○沓脱タケ子君 まだ残っているということをお認めになっておられるようなんですが、若干具体的な事例を申し上げて、いまの時点での実態というものを少し御
理解をいただきたいと思うんです。といいますのは、将来この同特法についての延長について、各方面での延長すべきという点でのいわゆるコンセンサスが進みつつあるというふうな段階でございますので、過去の八年ないし九年の実績をやはり十分に踏まえて将来の対策に資すべきだと思いますので、そういう点で実例を具体的に見ていきたいと思うんです。
私は大阪出身でございますので、大阪のことが非常に詳しくわかるわけですが、大阪におきますいわゆる同和対策事業の中での
一つの重要な柱になっております同和地区住民の個人給付というところを見てみます。見てみますと、これは私が持っております資料というのは、大阪府下の市町村の個人給付一覧表なんですよ。これを見ますと、これはずいぶんたくさんの項目があります。
若干申し上げてみますと、生活保護対策としては、夏期手当に、大阪市の例を言いますと、世帯夏期手当一万一千円、年末手当一万二千円。それから身体障害者対策、一級、二級に対しては夏には一万七千円、冬には二万二千円。老人対策には、夏期手当として一万一千円、年末手当として一万四千円。それから結婚祝い金として七万五千円。妊産婦対策として分娩補助二十一万五千円、栄養補助として牛乳五十五円分――五十五円だそうですね。それから保育対策、入所支度金等が新入生が一万一千円、継続が九千円。就労対策は、就職支度金、国、府、市合わせて九万円、職業転換には、三十歳以上不安定就業者には実費。それから技能習得対策、普通一種、二種、これも実費、これは車の免許取得だと思います。大型一、二、特は、一、二は実費。小学校の入学進級支度金は世帯に対しては二万三千五百円、子供一人に対して九千五百円、就学奨励費は学用品一万八千円。中学生も、入学進級支度金が世帯に対して二万八千円、児童一人に対して一万八千円、就学奨励費は学用品二万四千円。高等学校の公私立入学支度金、これは公立八万五千円、私立二十二万五千円、修学金が公立十四万四千円、私立が二十九万四千円。大学は、公私立入学支度金が公立十六万円、私立三十三万円、修学金が公立二十一万六千円、私立三十九万六千円。
これ全部じゃありませんが、主なものを読み上げてみましても、こういうふうな細かい配慮がなされて、この費目の中には、国の補助のあるなしにかかわらず、これは地方団体が大変な努力をして細かく個人給付というのがやられて、手厚く住民に対して対処してきているわけです。私は、ここに問題があるんではなくて、こういう行政上の配慮というのが、これらの個人給付というのが、いわゆる窓口一本化と言われるやり方のために、地区住民、いわゆる同和地区住民全体に対してそれが行き渡っていないという点に非常に問題があると思うわけでございます。
これはもうすでに何回か各
委員会等で取り上げられておりますので、詳しく私申し上げるつもりはないんですけれ
ども、そういった窓口一本化と言われている実例というのは一体どんなことになっているかということを知っていただくために、ほんの一、二例を出してみたいと思いますけれ
ども、たとえば大阪市の同和地区妊産婦対策費というのがあるんです。これは大阪市と府の補助金でやっている事業ですが、これを見てみますと、大阪市のいわゆる支給要綱を見てみますと、受給資格というのは大阪市同促協会長及び地区協議会長が適当と認めて推薦した者だけがもらえるということになっているわけです。で、その決定がなされたら、今度は逆に大阪市から大阪市同促協を通してさらに地区協議会長のところへ通して、それから本人に金が渡されると、こういうふうになっているわけです。
ところが、これがそういうルートであってもみんなに行き渡っているんならよろしいんですけれ
ども、これは非常にはっきりしている実例なんで、実例を申し上げてみますと、藤原暁代さんという方がおるんですが、この方は、せっかくこういういい制度がつくられているのにその制度の恩恵を受けられなかった。で、どういうことになっておるかといいますと、この藤原さんというのが
昭和四十七年の二月に、妊産婦対策の個人給付を受けたいと思って申請書を福祉事務所へもらいに行ったわけですね。ところが、福祉事務所へ行ったら、申請書はこんなところに置いてないと、その書類というのは――これは大阪市浪速区ですからね、浪速の地区協を通じてやることになっているので、浪速の地区協へ行ってもらってくれというふうに言われた。当時――当時というのは
昭和四十七年ごろですね。当時は浪速のいわゆる地区協議会は、部落解放同盟の浪速支部と同じ事務所であったのでそこへ行った。それで、妊産婦個人給付を受けるというためには、実は部落解放同盟浪速支部の下部組織である妊産婦の会に入ってその方針に従うようにしてほしい、そして解放同盟の動員には産前産後十一回以上参加しないとこれはやらないんだと、こういうふうに言われたので、こんなことをやられたら大変だと思ってその日は帰った。しかし、そういうせっかくの制度を何とか利用したいと思って、大阪市から、申請書を市
会議員の方に頼んでもらって書いて
提出をした。
提出をしたけれ
ども受け取ってもらえなかった、大阪市当局から。そこで、何回か交渉に大阪市の民生局へ行った。本庁の交渉も何回もやった。ところが受け取ってもらえない。それはその同促協と同促協の下部組織である地区協議会を通してやっているんだということで大阪市は受け取ってくれなかった。非常におかしいんですね。地方団体だのに、そういう特定団体というんですか、任意団体にそういうものを――特殊法人になっているんですかね、同促協というのは。そういうところへ任しておるんだということで一切受け付けもしないということで、大分本庁では粘って交渉をしたらしいんですが、ずいぶんおなかも大きくなっていて、藤原さんは本庁交渉をした晩に早産の徴候が出てきて、帝王切開をした結果双子の未熟児が生まれた。
ところが、どうしても子供が生まれる前に折衝していたけれ
ども受け取ってもらえない。生まれてから以後も折衝しても受け取ってもらえない。それで、しようがないので、藤原さんはやむなく四十七年の十一月に、こんなおかしいことはないじゃないかと、いわゆる分娩費の経費全額の二十一万五千円、それから栄養費、養生費などを含めて、双子の場合には一万五千円加算するので四万五千円、それから牛乳代、牛乳として一日二本ずつ半年間というふうな行政的な措置があるのにこれが受けられないということではおかしいじゃないかということで、幾ら折衝してもだめなので、四十七年の十一月に訴訟を起こしておられるわけです。いまだに解決をしていない。ですから、四十八年に事務次官通達をお出しになって改善方を要請をされているけれ
ども、いまだに解決してないから裁判がいまだに続いている。近く判決の予定になっておるようでございます。こういう事態があるということを御
承知いただきたい。こういう事例というのはどの個人給付にもそういうふうになっているわけです。
さらにもう
一つ、四十八年にせっかく
政府が事務次官通達をお出しになって、この分については公正を期すようにと言われているのだけれ
ども、なかなか言うことを聞かないんですね。
これは国の補助金が出ておる、補助対象になっているもので、高等学校生徒奨学費支給要綱というのを見てみますと、これも同じなんで詳しく申し上げませんが、ただ問題は、この支給要綱を見ますと、制定は
昭和四十六年三月二十九日になっているんですよ。それで
総理府からは事務次官通達を四十八年五月十七日にお出しになっている、そういうことはやめなさいと言って。ところが、これ改正をしているんですね。
昭和五十二年四月一日付で若干の改正をしているんですが、やっぱり
中身は一緒なんです、
中身は。だから奨学金を受けるのも、これ奨学金は先ほど申し上げた例の中にあるんですが、五十二年度では国公立が一万二千円ですね。そのうちの国の補助金が七千円。私立は二万四千五百円のうち国の補助金は一万円というふうになっているんですが、これもやっぱりそのいわゆる地区協の会長の判を押してもらう人だけしかもらえないということになって、同じ部落住民の皆さん方がせっかくの行政の恩恵に浴せないわけでございます。こういうやり方がやられておりますために、次から次とやはり新しい事態が出てくるし、腐敗を生んでぐるわけです。
もう
一つの事例をやっぱり申し上げたいと思いますけれ
ども、これは国庫補助金が交付されている事例で同和対策特別事業費があるんですね。これがおもしろいことに、同和対策特別保育事業として、保育所に新規に入所する児童に被服を貸与する措置がとられている。国からは一人三千円、五十三年度は予算案では三千五百円、地方団体に補助をしているようになっておりますが、これは間違いありませんか、厚生省。