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1978-05-10 第84回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月十日(水曜日)    午後一時四十五分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 矢田部 理君                 小平 芳平君     委 員                 田代由紀男君                 三善 信二君                 山内 一郎君                 粕谷 照美君                 坂倉 藤吾君                 広田 幸一君                 中野  明君                 馬場  富君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    参考人        国立公衆衛生院        次長       鈴木 武夫君        横浜市公害研究        所所長      助川 信彦君        京都大学原子炉        実験所助手    塚谷 恒雄君        日本弁護士連合        会公害対策委員        会委員      峯田 勝次君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (二酸化窒素に係る環境基準に関する件)     ―――――――――――――
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、二酸化窒素に係る環境基準に関する件について調査を行います。  本日は、お手元の名簿にございます四人の参考人の御出席を願っております。  参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、当委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。  本日は、二酸化窒素に係る環境基準につきましてそれぞれ御専門立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の当委員会調査参考にさせていただきたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  ただいまより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事順序について申し上げます。  御意見をお述べ願う時間は、議事の都合上、お一人二十分から二十五分以内でお願いいたします。  なお、参考人方々の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からお尋ね等がございましたら、お答えをお願いしたいと存じます。  それでは、鈴木参考人から順次御発言をお願いいたします。鈴木参考人
  3. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私、きょう二十分間で何をお話しするか、実は御指示がございませんでしたので、NO2の判定条件委員会をお世話しました者としての立場から、とりあえず、その経過についてを主としてお話ししてよろしゅうございましょうか、最初は。御質問はまた後で承るといたしまして。――では、お許しありましたので、その立場最初はお話しさしていただきたいと思います。  私たちが作業いたしました、二酸化窒素判定条件委員会の使命と申しますものは、すでに御存じだろうと思いますが、二酸化窒素人間に対します影響判定条件とそれから指針を導き出すものでございます。で、恐らく、まあ御存じだろうと思いますけれども、判定条件とか指針とかいうものがしばしば誤解をされている向きがございますので、それを先に述べさしていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。――それでは、いわゆる判定条件と言われておりますものは、環境、この場合は二酸化窒素暴露されました人たちあるいは人口集団がどのような影響を受けているかということを、その影響の危険の強さ及び大きさ及び範囲等につきまして、いままでの得られました知識を整理したものでございます。したがいまして、よく世間では、判定条件というのは影響スぺクトルであると言われているところでございます。この場合におきましては、二酸化窒素暴露されております条件をはっきりさせること、それから、影響を受けた内容をはっきり明記しておくこと、この二つ条件を満たすもとにおいて判定条件というものがつくられてくるものでございます。そして、その判定条件を出しました後、そういう資料の中から、人間の健康に対する有害作用を非常に高い確率で避けることのできる濃度は大体どの程度であろうかということを提案したものが指針に相当いたします。そして、この場合におきましては、指針と申しますものは、実は目標値責任当局が導き出すための道しるべを示したのが指針でございます。これを環境基準という言葉で言う場合もありましょうし、あるいは一般的に申しますと目標値という言葉でもって総合してしまった方が学問といたしましては言いやすいものでございますから、目標値という言葉を使わさせていただきます。それで、指針が得られますならば、いま申し上げました状態で与えられました指針でございますけれども、その目的は、いわゆる目標値というものを導き出すための責任当局へ出した道しるべにすぎないんだということが指針でございます。  それで、この指針というものを考えます場合におきましては、どのような影響を防止するのが必要であるかという条件次第によりましては、指針内容は当然のごとく変わってまいります。で、一般的には、ここから先は物の考え方になりますけれども、許される最低濃度を示すのが一般的な指針考え方でございます。しかしながら、そういう指針が出ましても、この指針まで汚染は許容されるものであるというふうに考えることも行き過ぎでございますし、また指針を少しぐらい過ごしたからといって、直ちに有害作用が起きると言うのもあるいは行き過ぎた考え方でございまして、あくまでも後で目標値というものを導き出すための最低濃度であって、それは高い確率でもって影響を防止できると考えられるというものが指針でございます。  そして、目標値というものが導き出されてくるわけでございますけれども、目標値と申しましてもいろいろな考え方がございまして、恐らくこれも一般的と申し上げてもいいと思いますが、まだ決して国際的に全員がそうだということは申しておりませんけれども、まあ多くの方が――というのは、たとえばWHOというようなところでもって、大体こういう考え方でいいだろうという程度の合意に達しておりますものは、短期目標長期目標でございます。そして、短期目標というのは、ひどい作用というものを速やかに避けるために設けるものでございますし、長期目標というのは大気汚染物質――きょうは大気汚染でございますから、大気汚染に限定いたしますと、大気汚染物質暴露をできるだけ低く保つためのものでございます。で、その影響がないレベルというようなものにつきましては、現在の科学におきましては、ことに自然科学におきましては定義は明確にされておりません。しかしながら、何をもって影響のないレベル考えるかと、そのことにつきましては、恐らく短期間の間に定義というものが決定されるような状態でないことも、現段階におきましては申し述べておかなければならないと思います。相当長期間にわたる論議を経た上で、いま申し上げました正確な意味におきますところの影響のないレベルというものは考案されることになりましょう。したがいまして、ここから先はいろいろな手段が講ぜられるわけでございますけれども、指針よりも低濃度の場合の健康影響につきましては、しばしば考えの上で、これはちょっときざな言葉を使いますと、思索的なものになりかねないのでございます。そして、指針より低濃度によって生ずる可能性のある作用というものの予測は、現在のところでは明確に言うことはできません。しかしながら、現在の知識で、私たちといたしましては、全く悪影響を与えないだろうという希望は持ちたいものでございます。その希望を持つためには、指針として与えられました濃度自然バックグラウンド濃度中間目標というものをつくるべきであるというのが一般的な考え方でございます。  それで、いま申しました判定条件とかあるいは暴露影響関係とかいうようなもの、そして指針、ここまでは自然科学の分野に属します。この先、指針からいわゆる目標値というものを選んでくるときには、ここから先は行政ないしは政治という段階に入ってくると私は考えます。そして、指針から目標値を選びます場合におきましては、判定条件及び指針に使いましたところの資料精度のよさ、あるいは精度信頼性、あるいは予防しなければならない影響の強さ等々によりまして、安全係数が掛けられてくるのが普通でございます。そして、科学的にはどうしても安全係数を掛けたというようなレポートというものはつくることができませんので、事実をそのまま述べることによって、指針から目標値と、まあ日本の場合はこれが環境基準に相当するかどうかは行政当局及び先生方の方で御判断願いたいのでございますけれども、その中間において安全係数というようなものが掛けられてつくられる。しかしながら、どの程度安全係数が決まるべきであるかということにつきましてはまだ定説はございません。いままでの経験の中から安全係数というものをつくることによって目標値というものを導き出すものでございます。たとえば、わが国ですでに決まっておりますところの二酸化硫黄及び粉じんの環境基準は、指針安全係数を掛けたものでございます。それが環境基準としてつくられていると私は判断いたします。  そういうような中において、私たちはいま申し上げました順序の中において判断条件指針とを諮問されて、それに対して答えたのでございます。したがいまして、私たち専門委員会報告が出ました後で、一般的に環境基準という言葉に置きかえられまして報道されましたことは、委員会といたしましてはちょっと意外でございました。これは環境基準というものに対して多くの方々が非常に関心をお持ちであるということはもうやむを得ないのでございますけれども、委員会環境基準を諮問されたのでもありませんし、環境基準を答申した覚えもございません。それですから、その点につきましてまずお断りいたしまして、短い時間でございますけれども、私たち委員会立場を御説明いたします。  まず、私たち二酸化窒素判定条件及び指針を導き出しますときの姿勢というものを簡単に申し上げますと、わが国現状から申しますと、二酸化窒素は単独で存在することはまずないであろう、他の汚染物質が必ず混合している、その混合している中において二酸化窒素というものをどう考えていくかという非常に困難な考え方をまず設定いたしました。もしもこれを二酸化窒素だけの影響、ほかの物質影響考えないで二酸化窒素だけの影響だけで考えるとするのならば、一年半以前に出しましたWHO判定条件報告書というものに類似してまいりまして、私たちといたしましては、比較的容易にできるものでございます。ところが、ほかの汚染物質が混合している場合におきましては、実は学問的にはまだ非常に未熟な状態の中においてそういうことを考えざるを得なかった。というのは、わが国現状のもとにおいてそう考えざるを得ないという意味でございます。単なる二酸化窒素毒性学というものの教科書を書くのならばまだ比較的容易であったということをまず最初にお断りいたします。  それからもう一つは、安全係数という言葉先ほど使いましたけれども、自然科学立場からあるいは若干社会科学も関与すると思いますけれども、この安全係数というものは、動物実験から目標値考えたりあるいは指針から目標値考える場合に使うべき一つ考え方でございまして、判定条件とか指針とかいうものをつくるときには安全係数という考え方は一般的にはとりません。ですから、われわれといたしましてはとらなかったのでございます。それから、そういうような、安全係数というようなまだ確立していない、その場その場によって、それぞれの事情のもとによって安全係数判断して、そしてその安全係数を使うということを、われわれといたしましてはできるだけ避けたい。安全係数というものをつくるならば、いま申し上げました事情のところで安全係数を利用さしていただきたいということが頭の中にありましたがゆえに、安全係数を避けるために、疫学的な資料というものを重視いたしました。疫学的資料というのは、現実に起きている大気汚染状況下において置かれている人たちの健康への影響というものを見るわけでございます。  そこで問題は疫学とは何だとなるわけでございますけれども、時間がありませんので、御質問がありましたらもう一回疫学については申し上げますが、時間がもしありましたら少しつけ加えさしていただきますが、ここではちょっと飛ばさせていただきます。  それと、日本の置かれております事情というのは、私がここで申し上げるまでもなく日本の国土の構造でございます。その置かれております状況から考えまして健康の影響判断をどう考えるか、好ましくない健康影響とは何であるかということに相当の議論をいたしました。一般的に申しますと、よその国は、疾病ないしは死からの予防というものは、疾病ないしは死あるいは病理学上病気の変化を持った状態をもって好ましからざる影響というふうに定義するのは一般的でございますけれども、私がくどくど申し上げるまでもない、日本事情から申しますと、それでは少し甘過ぎるのではないか。要するに、日本の国ほど大気の汚れた状況下にさらされている人口数の多いこと、そしてその人口の密度が高いこと、そして発生源と居住の距離が余りにも短いこと、そういうことを考えますと、健康への影響判断というものは、やはり日本独自で考えるべきであるという結論に達しまして、いろいろ問題をいま起こしておるかもしれませんけれども、わかりやすい言葉であらわすことが非常に困難でございますので、「健康からの偏り」という言葉を使わさせていただきました。私はこれも決して熟した言葉とは申し上げません。しかしながら、一般的に申しますと健康というのは何であるか、この定義は恐らくこれも将来にわたって私たち研究しなければならないし、論議を重ねなければならない問題ではございますけれども、健康からのひずみ、偏りということを考えるときに、いまの医学ないしは生理学の立場から申しますと、人間の持っております恒常性。だから、人間を一定の状態を保つ性質というものが存在している間は健康である、少しぐらい影響を受けましてもその人間の持っております一般的な恒常性というものが維持されるというならば、多少の刺激がありましてもそれは恒常性である。問題は、その恒常性変化してきたときが健康からの偏りではないであろうか。これはWHOとかあるいはアメリカ――WHOと申しますよりもアメリカの国会においてすでに数年前に報告された、わかりやすい健康への影響というものを見ますと、明らかにある程度病的変化の起こったところをもって「健康からの偏り」ということを言っておりますけれども、私たちはそこまでは言いたくない。要するに、健康への恒常性が冒されるかもしれないという疑いのある場合には、それはもう健康への好ましくない影響として取り上げるべきであるというふうに考えましたのが、「健康からの偏り」という言葉であらわしたものでございます。これは非常にわかりにくい概念ではございますけれども、まあそのうちにわが国におきましても定着するのではないであろうかという希望を私は持っております。  そういうような立場でもって作業を進めてまいりまして、そして、実は御存じのとおりの判定条件というものを大体十四項目提案いたしました。そして、十四項目の中を分けまして、長期影響短期影響に分けて考察をいたしました。これは、長期影響とか短期影響というものの判断というものは、細かく申しますと非常にむずかしいところがございます。その点につきましては、報告書の方にいろいろの見方があるということは述べておきましたが、まあそんなことを長く述べてももう仕方がございませんので、ここで申し上げますと、短期暴露というもの――短期影響いう言葉よりも短期暴露と言った方が正しいのでございまして、それは、短い時間の高濃度暴露を受けた場合の影響と、それから低い濃度を長い期間受けている影響とは違う。すなわち、短期の汚れによって受けた影響が積み重なって慢性影響の増悪を呈するということもありますけれども、それだけではない。すなわち、慢性影響というものが起きるまでの間に、短い時間に得た影響が必ずしもわからないうちに慢性影響状態を呈することがございますので、そこで、これもいま国際的に一般的に考えられております二十四時間というものを一つの区切りにいたしまして、影響というものを二つに分けて考えました。これは言葉先ほど抜かしましたけれども、影響と申しましても、先ほど影響の強さだとか大きさだとかという言葉を使いましたが、それを言っているのでございます。ある汚染物質があって人間影響が与えられた場合に、いろいろな影響が出ます。そのいろいろな影響があるということ、それが比較的高濃度に短い時間暴露された場合と、比較的低濃度長期暴露された場合では、その起きてくる影響が違うんだという考え方で整理さしていただきまして、そして、短期暴露長期暴露というふうに整理させていただいたわけでございます。  で、十四のものを選び出してまいりましたが、その十四のものを選びました過程は、いまの健康の影響というものをどう考えるかという立場から選び出したのでございます。アトランダムに選んだのではございません。そういう健康のひずみ、あるいは偏りということでもってあらわされる報告書というものを選んでまいりました。そして、先ほど申しましたとおり、自然科学報告書の中から指針というものを導き出すときに、安全係数というものを使うならば、動物実験を使うことは結構でございますけれども、余りそれは――環境基準をつくるとかいうときに安全係数等を使ってもらいたい。それから、動物実験があるときに、その動物実験から人間に応用するときに安全係数を使ってもらいたいという願望がありましたので、もしも人間に対する影響がありますならば、人間に対する影響をまず考えて、その人間に対します影響資料動物実験で十分説明できるというものを選んでまいりました。それが報告書長期暴露短期暴露二つに整理したものでございます。  しかしながら、報告書の中に書いておきましたように、いま日本を含めてどこの国でも完全な研究というものはございません。もしも指針とか環境基準というようなものがわれわれの疫学的研究からできるとするのならば、これは理想的な案をつくることによって、そして理想的な――これから先余り言葉をやさしくできませんので専門言葉を使わさしていただきますと、量-反応関係というものの資料がありますならば、これはもうその資料から実は指針基準も出てまいります。しかしながら、残念ながらいまの状態から申しますと、そういう資料はございません。で、私たちが集めました資料を見ましても、それぞれの研究にはそれぞれの欠点を持っております。したがいまして、一つ資料から指針というものを導き出すことはできませんでした。そこで、総合判断ということを行って、一時間値とそれから年平均値というものの資料はこうなっていますといってお出ししましたのが指針でございます。最後は総合判断でございます。十四の資料短期長期に分けて、動物実験疫学とをさらに分けて、そういう中から総合判断によって一時間値と二十四時間値というものを出したのでございます。  それで、あと一、二分お許し願いたいと思いますが、実は私、四十七年に、最初のときにやっぱりお世話をいたしましたけれども、そのときと今度の関係を簡単に申し上げます。  この四十七年の場合におきましては、文献はほとんどございませんでした。それから環境調査というものも一けたの状態でございました。測定は十カ所以内。ところが、現在は六百カ所――八百カ所ですかございます。自動車の沿道調査を含めますとさらにそれに上積みされます。それから、先ほども申しましたとおり、まだ、ぴたりとたった一つ報告でもって、指針値を出すというようなことを考えます場合におきますような、理想的な、完全な、必要にして十分な条件を満たすような、そういう報告は得られませんでしたけれども、文献は、この五年間に、国際的に、わが国も含めまして、けた違いにふえましたことは事実でございます。そのことにおきまして見ますと、四十七年のときにはNO影響というものを私たちは心配いたしました。それは、NO影響というものは、その当時生体につきまして検査することはできませんでした。試験管内実験によってNO影響が心配されたのでございますけれども、この五年の間に生体内実験が行われたことによって、その当時心配されました程度のことはこれはなさそうであると。それから、二酸化窒素発がん性の問題、これは、少なくとも二酸化窒素を単体で与えた場合におきましては、細胞モデルにおきましては変異原性は認められますけれども、生体内において認められたという報告は、五年間にすぎませんけれども、まだありません。しかしながら、がんの問題は、五年ぐらいの研究結論を出すのは早過ぎます。私たちとしては正直に、五年間には報告はなかったというふうに申し述べておきました。  それから、長期影響と申しますか、疫学的資料というものにつきましては、いま申し上げましたとおり、その当時、アメリカ及び日本一つずつ中間的な報告があっただけでございますけれども、その後五年の間にアメリカで約三編、日本におきまして約四、五編という報告が出てまいりましたので、それを解析いたしましたところ、四十七年に、その当時の専門委員会が、恐らくせきとたんというものを目印にした場合におきまして影響を推定されましたものが決して間違っていなかったということが補強されたのが今度の委員会報告でございます。
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  それでは、次に助川参考人
  5. 助川信彦

    参考人助川信彦君) 助川でございます。  ただいま鈴木参考人から非常に御熱心に学問的に御検討をなさった経過が、大変御苦労なことであったというふうに伺ったわけでございます。  私は、自治体の研究機関行政機関にもおりましたが、研究機関にいま所属しております。やはり、これまでの展開してまいりました国と地方との行政のかかわりで、この問題について考えを述べさしていただきたいと思っております。  わが国環境行政ですけれども、国民の健康を守ることを最優先課題として出発をしたわけでございまして、本日御列席の諸先生を初め、各方面の格段のお力添えを賜りまして、世界にも類を見ないような汚染をある程度克服するということにつきましては、成果が認められるというふうに存じております。近ごろは経済安定成長期に入りまして、経済界などから不況を理由に環境改善のための目標の大幅な緩和を望む動きが目立っております。四月には例の経団連からNOx基準見直しの要望が出されておりますし、ただいま御説明のありました中公審答申に対する問題点指摘等もなされておりますのを新聞で拝見しております。それから、もう一面、国が被害者住民方々の素朴な訴えに率直に耳を傾け、あるいは大臣みずから公害の現地で住民方々と一緒に解決策を相談するというふうな傾向からはやや遠ざかってきているような点が見えるところがございまして、そうであるといたしますればまことに懸念にたえないというふうに思います。例の水銀を使う苛性ソーダの製法をことしの三月までに転換をするということになっておりましたのが、期限を定めずに製法転換が延期されたというような――きょうのお話とは関係ございませんが、NOxの第三次排出規制につきましても、排煙脱硫装置をひとついつまでにはつけろよという、そういう設置の義務づけも第四次規制以降に見送られておるわけです。  このたびのNO2の判定条件の問題につきましては、公害対策基本法九条三項前段の、汚染による暴露とそれに関連する好ましくない健康への影響につきまして、常に適切な判断を加えるというようなことになっておりますので、もともと環境基準の改定ないし緩和、そういったこととはかかわりなく検討されたというふうに承っております。専門委員会のお世話をなさいましたのがただいまの鈴木参考人でございまして、お話もございましたが、このたびは最近五年間の幾つかの新しい知見が出てまいりまして、その総ざらいをなさって、判断条件につきましてもかなり綿密に検討をせられ、おまとめをいただいたというふうに存じております。  NO2に関する知見は、かなり蓄えられたとは申しましても、いまもお話がございましたように、なお不確定、未分明の因子を抱えているということが報告されておりまして、今後さらに究明を要すると報告書にも述べられております。低濃度長期暴露の実験だとか、あるいは間欠的に高濃度あるいは低濃度が繰り返された場合の影響だとか、あるいはほかの汚染物質と――汚染物質はほかの物質もございます。それとNO2との複合的な影響、呼吸器だけでなくて他の内臓への影響等の追求なども必要だということが報告書に述べられておりますし、光化学反応へのNO2の関与につきましては、今回はどうも一応検討の対象から外されておるようでございますが、報告書の中では、今後一層の研究の推進を要するというふうに述べられるにとどまっております。  NO2の測定法に関しまして、ザルツマン法と化学発光法という自動測定器の測定方法、連続測定装置の測定の問題が検討されまして、最近の実験結果等からザルツマン係数の〇・七二というのを二〇%程度変更することが必要だと、たとえばこれは〇・八六というようなふうに読みかえることになろうかと思いますけれども、たとえば現在のNO2の基準値の日平均値〇・〇二PPmというのが実は〇・〇一七と――余り細かい数字まで言ってもしようがないですけれども、読みかえることになろうかと存じます。ただ、過去のデータをどう扱って、これから以後のデータとの連続についてどう考えるか、現在の機器の機種によっても多少の差異があるようでございまして、もし、ザルツマン係数を行政的に変更するようでありましたら、国におかれまして、自治体の測定担当者等の意見も十分におくみ取りいただきまして、現場に混乱が生じないように、もちろん御配慮いただけるというふうには存じますけれども、この席で申し上げておきます。  さて、現行の環境基準につきまして、鈴木参考人からお話がありましたように、四十八年の五月に告示されたわけでございますが、この告示の中には、基準値のほかに、「測定方法」、「達成期間」、「中間目標」、そういったものがあわせ掲げられております。達成期間につきましては、四十八年から五年以内、つまり本年じゅうに達成せよと、そういうことに努めよと記されてございまして、私どもが住んでおります京浜地区などの大規模工業地域におきましては、中間目標として日平均値〇・〇二PPm以下の日数が、年間総日数の六〇%以上維持されるようにと、まあ日平均値として〇・〇四PPmと言われておりますけれども、そういうことが記されております。ところが、現状は、昭和五十一年度の大都市地域における年平均値等を見てまいりましても、そうした数値ははるかにこの基準を上回っておりますものでございまして、私どももこの達成期間内に達成ができなかったことについて非常に責任を感じております。つまり、この達成期間内の達成は事実上不可能となっております。で、大都市の自治体の公害担当者の一員といたしまして、NO2の環境基準の達成が容易ならざる大事業であり、難事であることは、身にしみて認識はいたしております。横浜市におきましても、去る五十二年の七月に独自の窒素酸化物規制要綱を定めまして、市域内の大発生源等に協力を呼びかけております。しかし、一面で自動車の、トラックなどにかかわる第二次規制の実施時期がかなり――これはまあ六十年までに施行されるということになっておるのでございますけれども、かなり繰り上がって施行されることになりませんと、たとえば昭和五十六年にこの中間目標を達成するということすら困難になると、こういうふうに予期されるのでございます。  で、このNO2の環境基準値でございますが、確かに昭和四十八年五月に告示された数値は厳しいものでございますが、判定条件が出たからといって、いまの鈴木参考人のお話を伺いましても、これは変えなくてもいいんじゃないか、そんな感じがいたします。このたびの指針値は、五年間の知見の集約から導き出されたものでございまして、しかも不確定、不分明の要素を含むものでございますから、ただいまお話がありましたように、安全率というようなものを、あるいは安全係数というものを掛けて考えるというふうなことがあるといたしますれば、現在の基準値でよいということになりはせぬかと思います。四十八年以降、国あるいは自治体、企業、住民、それぞれ厳しい目標を目指しましていろいろと、まあできないながらも努力を結集をいたしまして、それをとにかくやらなきゃいかぬのだということについては、おのずからなる合意が形成されつつあるように、私ははだで感じ取っております。もちろん、一部の中央の大企業は別といたしましても、厳しいところを目指すのだというところから対策に迫力が生じている。現実にそういう姿が出ている。ここでこの力を一つ抜いてしまいますと、そのやや緩和されたと想定されるNOxの規制にいたしましても通らなくなってしまうというようなことが起こらぬかというふうに思います。自動車排出ガスのNOxの規制にいたしましても、日本版マスキー法と言われた厳しい規制が、不可能とされながらもついにその不可能が克服された経験を私ども持っておるわけでございますから、この点を考えてみましても、そうこの際環境基準値を変更しなくても対策を行えるのではないかと、こういうふうに考えます。  それから、NO2とオキシダントの環境基準というのは、これは昭和四十八年の五月に制定を見たわけでございまして、両者は無関係でない。で、NO2と非メタンの炭化水素は光化学反応形成の要因物質でございまして、まあ未解明ということで今回は十分にお取り上げになっていないようでございますけれども、光化学大気汚染防止のためのNO2の位置づけにつきましては、もう少し御検討があってもよかったんじゃないか、そんな感じがいたします。非常に光化学の被害が著しくなりましてから研究成果が学識経験者の方々の爼上に上るというような逆の結果になってはいかぬとこんなふうに考えられます。ここに関東地方一都六県の光化学スモッグによる植物影響調査報告書というのがございますけれども、確かに注意報の発令は、これは人間に直接、目を刺激するとかそういう影響が出るわけでございますけれども、これは五十年が百七十九件で、五十一年が八十一件、五十二年が九十五件と減少の傾向はございます。これは長雨だとか異常低温によったものでございまして、対策ができたからではございません。通常の気象条件でしたら光化学スモッグが起こる、その被害者も出ると、こういうふうになるはずでございます。その根拠として、一都六県の植物影響調査を見ますと、目で見える被害、葉っぱの三分の一以上ただれるとか枯れるとかいう、そういうものが広域化するのと、被害の程度の著しい地点の増加が目立っております。茨城、栃木の両県は、五十年よりも五十一年に被害がふえておりますし、大阪でも横ばいか少し植物被害がふえるというふうな傾向がございます。もちろん植物ですから、気象条件とか病虫害とか育成管理などの問題がございますけれども、アサガオ、サトイモ、落花生といったものは比較的そういう問題が少ない、光化学スモッグの指標生物としてふさわしいとされておりますが、オキシダント〇・〇七からあるいは〇・〇八PPmで、たとえば人間に対する注意報の発令基準の半分ぐらいの値で被害が出ておるということがございます。光化学大気汚染の低減のために、その要因物質であるNOxあるいは非メタン炭化水素、その生成物質のオキシダントの大気中の定量的な関係を明らかにする必要がございまして、最近、そうしたことを東京都の公害研究所から承りますと、未発表ではございますけれども、大変御熱心な御研究がございまして、かなり、たとえばNOxとして〇・〇三五PPm、NO2として〇・〇二四PPmを超えますと、非メタンの炭化水素が、現在環境濃度指針値と言われております〇・三一PPmCで、そこでオキシダントが〇・一PPmを超えるというデータだそうでございます。こうしたデータもあることでございますので、今後このNO2の環境基準の問題とあわせて、このオキシダントについても、四十八年に同時につくりましたので、お考えを願いたい。東京都がこのデータを教えてくださいましたのは、今回の答申につきまして、四十八年のNO2の環境基準を変えるなというふうなことの意味でおっしゃっているように存じております。少なくとも今回の指針値の範囲内にこのNO2の濃度を抑え込んでいくことは、国民の健康を保護する上で非常に大事なことである、緊急の課題であるというふうに存じております。  費用がいろいろと試算されたデータなどもございますけれども、とにかく、費用が幾らかかるという経済予測の論議も必要ではございますけれども、窒素酸化物の総量規制を具体的にひとつ進めていただく方向へ進んでほしい。国民の健康の保護を至上課題といたしまして、極限までの対策をやはり逐次実施していくということが必要であろう。ただ論議のための論議に時を費やすことのないようにお願いをしたいと、かように存じております。
  6. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  次に、塚谷参考人
  7. 塚谷恒雄

    参考人(塚谷恒雄君) 塚谷でございます。  きょう、参考意見を述べよということで、内容については特に限定されませんでしたので、私は、三月出されました、鈴木先生委員長になっております判定条件委員会報告について述べたいと思います。  で、今回の専門委員会報告を評価いたします私の立場をまず説明させていただきたいと思います。個人的にはいろいろ意見は持っているわけですけれども、それを述べるのでは余り参考になりませんので、たとえば、学術雑誌に論文を私たちが発表するときには、一般の雑誌の小説とかそういうものとは違いまして、レフェリーの制度があります。査読の制度というのがありまして、この論文が、学術的に見てその前提になるものとか、推論の方法とか、結論が、科学的に妥当であるかどうか、これを審査する制度であります。たとえて言いますと、私が専門委員会報告についてレフェリーになったという立場で評価したいと思います。  結論的に言いますと、全体としてはまとまった報告書で、現在のNO2の影響に関する科学的知見をよく総括していると考えられます。しかし、それにもかかわらず、この報告書は、再度吟味して内容を改めなければ、たとえば学術雑誌に公表するということはできない。レフェリーとしてはリジェクトするという個所が幾つか見受けられるわけです。その個所のうちの一つ――幾つかあるわけですけれども、その一つについて以下述べたいと思います。  この報告書の最大の主張点であります指針値、そのうちの長期目標値、年平均〇・〇二から〇・O三PPmの提案の部分がありますが、以下に述べるような理由で、この値というのは〇・〇二PPm以下に改められるべきではないかと思っております。  年平均濃度で示された指針値〇・〇二から〇・O三PPmを導き出した根拠は、報告書では二カ所で示されております。一番目の個所は、報告書の三の二十八というページで謝りますが、十四の疫学研究論文を紹介した後の締めくくりとして、次のような表現があります。「以上の慢性呼吸器症状有症率調査のうち、吉田、常俊、岡山県または坪田の報告で示されている持続性せき・たんの有症率と二酸化窒素濃度のみを対比してみると、二酸化窒素濃度〇・〇二-〇・〇三PPm以上の地区での有症率は、二酸化窒素濃度との関連でそれ以下の地域の有症率よりも高率であり、二酸化窒素濃度との間に関連があることが観察された。このことは環境庁複合大気汚染健康影響調査報告されている結果と一致するものである。」、ここで述べられていることを、長いですから、整理し直して二点に要約いたしますと、第一に、NO濃度〇・〇二から〇・〇三PPm以上の地区の有症率が、それ以下の地区の有症率に比べて高いことが認められたと、こういうふうに述べております。それから第二に、地区間の有症率の差は、地区間のNO濃度の差によると考えることができる。  いま申しました第一点の方は、NO濃度の高低には触れずに、単に有症率に差があることを示しているのでありますが、なぜこのことを確かめることが必要であるか、例を挙げて説明いたしますと、たとえば、いま人口十万人の都市のうち、三千人が呼吸器に疾患がある地区で、百人を無作為に抽出して有症率調査を行う場合、最もうまく計画された調査によっても、百人のうちの有症者には一人から六人という幅がありまして、決して十万人のうちの三千人――三%という数値にはならないわけであります。  次に、第二の点、地区間の有症率の差が証明されることの必要性は、次のように考えることができます。すなわち、有症率の高低が、NO2を指標とする大気汚染以外の原因によって生じ、見かけ上たまたまNO2が有症率に影響しているかのように見受けられる場合があるわけです。このことを確かめなければならないわけですが、もちろん医学、生物学的にNO2の人体への作用ということを考察しなければならないわけですけれども、それ以外にも統計学的にNO濃度が相当広い範囲にわたって有症率と関係があることを示さねばならないわけです。  指針値〇・〇二から〇・〇三PPmの根拠を示す他の一カ所の部分は、これも報告書の三の四十四というページ、疫学調査のまとめという個所に、次のように示されております。引用いたしますと、「大気汚染のほとんどない都市の有症率である三-四%を参考に、これ以下の有症率では濃度と有症率との関連が見い出されないであろうと考えた。こうした条件から各地域の疫学調査の結果を総合的に考察すると、有症率三-四%に対応する大気汚染の指標としての二酸化窒素濃度年平均値〇・〇二-〇・〇三PPmであった。」、このように書かれております。  また、同じように、このような結論を導くために必要なことを整理いたしますと、やはり次の二点が証明されなければならないわけです。  第一点は、大気汚染のほとんどない地域の有症率は三から四%である。それから第二に、NO2平均濃度が〇・〇二から〇・〇三PPm以下の地域の有症率は三から四%である。この二つが後段の引用個所について成立しなければならないわけです。  以上、指針値を導き出した根拠となる個所を二カ所引用し、それぞれについて証明されなければならない命題を四つ紹介したわけです。  さて、この四つのうち、報告書で部分的にせよ言及されているのは二つでありまして、一つは、地区間の有症率の差がNO濃度の差に対応している、すなわち相関関係があるという部分、これは報告書の三の二十八というページに書かれております。それから、二つ目は、同じページですけれども、NO2が〇・〇二九PPmの地区での有症率は四%である。これは全国六都市の調査結果でありますけれども。この二つ報告書では言及されているわけです。もちろん、専門委員会においては先ほど申しました四つの命題すべてにわたって検討されたかとは思いますけれども、一応公表される論文となりますと、すべて四つについて証明を必要とするのではないかと思います。  それで、以上の点に関する私の意見をこれから述べるわけですけれども、その前に、専門委員会が想定しているNO2と有症率との関係をあらわすモデルを私なりに推理してみたいと思っております。鈴木先生から、それは違うと言われればそれまででございますけれども、一応の推理を申しますと、想定されているNO2とそれから有症率の間の関係は、NO2が低い地域での有症率はNO2には無関係である。それから、NO2がある値を超えると両者には関係が出てくる。私はここで、そのある値を超えるというある値について、臨界濃度、マージナルもしくはクリティカル濃度と以降呼ばせていただきます。このモデルは、統計学的にはホッケー・スティック・モデルと呼ばれております。すなわち、横軸にNO2の濃度をとっていただいて、縦軸に有症率をとりますと、両者の関係は、その図の中では、初めは横軸に平行に、それから臨界濃度を超えると右上がりに上昇を始める、そういうモデルであります。もう一度言いますと、集団における有症率を、住宅事情とか労働条件とかあるいは喫煙とか、もろもろのほかの影響をもし除去できるとすれば、NO2と有症率との関連は、初めはその図の中で横軸に平行に、臨界濃度を超えると右上がり、これはあたかもスポーツのホッケーに使われますスティックに似たかっこうをしておりますので、ホッケー・スティックと呼ばれております。  それでは、有症率が上昇を始める臨界濃度を求めるにはどうしたらいいかという問題が出てくるわけです。統計学的にはいろいろ解析なり試みがなされておるわけですけれども、専門委員会で行われたと推定される方法は次のようなものであります。すなわち、有症率もしくはNO濃度の低い方から並べ、それらの間に相互に差があるかどうかを検定しながら、徐々に有症率もしくはNO濃度を増加させ、差が明らかとなった時点でのNO濃度をもって臨界濃度とする、これが指針値になったのではないかと思っております。  しかしながら、この方法には致命的な欠陥が――致命的なというか、致命的と言える欠陥がありまして、そういう方法で求めた濃度というのは、必ず実際の、真の臨界濃度よりは高くなる性質があります。すなわち、いま自然有症率をたとえば三%とみなして調査人数を二百人にとれば、差が出てくる地域の有症率は六%以上、調査人数を四百人にとれば、五%以上、千人にとっても四・二%以上でなければ、三%との差は出てこないわけです。ですから、当然それに対応するNO濃度は高く出てくるわけです。統計学的には、このことは検出力が弱いという表現をいたします。検出する力が弱い。逆に言いますと、エラーのうちの第二種のエラー、ベータのエラーと言いますけれども、ベータというのは簡単に言いますとぼんやり者のエラーというわけですけれども、差があるのに差がないかのようにぼんやりしててやってしまうという、こういうベータが非常に大きくなる可能性があるわけです。  実際にこの方法で、私がデータに当たってやってみますと、引用されている四地域のNO2の濃度については、岡山では〇・〇二七から〇・〇三〇、それから千葉では〇・〇一六から〇・〇一八、大阪では〇・〇二〇から〇・〇二九、六都市の調査では〇・〇一六から〇・〇二〇、それぞれ単位はPPmです。この方法で指針値〇・〇二から〇・〇三PPmが――低い濃度もありますが丸めてやりますと〇・〇二から〇・〇三PPm、これが出てきたと推論ができるわけですが、先ほど述べましたように、果たして検出力が非常に弱い。べータが大きいために、実際の有症率というのは、岡山ではそういう指針値のときの有症率は二・五%、これは平均値でありまして、もっと違う言い方をしますと、八・三から一五・一%。違う言い方というのは統計的な幅を持たせた言い方なんですけれども、千葉では五・〇八で、四・〇から七・四。大阪では、これは有症率の指標が違いますが、慢性気管支炎で五・八%、統計的に同じく四・九から六・八%、それから六都市、これも、指標は同じですけれども、調査対象が、三十歳以上の女子でありまして、五・四六%、幅は三・〇から八・七%と、いずれも非常に高い有症率になってくるわけです。  それでは、地区間の有症率に差があるとみなせる濃度はどれくらいかと言いますと、四つの疫学調査のうち三つ、岡山、千葉、大阪の結果は、簡単に述べますと、すべての地区には全体として差があるのであって、NO2がある濃度より低いところで差がなくなるというような臨界濃度は見出せない。言いかえますと、すなわち、臨界の濃度というのは、岡山では〇・〇二八、千葉では〇・O一三、大阪では〇・〇二〇PPm以下のところに存在するであろう。それから四つのうちのあと一つ、六都市の調査では、このような臨界濃度は〇・〇一三から〇・〇一六PPmであります。  次に、大気汚染のほとんどない地域の有症率は三から四%であるかいなかについて申し上げたいと思います。報告書には、ページ数は三の七十五というところに付表がついておって、鹿島、赤穂、青森、秋田等の有症率が記載されていますが、この表からも三から四%という数値はちょっと無理がある。さらに低いところであるのではないか。  ついでに、従来の中公審の専門委員会報告では、自然有症率、持続性せき・たんは三%という記述がありますし、一般的には二から三プラスマイナス〇・五%ぐらいと言われておりますし、調査によってはもっと低い二%以下の値を出しているものもあります。  それでは、実際の四つの疫学調査のうち、〇・〇二から〇・〇三PPmの有症率が三から四%であるかいなかについて、統計学的に検定を行ってみますと、非常に言いづらい。どう言うんですか、先ほどの言い方で言いますと、エラーのうちの第一種のエラー、アルファですね、あわて者のアルファと言いますけれども、あわててそういうように言うことは言えるかもしれないですけれども、非常に危険が多いということであります。  結論的に、この論文の最初に言いました、たとえばレフェリーとしての評価を申し上げます。  第一点は、今回の報告書の根拠となった疫学調査からは、報告書参考値とは銘打ってありますが、指針値〇・〇二から〇・〇三PPmという数字は求められない。報告書中で述べられている手法を推理すれば、その手法は検出力の弱い、すなわち、第二種の、べータが非常に大きい方法である。  第二点は、大気汚染の集団影響に対し、NO2を指標にとるならば、影響が認められる臨界濃度は〇・〇一三から〇・〇二〇PPmの範囲に存在するのではないかと考えられます。専門委員会では丸めを行っておりますが、平均値であらわす限りこの値というのは安定した値でありますので、丸めの必要はなく、そのまま小数点以下三けたまで出してもいいのではないかと思っております。  第三点は、以上のような若干の不備な点を除けば、疫学調査結果から導かれる判定条件といいますのは、四十七年六月の、中公審窒素酸化物に係る環境基準専門委員会報告に述べられた、NO2と有症率のいわゆる予見的な推論を相当程度に補強し、かっこれを実証する可能性がある。こういう四十七年当時の予見的な推論がいかに正しかったかということが今回ある程度補強されたと思いますが、これはひとえに専門委員会鈴木先生の学問的なセンスが相当高かったということを証明するものではないかということを述べて、私の参考意見といたしたいと思います。
  8. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  次に、峯田参考人
  9. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) 私は、日本弁護士連合会公害対策委員の峯田でございます。  私どもは、三月の二十二日付中公審答申を契機とした二酸化窒素に係る環境基準改定問題について、国民の生命と健康を保護するという点から見て、黙過することができない問題点があると考えまして、意見書を発表することとしました。何せ事態が急な進展を見せておりますために、本日までに諸先生方関係機関の皆さん方に意見書をお届けすることができませんでしたが、本日は、その意見書をもとに若干の意見を申し上げたいというふうに思います。意見書の方は近日中に印刷して皆さんにお届けしたいと思っておりますので、細かい点につきましては、その意見書を御検討をいただきたいというふうに思います。  結論から先に申し上げますと、日弁連といたしましては、このたびの中公審答申を基礎として、二酸化窒素に係る環境基準の改定をすべきでないというふうに考えております。  以下にその理由を若干申し上げたいと思います。  私どもがまず注目したいというふうに思いますのは、今日の大気汚染の深刻さとそれによる広範な被害の実情であります。二酸化硫黄につきましては比較的早くから対策がとられまして、関係機関の御努力もありまして、全体としてそう遠くない時期に環境基準が達成されようという、そういう展望が持てるところまできておりますが、二酸化窒素につきましては、環境基準値の四、五倍という高濃度汚染地域が少なくありません。昭和五十一年度で見た場合でも、環境基準値を達成した測定局は、五年地域で二八・二%しかありません。八年地域では全くそういう達成測定局はないわけであります。  こういった汚染状況の中で、公害健康被害補償法に定める第一種地域の認定患者数は著しい増加を示しております。私どもは、昨年五月、補償法についての実態調査報告書を発表いたしましたが、それによりますと、昭和五十一年の九月末現在では、公害認定患者数は、全国三十七地域で四万四千五百八十三名でございました。ところが、本年一月末現在では実に六万一千九百二名に達しておりまして、この間に一万七千三百十九名の増加であります。答申された年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPm、こういった汚染レベルの地域でも、患者さんはふえているわけであります。しかも、これでも地域指定の要件となっております有症率に比較してみますと、はるかに低い認定率でありまして、潜在患者さんあるいは指定地域外の患者さんを加えますと、被害者の数は膨大な数に達するものと思われます。  二酸化窒素を中心とする高濃度汚染が続き、被害者がふえ続けている、こういう状況の中で、被害者住民二酸化窒素などの排出規制を求めて訴訟を提起していることは注目しなければならない事態であろうと思います。こういった訴訟には、千葉川鉄訴訟、兵庫におきます国道四十三号線訴訟、最近提訟されました大阪西淀川訴訟などがあります。  このような状況を見てみますと、二酸化窒素に係る環境基準を緩和しても、被害は発生しないという社会的な検証はされていない、こういうふうに言えると思いますし、国民の生命と健康を第一義として、安全の側に目標値を定めるという現行環境基準設定の際の考え方からしますならば、現在は環境基準の改定に着手するのではなくて、むしろ環境基準の早期達成を目指してあらゆる施策を推進するのが目下の急務であろうというふうに考えます。  次に、答申の持つ問題点に移りますが、私どもは、まず基準改定に至る手続に重大な問題があるというふうに考えております。昨年三月二十八日付で環境庁長官から中公審に諮問がなされたわけでありますが、この諮問も判定条件についてであって、これを受けて作業を進めた専門委員会報告も、判定条件についてのみ報告しているわけであります。決して環境基準そのものについての報告や諮問ではなかったわけであります。ところが、専門委員会からの報告を受けた中公審が、「環境基準について、」「検討を加えられたい。」と、このような答申をしまして、これを契機として環境庁が現行環境基準の改定作業を進めるということは、まあ言葉が悪いですけれども、政治的なすりかえであるという批判を免れないであろうというふうに考えます。私どもは、国民の生命と健康に直接関係し、また高度に科学的な判断を要する環境基準の改定と、こういった問題は、当然専門家の判断を待って行うべきものであって、報告を受けて環境庁が専行するという性質のものではないであろうというふうに考えております。  次に、答申の内容の問題に移りますが、その点につきましては、すでに参考人方々が申しておられますので、手短に申し上げたいと思います。  結論的に言いますと、専門委員会に集約された知見は、何ら現行環境基準の緩和を迫るような知見は全くなくて、むしろ先ほど来の参考人が申しましたように、現行環境基準設定の際の知見を補強すると、そういう性質のものであったということであります。現行環境基準の設定の際には、三十歳以上の家庭婦人についての疫学調査の結果、自然有症率三%に対応するNO2、濃度が〇・〇二PPmであったということを一つの有力な根拠としておるわけでありますが、答申された指針値のうちの年平均値の基礎資料となっております四つの疫学調査を解析して見ますと、有意の差をもって被害の増加するレベルというのは、〇・〇一六ないし〇・〇二〇PPm、このような範囲であろうということが専門家の検討の結果明らかになっております。この結果は、四十七年当時の知見と一致するわけであります。ところが、専門委員会が〇・〇二ないし〇・〇三PPmレベルで有意差があらわれるというふうにあえて断定して、環境基準緩和の素地を提供しているというのは、まことに問題であろうというふうに思っております。  また、短期暴露の問題について見ましても、国際的に承認されましたWHOのガイドラインを日本大気汚染の実情に引き当てて見た場合に、現行環境基準レベルは当然維持されなければならないということが明らかになっておりますし、環境庁自身も昨年の国会の中で御答弁しているところであります。今回答申されました指針値は、非常に厳しい付帯条件のついておりますWHOのガイドラインよりも後退した中身であるというふうに私ども考えております。  それから次に、指針値が示しております年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPm、このレベルでは被害が多発するであろうというふうに予測するわけであります。さきに挙げました疫学調査のデータをもとにしまして回帰直線式を引いてみますと、年平均値〇・〇二PPmのレベルでも、四十歳以上の男女の場合ですと、約四ないし七%の有症率となることを示しておるわけであります。持続性せき・たんの有症率というのは二ないし三%のレベルとされているわけでありますから、指針値レベルにおいては被害が多発するであろうということは明らかであるというふうに考えております。  さらに、もう一点ですが答申された指針値をそのまま環境基準値にすることはとても許されないという点でございます。指針値判定条件であったわけですし、その性格上、鈴木先生が申されましたように、安全率というのは見込んでおりません。また、専門委員会もその点については何らの報告をしておらないわけであります。ところが、大気環境中には病弱者も含まれておりますし、老人、子供といった非常に感受性の強い人たちも居住しておるわけでありまして、環境基準は当然それらの人々を含むすべての住民の健康を保護するに足るものでなくてはならないと思います。したがって、非常に特定された条件下で得られた知見をもとに、しかも未解明の領域を残しつつ環境基準を設定するという場合には、当然一定の安全率を考慮すべきであろうというふうに思います。したがいまして、指針値環境基準たり得ないということは明らかであろうと思います。  最後に、私は、公害大国日本とまで言われました過去の公害行政の教訓をいま改めて見詰めてみる必要があるであろうというふうに思います。日本公害行政が、長く経済との調和論に斜傾する中で、科学的に不確かであるなどということを一つの理由にしまして、現状追認の姿勢をとり、公害絶滅という点で後手に回ってきたとの批判は恐らく免れないだろうと思います。そうした歴史的な教訓を踏まえて、現行環境基準設定の際には、知見上の不確かさを踏まえつつも、国民の健康を第一義として、思い切った環境目標値を設定するという大英断をしたわけであります。この考え方は、今日においても生かされるべきであろうというふうに思います。産業界などから、科学という名においてさまざまな批判が加えられておりますが、科学の名に隠れて、経済との調和論に実質的にくみするというようなことがあってはならないというふうに思います。  四日市判決は、企業の公害対策についてでありますが、こういうふうに述べております。引用いたしますけれども、公害対策基本法が経済との調和条項を削除して国民の健康の保護や生活環境の保全の目的を強調する改正を行ったことにかんがみると、少なくとも、「人の生命・身体に危険のあることを知りうる汚染物質の排出については、企業は、経済性を度外視して、世界最高の技術知識を動員して防止措置を講ずべきである。」と、このように述べております。  こうした過去の深刻な被害を踏まえた判決の述べておりますところは、二酸化窒素に係る現行環境基準の改定問題についても当然その精神は生かさるべきであるというふうに思います。  少し早口になりましたですけれども、これで私の冒頭における意見を終わらせていただきます。
  10. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  以上で、参考人意見開陳が終わりました。  参考人に対して御質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 鈴木参考人にお伺いいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  私、学問的には全くの素人でございますので、その点をお含みの上お答えをいただきたいと思います。  たまたまきょうの朝日新聞の「論壇」に、中公審の大気部会の専門委員の一人でもいらっしゃいました東大の前田教授が投稿をされております。私は実はそれを拝見いたしまして、いま申し上げましたように、学問的には全く素人でございますけれども、なるほどなあというふうに、何か私の気持ちとしてはずいぶん同感するところがあるように思えたわけでございます。間違うといけませんので、この投稿の中の一部分でございますが、読ましていただきます。  前田教授の投稿でございますが、   私は、最近米国ハーバード大学の十年計画の  大気汚染健康影響調査のデザインと、今日まで  に得られた結果をみてきたので、その内容を紹  介し、正しく、合理的な疫学的方法による大気  汚染物の健康影響の把握(はあく)のあり方に  ついてのべたい。   ハーバード大学の研究は、一九七四年から始  められ、米国内の東部から中西部にいたる六州  のうち一州一都市をえらび、汚染程度を高・  中・軽の三段階に区分して、各区分二都市ずつ  として実施中である。これまでの四年間に各地  で研究調査の趣旨を理解し、長期にわたって  協力してくれる人をえらびだすこと、その人た  ちのくわしい生活歴、生活習慣、家族構成、住  居の構造、炊事・暖房の方法と熱源などの調べ  を予備調査として済ませている。   喫煙についての調査に特徴があり、吸う人  に、煙を吸いこむか否か、吸いこむ習慣に過去  と現在とで変化があったかを中心としている。  葉巻やパイプの人は普通は吸いこまず、吸いこ  むのは紙巻きを吸う人である。タバコ関係の疫  学調査で通常実施されているような、過去を含  めての吸ったタバコの種類とその量を答えても  らうよりも、はるかに確かに、喫煙歴がわかる  との意見である。   とくにNOxについては、その発生源の性質  上、室内の濃度の方が高いばあいが多いことか  ら、各都市十世帯ほどをえらび、その濃度差を  調べつつある。   このように、アメリカではまず人びとが実際  に 暴露されている汚染物の量を正確に調べるこ  とから始めており、計画の半ば近い時間がすぎ  た今日でも、まだ中間報告も公表されないとい  う息の長い調査である。   この調査が企画された理由は、地域内の一、  二の測定局の値を個人の暴露量とみなして行わ  れてきた従来の調査方式(CHESS)が誤り  として廃止され、その後に、個人が暴露されて  いる汚染物をできるだけ細かく測る方式を考案  しなければならぬとされたためである。   わが国疫学調査は、すべて米国の従来の方  式(CHESS)であるが、この方法から特定  の汚染物の判定条件を導きだすのは、科学的な  結論というよりは、諸般の状況にもとづく決断  にほかならず、私も長い審議の過程でのこの決  断に従わざるをえなかった。 というのが前田教授の投稿の内容でございます。  何かこれ、拝見いたしますと、前田教授、専門委員として御参加されておりますけれども、現在のこの疫学調査の方法に対して御不満があるようなふうにも私受け取れるわけでございますが、このことにつきまして、私全くの素人でございますので、鈴木参考人の御意見をお伺いいたしたいと思うわけでございます。
  12. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) いまの前田先生のお書きになったものは、一般論といたしましては私はそうありたいと思います。で、わが国を含めて、世界各国で、それまでの疫学調査というものは、現実には行うことは非常に困難でございまして、行っておりません。いまのお話のハーバードの問題は、フェリス教授といわれる方でございまして、私の友人でございます。二年前からその話は聞いております。  それで、結局、いまそこでお挙げになりましたアメリカ疫学調査というものは、集団的な取り扱いと同時に、個人の取扱いも同時にやろうとしているわけです。したがいまして、CHESSというのは、これは私たち言葉を使わせていただきますと簡単にチェススタディというのですけれども、チェススタディの方は人口集団としての取り扱いを取り扱ったものでございまして、決してそれがおくれているとかおくれていないとかいう問題ではなくて、疫学内容をさらに拡大するという意味でフェリス教授がその研究を始められたわけです。ですから、そこにお書きになっていらっしゃることは、われわれといたしましてはちっともおかしくないわけです。しかしながら、いまの、お書きになった個人診断と人口集団と両方はっきり分けて、そしてさらに、個人に対してあるいは人口集団に対して与えられるであろうあらゆる影響を加味した疫学調査というのはないのでございます。で、これは、アメリカがそこまでくるのには二十年以上かかっているわけです。すでに二十年前に大気の汚れというものを非常に正確にはかる――というのは、ここでお断わりいたしますが、あくまでも相対的でございます。その当時において最高の方法ではかって、そして、アメリカの空気の汚れというのはどういう形をしているかということをまず最初に調べて、それからチェススタディといま言うふうに移っていったわけです。それで、チェススタディの場合におきましては人口集団と、要するに個人ではとても見出せない影響を、人口集団という一つのグループを通じて見ようという、これ統計学的な一般論でございます。何もこれは人間だけじゃなくて。という考え方でもってチェススタディというのは始まりました。  ところが、これから先はむしろ私からお願いなんですけれども、チェススタディでやりましたけれども、本当に人間に効いているのは何だと、大気汚染一つとりましても。これがいろいろ問題になってまいりました。その点につきましては私たち報告書の中にも若干触れてあります。長々とは触れてありませんけれども。それについて、チェススタディは今度はチャンプスタディというのに変わってまいりまして、この本当の汚れ物は何だということ、これはちょっとこの場では不適当かもしれませんけれども、本当に人間影響を与えているものは何だということを確認する作業が一方で始まりました。これがEPAの仕事でございます。それで、いまフェリス教授のやっているのは、トータル環境、トータル人間という立場疫学調査でございます。それが私が先ほど申しました理想的な、完璧な、必要にして十分な条件調査である。で、私が一番先、それがないと言ったのは、そういう調査がいままでなかったということです。それに対して、アメリカが十年計画で手をつけた。五年間で中間報告がないというのには、私はその理由は存じております。だけどここでは、学会じゃございませんから……。
  13. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 どうもありがとうございました。  あと一問、助川参考人に御意見をお聞きしたいのでございますが、現在、日本の場合、NO2のいわゆる環境基準というのが、日平均値でもって〇・〇二PPmということで示されていると思いますが、NO2の環境基準を決めている国は余りないようでございますけれども、たとえばイギリスとかフランスとかいうようなのはまだ決めてないように聞いておりますが、アメリカ、カナダあるいは西ドイツというようなところで決めておりますが、そこの環境基準は大体において、これ日平均値に直すと〇・一PPmである。それからWHOも大体そういうような考え方を持っているというふうに私は承っておるのでございます。もちろん日本の場合、先ほど鈴木参考人最初のお話にもございましたように、いわゆる安全率というようなもの、特に、発生源とそれから人口が非常に多いところが近接しているとか、いろいろなそういう条件もあろうかと思うのでございます。思いますけれども、〇・〇二というのと〇・一では五倍でございますね。その開きが余りにも大き過ぎるんじゃないかなというふうに私ども素人なりに考えるわけでございますが、これに対しての助川参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  14. 助川信彦

    参考人助川信彦君) 先生の仰せられることよくわかります。この点等につきましても、鈴木先生たちがおまとめになりました指針値を導き出すに至りますまでの成果で、狭いところに過密に居住している、あるいは工場地帯に近いところに人間が住んでいるというふうなわが国の特殊性について触れてもおられます。  それから、先ほど塚谷参考人が引用をされましたときの文献の中に、常俊さんという大阪の先生がおられますけれども、その常俊先生の御本を読んでみたことがあります。人体影響等につきまして、やっぱり人種的な差があるのではないだろうかと。まあ断定しているわけではございませんが、黒人の方の慢性気管支炎の有症率、あるいは白人の方の有症率、そして日本人の有症率というようなものの違い、あるいは生活様式とか居住様式とか、あるいは皮膚の中のメラニン色素のあり方とか、そういったものとの絡みもあるのかもしれませんけれども、わが国の特殊な大気汚染状況、まあ五年前の状況と現在の状況、また多少は変わっておるかもわかりませんが、大きな目で見ました場合に、これまでの、五年前の状況下に調べられたもので、それを追求すべくわれわれが合意を一つ形成しつつあるさなかでございますので、少なくともこの基準でもう五年ぐらいやっていくのが妥当ではないだろうかと、こういう考え方でございまして、人種の違い、国の違い、地域の違い、工場の形態の違い、そうしたところからわが国わが国で調べた疫学調査とか、そういうもののデータによって定められた四十七年あるいは四十八年の環境基準で進んでいくのがよい、それをどこまでも目指していく。簡単にそこへ到達できない悩みがあるのでございますけれども、こういう仕事は一人でやるわけでもございませんし、国や自治体や企業や住民方々の合意の中で仕事をしてまいりますのが公害対策基本法の目指すところでございますので、やはり一遍決めましたことは相当困難にぶつかっても遂げていくという姿勢がほしいと、こういう考え方でございまして、先生の御意見とはまた別の角度から、十分わかるのでございますけれども、行政の実際現場におる者といたしまして、いまさら戻るということはしにくいと、こういうことを申しておるわけでございます。
  15. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 どうもありがとうございました。  きょうは参考人先生方から御意見を聞くだけで、時間もございませんので、私の意見は申し上げませんで、これで終わりたいと思います。
  16. 矢田部理

    ○矢田部理君 まず、鈴木参考人にお聞きをしたいと思います。  鈴木参考人委員長としてまとめられた報告などについて、一定の評価もなされかつ厳しい御批判もあるわけでありますが、もう一つ大事なことは、この報告を基礎にして、それを悪用し、環境庁が環境基準の見直しをしようとしている、ということになりますれば、問題はきわめて重要でありますので、ひとつ率直に、専門委員会としての、あるいは鈴木参考人としてのお考え、御意見をお聞かせいただきたいと考えております。  まず、事実関係を確かめておきたいと思うのですが、環境庁から受けた諮問の内容というのは、判定条件指針値を出してほしいということだったのでしょうか。環境基準ないしはその見直しの是非等については諮問はなかったというふうに確認的に承ってよろしいでしょうか。
  17. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) いま先生がおっしゃいましたとおりでございます。私たち委員会といたしましては、判定条件指針ということでございます。
  18. 矢田部理

    ○矢田部理君 当時の石原環境庁長官が諮問をする際に出した文章、内容によりますと、指針値という言葉は必ずしも入っていないのですが、ただ、「判定条件等」と言っておりますので、これは指針値等を含むというふうに何か説明があったのでしょうか。
  19. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) そうでございます。
  20. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、次の質問に入りますが、その諮問に基づいて、例の専門委員会報告を膨大なものを出されたわけですが、この報告を受けた中公審は、これを基礎にして、御承知の三月二十二日に環境庁長官あてに答申を出されましたね。一番問題なのは、この答申の末尾三行だと言われております。諮問を受けたのは、いま鈴木参考人が確認されたような、言うなれば判定条件指針値だけであるのに、それを超えて、どうして、「環境基準について、」「適切な検討を加えられたい。」という、諮問を受けてもいない内容にまで立ち至って答申をすることに相なったのでしょうか。その間のいきさつについて伺いたいと思います。
  21. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) その間のいきさつを、私ちょっと正確には事情はわかりませんが、あの当時、私は委員長といたしまして報告をしたので、終わったはずでございます。それ以上の論議はございませんでした。
  22. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、専門委員会委員長として諮問を受けた内容についてのみ報告はしたが、それ以上どう扱われたかは、あなたとしては関知していないということになりましょうか。
  23. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) そうでございます。その議論はなかったということでございます。
  24. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、議論はなかったということは伺いましたが、答申を出すに当たって、あなたに了解を求められるなり、御相談なりはなかったのでしょうか。
  25. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) よくそういうことを聞かれますけれども、今度の専門委員会の行動に対しましては、ほとんど無関係でございました、環境庁とは。したがいまして、そういうような、何といいますか、お話というものも含めて何もありません。
  26. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、経過はわかりましたが、専門委員長としてまとめられた報告、そういうものをまとめられた責任の立場から考えて、これは諮問の内容にそごをした答申だ、少なくとも立ち入り過ぎた答申だというふうにお受けとめになりますか。
  27. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 正直に申します。そのとき、私と吉田先生はちょっとかっかしておりまして、若干見落としました、そこのところを。かっかした理由は申し上げません。
  28. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあかっかしておったということで、事情察するに余りあるところでありますが……。  それでは次の質問に入ります。  専門委員会報告について、付言というのを出されましたね。専門委員会として最初まとめられた付言の案、これが後に修正をされたようなことはございませんでしょうか。
  29. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 若干の字句の修正は行われました。
  30. 矢田部理

    ○矢田部理君 その修正というのは、どの段階で、まあだれの手によってと伺った方がいいかしれませんが、修正が加えられたのでしょうか。
  31. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私たち専門委員会報告をしたその日でございます。そして、委員先生方から御発言がございまして直されたということでございます。
  32. 矢田部理

    ○矢田部理君 専門委員会の場で修正がされたのではなくて、専門委員会としてまとめた報告について、大気部会にかけられる段階で修正が加えられたとも言われているのですが、いかがでしょうか。
  33. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 大気部会の会の席上で修正されたわけです。
  34. 矢田部理

    ○矢田部理君 その修正というのは、専門委員会のメンバーの手によってではなくて、専門委員会に参加をしていない大気部会の人たちの手によってというか、イニシアによって修正をされたと伺ってよろしいでしょうか。
  35. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) そうでございます。
  36. 矢田部理

    ○矢田部理君 ここに、専門委員会報告についての案という――これは付言についてでありますが、もとの資料があります。そしてその後、いま鈴木参考人のお話によれば、大気部会の場で修正をされた。つまり、公にされたものがもう一つありますが、その重大な内容に手が加えられているというふうに思われるわけでありますが、付言の付の四というページのところでありますが、その終わりの方の下から三段目のところで、「そして提案された指針は、その濃度レベル以下では、高い確率で人の健康への好ましくない影響をさけることができると判断されるものである。」と、公にされた付言ではなっておりますが、専門委員会段階での文章は、これとはかなり違った内容、表現になっていたのではないでしょうか。
  37. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 内容は同じなんでございます。指針という意味をここに書いてもらったわけです。原案は、指針という言葉は使っていませんので、「指針」という言葉でもって置きかえたわけです、指針定義で。ですから、原文は先生御存じのとおり、「提案された値は影響が出現する可能性を示す最低濃度レベルであると判断される。」と。これは実は指針意味を書いてあったので、「指針は」という言葉を入れたのでございます。「指針は、その濃度レベル以下では、高い確率で人の健康への好ましくない影響」が出現しないと「判断されるものである。」と、要するに書きかえただけでございます。
  38. 矢田部理

    ○矢田部理君 その部分もそう変わっておりますが、問題はそれ以下の表現です。最終的な案は――案というか、最終的な付言は先ほど読み上げたとおりでありますが、もとの案は、いま鈴木さんの述べられた、「提案された値は」というのが、今回「指針は」というふうになっているようでありますが、問題は、その後に、従前の文章は、「影響が出現する可能性を示す最低濃度レベルであると判断される。」と表現をされていたのではないでしょうか。
  39. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) そうでございます。
  40. 矢田部理

    ○矢田部理君 この表現は、率直に言ってかなりの意味を持つ。両方とも日本語としてはわかりにくいので、お聞きをいただいたような言葉の対比になるわけでありますが、非常に食い違いがある。問題点のとらえ方に差があるというふうに考えられるわけですが、ここは議論にならなかったのでしょうか。
  41. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私は別にならなかったと記憶しております。そこのところ、指針意味を書いてくれという御注文があったと思いますので、書きかえたということでございます。
  42. 矢田部理

    ○矢田部理君 かなり言葉意味、問題の持つ中身がこれで違ってくるだろうと思うのですが、その辺は余り気にしないで、直されるまま了解をされたと、こういうことになるわけですか。
  43. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) そうでございます。
  44. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから、内容に立ち至って質問したいと考えていますが、先ほど塚谷参考人から内容についてかなり厳しい御批判がございました。とりわけ指針値を出すに至った根拠といいますか、資料の解析といいますか、等々について幾つかの疑問と問題点が提起をされました。峯田参考人からも同趣旨の意見が述べられたわけでありますが、鈴木参考人として、実はこういう解析をし、こういう分析の上にこの指針値を導き出したんだという説明をお願いをしたいと思いますし、同時に、塚谷、峯田両参考人から、その鈴木参考人のお話に対して反論があればひとつしていただきたいというふうに思います。
  45. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 塚谷先生とは、実は統計学的な問題につきましては、この問題以外でしばしばお話し合をしていますので、ここで私が御説明いたしましても、やっぱり研究者仲間としての討論は残ると思います。委員会といたしましてどう考えたかということにお許しを願いたいと思います。  二つの点がございまして、先ほど各論の方の章とまとめの章との食い違いを御指摘になりました。これは残念ながら、まとめの方の章は私たち言葉を非常に省略してしまったために誤解を生んだといま反省しております。ですから、別に他意があったわけではなかったんですが、内容は実はこうなんですと一行ぐらい書き足せば、恐らく塚谷先生のおっしゃっていることにお答えになったと思いますが、だんだん書いているうちにどんどん言葉を省略した関係もありますので、非常に塚谷先生の御指摘は、私といたしましては、今後注意しなければならない書き方であると、文章を書くときに注意しないといけないというふうに受けとめました。  まず各論の方なんですけれども、〇・〇二と〇・O三というものを設けましたのは、先ほど申しましたとおり、私たちが収集いたしました資料、どれをとりましても、それぞれの疫学調査には若干の欠点があります。いま原先生から御指摘のあったような完全な疫学調査というものはないわけです。したがいまして、それらをどうしても総合判断しなければならない。そこで四つの疫学資料――実は集めましたのは五つか六つございましたけれども、そのうち汚染の推測したのがございます、シミュレーションモデルを使って。これは私といたしましては採用しても一向おかしくはないんですけれども、やっぱり日本のいろんな事情の上から言うと、推測値というものに対しましては非常に抵抗を示す方がおられますので、それを除きまして、実際に測定されている資料だけから申しますと四つになります。その四つのもののうち、いま先生が後から言われたホッケー・スティックの方法でやれば一番いいんです。さらに、生物現象でございますから、ホッケー・スティックでも実は不十分なのです。生物現象は直線的に変化をするはずがないのです。曲線的な変化をするはずなのです。しかしながら、そういう解析をするほどの十分な資料はございません。したがって、次善の策といたしまして――本当はホッケー・スティックがしたいわけです。しかしながら、私たちのやりましたところは、先生とちょっとここのところが意見が違うと思いますが、われわれのやりました資料に基づく限り、ホッケー・スティックの解析をするにはちょっと資料が不十分ではないだろうかという私たち考え方でした。まあ先生は大丈夫だといまおっしゃっていただいているんですが、その当時におきましては、実はホッケー・スティックの解析をするには不十分であると。というのは、実はホッケー・スティックの分析をするといたしますと、分析に使われる調査結果が三十点以上なければいけませんし、その一点ずつ少なくとも三百人以上の人がいなければいけませんから、九千人になるわけです。これは大変な調査になります。ですから、そういうことを考慮して――先生、大丈夫だとおっしゃっていただければこれからやりますけれども、何か心配になりましたものですから、ホッケー・スティック・モデルの解析はいたしませんで、普通の単純相関から判断をするということになりますと、いま先生がいみじくも御指摘になりましたように、単純相関というのは、あくまでも関係を説明する一つ資料としてわれわれが使っているのであって、あそこに書いた線の上を人間変化が動くというのでは決してございません。そんな人間の体というものは簡単ではございませんから。ただ関係判断する材料として使うわけです。そのときに先生がおっしゃったとおり下から積み上げていったわけです。そして、どの程度の有症率から次の点の有症率の差が出てくるだろうかということを三つの調査についていたしました。実は四つあるのですけれども、一つ先ほど申しましたシミュレーションをやっていますからちょっと除きまして、それから、環境庁の調査は五点ないし六点でございますからとても勇気がなかったわけです、そういう検定をする。まあこれも塚谷先生、大丈夫だとおっしゃっていただければ今後いたしますけれども、その当時におきましては例数が非常に少ないものですから、勇気がない。それは除いておきます。そして、若干サンプル数の多いものでもってやっていきますと、直線関係で、モデルでもって説明できる。しかし、これはあくまでも生物現象は直線関係があるという意味とは全然違います。統計学的な意味でございます。下から積み上げていって、どこから有意差が出てくるだろうかといって計算いたしましたところ、その三地区、まあ四地区も入れてもいいのですけれども、四捨五入いたしますと、大体二から四の有症率のあるところ――大部分が三から四でございます――有症率のあるところから上がり始める。関係が出始める。さっきホッケー・スティックのときに塚谷先生のおっしゃった傾きが出てくる線の方に乗ってきます。その点に対応する濃度が大体〇・〇二八ないし〇・〇一七でございました。そこで、いま先生からおしかりを受けましたけれども、われわれといたしましては小数点二位という数字はどういうものだろうかということでもって〇・〇二というふうに切り上げました。小数点二位という、これは先生の御指摘のとおり、三百六十五の二十四でございますから、八千何時間になりますから、物すごい数になりますから、決してそれは意味がないとは私は申しませんけれども、いま、そういう細かいことを言ったときに、世間が理解してくれるだろうかという若干のあれがありまして切り上げました。  で、上の方はこういうことでございます。〇・〇三の方は、これは六都市の調査、これいろいろ問題がありますけれども、あれを全部見直して計算をいたしました。そして、その結果といたしましていろいろの新しいことが言えるようになったのでございますが、あのうち四十九年度の調査が、環境調査及び面接調査が非常に完璧にやられているわけです、五年間のうちで。それで、どこからみんなふえてくるだろうかということを計算すればいいわけです、それを使って。ところが、いま先生からも御指摘がありましたけれども、われわれといたしましては、たった五点でどこから上がってくるという計算はとてもできないので、この三つないし四つのデータから、大体三から四のところに落ちたその数字を逆に持ってきます、例数の少ない方に。そうすると、それが大体〇・〇三に落ちた。同時に、これは報告書の中にも書いてありますけれども、学童の機能検査が〇・〇四のところで正常範囲内では移動する。しかし病的にはならない。ですから、先ほど申しました健康のひずみになっているかなっていないか、ちょうど境目でございますというのが〇・〇四なんです、年平均値。それを総合いたしますと〇・〇四と〇・O三になるわけですけれども、高い方を下げたのです。で、〇・〇三にして、〇・〇二と〇・〇三というふうに持っていったわけでございまして、統計的手法の問題につきましては、私は、先生といままでも議論しますし、恐らく今後ともいろいろと御相談をしながら、もし新しい統計的手法が適用できるのならばやってみたいと思います。あの状態におきましては、あの例数と、あの各地区におきますところの対象者の年齢構成、性別構成、それから社会経済因子と、みんな違いますので、それを十把一からげに計算するということは私たちはいたしませんでした。
  46. 塚谷恒雄

    参考人(塚谷恒雄君) いつも、先ほどのような私の意見を言うと、鈴木先生にしかられて申しわけないんですが、第一点は、ホッケー・スティック解析法をやればいいんだけれども、それができなかったというお答えなんですけれども、私は、先ほど説明したのは、あの専門委員会がやった解析の方法は、ホッケー・スティックということを前提としてやった。だから、お出しになった結論は、先ほどのべータというんですか、検出力が弱くなったと言っておるわけです。なぜならば、いま鈴木先生がおっしゃったように、濃度の低いところの方からどんどんとっていって、徐々に濃度の高いところの有症率と差があるかどうかを見るということは、とりもなおさず、濃度が上がれば、ある点までは有症率はいって差がないけれども、それ以上上がれば有症率も上がる、これはホッケー・スティックそのものである、そのように言っているわけです。私は、ホッケー・スティック法をこういう問題に適用するということについては反対というんですか、学問的には非常に問題がある。これは統計学者の常識だと思うんですけれども、なかなかむずかしい問題があると思っているわけです。にもかかわらず、――意識はされてないと思いますが、解析の手法としてはホッケー・スティック法を使っちゃったというように判断しているわけです。それでなければ、たとえば回帰線を引くとか、ホッケー・スティックの左の方の水平の線が出てこないとなれば、先ほど付言のところで引用されたような、これ以下の濃度では影響がないとか、これ以上だったらあるとか、そういう点は出てこないわけです。先ほどもぼくが言ったように、これ以下であろうと、有症率の調査濃度調査をやって、その濃度よりもっと下にあるだろうということぐらいしか言えないわけです。にもかかわらず、この委員会では指針値というのを出していますから、これはやはりホッケー・スティックの曲がり点のところを指したものであるというふうに考えておるわけです。  それから、第二点の、大都市の調査ですけれども、これは私は、二つの理由で、やはり問題が残っておるんじゃないかと思います。  一つは、四十九年度のデータを確かに使っておられて、NO2が〇・〇二九であれば四%というふうにおっしゃっているわけですが、四十七年度と四十八年度のデータを持ってきますと、〇・〇二から〇・〇二二、非常に低い値になるわけです。この値は大牟田の値なんですけれども、四十七、四十八、四十九、三点とも大牟田の値です。これでどちらの方を採用するかと言えば、もし四十九年度に濃度が高くて有症率も高かったとしても、影響というのはもっと前の濃度で効くんではないかという点から見ても、やはり前のデータを使わなければならないんじゃないか。たまたま四十九年が六都市全体では精度がよかったかもしれないですけれども、有意差を検定する場合にはすべてのデータを使って、まあすべてといっても条件がありますが、NO2の濃度がはっきりはかられているとか、そういう条件を満たしながら、可能な限り多くのデータを使うべきであるというふうに考えております。  それから、もう一つの問題は、ここで言いました四%という濃度は、これは三十歳以上の女子の有症率であります。持続性せき・たんが三から四とか、二から三とか言われているのは、これは大体四十歳以上の男女を合わせたものです。で、この付表のところでも鹿島の例が出ておりますが、男子は女子に比べて大体二倍から三倍程度有症率は多いわけです。総合すると、女子のここで言っている四%よりはもっと高くなるわけです。ですから、有症率三から四をめどにして〇・〇三を引いたという、この考えもやはりおかしいんではないかと思っております。
  47. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) 有症率の三ないし四%がおかしいという点は、塚谷先生が申し述べましたので、重複して申し上げませんが、その四%を引いている数字というのは、茨城県の鹿島地区の女子の数字だけなんですが、もとデータを私どもが引いて調べてみますと、――四%というのは男子の有症率ですが、女子の有症率は〇・八%というふうになっておりまして、男女合計しますと有症率は二・二%というふうになるわけです。そうすると、高い男子の有症率の数字だけを恣意的に使っているという、そういう解析手法の中での非科学的な態度というのは、そういう中にもうかがわれるだろうと思います。  そのほかに若干ありますが、一点だけ、私どもの意見書の中でも触れている、本報告書のとっている、まあ公正さがあるかどうかという点について、若干疑問を持っている点がありますので、一点だけ申し上げたいと思います。三の二十八のところに、真ん中ぐらいですけれども、こういうふうに書いてあります。「この結果について、カイ自乗検定を用いて計算すると二酸化窒素濃度〇・〇四三PPmの地区の有症率と〇・〇一六PPm以下の地区の有症率に有意な差があった。」と、こういうふうな書き方をしてあるわけですが、実は、この〇・〇四三というのは六都市調査のうちの東大阪地区の昭和四十九年の数字で、〇・〇一六というのは千葉県の佐倉の数字なんですが、これはどういうふうにおかしいかと申しますと、先ほど塚谷参考人も申し上げましたが、有意の差がある、高い方のグループの中の最高の濃度だけをあえて持ち出して低い方のグループの数字と比較すると、そういうふうな非常に恣意的な使い方をしている。ですから、厳密に申し上げれば、〇・〇二PPmの地区の有症率と〇・〇一六PPmの地区との間に有症率が有意の差があったと、こういうふうに、カイ自乗検定の中で出てくる有意の差のある高い方の最低のものとそれから低い方のグループの数字とを比較する、こういう検定をしなければいけないのに、高いグループの中の最高のやつを持ってくるという、そういう、いかにも数字が高い方がよろしいですよと、こういうふうに、まああえて意図的に読めば読めるような解析手法を用いているといいますか、記述をしているという点については、非常に私どもとしては納得しがたい処理の仕方であったんではないかというふうに思っております。  専門家でございませんので、若干その点だけ触れさしていただきます。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 ありがとうございました。  それから鈴木参考人に、――もう少しその内容については改めて環境庁と議論をしたいと思いますが、もう一点だけ伺っておきたいのは、報告書をまとめるに当たって、時間値といいますか、「〇・一-〇・二PPm」という数値を出されたわけですが、何か、鈴木さんは、〇・一にしようということを提案されたのに、他の財界寄りといいますか、委員等からかなり激しい攻撃を受けて、最終的に「〇・一-〇・二PPm」に指針値をしたというふうにも伝えら、れているのですが、そのときのいきさつはともかくとして、鈴木さん自身はやはり〇・一にすべきだというふうにお考えだったのでしょうか。
  49. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) これは先生のおっしゃったことは毎日新聞だろうと思います。しかし、ああいう記事は私はきらいです。何かの一言をとらえてああいう書き方をされるのは。内部で議論があるのは当然でございます。ですから、私が何という数字を言い、ある人が何という数字を言ったって、それはデータに基づいて言っておるのでございまして、決して政治的判断で言っているのじゃないのですよ、と私は思います。少なくとも私はそうでございました。  それで、私はこれを決めるときに、率直に申し上げますと、これ、自然科学立場から判定条件ないしは指針を出すというその出し方というものは、日本でいままで初めての経験でございます。したがいまして、この自然科学の方から申しますと、生物学でぴたっと決まるはずがないのです。どうしても幅が出てくるわけです。ですから、幅で出すのが自然科学的態度なのか、その幅の中から私たちがただ選択をして出すのがわれわれの態度なのか、それに悩みました。結論は、その結果といたしまして、普通の自然科学立場でもって、幅でもってわれわれの知り得る範囲はこの範囲でございますということで出したというのでございます。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあ、そう伺っておきます。  それから、助川参考人にお尋ねをしたいと思いますが、先ほど助川参考人は、基準を改める必要はない。この基準で十分に対応できるし対策可能だというふうにおっしゃられたわけですが、具体的に、たとえば横浜市としてはこういうふうに取り組んでいる、あるいは今後の施策としてこういうことを考えておられるというようなことがありますれば、少しく詳細にお話をいただきたいと思います。
  51. 助川信彦

    参考人助川信彦君) 横浜市といたしましては、先ほども少し触れたわけでございますけれども、昨年、窒素酸化物の総量規制ということを考えまして、これはNO2につきましても、まあ平たく申しますと、現在の環境基準中間目標値を、本来でございますれば五十三年に達成していなければならないわけなんでございますけれども、それを三年ずらしまして、そして中間目標値、一日平均として〇・〇四PPmにNO2がなるように、窒素酸化物の総量をひとつ規制をしていこうと、こういう計画を立てました。残念ながら、幹線道路の周辺につきましてはちょっと手の打ちようがございません。それから移動発生源につきましても、環境庁でいまいたしております第二次規制を完全に、早期に、いまから手をつけるというふうな形にいたしますれば、幹線道路周辺を除いて大部分の地域は、移動発生源、固定発生源とも総量が規制できて、〇・〇四PPmになるだろうと。  ただし、幹線道路周辺についてそのままほっておくのかとこういうことになるわけでございまして、これについては社会科学的な手法をひとつ駆使していこうと。そのためには、地方自治体の権限の問題が問題になるわけでございますけれども、まあ権限の問題はあるにしても、相互の行政の連絡等をとりまして、そして道路管理者とかあるいは交通取り締まり当局、あるいはこれから車をつくる方の側の方にいろいろと公害のない車をつくってもらうというふうなことを絡み合わせて、そうした社会科学的な手法を社会科学関係の学者の方から――十人ばかりおられるわけでございますが、関東学院大学の清水嘉治先生という方に座長になっていただきまして、いまいろいろ案を練っていただいております。とりあえず研究所でその仕事を手がけております。そのために、たとえば県警本部の交通管制センターを訪れる、あるいは手近には日産自動車の工場だとかそういうところもございますので、今後そうしたところを訪れたり、あるいは幹線道路周辺の住民方々に対する意識調査を現在手がけております。  そうしたことを全部寄せていきまして、窒素酸化物につきまして最終的には日平均値〇・〇二PPmというものをもう少し先の時点で達成をしようと。簡単にはできないということは十分認識しておる次第でございます。しかし、これは国民の健康を守るための施策でございますから、最大限の努力をしていかにゃならぬと、こういう考え方でございます。
  52. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がありませんので、峯田参考人にもう一点だけ伺っておきたいと思いますが、経団連を初め財界筋は、現行環境基準に対していろんな反対といいますか、見直しを求めてきているわけでありますが、その重要な根拠として三つぐらい挙げています。現行環境基準科学的根拠に乏しいとか、外国の基準に比べて厳し過ぎるとか、あるいは膨大な投資を必要とするというふうなことがその主な内容だと思うわけでありますが、時間がありませんので、その中で一つだけ伺っておきたいのは、アメリカ基準値と日本基準値の違いについて、性格上どういう問題点を持っているのか、あるいは被害のとらえ方等の相違についてどう考えておられるのか、その点についてだけ質問をしたいと思います。
  53. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) しばしば、アメリカ基準値と比べまして、日本環境基準値というのは六、七倍厳しいという批判がされておるわけでありますが、幾つかの点で、日本環境基準アメリカ基準値とは違う性格を持っている。したがって、単純な比較の中で、外国の例を持ち出して日本基準値を非難するという点は当たらないだろうというふうに思います。私が承知している範囲内で申し上げますと、アメリカ大気の質基準、正確には環境基準という規定の仕方がいいかどうか疑問であるというふうに思っていますが、とりあえず環境基準と言いましても、これは一九七〇年の改正大気清浄法に基づいて決められておるわけですが、当初三年という短期の達成目標を決めまして、その中で各州が必ず実施して達成しなければいけないという、そういう規制法的な性格を持っておるものでありまして、鈴木先生の分類によりますと、スタンダードというものに該当するだろうと思います。したがって、そこでは経済的な効果の問題であるとか技術的な対応能力の問題なんかも当然考慮されておるわけでありますが、日本環境基準の場合は、従来言われておりますようにあくまで行政目標値ということであって、それの達成について法的に強制されていると、そういう性質の問題ではない。そこら辺に性格上の大きな違いがあるというふうに思います。  また、被害のとらえ方、どういう被害をとらえて基準考えるかという、そこについても、日本の場合は持続性せき・たんというような慢性的な影響を指標にして考えておるわけですが、アメリカの場合には亜急性の被害をもってとらえるというような違いがあるというふうに思います。  さらに、運用の仕方の面でかなり違うわけですが、アメリカの場合は、基準に適合するか適合しないかというその判断を、九九%に近い運用の仕方の中でその数字を生かすと、そういう生かし方をしておるわけですが、日本環境基準の場合には、実際上九八%値でやるというふうになっておるわけです。この九八%値と九九・九%値の違いというのは、平均すると一・五倍ぐらいの差があるんじゃないかというふうに言われておるわけでして、そういったもろもろの違いを考慮すると、アメリカの例を持ち出して単純に比較するということは間違いであるというふうに私どもは考えております。
  54. 矢田部理

    ○矢田部理君 各参考人の方、ありがとうございました。貴重な意見を聞かせていただきまして感謝をいたします。  最後に、委員長にお願いがあるわけですが、先ほど鈴木参考人のお話でも明らかになりましたように、中公審は、環境庁から諮問もしないのに、環境基準を検討すべしと、きわめて異例の答申を行ったわけです。それにまず第一の責任者といいますか、中心的にかかわってこられた鈴木委員長すら――かっかしておられたという事情もあったようですが、関知しないところでそういうものが出される。これまたきわめて疑惑、疑問の多いところでありますので、この際、当委員会に、中央公害対策審議会の会長であります和達さんですか、これぜひ呼んでいただいて、その間の事情をやっぱり明らかにしてほしい、強い希望を私は持っておりますので、委員長としてよろしくお取り計らいをお願いしたいと思います。
  55. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまの矢田部委員の御発言に対しては、後ほど理事会において御相談いたしたいと思いますが、よろしゅうございますね。――じゃ、そのようにいたします。
  56. 中野明

    ○中野明君 一、二問簡単にお尋ねしたいと思います。  先ほど助川参考人がちょっとお話しになっておりましたが、私、鈴木参考人にお尋ねするんですが、光化学反応での二酸化窒素のかかわり合い、これについてはどの程度意見がかわされたんでございましょうか。
  57. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私たちの諮問を受けましたのが、非常に狭く申し上げて本当に申しわけございませんけれども、二酸化窒素の人体影響という諮問を受けました。で、二酸化窒素の問題にかかわるすべての問題というふうには――もちろん考えの上ではいたしましたけれども、一年間の間にまとめるといたしますと、整理のしやすいところに持ってくるとすれば、最初の諮問がありましたように、二酸化窒素判定条件ということに論議を集中いたしました。したがいまして、いま先生がおっしゃいましたように、光化学反応の問題あるいは窒素の酸化物から出てきます二次汚染物まだもっとほかにございます。そういうものにつきましては、今度の専門委員会では除くということで整理して作業を進めました。しかし、繰り返しますけれども、窒素の酸化物と光化学反応との問題は、非常にむずかしい困難な問題でございますので、これはこの前の昭和四十七年のときにも、いわゆる二酸化窒素とは別に論議いたしましたので、オキシダントの問題はオキシダントの問題として論議すれば、もっときれいに整理されていくのではないであろうかと私個人は思います。
  58. 中野明

    ○中野明君 いま一点。矢田部委員からもお話が出ておりましたが、この答申を出されるときにかっかしておったというお話なんですが、指針値を決められて、他の参考人のお方は大体、環境基準は変更しなくてもよろしいと、対策は十分できると、そうすべきだという御意見のように私お聞きをいたしたんですが、指針値をお出しになられました鈴木参考人として、現在の環境基準値をやはり変更すべきであるというお考えをお持ちなんですか。それとも環境基準値は現在のままでよろしいと、こういうお考えなのですか。参考までに。
  59. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) これは、専門委員会をお世話した人間としてではなくて、個人としてお答えいたします。  私は、先生方と同じ意見でございます。変える必要はないと思います。
  60. 中野明

    ○中野明君 終わります。   〔委員長退席、理事矢田部理君着席〕
  61. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの中野委員質問が、私も最初にお尋ねしたいと思っていたことであります。  で、四人の参考人の御発言の中から、鈴木参考人を除く三人の先生方からは、環境基準値は変える必要ないというふうな御発言のように私伺っておりましたが、そんなふうにこう単純に受け取っていいものかどうか。そういう点については、なお私がこれから各参考人の皆様に順を追って御質問することになりますので、もしつけ加える点がございましたらつけ加えていただきたいとお願いしたいわけでございます。  で、鈴木参考人は、個人としては環境基準を変える必要ないと考えているといういまの御発言でございますが、そうなりますと、今後どういうふうなことをおやりになる必要があるか。御自身が責任者としてまとめたものと、自分の個人の考えと、全く正反対の考えだということを、こうした公式の席上で御発言なさる上におきましては、何かこれからの段取りについてのお考えがございますか。いかがでしょうか。
  62. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) その点につきましては、実は、いま私が最初に御説明申し上げましたときに、指針から目標値への動きの中において、すでに私は自分の気持ちを申し上げたつもりでございます。指針に対して、指針を得られました資料というものの信頼性精度、それから予防しなければならない問題によっては安全係数を掛けることによって――私はきょう専門委員会として報告いたしましたので、行政言葉を使いませんで、目標値という言葉を使いましたけれども――目標値に持っていってもらいたいというふうに私が最初に発言をいたしましたのは、いま最後に申し上げたことを抽象的に申し上げたのでございます。
  63. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうした、るる御説明のありましたことも私もずっと伺っておりました。  そこで、新聞報道、ニュース等を見ますと、いよいよ環境庁は環境基準を変えるという作業に取り組むというふうな感じを受けるわけですが、鈴木先生としましては、そういうことは全く見当はずれであると、そういうことを答申したわけではないと、こういうことでございますか。
  64. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 行政当局を私は支配するつもりはございません。どうぞ行政当局の責任においてお仕事をお進めになっていただきたいと思います。
  65. 小平芳平

    ○小平芳平君 もちろんそうだと思いますが、行政当局は、こういうところで質問をしますと、必ず審議会においてはこう、答申にはこうと、こういうふうに言います。答申にはそうなっているけれども行政当局としてはこうやりますとか、審議会の意見はこうだけれども行政当局はこういうことはやりませんとか、決してそういうことは言わないというのがまず例だろうと思いますが、そういうような点について、重ねて、御意見がございましたら……。   〔理事矢田部理君退席、委員長着席〕
  66. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) そういうことがありましたら大変残念に思います。それぞれの、私たちの仕事の役割りというものはやっぱり制限がありますので、その制限内で私たちは行動したのでございますから、その範囲内のわれわれの責任を追及していただきたいと思います。それ以上の責任をわれわれに負わされましても、実は困っちゃいます。
  67. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、行政当局がもし、この答申を受けた上で環境基準の変更にかかったのですという説明をしても、鈴木参考人の意思には反すると、こういうわけでございますね。
  68. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) あり得ると思います。
  69. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、反する……
  70. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) ええ。先生のおっしゃるとおりでございます。
  71. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、塚谷先生にお伺いしたいと思いますが、先ほど矢田部理事からもお話がちょっと出ましたんですが、この鉄鋼連盟の考えでございますが、要するに現在の基準値はおかしいということ。最近は何かこんなりっぱなパンフレットを送ってきまして、読んでみると、なるほど現在の基準値というのはおかしいのかなと、素人が読めばなるほどと思われるようなことをずっとこう書いてございますが、しかし、そういう現在の、四十八年の目標値というものがおかしいと言う方がむしろおかしいということについての御意見先ほどちょっとおっしゃったように伺いましたが、もう一つ詳しく御説明いただきたいと思います。
  72. 塚谷恒雄

    参考人(塚谷恒雄君) 実は、鉄鋼連盟のそのパンフレットは、直接ではないにせよ、私が鉄鋼連盟から意見を聞かれて、二、三年前に答えた、ちょっとおかしいよと言ったのが、その中に若干入っている部分もあるわけです。それは、まあ本当に正直に申しますと、残念ながら四十八年の報告書の中では、若干問題が――若干というか、相当程度というか、あったということは否めないと思います。これは指摘としては非常に正しい――正しいというんですか、まあそのとおりだと、反論できない部分も鉄鋼連盟の主張にはあるかと思います。  しかし、それは今回の判定条件が出たことによって、先ほどから補強という言葉を使っているんですけれども、四十八年のは、ややおかしい点がありましたけれども、結論としては、現行の環境基準を出したということは結論としてはよかったと。過程は若干問題があったけれども、結論としてはよかった。それが今回の専門委員会報告で確かめられた。それで私は先ほど鈴木先生のセンスということを申したんですけれども、そういう意味でございます。
  73. 小平芳平

    ○小平芳平君 そして、なおかつ、科学的根拠がないとか、そういう点について若干説明を加えていただけますか。
  74. 塚谷恒雄

    参考人(塚谷恒雄君) 科学と申しますのはいろんな段階がありまして、純粋論理学的な科学科学の一種ですし、こういう問題ですね、行政にすぐ行動――デシジョンメーキングをしなければならない、これも科学一つだと思っております。  それで、簡単に言いますと、鉄鋼連盟が主張している、科学的に不備であるということは、求められないようなことを求めて、たとえばの話ですけれども、NO2の汚染が全くない地域の有症率を求めよだとか、確かに科学のいろんなスペクトルがありますけれども、全体の中ではそういう部分も必要ですけれども、この問題に関しては、調査をしようと思っても、体制の問題とか、それから肝心のきれいなところがないとか、もしくは人体実験をしなければならないとか、そういう倫理的な問題も入ってくるわけです、本当に鉄鋼連盟が主張しているようなものを求めようとすれば。確かにそれは科学と言えないかもしれないですけれども、現状環境汚染を制御するという点から言うと、若干求められないものを求めているという気がいたします。
  75. 小平芳平

    ○小平芳平君 峯田先生からも、先ほどアメリカとの問題がお話がございましたが、そのほかの点について、鉄鋼連盟等、あるいは産構審等の意見に対してのお考えがございましたら、お話しいただけたら幸いだと思います。
  76. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) 私も、現在の環境基準は改定する必要がない、むしろ改定すべきではないという意見なんですが、これは、一つには、過去の公害訴訟の判決の中におきましても、限られた資料であっても、影響を一定程度蓋然性の程度まで認め得る資料があった場合には、それをもって社会科学的な行動は起こすべきだ、訴訟の場合は損害賠償すべきだ、こういう行動基準が過去の公害訴訟の中で確立されてきたと思うんですが、そういった考え方を基礎に考えますと、このたびの中公審の答申そのものについても、厳密に言えばまだ未解明な部分があるという指摘をしておりますが、行動を起こすに足りる資料は十分に提供されている。そういう立場から言えば、現在の環境基準にさわる必要はないし、さわるべきでない。むしろ、鉄鋼連盟あるいは産業構造審議会の答申で改正すべきだと言っているのは、その肝心の考え方そのものの違いというのがかなり大きいだろうと思います。ただいま塚谷先生が言われましたけれども、本当の厳密な科学的な立証がなければ行動すべきじゃないという立場に立っての御意見であろうというふうに承知しておるわけです。そういう点で、まず鉄鋼連盟ないし産業構造審議会の考え方に、私は批判を持っているわけであります。  そのほか、昨年十二月に出ました産構審の答申の中で、基準改定について幾つか考えるべき点があるというふうに述べておりまして、その中には科学的な根拠を十分確めなさいという点も指摘されておるわけですが、ほかに技術的、経済的な点についても配慮すべきだと、それを環境基準の設定の要素にすべきだということも述べておるわけですが、その点について、まあ考え方そのものは別にしまして、事実こういう点があるということだけ申し上げておきたいというふうに思います。  で、NOx対策の面で現在固定排出源については第三次規制まで行っておりまして、液体燃料で十万ノルマル立米パーアワーで新設の場合一八〇PPm、これが規制基準になっておりますが、実は、九州電力の新小倉発電所の場合は、脱硝装置をつけるということで一〇PPmまでやりますということを公害防止協定の中で現実に取り決めしている、こういう事実というのは、社会的な事実としては十分重みのある事実であろうというふうに思います。  それから、自動車の問題その他についてもかなり技術的にはむずかしい点がありますが、この点については大阪府の「BIG PLAN」などでは、土地利用の適正化その他の総体的な都市のあり方を根本的に見直すという中で窒素酸化物対策も考えたいと、こういうことを前提とした計画を持っているわけでありまして、そういった総体的な配慮の中でNOxの規制問題を考えていくという、そういう発想に立てば、単純に経済的、技術的にどうだというような短絡的な考え方は出てこないんじゃないかというふうに思います。
  77. 小平芳平

    ○小平芳平君 最後になりまして大変恐縮でございますが、助川参考人に伺いたいと思いますことは、二点でございますが、第一点は、いまのお二人の参考人からお答えいただいた、鉄鋼連盟ないしは産構審等の意見に対する先生のお考えについて伺いたい、それが一点でございます。  もう一点は、横浜市におきまして、総量規制等いろいろ御努力をなさっていらっしゃるというお話でございましたが、特に光化学の問題につきましての具体的な対策、特に夏を迎えますが、見通しなりそういうふうな点についてお話しいただけたらと思います。
  78. 助川信彦

    参考人助川信彦君) 第一点につきましては、お二方の参考人方々の御意見に全く同感でございますので、重複いたしますから申しません。  第二点につきましては、この一、二年、夏一番盛りの時期が長雨とかあるいは気温が低かったというようなことがございまして、まあ光化学公害被害者が少なくて済んだということはございます。しかし、先ほど申しましたように、植物影響などを――横浜市も参加しておるわけでございますが、農林関係の部面の人たちが御熱心に検討してみますと、その汚染の範囲が非常に関東地方一円に広がって、いままで被害のなかったところにも出始めている。かなりの距離にわたってオキシダントあるいは窒素酸化物が、あるいはNO2につきましても広がっている。場合によっては、船で伊豆の大島あたりまで海洋の観測船を乗り出してみますと、京浜工業地帯あたりの、東京湾からの汚染物質がかなりの距離まで運ばれている様子もある、かようなことでございますので、一朝好天に――まあ別にこういうのは恵まれるわけじゃないんですが、気象条件が変わりましたら、これはもう非常に不幸にしてそういうことになりましたら、やはり四十九年ごろの被害が出ることになりかねないというふうに存じております。  それから、私、もう一点だけ言わしていただきますと、基準値のほかに、「測定方法」、「達成期間」あるいは「中間目標」等が四十八年に定められていたわけでございますので、環境基準の告示の中で。達成期間はことしでございますから、これは変更せざるを得ないんじゃないか。測定方法等についての検討も行われているようでございますが、なるべくならば現行のまま推移することが好ましいんですが、測定技術の進歩もございます。地方自治体あたりの意見を聞いて、そして、そうしたものについて変更の必要があればそれは告示せざるを得ないだろうと、こういうふうに存じております。  以上でございます。
  79. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大変限られた時間でございますので、端的にお伺いをしていきたいと思うんです。  鈴木参考人にお伺いをいたしたいと思います。これはいままで冒頭でのお話をいただいたり、また質疑応答の中で、いろいろとそれぞれの局面で御答弁をいただいておる問題も含めまして、私、お尋ねをしていきたいと思うんです。  まず最初にお伺いをいたしたいと思いますのは、お述べになったと思うんですけれども、今回答申をなさいました、いわゆる指針値というその数値の性格ですね、これは何でしょうか。念のためにお聞きをしたいのです。
  80. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 性格というと、ちょっと私もわかりませんけれども、判定条件指針でございます。それでよろしゅうございましょうか。
  81. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 お話の中でもそういうふうに伺っておりますんですが、改めて実はお伺いを申し上げたんです。といいますのは、これは三月の二十二日に中公審の答申が出まして以来、報道関係でも、御承知のように、環境基準値二倍ないし三倍に緩和か、というふうに、ストレートに横すべりで、指針値横すべりの環境基準になるのではないかという報道などが盛んに出ております。それからもう一つは、環境庁の橋本大気保全局長も、今回いただいた指針値をもとにして環境基準改定の可能性が大きいという点をお述べになっておられるわけです。そういうことになりますと、いわゆる安全率も掛けないで、いわゆる報道関係で報道されておりますように、横すべりで、安全率も掛けないで、横すべりで環境基準の改定に使われるということになったら、これは専門委員会の責任者として大変御苦労をいただいた鈴木参考人としてはどうなんでしょう。
  82. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私たちが御報告申し上げました翌日からの新聞報道に対して、皆さんいろいろと書いていただきましたけれども、専門委員会の気持ちは伝わってないということは冒頭私申し上げました。しかし、一般の方々がこんな判定条件よりも環境基準の方に興味があるということは私は理解できますので、そんなに怒ってはいませんけれども、報道というのは違っていたなという印象は受けました。  それから後半の問題につきましては、もういま繰り返し申し上げましたように、私たち委員会報告は昭和四十七年の補強をしたのであって、変わったものではないという気持ちは私は持っております。
  83. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 鈴木参考人の御見解、非常によく私ども、冒頭からのお話、その後の質疑応答の中でよく理解をさせていただいておるつもりでございます。ところが、それは行政だから知らぬとおっしゃったら終わりなんですけれども、環境庁は、この指針値を基礎にして、環境基準改定の可能性は大きいという発言を、これは責任ある大気保全局長がおやりになっている。で、私どもは、新聞等が書くということについてもそれはそれなりの問題はあろうと思いますけれども、責任ある省庁の責任者がそういうふうに発言をなさるということを非常に重視しているわけです。そういう点で、専門委員会の責任者として御苦労をなさり、しかも判定条件としての指針値ということを明確に明らかにして報告をされたこの数値が、報道されているように横すべりで使われるというふうなことがあったら、これはどうでしょうか。がまんがならないというふうになると思うんですが、率直な御見解をお伺いしておきたいと思うんです。
  84. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私は、橋本先生を尊敬しておりますから、橋本先生個人のことは言いたくありません。ただし、私が、委員長としてではなくて、一人の一人間として、一委員として考えます場合におきましては、同じ判定条件あるいは同じ指針のもとにおいて、もし違った環境基準が決められるならば、その根拠は、私たちにわかりやすいようにはっきりと説明していただきたいと思います。それができないのならば私は直す必要はないということだけは言えます。
  85. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 非常にはっきり言っていただいておりますので、私、実はいままで本委員会で、いろいろと、公害患者の皆さん方だとかあるいは弁護団等からもいろいろと御要請を受けたり、また私自身も大変関心を持ちまして、素人なりにそれなりの解析をしたり調査をしたりして検討をやってまいって、いろいろな御意見環境庁とは交わしてきたんです。で、きょうはそのことについては、もういろいろとお話が出ておりますので触れるつもりはないわけです。  ただ、一点だけ、先ほど塚谷参考人がおっしゃっておられたんですが、〇・〇二ないし〇・〇三PPmという指針値をお出しになっておられるけれども、これは〇・〇二PPm以下に改めるべきではないかという御意見をお出しになっておられるんですが、私も私なりに、素人の立場でではございますけれども、いろいろ検討をしてまいった限りでは、そういう塚谷参考人の御意見と同様に思うわけでございます。  そこで、そういう上に立ってなんですが、〇・O二ないし〇・〇三PPmという幅のある指針値をお出しになられた。幅のある指針値を出された論拠についてはすでにお話を伺いました。で、〇・O三の根拠というのは、あの資料を私どもなりの解析や検討をします中では、どこから出てきたのかということで、非常にこれは見つけにくいわけです。それはお伺いしておると時間がかかると思うんですが、そういうことなんで、時間があればちょっとお伺いをしたいと思っておりますが、こういうふうに幅のある数値が出た場合、指針値として幅のある数値が出た場合に、それでは、行政としてこういう幅のある数値を扱う場合にはどういうふうに扱うべきか、国民の健康を守るという観点からはどのような扱いをするべきなのかという点についての御見解をお伺いしたい。
  86. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) これも個人的意見にさしていただきたいと思いますけれども、幅は、先ほど申しましたように、いまの、現在持っております自然科学の限界でございます。ですから、そのうちどっちをとるかといえば、公衆衛生学の立場に立てば、当然低い方をとるべきだと私は思います。同時に、先ほど最初にお話し申し上げましたように、ちょっとよけいなことも言ったかと思いますけれども、ここまで汚していいとは決して言ってないのです。したがいまして、以下という言葉はぜひつけていただいて――でないと、ここまで汚してもいいという考え方はどうしてもとられがちでございますので、できるところはこれ以下であるということがわかるような表現にさしていただきたい。これは私、行政の御苦労を個人では知りませんから、ただ私個人の意見から言えばそうであるというふうに申し上げます。
  87. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 そうしますと、行政として扱うという場合には、〇・〇二ないし〇・〇三という幅のある数値で示された場合でも、国民の健康を守るという立場で扱う場合には、当然低い数値、〇・〇二PPmを取り扱うべきだということだと思います。そうなりますと、さらに、この指針値自身も不確定要素等があるわけですからね、御説明のありましたように。それにいわゆる安全係数というのが当然掛けられなければならないわけですから、安全係数をどこに置くかということもなかなか定説にはなり切れていないというお話もございましたけれども、通常やられておる安全率を掛けるということになりますと、これはそうすると、おっしゃられたように、環境基準を改定する必要がないということにならざるを得ないと、私ども素人でも思うわけでございます。  そういう点で、鈴木参考人がたびたび繰り返しおっしゃっていただいておりますように、四十七年のあの中公審答申を出す場合には、非常に資料も少なくて大変な状況の中で現行の環境基準が決定をされたんだと、しかし、それは今回の五年間の間の資料等の分析をし、集積をしてみた結果は間違っていなかったと、むしろ現行の環境基準の正しさというんですか、妥当性というのが補強されたというふうなこととして御理解を申し上げてよろしいんでしょうね。これは念のためにお伺いいたします。
  88. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私といたしましては、そういう御理解をいただければ大変うれしく思います。
  89. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、結構です、もう。
  90. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは、鈴木参考人助川参考人とお二人にお聞きをしてまいりたいと思うんです。このような問題については、私はどちらかというと大変素人な方なものですから、そういう点できわめて初歩的なところから聞かせていただきたいと思うんです。  というのは、何かというとすぐPPmという言葉が出てくるんですが、たとえば一PPmといったらどの程度の量なんだということがどういうふうに理解をしたらいいかということなんです。いま東京都内でも、主要な渋谷なり何なりですぐ掲示が出るようになっている。あれを見まして、一般の都民の方にわかりますかと聞いても、あれがどういうことを指しているかわかるという答えは出てこないわけなんです。何かあるとすぐテレビなんかでも何とかかんとかが〇・〇何とかPPmと言って、そういう報道がニュースにのってくるんですが、これを扱う専門の方たちはそれなりの理解をされていると思うんですけれども、一般の国民というものは、そういうものについてどの程度のものなんだという理解がほとんど、むしろきわめてないと言った方がいいと思いますので、そういう意味で、一PPmというのはどの程度のものなんだということを、どういうふうにして理解をしたらいいのか、話したらいいのかということで、まずその初歩的なところからお聞かせをいただきたいと思います。――鈴木参考人助川参考人お二人に聞きたいんです。
  91. 助川信彦

    参考人助川信彦君) まあいろんな言い方をときどき私もさしていただきますが、すぐ適切なのが浮かびませんけれども、まあもとは百万石の中に一石入っているんだというような言い方をしてみたり、それから鶴見に電光掲示板を設けまして、実は同じようなことを言われましたものですから、電光掲示板で、いろいろ窒素酸化物とかあるいはSO2あるいは粉じん、それから騒音なんかを掲示しております、鶴見駅前に。まあ初め、ある濃度以下だと「きれいです」と書いたわけなんです。これに対しては賛成意見もあり反対意見もございました。普通じゃないか、普通ですと書けよなんて御意見もありました。まあきれいなのが普通のはずです。それからまた、きれいばっかり毎日出るじゃないかと。PPmの濃度は書くんでございますけれども。そうしたら、さらに先進的な自治体がございまして、たしかあれは千葉市だったかと思いますが、そこではにこにこ顔を書くんですね、基準以下のときは。それから基準以上だと今度は怒り顔。これは一本やられたなと思っておりますが、まあそうした配慮というのは確かに必要でございます。われわれも、魚なんかにつきまして、確かに汚染濃度によって出てくる魚の種類が違ってまいります。虫とかトンボとか小鳥の来るぐあいとか、あるいは鳥の羽のぐあいと濃度関係先ほどオキシダントにつきましては、発令基準の半分ぐらいになるとアサガオの葉っぱが三分の一ぐらいやられるというデータが出てまいりました。そういうデータを積み重ねていきまして、そして国民にわかりやすいように公害問題をとらえていただく努力を今後も払ってまいりたいと思っております。  そういうお気持ちの御質問かと存じます。
  92. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) どういうふうに御説明していいか、私たち何センチと同じように使っておりますので、日常用語になっちゃっているものですから……。ただ、PPm屋さんという言葉がございますね、これだけはやめていただきたい。数字に振り回わされるような問題ではないわけでございます。環境汚染問題は。ですから、PPmというものがあるとするのならば、それを正しく理解し、解釈していただきたいということをつけ加えた上で、医者の立場から申し上げますと、人間影響のあるのは実は濃度なのでございます。濃度掛ける時間なんです。ですから、富士山が見えるのが五時間あったと、だから病気になるというんじゃ客観性がないわけです。だから、どうしてもPPmという言葉を使いませんと客観性がございませんし、それから、富士山が見えたり、水の方は魚がすめるとか、いろいろございますですね。これはしばしば主観に左右されます。PPmというのは、これ、客観的でございますので、主観には余り左右されないものですから、どうしても影響とか何かを見る場合におきましては、こういう数字でもって表現をすると。あるいは、光化学の対策を立てるために工学的技術対策を立てるときに、きれいにしてくれでは、恐らく設計図引けないと思うんです。だから、何PPmにしてくださいと、こう言うだろうと思います。そういう意味で使っておりますので、私たちといたしましては、PPmと何センチメーターというのは、ついうっかり、あたりまえの数字として使っております。
  93. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ありがとうございました。  私も、いま鈴木参考人が言われた、PPm屋になるなという言葉が、大変おっしゃるとおりだと思うんです。前にもよく大気汚染の問題の論議をする会議に出ておりまして、かんかんがくがくと何とかPPmで議論をされておったんですが、そのときにも私が言いましたのは、皆さん方はそういう議論をしているんだけれども、夜になると、結構マージャンがお好きでもっておやりになっているんじゃないですかと、あの狭い部屋でもって四人が囲んでたばこをぷかぷかふかして大体三時間ぐらいたったら、いま皆さん方が言っている、その議論をしている水準をはるかに超えるような悪い空気になっているんだけれども、そういう点についてはどういうお考えなんですかと言ったら、みんなは黙っちゃったわけですけれども、ですから、私は何かのときによく、一PPmといったら、普通の四畳半ぐらいの部屋の中に角砂糖を一つぐらい置いた程度の、そのくらいのものなんだという判断でもって物をお考えになったらよろしいんじゃないんですかということを言ってきたんですけれども、できるだけ何かにつけて一般の人たちが聞いてわかるような形での、いろいろの点でのおまとめをいただきたいと思います。  次にお聞きしたいことは、光化学スモッグといいますか、数年前からいろいろと東京都内で、杉並の方で起きました。あの原因はどういうところから出てきているのか。そして、その予防の方法というのは何か、決まったんでしょうか。私は非常に理解つかないのは、あれがいつも問題になる学校が決まっているんですね。わずか数百メートル離れた学校においては全然そういうことの問題が起きないんで、そういう点が、私たちが素人目に見ておりましても、何でああいう形になっちゃうんだろうかという疑問も持つわけなんです。ですから、その原因というものはどういうところからくるのか。そしてその予防ということについて何かあるのか。これも鈴木参考人助川参考人お二人にお聞きしたいんです。
  94. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 光化学オキシダントの影響という問題につきましては、非常に高濃度で、しばしば毎日続くものでございましたならば、これは大事件でございます。で、それにつきましては学問的証拠はあります。いま先生の御指摘のような問題につきましては、これはわが国も、実はアメリカもそういうことが起きているんです。ただ、先生のおっしゃったとおり、ちょっと違うともう起きないんです。それの事実はよくわかりません。けれども、光化学オキシダントが何らかの形で関与していることは否定できません。それをもっと細かく言えというためには、恐らく環境庁はもう数年にわたって調査を進められておるでしょう。それはいろいろな結果が出てきておりまして、一般原則を確立するまでには至ってないでしょうけれども、しかし相当の資料は集まっていると私は聞いておりますし、発表があります。  それから対策は、発生源対策以外何もありません。原因物質の対策以外にはありません。個人の対策なんてあり得ません。ですから、炭化水素を減らし、窒素の酸化物を減らしと。しかし、その炭化水素を減らし、窒素酸化物を減らすという戦略につきましては議論のあるところでございます。
  95. 助川信彦

    参考人助川信彦君) 時間の関係もございましょうから、鈴木参考人の御意見で間に合わしていただきます。
  96. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 次にお聞きしたいのは、二酸化窒素のこの環境基準の問題で、いまの日本の実態でもって世界の主要な国と比較したときに、大体どのくらいのところにいるのか。もう一番悪いところの辺にいるのか、中間ぐらいなのかという、その実態で比較したときにどういうふうな答えになるのか。  それから、いろいろと先生方がこういう答申なんか出されて、こういう一つ目標値が出されてくるんですが、そういう、ここまでよくするんだと言っている、そういう目標値といいますか、指針といいますか、そういうので比較した場合に、世界の主要な先進国との比較でどういうことになるか。これは塚谷参考人、それから鈴木参考人にお聞きしたいのです。
  97. 塚谷恒雄

    参考人(塚谷恒雄君) 実態的に申しますと、極端な例は、たとえば、私イタリアのジェノバに行ったことがあるんですが、海岸に製鉄所と石油精製工場がありまして、神戸のように山が迫っておりまして、山はだに人が住んでいるわけです。そこへ登りますと、驚くなかれ、風が吹いてきますと、目に、顔に、何かわからないキラキラ光る物質が当たって痛い。目が痛いんじゃなくて当たって痛いという、それぐらいの程度の相当ひどい大気汚染の害があるところもあります。それはジェノバだけじゃなくて、ヨーロッパ全体、特にベルギーがひどいですけれども、もっとひどいところがあります。それからアメリカでも、北の方の五大湖沿岸の工業都市とか、南の方のメキシコ湾岸地帯では相当ひどいところがあります。  で、数値で――PPmで比較しちゃうんですけれども、PPmで比較いたしますと、ヨーロッパは余りそういう測定結果がないんですね、信頼できる。で、特にアメリカと比較いたしますと、日本は中くらいですね、現状は。そうだと思います。ただ、それがPPmだけじゃなくって実態として比較いたしますと、やはり生活事情、住宅事情、都市生活なり農村での生活全般の中での大気汚染がどうだとか、そういう比較になっちゃいますので、これはなかなか比較がしがたいと思います。ベルギーでも有名なミューズバレーというのがありまして、戦前事故が起こったんですけれども、いまでもひどいところです。濃度自体も日本よりずっと高いんですけれども、ひどいと感じるんですけれども、そこの都市生活自体は、わが国で言いますと、私、京都に住んだことがありますけれども、京都よりもっと過ごしやすいという感じを受けます。ですから、簡単にPPmだけで比較することはできないんじゃないかとも思っております。  それから目標値、まあ環境基準値でいいと思いますが、これは先ほどから、特に峯田さんが紹介されたんですけれども、制度上の違いといいますか、そういうものがあって、これも簡単には比較できないんですが、PPmだけで比較いたしますと、一番簡単にはOECDの「インバイアロンメンタル・ポリシーズ・イン・ジャパン」という日本事情を紹介した中に基準値がありまして、日本より厳しいのはカナダのサスカチワン州で、〇・〇一でしたか、日本の二倍厳しいところがありますけれども、そのほかは大体日本より緩やかですね。
  98. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) ございません。
  99. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 先生がいまおっしゃったのを横で聞いておりましたが、大体そうでございます。  ただ、窒素の酸化物の測定は、わが国が最高の測定点を持っております。アメリカが測定していると言ったって、八百点なんてありません、あの広いところで。それからヨーロッパは、先生のおっしゃったとおりでございまして、まだ始まったばかりである。したがって、事情の相互比較というのは私は簡単にできないと思います。これは私たちが申すよりも、環境庁の方からいずれ別の機会に、どういうふうに行政立場から比較しているかということをしていただかないと、測定点の配置系列が全然違うのでございますから、各国とも。それから機械も違います。だから簡単に言えないと思います。ただ日本における事情ということに私たちは注目したわけです。ごらんのとおりの汚れでございますから。そういうふうに思われます。  もう一つは、環境基準ですか、目標値――目標値であろうと環境基準であろうと、これは私の知る範囲におきましては、文献的にはどこかにあるんですけれども、それは本当にやったかどうかはわかりませんから、それは採用しないといたします。そういたしますと、日本が最も厳重であると、これはもう申し上げていいと思います。ただ、厳重にしなきゃならない理由があったということの上で厳重であるというふうに御理解いただければと私は思います。
  100. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは先生方四人にお聞きをしたいんですが、最後の質問になりますが、きょうのこの二酸化窒素とかいろいろそういうふうな問題を離れまして――離れてといっても関係を持つわけですけれども、日本の場合には、環境庁ができたのも歴史が大変浅いわけです。いろいろの点でもって環境行政というものが外国と比べたならば大変おくれているところがある。しかしながら、最近の短かい期間の中で、そういう先生方の御努力なんかが反映をして、急速に世界のレベルに追いつこうとしているんだと思うんです。そういう点に立ちまして、日本環境行政のやっていることについて、こういう点が大変抜けている――抜けているという言葉よくないですけれども、わかりやすく言えばそういうことで、いろいろお気づきになったことを御意見をお聞かせをいただけたら大変ありがたいと思います。いい点悪い点どちらも含めて結構ですから。
  101. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうぞ、峯田参考人から。
  102. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) 全体としましては、私も日本環境行政というのは昭和四十五年の公害国会において経済との調和論を克服した以後は、全体として評価できるものを持っていたというふうに思います。ただし、それ以前につきましては、実は大阪弁護士会でもそれに対する批判の報告書を出したことがございますが、当初申し上げましたように、科学的に不明確だとかそのほかの理由で、地方自治体のやってきた規制行政から少なくとも十年はおくれた対策をとってきたというふうに申し上げていいかと思います。昭和三十七年に初めてばい煙規制法というのができまして、国のレベルでは最初大気汚染立法でしたわけですが、その規制の中身というのは、実は大阪府の事業場公害防止条例で決めておりました数値よりも低い数値でございました。したがって、大阪府の府下の企業にとりましては、いままで条例で規制されていたレベルよりも緩めてもよろしいというようなお墨つきをもらったという非常にアンバランスな事態が出たわけですが、そういった過去の、少なくとも四十五年以前の問題については、被害者立場に立った行政ではなかったというふうに思っております。  で、進んだ点について、一つだけ弁護士として思っておりますのは、例の公害健康被害補償法というのは、これはアメリカにもない非常にユニークな立法ですが、これについては、さまざまな意見があるということで、昨年私どもも運用の問題点も含めて意見を出しておりますけれども、こういう被害者立法があるということは、とりあえずの措置として、やはり世界的に見ても評価していい問題であろうというふうに思います。それをめぐってさまざまな巻き返しの議論があるという点はすでに皆さん御存じだろうと思いますが、少なくともその堡塁はぜひとも守っていただきたいというふうに思っております。  現在、窒素酸化物を指定地域の要件にするかどうかという点でかなり議論があるところでありますが、このたびの中公審の報告が出て、四十七年当時の知見を裏づけたという現在の時点に立って見れば、窒素酸化物を指定地域の要件にしていくという決断をしていい時期ではないかというふうに思っております。
  103. 塚谷恒雄

    参考人(塚谷恒雄君) 日本環境行政全体は、私は基本的にはわかりません。なぜかと言いますと、大気汚染もさることながら、水俣病の処理をいかにこれからやっていくかということで世界的な評価が決まるんじゃないかと私は思っております。  行政全般はそうですが、行政官自身は、私のつき合っております範囲では、非常に優秀でよくやっておられます。まあ給料を上げるというふうにはいきませんけれども、何かほかの形で報いられたらと思っております。  それにつけても、NOxの環境基準を五年前につくって、五年たったらすぐ変えるということは、行政官自身が非常にやりにくい。目標を軽々に変えて、おまえたち仕事をやれと言われても、特に環境行政は二十年、三十年先を見ながらやらなければ――ほかの行政もそうですけれども――無理ですので、その点でも、理由はどうあれ目標を変えるということ自体は、国を初め地方自治体の行政としては非常にやりにくくなるのではないかという点があります。  それから最後に、環境行政をやるにつけても、もっとほかの行政の面からメニューを出すべきだと思っております。たとえば鉄鋼連盟なり産業界が金が要ると言っているわけです。確かにお金が要りますけれども、確かにそれは鉄鋼自身なり自動車自身は金使いますが、じゃあそれでもって日本経済全体がどうなるか。それから〇・〇五以内には低められないということを言っておりますが、それも、何と言うのですか、三全総か何かの長期エネルギー報告ですか、昭和六十五年度を目標にした、エネルギー事情を前提としてやっているわけです。もっとほかにいろいろメニューを出して、こういうことでもいけるんではないかということを、これは環境行政以外の点から出すべきではないかと思っております。  以上です。
  104. 助川信彦

    参考人助川信彦君) 塚谷参考人の御意見をもう全面的に支持いたします。特に、行政官の一人でございますので、われわれの同僚がおほめをいただいたことはありがたいと思います。これから大いに努力せにゃいかぬと思います。  やっぱり、住民あるいは企業、そして国、自治体、こうしたものの合意の形成を促進する必要が非常にあるというふうに思います。  また、通産省さんとか環境庁さんとか、政府の各省庁の方々の協力体制、かなりできているようには存じますけれども、さらに強めていくことが国民の幸福につながってまいろうかと思います。  以上です。
  105. 鈴木武夫

    参考人鈴木武夫君) 私は、日本環境行政というものは、環境問題がよその国――先進工業国に比べれば、短い時間の間に悪くなって、そして短い時間の間にここまできたということに対して、日本行政官の能力というものは大したものであるということは私は認めます。私の商売であります研究室に比べれば、はるかに能力があるというふうに反省せざるを得ないと思います。そして、その問題は、OECDのあの環境レビューで述べられているとおりだろうと思います。少しほめ過ぎているところもあるかもしれませんけれども。  しかし、あれを境にしてちょっとおかしくなったんじゃないだろうかということを最後に一言申し上げたい。それで、でき上がったときの精神に立ち返って、何といいますか、お仕事を、さらに拡大再生産という立場をおとりになって、そして、気持ちの上ではつくったときの気持ちを忘れないでいただきたいなと、これは感覚的で物を言っておりますので、大変申しわけございませんけれども、そう思います。
  106. 峯田勝次

    参考人(峯田勝次君) ちょっと、一点だけ補足させていただきたいと思います。  最近の環境行政の中では、二酸化窒素環境基準をめぐる問題点というのが最大の争点であったというふうに思うわけですね。で、産構審あるいは産業界からの声というのも、それに集中している感があるわけですが、しさいに検討をいたしますと、つまるところは、実質的には、経済との調和論のベースに乗るかどうかというところが瀬戸際のところにあると思うのですね。そういう意味で、今回の答申を基礎にして基準改定をするというようなことになってきますと、これは評価するというようなことには当然ならないというふうにもちろん思うわけです。  それともう一つは、環境行政がさまざまな問題を残しながらもここまで前進してきたというのは、一つには住民運動あるいは弁護士が加わってきております公害訴訟その他の市民の大きな支えがあったというふうに思うわけですね。で、四日市判決というのは昭和四十七年にございましたけれども、その判決が日本公害行政の中に及ぼしたさまざまな影響というのは非常に大きいものがあろうかと思うのですね。そういう意味で、今後の公害行政を進めていく中でも、やはり被害者である住民の声を十分に反映するという形で進めていく中で、十分評価に値するものになっていくだろうというふうに考えております。
  107. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  108. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上をもちまして、参考人からの意見聴取並びに参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、皆様御多忙中のところ、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  お聞きいたしました御意見は、当委員会の今後の調査に大いに参考になることと存じます。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。  以上をもちまして、本日の委員会を散会いたします。    午後五時四分散会