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戸叶武君
日本と中国の間にある問題は、尖閣列島などの問題でなくて、やはりソ連側で注目しているのは覇権問題の取り扱いであります。もう
一つ、ソ連と
日本との間において非常にむずかしい問題は北方領土の問題でございます。しかし、国連総会であれだけ大胆、率直に物を言い、また外務
大臣に就任して以後、この一月にはいち早く言いづらいことであっても、
日本政府はみずからの責任で、モスクワに行って日中平和友好条約を結びますということを、相手の意見を聞くんでなくて、率直に通告した園田さんの外交は、いろいろな点においていろいろな人が批評をしておりますが、やはり
日本外交は古武士のごとく堂々の陣を張って、力に頼らないけれ
ども、人間の真心に頼って、相手の評価がどうであろうと、真実を語って、相手がときには誤解しようが何しようが、それを伝えていくというこの態度というものが非常に必要で、園田外交に対してはいろいろな批判もありますけれ
ども、批判は勝手だが、とにかく事の成敗もあるけれ
ども、率直大胆に真実を語る以外に相手の心を開くことはできないので、私は、日中平和友好条約が結ばれたときには、既成事実ができた他国のことに
余り深入りして干渉してはならないというところまでソ連も理解できると思うんです。
私もソ連側からある人が来るようにと言ったが、私が行かないのは、誤解されてはいけないから。浅沼のしりぬぐいのときに、一九六〇年の安保闘争のカンパニアを代表し団長として北京に行ってからももう十八、九年になりますが、一歩だに中国には行きません。
ソ連に行っても、北方領土で
成田さんと見解を異にして、
日本はソ連共両党と違って、重大な条約を決定するのには主権者である国民の合意を得なけりゃならない。ソ連共産党と
日本の社会党が共同声明を発しても、国民が納得するような線でしなけりゃ
日本の国民というものは応じない。そういう過ちを犯してはいけないから、やはり北方領土の返還、少なくとも歯舞、色丹で早期平和条約を結ぶというような、それも
一つの
考え方かもしれないけれ
ども、国民は合意を与えない。最小限度国後、択捉までの線は返還してもらわなけりゃだめだ。戦時中の軍事秘密
協定のヤルタ
協定は、ソ連だけの麦任じゃなく、米英にソ連がだまされたような結果であるが、この三国みずからが虚心になってこの戦時中の他国の主権を侵した軍事秘密
協定をみずからの責任で消却するというところまでこなければ、次の戦争を避ける条件としての平和条約は結べないじゃないかと言ったとき、ミコヤンがニエットと。ニエットなら勝手にしろ、おれは帰るという、われわれは野党だから、少し無礼だけれ
ども、
日本人の魂というものを、ぶつけなけりゃソ連だってわかりっこないと思ってはなはだ失礼たこともやりましたが、私は、ソ連にはソ連の伝統がある、けれ
ども、
日本の悩みというものもわかるし、また中国の苦悩、兄弟党とまで言われたソ連の中国に対する裏切り、これは浅沼のしりぬぐいに私は団長として一九六〇年に行って、周恩来、廖承志と北京で語りながら、涙が出るほど彼らの苦悩というものを理解したつもりであります。
しかしながら、中国の立場は理解しながらも、
日本が中国と同じようにソ連を仮想敵国とするような覇権主義の中に埋没してしまっては、日ソの
関係というものは決して私はよくならないと思うんです。われわれ自身がソ連の第五列でもなければ中国の第五列でもない、アメリカの追従者でもない。
日本自身はあの戦禍の中から大きな平和共存の教訓を与えられて、キリストやヨハネやペテロよりももっと神に祈るような
気持ちで平和共存の路線をとにかく歩むべく運命づけられたんだということをもって本当に説くならば、私は中国でもソ連でもわからないはずはないと思うんです。そんなことを言うやつはばかだと言うかもしれないが、本当のばかが二、三人
日本にいなけりゃ、小利口なやつばかりうろちょろしておっては
日本の国というもののへそがなくなっちゃうと思うんです。いまの政治、外交、すべて小利口なやつがちょろちょろしているから多く事を誤っているんです。
どうぞ園田さんはその辺では天草で鍛えた土性骨の人物ですから、やはり
余り荒々しく言うと相手を傷つけるかもしれませんが、相手のメンツを傷つけない
程度に、
日本には
日本の道、
日本が世界に貢献する道はこれっきりしかないんだということを本当に説くならば、私は、力づくで、原爆でおどかしながら、権謀術策ではどうにもできないソ連やアメリカや中国の融和も、
日本があることによってあるところまで平和共存への
方向づけができ得る、こう思っているんです。私は少しドンキホーテですから、夢を見ているのかもしれません。しかし、地上にわれわれが天国を築くという夢を拾ててしまったら、地上は地獄になってしまいます。
どうぞそういう意味で、国連であれだけのことを言い切ったんだから、今後における日中平和友好条約においても、中国さんの気に入るようなことばかり、うまいことをやろうなんてことは、あなたは不器用だからできないはずだから、やはり率直に、中国の人もソ連の人も、ソ連なんか大分園田さんを警戒しているけれ
ども、警戒されているからかえっていいんで、そこに存在の意義があるんだから、やはり私は土性骨でもって体当たりで自分のはらわたをたたきつけるつもりで、今後のいままでにない外交をやってもらいたいと思いますが、時間が来ましたからこれでやめますけれ
ども、ひとつ簡単にお答えを願います。