運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1977-12-20 第84回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十二月二十日(火曜日)    午前十時十五分開会     —————————————  委員氏名     委員長         安孫子藤吉君     理 事         稲嶺 一郎君     理 事         亀井 久興君     理 事         原 文兵衛君     理 事         戸叶  武君                 上原 正吉君                 大鷹 淑子君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 阿具根 登君                 小野  明君                 福間 知之君                 渋谷 邦彦君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 江田 五月君                 秦   豊君     —————————————    委員異動  十二月十九日     辞任         補欠選任      江田 五月君     田  英夫君      秦   豊君     河野 謙三君  十二月二十日     辞任         補欠選任      阿具根 登君     川村 清一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 稲嶺 一郎君                 原 文兵衛君                 戸叶  武君                 渋谷 邦彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 町村 金五君                 三善 信二君                 小野  明君                 川村 清一君                 福間 知之君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 河野 謙三君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        農 林 大 臣  中川 一郎君    政府委員        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省条約局長  大森 誠一君        水産庁長官    岡安  誠君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        外務省アジア局        次長       枝村 純郎君     —————————————   本日の会議に付した案件理事辞任及び補欠選任の件 ○調査承認要求に関する件 ○北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定有効期間延長に関する議  定書締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国地先沖合における千九百七十七年の漁  業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共  和国連邦政府との間の協定有効期間延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告をいたします。  昨十二月十九日、江田五月君及び秦豊君が委員辞任され、その補欠として田英夫君及び河野謙三君が選任されました。     —————————————
  3. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 亀井久興君から、文書をもって、都合により理事辞任したい旨の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  5. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事渋谷邦彦君を指名いたします。     —————————————
  7. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、調査承認要求に関する件についてお諮りをいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  10. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 次に、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件  及び、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件  両件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。園田外務大臣
  11. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま議題となりました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の二件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この二件は、それぞれ別個の案件ではありますが、経緯上も内容的にも互いに密接な関係にありますので、一括して御説明をいたします。  政府は、本年五月二十七日にモスクワで署名された北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び本年八月四日に東京で署名された日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間がともに本年十二月三十一日に満了することにかんがみ、ソビエト社会主義共和国連邦政府との間にこの二つ協定有効期間延長に関するそれぞれの議定書締結するため、本年九月末以来モスクワにおいて交渉を行いました結果、本年十二月十六日にモスクワにおいて、わが方重光駐ソ大使先方ブイストロフ漁業次官との間でこの二つ議定書の署名を行った次第であります。  この二つ議定書は、いずれも二カ条から成っており、それぞれ右に述べました協定有効期間を明年十二月三十一日まで延長すること、両政府代表者は明後年以降の問題に関して明年十一月十五日までに会合し協議すること等を定めております。  この二つ議定書締結により、一方では、わが国漁船ソビエト社会主義共和国連邦沖合い水域において引き続き明年末まで操業することが確保されることとなり、他方では、わが国は、ソビエト社会主義共和国連邦漁船が明年においてもわが国漁業水域においてわが国の法令に従い操業することを認めることとなります。なお、漁獲割り当て等実体的事項につきましては、ソビエト社会主義共和国連邦沖合い水域におけるわが方の漁獲についての沿岸国としての先方立場にはきわめて厳しいものがあり、政府先方と鋭意折衝を行いましたが、明年のわが方漁獲割り当て最として八十五万トンが定められました。他方ソビエト社会主義共和国連邦に対する明年の漁獲割り当て最としては、六十五万トンを定めた次第であります。  この二つ議定書締結は、互いに相まって、両国の二百海里水域における漁業に関する両国の間の円滑な秩序を確保するものであると考えております。  よって、ここに、これらの議定書締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  12. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 以上で説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 戸叶武

    ○戸叶武君 ただいまの外務大臣の御説明によってこの経緯を了解することができるのでありますが、二百海里時代に入ってからのソ連日本立場はおのおのそれぞれの立場がありますが、ソ連といたしましては、大西洋地域における各国との調整になかなか骨が折れているようであります。日本といたしましては、いままでの太平洋地域における日ソ間の漁業交渉というものは、いままでもなかなか大変でしたが、二百海里時代を迎えるに当たって、ソ連大西洋沿岸における締めつけによって漁獲量においても後退しなければならないので、太平洋方面にその活路を見出そうとしている面もあり、わが国はいままでにおいても譲歩譲歩を重ねてきて、沿岸漁民が生活のために非常に苦境に立つ現実を政府は見ていられないという立場もあって、この問題の解決というのは非常に今後も骨が折れることだと思います。  ここまではこぎつけたが、将来、これがどうなっていくか、その見通しの暗さもありますので、沿岸における北洋漁業に従事する漁民、その他の人たちが非常に心痛を重ねておりますけれども、それに対して、政府は、今後の見通しをどういうふうに見ておりますか。
  14. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のように、日本を取り巻く漁業情勢は厳しいものがございます。特に二百海里時代を迎えまして、世界各国余剰原則、すなわち、その国において必要な魚をとって余った分を外国に与えようということでございますから、海外に依存をしておりましたわが国はすべての国において厳しい情勢となるわけでございます。  特に、ソビエトが、御指摘のありましたように、ヨーロッパ方面でとっておりました漁獲量が締め出される。ソビエトも、御承知のように、外国からとってくる方が多い国でございましたので、締め出されるという一面がありますから、したがって北洋における漁業についても自分の国でたくさんとりたいということになってまいりまして、今回も、等量主義ということを非常に厳しく主張したわけでございます。立場は同じであるんだから、同じだけとることはいいがという主張でございます。これに対して、わが方は、何としても過去の実績は確保したいと実績論でもって交渉に臨んだわけでございます。かなり厳しくはありましたが、原則的な向こう等量主義とこちらの実績主義というものの妥協の結果として、八十五万トン対六十五万トンと二十万トンの開きで等量主義を破ることができたわけでございます。  今後、この傾向はますます強くなることは察せられるのでございますけれども、何といってもわが国漁業資源に依存する国民的立場からいっても、あるいは漁民対策からいっても、今後、厳しくはありますけれども、実績主義というものを主張して、それぞれの国で事情は違いますけれども、それぞれ努力をして漁民に大きな不安を与えないように最善努力を尽くしていきたい、これが基本的考え方でございます。
  15. 戸叶武

    ○戸叶武君 さきの農林大臣以来、農林省の方々もわが国食糧資源としての漁業漁獲量に対してはきわめて真剣な態度ソ連側とも折衝してきた結果がこのような状態に陥ってまいったのでありまして、中川農林大臣北海道出身であるし、それにかなり厳しい方ですから、アメリカとの関係においては少し譲歩したという記録もあるようですけれども、これはアメリカとの農作物その他肉の問題と違って、日本の死活問題にもなる問題でありますので、これと取り組むためには、前の三陸出身農林大臣以上に、北海道漁民その他を背景として、労働者の国であるソ連日本の海洋における労働者死活権をこのように締めつけてはかなわないという形において、今後も前の農林大臣に負けないような厳しさで交渉に当たるものと思いますが、あんたは大体いつごろモスクワの方には行く予定でおりますか。
  16. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 今回も非常に厳しくございましたので、できるならば直接訪ソしてと思ったのでございますが、御承知のように、取り巻く対米折衝等がございまして、その時間がなく、ここにおります岡安長官に全権を委任し、親書も託して、民間の顧問団とも協力をして、最善努力をして今日の結果を得た次第でございます。  明年は、御承知のように、協力協定もございますし、特にサケ・マス交渉等も厳しい状況にございますので、いつ訪ソということは決めておりませんけれども、必要に応じてはそれぐらいの気持ちは持って対処したい。この交渉がどういう時期にどうなりますか、いま内々詰めておるところでございますので、交渉の時期等決まりませんと、いつというわけにはまいりませんが、ぜひとも直接行って、この基本協定に対処したい、こう思っておるところでございます。
  17. 戸叶武

    ○戸叶武君 エネルギーの問題と食糧の問題は、アメリカではすでに戦略物資として重視しており、特にソ連日本とに対してはいろいろな面において厳しい態度が出ているように思われるのでありまして、日本アメリカとの折衝、それとソ連との折衝の中において非常な矛盾が露呈するようなことになると、その虚をつかれる危険性もありますので、日本自主外交の本領というものを具体的に展開するのにはこの難局においてこそ初めて、日本はそういう考えで、そういう立場で物を言っているのかというのがわかるような明快な一つ態度が必要だと思うのであります。  その点においては、農林大臣はなかなか腹のある人で抜かりがないと思いますが、どうぞ、日本外交には自主性がないというので評判の悪い面もありますから、その悪い面をとにかくなくして、ソ連に対してもあるいはアメリカに対しても言うべきことは言って、また調整すべきことは調整していくという毅然とした態度を堅持していただかれんことをお願いいたします。  そこで、外務大臣の方にお尋ねいたしますが、漁業の問題は、いままで農林大臣日本の重要な食糧問題に関連があるので、この問題と真っ向に取っ組んでソ連と渡り合ったので、あなたが一月の八日あたりソ連を訪れるということですが、この問題に対しては農林省の方に大体お任せして、そして大所高所から日ソ外交調整のために赴かれるのかどうか、そのねらいをお聞きしたいと思います。
  18. 園田直

    国務大臣園田直君) 今度、私が参りますときには、ほかに重要な問題も抱えておるわけでありますが、いまの漁業問題についても、所管は農林大臣でありますけれども、外交折衝責任は私にあるわけでありますから、農林大臣とよく協議をし、そして方針を持って、私のモスコーにおける会談の中にこの漁業問題も持ちたいと考えております。     —————————————
  19. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、阿具根登君が委員辞任され、その補欠として川村清一君が選任されました。     —————————————
  20. 戸叶武

    ○戸叶武君 まあ園田外務大臣農林大臣もなかなかの腹の人物だと言いますから、腹を立てないでねっちりこの交渉には真っ向から取り組むことと思いますが、特に外務大臣ソ連に一月早々行かれるのは、なかなか日本外務省には秀才が多いが、やっぱり責任をかぶるという点では能吏ですからなかなか土性っ骨が余りないようですけれども、やはり今度土性っ骨のある園田さんが行かれるからには、先制攻撃というんじゃなく、逃げを打たないで、先に胸襟を開いて物を申して、旨いづらいことだけれども、ソ連も誤解している面もあるから、話せばわからないはずはないだろうから話していこうという態度で、前向きの姿勢と思いますが、とにかくソ連先入観としては、中国もそういう先入観がありますが、お互いに中ソ関係はこじれにこじれてしまって、双方とも不信感がつのって疑心暗鬼がそこにはあるので、これを一朝にして解明させるということはなかなか困難と思いますけれども、中国ソ連それぞれの思惑はあるにしても、日本はこういう立場で、問題その他に対してもこういう自主的見解を持っているんだ、ソ連気持ち中国気持ち、それぞれわからないことはないが、日本日本としての立場を堅持していくつもりだという点を、どういうふうな表現で向こうへ伝達しようというお構えでしょうか。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の今度の訪ソは、ソ連側でも発表しておりますが、八日に出発をいたしまして、九、十、十一と、数回向こうの要人とお会いして会談をしたい考えでおります。  その第一の私の用件は、平和条約締結のための継続交渉及び日ソ外相定期協議が行われるわけであります。平和条約締結交渉では、日ソ間の戦後の未解決の問題である北方四島、これを含めて平和条約交渉再開を強く向こうに要望するつもりでございます。定期協議では、日ソ間の諸問題及び、国際情勢についての意見交換が中心となるわけでありますが、その国際情勢の諸問題の一つの大きな問題は中ソの問題であります。私はむしろ進んで中国ソ連関係を詳細にお伺いをしたい。  なお、わが日本が近く進めるでありましょう日中友好条約締結交渉については、日本中国の問題を他の国に相談をする必要はないと私は考えておりますけれども、向こうから質問があれば、的確に私の考え方を申し述べてきたい、このように考えております。
  22. 戸叶武

    ○戸叶武君 その見識と勇気には、一応、私は感心する次第です。いままでへっぴり腰で、言うべきことを言わないで、おさすりさん的態度でやっていたから、ソ連もさっぱり日本が何を考えているのか、押せば腰がふらふらとよろめくんじゃないかというので、やっぱりそういうことにはこちらに責任がむしろあったと思うのであります。  日本の国が平和憲法にのっとって、そうして非核三原則を堅持し、拡散防止条約も批准するという積極的な平和共存外交基本的姿勢を示しているのだから、それに対していろんな疑心暗鬼を持つのは常でありますが、自民党あたりでも平和憲法改正なんというのを、言っているような言わないような、だんだんぼけてきて、そしてまあ平和共存の方向へ行こうというところまでは来て、このごろは細かくなかなかわけのわからないと思うような長老にも手を回して、そして党内合意も得ているようですから、そういう点において外交基本的姿勢がほぼできかかっている、できたという点を詳細に説明するんでありましょうし、民主主義的な国家においては党内にいろいろな意見自民党でも、わが党にでも少しあるぐらいですが、ですけど、国民的合意という点を確信を持って政府がいられるという、その上に立って外交をやるという姿勢を持たないと、日本の国はソビエトロシアのようなプロレタリア独裁による一つ国家体制と違って、国民のコンセンサスを得なければ条約締結できないんだという、その国柄を明快に示して、四島返還の問題むいままでの経緯によって国民的な合意を得てきたんだ。共産党の中にもときどきいろいろな意見もわが党と同様、以上にあるようですが、やっぱり四島返還に関してはほぼ国民的合意に近いものをかち得たという確信政府は持っていられるんだと思いますが、園田さんは勇気を持ってその点をどういうふうに説明するつもりですか。
  23. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御意見のとおりに、主張すべき点は的確に主張したいと考えておりますが、ソ連に行きますについてはややもするといろいろ問題があるわけでありまして、日ソの対決ということをよく言う方があるわけでありますが、私は、そうではなくて、ソ連日本の間には、この領土の問題を除けば、共通する利害はたくさんあるわけでありまして、ソ連にはソ連立場があり、日本には日本立場があるわけであります。その相互の理解をすることが第一でありますから、もろもろの問題についてもソ連立場理解し、こちらの立場理解してもらいつつ、主張すべき点ははっきり主張して帰りたい、こう考えております。
  24. 戸叶武

    ○戸叶武君 外務大臣は歯に衣を着せずに腹を割って話し合う、話し合えばわからないことはないという九州男児的な信念を持って押されるのでしょうが、ソ連というのも、中国も同様ですが、こじれるとなかなかがんこな面がありますから、そこいらを一気かせいに問題が片づけられるという見通しですか、それとも意気込みがそうだという話ですか、そこいらの測定はどんな考えを持っておられますか。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が今度訪ソするに際して、参りましてから物事を解決する決意は持っておりますけれども、何か事を解決して、日本に帰るときにおみやげを持って帰るという気持ちを持っておれば、交渉事は妥結しない。むしろ妥協をしたり言いたいことも言えないことになります。外交というのは私一人のものではございません。外務大臣というものの任期は瞬間であります。しかし、それがずっと続いておって、主張するものは主張する、場合によってはお互い意見の火花を散らす、その結果まとまるときにはまとまる、こういうことでありますから、私は決意は非常な決意を持ってまいりますけれども、何か持って帰って皆様方からおほめをいただこうという考え方が私にあるならば今度の訪ソは成功しない。しかられることを覚悟で私は言いたいことを言い、主張主張し、いままで不分明になっているところは分明にしていきたい、このように考えております。
  26. 戸叶武

    ○戸叶武君 私は、日本人ソ連に対しては特殊な先入観を持って、いままで言わなけりゃならないことも言わない。また、ソ連だけでなく、中国に対してもアメリカに対しても、向こうの顔色を見ちゃ物を言うくせがどうもあるんだが、今度、園田外務大臣が行くと、あれおかしな日本人が来たというふうに、日本人にもやはり本当のことを言うやつがいるんだわいという形で、私はかえって耳を傾けてくれる場合もあると思うのです。  私たちの浅い経験でありますが、ソ連もずいぶん変わってきて、国を国民的基盤の上に立てなけりゃならないという、われわれから見るとちょっと理解に苦しむような点もあるが、憲法改正も一歩前進してきたのは事実だと思います。日本の国は、ソ連以上に、人民と結びついて主権者人民であり、国民的な合意を得られないでは外交一つも前進できないんだという一つ国家性格を持っておりますので、その点を十分理解してもらえれば、国の国家性格は異なるけれども、真実はやはり相手の胸を打つのではないかと思うのであります。  かつて、私も、クレムリンでミコヤンとテーブルをたたいて北方領土の問題では議論をしましたが、スースロフ氏が間に立って調整をしましたけれども、思い切ったことを、真実を語ることが、これが日本人ソ連に対する一つの敬意だという形で私たちは語ったので、日本のためにもソ連のためにもうそを言っているのでは前進がない、こういう信念で園田さんが邁進するならば、その過程においては苦干のトラブルがあっても、私はこれは本物の日本人が来たんだわいというので再認識してくれるのでないかと思うのです。どうぞ、そういう意味において、事の成果よりも、その意気込みにおいてソ連人たちの胸を打つ、胸襟を開く、こういう態度で私は邁進してもらいたいと思うのであります。  この平和条約において、基本的に、いままで私たち日本の保守的な国際外交関係の学者なりそういう技術屋と異なっていた点は、過去の平和条約——講和条約とも言ったが、そういう既存の概念に支配されるのではなく、次の平和を保障すべき条件を具備した上において平和条約締結すべきであるという信念のもとに、いままでわれわれの平和外交というものは推し進めてきたんであり、ソ連においても、レーニンがあれほど敗戦の中から革命を断行したときにおいても、ソビエトロシアの寸土だに譲らず、他国の領土は寸土だに取らないという気概でレーニン、リトヴィノフの外交が展開されたのが事実であるし、戦時中における軍事謀略協定としてのヤルタ協定ソ連アメリカ、イギリスに一杯ひっかかったような形の面があるのには同情いたしますけれども、アメリカでもイギリスでもいまではほおかぶりしていますが、戦時中の軍事謀略協定としてのヤルタ協定は、次の平和条約締結するに当たっては、これらの国々が戦時中の軍事謀略協定というものは自然に解消さるべきものであるという認識のもとにおいて、世界に率先してヤルタ協定解消の宣言を、ソ連なりアメリカなりイギリスなりが、余りしらばくれていないで、みずからの良識においてそれを断行するぐらいの勇気がなければ、本当の意味の平和外交というものは前進しないかと思っております。  政府は国の当事者で、やはり若干歯に衣を着せなけりゃ物を言うと当たりさわりができるでしょうが、われわれは在野の政治家ですが、民族の悲願というものはイデオロギーや何かにこだわらずに、過去よりも将来に向かって希望を与えるような烈々たる主張というものが出なければ私は外交の前進はないと思うので、英米諸国においても、アトランチック・チャーターにおいて、戦後において勝った国が敗れた国から領土を取るようなことはしないということを誓っておったのですから、その面から見ても、ソ連がレーニンに劣るような、またアメリカ、イギリスがアトランチック・チャーターの宣言にもとるような態度をいつまでも保っているということは世界から不信感を非常に招くんじゃないかと思いますので、どうぞ、そういう意味において、園田さん、日本人ここにありという形でひとつ私は主張をしてもらいたいんです。  私たちは、外交を技術として小刻みに質問をするのじゃない、民族の悲願というものを政府にぶつけて、政府の中に国民的な気魄というものを横溢させて他の国に当たるだけのものを生み出していかなければ、外交などというものは実質的に前進しない。われわれが政府に隷属する外交論争じゃない、民族の悲願を政府を通じて到達さしてもらいたいという悲願を込めて、あなたに質問とも御意見ともつかないわれわれの悲憤というものをぶっつけるんでありますが、外務大臣はどのように受けとめてくれるでしょうか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御意見を拝聴しましたとおりでございまして、第二次大戦の戦後処理について方針を示しましたポツダム宣言の基礎になっておる大西洋憲章、カイロ宣言等も領土不拡大の原則は明記されております。レーニンの外交の基本の方針でもあるし、わが国の固有の領土である北方四局を占拠される根拠は全くないものと考えております。  いまの仰せをよく守りつつ、政府としては、今後とも、その返還のために努力してまいる所存でございます。
  28. 戸叶武

    ○戸叶武君 大体、自民党支持、改憲論者との盟友のような形において、毎日、何か二・二六の人たちの歌か何かラッパにつけて北方領土返還という形で、好戦的な態度ソ連敵視の街頭宣伝がなされておるが、これは政府自民党にはかかわり合いはないのでしょうけれども、ああいう無用な摩擦でなくて、政府自身が本当に日本の国は戦争を欲しないんだと、日本の憲法は戦争はやれないんだということをのみ込ませて、中国あたりでも日本は武器を持ってもいいんじゃないかなんと言うと、すぐそれに飛びつくような卑しい姿勢を捨てて、あくまでも平和共存の平和路線をわれわれは推進して、世界で戦争や暴力革命を夢想するやつは少し頭が変なやつ以外にないんだと、日本は最大の迷惑もかけ、また被害国であるので、再び戦争に動くようなことはしないんだと言って、今後、みずからも軍備を強化するようなことがなく、また、ソ連中国に対してでも、アメリカに対してでも、発展途上国と呼吸を合わせて全世界の世論として平和共存への路線というものをつくり上げなけりゃならない任務がありますので、それには、他に説くよりも自分で範を示すことによってのみ各国の世論というものをわれわれと同じような方向に導くことができるんだと思います。  ソ連における日本外務大臣の一挙手一投足は世界の注目するところと思いますが、どうぞ、そういう問題にも触れることと思いますが、核軍備一切をなくさせる方向へ、並びに各国に対して武器を売り飛ばすようなことはしないように、こういうことをやはりこういう機会にあるところまで触れてもらった方がよいのじゃないかと思います。ソ連アメリカがよその国にだけ規制を厳しくして、みずからは軍縮に対し、デタントに対して積極的姿勢を示さないというのでは、やはり世界がソ連なりアメリカなりの言うことに対して疑心暗鬼を生むのは当然だと思いますので、その辺はどういうぐあいに触れていくつもりでありますか。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) いま仰せのとおりでありまして、非常な決意を持って参りますけれども、それは四島返還、国交断絶などという好戦的な、対決的なことでこれは解決できると思っておりません。第一に、お互いの相互理解——わが方はソ連立場をよく理解し、ソ連の方にもわが方を理解してもらう。そしてともに平和を願う隣国、そして領土問題さえなければソ連の繁栄、平和に協力、参加のできる日本であるということを理解願うことがその基本であると考えております。したがいまして、日ソばかりでなく、ひいては世界の平和に両国が貢献するということは、これまた話の中の一つの方針でなければならぬ、御意見のとおりに考えております。
  30. 戸叶武

    ○戸叶武君 そこで、ソ連としては、しつこいほど中国日本との結びつきというものに対していろいろな質問が出てくると思いますが、外務大臣も御承知のように、中国が統一国家をつくって辺境諸民族を刺激したときにおいては、モスクワ公国をモンゴルが長い間占領し、あるいはトルコ民族のタタールがウクライナを占領し、キエフを席巻したというような苦い過去の悪夢がありますので、われわれが想像する以上に、大陸の地続きでございまして、ソ連中国の動向というものに対しては非常に神経質な面があると思うのであります。日中平和友好条約締結するならば、おのずから日本がその間のクッションとなって、もちろん他国のことには干渉できないし、それぞれの事情があることでしょうが、私は平和共存への路線は一歩前進するのではないかというふうに、そういうふうに考えております。  しかし、いまとんがりにとんがった感情が露呈している限りにおいては、一朝一夕で中ソ関係というものを好転させることは困難と思いますが、やはりソ連圏の政治的リーダーとしてのチトーさんに、彼のパルチザン時代の古戦場でお目にかかったときに、ずばりと質問したら、やはり中ソ論争の根底は領土問題だと、彼だけが割り切って話をしてくれたことがあります。やはり領土問題というものは、ソ連ではいろいろな、日本と違って、近隣諸国とのトラブルがありますので、日本との関係調整せられれば、それがいろんな火を吐くような場合もある。日本人考えるよりは深刻にこの領土問題というものを私は慎重過ぎるほど慎重な態度で善処しなきゃならない立場もあるんだと思います。  われわれの主張と同時に、相手の立場をもあるところまでは理解して、言うべきことは言うが、どういう形においてしからば実質的な成果が上げられるかという点に対しては、当たって砕けろではなく、当たってまとめていこうという気力で対処するんですが、外務大臣としては、そういう問題に対してはどういうふうに——領土問題に力んだ余り、主張すべきものは主張するけれども、領土問題の中にのみ埋没して日ソ関係が前進できなかったということも、これは外交としては必ずしも成果が上がった外交とは言えないんですが、その辺のことはどういうふうに受けとめておいでですか。
  31. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、今度参りましたら、率直にソ連の方にお尋ねしたいと思うことは、ソ連中国はもともと兄弟の国でありまして、ある時期には中ソ同盟条約を結んでわが日本を敵国とされた時代もあるわけでありますが、そのソ連中国お互いに相争って、そして一方は日本に対して警告を発し、一方は、また日本に対していろいろ意見を言うということは全く遺憾でありまして、真のアジアの平和は中ソの緊張緩和から出てくると考えております。  そこで、中ソの関係について内政干渉にわたるような言葉は私は申し上げませんけれども、少なくとも日本ソ連と結んで中国を敵に回したり、中国条約締結してソ連を敵に回したりする考えは毛頭ないばかりでなく、むしろ進んで日本立場が与えられるならば、中ソの緊張緩和について微力を尽くしたいという誠意を披瀝してきたいと考えておるわけでございます。  なお、また、日本ソ連の間には、領土問題以外は、いろいろ経済的にあるいはその他の問題であるわけでありますから、この点は、向こうの方からお話があれば、喜んでこれに参加をするという姿勢を持って出てまいりたいと考えております。
  32. 戸叶武

    ○戸叶武君 自民党の中のいろいろな会合で、また、現地に行きましても、ここまで日中関係が煮詰まってきているのにもかかわらず、ソ連中国の間には中ソ友好同盟条約の中の軍事条項、軍事同盟的なものが締結されておって、それが廃棄されてないじゃないかということをずいぶん無遠慮に質問する方がありますが、形式的にはそうであっても、今日の生きた政治の流れから言って中ソ友好同盟条約の軍事条項がいま中国ソ連によって発効されるということはあり得ないという常識的な観点から見られるのにもかかわらず、そういうことにまで触れていくということは無神経というか、歴史の生きた流れを見ていない一つ外交論議としか受け取れないのであります。  あなたも、党内におけるいろいろな議論というものに対しては、自由民主党というので自由に勝手なことを言える幅の広い党としての党の性格から言って、それに干渉することは一々できないでしょうが、要らざることじゃないか。非常なデリケートな段階において、日本中国、あるいはアメリカ中国との間においても、理屈からいけば合わないようなものがずいぶん合っていくところに微妙な歴史の流れにおける不可思議な生きた流れというものがあるということを把握できないで、近代国際政治を論ずることはちょっとこれは危険な面もあるんじゃないかと思うのであります。いままでの法理論者のように、形式的な条約の条文の末端論争のみに終始しておってはダイナミックに歴史を創造する外交の躍動というのはできないんじゃないかと思いますが、まさか園田さんはそんなことはないと思いますが、そういう問題に対しても、党内に対してはどういうふうにお答えになってきておるんですか、いままで。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) 私は、党内に対してはまだ説明をする機会がございませんので、近く機会を求めて私の方針をただされることだと考えております。  中ソ同盟条約というのは、これをどうされるのか、内政干渉はいたしませんが、これに対するソ連気持ちは聞いてみたいと思っております。中国の方では、正式の通知ではありませんけれども、行かれた議員の方々をそれぞれ通じて、日米安保条約は認める、それから中ソ同盟条約は有名無実であって、ごく最近の情報では二年以内にこれを破棄するというような意向が出されておるよでございますが、そういうことで、これによって一つ決意、進める場合の参考にはなりますけれども、これによってどうこうというべきものではない、こう考えております。
  34. 戸叶武

    ○戸叶武君 日米安保条約が解消されたならば、それと同時に、領土を返すというようなことを言わないとも限らないし、また、そういうことをあるいは言わないかもしれませんが、とにかく一定の既存概念で律せられないような生の外交の動きというものはやはり動くものでありまして、既存の条約や既存の取り決めがあろうと、現実的な要請に基づいての具体的な問題、たとえばコンブ漁の問題でも漁業の問題でもシベリア開発の問題でも、そういう問題の具体的な解決の積み上げの中に外交はあるところまで前進するんだと思いますが、そういう問題に対しては、外務大臣は、どういうふうに準備しておりますか。
  35. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連の方は、領土に対する見解も、戦後からいままでに何回も表明された方針は変わっておるわけであります。これは委員各位は御承知のとおりであります。したがいまして、今度行ったときに、これならどうか、あれならどうかという具体的なことに対する私の考え方は申し上げるわけにはまいりませんけれども、他の問題の積み上げは、これと交換条件にはなりませんけれども、やはり相互理解という点から影響はあると考えておるわけでございます。
  36. 戸叶武

    ○戸叶武君 ギブ・アンド・テークの商売人的な取引ではなくて、相互理解というものに重点を置いて、日ソ関係の基本的な調整を行うという園田外務大臣の構えは結構だと思います。  しかし、問題は常に幾つかの問題が重なり合って生まれておるのでありますから、一つ一つの問題に対してきわめてデリカシーな態度で、しかも毅然とした態度でイエス、ノーというものを常に明らかにしていかなければ外交は前進しないのだと思います。政治においても実証主義的な政治学がないことが、へっぽこ政治評論家によって日本の政治というものは道化的な形において取り扱われておりますが、社会科学は観念的なイデオロギーの論争でなくて、具体的な事実の上に立って、しかもそれが国民生活と密接なつながりのある面から一つ一つ問題は具体的に解決されていかなきゃならないものだと思います。  今度は基本的な問題の意見の交換に重点を置くのでしょうが、具体的にいま園田さんのバゲージには、この問題だけはひとつ簡単にできるんだから片づけてやらなけりゃならない、これなら片づくんだろうというものは持っていかれるんですか。今度は何もかも空にして、そして体当たりでいくつもりなんですか。
  37. 園田直

    国務大臣園田直君) 二国間の問題ではただいま事務的に詰めておりますが、いまの御発言の趣旨を十分取り入れて準備をしていくつもりでございます。
  38. 戸叶武

    ○戸叶武君 福田さんは、ことしの一月元旦の新聞には、ことしは経済の年だと断言されましたが、あのときにも私は福田さんに会って、一国の財政・金融・税制をつかさどっていた大蔵官僚だけのお手盛りによるところの経済の年でなくて、グローバルな時代において世界との関連において特に外交というものを、経済とともに、重視しなければ、日本はこの激動の時代に対処していけないんじゃないかということを私は進言したのでありますが、来年も、また、福田さんは経済の年だと言われるそうです。  それはそれで福田さんなりの受けとめ方で結構ですが、園田さん以外に、外務大臣は一人ですが、私は、前に、外務大臣はやっぱり三人ぐらいいないと体がもたないぞと言ったが、とにかく園田さんが正式の外務大臣であると同時に、宮澤さんとか牛場さんとか、外務大臣の左右の翼のようなものも備えられて、なかなか味のある内閣構成をいまやっておりますが、この狂乱怒濤の変革の時代、それは若き日に福田さんが受けとめた一九二九年以来の世界経済恐慌と金融恐慌の時代よりはもっと産業構造の根底まで揺すぶっていくというようなあらしがやはりいま襲うてきているんですから、このチームワークはなかなかよくできているようですが、まあ牛場さんはアメリカに行ってそれなりの一応パイプを通じたような通じないようなところまでは通じたようですが、ひとつあなたはソ連の方に牛場さんよりはもう少し通じなけりゃ、園田さんという外務大臣への期待が大きいだけに、何だ園田もやはり牛場さん程度かということになってしまうと、これは大変なことになると思うんです。  ひとつその辺は、食糧の問題もあるしエネルギーの問題もあるし、それからデタントの前進の問題、軍備の問題、核兵器の問題等ありますから、出すべきものは出して、遠慮は要らないんですから、やはり機先を制するというだけの気魄で外交を——年じゅう日本外交というのは、外務省の人は頭がいいから、上品過ぎるものだから、いつでもへっぴり腰で受け身で構えておりますが、今度はひとつ天草生まれの、怒濤の時代はおれの時代だという形で、先制攻撃といっちゃ悪いが、やはり向こう側に何とか、日本がこう言ってきたからこっちも考えなきゃならぬというぐらいな注文をつけてくるつもりはありませんか。
  39. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御発言の中の前半で非常に大事な御発言があったと承っております。それは今度の日米経済問題の折衝中、私は海外経済閣僚会議に外務大臣を必ず入れてもらいたいということを申し上げまして、これに入ったわけでありますが、これは決して外務大臣としての面目上言ったわけではなくて、少なくとも国内経済というものは国際経済と波長の合ったものであって、外務省が政治の一翼で代弁者であるという時代は過ぎた。むしろ今日のような問題を引き起こしたのは、いままでにいろいろ海外経済、海外の動向、国際動向に応じて日本の体質を改善をしなければならなかった、それができなかったのは外務省が無力であった。むしろこれから先は、経済の問題にしろどの問題にしろ、やはり国際経済というものをにらみながら進めていかなければなりませんので、外務省の仕事がこれからは国際経済のすべてを知悉し、その中心となって、かぎの一つにならなければならぬということを考えておりますので、これはいま仰せを願ったと同様に考えております。  なお、最後に御激励をいただきまして、ありがとうございますが、余り力み過ぎて行くとひっくり返りますから、決意はかたく体はやわらかく、こういうつもりで行きたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
  40. 戸叶武

    ○戸叶武君 いま言われることは、党人としての園田さんの言うことは受けとめられない。ひっくり返っても平気だという七転び八起きの土性っ骨で、余り官僚のまねをしない方がいいのです。  その点で、今度は、最後に、中川さんの方も党人のようで、大野伴睦に育てられたなかなかの豪傑ですが、私は、あなたが農林大臣になった機会に、日本農林省農林省なんぞというやぼったい名前じゃなくて、西ドイツと同しように農業食糧省ぐらいにして、食糧問題というのがいかに重要であるかということに力点を置くように変えた方がいいんじゃないかと思うんです。それは山役人が幾ら何をやっても日本の山から余り木もとれないし、やはりこれからは海の方に相当眼を注がなければならないんですが、ドイツでエアハルトのドイツ経済の奇跡をつくり上げたときに、アデナウアーだけが、池田さんや下村治さんが言うような高度経済成長政策で有頂天になることは危ないという警戒から、彼の友人のリペックを農業食糧大臣にしたのでありますが、それは高度経済成長が第二次産業、第三次産業の所得を増大して、そうして前進させていくが、そこに国内においては農業の面が成長率も低く所得も低くてアンバランスが生まれる。このアンバランスをどういうふうに是正していくかということを考えないと、エアハルトのような調子者に任しておったのじゃ危ないという一個のアデナウアー哲学がリペック博士をしてドイツの農業基本法をつくらせたのであります。  日本の農業基本法は、農林省の役人が意気地がなくて大蔵省や何かに押しつぶされちゃって、農業を犠牲に供して、日本の重化学工業なり何なりを発展させて、加工貿易によって日本を繁栄させなければならないという形で今日の食糧問題というのをおろそかにした原因があるんです。米以外に農民が生産に従事しても、それに見合うような所得が得られないような価格政策、その貧困が今日になっているんです。  あなたたち北海道において——北海道はなかなか苦しいところでありますが、うまい米は余りとれないところであります。やはり思い切って酪農なら酪農を育てようとするのに、いまのような肉をアメリカからも豪州からもニュージーランドからも買わなければならないという羽目に追い込められて、肉だけはといっておみやげか何かを牛場君も持たされて帰ってきたそうですが、日本の肉の方がおいしいのに、ホテル用の肉だといってアメリカから肉も買えということにされております。この問題は、ソ連はまずい肉を食べておりますが、あんなまずい肉をよく食べるなあと言ったら、アルゼンチンからこれは買っているんだと言っていたが、いずれにしても、おいしい肉は日本が一番おいしいんで、アメリカからも少し肉は買うが、本当のおいしい肉は日本からも買うというぐらいな、この逆手を中川さんぐらいな顔だと打つこともやはりできるんではないかと思うんですが、どうです。値段は高いが、三倍もの量を食べるばかりが能じゃなくて、おいしい肉を日本からも高いけれども、買ってくれないか、おまえの方のもおれが安いのは買ってやるからというぐらいな、こういうことはできないものですか、中川さん。
  41. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 日本の農業についていろんな御批判はありますけれども、一つは、一億一千万の国民に安定的に食糧が供給されるということが一つの基本だろうと思うのです。  総合自給率はいま七〇%です。ところが、一方、国際的には世界が自由貿易をやれという圧迫も非常に強い。国際競争力との関係ではどうなるかというと、日本は土地面積が非常に少ない。まあ笑うんですが、豪州なんというのは肉をつくっているんじゃなくて拾ってきていると言ったら言い過ぎかもしれないけれども、二千町歩、三千町歩というところで自然に繁殖したものをもって輸出しているということですから、これはもう国際競争力からいくと非常に弱いものである。これは肉だけでありませんで、農業全体がアメリカでは平均が百五十四町歩というんです、農家の経営面積が。これは平均でございます。日本では一町歩ということですから、アメリカで麦をつくるのには一俵千円でできます。日本では一万一千円出さなければできない。そうすれば、その差額の分は消費者が持つのか、国が助成するかという、自給率を上げるためには国際競争力との関係において国民あるいは国家が非常な決意と犠牲を払わなければ自給率が上がらぬ、こういう問題が一方でございます。国防的観点も加えて、少々の負担があろうとも自給率を上げるのだと決意をするか、それほどの無理をしないで、やっぱり安い物を食った方がいいという最近の消費者の動向、安い物を食いたいという、外国から自由化してもいいじゃないかという声も消費者の中に一方ある。これをどう調和してやっていくかというのが農政のこれからの非常にむずかしいところではないかと存じます。  また、他産業との所得の問題については、確かに戦後三十年間高度経済成長を続けて、総評を初め官公労等のベースアップが毎年十数%という時代が長くあった。三年、五年にして所得が倍になるという時代が三十年間続いたものですから、他産業がよくなる。それに比較して農業というものは合理化が進まない。相当政府も力を入れてきております。大体国の予算の一割、ことしも三兆円を超すでありましょう。そういった多額の金を入れながら、なかなか追いついていかなかったというところに問題があり、離農という問題もあったかと存じます。しかし、最近、経済が安定してまいりますと、むしろ農村の方が安定ということで最近ではUターン現象も見られる現状でございます。こういった農家経済所得の向上というものを、高度経済成長を反省しつつ、安定したものに持っていかなきゃいかぬというのがこれからのもう一つの大きな課題であろうと思います。  もう一つ、農業で大事なことは、やはりどこの国でも国家民族の魂は農村から出るというぐらい、農村に働く人は実直であり、人間の基本を外さない、民族の魂であろう。この民族の魂である農業を自由化その他によってだんだん狭いものにしていくということは国家百年にとってマイナスである。この辺も農政上考えていかなければならない大事な課題だと存じます。  こういう幾つかの厳しい中に日本の農業はどうあるかということを考えていかなければならない。この際、農業食糧省というぐらいにしたらどうだという御意見でございますが、実は、水産のことが名前に入っておらぬというので水産省をつくってくれという声もありましたので、食糧省まではまいりませんが、農林水産省というようなことで全体的な農林水産をあらわす省名にかえたい、こう思っております。  そこで、具体的に肉の御指摘でございますが、確かに日本の肉はおいしいというので、松坂牛あたりは自由化結構でございますと、幾ら入ってきても私の方は負けませんという肉があることも事実でございます。ところが、和牛を中心とする最近の畜肉、それから北海道あたりの素牛を育成する育成牛、こういった方々の肉と外国の肉とがちょうど競争条件にある。ところが、国内のは非常に高い。なぜ高いかと言うと、アメリカ、カナダあたりでできました飼料を地球の裏から高い輸送コストをかけて持ってきて、そしてそれを肉にかえておりますから、どうしても二倍、三倍高いものにつくというので、最近も消費者の間から外国の安い肉を食いたいというので肉の値段を下げろ、牛肉大臣ということになってしまったわけでございますが、外国の物を入れて安く食わせるのがいいのか、やはり先ほど言った食糧自給率から言えば、少々高くてもがまんをして国内の物を食っていただくのがいいのか、非常に判断に苦しむところでございます。  しかし、最近の外圧は予想以上に強いものがありますので、何とか国内の生産コストも下げるように行政の力で生産対策を行って、安い肉を消費者に与えるようにする、そこへ外国のも補完をして入れていく、そして消費の拡大を図って、生産農民の安定といいますか、需要に対する長期的な安心感も与えると同時に、余力があるならば、外国からの輸入枠の拡大も図っていきたい。いずれにしても、日本では牛肉というものが手の届かない特殊なお祭りとか何とか、あるいは特殊な金持ちの人にしか手が届かぬというようなところにこの際メスを入れよう。もう一つは流通過程が非常に複雑で、流通コストが高い。こういうことにもメスを入れて、国際的な要請にもこたえるし、国民的な要望にもこたえ、さらに自給率向上という日本の畜産、酪農、肉食の安定も期してみたい、こういうことで取り組んでおるところでございます。  農政については非常にむずかしいやっかいな相反する課題がありますが、何とか安定的に国民食糧を供給できる体制、そして農家の経済がよくなる方向、さらには国際的にも協力できる接点というものを見出すために苦労いたしておるところでございますので、御理解と御協力をお願いいたす次第でございます。
  42. 戸叶武

    ○戸叶武君 河野一郎君はあなたと同じく一個の党人的な野人政治家であったが、彼が農林大臣のときに、フランスへ行って、外務省のフランス語の達者な有名な外交官に通訳をさせながら、フランスの農林漁業関係の大臣と会ったときに、会うや否やいきなり肩をひっぱたいて、君の手を見せろ、おう君はやっぱり若いとき働いた手だな、百姓の苦労や漁民の苦労がわかる手だなと、人相じゃなくて手相を見て、そしてそれならば日本漁民のいま苦労していることが君には一番わかると思うから、日本でかん詰めが売れなくて弱っているんだから、君の方で引き取って買ってくれないかと言って、それでうまく成功したのを見て、なるほど普通のわれわれ外交官と違う持ち味を持ったものだなと思って、その人が感心して私にパリで話してくれたことがありましたが、中川さんはそのくらいのことはへのカッパで河野以上にやれるんだと思います。  やはりアメリカへ行っても、ソ連に行っても魚とりは日本の方がソ連よりは上手なんだから、まあ石油でも少し持ってきてくれりゃ幾らでも魚の方は送りましょうというぐらいな性根で、日本労働者であり漁民である人たちの希望を抱いていくならば、労働者の国をもって唯一の誇りとするソ連の人にも、青嵐会のあんたじゃこわいと思うかしらないけれども、農民の代表としてぴしゃりと行けば、私はそこいらは通ずるものがあるんじゃないかと思うのです。そこいらは一発今度は園田さんが行って地ならししてくれるから、そのときにはおれよりこわ面のやつが来るからよろしくぐらいのあいさつをして、あんた相当の成果を上げないと、北海道じゃもう受け入れる余地がなくなっちゃうから、どうぞそこいらは気をつけて農林漁業大臣か何かやってもらいたいと考えて、これで質問並びにお願いをして終わります。(笑声)
  43. 川村清一

    川村清一君 私は、議定書の内容であります漁業の問題について御質問いたします。割り当て時間も少ないですから、御答弁はひとつ簡明にしていただきたいと前もってお願いいたします。  そこで、お尋ねの第一は、日ソ・ソ日漁業暫定協定を長期協定に切りかえる方針で最初は交渉に臨んだ模様でございますが、これをまた一九七八年一年限りの暫定協定締結ということに合意せざるを得なかったいろいろな経緯があると思うんでありますが、その経緯について、さらにこの交渉の結果、このようなことになったわけでありますが、これにつきまして外務省の方の見解をまず簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  44. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいまおっしゃいましたとおり、私どもは、最初、苦労してつくりました二つ協定でございますので、一定期間の使用にこれは耐えるものである、こういう考えを持っておりましたので、ソ連政府に対しまして、この二つ協定を一定の長期間、ほぼ五年程度でございますが、これに変えたい、このように延長したい、このように提案いたしました。  これに対しまして、ソ連側は、いやこの日ソ協定のもとになった最高会議幹部会令というものは暫定措置である。いまだ海洋法の結論も出ていない現在、漁業秩序というものが世界にまだ確立しておらない。したがってソ連側も暫定措置としてこのような幹部会令を出したものであって、それをもとにしてつくられた協定を一定期間長期にわたって延長することは法的にソ連側として困難であって同意できない、こういうことでございました。ただ、ソ連側も苦労してできたいい協定であるということは認めておりまして、現に外務省の高官が私にそう申したわけでございます。  そのようなことから、当座、一年延長して、その次はまたそのときに話し合って先のことを決めよう、このように合意したわけでございます。
  45. 川村清一

    川村清一君 そこで、合意された経過はわかりましたが、この合意書に対する御見解、これで満足なのかどうかということが一点、これはこの後の質問に関連してくることであります。  それから、この日ソ暫定協定は、御承知のように、ことしの五月の二十七日に業界の代表が署名をされまして、六月十日に発効しておるわけでございますね。この協定が五月二十七日に合意されるまでにはずいぶん交渉は難航しておるわけであります。この間、園田当時官房長官は特使として訪ソされていろいろ当たられた。もちろん鈴木前農林大臣は全く骨を折られたわけでございます。私どもも、超党派議員団の一人として、四月には訪ソいたしまして、イシコフ漁業大臣はもちろんのこと、ポドゴルヌイ最高会議の議長ともお会いしていろいろ努力してまいりました。園田さんはソ連を相手の外交交渉が非常にむずかしいということは十分身をもって体験されておるわけであります。どうもわれわれ今度の交渉の経過、結果を見ると、そのことしの暫定協定締結のために大変苦労された経験というものが生かぜなかったのではないか、つまり政府見通しというものがきわめて甘く、そういう態度交渉に臨んだのではないか、こう考えざるを得ないわけでありますが、これはどうなんですか、外務省の御見解は。
  46. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 政府見通しが甘かったのではないかという御批判でございますが、私どもといたしましては、この協定をつくりますときに、御承知のとおり、領土問題につきまして大変にむずかしい交渉が行われたわけでございまして、その結果、私どもとして満足できる協定ができたと考えております。  それで、今回、これを一年——私どもはもう少し長期と考えておりましたが、これを一年ということにいたしましたことも、ソ連側の言い分にもそれなりに理屈はあると思いましたし、確かに世界の漁業秩序が動きつつあることは事実でございます。私どもといたしましては、何よりもまず日本漁民がその操業の権利を確保することが大事である、こういうことから、やはり苦労はいたしましたけれども、一応、一年ということで、この協定そのものが延長されましたことにそれなりに満足をいたしております。
  47. 川村清一

    川村清一君 問題は、暫定協定が一年に限られたとか五年間の長期協定になったとかということではなくして、その中身の問題、つまり漁獲量の割り当て、操業水域決定、ここにあるわけですね。  九月二十九日に、日ソ漁業長期協定交渉が開始されて、十月の二十日に、日ソ及びソ日両暫定協定の一年間延長ということが実質的に合意されておるわけですね。そうして議定書に署名されたのが十二月の十六日ですね。漁獲量、操業水域等についても、この十二月十六日、同時に、議定書にこの両国当局間の書簡として取り決められておるわけでございますね。この漁獲量、操業水域、このことがわが国の国益、漁業関係者、する水産業界、国民食糧の面、これらの面から見て、最も大事なことであることは御理解いただけると思うのです。  国民のきわめて関心の深い漁獲量等の交渉は、一体、この妥結までの間に何日間交渉されたのですか。
  48. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 先生御指摘のとおり、今回の交渉は九月の下旬に始めまして、最初は、暫定協定延長問題、それから日ソ漁業協力協定の問題、それを中心にいたしたわけでございます。具体的に来年のクォータの交渉を始めましたのは十一月の二十一日からでございまして、それは十二月の十六日に議定書が署名される間際まで交渉いたしまして、署名と同時に、御指摘のとおり、交換書簡で両国合意を明らかにするというような結果になったわけでございます。
  49. 川村清一

    川村清一君 十一月の二十一日から交渉に入られて、十二月の十六日に署名されたと、こうおっしゃっておりますが、その日にちだけ考えると相当期間があるようでございますが、実際にやれたのはぎりぎりではないんですか。たとえば、ことしの春のサケ・マスの漁獲量にしても五万七千が六万二千に五千トンふくれたというような点などは、当時私はソ連におったわけですが、全くぎりぎりでしょう、そうじゃないんですか。いま長官がおっしゃったような交渉そのものに、十一月の二十一日から十二月十六日まで、その相当の期間、実際にこの漁獲量とか操業水域交渉に実質的に当たっておったのかどうか、これを明らかにしていただきたいと思います。
  50. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 十一月の二十一日からクォータの交渉を始めまして、これは新聞にも報道されておりますけれども、当初、それぞれの両国のクォータに対する考え方が明らかになりました。そのときには、ソ連側は、ソ連沿岸の二百海里内で日本側に七十万トンのクォータを与えると、それに対して、日本側は、日本沿岸ソ連漁船に対して三十七万八千トンのクォータを与えるというところからスタートいたしたわけでございます。  ところが、ソ連側は、その日本側の考え方等に対しまして、日本がもしソ連側に対して三十七万八千トンしか与えないのならば、ソ連側日本漁船に対して三十七万八千トンしかクォータを与えない。もし日本ソ連漁船に対して日本近海で七十万トンのクォータを与えるならば、そのときにソ連として日本漁船に七十万トンのクォータを与えるというような等量の原則を持ち出しまして、これを打破するためにまず非常な時間がかかったということは御指摘のとおりでございます。  それから、操業水域に関しましては、交渉の当初からわれわれはクォータの総量とともに、どうしてもことしの七つの操業水域、これで満足するわけにはいかない。特に関係漁民の不満が非常に大きい。したがってこれの拡大をぜひともしてもらわなきゃ困るということを交渉の当初から主張してまいりました。私も途中で参加いたしまして、相手方の次官並びにイシコフ大臣にもそれぞれ操業水域の拡大等につきまして話し合いをいたしたわけでございますが、この操業水域の拡大につきましても、ソ連は、当初から来年のクォータ並びに操業の規制等につきましては、特に操業の規制関係はことしと全く同じことを考えておるという態度に終始いたしたわけでございます。したがって等量原則とそれから諸般の規制はことしと同じであるというソ連考え方を打ち破るために相当長い期間を費やさざるを得なかったということは御指摘のとおりでございます。
  51. 川村清一

    川村清一君 それではお尋ねしますが、交渉に臨むに当たって、当然、政府としては、ことしのクォータはどのくらいと、操業区域はたとえばスケトウダラにすると北緯五十度からさらに北の方に延ばす、それを要求するとかいうような案は持っていかれたと思うんです。その案はどういう案であったのか、これを簡単に説明してください。
  52. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 当然のことながら、まずクォータにつきましては、私どもかつて北洋におきまして百七十万トンの実績を持っていたわけでございます。したがって百七十万トンまるまるというわけには必ずしも二百海里時代でございますのでむずかしいにいたしましても、これは実績を相当程度確保できるようなそういうクォータを獲得したいということをまず考えたわけであります。そのためには、先生十分御承知と思いますけれども、やはり七つの水域に限られました現在の操業水域、これをそのまま固定したものでは現在のクォータを大幅に拡大するということは全く不可能であるというふうに考えまして、クォータの拡大とあわせまして操業水域の拡大、この二つをぜひ実現いたしたい。たとえば操業水域につきましては、現在、北緯五十度で頭打ちになっております水域をもっと、たとえば五十三度ぐらいまではぜひ上げたい、そうすることによってそこを中心とした漁場の確保、これを図るというような心組みで参ったことは事実であります。
  53. 川村清一

    川村清一君 長官の持っていかれた考え方は妥当な線だと思っております。妥当な線だということは、これは私個人ではなくして、漁業に従事しておる漁民のすべての方々がこれを強く要望されておったわけです。  ところが、結果はどういうことになったかというと、この議定書に関連しての両国代表の書簡に明らかでありますが、日ソ協定に基づく七八年の割り当て総量は八十五万トン、これはいま長官のおっしゃった過去の実績百七十万トンに比べるとまさに半分でございますね。それから七七年、ことしの暫定協定に基づく六月から十二月までの割り当て四十五万五千トン、これに暫定協定締結前の一月から三月までの漁獲量——これはどうも水産庁に数字を要求したんですが、まだ集計がきちっとできないといったようなことで明らかな数字が出てまいりませんが、これに四月、五月は休漁しておるわけでありますから、もしこの間操業しておったとするならば、どのくらいとれたかということは過去の実績から言って推定した数字が出てくるわけですね。恐らく七七年においても優に百万トンは超しているんじゃないかと私は素人考えでそう思うわけであります。  現に、あなた、岡安水産庁長官は先日の農林水産委員会における私の質問に対して、一月から三月までスケトウダラの漁獲量は五十万トンだとおっしゃっている。六月から十二月までに十万トンですから、スケトウだけで六十万トン、七七年には漁獲しておるわけです。これが今度は、スケトウに限って私申し上げますが、七八年、来年は三十四万五千トン、まさに半分に大削減されておるではありませんか。これでは北転船、もちろん沖合い底びきが壊滅してしまうと言っても過言でないでしょう。関連する水産加工も、特に中小零細の加工は全滅してしまうんでないですか、これが実態でしょう。  こういう情勢というものは大変なことですよ。この情勢に対処して、農林大臣は、どうなさろうとしているのか。中川農林大臣北海道の方ですから、十分北洋漁業については御承知のはずです。大臣の御見解を伺わせていただきたい。
  54. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 確かに出ました結果は八十五万トン対六十五万、過去の実績から言っても、あるいは昭和五十二年、今年の交渉に基づく分、さらには一月——五月、そういったものを足したものに比較しても少なくなっておることは事実でございます。したがいまして北海道漁民やあるいは関連加工の皆さん方が非常に不満足であり、心配をしておられることも事実だと存じます。  ただ、先ほど来お話がありましたように、国際的な水産環境は非常に変わってきて、特にソビエト等量主義というものが非常に厚い壁となった。最後まで持ちましたのは七十万トン対七十万トン、それはもう一歩も譲らぬという非常に厚い壁があったわけでございます。そこで、私自身も訪ソしてとも考えましたが、先ほど申し上げましたように、いろんな厳しい情勢も国内的にもありましたので、岡安長官に親書をイシコフ漁業相へあて渡しまして、全権を委任するので、私伺いたいところではあるが、こういうことでありますから伺えないので、ぜひともひとつ御理解、御協力をいただきたいとお願いを申し上げて、岡安長官を、十二月の八日、私の代理として派遣をいたしたわけでございます。  かくて事務的な折衝もありましたが、岡安・イシコフ会談というものも持たれまして、ようやく等量主義の壁を打ち、ソビエト側の七十万トンが五万トン減るということで六十五万トン。そしてこちら側の七十万トンにさらに十五万トンを上積みをして八十五万トン。もう十万トン、二十万トン、できれば百万トン近くということで、少々こちらの分は譲っても、百万トンぐらいはとりたいという最後の努力をいたしたところでございますが、非常に壁が厚くて、最終二十万トン開きの八十五万トンとなったわけでございます。  確かにスケソウダラについては、昨年の実績あるいは過去の実績に比べれば、かなり少ないものではありますけれども、十万トンであったものが三十四万トンになったということになりますれば、まあまあ去年の交渉結果十万トンという厳しい壁であったものを三倍半近く確保することができまして、この点、漁獲量の確保に最善努力をして三十四万トンとなりました。前回、北転船では三十隻、第二次分として二十七隻を予算上も措置をいたしてございます。この二十七隻を計画どおり減船をし得るならば、何とか残った船で三十四万トンをとるならば操業が成り立っていくのではなかろうか、こういうぎりぎりの検討もしながら最終決着を見た、こういうわけでございます。
  55. 川村清一

    川村清一君 詳しいことはいずれ農林水産委員会で大臣にお尋ねしますが、時間もありませんので先に進めます。  いま大臣はいろいろ御説明されました。ことし七七年は十万トンであったと、今度はそれが三十四万五千トンになったんだ、だからふえたんだと、こうおっしゃいますが、御案内のように、その十万トンというのは六月から十二月までであって、いわゆるスケトウの盛漁期ではないわけですよ。盛漁期というのは一月から三月までです。それから等量主義だからこうだとか、十万トンが三十四万五千トンになったからまあまあだなんということは、これには当てはまらない。  そこで、さらにお尋ねしますが、三十四万五千トンになったと、これは恐らく関係漁民はほんとに不安でしょう、絶対にのめない数字だと思います。私の方も同じです。そうして操業水域は七水域そのままですね。このスケトウの操業水域は、千島の東部、西部のオホーツク海側、それから樺太の東、日本海、この割り当て水域、これで一体三十四万五千トンという漁獲量を消化できるという確信がおありかどうか。せっかく三十四万五千トンの割り当てがあったが、資源のない水域を割り当てられたところで、これはとれない。いわゆる宝の持ちぐされになるわけだ。絶対この水域で三十四万五千トンは消化できるというそういう確信があるのかないのか、これは明確にひとつお答えいただきたい。
  56. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに、私ども、スケトウの主漁場はかつては北緯五十度以北のカムチャッカ半島の東、西の海域、これが主漁場であったわけですから、ぜひこの主漁場を回復いたしましてスケトウの操業を容易にいたしたいということで最後まで努力をいたしましたけれども、残念ながら操業水域の拡大はできなかったわけでございます。  そこで、御質問は、三十四万五千トン、これが七つの水域でとれるかということでございますが、窮屈であることは私どもも認めざるを得ないと思います。特に北の五十度に近い海域におきましては、ことし主として操業をいたしましたけれども、ここで大量の漁獲を上げるということははなはだ困難であろうと思いますけれども、しかし、それ以外の海域における南の方、これにつきましては、なお私ども大いに工夫をいたしまして操業すれば漁獲実績を上げる余地があるというふうに考えております。したがって、このスケトウの枠三十四万五千トンは全くとれないというようなクォータではなくて、私どもは努力すれば可能性のあるものというふうに考えております。
  57. 川村清一

    川村清一君 私のお尋ねしているのは、絶対とれるという確信があるかということをお尋ねしている。ところが、長官の御答弁は、まあ可能性がある、努力すれば可能性がある、こういう御答弁で、私の聞いているところと合わないわけですね。ですから、もし宝の持ちぐされで、とれないということになったらこれは大問題ですから、その場合には、私はまた質問いたします。きょうは保留しておきます。  次に、大臣もまた御案内のように、この北方領土周辺のいわゆる三角水域、ここではことしは花咲ガニ、毛ガニ、これは漁獲割り当てゼロです。一匹もこれはとってはいけない、こういう割り当てになっておる。これまた大変ですわ。恐らく根室地方におけるカニ漁業、これまた全滅、どうですか、これに対処してどうなされますか。
  58. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 確かに三角水域の二十隻に及ぶカニ漁船が今回の交渉によって来年からゼロということになりましたので、非常に厳しい結果でございます。  この点は、代表団も最後の最後まで、御承知のように地元の川端さんも行っておられまして、川端さんは地元でございますから、何とかこれはということで最後まで粘ったのでございますが、向こう主張は、三角水域内では資源が非常に少なくなってしまった、このまま操業を続けるならば、われわれの子孫の時代には壊滅するだろう、われわれの子孫の時代のために、この際、資源保護という高邁な気持ちからやめてもらいたいという主張で、資源論からどうも壁が破れなかったということでございまして、地元の漁民の皆さんには申しわけないことでございますので、これが対策について万全を期していきたい、こう思っておるところでございます。御指摘のとおり、まことに予想もしない厳しい結果となって、非常に残念に思っておるところでございます。
  59. 川村清一

    川村清一君 日ソ漁業の問題、漁獲量の割り当ての問題等々につきまして、私は、今日まで、長官御存じのように、農林水産委員会におきましては、もう数度にわたって議論をしてまいったわけであります。  私は、先ほど、外務省当局に対して見通しが甘かったんではないかということを指摘いたしましたが、そういうことはないという御答弁であったわけであります。しかし、私の立場から言えば、ことしの暫定協定締結されて後の委員会における鈴木農林大臣の御答弁は、いわゆる日ソ間の余剰原則——余剰原則というのは、これは国連海洋法会議における単一草案の中のやはり私は基本原則だと思うわけです。それは沿岸国が二百海里の資源をその主権が管轄する、その国がその資源を利用して、もし余裕があるならば、その余ったものについてはいままでの実績のある国にそれを与える、この余剰原則だということを鈴木さんは強く言われておった。ところが、今度は、等量主義だ、おまえの国にこれだけとらせるから、おれの国にもそれだけとらせろという等量主義という言葉に変わってきたんです。  等量主義というのは、もちろん鈴木さんも相互主義ということはおっしゃっておったが、等量主義なんというものは初めて出てきた言葉です。私は委員会で初めて聞いた。そこで、ソ連がそういう考えに変わってきておるということを日本政府はわからなかった。そうして交渉に臨んで押し切られたんじゃないですか。これは園田外務大臣も御存じだと思うんですが、ソ連外交交渉というのは常にこの手を使っておる。いまはもうなくなったいわゆる日ソ漁業条約に基づく資源の分配も常にそうでしょう、サケ・マスなども、最後の最後まで決まらない。そうして最終は政治的に決着を見たというのが今日までずっと続いてきたパターンですよ。このソ連外交のパターンに今回も押し切られているんです。そうでないですか。  こういうようなことでは、また、一年間の暫定ですから、来年は一体どうなるのか全然わからないでしょう。それでは、北洋漁業というのは、思いつきのように、さあことし始めようやなんと言ったって、できっこないわけです。来年の漁業はどうかと、前の年から船の準備から漁船員の雇用から、そういう準備をしなければ漁業はできないわけでしょう。来年が皆目わからない、こんなような状態では全然用意も何もできないでしょう。どうなるんですか、一体、今後のこの北洋漁業というものは。そういうソ連態度なり、前の見通し、こういうものを的確に持たないで、ただ、ことしはこういうような線で何とか妥結してこようと思ったぐらいな程度で出かけていったって、これは日本外交がまずいのか、向こうの方の外交がすぐれているのか、私は外交は全く素人ですからわかりませんが、経過を見ると、常に押しまくられているのが実態ではないですか。もう少し日本の国益を守るために毅然とした態度でやれないのかどうか。もう相撲で言えば、土俵際まで押しつけられて、後がない、後がないというところまで押されて、とうとう押し切られてしまっているのが今日までの実態ではないですか。どうなんですか、これ外務大臣
  60. 園田直

    国務大臣園田直君) この前の交渉のときに、川村委員もモスコーに行っていただいたわけでありますが、あのときに、ソ連は余剰の原則を打ち出し、日本実績主義を打ち出したわけであります。  その当初から、ソ連の方は、米国、カナダから締め出され、さらにEC海域からは締め出されたのでありますが、EC海域ではヨーロッパ側が等量の原則を言い、ソ連実績主義を言い争ってきたが、結局は追い出された。そこでソ連は、今度はそれを持って帰って、今度の交渉では等量、日本実績ということでやってきたわけでありますけれども、今後、趨勢としては、日本に有利不利は別として、余剰の原則ということが世界の大勢になりつつあるし、それから川で育った魚が外へ行って帰ってくる、これはおれの魚だという原則も世界の趨勢になりつつある、こういう趨勢もにらまなければならぬと考えておるわけで、前途はなかなか厳しいものがあると思います。  いまおっしゃった中で、交渉するのに舞台がいつも狭いじゃないか、漁期をぎりぎりに詰められて、そして言うことを聞かなきゃ魚は全然とれないということで追い込められているじゃないかと、この点は、非常にわれわれは将来注意しなければならぬ点であると考えております。
  61. 川村清一

    川村清一君 将来注意しなければならないんではなくて、先ほど申し上げましたように、日ソ漁業条約締結されて以来、今日まで毎年その手でやられてきておるということを御承知ならば、何も将来ではありませんよ、過去もう十数年、二十年もこの手でやられてきたんですから、もう少ししっかりした外交をやってもらわなければ困るということだけ率直に申し上げておきます。  そこで、続いてお尋ねしますが、今度はソ日暫定協定によって日本の二百海里水域におけるソ連漁獲量は、割り当て六十五万トン、これは実績主義でなくて等量主義という点で押し切られたものと思うわけでありますが、これも不満です。水産庁の長官にお尋ねしますが、まあスケトウにばかり例をとっておりますが、スケトウは八万トン割り当てておりますね。一体、八万トンというのは日本のどこでとるんですか、とれるんですか。私は、八万トンのスケトウをソ連日本の近海で漁獲するということになれば、どこでとるかわからぬけれども、日本沿岸漁業に与える影響はきわめて甚大だと思うわけでありますが、これに対してどうですか。
  62. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ソ連に与えましたクォータのうち、御指摘のとおりスケトウは八万トンでございます。かつて、ソ連は、これは一九七六年、五十一年でございますけれども、五十一年にスケトウを日本沿岸で十七万四千トンとっていたということを主張いたしております。恐らく、この十七万四千トンは、まだわが国の領海が三海里であるということ、それからまたソ日協定ができましてオッターラインの中には入れないという規制をいたしましたけれども、そういう規制のない時代におきます漁獲の量であるというふうに考えられます。そこで、私ども、今回の協定では、当然、ことし締結いたしましたソ日協定におきます各種の操業規制をそのまま踏襲いたしておりますので、八万トンのクォータを与えましたけれども、これをソ連が十分に消化できるかどうか、この点はもちろん実績を見なければわからないわけでございます。
  63. 川村清一

    川村清一君 そこで、長官にはっきり申し上げておきますが、前に鈴木農林大臣と私との間に確認された事項があるわけです。もちろん領海十二海里の中には入らぬけれども、十二海里の外であっても、資源を守るという意味において、日本のいわゆる漁業調整規則によって日本漁船でさえ操業させない底びき禁止区域ラインとかオッタートロールのラインがあるわけですね。そのラインを侵入して、もちろん領海十二海里の外でありますが、そういうところまで来てソ連が操業して八万トンを漁獲するなんということになりますれば、これは大変な問題ですから、そういうようなことがないようにしっかりやっていただきたいと思うわけです。時間がありませんからこれ以上申し上げません。  あなたの方の第八十回国会に委員会に出された資料に基づくと、最近におけるわが国距岸二百海里内の水域における外国漁業漁獲量、もちろん推定となっておりますが、ソ連は三十万トンから四十万トンしかとっておらない、これを今回六十五万トン与えたということは、いかに等量主義といえども、日本の方は百七十万トンの実績の半分の八十五万トンで、ソ連の方には三十万トンの二倍の六十五万トン割り当てておる。まさに等量主義かもしれないが、こういうようなことを決めてくるなんということは承服できませんよ、はっきり申し上げておきますが。  次に、将来にわたっての問題ですから、ここではっきりお尋ねしておきますが、今回は、サケ・マス漁業については議定書で決められておりません。今後、一体、これはどうなるのか、重大な問題です。御承知のように、今日まで北洋漁業の中心は何といってもサケ・マス漁業です。今日すでに廃棄された日ソ漁業条約の主体はサケ・マス漁業であったことは御存じのとおり。しかし、今日的情勢においては、先ほど外務大臣がおっしゃっておったが、遡河性魚類は母川、つまり母なる川を持つ主権が管轄すべきであるとアメリカもカナダも主張しておる、もちろんソ連主張しておる。この主張どおり実現されるようなことになれば、北西太平洋におけるいわゆる公海上のサケ・マス漁業というものは全滅、皆無の状態になるわけです。本当にこれはゆゆしき問題になるわけでありますが、今回の交渉では決まらなかったが、必ず年が明けた交渉においては、これが中心の問題になるわけですが、これに臨む政府態度はどうなのか、姿勢はどうなのか、これをひとつ明確にお答えいただきたい。
  64. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) サケ・マスの問題に先立ちまして、ソビエト考え方について若干補足しておいた方がいいのではないかと思います。  二百海里が余剰原則であり、ソビエトは当初実績主義だったのでありますが、最近は、実績主義よりは余剰主義に変わっておる。これは鈴木大臣のときにも答弁をされ、そして相互主義、お互いに入り合う。それでソビエトが今回余剰原則に立ったというのは、先ほど外務大臣が言ったように、EC、アメリカ等から追い出されて、もう余剰がなくなった、だから日本にも全部とらしたくないという原則ですが、日本からもとるんだから、相互乗り入れで等量はとり合おうということで、そう大きく鈴木農相のときの余剰原則、相互主義というものが変わっておらない。等量主義という名前で相互に同じ量をとろうではないかという原点に立っての交渉であった。  しかし、ソビエトが厳しいということについて、あるいは年々後退しておったということについては大いに反省もし、また、厳しくこれに対処しなければならぬということは言うに及びません。そういうところから非常に難航したということでございます。その中にあっても、二十万トン、等量主義を打ち破ったということでございまして、その点は、実際問題として議論されたことでございますので補足をいたしておきます。  次に、サケ・マスでございますが、これも過去厳しく厳しくなってまいりまして、いよいよ今年は来年度について話し合おうと思ったんですが、明年に持ち越した。そこで、日ソ間におきましては、協力協定の中でのサケ・マスをどうするかということは、明年明けましたならば、一月末か二月初めからか、少なくとも四月までには決着を見たい。  それ以前に、日米加のサケ・マス問題もございます。アメリカも非常に厳しい母川国主義でございます、あるいはカナダもそういう傾向にございます。これらの国々とまず話し合いをし、明年明けましたならば、早々に見通しを立てて、それを踏まえてソビエトとの間において真剣かつ強烈な外交を展開し、特に、今回、訪ソされます園田外務大臣にもその辺のところを篤とお願い申し上げて、過去長い間営業を続けてきた北西太平洋におけるサケ・マスの実績は何としても確保していきたい。明年明けましたら、日米加に引き続いて、日ソと精力的な交渉を続けてまいりたい、こうなっておるわけでございます。
  65. 川村清一

    川村清一君 時間の関係で最後の質問を申し上げますが、いま明らかになったことによっても減船措置は避けられないと思います。先ほど農林大臣もおっしゃっておりますが、北転船の第二次減船二十七隻、これは避けられないと思います。さらに沖合い底びきも減船が避けられないのではないか。特に樺太西部の水域が割り当てられませんでしたから、北海道北部、特に稚内あたりの底びき船は漁場がないわけですから、したがいまして沖合い底びきも減船は必至、私はさように考えます。  さらに北方四島周辺のカニ漁業は全滅、これら減船やむない漁業者に対して、どのような補償措置をとられる考え方か。さらに漁船の乗組員の雇用の問題、さらに北転船、沖合い底びきの漁獲した魚を原魚として仕事をしておる加工業者、これに対する救済措置、もちろん万遺漏のないことを期せられると思うが、本当にこれらの方々が満足できるような、そういう措置がとられるかどうか。  一つ例を挙げてお聞きしたいのですが、たとえば北転船一隻、ことしは一隻に対して政府の交付金が三億一千万、それにのれん代的な融資の対象事業として六千万、合計三億七千万交付されておるわけでございますけれども、実際は、そんなものでは減船しない。そこに共補償が加わって、実態は北転船一隻減船について六億、これだけの金が要るわけです。そこで、私は、ここではっきりさせておきたいことは、もはや残った業者がやめる人に補償するというような共補償的なことはできる能力がもうないと思うんです。また先を見通して、これじゃ絶対もう先が暗いからいまのうちにやめた方がいいといってやめる業者も出てくるのではないか、こういうことも考えられる。それらの補償——共補償なんということに頼らないで、全部国が補償するかどうか、してもらわなければならない。この点を明確に御答弁をいただいて、時間がもうございませんので、これで私の質問は打ち切って、今後の問題につきましては、農林水産委員会でさらに進めたい、かように考えます。以上です。
  66. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 減船されました方は、前回の分も非常にお気の毒であり、また、共補償といいますか裏補償といいますか、政府が手当てをいたしました以外に補償が動いておりますから、残られた方も大変なことはよく承知いたしておるところでございます。  そこで、このたび、二十七隻については何とか操業ができるように鋭意努力したんでございますが、当初計画したとおり、二十七隻、第二次分は予算もとってあります。措置をしてまいりますが、前回と変わった措置ができるかどうか、この辺はバランスの問題もあり、よく検討してみたいと思いますが、なかなかバランスその他でむずかしい点もあるのではないかと苦慮いたしておりますが、十分検討してみたいと存じます。
  67. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 午前の質疑はこの程度として、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      —————・—————    午後一時二十四分開会
  68. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  69. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 午前中の議論をまつまでもありませんけれども、長い日ソ漁業交渉というものを振り返ってみると、きわめて忍耐を要求される陰湿なそういう経過ではなかったろうか、こういうふうに思います。それだけにソビエト外交というものが大変強いとか弱いとかという、これはもう議論外の問題でありまして、果たして人間性というものをどこまで一体考えているんだろうというような基本的な問題までさかのぼらなければならない、あるいはその解決のめどというものもそこまでいかないと決着がつかないのじゃないかという印象すら受けるわけでございます。恐らく、この暫定協定をもとにした今後の日本漁業というものは、相当、過酷なほどまでに厳しい条件を突きつけられながら操業しなければならないだろう、これは恐らく心ある人はだれしもがそのような理解を持つであろうというふうに思うわけでございます。  もう一つ、われわれの予想をはるかに上回るその厳しさの中に、いろいろな対外的な関係性というものが問題にされなければならない。特に中国との関係において、ソ連が、一体、どういう対応を示すのであろうか。伝え聞くところによれば、もし覇権条項を含む日中条約というものを締結すれば、それなりの報復措置を講じざるを得ないだろう。しかも権威あるプラウダがその点を非常に語気を強めて強調されているわけであります。その辺の真意というものが果たして具体的にどのような形で日本に対しての要求として迫ってくるのか。また、特に、この報復措置の一環として二百海里水域における日本漁船の操業を認めないというようなことも伝えられているようでございます。その点について、政府としては、どのように分析をされているのか、また、それが実際ソビエト政府の言う方向に向かうものであるのかどうなのか、まず、その点から最初にお伺いをしてまいりたいと思うわけであります。
  70. 園田直

    国務大臣園田直君) 私の方でも、いまの御意見の点については十分留意をし、それぞれ打診をしたり、あるいは判断をしたりいたしております。  中国ソ連はともにわが国の重要な隣国であります。わが方としては、ソ連とも友好を深めていく、中国とも深めていくということが基本的なことでありますけれども、御承知のとおりに、中国ソ連は相争っておるわけであります。そこで、新聞その他で御承知のとおりに、ソ連としてはしばしばこれに対する発言をしておるわけでありますが、よく分析をいたしますと、争っている中国日本条約を進めていくことに好意を持つはずはございませんけれども、一番問題は、中国日本と提携をしてソ連を敵対視、または敵対した行動をとるかと、それならば報復手段をとるというのが大体あの言葉の出てきているところであります。  したがって、この覇権条項をどう扱うかということも問題でありますけれども、そうではなくて、日中は日中、日ソ日ソお互い条約を進めていきたいということで進めていって、仮に、仮にです、条約締結した場合に、大使館引き揚げとか、その他の報復措置を講ずることはあり得るはずはないと、このように判断をいたしております。
  71. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 単なる恫喝なのか、われわれとしては非常にその辺の判断に苦しむところでございます。  いま園田さんがおっしゃったように、日中にしても日ソにしても、われわれの立場から言えば、友好関係をこれから展開していく、あたりまえのことであります。それが日中接近あるいは条約締結によって反ソ同盟あたりに結びつくんじゃないかというソ連の見解であるとするならば、これは間違いもはなはだしいと言わざるを得ないだろうと思います。  ただ、それが単なるいままでの中国と接近することによって、あるいは軍事面における影響が出てくるのか、いろんなそういうソビエト考え方があるのだろうと私は思うんですけれども、いままで重光さんなら重光さんがモスクワに駐在されて政府の訓令を受けながら、もう日中条約締結というものは国内世論が沸騰しているわけです、当然、政府の訓令を受けながら、いろんな角度からコミュニケーションの場というものは持たれてこられた経緯というものがあるであろう、こういうように想像するわけです。一体、その辺の話し合いにおいて、どういうソビエト側の真意というものがつかめているのかどうなのか、この辺いかがなものでございましょうか。
  72. 園田直

    国務大臣園田直君) 正式にソ連側の意向ということになると、この公開の席上で責任者の私が申し上げることははばからなければならぬと考えておりますけれども、いまおっしゃいましたような点でそれぞれ非常に神経質に検討いたしております。  ソ連の発言は、大体、二つに分かれてくる。まず、交渉再開をするかどうかということに対するソ連の発言と、今度は、条約締結に入った場合の発言、締結した後の発言というように分かれてくると思うわけでありますが、やはり締結前は、声を大きく物を言えばその効き目があって、日本の方が遅疑逡巡して条約交渉再開に踏み切れないとなれば、これはむしろますますこの発言は強くなってくる。おどすということは適当でありませんけれども、おどされる者がおっておどしがあるわけでありますから、さて、これが第二段階の交渉再開成ったあるいは締結したと、こういう場合には、やはりソ連日本の間にはそれぞれいろんな問題もあるわけでありますから、大使館引き揚げとか、その他のことをやってソ連にとっては何ら利はないわけでありますから、その点は甘く見てはならぬが、これによってこちらが足踏みすることも適当でない、こう考えております。
  73. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 おっしゃるとおり、確かに甘く見てはならぬと思うんです。ただ、ソ連の出方というものが、この漁業交渉に見るまでもなく、もうわれわれの想像をはるかに越えた、あるいは端的に言えば、非常識と言えるくらいの要求を突きつけてきているわけですね。先ほど午前中の議論の中でも、この漁獲量一つ取り上げましても、われわれは屈服しなければならないという、表現は当たるかどうかわかりませんけれども、甘んじなければならない。こうしたことをいままでの経過の中でとらまえてみますと、いまおっしゃったお話の中の大使館員の引き揚げだとか、あるいは北方領土は一体どうなるんだろうという問題だとか、あるいは仮に二百海里水域内において操業させない、これは恐らく国際世論というものがまた沸き起こってくるであろうという背景もございましょう、それならば漁獲量でもっと締めつけをやろうとか、報復のやり方というものはいろいろあるんではなかろうか。  それとも、やはり甘い見方はできないけれども、そういうことはないという判断に立たれて、そういったことは全く考えられないというふうに私ども判断した方がよろしいんでしょうか。
  74. 園田直

    国務大臣園田直君) そのように考えております。
  75. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そうなりますと、ちょっと本題からそれるかもしれませんけれども、来年はあるいは早々に、福田さんの言外の発言を聞きましても、日中条約というものは佐藤大使あたりの報告を恐らく周到に分析をされてきたろうと私は思うんです。恐らく来年、前外務大臣の鳩山さんの最も早い時期にということの答弁をつなぎ合わせましても、これはもうやらざるを得ない。いまの御答弁にもございましたように、それはもうあくまでも日ソ日ソだと、日中は日中だと、こうした判断に立てば、この日中条約というものは来年度成立という見通しは十分考えられる。ソ連のたとえどういう動きがあろうと、交渉の段階、条約締結の段階、それは二通りあるとおっしゃいました。それはともかくとして、十分にいまおっしゃった考え方というものは貫き通して日中条約締結への道が開かれるかどうか、この辺はいかがでございますか。
  76. 園田直

    国務大臣園田直君) 日中条約締結交渉というものは、まだいつ再開するかは決めておらぬわけでありますけれども、方針としては、いま渋谷委員がおっしゃったとおりに進めていくべきだと考えております。
  77. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 そのためには、いまスケジュールをいろいろ園田さんとしてもこれから世界外交の先頭を切って取り組まれるわけでございますので、その皮切りといいますか、ソビエトへいらっしゃる。それに引き続いて、やはり中国を訪問する、そうした御計画は現在ございますか。
  78. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が、まず、就任直後、第一にモスコーを訪れたいという計画をいたしましたのも、いままで渋谷先生から質問されたようなことも含めて、まずモスコーへ行きたいと考えたわけであります。  いまの御質問の、中国に行く計画はあるか、いまのところは、ございません。これは今後どのように進んでいくかによって決まることでありまして、いまのところ、早急に私が中国に伺うという計画はございませんが、これは今後の問題であります。
  79. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 言葉じりをつかまえて大変恐縮でございますけれども、それはやはり訪ソをされたその段階を踏まえて、ソビエトの出方待ちというふうにわれわれ受けとめてよろしいのでしょうか。
  80. 園田直

    国務大臣園田直君) そういう意味ではございません。まず、いまの問題もよく日本の真意をソ連理解してもらう手だては打つべきだ、やるべきことはやって、それから片方を進めるべきだ。やることをやらずしてこれ起こるはずはないと言うわけにはいかぬと、こういう意味でございます。
  81. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにいたしましても、いまお述べになりましたように、日本の今後のあり方といたしまして、日ソ日ソ、日中は日中という明確なそういう判断に立たれた外交折衝というものはこれは当然とっていただくべきことであろう。それ以上のことは、ソビエト日本に対する内政干渉になるでありましょうし、中国はまた日本に対しても内政干渉にならざるを得ない。ですから、そうしたような、いままでの過去のいろんなかかわり合いというものはかかわり合いといたしまして、今後の取り組む姿勢としては、明確にその方針というものを貫かれて、そうして今後の新しい日本外交路線というものを展開していただきたい、こう思いますが、いかがでございますか。
  82. 園田直

    国務大臣園田直君) 全くいま仰せのとおりだと思って、それを一貫する所存でございます。
  83. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、今回の暫定協定、もうあっと言う間に一年がいま過ぎようとしているわけでございます。そしてまた一年間の暫定協定漁業が行われる、こういう取り決めが行われるわけでございますが、これをやはりしょっちゅう繰り返していいものなのかどうなのか。  いろんなこれからの詰めの問題というものもございましょう。願わくは、政府が当初考えておりましたように、それが五年になるか十年になるかは別問題といたしましても、やはり長期協定を結ぶことによって北海道を初めとする沿岸漁民が安心して操業できるという、そういう交渉の仕方、また取り決めの仕方というものを、何とか、来年訪ソされる際に、その一つの足がかりというものをおつけになるべきであるまいか、こう思いますが、いかがでございますか。
  84. 園田直

    国務大臣園田直君) いまのようなことも考えて、訪ソしたいと考えております。
  85. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 どうですか、長期協定の望みというものはあり得るというふうにとらまえていらっしゃるのでしょうか。
  86. 園田直

    国務大臣園田直君) 農林大臣ともよく打ち合わせをして相談の上参りますけれども、向こうの方は、午前中の質問でもありますとおりに、いまの二百海里最高幹部会令というのは暫定措置であるという理由で短期でやっておるわけでありますけれども、日本としては、あくまでこれを長期に持っていくように努力をしたいと考えております。
  87. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまおっしゃったことは、恐らく、中川さんの場合もお考え方は全然変わらないと思うんでございますけれども、くどいようですけれどもね、安心できる協定というものはだれしも国民がひとしく望むところでございますし、今後、いろいろと御相談の上、そういう線を何とかソビエト側と交渉の上お決めになる、それはやはり中川さんとしても同じでございますか。
  88. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 長期的に安心した操業ということは、これはもう漁民のみならず関係者の一致した願望でもございますから、ぜひとも今度の園田訪ソによって解決できるならば解決、あるいは一歩でも前進できるならばできる最善努力をしてもらうように、外交ルートを通じて強力にやっていただくようにお願いするつもりでございます。
  89. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今回、この二百海里水域決定——決定ということよりも宣言ということによって大変厳しい環境にいま立たされておるわけでありますが、恐らく、いま世界の趨勢として、もっと二百海里宣言をする国がふえるであろう、そういう可能性も十分感じられる昨今であります。  政府の方で御調査になった数字を申し上げますと、二百海里宣言をされた国が現在十八カ国あるそうであります。この中には大変日本に影響を持つ地域があるわけでございます、ソ連、米国というふうにあるわけでございます。これが将来ニュージーランドであるとかオーストラリアであるとか、特に漁業資源が豊富だと言われております北太平洋あるいは東シナ海あるいは南洋ということを考えますと、これは将来、一体、どうなっていくんだろう。海洋秩序というものが恐らくわれわれが想像している以上に混乱をするであろうし、それに伴う今後の日本漁業というものはどういう方針で対応しなければならないんだろうか。これは必ずしもソビエトの問題、アメリカの問題だけに限らないきわめて重要な課題がしかも現実的に迫ってきているというこの実情をどういうふうに掌握をなされて、そしてかつて対応に非常に苦慮された政府が二度と同じ轍を踏むのか、アメリカとかソビエトのように。そうしたことも、これから、せっかくこういう機会でございますので、中川さんにその方針といいますか、日本の対応といいますか、まず、それをお伺いしておきたいと思うわけでございます。
  90. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のとおり、国連海洋法会議でこの二百海里問題が討論され、まだ結論を得ないままにアメリカが口火を切って二百海里宣言というものが出てまいりました。相次いで、ソビエトその他の国々が二百海里時代に入っております。今後とも、だんだん、海洋法の成立前に、あるいは海洋法ができてまいりますと、いよいよ二百海里という問題が定着をしてまいる。わが国の水産資源は約千万トンと言われておりますが、その中で二百海里に影響をされるものは四百万トン前後と、こう言われております。したがいまして、わが国水産の水揚げの約半分に近いものが影響を受けるわけでございますから、非常にわが国にとっては大きな課題であり、むつかしい時代を迎えた、こういう認識にまず立たなければなりません。  そこで、この二百海里時代を阻止できるかというと、阻止はできるものではなくて、やはりそういった国々が多い海洋法会議でもございますので、これが逆転する、逆流するということは考えられない。さすれば、この事態に対処して、それぞれの国々に独自のいろんな固有の問題がありますけれども、それを乗り越えて粘り強くこの四百万トンの資源を確保するために最善努力をする以外に方法はないのではないか。そして漁業権益を少しでも守り抜くということを第一にし、第二番目は、そのことによって穴のあいた分は、ややもすれば従来怠りがちであったわが国の資源の活用、開発あるいはまた新規漁場の開発あるいは魚資源の有効利用、こういうようなことを、特に沿岸漁業の振興整備等を促進をいたしまして、これに補完をしていく。そして日本の水産をして安泰なものにしなければならない、こういうことになろうかと存じております。
  91. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 私が申し上げておりますように、いまおっしゃったことは抽象的にはわかるんですけれども、しかし、もう猶予できるんだろうか。ニュージーランドあたりも大変厳しい姿勢日本へ臨んでいる。将来、これは可能性があるかどうかということは別問題かもしれませんが、もし中国が二百海里経済水域を宣言した場合、どうなるのか。その場合、尖閣列島は一体どういうふうな措置がなされるのか、もう現実的な問題が実は連なっているわけでございますね。  こうしたことは、もうすでに、当面の問題あるいは将来当然起こるであろうと予測される問題、十分部内においても検討がされてきて、一応の目安というか、今後、日本政府として、こうなった場合こうする、あるいは断定的なことは言えないにしても、相手国があるわけでございますから、こうしたことまですでに踏み切るだけの基本的な考え方というものはおまとめになっていらっしゃるんでしょうか。
  92. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 中国との問題では尖閣列島の問題もありますし、あるいは韓国の場合は竹島の問題もある等々、二百海里の問題が設定されれば、それぞれ厳しい条件がある。特にむずかしいのは、いまニュージーランドあたりでは、ただ単なる魚の問題だけじゃなくて、農産物の輸入とも関連するぐらい、予想もつかないような厳しい条件もあることでありまして、これから一つ一つ乗り越えていかなければなりませんが、全体的にこうなった場合どうする、ああなった場合どうすると、御指摘のとおり相手のあることでもございますから、厳しさは痛感いたしておりますけれども、でき上がりはこうなってこうするというまだ全体的な見通しをまとめる段階にはなっておりません。
  93. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 たとえば、午前中にも問題が提起されましたけれども、サケ・マスの問題、母川国所属というんですか、大変けったいな理由づけをアメリカもカナダもつけているようですけれども、回遊性のある魚に国旗を一々立てるわけじゃございませんので、どこの国のサケかマスかなんということは大体判断もつかないわけですけれども、そこで、私は私なりにこう調べてみますと、漁業資源が大変豊富だと言われている地域は、先ほども少しく触れましたけれども、北太平洋であるとか南洋であるとか、いわゆる先進国の周辺に大体豊富な漁業資源があるんではないだろうかというふうに見ることができるわけです。  そこで、とりあえずの措置として、こうした問題が将来もぎすぎすしながら、あるいは二国間あるいは多国間において感情的な問題にまで発展するということを避ける上からも、もっと友好的な話し合いのもとに措置がとられるという、そういう考え方を持てば、一つは、たとえば日本を中心にして、とりあえずアメリカ、カナダ、ソビエトというこの四カ国でもいい、国際条約みたいなものを結べないのか、あるいは国際委員会というものをつくって何とか調整の役割りというものを果たすような行き方というものができないのか。そのためには、日本がイニシアチブをとっていくことができないのかどうなのか。
  94. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) そういう議論も一方にございます。わが国が言い出すだけじゃなくて、ほかの国からも言い出すような空気もないわけではありません。  その場合、果たして日本が有利になるのかどうか、利害が錯綜いたしておりますから、やっぱり二国間でやった方がいい場合もあり得るのではないかと、その辺は慎重に総合的に判断しませんと、むしろ全部で集まった結果一人だけのけものになるというような場合もないわけではないということでございまして、御提案のことは十分念頭に置いて、どうしたことがわが国益に合致することであるかと判断をしてまいらなければならないと思っておる次第でございます。
  95. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 恐らく、日本のみならず、他の国においてもそれぞれの立場から国益というものを十分に基本に置きつつ考えもし、また取り組んでもいるだろうというふうに思うわけです。そうした国益、国益というものをお互いにむき出しにしている場合に、果たして円滑な話し合いが進んでやれるものかどうなのか、いまの日ソ漁業交渉のように、まことに不当といえば不当、先ほどもあくまでも実績主義を貫くといってみたところで、結局は、等量主義の何か形を変えたかっこうに結果としては終わったんじゃないかということになれば、もっとやはりまだ話し合いが十分弾力的にできる、まずアメリカとかカナダだとか、そういうところで新しい一つの世論というものを起こすことも私は一つの手だてではあるまいかという含みを持っていま申し上げたんです。いかがでございましょう。
  96. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) アメリカは、わりあい、魚の資源が国全体の大きさあるいは国民の人口等に比べれば、余剰主義というものが守られても相当余剰力があるわけでございますから、そしてまた外交ルートも非常にいいというようないろんな条件からわりあいうまくいっております。ただ、サケ・マス問題になりますと、これはまた母川国としての考え方を持っておりまして、かなり積極的な意見もないわけではありません。  そこで、まずアメリカとの話し合いを十分にして、この余剰の原則ということでかなりの実績をとらしていただく、余剰主義を貫きながら実績主義も守られる、こういうことで突破口をし、そういった外交をほかの国にもお願いするということでは、日米の漁業交渉というのは非常によかったのではないか。でサケ・マスについても厳しい点はありますけれども、まずアメリカ、カナダ等と話し合って、その上でまたソビエト等に交渉していく、こういうことが、御指摘のとおり、意味ある外交のあり方ではないか、こう思っております。
  97. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これはまるっきり素人的な発想かもしれませんけれども、たん白源というものを魚に求めている国、あるいは動物たん白を求めている国、それぞれその国の習慣、いままでの歴史的な経過によってそれぞれの違いがございましょう。ただし、漁業資源に見る限りにおいては、いわゆる海に面してない国、そういうところもございましょう心また漁業技術そのものが非常におくれているという上から日本のようなみごとな操業ができないという国もございましょう。それに加えて、先ほど中間で触れましたけれども、お互い自分の国の権益というものを主張する余り、あるいはそれを戦略的に使うかどうかは別問題といたしましても、将来、先ほども御答弁にございましたように、まさに海洋秩序というものは混乱期に入る。となれば、あるいは海洋法会議の結論を待っていいのか、あるいはやはり一番切実に影響力をこうむる日本というものがむしろ何にも増して歴史的にも経験的にも深いわけでございますので、そうした知識を駆使しながら、先頭に立って将来のあるべき海洋秩序のあり方というものを基本に置きつつ、いま申し上げたことを含めてやらぬことには、これは将来どうにもならない問題になるということを私は私なりにやっぱり受けとめざるを得ない。  そういったことが北海道漁民にいたしましても、九州方面の漁民にいたしましても、一体、政府は何を考えているんだろうと、それはもちろん専門的な外交折衝ということにはむとんちゃくかもしれません。しかし、今日ほど、北海道漁民にしても九州の漁民にしても、一体、外交のこれからの推移というものはどういうふうに展開されるんだろうということを、もう実につぶさにその推移というものを見守っているに違いない。それだけにやはり政府一つ一つやる行動、自信を持ってこれから展開する漁業外交なら漁業外交と言ってもいいかもしれません、こうしたものを、基本的な発想に基づいた展開というもの、将来の五年先、十年先のビジョンというものを掲げながら、そうして当面する問題にどう対応していくかという、こうしたことを連動させながらお示しになることが政府としての責任であるまいか。これはいままで申し上げたことを総括して、さらにその結論として、ひとつ御答弁を伺いたいわけでございます。
  98. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まさに御指摘のとおりで、海洋秩序が大きく変わろうとしておる、二百海里時代というものが突如出たわけでありませんが、ここ数年来の動きでございます。海洋法が出てからならばまだしも、海洋法がまだ合意を得る前に、アメリカに先駆けて実施された、そして相次いで次々と出てまいりまして、いま苦慮をしているのが日本外交であり、政府の当面する課題になっております。  厄介なのは、これはすべて海洋法なり、二百海里というものが、国益、自分の権益を守ろう、そこから出たことでございますから、その国益というものが共通しておりませんで、それぞれの国によって条件が違うというものでありますから、これは画一的にどうするということも十分配慮しなければなりませんが、やはり個々の折衝を通じて粘り強く権益を守っていかなきゃならぬ。ある国によっては技術を提供することによって打開ができるであろうし、あるいは経済協力をすることによってできるであろうし、その他いろんな問題をきめ細かく一つ一つ解決していかなければ、この問題は総括的に解決できるものではないのではないか。  もとより、そういった厳しい事態を迎えての外交なり何なりを客観的に考え直さなければならぬ点もあろうかと思います。目先の外交ではなくて、長期的な、あらゆる国から協力を得られるような外交姿勢などもその一つだと思いますが、何分にも、ここ数年来出たことであり、それぞれの国の国益がその国によって違う、多様化しておるということでございますから、この際、粘り強く一つ一つの国に対応して少しでも実績を守っていく、こういう姿勢で貫いていくより方法はないのではないか、こう思う次第でございます。
  99. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、ソ連の監視船によるところの取り締まり状況、非常に厳し過ぎるんではないだろうか、要は、この協定の解釈が統一されてないんではないかという分析、見方もあるわけです。  なぜ、一体、日本漁船だけが余りにも拿捕される数が多くて、罰金を科せられる金額が多過ぎるのか。アメリカの二百海里水域内においては、八カ月間の間にわずか四隻、罰金が千百万円。それに対して、わずか五カ月間で一億数千万も超えているという状況、同じ二百海里水域ですね。それはいろんなその要素は違う面もあるかもしれません。これはその協定の解釈上の違いなのか、一体、どこに問題があって、こういうようなことが未解決のままに今日なおかつ漁民の不安を買わなければならないのか、その点いかがでございますか。
  100. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに、日ソ漁業の暫定協定が発効して以来、最近までの間に、ソ連の監視船によりまして臨検を受け、違反として指摘されたケースが非常に多いわけでございます。ちなみに、その件数を申し上げますと、十二月十日現在で百六十一件というふうになっております。  ただ、その中身を若干検討してみますと、そのうちで明らかに日本漁船の方に非があるというふうに考えられますものが百二十一件というふうになっておりますので、これらはやはり日本漁船が、特にソ連海域においては多数の零細な漁船が出ておりまして、十分二百海里時代というものを理解していなかったというような点も反省をしなければならぬと思いますし、私どもの指導が十分でなかったという点もあろうかと思います。ただ、私どもは残りのケースにつきましては、これはお互いソ連の方も日本の方も、解釈が必ずしも一致していなかったとか、それからきわめて不注意であったとか、誤解があったとかというようなケース、それから私どもといたしましてはとうてい容認ができないような、私どもからすれば不当な拿捕であったというふうに認めざるを得ないケースもございます。  そこで、私どもは、数次にわたりまして、両国の専門家同士の会議を催しまして、相互の解釈統一、さらに今後違反が多発しないように、操業日誌記載方法のできれば簡素化もいたしたいということで相談をしてまいりました。また、先般からやっておりますモスクワでの交渉におきましても、第三グループにおきまして、取り締まり関係の問題を専門に相談をしてきたわけでございます。そこで明らかにするもの、お互い合意に達するものをできるだけ多くいたしまして、合意に達したものは、これを文書化するという作業を現在いたしておりますし、また、さらに残った問題につきましては、現在もモスクワに専門家を残しまして、できるだけ早く両国合意に達するように努力をさしているわけでございます。  何と申しましても、六千隻以上に及ぶ船がソ連の二百海里内には出漁いたしております。それらの船に早く趣旨を徹底いたしまして、今後は、こういうトラブルの発生が少なくなるように努力をいたしたい、かように考えております。
  101. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 今後はということは、一体、どういうふうになるのか見当もつかぬわけですが、いまおっしゃっている間にも漁民は操業しているわけですね。具体的に日本漁民にも非があったという点が指摘されております、それはございましょう。一体、二百海里なんというのは、それは中にはもちろん計器も持っていない船もあるかもしれません、どこで見分けをするのかという問題もありましょう、素朴な考え方で申し上げれば。で、いま御答弁にもございましたように、相当数が中小零細の漁船なんですね。刑事事犯でも、初犯の場合には、軽ければ説諭ぐらいで本当は解き放たれるというのが日本のしきたりでございます。しかし、今回の日ソ間における、まあ国対国の関係だからと言ってしまえばそれまでかもしれませんけれども、全然弾力性がない。言うなれば一刀両断と、こういうような取り締まりの状況で、戦々恐々として漁業に従事している漁民のことを考えれば、何とも情けない、言いようのないふんまんが起こるのは、私ばかりじゃなくて、長官自身もそういうお気持ちだろうとぼくは思うんです。  なれば、一体、具体的にどうその短期間の間に、まず姿勢を正す一環として、日本漁民に対する啓発指導というものを行うその方法、それはどういうふうに徹底させられているのかどうなのか。いま指導が足りない点もあったということを言われました。しかし、単にそれだけでは、いわゆる漁民は毎日のように朝から晩まで夜遅くまで操業しているわけです。どういう時間にどういうふうに教育をするのか、啓発をするのか、これもぼくは問題が残るんではないだろうかと思いますが、その辺をどう調整されて、今後、事故の絶滅を期しながら、安心できる仕事ができる方向へ向けられようとされているのかどうなのか。
  102. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに事故を減らす、絶滅する手段で重要なものは、やはり趣旨の末端までの徹底を図ること、これが第一だと思っております。  これはソ連の方を言うわけじゃございませんけれども、ソ連の方は、漁船団という相当大きな船ばかしが操業しているという関係もございましょうけれども、ソ日協定が発効いたしましてから、彼らは一定期間港へ戻って、操業を中止いたしまして、その間にソ日協定において守らなきゃならない事項の趣旨の徹底に努めたというふうに聞いております。ところが、日本漁船はきわめて中小零細でもございますので、休漁の期間が非常に多いと生活の上での問題があるということで、もう操業ができるとなれば、一日も早く現場に駆けつけて操業をしたいということでございますので、私ども、いろんな機会を通じまして講習会もいたしました。それから業界を通じての指導もいたしましたし、パンフレットその他も交付いたしておりますけれども、必ずしも従来は末端まで趣旨が徹底していたかと言われますと、十分ではなかったと反省をしているわけでございます。  そこで、私どもは、先ほど申し上げましたように、日ソ間で合意されましたような事項が文書化されてまいりますので、それらを一日も早く、私たちみずからも講習会を開くと同時に、業界でもまんべんなく講習会その他を催していただきまして、確実に正確に早く趣旨が徹底するように今後とも努力をしたい、かように思っております。
  103. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それはもうぜひ強力に推進していただきたいと思うんですが、われわれが客観的に新聞等の報道を通じて見た場合でも、ソ連側漁船を拿捕した場合に、違反船として科する罰金の額ですね、これは前回も私は鳩山さんのときにこれを尋ねたことがあるんですよ、全然それは決まってないというのです。じゃ何を一体基準にして罰金を要求するのか。非常に較差がはなはだしいんですね。十万単位もあるかと思うと、何百万単位もあるわけです。一体、どこにそういう違いがあるのかということが一つですね。  ほとんどが操業日誌の不備ということでつかまっているというこの事実が指摘されているわけです。単にそれだけのことで、あるいは船長のお手盛りか何か知りませんけれども、簡単に決められたんでは、泣くに泣けない。船によっては、せっかくとった魚の漁獲高というものが仮に四百万円だとすると、罰金が四百五十万円も取られたと、こういう例が伝えられております。これじゃ油を使って、しかも欠損をして港へ帰ってこなくちゃならぬ、どうなっちゃうのかと。これはもうこうしたこの委員会で私が別に声を強めて発言しなくても、水産庁の方でもその実態についてはよく掌握をされていると思うんです。この点については、実際の協定締結するに当たって、実務の段階ではどういうふうな話し合いがされたのか、この辺はどうなっているんでしょうか。
  104. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) これはソ連の法制のもとにおきまして、違反船をとらまえまして罰金を科するわけでございますから、法制度の運用そのものにつきまして私どもがとやかく言う権限はないということがまずございます。それにいたしましても、違反船が科せられました罰金の額の中には、相当の、御指摘のとおり、較差がございます。  ただ、私どもよく調べてみますと、一つのケース、たとえば操業日誌の記載事項が違反をしているというケースだけで罰金が科せられたということじゃなくて、二つも三つものケースが重なって合計で幾らと、こういうようなことからくる罰金の較差の発生もわれわれは知っております。それからまた、罰金以外に、違反をしまして漁獲した魚につきましては一尾当たり幾らというような、賠償金のようなものですね、それもあわせて徴収されているというようなこともございます。  そこで、私どもは、できるだけそういう金を科せられた場合には、向こうがどういう内容で、どういう理由でこれだけの罰金を科したかという調書ですね、これを必ずもらってくるようにという指導をいたしております。当初は、必ずしもソ連側もすべての船に調書を渡していなかったようでございますので、これは必ず渡してほしいということをソ連側にも申し入れましたし、それから各漁船にも必ずもらってくるようにという指導をいたしております。  それを少し分析いたしますと、そういうようなケースの違いのほかに、確かに同じケースでも罰金の額が違うということがございます。そこで、ソ連側にこれを確かめましたところ、ソ連といたしましては、現場の監督官にある一定の幅を与えて、その幅の中で罰金を科する権限を付与しているということでございます。その幅はどういうことで出てくるかといいますと、違反の態様のほかに、拿捕いたしました船長、船員がソ連側の監督官にどのように協力をしたか、協力の度合いその他を勘案をいたしまして、第一線の監督官が罰金を科し得るという制度になっているようでございます。それそのものをとやかくは言えませんけれども、それにいたしましても、余りばらばらな罰金は必ずしも適当ではないので、それはその都度私ども発見次第ソ連側に申し入れておりまして、少なくとも整々とした罰金額を科するように申し入れはいたしておりますし、今後も、おかしなものは発見次第申し入ればいたしたいというふうに思っております。
  105. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまお伺いしておりましても、まだ結論的に出ていないわけですね。はっきり申し上げて。  園田さんも、いま長官の答弁を聞かれて、言うまでもなく、特に中小零細漁民というものが不当な、心ならずも違反を犯して拿捕された、罰金を取られた、余りにもひど過ぎる、あるいはその人自身の暮らしにも重大な影響をもたらす、これは枚挙にいとまがないと言っても言い過ぎでないぐらいの数に上っているとぼくは思うんですね。こういったことを踏まえて、やはり来春早々訪ソされるときには、それらも恐らくお考えの中に入れながら折衝もされるんであろう。もちろん細かいことは実務家段階でもって取り決めればいい問題かもしれませんけれども、せめて大まかであってもいい、もっと弾力的な取り決めの運用というものをソビエト側としてもぜひ適用してもらいたいというような要請を私はすべきじゃないかと思うんですね。まだ協定が実施されてそう日も長いことではありませんので、その取り扱いについてはふなれな点もあるかもしれません。ふなれがあるからといって容赦なくやられたんではたまったもんじゃないのは漁民の方であることは言うまでもありません。こうしたことはやはり代弁して、その利益を守る立場から、園田さんとしては外交折衝に当たっていただきたい、こんな感じもするんですが、余り細か過ぎていけませんか。
  106. 園田直

    国務大臣園田直君) 当然のことでありますから、向こうに参りましたら、二国間問題でいろいろ話をしてみたいと思います。  なおまた、いまのところ話がついておりませんが、この取り締まりあたりも一方的なことではなくて、共同で取り締まりをするとか、何か方法がほかにもないか検討もしてみたいと考えております。
  107. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 さしあたって漁民が受ける心理的な影響の一番大きいのは、常につかまるんじゃないかという恐怖心を持ちながら、しかも生活がかかっておりますので出ざるを得ないと、全くもう言いようのないかわいそうな気がいたします。  そうした点を考えた場合、できるだけ洋上での話し合いでもって解決できる道というものも当然考えられていることはわれわれも承っておりますけれども、残念ながら、果たして日本を代表して日本漁民の利益を守るために折衝の場に臨む、いわゆる言葉のきわめて通ずる、そういう人が必ずしも漁船やあるいは警備艇に乗っているとは限らない。この点の体制強化というものは、どういうふうにしたらそういう問題の解決につながるかどうか、この辺も当然連動して水産庁としても総合的にお考えになっていらっしゃるんではあるまいかと思いますが、いまどこまで進んでおりますか。
  108. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) わが国の二百海里内の漁業秩序の維持はもっぱら保安庁にお願いをしているわけでございますけれども、ソ連船との接触が見られる地域、特にソ連の二百海里内の水域等につきましては、水産庁が水産庁の官船のみならず用船もいたしまして、現在、北洋を中心にいたしましては七隻稼働いたしておりまして、来年、さらにこれは増強をいたしたいというふうに思っております。  それからトラブルにつきましては、御指摘のとおり、もし問題がある場合には官船がそこへ入りまして、話し合いをして問題の解決をするということが望ましいわけでございまして、従来も、十件ばかしは、われわれの官船が間に入りまして円滑に話を進めたというケースがございます。今後も、必要な場合には、できるだけ紛争の場に駆けつけまして円満な解決を図りたいと思っております。  また、当然、そういう官船にはロシア語のできるような人を乗せまして、意思がスムーズに通ずるようにすることは当然でございまして、私どもそれに現在努めているわけでございます。ただ、なかなかロシア語のできる有能な人を獲得するのがむずかしくて、現在、その充員に努めているというのが実情でございます。
  109. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 拿捕される傾向を見てみますと、これももう統計上明確になっているはずですが、あの三角地帯ですね。ここは本当に、私もかつて行ったことがありますけれども、非常に資源の豊富なところですが、ちょっとまかり間違えば入ってしまうというようなことでありますし、その辺の入らないような注意の喚起というものも当然海上保安庁あたりと水産庁が連携をとられて、十分そういうような違反を犯さないようにという、洋上においてもそういう警報を発するとか、あるいは空の上からも、ときには定期的にヘリコプターを飛ばしながら監視を続けるとか、立体的なそういうことも、こういう時期、こういう段階でございますし、みんながなれるまでの一定期間だけでも、そういう措置がとられることが私は望ましいんじゃないかというふうに考えるのですけれども、そういったような取り組みは現在考えられていないのかどうなのか。
  110. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 当然、紛争が多発するような地域につきましては、重点的に私どもの指導船を配置するということで従来も対処いたしておりますし、先ほど申し上げましたように、今後も、そういう地点に指導船を増強したいというふうに思っております。  ただ、従来の傾向、特に北方四島周辺の問題を見ますと、無許可で入っているとか、そういうようなケースは、ほとんどございませんでして、むしろソ連側が領海と称しているような地域に知らないで入ってしまったということによって拿捕されるというケースが非常に多いようでございます。私どもは、やはりそういうすれすれのところでの操業はなるべくこれはしないように、危ないですから、だからなるべく危険な水域には近寄らないで、安全な水域で操業するように指導しておりますが、今後とも、そういう点の指導は重点的にやってまいりたい、こういうふうに思っております。
  111. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 次に、これは確認しておきたいことなんですけれども、前回も、私、大変不合理だなと思ったことを申し上げたことがあるんです。きょうは厚生省がおいでになっていないから、どうかわかりませんけれども、知っている範囲でひとつおっしゃっていただきたいと思うんです。  拿捕された船は必ず検疫を通らなくちゃなりませんね、そういう決まりになっているそうです。で北海道あたりは主要な港には検疫所もあるからいいかもしれません。ただし、港によっては、とにかく沖合いでもって検疫官の来ることを待ち、そして検疫を受けた上で初めて入港を許される、こういう仕組みになっているんだそうであります。ところが、検疫官の勤務状況というのはそう夜中ばっかり行くわけじゃございません。大体、船は朝方にかけて入ってくるわけですね、五時間も六時間も検疫官の到着を待たされる。そうすると、言わずもがなでございますけれども、もう朝十時か十時過ぎあたりに船が市場に入ってきたんでは、魚価がもう半分以下にたたかれてしまう。拿捕された上に検疫で待たされて、それも問診——問診なんていう程度じゃないんですね、ただ聞くだけ、どこも異状ありませんかと。検疫官も少ないわけですからね、異状なければそれでもうおしまい、別に聴診器を当てるわけでもない。そういうことを何とか改善できないのかなと。これは実際鳥取であった話なんです。恐らく北海道でもそういうことは同じはずなんです、法律の立場から言えば。  そういったことについて、その後、どういうふうに改善されているのか。あるいは検疫を受けるにしても、その陣容というものは整備されつつあるのかどうなのか。で魚民が魚価が値下がりをするという不安を持たずに入港できるのかどうなのか。これはその後どういうふうになっているのか、もうかれこれ二カ月ぐらいたっています、私がこの委員会で質問いたしましてから。
  112. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) そういう問題があるという御指摘は私ども承知いたしておりまして、おっしゃるとおり、捜査を受け、悪い場合には罰金も受ける。さらに、そういう被害をこうむるということは問題でございますので、御指摘のとおり、これは厚生省の所管でございますので、厚生省にも強く申し入れをいたしまして、現在、厚生省の方から現地の方にそれぞれ指令がいっているというふうに聞いております。私の方からも、当然、漁業関係の所管の部局が地方にございますので、それと常時連絡をとりながら、いま御指摘のような問題が発生をしないように指導はいたしております。今後とも、いままで経験していない点もございましょうから、あらかじめ問題点を指摘いたしまして、そういうことの発生のないように心がけてまいりたいと思っております。
  113. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 現在、未解決になっている日ソ間における問題は何件あるんですか——簡単でいいです、わかる範囲で結構です。
  114. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 十二月十日までに、先ほど申し上げましたけれども、ソ連の監視船の臨検を受けましたのが百六十一件ございます。そのうち罰金等を支払いましたものが百四十九件でございます。  で、十二件はどうなっているかと申しますと、そのうちで罰金は一たん徴収をされましたけれども、日本側の抗議によりまして罰金を返してくれたというのが五件ございます。残りの七件がまだ日ソ間で話し合い中でございます。私どもは不当であるということ、向こうは不当でないということで、まだ話し合い中でございまして、罰金を支払いするに至っていないという紛争状態のものでございます。
  115. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いずれにしても、話し合いということになれば時間もかかるかもしれませんけれども、重ね重ねで恐縮でありますが、漁民にとってみれば、もう一刻も争う、一日も猶予ができない、常にそういう立場に立たされているということを十分お含みおきいただきながら、そういう未解決の問題は長期にわたらないように、できるだけ短期間に日ソ間において折衝されて解決をしていただきたいなと、こう思うんです。  そのほかにも細かく分ければ、許可証の問題、コピーの許可証を持っていってそれが摘発されたとか、あるいは肩がわりをさせられたとか、いろんな問題があるわけでしょう。これじゃ踏んだりけったりですわ、はっきり申し上げて。その辺にソビエト側にもなれない点というものがあるのかもしれません。しかし、なれないからといってやられたのでは、こっちはやられっ放しですわ。じゃ日本の二百海里水域においてどれだけの一体ソビエト漁船を拿捕して、負担金をどれだけ要求したのか、微々たるものです、日ソを比較してみた場合に。それは漁場が違うからそうかもしれませんけれども、それにしても余りにも理解の度合いが差があり過ぎるんじゃないか。そういう点から協定自身に対する理解の仕方にさまざまな受けとめ方があったんでは、これはもう当事者が一番困るわけです。  ということを踏まえて、園田さんが訪ソをされますときにも、十分ひとつその辺を——これは国益でございます、単なる漁民だけの問題じゃございません、申すまでもございませんが。漁業者にとっても消費者にとっても、これは重大な日本の将来展望にかかわる問題でありますだけに、十分、その成果のある折衝をしていただきたいということを、最後に締めくくりとして申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  116. 立木洋

    立木洋君 日ソ・ソ日の漁業協定について、長期の安定した操業ということがひとつ大切な点だと、日本政府としては五年間ということで出されたけども、結果としては一年間、そういうふうになった経緯については先ほどお話を聞いたわけですが、来年、大臣が訪ソされたときに、その問題も出して、何とか努力してみたいというお話を先ほどされました。  しかし、先ほどのお話ですと、海洋法会議で結論が出るまでソ連としては幹部会令が暫定的な措置としてなされておる。海洋法会議というのはいますぐ結論が出るような状態でない。とすると、そういうソ連側が出してきている条件が変わるということはなかなかないだろう。とするならば、努力をされるけれども、結果は、見通しはないというお話なのか、その見通しの点についてもうちょっと大臣の方からお話を聞いておきたいと思うんです。
  117. 園田直

    国務大臣園田直君) 私が参りますについての二国間問題の漁業の問題では、そういう理解を深め、わが方の希望を言うことであって、現実にそういうことが決まるのはこの次の漁業協定で決まるわけでありますから、私のときに結論が出ることはあり得ないと思います。
  118. 立木洋

    立木洋君 いや、それで来年そういう長期的な協定交渉も通じてやっていく見通しがあり得るかどうかということ。大臣が行かれたその場ですっと結論が出るなんというようなことはもちろん考えておりませんけれども、来年一年間の交渉を踏まえた上で、どういうふうに判断されているのか。
  119. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 御承知のとおり、この二つ協定は本年結ばれましたもので、これに基づいた操業というものの歴史はまだほんのわずかでございます。それでいろいろ試行錯誤もございますし、改むべき点もあるかと思いますが、もう一年、さらにまた次は一月からでございますから、ことしのように半年やったというのよりは、もう少し実のある実質的な操業の経験が得られると思いますので、来年の十一月十五日までに協議をするということを取り決めましたそのときまでのまた経験、試行錯誤から得られました経験をもとにして、そのときにソ連側がそれではこれをもう少し長期化しようと言うか、あるいはまたもう一年やってみようと言うか、そのときの様子に応じまして交渉をいたしたいと考えております。
  120. 立木洋

    立木洋君 できるだけ、そういう長期に安定した操業ができるように、早く結論が出るように、漁民としてはいつもこう外交状態でどうなるかということで大変な状態にあるわけですから、そういう点を踏まえて努力していただきたいと思います。  それから、午前中も問題になりました漁獲量が大幅に削減されたという点で、農林大臣が記者会見をなさったあれも読ましていただいたわけですけれども、今回、日ソ交渉で操業水域の拡大が実現しなくて、事実上、北転船の第二次減船が避けられないというふうにも考えておられるようでありますけれども、その点については、どういうふうに御判断ですか。
  121. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 大体、前から予定しておりました一次分三十隻に引き続く二次分の二十七隻は、残念ながら、減船せざるを得ないこととしております。
  122. 立木洋

    立木洋君 宮城県の関係者の話を聞きますと、大変悲痛な話をされておるわけですね。日ソ漁業交渉での漁獲量の割り当ての結果を聞いたが、私たちが期待していた東西カムチャッカ周辺はやっぱりだめだと、それで北転船の操業はゼロに等しくなる、こうなればアメリカ海域に望みを託すことにもなるというふうな話も出されているわけですね。  アメリカの海域の漁獲量は来年八十二万トンですか、スケトウダラは。ことしが八十三万ぐらいですから一万ちょっと減るというぐらいだろうと思うんですけれども、このアメリカ海域における割り当て、日本トロール協会とそれから北転船、北転船が主としてソ連側で、日本トロール協会はアメリカ側だということであったけれども、その北転船を、アメリカ海域での割り当てを少しふやす、前回八万トンぐらいだったのが何か三万トンぐらい鈴木農林大臣のときに手配していただいて、十一万トンぐらいになっているんじゃないかと思うんですけれども、こういうふうなアメリカ海域での割り当てをふやすというふうな方向は御検討されているのかどうなのか、その点いかがでしょうか。
  123. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 今回のソ連との交渉によりまして、北転船につきましては、最大の希望であった操業水域の拡大はできなかったわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、でき得るだけ北転船にも漁獲の機会を与えるようにいろんな種類の魚につきまして配慮したつもりでございまして、大体、ことしの六月から十二月の間に一万六千トン余りの北転船に対するクォータでございましたけれども、今回は、総体といたしまして十四万六千トン程度の北転船に対してはクォータが与えられたというふうに考えております。もちろん、漁場が従来のように主漁場へ行くわけにまいりませんので、制約された漁場の中でこれだけの漁獲を上げるということは相当努力をしなければならぬというというふうに思いますが、この漁場で私どもは二十七隻程度は操業ができるものというふうに考えております。  先ほど大臣も申し上げましたとおり、私どもは、三十隻の第一次減船のほかに第二次の二十七隻の減船をしていただければ、それ以外は、このソ連水域で二十七隻、それからさらに余った船につきましては置網の方にも操業していただくとか、それから調査船等にも転換をしていただくということにいたしまして、一次、二次の減船以外は減船をしないで済むんではなかろうかというふうに思っております。  なお、アメリカでの操業の問題でございますが、確かにことしは八万トンのクォータを十一万トンということで操業をいたしました。ただ、アメリカ水域におきましては、スケトウそのものは若干の減少でとまっておりますけれども、その他の魚につきましては、相当削減をされたものもございます。そこで、アメリカ水域で操業しております船は、北転船のみならず、北洋はえなわとか刺し網とか北方トロールも相当打撃をこうむるんではあるまいかというふうに考えておりますので、それらの影響等を勘案いたしまして、北転船の役目を決め、それで操業をお願いしようと思いますが、現状では、二次の減船までしていただければ、それ以上の減船はなくて済みそうだというふうに考えております。
  124. 立木洋

    立木洋君 これはアメリカ海域でどういう割り当てをするかというのは、これは外交交渉ではなくて、国内的にいろいろ検討して措置していただけることですし、前の鈴木農林大臣の場合も、北転船の立場というものは十分承知しておりますから、私としてはこの配分には十分な考慮を払ってまいる考えでございます、という趣旨の御答弁もありましたし、それから、中川さんも、十二月十六日、農林省で記者会見されたのを新聞で見ますと、関係漁業者から要望の強かったソ連二百海里内の操業区域の改善はできなかったが、その点については水域、魚種別割り当てでできるだけ配慮をする、という趣旨の記者会見での発言もあるわけですが、この点、やはり北転船の場合に、特に中小の漁業者の方が多いわけですから、そういう配慮を十分に払っていただいて、被害ができるだけ少なくなるようにやっていただきたいと思うんですが、その点、大臣いかがですか。
  125. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) そのように一生懸命これからきめ細かくやっていきたいと思っております。
  126. 立木洋

    立木洋君 一生懸命やっていただいて、結果としてうまくいくようにひとつお願いしたいと思います。  それから、先ほど問題になりました罰金の問題ですね。これは先ほど水産庁の方からいただいた資料ですが、百六十一件。で「日本側に何らかの非があったと考えられるもの」が百二十一件。それから「日ソ間で合意に達しているもの又は双方の見解の相異によるもので、ソ側あて抗議中のもの」二十八件。それから「日本側から抗議の結果罰金の徴収をとりやめたもの及び抗議中又は今後日ソ間での話合いを予定しており罰金を未払いのもの」十二件というふうにデータをいただいているわけです。  今度の交渉の中で、さらにどういう種類のものが解決されたのか、あるいはソ連側が手落ちとして認めたのは、先ほど言った十二件のうちの五件だけなのかどうなのか。それから交渉の過程で罰金の返還に同意しなかったというのは、つまりどういうものについては彼らが同意しなかったのか、その内容についてちょっと説明していただきたいんですが。
  127. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま御指摘のとおりの内容になっております。  そこで、私ども、現在、モスクワにおきましてさらにいろいろこの取り締まり問題を交渉いたしておりますが、いままで合意いたしましたのは、証明書の様式とか、それから記入手続等、従来誤解等がございまして要らざる紛争を起こしたというようなものをなくすように精力的に交渉いたしまして、それらにつきましては相当数合意に達しまして、合意文書の取り交わしというところまでいっております。  ただ、先生御指摘の、いままで見解が相違しておる、たとえばビルジ排水の問題とか、それから食糧として積み込んだハタハタはおかしいではないかというようなわれわれの主張に対して合意ができないとか、そういうような問題等につきましては、引き続きモスクワに滞在しておりますので、早期にこれらの問題についてのわれわれの主張を相手方に認めさせるように努力をいたしたいというふうに思っておるわけでございます。  従来、罰金が返還されたというのは、たとえば先ほども御指摘ございましたけれども、かわりに払えとかいうようなこと、これは厳重に抗議をするということで相手方も非を認めるというようなケース、これは残念ながら五件ぐらいしかございませんけれども、そういうものもございます。私どもは、一たんすでに罰金を払ったケースが二十八件ございますので、これを取り戻すというのは容易でないと思いますけれども、しかし、この際、これは明らかにしておかなければ将来やはり問題が再発するおそれがございますので、私どもは粘り強く抗議をし、われわれの主張を相手方に認めさせるという努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  128. 立木洋

    立木洋君 北海道で起こった九月六日の新幸丸ですね。これはさっき言ったヒトデの生きておったものが積み込まれておったという。それで罰金が十八万四千六百四十円ですか。それから九月十八日、これも同じ北海道の第十八幸勝丸、これは罰金百万円、カニのトン数の記載があるけれども、漁獲尾数が書いてないという。それから十月二日の第十五日東丸、これは監視船の前を横切って妨害したのではないかというふうなことで罰金百万円。これらの問題についてはまだ解決されていないんですか。
  129. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) ヒトデ、ツブの問題につきましては、その後、いろいろ交渉をいたしまして、やはり混獲は混獲だということで、これは漁獲として認められていないと、われわれがたとえばヒトデについては有害な動物ではないかと、そんなものをとって二百海里の取り決め違反だというのはおかしいということを言ったんでございますが、なかなかそれは通らなくて、話ができましたのは、決められたもの以外をとった場合には早くこれを船外に捨てる、そういうようなことをしてもらえれば、これは問題がないというところまではいっております。しかし、これをとって違反でないというところまではまだいっておりません。  それからカニの尾数等につきましては、今回、いろいろ相談いたしまして、明らかにこれは尾数で計算をし記入をするというようなことで合意をいたしましたので、今後は、そういう指導でやってまいりたいというふうに思います。  それから監視船の前を横切る云々は、これは実態判断の問題でございまして、私ども、その船に聞きますと、必ずしも故意にそういうことをやった覚えはないという話は聞いておりますけれども、何分にもその場に立ち会った者もいないということでございまして、事実の問題でなかなか解決が困難であるというふうに思っております。
  130. 立木洋

    立木洋君 先ほども質問されていろいろ議論があったんですけれども、やっぱりソ連側の取り締まりというのは不当な点が大分ある。それから、もちろん先ほど認められた日本側にも非があるものがある。これは指導を徹底されると同時に、いろいろな対策を講じて、こういう件数が少なくなるようにしていっていただきたいと思いますが、その点、こういう取り締まり違反という形での拿捕が今後減少するという、そういう展望をお持ちになっているのかどうなのか。
  131. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに、もうすでに減少をいたしております。数字で申し上げますと、全体で百六十一件ということでございますが、八月には六十三件でございましたのが九月には二十七件、十月がちょっと多くて三十五件でございますが、十一月が八件、それから十二月は十日まででございますけれども、二件というように漸次減少をいたしております。  これはわが方の船もなれてまいりまして、まさにケアレスなミステークはなくなってくるということもございますし、ソ連側も取り締まりになれてきたということもあろうかと思いますし、今後は、さらにこういう発生の絶滅を期したいということを考えております。
  132. 立木洋

    立木洋君 それから、韓国漁船による日本側に対する被害件数や被害の額、これは五十一年、五十二年、この二、三年どういうふうに推移しているのか、その点について。
  133. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 北海道周辺におきます韓国漁船の操業によりまして、わが国漁民が漁具等の被害を受けたケースでございますが、四十八年から大体発生しておりまして、四十八年が九件、四十九年が六件、五十年が二百九十六件、それから五十一年が非常に多発しまして五百五十七件、それから五十二年が四月から十二月まででございますが、二百五十五件ということになっております。で合計が千百二十三件ということになりまして、被害金額のトータルが三億八千四百万円ということになっております。
  134. 立木洋

    立木洋君 これはずっとふえてきているわけですね。現在、日本近海での安全操業に関して韓国漁船による被害が非常に大きな問題になっているということが現地でもよく言われているわけですが、北海道の指導漁連などについても、この点、強い要望書が出されてきているというふうに思いますけれども、こうした事態についてどういうふうに判断されておられるのか、その点、今後、どういうふうに措置をしていかれるおつもりなのか、その点について。
  135. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに韓国漁船による被害が五十一年の末ごろからふえまして、一時ちょっと減りましたけれども、若干最近もふえているということ、これはやはり韓国が北洋、特にソ連の二百海里内から締め出しを受けまして、一時操業する海域がないものですから、多数北海道の周辺に集まってきたという時期がございました。そのときに相当被害が多かったというふうに考えます。最近は、それぞれ韓国の水産庁の指導によりまして、そう多数の船を北海道ばかりに集中をさせないという指導がなされました結果、当時よりも被害は減っております。  ただ、問題は、北海道漁民も言っておりますけれども、わが国漁船ももとより、またソ連のの漁船もソ日の協定によりまして守っておりますような操業の規制、たとえばオッターラインの中では操業しないとか、それから、まき網等の期間の制限等につきまして、韓国船が必ずしもそれを守ってくれていないわけでございます。当然領海内には入っておりませんけれども、わが国漁船が守っているような資源保護のため、また調整のための規制を守っていないという点が大きな問題でございます。それによりまして、やはり資源保護の問題のみならず、漁具等の被害も発生しているということでございますので、かねてから民間同士の話し合いのみならず、私どもの役人のベースにおきましても、しばしば交渉を行いまして、先般、私は十一月の初めにも韓国に参りまして、まず、先ほど申し上げましたように、わが国漁船もそれから外国漁船というソ連漁船も守っているような規制、特に資源保護の点から、また沿岸との調整の点から守っているオッタートロールの禁止ライン、これはぜひ守ってほしいということを申し入れたわけでございます。  韓国側も、われわれの言い分にはある程度理解を示すのでございますけれども、従来、韓国漁船がそういうオッタートロール禁止ラインの外で余り操業した経験がない、そこで操業しても漁獲があるのかどうか非常に自信がないので、にわかに漁場を移すわけにはまいらない。できるならば、そういうところでもってこういうように漁獲が可能であるというような資源の状態等の資料が欲しいというところまではきておりますが、直ちにわが国の規制の諸規則を守るというところまではいっておりません。これは粘り強く、また、なるべく早く私どもの要望を守ってもらうように、これは交渉をいたしたいというふうに思っております。  それから、すでに起こりました損害についても、賠償の処理、それから今後の安全操業の問題等につきましては、これは民間の委員会を常設いたしまして、そこで解決をしようということにつきましては合意をいたしまして、すでに十二月の初めに第一回の会合がソウルで持たれております。第二回以降も、一月の末ないし二月には開くということになっておりますので、私どもは、民間のライン並びに政府の下部の話し合い、両方によりまして、できるだけ早く韓国船の操業について秩序ある操業をしていただくということを確立いたしたいというふうに思っております。
  136. 立木洋

    立木洋君 北海道の指導漁業協同組合連合会から「当面する被害防止措置として、緊急に次の対策を実施されたい。」という二点、これは長官もごらんになっているだろうと思いますけれども、「特に対韓国漁船専門の取締船を、本道各海域毎に配備し、昼夜を問わず、常時監視体制の強化をはかること。」。二つ目が「漁具被害の未然防止の徹底をはかるため、沿岸スケソ・カレイ等沿岸漁具敷設海域において、韓国漁船が操業する際には、厳重なる指導取締りを行ない、操業中止あるいは当該海域よりの退去措置等を講じられたい。」という趣旨の要望が出されておりますが、これについては、どういうふうに検討されておりますか。
  137. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) もうすでに、北の方では、先ほど申し上げましたけれども、七隻の官船並びに用船によります指導を行っております。それも特に北海道の御要望によりまして、最近、二隻を増強いたしまして、そういうことにいたしておりまして、増強された船は、御指摘のとおり、韓国船が主として操業しているところを中心に指導するようにいま指示をいたしておるわけでございます。  また、これだけでは必ずしも十分でございませんので、来年度におきましては、さらに指導船を増加いたしまして、紛争多発地帯につきましては重点的に指導船を配置するように、それによっていまの御要望の線にこたえてまいりたいというふうに考えております。
  138. 立木洋

    立木洋君 外務省の方にお尋ねしたいんですけれども、韓国で十二海里が問題になって、そして竹島について線引きをするとかというふうな報道がなされておりますけれども、この点の事実関係はどういうふうになっているでしょうか。
  139. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) 御指摘のとおり、韓国国会は、十二月十六日に、領海法を成立させたわけでございます。ただ、実際の公布は四カ月以内に大統領令で定める日から施行されるということになっております。  それとの関連で、竹島周辺についてどうかというお尋ねでございますけれども、特に明示的に領海十二海里の具体的な線引きを竹島周辺についてしたということは承知いたしておりません。
  140. 立木洋

    立木洋君 もし十二海里に、四カ月以内ですか、発令されて、竹島についても線引きされるというふうな事態が起こった場合には、外務省としてはどういうふうな対処をなさるおつもりですか。
  141. 枝村純郎

    説明員(枝村純郎君) 韓国は、御承知のように、竹島は自国の固有の領土であるという立場をとっております。したがいまして、理論的に、竹島について十二海里が適用されるというふうな立場をとるということはあり得ることでございます。これに対しましては、私どもとしましては、歴史的事実に照らしましても、また国際法上も、わが国の領土であるということは明白であるという従来の立場に従って対処していく、こういうことでございます。
  142. 立木洋

    立木洋君 どうも次長さんのお話ははっきりしないのですけれども、大臣のお考えをちょっと聞かしておいていただきたいんですが、きちっとした措置をなさるのかどうなのか。
  143. 園田直

    国務大臣園田直君) いま事務当局が申しましたのは、韓国が理論的にはそういうことがあり得るということで、現実にそういうことはないと確信を持っております。
  144. 立木洋

    立木洋君 そういう線引きは竹島にはしないというふうに大臣はお考えになっている。
  145. 園田直

    国務大臣園田直君) はい。
  146. 立木洋

    立木洋君 先ほど来、問題になってきた外交交渉姿勢として、ソ連の不当なといいますか、強引なやり方、また、韓国の漁船北海道水域に来て日本にいろいろ被害を与えているこういう問題についても、やっぱり毅然とした対処の仕方が必要だろうと思うんですね。外交上の問題として、いつも相手から押しまくられるような感じでは、これはまさに日本の国益というのは守れませんし、それには、こちらとしては、きちんとした理論立て、実際の歴史的な経緯も踏まえてきちんとした立場を述べながらもやっていく強い姿勢というのが私は必要だろうと思うんです。もちろん、これは武力をもって云々というふうなことではなくて、平和を貫くという立場交渉をやらなければならないことは言うまでもないわけですけれども、その外交姿勢のあり方というのは、そういう意味では毅然とした強い姿勢というのがきわめて重要だろうと思うんです。  ですから、韓国のこういう問題についても、厳しい対応の仕方をやっていく必要があるだろうと思うんですけれども、その点についての大臣のお考えを聞いておきたいと思うんです。
  147. 園田直

    国務大臣園田直君) お互いに、外交は、相手の立場を尊重すると同時に、こちらの立場も明確にすることでありますから、取り決めをしました以上は、こちらでも取り決めに従うようにすると同時に、相手国の違反については厳然たる態度をとることは当然であって、それをあいまいにしておくと、とかく問題が逆に起こってくる。これは立木委員と同じように考えております。
  148. 立木洋

    立木洋君 別の話ですが、新聞報道を見てみますと、貝殻島のコンブ漁の問題、これは日本へのソ連漁船の寄港を認めれば、貝殻島のコンブ漁の民間協定による再開を認めてもよいというふうな報道が、新聞でソ連側の意向として出されておったわけです。この点については、どういうふうにお考えになっておられるのか、また、どういう経緯になっているのか。
  149. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 貝殻島周辺のコンブ漁につきましては、従来、民間協定によりましてその操業が行われていたわけでございます。ところが、ソ連が二百海里を引きまして、ことし二百海里の交渉をいたしたわけでございますが、そのときには、コンブの採取、ソ連沿岸二百海里内でのコンブ漁は認めないということになりまして、一応、従来の民間協定の継続ということがなくなったわけでございます。ところが、地元としましては、強くやはり貝殻島周辺の漁場というもの、これをぜひ確保してコンブ漁を続けたいという意思がございまして、これは先ほど申し上げました二百海里内の漁業交渉経緯から見て政府間ではなかなか困難であるということから、民間で話し合いをするということになりまして、先般、亀長大日本水産会の会長が訪ソをされました折に、イシコフ漁業大臣にお会いいたしまして、この問題が話題になったわけでございます。  私ども聞いておりますのは、ソ連邦として、今後、従来と同じように民間同士の話し合いによりまして、この貝殻島周辺のコンブ漁、これを認める用意があると。ただし、その条件といいますか、条件としては、ソ連漁船に対しまして日本漁港の設備の利用、サービスの提供、これをぜひやってほしいという話があったというふうに私どもは聞いております。この問題は、いずれ大日本水産会の方で対処の方針を決めまして政府の方にも話があるであろうというふうに考えておりますので、その場合には、政府としてひとつ慎重に検討してまいりたいというふうに思っております。
  150. 立木洋

    立木洋君 ソ連漁船の寄港の問題については、外務省の方としては、どういうふうに御判断なさっておりますか。
  151. 園田直

    国務大臣園田直君) ソ連の方で寄港をしたいという希望が一貫してございまして、この前の漁業交渉の際にも、折あらば、そういう問題が出てきたわけであります。  外国漁船の入港は、外国漁業規制法第四条によって農林大臣の許可する事項でございます。わが方では、修理その他で寄港するということはケース・バイ・ケースで前向きに検討していくことを考えておりますけれども、寄港について、貝殻島のコンブと交換条件になるべき筋合いのものではない、このように考えております。
  152. 立木洋

    立木洋君 それから、いま貝殻島の新しいコンブのあれをつくるために、石を入れてですか、造成しているというふうに聞いていますけれども、この進行状況と、この見通し等々についてお尋ねしたいのですが。
  153. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) いま、私ども第二貝殻島とこう言っておりますけれども、新しく根室地区に人工礁の漁場を造成いたしまして、ここでコンブを生産いたしたいというふうに考えております。  大体、三カ年計画で、事業費にいたしまして約十五億ぐらいの事業をここで実施をいたしたい。初年度、五十二年度、ことしでございますけれども、すでに着工いたしまして、事業費で約二億前後の事業を予定し、すでに着工をいたしております。あと五十三、五十四の二カ年間の事業を完了いたしますれば、大体、この周辺におきまして七百六十トン程度のコンブが採取できるものというふうに考えて事業を進めておる次第でございます。
  154. 立木洋

    立木洋君 この点について、地元の方からは、山の石をとってきて入れると海が大変濁ってしまう。そのためにウニなんかをとるのに妨げが生じたり、また漁類の生息地にもいろいろ影響を及ぼしておるというふうなことで、いろいろ問題が出されておると思うんですけれども、本格的にこれがどんどん進んでいくと、さらに深刻な事態が起こってくるというふうにも考えられるんですが、こういう地元の要望についてはどういうふうな対処をなさるのか、その点についてお尋ねしたいんです。
  155. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この第二貝殻島の造成につきましては、地元の特殊な事情もございまして、大体、私ども自然石を切り出して、これを海中に投棄するというようなことで事業を実施したいと思っているわけでございます。もちろん、そのこと自体によりまして環境を悪化するというようなことは、当然、避けなければならないわけでございますので、事業の実施に当たりましては注意をしながら実施をいたしていきたいと思っております。  特に、問題とされておりますのは、あの周辺にサケの定置網が設置されておりまして、これとの関係でございます。ただ、私どもは、サケの定置の方がむしろよけい沖に出ておりまして、その定置網よりも相当離れたところで、岸に近いところで人工礁が設置されますので、その問題のそのことによる影響は余りないというふうに考えておりますし、また、工事の実施の時期につきましても、ある程度配慮をすれば、サケの定置網漁に対する影響は相当避け得るんではなかろうかというふうに思っております。
  156. 立木洋

    立木洋君 悪影響がどんどん広がってから問題に対処するのじゃなくて、事前にやはり地元の人たちの声もよく聞いて、道の方とも相談していただいて、そういう悪影響が広がらないうちに必要な措置を講じていただきたいということを特にお願いしたいんです。
  157. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この事業は北海道庁が事業主体でございます。したがって、その点はよく注意するように道庁にも言っておきたいと思っております。
  158. 和田春生

    和田春生君 去る十月二十五日の本院外務委員会で、日ソ間の漁業交渉の点について、鳩山前外務大臣のときに私は質問をいろいろいたしました。  外務大臣、大変お忙しいでしょうから、その議事録まではお読みになっておらないと思いますが、そのときのやりとりのことについて、申し継ぎないしは政府委員の方からお聞きになっているでしょうか、質問の前に、その点を確かめておきたいと思うんです。
  159. 園田直

    国務大臣園田直君) まだ不勉強で聞いておりません。
  160. 和田春生

    和田春生君 そうしますと、質問の内容を引用しながらお伺いをしなくてはならぬことになるわけです。  実は、こう言ったけれども、そのとおりになったじゃないか、そうしないように努力すると言ったが、結局だめだったじゃないかと確認しながら質問するというのは、私は非常にむなしい気持ちがするんですけれども、今後のこともございますので、そういうような形になりますが、その点についてはひとつ的確に、また率直なお考えを聞かしていただきたいと思うんです。  十月二十五日の委員会で私が質問したのは、まず前提として「二百海里時代に入ってからの日本漁業に関する外交交渉を見ておりますと、希望的観測ばかりが先走って次から次へそれが裏切られていって、結局は追い詰められて、どろなわ式に後追いの対策に追いまくられているという経過をたどってきている」、こういうことをまず前提にして幾つかお伺いをしたわけです。  その中の要点の一つは、すでに、当時、ソ連のノーボスチ通信——というのは御承知のように国営通信でありますが、ノーボスチ通信にカチューラ評論員が今日の協定の結果生まれたことと同じことを述べておったわけですね。そのことを私が引用して、結局、七七年、ことしの三月から十二月の七十万トンの漁獲量、こういうものを月数で割って、それを十二カ月にひっくり返して伸ばすという形になると八十四万トンぐらいで、ちょうどバランスがとれるんではないか。同時に、ソ連の方は七月から十二月までに約三十三万五千トンということになっておるので、それを月割りにして十二倍をするという形になると六十数万トンという数字が出てくる。そういうものを基礎にして、結局のところはイーブンに、つまり等量に持っていこう、そういう考え方がこのカチューラ評論員の述べているところによれば明らかである。ソ連というのは、しばしば政府の公式な考え方というものをこういう形で流すことがあるんだが、そういう結果になりはしないのか、要約すると、そういうふうにお尋ねをしたわけです。  これに対して、当時、政府委員の方からは、そういうソ連考え方というのは大変不思議だというふうにわれわれは思っているんだ、そういうやり方は、シーズンとか魚種とか——漁獲の量によって単純にやるというのは、そういう変動を考えに入れない、そういう物の考え方というのはもう理解できない、そういう点に対しては、それを改めさせるようにいわば日本側として努力する、こういうことだったわけですね。  それに対して、私は、大体、ソ連という国は単純で不思議だと言うけれども、そういう考え方を端倪すべからざるテクニックで押しつけてきて、結局、こちらがやられてしまうということになる。したがって、それに対しては十分なこちらとしては腹構えをくくって交渉に臨むべきである。  なお、それに関連しまして、単にお願いします、頼みますということだけでは結果的に向こうの言いなりにならざるを得ない。いまや日本は軍事力を背景にして外交をしていない。ほかの方法で何かのバーゲニングパワーを持つとか、取引条件を考えるとか、その交渉に臨む具体的な対策というものを事前に立てながら、しっかりした態度で臨まぬことには結局だめじゃなかろうか。その中身については、一々、ここで具体的にああいうことを考えている、こういうことを考えていると言えとは言わないけれども、そうしてしっかりひとつ交渉に取り組んでほしいということを言ったわけです。  ところが、出てきた結果と、けさからの質疑の中で出てきた政府側の答弁というものをつなげてみると、私の懸念したとおり、全部そうなっちゃったわけなんです。事前に、十月の段階で気をつけろよ、そうなるぞよ、何かの対策を用意していきなさい、腹をくくっていかぬとだめですよ。やりますと鳩山外務大臣もおっしゃっておったわけですが、結局、そのとおりになっちゃったわけです。  八十五万トンと六十五万トン。そうしてこのままでいくと、一年間の暫定協定延長ですから、次にまた七九年の問題が出てまいります。またぞろ交渉をやる。結局、等量主義という線に押しつけてきて、いろんな形で日本が言っておったことは最終的には全部だめで、ソ連の意図どおりの結果を招来するという可能性が非常に強いように思うんです。  大臣は、今度、外務大臣をお引き受けになったわけですが、その前にはやっぱり内閣のかなめとして官房長官をやっていらっしゃったわけですね。いまだから言ってもいいと思うんですけれども、この交渉に臨むに当たって、私が指摘したような何らかの交渉力を持つ、テクニックを持つ、ソ連に当たっていくということについて、どういう態度と方策を具体的に持って臨まれたのか、それを伺いたいのです。
  161. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) この前、先生から国会でそういう御指摘があったということは私ども承知いたしております。また、十分御注意がございましたので、用意をいたしますといいますか、もちろん用意をして交渉に臨んだわけでございます。  確かに、ノーボスチ通信が指摘しているようなそういう数字には近くなりましたけれども、ただ、ノーボスチで議論されておりますような月割りというようなことは、これはソ連側から一遍も提案はございませんでした。  その交渉方におきましては、私も言いましたし、また、イシコフ大臣も言ったんですが、交渉というものは駆け引きではない、したがってお互い一つルールをつくる、たとえば算式をつくってあとは適当なといいますか、必要な数字を代入すればお互いのクォータの数字が出る、そういう算式を相談しようじゃないかというようなことを私とイシコフ大臣の間で相談をいたしまして、それで専門家の間で議論してもらったわけでございます。ところが、専門家の間でいろいろな審議をやりましたけれども、出てくる数字が現実に合わないといいますか、採用することができないような、そういう数字しか出てこないということで、そういう数式によって結論を出すということをあきらめまして、別のアプローチをするということからいろいろな相談をして、結果的には六十五万、八十五万ということになったわけでございます。  どうも結論が似ておりますから、いかにも月割りで決めてきたようではございますけれども、そういうわけではなかったということを最初に申し上げておきます。  それから、私ども、やはり出るに当たりましては今回は前回とは違うと、と申しますのは、少なくとも前回の交渉の場合には、ソ連は二百海里の体制をしいている、しかし、わが国はまだしいていなかったという時点での交渉でございました。今回は、両方とも二百海里体制のもとにおきます交渉でございますから、意見が合致しなければ、お互いに許可証を発給することができない、したがって操業することもできない、そういういわば対等の立場に立ちましての交渉である。したがって、そういう立場においてどういう主張をするかということを考えていたわけでございますが、最終的には六十五万、八十五万という数字、満足のいく数字ではございませんでしたけれども、この際、交渉を中断して帰るということは、北洋漁民わが国漁民に対する影響のみならず、やはり日ソ漁業関係の安定的継続ということを阻害する、これは非常に大きいことではなかろうかというふうに考えまして、最終的には妥結をしたということでございます。  私ども、ソ連北洋漁業に対します意図、将来あそこを大いに活用したいということ、また、日本沿岸に対します価値の認識といいますか、ソ連側のですね、これも相当大きいということ、これは痛感をいたしておるわけでございます。
  162. 和田春生

    和田春生君 この前のときにも、水産庁当局ではいろいろ数字を準備し、反論の用意もしているというようなことをおっしゃっておりました。  私が伺ったのは、そういう技術的なことではなくて、日ソ交渉に臨む基本的な政府としての取り組みという点で伺ったわけですよ。ですから、水産庁がいろいろそういう点で数字を挙げ、技術的な面で苦労したというその事実を認めないということではないんです、それは認めるにやぶさかじゃないんです。私も、また今度のことは月割りで決めてきたと言っているわけじゃない。そのときも月割りで決めるとは言っていない。その考え方というものを前提に置いて考えると、結局、そこへくるんじゃないかと、八十数万トン、六十数万トンというところにおっつけられてしまうんじゃないか、それをはね返すためにはよほどしっかりした腹構え、あるいは何かほかの政治的な面で取引できるようなものを用意するというか、バーゲニングパワーというものを持たないとだめなんですよということを伺ったわけです。  だから、外務大臣にこれはお伺いしているんで、政府としての取り組みということについてどんな決意で臨んだのか、あるいは決意を持って臨んだとされたら、今回の結末というものは事志に反したのか、あるいはまあまあというところにきたのか、その辺も含めてお伺いしたいんです。水産庁の方はよろしゅうございますから、ひとつ大臣からお伺いしたいと思うんです、これは。
  163. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいま御指摘の御質問がございまして、鳩山大臣がお答えになったことも私よく記憶しておりまして、私も、一部、お答え申し上げたように記憶いたしております。  結果といたしまして、同じような数字になりまして、これはわが国漁業者にとりまして漁区割り及び漁獲量等について必ずしも満足のいくものでなかったという点につきましては、私どもよく水産庁ともども考えておりますが、私どもといたしましては、全力を挙げましてソ連交渉に当たったと。ただいまおっしゃいました何かバーゲニングパワーというようなものを用意していったかという御質問でございますが、私どもといたしましては、過去の実績とか、それから、このようなソ連側のトン数の出し方、必ずしもこのとおり出したということではないわけでございますけれども、それが非常に不当であるということで、日ソ間の関係の柱をなします漁業についてはソ連側がもう少し十分な理解を示すべきである、このように考えて鋭意折衝したわけでございますが、結果として、このようになったわけでございまして、将来の交渉に備えまして、これはまた私どもの反省の資料にはいたしたいと考えております。
  164. 和田春生

    和田春生君 いかがでしょう、外務大臣、これは本当に大事な問題で来年またやらなくちゃいけないんです、長期協定じゃありませんから。一年間の暫定協定延長で、一年間に限っての漁獲量お互い交渉であったわけですね。もう来年になれば、その問題が出てくるわけであります。大変重要な問題ですから、私は、基本的なものとしてその決意ないしは本当のところをお伺いしたいと思うんです。  なお、ついでに御答弁される参考に申し上げますと、その際、鳩山前外務大臣はこういうことをおっしゃっておったんです。前回は時間切れであったので、時間切れのために一応決めざるを得なかった、今回は十分時間をかけてその点はひとつ是正をすべきだという考え方である、そこで十一一月十日から交渉に入ろうという決意をしたんだということをおっしゃっている。  もう一つ、私が向こうとの交渉についての腹構えをただしたことに対して、「私どもは、やはり漁業漁業の分野におきまして協力関係を深めていくということで、ほかの問題との取引関係というふうなことは考えないで交渉に臨む所存でございます。」と、こう嶋山前外務大臣はお答えになっておる。それに対して、私は、「漁業の問題は漁業に限ってという形になりますと」「なかなかむずかしいんじゃないかと思いますね。」ということを申し上げているわけですね。  したがって、これからの日ソ間の交渉についてどんな基本的な心構えで取り組もうとされているのか。漁業だけに限ってこの面でやっておれば、結局、同じパターンの繰り返しで、最後には、努力はしたけれどもだめでした、不満足でした、いたし方がありませんということを繰り返していくことになると思うので、お伺いしているわけです。
  165. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、今後の問題でありますが、見通しとしては、私はなかなか厳しいものが予想されると思います。  ソ連側では、第一にソ連立場があって、陸上における畜産生産は逐次低下をしておる、そこで海上に資源を求めておる。コンブなどいままで食べなかったものを食べるように食生活の改善までしている。一方、米国、カナダから締め出された。この前の交渉では、ソ連は余剰の原則を振り回してきたが、今度は一方EC海域に行っては、逆に日本主張した実績主義ソ連主張して、ECの方からは等量主義を言われて締め出された。日本海に帰ってきては、日本実績主義を言い、ソ連等量主義を言っているというこの現実は、ソ連が必ずしも日本をいじめるとか意地悪とかしているわけではなくて、ソ連にはソ連の苦しい立場があって、こういう厳しい態度をとってきている、こう思いますので、今後の交渉についても、今後とも厳しい交渉が予想されなければならぬと思っております。  そこで、これに対しては、今度の交渉では、日ソ間の漁業問題を安定的に発展させていく努力の一環として、この協定の問題と並行して漁業協力に関する問題を日本は持っていったわけでありますが、漁業協力共同委員会の設置、公海上のサケ・マス問題等がありますけれども、私は、領土の問題もそうであるように、一本切り離して個々の問題で一つの枠内で折衝することは、そういう厳しい中で決して有利ではないので、ソ連ソ連で、たとえば経済上の問題とか、あるいはいろんな開発の問題とかいろいろあるわけでありますから、そういうものと取引はできないかもわかりませんが、絡めて——絡めてというよりも相並行して進めていく、そして日ソ友好親善の一環として、魚も、厳しい中にも両方が相互の立場理解するというふうに持っていかなければならぬと考えております。
  166. 和田春生

    和田春生君 いま、ここで、具体的に限られた時間でやりとりをしておっても、実りのある議論にはならないと思うんですが、いま大臣が述べられたんですけれども、やはり漁業の分野だけに限って狭い範囲でやるという形になれば、こちらがとらさぬぞと言えば向こうも非常に困るというような形じゃなくて、やっぱり日本の方が多くとらしてもらいたい、こういう立場がある限り、だんだんだんだん押さえ込まれてくるというふうに思います。  同時に、この問題は、今度の問題のほかに、御承知のサケ・マス漁業の問題がございます。日ソ漁業協力協定、これについてアメリカ及びカナダとの関係もありますけれども、結局、母川国主義で押してくる。そうすると、アジア系ソ連系のサケ・マスは——北海道から出ていったのは、これは北海道へ帰ってくるのは別でありますけれども、とらさない。現在のソ連のやり方というものを見ていると、公海上の沖取りというのは全面的禁止というふうに出てくる可能性が大変強いように私は考えるんです。で今度の問題は不満であろうがどうだろうがともかく協定しちゃったことで、来年に対する対処ですけれども、いま懸案になっている、ペンディングになっているサケ・マスの問題があります。これについては、どういう見通しと対策をお考えでしょうか。
  167. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) サケ・マスの問題につきましては、今回の協力協定の中でも、三本柱の一つとしまして二百海里外のサケ・マスの問題を出しまして議論をいたしました。しかし、おっしゃるとおり、協力協定のうちサケ・マス関係の部分につきましては両国意見調整をされない、したがって懸案のまま残っているという状態でございますので、来年の早い機会に再開されます協力協定交渉の場におきましてサケ・マス問題を中心とした交渉をしなければならないというふうに思っております。  また一方、日米加の問題も、ことしの十月アンカレッジで日米加三国が集まりまして、いろいろ議論をいたしました。しかし、アメリカもカナダも、おっしゃるとおり、母川国主義というものがございまして、二百海里の内のみならず、外につきましても、母川国の主権的権利、管轄権の主張が非常に強いわけでございます。十月の会合ではもちろん話がまとまりませんで、来年の一月中旬に、東京で話が続けられるということになっております。  そこで、私どもは、やはりこういうサケ・マスというように特に国際性の強い魚につきましては、日米加の話し合い、さらに、それらを下敷きにいたしました日ソの話し合いという話し合いを積み重ねまして、われわれが古くから操業をし、実績もたくさん持っておりますその実績を認めてもらうように努力をしなきゃならない。特に、ソ連との関係におきましては、日ソ交渉の回復の契機になったのは漁業問題であり、その漁業問題もサケ・マスを中心として漁業問題が維持されてきたわけでございますので、それらの背景を十分説明をいたしまして、私どもは、サケ・マスについての従来の実績確保のためにひとつ精力的な交渉をしてまいりたいというふうに思っております。
  168. 和田春生

    和田春生君 私たちの聞くところによりますと、日本側のいままでの話し合いで日本案というのは、サケ・マスの増殖ですね、それから公海におけるサケ・マスの漁業の取り扱い、漁獲量の割り当てとか共同規制とか、それと日ソ共同委員会の設置、こういう一種の三点セットといいますか、三本立てで臨んだけれども、向こう側はそれに拒否的な反応を見せて、そういうわけにはいかぬと、ソ連から出たサケは原則としてソ連のものだと、こういう非常に厳しい態度をとっているというふうに聞いているわけですね。  そうなりますと、また、先ほどの話じゃありませんけれども、サケ・マスに限った、公海上のサケ・マスの規制というソ連ペースにまるきり巻き込まれてしまって、いろいろ言っておっても結局空回りになる、こういう危険性が非常に強い。今後、また外務委員会を開いて、その案件がかかったときに、だから言わないこっちゃないなんという議論をしておったんじゃ、これはどうにもならぬのですね。  その点、いかがですか、取り組む姿勢といいますか、これに対してこんな手を考えているということを言えとは言いませんよ、なかなかそれは言えないでしょうが、どうなんですか、何とかはね返して持っていけるという見通しと方策はおありなんですか。
  169. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) 確かに現状は厳しいとか言いようがございません。協力協定交渉の際にも、おっしゃるとおり、協力問題、それから二百海里外のサケ・マスの問題、それから共同委員会の問題を議論いたしました。しかし、問題として残りましたのは、やはりサケ・マス絡みの点が問題として残ったわけでございます。たとえばサケ・マスの共同増殖という問題につきましても向こうがやはり問題点を残すというようなことで、私どもとしましては、サケ・マスが今後日ソ間に残されました非常に大きな問題であり、その問題につきましても、おっしゃるとおり、現状におきまして日本ソ連主張が必ずしも一致していないというのも現状でございます。  ただ、私どもは、先ほど申し上げましたとおり、日ソ間におきますサケ・マス問題というのは特別の地位を与えられてしかるべき問題であるというふうにも思うわけでございます。そこで、私どもは、ソ連主張主張といたしましても、われわれの過去における実績、それから問題点ということをやはり申し述べて、そこに何らかの話し合いでの合意ということに達したいというふうに思っているわけであります。
  170. 和田春生

    和田春生君 いまも長官がおっしゃいましたけれども、こちらがしかるべきだと考えたってそれをしかるべきと考えないのが相手なんですよね。実績を尊重と言うけれども、実績なんというのは頭から無視してやっぱり押しまくってくるという傾向が強いわけです。  その辺を考えて、今後の日ソ関係漁業問題というものを検討してみますと、こちらの方で、日本の二百海里内で百万トンもとらしてやるからおまえの方でも百万トンとらせろと、ただ、魚種がいろいろ違うが、相互利益があるではないかというような態度に出られればいいんですけれども、そうでないといたしますと、結局、六、七十万トンぐらいのところで、等量というかっこうで落ちついていくことになるんではないか。それから、公海のサケ・マスの沖取りというような面についても、おっしゃるように、大変厳しい線に追い込まれてきて、従来の実績という上にわれわれが依存しているわけにはいかない状況になってくる。  こういう点を考えますと、私は、これは農林大臣にお伺いしたいんですけれども、日本漁業政策そのものについて、この新しい二百海里時代という形で根本的に検討し直していく、そうして希望的観測を与えて何とかなるだろうと思ったら何ともならなかったと、減船対策、失業対策、雇用対策もある、相当の予算をつけてお金を使う、これは結局後ろ向きの金ですよね、はっきり言って、これはもう困る人は助けなくちゃいけないわけですけれども。そういう点で、向こうの方に痛いところをつかれるんじゃなくて、おまえの方もとりたいんだろうと、イワシとかサバとか日本の近海でとりたいんだろうと、とらしてやるかわりに、おまえの方でもそちらのやつをとらせろという、その限度内において対々の交渉条件というものをつくる前提は、やはり日本の二百海里内における日本漁業の新しい開発であり、あるいは公海上においてそういうかかわりを持たない新しい漁場の開発なり、そういうところに積極的に前向きの金をそこへ使っていく、そうして日本自体の自主的な漁業というものをつくり上げていくという体制が大前提になければ、結局、お願い交渉、頼みます交渉で、後でやっぱり残念だった、非常に不本意だったということになると思うんですがね。そういう点、ちょっと農林大臣の水産政策そのものについての基本的な考え方をお伺いしたいと思うんです。
  171. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 将来、実績主義はなかなかむずかしくて等量主義に結局はいくんでないかと。各国それぞれ違いますが、特に、ソビエトは、先ほど外務大臣からお話がありましたように、アメリカあるいはECその他からだんだん追い出されて、結局は大事な資源になってしまったと、食生活の改善によってだんだん魚あるいはコンブ等まで活用するようになったということからすれば、従来の単なるソビエト一流のやり方だと見捨てるわけにはいかぬ厳しい情勢ではないか。  その場合、ある人は、等量になるんなら、何も向こうへとりに行かなくても、こっちで近いところでとった方がいいんだから、もうそんならソビエトをみなやめちまったっていいんではないかという議論をする人もあるわけです。私は、そう思わないんで、やはりソビエトのとりたい魚と日本のとりたい魚は魚の種類が違うわけですから、相互乗り入れ主義でやっていくという方向に行かざるを得ない。  そうなれば、第一義的には等量主義にならないように最善努力はしなければなりませんが、いま御指摘があったように、やっぱりソビエトにも喜ばれるような、与えるものについて工夫をする。ただ、現状では、そのことがたちまちまた沿岸漁民との競合にもなる、小型の中小の沿岸漁民との競合にもなりますから、いまにわかにこれを等量にしてやるというわけにはいきませんけれども、二百海里時代を迎えて国内資源は活用する、思い切った資源増殖をやっていくということが必要であると同時に、そういう中にあってソビエトに対しても与えるものの工夫もするというぐらいの積極的姿勢が必要ではなかろうか、こう思うわけでございます。  なお、サケ・マスにつきましては、確かに厳しくはあります。が、まず、アメリカあるいはカナダ等との公海上の取り決めを決めて、その上で、長い間お互いに仲よくやってきたこの漁業を打ち切るということは、単なる魚の問題ではなくして、日ソの友好関係のきずなすら切れるような重大問題になる、こういった大乗的なことも訴えて、ぜひともこの権益は守りたい。  実は、今回、外務大臣園田先生がわざわざ来月九日、正月早々に行っていただくのも、こういった背景がありますので、いままで定期閣僚会議も開かれないという中での交渉では漁業問題一つとってみても、まさにまた領土問題はもとよりでございますが、せっぱ詰まったこの漁業問題についても明るい方向にドアを開いてもらう、こういうことで大きく期待をいたしておりますし、また、年が明けましたならば、われわれも協力協定を通じてのサケ・マス交渉については全力を挙げて、この伝統ある公海上のサケ・マスの漁獲について実績を守っていくという最善努力をしていきたい、こう思う次第でございます。
  172. 和田春生

    和田春生君 今後の交渉に当たって、いまも農林大臣はお話しになりましたし、先ほど園田外務大臣からもその種の発言がございましたけれども、やはり日ソ関係全体の中における漁業交渉という位置づけをやって取り組むということが一つ根本的に私は大事だと思いますし、それから、漁業の面でいけば、お願いします、要請するという形ではなくて、日本の自主的な二百海里の内外を含めての漁業の開発という中における補完的なものとして、他国の二百海里内で魚をとらせろと、それはお互いのバーターであり、あるいは取引であると、こういうところに持っていくことが必要ではないか。  そうした面で、いま目の前のことにそれがすぐ役に立つわけではありませんけれども、やはり三年、四年、五年という見通しの中でそういう方策を打ち出していくということが非常に重要で、そうした意味の水産政策についてもひとつ転換期に来ている。まだまだ従来の後追い的なことが多いんですけれども、その転換を早くやればやるほど沿岸漁民、沖合い漁業あるいは遠洋を含めて、その調整というものもやりやすいわけですし、お互いの共存を図っていくという国内措置もいろいろ手が打てるんじゃないか、ぜひ、そういうことをお考え願いたいというふうに思います。  今度は、最後の質問になりますが、具体的なことでございますが、今度の日ソ漁業交渉の結果、午前中の質問その他にも出ておりましたけれども、やはり減船に追い込まれるものがある。北転船の場合にはすでに予算措置も講じている二十七隻の第二次減船、これは予定どおりやらざるを得ないだろうというようにお話がありましたんですが、大体、全体で、それぞれ業種別がありますけれども、細かくはここで一々お伺いいたしませんが、何隻ぐらいそれによって職を失うというか、離職ないしは雇用問題に直面する船員がどのぐらい、あるいは関連加工業で影響を受ける範囲というのはどの程度のものがあるか、それに対する政府としての措置ないしは予算問題も含めて、どのぐらいのことをお考えになっているか、もしいまわかっている範囲があれば、考えていることをこの機会にお聞かせ願いたいと思います。
  173. 岡安誠

    政府委員岡安誠君) まだそれぞれ総クォータ並びに魚種別のクォータも決まったばかりでございますので、関係の業界とも打ち合わしてみませんと、最終的な結論は出ないと思いますけれども、ただいまはっきりいたしておりますのは、まず北転船の第二次減船、これは二十七隻、これはどうしても減船が必要だろうと思います。で大体平均的な話ですが、一隻当たり二十名前後の船員が乗っているのではなかろうかと考えております。それから北方四島周辺、特に三角水域の花咲ガニ、毛ガニ関係漁船二十隻、これもクォータがゼロでございますので減船やむなしというふうに考えております。これは大体平均的に一隻当たり十人ぐらいの漁船員が乗っていると考えられますので、これらの方々が職を失うということが残念ながら予想されるわけでございます。  その他につきましては、それぞれよく業界とも相談をいたしまして、これらのクォータで将来操業が続けられるかどうか、また、ほかの水域と絡めても操業が続けられるかどうか、よく相談をしてみたいというふうに思っております。  それから加工業等でございますけれども、確かに従来の実績から見まして八十五万トンという数字は非常に少ない数字でございます。特に、ことしの北洋関係も、実績としましては百万トンを超えるような操業を上げておりましたのが、来年は八十五万トンでございますから、それなりの影響があるものというふうに思います。やはり一番影響を受けますのはスケトウダラの関係だと思っております。スケトウダラの関係につきましては、アメリカ漁獲量も影響がありますが、大体の推算では、ことしに比べまして二十万トンちょっと強ぐらいの減産ではなかろうかというふうに思います。  そういたしますと、その加工業関係の方々が非常に影響を受けるわけでございますが、私どもは、できれば、そういう方々に対しましては、従来使っておりましたような魚、たとえばいまはスケトウ一色でございますけれども、ホッケとかそういうような魚を原料とするように転換をするとか、また、この前も御説明いたしましたけれども、サバとかイワシとか多獲性魚を練り製品の原料にするというような転換を勧めてまいりたいというふうに思っております。それでもなおかつ非常に問題があるという場合には、必要最小限度の輸入というものも、これは秩序ある輸入でございますけれども、検討いたしまして、加工業の受ける影響というものを最小限度にいたしたい。それらの転換等に必要な措置につきましては、金融の面におきましても、先般法律も成立させていただきましたし、そういうような制度を万全にいたしまして、できるだけ早く原料の転換、製造方法の改善その他を勧めまして、影響を最小限度に食いとめたい、かように考えております。
  174. 和田春生

    和田春生君 いまスケトウ関係は一番影響が大きいわけですが、花咲ガニ、毛ガニ、そのほかに日本海のエビとか南樺太のズワイガニとか、そこに従事している船の隻数と人数が少ないようですけれども、部分的に見ますと、そういうものを扱ってやっている関連業者、そういう面について部分的にいわば集中豪雨的な被害ということも考えられるんじゃないか。特に、最近のような不況が続いておりまして、全般的に雇用不安の状況ですから、よけいそういうものが増幅される可能性が非常に強いと思います。したがって、そういう面については、きめ細かくひとつぜひ対策をやっていただきたい。それはもう本人の責任じゃなくて、国際協定の結果やっぱりいきなり横面を張られるようなものですから、それは政府責任で十分手を打っていただきたいということが一つ。  それから、原料薄になりますと、転換がきけばいいですけれども、そういうところにギャップができれば、原料の不足から値上がりをする。それがまた別の意味で加工業者その他にダメージを与えるし、国民の消費生活についても物価高の一つの誘因になる可能性もあるわけですから、そういう漁獲量が特にスケトウを中心にして減ってくるという場合に、加工食品の原料として使われているわけですから、そういうような原料不足から、あるいは手薄になって値上げの誘発をするというようなことが今日の経済情勢の中で起こらないように、そういう面の原料手当てなんかについてもひとつ積極的な手を打っていただきたい、このことを特に希望いたしたいと思いますが、農林大臣、よろしゅうございますね。
  175. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 承知しました。
  176. 和田春生

    和田春生君 それじゃ質問を終わります。
  177. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 他に御発言もないようでありますから、質疑は終了したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  まず、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  178. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件を問題に供します。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  179. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定をいたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 安孫子藤吉

    委員長安孫子藤吉君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会      —————・—————