○矢田部理君 委員派遣の
報告を申し上げます。
去る二月六日から八日までの三日間、久次米理事、原理事、田代委員、
粕谷委員、坂倉委員、中野委員、沓脱委員、柳澤委員及び私矢田部は、PCBの保管
状況とPCBの処理対策、
瀬戸内海の
水質汚染、赤潮被害の
状況とその対策、本四架橋
児島・
坂出ルート建設計画に伴う
環境保全対策等の諸問題につき実情
調査を行うため、兵庫県、岡山県、香川県を
視察いたしました。
二月六日は、高砂市文化会館において
県側から、兵庫県の
公害環境問題につき
説明を、また、
住民側からは、PCB、赤潮対策等に関する陳情を聴取した後、鐘淵化学工業株式会社高砂工場及び高砂西港を
視察いたしました。
二月七日は、岡山県庁において岡山県の
公害環境問題につき
説明を聴取した後、本四架橋計画に伴う
環境問題及び
瀬戸内海の
水質汚染状況の
調査のため、
児島・坂出海域を海陸より
視察いたしました。坂出番の州工業地帯におきましては、アジア共同石油株式会社坂出製油所を
視察いたしました。
二月八日は、赤潮による漁業被害等の実情
調査のため、香川県引田町を訪問し、引田町当局及び漁業
関係者より
説明を聴取いたしました。
以上が今回の
調査範囲の概要であります。
次に、今回の
調査で問題と思われる四つの点を
報告し、これに対する政府の善処を要望したいと思います。
まず第一は、PCBの保管と処理の問題であります。
現在回収されました熱媒体用液状廃PCBは、鐘淵化学工業高砂工業所の三つのタンクに五千四百九十二トン保管されております。このほか、同工業所には百七十台のコンデンサー、一万六千本の運搬のために使用されたドラムかん等が、また県下の
事業所には四百一トンの感圧紙が保管されております。高砂工業所の保管PCBの監視につきましては、保管者である鐘化が毎月一回自主検査をしているほか、県は高砂市消防本部との共同検査を含め、年六回以上の検査を
実施している。タンクの耐震性については、直径三百ミリ、長さ十三メートルのパイルを百二十本、岩盤に突き当たるまで打ち込んだ上に設置してあるので、震度七程度の地震にも耐えられるものである。また、万一に備えて予備のタンクを
一つ持っており、ポンプで移送する。防油堤は約六千立米の能力があるので、三つのタンクがすべて漏れた場合でも対応できる。タンクの周りにつくった防油堤の中にたまった雨水は活性炭を通してろ過しているので問題はない等の
説明が会社側からありました。しかし、兵庫県としては、
住民の不安を取り除く
意味からも、液状廃PCBにつきましては、昨年十月設置された国の液状廃PCBの洋上処理
調査研究
委員会の結論を待って早急に処理したいとのことでありました。政府としては、二次
公害を起こさないよう焼却等の処理
方法を早急に確立するとともに、県下の
事業所に保管されております感圧紙等についても処理
方法を検討すべきであります。
第二は、高砂西港のヘドロ処理の問題であります。
高砂西港のPCBヘドロ除去
事業は、第一期工事が
昭和四十九年九月二十七日から五十年三月十九日、第二期工事が
昭和五十年八月十八日から五十一年八月十三日までとなっており、すでに工事は完了しております。しゅんせつしたヘドロの量は三十五万立米、それに含まれる推定PCB量は六・八ないし十トンでありますが、現在六万平方メートルの埋立地にアスファルト工事で封じ込めており、
水質の検査を二カ月に一回行っているが、PCBは検出されていないとのことであります。
しゅんせつに要した総
事業費は四十一億二千九百万円でありますが、ヘドロのしゅんせつを請け負った株式会社竹中工務店、東亜興発株式会社両者へ支払われた額は十五億九百万円であり、残りの二十六億一千九百万円が未払いとなっております。
当該しゅんせつ
事業の費用負担問題については、
昭和四十九年九月五日、県、高砂市、
関係企業——鐘淵化学工業株式会社、三菱製紙株式会社、三菱重工業株式会社、武田薬品工業株式会社の四社による六者協議会を設置し、四十九年十月五日には六者協議会の合意により、公正な第三者機関として費用負担
委員会を設置、五十年十二月二十日、費用負担
委員会は各社の分担率を鐘淵化学一〇・二ないし一五・四%、三菱製紙八〇.一ないし八五・九%、三菱重工一・五ないし二・一%、武田薬品二・四%と
報告し、三菱製紙を除く三社は了承しましたが、同社はメーカー責任が加味されていないとして
報告を了承するに至らなかったとのことであります。現在三菱製紙が鐘化を相手方として、損害賠償等の支払いを大阪簡裁に調停申し立てをしているところであります。県としてはその結果を見守りたいとのことでありました。
当該しゅんせつ
事業は
公害防止事業費
事業者負担法によらずに行ったものであります。昨年の最高値でPCB一三六九PPmを記録している延長六百メートル、幅員三十メートルの大木曾水路のPCBヘドロの除去の問題が残されております。政府としては、今後のヘドロ処理に当たっては、
公害防止事業費
事業者負担法の適用をも含めて、このような事態に至らないよう万全の
施策を講ずべきであります。
第三に、
本四連絡橋児島・
坂出ルート計画に伴う
瀬戸内海地域の
環境保全の問題であります。
政府は、昨年四月、
児島・
坂出ルートを
本四連絡橋の当面早期完成を図る一ルートとして内定し、同年十一月、第三次全国総合開発計画においてこれを正式に決定しております。
本四連絡橋の
事業計画の概要は次のとおりであります。
すなわち、本ルートは、道路・鉄道併用橋とし、道路単独部は、一般国道二号線バイパスと連結される岡山
県側の早島インターチェンジを起点に、これより南下して、倉敷市下津井付近から、櫃石島、岩黒島、羽佐島、与島、三ツ子島等の島嶼部、坂出市番の州の埋立地を経て香川
県側の一般国道十一号線バイパスに連結される坂出南インターチェンジに至る総延長約三十八キロメートルの路線であります。
鉄道単独部は、倉敷市南部から道路・鉄道共用部を経て香川県宇多津町に至り、東西に分岐して国鉄予讃本線坂出及び丸亀方面に連絡する総延長二十八キロメートルの路線であります。
道路・鉄道共用部は、道路が上部、鉄道が下部の二層構造で、倉敷市大畠において併用区間となり、神道山の東側山腹から鷲羽山の西端付近にかけての山地部を通り、櫃石島等の島嶼部を経て四国側坂出市番の州に至る、総延長約十三キロメートルの路線であります。
これに要する総
事業費は、五十年度価格で約六千九百億円となっております。
本四連絡橋公団は、
環境庁の「
児島・
坂出ルート本州四国連絡橋
事業の
実施に係る
環境影響評価基本指針」及び
運輸省、建設省の「本州四国連絡橋(
児島・
坂出ルート)に係る
環境影響評価技術指針」に従い
環境影響評価を
実施し、すでに昨年十一月から十二月にかけて岡山県の六会揚で
説明会、十二地区で懇談会、また香川県の六会揚で
説明会、七地区で懇談会を開催し、三週間にわたり
環境影響評価書案を
住民に縦覧しておりますが、
公団にはすでに岡山
県側住民から六十八種類、香川
県側の
住民から四十二種類、合計百十一種類の
意見が提出されております。
また、岡山、香川両県及び
関係市等からもすでに
環境影響評価書案に対する
意見書が
公団に提出されております。
意見書の主なものについて御
報告いたします。
まず第一は
住民の
意見であります。
七百項目百十一種類の
意見の約半分は路線の変更、側道、防音壁の設置等構造の変更に関するものであります。残りの約半分は、
環境影響評価の
内容に関するものでありますが、その概要は次のとおりであります。
(1)
アセスメントそのものに関しては、
環境影響評価を第三者機関が行うべきである。
説明会は専門的過ぎてわかりにくい。
評価項目については社会的な変化についても
評価すべきである。
(2)
自然環境の保全に関しては、切り取り面の土砂の崩壊
防止のために現地に多い樹種で復元を図るべきである。
(3) 自然景観に関しては、新しく橋ができることにより新しい景観がつくり出されるとしているが、
評価の仕方としては主観的に過ぎる、もっと客観的な
評価をすべきである。
(4) 大気に関しては、NO2の予測は局地的要因、地形的要因を加味した
評価を行うべきである。
瀬戸内海に多い霧、夕なぎの発生時のNO2の
評価を行うべきである。
道路に面する地域のNO2については、WHOの専門
委員会が公衆の健康を守るためのガイドラインとして示した値、「NO2の一時間値が月に一度を超えて出現してはならない値〇.一〇ないし〇・一七PPm」を予測結果の
評価に用いているのは疑問であり、慎重にすべきである。
(5) 自動車騒音に関しては、中央値を基準に規制することになっているが、
住民の生活
環境の保全の見地からは高い値の方を低減させる必要がある。
騒音の予測の基礎として一日当たりの自動車交通量四万八千台を用いているが、これを超えることも
考えられる。その場合は車線制限等の交通規制をする必要がある。
(6) 鉄道騒音に関しては、既設の在来線規格鉄道の騒音レベルを
環境保全目標としているが、新設される鉄道であるので、新幹線の騒音基準で対策を立てるべきである。
(7) 鉄道振動に関しては、岡山県及び香川県内の計画路線と類似した地質及び構造を有する既設鉄道の振動レベルを基準としているが、路線建設予定地の地質に適合した他のより
条件の悪い路線の実測値でやるべきである。
(8) その他として、代替地を確保してほしい。
工事中の苦情処理のための窓口をつくってほしい等でありました。
次に、岡山、香川両県の
意見でありますが、岡山県からは、
(1) 生活
環境について、
窒素酸化物等大気質に係る
環境汚染については、その予測手法等が十分に確立されているとは言いがたい面があるので、今後の継続的な
調査検討とともに、新たな知見が確立された場合は再検討を行うなど、供用時の
環境基準を守るための最善の
努力を続けられたい。
(2)
自然環境、景観について、工事に当たっては、地形、地質等の詳細な事前
調査とともに、動植物等の貴重種の
保護・保存を図るため、地元専門家の指導を受け、工法等に細心の留意を払われたい。
(3)
公害の
防止に関する協定の締結について、現時点では予測し得ない事項及び予想外の
問題点等に適切に対処し、供用時の
環境基準を守るため、着工に当たり、本県と
公害防止に関する協定を締結することとされたい。
(4)
住民の
意見の尊重について、
環境影響評価書案の周知
手続を通じて寄せられた
住民の
意見に対して、これを尊重し、適切に対処するとともに、今後工法協議等に伴う要望についても誠意のある対応を行い、適切な処置をされたい。
(5) 稗田地区について、
環境影響評価書案によるルートのうち、稗田地区について再検討し、ルートを確定すること。
香川県からも同様に、生活
環境、
自然環境、
住民の
意見の尊重等について
意見が出されておりますが、このうち、
自然環境につきましては、
(1) 自然の状態で保持されている海岸、島嶼部のウバメガシ、トベラ群集、花樹岩の風化露頭及び三ツ子島周辺の片状ホルンフェルスは、貴重な自然でありますので、工事に伴う改変量の最小化に努めること。
また、島嶼部の当該植生及び自然海岸は、鳥類の繁殖地及び中継地としても重要であるので、その失われる植生の復元・造成、残土処理地の選定等、その保全に十分配意すること。
(2) 三ツ子島と番の州間の海底におけるナウマンゾウ及びシカ等の動物の化石については、橋脚工事に伴う掘削を最小限度にとどめるよう
十分留意するとともに、発掘された化石について適切な処置すること。
(3) 自然改変地の緑化については、改変地の表層土を努めて活用するほか、当該改変地の現存自然植生、潜在自然植生を考慮した樹種等を用いるように努めること等となっております。
公団側からは、木見から岡山駅までの鉄道路線約二十キロメートルは、
運輸省の承認がまだ得られていない。
架橋による船舶のレーダー等電波への
影響については、専門家に予測、
評価を依頼している。また、
環境庁の
基本指針には、必要ある場合
公聴会を開くとなっているが、これまでの
説明会等で十分であるので、改めて
公聴会を開くつもりはない等の
説明がありましたが、国としては、
住民の
意見、
関係県等から出された
意見等については十分尊重し、今後も
住民の意向を積極的に聴取する等、
自然環境の保全、生活
環境の保全等に万全を期す必要があります。
第四に、
瀬戸内海における赤潮被害とその対策の問題であります。
昨年八月、播磨灘に発生した悪性のホルネリアによる赤潮被害は、
昭和四十七年七月発生した赤潮被害に次ぐ規模となり、ハマチの大量死等
瀬戸内海漁業に重大な被害をもたらしたのであります。
その被害
状況は、香川県ハマチ百八十四万六千尾の斃死、被害率八八%、被害額十八億七千万円、徳島県の百十四万三千尾、被害率八二・八%、被害額九億五千万円、兵庫県三十二万六千尾、被害率二二・七%、被害額二億八千万円となっております。今回
視察いたしました香川県引田町におきましては、昨年八月二十七日から二十八日にかけて、急激に大量のハマチが斃死をいたしております。
昭和四十七年の赤潮発生のときは、七月上旬に東讃海域に赤潮被害が発生し、その後半月の間、徐々に西へ移っていったのでありますが、昨年の場合は、強い毒性を持ったホルネリアが発生したため、数日の間に引田、相生等六漁協、八十一経営体、百四十五名が、先ほど御
報告いたしましたような甚大な被害をこうむったのであります。
引田地区は、
昭和の初期から安戸池等においてすでにハマチの養殖を行っており、日本におけるハマチ養殖の発祥の地である。また、潮流、潮汐、沿岸の地形等の点から養殖場として適しているが、その反面汚濁物質が滞留しやすい
環境にあるとのことであります。
当該地域のハマチ養殖の
方法は、一辺五ないし六メートル、水深四ないし六メートルの網で囲った小割り式の
方法で行っておりますが、昨年八月発生しましたホルネリアは、水深十五メートルくらいの深さまで発生したため、多量の酸素を消費する回遊魚でありますハマチは、酸素不足あるいはホルネリアがえらに詰まる等により、多量に斃死したものであります。
このような深刻な赤潮被害の事態に対処するため、香川県では、昨年十月一日、県、県漁連、学識経験者、漁協代表からなる香川県赤潮対策協議会を発足させ、五十三年度漁業養殖にかかわる対応策を打ち出しております。
その主な
内容は、第一に、適正養殖の
実施であり、赤潮に強く、市場性の高いタイ、チヌ、スズキなどの魚種を選定して、ハマチとの混合養殖を推進する。
第二に、過飼料による自家
汚染防止を図るとともに、飼料の効率化を図るため自動えさやり器等の開発を図る。
第三に、過密養殖をやめさせるために、月末ごとに各漁協に養殖数量を
報告させる。
第四に、現在養殖場は潮流の遅い、潮が滞留しやすいところに設けられているため、海中の酸素不足、
環境の
汚染が見られる。これを回避するため、漁場を交代する輪番使用や海底耕うんを
実施する。
第五に、赤潮の発生と同時に安全な場所へ移動させることのできる金網式小網を採用する。
第六に、一部倒産する漁家も出ているので、能力に合った経営をさせるように指導する。
第七に、万一の際の経営安定化のために、共済制度へ全員加入させる。
第八に、五十三年四月一日から県に常時赤潮対策本部を設置するとともに、各漁協単位で各地に対策本部を設置させる。
第九に、毒性の強いホルネリアに重点的に取り組み、漁協の組合員を集めて顕微鏡でのホルネリア識別研修会を
実施する。
さらに、同協議会では五十三年度も検討を続け、潮流の速さ、水深等をもとにして、適正養殖数の基準づくりを行う等であります。
また、現地の漁業
関係者からは、赤潮被害による二年物ハマチ一尾の費用が二千五百円かかっているが、ハマチ養殖共済保険からは一尾当たり千七百七十六円しか支払われていないので、せめて二千円くらいに引き上げる等、国の掛金の引き上げを図ってほしい。また、五十三年の着業資金の確保のため融資の面でも特段の配慮をお願いしたい。
赤潮発生機構等を解明するために、国立の
瀬戸内海環境科学総合研究所を引田町に設置してほしい等の要望が出されました。
瀬戸内海全域の
水質の
改善を図るため、排水中の汚濁物質の総量規制の早期
実施、下水道整備の促進及び処理技術の開発、実用化、赤潮発生の
一つの要因と見られている燐の規制、赤潮発生機構の解明を図るため、総合的な研究体制の確立を図る等、国として今後とも万全の
施策を講ずる必要があることを痛感いたしました。
以上簡単でございますが、
報告いたします。
なお、
関係県等から出されました要望書等を、別途
報告書として、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますので、
委員長がよろしくお取り計らいくださるようお願いいたします。
以上でございます。