現在の日本産業構造が変わってきておる、あるいはまた高齢者社会になってきておると、こういう時代の変化を踏まえながら、同時にまた産業としては第三次産業がずっとふえてくるという、こういう雇用産業情勢に対応して再就職の道を図る職業訓練のあり方と、こういったことで今度の訓練法の主なねらいをしておるわけでございまして、そのためにはやはり中高年齢者訓練の充実と、それといわゆる養成訓練の場合には、その資質の向上を図っていく。このようなことをねらって今度の訓練法の改正をいたすことになったわけでございます。
  52. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 労働需給の後、失業の見通しをいまお答えいただいたんですけれども、お話しのように最近の経済動向から見て、景気回復にやや明るさが出始めたと、こういうようなお答えも含めましてありましたが、しかし、雇用情勢というのは、現状はきわめて私はやはり厳しい現状であることは大臣も御承知だろうと思うのですね。今度の五十三年度の年次雇用計画発表してそのお話も聞きましたし、今回の職訓法改正との関連もいま若干お話がありましたが、雇用政策訓練教育との関連、具体的にこれは大臣どうなんでしょう。今回の法改正は、先ほど安恒委員も指摘しましたように、昭和四十四年の改正以降の大幅なものでありますね。この間には、社会経済情勢の変化も著しくなっておりますし、現行の職訓制度に対しては、昨年の八月、行管の勧告が出ていて多くの問題点が指摘をされているわけですね。これについて今回これらの問題についてはどの程度勧告されたもので改正が行われているのか、まずこれを二つ目にお聞きをしたいと思うんです。  それで、それでは中央職業訓練審議会の答申もしてきておりますから、今後改正すべき点、これらについて改善措置等も必要だろうと思うんですが、これらについてあわせてまずお聞きをしていきたいと思うんです。
  53. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) いま先生御指摘の、昨年の行政管理庁の勧告は、職業訓練の体系、それから実施体制につきまして、現在の社会経済情勢に即応したものに改めるよう、こういうことでありました。その中身といたしまして主な点は、一つには、やはり公共訓練施設が県と雇用促進事業団のものとあるわけですが、この間の役割り分担を明確にすべきである。特に、離転職者訓練、それから身体障害者訓練、こういうものが公共訓練施設の特に注力すべき問題である。離転職訓練につきましては、民間教育訓練施設への委託、あるいは中高年者が多いわけですから、そういう者に向くような科目への転換、新設というようなことをやれというようなこと。あるいはまたそれに伴って、指導員の研修というようなこともやるように、こういうような指摘がありまして、まさに私ども率直に申しまして、現在の訓練体制の問題として意識しておりましたものを指摘していただいたようなことでございまして、そこで必要措置をとるにつきまして、必要な法的措置は今回の法改正の中で盛り込ませていただき、またそれに基づきまず運用面で是正すべきものは、運用面でこの法的な措置とも相まちまして今後対処をしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  それから、中央職業訓練審議会に対しましては、昨年以来中央職業訓練審議会に御検討をいろいろいただいておりまして、その成果も踏まえて私ども法案要綱としてことしの二月二日に御諮問を申し上げて、二月の二十七日でしたか、答申をいただいたわけでございますが、私どもの諮問申し上げた法律案の要綱につきまして、おおむね妥当であるということでございました。その際、訓練審議会のいろいろな御議論を踏まえまして、今後の改正法の施行につきまして、あるいは今後のまた訓練事業の推進につきましてのいろいろな御意見がございました。これにつきましては十分踏まえまして、尊重して今後推進してまいる所存でございます。
  54. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 現行の職訓制度は魅力に乏しいと言っていい、適当な表現かどうかわかりませんけれども。先ほど安恒委員も、充足率については非常に悪い原因も指摘しましたね。私は職業訓練就職に連動していない点も問題だろうと思うんです。主たる訓練課程において定員の充足率については先ほど安恒委員が指摘をしましたね。中途離脱者数というのはどのぐらいあるのか、それから受講者の就職率、これはどういうふうになっているのか伺いたいと思います。
  55. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) 中途の離脱状況について最近の状況を見ますと、養成訓練の場合は約一七%の方が、また能力再開発訓練では、若干パーセンテージ落ちますが、それでもやはり一三%の方が中途で退所されるという状況でございまして、この点につきましては今後さらにこういう訓練施設入校されるに当たりまして、適切な職業指導なりまたその訓練生の方々の適性あるいは希望等、十分尊重して訓練内容についてより一層の充実を図っていくということで対処をしていく考えでございます。  次に、訓練修了者の就職状況でございますが、養成訓練につきましては、訓練が修了する時点におきまして九四%の方が就職が内定しております。なお、能開訓練につきましては、先ほども触れましたように七一%となっておるのが現状でございます。
  56. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今回の改正のポイントは、離職者及び中高年齢者中心の職訓制度に切りかえることというふうに思われるんですね。そうすると、先ほど安恒委員も指摘しました入校時期、訓練期間等について具体的にはどうするようなことになりますか。それから、離職をされる者の希望に沿った受講体制の整備、あるいはまた技能労働力需要に応ずる訓練内容の改善、こういうものが具体的にやっぱり考えられなければならぬと思うんです。ですから、再就職促進のための各種資格の付与等についての措置、これは必要だろうと思うんですけれども、これら各種資格の付与について、現在どういうような準備をされているのか御説明をいただきたいと思います。
  57. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 先生御指摘のように、今回の法律の一つ改正中心的なポイントは、離転職者の再就職のための訓練体制の整備ということでございます。これは法律におきましても、離転職者のいろいろな事情に対応し、また雇用需要に対応いたしまして訓練をするということをポイントにしておりまして、訓練内容とかあるいは訓練期間、あるいは訓練方法、入校時期というような問題について、弾力的に対応すべきことを規定することになっておりますが、具体的には、たびたび私御説明申し上げているんですが、やはり離転職者が速やかに職業訓練を受けて再就職をできるためには、できるだけ訓練校に入校できる時期を、現在は四月あるいは四月、十月というようにやや硬直的でございますが、これを随時入校に近づける。訓練の実際のやり方としまして、二カ月に一遍ぐらいがあるいは適当かと思いますが、そのためには訓練のやり方、ひとつ訓練技法というものをやはり改めていかなきゃならぬ。これは実は単位制訓練と申します外国でやっておりますような訓練の仕方でございますが、一つ一つだんだんに積み上げて、そしてでき上がるという形にしていこうということで、すでに何科目かについて実際の施行に移しております。今後それの実績等も見ましてどんどん広げて、そういうものに切りかえていきたいというように考えております。さらに、訓練科目等につきましても、中高年向きあるいは今後の雇用需要に対応するようなものに切りかえていく。それから、切りかえが当面間に合わないところにつきましては、民間教育訓練施設なりあるいは事業訓練というような、広く民間教育訓練施設に対しまして委託をしていくという形で展開をしてまいりたいと、このように考えております。訓練期間につきましては、基本的には標準として六カ月というようなことを考えておりますが、御指摘の公的な資格等に結びつくものにつきまして、所要の訓練期間が定められておりますものにつきましては、九カ月とか一年とかというようなことで、公的資格と結びつくようなものにしてまいりたい。現在もしておりますが、今後ともそういうようなものがありますれば、そういうものに対応してまいりたい。訓練修了者の公的ないろいろな資格についての結びつきにつきましては、従来ともに建設、運輸通産省等いろいろ所管省が異なりますが、それらと協議をしつつ進めてまいっております。実績も相当出ておりますが、いろいろと従来のいきさつ等もありますし、私ども努力しておりますが、今後ともにそういった結びつきをさらに広げてまいるように努力をしてまいりたいと考えております。
  58. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  59. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、職業訓練法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続けます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  60. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 休憩前に、再就職促進のための各種資格付与等の措置について伺いました。  具体的に、これからお聞きするわけですけれども、モジュール制が実施されることになっていますね。隔月の入校あるいはまた六カ月間で訓練が終了となるのか。この場合、訓練期間を終えてもその資格が取れないような場合、あるいはまた再就職ができない場合どうなるのか。これにはさらに、期間の延長というのが行われるのかどうか。現行制度において一年間訓練しても容易に就職というのはしがたい現状であることは、午前の論議を聞いても明らかでありますが、こうなりますと六カ月間で切り捨てることにはならないと思うけれども、その点を念を押しておきたいと思います。  以上の諸点についてどうなりますか。
  61. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) モジュール訓練は、先ほども御説明申し上げましたが、一つ一つの単位を積み上げて、一つ一つ修得したらその上に積み上げるという形で、一つ訓練職種をマスターしていただくというようなかっこう訓練を進めていく技法でございますが、これも従来の一般的な六カ月という標準的な期間に対応するものとして一応考えているわけでございます。ただ、午前中申し上げましたが、公的な資格と結びついて九カ月なりあるいは一年の訓練を受けなければ、それの受験資格ないし公的資格が得られないというようなものについては、当面このモジュール訓練のやり方というものがうまくかみ合いませんので、それを当面開発するつもりではないわけでございます。  それから、モジュール訓練に限らず、離転職者のための訓練は、結局再就職に結びつけるための訓練でございますから、職業安定機関訓練校と十分連携をとりまして、求人需要との関係において有効な訓練をして技能を身につけていただくということを進めていくわけでございますから、その訓練を受けていていただく間におきましても、安定機関あるいは訓練機関事業主等との連携を密にいたしまして、訓練期間中にすでに雇用の予約をするような形で就職に結びつけていくというような努力を最大限に払って、訓練を受けた方々については再就職機会が得られるように、これは今後ともに十分の努力をしてまいりたいと、こう考えております。
  62. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 午前中に安恒委員も指摘をしましたが、私もちょっと角度を変えて内容的に同じようなことになるかもしれませんが、念を押しておきたいのですが、各種公共訓練施設の古い施設ですね、それから設備等の改善、これはもう当然措置を行わなければならないと思うのです。この措置等に伴う訓練の指導員の資質の向上あるいはまた定員の増員、さらには訓練事業に対する財政面で助成の強化というのは当然に必要であると思うのですね。これは、今後の具体的な改善についていま申し上げました諸点について、もう少し具体的にお聞かせをいただきたいと思うのです。
  63. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 公共職業訓練施設の設備につきまして、いま御指摘のように老朽施設等があります、あるいは機械器具についても陳腐なものが出てきているじゃないかというようなお話があるわけですが、私ども従来ともにそういった老朽施設の建てかえ、あるいは機械器具につきましても、できる限り新しい、要すれば先端的な機械器具を整えるように従来ともに整備に努めてまいっております。特に、今年度におきましては、昨年度に対比いたしまして四十数%の増ということで対処いたしておりますが、さらに今後これの改善には十分努めてまいりたいと、このように考えております。  それから、訓練定員の増につきましては、特に能力再開発訓練を重点に、昨年度に比べまして約一万人の定数増を図っておるところでございますが、それには訓練科の増設あるいは委託とかあるいは速成というようなやり方で施設内、施設外をフルに活用いたしました訓練ということで定員増を図っております。訓練指導員の再訓練と申しますか、資質の向上につきましては、訓練大学校が年間約一千人の定員で行っておりますほか、それぞれの地域においてたとえば工科系の大学なり、民間に対して派遣をして研修をしていただくというようなことで、資質の向上を図っていくべく都道府県等に対しましても指導をしておるところでございます。  都道府県の訓練に対する助成につきましては、従来ともに逐年充実を図ってきているところでありますが、特に五十三年度におきましては離転職訓練の飛躍的な増大、増強ということで、特に離転職者訓練を多数行う必要があるというようなところについては、特別の助成を上積みという形で行うように措置をしているところであります。今後ともにこのような面では努力をしてまいりたいと思います。
  64. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 午前中の大臣のお答えをいただいても、現実に長期不況によって最大の犠牲をこうむっているのは中高年齢者、それからその次特に申し上げると婦人労働者、心身障害者等々があると思うのですが、中高年齢者の問題については、先ほど詳細に安恒委員から指摘をされましたが、この婦人労働者、心身障害者の職業訓練について、定員の増加や訓練職種の開発を含む施設、設備の拡充、こういうのは当然図られなければならないと思うんですけれども、特に訓練施設面においては、福利厚生面が非常に欠けているのではないかと、こういうように思われるんです。この訓練施設等における予算の措置についても不十分だろうと思うんですが、具体的な改善措置、いま助成の強化等のお話もありましたが、今後のこれらの具体的な設備、施設、あるいは拡充改善を含めて、婦人あるいは心身障害者の方々のためにどのような具体的な措置がありますか。
  65. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 婦人の訓練につきましては、従来も婦人専門訓練校が都道府県立で全国に八校ありますほかに、一般の訓練校におきましては、訓練職種に婦人向けの、あるいは婦人もそれから男子も両方とも受けられるような訓練の科目がたくさんございます。そういうことで、年間約四千人ほどの規模で行うことにしておりまして、これは昨年度から比べてやはり数百名の増ということを考えております。  それから、身体障害者の訓練につきましては、従来ともに国が設立いたしまして、都道府県に運営を委託するものと、それから都道府県がつくっておりますものとあわせて十三校ございます。これは約二千人の規模で身体障害者のための職業訓練をやっておりますが、さらに昭和五十四年度から、所沢に厚生省と一体になりまして身体障害者の職業訓練のリハビリテーションセンターをつくりまして、そこでは既存の十三の訓練校にはないような、先端的な産業雇用できますような先端職種を選んで、いろいろな面で、これは重度身体障害者中心になりますが、新たに、ある意味では手工的なものも交えまして、身体障害者の訓練の充実を図ってまいりたいと存じております。既存の身体障害者訓練校につきましても、やはり施設の老朽化、あるいは設備等につきましても改善を要するものがございます。これは、とりあえず今年度の予定といたしましては、東京にあります身体障害者職業訓練校を建てかえるということの予算措置をしておりますが、今後ともにそのスピードをできるだけ速めて充実を図ってまいりたい。婦人の問題につきましても、それぞれ婦人の訓練校につきまして、あるいはまた、婦人と男子とが一緒にやりますところで、婦人向けの福祉施設、設備等につきまして、必要なものについては改善を図る努力をしてまいりたいと思います。
  66. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 離転職による能力再開発訓練受講者、特に中高年齢者については安恒委員も指摘しましたが、再就職につながるような特別の措置が必要であることは、午前の論議を通じて明らかになっていますが、具体的には何らかの社会的に認められるような資格付与制度の確立、これが一つあると思います。もう一つは、これは私のあくまでも個人的な考えでありますが、雇用の予約制度、こういうような何らかの制度、これは提言になるかと思いますが、そういうような熱意を大臣ひとつ持って、開発等についても積極的な、具体的なそういう裏づけというものが私は必要ではないだろうかと、こういうふうに思いますけれども、その点はどうでしょう。
  67. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) いま先生御指摘のとおり、離転職者職業訓練は再就職のための訓練でございますから、できるだけ安心して、訓練の結果、その技能を身につけるというためにも、むしろ早く就職先が決まっているということが非常な訓練への励みにもなりますし、また意欲にもつながるということから、私どもも職業安定機関訓練校と十分に連携をとりまして、事業主等の求人状況等を踏まえて、事業主等の求人のあるようなものに向けて転換訓練をするということが、まず第一義でございますが、転換訓練を受けている間にも事業主と接触をいたしまして求人開拓をし、できるならば訓練終了前にすでに雇用が約束されているという形で、さらに欲を言えば、その事業主が、このような仕事を身につけて来てほしいというようなことの要請にも応じて、その後の訓練をいたして、そうして事業主の雇用事業にうまくマッチするような形でやっていくという、この先生の御提言につきまして、私どもも全くそのとおりに考えますので、今後ともに努力をしてまいりたいと思います。
  68. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 職訓制度あるいはまた訓練所手当の制度については、若干労働省も御熱心に活動されていると思いますが、どうも広報活動についてはやや弱いのじゃないだろうか、不足しているのではないだろうか、こういうふうに考えているわけですが、これは当然国の予算措置等も含めまして、私はその要因といいますか、幾つかあると思いますけれども、やはりこういう大事な法改正の時期でありますから、今後の、これはもう再就職なり雇用なり、あるいはPR活動というものを十分にしていく必要がある、こういうふうに思うのですが、これらについて、大臣どういうふうにお考えになりますか。
  69. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まさに、御指摘のとおりと私も考えております。特に、この離職者就職、こういったためにも今度の訓練法の改正趣旨があるわけですから、この機会にやはり離職者側、再就職を求める労働者側にも、また、これを受け入れる事業主側にも、これが改正された趣旨、内容を平易にわかりやすく、PR活動というのを積極的にやるべきだと、このように考えております。
  70. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、高等職業訓練校の転換について、午前中安恒委員も若干指摘をされましたが、雇用促進事業団が設置する高等職業訓練校の転換に当たっては、画一的に実施するというようなことではなくて、要請訓練等、希望者が不当に受講機会を失うことのないよう配慮すべきだと、こういうふうに思うのです。また、高等職訓が非常にへんぴなところに存在するものが多いと思いますが、そういう点について、画一的ではなく、弾力的にという午前中のお話もありました。したがって転換、移転することによって、訓練施設社会的地位及び機能が低下するおそれがあると言われるような転換に当たっては、地域の労働者のニーズによって移行するなど、弾力的に、私は具体的にそういうものを配慮しながらやるべきだと思いますけれども、大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  71. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のことを十分私は考えなければならないと思っておるわけでございまして、特に関係地域における雇用情勢、そうして地域産業動向ということを十分配慮して、そうして職業訓練のいままで実施された状況、今後実施すべきあり方、こういったことを十分考えて対処しなければならぬ。やはり、この訓練を受ける人のニーズ、いわゆる要請を十分踏まえて、この際、制度改正とともに実施に当たって十分配慮すべきであると、このように考えます。同時に、私はごく部分的な現場視察でありますけれども、宿泊施設というものがある程度設けられておりますけれども、利用率が非常によくないという、私はこの寄宿舎制度、宿泊施設、こういったものをやはり一遍見直して、これを十二分に活用できるような線、そして特に再就職の人たちというのは、また場所を、自分の居住地から移さなきゃならぬという場合もありましょうし、また養成訓練校の場合もそうでありますけれども、寄宿舎制度というものをもう一遍見直して、これが訓練を受ける人たちに十二分に活用されるような検討もすべきであると、このように考えているわけでございます。
  72. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 職訓の短期大学校の施設あるいは設備、あるいはまた訓練内容等の充実を図る、このことについて、特に指導官の資質の向上については、午前中の安恒委員からも御質問がありましたし、お答えいただきました。私は、特に指導官については、部内の講師、それから部外からの講師というように、私は、制度としてそのようになっていると思いますけれども、学習面の指導に当たって、実は私も労働安全衛生コンサルタント等の活用について、これはもう安全教育指導等を含めて、やはり災害という問題についても大事な問題でありますから、こういう点も含めまして、部外講師としてのそういうふうな多角的な講師団あるいは指導官なり、こういう者が部外の講師として必要ではないだろうかと、こういうふうに思うんです。これらについての具体的な裏づけといいますか、労働省でのお考えをひとつお聞かせいただきたいと思うんです。
  73. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) いま御指摘の部外講師の活用につきましては、ここ一両年非常に各訓練校におきまして多角的に展開をしてまいってきていると思います。いま先生御指摘の労働安全コンサルタントの問題等につきましても、従来そういった労働安全衛生の面での教科につきましては、それぞれの都道府県の労働基準局に安全衛生の担当専門官がおりますので、そういう方々に主に担当してもらっておったように聞いておりますが、いま御指摘のような、コンサルタントの活用も今後図ってまいりたいと思いますし、先ほどからも申し上げておりますように、離転職訓練等の、特に職業訓練校にないような科目への職業転換を大いにやっていこうというような職種につきましては、部外講師の活用というものを最大限に図ってまいりたいと、このように考えております。
  74. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 午前中、安恒委員を含めて、あらゆる角度からの法改正について論議をされました。今回の改正によっても生涯職業訓練体制というのはまだまだ十分であるとは言えないですね。  そこで大臣行政管理庁の方の勧告あるいは中央職業訓練審議会の答申等の指摘を、幾つかあります、詳細に私ども拝見をしているわけですけれども、この問題点について早急に改善措置というものをしていかなきゃならない時期であると思うんです。これについて大臣、いままでの集約といいますか、諸点について、今後の取り組みについての所見というものを大臣に伺いたいと思うんです。
  75. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 一応、このたびの職業訓練法改正、まあ十年ぶりの改正でございまして、これを求める日本産業雇用構造の変化ということから考えますと、まあとりあえず法的措置として急がなきゃならぬ問題を、この際改正法案として御審議願っているわけでございますけれども、これで決して内容が十分だということはわれわれ考えておりません。一層、先ほど指摘がございましたような線、また衆議院においてもこの訓練改正の附帯決議がなされておりますが、その附帯決議の趣旨を踏まえまして、そしてこの内容の一層整備を図っていくことはぜひしなきゃならぬと思います。これは、とりあえずは運用面においてやることと、同時にこの財政面においての配慮と、こういうことも考えていかなければならぬわけでございまして、このような問題につきましては関係審議会にもお諮りをいたしまして、またこの法案を通すに当たって衆参両院でいろいろ貴重な御意見を承りました。その御意見を踏まえて、内容の整備に今後十二分に配意をしてまいりたいと、このように考えるわけでございます。
  76. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 少し角度を変えまして、私はこれからの提言を含めてお伺いいたしたいと思うんですが、溶接技術資格統一について伺いたいと思うんです。  去る昭和二十五年制定されました日本工業規格、JISですね、に伴う溶接工の技術検定制度、今日広く産業界に普及をされております。その数、私の聞くところによりますと三十六万人に達しているというふうに聞いているわけですが、このJISの溶接技術者はボイラー溶接士及びNKの溶接士など、他業種の資格とその実技試験内容はほとんど一致している、もしくは非常に似ているわけですね。しかし、現実はそれぞれが並列をした、独立をした形で実施されているわけです。この資格検定についてはですね。このことは、受験者の側から見ますと、非常に溶接工の大きな負担になっているわけです。これはもう国家的見地から言っても不経済のそしりを免れないと思うんですが、きょうは通産省、運輸省、建設省、労働省の、それぞれ検定試験等に関係のある省庁からおいでをいただいております。したがって、順次こういうような資格問題統一についてまず見解を、ひとつ運輸省通産省、建設省、労働省の順に伺いたいと思うんです。それぞれの立場、目的を尊重する。それから、合理的な統一した試験体系というものを確立していく。産業界の期待、雇用拡大等に寄与すべきであると私は思うんですけれども、いま申し上げました点について、申し上げました順序に従って、恐れ入りますが各省から順次お答えをいただきたい、お願いをいたしたい。
  77. 辻栄一

    説明員(辻栄一君) 御指摘の点につきまして、運輸省の方の考え方を御説明さしていただきます。  溶接工技能試験が関係各省のそれぞれの所管する法令によって行われておるという点につきまして、これらを相互に認め合うことにしてはどうかという点につきましては、昭和三十九年に臨時行政調査会の許認可の改革問題についての意見というところで、非常に先生の御指摘と同様の指摘がなされております。その後私ども、労働省あるいは通産省とそれぞれ協議を申し上げまして、昭和四十二年の四月から関係三省庁が一斉に通達を発しまして、それぞれ各省庁で行いました溶接工技能試験の免状を相互に認め合うということで措置してきておるわけでございます。ただいまのところ、私どもといたしましては、同年の四月四日付の船舶局長通達をもちまして、これらの証明書を船舶安全法によりまするところの証明書と同じにみなすという措置をとっているところでございます。
  78. 木内貞夫

    説明員(木内貞夫君) 通産省の立場として御説明申し上げたいと思います。  ただいま運輸省担当の方から御説明になっておりましたとおりでございまして、通産省といたしましては、溶接士の資格につきまして他省庁と相互に認め合うことは非常に有意義であると考えております。かかる観点に立ちまして、従来からJISの溶接士についても溶接方法の認可において発電用溶接士技能確認試験において採用いたしておるところでございます。  具体的に御説明いたしますと、電気事業法第四十六条第二項第一号におきまして「あらかじめ通商産業大臣の認可を受けた方法に従って行なわれていること。」と規定されておりますが、その認可の運用方針といたしまして資源エネルギー庁長官名で通達が出されております。その通達の中におきまして、ボイラー及び圧力容器安全規則百四条に規定いたしますボイラー溶接士試験に合格した者、鋼船構造規程第二十五章第三節に規定する試験に合格した者及び日本工業規格JIS−Z三八〇一、JIS−Z三八二及びJIS−Z三八二一の規定に準拠して社団法人日本溶接協会の行う検定試験に合格して技量証明書の交付を受けた者につきましては、発電用溶接士の確認試験を省略することといたしております。
  79. 楢崎泰道

    説明員(楢崎泰道君) 建設省の関係では、直接検定等のことを所管していないわけでございますが、建設業でいずれにいたしましても溶接作業に従事する職種が必要でございまして、近年そういった特種技能工が不足状況になりつつあると、こういうことでございますので、建設工事の適正な施工という立場から、そういった高度な技能を有した労働者の確保が私どもの課題になっておるわけでございます。  溶接作業につきましては、労働安全衛生法の規定等がございますし、それから検定につきまして、検定の資格を持っていなければ作業に従事してはならないということには必ずしもなっていないわけでございますけれども、いずれにいたしましても高度な技能を有する溶接工の確保という観点から、ただいま運輸省通産省さんから御答弁ございましたような方向でお互いに協力して前進をいたしたいと、こういうふうに考えております。
  80. 津沢健一

    説明員(津沢健一君) ただいま各省庁から御説明がございましたが、私ども労働省関係の免許といたしましては、御指摘のボイラー溶接士免許というのがございます。  この免許につきましては、このうちの実技試験につきまして四十二年から、一つ運輸省関係では、先ほどお話がございましたように、鋼船構造規程に基づいて行われております溶接技量試験に合格した者、それからもう一つ通産関係といたしましては、電気事業法に基づきまして行われております溶接士技能確認試験に合格されました方、この二つのものにつきましては実技試験を免除するということにいたしております。これと対応する関係で、それぞれ運輸省通産省におかれましても、労働省のボイラー技士に対しましてほぼ同様の免除措置が講ぜられておるところでございます。御指摘のように、JISを含めまして同種の資格につきましてはその連携を強化していくということは大変有意義なことと存じております。したがいまして、私どもといたしましても、今後とも関係の者の間で十分協議検討を進めて、さらに前進を図るようにいたしたいと存じます。
  81. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 訓練局にお尋ねをしますけれども、訓練局が行う職業訓練技能検定においては、溶接科以外の科にあっては技能検定制度を持っているわけですね。教育目標も持っておられるのです。しかも、そういうふうに持っておられるにもかかわらず、溶接科だけがこれを持っていない。これは一体どういう理由なんですか。それから、教育目標も検定制度も持っていない、これは言うなら怠慢ではないかと、私はこういうふうに思うんです。これはせっかく溶接工として入校をして溶接技術を身につけて、そしてすぐ就職、実戦に役立つわけですよ。ところが、これらについては教育目標——訓練校の中のですね、それから検定制度もないことによって、せっかく訓練校によって溶接の技能を身につけても、社会に出たら通用しないという、そこに私はいままでの何か手落ちがあるんじゃないだろうか。これは今日非常に溶接技術を学ぶべく入校した学生の人たちにとっては大きな痛手なんですよ。一体、今日まが放置さしていたのはどういう理由なんですか。
  82. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 溶接につきまして技能検定制度がないという御指摘は、まさに形の上ではそのとおりなんでございますが、技能検定制度昭和三十三年に職業訓練法が制定されました際に、その中の法的制度として入れられたわけでございますが、たとえば他省庁がすでにその時点において所掌しておりまして、それと類似のこういった制度をやっているものとしては、溶接士だけではなくて、たとえば自動車整備士等についてもあるわけでございまして、私どもは職業訓練制度の技能検定発足当初、いろいろと各省との折衝をいたした経緯があったわけでございますが、結局私どもとしては、先生御指摘でございましたが、溶接の場合には、各職業訓練校とともに、先ほど指摘のJISの検定合格ということを目標にして、JIS検定試験の水準をいわば上回る内容の訓練ということをいたしておりますので、目標がないということではございません。したがって、訓練を終了いたしました場合、あるいは在校中にも訓練終了までにその検定試験には大部分が合格しているというのが現状でございますので、そのいろいろな経緯があることから、技能検定という名を冠する制度としてはございませんが、訓練を受けました者のメリットとしては、そういった訓練の目標並びに訓練を受けました訓練生のメリットとしては、大体そのようなことが充足されているというように考えております。
  83. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 局長ね、そういうふうなお答えですが、現実はそれとはまだやや違うんですよ。日本溶接協会の検定を受けなければ、溶接は使えないんですよ。JIS−Z三八〇一については、さっき通産省からもお答えがあったんです。私は今回の法改正によって、職業訓練及び機能検定の推進のための中核団体として、職業能力開発協会というのを設立することになっていますね。じゃ、一体具体的にはそういうところに溶接科を終了した者にはJIS−Z三八〇一の資格を与えるような、そうすれば、その卒業と同時に就職もできるし、すぐに役立つわけですよ。そういう配慮がないんですよ。確かに、訓練をして溶接の技能は身につけているけれども、無資格なんですよね。その辺の関連で私がいま申し上げたような、今後せっかく技能を習得したんだから、そういう検定を含めて、新しい設立をされる協会なら、そこも溶接協会との関係を十分とりながら、あるいは検定委員等も派遣をいただくような形でも結構ですから、何らかの措置によって訓練を経た者がそのJISの合格者になるような、そういう配慮を具体的にやるべきだと、私はそう言っているんです。それの配慮がややいまの局長のお考え、お答えではちょっと違うと思うんで、この辺、今後もし現状はそうであるならば、今後そういう方向でやらなければ、私はさっき午前中から安恒委員も指摘しました充足率が悪い幾つかの要因の一つではあろうと思うんです。要するに魅力がない、訓練を受けても資格が得られない。これではせっかく養成をしてもすぐに役立ちはしないところに、何かそういう充足率、あるいは魅力によっても乏しいものではないだろうかと、こういうふうに考えられるんです。これは局長がいただいたら、通産省はそれにどうしますかということでお答えをいただきたいと思うんです。
  84. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 先生御指摘の点でございまして、私どもあるいは実情の認識において十分でない点があるかと思いますが、十分先生の御指摘を踏まえまして、今後検討、努力させていただきたいと思います。
  85. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 通産省は。
  86. 木内貞夫

    説明員(木内貞夫君) 通産省といたしましては、発電用の安全性の確保の点から、その大きなウエートを占めます溶接士につきまして、JISの資格なり、適切な資格を取りましたらば、先ほども御説明申し上げましたとおり、その線に沿って発電用の溶接士として認めてまいりたいと、かように考えております。
  87. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 JISのことをいま言っているのですよ。JIS−Z三八〇一でいいですよ。
  88. 木内貞夫

    説明員(木内貞夫君) JIS−Z三八〇一の資格を取りました場合には、先ほど申したとおり採用していきたいと考えております。
  89. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 いや、そうじゃないんだよ。溶接協会が検定をいまやっているでしょう。今度、この法改正によって、各種検定制度を含めた新しい団体が生まれるわけですよ。能力開発協会が。そうすると、そこにも検定というものができるように、あなたの方から検定委員を差し向けてもいいわけですよ。そういうような相互の関連で訓練生に溶接技量を習得した者については実技の免除をするとか、具体的なそういうものを通産省のJISの中では考えませんかということを言っているんだよ。私はぜひ考えてほしいと思うんですよ。労働大臣、それでなければ、せっかく法改正やっても私は十分な意味をなさないと思うんです。
  90. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御趣旨はよく理解をいたします。溶接技術工の技能の評価に当たりまして、通産省ともよく連絡をいたしまして、ひとつせっかくの職業訓練が再就職の道に十分役立つように、社会的評価の基準を明示したいと、明示すべく検討さしていただきたいと、このように思います。
  91. 木内貞夫

    説明員(木内貞夫君) 先生の御趣旨の線で前向きに努めてまいりたいと、こう思っております。
  92. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 くどいようですけれども、基本的な統一の方向というのは、私は何もかも全部と言ってはいないんですよね。たとえば、技量について言うならば、実技は免除したらどうかと、学科というのはこれはそれぞれ高度なボイラーについてもNKについても、それぞれの高度な知識、技術、技量というものは必要であることは私は十分承知をしているわけですよ。しかし、その基本的なJISのZ−三八〇一でもいいんですよ。基本ベースによって、そうして資格を与えれば、その上にNKなりあるいはボイラーなりという、そういう拡大できる条件というのが私はできると、こういうふうに、基本的にはそういう統一方向の基本的な考え方でどうですかと、こう言っているわけです。その点で念を押しますが、もう一度はっきりお答えをいただきたいと思います。
  93. 木内貞夫

    説明員(木内貞夫君) 先生の御説明で十分私どもも納得いきまして、通産省といたしましてもその線で努めてまいりたいと、こう思っております。
  94. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 先ほど十一年前ですか、各省がそれぞれ通達をされています。経過については私も御説明をいただきました。そこでわかりましたが、溶接の資格については今後各関係の省庁が十分に協議をいただいて、いま申し上げました、これは提言になるかもしれませんが、基本ベース、特にJISを基本とした資格の相互乗り入れですね、これを強く私は要請をします。きょうおいでの各省とも、早急に協議会あるいは御協議をいただきたいと思うんです。これは要請ですから、ぜひ実現をしていただきたいと思うんです。  そこで、今回の法改正によって今後の訓練については先ほど労働大臣からも言われました。特に、教育課程というもの、教育目標を設定して教育の内容を充実される。しかも、これから設定される職業能力開発協会がJIS検定できるように取り計る、これも大臣から前向きの姿勢でということでありますから、私ども十分期待できると思うんです。本法の基本理念による職業訓練及び技能検定が、相互に密接な連携のもとに行われることによって、私はすべての労働者が各自の職業に関する能力、その段階に応じて適正な評価をされるよう、私は強く要望しておきたいと思うんです。このことについて、再度労働大臣から政府のひとつ御見解あるいは今後の御所見、承りたいと思うんです、
  95. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御指摘をされました御趣旨の点を踏まえて、十分制度趣旨を生かしていきたいと、充実してまいりたいと、このように考えます。
  96. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大分時間もたちましたから、最後になるかもしれませんけれども、午前中の安恒委員等々から、私も含めまして御質問をしました中に、今後の雇用政策について私どもはこういうふうに考えているんです。今後の雇用問題の解決のためには、一般的に成長率を高めて雇用機会というものをふやす政策、これだけでは私は十分であるとは思わないんです。複合的な政策が必要である。その第一は、私は全般的な有効需要政策である特に長期的な改革の視点というものを明確にすることである、こういうふうに思うんです。第二は、環境保全とそれから環境開発を主眼とする地域計画というものを重視して、地方自治体の役割りというものを強化することであると、こういうふうに思うんです。第三は、広義の社会サービス活動、すなわち教育、医療、保健、社会福祉などの領域を改善、拡充させる計画というものを立てて、それに合わせてこれらの領域にもっと多くの人材というものを配置をしていく、雇用計画というものを持たなければならない、こういうふうに思うんです。第四は、効果のある職業転換の計画、これを持つことであると思うんです。形式的な職業訓練計画の拡張ではなくて、既存の教育訓練を有効に活用して、転換のための集中コースというものをつくる必要がある、こういうふうに思うんです。  これら諸点について、締めくくりとして大臣からもあるいは局長からもお答えをいただきたいんですが、これらの諸点、私どもはこう考えるんですが、今後の雇用政策についての見解及び大臣からの御所見、これを承りまして私の質問を終わりたいと思います。
  97. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘されましたもろもろの諸点、私も基本的に考え方を同じくするものでございます。特に、これからの雇用機会拡大し、新しく生み出すためには、欧米と比較して日本が立ちおくれております福祉関係の諸部門、こういうことに対してやはり人の充実を図って、そうして日本人の生活の質を向上さすという、こういう観点から積極的に推進をすべきである。ただこれは、労働省だけではどうにもなりません。文部省ありあるいは厚生省あり、それぞれ関係の省庁がございますから、よく関係省庁と密接な連絡をとって、午前中の安恒委員の御指摘のような総合的な雇用対策を推進する方向に向かって、労働省としてはいわゆるマンパワーを適切に配置して、日本人の生活の質を向上さすということに努力することによって雇用拡大を図っていく、こういうことに十二分の留意をいたしたい、このように考えているわけでございます。
  98. 小平芳平

    ○小平芳平君 職業訓練法改正につきましては、午前中から安恒委員、また高杉委員からの質問がありまして、いろいろ具体的な点についての御指摘があり、また答弁がありました。これらの点について私も伺いたい点があるわけですが、大体私は、前半におきましては身障者に限りまして、身障者の雇用問題、訓練についての問題、こういう点について質問をいたしたいと考えます。  先ほどの御答弁の中にも、こうしたオイルショック以来の不況、あるいは円高不況、こうした不況の影響が弱い者にしわ寄せされるということ、それは中高年齢層であり、婦人労働者であり、身障者であるという点についての御説明がありました中で、私はいま特に身障者についてずっと問題点をお伺いしたいと考えるわけであります。  まず最初に、身体障害者の雇用問題について伺いたい点は、身障者雇用促進法が五十一年の改正雇用率が法定された。昨年十月からは、未達成数に応じた納付金制度もスタートいたしました。労働省が現在把握しておられます身障者の雇用状況を規模別に、簡単で結構ですから御説明いただきたい。
  99. 細野正

    政府委員細野正君) お尋ねのございました身体障害者の雇用状況でございますが、規模別という特に御指摘ございましたので、規模別で申し上げますと、規模千人以上のところが〇・八〇、それから五百ないし九百九十九人のところが一・〇四、三百ないし四百九十九人が一・二一、それから百ないし二百九十九人が一・四八、六十七から九十九人が一・七一、これが昨年の六月一日現在における実雇用率でございます。
  100. 小平芳平

    ○小平芳平君 その昨年六月一日現在の雇用率については、すでに発表にもなり、新聞にも報道されておるわけでありますが、その後、たとえばいま最初に言われた千人以上で〇・八〇というのはいかにも低過ぎるということがこの委員会でも指摘され、あるいは新聞等でも指摘されたわけでありますから、その後において労働省はどういうふうな指導をなさったか、あるいは企業の方もその労働省の指導なり要請に応じてどういうふうな努力をしてきたか、そういう点を明らかにしていただきたいわけであります。この雇用率も労働省内で十分検討された数値でもありますし、それから諮問機関も経ておるし、そして施行までに一年の猶予期間もあったはずでありますから、いろいろこの理由は余りもうなくなっているわけですから、いかにして達成するか、あるいはどう責任を感ずるかということにあろうかと思いますが、それらの点について御説明をいただきたい。
  101. 細野正

    政府委員細野正君) この身体障害者の雇用率の達成につきましては、現在新しい採用をやっている数が相当多くて、しかも先生御指摘のように、雇用率の実雇用率が非常に悪くて、しかもその率だけでなくて人数的にも非常に法定の雇わなきゃならない数を下回っている、こういう事業をつかまえまして、これに対する雇い入れ計画の作成命令という制度を活用していこうと、こういうことでやっているわけでございます。したがって、ただいま申し上げました基準というのは、大体別な角度から見ると大企業が該当するということになりますので、したがいまして、大企業に対して重点的にこういう雇い入れ計画の達成命令というものを出しまして、計画をつくってもらって、その達成を督励をしていくと、こういうやり方をひとつ考えたわけでございます。それから、さらに御存じの納付金を原資とします調整金なり報励金なり助成金なりというものを、これはことしに入りましてから、これが支給をされるということになっておりますので、こういうものを十分活用して、一方において省令によって助成をするあるいは援助をする、こういう両面から雇用率の達成に努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  102. 小平芳平

    ○小平芳平君 その助成金については後ほどまた質問いたしますが、こうした大企業が要するに雇用率を達成しないという、要するに不熱心である、熱意がないということ。それから、業種別にはどうなっておりますか。
  103. 細野正

    政府委員細野正君) 業種別に見ますと、これも相当アンバランスがございまして、いい方で申し上げますと、鉱業——マイニングでございますが、これが三・二〇というふうなことで非常に高い実雇用率を示しておりますが、一方におきまして、低い方で申し上げますと、金融、保険、不動産が〇・四八というふうなことで、それから卸、小売が〇・六五というあたりが一を下回っておりまして、かなり法定雇用率を下回っているということが言えると思います。
  104. 小平芳平

    ○小平芳平君 こうしたわが国の雇用率に比較しまして、外国ではどうなっておりますか。
  105. 細野正

    政府委員細野正君) ちょっと手元に資料持ち合わしておりませんので、後ほど先生のところへ御説明に上がるようにいたしたいと思います。
  106. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、わが国より多いですか、少ないですか。
  107. 細野正

    政府委員細野正君) 先ほど申しましたように、ちょっと手元に資料がございませんので、正確に申し上げられませんが、身体障害者の範囲なりその率のとり方等にも違いがございますので、ちょっと一律に比較するのがむずかしいんじゃないかと思いますが、先ほど申しましたように、正確にちょっと申し上げる資料はございませんので、後ほど御説明をさしていただきたいと、こう思います。
  108. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、結構です、後ほど御説明に来なくても。それは前回の改正のときさんざここで議題となった点でありますから。  決してわが国の雇用率が無理なものではないということ。それは労働省としても、外国の例なんかも検討をし、あるいは審議会等でも検討した結果であって、決して無理なことを定めたんではないということ。したがいまして、こうした千人以上の大企業、それから業種別では金融、保険、不動産業、こういうような、何か労働省が指導して、そして計画を提出させてということを先ほど言っておられますが、余りにも業種別に見ましてもかけ離れているわけですね。達成率が非常にアンバランスが大きい。大体の労働省考えとして、見通しとして、そうした極端な不熱心なものはなくなるというふうに見通しを立てられますか。
  109. 細野正

    政府委員細野正君) 先ほど申しました悪い産業につきましては、基本的に——新しい雇用制度が決まる前からも決してよくないわけでありますから、そういう意味で基本的にこういう点について熱心さを欠くという点は前提にした上で、たとえば金融、保険等につきましては若干の事情もございまして——といいますのは、従来事業所単位に適用しておりましたのを企業単位に適用したために、金融、保険関係のような支店の非常に多いところにつきましては、達成のために雇わなきゃならない身障者の数が思ったよりも非常にふえたというふうな事情とか、あるいは身体障害者の定義を厳格にして、お医者さんの証明がある者に限るというふうな厳格な運用をしたとか、いろいろな多少の事情は確かにあったわけでございますが、したがって、そういう点も、何と言いますか、ある程度アンバランスができた一つの理由にもなるかとは思いますが、基本的には先ほど冒頭申しましたように、もともとそれでは旧制度においても比率が高かったかというと、そうではございませんので、したがいまして、やはり率の低いところについては十分私どもも、たとえば業界団体等に接触をとって、そこの身障者の雇用の機運を大いに助長していかなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけでございます。  具体的には、たとえば銀行等につきましては、昨年来労働大臣初め事務当局等もそれぞれ業界の団体に強く要請をいたしまして、銀行等におきましては、協会そのものの中に特別な対策委員会を設けるほか、各行それぞれ同種の対策委員会を設けまして、身体障害者の雇用にいろんな工夫、努力を重ねてきているという、そういう実情には現在なっておりまして、こういう全般的に不況下の中ですから、一気に率を達成する、あるいはこれが一斉にそろってくるというのはなかなかむずかしい面があると思いますけれども、その中でもいま申しましたような率の悪い点については、私どもも極力これを追いつかせるための努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  110. 小平芳平

    ○小平芳平君 特に三月などは、新しい学卒者が出ますし、そしてまた就職ですね、新しい就職の時期でもあったわけですから、三月の時点での指導なり動きというものが非常に大事な時期だったと思うのですが、そういう点、どうか考えられましたか。
  111. 細野正

    政府委員細野正君) 先生御指摘のように、新規採用者を雇い入れるときが一つの大きなチャンスである点、御指摘のとおりなわけでありまして、私どもはそういう意味ではむしろ三月よりももう少し早く、昨年の暮れごろから、あるいは新卒者のためのいろいろな接触の始まる段階をつかまえまして、いろいろな促進方の努力をしたわけでございますが、三月という時点をとって考えますと、私どもは、先ほど申しました計画の達成命令を原則として三月までに出してくれと、こういうことで達成命令を出すところについてはそういうとり方をするように各安定所長に対して指示をいたしております。したがいまして、その三月という時点は、いま申しましたように、その時点前から接触をして促進方を努力させると同時に、その計画自体は三月をめどに出してもらうという形で、新規採用に当たってこの問題に十分向こう側が関心をもって対処するような努力をしたつもりでおるわけでございます。
  112. 小平芳平

    ○小平芳平君 当然それは、三月という時期はと私が言いましたのは、三月にやれと言っているわけではないのは申し上げるまでもないことでありまして、大体就職試験は何月から始まっているかですね、採用予定者は何月ころ決まるかということですね。そういう点から考えて、いま局長が御説明なさっていらっしゃることは、これは当然だと思います。  労働大臣、そうした点につきまして、いま労働省としては一生懸命やってきているということを繰り返し説明しておられます。  これから、納付金の問題について別の質問をいたしますけれども、要するに大企業とか、あるいはある種の企業、ある種の産業は、納付金を出せばいいんだということで、本来の身障者雇用促進という趣旨からかけ離れていくのじゃないかということ、それはこの改正の審議の過程でも、それこそ衆参を通じての最大の問題点だったことも御承知のとおりなんでありますが、最近の傾向としてそうした最大の課題だと言われたことが、知らず知らずそっちへいってしまいはしないかということを恐れるゆえに、またこうして問題を繰り返しているわけですが、いかがでしょう。
  113. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 身体障害者雇用促進法の目的、まさに雇用制度を設け、納付金制度を設けたゆえんのものは、いまお話しのように、ペナルティー的な性格のものでは断じてない。そして、みんなが社会連帯の考え方の上に立って身障者の雇用促進を図ろう、こういうところに本来の趣旨があるわけでございます。残念ながら、いままでの経過をたどってみますと、御指摘のようなせっかくの促進法の趣旨がまだまだ生かされておらない。そして、納付金制度は、これを納めればこれで免れるのだという、こういう間違った受けとめ方がまだ残っておるとするならば、ぜひこれは払拭をせなければならぬ。そして、特に現在のような厳しい雇用情勢のもとにおいては、私は、一番重点的に配慮しなければならぬ問題は、中高年齢者雇用対策と身障者の雇用対策に万全を期すべきである、このように考えております。したがって、これからの雇用促進に当たって、身障者の雇用問題については法の趣旨を生かして十二分に各企業趣旨が徹底され、これが実現されるように労働省として関係担当者を大いに督励をして、全力を尽くしてまいりたいと、このように考えております。
  114. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、訓練について伺いますが、身障者の職業訓練はどのようになされておりますか。その訓練科目にしましても、手内職的なものとか、単純作業的な職種、そういうようなものに偏っているんじゃないかということ。従来の訓練職種が閉鎖的な、そうした偏ったものである、そのきらいがきわめて強いわけですが、それらの点についてはいかがですか。
  115. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 身体障害者の職業訓練につきましては、全国に国立の十一校、並びに都道府県の三校、合わせて十四校、約二千人の規模で職業訓練をやっているわけでございます。もちろん、訓練方法等についても特別の配慮を加え、身体障害者の能力、適性に応じた訓練をやってまいっておりますが、やはり先生いま御指摘のような職種に従来は偏っていたように思います。  今度、来年度所沢にできます身障者の職業リハビリテーションにおきましては、従来の訓練科目と離れまして、できるだけ先端的な職種についての訓練科目を試行的にやってまいりたい、このように考えておりますし、やはり身体障害者もいろいろな適性、能力がまちまちでございますので、雇用需要との関係考えますと、訓練科目転換なども、できる限り事務系といいますか、第三次産業系的なものに転換を図るような工夫を今後してまいりたいと存じております。
  116. 小平芳平

    ○小平芳平君 身体障害者雇用審議会の答申、四十八年十二月、この段階で、身障者の訓練職種の開発に関して、既存の科目の整理統合を進める、あるいは就職条件の良好なコンピューター関連職種等、近代的な職種、資格の取得に容易に結びつくような職種の開発を進めることが必要である、こういうようなことがありますですね。   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 これから、ずいぶん、もう数年たっておりますが、こういう点はいかがですか。
  117. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 確かに、身体障害者の訓練につきまして、新たな一つ訓練科目をつくるにつきましても、いろいろな研究開発が必要でございます。そのために、この前の審議会の答申を受けまして、その時点からすでに所沢の職業リハビリテーションセンターの設置の計画がございまして、実際にちょっとおくれて、来年度開校というようなことになっておりますが、その中で、先ほど申し上げました、試行的に先端的な職種と申し上げた中には、コンピューター関係の職種も設けるべく考えておるところでございます。
  118. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど身障者訓練校について、職業訓練校についての御説明がありましたが、その定員と現在員、それから訓練終了者の就職状況、こういう点について御説明をいただきたい。
  119. 守屋孝一

    説明員(守屋孝一君) 現在の身障校の定員は約二千名、正確には千九百四十名でございます。これに対しまして、現在入校されています方は千三百七十七名、したがいまして約七〇%の充足率になっております。この身障校の方々の就職状況につきましては、現在手元にこの就職率がございませんので、はなはだ恐縮でございますが、私の記憶によればたしか一般の養成訓練と能開訓練のちょうど真ん中あたりという記憶がございますので、養成訓練先ほどお話ししましたような八〇%強、それから能開訓練は七〇%強でございますので、ちょうどその中間あたりではなかったかというように記憶しております。
  120. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点、私がこの委員会で身障者訓練校の問題点につきまして質問たことがあります。そのときのことを詳しくここで繰り返すわけにはまいりませんけれども、非常にいろいろな問題があるわけです。ただ、定員に対して約七〇%ということだけだと、それほどがらがらでもないという印象を受けますけれども、ところによってはとてもそうじゃないわけです。いろいろな問題点があることを改めてまた別の機会に問題にしたいと思います。  ここで、先ほどにちょっと戻りまして、納付金についてであります。この納付金について、労働大臣からも、ともすれば納付金を納めることによって事を済ませようというようなことになると大変なことだという大臣の御見解でありましたが、結論を申し上げますと、労働省もそういう納付金で事足れりへ流されていきやしないかということです、労働省自体が。そしてまた、雇用促進協会も、もっぱらお金を集める方に流されていっていはしないかという点を心配するわけであります。  そこで、五十二年度のこの集めたお金は幾ら徴収されましたか。支出は幾らになりましたか。
  121. 細野正

    政府委員細野正君) まず、納付金の徴収状況でございますが、五十二年度に徴収された納付金の総額は約九十二億円でございます。これは五十一年度下半期の六カ月分ということでございます。  それからなお、これを原資とします調整金、報奨金、助成金等の支給状況でございますが、五十二年度における支給の実績は、まず雇用調整金の方から参りますと約七億円、それから報奨金が約三億円、それから助成金は目下集計中でございますが、概算しまして約七億五千万円程度、合計約十七億五千万円ぐらいになるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。
  122. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、九十二億円が納付金として集まった金額で、約七十五億円というものは翌年へ繰り越していくということでありますか。結局、どうするおつもりなんですか。そういうようにお金さえ集めれば、要するに納付金さえ集めれば——企業にしてみれば納付金を納めれば事足れりという、それに対して労働省といいこの協会といい、九十二億円お金を集めたと。七十五億円はその次の年へ繰り越していくと。それで事足れりというわけにいかないじゃないですか。いかがですか。
  123. 細野正

    政府委員細野正君) 御指摘のように、納付金がたくさん集まるということは決してほめられたことではございませんで、それだけ法定雇用率未達成の事業所があるということでございます。したがいまして、私どもとしましては金が集まることを決して喜んでいるわけじゃございませんで、これをもとにしまして、先ほど来申し上げておりますような調整金なり、あるいは奨励金なり、あるいは助成金なり、なかんずく助成金等について、その支給要件なり内容について改善をして、一層身体障害者の雇用促進される、それに対するはずみをつけていく方向に私どもは努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、この身体障害者の雇用促進しますと、今度は逆に納付金が減って、出ていく方がふえるという、いわば二重計算的になるわけでございますから、そういう意味で現在、初年度において大きな差があったからといって必ずしも——少しはあり過ぎるとは私どもは思っておりますけれども、これに差があること自体が適当なものであれば、やはりその程度の差というものは翌年へ繰り越して翌年における事態に備える、こういう必要もあるかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  124. 小平芳平

    ○小平芳平君 何かずいぶん苦しい説明をしておられますが、こちらの遠藤さんが局長でそこで説明なさっていたときは、そんな苦しい説明はしておりませんでしたがね。  そこで次に、五十三年度予算はどうなっておりますか。
  125. 細野正

    政府委員細野正君) 五十三年度の納付金の徴収の見込みは、いろいろ前提がございますので正確にはあれですけれども、一応私どもは五十三年度一年分、先ほど申しましたように五十二年度は半年分でございますが、これを一年分に引き延ばしまして、納付額で約百六十億円というふうに見込んでおるわけでございます。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 納付額が百六十億円で、次に事業費、事務費、そういうふうに分けての経費、どうなっておりますか。
  127. 細野正

    政府委員細野正君) 現在概算しておりますところでは、業務取扱費が約十億、それから雇用調整金、報奨金、助成金等の総額を約百億強というふうに見ているわけでございます。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ事務費が十億ですね、結局。それから、報奨金等が百億円ということですね。そうしますと、前の年度では十七億くらいですかね。前の年度が十七億円くらいだったものが、五十三年度になったらいきなり百億円になりますか。
  129. 細野正

    政府委員細野正君) 先ほど申しましたように、助成金につきましては本年度におきまして要件それから限度額その他の改善、あるいは新しい助成金の種類等もふやすというようなことをやっておりまして、そのことと、それから現在までのところ、まことに残念ながら知らずにこれを請求をされないというふうな向きもかなりあるやに見受けられますので、この周知徹底を図るというふうなことによって、先ほど申しましたように、百億円程度の支出を見込んでいるという状況でございます。
  130. 片山甚市

    理事(片山甚市君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  131. 片山甚市

    理事(片山甚市君) 速記起こして。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 労働大臣にも、それから訓練局長も呼んできてください。  聞いていただかなくてはならないことは、身障者雇用促進協会ができたわけであります、先ほど来ずっとお話がありますように、雇用促進協会ではこの雇用率未達成の企業から納付金を集めているということですね。それが五十二年度の段階では九十二億円集めて、使うのは十七億円程度で、七十五億円くらいは翌年回しになろうということ。それから五十三年度予算では百六十億円ほどが集まるだろうと。その中で百億円程度は報奨金その他で支給する方になるだろうというんですが、局長、百億円の中身は答弁できますか。
  133. 細野正

    政府委員細野正君) 雇用調整金が十七億、それから報奨金が七億七千万、それから助成金が七十七億八千万という内訳に積算をしております。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 助成金がいきなりどうしてそんな十倍にもふえるんですか。
  135. 細野正

    政府委員細野正君) 先ほど申し上げましたように、助成金に新規なものを設けますことと、それからその要件を緩和するとか、あるいは限度額を引き上げる、あるいは従来のたとえば賃金の三分の一というものを二分の一に上げるというふうな、そういう助成の中身の強化というふうなことをやっておりますのと、先ほども申しましたように、この制度を御存じなかったというような方もできるだけよく周知をして、この制度に乗っていただくというふうなことをあわせやりまして、いま御指摘のように七十七億八千万程度の助成金を支出してまいりたいと、こういうふうに考えたわけであります。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 助成金の中身を点検するということは、これは大事なことだと思います。それはやるべきことだと思います。  この協会の業務の第一に職業訓練のことを掲げておりますが、これはどうなっておりますか。
  137. 細野正

    政府委員細野正君) 協会の業務の第一番に訓練というのは、ちょっと私もあるいは……
  138. 小平芳平

    ○小平芳平君 五十九条の一。
  139. 細野正

    政府委員細野正君) 所沢にリハビリテーションセンターをつくりまして、そこで厚生省の施設と同じ場所に、同じ敷地の中につくりまして、それによって治療からリハビリ、それから再就職のために必要な技能等を一貫して付与してまいりたいと、こういうことでやっているわけでございます。
  140. 小平芳平

    ○小平芳平君 所沢のお話先ほど来ありますが、この協会の業務として五十九条がありますね、その五十九条の一、それは所沢で全部終わるわけですか。
  141. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 現在、身体障害者雇用促進協会で委託を受けて運営する身体障害者職業訓練校は、所沢だけに現在のところは考えております。
  142. 小平芳平

    ○小平芳平君 現在は考えているのはそこでしょう。それから、あと何か考えておりますか。
  143. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 現在のところ、計画としては考えておりません。
  144. 小平芳平

    ○小平芳平君 あとは考えていないと。  労働大臣、こういうことでありまして、身障者雇用促進協会で新しい協会が出発をいたしまして、そして先ほど来のお話しのように納付金を集める、そしてまた雇用調整金、報奨金、助成金というふうなお金をまた給付するという言葉が当てはまるかどうか、とにかく支給するという。ですから、恐らくこの身体障害者雇用促進について、労働省対策は十分できておりますかという質問をしますれば、労働大臣あるいは労働省当局は、いや、それは雇用促進協会ができておりまして、この協会を中心にして十分な対策をやっております、というふうな答弁をなさるかもしれないし、なさらないかもしれませんけれども、それほどこの協会はある意味で注目もされ、期待もされたわけです。ところが、現段階では集まるお金は多いけれども、さて何に使っていいかわからないというような状態。かといって、お金が余っているからといって、いいかげんな使い方をされたんでは、ますますこれはおかしなことになってしまう。そこで、そうした期待もされた、注目もされている協会の今後のあり方について、労働大臣のお考えを伺いたいわけです。特に、先ほど申しましたように、ある意味企業が新付金を出せば事済むというように、労働省も納付金を集めれば事済むというように、協会も同じことを——それじゃ何のための協会か、全く雇用促進どころかその反対の協会になってしまう。そういうような点をひとつ篤と大臣考えいただきたい、御見解を承りたい。
  145. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 納付金を財源として、雇用促進協会というのがいろいろな身障者の雇用促進の施策を推進するということは、まことにちょっと理屈から言いますと自家撞着をする仕組みだというふうに思います。ただ、私は現在発足の当初でございまして、やはりなかなか身障者の雇用促進雇用率の線に及ばない、こういう過渡的な、私は現在の段階においては、遺憾ながら雇用促進協会というものの存在の意味があると思うのです。これは私は理想から言えば、雇用促進協会なるものは雲散霧消すべきである、納付金がなくなるような時代が来れば一番理想ではないかと、このように思うわけでございまして、まあそうなればまた雇用率を上げていくという、こういう線において促進協会というものの存在意義というものを位置づける、こういうことになると思うのでありまして、やはり納付金のための納付金ではないし、また雇用促進協会のための協会ではないわけですから、本来の趣旨に沿うて、年を追うて改善され、運営が充実されてそして身障者の雇用促進が充実していく、雇用促進の率が高まっていくということに、これに焦点を合わしてわれわれは努力すべきである、このように考えておるわけでございます。
  146. 小平芳平

    ○小平芳平君 特に、協会はいろんな意味企業から直接納付金を集めるとか、あるいは報奨金を支給するとか、直接接触をしているわけでありますから、したがって企業の希望なり意見を協会が集約するとか、それを労働省に伝えるとか、とにかく納付金がなくなるという将来のことはともかくとしまして、さしあたって五十三年度どうするかということを、それがちゃんと説明がつくような、要するに先ほどの十七億円がいきなり百億円になるという説明がつかないですよ。ですから、集められる方だって、納付金を出す方だって、そういう説明がつかないようなことをやられるのは心外だと思うのですね。そういう点ひとつ将来は将来として、さしあたって五十三年度どうするということを御検討いただかなくちゃならないと思うのですが、いかがですか。
  147. 細野正

    政府委員細野正君) 先生、いま御指摘ございましたように、助成金の要件の緩和とかいろいろな新しい種類を設けるとか、その辺につきましては、これはまさに身障者雇用促進協会が業界等のいろいろな意見を聞いて、その上でここを直した方がいいというふうなことを集約しまして、そういうことに基づいて改善をしたという経緯があるわけでございまして、そういう意味でこの助成金制度の普及、それからそれが実際に役立っていくということ。それから、さらにはそういう意見を出してこられた方については、この問題に非常に関心を持っておられる方でございますから、そういう方を通じて一層この制度の中身が普及をされていくという意味で、そういうこの制度全般の普及あるいは個々の制度の内容の改善、さらにはそれについての利用の拡大というふうなことに身障者協会がかなり役割りを果たしておられる。そういう意味での、先ほど先生御指摘の納付金というものの性格についての理解の徹底、あるいは雇用義務達成についての責任感の増大、そういうことを全般ひっくるめてのPR、それから業界の中における盛り上がり、そういうことがまずこの身障者雇用促進協会の重要な任務でございまして、ですから納付金を集めるということももちろん重要な業務であり、それから個々の助成金等の金を支給するということも重要な業務でございますけれども、それ以上にいま申し上げましたような制度全般に対する理解の普及、それから業界内部におけるそういう社会的責任についての認識やそれから機運の高まりということに私どもは期待をし、業務の中でもそれを重要な業務というふうに私どもも考えている次第でございます。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどの所沢の訓練学校についてですが、この飛び飛びにはずっと説明がありますんですが、特に最終の訓練校を卒業するその段階でどういう方が卒業し、どういう労働市場に進出をしていくことを見込んでいるかという点について、そうした点を焦点にしての説明がいま可能ですか。
  149. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 所沢の職業リハビリテーションセンターは、厚生省の国立リハビリテーションセンターと連動いたしまして、医療的なリハビリを終わりました方々に、まず職業適性の検査をいたします。職業適性に応じまして、その適性に合った訓練種目を選んでいただきまして、同時に訓練を終りましたら——訓練をやっている過程から、その就職先につきまして相談をしまたあっせん機能もするということで、実際の労働市場にその訓練を終わった者を送り出していこうと、こういうことにいたしておるわけでございまして、現在五十四年度で職業リハビリテーションセンターで設置をしようと思っております訓練科目は、やや大まかなことでございますけれども、情報系あるいは事務系、服飾手芸系、木工加工系、電気系と精密加工系というような訓練科目を、その中はいろいろ細かな訓練科目になりますが、そのようなことを考え、かつ重度の身体障害者を対象にいたすことにしておりますので、訓練期間につきましても要すれば従来の一年にこだわらず、二年というような訓練期間も弾力的に設けまして進めていこう。規模につきましては二百入をいまのところ予定をしております。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま私が申し上げた趣旨は、訓練が終わった段階で十分労働市場としての受けざらができているかどうか、そういう見通しをつけた上での訓練科目なりその構成が必要だという点で申し上げたわけでありまして、それはむしろ要望をいたしまして、従来の重度障害者の訓練といえば、何かこう機械的なことしかできないというふうな、先ほど申しましたような先入感でない新しい訓練科目。今度新しい訓練科目を終わってそのまま就職できないんじゃまたこれ困るわけですから、十分調査の上でやってほしいということを申し上げたわけであります。労働大臣先ほど来申し上げる協会につきまして、さしあたって五十三年度についての御検討をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  151. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほど来、政府委員から答弁をいたしましたように、まだ制度が発足して日が浅いわけでございますけれども、本当に身体障害者雇用促進法にのっとった制度でありますから、その身障者の雇用促進が図られるように、やはり運営を十分配慮して、予算の使い方というような問題についても、きめの細かい注意をしていきたい、そして軌道に乗せるべきであると、このように考えております。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 以上で協会は終わりにいたしまして、あと、今度の改正について若干御質問いたしたいんですが、これは先ほど質問があって御答弁が出ておりましたが、労働省で行っている技能検定と、国家試験によって電気工事士、建築士というのがありますですが、そういう点について、結局申し上げたいことは、労働省で言うところの検定制度がもっと格の高いものに、職場でもなるほどと思うような、そういう格上げをしてほしいという意味のことを申し上げたいわけなんですが、そういう点はいかがですか。
  153. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 技能検定は、申すまでもなく、労働者の技能を一定の基準によって検定して、その熟練度を評価するという制度でございますし、公的資格試験の方は、たとえば安全衛生の問題、あるいは交通輸送の安全というような点からの一種の従業資格と申しますか、そういう面をあらわすためのものでございますから、就業制限が一般にはあると。その性格は違うわけですけれども、私どもは、たとえば訓練を受けた人がその公的資格を取得できるようにというようなことでは従来も努力し、また今後とも努力してまいりたい。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕  技能検定そのものの社会的な評価でございますが、これは確かに大臣からもたびたび申されますように、社会一般の技能に対する評価、技能尊重機運というものの醸成に待つところが多いわけでありまして、そういう観点から、私どもは、たとえば卓越技能者の表彰とか、年間の職業訓練期間、あるいは技能尊重月間というようなことで世論の振興を図っているわけでございます。  同時に、技能検定の中身につきましても、これはいろいろ御意見がございまして、専門の先生方に御検討いただいているわけでありますが、現在の一級検定、二級検定というのが段階的にございますが、その上にさらに技能のさらに高い、卓越度を持った方、あるいはまた管理能力も兼ね備えたような方についての顕彰というようなものもできないかというような点等の検討も加えまして、先生御指摘のような技能に対する社会的に高い評価が行われるような方策を講じてまいりたいと存じます。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほどもずいぶんお話が出ておりましたので繰り返しませんけれども、技能に対する社会的評価、いま最後に局長が言われました、その点が一番大事だと。しかし、それも社会的な評価ですから、国が決めるとか、労働省が決めるとか、そういうことよりも、大事なことは、そうした社会的な評価が、それがきわめて大事であるということによって、やはり行政も政治もそうした技能の評価が高まる、そして定着をするという方向へ進んでいくべきだというふうに私も考えているわけであります。  それから、次に、在職労働者の職業訓練についてですが、この在職労働者の訓練については時間が問題だというんですね、何といっても時間が問題だ。そういう点も十分検討した上でこういう制度ができるわけでありましょうが、特に仕事が忙しいとき、あるいはむしろ人員整理が始まるかもしれないというようなとき、そういうような段階に分けて御説明をいただきたい。
  155. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 最近における、たとえば第二次産業におきましてもいろいろ技術革新とか、あるいは技能の質が変わってくるということから、在職労働者が、さらに技能の向上を図りたい、あるいはまた既存のみずからが持っている技能に付加して、もう少し多能化的なものに対応していきたいというような、いろいろな在職者に対しての成人訓練の意欲が高まっていることは、私どもがやっております調査でもあらわれておりますし、また、現実に公共職業訓練校におきます成人訓練も非常な大きな伸びを示し、また事業内でもそういったような伸びの数字が出ております。  そこで私どもは、いま御指摘のような、特に中小企業あたりで聞くことでございますが、なかなか訓練を受けたくてもいろいろ障害があるというようなこともあります。私どもは事業主がなるべく負担を少なく済むようにということで、労働者に対する有給教育訓練休暇の奨励制度、あるいは職業訓練施設への派遣奨励給付金制度というようなものを設け、さらには、先生御指摘のように、特に中高年に差しかかって今後のみずからの再開発、あるいは将来に備えてというような訓練需要に応ずるためには、中高年に対する有給教育訓練休暇奨励制度につきましては、特に、特別の上積みの助成をするというようなことで考えてまいりますとともに、公共職業訓練施設もできる限り在来の養成訓練中心ではなしに、成人訓練、あるいは離転職訓練もそうですが、そういうものに再編整備を図っていきたい。そういう観点から、特に雇用促進事業団の訓練施設につきましては、できるだけ技能開発センターという形でそういった需要に応ずるようなものにしてまいりたい、このように考えております。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっといまのことに関係しますが、委託ですね、二十一条二項ですか、委託、これは従来も似たようなことはあったと思いますが、従来の実績から見てどうかという点が一つと、それからどうかということは、プラスマイナスがあると思うんですが、それから、特に、この点は先ほどお話が出ておりましたが、公共職業訓練所の教える内容、設備が古いとか、技術革新に追いついていないというような欠陥があったのではないか、そういうような点についてはいかがですか。
  157. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 公共訓練施設における成人訓練につきまして、先ほど申し上げたように、だんだんに伸びておるわけであります。特に、委託の問題につきましては、従来の公共訓練施設は、特に、施設内で訓練をすることが不適当または困難である場合には外部に委託できるというような、非常に消極的な立て方になっておりました。この点は特に私ども今回の改正で、離転職者中心考えたわけでございますが、外部の民間教育訓練施設にむしろ積極的に、適当と認めるときには委託をするということで、訓練の幅を広げてまいりたいというやり方に変えようと考えているわけです。ですから、従来の成人訓練が、委託訓練は多少の数字は数字的にも、あるいは御説明ちょっといま手持ちがございませんけれども、だんだん伸びてはきておりますが、今度の法律改正を軸にいたしまして飛躍的に伸ばしてまいりたい。  それから、公共職業訓練施設は、いまも申し上げましたが、たとえば、雇用促進事業団は技能開発センター切りかえということに注力をしてまいりたいんですが、この点、機械設備等について古いものについてはなるべく技術革新の先端を行くようなものに切りかえ、それから大臣お話がありましたが、高価なものについてはリース等も考えながら、陳腐にならないような措置を今後大いにとってまいりたいと、このように考えております。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうした点はきりがないのでもう繰り返しませんけれども、概略申しまして、一時は公共訓練が評判が悪くて、企業訓練が非常に評判がよかったという時期があったわけですが、最近は大分いろんな雇用情勢その他経済情勢も変わってきておりますが、そうした公共訓練がつまらないと、企業訓練なら参加しようというような傾向が現在あるかどうか。また、そういう点が過去にあったことは事実なんですが、公共訓練よさようなら、企業訓練よこんにちはですか、そういうときもあったんですが、なぜそういうことが起きたかということですね。そういうことを、そういうことにならないような基本的な姿勢について、そのことを伺って終わります。
  159. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のような過去における、また現在における職業訓練校の評価につきましては、十二分にわれわれは反省すべきところは反省し、そしてやはり労働者の養成、これをまた受け入れる事業主のニード、こういったものをよく踏まえて、それで時代の求める職業訓練をやっていくということに十二分の配慮をして、せっかくの訓練法の改正を契機に、しかも周囲は大変な産業構造、雇用構造が変わっておるわけでありますから、それに対応するように十二分にわれわれも努力をいたしたいと、このように考えております。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  161. 柄谷道一

    柄谷道一君 一九六四年のILO総会で採択された雇用政策に関する条約百二十二号及び勧告百二十二号は、先進工業国の新段階に処してとるべき雇用政策の基本理念を鮮明にしたものだと理解いたしております。この条約では、完全雇用の概念を、利用し得べき労働力を完全かつ最も有効に活用する状態であると定義づけ、さらに、単に量的に完全に雇用されるだけでなく、その質的な充足を同時に要求するものであり、これを達成するため経済の継続的成長を図りつつ、技術革新産業構造の変化に対応して、必要労働力を確保すべく職業訓練を充実するほか、職種間や地域的な労働力移動を促進する措置を講ずべきである、このように規定づけていると思います。  まず、この雇用政策に関する条約についての大臣の基本的な認識をお答えを願いたいと思います。
  162. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のILO百二十二号条約、雇用政策に関する条約の趣旨として、ただいま御指摘をされたわけでございまして、私もこの趣旨については一応前もって勉強いたしました。確かに、十分了承できる趣旨であると。ただ問題は、この条約の規定の細部にわたって、なかなか日本国内の情勢と照らして十分理解できないようないろんな問題がございます。そういう点も批准に当たってはさらに検討をして、そしてこの法律の趣旨は妥当なものだと考えますから、前向きで検討すべき問題ではないかと、こう考えております。
  163. 柄谷道一

    柄谷道一君 趣旨は全く同感であるけれども、細部の問題について検討したいと、まあこうお答えになったわけでございますが、先に答弁をされてしまったのでありますが、まあ現在の条約、未批准であることは大臣承知のとおりでございます。条約が採択されましたのは約十年近く前のことでございます。検討と、こう言いましても、余りにも長い検討期間ではないかと、こう思うんでありますが、いつごろまでにその検討を終えられて、批准の方向に向かおうとしておられるのか、再度お伺いします。
  164. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まあ相当、この条約がわれわれに提示されてから時間が経過しております。それだけに細部にわたっていろいろ問題があるようでございまして、そういう点をもうちょっと煮詰めて検討しなきゃならぬと。まあいつごろこれができるかということについての時間的なお約束を、いまの段階で申し上げるまだ状況ではないと、このように考えます。
  165. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ未批准の理由が何であれ、大臣は、ただいまこの条約に示されている完全雇用の概念、そして雇用保障政策が今後失業者の事後的救済対策にとどまらずに、積極的雇用政策というものを導入しながら、産業構造の変革に即応する事前対策に重点を指向しなければならぬという、この理念については、ILO百二十二号の精神と全く同感であるという旨を答えられたわけでございます。とするならば、私も細部の検討は当然行われるべきだと思いますけれども、その検討を早めて、やはり国際的にも日本雇用政策雇用保障政策がこのILO条約の精神に沿って進められているということを、この姿勢を内外に鮮明にすべきではないだろうか、こう思うのでございます。この点につきましては、その検討の促進方を強く大臣に要請いたしておきたい、こう思います。  次に、私はまあ雇用政策に関し、本委員会で再三質問として取り上げてきたところでございますが、特に昨五十二年四月十四日の予算委員会の分科会で、職業訓練行政の改革について、提言を含めて質問をいたしました。  その中で私が主張いたしましたのは、第一に、農村の二、三男の就職対策や、新規学卒者などの未熟練者を主体とした訓練体制から、離転職者、高学歴者、高年齢者などを包括した体系的な生涯訓練体制に拡充する必要がある。第二には、公共職業訓練中心訓練体制から、専修学校、各種学校、企業訓練を含む多角的な訓練体制に移行し、多様な職業訓練を受ける機会を確保すべきではないか。第三に、いままでの質問にも取り上げられておりますが、公共職業訓練施設の整備とともに、訓練科目訓練期間の充実を図る必要がある。第四に、職業訓練に関する国の情報の提供という体制を強化すべきだ。そして第五に、事業主、特に中小企業に対する企業訓練の助成と援助を拡充すべきであるという問題を中心として指摘し、訓練法の抜本改正を要求したのであります。  方向としては、この提言に沿って職業訓練法改正案が提案されたことを私は率直に評価するものでありますが、しかし本法改正の効果を一層高めるという視点から、次の数点について質問をいたしたい。  まず第一は、雇用創出職業訓練体制を有効にいかにして連動させるかという問題でございます。  私は、一九五〇年代、一九六〇年代は完全雇用維持のためには大変ラッキーな時代であったと思います。すなわち、全世界的な重化学工業に対する投資が活発であって、それによって政策当局の意図を超えた高い経済成長が実現し、そのことが労働力が基調的に不足の状態になって雇用が改善された。これが二十年間にわたる雇用情勢の背景であったと思います。しかし、七〇年代に入りますと、資源の制約、環境汚染の深刻化、インフレに対する不満の増大、通貨体制の動揺、さらには輸出構造や産業構造のアンバランスなどの要因が重なりまして、経済成長の条件が急速に失われてきた。したがって、産業投資の高揚に依存して完全雇用の実現を図るという方法が有効であった時代はすでに終わったと、こう思うのであります。  私は、基本的に雇用の基調が変わったと、この認識が今後の雇用政策の出発点でなければならない、こう思うのでありますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。  あわせて、基調の大きな変更に伴う今後の雇用創出に関する大臣の基本的なお考えをお伺いしたい。
  166. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいまいろんな問題点を踏まえて、非常に貴重な御意見を踏まえての御質問でございまして、私も午前中の御質問にお答えをした中にも、高度経済成長から低成長に移行しておる現在、移行せざるを得ない現在、やはり産業投資部門の企業というのは、これはやはり縮小をせざるを得ない運命にきている。これがまず第一の認識でございまして、投資財の産業部門というのは縮小するという観点で雇用考えなければならない。  それから第二は、資源を消費する、このような資源消費型産業というのもこれまた縮小さぜるを得ない。まさに平電炉あたりはその典型ではないか。アルミ産業も同じでございます。そういったこと。  それから、雇用構造が高齢化しておるという、こういったことに対する対応の仕方、こういう問題、あるいは日本発展途上国の追い上げ、あるいはまた輸出国との摩擦の問題こういった関係をどう対応していくかという、このようなことを踏まえながら、私は、やはり雇用政策としてはこれからお互い日本人の生活の質を高めていくという、こういう面において特に重視しなければならぬ問題は福祉の面であり、あるいは保健衛生関係であり、あるいはまた教育面であり、情報サービス面である。こういう点については、もっともっと人を十二分に配置するということが考慮されていいではないか、こういうことにお互いの日本人の生活の内容を向上しながら雇用拡大を図っていく、こういう配慮も怠ってはならない。それへ持っていって、これは消極的な面でありますけれども、いわゆる仕事を分かち合うという、時間短縮の問題これによって雇用の確保を図っていくという、このようなもろもろの配慮をしながら、これからの雇用機会をつくり上げていく、雇用機会を確保する、こういうことが必要ではないかとこう思うわけでございます。
  167. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま大臣雇用の基調が変わったという認識は全く同感である、こういう御答弁でございました。しかし私は、現実にいまの政府の対応策を見ておりますと、景気回復という当面の問題に議論が集中している。雇用に関しての長期的対応策というものについて、まだその施策が確立されていない概念としては言われているのですが、それでは具体的に云々ということになると、まだその政策の確立がされていない。これが率直な現状ではないかと、こう思います。  そこで、いま大臣も触れられましたけれども、これからの雇用創出していくためには、第一には、中期経済計画によって継続的な経済成長というものが達成されなければならない。さらに、労働時間の短縮の推進ということが必要である。さらには、総合的な有効需要をいかにして拡大するかという施策が必要である。さらには、大臣も触れられましたが、公共的ないしは準公共的な社会支出サービス領域に対して雇用拡大する。さらには、政府の奨励政策や研究開発というものを通じての新しい雇用拡大というものが望まれる。そういうことになりますと、これは単なる労働行政の範囲にとどまらないわけでございます。財政、対外経済産業地域開発社会保障、教育、環境、こういったものを総合するいわば中長期的な政策としてこれをとらえ、いわゆる複合した政策を推進しなければならぬという結論に結びついてくるわけですね。そういう認識は全く同じであるとすれば、一体このような総合、複合政策というものをどのような体制づくりをして推進していくのか、こういうことがこれからの大きな課題になってこようと思うのであります。その体制の問題について、ひとつ大臣いかがお考えかお伺いしたい。
  168. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点、私も現在頭でいろいろ考えておる最中でございます。私は、先ほどお話を申し上げたこともまだ一つのビジョンにとどまっておる、本当に、現に施策として実行に移されているというふうにこう胸を張れる状態ではございません。率直にわれわれもこれからやはりそういう方向に向かって努力すべき目標だと、このように考えておるわけでございますが、さて、しからばその目標をいかにして到達するか、その具体的な手段、方法についてでありますが、雇用問題閣僚懇談会というのが内閣の中にございます。私は、そういった場を一応提言の場所としてひとつ考えたい。と同時に、一応労働省の方で各部局に現在検討をしてもらっておりますけれども、ともかく他の省の領域であろうとも、一応マンパワーをいかにして適正に配置するかということについて、全く粗雑な案であっても一つ提言しよう。そして、それを各省に受け取ってもらって、これを総合的に推進していくまとめる機構を、これは経済企画庁でやるか、あるいは総理直結の体制でいくか、そういったことをひとつ考え、同時に、政府与党でありますから党にも諮り、同時にまた、まさに超党派的に問題を推進していく、こういう方向に進めていったらどうかとこのように考えておるわけでございまして、ひとつ皆さん方のお知恵を借り御鞭撻を得て、雇用拡大雇用機会創出について、ひとつできるだけの努力を払っていきたい、こう考えておるわけでございます。
  169. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま大臣が御答弁になりましたように、関係閣僚会議、これを提言の場として位置づける。それはまことに私は結構でございますし、その体制がとられていると思うのです。しかし、いままでの情勢を見てますと、たとえば公共投資をやる、その公共投資というもののいままでの主眼は、いかにして景気回復を図るかということが主であって、結果としてそのことによって幾らの雇用拡大が図られるのかと、そういう位置づけに雇用はいまあるんですね。むしろ私は、今後の産業政策なり公共投資というものは、いかにして雇用拡大創出されるかということがメインであって、そして、そのもののメインのもとにその施策が進められている、いわゆる位置づけのこの逆転がいま求められている時期ではないだろうか。そこで、さきに現代総研が「雇用創造の基本戦略のための緊急提言」というのを行っております。私は、その中に、これはまことにユニークな提言であると思うんでありますが、たとえば、いま対外経済問題が非常に重要である、そこで、外務大臣のほかに牛場担当国務大臣を設けて、そしてより強力な総合施策を進めようという体制をとられたと同じように、内閣に有力な国務大臣を置いて、そしてそのもとに雇用戦略推進本部を設ける。その雇用戦略推進本部のいわゆるサポートするものとして、公、労、使等が参加するいわゆる審議諮問機関、こういうものを設けて総合的施策を推進していくべきではないか、これは私の意見ではなくて、現代総研の提言でございます。  私はどうも、いま大臣がお答えになったんでございますけれども、労働省の、片手間と言っては失礼でございますけれども、現体制で、果たしていま私が指摘いたしましたような、総合政策を確立し、推進していくということは、まあ縦割り行政日本の状態から見て、なかなかこれはむずかしい、このような私は具体的提言というものを十分に配慮すべきではないかと、こう思うんでありますが、いかがでしょうか。
  170. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御指摘されました提言は、非常に参考になる私は御提言だと思います。やはりこの際、雇用問題というのが、日本産業構造が質的に変化をしているというこの事態を踏まえ、一石二鳥の体制として、やはり単なる公共事業だけで問題を処理するというわけにはいかなくなっておると、このように思うわけでございまして、ひとつこれからどういう仕組みで、どういう機構で、どういうふうな取り組み方をするかということについては、いろいろ貴重な御意見を承りましたのを参考にして、ひとつ労働省として積極的に取り組んでいきたいと、このように考えておりまして、まだこの時期で発表すべき段階ではございませんけれども、一応ある程度の素案をまとめつつあるわけでございます。
  171. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、まあ効果ある職業転換計画、そのための職業訓練、これにとりまして今日欠けているものは、いま私が指摘いたしましたように、今後吸収されるべき職業領域に関しての積極的なビジョンを欠いているということにあるのではないか。私は形式的な職業訓練体制や計画の拡充だけでは、その効果を大きく期待できないと、こう思うのでございます。その意味において多角的、複合的な雇用創出策と、これに連動する職業訓練体制、それこそ今後の雇用政策の基本方向であると、また、非常にむずかしい問題ではございますが、この点を解決していくのが今後の労働行政中心に据えられるべきではないかと、まあこのような点を特に指摘をいたしまして、大臣として早急にこの問題を検討され、私はまあ具体的な提言もしたわけでございますから、必要とあれば閣僚会議にこの問題を大臣から持ち出されて、新しい機構確立について御努力をいただきたい、こう思うわけでございます。  第二は、失業多発地域雇用拡大政策の推進と職業訓練体制との連動の問題でございます。私はまあ、現在の不況の大きな特徴は、労働力需要が全体的に供給過剰である中で、特定地域に衰退産業や構造的不況業種からの離職者が多量に発生している、いわばこういうダブル現象ではないかと、こう見ます。したがって、失業多発地域に働く人々に働く機会を与えるということは、これまた大きな雇用政策の課題であろうと、こう思うんであります。そこで、この課題を解決していくにも、これも労働省サイドだけではいかぬわけですね。たとえば、工業再配置促進法や、農村地域工業導入促進法、こういうものをさらに改善充実をして、大都市に集中している工場、事業所を、その地域の発展と住民福祉向上につながる形で失業多発地域に積極的に誘導していく、こういう政策も必要であろう。さらにまた、親企業が場所を移転するという場合に、子企業、孫企業、これはいずれも中小企業でございます。それらの下請中小企業の移転というものについて手厚い助成をしていく。また、特定地域における公共投資を、地域開発という視点に加えて、社会資本の整備充実によって移転してきた企業活動というものを支援するという視点における公共投資も必要であろう。さらに私は過般、沖繩問題でも駐留軍に関連して質問したんでございますが、特定地域地場産業地域特殊の事情に相対応して、その地域地域ごとに振興計画というものを現実に即して樹立していく。まあいろんなこの政策というものがこれに伴ってこなければ、なかなか職業訓練体制だけではこの問題解決できないわけですね。ということになると、これは非常に多くの省庁と関連を持つ問題ではないか。今日まで大臣として、いま私が一、二例示をいたしましたが、失業多発地域における雇用対策という問題について問題を提起され、そして協議を進められたことがありますか、お伺いします。
  172. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御指摘をされたような広範な観点からの問題指摘まではまだやっておりませんけれども、実は、もうすでに、去る三月二十五日だったと思いますが、雇用対策閣僚会議経済対策閣僚会議、同時に行われた場において、特にこの失業多発地帯で目立つ造船地帯ですね、この地域雇用問題を解決するために、労働大臣としては領域外だけれども、ひとつこの際、造船企業から出ていく離職者の再就職の場として、船の解撤事業をひとつ積極的にやるべきではないかと、こういったこと、あるいはまた、特に官公庁船の建造の早期発注、こういったこともやってもらいたい。あるいはまた、海上に浮く構築物、大きく言えば飛行場あたりも、陸上の飛行場はいろんな問題が起こるわけでございますから、海上に浮かす浮上の形態の飛行場も考えたらどうかと。これはいますぐには間に合いませんけれども、そういったことを提言をいたしまして、現に解体事業の問題については、すでに運輸省中心でこれが実行に移されるという方向へいっておりますし、海上保安庁あたりの巡視艇の早期発注の問題もこれも推進をされつつあるように承っております。そういったことを一応提言をしたわけでございますが、これから先、やはり御指摘のような総合的な線が出ることは非常に私は結構なことだと思います。ただ問題は、そのように各省間にわたる施策が雇用中心に展開をされるということについて、いろいろこれから工夫をしなきゃならないと思いますけれども、せっかくの御指摘の線に沿うて、できるだけの私も努力をいたしたいと、このように考えております。
  173. 柄谷道一

    柄谷道一君 日本は、明治以来縦割り行政なんですね。しかも、所管所管が決まっている。それだけではなくて、どうもはなはだ失礼なんですけれども、労働省というものの重みが、大蔵省や通産省や建設省などと比べて、はなはだ失礼でございますけれども、やや格落ちといいますか、そういう地位に置かれてきた。最近、こういう情勢を踏まえて徐々にその地位は向上しているというものの、まだ労働省が中核になって政策展開が行われるという地位までは到達していない。これは大臣もお認めになるところだと思うんです。しかし、いまの日本にとって一番重要なのは雇用問題、総理大臣施設方針演説でそのことを強くいつも述べておられるんですね。ところが、それは総論としては述べられるけれども、具体的体制、その体制を通じてつくられる総合施策というものは、おくれおくれにいつもなりがちである。これが率直な行政の現状ではないかと、こう思います。私は来年の社労委員会で、再び同じ視点に立つ質問を繰り返さなくてもいいように、いま大臣も述べられたわけでございますけれども、根本的なひとつ体制の問題というものについて勇断を期待をいたしたい、こう思います。  それから第三は、多くの人から指摘をされましたけれども、技能検定と処遇との、労働条件との関連についてであります。職業訓練を受けた、そして技能検定を取った、しかし、就職してもそれが労働条件に結びつかないということであれば、これは問題でございます。私は他の委員が指摘されましたように、技能検定職種の拡大や内容の充実、これはもちろん必要でございます。しかし、重複することは避けたいと思います。しかし、私が昨年の質問でこのことを指摘したのに対して、当時大臣と現局長は、四、五年前にアンケート調査をしたが、これは相当以前のものであるので、もう一度追跡調査をしてみたいと、こうお答えになりました。検定を受け再就職した者が具体的にどういう処遇をされているのか。このことに対する追跡調査の問題でございます。このことについて、昨年の答弁以降一年を経過いたしておりますが、追跡調査は行われたのか。もし行われたとするならば、その結果がどうであったのか。もし行われていないとすれば、いつこれを行う予定を立てているのか、お伺いいたします。
  174. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 確かにおっしゃいますとおり、昭和四十九年に追跡調査をしたままになっておりまして、もう四、五年たっておるわけでございます。その後の産業、技術等の変革、それに伴う技能労働者の処遇がどうなっているかということは、やはり把握する必要がございます。いま先生お尋ねでございますが、まだ着手しておりませんので、近い将来——近い将来と申しますか、近く調査を進めたいと考えております。
  175. 柄谷道一

    柄谷道一君 近くというのは、秋口までにはと理解してよろしゅうございますか。
  176. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 私どもいま法律を御審議いただいておりますが、その法律の施行との関係がございますので、できるだけ早い時期にということで急ぎますが、いまのところまだ秋口、何月ということを明確にお答えする段階まで至っておりませんことを御了承いただきたいと思います。
  177. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、ひとつ職業訓練局を督励していただきましてぜひ早期に、これ約束でございますから、調査が実施できるように御指導、指揮を願いたいと思います。  そこで大臣、追跡調査も結構でございます。しかし、いま四十九年調査では多少労働条件には反映されているという結果は出ておりますけれども、果たしてその技能に適する条件か否かということになると、これは年功序列の賃金体系もございまして、十分とは言えないというのが四十九年調査の実態であったと、こう思うんです。ということになると、これはもちろん労使関係の問題ではございますけれども、その関係労使にいかに職業訓練と技能検定そのものを技能というものを正当に評価させるかということに対して積極的なPRを労使に行っていかなければ、ただ流れにゆだねるだけではこれは実現はむずかしいと思うんですね。大臣として今後どのような方法で正当な評価が行われるような環境づくりをするおつもりなのかお伺いします。
  178. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私は、何といっても職業訓練の質の向上によって、その内容の充実した技能労働者をつくり上げるという、これを社会的に公認していくという、   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 この技能検定という、そしてこの制度を大いに社会的に定着をさしていくためには、今度の法律改正によりまして職業能力開発協会というものがせっかくできたわけでございますから、この職業能力開発協会というものを、これを後ろ盾にして、民間の力を中核として、大いにひとつ御趣旨の線に沿うてこれが正しく評価されて、そしてこの技能労働者雇用の安定に資するというふうに努力してまいりたい、こう考えております。
  179. 柄谷道一

    柄谷道一君 中央及び地方につくられる職業能力開発協会を通じてということでございましたが、そうなりますと、この開発協会には労使がいわゆる積極的に参加する体制の工夫というものがないと、ただいまの大臣の御答弁は生きてこないわけですね。私はこれに対して、労働省が労使の参加という問題についてどのようにお考えになっておるのかお伺いします。
  180. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 職業能力開発協会は、職業訓練及びその技能評価を一体として民間の力を結集していこうと、こういうことで設立しようとするものでございますから、その中においては何と申しましても民間の意見、バイタリティーというものが大いに活力となり反映されていかなければならない。その観点から申しますと、関係の労使その他広く学識経験をこの問題について有する方々のお知恵を拝借することが必要でございますので、今回の法案でも能力開発協会の中央並びに地方につきましては参与制度を設けておりまして、これは広く学識経験者から会長が委嘱するということになっておりますが、これには当然労使の関係者も含んで運用していただくように指導してまいりたいと考えております。
  181. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひそのような参加の方式について、深い御配慮を願いたいと思います。  次に、昨年私が質問した中に、生涯職業訓練体制を確立するために、労働行政の一元化が検討されるべきではないかという問題を提起いたしました。当時の石田大臣も、どうして高年齢者職業訓練というものが職安局になっているのか、私も少しおかしいと思う。いずれにしても事情調査をして、労働行政一元化のために努力をしたいという答弁をされております。その後、経過はいかがなっておりますか。
  182. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 実は私は、前の労働大臣がどういう御見解を委員会で述べられたか承知しない前、労働大臣に就任いたしまして、これからの雇用政策、職業安定対策は、これは職業訓練と表裏一体でなければならぬと、こういう考え方の上に、いろいろ省議でも話をいたしましたが、同時に予算委員会あたりでも、そういった趣旨の答弁をいたしたわけでございます。  私はこの際、そういう考え方でこれからの労働行政を強力に推進していきたい。現在、職業安定局と職業訓練局と一応機構は分かれております。それにはそれなりのいろんな事情があってそうなったわけでございましょうから、運営上現在の機構はそのままにして、私はその上に立っておるわけでございますから、大いに労働行政をいまのような方向に向かって、ひとつ時代の要請にこたえて適切に、積極的にまた機敏に対応していきたい、このように考えておるわけでございます。
  183. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは時間にきょう余裕がありませんので、次の機会にでもまた御質問しようと思いますが、昭和五十年、五十一年、当時、長谷川労働大臣時代に労働行政一元化の壮大なる構想を打ち出されました。しかしこれは、行管の反撃があったんでしょう、消えてしまいました。そして昨年は、石田労働大臣も検討はすると言われたんでございますが、本年度の予算要求に関連する折衝の際は、それが消えております。私は新時代に対応する労働行政機構のあり方というものについては、現状のまま推移していいとは考えてないわけでございます。時間の関係がございますから、これは次の機会にまた改めて深く質問することとして、大臣の積極的な検討をお願いをいたしたい。  次に、今回の法案を見ますと、事業主に対する助成措置につきましては、職業訓練派遣奨励給付金制度の新設や、有給教育訓練休暇奨励給付金について、四十五歳以上の支給期間を延長して、受講奨励金を上積みする、こういう改善が行われております。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕 いわゆる在職中の訓練については相当の手が打たれているわけでございますけれども、その他の職業訓練期間中の生活保障につきましては、単価の引き上げ等にこれはとどまっているわけでございます。私はまだまだその単価のかさ上げについても、実態から見ると十分とは言い得ないと思うのでございますが、これに対するお考えをお伺いをいたしたい。
  184. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) いま先生御指摘のとおり、今回の法案の一つ中心課題が成人訓練の、ないし事業訓練の振興ということでございまして、その面での助成措置を大幅にふやしたということは御指摘のとおりでございます。ただ、離転職訓練につきましては従来から施策が整っているわけでございまして、一つには離転職者訓練につきましては、公共訓練施設の受講料は無料という措置が一般的に行われておりますし、また失業保険の受給者が職業訓練を受けます場合には、給付の延長ということの措置を講じますとともに、中高年者で一定額の所得以下の方につきましては、離転職者訓練を受けられる方について訓練手当を支給しているという措置がすでに整っているわけでございます。それで今年度につきましても、訓練手当につきましては一〇%強ふやしまして七万五千円というような措置にしているわけでございますが、今後ともにそのときどきの社会事情、経済事情に即応いたします増額措置を設けてまいりたいと、このように考えております。
  185. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は最後に、私もこれで四年社労委員をやらしていただいたわけでございますが、この経過をずっとこう考えてみますと、当時、失業後のいわゆる事後処理救済対策というものに重点を置かれておった雇用政策が、雇用保険法を制定していわゆる短期循環的な失業のおそれあるものを救っていこう、こういう制度ができました。翌年には中高年齢者、身障者雇用促進法の改正を行いまして、内容はまだまだ不十分ではございますが、特に現在当面の問題だと思われるところに、より深い施策を講じていこう。そして第三段階に、産業構革に伴う雇用安定のための安定資金制度の創設が行われた。そしてこれは、政府立法ではございませんでしたが、昨年暮れには特定不況業種離職者臨時措置法ができた。そして今回、職業訓練法改正が行われようとしている。この五層と言いますか、この対策を見ますと、確かにこの方向としては充実の方向に向かいつつあるということは評価できるのであります。しかし、私はただいままでの質問でも指摘いたしましたように、ただこの体系的、制度的なものを幾ら充実をしても、それだけで追いつける時代ではなくなった。私は再度、今後現行制度の内容充実を図るとともに、視点を明らかにした新しい雇用創造、または失業多発地域に対する地域振興と職業訓練、これを文字どおり有機的に結合させるということが、今後の労働行政の私はかなめでなければならないし、その点を欠落すれば、まさに画龍点睛を欠くという結果にとどまるであろうという指摘を行いまして、大臣の総括的答弁を求め、質問を終わることといたします。
  186. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点は、私も基本的に全く一致しております。御指摘はまさに私は理想的にはりっぱな方向の御提言だと思います。ただ、現実にまとめていく行政の立場でどの程度いけますか、やはりこれからはただ労働省の枠組みだけで問題を解決するわけにはいかないというこの認識、そして他の省庁との連絡、こういったものを密にいたしまして、でき得れば本当に雇用問題を中心にして相当強力な組織が一つできてもいいと、このくらいに思っておりますけれども、行政機構簡素化というまた別の要素もございますから、極力御提言のありました、最後にまた取りまとめて御発言がございました趣旨を踏まえて、ひとつ今後雇用創出の問題については積極的に労働大臣としては取り組んでいきたいと、このように考えております。
  187. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  188. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 長引く不況に加えて、ますます深刻化していくという不況の中で、いま出されました職訓法の一部改正が漸次進められてきているという点について評価することはやぶさかではございません。しかし、私が最も言いたいことは、職業訓練訓練のための訓練であってはならない。その訓練雇用に結びつく訓練でなければならないという雇用との関係の問題それからまた、働くということは、これは人間と動物との違いの大きな点でございまして、働くことは食べるだけのものではなくて、働くことによって、自分の能力で社会に貢献できたと、そういう喜びがあって本当の労働という問題が考えられるのではないか。そして、その観点から考えれば、人間として働くという権利があり、働く喜びを享受するということが許されなければならない。そして、人間であるからには、最もハンディを受けた障害者であろうとも、人間としての当然の権利としては同じく考えていかなければならない、そう思うわけです。  身体障害者雇用促進法が五十一年に改正されましたその審議の中でも、いま申し上げましたように、障害者の中でも、最も精神薄弱者、知恵おくれの方たちのお母さんたち、お父さんたちが非常に深刻に考えられたことはもう御承知だと思います。雇用率に関しましても、精神薄弱者は身障者法の附則第四条で雇用率の対象から外されているというようなことは、それらの人たちにとって、御家族にとってどんなにかつらかったことだろうと、そう思います。  私も、本当にその立場に立ってきょうこれからお伺いしたいと思うんですけれども、その附則第四条には、その雇用について、事業を推進するとともに、いろいろと適職に関する調査研究もしなければならないとうたわれておりますし、あの審議の際にも、その調査研究を進めるというふうに何度も政府から御答弁をいただいたわけでございます。  五十一年から五十二年、いま五十三年になりますが、この精神薄弱者に対しての研究、検討というようなものがどのように検討されて、そしてどのような雇用対策としてお考えになっていらっしゃるか、その点についてまずお伺いしたいと思います。
  189. 細野正

    政府委員細野正君) お尋ねございました精神薄弱者の方の適職に関する調査研究でございますが、現在職業研究所というのがございまして、そこで昭和五十二年度を初年度といたします三年計画を実施しているわけでございまして、研究の内容は、精神薄弱者の方の職業生活への適応能力、それから作業能力、それの発達過程の分析。もう一つは、精神薄弱者を雇用しておる事業所におきます雇用管理の分析、こういうことをやっておりまして、これらを通じまして、精神薄弱者の方の職域拡大の基礎資料を得ようということで研究をいたしておる次第でございます。
  190. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういたしますと、五十二年度より三年間と言いますと、五十五年度でございますね。五十五年度でその研究の一応のまとめが出て、それから雇用という問題について取り組むということになりますと、もうどうしても五十五年以後ということになるわけでございます。しかし、知恵おくれの方たちは現実に生きているわけです。そうして、一年一年苦しみというものは延ばされていってしまう。こういうことで、本当にどうしたらいいんだろうと。五十五年まで成長するのをとめるわけにはいきません。成長するそういう方たちを持った御家族や皆さんがいま一生懸命に、これは暇がかかり過ぎる、だから何とかここでこの人たちを守っていかなければならないということから、全国で共同作業所というものが非常に関心を持たれて運動になってきております。  大臣にお伺いいたしますけれども、共同作業所という言葉、こういう中身というものについていままで御存じでいらっしゃいましたでしょうか。——いや、御存じなければないでいいんです、いまお読みにならなくても。
  191. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 申しわけございませんけど、不勉強で、まだ内容について十分承知いたしておりません。
  192. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そこまでなかなかお目につかなかったかもしれません、とおっしゃるのは大変残念なんですけどね、これは当事者、家族にとっては本当に深刻な問題なんです。  これは、いま準備しているのが五十カ所くらいございます。これから準備に取りかかろうというふうに数えられるのを見ますと、全国で百カ所ございます。これはもうどうしても待っていられないというので、この六月の二十四、二十五、二十六日に全国集会を持って、そうしてどうやってこの知恵おくれの方たちの働く場を保障していこうかというような、非常に大きな運動になってきているわけでございます。  そういう中で、もうすでに始まったところの例を、大臣御存じないので、一応御紹介したいと思いますけれども、きょうは時間がございません、たくさん持ってこれませんでしたけれども、五十二年、去年の十月に、岸和田障害者共同作業所というものも発足いたしました。そうして、そこで作文集というものをおつくりになりました。それで私読ませていただいたわけです。そうすると、知恵おくれなどという言葉でおっしゃるけれども、知恵おくれなどとばかにする人もいるけれども、私自身、この人たちはもう本当にいまの世上の汚いものを何も持ってない、まさに私は、人間の原点の姿を持っていると思うんです。この方たちと会っていますと、いかに俗っぽくなっているいやらしい人間かというのがわかりまして、いつも教えられるんです。  その作文の中で読みました。これは森本佳代子さんというのがこう書いている。「クリスマスにはみんなと、フォークダンスをしたいとおもいます。たのしくします。  おきゅうりょうをもらってうれしかった。そのおかねでおともだちの十七さいのたんじょうびのプレゼントをかいました。」いろいろ書いてあるんですけれども、給料と言っても、何万円という給料じゃございません。一生懸命働いて月に二千円とか三千円。しかし、その子供たちが初めて働いて、そうして自分の働きで給料もらったと。この給料で十七歳のお友達の誕生日のプレゼント買ってやると。私は、何ときれいな、本当に私は涙が出るような思いでこれを読ませていただきました。  それからまた、こういう子供たちを見ていらっしゃるこのお母さんたちが、いろいろ考えて書いていらっしゃるわけですけれども、「うちの子供は、入所したものの、ずっと寝たきりだったせいか、一人歩きも食事も、又、便所へ行くことも出来なかったのですが、今では先生の御協力によりまして、一人で出来るようになりました。」云々と書いて、そうして、「いつも光一が「母さん、作業所へ行っていたら、卒業することあるの? 卒業するのは嫌やで」と、口ぐせに言って居ります。」と、そういうふうにも書いております。つまり、在宅で障害者持っているときには何にも自立できなかったと。しかし、共同の場で働くという意欲ができたときに、自分で自立するということもできてきたと。親にとってもこんな喜びはないと思うんです。これは去年できました。  それから札幌でも、去年のこれは九月でございます、ここでもライラック共同作業所というのができまして、三十平方メートルのマンションの一室でできました。ここは四人しか女の方は入っていません。何のお仕事をしているかと言ったら、おしぼりのしみ抜きやっているんですね。非常に一生懸命やっていると。お母さんたちが十人で、毎月交代で二人ずつお手伝いに行って、指導員が一人でやっていると。ここでも共同で作業することによって、子供も親も本当にいままで真っ暗だった人生が明るくなったという希望がいっぱい出てきているわけです。  この方たちも、どれくらいで運営していらっしゃるかというと、国としても何の手当てもしていただけないものだから、だから、通所している方たちから月三千円を取っていると。そうして、指導員には六万円を払っているというような形態で、非常に御苦労しながらも、一生懸命にこういう作業所というものをつくっていらっしゃるわけなんです。  私、冒頭申し上げましたように、本当に、知恵おくれだと言っても、人間として働く権利はあるんだと、そうして働けばそれなりの能力で一生懸命働いています。また、時間がないから言えませんけれども、私がそういう施設だとか、健常者とまざって精薄の方たちを雇っていらっしゃる事業主の方とお話しいたしますと、普通の者は、健常者はサボることも知っている、そして要領よく立ち回ることも知っている。しかし、その知恵おくれの人たちは本当にそんなことがない。単純作業であろうともう一日こつこつこつこつやっている。だから、そういう知恵おくれの方たちが入ったために、健常者の働く人たちが非常に働くようになりましたと、こういうふうにも言っていらっしゃるわけなんですね。私はそういう意味から、一番目が当たらない、大臣も御存じなかったようなところで起こっている共同作業所というものについても、やはりこれは国としても、いますぐはできないかもしれない、だけれどもこれをやはり厚生省サイドの生活訓練だとか、かわいそうだから見てやろうというのではなくて、一人の人間としての働くという立場から労働者サイドでも、この共同作業所というものについて制度化するという目標を持って検討していただきたい、こういうふうに思うわけでございますが、大臣の御所見はいかがでいらっしゃいますか。
  193. 細野正

    政府委員細野正君) ただいま御指摘のございました共同作業所でございますが、これはお尋ねの御趣旨が納付金に基づく報奨金なり助成金ということについてのお尋ねかと思いますが……
  194. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 違う、違う。時間とられるんだよね、これで。そう言っちゃ何だけど。  つまり、こういう人たちの、この人たちの働く場というものを制度化して、その知恵おくれの方たちを守っていこう、働くという権利を保障していくということで、共同作業所というものを制度に乗せるということについて検討していただきたい。これは簡単だから、大臣の御理解いただけると思います。そういう制度というものを——いますぐとは申しません。いろいろ問題があろうかと思いますが、制度化させて、そしてそういう障害者の方たちも、人間としての立場で、働くという権利も守っていくのが当然だというふうに、私は人間だったら考えられると思うのですけれども、大臣はお聞きになってどうお思いになりますでしょうか。
  195. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お話しの御趣旨はよくわかりました。これは労働省の立場から言いますと、いわゆる雇用者、労働者、こういう観点から言いますと、ちょっと角度の違った立場の方でありますが、ただ、政治というのは、申し上げるまでもなく、非常に社会的に弱い立場の人、日の当たらない立場にある人たちに対してこれを支えていくというところに政治の大切な務めがあるわけでございますから、ひとつきょう初めて聞かしていただきまして、厚生省方面の考え方も十分参考にして、労働省としては果たしてこれが対応策ができるかどうか十分検討さしていただきたいと、こう思います。
  196. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 先ほども申しましたように、いままでこういう方たちの場というのは厚生省サイドでみんな扱われてきたわけですね。その厚生省の方で精薄者の通称援護事業というので援助はしているわけです。私がきょう大臣に特に御検討いただきたい面としては、この厚生省サイドでの生活訓練、保護というだけにゆだねないで、やっぱり働くという、働く権利を持った人間としてのその要求から、労働省サイドでも御検討いただきたいという意味で申し上げました。大臣もそういう御趣旨でわかっていただいて、検討しましょうということでございましたので、ぜひ御検討をお願いしたいと思うわけです。  御検討していただくにつきまして、いろいろこれから申し上げたいんでございますけれども、ILOの九十九号勧告というのがございます。身体障害者の職業更正に関する勧告というのがございますが、ここで雇用促進の方法についてどのように書かれているかということを——時間の関係ありますから私の方から読みましょうか。九十九号の中の31の(a)(b)(c)(d)というのがございまして、その(d)項でございます。それを私の方から、時間もございませんので、読ましていただきたいと思いますが、「身体障害者によって又は身体障害者の名において経営される協同組合その他類似の企業の設立を奨励し、かつ、その運営を容易にすること。」と、こういうふうに書かれているわけです。これはいつかというと、一九五五年でございます。もうずいぶん前にこれが言われております勧告でございます。だから、この勧告の立場から言いましても、私が言いました共同作業所というようなものも、「協同組合その他類似の企業の設立を奨励し」というものと、趣旨は同じではないかというふうに考えるわけでございます。  その後、一九七一年には、国連障害者の権利に関する宣言というものが出て、そこで認めているように、障害の種類や程度にかかわらずすべての障害者にとって働くこと、学ぶことは、生涯にわたって「本人の能力を可能な限り十分に発達」させていくために必要不可欠なこととしてその宣言ではとらえ、実現のために取り組むべきだと、こういうふうに出ているわけです。これは国際的にもこういう考え方で、諸外国を見ましても、進んだところではいろいろな手が打たれているわけでございます。こういう趣旨から言いまして、有効な労働政策、雇用対策として小規模な作業所方式を制度化して研究してほしいと先ほど申し上げたわけでございます。  それについて、じゃ、これはいろいろと先ほど言いましたように、そのお父さんお母さん、父母が負担しますだけでは運営がなかなか困難でございます。そうしますと、その財源ということも、さっきお答えになりかけていらっしゃったようですけれども、その財源というものも考えなければならない。気持ちだけではできないと思うのです。  その財源の問題にいたしましても、先ほど小平議員がお話しになりましたけれども、雇用納付金を取って出すというようなあの制度の中で、ちょっと私も調べさせてもらいましたら、五十一年十月から五十二年三月末で約九十二億のお金が入っている。いろいろ使い道はあろうかと思いますけれども、こういうお金が半年で九十二億も入ってきているということから考えれば、いままで本当にもう日の全く当たらなかった、しかし人間として生きる権利を当然持っている、この一番弱い日の当たらない場面に、こういうお金も使っていくということを考えれば、財源がないということにはならない。そう思うわけなんですけれども、これについていかがお考えでございましょうか。
  197. 細野正

    政府委員細野正君) お尋ねのございましたのは、納付金を財源にして共同作業所に対する援助ができないのか、こういうお尋ねでございますが、これは先生も御存じのように、納付金制度に基づく報奨金なり助成金というのは、身体障害者を雇っている雇用関係にあるということを前提にしまして、そういう事業主の方の経済的負担を軽減する等の、いわば経済的な負担調整という考え方になっており、これに基づいて全体としての身体障害者の雇用の水準を高めていきたい、こういうことになっているわけでございます。したがいまして、そういう観点から見ますと、いまお尋ねの共同作業所につきましては、その雇用関係に入っている労働者と見ることが非常に困難でございまして、そういう意味で共同作業所に対して助成金等を支給するということは非常にむずかしいのじゃないだろうかというふうに考えるわけであります。  ただし、作業所がさらに発展しまして雇用関係ができて、一つ事業所というふうにみなせるようになったという場合には、助成金の支給の余地というものもあり得るんじゃなかろうか。  一方、報奨金につきましては、これは冒頭に先生からの御質問の中にございましたように、まずその雇用義務ということと結びついている制度でございますので、精神薄弱者の方が現在雇用義務の対象から外れておりますので、現時点では補助金についてだけは、雇用関係ができましてもなかなかむずかしいと、こういうふうな関係に立っているわけでございます。
  198. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういうことになろうというふうに私も見てきたわけですけれども、やっぱりおっしゃいましたように、雇用納付金制度の、この納付金を財源としてどう使うかというところに、常用労働者三百人以下の中小企業主であってと、こういうふうな規定がございますからね。だから、私もきっとここがネックになるんだろうと。そうすれば、この共同作業所と、まあお母さんたちがみんなでやっているというようなものを、いまおっしゃったように発展させていって、そして、事業主と雇用関係というものをつくればそれは道があると、思ったらいまそうだとお答えいただきましたので、やれやれこれでひとつこっちの方も共同作業所としても努力して、そういう形態に進めていこうと、そういう努力はしたいと思います。そこで、これが対象になるようにしていきたいと、そういうふうに考えるわけでございます。本当に明るい一つの灯がともったような気がいたします。そういうふうに共同作業所の方も発展させていきたいと思います。  そこで、今度納付金財源として出すイ、ロ、ハというのがございますけれども、このイの雇用率を超えて、の調整金を払うというのにはまだまだいかないと、事業主にしても報奨金の一人当たり八千円ですね、いまのところ。それは当たるけれども、調整金というのは当たらないということになるわけですよね。
  199. 細野正

    政府委員細野正君) 先ほど申しましたのは、報奨金にしても、調整金にしましても、いずれも雇用義務と絡んでおりますので、その限りで、したがいまして雇用義務がかぶるようになるまでは、いずれもちょっと対象にはむずかしいんじゃなかろうかと。ただ、助成金の方は雇用義務を必ずしもかぶっておりませんので、雇用関係が明確になれば道は出てくるということを申し上げたわけであります。
  200. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 さっきおっしゃったのは、事業主という形にして、そして雇用関係ができれば、そうしたらそれはこの口の項も、事業主であれば出すと、こう書いてあるんだから、これは適用されるとおっしゃったんじゃないですか。
  201. 細野正

    政府委員細野正君) 先ほど申しましたように、調整金と奨励金というのは、いずれも規模で区別はしておりますけれども、いずれも雇用義務を前提にしまして、その雇用義務を上回っているということで出るものでございますから、したがっていまのお話は、精神薄弱者の方を前提にしてのお話だと思いますので、精神薄弱者の方については雇用義務が現在かぶっていないわけでございます。したがって、それとの絡みで、いずれもちょっとその適用の対象外になると。ただし助成金の方は、これは雇用義務とかかわりなしにやっておりますので、こちらは雇用関係が明確になると追給の道もあり得るというふうに申し上げたわけでございます。
  202. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうすると、助成金というのは、出るのわかりますよね。だけれども、助成金がなくて、私がほしいのはその報奨金と調整金というものも適用してもらいたいと、こういう願いなんです。しかし、それはだめなんだと。この十八条にひっかかってくるからというお答えですよね。そうすると、これ改正すればいいわけですよね。これ改正すればかかると。  そこで大臣に、ちょっとこのやりとりややこしいかもしれませんけれども、結局その精神薄弱者に対しては雇用率の対象にもならないと。そして、この調整金だとかそれから報奨金を出す対象にもならないというのは、何でひっかかっているかというと、この十八条のところでひっかかってきているということなんですよね。だから私はこれね、法律改正というところまで検討していただきたいと思う。要求というのは無理じゃないと思う。これ法律改正案出せば全会一致で賛成になると思うのですよね。つまり、事業主形態にして、そうしてその労働者として働くという雇用関係ができると、そして知恵おくれの人もその対象に入れると。やっぱり知恵おくれだから、対象からね、雇用率からもみんな外すというのは余りにも酷じゃないかと。どうしてもやっぱり知恵おくれの方たちでも対象の枠に入れるということにすれば、法律改正ということをしなければ——まあ現行法ではそうなりますがね。だけれども、その辺についてはやっぱり検討課題ではないかということなんです。だから、いますぐ変えてくれと言ってもこれは無理ですから、だけれどもこれ検討していただくということについて、大臣にもお願いしたいと思うのです。今後の検討課題としてお考えいただけますでしょうか。
  203. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御質問の御趣旨はよくわかりました。私も初めてこの事実関係聞かしていただいたわけでございまして、今後十分研究さしていただきまして、善処をいたします。
  204. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ありがとうございます。  それで、当然いま対象になっています助成金の方でございますけれども、この助成金でも、身体障害者専従指導員設置助成金というのが、月額五万円で五年間というようなのもございますね。こういうのもやっぱり一番大変な支出になるのはこの指導員というような方たちの人件費になるわけですけれども、やっぱりこういう期間も特例的に延長するというふうなことも、私は御検討いただきたいというふうに考えるのですけれども、いかがでございましょうか。
  205. 細野正

    政府委員細野正君) 助成金につきましては、先ほどもずっとお答え申し上げておりますように、いろいろやってみた上で検討して、実情に適するように改正を今後ともやっていこうと思っておりますので、そういうものの中の一環として研究をさしていただきたいと、こういうふうに考えております。
  206. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ御検討いただいて、少しずつ枠を広げていただきたいと思います。  それから、もう一つの問題は、在宅の雇用制度の問題なんですけれども、これもぜひ私は検討していただきたいと思うわけです。  在宅雇用制度というのは何を言っているかと。私どもの党が言っているのですけれども、障害の種類や程度によって、通勤など雇用されることが困難な人、たとえば全盲の方だとかというようなのは、大変通勤が困難なんです。だんだん少しずつよくなりましてね、あのぎざぎざの歩道ができたとおっしゃる方もあるけれども、あれ北海道雪になっちゃったらだめなんですよね。もうあんなのあったって点字ブロック。そういった在宅に、目だけではなくて体幹の方、いろいろな障害でも非常に困難な方もおられる。その場合に、本人の希望をもとに自宅で仕事をする、あるいはそうしてある企業から仕事をもらって自宅で働くと。そうすると、これは企業との契約で仕事をするわけだから、企業雇用率に入れるというふうな考えで、在宅雇用制度ということを考えていただいていいんじゃないかと、そう思うんですけれどもいかがでございますか。
  207. 細野正

    政府委員細野正君) 在宅で仕事をしておられる場合には、基本的にはその場合の契約関係雇用契約なのか、それとも委託関係なのか、それともまあやはり家内労働みたいなかっこうなのかと、いろいろ問題はあるかと思われますけれども、もちろんそれが実態的に雇用関係にあるものにつきましては、当然先生がおっしゃるような方向で処置すべきものじゃないかというふうに考えるわけです。
  208. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その問題もいろいろ具体的に違ってきますがね、いまおっしゃったように。これもちょっときめ細かく考えていただいて、本当に家で仕事をするということも保障していただければと思いますので、御検討いただきたいと思います。  それじゃ、次に、札幌の職業安定所の問題に移らしていただきたいと思うわけですけれども、こういうふうに失業者がふえて、そしていろいろ離職者法が出たり、中高年齢者のための法律が出たりというようなことになりますと、職業安定所としてもいろいろこれを宣伝普及して、そうして雇用に結びつけなければならないという仕事が非常に多くなっているわけなんです。しかし、札幌の場合を考えますと、非常に業務が繁忙になっております。これはいま私が言うのではなくて、大臣は御存じないかもしれません、これは長谷川労働大臣のときでございます。昭和五十一年の七月の十九日付で、北海道知事、堂垣内知事から、この要請というものが届いているはずでございます。そして、五十一年の六月二十日には、この札幌の東出張所というところにあります白石区、豊平区の住民代表が、札幌市長の副申書とともに、労働大臣に要請をしているという経過もございます。それから、五十一年七月二十八日には、今度は業界の方です。札幌建設業界からも要請が来ていると。つまり、札幌に職業安定所があります。ありますけれども、非常に業務が多忙になっているという中で、この東出張所というものがあるけれども、これは安定所に昇格をして、そして住民サービスをやってもらいたいと、こういう要請が実は五十一年当時から出てきているわけです。いろいろ私も調べてもらいました。東出張所というのは、あくまでも出張所でございますので、窓口では一応受けつけるけれども、専門分野の処理が人員の配置などによる十分なことができない。援護措置はすべて本所に回す。雇用奨励金関係離職者法に基づく訓練関係説明だけで、処理はすべて本所で行うというような状態でございます。  それからまた、いまも問題にいたしました身障者の雇用対策、これは出張所に担当者がいるということなので、身障者のための方は何人いるのかと聞きましたら、兼務で一人でございます。だから、なかなか相談に応じ切れないというような状態でございました。それでは兼務で一人と、札幌の身障者どれくらいいるのかと言いますと、昭和五十年に新規登録者数が三千六百四人でございます。そして、有効求職四百七十六人、これも年々ふえてきているわけです。それから、これまた御承知だと思います。札幌の場合に、季節労働者というものが、七千八百人札幌にいます。これの仕事の集中する時期というのは、四月、五月、六月の仕事が始まるときでございます。そのときの資格取得業務といいますか、それから仕事が終わります十二月、一、二月の時期で確認業務、一時金業務と、もうこの時期というのはほんとに大変で、全所挙げて業務に取り組むというようなことになりまして、就職担当の方たちがいろいろと御相談に乗るというようなことにも、とても応じ切れなくなっているわけです。たとえば中高年齢者先ほども申し上げましたように、いろいろなものが出されましたけれども、これを説明して、そして相談するというようなこともできないと。まして、求人開拓などというのはできないんだというような状況でございます。そして、職業安定所からいろいろ資料を見せていただいたわけですけれども、この中にも中高年齢者就職促進、炭鉱離職者を含め、困難を伴うが、今後の労働力事情の動向から見て、中高年齢者雇用率未達成事業所に対する雇用促進、定年制の延長に関する周知を図るとともに援護制度を周知活用し、求人確保と就職促進を図ることが緊要だと。緊要だと言うけれども、それができないというような状態なわけでございます。やっぱり私は、これ、いまの問題として、やはり住民サービス、離職者、転職者というような方が多いというような中で、何とかこれを考えていただかなければならないのではないかということを考えるわけですけれども、五十一年からの知事や、それから市長の副申書ですか、住民、業界から来ているんだけれども、これについて何らかの御検討をなさったかどうか、いまの段階でどういうふうに考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  209. 細野正

    政府委員細野正君) 御指摘ございました安定所への昇格の問題でございますが、一般的に最近の厳しい情勢の中で、一面は国の行政組織について、できるだけ簡素で効率的なものでなければならぬと、こういう要請が一般的にあるほかに、いまのように厳しい時代には特にそれが強いということが一つと、それからもう一面は、いろいろなサービス活動の面は、先生御指摘のように、できるだけ手足が遠くへ及んでいる方がいいという側面も確かにございますけれども、たとえば職業紹介のような結合関係の業務は、狭い範囲でそれが行われた方がよりいいんだということに必ずしもならなくて、むしろ一つの需給圏の中で広く結合を図っていった方がいいという、そういう側面もございますので、一概に何といいますか、安定所をたくさんつくった方がいいんだということにも実はならない面もございまして、そういう意味で、現在は安定所の増大というのは非常に困難な状況にあるということをひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。しかし一方、菊水出張所の関係は、御指摘のようないろんな仕事が忙しい面もございまして、そういうことでその業務量に対処するために庁舎新設する際に、業務量の、取り扱い業務を従来の業務の範囲よりももっと広げますとともに、従来所長以下十人であった体制を現在二十二人というふうに二倍以上に増員をいたしております。それから、いろいろな意味での機能の強化も図っているわけであります。そういう意味で、今後とも機能上の強化ということを私どもは考えてまいりたいというふうに思っているわけでございますが、冒頭申しましたように、安定所への昇格の問題は、今日の段階非常に困難だというふうに申し上げざるを得ない状況にあるわけでございます。
  210. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 困難だから、きょう私は質問をして、困難だというお答えはもう予想していたわけなんですけれども、まあ中高年齢者対策で調べてみますと、五十年の場合ですけれども、新規求職申し込み件数が二万八千五百四十三人、これに対して就職件数は八千八十一人で、わずか二八%に過ぎない。紹介件数は九千七百三十九人だと、こういうような状態、先ほどから、るる申し述べましたように、私も、役所多ければいいというもんじゃないと思います。わが党としても、安上がりの効率のよい、住民にサービスできる政府機構であってほしいと、こう思うわけですから、だから、ただやたらとふやせと言っているわけではない。いま人数も大分増員して、機能もふやしてきたと、こういうふうにおっしゃったわけなんですけれども、さて、そこで、私は比較をして申し上げなければならないのですけれども、札幌市も御承知のように政令都市でございます。これは総理府から出ている政令都市の人口と増加率を見たわけですけれども、他の政令都市と全然違うのですね。昭和三十五年当時、札幌の場合は六十一万六千人で、十大都市中一番少ない状況でありました。しかし、昭和四十年から四十五年に人口増加率二三%なんですね。このとき十大都市の平均が三・九%。三・九%なのに二三%も増大しているんです。それから、その後また調べますと、四十五年から五十年にかけましては、これまた二二・八%。このとき十大都市平均は二・五%。もう十倍近い人口の増加率なんです。それで現在、人口何人かと調べましたら、これは五十年の統計ですけれども、現在百二十四万なんです。御承知のように、札幌にますます集中してきますからね。北海道三期計画なんかでも、札幌市を中心にして発展していくわけなんです。だから、札幌というのは、ほかの政令都市に比べて、人口増加率は実にひどいということが一つですね。それから、その範囲ですね。札幌市にも熊が出るというような札幌市でございますから、その広さはどうだというのを調べますと、これまた大変なんですね。札幌の場合は、千百三十八平方キロメートルなんです。それで人口も、これは五十年度で全部そろえて調べてみたんですけれども、たとえば札幌が人口百二十四万。そのとき神戸の人口は百三十六万だった。これが面積で言うと約半分ですよ。北九州も面積で言ったら約半分。そうして札幌より人口は二十万近く少ないと、こういうわけですね。札幌よりも人口が少ないというところで、札幌の方が、それらの都市よりも倍の広さを持っているというところで、それじゃ職業安定所幾つあるかというのをちょっと出してみたわけですよね。そうすると、人口も大体似たり寄ったりで面積は半分以下の神戸では職業安定所三カ所あるわけですよ。それから京都でも三カ所ありますね。これも面積約半分ですわ。それで、人口も大体同じぐらいにいまなってきていますね。北九州は七カ所ございます。これはまたいろいろと、あそこの特殊な状態があろうかと思いますけれども、そうすると、公共職安の数というのがもう全部最低二カ所ありますでしょう、神戸三カ所、京都三カ所。そうすると、増員されたと言われても、やっぱりそういう全体から見て札幌の業務というのが大変だということは、これは客観的に言えると思うわけなんですよね。実際調べてみたら私も大変だったというような事情もございますので、これもすぐきょう困難だとおっしゃったから、いや、職業安定所に昇格しますということのお答えは出ないと思いますけれども、やっぱりこういう客観的な実情、ずっともう一度御検討いただきたいと思うわけです。それで、増員というのも考えていただかなきゃならない。昇格が無理なら増員という形でもっと検討していただかなければ、本当の意味で、いまこの不況の中で離職者中高年齢者はたくさん問題抱えて、働く人たちにこういうことを教えてあげたいな、いろいろ相談に乗ってあげたいなと思っても、それができないということは、住民サイドから考えても大変問題があろうかと思いますので、もう再度昇格ということは全然だめなのか、大臣、だめなのか。増員ということにこれだけ私がるる言っても、これはもう全然だめなんですというお答えになるのか。それとも、やっぱり考えてみればこれは大変だなあというふうにいまお考えになっていただいているかどうか、その辺の御見解を承りたいと思います。
  211. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほど局長からもお答えをいたしましたように、非常に国の台所が厳しいという、こういうことで、去年の暮れ、閣議でも決定を見まして、行政の簡素化、これはひとつ各省庁徹底してやるようにという、こういう枠がはまっております。いま御指摘の札幌地帯、この地域住民の雇用サービスの充実の必要性については、私もよく御趣旨の点は理解をいたします。十分きょうの御意見を踏まえて、今後研究さしていただきます。
  212. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 よろしくお願いいたします。
  213. 下村泰

    ○下村泰君 私が質問するときになると、いつも皆さんお疲れのようでございます。聞いていらっしゃる方々もお疲れのようでございます。できるだけかいつまんで、時間がどうのこうのとは言わず、早く終われば終わらしたいと思います。  きょう討議されております法案に対しまして、ほかの委員の方々は大所高所に立ったお話をしていらっしゃいます。私にはそういう知識がございませんので、直接訓練校へ参りましていろいろ見たり聞いたりしてまいりました。そこからひとつ具体的にお話を伺いたいと思います。  先日二十四日、品川、荏原の二校を拝見させていただきました。荏原校の校長が鈴木正五さんとおっしゃる。品川校の校長が岩宮鹿雄さんとおっしゃる。大変お二人とも熱心な方でした。ことに品川校の岩宮さんという方は大変この道の大ベテランでした。そして、この岩宮さんがおっしゃるには、訓練局長が大変すばらしい人である——これはお世辞抜きです。この職業訓練局長は大変話のわかる人である、労働省にとってはいままで珍しい、大臣以上ではないか——これはその場の話ですから、大臣気を悪くしないでくださいね。大臣以上である、われわれの意見をよく吸い取ってくれる、そしてよく聞いてくれる、ここまではいいんですな。聞くだけじゃ、への突っ張りにもならないんです。現在、この訓練校の存在をどういうふうな手段で広報されていらっしゃいますか。まずその辺から承りたいと思います。
  214. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 先生の御指摘、恐らくPRが足りないじゃないかというお話になろうかと思いますが、私どももやはりどちらかといいますと、これ役人仕事と申しますか、そういったPR下手な点があろうかと思います。ですから、たとえば職業安定所に来られる方々にはこういう訓練をしているぞということが、いつでもパンフレットが置かれているようなかっこうにしておりますし、また特に東京都などでは、電車の中につるしのポスターなどを張って、そして公衆がわかりやすいようにと。それからもちろん、区役所ないしそれぞれの市町村が発行いたしますPR誌などにも、そういうスペースをとってもらってやっているというようなことをやっております。私どもも、できるだけいろいろな機会にそのほかの報道関係等も通じまして訓練のPRに努めている所存でございますが、なかなか訓練の一般に対する認識が十分でないということについては痛感しておりますので、今後ともに、特に今度職業能力開発協会など民間のうちでもってできますようなものを通じまして、一般のPR手段を高めていきたいと、こういうように考えております。
  215. 下村泰

    ○下村泰君 局長はこういうパンフレットごらんになったことありますか。
  216. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) はい。
  217. 下村泰

    ○下村泰君 この「事業概要 昭和五十二年版東京都立品川高等職業訓練校」、この中に大変おもしろいのが出ておるのです。「応募情報入手先別」というのがある。つまりこの学校へ入ってきた人たちが、どういうところからこの学校の存在を知ったかということなんですね。もう一つおもしろいのが、この品川の訓練校では、「どうぞ品訓の一日開放へ」、こういうようなパンフレットを配りまして、そしてここにある施設を利用して御近所の奥様方とか亭主族とか日曜日に集まって、たとえば建物やマイカーの相談コーナー、自分である程度の修理はできなくても故障個所を見分けるとか、あるいは作品即売会ですね、木製品、金属製品、衣料品。それから楽しい一日工作室として、私はここでおもしろいと思ったのが板金工作室、中華なべをつくりますというのですね。こういうようなことで御近所に配って、ここへ集まった人たちが、これ近所の団地で自分の団地の窓から下に見えるこの訓練校を知らないのですよ、御近所に住んでいる方は。こんな学校がこんなところにあったのですかというようなことから、このやり方は大変評判だったそうです。ことしも十月か十一月にやるそうです。それはそれでいいんですが、この品川訓練校へ入った方々が、どこでどうしてこの存在を知ったかということなんですがね。全体を見ますと、「テレビ、新聞」が六%。「お知らせ」が一四%。いま局長の言った電車の中のちらしですな、ポスターですね、これなんと五%ですわ。「学校」で教えられたが六%。「安定所」が二三%。「人から聞いて」が圧倒的に多いのです、これが何と二七%あるのです。「その他」が一九%。それから養成訓練課程では、「テレビ、新聞」が六%。「お知らせ」が一三%。「ポスター」がこれは少ないのですよ、三%。「学校」が一〇%。「安定所」が二九%。「人から聞いて」が三二%。「その他」が七%になっています。それから能力再開発訓練、この方では「テレビ、新聞」が五%。「お知らせ」が一四%、この「お知らせ」というのは余り変わらぬようですね。ポスター、これも少ないです、三%。「学校」が七%。「安定所」がこれは多いのです、三三%。それから「人から聞いて」が二七%。「その他」が一一%。もう一つありますけれども、大体こういうふうな知り方をしているわけですね。  そして、この「人から聞いて」というのは、どういうふうに区分したらよろしいんですかと伺ってみましたら、大体訓練校を卒業した方が、そういう方々が現在離転職やなんかで悩んでいる人とか、あるいは高校卒でいまの技術ではちょっと実社会に飛び込むには不安定というような場合に、それじゃこういう学校があるからここへ行ってみっちりやりなさいというようなことで入ってきているんです。そうしますと、この中で一番多いのは人から聞いてということなんですね。ですから、いかにクチコミの方が、変にお金をかけてべらべら変なものをぶら下げるよりは、はるかに効力があるかということ。私自身が三十何年こういう商売に携わっておりましたからよくわかるんですが、テレビやなんかのお知らせというのはあれ意外とだめなんです。と申しますのは、視覚というやつはだめなんですよ。つまり、いま見てあっと思った瞬間に、その次にもし強烈な場面がぱっと出てきたら、前のは全然覚えていませんよ。そんなものなんです。ところが、人から聞いた、耳というのは一番これ確かなんです、聴覚の方は。よく労働大臣なんかもほかのことでこういう事例はおわかりだろうと思いますけれども、デパートその他でもって人間のたくさん集まっているところで火事が起きたりあるいは地震が来たり、ちょっとしたパッニク状態になったときに、ほとんど非常階段はどことか、非常口はどことか、覚えている人はいないんだそうです、これは。そのときに適切なアナウンスがあると、それによって大ぜいの人間が動く。これだけ耳の方がしっかりしているわけですね。してみると、この人から聞いてというのが圧倒的に多いというところにもうちょっと重点を置いて、PRの方法も考えていただきたいと思います。  さて、今度このお話は出たと思いますけれども、この決められた期限の中で、それぞれ実習をなさって実技を身につけるのは結構なんですけれども、やっぱり個人にいろいろ差があります、能力に。ですから、その決められた期限の中で完全に身につく者とつかない者とおります。こういう方たちをどういうふうに対処、処理されるようなお考えをお持ちでしょうか。これは局長に聞くことじゃないかもわかりませんけれども。
  218. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 先ほど来、そのお話はたびたび出ております。私ども一般に申しまして、平常の可能性を持っておられる方ならば、それからもちろん訓練の職種によっても違うんでございますけれども、平均六カ月というように考えておりまして、ものによりましては九カ月、一年というようなものもありますし、逆に三カ月ぐらいでとりあえずこれだけ身についていればというようなものもあります。個人差が当然出てくるんだろうと思いますが、私ども現在のところは大体そういう基準でやっておりますけれども、たびたびお話に出ますモジュール訓練、単位制訓練ということで積み上げていくやり方をとりますれば、ちょうど自動車学校で習得能力の早い者と遅い者というような差があるがごとく、各人の習得能力に応じまして早い者あるいは少し遅い者というようなことで、実際に一つのものが身につくまでの期間の差というものが出てくるわけです。それはいろいろな——とりあえずことしから四科についてやりますが、また来年度はそれを拡大するということで、早急にそういうやり方を広げていって、そういうものに具体的に対応していきたいと、このように考えております。
  219. 下村泰

    ○下村泰君 実は、私わざわざ局長に伺ったのは、局長も品川校へ行ってお話を伺ったと思うんですけど、品川校の場合には四時で帰るべき指導員が残っているんです。そして訓練生が、みずからがついていけない場合は自分が希望するらしい。その人たちの特訓みたいなものですわね。野球の方の特訓ならいいですけども、この方の特訓は大変なものですよ。指導員が四時に帰れるのに一時間も二時間も帰宅時間をおくらせて、直接そのメニューを消化できるまで、その日のメニューを消化できない人たちが完全に消化するまで一生懸命ついてやっていらっしゃる。こういうところなんかは、実にそれこそ人が人に物を教える私は典型的な美しい光景だと思います。大臣、ひとつこういうのをよく聞いていってくださいね、私の話は非常に具体的でございますからね。  いま、局長のお答えくださいましたように、いろいろと幅が出てくれば結構だと思います。  それから、一般事務の科では、五十歳以上の方たちが訓練を受けているんですけども、荏原校へ参りましたら、国立大学を出た、言うなれば東大を出た方が二人いらっしゃる。そういう方々もいらっしゃる。中には管理職を幾多経験なさった方もいらっしゃる。お一人、ある大新聞の編集長をやった方がいらした。ところが、大新聞の編集長こういうのできないですね、そろばんだとかあんなものは。それで、たまたまそこの校長さんがお話をしたら、ある小さな新聞ですね、町の新聞というようなところで、即そのままそこの編集におさまったという話もありました。ですから、受ける側も教える側も相手が千差万別ですから、お互いが苦労している様子ですね、見ていると。地域によってはその格差がますますひどいです。それで、この荏原校の校長先生が言うには、大変教えても片方はよくわかるんですが片方はわからない、これを何とか教室を別にして、べっ視とか、そういうものじゃなくて、別にして何とかしてこの人たちを早くこちらへ引き上げる、そして一般と同じように教育をしたい、それには校舎が狭くてどうにもならない、こういうことを嘆いていらっしゃいました。こういう差を少しでも縮めようと当事者はいろいろそういった苦労をなさっていらっしゃるんですけれども、この訓練法の精神にのっとれば、何とかして労働省が、つまりお国の方としても手を差し伸べて、少しでもあそこを直せば、全部壊して、たとえば極端に言えば建て直せば相当大きなまだフロアができるはずなんですが、そういうことに対しては、どういうふうに労働省側はお考えでしょう。
  220. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 私ども、都道府県が設立しております訓練校につきましては、施設、設備につきまして国が半額、それから都道府県が半額ということでやっておるわけでございます。したがって、各年度の予算の編成、また、それの予算の実行に当たりましては、各都道府県における施設整備等につきまして十分に打ち合わせをいたしまして、そして予算要求をし、そのつきました予算の配分につきまして、また、実行計画について各都道府県の意見を十分聞いて、それを吸い上げて対処するということにしております。したがいまして、いまのようなお話が、具体的に私一つ一つの事例について必ずしも存じないんですが、たとえば、いまのようなお話が都から出てまいりまして、私どもそれに対して、計画について両者の意見が一致すれば、これは当然その施設改善ができるという運びになると思います。具体的にそれが今年度の問題として出てきているかどうか、いまちょっと存じませんのですが。
  221. 下村泰

    ○下村泰君 どうぞひとつ、そこのところは融通をつけていただきたいと思います。  それから、たとえば、いままで男子を相手にして訓練校がほとんどできていますね、いままでは。そこへ近ごろは女性が入ってきたんです。そのために、まず一番困っているのが女性の便所がないですな、かわやが。それから更衣室がない。そのために大ぜいの男の中に入って数少ない女性が困っておるんです。そういう姿も伺ってまいりました。これはお聞きしてどうのこうのと言うほどのことではございませんけども、もちろん、そういう施設ができればそれにこしたことはございません。  それから、両方の訓練校というのも、荏原の方がほとんどでございましたけれども、ミシンによる縫製ですね、そういうものはいわゆる母子家庭、おおむね三十五歳以上の御婦人となっていますけども、そういう方々がせっかく訓練校で実習なさっても、おうちへ帰ると子供さんがいるためにそちらの方にかまけてしまって進まないんだそうですな、実習の内容が。これが何とかならぬものでしょうかと言っていましたね。  それからもう一つは、四月と十月だけですね、入校期が。そうすると、四月で入り損なった人は十月まで待たなくちゃならない。その間にいろいろとまた生活している状況が変わって、ついには入り切れないという方々もいるわけなんです。そこで、いま大変ユニークなことを考えたのは大田区ですな。大田区の訓練校では年四回、一月、四月、七月、十月。これ初めてだそうですね。こういう方法を用いまして、いわゆる三カ月ごとに門戸を開いて、さあどういうふうになるかというような結果がこれからどう出てきますか、これまた見ものでございますが。もちろん、年四回入りましても実習期間は半年だそうです。これは結構なんです。  そして、もう一つ問題は、離転職者ですね。この方たちの入ってくるのが一月、十月となると、必ず年度末に会社が倒産するとか、あるいはその時期に出ていってくれなんということはないでしょうし、いつかにどうなるかわからない。となりますと、これに対する対応策がちょっとこれではおろそかだと思うんですが、局長いかがでしょう。
  222. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) それは先生御指摘のとおりでございまして、特に私、いま東京の具体的な事例でございますので、東京の場合には訓練校がたしか十七、八ぐらいございます。
  223. 下村泰

    ○下村泰君 十八ございます。
  224. 岩崎隆造

    政府委員岩崎隆造君) 十八ございます。それで、共通の訓練科目がたとえばそのうちの半数ぐらいの訓練校にあるといたしますと、東京都は都内ですと大方のところは通勤圏内でございます。ですから、ある訓練校では一月入校にし、同じ訓練科目についてあるところでは四月にし、それから七月ですか、十月にしというようなことで四回にするということも可能ですし、それからさらに、それを二カ月ごとというようなやり方も、都会的なところにおいては同じ訓練職種について訓練校を変えることによって可能だと思うんです。一般的には、先ほど申し上げましたが、そのモジュール訓練というやり方で、いつ何人が始めましてもそれをだんだんに積み上げていって、これは視聴覚器材なども使いまして自学自翌方式をとり、チェックポイントだけ指導員にチェックをしてもらいながら、先へ課程を進めていくというやり方ですが、これをとりますと、極端に言えばいつ何時でも入ってきてもらってもそこからスタートができ、それぞれいろいろな進度でもってやっていけるというような形をいま進めつつありまして、女性の科目としてはとりあえず今年度縫製の関係についてはやろうとしております。そんなことで、離転職訓練はまさに先生御指摘のように、いつ何時離転職されるかわからないわけですから、いつでもその時期に入れますように措置を、これは精力的に進めてまいりたいと思っております。
  225. 下村泰

    ○下村泰君 まだ大分時間があるようですけれども、私は時間に関係なく自分の聞きたいことが終わったらやめるつもりです。  それで、実は、各校実習しているところを回って歩いたんですが、木工科のところに女の子が一人いたんです。若いんです、まだ十代でした。何でこういう科目を選んだのか。女性が一生懸命のこぎりを引いたりかんなで削ったり、あるいはのみをはたいているわけですね。あなたどうしてこういう若い身空でこの科を選んだんだと、そしたら、女がこういうことをやれば、むしろ世間が目をつけて普通の人よりかよけい仕事の量があるんじゃないか。実に現実的ですな。これをやらなけりゃ私は食えないからと、こう言うんですね。ですから、実習している人たちというのはもう切実なものなんですね。われわれが考えていたようなそんななまやさしいものじゃないということです。それははだで直接感じてまいりました。  大臣、こういう施設ができています。そしてそこで現在実習していらっしゃる方々もいます。この方々に、いま局長にもいろいろ質問させていただきましたけれども、一つ一つが本当にこの訓練校に入ってきてよかったという成果があらわれれば、国というものはいかに信頼できるものか——いま政治不信、政治不信と言われておりますけれども、こういう一つの場所を通して、国というものがいかに手を広げているか、あるいは皆さんのためを考えているかというようなことが、そのまま私ははだに浸透していくと思う。そして、この訓練校を卒業して実社会に入った場合、これがもし入れないとなるとまた問題です。伺ってまいりましたら、大体七十何%はほとんど就職できているそうです。就職できないのはどういうのかというと、いまも局長に申し上げましたが、期間が短いためにそれだけの技術ができなかった。あるいは習得できなかった。そのために、実際に会社に入ってやってみたときに、いわゆる実習訓練みたいのがあったんでしょう。そこではねられたというような結果が出ています。そうすると、その子たちも一生懸命やりながらも、ついに果たすことができなかったという結果が出てくるわけです。ですから、いま申し上げましたように、何とかして労働省側としては、その期間なり何なりを弾力的にお考えくださいまして、せっかくそういうところへ入って実社会に巣立とうという人たちの心を無にしないように、ひとつ努力していただきたいと思うんですが、このお願い大臣どういうふうに御見解をお持ちでしょうか。
  226. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほど来、具体的な現場を御熱心に視察をされまして、その現実を踏まえて非常に行き届いた観察のもとに非常に有意義な御意見を承りまして、御指摘のとおり、現在職を求めて職業訓練校に入られた諸君が、やはり本当に要請にこたえ得る職業訓練をして、そうして社会へ巣立ってもらう、こういったことが労働省雇用政策の大切な一環でございますから、それを通じて政治の信頼を回復するということ、こういったことができればこの上のない幸せでございまして、大いに御趣旨を生かして努力いたしたい、このように考えております。
  227. 下村泰

    ○下村泰君 一つつけ加えておきますが、訓練校へ参りまして、指導員の方々、決していわゆる役人根性とか役人感情とかいうものではありませんでした。人間と人間との形がよくあらわれていました。これだけつけ加えさせていただきます。  終わります。
  228. 片山甚市

    ○片山甚市君 いままで各委員から熱心な質疑がありましたから、私から簡略な形で大臣質問をしてまいりたいと思います。  離職者、転職者に対する機動的な職業訓練の実施のため、入校時期あるいは訓練の期間というものについては弾力的にやってもらいたい。こう申し上げるのは、職業を安定させるための訓練でありますし、再就職をさせる訓練でありますから、時間が足りなかったということで全部六カ月なり一カ年がふいにならないようにするということでまず考えられておるのかどうか、お答えを願いたいと思います。
  229. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お答えをいたします。  離職者に対する職業訓練は、雇用及び産業動向に即応いたしまして機動的かつ弾力的に実施することが重要であること御指摘のとおりであります。このために、今後入校時期の多様化、またモジュール訓練方式の導入等を進めるなど、入校時期の弾力化とあわせて訓練期間につきましても弾力化を図りまして、特に転職者が早期に安定した職場に再就職のできるような体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
  230. 片山甚市

    ○片山甚市君 離転職者は、主として産業構造の変化の中で犠牲的な立場でありますし、特に中高年齢の方々は家族を養っておるといいますか、家庭を持っているわけです。そういうような立場から言いますと、今日の訓練を受けるということになれば、それを受けるに値する生活といいますか、が保障されなきゃならぬ。そういう意味で、諸手当については格段の増額を図ってもらわなきゃならぬと思うんですが、いかがでしょうか。
  231. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおり、離転職者が安心をして再就職のために職業能力の開発、向上に専心ができるように、訓練受講中の訓練手当の額につきましては、ことしも、五十三年度相当改善を図ってまいったわけでございますが、五十四年度に向かってもその改善について努力してまいる所存でございます。
  232. 片山甚市

    ○片山甚市君 われわれから見ると不十分だと思います立場ですから、繰り返して内容的に申しませんが、ぜひとも緊急に措置をするようにお願いをしたいと思います。  次に、離職者、転職者の訓練については、再就職をすることが目的であります。そういう意味で、いわゆる訓練の内容でございますが、技能検定もさることながら、各種の資格を取れるようにしてもらいたい。今日技能検定の社会的評価、御承知のようにこれはその評価と再就職とが関連すると私の方は考えるわけです。大体、技能検定に対する社会的評価に応じて再就職というのは有利になると同時に、この訓練校で学んだ者が資格試験、国家のライセンスが得られるような、こういう仕組みにしてもらうことが訓練修了者に対する職業を安定さしていくことになろう。特に、訓練を受ける場合は職業安定機関と連絡をとられる、密にすると言っておられますが、必ず職業につける用意を持って訓練を始めてもらいたい。その中で必死になって勉強をしたい、こういう気持ちが起きるように考えられてこの法案をつくられたものと思いますが、いかがでしょうか。
  233. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点、私もしごくもっともだと考えております。離職者が再就職を図る上で、各種の資格を取得することが有利でございますので、離職者に対する職業訓練がこれらの資格の取得に結びつくよう、訓練内容の質的向上に努めてまいりたいと存じます。  また、職業訓練機関と職業安定機関との連携を一層密にいたしまして、訓練修了者の再就職の場の確保を図ってまいる所存でございます。
  234. 片山甚市

    ○片山甚市君 特に、雇用について、雇用状況が非常に厳しい失業多発地帯、あるいは中高年齢の離転職者、また、婦人、心身障害者等に対する、先ほどからの熱心な御意見を受けて、このための職業の訓練の拡充、内容的に充実さしていただく、こういうことについて考えますと、まず定員を具体的にそういう方々についてふやしてもらい、訓練科目についてもその人々に適応するように開発してもらう。特に、施設については、お話がありましたように、これは財政的な改善を図っていくようにしてもらいたい。特に、先ほどお話がありましたモジュール訓練のような形は、六カ月であれば足りないということが総訓の先生方からも言われておるようなことでありますから、含めて十分に配慮してもらいたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  235. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおり、その必要性は私も同感でございまして、今後重要となるのは、離転職者中高年齢者、婦人、心身障害者等に対する職業訓練に重点を置かなければならぬと思っております。このために、今後の雇用及び産業動向等に対応いたしまして、これらの人たちに対する必要な職業訓練を適切に実施するように、訓練規模の拡大訓練職種の開発施設、設備の拡充について十二分に配慮してまいりたいと存じます。
  236. 片山甚市

    ○片山甚市君 そのようなことで、総合訓練校の転換が具体的に今回提出されています。御承知のように、養成訓練の問題についても、時代の要請で云々と、こう言われておるようでありますが、それは、地域の要求といいますか、要請というか、ニーズというものに適応して具体的に弾力的にやってもらわなきゃならぬ。特に運営上、財政上そういうことをとる必要があろうと思いますが、それについて万般の措置をとられるかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  237. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 雇用促進事業団が設置いたしております高等職業訓練校の転換は、関係地域におきます雇用及び産業動向職業訓練の実施状況その他の事情を十分考慮しつつ、円滑に行うことが適当であることはもちろんでございます。また、具体的な転換に当たりましては、養成訓練受講者が不当に受講機会を失うことのないように十分配慮してまいりたいと存じます。
  238. 片山甚市

    ○片山甚市君 今回はまた、目玉のように職業訓練短期大学校について御提案がございました。この施設、設備の拡充のほか、特に訓練内容、訓練生の入校資格、修了時の資格等についても格段の改善を図ってもらう必要があろう。といいますのは、高度な教育、訓練を施したいと言われるんでありますから、従来に増してこれは改善を図られるものと思いますが、どういう御所存でございましょうか。
  239. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お答えいたします。  今後のわが国の産業社会が必要とする高度の技能労働者の養成確保を図るためには、職業訓練短期大学校の整備を図ってまいる方針でございます。職業訓練短期大学校が所期の機能を果たすよう設備、施設の拡充とともに、訓練内容、訓練生の入校資格、修了時の資格等の改善についてもさらに御指摘の方向で検討、対処してまいる所存でございます。
  240. 片山甚市

    ○片山甚市君 午前中からの議論にありましたように、施設、特に機械などについては、先端的なものを置くとすれば相当の財政的な措置がなければ、リースでやられるといいましても大変だろう。こういうことについては、繰り返しになりますが、特に私からお願いをしておきたい。御答弁は必要でありませんけれども、各委員からそういうようなことについて言われておりますので、念のため言っておきたいと思うんです。  営利を目的としない法人等が行う認定職業訓練に対しては、補助の対象の拡大を含め、いわゆる援助助成を強化すべきである。これは御承知のように公共職業訓練それだけで十分でない、そういうことで認定時の作業をしていただいている方々に対する援助について、具体的にどういうような助成をされるか、お答えを願いたいと思うんです。
  241. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のこの認定職業訓練に対する援助助成につきましても、その内容の改善とあわせて補助対象の拡大についても御指摘趣旨を踏まえまして今後さらに検討してまいりたいと存じます。
  242. 片山甚市

    ○片山甚市君 生涯職業訓練体制を確立をし推進するために、職業教育との関連を含めて訓練制度のあり方や行政機構訓練事業の財政的な面での強化と指導員の資質の向上等について基本的な検討をされていかなければならぬと、こう思っておるところです。これが指導員の特に養成、こういうことについて怠るならば画竜点購を欠くことになろうし、これらの人々が安んじてこれについてがんばれるような状況をつくらなければならぬと思いますが、これについてのお答えを願いたいと思う。
  243. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 今回の法改正は、御承知のように当面早急に法的措置を講ずることが必要な離転職者及び中高年齢者に対する職業訓練の実施体制の整備等を図るものであります。しかし、御指摘のように職業訓練との関連をも含めた訓練制度のあり方、行政機構、財政面での強化、指導員の資質の向上等については、さらに基本的な検討が必要であるとの意見もあり、今後引き続き関係審議会で検討を進めることといたしたいと存じます。
  244. 片山甚市

    ○片山甚市君 技能検定の職種の拡大、これは内容的にも時代に合うようにしなければなりませんが、この検定内容の充実ということについて、この法律改正後どのように進められるかについてお答えを願いたいと思います。
  245. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 技能検定制度が労働者の社会経済的地位の向上に資するものとなるように、今後とも技能検定技法の開発等による技能検定職種の拡大を図るとともに、試験基準の見直し等により検定内容の充実を図り、技能検定制度の実効ある運用を図ってまいりたいと存じます。
  246. 片山甚市

    ○片山甚市君 特に、技能検定職種のいわゆる拡大と内容を申しましたが、やはり社会的評価を得るということになると、そこの学校を卒業した者たちが、先ほど下村先生のお話でございませんが、クチコミで、あそこへ行けばわれわれの救い神のところだ、われわれがあそこへ行けば自分ら失業を克服できるところだと言ってもらえるような内容にしなきゃならぬ。そのためにはやはりこの技能検定の内容をうんと高められるように、ひとつ、初めにも申しましたけれどももう一度申し上げておきたい。私から言いますと、数も大切ですが、学校出た者が全部こんな学校なら出なきゃ損だと、村々町々、工場の中でふれて回ってくれれば看板は要らぬというのが大体下村先生のお話じゃないか。そのためには人も要るし物も要るし、いまちゃんとした設備を、法律改正だけでなくて内容を深めれば、一番いい中高年齢のいわゆる離転職者、あるいは婦人の方々、あるいは心身障害者に対する雇用の保障ができる。こういうことでは非常に大きな役割りを果たすんじゃないか、こう思いますが、大臣いかがでしょう。
  247. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおり、せっかく職業訓練体制の再編をいたしまして、いよいよこの時代の変化に対応して、特に再就職の道を開こう、中高年齢者対策とかあるいはまたこれからの訓練、養成の内容を高めていこうという、こういう方向に行くわけでありますから、それを十二分に国民皆さん方に知ってもらうということが必要でございまして、そのためには今度職業能力開発協会というものを新しく整備するわけでございまして、こういった協会を主軸といたしまして大いに職業訓練の実情をPRする、PRすると同時に、また中身もPRするに値するような充実をやっていく、両々相まって大いに所期の目的を達したいと、このように考えておるわけでございます。
  248. 片山甚市

    ○片山甚市君 大臣からお答えがあったんですが、先ほど同僚委員、柄谷委員などからもお話がありましたように、今回つくられますところの職業能力開発協会の運営については、いわゆる産業に従事する事業主、それから労働者の意見が十分に反映されるように具体的な措置をとられると聞いていますが、お答えを願いたいと思います。
  249. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほども触れましたが、この職業能力開発協会の運営に当たりましては、業務の重要な事項に参画する参与制度を設け、そしてこの制度を通じまして事業主、労働者の意見が業務の運営に十分反映されるように指導してまいりたいと、このように考えます。
  250. 片山甚市

    ○片山甚市君 今日の技術の近代化、産業の構造の大変化の中では、高度な技術を有する労働者群と、いわゆる低賃金で技能を有さない労働者群に振り分ける力を持っておると考えるものです。そうして、技術がなければ結局それからはみ出していってしまう、そういうふうに考えます。これはいまの力としては、高度な技術者を一つのグループにしながら、そして多くの技術を有さない労働者をつくる可能性がある。それを補うというか、そういうことをさせないために、職業訓練が公共的に行われ、国の政策として行われるものと思いますが、そのできる段階で、御承知のように第三次産業が大体中心だと言われておりますが、そうなりますと、それはどのような第三次産業になるのか。第三次産業の中のいわゆる技術者というのはどういうものなのかということに相なろうかと思います。先ほど、いわゆる技能検定の職種を広げていくこと、こう言ったのでありますけれども、第三次産業ということになると、たとえばパチンコのくぎ師、競輪や競馬の予想屋というのも一つの技術者みたいに思いますが、まさかそんなことは考えてないんでしょうから、第三次産業の技術者ということになるとどういうようにイメージをされておるか、最後になりますけれども、最後の段階になりますが、もう一度お聞きをしておきたいと思います。
  251. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) これから雇用が要請され拡大をされる産業としては、特に第三次産業が期待の持たれる領域でございまして、その中の具体的な事例としてわれわれが考えておりますのは、ビル管理、自動車整備などの対事業所サービス関連職種と、それからよく言われます福祉サービス、医療事務などの対公共サービス関連職種と、それから造園あるいは園芸、こういったいわゆる生活関連職種、こういったことでございまして、特に第三次産業関連職種のうちに、医療、保険、経理等についてはすでに民間の専修学校などのコースもございまして、こういったところに対しては委託訓練と、こういったことも幅広くやっていくべきであると、これが時代の要請にこたえるゆえんではないかと、こう考えております。
  252. 片山甚市

    ○片山甚市君 素材産業、または第二次産業、こういうものについては一定の幅でしか職業拡大がない。人口は一年間に九十万人なり百万人なりが新しく労働の場を必要とする、こういうときでありますから、大臣がおっしゃるように労働時間短縮等で仕事を分ける方法もありますが、新しく大臣がおっしゃったような形で仕事の分野をつくると同時に、具体的に技術者といいますか、プライドを持って働けるように労働省がお力をいたそうとするのはもっともでありますから、賛成します。  そこで、せんだって、五十三年の二月二十七日、中央職業訓練審議会答申、あるいは先ほど御・議論がありました行管の職業訓練に関する行政監察に基づく勧告、これは五十二年の八月ですが、これによって指摘されたことは、大体今度の法律の改正ではすべてを受け入れた、先ほどはそういうようにとれたんですが、そういうように受け取って、これからあなたたちが行政の上で約束を守るかどうか見たいんでありますが、入れてある、こういうふうにおっしゃるか。この指摘をされた、答申をされた分で入れなかった分があるのか、大体全体的に受け入れたということになるのか、しかとお答えを願って質問を終わりたいと思います。
  253. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 指摘を受けました問題点は、おおむね全部取り入れたつもりでございます。また足らざるところは運用面においてこれを十二分に生かして、趣旨を十分実現いたしたい、このように考えております。
  254. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  職業訓練法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  256. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、片山君から発言を求められておりますので、これを許します。片山君。
  257. 片山甚市

    ○片山甚市君 ただいま可決されました職業訓練法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブの共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと存じますので、御賛同をお願いいたします。  案文を朗読いたします。     職業訓練法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一、職業訓練における入校時期、訓練期間等についてその弾力化を図り、訓練受講中の諸手当の増額に努めるとともに、各種資格取得のための便宜を与え、職業安定機関との連携を密にすること。  二、失業多発地域における職業訓練及び中高年齢離転職者、婦人労働者、心身障害者のための職業訓練については、定員を増やすとともに、職種の開発をも含めて、施設、設備の拡充を図ること。  三、雇用促進事業団が設置する高等職業訓練校を転換するに当たつては、一定時期に、画一的に切り替えることなく、新規学卒者など養成訓練希望者が不当に受講機会を失うことのないよう運営上、予算上の措置を講ずること。  四、職業訓練短期大学校の施設、設備を拡充するとともに、訓練内容、訓練生の入校資格、修了時の資格等について改善を行うこと。  五、営利を目的としない法人等が行う認定職業訓練に対する補助の拡大を含め認定職業訓練に対する援助、助成の強化を検討すること。  六、生涯職業訓練体制を確立し、推進するため、職業教育との関連をも含めた訓練制度のあり方、行政機構訓練事業の財政面での強化、指導員の資質の向上等について、基本的な検討を引き続き進めること。  七、技能検定を必要とするすべての職種に技能検定を拡大するため、現在実施されていない職種についても新たな技能評価方式の研究開発を推進し、作業管理等の能力も加味した検定の実施、試験基準の見直し等検定内容の充実を図ること。  八、中央及び都道府県の職業能力開発協会の運営に当たり、事業主及び労働者の意見が十分反映されるよう措置すること。   右決議する。 以上でございます。
  258. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいま片山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  259. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 全会一致と認めます。よって、片山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、労働大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。藤井労働大臣
  260. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現に今後とも一層努力いたしたいと存じます。
  261. 和田静夫

    委員長和田静夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  263. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御報告いたします。  一昨二十五日の委員会におきまして、特定不況産業安定臨時措置法案について、商工委員会に対し連合審査会開会の申し入れを御決定いただき、またその開会の日時につきましては委員長に一任となっております。本日、委員長は商工委員長と協議の結果、明二十八日午後一時、商工委員会社会労働委員会農林水産委員会運輸委員会連合審査会を開会することといたしました。  以上、御報告申し上げ、委員各位の御出席をお願いしておきます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十四分散会      —————・—————