○
吉田分科員 余り確たる
方針を打ち立てないままに推移を見守っておられるというふうな感じに受け取りますが、私
どもの考えでは、やはりローマ字というものは大変重要な
役割りを果たし得るものではある。しかしそれは相当慎重に配慮して教え込まないと、先ほ
ども申しましたように非常に大きな弊害を生ずる。
私
どもも子供のころにこのローマ字というのを、たしか下敷きみたいなものに書いてありまして、それを覚えたら、非常に図式的ですぐに覚えられました。かたかな、ひらがなと同じように、これほど覚えやすいローマ字というのがあるものか、何かそれで書いてみると、
日本語が急に英語的になったようで、
一つの感動も覚えました。非常に覚えやすい図式的な現在のローマ字、特に訓令式はそのまま幼少年時代に
日本人の頭にこびりついてしまう、その幼少年時代にこびりついたものは永久にそれが影響を与えていくわけでありまして、それが今日英語を読んだり語ったりするのに非常に弊害を生じているというふうな気がするわけでございます。
そこで、まず町の様子を見ますと、いま
大臣みずからもおっしゃいましたように、ほとんどがヘボン式を使っているようでございます。たとえば不二家というのはFUJIYAとこうなっております。決してヘボン式の言に始まっていないわけであります。huで書きますと、hujiyamaというのがヒュージヤマというふうにしか外国人には読めない。これでは通用しないものでございますから、お互いに生活の知恵でヘボン式を使っているようでございます。
そこで、私はそういう点をさらに詳細にいろいろ聞いてきたわけでございますが、siですね、これを訓令式ではシと読ましておりますけれ
ども、これは英語で発音いたしますと、スにイをつけたスィだそうでございますね。私もローマ字の弊害でどうも発音がうまくいかない方でございます。したがって、たとえばsick、これは本式に読めばスィックだそうでございまして「病気の」という訳になりますが、これを
日本人はそのまま全部ローマ字式に読んでシック、その病気というのがシックと、
日本英語になってしまっているわけでございます。これが諸外国では全く通用しない。
それから、銀でございますけれ
ども、sil−ver、スィルヴァーですが、これが全部ローマ字式にシルバーで押してしまって、
日本では銀はシルバーということになっておりますが、これも全く通用しません。
一番笑われるのは、座るという
意味のsitでございますけれ
ども、これは英語ではスィットと読まなければならないけれ
ども、われわれはこれはもうシットになります。だから、ハロー・ウエルカム・シット・ダウンとか——シット・ダウンと言うと、トイレへ行って排せつする行為をシット・ダウンと言う。ですから、客を迎えるなり「トイレへ行って用を足してこい」こう言うものですから、
日本人というのはばかじゃないだろうかと外人は驚くようでございまして、この辺にも大変な不便が生じていると思います。
したがって、今後
日本人がそういうことに苦労しないで済むためには、先ほどシゲタミのシはshiだとおっしゃいましたけれ
ども、やはり
文部省みずからが、
文化庁自身がシというローマ字はshiが一番適当なんだというふうにきちんとお決めにならないと、いまおっしゃっているように、まあ訓令式でもヘボン式でもどちらでもいい、適当に使っていればいいだろうというふうなことでは、これはもう
国民にとりまして、まして幼少年の
子供たちにとりましては迷惑千万なことでございますので、いろいろそういう角度から見ても、シという発音をローマ字に直すこと
一つをとりましても、この際それはshiに変えるべきではないか。
それから同様の弊害が随所に出ておりまして、時間の
関係でことごとくを申し上げるわけにはまいりませんけれ
ども、たとえばti、これをチと読め、こう訓令式で教えているわけでございます。これは英語ではどうしてもティでありまして、チにはならないようであります。したがって、たとえばチケットと言っております。切符のことでございますけれ
ども、これはtichetでありまして、ティケット、それがチケット、チケットということで、
日本では通用いたしますけれ
ども、もう一歩外に出れば何のことか全然わからないという弊害が生じております。したがって、チというこの発音もchiというふうに変えるべきではないか。ローマ字で並べてみますと、確かにタ行にchが入るということはなかなかいやなことではございましょうけれ
ども、しかし後で迷惑するよりはむしろそのように教えた方がいいのではないか、私はそう思います。ツもそうであります。tuではツにならないようでありまして、tubeはチューブでありまして、ツとするためにはtsuにしなければツとしては今日英米語社会では通用しないと思われるわけでございます。
その他、特にハ行のヒュでございますけれ
ども、これが非常に混乱をいたしております。先ほど申しましたように、フという発音はhuではなしにfuにしてやらないとこれはヒュになります。ヒューマンのヒュになってしまいます。したがって、これはやはりfuに変えるべきではないか。
それから一番おかしいと思いますのは、われわれの持っております一万円、あるいは千円でもそうでありますけれ
ども、円がyenとなっています。これはどこから始まった
言葉か知りませんけれ
ども、こればイェンでありまして、イェンで結構ですが、現に円高と称されておりますわれわれの通貨が訓令式を使っておりませんで、yenというのでエンと読ませているわけでございますから、考えてみましたら、
文部省が教えながら、しかも役所は、大蔵省はまず訓令式を使っていない。国鉄へ参りましたら、運輸省の方は全く訓令式を使っておりません。全部ヘボン式でありまして、私もそうかなと思ってきのう東京駅へおりてじっと見ましたら、新幹線と書いてありますが、畳でございます。丸の内のチはchiでありまして、これは
文部省の威令行われないことおびただしいと思うわけであります。
余り長々と同じようなことばかり言ってもおかしゅうございますが、ともかくそういうふうに現に政府みずからの各出先で使っておりますのがヘボン式なのでございまして、
文部省がいつまでも訓令式にこだわるのはまさに時代錯誤ではないかというふうに思いますが、
大臣はいかがお考えでございますか。