運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-05-29 第84回国会 参議院 決算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月二十九日(月曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     三治 重信君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        茜ケ久保重光君     理 事                 斎藤 十朗君                 長谷川 信君                 野口 忠夫君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 岩崎 純三君                 河本嘉久蔵君                 北  修二君                 世耕 政隆君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 寺田 熊雄君                 丸谷 金保君                 和泉 照雄君                 沓脱タケ子君                 三治 重信君                 野末 陳平君                 江田 五月君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣  加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        内閣総理大臣官        房同和対策室長  黒川  弘君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        国土庁地方振興        局長       土屋 佳照君        外務政務次官   愛野興一郎君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵大臣官房審        議官       加藤 隆司君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵大臣官房審        議官       渡辺 喜一君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        大蔵省理財局次        長        副島 有年君        大蔵省理財局次        長        川崎 昭典君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁直税部長  水口  昭君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁長官    犬丸  直君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        食糧庁長官    澤邊  守君        通商産業大臣官        房長       宮本 四郎君        通商産業大臣官        房会計課長    小長 啓一君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        運輸省自動車局        長        中村 四郎君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省道路局長  浅井新一郎君        自治省行政局長  近藤 隆之君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        会計検査院事務        総局第三局長   松尾恭一郎君        会計検査院事務        総局第四局長   阿部 一夫君    参考人        日本道路公団理        事        吉田 喜市君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十一年度一般会計公共事業等予備費使用  総調書及び各省庁所管使用調書(その2)(  内閣提出衆議院送付) ○昭和五十一年度一般会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その2)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和五十一年度特別会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その2)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和五十一年度特別会計予算総則第十一条に基  づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額  調書(その2)(内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度一般会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その1)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計予備費使用調書及び  各省庁所管使用調書(その1)(内閣提出、  衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計予算総則第十一条に基  づく経費増額調書及び各省庁所管経費増額  調書(その1)(内閣提出衆議院送付) ○昭和五十一年度一般会計国庫債務負担行為総調  書(その2)(内閣提出) ○昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十九年度特別会計歳入歳出決算昭和四十九年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十九  年度政府関係機関決算書(第七十七回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十七回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十七回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月二十四日、田渕哲也君が委員を辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 次に、昭和五十一年度一般会計公共事業等予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外三件、昭和五十二年度一般会計予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その1)外二件、昭和五十一年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)、以上八件を一括して議題といたします。  まず、これらの説明を聴取いたします。村山大蔵大臣
  4. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま議題となりました昭和五十一年度一般会計公共事業等予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外六件の事後承諾を求める件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十一年度一般会計公共事業等予備費につきましては、その予算額は一千三百五十億円であり、このうち、財政法第三十五条の規定により、昭和五十一年十月八日から同年十二月十七日までの間において使用決定いたしました金額は一千二百四十二億九千六十九万円余であり、すでに第八十回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和五十二年三月四日から同年三月二十二日までの間において使用決定いたしました金額は二十五億九百五十万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、山林施設災害復旧事業に必要な経費等の四件、豪雪に伴う道路事業に必要な経費の二件であります。  次に、昭和五十一年度一般会計予備費につきましては、その予算額は一千五百五十億円であり、このうち、財政法第三十五条の規定により、昭和五十一年五月十四日から同年十二月十七日までの間において使用決定いたしました金額は百八十五億四千三百七十七万円余であり、すでに第八十回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和五十二年一月十八日から同年三月三十日までの間において使用決定いたしました金額は六百五十一億三千七百四十七万円余であります。  その内訳は、災害対策費として、環境衛生施設災害復旧に必要な経費等の五件、その他の経費として、国民年金国庫負担金不足を補うために必要な経費等の十四件であります。  次に、昭和五十一年度特別会計予備費につきましては、その予算総額は二兆三千二百四十五億四千百三十九万円余であり、このうち、昭和五十一年十一月十九日から同年十二月十七日までの間において使用決定いたしました金額は一千七百四十五億九千四百二十一万円余であり、すでに第八十回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和五十二年三月一日から同年三月二十九日までの間において使用決定いたしました金額は三百二十六億四千五百十万円余であります。  その内訳は、国民年金特別会計業務勘定における印紙収入国民年金勘定への繰り入れに必要な経費郵便貯金特別会計における支払い利子に必要な経費等特別会計の十一件であります。  次に、昭和五十一年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十一年五月二十八日から同年十二月十四日までの間において経費増額決定いたしました金額は六百九十五億九千六十三万円余であり、すでに第八十回国会において御承諾を得たところでありますが、その後、昭和五十二年三月一日から同年三月二十九日までの間において経費増額決定いたしました金額は八百三十三億千二百二万円余であります。  その内訳は、国民年金特別会計福祉年金勘定における福祉年金給付費支払いに必要な経費増額郵便貯金特別会計における支払い利子に必要な経費増額等特別会計の六件であります。  次に、昭和五十二年度一般会計予備費につきましては、その当初予算額は二千八百六十五億六千四百七十三万円余でありましたが、補正予算(第1号)により、二百四十五億六千四百七十三万円余を修正減少いたしましたので、改予算額は二千六百二十億円となっております。  このうち、財政法第三十五条の規定により、昭和五十二年四月二十八日から同年十二月十六日までの間において使用決定いたしました金額は一千百二十八億四千八百二十三万円余であります。その内訳は、災害対策費として、河川等災害復旧事業に必要な経費等の七件、その他の経費として、北洋漁業減船に伴う漁業者の救済に必要な経費等の二十一件であります。  次に、昭和五十二年度特別会計予備費につきましては、その当初予算総額は二兆六千六百六十六億一千七十一万円余でありましたが、補正予算(特第1号)により七十八億三千四百七十万円、補正予算(特第2号)により三十億二千四百四十四万円を修正減少いたしましたので、改予算額は二兆六千五百五十七億五千百五十六万円余となっております。  このうち、昭和五十二年九月二十日から同年十二月二十日までの間において使用決定いたしました金額は一千六百九十五億四千九百七十一万円余であります。  その内訳は、食糧管理特別会計国内米管理勘定における国内米の買い入れに必要な経費等特別会計の八件であります。  次に、昭和五十二年度特別会計予算総則第十一条の規定により、昭和五十二年五月二十七日から同年十二月十三日までの間において経費増額決定いたしました金額は三百二十四億八千五百七十九万円であります。  その内訳は、食糧管理特別会計調整勘定における国債整理基金特別会計への繰り入れに必要な経費増額等特別会計の十件であります。  以上が、昭和五十一年度一般会計公共事業等予備費使用調書及び各省庁所管使用調書(その2)外六件の事後承諾を求める件の概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御承諾くださいますようお願い申し上げます。  次に、昭和五十一年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)の報告に関する件につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十一年度一般会計におきまして、財政法第十五条第二項の規定により、災害復旧その他緊急の必要がある場合に国が債務を負担する行為をすることができる限度額は八百億円であり、このうち、昭和五十一年十一月十九日の閣議決定を経て、総額五億四千三百万円の範囲内で債務を負担することといたしたものにつきましては、すでに第八十回国会において御報告したところでありますが、その後、昭和五十二年三月四日から同年三月十五日までの間において、閣議決定を経て、総額三百十六億千九百六十五万円余の範囲内で債務を負担する行為をすることといたしました。  その内訳は、昭和五十一年発生河川等災害復旧事業費補助等の七件であります。  以上が、昭和五十一年度一般会計国庫債務負担行為総調書(その2)の報告に関する件の概要であります。     ―――――――――――――
  5. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 次に、昭和四十九年度決算外二件について、本日は締めくくり総括質疑第一回及びただいま説明を聴取いたしました予備費関係等八件を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 野口忠夫

    野口忠夫君 ただいま議題となっております決算昭和四十九年度のものでありますが、本日は締めくくり総括ということでございますので、若干、その基本問題について大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。  昭和四十九年度予算は、その前の四十八年の秋から始まった石油危機と、それに伴う狂乱物価という非常事態に対処するために、財政金融政策中心に厳しい総需要抑制策をとることを方針として編成されたものであった。その結果、この年は物価鎮静については一応の効果が見られたものと思われますけれども、経済活動水準は年初来低下の一途をたどってきて、国民所得統計の公表を始めたのはたしか昭和二十六年であったと思いますが、それ以来初めて、実質経済成長率マイナス〇・二%というマイナス成長を記録する大変な事態となったのであります。こうした経済情勢を反映して、税収は、所得税法人税中心として伸び悩み、年度末には七千七百億円という多額税収不足歳入欠陥が心配されるに至ったのであります。  こうした多額税収不足歳入欠陥は、租税及び印紙収入が当初見込みより年度後半で落ち込んだこと。中でも申告所得税法人税政府見込み違いが強く指摘されねばならないことは当然であります。このような税収の大きな見込み違いは、政府がみずからの施策についても大きな見込み違いをしていたことを証拠立てる結果となったのではないかと言わざるを得ないのでありますが、このように歳入について大きな見込み違いが出た場合の政府責任、特に財政当局責任について大蔵大臣はいまどのようにお考えか、承りたいと思う次第であります。
  7. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま野口委員御指摘のとおりに、四十九年度石油ショックの後を受けまして、初めてマイナス成長が記録された年でございます。その間の経緯をずっと歳入見積もりについて見ますと、当初予算額では一般会計分として十三兆七千六百二十億を計上いたしたのでございますが、補正で当時一兆六千百二十億の実は追加をいたしております。したがいまして、補正予算額は十五兆三千七百四十億で計上いたしたのでございますけれども、その後経済は急に物価鎮静、また加えまして企業収益の減少、あるいは年末におけるボーナス等経済の実勢を反映いたしまして急速に縮小いたしまして、補正予算額に対しまして、おっしゃるように七千七百十一億の歳入不足を生じたのでございます。その内訳を見てみますと、源泉所得税で千六十億、申告所得税で三千五百四十六億の減が出ました。法人税は六百三十九億でございまして、その他合わせまして七千七百十一億でございます。  つまり言いかえますと、補正額で一兆六千百二十億見積もりましたが、七千七百十一億だけはこの一兆六千億からは減ったのでございまして、まあ初めからよく経済状況がわかっておれば、およそ九千億ぐらいの増しか見積もれなかったにもかかわらず、一兆六千百二十億、これを計上いたしたことによりまして、結果的に七千七百十一億出たのでございます。  このような、財政当局といたしましては、やはり経済企画庁の経済見込みをもとにいたしましてそして税収見積もりを出すわけでございますけれども、経済見通しも変わってまいりましたし、またしたがって、税収の方も変動を生じてしまったのでございます。しかし財政当局としては、やはりもっと精緻な、経済見通しとそれと税収見積もりの間の開差をもっと縮めることができなかったかどうか、そのことをいま反省いたしておるのでございます。いずれにいたしましても、財政当局としては的確な見通しを立てる必要がございますので、きわめて遺憾なことと存じております。  なお、事後措置について申し上げますと、七千七百十一億の歳入不足に対しまして、このとき四月まで、そのときまでは法定納期限で決めておりまして、法定納期限の三月までに来たものをその年分税収としておきましたが、この年初めて、三月末までに租税債権が発生しまして収納が四月になる分も当該年度歳入にいたしまして、四千三百三十億オフセットいたしたのでございます。残る金額の三千四百億程度につきましては、その他の収入での増がございまして、まあようやく事なきを得たのでございますけれども、いずれにいたしましても、これは経済変動期における財政租税収入見込みの的確を期するという意味において、財政当局としては非常に貴重な、また苦い経験になったのでございます。  大体以上のようなことでございまして、いずれにいたしましても、もっと的確な歳入見積もりをやるべきであるといういい教訓を得たと、かように承知しておるところでございます。
  8. 野口忠夫

    野口忠夫君 時間がないものですから、たくさん質問の要綱があって、大臣各位には皆さんおいでを願っていて、質問できないでしまったんではこれは済まないと思うので、答弁はなるべく簡潔にお願いしたいと思うのですが、私はいま、こういう見込み違いについて財政当局責任を感じないかと、こういうことをお尋ねしたわけであります。なかなか容易ではないけれども、的確性を欠いたことについては非常に責任をやっぱり感じなけりゃならぬという御答弁であったと思うのですが、四十九年度における財政経済政策評価をするということになりますと、やっぱり総需要抑制策妥当性、これの一体可否評価になろうと思うのですけれども、インフレの収束ということは確かに最重要な課題には違いなかったと思います。しかし、物価の安定にのみ心を奪われていた政府は、その抑制策によって深刻化しつつあった経済界不況に対しては有効適切な手を打たないで、結局物価の安定と引きかえに、その後の日本経済を長い長い不況の底に沈めてしまい、倒産、失業、自殺をする者なども出るという深刻な結果に国民を落とし込めてしまったこととなると思います。  また、当然国の財政も毎年歳入欠陥に悩まされ、五十年度以降は毎年赤字公債の発行に追い込まれ、五十三年度は、許されてよいかどうかわからないようなパーセントの借金財政に落ち込んでしまったと。このような事態は、実に四十九年度から引き続く政府財政運営経済政策の失敗によるものと言わざるを得ないと思うんですけれども、やはり国民の今日的状態倒産の中の苦しみ、自殺をする者も出るという今日的状態の中で、こうした結果に対する責任というものはやっぱり明らかでなければならぬと思うんですけれども、ひとつ大蔵大臣のもう一度重ねて反省の弁を承りたいというふうに思うわけであります。
  9. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 当時――いまわれわれも思い出しているわけでございますが、当時は国会における議論も、すべて狂乱物価をいかにして鎮静させるかという一点に集中しておったのでございます。当時、もう五月ごろでございまして、国会は延長されておりましたが、五十年三月末の消費者物価が何%になるかということは、これは与野党を挙げまして政府に迫っている状況であったわけでございます。また、四十八年並びに四十九年は、御承知のようにオイルショックによりまして日本卸売物価は三〇%を超える物価騰貴でございます。消費者物価も二十数%、実にそれ以前に比べますと、卸売物価におきましては十五倍のスピードで伸びていました。消費者物価におきましても五倍ぐらいのスピードで伸びておったのでございまして、当時の命題としては、日本はこの狂乱物価をいかに抑制するか、これが私は至上命令であったということをいま思い出しているのでございます。  そういう意味で申しますれば、私はあのときとりました総需要抑制政策、これはやはり一つの大きな成功の原因でなかったであろうかと思っているのでございます。確かにそのことによりまして企業収益は悪くなりました。しかし同時に、ほどよくやるということはどこの国でもむずかしいのでございまして、今日各国の状況を見てみますと、まだあの当時のインフレにそのまま苦しんでいる国もございます。そしてまた、いままた新しいインフレの起きている国もあるわけでございます。今日日本のデフレーターが世界先進国の中で最低の水準にあるということは、私はやはり当時の総需要抑制策が大きく響いておる、それのたまものであると思うのでございます。そういう意味で、私は日本財政経済史を見るときに、世界の歴史の中の一つ成功の例として考えていいのではないかとさえ思っておるのでございます。評価はいろいろあると思いますが、私はあのときの至上命令インフレ抑制にあったことに間違いない、かように考えているところでございます。
  10. 野口忠夫

    野口忠夫君 ちょっと議論になるところでございまして、時間がないものですから申し上げるわけにいきませんが、まさか大蔵大臣は、今日の不況の段階はやむを得なかったとおっしゃるのではなかろうと思うわけであります。インフレ物価物価高と不況というものが同時に進行したというこのスタグフレーションという一つの問題に対して、あの当時は物価の方に、その極に向かった。今回は、五十三年度予算は物すごく今度は景気の方に向いていると。矛盾する二つの問題の両極の間を行ったり来たりするような政策、そこから国民は、一喜一憂しながら非常に苦しい状態も生まれてきた。やっぱり総需要抑制策とあわせて、当時不況の問題も考えなければならなかったのではなかろうかと、私はそういうふうに考えられるわけですけれども、どうも両極の間を行ったり来たりするだけで、国民往復びんたを与えるような経済政策財政政策だけで本当の意味での日本安定経済成長の道は開けるのかどうか、若干その点疑問なんですけれども、まあ一応の評価は、確かに物価鎮静したということはあろうと思うんです。私は、その方は認めているんです。だが、今日の不況をつくったのもそのときから生まれているということを言ったわけでありまして、これはひとつなおその他の機会でやりたいと思うんです。  先ほどの七千七百億の赤字の解消のために、いわゆる税の前倒しということをやられました。四十九年度多額税収不足に見舞われることがはっきりした昭和五十年の四月になって、政府がこの急場をしのぐためにとった財政上の措置にいわゆる税の前倒しというのがあるが、私はこれも問題ではなかったか。  政府は、昭和四十九年度税収が約七千億円不足するという歳入欠陥の心配のあることを、五十年度予算が成立した直後に認めまして、その穴埋めとして国税収納金整理資金に関する法律施行令、これは政令です、これを改正して、従来、新年度税収とされていた四月分の税収の一定部分を前年度繰り入れるため、五十年四月十五日に政令改正を行った。この措置により取り込んだ額は約四千三百三十億円となっていると言われます。  こうした前倒し措置は、確かに法令上は政令改正ですることができる。しかし、このような財政上の措置は、やっぱり国会の意向を確認してなさるべきではなかったろうか。それが憲法八十三条に規定する財政民主主義の精神に沿った財政の処理方法だと思うが、大蔵大臣は一体どのように考えておられますか。また、予算執行の単年度主義の原則を踏みにじるようなものだとも思われるのでございますけれども、大蔵大臣の見解を承っておきたいと思います。
  11. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ある年度歳入を、たとえば租税につきましてどのような原則で立てるか、これはやはり国で決めるべきことであろうと思うのでございます。先ほども申しましたように、租税債権年度内に発生したものにつきまして、四月末までに収納したものを新たに取り込んだわけでございます。租税債権はすでに発生しているわけでございますので、私は、租税債権の租税収入の年度所属区分としては、それは決して不適当であるということは言えないのではないであろうか。これはむしろ技術的な問題でございまして、当時は高度成長時代が続いておりましたので法定納期限で決めておったのでございますが、発生主義によってやることは決して私は財政原則を乱しているものとは考えない。むしろその間の、低成長になりましたその穴を埋めるために四月までを取り込んだわけでございます。  今度も、御承知のように前倒しをさしていただきました。今度は整理期間の終了であります五月末までをとらしていただいたのでございます。整理期間でございますから、これ以上延びることはないと思いますが、そういう意味で申し上げますれば、年度所属分の原則的な誤りを犯していると、そういうことではないであろう、かように考えております。
  12. 野口忠夫

    野口忠夫君 私の申し上げたのは、政令改正でやってしまったことについて、財政民主主義の立場において、一方的にやられることについて問題がなかろうか。五十三年度の問題につきましては、これは法律改正でございますから、国会で審議をしてやったわけでありますけれども、四十九年度に関しては、あなたの方で勝手におやりになったということになるわけであります。これが財政民主主義の方向を逸脱しないかと、こういう点をお聞きしたわけでございますけれども、時間がありませんので次に移ります。  次は、先ほどと関連しますが、政府の景気対策についてであります。政府が七%の経済成長を達成しようとして打ち出しておりまする景気対策というものは、相変わらず公定歩合の引き下げによる金利の引き下げあるいは公共事業投資の拡大という決まり切ったやり方で押し通してきているように思われます。しかし、景気の現状を見ると、全く効果がないとは言いませんけれども、どうも景気が回復に向かっていると胸を張れるような状況ではないようであります。  まず、企業の設備投資はすでに過剰なのであるから、多少金利が下がったからといって上向くとは当分考えられないと思います。また、公共事業についても、事業の実施に当たる地方自治体などからは、施行能力の面がもう限界に来ているというような声も上がっております。ほんのいっとき、景気の上向くことがあるかもしれませんけれども、何かすぐに息切れするのではないかと思われるような今日の政策ではないかと思います。  こうした面から考えてみても、政府の金利引き下げ、公共事業投資重点政策一辺倒のやり方では、真の景気回復はむずかしいと考えざるを得ないのでありますが、この点について大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  13. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 最近の経済指標を見ておりますと、私たちが予算編成当時の状況から見ましてかなり私は明るい面がたくさん出ていると思っておるのでございます。生産指数にいたしましても、出荷にいたしましても、ここのところ五カ月ぐらい引き続き上昇に向かっております。特に生産の絶対水準は、かつての石油ショック前のピークをいま超えるに至っております。それから在庫の方の調整も非常に順調に進んでおりまして、その意味で申しますと、これから公共投資の積み増しが在庫との関連において効果が出てくるのではなかろうか、そのように思っておるのでございまして、すでに官需はもちろんでございますけれども、民需の受注状況も予想よりよろしくなっておるのでございます。また、企業収益に対する見通し等もだんだん時とともに民間の予測もよくなりつつございます。設備投資につきましては、ことしの経済見通しでそのように余り多くは期待いたさなかったのでございまして、名目で九・九ぐらいでございますが、すでに民間調査ではそれを超えまして一〇%以上になるであろうという調査機関もたくさん出ておるのでございまして、私は大体いま七%成長の軌道に乗りつつあるのではなかろうかと思っております。  御懸念の公共事業の消化の問題、あるいは下半期における息切れの問題と、こういうことを御指摘でございますけれども、われわれが見ておりますと、その心配は私はないように思っておるのでございます。大体公共事業の契約の成約率を見ましても、五十二年度末で九八・一%、過去最高でございます。それから五十三年度分の四月分を見ましても、これは非常にきわめて順調にいっております。それから契約後、一体工事量としてはどうなるかと、こうずっと見てまいりますと、大体七カ月ぐらい普通かかるようでございますので、契約率がかなり前倒しになりましても、工事量としては私は年度いっぱい順調にもっていくのではなかろうかと、これは今後の問題でございますけれども、私たちがいろんな面から試算いたしまして、まずまずいまのところは順調にいっているように考えているのでございます。
  14. 野口忠夫

    野口忠夫君 大蔵大臣の大変自信あることでございまして、大体経済成長は確実に七%いくであろうと、この決算委員会の席上で御答弁になられましたので、私もそのようにいくことを願いたいと思うんですけれども、どうもその発言とはいつもうらはらにうまくない方向にいっているものですから、以上の質問をしたわけでございます。  息切れについてはそういうことはないと思うと、公共事業で景気を回復しようとするやり方が息切れがない、続いてそうしたことが行われていくという背景に、本当の景気回復というのはやっぱり私は国民総支出の五七%を占めると言われる個人消費が低迷していてはだめなんではなかろうかというふうに考えるわけであります。個人消費については最近これもやや上向きではあるようでございますけれども、しかし、その伸び方などを見ると、相変わらず低調と言うべきであろうと思うんです。  個人の消費需要がこのように伸び悩んでいるのは、やはり不況によってこのところ賃金の上昇が低く抑えられている、個人の所得がふえないことと、一方には物価、公共料金の引き上げなどによって相変わらず上昇気配があるのでございますので、こうしたことから生活に不安を感じている庶民が、できる限り消費を切り詰めていこうとするからであろうと思うんです。政府の景気対策は、金利引き下げ、公共事業拡大だけでなく、このような個人の所得をふやすこと、消費需要をふやすこと、これをあわせて考えていかなければならぬのではなかろうかと思うのでありますが、ただ単なる公共事業、公定歩合引き下げ一本ではなしに、個人の消費需要というものをあわせて考えながらその施策をやっぱり持っていくべきではなかろうか。一方的にのみ考えていないで相対的に考えていく必要があろうかと思うんですけれども、この点について大蔵大臣はどうですか。
  15. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 個人消費の伸びを考える場合には、あくまでも私は実質で考えるべきであろうと思うのでございます。したがいまして、確かにおっしゃるように、名目賃金が上がるということ自体、それは望ましいことでございますが、それがすぐ物価騰貴につながってしまえば何にもならぬのでございます。御承知のように、現在卸売物価は対前年二・一%ぐらいのマイナスになっております。世界では恐らくないのではないかと思います。それからまた、四月の消費者物価もだんだん対前年下がりまして、いま三・九でございますから、ですから、物価世界において最も安定している国であるわけでございます。そういうことを反映いたしまして、名目賃金の伸びがわりと少ないにもかかわらず、実質の賃金あるいは実質の消費支出はこの一、二カ月かなり順調に伸びつつあるのでございまして、いずれも三%台を超えて伸びておるというところを見ますと、私はやはり個人の消費支出という問題は物価との相関関係で考えなくちゃならないと思っておるのでございます。  そしてまた、民間企業の方が、いまの施策が成功いたしますれば、たとえば単なる名目賃金が幾ら上がるというようなことだけではなくって、いわば時間外労働が伸びてくるとか、あるいは将来の問題でございますけれども、収益が上がりますればやはり賞与がよけいになってくるとか、そういうことによりまして実質賃金並びに実質消費が伸びると、こういう側面にも同時に注意していかねばならぬのでございまして、私はまずまずそこの点はいまのところ順調に推移しているように思っておるところでございます。
  16. 野口忠夫

    野口忠夫君 非常に物価鎮静化して、それが実質賃金にはね返ってきて、決してそんなに苦しいものではないのではないかと。現実にしかし経済企画庁あたりの発表でも、消費需要の伸びというのはまことにこれは進まないと、やはりどうも冷え込んでいって経済成長七%の土台としては若干どうも不安であるというようなことは当委員会でも発表になっているわけでありますから、大蔵大臣の言われる現在の計数の中で、数字の上で見たものだけではなしに、これはいよいよ景気が回復していくわいと、ひとつ私も買い物をしようじゃないかという個人消費の需要というような方向の気分を出すためには、景気回復をしていく土台としての消費需要を増大するためには、いまのお言葉だけでは決してそれは伸びてこないのではなかろうか。むしろ貯蓄の方に回ってしまったり、あしたの生活不安の防衛のためという方向で、公共料金、物価等の値上げの将来に対してもやはり不安を持つ、ことに来年度以降大増税などということを考えておられるようでありますから、結局景気というのはそういう国民心理、そういうものをどのような方向に向けていくかということだと思うんです。  単に数字を何ぼ言っても、国民自体がそれによって消費需要が増大していくというようなことにはならぬと、こう考える中で、やはり賃金の問題についても減税の問題についても、その消費需要を喚起する方向で財政当局がやっぱり進めていくと、こういうやっぱり政治の方向性が出ていなくちゃいかぬじゃなかろうか。それは見たところ下がったからもう大丈夫ですと言うだけでは、いわば安定経済成長に向かっていくであろう日本経済の土台をつくり上げていくところにならぬじゃないかというように思うわけであります。  総需要抑制策の効果もその点ではよかったわけです。しかし、それだけに走っていって、果たして国民全体から見た場合、特定の人々にはそれが成長の所以はあったにしても、全体としてはまことに不満が多かったというような、そういう結果に終わってしまっているわけでしょう。どうにもできないこうした状態の中に、経済不況の谷間に落ち込んだ。これをいま打開しようとするときに、消費需要の増大というのはおのずから起こってくるであろう、成功しているのであろうというような推測だけでは、政治として、政策として、景気回復をする個人消費の増大というような方向には、私は何のプラスにもないのではなかろうかというふうに思うわけでありますけれども、やはり春闘の賃金が非常に低位であった。これは、まあ政府は、賃金問題については介入しないということを言っておりますけれども、政府の方針がやっぱり影響したということはもう大方の認めているところであろうと思います。減税はまた貯蓄に回るというようなことで、ごくわずかやりましたけれども、私どもはこれは提唱しておりますけれども、やっぱり兆円台の減税を実施して、個人の消費を増大するというような方向の思い切った政策というものが取り上げられるべきではなかろうかというふうに思うわけであります。  自信のほどだけお伺いいたしましたけれども、国民の直接的な毎日の生活感情から言えば、それが本当に国民の中に定着していくような方向にはなっていない。やはり公共事業といっても大企業優先ではなかろうか。その中で倒産の続く中小企業の皆さん方の不満というものも深刻化していくであろう。こういう中で、全国民的な景気に対する回復策を、減税とかあるいは賃金の問題とかの中でやっぱり考えていくような政策が望まれるのではないかという考え方をするわけでありますけれども、もう時間がありませんので、それについてのお答えは求めないことにいたします。  文部大臣が十一時までで退席なさるそうでございますので、まだ財政問題は残っておるのでございますけれども、中断いたしまして、文部大臣に対する御質問を申し上げたいと思うわけであります。  砂田文部大臣は、非常にユニークな方であられまして、学校ではやっぱりジャズなんかもやった方がいいんじゃないかみたいなお話もあったように聞いておりますけれども、教育というものが、何か、かたくなに権力の中に埋没してしまいまして、自主創造性というようなものが失われるときに日本の将来というのは非常に不安だという考えの中で申し上げますと、そうした大臣の姿勢について非常に好感を持つものでございますが、今回、学習指導要領がゆとりのある教育、落ちこぼれの子供たちを救っていこうと、こういう大きな子供たちの幸せに向かっての教育改定が行われたわけでございますけれども、この学習指導要領の改定の中に、実は従来までは「君が代」として扱われてきた教育的な問題が、「国歌「君が代」」ということに改定されたわけでございます。どうも学習指導要領というものの中に、いろいろな改定があって、修正があって、まことによい方向に向きつつある中に、「国歌「君が代」」というものを入れたということの趣旨が私はどうもわからないわけです。  教育過程審議会の審議の過程では、その性格の明確化については一度も取り上げられていない。この改定学習指導要領に載せるという段階で、この問題が審議会の中では一度も論議されていない。現に、当時の審議会会長であった高村象平先生も、これは全く知らなかったと言っていらっしゃるわけなんですね。私たちの調べたところによりましても、五十一年末の教育課程審議会の答申にはもちろんございませんし、文部省自身の第一次案、第二次案、これにも国歌というようなことの明記は何一つなかった、そういうことは。二次案ができ上がりましてから最終案になるまでの一カ月足らずの間に、突然「君が代」国歌論が出てきて指導要領の中に明文化されたと、こう言われているわけであります。  一体どういう経緯がその中にあったのか。世論調査とか、国会の発言とか、定着とか、そんな理由はもう結構でございます。いままでるるそういうことはあったようですけれども、それはもう結構です。なぜ教育過程審議会で何にも議論もしていないものを突如としてここに入れることになったのか、その経過を実は伺いたいわけであります。また、こんな重大な問題を国会で十分な議論もされてないものを、審議会というようなものもこれ抜いてしまってこうしたものを入れるということが一体許されるのかどうか。政府は、都合のいいときは審議会を隠れみのにして、都合の悪いときは審議会抜きでやるといった、審議会軽視をすべきではないと思うが、文部大臣はどう考えますか。これでは教育過程審議会の審議会の権威も私は落ちていくのではなかろうか。今日、日本の教育が負うている大きな歴史的な使命を考えた場合、日本民主化の過程の中における教育の持っている使命の上に立って考えた場合、余りにもこの辺のところが不明朗であり、わからない。一体この「国歌「君が代」」という言葉を指導要領の中に載せていくまでの経過、これについて大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  17. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 学校教育におきます国旗、国歌につきましての指導は、明治三十三年以来、社会、音楽等の教科や特別活動で行ってまいったところでございます。特に特別活動の学校行事におきまして、国民の祝日などにおいて儀式などを行う場合に、児童、生徒に対してこれらの祝日などの意義を理解させるとともに、国旗を掲揚し、「君が代」を斉唱させることが望ましいとして、先般の学習指導要領改定までやってまいったわけでございます。昨年の学習指導要領の改定におきましては、「君が代」が、長年の慣行によって、わが国の国歌であるという認識が広く国民の間に定着しておるところでございます。先生、定着というような、そんなもう説明は要らないのだとおっしゃいますけれども、これやはり現実の事実でございますので、さようにお答えをするしかないのでありますが、また、国際的な関係がますます緊密化してまいりました今日の状況におきまして、国旗とともに、国歌に対する尊重の念と親愛の念を育てることの必要を考慮いたしまして、「君が代」を国歌とした次第でございます。  なお、教育過程審議会の答申というものは、学習指導要領上の表現までには及んでいないのが従来の通例になっているところでございます。また、今回の学習指導要領の改定に当たりましては、その案を広く公表をいたしまして、各方面の御意見を承ったわけでございます。その段階におきましても、「君が代」を国歌として理解することについて、大方の率直な国民感情からは当然のことと受けとめられたという判断をいたしたわけでございます。そういうことから、その公表をいたしました、広く御意見を承りました案について、変更いたさずに国歌と制定をしたわけでございます。
  18. 野口忠夫

    野口忠夫君 定着をしている、それから国会でも答弁があった、世論調査では総理府の世論調査等で明らかだ、それはそれとして、あったとしましょうか。文部省がそういうもので、国歌「君が代」であると、子供たちにこれを今後指導しなさいというようなことを言える権限が文部省にはあるんですか、これは。私はそういうものがあったならばあるいは文部省が主宰してもいいと思いますけれども、何らかの国民的合意を得る方法での機関というものを設置されるとか、話し合いをするとかの方法があると思うんですよ。審議会にも出さない。そして一次案、二次案にもなかった。たまたま国会終了後の最終案決定までの一カ月間に突如としてこの問題が入った。こういう決めつけ方で、これが全国の子供たちの上にかぶっていく指導要領の中にこれを載せたということですね。  私の調査の中にもあるんですけれども、明治のころにこの「君が代」をつくるときも、あの帝国憲法のもとにおいてつくるときにもいろいろな議論があったそうですよ。その議論の中で、結果的には教科書の方にまず載せたということなんですね。そして子供たちの頭の中にまず国歌を植えつけて国民的な合意を得ようとした。これは教育の中立性に対してある政策意図を持ったものとして大きなやっぱり意欲を示したものと、過去の実態としては批判されると思うんですね。一体文部省はそういういろんな状態の中に立って、これを国歌だと、こう決めつけるだけの権限が、そしてそれを教育の中に取り入れるということが、教育過程審議会も知らないで一方的にできるものかどうか、文部大臣の見解を承りたいと思います。
  19. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 諸外国におきましても、国旗、国歌に関します制定形式等はいろいろな国々によって異なっております。長い歴史の間に、国民共通の感情によって国旗、国歌として結晶したものも多いわけでございまして、日の丸がわが国の国旗であって、「君が代」がわが国の国歌であるという認識は広く国民の間に定着をしてまいっております。政府といたしましても、日の丸を国旗として、「君が代」を国歌として考えておりますことは、従来からこれまでも明らかにしてまいったところでございます。そこで、文部省としてもこれらのことを受けまして、教育上の配慮から、学習指導要領において国旗、国歌として示したものでございます。先頭を切って文部省が独断専行、独善的な措置をしたのではなくて、政府として、従来から日の丸を国旗として、「君が代」を国歌として考えてまいりましたことを、国会の場でも明確にし続けてまいっております。国民の間にもそれが定着をしてまいっております。文部省はそれを受けて学習指導要領に国歌として明確にしたわけでございます。
  20. 野口忠夫

    野口忠夫君 国歌として、国旗として、国会の中でも政府側もとり続けてきたということはちょっと間違いじゃなかろうか。「国歌「君が代」」という言葉が入ったのは今度の指導要領が初めてです。それまでは「君が代」として歌ってきたわけです。今度の指導要領が初めてです。国会の中で国旗、国歌に対する答弁を求められたのは三木内閣総理大臣のときに初めてです。そのときに、衆議院段階における永井文部大臣のお答えは、「君が代」としてやっておりますと、それを私たちは認めておりますという答弁をしております。参議院に来まして重ねてこの問題の質問がありまして、当時の速記録を拝見いたしますと、あなたは一体どこの国の文部大臣だと、まことにけしからぬ発言だというような問題の中で、永井文部大臣も国歌として認めるというような御返答になった。この二回だけですよ。これで国会の中は国歌「君が代」、国旗、それをみんなで確認してきたのだということにはならないと思うんです。私はそう思いますね。  世論の定着したという問題は、国歌「君が代」の問題は多数決によって決める問題ではなかろうと私は思うんですよ。  実は、私は福島県に帰りまして地元に行って、親たちとこの問題を話をしてみましたけれども、賛成の方もあります。反対の方の根拠は戦争にあります。天皇様にあのときの責任を問うようなことを再びしてはなるまいと、これからの天皇様は私たちの父親なんだ、またぞろこういうものを出してきてあの当時の思いを再現していくのか、私は儀式において国歌「君が代」として学校が扱う場合は、私の子供はその儀式には参加させない、どうも理解に苦しむ、その経過の上から見ても理解に苦しむ、私の父親はその「君が代」を歌いながら死んでいったんだと。遺児として、未亡人として苦しんできた多くの遺族の皆さんの前で、そういう「君が代」を私たちがいま歌うという心境にはならぬと。こういうように、数は少なくても土台は深刻。文部省として考えるべきことは、こういう国民に対して本当に喜んで心から歌えるような国歌をつくり上げていくことではなかろうか。  私は、日本の教育を担当する最高の責任者である文部省、文部大臣が、この国民の中に残った傷跡をいやしながら、日本の国に対する愛情と国に対する責任とを感ずるような方向で国歌を考えていくというようなことこそ大事ではなかろうかと思うんですがね。私もこれは代表質問で質問を申し上げましたが、総理は、野口さん、あなた国旗、国歌のない国はないでしょう、何をおっしゃっているんですかという、まことに軽やかな御返事をいただきました。砂田文部大臣からは、先ほどの総理の答弁のとおりでございますという御答弁を受けているわけです。私の聞いたのはそういうことじゃなかったわけですね。本当に喜んで全国民の歌える国歌をつくり上げる先頭に文部大臣が立つならば私はわかります。だれにも話をしない。前三木大臣のころに、わずかに問い詰められて、そして問い詰められながら答えたその答えの中ではいろいろのことを考えていたと私は思うんですよ。これでは本当に国民がみんなで歌う国歌にはならぬじゃないかというように思うわけであります。  この指導要領の改定のところを見ますと、「国歌を齊唱させることが望ましい。」となっておりますね。この「望ましい」という言い方からいたしますと、たとえば学校の中で教師と校長先生とが意見が衝突したとか、父兄の皆さんからいろいろな議論が出てきたような場合には、これは決して強行するものではないという指導要領の精神でございますか。文部省としてはその辺のところを一体どうなさるか。と同時に、この国歌を歌う儀式等には私の子供は出さないというような父兄が出てきた場合、これは一体法的にどういうことになるのかと、大臣の見解も承っておきたいのです。
  21. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 国歌というものを多数決で決定するべきものではないという先生の御趣旨には私も全く同感でございます。ですから、新しい国歌を制定するために文部大臣が先頭に立てということは、私にはちょっと理解がしにくいことでございます。やはり総理府が何回もの世論調査をやってまいりまして、その世論調査の結果は、年を経るに従って国歌「君が代」が定着度が高まっているという厳然たる事実を私どもは判断をいたすわけでございます。確かに国民の一部の方々の中には、戦争中に大変つらい、いやな、苦しい目に遭われた、そのことと「君が代」が結びついておられる方々がある現実を私も承知をいたすものでございます。ごもっともだと思います。しかし、国民の大勢がやはり「君が代」、国歌というものを非常に定着的に率直に受けとめておられる、そして今日の平和憲法を持ちますわが国、その国歌「君が代」というものがそんなに好戦的なことに使われているわけではない。国家間の交流におきましても、あるいはスポーツにおきましても、やはり平和国家日本を象徴する国歌「君が代」として外国でもまた定着をされてきているということもまた厳然たる事実でございます。そのことを一部の国民の皆様方にだんだん御理解を願わなければならない努力をする責任を私は感じますけれども、そのことによって、国歌「君が代」というものを素直に、率直に受けとめておられる大勢の国民の方々に対しても、私はそう軽々に考え直すという立場に立つものではございません。  しかし、いま申し上げましたように、一部の方が戦争中の非常につらい思いをなさったそのことと「君が代」とを結びつけて感じておられるということは、人の心の問題でございます。人の心を統制できるなどとは、毛頭思い上がった気持ちを持っておりませんから、もしも学校等の行事において自分の子供をそこに参加させないという御父兄が今日ありましても、それはいたし方ないことだと考えなければなりません。法的にどういう措置をするかというお尋ねでございましたけれども、法的措置などをするべきことだとは考えません。しかし、父兄の中にはやはり国歌、国旗というものを尊重する態度、それを子供たちに育成していくべきだという方の方が非常に多くあるわけでございます。それもまた事実でございますから、いまおっしゃいましたような、子供たちを学校の儀式に参加させないという方がそう大ぜいあるとは私は考えられないのでございます。
  22. 野口忠夫

    野口忠夫君 これは非常に議論があるところでございまして、文部大臣としてはもうそうしてしまったんですからそう言わざるを得ないかと思いますけれども、「望ましい」についてはいかがでございますか、「望ましい」ということは。
  23. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 国民的な常識で定着をしております国歌「君が代」でございますから、国家権力をもって強制するというようなものではございません。したがって、「望ましい」という言葉はまさに望ましいと私どもは判断をしているわけでございます。
  24. 野口忠夫

    野口忠夫君 学校現場に対して望ましいんですね。裁量権があるということでですね。学校の校長先生と教頭、先生方が相談していろんなことを考え合って議論をして、それでとるかとらぬかということを決めることについては、これは「望ましい」ですから大胆答弁のとおりですね。それで差し支えないでしょうね。
  25. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 事、国歌のことでございますし、学校行事のことでありますから、校長先生、管理職の方々、教員の方々、そしてまた父兄の意見も徴しながら学校現場でお決めになるのが望ましいということでございます。
  26. 野口忠夫

    野口忠夫君 どうも問題非常にまだまだ残っておりまして、これはもちろん委員会等は文教委員会等でもっと議論さるべきだと思うんですが、私も大分資料いっぱい用意してまいりましたが、大臣の時間もないようですから以上で終わっておきます。
  27. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ちょっと文部大臣、委員長から特に……。  いまの答弁ね、したがって、学校が「君が代」を歌わせないということを決めても、文部省はその学校に対して何ら処置はしないということですね、文部大臣。
  28. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 学習指導要領には「望ましい」と書いてございますので、望ましいというのが私どもの気持ちでございます。
  29. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) したがって、それを歌わぬということになっても、文部省はその学校に対して何らの処置をしないということでしょう。もう一遍、文部大臣。
  30. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 国民の間に定着している国歌「君が代」でございますから、歌わせないというように決める学校はまずないだろうと私は考えております。
  31. 野口忠夫

    野口忠夫君 後でゆっくり今度は時間を――きょうはいま十五分ぐらいきりないわけなんで、どうも不満です。だれがそうしたのか不満なんですよ。わからないです。私にはわかりません。  それじゃ大蔵大臣の方に戻って、あと二十二分くらいあります、十分ばかり大蔵大臣にお聞きしますが、これからの日本経済財政立て直しというようなもので、国民としては大幅な減税を望んでいるという声が強いんですけれども、増税に向かってこれは進もうとしているわけでありますが、現在の税制及び財政運営について国民が抱いている不平、不満というものの解消、これにはほとんど手をつけようとしない、ただただ増税路線を進んでいく、こういうことになっているようでありますが、政府としては、それほど今日の財政困窮の中で増税を必要とするならば、その前に、まず現在国民の抱いている不平、不満というものを取り除く努力というものを払わなければならぬと思います。その上で初めて国民に増税はどうだと、こう号令をかけるべきではなかろうか。  こうした国民の不平、不満のうち幾つかについて伺いたいんですが、一つはまず税の不公平であります。負担の公平が税の大原則であるということはもう釈迦に説法であろうと思います。しかるに、現行の税制上には幾多の不公平があります。国の政策として制度的に不公平につくられているものが少なくなく、大多数の庶民には厳しくて、大企業や医師、配当所得生活者などの強者には数々の優遇措置が講じられております。しかも、制度的な不公平ばかりではありません。課税の対象となる収入の捕捉という徴税技術の上でも、トーゴーサンなどと言われる不公平が生じていることはこれまでも機会あるごとに指摘されてきたところであります。このようなことでは、大多数国民の納税意欲は減退するのみであって、ひいては、政治、行政に対する国民の不信を増幅させる結果とならないか。このような中で政府のやり方を見ていますと、こうした税の不公平には全く目をつぶって、しかも増税路線を推し進めようとしているのであって、余りにも大多数国民の感情を無視したやり方ではないか。大蔵大臣の見解として、この税の不公平ということについてはどうお考えになっておりますか、お聞きしたいと思います。
  32. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まず前段の問題でございますけれども、御承知のように、いま先進国の中で租税負担の最も軽いのは日本であるということは御承知のとおりでございます。国民所得の割合から申しましても二割を切っているという国はないのでございます。大体の国は大体租税負担率は三割をちょっと超えているところでございまして、英国あたりは三割七分ぐらいいっておるのでございます。特にその中で見ますと、所得税は大体二分の一程度、住民税を含めましてそれぐらいになっております。課税最低限は世界で最も高い水準を示しております。間接税は大体三分の一というのが常識になっているのでございます。通じまして、大体特に重い国に比べまして租税負担は、国税、地方税を含めて約三分の二というところに来ていることを御注目願いたいのでございます。しかし、今日のような状況でございますので、何よりも景気の振興が先であるということでことしのような臨時異例の財政措置をとらしていただきました。  しかし、このままやっていくということは長続きしないということは当然のことでございまして、皆さん御心配になっております財政から来るインフレという問題もそれはやはり心配していかなければならぬのでございます。しかし、一般的な歳出の優先度の選択、あるいは今後一般的な負担の増加という問題は、国民の福祉とかあるいは所要の経費を賄うというために避けられないところであるといたしましても、その前にいま野口委員がおっしゃるように、税における不公平を直さにゃならぬという点は全く同感でございます。政府も鋭意その問題に向かいまして逐年やっているところでございます。特に企業関係につきましては逐年やってまいりまして、この三年間は急速に改善の跡が見られていると思っております。ただ、企業税制につきまして、いわゆる不公平税制という中で大きく主張が分かれておりますのは、たとえば企業会計原則等で認められる引当金、これも不公平税制の中に数えている人がありますが、私はそういう考えを持っていないのでございます。また、配当の二重課税の調整の仕方、これは法人税所得税の基本的仕組みの問題でございます。これも不公平税制に数えている人はございますけれども、われわれはその立場をとらないのでございます。そういう意味で、やはり不公平税制一般という問題につきましてはわれわれも非常に気を使いまして今後やっていくつもりでございます。  全体を見てみますと、今日のいわゆる租税の特別措置による減収額のうちでやっぱり大きな部分を占めているのは、どちらかと申しますと所得税系統であるわけでございます。法人税もございますけれども、逆に交際費の課税というようなことで、ほとんど法人税総額といたしましては大体とんとんぐらいになっております。その分を除いて計算いたしますと、大企業分とそれから中小企業分はほぼ半々ぐらいのかっこうになっているのでございますが、私は今後とも引き続きいわゆる企業関係の不公平税制につきましては、時代の要請に応じまして、やはりかなり厳格な検討を加えてまいる所存でございます。  一方、所得税につきましては、御案内のように医師の優遇という問題、これにつきましては現在の制度は五十三年度限りにいたしますということをわが党が言っております。われわれもわが党と協力いたしまして、現行の措置は今年度限りにいたしたいと、かような決意を持っているところでございます。  また一方、利子のいわゆる総合課税の問題あるいは有価証券の譲渡益に対する課税の問題につきましては、しばしば申し上げているように、非常にテクニカルにむずかしい問題でございます。用意なくして急にやりますとかえって大きな不公平が生じますので、実効のある方法をいかにしたらとり得るかということを政府の税制調査会を中心にいたしましていま検討を加えているところでございます。しかし、この問題につきましては少し時間がかかりますので、しばらくの間時間をおかし願いたい。  いずれにいたしましても、一般的な負担の増加を求めるといたしますと、やはりおっしゃるように、税制の不公平というものの是正という問題はそれの前に解決しなければならぬ問題であろう、この点はいま野口委員と同感でございます。
  33. 野口忠夫

    野口忠夫君 全く時間がありませんで、医師の優遇税制の問題、いま大臣からお話があったわけでございますが、お医者さんの所得を確保しようという意味で、診療報酬の引き上げ幅の少なかった理由からこれが生まれてきたという経緯を持っていると思うんですけれども、この間大蔵省が発表した所得の番付を見ますと、この番付の中にお医者さんが大分いっぱい入っておる。あなたの所管の国税庁が、この間不当な過少申告の――これは私は脱税と、こう言いたいんですけれども、大蔵省としては脱税とは見ないようで、申告が少なかったというようなことで言っているようでございますけれども、これで見ましても、お医者さん方の方がまたこれ上位番付の方に並んでいる。まさに医師の優遇税制というものは今日的状態の中ではもう存在する理由はなくなっているんではなかろうか、こういうことにいま国民の感情としては受け取っているわけですね。  そういう中で、大蔵大臣はいま五十三年度というお約束でやっているのだ、これでやめようとしていると言うのだが、この間、政府・与党の方でこの問題について見送るというような意思の決定をなさっているような新聞報道を見たわけでございますが、五十三年度限りで医師の優遇税制というのはもうやめる、これには間違いない、技術上むずかしいのでちょっと時間はかかるがおやめになる、こういう先ほどの御発言と承っておきますが、結構でございますか。
  34. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 現行の医師の優遇制度は五十三年度限りで廃止する、こういうことをわが党が約束いたしておるのでございますので、党の作業と相あわせまして、政府もこれと協力して、現行制度は少なくとも五十三年度限りで廃止したい、かように申し上げておるところでございます。
  35. 野口忠夫

    野口忠夫君 もう時間がないのですが、予備費ですね、予備費の使用。これは大体予算的な状態を決算委員会でやることになるのが予備費の状態であろうと思うわけでありますが、この予見せざるものを予備費に組み込むという中で、五十一年度、五十三年度に見ましたこの公共事業予備費というのは、いろいろ御説明がいままでありましたけれども、どうも納得できないですね。政策的な予見というものは当然なされるであろう予備費、五十三年度で言えば景気回復のための公共事業の予備費である、こういう予備費の自由裁量の範囲を拡大していくということは、これは非常に財政民主主義の上から問題ではなかろうか。憲法で規定しており、財政法規定している予備費というのは、将来予見せざるところの予備費を使うということになっているわけですね。しかし、今回とられた公共事業補助費というこの事業の予備費というのは、政策予備費であって、それを推進しようとする過程の中でもう考えているやつは本予算にとるべきではなかろうかと思うのですがね。何で大蔵大臣の自由裁量の中にこれを持ち込んでいくのだろうか。国会の審議というものをすうっと抜けた方向にだんだんふえていく。これはやっぱり総合予算主義の中で五十一年度などがやられたようですけれども、今年度は景気が悪い、非常に財政的に下安定である、だから補正予算を組まない、こういうことで総合予算主義というものを五十一年度にとりましたけれども、予算編成方針の中にはそれは書いてないのですね。何か補正予算をとらないということの中で予備費の方に重点が移っていく、政策課題であるところの景気回復のために公共事業予備費というのが大きく予備費の中に位置を占める。憲法で保障するこの予見されないという問題ですね、現に予見され、政策的に意図を持っているものまで予備費に組み込むということについては非常に疑問を感ずるわけでありますが、五十一年度公共事業予備費、それから五十三年度の公共事業予備費、いろいろの答弁はあるわけですけれども、私の見解について簡単に御答弁願いたいと思います。
  36. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 公共事業等予備費も、やはり憲法上あるいは財政上認められた予備費には違いございません。つまり、予備費と申しますのは、予見しがたい経費の支出に充てるために当該経費予算不足を生じた場合にのみ認められるのでございます。そしてその予備費につきましては、あらかじめ国会承諾が、議決が必要でございます。そしてまた予備費を支出した場合には、事後におきまして国会承諾を経ることが規定されているわけでございます。したがいまして、その意味におきまして、一般の予備費であろうと、公共事業予備費であろうと、その性格に変わりございません。したがって、五十三年度予算においても国会の議決を経さしていただいたのでございます。  ただ、公共事業予備費というのは、具体例で申しますと、ことし一般の予備費が三千億、公共事業等予備費が二千億でございます。それを合わせて五千億にしてお願いするという方法もあったのでございますけれども、みずから、その二千億につきましては公共事業等にしか使えない、そういう制約を逆に課したわけでございますので、一般に五千億にするよりも、三千億と二千億で、二千億の方を公共事業予備費にした方がかえってその支出についてはみずから縛られているわけでございます。予見しがたいということ、それから本閥が不足であるという条件は両方かぶっているわけでございますので、決して財政のいわば国会議決主義というものに反しているわけではなくて、逆にみずから制約を課していると、このように御理解願いたいのでございます。
  37. 野口忠夫

    野口忠夫君 なぜそれを本予算の方に回さないんですか。予備費の中になぜとるのかということです。予備費というのは少ない方がいい、国会の立場で申し上げますと。真にやむを得ざる、予見しがたかったものについてのみ大蔵大臣の権限でこれを予算化することを認めている。それを大蔵大臣の裁量範囲というのをずっと――予算委員会でなるほどその二項目決定したことはわかります。しかし、あなたの予算的な措置をしたことについては、決算委員会でその問題を論議せざるを得ないわけです。ここできりそのことの正否を判断することができないわけでございますから、私どもとしてはそういう見解で、私はやっぱり何で予備費に組むんだろうかという疑問は消えてなくなりません。時間がありませんから、お話しのことではわからない。  これほど、景気回復ということが福田内閣の政策課題としては重点課題でございましょう。その重点課題で推進するものを予備費にとってやらねばならないという理屈がわからぬのですよ。自分が、みずから制約をしたなんて言うけれども、何で本予算の方で制約しないんですか。それを予見しがたいと言うているところに予備費の性格はがらっと変わっていくんではなかろうか。  食糧庁長官がおいでになっているかもしれませんが、米の生産者米価、あれは全部上がった分は予備費から出しておいて、七百億近い金を予備費から出している。労働者の、公務員の賃金等を見ますと、常に本予算の中に、人事院勧告が出ない以前に五%の賃金は確保しているはずなんです。しかし、米の問題に関してはまだ一銭もこれは確保しない。そして、農民が生産に間に合わないから上げてくれというときがくると、食管会計は赤字でこれはだめだ、こういうお断り方をなさる。審議会が決定されなければ予算にできない、だから予備費である。予見しがたいものであるという解釈をするならば、公務員の人事院勧告前の賃金も、これもまた予見しがたいものとして予備費から出す、こうなるんではなかろうかと思うんですが、長い間、前年度の米価だけの算定で一銭の値上げも見ないで全額これを予備費の中から提出すると、この辺のところ、どうも納得得がたいもので予備費が拡大になっていく。憲法並びに財政法上で規定している、予見しがたい範囲というものが政府側の独断的な方向での問題としていくように思われる。  総理並びに通産大臣等が外国においでになりました旅費などにつきましても、これは予備費ということについてはよっぽど厳格に考えてもらわにゃ困ると思うんですね。総理がロンドン会議に行くなんていうのが予備費から出ている。この重要な問題で行く総理大臣の旅費は予備費から出されている。そうかと思うと、通産大臣がASEANに行ったときの旅費は通産省の旅費の中でやったというんだね。そんなに旅費って余っているもんでしょうか。余った予算早く食わなけりゃうまくねえなんて言ってやるんじゃないですか、これは。通産大臣のASEAN旅費は余った金だと思うんですよ、予算には。すると、来年度予算の要求のときには、これも含まれて要求される、こういうことになってくると思うんですけれども、本当に公的な措置の中の予備費の厳正というものを改めて考え直してもらわなきゃいかぬと思うわけであります。  最後に、環境庁長官と自治大臣がおられますので、これ時間があと二分でございますから、答弁する方はそっちでやってもらいたい、これは。  次にお尋ねしたいのは、最近における国会における政府担当大臣の答弁、公約ですね。われわれへの公約に対して、全くその場限りの空念仏に終わる事例がまことに多くなってきたのではないかというように考えられるわけであります。決算というのは、ある年度の施策遂行のための予算審議を通して、審議経過の中で大臣が何と言った、政府関係者はこう言ったというこの答弁というのは非常に重要なポイントであろうと思うわけであります。その答弁の上に予算というのを決定されているわけですから、そして決算の場に来るわけでございますので、決算委員会の立場としては、こういう空念仏による公約をやっていてはうまくないのじゃないか。申すまでもなく、憲法第四十一条に定められたとおり、国会は国権の最高機関である。国民の厳粛な信託にこたえるための責任は重かつ大だと言わなければなりません。政府担当大臣の、みずからの発言に対してその責任を感ぜず、その誠実履行の義務を放棄する国会軽視のこの態度は許すことはできないと私は思います。当然その責任は問われなければならないと思うのであります。  その具体的事例として、環境アセスメント法案の国会提出についての問題、地方事務官身分移管の問題についての地方自治法改正の問題について、両者ともに国会審議の経過の中ではその実現に約束があり、その提出する期日までも約束してあったものだと私は考えられます。いかなる理由があるにしても、国会に対してなされました発言の責任というのは消滅するものではないと私は考えます。どんな理由があるにしろ、国会の中で、少なくとも大臣が、総理が答弁をなすったことに対しての責任は負わねばならないし、もし通らないときには職をなげうってもやっぱりこれに対して対抗していくということが国会に対する皆さん方の態度でなければならぬと私は思うのでありますが、何か運輸省の方から運輸関係の法律の改正が出て、いかにも地方事務官の身分の問題は解消したみたいなことが出ておりますが、内容を拝見しましたところ、まことこもってこれはわれわれの言ってきた従来の主張とは全く相反する。地方自治体における身分移管の問題について、混乱している行政機構の改善の問題について、三十年来この問題をやってきた。それが、今回運輸省からああいうものが出ておりますが、ひとつ自治大臣としては、地方事務官問題はこれによって解消したというような考え方でおられるのかどうか、お尋ねしたい。  環境庁長官には、あなたの部下が、今度諌早ですか、あすこで自然保護大会というのがありましたね。そこに参事官が出席なさいまして、保護大会の状況はわかっていると思うのですけれども、自然保護大会の皆さん方は、環境庁の威信いまいずこにありや、環境庁は後退の一途をたどってわれわれ国民の苦しみというやつを捨てていくのか、環境庁設置の理由は一体何であったかということを厳しく問い詰められて、参事官はしどろもどろの答弁に終わったというような新聞記事を私はけさほど見てまいりました。  私も、環境公害特別委員会の中で、前石原環境庁長官に、環境アセスメント法案はいつ出すのかということについて、今年度は必ず出すという約束をしていただいたわけであります。残念ながら三大公害と言われるこの苦しみの中にいる国民の期待を裏切って、今回もまたこれは見送りになってしまったわけでございますけれども、何度約束してもだめだだめだとこう流れていくこのあり方について、国会というところは一体どういうところなんだと、どうでもいいところなのか、こういう考え方を国民に持たせることは日本の民主主義の危機だと私は言わざるを得ないと思うんです。何やかの問題を抱えて、われわれはいま厳粛に国民の信頼を取り戻すための精いっぱいの努力をやっぱりするべきだと思うんですけれども、いろいろな経過はあったかもしれませんけれども、通らなくなってしまったというような話、提出がないというお話を聞きまして、環境庁長官のひとつお話を承って、私は終わりたいと思うんです。
  38. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 地方事務官制度につきましては、しばしば国会におきまして総理も答弁をいたしておりますし、私からもまた答弁をいたしてまいっておるところでございまして、答弁をいたしたことにつきまして責任を持って誠心誠意努力をしてまいらなければならぬことは申すまでもないことでございます。そこで、御承知のように、昨年暮れ閣議決定をいたしまして、行政制度の改革について、行政改革の推進について閣議決定を見ておるところでございまして、この閣議決定の骨子となりますところは、厚生事務官と労働事務官につきましては二年以内に解決を図る、運輸事務官につきましては今国会での解決を図ると、かような基本の方針であったことは御承知願っておるとおりでございます。そこで、厚生並びに労働関係につきましては、目標年次を頭に置きながら、関係省庁と鋭意努力をしてまいらなければならぬのでございますし、運輸事務官制度につきましては、ただいま国会に法案を上程いたしまして御審議をいただくと、かような取り運びに相なっておるのであります。  ただ、御審議いただくことになっております運輸事務官関係の法案が完全な解決とは言いがたいのでありまして、その中身は、車検登録は国の事務といたしまして、国家公務員がこれに当たることになり、運輸行政事務につきましては引き続き検討いたすと、かような、見方によっては中途半端な解決だと、かような言い方もできようかと思うのでございますが、関係省庁間で議のまとまりましたものをとりあえず上程いたしまして、残った問題につきましては今後さらに検討を進めてまいりたいと、かように考えておるところであります。
  39. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 環境のアセスメント法案でございまするが、環境の影響を事前に評価する、そうしてまた地域住民に十分の発言の機会を与える、できればそれを、公正な意見をくみ取るということ、そしてまた環境評価のでき得れば統一した基準、手法というものをつくり上げるということにつきましては、原則として各方面もその必要を認めている点であると、こう確信いたしております。したがいまして、これの法制化につきましては、無論これの及ぼす業態というものの多岐にわたること、そしてまたその実態の複雑性、われわれは決して軽視しているものではありません。したがって、これについては、今国会においてでき縛ればこれはひとつ出したいという方針を持ちまして非常な努力を払ってまいりました。一ころよりも一般の認識も非常に浸透してまいりましたし、まあおおむね日の目を見るというようなところに至り得る点までわれわれの努力が実ってまいったと私は確信しておった次第でございます。しかしながら、最終の段階において、まあこの世界のいまのいろんな状況等に照らして、統一した一つのものを法制化するという点では、まだ定見と申しますか、時期尚早であろうという反対の意見、にもかかわらずやはりこの機においてこの基本的な点についてのルール、これを確立すべきであると、この意見が対立いたしまして、結局最終の結論に到達し得なかった。まあそういう状況において、今回も非常に残念ながらこれを見送らざるを得ないということに相なったことは、はなはだ遺憾に考えております。  にもかかわらず、わが党においても、この問題の制度の必要性ということに対しては一致した認識を持っておりますし、したがいまして、わが国の国土になじんだような一つの制度を実現していくということの必要性につきましては、党と政府一体になりましてひとつ今後も精力的にこれをやっていこうと、この方針に従いまして政府もひとつさらに努力を続けていきたい、これが今日の状況でございまして、われわれも引き続きその方針をもって臨んでいきたいと、こう考えている次第でございまして、御了承を得たいと思います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は大蔵大臣に週休二日制の問題でお尋ねをしたいと思います。  週休二日制の問題につきましては、まあ銀行法十八条の関係で、大蔵大臣の御所管の範囲というのが非常に大きいわけですね。で、前の大平大蔵大臣は、この問題で非常に積極的な御答弁をなさっておられたわけですね。これは、衆議院の大蔵委員会で、一両年以内にめどをつけたいというようなことを御答弁になって、それがきっかけで非常にこの問題が進展をいたしまして、ことに衆議院の方は、大蔵委員会の中に金融機関の週休二日制に関する小委員会までできまして、ついにこの小委員会が五十三年、ことしの三月二十八日ですか、金融機関の週休二日制に関する決議をなさったわけであります。これは、金融機関の方が週休二日制の実施に踏み切るということがわが国の民間企業の週休二日制の実現に大きな影響力を持つということ、それから、ちょうど公務員の週休二日制の実施がやはり同じような影響力を持つであろうと、両者がまあ推進役になってほしいという気持ちが私どもにありますね。公務員の方もある程度、いま試行期間中だと言われておりますけれども、大蔵大臣のいままでの国会における御答弁、これはまあ参議院大蔵委員会における御答弁、それから、このいま申し上げた金融機関の週休二日制に関する小委員会における御答弁、こういうものを読んで大方のことは承知しておるのでありますけれども、これについて大蔵大臣がどういうお考えを持ち、どういう決意のもとにこの実現を図ろうとしておられるのか、そういう点についてまずお伺いいたしたいと思います。
  41. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま寺田委員御指摘のとおり、大平大蔵大臣のときに衆議院の大蔵委員会におきましてこの問題が大きく取り上げられました。そこで、内閣で週休二日制並びに定年制に関する閣僚懇談会が初めて設けられまして、その後関係各省間の事務レベルでもう数次にわたりましてこれを検討いたしておるのでございます。  一方、この問題は銀行法の改正に関係いたしますので、金融制度調査会におきましてもまた別の角度からこの問題を鋭意検討してまいってきたところでございます。金融制度調査会の方の大体の方向でございますけれども、まず、果たして完全に週休二日制を阻害しておるネックは何かと、それをまず除去しなくちゃならぬ、こういうことでございます。すでに交代制による、いわゆる普通で言う週休二日制は各銀行でもある程度行われておるわけでございますけれども、完全に休むということは果たしてできるかどうか、そこに問題の論議の焦点が集中されているわけでございます。  いろいろアンケートを取ってみますと、どうもその一つは、利用者側から申しまして、中小企業の方々がやはりたとえば土曜日休まれるということは非常に金融の関係で困るとか、あるいはこのごろは消費者金融がずいぶん盛んになりまして、月給取りの方が土曜日の午後にでもいろいろ住宅金融のローンの相談に行くとか、あるいは条件の変更に行くとかいうことでございまして、そのときに金融機関に休まれては困るというような世論がまだ非常に一般的であるわけでございます。だから、それを一体どういうふうにしてやっていくかという問題が片やございます。  もう一つ参考人としてこれは大蔵委員会で参議院の方でも全銀協の会長を呼んだわけでございますが、銀行側といたしましても、われわれは銀行法の改正が利用者の御理解が得られればいつでも銀行自身としてはそれに対応するだけの姿勢は持っております、しかし、実際問題として、そのときは郵便局がやっているとかあるいは農協がやっているということでは、非常に金融の分野においてはからざるいろんな資金の流れが違ってくる、そういうことでは困るので、もし週休二日制ができる場合には、郵便局もまた農協等も同じ歩調をとってもらわにゃ困る、この二つの問題。利用者の問題、それからいわば競合関係にございます金融機関をどうするか、こういうところに問題がいま集約されているわけでございます。  したがいまして、今回の今度の国会におきます衆議院の委員会の決議あるいは参議院の大蔵委員会における決議も、それらの問題を早く解決して一刻も早くやるように政府は精力的に勉強をしろ、こういう御注文をいただいております。私たちもその方向に向かいまして鋭意努力してまいりたい、これが私たちのいま持っておりますスタンスでございまして、できるだけ早く実現さしたいものだと、このように考えているところでございます。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま大蔵大臣、銀行では銀行員が交代で休んでいる、したがって部分的な週休二日制といいますか、これがある程度実現しているというふうにおっしゃったわけですね。ただ、私どもが週休二日制を促進するのには、銀行員の健康、人間たるにふさわしい生活を確保しようという、その面からの要求と同時に、銀行が休むことによって一般の企業の週休二日制を推進させる、そういう推進的な機能といいますか、それに期待する面がありますね。ですから、いま大蔵大臣がおっしゃった面は、半面はなるほどある程度緒についたということが言えるでしょうが、しかし、やはり業務それ自体を休まないと、私どもがもう一つの面から要請しているという、その方の機能がまだ全然緒についていないわけですね。  そこで、この点について大蔵大臣は、いま中小企業が休まれては困るという、そういうまだ一般的な気持ちを持っているというふうにおっしゃったわけですけれども、国会のさまざまな議論を見てみますというと、何か大蔵省におかれて、最近世論調査ですか、これをなさったようですね。そのときにキャッシュディスペンサーですか、現金の引き出しなどができる、そういう何か機械化を進める、あるいは預金も閉店時においても可能にするような機械化を進めるということであれば必ずしも反対ではない、賛成であるというのがすでに五〇%を超えているという、これは銀行局長の何か御答弁があるようですね。そういうことを考えますと、これはやはり中小企業の方も必ずしもそう深い堀があるようにも思われませんし、また、そういう改革に対する反対意見というものを顧慮しておったのでは、何らかの改革というものが容易に進まないという私ども日常の体験もありますし、ここは少しやはり大蔵省が積極的に進めてほしい。  いま郵便局や農協の問題が出ましたが、こういうのも、おっしゃるとおり一緒に並行的に進められるべきものでしょう、そのために各省庁の連絡の協議があるわけですから。どうでしょうかね、何か金融制度調査会ですか、この方は、いままでの御答弁ですと、ちょっと、来年銀行法全般の改正についての答申がなされるであろうというようなふうに御答弁になっておりますね。そして銀行局長の御答弁ですと、この銀行法の改正が国会に上るというのは大体再来年のような御答弁もあるようですが、大蔵大臣、これは銀行法十八条だけを切り離して改正するというお気持ちがありますか。それとも、やはり銀行法全般の見直しの中でないと困るというのでしょうか。その点いかがでしょうか。一応これは大蔵大臣の御意見を伺って、それから後補足してくださいますか。
  43. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま寺田さんがおっしゃったように、確かに両面あるわけでございます。私たちは完全実施という点に主としてねらいをつけているわけでございます。おっしゃるように、アンケート調査におきまして、預金の引き出しが自動的にできれば相当緩和されるという御意見もございます。その点もわれわれは十分心得ているわけでございまして、そしてまた参議院でございましたか、全体の答申の前に、これを切り離して、この分だけ切り離してやったらどうかという御意見、貴重な御意見も承っておりますので、そういった問題を踏まえまして、その方向で検討さしていただきたいと思っておるところでございます。しかし、いずれにいたしましても郵便貯金との関係もございますし、あれはまあ公務員でございますので、この辺両々相まちましてできるだけ早い機会に促進してまいりたい、基本的にはそういう構えでおるわけでございます。
  44. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 金融制度調査会におきましては、銀行の週休二日制問題は取引、サービスはいかにあるべきかということとの関連で昨年の秋以降検討をしたわけでございます。その結果につきましては、十二月の総会で中間的な集約といいますか、行ったわけでございますが、大体の方向としては、十八条を弾力化するという方向で考えるべきだということであったと思います。ただ、現時点におきましては、まだ国民的なコンセンサスといいますか、金融機関の利用者も含め、その他関連のもろもろの問題を含めましてコンセンサスができておるというふうには理解できないと、先ほどのお話のありましたアンケートの結果その他を見ましても、なおこれに対する批判的な意見もかなりあるわけでございまして、そういう意味で、いま直ちにこの十八条だけを切り離して早急に改正するという時期ではないという判断であったかと思います。したがって、現在の段階におきましては銀行法全体の改正との絡みでこの十八条の改正も取り上げる。特にいろいろな問題を金融制度調査会で討議いたしておるわけですが、それらの問題は相互にそれぞれ関連がある、したがって、一わたり全体の問題を討議し終わったところでまた振り返って全体をながめると、こういう作業も要るんではないかということで、一応は銀行法改正全体としてこの問題も取り上げた方がいいんではないか。ただ、客観的な情勢が早急にこれから熟して、この問題を切り離して改正すべきだというふうな事態がもし参った場合は、そういう場合においてはこの十八条を銀行法一般の改正から切り離して特別に検討をすると、こういうことも考えてよいと、こういうふうな結論であったかと思うわけでございます。
  45. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いままでこの問題を渋る最大の論拠が、まだコンセンサスが得られていないということのようですね。これはあなた方だけでなくして、銀行協会など初めですね。だから、一〇〇%のコンセンサスというのは不可能でしょうから、だからあなた方の世論調査でも、すでに預金の引き出しあるいは預金そのものが可能になれば構わないというのがたしか五〇%超えていましたね。だから、大体の多数が得られるならば踏み切っていいんではないだろうかという私どもの考え方ですが、少なくももうちょっと積極的になるためにはやはりその環境づくりが必要なわけでしょう。環境づくりとしてはいろいろ考えられるんですが、どういう環境づくりを考えておられるんでしょう、また実施しておられるんでしょう、それを伺いたいと思うんですが。
  46. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 環境づくりに関しましては、   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕 特に全銀協を中心に一般の国民の世論誘導を図ってまいっておるわけでございます。全銀協に広報委員会というのがございまして、そこで新聞広告をしたりあるいは個別にお得意さんにいろいろ呼びかけたりというふうなことで説得をいたしておりますし、それから具体的には、土曜日、非常に郊外の住宅団地等は逆に銀行の窓口が通常の日より混み合うというふうなことになっておりまして、そういう状況ではなかなか土曜日を店を閉めるということもむずかしくなるものでございますので、土曜日はお客さんにできるだけほかの日を利用するようにお願いをする。たとえば手形を切る場合、土曜日に決済日が来ないような切り方をしていただくとか、あるいはいろいろな住宅相談その他につきましても、土曜以外の窓口をできるだけ御利用くださいというふうなことをお願いいたしておるわけでございます。それから、銀行側にとりましても、できるだけ土曜日の仕事を節約する。たとえば外訪活動、土曜日に外務員が集金その他に回るとか、そういうことはできるだけやらないようにしようというふうな申し合わせをいたしたりということをやっておるわけでございます。  最近お話しのように衆参の大蔵委員会でこの問題に関します決議その他があったわけでございますが、それを受けまして、私どもさらに全銀協に呼びかけまして、いつでも必要の場合は週休二日に移れるような体制づくりをこれから急いでやるべきだと、こういうことで、現在全銀協にこの問題のための専務、常務クラスの特別委員会というものをこの五月に設けさせまして、現在それを中心に、その下に実務家を集めた個別の小委員会をつくって検討を進めておると、こういう段階になっておるわけでございます。
  47. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大蔵大臣、あなたがたしか参議院の大蔵委員会でことしの四月二十一日ですね、こういうふうな御答弁になっていますね。「金融制度調査会の答申をできるだけ精力的に進めまして、来春ぐらいには何とかうまくいくんじゃないだろうかと、こう思っておるわけでございますので、その上で検討してまいりたいと思いますが、しかしそれまでの間に、完全に店を閉めるのでなくっても、一歩でも二歩でもやはり前進していくことが大事ではないかと私は思っているのでございます。」と。これは御記憶ですか。わが党の福間委員の質問に対してこう答えているのですがね。この御答弁はどうなんでしょうね。銀行法十八条の改正で一挙に土曜を休日に加えるというところまでいかなくても、たとえば土曜のうち第一土曜と第三土曜を中間的に休日に加えると、そういうような構想も含んでいるんでしょうか、どうでしょうか。
  48. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) あのときお答えしましたときの私の心の中にありましたのは、要するにいずれにしろ店を完全に閉めるということが非常にむずかしいということなのでございます。そういう意味で、隔週に店を閉めるということは、やはりそれができれば私は全部できると思っておるのでございます。問題はやはりそうでなくて、土曜日になるべく、いま審議官が答えましたように、銀行を利用しないようにしてくださいというPRをどんどん進めていって、事実上あるできるだけ早い機会にやめてもそれほど支障がないという情勢を一般的にやったらいかがなものであろうか。金融制度調査会なり、郵便局がどうなるかわかりませんけれども、それが来たときに利用者が非常にあわてるようでは困るということで、事実上の対応関係を早く進めた方が、もうこれからでもどんどん進めていった方が、いずれ決定したときにショックが少ないし移行が早いのではないかと、こういうつもりで申し上げたつもりでございます。隔週やれるということを実は余り考えていなかったのでございます。
  49. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま審議官も詳しく環境づくりを述べられて、大臣も一歩でも二歩でも前進と言うのは、結局閉店ですか、休日としてもショックが少ないように緩和するような状態をつくり出す、そこにあるんだということでした。審議官のお話の中には、手形の支払い期日を土曜日にかからないようにすることも一つの方法だということがありましたけれども、それに関連して、各県庁あるいは大きな市の市役所などには銀行の出店がありますね、それぞれ。したがって、政府支払いあるいは政府のさまざまな機関の支払いあるいは公団、公社、それから自治体の支払い、そういうようなものをいまおっしゃったように土曜日の支払いを一切やめるというようなことは、これは政府の一存で可能ですわね。そういうような構想はないんでしょうか。
  50. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 週休二日制問題に関します各省庁の関係省庁連絡会議というのがございまして、そこの場で、私どもといたしましては、できるだけそういう政府あるいは政府関係機関の支払い等につきましては配慮してもらいたいということをお願いいたしておるわけでございます。
  51. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、この問題が論議されてもうずいぶん久しいわけでね。たしか関係閣僚懇談会ができたのは四十七年じゃなかったですか。そうすると、もうすでに五十三年まで六十年を経過しているわけですね。もし本当に熱意があるならば、その環境づくりで政府がなし得ることぐらいはこれはできない道理はないわけでしょう、政府支払いなんだから、または政府関係機関の支払いなんだから。自治体は、これは政府がやれば恐らく右へならえするでしょうから。だから大蔵大臣、これは関係各省庁にお願いしているというような問題じゃなくって、大蔵大臣があの大平大蔵大臣が示したような積極性をお持ちになれば、これは閣議でそれを主張し、それを実現させることは決して困難ではないと思うんですが、大蔵大臣いかがでしょう。
  52. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま野田委員がおっしゃったことも十分検討してみたいと思います。  ただ、金融でございますので、一方政府支払いは仮にやらないとする、しかし中小企業なりその他の人たちがやはり手形を切る、政府支払い資金を当てにして手形を切るという慣習がございますと、やはりそこは詰まってしまうわけでございます。資金はずっと流れているものでございますので、それも一つの方法かと思いますが、よく検討さしていただきたいと思うのでございます。  基本は何と申しましても、寺田委員も十分――釈迦に説法でございますけれども、これをやります場合には単に銀行法の改正だけにはとどまりませんで、すべて手形・小切手法の改正を伴いますし、また国税通則法の関係、税金の関係はどうなるんだと、こういう一切の金融取引全般がその日はまあ言ってみますととまってしまうわけでございますので、その辺との兼ね合いも考えながら、いま寺田委員が言ったことが技術的に可能であるかどうか、その辺十分検討してみたいと思っています。
  53. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 財政金融のことではもう大蔵大臣の方が私どもよりはるかによく御存じなので、これはお考えいただきたいと思うんですけれども、中小企業のことをおっしゃったけれども、それならば支払い期日を一日早めればいいわけですからね。土曜日に支払いしなければ中小企業は困るという、そういう実情にはないですし、論拠もありません。ですから、それは支払いを二日早めて木曜にするとか、一日早めて金曜にするということで賄えるわけでしょう。急がなければ月曜にすると、そういう配慮は政府支払いの場合は十分可能だし、それは自分がやるんですもの。それから公団、公社の場合も、自分が政府のそれは意思決定でできますからね。ですから、これは大蔵大臣、十分検討するとおっしゃったけれども、これは大蔵大臣の本当に意欲の問題だと思うんですよ。環境づくりという面では非常に重要な意味を持ちますので、ひとつ積極的に前向きに検討して努力していただきたいと思うんです。いかがでしょう。
  54. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 十分検討さしていただきます。
  55. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは大蔵大臣の御誠意を信頼することにいたします。  それから根本的に、私は銀行の営業日を法律で規定するという、まあ公共的な役割りが大きいものですから自由に休まれては困るという気持ちはわかるけれども、これはまだ不勉強で十分研究するいとまがなかったんだけれども、どこの国でもみんな法律で営業日を規定しておりますか、この点ちょっとお知らせいただきたい。
  56. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 主要な先進国においてはそういう例は少ないかと思います。
  57. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私も、どうも資本主義社会で企業の休日を法律で定めるという、それは銀行の公共的役割りを重視したからだというそういうアポロジーはできるけれども、多少疑問を抱いたので、これは後で各国のそういう事例を一覧表にして出してください。よろしいか、ちょっと。
  58. 渡辺喜一

    政府委員(渡辺喜一君) 資料がございますかどうか、ただいまちょっと確信を持ってお答えできませんが、できる範囲で調べた上でお答えをいたしたいと思います。
  59. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、いま医師優遇税制の問題で、これは野口委員からも御質問があって、大臣御答弁になりましたけれども、これは金融制度調査会で再三にわたって決議がなされておるわけで、金融制度調査会というものの評価といいますか、これは大蔵省が実際どの程度しておられるのかは知る由もないけれども、これを大切なものと思っておられるならば、その答申というものは相当尊重すべきものだと思いますし、いま一般の世論も、医師優遇税制の問題では政府を叱咤激励していると言っていいんじゃないでしょうか。そういうことを考えますと、何かこの問題でいままで大蔵大臣、それから総理大臣も含めて御答弁になっているのを見てみますというと、何か自由民主党のこれに対する積極的な対応を期待するかのごとき、そういう何かちょっと及び腰の態度が見えますね。そうでしょう。もし本当におやりになるという決意があるならば、これは政府提案でもいいわけですね。しかし、大臣のこれは予算委員会、ことしの二月四日の御答弁を読んでみますと、   いまの税制は五十三年度限りにしよう、ここでピリオドを打ってしまう、そして一年かかっていまのいろいろ関連する問題もあわせ検討しよう、そのための議員立法をわが党の方で出したい、  と、これはここで、大臣というよりは自民党員としての答弁になってしまっているんですよね。   こういうことでございます。これはまた私は一つの考え方であると思いまして、政府の方もそれを期待し、  と、今度は大臣にまた返りまして、   そして党の検討並びにピリオドを打つということと相まちまして、今後並行的に検討してまいりたい、  と。それから、内閣総理大臣も、   五十三年度をもって特別措置は終わりにする。終わりにすると五十四年から一体どうするか、こういう問題が起こりますが、それにつきましては、それまでの間にひとつ検討して具体案をつくりましょう、こういうことで、妥協というか折衷といいますか、そういう現実的な考え方を打ち出したわけです。   私も、それも一つ具体的な考え方としてかなりこれは魅力がある考え方だな、こういうふうに考えまして、ひとつそういう方向でお願いしたい、自由民主党はそういう考え方のもとに立ちまして議員立法を考える、こう言っておりますので、その考え方によってこの問題を最終的に処理する、こういうことにしたらどうかな、こういうふうに思っているのです。  と。これは、自由民主党の方でやってくれるという、それを期待するという非常に及び腰の態度ですね。これは本当にやるという御決意があるんでしょうか。それとも自由民主党に期待するんだと、自由民主党がしてくれなきゃしようがないんだと、こういうんでしょうか、どっちでしょう。
  60. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは寺田委員も御承知かと思うのでございますが、そもそもできましたのが昭和二十九年でございまして、これは議員立法でございます。しかも与野党一致の議員立法でできたのでございます。当時私も政府におりましたけれども、政府の意見を求められまして、反対であるということを強く申し述べたところでございます。問題は一点単価と実は絡んでおったわけでございますが、それがそのまま、しばしば医療制度の改正が行われたにもかかわらず、まだ一点単価の問題と絡んでいるということで今日まで来たわけでございます。  政府の税制調査会におきましては、この問題は早く解決すべきであるとしばしば提言がございまして、政府もそのたびに立案いたしまして、しかし政府・与党の間でございますので、与党側の理解を得られなければ国会提出できないのでございます。そして、しばしばやりましたけれども、最後のところでやはり政府・与党との意思の統一が得られなかったというその現実問題をわれわれはよく知っているのでございます。  したがいまして、法案の成立の過程といい、そしていままでこれが実現がされなかった経緯を踏まえますと、今度わが自由民主党が、現在の制度は今年度限りにするという決意を表明してくれたのはまさに初めてであるわけでございます。したがいまして、私は、従来の経緯から言いまして一つの現実的な解決の方法である、そういうことで、党の方で案をつくると、こう言っておりますので、われわれもそれに精力的に協力いたしまして、そうして現在の制度は今年限りとして、そして適切な、妥当な改正をぜひやりたいものと、政府・与党一体となってやる決意を持っておるのもそういう事情にあるということを御理解賜りたいのでございます。
  61. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあ大臣の個人の正しいお気持ちというのはよくわかるんです。ただ、議員立法なるがゆえにそれを改正するのは議員立法でなきゃいけないということはありませんわね。まあしかし、その方が滑らかにいくということはわかりますけどね。大臣としてはどうなんでしょうかね。党が提案しなければそれはやむを得ないというんでしょうか。それとも、党が提案しなければ政府が提案するぞという、そこまでの決意がおありなんでしょうか。あるいは、もう党が決意せず出さないなんということは考えられないというんでしょうか。どうでしょう。
  62. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) あれだけはっきり言っているわけでございますので、党が出さないなどということ、案をつくらないなどということはいま全然考えておりません。したがいまして、党と協力して一緒にいい案をつくりたいと、かように思っておるところでございます。
  63. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは、それも大臣の御誠意を信頼してお任せをするということにいたしまして、次に国債の問題をお尋ねしたいんです。  国債がどういうふうにふえていくだろうかという問題と、それからどういうふうに償還していくんだろうか。余りにも膨大なので、将来国債の価値というものがこれは下落するというようなことは全くないんだろうか、またインフレのおそれというものはないんだろうかということをわれわれは非常に考えざるを得ないわけですね。何とか国債を出す歯どめというものはないだろうかというようなこともいろいろ考えます。  政府がお出しになりました「財政収支試算」というものがありますね。これによりますと、五十二年度から五十七年度の国債費というものがずっと書いてあるんです。それから、ここには載ってないけれども、赤字公債が五十年からずっと出ておりますね。これが二兆二千九百億、三兆四千億、それから四兆五千億、四兆九千億とずっとふえていきますね。そうすると、この国債費、それからまた、六十年からはこの赤字公債というのは現金で償還していくということになりますね。それが可能になる前提として、増税額が五十四年度に一兆九千億、五十五年度に二兆三千七百億、五十六年度に二兆七千二百億、五十七年度に三兆三千四百億、合計して十兆三千三百億、これは試算のケースCという、一番あなた方が可能性が多いということを言っておられるんだけれども、そうすると、五十七年度は七兆三千億の公債費。恐らくこれは六十年までは同じような――大体五十二年度から見てみますと一兆円ずつふえていっていますよね、五十七年度まで。公債費は大体六十年度まではこのように一兆円ずつぐらいふえていかざるを得ないように思いますが、どうでしょうかね。
  64. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま御質問の公債費の点でございますが、ケースCに基づきましての公債費の数字はただいまおっしゃったとおりでございます。  その後どうなるかという点でございますが、これにつきましてはいろいろな前提を置きませんと実は計算できないものでございますから、ちょっと的確にお示しすることがむずかしいわけでございますが、ことしの予算審議に際しまして、衆議院の予算委員会で、こういう前提で計算したらどういうことになるかという前提をある程度お与えいただきまして計算した資料がございます。それも資料として二つのケースをお出しいたしました。これはあくまで仮定計算でございますが、本院にも同時にお配りしてあろうかと思います。  で、ただいまおっしゃいましたように、特例債は借りかえをしないということをかねて申し上げているところでございますので、六十年度以降その償還が参るわけでございますけれども、その償還財源が果たしてうまく賄えるかということが問題になるんではなかろうかと思うわけでございます。国債の償還は、建設公債でございますれば、六十年かかって償還するという考え方で、その間は、かつての七年ものでございましても、あるいは現在出しておりますような十年ものでございましても借りかえていくという考えでございますので、六十年の償還財源と申しますと、財政法規定しております一・六%の定率償還で賄えるわけでございますが、その特例債の分が問題になるということなんだろうと思うんです。   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕 その特例債の分が賄えるかどうかという点は、衆議院の予算委員会にお出ししました資料、これが、一つの仮定計算でございますが、御審議の御参考になるんではなかろうかと思うわけでございます。
  65. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、そうじゃなくて、このケースC、表を持っていらっしゃるでしょう。これの国債費の増加の割合を見てごらんなさい。大体五十二年から一兆円ずつふえていっているような――大体ですよ、計算でしょう。私はこの状態でいってみて、これは非常にむずかしいいろんな前提があるからだけれども、五十八年度からこれがぽっきり減っていくということは考えられないでしょう、いまの状態。五十八年度以降もやっぱりこういうようなカーブで公債費というものは増加していくんじゃないだろうかとお尋ねしているわけです。
  66. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 五十八年度以降そういう計算をしたのはございません。先ほど申し上げましたのは、国債費というのは利払いとそれから償還費と両方になっているわけでございますけれども、利払いを計算してない、一種の仮定に基づいた償還財源の計算はございますけれども、利払いまで含めた国債費は実は算定いたしておりません。
  67. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 算定不可能という意味ですか。
  68. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) これもやはり一定の前提をお与えいただければ算定することができますが、非常にいろいろな仮定を入れなければいけませんので、一義的にこういうふうになるだろうということをお示しすることはむずかしいわけでございます。
  69. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 しかし、それは不可能ではないでしょう。やっぱりこれと同じ前提で試算をすることは可能なんじゃないでしょうか。
  70. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 五十八年度以降の経済の情勢、それからそれに対応いたしまして財政状況、これは歳入歳出両面でございますけれども、それがどうなっていくかということをどういう前提を置いて考えていくかという寄りがかりが現在のところないわけでございます。五十七年度までは経済企画庁の審議会での暫定試算はございましたんで、私どもそれを下書きにいたしまして試算ができたわけでありますが、五十八年度以降はそういうものがない。そこで何か仮定を、前提をつくらなければいけないわけでございますが、それを私どもだけでこういう前提だと言うのはいささかいかがであろうかということで、それから先は、前提を仮にお与えいただければ、こういうので計算してごらんということでお与えいただければ計算することも可能であろうかと思いますが、私どもでこういう前提でこうだというだけの数字は持ち合わしていないわけでございます。
  71. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは大蔵大臣、いま主計局次長が経済企画庁のそういう財政経済の状態を予測したものがないので計算が不可能だということでしたけれども、あなたはどう思われますか。こういうふうな五十二年度から五十七年度まで大体一兆円ずつの公債費の増加というのを想定しているわけですね。これが急速に公債費が減少するというような、そういうようなことは考えられますか。やっぱり私はこういうなだらかなカーブで公債費の増加というのを予想する方が合理的のように思えますが、いかがでしょう。
  72. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まずそれにお答えする前に、財政収支試算の性格についてお話ししておいた方が早いんだろうと思うのでございます。  実は私たちは、あれは試算でございまして、あのとおり実行できるという保証がないわけでございます。われわれの問題意識は、先ほど寺田委員が御指摘になりましたように、いまのような状態でもし公債が累増したときに財政インフレになりはしないかという問題が一つ。それから、いつかは公債費の累増を通じてそして財政が硬直化をしてしまうと、本来国民経済が期待しておるそのときどきの施策ができなくなってしまう。いわば既定経費だけで一ぱいになってしまう。財政が与えられているところのいろんな機能があるわけでございます、国民経済上。それができなくなるんじゃなかろうか、そういう懸念を持ちましてやっているのでございます。  私たち基本的に考えてみますと、従来の、オイルショック以降でございますけれども、歳出は大体二〇%オーダーでふえているわけでございます、年率。普通歳入の方は一〇%オーダーでふえているわけでございますから、その穴を全部公債で埋めているわけでございます。その中に特例公債もたくさん含んでいるわけでございます。  問題意識といたしまして、一つはこのままでいまのような惰性を続けていきますれば、いつかは公債の元利償還払いで硬直化してしまって、恐らく財政の機能は麻痺するであろうというのが第一点。第二点は、いまのところ民間の資金需要が出ておりませんから、だから貯蓄をいかに利用するかということで社会資本の充実、それからあわせて景気対策と両方でいまやっているわけでございます。  したがって、将来資金需要が出たときのことを考えますと、四条国債につきましてはこれは出さなくてはならぬという理屈はないのでございまして、民間の資金需要が出たときは、それに応じて四条国債を減らせばそれだけあるめどとする経済成長は図れるわけでございます。だから、それは私は弾力性を持って考えていけるであろうと。問題はいわゆる赤字公債でございまして、これは経常経費を賄っているわけでございます。その裏づけになっておるのが全部各法律があるわけでございます。資金需要が出たからといって、そんなら赤字公債は一挙に減らせるかと申しますと、それはもう社会の中に定着しているわけでございまして、これは恐らく減らせないであろうと、計画的にその問題をあらかじめ対処するところがなければとうてい減らせないであろう、これは大変なことであると。  そして今年度状況を見ますと、約五兆円近くのものが赤字公債であり、それから約六兆円ぐらいのものが建設公債、こういうことでございます。  したがいまして、将来の財政を考えるときに、どうしてもまず減らすべきはその赤字公債だということになるわけでございまして、その赤字公債の脱却がいかにしてできるであろうか。それが経済企画庁で言っているところの中期経済計画、まあ六%強で五十五年度まで実は正式に組んであるわけでございます。少し時期がおくれましたので、五十七年度まで暫定試算をしていただいたわけでございます。それで、やはり経済企画庁の方からのいろいろな経済上の予見、あるいは財政上の予見等をいただきまして、それに基づいて財政試算をやって、それで将来、ことしは御承知のように歳出は二〇%強の伸びでございますから、これを、経常経費を圧縮することによりまして、Cのケースで見ますと、一五%強くらいのところの歳出の伸びでやって、しかも、一般的な租税負担の増加を求めながら償還財源を考える、あるいは赤字国債を減らしていくということによって、六%の経済成長は可能であるかどうか、それを試算したのが実は財政収支試算の真のねらいであるわけでございます。  幸いにいたしまして、いろいろ計算してみますと、経済企画庁との共同作業でございますけれども、そういう財政手段を講じましても六%の成長は可能である、こういう答えが出ているわけでございます。そして、目標年次を、五十七年度までに赤字公債脱却と、こういう一つのめどを置きまして、そして逐次来年度から、歳出予算についてもかなり厳正な、項目別に、何をどのように減らすべきか、こういうのを立てまして、そして自然増収以外の分は何らかの形の負担増を求めるとして、一つ計算をしたものが財政収支試算であるわけでございます。しかしこれは、試算でございますけれども、理論的に可能であるという姿をお示ししたのでございます。  これに対しまして、予算委員会あるいは大蔵委員会においては、単なる試算ではなくって、財政計画として早く出せと、こういうお話、むずかしい注文を承りまして、われわれは、この試算をさらに財政計画まで深めるために努力いたしますと、こういうことを申し上げたわけでございまして、今後は、この試算というものを計画にまで一なかなか時間がかかることはよく承知しておるのでございます。各国とも、財政計画ができるまでには大体十年ぐらいはかかっておるわけでございます。諸国のいろいろなお手本がございますので日本はそれよりも早くできるかもしれませんが、来年すぐできるというような性質のものでないことだけは明らかでございます。だんだんそのようにいたしまして、単なる試算から計画の方にこの内容を深めてまいりたい、こういうつもりでつくっておるのでございます。  そして、その計算の過程におきまして、当然でございますけれども、償還はうまくいくのかねえとか、あるいは、国債費はどういうふうになるんだと、こういうお話でございます。国債費は言うまでもなく累積額で決まってくるわけでございます。したがいまして、今後、発行額が減るにいたしましても累積額はふえてくるわけでございますので、いわゆる国債費というものはだんだんふえていくということは、これはもう免れぬわけでございますが、一方におきまして、GNPも伸びればまた予算も、従来ほどでないにしても伸びますから、大体その程度であれば健全財政の枠に持っていけるのではなかろうか。こういうことで、とりあえずは、いわゆる赤字国債から早くどのようにしたら脱却できるかという問題を詰めたつもりでございます。  重ねて申し上げますが、四条国債につきましては、弾力性はいつでもあると、私はかように考えているのでございます。
  73. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまの大臣の御答弁でも、大体安定成長の線を堅持し、そういう指導をしていくと、それからそのために予算の伸びも大体一五%程度で持っていくと、さまざまなそういう予見を前提として、やはり公債費は増加せざるを得ないという結論にはなるようですね。私はやはりそういう予測は十分可能だし、また蓋然性が一番高いというふうに考えますがね。  そうしますと、これは六十年からやってくる赤字公債の償還ということを考えますと、これは十兆円以上のものが六十年から国債の元利償還に振り向けられるわけですね。しかもそれが、いまおっしゃったような試算のもとでは、五十七年度まで十兆円の増税をしてなおかつそうだというんですね。その国債の償還というのは、いまのところは大体市中銀行が持っておるわけでしょう。それは買いオペで日銀にと言っても、日銀がどんどん買って紙幣をどんどん出したんではインフレになっちゃうから、そこにもやっぱりおのずから制約がありますから、どうしても金融機関の手持ちが多いことになるんでしょう、あるいはお金持ちとか資産階級とか。そうすると、国民から増税をして、一般消費税のような大衆からずっと増税をして、そしてそれを結局銀行とかそういうものの方に振り向けて国債の償還をしていくということになると、これはますます貧しい者から富める者へという、非常な所得逆配分みたいなものになっていくんじゃないかと考えるんですが、これはどうでしょう。
  74. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 最初申し上げましたように、日本はいろんな税目を持っております。しかし、もう端的に申しますと、直接税の比率は七〇%を超えているのでございます。アメリカに次いで直接税比率が高いのでございます。ほかの国は、たとえば五割・五割とか、ラテン諸国でございますと逆に直接税が三割で間接税が七割だと、こういうことでございます。それで、特に租税体系を見ますときに、日本の場合は、消費税の負担というものは、やはり一般消費税がございませんから、諸外国の負担に比べますと実は三分の一程度でございます。それから個人所得税は、住民税を含めまして約二分の一、法人税がほかの国と大体同じぐらいの税率になっておりますから、したがって、そういうものを入れますと全体で三分の二、これが日本租税構造であるわけでございます。全体の負担率は非常に低い。  こういう中で何に負担を求めるべきかということは、それ自身の新しい税目だけの話ではなくて、全体として租税が累進構造を持っているのか、あるいは逆進構造を持っているのか、私はやはり全体として論ずべきであろうと思っているのでございます。そういう意味で、消費税という問題が、全体の租税体系あるいは全体の累進性、逆進性の中で政府税制調査会では取り上げられているであろうと思うのでございまして、まあこの消費税もその組み方によりまして、ある程度比例的な消費税というものもございます、それから非常に逆進的なものもあるわけでございますが、そこまでは現在はまだ検討しておりませんで、いかなる課税標準、いかなる税率、あるいはいかなる免税点、あるいはいかなる課税除外物品をつくるかはこれからの作業であるわけでございます。  しかし、全体として考えてみますときに、日本の場合は、ヨーロッパ諸国における一般消費税という体系を欠いていることは事実でございますので、やはりこれが一つの大きな問題点であろうということで、税制調査会の方では、とりあえずひとつ具体案をつくってみて、それで国民の世論を問うべきである、それを踏まえた上で、どのように、さらに論議を深めて、実施をやる場合にはその内容なり、あるいはさらにタイミングの問題もあるかもしれませんが、そういう角度で検討すべきであるということで、これから政府税制調査会開かれますけれども、一つのたたき台をつくって、そして大方の皆様方から、国会からもちろんでございますが、国民からもいろんな御批判をいただきまして、さらによりよきものにしていきたいと、これがいまわれわれが考えているスタンスであるわけでございます。
  75. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは税の所得再配分機能というものに着目していきますと、まさに逆のコースで、一般消費税を大衆からどんどん取っていくと。そうして国債の償還にもう毎年、六十年からは十兆円以上振り向けていくと。その振り向ける先が大衆ではなくして、これは皆金融機関であるというような、そういう状況になることも十分これは想定されるように思いますね、この試算によると。そうすると、これは大衆の負担で金融機関に大量の資金を送り込むような、そういう結果になりますね、これ。これは間違いないでしょう。簡単でいいんですよ、大臣。
  76. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ちょっと寺田委員に誤解があるんじゃないかと思いますが、このケースCで五十七年までいわば試算した増税額十兆幾らと出ておりますが、これ全部一般消費税で賄うなどということはちっとも言っていないのでございます。いずれにいたしましても、何らかの形でこれだけの税負担の増加を求める、求めてもなお大体所定の経済成長は可能であると、こういう試算にとどまるわけでございまして、中身が何税であるかということは財政収支試算では別に決めているわけではございません。別途、税制調査会の方では租税体系、それからいまの全体の累進性から申しますと、恐らくアメリカに次いで日本は累進性が強いということは、これはもう間違いないのでございます。所得税の課税最低限が世界で一番高いという事実一つを見ましても、またあの税率構造を見まして、恐らく租税体系全体としてはアメリカに次いで所得再配分機能は強いわけでございます。しかし、財政試算とは必ずしも絡み合っておりませんけれども、そのうちの一つの税目として一般消費税というものがいま取り上げられている。これにどの程度の税収を期待するかは今後の問題であるわけでございます。したがいまして、財政収支試算のようなあの形での負担増を求めるにしますと、その他の既存の税金の改正にも当然及ぶことであろうと思うわけでございまして、あるいは一般消費税以外の新税等も考えなければならぬのかもしれません。それらの点はいまのところはニュートラリーでございまして、あれを全部一般消費税で十兆何千億やろうという性質の試算でないことだけ申し上げておきます。
  77. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時間が参りましたので最後に。  まあできるだけ大衆課税でない方向でこういう試算の実現を願いたいと思います。それから、仮に累進税率が高いというお話がありましたけれども、法人のふところに入ってしまうと、これはもうどんなに収益が上がろうと、資本収益率がどんなに高かろうと、絶対額がどんなに多かろうと、これはもう税率は一定ですわね。しかも、それがまた個人に配当の形で還元されますと、配当軽課その他のことでこれはまた減税的な措置がありますから、余り累進税率だということは弁明にならないようにも思いますからね。  それからもう一つ、最後にお尋ねしたいのは、こういう国債を発行する一つの歯どめとして、発行条件を市場の実勢に即応するようにしろとか、あるいは入札制にしろとかいう議論がありますね。これをやはり十年ものも、今度は三年ものを何か入札制にするというんですが、十年ものでも入札制にすると。発行条件を市場の実勢に合わせると。それで、利率がだんだんと市場の実勢に合っていくということにした方がいいように思いますね。これが一つの歯どめになるでしょう。それでないと、安い利率でどんどん発行するというと、昔の戦前の軍部の軍事費の調達みたいに、景気の浮揚だということでどんどん出してしまう。歯どめがない。それともう一つは、銀行の窓口で売らせるという問題がありますね、この問題を大臣どうお考えになるか。  それからもう一つ、最後に、今度はOECDの方で成長率を五・五%と想定しましたね。宮澤さんは何か七%は可能だと言うし、大臣も何か楽観論のようですが、いまでもその楽観論でしょうか。  この二つについて最後にちょっと簡明にお答えいただいて終わりたいと思います。
  78. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 法人税というものは私は累進税率にはなじまないものだと思っているわけでございます。もちろん、従業員の数あるいは総資本のあれによりまして利益はおのずから違ってくるのは当然でございます。世界各国でも、法人税には累進税率はなじまないというのが国際的な税制の定説になっております。  それから第二番目の、発行条件を市中金利に合わしたらどうか、これは賛成でございます。できるだけその方向でやるべきであろうと。しかし、私は歯どめの問題は、第一に何といっても赤字国債を早く絶滅するということにまず置いているわけでございまして、ことしは実質上赤字国債の経常経費に占める割合が二四%でございます。これを現実の問題としては逐次減らしていく、できれば、できるだけ早い機会に、試算にもありますように、五十七年度で脱却できるかどうかはまだ財政計画でございませんけれども、できるだけ早い機会に脱却する。これがもう私は赤字公債に対する最大の歯どめである。  それから第二は、いま寺田委員御指摘のように、金利というものを市中金利に、実際の流通利回り、これをやはり参考にしていくと、こういうことでなければならぬだろうと。逐次その方向にいま進んでいることは御案内のとおりでございます。  最後に、いまの経済見通しの関係でございます。OECDもことしは、暦年でございますけれども、五%と言っておったのが五・五%にこの間修正いたしました。わが国はいま七%と、こう言っているのでございます。私は容易ならぬ、七%はそんなに楽にできるとは決して思っておりません。しかしながら、いま民間の経済見通しはどんどん変わっておりますし、それから経済の指標も月ごとにどんどん変わっているわけでございますので、私は不可能であるとは思っていないのでございまして、この政策を着実に進めていく、そしてこれを十分ウォッチしまして、もし必要があれば公共事業予備費、中に二千億あるわけでございますし、なお財政投融資の方の弾力条項が五割あるわけでございますので、適宜適切な処置をとることによりまして、七%という努力目標を何とかして達成いたしたいと、このように考えているところでございます。
  79. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 銀行の窓口の問題、国債の。
  80. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 申しわけございません。  この問題は、単なる銀行と証券会社の業務分野の問題として世間は見ているようでございますが、私たちは実は一つは国債の管理政策のあり方という問題でございます。それは二つ問題がございまして、一方において流動性が必要なことは当然でございます。同時にまた、その安定という問題が必要なのでございます。実はこの両局面が相矛盾しているところがあるのでございまして、その辺を流動性を高めながら、しかしいかに安定させるか、ちょっと悪くなるとどんどん売りに出てくるようではこれは困るのでございまして、何とかして安定保有者層を開拓したい。この公債管理政策のあり方から申しますと、この両者に関連する問題、問題はその程度の問題であり、いかにして新しい保有者層を開拓するか、こういう問題でございます。そういうわけで、私たちはこの問題は引き続き慎重にやっぱり国債を、これだけの大量国債を持っているわけでございますので、慎重に検討してまいりたいと、いまいずれがいいともまだ判断しかねておるというのが実情でございます。
  81. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後十二時五十分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十三分開会
  82. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  83. 田代富士男

    田代富士男君 最初に、午前中も同僚の委員が質問されましたが、時間の関係でその結論を見るに至っておりません予備費の問題についてお尋ねをしたいと思います。  最初に、憲法においてまた国会との関係で国の財政について規定している条文は何であるのか、またその底流に流れる精神というものをどのように考えていらっしゃるのか、憲法、財政法の運営に当たりまして最初に政府の基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  84. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 法律問題でありますので私からお答えいたしたいと思います。  憲法は、八十三条で財政処理権限の国会議決主義をうたっております。「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」これがいわば基本原則でございまして、そのコロラリーとして八十四条で課税法律主義を規定し、それから八十五条で、国費の支出あるいは国の債務負担については「国会の議決に基くことを必要とする」ということを定め、これと並んで八十七条で予備費の規定を設けているわけでございます。財政法にもこれに準じて各種の規定が設けられておるわけでございますが、政府としては当然のことでございますが、憲法、財政法の諸規定を尊重し、誠実に執行しなければならない、当然でございます。
  85. 田代富士男

    田代富士男君 いま条文の御説明をしていただきましたが、予備費に関しまして憲法、財政法上、国会開会中また国会閉会中とに分けまして規定された条文はありますか。
  86. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 予備費の使用につきましては、憲法及び財政法は、国会の開会中と閉会中に分けて規定はいたしておりません。
  87. 田代富士男

    田代富士男君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、いま条文の御説明をいただきましたが、私が最初に説明いたしましたのは、その規定された条文の底流に流れる精神というものをどのように受けとめられていらっしゃるのかということをお尋ねいたしましたが、大蔵大臣としていかがですか。
  88. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 一言で申しますと、やはり予算の編成あるいは執行等、それは立法府の承認を基本的に受けたものでなければならぬということが出ているわけでございまして、財政処理に関する原則あるいは租税の法定主義の問題、さらには予備費総額についても同様でございますし、したがって、また一見例外に見えます予備費支出、議決を見ました予備費につきましてもその使用の条件等を規定しておりますし、その後において国会承諾を求めておるところでございます。これらはすべて政府が編成いたします予算のその基礎を、やはり立法府である国会の意思に基づいてやれと、こういういわば財政民主主義と申しますか、あるいは三権分立と申しますか、そういう基礎の上にしっかりつくっておかなければならぬ、これをはっきり新憲法は明示していると思っているのでございます。
  89. 田代富士男

    田代富士男君 いまも大蔵大臣が申されましたとおりに、この憲法や財政法、こういう全般を見渡した場合には、いまお話しのとおりに、立法府の意思を基づいてやっていかなくちゃならないし、この財政については国会の審議権というものを重視していかなくちゃならない、これはまことに重大なことであるという大臣のお言葉でございますが、私もそのとおりでなくてはならないと思うんです。これは容易に侵してはならないことである、このように私自身も理解をしておりますが、そういう立場から考えていくならば、政府もそういう認識に立って仕事をされていくわけでございますが、政府政策とかあるいは内規はともかくといたしまして、憲法あるいは財政法の解釈として、国会開会中に新しい項を設けて予備費を支出するということはできるという解釈は、そういう性格の上から考えていった場合はできないと、私はこのように私なりに理解しておりますけれども、政府の立場としてはいかがでしょうか。いまの大臣の答弁と私自身の理解、そういう立場から言うならばこういうことはできないと思うんですが、どうですか。
  90. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 予備費は、憲法八十七条に規定しておりますように、「予見し難い予算不足に充てるため」ということでございますので、予見しがたい予算不足というのは、金額が予見できない場合だけではなしに、その事項も予見できない場合も含まれるわけでございます。したがって、予備費の使用は既定予算不足を生じた場合のほかに、当初予想もし得ない事態に応じまして緊急に予算措置が必要な場合にも使用が可能である。この場合には、支出の目的に従って新しい項を設けることが必要となる場合があるわけでございます。  予備費の使用につきましては、憲法及び財政法国会の開会中と閉会中とで区別して規定はいたしておりません。国会の開会中でも予備費の使用決定し、必要があれば支出の目的に従って新しい項を設けることも可能であると考えております。それで、国会開会中の予備費使用につきましては、法律上の要請というよりは、むしろ憲法、財政法の精神にかんがみまして、国会審議権との関係で閣議決定をもちまして予備費の使用について政府は自制をしておるわけでございますけれども、その自制をしておる中においても、たとえば災害復旧のために緊急に支出が必要であるというような場合には、国会開会中であっても予備費の使用をすることが可能であり、また現にやっているわけでございますが、そういうような場合には、場合によりますと項を新設しなければそのための予算がつくれないという場合がございますので、こういうような場合には新しい項を設けることが現実にあるわけでございます。例は相当多数あろうかと思います。
  91. 田代富士男

    田代富士男君 いまお話を聞きますとそういう解釈もできると思いますが、厳密に法理論的に解釈していった場合に、じゃ国会開会中にそういうことをやってよろしいという裏づけとなる条文がありますか。いまそういうふうにできるとおっしゃるけれども、法理論的に言った場合にはできないはず。だから私一番最初に大蔵大臣にもその精神というものは何かと尋ねました。そのために尋ねてきている。純然たる法理論的にいくならば、そういうことは「予見し難い予算不足」と、こういうことでございまして、国会審議権の立場からとかいろいろいまそういう遠回り的な説明をされましたが、私は国会閉会中も国会開会中もそういう条文があるかということをお尋ねしたのもそのことなんですけれども、裏づけの条文はありますか。
  92. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 予備費につきましては、憲法でも財政法でもその使用について特別の制約を課しておりません。法律論といたしましては、予備費の使用要件にかなっている限りいつでもその使用決定することができる。つまり国会開会中も使用は可能でありますし、それからそれが必要でありますれば項を新設することも可能であるというふうに法律論としては考えます。それで恐らく国会開会中の問題といたしましては、補正予算を組むか予備費を使用するかという選択の問題があろうかと思うわけでございますが、補正予算を組むかあるいは予備費を使うか、これは法律上の要件といたしましてはほとんど同じ表現でございまして、いずれをとるかは結局第一次的には政府の判断の問題であるというふうに従来からも解釈いたしておるところでございます。
  93. 田代富士男

    田代富士男君 私はいまの説明では納得しがたいんです。  大臣にお尋ねいたしますが、大臣は、その底流に流れる精神ということで財政民主主義の精神と申されましたけれども、いまの裏づけとなる条文があるのか、法解釈的にいくならばこれは厳然としてできないはず。そのために、いま申されるとおりに、国会審議権云々、国会尊重、国会の審議権を尊重します、財政民主主義の立場から慎重に取り扱わなくちゃならないということを大臣申されましたけれども、その関係はいかがお考えでございましょうか。大臣にお伺いしたい。
  94. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 財政につきましては立法府のやはり意思を尊重するということが随所にあらわれているわけでございます。予備費についても同様でございますが、しかしその点は、憲法並びに財政法で規制しているところは明確に書いてございまして、憲法の八十七条は、「予見し難い予算不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会承諾を得なければならない」、同じく財政法二十四条におきまして、「予見し難い予算不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる」と、こう書いているわけでございまして、憲法並びに財政法はこの文言に雷かれているとおりの規制を課しているわけでございます。したがいまして、国会開会中という問題と国会閉会中という問題は、憲法並びに財政法の立場ではないわけでございます。  ただ、恐らく委員のおっしゃっておりますのは、内閣が国会開会中にやはりみずからこの憲法の枠の中でさらに自制しておる閣議決定があることはもう御承知のとおりでございます。しかし、その内容を見てみますと、やはり経常経費の増加に伴うものとか、災害その他で緊急を要して恐らく補正予算を組むというようないとまのないようなもの、こういったものにつきましては国会開会中であってもこれは出せることになっておりまして、その場合には、項を設けるとか、項を設けない、そういう技術的な問題ではなくて、その経費の性質によりまして自制いたしているところでございますので、憲法あるいは財政法が定めております財政民主主義という原則と、それから国会開会中であるか閉会中であるか、それによって、政府はおのずから自制しておりますけれども、その問題は直接には関係のない、いわば国会の審議権を内閣はこの憲法なり財政法の精神をくんでみずから自制しておる、このように理解いたしているところでございます。
  95. 田代富士男

    田代富士男君 これをやりますと、過去、前国会におきましてもこれはすべて水かけ論で終わってしまっているわけなんですが、これはいずれば明確にしなくてはならない問題じゃないかと思いますが、そこで後ほど具体的な例を出しましてもう一度検討をしたいと思いますが、その前にもう一つお尋ねしたいことは、御承知のとおりに、昭和二十二年の閣議決定におきまして、別項の事項について大蔵大臣のみで予備費の支出ができることになっておりました。それを、昭和二十五年に政府はまた閣議決定によらなければ支出できないことにしまして、一段と厳しいこういう閣議決定がなされておりますが、内規を厳格にして財政運用の姿勢を正したというようなことではないかと理解をしておりますが、ところが、昭和二十七年の四月の五日の閣議決定からは、大蔵大臣使用決定をするだけでよいということになりまして、これまた逆戻りといいますか、この言葉が適当かどうかわかりませんが、そういうようなことになってしまっている。そのように見た場合に、昭和二十五年三月十七日のものと二十七年四月五日に閣議決定変更されたものと比較した場合に、憲法の求める予備費の使用に関する内閣の責任についてどちらが忠実であるかどうか、これを私はお尋ねしたいと同時に、いま私は過去の一つの事例を申し述べました。これから考えまするに、予備費の項目が次第にふえてきている、このままでいくならば際限なく広がっていくのではないか。そういたしますと、私が一番最初大蔵大臣にお尋ねをいたしました財政民主主義の基本原則に触れることになるのではないかと思うんですが、この点いかがでございましょう。大臣からお願いします。
  96. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほど私が条文を読みましたのは、立法府とそれから政府との権限の配分の規定が書いてあるわけでございます。で、閣議決定の方は、いまお挙げになりました二つの閣議決定は、すでに任されております、この条文において政府の権限に任されておる権限の行使の仕方について一々閣議決定をとるか、あるいは軽微なものにつきましては、あらかじめ閣議の了解を経まして大蔵大臣限りで認めることができるかどうか、もちろんその場合はあらかじめ閣議決定を経ているわけでございます。したがいまして、政府にすでに任されておりますいわば事務執行の迅速性というところに着目いたしまして、どのようにした方が技術的にあるいは実務的に国民の利害のためにいいであろうかと、こういう行政判断の問題であると思うのでございます。そういう行政判断が、言ってみますと、ある年によりましてと、それから後におきまして行政判断が違ってきておることは私も承知しておりますけれども、いずれもやはり憲法並びに財政法の枠内の問題であり、そしてそのことは直接憲法あるいは財政法の精神とはかかわり合いのない、言ってみますればどちらが迅速であるか、どちらがより的確にいけるであろうか、こういう見地で閣議決定が行われているものと、かように了承いたしているところでございます。
  97. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、具体的な問題としてお尋ねいたしますが、予備費の問題点がこの具体的な問題の中から出てくるかと思いますが、先日福田総理が訪米されました折に、ハンフリー研究所へ寄付をされております。その寄付の支出はどういう性格になっているのか、そういう点が一点。金額等も御説明いただきたいと思う。簡単で結構です。  それと、ボストン美術館についても寄付をすると、こういう話がされておりますが、ボストン美術館の場合は予算上どうするのか、またその支出の理由。時間の関係もありますから簡潔にお願いいたします、答弁の方。
  98. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 具体的な問題でございますので、政府委員から答弁させます。
  99. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ハンフリー研究所に対します百万ドルの寄付は五十三年度予算措置済みのものでありまして、これは寄付を行ったわけでございますが、ボストン美術館に対します資金援助につきましては、これは意図表明でございまして、予算措置等の必要な国内手続を講じていくという前提のもとでの意図表明でございます。したがって、いかなる予算措置をするのが適当かということはいまの段階では確定していないわけでございます。
  100. 田代富士男

    田代富士男君 どうしてこれは確定してないんですか。
  101. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま申し上げましたように、意図を表明したわけでございまして、これに基づきまして今後具体的措置について、案件の詰めに応じて予算措置についても検討していく、予算措置等の必要な国内手続についても検討していくということでございますので、現段階ではまだ予算措置が決まっていないということでございます。
  102. 田代富士男

    田代富士男君 大蔵大臣、これは予備費で処理されるということはあり得ませんわね、予見し難いことではございませんから。
  103. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまのお話しは、まず第一に、このことは予見し難いか予見し得たかという問題になりますと、やっぱり予見し得なかったと思うのでございます。しかし、この問題をどのように予算措置を講ずるかという問題は、いよいよ支出の段階の話でございまして、先ほど山口次長からもお話ししましたように、その場合は政府責任において予備費で支出するかあるいは補正予算でやるか、補正予算の財源をどのようにするか、そういう選択の問題がまだ残っているわけでございます。その支出の時期においていかなる予算措置をとるかということを選択すべき問題であろうと、かように考えているところでございます。
  104. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ次にお尋ねしたいことは、バングラデシュ政府に対しまして、日本航空のハイジャック事件の処理に対する謝礼の意を込めて、航空機購入代金として十三億九千万円を贈ることにされましたけれども、その経緯について御説明を願いたいと思います。
  105. 愛野興一郎

    政府委員愛野興一郎君) バングラデシュ政府は、先生御承知のように、先年のハイジャック事件の際に、航空機搭乗員、また乗客の大部分、それからまたハイジャックの犯人そのものが日本人であったわけでありますが、わが国の政府の要請を十分考慮して、そうして非常な努力をしていただいたわけであります。しかも、その事件解決に従事しておられた矢先に空軍幹部を巻き込んだ騒擾事件等も惹起されたわけでありまして、そういう厳しい状況下にあるにもかかわらず、わが国政府の要望を尊重しつつ事件の解決に全力を尽くされたのがバングラデシュ政府であります。このため、政府は直ちに早川特使を派遣いたしまして謝意を表明したわけでありますが、その際バングラデシュ政府が、バングラデシュの国営航空の輸送力拡充のため早急に中古航空機一機の入手を希望されたわけでありまして、両国間の友好関係のためにも、また具体的に謝意を表するためにも、できる限り時を移さずこの中古航空機一機の購入に必要な資金を供与することによって、具体的な謝意の表明、またわが国とバングラデシュの密接な友好関係を確立する方が大事であると、こういう観点からこの予備費の使用をお願いをいたしたわけであります。その結果、四月五日から四月九日までバングラデシュのラーマン大統領がわが国を御訪日になって謝意を表明されたというような経緯があるわけであります。
  106. 田代富士男

    田代富士男君 時間がありませんから、この経過措置ですね、どういう事務的な措置をされたかということを私はお尋ねしたかったわけなんですが、私の方でつくりました一覧表は外務省に渡してあります、これ。  それで私は、早川さんが五十二年の十月の二十八日から三十日にお行きになられて、いまのようなそういう意図の説明がされまして、そしてそれが五十二年の十二月の十六日に予備費から支出する閣議決定がなされました。で、五十三年の二月の十七日に交換公文、閣議決定が署名されております。で、三月の一日にバングラデシュ政府が東京銀行に口座を開設をいたしまして、三月の四日に贈与金金額支払いを済まされている、こういう経過になっていると思いますが、一言、間違いないかどうか、お答え願いたいと思います。
  107. 愛野興一郎

    政府委員愛野興一郎君) 先生の言われるとおりでございます。
  108. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ大蔵省に、五十二年度補正予算(第2号)の審議経過につきまして簡単に御説明願いたいと思います。
  109. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 五十二年の十二月二十三日概算閣議決定をいたしまして、翌五十三年一月十七日に閣議を経て国会提出いたしております。一月二十九日に衆議院を通過いたしまして三十一日に参議院を通過いたしました。
  110. 田代富士男

    田代富士男君 時間が余りありませんから、いま外務省のとられた措置とこの五十二年度補正予算(第2号)の審議過程を比較して相対的に考えてみますと、こういうことになるんではないでしょうか。五十二年度補正予算の概算閣議決定が行われたのが五十二年の十二月二十三日でございます。その一週間前の十二月十六日にバングラデシュに対して飛行機の供与のための閣議決定をされているのであります。ということは、十二月十六日の閣議決定の内容というものは十二月二十三日に盛り込んで決めることはできたわけでございます。この点が第一点。一方、この補正予算の成立、配賦というものは五十三年一月三十一日でありまして、バングラデシュとの交換公文、閣議決定署名は二月の十七日であります。そうしますと、日にちを追っていきますと、バングラデシュは三月の一日に東京銀行に口座を開設しまして、政府は三月の四日に十三億九千万円を支出、払い込んでおります。  こういう経過をたどって考えてみますれば、政府が予備費の支出について厳格に、最初に大臣が御答弁されたように、慎重に取り扱っているというそういう精神でなくして臨んだということは、私はこれは安易な処理の仕方であったのではなかろうかと言わざるを得ません。だから、予備費の支出を決めた閣議決定の十二月の十六日は第八十三回国会の終了後でありまして、ちょうど国会は閉会中であったということもこれは事実でございますが、しかし、三日後の十二月の十九日には第八十四国会が召集されております。その四日後の十二月二十三日に補正予算の概算の閣議決定をしている以上、当然予備費を支出しないで予算に組み込むことが可能であったということはこれは明確であります。  まあこういうことから形の上では国会閉会中に新しい項を設けて支出したということに一応はなりますが、実質は国会の審議権を尊重するという政府の姿勢とは矛盾するんではないかと、私はこのようにいま両省の説明を相対的に考えて、大臣の最初の尊重するという精神とこれは矛盾する面がある、このように考えますが、大蔵大臣あるいは外務省から御答弁をいただきたいと思います。
  111. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) また後ほど不足の点がありましたら政府委員からお答え願いたいと思いますが、先ほども申しましたように、これは予備費でもあるいは補正予算でも、それはどちらでも、私はさきの条文の上から言いますとできるものであろう。どちらでやったから違法であるというようなことはないであろうと思うのでございます。したがいまして、当時の見通しにおきまして予備費決定いたしましたことは、やはり憲法並びに財政法の趣旨に違反しておるとは思っておりません。  ただ、どちらがどうであるかという問題はいろいろ考えようがございます。確かにことしの補正予算は非常に、おかげさまで皆様の御協力を得ましていわば一月中に済ましていただいたのでございますが、一月中に済むという保証は全くなかったことはもう御承知のとおりでございます。補正予算はことしは本当にもうありがとうございましたが、例年でございますとそうはいきませんので、一般の本予算におきますいろんな総括質問が済んだ後で大体いままでは補正予算がかかりまして、それも、まあ案件にもよりますけれども、バングラデシュだけじゃございませんので、ずいぶんかかわるわけでございます。今度の場合、先ほど年度内にディスバースが済んだと、こういう話でございます。私は補正予算の例年の場合でございますと、もし補正予算になった場合に、ことしじゅうにディスバースが済むという保証は少なくと一もなかったのではなかろうか。結果といたしましては年度内のディスバースが済んだのでございますけれども、そういうことを考えますと、両者の、憲法並びに財政法規定の上から申しまして、そしてまた事柄の性質から言いまして、政府が予備費支出を選んだということもやむを得なかったのではなかろうかと私は思っておるのでございます。
  112. 愛野興一郎

    政府委員愛野興一郎君) 外務省といたしましても、できる限り速やかにバングラデシュ政府に謝意を表明をしたいということが第一点と、それからいまの御答弁にもございましたように、補正予算措置をされた場合にはそれだけ、まあ一カ月半以上おくれることを懸念をいたしまして、予備費でお願いを申し上げたわけであります。
  113. 田代富士男

    田代富士男君 大蔵大臣、いまこの取り扱いは予備費でも補正予算でもどちらでもよいんだという御答弁をされましたけれども、その態度がよくないということをいま審議しているところですよ。だから一番最初に、国会審議というものを尊重するということなんですから、だからそういうあいまいなところをいま問題にしているところなんですから、その姿勢を改めようというのがこちらの質問の趣旨でございます。だから、最初にハンフリー研究所の寄付金の例を挙げたのは、これは御承知のとおりに政府の原案に計上されております。だから、じゃこのバングラデシュの今回のこれが補正に計上できなかったかと言えば、できる余裕はありましたよということを、いまさっきの私の質問で、外務省と大蔵省との御説明になったのを相対的にお話しをしたわけなんです。入れようと思えば組み込むことはできたんだと。そのように予備費に対する態度というものが甘いということを私は訴えているわけなんです。  だから、バングラデシュに対するこれは経済協力といいますか、供与というものも、ハンフリー研究所に対してそういう処置をとったと同じようにとろうと思えばとれないわけはなかったと思うんです。だから時間がないとか、そういうことを、幸いにも補正予算がこんなに早く通ると思わなかったと言うけれども、補正予算は早かれ遅かれさほどの日程の違いがなくしてそれは通るわけなんです。たとえばいまの五十三年度予算に組み入れても、これはバングラデシュ政府が飛行機を買うために幾分かのお金を上乗せして飛行機を買おうとしておりますけれども、そういうわけで、そういうことも勘案していま飛行機を実際に買いつつあるところでございますけれども、予算の成立は四月の四日なんです。そうすると、お金を口座に振り込んだのは三月の四日です。一カ月ぐらいの違いしかないわけなんです。  そういうことを考えてみるならば、国会審議を尊重するというならば、そういうような補正予算という――ハンフリー研究所の場合は政府原案にも組み込まれている、そういう立場から、私は、この予備費の取り扱いというものに対しましてはあいまいな態度であってはならないと、これを主張しているわけなんです。どちらでもいいんだと簡単に大臣は申していらっしゃるけれども、予見しがたい予算不足に充てるものであると、それはもう解釈はいろいろありますけれども、基本精神、法解釈は法解釈の範囲内で解釈していくならば厳しい面があるわけなんですが、いかがでございますか、大臣。
  114. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 繰り返しになりますけれども、五十二年度の予備費総額につきましては国会の御承認を得ているわけでございます。その意味で立法府の意思は十分働いておる、その枠の中でやっているわけでございます。そしてまた、その支出は予見しがたい、そしてまた、本費で不足する分について支出しなければならぬ、予備費の発動条件はそうなっているわけでございます。  したがいまして、バングラデシュの問題は非常に急速を要する問題であるので、すでに御承認を得ました予備費の範囲内でしかも条件も予見しがたい、そしてまた、本予算に組んでありませんので予備費で出さしていただいたということでございます。したがいまして、それを補正予算に組まなかったからといって、財政あるいは憲法の精神に、あるいは規定に反しているというふうには考えていないのでございます。
  115. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ、もう一つ大臣お尋ねいたしますが、大蔵省が言われていらっしゃいます別表の項目というものは、他動的な原因によるものが多いわけなんです、説明をお聞きいたしますと。これは義務的な経費で賄わなくちゃならない面があるでしょう。しかし、こういう閣議決定される災害、こういうものは全部他動的原因によりまして、政府責任のもとによってこれはされていかなくてはならないものでありますけれども、いま問題にしておりますバングラデシュに対する供与というものは、他動的な原因でなくして、政府の主体的判断によってこれは決めることができるわけなんです。災害だとかそういうものは他動的原因です。しかし、バングラデシュの場合は主導的な原因でこれは判断することができる。謝礼は急がなくちゃならない。しかし、飛行機の購入につきましても、いまバングラデシュでは、日本からもらった金に上積みをしてどうせ買うならばよい飛行機を買おうと、まだいまその物色中です。だから、それだけの意図を表明してあげるならば、向こうかてそれだけの余裕がある。それは謝礼は早いことにこしたことはないけれども、余裕は、そういうような余裕はあるはずなんです。その向こうの誠意に対する、またこちらがそういう体制を組むだけの余裕があるはずです。  そういうことから考えていくならば、補正予算と五十三年度予算を控えたこの段階で予見しがたいということは、私はこれは言えないと思うんです。そういう意味から、私は、これは予見しがたい、不測というわけにいかないから、この取り扱いに対しては、いま補正予算でも予備費でもよいんだというそういうあいまいな態度をとられているけれども、それならば一番最初の根本精神というものは、国会審議というもの、国会から予備費というものは一番最初に承認されておりますからという、そういう大臣のお言葉はありますけれども、審議を尊重するというならば、そういう補正予算でも組むことができたならばそこへ組み入れるべきではないでしょうか。その点どうでしょうか。
  116. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま田代委員のおっしゃっておるいわゆる自動的、他動的の問題でございますが、これは内閣の方ですでに与えられた権限、予備費支出の権限を前提にいたしまして、国会開会中であるか閉会中であるかということによって、そして開会中の場合には原則として他動的なもの、いわば緊急性を要するものに限っているわけでございまして、これはあくまでも予備費使用政府に任せられた権限の中におきまして、政府みずからが国会開会中にはこのようにいたしましょうという、いわばその枠内で自制をかけているわけでございます。いまおっしゃいましたバングラデシュの問題は国会閉会中の事業であるわけでございまして、したがいまして、いまの他動的とか自動的とかという、いわば内閣みずからが自制いたしました条項とは別問題であると、かように考えているわけでございます。
  117. 田代富士男

    田代富士男君 そういうことを言われると、またもとの説明の日にちを追ったところへ戻らなくちゃならない、姿勢の問題なんですから。そういう大臣のいまのお話でしたら、閉会中のあれだと、日にちが、もうすぐ次に通常国会が開かれようとするような日にちの問題になってくるわけなんです。  時間が、与えられた時間がありませんが、最後にお尋ねいたしますけれども、これは法学界におきましては、少数意見とはいいながら、国会開会中に新しい項を設けて予算の支出を行うことはできないという、こういう学説を唱えている人があります。ところが、いま現実問題としては、大臣初めいま申していらっしゃるとおりに、たとえば総調書及び調書の(その2)は通常国会の開会中の予備費の支出だけが掲載されておりますと。その中を見ますれば、ほとんどが災害のための支出が多くなっておりますが、まあこの期間はまた新年度予算の審議中でもありますけれども、あくまで少数意見というものは現実問題を無視して法理論的に厳密な立場をとるのは当然でありますけれども、裏を返して言うならば、政府の立場というものは多数説の立場じゃないかと思います。現実に起こる問題から考えた場合には、政府責任という立場からも国会開会中といえども項を新しく設けるという解釈をとるんだという、いま大蔵大臣が答えたとおりでございますけれども、これはまた水かけ論になるかわかりませんが、私は一番最初のその根底に流れる精神ということを考えれば、国会の審議権をこれを侵すことには間違いはないと。そういう立場をとったとしましても、そういう審議権を侵すと、そういう立場から考えますと、われわれは立法府の責任としてこれを少し明確に交通整理をする必要があるのではないかと思うわけなんです。それと、だれが見ても納得ができるようなそういう体制を私はやるべきじゃないかと。その意味におきまして、財政法の予備費の規定については再検討して、明確な規定に基づいた運営を今後図るべきではないか、検討をする余地はないのか、これをお尋ねいたしまして最後の質問にいたします。
  118. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 田代委員の御意見は御意見として十分拝聴しております。ただ、私たちはこういう問題はやはり権限の配分の問題であろうと思うのでございまして、かつての帝国憲法時代と全く違う財政処理につきまして、最終的には立法府のすべて意思によって決めなければならぬということになっているわけでございます、先ほど挙げました条文のとおり。  しかし、同時に政府もまた与えられた任務につきましてはやはり敏速に予算を執行していく責任を持っているわけでございます。問題は立法府、行政府の権限の配分、それをどのようにするのが最も合理的であるかという問題につながることであろうと思うのでございまして、私たちのいまとっております解釈は、るる先ほどから申し述べたところでございます。しかし、田代委員のような御意見があることも承知しております。今後ともこの種の論議が深まることを期待いたしておる状況でございます。
  119. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 時間がございませんので、答弁の方は簡潔にひとつお願いをいたしますが、私は五十一年度の検査報告における特記事項の中のいわゆる法定外の公共物の管理問題についてお伺いをいたします。  本件は会計検査院が里道、畦畔、水路、海浜などのいわゆる法定外公共物の管理状況について検査したところ、一千三百十三件の法定外公共物のうち七百四十八件、面積にして約三十八万五千平米、価格にして約七十億円もの里道、水路等が無断で原状を変えられ、私企業や個人等に使用されているというもので、同様の事態は以前から全国的にも数多くあることが見込まれた上、今後も都市化の進展につれて原状変更がなされ、相当な財産価値のあるものが特定の者に無断使用されていくものと認められるので、国有財産管理上放置できないとして特に会計検査院が特記されたものでございますが、このように大量の法定外公共物が無断使用されているのは、まずこれら法定外公共物には地番もなく、登記もなされておらず、その所在は登記所の公図上でしか判明しない上に、その一件一件が小規模で広範囲に散在しており、長い歴史的な経緯などからこの原状も変えられているために、その存在や現状の把握が著しく困難であることによるということはわかるわけでございますが、しかしながら、検査報告によれば、このような無断使用が生ずるのは当局における管理体制の不備にもあり、都道府県知事が建設省所管国有財産取扱規則によってこれら法定外公共物を処理することになっているものの、責任の所在は明確でなく、市町村が事実上管理していると、このように指摘をされております。また、本件に関して建設省にあてた照会文の中でも、法定外公共物の管理の責務内容等は関係法令上必ずしも明確でなく、実情に沿わないものであると、このように述べられておりますが、これらの点が果たしてそうであるのか、建設省の御所見をお伺いいたします。
  120. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 公共物につきまして会計検査院から決算報告の際御指摘になりました内容につきましては、いま先生お話しのとおりでございます。建設省といたしましても、公共物の管理につきましては、従来とも制度上の問題その他につきましていろいろ検討を重ねておるところでございます。  御承知のように、公共物でございます河川法適用外の河川、道路法適用外のいわゆる里道あるいは堤塘、ため池等があるわけでございますが、これは明治七年に地租改正の前提となりまして太政官布告が制定をされまして、これらのものにつきましては官有のものとして地租を課さないことになったわけでございます。それをその後内務省が引き継ぎ、さらに建設省が引き継ぎまして、国有財産法及び建設省所管国有財産取扱規則によって建設省所管の公共用財産として知事が管理しておるところでございます。これらは会計検査院の指摘にもございますように、非常に数が多く面積が小さく、また歴史的経緯もありまして、また制度的にいいますと国有財産台帳の規定の適用もないわけでございまして、いま御指摘のように、公図によって推定せざるを得ないという状況でございます。  これらの管理の適正化につきましては、建設省といたしましても従来からいろいろ問題があることも承知しており、都道府県部局等とも相談をしてその管理の適正化を図っておるところでございます。しかしながら、残念でございますけれども、いま御指摘ございましたように、また会計検査院から指摘もございましたように、許可なく占用されたという事実があるわけでございます。建設省といたしましては、地方公共団体と密接な連絡をとりながら、これらの不法状態の除去とまたその公共物がすでに用途を廃しても差し支えないというものにつきましては、大蔵省に引き継ぎましてこれを有償で譲与すべく手続を進めているところでございます。  なお、この管理問題につきましては、やはり制度的な問題もございます。現在のように、建設省所管都道府県知事というようなことで果たしていいのであろうか。まあ知事でございますと広域的な行政をやっておりますので、なかなか目の届かない面もありますので、あるいは市町村等に管理を委任するような制度を整備した方がいいのかどうかというような問題もございまして、目下検討を進めておるところでございます。
  121. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 今日この種の法定外の公共物は、当局の推理によると山梨県の全面積四千四百六十三キロ平米にも匹敵すると、このように言われております。それだけに、これを管理する地方公共団体は、現状の正確な把握、その処理にはかなりの人手と経費がかかるのは当然でございましょう。したがって、この種の行政財産の管理を全面的にゆだねる国としては、それに所要の予算措置をとるべきであると、このように思うわけでございます。私の見るところではほとんど予算がつけられておりません。境界確定のための交付されてきたわずかばかりの補助金、年度総額で千二百万程度ではございますが、これも五十三年度予算では減額をされ、用途廃止のための補助金も零細補助金のゆえをもって五十三年度は打ち切りであるというこのような状態でございますが、これでは管理責任の明確化や管理体制の整備を図っても、この面から実効を上げることは非常にむずかしいのではないかと思います。検査報告でも、このような現状もあって、地方公共団体でも徹底した管理の意欲に乏しく、このため現にその形状が変更され、無断使用されていてもこれを見過ごす、看過するおそれのあることを指摘をしておりますが、建設省としても、このような予算措置では、仮に検査院が指摘するこのような看過の事態があったにしても、これについては十分な行政指導ができないのではないかと思います。  建設省当局の資料によると、各都道府県がこれら法定外公共物の管理経費として負担をしてきた額は、五十年度内でも人件費として二十一億円、市町村に対する補助及び事務費として約七億円、合計して二十七億八千万円となっているが、この法定外公共物についての無断占用の事態は、都市化、地域開発が進むにつれて今後も増加しようとすることは当然でございますが、これは、防止あるいは廃除するための管理経費について私は早急に格段の配慮をすべきだと思いますが、これについては建設省、大蔵省はどのようにお考えでし、ようか。
  122. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 公共物の管理に関しまして、地方公共団体が相当の負担をしていることは事実でございます。現在の国有財産法の規定によりますと、公共物を用途を廃止をいたした場合におきましては、その維持保存に要した費用の範囲内におきまして公共用財産を普通財産にいたしまして当該普通財産を無償で譲与することになっておるわけでございますが、また一方、建設省におきましては、先ほどお話しございましたように、境界の査定でございますとか、用途廃止で大蔵省に引き継ぐために要する費用について若干の補助をしておるのが現状でございます。  この公共物の管理と地方の負担問題につきましては、これは単に負担問題だけを切り離して論ずることは私どもとしては問題があると思いまして、管理制度全般の問題と関連をいたしまして、その負担の問題につきまして適正化を図ってまいりたいと考えておるところでございます。先ほど申し上げましたように、その制度全般についての見直しが必要でございますので、建設省としては、近く公共用財産管理制度調査会というものを発足いたしまして、学識経験者あるいは関係行政機関、さらに知事会、市長会、町村会の代表者の方も加えまして、財政問題を含む制度全般につきまして検討をいたし、早急に結論を出したいと考えておる次第でございます。
  123. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 建設省からお答えしたとおりでございます。
  124. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 会計検査院にお尋ねをいたしますが、会計検査報告では、実際に管理に当たっている地方公共団体の中には、その法定外公共物について、すでにそれが公共の用に供されていない現状をつかんだ場合でも、これを用途廃止して大蔵省に引き継ぐべき事務処理に円滑さを欠くものがある、このように指摘をされておりますけれども、この点を検査院の方から具体的にお示し願いたいと思います。
  125. 松尾恭一郎

    説明員松尾恭一郎君) 既往において占使用等の事実が判明していながら、長期間にわたって処理されないまま現在に至っているものの事例を二、三申し上げますと、まず大阪府の貝塚市地区地先で里道、水路、四千七百四十五平米が工場敷地として使用されているという事態がございます。それから、東京都の八王子市地先で水路八百八十四平米がゴルフ場として使用されている、こういう事態がございます。それからもう一つ、神奈川県足柄上郡大井町地先で水路千三百七十七平米が個人の宅地及び農地として使用されているという事態がございますが、これらはそれぞれ三十八年十二月あるいは三十五年十一月、四十二年十月には占使用等の事実を地方公共団体が承知したものでございますが、使用者側の申請がおくれたり、管理者側と使用者側との折衝が難航したなどの事情がありまして、その後の事務処理がおくれ、検査院の調査時におきましてもなお未処理となっていたという事態でございます。
  126. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は大蔵省にお尋ねをしますが、建設省が提出した資料によりますと、地方公共団体が法定外公共物の用途を廃止するため境界を確定したものの件数は、占有者等が申請をした場合のものを除いても、五十一年度で六千五百三十四件もございます。用途廃止をすることを決めたものの件数は八千八百五十四件、面積で三百八十一万平米に上っておりますが、これらは普通財産として大蔵省に引き継がれて売却処分がなされるわけでございますが、これによる国の処分収入は相当額に上っているのではないかと思いますが、五十一年度ではどれぐらいに上っておるのか、お示し願いたいと思います。
  127. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) 五十一年度中に建設省から大蔵省が引き継ぎを受けましたいわゆる法定外公共物は、ただいま先生お話にございましたように、約八千七百件、三百五十五万平米でございます。その売り払い処分収入でございますが、普通財産を売り払う場合の統計作成上、法定外公共物というものを区分して集計しておるようになっておりませんので、明確にはお答えできないわけでございますけれども、概算推計してみますと、年間約五、六十億円ということになっております。
  128. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、今回検査院が本件指摘に関して無断使用の代表事例として挙げた個々の実態を見ても一覧表で相当な件数がございますが、A企業が工場敷地として占有している船橋市海神二丁目所在の里道、水路は隣接地の評価額から見て二億五千三百万円と評価をされ、またB企業が工場敷地として占有している貝塚市脇浜所在の里道、水路は八千万円と評価をされておるようでございます。また、C企業が社宅やテニスコートなどに使っている調布市佐須町所在の水路は一平米当たり四万八千円もするものである、このようになっておりますが、これらの事態は社会的公平の見地から見ても看過できないわけでございますが、いま申し上げたこれらの三件については、今後どのように建設省は処理をされるおつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  129. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) ただいま御指摘の、まず第一番の船橋市所在の問題でございますが、これにつきましては現在すでに境界の確定を終えておりまして、用途廃止申請を受理しております。ただ、書類が不備のために現在再提出の指示をいたしておりまして、近く手続を完了する予定でございます。  それから次に、貝塚市所在の件でございますが、現在、以前に境界確定を一応行っておりますが、さらに最近の現況が相当変化しておりますので、現在、再度境界の査定を行っておる段階でございまして、境界の確定の後、速やかに用途廃止を行う予定でございます。  もう一件の調布市所在の件でございますが、近く、六月になりまして境界確定を実施すべく現在準備中でございまして、境界の確定後、速やかに用途廃止を行う予定でございます。ただいま申し上げましたように、境界確定が済み、または境界確定中のものがございますが、それが確定をしました段階においては用途廃止をし、適正な価格によって処分をされるということに相なるわけでございます。
  130. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は国土庁に、奄美振興開発特別措置法のことに関して質問をいたします。  去る五月の十日、奄美群島振興開発審議会は、昭和五十四年度末で期限切れになる奄美群島振興開発特別措置法を継続すべきとの意見書をまとめて福田総理に提出をされました。五月八日に鹿児島県が発表した総合調査報告書によりますと、一人当たりの所得は県平均の八十二万八千円に比べて奄美群島の島民の平均は六十八万七千円にすぎず、県民所得比で八三%、国民所得比で六〇・三%と非常に低く、また、生活保護法による月平均保護率は、奄美大島五三・五%で、全国平均一二%に比べますと約五倍もの保護率でございます。さらに市町村の財政指数は、奄美大島の〇・一、鹿児島県〇・二六、全国平均〇・五一と、これまた著しい格差が存在をしているわけでございますが、このほか、離島の生命線とも言える輸送手段の重要港湾施設や、空港、道路の整備、医療機関の充実、生鮮食料品等の割り高などと、対策がおくれている面がまだ非常に多うございますが、しかも島の経済を支えている基幹産業であるつむぎも、この数年間、韓国つむぎに押され、苦況に陥っているのは御承知のとおりでございます。島民は国庫補助率、そしてまた事業量も、沖繩県並みの内容に改善を強く要望しておりますけれども、国土庁長官はこれをどのように受けとめて対処をされるおつもりか、お聞かせ願いたいと思います。
  131. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 奄美群島の現状につきましては、ただいま和泉委員の御指摘のように私もまた踏まえておる次第でございます。さらに審議会よりの御意見、あるいはさかのぼって昭和四十九年の法改正に際しての国会の附帯決議の趣旨などを考えてみまするに、なお奄美群島について今後振興開発が強力に推進されるよう適切な措置をとっていかなければならないということを痛感いたしておる次第でございまして、審議会の御意見もあることでございますので、私としてもそれに応じて考えてまいりたいと思います。
  132. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 どうしても、沖繩県の沖繩特別措置法というのは、この奄美振興開発特別措置法のいろいろなネックといいますか、そういうところを払拭をしてそしてつくられた、こういうようないきさつもございます。そういうことで、島民としてはどうしても谷間に陥るような状態になることを非常に恐れておるわけでございますので、長官のいま御答弁になりましたとおり、ひとつ前向きで内容のある、沖繩県に匹敵する補助率、事業量に近づく努力をしていただきたい、このように思うんですが、再度その点を確認をしておきたいと思います。
  133. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま強い御要望があった次第でございまして、関係各省庁とも協議の上、十分検討してまいる考えでございます。
  134. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 次は、大島つむぎと韓国つむぎのことに関しまして通産省の方にお尋ねをいたします。  鹿児島の代表的な伝統産業でございます大島つむぎは、御承知のとおり、長引いたこの不況に、それにプラスしまして韓国つむぎの大幅な輸入によって生産の伸びがとまってしまっておるのが現状でございます。ついに五十一年の九十七万反をピークとして、五十二年度は十五万反の減少で八十二万六千反となって、特に、年間二十数万反が韓国から流入をしていると言われるこの韓国つむぎの進出が、この減産に大きな原因となっていることは御承知のとおりと思います。特に大島つむぎはサトウキビとともに奄美大島の基幹産業でございます。そして、全人口大島郡の十六万の約半数の八万ぐらいがこの大島つむぎにかかわった仕事をしているわけでございます。そして、年間生産高は二百四十億円と、このように基幹産業としては実績を持っておるわけでございますが、特に申し上げたいことは、このさなかで特に奄美群島には男女青年が定着をしているということはこの基幹産業のゆえでございます。先ほども申し上げましたとおり、奄美群島は生活保護率も非常に全国的平均からしましても五倍という高率を持っておりますので、この基幹産業が壊滅をしたときには、全世帯がほとんど生活保護世帯に転落をするんじゃなかろうか。そしてまた、このいままでせっかく定着をしておった若年層が都市に流出をしてしまう。ある学者のごときは、過疎の状態になって行政組織が崩壊をしてしまうんじゃないか、いまこそ国の手を打たなければならない大事なときだと、こういうふうに声を大にして叫んでおるわけでございます。  いま日韓の両国間において三万数千反の協定がなされておりますけれども、向こうに民間の人たちが行っていろいろと調査したところでは、約二十数万反が観光客、いわゆる担ぎ屋の手を経て国内に流入をしておる。それが円高という、こういう状態になって、大島つむぎの価格の約四分の一の価格で取引をされておるという、こういう実態が明らかにされておるようでございます。聞くところによりますと、通産省は韓国に渡ってこれの正式な調査をおやりになったことはないように私は理解しておるわけでございますが、やはりこの協定をした反数を守らせるということが一番大事ではないかと思います。そういう意味合いからも、民間の諸団体とそれから通産省の関係の方々が韓国に渡られてその実態をいろいろと話し合う、そういう機会を持つべきだと思いますが、これに対するお考えはいかがでしょうか。
  135. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 大島つむぎに関しまして、大変現在困難な事態に立ち至っておりますことは先生の御指摘のとおりでございます。  生産数量につきましては、実は石油ショック前、いわゆる一時期ブームの時期がございまして、それが非常に大きく生産が伸びたと。ある意味では需要に対しまして少し伸び過ぎた感じもございまして、その反動という意味合いもありまして、また、消費需要全体が非常に鎮静化しておるという面もございまして現在生産も少し落ちておると、こういう国内的な理由もあるわけでございます。  ただ、いまお示しのように、韓国からの輸入というものが非常な大きな問題となっておることもおっしゃるとおりでございまして、現在、昨年以来、韓国との間に絹織物に関します二国間協定ということで、大変私どもとしては通常の常識外でございますが、前年の輸入水準をさらに割り込むという形で、絹織物全体及び大島つむぎにつきましても前年よりもカットバックするという協定をつくりまして、その厳格な施行をやっておる次第でございます。  ただ、お示しのように、つむぎ類といいますものの中で大島つむぎが必ずしもはっきりしないと。これは製品自体についてそういう問題があるわけでございますが、一応われわれといたしましては、協定数量の範囲内ということで、大島つむぎにつきましては韓国側のビザの発行を認めましてその数量を確認しておるというのが実態でございまして、そういう意味合いでは、協定数量三万六千五百反でございますが、その数量内に五十二年度もおさまっているというのが実態でございます。ただ、つむぎにつきましては、御承知のように、総量として相当量が入っておりまして、そのつむぎ類の中で大島つむぎに紛らわしいものがあるというふうなことが言われておることもお示しのとおりでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、絹織物全体の枠という問題と、それから大島つむぎのその中での別枠という意味での協定の仕方につきましては、本年度協定におきましても、非常に困難ではございますが、ねばり強い交渉を続けておる状態でございまして、なるべく御趣旨に沿うような協定に到達したいということで鋭意検討中、折衝中と、こういう状態でございます。  なお、調査の問題でございますが、韓国には残念ながら信頼の置けまするような調査機関というものが実は必ずしも十分発達しておりません。また、政府が入りましてこれを直接調査をするということになりますと、これは韓国政府もきわめて神経質になると思いますし、また、民間におきましても、これを日本政府が入ってあるいは調査をするというふうなことになりますと、非常にやはりかえって期待に反するような結果になるおそれもあるわけでございまして、目下二国間協定で鋭意その縮減の方向に交渉している途中でございますので、そういうふうな余りドラスチックな調査ということはやはり好ましくないんではなかろうかというふうに現状では判断をいたしております。ただ、いろいろと私ども情報のソースはございますので、その情報を収集いたしまして実態の究明に努めてまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  136. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 大体、向こうの方にこちらの方から輸入をされた織機というのが一万二千機相当だということで、大体三十万反ぐらい年間絹織物としてつくられて、その中で大島つむぎは約二十万反という話を現地の関係の人がおっしゃっておるわけで、あなた方も、日本の国内の行政組織も崩壊するようなそういう基幹産業の急場をよく御承知になったら、果敢にやっぱり現地に乗り込んでいって、その協定が守られておるかどうか、それぐらいは私は通産省としてはやるべきだと思いますが、そういうような決意をあなたたちがお持ちにならないことがこの問題が根本的な解決にならない私は大きな原因だろうと思いますが、そこらあたりはいかがお考えですか。
  137. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 実態の数字を把握する必要性ということにつきましては、私どもも全く同様な感じを持っております。ただ、日本政府の者が韓国等へ乗り込みましてこれを調査するということは、これは非常にまあ内政干渉という面もございますし、非常に問題が大きいかと思います。これは特に先方の国の生産事情調査というふうなことになるわけでございまして、これは私やはり行き過ぎではなかろうかというふうに考えるわけでございまして、私ども日本国内で収集できます資料、あるいは韓国から協力を得て、協定上協力を得られる面は多いわけでございますので、そういう面からの資料収集により事実の確認を進めてまいりたいと、このように考えておるわけでございます。
  138. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 再度申し上げますが、韓国の方々に言わせますと、私たちは悪いとは思ってなかったと、みんなこれは日本の業者が教えてくれたんですよと。まああっさり言いますと、悪知恵を教えたのは日本の商社であると。そして、韓国から観光みやげ品として担ぎ屋が一人で十反ぐらいずつ持って、そしてあるところで集めてそしてさばいておるという、そういうような実態は御存じだと思いますが、そういうことの規制をするおつもりはございませんか、国内の問題ですが。
  139. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 観光のみやげ品として入ってくるものがあることは事実でございます。これは一般のみやげ物の輸入の限度というものの範囲内で行われるわけでございまして、その限度を超えました際には、これはいわゆる貿易によります輸入ということになりますので、協定数量の中に入ってくるわけでございます。したがいまして、一定の限度以上のみやげ品というものにつきましてはこれは税関でチェックされて差し戻されるわけでございますので、現在私どもが把握しております限りでは、言われているほど携帯輸入といいますか、みやげ品輸入が多いというふうには理解をいたしていないわけでございます。
  140. 和泉照雄

    ○和泉照雄君 もう少し業者の方の陳情書等も心を入れて見ていただいて、よく事情を聴取して対処されることを強く要望しておきます。  次は、文化財の問題で質問をいたしますが、私は去る四月の十四日に、佐賀県の文化財保存協議会及び佐賀県の自然と文化をまもる会の要請で、九州横断道路関連遺跡の現地調査を実施をいたしました。中世綾部城跡、高柳大塚古墳、二塚山遺跡、丸山遺跡と、このように視察をしたわけでございますが、九州横断道はこれらの遺跡群をそれこそくし刺しをした形で破壊をしておるようでございますが、特に平安末期より山城として発展をしてきた貴重な遺跡でございます綾部城の真ん中を九州横断道路が横切り、このため少弐城は完全に掘り崩されてしまう状態であります。中でも縄文時代晩期、弥生時代の前期のわが国の初期水稲農耕社会の墓地群で全国的にも例が少ない丸山遺跡は、舟形石棺、横穴式石室あるいは竪穴式石室などが発見をされて、古墳の陳列場と呼ばれているほど貴重なものでございますけれども、九州横断道はこの真上を走っております。佐賀県は移築保存を考えておるようでございますが、遺跡はそもそも現場保存をしてこそ遺跡であると私どもは今回主張をしまして、佐賀県の副知事は移築保存の方針を再検討してみようと、このような答弁が返ったわけでございます。私は、このような貴重な文化財は一佐賀県に任せるんではなくて、文化庁が現地保存のためにも積極的に対策を講ずべきであり、丸山遺跡は現地保存をして国の指定の史跡にする等のそういうお考えはないのかどうか、それが一点。  また、九州横断道の佐賀県内の予定路線上のここには、丸山遺跡、綾部城跡などの貴重な遺跡、史跡が三十近くも数えられ、その数は無数と言ってもいいほど遺跡ベルト地帯でございます。地形上、当然古代人の遺跡が密集していることが考えられるところに横断道を計画した道路公団側にも、私は反省すべき点があるように思われます。過去にも、九州縦貫道建設途上発見された遺跡保存のために工法を変更した経緯もあるのですから、このような密度の高い埋蔵文化財の包蔵地帯は、路線の変更か、あるいは最小限工法を変更すべきだと思いますが、これについてはどのようなお考えか。  また、文化庁にお尋ねをしますが、今回の決定的なこの誤りは、佐賀県が公団側から示された幅一ないし三キロ幅で佐賀県を東西に横断する五十五キロメートルのベルト地帯を埋蔵文化財分布調査区域として公団側から示され、この広大な面積を、県はたったわずか数名の調査員で一年という短期間に調査を済ます、いかに粗雑なものであったかおわかりだと思いますが、このような専門調査員の育成充実、それから機動的な配置、こういうことを今後考えなければいろいろと問題が起こってくると思いますが、これにはどのような対応をお示しか、お答え願いたいと思います。
  141. 犬丸直

    政府委員(犬丸直君) 開発事業とそれから文化財の保存という二つの問題、最近特に開発が促進されてまいりますと所々方々において非常に問題を起こす事柄でございまして、私どももできるだけその対処に遺憾なきを期して努力いたしておる次第でございます。  わが国は全国にわたりまして遺跡の数は非常に多うございまして、できるだけ事前に遺跡の存在を察知いたしまして、建設計画、開発事業等が行われます前にそれを察知して、その計画ができるだけ遺跡にぶつからないようにするということが一番最良の策でございます。そのために私どもいろいろ努力をいたしております。全国的な分布調査をするとか、あるいは地方的な遺跡調査をするとかいうふうなことをやっております。しかしながら、遺跡と申しますものはなかなかその表面からだけでは察知しにくい。これは技術上の問題もございますし、今後研究が進みまして、表面の状況からもう少し的確に深いところの状況がわかるようにするという検討を進めなくちゃならないと思いますけれども、何せ表面はたんぼがあり畑があり山林がありというところ、それをほじくって全部調べるわけにはまいりません。  それで、できるだけその予知できる場合には計画を変更するようなことをやっております。現に、九州縦貫道路、横断自動車道の建設の計画の際におきましても、すでに昭和四十五年、二キロの幅で一応の調査をする、それからさらに四十八年にはさらに狭い範囲内で、一キロの幅で調査をすると。そして、その過程におきまして、できるだけ遺跡を避けて通るという措置は講じてまいりました。しかしながら、実際に工事にかかりまして、田をつぶし、掘ってみまするとその下に出てくるということは、実際の技術的な問題として避けがたい問題でございます。  それで、今回この丸山遺跡というかなり重要な遺跡にぶつかったわけでございます。それが五十二年の一月でございました。それでさらに精密な調査をいたしましたところ、かなりこれは重要な遺跡であるということでございまして、佐賀県の教育委員会を通じまして調査を進めていただき、そして何かできるだけその遺跡を残す方法はないかということで公団側と鋭意折衝していただきまして、そしていろいろな方法をいま最終的に詰めているところでございます。いまおっしゃるように、他の場所へ移すほかはないんではなかろうかというところまで一応来たようでございますけれども、さらにもう少し現場保存の可能性もないかどうかということを公団側と詰めておる段階であるというふうに聞いておりますので、まずその県と公団との御協議を注目しつつ、文化庁といたしましても適切な措置を講じてまいりたいと思っております。  直接国がやったらどうかというお話でございますけれども、やはりこれは、現場におられる、現場に近いところにございます県の教育委員会が中心になりまして、そして現場の公団と折衝していただくという、まずそこから積み上げていくことが大事でございますので、もちろん、私ども常に連絡を受け、あるいは技術的な指導をするというようなこともやっておりますが、そういう形でできるだけ遺漏のないように進めてまいりたいと思っております。  なお、最後に御指摘のございました発掘調査等の体制の問題でございます。これは、御指摘のとおり、現在のような非常にこういう現場がたくさん出てくるという状況の中におきまして、体制の整備がまだ不十分であるということは率直に認めなければならないと思います。しかしながら、私どもといたしましては常日ごろその充実強化には努めてまいりまして、まず第一が、これは単なる人があればいいということではございませんで、かなり専門的な訓練を必要といたします、遺跡調査というものは。そのために、そういう資格のある遺跡調査のできる人を養成するということがまず根本の問題でございまして、これは私どもの奈良文化財研究所に付置いたしました埋蔵文化財センターというようなところでそういう養成のことも努力いたしております。それからさらに、各自治体で現実にそういう人が採用できるようにということで、あるいは交付税の措置その他によりまして、かなり全体的なそういう人員の増加も図ってきております。さらに、地方の埋蔵文化財センターというようなものに対する補助金と、まあいろいろな方法でもって、この辺の体制は強化していくように今後とも努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  142. 吉田喜市

    参考人(吉田喜市君) ただいまお話のありました九州横断自動車道――佐賀県下の問題でございますが、この九州横断自動車道の鳥栖-武雄間約五十四キロの施行命令は、実は四十七年の六月に大臣から道路公団はいただいたわけでございます。以来、路線の選定を行いまして、路線選定をする際には、いまお話のありましたように、重要な文化財、これは当然避けるのだということで、県の教育委員会その他の方々と十分数次にわたる協議をいたしたわけでございます。  なお同時に、鳥栖という場所はすでに九州縦貫道ができております。鳥栖のジャンクションから武雄まで行く区間、要するに佐賀平野と申しましょうか、佐賀県の中心である佐賀を中心としての地域振興をどうするかということも考えまして、結論的には背振山系の下に路線を入れた、こういうようなわけでございます。背振山系の下に路線を入れるにつきましても、いま申しましたように、数次にわたり文化財についての協議を行い、重要なものは避ける。結局残りましたものについては発掘調査をして記録保存をしようと、かような姿で路線を入れたわけでございます。  その結果、五十一年から文化財の調査を行ったわけでございまして、たまたまその調査を進めた際、当初予期されていなかった場所に丸山古墳というものも出てまいりました。先生お話しのように、十三基の古墳群から成り立っておって、非常に学術上価値が高いということを私たちも聞いております。それからまた、したがいまして、現在その保存方法について、県の教育委員会、文化庁と協議を続けておるというのが現状でございます。  また、先ほどお話しの綾部城址と申しましょうか、これ中世の山城がございますが、この山城につきましても、路線選定の際には、城の本城と申しましょうか、本城址と申しましょうか、ここは全部避けて、このあたりではいいんじゃなかろうかというんで路線を入れたわけでございまして、この件につきましても、五十三年度の六月からこの調査を始める、かような姿になっております。  いずれにいたしましても、私たち、重要な遺構をつぶすといいましょうか、無理やりにつぶすという考えは持っておりませんし、極力避けてまいりたいというのがきわめて本質でございます。この佐賀県の場合には、やはりどうしても背振山系を通らざるを得ないという、一つ客観的な問題もございます。したがいまして、いまお話しの丸山古墳あるいは綾部城址、単にこれらのものだけじゃないと思います。私は、われわれが路線発表いたしました中について、ひとつ埋蔵文化財の調査を急いでいただきたい。単にこれが丸山古墳だけか、あるいはそれと類似のものがその近くに、現在未確認でございますが、発掘した結果あるいは出てくるかもわからない、こういうふうな事態もあるかもわかりません。したがいまして、県教育委員会にお願いしていることは、ともかく背振山系の下の調査を急いでいただきたい。その調査の結果全体をながめまして、その結果が歴然といたしますれば、県の教育委員会あるいは文化庁の方々を含めまして、関係の方々と道路の縦断線形をどうするかというようなこと、あるいは一部には道路構造をどうするかというようなこと、それで、これから検討をしてまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。
  143. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、最初に、国連軍縮特別総会に関連をいたしまして、若干のお尋ねをいたしたいと思います。  国連史上初の軍縮特別総会がこの二十三日、日本時間では二十四日ですが――から始まっております。核兵器を中心とした軍拡競争が恐るべき勢いで進められており、核戦争の危機がなくならない。しかも、他方では広島、長崎における被爆者の多くがいまだに放射能障害に苦しみ続けておる、こういう現状でございますが、このときに軍縮総会が開かれるということはきわめてその意義が重大であると考えます。日本政府代表といたしまして、園田外務大臣が三十日に演説をすることになっております。民間からも、約五百人の国連に核兵器完全禁止を要請する日本国民代表団が参加をいたしまして、すでに活発な活動を始めております。  そこで、そういう状況のもとで若干のお尋ねをしたいと思うわけでございますが、まず最初に核に関する調査についてでございます。  先般発表されました、外務省がヨーロッパ諸国を対象にして行われました世論調査によりますと、これは二人に一人が、日本は現在核を持っているあるいは将来誓うとしていると見ているという結果が出ております。これは私も数字を拝見いたしまして実は驚いたわけですけれども、安倍長官、せっかくおいでをいただいたので、こういうことが、なぜこういう結果が出てくるとお考えになりますか。
  144. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) わが国は御承知のように特異な憲法を持っておりますし、平和国家としてその考え方は世界に明白にしております、非核三原則を堅持しておるわけでありますから、当然世界の諸国もこうしたわが国の基本的な立場ということはよく承知をいたしておるわけでありますが、いま御指摘がありましたように、確かにヨーロッパの諸国で世論調査をしたところが、その調査にあらわれた結果というものは、そうしたわが国の立場というものがヨーロッパの諸国民の間に広く浸透してないという結果が出まして、私もあの世論調査の結果を見まして非常に驚いた一人であります。もっと世界全体、特に先進国のヨーロッパの諸国民日本の立場というものを十分承知しておるはずなのに承知していなかった。これは本当にいわばショックを受けたわけでございまして、やはりこれに対してはまだ日本というものが諸国民の間に理解をされていないと、遠い国であるということで理解をされていないという面もあると思いますし、一面においてはやはりわが国のそうした基本的な考え方というものを諸国民に周知徹底させる努力がやはり不足しておったんじゃないかということを私自身感じたわけでございます。この点はやはり世界の人にわが国の立場というものを知ってもらうためにはもっとPRその他の周知徹底させる方法をこれから積極的に進めていかなきゃならないということを痛感をいたしました。
  145. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、いま私、ヨーロッパの例だけを出しましたけれども、同じくアメリカの将来の核保有についてという項で、米国の有識者を対象にしての調査が一九七七年三月にやられているのですね。その数字を見ますと、日本は将来核兵器を保有すると考えるかと。回答の中で、考えるというのが六五%ですね。そして、考えると答えた人たちに対して、日本はいつごろ核兵器を保有すると思うかという質問に対して、回答は、五年以内と答えたのが三三%、十年以内と答えたのが四六%、合わせて七九%です。ですから、アメリカの有識者は十年以内には日本は核兵器を持つであろうと思うということを約八割の人たちがそう思っている、こういう資料が出ているわけでございます。いかにわが国の、いわゆるいま長官がおっしゃられた非核三原則の問題、あるいは平和憲法を持っておるという立場、そういった点が浸透していないかということがわかるわけです。確かにPRもきわめて不足をしておりますね。このザ・ジャパン・オブ・ツデーですか、これを見ますと、これは日本の外務省が出している紹介文書ですが、核問題についてはわずか一ページです。これは何ページですかね、二十八ページから二十九ページにかけてわずか一ページ足らず、そういう状況になっております。ですから、この状態では、これはヨーロッパあるいはアメリカを中心にして、わが国が核兵器に対する態度というものについての世論というのがそういうふうになっておるし、国民の悲願とは非常に大きく離れているというように思うわけでございます。  しかし、こういうふうに外国人が非常にクールな判断をしておるというのも根拠がないわけではないと思うわけです。それは最近の国会における防衛諸論議においてでも示されておりますが、今度の総会に対してもそうですし、核の核兵器全面禁止についてもそうですし、軍縮についても非常に熱意が乏しい。むしろ乏しいだけではなくて、逆に核保有の道を切り開こうという態度が歴代自民党政府の姿勢にうかがえる。  特に最近では、憲法と軍事力の関係等につきましては今国会でもずいぶんいろんなことが言われております。三月九日に予算委員会へは統一見解という形で出されておりますが、ここでは核兵器であると通常兵器であるとを問わず、これを保有することは同項の禁ずるところではないとの解釈をとってきている。憲法第九条の二項ですが、この憲法第九条の禁ずるところではないとの解釈を持っているという御意見だとか、あるいは三月二十四日、これは福田総理の御見解はもっとエスカレートしておりますが、衆議院の外務委員会での御発言では、「わが国といたしましては、自衛のため必要最小限の兵器はこれを持ち得る、こういうことでございまして、それが細菌兵器であろうがあるいは核兵器であろうが差別はないのだ。自衛のため必要最小限のものである場合はこれを持ち得る、このように考えておる次第でございます。」と、こういう状況でございます。核兵器や毒ガスあるいは細菌兵器というのが、人間の大量殺戮を目的にした恐るべき兵器であるということはもう明らかですし、これらの兵器が憲法第九条の戦力に当たるかどうかなどというのは、これはもう論議の余地がないと思うわけでございます。ところが、そのような恐るべき兵器の保有さえも憲法上可能とする見解が政府の最高責任者の口から公然と語られるに至っては、もはや憲法九条はなきものに等しいという状態に来ていると思うわけでございます。  そこで、私は外国人は案外クールな目を持っておるというのはその点なのであります。ですから、外務大臣が三十日、日本時間ではあさっての朝になりますが、演説をされますけれども、そこにおけるいわゆる平和憲法のもとに平和国家としてという文言が演説原稿の骨子で触れられておりますけれども、この辺あたりはよほどはっきりしなければ、単にPRが足りないというふうなことだけではないと思うわけですね。一方そういったことが最高責任者の口から公然と語られる、また一方では、解釈、改憲のエスカレートというのが非常に進んでいるという半面、五十三年度予算ではF15やP3Cの導入、そういうことを、そういう実態の面でも侵略的な装備を強化する、こういう状況になっております。こういう状況のもとで幾ら核兵器全面禁止あるいは核の廃絶、全面完全軍縮ですか、そういったことを言われても、これは口先だけではないかというふうに受け取られるのはこれはしようがないと思うんです。その点はどう思いますか。
  146. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカの国民のいまの世論調査等で、いまお話しのように十分まだわが国の立場というものを理解をしていないという面が出ておるわけで、これはアメリカと日本は最も近い関係にあるわけですが、日本人がアメリカ人を知っているほど私はアメリカ人は日本人を知ってないと、また日本を知ってないということも言えるんじゃないかと。ですから、いまおっしゃったように、アメリカが、アメリカ人が非常にクールな見方をしているというふうな御意見でございましたが、私はむしろこれは完全に誤解をしているというふうに言わざるを得ないんじゃないかと。日本の立っておる立場というものを完全に誤解をしていると思っているわけで、憲法の解釈は解釈として、わが国としてはこれはもう非核三原則というものは堅持していかなきゃならぬということでありますし、一昨年の核兵器不拡散条約を批准したことによって、核兵器は保有しないということを世界に対して国際的に約束をしておる立場にあるわけでございますから、そうしたわが国の政策というものをあらゆる機会に内外にも宣明してきておるところでもありますし、また今回の軍縮総会でも、園田外務大臣が政府を代表して出席をしたわけでありますが、こうしたわが国の先覚的とも言うべき政策と立場を改めて世界に宣明をいたしまして、そして核軍縮の促進というものを強く訴えると、究極的には核軍縮、核兵器の全廃というところまでいかなきゃならぬということを強く訴えるわけでありますから、   〔委員長退席、理事野口忠夫君着席〕 私はどうもアメリカ人の一部に見られるような、そうした日本に対するところの解釈、考え方というものは、日本の今日の姿というものを正確に理解していない誤解に基づくものだと思います。したがって、われわれは今後ともあくまでもこうした日本の基本的な非核三原則を貫き通すというこの立場というものを、今後ますますあらゆる機会を通じて積極的に国際的に強く訴えていかなきゃならない。訴えていくことによって、世界にもおのずからわが国の立場というものを理解してもらえるものと、こういうふうに思うわけであります。
  147. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、そういった点で誤解もあるということであるならば、これはやはり真意を知らしていくという点でも具体的な提案というのは非常に大事だと思うんですね。  報道によりますと、民間代表団は二十四日に、国連本部前のユナイテッド・エンジニアリング・センターですか、で国連事務局幹部外各国政府代表も出席をして報告集会というのが開かれております。この場で日本代表団は、「八月六日を国連が核兵器廃絶のための「世界軍縮デー」と宣言してほしいと正式に要請をしたと。これに対してコラディーニ国連軍縮センターの副所長は、「きわめて建設的な提案だ。みなさんの政府か、みなさんがよろしければ別の国の政府を通じて、国連の場で提案してほしい。そうすれば各国の理解を得るのは可能だ」と述べたということが報道されておりました。日本代表団に皆さんの政府と言っているんですから、これは当然日本政府なんですが、皆さんの政府か、皆さんがよろしければ他の国の政府によってと言われておるわけです。私はこういうことこそこれは当然日本政府が公然と提案をするべきだと思いますが、これはどうですか。
  148. 愛野興一郎

    政府委員愛野興一郎君) 軍縮デーの意義につきましては、わが方も十分認めておるところであります。ただ、今日まで東ドイツが五月九日、スリランカが五月二十三日を提案するというようないろんな提案があったわけでありますが、ただいま御提案の八月六日をも含めて、わが方の代表団もひとつぜひ検討をしていきたいというようなことで対処しておるわけであります。
  149. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは、八月六日というのは、言うまでもなく広島に原爆投下された人類にとって恐るべき記念すべき日ですよ。ですから、わが国がこれはまさに非核三原則を踏まえておるということを知ってもらうためにも、当然これをわが国の政府代表が堂々と提案をなさるということこそ大事だと思うんですよ。その点、長官どうですか。外務大臣の演説までまだ大分時間ありますし、これはぜひ御相談をいただいて御提案をいただきたいと思うんですが、どうですか。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま愛野政務次官から申し上げましたように、国連軍縮デーというものをつくるということについての意義は大いにあるというように政府としては考えておるわけでございまするし、この点については、いまも申し上げたように、政府としても検討をしなきゃならぬ問題だと、こういうふうに考えるわけですが、ただ問題は、それをいつの日にするかというふうなことについては、たとえば八月六日と、わが国にとっては原爆が投下されたまさに記念すべき日であるというふうに考えるわけです。しかし、世界的なこれは国連の場でありますから、各国の承認というもの、理解というものを得なきゃならぬ、それにはやはり各国からそれぞれ軍縮デーと。ドイツが降服した日にちを軍縮デーにしようというふうな、これは東独政府からの提案もあるそうでございますが、そうしてやはり世界各国が合意に達するといいますか、理解に達するような具体的な軍縮デーというものの見通しをやはりつけてからでなければいけないんじゃないか、私はそういうふうに思っておるわけで、いずれにいたしましても、国連の当局の方でも、わが国から行っておりますわが国の人たちの声を耳を傾けて聞いておるわけでございまして、そういう空気はだんだん盛り上がっていくという可能性も十分あるわけですから、政府としても十分検討に値する問題だと、しかし、それにはやはり世界各国の了解を得る、理解を得ると、合意に達すると、そういう日を選ぶ必要がある、これからひとつ検討してみたいと、こういうふうに考えておるわけです。
  151. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 軍縮関係の問題では実はもう少しお聞きをしたいんですが、時間がありませんので、以上でこの問題については終わります。すでに国連の場で日本の民間代表NGOの代表が提案をしていることで、しかも積極的提案として受けとめられておるという世論もあるわけですから、ぜひこれが実現できるように政府も御努力を賜りたいと思います。  次に、同和行政の問題についてお伺いをしたいと思います。  私は本決算委員会でも、同僚議員も含めまして数回にわたり、また今国会中も、わが党の同僚議員が衆参両院でそれぞれの委員会あるいは予算委員会等で同和行政の問題について問題を提起してまいっております。といいますのは、同特法が発足をいたしましてまる九年、いよいよ今国会でも延長についての問題が議題として供せられるという段階に来ております。そういう中で、同和行政の中での不公正あるいは非民主的な行政のあり方等を正すということがきわめて重要だという観点で、たびたび具体的な問題等を提起してまいったのでございます。  きょうは同和問題に端を発しまして、これが単に同和問題にとどまらずに、政治活動の自由や言論、集会の自由のじゅうりん、民主主義の抑圧という恐るべき暴挙、こういうことが北九州市で起こっているのでございます。そのことについてお聞きをしたいのでございますが、具体的な問題に入る前に、最初にまず一般論として、当然のことながらお聞きをしておきたいと思います。  地方自治法の二百四十四条の二項には、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」、こう規定をされております。  そこで、ある自治体が、その自治体が行っている行政方針が批判されると、その推進に支障があるからという理由で、公の施設、たとえば体育館だとか公民館、そういったものの利用を拒否した場合、これは地方自治法に言うところの正当な理由と言えるのかどうか。私は、憲法第十四条の法の下の、平等ですね、あるいは憲法二十一条の集会、言論の自由、地方自治法十条二項の役務の提供をひとしく受ける権利、これら等から見まして、正当な理由となり得ない、こう考えるわけですけれども、念のために自治大臣の御見解を最初にお伺いをいたしたいと思います。
  152. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) ただいま同和問題についての御質問でございましたし、そして、これとの関連におきまして地方自治法第二百四十四条についての関連を持たした御質問でございました。  御指摘がございましたように、地方自治法第二百四十四条は、「普通地方公共団体は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」、かように明定してあるのでありまして、したがって、地方公共団体が施設なり、営造物を管理いたしております際に、その管理を行います上での条例なり規則を持っておると思うのでございますけれども、さような条例なり規則に従いまして具体的に個々の方に貸与いたす、使用いたさせる、かようなことであろうかと思うのでありますけれども、しかし、その条例なり規則には、正当な理由がない限り拒んではいけないというたてまえが貫かれておりますのが当然だと、かように私は理解をいたしているところであります。
  153. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう一つ一般論として総務長官にお聞きをしたいと思いますが、同対審答申の中にこういうふうに記されている。「同和問題の根本的解決を目標とする行政の方向としては、地区住民の自発的意志に基づく自主的運動と緊密な調和を保ち」云々と、こういうふうにあるんですね。同対審答申の一番最後のところにありますが、こういうふうに書かれているいわゆる「地区住民の自発的意志に基づく自主的運動と緊密な調和を保ち」という文言ですね、これはある特定団体だけを同和行政の窓口にしたり、あるいはある特定団体にだけ同和行政の執行権をゆだねると、こういうことではないと思うんですけれども、私はそうだと思うんですけれども、長官その点の御見解いかがですか。
  154. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 政府委員にお答えをさせます。
  155. 黒川弘

    政府委員(黒川弘君) いま、沓脱委員御指摘の同和対策審議会の答申の中にございます、「地区住民の自発的意志に基づく自主的運動」との関連でございますけれども、行政を円滑に進めるに当たりましてはこのような工夫も当然必要かと思いますが、およそ実質的な意味におきまして、同和対策の効果がひとしく同和地区住民に及ばないというようなこと、すなわち行政の公正性を欠くというふうな事態は許されないことであるというふうに考えております。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっと一般論もなかなか明快ではないですね。  ところで、具体的に申し上げますが、去る五月二十六日、北九州市におきまして地元の共産党が、わが党の渡辺武参議院議員が三谷秀治衆議院議員を迎えて八幡の市民会館で演説会を開くことにしておりました。これは国会報告、時局演説会です。ところが、直前になりましてから市の当局から、市の同和行政に反するおそれがあるとして、同和問題に触れないように、話の中で同和問題に触れないようにと要求をしてきたわけです。当然わが党は、こういう不当な要求には応ずることはできない、その旨を明らかにして会場の使用を要求をしたのは当然でございますが、市の当局は結局使用承認を取り消した、こういう事件が起きまして、当日直ちに三谷議員が現地から自治省の近藤局長に、こういう不当なやり方というのは直ちにやめさせるように連絡をしなさいといって連絡をした。そうしますと、自治省の近藤局長は、市の理由をただしますと、こういうお約束をされたそうでございますけれども、市の当局はどういう理由でそういうことになったということを伝えてきておりますか。最初に近藤局長からそのことをお伺いしたいと思います。
  157. 近藤隆之

    政府委員(近藤隆之君) 八幡市の市民会館の使用の問題につきまして、二十六日の夕方六時半ごろだったかと思いますが、三谷先生からお電話がございまして、この市民会館を借りておったんだけれども取り消してきたと。この理由について市の方へ確かめろというような御連絡がございました。そこで、市の方にいろいろ聞いてみましたところ、市といたしましては、管理上支障があるので、北九州市立市民会館規則というのがございますが、その第八条に基づきまして使用承認を取り消したんですというような御返事がございました。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 管理上支障があるのでという、管理上の支障というのは何ですか。
  159. 近藤隆之

    政府委員(近藤隆之君) 管理上支障があるかどうかということは市の方が判断すべきことかと思いますけれども、この北九州市におきましては同和問題がいろいろ現在問題となっております。そして、この二十六日の会合の前提といたしまして四月二十一日に会館の使用について申請がありました際に、同和問題についての使用ではないという旨の確認の上にこの使用の許可がされておったようでございます。そこで、二十六日の当日になりまして、こういった前提条件について会館の方で再確認を求めたところ、確認できないという返事がありまして、種々の条件を勘案いたしまして使用を認めた前提条件というのに違反してきたというようなことで、このままでは管理上責任が持てない、支障があるということでお断りをしたというふうに聞いております。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで現場でも、いま局長がおっしゃった、「管理上支障があるので」「使用承認を取消します。」というのが出ていると同時に、「管理上支障があるので」という中身は何なのかということで、これは三谷議員などが聞いたそうですが、文書でこういうふうに言うてきている。「昭和五十三年五月二十六日の会場使用申込みについては比九州市同和行政の基本方針に反するおそれがありますので使用承認を取消します。」と、こういうふうなことが言われている。  で、ちょっとこれは私この事件だけかと思っていたら、そうではなくて、北九州市では今回の事件だけではなくて、ずいぶんいろんな事態が起こっております。四月の二十五日には戸畑区で市会議員が市会報告の申し込みをいたしました、公民館の使用をですね。これが同じ理由で使用が拒否されている。五月の十九日には、戸畑区の同じく公民館に、全国生活と健康を守る会定期大会の申し込みをしたところが、申込書に同和問題と関係ないと記入しないから貸せないと、こう言って拒否をされた。  また貸す場合にも、集会で同和問題が扱われると市の当局者が臨席をし、弁士が同和問題に触れますと集会の中止と解散を命ずることができると通告さえしてきている。これは戦前の暗黒時代と間違うようなことが平然とやられている。  もっとひどいのは、歌声サークルや労働組合の定期大会で申し込みに行っても、申込書に同和と関係ないと書かないと使用承認がもらえない、こういう異常な事態が起こっている。まさに冒頭に私が申し上げた憲法第十四条、二十一条、地方自治法の全く乱暴なじゅうりんをしておる不法行為だと考えますが、北九州市に対して厳密に厳正な指導を行うべきだと思うんです。自治大臣御見解どうですか。
  161. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 同和行政は公正公平に行われなければならぬことは申すまでもないことでございます。いま北九州市の具体的な事例をお示しであったのでございますけれども、私どもは公の施設を使用するに当たりましては、憲法や自治法に、あるいはその公共団体の、具体的には北九州市の制定いたしておりまする条例に反して使用されておるような事実はないものと思っております。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ちょっとよくわからないんですが、もう少しはっきりお聞きをしたいんですが、たとえば同和問題には触れませんと書かないと公民館やあるいは市民館ですか、市民センター、そういうものを貸さない、そういうやり方というのはこれは憲法、自治法に違反しませんか。表現、言論の自由、全くじゅうりんじゃないですか。そう思いませんか。
  163. 近藤隆之

    政府委員(近藤隆之君) 先ほども申しましたように、北九州市立市民会館規則というのがあるわけでございますが、それによってこういった場合には貸すということを規定しておるわけでございまして、その中で、管理上支障があると認めるときには貸さないあるいは一旦貸すと決めたものを取り消すことができるというふうになっておるわけでございます。もちろん、市の行政というのは憲法その他法令に基づいてなされることはこれは当然のことでございますけれども、管理上支障があるかどうかということをいろいろな基準に基づいて判断した上で、市当局としてはこの場合には貸せないというふうに決めたのだと思います。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いやそうじゃなくてね、私大臣にお聞きしたいと思いますのは、たとえば私先ほど申し上げました二十六日のケースを見ますと、「北九州市同和行政の基本方針に反するおそれがありますので使用承認を取消します」というのですよ。これは、一つの北九州市のたとえば同和行政なりそれぞれの市の政治方針というのはありますよ。これは全市民百万なら百万すべてが同じく支持しているかどうかということは保証の限りではないですよ。政府だってそうでしょう。そんなことを言うたらわれわれ国会報告もできませんよ。自民党政府批判しますよ、当然。そんなことをするんだったら貸しませんということになるんじゃないんですか。そういうことを一地方自治体でやってよろしいかと言うんですよ。私はこんなことは絶対にあってはならぬと思いますよ。その地方自治体がやっておる行政の方針に異見がある、あるいは批判がある、そういう人には貸しませんと、そんなことを憲法の十四条、二十一条で規定していますか。その点をはっきりしなさいと言うんですよ。――いや、大臣の意見を聞きたい。
  165. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほど、地方自治法に触れましての御質問がございまして、そしてそれは正当な理由がなければ断ってはならないことがたてまえであると、かように申したのでございます。  そこで、北九州市がいかなる条例を制定いたしておりますか、またいかなる規則を持っておりますか、そのことは私は明確にいたしておらないのでありますけれども、しかし、地方公共団体は云々と、かような地方自治法の規定に反しますような条例を制定しているとは思えないということを申したのでございまして、そして具体的なお話がございました。それは、管理上支障があってはならぬから、支障のある場合には貸さないことにしておる、かようなことでありますならば、管理上支障がありやなしやはその施設を持っておりまする公共団体みずからが判断することであろうと、かように理解をいたしておるところであります。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 北九州市の管理上支障というのは、建物が管理上支障があると言っているんじゃないんです。これは裁判所で係争中のケースもありまして、それには北九州市の準備書面ではこういうふうに言われている。管理上支障を及ぼすおそれがあるという内容は単に設備の管理のみではなくて、広く行政目的に沿った管理運営を指すんだと、だから、北九州市の行政方針に反するものは支障があると判断をしたら貸せない、貸さないんだと。こんなばかなことがありますか。だから、建物の管理上支障があると、混乱が起こるとかなんとかという場合はこれは支障ですよ。管理上の支障ですよ。しかし、行政方針に異論のある人については、これに貸したら自分のところの行政方針を進める上で混乱が起こったら困るんで管理上支障があると、こんな言い方なんですよ。準備書面にはそういう内容をつぶさに書いてあります。だから、私が申し上げているのは、少なくとも政治方針や行政方針に異論があろうがなかろうが、思想、信条のいかんにかかわらずですよ、これは。表現の自由、言論の自由というのを基本的に認めているのは憲法二十一条じゃないですかと、この憲法二十一条に抵触するじゃありませんかということを申し上げている。その点をはっきりしていただきたいと言うんです。
  167. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 準備書面といいますのが私には正確には理解できませんが、恐らく裁判事案に相なりまして、その民事手続においての書面の準備書面と、かような理解をいたすのでございますけれども、準備書面にいかなる理由を記載いたしましたかはこれまたつまびらかではございませんけれども、さような書面なりあるいは実際の審理を通じて具体的には裁判所が決定をいたすことであろうと、かような理解をいたすのでありまして、準備書面にいかなる記載があったかは私ども全く関知をしておらないところでございます。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、私は準備書面についてお聞きしてるんじゃなくて、先ほど局長がお述べになった、管理上支障があるという中身が何かということについて申し上げたんですよ。北九州市のお考えの中身はそういうことらしいというのが準備書面に出ておるということを引用いたしましたので、それについては確かに何も大臣関知していただかなくてもよろしいわけで、それで、簡潔に言うておられるのは、「北九州市同和行政の基本方針に反するおそれがありますので使用承認を取消します。」と、こんなことってありますかと言うのです。北九州市の同和行政の基本方針、これに反するおそれがあるので会館の使用は取り消しますと、そんなことってありますか。それは正当な理由と思いますか。混乱が起こるおそれがあるということがあるので貸せませんというなら話は別ですよ。違うんですよ。もう一遍言いましょうか。「北九州市同和行政の基本方針に反するおそれがありますので使用承認を取消します。」と書いてある。  第一、公共的建物を借りるのに、同和行政には触れませんとか、そんなこと書かぬと一々貸さぬというようなこと、そういうことがまかり通って、それまともな理由が成り立ちますか。まともですか。政府批判をいたしませんと書かないと公会堂は貸しませんと、そういうことがまともですか。同じですよ。その点について。
  169. 近藤隆之

    政府委員(近藤隆之君) 私どもが市に照会いたしましたのでは、その同和行政と結びつけた文面によって実はお断りしておるというのではなくて、事情聴取した結果、使用の条件に違反し、管理上支障があるので使用の承認を取り消すというようなことで、その何が管理上支障があるのかということを地元でいろいろ論議した結果、ただいま申されたような文書の提出ということになったというふうに聞いておるわけでございます。そこで、同和行政の批判のための集会といったようなものがいろいろ同和行政遂行上トラブル等を生みまして問題になるんじゃないかということで、市としてはそれが正当な事由であるということで、トラブルのおそれありということでそういうのにお断りしておるということで、ただいま先生も御指摘になりましたように、五十一年の事案はたしかこれは現在裁判でこの点について係争中であると思っておりますが、私ども、地方公共団体が行っておりますことでございますし、法律に、憲法その他の法令に違反するような措置はとってないと信じておるわけでございます。
  170. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ところがね、実際上は、これは二十八日の分ですけれども、二十六日もそうですが、会場使用取り消し処分の執行停止仮処分の申し立てをやったんですね。そうしますと、福岡の地裁は北九州市に不当な会場使用拒否を取り消すように命じた、そういうあれですよ、仮処分申し立て申請を全面的に認められて、結局これは二十八日は借りられた。裁判所が違法だということを認めて、いわゆる取り消し処分の停止の仮処分の措置をしたんです。それなら、あんたたち大臣も局長もおっしゃっていることと裁判所の処置と全然違うじゃないですか。法律違反はやってないと思いますっておっしゃるけれども、裁判所はそうやって仮処分を決定してるんですよ。どう思います。
  171. 近藤隆之

    政府委員(近藤隆之君) 二十八日の事例につきましては、私も新聞紙上で拝見したところでございまして、何分新しいことで、その詳しい事情につきまして市当局について照会する暇もないような状況でございますけれども、これは有効に何か契約が成立しておって、これを取り消すことによりまして、いろいろな方面に迷惑をかけるというようなこともこの理由の一つになっておるようでございますけれども、その間の事情につきましてはなお市の方に聞いてみたいと思います。
  172. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、まだ起こって間のないことだから十分事情が詳細にわからないということであれば、これは事情は詳細にお聞きをいただきたい、お調べをいただきたい。  しかし、公共的な建物を、集会場、公会堂あるいは市民センターなどを、その考え方のいかん、思想のいかん、宗教、信条のいかんによって貸したり貸さなかったりするというふうなことを条例に明記をしているということが法律に抵触しないと言う方がおかしいんですが、これは大臣は先ほど、するはずがないとおっしゃった。そういうきわめて重大な憲法違反、地方自治法違反がやられているという具体的な事例をお示しをいたしましたので、十分調査をしていないんだったら、ひとつぜひ調査をして、こういう乱暴な、いわゆる言論、集会の自由、憲法で定められている基本的権利をじゅうりんするような暴挙というのは直ちにやめるように、また、これを裏づける条例等があるようですが、これについては少なくとも自治省としては指導するべきだと思いますから――しなければならないと思うんです。事情がわからないからいまできないというんなら、ひとつ事情をよく調べて、そういった厳密な、厳正な措置をとるべきだと思いますが、最後に大臣ひとつお願いしたいと思います。
  173. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 思想なり信条なりあるいは宗教なりによりまして使用せしめるかいなかを決めておると仮定をいたしますならば、それはまさに正当な理由とは言いがたいとただいま私は判断いたしているようなことでございますが、北九州市なり福岡市がどのような条例なり規則を持っておりますか、よく調査をいたしてみたいと、かように考えます。
  174. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃこの問題はまた後へ譲ることにいたします。  次に、時間がありませんので、先日報道されました日本歯科大学の隠し預金の問題について若干お聞きをしたいと思います。  最初に国税庁にお尋ねをしたいと思いますが、新聞に報道されております内容、あれは事実でございますか。
  175. 水口昭

    政府委員(水口昭君) お答えいたします。  日本歯科大学の問題でございますが、御承知のように、昨年来、私立の医科大学につきましてはいろんな問題があったわけでございます。そこで、国税庁といたしましても、税務上の問題もありますので、各いろいろの医科大学について十分調査を進めておったところでございます。  ところで、お尋ねの日本歯科大学でございますが、これは学校法人でございますから、学校そのものの課税につきましては、収益事業に該当しない限り課税問題は起こらない。いま問題になっておりますのは、日本歯科大学の源泉所得税の問題でございます。日本歯科大学が、学校の理事者なりあるいは職員に給与等を支払います、その課税関係が適正に処理されておるかどうかという問題でございます。まあ、そういった関係につきまして税務当局といたしましてもいろいろ調査をいたしまして、適正な課税が行われるよう指導しているところでございます。  なお、その詳しい内容等につきましては、これは個別の課税の事案でございますから、詳細を国税当局からお話し申し上げることはお許しをいただきたいと思います。
  176. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 文部省はどうですか。こういう事実を知っておいでだったですか。知らなかったんだったら、国税庁と連絡をして、事実調査などを進めておられますか。
  177. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 五月二十七日朝夕刊で報道されたところで承知をしたことでありますけれども、日本歯科大学におきまして、昭和四十八年度から昭和五十二年度までの五年間に、入学者から収納した寄付金の一部と見られる四億八千七百万円が架空名義や無記名で預金されていた事実がある、またそのことに中原理事長が関与をしていた、こういうことが東京国税局の調査によって明らかになったという報道を承知をいたしたわけでございます。  文部省といたしましては、学校法人はその公共性にかんがみまして、節度ある運営、特に経理の適正な処理を期すべきであるのは当然でございますから、昨年の九月七日に、私立大学医学部、歯学部におきます入学に関する寄付金の収受等の禁止などにつきまして非常に厳しい通達をいたしました際にも、経理の適正な処理について指導いたしたところでございます。  今回の日本歯科大学におきます問題につきましては、文部省といたしましては土曜日の朝刊で承知をいたしましたので、学校法人の所管庁としての立場から、できるだけ早く事実関係を調査をいたしまして、その結果を待って、指導助言をいたさなければならない事例でございましたならば、厳重な指導助言をいたすことにいたしております。
  178. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 報道によりますと、四十八年から五十二年度まで五年間の寄付金総額約百六十億程度ですね。これを納めた父兄とか学生はあれは大問題です。少なくともなけなしのお金をはたいて子供を進学させるのに相当苦労していますわ。一人当たり八百万から千二百万と言われているんですからね。そのお金が、学校が充実し、子供の教育環境や教育内容が充実するためにという父兄の善意というのがあるわけですけれども、それが学校法人と離れて、理事長兼学長が個人で費消しておられたと言われてもしようがないような形になっておるとしたら、実際これは全国の千数百人、千七百人以上だそうですけれども、そういう方々の御父兄や現に在学中の学生さんたちのショックというのはきわめて大きいと思うんです。  おっしゃられたように、特に学校というのは、これは公共的な機関でもあり、社会的な信頼というのがきわめて大事だと思うんですね。こんなことを国税庁から追及をされても、四億八千万ですか、のお金の使い道を言わないで、九億も税金を払うというのは、よくよくこれは中身が言えないんじゃないかとだれでも思います。普通なら、しかも生徒から集めたお金であれば、最も有効に使うということが妥当なやり方ですよね。それを、四億八千万の使途を明らかにしないがために、国税庁へ九億ほど税金を納めたというんでしょう。これは異常なあり方だと思う。  私は時間がもうありませんからたくさん申し上げませんけれども、大臣がおっしゃったように、すでに医科系、歯科系の私立大学に対する問題というのは社会問題化して、その時期に、昨年の九月でしたか、これはもうその以前にもやっておられるようですが、御指導になっておられ、通達も出しておられるんですね。これは少なくとも厳正にやらせなければならないと思うんです。日本歯科大学というのは非常に長い伝統を持つ大学のようですが、少なくとも学長、理事長がまさにその聖断をするというようなことをやっておるようなことでは、これはもうやはり学校のいわゆる何というんですか、自主性、独立性、公共性という点は非常に危惧を感じますよ。  そういう点で、何から何まで文部省も御指導はできないんでしょうけれども、少なくとも通達で明確にしておられるいわゆる経理の適正処理、それから財務状況の明示、これの点については事情聴取を、事情をよく調べられて、徹底的にやはり明らかにさせてほしいと思うこと。さしあたり、この四億八千万円の使途については少なくとも明らかにして関係者に明示する必要があると思うんです、だって大学の会計じゃないんですからね。それで、言われたからといって学長、理事長のやみ給与として処理がされた、こんなことで父兄が承知すると思いますか。もう私どもの方にもいろいろと御意見が上がってきておりますが、そういった点で、社会的な信頼を回復する上でも、また文部省としても、こういう事例というのがぞろぞろ出てきたら大変なんですから、少なくともそういった点を今後もなくしていくためにも、この点については明確にするという点が非常に大事だと思いますが、この少なくとも四億八千万円についての使途を明らかにして、これを関係者である父兄や生徒に明らかにするという点はどうですか。
  179. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 学校法人につきましては、私立学校法の趣旨に基づきまして、各学校法人みずからがその公共性を自覚をして自主的に健全な経営を行ってくださることを期待をしているわけでございます。文部省が期待しているだけではなくて、国民が期待をしているわけでございますから、御指摘の点は十分調査をいたしまして、明確にしなければならない責任が私どもにあると承知をしております。
  180. 野口忠夫

    ○理事(野口忠夫君) 時間でございますが……。
  181. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間ですか。ちょっとだけいいですか。
  182. 野口忠夫

    ○理事(野口忠夫君) 結構です。
  183. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私、一言だけこの機会に稻村長官に。  これも新聞に出ておりましたけれども、あれは事実ですか。私は、長官のための選挙違反を、しかも買収、供応等で選挙違反で有罪判決を受けられて、それぞれの処分を受けられたというふうに書かれていたので、まず最初は事実かどうかと思って実はちょっと驚いたんですが、事実関係はどうなんでしょう。   〔理事野口忠夫君退席、委員長着席〕
  184. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 園遊会の推薦に際して、宮内庁の所管をいたしております総理府の総務長官といたしまして、まあ政治的細やかな配慮に欠けておったことは率直に認めたい。しかしながら、発表と同時に、即私はそういう事実関係等々を思い出し、関係者を通じて不参加要請をいたしました。三人はすでに一昔前のことであり、現在は農林、漁業、商工、消防、議員としてその償いは十二分に果たし、しかも現在は功労者、功績者として推薦に値する人々であります。まあしかしながら、いまなお社会的な差別を受けるということについては大変残念ではあるが、そういう問題を起こし得るとするならば不参加をするということでございまして、いま率直に申し上げて、まあ政治的な細やかな配慮の足らざるところをやはり率直に認めてまいりたい。いま申し上げたように、その人々はいろいろな問題を考慮して不参加をするという報告を受けておるということが事実であります。
  185. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 時間です。
  186. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 明快に御答弁いただきましたので、私はいわゆる買収、供応などという選挙違反というのは、本当にそういうものをなくしていくと。そういうことがまかり通るということがいわゆる金権選挙、こういうものを根絶していくことはできないと思うので、そういった点では、ひとつ政治的に厳正に今後とも対処していただきたい。そのことを申し上げて終わりたいと思います。
  187. 三治重信

    三治重信君 国有財産の管理の問題について、若干、最近と申しますか、二、三経験したこととの関連で御質問をしたいと、こう思うわけでございます。  一般に国の出先機関の土地や建物は、公共用財産として、これは各省庁の長、いわゆる大臣や長官の所管として国有財産が管理され、大蔵省の方は普通財産の管理を総括的に行われる。しかし、大蔵大臣は全体としてそういう各省庁に任した公共用財産も、いろいろの変更、またその使用について相談に乗られるといいますか、いろいろ指示される権限があろうかと思います。それで、戦後非常に国が貧しく、また出先の方も予算がないけれども、しかし庁舎その他を建てないと行政ができないというようなことから、いろいろ団体をつくったり、また市町村が無理をして土地をつくって、それを当該省庁、いわゆる国に国有財産として寄付をし、そしてその土地の上に予算をわずかばかりつけてもらって庁舎をつくり、そして出先機関の行政ができたのがたくさんあるわけなんです。それが非常に高度成長で大蔵省の配慮もあって、出先の合同庁舎をつくって、そしてそういう末端の零細出先機関を各地域ごとに統合して総合庁舎をつくられるようになった。これは国有財産の管理、出先機関の効率的な庁舎の運営から見て非常に画期的な新しいいいことだと思っております。  ところが最近、そういう合同庁舎に出先機関がつくっていただいて入れるようになった。しかし、その前につくった、いわゆる寄付を受けた土地に木造や何かの建物をつくっておったのががらっとあくと。すると、それは大蔵省に返しますと、こういうと、それはまあ合同庁舎に入ったんだから不要になる、しかもそれはいままで公共用財産として各省大臣の所管だけれども、それは不要になれば大蔵省に返さなければいかぬと、こういうふうな規定になっていることはまあ御承知のとおりでございますが、そのときに、土地は返すのだが、その上屋は使い道にならぬから取っ払って返せと、こういう事例があったわけなんです。それはもう使っていたものを返す分にあって上屋は要らぬと、だから出先機関で返せとこう言っても、出先機関は予算もない。そうすると、そのまた外郭団体なり援助団体があるとそれに言って、大蔵省の財務局の方で上屋は要らぬから取っ払わなければ受け取れぬとこういうことだから、おまえの方で何とか費用を工面して取っ払ってくれと、こういうようなことになったわけなんです。  これは済んだことなんですけれども、とやかく責任とか何とかいうものを言うわけじゃないけれども、こういう一例から見ても、これからたくさんそういういわゆる出先機関が、合同庁舎やその他の新しい大蔵省の予算をつけて出先の庁舎が合理化されていく。しかしながら、その残った公共財産の寄付された土地、あるいはそういう庁舎が不要になったときに普通財産に返す場合の大蔵省の財務局の態度、こういうものについて、そういうふうに更地じゃなくちゃだめだというのか、またそれから、寄付された土地を地元が、これはひとつわれわれが当時なけなしの金でみんなから集めてつくって寄付した土地ですから地元へ返してほしいと、こういうときに、何か注文というか、特別何に使うんだと、どういうことでなければだめだとかいうような、一つの何と申しますか、返還についての大蔵省の方で決められている要件があるのかどうか。
  188. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) まず寄付を受けた土地の話でございますけれども、寄付を受けた土地に各省各庁が建設した建物がございまして、用途廃止をすると、その建物が今後とも使えるというような場合は別でございますけれども、もう使えなくて取り壊さなければいけないと、そういった場合には、その建設をしました各省各庁におきましてこれを撤去していただくように実務上扱っておるわけでございます。これは撤去に予算措置を要するといったような関係でございまして、通常、建設した者が撤去する予算を要求していただいて撤去すると、そういう形になっております。したがいまして、その建物が将来におきましてもずっと使用にたえるという場合には普通財産として土地と一緒に大蔵省に引き継いでもらうと、そういうシステムでございます。  次に、その土地が寄付を受けたような場合に、その寄付者に返せるんじゃないかという場合でございますが、これは法律の方に規定がございまして、返す要件がございますので、われわれが寄付した土地であるからすぐ返してくれということを申し出られましても、その要件に合わなければ返すことができない。その要件と申しますのは、地方公共団体が寄付をした場合にはその地方公共団体がまた使うといったようなこと、地方公共団体以外の者が寄付をした場合には二十年以内であるというようなこと、いずれの場合にしましても、国において使うことがないということが前提になっております。
  189. 三治重信

    三治重信君 そうしますと、出先機関は、取っ払って返せとこう言われたときに、取っ払う費用を、予算をあらかじめとっておかないと大変なことというか、まあ何といいますか、ほかへたかるようなことでないとその建物の撤去はできない。あるいはそれはまあ一年、二年ほったらかしておいて、そして予算が取れてから取っ払って大蔵省へ返すと、こういうことになるわけですか。
  190. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) 大体おっしゃるとおりでございますけれども、建物を解体する場合に、数年前までは解体売り払いという手段がございまして、たとえば幾らか何千円というふうに廃材の価格が出るという場合が多うございましたが、この数年来ずっと労働賃が上がっておりますので、解体撤去には必ず費用を要するというような状況になっております。したがいまして、あらかじめ見越せる場合には予算要求をして解体費を建設費と合わせて予算に計上していただくということになろうかと思います。
  191. 三治重信

    三治重信君 それから、一般会計予算の場合には余り問題ないようですけれども、出先機関で特別会計一般会計の職員が一緒になっている。いわゆる予算上からいくというと、職員の中にも一般会計で支払われる職員、それから特別会計で支払われる職員、そういうものが出先機関で一緒になっている。したがって、その庁舎の新営費も、あるところでは、全国二十つくるとすると、十は一般会計予算で建てる、それからあと十は特別会計予算で建てる、こういう場合に、大蔵省から、普通財産から公共用財産にかえてもらってそこへ予算で建てようしたら、何だ、これは一般会計と思ってたんだけれども特別会計予算じゃないか、そんならこの土地も買えと、そうじゃなければそういうふうに公共用財産に切りかえることはまかりならぬと、何で特別会計予算の庁舎をおれの方が土地をただ提供して公共用にしなくちゃならぬのかと、こういうような問題もあったわけです。  しかしその出先機関は、全部が全部特別会計の職員や特別会計だけの仕事をやっている出先機関ではない。だけれども大蔵省予算そのものは全国に何百カ所という出先機関のやつで、その特会の人間と一般会計の出先機関がずっと国から県、それから末端の庁舎まであるわけなんですね。そういう場合でも、特別会計予算の建物として入ったところは、大蔵省が好意的に普通財産をいい場所にそれは提供して、予算がつかぬならそれをかえてやろう、だけれども特別会計ではそれは買え、こういうことでないとだめだと、またそうでなければ何か一つその理由を出せと、こういうようなこともあったようですが、そこはそういう混合の出先機関、しかも予算もそれは一カ所の一つずつのところに一般会計予算特別会計予算と――まあ五千万円の予算を三分の一は特別会計、三分の二は一般会計予算各省入れておけばそういう誤解はなかったかもしれぬ。そういうような問題について、やはり特会と一般会計と、それほど厳重な国有財産の管理があってしかるべきかと思うんだけれども、実際の出先機関やそういうものについては、予算がそういうふうになっている場合に、国有財産管理の方ももう少し実情に合った話し合いをしてもらわぬと出先がえらい混乱をする。せっかく予算を取ったと、また、土地を借りることになってちゃんと所管がえもできるようになったと、しかしその予算が、たまたま割り当てられたのが一般会計予算でなくて特別会計予算だったと、それをなぜおれに知らさなかったんだ、だからこんなものつくることはまかりならぬと、年度末になっててんやわんやをする、予算使用残がなくなってしまう、こういうようなこともあったわけですが、こういう問題についての処理を一般会計、特会、どういうふうに財産管理をされているのか、また方針を出先機関に示されているのか、ひとつ御説明願いたい。
  192. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) 先生御指摘のようなケースが間々あるようでございますけれども、特別会計の建物の敷地が一般会計所属の土地というような場合には、やはり国有財産法の規定によりまして一般会計から特別会計に有償で所管がえをする、つまり有償で所管がえするというのは売り払いに当たるわけでございますが、そういうふうに有償所管がえかあるいは有償で使用させる、つまり代金を払って土地を借りるという形態かにするわけでございまして、混淆は許されないというシステムになっておるわけでございます。しかしながら、実際上の扱いとしましては、国におきまして面接公共の用に供する目的をもって行ったような場合には、その財産の価額が政令で定める金額に達しない比較的小規模のものは大目に見て扱うということで、無償でもよろしいという暫定的な措置をとっております。
  193. 三治重信

    三治重信君 そうすると、結局会計上の方はそういう特別会計というのと、国有財産の管理される方は一般会計の考え方で財産管理をする、だから、特会はあくまで有償とかあるいは使用料を払ってそれを使わしてやる、所管がえをする、こういうふうで、まあ特別小さいのなら融通はさくけれども、一定規模以上のところは、特会の予算でやる場合には必ず土地まで使用料を払うか金をちゃんと払った上でやれと、こういうことでいいわけですね。
  194. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) さようでございます。
  195. 三治重信

    三治重信君 そうしますと、今後もう一つ一般論として、こういう国の国有地の管理に土地が――まあその他もありますが、典型的には土地だと思うんですけれども、都道府県は各省の要求によって土地を借したりあるいは寄付をしたり、そういうようなことが行われている。また国は、都道府県に国有地を借したり、また無償で払い下げたりするようなこともやっている。そういうのが入り乱れているわけなんですが、そういうものに対して、結局それはケース・バイ・ケースでどうしようもないんだということか、やはり国と府県とのいろいろのそういう土地の貸し借りあるいは有償、無償の貸借というものについて、やはり出先機関といいますか、都道府県、地方自治体の方だと、やはり国がどうしても優先的に主張を、言うことを聞かざるを得ぬなということで、有償、無償、非常に財政状態の困難なところでも、出先機関をつくってくれるなら、あるいはこういう施設をつくってくれるならと、こういうことで土地の提供をやる。しかし、こういうものについて国有財産の管理として――寄付されたものは別として、貸借関係に置いたり、そういうものを国の用に供したりなんかしている場合に、やはり都道府県と一定の方針のもとに話し合って、貸し借りをだんだん整理をし、国のものはやはり国の財産で行政をやっていく、また施設をやっていく。都道府県のものについては都道府県のそういう財産でやるような、何かそこに交通整理というものがときどき行われないと、非常に各省庁が、そういう予算だけではなかなか処理できない問題が国有財産の問題として大蔵省に出てくると思うんですが、こういう問題について、一般論として、国有財産の管理運用に当たられる大蔵当局として、そういう貸借だとか寄付のやつの不要になったものの処分の問題、返してくれとかいう問題について、どういうふうな方針といいますか、で国有財産の管理をやっておられるのか、方針をお聞きしたい。
  196. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) すでに貸借関係に入っております財産につきまして、先生御指摘のように、将来ずっときれいにしていった方が望ましいんではないかということは全く同感でございます。その手段としましては、交換とか、あるいはまた場合によったら売買ということもあろうかと思いますけれども、何分個々の土地の事情はどういう事情で貸借関係に入ったかということ、それぞれ関係も多うございますし、過去の経緯もございます。また、国の方にも都道府県の方にも予算上の制約もいろいろございますので、結局は具体的なケースに即して必要のあるものからそういうことをやっていかなければならぬ、そういう事情にあろうかと思いますが、従前からときどきそういう形の事務もやっておりますけれども、まだそれほど多くはないと考えております。
  197. 三治重信

    三治重信君 そうしますと、ケース・バイ・ケースだと。たとえば国有財産で、農林省なら農林省としての出先機関のやつについてはA県が土地を提供している。それから労働省なら労働省のある出先機関のやつには、何と申しますか、国がその県にその土地をただ提供しているとかいう場合に、各省庁間のやつを一つの県だと絶対わかるですわね。大蔵省との、国有財産との貸借なり、それから寄付とまたこちらが借りている分、そういうものは、県なり市町村が各省の出先との、各省とのいろいろなやりとりでやったやつを総合して、その貸借を帳消しにしてくれとか、交換をしてくれと、その差額を払うというような計画をした場合に、それには国有財産の管理として応ずることができますか。
  198. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) もちろんそういう計画が総合的にできました場合には応ずることができようかと思いますが、いずれにしましても、そういう交換なりあるいは予算措置を伴う売買といったものをやる必要があるという実益が優先するんではなかろうかと思います。
  199. 三治重信

    三治重信君 もちろん実益ということになってくると、そこが見解の相違になって、一たんできた、寄付したものはいつまででもそこで寄付に終わってしまう、あるいは貸したものはいつまででもその施設が使用を終わるまではそのままにされてしまう。しかし、そこでその土地が欲しい、それを移転してほしい、こちらの方に場所があるからそっちへかわって一ほしい、こういうふうなこと、ことに、これから国の出先機関の合同庁舎や何かの出先と同じように、まだ合同庁舎ができぬでも、都市計画上、一つの出先機関の市は、各省の出先の庁舎を一つの区画のところへかわってほしい、こういう事業の土地の使用で、一つの都市で、労働省の出先機関は山の手の駅から遠いところにある、税務署はまたこちらの方の反対側の方にある、それから社会保険出張所はまた右の方にある、こういう出先機関を、一つの都市計画上一定の区画のところへ税務署も保健所もそれから監督署もと、こういうふうに各省の出先機関を、合同庁舎までいかぬにしても、その都市計画上一定の区画のところへ移ってほしい。こういうような計画のときに、移る分は、土地を提供すれば予算は上屋だけで済むからいいわけですよね。ところが移った後――その土地は主として開発公社なんかが銭を借りて一定の土地を手配をして、そして提供して、そして各省に陳情して予算をつけてもらって一定の区域に逐次庁舎をつくってもらって整理をしていこう。その余った土地はそのいわゆる市や何かに払い下げてもらうとか、それから市の土地を早く返してほしいと、こういうふうなことになるわけなんですが、それがなかなかそういう場合にうまくいかぬところがどうも大分あるようなんですが、それは出先の一財務局だけではどうにもならぬわけだと思うんですけれども、そういう都市計画や出先官庁をやはり新しく地域に集合してほしいという場合の配慮は、国有財産関係から見てどういうふうに考えられるのか。
  200. 川崎昭典

    政府委員(川崎昭典君) 先生がおっしゃっておりますのは、国有地があるからというので国の役所があっちこっちに散らばっておる、それを市が土地を提供して一カ所に集めていい都市計画で官庁街づくりをやる、そういったような場合にどう対応するかということであろうかと思いますが、それはそれで非常に結構なお話で、できるだけ協力といいますか、対応してまいりたいと考えるわけでございますけれども、そういう場合に、まず第一にやはり予算上の制約がございます。こちらにある国の建物ができ上がったばかりであるといったような事情がある場合には、それをやめてすぐ移るということもできないような事情がございますし、また、国有地とその新たに提供を受けた私有地とを交換するといったような場合には、交換適状といいまして、やはり価格とか面積とかがある程度つり合いませんと、何でもいいから交換したらいいというものではないわけでございます。また、国が庁舎を移転しましてその跡地を利用する場合にも、どういうふうに使ってもいい、すぐ売ってしまえばいいというものじゃございませんで、いろいろの法制上のルールがございます。したがいまして、いろんな意味で、そういうことが可能な場合にはできるだけ協力をしてまいりたいというのが一つの考え方でございます。
  201. 野末陳平

    ○野末陳平君 健康保険法の改正について厚生大臣がいろいろと御苦労なさっていることはよく承知しておりますし、それからまた、それが非常に大変だということで、あれこれと厚生省もいろいろと案を出されて、この点いろいろな面で評価はしているんですが、大臣にあえてお伺いしたいんですが、やはり医療制度の問題を考える場合に、健保法の改正、これは大事ですけれども、同時に、何か最近は医者の良心も問題にしないとどうにもならない部分があるんじゃないかと、そんなふうな気がしまして、その一つがいわゆる乱診乱療というような世間でよく言われていることですね。これに対するチェックがどうもいまの制度上行き渡らないんではないかと、そんなふうに思っているんです。で、この乱診乱療の実態というのがいま一つはっきりしませんので、一体厚生省が把握する範囲ではどんなような事態になっているのか、それをお聞きしたいと思います。  まず、保険の支払い基金への不正あるいは不当な請求ということで監査の対象になったのがどのくらいあるか、その辺からお答えいただきたいと思います。
  202. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 先生御指摘のように、医療機関につきまして大部分のまじめにやっている方、お医者さん方に対しまして、非常に不正を行っているという面につきましては厳正な姿勢で臨まなければいけないことは当然なことであるわけでございまして、そういう意味で指導、監査というのを実施しているわけでございますけれども、五十一年度の実績で申しますと、先生の御質問ございました監査の件数で申しますと、集団指導なり個別指導をやっておりますけれども、監査は五十一年度では医療機関の数といたしましては三十四件でございます。
  203. 野末陳平

    ○野末陳平君 いま集団指導、個別指導ということが出ましたけれども、私は監査についてお聞きしているんですが、いまの三十四件の中で不正あるいは不当請求の手口にどういうものがあるか、これを具体的に。
  204. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 監査を行いまして、悪質な場合には医療機関の取り消しということでございますし、さらに不正な金額につきましての返還を求めているわけでございますけれども、不当な額としまして、監査によります返還の態様としましては、架空請求、つけ増し請求、振りかえ請求、重複請求、その他というふうな態様になっております。
  205. 野末陳平

    ○野末陳平君 その手口がいわゆる架空、つけ増し、いろいろありまして、世間ではひっくるめて水増し請求とか、そんなことを言っているようにも思いますが、その手口の具体的な内容ですね、その辺がお聞きしたいわけなんです。どの医者もやっていると言われますが、これは必ずしもそうじゃないと。もちろん良心的な医者がいることはもう当然だと思いますが、いま言ったいわゆるよろしくない請求をやっている医者もかなり多いんじゃないか。ただ、それが事実としてなかなかわからない、あるいは監査の対象にはとうていなっていないと、そんなような印象もしますので、いまお挙げになりました取り消し処分を受けた医療機関において、何県でどの手口でどういうような水増し金額があったか、その辺を診療機関単位で具体例一、二お答えをいただきたいと思います。
  206. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 若干長くなるかもしれませんけれども、具体的な例ということでございますので、まず架空の例としまして、東京都のある診療所でございますけれども、胃潰瘍の患者さんが四日間診療したという診療報酬の請求がありましたけれども、患者調査の結果、その月には一度も受診してなかったというのが架空請求の例でございます。  それから保険証で一遍、これは神奈川県のある医院でございますけれども、同一世帯の者が多数受診しておった。ところが、保険証で書いております家族の多数の方が実際には受けておらなかった、それを受診としたという例がございます。  それから、つけ増しの例といたしまして、福井県のある病院でございますけれども、慢性胃炎で三回受診されて二十一日分の投薬を行った。ところが実際に調査しました結果では、一回しか受診してなくて、七日間分の投薬しかなかったという例がございます。  さらに、外来患者につきまして、これを入院患者として処理しておったという例もございます。  それから振りかえ請求の例等で申しますと、これは静岡県のある医院でございますけれども、貧血の患者さんに対しまして、実際に投与しました造血剤一日二十円分を投与したわけでございますけれども、それより高い一日分三十円の造血剤を投与したというような診療報酬の請求があったという例がございます。  それから愛知県のある歯科医院でございますけれども、普通の抜歯、歯を抜いた場合でございますけれども、非常にむずかしいケースをやったというような例で請求したとか、あるいは単なる歯石を除去したという際に、歯槽膿漏の措置をやったというような、点数の高い診療行為で請求したというような例等につきまして二、三の例で御説明申し上げた次第でございます。
  207. 野末陳平

    ○野末陳平君 その手口を聞きますと確かに悪質ですが、同時に、そういうことはかなりあちらこちらでやっているんじゃないかという気もしないでもないんですね。でも、それはもちろんはっきりした監査の対象となって出てきていないわけですから、ここでお聞きするわけにいかないでしょうが、いまのそれぞれの例で、たとえば一体幾らぐらいの水増し金額になっているんでしょうね。一つか二つでそれは結構ですよ、例はずいぶんありましたのでね。それで同時に、じゃその診療機関がまあ全国平均で言っていいかどうかわかりませんが、請求点数のやや標準をどの程度に、何倍くらい上回るようなでたらめな不正不当請求になっているのか、その辺もわかったら簡単にお願いします。
  208. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 監査で返還をさせました金額につきまして、五十一年度で申しますと二億三千百万ということでございますけれども、ただいま申し上げた例等で申し上げますと、最高の金額を返還させました例といたしましては、三千百万という例が……
  209. 野末陳平

    ○野末陳平君 一診療所ですか。
  210. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) そうでございます。三千百万という例がございます。
  211. 野末陳平

    ○野末陳平君 点数で言えば……。
  212. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 五十一年度の、これは総平均の一日当たりの五十一年度の平均点数で申しますと、外来で一日二百点、それから入院で一日七百五十点という、平均点数でございます。
  213. 野末陳平

    ○野末陳平君 不正なところはそれに対してどのくらいの請求していますか。
  214. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) いろんな例がございますけれども、たとえば最高の三千百万円を返還さしたという例で申しますと、一カ月の平均請求金額が二千九百万くらいの病院でそういうようなケースというのがございます。  それから一、二例を申し上げますと、やはりかなり返還さした例としまして、一千百万を返還さした例でございますと、一カ月の平均請求額が一千百万ということで、大体一月くらいを返還さした例もございます。あるいは一カ月の平均請求金額が七百十万円に対して六十八万円を返還さしたということで、個々の不正のございましたケースによりまして具体的に金額は多様でございます。
  215. 野末陳平

    ○野末陳平君 いまお話聞いていますと、当然それが取り消し処分を受けるというのはあたりまえだと思いますね。  そこで、いまは診療機関の単位で具体例をお聞きしたんですが、今度は患者一人一人の例に直して、またいまの架空請求にはどんなふうなのがあった、あるいはつけ増しはどんなのがあった、その実態も二、三お話ししてほしいと思うんです。というのは、私の知っているところで、これは監査の対象にもなっていないから不思議でしょうがないんですけれども、もうとっくに死んだ老人を生きていることにして請求する例なんてずいぶんあるんですね。で、医者の仲間ではそれがもうわかっている。で、ぼくが、どうしてこれが監査の対象になって、こういうでたらめな医者が保険医としてまかりとおっているんだというようなことを聞きますと、結局監査に行く前の段階で終わっている、つまり指導でもって、内輪の指導という形で何か処理されているようにも聞いたり、まあこちらは素人ですからね、そこまで具体的に証拠を突きつけてどうということじゃないですけれども、一応いまの患者一人一人の例に画して不正不当な実例を厚生省の方で説明していただけませんか。
  216. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 御質問のその患者一人一人に直してということになりますと、そういうような面から資料というものを用意しておりませんので、個々のケースについて当たる以外にないわけでございますけれども、確かに先生御指摘のように、それから先ほどの例でも申し上げましたように、実際に受診したのは本人である、ところが保険証に家族の方の名前が何人か載っておった、ところがその家族の方が診療してないにもかかわらず、家族の方が何人も診療したというような形で請求したというようなケースがございますし、それから重複請求等で、同一の患者の方に二度にわたりまして請求した、重なって請求したという例等もあるわけでございます。あるいは確かに先生御指摘のように、過去に一遍診療を受けたという方について、その後受診がなかったにもかかわらず請求したという非常に悪質なケースもございます。
  217. 野末陳平

    ○野末陳平君 それにしても、その監査の件数が三十四ですか、それから取り消しがまたその中にあると、この辺がどうも少な過ぎる気がしてしようがないんですが、こんな例も、私の手元にいろいろ入りました資料あるいはお医者さんに聞いて具体的に知っているんですけれども、どうなんですか、たとえば肩こりと目まいとあとちょっとした頭痛などで病院に行ったわけですね。これは二十代の若いサラリーマンですけれども、もちろん入院しているわけじゃありませんで、会社勤めしながらその後半月通院しまして、途中でもうめんどうくさくてやめちゃったという例があるんですが、なぜやめたかというと、薬攻めというか検査攻めというか、薬と検査でもってあれやこれやめんどうくさくなったんでしょう。で、その人のレセプトが回ってくるわけですね、当然。そこからぼくがいろいろ見せてもらったうちの一つなんですが、とにかく薬も多いけど、レントゲンを――いまの肩こりと目まいとちょっとした頭痛で行っているんですよ。で、半月の通院ですよ。それでレントゲンが十七回、注射四十八回、ここまではともかくとして、病名が十六ついているんですよね、そのレセプトに。それで、わからない病名もたくさんあるんですが、肝障害、胃潰瘍、胆石、心筋障害、脳波異常、甲状腺機能異常、腎障害、尿路感染症、動脈硬化と、こういうふうにつくんですね。それでそれに応じた検査をやるんですよ。やってあるわけですね、レセプトで。それは架空かどうか、その辺患者調査を細かくやっているわけじゃありませんから、厚生省ほどは私の方はわかりませんがね。検査がまたすごくて、検尿が十回になっているんですね、それから血球検査が八回でしょう。血清検査に至っては、種目が五十二で採血したのが十回で、そのほかいろいろありますよ。とにかく私たちは素人ですから、その患者が本当にその程度の病気で必要な診療であったかどうかについては断定はできないわけですね。しかし、常識で考えて、会社勤めしながらちょこちょこと通院する、そのたんびに薬と検査で攻められて途中でいやになっちゃって、後は平気でいられるというようなこんな病人が果たして存在するかどうか、これが特殊な例であるかどうかということは、レセプトをたくさん見ていけば、どうもぼくが見せてもらった範囲ではそう特殊でもなくてかなりあるということで、もうはっきり言ってお手上げなんですよ。何かこういういわゆる乱診乱療というものがもう世にはびこっておりまして、しかし、それは医者の方が専門家で素人にはわからないんだからという前提のもとに全部請求が行ってて、それが不正とも不当とも言われずに審査を通って支払いを受けて、結果として医療費の方にはね返っているんじゃないか、そう思わざるを得ないんですね。  そこで、いまお聞きしたのは、たまたま監査の対象になって取り消し処分を受けたという非常に悪質な例についてお聞きしたわけですが、あえてひとつ大臣にお伺いしたいんですが、取り消し処分なぞがありますね、そうすると、これは当然私たちの考えでは、一罰百戒のようなもので、それがほかの良心的なお医者さんはもとよりのこと、ちょっといかがわしいお医者さんたちへも警告になって、医療全体の、お医者さんの反省を促すということになるのが当然だと思いますが、実際にどうでしょう、取り消し処分があったらその後しかるべき効果というものが出ているのかどうか、どんな効果が出たか、その辺まで厚生省ではおわかりになっていますか。
  218. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 確かに悪質な場合に姿勢を正すという意味におきまして監査を行い、必要な場合には取り消しを行うということはぜひとも必要だと思いますけれども、具体的に取り消し処分が行われた場合に、他の医療機関についてどういうような影響があったかという面につきましての調査は残念ながら持っておりません。
  219. 野末陳平

    ○野末陳平君 いい効果が出ていなければ何の意味もないと思いますし、実態がなかなかこれはわかりにくい制度上のいろんな複雑なむずかしい問題があるようですから、これ以上はお聞きしませんけれども、大臣、いま聞いただけでも、極端に悪い例であるとはいうものの、どうも不正あるいは不当請求を医師がやって収入を上げている、何かそういうのはもっと多いんじゃないか、いまの監査の対象になった話は氷山の一角じゃないか、そんな気がしてどうもなまぬるい、もう少し監査を厳しくやっていく、そして乱診乱療をチェックして医師の良心を目覚めさせるというようなところまで指導が行き渡らないと、幾ら健保法を改正しても、医師の良心に任されている部分が非常に多いですから、ましてや、このレセプトはほとんど医者が自由にやっているわけですから、われわれはすべて任せ切っているわけですから、その辺でどうも監査がなまぬるい。いまの数字などは氷山の一角じゃないか、ぼくはそんな気がしているんですが、大臣の御認識はいかがでしょうかね。
  220. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるように、私もそういう不信感が非常に根強くあるということははなはだ遺憾ながら承知をいたしておりますし、また心配をいたしておるものでございます。これはやっぱり監査をびしびしやれとおっしゃいますが、その前にまず審査を適正にやっていかなければなりませんので、この審査をそれでは一体どうしたらいいのかと考えてみますと、大体本来お医者さんの診断をし治療するというのは、一つの客観的な何か物差しがありまして、それによってすべてが行われているということではございませんで、医師というものはやはりオールマイティーで自分の診察、判断というものがすべてでございます。また、患者さんそのものの医師との人間関係というものは相対のいろいろなことでございますものですから、一つの何か方程式みたいのがあってそれで当てはめていくというわけになかなかいきません。そういう非常にむずかしい医療行為というものの特殊性がございますが、しかし、現実にいま挙げましたような例もございますので、これが摘発されたものだけで他はないかということになりますと、これはおっしゃるようにやはり他にももっと精密な審査と監査を続けていけばあるんじゃないかと言われてもこれは仕方がないわけでございます。この審査体制を、したがって私は今度の法改正の眼目の五つの項目の一つに挙げておりまして、ただ現実にいまどうこうということはなかなかできないけれども、審査のあり方をどうすべきか、これをひとつ今後いろんな方法を考えてみまして、審査体制の改善をやるということを、医療担当者側とも合意を見ておるものでございますから、現在はまあ県単位でございます。ところが何千件というレセプトでございますから、これはもう非常に精緻な監査をやるということは困難でございます。なるべく審査単位を細かくした方がいいんではないだろうか。ある御提案等がございまして、市町村単位にむしろ審査委員会をつくるべきじゃないかという御意見等もございます。これについてはいろいろな方々の御意見を聞いて、できるだけ審査が適正に行われるような仕組みをどうしたらいいかということをこれから真剣に取り組んでいきたいと考えておるわけでございます。  ただ、審査をやるには、医療担当者以外の専門的なお医者さんを私どもの方なり、保険者の側で抱えなければできません。これは素人ではできません。ところが、現在政府の方で定員の充足率は七十数%でございまして、なかなか医師を確保することができないわけでございます。したがって、これが現実でございますので、そういう現実等も踏まえた上でどういうふうなやり方をしたらいいか、一般の医療機関、病院の大部分はまじめな方だと思いますので、むしろ相互にチェックをしていただくような方法を何らかの意味で組織的に考えるべきではないかという気もいたすわけでございます。  いずれにしましても、審査機構の問題についてはもっと医師と患者の間、あるいは世間と医師の間の不信感がなくなるように、これは大方のお医者さんの御迷惑だと思いますので、なくなるような仕組みについて十分検討していきたいと、かように考えます。
  221. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあそこまで説明をされますと、何かできそうもないようにむずかしい問題じゃないかと思いますが、努力を願いたいと思います。それにしても審査体制の強化をしなければならないというのがおかしいんで、お医者さんが正直で良心的であれば別に文句はないと、まあそんなふうに思うんですがね。  時間も来てしまいましたけれども、会計検査院のお考えもついでにお聞きしたいんですな。政管健保については、やはり不正不当請求というものを検査院独自の立場でチェックできるのかどうか、やってほしいと思うんですが、現実の問題としてどんなもんでしょうか、検査院の立場からこの問題についてお聞きします。  それと、もう恐らくこれで終わりになると思いますから、そのお答えを聞いて、同時に、いま大臣のお答えの中にちょっと出ましたけれども、私はやはりこの問題は医師会がみずから反省をしてお互いに監視の目を光らせるというか、自粛する体制をとらない限りはだめじゃないか。もう量的にさっき言った問題にも絡みますけれども、こんな膨大なレセプトを一々これが不正か不当かなんてやっているのはむずかしいと思うんですね。やっぱり医者が問題である。ですから、大臣はいろいろな制度上の問題に頭を使われると同時に、どうですかね、医師会にこの問題で正式に大臣が警告を発する。この乱診乱療は目に余るので、患者との不信感があって、これじゃ医療は荒廃する一方だと、医師会もこの問題についてもっと内部チェックを厳しくするということを、大臣から一度正式に申し入れるべきじゃないか、そんなふうに思っているんですよ。ですから、医師会への大臣の態度ですね、それもお答えいただいて、お二人のお答えをもらえばそれで終わりにしたいと思います。
  222. 阿部一夫

    説明員(阿部一夫君) 先生御指摘のように、政府管掌の健康保険の診療報酬の支払いは適正に行われなければいけないというふうに私どもも考えているわけでございますが、私ども権限といたしまして、お医者さんとかあるいは被保険者――患者さんですが、そういう人たちを直接検査するという権限がございませんというのが一つと、それから私どもが検査するということになりますと、お医者さんの方から出てまいりますいわゆるレセプトでございますが、この書類が出てまいりまして、社会保険庁、具体的には個々の社会保険事務所に出てまいるわけでございますが、そういう書類をチェックするという、具体的にはそういうことになろうかと思いますが、これの内容を調べるためには医学的な知識というものが必要である。それからレセプトが膨大な量でございますので、相当の人員も必要であろう。ところが、実際には私どもの役所には医学的な知識のある、医師の資格を持っている職員は全然ございません。それから厚生省関係の検査を担当している課も二十数名の職員しかおりませんので、その中の人間をやりくりするといっても、この膨大な書類をよく見るというようなことは実際問題としては非常にむずかしい、残念ながら先生御指摘のような検査を行うことはむずかしいというふうに考えております。
  223. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 御指摘のように、私が今度の健保法改正の際に日本医師会長といろいろお話し合いをした中に、五項目の合意を得ました最後の項目が審査機構の改善を検討するということがございます。審査機構につきまして、あるいは審査のあり方、お医者さんの側におけるいろいろな御協力のことについては申し入れを行い、また医師会長も、ひとつその点を十分検討して審査機構を効果の上がるような方途をお互いに見出そうではないか、こういうことで五項目の合意の最後に審査機構の改善を検討するということが合意事項として生まれたわけでございますので、すでにもう私からお願いをし、また医師会側も、いまいみじくも野末委員のおっしゃるように、お互いの仲間で自粛し合う、チェックし合うという方がより有効ではないか、そのためには審査機構の単位を市町村単位にしたらどうかというような御提案さえありました。しかし、これをどういうぐあいでやっていくか、いろんな問題がありますので、そこで審査機構の改善を検討するということに今度の健保法改正前の合意事項の中にそれが入っているわけでございまして、今後とも、大部分のお医者さんはまじめにやっておられるわけでございますから、そういう意味で医師会長もみずからその問題を提起いたしておりますので、一層努力をして、お互いにひとつ正しい医療が行われるようにいたしたい、かように考える次第であります。
  224. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十八分散会      ―――――・―――――