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1978-05-26 第84回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月二十六日(金曜日)    午前十時十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 小平 芳平君     委 員                 田代由紀男君                 林  寛子君                 藤井 丙午君                 森下  泰君                 山内 一郎君                 粕谷 照美君                 坂倉 藤吾君                 中野  明君                 馬場  富君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁長官官房        審議官      石渡 鷹雄君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        環境庁水質保全        局水質規制課長  島田 隆志君        水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君        運輸省海運局監        督課長      棚橋  泰君        海上保安庁警備        救難部海上公害        課長       佐藤 弘毅君        海上保安庁警備        救難部航行安全        企画課長     渡辺純一郎君        海上保安庁警備        救難部救難課長  宗形 健寿君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止  法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案の審査のため参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 次に、瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 森下泰

    森下泰君 私は、まず初めに、総論と申しますか、基本的な考え方につきまして、長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。  実は、私は瀬戸内海環境保全につきましては、現行臨時措置法あるいは各種公害関係制度運用によって、他の地域よりもすでに相当進んでおると、かように了解をいたしておりまして、水質につきましてもかなり改善をされていると思っております。したがいまして、瀬戸内海についてのみ今回さらに特別立法をする意味があるのかどうか疑問を持っております。その点につきまして、基本問題でございますので、特に長官の御意見を伺いたいと思います。
  7. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 瀬戸内海環境保全につきましては、現行臨時措置法その他の法制度運用によりまして相当進んだ施策が行われまして、水質についても改善傾向にあることは御指摘のとおりでございまするけれども、臨時措置法は本年の十一月にその期限が到来することになっていることは御承知のとおりであります。  ところで、瀬戸内海はすぐれた自然の景観、漁業資源の宝庫としての特殊性を有しておる、この点は御案内のとおりでございまして、水質について改善されたことはこれは確かでございまするとはいえ、環境基準達成という点になりますとなお困難な状況にあるということ、また、富栄養化の進行に伴います被害が多発しておるという状況であること、第三に自然海浜保全等についての要請が強くなっていることなどの現状を踏まえまして、今後とも環境保全対策充実強化を図っていく必要があると、こういうふうに考えているわけでございます。  このために、政府といたしましては去る四月二十一日に閣議決定によりまして瀬戸内海環境保全基本計画を定めまして、今後長期にわたる瀬戸内海環境保全目標及び基本的な施策の方向を明らかにしたところでございまするけれども、この基本的施策を実施していく上におきましては、既存の法制度、これに加えまして新たな立法措置を講ずる必要があると考えておる次第でございまして、この改正法案による後継法の制定を提案した次第でございます。  で、この法案におきましては、現行臨時措置法の規定のうち必要なものは引き継ぐことにいたしまするとともに、富栄養化対策自然海浜保全制度等特別措置を新たに規定いたしますることによりまして、後継法を制定いたし、あわせて広域的な閉鎖性水域水質保全対策といたしまして、後継法にもそのことがあるわけでございまするけれども、現在の臨時措置法にも規定されている趣旨にのっとりまして、瀬戸内海のみならず東京湾伊勢湾なども対象とすることができるように、水質汚濁防止法を改正いたしまして総量規制制度化しようと、こういう考えに基づきまして提案いたしたような次第でございます。
  8. 森下泰

    森下泰君 基本的なお考えにつきましては一応了解をいたしましたが、それでは、具体的な諸問題につきまして局長初め政府委員各氏にお伺いいたしたい。  第一に総量規制の問題でありますが、その第一番目に 最近の公共用水域水質汚濁状況は一体どうなっておりますのか。いま長官から概略お話しでございましたが、さらにお伺いをいたしたい。そして、瀬戸内海等も総体的には改善されてきているのではないかと私は考えますので、特にその点を御説明をいただきたい。  したがって、現行濃度規制制度充実で対応すればよいのであって、さらに総量規制まで考える必要はないのではないか、かような意見を私は持っておりますが、その点につきまして御説明をいただきたいと思います。
  9. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 最近におきます公共用水域水質汚濁状況でございますけれども、これは総体的には改善傾向にございます。ただ、多数の汚濁発生源が集中しております東京湾なりあるいは伊勢湾瀬戸内海、それから湖沼などもそうでございますけれども、そういう閉鎖性水域、こういうところにつきましては、生活環境項目、これの面におきまして環境基準達成といいますものがなお困難である、こういうような状況にございます。したがいまして、こういうような水域につきましては、さらに一層の水質改善を図っていくことが必要になってまいるわけでございます。  で、問題は、現在は先生指摘のとおり濃度規制と、こういう方式でやっておるわけでございます。ただ、この濃度規制というものではやはり問題がございます。一つは、東京湾なら東京湾というそういう水域に流入してまいります汚濁発生源としまして、内陸部から河川を通じて入ってくる。さらにその内陸部がよその県に属するということで、上流県というような場合もございますが、そういう内陸部からの負荷というものを効果的に規制し得ないというのが問題点一つでございます。  それからもう一つは、大きな負荷量を持っております生活排水、これにつきまして——もちろん一部のものは規制対象ということで濃度規制対象にいたしておりますけれども、どうも生活排水への配慮というのが十分ではないといううらみがあるという点がございます。  それからもう一つは、工場事業場等の新増設、こういうものに伴います負荷量の増大、こういうものに対して有効に対処し得ないというような点が、現行水質汚濁防止法規制方式濃度規制方式というようなものでは限界があるということでございます。  したがいまして、現在の濃度規制方式といいますものは、これは当然今後も存続していく必要があろうと思いますけれども、先ほど申しましたような広域的な閉鎖性水域、こういうところは、濃度規制充実といいますもの、たとえば上乗せをかけるというようなことで対処してきたのは事実でございますが、今後そういうやり方だけで十分対応できるかどうかということに相なりますると、これは非常に困難であるというふうに考えられるわけでございます。したがいまして、現行濃度規制方式というものにさらにオンをしまして、総量規制方式というものを導入をして、両々相まって水質改善といいますものに邁進していくべきではないかと、こういうふうに考える次第でございます。
  10. 森下泰

    森下泰君 ただいま個々の問題について御意見ありましたが、それでは、その内容で特にこの際明らかにしておきたいと思います点について御質問いたします。  まずその第一は、今回の総量規制では指定項目CODということになっておりますが、その理由を伺いたい。実は燐や窒素等につきましても指定項目とすべきであるという御意見があるようでございますが、環境基準も決まっておらない段階でありますので、そうしたものが果たして指定項目にできるのかどうか、そういう問題もあるかと存じます。その点につきましての特に担当者の御意見を伺いたい。
  11. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 総量規制というものをやります際に、この対象汚濁物質というものをどういうものにすべきかということになるわけでございますが、現在のところ考えておりますのは、当面はCODということを考えておるわけですが、なぜCODにしたのかということでございますが、考え方としては、まず基本的にはこういう考えでございます。  一つは、何といいましても、代表的な有機汚濁指標ということで、各種の利水上特に重要な環境基準項目というふうに考えます。それから、そういう項目で、すでに濃度規制環境基準がもう全面的に達成されていれば問題ございませんので、そういう重要な環境基準項目で、かつ環境基準がまだ全面的には達成されておらないということがまず一つでございます。それから、対策として広域的な対策をとることが必要である。しかもまたそういうことが効果的な汚濁指標であるという観点が第二点でございます。それから第三点は、汚濁負荷量といいますものの測定が可能な項目ということでございます。  で、そういうような条件といいますか、要件というものを満たすものでなければならぬということになるわけでございますけれども、まあ健康項目というのはもうこれは全然出さない方がいいので、ゼロディスチャージというのが理想でございますし、現在でもほとんどもう健康項目は問題ございません。したがって、いま言いましたような生活環境項目ということでながめますというと、有機汚濁指標としてはCODBODということになろうと思います。BOD生物化学的酸素要求量COD化学的酸素要求量ということでございますが、この二つのものが考えられる。その場合、御存じのとおり、現在BODというのは河川の方の関係環境基準項目にやっておりますし、CODがいわゆる海域、湖沼でございます。こういう閉鎖的な水域関係の方がCODということにたまたまなっております。そういうことからいたしまして、今回は広域的な閉鎖性水域というものを対象にして総量規制というものをまず導入しようということでございますので、当面はこのCODというものを指定項目にするというのが一番適当であろうと、このように判断した次第でございます。  それからもう一つ、燐と窒素の方のことでございますが、これにつきましては、燐や窒素総量規制対象にすべきじゃないかというような御意見も一部確かにございます。ただ、この窒素なり燐につきましては、環境水質、いわゆる公共用水質等のどの辺までが一体望ましいレベルなのか、窒素は一体どこまでか、燐はどこまでか、どの程度まではいいのかというそういうレベル、これに関する知見がまだ不十分でございます。これは必ずしも汚濁物質というよりは一種の栄養物質でもございますので、全然ないというわけにもまいりませんが、さればといって多過ぎれば富栄養化等の障害を起こしますので、その辺の望ましいレベルというものにつきまして、まだ十分科学的知見が煮詰まってちないという問題がございます。そういうことですから、環境基準というものはまだ確かに設定されておらないわけでございます。  それから、排水基準でございますが、これにつきましてもまだ未設定でございます。まあ排出源が非常に多岐にわたるということはもちろんございますけれども、問題は、排水基準等を決めるという際に、一体的確に除去することができるか、排水処理基準で燐なり窒素なりを除去できるかということに相なりますというと、まあ燐の方はやや実用化のめどがついたということは言われておりますが、窒素の方はまだまだでございます。そういうことからいたしまして、現在排水基準というものも、水濁法上の排水基準を決めてございません。したがって、CODであれば現在濃度基準としてそれぞれ環境基準排水基準があり、その上で総量規制ということで指定項目にする。ところが、燐、窒素の方は、現在は濃度規制対象になる環境基準排水基準というものもないわけでございまして、これをいきなり総量規制というものの指定項目にするということは、現段階ではとうてい考えられない、かように考えております。
  12. 森下泰

    森下泰君 ただいまの御説明で私も納得をいたしました。科学的知見ないし基準が設定されておらないものにつきましては現時点では取り上げがたいと、こういうことと了解をいたします。  次に、産業排水の問題でありますが、瀬戸内海では現在までの臨時措置法に基づいてCODの二分の一カットということが実施をされました。すでに約三〇%の超過達成がしておるはずでありまして、私はこれ以上産業排水汚濁負荷量の大幅なカット期待ができないのではないかと、かような考えを持っておりますが、その辺はいかがですか。
  13. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 現行瀬戸内海臨時措置法によりまして、ただいま先生からお話しございましたようなCOD汚濁負荷量の二分の一カットという措置があるわけでございます。これにつきましてはその後三年経過いたしました目標時点で調査をいたしましたところ割当量の三割増しの超過達成、一三〇%の達成状況に相なっておるわけでございます。したがいまして、今後総量規制をやるというような際に、産業系排水についで大幅な削減というのが期待できるかということになるわけでございますが、結局この産業系排水に係るCOD二分の一カットということで超過達成をやったという、その上に今後総量規制ということで、生活系も含めて、産業系対象総量規制制度を実施していくということでございますので、考え方としては、まあ感触的に申し上げれば、相当ぜい肉部分産業排水については落ちてきておるというふうに考えざるを得ないと思います。したがいまして、大幅な削減といいますものは、一般論としては非常に困難であろう、こう思います。ただ、個々にながめますと、まだゆとりがあると思います。といいますのは、一つは、瀬戸内海関係の各工場事業場等をながめました際にも、技術の相当の極限まで、いまあります最高技術レベルまで処理施設整備をしてやっておられるというところもございます。しかし、その反面必ずしもまだ十分でないというところも現にございます。また、排水処理技術動向等考えますと、排水処理のおくれているところは今後さらにもっと高度な処理レベルに上げ得るというようなところもございます。それから、新増設等も今後あろうかと思いますが、これに対しては、新しく工場をつくるわけですから、新しい機械を張りつけるかっこうでのレイアウト等をやっていただきまして、最新技術を導入させていただくというようなきめ細かいやり方ができるのではないか。そういうことによりまして、産業排水につきましても、相当大幅なあれは期待できないにいたしましても、かなりの削減といいますものはこれは可能ではないか。そういう意味で応分の努力はぜひお願いをしたい、かように思っておるわけでございます。
  14. 森下泰

    森下泰君 いまお話しのとおりで、私も著しく不十分なところ、それから新増設につきましては当然のことであると思いますが、一般的に産業排水につきましては大きな期待ができないということにつきましては、私もいまの御意見が正しいと、その御判断行政を進めていただきたいと思います。  したがいまして、関連いたしますのは生活排水でありますが、これについては下水道のおくれという問題がありまして、きわめておくれておるというのが現状であると思います。で、総量規制生活排水対策はきわめてその意味で重要であって、その積極的な推進なくしては総量削減の大きな効果は実際上期待できないと、かように私は了解をいたしておりますが、その大事な生活排水対策について特に御説明をいただきたい。
  15. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 総量規制制度ということに相なりますと、単に産業排水のみならず生活排水等を取り込んでいく、さらに上流県等内陸部も取り込んで負荷量の総合的な削減対策というものを進めていこうと、こういうものでございます。その際に、産業系排水についてはただいま申し上げましたような次第でございますので、今後この総量規制制度におきまして大いに削減期待すべき点というところは、生活排水関係というものがどうしても重点になろうかと思います。  そこで、この改正法の中におきましての仕組み方といたしましては、一つ総量削減基本方針、これは内閣総理大臣が決めるわけでございますが、この総量削減基本方針、それから知事さんの決めます総量削減計画、これにおきまして、産業排水だけでなくて生活排水等を含めましてその負荷量目標量を示します。どの辺ぐらいまで下げるかということの目標を一応出しまして、おおよそ五年先ぐらいになりますが、そして、単に目標を掲げるだけではなしに、負荷量削減方途ですね、どうやってそれをやっていくのかという具体的な方途等を決めるというふうにまず法律上は仕組んでございます。  それから、総量規制制度下におきましては総量規制基準といいますものが適用になるわけでございますけれども、その際に適用になるものは単に産業系だけでございませんで、生活系につきましては下水道終末処理場、それから屎尿浄化槽の中の大規模のもの、それから屎尿処理施設、こういうものにつきましても総量規制基準対象にしていこうというふうに仕組んでございます。  それから、そういうような規制のほかのものは、生活糸雑排水等、こういうものは野放しかということになるわけでございますが、これはまあ規制というわけにはまいりませんけれども、これは必要に応じて、要するに行政指導ということで助言なり指導なり勧告というようなことを知事さんの方が精力的にやっていただきまして、この生活系規制対象外の分につきましても削減の方に努力をしていただく、協力していただくということを考えておるわけでございます。もちろん今後は下水道整備なり屎尿処理施設整備等が中核になろうと思いますので、今後はそういうもので整備をしていただきまして、逆に言えば先ほど言った総量規制基準対象に極力取り込んでいくというようなことをむしろ考えるべきであろうというふうに思っております。
  16. 森下泰

    森下泰君 ただいまの御説明で私も一応納得をいたしましたが、産業排水については必ずしも大きな期待はできない。生活排水についてはいまお話しのように下水道整備が大変に重要な要素である。それは必ずしも現在円滑には進行いたしておりません。それから行政指導ということでありましたが、これにつきましても具体的には各府県においてよほどの御努力が必要である。かように考えますが、その両方の条件の上で、これから総量規制を行うことによりまして負荷量は一体どの程度削減できるか、環境庁としてのお見通しといいますか、現在の御判断を伺っておきたいと思います。
  17. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 総量規制における総量削減目標でございますけれども、これにつきましては、まず一つは、水質保全行政として一体その目標というのは何かということになりますと、これは水質環境基準達成維持というのが、これが行政目標でございます。ところが、先ほど来申し上げておりますように、広域的な閉鎖性水域等においては、なかなか、濃度規制において上乗せ等をかけて厳しくやってもなおかつ全面的な達成はむずかしい。そこで、濃度規制だけではなしにさらに総量規制といいます制度も新しく戦列に加えまして、この環境基準全面達成ということに向って進んでいきたい、こういうことでございます。したがいまして、総量規制制度といいますものを考えます際も、その究極的な目標と申しますか、目途といたしましては、何といたしましても水質環境基準達成でございます。ただ問題は、それではこの環境基準全面達成ということで目標をすぐ立てられるかということになりますと、これは中公審の答申にもありますように、いま直ちにそういう目標量を設定するのはむずかしい、困難であるということでございます。  したがいまして、私たちが現在考え、また法制上も仕組んでおりますのは、いわゆる目標年度といいますものを大体五年なら五年先というところに置きまして、そして目標量を決めたい、それを達成していきたい、こういう考え方です。その目標量を決めます際に、具体的な決め方としては、一つは、今後汚濁負荷量がふえるという要因がございます。これは人口がふえる、あるいは産業活動が伸びる。今後も日本経済伸びるわけでございますので、そういう産業活動の伸びということで負荷量増加要因というものを一つ見なくちゃならぬ。ところが、もう一つは、現在の排水処理技術、こういうものがさらに進歩するということもあるでしょうし、また現在の技術のものがさらにより普及をするということで、これは負荷量が減る要因でございます。それから、生活系の方については、特に下水道整備普及状況というようなものが考えられるわけなんで、そういうプラス、マイナスの要因といいますものを十分勘案をして、そして先ほど言いましたような水質環境基準達成維持というのが究極目標でございますので、それに向って極力実現可能な限度で減らしていこうという意欲を込めて五年先の目標を決めるということでございます。  したがいまして、いまこの時点でどの程度それでは削減できるのかということでございますが、これはいまこの段階で申し上げるのはちょっと困難でございます。いずれ御賛同を得て法律が制定され施行になりますれば、十分その辺は県の方のいろんな計画等もございましょう。そういうものもヒヤリングしながら、適正な目標量というものを策定をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  18. 森下泰

    森下泰君 具体的にどれぐらいだとお伺いしても、それはいまお答えのように現在示しがたいという点につきましては了解をいたしますが、いまの局長の発言のように、実現可能性現実性というものを前提にして指導あるいは行政を行っていくということにつきましては、私といたしまして了解をいたします。  総量規制の最後の問題でございますが、実は、この改正法を読んでおりますと、「政府」とか「内閣総理大臣」あるいは「環境庁長官」というのが何度もこれは法案の中に出てまいりますのですが、これらの関係がちょっとわかりにくい点がありますので、この点について若干御説明をいただきたい。  さらに、具体的には、総量削減方針は内閣総理大臣が作成しとなっておって、総量削減計画内閣総理大臣が承認することとなっておりまして、さらに、公害対策会議の議を経ることとなっておりますが、これでは環境庁はどういう分担になりますのか、どこかへ行ってしまったのではないかという感じもございまして、実はこれは一昨日の毎日新聞でありますが、「こんな環境庁は、いらない」と、こういう記事がございました。私も環境庁に以前関係をさしていただいておって、大変残念でありますので、この際特にこの点につきまして、そんなことはないということにつきまして御説明をいただきたい。
  19. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 今回の法案で、確かに「政府」、それから「内閣総理大臣」、「環境庁長官」というような用語といいますか、が使われているのが多々ございます。その辺の使い分けといいますか、関係でございますけれども、まず、「環境庁長官」ということでございますが、これにつきましては、環境庁が総理府の外局ということになっております。で、当然環境庁設置法というのがございまして、環境保全については第一義的に責任を負うと、こういう行政機関に環境庁はなっておるわけでございます。したがいまして、環境保全関係法等におきましては、環境保全のための行政機関の権限、義務を規定をいたします際に、一般的には「環境庁長官」というふうにいたしております。  もう一つ、「内閣総理大臣」というのが、これはいろんな環境保全関係法にも出てまいります。「内閣総理大臣」につきましては、一つは、これは冒頭に申し上げましたように、環境庁が総理府の外局でございますので、法律なりあるいは政令制定等のために閣議でいろいろ決めてもらわなくちゃならない、その際の閣議請議が、これは環境庁ではできないわけでございます。閣議請議ができないというのが一つございます。それから総理府令、よその省であれば省令というのがございますが、そういう府省令といいますものを環境庁が発することができないということになっております。したがいまして、たとえば環境基準を決めるというのは総理府令で現在やっておりますが、こういうような府令を決めるんだというような場合には、総理府の長でございます内閣総理大臣においてこの総理府令を発するということに相なります。それから閣議請議をやります際も、内閣総理大臣の名前で閣議請議をやるというふうになるわけでございます。このことは何も環境庁に限らず、総理府の外局でございます経済企画庁、国土庁も同様でございます。そういうことで、政令の制定なり改廃の立案をするとかあるいは府令の制定、改廃に当たりまして、地方公共団体なり知事さんなり審議会の意見を聞くというような場合なりあるいは各省と協議するというときは、「内閣総理大臣が」といって出てまいるわけでございます。それから、閣議に付すべき案件についての立案、これも当然内閣総理大臣と、こういうことになるわけでございます。しかし、そういうことで「内閣総理大臣」というのが出てまいりますが、先ほど申し上げましたように、環境庁が第一義的に環境保全というものの責任ある行政機関でございますので、「内閣総理大臣」と規定されております場合におきましても、実質的な事務処理はすべて環境庁がやる、こういうことで、実質的には環境庁がやるということでございます。  それから、公害対策会議の付議というのがちょいちょいこれもございますけれども、これも、公害対策会議そのものが総理府の付属機関ということで置かれてございます。しかも、この会議の会長さんは、実は総理府の長である内閣総理大臣公害対策会議の会長ということに相なっております。したがいまして、手続上の問題といたしまして、総量削減基本方針等の策定等はこれはやはり内閣総理大臣の名において行わなければならないということになるわけでございます。「公害対策会議の議を経」てということになりますので内閣総理大臣がやる。しかし、これも実質的に環境庁がその事務を行うということにおいては何ら変わりがないわけでございます。  それからあともう一つ、「政府」というのがやはりこれまたちょいちょい出てまいります。「政府」と規定されております場合には、これは内閣及びその統轄下にある行政機関といいますものを総括してくくりまして、総ぐくりして呼んでおりますものが「政府」でございます。言うなれば、国家機関といたしまして立法・司法・行政というふうに言われておりますけれども、その場合の国家機関の立法・司法、それに対する行政というものを指す場合がこの「政府」という用語を使っておるわけでございます。政府の中のどこの行政府がどういうことをやるかというのは、これは各省設置法というのがございまして、その分担関係におきまして処理するということになるわけでございますが、いずれにいたしましても行政府がやるということで、政府は何とかの措置を講ずるものというような規定をよくいたしておるわけでございます。  そういうようなことで、今回のこの法案におきましても、以上のような用語の使い方といいますか、概念に基づきまして、法制面でも、今回の法案の中でもそういう使い方をいたしておるわけでございます。  それからもう一問、後段に、総量削減基本方針内閣総理大臣がつくって、総量削減計画知事がつくるのですが、総理大臣の承認が要ると、さらに公害対策会議の議を経るというのはどういうわけかということでございますが、実は、この総量規制というものを仕組みました際に、瀬戸内海を初めといたしまして、東京湾なり伊勢湾、いずれも広域的な閉鎖性水域ということでございます。したがいまして、必ず複数の県、これが関係してまいるわけでございます。そういう複数の県がそれぞれ足並みをそろえてこの負荷量削減というものに努力していくということにおいて、結果として東京湾なり伊勢湾の全体のCODならCODの量を一定量以下に抑えるということができるわけでございますし、またこの方途にいたしましても、下水道整備なり屎尿処理施設整備ということで、いろんな各般の非常に幅の広い施策が必要だというふうになるわけでございます。したがいまして、そういうことで、法律に仕組む際に、各県におきます総量削減対策、こういうものが総合的に調整されていく、足並みをそろえてやってもらうということと、また各省でいろんないま言った下水道関係等もあるわけですけれども、こういうようなものが、また各県においても土木部等いろいろあるわけでございますが、それが統一的にやはり推進されていくというような必要があろうということで、この総量規制におきましては総量削減基本方針といいますものを内閣総理大臣が決める、それから県の知事さんの決めます総量削減計画内閣総理大臣が承認をするということにしたのとともに、公害対策会議の議を経る。この公害対策会議といいますのは、これは単なる審議機関でございませんし、単なる決定機関でございませんで、審議推進機関ということに相なっております。これには相当多数の関係閣僚が入っておりますので、そういうところで議を経ていただいた方が、むしろ今後の総量削減といいますものの達成なり何なりといいますものを考えた際にはその方が適当であろうということで、公害対策会議の議を経るというふうな仕組み方をしたわけでございます。  ただ、こういうことで内閣総理大臣が前面に出ておりまして、環境庁長官という名前が出てまいってないわけなんで、何か環境庁が後ろに引っ込んじゃって後退したんじゃないかというお話でございますが、これは先ほども「政府」、「内閣総理大臣」、「環境庁長官」の概念の御説明を申し上げましたが、そういうような考え方で整理をいたしておりますので、「内閣総理大臣」というふうに書いてございましても、実質的には環境庁長官が責任を負って行政を遂行するということでございますのでこういうことの規定の仕方をしたと、表現の仕方をしたということから、環境庁が後退したんではないかということは当たらないのではないかと、かように考える次第でございます。
  20. 森下泰

    森下泰君 ただいまの問題につきましては、衆議院の公環特においても御議論があったようでありまして、ただいまの局長の御説明で私は了解をいたします。ぜひそういうことで、間違った世論に惑わされないで、環境庁として堂々と法律を作成し、行政をやっていただきたいと、特に私としてはお願いを申し上げておきます。  それでは次に、ちょっと時間がありませんので、御答弁の方は簡略にしていただきたいと思いますが、個別の問題で、まず第一に富栄養化対策についてお伺いをいたしたい。  富栄養化要因物質と言われる窒素とか燐等につきましては、先ほど局長のお話のとおり、環境基準排水基準も設定されておりません。そういう現段階において富栄養化対策を行うのは時期尚早であるという意見がございます。私もその意見者の一人でありますが、それが行政指導という形で行われました場合、行政指導だと申しましても、法律に基づく指導であれば、一般にはこれに従わざるを得ないということでありまして、実質的には規制ということに相なってまいるはずであります。このような段階富栄養化対策は行うのには、そうした意味で問題があると、かように私は考えますが、その点はいかがでありますか。
  21. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 今回、行政指導ベースではございますが、富栄養化対策ということで削減対策を進め得るということの条項を入れているわけですが、当面考えておりますのは燐でございます。燐でございますが、この燐にいたしましても、先ほども御答弁申し上げましたように、まだ環境基準というものがございません。それから排水基準といいますものもございません。そういうような段階であるのになぜ、行政指導ベースとはいいながら、燐について削減措置をとるのか、こういうことだと思います。  問題は、この瀬戸内海といいますものを見ました際に、冒頭の御質問にもございましたように、瀬戸内海水質といいますものは、CODなりあるいは透明度等で見る限りにおきましては、四十七年当時に比べますと相当数値的にはよくなってきております。しかし、富栄養化という問題になりますというと、むしろ進行をしておるというふうに見ざるを得ないかと思います。そういうことで、この富栄養化に伴う被害といいますものが非常に多発いたしております。昨年の八月の二十八日の養殖ハマチの大量斃死という問題もございますが、そのほかに、海水浴場の遊泳禁止というような日が続くとかあるいはプランクトンが斃死する、その悪臭で住民が悩まされるという苦情が出るというようなこともございますし、排水基準なり環境基準なりがないから何もせずに済ませるかということになりますと、何らかの富栄養化対策は、やはりこの後継法の提案ということを考えました際には何らかの対策をぜひ織り込みたい。しかし、科学的知見その他からして、ただいま申し上げたようなはっきりした規則ということはできませんので、そこは行政指導ベースでございますが、削減措置といいますものを考えるべきであろうということで、瀬戸内海につきまして先駆的に富栄養化の一層の進行を防止するという観点から、そういうような措置を実施するという角度の規定を盛り込んだ次第でございます。
  22. 森下泰

    森下泰君 いま御説明のあった燐でありますけれども、実際は燐対策の場合は生活排水の方にむしろ大きな問題あるいは解決点があるのではないか、かように考えられます。ところが、いまのようなお話でありますと、実際にはなかなか、下水道整備の総体的遅延という問題と絡みまして、生活排水の方の燐対策が大変むずかしいあるいは時間がかかるということでありますと、現実には産業排水の方にウエートがかかってくるのではないか。産業排水の方は、先ほども御質問いたしましたように、すでにCODその他かなりな前進が行われておりまして、さらにその上に産業排水についての燐対策と、こういうことになりますと、いわゆる産業部門では大きな負担が発生するおそれがあると、かような私はおそれを持っておりますが、この点について特にもう一度確かめさしていただきたい。
  23. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 瀬戸内海の燐の発生負荷量ということを見ました際には、これは生活排水の方が産業系排水よりもウエートが相当高うございます。この辺はCODの場合と逆転をいたします。したがいまして、燐対策という際にも生活排水対策というものがやはり相当重要になってまいるわけでございます。  ただ、行政指導でいろいろ燐対策考えます際には、これは一律にどうするということでございませんで、やはりそれぞれの発生源の実態に即した適切な行政指導ということに相なろうかと思います。したがいまして、生活排水につきましては、何といいましても、やはり下水道整備ということになります。屎尿処理施設整備というのもございます。問題は、たとえば下水道整備といいますものも、現在の二次処理という活性汚泥方式でやりました際にも、燐は普通の二次処理でやはり二割から四割程度は付随的にといいますか、副次的にといいますか、落ちてくるわけでございます。したがいまして、下水道整備というのは、COD対策ということで二次処理をどんどん普及するという際にも、それは単にCOD対策だけでなくて、燐対策的機能というものも当然反射的に出てまいる、両面にプラスになるわけでございます。そういうことからもこの下水道整備というものを相当重点的に所管省の方にも要請しながら整備をしていくということは今後とも必要であろう、こう思っております。  それから、産業系の方につきましては、これは燐の排出濃度の高い業種等におきまして脱燐施設の導入をしていただく。燐酸肥料工場等におきましてももうすでに脱燐施設を相当入れておるところがございます。そういうようなことも、できるところは若干やっていただこうかとは考えておりますし、すでにもう入っておりますところは、むしろそれは管理の改善といいますか、維持管理といいますか、そういう面に配慮をしていただくということになろうと思います。  それから、魚類養殖の場合、ハマチの養殖等につきましても、この辺の漁場管理の適正化ということをやっていただかないといかぬと思いますし、畜舎排水の関係もございます——これは農林省の関係になりますが。  そういうことで、行政指導をやります際にも、生活系産業系、さらに一般的に産業系以外と言われております畜産とかそういう面。それから養殖の問題、魚の関係ですが。そういうもの等について、まあきめ細かな指導を行うということを考えておりまして、産業排水だけにしわが寄っていくとか、偏るというようなことはないというふうに運用をしてまいりたい、かように思っております。
  24. 森下泰

    森下泰君 ただいまの局長の御説明のように、産業排水に偏る、あるいは過大な期待を持つということはないと、現実に沿って進めると、あるいはきめ細かな行政指導を行うと、こういうことでありますれば大変結構かと思います。  富栄養化一つの問題で、赤潮の問題もありますが、これはまた後ほど御質問もあるかと思いますので、私は省略をさしていただきます。  次に、上流県の問題、これは先ほど局長からも若干付言がありましたが、私などは大阪でありますので、特に大阪湾に関連をいたしまして、京都府等から流入してまいります負荷量も相当な割合になると思います。現行臨時措置法でも、上流県を対象関係府県に含めることができると、かように相なっておるはずでありますが、政令の指定が行われておりません。上流府県を含めないと下流の大阪府等にしわ寄せがくることになるので、この点につきまして、今度の法案のこれからの問題として、現在の環境庁考え方をはっきりしておいていただきたい。
  25. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 現行臨時措置法におきまして、「関係府県」といいますのは、大阪府を含めまして十一府県というのがはっきり書いてありまして、それに、「環境の保全に関係があるその他の府県で政令で定めるもの」と、こういうことになっております。で、現行法下におきまして実はこの政令が出ておりませんで、現在「関係府県」というのがこの十一府県になっておるわけでございます。  問題は、今後この臨時措置法特別措置法ということで後継法段階に移るという際に、一体この「関係府県」はどうなるのかということですが、その際には、この臨時措置法の第二条の定義はそのまま受け継いでおります。で、問題は、受け継ぐのは結構なんですが、総量規制をやるとか富栄養化対策をやるというときに、政令を出すのか出さぬのかということに相なるわけでございます。で、先ほど申し上げましたように、総量規制制度といいますものの物の考え方、あるいは富栄養化対策ということの——これは行政指導ベースですけれども、これを進めていくという考え方からいたしますと、それは総合的な汚濁負荷量削減ということが必要でございますから、当然その趣旨に照らしましても、上流県といいますものを対象にしていくというのが望ましいことは言うまでもございません。これは望ましいということはそのとおりでございます。  問題は、それでは瀬戸内海というもの、あるいは大阪湾といいますものに焦点を置いて上流県を考えますと、何といいましても滋賀県、京都府、奈良県というものが考えられるわけでございます。で、問題は滋賀県でございますが、滋賀県はこれは自分の県で琵琶湖という閉鎖性水域を抱えておるということでございます。したがいまして、瀬戸内海をきれいにするために滋賀県が仲間入りをするというのでなしに、滋賀県としては琵琶湖という広域的な閉鎖性水域をどうしても保全をしたいと、そのためにむしろ滋賀県は指定を受けた方がいいというような感触でございまして、まだこれは正式にやっているわけじゃございませんが、感触的にはそういうことでございます。したがいまして、滋賀県を瀬戸内海上流県という角度で考えるというのはいかがかと、こういうふうに考えております。で、問題は、そうすると京都府と奈良県というふうに焦点がしぼられてくるわけでございます。先ほど申し上げましたように、総量規制なり富栄養化対策の物の考え方からいたしまして、これは政令指定をすべきであろうということで、そういう方向で検討を進めたいと思っております。ただやはり、いきなりぽんと政令を出すわけにまいりませんので、それは当然京都府なり奈良県の意見を聞かなくちゃなりません、相談しなくちゃなりません。それから、従来のこの十一県の方では、瀬戸内海環境保全知事・市長会議という連絡調整の機関もつくってございますので、そちらの方の意見もあろうかと思いますから、その辺とも十分相談しながら検討していきたいと、かように考えております。
  26. 森下泰

    森下泰君 前向きに、望ましいと、また前向きに取り組むということであるようでありますので、了解をいたします。京都の方も今度は御賛成をいただけるのではないかと、大阪の方では御期待をいたしております。  次に、最後、二つばかりまとめてお伺いしたいんですが、自然海浜と、それから埋め立ての問題であります。  自然海浜につきましては、これはもう瀬戸内海は自然公園指定地域、それから臨時措置法による埋め立ての抑制などで、十分に自然海浜の保全は今日までに行われておるのではないかと私などは了解をいたしておりまして、したがって、この際はもう既存の制度の活用で自然海浜の保全は達成されるのではないかと、かように思いますが、さらにここでそれを規制をするということについての理由。  それから、いま一つは埋め立てでありますが、これはもう申し上げるまでもなく、いわゆる産業廃棄物、一般廃棄物が、もうどこへ捨てていいかわからぬというのが現在の大阪などの現状でありまして、その公共的な目的の埋め立てについてはそれを行えるような制度をどこかにつくるべきではないかと、かような実際上の実は問題を抱えております。  この二つを特にただしておきたい。お願いいたします。
  27. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 瀬戸内海は、ただいま先生からもお話しございましたように、世界に比類のない美しい景観を持っておるところでございますので、自然公園法によります自然公園制度対象の地域が相当広うございます。それから、自然環境保全法による自然環境保全地域制度の面では、これは広島県などで県の環境保全地区を指定をしているというところがございます。  ただ問題は、そういうことで相当広範囲にこういう網がかぶっておるわけでございますけれども、なお、自然海浜であってしかも海洋レクリエーションといいますか、海水浴なり潮干狩り、そういうところに使用されており、今後も使用していきたいというようなところが、いま言った相当広範囲に網はかぶっておりますが、まだ十分カバーされてないというところがやはり瀬戸内海に多々ございます。こういうところはやはり今後とも自然海浜ということで、なおかつレクリエーションの場として今後とも末長く保持したい、保持してほしいという要請が強うございますので、そこで今回自然海浜保全地区の制度といいますのを後継法に盛り込んだと、こういう次第でございます。  それから、もう一つは埋め立ての関係でございますけれども、埋め立てには廃棄物の最終処分とかいうようなことで公共的なものもあるから、円滑に行えるようにすべきだということでございますが、問題は、公共的と言う際に非常にむずかしゅうございますのは、どこからどこまでが公共的なのかというのがなかなかこれは線が引けません。人によって大分違います。たとえば、こういうものが公共的だというふうに決めました際も、その埋め立てる場所がどういうところかによって違うわけです。これは水産資源の保護上大事な水面でありますと、そこを埋めたらもう魚の方が生態系が狂ってまいりますからと、埋め立て場所の問題があります。それから、面積も問題なんですね。これは公共のあれだからというのでも、五十ヘクタールと五百ヘクタールでは全然違うわけでございまして、これも違う。それから、それで埋めたからといいまして、今度は上物が問題でございまして、緑地になっていてという場合と汚水を出す工場が出てくるというような話では、全然これは違うわけですから、したがいまして、単に廃棄物の処理だとかいろんなことで、これは公共的だからいいではないかという一般論では何ともこれはまいらぬ。  じゃ、きめ細かくやるべきだということになりますと、現在瀬戸内海の審議会の方から御答申いただいて、埋め立ての運用の基本方針というのが決まっております。したがいまして、それを物差しにしながら、やはりケース・バイ・ケースにどの程度の面積のものをどういう場所に何の目的でつくって、そしてその後はどういうふうな跡地利用をするのかということをきめ細かくやはりアセスするといいますか、その辺は審査をすると、そして瀬戸内海についてはこの十三条の規定に照らした運用の方針がございますから、この物差しに照らしてケース・バイ・ケースで環境保全に支障のない、そういう角度で審査をしていくということで対処すべきではなかろうか。公共的だからということだけで漠然とやるというわけにはまいらぬのではないかと思います。  したがいまして、後継法段階でも臨時措置法の十三条の埋め立ての規定はそのまま存続をしておるというのは、そういう物の考え方でございます。
  28. 森下泰

    森下泰君 最後に、長官にお伺いをさせていただきたい。お伺いしたい点は二つございます。  第一は、いま埋め立ての問題で局長からの話がありましたが、そのように、環境問題は単に事業者だけではなく、国、県あるいは国民全体と申しますか、関係者全体が協力をし、理解をしあるいは負担をいたしまして初めて目的が達成されるはずでございまして、その意味では、特にこの法案が行われました場合に、瀬戸内海関係のいわゆる国民の皆さん、それからそれだけではなくて全国の国民の皆さんが十分に御理解をいただいて取り組むということでないと目的の達成はむずかしいと、かように考えますが、その点につきましての御意見。  もう一つは、少しとっぴなことを申し上げますが、大体私はこの閉鎖性水域というものを前提しての発想ではなかなか根本的な解決はないと思っておりまして、つまり閉鎖性水域であるからそれに対してこれをごじゃごじゃこうするのだと、それはそれなりに必要でございますけれども、それと並行いたしまして、閉鎖性水域そのものをなくしてしまうという発想の転換をこの際長官におかれましてお考えをいただけないであろうかという、私のこれは一つ意見でございます。私だけの意見ではなくて、現在関西の経済界でまじめに取り組んでおりまして、具体的にはあの鳴戸海峡を爆破すべきではないか、こういう意見。爆破というと大変言葉が過ぎますが、鳴戸海峡で水がたまっておるわけですね、そのために閉鎖性水域になっておるわけです。ですから、あそこを広げましたら閉鎖性でなくなりまして、水が太平洋の方に流れ出まして、富栄養化水が太平洋に流れ出まして、お魚のえさになってお魚もとれる、一挙三得であります。もっとも困るのは鳴戸海峡の観光でございますけれども、これは別に穴を掘って渦をつくればいいということでありまして、(笑声)それくらいの発想の転換でないと私は、日本が一億総移動をしますか、オーストラリアかどこかに移動するか何かせぬ限りは解決をしないわけですから、そういうことを含めまして発想の転換が私は必要ではないか、かように考えております。  以上二点について長官の御高見を承りたい。
  29. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 環境問題について、広く各方面、ことに国民の理解が必要だという点、これにつきましては、ことにこれからの環境問題というものは、これは外国からも指摘されておりまするけれども、特に環境の質の向上という方面に向かって、特に都市生活、人工的な環境というものの質の向上ということをいろいろな面で図っていくというような段になってまいりまするというと、これは国民の非常な理解、協力というものがなくてはこれはできないと思います。現に世界的な環境問題といっても、政府が何でもかんでも縛るというようなことじゃなくて、ほとんど民間の自発的な意図による一つのコミティーのレギュレーションというような形でりっぱにいろいろな点が規制されておる。そしてまた、そういうものを保持していくためには、それなりの経費というものも進んでいろいろこうやっていくというような傾向、こういうことが、長い経験といいますか、非常に顕著であろうかと、こう思います。そういう意味においていま森下委員の指摘されたような点、われわれは非常に必要な点だと考えております。  したがいまして、総量規制制度富栄養化対策、海浜保全制度、いろいろな問題について事業者に義務づけようという、必ずしもそうではなくて、みんながやっぱりこれはひとつ理解しながらやっていくという、ここが私は非常に環境問題の一番大事な点で、これからそういう点についてのいろいろな啓蒙、理解、バックアップ、そういうことを考えてやっていこうと考えております。したがいまして、今般のわが法案につきましても、国、地方、事業者、国民、全部の理解というものを求めて、そうして瀬戸内海環境保全対策、この問題というものがうまくいくように、ひとつぜひ推進していきたいと考えておるような次第でございます。  さらに、いま御指摘になりました鳴戸海峡の問題でございますけれども、なかなかのいろいろな着想の御披露があったわけでございまするけれども、そういうような点、いろいろな点が出ております。しかしながら、なかなかあれは、一方で言えば自然というものは微妙なやはりバランスでできておりまして、海象、気象あるいは生態系とかいろんな問題もございましょうし、また自然景観の問題、その各種の影響についてはよほどいろいろ考えていかなきゃならぬ。この点は、鳴門海峡の点についても、いろいろの科学的な調査というようなもの、その他の積み重ね、また関係者の合意というようなものも必要じゃないかと、こういうふうに考えております。したがいまして、いまの段階でおまえどう考えるかと、こう言われましても、まだちょっといまの段階では私も意見を申し上げる段階には——(笑声)まあこの際はちょっと差し控えさしていただいた方がいいのじゃないかと、こんなように考えておりますので、御了承いただきたいと思います。
  30. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 私は、まず初めに、最近の新聞等をながめておりますと、環境庁に対する指摘は大変厳しいものがずっと出ているわけですね。これはいま審議中の法案の問題もしかり、さらにまた大気に対する問題もしかり、これはきわめて厳しい記事が続出をしている。ただその中で一つだけ、これは私は大変楽しく見たんですけれども、五月の十六日の朝日新聞の夕刊なんですがね。「不連続線」というのに「もう一つの環境白書」というのが出ております。これによりますと、いまの環境行政の中で、世界各国に恥ずかしくないそういう立場の日本の環境行政というものをこれから確立をしていかなきゃならぬということで、環境庁の中の若手の皆さんが集まって、これ、どういう名前になっているんですかね、アメニティ研究会ですか、こういう活動がいま始まっている。これに期待をするという編集委員の木原啓吉さんの記事なんですけれどもね。私はこれを読んで、なるほど環境庁の世論から大変厳しく批判をされているところがそういう若手グループの中で芽を吹いてきたか、率直に言ってそう感じたわけですが、これは長官ごらんになられましたでしょうか。なられましたらこれに対する長官としてのまずお考えを少しお聞きをしたいと思います。どうでしょうか。
  31. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いろいろ環境庁に対する批判ということをいまお話しになりましたけれども、われわれは、いろんな批判というものはもう謙虚にこれは受けとめたいと思います。しかしながら、私は、いろいろな誤解、あるいは現在の環境問題というものの大きな動きというものがどんなふうになっているかという点についてのある場合には無理解、あるいはそういうような点も多分にあるんじゃないかと、こういうふうに考えております。  いま、若手のアメニティ研究会というような御指摘がありましたけれども、われわれは、過去を振り返ってみまして、非常な高度成長ということに伴ってまき散らしていった公害、いわばその公害というものとの闘い、公害の告発というようなことが環境行政のすべてであるような形、それも確かに公害から生命を守るという面では非常に重要な問題であるし、その問題は今後においても依然として大事な問題ではあるけれども、しかし、OECDも指摘しておりますように、つまり日本では環境というものの質の向上というものがどうも置き忘れられていったということを指摘されておる。私は、そういう面というものに環境行政は取り組んでいく必要があるだろうと、こう思います。こういう面になってまいりまするというと、これは相当長期的な観点に立っていかなけりゃならないし、それから、いまの複雑ないろいろな社会現象あるいは経済活動、いろんな面から見まして、これに対処していくための計画、対応策というものも、これは相当複雑なものをもって対応していかなけりゃならぬけれども、しかしながらそういう面にも目を向けていかなけりゃいかぬ。ちょうどそのアメニティ研究会というのが、環境の質という問題に目を向けて一生懸命にやっていこうと、いままでの長い研究の中から若手がひとつ考えていこうじゃないかということが、ある意味において、これは新しい環境問題の方向というものを示唆しているものとして、私はもともとそういう点をもっともっとこれから考えていかなけりゃならぬという点で、非常に私もこれには大きな関心とまた激励も示しているような次第でございます。  余り長く申し上げるのもどうかと思いまするけれども、これについては、環境の質ということになりますといわば公共投資の問題、たとえば先ほど指摘がありましたけれども、下水道というものに非常な投資をしていくという問題を初めといたしまして、道路の問題、それから建物、つまり、都市域というものの生活の訓練というものが日本では少ないんです。したがって、外国の場合にはすでに過密の中でどうやって環境の質を維持していくかということのために、大体住むのも三階、四階でずっとバランスをとっていくし、道路も広い、公園というものも非常にやっておる。それからまた、電線とかそういうものが邪魔しないように、街路樹というものをもう思うままに育てるために、そういう邪魔な物は全部地下に埋設していくというような、非常に総合的計画でやっていく。そういう総合計画をもって初めてアメニティというものができてくる。ことにわれわれの身近なものの中にそれをやっていく。そういう問題も含め、それからわれわれが社会の中で見知らぬ人と非常に多くかかわりを持っていかなければならぬ都市生活の中における、つまりわれわれのモラルの問題を初めといたしまして、それからまた公共の建物を美観の上からどういうふうに考えていくか。あるいは先ほど自然海浜の問題がありましたけれども、つまりわれわれのレクリエーションという問題を含めて、近くのところにそういう意味で安らぎの場というものをつくっていくという問題をどうしていくか。これは言っていけばいろいろございまするけれども、そんな問題を考えてやっていかなければならない、われわれとしてはそういう点に非常に力を入れなければいかぬ。いわば環境は感情の問題から理性の環境へというところで、われわれも一生懸命になって静かな情熱を燃やしてやっているんでありまして、どうかひとつ御理解いただきたいと思います。
  32. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 大筋と言いますか、そういう意味ではいまの長官のお話は十分に承ってありがたかったんですがね、ただ、静かな情熱じゃぐあい悪いので、いまきわめて激しく情熱をかき立ててもらわなければならぬ、こういうふうに思います。特に、今日の日本の環境の状況は、高度経済成長政策の推進と合わせて残念ながら大変汚染がひどくなっている、こういう事実はどうしても隠せない実態だと思いますね。したがって、それを一日も早く取り戻していくということがこれがいま重要な柱になってこなきゃならぬ。そこに環境行政の一番大きな課題があると思う。そういう意味合いからながめて、いま言いました若手グループを落胆をさせないようなそういう形を、ぜひとも長官としても、いまお話がありましたように、むしろこれからも助長をしていっていただくようにお願いをしておきたい、こういうふうに考えます。  冒頭、新聞で大変問題が提起をされているということについて誤解があると、こういうことでした。したがって、この誤解はきちっと解いていってもらって、その正しさというものは証明をしていかなきゃならぬ、こういう状況に私は立っていると思うのですね。そういう観点できょうは少し質問をしていきたいと思うんですが、その前にこのいただいております資料について少し御説明をいただきたいというふうに思います。  まず三ページですが、「油濁の発生状況」というのが出ておるわけであります。で、先ほど配付をいただきましたいわゆる公害白書ですね、これによりますと、数字が少し違うと思うのですね。これは、理解としては、白書の方では大阪湾と瀬戸内海に分けておりますから、これをプラスをすればこれは数字は合うということになるんですが、白書でこういうふうに出ておるとするならば、やはり資料をつくるに当たってもう少しその辺の配慮をしていただいて、比較のしやすいようにぜひともお願いをしなけりゃならぬと思うわけですがね、この辺の配慮についてまず第一に指摘を申し上げておきたいと思うんです。  それから、十一ページなんです。これは総量規制の方の関係ですが、この十一ページの最初のアの表なんですけれども、この表は一体何を示しておるんでしょうか。これはCOD達成状況という立場で表がつくられている。この達成状況でいきますと、たとえば四十九年度のAですね、瀬戸内海達成状況四〇%。ところ東京湾伊勢湾達成したものが一つもないと、こういう見方になっているわけですね。この表を見さしていただいてもよくわかりません。白書でいけば、これはたとえば四十九年度のA水域の場合は東京湾五三、伊勢湾は五四、そうして瀬戸内海は四〇、こういうことになるはずでございます。この表を見せていただいている形からいけば、A水域、B水域については、問題にしておる瀬戸内海は、きわめて伊勢湾東京湾と比較をしたら大変りっぱでありましてね、伊勢湾東京湾はこれはもう目も当てられぬような状況に相なろうかと、こう思うんですが、これは一体どういうことなんでしょう。
  33. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) この十一ページの「COD環境基準達成状況」というのでございますが、これはこの表題にございますように、環境基準というものを当てはめを水域ごとにやるわけでございます。ただ問題は、水域ごとにやります際も、東京湾であれば十八水域ですか、中を区分けをするわけでございます。瀬戸内海は現在百五十一に区分けをして当てはめをやっております。そういうことで区分けをしてやる際に、利水の目的といいますか、そういう点も現在の利水、将来の利水、そういうものも頭に置いて、これはAならAという当てはめをやる、BならB、CならCという当てはめをやるわけでございます。そのAなりBなりCというものの基準値がどうかというのがその右側の方の「註」のところに書いてあるわけでございます。そこで、当てはめた水域がこの環境基準達成するというのが一つ行政目標でございますから、この達成状況がどうなっているかということを見るわけでございます。その見る際に当てはめ水域達成しているかどうかというときに、その「註」の2に「達成率」というのがございますが、これは環境基準当てはめ水域数でもって環境基準達成した水域数を割りまして、これをパーセンテージで出すというやり方でやったのがこの表でございます。もちろんこのほかにもやり方としては、環境基準に対していろいろ測定点で調べます、全検体数の中でどのぐらい達しているかという検体数ベースで調べるやり方ももう一つございますけれども、この場合にはむしろ当てはめ水域達成状況といいますものがどうかなということで、これをこの参考資料では収録をしたということでございます。  その際に、たとえばA、B、Cというのを見ました場合にも、Aの方が達成率が悪うございます。次がBでCがあれということになります。結局問題は、地先水域等におきましてはむしろCというところが相当ございます。それから今度ややBになりまして、中央部の方がAになるという傾向がございます。そこでなかなか達成が逆になっておるという姿がございます。  それから、ここに東京湾伊勢湾瀬戸内海といいますものが三つ並べてございますけれども、瀬戸内海が比較的達成状況がよろしくなっております。といいますのは、一つはこれは先ほど来話もございます産業系排水に係るCOD二分の一カットというような措置を特に瀬戸内海の方についてはとっておりまして、これも超過達成したというような現実もございますので、比較的数値はよろしくなっておりますが、東京湾伊勢湾、これが余りよろしくない。したがいまして、今回総量規制というような制度をやります際も、むしろ、瀬戸内海をやるのであれば、瀬戸内海以外もやり得るようにというような仕組み方を、総量規制等も考えたと、こういうようなことでございます。
  34. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 長々御説明いただくのも結構ですがね、問題は、この表を見てあなたは疑問に感じないかと、こう言っているんですよ。伊勢湾東京湾は、言うならAランク、いわばA水域ならA水域の中で基準達成しておるのはどうなのかというその結果がここに出ておるわけでしょう。瀬戸内海は、たとえば百なら百ある中で四十なら四十あったと、ところ伊勢湾では百なら百あったけれども、全然達成をされたところはなかったと、こうなるわけでしょう。そうすれば、達成をされている部分が幾分かでもあるところの方が、これは環境よくなったってあたりまえの話なんですよ。ところが、この表からいきますと、問題になっている瀬戸内海よりも伊勢湾東京湾はこれは大変なことじゃないのかと、こうなりますね。事実そうなんですか。
  35. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) CODに見る限りにおきましては、瀬戸内海よりも東京湾伊勢湾の方が水質は悪いと、かように認識しております。
  36. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そうしますと、この環境白書の中で出ている数字というのはでたらめだということですか。たとえば伊勢湾の場合は、この表からいきますと、はっきりしているんですよ。この瀬戸内海基準で合わしていくとするならば、四十九年度のAは伊勢湾の場合五四、東京湾はAは五三、Bの場合は東京湾四八、伊勢湾が六三。Cの場合が伊勢湾は……言ってることわかるでしょう、違うんですよ、これ。達成率は、四十九年度、伊勢湾の場合のAは五四、それからBが六三、それからCが九六。五十年度はAが四九、Bが六〇、Cが九三。五十一年度Aが五五、B六〇、Cは九七。それから東京湾の場合は、四十九年度のAが五三、Bが四八、Cが八八。五十年度はAが五六B六三、C九二。五十一年度Aが七九、B七七、Cが九九・八。これは二百二十一ページ、二百二十三ページ、それぞれ表が出てるじゃないですか。これと同じような並べ方で瀬戸内海ところがありますね。瀬戸内海ところの数字はここに挙げられておる数字と一緒なんですよ。こういうふうに出ておりながらなぜこういう表が出てくるんですか。
  37. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 先ほども申し上げましたように、この環境基準達成状況と言います際に、一つは当てはめ水域分の達成した水域数という角度での達成状況、これを参考資料の方の十一ページに収録したわけでございます。それから、こちらの白書の方のは、二百二十ページに東京湾水質が書いてございますが、これも備考にございますように、これは検体数でやったということで備考の2に書いてございます。総検体数の中で環境基準に適合しない検体数がどうかという、要するに検体数ベースでやったものということが東京湾、それからその次の二百二十二ページ、三ページにわたって書いております伊勢湾、これも検体数ベースのを、白書の方ではこっちを収録してあるという、そういう関係でございます。
  38. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 これは、東京湾伊勢湾瀬戸内海の比較をするためにここに集計をされたんでしょう。そうなれば同じ方式で出された数字がなぜ出てこないんですか、資料の中に。どこからこれ拾っているのかぼくはよくわからぬですよ。しかも、いま具体的に指摘をしておりますように、四十九年度にしても五十年度にしましても、五十一年度にしましても、瀬戸内海の方ではこれだけ達成率があるのに、伊勢湾東京湾でAランク全然達成率が一つもないなんというのは、こういうふうにこの表からいけば見ざるを得ぬでしょう。違うんですか。東京湾伊勢湾ゼロなんですから。そうして瀬戸内海はこれは三八あるんですから、五十一年度の場合は。この表の意味というのは何を指しているのか、何のために集約をしたのか、さっぱりわからぬじゃないですか。しかも、たとえば伊勢湾の方は、AAランクあるいはAランクは不適合率が若干増加をしておるけれども、Bランク、Cランクは横ばいだという評価をしているんです。これは三重県の環境白書の中で明確になっておるんです。で、その数字と私が先ほど申し上げたこの環境庁の環境白書の数字とは合っているんですよ。ところが、ここへ出された肝心の法案を審議するための資料の方は何を意味しているかさっぱりわからぬ。こんなばかげた資料ありますか。  さらにもう一つ指摘をいたしましょう。たとえば赤潮発生——同じ十一ページです。この赤潮の発生につきましても、白書の数字とそれからこの表の数字というのは食い違っているじゃないですか。瀬戸内海は合っているんですよ、瀬戸内海は。こういう資料というのは一体どうなっているんですか。
  39. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ですから、先ほど来申し上げておりますように、環境基準達成しているかどうかと言います際に、われわれが使ってますのは、大体総検体数で適合していない検体数を割れば不適合率ということで、どの程度に適合していないかという姿がわかるというデータを一つ使っておりますのと、もう一つ使っていますのは、当てはめ水域分の、達成した水域なり達成していない水域というのを分子にした場合の達成率というのと、二色よく使ってございます。したがいまして、物によりましては両方載っているものもあるし、場合によりましては片っ方の数字を使って、そのかわり注の方で、こういうものであるというふうに説明している場合がございます。と申しますのは、一つは、要するに検体数ベースでいきますと、たとえば東京湾なり瀬戸内海といいます広域的な水域になりますと、中央部につきましては県の境目になるものですから、その辺は余り県の方も調べないんですね。調べるところはすぐ地先の、見えるところの方はたくさん調べるということで、検体数がそちらに集中をしてくるということで、中央の方がややお留守になりがちでございます。したがいまして、地先の方はいろいろ上乗せ規制や何やかけてきれいにしていこうという努力をするわけですけれども、中央部の方は余りはかりもしませんし、また中央部が汚くてもまあいいじゃないかという感じが多少あるわけでございます。今度はわれわれは総量規制というものを実施していく際には、瀬戸内海なら瀬戸内海東京湾なら東京湾全域をきれいにしたい。したがって、地先水域は、上乗せ規制はいままでどおり存続しますから、これはこれでやっていただくとともに、さらに東京湾なり伊勢湾なり全体を目指して、CODを全面的に達成するということのために総量規制をやりたい。そういう趣旨からながめますと、むしろ今度のこの当てはめ水域達成状況というのが適当ではなかろうかということで、法律案の参考資料という際にはこちらのものを一応収録したと、こういう経緯でございます。
  40. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 これはもう何遍聞きましてもわからぬですよ。仮に、いま説明がありましたように二つの種類のデータのとり方があると言うんならね、その二つの種類の二つとも同じデータ基盤をそろえて出してくださいよ。二つあるってね、片方は、瀬戸内海だけはこちらAをとる。東京湾伊勢湾はBの方のデータをとる。そんなことじゃ比較にならぬじゃないですか。どうですか。
  41. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 質問の要旨に答えてください。
  42. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ただいま申し上げましたようなことで、この法律案の参考資料としては、当てはめ水域分の達成水域数というこの表の方を収録した方がむしろ適当であろうということでこちらを収録したわけですが、ただ、白書の方は、ただいまお話しございました、東京湾の方が二百二十ページ、それから伊勢湾が二百二十二ページにございますが、そのほか瀬戸内海は二百四十一ページにこれまた書いてございまして、いずれもこちらの方は総検体数で適合した検体数を割るということでの適合率というような姿でこちらはそろえたかっこうで、白書の方はこちらの指標を使ってございます。
  43. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 もう一遍聞きますがね、東京湾伊勢湾瀬戸内海のこの三つの中で、ここに挙げられたデータの根拠は同じ方式のものですか、異なるんですか、それを明確にしてください。
  44. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) ただいま配付してございます資料は、いわゆる環境基準をA、B、Cというような形で面で当てはめてしているわけですが、その面の中には測点の数が相当ございます。その測点で環境基準が満足しているかどうかをそれぞれ、全体で評価して、各測点とも満足しておればその水域は満足しているということで、こちらの方ではその当てはめ水域環境基準達成しているという形で出しているものでございます。それで、当てはめられた水域環境基準達成しているかどうかというものを評価して、そこの水域を今後どうするかという面で今後考えていくことになりますので、ここでは当てはめ水域で見た方が妥当であろうということで見ております。  それから、いま局長が申し上げましたように、一測点でたとえば年十二回とかあるいは年六回とか、そういう形で相当測定をしているわけでございます。その測定した結果が、たとえばその一回の結果が環境基準に対して適合しているか適合してないかという、総検体数で見る物差しがございます。それが白書の方に出ているものでございます。そういうことで、考え方としては、この瀬戸内海伊勢湾東京湾というのの物差しはすべて統一してございますので、先生指摘ございましたそれぞれ違うということはございません。  それから、赤潮の方で白書の方と違うじゃないかというようなことがございましたが、瀬戸内海につきましては水産庁の方できめ細かくとっておりますので、そのデータをとったわけでございます。それから、東京湾伊勢湾はそういう水産庁で細かく調べたものがございませんので、海上保安庁が調べておりますものをここでとらえてございます。これは白書と同じでございます。白書の二百三十五ページに「海洋汚染の海域別発生確認件数」というのがございますが、その中の「赤潮によるもの」というものをこちらに別掲してございますので、五十一年、五十年を比較していただきますと、この十一ページの「赤潮発生件数」と同じでございます。
  45. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 くどいようですが、もう一遍説明いただけますか。  白書の二百四十一ページ、これは瀬戸内海における「COD(海域)の環境基準適合率」です。それから、先ほど言いましたように二百二十三ページ、それから二百二十一ページの下段、それから二百二十三ページの上段、それと二百四十一ページの数字、これは根拠が違うわけですね。
  46. 島田隆志

    説明員(島田隆志君) 同じでございます。根拠は一緒でございます。
  47. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 根拠は一緒。——一緒だとしますと、この達成率という形からいきますと、それぞれの達成率、ここに出されておる表を一覧表にしますとだれが見ましてもよくわかるんですよ。その数字が、先ほど私が申し上げましたように、たとえば四十九年度のAですね、ゼロのところが五四という数字になる。そうすると、伊勢湾での五四と瀬戸内海の四〇というものを比較をすれば、大体瀬戸内海伊勢湾との比較、同じ基準の問題ですから簡単に理解ができるんです。なぜそういうふうにやらなかったのかということなんですがね。憶測的に物を考えていきますと、瀬戸内海特別法案をつくるんだと、伊勢湾東京湾の方がAランク、Bランクあたりでは話にならぬほど汚れていますよと、しかし瀬戸内海は特別法をつくるんですと、したがって、その特別法は伊勢湾東京湾の立場からながめてみて、少しぐらい後退したってしんぼうができるんじゃないのかというデータに、憶測をすればそういうことになっちゃうんです。違いますか。
  48. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) まあ参考資料の方に収録したのは、環境基準達成状況と当てはめ水域関係での状況のを収録したわけでございます。そういうやり方でいきますと、東京湾なり伊勢湾のA水域、これはゼロという数字に計算上なります。  で、問題は、こういう表を出した際に、東京湾伊勢湾というのがこういう状況なんだから、瀬戸内海あんまり勇ましくする必要はないんだというような角度でこういうものを入れたのかという御指摘ですが、そういう意図はございません。むしろ瀬戸内海といいますものが、先ほど来申し上げておりますように、産業系排水の二分の一カットいうようなことでCODについてやったということもございますので、そういう関係で比較的達成率がこの三水域では高い。しかしまた瀬戸内海は、総量規制というものは現行法の十八条の規定からしても導入をすべしという趣旨の規定がある。したがって総量規制は入れたい。やるけれども、それだったら東京湾伊勢湾はほっておいていいのかねと、そういうわけにはまいらぬのじゃないでしょうかという感じにもなるかなという気もいたしますし、まあとにかく現実はそうであるという角度のもので一応出したというものでございます。
  49. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 まあこれは、大体私どもは専門家じゃありませんからね。ですからもう少し、せっかく出ておるデータは私どもがながめてもなるほどなと単純にわかるようにしてくださいよ。この辺はもう特に私は要望しておかなきゃならない。——頭をひねってますか、これながめて私はわからぬですよ、正直言いまして。せっかく白書の方では同じデータに基づいて表が出ておって、これをこう組み合わせていけばはっきりぼくらでもわかるんです。ところが、せっかくこの法案審議のために出していただいた資料を見ていると、さっぱりそれわからぬと、これじゃお話になりませんから、これは頭ひねるんじゃなしに、ひとつそろえてもらうようにお願いをしたいと思うんですがね、いいですか。
  50. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) この当てはめ水域以外に検体数での三水域、その他の対比の表、これは調製して提出いたします。
  51. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 まだ資料の関係で大分あるんですけれども、同じような数字の問題ですから、一つだけ。これは昼から海上保安庁の方に来ていただくことになっていますからさらに確認をしなきゃなりませんけれども、水産庁のいわゆる確認とそれから海上保安庁の確認と、赤潮の確認の件数が違ってますね。これはたとえば水産庁が確認をした場合に、ここで発生してますよという確認があったときに、当然これは保安庁の方にも関係ところですから、連絡はあるんだろうと思うんですがね。そうなりますと、水産庁は確認をしたけれども、たとえば保安庁がそれは違うよという否定があったり、あるいは保安庁が確認したけれども、水産庁の方でそれは赤潮じゃない、こういう何かトラブルがあるんですか。
  52. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 赤潮発生件数の関係ですが、実は瀬戸内海につきましては「水産庁調べ」ということで出していますが、これは瀬戸内海漁業調整事務局という水産庁の出先が瀬戸内海にはございます。で、水産庁の方におきましてはこれは補助事業としてやっておるわけでございますが、たとえば、漁船等が瀬戸内海で漁をしているときに赤潮を見たと言えば、すぐこれが漁船から漁協、漁協から県庁、それから瀬戸内海のこの漁業調整事務局に通報がすぐぱっと行く、そういうシステムをあそこはとっております。そういうことで、この「水産庁調べ」というのはむしろ非常に精緻なものまで皆上がってきておる。海上保安庁の方は、これは巡視船その他で、取り締まり船等で回るわけですが、これは単に瀬戸内海だけでなくて、伊勢湾東京湾もその他の地域も海上保安庁はまんべんなくやっておりますので、回っていってみたときに赤潮が出たというのを集計していると、そういう角度のものでございます。ですから、そういう意味では水産庁調べの方が何といいますか相当きめ細かく、しかも迅速に集計といいますか連絡があるという筋合いのものというふうに聞いております。
  53. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そうしますと、確実な方をデータとしては採用していただければ、不確実なものは何も載せなくたっていいんじゃないですか。これも一つ疑問があるんですがね。
  54. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 御説明申し上げます。  これは本当はお答えというより説明の方になるわけでございますが、こういう生物現象につきましては、どの限界から先を赤潮一件と勘定するかと、こういう基本的な問題が一つございまして、まだ学者の中でも、ある程度プランクトンが少し多くなったなという程度のものは赤潮と勘定しないという考え方もあるようでございます。あるいは色の変化、赤潮という言葉が表徴いたしますように、色の変化を起こしますと生物現象としては余り大きな変化じゃなくても赤潮として勘定されると、そういう何といいますか、人間の角度からの尺度の問題がございますが、そういうことで、水産庁も、先ほど二瓶局長の方からお話がございましたように、現実的には漁業者が発見したものを基礎として数字が組み立てられております。  それからもう一つは月別の形で集計をいたしております。それからもう一つ、単位といたしましては県別で集計しているということで、非常に大きな赤潮の場合でございまして、二カ月にまたがるという場合には、しかも二県にまたがりますのはそれぞれの月、県でカウントするという形になりまして件数が多くなってまいります。そういう点がございます。  それはいろんな集計上の、こういう生物現象の統計をとる場合の、どの範囲を一件と考え、それから濃度的にどの程度のものを一件と考えるかという点が基本的にあるということで、私どもが補助事業でやっておりますのは実は瀬戸内海を一番濃密な形でやっておりまして、そして最初どういう形でやるかというのをいろいろ検討したわけでございますけれども、やはり漁業者が見てこれは赤潮だというやつから、しかもある程度の大きなやつから件数としてカウントしようという、どちらかと言えば実態的な面に着目をした統計のやり方を積み上げてきておりまして、それを何年か積み上げることによって大体ある程度瀬戸内海全域としてのコンセンサスができているというような形の統計のやり方でございます。まことに人間的なと申しますか、そういう点の統計でございます。  それて、一方海上保安庁の方の——細かいことは聞いておりませんけれども、全国的にやっておられるということで、主として発見の件数の形でとらまえる形になっておられるんだと思いますが、その点どうしても統計の基本的な違いがあるということを御理解いただければありがたいかと思います。どちらが間違っているということじゃございませんので。
  55. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 間違っているというふうには言ってないんですがね。ただ正確に資料が提供されれば、それに基づいてということになりますから。  いまのお話聞いていますと、たとえば伊勢湾の場合に、五十一年度赤潮の発生がこの表では三十三件だったと思うんですが、ところが、私どもがほかのデータで拾っているのは四十四件、それから白書もたしか四十四件になっていると思うんですよね。そうしますと、その四十四件の件数の中には、たとえば伊勢湾ということになりますと、たとえば三重県と愛知県、この両県に一つの赤潮についてまたがったときには、一件ずつ都合二件という数字になるんですか。
  56. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) おっしゃるとおり、県がまたがりますと、瀬戸内海方式の調査のやり方によりますと二件というカウントになるわけでございます。
  57. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 伊勢湾の場合はどうなんですか。
  58. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 水産庁といたしましては、そういう赤潮につきましてきめ細かい調査をやっているのは瀬戸内海だけでございまして、それ以外の地域についてはそういう形の調査はやっておりません。ただ年一回、各県からいろんな漁業関係で公害が出ました場合に件数を別にとっておりますが、そういう中の一部としてとっている数字はございます。
  59. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そうしますと、この資料の確認としては、たとえば瀬戸内海のこの件数というのは、伊勢湾あるいは東京湾と比較をする場合の見方として、海上保安庁の資料の方が大体共通していけると、水産庁のやつでいくと件数としては増加をしてくる、こう見ていいわけですね。
  60. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) そのとおりでございます。
  61. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時五分まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  62. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  午前に引き続き、瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  63. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 午前中、資料の関係について簡単に御説明をいただいてやろうと思ったのが時間をとってしまいまして、時間をとった結果、提起をしている趣旨は理解ができたんですが、審査に当たっての、私ども専門家でない者の物の見方としましては、提起の仕方自体について問題があるんじゃないかというふうにも考えるわけでして、その辺、資料提出に当たって少し御検討を賜りたいというふうにまず申し上げておきたいと思います。二瓶局長も専門的な立場で御説明をいただいたんですが、御説明が大変、何といいますか、説明をすれば簡単に理解のできるような形の資料でないと手ごろでないということだけ、素人の立場から申し上げておきたいというふうに思います。  それで、余り時間とれませんから、本論の方に入っていきたいと思いますが、四月の二十日の朝日新聞の社説でありますが、幾つか瀬戸内海環境保全の件に関しての新聞記事が、論調等も含めてあるわけですけれども、大体共通して指摘をされております点は、環境庁の姿勢が後退したんではなかろうかと、こういう心配と同時に、法案の内容あるいは基本計画そのものをながめてみましても、大変歯切れの悪さが各所に目立っておるわけで、そうした観点を端的に指摘をしている部分が多いんですね。そういう意味で、私はせっかく基本計画をつくられて、そして新しい、待ちに待っておりました後継ぎ法という立場で法案瀬戸内海の場合やる。さらにまた、具体的には、東京湾伊勢湾あるいは琵琶湖等緊急救済を要するといいますか、そういう立場にある、総量規制を中心にした新しい対策法案、こういう御苦労が実ってきたわけでありますので、さらにそれを補強することはもちろんの話でありますけれども、特に新聞の持つ大きな社会的な影響力等を考えて、長官が冒頭お話しがありましたように、誤解をされる面があるとするならばその誤解を解いてもらう、そして正しい認識の上に立って新たな評価なりあるいはそういう立場での国民的合意が取りつけられていかないと、本当の実を上げることができないという立場で、二、三この社説に従って私は解明を求めていきたいと、こう考えるわけであります。  そこで、この朝日新聞の四月二十日の社説によりますと、総括的なものはともかくとして、問題点として大体四点、あるいはその他を加えていきますとあと二、三点あるわけでありますが、まず第一点として提起をされておりますのは、この提出に至る手続上の問題であります。それは、「瀬戸内海環境保全に関する基本となるべき計画の基本的な考え方について」という答申を瀬戸内海環境保全審議会が行ったわけですね。これが五十一年の十二月であります。ところが、この答申に基づいて、現行法の立場からいけば速やかにこれは政府が基本計画をつくり、そして関係ところ指導あるいは協力を仰ぎながら具体的に進めていくという立場になっている。ところが、この答申が行われてから約一年半も空白があって初めてものになったんじゃないのか、こういう指摘があるわけであります。私どもといたしましても、他の諮問の案件、それからそれを政府閣議決定をしてそして具体化をしていくという道筋から考えていきますと、大変時間がかかり過ぎている。この間にいろんなあつれきその他があって、なかなか調整に手間取ったという御苦労はわかるんですが、この間の環境庁の姿勢の問題として追及をされても、なかなか抗弁ができにくいと思うのであります。そういう意味で、この空白期間がなぜ長引いたのか、この辺についてひとつ明確に解明をしてもらいたい、こういうふうに思うのであります。したがって、現行臨時措置法の第三条の精神に基づいて、空白期間が長引いたという、こういう立場の責任とそれから結果、こういうことを骨にしてひとつ十分な御説明を賜りたいと思います。
  64. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 瀬戸内海環境保全審議会、これから御答申いただきましたのが五十一年の十二月ということでございます。「基本となるべき計画の基本的な考え方」という答申でございます。したがいまして、御指摘のとおり約一年半前でございます。で、瀬戸内海環境保全につきまして、きわめて多岐にわたります施策なり施策の方向といいますものがこの答申には盛り込んでございます。したがいまして、政府といたしましてはこの答申を尊重いたしまして、これに基づいて基本計画を定めるということになるわけでございますけれども、これを実施していく十分な手段といいますものを用意することがまた不可欠である、かように考えられた次第でございます。  そこで環境庁は、答申を受けましてから、その答申の中に盛り込まれた各般の事項につきまして具体的な検討を進めまして、既存制度によって措置し得るものと新たな立法措置を要するものとに振り分けまして、さらに新たな立法措置につきましても、既存制度との関連というようなことで若干調整を要するというようなものがありますればこれを調整を図るというようなことで、立法措置に関するものは今回の法案の中に取り込んだと、そこで基本計画とあわせまして去る四月二十一日に閣議決定を行なったということでございます。  やや具体的に例を挙げて申し上げますと、たとえばこの基本計画の中に、「総量規制制度の実施」ということが書いてございます。答申におきましては、この水質関係につきましては、「水質環境基準達成維持を目的として、瀬戸内海にふさわしい所要の排水規制を実施する」云々、こうなっておるわけです。そしてさらに答申の「留意事項」というところがございまして、この留意事項の2で、「環境保全上許容される汚濁負荷量の範囲内に排出汚濁負荷量を量的に規制する方式の導入に努めることとし、」云々というようなのが答申でございます。私たちといたしましては、瀬戸内海にふさわしい排水規制とは何ぞや。しかもまた「留意事項」でただいま申し上げましたような量規制関係の点に触れておられる。で、臨時措置法それ自体は、十八条の規定で、量規制の導入を図るべしという趣旨の規定がある。こういうことを踏まえますと、どうしても後継法というときには、総量規制というものを瀬戸内海については導入するのが一つの大きな至上命令ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。  したがいまして、一昨年の十二月に答申を受けましたが、引き続いて国会等もございました。そこで、昨年の通常国会は六月九日に終了したかと思いますが、そのころから総量規制をどういうふうな仕組み方をすべきかということと、それの施行のための所要経費をどう要求したらいいか。予算の方は御存じのとおり八月三十一日が概算要求の締め切り期になります。したがいまして、法制を考えます際には、それとの絡みでの所要の執行予算がなければ困りますので、そういう面も十分検討もいたしました。そしてその後、この仕組みは、総量規制というのはこれはわが国では当然初めての制度でございますが、世界でも水質総量規制というのはやってないと思います。したがいまして、こういう濃度規制にかわる新しい総量規制水質についての総量規制でございますから、これは中央公害対策審議会、こちらの方に御諮問を申し上げる。そして、その答申を昨年の十二月の九日ちょうだいをいたしました。そしてそれをベースにして、これもまた尊重いたしまして、それで法案化を考えたわけでございます。  その際に、瀬戸内海は当然導入するほかに、先ほど午前中にも申し上げましたような環境基準達成状況からいたしますと、伊勢湾なり東京湾の方がCODに関する限りは数値は悪いということを示しておるものですから、そちらも総量規制は導入し得るように仕組みたいということで、こちらは水濁法の改正でいくと、そして、瀬戸内海は必ず総量規制は実施しますという形の規定を後継法などに法文としてまたこれを入れたということでございます。  そういうような整理をいたしまして、そして後で基本計画を政府として決めます際に、その法案の方とそれから基本計画という閣議決定政府が決めるものとの整合性といいますか、そごのないように調整もいたしまして、四月二十一日法案と一緒に閣議決定をしたということでございまして、ただいまは一つの例といたしまして総量規制のことで申し上げたわけでございますが、そのように、一年半前に答申をもらったがその間のんびりしてたのかということにつきましては、答申の趣旨を体してさらに具体的な施策というものをどう基本計画に織り込み、その中の法律事項というものを後継法なり水濁法の改正というものに盛り込んでいくか検討を鋭意続けてまいったということでございます。
  65. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 時間があればいまの御答弁は大変問題があるところです。それはなぜかといいますと、これは指摘だけにとどめておきたいと思うんですがね、臨時措置法の第三条は基本計画を定めることが義務づけられているんですね。しかもその立場で審議会にかけられて答申が出ている。具体的な法律は、臨時措置法は延長してその過程にありますから——そうでしょう、過程にありますから、その法案を直ちに修正するかどうかの課題じゃないはずですね。基本計画をどうするかということですよ。しかもそれは、瀬戸内海のこの法案を議員立法でつくられるときに、瀬戸内海に関してきわめて崇高な目標を掲げられて、それに到達すべき基本計画というものが政府の手で行われなきゃならぬということを第三条は決めているんです。そうなりますと、基本計画と、基本計画を具体的に実行していく法案とをすり合わせをしながら、その整備に時間がかかったんだという言いわけは、私はこれは成り立たぬと思うんです。少なくとも、これは答申に基づいて基本計画をばっちり立てる、立てた基本計画に基づいて、後法案をこの基本計画に沿うようにどうつくり上げていくかというのが、これが課題であろうと思うんです。いま全般的に今日の状況の中で、具体的法案としてはこうこうこういうふうないろんな問題を考えて、その考えた上に立って基本計画を確立するんだじゃ、これこそまさに本末転倒になるのじゃないかというふうに、私自身としてはいまの局長説明では受け取らざるを得ない。これはやっぱり間違いです、そういう意味からいくと。少なくとも環境保全という立場からいけば、目標を掲げて、その目標にどう到達をしていくかについてのお互いの努力というものが、これが具体的な法案にもなったりあるいは指導にもなったりという立場の中でこう積み重ねられていって目標に到達をする、これはあたりまえの話だと思うんですよ。この第三条の立場からいくと、いまの説明というのは、私は少なくとも説得性のあるものだというふうには思えません。これだけ御指摘を申し上げておきたいと思います。  二つ目の、手続上の問題ですが、この社説によりますと、いわゆる閣議決定の日程が明らかになった段階に、閣議が五日後に行われるのだという日程がはっきりしておってこの審議会が開催をされている。ところが、その審議会が、審議会という正式のテーマで議題として取り扱われるのでなくて、いわゆる懇談会という形で行われた。これは一体どういうことなんだというのがこの指摘なんです。この辺はどうなんですか。経過のくだりはよろしいですからね、結論言ってください、もう余り時間がありませんから。
  66. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 基本計画につきましては、先ほども申し上げましたように、審議会で十分御検討をいただきまして御答申をいただいたわけでございます。したがいまして、この基本計画の基本的考え方という答申を尊重いたしまして、これに即して政府として基本計画を策定するということで考えたわけでございます。したがいまして、前に御諮問をし御答申を得たというものをベースにして、それを尊重して決めるということでございますので、さらにまたその政府が決める基本計画の原案そのものといいますか、こういうものをさらに審議会に諮問するという必要はないのではないかというふうに考えたわけでございます。  ただ問題は、御答申をいただいたそういうものを尊重して政府の原案を決めるということでございますが、先ほど申し上げましたように、排水規制で言いますれば瀬戸内海にふさわしい排水規制をやるべしという御答申でございます。他面、「留意事項」で総量規制というものを検討せよということでございますので、その線に即して、たとえば総量規制という制度を実施をいたしますというようなふうにしていますので、その辺の答申を得てからの経緯なり、あるいは、答申では方向は示されていますけれども、それをさらに具体的に基本計画の中に記述をしていくと、そういうような事項はこういうことであるというようなこと等について、これは閣議決定をする前にあらかじめ審議会の先生方の方には十分御報告し、あわせて御意見も伺ったらどうかということで実は審議会を、懇談会という形式でございましたけれども、一応四月の十七日にお集まりいただきまして御報告をし、御意見も伺ったわけでございます。
  67. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 時間の関係ありますからね、長い経過は承知の上でお尋ねをしているわけですから、その辺はひとつ重複をしないで、御答弁を簡潔にしてもらいたいと思います。  いまのお話ですがね、たとえば答申済みのものを土台にしてやっていることだから、だからそれは審議会でなくったっていいんだと、こういう趣旨合いの御説明ですがね、そうすると、審議会というのは諮問事項だけがこれが審議会であって、そのほかの論議をする場というのはこれは懇談会なんですか。私は少なくとも、基本方針はなるほど答申済み、明確であります。それからさらに部分的には去年の十二月にも出ていますから、これもある程度出ているわけですね。しかし、具体的に、今回の臨時措置法から特別措置法へという、いわば臨時の立法から恒久法へと、こういう基本的な瀬戸内海法案の問題ですね。その現実に立ちますと、当然これ審議会の正式議題として取り扱われて、そしてそれが一つの注視をすべきいろんな意見として明確にされていいんじゃないんだろうか、こういうふうに思いますがね。なぜそれを懇談会というふうにしなければならなかったのか、依然としてこれやはり説明納得できません。その辺少し明確にしてください。
  68. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 四月の十七日の審議会の懇談会には、基本計画案といいますか、その面についての御報告と、それからもう一つ後継法案並びに水質汚濁防止法案、これの大綱といいますか、法律案の骨組みをこれも御説明をいたし、御意見等も伺ったわけでございます。したがって、この面につきましては、まあ懇談会という形をとりましてやったわけでございますが、その辺はむしろ懇談会の方が忌憚のない御意見も出るかなという感じもいたしまして懇談会とやったわけですが、別にこれは審議会にせずにぜひ懇談会でないと困るんだとか、そういうようなものはないと思います。一応懇談会形式でお話し申し上げ、委員各位に御理解をいただき、また御意見等がございますれば大いにその辺は出していただくと、こういう形で、報告を主にしてそういう機会を設けたということでございます。
  69. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 これも突っ込みますとまた大変ですが、審議会のメンバーが、審議会ということで正式議題にしたときは意見が出にくくって、懇談会にしたら意見がざらざら出るというような性格のそういう審議会のメンバーならね、差しかえてくださいよ。私はそんなものじゃない。懇談会であろうと審議会であろうと、少なくとも国民の命を預かろうという重要な法案ですからね。これは少なくとも私は正式議題として、明確に、堂々とお互いの立場に立って論議がし合える、こういうことが原則だろうと思うんです。こういう場合についてはもう少し権威を持った態度をとってもらうように注文をつけておきます。  それから、これは新聞にはありませんが、今回の法案全体をとらえてみまして、一番不足をしておりますのは、これは民主的手法というものが全然どこにも採用されてないということです。計画策定、いわゆる計画の樹立、策定あるいは実行に当たってですね。これは環境アセスの法案が出ておれば、事前評価の法案が出ておれば私はそれで十分に論議をし、充実をし、こうした課題についても明確になるだろう、こういうふうに思うんですが、残念ながらそれがいまだに出ない。そういう形の中でこの法案をながめていきますとね、いわゆる住民参加を大きく求めて民主的にこれらを到達目標にやっていこうという手法はどこにもないわけです。少し工夫をすれば、これは明らかにここへ入れればよかろうというところは各所にありますね。ところがそういうのがありません。この辺は検討をされたのかどうなのかということを明確にしたいと思います。
  70. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) この法案で、瀬戸内海環境保全基本計画の策定なり、あるいは新たに後継法案で府県計画の策定の規定等もございます。それから、総量削減基本方針、これは内閣総理大臣が決める、削減計画は知事さんが決めるというような関係で、いろいろ計画を決める段階のものがございます。それぞれ必要に応じて審議会の意見を聞くとかあるいは関係府県知事意見を聞くというようなくだりは十分設けてございますけれども、住民参加というような角度での住民の意見を直に聞くという規定は、先生指摘のとおりございません。問題は、私たちがこの法案を検討いたしました際に、住民参加というような問題についても検討はいたしましたが、私たちの考えとしては、たとえばアセスなり、あるいは現在の臨時措置法でも特定施設の許可制というのがございますが、この許可につきましては事前のアセスメントつきでございます。これは今度の法律にはそのまま引き継いで踏襲をいたしております。結局、考え方といたしまして、そういう特定の開発行為なり特別の施設等を設けるということにおいて、それが環境に影響を与えるとかというような際に、利害関係の直にありそうなそういう方々のいろんな意見というものを反映さして、そこで物事というものを決めるべきではないかという感じのものであろう。  ところが、ただいま私が申し上げました、閣議で決める瀬戸内海全体の環境保全の基本計画なり、あるいは府県の知事さんが県全体をにらまえて決める府県の環境保全計画なり、あるいは総量規制でいえば内閣総理大臣が決める瀬戸内海全域の総量削減基本方針なり、あるいは各県の知事さんが総量削減計画を決めるという際に、これはもちろん県民の方なり国民の方というのは無関係ではございません、大いに関係もありますし、御理解を得て御協力もいただかなくちゃならぬと思いますけれども、いわゆる直接的に利害関係があって、この人の意見を十分反映さしてそしてそのあれをどうするかという、何か物をつくるといいますかね、開発行為をやる、あるいはある特定の施設をする、その及ぼす影響というものとの絡みでの住民の方々の意見を聞くということとは、どうも違う性格のものではなかろうかということで、この法律でのいろんな諸計画というものにつきましては、特に住民参加というものは必要はないんではないかということに考えたわけでございます。
  71. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 説明はわかりました。ただ、基本計画でも明らかになっていますし、新しい法案でも明確に言ってますように、住民、住民というか国民の納得を得るということがまず第一ですね。そうして納得の上に立った協力を得る。そのために基本計画等についても公表の義務がつけられている、私はこう解釈するんです。そうしますと、少なくとも公表をするという——決められたものが上から下へ落ちるルールはなるほど今度の法案の中には明らかなんです。しかし、少なくとも民主主義というのは、上から下へと同時に下から上へというパイプもあって、そうして正しく運営をされていくだろうと思うんです。  特に先ほども言いますように、崇高な一つの理想を掲げて、それを到達目標としてお互いに努力をしていこう、しかも全体の国民の協力を得ていこう、こういう立場の法案のときに、いわゆる関係市町村はもちろんの話ですか——この法案は大体県どまりですね、ほとんどが県どまりです。少なくとも関係市町村を含めたり、それから同時にそこに住む関係のいろんな影響を持つ職業の方もみえるわけでありますから、そういう方たちの意見を十分に取り入れていけるような、そういうものというものが組み立てられていって初めて下から上への、全体としての回転ができるような構え方になるのじゃないのだろうか。私はそうあるべきだと思うんです。  たとえばこの法案でいきますと、第四条の二項、「関係府県知事は、府県計画を定めようとするときは、総理府令で定めるところにより、その内容を内閣総理大臣に報告しなければならない。」と、こうなっているんです。関係府県知事内閣総理大臣に報告をしていく、こういう縦のルールですね、下から上へのルールについて、当然これは関係市町村及び関係住民の意見を聞くという、ここら辺が明確に取り入れていただいていいんじゃないんだろうか。これを「総理府令で定めるところにより」と、こういう上からの関係だけでしか受けとめてないところに私はやっぱり問題点がある、こういうふうに指摘をせざるを得ません。  さらにまた、第十二条の七、これはまあ要素が少し違いますが、たとえば歯切れの悪いというふうに御指摘を申し上げておりましたのは、ここら辺で明確に規制の権限等をつけていったらどうなんだろうか。  あるいはまた第十四条の関係等について、たとえば規制基準に基づいて、測定とそれから結果の記録というものが義務づけられておるわけですね。これらに対して、たとえばその結果を記録すると同時に、求められれば直ちにそれを公開をするという、いわゆる公開等について明らかにしていくという立場があっていいんじゃないのか。私はそれがガラス張りで、しかも住民参加を得て、しかも全体の合意を得て目標達成に進んでいく道筋というものが明確に確立をしていくと思う。これは一つの例として申し上げておきたいんですがね。これはもう簡単に、そういうような考え方は取り入れる余地がないと言われるのか、あるいは検討してみようと言われるか、その辺だけ伺っておきたいと思います。
  72. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 先ほどもお答え申し上げましたように、ある開発行為をやるとか、ある特定の施設を設けるとか、その行為によりまして環境に影響を与えるというようなことに相なりますると、直にそういう影響をこうむるような地域の住民の方々の御意向等は十分これは聞くというようなことはあり得ようというふうに思います。ただ、問題は、先ほども申し上げましたように、たとえば瀬戸内海の府県計画、これも知事さんが立てるわけでございますけれども、これには御指摘のとおり市町村長の意見を聞くということあるいは住民の意見を聞くということは法定をいたしておりません。当然知事さんは総合行政をやっておられるわけでございますから、十分市町村長さんの意向等も常日ごろも聞いておられますので、法文上そこまで書く必要はあるまいということと、先ほど申し上げましたようなことで住民参加といいますか、その規定も要らないのではないかというようなことで考えたわけでございます。  そういうようなことでございますので、私の方といたしましては、今回のこの法案というものにつきましては、事の性格その他からも見て、住民参加という角度のものまで織り込むという必要性はないのではないかと、かように実は考えております。
  73. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それは平行線のようでしてね、私はやっぱりそういう形を取り入れていくべきだ。当然各府県が関係の市町村やあるいは違った立場で住民の意見を聞くであろうということを想定をされておるようですし、それからまあ現実問題そういうふうな動きということは私はあるだろうと思うんです。しかし、それが法律の中で保障されない限り、私は生きたものにならない。義務づけがないわけですね。あるいはそのことを要求をしても都合が悪ければ拒否をされる。拒否をされても、これは法律にないんですから、だからそういうものをきちっとやはり法の中に明らかに掲げておいて、当然それはあっていいんだという、そういう保障を明確にしていくように私はやっぱりやるべきだろう。少なくとも環境保全の各法案についてはそういう形が、住民参加の形というものが大きく取り入れられていかないとりっぱなものになっていかないということだけ、これはもうこれからも何回かあることでしょうから、御指摘を申し上げておきたいと思います。  次に、この社説の三点目の問題といたしましては、富栄養化の問題があるわけです。これは森下先生の方からもいろいろ論議がありましたけれども、いわゆる燐と、問題になっております窒素関係ですね。これは基本計画によりますと、七ページのところだと思いますが、後継ぎ法の中で、関係者といいますか、付近の方々等を含めまして求めておりましたのは、燐についても何とか値を明らかにして、そうして規制対象に明確に加えるべきだろう、こう期待をしておりましたのが、言うならばここでは行政指導対象としていくという立場にとどまってしまったし、それから窒素の問題につきましても、この説明からいけば、これは「排水処理技術の開発」、それから「調査研究」、こういうことであって、これもきわめて期待に反すると、こういう形になっているわけですね。幾つか説明をされておりまして、まだ基準がどうのこうのと、こういうふうになっておりますが、私はここで見解は、それが一体どういうものなのかということについて明らかになってないから定めないんだという物の考え方と、少なくとも大方の意見としては、窒素、燐に問題ありと、全然なくしたらこれまた困るんだけれども、多過ぎたら困るんだということもはっきりしてきておるわけだから、多過ぎないようにしていくための措置についてはもう目標を定めていったっていいんじゃないんだろうか、ある程度の。そして、その目標が、いままでの経過から言えば不適当であれば変えていこうとしているわけですから、ほかのものについても。それならそれで、定めた目標を変えることについては私は余り賛成をしませんですけれども、少なくとも変える余地というものは、不確定なものについてもなるべく達成をする一つの道筋というものは明らかにして進めていきながら、なおかつそれのデータをそろえていくわけでありますから、修正は若干後になってやったっていい、こういうふうに思うんですが、その辺の道筋はまるきり逆になっていますし、新聞でもその点を指摘をしながら、これは予測をしておったよりも明らかな後退だと、こういう評価をしているわけですが、その辺の説明をしてもらいたいと思うんです。  たとえば燐等につきましても、これはもう御承知だろうと思いますが、神島というのがございます。これは愛知県と三重県の境ですね。ここは合成洗剤の追放を島ぐるみで決めまして、そしてそれを決めて大体一年ちょっとぐらいたってさましたら、それまでもう天然ワカメなんというものはほとんど見られなかったのが戻ってきたというんですね。こういうことを証明しています。それから、これは前のときに私質問の中に入れましたけれども、海を合成洗剤から守れ、これは明和町の婦人会、前々からこの運動は始まっておるんですけれども、さらに講演会等で認識を深めつつ徹底をしていこう。それから、これは環境庁もいろいろとおつき合いいただいております三重大の三上先生が中心になりまして赤潮の研究をやっているわけでありますが、この三重大のグループが合成洗剤も赤潮の一因と、こういうことで研究データを、中間発表でありますけれどもされているわけです。  こういうふうに燐の問題等も明確になってきておりますし、それから窒素関係等につきましても、これはもう大体の形は決まってきている。ただ量がどれだけかということについては、なるほど説明をされますように幾つか問題があると思いますが、そういう意味から言って、後退だと受けとめられることについてどう釈明をされるのか、この辺を聞きたいと思います。
  74. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 富栄養化対策ということで、窒素、燐というのがいつも問題になるわけでございますが、窒素、燐とも現在のところまだ望ましい環境水質というもののレベル、これが十分詰まっておりません。したがいまして、環境基準というものの、設定も現在ないわけでございます。それから他方排水の処理技術の面等につきましてもまだ十分でないということもございますし、その他の要因もあるわけでございますが、排水基準もまだ決めておらないということでございます。  で、問題は、今回のこの後継法というものを考えます際に、瀬戸内海におきましては富栄養化に伴う漁業被害という問題もございますほかに、海水浴の利用障害とかいろいろな問題がございます。したがいまして、そういう規制という形のものがまだ十分できない段階ではございますが、何らかの手法でもって現状以上にこの富栄養化の進行に歯どめをかけるというような措置はできないものかということで、今回の後継法富栄養化の被害の発生の防止という角度で一応条項を挿入をしたわけでございます。で、その際に、「政令で定める物質」ということで、指定物質を政令で決める仕組みにいたしておりますが、現在の科学的知見その他からいたしまして、行政指導ベースということにおきましてもやはり当面は燐というものを対象にやっていくというのが精いっぱいではないかというふうに考えておるわけでございます。  で、燐と窒素といいますものがよく対で言われるわけでございますけれども、燐と窒素というものを比較いたしました際に、非常にまだ窒素の方が今後科学的研究も相当やっていかなければなりませんし、また、削減技術の面につきましても開発研究等をさらにやっていかなくちゃならぬというようなことで、燐もまだ完全とは申せない段階でございますが、窒素の方はまだまだ問題が多いと、こういうようなことでございますので、窒素の方につきましては調査研究というものをさらに詰めていって、その結果を待って検討したいという角度にいたしておる、こういうのが現状でございます。
  75. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 きょうの段階では、それはもう答弁と質問の繰り返しになりそうですから私やめます。しかし、いずれにしてもこれははっきり姿勢の問題も含めてしていかなければならない課題だろうと思うんです。改めてやりたいと思います。  次に、埋め立ての関係なんです。この埋め立ての関係は、臨時措置法の中でもこれは明らかにして、そうしてこれも歯切れの悪いところがありますけれども、ともかく趣旨合いというのは、余り影響を与えるような形のものについては極力避けていこうじゃないかということが貫かれておるわけですね。ところが、実際に臨時措置法ができ上がりましてから以後の瀬戸内海における埋め立てということになりますと、ちょうど施行をされてから一年三カ月の段階で、件数にして一千六十二件、面積で五百七十四ヘクタール、こういうことになりますね。そして、その後の一年十カ月で千五百八十四ヘクタール、これだけ埋め立てが行われておる。  そうなると、臨時措置法の中で埋め立て規制について大きく取り上げて——これはやらないというふうに決めたら大変だったんでしょうからそうはなっておりませんですけれども、しかし、法の趣旨合いというのはそれに近い、いわゆる規制の力というものが働いて出たといういきさつから見て、これは一体どういうことなんだろう。しかも今度の法案は、そういう現状にありながらなおかつ法案そのものについては少しも強化をされてない。果たしてこれで瀬戸内海の周辺各府県あるいは市町村というものは満足するんだろうか。さらに住民は一体どうなるんだろうか。これは文句が出てきて私はあたりまえの話だろうと思います。  距離にしましても、海岸線では、このいただいた資料でもはっきりしておりますように、瀬戸内海の総沿岸線が五千四百八十三・二キロですか、そのうち純自然海岸線というのは四〇・六%。だから五九・四%はすでにこれはもう自然海岸でなくなっている。二百二十二・八キロしか自然海岸としては残っていない。こういうことを数字でも明確にしているわけですね。私の住んでいる伊勢湾なんか特にひどいんですけれども、とてもじゃないけれどもその比じゃありません。大変恥ずかしい話です。しかし、現実に法が制定をされてなおかつこういう状況になった。これで信用しろと言う方が私は無理じゃないのか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  76. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 瀬戸内海の埋め立ての関係でございますが、これにつきましては、臨時措置法の十三条の規定に基づきまして運用をやっておるわけでございますが、その基本的な運用の物差しといいますか基準につきましては、審議会の答申を得て、埋め立ての運用の基本方針というものがございますので、それを照らしながらケース・バイ・ケースで審査をしておるわけでございます。  で、ただいまお尋ねの朝日新聞の社説によります数値でございますが、これは施行後一年三カ月で五百七十四ヘクタールという数値になっておりますが、これにつきましては若干特殊事情がございまして、たとえば件数が千件というお話もございました。こういうことが実はあったわけでございます。といいますのは、実は臨時措置法が四十八年の十一月から施行になりましたが、四十八年に公有水面埋立法の改正がございました。この新しい埋立法が四十九年の三月から施行になりました。で、施行前の法律では、埋め立てをやっておいて後で追認をいただくと、追認すればもう免許を受けたこととみなすというような規定がございまして、改正法が四十九年の三月から施行になるということで、この四カ月間に追認が殺到したというようなことがありまして、面積は小さいのですが件数とすれば多いので、千幾らという件数がここにあらわれたということがございます。したがいまして、私たちといたしましては、そういう特殊のものはこのまま見るのはどうかという感じもちょっと持っております。ただそういうのが五百七十四ヘクタールには入っておるということを御理解いただきたいと思います。  それから、その後の一年十カ月で千五百八十四という数字が出ておりますが、私の方といたしまして、この千五百八十四という数字がどうもよくわからぬわけでございます。一応私たちが今度の参考資料ということでお手元に差し上げております資料と合うわけでございますが、この新聞社説の五十年二月一日からというスタートからあれすれば、私たちは五十二年の十月末までの数字はこれは公表もいたしております。出しております。そうしますとそこの数字が変わってまいります。千八百四十九です。ただ一年十カ月でなしに二年九カ月になるというようなことでございます。  そういうことで、数字のことで、若干特殊事情なりあるいは期間のとり方、その他によって違いがあるということはあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、私たちはこの瀬戸内海法の施行前と施行後ということで、期間のとり方の関係もございますので、むしろ年平均でながめた方がよかろうということで、参考資料等でお配りしているのにはそういうようなもので収録してもございますが、大ざっぱに言えば施行前の件数で半分、面積で約四分の一程度になっておるということで、十三条の規定によります抑制の方針で、環境保全に十分支障のないようによく留意しながらやるべしという線は相当生かされておるのではないかと、かように考えておりまして、後継法におきましてもこの規定はそのまま存続をするということにいたしております。今後とも瀬戸内海のそういう特殊性といいますものを十分配慮して運用をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、自然海浜関係でございますけれども、先生から御指摘がございますように、瀬戸内海の純自然海岸、これが全体の四〇・六%、半自然海岸が二四・一%、両方合わせましても六四・七%というような現況でございます。したがいまして、なるべくこういう自然海岸というものは残すべきではないかという考えが当然あるわけでございますが、ただ今回私たちが法案等で仕組みましたのは、これは答申にも出ておりますが、いわゆる自然海浜であるということと、もう一つは、そこが潮干狩りなり海水浴等のレクリエーションの場として現に使われておるし、今後も将来にわたってそういうところは自然海岸であって、かつレクリエーションの場として大衆が使っていきたいということを何か保存するといいますか、保全する道はないか、むしろそういう面を考えるべきではないか、これは答申もそういう答申をちょうだいしておるわけです。  したがいまして、私たちといたしまして、その線に沿って何か具体的な仕組みができぬかということで、自然公園法なり、自然環境保全法なり、都市計画法なり、いろんな面での措置があるわけでございますが、瀬戸内海の自然海岸で、そういうものでカバーし切れないものがございますので、それを今回のこういう自然海浜保全制度というもので救えないかということで、まあ県が条例でもってやり得るような措置考えたということでございます。
  77. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 お話を聞いておりましても、何かこう及び腰でやっておるような感じがしてなりません。特に十三条で特別に配慮をしてきてなおかつこういう現状が出てくるということになりますとね、これはやはり相当思い切ってやるべきじゃないのか、そういう意味合いからいきますと、後のたとえば「論壇」等にも書いてありますように、少なくとも世界が注目していると、日本の瀬戸内海であり世界の瀬戸内海だと、こういう立場からいくとするならね、もうこれ以上許さない、ひとまずもう一切のものを認めないというぐらい、思い切ったことをやっていいんじゃないのかというところまで、意見としては出てきているわけですね。それにやっぱりこたえていくような少なくとも姿勢というものをお出しをいただきませんと、この問題は、私は言いわけで済む問題じゃないと思っているんですよね。そして、ただ話し合った相手が納得すればいい、それだけのものではないはずですね。それ以上のものがやっぱりお互いが努力をしていかなければならぬ課題として残っておるわけですから、その意味では、やはりよそからながめておって後退じゃないか、どこかから押されているんじゃないかというような形の疑惑は、これはすっきりしてもらわなきゃならぬ。そのことを特に私は、まあ時間の関係もありまして抽象的な物の言い方ですけれども、指摘をしておかざるを得ません。  それから次に、海上保安庁の方にもおいでをいただいておるわけでありますが、瀬戸内海の巨大タンカーですね。巨大タンカーはいわゆる船の長さが二百メートル以上というのが法律で定められた巨大タンカーの認識ですね。瀬戸内海へ入ってまいります巨大船、これらを今日現状に照らしてながめてみまして、どうでしょうか。危険的要素というものは、どういう形に現状としてはなっておるんでしょうか。これは海上保安庁の方にちょっと御説明をいただきたいと思います。
  78. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 瀬戸内海の大型船の規制現状でございますけれども、海上保安庁におきましては、四十八年以来海上交通安全法を施行いたしまして、一定の長さ以上の船舶に対しましては航路航行義務、それから右側端通航、速力制限等特別な航法を遵守させております。さらに巨大船に対しましては、特別の灯火、標識を義務づけ、さらに航路航行予定時刻を通報させまして、進路警戒船の配備、夜間を避けまして昼間に航行すべきこと等の必要な指示を行っているところでございます。また、海上衝突予防法という法律がございまして、これに基づきまして狭水道におきまして右側端通航等の規制を行いますとともに、夜間におきましては灯火表示の義務を課しておるわけでございます。さらに港内に関しましては、港則法によりまして、港内におきまして特別の航行規制を行っておるとともに、大型タンカーにつきましては、夜間の入港を禁止するという措置を講じておるわけでございます。そういった交通ルールのほかに、海上交通法令の遵守を徹底させるために、海難防止思想の高揚、さらにわが方が保有しております巡視船艇による指導、取り締まりの強化ということをやりまして、万全の安全対策を講じておるわけでございます。  なお、今後におきましても、船舶交通状況の変化に対応しまして、各種の安全対策措置をとってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  79. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 海上交通安全法の二十二条に、いわゆる巨大船の航行に当たって事前の通報義務がありますね。この事前の通報義務というのは大体時間的にはどれぐらい前に保安庁としては通報されるんでしょうか。あるいはまた、その通報義務というのは保安庁からながめられて、きちっと守られておるかどうか、その辺少しお聞きをしたいんですが。
  80. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 巨大船の海上保安庁に対する航路への入港の通報義務でございますが、これは前日の正午までに航路担当部署の方に連絡をするということになってございまして、これにつきましては、一〇〇%と言っていいぐらいに守られておるわけでございます。
  81. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 届け出といいますかね、それについては一〇〇%で違反はないと、こういうことなんですが、そのほか今日まで瀬戸内海関係について、他の関係も含めまして違反というのはどうでしょうか、保安庁が担当されている範囲の中で、これはまずいと、こういうようなケースなんというのはあるんでしょうか。
  82. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 先ほど申しましたように、交通安全法の関係におきましては、各種のきめの細かい航法規制を行っておりまして、これにつきましては、具体的には各航路ごとに海上保安庁の巡視艇を張りつけまして監視を行っておるわけでございまして、全く違反がないというわけではございませんけれども、かなり遵守されておるという状況でございます。
  83. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 傾向としては、まあまあ安全はそういう意味合いでは保たれていると、こういうふうにいまの御答弁を聞いて判断をするんですが、なおかつ危険性はきわめて大きいというふうに、付近の漁業者あるいは船舶航行者の方からは意見が出されてきておるわけですね。これはまあ瀬戸内海の置かれた条件の特徴的な一つだろうと思うんですがね。そういう意味からいきまして、何とか海洋の事故を含めて瀬戸内海を美しくしていくという立場の前提に立ちながら、船舶航行、特に大型船等については、この規制をする取り扱いができないのかという、こういう注文等が寄せられるわけですが、これに対して海上保安庁なり、それから運輸省海運局お見えになっていますか、その辺何か規制をするということについては今日いかがなものでしょうか。まあ法律的には大変むずかしい、今日の法律の中ではそれはできにくい、こういうふうに思うんですが、もしそういうふうな形をとろうとした場合にとり得る可能性というものはあるんだろうかどうだろうか、この辺ひとつおわかりでしたら御説明をいただいておきたいと思うんですが。
  84. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 先生の御指摘のとおりでございまして、瀬戸内海は船舶航行の場でありますとともに、漁業操業の場でもあるわけでございます。実は、海上交通安全法を制定いたしますときに、関係者十分話し合いまして、お互いに調和ある仕方で両立させる規制方法というものを十分検討いたしました結果でき上がりましたのが現在の海上交通安全法でございまして、現状におきましてはこれの遵守徹底を十分図っていくということがお互いの、漁船操業、船舶交通の調和を図っていく最良の道ではないかというふうに考えております。
  85. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 運輸省の方どうでしょうか。
  86. 棚橋泰

    説明員(棚橋泰君) 原則はただいま海上保安庁からお答えのあったとおりだろうと思います。  で、瀬戸内海には、御承知のように多数の開港場がございまして、この開港場には外国の船が自由に入港できるというのが国際的慣例でございまして、特段、たとえば安全上どうしても規制しなければならないというようなことで、日本船も含めましてすべてを規制するというようなことがあればこれは別でございますけれども、一般論として、瀬戸内海への船の入港を禁止するというような措置はとれないのではないかというふうに考えております。
  87. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 現行法律の中ではなかなかとれないというのはよくわかるんですがね、特に漁業者は、夕方出ていきまして朝帰ってくるという、いわゆる夜間にやっぱり船が出ざるを得ませんね。そういうことで、夜間のいわゆる航行について、特段に何とか対策をしてもらいたいというのがもうたっての希望としてあるんです。今日の法律の中では大変むずかしいということは先ほども申し上げますようによくわかるんですが、ぜひそうした課題について、一たん事故が起こってしまったんではこれはもう取り返しがつきませんので、そういう危険な様相等について、順次改善をされてきておるとはいうもののまだ安心ができないと、こういう現実をとらえて、その辺が安心できるような立場にぜひともさらに検討をひとつ加えていただきたいと思うんですね。そうして、これはまあ直接環境庁ではありませんが、瀬戸内海のいわゆる保全も含めて、そういう関係についてやはりそれぞれの立場で御相談をいただいて、いい結論が出るようにお願いをしておきたいというふうに思うんです。  それから、初めに歯切れが悪いということを申し上げたわけでありますが、たとえばこの法案そのものも歯切れの悪さがありますが、基本計画をながめまして、これは長官にひとつお聞きをしたいんですが、先ほども話がありましたように、これは公表をするわけですね。で、公表するというこの計画書をずうっとながめましてね、果たして、瀬戸内海の環境を保全といいますか、保全すべき状態にまで取り戻していくのに、この基本計画というのは一体どういうふうに映るだろうか。言うなら、この基本計画の趣旨合いというものをすんなりと、いわゆるこの公表を受けた国民の立場でとらえてみたときに、大変これわかりにくいんじゃないんだろうかというのが一つです。  それから、もう少し明確にできないんだろうかなというのが各所にございます。たとえば、五ページの(2)の四行目ですが、「緑を極力維持するのみならず、」と、こうあるのですが、この「極力」というのは、普通ならば強める意味で極力というのが使われるんですけれどもね、ここで言う「極力維持するのみならず、」という「極力」は、むしろ強めるんじゃなくて、結局維持を妨害をするような力に対して抵抗をしている、こういう立場の極力ということになるんじゃないのか。  それからさらに、十三ページの上から五行目ですが、ここでも「必要に応じ、除去等の適切な措置を」と、こうなっているのですが、少なくとも、「有機物の堆積等に起因する悪臭」が発生をして、あるいは「水質が悪化」して、「生活環境に影響を及ぼす底質」があるわけですね。そういうふうに、「生活環境に影響を及ぼす」ということが判断をされるものについて、なぜ必要かどうかということを判断しなきゃならないのか。これは言葉じりをとらえるような形で私申し上げているのじゃなくて、この段階でもなおかつ「必要に応じ、」という、必要であるかどうかという判断をしなきゃならぬのかどうかという、そこに大変な疑問があるんです。「生活環境に影響を及ぼす」、こういうことがはっきりしておれば、必要であるかないかということは論外です。少なくとももう取り除くことが必要不可欠だと思うんですね。だから、この「必要に応じ、」というのは一体何だろうかと。この辺ながめておりましてね。まだそのほかにもあるんです。  そういう意味合いで、一番根本になる基本計画がそういうことなんですから、これはまあ一体どうなっているんだろうかなというふうに疑問を持たざるを得ません。どうでしょうか、これは事務的な立場もありますけれども、長官自身、これ閣議決定されてどう受けとめられていってみえますでしょうか。
  88. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 先ほど来、坂倉委員のお話傾聴しておるんですけれども、ちょっと一言言わしていただきますと、いま後退というような意味での印象ということで御指摘になりました。しかしながら、私は、この世界の先進国と言われるところでの環境問題については、一体その対処していく対処要領というものはどういうことでやっているかということを見てみまするというと、やっぱり法というものは、これは基本的な一つのガイダンスというものを与えると。あるいは一応の基準ということで、あとは主として非常に複雑ないまの社会経済事象というものに対しては、やはり行政行政の責任において、その趣旨をとらえてこれに対応していくという、こういうやり方でやっている。私は、これは要するに実態に即して見るならばそうするほかないし、またそうすべきものであるし、またそういう責任を持って行政は対応すべきものだと、こう考えているわけです。  したがって、恐縮ですけれども、ほんの一、二申し上げますけれども、たとえば先ほど来の富栄養化の問題にいたしましても、現段階において、それはまだわれわれの努力が少ないと言えばそれまでですけれども、しかしながら、やはりこの科学技術の進歩の段階というものを考えながら、それに応じて努力するよりほかしようがないので、何でもすぐ規制という、法で縛ればいいというものじゃないだろうと、私はこう思うんです。大体後退、後退と言っている意味は、これはいきなり法で縛ってないというような点について——いろんな論調なんかもそうですけれども、私は、これは先進社会が彼らの経験と知識でどのように対応したかということをわれわれは謙虚にやっぱり参考にすべきものであって、すぐいきなり身動きができないように法で縛ったらそれでいいという種類のものじゃないと思う。むろん坂倉委員もそんなことを言っておられるんじゃないと思うけれども、そういう印象を与えている点は、私は非常に残念である。  たとえば大型タンカーのことについても、大型タンカーというものを規制しなかったからおまえそんなのじゃ非常に後退だっていきなり言う。いまあそこにおいて漁業のことも考え、タンカーのことも考え、そして交通の安全ということについては一番責任を持って肝を砕いてやっているのはやっぱり海上保安庁がこれをやっている。だから、いまの法制の中で自分の方のやり方でこういうふうにしてやる。これについてなお一層の努力はするけれどもそういうことでやるという、この努力意見。やっぱりその法体制というものを尊重していくということ。私は、これをいきなりそういう点を考えないで後退と言うようなことはどうか。もう少し実情に即して、相互の理解でやっていかなきゃいかぬ。  ことに環境というものは、先ほど申し上げましたように、ガイダンスをやり、しかも行政がこれに対応し、そうして国民の大きな理解というもの、こういうものがみんなの支えをなしているので、本当に環境行政というものの中では、大体市民自身の自分のボランタリーのレギュレーションということで、アメニティなんというものは行われているということはさっき申し上げましたけれども、私はそういう枠組みは、これは単なる思いつきじゃなくて、長い経験からこれは来ているものだと、こう思うんです。環境問題は、そういう感情の部面がありましたけれども、私はやっぱり感情から理性へという意味の、環境行政というものもひとついい意味の転換で考えていくという、これが必要なんじゃないか。これも御賛成いただけると思いますが、そういうつもりで考えているわけではございます。  いまちょうど基本計画の点で御指摘がございました。どうも細かい点を指摘されますと非常にあれですけれども、まあそこら辺のところをぜひ御理解いただいて、ひとつ当委員会としても鞭撻と御支持をいただきたいと思います。
  89. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 時間が来ておりますので最後にしたいと思うんですかね、いまの長官の御説明は、一般的に物を考える場合に、私はそれを否定するものじゃないんです。ただ、日本の現状は、午前中にも指摘をいたしましたように、少なくとも高度経済成長政策がとられてから、一挙に環境が悪化をしたというのはもう否定のできない事実ですね。そうしますと、産業界であろうと一般の人であろうと漁業者であろうと、少なくとも人の生活に悪影響を及ぼすようなものについては、あるよりもない方がいいというのは、全部共通していることなんです。ただ、そういうふうな形にしていくためにはきわめて金がかかる。その金の問題があって、結果的に、言うならば金もうけといいますか、採算に合わないと、そこに力を入れにくいという今日までの状況が、結果としては悪化の状況をつくり出していった最大の原因だと思うのですけれどもね。  そういう状況の中で日本の置かれておる環境というものを考えてみたときに、これは基本計画の中でも言っていますように、歯切れは悪いけれども明らかにもっと住みよい状況をつくり出す、これからつくり出すというよりも、取り戻すということがまず第一にきているわけですね。取り戻すということになれば、今日まで放置をされてきたものを規制をするというのはあたりまえの話になってくるわけであります。そういう意味で幾つかの法案がつくられてきて、何とかして守っていこうじゃないかというふうになってきた。ところが、なってきたにもかかわらず、なおかつ、そのつくられた法案の中でも、さっきの埋め立てじゃありませんけれども、法案ができ上がって、これからそれについて十分に気を配っていこう、そういうことをなるべく避けていこう、こういうふうに合意をし、しかもそれを法律で決めながら、なおかつ現実問題としては進行していくという状況が出たことも、これまた事実なんですよ。  そうなりますと、いま回復をする立場では、相当思い切った手を打っていかないことにはもとに戻らないじゃないかというのがこれが基本としてあるわけです。その気持ちが、今日のいろんな環境庁を取り巻く状況の中で、私どもがながめておって、少しあっち行ったりこっち行ったりしていやせぬのだろうかということが、これが前々から指摘をしているポイントなんですね。しかも、そういう立場で私どもが提議をされました法案なりあるいは基本計画をながめていることは事実です。いま素直に何にもない状況の中で、これからなおこの何にもない状況を守っていこうという立場で計画が出されたのとは、これはもう角度が全然違うわけですからね。その辺を御答弁をされる方、あるいは運用に当たられる方については十分に注意をしてもらわなければならぬ、このことは私ははっきりと申し上げておきたいと思う。これからの審議の立場も、私はそこに基本を置きながら、したがって、一般の裁判であれば疑うしきは罰せずなんです。ところが、環境行政については、疑いのあるものについては、それはその疑いを残さないような措置をまず第一に立てる、そうして本当にそれが疑いで済むのか、実際にそうなのかということを、立てた対策の中で、それを思考しつつ検討していって、確かめて、直すべきは直していくという、そういう立場をとるべきではないんだろうかというふうに考えるわけでありまして、ぜひその辺の御理解を賜って、そういう上に立って、先ほど言われた長官の話、国際的な話、結構であります。そういうふうに組み立てをいただいておかないと、相変わらず、何といいますか、こう一つのみぞを隔てて環境庁の皆さんと私どもとやり合いをしておったのでは実りあるものになりませんので、同じ土俵に上がり、底辺を同じような立場の上に立ちながら、論議があれば論講をしていくという方にぜひひとつお願いをしたい、こういうことを申し上げて終わりたいと思います。
  90. 中野明

    ○中野明君 最初に、けさほど来議論になっておりました、森下委員長もおっしゃっておりましたが、いままた坂倉委員もおっしゃっておりましたように、環境庁を取り巻く世論というのは、後退性ということをめぐって非常に厳しいものがございます。特にけさほども森下委員もおっしゃっておりました、毎日新聞の「こんな環境庁は、いらない」という記事、けさほど来長官の答弁を聞いておりますと、ずいぶん誤解もあるんじゃないかという意味の御答弁もなさっておりましたが、長官もごらんになったと思いますが、私もこれ一通り目を通してみましたが、余り間違ったことを書いてないように私は受け取っております。そういうことで、これを誤解というふうに認識を持っておられるとすると少し私も気になるんでありますが、最近のこういう一連のマスココミの見た目といいますか、環境庁に対する周囲の環境、こういうことについて長官はどのように受けとめておられるのか、もう一度御所信をお聞きしたいと思います。
  91. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 私、午前中にも申し上げましたけれども、環境行政としてわれわれの課せられておる責任、任務、そういうことについては感情を交えないで、また一ころの公害との闘い、そういう時代から時代は変わってきておりますにもかかわらず、それは公害との闘いは依然として続けるけれども、もう少し理性的な目で、われわれの課せられた環境問題にどう取っ組んでいくか。この問題は、もう繰り返して言うように、たとえば後退であるとか何であるとかという、そんな簡単な物差しでははかり得ない、もっとむずかしい問題がわれわれの中には今日提起されて、それと取っ組んでいかなきゃならない立場に私は置かれていると、こう考えます。また、それが幾らむずかしくあろうとも、冷静に、しかしながら情熱は燃やして、それでこれと取っ組んでまいりたいということを申し上げたいと、こう思うんです。  先ほどもいろんな具体的な点で問題がございましたけれども、やはりいまのこのむずかしい客観情勢においては、単に盾の両面なんということ以上に、私はその背後の事情というものについてはこれを把握して、理解して、やっぱり実効のある対策というものを必要とされている問題が非常にあると思うんです。その一、二を私は指摘しました。それはたとえば埋め立ての問題なんか一番みんなの注目を引く問題であろうと思います。あのきれいな環境において、埋め立てというようなものを相当大きな立場で規制して考えていかなきゃいかぬ。であればこそ臨時措置法にもその点が書いてある。それをわれわれは引き継いだんです。しかしながら、いまのこの複雑な事態において、これを全部禁止してしまうというようなことで一体対処すべきかどうかという点になると、あえて言わせれば、その複雑な問題に対しては、法律によって、行政の責任でこれに対処していく、やっぱりその判断というものでやっていくのがいいので、もういまこれすべて禁止というような方向は、これは少し一方的であり、権威的であり、そのような判断でぱっと押しつけていいかどうか、私は非常に良心的に考えればちゅうちょせざるを得ない点だろうとこう思うんです。それを突っ込んでいけば、いろんな面で私はなるほどという点が出てくると思う。ちょっと見てすぐ何とかというようなことでどうか御批判をいただかないで、いまはむずかしい時代に実は入ってきていると私はそう思うんで、それなりに一生懸命に——無論われわれはまだ浅学でもあるし未熟でもあります。だから、いろいろ御鞭撻、御叱正をいただかなきゃいけないんだけれども、そういうつもりで、一生懸命になって、われわれの課せられた責任に対処しようというつもりで一生懸命になってがんばっているわけでございまして、願わくばこの点だけはひとつ御理解いただきたいと、これが私の立場でございます。
  92. 中野明

    ○中野明君 先ほど坂倉委員も、環境庁の若い人たちがやる気を出してがんばっているという記事を引用になって大変激励をされておるわけですが、恐らくこの記事を書いている御本人も、気持ちとしてはしっかりしてほしいと、環境庁がんばってほしいという願望が私はこれに出ているのじゃないかと思いますけれども、しかし、こういう批判というのですか、記事を書かれると、環境庁に勤めている人というのはこれはいい気はしないでしょうし、またやる気のある人がやる気をなくするようなことになってもこれ大変なことでありますので、そういう意味でいま長官の所信をお聞きしたわけでございますが、どうかひとつこういういろいろの周りの意見というもの、それを一つの発奮の材料にしていただいて、そして、長官がいまおっしゃったように、確かにむずかしいということは、私どもも全然それをそんなことはないと否定するものではございませんけれども、しかし、なぜ環境庁ができたのかというこの発足の趣旨というものをよくお考えいただいて、今後ともがんばっていただきたい、このように私思うわけです。  それからもう一つ法案の中身に入る前にただしておきたいのですが、懸案の環境アセスメント法案がまたこの国会で提案することを断念になりました。いろいろ言われておりますが、改めてこの場で、このアセスメント法案が提案できなかったその経緯について説明をしていただきたい。
  93. 山田久就

    国務大臣山田久就君) われわれは、いわゆるアセスメント法について、いろいろな開発事業、そのことの事前に、できるだけその影響を評価するということは、これは法律があるないにかかわらず、現にそれは行われているところのものであるし、またそれは必要な点であります。と同時に、地域の住民の参加という問題、つまりこの影響評価というものを公表されて、それを見る機会が与えられる、そしてそれに対してのいろいろな意見というものを十分述べる機会が与えられて、でき得べくんば、その公正な意見というものが反映されるような、そういう一つのルールというものをそこに立てるということ、第三にはこの評価というものが、でき得れば統一した一つの環境評価の手法によって行われるということ、これが望ましいという考えで、私どもはひとつこの法案を実行に移そうということで努力してまいったわけでございます。  しかしながら、先ほども申しましたけれども、世界的にいろいろこの種のあれを見てみれば、どちらかと言えば一つのガイダンスというようなものを法では言っておるけれども、余り細かくわたってなくて、そこは大体行政の裁量というものに任してやるというような点が多くて、そういう意味ではこの統一した法律で規定するという点については、実際問題としては、それはまあ世界的に見ればかなり経験を経てきておりまするけれども、日本的に言えば、まだそれはわれわれも十分経験を重ねてないじゃないかということを言われれば無論そういう面はそれはなきにしもあらずであろうかとは思います。しかしながら、われわれとしてはもうこれ三回目になりますけれども、三回目だからという意味よりも、実際の客観情勢として、こういうルールをこの際統一して、かつ住民参加のルールも確立し、事前にやるというそのルールが行われる方がいいという立場で、今度は実行しようということで、関係各省ともずいぶん努力してきました。去年とことしが同じじゃないかと、こう言うかもしれないけれども、実際問題として前とは違って、もうこの問題を実行するという立場に立って、しかもその未知のものが実現されるというその枠とガイダンスを持ちながら、関係各省ともずいぶん努力してまいって、かなり今度は同じ土俵の中でこの実現というものも——多少これは私も楽観的であったかもしれぬけれども、今度はかなり実行されるのが有望だという観点に立ちました。  しかしながら、いよいよ最終の段階で、われわれと同じようにこれを実行に移すべきであるという党の中の考え方と、それからこれを統一的な法律でやるという点についてはまだ時期尚早じゃないかというこの意見が結局対立したようなままで、ずいぶんこの対立をほぐすために努力もいたしましたけれども、結局それを解くというところに至らないということになったものですから、党の方でそういう状態のままにおいて法律を出すのはという判断から、まあこの際はひとつ時期尚早として見送ろうという判定になったということは、私としてはこれは非常に残念だと思うけれども、そういういきさつでなったわけです。  しかし、この制度というものの必要性ということは党も認めているところであるから、したがって、党とそして政府が一体となって日本の国土になじんだそういう一つの法というものを、制度をつくるということについてひとつ精力的に努力をするということで、それでこの際は見送るということであるということなので、まあわれわれ、これは政党政府でありまするのでこれを尊重せざるを得なかったけれども、その最後の党の方針ということによりまして、今後、いままでわれわれの考えていたものにとどまらず、いろんな経験も熟慮して、ひとつより実効性のある、そうして説得力のある法案を次には提出したいという決意を新たにいたしているという現在の状況でございます。  ちょっとこの点申し上げておきたいと思います。
  94. 中野明

    ○中野明君 私どもも、長官の所信表明の中でも述べられておりましたし、ことしはこの国会に成案として提案されるということをもう最大限期待をしておったわけですが、非常に残念であります。これは環境庁発足以来の悲願でございます。何としてもこのアセスメント法だけはつくっていただきたいというのが私どもの強い願望であります。やはり環境庁の持つ役割りというのは、各省間の調整ということが大きな仕事の一つだと思うんですが、これ調整が不調に終わったということで、いま長官のお話もあったわけですが、いまの答弁を聞いておりまして、時期尚早というお話もあったですけれども、時期尚早ということは私はあり得ないと思います。これはもう時期がおくれておくれてしようがないんですから。ただその調整がもう一つうまくいかなくて環境庁の希望が達せられなかったということでしょうから、そのように私は理解をしますが、今回この調整に当たられて、長官として、もうここまで来たんだから、大分土俵ができてきたから、この次はもうぜひ実現できると、そういう感触をお持ちになったかどうか、その辺をもう一度。
  95. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 私は、こういうことを申してどうかと思いますけれども、いままで前二回出すというあれはありましたけれども、実際問題としてはほとんど調整ができてなかったと思うんです、これはなかなか相手との間に。今度は、相当それが進んでいたけれども、しかしながら結局与党の中でもついにあれを見送らざるを得なかった。私としては、党のたてまえ、そして私の所信はいま申し上げたとおりですけれども、よし、そんならおれやってやるという、そういう単細胞のようなことじゃなくて、やっぱり世界のいろんな経験なんかをまた考えながら、反対という問題も謙虚にわれわれは考えながら、そうしていろんな世界の例というものも考えて、しかもその実効というものを、本当に目的を達する案というものを、改善する余地があるならばそういうことも取り入れながら、ひとつぜひ今度は実現に持っていく努力を、全力を尽くしてやっていきたいと、こう考えている次第でございます。
  96. 中野明

    ○中野明君 この問題は本題でありませんのでこの程度にしておきますが、この環境庁の存在価値というものを示す最大の私は課題ではなかろうかと、このように思っておりますので、一日も早い成案を得られることを特に要望いたしておきます。  では、今回のこの法案に移りたいと思いますが、極力重複を避けてお尋ねしたいと思います。しかし、大事な点は重複するかもしれませんが、あらかじめ御承知をいただきたいと思います。  まず第一点ですが、けさほどからの答弁を私聞いておりましたが、この「富栄養化による被害発生の防止」、これは基本の計画の中にも出ております。ここまで明確に基本計画に出ておるぐらいなんですが、まだいわゆる科学的な知見で結論が出てないと、そういう御答弁でございましたが、行政的にこれ指導をしていこうというところまで来ておるわけですから、そうしますと、科学的な結論が早期に出るという見通しを一応持っておられるのかどうか、最初にそこを。
  97. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 富栄養化の防止対策ということで、燐と窒素削減問題等が出てまいるわけでございますが、窒素の方はまだいろいろ問題がございまして、行政指導ベースでも現段階ではこれを実施に移すというのは、まだそこまではいっていないという感じを持っておりますが、燐につきましては、規制とかいう角度のものまではまだ十分ではございませんけれども、行政指導ベースで何とかこの瀬戸内海につきましては、富栄養化の進行に歯どめをかけるというような物の考え方に立って削減対策というものを進めたいということでございます。  そこで、問題になりますのは、環境水質レベルの話と排水処理技術レベルの話と二つあるんでございますが、環境水質の望ましいレベルというのは那辺にありやという話になりますと、これはまたいろいろ議論もございますし、また実態的な現実の把握という問題につきましてもまだ不十分な面がございます。したがいまして、燐につきましても今後環境ガイドラインというようなものを何とかつくろうかということでの調査や何やは今年度から取り進めたいとは思っておりますが、右左にはいかないかと思います。ただ問題は、どこまでが望ましいかというものを別にいたしましても、現にいろんな被害が出ておると、富栄養化による被害が出ておるということは、相当富栄養化が進行しているということは現実でございますので、削減ができるのであれば削減をもう実施に移したい。そこで燐の場合は、これは一般的な、たとえば下水道などでも二次処理で生物処理でやりました際にも二割ないし四割は、その原水の質によって違いますけれども、落ちるということもございます。さらにもっとそれを落とすということであれば、凝集沈でん法等によりまして、たとえば硫酸礬上のようなものを使用すれば相当、九十数%まで除去できるというようなめども試験結果では出ておるということを踏まえて、この排水処理の方につきましては行政指導ベースで、富栄養化対策一つとして実施していってはどうかということで、今回の後継法の中にもその間の規定を織り込んだわけでございます。
  98. 中野明

    ○中野明君 いや、一応私ども素人で、富栄養化というんですから、これ栄養が多過ぎるということですわね。そうしますと、どの辺から多くなるのかと、こういう素朴な、富があれば貧があるんじゃないかと、その境界線は、科学的にはまだ決定的なものが出てなくても行政的にはもう恐らく大体の目標値は持っておられるんじゃないかと、このように私どもこれを見て感じるわけなんですが、その辺、ただ現在あるのを何となし減らせばいいと、この程度なんですか。どうなんでしょうか。
  99. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 先ほども御答弁申し上げましたように、環境水質の望ましいレベルということですね。ですから、瀬戸内海なら瀬戸内海という中の燐がどのくらい一体あるのが望ましいのかということになるわけでございますが、これは一つは利用目的の問題とも絡みます。ノリの養殖をやるというのであればある程度あった方がいいという説がございます。ところが、ノリにはいいけれども、そうでない高級魚の場合はもう少し少ない方がいいとかいうこともございます。したがいまして、望ましいレベルということを考えます際には、その利用目的という問題も一つあろうかと思います。したがいまして、どの辺かというところにつきましては、いろいろ専門家の先生方等にも御検討等も願ったりはしておりますけれども、なかなかその辺で結論がまだ出ておらないというのが偽らない現状でございます。  ただ問題は、その際にどこが望ましいかとかいうことを一方進めつつも、事瀬戸内海というものに目を転ずれば、これはもう大規模赤潮が発生して養殖ハマチが斃死するというようなことは四十七年も五十二年も起きたわけでございますし、海水浴場が赤潮の関係で遊泳禁止の日が続くというようなことも現にあるわけでございますので、何かこれに歯どめをかける必要があろう。そうだとすれば、瀬戸内海に現在流入しております燐、これはわれわれの現在の調査では、一日三十五トン程度が流入されてございます。このままほうっておきますと、こういうものの数値がさらにふえてまいろうかと思います。これは人口の増加と産業活動の面によってやはり増加ということはこれは避けられないと思います。したがいまして、この避けられないものを少なくともふやさないと。で、大阪湾なりあるいは播磨灘なり広島湾なり、特に赤潮の発生常襲地帯のようなところ、こういうところはむしろできれば下げたいということで、何とか行政指導ベースででも下げるためのことをやってはどうかと。技術的にはそういうことで、凝集沈でん法等でやれば、薬剤を使えばさらに落ちるということもございます。もちろん二次処理でも相当落ちるわけでございますが。そういうことできめの細かい行政指導を展開してみてはどうかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  100. 中野明

    ○中野明君 それで、先ほどお話が出ておりました窒素の問題は、まだまだなかなかそこまでいっておらぬと、そういうことでございますが、窒素の除去とか低減の方策、こういうことは、赤潮発生の予知と防止研究機関、赤潮の研究機関等でやはりこの窒素の問題は進めておるんでしょうか。赤潮の対策と一緒にあわせて研究が進んでおるんですかどうか、その辺ちょっと。
  101. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 赤潮の関係の方は、これは今回の改正案の中でも、「赤潮発生機構の解明」というところに大いに努力すべしという形の努力規定を挿入をいたしているわけでございます。問題は、赤潮の方はいわゆる燐、窒素というようなものが流入がふえてくるということによって富栄養化した際に、それに気象、海象等のいろんな条件が重なってプランクトンの異常増殖が好適な条件になった際に発生をすると、こういうようなことなんです。ところが、その辺がどういうからくりなのか、メカニズムなのかというところがまだよくわかりませんので、その辺の解明というものを、これを力こぶを入れて研究を進めるべきであるということで現在も取り組んでおりますし、今年度もその面をさらに詰めていくように、赤潮研究会等を通じてやっていきたいと、こう思っておるわけでございます。  問題は、窒素の場合につきましては、今度は富栄養化というような問題を踏まえて、一体どの辺が望ましいものかという一つ環境水質の問題があるほかに、除去技術の問題が一番これネックになっております、率直に言いまして。したがいまして、赤潮の研究というよりもむしろこれはどうやって落とせるかというそちらの面の角度の研究でございます。開発研究になろうかと思います。燐の方は大体トータル燐なりあるいは燐酸態燐というような二種類ぐらいに普通われわれ分けて言っていますが、窒素の場合はこれは四種類ぐらい普通われわれは言っております。ですから、その存在形態自身が燐と違いましてもっと複雑でございます。したがいまして、そういう形態別、濃度別にもこれをどうやって除去するかというところが非常に燐と違ってむずかしい。それから薬剤を使えば相当、九十数%落ちるというようなものではなしに、相当これはいろんな施設をつくって処理方法を組み合わせながらやっていかないとだめであるというようなこともございます。そういうことで、これは実用化といいますかの段階までまだいっておりません。したがいまして、研究の姿勢としては、赤潮の研究という角度のものと、それから燐の除去技術の研究というのでは、研究者なりあるいは研究をする機関でございますね。たとえば産業系排水の方では工業技術院の系統でやっておられるとか、下水道関係では、またそれなりに土木研究所等でやっておられるとかいうのがございますが、研究機関等もそれぞれやや分野が違うものですから、大分違っております。
  102. 中野明

    ○中野明君 赤潮の問題でもう一、二点聞きたいと思いますが、先ほど坂倉委員もおっしゃっておりましたように、赤潮というのは、非常に瀬戸内海におきましては——これは瀬戸内海だけじゃございませんけれども、特に大量発生をして赤潮は大問題となっておりますが、その関係で、海上保安庁とそれから水産庁との赤潮の発生したデータですね、それが食い違っておるということで、坂倉委員も御指摘になっておりました。その辺、こんな大事な赤潮の問題でございますので、やはり総合的にそれを研究する、今回の法案でも「赤潮発生機構の解明」と明確にうたわれておりますので、その辺を考えますとやはり一本にして、前々から瀬戸内海の各関係府県からの要望も出ておりますが、窓口はやはり一本にして研究を始めると、そういうところで赤潮の状態を絶えずまとめて見るというふうにしないと、いまのように水産庁と海上保安庁の赤潮発生の件数が倍も違うと、こういうようなことでは、やはりこの赤潮に対する認識の仕方が、まあどちらがどうとは言えませんけれども、その辺、環境庁としてはどちらのデータをもとにして赤潮のことを認識しておられるのか、もう一度お聞きしておきたいと思います。
  103. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 参考資料ということで十一ページに収録をいたしております赤潮発生件数でございますが、これは先ほども坂倉委員からの御質問に対して水産庁等からも答弁申し上げましたように、一つは水産庁の方で瀬戸内海の漁業調整事務局というものを軸にしながら、漁協等からの通報等によりましていろいろ集計をしていくという形のもの、これは瀬戸内海だけあるわけでございます。そのほかのところにつきましては、これは海上保安庁が調査をされておられる。その際に、広域的な閉鎖性水域ということで、水質がどうかという際に、CODというのも一つのメルクマールでございますけれども、やはり赤潮が発生するというのは水質がよろしくないという一つのメルクマールになろうか。その際に、これを横に並べますと、やはり瀬戸内海も海上保安庁のものを使って横に並べれば、どこが多いかというようなことが見当がつくであろう。ただ瀬戸内海については、水産庁の方で、そういうことで特別の補助事業というようなことをやりまして、より詳細なといいますか、通報、情報収集のシステムをとっておりますので、その数字もあわせて掲げたと、こういうことでございます。  で、問題は、いろんな数字があるけれども、この方法というものが必ずしも同じじゃないし、これは統一する必要があるじゃないかというようなお話もございますが、やはりこれはそれぞれの目的というような観点からそれぞれやっておられますので、やはりこれはこういうふうになっておりますのも、まあこれはこれでよろしいのじゃないかという感じもいたします。またこの辺は水産庁なり海上保安庁の方でそれぞれさらに検討はしてもらおうかと思っております。  それから、こういう発生件数の問題は問題といたしまして、赤潮の研究ということにつきましては、いずれにいたしましても相当多く発生しているということは、これは現実でございますから、これの解明にはさらに十分力を入れていくべきであろうと、この面については、赤潮研究会というものを、これは環境庁と水産庁の方でタイアップしてつくっておりまして、赤潮研究者十四名の方々にいろいろ分担して研究をやっていただき、またその成果もその場でいろいろ報告もし、評価もし、さらに次どうやったらいいかということをいろいろ御検討いただいておるわけでございます。
  104. 中野明

    ○中野明君 与えられた時間が余りありませんので、次の問題で、先ほどの保安庁の答弁で、いわゆるタンカーの航行の問題、これに入りたいと思います。  先ほど坂倉委員の答弁のときにも、夜間の航行は大型タンカーは一応禁止しているというような意味の答弁があったように私聞いたんですが、その辺、もう一度確認したいんですが。
  105. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 瀬戸内海におきます夜間のタンカーの航行でございますが、まず、海上交通安全法によりまして、大型タンカー等の一定の船舶の夜間航行につきましては、先ほど申し上げました繰り返しになりますが、特別の灯火の表示の義務づけということをやっておりますほかに、航路を航行いたしますときには海上保安庁に対しまして航行予定時刻の通報を義務づけまして、その際には、一定の航路につきましては夜間を避けて昼間に航行をすべき旨の指示を行っておるわけでございます。さらに、港に入りますときには、港則法に基づきまして、大型タンカー等を含む一定の船舶に対しましては夜間入港を禁止するという規制を行っているところでございます。
  106. 中野明

    ○中野明君 港の夜間の入港を禁止ですね。
  107. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) と航路でございます。
  108. 中野明

    ○中野明君 航路でも通航禁止ですか。
  109. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) はい。禁止といいますか、昼間航行の義務づけでございます。
  110. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、環境庁にお尋ねするんですが、以前、私、今回の法案で、夜間におけるタンカーの航行を一応禁止するような、そういう項目を設ける予定に聞いておったんですが、今回の法案から外されているんですが、その辺は何かわけがあったんでしょうか。
  111. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 今度の後継法案を考えます際に、この法案作成の過程で、一つの案といたしまして、環境庁の方でタンカーの夜間航行の原則的禁止といいますか、こういうことを検討したということ、これは事実でございます。ただ問題は、ただいま海上保安庁の方からもお話しがございましたように、タンカー等の船舶の航行安全という問題につきましては、これは海上交通安全法なり海上衝突予防法等ございます。ただいまも答弁がありましたように、海上交通安全法の二十二条の通報義務の関係というのもございますし、それから海上交通安全法によります航路の指定がございますが、この航路の場合にも、備讃瀬戸等々一定の航路につきましては、巨大タンカーにつきまして夜間航行の禁止ということを現実問題としてやっておられるということもございます。そういうようなこともございますので、今回の後継法ということを考えました場合には、いまの海上衝突予防法なりあるいは海上交通安全法なり港則法なりそういう体系で、現状に即したやり方を海上保安庁を含む運輸省におきまして十分やっておられるということでもございますので、今回の法案にはむしろ盛り込まないということにしたわけでございます。  ただ問題は、私たちといたしましては、努力規定でございますけれども、海難等による大量の油の排出の防止ということにつきまして、さらに排出された油の防除、これについては努力規定を入れたわけでございます。これは四十九年の十二月に水島の重油流出事故等もございました。何ppmという上乗せ規制等もかけて、水質をきれいにするように、各企業、その他国民の方々にお願いをしている、そういう際にも、ああいう重油等が出ますというと、何といいますか、多年の努力が一朝にして水泡に帰すという場面があり得るわけでございます。まあその後も釣島水道でアストロレオ号と幾春丸というのが衝突をしたということがございます。流れたのが千二百キロリットルでございますが積んでいたのが八万キロリットル、水島の重油流出事故の十倍の原油を積んでおったということもございます。最近ではフランスで、ブルターニュ海岸で二十二万トンのタンカーが座礁して二つに割れまして、その油が流れ出しておる等々の話があるわけでございます。そういうことからしますと、油が流れ出すということになりますと、これは環境を汚染することは間違いないわけでございまして、またこれを元に戻すのには相当の長年月と相当の人力なり資金力が要るわけでございます。ですから、そういうことにつきましては十分運輸省もやっておられると思いますけれども、やはり念には念を入れといいますか、十分やっておられるほかに、十二分にさらにやっていただきたいということもございまして、そういう規定を特に織り込んだというのがその経緯でございます。
  112. 中野明

    ○中野明君 いま局長からこのタンカーの事故のことについて述べられまして、それはもうそのとおりであります。ですから、一たん事故が起こるともう処置なしなんですが、この瀬戸内海では非常に事故が多いという、それだけ船の通航が多いんでしょう。私も一週間に一回は必ず瀬戸内海を渡るわけですが、国鉄の連絡船に乗っておりましても、年に何回かはひやひやするときがあります。それほど船がふくそうしております。  保安庁にちょっとお聞きしておきたいんですが、この瀬戸内海の海難の事故ですか、これはここ二、三年どういう程度事故が起こっているんでしょうか。
  113. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 私どもでつくっております統計は、救助を要した海難発生隻数ということでございまして、ここ三カ年について数字を申し上げますと、五十年につきましては一般船舶四百三十七隻、漁船百十五隻、合計五百五十二隻。五十一年につきましては一般船舶四百九十五隻、漁船百二十七隻、計六百二十二隻。五十二年につきましては一般船舶四百十一隻、漁船百五十四隻、合計五百六十五隻ということになってございます。
  114. 中野明

    ○中野明君 それからもう一つは、事故がもう年間六百からというんですが、これは救助を要した分でしょうから、要さなかった分を含めますと大変な事故が起こっております。それに加えまして、瀬戸内海、特に備讃瀬戸、あの方面は霧が非常によく出ます。大体五月−十一月ですか、六月−十一月ですか、霧がよく出ますが、濃霧で航行停止命令を保安庁が出すと思うんですが、その発動回数というのはどれぐらいございますか。
  115. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 海上保安庁で、海上交通安全法に基づきます航路につきまして、瀬戸内海におきまして視界制限不良時に入港禁止を指示しました回数及び隻数でございますが、これは管制対象船舶のみの数字でございますが、五十年につきましては二十九回、五十一隻。五十一年七十一回、百八隻。五十二年百三回、百七十三隻ということでございます。
  116. 中野明

    ○中野明君 まあそういうような、非常に瀬戸内海そのものが交通の安全に障害になるような地域であります。そういうところで油が流れ出ますと、もうこれは処置なしでありまして、先ほど局長からも水島の話が出ておりましたが、いまの技術で、油を防除するのに、原油なり石油が流れ出ますと、どの程度回収可能なんですか。その辺おわかりでしょうか。
  117. 宗形健寿

    説明員(宗形健寿君) 海上保安庁としましては、特に東京湾伊勢湾瀬戸内海等におきまして、油が著しく大量に排出されました場合におきます排出油の防除のため、必要な事項を決めました排出油防除計画を作成しております。この計画によりますと、大型タンカーの海難に伴う排出油事故の規模を想定しまして、それで想定排出油をオイルフェンス、それから油回収船等により防除するものとしました場合の資機材の必要量を決めておりますが、現在瀬戸内海の各海域におきましては、オイルフェンス、油処理剤及び油吸着剤につきましては、ほぼ必要量を満たしているものと考えられております。しかしながら、今後とも海上保安庁を初めとしまして、関係者を指導して、十二分にこれら資機材の整備を図っていきたい、かように考えております。
  118. 中野明

    ○中野明君 いや、私お尋ねしているのは、流れ出た油をどの程度、何割ぐらい回収できるんですか、いまの技術で。
  119. 宗形健寿

    説明員(宗形健寿君) 先生お尋ねの点につきまして、これは流出された量と、それから防除資機材の投入量と、これによって回収率というものが決まるものと思われます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、瀬戸内海においてタンカーから流出した場合ということにつきましては、各海域につきまして、乗り上げの場合、あるいは衝突の場合、これらのことを想定しまして、そして必要な油防除資機材というものの整備を図っているわけでございまして、これら資機材を直ちに投入すればほぼ回収可能と考えております。
  120. 中野明

    ○中野明君 じゃ具体的に、この前の水島の三菱のタンクから流れた事故がありましたですね。あれはどの程度回収できましたか。
  121. 宗形健寿

    説明員(宗形健寿君) ちょっとその辺の詳細な資料持ち合わせておりませんのであれなんでございますが、当時は確かに、御指摘いただきましたように、油防除資機材等の量というものが現在とは大分かけ離れた少量でございました。現在は、たとえばオイルフェンスにしましても、瀬戸内海海域におきましては六千メーター保有するというような状況で、非常にたくさんの資機材が整備されております。
  122. 中野明

    ○中野明君 私の承知している範囲では、もう三分の一も回収できなくて、あとは全部海の底に沈んでしまっていると、こういうような状況ですので、事故が起こるとこれはもうどうしようもないというのが現状でありますし、それから近くアル・サビア号ですか、太平洋の土佐沖であった事故もありました。そのときも、これは内海と違いますからそんな余裕はなかったでしょうけれども、全然そういう防除体制がなくて、むしろやらひしゃくで、大あわてで私どももやった経験がありますが、そういうことを考えますと、いまここでただ大丈夫ですと言われただけで——そのまま信用しなきゃならぬのかもしれませんが、私は本当に心配をする一人でございますので、今後とも万全を期していただきたいと思いますし、環境庁の方でも、これは努力目標というんじゃなくして相当神経を使って真剣にやっていただきたい。  もう一つ、私こういう例を知っております。台風が来るときに、避難港になっている港がありますね。あの台風の避難港では、漁船とか小型船舶が皆避難をしてくるわけです。そうすると、台風が通り過ぎるまではもう用事がないものですから、船員が機械を掃除したりあるいは廃油をそこから流す。で、海を見れば透き通って底まで見えるんですけれども、底に約五センチぐらいはずっと油が沈でんしているというんですか、そういうことで、もう貝類なんか一切なくなっている。そういうことで避難港を辞退したいというような、そういう要請も私受けたことがございました。  ですから、そういうことをいろいろ考えていきますと、ここで油の除去とか汚染の防止とおっしゃっておりますけれども、まあ最後に「思想の普及及び意識の高揚」ということを挙げられておりますが、各人がやはりそういうつもりで監視もしなきゃならぬでしょうし、そしてまたそういうPRといいますか、これをよほどやらないと、せっかく法律ができ上りましても、やはりその辺一人一人が自覚していくということが非常に大切じゃなかろうか。そういう点で、今後格段の思想の啓蒙、これにも万全の力を入れていただきたい、このように思います。  で、いままで、どうなんでしょう、保安庁の方で、そういう油を捨てたとか汚したとか、そういうようなので摘発されたというようなことはあったんでしょうか。
  123. 佐藤弘毅

    説明員(佐藤弘毅君) 瀬戸内海におきます過去三年間の海洋汚染の状況につきまして申し上げますと、昭和五十年八百三十三件、五十一年七百四件、五十二年六百四十四件ということになっておりまして、まあ総体的に見てまいりますと減少の傾向を示しておるということが言えると思います。  この内訳といたしましては、油によりますものが五十年に五百七十件、五十一年に五百十四件、五十二年に四百六十七件という数字になっておりまして、これも減少の傾向を示しておるわけでございます。油以外によりますものは、これは赤潮、それから廃棄物、そういうものが含まれておりますけれども、それを総体的に申し上げますと、五十年二百六十三件、五十一年百九十件、五十二年百七十七件というような数字になっております。  海上保安庁といたしましては、これらの海洋汚染につきまして監視取り締りを強力に行っておりまして、検挙件数を申し上げますと、五十年に七百六十一件、五十一年に六百八十一件、五十二年に九百八十九件という検挙の件数になっておりまして、五十三年と五十一年を対比してまいりますと、三百八件の増加になっておるのが現状でございます。  これ、ちょっと内訳を申し上げますと、五十二年度の検挙の内訳でございますけれども、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反といいますのが五百三十六件ございます。この内訳ですが、油の排出禁止違反、これが二百二十四件という数字を占めております。それから船舶からの廃棄物の排出違反、これが五十四件、それから廃船の投棄というものもございまして、これにつきましては百五十件、その他の条項違反、これは油記録簿の不所持でありますとか、そういった関連の法規違反ですが、百五十件というふうになっております。このほか廃棄物処理法の違反、これが三百五十六件、その他、というような形になっておるわけでございます。
  124. 中野明

    ○中野明君 他に下水とかそれから埋め立てのことをお尋ねしたかったですが、それは他の委員の人にお譲りします。  きょうは以上です。
  125. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時二十二分散会