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1978-03-02 第84回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二日(木曜日)    午後零時十二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 稲嶺 一郎君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 秦野  章君                 三善 信二君                 小野  明君                 田中寿美子君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        運輸大臣官房観        光部長      杉浦 喬也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○世界観光機関WTO憲章締結について承認  を求めるの件(内閣提出)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  世界観光機関憲章締結について承認を求めるの件を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣が大変忙しいので、この問題に対しては担当のエキスパートの方から詳細にいろいろな意見は承りましたが、外務大臣にこの機会に質問したいのは、この世界観光機関日本加盟していくのに際しまして、日本観光対策は、今後、どうあるべきかということは、そのみずからの主体性をつくることが一番大切なことだと思います。  大臣から大体の趣旨は承ったのでありますが、観光という形だけで観光事業を簡単に片づけられないのは、いま国際外交の面を見ればおわかりのように、日本アメリカ日本中国日本ソ連日本ECの間のいろいろなギャップというものも、簡単に言うと、相互理解が足りない点が多々あると思うんであります。今後、おのおのの国が、私は、このむずかしい外交交渉の中で心ひそかに反省する点は、やはり人間の交流文化交流というものがきわめて重要であるという形において、観光という範囲内においても、その観光内容ある一つの実りを求めているんじゃないかと思うのでありますが、これに対して、外務大臣は、どのような御見解をお持ちですか。
  4. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま御発言がありましたとおり、観光というのは、国際協力出発点というか、あるいはスタートというか、文化交流の中の一つとして、単に風物、風景等だけを紹介するのではなくて、それに伴った国民の生活、考え方、こういうものをお互い交流する一番いい機会でありまして、これが国際協力の重要な柱になってくる、こういうことは御意見のとおりでございます。  したがって、そのような方向から、観光は私の所管ではありませんけれども関係各省と相談をして、そういうふうにつながっていくように努力をしていきたいと考えております。
  5. 戸叶武

    ○戸叶武君 一九七五年の統計によると、アメリカ観光収入が四十八億七千六百万ドル、スペインが三十四億ドル、フランスが三十四億ドル、西ドイツが二十八億四千万ドル、日本が四億二千四百万ドルということであります。  スペインのような国あるいはイタリアのような国におきましては、観光収入というものを国家の財政の中における大きな資源として取り扱っている面があるのでありますが、日本においては、当然、この観光収入というものをもっと生かして、そしていま大臣が言われたような文化交流なり、相互の人々の理解を深めるための人事交流なりに使っていくべきだと思うのでありますが、このことはやはり観光に対する構えの上においてきわめて重要な物の考え方と思いますが、大臣は、どのようにこれを受け取めておりますか。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) 全く御発言のとおりだと考えております。
  7. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本観光収入は赤字が十七億二千万ドルということですが、それは日本より海外へ三百十五万人も出ていって、百二万人、三分の一に足りない外人しか日本を訪れていないんです。日本黒字減らしのために農協婦人会あたりまでも率先して全部外国外国へと旅行に出かけておりますが、その日本というものから何か学び取ろうという気持ちアメリカにおいても発展途上国においてもECにおいてもある際に、三分の一というのは少しアンバランスだと思うんですが、その主たる原因は、大臣は、どのようなところにあると見ておりますか。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本の国から各国海外旅行して、そして各国の実情を理解して帰ってもらうことは非常にいいことだと思いますけれども、ただいまのところの趨勢は、流行というか、舶来品愛好の一時の日本国民流行がありました.けれども、ある一地点に集中をして若い人が行くようなこともありますので、こういう海外旅行をされるためには、ちゃんとした目的なり、あるいはそれによって得る相互理解、こういうことも考えながら、観光を担当する省ではよくPRをし、よく指導をしながらやる必要があると考えております。
  9. 戸叶武

    ○戸叶武君 日本文部省の予算において五千名の人を海外研修に送り出し、その費用は十三億二千七百六十万円であり、一人一カ月内外の海外旅行だとされておりますが、このわずかな十三億二千万円程度の費用ですが、これによって日本教育者外国を見る眼は百聞は一見にしかずで、ずいぶん進んで、効果を上げているのが事実であります。  そういうことを見るならば、これは教育者だけでなくて、技術者もあるいは各方面において働いている社会福祉関係における活動家でも、そういう者にも、この文部省にならって、海外研修旅行をさせるということがきわめて効果あるものじゃないかと思いますが、大臣は、それをどう見ておりますか。
  10. 園田直

    国務大臣園田直君) 御発言のとおり、非常に効果があると考えておりますので、逐次、そういう方面から各省計画をして、そういう勉強のための旅行、こういうものの企画をすることは、わが外務省としても非常にありがたいと思っております。
  11. 戸叶武

    ○戸叶武君 観光の面で、私も、もうワイフと私で二百組ぐらいの仲人をやっておりますが、最近は、だんだんぜいたくになっちゃって、まあ仲人は一人になったから遠慮しておりますけれども、それでもごく平凡なサラリーマンの人でもハワイに、グアムに、フィリピンに、シンガポールにってずいぶん海外に気軽に飛び立っていくようであります。これは政府黒字減らし協力しているせいかもしれません。  いずれにしても、気軽に海外に飛び出していけるようになったというのは、これは日本だけでなく、私は、今後、中国なんかも、もっと日中平和友好条約が結ばれて明るくなり、独善的なイデオロギーのみで武装されたような時代と違って、相手の立場理解しなけりゃならない、各国から学ぶところがなけりゃならないという機運が醸成されたならば、日本には大量に観光客が来るんじゃないかと思います。  日清戦争の後において、西太后なんかというわからず屋の人でも、やはりがんこな面だけをとっていては、国を、政府を維持することができないという彼女の一種の変身によって、とにかく日本に留学した者を教員に採用するというので、怒濤のごとく何万という学生日本に押し寄せたことがあります。しかしながら、その留学生に対する日本の待遇が余りよくなかった。魯迅のようなすぐれた人はすぐれた日本人の教師との接触によって啓発されたが、おおむねは日本人差別観によって自分たちが本当に民族独立をかち得なけりゃ、この侮べつからわれわれは抜け出ることはできないという形において、日本に勉強して帰った者は皆排日抗日先駆者になった。特に一九一五年の大隈内閣における加藤高明の二十一カ条の帝国主義的要求に憤激し、あれが一つ中国近代ナショナリズムを生む抵抗の源泉になった。国の外交日本の国の留学生受け入れ方、この拙劣さが中国ナショナリズムを育成して、近代中国をつくった原動力となったということは、結果的にはあれはよかったんかどうかわかりませんが、いずれにしても日本政策の間違いというものが非常に日本としては隣国との長い間の争いを生んだと思うんです。  今後、やはり再び中国日本を見直してくれて、怒濤のように日本から何かを学ぼうというふうに多くの人が来る、まず観光で来る、そうしていろいろな研修で来るというときに、これに対する対応姿勢がないと、また、日本には行ってみたが、ひどい目に遭ったというような憎しみを醸成されるような結果になっては大変だと思います。  いま留学生に対する外務省なり文部省なりの対処の姿勢というものは、率直に言って、なってない面が多々あると思うのです。およそ官僚的な一つの処置によって温かさが足りないと思うんですが、そういうところに苦労人の外務大臣は幾らか気がついてはいると思いますが、そういうものはできるだけ早くやっぱり直していかなけりゃならないと思いますけれども、どうでしょうか。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) 留学生に対する取り扱いは、これはもう御指摘のとおり、きわめて大事であります。  新聞等でもときどき出てまいりますとおりに、留学生に対するいろんな問題があるわけでありますが、大体分けますと、官費留学生自分の金で留学してくる私費留学生とがあるわけでありまして、官費留学生はまあまあ今後十分注意をして、いまおっしゃったようなことを考えながら取り扱いをすれば、帰ってから日本に対する友好的な感情を持って、その後交流の会を続けておりますからうまくいっているわけでありますが、私費留学生がとかく問題が多いわけでございます。そしてこちらの方が、どっちかというと、帰ってから排日思想を持ったり、排日運動をやったりする拠点になる可能性もあるわけであります。  したがいまして、どちらかというと、私費の方は自分の金を出してまで来たいという熱意のある人でありますが、いま官費の方は文部省所管私費の方は外務省所管となっておりますが、これを一本にまとめて文部大臣所管にして、それから私費留学生にも政府としては何がしかの援助をして、そして帰られたら気持ちよい日本であったというふうにしたいという努力をいまやっているところであります。ただ、いまのような努力ではまだまだ足りませんので、将来、この留学生に対しては特に外交の一部である、というよりむしろ外交の先走りである、こういうことで努力をしたいと考えております。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 私はお役人のことだけを攻撃するんじゃないんですが、日本の庶民は、いろいろな点において誠意が必ずしも高くない人でも、善意のものを持っていると思うのです。  それは一つ具体的事例として、私は杭州でお医者さんをやっている、婦人のお医者さんの岑仲月さんというのが友人でございましたが、杭州抗日源泉地と言われてもいいような土地でありますけれども、そこで岑仲月さんと舟遊びをしたときに、東京女子医大を出たその婦人が、私は日本に留学して下宿先を探したが、どこでも下宿をおおむね断られた。それで言い分は、言いづらいけれども、どうもあんたたちは油を使い過ぎる、南京虫を持ってくる、そういう点で自分たち部屋を貸すのはいいが、部屋が汚くなってしまうというようなことを言われるんで、それだけはしませんから貸してくれと言ったところが、あるところのおばあちゃんが、口はそういう本当なことを正直に言ってくれたが、親しんでいる間に、実に親切で、洗たくでも、いろんな縫い物でも指導してくれて、その人情の深さというものに非常に私は打たれた。やはり魯迅が仙台において、あれは藤野先生でしたかな、あの人格に打たれたように、そういういいものを日本人は持っているんです。  ところが、いろいろ留学生を取り扱う機構になると、責任をかぶっちゃいけないという形で言うことも言わない、取り締まりだけは厳重にやる、これじゃ人情が移りっこはないんで、そこいらの人心の機微というものをやはり若い学生たちには与えていくような配慮が必要であると思います。  いま大臣答弁を聞いて、外務省文部省に譲っても、譲ると同時に、そういうこともそういうふうにしてやってもらいたいというだけのくぎは私は打ってくれると思うんですが、時間が過ぎますから、これで終わりますけれども、私は、ソ連でも、あなたは行って体験したが、お互いに国と国との立場というのはがんばり抜きますが、根本からいけば日本ソ連も反省しなければならぬが、お互いに、ソ連日本立場がわからない、日本ソ連立場がわからない、理解が浅いんです。そういう点において、私は、観光というものを乗り越えての文化交流というものがきわめて重大だということだけを、大臣に、答弁は要りませんが、もう時間がありませんから、お願いして、単なる観光に終わらずに、やはりあなたが受けとめているような文化交流における成果をこの観光事業の中にも持ち込んでいきたいという悲願を持って、ひとつ今回WTO憲章承認するのに当たって、決意をどこまでも示していただきたいと思います。これはお願いだけで、答弁は要りません。
  14. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回のWTO憲章承認に当たりまして、特に第三条の目的は、一見すると、大変理想論ではあるまいかというような印象を受ける内容が掲げられておりますが、しかし、これは理想ではなくして、あくまでも現実的な課題として乙の実現を強力に推進していかなければならない、このように思うわけでございます。いま伺っておりましても、確かに単なる観光という一目的にとどまらずに、広くは人類の平和というものに貢献する点を突き詰めてまいりますと、お互い交流というものが何よりもそういった道を開くきっかけになるであろう、これは十分考えられる常識だろうと思います。歴史的な今日までの経過あるいは文化、社会的な仕組み、産業の発展等々、その国のきわめて個性的な内容を知るということは非常に必要なことであり、そういうところにむしろ観光というものを幅広く広げた考え方に立って、これを進めていかなきゃならぬだろう、これはまさにそのとおりだと思います。  そこで、問題は、次の点にしぼられるような気がいたします。  一つは、日本自体観光を兼ねた、いま申し上げるような広く外国の方々に認識をし理解を深めていただくという観点に立って、果たして現在の体制で十分対応できる状況になっているのかどうなのか、国内のそういう体制整備という問題が一つあるんではなかろうかということが一点。  それから、第二点は、目的の第二項目にも述べられておりますように、特に発展途上国利益を阻害しない、むしろこの点に相当力点が置かれているような印象を受けるわけでございます。恐らく、日本がこれからこの憲章をめぐって果たさなければならない役割りは何かと言えば、まず、国内体制十分整備をして受け入れに万全を期するということが一つと、それからもう一つは、発展途上国に対しての開発などを中心とした協力を促進する、この二点に集約されるんではあるまいかというふうに思います。  ただ、現在の日本状況を考えますと、私も詳しくは存じておりませんが、はなはだ心もとない状況にあるのではないだろうか、いろんな問題がやはり横たわっております。つい先日の委員会におきましても、そうした細かい点のやりとりがあったわけでございますが、せっかく運輸省観光部長さんもお見えのようでございますから、これから五年なり十年なり、この憲章に基づいてどういう受け入れに万全が期せられるのか、外国あたりにおいては観光省なんというものを設置するくらいに非常に大きなセクションとして機能を発揮しているというようなところもあるわけでございますので、あるいは行政的に非常にばらばらになっているために、道路の問題にしてもホテルの問題にしても、そうした観光客に対する応対というものが十分万全を期しがたいものが現状においてはある。それをこれからこの憲章の精神にのっとって、日本に来られても、確かに大きな見ただけの価値というものがあったし、また、それを通して日本の国情、国民性というものに対する理解を深めることができたというような方向に持っていくためには何が足りないのか、どうすればいいのか、これからどういう考え方に立って受け入れに万全を期していくのか、そうした総合的な面についてお答えをまず最初にいただきたいと思うわけです。
  15. 杉浦喬也

    説明員杉浦喬也君) ただいま先生お話のように、WTO加盟の暁におきまして、今後、わが国が国際的に多くの国から多くの方の受け入れをしなきゃいかぬ、そのためにはそれだけの受け入れ準備といいますか、体制ができていなきゃいかぬというような御指摘でございまして、全くそのとおりであろうと思います。  従来も、私ども運輸省だけではございませんが、できるだけの努力はしてまいったわけでございますが、何分にも観光所管しようとする行政につきましては、運輸省がやっておるだけではございませんで、その基盤施設というような問題になりますと、建設省なりあるいは厚生省なり、それから文部省なり、各種対応のための各省庁の所管が非常に多うございます。こういうような多方面、多様な所管ということにいわば一つ問題点が確かにあることは事実でございますが、現在の段階では、こうした多くの観光行政をよりよくするための一つ方法といたしまして総理府観光対策連絡会議というものがございます。ここで各省庁の問題を全部持ち寄りまして連絡を密にするということが一つございますし、また、基本的な政策の問題につきましては、同じく総理府総理大臣諮問機関でございます観光政策審議会というのがございます。今後、WTO加盟契機にいたしまして、もう一回、実は、私ども、この観光政策審議会国際観光あり方いかんということを御審議願いたいという気持ちではございますが、そのように政策審議会で今後の政策を大いに議論をしていただくというのも一つ方法かと思います。  具体的な行政の問題につきましては、これをいわば一元化するというようなお話になりますと、これは大変な問題にもなりますので、現在のような体制で横の連絡を十分に緊密にとりながら、今後もやってまいりたいというふうに考えております。今後、非常に外客の増大というものが期待されるわけでございますので、先生指摘のような方向で十分に努力をしてまいりたいと思います。
  16. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 外務大臣、いまお聞き及びのとおりでございまして、この憲章承認される、もうすぐにそれに連動して機能的な働きというものを進めていかなければならない、そういう状況でありながら、実際には、まだ準備すらも雲をつかむような状況に置かれているんではないかという大変心もとない感じを受けるわけでございますね。  外務省中心におなりになることも結構でしょうし、運輸省中心になることも結構だろうと思いますが、外国とのかかわり合いの中でこうした問題を進めていくわけでございますので、特に外務大臣はいま答弁があったことを十分含んではいらっしゃると思いますけれども、せっかく国際的なこういう機関が設けられた以上、日本としてやはり恥ずかしい思いをするような進め方というのは非常にまずいんではないかと思いますが、その点についての御見解を伺っておきたいと思うんです。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) 御指摘のとおりに、ただいままでは、この機関が発足以来、事務局の設立とか各種内部機関の設置とか内部規則の起草とか、国際連合との協力協定締結等々に基盤が置かれてきたために、いまの御指摘のように、実質的にはなかなか進んでいない点もあるし、国内的な各省との連絡が緊密でない点もございます。したがいまして、いま御発言のとおりに、この条約に批准、加盟をしたのを契機にして、それぞれ各省連絡をしつつ、具体的な計画国内ばかりではなくて、開発途上国に対する調査あるいは技術協力あるいは援助等を具体的に進めていく所存でございます。
  18. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、こうした国際間における取り決めをするという場合には、国内的な諸問題というものも整備していかなければならないのは言うまでもありませんし、そういった準備不足のまま、これが進められていくということは非常にまずい点ではなかろうかということを十分御配慮いただいて、日本というその真価を高からしめていく一つあり方としても国内体制整備を強力に推進をしてもらいたい。  次に、今回のこの憲章加盟することによっていまだ知られざるいろんな情報だとか、資料収集が行われる。確かに日本交通公社あたり収集しております外国旅行の手引などでも、相当御苦労されてあすこまでまとめられたんだろうと思いますけれども、実際行ってみたい、見聞をさらに広めてみたいと願うその地域についての情報あるいは資料というものの収集はいまだしと、そういう点を補完する意味において今回の憲章が持つ役割りというものは非常に大きな効果を持つであろう、こういうふうに言われているようでございます。ただ、その際、一体、どこが中心になってその資料だとか情報収集をおやりになるのか、外務省中心になるのか、運輸省中心になるのか、この点でもまたちょっとどうなるんだろうなという心配が起こるんですが、このような点についても、これは若干具体的な問題に入ったのですけれども、どのようにとらまえていらっしゃいますか。
  19. 杉浦喬也

    説明員杉浦喬也君) 資料対象いかんでございますが、私の方の運輸省におきまして、かなりいろんな統計整備いたしております。受け入れ体制の中での一番大きな問題でございますホテルあるいは旅館あるいは旅行業の実態あるいは観光レクリェーションの様子、その他かなり私どもの方で数字をつかんでいる点が多いのでございますが、その他基盤施設等におきまして一般的な問題等もございます。したがいまして、どこが中心になってというふうにまだはっきり申し上げられませんが、少なくとも私どもの方といたしましては運輸省中心になりまして、できるだけ正確な数字収集いたしましてWTOに提出いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  20. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 くどいようですけれどもね、いままでは、それぞれ民間企業にいたしましても、またお役所にいたしましても、ばらばらの状態でそうした資料情報収集をおやりになっていたんじゃないかという傾向があるんですよね。ですから、ガイドブックなんか見ましても、それぞれみんな違う。違いはまた特徴でもあるかもしれない。しかし、旅行者立場に立ってみると、どれを一体セレクションしたらいいのかという問題で非常に困る場合があるんですね、  先ほど申し上げた交通公社もそうでしょうし、あるいは国際協力事業団なんかもそうでしょうし、そのほかいろいろあるようですね、団体を考えてみますと。国際旅行業者協会というんですか、こういうところもあるようですし、そのほかユースホステル協会などというような団体もあるようです。それがばらばらにやって集約されませんと、これは本当に不便を感ずるばかりじゃなく、大変不親切だ、外国に対しても不親切だというそしりを免れない。こういったものも含めて、冒頭に申し上げたようなことを基本に、やはり国内的な整備を急いでいただきたいなというふうに思うわけですね。  もうあときょうはきわめて限られた時間ですので、最後に一つだけ申し上げて終わりにしたいと思うんです。  発展途上国に対しての利益の供与といいますか、これに相当大きなウエートが置かれているようですけれども、恐らく国連機関中心になっての活動というふうになるのだろうと思います、もちろん二国間という場合もございましょうけれども。先般も大変問題になったんですけれども日本は確かに分担金は多いけれども、実際に多いわりあいに仕事をする面で果たして、現状、効果ある成果というものが上げられるのだろうか。職員の問題もございましょうし、あるいは事務所の問題もあるでしょうし、いろんなそういう問題がやはりネックになって横たわっている。  いろんな条約加盟し、いろんな新しいいま方向というものが開けようとするときに、ますますこれから国際交流というものが複雑化する、その場合に、きちんと整備をしておきませんと、えらいことになっちまうんじゃないか。外務省がそれを全部しょい込んでふうふう言わなきゃならぬというような点が非常に心配ですし、特に発展途上国に対して先進国が一つの責任を果たすということはもう当然の義務としても履行していかなければならない。そういう立場を考えたときに、それを動かすのは人でありますので、そういう国連機関等を初めとする機関において、きわめて少ない、予定の半分しか配置されていない。  この辺は、外務大臣としては、いろいろ御苦労もおありになると思いますけれども、こうした問題が出るたびごとにどうしようかということではなくして、もうこういう問題が一つ出ることによって五年先、十年先まできちんと整備をしていくというような方針を明確にお立てになりませんと、こうした条約はあっても働きが何にもない、発展途上国に対しての期待も裏切る、こういう逆行的なことがあったんでは非常にまずいんではないか。最後に、それを一まとめにして御答弁をいただいて、終わりにしたいと思います。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御発言のとおりでありまして、観光、特に国際観光となりますと、責任、実行の所在が各省に分かれるわけであります。しかし、いずれにしましても、旅券を発行し、出ていかれてから帰ってこられるまでの責任、それから海外における日本国民の行動、こういうものは全部外務省の責任になるわけでありまして、さらに積極的に進んで、その旅行をどのように、いままで各位から御発言のありましたように、日本の国の外交に進めていくか、こういうことになると、国内体制が非常に大事であると思います。  これは連絡ばかりではなくて、宣伝等にいたしましても、わが外務省から出しておる宣伝刊行物、運輸省から出しておる宣伝刊行物あるいは旅行の心得、あるいは厚生省から若干出てくる問題、こういうものを一まとめにしてやれば、もっと実際に量から言ってもできるわけですから、その点十分検討をして、各省連絡を密にして、なわ張り根性ではなくて、おのおの責任を明確にすると同時に、連絡協議会がいま総理府にあるようでありますが、この協議会というのが実行上の協議会とはなかなかいきませんので、十分検討して御趣旨に沿うようにやりたいと考えております。
  22. 立木洋

    ○立木洋君 観光の問題については、先ほど大臣が言われたように、これはただ単なる観光ではなくて、相互理解を深め、国際協力の点から見ても非常に大切な点であるというふうなお話があったわけですが、いままでこうした観光の分野で日本政府として国際的に援助を行ってきた実績というのは、どういうふうになっているんでしょうか。
  23. 杉浦喬也

    説明員杉浦喬也君) 大きく分けて二つございまして、技術協力の面とそれから経済協力、この二つに分けられると思います。  技術協力の面では、最近は、開発途上国におきまして、国際観光というものは非常に自分の国に有利である、外貨獲得、それから雇用機会の増大という点で非常に重要なものであるという認識が高まっておりますので、開発途上国から日本に何とか技術協力をしてくれという要請が非常に高まってきております。  これに対応いたしまして、私でもの方で、これも二通り方法がございますが、一つは、日本観光セミナーの開催をいたします。これを地域別に二つに分けまして毎年実施をいたしております。昨年の例を申し上げますと、総計で二十六名の観光セミナー参加者がございまして、成果を上げて、日本研修を修了し、自国へ帰っております。  それからもう一つは、ある特定地域の観光開発の調査をしてくれという依頼がまいっております。その依頼に対応いたしまして、日本から観光の専門家を派遣いたしまして、いままで実施いたしましたものの例といたしましては、タイのパタヤ地区の調査、それからインドネシアの北西部スマトラ地区の調査、観光開発計画というものを作成いたしておりますし、タイのパタヤ地区におきましては、それを進めて、その実施計画に現在着手をしておるような状況でございます。これが技術協力状況でございまして、今後、特に東南アジアの諸国からは多くの要望が出てくると思われます。  それから、第二番目の経済協力でございますが、特に日本ホテルの事業の隆盛ということに注目をされまして、外国からホテル事業についての建設あるいは管理というような面での協力要請が行われております。いままでの実績といたしましては、バングラデシュにつきまして国際級のホテルの建設、それからブルガリアにつきまして同じように国際級のホテルの建設、これを行うように、日本政府並びに民間ベースでの借款の申し入れがございまして、海外経済協力基金から円借款を行って、現在、建設をしておる最中でございます。そのほ、直接的な経済協力ではございませんが、日本に東南アジア貿易投資観光促進センターというのがございまして、ここで東南アジアの各国からの要望にこたえまして、それぞれの国の観光宣伝を行うという仕組みを含んだ貿易、投資全般の促進センターが行われておりまして、五十二年度の予算では日本はこれに対しまして二億四千二百万円程度の投資を行っておるのでございます。  いままでの実情といたしましては、このような状況になっております。
  24. 立木洋

    ○立木洋君 いままでの状態はわかったわけですが、この今度の第三条の目的では、WTOが「観光の分野において中心的な役割を果たす」というふうなことになり、日本政府がこれに加盟した場合、今後、どういうふうないわゆる観光の問題に関する援助の方針といいますか、これをいままで要請があった枠内においてやるのか、さらには今後それを積極的に進めていくというふうな方針を考えておいでになるのかどうなのか。WTOの活用の問題等々もあわせて、今後の対策としてはどう考えておられるのか。
  25. 杉浦喬也

    説明員杉浦喬也君) WTO加盟をいたした場合におきまして、日本観光の面におきましてはかなり期待をされておる国でもございますので、いろいろな面で日本活動、活躍が期待をされ、また、そのような期待にこたえて積極的な活動をしなければいかぬというふうに考えております。  何といいましても、このWTOの設立の当初の発端になりました開発途上国の技術援助というような問題が非常に多く議論になったわけでございますし、また、そのような体制としましては国連の開発計画との協力体制もできておりますので、まず、この国連開発計画の実施機関としてのWTO、この役割りが非常に大きいと思います。その実施や具体的な問題はこれからでございますが、そうした国連の開発計画の実施機関として開発途上国に大いに技術協力を行うということにつきまして、日本も大いに発言をするということになり、あるいはまた日本に依頼をされるということになろうかと思います。  その他、各国観光統計資料なり、政策資料なり、調査研究というようなものも活動が活発になろうかと思いますが、それらを含めまして、日本がそれらに十分おこたえできるように積極的な活動をしてまいりたいと思っております。
  26. 立木洋

    ○立木洋君 国連開発計画の実施機関として行う技術協力等々は非常に重要になり、適切な人材等も問題になってくると思うのですけれども大臣、今度のこのWTO事務局等には日本側としても人材を派遣するだとかいうふうなお考えはおありなんですか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) いまのところは出しておりませんが、加盟した上は、有力な人材をお願いして派遣したい希望でございます。
  28. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一つ開発途上国の要望がこの問題については大変強い。特に日本に対しても幾つかいままでもそういう技術協力等の要望も出されてきておるというお話なんですが、これを見てみますと、一九七八年の総予算が約二百六十一万ドル。お聞きしますと、あそこの事務局におられる方々が大体九十二名が定員だとかというふうな話なんですが、そうすると二百六十一万ドルといえば人件費で約半分なくなってしまう、あと大体一般事務費でほとんどなくなってしまうのじゃないか。ここに述べられてあるのを見ますと「機関の事務上の任務及び一般事業計画に充てる機関の予算」ということにこれがなるわけですね、総予算が。二百六十一万ドルというふうなことで実際に開発途上国の要望にこたえられるような状態になるのかどうなのか、そのような点について、今後の見通し等もあわせて、少しお話を聞いておきたいのですがね。
  29. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) ただいま御指摘がございました予算額は、このWTO自体を維持していくための行政経費でございます。若干の事業経費もございますけれども、それは従来その前身である民間機関であった同盟が行っていたような資料収集であるとか編さんであるとか、そういった事業に向けられるものでございまして、後進国援助、技術援助といったような今回の機関が発足と同時に新しく引き受けましたそうした事業は、国連の開発計画から予算の配賦を受けて実施されていくものでございます。UNDPの予算は年間約六億ドルございますので、その一部を配賦を受けて、その実施にこの機関が当たっていくということでございます。
  30. 立木洋

    ○立木洋君 そういう点では問題ないというお話だと思うんですけれども、この外務省の説明で「機関が特定の加盟国のために行う観光開発援助の如き事業に関しては、信託基金という制度が設けられている。このための財源は構成費の分担金によらず、自発的拠出金によって賄われることとなっている。」というふうな記載もあるわけですが、こういう自発的拠出金等については日本政府としてはどういうふうに考えておられるのか、どういう対応をされるのか、その点もちょっとお伺いしておきたいと思います。
  31. 杉浦喬也

    説明員杉浦喬也君) この憲章の中に、そのような信託基金の制度が盛られておりまして、御指摘のように、毎年の機関の予算に計上されていないような活動、たとえば特定の加盟国あるいは特定の加盟国の集団が利益を受けるようなある開発計画というようなものをここで行うという場合に、自発的な拠出金を財源とするために信託基金というのを設ける制度がございますことは確かでございます。  ただ、現在のところ、まだこれが具体的に基金として設置をされておりません。そこで、WTOにわが国が加盟をいたしました後に、信託基金にお金を出すかどうか、その辺の問題は、信託基金はまだ現在運用されておりませんけれども、具体的な運用の今後のチャンスにどう対応したらいいか、その時点で検討してまいりたいと思っております。
  32. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、一番最初の話に戻るわけですけれども、これが相互理解を深め、国際協力を進めていく上で非常に大きな意味を持ち得るというふうなお話だったわけですけれども、特に開発途上国との関係ですね、経済協力にしろ、今後の国際的な協力関係にしろ。いまの情勢から言えば、国連においても非同盟諸国と言われる開発途上国の要望というのもいろいろ出されておりますし、南北問題として大きな問題になっており、UNCTADでも経済格差を取り除くというふうな点が大きな問題になっているわけですけれども、この観光問題に関しても開発途上国からの要望ということが強く出されて、こういうふうに進んできた。そういう点で、開発途上国について、日本政府としては、この国際協力相互理解を深めていくという点について基本的な考え方をこの点でお伺いしておきたいのです。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) 先ほどはこの国際機関の予算が少ないじゃないかという話がありましたが、正直言って各種国際機関や基金が非常に困っておりまして、各国に呼びかけているところでありまして、日本にももっと出せと、こう言われているところであります。日本の方も五十三年度予算では四億三千九百万出すことにしておりますが、各機関ともまだまだ資金が不足であることはおっしゃるとおりでございます。  次に、開発途上国に対する援助でございますが、これは観光施設と言いましても、実際生活とつながってくる施設、たとえば道路であるとか空港の整備であるとか、あるいは通信網だとか、いろいろつながってまいりますので、まず、開発途上国観光に対する援助については、運輸省とも協力をして、何を求めておるか、何が実情であるか、その国の観光資源というものもあわせて調査をし、これに対する的確な計画を両方でつくって、それぞれ援助をしていきたいと考えております。
  34. 立木洋

    ○立木洋君 締約国が十二月三十一日現在九十八カ国というふうになっておりますが、この中には朝鮮民主主義人民共和国が入っていないわけですけれども、この朝鮮民主主義人民共和国というのは加盟の意思があるのかどうなのか、あるいは加盟の意思があるけれども入れなかったのかどうなのか。そういう問題が提起されてきた場合には、日本政府としてはどういう態度をとられるのか、その点について。
  35. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) 現在までのところ、中国及び北朝鮮は未加盟でございますが、加盟についての意向は私どもといたしましては承知いたしておりません。もし加盟というような意思表示がございまして、これがこの機関の議題として取り上げられる際には、わが国といたしましては、これに対して異議を申し述べる意向は毛頭ございません。
  36. 立木洋

    ○立木洋君 これで終わりですけれども、先ほど言いましたように、これが非常に国際相互理解国際協力、特に「目的」の部分でも、各種差別の撤廃及び基本的人権の尊重、遵守を観光振興と結びつけて「目的」の点でもうたっているわけですから、そういう点十分に配慮しながらやっていくことが必要だと思うのですね。  いま時間がないからもう申しませんけれども、いろいろと海外に出ていった場合に、いろいろなトラブルが起こるだとか、好ましくない情報等も新聞紙上にときどき出たりしますし、また、先ほど来問題になっております日本に来た場合ですね、非常によくない感情を持って帰る旅行者もいるというふうなこともときどき新聞紙上でも出されているわけですから、この点、相互理解を深め国際協力発展させ、そういう差別だとか基本的な人権の尊重というふうな目的を掲げながらも、実際には、この観光を正しく発展させないと、かえって逆効果になる問題点もやはりあるんではないかと思うのですね。そういう点十分に御検討いただいて、正しい発展ができるようにしていただきたいということを要望しておきたいと思います。
  37. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    牛後一時八分散会