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1978-04-11 第84回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)    午前十時三十七分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十一日     辞任         補欠選任      和田 春生君     田渕 哲也君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 稲嶺 一郎君                 鳩山威一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 亀井 久興君                 永野 嚴雄君                 三善 信二君                 小野  明君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 田渕 哲也君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    政府委員        外務大臣官房長  山崎 敏夫君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君    事務局側       常任委員会専門       員         山本 義彰君   説明員       外務大臣官房外       務参事官      枝村 純郎君       外務省欧亜局東       欧第一課長     都甲 岳洋君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本国イラク共和国との間の文化協定締結  について承認を求めるの件(内閣提出) ○船員職業上の災害防止に関する条約(第百  三十四号)の締結について承認を求めるの件(内  閣提出) ○在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○安全なコンテナーに関する国際条約CSC)の  締結について承認を求めるの件(内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、日本国イラク共和国との間の文化協定締結について承認を求めるの件及び船員職業上の災害防止に関する条約(第百三十四号)の締結について承認を求めるの件を便宜一括して議題にいたします。  両件につきましては、すでに質疑を終局しておりますので、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  まず、日本国イラク共和国との間の文化協定締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方は挙手をお願いします。   〔賛成者挙手
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  次に、船員職業上の災害防止に関する条約(第百三十四号)の締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手
  4. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     ―――――――――――――
  6. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 速記をとめて。   〔速記中止
  7. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 速記を起こして。  次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 戸叶武

    ○戸叶武君 議題に入る前に、けさのテレビを聞いて驚いたのは、アメリカに駐在するソ連国連関係の高官が亡命したのではないかというようなテレビの放送がありましたが、その事実は外務省の方には入っておるのでしょうか。
  9. 園田直

    国務大臣園田直君) 国連代表安倍大使から電報が参っております。その要旨を御報告いたします。  本十日、午後三時三十分、国連事務総長スポークスマンは、シェフチェンコソ連事務次長政治安全保障問題担当選任に関し、次のとおり発表を行いました。国連情報収集の上派遣いたすべきも――じゃ要旨はちょっと読んでもらいます。
  10. 都甲岳洋

    説明員都甲岳洋君) 私の方から、要旨を御報告申し上げたいと思います。  国連事務局から発表されました要旨でございますけれども、国連事務次長アルカージー・シェフチェンコは、本国政府との意見相違に関連して、その職務から離れている。そして現在本件に関連して中央の究明が行われており、シェフチェンコ氏はその職務を現在休職中であると考えられている。国連に派遣されているソ連常駐代表部及び米国機関は、この問題に関連して、事務総長と連絡をとっている。  以上のような発表国連事務局からございました。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 国連事務局に送られ、しかも情報関係の重要なポストを占める外交官が、テレビでは亡命説が流されておりますが、いずれにしても職責から外されてしまったというようなことは、普通の亡命と違って、そこにも電報にあるように、意見相違でというのは、いま国際関係米ソをめぐって陰湿にして深刻な駆け引きが行われていると思うのであります。そのさなかにおける出来事だけにこの問題は軽視してはならないのでありますが、新聞にはすでに、バンス訪ソ期待という形で、米ソ関係の緊迫した状態の調整のためにバンス氏の訪ソというのが期待されておったのですが、このような出来事を中心としてバンス訪ソというものもなかなかむずかしくなったと思うんですが、どうでしょうか。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) まだただいま報告しました簡単な電報を見ただけでありますから、これについて私が所見を申し述べる段階ではないと思いますので、もう少し次の電報を待ち、事実を検討した上でお答えさせていただきたいと存じます。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 大臣から軽率な見解の表明というものは、こういう事態のもとにはできないと思うのですが、ブレジネフ書記長のシベリア、極東視察も領土問題並びに日中平和友好条約締結を前にしてのソ連一種恫喝外交ではないかとまで見られている状態のときに、ソ連なりアメリカなり動きというものは微細にキャッチされていなければ、日本外交は生きた外交として躍動しないと思うのでありますが、こういう背景があるのにもかかわらず、いま日本自民党においては、憲法規定どおり外交権内閣にあるんです。しかし、政党内閣で母体は自民党です。自民の揺れ方は京都知事選挙程度のものじゃありません。この外交権を持つところの与党が少なくとも国の運命を支配すると思われるような日中平和友好条約締結をめぐって覇権問題、領土問題において真っ二つ意見が分かれているような印象を世間には与えていますが、その実相はどういうぐあいなんです。政治をわれわれは形式的な観念論で取り計れないので、やはり生きたダイナミックな動きというものをする政治力躍動の根底がこのように分裂しておったのではどうしようもないと思いますが、外務大臣は一向平気ですか。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 日中問題の日中友好条約交渉再開について本朝もいままで自民党外交調査会出席をして本委員会に駆けつけたわけであります。いろいろ慎重に議論がされておるわけでありますが、少なくとも外交というものは政府与党、そして各党の方々、国民というものの大多数の支持がなければ外交ができないことは御発言のとおりでありまして、なるべく早く与党の御理解を得たいと万般の努力をいたしているところでございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 現実政治において、たとえば京都府知事選挙のような形で三つどもえの争いがなされたときに、自民党が勝ったと言うが、府民の支持は三つに分裂しておって、革新の票を集めりゃ革新の方が多かった。革新の分裂が保守党に利を与えたで問題は済むかもしれませんが、日本の国の運命を決する外交においてはやはり天下の意見が恐らくは二つに分かれるような状態というものは非常な危険な状態が醸し出される危険性があるのであります。自民党がどのように内部で議論やられるも構わぬけれども、最終的に国の百年の計を決める外交問題において意見が対立してまとまらず、外交権を打つと称する政府動きがとれない状態のもとにおいては、最終的には主権者である人民の動向によってこれを決さなければならない。解放も一つの方法でありましょう。そういうような形で外交問題が論議されなければならないということは、これはフランスの選挙以上に私は深刻な衝撃を日本の政界に与えると思うんです。  憲法擁護勢力か、憲法を改正する潜在勢力としての勢力の勝ちか、主権者が勝つか、政府与党が勝つか、こういうような天下分け目の政治決戦がそこに醸し出されないとも限らないのであります。一種革命的異変がそこにつくり上げられる危険性もあるのであります。それがよいか悪いかは別問題としても、いまその不安なる徴候を助長させているのがいまの自民党政府であり、成田問題とこの日中平和友好条約締結をめぐる中ソ、これらにくみしてどこの国に国籍があるのかわからないような言動が横行して揺すぶりがなされているとするならば、日本政治はきわめて末期的な現象を呈しているというふうに他からは見られると思うのであります。自民党としてはよもさようなことはないかもしれませんが、見ているところでは、国民全体が危ないかな危ないかなという危機感に私はさらされて、何事かがここに発火しなけりゃならないような状態すらも私はいま醸し出されていると思うのであります。  外務大臣もじっとしていられない気持ちがあるでしょうが、いわゆる権謀術策の徒は、前に私が指摘したように、福田外務大臣の間を分断作戦によって日中平和友好条約締結を阻止しようというような企ても進められているということですが、まあ園田さんは大人だからどこ吹く風としてそれを吹き流しているんでしょうが、こういう政治が生き物だからと言っても、一服盛られちゃってからおれは生きていると言ってもやはり生きられないような状態になる場合もあるが、そういう点はどのようにあなたは見通しておりますか。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) 日中友好条約交渉は、総理がしばしば言われているとおり、機はまさに熟しておる、これは内外の情勢がそうでございます。ここで余りにおくれることは、これは日本国益のためによくないと存じ、誠心誠意与党の御理解をいただくように努力を続ける覚悟でございます。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 別に水を差すわけじゃありませんが、水がないところに魚はすまないのですが、このごろソ連では魚の問題で水を差しているようです。なかなか自民党農林大臣というのは豪傑な方だそうですが、きょうは国会の重大な段階においても、農林省のおえら方は皆見送りでもってこれは全部留守だそうです。国会よりもやはりソ連の方に向かって、なるたけそれぬようにというのでソ連ソ連と言っているようですが、こういう状態国会を無視して、魚に夢中になって水の中へ落っこってしまったらどうかということを私は心配しているんです。  それは北海道なり魚関係のある人は必死でありますけれども、これと引きかえに領土問題をうやむやにするなどということは、少なくともいままでの日本人の政治家にさような者はなかったはずですが、このごろの青嵐会というのもときどき台湾の方へ傾いたり、ソ連の方へ傾いたり、揺すぶり専門になっておりますが、青嵐会の中にもいろいろな方があって、バラエティーがあっておもしろうございますけれども、一体、こういう奇現象というものはどういう自民党政治体制から発生したのでしょうか。
  18. 園田直

    国務大臣園田直君) やはり日中友好条約日本中国のこれから先長きにわたる友好関係を規制するわけでありますから、反対と言われる方はそうたくさんおられないわけでありまして、いろいろ御心配をされて慎重にやれという御意見でありますから、よく御理解を願うように努力を続ける以外にないと必死に努力をしているところでございます。
  19. 戸叶武

    ○戸叶武君 サケマスの問題でしょうけれども、昔から日本サケは南部の鼻曲がりと言って、鼻曲がりのやつの方がおいしいということでしたが、このごろ政治家にも鼻曲がりが大分多うございまして、そういうわけでこういうサケマスのことを避けて通れぬとばかりに夢中になってやっているんでしょうが、私は北海道なりあるいは日本海沿岸遠洋漁業をやっている人たちがとにかく生きるために死活問題としてもがいている現状というものを、プロレタリアの国家であるというふうなソ連が、政府のことは別問題として、日本の働く漁民をこのように苦悩させているということは、政府相手側に対して正しい見解を伝達する一つ政治力を持たないんでソ連が誤解しているんじゃないかと思いますが、私はソ連の方を少し善意に見過ぎるかと思うんですけれども、外務大臣はいままでの接触において、ソ連日本の働く漁民のために十分配慮していると思いますか。それとも、領土問題における仕返しとして、ひとつ日中平和友好条約を阻止するためにこのような恫喝をやるんだとやっていますか、どっちの判断ですか。
  20. 園田直

    国務大臣園田直君) 他国のことでございますから、外務大臣の職にある私がとかくこれをコメントすることは避けたいと思いますけれども、ソ連の方でも日本との友好関係というものを念頭に置きながらやっていただいておるものと判断をいたします。
  21. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣としての発言は慎重にこしたことはないと思いますが、外務大臣は、内務大臣じゃなく外務大臣ですから、やはり外国のことをよく知って、言動は気をつけなければならないけれども、ソ連ならソ連のペースに乗せられていってしまうのでは――園田さんは、大体、日本外務大臣という、評判のいいところと悪いところがありますけれども、多少相手国から誤解されても、それをやはり貫いていくだけの、毀誉褒貶は別として、見識が必要と思いますが、私がそれを聞かなくても、これは定評があるところで心配はないと思いますけれども、いま新聞においてもあるいは国会の中においても、青嵐会出身硬骨漢と言われている農林大臣園田はどっちもとにかく豪傑だが、片方ソ連側に、片方日本側というか、中国側にというふうに分類して「中央公論」におけるわが党の岡田君なんかもそういうふうな断定の上にたって談論を進めているようですが、その辺の断定は当たっているんでしょうか。
  22. 園田直

    国務大臣園田直君) 農林大臣漁民及びその家族、日本国益を守るために努力をしているわけでありますから、これはソ連に行って精いっぱい厳しい中に努力をされることが当然であり、また、私は、外務大臣として、農林大臣交渉がうまくいくようにできるだけの努力をすることが私の職務であると考えております。しかし、戸叶先生のおっしゃった件はきわめて大事な点でありますから、今後、十分参考として職務を遂行したいと考えております。
  23. 戸叶武

    ○戸叶武君 政治を誤るのは、およそ権力の要所に立つよりも、その取り巻きの担ぎ屋というものが事を誤る場合が多いのであります。そういう意味において、外務大臣農林大臣の立場をも正しく評価し、自分姿勢自分で明確に言い聞かせておるから、大体間違いはないものと思っております。  ただ、いま問題は、先ほどの米ソ関係の内面的な対立が深刻であるというのは、やはり核兵器軍縮、そういうものが国際連合の席上においても公然とSALTの問題などをめぐってなされるときに、世界平和共存を目指して列国の動静が定まってきているのに、ソ連だけがそれからそれてしまっては、本当にソ連と言ってもそれるとは何事かということになって、SALTどころの話ではなくなると思うんです。そういうところを、良心的な外交官はいても立ってもいられなくなってやはり飛び出さざるを得なくもなるんじゃないかと私は推定するんですが、この世界動向に対して覇権大国というソ連といえども、アメリカといえども孤立して自分の自我だけを通して世界を支配するなどと考えるのは、これは少し脳病院か何かに入れなくちゃならないんで、私は非常な危険な状態米ソ両国とも立っていると思うんです。  日本が勇気を持って、インチキでなく、本当に今後は軍備も撤廃していくべきである、特に核兵器などはなくしていくべきであるという先頭に立って、この米ソ世界からの孤立化と行き詰まりを救ってやる救いの神になるぐらいなつもりで物を言わなけりゃ、物を持ち過ぎて動きのとれなくなったソ連米国の血の回りの悪いやつには、やはり私たちが正しい見解というものを世界世論背景にぶっつけることが大切だと思うんです。そういう意味において、何だか神田さんは国連軍縮会議にはへっぴり腰で、そういうことには園田が行くというような言動をしばしばこのごろはしていますが、あの大切な日程だけを理屈にして、重要なこういうふうな国連における軍縮をめぐる国際会議のようなものに日本総理大臣が率先して顔を出すことができないという、この非政治性の行動はどこからあなたは起きていると思っていますか。
  24. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度の軍縮総会は、特に重要な総会でありまして、各国ともこれには重大な関心を持っております。ヨーロッパの各国とも首脳者が直接出ていく可能性が非常に強いわけでありますから、日本でもできれば総理の御出席を願うよう、ただいま努力をしているところでございます。
  25. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本外交というものは、世界の中の日本のあり方ということを突き詰めて考えながら、タイミングに合うような動きをしなければ、経済問題に対しても福田さんはタイミングが合わない、平仄が合わない、詩にもならない、政治が生きていない。冷凍物の腐ったものよりもひどい。これじゃ私は政治にならないと思います。われわれは武力を持たないが、われわれが核拡散防止条約に、フリーハンド論を説得して、そうしてこれを締結せしめた意図というものは、われわれが武器を持たないから外交がやれぬというのではない、世界平和共存に貢献できないというのではない。真っ裸になって人類の悲願をわれわれが生かさなけりゃならぬという使命感の上に立って日本外交基本路線決定したのだと思うんです。そういうことを野党までも涙をのんでそういう方向づけをやっているのに、国の外交権を握っている内閣総理大臣が怠け者で、ひきょうで、見識がなくて、動きがとれぬというような状態をわれわれは政治家の一員として見逃すことはできないんです。もしそういう大切な時期に、世界じゅうを挙げて日本に若干の期待を寄せているようなときに、動きがとれないような総理大臣に、日本内閣外交権をゆだねることは国民ががえんじないのであります。  やはり憲法擁護の旗を立てて、この度しがたき日本政治の停滞を救うために、われわれは広い意味護憲連動を通じて、また世界じゅう戦争を食いとめる連動ソ連アメリカの良識ある人をも引き込んでやっていくだけの世界を揺すぶる運動が起きなけりゃ、ソ連アメリカ、傲慢にして反省なく、自分たちは力を持っているから何をやってもいいというような、日本政治家でも田中さん一派がそうであり、アメリカでもニクソンがそうであったが、そういう絶対権力の独善的な行き方を打ち砕くというのがアメリカの今日における国会における動きであり世論動向だと思います。日本も、人の国だけをながめていないで、隗より始めよで、いままでの護憲運動や何かとは規模の違った、国民の手に政権を奪還する、政治を奪還する運動をしなければ日本は救えない。そこまで思い詰めた国民運動を発火させなければ、結局は、絶望的な青年が成田騒動みたいなのを、悪いのに決まっているが、ああいう絶望的な一つのテロリズムの方向へ走っていく危険性があるんです。  ちょうどあの満州事変の起きる前の血盟団事件、二・二六事件、あの当時に矢継ぎ早にいまのようなでたらめな経済政策をやった井上準之助浜口雄幸犬養毅高橋是清、皆倒されたように、あれよりも深刻な私は現象日本の中には生まれてきている、潜在していると思うのであります。私自身は井上準之助が殺されたあの瞬間に現場を訪ねて、一新聞記者でしたが、号外を出しながら、われわれが知らないところでこれだけの深刻な動きがあるんだ、政治記者や何かがいわゆる政治の要路の人を訪ねている間に、底辺においてはこういうていへんなことが起きているんだということをしみじみわれわれは感じさせられたのであります。  いま国会で安穏としてのんべんだらりの外交をやっている自民党の人々とわれわれが外交問題を論議するのも、果たしてこのままの姿勢でいいのかどうかといって苦しまなければならないような状態に置かれているんですが、福田さんとあなたの仲で最終的な腹は決まっていると思いますが、それが芝居なら愛きょうだけども、芝居にしても度が過ぎると思うんです。下手な田舎芝居みたいにせりふだけ長く言って花道だけを行ったり来たりしているような芝居は、これは芝居になりません。どうぞそういう意味において、日本だけじゃなく世界が見ているんです。日本政治家というのはぐずばかり多くて、どうしても動きがとれないで、歌舞伎でもいろいろな長丁場というのがあるが、歌舞伎には一つのなかなかそれなりの間をとる芸事が、三味線が入るなり義太夫が入るなりするが、入るのは怒号だけであって何にも入らない、こういう形だと私は芝居にならない芝居を見ている国民あくびをしてしまうと思うんです。やはりチャーチルが言ったように政治は一局のドラマです。ドラマには観客である国民あくびをしないような、じっとがまんして、そして足にしびれを切らせないようなやはり一つの演じ方が必要だと思うんですが、この芝居はどういう芝居ですか。
  26. 園田直

    国務大臣園田直君) 戸叶先生のおっしゃったことは十分拝聴して、私は総理大臣の部下たる外務大臣でありますから、輔弼の任を全うしながら、なるべく速やかに交渉再開できるように全力を尽くす所存でございます。
  27. 戸叶武

    ○戸叶武君 中国でも、廖承志君なんかもあきれて一年でも二年でも待ちましょうと言うけれども、よほどあきれたからああいうことも言うんでしょうが、とにかく中国外交には一貫性があります。がんこのように見えるが一貫性があります。中国ソ連と対立しても、中ソ友好同盟条約とも言うべき中ソ関係条約を断ち切っていないのは何かというような勢いのいい議論自民党の人は言っていますが、現実において無効化しているじゃありませんか。条約の形式的な理論でなくて、兄弟国と言われていた国が百年の恨みをのんでじっとがまんしている姿というものの中に、そういう形式的な法理倫というものがどれだけの効果があるんでしょうか。十八世紀に流行したような古ぼけた法理論によって国際的な一つの今日の動き外交の変化をくみ取るというようなものは全くナンセンスであります。日米関係における軍事同盟に等しいような安保条約はあっても、それをまたいで日中平和友好条約締結されようとしているのが現実じゃありませんか。  日本中国との間に、日本側戦争の講和の基本的な領土その他の問題は、時の政府と認める日華条約においてすでに済んでいるからといって、その上に立って日中平和友好条約をも結ぼうとしているんじゃないですか。そういうふうに現実政治というものは、マッカーサーと憲法論議論した松本烝治のナンセンスな憲法論などと違って、最もダイナミックに生きた形において動いているんです。そういうのに明治憲法以外に憲法というものを習ったことのないちんぷんかんな法理論によって、そうしていきり立って中国政府をかみつかせようなどというのは知恵がなさ過ぎるので、やっぱりまげ物か何かの役者に仕立てたならば役に立つかもしれないが、新劇にはそういう役者は登場してもらっては困ると思うんです。で、これは相手に通じないです。  ソ連日本関係におきましても、赤城宗徳君ですら、さすが日ソ友好関係の会長をやっておっても、領土問題に対しては、御承知のとおり、彼も、おれは日本人だという観点に立って明快な線を朝日新聞の投稿においても示しております。やはりいま日ソ関係においてソ連側の立場をとって、そしてソ連とももう少し話し合いを進めてみたらどうかというような間に立っていながらも、無理をしないで領土問題に対して物を言っているのは、ソ連側もこれだけのことを了承しなければ日本側ではやはり平和条約を前進させることはできないぞというのを政府に物を言いながら、ソ連側にも物を言っていると思うんであります。  私は、日本政治家の中にはそれだけの見識と教養が必要であって、ソ連のために思うならばソ連一辺倒になり、中国のためになると思えば中国一辺倒になるのは余り頭の構造が単純で、国際社会における外交論議の山には参加しては迷惑な方方がずいぶんあると思うんです。どこか寄席あたりでやるんなら、よせよせと国民もあきれて言うだろうから、そういうところなら無難ですけれども、外交の問題はきわめて国の運命に関する問題ですから、もっと近代外交の理念というものを把握した上で、単に総理大臣外務大臣をいじめるだけでなく、自分たち言動が、日本はオープンですから別にスパイを入れなくても――ソ連なんか余りスパイなんか入れ過ぎるから失敗するんだし、迎合しているやつはソ連にでも中国にでも明日にはすぐにその情報を向こうに持っていくという、そういう器用な飛脚みたいなやつもおりますけれども、そういう形でなく、もっと真剣に本当に外交問題が論議されなければ、世界じゅう日本という国は何という国だと言ってばかにするんじゃないかと思いますが、園田さん、あなたががんばっている限りにおいてはそういう心配はありませんか。
  28. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のことを十分胸に入れて、間違いないようにやりたいと思っております。
  29. 戸叶武

    ○戸叶武君 それじゃ時間が迫りましたから本論に入ります。  今度は場面を転回いたしまして、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に関して質問いたします。  この問題は、簡単に要約すると、「在コモロ及び在ジブティの各日本国大使館並びに在カンザス・シティ日本国総領事館の設置並びにこれら在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の額を定める。」ということで、すでに外務省からも細かく予備的に説明を受けているから、重ねていろいろ中さなくても、外務省でも十分これらの辺境の地に勤務される人々に対する手当というのには万遺漏なきを期しているものと私は思うのであります。  とにかくアフリカにおける片方は漁業基地であり、またアメリカの方はアメリカの平原地帯における一つのフロンティアの土地であります。こういうところに勤められる人たちが一番困るのは、やはり子供の教育の問題、外交官というものが非常に二重生活というか、明日のための子供をどうやって育てるかということは、これは外交官の人、夫人、家族の人、全家を挙げて私は一般の人よりも二重の苦労をしているのをずっといままで見ているのであります。今度は、外務省ではそういう問題を非常に苦慮していろいろな学校や何かもつくり、また、辺境の地における人たちに対するいろんな温かい一つの待遇をしようという配慮がなされているようですが、具体的にはこれに対してどのようなところに重点を置いて、そういう施策を行っておるのでしょうか。
  30. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) 先生ただいま御指摘のように、現在、在外公館百五十六、全世界であるわけでございますけれども、そのうち先進国、OECDに加盟しております国に所在します公館は五十六公館にすぎないわけでございまして、あとはいろんな意味で衛生、福祉、文化環境、社会条件、言うなれば日本よりも厳しい国にある公館が多いわけでございまして、外務省といたしましても瘴癘地対策という言葉を数年前以来使っておりまして、特にこういった地域に在勤する職員の福祉、厚生、そういう点に気を配っております。  具体的には、休暇帰国を普通のところよりも健康地であれば三年に一度というのを、一年半に一度にいたしておりますし、さらに特に勤務条件の厳しい地に在勤します職員につきましては、いわゆる健康管理旅行という制度を設けておりまして、この休暇帰国のとれない年には欧州でありますとか、近辺の健康地に行って健康のチェックを受ける、あるいは身体の休養を図るという制度を官費負担でやっているわけでございます。さらに厚生施設がいろいろ不備でございますので、プールでありますとかテニスコートでありますとか、あるいはビデオの機械を設置いたしましてそういう娯楽面でも配慮する。さらに電気その他インフラストラクチュアの面でも劣るところが多いもんでございますので、自家発電装置を設けるとか、そういう基礎的なことから整備をいたしておるわけでございます。  さらに、こういう地域は最近の傾向としまして治安状況が悪いところが多いわけでございまして、身体の安全ということは、これは何よりも第一でございますので、昨年及び本年度この治安対策という面、警備対策という面に特に重点を置いて配慮をしておるわけでございます。
  31. 戸叶武

    ○戸叶武君 コモロはマダガスカルの付近の小さな島で、人口は十万程度あるかないかのところでしょうが、漁業基地としてインド洋における重要な地点と思いますが、これは領事事務局をマダガスカルの大使が兼務をするのでしょうか。
  32. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) 私どもの承知いたします限り、現在、コモロを日本の漁船が基地に使っておるということは承知いたしておりませんが、ただいま先生おっしゃいましたように、当面は、マダガスカルにあります大使館がコモロも兼轄するということになっております。
  33. 戸叶武

    ○戸叶武君 マダガスカルの大使館には、大使以下七人ぐらいか人員は配置されてないんじゃないでしょうか。
  34. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) そのとおりでございます。
  35. 戸叶武

    ○戸叶武君 それで間に合いますか。
  36. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) 確かに兼轄国に十分目を配るということは非常な負担になることが多いわけでございまして、アフリカのような場合でございますと、一国一大使館が数ヵ国も兼轄しておる、こういう例もあるわけでございます。ただ、マダガスカルの場合は、幸いにしましてコモロが恐らく唯一の兼轄国になると思います。現在の日本とコモロとの関係、その他を勘案いたしますと、適宜マダガスカルから出張していくということで、もちろん十分ではございませんでしょうが、一応の事務処理はできるものというふうに期待いたしているわけでございます。
  37. 戸叶武

    ○戸叶武君 ジブティはどういう意味において重要なんですか。
  38. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) ジブティは、御承知のとおり、アフリカ大陸とアラビア半島の間にございます紅海のちょうど出口のあたりにあるわけでございまして、言うなれば通商、航海その他の面で非常に重要なポイントを占めておるわけでございます。人口は二十万程度と非常に少ないわけでございますけれども、昔からあそこにスエズ運河を通ってインド洋に抜けます船が寄港いたしまして、淡水その他の補給をするという点で栄えてきた国でございます。そういう意味で、また日本からの輸出もそういう国の規模にいたしましては結構大きいわけでございまして、重要でございます。また、そういう地政学的に非常に重要なアフリカの角の一角を占めておるわけでございますから、そういった意味で国際政治的にもやはり重要な地点であろうかと思っております。
  39. 戸叶武

    ○戸叶武君 大西洋沿岸ではモロッコ付近のカナリア諸島に総領事館が置かれてありますが、あそこには幾人ほどの人が配置されておりますか。
  40. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) たしか運輸省からの出向者もございますので、定員四名であり、現実に四名配置いたしております。
  41. 戸叶武

    ○戸叶武君 あの辺は同じ漁業関係の基地といっても、どっちかと言えば保養地的な性格を持っておるのですが、あそこは総領事館が、これは独立して存在しているわけですか。
  42. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) そのとおりでございます。現実に総領事がそこに駐在し、そのほかに三名の館員が勤務しておる、こういうことでございます。
  43. 戸叶武

    ○戸叶武君 アメリカ合衆国のミズーリ州のミシシッピー河畔のカンザス・シティは南部の農業地帯にとっても、あの地方においても重要な地点ですが、これはいまの大統領の要請でもあったわけですか。そういうわけでなくて、あの地帯においてやはり穀物や農産物の集散地であるだけでなく、教育機関も整備している文化都市ともなっておるからでしょうか、一番あそこへ総領事館を置く重要な問題点はどういうところにありますか。
  44. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) アメリカ大統領から格別の要請というか、そういったことはございませんでした。  カンザス・シティに公館を設置いたしました大きな理由は、一つには、あの地域、先生御指摘のとおり、穀物の重要な集散地であるという従来からの性格に加えまして、最近は、航空産業でありますとか自動車産業でありますとか、そういった近代工業が次第に興っておりまして、重要な工業上の地点ともなってきておるわけでございます。ところが、この中西部十二州というものは、現在のところ、シカゴにあります総領事館が管轄をしておりまして、この中西部全体の日本との緊密な関係を考えますと、それだけ広大な地域をシカゴに管轄させるということは十分目が届かないといううらみもございましたので、この半分の六州をカンザス・シティの管轄下に聞くということ、これが第二の理由でございます。
  45. 戸叶武

    ○戸叶武君 それでは、最後に、締めくくりに外務大臣にお尋ねします。  大使館なり総領事館というのは日本外交のとりでといいますか、重要なやはり一つの拠点となるものだと思うのであります。その拠点を守る外交官というものは、やはり問題は人間ですが、家族を含めて気持ちよく国のために働けるような思いやりのある体制というものをつくらないと、こういう世知辛い世の中になると、やはり子供を犠牲に供するわけにはいかないから、外務省の方はやめて、ほかへ、どっちかへ移らなけりゃならないというような考えを起こさざるを得なくなるような人もずいぶん出てくるのじゃないか。いまはまだ微々たるもんであるが、出てくるんじゃないかという予想を私は持っているんです。グローバルな時代ですから、一応外務省において苦労して、それから各方面に散らばっていくというのも結構ですが、やはり外交官のすそ野を広げていかないと、いまのようなすそ野が狭い状態だと、十年の計を立てることは困難になると思いますが、外務大臣は、その点において、今後グローバルな時代における日本外交を名実ともに世界の中における日本外交というふうに発展させるために、どういうふうな心遣いをしておられますか。
  46. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務省の職員が、ほかの省と違って、特別重要な勤務に服し、かつまた危険な状態にも遭遇し、家族ともども苦労し、子供の教育等に苦労していることは御承知のとおりであります。  そこで、まず外務省の職員には、外交というものの新しい時代における重要性を認識させることが必要と存じますので、研修所で研修しました職員はなるべくそのような現地で勉強をさして、そして最初から外交及び現地の国民に対する理解と責任を自覚させる。そこでいろいろ苦労した者が本省で仕事をするという方がよいと考えておるわけでありますが、なおまた、そのためには勤務環境を整備することが大事でありまして、職務を遂行する公館、それから宿舎、家具、こういうものを国で購入する、あるいは健康管理、福祉厚生措置の実施、医務官の増員、日本人学校の新増設等、種々問題があり、給与面でも、近ごろいろいろ事件が起こっておりますが、飛行機の事故あるいは在勤中に不慮の死に遭う、こういういろんな問題がありますから、こういう待遇についても、この際、特別な勤務条件というもの及びこれに対応する条件等も整備をして、わが国外交が一層活発化し、しかも責任に身を挺する、こういう外務省の職員を養成することが大事であると考えております。
  47. 戸叶武

    ○戸叶武君 外交官と大蔵官僚、日銀官僚なんかは天下の秀才を集めてエリートだという誇りを持っているようですが、今後、国際活動をするのにはあんまり頭のいいエリートだけでなく、やはり発展途上国の将来に何か自分は役に立たないかというような悲願を抱いている青年をそこに植えつけなければならないと思います。そういう点においては、かつて中国には東亜同文書院のようなものもあって、アメリカは教会及びジャーナリスト、学者、そういう者を中国にいろいろ入れて、外交活動の足りないところをいろいろなブランチにおいてこれを助けていくという方法を持ちましたが、日本は変わり者の支那浪人などというものもあって、命がけで中国の人々と交わりを結んで奥地にもずいぶん入っていたと思うんです。日本においてもいま変なところに冒険心が向いてしまって、破壊活動なんかを命がけで活発にやっておりますが、日本の青年たちに明日のために命をささげようとするようなアンビシャスな面というものが足りなくなってしまっていると思うんです。  いまこういうときに、物の関係で物、物、金さえ助ければいいというんでなくて、やはり日本世界の将来のために何かプラスになる人間になろうという夢を抱いているような青年を、外務省あたりでも、雇いとしてかあるいはアルバイトとしてか、活動の舞台をもっと私は広げていくことが必要だと、こう考えております。通産省関係から派遣されたジェトロの人たちなんかは、その土地土地の商社や何かとつき合いながら、現地の人ともつき合いながら、なかなか外交官の持たないような味を持って国際活動をやっている人も見受けられるのですが、このごろは世界各地に、考古学なり、あるいは、国学なり絵なり音楽なり民芸なり、いろいろなバラエティーに富んだ男女の若者たち世界に散らばっていると思うんです。それ全部を外国人からあいつらは赤軍じゃないかなどというふうな眼で見られないような位置づけをしてやることが、これは外務省の仕事じゃないと言えばそれまでですが、世界の中の日本というものを目指しての外交を行う場合においては、そういうことも必要だと思うんです。  一つの実例を挙げると、トルコのイスタンブールの大学にはトルコの美術を研究している女性があそこの大学の教授と結婚している。そういうようになると、そこが日本とトルコをつなぐ一つの拠点にもなるんです。また、ギリシャにおいて、われわれはギリシャ神話というものをいろんな形において翻訳ものからだけ見ておるが、ギリシャ神話を研究しに行ったある学生のアルバイトを頼って、そしてアテネのアクロポリスだけでなく山岳ポリスの宗教の殿堂を見に行ったことがありますが、やはりそれはそれなりで現地に根をおろして、古代における一つのポリスの繁栄及びその宗教のあり方、そういうものに対してわれわれが得ていないような知識を若者はどん欲に吸収しているんです。  だから、そういうふうにいろいろな形において、今後は、いままでの外交技術というだけでなくて、考古学においても植物学においても、あるいは食糧の問題でも酒の問題でも踊りの問題でも民芸の問題でも、日本人というものはきわめて研究心においてどん欲であり、そうして各局族のいいところを吸収しようとしているという意欲が躍動していることを、やっぱり外務省はその旗振りになっていくところまでゆとりを持ってもらいたいと思うんで、外交における情報というものは、変な過去のスパイ的な情報でなくて、人間同士の交わりによって一番正確な民族の動向なり何なりというものがわかるんだと思いますが、その辺のことは外務省においてはどういうところで配慮しておりますか。
  48. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御指摘のことはきわめて重大な問題でありまして、幸い新しく外務省を志望して受験をする若い人には、華やかな外交舞台ということよりも、それぞれの地域に対して奉仕をしたいという気持ちの人が多いわけでありまして、そういう純真な気持ちで入省した職員なり幹部職員を、その純真な気持ちを壊さないように、そして専門のキャリアとして育てていくということがきわめて大事だと考えております。なおまた、幹部等におきましても、近ごろ、それぞれ任地の希望等を聞きますと、かつて英、米、フランスなどと言っておったのか、それぞれ日本外交の重要な地点に赴任してここで努力をしてみたいという幹部がふえてきたことはきわめてありがたいことであって、うれしいことだと存じております。  そこで、そういう気分をますます養成するように、研修所の研修方針、教育方針が、単に外交官としての技術も大事でありますが、その前にそのような外交官としての心構えを研修所でよくよく練摩養成するように努力をすると同時に、かつまた、できるだけ私は外務省の食事をする場所というものを利用して、ここで先輩と後輩、大臣ともできるだけここで食事をして、その食事の間にいろいろ話し合いをする。そこで人間的なつながり、そして外交の重要性というものを、お互いが喜んだり手を握って泣いたりしながら血の通った外交を進めていく姿をつくりたいものだと、いませっかく腐心努力をしているところでございます。
  49. 戸叶武

    ○戸叶武君 その点の考え方は、私も同感です。やっぱり簡単な食事でもしながら談笑の中に語り合うというところにおいて人の心というものはお互いに開け打ち解けていくんだと思います。  ただ、日本の食事を特殊に見ている人がありますが、日本の食事になれると外国人はこんなおいしいものはないという形で、いまではてんぷらでも刺身でもあるいはすしでも世界じゅうに広がっておりますが、問題は、外交官の行うパーティや何かでありますけれども、ソ連圏なんかの東欧諸国の貧しいところでは、ほとんど行っても気の毒と思われるほどパーティにも何にも出してありません。ウオッカが並びブドウ酒が並べてあるぐらいです。私は、物の量よりも、そういうふうに外交官が談笑の間にみんなとつき合ってくれるというのが原住民の人や何かにとっては大切なことであるし、また世界を旅行している人たちにおいても、ここにオアシスありという感じを私は持たせられるんじゃないかと思います。  そこで、私は、外交官の夫人にもいろいろな手当がだんだんつくようにはなったようですが、中にはやっぱり奥さんを教育の関係や何かで連れていけない人もある。そういう人は何らかの手伝いなり何なりを頼まなけりゃならないと思います。そういうところにまで配慮をして、そうして簡単ながら大使館において、あるいは総領事館において、総領事なりあるいは若い外交官と一緒に、それは大規模なパーティじゃなくて――インドに民間から行った西山さんがやっていたのも、あのお嬢さんが成功したのも、小さな四、五人の人を呼んでじっくり人の話を聞いてやる。これはイギリスの当時の方式は話は聞いてやるが、そのとおりに必ず全部を採用するというわけじゃないが、イギリスは先進国であるから話だけは聞いて、その後でコントロールは別だと。これはイギリス帝国主義的な方式であるが、そういう形で長い間とにかくあの植民地政策にいろんな失敗もあったけれども、長続きしたのは、聞いてやろうというその努力があったからだと思うんです。日本人はそういう点において、あんな者じゃ話聞いたって何がわかるかというふうな鼻であしらっていくような傾きもありますけれども、やはり悩める者、苦しめる者、そういう人たちから物を聞いてやるというだけの配慮というものが非常に大切だと思いますし、いま大臣はそういうことを述べておりましたが、そこでやはり私は幾ら貧乏といったって人を呼ぶのには若干物なり金がなけりゃ呼べないんで、その辺のことはどういうふうに処置しておりますか。
  50. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) 各在外公館には、一応、交際費というものが配賦されておるわけでございまして、これは必ずしも館長だけが使うということじゃなくて、館員にもこれを使わせるということになっております。この点は、結局、館長の裁量によるわけでございますけれども、本省からもきちんと指示をいたしまして、また、実際に交際費の使途につきましても官房の方でチェックをいたしまして、館長のみならず一般職員、特にその国の専門家でありますような職員が十分に向こうの新聞記者でありますとか学生でありますとか、そういう連中とも接触できるように、そういう形で使われているかどうかということもチェックし、気づきの点があれば、これを半公信というような形で注意喚起をしたり、そういうこともやっておるわけでございまして、もちろん、実は、交際費というものはなかなか国内官庁の庁費の伸びというものも抑えられておりまして、こういう台所経費というものが十分伸びないということが私どもの大変な悩みでございますけれども、与えられた範囲では最善を尽くすということをやっております。また、もう一つ、そういう人を呼ぶ場としての住居というもの、これは大変重要でございまして、この点でまだまだ見劣るところがございますが、逐年、住居手当の改善、宿舎の国有化、その他の方法で整備に努めておるわけでございます。
  51. 戸叶武

    ○戸叶武君 これは園田さんも御承知だが、インドネシアには文化センターができ、またブルガリアにはホテルができるということで、日本もだんだんあか抜けた一つ外交関係の文化交流の基盤をつくりつつありますが、インドなんかにやった那須大使の時代の農業の指導者たちがそれほどの成果を上げられなかったのは、やはり日本から持っていったような方式における水田耕作の方式を普及させようとしても、なかなかそれがインドと実情が合わないので、湿地の多い地帯では、基本的な河川の問題あるいは土地構造改良の問題、そういうものと並行しなけりゃだめなので失敗した面もずいぶんありますけれども、私は、ボンベイの郊外で二百人ほどの――あの独立運動のチャンドラボースの一党が日本において学んだ農業方式を取り入れ、さらに集団農業によって屠殺した動物の血からメタンガスを起こさせて電気を起こさしたり、皮のなめしを成功させて、そうしていろんな皮の袋やなんかをつくって、そうしてボンベイにマーケットなんかを持ったりしている成功ぶりを見たんですが、そういう発展途上国においては、抽象的な教育より、具体的なやはり一つ一つの成功によってそれを他がまねるというような方式が一番いいんだと思います。  インドにおいても、その他の発展途上国においても、どこでも聞くのは、日本人は器用で非常に奥さんたちでもハンドワークの仕事において特別な技能を持っているそうだから、インドの貧しい人たちが子供を育てながらでも働くことのできるような、そのハンドワークの指導を日本でもっとやれないものか。わざわざ日本に訪ねてきた青年もあり、日本の竹細工やあるいは人形やあるいは織物や、そういうものを見て、陶器などもありますが、今後、やっぱり日本にはいろんなそういう各芸に通じた人もあるので、そういう陶磁器の問題から細工物の問題から編み物、そういうものを、文化センターなりあるいはホテルの一室において二ヵか三ヵ月習えば、日本人から習ったというので修業証書でももらえば、それで何とか職にありつけるような一つの方策というもの、そういうものが必要になるんじゃないか。  特にブルガリアなんかはソ連と一番近い国だが、ソ連と仲よくしていながらもソ連よりは一歩進んだ国づくりをやろうという意欲に燃えているところであります。そういうふうな意味において、東欧なり、あるいは中近東なり、その土地土地に合った一つの文化活動――文化というものは、非常に高い水準の文化人でなけりゃわからないようなことだけじゃなくて、一般の人が近づけるようなことを試みていくことがいい。共同発掘なり言語の探究なり、あるいは織物一つを見てもそれのルーツを追求するなり、そういうふうな形で日本とその国と結んで、それによって非常な具体的な効果があったというような実績をつくり上げてもらうことが大切だと思いますが、そういう点については、外務大臣は武道の達人だけじゃなく、なかなか芸の細かいところもあるので、一つ各国に対する思いやりを持っていると思いますが、どのようにお考えですか。
  52. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言は私も全くそのように考えておりまして、御発言の趣旨に従い、すでにそれぞれ対応の策を講じ、それぞれの大使には私がじかにそういう点を特に留意するように指示しているところでございます。
  53. 戸叶武

    ○戸叶武君 ソ連だけじゃなく、東欧圏を含めてポーランドから各地において、私は背の利潤論争や何かイデオロギーなんかの論争よりも、もっと強くもっと豊かなもっと進歩的な、自由にして濶達な経済体制なり何なりが創造されなけりゃならないという意欲、息吹が聞こえるような気がするんです。絶望的な苦悩でなくて、地についた新しい一つの芽をわれわれはつくらなけりゃならないというプライドが、ボヘミアにおいてもポーランドにおいてもハンガリーにおいてもルーマニアにおいても起きてきております。これは一ユーゴのチトーのとったところの独立路線と違って、各国の民族がやはり権力やイデオロギーに抑圧されたのでは民族が伸びない、われわれの自覚によって新しい創造、新しい芽を吹き出そうというのが、毎日の新聞を私は朝の四時に起きてずっと五時までにらめっこして、このごろは国会中は見ておりますが、その息吹を感ずるのです。いまソ連が軍備をもって恫喝するなどというのは愚の至りです。こわいのは内部です。もっと思いやりのある処置で人間を尊重し、自由を認めて、そしてもっと温かい外交をやらなければ、この異国の異民族はそれに承服しないと思うんです。  やはりレーニンの偉大さというのは、彼はウエストモンゴールの出であって、チベットから流れたモンゴールの流れをくんでいるというのは、あの顴骨を見ただけで人類学者は単なるスラブではない、お母さんの側にはゲルマンの血が流れて、レーニンの偉大さは一個のボルシェビキというだけじゃなく、ロシアはツァーの圧制を武力革命以外に打開できなかったろうが、レーニンの偉大さはボルガ河畔における少数民族の苦労を骨身にしみてそれを受けとめて、初等教育に全身を尽くした親たちの血が、心が流れているからあれほど、単にプロレタリアだけでなく、異民族に対しても温かい気持ちを持って一つの祖国ロシアに対して貢献することができたんだというふうに、レーニン研究も最近はイデオロギー一本でなくて、いかに人間的な温かさというものが重要であるかということが見られてきているんです。  そういう意味において、私は、あなたがソ連に行っても、一部の人はどうもはでにソ連にぶつかったんで弱ちゃったなんという弱音を吐く人があるが、そうじゃない。やっぱり言うべきことは言って、しかし、ソ連に対して、あなたが漁業の問題でも、ソ連にもソ連の苦労があるんだというあの一語がやはりソ連側にずいぶん感銘を与えているんです。自分たちさえよければよいというんでなくって、相手の苦悩と立場をも配慮しながら、自分の国の繁栄と平和を願いながら、無遠慮と言ってもいいほど私は真実を語っていく以外に、真実以外に人を動かすものはないと思うんです。誤解なんか恐れちゃいけないし、恫喝を恐れちゃいけない。けんかはやった方が、あいつはさっぱりしていいやつだって仲直りになる動機をつくるきっかけにもなるぐらいでありまして、いままでソ連に恐れをなして多くの人がへいちゃらへいちゃら言っていたものだから、頭のぼせてあのような恫喝によって人は支配できるというような原始的な外交ソ連は戻っているんですが、レーニンは墓場の中で嘆いていると思うんです。  どうぞ、そういう意味において、この日中平和友好条約というのは日本外交の一大試練です。みずからの主体性をここで貫いて、中国にもソ連にも、なるほど日本の真意というものはそこにまであったのか、われわれは人類の滅亡を見ちゃいられぬ、われわれがよし誤解され、あるいはわれわれがそれがためにいろいろいじめ抜かれても、このことはやはり聡明であるべき最も力のあるソ連なりアメリカなり理解しなければ世界は救えないということを、原爆で洗礼を受けた日本民族がその役刷りを果たさないでだれが果す人があるか、この信念を私は岡田さんは貫いてもらいたいと思うんです。  いましんぼう強く――いろいろほえる犬は余りかみつかないというんだから、犬にはほえさせておくべきであるが、やはり私は、犬だって、イソップ物語にあるように、水に映るおのが姿のあさましさを見て、くわえていたやつを落っことしてしまったなんという例もありますように、ほえるものはそれほど気にかかりませんけれども、政府外交方針が年じゅうぐらつくようなことでは――東洋の道徳の最高は信義です。信義を貫くことのできないようなちゃらんぽらんの外交なら、どこも相手にしなくなると思いますので――私たちは少し憂え過ぎて、先が短いからだんだん気が短くなったのかもしれませんが、見ちゃいられない感じがしますが、これは答弁は要りません。園田さん、しっかりふんどしを締め直して、そうして気合いのかかった外交をやってもらいたいということを私は期待して、本日の質問はこれで終わります。
  54. 園田直

    国務大臣園田直君) どうもありがとうございました。
  55. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の審査はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時五分開会
  56. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  57. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最初に、本論へ入る前に、日中条約交渉の現状について若干お尋ねを申し上げたいと存じます。  一ころ、日中条約交渉へ向けての政府の意気込みも大変積極的な印象を私ども受けとめていたわけでございまして、非常に大きな期待感を持ったことも事実であります。にもかかわらず、その後潮が引くような状況で、あたかもデッドロックに乗り上げたんではないかという、そういう感じがしてなりません。もちろん、先般来しばしば問題にされました与党の中の調整というものに手間取っているということも挙げられましょう。ただ、外務大臣としては、先般、総理に対しても、このまま長引くようなことになれば、日中外交展開の上で非常にまずい行き方になりはしまいかという懸念を込められて進言をされたというふうに伺っております。こうした推移について私どもも多分に心配をしているわけでございますが、現状はどうなんでございましょうか。
  58. 園田直

    国務大臣園田直君) これまで御承知のとおりりに、外交チャンネルを通じて中国側との接触を続けてきたわけでありますが、その感触は、いまや政府として交渉再開によるべきであると判断するに至りました。公明党初め各党から行かれた方方の御意見を承っても機はまさに熟しておる、こういうことで先般来から与党に対する御理解と協力を求めておるところでございます。  この条約は、国民の関心も高く、重要な条約でございますから、国民、各党の理解を得て、中国側との交渉に慎重に臨むことが大事でありますけれども、かといって余りにこれが冗長に長引きますと、単に日中だけではなくて、世界の国々から日本外交姿勢というものに対する批判は決してよいことはないと存じますので、極力、いま努力をしている最中でございます。
  59. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まことにおっしゃるとおりだと思います。  先ほど、午前中の御答弁を伺っておりましても、言うなれば、強硬な反対ではなくて、慎重に対応してもらいたいという背景に基づいて、政府与党としても決してむき出しの反対をしているのではないというような趣旨の御答弁があったように記憶をしております。ならば、いまおっしゃったように、あとは総理の決断によるんではなかろうかというふうに思えてならないわけです。いまお述べになりましたように、いたずらに延引するということは日中間に及ぼす影響だけではなくして、諸外国に及ぼすそういう波及効果の方がはるかに大きいということに思いをいたしますと、やりこの辺はある時期にけじめをつけなければならないのではなかろうか。  そこで、私ども、あるいはこの国会開会中、中旬ごろにはというような推測もございましたし、恐らくそのことをめどにして外務大臣としてもあるいは腹を決めておられたのではあるまいか。しかし、もう現状においては物理的にはとても不可能、加えて総理の訪米という問題も絡み、恐らく外務大臣も随行されるということになりますと、これは先にどうしても延びざるを得ないということを考えましたときに、果たしてこの五月十七日に閉会いたしますいまの通常国会の期間中に外務大臣としての訪中があり得るのだろうかというような思いすらもいたすわけでございますが、もちろんいつというような明確なそういうことはなかなかこうした委員会においてもお述べになりにくいということはわれわれも十分踏まえております。しかし、一連のそうした動きの中に、もし通常国会開会中に実現できないということになれば、あるいは秋に予定されている臨時国会まで延びるのか、その臨時国会の機会に改めて日中条約の批准というものが行われるようなスケジュールでもって詰められていくのか、この辺は、どのようないま進め方をこれからなさるおつもりでございましょうか。
  60. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま、外務大臣が訪中を前提にして話を進めておるということで、いろいろ御質疑を受けておるわけでありますが、私の訪中は、たびたび繰り返すとおり、私が与党の御理解と協力を求めておりますのは、交渉再開についての御理解でありまして、その後、必要があり総理からお指図があれば訪中する、こういうことでございますが、いまなお外務大臣としては、諸般の情勢をかんがみて、最後まで望みを捨てずに、御理解を願うように努力をしている最中でございます。
  61. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 交渉再開の窓口が開けたという時点において、やはり外務大臣としていわゆる日本政府の最高責任者という立場において訪中されることは望ましいのじゃないかと思います。まず単なる事務的な窓口を開くのか、やはりいろんな政治的な判断というものをその時点ですでに求められるのではあるまいかという判断も成り立ちますので、やはり訪中ということが大前提になる、そこで初めて交渉再開への突破口が開けるのではないかというふうに私どもは受けとめておるわけですが、その辺はいかがでしょうか。
  62. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の訪中は、一に、再開になって、そして必要があり総理大臣から指令を受けて訪中するわけでございまして、いまの段階で、私の訪中が前提であるということを御理解を求めておるわけではございません。
  63. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 こういうことは考えられませんでしょうか。いまこうして長引いた経過を振り返りまして、中国政府に対する礼儀というものもございましょうし、いろんないままでの問題は問題といたしましても、誠意を尽くすという観点に立って、本交渉に入る前の予備交渉というようなことが考えられ、その機会に、もし福田総理から行くことを勧められた場合には、その可能性はいかがでしょうか。
  64. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理から指令を受ければ、喜んで参りたいとは思っております。
  65. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 重ねてお尋ねをいたしますけれども、いかがでしょうか、大体の感じといいますか、早いことが非常に望ましいわけですけれども、それが早いのか遅いのかということでいま判断に迷うというような現状でございます。訪米後になることは必至でございましょう。ならば、訪米後、五月十七日の国会閉幕までもうわずかな期間しかありませんけれども、そうしたわずかな期間でも、機運が盛り上がり、その条件が整えば、行かれるという可能性はあると判断されておるのでしょうか。
  66. 園田直

    国務大臣園田直君) 機運はすでに盛り上がってはおるわけでありまして、あとは再開の御理解を得れば、実際に行動が始まるわけでありまして、私が参ることは一に総理の指令によるわけでございます。
  67. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま大変含みのある御答弁を伺っておりますと、あながちに、訪米後、いわゆる非常にせっぱ詰まった期間の中でもその可能性は十分にあり得る、このように理解してよろしゅうございましょうか。
  68. 園田直

    国務大臣園田直君) 一に総理の御指令と決断でございますから、いまその時期を早く来るように努力をしているところでございます。
  69. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かに最後の決断は総理にかかっているんだろうと思います。総理の胸中というのはなかなかわれわれにつかみにくい。大変前向きだなと思うと大分後ろ向きになる。しかし、表裏一体になられて今日までの日中外交推進の役割りを果たされた外務大臣としては、その辺の呼吸というものは十分踏まえておられるんだろうと思いますけれども、総理の決意というのはどのように外務大臣としてお受けとめになっていらっしゃるのでしょうか。
  70. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務大臣としての輔弼の任を全うするために、外務大臣意見総理大臣に申し上げて、その御指示を待っているところでございます。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 くどいようですけれども、せっかくの外務大臣のその輔弼の任に当たられる貴重な意見あるいは積極的な発言というものについては、総理としても十分踏まえられていらっしゃることは言うまでもないと思うのですけれども、近いうちに決断なさるという趣もわかりませんか。
  72. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理総理として諸般の事情を勘案されておるところでございますから、私がいまとかくのお答えをしない方が総理判断されるのに判断されやすいと存じておるわけでございます。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 ただ、私たちが一応常識的に考えられるのは、きょう訪ソされた中川農林大臣、それから福田総理がカーターに会見をする、いろんな日中の問題ばかりではなく、世界のあらゆる情勢というものを分析もしお互い意見が交換される。なかんずくアジアにおいての日中問題というものは非常に大きなウエートを占めるだけに、当然話し合われるだろうということになるわけですけれども、その辺も当然整理をされて十分誤りのないような分析に立つということになると、これまた時間がかかるんではないだろうか。その辺は余り心配をしなくてもよろしいのでございましょうか。
  74. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理がいろいろ考えておられるところでありますから、この段階に来ると、私がとかくお答えをする段階ではないと存じております。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それでは、ただいま議題になっております本論に入らさしていただきたいと思います。  過日、この委員会におきましても、すでに政務次官を相手に私いろいろと質疑を申し上げたわけでございます。ただ、そのときに答弁された政務次官の中身はきわめてごもっともなことばかりでありまして、当然、この委員会において取り交わされた内容については外務大臣にも報告がなされていると拝察をいたします。しかし、再度、確認を込めて、いま問題になっております在外公館法律に関連して、外務省の今後のあるべき姿というものはどうしたらいいのかという点について、少しくまた、重復することもあるかもしれませんけれども、重ねて外務大臣政治的な判断を中心に御答弁を求めたいと思うわけでございます。  言うまでもありませんけれども、また何回か外務大臣の答弁の中にもありましたように、今後の日本外交の展開というものを考えた場合、非常に激動する、また変化に富む、そうした世界情勢に十分対応していかなければならない、これは当然だろうと思いますね。そのためには、当然のことながら、十分な人員あるいは設備等の整備あるいは強化というものがこれからも考えられていくことが望ましいということになろうかと思います。しかし、残念ながら、現在の外務省の機能では果たしていま政府自体が考えているような方針に従っての外交活動というものが十分な効果を上げられるであろうかという心配を非常に強く私自身は持っているわけでございます。  何回か私もうすでに申し上げておりますけれども、特に在外勤務の日本を代表する外交官というのは、一理事官補に至るまで日本の顔だと私は理解をしております。それだけにその人たちが安心して、しかも希望を持って活動ができるという、そういう環境にしてあげることが必要でもありましょうし、外務省当局としても重々その点はいままでも何回も何回も繰り返し、あるいは計画を練り直したり、いわゆる合理的な活動ができるそういう方向に向かって努力もされてこられたんではないだろうか、にもかかわらず、その努力が一向に報われないというのが現状であろうかというふうに考えられるわけであります。たとえば先進国家と日本のいわゆる外務省の機能あるいは機構というものを比較をいたしてみた場合に、大変な見劣りがする、それが端的に職員の数を見る上でも余りにもその開きがあり過ぎるんではないだろうか。いままで私どもも官房長を通じましてレクチュアも受けてまいりました。あるいはせめてもの願望としてはイタリア並みあたりに、あるいはでき得べくんば西ドイツ並みの機能を維持できるような体制に近い将来ぜひ持っていきたいというのが年来の悲願であるということも伺っております。しかし、残念ながら総定員法だとか、行政管理の上でなかなか思うようなそういう突破口が開けない。先日も行政管理庁から局長に臨席をしていただきましていろいろお尋ねしたんですけれども、きわめていわゆる公式的な答弁に終わりまして、そこをどうするかというところまで実は議論が展開されないという大変残念な結果に終わったわけでございます。  そうしたようなことについては、私がいまあえてるる、くどくどしく申し上げるまでもなく、外務大臣としてだれよりも一番痛切にそういう実態については感じもしておられるだろうし、また、今後の展望に立って見た場合に、五年先どうするのか、あるいは十年先どうするのか、あるいは二十年光どうあることが一番望ましい、これからの日本外交の展開の上において考えられるんだろうかということはもうすでに胸の中にもおさめられておるんではあるまいか。いま総論的なことをずっと私申し上げました。そうした点について外務大臣としては、現在から発展的なそういう方向へ展開するためには現在どうあらねばならないかということをお考えになっていらっしゃるか。
  76. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言とおりでありまして、定員、機構を年々漸次整備はしておりますものの、その整備の仕方は、国際情勢の変化、多様化、多極化、こういうもののスピードの方が速くて、整備しているスピードが非常に遅くて、このままでは年々逆に開きが出てくるというようなかっこうでございまして、現に、本名においても、真に外交を進めていこうとすると、アフリカ関係の職員は人手が不足で仕事ができないとか、あるいはまた機構についても、今後、エネルギー問題、科学技術問題、こういうものが一つ外交の大きな問題になってくるわけでありますが、そういう点についての機構も不足である。こういうことで、このような多様化、多極化に対応してわが国の国益に沿った外交を十分に展開していくためには、さらに外交自主体制の整備を飛躍的に図る必要がございます。  現在、政府がやっておりまする行政改革その他は一律に物事を考えておりますので、やはりふやすところと減らすところ、節約すべきところと増大すべきところと、こういう一つの方針のもとに、今後、政府がやらなければ、とうてい外務省の機構整備もこのままでは困難である、こう考えておるわけであります。四十九年の外務省の定員拡充長期構想では五千名を長期目標として段階的にその実現を図るように努力しているところでありますが、その後の情勢はますますスピートが速くなってまいりまして、とうていこれでは時宜にかなったものとは言えないわけでありまして、いま御指摘のように、中期、長期の構想をちゃんとつくって政府部内で御理解を得るように努力をしなければならぬ。外交機能の強化というのは目の前のことではなくて、大所高所に立って、これがまたすべては内政の上に立った外交でもありますが、外交の成否いかんによって内政がまた影響を受けるわけでありますから、そういう判断に基づいて鋭意努力したいと考えておるところでございます。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題はもういまに始まったことではもちろんないわけでして、終戦直後定員が減らされたというようなその経過の中で、今日までその努力が一向に報われなかった、そういうところに極端に言えばその破綻を来たすようなもう現状まで来ているのではないだろうか。外務大臣外交演説の中でも述べられておりますように、あの外交演説そのままを具体化するためには大変な陣容が必要であることは、これはあえてここで議論する必要はないだろうと思うんです。それを着実にそして正確に外務大臣が意図する方向に向かっての政策展開ができれば、これは一番望ましいことは言うまでもないわけでありますけれども、もう現状としては、まことに残念ですけれどもね、不可能に近いと言えばちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、いまそういうような状況であろう。  確かに三千四百十一名、で在外に出向しておられる方が千七百名。それも大体もう北米あるいはヨーロッパでもイギリスとか、そういう大きな国を除いたほかは、ほとんどもう少ない人数で何もかもやらなければならない。特に中南米だとかあるいは中東、アフリカなんということになりますと四、五人で一切の運営をしなければならないなんということは一体物理的にできるんだろうかというふうに考えるんですね。細かいことを申し上げて恐縮なんですが、本省にいろいろ訓令を受けるために電信も打たなければならぬ、その電信士が急病で倒れた、それにかわるべき人がいなかったら、急を要する場合、一体どうなるんだろうというようなことまでこれは実は心配をせざるを得ないわけですね。言うなれば焦眉の急である。  ですから、私は、行政改革というものは、それは一つの方針に基づいてむだなところは省こうという一環から大いに整理結構だと思うんです。しかし、いま御答弁がありましたように、今後のやはり外交の果たす役割りというものは内政にまでその影響を与えるということを考えた場合に、外務省は特にその枠外に置く、または必要とあれば法律改正、新しい法律をつくるということも、制定ということも考えてもいいんではないかというくらいに私どもは思っているわけですけれども、その点についてやはり努力をする、それはまことに結構だと思うんです。その努力の中には、具体的にいまどういうビジョンを描きながらその隘路を開かれようとしているのか、重ねてお伺いしておきたいと思うんです。
  78. 園田直

    国務大臣園田直君) いまおっしゃいましたように、定員の数だけで比較するわけではありませんけれども、定員の数から見ましてもインドネシアよりも少し上、ベルギーとほとんど同じぐらい、オーストラリアとかインド、イタリアなどよりもはるかに低いわけでありまして、これが仮にいま申し上げました五千名の増員計画が終わったといたしましてもカナダあたりよりもうんと低い、こういうことでございます。  そこで、まず私の方では、いまの政府の行政改革とは別個に、外務省としてこの責任を果たすためにはいかようにあるべきかということを中心にして、省内の機構改革というものを具体的に検討したいと考えているところでございまして、それに基づいて中期、長期の展望を具体的に出して、そして具体的な問題をひっ提げて政府部内で努力をし、皆さん方の御協力も願いたいと考えてせっかくいま検討中でございます。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私は大変遅きに失した印象をぬぐい切れないんですよね。過去においてここまで私は突っ込んだあるいは質疑をしたかどうかいま忘れておりますけれども、こうした在外公館にかかわる法律が提出されたたびごとに繰り返し申し上げてきた記憶があるんです。ですから、もう相当前からこの問題については申し上げているんですけれども、努力の跡が少しも、いま申し上げたように、その足跡すらも見られないというところに、やはり日本外交としての脆弱さというものは側面から見詰めることができるんではないか。  ですから、いま確かにお述べになったその決意というものは、つまり具体的な方向に向かってお取り組みになるというふうに私理解するわけでございまして、確かに五千名あるいは六千名というぐあいに西ドイツ並みに水準が上がったとしても、彼らはもっとその上にレベルがさらに日本を追い越していく、こういうようなことでいつもイタチごっこみたいなことになったんではまた同じ議論を繰り返さなくちゃならぬ。やはり先行きというものをよく見通されて、何でもかんでも人数さえ多ければいいという問題じゃございません。質量ともにそれを充足したところに今後の円滑な日本外交の展開というものが望まれるわけでございますので、その辺は相当、いま四十九年の計画書のことについてもおっしゃられましたけれども、何とかその方向へ一つ一つもうぜひ道を開いていただきたい。  それで、いままで伝えられているといいましょうか、いろいろわれわれの耳に入ってきている問題の中には、やはり行政管理の壁というものは非常に厚い。外務省がせっかく、決してむだではない非常に効果の高いそういう考え方を持っていても、それに対応できないそういうあり方しかいままでは考えられなかった。その辺、行政管理庁の方との連携もあるんだろうし、私は、それ以前に、行政管理庁は行政管理庁として一つの目的があり業務というものを遂行しなければならない役割りがあるわけでございましょうけれども、やはりそれはもう乗り越えて、政治判断によっていまおっしゃられた方向にできるだけ早い機会に道を開いていただきたい。外務大臣としては、いまおっしゃられた、せめてイタリア並み西ドイツ並みというレベルアップを図るためには何年ぐらい必要だとお考えになっていらっしゃいますか。
  80. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの問題は、外交に対する対応の処置を講ずるための最低限というよりも、むしろ現在では物理的限界が来ているような気がいたします。本省の職員の中で過労のために病気になる職員が相当数出てきておるわけでありまして、まさに現在の仕事を片づけるだけでも物理的限界に来ておる、こういうことでございますので、少なくとも私が先ほど申し上げました計画の骨子は、明年度予算の折衝が始まる前に、これを検討、仕上げて、そしてこれの折衝を始めたい、こう考えておるわけであります。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 今年度はすでに予算が執行される段階に入りましたので、今年は無理だろうと思うんですね。いま確かに瘴癘地や何かに赴任されている方々の状況を考えますと、いま述べられた以上の、われわれの想像をはるかに超えるきわめて悪い条件の中で行動しなきゃならぬ、これはもう考えようがないそういう条件のもとで仕事を強いられているのじゃないかというふうに思うわけですよね。そうすると、来年度は相当大幅に考える必要があるのではないか。  私はこれは個人的な判断ですから、あながちにそれが常識であるかどうかわかりませんけれども、少なくとも一人の外交官が育つまでは最低十年はかかると思うんですよ。そうした期間を考えてみた場合に、いま直ちに増員したからといってすぐ役に立つ者は一体何人いるのかという問題もございましょう。あるいはやはり情報化の時代でございますから、主な大使館あるいは総領事館あたりにはコンピューターの導入も必要でしょう、電信あたりの整備も必要でございましょう、今度それに伴う技術者というものも当然それに付随して必要になってくることは言うまでもない。しかも、しゃべれるということが条件になってくるということになりますと、もっともっといろんなあらゆるところから工夫をこらして、その人員確保というものに努められなければならぬと思いますし、その辺を通じて特に昭和五十四年度についてはどのくらいのことを目標にして、いまお考えをこれから進められようとされておりますか。
  82. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先ほどから、大臣からも御答弁のありましたように、われわれとしては来年度はいわば飛躍的な拡充を図りたいというふうに考えております。もちろん政府全体としての国家公務員の削減計画もあるわけでございますが、いまや多交に求められている分野は非常に広がっておりますし、また仕事の量も格段にふえておるわけでございますので、来年度の予算の要求に当たりましては、従来の構想をさらに進めて、大臣の強力な御指導のもとに思い切った要求をいたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは大変細かいことになって恐縦なんですけれども、電信士の場合なんかについてもこれは非常に重要な部門だろうとぼくは思うんですよ。こうした人たちの採用というものについてはいろんな試験を通ってきて採用されるという方法と、それからすでに郵政省あたりに勤務された職員をスカウトするというような面と両方考えられるのじゃないかと思うんですが、その辺はどんなふうになっているんでしょうか。
  84. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 電信の問題につきましては、これは非常に最初からある程度の技術的な訓練を経た者を採用する方がより能率的でございますので、われわれとしましては、そういう電信技術を習得した者を、そういう方向の学校の推薦を受けて採用いたしております。しかし、実は、それだけでは追いつきませんので、普通に採用いたしました初級職員に訓練をいたしまして、電信官として養成するということもやっております。郵政省方面からのそういう方面での技術者を特別に中途採用するということはやっておりません。
  85. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 電信なんというのは特殊な技術を要求される部門でありますだけに、そういう点なんかについても新しい道を開くなんてことも、やはりお考えの中に入れながら整備をされることも必要じゃあるまいかということが一つ、これは一つですよ。  それから、全然違った部門で、特に瘴癘地なんかに勤務する場合には、病気した場合、病院といってもまさかアフリカからしょっちゅう先進国のヨーロッパあたりへ病人を運ぶということもできない場合が起こるでしょうし、手なれた日本人の医者というものが、かかる方も安心して診てもらえるんじゃないかということを考えると、当然、医務官の充実ということも考えられるでしょうし、そういったものの面についてはいまどういう状況にあるんでしょうか。
  86. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 私たちは、この瘴癘地に勤務する外務職員につきましては、特にその医療の問題については意を用いておるわけでございます。医務官は現在十三名おりまして、本年度中に一名増員いたしまして十四名にする予定でございます。この医務官をそういう低開発国の中心公館に配置いたしまして、その公館のみならずその周辺の公館を巡回いたしまして、そういう公館に勤務する館員の健康管理をいたしております。しかし、これはときどき参るだけでございますので、突発的に病気になったような場合には、これは別の手当てを要するわけでございます。そういう場合には、やはり先進国の医療事情のよいところに患者を移送するというふうなことも必要となってまいります。そういう移送に必要な費用も計上いたしております。  また、やはり病気になってからでは遅いわけでございますので、その健康管理のために健康管理休暇というものを設けております。この健康管理休暇というのは、年間、公務員は二十日の有給休暇をいただけるわけでございますが、その範囲内におきまして、その本人及び家族とともに指定されました健康地に赴くことができる制度でございます。現在、二十五公館についてこの健康管理休暇が認められておりますが、本年度からさらに五公館が加わりまして、三十公館はこの健康管理休暇を交互にとることができるようになっております。それから、その健康管理休暇のために必要な交通費とか滞在費を支給しておるわけでございます。  さらに、非常に高池に勤務する公館員の場合には、やはり空気が薄いために健康にいろいろな障害を生ずるということもございます。非常に高い土地、たとえばボリビアみたいな場合には健康管理休暇によって対処しているわけでありますが、それほど高くないところ、たとえばエクアドルとかコロンビアといったようなところにつきましては、高池対策ということで健康保持のため、保養の目的でその国の中で低地に旅行する経費を支給しております。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま大臣お聞き及びのとおり、健康管理休暇、大変結構な制度だと思うんですけれども、それを利用してお休みになった後を考えた場合、大体、そういうところに限って非常に少ないんですよね、館員の方が。四名ないし五名ですわ。そうすると、その人の分は残された職員の方に全部ウエートがかかるわけです。そうすると、また過重な仕事を強いられるために、また続いて病気になる条件が整うわけでございますので、非常に悪条件、悪循環をするようなそういういま状況ではあるまいか。ですから、もうだれが考えても、これは焦眉の急だというふうに思えてならないわけですね。その辺も十分考慮をしていただきながら、特に昭和五十四年度については思い切った、だからといって何でもいいというわけにはもちろんいかないわけでありまして、十分その辺も考慮に入れながら、できるだけ多くの人をまず採用して、少なくともそういうような問題の解消に、一つ一つ解決に努めていただきたいものだなあという願望があるんですが、いかがでしょうか。
  88. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) いま渋谷委員の仰せのとおりでございまして、こういう健康管理休暇とかいろんなものをつくりましても、非常に公官員の少ないところでは十分な休暇もとれない、また、その人が休暇に行っている間はほかの人の負担がふえるという現象はございます。そういう点については、われわれは、結局は人手をふやす以外にないというふうに考えております。したがいまして、先ほどから申し上げましたように、いままでも一生懸命やってまいりましたが、さらに来年度については思い切った人員増を図っていきたいというのがわれわれの決意でございます。  それから、ある公館について、たとえば電信官が倒れたというようなことでどうにもならなくなりました場合には、本省から電信官を臨時に派遣するということもやっております。しかし、これも本省の人間が不足であるために意に任せない次第でございます。この点につきましては、われわれとしても非常に苦慮しておりますので、今後、やはり人手を増加することによって対処いたしたいと考えております。     ―――――――――――――
  89. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) この際、委員の異動について御報告をいたします。  本日、和田春生君が委員を辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。     ―――――――――――――
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 特に、在外公館の館員の状態を私なりに調べてみますと、アメリカとかヨーロッパのような先進諸国はともかくとして、中南米、中東あるいはアフリカというような地域については格段に館員の数が少ない。しかも中東地域については、しばしばここで問題にされましたように、出先の外交官の占める位置というものは非常に高い。しかも情報の収集、分析というものの敏速を要するという問題がございましょう。あるいはアメリカにしてもソビエトにしても同じことが言える問題の山には、軍事的な動向なんというものがまた先進国は先進国なりにそれにプラスされたものが出てきますでしょうし、それに伴ういろんな情報収集、分析ということを考えますと、先進国自体が総枠が少ないんですから、とやかくいまここでどうこう言うわけにいかないかもしれませんけれども、やはり先進国のみならず、あえて例を挙げれば、中東地域についてももっと重点的に館員をふやすという、そういう必要性というものがいま非常に強まってきているんではあるまいか。  何かこう機械的に余り重要視されていないのであろうかなあというふうに勘ぐりたくなるくらいに、特に中南米だとかアフリカだとか中東地域というものは二、三ヵ国を除いたほかはほとんど四、五名ですわ。これは事実上もう何にもできないと言っても極論では私はないと思うんです。だから油の問題が大切であるということになれば、中東についてはもっと整備をする必要があるだろう、重点的に。特に昭和五十四年度については、それを充足する方向で取り組む必要もあるんではなかろうかと思いますが、その辺の外務大臣判断はいかがでしょうか。
  91. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) われわれとしましては、毎年、定員の増強に努力いたしておるわけでございますが、それによりまして得られました定員をただ機械的に、また平等に各公館に配置いたしておるのではございません。やはり仕事の量に応じて重点的に配置いたしております。ことに後進国のうちでも重要な公館につきましては、毎年、増強に努めております。たとえばサウジアラビアの公館はかつては本当に四、五人の公館であったわけでございますが、現在は、十八名の人員を配置しておるわけでございまして、そういう点については十分そのいわばニーズに応じて重点的にやっているつもりでございます。
  92. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろん、それは必要に応じてということは当然でございましょうけれども、全体的なバランスもありましょうし、また、いま重点的にという、これは当然のことであって、今後またその方向に向かってぜひ整備を図っていっていただきたいというふうに私は思うわけでございます。  それから、いろいろ言いたいことはたくさんあるんです、細かい問題かもしれませんけれども。先般も外務省の職員が航空機でもって墜落をして亡くなった。その前にはたしかあれはラオスかどっかですか、御夫婦が殺された。その前にはフィリピンかどっかでも事故に遭っているというような不測の事態が起こる場合が、特にそういう発展途上国と言っては大変失礼な言い方かもしれませんけれども、治安状況の悪い、社会情勢あるいは経済情勢のきわめて不安定な地域においては特に考えられると思うのですね。  ところが、亡くなったはいいけれども、そういう方々が国を代表して行っているにもかかわらず、その人たちに対する補償が非常に薄いという状況のようでございます。こうしたこともやはり考えてあげなければ、希望を持って、特にそういう瘴癘地あたりに行くような方々というのは、行きたくはないけれどもやはり命令とあればどこでも喜んで飛んでいかなきゃならぬというお立場でありますだけに、もっと心の通う、血の通うそういう配慮というものが――いろんな場合が想定されると思うんです。傷害でもう一生だめになることもあるでしょうし、いま申し上げたように亡くなるという場合もございましょうし、そういう点については、いま考えられる補償措置というものはどういうふうになっているんでしょうか。
  93. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 在外公館員がそういう死亡その他の傷害を受けました場合の措置といたしましては、やはりこれは国家公務員災害補償法によって補償されることになっております。この点は内地に勤務しております公務員と全く同様でございます。ラオスで亡くなりました杉江書記官、当時、彼は臨時代理大使でございましたが、の場合には、公務上の死亡であるという認定はおりまして、いま申し上げました国家公務員災害補償法に基づいて遺族補償金等の支払いのための手続を進めております。  なお、在外に勤務する職員について特別の場合には五割の加算をするという制度がございます。それで、その他その制度については三つの要件がございます。一つは、戦争、事変、内乱その他の異常事態の発生時であること。第二に、生命または身体に対する高度の危険が予想される状況のもとにあること。三番目には、外交領事事務に従事し、そのために公務上の災害を受けたということであること。その三つの条件がございます。われわれといたしましては、この杉江書記官の場合には、この五割加算のケースに該当するのではないかということで人事院ともいろいろ協議いたしたわけでございますが、当時のラオスのきわめて治安の悪い状況を前提としていろいろ検討していただいたわけでございますけれども、残念ながら、その三つの要件を満たしたと認定することは非常にむつかしいというふうに言われております。なお、この点は、人事院と協議いたしておりまして、最終的な結論は得ておりません。  そういう状況でございまして、われわれの同僚が在外で受けました災害についての補償というものは、内地における国家公務員と同様の状況にあるという次第でございます。
  94. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまの御発言は非常に重大な問題でありまして、私が就任してから、いま御指摘の先般のラオスの事故、相川君の遭難事件とあったわけでありますが、現在、許されておる法規の中で最大限の解釈をしてやっておるわけでございますが、とうていそれでは――こういうことがしばしばあってはならぬことではありますけれども、現状というものは必ずしもそうではなくて、今後こういうことも予想しなければならぬし、また、生命ばかりでなくて、現地で何か急に事態が起こった場合に、在留邦人の身辺を保護し、本人は財産等は全部放置して引き揚げる等の場合もあるわけであります。本人の補償ももちろんのこと、同じ運命に遭った夫人に対する待遇の処置が全然ないわけでございます。  したがいまして、これは早急に特別立法をするなり、省内規程をつくるなり、警察官の特別表彰規程のようなものをつくって、外交官というものが夫婦で勤務地で危険を冒してやるということに対する処遇だけはやっておかぬと、このままではみんなが安心して現地で仕事ができないというふうに考えておりますので、これは早急にそういう手だてを御相談したいと考えております。
  95. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 私の持ち時間はすでに経過しているんですが、聞きたいことはまだ残っているんです。いままとめて言いますから、簡潔にひとつお願いしたいと思います。  いま御答弁されたことについては、早急にこれは取り計らっていただきたい。そうでないと、若い外交官の希望の芽を摘むというようなことになったんでは、これはやはりかわいそうではないだろうかというふうに思います。  それから、次に申し上げたいことは、外務省の内部におけるうっせきした空気というものもないではないと、いろんな因果関係があるようです。たとえば昭和十八年組なんというようなことがいつも話題にされながら何かこう一つの阻害要素みたいなことになっていはしまいかというような空気もあるやに、これは風聞でございますので、伺っております。それはまあ大東亜省が設けられたときに、それが改廃されて外務省が引き受けたというようなことがあって、人数が急に膨大にふくれた、そういう人たちが上にいるために若い人がなかなか力があっても、その人たちの能力を発揮させる場所がつくれない。それでまた中には、どうせ自分の先行きというものはあと二年か三年、四、五年たてばどうせ退官だろうということで大変無気力になっているような人たちがいるらしいと、そういう人たちがもし外国に出まして大使とか公使とか総領事なんというふうになった場合に、その中で働く館員はこれはありがた迷惑というようなこともあるらしいということを聞いておりますが、その辺の真偽のほどはどうなのか。もしそういう事実関係があるならば、やはり人事の問題の一環として、われわれは人事の問題に触れるわけにいかない立場ですけれども、やはりそういうことも整備をしながら、気力あふれた外務省の内容に整えていくということが必要ではあるまいか。  それから、現在、待命中の者が一体何人いるのか、この人たちは一体どういうふうに使われるのか。それから外務省顧問という役割りは一体どういう役割りを果たすのか。  私は、外務省というのはおやめになると、大変言いにくいことですけれども、ほかの省と違ってつぶしがきかないという定評があるんですね。ここに一つのぼくはデータを持っているんですけれども、いままでいろんなところへ行かれた方がいます。東京銀行の常任顧問だとか日航の顧問だとかニューオータニの会長だとか三菱重工の顧問だとか、こういう方々はきわめて限られた人なんですね。もう国会議員ならずとも、大変有名な方ばかりです。それ以外の方々は一体どうなるんだ。必ずしも天下りがいいとは言いませんけれども、民間の企業体に、また余生をそこでいままで経験を積み重ねた力を発揮できる場所というものがあってもいいはずだし、そういうことで道を新たに開いている方々も大ぜいいらっしゃる。ただし、外務省の場合、残念ながらない。  そこで、これは私の提案なんですけれども、政府の機関の一つにたとえば外交問題調査研究所というような、いわゆるオーソライズされたそういう機関、しかも有給であると。で有能な外交官外務省をおやめになった方々がそこでいろんな多角的な、そういう豊富な経験を積まれて、そしていろんな分析もなされる、そしてそれを政府に対してアドバイスをする、こういう機関があってもいいのではないだろうか。確かに民間団体はあるようです、幾つも。しかし、やはり政府の機関としてそういうものがあってもいいんではないか。せっかく有能な力のある経験の豊富な外交官が野に下がって、あとはもうその力を発揮する場所もないというのでは非常に残念な惜しい気がしてならない。そういうことについてはどんな考え方を持っているのか。  ほかにもあるんですけれども、後に質問される方のじゃまをしてもいけませんので、いま幾つか申し上げた質問をまとめて要領よくひとつ御答弁をいただければというふうに思います。
  96. 園田直

    国務大臣園田直君) 私、官房長官の時代から、いまの御指摘の点は十分頭にございまして、あるいは電電公社であるとか、あるいはその他各所に新しい、外務省を終わられた方の職場を広げてきたところでありますけれども、とうていそれでは持ち続けるものではございませんので、いまおっしゃったような外交官として経験を積み脂の乗った人にどのように国家利益のために奉仕してもらうかということは考えなきゃならぬことだと思います。  なお、また数多い中でありますから、若い人あるいは中堅幹部等が希望を持って躍動する外交活動ができますように、人事の停滞あるいはその他がないように、この点は十分注意をして具体的に検討してまいりたいと存じております。
  97. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 官房長、補足することないですか。
  98. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 待命大使が何名いるかということでございますが、この四月一日現在の待命大使は八名でございます。なお、大使のポスト数としては現在百五ございまして、今年度末にはこれが百八にふえます。そのうち実際に大使に任命しておりますのは九十八名でございます。したがいまして九十八名中の八名が現在待命中である、こういうことでございます。こういう待命の方々は、一部の方は、その待命期間、適当な期間を終了後退官されるなり、また、その他の方々はまた新しいポストにつかれるということになるわけでございます。  それから外務省顧問でございますが、外務省顧問は現在十二名おられます。これは外務省で重要なポストを歴任された方、特に次官を経験された方、その他民間の方々に外務省顧問をお願いいたしておりまして、この方々は随時外務大臣の諮問に応じて外交政策について意見を述べられておるわけでございます。
  99. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外務大臣、締めくくりといたしまして、一言要望を兼ねて私は終わりますけれども、まだまだ言い足りない点をきょうは残しました。ですが、意のあるところをくんでいただきまして、やはり強力な外交布陣というものを考えた場合に、いま申し上げたようなことを十分にお考えおきをいただいて、来年はまたさらにその推進が果たされたと具体的な実績が残るような方向でもってぜひ整備、強化の方向へ取り組んでいただきたい、このことを要望申し上げます。
  100. 園田直

    国務大臣園田直君) 十分拝承いたしました。
  101. 立木洋

    ○立木洋君 私も、関連して、日中平和友好条約の問題についてお尋ねしたいんですが、御承知のように、いまの国際情勢というのは非常に複雑多様でありまして、この中でそれぞれの在外公館に勤務されておられる大使及び外交官の役割りというのは非常に重要だと思うんです。いま日中平和友好条約締結という問題を前にして北京駐在の大使並びに外交官の方々は、特にどういうふうな役割り、どういうような仕事をなさっておられましょうか、日中平和友好条約に関連して。
  102. 園田直

    国務大臣園田直君) 北京の佐藤大使は、本年初めごろから中国側との間で交渉再開のためのいろんな手順、段取り、情報収集等を行っているわけでございます。なお、また北京を中心にしてベトナム、カンボジアその他の方ともいろいろ接触をする努力をいたしております。
  103. 立木洋

    ○立木洋君 外交官の活動としては、特にやはり相手の考え方を十分に知ること、そしてそれを正確に本省に報告するといいますか、また同時に、日本政府の考え方を過不足なく相手に伝える、そして相手に理解を得るという仕事というのは非常に大切だと思うんですね。特に条約締結するという場合には、その役割りというのはある意味では決定的な意味を持ち得ることもあるだろうと思うんです。外交官の活動が失敗したためにいろいろ問題があったということは、いままでの世界外交史上いろいろ挙げるまでもなくあるわけですから、そういう意味で私は外交官の活動というのは非常に重要だと思うんです。  そこで、日本としては、この日中平和友好条約についての中国側の考え方を十分に知っておるというふうにお考えになるかどうか、これが一つと、それからもう一つは、いまの日本側の考え方を十分に中国側に知ってもらえておるというふうに御理解なさるかどうか、その点はいかがでしょうか。
  104. 園田直

    国務大臣園田直君) 友好条約締結についての中国側の考え方、姿勢等は十分わかっているつもりでございます。交渉の内容については言ってありませんが、日本側の大体基本的な考え方というものも中国には伝えてあると存じております。
  105. 立木洋

    ○立木洋君 日本側の考え方については、いま大体というふうに形容詞を特につけられましたけれども……。
  106. 園田直

    国務大臣園田直君) それは正直言って中国側日本は立場が違っておりまして、中国側はいつでも再開に応ずるという姿勢をしておりますから、相当突っ込んだ話ができる。日本側交渉再開ということはまだ言っておりませんから、一つもラインから出ないようにしながら話をしておりますから、そこに若干の差異はあるのではなかろうかと存じます。
  107. 立木洋

    ○立木洋君 この過程で、北京における大使並びに外交官の方々は十分に役割りを果たされておるというふうに大臣はお考えですか。
  108. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は十分役割りを果たしておると存じております。
  109. 立木洋

    ○立木洋君 最近、先ほど渋谷委員の方からもいろいろお話がありましたけれども、いろいろジグザグな経過があるようであります。その点について、そういう経過を踏まえながら今後の見通しの点について、大臣御自身としてはどういうふうな見通しをお持ちでしょうか。
  110. 園田直

    国務大臣園田直君) 先般から申し上げますとおり、ただいま与党の御理解等を願っておる段階でありますから、まあ与党の方でも反対というのは少数でありまして、大体は大事なことであるから慎重にやれという御意見でありますから、いろいろ御理解を得ながら進めようとしておるわけであります。いまそういう段階でありますから、見通しとしていつごろどうなるかということは申し上げられませんが、諸般の情勢から、なるべく早く御理解を得たいと最善の努力をしておるところでございます。
  111. 立木洋

    ○立木洋君 私はいま一つ日中平和友好条約の問題をめぐって非常に重要な時期に来ておるのではないかというふうに考えるんです。これはいつ交渉再開するかという時期の問題ももちろんございますが、本当に今後日中両国が恒久的な平和的友好的な関係を促進していくことができるかどうかという内容の面からも、当然、大臣自身お考えになっていると思うんですね。だとするならば、私たちもいま問題になっています覇権反対という問題について言いますと、これは一般的に言えば両国の関係が平和五原則に基づいて友好関係を発展させるという意味で言うならば、覇権反対ということは当然のことだろうと思うんです。しかし、これを一つ条約として覇権反対ということを定式化する場合、この覇権反対ということ、つまり覇権行為というものがどういうものであるかということは明確に認識しておく必要があるだろうし、その問題について当然はっきりした概念としてその用語が使われないと、条約としてはやっぱりなじまないことになるだろうと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  112. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 覇権につきましては、国際的に必ずしも明確な定義が一般的にないわけでございますが、私たちが一般的に解しておりますのは、一国が他国に対して意思に反してその意思を押しつける、そういうことでございます。したがいまして内政干渉にかかわるような問題とか、それからあるいは武力の威嚇にかかわる問題とかいうものがこの覇権ということに当たるのではないかと解釈しております。
  113. 立木洋

    ○立木洋君 そうすれば、先般来、大臣が繰り返しお述べになっているように、つまり今度の日中平和友好条約の内容については、いわゆる政治的な妥結ですか、政治的な決着ですか、これはあり得ないと、つまり玉虫色ではなくて十分にはっきりしたものでなければならないということが言われておりますが、この点については覇権行為ということに関しても、つまり覇権反対ということに関しても同じことが言われるわけでしょうか、大臣のお考えとしては。
  114. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度交渉を再開して、いよいよ条約案文の交渉を始めるとなると、いま御指摘された点が日本国民大多数が一番心配されているところであろうと私も考えるわけでありまして、要は、米ソその他の国々の友好条約で覇権という問題が使われている条約は相当あるわけでありますけれども、その覇権ということを条約の中にどう盛り込むのか、どういうふうにやるのか、それが特定の第三国を目当てにした両方のこれに敵対する行動であるか、そうでないかという点が一番問題だろうと考えておりますから、その点を十分留意をしておるところでございます。
  115. 立木洋

    ○立木洋君 それで、この間の予算委員会でも私は覇権行為の問題について若干大臣にお尋ねしたんですが、時間が十分でなくて突っ込んだお尋ねができなかったんですけれども、いま、これは世界全部とは申しませんが、アジア太平洋地域において覇権行為というものが現実に存在しているんでしょうか。存在しているとしたら、どういうことを大臣は覇権行為だというふうに、現存しておるアジア太平洋地域における状態をお指しになりますか。
  116. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほど次長から申し上げましたとおり、覇権行為というものの定義というものは別といたしまして、少なくとも外交上あるいは政治上納得づくで相互理解で事を進めようとしないで、力づくで、あるいは軍なり武力なり、あるいはその背景なり、あるいは大国としての威力をもって相手を動かそう、無理やりに押しつけよう、これが覇権行為であると考えます。
  117. 立木洋

    ○立木洋君 具体的にはなかなか大臣の口からは言いにくいかもしれませんけれども、たとえばベトナムに対するアメリカの侵略行為ですね。私たちは侵略行為というふうに明確に指摘していますが、アメリカのキッシンジャーについても、彼はアメリカのベトナムに対する介入という表現を使いました。このアメリカのベトナムに対する介入、つまりアメリカの表現で言うならば、これは覇権行為なんでしょうか。
  118. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 先ほども申しましたように、覇権という言葉自身が非常に概念規定が一般的に確立しておりません。したがいまして、それは見方によりましていろいろな見方もあるかと思いますが、ですから、これを一つのベトナムに対するアメリカの介入をもって覇権行為であるかどうかということは、私たちとしては申し上げる立場にないということでございます。
  119. 立木洋

    ○立木洋君 うまいぐあいに次長さん答弁されましたけれども、この間行われましたチーム・スピリットですね、あれは朝鮮民主主義人民共和国ではやっぱり脅威を感じているわけですね。先ほど言われた説明によりますと、武力を行使して相手の意思に反して脅威を与えるという、そういうふうな行為はこれは覇権行為であるというふうに言われましたけれども、これはどうなんですか。
  120. 園田直

    国務大臣園田直君) 力をもって相手に自分の意思を押しつけることが覇権行為であって、この前の合同演習は韓国が侵略された場合を予想をして、その場合にこれを防衛するということでありますから、必ずしも武力をもって相手に意思を押しつける行為ではないと、こう思います。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 ベトナムの場合だって、ベトナムの領土であり、そしてベトナムの主権が事実上アメリカによって侵害された。そして当時国会内でも、外務委員会でもいろいろ議論しましたけれども、いわゆるあれは民族主権ですね、主権を尊重するという、いわゆる民族の大義という立場から見るならば、あの流れは当然の流れとして考えなければならないだろうということは当時の宮澤さんも言われておったわけですね。そういうことから考えるならば、これはアメリカの行為を覇権行為というふうに公式の場で大臣が述べるということはなかなかむずかしいでしょうが、これは明確にやっぱり覇権行為だと思うのですよ。当時に、そういう武力を行使して、それはたとえ演習であろうとも、いわゆる武力によって威嚇を与えるような行為としての今回のチーム・スピリット78というのは、これも覇権行為の一種としてわれわれは考えざるを得ない。こういう問題についてはやっぱり明確にしておかないと、覇権反対ということが条約でうたわれておって、そしてそのことについて明確な一致がなくて、あいまいな形にされておるということになると、後々問題が出てくるんではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  122. 園田直

    国務大臣園田直君) 米国は韓国と米韓条約を結んでいるわけでありますから、その米韓条約の義務を履行するための演習を行った、このように解釈をいたします。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 少し話を変えますけれども、中国側の考え方については十分理解をしておるというふうに先ほどお話しになりました。理解しておるじゃない、知っていると、わかっておるつもりだというふうに言われましたが、中国は覇権行為というのをどういうふうに考えておるのでしょうか。現実に存在している覇権行為について中国側はどういうふうに考えているんでしょうか。
  124. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国側も力をもって相手に意思を押しつけることを覇権行為だと解釈しているようでございます。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 具体的にはどうなんでしょう、具体的な現実に現存する事態についての認識としては。
  126. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国の訪中された方々その他に対した発言から想像すると、中国は、覇権行為というものは、まず第一に自分の国に対して力をもって意思を強制しようとしている行為を覇権行為だと解釈していると存じます。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 現在の状況ですから、なかなか言いにくい点もおありになるだろうと思いますから、その点はそれまでにしますけれども、具体的に言うと、覇権行為そのものについて、日本政府中国政府との間では、いわゆる概念的なといいますか、問題の考え方においても具体的なとらえ方においても十分に一致しているというふうには私は考えられないのですけれども、その点は大臣どのように御認識されていますか。
  128. 園田直

    国務大臣園田直君) 一致していると私も考えておりません。ただわかっておると言っただけでございまして、一致していないからこの覇権という問題をどのように扱うかということが今度の交渉一つの問題になってくると考えております。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、結局、あれですね、一致していない覇権条項というものをいわゆるそれぞれが義務を負わなければならない条約で定式化するという点に非常に難点がある、その点がいま十分に苦慮しなければならない問題点になっておるというふうに理解していいわけですね、大臣の考え方としては。
  130. 園田直

    国務大臣園田直君) この覇権条項というものを今度の条約交渉でどうやるかということは問題でありますけれども、中川は日本に覇権を行わない、日本中国に覇権を行わない、ここのところは問題ないと存じます。  そこで、日本中国が違うところはどこが違うかというと、ソ連に対する、特定の第三国といいますか、外交方針が通うわけであります。わが国の外交方針は、私が国会の演説で申し上げたとおり、どこの国とも敵対行為をやらない、どこの国とも友好関係を結ぶ、こういうことであります。中国はそこのところが違うわけであります。  もう一つは、わが国の基本的な憲法並びに外交方針は、戦争をこの世の中に断じて起こさせてはならぬということであり、中国の方は、その情勢分析が戦争だ、戦争だと言っておられるようでありますから、そこのところがまた二つ違う。  二国間で条約を結ぶ場合は、完全に意見が一致して結ぶ条約はないわけでありまして、お互いに双方の立場を損ねないように結ぶのが条約であると考えております。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 大分本当のことをお話ししてくださいました。  それで、この間、与党の方々で合同会議をされたという新聞報道を見たわけですが、その席上で外務大臣がこのように述べられているんですね。台湾の問題に関して「武力解放というような事態はないと思うが、仮にそのような台湾の安全にかかわる事態が起これば、それは日米安保条約にいう「極東の安全」にかかわることになるのだから、わが国としてもただ座視するのではなく、日米の協調のもとに対処してゆくことになるだろう。」と、こういう発言をなさったのかどうかということが一つと、それからこういう発言をもしかなさったとするならば、これはどういう意味で述べられたことなのかということについてお尋ねしたいんです。
  132. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、これに対する正確な答えは、そのような在日米軍が台湾に出動するような事態はないであろう、これは米国中国のやりとりを見てもそういう想像ができる。もし、しかし、仮に論理的にそういう事態があったと、こういう場合には、大平外務大臣のときに政府として申し述べた論は、日本中国友好関係も考慮しつつ、十分尊重して安保体制の中で日本がやっていくことが今日日本の進むべき道だと考えておりますと、こういう趣旨のことを言ったわけであります。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 じゃもう一つ。一九七二年九月二十九日北京において結ばれました日中両国のあの共同声明ですね、あの共同声明の第二項、第三項。第二項には「日本国政府は、中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府であることを承認する。」第三項は「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」というふうに述べられておりますが、この意味について大臣はどのようにお考えになっていますか。
  134. 園田直

    国務大臣園田直君) これはもう書かれた言葉のとおりだと解釈をいたしております。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 だとするならば、これは先ほど台湾の件で述べられた、論理的にという前提がございますけれども、これはやはり矛盾することにはなりませんか。
  136. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本中国友好関係も考慮しつつ、十分尊重して安保体制の中に入っておる日本と、こういう意味でございます。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 十分考慮しつつと申しましても、これは先ほど言いましたように、相手の意思に反する意思を押しつけないというふうにも述べられましたし、また内政干渉にわたるような行為、これも反対であるし、武力による威嚇等々についてもこれは反対であると。ただ、台湾は、これは中国の領土である、台湾は一つ中国の省であるという点については間違いないとするならば、日本政府がその点についてどう考えているかもう一度確認したいわけですけれども、それが間違いでないとするならば、中国の領土にあるそれについて中国政府が行使する行為について、それに反対するような行為を行うということは、これは覇権行為にかかわってくるようなことになるんじゃないでしょうか、その二点。
  138. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本中国の意思の表明を十分尊重するという言葉で書いておるわけであります。したがいまして十分尊重するということが日本中国友好関係も考慮しつつという言葉になってくるわけでありまして、現実問題としてはそのようなことはあり得ない、ということは、共同声明の場合にもこの件について両国から議論が出たわけじゃございません。これからもそういう事態は考慮されない、あってはならない、こういうことで解釈しておるところであります。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 ですから、私は、先ほど申し上げました両国が恒久的に今後長期にわたって平和的友好的な関係を発展させる、そういう意味でこの日中平和友好条約というものの持つ意義ということが非常に私は重要だろうと思うんですね。で、これは先ほど大臣が言われましたように、第三国に向けられた、両国の平和友好の関係が他国との敵対的な関係を前提とするというふうなことになるならば、これまた方針とは異なってくるという問題にもなりましょうし、ましてや、また他国の意思に反するような行為を押しつけるということが日中両国間であることは、必然、これはあり得べきではないわけですし、また、そういう事態というのは、いまの複雑な多様な形で進展しておる国際情勢の中で今後いろんな形で起こってくる可能性もまたあるでしょうし、そういう場合には、本当にこの平和友好条約の基本に基づいて対処できるような、そういう自主的な立場というのが日本外交上きわめて重要になるだろうと思うんです。  ですから、そういう意味では、私は、今度のこの日中平和友好条約締結という点については、いわゆる真に恒久的な平和関係友好関係が発展できるような、そういう基礎を踏まえたものにならなければならないだろうと思うんです。そういう形が速やかにできることが望ましいんであって、その点について今後の展望、見通しの問題については、先ほど大臣が言われたように、いまの状況の中ではなかなかむずかしいという状態がありましたけれども、いままで大臣が述べられた――何回かいままで当委員会でも御答弁は聞いているわけですけれども、当初述べてきた考え方と、あるいはいままでの自民党与党内での合同会議の経緯を踏まえてどういう新しい認識をお持ちになったのか。それから認識は全然変わらないというふうに判断していいのかどうなのか。  そして最後に、いま私の述べた長期的な両国の平和友好関係がどういう形であらねばならないかという点についての大臣の御所見を伺い、その三点を伺って、私の質問は終わりにしたいと思います。
  140. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言は重大な参考として、交渉再開になれば交渉したいと考えております。  なお、与党の方々の御意見は慎重に承っておりますが、日中友好条約締結に関する基本的な物の考えと方針は変わりはございません。
  141. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方は挙手をお願いします。    〔賛成者挙手
  142. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認めます。さように決定をいたします。     ―――――――――――――
  144. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、安全なコンテナーに関する国際条約CSC)の締結について承認を求めるの件を議題とし、政府から趣旨説明を聴取いたします。外務大臣
  145. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました安全なコンテナーに関する国際条約議題について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、コンテナーの取り扱い、積み重ね及び連送において人命の安全を高水準に維持すること並びにコンテナーによる国際運送を容易にすることを目的として、昭和四十七年十二月ジュネーブにおいて国際連合及び政府間海事協議機関が共同して開催した国際コンテナー輸送会議において採択されたものであります。この条約は、昭和五十二年九月六日に効力を生じたものでありますが、主要なコンテナー保有国である米国、英国、ドイツ連邦共和国、フランス等を含む十六ヵ国がこの条約をすでに締結しております。  この条約は、締約国がコンテナーの試験、検査及び承認に関する手続をこの条約に定める基準に従って定めること並びにある締約国がこの条約に従って与えた承認は他の締約国において認容されることを主たる内容としております。  世界第一位のコンテナー製造国であるわが国がこの条約締結することは、コンテナーの運用において安全性を維持するための国際協力を促進する点で意義があり、また、コンテナーによる貨物の国際運送を円滑化するために望ましいものと考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  146. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上で説明は終わりました。  本件に対する自後の審査は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十二分散会      ―――――・―――――