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1978-06-02 第84回国会 参議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月二日(金曜日)  午前十一時六分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 永野 嚴雄君                 三善 信二君                 矢追 秀彦君                 和田 春生君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務政務次官   愛野興一郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    千葉 一夫君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        運輸省航空局次        長        松本  操君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省アメリカ        局外務参事官   北村  汎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○航空業務に関する日本国イラク共和国との間  の協定締結について承認を求めるの件(内閣  提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  航空業務に関する日本国イラク共和国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 前回、ただいま議題となっておりますイラク航空協定締結に関連いたしまして、成田空港の今後ということに視点を注ぎながら御質問を申し上げたわけでございますが、先回の御答弁を伺っての印象としては、やはり成田現状としては大変多くの欠陥を残しているという判断をせざるを得ない。  さて、そこで今後残されている欠陥をどう是正していくのか、いろんな問題があろうかと思うんですが、これは技術的に大変厄介な内容も含まれておりますので、あながちこれはこうこうこういうわけでこうだと、その見通しはこうだということの予想を立てることも大変むずかしいであろうというふうに思えてならないわけでございますけれども滑走路の問題あるいはそれに伴う地元民との話し合い、あるいは騒音対策をどうするのか、アクセスの問題をどうするのか等々、挙げれば切りがないと言ってもいいくらいに非常に不安を将来に残すような現状である。  こうした観点に立って、運輸省といたしまして、ある程度展望を持たなければ、今後の国際的信用というような問題も当然絡んでまいるわけでございますので、その点を整理しながら、いまわれわれが不安感を持っているそうした問題についての除去ということが具体的にどう一体これから進められていくのか、細かくいろいろと伺っている時間ももちろんないと思いますので、松本さんの方から現在の運輸省が考えている今後のあり方について再度申し述べていただきたいというふうに思うわけであります。
  4. 松本操

    政府委員松本操君) 先生の御質問が非常に包括的な問題でございますので、お答えの仕方も大変むずかしいのでございますが、まず、現在、成田空港が抱えております問題が幾つかあるという点については前回の御質問の中にもその片りんが出ておったわけでございますけれども、私どもこれを否定するものではございません。いろいろとむずかしい問題がある空港であるという点については十分承知をしておるつもりでございます。  ただ、いま欠陥空港ではないかという仰せでございましたが、そこまでシビアな点をいただかなくても、問題の多い空港であるという御認識を賜る点については私全く否定はいたしませんけれども欠陥とこうきめつけられるほどのことも、さしあたってこの二週間ばかり開港後たったわけでございますけれども、それほどのことはないのではないかというふうには思っておりますが、しかし、いま先生の御質問の中でいろいろ出てまいりました問題点についてざっと考え方をお答え申し上げます。  まず、アクセスの点につきましては、おかげさまと申しましょうか、現在、空港に対するアクセスの点で特に大きな問題が継続的に起こっておるということはございません。ただ、一、二の問題点として、非常に着便がおくれましたことが一回ございました。着便予想外におくれてまいりましたがために、リムジンバスというのが箱崎町までの間出ておるわけでございますが、このリムジンバスの終バスが出てしまった後にもなお通関等を終わって出てこられるお客が相当数あって、これに対する車両の手配等に多少のもたつきをいたしましてお客さんに御迷惑をかけたということが一回ございました。  それからもう一つアクセスの点では、これは首都高速環状線の中で事故がございまして、そのために非常に渋滞が起こって、通常東関東自動車道路京葉道路首都高速というルートをお通りになった方々が多少従来の時間よりもよけいかかったということがございます。先回も申し上げたかと思いますが、大体、いままで経験則的に考えておりましたものを実測してみましても、上りは九十分、一時間半程度箱崎町までは来ておるわけでございますが、その日は百十分でございますから、一時間五十分、ほぼ一時間近くかかったということが一度ございました。たまたま牛場大臣がお帰りの日にこの渋滞の渦の中に大臣の車が巻き込まれてしまって、新聞に報道されたりなどしたことがあったわけでございますが、その後、私どもの方で連続的にずっとどういうふうな瞬間で動いているかという報告を徴しておりますけれども、その特異な例を除きましては、大体、九十分というのが長い方でございます、早い場合には七、八十分で帰ってくるということもあるようでございます。  それから、どういう種類の輸送手段を使っているかという点についても統計資料的なものをこの三週間ばかりずっととってまいっておるわけでございますが、相当の旅客がやはりリムジンを使っておいてである。これは一つは現在御案内のように成田空港におきます警備状況との関係もございまして、箱崎でチェックインをいたしました旅客の乗ったバスについては余りむずかしいことを言わずに場内にまで入っていただく。そうでないものにつきましては、場内に入りますところに検問ブースを置きまして、そこである程度のチェックをするというふうなことをしております関係上、やはり箱崎からリムジンバスに乗っていくのが一番便利なようだというふうなことが伝わっておるのではないかと思いますが、ともかく数字的に見ましてもリムジンバス上り下りとも予想をやや上回るような数字で動いておるわけでございます。  それに反しまして、京成電鉄の方は、実は、多少乗車効率が低うございまして、二十数%という数字にとどまっております。これはやはりいま申し上げました検問などが煩わしいというふうなこともあるようでございますが、だんだんと手荷物サービスとか、あるいはポーターサービスとか、あるいは検問も月が変わりましてから徐々に緩和される方向にもございますので、これからの道路交通込みぐあい等との関連で、京成のいわゆるスカイライナーと申します直行便直行電準でございますか、これを使うお客もふえてくるのではないだろうか、このように考えております。
  5. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ちょっと松本さん、そのことについては前回伺っておりますので、よく心得ているつもりでございます。  ただ、いま御答弁の中にございましたように、環状線事故だとか、今日まで一応スムーズに動いているような感じを受けますけれども事故というのは予測しないときに起こるわけでございまして、京葉道路のいまの込みぐあいを考えましても、どうしようもない状況でございましょう。そうしたようなことを踏まえて、今後もっとスピーディーに都心に乗り入れるというその工夫がないのか、もっと乗客の利便に供することのできる、確かに距離的には非常に遠いけれども、大変速く着ける、こういうようないま考え方がないのか、そういう問題についていまむしろ今後の展望としてお伺いをしているんでありまして、今日までの経過については結構でございます。まだ騒音もあります。
  6. 松本操

    政府委員松本操君) わかりました。いまおっしゃいますように、現状は申し上げたとおりでございますが、今後の問題としては、いまもちょっと申しかけておりましたけれども京成の場合には時間的には非常に安定をしておるわけでございます。したがって京成電車を使って上野まで来ていただく、あるいは上野から京成で直接空港内に入っていただくという分がいま申し上げましたように二十数%の乗車効率でやや予想を下回っておりますので、こちらの方面に対して旅客を誘致するということについて、まず当面の努力をしていく必要があるのではないか、このように考えております。これによって成田の往復時間というものが短縮されるだけではなくて、確実になる。いま先生おっしゃいましたように、事故等の現象というのは、道路に比べると電車の方がはるかに少のうございますので、そういう点で確実に行けるということになるのではないか。  ややさらに先の問題といたしましては、たとえば在来線空港内に延長する考えでございますとか、あるいは北総鉄道をつなげて都内から地下鉄の延長線上を通ってまっすぐ入れるようにする構想でございますとか、いろいろな新しい鉄道輸送の問題について私どもの方で検討をいたし、さらに一、二回これに関しての関係者間での会議も開きましたが、これは工事の期間等を考えますと、すぐにというふうにはまいりませんが、そう遠くない時点で実現するように努力をしていきたい。  道路の力は、十分御案内と思いますけれども湾岸道路が五十六年にはでき上がるということになりますと、これは高速通常道路を入れまして十四車線の道路でございますので、したがって容量的には非常にゆとりを持って願いります。それからまた首都高速の九号線というのが箱崎町からまっすぐ湾岸道路へつながるような形で、これも建設中でございますので、これは五十五年度末というふうに私ども聞いておりますが、こういうふうなものができますと、いまの場合に一本しかない道路交通が複数完全に使えるという形になりますので、将来の問題として大きな寄与をするのではないか、こう考えております。
  7. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 せっかくいまアクセスの問題の中の交通手段が出ましたが、利用者の感覚というのは、松本さん御承知のとおり、遠い、時間がかかるだろう、そうすると万が一ということを考えるのですね。一時間ぐらい余裕を見ていかなくちゃならない。二時間で行くところは三時間もかかるという計算を立てませんと、飛行機に乗りおくれるようなことがあったらどうしようか、これ一大事ですね。そういうことを考えると、大体、いままで利用された方の話をそれとなく伺ってみますと、四時間ぐらい、やっぱり家を出てから着くまでの間、そのくらいの時間を見ないと安心して行けないという印象を皆持っているのです。  それは机上計算でもって、鉄道利用すればこれだけだ、バス利用すればこれだけだと。しかし、万が一ということがあって、事故があって、先ほどおっしゃったように牛場さんが帰られたときに、そういうラッシュの中に巻き込まれて予想以上の時間がかかるというようなことだって今後ないではございませんね。それは五十五年に道路が貫通するとか、五十六年にいろんなそういう設備がまた整備されていくと、いまどうするかという問題があるわけですね。ですから、十日余りたった現在、いろんな貴重な経験をされたと思うのですね。  で着陸する飛行機予定どおりの瞬間に着けばいいでしょうけれども、着かない場合に三十分も一時間も延着だと、当然、その場合どうするかという問題も出てきましょう。それからリムジンならリムジン利用した力が非常に便利だという場合には、それに対する一体配慮の仕方というものもみんな後手後手になって、これも新聞報道でございますけれども、当然当初から予測されたことであったろうし、また今後もそういうことが十分考えられる。むしろいまの時点に立って、どういう一体利用者に対して迷惑をかけないような交通体制というものが組めるのかどうなのか、むしろその方が大事じゃないかと私は思うのですがね。そういう点を考えてみましても、事ほどさようにこちらが計画したようなぐあいにはなかなか進まないということを心配するために、その点はどういうふうに考えていらっしゃるのかなあということを含めていま申し上げたわけなんですね。その点はこれからも万全を期することができるというふうに確信がおありでございますか。
  8. 松本操

    政府委員松本操君) 御指摘はごもっともではございますけれども、先ほどの答弁にも含めて申し上げましたように、いま京成がわりあいと使われていない。鉄道というものの輸送安定性確実性というふうなことを考慮いたしまして、いまリムジンにやや過度に集中しているように思われます旅客の流れというものを京成の方にも散らしていく。京成になりました場合に、実は航空旅客というのは大きな荷物を持っておりますので、これを持って電車に乗るのかという議論がございます。これについては別に手荷物サービスの会社を新しくつくりまして、前の日にちゃんと手荷物は取りに来て空港まで持っていってもらう、こういうふうなことも実は業務を開始しておるわけでございますが、現在のいろんな警備上の問題等もあって、まだ完全に近い状態とは言えないかと思います。したがって、こういう点についての積極的なPR等、これを旅行代理店等を通しまして旅客に浸透させていくことによって、なるべく大量輸送であってかつ確実に運行ができる交通手段というふうなものに旅客を転移させていくというふうなことが当面とり得る一番確実な方法ではないか。  かつ、この二週間あたりの間に運行状況も私どもずっと見ておりますが、だんだんと安定をしてきております。したがいまして、確かに当初の段階で非常に御心配になって数時間前に家を出たというふうな方が相当おいでになったことも私ども承知しておりますが、そう遠くない時点で大体こんなことだなあという数字も落ちついてくるのではないだろうか。また、私どもの方も公団を督励いたしまして、大体都内のどこから来ればどのくらい、横浜から来る場合はどのくらいというふうな指針をある程度自信を持ってお示しすることによって、余りむだな時間をかけて早目にお越しいただかなければならぬようなことを防止するような、そういった具体的な方法というものについても今後努力をしてまいりたい、このように考えておりします。
  9. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いろいろと運輸省運輸省なりに多年の経験をもとにいたしまして工夫もされているんだろうと思うんです。ただ、いま申し上げたような心配というものはどうしてもわれわれの頭からぬぐい去らないというところに不安感を持つわけでございまして、たとえば、いまおっしゃった列車利用するという場合にどうしてもやっぱり荷物の問題が気になりますわな。赤帽を頼むにしてもお金がかかるという仕組になるでしょう。それよりも目の前でバスに飛び乗って荷物も一緒に積み込めると、これは確かに便利であることは言うまでもない。それから荷物だけは前の晩にということもありましょうけれども、それは恐らく無料で運んでくださるんだろうとはぼくは思いますけれども、そうしたことにまたお金がかかるなんというようなことになると、当然、これは利用の対象にはならぬ。いろんなそういうことが細かいようでありますけれども利用者の心理というものを考えた場合に、これは私たち、松本さん御自身だって恐らく同じようにお感じになるんじゃないか。いまわれわれは国内の問題を討議しているわけですが、もしわれわれが外国へ行ってそういう目に遭った場合にどういう気持ちを抱くであろうか。恐らく不愉快な気持ちを抱くに違いないと思うんですよ。ところが、もうそうした不愉快の中でもまことに顕著な状態がいまの成田に象徴されているというふうになれば、これは国際的な信用においても非常にマイナスの面こそあれ、プラスの面は何にもない。日本へ行くのも少し手控えようかというようなことになりかねない、そういうことも言えると思うんです。  そういった面を考えた場合、ちょっと横道へそれるかもしれませんけれども外国からいろんなお客さんが参ります。当然、首都空港利用される場合が非常に多いと思うんですね。ところが、一遍東京へお入りになった方々は、たとえば北海道へ旅行される、あるいは九州へ旅行される。実際はスケジュールとしては北海道で終わりであり、九州で終わりである。むしろ札幌の空港から飛び立っていただきたい、あるいは板付空港から飛び立ってもらうという方が非常に全体の客さばきのしから言っても、われわれ素人の考え方ですよ、非常に外国お客様に対しても安心感と便利さというものを与えるんではあるまいか。そういうようなこともいま進めながらこの総合的な計画というものが進められているのかどうなのか。
  10. 松本操

    政府委員松本操君) いまおっしゃいました点につきましては、日本にやってまいります旅客選択性向がどういうふうに変わっていくかということをよく見きわめていかないといけない問題かと思いますが、現在、成田及び大阪のいわゆる国際空港という肩書きをつけたものを含めまして国際線が出入しております空港国内に七つございます。したがって、いまおっしゃいました福岡でございますとか、千歳余り数がございませんけれども、その他名古屋でございますとか、あるいは鹿児島でございますとか、そういうふうなところから出入りしているチャーター便というのが実はかなりございます。福岡等については定期便も出入りをしておる。  そこで、チャーターと定期の違いということになりますと、実はこれは非常にむずかしい問題がございまして、定期便を出し入れしようということになりますと、相手国との例の二国間協定の中で、わが方はたとえば千歳たら千歳を提供する、そのかわりわが方に相手国のここをもらいたい、こういうふうな形で権益の分配が適切になされるような形になってまいりませんと、一方的にこちらからわが方の都市だけを提供するというのもいかがかと、こういうふうな感じがいたします。したがって、これは今後の問題として、それぞれの空港から非常に強いそういう御要望も私ども承っておりますので、今後の旅客選択性向がどうなっていくかというふうなことを十分に見きわめながら、今後の交渉の中で配慮していく問題ではないか、このように考えております。
  11. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かにおっしゃるとおりだと思うんです。しかし、やはり今後狭い日本の中での空港を考えた場合、相手国権益というものも尊重しながらと、これは当然だと思うんですね。その当然であることを踏まえて、そういう問題点についても考慮だけではなくして、具体的に進める方向をたどれば、いまの成田満杯状態というものがある程度緩和されるのではないかというメリットがぼくは出てくるのではないだろうかということを考えますので、その点も恐らく将来計画の中に、それぞれの要望もあるということを伺っておりますので、当然、中に盛り込みながら総合的に計画を立て、それを進められるんだろうと、それはぜひ推進してもらいたいと私は要望したいんです。  これは将来のこれからの推移を見ながら、アクセスの問題がどう解消したかもう一遍われわれとしても見守っていく必要があるだろうというふうに思います。いまここで結論的にどうこうという問題ではございません。可能な限り、言うまでもなく日本人あるいは外国人利用者に対して不便を与えないということについては、さらにやはり努力を重ねていただきたいというふうに思うわけであります。  第二点は、何といっても問題なのは燃料だと思うんですね。当初、空港公団では昭和四十六年ごろの策定では一日の使用燃料というものは四千キロリットルぐらいに考えていたようでございますね。それがだんだん飛行機がジャンボ化される、燃料もそれに伴ってふえる、あるいは日米航空協定に伴うこれからの増便ということも考えられる、あるいは新たにいま問題になっておりますイラクとの航空協定ということになって、また、おいおい航空機の乗り入れというものが考えられてくる。となりますと、それに耐え得るだけの燃料というものが、これからパイプラインが貫通するまでの間、三年間、果たして確保できるのかどうなのか。ゲリラ対策も当然考えなくちゃいけない。現在は、たしか十二両編成でもって運んでいるわけでしょう、千葉ルートあるいは鹿島ルートからですね。それを空港公団の方ではもうとても足りないんで、これを十八両ぐらいにしていただかないことには充足できないというようなやりとりがあったやに伺っておるんですけれども、そういう点については解決の見通しというものがいま考えられておるんですか。
  12. 松本操

    政府委員松本操君) まず最初、おおむね四千キロリットル、こういうふうに申しておりましたのは、実は、御案内のように、暫定輸送といういまの鉄道で運ぶという話が持ち上がってまいりましたのが四十七年でございますが、その当時の羽田の実績というものを前提にして推定をいたしまして、そのころはまだ四千までいっておりません、したがって多少のゆとりを見ても四千キロリットル、おおむねその程度でよろしいのではないか、こういう理解をしておったわけでございますが、諸般の事情もあって開港が非常におくれたというふうなことから、現状では四千ぎりぎりという数字ではちょっと問題があろうかと思います。ただ、開港後現在までの実績的な数字で申し上げますと、ノースウエストがいま運休をしておるというふうなこともございますけれども、大体三千六、七百キロリットルという程度のところでございますので、これに運休しておりますノースウエスト等が入ってくるというふうなことを考えましても、四千数百というところで一応の落ちつきを見せるのではないか。もちろん先の方を考えますと、当然、これはふえこそすれ減るわけではございませんので、抜本的にはやはり先生が仰せられたパイプラインというものを、開港後三年以内という約束をはっきりしてございますので、この三年の中でパイプラインというものをつくって潤沢な燃料供給をするということが基本的な問題でございますけれども、当面は、さしあたっての問題でもたもたするというふうなことはない、こう思います。  ただ、いま十四両とか十二両とかおっしゃいましたのは、これは非常に複雑な組み合わせになっておりまして、鹿島から入ってまいりますものは十八両編成、十四両編成、たしか十三両だったと思います、それの組み合わせ、それから千葉から入ってまいりますのが十二両の組み合わせ、こういうふうな形で、大体、いまフルに運転をいたしました場合には五千キロリッター程度燃料が一日に入ってくるわけでございます。現在、きょういっぱいの終わり、つまり二週間目の終わりぐらいのところで締めまして、大体空港をオープンしましたとき程度備蓄量に戻るはずでございます。これはオープンして二日か三日かの間燃料列車輸送がございませんでしたので、その間は備蓄を食ったわけでございますけれども、その後備蓄がまた回復をして願いりました。大体開港当初の状況に戻るってくるというふうな見通しもいま持っておりますので、繰り返しになるようでございますが、さしあたって燃料問題によってピンチに立たされておるというふうなことではないと私ども理解しておりますが、将来的なことを考えれば、抜本的にはパイプラインの問題がございます。それまでの間は、いまのような形のいわゆる暫定輸送でつないでいくわけでございますけれども、これをどういう形で今後取り上げていくかというのは、もう少し運航の状況、油の消費の状況、こういうふうなものも数字的によく把握し、検討した上で中間的な方策というものが必要であれば積極的に取り組むようにしてまいりたい、このように思っております。
  13. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただ、松本さんも私なんかよりもお詳しい方でございますので、あえてどうこうということを言いたくないんですが、空港公団千葉という運用局長がいるでしょう、この方は明確に言っておりますね。近い将来――近い将来と言っても、そう日ならずしてという、大変緊迫したそういうような表現で、もう足りないことは目に見えていると。これは何とかしなきゃならぬということを考えますと、これは余り悠長なことではあかぬのじゃないか。動労がなぜ反対しているのかという問題もございましょう、ゲリラの問題もございましょう、それで警備体制がいつまでもいまのような状態が続くのかどうなのかという問題もございましょう。果たして三年間いまの状態が堅持できるのかどうなのかということになりますと、パイプラインの問題だって実際に間違いなく三年後には完成するという見通しはまだ立ってないわけでしょう、はっきり言うと。  というような、そういう要素を絡み合わせて考えてみた場合に、本当に大丈夫かなと。燃料がもし万が一のことがあればこれは致命的と言ってもいいくらいで、ですから、私は、冒頭に、問題ということよりもむしろ欠陥と御指摘申し上げたのがその理由でございましてね。だれが恐らく考えましても、そういうふうな評価をせざるを得ないというのが現状ではないだろうか。そういういま申し上げたことを背景にいたしましても、なおかつ油の確保については万全が期せられる状態が絶対に考えられるかどうか。恐らく運輸省としては考えられないというようなことはおっしゃらないと思うんですよね。けれども、いま私が申し上げたような問題が本当に解消できるのかどうなのか、この解消ができなければ大変将来にも不安をやはり残してしまうということを言わざるを得ない。恐らくこの問題もずいぶん議論がされたことであろうと思うんです。ただ外務委員会では初めてこういうことをお尋ねするわけでございますから、その点についてもお教えをいただければありがたいと思います。
  14. 松本操

    政府委員松本操君) 確かに先生御指摘のように、油と申しますか、燃料問題について非常に問題を抱えた状態であるという点はもう御指摘のとおりでございます。ただ、私どもといたしましては、戦争中の標語じゃございませんけれども、油の一滴は血の一滴ぐらいのつもりでこの問題には積極的に真剣に取り組んでいきたい。いま動労のお話なども出ましたけれども、これは航空局として直接にどうこうということにはまいりませんが、しかし、国鉄というものは同じ運輸省の管轄の中に入るわけでございますので、そういうふうなところとも十分に詰めをしながら、いやしくも先生の仰せられたようなことに立ち至らないように最大限の努力をしていかなければならない。  ただ、現時点においては、先ほど御報告申し上げたようなことでございますが、だからと言って気を許してしまっていいというふうな問題ではなく、したがって運用局長という直接空港運営の責任者である千葉理事としてはそういった気持ちを何らかの機会にあるいは率直に表明したのであろうかと思いますけれども、私どもそういう点は十分に踏まえた上で、しかし、この暫定輸送になってどうしてこんなに問題が複雑になったかという、この経緯も実は非常に貴重な教訓として私ども学んでまいったつもりでございますので、そういう点を存分に生かしながら今後の燃料問題に取り組まなければならないのじゃないか。  パイプラインも、確かにいま手放しでどうこうして三年後にちゃんとつくってごらんに入れます、安心しておりますというふうなことは私申し上げませんけれども、しかし、これもかつてのパイプライン計画において踏んできました轍を再び踏むことのないように、地元に対する説明等もすでに数十回にわたって行っておりますし、かなりの理解を得つつあるというふうに私ども聞いておりますので、そう遠くない時点で本計画がきちっとした施行上の問題として動いていくように、いま特段の努力を払っている段階でございます。
  15. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それ以上のことを私はお伺いしようとは思いません。それが精いっぱいのいま運輸省として考えられる最大公約数だろうというふうに思います。ただ、いままでの例をいろいろ振り返ってみますと、この種の問題はかりじゃなくて、常に後手後手に回るという、そういう手の打ち方が余りにも多過ぎるという問題がございます、大変抽象的な言い方かもしれませんけれども。起こってからでは間に合わないことは言うまでもありません。可能な限り、考えられる限り、やはりその防衛体制というか、油の確保についても当然のことながら万全を期していただかなければ、それこそ世界にまさしく成田というのは欠陥空港である、寄りつかないということになったんではもう手の施しようがない。もう絶対後に引けませんし、前へ進む以外にない。これから日米航空協定の問題も出てくるでしょう、サウジアラビアあたりがまた乗り入れをしたいということで新しい航空協定が結ばれる時期も来るでしょう。いまの問題は将来に譲るといたしまして、これからも特段の努力を重ねていただきたい、これも要契ぐらいにしかとどめられないわけです。  それから、気になる問題の次には騒音ですね。当初のテストと違いまして大変ないま騒音公害をまき散らして、前回もちょっとその点について触れました。恐らくこれからもっと激しくなるだろうと、それは乗り入れる機数がどんどんふえることによって当然それは予測されるわけでございましてね。これもテストの段階とはもう全く違う。その辺の、地域住民の了解というものは取りつけられるのかどうなのか。これに伴う問題として、夜間飛行については、いま成田市でございましたか、午後の十時から翌朝の七時まではもう禁止してもらいたいという要望が出ているわけでしょう、これに対応できるのか。もし対応できないということになった場合に、あるいは反対同盟のそうしたような存在にまた力をかすみたいなことになったんではもういかんともしがたいというようなことも憂慮にたえないわけでございますけれども、いまそうした地元からのそういう大変厳しい騒音規制に対する要請に対しては、これからどんなふうな考え方でお取り組みになるというお考えでございますか。
  16. 松本操

    政府委員松本操君) 確かに騒音問題は空港が動き出しました途端に非常に大きな問題になり、かつ空港が動いております限り続く非常に息の長い問題でもあるわけでございます。特に日本における空港騒音問題というのは幾多の事例を私ども経験してきておりますので、成田についてはそういうことを繰り返したくない、こういう趣旨で騒音防止法に基づきます線引きを五十一年早々にいたしますと同時に、それに伴う移転補償なり、あるいは家屋の防音工事なり、あるいは学校、病院等の防音工事なりというものを公団をして進めさしてきたわけでございます。  たとえば家やの防音で申しますと、八百余戸のうち約五百戸ではともかく防音工事を御了承をいただいて済ましたわけですが、残りのところはまだもう少し音を聞いてからとか、あるいは全室防音でなければ困るとかいうふうなことで残ったままで実は開港に及んでおります。そうしておりますうちに、全室防音ということについて非常に強い御希望があるということが私どももはっきりとわかってまいりましたし、また、そういう御希望があるのもごもっともと、こういうことでございますので、五十三年度におきましては、とりあえず成田の周辺六世帯と申しますか六戸と申しますか、につきまして全室防音をした場合のいろいろな設計でございますとか、遮音の効果でありますとか、あるいは居住性でございますとか、こういうふうなものをモデルハウス的なものをつくってチェックをしてみよう。これは御承知のとおり成田空港は田園の中の空港であり、それだけにまた騒音問題が特に問題になるわけでございますが、田園地帯の家屋というものは非常に家のつくりがまちまちでございまして、都市型のような一律の形ではまいらないというふうなこともございますので、六戸のそういったモデルハウスをつくろう。すでに二戸については工事に着手をしておりますが、これらを行った上で十分にデータをとって、この秋ごろまでにはきちっとしたデータを手に入れたい。そして標準的な設計というものも決め、またそれをもとに県なり、あるいは市、町と御相談をしながら今後の防音工事というものをどうするかということを御相談して進めていきたいと思っております。  さしあたっては、新聞等にも問題になっておりますが、現在、引いてございます騒音コンターというものが実情に合っているのかいないのかという点についてのチェックをするのが何よりも急がれることではないか、こう思いまして、二十六日から一週間という予定で第一回目の騒音の実測調査をいたしております。昨日終わったばかりでございますので、委細のデータがまだ整理が終わっておりません段階でとやかく私が断定的に申し上げるのははばかりたいと思いますが、一応、この一週間の測定の結果の概貌的なもので見ました限りでは、そう大きな修正を要する部分はないのではなかろうか、こういうふうに思っておりますけれども、なお、この点は十分にデータを調査したし、関係市なり町なりとも御相談をして、せっかくとるべき措置があれば、その修正なり何なりの措置をとっていくようにしたい、このように考えております。
  17. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もうすでに伊丹の例があるわけですので、これはもう内陸空港の特有性と言っていいほどの特徴があるわけでしょう。確かにデータをおとりになって再検討されることも結構だと思いますが、余りにも時間がかかり過ぎているんじゃないかと思うんですね。どうしても成田でいくんだということを決めてから十二年間かかって、それは当然考えられるいろんな問題があったはずですね、この騒音もその一つの例であったろうと思うんです。  予想を裏切るそういうう結果が出る場合だって、それは当然考えられるわけでありまして、これはもうあらゆる面をとらまえてどうするか、どうするかと、その場合、地元民とのコンセンサスというものが果たして得られるのかどうなのか。そうでなければ、また係争問題でしょっちゅうそういうことばっかりやっていたんでは地元住民も大変だろうし、当局としても大変だろう、そういう繰り返しが今回もまた始まるわけでしょう。だから、その後手後手に回るということについても、一体、いままで何をやってきたんだなんというふらちなことは言いたくないですけれども、そういうやはり受けとめ方をせざるを得ないわけですね。  しかし、いまどうこう言うてみたところで始まらないわけでございまして、先ほど私が最後に申し上げた十時から七時までの運航をやめてもらいたいという問題については対応できますか、できないでしょう、これは事実上。
  18. 松本操

    政府委員松本操君) この点については確かに成田市あるいは芝山町からそういうふうな御要望があったことは事実でございますが、県の力とも十分に御相談をいたしました結果、やはり国際空港として運用をいたします以上、夜の十一時から朝の六時まではお休みにするけれども、その間の十七時間は動かさしていただきたい、こういうことで私どもお願い申し上げ、一応の御了承は得ているというふうに私ども理解をしておるわけでございます。  ただ、そのときにいろいろと付加されてまいりました条件と申しますか、そういったようなものがございまして、たとえば騒音の障害の防止に関する特別措置法というふうなものをつくって、今後、いま先生がいみじくも仰せられました大阪のような広範囲にわたって騒音をばらまき多くの人たちが迷惑をするというふうなことがないようにしろとか、あるいは同じくその法律の中で空港周辺の地域開発的なものを積極的に取り上げるようにすべきであるというふうな点については、実は、今国会で成立さしていただいて、十月からこの法律が動くという段取りに相なっておるわけでございますが、そういうふうなことをも含め、現行の騒防法を積極的に動かしていく。さらにはまた、先ほど御報告申し上げました全室防音のようなものも、これも実は成田の御議論というものが一つの引き金になりまして、私どももこの方向に踏み切っていったというふうな次第もあるわけでございます。  したがって夜の十時にとめてしまえと仰せられましても、あるいは朝の七時まで飛ぶなと言われましても、なかなかに国際空港としてはむずかしい点があるという点は繰り返し御説明をし、かつ御了解を得るように努力をしていかなければならないと思いますが、それだけにまたいまいろいろと御指摘のありました騒音防止対策について私どもの方は誠意を持って後手、後手に回ることのないように対処をしていくという点で努力をしていきたい、こう思っております。
  19. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 昼間飛んでいるときにはそうさほども感じない場合がありますけれども、静寂のしじまを破ってやられたんじゃもうたまったものじゃないんですよ。御経験がおありになるかどうかわかりませんけれども、私は小牧でもやはりそういう経験をしております。それはもう小さな子供や何かいた場合にはもうたまらない状況ですよ。松木さん御自身も実際に実験されてはだでお感じになったかもしれませんけれども、それはしょっちゅう、毎日なんですからね。われわれの場合にはちょこっと行って騒音がどういう状況になっているかということをただ体験的に味わうだけの話でございましてね、住んでいる人は毎日それに襲われているわけですから。  さりとていまこういう住宅事情ですぐどこかへ移りたいと言ったってそう簡単に移れないというようなことについても、これはもう社会問題としても当然起こり得る、予測される問題として、いまこの段階になってから騒音テストをやってやり直してどうこうなんということは非常に手おくれじゃないかという、これも将来地元の成田市にしても芝山町にしても、どういう話し合いでまとまるかはぼくはわかりませんけれども、いずれにしても非常に大きな禍根を残しながら、とにかく開港と、将来問題なければいいんですよ、問題が起こってしまったんでは、それこそ取り返しのつかない国際信用の失墜、これを恐れるから私どもはくどいようにそういう問題の指摘をいままで続けてきておるわけなんです。  これ以上言ったって水かけ論みたいなことになりそうな気配でありますので、もう一つ確認をしておきたい問題は、いつでしたか、しばらく前、先月くらいですか、日本航空を初めとする機長会において運輸大臣に申し入れた事項があったでしょう。百里、成田、羽田のレーダーというものを一元化するわけにいかないかという問題、この点は将来進むんですか。
  20. 松本操

    政府委員松本操君) いまのお答えの前に、私の方も、くどくなって恐縮でございますが、騒音対策の方はこれから騒音をはかって何かしようということではございませんので、私の御説明が悪かったのかもしれませんが、一応、いわゆるコンター線引きはできている、それによって手は打ってまいりました、多少残っております。そこで実際に飛行機が飛んでコンターが違っているじゃないかということでは初めから話になりませんので、それを確認することをいま取り急ぎしておるということでございますので、御了承をいただきたいと思います。  それから、いま御質問のございました百里、成田、羽田、これを一元的に管制をするという問題は恐らく広域管制のことを御指摘になっておられるのだろうと思いますが、私どもといたしましても、わりあい近い将来に広域管制に持っていきたいというふうに考えております。それをなぜわりあい近い将来にというふうに申し上げるかと申しますと、実は、遺憾ながら私どもの管制が輸入品で、戦後、米国の管制システムというものを輸入して、一本立ちになってまだやっと二十年ぐらいしかたっておりません。したがって広域管制というものについての十分な技術というものをまだ私ども身につけるに至っていないという、そういうふうな問題もございまして、したがって、いま鋭意その調査研究をしておる段階でございます。それまでの間は、個々の空域の中は一つの管制機関が専属的に管制をするという、従前の私どもの最も手なれた手がたい方法で安全確保をしていきたい、このように考えておるわけでございますが、しかし、いま鋭意新しい広域管制という方向についての研究をしておる段階でございますので、そう遠くない時点で関東空域に、全部か部分的か、そこら辺のところはまだ決まっておりませんけれども先生のおっしゃられたような広域管制の方向で管制をしていくということが実現できるというふうに私どもは考えております。
  21. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 パイロットにとってみれば、それは広域管制の方が安全の確度の上から言って非常に安心が持てるということなのかどうなのか、それはわかりませんよ。ただ、ニューヨークあたりではすでにそういう方法を実行しているわけでしょう。ラガーディアだとかケネディだとかニューアークというような先鞭をつけた国の問題もありますので、恐らく、そういうところからも資料なんかを取り寄せられながら、あるいは研究の対象にされているのかもしれませんけれども、いずれにしても近い将来はその可能性があるというふうに確認しておいてよろしゅうございますね。
  22. 松本操

    政府委員松本操君) いま先年がおっしゃいましたラガーディア、ニューアーク等は、実は、空港空港との洲の距離が関東地方におきますよりもはるかに近いんでございます。したがって広域管制という手段を使いませんとむしろできないと言った方が正しいのではないかというようなトラフィックの状態になっている。ところが、いま私どもが取り組もうとしております広域管制は、たとえば成田と百里の間が二十六マイル、成田と羽田の間が三十マイルというふうに中途半端に離れておるものですから、したがって空域を分けた形でも安全上支障がなく扱えるわけでありますけれども、しかし、将来の方向づけといたしましては、やはりこれらの空港を一元的に管制するという形によってむしろトラフィックの質を向上させるというふうな方向へ向かっていくべきであるというふうに私ども思っておりますので、方向づけとしては、先生が仰せられた方向で、いま鋭意研究しておるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  23. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、地元住民との対話、これも気になる問題なんですね。これが満足にいきませんと、恐らくいま計画を進められているB滑走路にしても横風用滑走路にしても大変むずかしいんじゃないかということを懸念するわけですけれども、これはあれですか、稲永さんも大変な決意でもって開港前後取り組まれたいきさつもありますけれども、その後進んでおるんですか。  大変物騒なことを言っているわけですね、地元住民というのは。反対同盟の方ですか、われわれは百日闘争だとか、開港になればしゃあない、ついに開港しちゃったかというあきらめが出てきて恐らくだんだんだんだん抵抗運動も弱まるであろう、そんなことももう十分計算済みだと、いろんな向こうの幹部の方が言われていることが伝えられておりますね。決して彼らの抵抗運動というものは弱まっていない。そういう環境の中で、今後、話し合いというものが進められる可能性というものが十分考えられるのかどうなのか、これも難問中の難問だろうと私は思うんですね。  とにかく、出発点からボタンを一つかけ違えたまま今日まで来ちゃっておるわけですから、過去のことはともかくとして、現状大変厳しいと言わざるを得ないけれども、ただそればっかりでは問題の解決になりませんので、運輸省としては、いまどういうふうにこれから具体的に進められるその方針をお立てになり、また現実にどういう根回しが進んでいるのか、その辺を参考までに聞かしていただけませんか。
  24. 松本操

    政府委員松本操君) 非常にむずかしい問題について御指摘があったわけでございますが、ボタンをかけ違えたのではないかということをしきりに替われ、私どももいや全然かけ違えなどいたしておりませんとは申しませんけれども空港の用地六千十五ヘクタールの中に三百二十何軒の実は地権者がおられたわけであります。現在は、それが十七世帯になっておるわけですが、その残余の三百何世帯という方々とは実は無理無体をした覚えはないのであって、お話し合いの中で処理をしてまいったわけでございますから、したがって話し合いの中でおのずから道を通じていくというこの考え方は実は私ども当初から持っておりましたし、いまでも少しも変わっていないし、むしろ強くなっている、こう御理解いただいてよろしいと思うんですが、ただ、いまのようになっておる段階でどういうように話し合いをしていくのかという手段方法ということになりますと、これは仰せのとおり非常にむずかしいということが言えるかと思います。  ただ、やはり成田問題の抜本的な解決策というものは、これら反対派農民の方との話し合いというものの上に立って解きほぐしていかなければならない、こういうふうに考えておりますし、ことさら、その中心になる問題が農業問題、つまりあそこは北総台地という非常にりっぱな農村地帯と申しますか、そういうところで長年かかって開拓、開発をしてこられた方々との話でございますので、農業問題というものを離れて単なる用地買収的なアプローチをしていたのでは、これはらちが明かないのは十分いままでの経験で私ども身にしみてわかったわけでございます。  そういうふうな点を十分踏まえまして、今後、いろいろな点で私どもの方も積極的に施策を打ち出しながら、あらゆる折をつかまえて反対農民の方々との話し合いの糸口を開いていく、こういうふうにしてまいりたい。そして、ただ単に、開いてしまえばおのずから道が開けるというふうなそういった無責任なことではなくして、むしろ積極的にこの問題に取り組んでいきたい、こう思っておりますので、この点につきましては、事柄の性格上、具体的にどうこうというのをいま申し上げられないのは残念でございますけれども、せっかくの努力を続けていく決心は強く持っておる点を十分に申し上げておきたいと思います。
  25. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 きょうは、警備当局の方もいろいろな予定のスケジュールでこちらへお出かけをいただけませんでしたし、まだまだ、この問題については、もう少しく確認をしておかないと気が済まないという私自身の気持ちも実はあるわけです。  いまの地元住民の御答弁の歴史的な経過の中にはちょっと私は不満を持つ側面もあります。ただ、運輸大臣が言われた決意表明とはやっぱりずれがありますよ。運輸大臣の方は素直だとぼくは思うんですよ、率直に述べられていると思うんです。やはりその原点から今日までの経過を振り返ってみるまでもなく、それは当初から問題があったから今日まで尾を引いているのであって、だから、いま反対の農民の方々の説得に対しても意固地なくらいに、自分の生活がかかってきておりますからね、二十年、三十年の長い苦労に一体どう報いられるのかという、彼らとしては納得のできないそういう仕打ちをされたわけですから、それは一般論から見た場合にうなずけたいことはございません。だからといって、現実がこういう事態に推移してきた以上は、それをどう一体解消するかということがこれからの残された問題点であります。  以上、いまずっと成田について私が感じて、またどうなのかなという不安を持っている問題について、私は、やはり将来にまだまだ問題が残ったままこれから推移するであろう。どうしてもやはり松本さんは運輸省切っての弁論の立つ方だというふうに私も伺っておりますけれども、非常にそつのない御答弁をされていらっしゃいます。それはそれで結構だと思うんです、私はそれ以上のことを求めようとも思いません、大抵その程度答弁しか返ってこないだろうと。きょうは運輸大臣がどうしても都合があって来れないというので残念でしたけれども、ともあれ、当事者として大変な御苦労もあったろうと思います。しかし、どうか今後も乗り出した船でございますから、その針路を誤らないようにがんばっていただきたいなと、こう思います。  最後に、時間もありませんけれども、やはりもう一つ気になる問題は、せっかくイラク航空協定なんですけれども、本論に入れずに関連ということでいま申し上げているわけですけれども日米航空協定ね、これは前回もちょっと他の同僚議員から発言があったようでございますけれども、大変息の長いマラソン交渉をやっているという印象を受けますね、一体、この決着がつくのかどうなのか。  恐らくサンフランシスコ講和条約あたりまでさかのぼらないと、その淵源というものは明確にされないんじゃないかという印象も受けるのですけれども余りにもアメリカの主張というものが強過ぎて、一体、日本権益というものがこれから守られるのか。以遠権の問題もありましょうし、それから航空運賃の値引きですか、こうしたことが絡んでくる。いま国際的にも趨勢としては、アメリカにならおうとしている国がふえてきているということを考えた場合、日本としてもあるいはそれに同調せざるを得ないんではないかというふうになった場合、一体、どうなるんだろうと。これはきょう残念ながら、細かくいま伺っている時間がありませんので、包括的にちょっとその辺の実情について、これは外務省の方がよろしいですか、松本さんの力がよろしいですか、当然、運輸省にも関係のある問題ではありましょうけれども、お教えをいただきたいと思うのです。
  26. 北村汎

    説明員(北村汎君) 先年御指摘の日米航空交渉は、ここもう一年半ぐらいアメリカとの間でやっておるわけでございますが、とにかくこの一九五二年にできました協定は、当時、日本航空もほとんど飛行機もなかったようなときに比べて、アメリカの方はほとんど世界の翼を独占しておった、そういう状況を反映して、路線権であるとか、あるいは以遠権であるとか、いろんな点で権益の不平等というものがございますので、私どもはこの権益の不平等をとにかく直して、そしてお互いが同じスタートラインに並んで競争をするというような関係に立とうではないか、こういうことで鋭意説得の努力をしてきたわけでございます。  去る三月、ワシントンでも第六回の協議を行ったわけでございますが、ほとんど問題点は出尽くしておりまして、双方の立場について理解は進んだわけでございますが、しかし、日本側の、要求は、たとえば現行の協定でございますと、日本は七つの地点にしかアメリカに乗り入れられないのに対して、アメリカ側は十一の地点から日本に乗り入れておる、それだけを見ましても不平等があり、片やまた以遠権の面では、向こうは無制限な以遠権を持っておりますのに対して、私どもはニューヨーク以遠ヨーロッパという以遠権だけでございます。そういうことでありますので、まずこの点を是正した上で、それでアメリカの言うチャーターの自由化とか、あるいは低運賃の問題とか、そういうものを話し合おうではないか、こういうわれわれは血眼をしておるのでございますが、アメリカの方は、先生も御指摘のように、非常にチャーターの自由化とか、あるいは低運賃という問題はこれからの国際航空の分野において非常に重要な問題なんで、これを切り離して日本との航空協定の改定をすることはできない、こういう非常に強い態度を示しております。わが方としましても先ほどから問題になっております成田空港におけるいろんな問題もありまして、アメリカ側は、成田空港におけるきわめてはっきりした増便の枠を示せ、それを保証しろ、こういうような主張もしております。そういうこともあって、なかなか三月の交渉はまとまることができませんで、秋に延ばしたわけでございます。  その見通しということでございますけれども問題点はもう出尽くしておりますので、われわれ双方とも、アメリカも日本も、いまのお互いの立場を十分検討しまして、それで秋に何とか話をまとめたいと努力するつもりでおりますが、私どもとしましては、粘り強く、かつ毅然とした態度で臨むということで、目下、いろいろ検討しておるところでございます。
  27. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 どうですか、大変がんばっておられるようですけれども、大変長い歴史の中で日本の主張というものがなかなか受け入れてもらえなかったという経過もあることを考えてみると、今回もまた大変厳しい条件をむしろアメリカ側から突きつけられる方の可能性が強いのではないだろうか。この間、福田さんが訪米いたしまして、そういう話し合いもされたのかどうなのかわかりませんけれども、一度そういう点についても、この外務委員会に総理に来ていただいて、日本権益にかかわる問題でありますだけにお尋ねをしようという考えもあったんです。その前にやっぱりそういう細かい実情というものを伺っておいた方が便利かと思いましてね。  やはり以遠権の問題、日本にとっては、これは致命的でございまして、どうして一体この日本の主張というものが認められないのか。確かに平均的に考えてみても、アメリカの方がはるかに有利であることは、だれが見てもこれは理解のできるところであり三して、日本としてそうした主張というものをどうして通せないのか、はね返すことができないか。九月ごろに予定されている日米航空協定の交渉に当たって、その辺がどの辺で妥協できるものなのか、最大公約数としてですね、この点だけきょう伺って終わりにする以外、時間がありませんので、おしまいにしたいと思うのですが、もし妥協点が見出されて一応の決着が出る、日本の主張も取り入れられ、向こうの主張もある得度のまなければならぬというその辺は、どの点で大体落ちつくような気配が予測として考えられますか、全く予測はつきませんか。
  28. 北村汎

    説明員(北村汎君) 三月の交渉で、いま先生御指摘の点を私どもも詰めようとしたわけでございます。それで私どもとしましては以遠権とか、あるいは路線権というものをとにかく平等にしてもらいたいという主張をしました。ただ、向こうは、さっき申しましたように、チャーターの自由化と低運賃の導入という問題は切り離せない、こういうことでまいりますので、そこで日本の航空政策の面で、チャーターの自由化と申しましても、どういうところまでいけるのか、低運賃の導入といっても、どの点までいけるのかというところが非常に日本としても問題としなければならぬところでございまして、特にまた、アメリカと日本とにおけるお互いの航空面における発展段階と申しますのはやはり違うわけでございます。アメリカでいいことが必ずしもそれがすぐ日本にいいというわけにはまいりません。そういうこともあって、チャーターの自由化と申しましても、もちろんその方向では日本も考えておるわけでありますけれども、しかし、アメリカが要求するようなほとんど完全に近いチャーターの自由化というものは、これは日本としてもすぐには受け入れられないところであろうと思います。  そこで、いま先生がおっしゃいましたように、アメリカの主張と日本の主張とどのあたりでバランスをとるのかということでございますけれども、やはり私どもとしては、チャーター問題とか低運賃の問題というものは、これはやはりいまの現行協定の枠の外にある問題である。まず、この現行協定の問題の不平等性をたくそうということを主張して、そうしてアメリカの方の主張に対しても、私どもとしてもできるだけ前向きなところで解決策を図るということしか解決はないのじゃないかと思います。そういうことで、見通しはやはり非常にむずかしいわけでございますけれども努力いたしております。
  29. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 締めくくりといたしまして、不十分で終わってしまったわけですけれども、愛野さん、いま運輸省松本さんとのやりとり、それから外務省の方とのやりとりを通じまして、いろいろ要望を込めて私いま質問をさしていただいたと思うんです。当然のことながら、いま申し上げたようなことを十分踏まえて、政府といたしましても、成田成田として、また日米航空協定については日本権益が侵害されないという方向に向けてぜひお取り組みをいただきたいということを申し上げて、本日は、この程度質問で終わらさしていただきたいと思います。
  30. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  31. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、航空業務に関する日本国イラク共和国との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 本論に入る前に、いま世界が大きく変わりつつあるので、この潮流の流れにさお差して日本の国の対処する姿勢というものを明確に打ち出さないと、日本は世界の大勢から置き去りを食ら危険性があるので、いままでの日本の置かれている立場からして、今回の国連における軍縮の会議には当然総理大臣がみずから乗り込んで、日本の外交に関する基本的姿勢を述べることを私たちは期待しておりましたが、福田さんは二枚腰というか三枚腰というか、自足党の中の人でも福田さんの腰の置きどころがわからなくなってしまっているとぎだから、この点はあるところまで問題を明快に割り切れる勇気と決断がある園田外務大臣にでもというので、恐らく全権をゆだねて出席させたのでありましょう。  新聞では、七割ぐらいほめて、三割ぐらいはぼけているとありますが、いまの自民党のぼけ切った外交に対する体制の中では、あれだけよく思い切って私は言ったと思うので、みずからの責任において自民党の危機を救おうとしたんでしょうが、自民党の危機を救うというよりは、日本の外交的な基本的姿勢というものを諸外国に率直に訴えた役割りというものは非常に私は高く評価しています。表現の形式やもっと具体的なと言うけれども、いまの自民党の外務大臣や総理大臣をやっていた日には、具体的な問題を提唱したらすぐに足を引っ張られてつぶされちゃう危険性があるので、よくまああの程度のすれすれのところまでは言ってきたと思うのですが、問題は、その成果です。諸外国の反響を外務大臣はどのように受けとめてまいりましたか。
  33. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、お答えする前に、一言だけ御礼を申し上げることをお許しいただきたいと思います。  特別軍縮総会に対しては、終始熱心な御指導、御意見を賜りまして、私参りますのに、非常に貴重な意見として参ったわけであります。絶えず御指導、温かい御援助を賜ったことを厚く御礼を申し上げます。ただ、私は、各位から御指導を賜りました点は一点残らず演説の中で主張してきたことだけは御報告をしたいと存じます。  今度の軍縮総会で、私は、第一は日本の立場を鮮明にすること。そして二度と再び日本が後戻りができないようにくぎを打とう、こういう考えでございまして、憲法九条、非核三原則、平和国家、こういうことを鮮明にしてまいりました。  第二番目には、いま主で日本は理想はこうではあるが現実がこうであるからできないという、こういう論理でありましたが、私は、現実はこうではあるが、社会の必然性はこうであるから理想に向かって一歩でも前逃していかなければならないという意味でやってきたわけであります。  なお、この軍縮特別総会では、協定であるとか決議であるとか、こういうものが出る可能性は少のうございまして、最後は、共同声明みたいな文章で各国の主張を提案したものの同窓の多いものからずっと列挙していく、そして将来これを再び軍縮総会か軍縮委員会で具体的にだんだん持っていこう、こういうことだと思いましたので、なるべく幅広く、突っ込みが足りなかったかもわかりませんが、少なくとも各所に突っ込んできりをあけてきたい、こういうことでやってきたわけであります。  まず、私から言うのは何でありますが、民間団体五百三十名が行っておられた。これが主義主張、思想、活動方針が全く違う方ばかりであります。行かれる前に、外務省の事務当局は、これは私から言うのは変でございますけれども、いままでこういう団体に対しては外務事務当局はわりに距離をとって間違いが起きぬようにとやるものでありますが、国連局長以下進んでこういう団体の方々と懇談会を催して、私もお願いをして、外へ行ったら足並みそろえていこう、帰ってきたらまたけんかしてもよろしい、こういうことで、向こうへ行きましてもそういうことだったんですが、実によくやられまして、米国の国民から反感を受けるとか、あるいはいやらしいという感じを受けることなしに、国連事務総長以下高く評価をして、丁重にこれを扱い、また五百三十名の方が足並みをそろえてやっていただいた、これは非常な成果であった。  そこへ私が演説した。私の成果は自分のことなのでわかりませんが、ただ、まず米、中国、ソ連、特に米国から、よく思い切って言ったと、いままで日本が米国、ソ連、中国、フランスなどと名前を挙げて要請をしたり批判をしたことはなかった、あれくらいやった方がいいと言われたことが非常にうれしかったことと、何かわからぬが、いままで胸にたまったことを言ってもらったという気がしたというのが米国におられる在留同胞や駐在の日本の記者の方々の御意見でありましたから、決してこれで満足すべきものではなくて、いま戸叶先年がおっしゃったように、私がみぞをあけてきた、このみぞを今後どのように具体的にどんどんどんどん進めていくかということが大平であると思いますけれども、一応、皆様方に日本の立場を理解してもらったという点だけは曲がりなりにもやってきた、このように考えております。
  34. 戸叶武

    戸叶武君 いま外務大臣が言われたように、外に行ったら仲よく、帰ってきたらけんかしてもよいがというぐらいな幅と見識を持って、今後、政府と国民運動というものがあるところまで一体化していかなければ国際世論を変えていくということはなかなか困難だと思います。  そこで、非常に残念なのは、問題は国民ではたく、今日の派閥化されて次期政権を担うために総裁がどうだとか、次期総理大臣に総裁がなるだろうから、そうしたらどうやって大臣にでものめずり込もうかという形における最近の与党の動きを見ると、派閥次元の政争は苛烈化してきたが、世界において日本の立場を明快にすべき問題に対してますます不明朗な形を増大していると思うのであります。私は、このような政党は国民から解体すべしという憤りが必ず起きると思うのです。いまの野党がだらしないからというのが定説になっておりますが、しかし、それ以上に現在の政府の基盤となっている政党がどっちを向いて物を言っているのか、何を考えているのかわからないようなばかげた政党が世界のどこにありますか。  いま重要な問題で、あなたは、国連の場において、日本の平和憲法の線あるいは非核三原則、核拡散防止、積み重ねた日本の平和共存の外交路線を明確に打ち出してきた。素朴にして明快。それはよいとして、あなたの政党の総務会長の中曽根何とかという人は憲法九条改正を強調している。憲法九条改正というものは平和憲法の骨を抜くことです。あなたが国連に行って骨折っても、あなたの方の総務会長は骨を抜く方に力を入れている。こういうふうな全く逆な方向に突っ走っている政党が近代政党と言えますか。右回りにだんだん世界がなったから、おれはその右の方の通行をするんだと。沖繩あたりでも左側を通行することに戻ったのに、天下の大勢が、とにかく日本においては右側通行より左側通行というのが常識になっているのに、こういう佐々木巌流の物干しざおじゃないが、物欲しそうな刀をぶん回して、そうしてファシズムム台頭の中核になろうというようなおかしげな政治家が出現しておるが――これは個人攻撃じゃないですよ、本当に私は憂えているんだ。  いつでも何かあると、何か物欲しそうに先取りをするというのが流行していますが、あなたは政府と政党とは運営のやり方が通うと思うかもしれませんが、議会民主主義の政党においては、政府と政党の中に基本的理念において貫くものがなければ近代政党とは認められないんです。それで先ほどあなたは、言いたいことは言ってきた、それから日本の真意を外国に伝えてきたと。さて自分の足元をのぞくと、洪水が届きたときのように、がらがら自分の足元がほじくられている状態ですが、まあ政党と政府は違うというつもりでしょうが、もう少し政府も、総裁兼任の福田さんの方が責任があって、あなたはないか、まあ仕方がないとして、これじゃとにかく天下の政党として一番劣悪な政党が政権を握っているということになると思うんですが、政治は、互いにそう考えると同時に、国民とのパイプが通ずる力を必要とするのでありますが、これは一体どういう現象なんです。国連の場では明快に大胆に外国には表現できるが、国に帰ってみると、自分のふるさとは荒廃して、自民党の中においては総裁にもこそこそと耳打ちでもしなけりゃならたいような状態だと、これは国民にはわかりませんよ、通じませんよ。  どんなりっぱな演説を国連でやっても、自民党の三役という幹部の中において、このようにファシズム台頭期における波に乗って憲法九条を骨抜きにするんだというような再軍備論者がおる日には、諸外国に、福田内閣というのは二枚腰だとはかねがね聞いてはおったが、まさしくどっちを向いているのか、右を通行するんか左を通行するんか、その道路法の方だって危うくなってしまったんで、本当にこの福田内閣みたいなのを相手にして外交はやれぬという、隣の疑心暗鬼に非常に神経質になっている中国でもソ連でも、中国、ソ連だけでなく、世界の国々から、外交はいまの自民党には任せられない、福田さんあたりなら任せられるけれども、園田さんだってそれほどの力を持っていないかもしれないという疑心暗鬼が生まれたら、これは一体どうなるんですか。そこいらはあんたから回答を聞くのは無理だろうから、そうすると、いよいよあなたを窮地に陥れちゃいけないから、やっぱり国民の意向がそういうところに、外国でもそういうところに疑心暗鬼が生まれているので、私は答えられませんでしたが、総理大臣どういうふうに答えたらいいでしょうか、中曽根さんどう答えたらいいでしょうかと言って、あちら側にあなたから質問してもらいたいと私は注文をつけておきます。  これは本当に日本の政党政治の危機です。こんなばかげた政党に政権を握らせているというのは、国民も国民だが、野党も野党で、全く恥ずかしい次第だと思うんです。そういうわけで、もう少し堂々の外交、防衛に対する論争も政党政派を乗り越えてやらなければ、国民の政治不信が非常に深刻化しているんですから、あっと驚く為五郎じゃ間に合わないような一つの突発的な平攻が起きる危険性があるということをかねがね私は政府に向かっても警告しているんですが、本当に危険なシーズンになっておりますから、梅雨に入る前にあらかじめこのうっとうしい政界の空気、これに対応しないと、成田でたくて福田内閣の足元から東海地震以上のものが起きる危険性があるということを、私はだんだん予言者に近くなってきましたから、それを予告しておきます。  そこで、問題は、この軍縮の問題だけじゃないですが、今後、国連局長の意見もあってとあなたは言いましたが、外務省でもいままでの外交官とは違った、国民とパイプが通じ、国際世論に訴えることができ、それが反響を及ぼすような外交というものが必要であるということを、今度の国連における軍縮会議の場においても舞台装置をする人たちがそのことを考えてきたということは日本の外交の大きな質的転換だと私は思いますが、外務大臣はそれをどのように評価しますか。
  35. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 御発言のとおりだと私考えておりまして、いまきわめて大事なときであります。外交については、大多数の野党の方々それから与党、手段や突っ込み方、速度の差はあっても、目標は完全に一致したものでなければ外交はできない。その目標とは、これは共通の目標、いわゆる戦争のない社会、平和の中に繁栄を求めていくという外交、それに基づく内政ということだけは狂ってはならぬと思います。  その方向で、手段とか突っ込み方の速度の変異はあっても、そういう方向に行くべきであって、そのためにはやはり民主主義国家でありますから、その過秘においてはいろいろ御意見や御異存もあると思いまするけれども、少なくとも世界の方向、世界の必然性はもうすでに決定していると思います。その必然性に向かって微力ながら全力を尽くすことが外務省の仕事であり、また与野党各位の御意見を承りながら、国民の心と切れないようにやっていくということが一番肝要である、このように考え、若干の矛盾や錯誤があっても、矛盾と錯誤を乗り越えつつ必然性に向かって前進すべきときであるとかたく決意をいたしております。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 国連において、中国側の代表とも接触をして、中国との交渉を軌道に乗せることに大体決まったようでありますが、中国の方にはいつお出かけですか。
  37. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 日中友好条約の交渉は申し入れをすでにやって、正式に、こちらは交渉再開、中国は再開ではない継続だと、こういう食い違いはありますけれども、いずれにしても両方で話を進めようということは合意をしたわけでございます。  そこで、相手のあることでありますし、またその話し合いによって決まってまいるわけでありますが、大体の見通しを申し上げますと、佐藤大使が韓念竜・佐藤会談をやって申し入れをいたしましたから、今週中か来週になるかわかりませんが、そう遠からざる時期に向こうの方から具体的に、こちらから見れば具体的に何日ごろから始めようとか、あるいはどういうふうにやろうとかということを申し入れておりますから、それに対する返答があると思います。あったら直ちに佐藤大使を召還するつもりでございます。そして今度は間違いがないように、総理なり私から具体的に佐藤大使に指示をして帰す。国会の模様も考慮しながら、それが済んだら、ある時期に中江アジア局長に数名の専門家をつけて佐藤大使の相談役として送る。そして、ここまでくれば事務折衝と政治折衝の区別はないわけであります。一体となって、たとえばこの条約を改めて両方から案を出すのか、いまのままの案の続きでやるのかという事務的な整理を詰めて、そしてある段階に総理のお指図があれば、私が中国に行って話をする、こういう段取りでございます。  さて、私がいつ行くかということは、その話ぐあいによるわけでありますから、私自身がまだ申し上げる時期ではございませんけれども、ただ、私もASEAN外相会議に出席をしなきゃなりません。ここで四日間ぐらいはかかるわけであります。日豪の定期会議もあるわけであります。それから先進首脳者会議に外務大臣がお供することもあるわけでありますから、その合間を見ながら見通しをつけなきゃならぬわけであります。  そこで、いつごろか見当はつきませんけれども、大体、私は、黄華大臣に話したことは、黄華大臣との話し合いはお互いにもうすでに交渉が再開されたから政治的な話し行いは一切やらずにごあいさつの話し合いをやろうと、向こうも賛成ということで、二人で会うつもりでありましたが、中国の外務大臣から、どうも日程を見ると、園田外務大臣の日程は相当厳しい、そのために無理に時間をつくってもらうのは大変だから、園田外務大臣の午さん会の招待に自分が応じてお伺いすることにしている。これもそういう意味であるから、特別に場所はつくらずにここで話そうということで、午さん会で私の左わきに黄華大臣の席をつくって一時間半ぐらい雑談をしたわけであります。  その中で御報告申し上げますと、何日ごろ北京に帰られるかと、こう言ったら、あちらこちら回って大体六月の十六日ごろ北京に帰るという話でありました。それで私どもの日程は詰まっているが、あなたの方の日程はいかがかと尋ねたところ、七月の初めから半ばにかけては仕事が詰まっておるが北京におろうと思えばその可能性はあると、こういう話でございましたから、大体、うまくいけば、ねらいはそこらあたりじゃないかと思いながら、具体的に煮詰まってくるのを待っている段階でございます。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 最近、イギリスやオーストラリアやアメリカ関係の人たちが日本の外交の方向というものを探りにずいぶん来ておりますが、アメリカ自身の外交政策も権謀術策にたけたキッシンジャーのやり方あるいはソ連包囲戦線を強化しようとしたシュレジンジャーのやり方と違って、ブレジンスキーの中国訪問というのはバンス国務長官の訪中以上に大きな期待を持たれたのは、中国側の苦悩の問題点一つ一つ明快に具体的に論議を進めたからであろうというふうに見られておりますが、このアメリカの動向とはかかわりなし日本の園田外交の方向づけはすでに行われており、むしろアメリカ自身が日本の外交路線と若干違う点はあるが、日本日本、アメリカはアメリカ、中国は中国というふうに割り切って、その中に何か総合的な関連性を持って一つの新しい外交路線を設定しようというようにも見えるのですが、園田さんは、この点はなかなか言いづらいでしょうが、しかし物事を単純化して表現する名人ですから、どういうふうにアメリカが対中国政策の基調を置いているか、その点はどういうふうに見てまいりましたか。
  39. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いま戸叶先生の発言のあとおりでありまして、日中友好条約の締結はアメリカはアメリカ、中国は中国、日本日本という独自の立場で進めていくべきであると考えて、その方向で前進をいたしております。  ただ、米中関係というものは、表面上は、余り進んでないようなかっこうではありますが、相当将来に向かって話はされておると私は判断をいたしております。
  40. 戸叶武

    戸叶武君 バンス国務長官は練達の士であって、非常に冷静で慎重であります。だから中国に行った後において何か慎重な方向に変わったのじゃないかというふうに見られたのは、別に中国を過大評価したものではないが、中国自身が近代化の方向に向かって平和共存路線を模索しつつあるということを理解して、恐らくはシュレジンジャー的な戦略本位の対中国政策でなく、いままでの中国に対する先入観念と違って、中国の近代国家に向かって前進しようという意欲に対してあるところまで協力しなければいけないという形の考え方をまとめた上で今日のブレジンスキーの訪中というものはなされたものではないかと思うんで、ソ連ではシュレジンジャーの作戦というものは余り裏が見え過ぎるので非常に警戒し、いまもブレジンスキーの動きに対しても若干の警戒を持っているが、シュレジンジャーのときとは少し違うように見受けられるのですが、その間の流れはどういうふうな流れでございましょうか。
  41. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまの点については、戸叶先生の判断と私も全く同じ判断をいたしております。
  42. 戸叶武

    戸叶武君 やはり日本が園田さんが確信を持って国連会議においてあれだけの発言ができたのは、表面には出ないが、日本の外務省の国際感覚というものがデタントの方向に、もはや米ソも世界戦争はできない、代理戦争もやってもなかなかこれは逆効果になる場合もある。多くの者は現象面だけを見て、興味本位にアフリカあるいは中近東、おもしろおかしくというんじゃないが、何か推理小説をたぐるように興味本位に現象面を追うているが、底流にはやはりサダトが体を投げ打ってイスラエルに飛び込むように、あるいはPLOのあれほど捨て身のテロを断行してきた団体でも、パレスチナデーに出てみると、イスラエルとパレスチナ人とがやはり共存するような背のような状態に復帰するより解決の方法はない。ソ連なりアメリカなり、その他に頼って自分たちの平和と繁栄を求めようとするのは間違いで、自分たちがもっと自主的な立場を堅持して相手の立場をも配慮しなければならないというところにまで考え方が変わってきているのに私はびっくりしたんです。  世界の効きは固定化してないで、どんどん自分たちの平和と繁栄のためにまじめな政治家が常識的な判断の上に立とうとしてきている。この潮流を見誤って、右だ左だ、ヒトラーのまねごとみたいなことをやっていると、その国が孤立化して世界から取り残されていく。いまソ連でもアメリカでも、私はブレジネフがあれだけの半身不随と思われるような体にもかかわらず、自分以外にソ連の軍部を押さえる者はないと思うような背水の陣をしいて西ドイツを訪問する姿を見ると、やはり革命を断行した者はこの革命の成果を維持するために、進むことより、そこに融和をもたらすために献身しなければならないという気持ちが側々として流れていることを感じたので、ソ連ですらも変わる、中国も変わる、PLOすらも変わったというような、私は楽観的かもしれないが、サルから進化した人間でなく、原始的な人間から進化した人間なので、サルには革命がないが人間には自分の考え方によって間違ったと思ったらそれを変えていく能力がある。特に日本人はおっちょこちょいなどと言われるけれども、フランス人と日本人はテンション民族であって感覚が非常に豊かであって、明治維新を断行したときに攘夷党が開国進取にも百八十度的な転換ができたので、できないやつはふん詰まりでそのままつぶれていったんですが、私は、いま革命ということは華々しい原始的な革命の方式でなく、いままでの自分たちの考え方を変えていく一つのデタントへの、平和共存への方向づけが世界で用意されていると思うんです。  日本がうろちょろするんでなくて、あれだけの犠性を払い、天皇自身も泣きながら国民の気持ちを代表して、再び戦争はしない、再軍備はしないと世界に誓っているんです。これをまた裏切るようなことがあれば、いまは天皇制でないから、象徴天皇であるからと言っても世界から日本人のだれもかれもが信用されなくなると思うんです。日本がいま困難なときに、あなたが国連であの軍縮の場で大胆、簡明、率直に表現したようなそれが日本人の本当の心だということを世界に理解してもらったときに、初めて日本外交というものが私は平和共存の路線の上に盤石の力を持ってくるんじゃないか。ネルーさんや周恩来が五原則だ十原則だと言って模索したそれが、戦争の最大の犯罪人であるとともに、犠牲者であり、反省者である日本民族すらがこれだけに変わったということによって世界に新しい、さっき穴をあけたと言うが、光がもたらされるのじゃないかと思いますが、その点でやはり責任が非常に重いと思うんです。  あなただけに責任を負わせるのじゃないけれども、あれだけの一つ考え方を吐露さした福田内閣なり、あるいは外務省の舞台回しのいろんな人たちなり、やはり平和憲法あるいは非核三原則、拡散防止条約の批准、はっきりと一歩一歩大地に足を踏みしめてきたこの外交路線以外に日本の生きる道はない、世界の生きる道もないんだ、この信念が燃焼してこそ、日本人の言うことを世界の人たちも胸を開いて聞くことができると思うんですが、外務大臣は自分が張本人ですが、この後の責任はどういう形において継承しようと思っておりますか。
  43. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまいろいろ言われましたが、これまた私全く同意見でありまして、今度の軍縮総会の立場だけ考えてみましても、大統領あるいはモンデール副大統領は、米ソが相当厳しい仲にあるような表現をしておりますが、事実はそうではなくて、中東問題に対しても、中東諸地域と連絡する一方、やはり米国はソ連ともよく相談をしている形跡が十分ございます。それから中国の演説も激しい演説ではありましたが、いままでは米ソ戦必至という表現でありましたが、これがややみんなが努力をすればこれを回避することは不可能でないというような表現に変わってきたような感じがいたします。  こういう点から考えると、戸叶先生がおっしゃいましたとおり、現実ではお互いに対立しながら、この対立を顕在化しないで、逐次安定を保ちながら平和共存の方向へどう持っていくかということが世界共通の念願であり、また、それが努力の目標であることは紛れもない事実だと思います。そういう意味において、日本もいろいろ事情はあっても、その方向へ真っすぐ必然性に向かって前進することが必要である。そのためには内外に対する諸問題や苦労はこれをいとわず努力をしなければならぬと私ははだをもって感じて帰ってまいりました。
  44. 戸叶武

    戸叶武君 日本と中国の間にある問題は、尖閣列島などの問題でなくて、やはりソ連側で注目しているのは覇権問題の取り扱いであります。もう一つ、ソ連と日本との間において非常にむずかしい問題は北方領土の問題でございます。しかし、国連総会であれだけ大胆、率直に物を言い、また外務大臣に就任して以後、この一月にはいち早く言いづらいことであっても、日本政府はみずからの責任で、モスクワに行って日中平和友好条約を結びますということを、相手の意見を聞くんでなくて、率直に通告した園田さんの外交は、いろいろな点においていろいろな人が批評をしておりますが、やはり日本外交は古武士のごとく堂々の陣を張って、力に頼らないけれども、人間の真心に頼って、相手の評価がどうであろうと、真実を語って、相手がときには誤解しようが何しようが、それを伝えていくというこの態度というものが非常に必要で、園田外交に対してはいろいろな批判もありますけれども、批判は勝手だが、とにかく事の成敗もあるけれども、率直大胆に真実を語る以外に相手の心を開くことはできないので、私は、日中平和友好条約が結ばれたときには、既成事実ができた他国のことに余り深入りして干渉してはならないというところまでソ連も理解できると思うんです。  私もソ連側からある人が来るようにと言ったが、私が行かないのは、誤解されてはいけないから。浅沼のしりぬぐいのときに、一九六〇年の安保闘争のカンパニアを代表し団長として北京に行ってからももう十八、九年になりますが、一歩だに中国には行きません。  ソ連に行っても、北方領土で成田さんと見解を異にして、日本はソ連共両党と違って、重大な条約を決定するのには主権者である国民の合意を得なけりゃならない。ソ連共産党と日本の社会党が共同声明を発しても、国民が納得するような線でしなけりゃ日本の国民というものは応じない。そういう過ちを犯してはいけないから、やはり北方領土の返還、少なくとも歯舞、色丹で早期平和条約を結ぶというような、それも一つ考え方かもしれないけれども、国民は合意を与えない。最小限度国後、択捉までの線は返還してもらわなけりゃだめだ。戦時中の軍事秘密協定のヤルタ協定は、ソ連だけの麦任じゃなく、米英にソ連がだまされたような結果であるが、この三国みずからが虚心になってこの戦時中の他国の主権を侵した軍事秘密協定をみずからの責任で消却するというところまでこなければ、次の戦争を避ける条件としての平和条約は結べないじゃないかと言ったとき、ミコヤンがニエットと。ニエットなら勝手にしろ、おれは帰るという、われわれは野党だから、少し無礼だけれども日本人の魂というものを、ぶつけなけりゃソ連だってわかりっこないと思ってはなはだ失礼たこともやりましたが、私は、ソ連にはソ連の伝統がある、けれども日本の悩みというものもわかるし、また中国の苦悩、兄弟党とまで言われたソ連の中国に対する裏切り、これは浅沼のしりぬぐいに私は団長として一九六〇年に行って、周恩来、廖承志と北京で語りながら、涙が出るほど彼らの苦悩というものを理解したつもりであります。  しかしながら、中国の立場は理解しながらも、日本が中国と同じようにソ連を仮想敵国とするような覇権主義の中に埋没してしまっては、日ソの関係というものは決して私はよくならないと思うんです。われわれ自身がソ連の第五列でもなければ中国の第五列でもない、アメリカの追従者でもない。日本自身はあの戦禍の中から大きな平和共存の教訓を与えられて、キリストやヨハネやペテロよりももっと神に祈るような気持ちで平和共存の路線をとにかく歩むべく運命づけられたんだということをもって本当に説くならば、私は中国でもソ連でもわからないはずはないと思うんです。そんなことを言うやつはばかだと言うかもしれないが、本当のばかが二、三人日本にいなけりゃ、小利口なやつばかりうろちょろしておっては日本の国というもののへそがなくなっちゃうと思うんです。いまの政治、外交、すべて小利口なやつがちょろちょろしているから多く事を誤っているんです。  どうぞ園田さんはその辺では天草で鍛えた土性骨の人物ですから、やはり余り荒々しく言うと相手を傷つけるかもしれませんが、相手のメンツを傷つけない程度に、日本には日本の道、日本が世界に貢献する道はこれっきりしかないんだということを本当に説くならば、私は、力づくで、原爆でおどかしながら、権謀術策ではどうにもできないソ連やアメリカや中国の融和も、日本があることによってあるところまで平和共存への方向づけができ得る、こう思っているんです。私は少しドンキホーテですから、夢を見ているのかもしれません。しかし、地上にわれわれが天国を築くという夢を拾ててしまったら、地上は地獄になってしまいます。  どうぞそういう意味で、国連であれだけのことを言い切ったんだから、今後における日中平和友好条約においても、中国さんの気に入るようなことばかり、うまいことをやろうなんてことは、あなたは不器用だからできないはずだから、やはり率直に、中国の人もソ連の人も、ソ連なんか大分園田さんを警戒しているけれども、警戒されているからかえっていいんで、そこに存在の意義があるんだから、やはり私は土性骨でもって体当たりで自分のはらわたをたたきつけるつもりで、今後のいままでにない外交をやってもらいたいと思いますが、時間が来ましたからこれでやめますけれども、ひとつ簡単にお答えを願います。
  45. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 私もおっしゃるとおりだと考えておりまして、政治には夢がなければならぬ、その夢を実視することが政治だと、私もさように心得ております。  黄華大臣といろいろ友好的な話し合いの中で、私は次のように言いました。日本と中国の関係は二国間の問題ではない、中国も日本もアジアの平和、世界の繁栄に対する責任と義務がある、こういうことだと思うがと言ったら、向こうも同意だと、こう言われました。そこで、日本と中国は近いからいろいろ問題もあります、しかし、そういうことにこだわらぬでやりましょう、日本の政府も近ごろ方針を変えまして、いやなこともいいことも、困ることも困らぬことも率直に話すことにしました、私の名前は園田直でございます、こう言ったら、笑いながら私の名前の直という字を手のひらに書きながら、いいことだ、いいことだと、こういう話をしましたが、雑談の中に、私は、戸叶先生のそのお気持ちを自分も出してやっていく決意でございます。  なお、ソ連に対しても、ソ連の方で日中条約を結ぶのはどうだこうだというようなことを言われておりますが、ソ連に対しても、私は、ソ連の言うことは十分聞く、しかし、それによってこちらが動くべきではない、もうすでにボタンが押されて歩き出したわけでありますから、歩き出した後、鉄砲の音がしようと太鼓の音がしようと、歩きとまるということは拙劣な方法でありますから、既定どおりに歩く、しかし、日中友好条約を結んだ後は全力を挙げてソ連との友好関係を進めていく、こういうことを私ははっきり申し上げてまいりましたが、いまおっしゃいました戸叶先生の仰せのとおり、私は、今後、決意を持って進めるつもりでおります。
  46. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回、外務大臣は、大変厳しい日程の中で軍縮特別総会に出席をされた御苦労にまず敬意を表したいと思います。  十分な時間もとれなかったという背景もありまして、各国の首脳とひざを交えての話し合いというものも、あるいは意に反した面もあったろうというふうな気がしないでもございません。いずれにせよ、今回の特別総会は大変画期的な一つの足がかりであったろうというふうに判断をしております。ただ、かつてのロンドンにおける軍縮会議の例にまつまでもなく、言うべくしてこの軍縮というものは大変厳しいものではなかろうか。しかし、いま人類が、先ほどの御答弁を伺っておりましてもそうでございますけれども、心から望んでいるのは、平和の中に繁栄を求めるという方向であろうということは当然だろうと思うんであります。しかし、残念なことに、イデオロギーの相克等々というふうなものが介在しながら、そういう前進を阻んでいるということは大変残念なことでありますけれども、いずれにせよ、特に米ソ二大両国がいま保有していると思われております核兵器百数十万発あるであろう。広島級の原爆に例をとれば四十回全人類を段数するだけの力を持つ、それを聞いただけでももうぞっとするような事柄ではなかろうか。それだけに、何としてもこれから核廃絶を軸にして通常兵器に至るまで何とか軍縮へ実りある成果がおさめられていくような方向というものは考えられないものであろうか。  確かに今回の外務大臣の演説を伺いまして、特に誇り高き平和憲法を基軸にしてというこのくだりは、国内においても、またさまざまな特に政府・与党においては波紋を呼ぶことかもしれませんけれども、しかし、これだけ毅然として平和憲法を表に出されて提言されたということは大変勇気ある発言であったろうと私は思うんです。そうした観点に立てば、日本の置かれた立場というのは、申すまでもなく、最も前進的に言うならば軍縮のイニシアチブのとれるそういう位置に置かれているであろうことは申すまでもございません。さて、そうした特別総会なんかでいろんな提言が、日本のみならず、あるいはジスカールデスタンあたりからも出されたようでありますし、またメキシコあたりからも出されたようでありますし、あるいはワルトハイム事務総長からも出されておったようでありますが、そうした提言というものを果たして今後具体的にどういうふうに軌道に乗せることができるんだろうかということが大変不安でありますし、われわれとしても将来にわたって疑問が残るというふうに思えてならないわけであります。  確かに先ほど御答弁を伺っておりましても、いま国内世論の中でいろいろとやかましく議論されております軍縮への課題の一還として核廃絶を初めとする通常兵器の削減、これは恐らくいろんな角度に立って主張を述べられたんだろうと思うんです。その主張が本当は近い将来に一歩でも二歩でも前進ができればなあと願うのは決して日本だけではないであろう。ただ、先ほども申し上げましたように、ロンドンの軍縮会議に見られるような、結論から言ば必ずしも成果がなかったと思われるそういう歴史的な事実を考えましても、果たして今後いかなる方向へ行くものであろうか。これは恐らく忍耐というものが要求され、時間というものも考えていかなきゃならぬということになるでありましょうけれども、しかし、いま世界の趨勢はそれだけの時間的な余裕が果たしてこれからも考えられるだろうか。むしろ一触即発、あるいは中東で火が吹くのか、あるいはアフリカで火が吹くのかそれはわかりませんけれども、もし再び第二次大戦のようなそういう忌まわしい結果が起こるということになりますと、これはもう何をか言わんやでありまして、それではもう手おくれ、言うなればわれわれの英知をもって何とか早い時期に日本の提言を踏まえ、そして今回各国から出された提言も含めまして、一つでも二つでも実現できるような方向へ向けることができないんだろうかということを感ずるわけですが、今回、そうした特別総会の雰囲気あるいは反応、世界の重立った国々が考えているいま申し上げたような問題点についての受けとめ方、これをお感じになったままを御披露いただければ大変ありがたいと思います。
  47. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいまの御発言のような点が今後の問題点であると思いますが、第一は、今度の特別軍縮総会が御承知のとおりのような経緯で開かれた歴史的な総会でありますが、この総会がこのままで終わってはならぬと思います。そこで定期的にやるか、あるいは随時やるか、少なくともこの総会を契機にしてさらにこの総会を進めていこう。  二番目には、そのためにはジュネーブの軍縮委員会、これがややもすると大国の駆け引きの場所になっておる。そこで中国もこれに参加しない、フランスは機構を改正するならば加盟するにやぶさかでない、こう言っているわけであります。したがいましてジュネーブの軍縮委員会の再検討及びこの軍縮委員会と国連との関連性というものも考えて、フランス、中国の加盟を求めるというととが二番目だと思います。  次に、今度の軍縮総会で出された意見で、妥当であり、将来そうなければならぬと思われるもの、しかも大多数のものも合意するという問題は、協定なり、決議なり、あるいは多数によって決定するということはあり得ませんけれども、共同コミュニケみたいなかっこうで総まとめの結論を出すという見通しでございます。そこで、その出された具体的な一つ一つの問題を、ただいま渋谷先生がおっしゃったように、それぞれの機構でそれぞれの国が理想に向かって半歩でも一歩でもいいから逐次前進さしていくという、こういう機運は今度の総会で出てきたと、とう判断をいたします。  たとえば今度アメリカのモンデール副大統領が演説をいたしました。その演説の中では、内容を検討すると、相当諸種の提案をやっているわけであります。しかるにもかかわらず余り受けなかったというのは、どっちかというと演説のムード――しかし、現実に世界の安全を保障するためには、いまやっていることは仕方がないんだというムードの演説であったので、これに対する若干の批判もあったようでありますが、また一面、米国の国内においてもこのままではいけないという意見をワシントンに意見具申をしたり、日本の原爆禁止に対する訴えを見て、ヤングという大使は米国へそういう泣きながら電報を打ったという実例もございますので、理想に向かって前進することは困難なようではありますが、私は、みんなが絶えざる努力をすれば、一歩一歩そっちの方向へ前進をする。なおまた、米国、ソ連もいろいろ言いながらも、お互いに牽制しながらも戦争は回避しようということは一貫しておると判断をいたしますので、そういう点も考慮しながら私は各種の提案をしてきたわけでありますが、その提案を今後どのように努力していくかということが問題であると考えております。
  48. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 恐らく、いまおっしゃられるとおり、アメリカにしてもソビエトにいたしましても、確かに平和の方向へという、そういう政策に立脚した取り組み方をしてはいるんだろうと思うんですけれでも、しかし、申すまでもなく、毎年の軍事費の増大というものを考えますと、むしろこの軍縮という課題に背を向けた、逆な方向へ特に米ソ二大勢力というものが歩んでいるんではないだろうか、こうした行き方に対しての歯どめというものは一体どう考えたらいいんだろうか。確かにいまお考えになっておることはお話がございました。しかし、果たしてそうしたような行き方が百年河清を待つような行き方になりはしまいかというおそれも実はないではない。  やはり一つのきっかけというのは、アメリカに対しても、あるいはソビエトに対しても、近くはまた中国に対しても、あるいはフランスに対しても言うことができると思うんでありますが、全世界を集めてと言っても大変問題がふくらみ過ぎて、意思の統一ということは簡単なみたいでなかなかむずかしい。今回の国連総会のあの模様を拝見しておりましても、ちょうど外務大臣が演説をされるころには、残念なことに、聞いている人が一体何人いるんだろうという、そういうような印象を私は持ったわけです。それはどういう理由か私にはわかりません。しかし、少なくとも軍縮に相当の関心と期待を脅せるという各国の代表が集まった会合であるとするならば、えりを正し、耳をそばだてて、各国の代表に対する演説を聞くべきではないだろうか、そういったところにもまだまだこれは時間がかかりそうだという感じをぬぐい切れなかったわけであります。  そこで、次善の策として考えられることは、何といっても強力な軍事力を持っている国を主体にした――私がおでかけになる前にも申し上げたわけでございますけれども、一日も早いこの首脳者会議によるところの核廃絶を中心とした通常兵器に至るまでの軍縮への話し合いというものが持たれないだろうか。それは共同コミュニケも結構だと私は思うんですよ、これは恐らく何らの拘束力も持たない、ただ道義的に戦争の抑止へひとつお互いに申し合わせをしようではないか、言うなればそういう形の内容に終始するおそれがありはしまいか。したがって、やはりでき得ることならば、まずそういう大国が力を合わして協定なり決議という一歩厳しい拘束力を持った方向へ、その手助けとして日本が役割りを果たせないものであろうか。今回のこの短い日程でいろんなことを御注文を申し上げ期待をかけることの方がむしろ大変いかがかというふうに思うわけですけれども、しかし、世界が激しく動いている昨今でございますだけに、決してもう待てないという情勢も考えられますので、その辺についての今後の展望を踏まえてお聞かせをいただければと思うわけであります。
  49. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) ただいまおっしゃいました主要国家の指導者が集まって、そうしてじかにひざ談判をやれという意見はやはり国連総会の中でも出てきております。  そこで、今度の会の模様でありますが、軍縮総会の模様は、各国から少ないところで五名、多いところで十名ぐらいの代表者が出てきております。したがって普通の余り関心のない議題の場合は三分の一ぐらいでございますが、三分の一ぐらいといっても各国の代表者だれか一人は座っているわけであります。ソ連とか米国とか中国等が演説する場合には、それがみんなさっと集まってきます。七割ぐらいになるわけでありますが、私の場合も七割ぐらいで、各国は全部集まってきているわけであります。私の場合は、被爆国が何を言うかということで関心があったんだと思いますが、ほとんど各国の席は全部詰まっておりまして、その五名、十名が全部出ていないので七側ぐらい。これは大体満員みたいな状態であります。そこで演説が終わるとさっとまたいなくなりまして、各国一名ずつぐらい座るようなかっこうになるわけでありますが、そんなら出たやつは何をやっているかというとロビー外交をやっているわけであります。それぞれよその国と会ったり事務的な根回しをやったりしているわけであります。相当真剣でございます。  そこで、今度、仮に私の想像どおりに共同コミュニケでまとまりますれば、そのまとまったことで打ち切りとしないで、それに取り上げられた問題を中心にしてそれぞれまたこれを実行段階に持っていくという議論は出てきておるわけでありますから、必ずそうなっていくと私は考えております。そういうことも考慮しつつ、いまおっしゃいましたようなことで具体的に進めていきたい。で私もそういう意味で広く提案をしてきたわけでありまして、現地に残った日本代表には、それぞれ八月六日の軍縮デーを初め、全力を挙げて提案したことに対して、これを表に打ち出していくように努力しろと、こういう指示を与えてきたところでございます。
  50. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そこで、くどいようですけれども、今回、外務大臣が十項目余りにわたっての主張を述べられたと記憶しております。そらした中で、すべてに平均的に可能性を持たせながら具体化の方向といっても、なかなか一概には無理な場合がございましょう。おっしゃられた中で、一番何が非常に早い時期に実現の可能性があると御判断なされたでしょうか。
  51. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) まず、私が提案をしました中では、うまくいけば軍縮デーというのは実現するかもわからぬと思っております。  それから、二番目には、私が提案した中で、みんなそれぞれ核を持った国も大国なりに悩みを持っていると思う。それは軍備に金を使って財政的な問題が出てきておる。それから一方には、その軍備を何割か削減すれば、これを開発途上国の援助に使えるというような、そういうお金の面からくるつらさというのが大国の中にも出てきておる。ただ、問題は、相互信頼がないわけで、相手に対する不信を持っている。不信があるから軍備を伸ばす、軍備を伸ばせばますます不信になるという――先生の方の党で言っていらっしゃる国を個人の立場に変えろ、こういうことをおっしゃっているわけでありますが、国の立場を捨てて個人の立場に変えると、簡単にみんなが納得し、簡単に話は進むことでございます。私はその点を主張してきたわけでありますが、この点は特に核を持たない小さい国々の間にそういう議論が起こってきて、急がば回れで、遠いようではあるが、案外近い道ではないか、そこから具体的な問題はそれぞれ進んでくる、このように思います。
  52. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 確かにおっしゃったとおり、お互い認識はしておりましても、国際的な相互不信感等いろいろな要素がございましょう。こういったことがやはりこの軍縮への道を大きく阻害しているということは否めない現象だろうと思いますれ。  たしか八月六日を軍縮デーにという提言があったことを記憶しております。その結果だろうとは思うんですが、いまわれわれが願っていることは、一日も早くもう軍備なんというものはこの世の中からなくなった方が一番いいわけでございまして、いつもそういう脅威にさらされているということは好ましくない。と同時に、私は、今回の国連というものをもう一遍見直したときに、やはりきわめて体制というものが脆弱ではないかという印象を強烈に受けるわけですね。  ワルトハイム事務総長も、軍事費の千分の一ですか、援助費に回すような提言をなされております。これなんかは本当は大変具体性のある問題として評価もされているようでありますけれども、こうしたことでも恐らくむずかしい、いまおっしゃったように。大国ですらもその発展途上国に対する援助というものは大変厳しい状態にある。厳しいんではなくて、軍事費を削減すればそういう方向へ本当は向けられることはもう常識でございますが、そうした問題。それから福田さんもお出にならなかった、なるほどなあと。アメリカはモンデール、世界の元首といえばフランスのジスカールデスタンぐらいである、ブレジネフも参加しているわけじゃない、シュミットもキャラバンも。こうなりますと、一体、今回の軍縮特別総会というものはどういう意義づけと性格があるんだろう。あるいはまず一つの突破口を開くための地ならしとしての最初のそういった総会であるならば、それなりの評価もございましょう。それだけに、先ほど申し上げましたように、決して無関心でいるわけではないということだけは事実であるということ。  それから、この国連を主軸にした話し合いというものがもう一遍見直されていいのではないだろうか。むしろ国連ということよりも、米ソというこの影響力の方がはるかに大き過ぎて、その米ソの動向いかんによってこの世界というものが左右されていると言っても少しも言い過ぎではない。こういうところをどう一体調整するかということがやはり軍縮にも連動していく問題であるというふうに私は受けとめているわけでございますが、その辺のかかわり合いを通じて、今後の国連のあり方というもの、また日本としてできる役柄といいますか、役割りというものは何が考えられるか。  それは先ほどの御答弁の中にもありましたように、ジュネーブの軍縮委員会、これもあるのかないのかわからないような、まあ極端な言い方かもしれませんけれども、そういったことで、恐らく機構改革というようなものの大変厳しい主張がほかの国からも出されたようでございます。こういったことは決して日本だけではない、世界でもそういったことを、米ソを除いた国々においては根強い気持ちの中にそれがあるということを考えますと、これはわりあいに早い時期に日本が中国あるいはイギリス、フランス等々先進国家とも話し合いの一つの土壌ができて、それを中核にして、あるいはアジア、アフリカというような各国にもそれを連動させながら一つの新しい環境というものができていきはしまいかなあと、余りにもぼくの考えていることは理想であり夢なのかもしれませんけれども。しかし、そうでなければどんなりっぱな理想を掲げても絵そらごとに終わってしまうというのが現在の実態ではないかということを心配する余り、いまのようなことを申し上げたのですが、さて果たしていま申し上げた点についてはどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  53. 園田直

    ○国務大盛(園田直君) 私は、ただいまの御発言は決して単なる理想ではない、そういう目標を持ってだんだん間遠いなしに前進すると思います。  今度の軍縮特別総会を先生は地ならし、これからの出発点とおっしゃいましたが、私は、私の表現で今度の特別軍縮総会は軍縮実況に向かっての一里塚と、これだけは確保したいと、こういうことで現地にも示してきましたが、みんな異口同音にそういう気持ちを持っております。私が演説を終わってから、いまは後の人の演説がしにくいので禁止されてはおりますけれども、英国、西ドイツ、豪州初め三十名の方々がよかった、よかったと言って握手をしに来られましたが、アフリカとかそれから非同盟とか、そういう国々の人はもう無条件で握手をしてこられて、本気になって私の手を握っておられた。それは演説の内容そのものよりも、日本が米国、ソ連、その他の国々の固有の名前を出しながら物を言うたということに対する共感だと思います。そこで、日本の役割りというのは、日本の利害ではなくて、やはりそういう政治的立場は異にするが、核を持たない国々の共通の願いというか、それの代表者であるべきだと思います。  いま御承知のとおり、日本は安保理事国の立候補をするべく表明しているわけでありますが、その選挙運動はなかなか困難であります。ところが、今度行ってまいりますると、単にいままでの安保理事国という投票ではなくて、だれを出したら自分たちの力になるかというようなふうに非常に変わってきております。これもいまおっしゃいました発言の中の、決して理想ではなくて、世の中はいろいろあるけれども、必然性に向かって必ず前進するというふうに私は確信を持って帰ってきたわけでありますが、そういうところに留意しつつ、日本は軍縮問題及び国連に向かっての役目を果たさなければならないと思います。  なお、国連、軍縮、これの機構の再検討、強化ということはおっしゃるとおりであると思うんです。私はそれも訴えてきたつもりでございます。
  54. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いま御答弁を伺っておりますと、私はチャンスだと思いますね。やはり各国が、それは中にはお世辞半分の国もあったかもしれませんけれども、しかし、大多数はやはり真摯な気持ちでそういった考え方に対する歓迎の意を表したのであろう。ならば、これからの日本の取り組む姿勢というものが非常に強く要求されるということも逆に考えると高まってもおりましょうし、また、要求もされてくるであろう。一番いま大きな曲がり角にありますだけに、非常に大事なこのチャンスを決して見逃すことがあってはならないというふうに思えてならないわけであります。確かに国会におきましても軍縮問題というものが衆参を通しましても本格的に論議されたのはまだ私の記憶にはならないくらいでございますので、むしろこうしたことを一つのきっかけにして、一つの新しい国民世論というものの形成を後ろ盾にしながら、国としても思い切った、いま申し上げたような方向に向かっての軍縮というものの実現のために労を惜しんではならないんではないか、そういう感じがいたします。  いずれにしても限られた時間であれもこれもとなかなか申し上げられないのが残念でありますけれども、そこで、今回、いろいろな方にお会いになって、それなりの成果もおありになったろうと思うのですが、特に、先ほどもお話が出ましたように、われわれが何といっても気がかりなのは日中の問題であります。黄華外相との会見の内容等についてもいち早く伝えられておりますので、あえてそれから先のことと言いましても、先ほど御答弁を伺っておりまして大体のスケジュールというのが浮き彫りにされてきたのではないだろうかというふうに感じられるわけであります。  ただ、そこで問題は、恐らくわりあいにテンポが早い状況で条約交渉の再開、そして条約締結、批准と、こういう当然考えられるようなこれからの段取りというものが出てくるだろうと思いますね。当初、福田さんは交渉再開と条約締結は分けて考えた方がというような考え方もあったようでありますが、最近では交渉イコール条約締結まで持っていくんだという方向に変わられたようであります。となると、やっぱり問題は、そこにいろいろなアクションがあるだろうと思うんですけれども、批准に至るまでの間、福田総理が今度は華国鋒に会見をするような予定がそこに出てこないかという問題。もちろん外務大臣は当然これからの政治折衝の具体的な詰めの中で向こうへいらっしゃる場合は考えられるわけですけれども、さらに条約批准を前にするか、その前後はわかりませんけれども、福田総理の訪中は考えられないか、あるいは華国鋒主席の訪日というものが考えられないのか、その道程の中で。そういう点についてはまだ全然お考えになってはいらっしゃいませんか。
  55. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) 交渉の推移でありますからどのようになるかわかりませんので、いまの段階でとかく申し上げると誤解を生ずると思いますけれども、少なくとも真に日中友好の実を示すためには、これが締結されて条約調印の際には、やはり両国の指導者が直接会う場面があってもよいんじゃないかと、こう思います。
  56. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 わかりました。  もう一つは、この条約署名、批准というこの段取りでございますけれども、これも相手のあることでございますから早計にいつごろというわけにはいかないにいたしましても、われわれの希望としてはできるだけ早い機会にという期待があるわけです。少なくとも今年中にはいま申し上げたような方向に大体お考えになっていらっしゃるかどうか、こちら側として、それもなかなか言いにくいことでございますので、その辺ニュアンスあたりでも結構でございますから。
  57. 園田直

    ○国務大臣(園田直君) いまや交渉段階に入りましたから、現場の司令官である外務大臣はなるべく言わずに、総理からおっしゃってもらった後をついていった方が非常によいと考えておるわけでありますが、しかし、少なくとも今年中に批准が終わるようなことでなければ、それはよい方向に進まない結果になるんじゃないかと思います。
  58. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 終わります。
  59. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十九分散会