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1978-04-14 第84回国会 参議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十四日(金曜日)    午前十時七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        茜ケ久保重光君     理 事                 斎藤 十朗君                 寺下 岩蔵君                 田代富士男君     委 員                 伊江 朝雄君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 北  修二君                 永野 嚴雄君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 案納  勝君                 寺田 熊雄君                 黒柳  明君                 沓脱タケ子君                 安武 洋子君                 野末 陳平君                 江田 五月君    国務大臣        国務大臣        (防衛庁長官)  金丸  信君    政府委員        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        国防会議事務局        長        久保 卓也君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁参事官   古賀 速雄君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁総務        部長       奥山 正也君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        防衛施設庁労務        部長       菊池  久君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君    説明員        法務省刑事局刑        事課長      佐藤 道夫君        外務省アメリカ        局外務参事官   北村  汎君        外務省国際連合        局外務参事官   矢田部厚彦君     —————————————   本日の会議に付した案件昭和四十九年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十九年度特別会計歳入歳出決算昭和四十九年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十九  年度政府関係機関決算書(第七十七回国会内閣  提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十七回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和四十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十七回国会内閣提出)(継続案件)     —————————————
  2. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  昭和四十九年度決算外二件を議題といたします。  本日は、総理府のうち、防衛庁決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 法務省刑事課長ですか、衆議院の方で同じように呼ばれているようですね。ですから、先にこの問題をやらしていただきます。  いわゆる地位協定ですね、この十七条二項(b)、同じく第三項(b)によって、アメリカ軍人、軍属が日本裁判所で裁判を受けた数ですね、これは人数、件数、それから犯罪の種類並びに裁判結果の態様、現に拘禁中の者の数、これは調べ得る限度で結構ですから、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  6. 佐藤道夫

    説明員佐藤道夫君) お答え申し上げます。  まず、地位協定十七条二項(b)の規定によってわが国専属裁判権行使した例につきましては、これは件数がございません。その理由といたしまして、これはもっぱらわが国法令に触れる罪でございますが、合衆国統一軍法典によりますと、重大な過失によりまして軍用財産を損壊した場合あるいはまた軍の威信を著しく失墜せしめるような非行があった場合等はいずれも統一軍法典によって犯罪であるとされておりますので、わが国法令のみにもっぱら触れるというような行為類型はほとんど考えられないことによるのではないかというふうに推測いたしております。  次に、同じく地位協定の十七条三項(b)の規定によるわが国が一次裁判権行使した事件件数でございますが、最近三年間の統計を申し上げますと、五十年は二千百二十五名、五十一年は千九百五十三名、五十二年は二千五十五名、三年間の合計が六千百三十三名ということに相なるようでございます。その内訳といたしまして、合計六千百三十三人のうち起訴された者が三千三百三十人、不起訴が二千八百三名、起訴率はほぼ五〇%を超えておりまして、これは日本人の一般犯罪の場合の起訴率とほぼ同程度であろうかと思われます。  次に、六千百三十三名中の罪種別内訳の詳細を把握しておりませんが、大体のところ道路交通法違反事件業務過失致死傷事件等交通事故関係あるいは交通法令違反関係、これが大多数を占めておりまして、現実起訴したものの九五%まではこの交通関係でございます。その他の特徴といたしましては、最近の傾向を反映いたしまして、大麻取締法違反等事件が若干増加の傾向にあるようでございますが、強盗等のいわゆる重大事犯というものは年々やや減少という感じがいたしておりますが、正確なところはわかりません。いずれにいたしましても、件数的にはそう目立った動きはないようでございます。  それから、現在拘禁中の数でございますけれども、これにつきましては、大変恐縮でございますが、全国的な統計がございませんのでちょっとわかりかねます。ただ、起訴された者のうち、略式請求等によって罰金刑に処せられる者がかなりの多数を占めておりまして、現実に実刑というものは年間、百名ないし二百名前後ではなかろうかという感じでございます。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは、現に拘禁中の者の数は、後日で結構ですから、お調べになって報告してください。よろしいですか。
  8. 佐藤道夫

    説明員佐藤道夫君) できる限り御要望に沿うよう努力いたす考えでございます。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは課長ね、刑務所に照会すれば容易にできることですので、できる限り努力するというんじゃなくて、これは可能なことですから、一応やってみてください。いかがですか。
  10. 佐藤道夫

    説明員佐藤道夫君) 了承いたしました。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 なお、地位協定の第十八条の第六項、これはわが国補償金の額を決定して、アメリカがそれに慰謝料を支払うかどうかという、そういう関連の規定ですけれども、これに関連して先般アメリカファントム軍用機が墜落した、この問題で、被害者からたしか検察庁告訴が提起されていますね。これはまだ捜査中ですか、それとも近く処分が可能な状態でしょうか。どうでしょうか。
  12. 佐藤道夫

    説明員佐藤道夫君) お尋ねファントム事件につきましては、事故発生以来、所轄の警察署におきまして捜査中でございましたが、本年一月二十日に、被害者の方二名から、パイロット等被告人とする業務過失致死傷事件等告訴横浜地検になされまして、現在横浜地検におきまして、警察と緊密な連携のもとに捜査中であるということでございます。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはいろいろ技術的な問題などで捜査が非常にむずかしい問題であると思いますが、大体検察庁処分結果が出るのにはなおどのぐらいの期間が必要でしょうかね。
  14. 佐藤道夫

    説明員佐藤道夫君) ただいま申し上げましたとおり、現在警察において捜査中でございますので、その送致を待って、検察庁の方に告訴のあります件とあわせまして、これは言うならば同一事件でございますので、あわせまして捜査処理を行うということに相なるわけでございますので、警察からの送致がいつごろに相なるのか、いまのところちょっと私報告を受けておりませんので、明確なお答えはいたしかねるわけでございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それじゃ、あなたにお尋ねするのは以上で終わったと思います。よろしいです。  ただ、この問題に関係して一部分だけ残すというのはなにですから、この問題をさらに終わってみたいと思いますが、安保条約の第四条の規定によります、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国要請により協議する。」という条項がありますね。この条項に基づく協議というものは、安保条約が締結されてからいままでにあるのでしょうか。もしあるとすれば、それがいつの時点でどのような協議現実になされたか。以上、御説明いただきたいと思いますが。
  16. 北村汎

    説明員北村汎君) ただいま先生指摘の第四条の協議と申しますのは、この条約実施に関連いたしましていつでも随時に日米間で協議できるということになっており、さらに、先生さっき御指摘後段の、「日本国の安全または極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国要請により協議」できる、こういうことでございます。  この特に後段について協議をしたことがあるかという御質問でございますが、これはたとえばトンキン湾事件の際に日米間でそのような協議が行われたことがあるということは、当時国会政府答弁いたしておるところでございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 トンキン湾事件のときにあるという。それ以外にはないという御答弁なんだろうか、それとも数限りなくあって一々列挙できないというのだろうか、その点もう少し詳細に。
  18. 北村汎

    説明員北村汎君) 先ほど御説明申し上げましたように、この四条の協議は、この条約実施に必要な場合はいつでも協議できる、その内容も、条約実施に関する限りは何でも協議できるわけでございます。  その協議機関といたしましては、一番代表的なものは安全保障協議委員会と申しまして、外務大臣防衛庁長官日本側代表であり、アメリカ大使太平洋軍司令官向こう側代表であるこの機関及びその他いろんなレベル協議機関がございまして、そこでいろんなレベルでいろんなことを協議いたしております。ですから、先生指摘のように、決してトンキン湾事件の際に限ったわけではございませんが、特にこの後段の御質問についてはこういう例があると申し上げたわけでございます。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この安保条約実施に関する協議といいますと、非常に広範な領域にわたりますから、恐らく数限りなくあるんだろうというふうに想像はしているのですが、ただ、ここにあるのは、日本国の安全に対す脅威であるとか極東における国際の平和に対する脅威というような、かなりこれは重大な意味合いを持つそういう表現になっていますね。ですから、そう頻繁に行われるとも思われないので、あなたいまトンキン湾事件の例をおっしゃったけれども、それじゃほかにあるとすると、二、三おっしゃっていただけますか。
  20. 北村汎

    説明員北村汎君) 私ども個々具体例について調べてみますと、トンキン湾事件のときがこの例でございまして、それ以外に全然そういう協議に当たるものがなかったかどうかということは、この協議自体が、先ほども申しておりますように、非常に前段に書いてある協議後段に書いてある協議との区別がきわめてむずかしゅうございまして、ダブっているところが非常に多うございます。ですけれども、いずれにいたしましても、具体的にそういう脅威に対してどういうふうに対処するか、そういうようなことについて協議したことは一度もございません。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま外務省の方からああいう御説明があったわけですが、これはいま外務省の御説明ですと、安全保障協議委員会があって、その協議に参画する人として外務大臣防衛庁長官という指定がありましたね。そうすると、防衛庁の所管にもわたるわけですから、防衛庁の側として、防衛庁長官当事者となってそういう協議をしたことが過去においてあるのかどうか、ちょっと御説明いただきたい。
  22. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 防衛庁が主になってそういう協議をしたということは、私の記憶する限りございません。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、この条約に基づく地位協定第十二条第六項(c)の協議、これはどの程度実際に行われているんでしょうか。それから同じく(d)の運用状況ですね、これ若干御説いただきたいと思います。
  24. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 地位協定十二条六項は、保安上の理由による解雇に伴う手続に関する条項でございますが、ただいま御質問の十二条六項(c)項の協議を要する事案はいままで具体的に一件も生じておりません。したがいまして、これに基づく協議を実際に行うに至った例がないわけでございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 同じく第十八条の五項によって日本が分担した費用というのはどのぐらいあったんでしょうかね。これは、過去におけるその累計額それからその件数等がおわかりでしたらお答えいただきたい。
  26. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) ただいまお尋ねの点は地位協定十八条五項の関係だと思いますが、これは公務上の事故等による請求権処理の問題でございます。防衛施設庁におきましてこの十八条五項に基づいて支払いをしましたものは、資料の関係で三十五年度から五十二年度までの間の累計を申し上げますと、件数にして約二万五千件、支払い総額は約十九億七百万円でございます。これは日本側で立てかえ払いをいたしました後、一定の手続によりまして米側からその七五%相当額日本側に償還されるということになっております。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この十八条の第五項ですね、これは「公務執行中の合衆国軍隊構成員若しくは被用者作為若しくは不作為又は合衆国軍隊法律上責任を有するその他の作為不作為若しくは事故で、日本国において日本国政府以外の第三者に損害を与え北ものから生ずる請求権」云々という規定ですね。現実にはどういうものがありましたかね。いままでに新聞報道で私どもに知らされたものの中で二、三代表的なものがありましたらちょっと説明していただけませんか。
  28. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) たとえば、昨年の九月のファントム機事故で小さい子供さんが二人亡くなられましたり、それから重傷を負われた方が何人か、あるいは家屋を焼失するというふうなことが起きたわけでございますが、これはまだ全体の手続は済んでおりませんけれども、このような場合には公務上の事故によるものでございまして、とりあえず日本側でその人的な損害あるいは物的な損害に対して、被害者の方と御相談して、協議の調ったところでお支払いいたす、そうして後に米側からその七五%相当額は償還を受ける、こういう仕組みでございます。件数を先ほど申し上げましたが、現実件数の中で多いのは車両事故自動車関係事故が多うございます。たとえば、五十一年度で申し上げますと、五十一年度では支払い件数が五百九十件ほどございますが、そのうちの五百件までは車両事故でございます。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 同じく第六項ですね。「日本国内における不法の作為又は不作為公務執行中に行なわれたものでないものから生ずる合衆国軍隊構成員又は被用者に対する請求権」、これが実際問題として非常に補償が取りにくいもので、国民の損害というものが慰謝されにくい難件のように思いますがね。これで一応日本として決定した補償金の額並びに件数、これはどのぐらいあるのでしょうね。それから同じようにアメリカがこれに対して慰謝料を支払うことになっておるのですけれども現実にそれに対応して支払われた額はどのぐらいか、件数はどのぐらいか。ちょっとそれを知りたいので御説明いただきたいと思います。
  30. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) お尋ねの十八条六項は、公務外作為不作為による請求権処理でございますが、これは日本側負担はございませんので、すべて米側負担でございます。それで、この支払い額については米側から通報を受けるたてまえになっておりますが、先ほどと同じく昭和三十五年度から五十二年度の間の累計で申し上げますと、米側支払い件数は約千二百件、支払い総額は約七億四千五百万円でございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 支払い件数はわかったけれども、支払われなかった件数というのもこれは多いんじゃないんでしょうかね。その点いかがですか。
  32. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 先ほど申し上げたもののほかに保険会社等が支払ったものもあるわけでございますが、支払われなかった件数というのはほとんどないように承知しております。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは私どものいろいろ見聞するところによりますと、これはアメリカなんかに帰っちゃったら、あれでしょう、その軍隊構成員被用者アメリカなんかへ帰っちゃったらどうしようもないんじゃないですか。訴訟を起こそうとしたって実際上不可能だし、その点の調査はどうなっているんでしょう。
  34. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) ただいまおっしゃったようなトラブルの起きないように、公務外の問題でございますけれども、個人にかわりまして米軍が支払うというたてまえでございます。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、いろいろ私どもが見聞している犯罪がありますね。たとえばかなり悪質な犯罪などが行われた場合に、その犯人が判明したときはもちろんいいですがね、アメリカ合衆国損害をかわって払うというのは、犯人が判明したときだけですか。それとも、判明しなくても、アメリカ軍人だということがわかっておればそれはアメリカ負担することになりますか。
  36. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 作為不作為当事者が特定いたしませんでも、アメリカ側の人間の行為によるものあるいは不作為によるものであるということが判明しておれば、米側慰謝料支払いに応ずる、こういうことでございます。
  37. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それではその問題はそれだけにしまして、自衛隊憲法第九条との関係、これについてお尋ねしたいのですが、自衛隊現実戦力であり、軍隊たる本質を持っております。その政治的な事実、既成事実というものはだれも否定できませんが、しかし、法律論といいますか、憲法論としては、その既成の事実によって必ずして影響を受けるものではありません。それはもちろん法が規範であり、当為を、ゾルレンを指し示しているからであります。国会の最近の論議は、もっぱらF15あるいはP3Cとか、戦術核兵器とか、個々兵器についてこれを装備することが憲法第九条に違反するかどうかというような論議に走りがちでありますけれども、この憲法問題としてはそうした個々兵器装備するかどうかということも必ずしも意味がないわけではありませんけれども、しかし、憲法第九条第二項に言う戦力かどうか、自衛隊がその戦力に当たるかどうか。それは決して個々装備で決せられるものではなくして、自衛隊、それが人的、物的の実戦能力を持った組織体でありますけれども、そういうものを総合的に見て決せらるべきものであると考えます。そういう議論もかつてあったんですが、これについては防衛庁長官あるいは法制局としてはどういう見解をお持ちでしょうか。
  38. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 長官が先だな。防衛庁長官。   〔政府委員茂串俊君「事柄が憲法論にわたりますので、長官にお答えいただきます前に私から」と述ぶ〕
  39. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ちょっと待て、まだ指名してない。
  40. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 憲法第九条は、わが国主権国として持つ固有自衛権までも否定しているものではないと承知しております。したがって、この自衛権行使を裏づける自衛のための必要最小限度防衛力を保持することは同条の禁止するところではないと。自衛隊は右の自衛のための必要最小限度防衛力として存在するものであると承知いたしております。
  41. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) ただいま大臣の方からお答え申し上げましたとおりでございまして、憲法第九条は、わが国主権国として持つ固有自衛権まで否定しておらないわけでございます。そしてその自衛権行使を裏づける自衛のための必要最小限度実力というものは、これは防衛のために必要でございまして、もとより第九条の禁ずるところではございません。自衛隊がまさに右の憲法第九条の範囲内のものであり、わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つための不可欠の機関であるという意味で違憲のものではないというふうに政府は従来から解しておりまして、また、たびたび国会でも御答弁申し上げておるところでございます。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 防衛庁長官法制局主管部長も、何か用意した原稿を読み上げるようで、私の問いに全然マッチしてないんですよ。そういう用意した原稿を読むような答弁じゃなくて、質問の趣旨をよく聞いて答弁していただかなければ困るのです。合わないでしょう。後で会議録をよく読んでもらえばおわかりになると思うけれども、それじゃ困る。よく聞いておいてください。  私がお尋ねしたのは、自衛隊憲法第九条第二項にいう戦力に当たるかどうかという点の判断は、自衛隊がどういう個々兵器を持っているかどうかということによって決せられるものではなくして、自衛隊という人的、物的の組織体がどういう実戦的な能力を持っているかどうかというようなことを総合的に判断して決せらるべき事項ではないかと、こういう質問なんですよ。個々兵器を持っているかどうかによって決せられるのではないでしょうと、そういう質問ですよ。
  43. 金丸信

    国務大臣金丸信君) おっしゃるとおりだと私は思います。
  44. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) ただいま示された御見解のとおりであると思います。
  45. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ところで真田法制局長官は今回この国会衆参両院予算委員会でも、いまちょうど長官部長のおっしゃった、わが国主権国として持つ固有自衛権、それは憲法第九条第二項によって否定されているのではない、そして、この自衛権行使を裏づける自衛のための必要最小限度実力を保持することまでも九条二項は禁止したものではありません、憲法第九条第二項の禁止している戦力とは、自衛のための最小限度を超えるものを言うのでありますと、こういうふうに答弁しておられるんですね。それは、そのことは御存じかとお尋ねをしようと思いましたら、お二方とも、それをそのままさっきおっしゃったものですから、それはまあ御存じだということになりますね。それはいいんですよ。  しかし、そういう憲法解釈憲法制定当時のわが国政府によってなされていたのかどうか。それとも、全く異なる憲法解釈憲法制、定当時にはなされていたのかどうか、この点の御理解はどうでしょう。これもやっぱり一応長官法制局部長お尋ねしたいと思います。
  46. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 質問者防衛庁長官を先にと言っているのだから、防衛庁側から答弁をして、それから法制局答弁してください。
  47. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私も憲法学者じゃありませんししますが、また、私が出てまいりましたのは昭和三十三年に国会に出てきたわけです。その当時の記録も私は承知いたしてはおらないわけでありますが、この自衛権という問題等については私は考え方は変わっておらぬのではないかと考えております。
  48. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) ただいま御質問の、かつての吉田総理からの答弁の問題でございますけれども先生指摘の過去の答弁と申しますのは、昭和二十一年六月二十七日の衆議院本会議における原議員の質疑に対する吉田総理からの御答弁としまして、「戦争放棄二關スル本案ノ規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居りマセヌガ、第九條第二項ニ於テ一切ノ軍備ト國ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ發動トシテノ戦争モ、又交戦権モ放棄シタモノデアリマス」という答弁をされております。  それからまた、昭和二十一年六月二十九日の衆議院の本会議におきまして、野坂議員の質問に対しまする吉田総理の御答弁としまして、「近年ノ戦争ハ多クハ國家防衛權ノ名ニ於テ行ハレタルコトハ顯著ナル事實デアリマス、故ニ正當防衛權ヲ認ムルコトガ偶偶戦争ヲ誘發スル所以デアルト思フノデアリマス」というような趣旨の御答弁をされておるのでございます。  この二つの答弁につきましては、その後吉田総理は、昭和二十一年七月四日の衆議院の帝国憲法改正特別委員会におきまして、林委員の御質疑に対しまして、「此ノ間ノ私ノ言葉ガ足リナカツタノカ知レマセヌガ、私ノ言ハント欲シマシタ所ハ、自衛権ニ依ル交戦権ノ放棄ト云フコトヲ強調スルト云フヨリモ、自衛権ニ依ル戦争、又侵略ニ依ル交戦権、此ノ二ツニ分ケル區別其ノコトガ有害無益ナリト私ハ言ツタ積リデ居リマス」という答弁をされております。  それからまた、昭和二十六年の十月十八日の衆議院の平和安保条約特別委員会におきまして、芦田委員の質問に対する答弁といたしまして、「私の当時言ったと記憶しているのでは、」……
  49. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょっとお待ちください。順々にいきますからね。私はいまは憲法制定当時におけるということをお尋ねしたわけでしょう。だから、そこまで二十六年に一挙に飛ばないでね。これは朝鮮事変が起きた後なんだから、またそれへいきますから。だからよく質問の趣旨を聞いて答弁してほしいのですがね。まず、それで一応わかりましたから。  防衛庁長官は、法律学者ではございませんのでよくわからないと正直におっしゃったのですが、ただ変わっていないと思うというのは、大変事実と違うわけですがね。これは大いに、百八十度転換しているわけですよ。それから部長も、ただ速記録——会議録答弁内容を読むだけで、その本質的な意味というものを全く理解しないで何かお答えになっているようなので、これを一つ一つやっぱり明らかにしておきたいと思うのですが。  その前にひとつ防衛庁長官お尋ねしておきますが、いまの自衛隊というのはやっぱり戦争能力、ことに近代的な戦争能力というものを持っているというふうに理解していらっしゃるんでしょうか。どうなんでしょうか、長官
  50. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は戦争能力ということより実際問題自衛力があるのかどうか、わが国防衛する力があるのかということについては、日米安全保障条約があるから、いわゆるいまの日本防衛というものは相まってできるんだという考え方を持っております。
  51. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それじゃ、近代的な戦闘能力ですよ、それはあるんですか、ないんですか、どちらです。いや、長官、自分が所管していらっしゃるんだから……。
  52. 茜ケ久保重光

  53. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 近代戦闘能力というのをどういうふうに理解するかという問題でございますが、現在の軍事技術のもとにおきまして、日本に対する直接侵略に抵抗する能力は持っているというふうに考えているというわけでございます。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは結局、現在の軍事技術というものを近代的と私、言っているわけだから、そういう意味じゃ近代的な戦闘能力を持っているという結論になるわけでしょう。それだけの誇りは持っているでしょう。どうです。
  55. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) その点は、いわゆる周辺諸国の軍事能力というものに対応して防衛力整備をやっておりますから、いわゆる戦前によく言われました竹やり三千本というような形ではなく、そういった武力に対抗できる能力というものは持っていると考えております。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ちょうど法制局部長がおっしゃた、吉田総理の答弁を三つほどおっしゃたでしょう。これは憲法学者の間で一番象徴的な答弁として援用されている部分というのは、部長が第二番目に読まれたものですね。これは衆議院の本会議において野坂議員の質問でありますが、その質問というのを、まあ大切な問題ですから読んでみますと、   戦争ニハ我々ノ考ヘデハ二ツノ種類ノ戦争ガアル、二ツノ性質ノ戦争ガアル、一ツハ正シクナイ不正ノ戦争デアル、是ハ日本ノ帝國主義者ガ満洲事變以後起シタアノ戦争、他国征服、侵略ノ戦争デアル、是ハ正シクナイ、同時ニ侵略サレタ國ガ自國ヲ護ル爲メノ戦争ハ、我々ハ正シイ戦争ト言ツテ差支ヘナイト思フ、此ノ意味ニ於テ過去ノ戦争ニ於テ中國或ハ英米其ノ他ノ聯合國、是ハ防衛的ナ戦争デアル、是ハ正シイ戦争ト云ツテ差支ヘナイト思フ、一體此ノ憲法草案ニ戦争一般放棄ト云フ形デナシニ、我々ハ之ヲ侵略戦争ノ放棄、斯ウスルノガモツト的確デハナイカ、此ノ問題ニ付テ我々共産黨ハ斯ウ云フ風ニ主張シテ居ル、日本國ハ總テノ平和愛好諸國ト緊密ニ協力シ、民主主義的國際平和機構ニ参加シ、如何ナル侵略戦争ヲモ支持セズ、又之ニ参加シナイ、私ハ斯ウ云フ風ナ條項ガモツト的確デハナイカト思フ、  つまり、憲法第九条第二項というものは間違った規定ではないかと。つまり、戦争には侵略戦争——不正の戦争と、防衛のための戦争——正義の戦争と二つあると。だから、そのいずれをも禁止した憲法第九条は間違った規定ではないか、こういう質問なんですよね。だから、まさにいまあなた方が。憲法第九条二項は侵略に対する抵抗のための戦闘をも禁止したものじゃないと、そのための人的、物的の戦闘能力を持つ組織体は保持が許されるという、その同じような立論の前提を野坂議員はとっておったわけですね。  それに対して吉田総理は、それを真っ向うから否定しておるわけです。長官これをよくお聞きになってください。あなたのいま変わらないというのは、大いに百八十度変わっていますからね。  國務大臣(吉田茂君) 戦争放棄ニ關スル憲法法草案ノ條項ニ於キマシテ、國家正當防衛權ニ依ル戦争ハ正当ナリトセラル、ヤウデアルガ、私ハ斯クノ如キコトヲ認ムルコトガ有害デアルト思フノデアリマス、  つまり、自衛のための戦争は有害であると。これを認めることは有害であると吉田総理ははっきりと言い切っているんですね。  近年ノ戦争ハ多クハ國家防衛權ノ名ニ於テ行ハレタルコトハ顯著ナル事實デアリマス、故ニ正當防衛權ヲ認ムルコトガ偶偶戦争ヲ誘發スル所以デアルト思フノデアリマス、又交戰權拠棄ニ關スル草案ノ條項ノ期スル所ハ、國際平和団体ノ樹立ニアルノデアリマス、國際平和團體ノ樹立ニ依ツテ、凡ユル侵略ヲ目的トスル戰争ヲ防止シヨウトスルノデアリマス、併シナガラ正當防衛ニ依ル戰争ガ若シアリトスルナラバ、其ノ前提ニ於テ侵略ヲ目的トスル戦争ヲ目的トシタ國ガアルコトヲ前提トシナケレバナラヌノデアリマス、故ニ正當防衛、國家ノ防衛權ニ依ル戰争ヲ認ムルト云フコトハ、偶々戰争ヲ誘發スル有害ナ考ヘデアルノミナラズ、若シ平和團體ガ、國際團體が樹立サレタ場合ニ於キマシテハ、正當防衛権ヲ認ムルト云フコトソレ自身ガ有害デアルト思フノデアリマス、御意見ノ如キハ有害無益ノ議論ト私ハ考ヘマス  長官長官のいまの、先ほどおっしゃった考えと正反対でしょう。「正當防衛權ヲ認ムルコトが偶偶戦争を誘發スル所以デアルト思フ」と、したがって、かくのごときことを認むることは有害であると思いますと、こう言っているんですよ。この意見は長官、いまの時点ではあなたは反対でしょう、いかがです。
  57. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は吉田総理のその発言は、まさにきょうの防衛庁の考え方は、そういう考え方の中で座して死を待つかということもあるわけであります。また世界の民族はすべて神様のような民族であればいいけれども、戦後世界の各地に小競り合いというようなものが起きておる、五十何回起きておると私は承知いたしておるわけでありますが、その吉田総理の考え方、それがきょう防衛という問題について考え方が百八十度変わったという先生のお考え、確かに変わっておると私も思います。しかし、現実の姿はこのような状況になっておる。しかし、ただいま吉田総理が申し上げたというその精神は、防衛庁、私自体はそれを踏まえて対処しなければならぬと、こういう考えでおるわけであります。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その長官のお言葉は、内部的に矛盾したことの二つを同時におっしゃっているわけですね。最後に吉田首相の答弁の精神を踏まえていかなきゃいかぬと、初めは大いに変わっておるという、そういう矛盾した答弁国会でなされるということはこれは大変なことじゃないでしょうかね。いいですか、長官。国家の正当防衛権による戦争が正当だというようなことは有害だと、吉田さんはこういう答弁をしているんですよ。むしろ正当防衛権を認むるなんていうことは戦争を誘発するゆえんであると、こう言っているんですよ。こんな精神を踏まえて、いま、それじゃ長官自衛隊を統轄していらっしゃんですか。
  59. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私はこの問題につきまして、いろいろ政府見解というものが変わってきておるというか、考え方が、現実のきょうの姿になっておるという、その現実のきょうの事態の中で、防衛庁長官として現実の事態の解釈の中で対処することは当然でありますが、しかし、あくまでいわゆるその防衛というものの考え方の中に、吉田さんが言っておる、昔の帝国陸海軍というものが防衛と言いながらあの大きな戦争を起こしたという、そういうことを否定的な立場で申し上げておるわけでありますが、しかし私は、現実の世界情勢の中でこの問題を考えてみれば、私の申し上げておることが矛盾だという先生の御指摘でありますが、私は絶対いわゆる昔のような軍隊の姿にしてはならないという考え方については、私はその精神は十二分に私も会得しながら、きょうの防衛庁の考え方、防衛庁の方針を過ちなく継承しながら、精神をくみながら、昔の旧軍隊のような姿にしてはならないと、エスカレートをだんだんしていくような姿にしてはならないと、こういう精神を私は踏まえているということを申し上げておるわけであります。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣のお気持ちは私が理解しないわけではないんです。大臣が、自衛隊を戦前の陸海軍のようなああいう存在にしてはいけないと考えているとおっしゃることには私も同感です。憲法論は別として、そういう長官のお気持ちは了といたします。それからまた、憲法解釈が変わっているということをお認めになったこともそれは正しいと思います。ただ、吉田総理がここではっきりと国会でおっしゃっていることは、正当防衛権、国家の正当防衛権を認めるということは有害なんだと、それは戦争を誘発するゆえんなんだということをはっきり答弁しているんですよね。こういう考え方は間違いなのかそれとも正しいのか、長官はこれをいま正しいと思っているのかどうか、そういうことを端的にお答えいただきたいわけですよ。
  61. 金丸信

    国務大臣金丸信君) この問題については非常に微妙な問題だと私は思うんですよ。私が軽々に判断を申し上げることは——一応先生の、吉田元総理の言われたことに対して、こういうこともあるといま防衛局長が私に知恵を授けてくれた。私が申し上げますより防衛局長から申し上げた方がよかろうと思うので、防衛局長から申し上げます。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは、長官にして事細かに局部的な問題にわたるとかあるいは技術的な問題にわたるとか、そういうことなら、これは補佐の局長答弁するということはわかりますよ。ただ、これは国に正当防衛権を認めんとするのか、認めるのが正しくないとするのかというような、国家の基本的な理論に関する問題でしょう。だからその問題はわからぬというのはおかしいです。
  63. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私はいま、吉田総理のおっしゃられる精神というものは私はくんでいます。しかし、防衛権というものは私はあると、こういう考え方は持っています。こういうことでございます。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ですから、結果的には、この吉田総理のいま私が読み上げた意見と現在の長官の意見とは違うということでしょう。だから、端的におっしゃってください。
  65. 金丸信

    国務大臣金丸信君) そのとおりであります。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 はっきりそういう結論になりましたからそれでいいんですけれども部長はいかがでしょう。
  67. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 先ほど実は申し上げかけたわけでございますけれども、吉田総理は、制憲議会等におきましては先ほど御指摘のような答弁をされたわけでございますが、先ほどちょっと読み上げました、昭和二十一年七月四日の衆議院の帝国憲法改正特別委員会で、林委員に対する御答弁として先ほど申し上げたような答弁をされておりますだけでなくて、その後昭和二十六年の十月十八日になりまして、衆議院の平和安保条約特別委員会の芦田委員の質問に対しまして、「私の当時言ったと記憶しているのでは、しばしば自衛権の名前でもって戦争が行われたということは申したと思いますが、自衛権を否認したというような非常識なことはないと思います」という答弁を通じて、その真意を明らかにされておるわけでございます。  したがいまして、この二十一年の七月と二十六年の十月のこの二回の答弁を考え合わせますると、吉田総理の真意が自衛権を否定するものではなかったということも理解できるわけでございまして、吉田総理の真意は、近年の戦争は多く自衛権の名において戦われたということを強調し、自衛権の名においてわが国としては将来そのような戦争をすることは絶対にないということを明確にしたいということにあったのだったと考えられます。  そうしてみますると、憲法第九条は自衛権は放棄していないし、外国からの急迫不正の侵害があったときに、それを排除して、わが国土、国民を守る止めの必要最小限度の武力行使は許されるという現在の政府の解釈と矛盾しているものではないというふうに考えられるのでございます。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 部長が二十六年の吉田さんの答弁をいま読み上げたんだけれども、二十六年というのは、朝鮮事変が起きて、そして二十五年に占領軍からマッカーサー書簡で警察予備隊の創設が指令された、その後における憲法解釈が変更という、そういう政治的な事実というものを全く考慮に入れてないんで、すうっと一足飛びに飛んでしまっているんで、そういうことでは困るんですがね、もうちょっとそういう政治的な変化というものをよく頭の中に入れた憲法論を展開していただかないと。  それからまた、自衛権というのは私も否定しているわけじゃないんで、いいですか、自衛権にもいろいろあるので、つまり、戦争に訴えて自衛するというものか、それ以外の自衛というものか。それ以外の自衛というのは、憲法の前文にあるような国際社会の援軍にまつというようなこともある、そういう憲法論を吉田さんが——後で言いますけれども展開した時代もある。それから警察力による抵抗もある、あるいはガンジーのような方法による抵抗もある、それを総称して自衛権というわけですからね。あなたのように、自衛権がありますありますというようなことをただ平板におっしゃられても、それは憲法論になりませんよ。  いま憲法制定当時のことをお話ししたんだけれども、その後も何回かにわたって同じような趣旨が国会会議録に残っております。それをよく長官部長も理解してほしいと思いますが、これは昭和二十四年の十一月二十一日です。これはまた、もう一遍野坂議員が質問をしておるんですが、これは衆議院の外務委員会の論議ですが、   まず第一は第九條のあの條項の解釈で、かつてこの委員会でも自衛権の問題が問題にされて、政府委員の方から若干の御回答がありましたけれども、この問題は非常に重要な問題であるし、またいろいろの解釈もあるようですから、総理兼外務大臣の方からはっきりとお答えを願いたいと思うのであります。これは御存じのように、あの憲法が改正されたときの委員会でもいろいろ問題があって、今の吉田総理及び金森国務大臣の方から、あの九條の解釈は自衞権がないようにも言われたし、また解釈の仕方ではあるようにも思われる。こういう解釈が一つある。それからあの委員会の委員長であった芦田氏が、その後著書の中でもはっきりとあの九條の解釈は、政府としても自衞権を日本は持つと解釈してもよろしいし、自分もそういうふうに解釈するという意味のことをはっきりと発表されております。それでまずお伺いしたいのは、あの九條には自衞権を日本が持つことができるというふうに解釈するか、あるいはしないのであるか、この点をひとつお伺いいたします。  つまり野坂議員は、最後に、憲法第九条には自衛権日本が持つことができるというふうに解釈するか、あるいはしないのか、この点を答えろという質問をしているわけですよ。それに対して吉田さんは、   私はこう考えております。日本は戰争を放棄し、軍備を放棄したのであるから武力によらざる自衞権はある。外交その他の手段でもつて国家を自衞する、守るという権利はむろんあると思います。  と。いいですか、自衛権については部長の言われたように、これはあるという。これは国家固有の権限だということは、これは国家理論の上からも否定すべくもないでしょう。それを言っているんじゃない。部長は、自衛権があると吉田さんは言ったんですということを鬼の首でもとったように言われるが、問題は、武力による自衛権かどうかという問題なんですね。ですから、いま吉田さんは、武力によらざる自衛権はあるんだということを言っているんですよ。この点おわかりになりますか。部長いかがです。
  69. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 当時吉田総理がそういう答弁をされたことは承知しております。また、吉田総理がどういうお気持ちでおっしゃったかということは実は私も申し上げる立場ではございませんけれども、恐らく武力のない自衛権を持つことができるというような答弁をされたという意味は、察するに、自衛の名をかりて武力行使をするとかあるいは戦争をするということはしないということを前提にした御見解ではないかというふうに考えますが、その当時私ももちろんそれを直接伺ったわけでもございませんし、自信を持って申し上げられませんが、恐らくそういう意味ではないかというふうに考えられます。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この吉田さんの答弁それ自体をあなたがどういうふうに理解するかということは別として、この答弁は否定すべくもないわけですね。  それからまた、この問題はそれだけじゃないんです。これは衆議院の本会議、これは二十五年の本会議ですから、ちょうど朝鮮事変がすでに勃発した後なんですけれどもね。まだその直後においてはいまの吉田さんの憲法解釈というのは変更を見ておりません。これは河口陽一という方の質問に対して吉田さんはこう言っておるんですね。   また国連援助の具体的方針、これは先ほどまでもしばしば私がここにおいて答弁いたしております通り、私の申す精神的に協力する、これ以上に政府としては今日の立場において積極的に援助するとかいうような具体的の方針は述べることはできないのであります。 これはまあ韓国に対する援助のことを言っているんですね。   また軍備を放棄したわが国において自衛権のあり方はどうだというようなお尋ねでありますが、自衛権なるものは武力のみではないのであって、国の自衛権なるものは、武力以外の自衛権は、いかなる方法によっても国を守るために行使し得るのであります。 つまり、自衛権というものは武力によるものとよらないものとあって、武力によらないものというものが持てるんだというその論旨は一貫しているわけですね。  さらに今度は衆議院の外務委員会、これもやはり同じころですけれども、これは自由民主党の、そのころは自由党の段階でしょうね。佐々木盛雄さんの質問に対してこう言っておるわけですね。   また今度の朝鮮事件によってただいまも申した通り、国連なりアメリカ実力をもって警察行動を起した。世界の平和擁護のために、世界の第三次戦争に至らないようにかくのごとき大規模な行動を開始したということによって見ましても、同じような場合が日本に起った場合には、決して国連その他は捨てておくはずはないと、私は今度の事件によってますます確信を強むるに至ったのであります。日本の安全は結局国連その他の国際機関か、あるいは世界の輿論が日本の安全を保障するだけの運動を起す、こう私は確信いたします。 と。つまり、吉田さんの自衛権というものは、武力によらざる自衛権という、つまり、それは何か国難が起きた場合には国連その他の国際的な援助が期待できるんだと。そういう趣旨がまだこのときはずっと続いているわけですね。決して武力による戦争というものを肯定した議論にはまだ至ってないわけです。それが次第に変化していく。  それから、いま吉田さんが直接答弁した言葉だけを申し上げたのですが、これは、まだ朝鮮事変の勃発しない当時においてはもう定説になっておったわけです。ですから、必ずしも吉田総理だけでなくして政府委員全体がそういう答弁で一貫しておったわけですね。西村熊雄さんの政府委員としての答弁を見ますと、まず川村松助という政府委員が、   政府といたしましても、あらゆる御意見を総合いたしまして判断した結果、自衞権、自衞戰争は放棄したものと、こう考えております。 という答弁をしたのに補足して、さらに西村さんが、   私から補足さしていただきます。憲法第九條第一項は、国際紛争を解決する手段としての戰争と武力行使はこれを放棄しておりまして、直接には自衛戦争には触れておりません。  これは第一項ですよ。   しかし第二項で一切の軍備と国の交戦権を認めておりません結果、自衛のための戦争も放棄したものと了解いたします。 と。大臣よろしいですか。「自衛のための戦争も放棄したと了解します」と。   自衛権行使が戦争または武力の行使、こういう形をとる場合、わが国は原因のいかんを問わず、すべての戦争または武力行使を放棄しておりますから、そういう形式をとる自衛権はないものと解します。しかし急迫した不正の危害が現に起っておる場合、かような火急の場合、やむを得ずこれを実力をもつて排除することも否定したものとは考えません。し と。つまり、自衛権は否定しでないと。   なおこの憲法解釈の問題につきまして、一言つけ加えさしていただきます。憲法の條項のうちには、解釈についていろいろ意見が立ち得るものがあり得ます。これらの解釈は、結局将来長い間にわたって成立するであろうと考えます最高裁判所による判例と、国会政府など憲法運用の責任にある機関によってつくり上げられます運用上の慣行等によって固まって行くものと考えます。憲法上の慣行の成立には、国会が一番大きな役割を演じられるものと考えます。憲法制定会議におきます審議によって明瞭にされました立法者の意思とか、政府当局の解釈とか、憲法学者の解釈とかいうものも、それぞれ大事なものではありますけれども、結局のところは判例と慣行とで固まって行くと考えます。れは昨年の秋、衆議院の解散に関連する関係條項の解釈問題の経緯を考えてくだされば御了解していただけると思います。 と。これは自衛のための戦争も放棄したものと了解するという点をまず固めて、その後で、憲法解釈は結局最高裁判所の判例あるいはこの国会政府などの運用上の責任にある機関によってつくり上げられる運用上の慣行等によって固まっていくと。こういう点で、後日の憲法解釈政府によって次第に変わっていくことを暗示しているということが言われると思うんですね。  なお西村さんは、それでは現実に侵略があった場合にどう対処するかという問題に端的にさらに答えております。これもやはりいま読んだように、衆議院の外務委員会の二十四年の十一月当時の答弁でありますが、労農党玉井祐吉さんの質問が、西村さんの、   私は国際法的に考えまして、仰せの通り自然発生的な自衛権はないと考えております。自衛権というのはあくまで国際法上の観念であるというふうに考えております。 と、そういうような答弁が前にありまして、そういう答弁について玉井さんがこういう質問をしているわけです。   今のお話のようでありますと、戦争もしくは武力による形における自衛権の発動は考えられないと仰せられるわけですが、そうすると残りはどのような自衛権があるか。そしてその自衛権が、はたして先ほど例をお引きになった国際法上有名な事例に対しての自衛権の形として、あのときに武力を使わないでどういうような自衞行動をとられただろうと御想像になるか、この点についてひとつお伺いしたい。 と。これは先ほど部長にもお話しをしましたけれども自衛権というものを否定しているわけじゃないですね、その当時、憲法制定当時も。ただ、自衛権には戦争による自衛と戦争によらない自衛とがあると。じゃ、その戦争によらない自衛権の形はどういう形なんだという質問に対して、この西村さんは、   日本の現状におきましては、警察力以外にないと考えます。 と。つまり、警察力による自衛なんだということを言っておるわけです。  それから同じく衆議院の外務委員会で、法務総裁——当時は法制局長官はなかったんでしょう法務総裁なり法務省の方でかわっておったようですが、法務総裁の大橋武夫さんがこういう答弁をしているんですね。   日本国憲法第九条によりますると、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない、こう明らかに原文をうたってあります。従いまして陸海空軍その他の戦力と認められるような部隊を日本国政府が保持するということは、これは国際法上自衛権が認められるといなとにかかわらず、憲法上制限された事項である。これは間違いのないところであろうと存じます。 と。これは大橋さんが法務総裁当時に、戦力と認められるような部隊を日本国政府が保持することは憲法上制限されている、これは間違いのないところであろうと思う、ということを言っておるわけですね。こういう点を長官部長もまず理解していただきたいと思うんですね。  この憲法解釈は、先ほど申しましたように、朝鮮事変が勃発してマッカーサー司令官から予備隊の創設を書簡によって命令されましてから変化を来たしたわけです。ただ、そうは言っても、その変化はきわめて緩慢になされているので、いまのような、いま長官がお持ちになったような憲法解釈が直接すぐに発生したものではありません。といいますのは、警察予備隊がそのままの名称でとどまった間は、吉田さんは、依然としてその軍隊的性格を否定することによってその従来の憲法解釈を変えようとはしなかったわけですね。  で、二十七年の二月一日、衆議院の予算委員会で共産党の横田甚太郎議員が、   あなたは警察予備隊であって軍隊関係ないように言われるが、アメリカにおいては、これは軍隊と解釈しておる。 と言って質問をしておるのに対して、吉田さんは声を荒げて、   警察予備隊は警察予備隊であります。外国の批評は、私どもは責任を負わない。 と、こう言って形式的な答弁でその場を糊塗しております。さっき私がもうすでに読んだように、じゃ侵略された場合はどうなるかといった場合に、それは「国連その他の国際機関か、あるいは世界の輿論が日本の安全を保障するだけの運動を起す」ということで切り抜けておるわけですね。まだその時代では、先ほども私が読んだように、大橋法務総裁が、戦力と認めるようなものを保持すると憲法第九条によって許されないと。でそのときにはまだ、警察力という先ほどの西村熊雄さんの答弁がありましたが、もう一つ、義勇軍による防衛はどうかということが一つの論争点になっておりますが、義勇軍でも、軍隊的な点までそれが体質が向上していったらそれはいけないんだという趣旨になっておるわけです。  いま申し上げましたように、まず第一の変化は警察予備隊の創設から生まれたのですけれども、次に、やはり平和条約日米安保条約が生まれるあたりから急速に変化をいたしますが、それをちょっと御理解していらっしゃるかどうかお伺いしたいと思うんですけれども、これは昭和二十六年の十月十九日衆議院の平和条約及び日米安保条約特別委員会、ここで社会党の猪俣浩三さんが従来の憲法論議を全部総ざらいにしまして、そして大変吉田さんに詰め寄っているんです。これに対して吉田さんがこういう答えをしているんですね。   ただいま申した通り。自衛権は国に存在するのであって、自衛権の発動としての戦争、その場合はいたし方ないのでありますが、 と、いままでは戦争による自衛権行使はいけないと、こう言っていたんですが、今度は「いたし方ないのであります」という点に変化しました。   しかしながらしばしば自衛権という名において侵略戦争が起されたことがあるから、自衛権という文字を使用することについては軽々になすべからざるものであるということを申した記憶があります。その他のことは記録を調べた上でお答えいたします。 これに対して猪俣議員が、   そうすると今総理のお答えは、自衛権に基く戦争は否認しない、ただそれを濫用することだけは困るということを言うたので、自衛権に基く場合においては戦争もまたやる覚悟であるというふうに承ってよろしゅうございますか。 と、こういう質問をしております。それに対して吉田総理は、   自衛権がある以上は、国自身の独立を保護するためにあらゆる手段をとるということは、これは自衛の範囲であり、自衛権の範囲であります。それが戦争になったといったところが、いたし方ありませんが、しかし私の言うのは、自衛権という言葉は濫用せられるおそれがあるから、軽々に用べからず、繰返して申します。  と。ここでは明らかに、いままでの戦争に訴える自衛はいけないと言っているのを、やむを得ないという肯定論に変化しているわけですね。それが正しいというのじゃなくて、やむを得ないということで逃げておるわけです。これが答弁の変化であることは、長官もお認めになりますか。
  71. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私も認めます。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 部長はいかがです。
  73. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) ただいま御指摘の吉田総理の御答弁に絡む問題といたしまして、その後吉田総理は、三月十日の参議院の予算委員会におきまして答弁を訂正しておられるようでございます。
  74. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 部長、余計なことを言わずに質問にちゃんと答弁しなさい。その点を認めるかどうか。
  75. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 訂正しているという意味で、それはそういう事実はあったと思います。おっしゃるとおりであると思います。
  76. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 訂正といっても、それは本質的訂正じゃないんですよ。それはまた全然場所が違いますよ、訂正のときは。  それはさらに検討してもらうとしまして、いまは戦争による自衛になってもいたし方ないというところまで変わってきたのですが、ただいたし方ないといっても、それはやむを得ないんだということですから、受動的なんですね。積極的でないわけです。そこがどういうところにあらわれているかといいますと、宣戦の布告はしないと、受動的ですから宣戦の布告はしないということに言っているわけですね。その点はこういう答弁なんです。これは参議院の内閣委員会、二十九年の五月二十日。二十九年ですね。もうすでに自衛隊防衛庁の設置がここでもう現実に提案された時代です。ここでもう、まだいまのような憲法解釈にまで飛躍はしません。しかし、そういうところに移行する過程にあると言って差し支えないと思うんですが、その答弁を読んでみますと、これは改進党の八木幸吉さんに対する答弁ですが、   お答えをいたしますが、正当防衛権は独立国である以上は当然の権利でありまして、これは否認をいたそうとしてもいたすことのできない本質のものであります故に、正当防衛権は如何に私が申しても、国家としては持ち得るはずと私は確信するのであります。  前は、正当防衛権の論議は有害だということを憲法制定当時に言っておりましたものが、今度は「持ち得るはずと私は確信するのであります」る、これも百八十度の転換でありますが、そう言っております。さらに続いて、   然らばこの事態をどうするか、憲法制定の当時は最も高遠なる理想の下に戦争放棄、又戦争を以て、武力といいますか、戦力を以て、正当防衛の名の下に戦力を以て抗争をするということは好ましくない。この高遠な理想を以て憲法九条はできたのでありますが、お話の通り爾来事態は深刻なる回転をいたしており、現に共産主義国との間においては、朝鮮の例を以て見てもわかる通りに、相手方は名儀の立たない侵略をいたして、朝鮮問題が起って来たのであります。この事態に処する以上は、国としては正当防衛権をあくまでも擁護して、そうして本来の国家、独立国家として持つ権能、権力を以て自己防衛に当る、これは当然なことであります。  この事態の変化といいますか、いずれにしても国としては正当防衛の名において宣戦の布告をするというようなことはいたすまじきものであるということは今なお考えております。又正当防衛権の名の下に国際紛争の解決をなすというようなことは、あくまでもいたさないつもりでありますが、不幸にして緊急な攻撃をこうむった場合、防禦にその武力以外に手段がない場合には、正当防衛権といいますか、いずれにしても直接の侵略の防衛に当るという手段を講ずるほか、国の独立は守ることができないはずであります。ここに今日防衛庁の設置及びその他の二法案を議会に提出したわけであります。 と、ここで大きな変化をしておることですね。だから、この変化を長官はお認めになったけれども部長は何やら訂正だ何だかんだ言うて、いまの憲法解釈を急ぐ余りに、その変化を認めるがごとく、認めざるがごとく、あいまいな態度をとっていますが、あなたは、そういう憲法解釈は徐々に変化してきているということまでも争うのではないんでしょうね。どうなんです。
  77. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 基本的には恐らく考えは変わってないのじゃないかと思うんでございますけれども答弁の変遷は確かに先生おっしゃるように、いろいろニュアンスの違いその他があるのではないかと思います。
  78. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 基本的には変わっていないという、そういう曲学阿世というか、これはもう法律の守護者としての法制局としてはあってはならないことなんで、そのときどきの答弁のニュアンスというような問題じゃないでしょう。正当防衛権を認めるというのは有害だという答弁と、正当防衛権は認めるというのとでは百八十度の転換でしょう。ニュアンスの違いじゃないんですよ。あなた、何かわきの人が盛んに知恵をつけているので答弁しているようだけれども、あなた自身の判断でお答えなさいよ。どうなんです。その変化はニュアンスの相違ですか、本質的な相違ですか、どちらです。
  79. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 先ほど申し上げましたようなことで、吉田総理の御答弁の変遷がいろいろあったことはもう間違いございません。ございませんが、先ほど申し上げました吉田総理の答弁自衛権を否認するような非常識なことは考えていないという答弁が、恐らく総理の最終的なお考えではないかと思います。
  80. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その点についてはさんざん私はお話ししたでしょう。自衛権にも幾多もあるので、武力によらざる自衛権はあるという解釈を初めとっておって、その次に武力による自衛に至ってもやむを得ないということに変わってきた。それ違うでしょう、二つの意味は。あなたはわきの人に聞かないであなた自身のお考えで答えてください。その二つの答弁が同一だとお考えですか、違うとお考えですか。どちらです。是は是とし非は非とする、それが法律家の精神なんですよ。詭弁でもって答弁をごまかしてしまっていくというようなことでは、法律家としての生命はありませんよ。どうですか。
  81. 茂串俊

    政府委員茂串俊君) 確かに先生の御指摘のように、総理の答弁の変遷はいろいろあったことはこれは認めざるを得ないと思います。
  82. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、吉田総理の答弁がいま言ったように非常に変化をしておるために、一たん非常に行き過ぎます。行き過ぎたのを国会でたたかれましてまたバックします。そういうことを繰り返しつついまの憲法解釈にまでいったのですが、その点の事実をはっきりと御認識いただきたいと思うんですが、これはまだ自衛隊の創設が提案されない時代に一たん行き過ぎまして、それからバックした一つの例でありますが、これは参議院の予算委員会昭和二十七年三月十日の質疑応答であります。このときの委員長は社会党の和田博雄さんでありましたが、ここで吉田さんの答弁の訂正を求めたわけであります。  委員長(和田博雄君) 委員会を開会いたしま  す。   先ず私から七日、八日に行いました理事会の御報告を簡単にいたしたいと思います。六日の委員会におきまする自衛のための戰力に関する質問についての吉田総理の発言を非常に重要視いたしまして、理事より理事会の開会の要求がありましたので早速理事会を七日開きまして、これを如何に取扱うかを御相談いたしたわけでありますが、結局重要な御発言でありますので、速記録を十分調べた上に、その上でこれをどう取扱うかを処理したいということになったのでありますが、七日の理事会の休憩中、保利官房長官から、総理が特に発言を委員会が開かれた場合においては冒頭においてしたいという申出がありましたが、理事会は速記録を十分見まして、その上でその発言を聞くことにしようということに大体落着きかけたわけでありますが、七日の夕刊に保利官房長官の談話が出ましたので、八日の理事会におきまして、その経過を保利官房長官から説明をして頂いて、結局結論としまして、本日の冒頭に総理が発言を求められておりまするので、それを許可し、その発言について本日の委員会においては質問を行い、そうしてその質問が済んだあと、本委員会をどういうように運営するかを理事会を開いて決定するということにいたしました次第でございます。従いまして本日は理事会の決定通り取運びますことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕  委員長(和田博雄君) 御異議ないと認めます。吉田内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。国務大臣(吉田茂君) 近く独立を迎えんとする時に当って、私は日本国の独立安全は日本国民自身の愛国心と熱意によって守らなければならんという点から、守らなければならんという気持を十分国民が持ってもらいたいという念願から、岡本君の質疑に対する私の答弁中、戦力という言葉を用いたために、自衛のためには再軍備をしても憲法上差支えなきかのごとき誤解を招いたようであります。この点についてかねて私が申しております通り、たとえ自衛のためでも戦力を持つことはいわゆる再軍備でありまして、この場合には憲法の改正を要するということを私はここに改めて断言いたします。而して再軍備をしないということは、私が従来しばしば申し上げた通りであります。この点誤解を招かんように更に訂正いたしておきます。 そこで、岡本愛祐という緑風会の方が、それをさらに念押しいたします。  只今の吉田総理大臣の御発言につきまして、数点質問をいたしたいと存じます。お許しを願います。只今の総理大臣の御発言の趣旨は、六日この委員会におきまして私ども質問に対し、総理大臣憲法第九條は自衛のためには戰力を持つことは禁じていない旨の答弁をされたのでありますのを取消されまして、憲法第九條は自衞のためにも戰力を持つことを禁じておると訂正されたものと了解いたしますが、果してさようでありますか、先ずその点を念のためお確かめいたします。 これは念押しをいたしたわけですね。で、総理大臣の吉田さんは、「御意見のとおりであります。」と言って答弁をしております。つまり、憲法第九條は自衛のためにも戦力を持つことを禁じておるという点を、吉田さんはまたこの二十七年の三月十日にはっきりと認めておるわけであります。  そうして、ここでもしも自衛のための戦力を持つということになれば、それは当然憲法を改正し.なければいけないという憲法改正論がここから生まれてきます。これは岡本議員が、  岡本愛祐君 然りとしますれば、戦力でない自衛力若しくは防衛力でありましても、漸次その人員を増加し、その装備を充実強化して参りますときには、戦力に近付いて参りますことは、当然であります。又戦力となっては憲法に正面から違反するのでありますから、万一憲法第九條の改正を見ないで、政府が事実上の戰力を作り上げて行くのでありますれば、憲法を破壊し、国民を欺き、ファッショとなるのでありまして、国会及び国民の断じて許さないところでありますことを総理大臣は深くお心に銘記されたいのであります。総理大臣自衛のために戦力を持つ必要がありとお考えになりますれば、戦力が生ずるに先立って憲法第九條の改正を国民投票に関わるべきであります。それが総理大臣に課せられた重大な任務であると思います。従来吉田総理大臣は、再軍備は考えていないと、しばしば言明され、ただいまも又さような言明をされたのでありますが、それは、当分の間はまだ自衛のためににも戰力を持たないとせられる御意思でありますか、どうか、この点を伺います。  国務大臣(吉田茂君) お答え申します。日本が戰力を持つか、或いは軍備を持つか、持たないかということは、全く国民の自由意思によるべきものであって、これは私の申すことも国の力がこれを許し、日本の経済力が軍備を持つことを許し、又外界の事情もこれを持たなければならん時に至れば、これを考えざるを得ないのでありますが、その場合には憲法に従って国民投票なり、憲法改正なりいたしますが、差当ってのところは未だその時期に至らない、つまり戰力にあらざるものを自衛のためにいたすことは、これはともかくとして、いろいろお話のような戦力を持つ、或いは軍備を持つというような場合には、国民投票によって憲法改正という手段をとりますことを、ここに確信いたします。 つまり、軍備を持つ、戦力を持つ、戦力と軍備を一緒にしていますが、「戦力を持つ、或いは軍備を持つというような場合には、国民投票によって憲法改正という手段をとります」と、こう吉田さんは言っているんですね。大臣、いかがでしょう。つまり、いまの自衛隊が軍備であることは間違いないと思うんですが、憲法改正の必要が吉田さんはその場合にはあるんだと言っているんですよね。大臣はこれはどのようにお考えになります。
  83. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、その当時まだ国会議員ではないから、そのときの状況はつまびらかではないんですが、その状況の中でいわゆる日本の独立というような問題もあったと私は思います。あるいは、アメリカ軍が二十六万とか二十五万とか、日本に駐留軍がおったというような状況の中で独立というような問題があった。そういうことを考えてみると、その問題はどのようにその当時解釈したのか、また、自衛隊をつくったのは吉田さんがつくったというような話も私は聞いておるわけでありますが、その辺のお話はひとつつぶさに先生から私はゆっくり承りたいと思っています。
  84. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 どうも答弁いただけないような御答弁ですね。じゃ、さらに先に進みましょう。  先ほど防衛庁設置法と自衛隊法などの法案が提案されましたときに、吉田さんが正当防衛権を是認する憲法解釈に変わったということを申し上げました。ただ、「宣戦の布告をするというようなことはいたすまじきもの」という答弁をしたことも先ほど読んでお示ししたのでありますけれども、ここで、先ほどもちょっと防衛局長お尋ねをして念を押した近代戦遂行能力という問題が出てくるわけですね。  これは参議院の内閣委員会、二十九年の五月二十日、八木幸吉改進党議員の質問に対して、法制局長官佐藤達夫氏が、  私の言葉を以てお答え申上げますれば、常識を以て判断される近代戦遂行能力、これを持つようになれば憲法に抵触するという問題が起ろうというわけでありまして、先ほど触れましたように軍隊とかなんとかということは憲法そのものの第九條第二項の戦力の判定の基準としては、これはむしろ任務の問題であって主たる要素にはならない、かように考えているわけであります。 つまり、自衛隊が全体として近代戦遂行能力を持てばそれは憲法第九条第二項に当たるんだ。いまの政府憲法解釈は、自衛の範囲を超えれば憲法第九条の二項に違反する、こういう解釈とっていますね。まだこの当時はそういう自衛の限界というふうなことでなくして、近代戦遂行能力ということを一つのメルクマールにしているわけですね。なお、同じように法制局長官が、  近代戦を遂行するために陸海空のバランスがとれなければならないものかどうか、そのバランスがどういう比率であるべきかという、これは細かい軍事上の問題になると思います。要するに私どものお答えとして大きな観点から申しまして、近代戦を遂行できるような能力、そのバランスの内訳というものは存じませんけれども、そういう能力はいけない、かようなことになるわけであります。 こういう答弁をしております。これ防衛局長、どうです、あなた。近代戦遂行能力はいま自衛隊は持っていると言っている。この佐藤達夫法制局長官の意見によると、それは憲法九条によって禁じられているんだ、こう言って答弁しているんだけれども、あなたのお考えは。
  85. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私は先ほど近代戦遂行能力という御質問に対しまして、いわゆる軍事技術的に見て、日本に現在の軍事技術の水準で侵略があったときに、それに抵抗する能力は持っているというふうに申し上げたわけでございます。この法制局長官のお答えになっております近代戦遂行能力というのは、そういった戦いというものを完全に独自でできるような能力というような形で御説明になっているようでございまして、そういう意味で申しますと、わが自衛隊の持っている能力というのは、従来申し上げておりますように、専守防衛能力といいますか、いわゆる防衛の機能の面におきましても近代戦というものを完全に遂行する能力というものはないというふうに思っているわけでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、いわゆる現在の技術による攻撃に対してこれを防御する能力は持っているというふうにお答えしたつもりでございます。
  86. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変な詭弁のように思いますがね、言い逃れのようにね。あなたのは二つの立論があるんですよね。つまり、自分だけでは防衛できないという、そういう意味では近代戦遂行能力がないというようにも思うし、軍事技術的にはあっても、さらにないんだ。じゃ軍事技術的にあっても全体としてないというのをもう一遍詳しく言ってください。  それからもう一つは、日米安保条約といって、アメリカ軍との共同作戦のことをあなたは考えておられるのだろうと思うけれども、しかし、その中にあって、アメリカ軍だけは近代戦遂行能力があって自衛隊はないという何か片ちんばの状態をあなたは言っておられる趣旨なのか、そうじゃなくて、この両者が一体となって初めて近代戦遂行能力があるという趣旨で言っておられるのか、どうもはっきりしないでしょう、もう少し詳しく言ってください。
  87. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私が申し上げましたのは、軍事技術的な面での能力ということで、その対抗できる力を持っているということは申し上げたわけでございますが、近代戦能力というものをどういうふうに定義づけるかという問題がございます。したがいまして、この戦争というものは攻撃面、いわゆるオフェンシブな面と防御面というものが一緒になりましていわゆる近代戦というものは遂行されるというのが、これが軍事的な常識になっているわけでございます。どこの国の軍隊におきましても、防御面というのはもちろんあるわけでございますが、いわゆる攻撃は最大の防御だというような考え方から、それぞれの国は攻撃的な能力というものはかなり持っているわけでございます。ところが、自衛隊におきましては、御承知のように戦略守勢という構想を堅持いたしておりまして、機能的に見ましても他国を攻撃するといった能力はないわけでございまして、そういった面から見まして、防御面というものに限って装備をしているという点が、いわゆる近代戦遂行能力というものを完全に満たしていないというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、そういった点の欠落しているのはどういうことになっているかと申しますと、これは日米安保体制によりまして、以前国会でも御説明がありましたように、いわゆる野球でたとえて当時の長官が御説明いたしましたが、自衛隊は内野の守備をやって、外野の守備というのはアメリカに依存するんだというようなことでございまして、いわゆる軍事的に申し上げますと、戦略的な攻撃の面はアメリカに依存し、戦略守勢の面は自衛隊がその能力を持つというふうに従来から御説明いたしているところでございます。
  88. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、あなたの近代戦遂行能力というのは、一に攻撃面の、攻撃的な、オフェンシブな装備なり、あるいは兵器を持たないと近代戦遂行能力を持つとは言えない、こういう結論になりますか、端的に言うと。そんなことはないでしょう。防御戦というのがあるわけだからね、防御戦における近代戦遂行能力というのがあるわけだから。何かあなた方は、つまり戦いを勝つために、勝利するためには攻撃が必要だという、そういう何か作戦上の原理というか、それを近代戦遂行能力にすり変えているような感じだがね。どうです。
  89. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それは必ずしもそういうわけでございませんで、その防御をする場合に、岸総理の御答弁だったと思いますけれども、座して死を待つよりは敵基地をたたくということが防御の面でも必要な場合があるというような御答弁があったと記憶いたしておりますが、そのように、防御の面におきましても敵の基地をたたくということが必要な場合もあるわけでございます。その場面に自衛隊としては、理論的には座して死を待つよりはそういった作戦をやるということが必要である場合もあるだろうけれども自衛隊としてはそういう装備は持たないんだということも国会で御答弁しているわけでございます。といたしますと、近代戦遂行能力というものの中には、いわゆる近代戦で必要なあらゆる機能を備えているということが条件だろうと思います。したがいまして、そういった意味におきましては、攻撃的な機能というものは自衛隊が持っていないということでございますので、いわゆる近代戦遂行能力というものを完全には持っていないというふうには考えるわけでございます。しかしながら、技術的な面で見ますると、周辺諸国の軍事能力というものを参考にいたしまして、それに対応できるような質的な装備は持っているということでございまして、そういうものが戦前の武器に比べて近代化されているということでありますれば、それはそのとおりだというふうに申し上げたいと思うわけでございます。
  90. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 完全には近代戦遂行能力を持っていないと。完全であろうが不完全であろうが、近代戦遂行能力を持っておれば憲法第九条第二項によって禁止された戦力に当たるという佐藤達夫氏のあれに当たりますけれども、ここであなたに伺いたいのは、それではどういう兵器あるいはどういう装備を持てばオフェンシブな軍隊になるのか、そしてあなたの言われる完全な近代戦遂行能力を持つというのか。つまり、近代戦遂行能力を完全に持つに至るであろう象徴的な兵器というものあるいは装備か、どちらでもいいがちょっと例示してみてください。
  91. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま、先生が申されたような意味におきまして、完全な意味の近代戦遂行能力というものを持っている国というのは、やはり世界におきましては米ソ、こういった超大国だろうと思います。といいますのは、これらの国々は、御承知のように核兵器もきわめて強力なものを持っております。核兵器というものは、これはICBMその他になりますとこれを完全に防御する手段というものはないわけでございまして、これは相手に攻撃を加えるということによってその戦争を抑止するというような威力を持っているわけです。同時にまた、長距離爆撃機によって一挙に相手国の心臓部を攻撃できるような能力、あるいは潜水艦から発射するようなミサイル、こういったもっぱら攻撃的な兵器というものを十二分に持っているような国ということになりますと、これはまさにアメリカとソ連だろうと思います。しかしながら、ヨーロッパの先進国等におきましては、もちろんその防御兵器が中心になっておりますけれども、ああいったいわゆる地勢の国におきましては、単にわが国のような防御的な力だけではなかなか守りにくい。したがってそういった防御的なものにも攻撃能力というものをかなり付与いたしまして、そういった攻勢面もとれるような形のものを持っているわけでございます。  そういった意味におきましては、わが国の陸海空の自衛隊は、御承知のように、航空自衛隊にいたしましても防空能力というもの以外は持っていないわけでございまして、海上自衛隊におきましても沿岸の警備、それから船団を護衛する能力という形のものでございます。ましてこの陸上自衛隊におきましては、陸上、日本の領土の中で侵略してくる直接侵略に対してこれを排除する力というもの以外には持っていないわけでございましてへたとえば陸上自衛隊なんかの場合には、まあよそに出ていくような能力を持つという場合には、きわめて大きな補給体制とかそういったものが必要になります。また海上自衛隊におきましても、遠く離れたところで作戦をするためにはいろんな補助艦艇というものが、いわゆる護衛艦と相対するぐらい必要になるわけでございます。こういった意味の機能というものが自衛隊の中にはございません。そういった意味におきまして、まさにこの防御的な自衛力だというふうに私どもは考えているわけでございます。
  92. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたはいまも近代戦遂行能力を持つに至るであろう主要兵器の一つとして、象徴的なものといって核兵器をおっしゃったね、だから、そういうものを十分持っているのは米ソ超大国以外にはないというような。まあそれはおかしいのだけれども、ほかのたとえばイギリスにしろ西ドイツにしろ、近代戦遂行能力がないと。そんなばかなことはないんで、彼らは皆持っていると思っているので、それでなければあれだけの強大な軍備を持つために大変国民総生産の中の三%ないし五%程度防衛費というものを注ぐわけがないんです。  それはまあいいとして、あなたはいま象徴的な兵器として核兵器とおっしゃったんだけれども、その核兵器憲法解釈上持てるというような統一見解を今度は出してきたわけです。で、佐藤達夫氏は、近代戦遂行能力を持つと憲法第九条に違反するんだとこう言っている。あなたは、いまや核兵器憲法解釈上持てるという見解に至っている。これはもう大変な違いだね。その違いはどこから出るとあなたは解釈されているのですか。
  93. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま私が申し上げましたのは、主として核兵器を申し上げたわけでございますが、その核兵器の中でも、先ほど御説明で申し上げましたように、ほとんど防御の手段がない、いわゆる攻撃するということにのみ用いられる核兵器という意味で申し上げたわけでございます。ところが、核兵器の中にもいろいろございまして、たとえば一つの例を申し上げますと、大陸間弾道弾を迎え撃つためのスパルタンというようないわゆる防御用の核兵器というものもあるわけでございます。  そういった意味からいたしますと、いわゆる戦術核兵器の中で——戦略核兵器になりますと、これはもうほとんどそういうものはあり得ないと思いますが、戦術核兵器の中で純粋に防御的なものがあるとするならば、これは憲法解釈上は持てないものではない、いわゆる専守防衛の機能としてそういった武力の中の一つとしては持てないものではないというふうに、これは予算委員会におきましても法制局の方から御説明がございまして、私がその例として申し上げましたのは、以前に、たとえば核地雷というようなもの、そういったものが、私ども現実にはどういう性能のものであるかは存じておりませんけれども、概念的には考えられるものかなあというようなことを御説明したことがあるわけでございます。
  94. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま、それじゃ自衛隊としては絶対に持ってはいけないオフェンシブな兵器というものは何と何と何だというふうに考えているのですか。
  95. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは防御兵器と攻撃兵器というものをはっきり区別するということはきわめてむずかしゅうございます。しかし、その中で特に際立ってはっきりしているというものは、戦略的な兵器といたしまして大陸間弾道弾のようなもの、これはきわめて長距離を飛んでいくわけでございます。それからたとえばB52というようなきわめて長距離攻撃のできるような長距離爆撃機のようなもの、こういったもの、あるいはポラリス潜水艦、これは距離からいきますと、ICBMほどはございませんけれども、いわゆる戦略兵器として壊滅的な破壊力というものを持っているわけでございます。こういったものはいわゆる戦略兵器、いわゆる攻撃的な兵器というような範疇に入るのではないかというふうに考えておりますが、その他個々兵器について、これが攻撃的であろうか、あるいは防御的であろうかというふうに一概に判断できないわけでございますが、少なくとも私どもの陸海空の自衛隊の機能として持っておりますような装備品というものは防衛的なものだというふうに考えているわけでございます。
  96. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 憲法論議というのはまだ遠々と続くのですが、時間がきてしまうのでこれはもうちょっど真ん中で打ち切ってしまったことになるので、またさらにこれは他日続けたいと思いますが、ちょうどいま近代戦遂行能力から横道にそれた感じがあるのですがね。  最近報道面を非常ににぎわしている兵器の中に中性子爆弾というのがありますね。これは防衛当局としては、いまのあなたの御意見の中でオフェンシブな兵器に当たるのか、ディコェンシブな兵器に当たるのか、あなた方としてはどういうふうに理解しているのですか。
  97. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 実は、この中性子爆弾というものの性能その他を完全に理解しているわけではございませんけれども、中性子爆弾というものは核兵器であることは間違いございません。したがいまして、核装備をする考えというのが自衛隊には全くないものでございますから、それがオフェンシブなものか、ディコェンシブなものかということをはっきり理解するのは困難でございますけれども、御承知のように、性能というものは、人間あるいはその他の生物を殺傷する能力を持っておりまして、他の核兵器のように熱と破壊力ということではなくって、人を殺傷する力をきわめて持っているわけでございます。御承知のように、八百メートル以内の人間というものは一両日のうちに死滅してしまうというような力を持っているわけでございまして、戦術核兵器という中には入るかと思いますけれども、これが攻撃兵器防衛兵器かということは、私どもの知り得ている情報でちょっと軽々に判断はできないというふうに考えております。
  98. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 核兵器の範疇に入るということになると、あなた方は、日本の非核三原則の見地から、それは当然政策的に日本では持ち得ない、そういう解釈ですね。
  99. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 核兵器の問題につきましては、いろいろ法的解釈がありますが、私は、自衛隊は全然持つ考えは持っておらない、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  100. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 外務省の人は来ていますか。  この中性子爆弾については、私も過日の本会議——これは八十二国会だったかな、本会議で当時の鳩山外務大臣質問をいたしまして、 この五月、六月に開かれる国連軍縮総会で当然この生産に対して反対をすべきであるという意見を申し述べたわけであります。そのときの鳩山外務大臣答弁は、まだ中性子爆弾の性能その他はっきりと把握していないということで答弁をはぐらかされたわけであります。いま防衛庁答弁によりますと、ややそれがはっきりしてまいりました。核兵器の範疇に入るということも言われたわけですね。いまはアメリカだけが生産能力を持っているということも報道せられておる。しかし、これは仮にアメリカだけが持っておったとしましても、これは原子爆弾のときも水素爆弾のときも同様ですけれども、いずれソ連が生産するに至るであろうということは、これは容易に想定される。そうとしますと、現実の権力政治の中でどっちに味方すればどうこうというようなけちな考えでなくして、わが国の、核戦争を絶対に起こしてはいけないという、そういう国是からして、これは当然国連の軍縮総会で日本は、こういう中性子爆弾の生産などについては反対の意見を表明すべきであると思いますけれども外務省としてはそういう考え方は持っておられませんか。
  101. 矢田部厚彦

    説明員矢田部厚彦君) 私どもといたしましても、中性子爆弾と申しますものは核兵器の一種であるというふうに理解しておりますので、申し上げますまでもなく、日本政府といたしましては、核兵器を地上から完全に廃絶する、完全核軍縮というものを目標にして核軍縮を進めていきたいということを基本的な考えとして持っておりますので、来るべき軍縮特別総会におきましてもその一環といたしまして対処いたしたいと、このように考えております。
  102. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 きょうの論点は十何項目にわたるのですけれども、ほとんどまだできていないので、大変時間が少ないのが残念なんだけれども、いまの憲法論争は一時ここで中断をして、私が一つだけ伺いたいと思うのは、自衛隊というものが憲法に違反するという私どもの信念は少しも変わらないけれども、しかし、現実にそれがあるんだから、その現実を踏まえての議論というものも同時にしていかなければならないという、そういう矛盾した立場を私どもは余儀なくされるわけですね。  私が一つ取り扱った事件で、自衛隊員が自動車に乗って行進しておるときに、何か運転手の過失で転覆して畑の中に落ちて隊員が死んだと。その場合に、その受け取るべき慰謝料的なものがわずかに百何十万だったわけですね。もうそのときの大体交通事故による損害賠償の額というのは、成年の男子の場合は、若い場合では少なくとも一千万円を基準にするべきときに百何万だった。そんなばかなことがあるかというので、訴えを国に対して起こして、たしか八百万円程度で和解したことがあるんだけれども、何か規定によるとそうなんだということであった。そんなばかなことはないので、いまたとえば戦闘機が墜落して殉職したと。それが恩給年限に達すれば恩給をもらえるということがあるが、恩給年限に達していない人間、まだ自衛隊員になって二年か三年ぐらいの人々というのは当時わずかに百万そこそこしかもらえないということであったんだけれども、いまだにそういうことなんだろうか、それは少し改正されたんだろうか。どうでしょうか。
  103. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) 公務で殉職をした自衛隊員に対しまして適用される制度としては、防衛庁職員給与法によりまして、国家公務員災害補償法の規定が準用されるということになっておりまして、一般の公務員と全く同様な補償が行われるということになっております。それから、いま年金のことをおっしゃいましたけれども、年金の問題につきましても、いわゆる遺族年金につきましては国家公務員災害補償法の規定が準用されると。それから、共済組合法の場合におきましても、全く一般の公務員と同じような遺族年金がやはり支給されます。したがいまして、自衛隊員であるから不利になっているということはございません。  それから、低額の問題につきましては、これはやはり若年隊員が非常に多うございますので、死亡したときの給与額がベースになるということになりますと、やはり低額にならざるを得ないという実情がございます。  なお、年金の年限に達しているかいないかということにつきましては、これは普通の退職年金と違いまして、勤務年数に関係ございませんから、極端なことを言えば、採用の日に殉職をしても遺族年金は支給される、こういうことになっております。
  104. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、戦闘機が墜落して死亡した、あるいは自動車が非常にスピードで走って谷に落ちて死亡したというような場合、現実に勤務年限がたとえば二年とか三年とかいうような職員の場合は、遺族年金は支給されるということだけれども、その遺族年金の額とか、それから救恤金とか慰謝料とかいうようなものは現実にどのぐらいの額になるんですか。
  105. 渡邊伊助

    政府委員(渡邊伊助君) これはつい最近起きた事例をちょっと具体的に申し上げたいと思うんですけれども、年齢二十六歳の二尉の幹部でございますけれども、これはジェット戦闘機の訓練中に殉職をしたという例でございますが、ちょっと細かく申し上げますと、遺族年金が百五十四万——端数はちょっと切り捨てます。それから葬祭補償として五十万七千円、それから遺族特別支給金が二百万、それから特別援護金というのがございますが、これが百万、それから退職手当が百四十八万。それから、これは自衛隊に特有の制度でございますけれども、ジェット戦闘機で殉職をしたという場合には、大体一千万から一千三百万ぐらい特別弔慰金というものが出ます。これが加算されまして、それから、これはいま申し上げたのは国からの給付でございますが、このほかに共済組合からの給付といたしまして、遺族年金が約五十万円、それから弔慰金が二十万ほどでございますが、それで合計いたしまして、年金といたしましては二百三十四万六千円、それから年金を除く一時的な金額といたしまして約二千万程度でございます。  それから、実はこのほかに、先生おっしゃいますように非常に低額であるということでございますので、特に自衛隊におきましては、団体生命扱いの保険というものに加入するようにということを勧めておりまして、これがございますので、これが非常に多うございまして、全体でこの二尉が受け取った金額は、年金を除く一時金といたしましては五千九百万というような実情になっております。
  106. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最後に一つだけお許しいただきたいんですが、これは最近発表されましたアメリカ国防報告、これは非常に示唆に富んだいろいろな方針が打ち出されておるのですが、その中でこういう一項目がありますね。「核戦力と通常戦力は潜在的脅威を秘める中国に対する障壁となるが、米国はもはや米中紛争を想定した戦力を計画しない」「中華人民共和国との友好関係は、中国がソ連に対する戦略的な対抗勢力であるとの理由からだけでなく、そうした関係が地域の安定に対する中国の関心を強めさせる他の理由からも重要である」と。つまりアメリカは、中国がソ連との対抗勢力だというふうに規定し、米国はもはや米中紛争を想定した戦力を計画しないと言っている。そうすると、アメリカとの同盟国である日本というのは、そのアメリカの方針の、まあ大変な変化だと思うけれども、そういう方針に影響をされざるを得ないとあなた方は考えているのか、あるいはもう自主的に、中国に対しては、最近の自衛官の訪中などにかんがみても、これはもう友好国というふうに防衛的見地から規定しているのか、その点はどうでしょう。これは大臣に伺いたいと思うんだが、大臣でどうしても困るというなら防衛局長でも結構だが、これを最後に。
  107. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 大臣がお答えします前に。  アメリカの国防報告におきましてことし非常にはっきり書いておりますのは、米中戦争を予想していないということでございまして、いま先生のおっしゃたとおりでございます。それから、中国がソ連に対する対抗の戦力として評価するというような内容のことがございます。しかしながら、中国に対する考え方というものは、昨年の国防白書でも、いわゆる中国の軍事力というものを脅威というふうには受けとめていないというふうなのが去年あたりから出ているようでございます。そういった意味におきまして、いわゆる米中の接近といいますか、軍事的な面から言いますと、中国の軍事力というものを脅威として感じていないということのようでございます。  わが国の場合には、先生も御承知のように、周辺諸国と友好関係にございますから、直ちにこれが脅威だというふうには考えておりませんで、軍事的な面から見ますると、最近のこの傾向を見ますと、中国の軍事力というものはやはり対ソ作戦を念頭に置いたような装備の改善というような形であるというふうに私どもは認識しているわけでございます。
  108. 金丸信

    国務大臣金丸信君) ただいま防衛局長からお話ししたような考え方は私も同じでありますが、先般、米韓合同演習があった後、アメリカのダンカン次官が防衛庁へ参りましていろいろ懇談いたしました。最近、日中友好条約というものは国民のコンセンサスが得られておるやに私も感じておるわけでありますが、そういう中でいろいろの状況をお話し申し上げまして、日中友好条約を促進することについてアメリカはどういう考え方を持っておるかというお話を申し上げましたところが、アメリカは歓迎するという言葉があった、そういうお話と、ただいまの防衛局長の話を含めて御推察を願いたいと思うわけであります。
  109. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  110. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十九年度決算ほか二件を議題とし、総理府のうち、防衛庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 尖閣列島の問題につきましては、きのうのきょうですし、いろいろ政府また与党自民党も慎重にという空気が強いのか、私たちも事態の成り行きをもっと的確に判断してと、こういう考えも片一方あるわけであります。しかし、現実の状態というものについても決して看過できないものはあると思うんですが、防衛につきまして、いわゆる領海の侵犯という事実はあるわけですけれども、尖閣列島の防衛については防衛庁としてはどのようにお考えになっているかと、そこらあたりからひとつお答え願えますか。
  112. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 今回の中国の漁船が尖閣列島の周辺に参りまして、いわゆる領海侵犯というような問題が起きておりますことは、日中友好条約を目の前にしてまことに意図がどこにあるのか、われわれにはまだわからないわけでありますが、そういうことも考え、この問題については防衛庁としては慎重に対処しなければならないという私は考え方でありますし、日中問題は、日中友好促進問題は促進問題として、またこの領海侵犯という問題はこれは別な角度から、これを一束にして考えるということは間違っていると私は思うわけでありまして、この問題につきましては慎重という考え方で、防衛庁はいまのところこれにタッチするという考え方は持ってはいけないという私は考え方を持っておるわけであります。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、現実に領海内に三十数隻ですか、けさの報道で——いま現時点においちゃわかりませんけれども、報道されておりますが、政府も慎重にと、こういうことでありますので、防衛庁当局も慎重にと、直接タッチしないと。今後これが続くとすると今後の処置はどうなるのか。まあ今後わかりません。いま現在においてわかりませんからね。夕方になって、あしたになってあるいは領海から出ていくのかどうか、その点わかりませんけれども、もし侵犯が続くとなった場合の今後はどのように処置するのか。
  114. 金丸信

    国務大臣金丸信君) その問題はあくまでも平和的にこれを処理するということでありますから、まず外交的な面からあらゆる接触をして、こちらにも大使館もあることでありますし、向こうにも大使館もあるわけでありますから、十分な意思の疎通を図りながらこの問題を平和裏に解決することに最大の努力をする。私は、その努力した後の結果もなお先生のおっしゃられるようなことがあるとするならば、そのときどうするかということは重大な政府の考え方であると思うわけでありますし、私はあくまでも平和裏にこの問題を解決するように最大のわが政府は努力すべきだと、このように考えておるわけであります。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 具体的に私はF15とP3Cのこと、相当交渉が進んでいると聞いておりますので質問したいんですけれども、その前に、何か坂田さんが、元防衛庁長官が考え出した基盤的防衛力構想というものが、何か総体的に、この前もちょっと長官お尋ねしてその答弁が来なかったんですけれども、何か所要防衛力に変わってきたんじゃなかろうかと、こういう感じがするんですけれども、わずか二年ぐらいでまたもとに戻って、いわゆる軍事技術の発展とか国際的情勢の変化とかあるいは各種の条件によってエスカレートする、こういうことになると、そうすると、二年前のあの基盤防衛力構想というのはわずか二年にしてすっ飛んじゃったのかと、こういう気がするのですが、その点どうなんでしょう、防衛局長
  116. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 基盤的防衛力の構想に基づきます防衛計画の大綱をお決めいただいたのが一昨年の十月でございます。そのときにいわゆる基盤的防衛力といいますのは、先生指摘がございましたように、四次防までは所要防衛力に対しまして質と量とともにふやしていこうという考え方で整備してまいったわけでございますが、あの基盤的防衛力の最大の特徴といいますのは、一応規模というのは四次防で整備されたものが概成したという認識に立とうと。それから、現在のような国際情勢が推移する限りは、その内容を整備するということで防衛力というものを漸増していこうという考え方に立っております。したがいまして、あの中でいわゆる寿命がまいりまして代替していくものについては、近代化と申しますか、質的な向上を図ってそのときどきの軍事技術に対応するものにしていきたいという考え方が出されているわけでございまして、あの計画が決定されまして二年後の今日におきまして、五十六年から明らかに現在持っております十個飛行隊の要撃飛行隊の中のF104Jという飛行機が寿命がきてダウンしてまいりますということ、それから、P2Jの寿命がまいりまして五十六年以降になりますと徐々に減ってまいります。その減ってまいりますものを代替する際に、その当時以降のいわゆる軍事技術に基づきます能力に対応できるものによってかえていくという形で来ているわけでございますから、再び所要防衛力を追い続ける、質、量ともに追い続けるという考え方はとっていないわけでございます。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 その基盤的防衛力構想の中では正面装備に重点を置いてきたと、こういう理解をしておりますが、いまその充足率状況というのはどのぐらいなんですか。装備局長かな、これ。充足率状況。正面装備に対する充足率。
  118. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) この装備品の定数に対する充足率ということでございますが、一つは、この機能的な面におきまして、「防衛計画の大綱」でお決めいただきました中で、はっきり欠落していると思われますのが、警戒飛行隊の一個飛行隊というのがございます。これは機数は定められておりませんけれども、低空で侵入してくるいわゆるレーダーの能力を補うという意味のAEWと申しますか、そういった機能が欠落いたしておりますが、この一個飛行隊につきましては早急に装備したいと考えております。それから、潜水艦が十六隻ということで大綱でお決めいただいておりますが、この点につきましては、現在たしか十四隻だったと思いますが、これも代替する潜水艦を建造しながら、これはしばらくかかると思いますが、十六隻まで持ってまいりたいと思っております。さらに、編成の面で申し上げますと、陸上自衛隊十八万体制をとっておりますが、現在は十三個師団の体制をとっております。この単位をふやしまして、四国にいわゆる旅団規模、混成団規模の単位の部隊を置きたいと思っておりまして、この編成が五十五年以降になろうかと思います。航空自衛隊につきましてはいまのAEWがございまして——あるいは艦艇が約六十隻ということになっておりますが、これは大体六十隻程度を推移していくことになりますので、充足の状況からいくと現在の規模を維持していくことになろうかと思います。  ただ、今度は個々装備品になりますと、たとえば陸上自衛隊におきます戦車の数、これは定数的には、これは大綱で決められておりませんけれども、定数的には一応千百両というのを私ども希望しておるわけでございますが、この定数につきましては八百両程度でございまして、これは徐々にふやしてまいりたいというふうに考えております。小銃その他につきましては、現時点におきましては十八万体制をほぼ充足しているという状況でございます。  ただ問題は、この正面兵備に伴います、乙類と私ども申しておりますが、後方の定数というものが必ずしも十分ではないというふうに考えておるわけでございます。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 いわゆる正面の方はFだPだなんて相当力を入れて、また、欠落しているものがあると思うんですが、いわゆる後方の抗たん化政策というんですか、これに対しても当然、まあ私たち充実させると言うことはおかしいんですけれども、配慮されているんではなかろうかと、防衛庁としては。たとえば航空基地とかレーダーサイドとか、この五十三年のこの整備状況、これはどのようになるんですか。
  120. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 先生も御承知のように、実は四次防まで正面装備の充実強化、これは量的な面、質的な面、両方で来たものでございますから、それに伴う後方支援体制というものがどうしてもおくれてきているというのが実情でございます。で、一昨年決めていただきました「防衛計画の大綱」に基づきましてこの調和をとるということでございまして、大きな問題といたしましては、弾の備蓄の問題というようなのがございます。それから航空基地のいわゆる脆弱性と申しますか、たとえば滑走路が攻撃を受けたようなときに、それに対する復旧能力とか、あるいは地上におきます待機しております飛行機の掩体の問題、そういったものが弱点としてあるわけでございまして、最も私どものウィークポイントと考えておりますのは、レーダーサイトが先生も御承知のように露出されておるわけでございまして、現在の防空作戦におきましてこのレーダーサイトがやられるということはほとんど飛行機が盲になるというようなことでございますので、まあ、三次元レーダーを整備しながら半地下式という形もとっておりますし、移動用のレーダー機材というものも逐次購入いたしておりますが、現時点におきましてはまあ三台程度でございます。  こういったものをふやしていくということでございますけれども、具体的には、そういうものを一挙に解決できないわけでございまして、五十三年度はそれぞれのものを、たとえば北の基地におきます飛行場の滑走路の復旧のためのマットの整備あるいは移動警戒レーダーの購入、そういったことに努力をしているわけでございます。弾につきましては、年間の射耗量というのを買うのがいままで精いっぱいでございましたが、五十三年度から、ややそれの一部を備蓄に回せるような内容の予算を組んでいるわけでございます。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 P3Cのプライムは決定したわけですね。——装備局長、そうすると、F15とP3Cの取得の段取りというのはどういう状況になっているんですか。
  122. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) F15及びP3Cでございますが、私どもの計画といたしましては、F15につきましては最初の二機、それから複座の、第一次契約分で六機でございますが、これを完成機で輸入して、あと、ライセンス生産をしたいと。それからP3Cにつきましては、最初の三機を完成機を輸入して、あとライセンス生産したいと、こう計画しておるところでございまして、こういう取得、生産に先立ちましては、まず日米相互防衛援助協定に従いまして、この二つの飛行機をライセンス生産するあるいは完成機輸入するということに対しまして、日米政府間でこの基本的な枠組みという取り決めが必要でございまして、五十三年度予算につきましては、この基本的な枠組みの取り決めというのがその発効を待ちまして、五十三年度予算分の完成機輸入というものについて私どもアメリカ政府と価格などの交渉を始めると、そういうことになっておるわけでございます。  ライセンス生産分につきましては、先ごろ発表いたしましたように、そのプライムコントラクターと申しますか、主契約者というものを私どもと通産省と協議の上に決定したわけでございますが、今後は、このプライム——主契約者というその企業が中心となりまして、アメリカのマクダネルダグラス社あるいはロッキード社という会社とライセンス生産契約というものを取り結ぶわけでございまして、そのライセンス契約がそのアメリカの会社と日本の会社との間でできて、それから後、私どもとそれからこの主契約者との間に幾らで買うというような商談が開始されると、そういう段取りになっている次第でございます。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカとの折衝はどこまで進んでいるんですか、いま。
  124. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 先般来、予算の本国会における御審議を願ってそれが成立したときでございますから、その翌日でございますか、今月の五日に実務者同士というものの交渉を開始いたしまして、実務者間におきましては実質的に合意してその仮案というものがいまできておると、そういう状態でございます。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 仮ですからね、まだこれから話が進むんだと思うんですけれども、その導入についてはアメリカとどういう取り決めをこれからやる予定なんでしょうか。
  126. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) いま御説明申し上げましたように、実務者同士の実質的な合意に達して仮案を得ておるという状態でございまして、アメリカといたしましては、この案を持ち帰りまして、必要な議会手続というものを経るわけでございます。私どもの予想といたしましては、それが六月の上旬ぐらいまでにはいわゆるのアメリカの国内における議会その他の手続を済ませて本調印ができると、こう考えておるわけでございます。その段階におきまして、どちらで行いますか、日本で行うとすれば外務大臣アメリカ大使との間に基本的な覚書、これは非常に簡単な、F15及びP3Cの導入ライセンス生産といったようなものを行うことに両政府が合意するという簡単な覚書を交換いたしまして、交換公文が作成されまして、それに基づきましてその仮案になっておるものに正式に権限を委任された者が調印して効力を発生すると、そういうことになっております。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 そのF15のエンジンの問題ですけれどもね、これはことしの二月ごろマスコミで報道されたことがあります。昨年の米上院の歳出委員会の小委員会の公聴会でサーモンド上院議員の質問に対してマーチン、これは海軍省の副長官ですか、答えた。そのときには、いわゆるシグニフィカント・プロブレム、重要な問題だという発言であったわけですが、このエンジントラブル、この概況。さらにそれから一年ちょっとたっているわけですね、昨年ですから。今日どういうふうにそれは改良されているのか、されてないのか。このあたりどうでしょうか。
  128. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 先生指摘のF15のエンジン、F100というエンジンでございますが、このトラブルとして起こっておりますのは、いわゆるスタグネーションストールという現象でございまして、これは非常に高性能なファン・ジェット・エンジンというものに起こる現象でございまして、高空を高速でアフターバーナーをたいて走っておるというときに、振動とかまた音といったようなものの変化がなく排気部が過熱されてくるという、過熱されてその回転率が非常に下がってくるという現象でございます。  これが先ほど申しましたように非常に高性能なエンジンに起こる現象でございまして、非常に原因というのがまだきちんとはしておらないわけでございますが、これが一昨年ごろには千飛行時間当たり四・五回起こったというようなことがございまして、これは好ましい現象と申しますか、そういうものではないわけでございまして、飛行機の性能を下げるというような結果にもなるわけでございます。アメリカの軍が中心となりましてこの改善委員会をつくりまして、いろいろの部品の信頼性の改良とか、あるいはエンジンの吸気口のところの多少の改良といったようないろいろの案をつくりまして着々実施しておる次第でございます。まあ現段階におきましては千飛行時間当たり三とか三・五といったような発生率に下がっておるわけでございますが、アメリカの計画といたしましては、来年にはこれを〇・四にまで落とすという計画になっておるわけでございまして、この計画が着々進んでおると、こう聞いておるわけでございます。  またなお、こういう現象が起こりましても、墜落するとかなんとかということはいままで一遍も起こっておらないわけでございまして、またこのF15下はエンジン二つ持っておるわけでございまして、スイッチを切ってまたかけ直すとまたもとの状態に戻るというのがいまの状態でございます。そういうことによりまして、そのエンジンのトラブルによって飛行事故が起きるということは考えられないと、こう考えておる次第でございます。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 もうこれ、私よりよく議事録等、あるいはアメリカからこれ以外のことを通知があって知っていることと思いますけれども、ストール・アンド・スタグネーション、失速、エンジン停止、いわゆるエンジンがとまってしまうと、こういうことでそれが千時間で四・五、いま三・五〇。これは運輸省の方の航空局。これは民間飛行機ですけれどもね、民間飛行機の場合には千時間で、一九七六年一月から十二月までで世界の全体的な平均が〇・〇九一と。千飛行時間で〇・〇九一。ところが、このF15は千時間で四・五、いま三・五になったと。ともかく二つあるエンジンの一つがある時点においてストップしちゃうと。だから、二百時間で一回ストップするわけですね。二百時間というと、まあ民間飛行機じゃないけれども、F15ですから。ですけれども、二百時間というのは、これは四千五百キロの航続距離があるにしても、二時間。そうすると、百回のうち一回エンジンストップしちゃうと。単純に車やなんかで言うと、またエンジンをかけ直して、それでこうエンジンが始動すると。こういうことでいままでは確かにエンジンがかからなくて落っこったという例はないと。  だけど、この議事録を見ますと、ある場合においてはエンジンはかかったけれども、ある場合においては地上で整備を必要とする場合も起きてきたとちゃんと出てますな。ですから、エンジンかからなかった、だけど二つあるから、一つはとまっても、かからなくても、一つだけでまあ滑走したのか目的地まで着いたのか、ともかく事故はいままではなかったと。これは間違いありません。だけど、二つあるうちの一つは二百時間で一回ずつエンジンストップになる。そして、エンジンがまた再始動する場合もあるけれども、陸上でオペレーションを必要とした場合もあった、修理を必要とした場合もあったとはっきり出てますね。だから、これは事故がなかったから事故につながらないんだと、ないんだという可能性は全く言えない、こう思うんですけれどもね。  それと、それじゃないままでアメリカから購入したF104あるいはF4、現在使っている、それにはこういうストール・アンド・スタグネーション、失速とかエンジンストップなんというのはあったのか、これはどうでしょう。
  130. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 先ほどお答え申し上げましたように、このF100というエンジンは、極限状態の高性能というのを目的としてつくられたものでございまして、まあ民間機のエンジンといったようなものは、もうマッハ以上の速力も出さないし、アフターバーナーを使うというようなこともほとんどないわけでございまして、こういうものとはなかなか比較にならないわけでございますが、この排気部が過熱してくるといったようなときは計器類によってすぐこれはわかるわけでございます。そうすると、一たんエンジンを切ってかけ直すというふうにして、大体すぐ直るというような状態にいまはなっておるわけでございまして、二つのエンジンが、同じような気流の状態あるいは排気の状態といったようなものが同時に起こるということはないわけでございまして、どんな場合にも、二つのエンジンがとまってしまって二つともかからないといったようなものは起こらないということでございます。  それから、ほかの高性能のファン・ジェット・エンジンにはこの現象はたまに起こるわけでございますが、104とかF4につきましては、普通の失速というやつはほかの原因によって起こる場合もあるわけでございますが、エンジンのスタグネーションストールという現象は起こったことはございません。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからね、私は民間機と民間機のエンジン、私もいろいろ勉強したんですよ、運輸省にも聞いて。完全に対比はできない。だけれども、エンジンストップということにおいては全く同時ですと。いまもおっしゃったように好ましい状態ではないと、こうおっしゃったように、このエンジン・ストール・アンド・スタグネーションということは民間機だってあるんです。これ民間機でこういきますと、計算しますと、アメリカ日本、これは十二時間、往復二十四時間、それを二百回やると一回エンジンストップがあるんですな。私も頻繁に、昨年は五回も行きましたけれどもね。その五回が二百回のうち一回に当たっていたらこれは大変だと思いまして、エンジンの音をよくこれから聞いておかなきゃとこう思うんですが、これは四つあるわけですよ。形も大きい、ずうたいも大きいですけれども。だから四つあるから一つストップしていいんだというわけじゃない。二つだから一つストップしていいとは言ってない。現に二つのうちの一つがかからないで、地上で整備しなきゃならない状態があったと、はっきり向こうでは上院の質疑の中であるわけですよ。  それからもう一つ、F4やF104じゃこういうエンジン停止という状態はなかったわけです。そうでしょう。いかに高性能であれ、いかに世界一の質の高い——イコール高性能だな、済みません同じこと言って——航空機であれ、エンジン停止ということが二百時間に一回あるということは、これは乗っている方にとっちゃ非常にやっぱり大変だ。だから技術的にこれは修理を要する、改良を要するといま一生懸命になっているんだ。来年になると〇・四になるったって、これは可能性わかりませんよ、現に一年半で四・五から三・五にしか減ってないんですから。そうでしょう。ですから、いま私の言ったこと、局長答弁したこととひっくるめますと、民間機と高性能のF15と対比をする必要はないけれども、片方は千分の〇・〇九一、片方は千分の四・五、いま三・五。これを購入しようというんでしょう。エンジン停止という状態は同じものなんです。  それともう一つは、いままでのF4やF104にはなかったのが、現にF15にはある。これははっきりしている。それから、二つあって、一つはとまったけれども一つはとまらないんだとおっしゃったけれども、それはインチキだ。この答弁はインチキだ。隣に課長来たけれども、危険だなあと思ったから座ったのであって、早く座んなきゃだめよ。そんなに局長いじめないから大丈夫だ。そうでしょう。いまの答弁は全くそれはおかしいですよ。課長、その答弁はうまくないというので即座に助け舟で座ったんです。一つはとまるけれども、二つとまるということはないんだなんて言ったけれども、そんなことは全くでたらめ答弁でありまして、二つとまる可能性だってあるわけですよ。一つしかいまとまってないけれども、二つ同時にとまってそれが再始動不可能な時点もある。だから急いで改良しているわけですから、そういうわけでしょう。いまおっしゃったことはインチキだ。  そういうようなことをひっくるめますと、あくまでも局長が思わしくない状態であると言うことにひっかかるんです。全部それに集約されるんです。思わしくない状態である。いままでかつてない、F4でもF104でも。そういう状態のものがあって、余りにもエンジン停止という度合いが多過ぎる、常識的に見て。こういう状態であることはこれは間違いないということを十二分に認識しなきゃならない。  だけれども国会においてはこういう問題がオープンになってこないですね。たとえば、私どものところへ配付されたF15のいろんなものあります、整備とか性能とかなんとか。それにはこういう問題は何にも触れられてない。これはどういうことでしょうか。やっぱりこんなことは隠しておいた方がいいと、何か黒柳に言われたらそのときは課長がごまかすからという意図なんでしょうか。どうなんですか。私たちに配付された、要するに国会審議で本予算が一月始まる時点で、防衛課から——こっちですな、つくったのは。装備局じゃない、防衛局。防衛局でつくったものの中には、こういうエンジンのシグニフィカント・コース・プロブレム、重大な問題だと。これは何にも書いてこないで、最高です、ベターです、ベストです、結構です、ワンダフルですということしか書いてない。こういう問題こそオーブンにしないと、防衛問題というのは進まないんじゃないでしょうか。  ある一部野党、どこかの野党が一生懸命苦労しているみたいです。私は知らない、どこの野党か。防衛論議を正常な状態にしたいと。ところが、幾らそう一部の野党が思っていたって、防衛庁の方がこんな問題を隠すという意図があるのか、問題じゃないからと思うのか。問題じゃなきゃなぜ向こうで問題にしてこんな論議しているんですか。そうでしょう。私、まだこれ発展させますよ。問題がいっぱいあるという感じだ。なぜこういう問題をこの予算が始まる、この問題が審議される、この予算を計上する、議員に渡される中に、防衛局がつくった——装備局長じゃないですが、こういう問題を入れて、ひとつこの問題もよく認識してくださいと、こういうふうに問題提示をしないんでしょうか。問題ったってこれが欠陥であるかということをいま私しませんよ、これから徐々に入りますけれどもね。これを提示して防衛審議というものを、予算というものを、そしていま言ったような観点についての正しい理解というものをやるという意欲がないのか。どうですか、防衛局長防衛局長なんだよ、これ、防衛局から出したものだから。
  132. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) たとえ〇・四回に落ちても、私はそれで十全だとは思っておりません。ない方がいいに決まっております。それから千飛行時間当より四・五回スタグネーションストール現象が起こったということでございまして、それイコールエンジン停止ということではございません。
  133. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたことは、私もそのとおりだと思います。ただ問題になりますのは、先生も御承知のように、あのブラウン証言以来いろんなときにそういうのが問題になっておるわけでございまして……。
  134. 黒柳明

    ○黒柳明君 いまのはブラウンじゃない、いまのはマーチン。ブラウンはこの次にやる。
  135. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) そういったときどきにあったものでございますから、ちょうどつくった時点にそれが判明しておったかどうか、ちょっと私も記憶いたしておりませんけれども、考え方としてはいま先生がおっしゃいますように、いろいろな問題点も十分御説明した上で御判断いただくのが適当だと考えております。
  136. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはだって、つくったのは一月でしょう、十二月かわかりません。これは去年のことだ。一年と四カ月たっているのだから、わかっているわけですからこれは。こういう問題を率直に提起するところに、やっぱりこちらも理解は理解、追及は追及、不備は不備という姿勢に当然させることになるんじゃないですか。こういう問題を国会に提起しないから、しかもいまここに持ってこないのですけれどもね、もう皆さん御存じのとおりなんです。ああいう膨大なものをつくって、それでその中にも触れられてない。新聞に出た、追っかけてアメリカがそれは欠陥じゃないときた、欠陥じゃないと言ったから欠陥じゃないと、こういう姿勢じゃだめなんだ、これからは。これは私ごとき者が言うものを皆さん方どう受けとめるかわからないけれども、それをやらないと防衛論議というのは正常な方向に進まない、いい意味でも悪い意味でも、と思いますよ。  それからもう一つ、いまブラウンと言われたので、ブラウンの問題。装備局長、もう一つこのF15については、これはもう新聞になりましたね、ディフィシェンシー、欠陥だという言葉、後にはそうじゃないなんというような、核と同じですわ。核があるのかないのかアメリカに聞いたらノーと言ったからノーだというのと同じような原理の、何かわからない問題がありましたね。これも同じでしょう。一月の二十五日、二十四日ですね、スパローミサイルの問題で、これはどういうことなんですか。今度は防衛局長
  137. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ブラウン長官の、いま先生が言われましたディフィシェンシーの問題というのは、これはかなり大きな問題でございましたので、私どもも調査団の調査の結果、あるいはまた昨年私が三原長官のお供をしてアメリカへ参りましたときも十分調べてまいりました。そのときの話では、これは先生も御承知だと思いますけれども、欠陥といって、これが物の用に立たないという意味で言ったのではないということははっきりいたしたわけでございます。  御承知のように、ミサイルをつくります場合には要求性能というのがございまして、それぞれスピードとか、あるいは持っておりますレーダーの到達距離、そういった各部門につきましての要求性能が出るわけでございます。私どもの知る限りにおきましては、あのミサイルはあらゆる点で要求性能を超えた能力を持っていたようでございます。ただ、飛行機が持っております照準器のレーダーの要求性能は最初の要求の倍ぐらい出ているわけでございます。このミサイルのレーダーはいわゆる容積が小さいものでございますから、同じ方式でまいりますと、どうしてもそこまで延びなかったという事実はあったようでございます。したがいまして、仮に要求性能を一といたしますと照準器の方が倍ぐらいでありまして、ミサイルのレーダーの方が一・一あるいは二とかいうような要求でございました。そこで、ブラウン長官は御承知のような科学者でございますので、いわゆる照準器のレーダーの到達距離が意外に延びたので、それと同じような能力のレーダーをミサイルでも開発できないかというようなことを指摘いたしております。これはその方式を変える以外に、いまのままではとてもそういった能力は出ないということで、その研究の開発に着手をいたしておりまして、たしかモノパルスシーカー方式とかいうでございますが、この開発にあと五年ぐらいかかるというような状況であるということを聞いてまいっておるわけでございます。
  138. 黒柳明

    ○黒柳明君 この向こうの議事録には、いわゆるいまのAIMの7Fという空対空ミサイルスパロー、この関連部門について問題があると、この間削除されているわけですけれどもね、向こうでも審議はあった、論議はあった、答弁はあった、ブラウンがこう答えているところから。この削除された部分について、これはいまおっしゃた性能だと思うんですが、これはいまおっしゃったことなんですか、この削除部分というのは。
  139. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) そのほかにも、このミサイルを飛行機から打ち出すときに、最初いわゆるあるスピードのもとに発射をいたしますと、非常に早くなるとまたいいわけでございますけれども、ちょうどマッハを超えるあたりのスピードで発射をすると、うまく発射できなかったということがあったようでございます。それは何かまあミサイルについておりますフィンといいますか、翼を改良することによってそれは直ったという話も私どもは聞いてまいりました。そういった点はあったようでございます。
  140. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、このF15が一応性能的に評価が高いとアメリカでは言っているわけですけれども、その高いということを二、三挙げると何と何なんですか。航続距離が長いと、ミサイルの命中率がすごいと、こんなことはその最たるもんなんでしょう。
  141. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これはいわゆる最もすぐれておりますのは、御承知のように独力なエンジンを持っておりますし、機体が軽くできておりますので、高高度におきます飛行性能というのはきわめてすぐれているわけでございます。それから、したがいまして、照準器のレーダーの隔離も長うございますので、遠距離から戦闘ができるということがございます。それから低空をはってくる飛行機に対しまして、いわゆるルックダウン能力と申しますか、上から照準器のレーダーで動く目標をつかまえまして、そして攻撃をする能力というのはきわめてすぐれております。それからもちろんのこと、スピードが早く、短時間で高高度に達するというような能力を持っているわけでございます。さらにはこのECCMといいますか、電波による障害に対する抵抗力というのもきわめて強いというふうに理解いたしております。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 スピードは早いとか、高速度に短時間で上るとか、これはエンジンの問題。そのエンジンに、ない方がいいという問題がまだある、いま改良中。  それからさらにこれ見ますと、インビジブルエンジン、要するに見えないところに対して、ミサイルAIMの7がぱあっと行って相当命中率がいいと。これは確かに予測したものを上回ってレーダーが追っつかないにせよ、いまそれに対して改良、開発中であることも間違いないわけですし、これ一たびは欠陥だと、こういう表現になったわけですけれども、それで七六、七七年ではF15は一年間で百八機、国防総省の生産購入が。それから七八と七九では七十八に落っこってますね、百八から七十八。この理由は何ですか。
  143. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) まあアメリカの軍の全体の予算の関連ということでございますが、七十八機が最終的には九十六機ということになっております。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 予算だけじゃないでしょう。予算だけじゃない。もう一つ何か理由があるでしょう。
  145. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 私どもは全体の予算との関連というふうに聞いておるわけでございまして、それからしたがいまして、それがディフィシェンシーに原因したというふうには理解しておりません。したがいまして、その全体の七百二十九機を調達するという計画は変わっておらない、こう聞いております。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 皆さん方もこの議事録は当然お読みになっていると思うんです。これはキャノン上院議員に対してブラウン長官の発言ですよ。これ正確にここに書いてありますね。これ原文がある。一つは予算で、他の問題点としては生産コストが増加したことであり、すでに予算を超過している。その結果F15は月九から六・六分の一機にする、毎月ですね。百八から七十八にする、いま九十六ですか。ところがもう一つは、いわゆる武器系統の欠陥があるんだ。この二つの理由で月間の購入を九月から六・六分の一にしているんだ、ブラウン長官ははっきりこう言っているんですけれどもね。これ、二つの理由と言っている。予算の問題とディフィシェンシーという言葉、欠陥が——欠陥じゃない、改良でもいいでしょう。だけれども、問題は二つあるから、だから七六、七七年の百八を機数を落っことしているんだ、二年間は。ことしと来年は。改良待ちであるのか、欠陥の直し待ちであるのか。ともかくアメリカの国防総省は購入の機数をぐっと落としているのは、いわゆる彼らの言葉ですよ、議事録では、欠陥があることと、一つはコストが予算をオーバーしているからだ、この二つをはっきり挙げているんですけれども、これについてどう考えますか。
  147. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ブラウン長官、当初はそういうふうに述べまして、七十八機にすると申したわけでございますが、その後その言葉を訂正いたしまして九十六機に上げて、それから全体の七百二十九機というもの、全体の調達計画は変わらない、こう申しておると理解しております。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、百八から落っこっているわけでしょう、七十八から九十六になっているのだから、落っこっているわけでしょう。その落っこった理由ですよ。一月の、一年四カ月前のときには三十機落っことした理由について二つある。一つは武器系統の欠陥、一つは予算、コストの問題だ。だから、それが九十六に上ったとしましても、結局理由については、まだ生産機数を落っことしているわけですから、この証言自体、発言自体を訂正したわけじゃないんでしょう。機数だけを訂正しているわけでしょう、七十八から。内容を訂正してないじゃないですか。これはどうなんですか。
  149. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) アメリカの七八会計年度の予算審議の際、当初そういうことで七十八機になったわけでございますが、その後委員会において訂正されまして、九十六機に上がりまして、全体の計画というものは、そこら辺のディフィシェンシー問題その他というものは、ブラウン長官の発言の訂正によりましてアメリカの議会の御了解を得まして、全体の計画というものはそのまま、こういうふうになっておる次第でございます。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、全体に機数は減って、また二十機、まだ機数減っているのでしょう、百八から九十六だから、十二機減っているわけですよ。十二機減っているの。ですから、一番初め七十八にしたときの理由のことを言っているんです、ぼくは。理由のこと。理由の訂正はないわけですよ、機数の訂正はあったけれども理由については二つのことを言っているんです。予算の問題があるのと、一つは武器系統の欠陥があるから二年間においては機数を少なくするんだ。この理由について訂正は来てないんじゃないですか。
  151. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 当初その百八機というのを要求いたしましたのは、私どもで言いますといわば概算要求ということでございまして、その概算要求の議会における審査中にブラウン長官がディフィシェンシー、それから予算問題というようなことで七十八機ということにいたしたわけでございますが、その後そのディフィシェンシー問題というものにつきましては、前の言葉を改めましてディフィシェンシーは克復されたという証言がございまして、それに従いまして議会で七十八機を九十六機に復元ということでございます。
  152. 黒柳明

    ○黒柳明君 防衛局長、克服はされてないんですよね。そうでしょうね。
  153. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ディフィシェンシーというのでございますけれども……
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、ちょっとまた話はややこしくなると、ちょっと陽気も暖かいし、私も頭混乱しちゃうから。要するに、いまおっしゃった言葉。言葉じりじゃないんだ。だから、すべてディフィシェンシーはもう完了して原状を回復したんじゃないと、さっき局長の言葉はそういう言葉ですよ。
  155. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) ええ、その点はいわゆる不ぐあい点といいますか、先ほど申し上げましたようなミサイルを発射するときのフィンの問題とか、そういうものは克服したようでございます。ただ、ミサイルのレーダーの性能を上げるというのは、これは新しい方式をやるために、今後五年かかるということは間違いございません。
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、ディフィシェンシーの言葉が後で訂正された。これは向こうが訂正したんですから、こちらがごまかしだろうと言ったところで、アメリカというのは強い国ですから、なかなか日本というのはそれに対して対抗できないから、しようがないし、訂正したんだろう。だけれども、内容についてぼく言っているの。機数も、一たびやっぱりこう三十機下げたのが、また上げたんです十八機、それも知っている。だけれども、七十八機にしたときの内容自体については変わってないわけで、その欠陥という言葉を改良に変えても、その内容については全く——若干は変わりましたけれども、全部変わってない。これははっきりしているんです。そうですね。そうじゃないですか。
  157. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 常識的に言いまして、欠陥のある飛行機であるならば、生産を一時延ばすということは考えられるんでございますけれども、欠陥があっても十機減らしたものをつくるということは常識的には考えられないわけでございまして、その当時考えられておりましたディフィシェンシーというものにつきましては、一応改良できたということでふやしたのではないかと思うんです。ただ、先ほど申し上げましたように、そのミサイルのレーダーの関係というものは今後研究をしていくということであろうというふうに考えております。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 エンジンの問題も改良中、それからミサイルも、初めの予定よりもちょっと長く飛んだから、ミサイルは後追っかけなきゃならない、それで改良中。この改良中でありますけれども、いわゆる一年四カ月前のことですから、いま時点においては相当やっぱり向こうから情報が来ているんじゃないですか。いま現在、これは、さっさの四・五から千飛行時間当たり三・五になったと。いま現在、そのミサイルの方はどの程度になっているんですか、装備局長。相当情報が来ているんですか。いま防衛局長の言ったのがすべてですか。
  159. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ミサイルにつきましては、先ほど防衛局長が申しましたように、完全な改良というのは五年かかるということでございまして、その五年かかるという状態と申しますか、そういう目標を徐々に達成しつつある、こう聞いております。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 五年ですと、二機向こうから生で買うわけですな。そのときには完全にそういう状態じゃないものになるわけですね。
  161. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 二機一番初め入ってくる状態のときには、そのエンジンに関しましては、もう改善された〇・四回という状態で入ってくると、こう思っております。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、それからミサイルの方はどうですか。
  163. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 私どもが入手する時期における米軍のものと同様ということでございまして、完全に改良されたものではないと思います。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 それからさらに国産化に入るわけですね。五年後ですか、それが大体四〇%ですか、国産が。内容的に六〇%はまだ。それから、十年たって百機と四十五機と。これはP3Cの方まで論議が進みませんけれども、F15の方ですけれども、これは欠陥というのか、当初予想していたのが百で、いま百二十の性能があるから、それが百五なんだから、あとの十五はこれでエクスキューズできるのだと、こう見るのか。あるいは百だったものがいま八十五なのか、ここらあたりは実際には私は定かにはわからないと思うんです、こういうものは。高性能であるんだから、比べるものがないからと、くしくも冒頭そういうこともおっしゃったし、果たしてベストの状態でいままでF4、F104が来ていたのか。  これはやっぱり飛行機というのは一番の科学技術の粋をいっているものですから、非常に微妙な機械であることは間違いありませんけれども、民間の技術者にいろいろ聞きます。武器系統は聞きようがないものですからね、エンジンなんか聞きますと、やっぱりストールスタグネーションという状態は、これはアメリカ自体においても、先ほどから何回も言うように、好ましくないということについてこれは非常にやっぱり危惧を抱いている状態ではなかろうか。もしこれ一つ事故が起こる、この問題で事故が起こったときは、全面的にこれはストップしなきゃならない、こういうことにも発展する可能性があるんではなかろうかと、こういうことも言っているんです。  さらに武器にしましても、あと五年たたなきゃ、いままで百の予想だったのが百二十になって好ましい、喜ばしいことなんだけれども、レーダーが八十だから百二十にするためのものなんだというふうにしましても、果たしてこれ実戦に使ってみて百だったものが百二十なものか、それが八十しか性能が出ないものか、これだってわかりゃしませんよ、いま現在においては。だけどわかっていることは、いま現在レーダーについて五年かからなきゃ改良できないということだけはわかっているんです。いいですか。百が百二十であった、それがレーダーが百五だからあと十五伸ばしているんだという意見が正しいかどうかわからないですよ、こんなことはこれは。皆さん方そう聞いているだけのものであって、アメリカからそう言われて、それで野党に、黒柳に言っておけば、あいつは科学知識がないから大丈夫だろうぐらいのことであって、厳密にこれはミグを対比してつくられたものでしょう。それでいま現在私も調べたところでは、メーダルスの空対空の敵に対しては非常に命中率がいい、だけど命中率というのに対して、距離が延びたから、レーダーはそれに追っつかないのだということになると、アメリカが百が、百二十になって、レーダーが百五だから十五を改良しているんだと言っているのは、いまの現実においてそう言わざるを得ないのであって、いまになっていると、いま百だったものが八十でレーダーが六十だからいまレーダー追っかけていると言えないからそう言わざるを得ないんだと、こういうことも一部では伝えられている。  私もそうだと断定しませんよ、断定はしない。断定はしない。ただ、高いお買い物をするんですから、それから国会でも問題はあるんですから、私はここでこの問題はいま直ちに欠陥だと声を大にして言うつもりはないんです。ないけれども、再三再四国会で問題になった。これから本格的にこのアメリカとの折衝も始まっていく。その中において、このF15を皆さん方が買って、購入して、国民の前に、世界的に日本防衛するために一番長所だと言われるところに私としてはどうしてもこのディフィシェンシー、シグニフィカントのプロブレムがある。そのあるというのは、百二十から百になったのじゃなくて、百から九十になっているんだと、こういう感じも国防総省の人との対話の中では感じられるんです。そんなこと、日本国会に言いませんよ。そんなこと、皆さん方に説明しませんよ、生では向こうの人は。それはそれでいいでしょう。だけど、これからそういう問題が十年間続くわけですから、いいですか、その間において皆さん方がいまのスタートを誤まりますと、いまのスタートが、本当にただアメリカから聞いただけを国会に伝えるだけだと、この問題というのは大変なことになります、いま言ったように。民間の専門家は、もしこのストール現象で一機落っこちれば、事故があれば、いま七百何十機つくるわけですから、予算。それは全部一時やっぱりストップしないと問題に発展するんだ、こういう深刻な問題にもなりかねませんよということははっきり言っています。その点がないにこしたことはない問題だと、そういう中に含まれていると思います。  まあ私時間がありませんから、きょうはこれ以上のことはあれしませんけれども、ひとつ慎重に、ただ単に、核とは違いまして、アメリカの報告をそのままうのみにするんじゃなくて、また国会にこういう問題があったら次々にデータ出してください。そこでまた私たちが理解している範囲で調べるのは調べて、それでまた質疑をしていかなきゃならない。何にもわからないところから始めて、議事録取り寄せてわからない英語は日本語に直してから始めたんじゃこれはだめですよ。そのことも先ほど言ったように希望しておきます。  ひとつ今後とも厳重にこのF15のエンジンの問題、ミサイルの問題については、生の情報をアメルカからとり、何だったらもう一回アメリカに行って、現場の日本自衛隊のパイロットが、どう改良されたのか、ただただ報告や何かじゃなくて、その点もう一回訓練飛行でもやってもしかるべき状態であると思いますよ、いま現在。一年四カ月たっている、そうでしょう。四十九年に行ったんですから、だから四年たっている。しかも一年四カ月前、そういう問題がある。あと一年半たつと購入する。それじゃいまの時点においては、欠陥であるとか何とか、こういう問題じゃなくて、この改良がどこまで進んでいるのか、実際に乗って、ミサイル発射するわけにはいかないでしょうけれども、向こうじゃそういう訓練のやり方もあるらしいですから、そういうミサイルもやってみて、どのくらい届いて、どういうところを改良するのか、エンジンは本当にストール状態はいまどうなっているのか。このぐらいのことはこの段階でやって、それで行った人が——だれが行くかわからないけれども、この場というわけにいきませんな、制限ですから。しかるべきところで私たちに説明してくださいよ。そのぐらいのことはやってしかるべきだと思うのだけれども、どうですかね、防衛局長
  165. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 一つだけ御説明さしていただきたいと思いますが、いま先生は、ミサイルがもっと能力が出るはずだと、それが出ないままに装備するのは問題があるのではないかという御指摘でございましたけれども、実はミサイルというのはF15の本体とは別でございまして、このミサイルはアメリカのたとえば14とか16、そういうものにも積むものでございます。そして現在ございますミサイルよりははるかに性能のいいものでございます。そしてまたさらにそれを改良することによって、四、五年たつともっといいものができるだろうということでございますので、その点は御理解いただきたいと思います。  そして、一昨年でございますか、現実に行って、そういった——撃ってはきませんでしたけれども、いろいろなデータを持って帰ってきておりますので、私どもも昨年御決定をいただくに当たりましてはそういう点についても十分調べたつもりでございますけれども、今後またいろんな機会に、チャンスがありましたならばそういう点についても確かめてまいりたいというふうに考えております。
  166. 金丸信

    国務大臣金丸信君) ただいま私は貴重な意見を聞いたわけでありますが、そういう中で、国民の税金で買うものでありますし、大きなプロジェクトでもある。このF15という問題ばかりでなくて、今後に対しましてもこれは十分な配慮をして、ことに防衛論議の中で何かこの問題を出したらどうなるだろうというようなことでは、これはシビリアンコントロールにも何にもならぬ。政治優先という立場から言いましても、今後こういう問題はあからさまに出して皆さんに十分な討議をしていただくことが本来の姿だと、私はこう考えております。  非常に貴重な御意見を承りましてありがとうございました。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、貴重じゃない。ほめられると後の質問がしにくくなっちゃうから委員長、もう結構です。
  168. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は昨年の九月の横浜市の緑区での米軍ファントム墜落事故についてお伺いします。  現在、被害者の状況がどういうふうになっているんでしょうか。簡単にお答えいただきます。
  169. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 重傷を負われました被害者三名の方につきましては、私どもも十分な注意を持ってその病状を見守りますとともに、一日も早く回復されるようお祈りしているところでございますが、まず最も重傷の林和枝さんほ、現在昭和医大の藤が丘病院に引き続き入院中でおられまして、現在は二月以来無菌室に入りまして敗血症を予防するとともに、数回にわたって皮膚移植の手術を実施されておるところでございます。  それから次に、林早苗さんは、現在自衛隊の中央病院に入院しておられまして、鋭意やけどの治療に努められておりまして、植皮手術もいままでに五回実施して、経過は非常に順調である、リハビリテーションも実施中でございます。御家庭の受け入れ態勢等の問題がございますが、比較的早く退院も可能ではないかと思われるというふうに伺っております。  それから椎葉悦子さんは、昨年の十二月三日に青葉台病院を退院されまして、目下防衛医大病院に月二回ほど通院されまして手当てを受けられておると承知しております。
  170. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま出ました林和枝さんは全身八割という大やけどを負っておられますね。皮膚移植が必要だということで、新聞報道などで知った人たちが七百五十人協力を申し出るというふうなことでどんどんと皮膚移植をやるというふうになっておりますけれども、しかしこの和枝さんに合った皮膚、これが提供できる人は三百人に一人ぐらいだということで、適応した人を探すというためには二千人ぐらいの人の検査が必要だと、こういうふうに言われております。こういうことに対して防衛庁としてはどのような処置をおとりになったか、対処をなさったでしょうか、そのことをお伺いいたします。
  171. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) そのことも承知いたしております。私どもも、現在も職員を病院に派遣しましていろいろ御連絡等の便宜をお図りするように努めておりますが、プラズマという薬品が不足だということも伺いまして、いろいろ衛生局を通じまして手配もいたしております。  それから皮膚移植については、当面、いまお話しのように、三百人ぐらいの血液検査をやりまして、その適応の方がまあ一割ぐらいだと、これは検査の結果によるわけでございますが、そういう見通しだそうでございますけれども、それによって当面また皮膚移植を続けられるということでございます。この点につきましては、皮膚提供の多数の志望者が必要になるわけでございますので、私ども——これは役所として組織としての立場でやっていることではございませんが、職員も、有志はこれに提供方を申し出ておる者もあるわけでございます。
  172. 安武洋子

    ○安武洋子君 血液検査には一人約一万円かかる。二千人ぐらいの人を検査しなければならない。これは大変なことだと思うのですね。私は、こういう悲惨な事故を引き起こした原因の究明というものは、これはちゃんとやらなければならないと思うのです。で、米軍によるこの事故被害者への救済対策についてお伺いしたいわけなんですけれども、まずファントム機墜落直後の防衛庁のとった措置についてお伺いしておきます。  昨年の十月五日の参議院内閣委員会の中で、当時の三原長官がお答えになっていらっしゃるのですけれども日本人の被害者の救出をしないで米軍パイロットだけを救出したのは問題だと、こういうふうに指摘したのに対して、米軍パイロットだけを救出したということについて過ちがあったかどうか検討している、こういうことを御答弁なさっていらっしゃいます。もう相当日時がたっておりますので検討なさったと思うのですけれども、どのような間違いがあったというふうに御検討になったでしょうか、これは長官にお答えいただきとうございます。
  173. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 先ほど皮膚の移植のお話も出たわけでありますが、この事件は私が就任する前の事故で、そのときの事態の話は聞いたのですが、三原長官のそのお話につきましては私は聞いてはおらなかったわけでありまして、その問題をどのように処理しておるか、どのようにしてあるのかつまびらかにいたしてはおりませんが、ただ私の聞くところによりますといわゆる米軍の飛行士が落ちた、救難活動をしておったというような話、それと同時に一方のはどういうような手を打ったかということにつきましては、つまびらかにいたしておりません。しかし私は、まことに気の毒だった、遺憾な事故だったと。  ただいま、子供が死んでおるのにもかかわらずお母さんはまだ知らないというような状況。実は私はロートルですから皮膚ももうたるんできておる。このたるんでいる私の皮膚でも、使っていただけのであるならばひとつ私も提供してもいいというような気持ちは私は持っておるわけでありますが、果たして私の皮膚が使えるのやらどうなのやら、これも医学のことでありますから、もし使えるということであれば使っていただきたい、こう考えて、非常に気の毒だという考え方を持っていますが、詳細につきましては政府委員から答弁させます。
  174. 安武洋子

    ○安武洋子君 それは政府委員の方から答弁していただきますけれども、こういう重大な事故すらお引き継ぎにならないんですか。私はこういういまの御答弁というのは、何とこういう事故を軽視なさっていらっしゃるか、そういうことがありありと見えると思います。私はそれに抗議をいたします。そして事務当局の御答弁を伺います。
  175. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 事故当日、午後一時二十三分に救難隊を発動いたしまして、S62というヘリコプターが一機救難に向かっております。一時二十五分ごろに現場付近の黒煙を発見いたしまして、三十分ごろその黒煙の上に行っているわけでございます。そのときにパイロットが上空から現場を視認いたしましたところが、すでに消防車が現地に参っておりまして、救援活動が行われているというふうな認識をいたしたようでございます。そこで、すでに救援活動が行われているということでございましたので、ヘリコプターのパイロットといたしましては、御承知のように、通常航空機の事故がありましたときには、一番ひどい被害を受けるのがパイロットであるというのが常識的に考えられるわけでございます、そこでパイロットの救出に向かいましで、そしてその帰りに再びその状況を見ましたところが、すでに放水なんかも行われているということで、そのまま帰ってきたようでございます。  そこでその救難の活動の事態といたしましては、十分ではないにしろ一応の任務を果したというふうには考えておりますが、さらにそのパイロットが、御承知のようにパイロットは余り傷もいたしておりませんでしたので、その帰りの時点でもう一度その現場の状況を確認し、そして航空隊に帰った上でその状況を的確に報告をするという必要もあったのではないかというふうに判断されます。  同時にまた、陸上救難隊というのも発動いたしておりまして、四十数名の者が現場に向かう準備をしておったわけでございますが、すでに救難活動が行われているということで、距離も十八キロばかり離れたところでございましたので、その陸上の救難隊というものは出ていかなかったわけでございます。この点につきましても、かなり大きな火災が起きているというような状況からいたしますと、むだになってもその救難隊というものが一応現地に行ってその状況を把握し、やるべきことはやらなければならなかったのではないかというような反省をいたしているわけでございます。
  176. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう少し一つずつ確認させていただきます。  一時二十三分に救難に向かったとおっしゃいましたけれども、じゃ自衛隊は何時にどこから事故報告をお受けになりましたか。何時何分ですか。
  177. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは飛行機が一時十八分に緊急事態を知らせる連絡があったようでございまして、十九分にタワーの方で、エマージェンシーが起きたようだということを発動いたしております。そして、直ちに離陸の準備をいたしまして、離陸をいたしましたのが二十三分ということでございます。
  178. 安武洋子

    ○安武洋子君 だれがどういう指示をなさって離陸をしたんですか。
  179. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) これは通常エマージェンシーがありますと、   〔委員長退席、理事田代富士男君着席〕 自動的に司令から救難飛行隊発進という命令が出まして、出て行くわけでございます。
  180. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま二十三分に飛び立たれたとおっしゃいましたですね。じゃ上空に到着は一時三十分とおっしゃいましたですね。そのときにすでに救難活動が始まっているとおっしゃいましたね。このことをもう一遍確認しておきますが。
  181. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 正確な時間を申し上げますと、二十五分ごろ現場付近で煙を上げているところを発見いたしまして、そしてその現場に向かって行ったようでございます。そして三十分ごろ現場の上空に達しまして、上から見たようでございます。そのときに、いわゆる消防車その他の救難活動が行われているというふうに視認したようでございます。
  182. 安武洋子

    ○安武洋子君 消防車の救難活動ということは、どうなんですか、火災が起こっているわけでしょう、黒煙を見ているんだから。ですから救難活動というのは、もう放水が始まって、人がちゃんと救出されていると、そういうことをヘリコプターから見たということですか。
  183. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それをはっきり見た時間というのが何時何分何秒というふうには出ておりませんけれども、三十分ごろその上空に行って現場の上を旋回したところが、人家が燃えているということ、それから消火活動がなされているということを見たようでございます。放水されているのを見たという報告があるんでございますけれども、それはその時点であったかあるいははその帰りの時点であったかということは、どうもはっきりした記憶がないようでございます。
  184. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、飛んでいる救難ヘリコプターですね、これは上空からどういうことを報告して、そしてそれに対してどういう指示を与えられたんですか。
  185. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 三十分ごろ救難活動が行われているということを報告はしていないようでございます。そのときに、御承知のように米軍のヘリコプターも飛んでおりまして、パイロットのいる位置を無線で教えてもらってそちらの方へ向かったというふうに聞いております。
  186. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はここに横浜の消防署の書類を持ってきております。これによりますと、横浜の消防署は一時二十三分に知って一時二十八分に先着隊が、藤が丘の消防隊がここに着いているわけなんですよ。一時三十五分からでないと放水は開始していないわけなんですよ。なぜヘリコプターの上から見て、三十分にこういうふうに救出していると判断したと、そういうことができるんですか。おかしいじゃない。帰りかもわからないとおっしゃるけれども、なぜ、燃えている、そして燃えていればそこに人が負傷しているかもわからない、どんな損害があるかもわからないという、そういうことが当然予想をされるのになぜおりなかったんですか、ヘリコプターは。   〔理事田代富士男君退席、委員長着席〕
  187. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま申し上げましたように、放水されているのは行きか帰りかはっきり記憶していないようでございますけれども、すでに赤い色の消防車がその現場に来ているというのは視認しているようでございます。したがいまして、消防車が来ておれば当然救難活動が行われているというふうに判断したようでございます。
  188. 安武洋子

    ○安武洋子君 時間的な食い違いもありますし、じゃなぜヘリコプターもそこにおりて救難活動に参加しないんですか。
  189. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それは先ほど申し上げましたように、一応航空機の事故があったというときには、一番被害を受けるのはパイロットであるというのが常識的に考えられるわけでございます。それでパイロットも救い出さなきゃならぬという気持ちもあったと思いますが、まず現場に行きまして、恐らく何にも様子がなかったらおりたと思いますけれども、すでに赤い色の消防車が来ているということで、それなりの救難活動が始まっているというふうな判断をしたようでございますので、そうなってまいりますと、まずパイロットはどうなっているかというようなことを考えたものと判断いたしております。
  190. 安武洋子

    ○安武洋子君 そのヘリコプターから何の報告も受けないで、ただヘリコプターの簡単なそういう判断だけに任せて、そしてそこにもう火災が発生している、当然だれが考えたってそこにおりていって、そこのところに負傷者があれば一秒も早く病院に運ばなくちゃいけないと、こう考えるのが常識なんですよ。それをやらないでなぜパイロットの方にそんな飛んでいくというふうなこと、単にそう思ったんだろうというふうなことでお済ましになるんですか。それじゃ検討したことにならないじゃないですか。なぜパイロットにちゃんとそこの事情をただして、そしてどこがどう間違ってこういうことになったのかということを検討なさらないと、検討するというお約束にたがうじゃないですか。私はおかしいと思いますよ。だから私は、やっぱり反射的に住民はほうってでも米軍のパイロットの方を救うんだと、ふだんから米軍を守るというふうに考える自衛隊の体質というものが、反射的にそういう行動をとらせたんだというふうに思うわけなんですよ。こういう事故から、自衛隊はやはり救難活動のあり方を反省していただかなくちゃいけない。いまの御答弁じゃ反省したことにならない。やっぱり結果的には救出したのはほとんど無傷のアメリカ軍のパイロットでしょう。そうして一刻も早く病院に運ばなければならない人たちはそのまま放置されてしまっているんですよ。そのことについて一体いまどうお考えなんでしょうか。
  191. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたけれども、けがをしている人をほったらかしにして救いに行ったというような気持ちは私はパイロットにはなかったと思います。といいますのは、航空救難につきましては、御承知のように、先ほど来申し上げておりましたように、一番被害を受けるのは通常パイロットでございます。したがって、パイロットの救難ということも頭にあったと思いますが、そのヘリコプターから見た状況におきまして、すでに救難活動は始まっているという判断をしたというところでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、もっと配慮をして、そういった点についての実態をよく見きわめる努力をしてもらいたかったというのが私どもの現在の気持ちでございます。
  192. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、単なるパイロットの安易な見過ごしだと、こういうふうに思われるんですか。もしそうだとしたら、じゃ、そういうことがないようにされるためにはどういうことをお考えですか。
  193. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭君) 単なる見過ごしだというふうには思いません。といいますのは、パイロットもそれなりに上から見ているわけでございます。そして、救難活動というものがすでに行われているということを視認いたしておるわけでございます。ただ、恐らくその上空から見た状況におきましては、この事故のように、大きな被害を受けて、そしてそういった病院に運ぶということも幾らかおくれたといいますか、ヘリコプターで運ぶよりは時間がかかったというようなところまでは考えていなかったかと思いますけれども、単に全く無視してやったということではないと考えております。
  194. 安武洋子

    ○安武洋子君 ヘリコプターはそんなに高く飛んだわけじゃないでしょう。実際に現況を確認しようと思えば、まだ放水していないということははっきりしているわけなんですよ。私が持ってきたこの横浜の消防署のこれによれば、放水時間がちゃんと書いてあるんです。ですから、私はやっぱり見過ごしたか、故意にやはり米軍を救えということでしか飛び立たなかったのか、どちらかじゃないかとやっぱり思わざるを得ないわけです。いまの御答弁では納得できません。  それで、こういうことについて、一体じゃ被害者補償の問題をどうなさっているのかということをお伺いしたいと思うんですけれども昭和三十九年の九月に神奈川県の大和市に米軍のF8Cジェットが墜落して、これも被害を与えておりますね。舘野正盛さんの場合、息子さんが三人も、それからおいごさんとそれから従業員、この五人が死亡しておられます。経営していた工場も破壊されておられるわけです。この補償額は一体総額で幾らになっているんでしょうか。
  195. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) 三十九年の九月八日の事故補償額でございますが、この補償額は約三千八百万円でございます。
  196. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまのはこれは人命だけなんですか、建物も含んでですか。
  197. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) 人命、財産含んでの数字でございます。
  198. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、人命は幾らですか。
  199. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) ただいま法人と個人に分けました補償額の資料を持ち合わせておりまして、人命と財産とに分けましたのがちょっと出でておりませんのでございますが、人命に関する補償額は、舘野年数さん、長男の方が五百九十六万七千六百三十三円、それから舘野幸男さん、次男の方でございますが、三百六十九万六千五百四円、それから舘野和之さん、三男の方、三百九十一万五千百二十一円でございます。
  200. 安武洋子

    ○安武洋子君 いや、いまのもう一人抜けていませんか。
  201. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) これは、舘野さん一家の三人の方でございます。
  202. 安武洋子

    ○安武洋子君 舘野さんの場合、現在もなお補償をめぐって国を相手に裁判をなさっていらっしゃるのですけれども、一体どこが食い違ってこのようなことになっているのですか。
  203. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) ただいま訴訟をしておられます舘野さんの御主張は、その事故後、四十二年の四月に御希望によりまして本人の土地を買い上げたわけでございますが、その際に代替地を払い下げてくれというのが事故補償額の決定の条件であるという御主張でございまして、その代替地を引き渡しをするという内容といたしました訴訟が、昭和四十六年六月二十五日に出ております。もう一件の訴訟は、土地の移転に伴います土地の売買契約、これが無効であるとして、買収地の返還を求めるという趣旨の訴訟が昭和五十年の十二月二十七日にそれぞれ出ておるわけでございます。
  204. 安武洋子

    ○安武洋子君 舘野さんは、補償交渉の窓口になっている防衛施設庁が、みずかちは査定基準を決して明らかにしない。だのに一方被害には、焼けた衣類や家財にまで証明書を要求する、このように言われているということを聞いております。こういうことが事実だとしたら、私はこれは本当に大変なことだと思うのですけれども、こういうことをやっていらっしゃるわけですか。
  205. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) 一応実際にそういうものをお持ちであったかどうか、その古さとか新しさというものもございますので、一応の証拠としましてそういうことをお願いしておるケースはございます。
  206. 安武洋子

    ○安武洋子君 当時は、三年前に購入したものは補償の対象外だ、それからそれ以外のものは、五千円以上だったら証明書が要る、こういうことですけれども、これはそうですか。——ちょっと時間がないから早く答えてください。
  207. 奥山正也

    政府委員(奥山正也君) 古い事件でございましたので、ただいまそこまで確認しておりませんので、直ちに確認をいたします。
  208. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう世間の常識ではこんなこと考えられないようなことなんですよ。大体自分の方が加害者でありながら、被害者に対して本当にもう考えられないような仕打ちをするわけですね。ですから、私は全く罪もない被害者をここまで苦しめることないと思うのですよ。この方は三人の息子さんを亡くされて、いまはもう十四年もたっているわけです。それでまだ裁判をしなければならない。六十二歳で一人で生活をしておられる。こういう人を苦しめないで、なぜこういう人の要望を入れてもっと早く事件を解決なさらないのかということを申し上げたいのです。舘野さんの場合だけじゃありませんね。やっぱり死亡事故に対するこの補償額だって満足なものだと言えないのです。  こういうことを見ておりますと、今度のファントム事故にしたって十分な一体補償ができるのかどうかということを私は危惧せざるを得ないわけなんですけれども、一体、今回の事故の場合も、被害者に対して、舘野さんの場合のように、焼けた物件については証明を求めておられるのですか。
  209. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 昨年の九月の事故補償については現在なお進捗中でございまして、ちょっとその状況を申し上げますと、被害件数は軽微な、ガラスが割れたような物損もございますが、そういうものを含めまして、五十三件のうちで支払い件数が……
  210. 安武洋子

    ○安武洋子君 いや、証明を求めているかどうかということを聞いているんですよ。
  211. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 物損につきましては、やはりこれは補償でございますから、その裏づけになるものはいただくように極力お願いするわけでございます。しかし、そこは常識的な判断の問題でございまして、どうにも証明がつかないというふうなものもあるわけでございますが、そこは私どもも常識的な態度で被害者の方々とよくお話し合いをして円満に解決したいと、こう思っておるわけでございます。
  212. 安武洋子

    ○安武洋子君 あなたたちは、被災者に、事故の直後、現場には立ち入るなと、こうおっしゃってましたね。そして後、本人が立ち入ろうと思って行くと、もうブルドーザーで整地してしまっておりますでしょう、本人に連絡なしに。そういうことをしてしまうと、被害者たちは、貴重品、こういうものも自分たちで確認することも取り出すこともできない。中にはお金にかえられないものだってあるわけなんですよ。結婚式の写真とか、あるいは新婚旅行のアルバムとか、いろいろ思い出になるものもありますし、それから海外で買ったようなものは証明を取ってこいと言ったって無理ですし、自分の家のものをお考えになればわかりますでしょう。いま自分の家にあるものが、一々どこで買ったか全部証明がお取れになれますか。そういう無理なことを、なぜこういう人たちにお求めになるんですか。
  213. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) ただいまのお話の最初の方の、現場保存と申しますか、現場の管理は私ども施設庁の権限の問題ではございません。したがって、施設庁の職員あるいは施設局の職員が被害者の方に現場に入っては困るとかいうことを申したことはあり得ないわけでございます。  それから建物を取り壊したというのも施設庁の方でとった措置でございません。  それから、いまお話しのような、たとえば記念アルバムのようなものは、なかなかこれ証明といっても証明、裏づけは得がたい。そのようなところは、もちろん常識に従って私どもも円満にお話し合いをするように職員にも指示してございます。
  214. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、施設庁がとった処置でなければだれがとった処置なんですか。だれかがとっているからこういうことになった。それが第一点です。  それから第二点は、三年以前に購入したものについては補償の対象にしないと、こういう態度をおとりですか。
  215. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 現場の管理についてだれがどういうことをどういう権限でやったかということは私ども承知しておりません。私どもはただ、私どもの立場ではやはり後の補償の問題がございますから、職員は職員として現場に参って検分はいたしておりますが、外部の方あるいは被害者の方に対して入ったらいかぬとかいいとか言う立場ではないわけでございます。  それから、いま三年以前のもの云々というお話がありましたが、そういうことはないはずでございます。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 現に入れなかったではありませんか。そして、やっぱり本人に事前に連絡もなしにブルドーザーでならしてしまっている。こういうことでは満足に補償されるということはなかなかむずかしいわけですよ。そして三年以前のものについても、確認しておきますけれども、本人から申請があれば必ず補償なさいますね。
  217. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) これは私どもも公的に補償をいたすわけでございますから、できるだけその裏づけが欲しいという気持ちはあるわけでございますけれども、そこは先ほど来申し上げておりますように、常識的な判断で、裏づけの取れるもの、取れないもの、こうあろうと思います。いずれにしましても、私ども被害者の方と逐一円満にお話し合いをいたして解決したいと、円満にお話し合いをして、お話し合いがつかなければ訴訟というようなことに相なるわけでございますが、そういうことに至らないように極力お話し合いを円満に進めまして解決したいという念願でございます。
  218. 安武洋子

    ○安武洋子君 常識的な判断というのが、あなたたちと、それから被害を与えられた人たちの間ではいつでも食い違うという事態が起こっているわけですよね。常識的な判断と言いますけれども防衛庁の中には補償基準があるはずなんですけれども補償基準は一体どうなっているんですか。
  219. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) 損害賠償の算定基準につきましては、今回の事故につきましても、被害者の方々等と何回か会合を持ちまして御説明も申し上げ、大体御理解を得まして個々の個別の補償交渉に入っておるというふうな段階でございます。
  220. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういうこと聞いていません。防衛庁の中には賠償の基準、これがおありなんでしょう、そのことを聞いているんです。
  221. 亘理彰

    政府委員亘理彰君) ございます。防衛庁の内訓で賠償基準がございまして、その要旨につきましては、これは書き物でも被害者の方々に差し上げ、さらに細部について説明会を数回皆さんと持ちまして、その上で大筋について、補償の基準についてはこういうやり方でやるということについて御納得いただいてから、個々の個別の交渉に入っておるということでございます。
  222. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、その内訓を資料として私の方にも御提出いただけますね。
  223. 原徹

    政府委員(原徹君) ただいまの内訓でございますが、これは自衛隊の中で防衛施設庁もございますし、ほかの自衛隊それぞれのところが使う、一つの取り扱いの公平を期するためにつくっているものでございますが、これ実は、中に書いてあることは被害者の方々それぞれには十分御説明を施設庁の方でもいたしておるわけでございますが、どうも、この和解の交渉みたいなことになりますと、被害の態様が非常に違いますものですから、自分の被害の態様と違うことに。いていろいろ書かれてあるものをごらんになると、何か自分の方がちょっと不利益なのではなかろうかというようなことがございまして、実際の交渉に当たる人たちは、それによってかえってまとまるものがまとまらないというようなことがございますので、被害を実際に受けられた方々にはそれぞれ十分御説明いたしますけれども、これは部内の内訓でございますので、出すことは御容赦願いたいと思います。
  224. 安武洋子

    ○安武洋子君 なぜ出さないんですか。内訓というのは、自衛隊米軍や対外的な事故を起こした際の補償の一つの基準なんでしょう。ということになると、これは何も内部のいまおっしゃったような御説明はだめですよ。これはやっぱり単なる内部文書ではなくって、国民に広く知らせるべき、こういう事故を起こしたときには自衛隊としてこういうことで補償しますという一つの基準なんですよね。自動車会社だって、保険会社だって、どこだってそういう基準を示していますでしょう。そういう基準をなぜ国会に出せないんですか。それはおかしい。出してください。
  225. 原徹

    政府委員(原徹君) その中身につきましては、たとえば死亡された御遺族につきましては、もちろん療養費用とか、それから死亡に伴う逸失利益の計算とか、あるいは葬儀の費用とか、慰謝料とかそういうことが書いてあるわけでございまして、それぞれの被害者の方々には十分中身について御説明をいたしておりますので、そういう内部の取り扱いでございますので、大変恐縮でございますが、御容赦願いたいと思います。
  226. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま被害者に渡しているとそちらでおっしゃった。被害者に出せるものなら、なぜ出せないんですか。おかしいじゃないですか。長官、いかがお考えですか。なぜ国会にこういう基準が出せないんですか。被害を与えたときにこういうふうに救済しましょうという、この基準がなぜ出せないんですか。おかしいですよ、いまの御答弁
  227. 金丸信

    国務大臣金丸信君) その問題につきましては、私は、むしろそういうものを出すことによって、補償がこの枠かという——いわゆる私は生命というものは非常に大切なものだ、その生命がなくなるということですから、できるだけのことはしなくちゃいけない、目いっぱい以上のことをやれと、こう言っておるわけでありまして、そういうものを出すことによって、いわゆるプラスになるということではなくてマイナスになる面が多いということ、その辺はひとつ御賢察を願いたいと、こう思うわけであります。
  228. 安武洋子

    ○安武洋子君 そんなこと納得できませんよ。目いっぱいやれとおっしゃっているなら、基準をお出しになったらなるほど目いっぱいやってもらったという基準がわかるわけ。基準も出さないで、内訓も出さないでなぜ目いっぱいやったということになりますか。おかしいですよ。私はそういうことでは納得できませんので、委員長にお願いします。資料を提出するように私はお諮り願いたい。
  229. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 私は、目いっぱいの中にも、その補償の中で、この人のランクはここだ、この人のランクはここだと——こんなことを言うと速記にならぬと思うんですが、そういう一つの事故のいろいろの様態によっては目いっぱいの中にもほどほどがあると私は思うんですよ。そのほどほどということをやるためには御理解がいただけるんじゃないかと、こう私は思うんです。
  230. 安武洋子

    ○安武洋子君 納得できません。目いっぱいやら、ほどほどやら、そんなバナナのたたき売りのようなことを言ってもらったら困る。なぜ被害者に示せる内訓が出せないのか。やっぱり基準は明らかにすべきですから、私は委員長にお願いします。資料提出をお諮り願いたいんです。
  231. 金丸信

    国務大臣金丸信君) たとえて申し上げますれば、足を切断したという——死んだということでなくて足を一本切断したと、そういうようなこと、あるいは背中に傷をしょったというのと比べてみて、どちらが重傷であるか。体に傷をしょったのを比べたらどうだと、そこには格差があると思うんですよ。みんな目いっぱいにやるというわけにはいかないと、こういう意味でぜひその面は御容赦願いたい、こういうことだと御理解いただきます。
  232. 安武洋子

    ○安武洋子君 障害者の認定だって、こういう親指がないときはどうだ、何だと、全部細かくあるわけなんですよ。だから、いまの長官の御答弁はいよいよおかしくなってくる。だから委員長、先ほどから何遍も言っています。大臣もう御答弁結構ですから、私はお諮りいただきたい。
  233. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 理事会に諮って処置いたします。
  234. 安武洋子

    ○安武洋子君 それで、同じようにファントムが墜落している原因がまだ究明されていないという中で、六日に同じ横浜の旭区でP3Cの主翼の一部が住宅街に落下しておりますでしょう。一歩間違うと大惨事になるというふうな状態なんですよ。米軍の安全対策というのは私はなっていないと思うんです。  それとともに、米軍の安全対策の問題とともに、私は横田という空域はもう日本の上空ですね。これが米軍が勝手気ままに使っている。こんなところで演習するというところに根本的な問題があるんですよ。だから、私はこの広大な横田空域というところを返還していただくということがなければ、こういう事故は絶えないと思うんです。私ここに資料持ってきましたけれども、横田空域というのはこんなに広いんでしょう。これだけでもけしからぬのに、防衛庁はこの横田空域の北半分ですね。私ここに赤で横線引いてきましたけれども、こういうところを一月の四日から使うことになさいましたでしょう、自衛隊の訓練地域として。こういうことは国民はほとんど知っていないわけですよ。国民がほとんど知らない間に、こんな広大な区域を自衛隊の訓練区域になぜお使いになるのか。空域の範囲と、それから高度と、それから使用条件、これを御説明いただきます。
  235. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) ただいま御指摘の後半の、横田空域の一部に自衛隊の訓練区域を設定したということにつきましての御質問でございますが、確かにこの上信越地方の中部山岳地帯の上空に訓練区域を設定しております。これは昨年の十二月二一三日付の第二種NOTAM、いわゆる運輸省の航空局が発行いたします航空情報のデータに載っているものでございまして、本年一月四日から適用されております。  そこでこの訓練区域の使用目的でございますが、これわれわれはH区域ホテルと称しておりますが、主としてここでは入間基地所在のC1であるとかT33等の訓練を実施しているというのが実情でございます。この空域の使用高度は地表面から二万三千フィートまでということでございます。
  236. 安武洋子

    ○安武洋子君 ここのところでは曲技飛行はやりませんか、やりますか。
  237. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 一概に曲技飛行というか、ある程度の航空機の姿勢あるいは高度、スピードを変換する、急激に変更するような飛行は実施するものでございます。
  238. 安武洋子

    ○安武洋子君 使用条件というのは一体何なんですか。そしてなぜ曲技飛行なんかやるんですか。
  239. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 自衛隊の航空機というのは、しょせん最終的には防空戦闘に従事するものでございまして、そのためには対戦闘機戦闘その他のいわゆる要撃戦闘訓練が必要でございますので、その範囲内で、いま申し上げた航空機の高度を変えたり姿勢を変えたりスピードを変えたりするような訓練をやる必要があるということでございます。
  240. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは日本の空なんですよ。その下には日本人が住んでいるんですよ。そういうところで平然とそういうことをおっしゃる。だから事故が絶えないんですよ。こういうことについて一体どうお考えなんですか。やはりここをこういう訓練地域にしないで運輸省の管轄にしてやらないことには、米軍から返還を求めないことには、事故が絶えないじゃありませんか。こういう事故がいままでも続発しているというのはここに原因があるわけなんですよ。私はこういうことはけしからぬと思うんですけれども長官の御見解いかがですか。
  241. 金丸信

    国務大臣金丸信君) 事故は絶対出してはいけない、人命の損傷は絶対ないように、なければならぬことは当然であります。そういう面につきましては鋭意最大の努力をして事故のないようなことを考えておるわけでありますが、こういう基地は外してしまえ、返還さして——アメリカがやっておるのは不届きだと、こういうわけでございますが、日米安全保障条約というものがあればアメリカ軍も演練という立場で演習もするでしょうし、またその空域に、日本も、日本の国を守るということであれば当然演練をしなければ精強な部隊はできない、こういうことであろうと私は思います。
  242. 安武洋子

    ○安武洋子君 だから私は日本人の生命を本当に尊重なさった立場でないということを強く申し上げたいんです。こういうファントム事故についてでも、被害者が本当に確実に救済されるかどうかという危惧を持たざるを得ないわけですよ。  時間が大変ないので、続いて伺いますけれども自衛隊の基地内の火薬庫の問題についてお伺いしたいんです。  一般に、火薬庫の設置、それから変更については、火薬類取締法によって都道府県知事のこれは許可が普通なら必要なんですけれども、まあこれは通産大臣の許可でよいというふうになっているわけなんですね。この設置される場所を、火薬庫が所在する自治体というところに通報は一体なさっていらっしゃいますか。
  243. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 火薬庫を建設する際には、建築基準法十八条によりまして都道府県あるいは二十五万以上の市の建築主事に対してその旨通知しております。
  244. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは小さい写真でちょっとおわかりにくいんですけれど、これは川西、伊丹駐とん地です。これ千僧です。どちらも、ごらんいただいたら民家の目と鼻の先にこういうふうに火薬庫があるということはおわかりいただけると思うんです。こういう火薬庫があるのに、中に一体どんなものが入っているのかということが全然わからない、知らされていないということで、付近の住民は大きな不安を持っているわけなんです。ですから、付近の住民の不安を取り除くためにも、それから事故などに備えて自治体がちゃんと備えられるようにもしなくちゃいけないと思うんです。ですから私は、千僧、伊丹、この両駐とん地にある火薬庫ごとの種類と、それから保管能力と、それからどのような弾薬が保管されているか、この点をお伺いいたします。
  245. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 伊丹火薬庫につきましては、一級火薬庫、保管最大能力〇・五トン、実包火薬庫約〇・四トン、煙火火薬庫約〇・六トン。千僧におきましては、実包火薬庫でございまして、約〇・〇三トンでございます。どういう種類のものが貯蔵されておるかということにつきましては機密でございまして、公表を差し控えさしていただきたいと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、法律の定めるところによりまして十分な保安措置をとっております。
  246. 安武洋子

    ○安武洋子君 中がはっきりわからないって、公表を差し控えたいとおっしゃるでしょう。あなたたちは保安距離、これは中の火薬、これを増減することによって、保安距離がとれたとかとれないとかとおっしゃっている。そんなことわからないから、中がわからないから保証ないわけですよ。  それともう一つ申し上げたいのは、どちらにしてもこれは人口密集地です。大口密集地の中に弾薬庫があるということは、弾薬を入れたり出したりするということなんですよね。ですから、そのときに一番危険が起こりやすい、しかも一級火薬庫があるということははっきりしているわけなんですよ。中身も知らされずに、ただ保安距離があるからと、それもはっきりわからないわけ。中がわからなくちゃ、住民に知らされなければ、保安距離だって本当に保たれているかどうかわからない。住民の中をこんな危険な弾薬が行ったり来たりするわけなんでしょう。そういうことを平然とおやりになるというのは、私は一貫してやっぱり人命を尊重する立場に立っていらっしゃらない。なぜこんな人家密集地にこんなものを置いとくんですか。さっさとこういうものはもっと人口密集地からおのけになるべきじゃないですか。あそこは欠陥空港と言われる大阪空港の、しかも近くなんですよ。そのことをどうお考えですか。
  247. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) いずれにいたしましてもいろいろの弾薬の種類はございますけれども、それを爆薬量に換算するきちんとした数式もございますし、そういうものによりまして法令の定むるところの保安措置というものは十分とっておるとともに、その点検、維持、運搬といったようなものにつきましても十分な教育訓練を施しまして危険のないようにいたしております。
  248. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう一度ちょっと聞きますけれども、一級火薬庫の中の保管能力はいま幾らっておっしゃいました。
  249. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 約〇・五トンでございます。
  250. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 安武君、これがおしまい、最後。
  251. 安武洋子

    ○安武洋子君 〇・二五トン以上の場合はこれは保安距離保てないじゃないですか。これ、一体保安距離幾らあるとお思いなんですか。保安距離、これ、私は地図持ってきていますけれども、これじゃ距離がないじゃありませんか。これ、大体八十五メートルから九十メートルでしょう、それなら法的な処置ということは違法じゃないとおっしゃっていますけれども、おかしいじゃないですか。
  252. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) その数量が全部この一つの火薬庫に入っているということになるとそうでございますが、これは五つの棟数に分かれて保存されております。したがいまして、千僧駐屯地におきましては。……
  253. 安武洋子

    ○安武洋子君 おかしいじゃないですか、さっき全部一つずつおっしゃいと言ったのに……。
  254. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 所要保安距離はリューデンベルグの実験方式によりまして、第一種保安物件に対して五十メートル、実測は学校まで百九十メートルございます。第二種保安物件に対しては四十五メートル、家屋に対して実測六十メートルでございまして、第三種保安物件に対して二十五メートル、それが実測三十五メートル、第四種保安物件に対して、二十メートルに対して実測が一これは高圧線でございますが、三十五メートルとなっておる次第でございます。
  255. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう一問でおしまいにします。大体先ほどの基準もお出しにならないでしょう。いまでももう何か知らぬけれども、ごまかしのような御答弁をなさる。もうきりきりいっぱいで、そしてこちらが気がつかなかったらそのままで済まそうなんて、だめですよ。やっぱり私はいまの防衛庁の御答弁の中にはたくさんのごまかしがあるような気がします。ですから、こういう点についてはさらに追及させていただきますけれども、もう少し誠意を持って、なぜ基準ぐらい、先ほど申し上げた内訓ぐらいお出しになれないのか。ぜひこれは要請に応じて出していただく検討を始めていただきたいですし、こういう危険な火薬庫、幾ら保安基準に満てているといま数字的おっしゃいましても、住民の不安は取り除くことできませんし、先ほどの御答弁ぶりから見ましたら、いよいよ私はけしからぬと、こういうふうに思うわけです。ですから、そのことを申し添えまして質問を終わります。
  256. 茜ケ久保重光

    委員長茜ケ久保重光君) 他に御発言もないようですから、総理府のうち、防衛庁決算につきましてはこの程度といたします。  次回の委員会は四月十七日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会      —————・—————