運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-03-01 第84回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月一日(水曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 正示啓次郎君       片岡 清一君    坊  秀男君       上田 卓三君    金子 みつ君       中村 重光君    伏屋 修治君       二見 伸明君    吉浦 忠治君       寺前  巖君    兼務 井上 普方君 兼務 兒玉 末男君    兼務 土井たか子君 兼務 山口 鶴男君    兼務 石田幸四郎君 兼務 春田 重昭君    兼務 竹本 孫一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 砂田 重民君  出席政府委員         文部大臣官房会         計課長     西崎 清久君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省学術国際         局長      井内慶次郎君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         文化庁長官   犬丸  直君         文化庁次長   吉久 勝美君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君  分科員外出席者         青少年対策本部         参事官     石瀬  博君         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 野辺 忠光君         大蔵省主計局主         計官      的場 順三君         厚生省児童家庭         局企画課長   下村  健君         厚生省児童家庭         局児童手当課長 加藤 栄一君         厚生省児童家庭         局障害福祉課長 佐藤 良正君         林野庁指導部森         林保全課長   小田島輝夫君         参  考  人         (日本道路公団         理事)     吉田 喜市君     ————————————— 分科員の異動 三月一日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     金子 みつ君   横路 孝弘君     上田 卓三君   二見 伸明君     吉浦 忠治君   寺前  巖君     三谷 秀治君 同日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     横路 孝弘君   金子 みつ君     中村 重光君   吉浦 忠治君     伏屋 修治君   三谷 秀治君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     藤田 高敏君   伏屋 修治君     二見 伸明君 同日  第一分科員井上普方君、第三分科員土井たか子  君、山口鶴男君、春田重昭君、第四分科員竹本  孫一君、第五分科員兒玉末男君及び石田幸四郎  君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算文部省所  管)      ————◇—————
  2. 正示啓次郎

    ○正示主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算文部省所管について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子みつ君。
  3. 金子みつ

    金子(み)分科員 私は、きょうは時間も短いことでございますし、一つの問題だけについて関係省庁の御所見を伺いたいと思っております。それは実は最近大変に問題になってきております性非行セックスの問題ですが、ことに少女売春の問題について少し問題を提起しながら御意見を伺いたいと思います。  昭和三十一年に制定されました売春防止法、これはざる法だと言われながらも、それでもやはり法律の持っている重みの中でたくさんの女性が救われてきております。しかし、売春は今日なおトルコぶろだとかあるいはピンクキャバレーですかというような形の変わったものとして根強く残っているということは、もう皆様御承知のところだと思います。そしてさらに問題になってまいりましたのは、今日この売春対象であるところの女性年齢が次第に低下してまいりまして、いわゆる少女売春ということが社会問題として取り上げられるようになってきたわけでございます。これは昭和五十二年の一月から十一月までの警察庁の調べでございますが、それによりますと大体十七歳の少女が一番多くて三〇・四%、十六歳二七・六、十五歳二八・一、さらに下がってきますと十二歳というのもあるわけでございますね。十二歳、十三歳、そういうような小さい年齢少女たち対象になっております。それで、これも同じ調べですが、十八歳未満の売春を行った少女たちの数ですけれども、これは五十一年の数は四十九年の数の三・五倍というのですから、二年間に非常にふえているということがこれでわかるわけです。どうしてこういうふうになるのかという問題をやはり考えなければならないと思うのです。  かつて売春原因というのは経済的な貧困というのが多かった、これはいままでの例でございますけれども、最近の少女売春は必ずしもそうではないということが言えるということです。言うなれば豊かさの中から生まれた貧困だ、こういうふうに考えてもいいんじゃないかというふうに思われるわけです。それはどんなことかと申し上げれば、もうすでにおわかりでいらっしゃると思いますけれども、いわゆる退廃文化とか、それから性の解放の誤った風潮というような問題ではないかと思うのです。たとえば町にはんらんするポルノの写真ですとかあるいは映画、それから例の雑誌自動販売、それから少女が読んでいる少女雑誌内容というのが、もうこれが例外なくセックス対象にした内容なんですね、漫画風になっておりますけれども、そういうものを読んでいる。それからこの少女たち家庭というのは、必ずしも経済的に貧困ではもちろんないし、むしろ知識階級家庭子供ですらそういう対象になっております。まあ知識階級子供たちでも両親が不在である、お二人とも就業しておられるとか、あるいは家庭の中が不和で緊張感が絶えずあるとかいうような問題もあるようでございますし、受験戦争なんかもこの問題の理由になります。受験本位授業に興味がなくて落ちこぼれた少女たち、あるいは志望校に入れなかったという挫折感、こんなものがやはりこういう道に走らせる。ただ、もう一つ問題だと思いますのは、補導された少女たちが言っているのは、学校家庭もつまらないという言い方をしているわけですね。つまらないというその精神的なさびしさみたいなものを少女たちが持っているんですが、これに対して大人がどう責任感じなければいけないかということを考える必要があると思うのです。少女たちは、もう一つの問題は、正しい性教育の欠如ということもやはり考えられるのじゃないでしょうか。言わせれば他人に迷惑をかけてないとか、授業料を使い込んで困っている友達を助けているとか、何か決して悪いことをしているような感じにとっていないというところに私は問題があるのじゃないかと思います。  そこでお尋ねしたいと思いますことは、こういうようなこと、まあ挙げてまいりますれば数限りなく実態はあるわけでございますけれども、こういうものはやはりそういうことを起こさせないように、性非行あるいは売春防止するのが一番大事だと思うわけですけれども、いまやっております警察補導というのは言うなれば事後対策でありまして、何の役にも立たない。そうじゃなくて積極的に防止をするということが必要だと考えます。  そこで文部大臣にお尋ねいたしたいのは、この問題について文部省、すなわち教育責任の府としてどういうふうに受けとめていらっしゃるのかということですね。それから時間ございませんから続けてお尋ねしておきますけれども、正しい性教育というのは学校教育ではどういう形でどの程度なされているのかということです。これが正しくされておれば子供たち判断力ができますから、これは自分防止することができるというふうにも考えられると思うのです。そのことと、それから先ほど申し上げた退廃文化の問題に関連してですけれども社会的な問題として、健全社会を育成していく、健全文化を育成するというたてまえからも社会教育立場でどういうような取り扱いをいままでしていらしたか、そしてこれからしょうとしていらっしゃるのか、そしてそのことによってこの性非行、ことに少女売春防止することができると思っておいでになるのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。
  4. 砂田重民

    砂田国務大臣 まことに心の痛む問題でございます。御指摘のとおり、そういう非行年齢層がだんだん下がってきているということも御指摘のとおりでございます。短い時間のことでございますから、学校でどういうふうに性教育を行っているかということをまずお答えを申し上げたいと思います。  学校教育におきます性教育人間尊重という精神を基盤といたしまして、心身発達段階に応じた性に関する科学的な知識生徒に与える。生徒が望ましい生活態度を身につけて異性特性立場理解して健全な異性観を持たせること、これに基づいた望ましい行動がとれるような指導をすることを目的といたしておりまして、理科保健体育特別活動等学校教育のいろいろな科目と申しますか、学校教育全体を通じて行っているわけでございます。  まず小学校段階におきましては、理科におきまして身の回りの動植物の観察を通じての指導体育におきます自分の体や心についての理解を通じての指導、また特別活動におきましては、児童心身発達に応じての初潮指導もすでに小学校ではいま行っておることでございます。中学校段階におきましては、保健体育における健康と体の発達や病気とその予防についての指導理科生物分野におきます繁殖や遺伝、こういった指導、道徳におきます生命尊重、同性、異性友達としてのいい人間関係をつくっていくこと、こういう指導特別活動の性的な発達への適応指導など、さらに技術家庭科目では保育の分野におきます指導等を通じまして、それぞれの分野に応じた性教育中学校段階では行っております。高等学校におきましては、保健体育におきまして性徴と性器官の機能、結婚と優生、家族計画性病予防、こういったことを指導いたしております。理科生物におきましては、生殖、遺伝と変異、生命現象、こういったことを指導いたしております。また倫理におきましては、現代社会人間関係、青年と人間形成、それから家庭におきましては育児と結婚、妊娠と分娩、家族、こういったことを指導いたしております。こういった各教科以外の教育活動部外活動と申しますか、こういう場では男女の特性と相互のあり方についての理解を深めていく、こういう教育指導を行っているわけでございます。  中学校高等学校の各段階におきまして、各教科等指導を通じて性についての正しい理解が得られるよう配慮しているところでございますけれども、各学校におきます実際の指導の場におきましては、各生徒実態に即して適切な指導が行われることが重要でございまして、こういう点におきましては、やはり教員の資質や指導力児童生徒たちとの気持ちの上での通じ合いというものが必要でございますので、文部省では生徒指導要領といたしまして、「思春期における生徒指導上の諸問題」というパンフレットを作成いたしまして、全国中、高等学校教員等に配付をいたしました。また、毎年生徒指導主事講座を開いて研修をやっております。教員たちカウンセリング技術指導講座を開設いたしますような教員に対する研修指導も行っているところでございます。  また、社会教育の場におきましては、社会教育分野では純潔教育と呼んでいるのでありますけれども性教育の問題が青少年教育及び成人教育内容として取り上げられておりますが、特に家庭子供さんたちに対するお母さんの対応の仕方ということに重点を置きまして、母親家庭教育に関する学習中心にいたしております。この種の学習は、婦人学級市町村事業である家庭教育学級等で主として行われているところでありますけれども、国はこれらの学級等の運用に要します経費の一部の助成をいたしております。  文部省といたしましては、社会の変化に対応いたしまして、この種の問題について今後ともなお力を入れていかなければならないと考えておりますけれども、同時に、金子委員からも御指摘のありました経済的な理由からという原因ではなく少女のこういった性非行が行われております実態から考えましても、こういったいまの社会的風潮から少女たちをどうしても守らなければなりません。同時に、テレビ、雑誌等、いい番組、いい雑誌がつくられますような努力を当然いたしておるわけでございまして、社会教育各種団体あるいはボランティアの団体等悪書追放と申しますか、お金を入れてすぐ出てくるカストリ雑誌のような週刊誌追放活動が全国的に相当物を言ってきてくれておりますけれども、やはり学校家庭社会と力を合わせてこの少女たちを守るという、いわゆるこの問題についての教育の同じ価値観を持った学校社会家庭連係プレーというものがどうしても必要である、そういう連係プレーの体制を整備してまいりますために積極的に文部省も働いていかなければならない、そういう決心をしているところでございます。
  5. 金子みつ

    金子(み)分科員 ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思いますが、いろいろ計画を立てたり政策を打ち出したりというふうに考えていてくださるようですけれども、そのことが功を奏さなければ何の役にも立たない。ですから、ああもし、こうもしといろいろ考えてくださることももちろん必要だと思いますけれども、功を奏するためにはどうするかということをもう一つ突っ込んでさらに検討を加えて指導していただきたいと思います。  続いて厚生省にお尋ねいたします。いまの問題でございますけれども厚生省はどういうふうに受けとめているかということを知りたいことが一つです。  それからもう一つ厚生省にお尋ねしたいと思いますことは、厚生省の場合は児童福祉法を持っていらっしゃる。この少女たち児童福祉法該当者なんです。ですから、児童福祉法のたてまえからいってこの問題をどうとらえるかということです。  さらに具体的な問題としては、児童福祉法三十四条一項六号に「児童淫行をさせる行為」というのは禁止行為になっている。この禁止行為を行った場合、六十条に「第三十四条第一項第六号の規定に違反した者は、これを十年以下の懲役又は二千円以上三万円以下の罰金に処する。」という罰則がついております。この罰則対象とされるのはだれかということです。だれが罰則対象になるかここに書いてないわけですが、厚生省はどういうふうにこれを解釈していらっしゃるか。時間がございませんから、そのことだけ御返事ください。
  6. 下村健

    下村説明員 いま三つ問題があったわけでございます。第一の厚生省としてはどのようにとらえているかということでございますが、御指摘のように警察等資料によりますとみずから進んでというのが半ばを超えるという状況でございまして、大変根の深い問題だというふうに考えているわけでございます。  厚生省でこれに関連する幾つかの施策を行っているわけでございますが、一つ児童相談所あるいは福祉事務所に置かれている家庭児童相談室のような相談機関等における必要な相談指導、それから児童委員あるいは母親クラブといった地域組織に関連するような地域的な分野での対策、もう一つ児童館その他の健全育成に関する施設、あるいは健全な環境を提供するという面での施策、さらに教護院等における非行少女の更生といった面での施策というふうな形での対策中心にして考えているわけでございます。それで……。
  7. 金子みつ

    金子(み)分科員 発言中ですけれども、時間がございませんので、皆わかっていますからそういうのを一々伺う必要はないのです。三十四条一項六号の罰則を受ける対象はだれか、それだけ教えてください。
  8. 下村健

    下村説明員 罰則を受ける対象は、「児童淫行をさせる」ということでございまして、児童をして相手方と不正な性交をさせるという、させたその者を対象にするということで、淫行をした者は含まないというのが従来の判例になっております。
  9. 金子みつ

    金子(み)分科員 させた者で、した者ではない。なぜした者は対象にならないのですか。
  10. 下村健

    下村説明員 立法当時としましては、淫行をする行為というのは性の自由というふうな問題とも絡んでくるわけでございますけれども一定限度以下の児童については自発的な判断能力がないというふうなことで外されているわけでございますが、ある程度以上の者については本人の自由な意思がある程度前提になっているという事情もございまして、この場合には、淫行をさせるという、児童影響力を及ぼすようなことによってそういうみだらな行為をさせるということを処罰する目的で、させた者だけを処罰するという規定になっておるというふうに解しております。
  11. 金子みつ

    金子(み)分科員 この文章を読みますと、「児童淫行をさせる行為」ですから、児童立場からいえば受け身ですよね。だから、積極的に能動的にこれをさせる者というのは、いまあなたの御説明によるような形ですとはっきりわからないのですね。具体的にはだれだということをおっしゃっていただかないとわからないのですけれども
  12. 下村健

    下村説明員 御指摘のようにその文章だけを読みますと、他人相手方として淫行させる行為のほか、自分相手方として淫行させる行為も含むかのように読める面は確かにあるわけでございます。これはただいま申しましたように、いろいろな強制力でありますとかあるいは場所の提供という場合も状況によっては含むというふうな感じ判例が出ておりますけれども、そうではありませんで、これは判例あるいは立法当時からの解釈といたしまして、自己を相手方とするようなものは含まないのだという解釈になっております。
  13. 金子みつ

    金子(み)分科員 慣例は大事ですね。役所は慣例を大変重んじになられる。だが、いまのお話を伺っておりますと、場所を提供した人だとかそれをするような組織とかいうものが対象になるのだ。実際に少女相手にして子供淫行をさせるような行為をした相手方男性野放しになっているわけですね。しかもこの少女は、さっきあなたがちょっと一言おっしゃった、本人の、自分意思だということをおっしゃっておりますね。そういう資料が出ているからだとおっしゃいましたけれども、これはたとえ意思があっても、相手少女なんですよ。そして相手男性大人なんですよ。いい年配の大人なんです。それだったら、本来ならば、そういうことは正しいことでないということを教育すべき立場にある人が、好んでそれを相手にしてえじきにするというようなことをして、しかもそれが何のお構いなし、野放しになっている、こういうことでは少女のいわゆる性非行はなくなりません。とても防げる方法ではない。しかも取り扱いとしては大変に片手落ちだと思います。あなたはいままでの慣習だとおっしゃいますけれども、あなた個人のお考えとしては、相手方男性の場合、これを放置しておいてもいいと思っていらっしゃいますか、それは構わないのだ、それでいいのだと思っていらっしゃいますか。
  14. 下村健

    下村説明員 最初にちょっと訂正させていただきますが、慣例ということで申し上げたのではありませんで、立法当時の立法趣旨、それからその後における解釈、それから実際にこの禁止行為にかかって裁判等判例におきましてもそういうものが含まれないということになっておりますということを申し上げたわけでございます。  それから、そういう未熟な少女相手にしてそういう行為をする、これは道徳的には大いに非難されるべき行為だと思いますが、それを立法上の問題といたしまして新たな刑事罰を加えるようなかっこうで規制をしていくのが適当かどうか、これについてはいろいろな角度からなお慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
  15. 金子みつ

    金子(み)分科員 売春という字は二つあるのです。普通、売る春と書いた売春ばかり物を言っておりますけれども、買うことだってあるのですよ。買うことがあるわけでしょう。売り買いの問題。だから買う春の方の立場で、その角度から物を考える必要があるのじゃないでしょうか。余りにも一方的だと私は考えるのです。  この問題をいま、課長のあなたを相手にしてどこまでも詰められませんけれども、問題は法律罰則を加えることについて法的措置をすることがどうこうといまおっしゃっていました。御承知だと思いますけれども、地方自治体では都道府県条例をつくって罰金も実刑も相手方に与えているというところだってありますでしょう。それから知事会でもその話は問題になっております。そういうような時点でありますから、厚生省におきましてもこの際この問題をもう一遍検討するということをぜひ約束していただきたいのです。そしてこれは少女相手方も何らかの方法で処罰するということが必要だと考えます。それは、どういうふうにしてするかということはお任せしますから検討していただきたいけれども野放しにしておくことでよろしいというような姿勢は改めていただかなければならないと考えるわけです。そのことが行われることによってこの少女非行が完全になくなるということはないかもしれません。しかし、これは歯どめにはなると思うのです。きょうは課長さんですからこれ以上申し上げませんけれども厚生省ではぜひそのことについてはよくお考えいただきたい。また別の機会を新たにいたしまして厚生大臣お話し申し上げたいと思っておりますけれども、きょうはそういうふうにいたしておきますので、厚生省では宿題としてお持ち帰り願いたいと思いますがいかがですか。
  16. 下村健

    下村説明員 御指摘のように都道府県青少年保護育成条例というふうな形でこの種の面の規制も行っているところがあるわけでございます。私どもとしてもこれらの実施状況等も十分把握いたしまして、またこれは、実は厚生省だけで判断するにはなかなか——実際の取り締まりの面その他も含めまして関係各省とも相談しなければならない面があるわけでございます。そういうことで御意見もよく踏まえましてなお十分検討いたしたいと思いますが、いろいろむずかしい問題を含んでいる問題であるということは御理解願いたいと思います。
  17. 金子みつ

    金子(み)分科員 やさしいとはだれも思っておりません。  最後に、お呼びしてありますので総理府の青少年対策立場で、この問題について、いままでこの問題を防止する姿勢で何をやっていらしたか、時間がありませんからほんの一言で結構です。
  18. 石瀬博

    石瀬説明員 時間がありませんので簡単に申し上げたいと思います。  私どもは各省庁との連絡調整を主たる仕事にしておりますので、関係省庁とも連絡をとりながらいろいろな施策を講じているわけでございますが、一つ地域における補導活動の推進といったような直接的な対策、それから学校における生徒指導家庭におけるしつけ、三つ目は不健全なマスコミに対する自粛の要請等活動を行っているということでございます。それから、いまほどお話がありました各都道府県青少年保護育成条例の改正あるいは制定についての各県に対する指導を通じまして、売春相手になった男の処罰が可能になるような方法での指導もいたしておるわけでございます。
  19. 金子みつ

    金子(み)分科員 大変にむずかしい問題でございますし、一つ省庁だけで解決のつく問題ではないことはよくわかっているわけでございます。来年は国際児童年なんですね。こういうものが野放しになったままで国際児童年を迎えるということは、私どもは非常に問題が大きいと思います。ですから、それまでの間に全部解決するとは考えられませんけれども、解決の方向へ向かってそれぞれの関係省庁が県と連絡調整しながら、真剣に誠意を持って対策を考えていただきたいということをしみじみ思います。  日本は昔から、半玉や舞子などの水揚げということがあって、これは少女売春そのものですけれども、そういうことが公然と行われている日本のいわゆる性に対する風潮、そういうものが男尊女卑の思想だとか男性優位の社会的な処遇、そういうものに全部関連してきていると思います。それらのことは十分御承知の上だと思います。この問題はやはり防止ということを重点に置きまして、文部省指導中心にして、厚生省側は先ほどの児童福祉法の法令の改正を実現させることによって教育実態の処置、処遇、両方からこれを仕上げていくようにしなければならないというふうに考えますので、その点をぜひ強くお願いしたいと思います。文部大臣、最後にその指導の御決意をお願いして私質問を終わります。
  20. 砂田重民

    砂田国務大臣 文部省は実は小、中学校学習指導要領の改定を行います。五月ごろには高等学校学習指導要領の改定が決着がつくと思います。  それぞれ児童生徒たちにゆとり時間が出てまいりますれば、その中で体育でありますとか福祉への奉仕でありますとか、そういういわゆる課外活動をそのゆとりの中に取り入れていこうとしているわけでございますから、その中に人間のとうとさというものをもっと教えていく、そして先ほども申し上げましたような心身発達段階に応じた性に対する正しい知識を与えていくことは当然でありますけれども、そのほかに生徒が望ましい生活態度を身につけてくれるように、そのゆとり時間をまたこれに活用して懸命に取り組んでまいります。
  21. 金子みつ

    金子(み)分科員 ありがとうございました。
  22. 正示啓次郎

    ○正示主査 では続いて、吉浦忠治君。
  23. 吉浦忠治

    吉浦分科員 最初に厚生省にお尋ねをいたしたいと思います。  二十一世紀の担い手でありますところの児童心身の健全な育成を目的として設けられました児童手当についてお尋ねをいたします。  一昨々年あたりからでございますか、いわゆる景気の動向とにらみ合わせての存続廃止論が出てまいりました。厚生省児童手当の見直しということで実態調査がなされたようでございますが、発足をいたしてまして五、六年でございますか、四十七年の一月に十八歳未満の子供三人以上いるときに義務教育終了前の三人目のお子さんから支給というふうになっておりまして、五十年十月からは五千円、所得制限が六人世帯で四百九十七万円に緩和されております。低額所得者に対しては、本年度からでございますか六千円というふうなお考えがあるようでございますが、この児童手当見直しということが起こりまして、実態調査をなさった結果を簡潔にお答え願いたいと思います。
  24. 加藤栄一

    ○加藤説明員 先般、五十一年末から五十二年の二月にかけまして、児童手当制度に関します意識調査をいたしたわけでございますが、これは三つの対象に分かれておりまして、一般世帯、企業、有識者についてそれぞれ調べたものであります。  一番最初の国民一般の世論が反映されておると思われます一般世帯の調査につきましては、五一・八%は児童手当制度を必要と考えておりまして、また支給対象、支給額などにつきましては、現行児童手当制度の基本的な枠組みにつきまして、現行制度を肯定する意見が多数を占めておりました。しかし一方、それよりは少ないわけでございますが、制度に批判的な意見もあったということは事実でございまして、私どもはこれを国民が児童健全育成、資質向上のために児童手当を含めまして関係施策がより効果的に実施されることを望んでおる、かように評価しております。
  25. 吉浦忠治

    吉浦分科員 歴史を申すまでもなく、児童手当はいわゆる世界の先進国においても定着している現状でございます。第一子からも西ドイツ、デンマーク、オーストラリア、ベルギーなど六十六ヵ国が実施をしている現状でありまして、特に日本と国情がよく似ているという西ドイツのごときは、第一子のお子さんに五千九百円の支給、第二子八千三百円、第三子以降は一万四千三百円という高額の支給をいたしているわけであります。発足して五、六年たった日本の現在において、定着どころではなくて大変不安定な状態が続いているわけであります。私、委員会は異なりますけれども、農水の委員会等でお米の生産調整を行うというのに、農林省は十年の計画を見通しを立ててやっているわけでございます。ましてや国家百年の大計が教育実態でございますのに、四、五年で見直しをしなければならぬというような不安定な状態ではならないのでございまして、せめて二十年、五十年という見通しに立たなければ教育はできないだろう、児童の健全な育成も図れないだろう、こういうように考えるわけでありますが、その点について、厚生省はやはり社会保障全体の中での児童手当制度の位置づけというものを明確にすべきときがいま来ているのではないか、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  26. 加藤栄一

    ○加藤説明員 先生御指摘のとおり、児童手当につきましては一世代後になりまして効果が出るというようなこともにらんで、私ども制度を考えていかなければならぬというふうに考えておりまして、現在、先般の調査の結果をも考えながら、厚生省に中央児童福祉審議会という審議会がございますが、そこにおきまして制度の基本的なあり方について御検討いただいておるところでございまして、昨年の十二月十二日に中間報告をいただいたわけでございますが、その中におきましても児童手当制度が目的といたします家庭生活の安定それから児童健全育成、資質向上、このような児童手当制度の目的は、現在の急速な人口の老齢化の進行等のわが国の今日の社会状況ないしは今後の社会の趨勢を勘案しましたときに、その重要性は増しているというふうな評価をいただいておりまして、私どもそのとおりであると考えております。これらに沿いますように、ほかの児童健全育成施策あるいは税制の扶養控除あるいは賃金の家族手当等の諸制度との関連性ないしは他の社会保障制度との関連性も十分に考慮しながら、制度の目的に即した効果的合理的なあり方を検討してまいりまして、それを中央児童福祉審議会の御審議の結果等も勘案しながら考えてまいりたい、かように考えております。
  27. 吉浦忠治

    吉浦分科員 厚生省のこうした中での福祉見直しの一番手として児童手当が挙げられているということについて私は不安を感じているものでありまして、言うなれば福祉国家の一つの柱でありますところの福祉保障制度と申しますか社会保障の後退につながるような児童手当であってはならないと思うわけでございます。先ほど申し上げましたように、やはり長期見通しの展望に立たなければ、こういう不安定な状態であってはならない、充実強化こそ先決ではないか、こういうふうに私は考えているものでありまして、いま文部大臣もおられますけれども、非常に不安定な状態が続く中に、私は先進国の状態等を見てまいりますと、金額の問題なりいわゆる社会的ないろいろな問題がありましても、やはり十年、二十年と存続をさせているところを見なければならないと思うのです。そういう点、日本の国情とは違いましても、しかも先進国と言われる日本がこういう不安定な状態であってはならないと思いますので、最後に存続強化の要望だけいたして、児童手当の問題は終わらしていただきたいと思います。  続いて、学校主任制度の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。学校には種々の分野があるわけでありまして、それぞれを主に世話をするということから主任というものが起こっておると私は思うわけでございます。言うなれば校務分掌の一端でございまして、要するに五千円支給の対象と申しますか、そういう主任制度であってはならないというふうに私は考えておるものです。主任の管理職化ということを避けられることからして、前の海部文部大臣のときに、管理職化を防ぐためには支給対象を拡大すべきだというふうなことをお話しになりましたが、砂田文部大臣、いまの小学校中学校の主任制度についてどのような拡大をお考えなさっているかを、私はまずお尋ねをいたしたいと思います。
  28. 砂田重民

    砂田国務大臣 御承知のように第三次の一回分の改善に係ります給与法、人事院規則の改正等が先般なされたばかりでございます。いま各県で給与改善のための手続をお進めいただいているところでございます。第三次の二回目がまだ残っておりまして、この中に主任制度の主任の拡大の問題が出てまいると思います。そしてその拡大につきましては、学校運営面で手当支給の対象といたしました第三次の一回分、このときに人事院が決めました主任等に準ずるような主任について、第三回目の第二次でこれが支給し得るように人事院に検討をお願いをいたしました。御相談をいたしながら、人事院の勧告をただいま待っているところでございます。
  29. 吉浦忠治

    吉浦分科員 支給対象と申しますか、大体主任というのは小学校においては学年主任、教務主任、中学校においてはそのほかに生徒指導主事、進路指導主事というのはお考えのようでございますが、ちょっと私は疑問を持っておりますのは、小学校の学年主任という場合に、一年から六年まで学年主任はそれぞれいらっしゃいますが、いまの支給対象というのは三クラス以上の学年主任でございますか、この方は対象になるけれども、小さな学校と申しますか、小単位の学校でございますと、二クラス以上というと一クラスしかありませんが、二クラスのところでは支給対象にならない、三クラス以上でなくてはならぬというふうなお考えのようでございますが、この付近、ちょっと私は矛盾していやしないかと思いますが、大臣、いかがでございますか。
  30. 砂田重民

    砂田国務大臣 大変卑近な例のようですけれども、例示的に御答弁をしたいと思うのです。たとえば教務主任の担当いたします仕事の一つに、時間割りの調整がございます。やはり同学年で三クラス以上になりますと、それぞれのクラス、時間割りがばらばらでは困るわけでございますから、教務主任がそれを調和をとって、それぞれの学級の担当の先生方と御相談の上で、まさに調整、指導、助言をして、その学年の各クラスの時間割りが決まってくる。二クラスですと、これは二人の先生御相談になれば、大体そんなに時間をかけずに調整がつくことでございますから、ひとつ例示的にいま御説明を申し上げたのですが、そういう意味もございまして、三クラス以上の主任の方には特段の御苦労がたくさんかかるわけでございますので、その職責に応じた手当を差し上げよう、そういう考え方に立つものでございます。
  31. 吉浦忠治

    吉浦分科員 大臣、お答えになっておりませんで、大臣、全般のことはお詳しいようでございますけれども、そういう実情の細かい点について、何か余りお答えがかゆいところに手が届かないようでございます。と申しますのは、やはりこの主任制度が制度化されてまいりますと、学校でかなりの混乱が起こってくると私は考えておるわけです。したがいまして、この主任問題の根本的な扱いといいますか、根本的な問題と申しますのに、先生の先生といいますか、先生をもう一つ指導する先生というふうな考え方、これは永井文部大臣のときにお話しのありました主任は教員指導職であってほしいというふうなことがございました。先生の先生をつくるということの問題も、非常に現場においては混乱をするのじゃないかと考えるわけです。ただ二クラス以上のこと、三クラス以上のことは、時間割りはそれほどの問題はないわけでございます。その付近のことも、文部省なりよほど現場を把握なさらないと、ましてや主任が教員指導職であるというふうなことでありますとこれは大問題になりゃしないかなと心配をしております。  続きまして、調和のとれた学校教育ということで私心配をいたしておりますが、この学校主任制度化というものが手当支給の現実面で調和のとれた制度と言われておりますけれども、これはうらはらじゃないか、かえって調和を乱すような形になりはしないかと思いますが、大臣、その調和のとれた学校運営というのは制度化とどのように結びつけられるのかを簡潔にお答え願いたい。
  32. 砂田重民

    砂田国務大臣 先生の指導立場に立ったと、必ずしも私はそうは言い切れないという感じがするのです。それは、主任という制度は学校の管理を強めるのではないかという誤解を一部の方に与えておりますことは事実でございます。私どもは、そうではなくて、自然発生的に全国にわたってできてきておりました主任を文部省で改めて省令に書き加えて制度化した、それは管理面を強めるためのお仕事をお願いをするのではなくて、教育指導面の仕事を担当していただく、そういう意味でございますから、主任の制度化という問題は教育活動を一層活発にする、まさに調和のとれた教育活動教育指導面によってなされていく、学校教育の質的な充実を図るために先ほど先生のおっしゃいました校務分掌の仕組みを整える、そういう意味の調和のことを申しているわけでございますから、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思います。
  33. 吉浦忠治

    吉浦分科員 これまた、私、御回答を納得できないわけでございまして、と申しますのは、学校の先生にはいわゆる特殊技術も必要でございますし、おのおの特技を持っていらっしゃる先生もいらっしゃるわけでございます。ところが、得手不得手もございまして、主任手当をいただけるような先生、そうでない先生の中にも、おのずからいただける先生の持っていらっしゃるより以上のものを持っているような先生もいっぱいいらっしゃるわけです。それがおのずから調和を発揮するときに学校運営は大変スムーズに動くわけでありまして、そういう点から私は当初申し上げてお答えがありませんが、主任手当の拡大、ほとんどの八〇%から九〇%くらいの先生に支給をいたしていけば問題はないけれども、ごく限られた先生だけという支給の対象が、これは現場が混乱をして、校長先生方も、支給はありがたいけれども混乱については悩むというふうな現状でございます。そういう点で、調和というのは私は違った意味の調和を考えておりますが、そういう点の不安を感じておりまして、できることならば、これほど混乱を招く、ストライキまでやるというふうな日教組のこと、またプール問題は私は触れませんけれども、こういう混乱があれば、いま教育の問題で果たさなければならない役割りがもっとたくさんあると思っているわけでして、その一つに、ようやく念願かないました教科書無償というふうなものを有償化しようという動きさえあるわけでありまして、こういう問題のある支給よりも、みんな児童、父兄が喜ぶところの教科書無償を確実に存続させるという大臣の決意を主任手当よりも優先するのはそういう義務教育は無償とするという憲法の条文に従う、そういう制度の方をウエートをどういうふうにお考えになっていらっしゃるかお尋ねをいたしたい。
  34. 砂田重民

    砂田国務大臣 教科書の無償化と主任の手当の問題を直接結びつけてお考えになるのは、少し御議論に飛躍があるように思います。主任の手当というものは、主任というものが自然発生的にすでにできていた、これはやはり制度化をしてその御苦労には報いるべきだということにすぎない。まさに調和は以前から、主任というものが自然発生的にできたときから、主任の方々のお働きによって調和のとれた学校運営ができていた。その御苦労にこたえようということでございまして、教科書の有償化というのは政府の一部にもそういう声がございまして、私は率直に端的にお答えいたしますけれども教科書を有償化しようなんという議論は歯牙にかけません。絶対にこんな議論には負けるものではありません。なぜかと言えば、私の味方には憲法がございます。
  35. 吉浦忠治

    吉浦分科員 力強い御答弁をいただき、ありがとうございました。  続きまして滋賀県の中学生の殺人事件等について、なるべく簡単に、各委員の方が御質問のようでございますので、これに対する大臣の、前に武田委員の質問に対していま考慮中であるということでございましたが、明快にこういう時代的背景についてのことと、それに対する対策をお尋ねをいたしたいと思います。
  36. 砂田重民

    砂田国務大臣 人命軽視の風潮でありますとか、特にそういう社会的風潮があるときでございますから、そういう角度に立っての教育がなおより重要であるということはもう議論の余地はございません。その点、私どもも当然もっともっと力を入れてまいらなければなりませんが、滋賀県教育委員会の教育長が東京へ出てまいりました。文部省の担当官が直接その事情の一切を聴取いたしました。この担当の先生は、この事件を起こしました子供に問題があるということを承知をいたしておられました。懸命になってこの生徒学習態度、校外の生活の態度というものを何とか改めさせたいという異常な努力で、御婦人の先生でございますけれども、懸命に取り組まれました。家庭も一緒になってやっていただきたいと思って何度も何度も御両親を訪ねましたけれども、夜の夜中までお待ちしてもお帰りにならない。そういうところから、滋賀県のこの問題については、その背景にあるものは、あえて学校教育の場の責任を逃れる意味ではなくて、家庭が余りにも放任主義過ぎた、放任というよりはむしろ捨て子の状態であった。中学校の三年生が大変数多く外泊しても、どこへ行ったかということを聞いてもいない。こういうところから、確かに学業の少々おくれもあった子供さんでございますので、五人、六人の人が一カ所に集まって毎晩のようにマージャンをしたり遊んでいた、そういう付和雷同的なこともあって非常に計画的にこの事件を考えていた。ちょうど大人計画的にこういう残酷な問題を企図する、計画をする、大人と同じようなことを計画的に考えていた。しかし、事の善悪については、大人のように善悪判断の能力がまだない、発達状態にある子供であった。先生は努力をしておられたけれども、しかし、やはり教務主任、学年主任等との連絡には完璧なものがあったと言い得ない。皆で反省をしなければならないという気持ちがするのでございます。地域社会ぐるみ、家庭ぐるみ、なお一層学校教員にも御努力をいただいて、こういう問題のある子供さんたちの態様の事前の察知、事前の教育による説得、教育指導、こういうことに力を入れてまいりたいと考えております。
  37. 吉浦忠治

    吉浦分科員 こういう問題が起こりますと、いわゆる環境学的な立場からですといろいろ問題にするわけですが、社会問題もそうでございます。家庭問題もそうでございます。また、教師、学校の側の考えなければならぬところもありましょうけれども、私はいまの子供さんをどのように育てたらいいかという点についてやはり反省をしなければいけないというふうに思っております。そこで、提言の形になるかもしれませんけれども、大臣に直接にお願いをいたしたいのは、子供たちの内面的な指導というものをいまの教育は考えなければいけないのじゃないかというふうに思っております。この問題等も、追跡をしてまいりますと、がまんできない子供さん、耐えられない子供さん、いわゆる耐性教育と言ったらいいかもしれませんが、それが非行問題、行動というものに密接に関係性があるということが教育心理学の立場からもわかってきている問題です。ですから、子供に対するがまんといいますかそういうものの教育を重視していかなければならない。たとえばそういう傾向を調査したものによりますと、一学級で耐性のある生徒は二五%です。耐性のない、低い生徒というのは七五%いるのです。耐性を高める教育というものを幼児のときから加えて考えなければならぬじゃないかというふうに思っているわけです。ですから、これはその一つの例でございますけれども、感動教育などを考えなければいけないのじゃないか。本を読んで感動するとか実際の場面を見て生きがい、生きざまを感ずるとかということを感じますと、おのずからこういうことはやっちゃいけないとか、感動したときにはこれは実践しなければいかぬというふうに人間の心というものは進んでまいるわけでございますので、そういう面に何かの感動を覚えるということが現実要求の場合の価値創造につながっていくものじゃないか。そういう内面指導というものを文部省は当然お考えになって、そういう面の充実を図るように心がけていただきたいと私思いますけれども、大臣、そういうお考え、いまちょっと提案申し上げたようなことについてお答えを、簡潔にほんの一言で結構ですからお願いしたい。
  38. 砂田重民

    砂田国務大臣 全く同感でございます。昔の人ならば、小学校へ通うのでも大変な、二里、三里の道を歩いて、学校へ往復するだけで耐えることを身につけておられました。いまの児童生徒たちはそういうことではございませんから、なおさら先生のおっしゃるような内面指導教育というものが非常に重要な時代になっている、ひとつ懸命に取り組んでまいります。
  39. 吉浦忠治

    吉浦分科員 子供の自殺というものも大変重大な問題が起こっているわけでございまして、大体、子供というのは自殺をするものじゃないのです。なぜそれでは自殺をするかというと、私はここで心理学の分析をしているわけじゃございません、その時間はございませんが、大体子供の傾向を見ますと、将来何になりたいかというふうに問いますと、野球選手になりたいというぐらいが関の山だったのが、いまの子供さんは、弁護士になりたいとかお医者さんになりたいというふうなことを言っております。これは子供の要望ではなくて親の要望がそのまま子供に出てきていると思うのです。そういう時代背景と申しますか、教育の問題点というものを考えなければならないと思う。先ほど私、内面的なことも申し上げましたけれども、いろいろ問題はあろうと思いますが、親の範疇と申しますか、親のそういう考え方が大きく子供に影響していることは事実でありまして、これは教師も親の方も反省をしなければなりませんが、学校の先生方のいまの社会環境の中で——私は千葉県でございますけれども、千葉から東京寄りの方に参りますと、非常に新興地域でございますから、新しい学校が多いわけでございます。千葉から房総半島の私の方の地域にかけますと、過疎地域、過疎というとあれでございますが、少なくなっていますから過疎地域でございます。そうなりますと、先生方の異動の場合も同じところでぐるぐる回っているような状態で、高齢化している職員編成でございます。若いところが——私も教育の現場に長いことおりましたのでわかりますが、教育技術とか教育経験だけではいかないものがございます。何と申しましても、教育には熱意が大事でございます。四十歳、五十歳になって熱意を言われますと、これは若い先生にはかなわないわけでございます。私の近所の学校は、ちょっと運動会に行ったときに校長先生にお話を聞きましたら、男の先生で一番若い先生が四十一歳でございます。平均が男の先生で四十七歳でございます。経験が物を言う教育ではございますが、情熱という点について欠けやしないか、そういう点における学校教師の編成、いわゆる千葉県における編成、年齢構成がどういうふうになっておりますか。それだけをお尋ねして終わりたいと思います。
  40. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ただいま御指摘のように千葉の南部の方の年齢構成というのは、大体全国平均に近いような状況でございますが、千葉県について申しますと、全県的に見ますと、小学校で三十六・三歳、中学校では三十七・一歳ということで、いずれも全国平均に比べて二、三歳若くなっております。ただ、その実態は、いまお話がございましたように、房州の方は一般的に非常に年齢構成が高い。千葉以西と申しますか、千葉、市川、船橋、松戸あの辺は人口急増地域でございますから、学校もふえ、先生もどんどんふやすということで、大分年齢構成が違っておる。したがって、人事異動の際にも、南の方と北、西の方とできるだけ交流するようにとやってはおるようでございますが、なかなかまだ十分でない、こういうことのようでございます。
  41. 吉浦忠治

    吉浦分科員 終わります。
  42. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、兒玉末男君。
  43. 兒玉末男

    兒玉分科員 文部省関係とエネルギー庁関係について御質問します。  まず最初に文部大臣にお伺いしますけれども、先般の予算の総括でも若干御質問したわけですが、第一点は、先般日教組の槇枝委員長にお会いになりましたが、結論的には物分かれの形でございました。この問題は後で御質問しますけれども、非常に重要な課題でございまして、これ切りにするのか、さらにまたこれから会見を通してお互いの意思の疎通を図るような努力をされるおつもりかどうか、まず一点お伺いしたいと思います。
  44. 砂田重民

    砂田国務大臣 それはお目にかかっての話の内容の問題も絡むわけでございます。先般は、会いたいというお申し入れをいただきましてお目にかかりまして、三点の申し入れがございました。主任の問題、公立学校の週休二日制の施行の問題、教員大学の問題。お申し入れの内容については同意できないことばかりでございましたから、それぞれ理由を御説明をいたしまして、「同意できません、私はこの立場でまいります。」槇枝さんからも、「大臣の立場はわかりました。並行線ですね。」「そのとおりですね。」ということで別れたわけですが、このままにするかと児玉先生おっしゃっても、またお申し入れがあればお目にかかりますし、そのときにも私の方からも「何か御協力いただかなければならないようなときにはこちらからも会見申し入れをいたすことがございますよ。」「喜んで。」というふうなことでお別れをしたわけでございます。
  45. 兒玉末男

    兒玉分科員 先ほどの方からも御質問がありましたが、私は今日の教育現場の実情というものを見ておりますと、まことに憂慮すべき事態が多々発生しております。たとえば先般の滋賀県の問題あるいは東京都における暴力行為あるいは集団万引き、さらにまた九州でも、集団暴行が最近発生しております。  この点について、最近の朝日ジャーナルが特集しました、沖繩においての日教組の教研集会における、高校なり中学教師の現場における生徒指導での悩みといいますか苦悩といいますか、それからまた、それに取り組む本当に真摯な取り組みの実態が朝日ジャーナルに載っております。私はこれを読みましたが、やはり今後の教育問題の根幹に触れる問題が、貴重な体験として主張されているわけであります。恐らく文部大臣も朝日ジャーナルをお読みになったと思うのですが、今後の教育の基本について現場における教師の姿勢がどうなければいけないのか、また、子を持つ親の平生の家庭指導がどうなければいけないかという問題等、いろいろな困難にめげずに、信念を通して子供の将来を守っていかなければいけないという、非常に熱心な、しかも献身的な表現があのジャーナルにルポされております。  こういう点からも、今後私は、教育現場における教員間の感情的な摩擦あるいは教員同士の不和感あるいは協調性、こういうもの等を考える場合に、今度実施されます主任手当、主任制度の問題等も、いままでの歴史から振り返ってみていま一段の突っ込んだ論議がなされることによって、この制度の実行が本当に教育現場にプラスするのかマイナスなのか、その辺の見解について大臣の慎重な配慮が必要ではないかと思うのでございますが、現在における文部大臣の御見解を承りたいと思います。
  46. 砂田重民

    砂田国務大臣 率直にお答えをいたします。  文部省は教研集会を認めておりません。その理由は、日教組傘下の教員の皆さんが集まられて教育内容の問題について研修をなさるだけではなくて、日教組としての政治的議論もあわせて行われる場が教研集会の中で持たれますから、文部省も私も、集会を認めないという立場をとっております。しかし、それぞれの分科会で議論なさいました教員の皆様のあの熱心な議論の内容については、素直にこれを評価すべきだと私は考えております。朝日ジャーナルも読みましたけれども、その中にも教えられるところすらあったことを率直にお答えをしておきます。  そして、教員の中での融和その他が必要でありますことは、兒玉委員御指摘のとおりでございます。ただ、私の立場といたしましては、教育という問題は、政府も社会も両親も教員も、教育というものについて同じ価値観を持たなければ教育の成果が上がるべきはずがございません。私は、社会や両親や教員に物を申します前に、文部省としては、五十三年度予算に絡めて、まず反省の立場に立ってこういう施策を行ってまいりますということを申し上げたい、かように思いまして、文教委員会でも所信の表明をいたしたわけでございます。まず自分の責務を果たすことを明確にいたしました上で、御両親にも社会にも教員にも言いたいことは言わしていただく、こういう立場をとっておるわけでございます。まず文部省として、言われます教育の荒廃から教育を救い出すために、子供立場に立って文部省としてまずなさねばならぬ責務は何かということからスタートをしたいと考えているわけでございます。
  47. 兒玉末男

    兒玉分科員 本日は初等中等局長もお見えのようでございますが、先ほど文部大臣にも若干お聞きしたわけですけれども、今日の中学校における中学生の非行問題というのはきわめて根が深い。同時にまた、いろいろな新聞なりあるいは週刊誌等の論評から見ても、子供教育に対するところの判断といいますか、認識あるいは現状分析というものが十分でない。同時にまた、家庭の両親との緊密な連携ということに多々欠ける面があるのではないかというふうに感ずるわけでございますが、最近連続して起きる特に中学生のこのような行動について、どういうふうな指導と全国的な体制について対処されているのか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  48. 砂田重民

    砂田国務大臣 大変中学生等の非行が多くなっておりますことは、本当に残念なことでございます。  文部省といたしましては、特別活動、各教科以外の教育活動も通じまして個々の生徒学校自体で、教員自身で十分把握いたしまして、教師と生徒及び生徒相互間の好ましい人間関係を育成するように最善の努力を尽くしていただいた上で、教師から家庭に、また地域社会に協力を求めていく努力をしてくださるように文部省としても指導を強めていこう、こういう決意を新たにしているものでございます。
  49. 兒玉末男

    兒玉分科員 何か、各県の教育長でございますか、そういう人たちを集めてさらに指導を強化する旨のことを、たしか大臣はこの前の予算委員会で答弁されたと思うのですが、それの措置は現在どういうふうになされているのか、その点について。
  50. 砂田重民

    砂田国務大臣 まず、各県の教育委員会に対しまして、滋賀県の野洲事件から受けました私どもの教訓、反省、これに基づいて通達を出すことにいたしております。
  51. 兒玉末男

    兒玉分科員 せっかく諸澤局長お見えのようでございますが、長年文部省におられた方で、特に今日の問題が非常に深刻だという点から、ひとつ局長立場からもこの際見解を承りたいと思います。
  52. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 中学生段階における非行の問題につきましては、毎年、指導関係を担当します指導課長会議というのを三回ほどやっておりますが、その際も常に課長を通じて、各学校段階における指導の徹底を期するようにお願いをしておるところでございます。ただ、最近われわれのいろいろやっておりますこととしては、そのほかに、学校生徒指導主事、そういう人たちを集めての生徒指導のための研修、それから一人一人の生徒のいろいろな問題についての相談に乗るという、カウンセリング技術の講習というようなこともやっておりますし、各種の資料等をつくりまして学校に配付するというようなこともやっております。  したがって、いろいろなことをやっておるのですが、問題は、あと実際に学校の先生がそれにどう対応してやっていただけるかということであろうかと思うのでありまして、先般の滋賀の問題につきましても、私はいろいろ話を聞きまして、一つは、先生方が非常に熱心にやっていただいているけれども、もう一つ踏み込んで、一人一人の生徒に対して、さっき申しましたカウンセリングと申しますか、そういうスキンシップ的な接触を深めていただくことが必要ではないかということ。それから、最近の非行というのは、子供がグループをつくってやります。そうしますと、その子供学校において組も違い、担任の先生も違うということになりますと、一人一人の子供をつかまえただけではなかなか十分な教育ができない。そこで、学校全体として、あるいは学年全体として、生徒指導主事なり学年主任も積極的に働いて、グループを対象とした、そういう問題の子供たちには教育的な配慮を十分していただくというようなことが必要だろうと思います。  そしてもう一つは、先ほど御指摘がありましたように、今日の社会においては、家庭というものが相当子供教育に対して関心を持っていただかなければいかぬ。特に、非常に細かい話になりますが、先般の滋賀県の殺人事件の問題なんかにしましても、子供に勉強の個室を与えておいて、その個室で子供友達を呼んでいろいろやる。勉強の話をしたり、相談をしたりのうちはいいのですけれども、放任しておきますと、そこでたばこを吸う、マージャンをやる、夜更かしをして大きな声で歌を歌ったり、レコードをかける、どうもそういうことが続いておったようでありますが、それに対して親がほとんど干渉しない。したがって、そういう子供家庭における日常動作、特に最近は、いま申しましたように住居状況等もよくなって、子供に個室を与えるというようなことがありますが、そういう場合にはやはり親が十分やってもらわないと、これはとても学校の監視の及ぶところではないというようなこともございますので、学校面、家庭面、そして社会全体もそういう問題については——近所で子供が騒いでおっても、うるさいと言うて注文をつけても、子供に注意することは余りしない、またできないという社会的風潮でございますから、そういう面についての社会の積極的な協力というようなことがなければいけないと思うわけでありまして、そういうようなことも含めて、今後通達等でさらに細かく各県にお願いをしますとともに、機会あるごとに県の担当者を通じて指導を徹底してまいりたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  53. 兒玉末男

    兒玉分科員 これは大臣の御答弁になろうかと思うのですが、ただいま局長も言われましたが、きめの細かい指導ということはこの前も若干御質問したわけですが、現在の小中学校の一教室の生徒の定数が四十五が上限になっておるわけでございますが、もちろん全国平均からすればそれ以下であろうかと思うわけですけれども、西欧先進国の例でも、大体一番多いところで三十五程度が普通じゃないか、やはりそういうような定数との関係を改善しなければ、いま局長が述べられたような児童の観察等にも見逃しがあるんじゃないか。そういう点等から、この際私は思い切った定数の改善措置に踏み切るべきだというように考えるわけですが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  54. 砂田重民

    砂田国務大臣 この問題は教育上の重要な課題でございます。私もさよう認識しております。ただ、今後数年間に百二十万ないし百三十万の児童が過密県だけに集中してふえてくる、これに対応をしなければなりませんこともなかなか大変なことでございまして、また片一方で、児童生徒の減少によりまして教員定数が急減するために最低保障を講じなければならないという過疎県もまた出てきておる、こういう異なった状況が、全国的にばらつきも出てまいりますので、こういうことを踏まえて教員定数のことについて、うらはらのことでありますから、五十三年度で長期計画を一応完結をいたしますので、悉皆調査をいたします。そのときにこれらの問題を慎重に検討したい、かように考えておるものでございます。
  55. 兒玉末男

    兒玉分科員 いまの大臣の御答弁では、結局財政的な問題が大きな要因のようでございますが、教育というものは、長い将来を考える場合に、金だけの問題として片づけないで、やはり人間形成の場としての大事な小学校中学校教育でございますから、十分ひとつその点を配慮しながらこの際積極的な取り組みを強く要望して、次の問題に入りたいと存じます。  宮崎市に花ケ島ニュータウンというのがございます。ここに最近できたての児童公園等もございますが、ここに今度九州電力が、六万六千ボルトの高圧線の配線をめぐりまして、地元の住民との間に大変なトラブルが生じております。この点についてはすでに通産大臣の方にも、先般三百五十名の連名で、その計画を変更する旨の陳情書が直訴的な形で出されているわけでございますが、エネルギー庁としてはこの問題をどのように把握されているのか、まず御所見を承りたい。
  56. 服部典徳

    ○服部政府委員 御指摘の送電線でございますが、宮崎市及びその周辺地域におきます電力の需要というのが非常に逼迫しておりまして、五十三年、ことしの夏の需要に対応するためにはどうしてもその送電線の工事を急がなければいかぬという事情にあるわけでございますが、御指摘がございましたように、その路線に沿ったところに花ケ島ニュータウンがございまして、そこで住民の方方からの異議が出ているということは、私どもも十分承知いたしております。電力会社を指導をいたしまして、十分地元の方の理解が得られるよう話し合いを行うようにという指導をしておるところでございます。
  57. 兒玉末男

    兒玉分科員 私は公益事業部長にお伺いしたいわけですけれども、御承知のとおり、九電の工事の進め方が非常に一方的だということが地元新聞にも掲載されております。その理由は、工事を進行する前提となる地域住民の承諾書というものがあるわけです。ところが、この承諾書については多くの疑問があります。一体どういうことを承諾したのか、その内容について住民に理解を求めていない。第二点は、この承諾書の問題はお上げした資料にもありますように、去る二月十二日、この地区の新しい区長と代表が、無効であるということを明らかに署名しております。  私はそのことを背景に考えますと、この工事を進めるに当たって、たとえば児童公園が近くにあるからたこ上げをしたり遊んだりする、危険である、電波障害がある、あるいは工事に着工する際に住宅その他に影響ないのかどうか、万一事故が発生した場合は補償関係はどうするのか、こういうような住民の不安に対して、九電は何ら答えてないじゃないですか。そこに問題があったわけであります。とするならば、やはり県の指導も、あるいは通産省の資源エネルギー庁の指導についても——すでにこの問題については、かなり前に書面が来ておるはずであります。とするならば、十分住民の納得のできる方法で、たとえば計画の変更等についてもなぜ住民と率直に話し合いをしようとしないのか。この承諾書の問題がいま偽造だと言われておるわけです。それには多くの地元の住民の不安、不満が載っております。日付の問題でも、十二月十四日になっているが、県の土木事務所は一月十一日に受け取った。それからこの計画を知って初めて区の役員会を開き、ついに前区長は否認された。十四日の日付の部分、その部分だけが後で書いた形跡がある。しかも、この承諾書の筆跡は区長の筆跡ではなく、署名も区長の筆跡ではない。さらに、使われているこの柄本という印鑑は私印であり、通常区長が使っている公印ではないこと。さらに、文意そのものが不明であり、何を承諾したのかわからない。なお、九電の支店長代理、総務課長はこの承諾書の存在を知らない。しかし、県知事への許可申請にはこれが使用されている。こういう、申し上げたような条項が、非常に住民の不信を買っている大きな理由であります。  とするならば、問題の処理は、やはりこの際進めている工事を一たんとめて、その中で九電側が住民に対する誠意を示すこと以外に、それからこの承諾書の経過を明らかにする以外に、問題の解決はないと私は思うわけですが、この点について部長の御見解を伺いたい。
  58. 服部典徳

    ○服部政府委員 ただいま御指摘のございました承諾書でございますが、これは先生御承知のように、九州電力が宮崎県に対しまして用水路利用許可申請書を出しました際に、県の行政指導を受けまして承諾書をとったというふうに承知をしておるわけでございます。したがいまして、その承諾書の取り扱いにつきましては、宮崎県、それから九州電力あるいは当該区長の間で取り扱われるべき問題だと思うわけでございますが、私どもといたしましては、やはり送電線の工事が円滑になされるということが望ましいわけでございますので、地元の方の理解を得て工事を進めるという意味合いから私ども指導いたしまして、前後六回にわたります話し合いを持たれたということでございますが、なお今後も電力会社の責任者、工事についての責任者は住民の方と十分よく話し合うというふうに指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  59. 兒玉末男

    兒玉分科員 私が先ほど申し上げましたように、この数点の疑問点が解明されることが第一であります。第二は、この承諾書は工事遂行上きわめて重要な書面だと私は思っています。この書面にサインをした前区長は先般、この内容が発覚したときに満場一致で否認をされているわけですね。そうするならば、やはり新しい区長のもとで当然代表者を出してこの経過を明らかにされ、そうして新しい区長の、本当の住民の意思尊重した形の承諾書でなければこの問題の根本的な解決はないということと、それから先ほど申し上げたように、もし事故が発生した場合——九電側はそんなことはあり得ないと言っています。しかし、子供たちがたくさん遊んでおります。とするならば当然たこ上げ、あるいは地震、あるいは宮崎は非常に台風の多いところです。九電側が技術的に解明できることであっても、その安全性ということは絶対とは言えません。とするならば、そのような事故が発生した場合にどういう形で補償なり対策をとるのか。現に削岩機が火を吹いて、住宅のすぐそばのやぶが燃えています。あるいは、その近くの家の壁にひびが入っている。そういう作業面の段階でもそのような事故が発生している現状から見ます場合に、公益性を盾にとって何でもしゃにむにごり押しするという姿勢は、明らかに間違いではないでしょうか。とするならば、いま申し上げた二点について、再度ひとつエネルギー庁の見解を伺いたい。
  60. 服部典徳

    ○服部政府委員 第一点の、新しい区長さん及び地元の代表者と十分話し合い、承諾をとるべきだという御指摘につきましては、現在の区長さんが新しくなっておられますし、それから地元の住民の代表の方も選ばれておるようでございますので、その方たちと九州電力の責任ある者が話し合いを進めるということでやっておるわけでございます。  それから第二点の、安全性あるいは電波障害の話でございますが、私ども、鉄塔の工法につきましては安全性は十分確保されるものというふうに考えておるわけでございますが、仮に電波障害等が発生した場合には、その防止策は当然講ぜられるべきものだと考えておるわけでございまして、被害につきましては適正な補償がなされるのは当然だというふうに考えておるわけでございます。
  61. 兒玉末男

    兒玉分科員 それは一つの現象面でございまして、申し入れの中に書いてございますように、そういうふうな住民の意思を無視した工事並びに危険性が十分予想される段階で、わざわざ児童公園のいわゆる敷地に関連するところを通さなくても、ほかに空地なりあるいは電柱を立てる場所があるということが住民側のこの陳情要請書にも書いてあるわけでありまして、現時点においてはあくまでも設計を変更しろというのが基本のようでございますが、それについてはどういうような御指導をされるつもりか、この際お伺いしたいと思います。
  62. 服部典徳

    ○服部政府委員 当該送電線の経過地でございますが、宮崎市とも御相談しているわけでございますが、将来の当該地域の土地利用計画から申しまして、やはりその用水路を経過地として利用することが適切であるという判断がなされているというふうにわれわれとしては聞いております。
  63. 兒玉末男

    兒玉分科員 いまのは答弁にならぬと思うわけですが、私のいままでの一切の地元の新聞なりあるいは関係者からいただいた書面によりますと、第一は、まず予定地を変えてもらうこと。第二は、決して住民は補償をたくさんもらおうとかそういう物取り主義で言っているものではないこと。第三は、危険が発生した場合等についてなぜ書面による交換ができないのか。第四点は、もうすでに、どうもこれは大変だということで二、三軒移転を始めた人もおるそうでございますが、そういう四点について、この際エネルギー庁としては住民の意思が十分理解できるように、さらにまた、新しい区長のもとでこの承諾書の内容が克明にされるように、ひとつ的確な指導を私は要望したいと思います。これについて部長の見解を承りたい。
  64. 服部典徳

    ○服部政府委員 先ほどもを答えいたしましたが、電波障害等の被害につきましては適正な補償が当然なされるべきでございますし、通常の場合、文書で取り交わしはいたしておりませんが、御指摘のようなこともございますので、文書で取り交わすということも一つ方法であろうかと思います。  その他、いまおっしゃいました三点につきましては、私ども、電力会社の責任者が住民の方たちと話し合う、その話し合いの段階において具体的な解決がなされるというふうに期待しておるわけでございます。
  65. 兒玉末男

    兒玉分科員 最後に御要望だけ申し上げます。  時間が参りましたが、この問題は、今後も各所で起きる問題であります。ですから、事前に住民にすべてを理解してもらう努力をすること。同時に、この件についてはエネルギー庁長官並びに通産大臣にも正確に事情をお伝えいただきまして、この解決に万全の措置をとられることを私は強く要望申し上げまして、質問を終わります。
  66. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、井上普方君。
  67. 井上普方

    井上(普)分科員 文部大臣にお伺いいたします。約十年前に大学紛争がございました。非常な国民のエネルギーと申しますか、それが失われたことは御承知のとおりであります。この反省の上に立って文部行政はどういう行政を行われておられるのか、この点ひとつお伺いしたいのです。
  68. 砂田重民

    砂田国務大臣 四十三、四年ごろに大変異常な大学紛争がございました。この紛争を終息させるために国会で大学運営に関する臨時措置法が成立いたしました。この法律は、大学の自治を確保するために大学当局みずからの責任でこの紛争を終結させるべく努力をしなければならない、そういう意識を学長初め当局に非常に強く持っていただく効果があったと私は考えます。あの臨時措置法に書かれておりますことは、国家権力をもって政府みずからが大学に踏み込んでいく、そういう権限を文部大臣に与えたものではない。あれだけの異常な事態のさなかではございましたけれども、紛争をおさめるための臨時措置法も、憲法で言う大学の自治、学問の自由ということの限界を踏まえた立法であった。あの臨時措置法を受けての当時の坂田文部大臣の国民の皆様に対する声明書の中にも明らかに——坂田文部大臣がなさったことでございます。私は、あの坂田文部大臣のあのときの言動を教訓といたしまして、同じ考え方で大学については処理をしていこう、かように決意をするものでございます。
  69. 井上普方

    井上(普)分科員 いや、私は、あの大学紛争を起こした原因、その反省に基づいていかに文部行政が変わってきたかということをお伺いしたのです。  話はそれますけれども、あの臨時措置法によって大学自身が収束しなければいけないということのために、大学人みずからが大学内にある一部政治勢力と結託して、そして終息させ、今日に至っておることは御存じのとおりであります。何ら根本的解決になっていない。その後、大学人によって大学制度そのものがどのように変わってきておるか見てみますと、はなはだ快然たらざるを得ないのであります。この点についてはどうでございます。大学の制度の上において何か新しい方法がなされたでしょうか。私は見るべきものがないように思う。どうでございます。
  70. 砂田重民

    砂田国務大臣 ただ、大学当局が、各方面から大学の改革が強く求められた、それが国民的要望であったという自覚が非常に強まってきたことだけは事実でございます。私はそういう立場から、国民の立場に立ってより一層大学当局に対する指導助言を続けてまいろう、かように考えておるものでございます。
  71. 井上普方

    井上(普)分科員 御承知のように、それは国民的関心を呼んだことは事実です。大学当局自身も改革しようというようなことがあったでしょう。しかし、実際の面においては一部政治勢力と結託して事件の紛争をおさめたがために、にっちもさっちも動かなくなっているのが現状ではないかと私は考えられるのであります。  そこで問題は、こういうような上に立って、百年も前の制度そのままでいって一体日本の文教政策というのはいいのだろうか。やはり大学の改革ということを考えなければ、常に警鐘を打ち鳴らさなければいけない時期が来ておるんじゃないだろうかと私は考えるのです。  その一、二の例を申し上げますと、お隣の中国とは私どもは二千年来あるいは三千年来の交流のある国であります。この国が、政治体制として最も実効の上がる社会主義という政治体制をとっておるわけです。しかも八億に及ぶところの優秀なる民族を持っておる。この国との間で、島国である、小国である日本、わが国は共存共栄を続けていかなければならぬ。共存共栄を続けるのみならず善隣友好の関係を結んでいかなければならない。そうすると、わが国としてはやはりアジア諸国から、あるいは世界諸国から畏敬せられるような国民的課題があるんじゃないだろうか。それは何だ。やはり文化的教養の高さにあるんじゃなかろうか、このように私は考えるのです。  そのためには、何を言いましても大学の質の向上ということが図られなければならない。しかし、制度自体は百年前のフンボルト以来の制度そのままを続けてきておる。中はと言えば講座制というようなしがらみに絡みついて、そして同族結婚みたいなことをやっておられる。これで果たして日本の文化あるいは教育、研究、こういうので世界から畏敬せられるようなものができるだろうか、こう考えるのです。特に中国が最近になりまして、科学技術の推進ということを非常な国是として進み出しました以上、やがて日本の科学技術に到達し、それを追い越すことは私は間違いないと思う。御承知のように、宇宙開発にいたしましても、あるいはわれわれ日本よりもはるかに進んでおると思われます。あるいはまた、宇宙開発一つによって科学技術の水準が示されるがごとく、あの中国は、戦前の教育の低いところの中におきましてもノーベル賞を受賞するような数学者も輩出しておる民族なんです。この民族と共存共栄をし、かつまた善隣友好を重ねるのみならず、アジアにおける日本という畏敬せられる国をつくるためには、教育、文化が果たすべき責任といいますか分野というものは非常に大きいと私は考える。  そのためには、どういたしましても大学制度それ自体をこの際根本的に改革しなければ、時代にマッチしたような大学制度に直さなければ、それについていけないんではないか。そこにはしかし、大きな問題としては大学の自治があり、大学の自治といいましても、これは教授会の自治です。しかも、その教授会の自治というものが何ら能力的に作用しない。このことに私ども国民としてはいら立たしさを覚えるのであります。したがって、いかなる方法を今後考えたらいいだろうか。文部省としては指導をする、結構なことです。大学人自体に自覚を求めなければなりません。しかし、自覚を求めても、依然として、あの大学紛争の当時のままの制度をそのまま温存しておるじゃありませんか。これに対して一体どう考えられるのか、お伺いしたいのです。
  72. 砂田重民

    砂田国務大臣 大学の改革はやはり基本的には大学当事者の自主的な努力で推進されるべきものという原則は、私は変えようとは思いません。  ただ、文部省としては、これまでもそういう努力を引き続きやってきているわけでございます。効果があるなしの御批判は甘んじて受けますけれども学校教育法や大学設置基準等も改正をしてまいりまして、大学制度の弾力化も図りましたし、各大学の自主的な改革を助長いたしますための予算上の措置も毎年講じてまいったわけでございます。自主的な改革の参考になる意味も含めて、これまでのあり方にとらわれない新構想の大学の創設の施策も進めてまいったところでございます。今後におきましてもそれぞれの大学が、社会や国民が大学に対して持ちます要請は非常に多様化もしておりますし、いまおっしゃいました国際交流のことも、これは中国に限らず、もっともっと門戸を開いた交流を深めていく、そういう大学になってこなければならないことも当然のことでございますから、そういう特色ある教育研究活動を展開できるように、引き続いて大学関係者ともども努力を重ねなければならない。いままで講じてまいりましたことが効果があるかどうかということについての御批判は甘んじて受けますけれども、私はその原則だけは崩さずに、いま井上委員も御指摘になりましたような、大学人としての自覚をもっと強く持っていただくための指導助言もなお強めていかなければならない。今日一部に残っておりますような異常な状態解決のためにも、決意を新たにしてそういう立場で取り組んでまいる、そういう決心をいたすところでございます。
  73. 井上普方

    井上(普)分科員 大臣のおっしゃられたいろいろの、私の効果が上がらぬじゃないかということについては、言葉は違いますが、肯定せられたと思うのであります。私ども国民としてはやはりもどかしさを感じておる、このことは率直に申し上げたいと思うのです。  そこで、新構想大学などという筑波大学なんかはつくられましたが、私はある点、評価する面もあるのであります。しかし、あの新構想大学というのは管理面ばかりを強調した大学構想じゃなかったか、ここに私は大きな欠点があったと思います。研究教育体制において新機軸を打ち出した大学であることも、私は評価するにやぶさかではございません。しかし、管理面において余りにも窮屈過ぎる、統制的な面が強過ぎる、この点において私は大きな不満を持っておる一人であります。しかし、いずれにいたしましても大学紛争はこのままいけばまた起こる、やはり依然としてその根は残っておる。というのは、百年前の制度をそのまま続けておるからにほかなりません。  余談になりますけれども、百年前からそのまま続いておる制度といいますと、いま裁判制度と大学ぐらいじゃないですか。裁判といいますと、どうも二十年、三十年裁判が起こる。国民ももどかしさを覚えているけれども、裁判制度、司法制度についてはどうも手をつけられない。同じように、どうも大学制度それ自体につきましても手がつけられない。しかし、政治的勢力がこれをやるということについては私は反対です。あくまでも大学人の自治の中からこれはやってもらわなければいかぬ。しかし、その自治というものが教授会の自治である、ここに私は大きな問題があると思うのであります。先般も某政党の諸君が、東京大学の精神科の混乱を一部極左勢力のごとく申されておりましたが、私は違うと思う。私の認識では、あの諸君が、いままでの医学部のあり方それ自体についてひとつ見直そうじゃないか、それには何だ、最も大事なのは生命の尊厳じゃないか、その生命の尊厳を侵すような治療方法に対しての批判が高まっておるのが現状じゃございませんか。  ここで、私も医学部を出ましたので、ひとつ私の経験から申し上げますと、私らの当時はやはり医局制度という古い制度もございました。古い制度です。まさに徒弟制度です。その徒弟制度の中から、指導者が一人一人についての治療の間あるいは話し合いの中から生命の尊厳というものを頭の中にたたき込まれたように私は感ずる。しかし、いまはそういうような古い医局制度というものはある程度崩壊した。崩壊した中において果たして生命の尊厳というものを考える場ができておるんだろうか。特に生命というものに直接さわる医者に生命の尊厳を考える時間、考える場が与えられていないのがいまの医学部の教育実態じゃないかと思うのです。それに加えて、御承知のように、一部拝金主義が横行いたしておる。結果、一部の私立医科歯科大学におけるがごとき現状も出てきたのではなかろうかと思う。  こういうようなことを考えますと、話は飛び飛びになりますけれども、やはり大学設置基準審議会に大きな問題があったと私は思うのです。したがって、今後のあり方とすれば、やはり講座制あるいはまた学科制、こういうものに根本的にメスを入れなければ、日本の大学制度それ自体についての改革は行われないだろうし、またまた大学紛争の起こる火種をそのまま残す、こう申しても過言じゃないと思うのであります。世界の科学あるいはまた文化というものは日進月歩で進んでおる。その中における二年、三年のブランクというものは非常に大きいものがある。こういうようなことを考えますならば、一日も早く大学改革を促進して、そして新しい、次代にふさわしい大学制度をつくり上げなければ世界の水準から残されるぞという気がしてならないのでありますが、どうでございますか。
  74. 砂田重民

    砂田国務大臣 私は、東大のあの問題の現状について非常に正確な御理解を初めて伺うことができました。私も同じ見解を持つものでございます。よって起こっている原因が御指摘の点にあること、私も承知をいたしておるものでございます。大学の問題についてもどかしさを感ずるというお言葉でございましたけれども、私自身ももどかしさを持つものでございます。  ただ、先生の御指摘にもございましたけれども、やはり大学の改革という問題はどこまでも大学当事者の手によって行われるべきもの、それはまさに国民に対して大学人にその責任がある、こういうふうに考えるものでございます。大学の体制等にとってそれは教授会の自主的なと申しますか、それであって、大学自身の力ではないというふうなお言葉がございましたけれども、この前の紛争がおさまりましたときも、私自身の感触といたしましては、あの時代のいろいろな文書等を読んでみましても、学長を中心にして学校運営をやっていく、学校全体の管理、教育内容の充実に学長が責任をとるべく学長を補佐する体制がまだ今日なお確固たるものができていない、そういう感じも持つものでございます。しかし、それをどういうふうにするかということは、やはり冒頭に申し上げましたように、大学人自身によってこの改革はなされなければならない。大学人に対して、大学当局に対して、その自覚をより強く持っていただく努力を非常に強くやってまいらなければならないということを痛感いたしておるものでございます。
  75. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、大学紛争が終息した原因について、文部大臣とは少し見解を異にしているのであります。少しと言いますより、大いに異にいたしておるのであります。  しかし、それはそれといたしまして、それでは新しい国立の医科歯科大学をつくっておるけれども、大学紛争の反省というものが一体どこに生かされているのか。何ら生かされてないように思われるのですが、いかがでございます。
  76. 砂田重民

    砂田国務大臣 新しい医科歯科の国立大学の、新しい決意を持って取り組んでおりますそのスタートのあり方の内容については、大学局長からお答えいたさせます。
  77. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 新設の医科大学を設けます場合に、まず基本的に、総合大学の医学部として設けるか、あるいは単科の医科大学として設けるかという問題がございます。しかし、私どもは、やはり御指摘のように、いろいろな問題に対してより積極的に対応をしていく、そして改正された医学部の設置基準の弾力化等を十分に活用をしていろいろな新しい仕組みというものを考えていく上には、やはり単科の大学の方がよろしいであろうという判断を持って、単科大学でおおむねスタートをしてきたわけでございます。各大学それぞれ、その大学の基本構想を練る段階から、十分に弾力化された設置基準を活用をして、それぞれ意欲的な計画を持って進めているわけでございますし、御指摘のような、いわゆる大学紛争の教訓というのは、いまの新しい医科大学の創設に関与している方々の間には十分に生かされているというふうに私たちは考えております。
  78. 井上普方

    井上(普)分科員 どういう点で生かされているのです。具体的に教えていただきたい。
  79. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 たとえば、幾つかの大学では、いわゆる六年間の一貫性のもとの教育というようなことを実施いたしておりますし、また、講座の組み方にいたしましてもいわゆる大講座制というものをとりまして、従来のような非常に細かく分かれた講座制というものを越えた、内科なり外科についても取り組んでいるわけでございます。そういった点を通じて十分に教育、研究の内容に対応していると考えております。
  80. 井上普方

    井上(普)分科員 私もその新しい大学の内容を知っております。新しい医科大学が誕生しまして、中へ入って調べてきました。形の上ではそうなっている。形と申しますか、部分的にはなっている。根本的には何にも直っていない。大学改革案がたくさん出されました。特に自民党の当時の大学改革案の中で、実にくだらぬ大学改革案だと寒心した一人なんですが、その中で評価することはただ一つあった。それは何かと言いますと、教授の任期制を導入しようじゃないかということが自民党の改革案にはあった。これには私は賛成をした一人であったわけです。ほかには評価する部分はほとんどなかった。しかし、これは確かにいいことだなあ、私らも、諸外国で行われている任期制というものを、せめて新しい医科大学をつくる際には、実際、これぐらいは多分導入するのかなと思っておりました。大体、教授になったら、全然勉強せぬ方々がほとんどなんですよ。一生、教授なんですな。三十で教授になりますと、定年六十。このごろは、新しい新制大学ですと六十五歳でしょう。三十五年間も、ともかく一生、教授なんですからね。御存じのように、一つのノートで何年間もやるような教授も出てくるわけなのです。ここに大学の進歩がない。学問の進歩がない。せめて十年間の業績を見て、そして、これはふさわしいか、ふさわしくないか、評価をするような大学があってしかるべきだ。私は、自民党だから、この改革案のりっぱなところ、私が感心したところ——寒心じゃございませんよ、これぐらいは当然やってもらえばなあと思っておりましたが、これさえも入れてない。  それから、大学設置基準に弾力性を持っておるなんて言いますけれども、どこに弾力性があるのですか。大学設置審議会が大学の設置委員というのを任命し、そこで、いわゆる学閥によるところの教授選考が行われておるのが事実じゃございませんか。そして、それが既定の事実として、あそこの大学はどのジッツを取った、どの席を取ったということでもって、やはり学閥を温存しておる。これがいまの新しい大学の姿じゃございませんか。  あの大学紛争の根底には、もちろん百年間にわたるところの古い大学に対する批判もあった。同時に、学閥に対する批判もあった。こういうものが、特に医学部においては、生命の尊厳というものに対する真剣なる研究が行われていないじゃないかというのが爆発して、あの医学部からの紛争が起こってきたのは御存じのとおりなのです。何ら変わっていない。ここに私は大きな不安を感ずるのであります。それよりももっと重要なことは、私が先ほど申しましたように、医学部において、この生命の尊厳を考えさせる場所、いまの大学制度のもとにおいてはこれがないのです。これを私は考えなければならない、こう思うのです。  それと同時に、先ほど来申しましたように、やはり大学というものは、大学設置法ではございませんけれども、真理の蘊奥をきわめなんということが書いてございますが、やはり学問の、文化の最高水準を研究し、探求するところです。やはりわが国が世界に畏敬せられるし、あるいはアジアにおける善隣友好をきわめ、共存共栄を深める基礎をつくるのはやはり学問、文化の水準の高さじゃなかろうか。こういう点からいたしまして、私は、まことに質問にならない質問でございますが、文部当局に対しまして一つの警鐘を打ち鳴らしたいと私は思うのでございます。大臣の御所見を承りたいと思うのです。
  81. 砂田重民

    砂田国務大臣 御発言の御趣旨を十分身に体しまして、勉強させていただきたいと思います。
  82. 井上普方

    井上(普)分科員 以上で終わります。
  83. 正示啓次郎

    ○正示主査 次に、伏屋修治君。
  84. 伏屋修治

    伏屋分科員 幻のニホンカモシカと言われまして、昭和九年に天然記念物に指定されておりましたが、その種の保存、維持が困難になるということから、昭和三十年に特別天然記念物として指定されたわけでございます。そしてニホンカモシカが手厚い保護を受けるようになりました。そして、現在そのニホンカモシカが日本各地に非常に多くの分布状況を示す中で、山林あるいは農業にまで非常に被害を及ぼし、特に私の県の岐阜県におきましては、その生業権である林業が追われつつある。また、個人の財産権までも侵害されつつある、こういう現実を呈しているわけでございます。この現実を目の当たりにしたときに、本当にカモシカが大事なのか人間が大事なのかという大きな疑問を私は持つものでございます。  そこで、お尋ねしたいと思いますが、まず第一に、特別天然記念物に指定されましたニホンカモシカが現在日本の国の中にどのように分布し、どのような生息状況にあるのかということの状況説明願いたいと思います。
  85. 砂田重民

    砂田国務大臣 環境庁の方から……。
  86. 野辺忠光

    ○野辺説明員 御説明させていただきます。  現在カモシカの分布状況は必ずしも正確にわかっておりませんが、私どもの方では五十年度にアンケート調査を実施いたしまして、その結果、東北、北陸、中部地方を主といたしまして、全国三十都道府県に分布しておるということが明らかになっております。この分布状況をさらに正確に把握をいたしますために、五十二年度、五十三年度にわたりまして、五十年に調査いたしましたアンケート調査に基づきまして、主要な県十県につきまして生息の密度調査を実施しておる段階でございます。従来の情報では、私どもの方の推定では全国おおむね三万頭前後と考えております。
  87. 伏屋修治

    伏屋分科員 その生息地域の分布をお願いしたいと思います。
  88. 野辺忠光

    ○野辺説明員 生息地域につきましては、北の方は青森県からでございますが、大体東北地方には全般的に生息いたしております。それから中部の方では、特に多いところは岐阜県、長野県でございますが、近畿の方から南の方は概して少のうございまして、中国ではほとんど生息いたしておりません。それから四国では一部、徳島県の周辺、九州の方面では大分県、宮崎県の周辺でございます。
  89. 伏屋修治

    伏屋分科員 分布の生息頭数あるいはその地域というものは大体わかりましたが、その生息地域の中でニホンカモシカがどのような高さのところで生息しておるのか把握しておられますか。
  90. 野辺忠光

    ○野辺説明員 従来カモシカの生態につきましては調査が非常に十分でございませんで、分布地域につきましても正確に把握いたしておるわけではございませんけれども、従来の経験で申し上げますと、おおむね千メーター前後のところを中心にいたしまして、もっと低いところではわりといないというふうに言われておりましたけれども、最近では数百メーターの地域まで生息が見られるという状況になっております。
  91. 伏屋修治

    伏屋分科員 これは森林保全課長にお尋ねいたしますが、いま環境庁の方からニホンカモシカについての分布状況、生息状態を大体御説明を願いましたが、その分布状況から起こるところの食害の被害状況、これについて具体的にお願いしたいと思います。
  92. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  ニホンカモシカによります造林地の被害状況でございますが、まず面積から申し上げますと、昭和四十五年ごろは百四十ヘクタール、これは民有林、国有林合計でございますが、近年三カ年間につきまして申し上げますと、昭和四十九年度は千二百ヘクタール、昭和五十年度は千九百五十ヘクタール、五十一年度は二千五百ヘクタール、年々増加の傾向にございます。五十一年度の国有林、民有林別で申し上げますと、二千五百と申し上げましたが、二千五百四十三ヘクタールのうち、民有林の面積が二千百五十七ヘクタール、国有林が三百八十六ヘクタール、こういうことになっております。  それから被害の樹種でございますが、カモシカによって食害されます樹種で一番多いのはヒノキでございまして、昭和五十一年度の内容を見まするにヒノキが千七百九十一ヘクタールで七〇%を占めております。その次がアカマツが一二%、三百八ヘクタール、杉が一〇・五%、あとはその他、こういうことになってございます。  それから被害の発生する都道府県でございますが、一番多いのが長野県でございまして、二千五百四十三ヘクタールのうち千三百六十三ヘクタール、その次が岐阜県、岩手県が三百八十ヘクタールでございます。
  93. 伏屋修治

    伏屋分科員 大体いまのような被害から推しまして、私の県の岐阜県というのは非常にニホンカモシカの被害の激甚地である、このように思うわけでございます。私の現地調査あるいは被害者の方々の声を聞きますと、四十八年以来そういう被害が発生をいたしまして、現在までに七億から九億に至る被害を受けておるということを聞いております。この多額の被害金額ということを頭に置いていただきながらこれからの質問にお答えを願いたいと思います。  このように特別天然記念物ニホンカモシカと指定されまして以来、カモシカが非常にたくさんの分布状況を示してまいりました。それにつれまして被害も広がってまいりました。それに対応するために三庁、環境庁、林野庁、文化庁がそれぞれ対応策を立てるという意味においていろいろと検討をなされたと聞いておりますが、その三庁の合同の対策会議の経緯、そういうものについて御説明を願いたいと思います。環境庁からお願いいたします。
  94. 野辺忠光

    ○野辺説明員 環境庁の方からお答えを申し上げたいと思います。  私どもの方のカモシカ被害対策検討ということで三庁で打ち合わせをいたしましたのは昭和五十年の六月からおおむね十回実施いたしておるわけでございます。  打ち合わせをいたしました主な内容は、第一番目は、造林地等の被害状況に関する情報の交換でございます。それから第二番目は、被害対策樹立に必要な調査に関する情報の交換及び打ち合わせでございます。三番目は、カモシカの被害対策に関連いたしまして予算についての事項でございます。四番目は、特に被害の激甚地でございます岐阜県等のそういう地域に対する当面の対策に関する事項でございます。そういったようなことにつきまして、連絡と情報交換を主体にして実施いたしております。
  95. 伏屋修治

    伏屋分科員 おおよその経緯はわかったわけでございますが、被害者は日々非常に食害を受けておるという切実感からたびたび上京いたしまして直接陳情されたと聞いております。環境庁、林野庁それから文化庁、それぞれ幾度ほど陳情を受けられたのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  96. 野辺忠光

    ○野辺説明員 陳情の回数についてはただいま正確な資料を持ち合わせておりませんので、後日お答えさせていただきたいと思います。
  97. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  私も正確な回数は覚えておりませんが、一昨年の八月以降今日までの回数、ざっと振り返ってみますと十回程度は記憶しております。
  98. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 文化庁といたしましても、正確な数字は記憶いたしておりませんが、私自身も三回ばかりお会いいたしましたし、ほかの方でも会っておりますので、数回ないし十回程度かと思います。
  99. 伏屋修治

    伏屋分科員 私もその陳情団について陳情に参ったことがございます。そのたびに私も非常に焦燥感にかられたわけでございますが、その三庁がニホンカモシカの被害に対する一つの対応策を考えるという面でお互いに合同会議を持ちながら、陳情を受けるのは各省庁別である、そういうことから地元の方々は、いま林野庁から説明がありましたように、自費でもって十何回上京し陳情しております。そしてそのたびごとに各省庁の見解がそれぞれ違っておる。地元の方々は一喜一憂しながら帰り、これでよいのかという考えを持ちつつ陳情されているのが実情でございます。そういう面からも、行政の縦割りではなくて、こういう緊急激甚地というところに対する対応策として、今後その三庁合同の中でどこが責任を持ってこのニホンカモシカの被害に対する総合的な窓口になるのか、その辺を文化庁次長にお尋ねいたしたいと思います。
  100. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 三庁会議につきましては、先ほど申し上げましたような対策についてそれぞれ話し合っておるわけでございますが、いわゆる被害者の方々等との関係につきましては、今後どうするかについて三庁会議の中で積極的に窓口等について話し合ってみたいと思うわけでございますが、ただ、三庁それぞれ陳情者の中身等が若干違う点があろうかと思いますので、どこかの省庁で取りまとめて窓口として全部話し合ってしまおうということにはならないのじゃないかと思います。そこらあたりの点につきましては、被害者側の便宜等も考え、かつ有効適切な話し合いができるような方法を三庁会議の中で話してみたいと思うわけでございます。
  101. 伏屋修治

    伏屋分科員 三庁会議で話し合うということはもうわかっておるわけです。三庁会議は十何回、回を重ねてきておりますので。ただ、私がいまお願いしたのは、自費を使って何度も上京してきた陳情団、その人たち自分の財産が侵害されるという切実感を持って上京してきておる、それにもかかわらず、各官庁を引きずり回されて、見解が違う、そういうことではその人たちは期待するものは何もないと思うのですね。そういう面からも、三庁会議で一つの窓口をつくる、これをはっきりと御答弁願いたいと思うのです。どうですか。
  102. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 その点につきましては、三庁それぞれの中でまた御意見があろうかとも思いますし、私がここですぐ申し上げることはできませんので、そのことについて三庁会議で取り上げて決めたいということを申し上げておるわけでございます。
  103. 伏屋修治

    伏屋分科員 時間が進みますので、いまおっしゃったとおり、この点は三庁合同会議で議題にいたしまして、ひとつはっきりと責任ある窓口をつくっていただきたい、このことをお願いしたいと思います。  特別天然記念物にニホンカモシカが指定されて、手厚い保護を受けるようになってから、いま環境庁あるいは林野庁の方が御説明になったように分布も拡大してまいりましたし、被害状況も全国至るところに拡散されてきた。こういうことからいたしましても、特別天然記念物ということが一つの大きなひっかかりになってくるということを私は考えるわけでございますが、この特別天然記念物をこのまま放置するのか、ここら辺でいささか考える時点が来たのじゃないか、この辺を文化庁次長にお尋ねしたいと思います。
  104. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 私どもといたしましては、先ほど環境庁からも御答弁がありましたように、カモシカの全国的な生息数そのものの詳細な状況をまだ承知をいたしておりません。五十三年度いっぱいまでには環境庁の方で御調査に相なるものと存じておるわけでございますが、そういうような状況もまだはっきりしておりません。  また、岐阜県下におけるカモシカの被害対策については現在いろいろ苦心をいたしておりますが、これはこれとして、被害につきましては、これを調整する方法、被害をなくする方法、これはぜひともやらなくてはならぬと思うわけでございまして、いろいろ検討すべき課題も多いわけでございますが、ただいまのところは指定にさかのぼってこれをどうこうするということまで考えていないわけでございます。将来の問題といたしましては、いろいろ研究する問題はあろうかと思いますが、ただいまのところでは、とにかく被害をなくすると同時に、全国的な生息状況を調査した上でいろいろ検討してみたいと思っておるわけでございます。
  105. 伏屋修治

    伏屋分科員 そうすると先ほどの環境庁の野辺鳥獣保護課長の見解を否定されるわけでございますか。参議院の方の公害特別委員会での御答弁を議事録で私は読んでみましたけれども、文化庁は生息状態を把握するための手足がない、だから環境庁にお願いしておるというような答弁がございます。私は最初に環境庁の鳥獣保護課長に分布状況、生息頭数などを具体的に話していただきたいとお願いしたわけでございます。そうすると、環境庁の方でおよそ推定しておる頭数は三万頭だというふうに答えられておりますが、いま次長はその頭数を正確につかんでからという答弁で、環境庁の見解を半ば否定するような発言でございますが、その辺はどうなんですか。三庁合同会議と言いつつ、そこら辺の見解の違いが大きな問題なんですから。
  106. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 私ども三庁会議で伺っておりますのは、正確な状況は五十一年度から五十三年度までで環境庁が中心で調査をしていただくということでございまして、約三万頭と先ほど環境庁の課長が申されたのは大体の推定の数字であろうと私ども理解しておるところでございまして、私ども文化庁と環境庁との答弁の食い違いは格別ないものだと理解するわけでございます。
  107. 伏屋修治

    伏屋分科員 環境庁の言っている三万頭というのは下限でありまして、それ以上どれくらいおるかということがまだはっきりわからないので、五十三年度を目途にしてその実態を把握する、こういう考えだと私は理解しますが、環境庁お答えください。
  108. 野辺忠光

    ○野辺説明員 大変誤解を招きまして恐縮でございますが、実は三万頭という頭数は私どもの方の聞き込みによる頭数でございまして、現在実施いたしております生息域に人を張りつけまして、ものを見ながら数えていくといったような調査方法に基づく集計ではございません。概数のおおむねの感じの話でございまして、上限、下限というような正確なものではございません。
  109. 伏屋修治

    伏屋分科員 非常にあいまいな頭数でございます。それこそ幻の数字でございます。岐阜の激甚地の人たちの現状変更届に対して審議会の結果七十五頭が昨年度認められましたし、またことしに入って二十五頭追加されて、百頭の捕獲許可が出ております。その数字というのは一体何を根拠にして出したのか。岐阜に何頭のニホンカモシカがおると見ておられるのか。そういうあいまいな幻の数字の中で幻の捕獲頭数を出したのかどうか、そこら辺をはっきり御答弁を願いたいと思います。
  110. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 ことしの二月になりまして、私どもが、四町村及び被害者の方々で捕獲の申請がございました三百二十五人の方々に対して百頭許可いたしたわけでございますが、これは文化庁といたしまして、いろいろ推定でございますが、実地に当たりました調査数と、それから環境庁等でのいろいろの調査等も照会いたしまして、その上で百頭という数字を出したわけでございまして、この数字の積算の中身につきましては、もし必要があれば御報告申し上げたいと思いますが、こういう推定の数字を出して百頭ということで許可したわけでございます。
  111. 伏屋修治

    伏屋分科員 時間もございませんので、後ほどその頭数割り出しの根拠を書類で私の方へ送っていただきたいと思います。それからその現状変更の許可の中で、わなによる捕獲ということになっておりますが、そのわな捕獲に至るまでの経緯というものを簡単に説明願いたいと思います。
  112. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 被害者の方々の申請につきましては、捕獲方法として、わな及び銃ということでございまして、銃はどのように使用するか尋ねましたところ、その大腿部等、つまり動けないようにしてその上で捕獲するということであったわけでありますが、私どもは保護捕獲という限度で考えておるわけでございますので、銃を使用して大腿部等を撃って、動けなくして捕獲するということは私どもの趣旨に合いませんし、またあるいは誤って撃ち殺すということもあり得るわけでございます。これは私ども立場からはお許し申し上げることはできませんので、したがって、わなによってお願いをいたしたい。ただし、わなに追い込むための動作として銃を使用する、つまり威嚇射撃ということは許されるのではないかということで、威嚇射撃のための銃の使用は差し支えないということで、最終的にわなに追い込んでとっていただくというふうなことで許可いたしたということでございます。
  113. 伏屋修治

    伏屋分科員 そのことを私も回答の文書で了解しておるわけでございますが、私が掌握しておる範囲では、最初は保護さくを設けて、有刺鉄線を張りめぐらす、こういうような手だてを踏んできた。だから私はわなに至るまでの経緯を聞いたのであって、現実のいまのわなの問題を聞いておるわけではございません。そういう面につきまして、時間がございませんので簡単に申し上げますが、有刺鉄線を張りめぐらした保護さくを設けるということを、文化庁あるいは環境庁、林野庁、どこで指導されたかわかりませんが、指導されておって、現地の被害者の方々は切実な願いを込めて現実にそれを設けた。設けたけれども、国も県も一回の視察もなかった。どういう結果になったかということも何にもない。そういうことを踏まえながら、わなへ来たところに問題がある。だからその経緯を聞いたわけでございますが、その点はもう時間がございませんので、次へ進んでまいりたいと思います。  捕獲の方法検討されて、去る二月四日に、いわゆる文化財保護審議会というのが開かれまして、その前に地元陳情団が文化庁へ、私もともに参りました。そして切実な願いを込めて陳情いたしました。そしてそのときに、二月四日の文化財保護審議会の結果を踏まえて御連絡いたします。その回答がいまの文化庁次長お話でございます。そのときの保護審議会の話し合いはどういう状況だったのか。たしか私はそのとき申し上げたことは、もっと地元の人の本当の実感に立った上で意見を申し上げてください、被害状況も数字を具体的に挙げて保護審議会の議題としてください、そういうことを私は申し上げた記憶がございます。その辺を少し説明願いたいと思います。
  114. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 カモシカ問題につきましては、審議会にたびたび報告を申し上げ、われわれの対策の概略を申し上げて御審議を煩わしてきたところであります。先生お尋ねの審議会におきましても、従来の経緯の上に立ちまして、被害者同盟の方々と私自身もお会いいたしておりますので、それらの方々の陳情の趣旨も概略申し上げて御判断を請うたわけでございます。一々につきましては申し上げかねますが、そういうようなことで十分従来からの審議の積み上げがございますので、そういう中で実情を報告して御審議を煩わしたわけでございます。
  115. 伏屋修治

    伏屋分科員 そういうような内容、これ以上聞いてまいりますと時間がございませんので、それに対していま言ったような捕獲方法、わな、銃を使用しても威嚇というような結論が出たようでございます。そのことに地元の方々は鋭意努力をされたようでございますが、いまだに一頭のカモシカもとらえられておらないということから、被害がますます広がる。そういうことからしまして異議申請を文化庁の方へ出された、こういうように聞いております。  この内容について、対応策がどうなのかということを聞きますと時間がございませんので、次へ進んでまいりますが、このような被害がますます拡大されていく、こういう現実の中で、文化庁としては今後どういう対応策を立てようとなさっておられるのか。たとえば、保護地域の設定をすることも一つ方法だと思いますが、この面についてどういうお考えを持っておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。環境庁の方ですか、文化庁ですか、保護地域は林野庁ですか。
  116. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 それでは、まず文化庁からお答えいたしたいと思いますが、私どもといたしましては、今日の状態におきまして、三月末を期限といたしまして、百頭の保護捕獲ということを町及び個人の方々に許可をいたしておるわけでございます。二月いっぱい、三月初旬まで雪の関係でなかなか実効を期しがたいようでございますが、三月初旬、中旬になりますと、雪も解けてまいりますので、さらに実効を上げるべく保護捕獲という範囲の中で方法を十分考えていただくようにお願いしたいと思っております。たとえば、犬を使用して追い込みをかけるとかいう方法もございましょうし、あるいはこれは環境庁の方からお答えがあろうかと思いますが、麻酔銃の使用につきましては現行法ではできないことになっておりますが、この点については環境庁の方で鳥獣保護法の改正を検討なされておるということも三庁会議で話が出ておりますので、今後そういういろいろ多面的な方法によりまして、あくまでも保護捕獲の中で実効を期してまいりたいと考えるわけでございます。  それから地域指定等の問題につきましては、三庁会議の議題に上っておりますが、引き続きこれは三庁の中で、抜本対策として検討してまいる課題ということに考えておるわけでございます。
  117. 伏屋修治

    伏屋分科員 時間がございませんので、環境庁、林野庁、結構でございます。  そこで、私が問題にしたいと思いますのは、協議の対象として保護地域設定ということがかなり話題になった、それも御岳休養林あるいは木曽御岳休養林、この二千七百ヘクタールを保護地域に設定しよう、こういうような話し合いがされた、こういうように私は新聞報道では聞いておりますけれども、そこで一番問題になるのは、林野庁が、その森林の伐採を配慮しながら保護地域を設定するということには一応の賛意を表しながら、その決断が林野庁ではまだされておらない。このように被害が拡大され、三庁合同で対応策を立てるということを何度も何度も詰めながら、いまだに三庁の合意が得られない、しかも林野庁はその決断をされない、そういうところにも私は大きな問題があると思います。文化財保護法の第四条三項には、個人の財産権、それの尊重ということがうたわれております。また八十条の第五項には、そういうようなことにおいて被害を受けた場合にはそれを補償しなければならない、こういうことがうたわれておりますけれども、これはすべて空文になっておる。そういう被害者に対する補償というものすらいまだ考えておられないようでございます。そういうことから考えましても、非常に手抜かりが多いように思います。  最後に、被害者の方々は自分の被害に対する切実感から、非常に感情的にもなっておられるようであります。それと同じように、今度は保護協会の立場をとりますと、特別天然記念物のニホンカモシカを射殺するとは何事かというように感情的な対立になっております。このような不毛の対峙関係というものは私は好みません。何としましてもここで両方が相寄って、特別天然記念物が日本の国の国民共有の財産である、こういうように考えるならば、やはり対峙した不毛の激突ではなくて、お互いがそういう認識に立ってやっていける方法はないのか、こういうことを私も考えるわけでございます。諸外国の例を見ましても、国から補助金をもらって、イギリスでナショナル・トラスト財団といりのがそういう鳥獣の保護に当たっておると聞いております。そういうことから考えましても、文化財保護基金的なものをこの際つくって、被害者の方にはそういう保護基金の中から補償の方法を考える、そして保護協会の言う保護するということは、被害者もその補償の中から今度は両方でそれを保護していく、そういうようなことを今受持考えになる意思ありやなしや、その辺をお尋ねしたいと思います。
  118. 吉久勝美

    ○吉久政府委員 私ども文化庁といたしましては、文化財の保存、管理のための国家的な一つ組織として、何らかの第三セクターと申しますか、文化財保護協会あるいは保護基金、そういうものが必要ではなかろうかという点につきましては、従来から検討課題としておるわけでございます。ただいまの先生の御指摘もあるいはその中の一つのことになろうかと思うわけでございまして、私ども検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  119. 伏屋修治

    伏屋分科員 重ねてその点は強く御要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  120. 正示啓次郎

    ○正示主査 午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  121. 正示啓次郎

    ○正示主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  122. 竹本孫一

    竹本分科員 私は教育に関して私が日ごろ考えておることについて大臣に二、三お伺いをしたいと思います。  第一点は基礎学力の低下という問題なんですが、やはり全人教育とかいろいろな問題がありますけれども、しかし学校というものは学ぶところなんだから基礎学力をつけるということが最大の課題である。そしてまた基礎学力をつけるという過程において人間形成という問題も幾多の期待ができる、そういう意味で、どちらかというと基礎学力を大いにつける、また学校生活においては大いに厳しく鍛え上げるということに私は賛成なんですが、そういう立場から、一つは最近文部省において学習指導要領を改められて、そして量が多過ぎるというので二割か幾らか軽くされた。これも詰め込み教育を反省する上において意味がありますし、それからまた量が問題ではなくてやはり物を分析する力、あるいは物をまとめる力をつけることが大事なんだから、私は二割減らすということには大賛成ですが、しかしその点から考えて、今度は教師の方の負担というものは大変だと思うのですね。不勉強な先生や怠けた先生では、その二割減らした範囲内において十分の基礎学力をつけるということは非常にむずかしい課題になってくる。したがって、教師の負担というものはむしろ非常にふえるのだと思うのですけれども、そういう点について基礎学力を充実するという面からどういう対応をされていくのか。また教師が自由裁量ができる時間も少しふえたそうですけれども、そういうことも含めて基礎学力をよりむしろ充実する形において、くだらぬ詰め込みはやめるのだ、そういう意味の指導要領の改正でなければならぬと思いますが、その点はどうかということと、時間もありませんので、あわせて最近における学力の低下というものの一番大きな原因はどこにあるのかについてどういうふうにお考えになるか、その二つをお伺いしたい。
  123. 砂田重民

    砂田国務大臣 小中学校学習指導要領の改定を終わりまして、五月ころには高等学校学習指導要領の改定が決定できると考えておりますけれども、その学習指導要領の改定をいたしましたねらいといたしますところは、先生が御指摘になったまさにその点でございます。詰め込み主義と申しますか、基礎的な基本の理解ができていないのに、そこにその次のものを詰め込み、上乗せしていく、いつまでたっても記憶力に偏ることになってしまって、理解力の養成ができないというようなことの反省の上に立っての学習指導要領の改定でございます。  学習指導要領で定めております各教科等内容は、各学校段階及び各学年段階で確実に身につけさせるべき基礎的、基本的な内容中心に編成をしておりまして、これらの内容を修得したかどうかがいま先生御指摘の各学校段階におきます学習の基礎の基準と考えておるわけでございます。
  124. 竹本孫一

    竹本分科員 学力が落ちた原因という問題をどうつかんでおるかという点をもう少し詳しくお願いします。
  125. 砂田重民

    砂田国務大臣 やはりそれはいままでの学習指導要領の内容が余りにも多過ぎた、学習指導要領が基準的なものになってくるわけでございますから、それに従って教員も追いかけられると申しますか、基礎、基本が身についていないのにその次のものを上乗せして、ともかくまる暗記、まる暗記でいかなければならない、こういう事態にありました、いわば知に偏り過ぎた学習指導要領ということから今回の改定をしたわけでございます。やはりいままで暗記力に頼り過ぎたと申しますか、余りにも量の多い学習内容を与え過ぎていた、それが理解力というものが身につかないで、そのために学力の低下を来したのではないか、そのように考えるわけでございます。
  126. 竹本孫一

    竹本分科員 いま大臣のお答えになりましたのが大きな原因だろうと思いますが、それのみでもないように思います。それは後でまた申し上げたいと思います。  第二の問題は、基礎学力の問題とあわせて、いわゆる人間教育とよく言われますが、そういう問題について、これはこの際思い切って午前中はいわゆる必修科目といいますか、そういう基礎学力をつくるものに充てる。中学校なんかの場合、特にそうでしょうけれども、午後はそれこそ全人教育というか、人間教育というか、そういうものは選択科目にして、それぞれ自分の個性、適性に合ったものをやらせる。実は私の友人に、ピアノをつくっておられる方があるのですけれども、その人がうまいことを言うのです。音楽がわりに音痴でも数学の天才はおるかもしれない、それから、一々時間がありませんから……。とにかく選択科目というものはその人の個性に合ったものをやればいいので、それをいまのように全部必修科目にする、人間の最小限度の教養をつけるという意味で幅広く必修になっている面もあるでしょうけれども、しかし、それはまた人間の生涯教育その他を通じてもできることでありまして、とにかく音楽とか芸能とか、そういうようなものは、それができないからといって人格にかかわる問題でもないし、あるいは人材という面から見ても、ほかの分野において人材であればいいわけですから、これを必修にしてすべての者に強制するといいますか、要求するということは間違いではないか、それが一点。  それからもう一つは、要するにいまの必修科目のものは、基礎学力をつけるものを必修にして、あとは全部選択にしろという意見なんです。それから同時に、授業のあり方も、午前中はそういう必修科目というか、基礎学力の充実に充てる、午後は選択科目にして自由にやらせて、その中で本当のコミュニケーションとかあるいは全人的な修養とかいったものをつけていくというふうにしたらどうか。思い切って午後は自由な選択科目による全人教育にするというふうに踏み切れないかどうかという御提案を私はいただいたことがあるのですが、大臣のお考えはいかがですか。
  127. 砂田重民

    砂田国務大臣 情操味豊かな人間を育てていく、人間性豊かな人間を育てていく、非常に大事な教育の基本だと思うのです。竹本先生も情操味のある人間をということを御強調になりながら、情操味豊かな人間を育てる一つの素材として音楽をみんなにやらさぬでもいいのではないかという御主張のように承ったのでありますが、私はやはり知、徳、体のバランスのとれた人間ということを特に教育専門家だれでも言うのですが、音楽に親しむ、花を愛する、人を愛するというような、そういう人間味といいますか、そういうことは一体知なのか、徳なのか、体なのか、何かもう一つあるような気持ちがいたしてなりません。やはり音楽というものは、特に小学校におきましては必修科目で、だれもがみずから歌を歌い、みずから楽器をりっぱに扱われることが音楽を必修で教えている目的では決してないと私は思うのです。音楽を聞くこと自体、そこに人間の温かさというものを身につけてこれるものだというふうに感じるものですから、いま直ちに音楽、いまおっしゃいました体育、そういったものを選択でというふうには考えがたいのでございますが、特に今回の学習指導要領の改定でゆとり時間を持ってもらうことにしたわけでございますから、そのゆとり時間もまた情操味豊かな、人間性豊かな子供たち、そういう教育指導教員の方々にも御研修の上で力を入れていただきたい、そこに創意工夫を生かしていっていただきたい、こういうように願っているものでございます。  午前、午後とお話しでございましたが、これはやはり学校御自身の御判断で決めていかれる筋合いのものと考えます。
  128. 竹本孫一

    竹本分科員 余り議論をする時間もありませんから要望だけですけれども、とにかく音楽ができなくても、あるいは図工ができなくても、天才的なものはあるわけですから、ぼくは教えることに反対しているのじゃないのですね。それを必修科目として、試験をして点を取ってほかのものと平均する、そういう必要があるかどうか。むしろそうすることの弊害の方が大きくはないかということを申し上げておるのです。  それからこれに関連しまして、宗教教育、道徳教育、それからもう一つついでに申し上げますが、われわれは勤労体験教科というようなことを言っておりますが、そういうものについてはどういうお考えであるか。  森戸さんは、わが党の先輩でございますが、宗教を国が、あるいは義務教育で一党一派に偏したような教え方はもちろんできませんから、やはり宗教の歴史を教えろ、釈迦はどうであった、キリストはどうであった、しかしその歴史を学んでおれば、宗教的情操教育は十分できるわけです。そういう意味で道徳教育も含めて宗教の歴史を教えろということを森戸さんが言われたこともあるが、そういう意味の宗教の歴史等を通じての道徳教育。それからもう一つは、やはり勤労体験教科といいますか、働くことの喜びと苦しみがわからなければ、人間として決して円満な人間にはなれない。中国なんかに行けば、保育園みたいなところでも、御承知のようにもう糸を紡いだりして働くことの意味というものを教えておる。いまの人間と言うとちょっと古くさくなりますけれども、働くということを忌避するか、回避するか、軽視するということになっておりますから、やはり勤労体験教育というようなものが必要ではないか。玉川大学は、有名な先生が非常に独自の見解を持っておられて、労作教育というものをやっておられるわけですが、そういう問題も含めて、この際、勤労体験教科というか、労作教育というか、そういうものにももう少し力を入れたらどうかと思うのですが、いかがですか。
  129. 砂田重民

    砂田国務大臣 特定の宗教を学校で教えることは許されません。しかし、森戸先生から私もその御意見を承ったことがございます。宗教の歴史を教える意義は十分あると思いますので、その方向で検討させていただきたいと思いますが、やはり人生の中で人間の力の及ばない何か大きな力がある、そういうことを子供たち理解をさせておく必要は、私は、宗教の歴史等を通じて子供たちも正当に把握をしてくれるのではないかという気持ちを持っております。  勤労の重要なことは、やはり今回の学習指導要領の改定によって生み出されてまいりますゆとりの中で、福祉活動的な奉仕でありますとか、体育を通じての耐えることでありますとか、同時に勤労のこともこのゆとり時間の中で先生方の創意工夫、これは特に今回の学習指導要領の改定をわれわれの考えておりますようなことに実現させるのには大変な御努力を教員にはお願いをしなければならないのですが、勤労の問題もこのゆとり時間の中で取り入れていっていただきたい。私もせがれを玉川学園に子供のときからやりましたが、あの勤労の精神の教育のあり方には敬服をいたしておりますので、こういうことを願いながらゆとり時間の活用を指導してまいりたい、かように考えます。
  130. 竹本孫一

    竹本分科員 問題ばかり並べるようで恐縮ですけれども、宗教教育の問題、もう一言力点を置きたいと思うのです。  たしかゲーテが言った言葉があると思うのですが、小さいときに恐れるものを教えられないで、恐れるものがあるということを知らないで育った人間は一生不幸であるというようなことを言ったことがあるのですね。いま非行問題あるいはハイジャックなんというようなことをいろいろ考えると、彼らは何物も恐れるものはない。おのが腹をもって天となしている、神となしているというようなところがあるので、特にその必要を私は感じておりますので、以上のようなことを申し上げたわけです。  それから働くことの問題も、これまた大学の学生が夏休みに、ぼくは新聞で読んだのですけれども、草刈り大作戦というような見出しだったと思いますが、投書がありまして、それで、学生の中の有志を募って、山へ行って、しば刈り、草刈りといいますかね、それをやらした。ところが、初めはみんななれないので、ちょっと興味を持っていってみた。もう大変でふうふう言ったのだけれども、しかし、半月か一ヵ月か忘れましたけれどもやって、最後に、やり遂げてみんなが、いままで学生生活で一遍も味わえなかった充実感というものを味わったということになって、それで翌年は、もう人は来ないかと思ったら、逆にうんと、倍くらい来たということが投書に、草刈り大作戦というような意味で出ておりまして、なるほどと思ったのですけれども、まあ学生にいますぐ強要、強制するということはどうかと思う面もありますが、少しはそういう学生もあっていいじゃないか、あるいはそういうことをやらせる学校があってもいいではないかというふうに思いますので、大臣のお考えも承ってみたい、こう思うのです。
  131. 砂田重民

    砂田国務大臣 学生が自主的に、先生御指摘のような勤労の精神を身につける勤労体験を積み重ねていくということは、非常に大事なことだと思うのです。いろいろな方面で学生たちがそういう活動を行っておりまして、社会福祉施設の事業の援助でありますとか、留守家庭児の学生保育でありますとか、交通遺児の育英資金の募集でありますとか、また財団法人学徒援護会でも、北海道援農事業のような勤労作業に従事をしておりましたり、社団法人の日本青年奉仕協会、茅先生が会長をしておられますけれども、これなども離島へ出かけていって援農活動をやっている。学徒援護会等は年に七百名近い学生たちがそういう活動をしているわけでございます。大変多くの学生が参加をしておりますけれども、やはり学生たちが自主的にこういうことを行うことに、自主的にということに非常に大きな意義があると思うのです。こうした学生の活動は貴重な体験でございますので、大学としてもでき得る限り援助、助言を与えることが望ましいことでございますから、大学に対しまして私どももその方向で指導、助言を続けてまいりたいと考えます。
  132. 竹本孫一

    竹本分科員 私は、松下幸之助さんが、国土創生論といいましたかね、列島改造じゃなくて、国土を新しくつくる、国土創生論という本を書いて出されて、送ってもらって読んだことがあるのです。それでぼくは、お礼の手紙の中に、まず文部省と一遍ゆっくり話されて、そして学生の有志を募って、その国土創生をやられたらどうですか。先生は、例によって非常なうんちくを傾けてその本を書いておられるのですけれども、とにかく私は学生に本当の意味で充実感を味わせる意味においてそういうことをぜひ考えてもらいたい、こう思うものですから、ちょっと申し上げます。  次に、先ほどもちょっと学習指導要領のところで申し上げたのですが、いま一番大事な問題は教師のあり方だと思うのです。  それで、その教師像の問題について、たまたま新聞を読みますと、「期待される教員像」といったようなものを中央教育審議会の小委員会で取り組んでおられる。教員の資質の向上、教師と生徒の触れ合い、教員の使命感、こういったような用題と前向きに取り組んでおられるということで私は非常に期待をいたしておりますが、その結論はいつごろ出て、またいつごろどういうふうな方向で実施、実現されようとしておるのであるか、この点を伺いたいのです。  時間の関係がありますからついでに一緒に申し上げますが、ここにあるうちの資質の向上というのも、これは当然皆よく考えることですから、大臣は十分御認識をいただいておると思うのです。これは吉田松陰であったと思いますが、教えることがなくて先生になってはいけない、教わることがなくて学生——いまで言えば学生ですね、学生になってはならぬというようなことを吉田松陰の本で読んだことがある。ところが教師が労働者であるか労働者でないか、いろいろ問題がありますが、使命感を持たない教員なんというのは役に立たぬ。教えることがなくて先生になる、教わることがなくて学生になる、そんなくだらない者ばかり拡大再生産しておっても、日本の文化水準も教育水準も上がらないとぼくは思うのですね。そういう意味で、教員がどれだけの厳粛な使命感を持つかということは非常に大事な問題でありますから、私はこの教員問題小委員会の結論に多くを期待しておるわけです。  それと関連をして、いまの問題をどう受けとめられるつもりであるか、いつごろ出る見通しであるかということとあわせて、いまの先生方の免許といいますか資格、これは一遍先生になったら永久に先生だということはぼくは間違いだと思うのですね。それはなぜかと申しますと、使命感の問題についても、時代の流れとともに受けとめ方が変わってくるであろう。それから、科目の中身についても、数学みたいなものでさえ教え方、教科書の内容が変わるでしょう。そういうことを考えると、一遍先生になりさえすれば一生涯大丈夫なんだというような形でなくて、やはり学問も社会も日々動いているのですから、十年に一遍ぐらい免許は再審査するということにしたらどうかということをわれわれは考えておるが、そういう考え方についてどういうふうに思われるか。自動車の免許と比較してはいかぬかもしらぬけれもど、自動車の免許だって三年ごとに更改するのでしょう。これはまた技術が衰える、規則が変わるのですよ。しかし、学校の先生というものはもっと大事なんだ。教え方にしても、いま言ったように指導要領が変わるのですから、社会の考え方も変わるのですから、一生涯保障されているというようなことでなくて、十年に一回は再審査をして、適格性を持たない者はやめてもらうというぐらいの断固たる決意はありませんか、こういうことですね。
  133. 砂田重民

    砂田国務大臣 まず最初の、中教審に御審議を願っております教員のあり方につきましては、大体五月ごろに御回答をいただけると思います。それは少し時間がかかるようでございますが、中教審御自身で現場の意見も聞いた上で結論を出すと言っておられますので、五月中には何らかの結論を得ていただけると期待をいたしておるところでございます。  基本的には、何といってもいろいろな学問的な資質も問題でありますけれども、その基盤になります使命感と情熱というものがまずなければなりません。それは先生の御指摘のとおり、全く私も同感でございます。教員の資質の向上のための研修機会をできるだけたくさん文部省としては持たなければなりません、準備をしなければならない責任がございますので、各種各様のいままでやってまいりました研修機会を提供するだけではなくて、五十三年度から新たにまたそういった研修機会を数多く持つわけでございます。教員自身の中にももっと勉強しなければいけないという気持ちがだんだん高まってまいっておりますことは、大変ありがたいことだと思うのです。  いま教員の免許の問題もお触れになりましたけれども、十年目に一遍資格審査をするというところまでは、もう率直に申し上げてすぐに踏み切れる問題ではございません。免許制度そのものの根幹に触れる問題でございますけれども、しかしすでに教壇にある先生に何年目かにはもう相当厳しい研修機会を持っていただく、そういう準備をいたしておりますので、各種各様の研修機会等につきましては、担当局長からお答えさせます。
  134. 竹本孫一

    竹本分科員 教師の再教育のための大学院大学ですか、そういうものを今度考えられておるようですから、とにかく教師の資質の充実ということについては特に格段の御配慮を願いたいということでございます。  最後に、一つは雇用対策の問題として、受け持ちの生徒数を減らして教師をうんとふやす、下手をすれば倍にしたらいいじゃないかという意見もある。それから週休二日制を即時実施したらどうかという意見もある。確かにそれらはそれぞれ雇用対策の前進のために一定の役割りは持つと思うのですけれども、その週休二日の問題、あるいは受け持ちのクラスの編制がえをして教師をうんとふやすという問題についてどういうお考えでおられるかを承って、最後にいたします。
  135. 砂田重民

    砂田国務大臣 週休二日制の問題につきましては、五十二年度に政府が試行を行いました。それに準じて都道府県教育委員会にも同様の措置がとれないか、そういう連絡をいたしたのでございますけれども、公立学校教員については実施をしてくださった府県は一つもございません。国立の付属学校等におきまして一部で試験的にまさに試行を一年間実施をいたしておりまして、三月で終わるわけです。この結果を踏まえましてさらに検討を続けたいと思いますが、五十三年度におきましても政府の週休二日制の試行が行われるものでございますから、重ねて各都道府県にこの旨を文部省から通達を出しまして、公立の学校においても授業に差し支えのない範囲で試行ができないものか、そういうことの連絡をとることにいたしております。  雇用関係に絡めての学級編制基準の御意見がございましたけれども、実は長期計画教員の定数を法律に基づく定数、児童数の増に基づく定数の改善を五十三年度で完結をいたしたわけでございまして、一万七千八百人の増員を見たわけでございますけれども、一応学級編制基準四十五名、しかし全国平均では小学校では三十二名余りになるわけですが、過密地と過疎地と非常なばらつきが出てきているわけでございます。教員の定数の問題は五十三年度で一応長期計画が完結をいたしましたので、そのばらつきがどういう状態になっているか悉皆調査をしたいと思うのです。それはこれから数年間で百二、三十万人の児童生徒が過密地だけでふえてくる、それにも対応しなければなりません。その悉皆調査の状態を見ました上でひとつ考えたい、かように考えるわけでございます。
  136. 竹本孫一

    竹本分科員 最後は、要望だけ申し上げて終わりにいたしますが、時間があるから申し上げるのですが、大臣、私の個人的な趣味を申し上げては悪いが、私はフィヒテの哲学が非常に好きなんです。彼は経済国家、警察国家はだめだ、これから先は教育国家でなければならぬということを非常に強く言っている。私は日本の再建も教育国家だと思うのです。そういう意味からいって、先ほどの教師の使命感の問題その他すべてをひとつ大きな哲学に立って本格的に取り組んでもらいたい。  実はこれはヨタ話になって申しわけないけれども、最後に申し上げますが、国会が始まって総理大臣が演説をしますね。そして、大蔵大臣、経済企画庁長官、外務大臣、こうやりますね。ところが、あの演説はくだらぬことばかり長くて、八割ぐらいダブっていますよ。あれをやめて経済演説とともに教育、文化、精神の問題の演説をおれにやらせろ、文部省としては意見があるのだということを一遍閣議でぶち上げるくらいの気迫と使命感をぼくは持ってもらいたい。総理が言った演説とあと細かいことが少し違うだけで、細かいことは、もちろん各論は委員会に任せればいいんです。国の大きな経済の方向は、もちろん生活に重大な問題がありますからやっていいですよ。しかし、総理大臣の演説の半分また各大臣の演説の中にも、文部大臣が当然に日本のこれからの精神のあり方、文化のあり方、教育のあり方はこうなければならぬということを国民に訴えるぐらいの使命感と自信を持ってやってもらいたい、私は将来そういうことを提案しようと思っておりますから、大臣に強く要望を申し上げます。
  137. 砂田重民

    砂田国務大臣 竹本委員ヨタ話とおっしゃいましたけれども、私は決してそうとはとりません。全く同感でございます。閣議でも確かに経済の苦しい時期ではあるけれども、ことしは経済の年であったって教育の問題は永遠に国の根幹ですよ。鉄やセメントに金を入れるばかりが能ではないです。人間の開発こそは一番大事なことではありませんかということを閣議でぶったわけでございます。なぜ私に文教問題について本会議で演説をさせてくれなかったのか、まことに不満でございます。確かに経済には国政は協力をしなければならぬと思いますけれども教育、学術文化にはまさに政治は奉仕をするべきものだと考える。しかし、そういう考え方は国会にも先生定着していないではありませんか。文部大臣に演説させろということをおっしゃっていただく政党があったら、こんなうれしいことはございません。経済閣僚ばかりに演説をさせないように、ひとつ御一緒に努力をしてまいりたいと思います。
  138. 竹本孫一

    竹本分科員 終わります。
  139. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、春田重昭君。
  140. 春田重昭

    春田分科員 私は、人口急増また生徒急増地域の小中学校学校建設につきまして特に御質問してまいりたいと思いますが、この地域につきましては、文部省としても鋭意いろんな配慮、努力をなさっていただいております。それはよくわかります。しかし、まだまだ未解決な点がたくさんございますので、それらの二、三点を挙げながら質問してまいりたいと思いますが、まず超過負担の問題でございます。その中の単価差。  そこで、用地の取得について中心に質問をしてまいりますけれども、この建物の単価は、新年度五十三年度予算においては若干上積みされております。しかしながら、用地の単価というものは据え置きになっておる。御承知のとおりです。その理由はどういう理由なのか、明確にひとつ御答弁願いたいと思います。
  141. 三角哲生

    ○三角政府委員 用地の単価につきましては、補助単価、補助の実施単価についていろいろ基準によって決めておるわけでございますけれども、現状で私ども判断いたしまして、五十二年度の事業について見まして、補助申請のありました学校のうち約八〇%強につきましては必要ないわば申請額と申しますか、必要額、これ結果的に申しましてそれに見合った補助金の算定が行われているという実情が一つございまして、なおあわせまして補助の実績の平均単価で、これは五十二年度の見込みで見ましても、単価差が約四・六%という状況になっておりますので、私どもとしましては、現在の単価で市町村側の実態に対応し得るというふうに判断しておるわけでございます。
  142. 春田重昭

    春田分科員 八〇%は実績に沿った線であるということでございますけれども、私の地域は大都市大阪でございます。非常にそういう点からいったらぴんとこないわけですね。平均単価が二万八千五百円、平米当たりになっておりますけれども、この平均単価は五十年に二万八千五百円になりまして、五十一年度、五十二年度変わりませんし、新年度予算でもそのまま据え置きになっております。  確かに、列島改造時代みたいに土地は動いてない、上昇してないといっても、かなり最近は動いております。国土庁の実勢価格の調査によりますと、わが大阪地域の住宅部では五十年度が六万四千五百二十二円、これは平米当たりでございますが、五十二年度は六万五千九百円になっております。二・一%ということになりますけれども、しかし、五十三年度は特にいわゆる土地税制の緩和がなされようとしております。また公共事業の目玉として住宅等に非常に力を入れておられる。そういう点からいきましたら、相当この土地の価格は上がっていくのではなかろうか、いわゆる年度末には相当上がっていくのではないか、このように私は読んでいるわけでございますけれども、こういう点からして、非常に地方自治体においては超過負担の問題として最終的には負担をしなければならぬ、こういう問題が出てくるわけです。文部省としてはその辺、いわゆる三年間据え置きになったということで、わが地域には実勢価格と若干離れているわけです。その点はどうお考えになりますか。
  143. 三角哲生

    ○三角政府委員 用地取得費の単価につきましては、先生御承知と思いますが、いわゆる建物の単価と若干扱いが異なりまして、それぞれの補助の執行に当たりまして、それぞれの学校が必要とする土地の評価額というものを一応基準にして、評価の方法についてはいろいろございますわけでございますけれども、それで補助の実行単価を決めておりますので、いわゆるいまおっしゃいました国の予算単価二万八千五百円、これと個々の学校の単価といわば直接リンクする、そういうものでないわけでございまして、それは御承知おきいただいていると思いますが、したがいまして、いまおっしゃいました実勢価格というものも、これはそれぞれそのときの事業実施の際の評価に反映されると思っておりますので、そういう意味で超過負担の問題につきまして、私どもはいまお願いしております予算の中でいろいろとできるだけ実情に即応できるように対処してまいりたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  144. 春田重昭

    春田分科員 実勢価格と実情が合っていないから私は言っているわけでございます。  そこで、時間ございませんので先へ進みますけれども、この用地の取得の問題につきまして、ついででございますから質問していきたいと思うのですが、いわゆる補助率の問題でございます。国庫補助率は三分の一、御承知のとおりでございます。しかも、そこに交付率があるわけですね。現在七〇%、したがって三分の一掛けるコンマ七となるわけでございますから、実質的に言ったら二三・三%、こういう実情でございまして、非常に低い。もちろん文部省としては、一般の地域については全然補助がつかないのだ、人口急増だけこれだけつくのだからそれでもいいじゃないですか、そういう論法になるのじゃなかろうかと思いますけれども、しかし、いわゆる人口急増地域では学校建設というものは待ったなしなんですよね。待てない。そこで補助率の問題でございますけれども、せめてこの三分の一というものを、補助率はこれも四十六年、いわゆる人口急増地域に対して補助率がつきましてずっと変わってない。一貫して変わってない。そこでこの三分の一を、まあここらあたりで少なくとも三分の二と言いたいわけでありますけれども、二分の一くらいいわゆるアップする必要があるのではなかろうか、こう思いますけれども、どうですか。
  145. 三角哲生

    ○三角政府委員 先生ただいま、若干御指摘ありましたように、この人口急増地域につきます現在行っております措置は、やはりそういった児童生徒が非常に急増するという状況によりまして、当該市町村が非常に財政的負担が大きくなるという、そういう困難を国としても援助するということで、いわば臨時の特例の措置として設けたものでございます。しかも、土地につきましては三分の一補助をいたしますが、残りの三分の二につきましてはそれぞれ交付税なりあるいは起債で手当てをいたしまして、その起債につきましても、後年度その元利償還の相当部分についてまた交付税で措置をするというふうな一連の仕組みで対応いたしております。現在のところなお急増市町村の傾向が続くということで、建物の方につきましてもこの臨時特例の措置を五年延長するということをお願いしておるわけでございます。そういう状況でございますので、補助率その他につきましてこれまでのやり方で対処してまいりたい、需要がまだ非常に続くわけでございますので、そのようにさしていただきたいというふうに存じておるわけでございます。
  146. 春田重昭

    春田分科員 地方債で認めるといっても、地方債というのはどうせ借金なんですから、後年度返していかなければならないわけです。まして教育債というのは、起債の約半分ぐらい占めるわけです。したがって、ほかの事業が制約される、こういう問題もあるわけでありまして、地方債を発行している、交付税で見ているといっても、交付税はわずか五%でしょう、あとの九五%が地方債である、借金なんですよ。そういう点から言って、もっと前向きに検討していただきたいと思うのです。  さらに、交付率七〇%の問題でございますけれども、これも昭和四十六年当時四四%で始まりまして、毎年上がってずっと来たわけでございますけれども、五十一年に七〇%になりまして、これもずっと五十一、五十二、五十三年と据え置きになったままです。交付率は変わっておりません。これは私前回も質問したときは犬丸政府委員がおっしゃいました中には、実情に合わせて改正していく、こういう答弁が返ってきておるわけですよ。全然変わってない。これはどういう理由なんですか。
  147. 三角哲生

    ○三角政府委員 交付率につきましては、これもまた先生御承知のとおり、この補助は他の補助と異なりまして、急増市町村以外の一般市町村が用地を取得する場合にはこういう制度はないわけでございます。基本的には、やはり土地というのは一つの当該地方公共団体の財産と申しますか、非償却資産でございますので、そのまま価値として残るものでございますから、たてまえはそういうことになっておりまして、やはり急増市町村につきましては、先ほど御説明申し上げましたようなわけで、臨時特例の補助をしておるということでございます。したがいまして、一般市町村の用地取得費の状況がどうなっておるかということを見合わせまして、そしてこの状況を超えて急増市町村が財政負担が重くなっているという部分について、国としてこれを対象としていこうということでございまして、私どもも現在までいろいろと調べておりますが、その状況が約七〇%であるということで、交付率を七〇ということにしておるわけでございます。  将来事情が変われば、またこの交付率についてその状況を十分に見なから検討をしなければならないと思っておりますが、現在のところ実績で見てまいりますと、一般市町村を上回っている分が約七割ということでございますので、それを交付率という形で使っているというわけでございます。
  148. 春田重昭

    春田分科員 用地取得の全体の面積の中で、急増市町村が七割ということでございますか、正確に言ってください、五十一年の実績で。
  149. 三角哲生

    ○三角政府委員 五十一年度取得実績で見ますと、急増市町村以外の市町村の用地取得費が約五百億でございますが、急増市町村の用地取得費が約千七百億ということになっておりまして、ですから、千七百分の五百という数値を出しまして、これを一からマイナスするというようなことで計算いたしますと、ほぼ0・七という指数が出てくるわけでございます。
  150. 春田重昭

    春田分科員 0・七七でないですか。
  151. 三角哲生

    ○三角政府委員 数字が細かくなりますが、0・七〇六というような数字でございます。
  152. 春田重昭

    春田分科員 いずれにしても、私の考え方とすれば、一般地域には用地の取得の補助は出していない、それを承知の上で私は言っているわけでありますけれども学校の建物というのは土地がなくては建たないのですから、一般の地域においても少なくとも三分の一、人口急増地域には三分の二、そういう補助をしてあたりまえである。学校建設にかかわる起債というのは用地取得が相当占めているわけですよ。私の守口市の実績から言ったら、ここにありますけれども昭和五十年三月に小学校の用地として一万六千五百三十四平米取得しました。このときの単価が六万六百五十六円なんです。したがって、十億二百九十一万なんです。これで買収しているわけです。ところが国の補助は一億五千二百八十九万ですよ。したがって一四・五%。中学校の例もありますけれども中学校も大体一四・九%。こういう点から考えてみても、三分の一の交付率が七〇%ですから二二、三%、それ以下なんですよ。これは当然超過負担等の問題があるわけです。  こういう実例からして、そういう人口急増地域はこの学校建設で相当悩んでおるわけですよ。だから、この補助率、交付率というのはずっと一貫して変わっておりませんが、やはり実情としてもうそろそろ変えるべきじゃなかろうか。この交付率はなくして一〇〇%にすべきである。たとえ、いま一〇〇%できなくても、毎年少なくとも五%ないし一〇%、改善してアップすべきである、こういう考え方を持っておるわけでありますけれども、この件につきましては、大臣、どう思いますか。
  153. 砂田重民

    砂田国務大臣 学校用地がやはり地方自治体の非償却資産であるというその性格は否めないと思うのです。ですから、他の人口急増地域でない地域とのバランス、兼ね合いもあることでございますから、補助率を直ちにどうこうということは大変困難なことだと思いますが、やはり超過負担という問題も現実にあることでございますから、用地単価でございますとか補助基準面積でございますとか、あるいは交付率等の改善については今後も重ねて努力をしてまいります。
  154. 春田重昭

    春田分科員 検討する、その検討がどうか政治用語で終わらないように、ひとつ前向きに検討していただきたいと思います。  さらに超過負担の中でいわゆる対象差の問題でございますけれども、五十二年度におきましては門とか囲障等が含まれまして補助の対象になりました。ところが五十三年度ではほとんどそういう対象差の解消はなされていないわけです。前回も指摘しましたけれども、非常放送のランプ、アンテナ、それからテニス、野球場のネット、それから渡り廊下の工事、工事用進入路の工事、解体、建設、撤去工事等のいわゆる必要経費というものがまだ対象外となっているわけですよ。いずれにしても、こういう学校の施設整備としてはどうしても必要欠くべからざるものなんですね。こういう点についてもやはり対象の範囲として認めていく必要があるのじゃなかろうか。こういう点も地方自治体の大きな超過負担の悩みとなっているわけです。この点、どうですか。
  155. 三角哲生

    ○三角政府委員 補助の対象経費種目と申しますか、対象につきましては、先生御指摘のとおり、五十二年度から門、囲障、渡り廊下について入れたわけでございます。それからさらにどうかという御指摘でございますが、現在の補助制度は基本的にはやはり建物の補助でございますので、いわば備品ないしはそれに類するようなものにつきましては原則的にやはり問題がございますことと、そういったものにつきましては、個々の学校によりましてこれを必要とするとか、あるいはこれを取りそろえようとするところ、そうでないところ、その物の種類が非常にバラエティーがあると申しますか、異なる状況に置かれておるものが多いと思うものでございますから、これはいわば一種の補助制度の上に乗せてくるといっても非常にむずかしい点が多うございますので、これは十分慎重に検討しなければならない事柄であるというふうに考えております。
  156. 春田重昭

    春田分科員 それは、現在補助の対象になっていないから入れてないのであって、対象に入れたら当然、これが現在ついてない学校等はつけてくるのですよ。そういう問題があるのです。その辺はよく検討していただきたいと思うのです。  さらに、老朽危険校舎の問題でございます。この増築、改築の問題でございますけれども、この問題につきましては、新年度予算で四千五百点を五千五百点といいますか、一千点上げられまして、いわゆる対象の範囲を広げられました。緩和されました。これは認めます。しかし、これも補助率の問題でございますけれども、三分の一、これが昭和三十三年から十九年間据え置きになったままになっておるわけですよね。これは、私どもの正木委員が予算委員会でも質問いたしましたけれども、この老朽危険校舎のいわゆる補助率三分の一は、もっと改善する必要があるのではなかろうか。正木委員のあのときの質問からいけば、せめて二分の一ぐらいにする必要があるのではないかという質問がありましたが、この点どうですか。
  157. 三角哲生

    ○三角政府委員 御指摘のございました危険改築の負担率の問題でございますが、老朽につきましても、いろいろ自然的条件でございますとか、公共団体の財政事情などを配慮いたしまして、特にそういった面で必要度の高い、特別豪雪地帯でございますとか、過疎地域、振興山村地域等につきましては、四十八年度以降逐次三分の二の補助率ということでいたしてまいっておりますが、一般地域につきましては、改築事業というものはかなり前からあらかじめわかる仕事でございますし、いわば通常は償却をしていく、そういう用意をしていくということがあってしかるべきものでございますから、全く新しく人口急増地域のように学校を新設するための新増築事業の場合と異なりますので、そういう意味で必ずしも扱いを同一的にしがたい。それから、御承知のように危険校舎等の面積がなお相当量残っておりますので、私どもといたしましては、補助率の引き上げを行うということではなく、できるだけ早く危険校舎そのものの解消を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  158. 春田重昭

    春田分科員 この問題につきましては、公共事業を消化する上においても、土地の取得の必要がないわけですから、そういう点では非常にやりやすいのではないかと思うのです。大臣も予算委員会では前向きに答弁されておりますので、その辺でひとつ前向きに検討していただきたいと思います。  それでは、時間が参りましたので、この点だけお聞きしたいのでございますけれども、最近大きな話題となっています小中学生の犯罪、それから自殺の問題でございます。自殺は、たしか昨年の三学期に入って急にいろいろな地域で出てきたわけであります。また、犯罪にしても、滋賀県の友人の殺人、それに発して、万引きや暴行や、シンナーまたは覚せい剤、こういう犯罪等がいろいろなところで出ておりまして、非常に大きな問題となっておるわけでございますけれども、その問題につきまして、どういう原因なのかということで警察庁が意識調査をやったところ、やはり一番の問題は学業問題である、これがトップになっておるわけです。そういう点で、教育のゆがみといいますか、受験戦争の弊害というものを指摘しなければならない面があるのではなかろうかと私は思いますし、ゆとりある教育、人間教育というものも必要ではなかろうか。大臣も、教育とは心と心の触れ合いであるという答弁をなさったと聞いておりますし、こういう問題が大きな社会的な問題になっておるだけに、大臣としては、少なくとも学校教育の中ではどういう点で改善する必要があるとお考えになっていますか。
  159. 砂田重民

    砂田国務大臣 非行の問題であるとか自殺の問題であるとか、心の痛む問題が大変多発をいたしております。いま御質問ございました自殺原因でございますけれども都道府県教育委員会からそれぞれのケース、ケースの実情の聴取をいたしておりまして、中学生の場合は原因不明というのが一番多いわけでございます。以下、家庭事情、学業不振、その他という順序になっておるようでございます。高校生は原因がまた少し態様が異なっておりまして、精神障害というものが最も多い。以下、原因不明、学業不振、厭世というような事情があるようでございます。いずれにいたしましても、学業不振という御指摘の点がやはり相当部分その原因として考えられるわけでございますが、やはりこれは教員が一人一人の児童生徒の態様というものを的確に把握をしてかからなければならない。昨日もお答えしたことでございますけれども、何かむずかしい困難にぶつかったり悩みごとがありますと、それをだれに相談するのかという調査がまたあるわけでございます。友達に相談するというのが圧倒的に多いのです。両親に相談するというのも二〇%を割るような数字で出てきている。一番少ないのが先生に相談するということなんです。やはり教員の皆さんも一生懸命努力をしていただいておりますけれども児童生徒教員の間にもう一つ心の通じ合うものがない。一人一人の子供たちの態様というものを的確に把握をして指導をするように、そしてまたそれを家庭との連携をとり、地域社会とも連絡をとり、そういった問題の起こりますことを防止するように、教員研修回数等もふやしてきているわけでございますけれども実態がそれに伴っていないという状態にあることを認めざるを得ないわけでございます。私どもといたしましては、やはり学校教育だけではなかなか防ぎ切れないことではありますけれども文部省として物を言いますときには、やはり学校で受け持つべき責任を果たさなければなりませんから、なお一層教員生徒の間で心の触れ合いがもっと的確に、親密に行われるように教員の側からの働きかけを充実させていくための教員研修というものをもっと深める、回数もふやしていく、同時に、担当教員だけではなくて学年主任なり指導主任なり、そういう人たちぐるみで、また最近は集団的なそういう児童生徒非行も多いわけでございますから、生徒生徒の間の心の触れ合いにも教員が十分気をつけていけるような、そういう態勢を教員に求める、そういう指導をより一層強めてまいろう、こういう決意をしているところでございます。
  160. 春田重昭

    春田分科員 確かに一連の事件、犯罪というものを、学校教育の現場に携わる先生たちだけを責めるわけにいかないと思います。家庭教育社会教育、いろいろな問題がある。全部そういうものがまざってそういうものが今日の社会的問題になっていると思うのですけれども、少なくとも生徒は月曜から土曜まで学校におるわけですから、本当に先生と触れ合う時間が多いだけに、私はこの前新聞を見たら、ある先生の、こういう生徒は知らなかったという発言もありましたし、そういう触れ合いというものが必要だと思うのです。そこで、いま大臣がおっしゃったような具体的な問題としては、道徳教育の時間とか特別活動の時間が週一回設けられておりますけれども、これが果たして本当に有効に使われているかどうかという問題もあると思うのです。それから、家庭訪問というのは、学校では先生が行っているわけでございますけれども、私が会った先生は年間一回、この学校では五月に行っているということでございますけれども家庭を知ることも生徒を知ることになるわけですから、この家庭訪問というものを、少なくとも春と秋二回ぐらいはやはり必要ではないか、私こういう点も思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、文部省としては知育、体育、徳育という三つを掲げて学校教育に携わっているわけでございますけれども、やはり根底に人間教育というものがなかったら砂上の楼閣になっていくのではなかろうか、私は最近の事件を見てこういう点を強く思うわけですね。  そういう点でどうかひとつ、そういう詰め込み主義で、成績が悪いからその生徒も悪いと全体で評価しないで、もっと本当に人間的な教育をやるような、そういう場面を今後つくっていただきたい。いわゆる道徳、特別時間、こういう時間を本当に有効に使っていくように文部省としてぜひ努力をしていただきたい。このことを要望いたしまして、最後にもう一点だけ大臣の決意を聞いて終わりたいと思います。
  161. 砂田重民

    砂田国務大臣 教育目的は本当にしっかりした人間形成目的とするのでありますから、従来ややもすれば知に走っていた、こういう点も学習指導要領の改定によりまして、知、徳、体のバランスのとれた教育ということを心がけるわけでありますけれども、率直に申し上げまして、私自身、知、徳、体で足りるかという気持ちがいたすわけでございます。いま言われました児童生徒に求める人間性というのは、果たして知、徳、体だけで——知、徳、体のどこにも入らない問題も出てくるのではないだろうか。学習指導要領を改定いたしました中から生まれてまいりますゆとり時間を、やはり教員の一人一人の方々の創意工夫をお願いをして人間性というものを十分子供たちに会得させたい。また、問題があると考えられる子供さんについては、家庭とも密接な連絡をとりませんと、学校だけですべての責任を果し得るものではございません。人間のしつけでありますとかそういうことは、学校授業内容家庭のしつけという問題をどこで切るか、私は切りようがないと思うのです。それだけに先生方が積極的に地域社会家庭と、その問題ありと考えられる、先生方がそういう判断をなさった子供さんについてはきめの細かい連絡をとりながら対処をしていっていただくように、そういう指導を強めてまいります。
  162. 春田重昭

    春田分科員 ありがとうございました。
  163. 正示啓次郎

    ○正示主査 次に、山口鶴男君の質疑に入るのでありますが、同君の質疑に際し、参考人として日本道路公団理事吉田喜市君が御出席になっております。  なお、御意見質疑をもって聴取することといたします。  山口鶴男君。
  164. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 どうも砂田さん御苦労さまです。  最近、群馬県高崎市日高というところに、登呂遺跡にもまさる水田跡、及びそこで共同生活をいたしました人たちの集落の跡、また墓地というものが発見をされたということを大臣御存じだと思いますが、いかがですか。
  165. 砂田重民

    砂田国務大臣 承っております。
  166. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 そこで、お尋ねをしたいと思うのですが、群馬県と長野県の境に浅間山という活火山がございます。天仁元年ではないかと言われているそうですか、浅間山の大噴火があった。そのために大量の火山灰がこの地域に降り注いだわけでございまして、そこに住んでおられた方々にとっては大変不幸な出来事だったと思いますが、しかし、それが登呂遺跡以上に——約千七百年くらい前ですね。弥生後期の水田跡あるいは住居の跡、墳墓跡というものを大変よい状態で保存をしてきた。そういうことはわれわれにとってみれば大変ありがたいことといいますか、よかったことではないかと思います。  登呂遺跡の場合は水田と住居跡が残っているわけですね。日高遺跡の場合は水田、集落、そして墓地も方形周溝墓というのだそうでありますが、残っておる。そういう意味からすれば、また保存状態その他から見ても、登呂遺跡よりも価値ある遺跡だ、こういうふうに私、考えておるのですが、現地を調査された犬丸文化庁長官、どのようにお考えでございますか。
  167. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 私もこの一月に行ってまいりました。そのときには考古学の方の専門家でございます杉原明治大学教授も御一緒いたしまして、つぶさに拝見いたしました。私、考古の専門家でございませんので、その価値がどっちが高いかというようなことはなかなか簡単には申せないと思いますが、杉原先生のお話など伺いますと、今度の遺跡は非常に方式が違う、同じたんぼであっても、登呂遺跡の場合には溝が掘ってあって、区画整理されたたんぼである。この場合には非常に珍しい不整形の形であって、水のとり方も全然違っておる。そういう意味において、ここで登呂遺跡とどっちかということは、学問的な問題でございますから、なかなかむずかしいと思いますけれども、この遺跡もかけがえのない非常に大事な遺跡であるということは印象を深めてまいったわけでございます。
  168. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私もそちらの方は全くの素人でございますから、詳しい点はわかりません。御一緒に行かれた杉原明大教授は、登呂遺跡を上回る全国第一級の遺跡ではないだろうかというふうな評価もされたと承っております。  このような遺跡は、当然文部省としては史跡として指定をされるおつもりだと思いますが、いかがでございますか。
  169. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 これも専門家の集団でございます文化財保護審議会のまた専門委員会で最終的な御判断をいただく。その御答申を得た上で決定いたしますので、いま私が決定的に申し上げることはできませんが、専門家のお話を総合いたしますと、これは恐らく指定間違いなかろうというふうに承っております。
  170. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 その場合は史跡としての指定になりますか、特別史跡という形の指定になりますか。その辺、もちろん答申を得てからということになると思いますが、お聞かせをいただきたいと思います。
  171. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 その辺のところが、もう少し調査をいたしたり専門的な材料をそろえた上でないと決定できないと思いますので、史跡の中でもかなり価値の高いものであろうということは予測できるわけでございますけれども、はっきり特別史跡ということになるかどうかいまの段階ではちょっと申し上げかねると思います。
  172. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 私、文部大臣にお尋ねしたいと思うのですが、高松塚古墳が発掘されまして、当時の貴族の姿をほうふつさせる飛鳥美人の絵でありますとか、すぐれた絵画が私たちの目に触れることになりまして、大変結構だと思います。また、現在その近くのマルコ山古墳でございますか、発掘調査中だということも承っておるわけでございますが、大臣も私も同じくらいの世代で、戦前教育を受けた世代ですけれども、戦前のあの教育を思い返してみますと、私たち学校で教わった歴史というのは、まさに権力者の歴史だったわけですね。私たち小学校では、代々の天皇の名前をまず、覚えさせられたと言っては恐縮ですが、覚える。歴史を見ましても、そういった時の権力を握っておられた天皇家の歴史、あるいはその下にあって実際に政治をつかさどった藤原家等のいわば貴族あるいは武士階級、そういう人たちの事績を習うということだったと思います。しかし、そういった貴族社会なり武家階級というものを支えた庶民、何といいますか、実際に富を生み出してきた庶民の歴史というものは、私たち学校では、戦前はほとんど習わなかったような気がいたします。もちろん大学その他ではそうばかりではなかったと思いますが、初等教育、中等教育ではそうだったろうと思います。戦後はその点は大きく改善をされたように私も承知をいたしております力そういう意味で高松塚古墳あるいはこれからマルコ山古墳を発掘調査してどのようなすぐれたものが出るか私も期待をいたしておりますけれども、そういうものも大切ですが、より重要なのは、そういった社会を支えた、実際に労働に従事してきた庶民の歴史が大切にされなければならぬし、またそういう人たちが残した遺跡というものを大切にするということが現代の日本にとっては私はより重要ではないかという気が実はいたすのであります。そういう意味から、ぜひこの日高遺跡の保存については文部省、文化庁としてできる限りの手を打っていただきたい。この指定もそうでしょう。また後でお伺いいたしますが、保存のための必要な費用の問題もございましょう。これらの問題についてできるだけの努力をしていただきたい、かように思うのですが、大臣としてのお考えを承っておきましょう。
  173. 砂田重民

    砂田国務大臣 全く同感でございます。いま先生御指摘になりましたように、山口委員も私も戦前の教育を受けて育ってまいりました。昔のああいう時代と今日の民主社会を両方知っているわけでございます。私はそれぞれどちらにも意義があると思うのです。そういう事実をわれわれは承知していかなければいけない。そうかといって高松塚がいわば専制君主時代といいますか、貴族の、特権階級の時代であったからそれは値打ちがないとも思いません。しかし庶民の残した文化というものも重要でございます。これは洋の東西を問わず同じだと思うのです。宮廷お抱えの作曲家がつくった音楽が、今日宮廷お抱えの作曲家がつくった音楽だからといってけしからぬとは言われない、いまは庶民のものになっているわけでございますから。同じように重要なもの、そういう考え方で日高遺跡についても十分その意義を尊重してまいりたいと思います。
  174. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 吉田さんですか、道路公団の理事さんにお尋ねしたいと思うのです。  ここに関越自動車道を建設する予定で道路公団としては用地の買収をなされて、現在工事を進めておいでになります。通常の道路建設ということになりますとこの遺跡が全く道路の下に埋まってしまうという形になるわけでございますが、犬丸文化庁長官も現地を視察され、また道路公団の役員の皆さんとも御相談をされて、これが保存のために当該地域を高架にするというようなことで、この遺跡については破壊することのないように、宗全に保存できるようにいま鋭意御努力をいただいているということをお伺いしているわけでございますが、道路公団としてこの貴重な日高遺跡を保存するためにいかような措置をおとりになるのかお伺いいたしたいと思います。
  175. 吉田喜市

    ○吉田参考人 日高遺跡につきまして、ここになぜ関越自動車道の路線が入っているかというふうな過去の経緯と、それから現況並びに今後の考え方ということについて御説明を申し上げたいと思います。  私たち、この関越自動車道は建設大臣から四十五年六月に施工命令をいただいたわけでございます。それで路線をどこに入れるかということについて鋭意現地を踏査し、調査をいたしました。その段階において県の教育委員会の方々とも埋蔵文化財の分布調査、一体どこに包蔵地があるんだということも協議して、その結果ほぼ現在の路線を決めたわけでございまして、この路線は四十六年八月に路線発表をいたしております。したがいましていまお話のある個所は、この路線が群馬県高崎市の日高地区で国鉄上越線と交差する個所にたしかあるわけでございまして、それで、ここの個所に文化財があるということは前々から予知されていたわけでございます。しからばそこの措置をどうするかということについても県の教育委員会と事前に打ち合わした結果、四十七年には記録保存をいたしましょう、記録保存の調査をしましょう、そのためにひとつ発掘をさせていただきたい、かようなことで発掘調査を県の教育委員会にお願いした。現在発掘調査は五十一年、五十二年と二年やっておるわけでございまして、五十一年には約一万平米、五十二年には約二万平米、お金にいたしまして約四千四百万円ぐらい現在使っております。なお残存地がございまして、これを五十三年にも調査していただく形になろうかと思うわけでございます。  一方、私たちの関越自動車道につきましては、いま申しました、この個所については記録保存するんだということが前提でございましたために、現在練馬から東松山まで完成しておりますが、この東松山から前橋までを五十五年度中に供用を開始する、こういうふうな予定がございますので、それで昨年七月この個所の工事に着手したわけでございます。それは当然いまの発掘調査と並行して工事にかかった、かような形で、現在工事の進捗状況は約二二%程度の進捗を示しております。なお、現在調査していただいておりますこの遺跡の区間と申しましょうか、二百二十メートルの区間は工事にかかっていない、未着工である、こういうふうな形であります。  一方、埋蔵物の発掘調査でございますが、まだ調査中でございますが、ことしの二月に調査の中間報告ということで県の教育委員会から、この遺跡は非常に重要なものだということを前提に県の教育長から現地で工事を担当しております東京第二建設局長あてに協議の申し入れ書が参りました。そのうちの主要なことは、遺跡の南側部分については重要な遺跡であるため国の指定史跡として文化庁に申請するので、道路敷のうち上越線の南側の市道までを盛り土以外の工法で検討願いたい、かような申し入れを受けております。これに基づきまして私たちは道路構造の変更を検討しているのがいまの段階でございます。  それで問題は、ここの遺跡の保存の範囲が一体どの範囲であるかの確認がまず一つ必要であろうかと思います。それからもう一つ、先生御案内だと思いますが、この道路に沿って側道が入っております。この側道を今後どういうふうに扱っていくか、どうするか、こういうことについてやはり地元の関係者との再協議の必要があろうかと思います。そういうふうなことを踏まえまして、私たちは、文化庁の御指導のもとで、県の教育委員会と十分協議をして道路構造の変更ということについて検討してまいりたい、かように考えております。
  176. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 県の教育委員会なり文化庁と協議をして、すぐれた価値を持つこの遺跡の保存についてひとつ十分な対処をいただきますように強くお願いを申し上げておきます。  そこで文化庁長官にお尋ねしたいのですが、問題は、遺跡の重要な部分が道路公団の買収した用地の中にかなり入っておるわけでございます。しかし買収した地域から外れて保存しなければならぬ部分があるわけです。特に集落の跡は道路公団の用地買収をいたしました地域とは違って、いわば民有地になっておるわけです。大体遺跡として保存をする必要のある面積が七万五千平米くらいだと、こう言われておるわけですが、道路公団が買収いたしました用地は、そのうち二万五千平米程度でございまして、五万平米は、結局民有地にかかっているわけです。したがいまして、日高遺跡を完全に保存するためには、この用地を自治体が買収をして、いまのあの地域の地価にいたしまして約十億円くらいかかるだろう、こう推測をされておりますが、この用地をやはり公の団体で支度をする必要がまず何よりもあるだろうと思うのです。史跡に国が指定いたしました場合には、地方自治体がこの用地を買収するに際しましては、当然国の補助があることになっておりますが、大体八割だというふうに承っておりますが、そのような補助について、これからの問題だとは思いますけれども文部省なり文化庁は、誠意を持って対処せられるお気持ちがありますか。それをまずお伺いしておきましょう。
  177. 砂田重民

    砂田国務大臣 弥生時代の集落が、おっしゃるような場所にございますので、民有地のままの保存はむずかしいと思いますから、やはり高崎市でこれは買収していただくのがいいんじゃないか。その場合には、当然私どもは、補助対象にしてまいるつもりにしております。
  178. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 八割が補助ということになりますと、二割が自治体の負担ということになりますが、もう砂田さんも御存じのように、現在国の財政も大変ですけれども、地方自治体の財政というものも同じように非常に苦しい状態にあることはよく御存じだろうと思います。私も長い間地方行政をやってまいりまして、その点はよくわかっているつもりでございますが、そうなりますと、やはり自治体とすれば、一般財源二億を投入するということは、なかなか大変なことなんですね。これは、文部省にお聞きするのではなくて、当然自治省にこれから話はしなければいかぬと思いますが、そういった起債等々で、他の一般財源をやはり国が見るということも私は必要だと思います。そういう点では、文部省として補助を出されるということになれば、当然自治省も同じような形で物を見なければならぬと思いますが、その際は、やはり文部省としても同じ官庁同士として自治省に当然働きかけていただきたいと思いますが、いかがですか。
  179. 砂田重民

    砂田国務大臣 当然自治省にも連絡をとりまして、両省で一緒になって、ひとつ検討いたします。
  180. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 同時に、用地を買収しただけでは、これはやはりいかぬわけでございまして、できればあの地域を史跡公園というような形で、十分一般の人たちがあの貴重な遺跡を見られるような施設をするということは、当然私は考えなければならないと思います。もちろん自治体にとってはなかなか大変なことだと思います。国なり県なりが、これから真剣に考えるべき課題だと思うのですが、そういった保存整備事業についても、国の補助制度があるというふうに承っております。この場合は五割というようなことだそうですけれども、そういったものについてもこれからの課題だとは思いますが、文部省として検討する御用意がございますか。
  181. 砂田重民

    砂田国務大臣 これだけ貴重な遺跡でございますから、また、いまの土地の所有者から高崎市が買収なさるのにも少し時間がかかるのじゃないかと思うのです。そのことも、私どもも初めから理解をしてかかりまして、史跡公園というような高崎市のお考え方が出てくるだろうと思いますので、高崎市ともよくこれから御相談をいたしながら、できるだけの御援助を申し上げたい、かように考えます。
  182. 山口鶴男

    山口(鶴)分科員 あそこでは水田のあぜ道に八個の足跡も発見をされた。子供用のげたなども見つかった。さらに土器その他さまざまの弥生式時代の埋蔵文化財も発見せられておるというふうに伺っております。したがいまして、先ほど申し上げましたけれども、登呂遺跡は文部省の努力によって、現在あのような形で保存されています。幸か不幸か、浅間山のあの大噴火によりまして火山灰土があそこに堆積いたしましたために、いわば奇跡的にあのようなよい保存状態で発見された貴重な遺跡でもあります。どうかひとつこれらの点を十分勘案をいただきまして、道路公団におきましても、この貴重な遺跡が損なわれないような御努力を今後ともお願いをいたしますと同時に、砂田文部大臣、犬丸文化庁長官、ひとつ文部省、文化庁挙げて、登呂遺跡にもまさるとも劣らぬこの遺跡が十分な保存の状態になりますように、また、国民の人たちが十分それを見て当時をしのぶことができますように御努力をお願いいたしまして、最後に、文部大臣文化庁長官としてのお考え方があれば、お伺いいたしまして、質問を終わっておきたいと思います。
  183. 砂田重民

    砂田国務大臣 高崎市もいろいろ大変な御努力をなさらなければなりません。私どもにはよくわかりますので、大変貴重な遺跡でございますから、関係官庁とも積極的に検討を重ねながら、御協力をしてまいります。
  184. 犬丸直

    ○犬丸(直)政府委員 いま大臣からお答え申し上げたとおりでございまして、文化庁といたしましても、大変貴重な遺跡でございますので、調査をする、それから公有化を図る、それからその後の整備をする、大体そういう頂序でこういうものは進展してまいるわけでございます。かなり時間のかかる大変な仕事になろうかと思いますけれども、精いっぱい努力いたしたいと思っております。
  185. 正示啓次郎

    ○正示主査 続いて、中村重光君。     〔主査退席、片岡主査代理着席〕
  186. 中村重光

    中村(重)分科員 この間、分科会でしたか予算委員会の本委員会であったか、教研集会の問題について文部大臣が、評価するというお答えといいますか、そういう表明をしていらした。私は、砂田文部大臣を非常によく、長く存じ上げている。お人柄も承知をしているわけですが、まさしく文部大臣にふさわしい発言であるというように感じました。正直に言って、イデオロギーということではなくて、敬意を表したわけです。やはり何と言っても、最近の教育の荒廃、先ほどもここで議論がなされておりましたが、原因はいろいろあるだろうと思うのです。だがしかし、やはり国と教師集団の不信感といったことが、学校教育環境を悪くしたり、あるいはそのことが、やはり学校教育家庭教育というものをどこで区切りをすることができるのか、なかなかむずかしいとおっしゃっておられましたが、やはり家庭教育の面にも影響していくだろうし、社会全体の問題にもなるように私は思います。したがって、現場で教育をしておられる教師あるいは教師集団、そうした人たちのいろいろな行動といったものがよくないんだ、悪いことだというようなことできめつけるのではなくて、やはり意見に対しては耳を傾けて、そうしてどのようなことをやっているかということに対しても、食わずぎらいではなくして、やはりそれを積極的に知るように努めていくということでなければいけないのだというように感じるわけです。そういった点からいたしまして、今後教研集会のあり方ということに対しましてもさらに把握に努めていかれる必要がありましょうが、私は何回か集会をのぞきました。この間も私どもの長崎で平和教育の集会があり、その集会にある政党の代表が行ったところが、入れないのです。政治抜きですと言う。それで、学者であるとか文化人であるとかそういった人たち意見だけを聞くというようなやり方、その平和教育の中身に対しましてもいろいろ議論はあると私は思うのです。しかし、真摯な姿で、民主教育を守っていくとか、子供にわかりやすい教育、豊かな子供を育てていくという点から、みずからのやっていることに対しても反省したり、さらに国のやっていることに対してもその中身を知る、そしてそれに対して意見や批判をするところはする、そういったようなことが当然なければならぬというように私は考えるのです。  そこで、教研集会に対しましても、いまは年休扱いということで、国はこれに対して協力の姿勢を示していないわけですけれども、そうではなくて、可能な限りと申しますか、可能な範囲と申しますか、やはりこれに協力をしていくという姿勢も当然あってしかるべきだというように感じるわけです。  そうした点と、私は一月二十四日の代表質問でも申し上げましたが、先ほど大臣が教師と子供の触れ合い、子供同士の触れ合いということも大切だとおっしゃっておられましたが、そのとおりなんですね。ところが、やはり教師と子供と申しますか、生徒の触れ合いということになってまいりますと、いまのような四十五名、お答えになったように過疎地帯等がありますから平均は下がってはおりますけれども、なお一学級の生徒数が非常に多いということは事実ですから、たくさんの子供を教師が一人で受け持つということになってまいりますと、どうしても触れ合いという点が薄くなる。血の通った教育というものがしにくい。子供一人一人の性格を先生が把握をするということはもう大変ですからね。ですから、やはり学級編制の再検討ということもこの際やってみる必要があるのではないか。中身については、時間の関係もありますからもうお答えの必要はございません、本会議でも伺いましたから。そういう再検討の必要というものをお感じになるかどうかという点にしぼってお答えいただいて結構でございます。以上、数点に対して、大臣の率直な御見解を伺っておきたいと思います。
  187. 砂田重民

    砂田国務大臣 最後にお話のございました学級編制の問題でありますけれども、率直に私の考えを申し上げますが、教育というものが教師と生徒と一対一で行われれば大変効果が上がるものだ、極端な議論をすれば私はそう思います。私自身の子供の時分の体験からしてもそう思います。ですけれども、やはり財政を無視してかかるわけにはまいらない現実問題を私どもは抱えております。もう長くは申しませんが、一万七千八百人という長期計画教員の定数の改善を五十三年度で終わりますので、悉皆調査を全国にわたって行います。過疎地帯では最低限度の先生も、ただ算術計算だけでは先生は要らないということにもなるわけですし、また過密地帯では正反対の状態が出ておりますので、悉皆調査を行いますその機会に検討をさせていただきたい、かように考えます。  教研集会の問題が冒頭にお話がございましたけれども、私は改めて先生にお答えをしておきたいと思いますが、文部省は教研集会を認めておりません。それは教研集会というものが教育内容についての先生方の研修だけにとどまっておりましたら別でございますけれども、政治的な意図もまたお持ちの集会でございます。したがって、教育には、何党の御主張であろうと、政治には関与していただきたくない。政治からの教育の中立性を守らなければなりません責務を文部大臣は負っておりますから、そういう意味で教研集会を認めるわけにはまいりません。  ですけれども、新聞で報道されておりますような教研集会の、分科会というのか何というのか小さく分かれていろいろ御検討、御研修になりましたその内容の中には、先生方の素直に評価をしなければならない御意見もございますので、私はそういう意味合いから、先生方御自身のいろいろなお考え方については新聞報道を拝見いたしましたので、これを素直に評価をいたします。かようにお答えをしたわけでございますから、基本的な文部大臣姿勢をどうぞ御理解いただきたいと思うのでございます。
  188. 中村重光

    中村(重)分科員 議論をする時間はないのですがね、日教組とか、それの下部組織である県教組とか、あるいは総支部とかいう組織があるのですが、そうした団体の大会といったようなところでは、大臣がいまお答えになったようなことを議論したりあるいは決定したりするかもしれません。しかし、教研集会に対してもし大臣がいまお答えのような考え方をお持ちになっていらっしゃるとすれば、私は偏見だと思うのです。海部前文部大臣ともこのことは、局長よく御存じだけれども、同じような意味の答えがあったのです。それは間違いだ。だから外からだけながめて、こうあるんだと言って一つの主観をもってきめつけることはいけない、その中身を知りなさい、こう私は申し上げたことがあるのです。私の知る限り、教研集会で特定政党の批判をしたりあるいは特定政党を支持したり、そういう議論はありませんよ。教育のあり方について真剣に研修をやっていますよ。そういう偏見だけは改められないといけないと私は思います。そのことだけは申し上げておきたいのです。いや、こういうことも聞いたと言って、局長はどこかの情報でおっしゃるかもしれないのですけれども、時間があればじっくり議論してみたいと思いますが、ありません。その偏見だけは改められて、そして、尊重ということは協力にもつながっていくのでなければ、文部大臣尊重とは何かと言って尊重の解説を加えていかなければならぬ。その中で、ある部分的な発言については尊重いたします。この意見については反対でございますと解説を加えていかないと、むしろ混乱をするという形になりかねないというように思います。ですから、そうではなくて、本当に知るということです。そして間違いのない判断をするということ、そのことをひとつ御提言申し上げておきたいと思います。  それから、私学振興に関して幼稚園から大学までのことについて触れたいのですが、時間がございませんから幼稚園の問題にしぼって申し上げます。  私立幼稚園の経営というのは非常に困難を来しておるし、父兄の負担も非常に大きいと思うのです。五十三年度予算で私学振興の中身としては、幼稚園の場合は就園奨励金を、本会議でもお答えになったようなことで若干改善をしておられるということは、私も認めるわけなんです。けれども、まだ格差が非常に大きいと思うのですが、五十三年度に公私立の父兄負担の格差がどの程度縮まることになるのか、そのことをひとつ伺いたいと思います。
  189. 三角哲生

    ○三角政府委員 御質問の五十二年度の父兄負担の問題でございますが、いわゆる保育料についての全国的な調査の状況がまだ出ておりませんために的確な……(中村(重)分科員「五十二年度はどうですか」と呼ぶ)五十二年度につきましては、保育料については公立、私立の差額が、年額で全国平均約八万円でございます。入園料についての差額は約三万円になっておりますが、初年度として、両方合わせますと約十一万二千円という差額になっております。
  190. 中村重光

    中村(重)分科員 その数字は少し違っているのではないかと思うのです。公立の場合は二万円程度で私立の場合は十二万ないし十三万くらいということですから、格差が十万くらいあるのですね。これは大変なことだと思うのです。  それから就園奨励金にいたしましても、住民税の免税とか所得割のない者とか、所得割も、所得割の額によって就園奨励金が決まっている。これもサラリーマンの場合は源泉徴収ですから、税金はぱっとわかってしまうのですね。ところが、そうでない業種のことを私はここで挙げては申し上げませんが、申告所得と実質所得というものが実際には違うのですね。申告所得はみずからがこうだと思って申告する。源泉徴収の場合はぴしっと引かれる。実質所得はサラリーマンの方が少ないのにもかかわらず、住民税の場合においての額が減税にならないというふうな形もありまして就園奨励金がもらえないとか、そういう不公平なあり方が現実にあるのです。これはサラリーマンの家庭には非常な不満が実はあるわけですね。ですから、これはなかなかむずかしい問題で、税を基本にしてやっているものだから簡単にできる問題じゃありませんけれども、そういう実態も踏まえた創意工夫、そういうような不満が起こらないような配慮というものがあるべきだというように私は思いますから、その点を申し上げておきたいのです。  それから、地方自治体なんかで就園奨励金というので助成をするわけです。ところが、それは子供対象に出すわけでしょう。すると、今度、園はその配分について大変な手数がかかるのです。だから園は喜ばないのです。園としては負担が過重になります。子供はいいでしょうけれども。園の経営が苦しいと結局それは子供にはね返ってくる、父兄負担にはね返ってくることになりますから、そういう点も十分勘案して、実情を踏まえながら経常経費というものをできるだけ助成をしていく必要があるのではないかという感じがいたします。その点をどうお考えになるかという点と、それからこの際、就園奨励金というのは全園児というか全世帯にまで支給をするように踏み切る意思はお持ちになっていらっしゃらないのかどうか、これまた財源の関係でなかなかそうはいかないということでしょうが、その点についてお答えをしてください。
  191. 三角哲生

    ○三角政府委員 御指摘の経常費助成費補助金につきましては、昭和五十三年度分について、前年度に比べて約五〇%増を図りまして百十六億円を計上しておる次第でございます。それで、交付税措置と合わせまして園児一人当たりの金額として、本年度は概算約二万九千円余りでございましたものを、明年度は、推計値でございますが約三万六千円弱というふうに充実を図っておる次第でございます。
  192. 砂田重民

    砂田国務大臣 就園奨励費の五十三年度予算の改善いたしました中身はもう御承知であろうと思いますが、いま中村委員御指摘のその所得の問題があるものでございますから、実は昨年までは四つに分かれておりましたのを少し変えたわけでございます。枠も変えて改善をいたしました。六十何%か増になるのですが、増のパーセンテージを言いますと大変大きいように聞こえるわけでありますけれども、もとが低いのですから大した増ではないじゃないかとおっしゃられればそれまででございますけれども、やはり六三%増というのは相当な努力をしたとおほめいただきたいと思うのでございます。
  193. 中村重光

    中村(重)分科員 評価はしませんということを言うわけにもまいりません、努力は文部省やっていらっしゃるのですからね。しかし、なおかつ、先ほど申し上げたように格差があるわけですから、その格差をもっと積極的に縮める。私学が果たしている役割りというのは大きいですよ。それだけ社会貢献度は大きいということになるわけですから、その点は父兄の負担ということを十分考えながら教育を奨励していき、教育効果をさらに上げさせるという点から、今後積極的な取り組みをやっていただきたいということを強く要請をしておきたいと思います。  障害児教育のことにも触れたいのですが、五十四年四月一日から養護学校の義務化ということになるのですけれども、私が理解に苦しんでいるのは、障害の種別によって分類教育をするということ、これはそれなりの理由というものを研究の結果お決めになったのでしょうけれども、どうも閉鎖的になるのではないかという気がいたします。やはり障害児教育ほど開放的な教育をしなければなりませんから、可能な限り普通学校に入れる。普通学校の特殊学級の学級編制もできるだけ弾力的にやるということにしませんと、どうしても養護学校へという形になってきますからね。その点は配慮していただきたいということを要請しておきたいと思います。  先ほどちょっと触れたのですけれども、平和教育の重要性、これは当然ですが、最近非常に高まってきたことは評価すべきことだと思います。地教委なんかでも平和教育に対する一つの方針というものをお出しになったのですが、たとえば長崎の場合は、長崎の特殊性というのは被爆体験が重要な点であると私は思う。その場合に原爆を平和教育の原点に据える、そして核廃絶への平和運動を教えていく。そういうことからいたしますと、原爆読本などの自主教材を使って平和教育を実施しているというような現状が適当でないという意見もあるわけですが、私は、何人といえども原爆を肯定する者はいないと思うのです。ところが、どうも原爆を平和教育の原点に据えると特定の国を敵視することになっていくとか、平和というものは平和の希求というものが基本でなければならぬとかといういろいろな意見もある。私は、この問題は、イデオロギーではなくて、原爆というものを平和教育の中に積極的に取り入れていく、そして再びあのような悲惨な洗礼というものを今後受けない、そういうことでなければいけないと思うのですが、それらの点に対する考え方を伺ってみたいと思います。
  194. 砂田重民

    砂田国務大臣 平和教育の大事なことは、もう議論する余地はございません。日本国の憲法、日本国民こぞっての平和を望む気持ち、これからいたしまして、平和教育を徹底していかなければなりませんことは当然のことでございます。いま御指摘の、世界じゅうで被爆経験のあるただ一つの国、そういう経験を国際社会の中では有効に利用をして世界の平和探求のために努力をしていかなければならぬことは当然でございますけれども、原爆被爆経験というものを教材に取り入れるときの技術的な困難さというものがあろうかと思います。それだけになかなかむずかしい問題でございまして、検討をさせていただきたい。教材としてこれを導入する場合に、政治に関係することなしに原爆経験、被爆経験というものをどう教育の中に取り入れていくかという技術面のことで大変むずかしいことでございますので、勉強させていただきたいと思います。
  195. 中村重光

    中村(重)分科員 平和教育の中に原爆を据えるということ、基本とすべきであるということは、御否定になりませんでしたから、私は文部大臣の考え方というものをそれなりに評価をするわけです。技術的に困難だ、困難ということよりも、どう取り入れていくかということが問題だろうから十分研究するということですから、私はそのことを期待したいというように思います。原爆を平和教育の原点に据えるといったようなことは、他国を敵視したりする、そういうようなことには決してならないのです。原爆被爆者といえども、アメリカがわれわれを殺したのだ、われわれを傷つけたのだというような言い方は、いまはもうしないのです。そういうことではなくて、ともかく国がこうしてほしいということを言っているのです。もういまは、特定の国を敵視ではなくて、世界人類の上にそういう不幸をもたらしてはいけない、原爆というのは貴重な一つの体験としてどうあらねばならぬかということで、教育の中にこれを取り入れていくべきであるという真摯な主張ですから、これも教師集団なんかが言い出したのだからよくないことだとか悪いことだとか、これも特定のイデオロギーだというような決めつけということは間違いである。しかし、いま文部大臣のお答えですと、そういうことではないということで、技術的な問題であるということですから、私はそのとおりに理解をします。長崎ということになってくると、これは地教委の中でいろいろ話し合うことでしょうから、むしろ文部省は積極的に、いま大臣が言われた技術的な問題でどうあるべきかということで、局長の方で、いまのお答えの線に沿った形で十分ひとつ指導するとか、ともに話し合う、そういうことでやっていただきたい。これまた、論争にならないようにぜひやっていただきたい。もうできるだけお互い対立しない、そこでできるだけ理解し合う、こういうことでないといけないと思います。人事の問題もあれだけ対立でした。しかし、本当に虚心坦懐に話し合った。そして、完全に理解し合っていませんけれども、お互い話し合いをする中で、お互いに歩み寄るといいますか、妥協と申しますか、理解し合うということになりますか、いい傾向が生まれてきているということを私は申し上げたいというように思います。  もう時間が参りましたからこれで終わりますが、先ほど障害児教育の問題について私の考え方ということを申し上げましたが、もうちょっと時間がありますから、どなたかお答えをひとつ聞かせていただけますか。
  196. 砂田重民

    砂田国務大臣 五十四年度から障害児に養護学校というものが義務化されるわけでございます。各方面の御意見をいろいろ承りながら準備を慎重にやっているところでありますけれども、養護学校の義務化ということは、義務というのはやはり原則的に二つあると思うのです。一つは養護学校を設立する設置者の立場の義務、養護学校に障害のあるお子様を就学させる義務、二つの義務があると私どもは考えておるわけでございます。  ただ、その養護学校に障害があるお子様を収容いたしますについて、原則はいま申し上げた原則でございますけれども、しかし、レアケースとしては、いますでに普通の学校へ通っている障害のあるお子様もあるわけでございます。すべての市町村をカバーするところのそれぞれの地域社会に就学指導委員会をつくっていっているわけでございまして、その就学指導委員会には、お医者様もおられますし、そういった教育に長年携わってきた方もおられますし、心理学に造詣の深い方もおられるわけでございますから、こういう専門家で構成されました就学指導委員会がケース・バイ・ケースで判断をして、その障害の種類、程度、そして現在の実情、お父様、お母様の御意見学校側の意見、そういうものをやはり総合判断をして、どこに進まれるのがそのお子様にとって一番幸せであるかという立場から判断をしていただく。その判断に基づいて教育委員会が決定をしてくださることを私は期待をいたしておるわけでございます。
  197. 中村重光

    中村(重)分科員 女子学校事務職員の出産に際しての補助学校事務職員の確保という点、これは御承知のとおり立法として提案され、参議院で先議して、恐らく三月半ばか三月中には衆議院の方へ回るのではないかというように伺っているわけですが、教員教育活動と相まって学校運営に有機的な、一体的な役割りというのを事務職員は果たすわけです。ですから、これを女子教職員と区別をするということ自体、当初から問題があったというように思うのです。政府として、文部省として、これが成立をするように積極的に推進をしていただきたいということを私は強く希望するのですが、この点いかがですか。
  198. 砂田重民

    砂田国務大臣 同法案は参議院で議員立法で継続審議になっておりますので、参議院の文教委員会等でよく国会側の御意見を承りながら対処してまいりたいと思います。
  199. 片岡清一

    ○片岡主査代理 次に、寺前巖君。
  200. 寺前巖

    寺前分科員 長時間御苦労さんでございます。  私は、きょうはスポーツ、特にプロの分野の問題についてお聞きをしたいと思うのです。  昭和四十七年に保健体育審議会で、体育、スポーツは、強健な心身発達を促し、人間性を豊かにするとともに、健康で文化的な生活を営む上においてきわめて重要な役割りを果たすものである、さらに、体育、スポーツを振興し、人間尊重を基盤とした健康な社会を建設することこそ今後の日本の重要な課題である、こうまで言い切ったスポーツです。このスポーツでプロの諸君たちが果たす役割りというのは、相撲の分野を見ても、あるいは野球の分野を見ても、あるいはボクシングの分野を見ても、やはり大きな影響を与えると思います。  たとえば野球について言うと、直接の観客だけでも一千万人と言われていますし、テレビその他を通じて見るならば数千万人という影響も与えるし、小学校なりあるいは学校へ行かない子供たちにしても野球の選手の服装をして歩いているという姿からもうかがうことができると思います。それだけに私は、プロの分野の問題について国がどういうふうに位置づけてこれに対処していくのかということは、非常に重要な課題の一つであろうというふうに思います。  ところで、昭和四十五年の五月八日に衆議院の文教委員会におきまして、いわゆる黒い霧事件というものが発生し、そのときにいろいろ論議になりました。いま振り返って当時の議事録を読ませていただいて、当時の文部大臣が言っておられる言葉を改めて大臣にお聞きしたいと思うのです。  ここでこういうことを言っておられます。「この不祥事を契機といたしまして、先ほど申しますように、災いを転じて福となすということをしていただきたい。コミッショナーの側におきましても、また日本野球機構におきましてもやっていただきたいと思いますし、私どもも、いままで文部省所管であるのかそうでないのかというようなことすら実ははっきりしていなかったというようなことでございますが、私は、今度の国会を通じて、この問題はやはり私の所管であるということをはっきり申し上げておるわけでございまして、またその責任の一端を痛感しておるわけでございます。」こういうふうに、プロ野球の問題について文部大臣の所管として痛感をしているということをおっしゃっております。そしてしかも、この中においてこういうことも言われております。云云とありまして、「非常に短時間の生命しかないということがあって、その期間中は相当高額の所得をもらっているけれども、その後の生活の保障というものはないというようなことも、一面においてある。あるいは、そういうようなことで非常に生活をくずしてしまうおそれがあるのではないか。これは相当意志が強固で、あるいは道徳堅固な人でありましても、それに流されるということは、人間としてあり得ることだと私は思うのです。」こういうふうに、黒い霧問題に対する一面の重要な課題としてその後の生活の保障というものがないという問題を、この段階において文部大臣指摘をしておられるわけであります。  最初に私は、現大臣に、当時明らかにされたこの姿勢を堅持されるのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  201. 砂田重民

    砂田国務大臣 プロ野球が多くの国民に非常な関心を持たれていて、その国民の皆さんが、大ぜいの方か、みずから体験するスポーツではありませんけれども、広い意味でスポーツ振興、国民全体のスポーツ振興という立場からプロスポーツに大きな関心を持っておりますことは私も同様でございます。ただ、プロ野球はそれぞれ御承知のように営業として行っておられますので、その営業活動につきましては、文部省が直接関与するものではございません。
  202. 寺前巖

    寺前分科員 私がお聞きをしているのは、関与せよとかいうことを言っているわけじゃなくして、四十五年の当時に指摘をされた大臣としての立場を堅持されるか、あるいはこれを変更するという立場に立たれるか、この点をまず最初にお聞きをしたいわけです。
  203. 砂田重民

    砂田国務大臣 その立場はとってまいります。
  204. 寺前巖

    寺前分科員 そこで、私は引き続いて内容についてお聞きをしたいと思うのですが、委員長にお願いしたいのですが、時間が短いことでございますので、大臣に資料をお渡しして、これに基づいてやりたいと思います。お許しをいただきたいと思います。  ただいま大臣に私は、プロ野球の選手の諸君がどういう生活に入っているのかということについての一端を、最近のスポーツニッポンに載っている資料とかあるいはサンデー毎日に載っている資料とか、そういうものを使わしていただいて討議をしたいというふうに思います。  いま大臣にお渡ししたその資料を見ていただきますと、プロ野球の選手がどういう実態におるのかということがわかると思うのです。一般新聞紙上などで私たちがプロ野球の選手を云々するというとすぐに、たとえば江川選手が契約金が一億であったとか二億であったとか、そういうような話がいろいろ取りざたされます。しかし、実際にプロ野球界の選手会の幹部の方々にお話を聞いてみると、契約金として入るのが三百万とか四百万というのが多くの人たちの中にあるようです。表面華々しく出ている人というのはきわめて限られた人なんだということを言っております。しかも、それでは毎月の生活実態はどういう状況にありますかということを聞くと、自分らのことだから言いにくい、あるいはお互いに言わないことになっているということです。ただ、こういうふうに新聞などに載った資料についてはどうですかと聞いてみると、大体推定されているのは間違いないというふうに言えると思います。というのがお答えです。  私は、そういう推定値の資料一つをいま大臣にお見せしたわけですが、これを見ますと、二百万以下の年額の収入の人というのが、一番右のところにパーセントを書いておきましたが、五八%、六割近くの人が二百万以下の生活費で毎月の活動をしている。プロ野球の選手と言えば、それは労働者で言うならば熟練労働者だ、きわめて高い水準の人だ、しかも寿命というのは非常に短いということを、さきの国会でも文部大臣が言っているところであります。とすると、社会的に見て、宣伝されている表面と中身とが非常に違う。  ここで私は、黒い霧問題のときに問題になったように、その期間中は相当高額の所得をもらっているけれどもやめた後が大変だと言われたけれども、その期間中も低い状況であるということでは、国民の側から言うたらあこがれの的である人たちが、そういうことで何か違う事件の方にでも発展していってはこれはまた大変な問題になるということを、改めてこの生活実態から感じざるを得ない。  しかも、その資料の裏の面を見ていただいたらおわかりになりますが、野球協約の第七条によって、みずからがお金を出し合って年金制度というのをおつくりになっております。その年金制度を見ましても、そこに書かれておりますように、五十歳になって初めて、その十年間活動してきた人たちが年額二十八万八千円だ。十五年以上活動した人がやっと三十六万円、十二で割ったら月三万円だ。わずかなお金しか五十歳になってからの話としてやっとそれが、みずからが出し合っている保障の中で存在している。これではやはり、このわずかな期間に全力を注いできた、活動しておった野球の選手にすれば、その後の姿というのはやはり不安にならざるを得ないではないか。  しかも、その五十歳までの間に一体何があるのだろうか。野球の選手が、それではその能力を発揮してしかるべきところで活動する条件というのは、果たして保障されるのだろうか。最近、ノンプロの分野で仕事をすることがやっと話し合いでなったようですけれども、学生その他の分野では、いろいろな歴史的な諸条件もあって、できない状況にある。そうすると、そこに待っているものは一体何だろうか。やはりこの分野においても、日常生活の分野あるいはやめられた後の分野、こういうのをどのように保障していくのかということは非常に大きな問題だろうというふうに言わざるを得ない。それはプロですから、それはあなたたちの契約の話だから私は関知しないということだけでは済まない要素がそこではあるのじゃないだろうか。そこで選手の皆さん方も、せめて何とかしなければならないということで、年金の改善とかあるいは別に社団法人をつくってやっていきたいとか、いろいろな問題提起をお考えになっているというのは、私はそこにあると思うのです。  私は、そういう選手の皆さん方が積極的に社会的使命を背負って立っていこうという立場に立っておられるというこの声に、それなりに文部大臣としても、四十五年の黒い霧事件のときのことを考えるならば、積極的に打って出られてもしかるべきではないかというふうに感ずるわけです。文部省として、あるいは文部大臣として、いままでにやってこられたことは一体何だっただろうか、これから何をしなければならぬとお考えになっているのだろうか、そこをちょっとお聞きをしたいと思うのです。
  205. 砂田重民

    砂田国務大臣 プロ野球は広く国民に親しまれております国民娯楽でありまして、それが健全に発展することを私も望むものでございます。したがって、選手が安心してプレーに専念できる環境がつくられてまいりますことが望ましいと考えます。  しかし一方、プロ野球というものは一面営利事業活動として行われているところから、野球選手の待遇改善等については各球団内部の自主的な努力によって行われるべきものと考えます。ただ、私どもの所管いたします社団法人日本野球機構というのがございます。日本野球機構を通じてプロ野球選手の生活実態について私ども承知はいたしておるところでございますが、もう寺前委員は、私に資料を下さるくらいでございますから、内容はよく御存じであろうと思うのです。御指摘のとおりに、非常に華やかに見えますけれども、それは一部のきわめて優秀な技能を持った選手に限られている。全体的に見れば決してそんなに華やかな、大変多額な給与を受けたスポーツの世界ではない。率直に申し上げますならば、大半の選手にとってはまさにハングリースポーツに属する選手生活である、こういうふうに私は見ているわけでございます。ただ、先ほども申し上げましたけれども、スポーツ振興法にもプロスポーツというものは除かれておりまして、私どもといたしましては、こういった改善がプロ野球の営業面でそれぞれの立場の努力によってされていくことが望ましい、さように期待をするものでございます。
  206. 寺前巖

    寺前分科員 ところで、昨年の七月二十五日の新聞を見ますと、各紙とも取り上げている問題があります。それは二十四日に大阪市北区の阪急百貨店特別食堂で十球団の代表十六人が参加して、パ・リーグの二シーズン制度廃止を決議して、東京で開かれる特別委員会でパ・リーグに申し入れることにするという発表と同時に、選手会が社団法人化認可申請を六月文部省に提出したことを報告したという記事が、一斉にどの新聞にも載っております。  昨年の六月から今日まで、考えてみるともう半年以上になっております。この社団法人化の申請というのは一体どういうところにあるのだろうかということで、私は選手会の方々に聞いてみました。もちろん、子供たちのための社会活動としての少年野球教室をつくるということもやってみる、あるいは多くの人たちにチャリティーショーをやって、そして社会人としての重要な役割りを担いだいというような積極的な問題提起であると同時に、自分ら自身もまた、ここに掛金をやることを通じて退職したときに幾らかの金が持てるようにしたいのだということで出されているわけであります。この社団法人の問題は文部省の直接の所管だ。こういうふうに、せめて自分らでやれることをやりたいのだということで出されてから半年以上になっているのに、今日に至るまでもそのことに対する結論が出ていないというのは、一体どこに問題があるのだろうか。私は、本当にやり得ることはやりたいのだという選手の人たちの気持ちが尊重されるならば、なぜ積極的にこたえてあげられないのだろうか、その点についてお聞きをしたいと思うのです。
  207. 砂田重民

    砂田国務大臣 どこに問題があるかとおっしゃっても、実は設立許可申請を受け取っておりません。プロ野球の選手会が社団法人としてプロ野球選手会というものをつくりたいという希望があるということは、事務当局にプロ野球選手会の代理だと言われる某信託銀行からのお話はございました。しかし、設立の許可申請書がまだ出ていないのです。私どもといたしましては、私自身ごもっともなことだと思いますから、設立申請書が出ましたならば、社団法人の設立許可に当たって、審査基準に照らして事業内容や財政基礎等を審査いたしまして、また指導もいたすつもりでございます。その上で判断をしたいと考えます。
  208. 寺前巖

    寺前分科員 私は、選手諸君たちの期待はすべてそれだけじゃなくして、年金の改善もあれは、いろいろ事業者との間に交渉があるだろうと思います。大臣も改善されることを期待しておられるのですから、大臣もまた側面から積極的に改善されるように御援助いただきたい。いまの設立の申請が出ていないというのも、形式からいえば判こが押してないのだから出ていないのです。判こが押してないのです。ちゃんとそれも全部調べたのです。問題は、事務的にここをこうしなさいよとかいう詰めさえやってあげれば、いくところまで話はいっているのですよ。私はここで何も、事務当局が怠慢だとかいうことをあえて問題提起したいとは思いません。ですから問題は、せめて改善をしたいということを提起されたときに積極的に受け入れて、どんどん事務当局もこたえてやってほしいということを、私はここであえて大臣にお願いをしておきたいと思うのです。
  209. 砂田重民

    砂田国務大臣 私が御指導もいたしますと申し上げていることで御理解をいただきたいと思うのですが、選手が御自身でおいでになったのではなくて、代理だと言われる某信託銀行でございますから、やはりこれは、選手御自身がおいでをいただきましたならば、申請書を受け取りまして適切に判断をしたいと考えます。
  210. 寺前巖

    寺前分科員 積極的な大臣のお答えをいただきましたので、その件についてはそれだけにしておきます。  私はこの際に、これは野球に限りませんけれども、プロの社会の中にあるところのいわゆる保留権という問題ですね、たとえば野球であったら、一たんそこへ契約して球団の中に入ってしまうと、自分がやめるときになって初めて自由が生まれてくる。やめない限りはその球団に握られっ放しだ。これは私は、制度としては本当に封建的な制度だというふうに言わなければならないと思うのです。相撲の分野にも部屋制度があります。ボクシングの場合には三年契約とか何か、そういうようなこともありますけれども、私は、いずれにしたってこの保留権の問題というのは、プロスポーツ界におけるところの一つの重要な、検討しなければならない課題だと思うのですね。これはやはり、先ほどの保体審の答申ではございませんけれども人間尊重を基盤として健康を促進させていくのだというような、スポーツ全体が持っている役割り、位置から考えても、これはプロの諸君の分野においてももっと民主化が進められなければならない課題だと思うのですよ。大臣はこの点についてはどういうふうにお考えになるでしょうか。
  211. 砂田重民

    砂田国務大臣 これはやはり契約社会の契約でございますから、文部大臣がお答えをする問題ではないように私は思うのです。どこが所管をいたしますか即断いたしかねますけれども、どこが所管をするんだろうかということも検討をさせていただきたいと思います。
  212. 寺前巖

    寺前分科員 私は、行政としての話をいま提起したわけじゃないのですけれども、民主化すべき課題の一つとして検討すべきものだろうという問題提起をしたので、これはまたしかるべき場で、大臣の方も所管も含めて検討したいとおっしゃるのですから、これはこの程度にしておきたいと思うのです。  さらに、私は、せっかくの機会ですから、もっといろいろプロの問題についてもお聞きをしたいわけですけれども、今日、日本のスポーツ全体の発展のためにも、施設の分野と同時に、指導者の分野というのはやはり大きな位置を占めると思うのです。そこで、指導者の分野を考えるときに考えられる問題の一つが、せっかく社会的に積み上げられてできてきたたとえばオリンピック、たとえば世界選手権などにおけるところのりっぱなメダリストがおります。こういうメダリストを、これは社会が生み出したところの遺産であると思うのですよ、これを後継者にやはり渡していくという、こういう役割りをそういう人たちに背負ってもらう必要があるだろう、そういう保障をする必要があるだろう、私はそういう意味で、今日までこういう人たちをどう扱ってきて今度どうしようとしておられるのか、それについて聞きたいと思います。
  213. 砂田重民

    砂田国務大臣 同感です。オリンピックメダリストだけではなくて、私、文部大臣に就任いたしましてからすぐに、スポーツ功労賞という、文部省にあります制度の規定を改定をいたしまして、世界選手権に優勝した方もスポーツ功労賞の対象に加えることにいたしました。  いま御指摘の点でございますけれども、五十三年度予算で新たに、オリンピックメダリストでありますとか、世界選手権を取った人でありますとか、そういう方々を各都道府県が開催をいたします各種のスポーツ行事等に派遣をいたしまして、そういう人たちにひとつスポーツの指導をしてもらおう、そういうことで体育・スポーツ功労者の派遣指導という経費を計上をいたしております。初年度のことでございますから金額はわずかでございますけれども、オリンピックのメダリストあるいは世界選手権に優勝したような優秀な成績を残された選手の皆さん、三十名ばかりの方に委嘱をいたしまして、四十七都道府県を二回ずつひとつ行っていただこう、そういうことを考えて、やはりこういう方々の努力の積み重ねで体得されました技術その他を広く国民スポーツの場に役立たせていただく、そういう予算を五十三年度で初めて計上をいたしました。
  214. 寺前巖

    寺前分科員 より発展されることをこの分野でも期待をするわけですが、同時に、スポーツ振興法に基づいて体育指導委員という制度があります。この体育指導委員制度というものも、より発展させる方向をやはり追求してもらう必要があるのではないか。  最近、私のところに手紙が来ております。福島県の方ですが、ちょっと紹介します。   私は小さいころからのスポーツ好き。学生時代は野球、卓球、陸上、庭球などをやり、現在もソフトボール、卓球などもやっています。一九六一年のスポーツ振興法が制定されて以後、ずっと町の指導委員をやっています。ところが、県下九十六町村のうち、年間報酬三万円というのが一町、無報酬が九町村、一万円までが三割、一万円以上で三万円に満たないものが残りの町村です。わが町の指導員が出動した日数は、一昨年の場合、朝から夕方までというのが十回、午後三時から夕方までが九回ぐらいです。私の場合は、体協、審判協会、郡、県などの出動もあり年間五十回くらいになりました。そのときの年間の報酬は一万三千円。ことしから一万八千円。しかし、このうち一万円は年一回一泊の研修旅行の会費として出費、差し引くと報酬の残りはわづか数千円。出動一回あたり二百円たらずの勘定です。   もちろん指導員は一人として手当を目的としている人はいないと思います。みんなスポーツが好きだからやっているのですが、考えると余りにも低いと思います。この面だけでも改善されるなら、指導員としての寿命はもっと多くの方面で活動できるようになるでしょう。という内容のお手紙です。  私は、本当に、この指導委員を非常勤の公務員とまでスポーツ振興法で位置づけたのですから、この位置づけをより発展させるために、それにふさわしい報酬をきちんとやはり出していくということによって、よりりっぱな寿命が生きていけるようにすべきではないかと思うのですが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  215. 柳川覺治

    ○柳川政府委員 御指摘体育指導委員の待遇につきましては、交付税の方で積算をいたしておりまして、各市町村におきまして適切な報酬が支払われる、あるいは費用弁償がなされるような施策をとっておるところでございます。  体育指導委員の方々がいま四万六千の方々がおりますが、ほとんどの方々が、この指導委員の職務につきましてやりがいがあるという御回答をいただいておりますので、今後ともその待遇につきましてはさらに努力を重ねていきたいという考えでございます。
  216. 寺前巖

    寺前分科員 私の提起しているのは、本当にみんなが積極的な役割りをしておられる、その個人の役割りをしているということにとどめておいてはいかぬのじゃないか。やはりスポーツ振興法で位置づけた体育指導委員というものを、きちんと報酬を出して、そして寿命を長く、世間のために会得された能力を発揮して返してもらうというふうに位置づける必要がある。改めて大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  217. 砂田重民

    砂田国務大臣 五十二年の一月に実態調査をやっておりますけれども、全国平均で一人年額一万二千五百円の報酬と、一回当たり約千六百円の費用弁償額が支給されているわけでございます。それぞれの体育指導員の皆さんはもう口をそろえて、本当に九十何%の方がやりがいがあると言ってくださっているわけでございますから、そのお気持ちにこたえる報酬等のあり方、ひとつ研究さしていただきたいと思います。
  218. 寺前巖

    寺前分科員 時間が来ましたから、終わります。
  219. 片岡清一

    ○片岡主査代理 次は、石田幸四郎君。
  220. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 昨日、当分科会においては青少年のいわゆる非行化の問題、特に中学生のいろいろな事件がいまたくさん起こっておりますけれども、これらの問題をめぐっての話題が取り上げられて大臣の答弁もお伺いをしたわけですが、この青少年の教育過程の中で一番精神的に訓練を受けなければならない中学生の時代にそういう事件がたくさん起こることは、非常に憂うべき事態だと思うのでございますけれども、これはやはり教育の問題あるいは環境整備の問題、いろいろあると思います。いろいろな方面からこの問題を真剣にわれわれ大人が受けとめていかなければならないわけでありまして、特にこれは文部行政を担当しておられる大臣として、昨日のお話ではかなり概括的なお話しかなかったように私は受けとめておるのでございますけれども、もっとより突っ込んだ御意見をお伺いをしたい、こういうふうに思うわけでございます。  特に、教育面についてはどんなことを重視して考えておられるのか。それから、環境整備の上においてはどんな点を重視しておられるのか。あるいは、これはやはり大人責任が私は免れがたいと思うのでございますけれども、いわゆる国民全般に対してどんな点を文部大臣としては望んでおられるのか。ひとつ各般にわたってお考えがあったらお聞かせをいただきたい。
  221. 砂田重民

    砂田国務大臣 文部省といたしましては、まことに心の痛む問題でございますけれども、従来から特別活動、各教科以外の教育活動を初めといたしまして、学校教育全体におきます指導を通じて個々の生徒を十分に把握をし、教師と生徒及び生徒同士の間の好ましい人間関係の育成というところに力を置いて指導をいたしておりますが、個々の具体的なというお話でございますので、初中局長から御答弁をさせます。
  222. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 学校における非行青少年の補導という面から言えば、何といってもそれに対応する先生方が適確な姿勢子供を扱っていただかなければいけないわけでございますが、その先生に対する施策としましては、文部省では、各学校に置かれておりますところの生徒指導主事であるとかあるいはカウンセリング担当の先生であるとか、そういう方々に集まっていただきまして、直接いろいろと講習をいたしております。また各学校におけるいろいろの機能も、いろいろの学校で具体的にこういうことをやっておるというような事例のお話もございましたけれども、全国的に見ますると、学校によってはかなり全校的な協力によって生徒指導の効果を上げている学校もあるわけでございます。そういう具体的効果というものを資料として作成いたしまして、各学校へ配るというようなことをいたしておるわけでございます。  そこで今度は、それを受けた各学校の先生方に、具体的にどう対応していただけるかという点であります。先ほども申し上げましたけれども、私は、現在の各学校を見ました場合に、今日の青少年の非行化というものがかなり人数が多くなってきておりまして、それぞれの学校でも、異なる学年あるいは異なるクラスにわたってグループをつくって、いろいろ非行に走るというようなこともございますので、一人一人の先生が自分の担当のところだけを守っておったのではいけないので、やはり学校全体、学年全体としてこの非行化に取り組んでいただく。しかもその取り組み方は、やはり一人一人の児童生徒に対して直接、言ってみれば心をとらえるといいますか、一層密接に子供に接していただくという配慮をしていただくように、以上のようなことをまとめまして、近くまた通達等を出したいということで検討いたしておるわけでございます。  一方、何といっても非行の問題は学校だけでは限度がございまして、親あるいは家庭の環境なり子供に対する監護、監督ということを十分していただいて、学校と協力していただかなければならぬ。そういう意味で、先生と学校との連絡を密にしますとともに、家庭における子供の行動、それを野放しにすることによって、どちらかといえば喫煙だとか飲酒だとか、あるいはさらに進んでいろいろな遊びということに走り、それを親が余り厳重に注意をしない。それで友だち同士で半ば公然と各学校外で非行に走るという実態もございます。そういう面での家庭教育というものも十分やっていただきたいと思いますし、それから社会全体が、いまのいろいろな事例を見ましても、そういうことに対して一般の大人子供のことについて、それを嫌悪感を持って見る、あるいはああいうことはけしからぬというようなことは言っても、積極的にそういう大人立場において青少年の補導に当たるというような気持ちが余りにも薄過ぎるのではないかという気がするわけでありますけれども、これは社会教育分野でありましょうか、そういうことも社会教育局の方ともいろいろ連絡をして、いわば社会教育の面でも十分徹底していただく。そういうことによって学校家庭社会というものが、もっと力を合わせて子供指導に当たっていくという体制を整えていただくように、これは関係者がいままでもずいぶん努力をしてきておるわけでありまして、一朝一夕になかなかいかない面もあるわけでございますが、われわれのいままでのあれを見ますと、先ほども申し上げましたように、地域によっては、学校によってはかなり効果を上げているところもあるわけでございますから、関係者の努力によって相当いき得るものでありますので、今後もそういうふうに努力をしたい、このように考えております。
  223. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 教育というものは、短兵急にいかないことは私もよくわかりますけれども、しかし、やはりこういう問題、たとえば暴力問題に対する考え方とか、そういうものに対応していくためには、かなり大胆な政治効果のある方法を考えなければいけないと私は思うのです。  これは議論をしておりますと、それだけで三十分の持ち時間がなくなっちゃうわけですが、いま私が指摘をしようとしているのは、文部行政の立場から考えますと、教育環境整備というものをもう少し考えなければならぬ。中学生の時代に高校に入るためにガリ勉をしなければならぬというような状況ではいかぬ、もちろんそれだけではないのですけれども。しかし行政の面から見れば、少なくともそういう問題を解決しようとすればできるわけなんだ。たとえば五十五年度に高校入学がピークに達するというような話がございます。財政的な制限があるにしましても、これは絶対的な要請になっているわけですね。また、景気回復の上から考えてみても、大型プロジェクトを組むよりも、それぞれの地域にはるかに経済効果もある対策になっておるわけです。確かに文部省としてはできる限りの助成をしているのでしょうけれども、しかし、実際に中学浪人が一万人も出るというような状況、これは文部行政の一つの怠慢を責められても仕方がないのではないかと思うのですよ。  一つ例を挙げるわけですけれども、この中学浪人が出る理由というのは、有名校集中の問題がございますね。それから公立高校の絶対的な不足の問題がある。有名校集中の問題は、いわゆる一朝一夕にして片づく問題ではない。しかし高校不足の問題については、いまの経済環境等あわせて考えてみれば、まだまだ積極的にやっていかなければならない問題だと思うのですよ。これは実は去年の予算委員会でも、私が海部文部大臣の時代に取り上げたわけでございますけれども、五十二年に比較して五十五年度は高校建設が二倍ぐらい必要だ、こういうようになるわけですが、全国的に見ますと、特に沖繩の状況というのはきわめて深刻な状況ですね。中学浪人の全国平均は0七%、沖繩の状態は六・三%というのですね。非常な高率になっておる。これは沖繩という特殊事情がありますね、離れ島がたくさんありますからね。そのことはわかっているのですけれども、こういうような状況に対して文部省は特別な手を打っておられますか。これは、石垣島あたりから沖繩本島へ行けば生活費に五倍ぐらいかかるという条件、しかもなかなか高収入が得られるような仕事がないというような沖繩の実情からいきましても、これはもう真剣になってひとつ取り組んでもらわなければならぬ問題だと思うのですよ。まず、その点から御答弁をいただきましょう。
  224. 砂田重民

    砂田国務大臣 中学浪人の問題は、先ほど先生御指摘の有名校志望、偏りのあることとつながりのあることでございます。高校進学の状況を見ますと、進学希望者の九八・七%は、これはマクロのことではありますけれども、いずれかの高校に入学しているわけでございまして、入学定員に対します実際の入学者数を見ますと、全国の高校で四万人の空き定数が出ている。まさに有名校志望という現象が中学浪人の非常に大きな要素にもなっているわけでございます。こういう状況を見ますと、中学浪人が生じておりますのは、高校の収容力の状況だけでもないという気持ちがいたすわけでございます。沖繩の問題につきましては、おっしゃるとおり沖繩は高等学校が足りない。他の府県と比べますと、一層足りない状態がいまなお残されているわけでございます。四十七年の沖繩返還以後その改善に努めてまいっているところでございますけれども、まだ他の府県に追いついていないのも事実でございます。ただ、努力を積み重ねてまいりまして、だんだん改善はされてきているわけでございます。もう一息だという気持ちがいたします。  沖繩の実際の数字につきましては、事務当局からお答えをいたします。
  225. 三角哲生

    ○三角政府委員 復帰当時、四十七年度におきまして沖繩の高校進学率が七一・一でございましたものが、五十二年五月一日現在で八二・九とアップしておりますが、大臣からも申し上げましたように、全国平均九三・一と比べますとその差が一〇・二というぐあいになっておりまして、依然として格差がございます。そういうことで、高校新設の増を図るべく五十一年度から五十三年度の三カ年計画を策定いたしまして、沖繩開発庁の方で手当てをしていただいて文部省で執行いたしておるわけでございますが、新たに五校の高校を新設して進学率の向上をさらに図っていくというふうにいたしておるわけでございます。
  226. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 文部省が特別に配慮しておることは私も知っておるのですよ。大臣、五十五年度までがピークですから、しかもこれは地方財政との絡みがございますでしょう。その中で一番問題になるのは、建設費助成はあるのですが、しかしながら、これはもちろん全国的な問題でありますけれども、用地取得費の方は助成がないものですから地方財政にとっては大変な負担になっているわけですね。  千葉県においては、地方自治体からの要望書の中の試算を見ますと、用地取得費は十七億。神奈川県は、校舎建設費十五億に対して十八億の用地取得費。愛知県は、これはまだ安い方ですが、校舎建設費が十五億、用地取得費は大体十億。ところが大阪あたりになりますと、校舎建設費は二十三億、用地取得費が二十億から二十五億。兵庫県に至っては、十三億の校舎建設費に対して二十二億の用地取得費が要る。  こういう状況でございますから、確かに高校建設を急がねばならぬという状況は地方においてはわかっておるのですが、しかしそういう実情があるからなかなか思うように進まないわけです。ですから、教育環境を整備しなければならぬという状況を考えたときには、やはりそこまで踏み込んでいかないと、五十五年のピークにははるかに間に合わないわけですね。これはひとつ大臣、来年度から多少なりとも用地取得費の方にも助成を出す方針を決めてもらうわけにはいかぬですか。特に沖繩みたいな地方財政の苦しいところはできないのですね。だから、それこそ沖繩なら沖繩だけという特例をつくってでもやらねばならぬ大事な問題じゃないか、こんなふうに私は考えるわけなんですけれども、沖繩の問題並びに全国の問題を踏まえてひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  227. 砂田重民

    砂田国務大臣 高校用地の取得の問題が大変むずかしい問題でありますことを私も自分の郷里で、いま先生、数字を御指摘になりましたが、よく承知をいたしているところでございます。国庫補助ということもなかなかむずかしいことでございますが、地方財政措置の拡充がどうできるかということも含めまして関係省庁とも一緒になってひとつ検討をさせていただきたいと思います。
  228. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 中学浪人の問題は新聞の社説等でも話題になっておりますし、中学二年、三年という時代は特に成長期でございますので、一年間浪人をするなんということになりますと、非常に屈辱的な精神的な打撃を受けるわけでございますし、また父兄の要望等を考えてみたときに、深刻な問題として、ぜひひとつ五十三年度、四年度、五年度の対処をしていただきたい。それにはどうしても用地取得費に対する助成が必要だということを強くお願いを申し上げておきたいと思うのです。  それから給食の問題についてお伺いをしておきたいわけですけれども、現在地方財政が非常に圧迫をされておるので何とか経費の節減を図らねばならぬということから、給食を民間に委託するという傾向が全国的にぽつぽつ出ているような感じがいたします。そこら辺の傾向については文部省御存じでしょうか。
  229. 砂田重民

    砂田国務大臣 民間に委託をするということは好ましくないと考えております。民間に委託をしたということの御指摘を国会で受けました当該校についても、これの改善をさせたことも昨年ございました。やはり単独校で調理を行うことが財政上なかなかむずかしい点があったりしますので、二つ以上の学校で一緒になって一括調理する共同調理場の制度を設置者の御判断でできるだけ採用をしていっていただきたいと考えているわけでございますが、昭和五十二年五月現在でそういった共同調理場の施設数が二千百七十八カ所にふえてまいりました。学校数で申しますと、小学校で四三・二%、中学校で六二・五%、生徒数で言いますと、小学校で三四・六%、中学校で六四・七%が共同調理場方式で給食をただいま実施しているところでございます。
  230. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 先般北海道へ行ったのですけれども、苫小牧あたりでもやはり民間委託を考えておるわけです。これは地方自治体のやり方でございますので、文部省がそういう好ましくないという方針をお出しになって地方行政をそこまで束縛することができるのかどうか。それだけのいわゆる行政効果を出すことができるのかどうか。これはただ教育上問題があるとかいうだけのことではなくして、やはり現在の不況という状況を考えてみたときには、大都会でもそうですけれども、特に地方へ参りますと、御婦人のアルバイトなんていいますけれども、簡単でなくなってきているわけです。男性側だって就職はなかなかいいところがないというような状況で、そういう観点から考えても、民間委託は現在不況の時代に特にとるべき措置ではないと私は思うわけです。そういった点について、本当に地方自治体に対してそこまで強制力が働くものかどうかという点も踏まえてお答えをいただきたい。
  231. 砂田重民

    砂田国務大臣 これは強制はできません。強制はできませんけれども、民間の仕出し屋さんというのですか、そういうところへ委託をして実は問題が起こったわけです。どうもそれが心配なものですから、子供の健康のことですから、好ましくないということを申し上げているわけでございます。共同の調理場をおつくりになるのに二分の一の国庫補助もございますし、起債も裏起債を自治省で見てももらっておりますので、できるだけ設置者の側でそういう選択をしていただきたい、そういうふうに希望も申し、また御指導もしているところでございます。
  232. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 これは具体的にひとつ各地方自治体との話し合いを詰めてもらいたいと思うのです。文部省がそういう方針であれば非常に結構なわけですけれども、小さな都市になりますと、人件費の節約ということですぐ二千万、三千万、四千万、五千万の経費が節約できるということを考えるわけです。この表なんかにもそういうことがうたわれておるわけです。確かに地方財政は苦しいけれども、しかし何といったって行政の目的は国民生活前進のためにあるわけですから、より失業者をふやすような方向は現在の政府の方針から見ても決して好ましくないし、そうあるべきでないということはもう申し上げるまでもないと思いますから、この点特に御配慮をいただきたいと思います。恐縮でございますけれども、もう一度。
  233. 砂田重民

    砂田国務大臣 給食の問題につきましては、米飯給食をだんだんふやしていこうということもまたもう一つあるわけでございます。米飯給食をふやしていきますについて新しい施設もまた必要でございます。これの財政措置もまた必要であり、同時に市町村段階では、これからこそ米飯に踏み切るための人件費も大きな問題になってこようかと思いますので、前向きに検討をさせていただきたいと考えます。
  234. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 それではもう一つお伺いをしておきたいと思うのですが、これは質問の通告があるいは行ってないかもしれませんけれども、国立美術館を地方へという要望が文部省に来ていると思うのですね。愛知県あたりも非常に希望しておるわけなんですけれども、これに対する基本的な考えをもう少し明確にしていただきたい。  二つ問題があります。  それは、今回の予算の中では調査費がついているのですけれども、どこにしようかというのではなくして、どういうところに国立美術館をさらにふやしたらいいかという問題のようです。そういった意味で何県かを対象にして考えておられるそうですか、これは予算委員会でも新自の西岡幹事長が美術に関する行政の推進としてお取り上げになったようですね。そういった意味でも、ぜひひとつ地方を重視していただきたいと思います。  それから、愛知県において陶磁器資料館をいま建設する動きがあって、これに対する助成金がついているのですけれども、たしか五十三年度で打ち切りのような方向のようでございます。この問題についても、やはり日本の美術、芸術を育成するという一つの方針のもとに、一貫した姿勢で助成をしていただきたいということと、やはり陶磁器資料館という問題の把握が文部省において弱いのじゃないか。そういうものは美術の交流という問題ではなくして、今後の日本の輸出行政の上においても大変な問題なわけです。これから中国あるいは韓国と競争しなければならぬわけですから、そういう意味で全体の質の向上も目指していかなければならないわけです。いわゆる歴史的な過程を研究し、新しい美術を興していく、そういう問題と、いわゆる産業を振興しなければならぬという問題と二面抱えておるわけですね。そういう方向であれば、形式的にちょこちょこと建物を建てるということでは相ならぬわけでありまして、本当に日本の陶磁器全体の向上のためのものになっていかなければならぬわけです。従来の美術に対する研究と、産業に対する研究というものをマッチさせたそういうところにこの陶磁器資料館のねらいがあるわけですから、通産省あたりとも十分お打ち合わせをしていただいて、それらに対する助成を強めていただかなければならぬと思うのです。  私は前にも申し上げたことがあるのですが、美術に対する評価というものが特に有名人の手によるものでありますと非常に高価なものになっている、あるいは古来のものでありますと非常に高価なものになっておるわけです。それが民間人のところに数多く秘蔵されておる。なぜこれが公開されないかというと、公開しますとこれは財産税の対象になるのですね。ですから一千万、二千万のものを秘蔵しておっても絶対表に出さない。そうすると、社会全般の人はそういうものを見ることもできないという状況がございます。こういった点についてももっと強気で日本の美術、芸術というものを振興していくという姿勢が必要ではないかと私は思うのですけれども、ここら辺を含めて、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  235. 砂田重民

    砂田国務大臣 三つ御質問がございまして、一番初めの美術館のことでありますけれども、千五百万の予算を五十三年度に計上いたしまして、調査費というよりは委員会を構成する、委員会の運営費でございます。残念なことでありますけれども、国立の美術館、確かに近代美術館、西洋美術館等がありますけれども、大ぜいの方が応募をされてその中から選ばれて展覧会を開くというような公募展のやれる美術館をまだ国は持っておりません。昨日も東海地方は美術館がないから美術、芸術の谷間だとおっしゃいましたけれども、そういう意味では日本全体が美術、芸術の谷間だと残念ながら言わざるを得ないわけでございます。そういうことから、国立の美術館というものを、どこにどういう規模でどういう態様でどういうふうにつくっていくかということを御検討いただく委員会を五十三年度に初めて持つことができたわけでございます。その委員会の運営費を千五百万計上したわけでございます。  石田分科員指摘の名古屋につきましては、また伺うところでは、名古屋のオリンピックの誘致運動等もございますから、オリンピックをやりますときには美術展覧会を併用いたします。そのこともまた頭に置きながら、五十三年度予算が成立いたしましたならば、この委員会構成をいたしまして検討をしていただくことにしている、そういう性格の委員会でございます。  それから陶磁器資料館のことでありますけれども、五十三年度で打ち切るとおっしゃいましたけれども、打ち切るとか打ち切らないとかいう性格のものではなくて、愛知県が非常に有意義なこういう計画をお立てになりました、いままでこういう種類のものは文化庁がわずか七千万円の補助しかいたしておりません。七千万、頭打ちでございましたのを、全く新しい事業として昨年から、昨年二億円、ことし二億円の予算でお手伝いをするということになったわけでございます。初めから愛知県と御相談の上で、愛知県のこの有意義な資料館に御協力をすることにしたわけでございます。  それから美術品の秘蔵ですけれども、財産税ではないと思うのです。秘蔵しておられる方が、これが表へ出ると、どうやって入手をなさったか、その金はどこから出たのか、やはり所得税がらみではないかと思うのです。そういうことでまさに秘蔵をされておる、そうではないかと思うのです。持っているから財産税がかかるというものではないと思うのですが、現状はそういう意味で隠しておられる方がたくさんおられるのではないかと考えます。
  236. 石田幸四郎

    ○石田(幸)分科員 時間がありませんから、また次の機会にやります。
  237. 片岡清一

    ○片岡主査代理 次は、上田卓三君。
  238. 上田卓三

    上田分科員 まず最初に、国際人権規約及び教育における差別待遇防止に関する国際条約について文部省の考え方をお聞きしたい、このように思うわけであります。  昨年の九年二十九日に国際人権規約批准要求大阪府民会議が文部省に要請行動を行った際に、文部省を代表して出席されました七田企画連絡課長は、政府は国連で賛成の一票を投じてきたが、それが必ずしも即国内で批准することではない、このような暴言を発しておるわけでございます。四十一年に国連でわが国が国際人権規約について賛成をしておるのですね。そのときは何ら条件らしいものも何もつけずに無条件で賛成しておきながら、それ以後十二年の経過の中でいまだに国際人権規約を批准しないのみならず、そのおくれの理由について、一票投じたからといって即批准する問題とは別だというようなことを一課長が言っていることは、これは大臣の考え方であるのかどうかということでわれわれ非常に遺憾に思っておるわけであります。まずその点、一点聞きたい。  それから、国際人権規約については、先進国ではわが国だけがただ一つ取り残されておる、こういうような状況にいまなっておるわけでありますが、外務省においても、また園田外務大臣においても今国会でぜひとも批准をしたいということで四月ごろには政府提案の法律を提出したい、こういうことのようでございますが、これに対して文部省としてどのような見解を持っておるのか、これが二点でございます。  それから第三番目には、冒頭に申し上げました教育における差別待遇防止に関する国際条約の批准について、これも国際人権規約と同じようにわが国だけが取り残されている。国際的な人権擁護の動きから取り残されているということは非常に嘆かわしい。人権後進国と言われても何の口答えもできない、こういう状況であるわけでありますが、具体的にこの批准についてどのような行動をとられるのか、大臣の明確なお答えをいただきたい、このように思います。
  239. 砂田重民

    砂田国務大臣 文部省といたしましては、日本国憲法の精神からいたしましても国際人権規約の重要性を十分認識をいたしておりまして、規約の問題点についてただいま鋭意検討を進めているところでございます。外務省とも密接に連絡をとっているところでございます。  冒頭御指摘のございました文部省課長発言云々のことにつきましては、人権尊重一つの柱としております日本国憲法の精神から言いましても、国際人権規約の趣旨には当然賛成でございます。そういう考え方でA規約、B規約の全会一致による採択に賛成をしたものと承知をいたしております。しかし政府といたしましては、条約というものについては、それが何の条約にいたしましても、国内法令等との調整を十分行いました上で国会に条約の締結の承認を求めるのがたてまえでございますから、そういう趣旨で恐らく発言をしたものと思いますが、何かその課長の発言の内容が不穏当のものがありましたならば、おわびをいたします。
  240. 上田卓三

    上田分科員 教育の方の批准の問題はどうですか。
  241. 井内慶次郎

    ○井内政府委員 第三のお尋ねでございました教育における差別待遇の防止に関する条約の件でございますが、わが国の場合、憲法第十四条の法のもとの平等及び第二十六条の教育を受ける権利の規定等、この憲法の規定を受けました教育基本法等によりまして本件の条約の趣旨は大体実現されておるのではないか。文部省といたしましては、本条約の大筋におきまして、わが国における現行法令との関係上さしたる問題はないと前大臣もお答えをいたしたわけですが、主管省たる外務省とこの取り扱いにつきましてはよく協議をしてまいりたい、かように考えております。
  242. 上田卓三

    上田分科員 問題がないということであれば、これは直ちに批准すべきだと思うのであります。これは文部省の怠慢ですよ。即刻、今国会に批准できるように外務省とも十分相談して——何か国内的に問題がないから国際条約を批准しなくてもいいという、それ自身暴論だと私は思うわけでありまして、それ自身が、人権思想というのですか、そういうものに対して日本が逆に立ちおくれておると言われても仕方のない状況だろう、このように私は思うわけであります。七田課長のことについては、これは保留します。われわれはいまのような大臣の答弁だけでは納得できませんから、この問題については別途明確にお答えをいただきたい、このようにいま思っておるわけです。  けさの新聞にも出ておりましたが、国際人権規約については、自民党の小委員会ですか、党で六つの留保云々という形で留保をつけて今国会の批准を了承しよう、こういうようなことの中に、いわゆる高等学校の義務化の問題について政府見解を早急にまとめるという項目があったように思うわけでありますが、御存じのように、国際人権規約というのは、これは発展途上国でのそういう人権の問題をどのように国際的に監視していくのか、あるいは協力していくのかという問題でありまして、本来ならば、国際人権規約に定められている条項の多くは、先進国と言われる国々はすべてそれはもうそういう問題がないということが前提になっておるわけであります。  いわんや、高等学校の義務化の問題については、発展途上国においてはまだまだ中等教育云々についてもこういうことがあるかもわかりませんけれども、わが国においてはもう高校進学率が九〇%をすでに大幅に上回っているというような状況のもとで、やはり早急に、こういう公私の学校教育格差あるいは教育費の格差の問題で大阪を中心にして私学訴訟なども起こされておることは、大臣も先般御承知のことだ、こういうように思うわけでありまして、そういう点で、わが国においてはそういう高等学校の義務化を当然目指すべきである、こういうように考えておるわけであります。  そういう意味で、一日も早く——一日も早くというよりも無条件で、文部省においては、外務省が予定しているところの人権規約の批准について御協力をいただきたい。目下検討中ということでありますから、そういう点強く要望を申し上げておきたい、このように思うわけであります。  次に、わが党の川本議員が一昨日二月二十七日の予算の第一分科会で、稻村総理府総務長官に対して同和問題の強化延長の問題をめぐって問いただしたところ、いわゆる同和問題を——云々ということで、もう同和問題のイロハのイに属する基本的な問題について重大な認識不足があったわけでございまして、これはもう罷免に値するということで、私はその後の分科会で発言をしたところでございます。そういう点で、まあ宗教起源説とかあるいは民族起源説とか、いろいろな差別的な考え方がわが国にあることもこれまた事実でありまして、そういう差別的な考えに大臣が毒されているということは、福田内閣の性格そのものを問われるところだろう、こういうように思うわけであります。  いまなおそういう差別事件が、たとえば一昨年の内閣委員会において、現在の法務省の安原事務次官、当時刑事局長でありましたが、人種問題、こういう形で差別発言をいたして陳謝をされ、閣内で同和問題について研修を深めるというようなことになったわけでありますが、そういう点でやはりこれは教育の重大な欠落といいますか文部省責任だろう、私はこういうふうに思っておるわけでありますが、これに対して大臣はどのように考えておるのか、この発言は当然だと思っているのか、けしからぬと思っているのか、抗議する気があるのかどうか、そういう点についてはっきりとした回答をいただきたい、このように思います。
  243. 砂田重民

    砂田国務大臣 私は、同和教育を充実してまいることはきわめて重要な私の責任であると心得ておりますから、稻村総務長官の発言に私がこの場でコメントすることはいかがかと思いますけれども、私は、遺憾な発言であったと感じております。
  244. 上田卓三

    上田分科員 遺憾な発言だということですから、当然それにふさわしい行動をとっていただきたい、こういうように思っておるわけでありますから、幾ら同僚だからといって手かげんするようなことのないようにしていただきたい。文部大臣の行動を見守りたい、このように思っておるわけであります。  さて、稻村長官は先般の予算委員会等で、たとえば延長を含めて今後真剣に努力するとか、あるいは私としては延長を決断しているとか、あるいは法律の空白をつくらないようにしたいという形で、延長についての一定の考え方を述べられておるわけであります。御存じのように、五十年の調査によっても、五十四年度以降相当数の残事業がある、こういうことも明らかになっておるわけであります。そういう点で、われわれは法のそういう充実といいますか、強化も含めて延長を要求しておるわけでありますが、文部省としてこの問題に対して全面的に御協力をいただけるのかどうか、その決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  245. 砂田重民

    砂田国務大臣 法律施行後九年を経た今日におきましても、まだ残された課題があることにかんがみまして、地方公共団体等の要望も踏まえて二月二十一日に同和対策協議会特別委員会が「延長は必然の方向であるとの認識にある」、こういうことを表明なさいました中間報告を総務長官に提出をなさいましたことも承知をいたしておりますし、このような動きを踏まえて、かつ同和問題の解決に教育が果たすべき役割りが大変大きいことを認識をいたしておりますから、予算の分科会で稻村長官がいま先生お話しになりましたような方向の答弁をなさったことを私は大変好ましいことであったと考えておりまして、文部省といたしましても、総理府を中心といたします政府部内の協議に積極的に参加をしてまいります。
  246. 上田卓三

    上田分科員 今国会での法律の強化延長にぜひとも文部大臣も御協力をいただくようにお願いを申し上げておきたい、このように思います。  そういう前提に立ちまして次に申し上げたい問題は、昭和四十年に出されました同和対策審議会の答申では、心理的差別の解消をきわめて重要な課題として取り上げておるわけでありまして、この点での文部省責任はきわめて大きいわけであります。先ほどの稻村長官の差別言辞についてもやはりしかりだ。いわんや国民の中にはまだまだそういう間違った差別的な考え方、予断と偏見に毒されているという部分があるわけでありますから、だからこそ同和教育の必要性が声を大にして叫ばれている、こういうことであろうと思うわけであります。  そこで、この法律ができて以後九年間経過しておるわけでありますけれども、しかしながら、たとえば非常に残念なことでありますけれども、昨年一年間だけとってみましても、大阪で、大阪大学それから大阪教育大学、大阪市立大学、桃山学院大学それから大阪芸術大学など、多くの大学で差別事件が頻発いたしておるわけであります。大阪市立大学では一年間に二十件も差別事件が発生をいたしておりまして、その内容たるや、たとえば「いまこそ市大から部落民、穢多、非人を一掃しよう 殺せ殺せ穢多、非人 市大から部落民を一掃する会」、白昼堂々と許せないそういう差別ビラがまかり通っておるわけであります。理性の府にあるまじき異常事態だと言わざるを得ない、このように思うわけであります。あるいは去年関西を中心にして大きく新聞報道もされたわけでありますけれども、大阪府下の大東市の深野小学校では、いわゆる同和教育を進めようとしたところ、一部の父兄が差別意識から、同和教育は反対である、文部省の同和教育指定校返上、こういうような動きが出たことも御承知のことだろう、こういうように思うわけでありますが、このように差別事件が減るどころか現象的にはふえているのじゃないかと思われるような向きもあるわけでございまして、そういう点で法があと一年というような状況のもとで、皆さんも御存じのように、部落地名総鑑とかあるいは特殊部落リストとか、そういうような形で悪質な地名総鑑が出版され、日本の中堅企業が労務管理のためにそれを購入する。これは法務省を中心にして追及されたわけでありますが、こういう状況、現象に対して文部大臣として一体どのように考えておるのか、どういう決意で、とりわけこの心理的差別と言われているものに対する解消のために努力する決意であるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  247. 砂田重民

    砂田国務大臣 いま上田委員から御指摘がありました事例について、すべて必ずしも十分に承知をしておりませんけれども、各大学側での対応にも問題があるように伺いましたので、必要に応じまして適切な措置がとられるよう、大学に対して強く助言をしてまいりたいと思います。  大学におきます同和教育については、教員養成学部を置きます国立大学に何度か文書によって指導を行ってきておりまして、同和教育について教員養成上遺憾のないような配慮を促してまいりました。今後も各大学に対しましていろいろな機会に同和教育の充実について適切な配慮がなされるよう十分留意を促してまいりたいと思います。  なお、いま御指摘のございました関西地区において私立大学で、地名総鑑という名称ではなかったと思いますが類似の文書を購入したというケースがございました。係官を早速そのときに派遣もいたしまして、教育委員会とともに相談の上で各大学に厳重な注意を促しまして、それぞれそれは返却をさせ得たわけでございます。
  248. 上田卓三

    上田分科員 文部省のそういう断固たる姿勢といいますか、そういうものによってやはり大きく同和教育が全国的にさらに盛り上がるかどうかということになるのではないか。ちまたでは、同和教育について文部省は非常に弱腰である、非常に消極的である、こういうような意見も聞かれているし、私自身もそういうように考えておるところでありますので、ぜひとも大臣は重大な決意のもとにこの問題の解決のために当たっていただきたい。  次に、部落の高校進学率あるいは大学進学率の問題について若干報告し、文部省の見解を聞きたい、このように思います。  全国的に見ても部落の高校進学率は依然として低いという状況にあるわけでありまして、さらに四十九年、五十年をピークにしてどんどん低下している。全国一般との格差が現実問題として広がっていっているというように、われわれは理解しておるわけであります。文部省は、昭和四十二年には二〇%あった高校進学率の格差が、昭和五十年には四・四%に縮まり、格差の解消のめどがついた、こういうことを言っておるわけでございます。しかしながら、昨年大阪府下で部落解放同盟やあるいは大阪府同和教育研究協議会などが高校入学後の追跡調査を行ったわけでありますが、その結果では入学から卒業までの三年間に実に一五・三%も子供が中途退学を余儀なくされておるということ、それから無事高校を卒業できた者は八二・八%にしかすぎない現実が報告されておるわけであります。中学卒業者と比較したいわば実質的な高校進学率は、実に七二%でありまして、いわゆる全国一般との格差というものは二〇%もある実態が明らかになっておるわけであります。だから、文部省が言うておることと現実に大阪などで調査したものとは大分大きな開きがあるということを申し上げたいわけであります。  同様の例は、広島とか兵庫とか奈良とか和歌山、三重を初め、多くの府県でこういう実態が報告されておるわけでありまして、ましてや宮崎県などのようにいわゆる未指定地域ですね。同特法によるところの未指定地域の部落の現実というものはもっとひどいということが推測をされるわけであります。  第二に、大学の進学率についてでございますが、これについては文部省は調査したことがない、こういうことになっておるわけであります。そういう点で、われわれの調査によりますと、部落の進学率は昭和五十二年で二五・二%にも満たない、こういう状況でございまして、大阪府全体の四七%あるいは全国平均の三七%を大きく下回っておるというような状況であるわけでありますが、そういう点で私が申し上げた問題については、これは恐らくそういう関係団体からも、文部省に文書なりあるいは電話で届いていると思うのですが、そういう点で文部省のそういう実態把握と大きな隔たりがあるということについてどのように考えられますか。大臣のお答えをいただきたいと思います。
  249. 砂田重民

    砂田国務大臣 高校の進学率、大学の進学率について、都道府県別でございますとかそういう調査はいたしておりますけれども、同和地区についての調査をまだいたしておりませんことは事実でございます。ですから、的確にその数字を私は把握をいたしておりません。総理府や関係府県の御協力をいただいて果たして正確な数字がつかめるかどうか、今日の時点で私にその確信が持てませんけれども、ただ同和地区の子弟で少なくとも高校、大学へ進学の気持ちをお持ちになりながら、経済的理由によってそれが困難だというようなことだけは何とか防ぎたい、そういうことから奨学金や通学用品の助成金等を給付する都道府県または指定都市に対しまして、必要経費の一部を国が負担をする制度をつくってございますが、大学の方は、五十三年度から通学用品の助成金も新たに計上をして改善をするわけでございますが、少なくとも経済的な理由で進学率が落ちるということだけは何とか防ぎたい、こういう措置をさらに改善をしていく努力をいたしたい、かように考えます。
  250. 上田卓三

    上田分科員 文部省の同和教育政策のうちで、特に同和対策事業特別措置法に基づいてやられている事業というのですか、そういうものは、同特法では補助は三分の二ということになっておるわけですけれども、そういうものの対象になっているのは高校、大学の奨学金と集会所の整備事業だけでありまして、それ以外はいわゆる同和対策としての配慮は加えられているとはいうものの、一般対策の枠の中でやられているというのが現実ではないか、こういうふうに思うわけでありまして、とりわけ学校の校舎設備の改善等について多額の費用が要るわけでありまして、そういう点についてやはり同特法の精神といいますか、そういうものが十分生かされてない。あるいは同特法そのもの自身に相当問題点があるのではないか。超過負担の問題もございますし、そういう点でわれわれとしては、同和対策事業特別措置法のそういう単純な延長だけじゃなしに、ぜひとも強化をしてもらいたい。特に物的な問題ではなしに、心理的な差別の問題もあわせて考えるならば、何年何月までにその心理的差別がなくなるものでも恐らくなかろう、こういうふうに思いますので、ぜひともやはりそういう部落問題解決のための法律というものがある程度長い期間にわたって必要だろうし、とりわけ法の内容充実というものについても十分御配慮いただきたい。  それから、時間の関係で申し上げるわけでございますけれども、大臣自身がやはり現実の部落というものを自分の目でひとつ見ていただいて、足でひとつその実感というものを認識していただきたい。とりわけ文部省は、五十年調査の不十分さというものを十分認識されて、部落の全国の教育の部分での実態調査というものをやろうとしておられるようでございますが、ぜひともその問題についても、総理府に対してもわれわれはもう一度実態調査のやり直しをせよと言っておるわけでありますので、各省とも十分相談してそういう実態の調査に全面的に取り組んでいただきたい。そういう点で大臣の考え方というものをここで示していただいて、私の質問を終わりたい、このように思います。
  251. 砂田重民

    砂田国務大臣 学校の施設面のことは当然のことでございますし、教員加配もいたしておりますけれども、なおこれが充実に努めてまいる努力をいたしてまいります。  上田委員御指摘のとおりに、やはり心の問題が非常に大切だと思うのです。私も郷里で小学校のときからの友達もたくさんいることでございます。一遍足を踏み入れろとおっしゃいましたけれども、一遍ではございません。始終遊びに行って交流もしておることでございますから、なおこういう関係を続けてまいりたい、かように考えます。(上田分科員実態の調査」と呼ぶ)
  252. 諸澤正道

    ○諸澤政府委員 ただいま御指摘のありました点は、たとえばいまの高校の進学率あるいは大学の進学率等の問題であろうかと思うのでありますが、私どもは……(上田分科員「それだけじゃないでしょう、文部省関係の全体問題について」と呼ぶ)ちょっとそれでは質問を取り違えましたけれども、全体の同和対策事業の今日までの成果といいますか、御指摘の点はあるいはそういう点を踏まえての調査のことであろうかと思いますが、従来の経緯等から申しますと、総理府が中心になりてまとめていただいておるということもございますし、この問題は関係の府県等の協力をいただきまして情報を提供していただくというようなこともやっておりますので、それらを踏まえまして今後どういうふうに考えていくか、検討さしていただきたいと思います。
  253. 上田卓三

    上田分科員 一言だけ。大臣も部落へ現実に入ったことがある、あるいはそういうふうに非常に自信ありげに申されたわけでありますが、やはりもっと謙虚に自分というものを見つめて、そういう傲慢な態度が稻村さんのようなああいう発言になってくるわけです。自分は同和問題について積極的な理解があるのだというところが、実際肝心かなめのところがわかっていないということにもなるし、過去のいわゆる文部省の同和教育のそういう一貫した姿勢が全く部落解放に反している、そういう部分が多々あるわけでありますから、そういう点について十分ひとつ留意していただくようにお願いし、またわれわれはそういう都度その問題について提起することを申し上げまして、私の発言を終わりたいと思います。
  254. 片岡清一

    ○片岡主査代理 次は、土井たか子君。
  255. 土井たか子

    ○土井分科員 きょう、私は教員養成大学院大学についてお尋ねをしたいと思います。  この問題は、今国会で恐らく教員大学院大学設置のための国立学校設置法改正案審議ということになる問題でございましょうから、追っていろいろな課題はそこの審議の場所で討議が進められるであろうと思いますが、大まかにいま私の考えております疑問の点だけをきょうは申し上げさせていただいて、いろいろそれに対する御見解を賜りたいと思っています。  いま予定をされております場所一つが、実は文部大臣の御出身の兵庫県でもございますから、そういうことからいたしますと、具体的なことになるとお尋ねすることが実はむずかしい点もあるかもしれません。でも、そこのところは率直にひとつお尋ねを申し上げ、お答えをいただくということで、この場所に臨みたいと思います。  いま大学院四百名、学部二百名という大学院大学構想というものについて、それにいろいろいままでの経過があったようでありますが、経過について当初大学院だけを考えられていたとか、あるいは後に学部が考えられたとか、いろいろな取りざたがあるわけでございますから、ひとつここで簡単にそこのあたりを整理しておくというふうな意味でも、経緯について御説明をいただきたいと思うのです。
  256. 砂田重民

    砂田国務大臣 経緯は、私の就任前のことでもございますし、正確を期するために大学局長からお答えをさせます。
  257. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 兵庫のいわゆる教員大学院大学について創設準備費が計上されたのは昭和四十九年度からでございます。このプロジェクトについては、御指摘のように二つの違った要請が当初ございました。一つは現職教員に対して高度の研さんの機会を与えるための大学院レベルの高等教育機関を確保したいという問題と、それからもう一つは初等教育教員についての需給等も考えて積極的な養成に当たる機関を考えたい。二つのいわばプロジェクトが当初あったわけでございます。これをいわば一つのものとして大学院にウエートを置いた教員養成大学を考えていくということで、名前としては教員大学院大学というようなことで、準備が始まってまいったわけでございます。
  258. 土井たか子

    ○土井分科員 この大学並びに大学院に入学する手続ということになりますと、どのようなものになりますか。
  259. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 これは、大学の学部の方はもちろん通常の教員養成大学の場合と同じでございます。大学院の方は、現在考えておりまます規模は三百名でございますが、その三百名の入学定員のうち、三分の二程度は現職の教職の経験をお持ちになった方を受け入れたい。もちろん、これは大学でございますから、大学院で適格な入学試験をして受け入れるわけでございます。
  260. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると、現職の教員が大学院を受験して、そして合格するか、合格しないかの判定は大学側がこれを行う、このことははっきりするわけでございますね。ところが、大学の方ではその受験に対して合格判定をいたしまして、その後、現職の教員のことでございますから、この大学院に就学するためにはどういう手続がさらに必要になってまいりますか。
  261. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘のように、現職の教員が二年間にわたって職場を離れて研さんを積まれるわけでございますから、それぞれのその担当されている学校現場の事情というものがあるわけでございます。したがって、一般の公務員が現職のままで大学あるいは大学院に入学する場合も同様でございますけれども、やはり任命権者側の同意を取りつけてそして受験をするということが必要になってまいると思います。教育委員会の方でどういう形で同意書をつけていただくか、そういったことについてのなお詳細は教育長協議会の方とも御相談をいたしておりますけれども、事の性質上入学すべき者の判定は大学で行いますけれども、受験に当たって教育委員会側の同意を求めるということに相なると思います。
  262. 土井たか子

    ○土井分科員 そういたしますと、御本人は向学心が非常に強く、就学の意思が非常に強い。そして幸いにして受験にも合格した。ところが、任命権者側、教育長だと思いますが、任命権者側がこの就学を認めない。つまり、それはどういう形式でなされるかはよくわかりません。推薦ということをなさらないのか、あるいはこれはどういう形になるのでしょうか、出張ということになるのでしょうか、研修出張という形になるのでしょうか、そのところはよくわかりませんが、その出張命令をお出しにならない。いろいろなことが私は具体的には起こってこようと思うのですが、御本人意思に反して、しかも合格がはっきり認められているにもかかわらず、そういうことが起こり得ないという保証はどこにもございません。そういうことに対してどのように考えていらっしゃいますか。
  263. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘のようなことが生ずると、まことに私の方としては遺憾なことになるわけでございます。したがって、先ほど申しましたように出願に先立って、その先生のお仕事の運び方との都合があるわけでございますから、教育委員会側と十分に御相談の上で、そして教育委員会と合意の上で受験をしていただきたいということを考えているということを申し上げたわけでございます。ただ、もちろん私の方のたてまえからすれば、これは大学でございますから、教育委員会側の同意書がなければ受験をさせないというわけにはまいりません。それは同意書がない場合であっても受験をすることは可能でございますけれども、その場合には、仮に合格すれば合格した後でやはり教育委員会側の人事行政との間にひずみあるいは衝突ができますので、そういうことにならないような配慮を事前にしていただきたいということでございます。
  264. 土井たか子

    ○土井分科員 これは、そのあたりからすでに問題がいささか出てこようと思うのですね。御当人は切なる希望を持っていらしても、教育委員会側が受験をお認めにならないということも現実の問題として出てこようと思うのです。それにはいろいろな理由がございましょう。たとえばそこでいろいろな判別基準というものが恐らくは問題に取りざたされるだろうと思います。取り扱いの上で特定の人に対して優遇をしているのではないかというふうな向きも恐らくは取りざたの中に出てこないとは限らない。私は恐らく出てくると思いますよ。それからさらに具体的な現実面からいたしまして、現にいろいろな研修制度がございますね。宿泊をいたしまして研修をするというふうな場合もございます。その研修を総括して考えてまいろこういうことを勘案して調査した結果の数字が出ているのですが、毎日九人か十人に一人は研修のために出張されているというのがいまの小中学校の現実の問題のようでございます。教員に裏づけもないままに授業に穴をあけることに当然なるというような実情が現に出てきて、行きたい研修にも出席することがそのためにできないというふうなことも現実にあるようでございますから、現在の教員状況をそのままに置いておいて、希望者が行きたいという申請を出しても恐らくは受験は認められない、片やこういう問題にもなるのですね。この辺の是正はどのようになさいますか。
  265. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 この点は担当の初中局とも御相談をしながら財政当局と御相談をして進めていかなければならないことでございますが、私どもの希望といたしましては、現職の教員がこの大学院で研さんを積む場合には、いわゆる研修命令の形で現職のまま給与を受けて勉強をしていただきたいと考えておりますし、またその教員のいわば補充の定員措置、定数措置についても配慮をしてほしい、また何とか配慮をいたしたい、そういうふうな方針で臨んでいるわけでございます。
  266. 土井たか子

    ○土井分科員 その辺はなおかつ問題がだんだん残りますよ。  ところが、その先を少し考えて歩を進めますが、いざ入学してから、いまおっしゃったとおり大学院では三百名のうちの三分の二が教員でございますね。あとの三分の一が一般でございますね、一般という言葉を使えば使えると思うのですが。この三分の二の教員はその間授業料を恐らくは支払わなければいけないと思いますが、その間、教員としての身分はどうなるんですか。
  267. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 現職の教員の身分のままで、いわゆる研修の命令を受けて参加をしていただくということを考えているわけでございます。しかし、同時に大学院の学生の身分を持つわけでございますから、当然御指摘のように授業料は納入し
  268. 土井たか子

    ○土井分科員 授業料は納入する、しかし片や教員としての身分を保持したままでございますから、給与を受給されております。一般の方は自分授業料を納入をして大学院に行くということなんでございますね。そういう点から言うと、これは少し条件が違ってまいります。大学院を卒業してからの条件はさらに違ってまいります。三分の二はすでに教職の経験のある人たちでございますし、三分の一はそれ以前にまるで教職の経験のない人でございます。しかし卒業資格は同じであろうと思います。修士号を取得する人が恐らくそのうちの大半だろうと思います。そうしますと、同じ修士号を取得しましてもその後の取り扱いの上で、この三分の二の人たちと三分の一の人たちに対する差が出てくるんじゃないか、その点はいかがでございますか。
  269. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 御指摘のとおりむずかしい問題でございます。現在給与の面から申しますと、いわゆる学歴につきましては一年について一・五号の給与差があるわけでございます。したがって、新卒のときで、大学院卒と同じ年の同じ年齢の学部卒の者を比べますと、二年たっているわけでございますから、その間に結局一号の差が初任給についてはあるということでございます。しかし、現職の方が在職中に大学院で御勉強になった場合、そして上位の学歴を取得された場合には、これは俸給の調整を行うことができるということにはなっておりますけれども、実際問題として、経験年数の換算方法等によりまして結果として俸給は変わらない。したがって、大学院修了後直ちに教職についた者と学部卒業後教職について大学院を修了した者とは、同一年齢で引き続き一号俸の差が残るということになるわけでございます。その辺のところをどういうふうにするのかというのは、これは大学院を卒業した者全体について、何もこの大学院に限らず、大学院を卒業して教職についた者あるいは在職中に大学院で勉強して高位の学歴を得た者の給与をどうするかという全体の問題として、将来の課題として検討してほしいと思っております。しかし当面は、いま申し上げたような形で、在職中に大学院をお出になっても特に給与上の優遇措置はないわけでございます。
  270. 土井たか子

    ○土井分科員 その給与の上での問題が一つあると同時に、実は卒業後のいろいろな教職の現場における取り扱いの上で、身分の問題もありましょうし、それから、どういう役割りをその方々が果たしていかれるかという、より根本的な教育上の問題がございます。  大臣も御承知のとおり、現在この教員養成大学の大学院について申しますと、既存のものが二校ございますね、恐らく将来はふやされるに違いないと思うわけでありますが。この既存のもの以外に、今度は教員養成を専門に心がけた大学院を設置するという意味は、既存の教員養成あるいはそういう学部を置いた大学に大学院を設置するのとは別の意味がなければ、今回のような大学院大学を新たに設けるという意味はなかろうと私は思うのですが、その辺はどういう辺に意味があるわけでありますか。
  271. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 既設の教員養成大学の充実に努めていかなければならないことはもとよりでございますし、御指摘のように本年度の法案の中にも愛知教育大学に新たに修士の課程を起こそうというお願いをしているわけでございます。  ただ、実態を見てまいりますと、たとえば東京学芸大学、これは入学定員が二百七名、大阪教育大学、入学定員百二十四名で修士の大学院を持っておりますが、現職教員の受け入れば望ましい、それは私たちもそう指導しておりますし、大学側も必ずしもそのことを否定しているわけではございませんけれども実態を見ると、五十二年度現職で在学している者は両大学を通じて十名でございます。こういった状況はもちろん改善されていってしかるべきだと思いますし、もっと受け入れてほしいとは思いますが、しかし同時に、こういった既設の大学の大学院の場合には、学部の卒業生に対してさらに高度の養成を積み上げていくということにやはり重要な意味を持っているわけでございます。わが国の教員養成を考えていくときに、学部レベルで養成がとまるのではなくて、やはり修士の課程までを通じた養成ということを考えていくことが、一つの重要なこれからの課題になっているわけでございます。今後、各大学に逐次それぞれの大学の方針に従ってそれを考えながら大学院を設置をしていくということは方向としては考えておりますけれども、それはなかなか短日月の間に進むことでもございません。一方、やはり現職の教員に対して積極的に大学院レベルにおける研さんの道を開くということは強い要請としてあるわけでございますから、そのために新しい大学をこの際二つつくり、そこで積極的に大量の現職教員の受け入れを行っていこうということでございます。いずれにしても、既設のものも新設のものも両々相まって整備をしながら進んでいかなければならないことはもとよりでございます。
  272. 土井たか子

    ○土井分科員 既設のものも新設のものも両々相まって整備をしていく、これは理想でありますけれども、現実の問題からすると、既存のものの整備がまず先になさるべき問題ではないかというのはだれしもが考えるところでございます。これはいまさら申し上げるまでもございませんが、国大協の方でも、総合大学の中に設置されている教育学部の諸条件が既存の教員養成大学について申しましても大変劣悪だということが他の学部に比較して言えるのではないかというデータもはっきり出ております。そういうことに対しての改善の方が先ではないか。それよりも先にこの新設の学校の整備を考えるということは、どうも問題に対する逆立ちした取り扱い方ではないかというふうに思われるわけでありますが、その辺はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  273. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 国大協の教員養成の問題を検討している委員会が、御指摘のように他の学部に比較した場合に教育学部の教育研究の諸条件は劣悪であるという御指摘をなさったことは承知しております。また、当初この構想が出てまいりましたときに、国大協の側に既設の教育系の大学学部との格差を生ずるのではないか、そちらの方をほっておくのではないかという懸念のあったことも承知しております。  しかし、現実に私どもはそういうことではなくて、既設の教員大学あるいは学部の充実に逐年努力してきておりますし、またこれまで設置をいたしておりませんでした修士の課程についてもやはり条件の整ったものについては考えていくということが愛知教育大学の例等を通じて明らかになってきておりますので、国大協は、私どもがむずかしいことではあっても新大学と既設の大学とを並行して積極的に整備をしていこう、そういう方針を持っていることについて十分に理解をしていただいたと思います。また私どもはそのとおり努力をしてまいりたいと考えております。
  274. 土井たか子

    ○土井分科員 既存のものとは違った教員養成大学というものの設置において種々考えられることは、技術的な面と申しますか、いろいろな組織運営上の問題でまだまだ問題は山積しているわけでございますけれども、一市民や一国民の立場から見てどうしてもこの点は気にかかるという問題がございます。それはやはり既存のものと違ったこういう教員養成を心がけた大学が新設されるということになりますと、ここで教育を受けた学部の卒業生、大学院の卒業生は教育の現場においては特に優遇される教職員になるのではないか、また教育の現場ではいわゆる他の大学を卒業したよりもエリートという役割りを果たすべく考えられている人たちを養成するということになるのではないか。実は、そうなることによって私は教育の基本という問題が大変壊されていくことを懸念いたします。というのは、企業とは違いまして私は、教育場所においては国が教育の現場におけるエリートというものをつくるための教育をなしては絶対ならない。このことは教育基本法から考えましても当然基本にある問題でございますから、その点が一国民や一市民の立場からすると新しくつくられる大学に対して最も素朴に抱いている大きな疑問ではないかと私は思います。このことに対して、そうではないということをはっきり答え得るようなあかしというのはどういうところでつくられるか、このことをひとつお答えいただきたいと思います。
  275. 砂田重民

    砂田国務大臣 いろいろな方からその御懸念の御表明があるわけでございます。基本的に、教育基本法の精神からして教員の中にそういうエリートが設けられることは絶対に許されない、私も同感でございます。大学局長が既存の教員養成課程を持ちます大学の充実、大学院をつくっていく、そういうことを両々相まってとお答えをいたしましたのもそのことを踏まえての御答弁でございました。新しく設立されますこの二つの教員大学を卒業いたしましたその教員について特別の待遇をするというようなことは絶対にいたさない、それは非常にかたく私どもは心に決めてございます。いま、あかしということをおっしゃいましたけれども教育基本法の精神を絶対に過たないという私の決意をあかしに御理解をいただきたいと思います。
  276. 土井たか子

    ○土井分科員 文部大臣のお気持ちやそして現在この大学についてお考えになっている基本的なお考えはそのとおりでありましょうけれども、実際上の運用になってまいりますと、最初に御質問を申し上げたとおり現場において教育長が果たして現場の教師にそういう意味を体して対応し切れるかどうかという問題はまだまだ残るわけであります。したがって、大学の器を単に建設するので、新設の教員養成大学院大学ができるのではなくて、一つ教育全般を総合的に考えてこの大学院大学というものがつくられることが今後教育にどういう新たな問題を提起しているのかということを考えることは私は基本的に非常に大事な問題だと思うのですね。そういうことからひとつ、きょうは入り口でございます。文教の方にも私またお願いを申し上げて、折を見てこの質問について続行させていただくということをお願い申し上げたいと思うのです。  最後に、文部大臣が御出身の場所でございます兵庫県にも関係のあることでありますからお尋ねしておきたいのは、ただいま兵庫県では県の土地開発公社が十二億八千五百万円でセミナーセンターを買収管理をいたしております。四十ヘクタールに及ぶ予定地でございますが、社町にございます。これは土地を無償提供することになるのか、有償で提供することになるのか、これは国の方がこの問題に対する対応をどのようにおとりになるかによって中身はずいぶん違ってまいりますし、県の新たにつくられる教員養成大学院大学の設置に伴って県自身の財政も違っていくだろうと思うわけです。この辺、国としては対応をどのように考えていらっしゃるかをお聞かせいただきたいと思います。
  277. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 あるいは御質問を取り違えているかもしれませんが、いま御指摘のありましたその研修センターは県の施設でございます。これは国の施設とはかかわりないところでございますからもちろん県費で行われるものと思いますが、この教員大学の用地につきましては四十ヘクタールくらいのものでございますが、これは国が適切な価格で買収をするということを私どもは考えております。
  278. 土井たか子

    ○土井分科員 そうすると四十ヘクタールについては国の方に有償で県が買い取ってもらうという立場になるわけでございますね、そういうかっこうですね。
  279. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 どういう形で国が譲り受けていくかについてはさらに県の方とも相談をしなければなりませんし、財政当局とも相談をしなければなりません。また一部借用をしていくところも途中ではあるわけでございますけれども、いわゆる無償で用地を提供していただくことは考えておりません。
  280. 土井たか子

    ○土井分科員 学校用地については、どこでも用地を取得するのに先行投資をやるのはいわばもう常識でございまして、そうしないと土地が確保できないという事情がございますけれども、一般に小中学校の場合は、学校建設というものが決定してから用地についてはその取得をはっきり確定させるというかっこうに手続上なっているのかどうか、そのあたりはいかがでございますか。
  281. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 もちろん大学の場合には大学の創設についての国の御方針、つまり国会での御審議が進みまして、法律で大学をつくるということが明らかになった段階で用地の取得等に入っていくべきものでございます。しかしいわゆる地元の県において、それに先行して土地の取得をし造成をし諸準備を整えるということは、新設医科大学の場合等に一般に行われていることでございます。
  282. 土井たか子

    ○土井分科員 そうしますと、国会での法律改正についての審議が完了いたしましてそして一部改正案が成立しないと、いまそのお考えの問題は具体的に動かない、このように理解させていただいてよろしゅうございますね。
  283. 佐野文一郎

    ○佐野政府委員 兵庫県による土地の先行取得なりあるいは造成措置というのは、それは進められてしかるべきことであろうと思います。ただ事柄が非常に重要な事柄でございますから、したがって兵庫の場合には学生の受け入れば五十五年からというようなかなり先のプロジェクトでございますけれども、本年の段階でまず大学を開学するというような形でかなり早目に国会の御意思を伺うという措置をとっておるわけでございます。
  284. 土井たか子

    ○土井分科員 もう与えられました時間が参っておりますけれども、いまのはちょっと私の質問に対する御答弁ということにはならないと思います。いまの四十ヘクタールについては国の方で買い上げるということが内々考えられておりますけれども、具体的にそのことが行われるのはそれはまだ国会審議で一部改正案が成立してから後の話でございますから、いわばそういうのは腹案であって、現実にはそれはまだ実効性を持ち得ないということだろうと思って私はお伺いをしているわけです。大臣そうですね。そのことははっきり確認をしておきます。
  285. 砂田重民

    砂田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。新構想によって兵庫県の社町にできる教員大学は、いままで県に用意をしていただいているような土地を取得するということは、教員大学の法律が成立して初めて国としては行動ができることでございますから、その上で土地の問題も県と御相談の上で処置をするわけでございます。
  286. 土井たか子

    ○土井分科員 それでは、さらに文教委員会の方での質問予定もお願い申し上げることにして、本日はこれにて終わります。
  287. 砂田重民

    砂田国務大臣 私も大変勉強になる点を幾多御指摘をいただきました。文部大臣の御出身地ということでございましたけれども、お互いの出身地でございますから、県に迷惑のかからないような方法で、また、いろいろ御指摘のありました点も文部省としても整備をいたしまして準備を完全にいたしたい、かように考えます。
  288. 片岡清一

    ○片岡主査代理 以上で、文部省所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明二日午前十時から開会し、大蔵省所管について審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会