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最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) ただいま御
指摘の大須事件につきましては、委員おっしゃいましたとおりに、この九月四日に上告棄却の決定があったわけでございますが、それにつきましては、九月七日以後何回かに分けて
異議の申し立てがありまして、現在第二小法廷に係属中というところであります。
そこで、その決定の中で、二十六年という確かに長い期間、これについてこういうふうな
指摘をしておられるわけであります。それは、今回の上告棄却の決定によりますと、長期化したことの原因と理由といたしまして、第一に、本件の主たる訴因が、規模の大きい騒擾という
犯罪であって、その
内容がもう複雑困難な
事案である、取り調べを要する
証拠も膨大で、被告人の数が百五十名もの多数であるということが一つ
指摘されております。それから、それに加えて、被告人らにおいて執拗ないわゆる法廷闘争を展開したこともつけ加えておられます。この法廷闘争の
内容としては、決定に摘示された
内容としまして、もともと忌避の理由となし得ない理由による忌避の申し立てがあったというふうなこと、繰り返し執拗な意見陳述、もしくは釈明要求があったというふうなこと、あるいは詳細をきわめた証人尋問があったというふうなことが挙げてございます。
で、私どもの方でいま、決定で御
指摘になっておりますような事実について、まあまだ粗い調査でございますけれども、一応把握しているところを申し上げますと、たとえば、理由のない忌避の申し立てというふうな問題につきましては、たとえば三十九年の四月三日に、別件の松川関連事件の有罪
判決があったらしいんでございますが、それに抗議するというふうなことで忌避の申し立てがされる、これで約三カ月中断したというふうなことがございます。その次は十月に、
検察官調書の採用不適当ということはけしからぬということで忌避の申し立てがあり、これで約三カ月停滞したと。こういったことが五回ほどございまして、合計で約一年二カ月の中断が起こっております。恐らくこの事実に基づいた御判断と思います。
それから、その他のものとしましては、たとえば事件と関連のない事項についてのいろいろな発言、抗議があったということがございます。それは、庁舎の警備に対する抗議、それから裁判官、
検察官に対する自己紹介をしろということ、
捜査機関に対する非難攻撃と、いろいろ分かれるわけでありますが、その中の一例をとってみますと、
警察官による庁舎警備がいかぬというので、
警察官がいると心理的に圧迫を受けるから起訴状朗読に入るには不適当であるというふうな発言がかなり執拗に行われる。それからあるいは、日中貿易は日本の経済政策上絶対必要なものであって、これを促進するための平和的集合を官憲がピ
ストルとこん棒をもって弾圧したために本件が
発生したのであるというふうな発言が行われる。それからあるいは、被告たちは帝国主義者の陰謀によって再軍備をして大虐殺を強行しようとしている元凶に対し断固闘う日本民族の立場を代表しており、
検察官は人類の平和、独立を侵し、日本がかつて歩いた大虐殺を再び犯そうとする帝国主義者の側に立っていると、そういうかなり長時間の発言があった。あるいは、保釈決定に対する
検察官が抗告をしたわけでございますが、
検察官に対して、法廷で抗告申し立ての疎明資料を明らかにすることを要求する、
検察官がそれに応じない限りは裁判の進行をあくまでも拒否するというふうな発言が繰り返し行われておる。あるいは、
警察において拷問を受けたというふうな主張がありまして、それで、公判の当初から、手続の段階のいかんを問わず、即刻取り調べ警官等の取り調べを行うべきであるというふうな発言が繰り返して行われる。まあ、というふうなことがいろいろと主張されたわけであります。
それから、保釈要求がかなり行われまして、そのハンガー
ストライキが行われる、これで約六カ月を中断したというふうなことがございます。
それから統一公判――百五十名の公判でございますが、統一公判の要求がいろいろ繰り返し行われて、それを入れられないということで三カ月ぐらい中断したということがございます。
それから、公判手続――途中で一度裁判長交代したことがございまして、竹田裁判長が亡くなられて、井上裁判長に交代ということがあったわけでございますが、そのときに、統一公判、それから開廷数の減少ということを繰り返し繰り返し主張されまして、更新手続に約一年間を要したということがございます。
それから、この百五十人の中から、裁判の早期終結を希望する被告人があったわけでございますが、この被告人が三十四年の七月から統一組から分離して審理されるということになったわけであります。で、この分離して審理するということがこれはいかぬということで被告人の方から非難攻撃があって、八カ月間審理が進展しなかった。
こんなふうなことがあったようでありまして、これを指して法廷闘争の遅延云々と言えるんではないかというふうに
指摘しておられるわけであります。
以上が九月四日の上告棄却の決定に即して私たちにわかっている程度の事実を申し上げたわけでございますが、事はまだ第二小法廷に
異議の申し立てという形ではありますけれども係属しております。それで、具体的
事案についての裁判所の措置、もしくは当事者の行動についてあれこれここで評価するのは必ずしも適当だとは存じませんので、ごく一般的にこういうこの種の事件で、これは二十六年ですが、こんな長い時間がかかるということ、これはだれが
考えても妥当だというふうには
考えられないわけでありまして、その責任といいますか、問題はどこにあるんだろうかということはわれわれなりに
考えておるわけでございます。そういう一般的な問題としての
答弁でよろしければここで御
説明申し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。