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1978-04-25 第84回国会 参議院 外務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午後一時二十二分閉会     —————————————    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      上田  哲君     佐藤 三吾君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 小野  明君                 佐藤 三吾君                 田中寿美子君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君    事務局側        常任委員会専門        員        山木 義彰君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    賀陽 治憲君     —————————————   本日の会議に付した案件日本国バングラデシュ人民共和国との間の国  際郵便為替交換に関する約定締結について  承認を求めるの件(内閣提出) ○日本国カナダとの間の小包郵便約定締結に  ついて承認を求めるの件(内閣提出)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  昨二十四日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として佐藤三吉君が選任されました。     —————————————
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 日本国バングラデシュ人児共和国との間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件及び日本国カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件、両件を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただいま議題となっております案件につきましては、特段のことはございません。したがいまして、この機会に若干最近の問題についてお尋ねをしたいと思うんであります。  まず第一点は、先日、大変不幸な出来事ソビエト領域内において起こった大韓航空機事故でありますが、この事故が起こった際の出先大使館情報キャッチが非常におそかったというようなことで、いろいろ今後のあり方についても新しい問題提起がされたようでございます。非常に対照的なのがアメリカではなかったかと思うんですが、事件が発生した二十一日、大体午前七時ごろに日本大使館としては情報をキャッチした。ところが、アメリカの場合にはすでに五時間も前にこの事件経過について的確な情報をキャッチし、そしてどこへ強制着陸したか、そしてまた機内におる人々の状況についてはどうであったかというようなことがもう矢継ぎ早に掌握ができた。しかし、一方、わが方におきましては非常にその辺の掌握がおくれ、ようやくある程度のことがわかったときには、中川農林大臣コスイギン首相と会っているその時点でようやくある程度の様子かわかった。せめてもの幸いは、タス通信がその後において一応公式の発表をしたその以前にわかったということが救いであったかもしれないにいたしましても、どうもその辺の堂握の仕方が今後に問題を残すんではないだろうか、この辺のいきさつについてまず最初に伺っておきたいと思うんです。
  5. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) ただいま御指摘の点でございますが、事件発生直後、わが方の在ソ連大使館がモスクワ時間で二十一日の午前七時五十分に事実関係確認する申し入れを行っておるわけでございます。ただいま御指摘のございましたアメリカ情報と申しますのは実は非常に限られたものでございまして、御指摘の点が、もし事件中間経過、たとえば湖水に着陸いたしますとか、そういうような事実関係、そういう情報ということでございますれば、実はアメリカの方からその種の情報が入ってまいりましたのは二十二日以後のことでございまして、中川農林大臣コスイギン総理と会われましたのは二十一日でございます。そういった関係もございまして、アメリカ情報と申しまするものが時間的にも内容においてわが方の中川大臣のお会いになりましたときの情報に比して非常に早かったということも必ずしも時系列的には言えないわけでございます。  同時に、御指摘のように、アメリカ当該地域に持っております関心度にかんがみて高度の情報網を持っておったということは否定できないかと思うわけでございまして、その情報がわが方の事態究明につきまして、事態解明と申しますか、事実関係解明について非常に役に立ったということも、これまた否定できないところと存じます。
  6. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 さらに、不時着した地点ケム市というところでございますか、大使館としてもいち早く乗客の、特に日本人乗客の安否を確かめるためにソ連当局へ行かしてくれという申し入れに対して、なかなか許可が得られなかった。しかも人命に関するこうした問題について許可が得られなかったというそのいきさつですね、なぜ早く現場へ行けなかったのか。
  7. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点につきましては、わが方は非常に早い段階におきましてレニングラード総領事館領事現地に派遣する、あるいは在ソ大使館書記官現地に派遣することを申し入れたわけでございます。これに対しまして、先方は、内部的に連絡をとっておるということで当面返事をしておらなかったわけでございますが、その間におきまして現地着氷地点の近傍のケム市のところまで飛行機を出す、救援機を出すという話が持ち上がりまして、これが大韓民国のチャーターしたパンアメリカン機という形で実現をしたわけでございます。そこで、そういう事態が発生いたしましたので、最も早く現場に参る方法と申しますのはそのパンアメリカン機に搭乗せざるを得ないという事態になりましたので、そこでさらに対ソ交渉が進展いたしまして、在モスコー大使館野村書記官、在レニングラード総領事館領事、この二名が搭乗をして現地に赴いたわけでございます。
  8. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、出先としても気が気ではなかったろうということは推察もできますし、いま答弁の中にございましたけれども、アメリカは高度の情報網を持っている。にもかかわらず、日本の場合には、いま受ける印象としては、比較できないかどうかは別問題にいたしましても、なかなかその情報がつかみにくい、そういうシステムになっているんではないだろうか。  今後こういう事件が二度と起きないことをわれわれは願いたいんでありますけれども、やはり不測事態というのはいつ、どこで、どういう形で起こるかわからない。そうした場合に、何といっても正確な情報の収集というものが出先においても急がれることは言うまでもないだろうと思うんですね。日本アメリカの場合、どういう点にそういう違いがあるのか。
  9. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) 今回、事件の発生いたしました地域が、御承知のようにソ連から見まして非常に、何と申しますか、神経をとがらしておる地域であるということは、これは言うまでもないわけでございますが、米国の場合も、あるいはNATOと申しますか、そういった関連におきまして当然関心がある地域であろうかと思いますし、そういう意味では米国政府がこの地域について非常な関心を抱き、情報について平生からそういうものが収集し得る体制にあるということは、これは否定できないところかと思うわけでございまして、これはやはり米ソ関係その他からもある程度そういうものを推察せざるを得ないという状況かと思うわけでございます。わが国の方は、わが国といたしましては、これは通常対ソ外交関係におきましてできるだけ早く情報を入手するというのが通常の手段でございます。そういったことも考慮に入れる必要があるかと考えております。
  10. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうした場合に、いまお述べになったこの経過を考えますと、直ちに日本が現時点においてアメリカ並みの水準に対応しにくいという面はわからぬわけではございませんが、一方、やはりアメリカ側からも情報を収集するというようなその次善の策としてそういう緊急の措置がとれなかったのかどうなのか。
  11. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) ただいま御指摘のその緊急の措置と申しますのがどういう意味で御指摘のことかと思いますけれども、わが方としてはあくまで緊急の措置として対ソ申し入れをしておるわけでございまして、そのチャネルでの努力を傾注したということだと思います。
  12. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回のこうした問題、領空侵犯という、しかもソビエトにとってみれば軍事機密の集中している地域であると、いろんなそういう問題があろうかと思いますけれども、しかも相手民間航空機、だれが見ても民間航空機であることは、これは否めない状況であったろうと思うんです。  たとえば日本領空侵犯なんかをソビエト戦闘機あたりが時折やった場合でも、いままで銃撃をして近い払うというような経過はなかったと私は思うんですね。早く領域外に出ろと、そういうような指図のもとに領空外に出てもらう、日本のいままでのやり方としてはそういうような方法がとられてきた。それは国柄が違い、いろんな実情というものの差異があったといたしましても、相手民間航空機、しかも無防備状態乗客に対して銃撃を加える、どう考えてもこれはもう考えられない。なぜ誘導しながら領域外に出すような方法がとられなかったのか、こういう疑問がやはり起きますし、将来、人道的な立場に立ってもこうしたあり方というものは食いとめなければならない、今回の事件を契機にいたしましてですね、そのような感じを非常に強く持つわけでございますけれども、外務省としてはそういう点についてはどのように事態を受けとめられているのか。今後そういう問題が起こった場合になんということでは遅過ぎますので、やはり今度の問題をきっかけにしながら、そういう場合の適切な処置というものを各国が合意の上で取り決めるなり、あるいは約束をするなりというようなことが考えられないのかどうなのか。
  13. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) ただいま御指摘の点でございますが、今後こういったような事態が起こらないようにいろいろ配慮をしなければならないということは御指摘のとおりでございますが、実際にどういう事実関係であったのかということをまず確認することが先決であろうかと思います。特に銃撃に至りました経緯等につきましてソ連側からも十分事情を聴取する。それから韓国側からもパイロットその他、現在まだ現地におるようでございますけれども、これが韓国に帰ってまいりました後においていろいろな調査が行われるでございましょうから、そういったものをさらに日本政府としても把握するということが大事であろうかと思います。  今後、こういう事件が起こらないようにするということは、恐らく領空の中に入らないようにするということが最も簡明なる対策であろうかと思うわけでございますが、その点については、今回の飛行機は、伝えられるところによれば慣性航法装置等を予備のものを含めて十分保有していなかったとかいうことが伝えられております。これまた事実関係はわかりませんので軽々として申し上げられないわけでございますが、もしそういうことがあるとするならば、今後そういうことのないように国際的にもアドバイスが行われるとか、あるいは日本側からもそういう関心を表明するとかいうことは当然問題として出てまいろうかと思うわけでございますが、まさに御指摘のとおりに、今回の事件を教訓として再発を防止するということに対して非常な関心を持たざるを得ないというふうに考えるわけでございます。
  14. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 事実関係はこれからの調査によれば明らかにされていくんだろうと思うんですけれども、その事実がどういう事実であったにいたしましても、まる腰の民間人銃撃して死傷に至らしめるということは、これはやっぱり許せないことではあるまいか。この視点からやはり考え、そして取り組む必要が私はあるんではないかというふうに思えてならないわけですね。  外務大臣としても、今回の出来事については大変不幸なことだろうというふうに判断もなさっておられるだろうと思うし、じゃ日本政府としてはいろんなこれからの賠償問題等についても最善の策を講じながら、できるだけの補償というものを具体的にどういうふうにこれから推し進めていかなければならぬのか、いろんなそういう問題を含めて、日本政府として当然抗議なら抗議、いろんな形の方法というものが考えられるんではないかと思いますけれども、いま考えられる問題はどんなふうに考えておられるんですか。
  15. 園田直

    国務大臣園田直君) まことに遺憾なことでありまして、亡くなられた方、それから負傷された方、遺族方々に心からお悔やみを申し上げ、一日も早い負傷された方の回復を祈るものでございます。  そこで、本件については外務省としては、いま御報告申し上げたとおり、事件が起こると同時に、最初は行方不明ということでありました。米国の方はレーダー網が完備しておりますので、どうもソ連領域内に消えたようだと、こういうことで早速ソ連米国情報提供——韓国には外交関係がありませんから、向こうの方からも日本の方を通じてソ連の方に事実の確認その他を要請をしてまいりましたから現地連絡をしたわけでありますが、ただ、ソ連の方ではまだ銃撃をしたという事実を言っておりません。不時着した際のあれによって死傷者が出た、こういうことを言っているわけであります。遺体がお着きになったわけでございまして、この遺体の検死その他を進めると同時に、御遺族の方の御理解も得てそういうことをただいまやっているところであります。そしてなお大韓航空乗組員及びソ連米国に的確な情報提供を求めておるわけであります。  したがいまして、次に出てまいります問題は、当事者と大韓航空との補償の問題、それから、いま御発言のとおり、この真実が判明いたしますれば、民間航空に対する射撃でありますから、日本国としてはソ連に対してもその点からどのような抗議をし、どのような補償を求めるか、こういうことになってくるわけでありますが、まず現実を調べた上で検討しなければなりませんので、まず政府現実確認ということに重点を置いて急いでおるわけでございます。
  16. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 政府としては、当然、慎重にその辺の事実関係というものを確認されることは言うまでもないだろうと思うんですね。ただ、帰ってきた乗客の談話、あるいは伝えられるいろんな写真報道、これを見る限りにおいては明らかに銃撃を受けたというそのことは門外漢が見てももう明瞭ではないだろうか。そういったことについて余り時間を長引かせるということは解決をまたおくらせるということにもなりましょうし、この問題についてはできるだけその出先大使館からの正確な情報、事実関係確認、これをやりながら特に死傷された方々に対する側面的なバックアップというものを政府としても当然これは取り組まなけりゃならぬということが一つ。  それから、二度とやはり民間航空機に対してこのような不祥事態が起きないようにするためには一体どうすればいいのか。それは国際法上いろんな問題があるようであります。けれども、やはりこうしたことは許せない問題でありますし、しかも多数の日本人乗客が搭乗していた、そしてその中でも相当多くの人がけがをしているわけです。もう二度とやられたらたまったもんじゃないわけですね。したがって今後のそういう事前の防止策の一環として、いま事実関係が明らかになると同時に、じゃどういうことが日本政府としてこれから国連なら国連、いろんな話し合いをする場所あるいは取り決める場所等々いろんなことがあるだろうと思いますけれども、こういった点は敏速に対応する必要があるんではないだろうか、こう考えますけれども、その点はいまどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおり、こういう事件は時間を経過しないうちに、なるべく速やかに対応措置を講ずることが必要でありますが、また一面、国際法その他によってそれぞれの対応をしなければなりませんので、事実を的確に知ることが第一でございますから、御発言の趣旨を体しながら、速やかにそういう検討を進めていきたいと存じております。
  18. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 再度重ねて、民間航空機には、何か今回の場合でも韓国語とそれから英語、それからもうだれが見ても明瞭な頭部と尾翼のところに印がついている。どこの民間航空機だってみんなそういうふうな態勢を整えながら空を飛んでいるわけですね。軍用機ならいざ知らず、こういうことが二度とあってはならないし、たとえどういう地域を飛ぼうとも、その場合に故障ということもあるでしょうし、不測事態ということがあるわけでありますので、今度の問題が一つの転機になるように、日本政府としても的確な判断をもって対応していただきたい、こういうふうにまず御要望申し上げておきたいと思うのです。  もう一点だけ。これは別な問題ですが、外務省では、すでに尖閣列島の問題は、一応中国側の公式な表明もこれあり、それを受けて、これに触れずに、日中条約交渉への道を、特に日米会談終了後行いたいというような意思表示がなされたように思いますけれども、その点はいかがでございますか。
  19. 園田直

    国務大臣園田直君) 尖閣列島は、御承知のとおり、この周辺をめぐる事件領海外に漁船が退去し数日を経過しました。その間、若干の船が潮に流されて領海に近づこうとしたことがありますが、海上保安庁の警告が出ると、直ちに網を上げて領海外に出ております。船団も点在をしながら領海からだんだん遠ざかっておるわけであります。したがいまして、ここしばらくは見守る必要があるわけでありますけれども、本問題は本問題として、日中友好条約締結交渉に向かって変わらない方針で努力をしたいと考えておるところでございます。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうしますと、日米会談後、もちろん明確な期日についてはおっしゃれなくとも、早い時期にその可能性があると私ども判断してよろしいんでしょうか。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) なるべく事実を見守りつつ、早く処理をして進めたいと考えております。
  22. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それでは、初めに、先ほど渋谷委員からも質疑がございましたが、今回の大韓航空機事件についてお伺いをいたします。  初めにお亡くなりになられた方には心からお見舞いを申し上げるとともに、負傷された方にも一日も早い回復を私も祈っております。  調査はこれからでございまして、はっきりした事実がわからない面もあるかと思いますが、まず第一番に、領空侵犯が起こった原因、これについていろいろ言われておりますが、先ほども少し触れられました完全なるパイロットのミス、その理由として慣性航法装置、INSがついていない、こういうことが言われておるわけでございますけれども、大体、そのように理解をしてよろしいですか。
  23. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点につきましても非常に厳密に申し上げますと、事実関係をさらに韓国等から聴取する必要がございますけれども、昨日でございますが、韓国大韓航空役員発言しておりますけれども、領空内に立ち至ったことはほぼ間違いないであろうということを言っておるわけでございますし、それから慣性装置云々につきましても、これはまた非常に厳密に申せばさらに調査する必要がございますけれども、一般的にどうも二重三重の装備がなかったということが言われておるようでございますし、これはしかしさらに調査の上、必要がございましたら、またお答え申し上げたいと思います。
  24. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 領空侵犯をした事実を示す証拠は、これはとることは可能ですか。ソ連側に渡された場合、しばしば、国の体制も違いますので、隠されてしまう場合もなきにしもあらずですが、この領空侵犯の事実を示す証拠はきちんと何らかの形によって——もちろん日本は直接見れないかもわかりませんが、ソ連側韓国側を通じてきちんとしたことがわかるかどうか、その点はいかがですか。
  25. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点につきましては、恐らくいま必ずそれがとれるということを確言申し上げることはなかなかできないと思いますが、ソ連側領空に入ってきたということを事実としてまず前提としなければなりませんので、当然、それなりの事実関係を把握しておるものとわれわれは想定しておるわけでございます。韓国の方も、大韓航空役員が入ったと思っておると言っておることがもし真実であるとするならば、やはり何らかのパイロットその他から聴取した情報によって客観的なあるいは事実があるのかもしれませんので、その辺はひとつ、必ずその証拠が入るとは断言できませんけれども、その方向で努力しておるわけでございます。
  26. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その証拠が入る入らないは別として、科学的にその証拠が厳然とあることは間違いないですね。計器とかいろいろないわゆる機体はそのままあるわけですから、爆破でもされない限りは、とることは可能ですね。
  27. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) これは恐らくソ連の場合にはソ連迎撃戦闘機ないしはレーダー等によって当該飛行機の位置がどうであるかということが確かめられているかどうか、あるいは大韓航空機計器等によってその点がどうなっておるのか、そういうことによるわけでございますので、当然、そういう客観的な証拠と申しますか、そういうものはあり得るはずでございますけれども、必ずそういうものがあり得る、また必ずあるものだということも、これは恐らく、断定しかねるかと思っております。
  28. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、ソ連戦闘機銃撃をしたことは事実である、これはまあはっきりしておるわけで、これもいまお触れになりましたけれども、この銃撃の事実はいまのところソ連側から正式のコメントはない。しかし、大変不幸なことに亡くなられた日本人遺体からはきちんと確認をされるわけですから、これはもう事実なんですが、これの確認日本遺体からはできても、仮にソ連がそんなことはないと否定をした場合、これはどうなりますか、その点については、ここが一番問題だと私は思うのですけれども。
  29. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点につきましては、現在、御遺族許可を得ての行政解剖が行われておるようでございますが、その結果にまたなければ厳密にはまだ判断できないという段階でございます。もし仮にそういうことが客観的に証明されるようなことになりますれば、もちろんこれについては一つの事実でございまして、動かしがたい事実になるわけだと思います。
  30. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 解剖は大体いつごろまでに終わって、いつごろきちんとしたデータとして出てまいりますか。
  31. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) 私の承知しております限りにおきましては、本日中あるいは明日の早い時期というふうに聞いております。
  32. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、問題となります銃撃をした時点ですけれども、警告を発してなおかつ領空外に出なかったから撃ったのか、あるいはまた、乗客のいろんな話から総合いたしますと、かなり突然というふうなことも考えられておりまして、この点に私は一番、今後、米側からの資料韓国側からの資料ソ連側からの資料が仮に出てきた場合、食い違いが相当出てくる可能性があると思いますけれども、この点について事実の確認というのができ得るのかどうか、その点の見通しはいかがですか。
  33. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点につきましては、ソ連側から得られるべき回答、韓国側から得られるべき回答、それを判断した上で、そのときにどういう判断日本がするかという点でございまして、現在の段階では予断することは差し控えるべきであろうかと思います。
  34. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 一番問題は、先ほどから言われてもおりましたこの民間航空機銃撃したということですけれども、国際民間航空機関ですか、これの取り決めが——私もちょっと詳しいことは承知してないのですけれども、たしかソ連は入っていない、したがって守る義務等はない、こういうようなことがこういう急激な銃撃ということになってきたのかどうか、その点はどうお考えですか。
  35. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点につきましては、御指摘の条約の問題はICAO条約でございまして、それに第二付属書というのがございます。これは航空規則に関する付属書でございまして、ちょっと細かくなるのでございますが、その中の三・八規則というのがございまして、これはかかる場合の軍用機によって進路を遮断されました民間航空機が当該軍用機等が与える措置に直ちに従うこと等を定めておるわけでございます。いま御質問のございましたソ連との関係でございますが、ICAO条約の付属書と申しますのは、もちろんICAOによって随時採択、改正されるわけでございますが、各締約国は付属書の規定と相違する国内法令を有する場合には、その相違についてICAOに通告することになっておるようでございます。ソ連の場合には、ただいま申し上げました三・八規則と申しますものについては、相違しておりますという通告を行っていないとわれわれは承知しておるわけでございまして、したがってソ連もこのICAO条約の第二付属書の求めるところには異論を唱えていないというふうに一応考えるわけでございます。  ただ、これはいま申し上げましたように、指示に直ちに従うこととか、あるいは当該軍棚機等との通信回路を設定すること等の措置をとるべき旨を規定しておりまして、銃撃につきましては、これは規定するところがもちろんないわけでございます。銃撃について規定することがないということは、銃撃をしていいのか、して悪いのかという問題にもちろんなると思いますが、少なくともそういう規定がないということでございます。
  36. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ということは、銃撃の規定がないということは、今後こういうことが起こってきた場合もやむを得ないというふうなことになってしまうかと思いますが、こういう事例は過去に平和時において——戦時はもう異常な状態ですから、民間航空機だって撃ち落とされておりますけれども、いわゆる平和時においてこういうことは過去にあったのかどうか、その点はいかがですか。
  37. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) その点につきましては、完全に先例を調べ上げたわけでもございませんけれども、例としては、一九五五年の七月にイスラエル籍機のブルガリア空軍による撃墜事件というのがございました。これは乗客にイギリス人とアメリカ人がおりましたので、英国及び米国がブルガリアに対して賠償請求等を行っております。それから五二年の四月にフランス籍航空機のソ連空軍による銃撃事件というのがございました。これは英国及び米国がやはり賠償請求を行っておるわけでございます。  前者につきましては、最終的には国際司法裁判所に米国及び英国が提訴したわけでございますけれども、これは恐らくブルガリアが国際司法裁判所の義務的管轄権をあらかじめ受諾しておりませんので、これは回遊することができるわけでございますので、結局、結論が出なかったということでございまして、後者については、非常にいろいろな曲折があったようでございますが、さらにこれは調べてみますけれども、最終的には補償は行われておらないというふうに了解しております。
  38. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 過去の二例とも、いま言われたように、結論がはっきり出ていないままになっておるわけです。今回も同じソ連がやっておるわけでございますから、このような事態にならないとは言い切れないわけでございまして、そういった場合、亡くなられた方及びけがをされた方は大変迷惑をするわけですが、今後、この過去の二例を踏まえた上でどのような方針で臨もうとされておるのか。さっき大臣から少し大まかにございましたが、こういうふうな形でどうやっていくのか。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま事務当局から報告いたしました二つの例はともに平時の事件であります。  前者の方は、乗務員、乗客全員が撃墜をされて死亡をいたしております。そこで、米国政府は、七月二十七日に事件が起こって、八月の二日に覚書をもってブルガリア政府に、かかる事件の再発防止、責任者の処罰及び米国民の死亡による損害賠償を請求しております。英国政府は、七月三十日付文書をもって英国民の損害に係る賠償についての権利を留保する旨述べ、なお翌年三月十二日付文書をもって英国民の死亡に係る損害賠償請求をしたが、結局応ぜず、司法裁判所に提訴したが、これは却下されたということであります。  後者の場合には、英米仏がソ連に対して速やかな事情の調査、責任者の処罰並びに人員及び機材に対する十分な補償を要求いたしました。これに対して、ソ連側は、同機は同回廊をそれておって、しかもMIGによる着陸要請を拒んだので警告射撃を行ったものと即日反論をして、いろいろ主張いたしましたが、結局、これも平時においては、警告のためでも非武装の航空機に対し銃撃を加えることは許されないと三国は主張いたしました。しかし、結局、ソ連は機体の調査にも参加せず、何ら補償を行わなかったという、近いこういう例があるわけであります。  したがいまして、政府としては、速やかな対応の処置も必要でありますが、こういう経緯を見ても、今後の折衡というのはきわめて綿密に合理的にやらなければならぬわけでありますから、行政解剖その他の結果を見、米国韓国日本乗客等の事情も調査し、それからソ連の正当な言い分等も聞いて、これに対応の処置をしなければならぬと考えております。
  40. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま大臣から詳しく過去の例もお話ございましたように、そういった点では大変ソ連に対して不信感を持たざるを得ない状況にあるわけでして、今後この問題についてもこういう態度に出ないとは限らない。  というのは、コスイギン首相中川農林大臣に話された内容、その後のソ連の態度というのはまたこの蒸し返しのような気がして私はならないわけですから、いま大臣はかなり綿密にやるとおっしゃっておりますけれども、綿密にやった上でも果たして可能なのかどうか。過去の事例については、かなり詳細に機体も抗議する方が調べられる立場にあったわけであるにもかかわらずソ連はそういう態度に出ておるわけですから、今回機体は向こうにあるわけですから、これは大変むずかしい。ただ幸いなことに乗客だけは日本にいる、遺体日本にあるということがせめてもの救い、こういう状況であります。しかも、その機体は韓国のものですから、なかなかむずかしくなってくるのではないかと思いますので、その点をどううまくおやりになるか重ねてお伺いをしたいと思います。
  41. 園田直

    国務大臣園田直君) この当事者の大韓航空会社——朴大統領は、本件に対するソ連の取り扱いに謝意を表明しているわけであります。したがいまして、そういうこと等をいろいろ考えてみますると、この折衝はなかなか困難ではあると思いますが、綿密に調査の上、折衝をすべきであると考えておるわけでございます。
  42. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、亡くなられた方並びに負傷をされた方の補償については、どのようになりますか。
  43. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) 本件は、第一義的に大韓航空と当該当事者あるいは御遺族との関係になるわけでございます。一部新聞報道では大韓航空が約千二百万円の支払いを検討しておるとか、これがどういう種類のものでございますか、保険的な意味であるか、上積みであるか、見舞金であるか、よくわかりませんけれども、そういった形で当事者間における話し合いが進行するものと予想しておりまして、これについては韓国に対しても情報を求めておる次第でございます。
  44. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、今後の問題として伺っておきたいのですが、一つは、先ほど触れました慣性航法装置大韓航空のこの飛行機はつけていないということですが、今後、これは国際的に義務づけ——現在は義務づけられているのかどうか私よく存じませんのでお聞きしたいんですが、義務づけられていないとすれば、こういった点を義務づける必要があると思いますが、それについてはどうお考えですか。
  45. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) これにつきましては、運輸省の専門的な御判断を得なければならない問題であろうかと思います。まず、慣性航法装置が本当になかったのかどうか、この点も実は明らかでないものでございますから、この点をひとつはっきりさせる必要があると思いますが、もしそういうものをつけていない場合、これをどうしていくかということは、これは航行の安全という見地から関係の国際機関でも関心を持つでございましょうし、特に事故関係国であった国が韓国に対しても当然関心を持つ事項でございますので、その点は今後の問題として御指摘のように重大な問題になるものと思います、もしそうでありまする場合は。
  46. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう一つ、先ほどお話のありました国際民間航空機関の件ですが、銃撃については何もない、これについても検討をする必要があるのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  47. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) ICAOの付属書には銃撃についての規定はございません。ただ、これにつきましては、軍用機の中では銃撃——まず最初に翼を振りまして合図をする、その次は追尾するとか、あるいはその次は側面に出まして並行飛行をする、並行飛行からさらに状況によっては正面に威嚇的な射撃を行うというようなことが作法として、これはICAO条約を離れまして、慣行上言われておるわけでございます。昨日の大韓航空役員発言でも、大韓航空パイロットはそのこと等は承知しておったはずであるという発言をしておることを新聞で拝見したんでございますが、そういう意味では、銃撃の問題というのは、ICAO条約だけで律せられない問題が若干あろうかという感じがいたしております。
  48. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう一つ最後の問題として、この北極圏内というのは、大変いま日本も結構この北極圏を通過して日本乗客も乗っておるわけですが、軍事的な面で見ますと、この北極圏というのは大変米ソ両陣営が、火花が散っておるといいますか、お互いにレーダーを駆使して情報の収集等をやっておる、いわば米ソが軍事的な面では大変緊張しておるといいますか、対立をしておる場面であるわけですから、したがって今回のような両国の戦闘機は絶えずスクランブルをしておると考えていいわけでして、この中にかなり多数の民間航空機が飛んでおるわけですから、極論をいたしますと、今回のような事件が絶えず起こる可能性を秘めた航路である。それだけに非常に今後むずかしいといいますか、こういった不幸なことが起こらなければいいがなと、私自信率直に言いまして、この北極圏で事故が起こったということを聞きまして、すぐこれは大変だと、日本ソ連とかいう問題だけではなくて、米ソの緊張ということがこういうことを生み出してくると、やはり米ソ二大、いわゆる超大国といいますか、核の大国が本気になって平和の話し合いをやり、SALT交渉も少しは前進しつつありますけれども、まだまだの状態ですし、この北極圏というものがもっともっと平和で、われわれ平和国家、また平和の国民が安心して飛べるようなゾーンになっていかないと、絶えずひやっとして飛ばなくちゃならぬということになるわけですから、私はこの点が日本として一番問題があるところだと思います。  何かモスコーとワシントンだと遠いように思いますけれども、平たい地図で見ていると遠いんであって、北極の上から見ますと大変近いわけですから、そこが大変厳しい環境にあるということについて日本としては考慮に入れた上で平和外交、自主外交をしていただきたい、これを私は大臣に強く要望するわけです。この点に対するこの事件を踏まえた上での、日本の本当に近くのことですから、大臣のこれからの外交路線といいますか姿勢といいますか、これをお伺いして、この問題についてはこれで終わりたいと思います。
  49. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御発言の要旨を体して、今後、外交に努力をしたいと考えております。
  50. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間がもうなくなりましたので、バングラデシュ、カナダの問題がございますが、バングラデシュとの郵便為替の問題ですけれども、その前に、この問題に触れる時間がありませんので、簡単に、先日、ラーマン大統領が来日をされまして、共同声明が出され、種々の経済援助の要請が、バングラデシュ側から出されました。それに対して日本政府も協力の形でいろんな約束をされておりますが、その具体的な内容。  それから、もう一つは、時間がないのでまとめてお伺いしますが、問題は、バングラ側が大変強く主張しております無償援助に対して日本は答えを保留しております。この点についてどういう理由なのか。これからもやはり無償援助というのはある程度積極的に、こういった日本が円高という形に見られますようにいよいよ厳しい状況の中ですから、検討しなきゃならぬかと思いますが、これについて答えを保留されている理由、今後やる方針なのかどうか。  それから、やはり全般としてまだまだ発展途上国への援助が非常に少ないと思います。資料を見ましても、韓国、ASEAN諸国にちょっと偏り過ぎておるのではないか。もちろんASEAN諸国も大事です。その次にバングラデシュは多いんですけれども、しかし、そのほかは大変少ない額になっておりますので、この点について現在の数字の上から見て、やはり少ないと見ておられるのか、現状でやむを得ないと見ておられるのか、その点はいかがですか。  それから、バングラデシュに限らず、日本の経済援助がひもつき、あるいは押しつけがましいということでいろいろ批判をこうむっておりますが、ひもつきではないというふうなことをきちんと援助の中で示すのにはどういうふうにされているのか。  それからバングラデシュヘの百億円の借款の具体的なプロジェクトが決まっておりませんが、これはいつごろまでにどういう形で実施をされるのか、その辺についてお伺いをして終わりたいと思います。
  51. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) バングラデシュがアジア地域の中でも特に開発のおくれた国ということでございまして、私どもといたしましては、バングラに対する経済協力につきまして大いに関心を有しているところでございます。先ほどラーマン大統領がお見えになりまして、経済協力の問題についてもいろいろ話し合いが行われたわけでございますが、ただいま御質問のございました点について順番にお答えいたします。  まず、有償資金協力についてでございますが、これはコミュニケにも書いてございますけれども、バングラ側の方から特に優先プロジェクトといたしまして、天然ガスの資源開発あるいは橋を二つ建設するという話あるいは送電線の敷設あるいはチッタゴンの製鉄所近代化というようなものを挙げまして、これらのプロジェクトについて日本側の協力を求めてきたわけでございます。ただ、これらのプロジェクトにつきましては、まだ必ずしも十分調査が完了していないということもございまして、日本側といたしましては、まず調査を鋭意行いまして、その実行可能性等が確認された暁には百億円の限度内において借款を供与するという方針にしているわけでございます。  その時期については、いつごろになるかというお尋ねがあったわけでございますが、これはその調査の結果待ちということになりますので、いつごろと日限をいまから申し上げることには若干困難があるわけでございますけれども、少なくとも日本側といたしましてはできるだけ早急に調査を完了して結論を出したい。その結論が出た暁におきましてバングラ側と十分協議をいたしまして、どのプロジェクトにどれぐらいの金額の円借款を供与するということを決定いたしたいと考えているわけでございます。  次に、無償につきましては、コミュニケには具体的に挙げるのは間に合わなかったわけでございますけれども、実は、バングラ側との打ち合わせがかなり進んでおりまして、無償資金協力のうちプロジェクト協力三件、これは農業関係、漁業関係、教育関係等でございますが、これはもう内容もほぼ固まりまして、きわめて近い将来に正式に合意に達することができるというふうに考えております。  そのほかに食糧援助についての要請でございまして、この食糧援助につきましても日本側が持っております全般的な予算の枠の中においてバングラ側に対してどれだけその配慮をすることができるかという問題になるわけでございますけれども、これもバングラ側の要望にこたえまして、日本側といたしましては、つらい予算の枠の中ではございますが、できるだけ好意的に配慮したいというふうに考えているわけでございます。  それから、ひもつきの問題でございますが、これは過日、日米通商協議のときにも表明されたところでございますが、日本は非常に外貨準備が豊かであるということもございまして、外国から日本の援助をアンタイすると申しますか、ひもつきをやめるという要望が多いということにこたえまして、日本側といたしましては、その援助のアンタイということを目下積極的に進めている段階でございまして、円借款につきましてはすでに本年度から一般的なアンタイということを鋭意進めるつもりでございますし、また、無償資金協力につきましても、今後はアンタイの無償資金協力というものを行うことを目下検討しているところでございます。  それから、アジアに少し偏り過ぎているのではないかという御指摘でございまして、確かに過去の数字を見ますと、わが国の援助の非常に大きな部分がアジアに向けられているわけでございますが、これはわが国とアジアとの間の歴史的、地理的、経済的関係等よりいたしまして、ある意味では当然であったところでございます。ただ、将来もこの比率を維持するかということになりますと、私どもとしては、現在のような形で将来ともそのままでいいんだというふうには必ずしも考えておらないわけでございまして、よく言われておりますとおり、日本といたしましては今後五年間に援助を倍増以上にするという意図を表明しているわけでございますが、この援助を拡大する過程におきまして、アジア以外の地域、中近東、アフリカ等に対しましても今後は日本の援助を拡大してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  52. 立木洋

    ○立木洋君 私も、この際、ちょっと二、三点お伺いしておきたいんですが、一つは、尖閣列島領海侵犯問題ですが、この問題は中国の漁船が領海から退いたというように聞いておりますが、やはりこの処理を正しくするということは、今後のこういう領海侵犯問題を再び起こさないという上から考えましても、また日中両国の友好を発展させる、条約の締結を進めるという問題からも非常に大切な点ではないだろうかというふうに考えるわけです。  そういう点でお尋ねしたいんですが、二十日までの時点については当外務委員会で中国漁船の動向についてはお聞きしたわけですが、その後の動向についてはどういうふうになっているのか最初にお尋ねしておきたいと思うんですが。
  53. 園田直

    国務大臣園田直君) 現場状況は、十八日の午後五時ごろから領海内の船はいなくなりました。その後ずっとゼロでございましたが、その間、二回か三回、数隻の漁船が領海に近づこうとしたことがございます。その場合、海上保安庁の船が警告を発したところ、全部操業しておった網を上げて領海外に退去をいたしました。それから船団主力というのは、一日は領海近くに密集しておりましたが、その後ここ二、三日来は各所に点在をしながらだんだん領海から遠ざかっていっております。ただいまは、領海外領海地点から二十キロぐらいの線に遠ざかって操業している状態でございます。
  54. 立木洋

    ○立木洋君 これは領海から大分離れたというふうな状況というのは、中国当局が漁船団にそういう指示を出したのか、その点については日本政府としてはどういうふうにお考えでしょうか。
  55. 園田直

    国務大臣園田直君) 二十一日午後四時に、北京で堂ノ協公使と王暁雲アジア副司長が会談をした結果、この辺の水域で魚をとることは数年来行っていたことであって、今回の事件もそのような漁労活動を行っている間に偶然に発生したものであるという調査結果の回答があったわけでありまして、それから午後五時から領海外に出たわけでありますから、中国の指示によってこの漁船というものはだんだん領海外に出ていったものと想像いたします。
  56. 立木洋

    ○立木洋君 いまおっしゃいました王暁雲氏の向こう政府からの回答ですね、その後段の部分に、今後とも日中関係については大局的な見地に立って対処したいという趣旨の回答があったというふうに新聞の報道で見たわけですが、これについては、日本政府としては、中国政府がこのように述べた考え方というものをどういうふうに判断されておりますか。
  57. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国側が述べたことに対しては、そのままこちらはその言葉どおりに解釈をいたしております。
  58. 立木洋

    ○立木洋君 この間、当委員会でもいろいろ質疑をいたしました際に、こういう主権侵害、つまり尖閣列島領海侵犯の事態というのが再び起こらないように保障されなければならないという趣旨のお話もありましたが、こういう事態の中で、尖閣列島の水域に関する領海侵犯が再び起こらない保障がついておるというふうに判断されるのか。さらに、その手を足しておく必要があるというふうにお考えになっているのか、その点御判断はいかがでしょうか。
  59. 園田直

    国務大臣園田直君) この問題については、向こうが偶然に起こったことである、こう言うし、それから日中関係は今後とも大局的見地に立って進めていきたい、こういうわけでありますから、先般から申し上げておりましたとおり、この事件はまず現場事件を決着をつけること、いわゆる領海外に出ていくこと、それからこの集団が領海近くにおって示威的な行動がないこと、これが現場の決着だと心得ております。大体、それは決着の方向へ進んでいるわけでありまして、中国側もいま言ったような方向でこれを処理したいという意図が見えるわけでありますから、わが方も、この問題については日中共同声明の線に復すればよい、こういうふうに考えております。
  60. 立木洋

    ○立木洋君 いまおっしゃったのは大体ということであり、そういう方向に向かっておるというふうな中国側の意図も見えるということであって、明確な保障という点ではないわけですね。そういう方向に向かっておるという判断ですか。
  61. 園田直

    国務大臣園田直君) 現場状況はだれが見ても大体解決されつつあると、しかし、ここ二、三日なお注意深く見守る必要があるとは考えております。そこで、この問題については共同声明を出したときの立場に返れば、こういう事件はないわけでありますから、それらについてはどのような話し合いをするかは今後の問題でございます。
  62. 立木洋

    ○立木洋君 これも新聞報道で見たわけですが、この間の閣議ですかね、福田総理はもう少しきちっとしたことを考えた方がいいという趣旨を述べられた、もう少しきちっとしておいた方がいいと。それから安倍長官がハイレベルの会談で取り上げることも考えられるという趣旨の発言が閣議の中であったというふうに報道されておりましたが、この点については、いまの時点で、これで大臣はもう大体再発の防止ができるというふうにお考えなのか、あるいは総理や長官が言われているように、さらにきちっともう一段手を加えておく必要があるというふうにお考えになっているのか、その点はどうでしょうか。
  63. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言は閣議ではなくて、先般、月曜日に行われた自民党の党と政府の首脳者会議の席上、総理の方から発言をされて、尖閣列島の問題も私が報告をしました。いまのようなことであるから、中国もこう言っておるので、先般決めた三ヵ条の趣旨に従って日中友好条約は変わらず努力するということでやりたいので御了解を願いたいと。なお、尖閣列島については、現場事件は大体解決がつくと思うけれども、もう少し高いレベルで何かもう少しちゃんとした方がいいかもしれぬと思っていると、こういうことを言われた意味で、方針は私が申し上げた方針と変わりはなくて、その後の共同声明の線でいくということで、どういう話し合いをするかという手段について何か方法があるかなということを総理は考えておられる状態でございます。
  64. 立木洋

    ○立木洋君 その点、大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  65. 園田直

    国務大臣園田直君) これは総理の意でもございますから、そういうことであれば、いま事件は解決されつつあるし、それからこれは偶然の出来事であるという中国の言い分もありますので、それに基づいて、共同声明の線にこれはいわゆる原状に回復しましょうということを、ある時期にどうにかの方法で話し合いをすべきであるかもわからぬ、こういうふうに考えております。
  66. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、今度いわゆる条約ですね、先般、大臣が言われたときには大体三つぐらいある、いま侵犯している事態から直ちに撤去していただく、それからもう一つは、こういうことが再び起こらないようにする、そしていまいろいろ意見が出されている与党の意見等々もあわせてコンセンサスを得て、それで日中の交渉を開始するというのが日中条約交渉に至るまでの、それらの条件が整う必要があるというふうに大臣は言われましたけれども、その条件、整えなければならない条件というのはいまでも変わりないのか。それともう一つは、さらにその見通しはどういうふうに現在お考えになっているのか、その点。
  67. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が申し上げた三つの条件というのは、第一は現場領海から出ていくこと、それから船団が領海から離れること——離れた公海でやっている分はこれは別でございますから。その次には中国がどのようにこれを考えておるのか、この調査の結果はどうか、これが王暁雲副司長と堂ノ脇公使との間でこれは偶然の出来事であった、決して準備的というかあるいは計画的なものではない、こういう調査の結果の回答があったわけであります。しかし、もう少し何か話し合いをきちんとした方がいいということであれば、それをやればそれで条件は満たされるものと思います。
  68. 立木洋

    ○立木洋君 先ほども問題になっていました最後の見通しですね。
  69. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本政府も中国の政府も日中の関係については大局的見地からやっていきたいということは一致しているようでありますから、私は話し合いをすれば、それは話はつくんじゃないかと思っております。
  70. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、事件が発生したときには大きな問題としていろいろ議論もされますが、実態はそういう中国の漁船が領海からのいたという後ですね、これはやっぱり正しい形で解決するということが私は必要だろうと思うんです、今後のいろいろな問題を残さない上でも。そういうことを明確にした上で、やはりそういうことをすることが両国の友好関係の基礎を固めていくことにもなるわけですから、そのことを最後に特にお願いしておきたいと思います。  それからもう一点、先ほど問題になりました大韓航空のあの事件に関連してですが、政府の方として、ソ連アメリカ、それから韓国に対して事実がどうなっているのかという究明の要請を行った。もちろんこれについての回答というのはまだないでしょうけれども、そのときの相手国の対応ですね、どういうふうな態度であったのかということについて三国の対応について説明していただきたい。
  71. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) 米ソ韓国に対するアプローチでございますが、これは昨日外務省におきまして領事移住部長から在京ソ連公使及び在京韓国公使に対して申し入れを行ったわけでございます。先方は、事実関係をひとつ究明することが非常に大事だと思うから、御趣旨を本国政府に伝えますということでございまして、ソ連については、すでにその前日に在モスコー大使館申し入れをしております。したがいまして回答を督促したという形にはなっておるわけでございます。先方は、出先でございますけれども、本国政府に御趣旨を伝達するという応答をいたしたわけでございます。
  72. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一ヵ国。
  73. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) この点、米国でございますが、米国につきましてはやはり昨日申し入れをいたしました。これに対しまして、米国は特に新たな情報を持っておらないようでございましたけれども、これも同様の応対でございました。
  74. 立木洋

    ○立木洋君 日本の国内で可能な限りの調査もする示唆も得られたわけですから、その調査もし、さらにはこの三国からしかるべき回答が寄せられることになるだろうと思ううんですが、それが寄せられるまでの時点日本政府としては新たなアクションを起こすというようなことはないわけですか、何らかの措置を要請するということは。
  75. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) 現在の段階では事実関係の把握が先決でございますから、これに専念するということであろうかと思います。
  76. 立木洋

    ○立木洋君 それで、そういう回答が任せられた後で検討して、そして新たな対応を決めるということになるだろうと思うんですが、この回答が非常に遅いような事態も考えられるでしょうし、また、先ほど問題になりましたように、回答自身にいろいろ食い違いが起こるというふうな状態もあり得るわけですが、これについては、政府は、出先で話をするというだけではなくて、さらに強力に要請をするような、そういうふうなことまでも一応考えには入れてあるわけでしょうか。
  77. 賀陽治憲

    説明員賀陽治憲君) 先ほど大臣からも御答弁がございましたように、過去の例におきましても、いろいろケースは違いますけれども、この種の事件は時間がかかっておりますし、かなりしんぼう強い対応が必要であるということは、これは否定できないところであろうと思います。したがって、どういう反応があるかわかりませんけれども、その反応のいかんにかかわらず、しんぼう強くやってまいるよりいたし方ないかと思いますけれども、ただいま御指摘の、さらに強力に働きかけるべきじゃないかということでございますが、これはやはり第一回の反応を見た上で判断いたしませんといけないことだと思います。そういうことで第一回の反応を待っておるような状況でございます。韓国がやはり第一義的に航空機の責任を持っておりますし、韓国対応というものも重要な参考になろうという感じがもちろんいたします。
  78. 立木洋

    ○立木洋君 最後に、大臣の方の御所見を伺いたいんですが、今度の大韓航空機事件に対してどういうふうにお考えになっているのか。それから今後の基本的なこれに対処する姿勢ですね、どういうふうに臨んでいきたいというふうにお考えになっているのか、その点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  79. 園田直

    ○国務大鹿(園田直君) 大韓航空機が強制着陸させられた、この事件韓国ソ連の問題であります。ただ、わが方としては、乗っておった乗客の中の一名が亡くなられ数名が負傷をされた、ソ連銃撃によって。ここが問題でありますから、この点は、十分実情を調べた上に警告を発したのかどうか、あるいはその警告を聞かなかったのかどうか、こういう点で一々違ってくるわけでありますから、それを調べた上で、これに対する対応の処置を講じたいと思っております。
  80. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  まず、日本国バングラデシュ人民共和国との間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  81. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本カナダとの間の小包郵便約定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  82. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれをもって散会いたします。   午後二時三十四分散会      —————・—————