○沓脱タケ子君 私は、その府県知事がやるというのは知ってますけれ
ども、実際にはまあ
総量規制もやらなきゃならぬ、燐の
規制もやらなきゃならぬという段階へ来ているんだからね、当面、いわゆる特例を除いて埋め立てを
規制するべきだと思うんですよ。そのくらいのところを
一つ改正法に入れるべきだとむしろ思うんです、これほど問題が起こってくるということであれば。
さらに、それに関連して申し上げますが、これはアセスメントに絡む部分というのが共通しますので、もう
一つ申し上げたいと思いますのは、「特定
施設の設置の許可」ですよ。これも
臨時措置法五条で知事の許可権にゆだねているんですね。で、この場合にも、知事に提出をするときにはアセスメントを添付して提出をすることになっている。こういう問題も、これも五条でこういうふうにかっちりやっているからいわゆる
瀬戸内海の
環境保全に役立っていると、こう言われますと——まあ長く答弁されると困るのでちょっともう聞きませんが、これは必ずしも
実効が上がっていると言えないという点があるんですよ。私はこの辺が、問題点は後で言いますが、アセスメントの添付を伴うところは、先ほどの埋め立ての問題もそうです。それから、特定
施設の設置の許可についてもそうなんですが、たとえば
現状のままでいくとするならば、五条というのは十分に機能すると
考えられないと思うんですよ。
具体例申し上げますがね、たとえば神戸製鋼の加古川製鉄所三号高炉の増設というケースがあるんです。これの経過を見てみますと、四十九年の十一月十九日に神鋼の加古川製鉄所三号高炉の建設を前提に市と県にアセスメントを出したというんですね。それから、一月二十九日には三号高炉増設の設置届け出を提出した。それから五十一年二月十三日には、神鋼と兵庫県、加古川市三者で公害防止協定の持ち回り調印というのを、ちょっと聞いたことないんですがね、三者調印が持ち回りでやられた。で、五十一年三月一日に神鋼の起工式がやられた。五十三年二月に完成して、火入れ式が終わっているんです。こういう経過のものなんですが、これは五条に適用して、特定
施設の設置の許可を受けているんです。その三号高炉もね。で、それまでに、
昭和四十五年に一号高炉ができている。四十八年には二号高炉ができている。で、一号、二号高炉で大体五百万トン体制ですね。
で、その一号、二号高炉が稼働していく中で、現地では各種の公害が発生してきているんです。しかも、被害は非常に深刻なんですね。神鋼の真ん前にある別府小学校というところでは、子供のぜんそく・気管支炎の有症率というのが一一・六%から一二・二%に一年間ではね上がるというほどですね。これは物すごい、もうむちゃくちゃ高いですよ。公害健康被害補償法で指定地域、こんな一〇%以上というのはありませんよ。ところがそんなことになっている。
それから、光化学スモッグ予報というのが、四十八年までは一遍もなかったのが、四十九年になったら年に二十回出てきた。
農業では、露地栽培の作物はどんどん枯れていく。ビニールハウスの作物は、上にばい煙がおりるために太陽光線をさえぎられて、発育がとまって、四〇%減収になったと、こういう
状況が起こった。
さらに漁業では、四十三年ごろにすでに明石の林崎という漁協では先を見越してノリの養殖を始めたんですね。そこへ一号、二号炉ができた。
昭和四十五年に一号炉ができて間もなく、原因不明の赤腐れ病というのが発生しまして、三分の二は全部生産不能になって、やむなく養殖場所を沖へ、相当な大量の資金資金を投じて移さざるを得なかった。で、ノリの養殖の条件というのは、水温一度上がるということが命取りだと言われているんですね。そういう
状況がありましたから、三号高炉が操業され出すと大体千トン体制になるんですね。で、千トン体制になってフル操業をいたしますと、日量五百二十八万トンの温排水が神鋼からどかどか出る。日量ですよ、五百二十八万トン。しかも、その水温が摂氏七度。いまは不況のあおりで二号炉がとまっているんですわ。それでまあ二百万トン前後なんです。これが全部フル操業になったらノリの養殖は壊滅するだろうという心配、不安にさらされているというのが今日の姿です。
そこで、こういういきさつがあるために、住民や漁民は、三号炉建設が表面化をしてから、神鋼がアセスメントを提出をされたということで、それを契機にして重大な関心を払い、重大な闘いが起こってきたんです。そうして、漁協と住民が温排水の流れについて、ノリ養殖との関連を明確にしていくために独自のアセスメントをやったんですね。これは閲覧に行くぐらいのことじゃなくて、ちゃんと独自でやってみたんです。どういうアセスメントをやったかというと、
瀬戸内海の温排水の流れを見るために、
一つはびんによる海流
調査、もう
一つは赤外線航空写真、この二つをやってみたところが全くぴたりと一致した。しかも、そういう海流の
状況というのが全部ノリ養殖場の方に流れているということは明確になっている。ところが、神鋼のアセスメントというのは全然違うんですね。だから、そのアセスメントはこれは事実と違うと、どうも疑義があるということで問題になっていたわけですが、そういう段階から、これはまあ現地加古川の市政、市議会の中では異様な事態で、暴力ざたは起こる、不法、違法ということを重ね重ねて、議会運営なんてもうむちゃくちゃですが、そういうことがやられた上で強行されてきている。
そういうトラブルの問題は現地の問題といたしましても、問題はここなんですよ。この特定
施設の設置の許可をとるために、あるいは埋め立てのためにということで必要なアセスメントを企業がやりますね。これに対して住民からいろいろ意見が出、あるいは
調査結果が出た場合に、これについて何
一つチェックされていないわけですよ、しさいには。だから、大問題が起こってもとにかく通って許可されたらやられると、操業されると、こうなっているわけです。それは企業としては操業するということに踏み切ったら結構かもしれませんが、そのことがどんなに住民にあるいは漁民に被害を与えるかもわからないし、
瀬戸内海の環境破壊にどれだけ寄与するかわからぬということになるわけです。
そういう点で、私が冒頭に申し上げたように、この五条の「特定
施設の設置の許可」というこのやり方だけでは、
瀬戸内海の環境の汚染防止、あるいは汚濁防止というものを
推進していく上で本当に役立っているのかどうか、きわめて大きな疑問を
感じるわけです。むしろこういうところでは、
瀬戸内海では、大きな工場、企業の
施設をつくるという場合には、厳密なアセスメントをやらせるということと同時に、もうどんなことがあっても住民の参加を抜きにしては、
開発をやる場合に環境を破壊から守ることはできないという点を痛感をするわけですが、こういう点をひとつ強化していくと、チェック機能を強化していくということを
考える必要はないですか。この点どうです。まあ事情を知っているのか知らないのか知りませんが、これは具体的な実例ですから。