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工藤(晃)
分科員(新自) この前、二月二十日、
予算委員会の
一般質問でやはり
村山大蔵大臣に御
質問をいたしました。その主たる内容は、いわゆる医師優遇税制と言われております
社会保険診療報酬の
所得計算の特例について御所見を承ったわけでございますか、本日はやはりそれに関連しまして、時間の都合で十分討議されなかったので、また時間の許す限りそういう問題について討議をさしていただきたい、かように思います。
ところでこの間私が
質問申し上げました要旨は、いわゆる医師優遇税制と言われているものが、何をもって優遇と言い、何をもって不公平税制と言われているのかという、そういう素朴な
質問をいたしました。先ほどの
田中委員の
発言要旨の中にも、これは不公平の代表的なものだから、重大決意を持って五十四年度には是正しろ、こういう御意見のように御
発言なさっておりました。問題は、その不公平であるという、そういう問題点の原点を、それが本当に不公平なのか、どこをもって不公平と言い、どこをもって優遇されていると言うか、そういう点について国民が正しい情報を握らなければならない、またそれに関連してくる問題についても十分取捨選択しなければならない問題がたくさんあると私は思うのです。そういう上に立ってなおかつそれが不公平であり、是正されるべきだと言うなら大いにやらなければいけないし、それもいまも
大臣おっしゃっておりましたが、重大決意をもってやりたい、こういうふうにおっしゃっている。だから期限はある
意味においては切られたわけです。それまでにそれに関連する問題についても十分整合性のある
配慮をしていきたいということもこの問の私の
質疑の中で
大臣はおっしゃっておられました。でありますから、私は、やることを前提に、それではどうすれば一番国民が納得できる解決方法か見出し得るかという点について、きょう私の
考え方を交えながら御
質問をさしていただきたい、かように
考えるわけです。
私はどういう立場で
発言をするかというと、私は職業は医師でございます。人の命を守るという立場に立ってこの問題について話し合いを進めたい、かように
考えるわけで、だからといって何が何でもそういう立場だけを主張するわけではない。しかしながら医師優遇税制という名前がつけられている以上、医療問題に
関係することは間違いない。それもまたいままでの健康保険
制度と深いかかわり合いを持ってきたということも、歴史的背景から見て十分あるということを
大臣もお認めになっていらっしゃる。そうすれば、
一つの
制度をいじる場合に、そのいじった結果どういうところへどういう影響が来るか、どういうメリット、デメリットが出てくるか。また元来その税をいじるだけでいいのだというのでは、これは話は別なんですけれ
ども、医療
制度という国民の命を守っていかなければならない、こういう
制度の根本にメスを入れようという
一つの問題でございますから、その税の公平を図った瞬間に国民の命が逆に不安な状態に置かれるということがあっては、これはもう本末転倒と言わざるを得ない。そういう立場で、私は与えられた時間の中で
大臣に記憶をしていただいたり、あるいは判断していただいたり、
お答えをいただいたりすることを求めたいと思います。
それでまず第一番に、私がお尋ねいたしましたときにもこういうふうに
お答えになっていらっしゃいます。「
昭和二十九年に議員立法をもって出発しましたいわゆる医師優遇税制につきまして、従来、不公平であるとか優遇であると言われたのは何かというお尋ねでございますが、従来言われておりますのは、私の
理解では、収入に対する経費の割合、逆に申しますと
所得の割合というものは、極端に申しますれば一人一人違うであろう、それを一律に経費率が七二%だ、それを法定しているところが、それが優遇であり、不公平税制だと言われていると私は
理解しているのでございます。」こう
大臣は
お答えになっていらっしゃる。それからまた「税制としてはそういうことであろうかと思います。ただ、その結果として、どれぐらい
所得が平均的に安くなり、税額がどれぐらいになるか、この問題はその結果として出てくる問題でございまして、先般の会計検査院が
調査した、あれも一例であろうと思うのでございます。」こういう答えをされておる。その「先般の会計検査院が
調査した、あれも」という例は、昨年の十二月十五日に
新聞に大きく発表されました
昭和五十一年度決算検査
報告、会計検査院が出しましたこのものを対象におっしゃっていると思います。
ところが、この前、会計検査院に対して私は
質問いたしました。この資料が果たして妥当と言えるのか、正しい資料と言えるのかどうか、こういうことについていろいろと議論をしたわけです。時間がありませんから結論として申し上げますけれ
ども、公平なデータではないという御意見を述べておられます。もしそれが誤るといけませんので申し上げますが、五千三百七十二人のうち千五百五十三人のお医者さんは、経費率が七二%を上回るということでその恩典に浴していない、こういうことでありますし、それから高額
所得者、一千万以上の
所得者を対象にしたということ、一千万以下のデータは一切持っていないということ、そういうデータ。それはその書類の中でも、調べた中の三七%の対象者ですね。そういうふうなものでございまして、六三%に対して何も手を加えていない、何も
調査していない、そういう資料をもって、それも歯科から医科から、すべて自由診療まで全部入れてしまって、込みにして、それから各診療科目も全部一緒にしてしまう、それも高額
所得者だけを対象にして出てきた
数字が総経費五二%というわけですね。それが七二%の間に二〇%の開差がある。この開差には課税対象になっていない、それが不公平である、あるいは優遇されているという、この争点の根拠というのはそこなんですね。ところが、どう
考えても、それ以上オーバーする人は皆除外しました、そして
所得の少ない人で経費率が高いだろうという人はみんな除外しました、もうかっている人だけを対象にして五二%の経費率で計算をいたしましたのがこの
数字でございます。これが国民に発表されたわけですね。それをもって
大臣も、一例としてこれが優遇されているというその根拠になっているわけですね。
そうなってくると、問題は、
制度上の問題として不公平だということはよく
理解できる、しかしそれをもってすべての医師が全部
経済的な優遇を受けているということが当を得ない回答だ、こういうふうに私は申し上げたわけです。だからそういう
意味において、国民がもし
経済的に医師が優遇されている、そういう
制度があるために
経済的に優遇をすべて受けているのだというふうに解釈したとすれば、これは資料の出し方が悪いし、国民の方にも、それはそうではないのではないか、こういう資料でございますよということははっきりさせる必要がある。しかしながら、
制度として、これは
大臣がおっしゃったように不公平な
制度だから是正しなければならぬということについては、私もごもっともな話だと思います。だからそこのところだけははっきりしておきたい。
それで私が申し上げたいのは、
所得に対して当然税の申告をしなければならぬ、そのときに一律七二%として認めてもらうために、申告の義務が時間的に非常に軽便化されている、時間的に優遇を受けているのですね、そういう作業ができるだけ簡便にできるようになっているわけで、それは確かに医師としては優遇されていると思いますし、私もその点は本当にいい税法だと思っていた。しかしそれかいけないということになりますと、問題はすべてこれは申告していかなければいかぬし、また
制度としては証拠主義ですから、そういうものに対してすべての証拠を集めていかなければ税の申告はできない、そういうことでございますね。
そうすると、ここに命の番人として申し上げなければならぬ大きな問題が
一つあるわけです。それは何かと言いますと、皆さんも御存じのように、これは
大臣も御存じだろうと思うのですが、健康保険の診療報酬を請求する場合に非常に細かい計算までしなければならない。何円何十銭という計算をすべてしていかなければいかぬ。一枚一枚のカルテのその月の請求を全部しなければいかぬ。大変な作業なんですね。自由
経済体制の中において
所得を得るためにそれだけの作業をしなければならぬ業種がほかにあるでしょうか。税の申告に対しては、確かにそういう
意味において作業を免除されている。しかしながら、
所得を得るそのときそのときに物すごい労働をし、神経あるいは精神をすべてそういうところに傾注していかなければならぬ、月末から月初めには大変なオーバーワークをしているという事実を国民の皆さんが全部知っておかなければいかぬ。そこへもっていって、なおかつ税の申告をしなければならぬという作業がまた倍加されるわけですね。医師は一体何のためにこの世の中に存在しているかというと、そういう作業をするために存在しているのじゃないのですよ。患者を診て人の命を助けるために持っている二十四時間を最高に使うことが
社会資本の正しい使い方だと私は思うのです。いまでも、医療は荒廃して、三時間待って三分だとか、いろいろな医療サービスの
低下に対して国民は物すごい憤りを持っている。そういうことをやれば、今度は三時間待って一分ですよ。最も不得手のところにすべての能力を傾注させて、そういうことをやることが
社会的に公平なのかどうかということを私は改めて問題提起したいと思います。医師が医師たるゆえんは患者を診ることです。そして命を助けるために全力投球をすることが医師の任務だと私は思う。また
社会がそれを認めなければならないと思います。ですから、そういうことも、私は税法上の問題を取り上げるときにはあわせて
考えていただかなければならない大きな問題だと思う。
確かに医師優遇税制によって、あるランクの
人たちには
経済的には非常に恵まれた人もいるかもしれません。しかしながら、すべて恵まれているということは大きな誤りだ。なぜならば、この間から申し上げたとおりに、こういうデータのもとに出ている根拠ですから、そうでない人もたくさんいるわけです。しかし、時間的に優遇を受けているということだけは事実だけれ
ども、逆に言えば診療報酬という決められた、完全に統制された
経済あるいは管理
社会の中でそういうものを全部一銭一厘間違いなく
報告しなければならない。注射一本何点、お薬はこれだけの種類を使ったから、この薬
一つ一つに何円何十銭掛けるの何倍の何のというのは大変な作業だと私は思う。そういうことを毎月毎月申告しているという事実もあわせ
考えなければならぬと思う。そういう
意味では二十四時間の
持ち時間は、だれがどのように整合化しようと思っても、二十四時間は二十四時間なんです。その二十四時間だけは、いかに再生産しようと思ってもできない。そういう貴重な時間をそういうことのために費やさせることが国益なのか、国民の幸せにつながるのかどうかということも私は国民に問うべきだと思うのですね。そしていまの税制そのものがそれでいいと言うのじゃない。言うのじゃないけれ
ども、そういうことに対して十分
配慮をし、より整合化さしていくことが政治の重要な任務だと思うのです。
大臣もまた政治家です。税の番人ではないから、そういう立場でこういう問題についてもお
考えいただかなければならない、こういうふうにも
考えております。
それからもう
一つ申し上げます。
いかに会計検査院の資料が私に言わせれば整合性を欠く資料かということを申し上げたいのです。先ほ
ども一人頭七百万だとかなんとかというような
軽減を受けているというようなことをおっしゃっていますけれ
ども、こういう資料をもとにして全般に一人頭幾らなどというようなこんな
数字を出すというのは、全くもって
数字の専門家のやるべきことではないと思うのです。完全な投影をしていない、
実態をつかんでいない、そういう
数字のもとにはじき出して、これを一人頭幾ら税が
軽減されておりますよと言うのは、あえてそれが優遇されているがごとく国民に誤った
理解をさせるために出した
数字じゃないかというふうにも疑われるわけですね。そういう
意味において大変大きな誤解を生んだとすれば、世の中に大悪を流したのじゃないかと私は思う。また
大臣もそういうものを資料にして、これはもっともな話だなどとおっしゃっていたらえらいことですから、これははっきり申し上げておきます。
それからこの前会計検査院にも申し上げた。
大臣にも申し上げたい。税の問題だけを云々するわけじゃないので、医療全般にわたってこの
機会に申し上げたい。
国民が求める医療、人命が尊重される医療をどうやってつくるかということになると、これはいろいろな問題点がそこに起きてくるわけです。そういうものをすべて置き去りにして見切り発車してしまったらえらいことになると思います。だから、そういう
意味において
大臣にいろいろな資料をあえて提供し、できることなら国民にもそういう資料をあからさまに出して、そして国民に判断を求めることが正しい行き方だろうと思いますので、あえてここで申し上げるわけでございますけれ
ども、たとえば健康保険
制度の中に
政府管掌健康保険と組合管掌の健康保険の二通りがワングループになっている。それは
大臣も御存じのとおりです。ところがこれは全く負担、給付がアンバランスで、格差が非常に大きい。
制度的に言えば
一つのグループの中でお金のない人、貧乏な人は貧乏人同士が保険をし合い、お金
持ちはお金
持ち同士保険し合う、そしてまた健康な人は健康な人同士保険し合い、病気の多発するグループはその中で保険し合っている。それが、お金がない人で病気の多発層を抱えたのが
政府管掌健康保険です。それから病人がいない、健康な人を対象にして病気になったときの保険料を取ろうというので、
所得の高い人を対象にしてつくられているのが健康保険組合です。ところがこの財源が
一つもプールされていない。全く別世帯でおれはおれ、おまえはおまえ、財布は全く別なんですよというのがいまの状態ですね。果たしてこれが
社会保障と言えるのかどうか、私は大変大きな疑問を持っている。これは企業内保険であって、
社会保障では決してない。だからこそ、この前も健康保険法の一部改正法案で野党も全部反対した、わが党だけはしようがないから賛成した。そういう問題があるわけです。それは何かというと、ボーナス保険料を政管健保にだけかけましょうという案が
政府から出てきた。これは大蔵省も
承知なさったはずです。これだっておかしいじゃありませんか。何のために
社会保障をするか。金
持ちを保障するのじゃなくて困った人を助けてあげるのが
社会保障でしょう。ところが困った人がなおさら困るようにいまの
制度はなっているじゃありませんか。そういうところへボーナス保険料を片方の
中小企業の、
所得が恵まれない、病気の人が多いところからだけ取る。ここにいらっしゃる方々も共済保険から定年退職すれば政管健保、国民健康保険という非常に財源が脆弱な、いわば貧しい組合へ移行するわけです。そういう
人たちは、ふだん病気をしないときにはたくさん保険料を払って、その人が今度病気多発年齢、要するに定年退職してからのそういう時代になると、非常に給付率の悪い、財源の乏しい、貧しい
制度の中で自分の命を預けなければいかぬ。ところがその間には何のプールもない、何の財源的なプールもないじゃないですか。だからこれをもって
社会保障と言えるとは私は思わない。そういう問題についても、これは前から言われていることなんです。保険料を上げるときだけは、そんなことはけしからぬ、一パーセントのボーナス保険料を政管健保にかけるのは大変よくないということを全部言う。ところがそういうものをプール化しようと言ったら、だれもそれに対しては賛成しない。一体これはどういうわけなんですかね。私にはわからない。貧乏人を助けるのが
社会保障だと私は思う。金
持ちを助けるのが
社会保障ではない。また健康保険
制度というのは、
大臣、やはり零歳から死ぬまでの間を一貫して保障していく、命を保障していくというのがそうだと私は思うのですが、そういう問題も一向に
改善されようとしていないわけですね、反対反対と言って。だから私は、そういうこともはっきりとこの
制度を
改善するときには
考えなければならぬ問題だと思うのです。
それからもう
一つ、これは重要な問題ですから聞いておいてください。その健康保険組合が毎年毎年黒字になっていく。何百億という黒字を重ねながら、その保険収入に対しては非課税ですね。それからそういう財源をもとにして、保養所とか施設とかいろいろなところへ不動産投資をしていく。投資と言ったら厚生省は、いやそれは投資じゃないのだと言うから、改めて金を不動産に置きかえた、こう言うのが正しいそうですけれ
ども、私は専門家ではないから投資と言いましょう。そういう不動産に対しても非課税だ、いろいろな
意味で。一体何のためにそういうことをしなければならぬかというと、やはりそれなりの法律の大義名分があるからやっておるわけでしょう。やはり公共
法人だから非課税だというわけですね。しかしながら収入があればそこに利益が計上されるというか、黒字になれば税金がかかるというのは
一般常識です。ところがそういうところには税金がかかっていかない。なぜかといえば公共性が高いから、だからそういう面においては税金をかけなくてもよろしいと言う。だとすれば、診療報酬だって公共性のある
仕事をして、その結果得た収益じゃないですか。それは不公平だと言う。そこにも私は何か納得しがたい、おかしな理屈が成り立つのじゃないかと思うのですね。だからそういうことも含めて、やはり
制度を見直すとすれば、当然そういうところに整合性を持っていかなければ普遍性のある公論にはならないと私は信ずるからでございます。だからそういうこともはっきりと
大臣の前に私は申し上げて、そういうことに対しても十分な御
配慮をいただかなければならぬ。どうするかという問題を国民の前に提起し、またそれについて討論し、十分国民が納得できるようにしていかなければならぬと思うのですね、
国会の任務としては。
そういうことをしゃべりまくって時間がなくなりましたが、
大臣、こういういろいろなことがございます。ですから私が申し上げたいのは、最後に一言でいいのだが、
大臣はそういうことについてはっきりと、私が言っておることは誤っているのか、あるいは私の言っていることはそれはそれなりの根拠を持った話であるかということについて
大臣から所見を承って、そしてそれについて十分御
配慮いただくと同時に、そういうことについても十分整合性を図ってもらわなければ納得しないだろうと思うのですね。やはり一番必要なことは一体何が大切かという、人命を尊重するというこういう
社会をどうやってつくるかということだと思うのです。医師優遇税制に対して国民が非常に憤りを持っているのは一体何かというと 医者がもうけているということ、そういうことじゃなくて、医療の荒廃に対して腹が立ってしょうがないわけですよ。だから一矢報いたいという気
持ちがそういうところへ行っているのじゃないかと思うのです。だから医師優遇税制と言われているそういう
制度の中で、そういうものを是正したから、では医療はよくなるのか。私は、そういけものをちゃんと整合化していなかければ、かえって医療は荒廃すると思います。そういう中でやはり正しい整合性をどうやって見つけていくかということを早く急がなければ、あと一年しかありませんからね、
大臣。だから私はこれについて厚生
大臣にもこれからどんどん言っていくのだけれ
ども、大蔵省の方でも十分検討されて、私が申し上げていることに納得のできる答えを出していただけますか。最後にこれをお聞きします。