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政府委員(
高橋寿夫君) この
法律をつくるに当たりまして、かつて参議院
運輸委員会の附帯決議の線に沿っていろいろの
法律技術上の検討をしたわけでありますが、なかなか、従来わが国の
法律体系でなかったようなスタイルの私権の制限ということを伴う
法律であるわけであります。自分はうるさいのをがまんしてここの土地に家を建てて住むんだという人に対しまして、いや住んじゃ困るんですということを言う
法律でございますので非常にむずかしかったわけでございます。
そこで、いろいろ検討をいたしました結果、そういったことを現行の
法律でやるとすれば都市
計画法の体系がある。これは先生も御存じのようなやり方で、
一つの都市のよき居住環境といいますか、そういったものをつくるために、都市の中をいろいろ
目的別に地域地区制によりまして区別をいたしまして、全体としてその町の発展を図るということで、したがって、そのことによって制限を受ける方も、全体としての町の発展のためにがまんする、また一方、その規制は強制されますので罰則を伴う、こういう
法律になっておるわけでございます。
で、今回のこの空港周辺の立地問題につきましても、私
どもはやはり、これは空港を取り巻く
一つのいわば空港都市ということであると考えまして、この空港とその周辺の都市というものが調和のある発展をしていかなければならない。また、空港の騒音にさらされる地区というものが、ほっておかれたんではやはりそこの地区は、いかにそこに住む人が自分はうるさいことをがまんするといっても、それはそういうものでもないんじゃないだろうか。やはりそのことがたくさん集まれば
一つの社会的な騒音問題になりますし、また末来永劫にわたってそこに騒音問題の種が残るということは、やはり国家的、社会的には問題があるんではないかというところから、私
どもは、空港周辺の地域に対しまして都市
計画の
考え方を援用いたしました。都市
計画の地域地区制ということをこの際適用して、騒音防止地区あるいは特別地区ということを考えたわけでございます。そして、
法律案にもございますように、防止地区というのは比較的うるさい中でも音の少ない方、特別地区は非常にうるさいところと分けまして、うるささの度合いの少ないところは家屋に防音構造を義務づけるという程度にしよう。それから、うるささのひどいところにつきましとは、新しい土地に新しい家が建てられるのをこれは禁止をする。もちろん、その地区としてどうしても必要な郵便局とか駐在所とかは別でございますし、また農家の息子さんが家を建て増しするというふうな場合は除外するような配慮をいたしたいと思っておりますけれ
ども、このねらいはあくまでも、空港周辺というのは土地が比較的確保しやすいし、また交通が便利になりますのでかなりいい土地になるおそれがあります。そうするともうすぐに都市から大規模な宅造業者が出てまいりまして空港周辺の土地を買いまくりまして、そして建て売り住宅などをつくりまして劣悪な住宅地をつくり、そして、そこに住む住民の方々は永遠に航空機の騒音障害を受けるということになるのを何とか悪循環を断ち切りたいというところから、これから新しくそこへ住むようになる人
たちを制限しよう、それもいわゆる宅造業者などの進出を抑えようというところが一番のねらいでございまして、したがって従前からこの地区に住んでいらっしゃる方につきましては、もちろん立ち退き強制はいたしません。しかしながら、どうしても自分はもう音がうるさいからよそへ行きたいとおっしゃる場合には適正な買い上げ等をすることにいたしておりますけれ
ども、そういったことでございまして、決して強権発動というふうなことでするつもりは全くないわけでございます。
ただ、
一つの規制でございますから、やはり防止区域にしましても防止特別地区にいたしましても、そこで行われる一定の行為につきまして規制がかかります。その規制に違反した場合には、都市
計画法のほかの制度との横並びもございまして、最小限度の罰則はかけなければならないということでございます。強制があるので罰則も裏にあるということでございますけれ
ども、もちろん実際の運用面につきましては、都市
計画法におきましても恐らく罰則を食らったという実例は余りないと思うのであります。すべて話し合いでやっておるわけでございますから、この
法律の実際の運用はもちろんそうなると思いますけれ
ども、
法律の体系としてやはり罰則なしの規制というのはあり得ないという法理論から罰則は残してございますけれ
ども、衆議院でもかねてたくさんこの辺で御議論ございました。私
どもはそういった点を勘案いたしまして、前々から住んでいらっしゃる方、新しく住む人じゃなく前々から住んでいらっしゃる方につきましては、その方々がこの地域に家をお建てになって防音工事等をなさる場合には、それは防音工事の費用を助成さしていただこうということで、経済的な負担の助成ということで実質的な御援助を申し上げる、こういうことで附帯決議等をおつけいただきまして衆議院では一応御了解願ったような経緯でございます。
罰則の問題につきましては御議論あることはよくわかりますけれ
ども、
一つの
法律のたてまえといたしまして罰則抜きの規制はあり得ないという、都市
計画法の他の規制との横並びからどうしてもこれは置いておかなければならないということを御
理解いただきたいと存じます。