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野田哲君 あなた方の方ではひそかにつくっていて、国会で問題になれば破棄した、こういうことなんですが、つくられたことは間違いないということなんです。ここにありますがね。これは
地震対策を担当しておられる
櫻内長官にも、自衛隊の派遣を要請するということでありますから、どういう
計画がつくられていたか、参考のために私が必要な個所を読んでみますから、よく聞いておいていただきたいと思います。
「関東大震災から得た教訓」陸上幕僚監部第三部作成、これは「戦時における国内警備は、」「広範多岐にわたり、大正大震災における軍の行動とは自ずとその性格を異にするものと考えられるが、以下当時における軍の行動のうち、参考とすべき事項若干につき観察を加えることにする」、こういう書き出しで、第一「治安維持に
関連する法規体系の完整について」、こういう項目があるわけです。これによると、
「未曽有の大震災に際し、軍が迅速、適切よく治安の維持を完遂し得た所以は、永年にわたって完整された軍機構の完備、訓練の精到等に起因するものと考えられるが、既に制定されていた戒厳令、衛じゅ令その他治安維持に
関連する諸法規及び震災に際し、急遽立法された適切な諸法規に負うところが極めて大である。したがって、この種治安維持に関する諸法規を
研究、整備して、平時から逐次これが具現を図るとともに、非常に際し迅速、適切に立法し得るようあらかじめ準備し、もって治安維持に関する行動及び権限の準拠を明確にすることは、戦時における国内警備の重要な課題である」まずこういうふうに言っているわけです。
二つ目は
2 国及び
地方公共機関の
活動について
「未曽有の大震災を大過なく克服し得た所以は、軍の迅速、かつ、適切な行動によるところが多大であるが、これに呼応する国及び
地方公共機関特に警察の
活動によるところもまた、尽大である。当時は、全般に国家の
地方機関及び一般に対する統制、指導力が強く、また、内務省等の特別な官庁があって機構的にも一般を統制、指導し易い態勢にあったのであるが、将来有事の場合にはこれに倍加する国及び
地方公共機関の統制、指導態勢、特に警察及び各都道府県知事、市町村長等の統制指導が必要であることは大東亜戦争の例を見ても明らかである。したがって、これが達成のための施策を平時から逐次整備する必要がある」三つ目は
3 大
規模な破壊に対する心構えの確立について
「大正大震災は……大
規模な
災害であったが、将来は敵の原水爆攻撃、謀略等により更に徹底、かつ、広範な地区にわたる大
規模な破壊が行なわれるものと考えられる。したがって、それに対応する準備を事前に十分
研究、準備し、事にあたり不覚をとらぬようにして置く要がある」
4 警察の活用について
「……今後における国内警備においては、当時に倍加して更に警察の
活動にまつべきものが多く、自衛隊はこれを適時適切に支援し活用するにとどまることが多いものと考えられる」「震災の教訓にかんがみ、特に警察に期待すべき事項は次のとおりである。
(1)不穏、騒じょう行動等の探知及びこれが未然検挙及び封止(検問を含む)
(2) 流言、飛語者特に不穏せん動、宣伝者等の検挙及び小
規模な騒じょうの制圧
(3) 要注意人物の監視、警戒
(4) 自警団等の取締
(5) 新聞、出版物その他の報道機関等取締
(6) 集会(屋内外)及び言論の取締
(7) 燃残品、救済品等に関する特殊犯罪の予防、検挙
(8) 自衛隊に対する犯罪の予防、検挙
(9) 行方不明者、死傷者等の捜索、収容、処理
(10) 事態に便乗する暴利取締」
こういうふうな項目があるわけです。
さらに続けて問題点を
指摘をいたしますと、
「大震災が
発生した場合は、……思想的な背景をもつ特定団体等が大衆を動員して、国会、政治機関、東京都その他に請願、陳情等の挙にでることも予想され」
これを括弧して群衆犯罪と説明してあります。
「とくに集団避難所においては、容易に行動に移りやすい要素をもっている。そして米よこせ運動、水よこせ運動にでることも予想され、自らの要求が満たされなければ、物資貯蔵所の襲撃、掠奪暴行等の不法行為を敢行することも予想される」
これを括弧して集団的不法行為と書いてあります。
「として、視察警戒、民心の動向把握、」
云々と、こうなっておるわけです。
つまり陸幕でつくられたこのいわゆる「関東大震災から得た教訓」としては、まず第一は治安維持のための法令を準備をして、そして短期間にこれが成立するようにいまから準備をしておけ、こうなっているわけです。
それから二つ目には、旧内務省がやったように
地方公共団体を統制する機能を持てと、こうなっているわけです。
それから三つ目には、この大
規模地震の場合を原水爆攻撃あるいは謀略等を想定をした形で対応策をとっているということなんです。
それからその次は、警察の活用の項では、十項目挙げましたけれ
ども、要するに予備検束、こういう制度をつくってあらかじめ扇動者等については検束をしてしまえ、こういうふうな条項が例記をされているわけなんです。そして大
規模地震が
発生した場合には、思想的な背景を持った暴動が起きるであろうからこれに対する群衆犯罪を十分取り締まらなければいけない、こういうような形の、言ってしまえば旧戒厳令的なあるいは治安維持法的な立法措置、政府の機能が必要である、こういうふうに主張をしているわけなんです。
この文書は廃棄をしたと言われましても、こういうものがつくられたということはそういうものの考え方が陸幕の中であった、あるいはある、こういうことは否定することはできないと思うんです。これは
櫻内長官は
国務大臣として一体どういうふうにお考えになりますか。