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1978-04-11 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)    午前十時六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 佐々木 満君                 玉置 和郎君                 片山 甚市君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 石本  茂君                 上原 正吉君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 福島 茂夫君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 安恒 良一君                 渡部 通子君                 小笠原貞子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  小沢 辰男君    政府委員        厚生大臣官房長  山下 眞臣君        厚生省公衆衛生        局長       松浦四郎君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  国川 建二君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省援護局長  河野 義男君        社会保険庁医療        保険部長     岡田 達雄君        社会保険庁年金        保険部長     大和田 潔君        労働大臣官房審        議官       谷口 隆志君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        文部省初等中等        教育局特殊教育        課長       久保庭信一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠選任の件 ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  安恒良一君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  つきましては、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事片山甚市君を指名いたします。     —————————————
  5. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 石本茂

    石本茂君 私がお尋ねしたいと思っておりますのは、本年度の厚生省事業の中で、重点的な施策一つとして揚げられております国民健康づくり対策に関してでございますが、ここには目標として揚げられておりますのは、国民の健康の保持と増進を図りたいというようなことから、国民一人一人が自分の健康は自分で守るんだというような自覚と認識を深める国民運動を展開していきたい、そういうことで住民生活に密着した保健サービス、いわゆる全部の市町村保健センターのようなものを設置していきたいというようなことが揚げられているわけでございますが、この事業の内容は大きく三つに分けてありまして、その一つは、生涯を通じての健康づくり推進ということで、従来とも進められてまいりました事業がさらに一層強化されているわけでございますが、この二番目の健康づくり基盤整備というところでは、新しいものが提起されてきたわけでございますし、三本目の柱はこれらの問題を啓蒙していくというようなことになっております。私がお伺いしたいと思いますのは、この二番の基盤整備というところで、新しく設置されます市町村のいわゆる保健センターの問題でございまして、本年度聞きますと約百カ所設置するということになっているようでございますが、その場合、今日まで地域住民保健サービスその他含めた健康管理等してまいりましたのが保健所でございます。この今日までの保健所のつかさどってまいりました役割りといいますか、それと、新たに設置されます保健サービスセンターとの行政的な役割り分担、大変な言葉ですが、そういうことについてこの機会に明確にお聞きできれば大変幸いだと思ってお尋ねをいたします。
  7. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ただいま先生質問いただきました市町村保健センターでございますが、市町村保健センターを新たにつくるという考え方は、これは従来から対住民保健サービスというものは身近なところでサービスをするのが一番望ましい、そういう面から各市町村対人保健サービスを行うのに便利な場所を提供するという考え方でございます。先生おっしゃいました基盤整備の中に、もう一つ国民健康保健に属しておりました保健婦さん方が、今度市町村衛生関係の部局の方へ配置がえをしていただきまして、そして市町村衛生業務に携わる、こういうふうなことも同時に行うわけでございますが、そういう保健婦さんが対人保健サービスを行います場合に、そういった市町村保健センターという一つの何といいますか、建物といいましょうか、場といいますか、そういうものがございますと、そこで健康教育をやったり、衛生教育をやったりという一つ活動の拠点になり得るということで、この市町村保健センターという考え方を今回打ち出したわけでございます。そういう意味合いで、これはあくまでも市町村保健婦さんが中心になって対人保健サービスをやる場である、このようなものと御理解いただきたいと思います。  なお、保健所との関係ということでございますが、保健所は従来からいわゆる一般行政的な仕事対人保健サービス的な仕事と二つをやっておるわけでございますが、その対人保健サービス的な仕事が、従来の保健所では不十分な面がある。と申しますのは、相当広範囲地域を持っているわけでございますから、保健所対人保健サービスをすべてこれまかなうということは、現在なかなか十分に行き届かないという面から、この市町村保健センターがそういうところをさらに進めていくということになろうかと思います。そのため、保健所はどういうことをやるかといいますと、市町村に対していろいろな技術的な援助あるいは指導を行うということが仕事一つになろうと思いますし、さらに広域的な処理を要するような衛生行政サービス、それからいろんなたとえば医師、保健婦あるいは栄養士等、チームワークを必要とするといったような仕事はやはり保健所でなければ行えませんので、そういった関係対人保健サービス関係保健所において行うということになると思います。それから、当然従来どおり公害とかあるいは食品衛生の監視といったような仕事は、これは対物衛生サービスという関係保健所が行うことになろうかと思います。いずれにいたしましても、そういうような大きな考え方の区分けができるわけでございますが、実際におきましては、それぞれの市町村連携をとりながら、各保健所市町村保健センター十分連携をとってやるというように、第一線においてそれぞれ連絡調整を行いながら、それぞれ十分機能を発揮するというようになろうかというふうに考えております。
  8. 石本茂

    石本茂君 お話しなさいましたことについて、大方理解できるわけでございますが、たとえば今日ただいま対人保健サービスということで、幾つかの県におきまして県単職員であります保健所保健婦駐在制をとりまして、地域住民と密着な活動をしてきているわけでございます。ただいま、私、看護婦出保健婦であるわけですが、仲間の中で非常に問題になってまいりましたのは、そうした地域を含めまして、保健所保健婦役割り市町村単位保健センターができた時点において重なり合うということは考えるわけですが、どういうふうに一体明確な分担というものができるんだろうか。ましてや、駐在制をとっておりますところにつきましては、しからば市町村に今度保健婦が設置されますと、私ども県単の者は一体どうなっていくんだろうか。変わらないんだと幾ら言いましても、その辺がどうも胸にしっくり落ち込んできていないといううらみを再々聞きますものですから、それであえてこういうことを聞きたかったわけでございます。もちろん、このセンターが発足いたしまして進行いたします過程において、それらの問題は解決するんだと私は思いますけれども当局とされましては、やはり県に指導なさる場面において、いま私が申しましたような混在しているような意識、感覚というものを上手に整理をしていただきまして、そして市町村に肩がわりしました国保保健婦さんはもとよりやってきた人々ですが、今後もし市町村単位保健センターというこのセンターには、住民状況といいますか、数といいますか、もちろん乳幼児死亡の多い地域もあるでしょう、成人病対策重点を置いている地域もあるでしょう、いろいろあると思うんですが、その前に、いま肩がわりいたしました国保保健婦は、本当に市町村に一ないし二人というような状況が多いと思うんですが、この数等のことにつきまして、現在ただいまそのまま将来に向かって見続けていくのか、やっぱり適当な時点において住民サイドの実態に合わせた保健婦の数の増強でございますね、こういうこともお考えになっているのか、あわせまして現在ただいま活動している保健婦が、将来少なくとも三年あるいは五年先を展望いたしまして、この仕事がいま私が言ったように増強していくんだと、保健センターふえるのだと、そして保健婦の数もふやしていくんだと、しっかり住民に密着した保健サービスをやるんだということになりました場合に、まかなえるのかどうですか、将来含めた保健婦増員対策といいますか、人材確保と申しますか、その辺の展望について所管されます医務局、そしてふやしていこうと考えなさる保険局の御意見を承りたいと思います。
  9. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) まず最初、前段に先生おっしゃいました市町村身分を有する保健婦もおり、また保健所保健婦市町村の方へ駐在している形もある、その辺どう整理するのかという第一の先生の御質問でございますが、私ども現在すぐどっちがどっちへ行けというふうに割り切ってしまって混乱を起こすということは、さしあたりのところ考えておりません。と申しますのは、実際にいままで歴史的に駐在制をとり、あるいは市町村国民健康保健婦がいるというのは、地域によってそれぞれ特殊な形をもって歴史的にでき上がってきたものでございますので、それを無理にねじ曲げていくということはかえって混乱が起こると思います。そういう意味で、やはり従来うまくいっているのをどのように今後伸ばしていくかということで、従来歴史的にうまくいってきたのはそのまま育てるというような考え方をとっていきたいと思っております。  それから第二に、保健婦の数をふやし対人保健サービスを増強すべきである。こういうふうに考えるかどうかということでございますが、私ども確かに先生おっしゃいますように対人保健サービスの担い手である保健婦さんの数をふやし、そして保健サービスを充実していくのは当然やらなければならない仕事だというふうに考えております。ただ、どのくらい必要かということでございますが、これは考え方によれば、いればいるほどいいんだということにもなるわけでございますが、しかし必ずしもそうは言っておれませんで、ある程度さしあたりのところこのぐらいというような考え方を出したいと思っておりますが、現在のところまだそういった計画にまで至っておりません。しかし、これからどのくらい本来いるべきなんだろうかというのを十分検討していきたいというふうに考えております。
  10. 石本茂

    石本茂君 ただいまの公衆衛生局長さんのお言葉でございましたが、医務局長さんいかがでございますか、この保健婦の育成ということにつきまして、将来そういう大きな健康づくり推進という意味で、至るところに保健センターができて、そこで活躍する保健婦ということを想定いたしますときに、いまのままの養成計画でよいのかどうか、その辺どのようにお考えになっていらっしゃいますか、お尋ねします。
  11. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 結論から申し上げますと、当分の間はいまのままの養成計画で十分であると考えております。年間に約千七百人の卒業生が出てくるわけでございますが、現在の経済、財政等の情勢を反映いたしまして、各都道府県や市町村においても職員の新規定員確保がむずかしいということでございまして、せっかく保健婦資格をお取りになりましても、就職する場所がないというような事態が起こっております。また、一方において、年間約千七百名の養成というのはかなりの数であると考えております。しかしながら、遠い将来の問題といたしまして、たとえば国民三、四千人に一人の保健婦さんは必ず要るんだというようなことでも出てまいりますと、現在の養成計画はさらに拡充強化しなければならない時代も来るかと考えております。
  12. 石本茂

    石本茂君 いただいております時間が大変短いものですから、このことについて大臣に私はお願いがあるわけでございますが、先ほど来局長も申しておられましたが、この保健センター中心活動する主人公は、これは保健婦だというふうに私は考えておりますし、食生活の改善問題、主婦対策いろいろございますが、それらをひっくるめましてこの仕事が十分にこなしていける素地だけは十分に持っているのが保健婦でございます。そこで、このセンター運営維持等につきまして、特にセンターの中で働く主人公として位置づけ、あえて言わしていただくなれば、センター長とかあるいはセンター主任とかいろいろな言葉があると思うんですが、ぜひ私はその位置づけにベテランの保健婦等を必ず設置していただきたいという希望を一つ持っておりますことと、それから、これは市町村中心でございますと財政的なアンバランスもかなり出てくるだろう。財政の豊かな市町村はよいのでございますが、そうでない地域におきましては、やはり処置のバランスが一県内にありましてもかなり大きなばらつきが出てくるんじゃないかというようなことを、老婆心でございますが憂慮している者の一人でございます。その時点において、何か、国とは申しません、地方自治体を含めまして平均化したような処遇措置というものは、これは保健婦のみではございません、そのセンター等に働くすべての者になると思うのですが、そういうこと等につきまして大臣の御所見をこの機会に承っておきたいと思います。
  13. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私、先生のおっしゃるとおりだと思いまして、保健婦さんはこの保健センター中心にして保健指導健康増進のためのいろいろな対人サービスをやっていただく重要な職責でございますから、これらの方々身分の確立なり、あるいはまた要員確保なり、こういう点については十分配慮をしていかなければならないと考えておりますので、おっしゃるような方向で努力をいたしてまいりたいと思います。特に、市町村財政力等アンバランスもございますから、現在のような一律の——国がやる場合にこの町村については補助率が高くてこの町村については低いというわけにはいきませんけれども交付税の方の取り扱いなり、その他、十分それぞれの市町村でこういう保健婦さんが活動していく場合に必要な経費についても、できるだけ自治大臣とも相談をしまして、ことしはいわば百ヵ所、試行的にといいますか、そういうような第一年度でもございますので、すぐにはいかぬと思いますが、状況等をよく見まして、おっしゃるような欠点が出てまいりましてこれが全国的な健康増進運動として効果が上がらないようなことのないように、できるだけ心を配っていきたいと、かように考えます。
  14. 石本茂

    石本茂君 どうもありがとうございました。よろしくお願いしたいと思いますし、特に担当局長さんにおかれましては、今後の具体性の中でよろしくいまお願いいたしましたことなど含めまして御勘案いただきたい。特に、保健婦の再教育ということにもかなり重点を置いていただきたいことをこの機会お願いしておきます。  続きましてお尋ねいたしたいのは、医療に関する問題でございますが、今日保険診療によるいわゆる診療報酬とは別枠で、例の差額ベッドのことでございますとか、あるいは世間に一応まかり通っておりますのは付添看護料金という言葉になっておりますが、これは職業人である付添者支払い賃金の問題だと思いますが、いわゆるその保険外として患者個人負担になっている部分について大きく問題が出てきているわけでございます。このことにつきましては、当局大臣におかれましてもいろいろ御配慮いただいている最中でございますが、先般大臣記者会見のお席でお話しされたことだと思うんですが、私も仄聞したわけでございますが、看護助手制度を導入したいというお言葉があったということなんです。このことをやはりちまたにおいて幾つか疑問を持ちましたというのは、この看護助手制度というものは医療法施行規則の十九条の中身の中にそれを設置するというお考えなのか、それとも診療報酬等の面におきます、いわゆる保険医療の問題でございますが、その面においての、先ほど申しました枠外個人負担分看護料金付添料金、このものを何らかの措置をしたいというお気持ち助手制度というものを導入しようとおっしゃったのか、その辺がちょっと皆わかりかねている部分が出てきておりますので、この機会に、制度上、いわゆる医療法施行規則制度規則にまつわる面においての御意見であったのか、それともそうじゃなくて、診療報酬にまつわります部分で、基準看護実施病院でありましても、とても一対一の看護なんていうものは、これは身の回り世話を含めた条件として考えられないのが現実でございますので、その枠外にはみ出た料金というものを何らかの措置によって保険診療報酬の中でカバーしていきたいという御意思に基づいての助手というものの導入ということであったのか、その辺をこの機会にお尋ねしたいのと、この助手と一口に言いますが、病院のいわゆる基準看護、一、二、三いろいろございますが、四・四・二という、現在有資格者が八割、そして無資格者二割ということになっていますので、この二割分をさらに四割なり五割にするという御意見であったのか、そうじゃなくて、さっき申しましたように、全く基準看護要員定数、その病院の持っているものとの枠外で、どうしても必要に応じて雇わなければならない付添者に対する保険配慮をしたいというお気持ちだったのか、その辺をお聞きしておきたいと思います。
  15. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いままさに先生が最後に言われたような配慮意味で実は私は申し上げたわけでございまして、やっぱりはっきりしなきゃいかぬのは、一体看護婦准看という者の任務でございますけれども先生専門家でいらっしゃいますからもうつとにおわかりのように、これは療養世話ということになっておるわけでございます。しからば、その療養世話範囲というものはどこまでなのかということを考えますと、これは広く解釈しますと、いまの付き添いさんがやっているような雑用まで全部含める、およそ病人身の回りに関するいろんな一切の世話は全部療養世話だと解釈するのか、そうでないかによって、大分違ってまいりますが、世間ではその辺がどうも明確に受け取られていないんじゃないだろうか。やっぱり、完全看護なり、いろんな看護婦さんを抱えた病院看護婦さんがやる、いわば看護業務範囲外仕事が大分あるんですから、それについてやはり病人の方の側の事情から付き添いというものが起こっているんじゃないだろうか。そういたしますと、いわゆる看護業務に従事する看護婦准看を含めました正規の看護婦さんという方々以外の業務というものが、やっぱりあるんではないだろうか、だから付き添いというものの需要が起こってくるんではないだろうか。そう考えますと、それが一方において一日六千円なり七千円なりを払わなきゃいけない、それが一ヵ月になりますと二十万以上になるというようなことになりますと、非常に保険外負担で、むしろ保険負担よりも保険外の方が多くなるという現実も出てくるおそれがございます。その解決のために何らか工夫をすべきことがあるんではないだろうか。一人の人が一日じゅう付き添いとして、その人が専属に雇わなきゃいかぬような需要があろうか。やはり、相当そういうような、いわば入院中の生活の介護的なものを、病院がある程度の人間を持つことによってこの需要を満たしていくことができるならば、患者さんの負担というものも大分軽減をしてくるんではなかろうか。そういう意味で、何らかその保険外負担というものを解消する意味で、これを保険の給付の中に入れる方法はないだろうかというような考え方から、検討を命じているわけでございますので、全く看護業務範囲内に属するものでなくて、そのほかの面の病人のいろいろな雑用をやる者がどうしても必要な場合に、これを何らか解決をし、経済的にも患者さんに全部そっくりそのまま負担がいくような形でないことを考えて、負担軽減を図るということをいま検討をしていると、こういう段階でございまして、看護業務以外のことについて何らかの方途を見出したいと、こういうつもりでございます。  したがって、看護助手というものを制度的に、医療法なり看護法看護婦保健婦、助産婦のあの法案の中に取り入れるという考えではないわけでございます、いま私が申し上げておるようなものは。そういうことでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  16. 石本茂

    石本茂君 どうもありがとうございました。  保険局長さんもお出ましでございますが、大変この問題はデリケートな問題でございまして、付添者付添看護と言えるのかどうかということも、いまの大臣お答えの中にあったわけでございますが、一概に付き添っている者が全部看護しているというふうな物の見方、考え方というものは、やはり是正していかなきゃいけないんじゃないかと私も考えている一人でございます。どうかこの問題につきましては、健康保険制度の一部改廃等も含めまして御検討いただいているところであると信じておりますが、よろしく何らかよい方法、御病人に御迷惑をかけない、しかしながら病院看護能力だけでは対処でき得ないという場面も想定していただきまして、よい結論をお導き、お出しくださいますことを、この席をかりまして心の底からお願いをしておきたいと思います。  なお、これは質問お答えは要りませんが、医務局長さんに申し上げたいんでございますが、三十年前にできました今日の医療法でございますし、その中に含まれているもろもろの問題でかなり検討していただくものもありますが、患者四人に一人の看護婦または准看護婦というふうに言われておりますけれども、もはや同じ厚生省内で保険局を見ますと、類別看護等の面で、四人に一人は看護婦ではなくて、いわゆる看護有資格者のほかに無資格者二割入れてもいいんだぞというような診療報酬点数の起算もできておりますので、どうかこの両者におかれまして十分これを御検討願って、絵にかいたもちのようなものはやはりこの際整理していただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  17. 安恒良一

    安恒良一君 私は、きょうは厚生行政の基本に関することを、一般を質問するということでありますが、四月八日に厚生大臣が社会保険審議会に諮問をされました健康保険の改正案の考え方についていろいろこれから質問をし、さらにこれは審議会に諮問をされておりますし、いずれ国会にまた出てまいるものでありますから、その場合に、それまでの間にぜひ検討していただかなきゃならぬものがたくさんありますので、私の意見等を含めながら質問をしていきたいと思います。  そこで、新聞で見ている限りにおいては承知いたしておりますから、ごく簡略に昨年のこの臨時国会の中で、前厚生大臣健康保険制度の抜本的改善について十四項目の約束をされました。厚生大臣はそれ引き継いでやると、こういうことは厚生大臣に就任をされたときの一般質問の中で私の質問に答えられておりますから、そういうものを踏まえて、今回の健康保険法の改正の考え方の骨子についてごく簡略に、新聞で見ていることはもう承知していますから、やはり新聞に報道されなかった以外の問題で補足すべきものがあれば、こういう問題があると、こういうことでまず厚生大臣としての大きい、大筋の考え方をお聞かせを願いたいと、こう思います。
  18. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 新聞で出ている以外のもので、私がさらに内容として持っているものはほとんどありません。私も率直に資料から何から全部渡して出しておりますので、それ以外のものを持ち合わせはございませんが、十四項目について、私どもこの方針を引き継ぎまして今度の改正案の骨子にしているつもりでございます。あの十四項目の中に、まず第一の「制度間格差の是正、当面、健康保険組合間財政調整の実施」、立法時期五十三年度とございます。これも入っております。それから二は、「本人家族の給付水準の格差是正等を中心とする給付改善」。それから三は「一部負担の適正化、合理化」。これについては立法時期五十三年度、実施時期五十四年度と御提出の中にございますが、これも今度の改正に入っているわけでございます。それから、五十三年度の立法時期の中に、第九項目で、「給付に見合った保険料及び財政基盤に応じた国庫補助による保険財政の安定」というのがございますが、これも今度の中に、保険料等についてあるいは国庫補助を一定率にいたしまして、しかも現行以上の補助率にしたいということの考えを申し上げております。それからさらに十項目の「保険負担の基礎となる報酬の合理的見直し」というのがございます。これはいろいろ見解の分かれるところかもしれませんが、私どもとしては、今度お願いをいたしております上限は、現在の与えられた授権の限度にいたしまして、それ以内でやることにいたしてございますが、同時に、毎月の報酬に対する料率、すなわち保険料の負担はだんだん減らしながらいきたいと思いますけれども、やはりボーナスということになりますと、相当給与の高い人がボーナスが多いということでもございますので、いわば所得の再配分というような意味でそれを入れておるということでございます。あと五十四年度以降につきましては、老人保健医療の整備についていま精力的に取り組んでいるわけでございまして、大体今度の考え方は、整理して申し上げますと、一つは給付の平等を図るという点と、それから負担の公平を図るという点と、物と技術を分ける、これはこの中に適正な医療費問題、「物と技術の分離、技術料重点診療報酬の改善」というのが六項目にもございますものですから、これらを第三番目の方針に入れまして、第四番目は家計負担を、何とか高額の負担を解消する方途を措置したいと、それからさらに審査機構につきましても、この十四項目にもございますので、今後いま直ちにはなかなか審査権の問題その他いろいろ理論的に解明すべき点がたくさんございますので、すぐにはできなくなりましたか、審査機構の改善を早急に検討するというこの五つの方針のもとに編成をしたわけでございます。
  19. 安恒良一

    安恒良一君 いま大臣は、十四項目の中で、これとこれはやるということを言われておりますが、私は今度の、私どもがあのとき議論したときの中で、一番大きいことを大臣はお忘れになっているのじゃないだろうか。私は国民が将来の負担増がある程度ふえましても、皆保険下においては、医療というのは、いつでもどこでもまともな医療が平等に受けられる、こういう医療供給体制というものがないと、なかなか負担増というのができないんじゃないだろうか、国民はこの負担増に応じないんじゃないだろうか、こういうような問題等も、いわゆる保険制度を改正をしていくうちの最大の焦点ではないだろうかというふうに思います。こういう点についての配慮であるとか、あと以下順次議論をしていきますが、たとえばいわゆる保険外負担の解消問題、そういうような問題であるとか、こういうような、どうもあなたは十四項目の中の——あえていいところ取りとは言いませんけれども、私は、この十四項目というのは、法律で改正すべきもの、行政でやるべきもの、この二つがあります。いまは、社会保険審議会に諮問をされたのは主として法律改正事項だと思います。しかし、法律で改正すべきことと行政でやるべきことが並行してやられないと、国民はいつでもどこでもまともな医療か平等に受けられるという皆保険の大原則は守られないわけですね。そうしますと、私が予算委員会の集中質問なり分科会等で質問をしますと、大臣は、いやそういうことはいま検討しておるんです、逐一やっていきます、こうなるわけですね。そういう答弁がすぐ返ってくる。それでは私は、国民は理解しない。少なくとも私が大臣にまずお聞きをしておきたいことは、行政でやるべきことについても具体案をきちっと付してやられる考えがあるのかどうか。それはもちろん率直なことを申し上げて、一年や二年でできないことがあります。中長期の計画を持たなきゃならぬ。しかし中長期の計画を示して、そして五十三年度は第一年目でこうします、五十四年度はこうします、こういうことを示して、一方制度についてはこう改正をしたい、こういう提案をされて、初めて国民は理解をするものだと私は思いますが、この十四項目の中で、たとえばいま一つ私がお聞きしたいのは、まず医療供給体制の問題でありますね。御承知のように、今日救急医療、夜間医療、こういう問題に対する国民の不安がたくさんあります。私はこの前、福井県に生態調査に参りました。そうしたら、福井市内に、半径四キロ以内に医療機関がないところが二ヵ所ある。福井市内ですよ。福井の市内にあるわけなんですね。そういう状況を、いわゆる医療供給体制というものの整備をどうされるのか。この点をきちっとしないまま、いまのように医療機関が大都会に偏在をしている。中小都市やさらに田舎の方に行けば無医村地区が依然としてある。しかも、大都会の場合でも、夜間や休日になるとなかなか——いわゆるたらい回しという現象が出ている。こういう問題について、もう医療供給体制の整備というものは、皆保険下になって、まずそれがおくれているじゃないかと、保険だけできてもうすでに二十年近くたっているわけですね。ところが、医療供給体制をどう整備していくのかということについて、何ら具体案が今回のやつについても示されてないわけですね。それでは、私はまず問題にならぬと思いますが、この医療供給体制の問題。それから、これまた医療供給体制の一つとして問題にされているのは、いわゆる病院、診療所ですね、診療所が有床、無床、病院が専門病院、総合病院、大学の付属病院等々、大別するとありますが、そういう問題に対する機能分化問題についても、もうこれも非常に長い議論がされている。ところが、医療機能分化問題にしろ、病院網の整備にしろ、そういうことに対しての中長期の計画というものが示されない。どこにそれが原因があるのだろうか。たとえば、一つの例を言いますならば——これは議員立法でできたという御反論があるかと思います。私は議員立法でできたであろうと何であろうと、悪いものは改めるべきだと思いますが、公的病院のベッド規制というのが旧態依然として残っておる。そういう問題について、どうして今度の改正のときにいわゆる医療供給体制の整備、それから医療機関の任務分担、特に私は公的病院のベッド規制などということは、こんなものは直そうと思えばすぐ直せる、そういう問題についてどうしてこの改正の中に——私は大臣が五つの柱を立てられたことを知ってます。しかし、肝心なところが抜けていると思うんですが、そういう点についてひとつお考えをまず聞かしてもらいたいと思います。
  20. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいま御指摘の「医療供給体制の整備と医療関係者の養成」、これは十四項目の第十二番目に上がっておるわけでございまして、これは五十三年度から逐次実施をいたしますと、こう申し上げておるわけでございます。この内容につきましては、五十三年度予算案の中にも載っておりますが、医務局長から詳しく御説明を申し上げたいと思っております。  また、付き添い差額ベッド等の保険外負担の改善につきましても、すでにこの案を御諮問をいたします前に、御承知の三人部屋以上の大部屋からは差額徴収をしないようにという方針を決めまして、指導をいまいたしておるところでございますし、同時にこの付添問題につきましても、先ほど言いましたように、いまもちろん通牒でもこの自粛を呼びかけておりますが、それだけでは実態が解決しませんので、先ほど石本委員にお答えしましたような意味における今年度の宿題として、具体案作成にいま取り組んでいるわけでございます。  また、歯科の差額については、この前の診療報酬の点数改定によりまして、その第一歩を踏み出しておるわけでございます。そういう意味で、法律事項でないものにつきましても逐次その条件整備をやっているつもりでございますが、先生もおっしゃいましたように、なかなか一遍にはできませんので、この点は御理解をいただきたいわけでございます。  医療供給体制の整備については、おっしゃるような問題点もたくさんございますので、これからも逐次、いま後ほど局長が申し上げますような具体的な措置を今後も拡充強化をしてとってまいりたいと思いますので、この点は私どもとして十分皆保険下におきます条件整備について努力をしていかなければならないという基本方針は、私から申し上げておきたいと思います。  以下、局長からこの供給体制の整備の具体的な実施状況、また今後の方針等について聞いていただきたいと存じます。
  21. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) まず、第一の御質問医療供給体制に関する計画並びにその実施状況でございますけれども、具体的な例を申し上げますと、僻地医療対策については昭和三十一年度からやっておりまして、現在の計画は五十年度から始まった第四次五ヵ年計画でございます。また、これが来年度で第四次計画が終わりますので、新たな第五次計画策定のための実態調査を本年度実施することにいたしております。また、救急医療対策につきましては、四十八年に消防法に基づく救急病院厚生省令を設けまして、告示病院、診療所の制度を進めると同時に、四十一年から各都道府県の救急担当の基幹病院の整備を進めてきたところでございますけれども、当時は交通事故が主体でございましたが、最近は交通事故も四十五年をピークとして減ってまいりましたし、むしろ脳卒中とか心筋梗塞とかあるいは子供の急病、あるいは緊急のお産と、そういった外傷以外の疾患が問題になってまいりました。そこで、五十一年度から第三次救急センター、いわゆる最高度の機能を持った救命センターの整備計画を打ち出したわけでございますけれども、さらに五十二年度からは三ヵ年計画をもって日本全国の救急医療の体制を整備しようという計画を打ち出しまして推進をいたしております。救急医療対策も五十四年度は約四十億増額されているわけでございます。  そのほか、特殊疾病対策でございますが、がんの対策といたしましては、すでに三十六年の国立がんセンターの整備から始まりまして、各都道府県のがんセンター、さらに広域市町村圏におけるがん診療施設の整備というふうに進めてまいっておりますし、小児病院につきましてもすでに専門の小児病院は世田谷の国立小児病院中心といたしまして全国に九ヵ所ございますし、計画中のものが四ヵ所ございます。また、総合病院で小児医療の診療部門を非常に強化したといったようなものも、二十七ヵ所はすでに整備されているわけでございます。  また、難病対策については、四十七年の十月に難病対策要綱を発表いたしまして、第一次五ヵ年計画を実施いたしまして、一応五十二年度で第一次計画は完了と、五十四年度からいよいよ難病対策の第二次計画に入るという時代になってまいっております。  また特に、新しいものといたしましては腎透析、腎移植の問題がございますけれども、腎移植につきましても本年度から地方腎移植センターと申しますか、じんセンターの整備を始めるといった予算が計上されております。  以上は、建物設備について申し上げたわけでございますが、医師の養成計画看護婦養成計画も、それぞれ医師については無医大県解消計画として、また看護婦については第一次五ヵ年計画として推進されていることは御案内のとおりでございます。  次に、第二の御質問病院と診療所の機能の分化の問題でございますが、これは各国の国民の慣習とかあるいはその国における医学、医術の発展の過程、歴史と、こういったものによって非常に左右されるわけでございます。やはり、日本の国民教育水準が高うございますので、できれば大病院の外来を利用したい、大病院の専門医を主治医にしたいというような気持ちがほかの国の国津よりも強いわけでございます。また、日本においては、病院そのものの発展過程がもう初めから外来を主とした病床を持った施設というような発展過程をとりましたので、非常に多くの外来患者を抱えているわけでございます。また、特に日本においては欧米のようなオープンシステムの病院といったものもございませんから、開業医は町にオフィスを持ってそこで簡単な診療をする、むずかしい患者は提携している病院に送る、そうして自分も一緒になってその病院で診療をすると、そういったシステムも発達いたしておりません。また教育制度自身が初めから一般医と専門医を分けて教育をするというようなシステムではございませんで、いわゆる学位制度中心として発達をした関係から、日本の医師は外国の医師に比べて平均的なレベルが非常に高くなっております。そういう関係から、開業いたしましても自分のクリニックであるいは自分の小さな病院でできるだけ自分の専門の腕をふるいたいという気持ちが強いわけでございます。そのように、いろんな複雑な要因が絡んで現在の日本の病院と診療所のあり方というものができ上がっているわけでございますが、ただ注目すべきことは、外来は診療所、入院だけが病院と、特に救急外来だけが病院というふうなたてまえをとっておりました欧米諸国におきましても、最近は病院の外来患者がどんどんふえていくというような傾向が出てまいっております。これは一方においては医学、医術が非常に進歩いたしますと、どうしてもそういった高度の専門医を持ち、高度の設備を持った病院の外来を使おうというふうな傾向が世界的に出てくるものと考えております。  第三の最後の御質問は、医療法七条の二に基づく公的病床の規制の問題でございますが、これは三十七年に議員立法によって行われた制度でございます。確かに、公的病床だけ規制して私的病床を規制しないのはおかしいではないかということであろうかと思いますが、私的病床につきましても、医療金融公庫の融資で公的病床と同じような融資の規制をいたしております。また、いわゆる公的病床につきましても、一般基準はあのように決められておりますけれども、たとえばがんの病床を整備する、小児の病床を整備する、あるいは老人病床だとか難病病床を整備する、リハビリの病床を整備するといった場合には、特別な加算制度が設けられておりまして、その運用の適正を期すれば問題はないというような考え方を私どもは持っております。  なお、これにつきましても、むしろ最近特にアメリカ、イギリス、フランスにおきましては、医療費増高の傾向から、やはり根源的にはベッド数のあり方を検討しなければならないというような立場に立ちまして、特に増床を規制する、病院を新築した場合には古い病院は壊してしまう、またできれば非常に利用頻度の低いところは捨ててしまう、そういうふうな病院削減計画を逆に打ち出してきているような傾向がございます。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 ちょっと医務局長に注意しておきますがね、演説会じゃないんですから、余り長くべらべらやらぬで、簡潔にやってください。あなたも専門です。私も専門でわかっていますからね。何か一人でべらべらべらべら、ぼくの質問時間の倍もしゃべるのは頭が悪い証拠ですよ。だから簡潔にひとつ答えてください、簡潔に。  私がいまお聞きしていることで、この医療供給体制の整備ということについて、やはりどうしても医療機関がいま偏在をしているじゃないか。これを直すためには五ヵ年か十ヵ年計画が必要なんですよ。というのは、わが国は自由開業医システムですからね、いわゆる行政的にお医者さんの開業の場所が指定ができないわけなんですね。そこで、どうしても大都会に偏在をすると、こういうことがあると思うのです。それでそれを直す方法は何かというと、私はやはりたとえば病院網の整備ということをやる以外にないと思うのです。県なら県に基幹病院を置く、その下に中級病院を置くというふうに、具体的な長期的な計画を持って私はこの病院網の整備をやらなければ、いまいろいろ努力されていることはわかっています。長々としゃべられました。もうしゃべっていただかなくてもよくわかっている。しかし、それだけでは体系的に直らないんじゃないだろうか。たとえば、いま私が申し上げたように、福井市内のようなところですら二ヵ所出てきているということなんですね。ですから、そういう点について私はやはりこの際医療供給体制を全国的に洗って、そして病院網を整備をする。これがなければ私はどうしてもこの無医村の問題なり、もしくは今日の成人病と言われる、総合的な判断が必要なものを国民が平等に受けられないんじゃないか。たとえば、東京の新宿の大久保通りを見ると、四つも五つもあの通りに、もしくは周辺に総合病院、専門病院がある。ところが、同じ東京でも青梅の方に行きますと、そういう病院が非常に少ない。これはいまのままで私はやったって直らない。どうしても厚生省が思い切って病院網の整備ということについて、これは年限がかかることですから、たとえばアメリカの場合には十年かかった。ですから、そういうことについて、ひとつやる考えがあるのかどうか。これは大臣にお聞きします。  それから、第二番目にお聞きしたいのは、たとえば夜間救急の問題についても、いまやっておられることでは間尺に合わないわけです。私はこれまた福井県で実態調査をしましたが、いわゆる二十四ヵ所、非常にいま申し上げた半径四キロ以内に医療機関がないところがあります。そこで、福井県で開業されている八百名の先生が、年間に十日間だけいわゆる夜間診療に当たってもらう、救急診療に当たってもらう。こういうことを供出をしてくれると、福井県の場合の夜間救急医療はそれで全部賄えるわけです。ですから、三百六十五日のうちの十日間なんですから、そういうことをやっぱり具体化するという考えを持たない限り、いろいろ予算はこれだけつけてます、あんな病院つくってます、こうしてますということだけでは解決をしないんですよ。だから、私はやはりそういうことについて前向きに検討をされる気があるのかどうか。また検討しているならどういうことを検討しているか。そういう点について少し具体的な問題でお答えを願いたい。  いま、私は二つのことを言いました。病院網の整備。一つはいま申し上げたように福井県の事例をとると、福井県の開業医八百名の方々年間十日間救急夜間診療に当たってくれれば、それで福井県民は安心をして一応救急や夜間医療が受けられるんですよ、いいですね。こういう点について大臣考え方をお聞かせ願いたい。
  23. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 病院網の整備の十ヵ年計画をやるべきではないかと。私は全国的に医務局で調べさせまして、本当に医療の供給体制が全く整ってないようなところがございますと、これは交通状況ともよく勘案してみなきゃいかぬと思うんでございますが、これはひとつよく全国的に各都道府県と連絡をとってみまして、そういう必要性のあるものについては、これはもうおっしゃるように進めてまいる必要があると思いますから、御意見としてひとついただいておきまして、何とかそういう計画が立ち得るものか、実態の調査等も含めましてやってみたいと思います。  それから、いま輪番制のお話をいただきましたが、これは現に実行いたし、予算にも若干計上いたしております。内容等については医務局長から簡単にお答えをいたします。
  24. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) まず、病院網の整備計画でございますけれども、これも昭和二十五年度の医療制度審議会の答申から始まり、三十四年の厚生省医務局の基幹病院整備計画に基づいて進んでまいっておりました。基本的には少なくとも県に中央病院一つ、またいわゆる広域市町村圏には中核病院一つ。さらにその中にございます二、三の保健所の管内には、りっぱな公的病院一つずつ欲しいという計画で進んでまいりまして、数の上ではもうすでにその整備は終わったものと考えております。問題は、その機能の面でございまして、たとえば総合病院で眼科、耳鼻科が足らないというふうな問題、あるいは腎透析の機能が弱いといったような問題、そういった問題が今後の問題ではないかと思っております。しかし、これにつきましては、すぐれて地域の特性が非常に強く働きますので、現在各都道府県にお願いいたしまして、各県の地域保健計画を作成していただくようにお願いをいたしております。まだ三分の一程度しかできておりませんが、近く全県そろうものと思っております。それを見た上で、さらに病院の不足なところは充実する。また病院があるけれども機能の弱いところは強化をするということになろうかと思います。  次に、夜間診療の問題でございますが、御指摘のとおりでございまして、開業医の方々も年に何日か夜間診療を担当していただく。あるいは年に何日か僻地に行っていただくということがあれば、ずいずん僻地医療、夜間医療としては助かるわけでございます。したがって、一方においては、たとえば北海道あたりが道と道医師会の間でそういうふうな話し合いを進めております。ただ、先ほど申し上げました五十二年度から始まりました救急医療三ヵ年計画におきましては、まず五万以上の市に休日夜間急患センターといったものを設けさせまして、そこで夜間診療を担当する。ただ、それでは多少不便であろうから地元の郡市医師会に当番医制をしいていただいて、だれかが当番で担当する、そういうふうなシステムを考えているわけでございます。これはまだ二年目に入ったばかりでございますので、全国の、全都道府県全部が実施しているわけではございませんが、これにつきましても、第一年度の五十二年度は大体計画を上回って実施が進められていると考えております。
  25. 安恒良一

    安恒良一君 いま私は大臣にお聞きしたんでして、医療供給体制問題は、私はやはり一遍いま少しきめ細かく全国の実態をよく調査をされた上で、私はやはり医療供給体制の整備については、いずれ法案が、まあ今国会は間に合いそうもありませんが、審議するまでの間に、こういう医療供給体制の整備を行いますということをぜひ出してもらいたい。  それから、第二番目の夜間問題も、まあ始めたばかりだというけれども、一部うまくいっているところもありますが、なかなか全国的には医師会の協力がきちっと得られてないというところに問題があります。ですから、一部都道府県においては住民が条例闘争という形において、国民自体が立ち上がっているところも皆さんお聞きだと思います。ですから、こういうような問題について、これまた少し夜間、休日の医療供給体制について、これもいままでこうやってきました、ああやってきましたということじゃなくて、具体的に過去のやつを継承し、これからはこういうふうにしていくんだ、こうすれば問題が解決できるんだという具体案をぜひ関係法案の審議の際には出していただくようにお願いをしておきたいと思います。  そこで、その次の問題に行きたいと思いますが、いわゆるこの今回の大臣が出されたやつの目玉の一つとして、「物と技術の分離」を行うとこういうことになっているわけですね。ここも大分大臣ちょっと厚生省の御出身の割りにはやや錯覚を起こされているんじゃないかという、その「物と技術の分離」の中心が何になっているかというと、薬代並びに歯科の材料費を国民に持ってもらう。そして後からこれは償還すると、こういうことで、いわゆる薬、これは今日総医療費が年率二けたでふえていっている。その中の一つが薬問題である。年によって違いますが、大体総医療費に占める割合が三六、七%だ、多いときは四〇%にもふえている。薬づけと言われている。これを何とかしなければならぬ。こういう意味で今回の発想がされたと思いますが、そこで私は大臣にお聞きしたいのは、お医者さんと患者さんの置かれている立場、新聞の社説では力関係と、こう表現されてますが、力関係ということがいいのかどうかわかりませんが、置かれている立場ですね。それからお医者と患者の信頼性の問題。こういう問題は、どうも今回の大臣のお考え患者医療需要を抑制する、それには目的が達するでしょう。というのは、現金を相当持っていかないとお医者にはかかれなくなりますから。しかし、医療需要の抑制では困るわけですね。医療需要を、医療というものはできるだけ早期に発見をされ、簡単なときに治療を受けないと、重病になれば本人も苦しみますし、医療費の面から考えても困る。ところが、どうも今回のいわゆる薬代の一部負担の問題は、私から言うと患者医療需要の抑制ということにはある程度効果を奏すると思いますが、肝心の薬づけ医療の解消にはならぬと思うんですが、そこのところはどうですか。
  26. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) お尋ねの御趣旨は、両者の立場にやっぱり、何といいますか、患者さんと医師の関係ということになれば、なかなか患者さんの立場というものを考えた場合に、同じような立場で物事を考えていけない、それはもうそのとおりだろうと思うのでございまして、ただ、私どもは、国会の御意思等もございますし、「物と技術の分離、技術料重点診療報酬の改善」というものを考えますと、やはり技術と物の分離というものは、この際はぜひやりたい。  診療の抑制ではないか、一部はそういうような傾向が出るかもしれません。しかし、だんだん、いわゆる御指摘の薬づけ医療というものが姿勢が改まってきました場合には、私は早期発見、早期治療にそんなに支障を来するものじゃない。しかも、負担の限度が、今度は前よりも相当全体的に家計の負担というものが、三万九千円の高額医療費の負担制度を約半分にするというようなこともございますので、そういう点ではそんなに弊害よりはむしろ効果の方が大きいんではないかと思うんでございますが、その辺のところは先生方のまた御意見も十分承りたいと思います。
  27. 安恒良一

    安恒良一君 いや、あのね大臣、肝心なことをお忘れになっていると思うんですが、たとえば、私なら私が病気になってお医者さんに参りますと、お医者さんから病名が告げられ、これにはこういう薬が必要だと。いまはそういう話もないわけですね。お医者さんが一方的に薬も注射もされるわけですよ。これからは、そこのところどうされるのかわかりませんが、たとえば、お医者さんがもしも言われましても、先生、私はお金がないのでその注射は結構です、その薬は結構ですとは言えないんです、病人の場合には。物の売買とは違うんですよ、物の売買とは。物の売買であれば、需要供給の関係ですから国民に選択があります。しかし、医療には国民には選択はないんですよ。ですから、今回の場合、薬代を一部負担をすることによって、薬の乱用がなくなるというお考えに無理がありはしないかということを言ってるんですよ。それはなぜかというと、いま薬が一番よけい使われるのは、大臣も御承知のように、薬価基準と実勢価格に大きな格差があるわけです。中間マージンが入るわけですね。潜在技術料とお医者さんは言う。私たちは中間マージンと。これがたくさんあるものですから、そこにいわゆる薬の多用、注射の多用があるわけですから、今回の措置でその点がどう改正されるか。たとえば一つの例を引きますと、新聞で見る限りにおいては薬価基準にかわる償還基準をつくると、こう報道されてますが、償還基準というのはどうしておつくりになるんだろうか。いまの薬価基準との関係がどうなるんだろうか。それがわからないんですね。これは新聞で報道されていることですから、薬価基準にかわる償還基準、これは新しいものが今度できるそうですが、その薬価基準と償還基準の関係がどうなるんだろうか。そうして、本当に薬づけと言われるものが直るんだろうかということについて、ここのところは今度の改正で一番大臣が、私は「物と技術の分離」ということに反対をしていません。基本方針に賛成です。またしなきゃならぬ。しかし、どうも今度の処置について「物と技術の分離」にはならない。患者のいわゆる医療需用の抑制になるのでは、肝心の薬づけのところが解決できないと思いますから、ここのところはその償還基準というものを設ける、その償還基準とは薬価基準をかなり下回るものだとこう言われていますが、いまの薬価基準は中央医療協議会において調査方法、決定方法等全部決まっていまして、それに新たに償還基準というものを設けるとおっしゃいますが、それはどういうことをやろうとされているのか、以上の点についてお答え願います。
  28. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 償還基準も薬価基準でございます。お医者さんの方も薬価基準でやっていただく、償還も薬価基準でやると、こういう考えがいまのところ私ども考えでございます。
  29. 安恒良一

    安恒良一君 そうしますと、結局いま問題になっている十四項目の中にもありますが、現在の薬価基準をどうするのかということを明確にしないと、中間マージンが非常に多いわけですから、それをそのままにしておって——もちろんですよ、薬価基準で患者が金を取られた以上、返すときも同じ金額返してもらわなければならぬこと、こんなことあたりまえですよ。どうも皆さん方の御主張は、このことによって「物と技術の分離」になる、それからさらに薬の使い過ぎが防げるというのが、防げないじゃないですかと、いわゆる患者が金を持っていませんからと断らない限りは、ところがそんなこと医療に関してはできないんですから。どうしてこのことが、薬の使い過ぎが抑制になるんでしょうか、そこを説明してくださいという。私は残念ながらこの制度では薬の使い過ぎということが防止できないと思う。そこのところ説明してください。
  30. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 当然、実勢価格と薬価基準の乖離は、毎年の調査によってこれを直していかなきゃいかぬ、これはもう従来どおりやるわけでございます。したがって、そういう面から言いますと、私どもは物と技術を分離するということは、お医者さんはまさに技術料全体を、治療に専念してもらってやってもらうということでございまして、当然一遍にそれか実勢価格——一つ考え方としては、いままでどおりにしておきまして、実勢価格と薬価基準を一遍に合わせるようなことにすれば、もう物でいわゆる利潤というものは起こり得ないわけでございますから、その方がいいんだという考え方もありますけれども、御承知のとおり、先生専門家でいらっしゃいますが、一遍になかなか実勢価格とは何ぞやということを把握を正確にして、これで全部合わすということがなかなか困難でございます。そう考えますと、やはりこの際は物と技術を完全に分離をしていく方が、より合理的な制度に近づくんじゃないか、こういうことでございます。
  31. 安恒良一

    安恒良一君 いや、物と技術を分離することがより合理的に近づくということは、それはだれもわかっている。問題は、今度の薬代の一部負担——一部じゃなくて薬代をまず全額患者に持たして、そうしてあとは償還をすると。そのときに、どうも二万円までとこう聞いているわけですね。そのことが、いまの薬づけと言われている医療を是正することにどうしてなるんですかと、こう聞いている。何も基本理念、精神論を聞いているんじゃない。具体的にどうして薬の節約になるんでしょうかと聞いているわけです。そのことについて、こうこうこうだからなるというふうに答えてもらわぬとわからぬわけです。どうして薬の節約になるんでしょうかということを私は聞いている。
  32. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 専門家でいらっしゃる先生もおわかりのように、私どもは衆参両院で、特にぼくはお医者さんに行ったがこれだけ薬をもらったが余ってしまった、これどうしたらいいか、という御質問さえあるようなぐあいでございまして、そうなりますと、自分負担でございますから、これはもう三日分ということに、いや先生二日分で結構ですと。薬は要らぬとは言えないと思うのですよ。薬は要らぬとは言えないと思いますが、三日分でまた三日たってから来ればいいことでございますから、あるいは二日分もらっておってまた来ますよということであれば、それだけ一日分でも二日分でも減っていくわけでございますし、これはお互い同士の姿勢の問題からだんだん直っていく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  33. 安恒良一

    安恒良一君 その考えが全く甘いんですよね、全く。というのは、何回も言うように、医療には国民の選択はできないのですよ。私のように専門屋であっても、行ってお医者さんに、あなたは肝臓なら肝臓が悪い、この薬を飲みなさいと言われたとき、先生ちっっとこれ種類が多過ぎます、二つにしてくださいとか、三日分と言ったときにいや二日分で結構ですと、そんなことを言える国民は一人もいないと思います。一人もいないです、そんな人は。ですから、その意味から言いますと、どうもあなたの考えは、全くここのところは甘いといいますか、本末転倒している。そんなことよりも、薬づけを解消するならば、ここに前大臣との間の約束がありますように、実勢価格に見合った薬価基準の適正化をやらなければならないんです。ところが、それは毎年の調査でやっていますと。それは知っています。しかし、それだけじゃだめなんです。毎年の調査で引き下げておっても、この前も私は秋のときに詳細なデータを持ってきて厚生省の皆さんとやりとりしましたが、それはいまここでダブることは避けますが、実勢よりも三〇%も二〇%も中間マージンがあるわけでしょう。そこのところにメスを入れないまま幾ら薬づけ問題をやってもね。ですから、一番いいのは、もう薬を扱うことによってはお医者さんにはいわゆる中間マージンは入らない、もちろん技術料は見ていかなければならない、だからその限りにおいて私は技術料を引き上げることについて反対じゃないのです。そういうことについて、私たちは私たちの案なりとして、たとえば医薬品配給公社制度ということをどうだということをかなり野党側からも何回も議論されている。それがいきなりできなければ、薬価基準の適正化についてバルクラインの九〇というのを引き下げたらどうなんだろうか。薬価調査方法についても、具体的に、こうしたらどうだろうかという提言は何回もしてあるわけですね。ところが、どうもそういうものは、いまあなたのお答えから聞く限りにおいては、例年どおりやっている薬価調査で実勢価格に合わせていけばいいんだ、これでは全然問題にならぬ。せめてたとえば、それならばお聞きしますが、バルクラインの九〇なら九〇ということについてこれを引き下げる、こういうことについてお考えがあるのかどうか、そこのところが明確にならないと、今回の「物と技術の分離」ということにはならないわけです。この点についてお考えをお聞かせ願いたい。
  34. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 実勢価格に見合った薬価基準の適正化ということは、これはもう毎年やっておるわけでございますが、御承知のとおりバルクラインの問題もあろうかと思います。これは中医協のマターでございますので、したがって私どもは今後も、たとえ今度の制度が御承認を得た後においても、お医者さんも薬価基準でやっていただくということになっておりますし、私どもの償還基準も薬価基準でございますから、薬価基準を実勢価格に見合った薬価基準の方に毎年努力をして持っていくということは当然のことでございますし、バルクライン等についての検討はこれは中医協にまたお願いをいたしまして、お医者さんが二割も三割も買えなくなるようなことでもまたいろいろな議論もございます。今度はできるだけ処方せんの発行を容易にいたしまして、医薬分業の方に誘導をしていくということはこれはもう当然のことだと思っておりますし、いろんなことを勘案いたしまして物と技術の分離をだんだん明確にしていくということについては、十分考慮をいたしておるつもりでございます。
  35. 安恒良一

    安恒良一君 いや、中医協の分野だと言われますけれども、いまの中医協は昔の中医協と違って、いわゆる諮問方式なんですよね。大臣が諮問案を出されるやり方。ですから、私はやっぱりこれも、これ以上ここだけに時間をかけるわけにいきませんので、大臣に言っておきたいのは、制度改正について、いつ国会に持っておいでになるかわかりませんが、制度のときだけこうしたいああしたい、こういうことで、あとのやつは中医協とか、漸次やっていきます、そういうことではなかなか法律改正は私は国会ではうまくいかぬと思う。だから、明確に、国会にお持ちくださるまでの間に、いま言われたところですね。私はどうも今回のやり方というのは、患者に選択権を持たせるということはもう全然無理なことなんです。あとはせめて、患者が一部負担で金額を一時立てかえるわけですから、その面から言うと、お医者さんは性善説でですな、良心的にお医者さんが少し薬出すのをある程度考えてくれるだろうと、こういう御配慮もあるのじゃないかと思いますが、私は、個人的な人格の問題でありますから、性善とか性悪説は言いません。そんなことは言いません。しかし現実に、いま大臣がお考えになっているようなことで薬の多用というものは防ぎ得ません。どうしても薬を扱うことによって利潤があるというところを断ち切る以外に方法はないと思う。やり方はいろいろあります。どうかそういう問題についてひとつきちっとした方法を、国会で私たちがこの問題を議論する場合には、薬問題についてはこういうふうにしていくのだ、たとえば、いま一つ言われました医薬分業というもの、これも、医薬分業のやり方によれば、第二薬局というものが設けられて、形だけは医薬分業になっているが何ら実効をあらわさないところもたくさんあるわけですから、そういう問題を含めて、今回の「物と技術の分離」の中の薬の問題については、私はいま言ったようなところについて十分な検討をしてもらいたい。  また、どうせいずれ、制度審、社会保険審議会等でもこういう点は非常な議論のあるところだと私は思いますが、われわれも、率直に申し上げて、この社労委員会全体でこういう問題は議論をする、こういうことになっていますから、そういう場においても与党の先生の御意見等も聞きながら少し議論をぜひしたいところだと思います。これは委員長の方でいずれそういう機会をつくっていただけると思いますが。ですから、薬のところの問題については、いま一遍大臣は、いま医者と患者のいわゆる置かれている立場、それから今日におけるお医者と患者の信頼関係、こういうようなところを、どうしたら実勢価格に合わせられるのか、いまの実態調査だけでは、年に一回の薬価調査だけでは実勢価格に合わないわけですから、どうすればいいのか、こういう問題についてもぜひ一遍再検討をしてもらいたい。その上でひとつ具体的な案を出してもらいたい。  それから、「物と技術の分離」の中でなり医療費の節約の中で、今回いずれも出てきていない問題があるのですが、たとえば検査の非常ないわゆる乱用という問題がこれまた大きい問題になっています。これは私は分科会でも御質問しましたように、足をくじいたといったある女性が、検査項目十五項目検査した。具体的な病院名も私は知っています。レセプトも持っています。そういうのがあるのですね。ですから、検査の乱用というような問題であるとか、さらに今日EMを中心とする機械化という問題がある。いい医療機械ができて国民が適切な診断が受けられることは結構でありますが、これも過剰投資ではいけないわけなんです。ですから、私は、大臣医療費の節減ということをお考えになる場合の一つの問題として、いわゆる薬だけに目をつけられるのじゃなくて、そういう検査問題、それからいわゆるEM機械の過剰投資、こういうような問題について今回の改正の中でなぜ考えられなかったのか。これもしばしば当委員会を初め多くの委員会の中で問題が指摘をされています。ですから、そういうことについて大臣として、この回の場合については、私は率直に言って、年々二〇%近く増加する医療費、これじゃとても国民負担に応じかねるということ等の大きな背景があって、いま大臣はとりあえず自分考えで五つの柱を立てられた。しかし、私は「物と技術の分離」の中の一つの重要な項目なり医療費の節減という問題から考えますと、検査問題なり医療の機械化の問題ということについても一定のある程度歯どめをかけるということがないと、私はその面から受ける医療費の増大というのが大変な問題になると思いますが、今回そういう問題についてはどうお考えになったのかということについて、検査と医療機械の問題について聞かせてください。
  36. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私はやっぱり正確な診断を行って治療を正確にやることが患者さんにとって最も大事だと思いますので、検査については必要な検査を制限する意思はございません。ただ、先生が例を挙げられまして、ある病院ではちょっと足をけがした人が十五ないし十六の検査もやっているじゃないかと。非常に特異なそういう過剰検査の例というものは、これはもう審査でやっぱり何とか発見をし、それを適正化する指導、監査をやっていかなければいかぬだろうと思うんでございまして、これはやっぱり極端な場合はもちろんいけませんけれども、元来検査というものは精密にやはり診断をつける場合の一番大事なことでございますから、基本的に検査の過剰を何とか防止するということは法律問題で考えるわけにいきませんし、御指摘のような事例をいかに防ぐかということについては、今後われわれも極端なそういう場合にどうこれを発見し対処するかということは別途考慮してまいりますけれども、検査そのものについては私の考えはそういう考えでございます。  それから、機械の過剰投資につきましては、御指摘の面も地域的にはあろうかと思います。しかし、全国的に見ますと、まだまだ日本の現状においてこの進んだ高度の患者さんのための医療機械が全国的に過剰だとはまだ見てないわけでございますが、地域的にそういうものがあるいはあるかもしれません。この機械の過剰投資については、医療行政全般との関連もございますので、この辺のところは十分気をつけていかなければいかぬと考えております。
  37. 安恒良一

    安恒良一君 私は医療の機械化について、むげに機械化を言っているわけじゃないんです。問題は、医療のそういう機械を備えつけるだけの施設の認定なり、それからいま一つ医療、医者の技能の認定がないと、たとえば生体断面のレントゲンというのが恐るべき勢いでふえていますですね。しかし、私はあのレントゲンというのは非常に優秀なレントゲンでありますが、そういうものを十分に使いこなす、そしてまたそれで診断をされ、さらにたとえば脳なら脳の手術がされる、こういうお医者さんがいないところに備えつけても、それはあったに越したことはないと思いますけれどもね、一台一億五千万も二億もレントゲンはするわけです。これは一つの例ですよ。ですから私は、少なくとも医療機関の認定なりお医者さんの認定、そういうものをある程度しながら機械化が進んでいかないと、どの病院でもどの診療所でもいいから、極端なことを言えば、買えばいいんだ、そのことが国民のためになるというふうには思いません、結局それは医療費で償還をされていくわけですから。ですから、そういう点について、どうもあなたたちはいい機械が入ればいいということで野放しじゃないですか。どうしていま言ったような施設の認定なりお医者さんのそういうたとえば脳外科なら脳外科でこういうお医者がいると、これは一つの例ですよ、というふうに、そういうことをしないまま、何でもいいから買い込めばいいということではいけないんじゃないでしょうか。それで御承知のように、もう日進月歩で、新しい機械買い込んで、完全に償却しないのにまた次の機械が開発されるということで、大変にそれが医療費の中にウエートを占めているというのがあるんですが、そういうやはり、少なくともいま申し上げたような点についてどう考えられますか。
  38. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は、お医者さんが医療機械を入れる場合に、おまえさんは資格がないからだめだと言うわけにもこれはいきませんので、やはり補助金なり融資なりの点でチェックする以外にはこの自由主義社会ではちょっとないんじゃないかと思うんでございます。おまえの病院はそんなものは医者がいないようだし、いや、おまえさんやると言ったって、おまえさんの経歴見たってできないじゃないか、これはだめだというようなことは、ちょっといまの実はこの現行法規では無理でございますので、そういうことはできないと思いますが、補助金なり融資等について、これは国民の税金なりあるいは全体の融資を考える場合には、これはもうその適切な施設あるいは配置状況等を十分勘案してやることは、これは可能でございますので、そういう方向でできるだけ考慮する以外にはないと、かように考えます。
  39. 安恒良一

    安恒良一君 私は、お医者さんの個々の技術というよりも、やはり問題は国民の必要性の問題があるわけですね。その点から考えますと、たとえばリハビリを中医協において点数化するときに、やっぱり施設認定をやったわけですよね、リハビリ問題について。こうこうこういう施設のあるところはいわゆる点数化しましょうということで。私は中医協の委員のときにいわゆるそのいろいろ、こういう技師がおることが必要と、こういう施設がないところは点数——ですから私は結局医療費を点数化する問題と、それからいま言ったこと等を考えて総合的に考えると、私は医療機関の認定というのはできると思うんです。個々人のお医者さんの技術をなかなか評価はできないと思います。しかし、そういうことについても、ぜひ一遍検討してもらわないと、自由社会ですからそれは野放しですと、残念ながらできませんと、補助金とかそんなことを出すときだけやりますでは、私はそういうことはできないと思います。ですから、そういう問題についてぜひ、これもいまここでやりとりするとこれだけでまた長時間になりますから、こういうものについては——というのは、私はやっぱり総合的に医療費はどう節減をするかということを考えないと、あなたたちが言われているように、近く二十何兆になるだろうと、こう言われているわけですよね。ところが、そんなのはしようがないんだ、自由開業システムだし自由社会なんだから、だれが機械買い込もうと何買い込もうと、どんどんどんどん機械が買い込まれて、そしてその機械が買い込まれることによって医療費がふくらんでいくのはしようがないんだでは国民は納得しません。保険料上げればいい、一部負担上げればいいと言っても、そんなことはうまくいきません。ですから、私は必要な機械というものは買わなければならぬと思いますが、そういうことについても、この際どうすればいいかということの検討をしないと、自由社会だからしようがないんだ、本人が買い込めばそれでいいんだという大臣の答弁はどうしても理解できません。そうしておきながら、それじゃ保険料上げてくれ、総報酬制にしてくれとか総報酬的にしてくれと言って、だれがよろしいと言いますか。だから、自由社会であろうと何であろうと、そういうものがやれる努力というものをお互いがやっぱりし合っていかないと、私はいけないと思いますが、このことについてはぜひひとつまたいずれ改めてこの議論をしますから、検討をしておってもらいたいと思います。  そこで、最後になりますが、それからその次ですが、いまおっしゃったように、検査の問題で診査機構の改善と、こういうことを言われているんですね。これ今度大臣が発表された中では、いわゆる保険医の指定の問題であるとか、それから再審査の申請であるとか、そんなことが若干ちょっと出ておりますけれども、私はやはりいま大臣が言われたように、水増し不正請求ですね、過剰な検査、過剰な投薬、こういうことがたくさんあることは事実ですね。この前から何回も議論になっているように、たとえば西高東低の問題がある。ある県では三けた運動という運動がされている、そういうことが依然としてされている。こういうときに、とにかく審査機構を改善をするんだと、それだけで問題は私は、問題は改善というんですからいいことですが、中身を具体的にどういうふうに審査なり監査を強化するのか、これも秋の国会の中で議論したように、査定率が最高と最低で十五倍も違うんですよ、県によってですね。そういう状況がいかに地域性がある、病気の特異性があるといってそんなに違うはずがない。そうすると、そこのところをやっていくためには、私はやはり審査をきちっとする以外ないと思う。そこで、具体的に審査機構の改善を早急に検討すると、こう言われていますが、いま申されたようないわゆる不正、水増し、過剰、薬の使い過ぎ、過剰な検査、こういうものをやっぱりチェックする方法についてどういうふうにお考えか。これだけではいわゆるこの法律改正をやるときに、この法律については早急にやりますからとりあえずこの法律改正だけと、こう言われても、もう今度はそうはいかないことに来ているのは事実ですから、その限りにおいては具体的に審査機構をどのように改善しようとされるのか、その点について聞かしてください。具体的にどうするのか審査機構を。監査、審査をどうするのかということについて。
  40. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は医師の大部分は、自分の医学技術の知識と良心に従ってやっておられると思うんです。一部、まあまあそういう御指摘のような不正不当あるいは過剰というような問題があろうかと思いますので、これをやはり審査機構の整備によってチェックをしていかなきゃいかぬということが起こってまいるわけでございます。したがって、基本はやはり医師と患者の信頼関係というものを損なわないことが大事でございますし、同時に、私ども医療担当者の方々が本当にもう日夜研さんをしながら患者さんの治療に専念をしていただいておるわけでございますので、一部不正不当な方がおられることによって全体の信用あるいは患者と医者の信頼関係が損なわれるということははなはだ不幸なことでございますから、当然審査の点は強化をしていかなきゃいかぬだろうと思っております。そういう意味で、この基本方針にしたわけでございますが、同時に具体的に審査機構をどうするかということになりますと、いろいろ影響が相当ございます。まあ、一部の有力な方のサゼスチョンによって、審査機構は現在のような県単位の大きなものでなくて、もっと細かく分けるべきではないかという御意見もいただいております。しかし、こういうことになりますと、現在の審査機構を人員から配置まで全部含めまして根本的にやり直さなきゃいけない点もございますし、なお若干の余裕をいただかなければなかなかこの点の明確なやり方をしていくということは、いろんな条件整備も必要になってまいりますものですから、したがって早急に検討するという表現にいたしたわけでございますが、将来各方面の意見を承りまして、現在の審査機構をさらにもっと能率ある適正な審査機構にするための機構と整備の確立を図っていきたい。現在のところ、まだ現行の審査機構をそのままにしましてこれを強化する、能力を上げていくという以外にはございません。もう少し時間的な余裕をいただきたいと思っております。
  41. 安恒良一

    安恒良一君 これも、これより以上やっても何ですが、ぜひこれも私どものところに、今回の改正の法律を審議をするときには、いま言ったような精神論ではなくして、具体的に監査、審査をこのように強化すると、こういうことをひとつぜひ持ってきてもらわなければ、これまた幾らもう少し時間をおかしをおかしをと言われても、そんなにおかしするわけにいきません。いまのようなままほったらかしてやられたんじゃたまったものじゃありません。ですから審査、監査、たとえば過去において監査のやり方について武見さんと当時の厚生大臣が約束されたこと、ああいうものはやっぱり撤廃しなきゃいかぬ、具体案を一つ言うならば。そういうようなこれは監査のやり方ですがね、約束があります監査をするに当たってのそういうものもありますから、どうか監査、審査を具体案をきちっとつくって出してもらいたいと思う。  それから最後ですが、現在の給付水準というのは、いわゆる本人十割、まあ一部負担があります。家族七割、大体政管の場合ですね。しかし、現実にはこれを平均しますと八七、八%の私は給付率になると思う。今回の大臣のお考えになっているのは、きのう本会議で三万九千円のところと二万円だけを——同僚の案納委員が質問して、非常に改善をされたように言われていますけれども、そんな計算にはならぬと思います。ですから、給付率八六、七%だと私は思いますが、それが何%程度に今回のことによって下がるのか。  それから、いま一つお聞きをしておきたいんですが、いわゆる保険料率を今回これによってボーナスを含めることによって、現在の最高政管千分の八十ですが、これを引き下げると、どの程度になるのか、保険料率は引き下がると。だから、非常に負担軽減になると言われていましたが、どの程度になるのか。  それから、現在定率の国庫補助が一六・四%ありますが、これは調整規定を廃止をして定率にすると。現在はそうじゃありません、定率。どの程度の国庫補助をやろうとするのか、現行は一六・四になっていると思うのだけれども、政府管掌はどの程度になるのか。そういうものを総合的に答えていただいた中で、なるほど負担軽減になっているということを言わないと、本会議の席上でしたから再質問ができないので、大臣の言いっ放しになっていますがね。どうも私は、これがいわゆる負担軽減をされたと大臣は盛んに、いわゆる家計の高額負担を解消する方法を別途に考慮する等々でいろいろ言われて、負担軽減になったようなことをちょっと本会議でも大臣の答弁が気になりましたから、最後にそこのところについて以上質問をしたいと思います。
  42. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先生御存じのように、いまの制度でございますと、要するに三万九千円までは、医療費全体によりますけれども負担しなきゃいけないわけでございますが、それを今度は二万円以上は一切もう負担しないでもいい。しかも、それはいままでは本人一人でございましたけれども、一人一人の被保険者について考えましたが、今度は世帯全体でそういうことになるということになりますと、それ以外一切負担がないわけでございますから、私はそういう意味でグローバルに言いますと非常に負担軽減になっておると、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから、一体今度のあれで給付率がどうなるかというお尋ねでございますが、私どもはこれは相当その人、人によっていろいろ違ってくると思っておりまして、全体的に給付率が八割になるとか七割五分になるとか八割五分になるとかという計算はいたしておりません。薬の非常に少ない人は九割給付になる場合もありますし、薬の多い人はこれが七割給付になる場合もあるわけでございますし、そう考えますと、給付率を一定に考えておりませんので、したがって、この点は姿勢が直るに従って、給付率はうんとむしろ上がると。そして全体の世帯の負担から見ますと、いままで三万九千円までは負担をしなきゃいけないものが二万円でとどまるということでございますので、この点の御理解を得たいというつもりでございます。国庫負担につきましては、現在一六・四ぐらいになっておると思いますが、この点はもっとこれ以上になるようにいま折衝中でございまして、やはり一定率にしておきませんと不安定でございますから、これは十分努力をして、現在以上の負担率にしたいと考えております。  それから毎月の保険料は減ります。これは上限は八十で、それ以内で保険料を決めていくわけでございますが、現在のところでは大体千分の十は確実に減るんじゃなかろうか……
  43. 安恒良一

    安恒良一君 何ぼ。
  44. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 千分の十は必ず減るんじゃなかろうかと考えております。それ以上になるんじゃないかと思いますが、この診療報酬の姿勢が変わってきますと、また十分これが変わってくることになりますが、現在の見込みを大体の見当をつけますと、十ないし十二ぐらい減っていくんではなかろうかというふうに考えます。
  45. 安恒良一

    安恒良一君 最後に、もう時間ありませんから私の考え言っておきますが、いまの説明はもう全く理解ができません。さっきから黙って聞いておると、診療の姿勢が変われば変わればと言って、どういうふうに診療の姿勢が変わるんですか、病気になったときのお医者と患者の場合に。どんなふうに診療の姿勢——あなたはもう事ごとに診療の姿勢が変わればいわゆるこういうふうになる、診療の姿勢が変わればと。物の売り買いじゃないんですよ、病気の治療というのは。そうでしょう。ですから、その限りにおいて。それから、私はぜひ平均給付率がどうなるかというのをはじき出しておってもらいたい。これは現在八十幾つが下がるのか上がるのか、どうも私の試算ではこれは下がる、このやり方では下がる。こういう問題については国会の中でいずれ議論しなきゃなりませんから、計算しておりませんじゃ困ります。計算しておいてください。きちっと平均給付率現行八十幾つ、八十まあ六、七ぐらいに私はなっておると思いますが、そういうものが今回の改正でどうなるのかということについて。  それから、やはり負担増は、これを実施した場合と、それから千分の八十まではフリーハンドになってますから、それらを含めて負担増が国民にどうなるのかということも、いろいろぜひ試算をしておってもらいたい。そういう問題を含めて、きょうは時間ありませんから、ですから私は、以上申し上げましたことについては大臣自分考えを発表したから、それに必ずしもそれだけには固執されないと思いますから、どうか何点か問題点を私は時間の範囲内でやりました。こういう点については審議会の場においても慎重な御議論を願いたいし、大臣みずから厚生省関係の各局長さんのところでも十分にひとつ御検討を願った上で、国会の中において審議が十分にできるような案にぜひしてもらいたいということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  46. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時再開することとし休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  47. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  48. 片山甚市

    片山甚市君 大臣に、せんだって、第八十三臨時国会で成立いたしました健保法及び船員保険法の一部改正の法律についてお伺いしたいんであります。  あのときは、御承知のように、ボーナスに保険料を掛けることについてお決めいただいたものと存じます。そのときに特に法外負担になります差額ベッド、あるいはそれに伴うところの差額ベッド等の解消について触れておりました。このことは入院料について二〇%程度引き上げるということで努力はできるというお話でありましたが、その後どういうような形で付添料などについては解消がされたのかどうか、お伺いしたいんであります。
  49. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 御承知のように、医療費改定後直ちに、三人以上の大部屋については差額ベッドを徴収しないように、ことに完全看護病院については付き添いの問題について、特に完全看護の趣旨にもとるような状況が完全看護の指定病院について行われた場合には、場合によって完全看護の指定も取り消すことがあるぞという強い態度の指導をいたしておるわけでございます。ただ、なかなか一片の通牒だけではその実行を期しがたいということでございますので、東京におきましてまず差額ベッドの多い大学の付属病院等の責任者にお集まりをいただいて協力要請をいたしました。また、病院協会等、関西で一部現状のままというような通牒もお出しになったところがございますので、これははなはだ遺憾だということから、責任者に来ていただきましてよく趣旨を徹底をいたしまして協力を要請をいたしました。また、全国の都道府県の課長を集めましてこの趣旨をよく伝えまして、それぞれの県で指導の徹底を期すように指示をいたしたところでございます。  なお、付き添いの問題につきましては、できるだけ現実にやはり必要に応じて起こってくる患者保険外負担というものを考えますと、これを解消していかなければいかぬだろうということから、何らかの方途を研究しまして、保険である程度これが見るような方向がとれないものか、午前中の御質疑にもお答えいたしましたような検討を鋭意急いでいるところでございます。まだ、十分実効が上がっていないと思いますが、私も直接これから病院等の指導に当たりまして実効を上げるように努力をいたしたいと考えております。
  50. 片山甚市

    片山甚市君 この解消のできない理由は、いわゆる日本医師会あるいは大阪病院協会あるいは日本病院協会等が述べておる一番大きな問題は何でしょうか。と申しますのは、二〇%ぐらいの入院料、室料を値上げしてもらっても、そんなもので間に合うものかと言っておりますが、どのぐらい上げたら納得するとおっしゃっておるんでしょうか、端的に答えてください。
  51. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先般の診療報酬の引き上げの際に、一つの大きなねらいと申しますか、問題点になりましたのは、保険外負担の解消の問題ということであったわけでございます。  そこで、保険外負担の解消の問題につきましては、従来からも指導をしておったわけでございますけれども、やはり一つの問題といたしましては、たとえば差額ベッドの問題等につきましては、医療機関の経営という面にやはり経営上の問題があるじゃないかというようなことから、そういう面を解決しなければやはり指導だけと言いましてもなかなかそう簡単にはいかぬじゃないかというようなことから、先般の診療報酬の引き上げの際には、特にそういう面も配慮するというようなことから、いろいろな入院関係につきましての措置を講じたわけでございます。  ICU、CCU等の特定集中管理室の加算でございますとか、それから先生いまお話しございましたように、手術料等を含めまして病院関係につきましては全体の引き上げ幅は九・六%でございますけれども重点的に二〇%程度の引き上げを行ったというようなことから、差額問題についての大きな前進を図るというのが一つの目的であったわけでございます。そういう意味で、私ども差額ベッドを全部なくすというわけにはいきませんし、一方、患者なりあるいは被保険者の方の希望なり、ニードもあるわけでございますから、やはり一定の差額ベッドというのは必要であると。しかし、差額ベッドを希望しない方からこれを強制するということになりますと、医療保険制度の趣旨にも反するというようなことで、先般の診療報酬の引き上げの際にかなりこの面の配慮をしたということでございますので、私ども少なくとも今回の診療報酬の改定によりまして、大部屋からは差額徴収を行わないという指導を徹底しようということでございます。もちろん、病院関係団体からのお話としましては病院経営上の問題もございますけれども、前回の診療報酬の引き上げによりましてかなり前進はできるというふうな考え方で行っているわけでございます。
  52. 片山甚市

    片山甚市君 いや、聞いておるのは、あなたは二度にわたって通達を出して解消方の要求を県知事にしておる、医療設置をする、命令をする人に。ところが、それを応じなければ保険医の保険の取り扱いをする病院としても解除する用意があるという意味もしておるんですが、とりあえずそういうように二〇%上げても改善されたのかどうか明確に答えられておらぬのですが、むしろ大阪のようなところでは、団体としてそういうことを応じなくてよろしいと、こう書いてあるんですが、それはどういうことなんでしょうか。私がお聞きをしておるのは、その通達を二回も出しておるが、効果はあるのかないのか、それはなかっても今後厚生省の通達というのは病院とか医者というものには効果がないものと期待するが、よろしいか。
  53. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるように、一片の通牒だけでなかなか効果が上がらないと思いますので、先ほど申し上げましたように各医療機関と個別によく相談をいたしまして、そして実情等も私どもも把握いたしまして、できるだけ努力をいたしたいと思っておるわけでございます。  ただ、差額ベッド問題は、私は保険だけで解決をしようと思いましてもなかなかめんどうだと思いますので、来年度予算の編成に当たりまして、まだ明確な態度は決めておりませんけれども差額ベッドか必要だというのは、病院の施設整備費に金がかかり過ぎているからだと思うのでございまして、この点をどういうふうに国なりあるいは融資なりその他の問題で解決をしてやることができるか、こういう点もよくひとつ検討さしていただきたいと思っておるわけでございまして、いまのままで病院経営全体から見ますと、一遍に廃止するという場合に非常に困難が起きるだろうというのが、病院協会側の言い分でございますので、それらの解決をどうやって具体的に進めていくか、いろいろ多角的な対策をとる必要があるのではないかとも思いますので、もうしばらく研究をさしていただきまして、できるだけ患者負担のないような方向に持っていくための具体策を二、三ヵ月の間に決めていきたいと思っておるわけでございます。
  54. 片山甚市

    片山甚市君 大臣の方がそういう御答弁でありますから、そのことは一応よく聞いておきますが、それでは付添料というのがございますが、大臣もおっしゃるように十万円も二十万円もかかるような状態については、これは解決方法はどうなりましょうか。
  55. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 付き添いというのは、たとえば、たとえ完全看護病院に私なら私が自分のおふくろが入院する場合ですね、まあ先生方はどうかわかりませんが、やっぱり常時家族がなかなか行ってられませんので、そうすると付き添いを置いておきまして、われわれに対する連絡だとか、きょうはどんなぐあいだったとかいうようなことも聞きたいと思いますし、どうしてもつけるということになるんじゃないかと思うのでございます。しかし、看護力が足りないから、看護関係業務まで含めた意味で、病院側から患者に、うちへ入るときは付き添いを必ずつけなきゃいけませんよとか、あるいは本人が、完全看護病院だからナースコールがありますし、これで十分だというのに、付き添いをつけてもらわなきゃ困るぞというようなことは、これはひとつやめていただくようにしたい。しかし、実際問題として、たとえ病院側が強制はしなくとも、患者としてどうしてもつけたいというようなことが、いろいろな病状によって起こってくるだろうと思いますんで、こういう問題をどうして負担を低めていくか、あるいは軽減するかあるいはなくするかということについては、やはり入院者の生活身の回りの介護的な要因というものを、何らかの意味病院確保して、そうして患者さん何人かに一人ぐらいずつそういうものの措置をやっていくような方法はないだろうか、そうしてその費用を一部保険で見ていくような方法はないだろうか、そうすれば非常に患者負担も減っていくんではなかろうかと、これらにつきましては保険だけでいけませんので、私どもの方の省で保険当局とそれから衛生関係の連中とひとつ研究会を持ってくれということで、いま検討を進めさせているわけでございます。私も、保険外負担が一ヵ月の月給が吹っ飛ぶような状況になったり、また相当部分を割かなければいかぬようなことが行われては大変気の毒でございますので、これらを何とか方法によって、いろいろな方法考えまして、解消する道を何らかないものかと、いま鋭意検討さしておりますので、まだ具体的なお答えできないで大変恐縮でございますけれども、熱心に検討を進めていきたいと考えておりますから、もうしばらくの御猶予をいただきたいと思うわけでございます。
  56. 片山甚市

    片山甚市君 医療の抜本的な改正を出されるときには、そのことについて触れて法律案を出されますか。
  57. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 具体的に、これがこうなりますというところまでいけるかどうか、およそ看護以外のものを保険で見るということは、健康保険制度、昭和二年から発足しましてございませんものでございますから、全く新しい面の患者負担解消の保険制度内における制度といいますか、そういう方策になりますので、今度の改正案の御審議までの間に、これらを一切もうきちんとしてということまではなかなかいかぬと思いますが、私どものそうした何といいますか、患者負担軽減に対する熱意だけは御理解願って御審議を願いたいと思っているわけでございます。
  58. 片山甚市

    片山甚市君 保険以外の負担が、法外負担が非常に重いという状態の中で、健保法の改正等が出されてまいりますから、両々相まってやっていただかないと、片一方の方では公平にあるいは平等にいろいろな技術を重視したなどと言ってみても、負担が一方的に重なるということになりますから、特にこの点については強く要求しておきたいと思う。  そこで、中央社会保険医療協議会、中医協の問題ですが、この制度についてはどういう委員の構成になっておるのかお答え願いたい。
  59. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 現在は、三者構成でございまして、いわゆる一号側、二号側、三号側がございまして、一号側につきましては被保険者、事業主等を代表する委員八人でございます。それから、二号側といたしましては、医師、歯科医師、薬剤師を代表する委員としまして八人、それから公益を代表する委員さんが四人という構成でございます。三者構成でございます。
  60. 片山甚市

    片山甚市君 そうしますと、中医協の中に病院の代表というのはないのでしょうか。
  61. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 現在、診療担当者側といたしまして、医師、歯科医師、薬剤師を代表する委員八人ということでございまして、医師を代表する委員、これは医師会から出ているわけでございますけれども、当然医師会におきましては病院関係の利益というものも代表するわけでございますし、そういう意味病院関係の代表というものも医師を代表する委員という中に代表されているというふうに考えております。
  62. 片山甚市

    片山甚市君 それで、私がお伺いしたいのは、公的病院というものを厚生省はどのような範囲で見ておられるか。これが大体救急医療含めて基幹的な、中心的な役割りを果たすべきでないか、公的病院というのはもう少し大きな役割りを果たすだろう、こう思うんですが、それは厚生省としては公的病院の定義といいますか範囲をどのくらいと思われますか。
  63. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 国立それから自治体立、つまり都道府県立、市町村立、こういったもののほかに、いわゆる公的病院というのがございますが、これは現在医療法で定められておりま・して、告示で経営主体がはっきりと決められておりますけれども範囲は日赤、済生会、農協、北海道社会事業協会、国保団体連合会、こういったものにしぼられております。問題は、公的病院の使命でございますけれども先生もよく御存じのように、日本では私立の病院や診療所が多うございますので、やはり公的な病院でないとできないようなことをするということになろうかと思うのでございます。したがって、まず僻地医療とか救急医療、小児の医療、そういったところから始まりまして、がんだとかあるいは循環器疾患、さらに難病とか、最近普及してまいりました腎透析、腎移植、そういったものを特別に扱っていく、率先して担当していくというのが公的な病院ではないかと思っております。ただ、これは医療法上の公的な病院でございますが、そのほかに健康保険組合等あるいは公的な財団等で経営している病院もあるわけでございまして、そういったところにつきましても、やはり同じような方針で協力していただくようにお願いをしている次第でございます。
  64. 片山甚市

    片山甚市君 公的病院に対しては、先ほど安恒委員の方からも言いましたように、ベッドの規制等が行われていた、これも解決をしてもらいたい、こういうような話がありましたけれども、今日、救急医療、緊急な医療、こういうものを完全にしようとすれば、一つの中核の舞台がなければできない、こういうことが具体的に示されておるわけです。そういうところで、いま佐分利局長のおっしゃられたいわゆる公的病院役割りということになりますと、これらについての位置づけはどういうように考えられますか。
  65. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 当然、先ほど申し上げましたように、救急医療といった業務は非常に重要な業務として出てくるわけでございます。また、それに加えまして、公的な病院というものは医師の大学卒業後の臨床研修に協力するとか、あるいは医学の研究開発に協力するとか、そういった使命もございますし、さらに医師以外の看護婦など医療従事者の養成計画にも協力をしてもらうというような基本方針があるわけでございます。そこで、先ほども公的病床規制のお話がございましたけれども、たとえば救急医療で救急用の専用病床を二十床とか四十床ふやさなければならないというような場合には、これは特例措置がございまして、たとえその地域が病床過剰地域であろうとも、上積みをして病床の整備が許可されるというような方途も講じてございます。また一方においては、補助金とか融資において、先ほど申し上げましたような特別な診療の実施、また医師とか看護婦養成、さらにこれは全部ではございませんが研究開発の費用、こういったものに対しまして補助金を交付する。また、一般的には建物、設備、土地については、地方債、厚生年金の還元融資等で優遇をするといった措置が講じられております。
  66. 片山甚市

    片山甚市君 公的医療機関の役割りということになりますと、やはり地域の中核的な病院として高度なしかも不採算の部門を担当することになるのではないか。特に私は、自治体病院を中核とする地域包括医療体制というものの整備が、今日、先ほど申しましたいわゆる付き添いの問題や、あるいは差額ベッドの問題を解決していく一つの方途ではないか。同じ税金使うならこのようなところで使うべきじゃないか、こう思いますから、そういうことについて、公的病院地域包括的な役割りを果たすようにしたいと思うんですが、いかがですか。
  67. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 先ほどもお答えいたしましたけれども、やはり地域の中核病院となるものは、その大部分が公的並びに国公立の病院であろうと思っております。そういった意味で、いろいろな助成策も講じているのでございまして、ただいまも御指摘がございましたけれども、高度の診療機能とか教育機能、研究機能を持てばどうしても赤字も出てくる。そうすると、その赤字をどうするかということで、たとえば日赤等のいわゆる純粋な公的病院の場合には四十八年度から、また県立とか市町村立の自治体病院につきましては四十九年度から運営費に対する補助金も交付しているところでございます。また、日赤等のいわゆる公的病院につきましては、黒字病院が財源を拠出し、それに国が一定の補助金を提供いたしまして財政調整を行う、経営の悪い病院に無利子で運転資金とか機械購入資金を貸し付けるというような制度もつくりまして、拡充しているところでございます。
  68. 片山甚市

    片山甚市君 大臣にお伺いするんですが、私は公的病院というものを強化することで医療のいわゆる安定的な供給ができるような形に政府としては持っていくべきでないか。いわゆる開業医という、民間の方々ががんばっておられることは、大変努力願っていることについては感謝しますけれども、しかし、実際上公的病院というものが機能を発揮しなければ、それは不採算の医療についてはこれを充足し得ないと思うんです。そういう意味で、このようなものを発展させていくためにはどうしても中医協にそのような代表、自治体の病院とか、あるいはそれを包括する公的病院の代表が加わっていくという必要があると私は思うんですが、大臣お答えを願いたい。
  69. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 不採算医療なり、あるいは特殊疾病なり、あるいは看護婦養成なり、あるいは医師の研修なり、こういう特殊な性格につきまして公的医療機関が役割りを果たしていただかなければいかぬわけでございますので、おっしゃる大筋は私もそのとおりだと思います。なぜ中医協に入れないかということでございますが、これは定数等もございますので、こういう点についてなかなか法律上の制約があることもございます。しかし、どうしても必要なら入れなければならぬじゃないかという御意見もわかりますが、公的病院の一番典型的なものは国立病院と私どもは認識をいたしております。そういたしますと、国立病院の経営者はだれかといいますと、私が最高の責任者ということになるわけでございますので、そういう面においては公的病院の代表を入れなくとも、私ども自身がこの国立病院やあるいはこの都道府県、市町村——地方公共団体の病院等について十分よく常に連絡を密にし考え方をまとめておりますので、その意見は十分反映できると、こういう考え方もございまして、従来入れてないように考えておるわけでございますが、しかし、  一応公共団体になりますとなかなかそうはいかぬと思いますので、おっしゃる意見は私はよくわかるんでございます。そういう意味でいま法律上の定数がいっぱいでございますので、いま直ちにと言われても困難でございますが、将来は一つ検討事項だと考えております。
  70. 片山甚市

    片山甚市君 私は国立の方は余り重要視しておりません、国立はわりにゆとりがありますから、自治体の方がずっと大衆に密着しているし苦労していますから。非常に失礼でございますが。私は自治体病院中心として、そういうものについての受け取り方をしてもらいたい、こう思っております。いま検討されると言っておりますから、中医協の中に、私は病院経営が非常に困難な状態、中途半端になっておる、こう思いますから、意見を述べて、これはとりあえず検討してもらうことにしておきます。  次ですが、先ほどから大臣の方から完全看護と言われる基準看護の問題に属しますけれども看護婦養成は昭和四十九年に五ヵ年計画というものを五十三年度を目途に需給のバランスをとることになっておりましたが、その結果はいまどういうことに相なっておりましょうか、簡単に願います。
  71. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 四十九年度から発足いたしました第一次看護婦需給五ヵ年計画では、四十八年末に三十七万人でございました就業看護婦を、十二万人ふやして四十九万人にするという計画でございます。  最新の資料は、まだ五十一年末の就業看護婦の資料しかございませんが、すでに四十三万四千人を確保しておりますので、この第一次計画計画どおり進んでいるものと考えております。
  72. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、佐分利局長のお言葉によれば看護婦の不足は改善されたと、こういうように大言壮語されたことについて理解してよろしゅうございますか。
  73. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 五十三年度が最終年度の五年目でございます。したがって、まだ一年分の増員が残っているわけでございますから、そういう意味ではまだ不足をしているわけでございます。しかし、大いにその減少幅は、不足の幅は減ってきているということは事実であると思います。
  74. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、昭和五十三年には看護婦の必要数はいま幾らと見込んでおられますか。
  75. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 就業看護婦四十九万人と見込んでおります。
  76. 片山甚市

    片山甚市君 わかりました。  そこで、潜在しておやめになっておる、また仕事が大変厳しいものでございまして、二・八の制度がきちんと取れない。そういう形がありまして、結婚されて子供さんができる、そういうときにはおやめになる、やめられてから再び帰ってくるようなことが非常に困難な状態だと聞いております。私、手元にある昭和五十二年五月の資料を見ますと、国立病院では七五・一%が二・八を実施して月九・三回泊まっておる。それから国立療養所の方は五八・九%が実施して月九・一だということで、そうするといわゆる民間の方は恐らくデータがないのではないか、出されないのじゃないか、こう思うんですが、看護婦が再び職場に帰れるような状態にどうしてもっていくのか、せっかく非常な高度な訓練をし、技術を持っておるんでありますから、そういう人をみすみす使わないというか、使えないような状態に置いておくことは、いわゆる人的資源をいたずらに喪失するというか、こういうことを考えるんでありますが、その対策としてどのようにお考えになり、特に二・八実施を進めたいと思いますからお聞きします。
  77. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 潜在看護婦は四十九年度の第一次計画発足の当時、約十五万人いらっしゃいました。その後どんどん養成数がふえておりますので、現在においてはもう二十万人を超えていると思うのでございます。その約八割ぐらいは職場に復帰したいという御希望がございました。そこで、具体的な対策といたしましては、各都道府県にナースバンクを設置いたしまして、そこに潜在看護婦を登録いたしまして、その方の条件に合った病院その他の医療機関に再就職をしていただくという方法を進めております。その数が実績で申しますと年間約四千名ぐらいになっているわけでございますけれども、私どもとしては、できればもっと、年間五千名とか六千名が職場復帰をしてくださる、つまりお子さんが大きくなって家庭の手が抜けた時期においては、もう一度医療機関に帰っていただくというような方法考えております。またそれと同時に、先生もよく御存じの、病院における保育所の増設にも非常に力を入れておりまして、お子さんを病院の保育所に預けながら勤務を続けるという施策も並行して強力に推進しております。
  78. 片山甚市

    片山甚市君 そうしますと、いまのところ看護婦及び准看護婦養成の状態はどの程度であり、先ほど保健婦養成についてはこれ以上養成しても受け入れ体制がないだろうという御答弁でございましたが、看護婦養成は大体需給としてはバランスがとれるような状態なのかどうか。
  79. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 第一次計画養成計画については予定どおり進んでおります。しかし、第一次計画はこの五十三年度で終わるわけでございまして、明年度の五十四年度からどうするかという問題があるわけでございます。人口も少しずつはふえます。医療機関もベッドもふえております。医学医術も進んでおります。そのほかにいろいろ勤務条件の改善等の問題がございます。また、福祉施設の方にも看護婦をたくさん差し上げなければなりません。そういった関係で、五十四年度を初年度といたします第二次看護婦需給計画を現在策定中でございます。
  80. 片山甚市

    片山甚市君 それでは看護婦養成についてあるいは需給については、万全を期して大体期待にこたえられるという御答弁ですから、これから実際の調査の中でその実態を明らかにすることにきょうはしておいて一応とどめます。  そこで、社会福祉施設のことにかかわるんですが、今回、昭和五十四年から五年前にお決めした文部省のいわゆる特殊教育の——いつになりましょうか、養護学校等設置をいたしまして、義務入学をさせると、こういうことになっておりますが、それはまず学校を設置する義務なのか、就学をさせることが義務になっておるのか、すべての子供たちが、就学をする義務があるんでありますけれども、この場合に、そういうような体制がとれておるのかどうかということについて、文部省の方からお答えを願いたい。
  81. 久保庭信一

    説明員久保庭信一君) 学校教育法におきまして、小中学校のほかに障害児のために盲、聾、養護学校が定められております。このうち養護学校だけがまだ義務制が実施されておりません。ようやく五十四年の四月一日から他の学校と同じように義務制が実施できる運びになっておるわけでございます。この義務の内容は、養護学校の設置義務は都道府県でございますが、これに設置の義務を課しております。これと見合いまして、それぞれ養護学校に就学すべき程度の障害を持つ子弟の保護者に対して就学をさせる義務があるわけでございまして、この両方か五十四年の四月一日から施行されるということでございます。
  82. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、養護学校に就学できる条件というのは、具体的にどのように判定されどういうように示されますか。
  83. 久保庭信一

    説明員久保庭信一君) 学校教育法の施行規則におきまして、養護学校に就学すべき精神薄弱者、肢体不自由者、病弱者のうち、その障害の程度を学校教育法の政令で定めまして、その程度のかなり重い者になりますが、それらの者は養護学校に就学をする、このような制度になっております。
  84. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、その認定をするところの、認定する者はどういう認定者がいたしますか。
  85. 久保庭信一

    説明員久保庭信一君) 就学事務につきましては、まず義務就学年齢になります六歳に達しますところで、各市町村教育委員会におきまして住民票から学齢簿を編成をし、その学齢簿に基づいて就学児の健康診断をし、それらのデータに基づきまして、障害に応じて必要な学校に就学すべきことを市町村教育委員会が定めるわけでございますが、その場合に、市町村教育委員会に必ずしもそれぞれ障害ごとに判定をする専門家がおるわけでございませんので、文部省では昭和四十九年から各市町村、都道府県に就学指導委員会なるものを設置することを進めておりまして、その就学指導委員会には医師、教育者、社会福祉施設等の職員等にお入りをいただいて、そこで十分専門的な見地から児童の障害の程度等につきまして総合的に御検討いただいて決定する、このような仕組みで適正な就学ができるように取り運ぶことになっております。
  86. 片山甚市

    片山甚市君 まあ文部省が適正にやれるというんですが、それはお手並み拝見で十分に検討させてもらいましょう、そんなことになりますか。施設に集まっておる子供たちがそんな簡単に、それは御家庭におる人はまだいいですが、施設に入っているような子供たちで、重度で歩けませんし、とにかく情緒は不安定だし、初めからわかっていますね。そんなもの学校の先生までよう預かるものかね。預かると思っておると、私はそんなことするなら、まず厚生省に聞きたい。その施設におる子供を、先ほど社会福祉施設と言ったんですが、学校まで行かせるのに何分ぐらいの時間かけるつもりで考えておられますか。厚生省にお聞きします。厚生省考えてくださいよ、自分の子供を学校へ行かすんですから。厚生省でしょう。だから、学校は来いというだけのことですよ、来たら教えてあげると。連れに来てやろうなどというようなの文部省おりますかね。大臣、おりませんね。文部大臣は学校に来いとは言うけれども、連れてきてやろうというような学校はありませんね。連れていくのは家の方でしょう。施設の園長さんが連れていかなきゃならないんじゃないですか、どうなっておるんですか。ちょっと厚生省様、答えてください。
  87. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 現在、その施設に入っております者で、具体的にその養護学校なりあるいは養護学級あるいは近隣の学校に行っている状態でございますけれども、施設の敷地内にその分校なりあるいは分級を持っておりますものが、精薄児施設の場合、約三分の一、三六・五%程度でございます。さらに、その施設のすぐ隣に学校があるというものが一〇・七%、それからやや遠い地域の学校、まあ市町村の学校でございますが、地域の学校に行っていますのが一七%、それから施設の建物そのものを利用しているのがございます。これが大変多くて三五・八%というのが精薄児施設の実態になっております。  恐らく、そのいまの問題になりますのは、地域の学校の一七%、いま通っておりますけれども、これがいまは軽度の方が多いわけでございますが、先生のおっしゃるようにだんだんその施設が重度化しておりますので、その重度のそういう精薄児を、近隣の学校といってもなかなかむずかしいではないかという御質問であると思います。実際にそのいま文部省で考えておりますのは、通学バスというものを考えているようでございまして、心身障害児施設に入っております通学バスにつきましては、文部省におきまして特殊教育設備整備費でございますか、それによって補助を行うという形になっておりますし、それから通学バスの添乗につきましても、一応学校の先生が添乗するということがたてまえになっておりますが、なかなかそうはいかない面がございます。施設からの距離の問題もございましょうし、それから障害の程度によりましては非常にむずかしい点がございますので、その場合は残念ながらその施設の職員をもって添乗させるということも考えていかなきゃならぬのじゃないか、こういうふうに思っております。
  88. 片山甚市

    片山甚市君 私は養護学校をつくるというから、つくったときどうなるのかと聞いておるわけです。いまのはよく知っとるんです。児童家庭局長が言われることはよくわかっておる。養護学校というのは県に一ヵ所か二ヵ所。三ヵ所もつくれないという寝言を言っておる、いま。それで義務入学だとか、就学だとかいうことをほざいておるというか、言っておるんですね。それは二時間ぐらいかかりますよ、片道ね。大体、普通の者でも二時間の通勤というのは大変ですが、子供が情緒不安定でガラス割るのが趣味のような子供もおるのですから——私三十名くらい子供を預ってますが、とにかく毎日のように、ガラス割るとすっとするのか知らぬけれども割っておる、そういうふうな子供がたくさんおるんですが、それをどのように連れていくんですか。一人が一人連れていかれません。ひょっとしたら一人を連れていくのに二人がついていかなきゃ、目離したらどういうことになるかわからぬ。こんな子供を連れていくのには、どういうやり方で厚生省は、就学させるときには人をくれるんですか。私は社会福祉施設を持っておる立場から聞くんですが、子供を学校へ行かせるのは勝手です。行かしますから、連れていきますが、そういうことで大体よろしいのか。どういう形で子供を通勤バスか何か知らぬけれども入れていく——近隣ではありませんよ。三つくらい市町村を飛ばさないと、それほどの子供が集まりませんからね。養護学校をつくろうということになれば、相当の範囲の人を集めなければならぬでしょう。重度と軽度もありましょうが、そういう点では厚生省は来年からこの義務入学とか学校の義務設置とかこういうものについて、施設に対してどのような手当てをしようとしているのか、これからのことについて聞きたい。いままであるやつはよろしいです。園の中でやっておるとか、近隣の学校へ行かしておるとかいうのは、やっておるのですから、それはいいです。やっていない者、行けなかった者です、今度。行ける者はいいんですよ。行けない者をこれから行かすんですからね。それはどうなんでしょうか、局長
  89. 石野清治

    政府委員(石野清治君) いまの施設の実態が、御存じのとおり年々重度化しておりますので、義務教育といってもなかなか学校教育にすべてをなじませるというわけにはいかないと思うわけでございます。たとえば重度心身障害児施設なんか、先生おっしゃるように、むしろ療育とかあるいは医療そういうものが先行しなきゃなりませんので、そういう場合についてはむしろ訪問指導とかいう形で受け入れるのが一番いいんじゃないかというふうに私ども考えております。問題は、いまの文部省で考えておられます市町村の就学指導委員会でございますか、そこにやはり施設の施設長なり職員なりあるいは児童相談所、そういう職員が入っていただいて、具体的にこの子は本当にすぐ学校に行かした方がいいのか、あるいは施設でもっと療育さした方がいいのか、十分討議して、本当に行かれる状態だった場合には措置をする、こういうことが一番望ましいと、こういうことで御指導申し上げているわけでございます。なおこの問題、非常にむずかしい問題でございますので、いま中央児童福祉審議会で教育と福祉との関連という意味で、施設のあり方についての検討をいたしておりますので、近々その結論を出したい、こう考えております。
  90. 片山甚市

    片山甚市君 私は、実は保母さんとか指導員が子供さんが全部学校へ行ってしまったらあくはずですから、どうされるのか聞きたい。簡単に言ってください。
  91. 石野清治

    政府委員(石野清治君) いま現在、施設入所児童の四五%程度が実は就学をしていない幼児あるいは就学猶予なり免除なり、あるいは学齢超過児童でございます。大体、精薄児で申しますと二万二千人のうちで約一万人が学校に行かない、こういうことになっております。したがいまして、今後の問題でございますけれども、私どもはもし学校に行っている間、確かに時間帯で若干あく時間がございます。そういうものにつきましては、いままでやっておりませんでした入所児童の——やっておりましたけれども、十分でない、個別の状況に応じました指導計画というものをもっと徹底した形でやる時間、あるいは研修の時間、そういうものに時間を当てたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  92. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、予供たちの中には、これからも入学の猶予とか、あるいは就学の猶予とか、免除とかいうものは若干残る、こういうふうにお答えがあるものとして理解してよろしゅうございますか。
  93. 石野清治

    政府委員(石野清治君) そのとおりでございます。
  94. 片山甚市

    片山甚市君 私がこのことを申し上げるのは、近隣の学校に行くのが一番いいと思います。養護学校という特別のものをつくって、二時間も一時間半も子供を引っ張り回して、自動車に乗せて、趣味のように別の子供たちをいっぱい集めてコロニーのようにやることについては反対なんです。どうも文部省というのは、全部教育してやってやる、だれも教育を受けない者はおらぬぞと言って、学校の先生さえ何かぺちゃくちゃしゃべれば、それで教育になっておるように思っておるようでありますが、子供がいわゆる字を書ける前に、物がわかるということは教育でないのでしょうか、と思います。教育というものは読んだり書いたり計算ができることだけだというような読み方をすることについては、その者たちの精神的な発達の度合いに応じて考えるべきではないか。幾ら年が五つになろうと六つになろうと十になろうと、二つ以上にならない子供が、悲しいけれどもあるのです。二つ以上になってほしい、二つになれば自分の名前も言う、何も言うのに、物も言えないような状態のままで十八になった、二十になった、成人になったと、こう言うけれども、体は確かにそうでありますが、そうなっておらないんです。悲しいんです。私の顔さえ忘れるような者がたくさんおるんです。それでもそばへ来て、肌のぬくもりで、これはおれのおやじさんだ、味方だと思えば、子供は寄ってくるんです。ですから、教育の問題をいわゆる通達を出した昭和四十九年、何々と言って文部省がいわゆる教育をさせると言ったことは間違っていないと思う。その内容については、やはり厚生省も子供を預かっておる立場から、前向きにきちんとして、そして一般の子供と差別せずに教育するということは、同じことを教えるのではありません。その中に、健常な子供の中に、必ずおれたちの仲間にはこういう子供がおることが世の中の前提なんだ、体の悪い者、そういう者がおるんだ、これは余り者じゃないんだ、こういう教育を本当に続けるべきだと思う。こういう意見があるのですが、局長いかがですか、私の。
  95. 石野清治

    政府委員(石野清治君) いまの先生の御発言、本当にごもっともだと思うわけでございます。私自身も、実は今度の養護学校の義務制に関連しまして一番悩み、かつ考えておりますのはその点でございまして、障害児が本当に将来自立自活し得るような支えになる、精神的な訓練も含めまして、そういうものをどうしても施設としてはつくり上げていかなければならない。そのためには学校との関係を十分検討して、先生のおっしゃるような意味で、できるならば近くの学校で一般の児童と一緒に並べるのが一番いいと思います。そういう意味で、なかなか学校側の受け入れの問題もございましょう。ありますけれども、できるならば、施設側としてはできるだけ学校側と相談をしながら、そういう方向を講ずるように私ども指導してまいりたい、こう思っております。
  96. 片山甚市

    片山甚市君 局長の御答弁を前向きに受け取って、私たちは文部省の皆さんにもよく話をして、現場の教育者も大変悩まれることでありますから、私がもし言葉足らずに学校の先生が適当にやっておるというように聞こえたら大変であります。わかる子供たちに言う言葉と、わからない子供たちに言う言葉と二通りある。わかる者に言う言葉しか使えないのがいまの学校なんです。言葉をわからなくても、肌のぬくもりのような形でわかってくるような教育もあるという、これはもうペスタロッチ以来あたりまえのことでありますけれども、しかし、そんなことは、今日は大量生産の教育でありますから、そんなものはのけておけ、落ちこぼれと。優秀な者さえ出たらいいという教育になってしまっていることは、日教組の大会でもそれを克服するための大変な御努力をしておるんです。ここで言う意思はありませんけれども、これを踏まえてもらいたいと思います。  実は、私は三十名ぐらいの子供を預かっておる施設の責任者の一人でありますが、今日の三十名を預かっておるところではどういうことになっておるかというと、措置費が五千三百七十二万三千円、国からくれます。補助金として都道府県から来るのが千六百二十六万円。で、利用者負担はなしで、寄付金が年に二十万円。雑収入ということで、これは金利などですが、十万円ほど入ることになる——少しお金持っていますから。こういうことで合計いたしますと、この金で七千二十八万三千円になります、金額は、私のところで言うと。それで使う金は、事務費の支出というのが五千六百七万円、それから事業費支出というのが千四百二十一万円ですね、こういうことになります。これは大体大阪府の職員の賃金に見習った形で支払っても大体やっておるということです。ですから、今日のいわゆる国から出ておるところの事務費あるいは事業費というのはおおむね満たされており、ここで欠落しておるのは、この施設を使うところの敷地の確保、建物をつくるのが、全部園長が、または事業団の法人が、自分がつくることであります。そこの金を、もし、つくらずに——五百万円や六百万円でこんな施設をつくったならば、どこから金を取ってくるかということになる。こういうことになるんですが、いまのところ、いわゆる長く使った園が建てかえるときには、それぞれの保証をするとか、こういうことを今度新しくつくっていただきましたね。しかし、いままさにこれから問題がありますのは、施設はできるだけゆとりのあるものにしなければならぬ、敷地もある程度広くなければならない、建物もきちんとした、いわゆる基準に合うじゃなくて、子供たちが、そこにおる人たちが人として生活できるようなものにしなければならぬとすれば、余り不完全なものをつくりますと、維持費がたくさんつく、十年や二十年、三十年ぐらいはびくともしないものを建てるのが原則だと思っておるわけです。そうすると、このお金が大変大きな民間の施設の維持に対して圧迫になっておると思う。これから国が提供すべきものは、土地とか物を、家を建てる順序だとか、こういうものについての保証ということでやらなければ、ただいま言いました事務費とか、あるいは事業費に若干の食い込みが出るんじゃないかと思うんですが、局長はいかがでしょう。
  97. 上村一

    政府委員(上村一君) いまお話しになりましたように、現行の制度では建設費用の四分三まで公費で——国と自治体で負担をいたしますけれども、残りの四分の一なり、あるいは土地の取得というのは自己負担になっておるわけでございます。こういった自己負担分につきましては、社会福祉事業振興会などの公的な融資の道も講じておるわけでございますが、民間の社会福祉事業のあり方といたしまして、一定の自己財源というものはある程度前提にすることはやむを得ないことではなかろうかというふうに思うわけでございます。ただ、最近の傾向といたしまして、民間の社会福祉施設がつくられたときの自己財源、あるいはそれに対する公的融資の償還財源というものにつきまして、自治体の方で補助金を計上する方式というのもだんだん進んできておるわけでございます。これが一つの方向になるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  それから、五十三年度の新しい予算措置といたしましては、一定の運営実績のある民間法人につきまして、国庫補助で老朽施設を改築した社会福祉法人が振興会から貸し付けを受けました場合に、償還金の一部を免除するという措置を新しく始めることにしておるわけでございます。そうすることによりまして、民間の社会福祉事業というものがきちんとした形で進められるように措置をとってまいりたいというふうに思うわけでございます。
  98. 片山甚市

    片山甚市君 兵庫県のある施設で、御承知のように、建設、維持費に伴って不正事件があったことは御承知のとおりです。いわゆるたらい回しをして、園のお金をごまかした事件がありました。私は、建設をするときに、局長がおっしゃるように、それでは自己資金を確実に見てもらいたいんです。本当に措金をして返すことがなく——借金をすることになれば、先ほど言った事業費とか運営費からごまかして、職員の賃金を切り下げるんです。職員の問題が起こるんです。労働問題が起こるんです。わかりますか。なかなかわからぬじゃないですか。いわゆる家の借金、土地の借金を返すためにする。私は一銭も借金していませんよ。みんなからカンパ集まって、四千万円、五千万円集まった浄財で建てておるんですから。だから、何も苦労してないからこんな発表ができるんです、数字が。わかりますか。私がいま数字発表したのはインチキじゃないですよ、私の予算ですからね、淡輪学園愛の家の予算ですから。私が申し上げるのは、そのようなことにしなければ職員が安定して——国からもらう、県からもらった委託やいろんな金が全部渡っておるんだよとわかれば、労働運動起こらぬけれども、ピンはねすれば、何か余分に金が出るんだと思ったら、そこで働く意義よりは労働条件の方が問題になりますよ。いまのところは、国及び地方自治体が出している金ではおおむね賄えるようになっておる、余り遜色ないようになっておると言い切ります、私は。しかし、それは逆に言ったら、施設の土地代だとか上物とか、そういうものについての借金をしておれば、その借金を払う金のためにどこからか寄付を進めるか、船舶振興会か何かからもらうのかどうか知りませんが、いろいろなことをしなければならぬ、こういうことが起こりますから、できるだけ早く——建物をつくるときに四分の三してますと言ったって、それはあなたの方が認定する四分の三でありまして、本当にかけた金の四分の三じゃありませんから、それは違うんです。そういうきれいごと言うたらいけない。私の方が認定する金額の四分の三を払います、こういうことですから、そういうことで、少しくどくなりましたけれども、これが一層、新しく園をつくられるときには基本的のお金はどうなっておるか、そして渡した金はきちんと職員のために、子供のために使われていることを確認するようにしなければこれはいかぬだろうと思う。私は自分がやってきた十年ほどの月日を顧みて、そう思いますから、これは意見として申し述べておきます。よろしいか。
  99. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) これは先生のおっしゃるとおりだと思いますので、いやしくもそういうことのないように当初に当たって十分私の方よく検討いたしまして、健全な運営ができるようなものに補助対象にし、また援助をいたしまして、りっぱな社会事業施設としての運営の確保に努力すべきだと考えます。
  100. 片山甚市

    片山甚市君 繰り返し言いますけれども、私は土地の入手あるいはそこの施設の建設、これについて万遺漏のないような監督と助言、助成をしてもらいたい。そうして、あとは、いまの国のあるいは県の補助を中心とすれば、大体福祉というものについては前に向いていくに違いない。子供のためのいわゆる教育の問題もいくだろうと思う。断定的に言いませんよ、私のかかわるものから推定すればということであって、全国そうだと言いません。労働問題は、私、いろんなことがありますから、そういうことを防ぐためにも国が非常に大きな努力をしてもらいたいと思います。  さて、スモンの問題ですけれども、医薬品の副作用による健康被害に係る紛争処理救済に関する法律案、仮称、が初め出される予定でありましたが、まとまりませんでした。これについてお伺いするので、スモンの救済方法について政府の考え方を聞きたい。  一つは、和解についてうんと力を入れて進めた、和解に応じなくって裁判をした者は勝手にやりなさいということになっておるんだろうと思うけれども結論から言えば、国と製薬会社のいわゆる責任があることは裁判でも明らかだ。そういたしますと、和解ではお金を少したくさん出しましょう、言うことを聞いたんだから、裁判所なら少ない、こういうことになりますと、これは不平等なことだと思うのです、感じとして。厚生省としては、私たちが言うように、和解に応じない者は知るものか、勝手に裁判所へ行って最後まで行け、こういうふうに言うのかわかりませんが、それは少し冷たいし、それからそんな事件が起こった原因は挙げて国のいわゆるお薬をつくる許可を与えたことから始まっておることでありますから、それについてどういうようにこれから薬害に対する対処をされるのか、これについてお伺いします。
  101. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) お答え申し上げます。  スモンの救済問題につきましては、厚生省といたしましては、東京地裁における和解条件に従って全国的に統一的な、先生のおっしゃるような差のない救済を進めてまいるというのが基本姿勢でございます。たまたま、先生御指摘のとおりに、三月一日に金沢におきまして、数といたしましては十一人、第一次の十一人分でございますが、これについて第一審の判決がございました。この判決は、その東京地裁における和解と比較いたしますと、金額におきましては、遅延利息を含めましても東京和解の約七〇%の金額になっております。これにつきましては、たまたまこの金沢の判決につきましては、原告側もこの金額を不服とされまして控訴されております。国の側におきましても、また民間の製薬会社におきましても、責任論についての問題から控訴をいたしております。現在、これは名古屋高裁の金沢支部に係属中であるというかっこうになっております。私どもといたしましては、最善の方法は、東京地裁における和解金額の例によりまして、全国統一的な救済を図るというのがわれわれの所存でございますので、この金沢の十一人の方々につきましても、現在高裁に係属してはおりますが、和解の御意思さえあれば、いつでもこれに応じまして、全国統一的な条件による和解を行いたい、かように思っておるわけでございます。今後も精力的に東京地裁の和解条件によって御納得の得られるように努力を続けてまいるというのが、厚生省の現在時点における姿勢でございます。
  102. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、いわゆる金沢で判決をされました国及び製薬会社に責任があるということについては、認められるんですか。
  103. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) その御指摘の問題が最もこの件の焦点になる点でございますが、国の姿勢といたしましては、現行薬事法のもとにおける製造承認の性格につきましては、それによるたとえば薬害等が発生した場合に、直ちに国に不法行為責任を課するような性格の製造承認の規定ではないというふうに理解をいたしております。しかしながら、当然社会問題として惹起されたスモンのいわば薬害というものにつきましては、その因果関係の問題につきまして、これがキノホルムによって大多数の者が起因しておるということは認めておるわけでございますので、したがって、そのような観点から、このスモンの患者方々の社会的な救済という行政上の責任を国は負うというのが国の見解でございます。
  104. 片山甚市

    片山甚市君 その意見については、また議論のあるところはしばらくおくとしまして、今回出された、案をつくられてまいりました、スモンではありません、薬害についての救済法律をつくろうとされたときに、業界というか、薬業、製薬業者はこれについて賛意を表されましたか、いかがでしょう。
  105. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 基本的に製薬業界は、この種の救済措置というようなものが、今後の有用な医薬品の開発の問題とうらはらなものとして社会的に必要なものであるという点については、国と意見の一致を見ております。しかしながら、製薬業界におきましては、たとえばその補償金額、あるいはその企業からの拠出の上限を画すべきであるというふうなこととか、あるいは国の立場において相当程度の国庫負担を投入すべきであるとかというふうな、いわば政府の原案にない数点についての見解の相違はございます。この見解の相違については、現在まだ最終的に調整はし切っておりません。
  106. 片山甚市

    片山甚市君 これは、つくれないのは、まず製薬会社というか当事者である者たちの意見もある、それ以外にはどういうことがありますか。
  107. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 実は、製薬業界との意見の未調整ということが主たる問題ではございません。実は、私どもといたしましては、この法案を一刻も早く公表いたしまして、案につきまして各界の御意向を徴したいと思っておったわけでございますが、御承知のようにスモンの和解が、東京地裁における和解が予想外な時間がかかりまして、この案をいわば関係各方面にお示しする時期が大幅にずれ込んだわけでございます。昨年末に近くなってこの意見を徴しまして、それについて非常にわれわれとしていわば原案につきまして反省しました点は、この薬害救済法案と車の両輸をなすものとして、現在の薬事法の安全性をめぐる規定について相当大幅な改正が必要であるという御指摘が各方面からございました。この薬事法の改正問題についてのいわば掘り下げた検討、法案の作成という作業に時間を要するために、現在いまだ提出できる段階に至っていない、かような点が大きな問題でございます。
  108. 片山甚市

    片山甚市君 局長の方から言われた問題が一番大きないわゆる課題だと思います。いわゆるどのように薬による害が起こってくるのかという状態を明確にしないと、私たちとしては納得できない。理由は、いままで起こったものについては適用するようになっておりませんから。この今度できるのは。これからのことであります。われわれは、いままで起こったものもどういうようにしていくのかということは非常に大きな関心があるし、これはつくられても適用されるものがあるのかどうか。そういうことで、一層現実に適応できるような案をつくっていただくように、私の方は私の方でそれについての大きな批判を持って、この政府のいわゆる要綱というか案については納得しがたい。現在起こっておるキノホルムを中心とするスモンの問題も、いろんないままでの薬害の問題について答え切れてない、抜けておる、こういうふうに思っていますから、これは質問をいたしませんが、ひとつ十分に考えてもらいたいと思います。  次の問題で、血液行政についてですが、二、三のことについてお伺いするのですが、輸血のいわゆる血液供給の現状、もう一つは冷凍血液の使用が九州では行われておるようでありますか、その状況。というのは、それは半永久的に保存ができるとか、輸血後の副作用がないとかいうようなことで宣伝をされてきたんですが、全国に余り大きく広がっておらないようでありますが、この点について。  三点目に、外国から入ってくる輸入血液の問題ですが、これはこれからもされるのか。特に、分画製剤が非常に大きな需要を呼んでおるのでありますが、これは需要を呼ぶというのは、医師の技術の関係がございます、医師が採択するのでありまして、患者が必要とするものでありませんから。分画製剤が大きくなってくるということは、その製剤に血漿が必要であります。血液が必要であります。ところが、いま転用血を充てている、いわゆる日赤で集めた血液のうち、使えなくなったと称して回しておるんですが、それでは分画製剤が大きくなれば足らなくなるではないか、こういうように考えます。こういう点で、新鮮血、全血、保存血、それから成分製剤それから分画製剤、こういうことで四つほどのランクがいまあるんですが、一番伸びるのは分画製剤でないだろうか。これからも全血、保存血ですね、これは全部使うやつもありましょうけれども、これは特に日常的には成分製剤が頻繁に使われるかもわかりませんが、そういうことを考えると、質問を申し上げるのは、分画製剤、こういうものは公的機関でやるべきでないか、いま製薬会社、ミドリ十字、目薬などに頼んでつくってもらっておるようでありますけれども、せっかく献血を中心として、転用血であろうと何であろうとするならば、当然すべきだと思う。そういう意味で、現在の献血の状態、それから冷凍血の問題、輸入血がどのぐらいか、そういう中でいわゆる病気が起こっておる、輸血後の肝災の問題等、総括的に簡単にお答え願いたい。
  109. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) いわゆるわが国におきますところの血液供給事業が献血方式に切りかえられまして以降、この献血者数は順調に現在まで伸びてきております。たとえば五十年、五十一年、五十二年とこの三ヵ年をとりますと、大体前年対比で献血者数が一〇%ぐらいずつ伸びてきているというのが現状でございます。  この献血によりますところの血液のいわば使用状況でございますが、五十二年の実績をとりますと、大体その六〇%強がいわゆる先生御承知のとおりの保存血液というかっこうで使用され、さらに八%が新鮮血の状態で利用されております。さらに、いわゆる血液成分製剤、全血漿も含めましての話でございますが、これが約三〇%という形の利用になっております。  先生の御指摘のいわゆる転用血でございますが、これは、かつては四十九年当時は一五%程度の転用血があったわけでございますけれども、この比率は比率としては年々減少いたしておりまして、大体五十二年度におきましては一一%強の転用血使用という形に収縮してまいっております。  一方、冷凍血液の件でございますが、これは有効期間が非常に長い。それから、何と申しますか、使用に至ります過程におきまして、抗体の生成が起こりにくいというふうな長所がございまして、このようなことで、特に臓器移植を予定します患者の輸血にはこれが非常にすぐれたものであるというふうに判断をされておるところから、国といたしましては、現在、日赤の血液センターでございますが、愛知県、福岡県、それから新潟、この三ヵ所におきまして、この冷凍血液の製造、貯蔵、その使用を図っておるところでございます。大体この本数といたしまして、五十二年度には、五十一年度に比べまして約倍、製造は四千八百本、供給が四千三百六十七本というところが実績でございます。今後もこの冷凍血液の長所というものを生かしまして、各血液センターにおいてこれの製造、貯蔵、供給を行わしめるというのが国としての方針でございます。  血漿分画製剤でございますが、これは先生御承知のように、全血を使わない、血漿の中のさらにそれを分画しました一部の有効成分を使うというふうな性質のものでございますけれども、これは、この需要は年々非常に伸びております。正直に申しまして、恐らく現在の供給量は、たとえば米国等との比較をいたしますと、恐らく米国の水準かどに比べて二分の一、三分の一ぐらいの供給実績しか現在持っておらない。したがって、この血漿分画製剤に対する需要が非常に強いために、勢い先生御指摘のような外国からの輸入血漿に頼るというふうなことがあります。この問題についてはなるたけそういうことが起こらないように、あるいは何と申しますか、日赤の献血事業の体系の中でこの転用血、あるいは血漿分画製剤の製造も全部包括して、これが完結いたしますように努力をする所存でございますが、現状といたしましてはその需要が非常に強いということから、一部売血、あるいはその輸入に依存せざるを得ないという状況がございます。  それからもう一つ先生御指摘の肝炎の問題でございますけれども、これは大体実績といたしまして、採血の際のチェック等によりまして、この発生頻度は逐次落ちつつございます。現在では、一時は四十年ごろには三〇%ぐらいの発生率だというふうに言われたわけでございますが、現在この検査の実施等の努力を積み重ねまして、最近ではこれは、実は正確な数字が非常にとりにくいものでございますけれども、一〇%前後ぐらいまでにこの発生率が低下してまいっているというのが実情でございます。  以上でございます。
  110. 片山甚市

    片山甚市君 最後ですが、公的機関で血漿分画製剤をつくるようにしたらどうかというのは、献血運動の中で、当然転用血じゃなくて、新鮮血でできるように、私はそういう運動を十何年間やってきたたてまえから言うと、外国から血をもらっている、また、商売でそういう製薬つくっておるのだと言わないで、下請をされるのはよろしいですね、公的機関が、ミドリ十字であろうと何であろうと。しかし、もう少しきちんとしたものでやってもらいたい。一〇%ぐらいマージンを取るので何が悪いかといってミドリ十字の重役が言っておるようでありますが、少しそれはのぼせじゃないか、体の一部である血液ですから。そういう意味で、公的に分画製剤をつくれるように。何もミドリ十字だとか目薬をけしからぬと言っておるんじゃないんです。私たちは献血運動をして、もう少したくさん血を集めて、当然要る分画製剤には新鮮血そのまま使えるように、どうか厚生大臣、もう少し外国に血液を買う、血漿を安いのを買ってくるなどとか、こんな恥ずかしい——一億一千万人もおって、プエルトリコの方々やメキシコの方々や黒人の方々やというような、大体アメリカから来ておるんでも大概それなんです。そんな恥ずかしいことやめるというぐらい、ひとつ私が言う熱意で分画製剤を新鮮血で使えるように検討してみようぐらい決意はありませんか。そのぐらい言うてくれないと、新しい大臣になったことになりませんよ。あなたはもう医療行政に物すごくベテランなんだから、ひとつこれは検討するぐらいはできましょう。役人が検討するというのは、しないということになるんで、余りほめたことでありませんがどうでしょう。最後、これで終わりです。
  111. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いまおっしゃいますように、献血を大いに日赤等で広めまして、これを設備ができない間は委託でやるような方向、場合によったら民間でなくて公的な機関で直接製造までやるべきじゃないかというお話でございますが、長年開発研究に努めて蓄積をされました技術というものがありますので、また多額の設備投資が要りますもんですから、そう一遍にいま公的機関でもってこれをつくれということはなかなか無理でございますが、原料血につきましてはおっしゃるような方向で、私どもは国内で確保する努力を続けなきゃいかぬと思っております。
  112. 片山甚市

    片山甚市君 終わります。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生行政基本施策として、医療制度について厚生大臣からいろいろ伺いたいのでありますが、政府側の御都合で、他の委員会との都合で先に公衆衛生関係について一、二お伺いをいたします。  最初に、神奈川県鶴見川の流域のコレラ菌汚染について、これは地域住民としては大変迷惑なことなんですが、また心配でもあり不安でもあるわけですが、この点についてのごく概略で結構ですから、経過とそれからいま何に取り組もうとしていらっしゃるか、簡潔にお答えをいただきたい。
  114. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 今回のコレラ菌の問題につきまして簡単に申し上げますと、まず私ども検疫所は海水を定期的にとってコレラ菌があるかないかというのを調べております。大体、横浜港が三月の二十二日、ただいま申し上げました定期的な海水検査を行いましたところ、このとき八ヵ所ほどとったわけでございますが、鶴見川の河口のところにコレラ菌がいるということをまずつかみました。それで、直ちに検疫所は、今度は検疫艇が行き得る範囲の鶴見川の河口から鶴見大橋という約二キロ上流でございますが、そこまで調べましたところ、これも陽性であったということでございます。そこで、今度は国内防疫に入りまして四月一日に鷹野大橋という橋が上の方にございます。これは鶴見川の河口から約十キロほど上がった先でございますが、そこで鶴見川の本流と矢上川という川に分かれております。その鷹野大橋のところまで調べました。そうしたところその全流域に陽性という答えが出たわけでございます。そこで今度はこれは鶴見川かあるいは矢上川かどちらからきておるのかということを考えたわけでございます。  そこで、この時点でなぜ鷹野大橋までやったかと申しますと、実は潮が満ちたときには鷹野大橋のところまで潮が上がるということで、鷹野大橋まで十キロのところまで調べたわけでございます。ところが、上までクロであったということで、さらに上流もやってみようということになりまして、四月四日の日に矢上川の上流、鶴見川本流の上流と両方を検査いたしました。そういたしましたところ、鶴見川の本流の方はそこから先は全部シロと出ました。それで矢上川の上流の方が渋川という川の分かれる点がございます。そこまで調べましたところ、それも全部陽性というふうに出てまいりました。  そこで、今度は四月七日の日にいまの矢上川の本流、矢上川の分流に当たります北の方へ二本出ておりますが、渋川、江川、それから南の方を西の方へ走っております有馬川、この三本の川につきまして軒並み上流まで調べましたところ矢上川の上流、渋川の上流、江川の上流は全部陰性に出ました。そうして有馬川の上流約十九キロのところまで、河口から十九キロくらいになりますが、そこのところが一番最上の点で、現在陽性に出ております。この有馬川のもっと先の方はということなんですが、現在とっておりますところがもうすでに川幅が一メートルぐらいの狭いどぶになっております。それでも行き着くところまで上の方を調べるというのが第一点と、それからその川へ、何といいますか、側溝から流れ込んでくる水を同時に調べるということで、昨日、その水の採取に着手したという状況でございます。  なお、もう一つ住民不安の問題でございますが、これは私ども十分保健所等通じまして、たとえば川の水は、魚を釣らないというようなことを言っておりますが、実際問題といたしまして、大体コレラ菌というのは約一万個ほど食べませんと、コレラには感染いたさないものでございまして、そういう意味では、川の中の水程度では常識的には感染するということがないわけでございます。そういうことも含めまして、住民の方に保健所からPRをいたしまして、不安のないように衛生教育をやっているわけでございます。  なお、つけ加えて申しますが、医師会の方にも連絡いたしまして、その地域病人でおかしいと思う者があれば、すぐに連絡してほしいということを言っておるわけでございますが、現在のところ、まだ全くぐあいが悪いというのは出ておりません。  それからもう一つ、海外渡航者で三月に入ってから汚染国から帰ってきた方々については、全部保健所の手を通じまして検病調査をいたしておりますが、これもまたぐあいが悪いというのは、現在、ございません。そういう状況でございます。  なお、河川の消毒という問題がございますが、一つは消毒をするのはいいわけでございますが、本当のどこから流れてきているかという元を押さえませんと、消毒しても次から次へ上からまた流れてくるんで、余りあわてて消毒するというのも、先ほど申しましたように、感染力の問題からしてそう急激に急ぐことじゃないんじゃないかという考え方も一方にはあるわけでございますが、昨日、各省及び専門家の間でどのように消毒をするかという検討会を開きまして、余り多量にまた消毒液を流しますと、別の問題が起こってまいります。魚が死ぬとか、あるいはその水をくみ上げて工場用水に使っているところでは機械がまたさびるというような問題もございますので、どの程度の量を流したらいいか、どこから流したらいいかということを現在、検討しているという実情でございます。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初発見なさったときは、たまたま発見したということで、それは非常に有意義だったと思うわけでありますが、何せこの汚染源がわからないということが、もっと早く何とかしてこの汚染源を確定することができないかどうか。確かに、消毒してもどんどん流れてきたんではまた同じことになってしまうわけですから、そういう点でいつごろまでには安心していただけるというようなことは言えないまでも、早く汚染源を見つけ、安心していただけるような見通し、それからそういうような不安が起きないような防疫体制、そういうような点について伺いたい。
  116. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先生おっしゃいましたように、もっと早く上の方までどうして見つからなかった、全くおっしゃるとおりでございまして、実は一時学者の間で海が汚れていて、海の中で実際に繁殖しているのが潮で上の方に上ったのではないかという意見が有力でございました。それはなぜかと申しますと、川崎の生麦のところに運河がございます。その運河でとったところの菌は、普通いま調べておりますのは二次培養と申しまして、一回菌をふやします、それでも数が足りないので、またもう一回培養する、二次増殖を行ってプラスになる。非常に元が少ないわけですから、二段に増殖をやるということをやって発見されているのが普通でございますが、この運河のところだけは一次増殖だけでプラスに出たということがございまして、運河のところに汚染源があるのではないかというのが非常に有力な見解だったわけでございます。そこで、その運河から上へ流れ上がるんだろうという見解で、まず潮の満ち干と関係のあるところを非常に詳細に調べたわけでございます。そういう点で、まだ運河でもやはりふえておるのではないかという見解も消えてはおりません。上からも流れ、しかも、運河にも住みついちゃっているのかもしらぬという見解も現在あるわけでございますが、そういうことがなかなか上まで行けなかったという一つでございます。  それからもう一つは、現在いまの地域で最高の能力でやりましても、まず培養するのに五十本の水ぐらい以上はとても現在の能力では培養ができないというのがございまして、一回の検査は五十ヵ所をマキシムぐらい、これ以上とても能力がないという問題がございます。  それからもう一つ、先ほど申しましたように、川が非常に広域にわたっておりまして、しかも、水をとるというのを私ども簡単に思ったんですが、川の水をとるというのは、非常に何か手間がかかることでございまして、そういうことから非常におくれております。しかし、現在もう有馬川のさっき申し上げましたように、何といいますか、上の上の方まで行ってしまいましたので、あとは今度横の方からどこから出てくるかというのを調べる段階に入っておりますので、もう遠からず大体あの辺だというのがわかるのではないかというふうに考えております。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 早く不安解消に努力していただきたいと要請いたして、次に、日本住血吸虫病についてですが、この寄生虫予防法の一部改正ということで、私も国会に出て以来何回となくこの一部改正の審議に加わってまいったわけでありますが、ちょっと時間の関係でまとめて質問をいたしますので、お答えいただきたい。  一つには、中間宿主のミヤイリガイ、このミヤイリガイかツツガムシとかそういうようなものとともに最近ふえてきている。農薬規制なんかの関係もあってか、大分ふえてきている。大量発生しているんじゃないか、思わぬところに。そういうことが言われておりますが、これは新聞にも報道されておりますが、こういう点についてどうお考えになっていらっしゃるか。  それから次に、寄生虫予防法の一部改正は五十三年度で切れますが、これはさらに延長する必要があるではないか。具体的には山梨県の例でまだ五十三年度工事が終わっても、なおかつ工事が未着工のところが残るような計画にしかなっておりません。  それから第三には、広域的な工事を進めていかないと、特にこれは県あたりが中心になって指導しなくてはならないかと思いますが、どこの町村でも中心部から着工いたしますので、あるA町にとっては大分離れたもう遠い方になっているんですが、B町にとってはそれが中心街に接しているというような面がありますので、そういう広域的な観点から工事を進めなくちゃいけないと思います。  以上の点についてお答えいただきたい。
  118. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先生の第一の御質問のミヤイリガイがふえているのではないかということでございますが、私ども確かに農薬が少なくなりますと、論理的にはカイが減らなくなる、あるいはふえるということがあるのではないかというような感じは、論理的にはするわけでございます。ただ、いわゆるみぞのコンクリート化とか殺貝剤の散布というのを行っておりますので、現在のところはふえているというようなことはないのではないかというように考えております。と申しますのは、現実に山梨県につきまして、昭和四十八年と五十二年に調査いたしておりますと、生息地点の割合を耕作地で見ますと、四十八年は一・八%であったものが五十二年には一・二%、こんなような数字でございますので、一応ふえてはいないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、第二の問題点でございますが、昭和五十三年度が終わりましてもまだ全体の設備が終わらないのではないか、こういうことでございますが、おっしゃるとおりでございまして、いま私どもの予定では昭和五十三年度が終わっても、まだ八十数%のところで当然その余の仕事が残っているというように考えております。それで、それにつきまして法律をどうするか、五十三年で五年間計画期間が切れるということでございますが、これにつきまして延長するかどうかというのは、ただいま検討しておる段階でございまして、ここでまだ御報告できる状態になっておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、五十四年度から先、事業を打ち切るというようなことはしない、当然事業は続けていくというふうに考えておるわけでございます。  それからもう一つ、広域的な工事、全く先生がおっしゃるとおりで、村単位に事業計画を立てますので、村は自分中心地から外側に向かってだんだんにやっていくということがございます。ですから、そういうことがあるのはある程度いたし方ないわけでございますが、そのために何か町の境界点のところでいろいろ問題が起こるというようなことがあれば、私どもそういうことがないように十分指導していきたいと思います。また、さっき申し上げましたように市町村単位仕事をしているわけでございますけれども、全体が効率よく動くということを考えますれば、当然都道府県がこれを指導して、先生おっしゃるような広域的な計画であることが望ましいというふうに考えますので、その点も十分に配慮しながらこれから各県と話し合いを進めていきたいと思っております。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生省に先日お話を聞きましたら、ミヤイリガイはふえてはいないという、いま御答弁のようなお話があったわけですが、実際日本住血吸虫病患者はなおかつ発生しているわけですね、今日もなお。これは山梨県の資料を見ますと、五十一年度末という資料でもやはり累計で患者さんが二百五十六人というふうになっておるわけでありますから、この辺で少し手を抜いてもいいじゃないかという段階にない、より気をつけていかなくてはならないということを申し上げたいわけでありますが、五十三年度で打ち切るということは考えてないということでありますから、それで推進をしていただきたい。  それから、昭和二十九年ころから工事が始まったわけでありますが、古いところは特にこの最初にやったところの工事などは、地元の人に伺いますと、材料も悪かったし、技術も未熟だったせいか、もう壊れているんです。これをちょっとごらんをいただくと全く壊れてしまって、擁壁が崩れて落ちているのと、底にはごみがたまっているのと、ミヤイリガイがここにいるんじゃないかと、つついている写真がありますが、そういうようなことで、やはりそれは二十九年ころ、三十年ころやった工事は中心部でやっているわけですから、中心部で本当にもう人家の密集地で工事をやったわけでありますが、そういうふうに壊れてしまったんでは全然効果がないわけです。これはどう処置されますか。
  120. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 現在私ども、コンクリート化した地点につきましても、その後そのコンクリート化したみぞの中に貝がいるかどうかということを引き続き調査をしているわけでございます。ところが、現在までの段階ではコンクリート化されたところ、いま先生が御指摘になられましたような壊れているところがあるのは確かでございます。そういうところも含めまして、その調査をしているんですが、そのところには貝はいないという状況になっております。と申しますのは、確かに貝がずっとコンクリート化して先の方に追いやられていなくなってしまいますと、回りがコンクリート化しておればそこに貝が来ないということになっているんだろうと思いますが、そういうことで、現時点では貝がおらないものでございますから、いま先生御指摘の壊れたところを直せということにつきましては、一応その補修ということは、補助をするということは考えておらないわけでございます。しかし、将来にわたりましてずっと調査をいたしまして、やはりこういうところへもし出てくるというようなことがあれば、その時点におきましてはこの補修ということについて補助をするということを考えたいというふうに考えております。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、いまごらんのように現在は貝が見つからないと言っているんですが、やはり調査あるいは補修管理ということは続けていかないと、まあよく御承知のように非常に恐ろしい結果になるわけでありますから、ちょっと時間の関係で病気の説明を聞いたり私がここで申し上げるのは省きますけれども、そういう恐ろしい結果になるわけでありますので、十分ひとつこうした調査、補修、管理等も注意を払っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  122. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 日本住血吸虫病につきましては、私も前に関与したことがございまして、これはおっしゃるように決して油断できませんので、十分管理をし、あるいは調査をするということは常に怠っていかないようにしたい。もし万一、おそれがあるような場合は、それはもう当然補修をしていかなければいかぬだろうと思っております。  なお、先ほどちょっと局長答えましたように、あと二十数%まだ残りがございますので、これはもう法的な延長問題とは別に、従来どおり予算措置を来年からもきちっととります。この点は大蔵省とも話し済みでございます。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 では次に、医療制度について伺いますが、けさ来の安恒委員等の質問で最初に私が伺いたいと思いますことは、昨年十一月厚生大臣医療保険制度改革の抜本的な考え方についてという十四項目を国会へ提出されたといいますか、ここで発表されたわけでありますが、先ほど厚生大臣からはごく抽象的に今度諮問した案は、十四項目に沿ったものであるということを抽象的におっしゃったわけでありますが、この中で各委員から特に強く言われておりましたことは五の「付添看護差額ベッド、歯科差額の保険外負担問題の改善、」、七の「実勢価格に見合った薬害基準の適正化」、十二の「医療供給体制の整備と医療関係者の養成確保」、このような点が強く主張もされ、また厚生省からも御答弁があったわけであります。各新聞の報道、解説、社説等でも、やはりこうした三点などが中心課題として、もっと厚生省が取り組まなくてはならないじゃないか、どちらかと言えば今回の厚生省の案ではこの抜本改正が、この改正案が成功すれば薬づけ医療がなくなるとか、医療費急増にも歯どめがかかるとかいうふうな説明にはなっておりますけれども、しかし、こうした国民が一番現に困っている問題のその取り組みが、いかにも弱いではないかということを指摘されていると思うんですが、いかがですか。
  124. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 第五の「付添看護差額ベッド、歯科差額の保険外負担問題の改善」これは御承知のようにまず歯科差額の保険外負担の問題の改善については、二月一日実施の診療報酬改定で、少なくとも三年計画の第一年度は歯科医師会と十分話し合い説得もいたしまして実行いたしました。したがって、これは逐次私どもとしてはこのお約束のとおりに進行しているものと思います。差額ベッド付添看護につきましては、すでにこの法案の諮問前に、先ほども言いましたように指導通知を出しまして、またその指導通知を受けました都道府県側において十分意思の疎通を図りまして、指導の徹底を期しているところでございますし、差額ベッドについては、少なくとも大部屋については今後こういう事態が起こらぬように善処をいたしたわけでございます。  付添看護につきましては、先ほど来申し上げましたような方法を、この法律の施行までに何とかひとつ検討したい。この法律は今度国会に御提案を申し上げて協賛いただきましても、一定の実施までの期日がございますので、その点について十分配慮してまいります。この十四項目の、国会で申し上げましたときも、ここに書いてありますように、実施時期としては「次期診療報酬の改定から逐次実施」となっておるわけでございますが、相当私どもは真剣に取り組み、テンポを進めておるというふうに御理解いただいていいんじゃないかと思うわけでございます。  七番目の「実勢価格に見合った薬価基準の適正化」、「次期薬価基準の改定から逐次実施」するというふうになっておりますように、今年も当然実勢価格に近づける努力をいたします。  それから、第十二の「医療供給体制の整備」でございますが、先ほど言いました皆保険下においてせっかく疾病という保険事故を担保するこの経済的な制度があっても、現実医療事故を救済するだけの医療機関がなければだめなわけでございますので、その面は一番のやはり問題点は無医村ではなかろうかと思いますので、地域中核病院中心にしました整備は相当計画的にやっておりますし、それから休日、夜間の診療についても、先ほど言いましたように五十三年度の予算では地域の医師会等に一定の金額をやりまして、輪番制の実施をしていただくだけの体制をとっておるわけでございますし、また、先ほど医務局長から詳しく申し上げましたような「医療供給体制の整備」については、特に一般的な医療供給というよりは特殊疾病、あるいはまた最近老齢化社会を迎えた、いろいろがん初めその他の老人病対策についての「医療供給体制の整備」、それから救急救命センターの整備については毎年度、予算を相当増額いたしまして体制をとっているところでございますし、看護婦養成については五十三年度でほぼ五ヵ年の目標を達成しようと、こういうことでもございますので、私どもとして従来と比べますと、相当努力をしてこの三つの問題に取り組んでいることを御了承いただけるんじゃないかと思うわけでございます。  なお、今後とも一層ひとつ努力をしてまいりたいと、かように考えるわけでございます。
  125. 小平芳平

    ○小平芳平君 これは大臣、あるいは厚生省当局も気をつけて読んでいらっしゃると思いますが、読売新聞の社説、四月六日、「薬づけ医療解消への条件」として、先ほど来問題とされていた医療機関が薬を扱って利潤を得るという、そこにこの根本の間違いがあるんだと、バルクライン九〇方式ということを具体的に挙げまして、こういう「薬づけ医療解消への条件」としては、そういう実勢価格と薬価基準がかけ離れている点が問題なんだということをいろんな新聞でこう指摘しております。大臣としては、それはいますぐ実勢価格に合わせろといってもできるわけのものじゃないというふうに答弁していらっしゃったように思いましたが、しかしこれほど実勢価格と薬価基準の離れている、医療機関が薬を扱って利益を得ること、そこがもう根本の問題だと、こう言って指摘をされているんですが、それにもなおかつ対応はできませんか。
  126. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 実勢価格に近づける努力は、二月一日の医療費改定でも五・八%、実は薬価基準を下げておるわけでございます。しかし、それにもかかわらずまだあるだろうと言われております。私が今度の改正で五つの原則を申し上げたんでございますが、その中で、したがっていま御指摘のような、お医者さんが薬ということから完全に分離されまして、本当は処方せんで発行しまして、処方せんによって患者が薬局で受け取るようにしまして、そして実勢価格というものに見合った給付を行うような仕組みを考えるのが一番やっぱり筋としては正しい方向ではないだろうかと。お医者さんはあくまでも技術だけでいくんだという方がいいじゃないかということを、これはもういろいろ話し合った結果、医師会長もそうだと、そのとおりだということになってきたわけでございますが、ただ問題は、医薬分業をすぐ強制できるかといいますと、なかなか実は薬局の分布あるいは医療機関の分布等から考えまして、若干方々で支障が出る面等もございます。これはしかし今後考えていかなきゃいかぬと思って解消の努力をいたしますが、ただ問題は、その場合に、今度は、そういたしますと、本当にたとえば医療上どうしても必要だと考えられるものも種類によってはございます。たとえば、麻薬というものは、これはもう一切いま医師の医療上必要な限度に限っておりまして、あとはもう全部取り締まりの対象にしておりますけれども、そういうような場合にどうするかという問題等もございますし、いろいろ考えてみますと、注射のものについては、これは分離はなかなか処方せんによって解決はできません。そういう点を考えてみましたので、今度は当面いまのような案というものを実は御提示申し上げたわけでございます。私としては、「物と技術の分離」を完全に行いたいという趣旨が今度の改正で出ておりまして、それを現実問題としてああいう形で解決をするようにしたいということをやったわけでございまして、もちろんその場合、将来とも「実勢価格に見合った薬価基準の適正化」というものは、逐次私ども努力をしてまいりたいと、かように考えます。
  127. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと本題から外れて恐縮ですが、大臣はいま「物と技術の分離」ということを、あるいは医薬分業ということを、医師会長もそうだと言ってそういうことにしたんだというふうな意味のことをおっしゃった。これは武見医師会長ですか。こうした新聞の社説でも、厚生大臣が多くの関係団体のうち、日医とだけ話し合っているのは納得できないと。医療保険制度の抜本改正は国民の合意なしには実現できないのであるというふうな、そういう事前の話し合いというものは大臣はどの程度おやりになったんですか。
  128. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先ほど言いました五つの私の原則というとおこがましいんでございますが、五つの考え方のうち、「物と技術の分離」につきましては、これはやっぱり診療担当者側の十分御理解を得ないとできないことでございます。従来の診療の内容に全部なっておりますものを医療担当者側から物と技術を分けていくと、離していくということでございますので、しかも、私はこの点ができなけりゃ、ほかの方々とお話を申し上げるといたしましても、一番のポイントが決まらないうちに、他の問題についてお話を申し上げてもなかなかうまくいくものではないと考えまして、この点で非常にお話し合いが何回も行われたわけでございますんで、武見医師会長も、薬によって不当な利潤を得るというような考え方は間違いだと、したがって、医薬分業というものを推進をしていかなきゃならぬということはもっともなんで、物と技術の分離についてはもうわかったということで、基本的にその点は一致をいたしたものでございますから、それからあとの問題につきましては、給付の平等化というような点、家計の高額負担というような点、あるいは負担の公平というような点は、前から実はいろいろ関係団体等の今度やりますたとえば十四項目の第一段の「制度間格差の是正、当面、健康保険組合間財政調整の実施」というのは、これはもうこの予算編成のときに国庫補助を健康保険組合に出しますときのいわば一つの暗黙の条件でもありましたし、それから、ただ保険負担につきましてはいろいろと問題のあることを承知しておりましたが、しかし、毎月の標準報酬に対する料率が相当低くなっていけば、一方においては所得再配分だというのでボーナスは高い人からよけい保険を取ることになりますので、この辺のところは御了解願えるんじゃないかというようなところから、その後私、各方面とも回りまして話をいたしましたり、また武見先生に会います前には健保組合の代表とも会っておりますし、あるいは健康保険組合を中心にした労働組合の方々も一緒に入りました研究会というのがございまして、この代表の方とも会っておるわけでございまして、そう医師会とだけ会って、あとはもうそれで決まればいいんだというような考え方ではもちろんございません。ただ、一番大事な「物と技術の分離」については、これはやはり医療担当者の十分な理解と協力を得ないとできないということで、これに骨折ったわけでございます。
  129. 小平芳平

    ○小平芳平君 内容的には、きのう諮問のあった社会保険審議会に私も参加いたしておりますので、内容の審議はそのときに詳しくさせていただこうと思っております。きょうはごく基本的な考え方だけ、基本施策についてですから、基本的な考え方だけを伺っていきたいと思っております。  確かに、この「物と技術の分離」それは診療担当者の考え方が非常に重要であるという点、あるいは厚生大臣がいろいろな各方面とお話し合いを進めるという点、それは私も賛成なんです。決して批判して言っているわけではありません。ただ、明らかにしておいていただきたいということだけを申し上げておるわけであります。  そこで、薬の方はずいぶんいろいろ御指摘があったように、とにかく二万円までは本人負担になる、患者さんの本人負担になるということであります。これについてもいろんな問題があって、先ほど申し上げましたように、それだけじゃ果たして——要するに国のやるべきこと、先ほどの三項目、厚生大臣は一生懸命努力しているんだから、理解を得られるはずだというふうに答弁なさっていらっしゃったわけですが、国のやるべきことがまだまだほど遠い段階で、国民負担ばかりが高くなっていきやしないかということが大きな問題であるというふうに考えるわけであります。  そこで、実際問題として、午前の最後の大臣の御答弁では、世帯で二万円以上の負担はなくなるということになれば、給付が高い給付になるんじゃないかというような点、あるいは国庫負担は現行よりもなお上げるように努力をいたしますという点、それから月々の保険料率は千分の十ないし千分の十二くらいは下がるはずだと、したがって、高福祉低負担になるみたいな印象を与えたんですが、そうじゃないわけでしょう。結局は賞与等も含めて保険料は徴収するわけですから、したがって、負担額はどのくらい上がるか。要するに、赤字をなくすまで負担するということになるかとも思いますけれども、被保険者の負担額はふえるわけです。そういうわけでよろしいですか。
  130. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 保険料につきましてボーナスも対象にするということは、被保険者間におきます負担の公平を図るということでございまして、高額所得者ほどボーナス等の支給率も高いということでございますので、一定の医療給付に必要な料率というものがあります場合に、現在でまいりますと、標準報酬だけを基礎にしているわけでございますけれども、ボーナスを基礎にする、ボーナスも算入するということになりますと当然ボーナスも基礎にしまして保険料が算定される、したがって、料率としては下がるわけでございます。ただ、被保険者間におきましての負担の均衡が図られるということで、ボーナスの多い方にとっては従来よりは負担がふえる、逆にボーナスが低いという方については負担が減る、一定の料率が同じ場合には被保険者の負担の公平ということでございます。
  131. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、ボーナスも含めて標準報酬月額の保険料と、標準報酬月額によってはじき出される保険料と、それからボーナスに保険料率を掛けてはじき出される保険料と合計しまして、従来の標準報酬月額だけの保険料を払っていたときよりも、賞与まで加えて払ってもなおかつ負担が減る人が出るわけですか。
  132. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 当然被保険者間の負担の均衡を図るということでございますから負担が減る、ボーナスが低い方は当然毎月の保険料額というのは下がるわけでございます。しかし、同じ料率がボーナスにも適用されるということでございますから、ボーナスの非常に低い方あるいはほとんどない方は保険料は下がるということになると思います。
  133. 小平芳平

    ○小平芳平君 それはボーナスがゼロならそうでしょうけれども、大体どのくらいの人がそれじゃとんとんですか。
  134. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ちょっと私から申し上げますと、先生おっしゃるように、今日の医療診療酬体系というものがどんどん変わってくるという前提を将来は持っておりますけれども、いま当面はそれでいろんな計算をはじくということはとうていできません。したがって、今日のいまの実情で考えて、この案でいった場合に、料率が千分の八十がボーナスまで入れますと一応千分の六十八ぐらいにはなるんじゃないかという計算を一応しているわけでございます。そうしますと、いま千分の八十を現行では取っておりますから、したがって、千分の十二というものが毎月減る人があるわけでございます。その人が一年間保険料を千分の十二と考えて計算をしましたトータルと、それ以下のボーナス、それと同等またはそれ以下のボーナスの人は負担がふえないかまたは減ると、こういうことになるわけでございまして、その上の人は確かに全体の保険料の負担は一年分として考えますと増加する、こういうことに当然なろうかと思います。しかし、私ども考えておりますのは、やはり保険制度というものは相扶連帯の精神を基礎にして、相扶共済をやるというのが保険制度だろうと思います。保険制度が相扶共済の制度であるとすれば、本当は大企業も零細企業も一本化して、あるいは官民格差もなくするように共済もみんな一本化して、そして同じように収入の高い人はよけい払い、低い人は少なく払うという保険制度にすべきだと思うんですけれども、そうはなかなか一遍にいきませんもんですから、したがって、どうしても所得の再配分機能をある程度いまのできる範囲でしていかなきゃいかぬだろう。そうして剰余が出た場合には料率をどんどん下げていけばいいじゃないかということを考えますと、いまどうしてもこの制度をやらしていただきたいと考えたわけでございますんで、この点は御理解をいただきたいと思うんです。
  135. 小平芳平

    ○小平芳平君 意見なり御理解はまた法案が出てからにいたしまして、いま基本的な考え方自分の納得できないことだけを伺っているわけです。  それから「物と技術の分離、技術料重点診療報酬の改善」がございますね。それで、厚生大臣はきわめて「物と技術の分離」を強調していらっしゃるように新聞では伺っておりますが、この「技術料重点診療報酬の改善」、こっちはどうなるんでしょうか。
  136. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 今度、二月一日の診療報酬の改定は、非常に技術料を重んじた改定をやったわけでございます。これからでございますが、私は医薬分業を推進をずっとしていく方向が、今度のあれによってこれをむしろ一層促進の方向に誘導したいと思っております。その場合には、処方せん料の問題やその他いろいろ出てくると思いますが、これは技術の評価全体をそれぞれ適正かどうかを判断をして、今後は技術料についての評価を厳正にしながら、これが妥当な線に合理的な改定を行っていくということになろうかと思うんでございますけれども、当面、ことし五十三年度ですぐ技術料の再評価をやるということをいま私の頭の中にはございませんのでございます。
  137. 小平芳平

    ○小平芳平君 物と技術を分離するということは、診療担当者の一番大事な、大事なというか、先ほどの診療担当者の了解を得るといいますか、それが必要なんだという点ですね、そういう御説明があったわけですが、その技術料の適正評価ということも、これこそ診療担当者の一番大事な問題であるわけですし、これは患者にとっても大事な問題なわけですが、したがって、これについては物と技術を分離した、分離すると同時にそうした技術料の適正評価ということも当然考えるということじゃありませんか。
  138. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃることは非常に論理的だと思うんでございますが、ただ現実にこの制度改正によってどういうふうな診療報酬の流れになるのか、それから、どの程度の財政的な健全化が各保険その他を見て行われていくのか。それから給付の平等という点から考えまして、国保の取り扱いをどうするかということも考えていかなければならぬわけでございます。そういたしますと、国保は一番財政が脆弱でございます。一方、老人保険というものをいま抱えております国保が一番老人保険問題について非常に関心が高いわけでございます。老人保険制度一つの別の制度として立てたいと考えておりますので、これらの推移も十分見なければなりません。国保の問題等も考えてみますと、いま直ちにおっしゃるように論理的な結論として実行はできないのでございますんで、もうしばらく、少なくとも一年ぐらいの余裕をいただきませぬと、そういうその当然論理的におっしゃるとおりの帰結になるわけでございますけれども、それがなかなかいま申し上げましたような事情でできませんので、もうしばらくはその問題はおあずけをいただきたいと、こう思っているわけでございます。
  139. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、薬剤または歯科材料に要する費用という、この薬剤の内容はどういうことですか。
  140. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いわゆる薬剤全部でございまして、いまのところは注射に必要とする薬剤がございますが、注射の技術料は別でございますけれども、注射の中に入れます、ぽんとこう割ってずっと入れますあの注射液がございますが、これも薬剤と考えておるわけでございます。
  141. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ薬価基準の範囲内でですね、ということになりますか、すべて、薬価基準で決めているものは全部入ると。
  142. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) さように御理解いただいていいと思うんです。
  143. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうなりますと、この午前中にも薬につきまして三日分を二日分にしておいてくれということもあり得るんだというふうな厚生大臣の御答弁がありましたが、注射に至りましては、いやその注射は困るというようなことを言えるでしょうか。とてもそれは実際問題、診療担当者に患者としては任せ切る以外ないわけですから。そうすると、お金は払って帰らなくちゃいけないですね。ですから、どれだけお金がかかる注射かということも、とてもとても素人じゃわかりませんし、病院へ行くにはまあ相当現金持っていかなくちゃいけないということになりますね。
  144. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 注射は確かに患者の選択はできません。これはおっしゃるとおりでございます。いろいろ実はその辺のところは問題点で検討しなければならぬなと思いつつも、やっぱりこの薬剤の「物と技術の分離」ということになりますと、やっぱりそこまでいかなければはっきりした体制にはならぬだろうというような考え方で、今日現在のところはそういうことにしているわけでございますが、患者さんが相当のものをふところに入れて行かなきゃいかぬという場合に、外来と入院では相当違うと思うんでございます。それらの場合の必要な、所得の低い方々に対する手当ては別途考慮をしていきたいと考えております。たとえば一つ考えられますのは、世帯更生資金の枠をうんと広げまして、そしてお貸しする制度をつくったり、いろいろ考えてみたいと思っておるところでございます。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 そのほか、内容につきましてはまた審議会なり国会に提案されてから詳しく伺いたいと思います。  見通しとして、厚生大臣としては両審議会と、なるべく早く答申を出してほしい、そうすればこの国会中に提案いたしますと、提案したいという意向を述べておられましたが、確かに厚生省当日としてはそういうふうに御発言なさるのが当然かと思います、そういう計画で進んでいるわけでありますから。しかし、実際問題、いまのような薬剤の扱い一つにいたしましても、きわめていろんな問題が多いわけでありまして、実際上は今国会へ提出すること自体も無理じゃないんですか。
  146. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ぜひ私どもとしては、なるべく早く御審議を賜りたいと思っているわけでございますので、今日の段階はもうそれ一筋にお願いに回ろうと思っております。
  147. 小平芳平

    ○小平芳平君 しかし、よく決まってないこともあるんじゃ、どうしようもないじゃないですか。
  148. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 実は、決まってないことはないんですけれども、いろいろ御議論を承って、この法律施行後の問題、法律事項でなくて行政事項の内容についていろんな御意見を承ってやるべきことは相当あるだろうと思いますけれども、法律事項につきましては私ども決まらぬという内容はこの中にはないと思うんでございますけれども、おっしゃるように行政的な面でやらなきゃいかぬことは多々あると思っております。
  149. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは最後に、ちょっと別の問題になりますが、薬についてです。下垂体小人症の治療薬ということです。クレスコルモンというこの薬は輸入薬である。輸入先とそれから分量が大変限定されているということ、一度使用したらずっと使っていかなくちゃならないということ。それで、これは私がそう説明するまでもなく、質問の内容がそちらへ行っていると思いますが、要はこうした特殊の薬ですので、希望者ですね、いまここで具体的に指摘している方は二十九歳の方ですが、そういう希望者にもこのクレスコルモンの使用ができるような対策をとってほしいということです。で、材料が脳下垂体ですか、その材料を日本が渡して先方の国で薬をつくってもらって、逆に日本へ輸入するというようなこともできないかどうかという点の訴えがありますが、いかがですか。
  150. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) お答え申し上げます。  御指摘の人成長ホルモン、これは現在のところの調査によりますと、これが有効である、この薬が有効であるとされる患者さんたちの数が大体千人というふうに推定されておりまして、このうち、この成長ホルモンによりまして治療を続けておられる方々の数が約八百でございます。差し引き治療が受けられない状態にございます方々が二百名ぐらいではないかというふうに一応推定されているわけでございます。この薬は、先生御指摘のとおりに、人の死体から摘出しました脳下垂体からつくられるものでございまして、すべてこれは現在スウェーデン、デンマーク、アメリカの三国からの輸入に依存をしているところでございます。このような性格のものでございますので、やはりこれはわが国でもこの輸入に頼らないで、日本でも国産できるような体制を当然とるべきであるということでございますけれども、この死体から摘出するということについての各般にわたる国民感情の問題、あるいはその法制面の問題、手続の整備等の問題がございまして、現在のところではすべて輸入に依存し、その輸入量も限定をされているということがございます。この国産体制をしきますために、わが国で成長科学協会という公益法人が昨年七月設立されまして、わが国においてもこのようなものをつくれる体制をひとつ推進していこうじゃないかということで、各般の各界の御協力を得まして、いわば準備態勢のようなものの努力を重ねておられるところでございます。それで、現在絶対量が不足しておりますところから、この成長科学協会におきまして、これはすべて専門医師から構成されております。専門医師で構成されておりますその委員会において、医療上適正にかつ公平に配分されるようなコントロールをいたしておりまして、原則的には現在この薬の使用は各地域の担当医が受け付けました登録順でこの薬を配分するという体制になっております。先生御指摘のとおりに、このようなものの、この種の薬の国産体制を一刻も早くわれわれとしては努力し、必要な方々に行き渡るような体制を早く固めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  151. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 きょうはスモン対策について具体的にお伺いしたいと思います。  三月三日に続いて、昨日も全国から四百人近くの患者さんそして弁護団の方々厚生省と交渉をなさいました。私はその両方にも参加させていただきました。決して厚生省に対する陳情ではなくて、北陸スモン訴訟判決によって勝者となった患者さんたちが、敗者となった政府、厚生省に対して当然の要求としての交渉だというふうに位置づけなければならないと思います。そういう状態から考えまして、せっかくきのう四百人の方々がいらっしゃったのに、人数は制限される、時間も、お忙しい中だったと思いますけれども、制限される、そして責任者である厚生大臣も御出席いただけなかったと。大変私は残念なことだと思うわけです。そういう立場から、きょうは主に大臣から御答弁をいただきたいと思います。単に私に対する答弁ではなくて、つかまれているだけでも全国で一万一千の患者。実際に調査すればどれだけふえるかわからない。しかも、春の日差しが差し、花が開いたと言っても、この患者さんたちにはいっときも心休まるときはない。心どころか、寝てもさめてもその痛みに耐えがたく苦しんでいらっしゃる、そういう患者さんたちの立場に立って私は質問をいたしますので、大臣としてもその方々に対する誠心誠意の御答弁をお願いしたいと思います。  この患者さんたちが肉体的に大変な痛みの中で困難を抱えていらっしゃるということも、もちろん第一義的な問題だと思いますけれども、その患者さんを抱えている家族の方たち、これもまた深刻な問題です。第二次被害とも言える家庭破壊が各地で起こっているわけです。こういうことを考えていけば、まず第一にしなければならないことは、一体全国にスモンの患者が何人いるか、そしてその状態はどうなっているのか、生活の状態も含めてその調査がまず正確にされなければならないと思うのですけれども、一体その調査、いつやられたでしょうか。
  152. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) スモンの実態把握の問題につきましては、先生御承知のとおりに、スモン研究調査協議会、公衆衛生局の担当でございますが、ここにおきましてスモンのいわば発生の原因の問題、あるいはその調査の前提になりました個々の患者の症状等の基礎資料がございます。先生の御指摘になりました一万一千という推計数字も、このスモン研究調査協議会のデータに基づく数字であるというふうに理解をいたしております。
  153. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それは四十七年のことでございますね。ことしは何年になりますか。五十三年になる。この六年間、その調査というものが最近行われていない。だから、私はいまの時点で改めてもっと綿密な、病状から生活を含めた調査というものが当然なされてしかるべきだと思います。  大臣にお伺いしたいと思います。その調査をする必要があるとお認めになると思いますけれども、それをどういうふうに具体化されようとお思いになるか、きょうは三十分しか時間が与えられておりません。恐れ入りますが簡潔にその調査をやるという御意向があればお答えをいただきたいと思います。
  154. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いろいろおっしゃることもごもっともだと思うんですが、私どもこの研究班の先生方と十分連絡をとりませんと、スモンと認定をすることからまず始めなきゃいかぬものですから、そうでなければはっきりしたその方々の実態調査に踏み切れないという問題もございますし、現に認定をされている方はいいでございますけれども。そういたしますと、なかなかいろんなこの準備の問題やら、他に研究をしなきゃいかぬような問題等もございますので。しかし、おっしゃるように実態が把握できなければ救済の方法等も明確に打ち立てられないことでもございますし、少し研究、検討さしていただきたいと思います。
  155. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 おっしゃることがごもっともで、対策を立てるのには実態調査が必要だと、いまおっしゃったんですよ。検討させてくださいなんという段階じゃないと思います。至急に調査に手をつけるというふうにお答えをいただきたいと思います。
  156. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) そこまでの私——やっぱり研究班の先生方とも相談しなきゃいけませんから、いまここでやりますというわけにいきませんので、検討さしていただきます。
  157. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 当然先生方と御相談になることも必要だと思います。そういうことも含めて、改めてここで調査する必要があるということをお認めになったのならば、調査に踏み切ってやるという、そういう立場での御検討だと伺ってよろしいわけですね。
  158. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 実態を把握して初めて対策がとれるというのは、私は基本的なことを申し上げたんで、全部の実態を把握しなければ対策が立たないとも考えないわけでございますので、この点はいまの前段に申し上げたことと、調査をするということと、すぐ結びつけていただくと困るわけでございますが、調査の御要求については検討さしていただくということであります。
  159. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そればっかりで時間かけていられませんので、ぜひ調査を具体的に、対策に必要な資料としておまとめをいただきたいと、調査していただきたいということを重ねてお願いをしたいと思います。  それから、また大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、四十七年にスモン研究調査協議会がキノホルム説というのを出した。そしてそのことによって、患者さんたちは薬の選択の自由がなく、そしてお医者さんの言うことを聞いて、自分の体を治したいということでお薬を飲んで病気になった。そういう立場からすれば、判決に出されたように国としての責任というのは当然問われるべきだと思います。その点について簡単に大臣の御所見、反省がございましたら一言お伺いしたいと思います。
  160. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 大臣の御説明に先立ちまして、厚生省の事務当局としての見解をまず申し上げておきたいと思います。  スモンとキノホルムのいわゆる因果関係の問題につきましては、厚生省といたしましては、厚生省自身が委託をいたしましたスモン研究調査協議会のいわば研究成果に従って、スモン患者の大多数がキノホルムの服用によってその症状が惹起されたものだという結論を認めて、この東京地裁の和解にも応じたわけでございます。ただし、その場合におきまして、この薬の製造承認によるところのいわゆる国に加害責任がある、あるいは不法行為責任があるということについては、厚生省としてはこれを認めておりません。しかしながら、現実問題として、キノホルムとスモンの間のスモン研究調査協議会の研究成果に従ってこの因果関係を認めたということとの関連におきまして、スモン問題という一つの大きな社会問題についての行政上の解決の責任を国としては負う、負うことを認めるというのが国としてのいわば東京地裁において明らかにした見解でございまして、これは今日といえども変わっておらないわけでございます。
  161. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私、きょういろいろお伺いしますけれども、専門で局長さんお答えいただくのも結構なんですけれども、私が初めに申し上げましたように、きのうも大臣お見えいただけませんでしたし、やはり大臣の立場としてのお考えを率直にお伺いしたい。いま大臣お立ちになろうと思ったら、局長さんが抑えて、局長さんが答弁なさるんだけれども、やっぱりここは国会の場ですから、私は政治的な立場として大臣の責任においてお答えをいただきたいと思いますので、大臣も思っていらっしゃることを率直にお答えをいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  それで、ちょっといまのにもいろいろ問題がひっかかってくるんですけれども、次に、確認をさせていただきたいと思います。時間がないから全部読み上げることはできませんでしたけれども、きのう、私が質問をいたしますよということで資料をそちらにお渡ししてございます。  それは、三月三日に交渉をされました、その中身についての取りまとめがございます。第一は、厚生省はスモン被害を引き起こしたことについては痛切に反省し、おわびしますと、スモンの原因がキノホルムにあることを認め、これまでの薬事行政を反省し、薬害を根絶していきますと、大臣もこの前お会いになったときに大変反省して申しわけなかったとおっしゃいましたが、まあ全部読み上げませんが、その始まります一項目から十三項目までをまとめました。これは客観的にまとめられていることなので、当然確認していただけると思います。いかがでございましょうか。
  162. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 拝見いたしますと、全体として御趣旨は私もそのとおりだと思います。ただ、法律問題や予算問題等に関連する事項については、なお全部そのままだと、こう申し上げることは保留さしておいていただきたいと思います。
  163. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは、一応その趣旨は確認させていただいた問題として、次に具体的にお伺いしていきたいと思います。  患者さんの要求の中に、スモン手帳をぜひつくってほしいというのが強く出ております。これは特定疾患治療研究費関係の更新手続の煩わしさや、またいろいろと医療機関を移った場合、大変助かるというような問題、それにとどまらないで、将来的には患者の継続的な健康管理のため、健診相談、治療を容易にするためのものだというふうに考えられるわけです。単に、便利だから出してくれというだけではなくて、患者さんにとってはいま言ったように切実な問題として要求されているので、ぜひ御検討をいただきたいということでございます。  それから、更新の手続でございますけれども、更新の手続はいま半年に一回ということになっております。半年に一回ずつ更新をいたします。そのときに診断書というのもつけて出すというようなことにもなろうかと思います。診断書が大体安くて二千円、高いところでは四千円から五千円取られるということです。財政的にも大変です。半年に一回行くということも大変です。伺えば、本人でなくてもいい、家族が行ってもいいと、ケースワーカーがその仕事をやっているじゃないかというお答えでございましたけれども、先ほど申し上げましたように、患者を抱えている家族は大変生活が苦しい中で共働きもたくさんございますし、それからケースワーカーがあっても、病院仕事が忙しくてケースワーカーが全部それを背負ってくれるということも困難だというのが実情として訴えられたわけです。  そこで、手帳をつくっていただきたいということと、更新の手続というのを半年に一回というのを何としても延ばしていただきたい。なぜならば、厚生省みずからも、このスモンはいまの医学で治せないと、治る道がはっきりしていないわけです。半年や一年で変わる問題じゃない。そしたら半年、半年というようなそういう苦労はさせないでいただきたい、こういう患者さんたちの実情を知っているところ、たとえば静岡、福岡、群馬というところでは一年に一回というふうに延ばされているわけですね。そうすれば、やっぱり国としても半年というのではなくて、運用としてやりましょうとか、何とかやみでやりましょうというのではなくて、少なくとも半年などという短期間ではなくて、長期に更新手続を延ばしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  164. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) スモン手帳の問題につきましては、三月三日の席上で御要望を確かに受けたわけでございます。これについては、現存の難病対策の何と申しますか、事業の運営の一つ患者さんの便宜を図るための提案でございますが、これはこれとして検討はいたしますが、それと同時に、いま御指摘にございました更新の期間の問題につきましては、この半年というものを公衆衛生局側においても、これをより長い期間に延長するということを検討する用意があるという旨を、私らの方としては公衆衛生局から聞いておるところでございます。
  165. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 実情を、開西医大の東田調査報告というのがあります。それは詳しく言う時間はございません、おわかりになっていただけていると思いますけれども、いまの西洋医学でこれという治し方もない、そこでやっぱりどういうのが、少なくとも少しは治療に役立つのではないか、患者さんたちの痛みを少しでもやわらげるのではないかというので、治療法として非常に希望されているのがはり・きゅう・マッサージという問題になるわけでございます。そのはり・きゅう・マッサージなどに対して、問題はお金がかかるということです。マッサージの場合には十二点百二十円でございます。百二十円というと、普通だとやっぱり安くて千五百円、大体二千円だと。百二十円の点数しかもらえなければ、マッサージやっても、私見ていたところで七分ぐらいしかやれないわけです。そういうのでは少し安過ぎるんじゃないか。また具体的なはり・きゅうについても今回少し引き上げていただきました。一術一回八百円、二術一回千二百円というふうに引き上げていただきましたけれども現実には最低二千円かかる、そして月に一回じゃなくて一週間に一回ないし二回はかかって、しかも長期にやらなければならないということになりますと、この料金は非常に安い。いますぐとはなかなか無理かもしれませんけれども、もう少しこれのめんどうを見ていただきたい。めんどうを見られるのは、お金でめんどうを見るということはいますぐできるわけでございます。その点が一点でございます。いかがでございますか。
  166. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 保険点数を、一般的にこれをいま変えろというのは無理でございます。  私が患者さんに向かって、なるほど、もっともだなと思いましたのは、せめてはりときゅうあるいはマッサージだけでも、何か方法はないかというあれがありましたので、この点は事務当局にスモン患者さんのために特別そういう道を何か考えたらどうだということで、いま検討しておりますから、保険点数を一般的に全部直せとおっしゃいますと、これはもうとてもできませんので、この点は御了承をいただいて、検討をいたします。
  167. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私は、すぐ保険点数を変えろなんて無理なことを言っていないんです。いろいろ御検討いただいて、具体的に患者さんの少しでも治療に役立たせていただきたいというような趣旨でございますので、ぜひとも御検討お願いをしたいと思います。  それから、はり・きゅうについての期間の制限がございます。一傷病について六ヵ月でございます。弾力的ということで、六ヵ月過ぎた後でも一定の期間を置いて再びかかることが可能だというふうにおっしゃっていただきましたけれども、その一定の期間というのはどの程度見てよいのだろうか。六ヵ月やった、しかし六ヵ月で少しはよくなったけれども、まだもうちょっとしなければならないというときには、その六ヵ月目から、またすぐその次の週からかかって継続していけるというように、一定の期間というのを考えてよろしいのでしょうか、いかがでしょうか。
  168. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 多少技術的な問題になりますので、私の方からお答えいたしますが、これは現実にそういうたてまえ、六ヵ月という保険医療の上でのたてまえ自身を崩すというのは、現在ではなかなかむずかしいことでございます。しかしながら、一方でスモン患者の特殊な状況と申しますか、そのことを配慮いたしまして、スモン患者の実情になるたけ合うように、医師の同意のいわば出し方と申しますか、スモンに詳しい医師の方々の御意見ということで、できるだけ実効上このはり・きゅうがなるたけ利用できるような配慮を私どもとしても現実問題として努力をしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  169. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ患者さんたちの立場で御検討を具体的に進めていただきたいと思います。  現在、そういうようなお金が少ないということで大変苦労していらっしゃるのを見て、これも地方自治体ですけれども、たとえば静岡県で県単費で六百円の補助をしているわけですね、一人一回の費用として。それからまた、昨日伺いましたら山形県では三十万円というのをスモンの会に助成して、六十三人の患者さんがそれを分けて、そして治療費の足しにしていると、各苦しい地方自治体の中でもそういうことをやっていらっしゃるわけですから、国としての立場でも従来の枠を越えて、自治体の努力を評価するとともに、国としての援助も真剣に考えていただきたいと、そう思います。  それは要望としてお願いをいたしますけれども、もう一つもう少し積極的に考えていただきたいんですけれども、スモン研究班の報告、五十一年度で芹沢先生の報告というのを読ませていただきました。私たち、患者さんの立場に立てば、これははりの治療が大変いいですよというふうにも読み取れます。おたくの方ではまたそこに一応の見解があって、そうすんなりとはおっしゃらないと思いますけれども、もしも芹沢さんのおっしゃったことがすんなり受け入れられないとするならば、それじゃ本当にはりというものが効くものであるかどうなのかということを、実験的に集中的にやってみるというお気持ちはありませんか。なぜ私がそういうことを申すかといえば、いまの西洋医学ではだめなんですよと、はりだってそんなことはわかりませんよと、わからない段階なんです。それじゃ少なくともはりで、患者さんたちに聞いたら、たとえばきのう伺った山形の方、親の退職金全部使い果たして一生懸命マッサージやったと、ある方は自分がスモンになって視力がなくなって、そして鐵灸師になって、そしてそういう人たちが集まって自分の体だからといって一生懸命にはりをやって、一年、二年やったら麻痺が楽になりましたって、昨日も歩いていらっしゃる。具体的にそういう例があるわけですよ。そうすると私、文部省も文教のときやりました。障害児に対して医療教育と実験的に集中して教育をやった場合には、障害児のIQもふえてきた、目も見えるようになった、りっぱな字も書くようになったというのが実験で出ているわけです。そうすると、このスモン、治療法がないんです。はりもどうかわかりませんと、少しはいいでしょうという程度じゃなくて、本当にこのはりが効くかどうか、実験的な立場でこの芹沢さんの報告も一つの参考になろうかと思います。そういう思い切った、いままでの枠ではだめなんです、スモンは。いままでの枠でできた病気じゃないんだから、いままでの枠を飛び越えてそれくらいやるというようなことを検討するということを考えていただけませんか。
  170. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 私どももいろいろスモンの患者さんを扱っておられる医療施設の方々の御意見も伺いまして、はり・きゅうにつきましては、確かにすべてのスモン患者ではありませんが、治療上有効なケースがおるのではないかというふうに考えております。そのはり・きゅうの治療上有効ではないかと考えられる点につきまして、先生御指摘のように、われわれとしても今後治療研究の一環としてこれを前向きの姿勢で取り組んでいきたいと、かように考えておるところでございます。
  171. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ御検討ください。  次に、患者さんの要求として出されましたのは、入院する場合の病床の問題でございます。国立病院、国立療養所に対してはぜひ協力するようにというふうにきのうもお答えをいただいたわけですけれども、具体的にそういう点について差額ベッドをなくするように、差額ベッドに入らないで済むようにというような通達、これはいつお出しになりますか。
  172. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 国立病院療養所は、もともと差額ベッドは非常に少のうございます。また、医療上必要な場合には個室であろうと料金を取っておりません。スモンの場合は……
  173. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 通達、いつお出しになるんですかというのだけ答えてください。
  174. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 特に通知を出さないでも、取らないのが普通であろうと思っております。
  175. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それでは、国立病院療養所があるところはいいけれども、それがないところで患者さんが困っているとするならば、これは公立病院、そしてまた民間病院に対しても当然その処置はとっていただかなければならないと思うわけですけれども、そういう処置はどういうふうにいつごろやりたいというふうに考えていらっしゃいますか、簡単にお答えください。
  176. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) これはスモンのいわゆる恒久対策の一環としまして、入院問題につきましてもいろいろ御要望がございまして、これについてはわが方、薬務局と医務局との間でいろいろ研究、検討を進めているところでございます。現在の段階では、先ほど御指摘のありましたように、国立病院療養所についての取り扱いの、いわばある程度の結論が出たという段階でございまして、公立病院その他についてはさらに医務局とよく御相談をしてまいりたいと、かように考えております。
  177. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 早急に御相談を進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  それから、保険外負担の問題でございますけれども、介護料、付添費、通院費の問題が非常に深刻になっております。東京地裁可部第二次和解案でも、超重症者の介護費用として、和解成立以降、被告が継続的に超々重症者に月額十万円、その他の超重症者には月額六万円支払うものとするというふうになっております。これは文字どおり和解成立以降でございますけれども、理念的には賠償額算定の修正要素に取り入れられていることに国はしっかりと思いを置いて、その立場に立っていただかなければならないと、そう思うわけです。そういたしますと、この介護料についても当然国としての立場で出していただくということになっていただきたいわけですけれども、もしもそれが不可能だとおっしゃるならば、製薬メーカーがこの負担を当面するように仲介の労をとり、製薬メーカーを説得するというようなことは、厚生省の一般行政の立場から言っても当然なされなければならない薬害救済の道だと思いますが、いかがでございますか。
  178. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 東京地裁の和解におきましては、先生御指摘のとおりに、その介護料の支払いが和解の一つの条件として約定されているわけでございます。国の立場におきましては、これは財政法上の制約もございまして、この介護料につきましては、すべて民間会社負担という線でこの話がまとまっているわけでございますが、こういうふうな形での補償と申しますか、和解の成立がすべての患者さんたちにとって統一的に及びますように、厚生省としましても製薬会社に説得の努力をすることにやぶさかでございません。現に説得の努力をいたしておるところでございます。
  179. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 時間がなくなりましたから、質問を続けてやりますから、お答えいただきたいと思います。  要求の中にございました難病対策から切り離し、薬害スモン対策として行えということが大きな要求になっております。これは決して難病ではございません。キノホルムという薬害によって、国の責任もそこに大きくあります、つくられた病気でございます。そうすれば、難病一般の枠ではなくて、スモン対策としての特別の枠をこしらえていただかなければ、スモンの患者救済ということはできないわけでございます。単なる予算をこっちからこっちにスモンに分けたよというような金の使い方の分け方ではなくて、薬害によるスモンの救済の立場に立って、難病とは切り離して来年度の予算も考えていただきたいということが一つでございます。  それからもう一つは、製薬メーカーとの交渉でございます。きのうも積極的に労をとっていただくというようなお答えが出たと思いますけれども、これも要求に従って、製薬メーカー、特に田辺というのは質が悪いですから、これについても相当の腹をくくって厚生省として患者さんたちとの仲介の労をとって交渉の場につけていただきたいということを二つ目お願いしたいと思います。  それから、たくさん聞きたいことがあります。また、次々と個別にお伺いしたいと思いますけれども、基本的な立場から考えて、個別ごとに問題点を明らかにしてきますと、国がこれまでの難病対策としての範囲を乗り越えて、薬害としてのスモン対策という、そこのところですね、いままでの枠では保険制度だとか、いまの制度ではできない、できないからだめだというのじゃなくて、薬害として患者さんを苦しめたその責任から、その立場から具体的にスモンの対策というもの、枠を越えた特別の対策を立てていただかなければならないということを特にお願いをいたします。そうした意味から考えまして、国がその責任をはっきり認めて患者救済を打ち出すということは最小限の義務だと思うんです。それにもかかわらず、現実にいま国がとっているやり方を見ますと——ここ大事なんで聞いてくださいね。一方では和解だ、一方で控訴というふうになってみますよね、そうすると、一方で握手しながら、一方には控訴するという、片一方で握手しながら、片方でひっぱたくというようなやり方と言われても、これはしようがないんじゃないか。  それから、これは特に警告として私はここできちっと申し上げなければならないわけですけれども、法務省の関係官と厚生省関係官が各地の地裁で訴訟派の原告または原告代理人に和解を勧めて歩いている。これ事実あります。勧めて歩いているということについて、私は警告をしなければならないと思うのです。あたかも和解が解決のすべてであるというようなやり方、原告の分裂をつくらせる、指向するようなやり方は、決して許せるものではないと思います。こういうことはやめていただきたい。そして、先ほどから言っているように、政府が救済の責任をしっかりとやるという姿勢を正していただきたい、控訴なんかも取りやめていただきたいということを主張するわけです。  その三問についてスモンの問題でお伺いしたいと思いますし、それから一点だけ、済みません、もう一つ聞かしてください。それはきょうは医療健保の改正問題、ずっと同僚議員から出されまして、これもいろいろ質問したいことがたくさんあるんですけれども、時間がなくなったので、これは後に回します。  ただ一つだけお伺いしたいんですけれども、この改正案というのは、いつごろ国会にお出しになれるというふうにめどを踏んでいらっしゃいますか。国会の会期はもう五月、すぐなんですよね、いつごろお出しになれるのかというので、会期末ですよ、そうしたら、会期末で審議できないじゃないですか。継続審議ということを考えていらっしゃるのか。とんでもないことだと思うんです。その点ちょっとお答えいただきたい。  それで終わります。
  180. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) スモンの対策は、私どもはスモン患者という実態を見て救済なり治療の研究なり、こういう問題に取り組んでいるわけでございまして、判決だ、和解だということで争いをやって、患者はそのためにいろいろ影響することを考えてはいかぬと、私は基本的にはそう思うんですね。和解を奨励しながら、片方では控訴をやって、ひっぱたいていると言われますが、それはむしろ逆だと思うんですよ、私は。それは先生いまいろいろ御質問がありましたが、御指導によって訴訟を大いにやっておられますが、私どもはこの問題は行政責任について法的に争っているだけで、しかし、証人の法的な性格ということについて争っているわけでございますが、したがって、そうじゃなくて、むしろ患者さんの救済のためには和解の方がいいじゃないかということで、訴訟をおやりになった金沢の方にも、とにかく和解を、いつでも私どもは窓をあけておきますよということを申し上げているわけでございます。したがって、和解の方針というものが一番やっぱりこの種の問題についてはいいんじゃないかということで、和解の方をお勧めを申し上げているわけでございますから、この点はひとつよく御理解をいただきたいのでございます。ところが、そう言いましてもやっぱり判決で、もう何とかきちっとしたものを出すべきだという御主張の方がおられますので、したがって、いま言われましたそのスモンというものは難病やその他と切り離して、スモンとしての薬害なんだから、その責任を感じて特別対策をとれとおっしゃいますと、どうしてもやっぱり判決の結果を見ないうちは、私どもはそのアクションが出ないと、こういうことになります。
  181. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そんなことないでしょう。判決できなくたって行政の責任じゃない……
  182. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) それはもう司法の最高のところでやっぱり判決が出るわけでございますから、それはそういうようなことを言わざるを得ないんです。言わざるを得ない。私どもとしてはやはり司法でいまどっちかのあれをやるわけですから。しかし、それとは別に、私がいつも言いますのは、スモンという一つの大きな社会問題を起こした行政上の責任をあらわす意味で、いろんな対策をとりましょうと、こう申し上げておりますから、したがって、その意味においては難病と切り離して、別個な何かスモンの方々については、私としてやり得ることをできるだけやりたいという気持ちで、いまいろんな問題を検討しておるわけです。  はりの治療がいいんじゃないかと言い出したのも、私は先生から聞いたわけじゃないんで、私が局長や何かにはりの治療等については、これはひとつの打開の道じゃないかと、研究してみろと、それについてまた患者さんにその点の負担をできるだけなくするような方法でこれができないか、いま検討を命じているのもそういう趣旨でございますから、和解だ、判決だというようなことについての論争よりは、むしろ私ども患者さんが早く和解についていただいて、しかも田辺についてのお話がありましたが、私も三回も会っていろいろと説得をしております。ただ、法人なり個人の裁判権の基本的な人権を、これはどうしても否定をしてかかるわけにいきませんので、その点は十分田辺側の気持ちもわかりますけれども、しかし、それはそれとして、一方においてこの患者さんの救済の道だけはお互い協力し合ってしようじゃないかということで、いま説得はいたしております。そういう精神で今後とも進めてまいります。  それから、国会へいつ出すかというお話でございますが、できるだけ早く出したいと思って、それのみを念じておるわけでございますから、もういつごろということは全く審議会の先生方の御協力いかんだと思いますので、これをいま一生懸命にお願いをしている最中でございます。
  183. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 会期末との関係。出されても、もう会期ないですよ。継続審議するんですか。
  184. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私どもとしては成案を得次第、ぜひひとつ御審議を煩わしたいと思っているわけであります。
  185. 柄谷道一

    柄谷道一君 健康保険問題につきましては、本日は時間の関係もございますので、改めて議題になった際、または社会保障基本問題懇談会で機会を見て、詳細質問をいたしたいと存じます。  私は昨年の国会で盲導犬問題について質問をいたしまして、その後道交法の改正、国鉄、私鉄、バス等に対する乗車問題等、逐次改善がされておりますが、本日は視覚障害者全般の対策について御質問をいたしたいと、こう思います。  私の手元にある資料は、昭和四十五年十月に厚生省社会局が調査したものでありまして、若干古いものだとは存じますけれども、それによりますと、身体障害者総数百三十一万四千人に対して、就労者の数は五十七万九千人、この対比を就業率と仮に唱えるならば、四四・〇六%の方が就業しておられるわけでございます。これを障害別にながめてみますと、聴覚障害者は五〇・七五%、肢体不自由者が四八・三一%という比率に対しまして、視覚障害者の場合は三八・九九%、いかに視覚障害者の方々の就業というものが他の障害者と比べてむずかしいかということを、これは数値として示していると私は思うわけでございます。さらに、全国社会福祉協議会が発行をいたしております「体の不自由な人々の福祉」というこの小冊子を見てみますと、その視覚障害者の原因がですね、先天異常によられる方は一五・一%で、あとは交通事故、労働災害その他の事故、感染症、中毒性疾患、その他の疾患、いわば中途失明者の方が大多数を占めているという傾向があらわれていると、こう思うわけでございます。  私は、このような諸資料をながめてみまして、他の身体障害者の方々対策はもちろん重視されなければなりませんが、特に就労状態が困難であり人生の途中で失明されたというこの事情を考えますならば、まあ視覚障害者の方々のニードにこたえる水準を持った医療から社会適応訓練、職業訓練等を含めた一貫したリハビリテーションの対策というものが拡充される必要があるんではないか、こう思うわけでございますが、まず大臣としての基本的なお考えをお伺いいたしたいと存じます。
  186. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私も全くそのとおりだと考えております。
  187. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあただいま大臣からはそのような認識については共通であるというお答えをいただいたわけでございますが、それでは具体的な問題をお伺いいたします。  いま全国の視覚障害者の総数は二十一万八千人を数えております。これに対しての施設でございますけれども、昭和二十三年七月十五日施行の国立光明寮設置法によって設けられておりますのは、国立の施設は東京、塩原、神戸、福岡、函館の五ヵ所でございます。さらに、これのほかに公立が四ヵ所、法人立が三ヵ所、これらを合わせて、私設、国公立合わせて十二施設で、その定数は千四百七十五人が定数になっているわけです。約二十二万に近い視覚障害者の実数というものをながめますと、量的に果たしてこの国公立の施設というものは十分であるのかどうかについて疑問を感ずるわけでございますが、いかがでしょう。
  188. 上村一

    政府委員(上村一君) いまの御指摘になりました国立の施設の定員が千百四十、それから公立、法人立の定員が三百三十五でございますが、そこで、その施設に入所の希望してくる方が相当あるわけでございますけれども、健康上問題のある人、それから学力なり能力で、これはあんま師の養成が主たる仕事でございますけれども、それになり得る見込みのない人を除きますと、大体全員入所しておるということでございます。したがいまして、この種の施設としては視力障害者の数に比べて少ないように見えますけれども、事足りておるんではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  189. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ局長のただいまの御答弁は、そのような認識なんでございますが、私どもが知るところによりますと、量的にもなお十分とは言えないのではないかという指摘が強いものがございます。大臣、これはもっとこの実態を精査していただきまして、現在の定員が必ずしもこれ正しいものだというわけではないわけでございますから、量的にもひとつ洗い直していただきたい、こう思います。大臣、いかがでしょう。
  190. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私はやっぱり立地条件等が相当影響しているんじゃないかというような気もいたします。九州に一ヵ所、それから関東地区では二ヵ所、関西に一ヵ所、北海道に一ヵ所という状況でございますから、そういう点をもう少し考えなきゃいかぬかなと。遠くからほかのところへその訓練のために希望するということはなかなか困難でございますので、そういう点も含めまして検討さしていただきます。
  191. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、なぜ入所者が限定された数しかないのかと、やっぱりそこまで掘り下げて、その配置、それから質的な問題、これらを含めて、これは大臣言われますようにもう一度洗い直しをぜひお願いをしておきたい。  次は、私はその質的な問題でございます。現在の施設におきましては、機構として教務課と指導課が置かれております。そして理療士養成と社会適応訓練のこの両方に対応している。中途失明者の方が多いわけでございますから、これらの者は相並行しつつ訓練が行われるべきだということは当然なのでございますけれども、私は、この理療士養成コース、さらに中途失明者のためのリハビリテーションコースというものにつきましては、機能的、組織的に現在十分に充実しているとは言えないと思うわけでございます。もっと有能な専門官を配置して時代の要請に適応した訓練内容にしていく、こういう配慮がさらに必要ではなかろうかと、こう考えるわけですが、いかがでしょう。
  192. 上村一

    政府委員(上村一君) 視力に障害のある人の就業率が冒頭御指摘になりましたようにほかの体の不自由な方に比べて悪いというのは、仕事をする上でのハンディキャップというのが一番大きいせいじゃないか。従来からこの種の人たちの仕事としましては、理療科の関係のあんま師、はり師、きゅう師、そのたぐいの養成中心であったわけでございますが、最近では、ごく一部の施設でございますけれども、視力に障害のある人の新しい職業を開発するために、盲人の電話交換手の仕事でございますとか、あるいはコンピューター要員養成、これはきわめて数は少のうございますけれども、そういったものにも着手をし始めておるところであるわけでございます。
  193. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はそのような専門科目に係る今度はクラス定員の問題でございます。  これはもう本当に古い話でございまして、昭和四十一年十一月七日には、あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復等中央審議会が意見書を出しております。またさらに、昭和四十五年八月には身体障害者福祉審議会が答申を大臣に行っております。これらの意見及び答申はいずれも、一学級の定数を十五名以下とすることが望ましい、いずれもこう指摘されているわけです。私冒頭申しましたように、視覚障害者の方々の再就職なり更生が非常にむずかしい。とすれば、少数のクラス構成でより充実した訓練というものを行う必要があるということをこの両審議会は指摘していると思うんですね。私は、質的充実強化の一環として、このクラス定員というものに対する是正が必要ではないかと、こう思いますが、いかがでしょうか。
  194. 上村一

    政府委員(上村一君) いろんな意見書が出たわけでございますが、現在の認定規則では一学級の定員が十五人以上三十人以下と書いてあるわけでございます。ただ、御指摘になりましたように、国立の視力障害センターでは、もっと教育の効果を上げたいということから、実技の実習とそれから専門科目につきましてはクラス定員三十人を二つに分けまして、十五人単位で授業をするように指導してまいっておるわけでございます。ただ、一部の施設では生徒の数によって二十人程度を単位にして授業している施設もございますけれども、その解消は今後も図ってまいりたいと思うわけでございます。いま二十名でやっておりますのは、どうしても設備に制約があって、教室の数等もございますものですからそうなっておるわけでございますけれども、基本としては十五人で実習の指導をするようにやっておるわけでございます。
  195. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、まだ施設そのものも不十分な点があるんですね。そこで、昭和四十一年に答申され意見書が出されたものが、大部分それに近づいてはおりますけれども、依然として十五人——以下ですからね、この意見書、答申は。何も十五人と書いているわけじゃないです。なるべく定員を少なくしてより充実した訓練をと、これが精神でございますから、私は施設の改善を含めてこの答申の意見というものを早く実現するための努力、国の施策、そして政治の姿勢というものが必要じゃないかと、こう思いますが、どうでしょうか。
  196. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 努力をいたします。それは確かにもう十年以上も前にそう言われながらできないということは大変申しわけありませんので、施設の整備によってできるものなら施設整備費もございますからできるだけ早くやりたいと、こう思います。
  197. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はそれとあわせまして、質的な問題のもう一点はいわゆる設備の問題でございます。視覚障害者の方々は、全盲者の方々にとっては、サームフォーム——いわゆる点字複写機、それからオプタコン——触覚模型、こういった器材の充実を強く求められております。弱視者のためには、弱視鏡、読書テレビの配置、ないしはエレファックス——いわゆる拡大文字印刷機等が必要だと叫ばれております。さらに、テープ及び点字専門図書の整備をするためのオープン及びカセットプリンター、さらにこれらの器材というものを駆使するいわゆる専門官の配置、こういう設備と人的な強化というものと、いま大臣御努力されると言いましたこの定数というものが相見合っていかなければ、私は本当の意味での質的な充実した訓練にはならない、こう思うわけでございます。本年度、設備の充実のための経費がわずか九百万円なんですね。私は全体の三十四兆二千九百五十億円という予算規模からして、余りにもこれは少ないのではないだろうか。政府は何か三ヵ年計画で整備を図られるという方針だと聞きますけれども、私は、本年度、初年度はもう予算が決まりましたのでこれはもうまことに残念でございますけれども、このペースで二年度三年度といっても余り効果的な充実はできないと思うんです。二年度三年度には、やはり大臣も一度ぜひこの施設を見ていただいて、そしてこの予算の増額というものに対して御努力を願いたい、こう思うわけです。どうでしょうかね。
  198. 上村一

    政府委員(上村一君) まず教材とか器具の整備でございますが、これは五十二年度から三年計画で、いま御指摘になりましたように九百万ずつで整備しておるわけでございますが、同時に五十三年度の場合には、臨床実習室等の充実ということで、国立の福岡の視力障害センターに臨床生活訓練棟というのを約四千万円をかけまして整備しておるわけでございます。こういった施設の整備とそれから器材の整備というのは、これからも逐年充実を図ってまいりたいと考えております。
  199. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ大臣としても御努力を願います。私は実態をいろいろ調査いたしますと、入所者の方々の約三分の一は弱視者でございます。しかも、高卒の方が相当多いという実態でございます。そういう現状を考えますと、職場開拓、すなわち能力に応じてより適切な進路を選択し得ると、こういう意味におきまして、従来までの理療士中心ではなくて、これに加えて、たとえば理学療法士、さらに柔道整復師といったような新しいコースを新設をして、職業訓練というのがさらに多角的に行われるようにする、そういう対策が必要ではないかと思うんですが、お考えいかがでございますか。
  200. 上村一

    政府委員(上村一君) 御指摘になりましたように、高卒の中途失明者というのはふえてきておるわけでございます。そこで、東京と福岡に高卒者を対象にしましたコースを設けましたが、五十三年度はさらにそれを神戸にまで広げるつもりでおるわけでございます。  それから一部の施設では、このほかに点字の印刷の訓練、それから農芸科を設けておるところもあるわけでございまして、お話になりました理学療法士のコースの設置につきましては、現在所沢に国立のリハビリテーションセンターというのを建設中でございまして、その中で理学療法士等の養成部門というのを設置するように検討しておるところでございます。
  201. 柄谷道一

    柄谷道一君 これも大臣言われましたように、逐次充実されていることは知っているんですよ。しかし、PTの養成コースは所沢とこう言われるのですね、大臣も言われましたように全国からその希望者は東京に集まれというのもいかがなものかと思うんですね。そういうコースの多角的な訓練の充実というのは、やはり全国的視野で視覚障害者の方がなるべく近い地域で多角的な訓練を受けられるという体制に向かうことが私は至当ではないか。所沢は一つの実験的なことかもしれませんけれども、ぜひそういうコースを少なくとも国公立の視覚障害センターには普遍的に拡大していく、こういう考えが至当であろう、こう思うんです。政治家として大臣いかがに思われますか。
  202. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるとおりだと思いますが、恐らく社会局や児童局のいろいろ身体関係の不自由な方々の予算というものは毎年伸ばしてはおりますが、非常に経常経費としての伸びがどうも他の予算に食われておるような気が、私着任してからしておるわけでございまして、たとえば農林省が食管の赤字のために他の行政費が非常に窮屈だというのと同じで、厚生省の予算全体を見まして六兆七千億の八割が、しかもそのうちの四割五分、全体の四割五分が医療費であるということの問題等も、やはり根本的に私ども健全化して解決をしていって、早く気の毒な方々の予算の伸びがうんとできますような方向に、全体としてやっぱり考えていかなきゃいかぬなあという感じを私自身率直に持っておるわけでございます。しかし、それが一遍に直らぬのに片っ方それじゃそれまでは待つのか、こういうわけにいきませんから、身体障害者全般の対策につきましては、いろいろ私も研究しまして、来年度の予算でできるだけがんばってみたいと思っております。
  203. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は中途失明者の更生の道は本当に狭いと思うんです。いま努力はされておりますけれども、実態は理療士に限られているような感が深いわけでございます。そこで職業開拓のための訓練につきましては、いま局長及び大臣の御意見もございましたように、今後引き続いて格段の努力が必要であると思うんですけれども、私はその狭い道を、最近では晴眼者の理療業に対する進出が著しいために、狭い道を一層狭くしているという現状があらわれているのではないだろうか。私の調査ですと、あんま・マッサージ・指圧師の四九%、はり師の五六%、きゅう師の五八%は晴眼者でございます。しかも、昭和五十二年四月現在の私立のあんま・マッサージ・指圧師養成所の定員を見ますと、その八八%は晴眼者でございます。私はこういう事態をとらまえますと、たとえば私立の養成所にいたしましても、視覚障害者のための定数を確保するとか、さらに工夫というものがあってしかるべきだろう、現状のような姿からいたしますとますます限られた職業分野というのが狭められていく、そういうおそれなしとしない、こう思うんです。この点に対する厚生省の御意見を伺います。
  204. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) ただいま先生から晴眼者に対する視覚障害者のあんま師等に占める割合のお話がございましたが、ちょっと私どもの持っております数字と違いまして、私どもの持っている数字では、四十八年、五十一年比較いたしまして横ばいの状態になっております。たとえば五十一年では、あんま・マッサージ・指圧師は五一・〇%はり師は四四・一%、きゅう師は四二・二%となっておりまして、ほぼ横ばいでございます。  次に、養成施設の問題でございますが、先生もよく御存じのように、三十九年のあんま等法の改正のときに十九条というのが入りまして、特に視覚障害者を優遇する規定が入っております。視覚障害者に御迷惑をかけるような場合には学校の、養成所の許可をしない、承認をしない、あるいは定数増を承認しない、定員の増加を認めない、そういうふうな方針が法律で打ち出されておりまして、あんま・マッサージ・指圧師については法律に基づいて厳格にやっておりますし、それからはり師、きゅう師につきましても四十八年に医務局長通知を出しまして、あんま師等と同じように運営をするように強力な指導をいたしております。先般もある県のある学校で定員の増加で問題になりましたけれども、強力な行政指導をいたしております。
  205. 柄谷道一

    柄谷道一君 資料の出所について、ここで時間もありませんので論争することを避けたいと思いますが、私は昭和五十一年度衛生行政業務報告から資料をとりましていまの数値を申し上げたわけでございます。これ厚生省の数字ですから。  いまの指導されておるということなんですけれども、それによりますと、私立ですね、晴眼者の定数千四百九十八名なんですね、これ五十二年四月現在ですよ。そして視力障害者の定数は百九十五名なんですよ、これ。これが実態なんですね。ということは、私は指導はされているとは言いますけれども、この実態を見れば、現実というものはいま医務局長の言われた姿に果たしてなっているのかどうかということについては、数字は正確に実態を私は物語っていると思うのです。まあほかに質問がありますから、この点につきましては正規の委員会の質問を離れて、また厚生省といろいろ折衝をいたしたいと思っております。  それから次に、私はそうした問題とは別個にまた重要視しなければならないのは、無免許施術者の存在でございます。これについては、医務局長から各都道府県知事に強化を指示しているとか、全国衛生部長会議でも保健所、警察等関係機関の協力を求めているという事実は承知いたしておりますけれども、なかなか実効を上げていないというのがその姿でございます。私は一片の通達や会議で無免許施術者の現状を改めることができるほど実態はなまやさしいものではないと、こう思うわけです。これに対する今後の具体的対策についてお伺いをいたしたい。
  206. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) その件につきましては、通達といたしましては三十七年に課長通達が出、四十九年に局長通達が出ております。また、最近しばしば部長会議等で指示しておりますのは、まず県の衛生当局がこういったあんま等業の実態をまず把握をする、で、その有資格、無資格をよくチェックをする、また一方、旅館、ホテル等々にリストを提供して、できるだけ——できるだけではございません、有資格者を使う、またできるだけ視力障害者を使っていただく、そのような御指導をするわけでございますが、法律違反につきましては、最終的には警察当局と連絡をとりまして行政処分をするという方針でございます。先生から見ればまだ不十分かと思うのでございますけれども、私どもといたしましては右のような従来の方針に従って、できるだけ厳しく規制をしていく方針を堅持しております。
  207. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間の関係がありますから、二つ質問をあわせていたします。  一つは、国立視力障害センターの卒業生のここ数年の実態というものをながめてみますと、国公立病院施設に就職した者は皆無に等しいものがあります。私立の大病院では理学療法士、作業療法士のみが採用の対象となっている傾向であります。小病院の採用者も対象者は弱視者に限られまして、一、二級の重度障害者は対象外とされている、これが実態ではないかと思うのであります。国公立病院における採用枠の確保や私立病院に対するこれの準用、さらに産業マッサージ制というものを導入するなど、中途失明者の私は職域拡大のために一段の努力が必要ではないかと思いますので、それに対する所見をお伺いしたい。  第二点は、あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅうの開業に必要な資金がどれぐらいかかるのか。私はある医療器会社の調査を要請いたしましたところ、あんま、マッサージ、指圧、はり、きゅうの開業に必要な設備資金だけで二百四十五万九千百五十円、あんま、マッサージと指圧関係だけで二百十二万九千三百円という設備費の目論見書が出ております。このほかに電話が要ります。冷暖房、広告、看板、さらに治療室、待合室等の新築ないしは改装、こう考えますと相当多額の更生資金を要するのではないか。世帯更生資金貸付制度がございますけれども、私は、これが低所得者のための制度に付随的につけ加えられている、こういう感がするわけでございます。身障者の自立更生のための経済的施策と、こういう視点に立ちますと、貸出限度額、償還期限、金利等においてさらに洗い直しが行われ、これに対する対策が必要ではないかと、こう思います。簡潔に大臣の方針をお伺いしたいと思います。
  208. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 技術的なことについて私から答弁させていただきます。  まず、国立病院におきましては、心身障害者の雇用は雇用促進法で定める一・九%を超えて三・三%雇用いたしております。ただ問題は、視覚障害者の雇用率でございますが、全心身障害者の雇用の一・〇四%ということでまだ必ずしも高くございません。しかも、問題は中途失明者の問題でございます。この点は今後も大いに努力をいたしたいと考えておりますが、医療機関の特性から視覚障害者についてはある程度の制限があるということはやむを得ないことでございますので、その点を慎重に考慮しながら、できるだけ雇用の促進に努めたいと考えております。  次に、施術所等の開業の医療金融公庫からの融資の枠とか条件の問題でございますが、まず毎年の融資の申請の出方を見てまいりますと、いま先生がおっしゃったほど、それほど多くないわけでございます。まずそういった実績がございます。件数にしてもまた一件当たりの単価にしても、どうもそれほど多くないという問題がございます。しかし、これは基本的にはほかの診療所だとかあるいは薬局だとか助産所だとか、そういうものとの並びの関係がございまして、あんま等の施術所だけを特に優遇するということは困難でございますけれども先生が御提案なさいました償還年限の問題とかあるいは限度額の問題だとか、こういったものの改善については今後も引き続き努力をいたしたいと考えておりますし、金利につきましてはプライムレートに並行いたしましてだんだんと安くなるものと考えております。
  209. 柄谷道一

    柄谷道一君 本日は、質問時間が三十分に限定されておりましたので、視覚障害者対策の問題につきましてはほんに表口をなでた程度の質問に終わらざるを得なかったのが残念なんでございますが、いま私が一、二指摘いたしましただけでも、身障者の中でも特に更生自立かむずかしいと思われるこの視覚障害者の対策、施設の質と量、そのための訓練、さらには更生資金の問題、これらに比べて私はまだまだ大臣が常々言われております福祉国家への道、福祉への道、これを歩む国の施策としてはまことにさびしき限りではないかと、こう思うのであります。私は、本当にそのことを希求している二十一万八千人の視覚障害者がある、こういうことを考えれば、もっと大臣力を入れてこの問題に対処していただきたいと思うわけでございます。最後に大臣の所感をお伺いしまして、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  210. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いろいろ御高見を拝聴いたしまして、私もきょうの御質疑をメモいたしましておりますから、それぞれ対策についてできるものからもうできるだけ努力をしていきたいと思います。
  211. 下村泰

    ○下村泰君 長い時間にわたって大変皆さん、いつも私が質問するときはお疲れのようなので、何ですかね、やっぱり慰労の言葉を先に述べなきゃ後が続かないような感じで、御苦労さんでございます。  私も重度心身障害者のことについて御質問をさせていただきたいと思うんですが、その前に、沖繩県那覇市西一の十二の七にお住まいの平良さんという方から、この方を初めといたしまして十一人の方の連名で沖繩県知事あてに請願書が出ております。これをちょっとお読みいたします。  「サリドマイド被害疑いの者に対する診察ならびに専門医師の派遣方について」という項目です。内容は、「私たちは「沖繩タイムス」(昭和五十二年十二月十五日付)の報道により、サリドマイド被害に対する第二次補償の結果、沖繩県でもサリドマイド被害児のいたことを知りました。私たちはこの記事ではじめてサリドマイド被害に対する補償申請のあることを知り、私たちの子どもは症状から見てサリドマイドによる障害ではないかという強い疑いをもっております。しかし、「沖繩タイムス」(昭和五十二年十二月十七日付)の社説が指摘するとおり沖繩県にはサリドマイドに関する専門家もおりません。また東京まで出向くのには時間的にも費用の面でも個人にとっては、かなりの負担になります。  そこで私たちは協議した結果、厚生省にサリドマイド被害に関する専門調査医師の派遣をお願いしようという結論に達しました。ご多用中恐縮ながら私たちの立場を賢察の上、厚生省に対して専門調査医師団をご派遣くださるようなご高配を賜りたく連署をもって請願します。」  昭和五十三年二月二十七日の日付でこれが出ております。  これはもちろん、厚生省の方には来てないはずです、これは沖繩県庁でとまっているやつですから。それを、こういう情報を得ましたので、わざわざ沖繩県庁の方に電話を申し上げましてこの書類をいただいたわけなんです。  こういうふうに、沖繩県の方々は知らないがために診査を受けることができなかった。これに対して、多分係の方だろうと思います、厚生省の方にお電話をなさったらしいんですね。そうすると、厚生省のどなたかはわかりませんが、こういう御返事をなさっているんです。財団法人の「いしずえ」でいま全国的にまとめているのであるから、そこで数がまとまったときに、私の方でも次の手は考えてあるんだけれども、それまで待ってほしい、というような御返事がこの県庁の係の方の方にあったらしいんですが、そのサリドマイド児の「いしずえ」の方でまとめたときに手を打つということの内容というのはどういうことなんでしょうか。何かそういう含みがあるのでしょうか、伺わしてください。
  212. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) この問題につきましては、昨年十一月二十二日、当参議院の社会労働委員会におきまして先生からの御質問もございまして私もお答えした記憶があるわけでございますが、その第二次の分の一応の処理が終わりまして、その際にまだそれでもう厚生省は打ち切りというようなことを言っておるけれども、出たらどうするんだというようなことが一般的に批判としてございました。これについてはサリドマイド胎芽症であるというふうなことの、あるいはそれの疑われる情報がもしもあれば、それに対してはその段階において当方として適切な措置をとる所存であるということをお答えしたわけでございます。担当者がまとまったらということを申したかどうか、またあるいはどういうことでそういう御返事をしたのか私個人としてまだ存じませんけれども、恐らくたとえば第三次というふうなことであるとすれば、当然これは先生も御承知のとおりに、これは非常に専門的にこの件に詳しい医師団の方々と、また西ドイツのレンツ博士自身も第二次の鑑定については直接御参加いただいて学問的に疑念を残す余地のないような処置をしたわけでございますので、ほかにもあるいは漏れがあったらばそれと一緒にというようなニュアンスで申し上げたのかと存じます。ただし、この沖繩について私、きょう初めて十人の方々の連名が出たという事実を承知したわけでございますので、これは「いしずえ」とも連絡をとり、また県庁の方にも連絡をいたしまして、その事柄の実態を十分見きわめまして適切な対策考えてまいりたいと、かように考えております。
  213. 下村泰

    ○下村泰君 薬務局長でしたね、中野さんは。もちろん、御存じないのがあたりまえです、先ほど申し上げましたように、これは県庁でとまっている書類でございますから。ただいまも局長のお口から出ましたけれども、ここに昭和五十年一月十一日、厚生省薬務局企画課というところで、こういうサリドマイドの申請に対する説明書が出ていますね。この中に、「補償の申し出は、同封の「サリドマイド被害者補償申出書」および「母親のサリドマイド製剤の服用に関する申立書」に必要な事項を記入して次のいずれかに提出してください。」という項目があって「厚生省薬務局企画課」が入って、「財団法人いしずえ」が入っております、東京と大阪。そうしますと、財団法人「いしずえ」という存在は、このサリドマイドに関して厚生省の方はどういうふうなお考えなんですか。これは外郭団体みたいに考えていらっしゃるのか、それとも手間を省くためにこっちへ責任を転嫁するみたいな感じで任せているというのですか、どんなふうな。
  214. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 「いしずえ」は、本来の性格から申しますと、補償金のいわば年金払いというふうな重大な事項がございまして、その年金払いのいわば受託者と申しますか、委託の面もございますが、そういう機能を本来持っております。それ以外に、サリドマイド胎芽症の方々の福祉一般と申しますか、相互連絡とかあるいは相談とか、そういうふうなきめの細かい機能を果たすためにつくられた公益法人でございます。したがいまして、その窓口が役所でも「いしずえ」でもということは、そういう意味において「いしずえ」そのものがいわばサリドマイド胎芽症の児童の方々の福祉を目的としている団体でございますので、そこを一つの窓口として御利用いただくということも決して本来の目的に反することでもございませんので、そういう趣旨でそれをも含めてお願いをしたというふうに理解をいたしております。
  215. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、今後たとえば沖繩の問題に関しましても、「いしずえ」の方と厚生省の方の窓口と御連絡なさるということは、これからも続いていくわけでございますね。
  216. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) そのとおりであると考えます。
  217. 下村泰

    ○下村泰君 実は、沖繩にもう三人出ております、こういう患者が。しかも認定されております。厚生大臣、これはいまも申し上げましたように、これは沖繩県庁でいまとめられているものなんです。しかし、親御さんにとりましては大変心の痛む問題でございます。で、医師の派遣どうでございましょうか、厚生省の方として医師を派遣してくださいますか、それとも派遣するような手だてを近々講じていただけますでしょうか、そこのところをちょっと伺いたい。
  218. 中野徹雄

    政府委員(中野徹雄君) 私といたしましては「いしずえ」及び沖繩県庁と十分連絡をとりまして、実態をよく見きわめた上で医師派遣の必要あるいはほかの要素も含めまして検討いたしたいと思っております。事情をよく見きわめて、十分その必要があれば当然医師の派遣も含めて適切な対策を講じてまいりたいと思います。
  219. 下村泰

    ○下村泰君 いつ幾日ということは申し上げませんが、ひとつよろしくお取り計らいのほどをお願いしておきます。  次に、田中元厚生大臣在任当時、在宅療養をなさっていらっしゃる重度心身障害者の緊急保護費という予算を請求いたしましたところが、当時の大臣もすぐにこれを認めてくださいまして、たしか実施されて三年目に入っておると思いますけれども、その緊急一時保護の利用状況はいまどうなっていましょうか。
  220. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 五十一年の十月から制度を発足させたわけでございますが、五十一年度では五県市が未実施でございまして、五十一年度に実際にやりましたのは三百四十四件、日数にいたしまして三千三百十五日。なお、念のため申しますと、予算の件数は七千八百三十六件予定しておりましたので、実際の実施率は五%程度というのが実態でございます。なお、これは五十一年の十月で半年分でございましたので、さらに五十二年度予算におきまして同じく七千八百三十六件の予算件数を計上いたしまして、実質的にただいままでに申請がございましたのが千九百十九件でございます。
  221. 下村泰

    ○下村泰君 これはひとつできるだけこういう子供さんを抱えていらっしゃる方々にPRをしていただきたいと思うのです。そうして、その趣旨を徹底していただきたいと思うのですが、その方法はどういうふうになさっていらっしゃいましょうか。
  222. 石野清治

    政府委員(石野清治君) ようやく軌道に乗ってきたわけでございますが、周知の方法といたしましては、一つは都道府県を通じて行政ベースで広報をするということでございまして、私の方は民生部長会議あるいは衛生部長会議等にこの制度についてPRをまずやってくれということをお願いいたしております。それから同時に、さらに県の児童相談所なり福祉事務所の方にそれを徹底させるようにも御指導申し上げております。  それからもう一つは、やはり行政ベースだけではなかなか進みませんので、いわゆる親の団体に対しまして、親の団体がやっております在宅療育の指導士というのがございますが、その指導士にできるだけこの制度のPRをお願いいたしまして、各個人の方がそれを理解できるようにという形でやっておりますのと、それから私自身も出演いたしましたけれども、短波放送等でこういう制度がございますのでぜひ利用してほしいということも申し上げてまいりました。それからさらに、各市町村の段階では市町村の広報紙でございますが、これにできるだけ回数を多く載せてもらうように努力はいたしております。
  223. 下村泰

    ○下村泰君 それはそれで結構です。ありがとうございました。  それから、重度の方たちの最も望んでいるのは施設の増設、それからその施設ができたらそこへ入るという入所でございます、それから及び在宅援護に対する施策、これも充実の方向に進んでいると考え——もっとも充実の方向に進んでいると考えますなんていう言葉はこれはあくまでも言葉のつなぎでありまして、一月三十一日の予算委員会で総理に伺いましたら、総理ははっきり答えました。残念ながら後進国並みでございますと、福祉に関しましては完全に出おくれているのは事実でございましてと……余りはっきり自慢されるとこっちも後言いようがなくなっちゃうんですけれども、この在宅援護とかあるいは施設の増設、入所、これはどういうふうに進められていましょうか、いま、今度の予算案の中では。
  224. 上村一

    政府委員(上村一君) 重度の対策というのは二つございまして、一つは施設に入れる対策一つは在宅対策。それで重度の対策というのはスタートがおくれました関係がありまして、まだ十分でない点は御指摘のとおりでございます。  それから、在宅対策としましては、一つはこれから御審議いただきます法律の中で、福祉手当の額の引き上げを図っているのがございます。それからもう一つは、さっきお話しになりました中でございますけれども、新しく十八歳以上の重い身体障害者について緊急保護事業の対象にしたということが一つ。それから、五十三年度の新しい仕事としまして、身体障害者等に対する住宅整備資金の貸付事業というのも行うことにしたわけでございますし、先般御質問いただきましたような身体障害者の福祉バスの設置というようなものを進めておるわけでございます。こういうのが五十三年度の新しい仕事でございまして、このほかに従来からおりますホームヘルパーの充実でございますとか。あるいは日常生活用具の支給でありますとか、そういったものの対策というものを充実しておるわけでございます。
  225. 下村泰

    ○下村泰君 いまちょうどお話が出たついでにお伺いするんですけれども、リフトバスは、一体何台ぐらいつくって、どういうようなところにどういうふうな配置をするのかお聞かせください。
  226. 上村一

    政府委員(上村一君) 五十三年度の計画といたしましては、原則として人口二十万以上の市に設置をするというふうに考えておるわけでございます。五十三年度の予算では三十台、一台六百六十万円でございます。
  227. 下村泰

    ○下村泰君 この二十万人以上のところへ設置するということは、厚生省が昨年出した五十三年度の予算の小冊子がありましたけれども、これから見ると大分進歩しているんですけれども、台数が減っていますね。台数が減っているのと値段が減っている。一台につきの値段が大分安くなっていますが、大分値切ったかどうかしりませんけれども、値切ったらかえってぐあいが悪くなるなんということはありませんね。一台こっちは七百二十万になっているんです。三十四台つくって人口五十万人以上の市に五年計画で配置する、こういうふうになっていますね。値段が下がって減ったというのはおかしい。値段が下がれば、製作費が下がれば、台数がふえそうなものですが。
  228. 上村一

    政府委員(上村一君) 厚生省の広報誌に載りましたのは、五十三年度の概算要求の厚生省の原案でございまして、それが大蔵省にまいりましていろいろ調整があった結果が、先ほど申し上げましたような数字になったわけでございますが、当初私どもは人口五十万人をめどに一台ぐらい用意していこうかというふうに考えておったわけでございますが、むしろそういった広い人口五十万の地域一つという考え方よりも、人口二十万の都市に置く方がより効果的ではなかろうかというふうなことで変えたわけでございます。  それから、台数が当初よりも若干減っておるわけでございますが、これは人口二十万以上の市について年次計画で整備していきます場合に、三十台ということになるわけでございます。
  229. 下村泰

    ○下村泰君 ボーイング727といわゆるジャンボ機とは違いますからね、容積が。ですから、台数が減っても大きくなれば、これは文句は言いませんけれども、台数は減るわ、形は小さくなるわでは、何の役にも立たないと思うんですけれども。  それから、ないよりはあった方がいいとは思いますけれども、厚生大臣はたしかこの間「あゆみの箱」の帝国劇場で行いました東京大会にはお越しにならなかったでしたね。毎年大臣お越しになるんです。来なかったのは小沢厚生大臣だけなんです。ほかに御用があったんでしょうから、ようございますけれども、身体障害者の方たちをああいう劇場に招待するのでも、その送り迎えは容易なことじゃないんですよ。ですから、こういうリフトバスというのができ上がりますとね、その児・者であるとか、そういう方々が娯楽も持てますし、それから一般の方々と一緒にものを楽しむということの生活の意欲というのがわいてくるわけです。もちろん、いまも申し上げましたように、ないよりはよござんすが、やはりもう少し温かみのあるような台数にしてほしいと思います。これから順次ふやしていくんだろうとは思いますけれども。あと運営方法については、いまここで申し上げません、これからまた時によって時間を割かせていただいて、このお話は進めさせていただきます。  それから、いまお伺いしました中に、この身体障害者のための住宅整備資金貸付事業、これは内容はどういうふうなもので、その手続が煩雑だと大変こういうことは避けたがるのが人情で、それから貸し付けである以上返さなくちゃいけないんですが、その返済方法とか、そういうのをちょっと聞かしてください。
  230. 上村一

    政府委員(上村一君) この仕事の目的は、体の不自由な人の居室、便所、浴槽そういったものを新しくつくりましたり、改造するのに必要な経費の貸し付けでございます。それで、五十三年度が初年度でございますが、財政投融資の資金の総額、大体九億円ぐらいの規模を考えております。細部についてはいま詰めておるわけでございますが、一応の考え方としまして、重い心身障害のある人あるいはそれと同居する親族で、そういった増改築ということを自力でやれない人、これが貸し付けの対象になるわけでございます。貸し付けの実施主体は原則として市町村、つまり市町村に申し込んでいただくということになるわけでございます。この一つの例というのが、四十七年度から老人向けの住宅資金の貸し付けというのをやっておるわけでございますが、事柄の性格上それよりも金額は多くするつもりでございます。それで大体、利子は資金運用部資金の貸付利率の範囲の中でございまして、償還期限は十年以内というのが老人の住宅資金の貸し付けを頭に置きました場合の一つの目安になるわけでございます。こういうふうにして運用してまいりたいというふうに思うわけでございますか、いま申し上げましたように、市町村が窓口ということでございますから、お気軽に相談いただけるんじゃないかというふうに期待しておるわけでございます。
  231. 下村泰

    ○下村泰君 しかし、自力でそういう資金のできない人に貸し付けるというふうにいまおっしゃいましたけれども、自力でこういう資金のできない人が、果たして十年で返済できるかということが私は疑問を抱くんですけれどもね。もし、そういう返済能力がなければ借りることができない、こういうことになりますね。そうしますと、そういう方たちは永久に自分の家の中の整備ができないということになりゃしませんか。
  232. 上村一

    政府委員(上村一君) これは財政資金を借りてきまして、そしてそれを特別地方債の形で自治体が運用するものでございますから、貸付制度になるわけでございますが、私いまそういった自力でと申しましたのは、ほかの金融機関から借りるようなことが容易でないような人、そういった人に公的な資金というものを貸し付けようということでございまして、したがいまして、利子も安うございますし、貸付期間等も長うございますから、この人たちが全然収入がないわけでもございませんので、その償還は期待するというふうに考えておるわけでございます。と申しますのは、先ほど話題に上りました世帯更生資金という制度があるわけでございますが、これは所得の低い人にお金を貸しておる制度でございますけれども、やはり所得の低い人というのは非常にまじめなんでございましょうか、償還率が非常によろしいわけでございます。それと同じように、きちんと返していただけるものであるというふうに私は期待しておるわけでございます。
  233. 下村泰

    ○下村泰君 どうも歯車がかみ合わないんですがね。実際のことを言って、そういう状態に置かれている人が、こんなに余力あるはずがない。しかも、多少なりともその家に余力があったにしても、その人がもし患った場合には、一体どういうふうになるかというふうなことを考えると、どうも私と局長の間にはかみ合わないものがあるんですけどね、もう時間がありませんね。  それから、もう一つ伺わせていただきますが、今度養護学校義務制が五十四年から実施されることになっております。これは言葉の上ではまことに簡単なように見受けられるんですけれども、実際にこの重障児ですね、施設に入っている重障児が一体どういうような教育をされるのか、ここのところが大変問題じゃないかと思うんですが、これどういうふうにお考えになっていますか。
  234. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 確かに、養護学校の義務制が発足になりますと、重症心身障害児のような場合について大変問題がございます。一般の肢体不自由児施設でございますとかあるいは精薄児施設、この就学率を見ますと大変高うございまして、すでに肢体不自由児の場合は九八・九%、それから精薄児施設の場合でございましても八三・八%、ここまで上がってきております。ただ問題は御指摘の重症心身障害児のような場合、これは非常にいま現在でも三六・四%しか行けない、こういうことになっておりまして、むしろこれは私ども考えれば、医療なりあるいは生活訓練、生活指導、そういうものが優先されて、その上に教育がかぶさってくる、こういうことでなければならないと思っているわけでございます。一律に養護学校義務制という形で押しつぶしてしまいますと、その障害児にとりましては大変な不幸なことになりますので、私ども文部省ともよくいま相談しておりますけれども、どういうことでこれを個々のケースについて当てはめていくのか。特に重症の場合については、先ほど申しました医療のケアというのが非常に必要な場合もございますので、それとの関連をどうさせるのか、いろいろ検討していきたいと思っております。  なお、厚生省自身でも中央児童福祉審議会で医療と福祉の接点、そのかかわり合いの仕方につきましていま検討いたしておるところでございまして、近々結論を出すつもりでおりますが、それに従った形で行政当局推進していきたいとこう思っております。
  235. 下村泰

    ○下村泰君 それは実際のことを言って、先生が施設の方に出かけていってたとえば教育をするとしましても、そこにいらっしゃる介護人の方と、この間もこれは予算委員会でもお話ししたのですけれども、介護人の方とその先生とがうまくかみ合いませんと、なかなかやりにくいことで非常にむずかしいんじゃないかと思いますが、しかし、義務制にしていただいてそういうお子さんたちの少しでも知能程度を上げようと努力なさる姿というのは私は結構なものだと思いますので、いろいろ障害がありましょうけれども、ひとつがんばっていただきたいと思います。  厚生大臣も先ほどからずっと伺っていますと、大変お気の毒な存在で、色よい返事は幾らもしたいが敵の数の割りには矢玉が少ないというような状態でまことにおつらい立場でしょうけれども、しかし、そのためになった大臣ですから努力はしていただきたいと思います。私は本当に大臣の姿を見ていて、大臣なんて頼まれたってなるものじゃないと思いましたけれどもね、なった以上はやっぱり責任をとっていただかないと困りますので、先ほどから申し上げましたように、いろいろと皆さん問題を抱えてそれぞれの御質問を一生懸命なさっていらっしゃいます。少しでもその質問の内容にお報いくださるように御努力くださるかくださらないか、一言聞かしていただきたいと思います。
  236. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 当然私は、もうおっしゃるように報いる報いないの問題じゃなくて、私の義務としていろいろ先生方の御意見はまさに身体障害者あるいはその他社会保障の必要とする面についての御意見でございますので、十分私、きょうの御意見を意に体しまして努力をいたします。  先ほど「あゆみの箱」の大会のときに参らなかったのは、私は行きたくてしょうがなかったのですけれども、国会のお許しが出ませんで、社会労働委員会で七時半か八時までおったものですから、ついに行けなかったわけでございますし、いまいろいろお話を承りまして、ごもっともな点も十分わかっておりますから、来年度予算また一層努力をいたします。
  237. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  238. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 次に、戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。小沢厚生大臣
  239. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金の支給を初め各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、これらの支給額を引き上げ、支給範囲を拡大するほか、戦没者の父母等に対する特別給付金を改めて支給するなど一層の改善を図ることとし、関係の法律を改正しようとするものであります。  以下この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。  改正の第一点は、障害年金、遺族年金等の額を恩給法に準じて増額するものであります。  改正の第二点は、昭和十二年十一月三十日の閣議決定「満州に対する青年移民送出に関する件」に基づいて実施された満州青年移民が、軍事に関し業務上かかった傷病により障害者となり、またはこれにより死亡した場合において、その者またはその者の遺族に、障害年金、遺族給与金等を支給するものであります。  第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。これは、未帰還者の留守家族に支給される留守家族手当の月額を遺族年金の増額に準じて引き上げるものであります。  第三は、戦傷病者特別援護法の一部改正であります。これは、さきに述べました満州青年移民のうち軍事に関し業務上傷病にかかり、現に第五款症以上の障害がある者に、戦傷病者手帳を交付し、療養の給付等を行うものであります。  第四は、戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、特別給付金として交付されてきた国債の最終償還を終えた戦没者の父母等に対し、改めて特別給付金を額面六十万円五年償還の国債で支給するものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  240. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  本案の自後の審査は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会      —————・—————