○沓脱タケ子君 それでは、限られた時間でございますので、端的にお聞きをしていきたいと思っております。
きょうは、三月二十二日に中公審から答申をされましたNO2の
指針値についてお聞きをしたいと思っています。
三月二十二日に
中公審答申が出て、NO2について、「短期暴露については、一時間暴露として〇・一−〇・二PPm」、それから、「長期暴露については、」「年平均値として〇・〇二−〇・〇三PPm」というのが答申をされました。それにつきましては三月二十九日の本
委員会で、私、一定の批判と
意見を付した
質問を行ったわけでございます。さらに、四月の十八日に、これは
公害弁連と
全国公害患者の会
連絡会から、あの
指針値については健康を守っていく上で疑問ありとしての御
意見が付されて要請を受けました。
環境庁へも申し入れをされたはずでございます。
環境庁はあの答申を受けて、
公害基本法第九条三項によって、
環境基準についての行政
措置をとるというために告示の検討をされておるというのが先日の
委員会でも明らかになっております。一方、国民の側では、大気汚染
被害の
公害患者というのはどんどんやはりふえているというのが実情でございます。具体的には、千葉の川鉄の第二次訴訟というのが四月の十七日に提訴をされました。四月二十日には大阪西淀川でもやはり提訴に踏み切られました。そういう点では、国民の側から言えば、非常にがまんがならないということで裁判も起こっているという中で、
環境基準の検討をし行政的に告示を検討されるという段階でございます。
一方、かねがね問題になっておりました財界筋の動きというのはどうかというと、これはもう数年前から、NO2の
環境基準については科学的根拠が乏しいと称して、見直し等についての強い御見解というのが国会内外で出ておるのは御承知のとおりです。で、昨年の十二月には
通産省の産業構造審議会の答申が出まして、仮想
環境濃度として日平均値〇・〇五PPm、こういうものが答申をされて、ちょうど昨年の十二月でございますから、中公審の判定条件の検討の最中にこれが打ち上げられた。で、中公審の答申が三月二十二日に出て以後の財界筋の動きで顕著なのは、四月の十一日に経団連から、「二酸化窒素(NO2)の
環境基準見直しに関する要望」というのが出ておるのは御承知のとおりでございます。しかもその中では、年平均値〇・〇五PPmで健康の保護はできるんだと、それから
環境基準の
設定については、
通産省を含めて、閣内のコンセンサスを得て行われたいという強い御要望が出されているようです。こういうことで、先日来私がたびたび申し上げているように、まさに財界が言っておる
環境庁をめぐる空中戦の真っ最中という
状況でございます。
それで、きょう私は、三月の二十九日に批判的
意見、また見解というようなものを述べておったわけでございますが、その後、
公害弁連とか
全国患者組織の要請を正式に受けましたので、従来私
ども疑問を持っておりましたので、さらにこれを検討をしてみたわけでございます。ところが、そういう中で数々の疑問が出てまいりました。そこで私は、今後
委員会での検討を進めていく上でも必要があるというふうに考えますので、その数点の疑問についてただしていきたい、そう思っているわけでございます。
この発表されました
指針値の年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPmの根拠の問題というのですか、これについて、
専門委員会の報告をしさいに拝見をいたしましたが、二カ所のところで非常にそれらしいことが明確に出ているわけです。その
一つは、この報告書の第三章、三の二十八ページ——これは企画
課長ちょっとごらんになっていてください——その中に、「以上の慢性呼吸器症状有症率
調査のうち、吉田、常俊、岡山県または坪田の報告で示されている持続性せき・たんの有症率と、二酸化窒素濃度のみを対比してみると、二酸化窒素濃度〇・〇二−〇・〇三PPm以上の地区での有症率は、二酸化窒素濃度との
関連でそれ以下の
地域の有症率よりも高率であり、二酸化窒素濃度との間に
関連があることが観察された。このことは
環境庁複合大気汚染健康影響
調査で報告されている結果と一致するものである。」という点が一カ所ですね。さらにもう一カ所は、第三章の、三の四十四ページです。これはあとで検討してもらわなければいかぬから、きちんと出しておいてくださいよ。
最初は三の二十八ページ、それから二つ目は三の四十四ページ。そこの下三段ほどです。「大気汚染のほとんどない都市の有症率である三−四%を参考に、これ以下の有症率では濃度と有症率との
関連が見い出されないであろうと考えた。こうした条件から各
地域の疫学的
調査の結果を綜合的に考察すると、有症率三−四%に対応する大気汚染の指標としての二酸化窒素濃度は年平均値〇・〇二−〇・〇三PPmであった。」と、こういうふうに記載されているんです。
でこういう結論的な表現の中から幾つかの問題点というか疑問点が含まれていると思いますので、その点について私
ども検討をしてみたわけです。——これは
長官、ちょっと細かい
数字のことになりますから、そこは聞き流していってください。企画
課長はあんじょう聞いとってください一その
一つは、年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPm以下なら有症率の増加は見られないのというのが、いま申し上げた二カ所の表現には出ているんですね。本当に有症率の増加が見られないのかどうかという検討をやってみたんです。
一つは。
もう
一つは、非汚染
地域の有症率、つまり報告書では自然有症率というふうに言っておられるようですが、この非汚染
地域の有症率の三ないし四%に対応する窒素酸化物汚染濃度は〇・〇二ないし〇・〇三PPmであると、こういうふうに述べておられる。こういう対応
関係が
疫学データで読み取れると、こう書いてあるんですね。それで、これは本当に読み取れるかということで、これも検討してみた。
三つ目は、いわゆる非汚染
地域の有症率三ないし四%を自然有症率とみなしているが——これみなしているんですね、この報告書では。この根拠というのは一体どうなんだろうかという点で、報告書が引用いたしました
データを用いて検討してみたんですが、これもちょっと疑問があるのでこれをひとつ聞きたいということ。これ三つ目ですね。
四つ目は、
環境大気中の二酸化窒素濃度のどのレベルに対応して有症率が増加するかは十分解析できないと、こういうふうに書かれているんですね。本当に解析できないのかどうか。お使いになっている
データから見ても見られるんではないかという疑問を
感じているわけです。
この四つの疑問点なんですが、若干
専門的にわたりますが、私
どもが検討してみた結果を、資料を差し上げますから、資料をちょっとごらんになっていただきたいんですが——
委員長いいですか。(資料配付)
まず、第一に申し上げた点ですね、年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPm以下なら有症率の増加は見られないと、こういうふうに言われておるんですが、本当にそうかなということで検討をしてみたわけです。
専門委員会では大気汚染による正常な健康
状態からの偏りは見出されない水準であってと、この数値はね。しかも、病人が病状を悪化させない水準だと、こういうふうに述べておられるんですね。ですから、この
指針値の範囲あるいはそれ以下ならなおさらのこと病状の増悪あるいは新しい病人というのは、有症率の増加というのは確認されない数値だと、こういうふうに言っておられる。さらにこれについて、きょうは御欠席でございますが、橋本大気保全
局長は、三月二十二日の衆議院の公環特ではこう言っているんですね。「この範囲にあれば、もちろんそれ以下は問題はございませんが、この範囲にあれば健康からの隔たりがなくして大丈夫ですよという形になっております。」という御
答弁をなさっている。だから、そういう限りでは〇・〇二ないし〇・〇三ということは、その水準が有症率の増加は確認されてはならない水準なんだということをおっしゃっているわけです。
ところが、それじゃそうなのかということで、これは私
ども確認の
意味も含めて検討をしてみたんですが、
専門委員会がこの
指針値を提案するに当たって根拠として使用された
疫学データですね、これ報告書に出ております。これを調べてみたんです。で、お手元に差し上げている資料なんですが、
最初に大きな紙の一ページ目を開いていただきます。それから第4図と書いてあるところを開いていただきたいと思うんです。で、私
ども検討してみたのは、この
専門委員会が
疫学データとして採用されたという四つの
データ、「岡山県または坪田信孝らの報告」それから「千葉県または吉田亮らの報告」それから「大阪府・兵庫県または常俊義三らの報告」それから「三府県六都市
調査または
環境庁「複合大気汚染健康影響
調査」」、いま申し上げたのはこの大きい紙になった第一ページです。それを検討してみたわけです。
最初に、いま4図をごらんいただきたいということを申し上げましたね。4図を見ていただきますと、この岡山県の報告というのは、
調査対象地区が十二地区、
調査人員は一地区当たり百七十三人ないし四百三十五名、それから四十歳から五十九歳の男女合計、それから性、年齢、喫煙量訂正有症率、こういう
データでございますが、これを解析をいたしますと、
指針値である〇・〇二PPmと〇・〇三PPmの間に、有症率が四・三六五%の増加を示すわけです。これは4図をごらんいただきますと、真ん中の下に、〇・〇二と〇・〇三と書いてありますが、それぞれそれを左に引きまして、有症率のところに線を引いております。その差は四・三六五%になっているわけです。
それから第5図は千葉県の分なんですが、これを同じようにやってみますと、〇・〇二PPmと〇・〇三PPmの差というのは二・八二一%の増加。ですから二%以上の有症率増加があるということなんですね。
それから三番目は、次の図表は第6図ですね。第6図は、「大阪府・兵庫県または常俊義三らの報告」という分なんですが、これを見ますと、これは一番差が少なくてその差は〇・五二七%。それで、これ二本線を引いていますが、これは二つの
データが出ておりまして、下は慢性気管支炎の
データであり、上の実線がいわゆるいままでの
データと同じく持続性たん・せきという同じ症状別の
データなんです。ですから他のものとの比較の
関係から上の
データをとりますが、それによりますと〇・五二七%。これは一番有症率の増加率が少ないですね。
それから最後の第7図が、これは
環境庁がおやりになった複合大気汚染健康影響
調査ですね。これは昨年の二月来問題になっておる分ですね。これは三十歳以上の女子だけなんですね。で、訂正有症率ではありませんけれ
ども、この中で、NO2濃度を六千五百時間以上測定したというその十一カ所をチェックをいたしまして、これで有症率の解析をやってみた。そうしますと、7図でごらんいただきますように、〇・〇二と〇・〇三の間の開きは一・九一%の増なんですね。
つまり、こういうふうに解析をしてみますと、これは大阪府、兵庫県の〇・五%の増という以外は全部、四%あるいは二・八%、あるいは一・九という約二%近く、そういう有症率の増加が見られるというのが、実際にこれは全く何の作為なしに、解析結果から見ますとそういうことになるわけでございます。
さらに、先日私
どもも要請を受けましたが、
公害弁連が解析をなさっておりました
データがあります。その
データに
関連をいたしまして、私
どももさらにそういった組み合わせの形で検討をしてみました。そうしますと、これは1、2、3のところなんです。
公害弁連からいただいた資料というのは、その中の3なんですね。で、そういう
データをいただいたので、それぞれの形で組み合わせて、いまの四つの
データをそれぞれ組み合わせまして——これは大きい資料(2)というところです。で、図表で言えば1、2、3の一番初めです、小さい図表。——
長官、有症率の差は図表を見ていただいた方がよくわかります。
公害弁連の資料というのは、そのうちの3と書いてある資料ですね。これは先ほど申し上げた千葉の
データ、岡山の
データ、それから
環境庁の六都市の
データ、それから兵庫、大阪の
データと、この四つを同時にプロットした場合の解析図なんですね。それによりますと、確かに〇・〇二と〇・〇三の有症率の増加というのは一・〇八%の増加になります。だから
公害弁連や
全国患者の会
連絡会からは、これでは有症率が上がるから、とてもじゃないけれ
ども健康が守れないから何とか考えてくれという要請が出たのはそういうことなんですね。さらに、それが四つ一遍に組み合わしておりますが、この
データをしさいに見てみますと、千葉と岡山の
データというのは男女の合計であり、それから、性、年齢、喫煙量の訂正有症率を使っているという点で、同じ条件の
調査になっておりますから、この二つを組み合わしてみたわけです。そうしますと、この解析の結果からいきますと——図1です、小さい図の。〇・〇二PPmと〇・〇三PPmに該当する有症率の差というのは二・八一%、約三%の増になる。それから図2を見ていただきます。それは、いまの二つの
データにさらに
環境庁がおやりになった六都市の
データを同時にプロットしてみたんです。で、ちょっと条件が違うんですね。
環境庁の六都市というのは、これは三十歳以上の女子だけが対象になっている。しかし、まあお使いになった
データだから、それを一緒に解析をしてみました。そうしますと、これやはり〇・〇二ないし〇・〇三の有症率の増加は、二・三二%の増加になります。ということになりまして、この四つの
データをいろんな組み合わせ方、それぞれの
データに基づいての解析、それをやってまいりますと、
指針値の〇・〇二と〇・〇三の間で有症率の変化がないどころではなくて、有症率の増加を認められないどころではなくて、二%ないし大きいのは四%の増加が見られる。わずかに大阪、兵庫の
データが〇・五%の増加にとどまっているというだけなんですね。
こういうことになってまいりますと、〇・〇二ないし〇・〇三で有症率の増加が認められず、大気汚染の影響による正常な健康
状態からの偏りも見出されないというふうにお述べになっておりますけれ
ども、報告書では。これはお使いになった資料を、具体的にどういうふうに検討されてこういうものが出てきたのかというのは、これは私
ども統計学の
専門家ではありませんけれ
ども、その水準で見ましてもちょっと理解に苦しむ。これは企画
課長、おわかりだったらちょっと教えてください。