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戸叶武君 現在、
日本の
政府が外交権をゆだねられております。議院
内閣制のもとにおける自民党
政府、福田さんの役割りは、自民党の
意向を
代表するだけでなく、軍縮への国民の
関心の盛り上がりを反映して、
日本の外交の基本路線というものを崩してはならないのであります。
いろいろな
関係から他党に関与するものではありませんけれども、
日本が戦争の悲劇、原爆の洗礼を経て、
日本国民だけでなく
世界のあらゆる国民に、人類に再び戦争による惨禍をもたらしてはいけないと
日本だけでも決意して、そうしてこれを平和共存の方向づけの基礎としようというのが八月十五日における国民の悲願を
代表しての天皇の
発言であり、また
日本国憲法の中に貫かれている精神でもあると思うのであります。これを天下に公約したから、天皇は新しい憲法において民族統合の象徴とされて政治責任者ではないけれども、少なくとも再び戦争はしまい、軍備撤廃ということを
世界に向かって誓約した出時の責任者であります。
日本国憲法ができたときにも勅語を出しております。天皇の責任をわれわれは追及するのじゃないが、憲法改正というものを自民党は党是としておるということであるが、軽々率々に憲法改悪をやるような場合は、天皇の退位を促進させ、また
日本の国際的な信義というものを崩してしまうことになります。
しかも、明日か明後日、中曽根君は東大において憲法改正の端々の論陣を張って学生、学者と対決するということでありますが、そういう趣味ならば別でありますけれども、一党の中心的な人物がこの国際的な平和共存への潮流に逆らって憲法九条を改めるとか、軍隊を持てるようにするとか、軍備を強化するとかいうような言動を行えば、
世界のどこの国がいまの自民党なり福田
内閣に対して信頼をつなぐことができるでありましょうか。
私たちは、そういう
意味において祖国を守らなけりゃならない、あるいは安全保障の問題というものをもっと広い
世界的視野においてこれを持って、
国際世論に訴えながら
世界の中の
日本としての行く道をいま尋ねなけりゃならない、方向づけに協力しなけりゃならないというときです。文明史観と哲学のない、政権争奪のみに終始するような集団は近代政党としての見識と資格を欠いております。そういう
意味において、私たちはいま国際
会議に
代表を送り、日中平和
条約の問題を通じて、
日本の外交の具体的な実践を行うというときに、
日本の平和欲求の熱意の足を引っ張るようなことをやっておって、その政党かぐらぐらさせるような、
世界に誤解を招くような勝手な
議論をやっておって、果たして
世界の人たちが信をこの
内閣、この政党につなぐかどうか。これは自民党だけのことではない。われわれ社会党においても、あそこへ行けばそこの国の都合のいいような、こっちへ行けばその国の気に入ったようなことを言って歩くような無定見な外交
方針を打ち砕かなければ、
日本に本当の——みずから外交を行う、他の国に働きかける主体性のない国民として
世界から嘲弄されると思うのであります。
まず、政権をとっている自民党からこの点をしかと受けとめて、今後の軍縮に対する国際的なアピール、態度並びに日中平和
条約に対する姿勢を正さなければ、
日本の平和憲法を守り、国際信義を保つために私たちは異常な決意を持って、平和を守るために、祖国を守るために、人類を守るために、
日本のとうとい平和憲法の精神というものを発揚するために行動を起こさなけりゃならないと思います。
十分このことは
外務大臣は心得ての上と思いますが、どうぞ命がけで祖国の人民、国民の魂を
世界に伝える、これだけの気概を持って、私は外交の先頭に立っていただかれんことを期待しますが、もうあなたに言うことはないと思いますが、問題は腹の問題です。腹です。腹のない冷酷非情なその場限りの官僚政治はおさらばです。どうぞ政治を主権者である国民の手に奪還してください。それでなければ
日本国民はまかりならぬ。大正二年の護憲運動や、大正三年のシーメンス事件において山本権兵衛
内閣を国民の手によって倒した以上の崩壊が、私は憲法擁護の問題をめぐって起こること必然だと思うのでありまして、心して軍縮
会議には臨んでもらいたい。外交権は
内閣にある。しかしながら、国民の心から隔離したところの
内閣は国民の
内閣としての存在価値は認められないような危機にいまさらされているということを十分踏まえて、
外務大臣は行動をしてもらいたいと思いますが、いかようでございますか。