○
政府委員(武田康君) まず第二番目の方から御
説明さしていただきたいと思いますけれ
ども、先ほどのように、復水器を通りますと現在の通常の設計では七度、八度あるいは九度という調子で温度が上がるものでございますので、仮に発電所がなかったときと同じような
状態を保つのが一番いいというふうに
考える場合には、先生御
指摘のように温度を下げる方がよくて、そのためには、実は海の表面で
考えますと、海の底の方に排水を出してやりますと、底の方には冷たい水がありますので、そことまざりまして、海の表面では温度差が七、八度じゃなくて、もう少し低いところになる。つまり排水口周辺における温度の拡散、それがもとからそこにございます海水とそれから冷却水とのまざりぐあいをよくするというようなことで、それが深層放流のプラクティスでございます。これにつきましては、現在の
原子力発電所の中にもすでに
運転中のものでたしか二例ございまして、また建設中のものでたしか三例だったと思いますが、すでにやっているところでございます。火力につきましても同様なプラクティスを採用しているケースがございます。ただ、これをすべての発電所に採用する方が適切なのかどうかという点につきましては、当該発電所の
地域というよりは、海域の海の形なりそれから海の底の形、海流のかっこう等々によりまして、一概に言い切るわけにはまいりませんが、仮にそういうプラクティスをとりまして、温度差を
——温度差といいますか、温度影響の範囲をより限定できるような場合には私
どもとしてはそういうことをとるように、そういう対策も
考えるようにというような指導を前々からいたしておるところでございますし、今後ともそういう
考え方を続けたいと思っているわけでございます。
さて、第一点の方に戻りまして、冷却塔なり冷却池でございますけれ
ども、私
どもとしては現在までのところ、冷却塔をつくることを検討しろ、あるいは冷却池をつくれというような指導をいたしたことがございません。今後につきましては、いろいろ未来のことでございますので断定的には申し上げかねるわけでございますが、現在の
日本の発電所の立地
条件のもとでは、冷却塔をつくるあるいは冷却池をつくるというような指導をすることが適切であるかどうかはきわめて疑問であると
考えております。外国では、たとえばヨーロッパの内陸部、アメリカの中部等々におきましては、正確な比率ではございませんが、発電所の半分ぐらいのものが冷却塔を持っております。また冷却池を持っているケースがございます。これはむしろ、たとえばアメリカで一番大きなミシシッピ川、ヨーロッパでのライン川等々でも流量がたかだか
日本の近海の海域に比べますと何分の一、何十分の一というオーダーでございまして、温排水を薄めるその原水の方が非常に限られているわけでございます。そこで川の水のみで、川で温度を薄めるということでは不十分というようなことが現実にございまして、そうなりますと、川の水を使うのみでなくて、何か別の冷却
方式を
考えなければいけないということでございまして、それが冷却塔というシステム、またはそこにもし土地に余裕がある場合、あるいは天然の池等々があってそこを使える場合に冷却池というようなシステムを取り入れているわけでございます。そうすれば必ずいいのかどうかという点でございますけれ
ども、少なくとも川の水に対する影響は冷却塔なり冷却池で薄められる分だけ軽減されるわけでございます。しかし、先ほど先生が、海の水を使った場合に蒸発の影響はどうだというような御
指摘もございましたけれ
ども、ある
意味では冷却塔
——雨を降らせて冷却するわけでございまして、そうなりますとコンマ数%とか一%近くの水が蒸発いたします。その程度は現在の
日本でやっているようなプラクティスに比べまして多分非常に大きなウエートでございまして、したがいまして、そういう観点の立地問題が起こっているようなケースを現に聞いたこともございます。また一方、水の中には微量成分が含まれておりまして、ちょうどあわみたいなもの、蒸発に伴いましてあわみたいなものが発生し、そのあわが飛んでいくというようなこともございまして、定性的にはいろいろな問題がございます。かたがたどこで熱を発散するかというのは、冷却塔は一カ所でございますが、
日本のような海水にまぜて冷却する場合には、熱容量の大きな水を使いまして、しかしある程度の面積ではありますが、そこで徐々に発散させるというようなことで、そういったような
意味でも冷却塔というプラクティスがこの
日本で採用する場合に適切かどうかという点につきましてはきわめて疑問でございまして、かたがた耐震設計その他これは経済的な問題ではございますが、きわめて大きな構造物、場合によりますと高さが百メートルを超し、直径が百メートルを超すような円筒形の筒でございますけれ
ども、これをたくさんつくるというのが本当にいいかどうかという点について疑問がみるわけでございます。冷却池につきましても、これまたつくれという指導をしていないわけでございますが、
日本の土地の事情で
考えますと、海を仕切るということに相当するかと思います。現在海を仕切ってはおりませんけれ
ども、温度の分布の範囲というものについてはシミュレーションなりモンタリングなりをやっておりまして、この程度の範囲で、二度の分布範囲であるというような勘定ができますが、同じようなことを海を仕切ってやりましても似たようことでございまして、
日本の海岸の陸上に池を新たにつくるというのはこれまた大ごとかと思われますので、そういったような
意味で、従来こういう指導をしたことがないし、今後ともそういう
可能性は少ないであろう、こういうことを申し上げたわけでございます。
ただ一言だけつけ加えさしていただきますと、現在地熱発電所を山の中につくっております。これは川の水を使わざるを得なくて、かなり上の方でございまして水量が不十分でございます。そんな
意味で、先生のおっしゃった冷却塔
方式というのがある
意味では地熱発電におけるプラクティスになっておりますので、冷却塔という技術がだめだということではございませんで、いろんな
考え方のどれを選択するかという点では現在のようなやり方であって、しかし、先生が御
指摘になりましたような、たとえば排水で深層放流というようなのが有益であれば、メリットがあればそれを使うという取水なり排水のやり方、取水口、排水口の場所、そういったものをいかに選んで、いかに一番よさそうなものにするか、こういうようなことが現在の私
どもの指導方針であり、現在のプラクティスでございます。