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1978-03-03 第84回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三日(金曜日)     午前十時一分開議  出席分科員    主査  伊東 正義君       田中 龍夫君    中島源太郎君       山下 元利君    岡田 利春君       栗林 三郎君    島本 虎三君       清水  勇君    飯田 忠雄君       権藤 恒夫君    兼務 井上 普方君 兼務 横路 孝弘君    兼務 坂口  力君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         環境庁長官官房         審議官     石渡 鷹雄君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林大臣官房予         算課長     田中 宏尚君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君  分科員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  米倉  輝君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      平河喜美男君         運輸大臣官房安         全公害課長   中島 眞二君         建設省住宅局住         宅建設課長   国吉  忠君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   大澤  融君     ————————————— 分科員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     島本 虎三君   権藤 恒夫君     飯田 忠雄君 同日  辞任         補欠選任   島本 虎三君     清水  勇君   飯田 忠雄君     権藤 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   清水  勇君     後藤  茂君 同日  辞任         補欠選任   後藤  茂君     栗林 三郎君 同日  辞任         補欠選任   栗林 三郎君     上原 康助君 同日  辞任         補欠選任   上原 康助君     岡田 利春君 同日  第一分科員井上普方君、第二分科員横路孝弘君  及び第五分科員坂口力君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  (農林省所管)      ————◇—————
  2. 中島源太郎

    中島(源)主査代理 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  本日、主査伊東正義君の出席がおくれますので、その間、主査の指名により、私が主査の職務を行います。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算農林省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島本虎三君。
  3. 島本虎三

    島本分科員 大臣林野庁長官おそろいでございまして、きょうお二人に篤と農林行政のことについてひとつ私の意見を聞いていただいて、そしてまた御教示を受けたい、こう思っておるわけであります。  私、大臣にまず考え方を聞きますが、いま営林局の統廃合の問題、このような問題で大いに北海道は揺れているのであります。しかし、私はこういうような形式の問題じゃなく、林野行政そのもの内容の問題じゃないか、こう思っているのでありますが、しかし、形式を揺する余り、内容が粗略になってはとんでもないことになる。これこそ画竜点睛を欠くことになるおそれもある。この際、こういうようなやり方をもう一回考え直して、もう一遍熟慮の上、すっと通るようなかっこうで、出せるものなら出す、出せないものは引っ込める、こういうような英断があってしかるべきじゃないかと思いますが、ひとつ大臣のこれに対するお考えをまず先に聞かしてもらいたいと思います。
  4. 中川一郎

    中川国務大臣 北海道国有林のみならず、国有林全体が、最近、収支が悪くなりまして、経営困難というような事態でございます。  そこで、詳細はまた後ほど申し上げますけれども、国の財投資金を大幅に導入したり、あるいは林道造林等にも一般会計を入れなければならないというような非常な事態になっております。わけても北海道国有林経営は悪化いたしておりますので、この際、こういった国有林実態、特に北海道実態を踏まえて、国有林野自体経営合理化もいたさなければならない。そういうところの一環として、北海道にありましては五つ営林局管理運営してまいりましたが、林野庁行政の中において果たして北海道五つ要るであろうかという問題、特に北海道の中におきましては国の機関道行政と一体化されておりまして、北海道には一局のものが多い。こういった他行政機関との円滑な運営のためにも、五つに分割しておることがむしろおかしいというようなこともありまして、この際、五つ一つにし、残りの四つを支局として実態上の仕事は変わらない。ただ、他の行政と重複いたします管理部門だけは一つにまとめたい。こういうことでやったのでありまして、今日の国有林、特に北海道経営からしても、あるいはまた他の行政とのつり合いからいっても、ぜひともこれはやるべきことである、こう思いますので、島本さんのぜひともの御理解をむしろお願いしたい、こういうことでございます。
  5. 島本虎三

    島本分科員 まさにそれは試行錯誤じゃないか。  その第一としては、この林木育成職員定員二百十二名のうち九十名を一条定員として、本年は二十五名削減の意向の計画を持っているようであります。そして同時に、五十三年度の国有林野事業特別会計国有林野事業勘定予算の概要を見ましても、「また、林木育種事業のうち基礎的な原々種生産等については、一般会計による事業実施を図る。」そしてその内容等もずっと詳細に説明してあります。一読いたしまして、そのための予算も、林木育種場運営費として一億三千八百万円を組んでおられるのであります。  こういうようにして見ますと、その最後には、「林木育種場において実施する業務のうち、林木育種に関する試験、研究技術開発指導、原々種の増殖等事業は、試行錯誤的であり、かつ採算にのりにくく、さらに、これらの事業効果は、国有林民有林を通じて広く一般に及ぶところから、これら事業実施に必要な経費一般会計の負担とする。」こうあるわけであります。会計をどっちにやっても試行錯誤であるというならば、初めから林野庁試行錯誤をやっていた。そしていま改めてまた内部で移行さしたりすること自身が、これは試行錯誤につながりはせぬか。実態にどう反映してどのような効果を生むのか、まさにこれは林野長官試行錯誤だ、私はそう思うのですが、長官どう思いますか。
  6. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生指摘になりましたように、林木育種場につきましては、来年度二十五名の一般会計への移替を考えております。  先生いま試行錯誤とおっしゃいましたが、これは行政試行錯誤ということではなくて、原々種の研究という問題につきましては、ちょうど研究行政との中間のような仕事でございます。したがいまして、そういう仕事をやる場合には、あれをやってみたりこれをやってみたりしながら、原々種を見出していこうということでございまして、そういう意味での試行錯誤でございまして、決して行政試行錯誤であるというふうにわれわれ考えておりません。  それからもう一点、いままで特別会計で抱えておりました人間一般会計に移替することはおかしいじゃないかという御指摘でございますが、この仕事そのものが、本来であれば民有林行政を含めました日本全体の林政に協力する一つの大きな仕事でございますし、そういう意味から、本来の姿に戻すということ、特別会計が余裕がございました時代は特別会計でやってまいりましたけれども、本来、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、特別会計国有林財政も非常に厳しくなっておりますし、特別会計特別会計らしく生きていくためには、そういう一般会計的な行政については一般会計の方から御負担いただいて今後とも進めていこうということで一般会計の方に移替したということでございます。
  7. 島本虎三

    島本分科員 しかし、やはり行政試行錯誤である。同じ職場で、職員が片一方は一般会計、机を並べる隣が今度は特別会計と二分して、処遇や労働条件の決定や機能に違いの生ずること、それは人間管理融和に欠けると思いませんか。まさに違和感亀裂が生ずる。それはチームワークに混乱を生ずる。こういうような状態にして業績がよけい上がります、こういうようなことには決してなりません。もし上げるならば、一般会計への繰り入れで、特別会計の中でいままでどおり充実した仕事をやらせる、これの方が効果が上がるではありませんか。両方分けて、隣の人が農林省、こっちの人が特別会計のあなたの方、こういうようなことになって、それでいろいろと違いを生じさせるようにしておいて、あるいはまた何か差別をつけるような、こういうようなことにしておいて、これに違和感亀裂が生じないということにならないでしょう。まず、人間管理融和に欠ける、こういうような行政をいまあなたが実施しようとする。これは私は一般会計繰り入れで、特別会計の中でやるという方がよほどりっぱな業績を残すことにつながる、こう思うのであります。したがって、私はこの問題ではどうも納得しかねるのでありますが、長官、このようにしても差し支えないのですか。
  8. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほど大臣から御説明いたしましたように、ことし国有林特別会計の方に造林なり林道なり一般会計から四十億ほど繰り入れていただく予定になっておりますけれども、この育種仕事につきましては、先ほど申し上げましたように、これは本来、国有林特別会計事業とタイアップしながらやっていく仕事というよりも、本来的性格として、たとえば農業の方にもこれに似たようなそれぞれの農業仕事がございます。そういうのと同じような林業関係林木育種仕事でございますので、これについてはやはりわれわれとしても一般会計で実行していただくのが妥当ではないかというふうに考えておりますし、先生いま御指摘ございました職場でのいろいろな問題につきましては、これは林野庁本庁そのものもそういう混在になっております。そういう観点から、私ども林木育種場の今後の運営につきましては、その辺につきましては十分そういうことのないような対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  9. 島本虎三

    島本分科員 そして、この身分は四月一日から移行する。後もう約一カ月後にそれを実施する計画であります。しかし、いま国会の中には国有林野事業再建整備特別措置法、これも社会党から出しているのであります。その中で広範な林野行政林業全体の論議、これを待って実施しても遅過ぎるということはないではありませんか。一方的にやってしまって、そしてまた過去の行政試行錯誤であった。試行錯誤の繰り返しをやっちゃいけませんよ。少なくとも国民のために国の林野事業実施する責任者としては、急いでやって試行錯誤だ、再びこういうようなことを銘記するようなことがあってはならないと思うのであります。したがって、林木育種場の問題としてもっと慎重にこれを考えなければならない、こう思うのであります。急いでやって育種専門官、こういうようなのを全部集めるというか支場に置かない計画、こういうようなことで果たして実効が上がりますか。私は、いままでまさに行政は錯誤であったということを一つ一つ例を挙げたい。しかし、それでも内容として機構をこういうふうにいじっただけで後はうまくいく、すっきりいく、長官、そういうふうに考えているのですか。
  10. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほど申し上げましたように、育種場の問題につきましては、国有林財政の問題ということよりも、本来の育種事業あり方ということでここ数年専門家の方々に検討していただいた結果、そういう御意見もいただいておりますし、私どもといたしましても、育種場育種場らしいあり方をもって今後運営していきたいという考え方から、いま申し上げましたような形で五十三年度から実行してまいりたいというように考えておるわけでございまして、先生指摘いろいろ組織内の融和の問題等々につきましては、今後の運営について私どもその辺は十分配慮しながら対応してまいりたいと思っております。
  11. 島本虎三

    島本分科員 やはりやるべきことをやって、そして本当に木をかわいがって十分手入れをしてやって、そして年次別に収穫を上げていく。いまの林野行政は、山は荒れっぱなしじゃありませんか。そういうふうにして中央機構だけいじって、どうしてよくなりますか。そのままにしておいてどうしてよくなりますか。まさに試行錯誤をもう一回あなたは繰り返すことになる。  論より証拠ですから、昨年の十一月十九日から二十日までの二日間、札幌営林局管内札幌定山渓苫小牧の各営林署造林地を私は調査さしてもらいました。私のほか同僚二名であります。しかし、その結果として、つる切り実施しないために成長を阻害されて、またそのつるによって造林木が破損されているその実態、写真に撮ってありますが、それはごらんになったでしょう。同時に、除伐を実施しないために造林木成長が阻害されて、徐々に造林木が消滅しつつある実態、これを目の当たりに見てまいりました。そして、大面積皆伐、この大面積造林地が全く成林の見込みのないままにいまなお放置されている。これは行政の手抜かりじゃありませんか。そして、下刈りを手抜きしたことによって造林木が消滅したままになっている実態。なお許しがたいのは、林野庁としてこの水源涵養保安林がその機能を果たしていない。定山渓のあの百六十一林班、この状態をどう見ますか。それは札幌市民飲料水をとっている豊平峡ダム、その上流にある国有林実態であります。もうまる坊主にされているじゃありませんか。そしてダムに土砂がたまって、湛水能力が減退している実態じゃありませんか。こういうようなことをしておいて、そしてきちっと制度だけを整備して、これで実効が上がりますか。なぜこのつる切りでも除伐でも大面積皆伐そして下刈り、こういうようなものをきちっとやらして、そして木を大事に生育させないのですか。なぜ手抜きをするのですか。なぜ札幌市民のための水がめである豊平峡ダム、この上流の大皆伐をやって、それは海抜が八百メートルぐらいの個所で、その後にはもう何を植えても寒さと風で生えないでしょう。こういうような試行錯誤をやっている。そして行政だけ中央でやって、まあ恐らくよくなるだろう。それよりも、つる切りをさせる人夫をなぜ出さないのですか。除伐をさせる、こういう計画をなぜしないのですか。  こういうようにして見ると、人を使ってきちっとすればできることをやらないで放てきしたまま、ほったらかしにしたままで山荒らしをさせている。その実体が林野庁じゃありませんか。営林局じゃありませんか。もっともっと機能を充実させてやらなければならないのを、それを縮小して統合する。まさにこれは反対ではありませんか。私はこれを見ていまだに怒り心頭に発しているのでありますが、これがいわゆる試行錯誤指導じゃないですか、長官
  12. 藍原義邦

    藍原政府委員 先生指摘のように、北海道国有林、いま御指摘になりましたのは札幌営林局管内でございますが、確かに不良造林地があることは私どもも否定いたしません。  その原因を私どもずいぶん追求いたしておりますけれども、まず第一に、北海道がいまのような状況になりました大きな原因として、昭和二十九年でしたか、あの洞爺丸台風が吹きまして、北海道中心苫小牧札幌、旭川、帯広を中心に相当な風倒木が出た事実がございます。その風倒木を処理いたしまして、その跡地すべてが大面積皆伐的な形になってしまった。それに関連しまして、たまたま昭和三十年代の景気の上昇に関連いたしまして木材の不足という問題がございました。そういう時点で、国民の需要にこたえるために国有林が材木をどうしても出さなければいけないという観点から皆伐作業というものをとりまして、北海道でもその作業をとったわけでございます。従来、北海道は択伐作業的な方法伐採をやっておりましたけれども、そういう事態が発生しましたので皆伐方式をとりまして、その結果いま先生が御指摘のように、一部の地域については確かにその皆伐方式を大面積でとったことの技術的な誤りといいますか不手際があったことは、私どもも正直に認めております。そのために、昭和四十年の終わりになりまして、やはりこれからは北海道らしい造林林業技術北海道国有林経営しようということで、過去のそういう不良造林地につきましても十分調査いたしまして、今後その改良を積極的に図ると同時に、伐採方法につきましても、六百メートル以上の高いところではもう皆伐はやらない、あるいはそれ以下のところでも小面積の皆伐にとどめていくという形で事業量を大きく縮減させる方向で、今後の国有林をさらによくする方途を考えておる次第でございます。  したがいまして、いまおっしゃいましたような問題につきましては、早期に対応いたしまして、健全な造林地になるように、そして標高の高いところでもうすでに再造林等の不可能なところにつきましては、今後の天然更新がスムーズにいくような技術によりまして林地の回復を図っていきたいというように考えておる次第でございます。
  13. 島本虎三

    島本分科員 しかし、そのうちで一つ人員を増加してという言葉は出ませんでしたね。いまでもみんな一生懸命やっているのです。そして、なお一万七千ヘクタールにわたっての不良造林地が放置されたままになっているのです。なぜ人員を増加して必要な配置につけて、そしてつる切りでも除伐でも下刈りでもやらせないのですか。その経費を惜しんでいるために、みんな山は荒れっ放しになっているでしょう。苫小牧営林署管内の支笏湖のそばにあるあの天皇手植えアカエゾマツ、手当てをきちっとしてあって、雑草も生えないままに、りっぱに二メートルくらいに伸びているのに、そのそば苫小牧営林署、それが同じ時期に植えた松は、あたりつる雑草のために、ようやくそのお手植えの松の半分くらいしか育っておらない。そして、聞いたならば、それはやらなくてもいいんだ、太陽の方に頭さえ出ていれば伸びるから、あとはつる切りも何もやらなくてもいいんだ、これが営林署方針だと言うじゃありませんか。いい木がそれで育つのですか。山を荒れさしているのが皆さんの試行錯誤による方針じゃございませんか。それなのに、大臣、上の方で幾らこんなふうにやったって、下の方で同じようなことをやらしていたら、山は同じですよ。手入れさせないとだめなんです。手入れさせなくてもいいと言うんですよ。どんな木でもいいと言うんですよ。恐らくは、こういう営林署林野庁なんかだったらこれは困るじゃありませんか。なぜ人を増加して、そして山に完全に手を加えて、そしてかわいい木を育てないのですか。それをやらないのが営林署の、営林局の、林野庁方針なんですか。この点、はっきりさせてみてください。
  14. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほどちょっと申し上げましたけれども国有林全体の伐採量も大幅に縮減させております。過去においては二千三百万立方を切っておりましたものが、現在千五百万立方でございます。したがいまして、すでに三分の一近いダウンになっております。それに引きかえまして、人員要員につきましては、さほどダウンいたしておりません。ちなみに北海道で申し上げますと、昭和三十八年に定員内が一〇〇といたしますと、五十一年に八七%でございます。それに引きかえまして伐採は、三十八年を一〇〇にいたしまして六四%。造林につきましては、三十八年を一〇〇にいたしますと、六割、六〇%でございます。このように、伐採量なり造林量が大幅にダウンしているにもかかわらず、やはり要員についてはそれほど要員が減っておらない。そういう観点から見まして、私どもも現在の要員で今後の、いま申し上げましたような造林地手入れ、あるいは要造林地植栽、さらに改植その他につきましては、現員で十分やり得るという判断をいたしておりますので、これ以上の増員というものは現時点では考えておらない次第でございます。  それから、天皇個所につきましてちょっと申し上げておきますと、確かにこの天皇陛下がお植えになりました周囲のところは、過去において植樹祭をやった個所でございまして、ここはある意味で公園的な取り扱いにもせざるを得ないとわれわれは考えております。そういう意味から、ほかの造林地に比べまして下刈りを八年間に十七回やっておりますし、それから施肥を五年間にわたってやっております。ほかの山もこのようにやればよいではないかという先生の御指摘かと思いますけれども、やはり林業と申しますものは一つ企業でございます。したがいまして、やはりその企業採算の範囲内で、そしてわれわれが考えております山になるような技術投下あるいは財政資金投下というものを考えながらやるべきであって、公園になるような、本当にすっきりしたようなところまでやらなくてもいいのではなかろうかという判断から、私どもはほかのものにはここまでの手入れはいたしておりませんけれども、それによってその山が今後悪くなるようなことは、私どもはないと思いますし、さらに先ほど申し上げました不良の造林地につきましては、過去のいろいろな技術的な問題がございましたので、その辺については今後十分保育をいたしながら、あるいは改植改良をいたしながら対応してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  15. 島本虎三

    島本分科員 現地に行きますと、やはり責任者が出てきて説明してくれるのです。どうしてこういうふうな、つるやよけいな木を切らないのですかと言ったら、これは太陽に向かって顔さえ出していれば、それはもうすでに側圧は受けない、したがってあたりのものを刈る必要はないんだ、刈らせないんだ、刈らなくてもいいんだと言うんだと。それなら手入れしたものは伸びるのに、刈らせなくてもいいということだと、植えた松がお手植えの松より半分も伸びないんですよ。それがいいんですか。そして、人を加えればやれるのを、方針としてそれをやらせないというのです。そうして、その中で積極的に手を加えればいいのに、苫小牧では、放置しておけ、こういうような指導をなさっている。同時に、現場の労働者意見、こうしたならばいいじゃありませんかという意見は全然聞いていない。こんなファッショ的なやり方が山を荒らしているんですよ。  私は、そういうようなことからして、営林署の、営林局の、林野庁のいままでの指導そのもの試行錯誤であった。そして、ちょっとした機構ぐらい変えたって、その姿勢が直らない限りは、山の緑はよみがえらないのだ、これだけは強く指摘しておきたい。そして、長官大臣に、これはよく調べた結果ですから、試行錯誤というか便宜主義というか、これが指導者かと思われるような実態があります。国有林経営姿勢、これは問題だということです。これは札幌営林署長が一緒に調査に、その場所へ来てくれました。そして、調査した際に、これは風致林であるから、ブドウづるであるとかいろいろな雑木があってもそれは切らせないんだ、ブドウやコクワを残してほしいという市民の要望があるので、つる切りはできません、こういうふうに回答した。それはなかなかいいな、こう思っていたら、その辺に全然道路がない。林道はもちろんない。そして、それならばどうして市民のために林道なり通路なりをつけないのか、こう言うと、歩道をきれいにつくると、市民が大ぜい山に入り込んでくるので困る、こういうふうに回答しているのです。これは市民のために残しておくと言いながらも、市民が入っては困る、まさに試行錯誤も最たるものじゃありませんか。こういうふうなめちゃくちゃな指導をするところに林野行政の誤りがある。こんなことは、ちょっとした小手先の機構いじりでは決して直るものではない。私は、いまこそ、北海道営林局五つのものを一つにして、単に支局にするような統廃合の問題、こんなことよりも、山に人を入れて、これをきれいに保守する方がよほど先見の明があるんだ。再び試行錯誤を繰り返してはならない、私はそう思うのであります。いまのような指導がなっていないということはわかるでしょう。これが下部ですよ。そして、私のほかに参議院議員の目黒今朝次郎さん、そして島田琢郎さんも一緒に行って、これを聞いて、三人とも唖然としているのです。こういうようなことに山は任されない、この点を強く感じてきたわけであります。もう一回こういうような点を考え直して、ひとつ行政措置に手を入れる必要を大臣は感じませんか。
  16. 中川一郎

    中川国務大臣 国有林経営が悪くなった理由にはいろいろあろうと思います。木材価格の動向とか、御指摘あったような経営姿勢が悪いという点もあったかと思います。しかし、労使関係が非常に乱れて、十分な労務管理ができておらぬということも一般国民の大いな批判のあるところでございます。そういった点も配慮して、この際、総洗いをして、あるべき姿にすべきだ。たとえば、仕事ができないのは、人が足りないからではなくして、むしろ直営直用というような非能率的なやり方に対する国民の批判もある。単なる増員の問題でなくて、事業やり方そのものにも批判がある。こういった点を総洗いをして、正すべきは全部正すという意味から言っても、国有林営林局は四つあるという姿勢は、これまた国民市民の批判の的であるということも勘案いたしまして、御指摘の点もわれわれ反省いたしますが、われわれが提案いたしております営林局の統合についても御理解をいただきたい、こう思う次第でございます。
  17. 島本虎三

    島本分科員 最後でありますが、直営直用はむだだ、しかし請負に回して賃金を値切って、そして植える松もそのまま植えないで焼いてしまう、こういうふうなことが市民の批判がそこに集中したというのも事実でありまして、一がいにそれは言えないのであります。今度の機構改革の面でも、いろいろ労働組合に行き過ぎがあると言うけれども、いやらしいですよ。あなたが野にあったころに、林野退治をおれがやってやるんだと言って、そしてあなたが大臣になったらすぐ縮小をやる。したがって、その顔はまさに鬼の笑い顔のように映るのですよ。心からこれを警告して、注意を促して私の質問を終わります。
  18. 中島源太郎

    中島(源)主査代理 清水勇君。
  19. 清水勇

    清水分科員 四十年代以降の動向を見てみると、国内の木材総需要量は、四十年の七千万立方から、今日では、つまり五十二年では、約一億立方にふえております。私がここで問題にしたいのは、この間外材の割合が需要の二八・六%から六五・八%に倍増をするということであります。何が一体このように急激に外材の大量輸入という事態を生んだのか、最初にこの点の端的な説明を求めておきたいと思います。
  20. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生指摘のように、確かに外材の輸入量が全体の需給に占める割合が非常に高くなったことは事実でございまして、現在六五%ございます。これは御存じのように、戦前日本では木材の需要というものの半分が薪炭材、半分が建築用材でございました。そのために、日本には建築用の樹木を育てる造林地が比較的少なかった。主として薪炭林が非常に多かったわけでございます。それが戦後昭和三十年代の初めごろまではまだ薪炭材が使われておりましたけれども、燃料革命によりまして逆にだんだん薪炭材が使われなくなってしまった。一方、戦後の復興あるいは経済の成長ということによりまして、木材の需要というものが非常に伸びてまいりました。ところが、それに見合うべき造林地というものができ上がっていないということで、どうしても国民の需要にこたえるためには外国から材木を入れなければ足りなかったということ、そしてその需要がどんどん伸びてまいりまして、現在、日本でも三十年生未満の造林地が約八割でございます。したがいまして、今後これから、だんだんと国民の期待にこたえる造林地ができ上がってまいりますけれども、いまの時点ではまだその需要に見合うだけの造林地ができ上がっていないということで、国民の需要にこたえるためにはどうしても外材を入れなければならなかったという事態からこのような事態になってきたということでございます。
  21. 清水勇

    清水分科員 どうも私は違うのじゃないかという感じがしてしようがない。いま言われたような事情もあるかもしれませんが、率直に言うと、とりわけ過去の高成長時代の無計画伐採、言葉をかえて言えば乱伐といったような状況が実は国産材の供給量というものを悪化をさしたり減退をさせているのではないか。無論、政府も経済成長に見合う需要の伸びというものは当然過去にも見込んでいたのだろうというふうに思います。しかし、需要が急激に伸びる場合、自然成長量に見合う伐採だけでは不足するということは私も理解をいたしますけれども、それにしてもこれほど、つまり三分の二というような大きな量を外材輸入に依存せざるを得ないということは、私は非常に異常な事態だと思うし、また政策的にも落第と言わなければならないのじゃないか、こんな感じを持たざるを得ないわけなのであります。そこで、これまで一体どのような計画をもって需給のバランスを確保しようとしてきたのか、この辺を説明をしていただきたいと思います。
  22. 藍原義邦

    藍原政府委員 先ほどもちょっ御説明申し上げましたけれども日本の森林は確かに全体の三分の二ございまして、二千五百万ヘクタールございます。しかしながら、そのうちの造林地と申しますのは現在約九百万ヘクタールでございまして、それもほとんどがさっき申し上げましたように三十年生以下の造林地でございます。戦前には、この造林地が約二百万ヘクタール程度しかございませんで、それを現在ここまで造林地を拡大してまいったわけでございます。そういう観点から私どもも、需給については、やはり戦後の日本の経済の伸展から考えて、どうしても外材に頼らざるを得ないということで、基本法に基づきます需給の見通しにつきまして、昭和四十八年につくりました需給の見通しによりましても、輸入の比率はここ当分の間六〇%以上を外材によらなければ需要に対して供給が追いつかないということで、そういう見通しを立てておりまして、われわれの見通しとすれば、ここ数年は相当量外材によらなければ、日本の森林からは国民の期待にこたえる用材が供給し得ないという判断に立っておる次第でございます。
  23. 清水勇

    清水分科員 林業のことについては釈迦に説法みたいになりますから多くは言いませんが、いずれにせよ林業は超長期性を持つ産業だ、私はそう思います。製造業のように設備投資をやればすぐ増産体制がしけるわけのものではありません。したがって、安定的な需給計画を立てて万全を期するということは非常に重要なことでありますし、とりわけその際、自然成長量を考慮に入れた伐採あるいは供給計画といったものを持つことは当然なことだと思うのです。いま六〇%以上を外材に依存せざるを得ない需給計画を立てたのだ、こう言っているわけですけれども、この辺について林野庁に政策的な怠慢といいましょうか、手抜かりがあったのじゃないか、こういう疑問を持たざるを得ないものですから、ひとつその点簡単で結構ですから答えていただきたい。
  24. 藍原義邦

    藍原政府委員 先生にこういうことを申し上げるのは恐縮でございますけれども、森林と申しますのは最終的にうまくでき上がれば、成長量に見合った伐採、これでいくのが理想だと私は思います。ところが、先ほど申し上げましたように、国民の需要に見合うほどまだ切れる山がない時代、そのときには、われわれとしては積極的に見合うような造林地をつくり上げていかなければいけない。造林地ができております間は確かに成長量はございます。しかしまだ幼稚園、中学校の生徒ばかりがたくさんおりまして、身長は伸びてまいりますけれども、一人前にはまだ使えない、したがいまして、これらが大学卒といいますか、伐期に達しましたときには使えますけれども、それにはまだ二十年ぐらいの時間がかかる、その間外材で食いつないでいこうというのが現在私どもが立てておる計画でございます。しかし、先生がおっしゃいましたように、やはりある程度たちますと間伐をやってまいらなければなりません。この間伐が必要な面積が現在二百万ヘクタール以上出ております。この間伐材をいかに利用するか、そして山をよくしていくか、これが現在私たちの一番大きな仕事ではないかと考えておりますし、現在それに向かって鋭意行政指導をし、またいろいろな施策を講じておる次第でございます。
  25. 清水勇

    清水分科員 なかなかかみ合わないのですけれども一つは、今日外材に大きな部分を依存せざるを得ないというのは、無計画な乱伐が過去にあったということも否めない事実だと思うのですね。そこで、これからの問題なんですが、特に政府は年次ごとの需給計画を確立していると思いますけれども、それに基づいて、たとえば計画的な造林をする、このことが政策的には必要欠くべからざる基本的な方針になるというふうに思うのですが、その点はいかがですか。
  26. 藍原義邦

    藍原政府委員 森林行政には、御存じのとおり森林法がございまして、それで全国の森林計画を立てますし、それに基づいてそれぞれ都道府県で立てるわけでございますが、そういう計画に基づいて造林も進めていきますし、林道もつくりますし、また伐採もやっていくという形をとっております。  ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、最近造林を進める中において林業が非常に停滞いたしておりまして、確かに最近は造林の進捗状況が必ずしも十分ではございません。しかしながら、何とかいろいろな問題点を切り抜けまして、私どもとしても所期の目的を達するようにしたいと思っておりますが、現在のところ目標は全国で大体千三百万ヘクタールの造林地をつくりたいと思っておりまして、大体九百万ヘクタールを超える造林地ができ上がっております。これも目標に対しましては七〇%を超えたというふうに思っておりますが、この点については今後さらに積極的に進めてまいりたいというふうに思っております。
  27. 清水勇

    清水分科員 そこで、造林計画に関連をしてちょっとお聞きをしておきたいと思います。  最近、林野庁は、林野会計の赤字といったような問題も踏まえて、経費の削減、コストダウンを図る、こういう立場から合理化政策をかなり強力に推進している。この中での問題点は、結果として造林の手抜きという傾向があらわれてくるのじゃないか。先ほども烏本分科員から指摘がございましたが、良質材を将来、長期かつ安定的に確保するためには、やはりちゃんとした山づくりをする、具体的に言えば地ごしらえをしっかりやる、そして植えつけから下刈り、枝打ち、間伐、こういったものもきちっとやる、そしてつる切りといったような手順もちゃんと踏む、つまり適切に行っていくという必要がどうしてもあるのじゃないかと私は思う。こういういわば基礎的な作業の手を抜くということになると、結果的に良質材も得られないし、長期かつ安定的な需給の確保という計画もそごを来すのじゃないかというふうに考えるわけなのですが、その点はいかがでしょうか。
  28. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま御指摘になりましたのは国有林の問題であろうと思います。  国有林につきましては、最近国有林財政が非常に厳しくなりましたので、何とかこれを国民の期待にこたえるように立て直さなければいけないというふうに考えて、いろいろな面の合理化を今後図ろうというふうに私どもも考えております。その中で造林の問題をただいま御指摘になりましたが、確かに先生のおっしゃるように造林についてはみっちりやらなければいけないと私ども思っております。  そこで、私どもが考えておりますのは、造林のコストダウンを図る、これはやはりこれからの林業も世界の林業の中で競争しなければいけませんから、コストダウンを図れるものはコストダウンを図っていかなければいけませんけれども、それは決して手抜きにつながるものではないと考えております。そういう意味から、われわれがいま主として国有林で考えておりますのは、実行部門ということよりも逆に管理部門が非常に肥大化しておりますので、管理部門を何とか合理化させていくことを中心にしながら、事業についてはより能率の上がるような形でやっていきたいということでございます。そのためにも、五十三年度、造林につきましては一般会計からの導入も図っていただく予定になっておりますし、財投からもお金をお借りして積極的に造林をやろうという姿勢をとっておるわけでございまして、先生が御指摘のような造林の手抜きをしようということは毛頭考えておりません。
  29. 清水勇

    清水分科員 この点は民有林の場合についても同様に対処しなければならない、こういうふうに考えておるわけですが、民有林において行き届いた造林をする、そういうことのために国が適切な指導なり助成なりを必要に応じて行うことは当然だと思いますが、どんな考えを持っておられますか。
  30. 藍原義邦

    藍原政府委員 造林事業につきましては、従来国から補助を出しておりましたのは地ごしらえ、植えつけ等が中心でございました。しかしながら、その後、先ほど申し上げましたように造林地も大分でき上がりましたので、これからはやはり保育が重点であろうということで、ただいまでは下刈り、除間伐、雪起こし等につきましても補助を出しております。こういう形で積極的に保育をしていただいて、いい山づくりをしようということで対応をいたしておりますし、特に積雪地帯の多いところでは、その点、五十三年度につきましても、補助体系について採択基準の緩和というものを考えながら積極的に造林なり保育ができるような方途を考えておりますし、今後もその姿勢で対応してまいりたいと思っております。
  31. 清水勇

    清水分科員 そこで私、この際ちょっと大臣に聞いておきたいのですが、国有林特別会計は主として払い下げの木材代金で賄っている。ところが、林業とか国有林を含めて森林、これは単に木材を供給するだけのものでなしに、大きな側面として、たとえば治山治水、環境の保全、最近では自然休養林あるいはレクリエーション施設を通じて国民の保健の向上を図る、こういうことが新しい時代の要請として課題になっている。したがって、こういう公益的機能を果たすためには何をなすべきかということが一つの課題になるわけでありますが、その点、大臣の所信をまず基本的に承っておきたいと思います。
  32. 中川一郎

    中川国務大臣 御承知のように国有林特別会計をもって原則とするということではございますが、その中に治山を中心とした公益性も持っておるというところから一般会計の導入も図る、こういう二面のやり方でやっておるわけでございます。公的機能は国が行い、木材売り払い等いわゆる経営部門は国がやるのはおかしいではないか、それは民間に事業として行わしめるべきであるというかなり有力な意見国民の間にあったのでございますが、いまの段階でそういうことを行うことは妥当ではない。やはり特別会計等による事業部門と、そしてまた公的部門を兼ね合わせて、両面が一体となるように経営していくことが望ましい、こういう判断のもとに特別会計制度は貫いていきたいと思うわけでございますが、その結果、経営なり採算なりが非常に悪化しておる。この際、一般会計からの繰り入れも強化すると同時に、経営そのものも洗い直して、将来にわたって安定したものにしたいというのが今回の合理化であり、機能の統廃合ということでございます。公的部門については理解いたしますけれども、だからといって機能の悪い面をそのままにしておくことは許されない情勢でもございますので、どうかひとつ御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  33. 清水勇

    清水分科員 いずれにしても、公的部面と言われたが、いわゆる公益的機能を確保する側面を持っている。そこで、たとえば林業が衰退するあるいは山が荒廃するということは、実はそういう公益的な機能が果たし得なくなるということを意味すると私は思うのです。だから、たとえば国有林について言えば、いまも公益的機能を確保するために国が一般会計から若干見ているのだというお話がありましたが、国の一般会計からの繰り入れというものをもっと拡大しなければいけないのじゃないか、これは当然責務という受けとめ方をしなければならないと私は思うのです。さっきも触れたように、同様な意味民有林に対する必要な助成ということもなさらなければなりません。  そこで、一体そういう角度で必要なものは、たとえば一般会計からの繰り入れを拡大するというような角度でこれまで長官財政当局に要求をされてきているか、あるいは大臣はそういう立場に立って対応をされてきているか、簡単で結構ですから基本的な点だけ承りたい。
  34. 藍原義邦

    藍原政府委員 まず民有林の問題でございますが、先ほども申しましたように、造林については、そういう形で積極的に一般会計から公共事業を導入いたしまして、造林の推進を図り、林道につきましても間伐林道というものを昨年創設いたしまして、昨年から実施いたしております。  それから治山事業につきましても、治山五カ年計画によりまして治山事業を積極的に推進する等々、公益的な機能がそれぞれの森林で発揮できるような対応をやっておりますし、今後も積極的に対応してまいりたいと考えております。  それから国有林でございますけれども国有林につきましても、ただいま大臣から御説明申し上げましたように、治山事業については前々から三分の二は一般会計から入っております。五十三年度につきましては、さらにそれを六八%強の補助で一般会計から導入を図るという形で高めておりますし、造林林道につきましても、先ほど申し上げましたように、四十億強の一般会計からの導入を図って推進を図ろうということにしておるわけでございます。  そのように今後森林をよく仕立てることによりまして、いま先生指摘の公益的機能がよりょく発揮できるわけでございますから、森林をよく仕立てると同時に、並行的に公益的機能が高まるような方途で積極的に対応してまいりたいと考えております。
  35. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘のように、森林というものは、国有林民有林を問わず、単なる木材を供給するというだけではなくして、国を、国土をつくっていく上に欠くことのできない公益性を持ったものでございます。したがいまして、民有林国有林ともに国が責任をもってできるだけの手助けをしていくことは必然のことだろうと思います。よって、そういった思想で民有林国有林について一般会計からの助成というものを前向きでやるということは出然のことでございますし、やってまいります。  中でも国有林については、最近治山部門の強化のみならず、林道造林に至るまで一般会計から導入してしっかりしたものにしていきたい、それだけにまた経営そのものについても合理化を図って国民の期待にこたえなければならない側面があるというところから、国の力を入れ、一般会計からの導入を図ると同時に、経営そのものもすべて見直して、しっかりしたものにしてこたえなければならないということを基本方針としてやっておるわけでございます。
  36. 清水勇

    清水分科員 大臣長官の答弁を聞く中で、しばしば国有林合理化ということが出てくるわけです。話を聞いていると、たとえば国有林が赤字である、何とかせなければならぬ、そこでそういう角度からの合理化、したがって営林署の統廃合というような話が出てきたり、機構を縮小するといったようなテーマが出てくる。これはどうも本末転倒なんじゃないか。国有林なら国有林の使命というものがいよいよ強化拡大をされなければならないというときに、逆にその機能を弱めたり、あるいは国有林に依存をする地域経済を圧迫する、こういうふうな結果になることをはなはだ憂えざるを得ないわけですから、ひとつそういうことのないように対処をしていただきたい、こう思います。
  37. 中川一郎

    中川国務大臣 どうして国有林合理化に異論が出てくるのか私はわからないのです。たとえば北海道営林局がなぜ五つ必要であるのか、事業執行には支障のないような管理部門だけは統廃合しようではないか、こういうことでございまして、まさに時代の要請、官庁機構の複雑化あるいは頭でっかちという批判にこたえるものであって、これが特に労働組合等から反対が出るとすれば、これはむしろ管理職を少なくする統合でございますので、合理化内容そのものについて十分御検討いただけば、労働組合関係には十分御理解いただけるものと期待をいたしておるところでございます。
  38. 清水勇

    清水分科員 きょうは時間がありませんから、その問題については私はいずれ別の機会に十分に触れさせてもらいたいと思います。  少し角度を変えて、これは主として長官ということになりましょうが、尋ねておきたいと思います。今日、木材価格というものが、供給量の三分の二を外材が占めているということで外材主導型という状況になっている。言うまでもなくアメリカ材でもソ連材でも天然木ですから、手がかかっていない。手のかかる国産材と比べれば当然コストが安い、運賃をかけても割安になる。このために国産材の価格が不当に抑え込まれ、これが採算割れを来したり国内林業が大変なダメージといいましょうか圧迫を受ける要素になっている。そこで、政府はこういう状況を放置しておくのかということが一つの問題になっておりますし、かねて各方面からたとえば外材の輸入規制という声が出ておるわけでありますが、こういう点についてどういう措置を考えておられるか、お聞かせを願いたい。
  39. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生指摘のように、最近は外材が大分入りまして、一方木材需要が余り伸びないということで、木材については需給が非常に緩和基調にございます。しかしながら、さっき申し上げましたように、やはり日本の森林をこれから育成して、強力な内容を持つ森林に仕立てていかなければいけないというふうにわれわれも考えておりますし、そういうものと並行しながら木材需給をいかに調和させるかということが大きな課題であることは先生指摘のとおりでございます。  しかしながら、一方国際的な立場から見ますと、貿易の拡大という要請もございます。また反面、外国にも原木輸出を差し控えようではないかというような動きもございます。そういう観点から見まして、ここ当分外材に依存せざるを得ない日本の木材需給関係でありますので、その辺につきましては今後も慎重な対応が要るのではなかろうかというふうには私ども考えております。  しかし一方、いま先生が御指摘になりましたように、そのために日本林業なり林産業が非常に伸び悩むということであってはいけないと考えておりまして、今後この問題を何とかいい方向に指導してまいりますためにも、輸入に関しては、短期的な需給の見通しの策定等をやりまして、在庫の調整その他が図れるような方途がないだろうかということを、今後鋭意検討していかなければいけないだろうというふうにわれわれとしても考えております。
  40. 清水勇

    清水分科員 いずれにしても政府は林業の安定化という方向に力を入れなければ、その責めを果たしているとは言えないのじゃないか。そういう角度で大いにやってもらいたいと思いますが、特に外材の問題については、価格面で一定のチェック機能といったものが考えられないものか、国有林というものはそういうためにも一定の役割りを果たしていいのじゃないか、こういうふうな感じがしてならぬわけです。たとえば農林大臣も御存じのとおり、生糸の場合は一元輸入をして、蚕糸事業団が安定帯価格などをしいて、一定の安定的な価格を確保するような努力をしている。むろんそれと同じことを林野庁一つのクッションになってやれと言ってみてもむずかしい側面がありましょうが、たとえば需給なら需給という面についても、そういう一つのクッションになるような役割りを果たすということでなければ林野庁の存在の意義は薄いのじゃないかというふうに私は思えてならないのですが、どうでしょう。
  41. 藍原義邦

    藍原政府委員 木材につきましては、ただいまアメリカから、カナダから、ソ連から、あるいは東南アジアから、ニュージーランドから、非常に多方面から入っておりますし、またその種類も非常に多うございます。木の種類によって使い方も違います。それから、丸太も入れば製材も入るというふうに非常に多種にわたっておりますが、いま確かに先生指摘のように、今後やはり安定的、計画的に外材が入りまして、そして日本林業振興にも役立つという形、そして国民の需要にも、期待にもこたえ得るという形で外材が輸入できるような方途を私どもも何とか考えなければいけない。そのためにも、現在木材需給協議会というのがございますけれども、さらにこれらを強力に指導いたしまして、さっき申し上げましたような短期的な需給の見通し、あるいは在庫率の調査検討、情報機関の整備というようなものを図りまして、国民の期待にこたえられるような外材の輸入の安定的、計画的方途を考えていきたいというふうに思っております。
  42. 中川一郎

    中川国務大臣 きわめて重要な御指摘でございまして、外材に対する輸入調整の問題もいろいろありますが、むしろ国有林というものが国民に安定的に木材を供給する、住宅材を供給するという機能を果たさなければならない。そのためにはまさに国有林経営がしっかりして、場合によっては安売りしてもいいのだというぐらいの国有林にならなければいかぬのでございますが、いまはむしろ国有林はうんと高く売って経営をよくしなければならぬという、経営を毎日毎日考えなければならぬ、むしろ月給が払えないので延べ払いも厳しくするというようなやり方、こういうことは改めていかなければならない。長期的にはそういった機能を果たせるような国有林にするためにも、まさに公的部門の負担を大きくする、それと同時に、経営そのものも国民観点から機能について十分反省する、こういう必要があろうと思って今回措置をとっておるところでございます。
  43. 清水勇

    清水分科員 終わります。
  44. 中島源太郎

    中島(源)主査代理 坂口力君。     〔中島(源)主査代理退席、主査着席〕
  45. 坂口力

    坂口分科員 ただいまも林業問題がお話に出ておりましたが、私も大局的な立場から林業問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  すでにいろいろの議論のありましたように、現在いわゆる林業経営者というのは非常に窮地に陥っております。ただ林業経営者だけではなしに、いわゆる林業地帯あるいは山村と申しますか、山間僻地の方は、林業が非常に厳しい情勢に置かれておりますために、村そのものが非常ないろいろの弊害に悩んでいる、こういう状態が続いているわけでございます。今回のこの国会は、林業関係の法案がたくさん出されまして林業国会の観がございますけれども、何とか現状を打開する道がないであろうかと思うのは、これは大臣だけではなしにわれわれも痛切にそう感じているわけでございます。  まず、お聞きしたいと思いますのは、林野庁が、五十二年の三月でございましたか、木材需要の見通しを発表になっています。たしか内地材につきましては一七%。外材につきましては六一%ぐらいの増加の見通しを述べておみえになると思いますが、五十二年度、まだ若干これはあるわけでございますけれども、最近まで見ていただいて、大体どの辺のところまで来ているか、おわかりだったらひとつお答えをいただきたいと思います。あらあらの傾向だけで結構でございます。
  46. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生おっしゃいました数字、ちょっと私たちわからぬのでございまして恐縮でございますけれども、現在の見通しでは、五十二年につきましては、一応需要全体で一億五百二十万立方ぐらいであろうというふうに考えておりまして、そのうち輸入材が大体六千九百二十万。したがいまして輸入率が大体六五・八%。五十二年はこのような見通しを一応つくっております。
  47. 坂口力

    坂口分科員 大体六五、六%、三分の二が外材ということになっているわけでございますが、そういう大きな比率の環境下に日本は置かれているわけでございます。大きい林業家はこれは別でございますが、特に中小林業をやっておる皆さん方は、最近材木が非常に値下がりをしておりますために、どうしていいかということで大変困っているわけです。また、林業家だけではなしに、それを取り巻きます素材業と申しますか、あるいは製材業といったものも、小さな町村におきましては現存次から次へと倒れておりまして、実は非常に苦しい状態にあるわけであります。そこで、その人たちが現在は苦しくとも若干しんぼうしよう、何とか切り抜けていこう、あるいは製材屋、素材尾さんも、たとえ倒れてもまたいつの日かはとがんばろう、こういう気持ちの人も中にはいるわけでありますけれども、ただし将来の見通しというものが立たない。だから、いまは苦しくとも将来これで大丈夫なのか。中小の場合に、それだけで経営が成り立っていくということは非常にむずかしいかもしれませんけれども、しかし、何とかして、ほかの職業との兼業の形であったとしても、山を守り抜いていきたいという大きな気持ちを持っていることは事実なんです。この辺のところに林野庁あるいは農林省はどうこたえていただくかということになると思うのですが、非常にむずかしい問題でございますけれども林業を経済的に見ましたときに、今後の行方というものをどういうふうにお考えになっているか、お答えいただきたいと思います。
  48. 藍原義邦

    藍原政府委員 非常にむずかしい御質問でございまして、私のお答えが先生の御質問に合うかどうかわかりませんが、林業の場合、確かに、先ほど来お話しいたしておりますように非常に停滞ぎみでございますし、将来の問題というのは真剣に考えなければいけないというふうにわれわれも思っております。そのためにも、外材の問題につきましても十分慎重な対応をしていかなければいけませんし、また、国内の林業そのものがさらに積極的に推進でき、山村の生活が安定できるような方途をわれわれとしても対応しなければいけないというふうに思っております。  そのために、まず森林組合の強化、こういうものから森林組合を強化して、個々の森林所有者あるいは林業従事者がさらに社会的な向上あるいは福祉の面の向上、こういうものをわれわれとしても考えていこうということで、今回森林組合の単独法というものを出しております。さらに、森林組合を合併いたしまして、森林組合をさらに強固なものにしていこうということで、合併助成法の延長も国会に提出いたしまして御審議を願うことにいたしておりますし、そういう観点から、林業につきましては、積極的に今後とも林業が推進できるような方途を森林組合等を中心にしながら考えていきたいというふうに思っております。さらに製材業等々につきましても、ただいま近促法によります協業化というものを進めるように指導いたしております。そういう意味からも、製材業等についてはできるだけそういう方面で対応していただきたいし、また合板につきましては、御存じのように不況のためにカルテルも実施いたしまして生産規制をしておりますし、また一方、今後改善合理化を図るために、一部設備の買い上げというようなもののための資金を五十二年度の予備費でセットいたしまして、ただいま合板業界の方では鋭意その検討を進めておるわけでございまして、そういういろいろな手だてを尽くしまして、林業並びに林産業がこの難局を乗り越えられるような方途をわれわれとしても見出していきたいというふうに考えております。
  49. 坂口力

    坂口分科員 いままではこの林業も、たとえば植林をいたしましてから十二、三年すれば間伐ができる、それがある程度の値段で売れる、こういうこともあったわけでありますけれども、最近は十二、三年のものを間伐いたしましてもなかなか売れない。よくひところ、一本の苗を植えるのに六十円から八十円かかる、十二、三年育てて、その間に下がりもし、いろいろ手当てをして、今度売るときに十円ぐらいにしか売れないという話がよくございましたが、いまは十円にも売れない。むしろ、お金を出しても持っていってくれないというような事態が起こっているわけでございます。  そういたしますと、材木は大体三十年くらいしないと、経済的には何らその間に収入の道がない、その間は要る一方である。こういうことになってまいりますと、むしろそういうふうで山をつくるのならば、そのお金があるのならば、それを銀行に預金でもしておいて、あるいは国債でも買っておいた方が経営的にはいいのではないかという議論もちまたでは聞こえるわけであります。そういうことになってまいりますので、最近山を切られたところはもう跡をお植えにならない、植林をなさらない。これをまた植林をして、そして税金を払ってということになるとどうにもやっていけないというので、もう伐採をした後、植林をしないというところの裸山があちこちにかなりふえてきていることも事実でございます。この辺をどう解決していくかということは、先ほども前の方の議論にもありましたように、環境というものとも絡みまして非常に大事な問題になってきていると思うわけであります。  先ほど外国から入ってまいります外材のお話も出ておりましたが、さりとて、現在の日本の経済状態を考えましたときに、輸入してまいります材木を徹底的に抑えるということはなかなかできにくいことだろうと思うのです。むしろ、輸入をふやさなければならないという全体の大きな目標があるわけでありますから、その中で外材だけを抑えるというわけにはいかないだろうと思うのですね。こういうことを考えますと、何とかして、外材も使いながら、その中でなおかつ内地材というものを有効に使っていくという道を考えていかざるを得ないのではないかと思うのです。  ところで、きょうは建設省の方からもお越しをいただいておりますので、私は建設省の方にもお聞きをしたいわけでありますが、たとえば公社、公団、いろいろ公的な機関もございますが、その中で、大きい鉄筋コンクリート等の場合には材木はそう関係はございませんけれども、そうではなくて、いわゆる木材を中心とした住宅の場合がかなりあるわけでありまして、そういうときに、現在ややもいたしますと外材が中心になっておりますが、外材もある程度は使われてやむを得ませんけれども、大事な中心になるような柱でありますとか、あるいはまた土台でありますとか、特に日本の風土等を考えましたときに、内地材を使った方がより有効である、たとえば地震に対しましても、あるいはまた湿度にいたしましても。そういうことを考えましたときに、外材よりも内地材のカが確かにすぐれているという部分があるはずでございます。そういったところについては、公的な機関でおやりになるときには内地材をもう少し加味する、中心部だけでも使うというような指導というものができないものであろうか、こういうふうな気がふだんからしてならないわけでございますが、その辺、いかがでございますか。
  50. 国吉忠

    ○国吉説明員 お答えいたします。  公的機関がつくる住宅といいますと、公営、公団、公社というふうなものがございますが、公営、公団は主として耐火構造の住宅を集団的につくるというのを原則としております。公社住宅では一戸建ての住宅も相当木材でやっております。ですから、そういった方面におきまして、先生の御指摘なされました内地材の使用というものを今後いろいろ検討していきたいと思っておりますし、五十二年度から在来工法のいろいろな開発研究行政府費でいまやっておる最中でございます。そういった研究開発の成果を踏まえまして、今後指導していきたいというふうに考えます。
  51. 坂口力

    坂口分科員 私は建設の方の詳しいことはよくわからないのでちょっと理解しにくい面もあるのですが、それは新しく研究開発をされるというのは、内地材についてのお話でございますか。
  52. 国吉忠

    ○国吉説明員 在来工法全般の研究でございまして、内地材だけということではございませんが、その中におきまして、いろいろな構造材にどういう材料を使用するかという研究項目も入っておりますので、構造耐力とか、そういった方面からいろいろ比較いたしまして、今後の利用とか使用とか、そういった面を研究するように考えております。
  53. 坂口力

    坂口分科員 その工法が開発されて進んでいけば、いままでよりも優秀な内地材というのがより多く使われるということになるのですか。
  54. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま建設省の方からお答えいただきましたけれども、この在来工法の研究につきましては、建設省さんと私の方とがタイアップいたしまして現在研究を進めさしていただいております。在来工法と申しますのは、御存じのように昔からありました日本の建築工法による住宅でございますが、これが部材が非常に多いということでなかなか手間がかかったり、いろいろございます。したがいまして、そういう点をさらに近代化すると同時に、使用材料につきましても、どういう材料を使えばより丈夫であるかとか、より耐火性があるかとか、いろいろな問題を研究しながらこの在来工法を近代的にしようという形で、建設省と林野庁がタイアップいたしまして現在研究を進めておりまして、研究の成果が出ますれば、その成果に基づいて国産材も使われると思いますし、また、どうしても不足でございますから外材も当然入ると思いますけれども、その辺の材料のあり方、あるいはその他構造上の問題を含めて検討を進めておる最中でございます。
  55. 坂口力

    坂口分科員 大臣、いまもお聞きいただいたような工法等も進んでいるわけでございますが、しかし、使われますパーセントが同じですと、これは進みましても内地材の方にプラスにはなってこないわけでございまして、そういう意味でぜひ内地材も外材と同じようにある程度は使われるという体制をどうしてもつくっていかないことには、日本の森林というものは維持されていかないと思うわけでございます。  いま私が指摘いたしましたように、外材も結構でございますが、その中でも重要な部門については内地材のしっかりしたものを使う。ここは内地材を使った方がいいんだがなと思う場所でも、安く上がるからというので外材を使ってしまう。だから、外材の非常に湿気を呼びますとすぐ腐ってしまうようなものを土台に使ったりあるいは柱に使ったりとかいうようなことをやっておるところがございますし、ここは日本材を使わなければならないなというところを外材を使っておりますために非常にもろかったりというようなこともあるわけでありまして、その辺のところは、内地材だけを使えというわけにもいかないでしょうし、また、同じヒノキの中にもいいのもあれば悪いのもございますし、また外材にもいいのも悪いのもあろうかと思いますので、一概にこれは言えないと思いますけれども、少なくとも公的な機関でおやりになるところについては、若干その辺の行政指導なるものがあってもしかるべきではないかというふうに思うわけでございます。でき得れば、その辺のところを建設大臣等ともお話をいただき、あるいは住宅公団、公社等ともお話をいただいて、その辺のところの詰めをしていただければ少しでも前進をするのではないかと思いますが、いかがでございますか。
  56. 中川一郎

    中川国務大臣 最近の日本における森林あるいは木材の状態というのは非常に危機状態にある、国内事情も悪い上に外圧があるということで、森林生産者のみならず関係業界も非常に苦境に陥っているという状況でございます。そこで、何とか国内材を活力あるものにしなければならない、そのためには需要の喚起ということが必要でございますので、御指摘の点については建設省とも十分相談をしてみたいと思います。何分にも一方では安いものを建てたいという住宅需要といいますか、住宅を建てる方々の要請もあれば、国の機関といえどもこれまた安い、いいものをということになりますので、その辺の兼ね合いがむずかしいところではございますが、民間の方々の住宅資材についていいものをつくるという工夫と相まって、これが伸びるように建設省とも相談をしてまいりたいと思う次第でございます。
  57. 坂口力

    坂口分科員 消費者の方も安いにこしたことはございませんけれども、しかしまた丈夫な家をつくってもらわなければ困るわけでありまして、そういう面ではもう一本か二本ぐらいの柱を内地材にしてくれればという気持ちも中にはあるわけでございます。その辺のところはぜひひとつ、今後建設省の方にもお願い申し上げたいと思います。  それから、きょうお話し申し上げたいもう一点は、あるいはいままでのお話にも出たかと思いますが、林業従事者が高年齢化してまいりまして、大体平均して五十数歳になっているのではないかと思います。これは、もう十年もすれば平均年齢がまた上がって、六十数歳になってくるわけでありますが、こういうことになってしまいますと、実際問題といたしまして、森林の本当の保護というのができなくなってくるわけであります。そこで、どういたしましても若い林業従事者というものを育成していかなければならないわけでございますけれども、現在のような状態ではどういたしましても若い人たちに林業をやれと言える段階ではないわけであります。経済的にももう成り立たないし、また職業的にも非常に不安定であるということでございますので、何とかして若い林業従事者というものを農山村において育てていきますためにも、ぜひその人たちの労働条件と申しますか、労働環境の整備というものをやはりいまから積極的にやっていかざるを得ないと思うのです。それに対する現在何かお考えがあればまずお聞かせを願いたい。簡単で結構です。
  58. 藍原義邦

    藍原政府委員 確かに、先生いま御指摘のように林業に従事する者が年々高齢化しております。ただ幸いなことと申しますか、総体の量は、総理府の調査によりますと二十二万という形で、ここ数年横ばいになっております。したがいまして、私どもといたしましても、今後山村を振興し、林業を振興するためにも、若年労働者がさらに林業に従事していただけるような方途をいろいろな面から見出さなければいけないというふうに考えておりますし、また、その原因の中には確かに林業従事者が、社会面あるいは福祉の面でその対策がおくれているという点もあろうかと思います。そういう意味から、中小企業の退職金共済法に基づきます特定業種の指定退職金共済制度の適用を図るような方途をここ三年のうちに制度化できるように、五十三年度からその補助金を国の方からと都道府県からと両方出しまして対応していこうということを考えております。あるいは、労務改善推進員というものをそれぞれの地域に置きまして、いろいろな意味での林業労働面の改善というものを図っておりますし、そういうもろもろのことを考えながら、今後林業労働力がより安定的になるような、そして社会的地位が向上できるような方途を見出してまいりたいと考えております。
  59. 坂口力

    坂口分科員 現在林業従事者の中でまあまあありますのは労災くらいなものでございまして、その労災もほかの業種に比べますと非常に掛金が高いということで、非常にいろいろの苦情も出るわけでございます。したがいまして、林業従事者だけではございませんけれども林業従事者も含む屋外労働者福祉法みたいなものを今後はつくっていかなければならないのではないか、こういうふうに考える一人でございます。  屋外労働者福祉法なるものを私どもも何とかしてつくろうと思って一遍考えたことがあるわけですけれども、屋外と屋内の分け方とかいろいろむずかしい問題がございまして行き詰まった経緯が実はあるわけでございます。たとえば、トラックで材木を運ぼうとなさる方が現場に行かれる、トラックに材木を積み込んでおみえになるときにはそれは屋外労働者だけれども、運転席へ入ってしまったらこれは屋内だというような法制上の問題もいろいろあったりいたしまして、どこで線を引くかということがなかなかできにくいということも実はあるわけですけれども、ぜひ労災、それからいま申されました退職金等の問題、あわせて総合的に、林業に従事する皆さん方が将来をそれに託することができる職業である、こういうふうに思われるような環境をぜひつくっていかなければならない。これは一にかかって農林省並びに林野庁の今後の大きな課題であるというふうに思うわけでございます。  時間も迫っておりますので、その点、大臣にひとつその辺の強い御決意をお聞きをして、終わりにしたいと思います。
  60. 中川一郎

    中川国務大臣 林業従事者が老齢化する、山に残らないという問題は深刻な問題でございますので、そういった方面についていままでもそれぞれやってはまいりましたが、さらに一段と前向きで検討してまいりたいと思う次第でございます。
  61. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま大臣からお答え申しましたように、林業従事者が今後山で安定的に働いていただけることがこれからの林業振興の基本でもございますから、私どももそういう面につきましては積極的に対応、充実するような方向で検討を進めてまいりたい、こう思います。
  62. 坂口力

    坂口分科員 もう一分ありますので、もう一言だけつけ加えさせていただきますが、先ほども申しましたように、最近伐採をした後植林をしないところがふえているように私は思うのです。ところが林野庁にお聞きいたしますと、そういう統計的な数字は出ていない、こうおっしゃるわけでありますけれども、最近かなりふえているはずでございます。したがいましてその辺のところを一度調査をしていただく必要がある、私はこういうふうに思いますが、いかがでございますか。
  63. 藍原義邦

    藍原政府委員 いま先生指摘の点は、私どもといたしましては、最近造林が進んでいないのは、前生にございます木を切らないから造林が進んでいないというふうに理解いたしております。したがいまして、伐採した後造林していないという私どもの調査報告は余り受けておりませんけれども先生指摘のような面があるかどうか、この辺につきましても私どもは十分その検討を進めてまいりたいと思います。
  64. 坂口力

    坂口分科員 終わります。
  65. 伊東正義

    伊東主査 これにて坂口力君の質疑は終了いたしました。  続いて、栗林三郎君。
  66. 栗林三郎

    栗林分科員 大臣、私は出かせぎ対策についてお尋ねをしてみたいと思います。  出かせぎの解消、出かせぎの抑止を図るために農林省実施しておる出かせぎ者就業改善対策実験事業、これを中心にして出かせぎ諸問題についてお尋ねをしてみたいと思うのであります。  出かせぎ者は、ひところは百万人とも言われておりましたが、現在は若干減っております。それにしましても、七十万、八十万と推測されておるのでございます。言うまでもありませんが、農家経済は悪化の一途をたどっておる。専業農家がわずかに一三%、もっと下がっておるはずでございます。残りは兼業農家、いわゆるオール兼業化の時代に転落してしまっておるわけでございます。兼業の中でも特に第二種無業の激増はきわめて憂慮すべき問題だと思うものであります。こういう状態でありますから、農外所得に依存せざるを得ない多くの農民、漁民は、これは好むと好まざるとを問わず、出かせぎに行かざるを得ない実情でございます。大臣は、このような激増する出かせぎの現状を好ましいものと見ておられるのか、それとも好ましからざる現象と見ておられますのか。その根本認識を伺っておきたいと思うのであります。  ある人は、出かせぎ者は出かせぎ組合もない、団交もない、ストもない、雇用も退職も全く資本側の一方的な意のままになる、しかも低賃金でよく働く労働力だ、労働者である、だから、こんな重宝な労働力はほかにはない、こう言って重宝な労働力として大歓迎しておる者もおるのでございます。また、それとは反対に、出かせぎはやがて日本農業の崩壊をもたらすものだ、さらに家庭破壊に通ずるゆゆしき農業問題であり社会問題だとして、厳しく警告し、憂慮しておる者もあるのでございます。大臣はいずれの見解をお持ちになっておられますか。まずこのことをお伺いしてみたいと存じます。
  67. 中川一郎

    中川国務大臣 わが国では、かなりの出かせぎ労働者、中でも農村の占めますウエートが東北を中心にして多い現状でございます。われわれ農林省といたしましては、出かせぎが農業から出なくてもいい、こういうことを理想といたしまして、出かせぎ対策のみならず、特別対策事業のみならず、農業そのものが出かせぎをしなくてもいいような体質にするために、農業基盤を初め価格政策、もろもろの政策をやっておるところでございまして、出かせぎのある実態はまことに遺憾であり、これを少なくするということを基本に置いて農政を進めてまいりたいと考えております。
  68. 栗林三郎

    栗林分科員 大臣の御見解の表明によりまして、出かせぎに対する認識では私の考えと全く一致いたします。そこで、この一致を前提として、まず出稼地域農業者就業改善対策実験事業、これに関しての質問に入りたいと思います。  農林省は、去る五十年七月と思いますが、次官通達をもって、出稼農業者就業改善対策事業実施要領というものを出しておるのであります。この中には「出稼農家に対する営農改善、留守家族対策を講ずるとともに、出稼が多発しておる地域について、出稼の解消、抑止を図るための事業実施し、もって農業経営の近代化及び農業就業構造の改善に資するものとする。」と書かれてあるのであります。そして、この要領に基づいて五十一年度から出稼地域農業者就業改善対策事業予算化されたものと存じます。たしか五十一年度から予算化されたものと存じておるものであります。その対策事業の中で目玉とも言うべき施策は、先ほどちょっと申し上げました出稼地域農業者就業改善対策実験事業であろうと思うのであります。しかし、この予算は余りにも僅少、微少で、これ、顕微鏡にかけなければわからぬほどの僅少な予算でございます。就業改善対策の事業は、今年度は約五億かと思いますが、間違ったら後で教えていただきたい。その目玉とも言うべき実験事業にはわずか二億六千万円しか計上されておりません。しかし、昨年の一億五千万に比べれば大幅の増ではありますが、まことにみみっちい僅少な予算と言わなければなりません。これでは中央における農林省の施行する事業ではなくて、地方自治体の予算かと思われるほどの僅少な予算ではないでしょうか。次官通達では、出かせぎ対策の重要性とその解消を目標とするまことにりっぱな内容のある文革でございます。しかし、その文章とはうらはらにその予算は余りにも僅少だ。この僅少さに私は驚いておる次第でございます。余りにも予算が小さいですから、多くの皆さんからこの予算は見落とされておるのかもしれません。しかしながら、この事業予算に対して重大な関心と期待を寄せておる者が多数おるのであります。それは全国の出かせぎ農民の皆さん、そしてまた私もその一人であります。  そこで、局長出席でありますから、このことは局長からお答え願いたいと思いますが、今年度の実験事業の概要と、すでに実施しつつある地区の中間報告をあわせてお知らせ願えれば幸いだ思います。その中間報告の中で東北関係の方は私も大体承知しておりますので、でき得れば、鹿児島、大分、高知等におきましての実験事業実施しておるわけでありますから、もしも資料の準備がありますならば、九州、四国地区における報告をお願いいたしたい。なければ、どこの地区でも結構でございます。なお、時間がありませんので、ひとつ簡潔に事業計画の説明をしていただきたい。
  69. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いま栗林先生が御指摘になりました実験興業でございますが、これは御存じのとおり出かせぎが多発している地域におきまして、地場の特色を生かして地場資源を活用して農業の雇用機会を増設するということでありますけれども、中身といたしましては結局、各地域、各地域が自分のところの特色を生かして御選択願うというメニュー方式をとっておるわけであります。基盤整備からいろいろの施設からいろいろ多種目にわたりますが、結局それぞれ都合のいい、実態に即したやり方でやっていただきたい、こういうことであります。  五十二年度、五十三年度、計画が七地区でございまして、五十二年度は事業実施地区が七地区、それから来年、五十三年度でございますが、事業実施地区は七地区ということで、今後の予定もあわせて御報告申し上げますが、五十四年度には五十三年度に計画をつくった地区につきましては着手していくということで、合計いままでのところ三十一地区につきまして事業実施する、こういうような予定になっておるわけであります。この分布は東北地方から南の方まで、青森から鹿児島まで分布しておりますが、やはり出かせぎ農家の分布は東北が六〇%以上を占めている、あるいは北陸、その次に九州ということでございますので、何といたしましても重点的には先生指摘になりました東北地方が主になっております。南九州の方では大分、鹿児島、それぞれ事業実施しておりますが、やはり先進的な意味では東北というものがその先鞭をつけているということではないかと思うわけであります。先生から南九州等についての何か詳しい報告をしろという御指摘がありましたが、いま事業が進んでおりますのがどちらかといいますと東北でございますので、東北につきまして御説明することで御猶予願いたいと思うわけであります。  秋田は、これは先生地元でございますから、私から釈迦に説法する必要は毛頭ないわけであります。隣県のたとえば山形等を見ましても、温海町というところで、ここでは非常に特色のある仕事をしております。つまり具体的に申し上げますれば、ワラビ、ゼンマイ等の山菜の採種圃とかあるいはワサビ田というものを造成して、農家が集団的にその生産をしていく。そういう意味で農家自身、農業所得の拡大を図って出かせぎの解消に非常に意欲的に取り組んでいらっしゃる。それからまたここの特色として、農家だけではなくて農業協同組合自身がやはりそういった農家の発意を受けられて、山菜だとかあるいはキノコ類の農家が生産されたものの処理加工施設を設置して、そのこと自身によって地元の就労機会の増大を図っておられる、こういうこともあるわけであります。町村なんかも非常に熱心になっていらっしゃるということであります。  そのほか東北地方では宮城にしろあるいは岩手にしろ、農民自身非常に立ち上がって御苦労なさっていらっしゃいますし、地方自治体、県町村におきましてもそれぞれ熱意を持って対応されていらっしゃるということがあるわけであります。  秋田の例はこれは先生よく御存じですから私申し上げませんが、西木村なんかも特に非常に熱心にやっていらっしゃいますし、率直に申し上げますれば、私どもがっくりました実験卒業も秋田等の例を参考にさせていただきまして、かなりそこからヒントなり知恵を拝借させていただいた、こういう経過がございます。
  70. 栗林三郎

    栗林分科員 私も秋田ですから、秋田の西木村が指定されておりますが、西木村の実施状況、これをつぶさに見学、勉強させていただきました。ここでは四事業がいま実施されておりまして、いずれも出かせぎ農家の人方が五人ずつグループをつくって熱心にがんばっておりました。農林省は一地区六千万円、これに二分の一の補助を与える、こういう事業でありますが、この西木村では乏しい財政の中から一割助成して、そうして出かせぎ農民に激励をしておる。これは村としては一割の助成というのは容易でない言っておりましたけれども、非常にこの村は熱心に指導しておりました。私、非常にそこは感激してきたのですけれども、それならば県の方も一割や三割助成しておるであろう、こう思っておりましたら、県の方では一銭も補助はしてくれません、こういうお話でございました。私は非常に残念でならないのであります。農林省もこのように熱心に指導される事業ですから、しかもその町村も乏しい財政の中からそういう助成措置を講じておる、してみれば県だってやはりある程度の助成は脅えてもよいのではないか、このように思うわけであります。  そこで、すでに地区を指定した府県はかなりありますが、他の県のこの事業に対する対応はどうでしょうか。具体的には、県が補助金を出して指導しておるところがあるかどうかということをひとつお尋ねいたします。
  71. 大場敏彦

    ○大場政府委員 具体的に県を申し上げますと、たとえば岩手県でありますが、これは県費を近代化施設につきましては一〇%上乗せしている、こういうことであります。それから宮城でありますが、これは近代化施設につきまして九%助成しておる。それから山形は近代化施設に一〇%、土地基盤整備一九・九%。福島が土地基盤整備三〇%という県費食掛をいたしております。新潟も近代化施設は一〇%、土地基盤整備二〇%、こういった助成をしております。  御指摘のありました秋田でございますが、秋田は結局国の補助率が江別でありますからその残りを地元で御負担願うわけでありますが、そのうちの四割につきましては農林漁業公庫資金でめんどうを見る、残りの一割につきまして県が県の農業振興資金という形で、これは県の財政融資でありますけれども三%という低利資金、これは七年償還でありますが、そういうものでめんどうを見ているというようなことで、それぞれ地方地方の御都合はあると思いますけれども、総じて町村、県、この事業につきましては私はかなり熱意を入れてくださっているというふうに認識しております。
  72. 栗林三郎

    栗林分科員 この種の事業ですから受け入れる県に対しては、ひとつ農林省のそういう上手な行政指導で何とか府県からも適当な助成措置がとられるような配慮を特にお願い申し上げておきたいと思います。  ここで大臣に尋ねてお尋ねいたします。  それは、先ほども大臣から出かせぎ解消の事業に取り組むのだという御答弁をいただきましたけれども、本当に出かせぎ解消、抑止を目指してこれらの対策事業を積極的に推し進める、それだけの御意思と方針があるのかということでございます。局長のただいま説明ありましたように、初年度十地区、二年度七地区、今年度七地区、それから明年度も七地区、そうしますと合わせて三十一地区が実験されるわけでありますけれども、何ぼ日本が狭いと言ってもこの出かせぎ多発地帯にわずか三十一町村指定して、しかもその町村の一部に実験難業をやらせたところで、この程度の事業でありますならばこれはいつになったら解消できますか。そういうように考えますと余りにも計画が小さ過ぎる、予算も小さ過ぎると思うわけであります。もちろんこれは実験事業として打ち出されておるようでありますが、この実験事業もことしで三年目だ。この際実験段階から本格的な抑止対策、解消政策へと発展させる御意思がないかどうか、これをひとつ私は伺っておきたいのであります。  農林省は実験実験と言っていますけれども、出かせぎ農民の中にはすでにみずから出かせぎを拒否して、みずから就業改善と経営改善に成功しておる、いわゆる実験済みの農民がたくさんおるというこの事実、私は予算の面でも、ただいま申し上げましたようにこのような僅少な予算、小さい計画ではどうにもならない。この際、農林省は一日も早く実験段階から本格的な対策に移行すべきではないかと思います。そうして出かせぎ解消、抑止事業の拡大を図るべきだと考えますが、大臣のこれに対する所信と決意のほどをもう一遍聞かせていただきたいと思います。
  73. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほど来局長も答弁いたしておりますように、三十一地区ですか、これについて実験を行うわけでございますが、来年をもって一応終わりますので、本格実施についてのあり方というものを来年じゅうにまとめまして、五十四年度からは本格的に取り組みたい。五十三年度までは実験事業でございますから予算にもおのずから限度がございますけれども、本格段階ではかなりの額を投入して出かせぎ解消に役立つようにいたしたいと思います。その規模その他については、これから調査結果を踏まえて判断してまいりたいと思いますので、今後ともひとつ何かとお力添えのほどを私の方からもお願いしておく次第でございます。
  74. 栗林三郎

    栗林分科員 ただいま大臣から本格的に解消施策に取り組むとの御答弁がありましたので、これは人道主義の立場で私どもは申し上げておるのでございますから、出かせぎをされている皆さんがこれを聞けば本当に喜んでくれると私は思う。ぜひこれを実行していただきたいが、来年から本格的な施策に移行するという御決意でありますので、そのためには次の提言がございます。私の提言を聞いていただきたい。  農林省はすでに実験されておりますし、その他の農業政策の元締めでありますから、農林省自体で施策化はむずかしいものとは私は考えませんが、こうした特殊な施策については農林省だけではいけない、学者だけではいけないと私は思うのです。大事なのは、これに取り組んできた農民の意地、農民の実践というものを学ぶべきだと思うのであります。大衆に学べという言葉がありますが、先ほど申し上げましたように、多くの出かせぎ農民の中で、みずから創意工夫、刻苦奮闘をして出かせぎを返上し、それ以上の所得を上げて経営改善に成功しておる者がたくさんおるのでございます。私は重ねて申し上げますが、明年を期して本格的な施策策定を図るというのであるならば、その策定段階、過程にぜひこうした実践農民の経験を生かしてほしい、彼らから意見を聞いてもらいたい、進んで彼らに学んでもらいたい。そうすることによって初めてりっぱな出かせぎ解消の施策というものがここに生まれてくるであろうと私は思うのでございます。本格的な政策策定の過程、段階でそういう配慮を特にお願いをいたしたいのでありますが、これについてのお考えはいかがでしょうか。局長からで結構でございます。
  75. 大場敏彦

    ○大場政府委員 大臣から御答弁いたしましたように来年度調査をするということでありますが、この調査につきましては中央で調査するだけではございませんで、現場の土を踏んで、りっぱによくやっているようなところに行きまして現場の実情をつかむということと、それからいま先生が御指摘になりましたように、出かせぎ解消のために立ち上がっていらっしゃるそういう農民の方々、それから村当局等の御意向をよく聞きまして、そういうものの実態を認識した上で新たな展開を試みていきたいと思っております。
  76. 栗林三郎

    栗林分科員 もう一つ、昨年の内閣委員会で、これは代理でありましたが長谷川農林大臣に対して私は次のことを提言してあります。考慮するという返事はいただきましたが、それ以後どうなっているか、これはナシのつぶてであります。というのは、出かせぎという問題はこれは特殊な問題でありまして、たとえば労働力という問題から見ました場合でも、これは普通の労働力とは違うわけであります。家庭を捨てあるいは農業を捨てて半年以上出てくる。出てきたときは労働者、うちへ帰れば農民、こういうような二面を持っておる特殊な方々でございまして、これを一般的な労働者と見ることはいけない。農業の場合も同じだと思います。専業農民ではないのです。したがって、私どもは出かせぎには絶対反対であります。いまでも出かせぎ反対というスローガンを掲げて闘っておるわけであります。大臣の御答弁にも出かせぎには反対だという意思表示がございました。しかし一部には出かせぎを歓迎する声もあるわけです。私はこれをまじめに考えてみる必要があると思う。私どもの方の革新知事でも、あるいは大阪の知事でも東京都の知事でも、栗林さん、出かせぎ反対、反対と言わないでほしい、出かせぎ労働力がなければ大都市の近代化はできないし公共事業はできない、下水工事、宅地造成はできない、高層建築の労働者はいなくなる、どうして都市の近代化ができるでしょう、だから出かせぎ反対とは言わないでほしいと、逆に革新の知事さん方からはそういう注文を私は受けておるような状態でございます。出かせぎは多くの問題を持っておる。農業が崩壊する、家庭が破壊する、人道問題だといって心配されておる。だが一方、いまの体制のもとではこの労働力がなければ公共事業はできない、都市の近代化はできない。産業面におきましても、いまは不況といいながら多くの出かせぎ労働力に頼っておる企業がたくさんございます。特に合板事業などはその適例かと思うわけです、それでありますから、出かせぎに反対だといえば、いまの産業はどうなるのだ、公共事業はどうなるのだ、都市の労働力はどうなるのだという問題がある。といって勧めれば、農業はどうなるのだ、家庭はどうなるのだという問題がここにあるわけであります。しかも農民は、反対だ、反対だと言っても、おれたちも好きこのんで行くわけじゃない、前業所得を得なければ生活ができない、農業を守ることができないからやむを得ず出かせぎをするんだ、こう言って出てくるわけです。だからこれは反対だ、反対だということでは問題の解決はつかないわけであります。そういう多くの矛盾をはらむ出かせぎ問題でございます。  でありますから、出かせぎ問題のこうした矛盾にどう対処するか、そういう出かせぎの基本に関する問題を審議するための審議会を設けてもらいたい。しかし、いま審議会などは整理される段階でありますから、新しく審議会を設ける必要はない。いまある審議会の中に出かせぎ問題を審議する専門部会のようなものを設けて、この専門部会で討議をすることも一つ方法であろう、こういうように私は提言をしておるのでございます。ひとつこの出かせぎ問題の基本に関する問題を審議するための何らかの機関を考慮する必要があると思いますが、大臣のお考えをひとつ聞かせていただきたい。それだけで私の質問を終わりたいと思います。
  77. 中川一郎

    中川国務大臣 出かせぎがもしなくなったならば、都市を中心にして労働力の問題で今度は社会的問題を起こすのではないか、こういうお尋ねでございますが、これは一遍にやれば大変なことにはなろうと思いますが、本格実施の段階になりましても、やはり予算その他の関係もあり、かなり時間はかかるのではなかろうか。そうしていけば、都市の労働力確保ということもそれほどむずかしくはないのではないか。急激な変化ならば大変だとは思いますが、急激でないことならば、それの対応策も講じていただけるものと思いますが、いずれにしても、そういった問題については、多くの人々の意見なり知識等を参考にしてやらなければなりませんので、意見を求める場は何らかの形においてつくっていきたい、こう思います。しかし、これは私どもの方が主として呼びかける問題ではなくして、労働省なりあるいは知事段階なり、そういった出かせぎを受けている側からも積極的な意見がなければなりませんので、関係方面と連絡をとりつつ、前向きで取り組んでまいりたいと思う次第でございます。
  78. 伊東正義

    伊東主査 これにて栗林三郎君の質疑は終了いたしました。  次いで、横路孝弘君。
  79. 横路孝弘

    横路分科員 きょうは北海道のサケ・マスふ化事業の問題を主として議論をしたいと思うのですが、その前に、現在モスクワで日ソ漁業協力交渉が行われておって、サケ・マスの作業部会をつくって、三月の一日から議論が行われているということのようですけれども、その後こちらの方の交渉の進展状況はどうなっているでしょうか。
  80. 森整治

    ○森(整)政府委員 三つの作業部会といいますか、専門部会に分かれまして議論がされておりますが、特にサケ・マスの資源問題をめぐりまして、御承知のように、沖取りをしないというソ連側の主張と、日本側の、やはり沖取りも沿岸の漁業とあわせて一つやり方であるという意見の応酬がただいま行われておるわけでございます。そういうことでございまして、当面焦点はそこにわが方はしぼっておるつもりでございますが、ソ連側は漁業協力協定全体を早く、そちらの方が先だというような認識で、話し合いが若干ずれぎみではございますけれども、サケ・マスの資源論争をただいまやっておるという状況でございまして、今後の見通しにつきましては、全くまだ予断を許さないというふうにわれわれ認識しておる次第でございます。
  81. 横路孝弘

    横路分科員 依然として沖取り漁を禁示するといいますか、抑止するということを前面に押し出してきているということのようですけれども日本としてはもちろん実績確保、当然北西太平洋地域のサケ・マスといっても別にソ連産ばかりじゃないわけですから、大臣として、これは四月下旬ぐらいでしょうか、まだ若干時間があると言えばありますけれども、しかしないと言えばないとも言えるのでありまして、この辺のところ、事態の進展を見ながら、ひとつ全力を尽くしていただきたいと思うのですが、農林大臣としての御所見はいかがでしょうか。
  82. 中川一郎

    中川国務大臣 サケ・マスの母川国主義、すなわち国に帰ってきて川へ上る段階でとるべきである、沖取りはやめるべきだという意見が海洋法会議以降非常に強くなっております。アメリカでもそういう意見もありましたし、またカナダもそうでございますが、日米加交渉に当たりましては、いま最後の詰めを行っておりますが、若干漁区等について話し合いは行われましたが、基本的には、沖取りは過去の実績を大幅に下回らないという形で確保できるものと見ております。  引き続きましてソビエトでございますが、ソビエトにつきましても、長い伝統のあるこのサケ・マス沖取りは重要なわが国の資源であり、また北海道中心として多くの漁家の生活のよりどころでもございますので、ソビエトの厳しい姿勢ではありますけれども、資源問題、その他の論争を重ねながら、何とか過去の実績は確保したいという不退転の決意で取り組むつもりでございます。
  83. 横路孝弘

    横路分科員 サケ・マスの資源の評価をめぐっての議論もなされておるということでありますが、確かにその資源をふやすための方策なども、これは五十年の九月ですか、日ソの共同サケ・マス事業ということで、ピオネー川に関するお互いの合意というのはできたのですが、その後なかなか内容的には進展していないようでありますし、ソビエトの方から資金面の要請などを受けたことも過去にあると思うのですね。そういう意味で言いますと、実績確保という前提に立って、協力すべきものは協力してやる。とりわけ日本のふ化技術というのは世界最高の技術なのでありますから、お互いに資源を確保し拡大をしていくという面からも、協力すべきところは協力してやるという観点もこれまた必要だと思うのですが、そこら辺のところはどうでしょうか。
  84. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、サハリンのピオネー川にサケ・マスの人工増殖施設の設置事業について一応合意を見たのですが、その後延期ということで実現しておりません。しかし、御指摘のように、新しい二百海里時代に入りまして、新しい漁業関係の樹立のための漁業協力協定を中心とする協議がただいまモスクワで行われておるわけでございます。わが国といたしましても、両国が今後とも協力いたしましてサケ・マス資源の増大を図る、そしてサケ・マス資源の管理保存に努めていくということが非常に重要な問題であるというふうに考えておりまして、この立場に立ちましてソ連側ともさらに交渉を進めていくという考えでございます。
  85. 横路孝弘

    横路分科員 しかしそれにしては、来年度予算の計上がわずか一千四百万程度ということで、これでは一体こちらの方に協力の姿勢があるのかないのかということにもなりかねないと思うのです。ぜひこれは交渉がうまくいくように全力を尽くしていただきたいと思います。  そこで、日本としても結局資源を保護し育成していくということが必要なわけです。とりわけその中でサケ・マスのふ化事業というものが最近大変大きな成果、効果を上げているということは、中川農林大臣よく御承知のことだと思います。水産庁は、サケ・マスの資源増大再生産計画というものの後期計画をつくられたわけですけれども、この目標を達成し、さらに拡大していくためには、幾つかの条件が必要だろうと思うのですけれども、この計画に基づいた具体的な細部計画というのは、もうすでにおつくりになっているのでしょうか。
  86. 森整治

    ○森(整)政府委員 細部の目標といいますか、毎年の目標数値はございまして、五十五年で、先生御承知のように、約十五億五千七百万尾の放流を目標としておるということでございます。あと五十一、五十二、五十三、五十四、五十五ということで、毎年の放流の尾数の目標値を定めて、それに見合う施設なり運営を図ってまいるという方針運営をいたしておるわけでございます。
  87. 横路孝弘

    横路分科員 それが五十三年度予算の中身になるわけですけれども、結局問題なのは、まず一つは施設ですね。それからもう一つは人ですね。この二つの要素というのは非常に大事だと思うのです。そこで、最近は回帰率が上がって、いま二・二%と言われておりますけれども、回帰率をこれ以上高めるのはなかなか無理な点があるだろうという段階にいま来ているわけですね。そうするとどうしても放流の量を拡大する、あるいは放流河川の拡大をしていくというようなことが必要になってくるだろうと思いますが、まず最初、今後たとえば北海道において放流可能な河川というのはどのぐらいあるのか、これはいままでのいろいろな調査で数字が出ていると思いますが。
  88. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいまのところ百三十河川について実施をいたしておりますが、さらにそれを拡大をしていくということが一つの方向でございます。いま具体的に全体の数字は持っておりませんが、いままでの河川をさらに拡大していくということでやっていきたいと思います。
  89. 横路孝弘

    横路分科員 これは前におたくの方で調査された研究の結果なんか出ていまして、大体大きい河川、可能河川についてはほぼ実施されているので、今後拡大するというと、河川としては小さな河川になるのですけれども、河川数から言えば、ほぼいまの倍ぐらいの河川にだって放流可能だということが、これはいろいろな調査の結果として出されているわけです。  そこで、先ほど水産庁の長官からお話があったような目標を達成するために、どれだけの施設の整備費が必要なのかというと、三十八億ですね。このうち昭和五十三年度までに大体約十億が予算化されたわけでありますから、したがって残り二年間で二十八億必要なわけです。これは五十三年度に行くと、たしか施設整備費は五億ですね。昨年度が三億五千万ですか、五十三年度が五億ということなわけです。この従来の伸び率からいきますと、この目標を達成するためには、あと二年間で二十八億が必要なわけです。つまりかなり大幅に伸びをふやさなければいかぬということだと思うんです。つまり長期計画でありますから、長期計画に向けて施設整備と人というものを配置していかなくちゃいけないわけです。これは投資効果から言ったら大変な投資効果です。こんなに投資効果の上がっている国でやっている事業というのは、私はないと思うのです。これはあと二年間で二十八億というのがきちっとできますか。いまのこのままの状況だったら、これはとても無理ですよ。
  90. 森整治

    ○森(整)政府委員 いま先生の御指摘の数字の中には、改修の費用も全部入っておるわけでございます。そういう意味で全体の計画資金量といいますか、いままでの、五十三年が確かに御指摘のように五億でございますから、この調子でというお話は確かにそういう而もあるわけでございますが、必ずしも放流を実施するに支障を来さない範囲の施設の拡充につきましては、なお今後努力をいたしまして、その実現を図っていくというふうに考えておるわけでございます。
  91. 横路孝弘

    横路分科員 この「施設の現状と整備」という内容を見ますと、大臣、まだ明治時代の建物があるんです。これはたしか大臣の選挙区だったと思うのです。それから大正時代の建物、それから昭和初期の建物。ここでどういう作業かというと、作業は冬が中心なんですね。秋に親をとってからふ化してかえすという、この冬の寒いさなかに、これは後で聞きますが、一人勤務のところがこれまた多いんです。ことしみたいに雪が多いと、みんな雪はねから何からやりながら、せっかくふ化からかえった稚魚をきちっと育てて放流してやるというための苦労というのは、私も何カ所か歩いてみましたけれども、これは大変なものなんです。  だからまず一つは、やはり施設を近代化するということです。まだまだ古いところへ行ってみますと、それこそ雪はねをしてまず雪を除いてからでないと、稚魚のめんどうが見れないような施設までまだ中にあるんです。きょうは大蔵省の担当の主計の方もおられますが、これは大蔵省にはぜひ一度現場に行って見てもらわなければならぬと私は思うのでありますけれども大臣どうですか。明治時代の建物の大変お粗末な施設で苦労しながらやってきて、技術をここまで持ってきたんです。施設をきちんと拡大していくというこの計画を達成するためには、いまのペース、五十三年度予算のこのペースでは間に合わないです。どうですか、農林大臣
  92. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように明治、大正期に開設されたものが二十二カ所、昭和期に開設されたものが十五カ所ということで、計三十七カ所の事業場でいろいろ事業を行っているわけでございます。現在までにいろいろ施設の更新、補修等の改修を行っておりますが、当面、耐用年数から見て整備を要するという施設は八事業場というふうにとらえております。  施設の整備費につきましては、先ほど御指摘のようにここ二、三年大幅に拡充をしてきておるわけでございますけれども、御指摘のような問題は十分われわれも認識しておりますので、さらに拡充強化に努めてまいりたいというふうに考えております。
  93. 横路孝弘

    横路分科員 それでもこの施設整備費というのは毎年毎年ある程度の伸びは示しています。しかし、これは全体の予算だって、大臣、本当にわずかなものですよ。この北海道のサケ・マス事業関係は、総額でもって、全部入れて幾らですか、十何億でしょう。たしか昭和五十二年度二十億行ってないのじゃないかな。その程度で一千万尾ですから、これの金額にしたら大変な金額です。三百億から四百億ぐらいになるのじゃないでしょうか。そこで、施設整備費はある程度伸びているんですが、採卵ふ化放流庁費というのですか、事業実施するために必要な経費というのは、ほとんどずっと横ばいになっているわけです。したがって事業運営がなかなか厳しくなってきている。これが現場の声ですが、ここはどのように見ておりますか。
  94. 森整治

    ○森(整)政府委員 いまのサケ・マスのふ化場の運営費は、水産庁の一般事務費に含まれておりまして、この事務費につきましては、毎年節約等、いろいろ合理化によって非常にきつくなってきておるということは御指摘の問題点の一つであろうと思います。  しかし、事務の取り扱いといたしましては、標準予算になっておるものですから、なかなか、事業が伸びるわりに運営費がついていけないという問題があったわけでございます。そこで現在の取り扱いといたしましては、運営費については新しい項目を立てまして、予算の増加ということを考えておりまして、全体の他部門に比べますと、比較的伸び率も高くしまして、その事業運営に支障がないように配慮しているつもりでございますが、そんな額では物足らないという御指摘については、十分さらに検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  95. 横路孝弘

    横路分科員 この北海道のサケ・マス、全部合わせて十三億ですな。
  96. 森整治

    ○森(整)政府委員 十二億四千五百万円であります。
  97. 横路孝弘

    横路分科員 昭和五十二年が十三億四千五百万で一千万尾です。それはどういうことになっているか。行管来ていますな。昭和三十一年から昭和四十年まで稚魚の放流数が大体三億です。そして親が大体二百八十万尾です。このときに定員が百五十八人なんです。昭和四十一年から昭和五十年になって稚魚の放流数は四億五千万、定員はむしろ一人減って百五十七人。昭和三十年代が百五十八人、昭和四十年代が百五十七人、そしていま何人いるかというと、むしろどんどん減っている。その稚魚の放流数は昭和五十二年で七億尾ですね。どんどんふえている。事業量はどんどんふえても人を全然ふやしてない。そこで最近大きな問題になっているのは、構成年齢層が大分高くなって、技術を若い人にどうやってきちっと継続させていくかということが大変問題になっているのですよ。退職された人がわざわざ出てきて若い人に教えるなんということまで、あちこちで行わなければならないような現状でしょう。一人庁、一人勤務のところが大体何カ所ありますか。
  98. 森整治

    ○森(整)政府委員 一人勤務の事業場は二十でございます。
  99. 横路孝弘

    横路分科員 農林大臣、これは一人でもって全部めんどう見ながら、雪かきまでやりながら、しかもこれは町に近いところにはないのですから。私のところの尻別なんというのは全くの雪の山の中にあって、大変なところでみんな苦労しながらやっているわけですね。だから、もう少しこういうところは、人をきちっとつけるところはつけるということですね。これは行管からも見解を承りたいですが、いままで要求を出したって、大体毎年一人つけばいい方じゃないですか。そして、本当に退職した人まで駆り出して指導しなければ、技術の継続がきちっとできないような状況になっているのですよ。まず農林大臣から御見解を承って、それから行管の方も、どうしてこんな惨めな査定になっているのか、見解を承りたいと思うのです。
  100. 森整治

    ○森(整)政府委員 一応事務的に御答弁を申し上げまして、後から大臣から御答弁いただきたいと思います。  私ども、確かに御指摘の問題は非常に認識はいたしておりますけれども、全体といたしまして、御承知のように定数の削減が行われている、むしろ前と同じ人数を確保するということは非常に事業を重視されておるというぐらいな認識が実情でございます。その中でも、ここ五十二年、五十三年と、一名とはいえども、こういう事業場に人員が確保できるということは、農林省としては最大の努力をしておるわけでございますけれども、そうは申しましても、一人の事業場につきましてはいろいろ勤務上の問題がございます。そこで、一人勤務の事業場につきましては、省務の補助人夫というものを活用いたしまして、忙しいときには二、三人で運営できるという体制をとりあえずとっておるというのが実情でございます。
  101. 中川一郎

    中川国務大臣 サケ・マスのふ化放流は、私も数年前からこれはやらなきゃいかぬなということで、大臣になる前からこの予算には非常に関心を持ってやってきたわけでございますが、それでも伸び率、さっきは減らない、率がいい方だという話がありましたが、伸び率では相半前向きでやってきたつもりでございますが、いよいよ厳しい時代でございますので、ひとつがっちり前向きで、さらに一段とがんばってみたいと思います。  また、最近では、民間でも、定置等で揚がったサケ・マスの中から何ほどかの負担金を出し合ってでもやるべきだ、それでも採算が合うであろうというような声があるくらい非常に大事でございますから、施設費の整備と、それから人員につきましても、農林省のみならず、非常に厳しいわけでございますけれども農林省の中にもどこか暇なところもあるのじゃなかろうかというふうに思いますので、全体の枠はなかなか厳しいのですが、行管とも相談をして、一人でやっていくというような大変なところについては、ひとつ前向きで考えてみたいな、こう思っておるところでございます。
  102. 横路孝弘

    横路分科員 行管の方も、非常に今後さらにその重要性というのは増していく部分ですし、大体毎年十人くらいの要求が出ていて、それが四十九年、五十年はゼロ、ゼロ、ことしは一名ついて、横ばいがいいという話だったですけれども仕事の量というのは非常にきつくなって、多くなってきているわけですし、ぜひこの次のときには人の点のめんどうを見るように、私の方も監視しておりますので、ひとつ行管の見解を承りたい。
  103. 米倉輝

    ○米倉説明員 先生おっしゃいますとおり、確かに二百海里時代に入りまして、特に海洋法会議等の動向等を考えますと、サケ・マスのふ化放流事業というものの重要性というものについては、われわれも深く認識しておるつもりでおります。特に、国の施設でございますので、たとえば採取、放流の技術の開発とか、あるいは動態的な把握、そのほか民間に対する技術指導、こういうような面についてやはり強化されるべきであろう、かように考えておるわけでございます。  ちょっと原則論を申し上げて申しわけないということになるのかもしれませんですが、定員法で規制されておりますので、一般省庁につきましては全体として前年より減っているわけでございます。そういう中ではございますけれども、サケ・マスふ化場につきましては、昨年、ことし、各一名ではございますけれども増員しております。今後につきましては、農林省からの御意見を十分伺い、かつ、実情、あるいは合理化の努力、そういうものを十分検討いたしました上で措置いたしたい、かように考えております。
  104. 横路孝弘

    横路分科員 それから大蔵省の方にも。この長期計画はもちろん御承知で今度の施設整備費になったんだと思うのですけれども、ぜひ一度現場を、本当は夏に行ってもだめなんでありまして、夏はもう肝心の仕事はほぼ終わっている段階なんで、冬の寒いさなかに一度行って、明治時代の建物の現状なんかをよく見てもらって、施設整備費をつけてもらわなければならぬと思うのですが、ひとつ来年度きちっと配慮するように要望しておきます。
  105. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答えいたします。  サケ・マスふ化場の件につきましては、中川農林大臣が農林大臣になられる前から非常に御関心をお持ちでございまして、私どもいろいろとお話を伺っております。いまの時代になりまして、非常な重要性にかんがみまして、今後ともよく水産庁御当局と相談をいたしまして、前向きで対処してまいりたい、こういうふうに思います。
  106. 横路孝弘

    横路分科員 ひとつ来年度、五十四年度で期待をしておきます。  そこで、問題が幾つかあるのですが、最近のサケの回遊する時期が——これはそこから見えるでしょう。オホーツク海域、根室海域、襟裳より東の海域、襟裳より西の海域、日本海域と、これが正常な、正規の分布ですね。これがややおくれてきているわけです。つまり、十一月、十二月という遅い時期になってきているのですね。これは何かといいますと、川に上げないでもって、沿岸沿いの漁民がみんな魚をとっちゃって、最近はとらない期間を何日か決めたりやっていますけれども、後期十一月から十二月でもって川にサケを上げても、そこからふ化して放流するということになりますと、これが戻ってくる時期がどんどんずれていくのですね。したがって、きちんと正規の分布型にしていかないと、大変なことになるわけですよ。これには沿岸の漁民の協力が必要なんで、その辺、水産庁としてぜひサケ・マスのふ化場の方と、これは道とも関連してくるわけですが、協力をして、何でもかんでも来たらとればいいというものではないので、後のことを考えた漁をきちっとするようにしてもらいたいということが一つ。  それから、最近、宗谷の方で刺し網を認めているのですね。刺し網を認めると、後の再生産に、傷ついてしまうなり何なりして、大変大きな支障を来すのです。したがって、そこら辺のところを水産庁としてきちっと行政指導をしていただきたいというのが、これはふ化場の現地だけではなかなかできなくて、みんなが苦労している一番大きな点なんです。これはいかがでしょう。
  107. 森整治

    ○森(整)政府委員 上期と下期と、中をとめるというようなことをいろいろやってみているようでございます。今後、確かに親魚の確保がある一定時期に集中しないということ、これは当然必要なことでございますから、定置の漁業権の切りかえの時期でございますから、ひとつこの際、しっかりと注文をつけて、今後の運営に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  108. 横路孝弘

    横路分科員 そこのところが一番大事なんで、魚が来ていると、沿岸の漁民にしてみればどうしてもとりたくなる。先ほど図で示したような傾向が、ずっと毎年毎年だんだんずれてきているというのがはっきり出てきているので、その辺、よく道とも相談しながらやってもらいたいというように思います。  あと五分ほどあるそうですから……。話が全然変わって恐縮ですが、水産外交というのがいま非常に問題になっています。海外協力、海外援助という観点から見ると、水産というのは従来ほとんどなかったに等しいぐらいですね。今日、われわれ、あっちこっちで、メキシコを初めとする中南米、あるいは南太平洋フォーラムなど二百海里の動きがずっとこう出てきている中で、やはり技術協力、これは道漁連あたりに引き合いも大分来ているようですが、こういうものに政府として積極的に協力をしていくということがなければならぬのではないか、ただ単に魚をとらせようというだけではなくて。現地の方ではやはりみずから船に乗り、漁業技術を高める、あるいはとった魚をさらに水産加工したいというところまで要求を持っているところがあるわけなんで、これに日本としてどういうぐあいに対応していくかということが非常に大事な問題だろうと思うのです。そこら辺のところをどうお考えになっているのかということと、最近の二百海里交渉の中で、ニュージーラン下と交渉が決裂したままになっていますね。新聞の報道するところによると、ニュージーランドはやむを得ないみたいな発言もややあるやに聞いておるのですが、そういうことじゃなくて、これはまた北海道の方からもかなり南転船というのかな、回っていってという矢先に、またニュージーランドがだめだということなわけなんで、これは一体交渉再開のめどがあるのかどうか、二つまとめてひとつお答え願いたい。
  109. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代を迎えて各国との二国間折衝をやるわけでございますが、アメリカのように先進国もあれば、そうでない、いろいろ技術協力なりあるいは資金協力等のような要請もございますので、これらには対応して漁獲実績を確保して、個々にやってまいりたいと思っております。現にメキシコ等においては具体的な提案もございますので、対応していくことにしております。  また、ニュージーランドでございますが、ニュージーランドは漁業協力よりはむしろ農業協力をやってくれ、そのことによって漁業交渉に応じようという宿題が出ておりますので、鈴木前農相はできるだけの対応を持ってまいりましたが、はよかったのでございますが、残念ながらニュージーはいまのところまだ決裂状態にございます。しかし、今後とも粘り強くわが方の意のあるところを伝えて、何としても打開にこぎつけたい、こう思っております。
  110. 横路孝弘

    横路分科員 時間が参りましたので、北海道のサケ・マスのふ化事業をさらに発展させるということ、これはやはり資源確保という意味からも拡大という意味からも大事だと思います。今後ともひとつ努力されますよう要望して、終わります。
  111. 伊東正義

    伊東主査 これにて横路孝弘君の質疑は終了いたしました。  次に、飯田忠雄君。
  112. 飯田忠雄

    飯田分科員 私は瀬戸内海の漁業問題について質問を申し上げたいと思います。  最近の漁場の変化を見てまいりますと、明らかに沿岸漁場というものが大変重大な問題となって取り上げられてきておるということは皆様方御存じのとおりだと思います。そこで、この沿岸漁場の中でも特に重要な瀬戸内の漁場につきまして最近の状況を見ますというと、大変憂うべき状態が生じておるわけでございます。赤潮の発生状況は年々増加いたしまして、昭和五十一年においては三百二十六件の発生を見ておる、こういう御報告を農林省からいただいております。     〔主査退席、中島(源)主査代理着席〕 そこで、赤潮の多発による漁業被害、この増大につきまして、この問題の解決に当たりましては、何といいましても、赤潮の原因を究明してこれをなくする以外にない、このように考えられます。  そこで、農林省におきましては、この問題についてどの程度の原因究明をされておるのか、また、そういうものについての調査研究機構はどのように整備されておるのか、このことについてまずお尋ねをいたします。
  113. 森整治

    ○森(整)政府委員 赤潮の発生につきましては、基本的にはやはり窒素、燐の富栄養化の問題が基底にありまして、それと潮のかげん、温度のかげん、いろいろ潮流等の変化によりまして発生するということは一応明らかにされておりますけれども、その発生の細かいメカニズムにつきましては、残念ながら、まだいまの知見ではなかなか把握しにくい問題があるというふうに考えております。ただ、そうは申しましても非常に重要な問題でございますので、水産庁でも毎年相当の研究費を使いまして、そのメカニズムの究明に努めておるというのが現状でございます。私どもも、何とかこの問題を解決いたしませんと、非常に困った問題として、頭の痛い問題として考えておるわけでございます。早くその究明を急ぎたいというのが実情でございます。
  114. 飯田忠雄

    飯田分科員 その調査研究につきまして、農林省においても進めておられるという話を聞きましたが、その具体的な方法、具体的な研究機関、またそれにつぎ込んでおられる具体的な予算金額、こういうものについて御説明を願います。
  115. 森整治

    ○森(整)政府委員 ちょっと時間をおかしいただきたいと思います。
  116. 飯田忠雄

    飯田分科員 それでは、それは後で返事をいただくことにしまして、先に質問を進めます。  燐とか窒素が海水へ流れ込んできていますが、これが赤潮の原因だという説がございます。そこで、その説の当否はさておきまして、そういうことが言われる以上は、燐とか窒素の海水への流入、これを減らすことが必要ではないかと考えるわけでございますが、これにつきましてどのような方策をおとりでございますか、お尋ねいたします。
  117. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答え申し上げます。  赤潮の原因物質として窒素並びに燐がその一つであろうということにつきましては学問的に定説化しっっあるわけでございます。したがいましてその流入をいかにして減らすかという話になるわけでございますが、まず窒素につきましては、先生御案内のように、空気の中に窒素があり、それが海中に溶け込んでいくというようないろいろな原因がございましてなかなか押さえにくい。燐については技術的にはアプローチがやや簡単である。それで、燐の流入につきまして技術的に対応の方法が見つかりつつあるというのが現状でございます。  燐がどのように海水に入っていくかということを大づかみに考えてみますると、生活排水からが大体半分ぐらい、それから産業活動から約四分の一、その他が四分の一、こんなかっこうになっております。そこで量的にとらえますには、まず下水道の整備等によりまして生活排水からの燐の流入をできるだけ減らす、それから目下急速に技術が進展しております。三次処理と言っておりますが、下水道処理のさらに一歩進んだものが開発され、普及されれば大幅に燐の流入が減らせるではないかということを考えております。それから産業系につきましては、もちろん燐を排出いたします工程につきましてはできるだけその燐を削減するという技術を導入していく、こういう方法で対処していこうとしているのが現状でございます。
  118. 飯田忠雄

    飯田分科員 ただいまの御説明で、産業排水とか生活排水の流入が問題だということを承りましたが、それならば、その生活排水とか産業排水の流入をどのように規制するかという問題があると思います。  総量規制を強化する御意思はございましょうか、お尋ねいたします。
  119. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 規制というお話でございますが、燐につきましてはまだ環境基準といったものを設定する段階にないわけでございます。と申しますのは、まず海の中の生物、特に植物系の生物につきましては、燐が栄養要素として必要なわけでございます。ただ、余りにたくさんあり過ぎると赤潮のように非常に毒性のある生物が大量にまた一時的に発生する。ではどの程度あったらいいのかという点が実は解明できていないわけでございまして、ある量は必要だ、あり過ぎてはいけないということでございますが、先ほど農林省からも御説明がございましたように、富栄養化すなわちあり過ぎる現象にいま移りつつある。特に閉鎖性水域につきましてはそういう現象が見られますので、現状よりはふえないようにしていこうというのが当面の行政対応であろうかと考えております。したがいまして、燐の流入を削減するという方向で方策を考えてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  120. 飯田忠雄

    飯田分科員 結局排水の問題の根本解決はむずかしいということだと思いますが、ただむずかしいでは困るので、その排水を浄化してその水を再び循環して使うという方策をお考えになっておるかどうか、お尋ねします。
  121. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 確かに将来考えていくべき方途だとは考えるわけでございますが、まず現状におきましては生活排水を下水道の普及によって処理をするというのが当面第一義的な問題点であるとわれわれは理解しております。と申しますのは、日本におきまする下水道の普及状況が二四、五%という状況でございますので、特に閉鎖性水域につきましてはその普及率をまず上げていくということが内海の浄化の第一に効果がある方法であろう、かように考えているわけであります。特に燐につきましても、現在行われております二次処理という下水道処理で、すでに三割ぐらい燐が落とせるわけでございます。そうすると、この下水道の施設が普及いたしますると三割ぐらいは黙っていても燐の流入が削減できるというような状況でございますので、まずそれを普及させたい、その普及を待ちましてさらに第三次処理、これは燐を落とすということを目的とした技術でございますので、その第三次処理の導入に移ってまいりたい、こういう方向で考えております。
  122. 飯田忠雄

    飯田分科員 排水処理の問題につきまして、まだ具体的な案ができていないというふうにお聞きしたわけですが、昔の瀬戸内海は魚が少なかったかどうか、現在と比べてどちらが魚にとっていい瀬戸内海の状況であるか、この点について水産庁の方のお考えを承りたいと思います。
  123. 森整治

    ○森(整)政府委員 昔と比較した資料はちょっとございませんが、いずれにいたしましても、一時非常に富栄養化が進みまして、危機的な状況を迎えた時代が確かにございました。しかし、最近はやや落ちつきを見せておりまして、漁獲量につきましても若干回復をいたしておるというふうに私どもは把握いたしておるわけでございます。  それから、立つたついでに先ほどのお答えを申し上げたいと思いますが、水産庁といたしまして、五十三年度に赤潮対策関係では全体で三億六千二百万円の予算を計上しております。そのほかに、養殖共済等の対策としまして二億九千四百万円計上いたしております。  そこで、赤潮の発生の防止対策といいますか、いろいろ研究等しております内容を申し上げますと、一つは、海底の汚泥の堆積状況を調査する、それから海底の汚染泥の回収技術の開発を図る。五十三年度からは次のことをやっております。富栄養化されました漁場の浄化技術の開発試験といたしまして、粘土物質によりますヘドロ底質の改良試験それから珪藻類であるスケレトネマ、アオコを食べるレンギョ等の生物によりまして水中の富栄養化物質を除去する技術の開発試験、それから水質、底質の浄化を図るための海底耕運機、海底曝気装置、それから海底被覆工法、要するにかぶせてしまうということですが、そういう技術の開発試験を行うということをやっておるわけでございます。その他いろいろ発生予察の仕事等含めまして予算を三億六千二百万円計上しております。
  124. 飯田忠雄

    飯田分科員 次に、海水が汚濁して漁業の状況が悪くなるというふうに言われる説と、よくなるという説がありますので私はその点ははっきりわかりませんが、とにかく汚染されない海のうちでも瀬戸内海の状況は非常によかったということは事実であります。今日汚染されて、とれた魚が人体に及ぼす影響が非常に大きいというところから、これをむだにしておることも事実であります。たとえば徳山沖でとった魚は、それを買い上げて埋めておる、そういうむだなことをしております。  そこで、そうした状態が生ずるもととなるのはやはり汚水の流入であろうと思いますが、全部のものについてお尋ねしても、これはちょっとむずかしいので、ひとつ合成洗剤の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  合成洗剤につきまして、これが赤潮の原因となるものだということがテレビでも放送されております。世の中の人も最近は大体そのように思うようになってきました。そこでこの合成洗剤というものを使うのをやめたらどうだという説が起こっております。これもテレビで放送しております。この点につきまして、通産省の御見解を承りたいと思います。
  125. 平河喜美男

    ○平河説明員 お答えします。  先ほどから環境庁、農林省さんのお話にございましたように、富栄養化について窒素、燐という原因物質があるというお話でございます。先生指摘のとおり、燐につきましては、合成洗剤が一部寄与をしておることは事実でございますので、私どもの方としても合成洗剤の低燐化について鋭意指導しておるところでございます。ただ、仰せのようにこれを全部禁止するということになりますと、現在、石けんの原料油脂の輸入量の問題あるいは価格の問題その他いろいろ問題等もございますので、急にこれを転換するということはちょっとむずかしかろうというふうに考えております。
  126. 飯田忠雄

    飯田分科員 瀬戸内海の海水を汚くするもう一つ原因として、油による清洲が考えられております。最近瀬戸内海周辺の県知事さんから、この問題は非常に重要だから大型タンカーなどの航行の総量規制などを考える必要があると思うがどうかという御意見もございました。  そこで、大型タンカーとか危険物搭載船、こういうものの瀬戸内海における航行の総量規制あるいは港への入港の総量規制、こういうものについてどのようにお考えになっておりますか、運輸省にお尋ねを申し上げます。
  127. 中島眞二

    中島説明員 瀬戸内海環境保全臨時措置法の後継法の中に、いまお話のございましたタンカーの航行規制、その他瀬戸内海の油によります汚染を防止することを目的としました規定を具体的に設けたいということを環境庁の方から御協議がございまして、目下いろいろ話し合いをいたしております。運輸省といたしましても、現行法制度の関連とかあるいは船舶航行の実態等にかんがみましていろいろ意見がございますので、今後とも十分協議してまいりたい、かように考えております。
  128. 飯田忠雄

    飯田分科員 この問題は大変問題が多いと思いますので、御研究をお願いいたします。  そこで次に、瀬戸内海環境保全臨時措置法という法律がございますが、これはことしの十一月で期限切れになると言われます。その後継法の内容につきましていろいろの点が言われておりますが、次のようなことを内容として盛られる意思があるかどうか、お尋ねをいたします。  まず第一が、水質保全対策としまして排水流入の総量規制、それから下水道の整備、排水処理の完備。次に、富栄養化対策としまして燐、窒素の環境基準の確立。それから次に油濁等の事故防止、漁業操業安全対策、こういうものといたしまして大型タンカーとか危険物搭載船の航行規制、船舶からの油排出の規制の強化。それから次に、自然海岸の保全対策といたしまして海岸の埋め立てなどについての規制でございます。こういうようなことにつきまして現地の方からは非常に強い要求が出ておりますが、こういうような内容も盛られる意思があるかどうか。それから次に、国印補助その他財政上の特別措置についての規定を設けられる意思があるかどうか、この点についてお尋ねを申し上げます。
  129. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答え申し上げます。  いろいろな項目について御指摘があったわけでございますが、順次お答えいたしますと、まず、汚濁の流入を防ぐために総量規制という制度を考える意思があるかという点でございますが、現行の瀬戸内海環境保全臨時措置法第十八条におきましてすでに次のように、すなわち「政府は、すみやかに、瀬戸内海及びこれに接続する海域以外の公共用水域に排出される排出水の規制に関し、量規制の導入について必要な措置を講ずるものとする。」と規定されておりますので、この精神を受けとめまして、この後継法につきましては総量規制という制度をぜひ導入したいと考えまして、目下環境庁案をベースにいたしまして関係省庁と協議を進めているところでございます。  それから次の、総量規制を実効あらしめるためには、下水処理の整備が絶対条件と考えておりますので、この辺、所管省庁であります建設省に環境庁からお願いをするという形で、ぜひこれは満足のいく遂行を図りたい、このように考えておるわけでございます。排水処理につきましては、下水道の整備並びに屎尿処理施設の整備の促進ということで対処してまいりたい、かように考えております。  富栄養化対策でございますが、先ほどすでに申し上げましたように、いきなり規制ということにはまだ段階が幾つかあるわけでございます。とりあえず富栄養化の逆行の防止、通行をとめるということにつきまして行政措置で対応してまいりたい、その行政措置の取っかかりを与えるような内容の条文を織り込むことができるかどうか、現在鋭意検討中でございます。  それから油濁防止につきましては、先ほど運輸省から御説明がございましたように、何らかの方法が脅えられるかどうか、また安全対策についても同様でございますが、何かそういう方途があるかどうか、関係省庁岡で協議を進めているところでございます。  それから自然海浜の問題でございますが、運輸省、建設省で所管しておられます現行の諸法律でも相当程度の効果が期待できるという実態もあるようでございます。さらにそれにつけ加えることができるのかどうか、これも現在関係省庁間で検討を進めている段階でございまして、近く何らかの結論を得るかと考えております。  それから国庫補助等につきましては、法律に書く書かないは別といたしまして、こういう瀬戸内海浄化の目的を達するためにぜひとも確保してまいりたい、これはむしろ関係省庁協力して実現を期するというのが基本的な姿勢であろうかと考えております。
  130. 飯田忠雄

    飯田分科員 次に、自然海浜の構想、いまお述べになりましたが、具体的に現在入浜権運動とかいろいろな運動が起こっております。こうした運動が起こってまいりますのは、現実にそういう不安があるからではないかと思いますので、この点について改めてお尋ねいたしますが、自然海浜保存の構想、これはどの程度にお考えでしょうか。簡単にお願いいたします。
  131. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 自然海浜、たとえば海水浴場に現在利用されているところ、あるいは散策の場、憩いの場として現実に利用されている個所、また将来もそうであろうと予想される個所につきまして、今後何らかの人工的な手を加える場合には、それはよく都道府県知事と相談していただくといったようなことが考えられるかどうか、そういうことを構想といたしまして、これが現行法で十分カバーできるのかどうかという点を詰めておるというのが現状でございます。
  132. 飯田忠雄

    飯田分科員 赤潮等による漁業被害が生じておりますが、この漁業被害を救助する制度の確立につきましてどの程度のことを考えておられますか、お尋ね申し上げます。
  133. 森整治

    ○森(整)政府委員 赤潮の大きな被害を受けますのは養殖でございますが、これは共済の対象といたしまして養殖共済におきます赤潮特約事業ということによりまして、ハマチ、タイ、ホタテガイ、カキ、真珠、真珠母貝、そういうものに係る養殖共済のうち、異常な赤潮によります損害をてん補する旨の特約を締結しておるものに対しましては、共済掛金の全部を国と地方公共団体が補助するということをやっておるわけでございます。一応そういうことを中心事業実施しておるというのが現在の状態でございます。
  134. 飯田忠雄

    飯田分科員 最後に大臣にお尋ね申し上げますが、瀬戸内海の漁業のわが国の水産界における位置というものは非常に高いものであろうと思います。ところが、それが海水の汚濁だとか埋め立てだとか、あるいは海中物の構築によりまして汚染が進みまして、漁業に重大な被害を及ぼしつつあるというふうに私どもは認識しております。ところで、今日の世界の海の分割傾向から見ますと、公海漁業がますますむずかしくなり、あるいは他国の沿岸漁業がむずかしくなる。そうしますと、必然的に沿岸漁業を見直さなければならぬと思います。特に沿岸漁業といいましても、瀬戸内海のようなところはわが国の総合的な産業計画の中の一部としまして、むしろつくる漁場、漁場製造ということをなすべきではないか。もっと極端に言いますれば、瀬戸内海全体をわが国の水産資源の製造場とするという考え方、したがいまして、それを阻害するあらゆる悪条件は排除するという考え方、そういう考え方をとって、強力な漁業政策を進めるべきであると思いますが、この点につきまして大臣の御見解を承ります。
  135. 中川一郎

    中川国務大臣 二百海里時代を迎えまして、沿岸のみならず内海、特に瀬戸内海の占める漁業は、今後の養殖漁業とも相まちまして非常に大事なところでございます。全国に先がけて瀬戸内海漁業栽培センターというようなものをつくったのもまさにこのためでございます。今後海の汚染問題あるいは環境問題等にも十分配意脅しながら、漁礁の投入等積極的にこの地帯の漁業発展のために水産庁をして前向きでやらしていきたい、こう思う次第でございます。
  136. 飯田忠雄

    飯田分科員 従来の政策を見ておりますと、どうも政策が総合的にとられていないように思います。各省各省の立場もございましょうが、各省が手をつないで一つの目的のために全力を挙げるという姿勢が、どうも欠けておるようでございます。たとえば瀬戸内海というもののわが国における地位は漁業だということならば、そのことを重点としての各省の対応策がなければならぬのですが、それがどうも欠けておるように思います。そこで一体瀬戸内海というものは今後漁場として確保していくのか、あるいはもう漁場を捨ててしまってここは交通の場にしてしまうのか、あるいは工業生産の場にしてしまうのか、そういう点についての確固たる信念をぜひ承りたいと思いますが、農林大臣はどう考えますか。
  137. 中川一郎

    中川国務大臣 漁業の場から言えば大事なところでありますが、やはり交通、あの付近の臨海工業地帯等々、あるいはあの辺における人口密度等からいって、一切交通は締め出すというわけにはまいらぬのではないか。やはり両々相まつように各省とも連絡をとりながら、それぞれが成り立つように努力していくべきだ、こう思う次第でございます。
  138. 飯田忠雄

    飯田分科員 最後に交通の点で、最近瀬戸内海−本州の間に橋をおかけになるというのでありますが、こういう問題につきましてもぜひ漁業というものを考慮していただきたいと思います。それから海上交通も考慮していただきたいと思います。私の時間が来ましたので、これで私の質問はやめますが、その点、特に御考慮をお願いする次第であります。
  139. 中島源太郎

    中島(源)主査代理 次に、井上普方君の質疑に入るのでありますが、同君の質疑に対し、参考人として日本中央競馬会理事長大澤融君が御出席になっております。なお、御意見質疑をもって聴取することといたします。  井上普方君。
  140. 井上普方

    井上(普)分科員 私は、大臣、古々米と冬物野菜の状況あるいは減反政策等々の問題を実は質問すべく用意してまいったのでありますが、緊急な問題がありまして時間がございませんので、特にまた場所を変えまして、ほかの場所でやりたいと思います。  まず一番に、減反政策でペナルティーの問題が盛んに論議せられましたが、もう一つの問題といたしまして、一町村で割当が完了しなければ、奨励金を一反五万円にする、完了した場合にあと一万円追加するというような方針を打ち出しておる。おりませんか、全部六万円出しますか。
  141. 中川一郎

    中川国務大臣 基礎的なものは四万円でありますし、それに加算の仕組みがいろいろございますけれども、その町村で完了しないから、その町村には加算金は出さないという仕組みは全くございません。
  142. 井上普方

    井上(普)分科員 そうすると現在どおりと解釈してよろしゅうございますね。
  143. 中川一郎

    中川国務大臣 その点は現在どおりでございます。ただし加算金その他は今度改正いたしまして、いろいろいいものがございますけれども、現在どおりやったから、やらないから差をつけるようなことはありません。
  144. 井上普方

    井上(普)分科員 こういうように村の中で非常に不安を感じておる。あるいは減反に協力せぬからわしらには加算金がつかなかったのだというようなことで、村八分になるおそれのあるようなことが事実行われつつあるのです。うわさされておるのです。ペナルティーにつきましては一応の方針を出されたようでありますが、特にこの加算金についてはひとつお考えを願って、公平にやられるようにお願いいたしたい。  あとやりますと時間がちょっとないので、特に緊急を要する問題を申し上げますと、実は中央競馬会が美浦にトレーニングセンターをつくる、これをこの四月一日からともかく向こうへ移るのだというお話で、先般中央競馬会の理事長の大難さんに参考人としておいでいただき、私は交通量の関係から無理だということを申し上げたのであります。特に成田空港の開港とかち合いまして、一体交通壁がどうなるのか不安定な状況であります。しかし国民的な関心は、競馬というのは国民的なレジャーになりつつある。一例を挙げますと、テンポイントがああやって足を折りまして、そうするとテンポイントの見舞い金が百万円集まったというのですね。ともかく毎日毎日の大新聞のスポーツ欄に、テンポイントはきょうは重態だ、あるいは蹄葉炎を起こしただのというようなことまで載るような時代になっているのです。ファンとしてはこの問題につきまして非常に重大な関心を持っておるのであります。  そこでこの前も、交通量の関係から申しまして、大臣、こういうことになっているのです。ここに私は建設省の交通調査のグラフを持ってきたのですが、特に京葉道路の状況が、現在でも朝の六時から七時につきましては、ともかく非常な込み方をする。実は私は先刻中央競馬会にこのことをひとつ延期したらどうかということを申したのでありますが、やはり現状どおりやるのだというお話で、あるいは人によると大難さんに対して個人的に非常に無礼な言動を吐くような人たちも出ておるということを私は聞いておるのです。しかしそういうような方ではないと思うので、素直にひとつ聞いていただきたい。  大臣、朝の四時半にこの美浦を出るのです。そしてこういう国道を通るのですが、国道も車道が幅六メートルのところをずっと通ってくるのです。そして四十台の車が、馬四頭乗せるのですから大型のトラックになりますね。四十台並んでずらっとやってくる。そうして成田のインターチェンジに上るわけであります。ここにも問題がある。というのは右折するのです。右折、左折する場所が三カ所あるのですが、これがまたともかく朝の四時半に出るというのですから、ないとはいいましても、これはひっかかったら大変なことになる。そうして出てくるというと、これが県道です。これがインターチェンジ、成田からのものです。こういうように、この状況を見ますと、成田空港が開かれますと、運輸省は交通量は一日一万台ふえるだろう、こう言っておりますけれども、しかしこれとても予測がつかない。この中でともかく馬を運ぶのでございますから、これは大澤さん、中央競馬会ではさっき二時間半とおっしゃっていましたね。——そうですね。二時間半だと申されるのですが、とてもじゃないが、私らは二時間半で美浦から府中まで行けるわけはないと思う。四時半に出ますと、どうしても七時のラッシュにひっかかってしまう。そうすると一体どうなるかと言えば、これは公正なる競馬が行われないのじゃないかと私は感ずるのであります。そこで、朝の四時半に出るということになりますと、馬は一体朝何時にかいばを食うことになるかというと、四時半に出るのだから、どうしても四時ぐらいにはかいばを食わさなければならない。農林大臣、朝の四時ぐらいにかいば食わせますと、それからずっと夕方四時の競馬にまで馬に飯を食わさないのです。あなたもよく御存じだろうと思う。こういうので公正な競馬が行われるだろうか。こういうことがまず考えられる。それから同時に、四時半に出発するとすると、それまでにまずトレーニングセンターにおいて朝には一遍回ってこいといって、普通でありますと、レースに乗る騎手が乗って走ってくるのです。そして載せる。こういうようなことになると、まあ二時間半とおっしゃるんだが、私は三時間半ぐらい府中まで運ぶとかかると思う。それで、特に馬に対しましては、スピードが一定で進んでおるトラックに載せておるときには問題はない。しかし、ずっと進んで渋滞にひっかかってストップしたり前進したときには、これに及ぼす影響というものは大変なものがあるらしい。こういうようなことから考えましても、私はちょっと無理じゃないか。現に、阪神におきましては、栗東でトレーニングセンターがつくられました。そして栗東から名神に即乗るのですから、専用道路みたいな道路ですから、これは簡単に行けるようです。しかし、実際に見てみますと、事故率はどっちの方が多いんだというと、関東よりも栗東の方の馬の事故が多いのであります。こう  いうようなこと。  私が、競馬会のやることをやるんだと言いますと、国会連絡員の諸君がわしに、やってくださいよということで、激励を受けてきょうもやってきた。ともかく、それほどこれについては関心が深い。私は、成田空港の車の交通量が一定状況になった、大体このとおりであればいつごろになるということになって移転してもいいんじゃないだろうか。いま直ちにこの移転をするということについては、ともかく不測の状況が非常にたくさんある。そして先ほども申しましたように、私は馬がそこまで絶食するということを聞いてなかったのですが、聞きまして、そうなんですか、それは大変だ、これはファンのためにひとつ物申さなければならぬ、ということで実は質問を展開しているのです。ところが中央競馬会は、先日までは、このことについては、いや、現状どおりやるのだ、こう言うんですね。監督官庁である農林大臣とすれば、公正なるレースが確保せられるということを中心に物事を考えるならば、やはり一考する必要があるのじゃないだろうか、このように考えるのですが、大臣いかがです。しかも、これは一考を要するといいましても、これは早いことやってあげなければいかぬ。といいますのは、府中であるとか中山にある厩舎の子供さんが、この四月に学校が移るので、早く結論を出してやらなければいかぬと思うのです。私は九月まで延ばして、二学期から行かすようにする。それはなぜかと言えば、成田空港の交通量の大体の流れがわかってきたときに初めて移していいのじゃないか、こう思うのです。いや、それは私の方は美浦のトレーニングセンターも計画しておりましたのですから、ひとつそのとおりやらしてもらいたいと言いますけれども、しかし成田空港ができるということは、これは四十二年にできて、もう四十五、六年ぐらいには最初の計画でともかくできる。その計画にのっとってやはり美浦のトレーニングセンターも後からつくったものだと思うのです。そういうようなことを考えますと、やはり成田空港の道路の状況を一応把握した上で移転しても差し支えないのじゃないか、そうすべきが当然だと思うのですが、どうです。
  145. 中川一郎

    中川国務大臣 美浦のトレーニングセンターについて、競馬会と馬主との間にいろいろ問題があることは聞いております。  そこで、御指摘の新空港ができ、輸送事情が悪いことは事実でございましょうが、その輸送方法について、当日輸送するというのが一応原則ではあるけれども、現実に合った弾力的な運営によって輸送を円滑にするというふうに聞いておりますし、そういう弾力的な運用を図るならば、やめるというところまでいかなくても、うまく輸送できるのじゃないかと思います。  その実態については、競馬会の人が見えておりますが、何が何でも込んだ時期に腹を減らして朝四時からというようなことで競馬で走れといっても、できないことはできませんから、輸送方法を弾力化するというふうには私ども指導してまいりたい、こう思います。
  146. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、先日の中央競馬会の大澤さんのお話によりますと、いや、やるのだ、不測の事故のときだけに厩舎は置いておくのだ、府中とかあるいは中山とか置いておくのだ、そこに運ぶのだ、こうおっしゃる。それじゃ話にならないですね。ストライキが起こったとかあるいは何とかが起こった、事故が起こった、道路上に支障ができたというときにのみやるのだ、弾力的というのはそういうことじゃないのですか。違うのですよ、私たちが言っているのは。あなたのおっしゃるのは、弾力的にやるというその弾力性をどういうようにお考えになっているのか。中央競馬会の考え方は違うのですよ、そこのところ。
  147. 杉山克己

    ○杉山政府委員 競馬会と馬主との間でもって輸送方法をめぐっていろいろ議論が交わされております。いずれも原則的な考え方を持っておりまして、競馬会の側は、当日輸送、レースの行われる当日朝早く輸送する、先生の御指摘になりましたような方法で輸送するということを基本にしております。それに対して馬主の方は、一開催輸送、レースが開催される一開催期間ごとのまとまった輸送ということを言っております。それについていろいろバリエーションもあるわけでございますが、基本的な考え方はそういう考え方にのっとっておるというふうに承知いたしております。  ただ、実際問題といたしまして、いずれの立場を主張されるにしても、全く終始その原則どおりに実行できるかということになりますと、おっしゃられるような交通事情の変化もございます。やはりそれはそれなりに、実際公正なレース運営に支障のないようなことを考える必要があるわけでございます。  そこで、公正なレース運営に支障がない方法というのはどういうやり方であろうかということで競馬会と馬主会の間でもって話し合いが交わされておるわけでございます。その話し合いがある程度のところまでは参りましたが、まだ最終的に合意を見るというところまでは至っておりません。私どもは、やはりこれは当事者が一番よく知っている問題でもありますし、当事者が責任を持って解決する話であると思いますので、なおその円満な話し合いを進めてこれの解決に持っていくようにということでいろいろ見守っているところでございます。
  148. 井上普方

    井上(普)分科員 私は馬主の代表じゃないのですよ。これは間違わぬようにしてもらいたい。ファンが非常に心配している。そして馬主との間の紛争もあることも事実。馬主の方の言い分の中には、私たちが見てむちゃを言っている条項もあります。しかし、われわれはファンとして、やはり国民がこれだけ関心を持っていることを、馬主と競馬会だけの話に任しておいていいのかと私は思う。一開催全部を向こうに置いておくのだということになったら、これまた大変な問題が起こってくる。それよりも九月までずらして、それから後を考えたらどうだろうか、こう言っているのです。子供さんが学校がかわるのは四月ですから、それにはきちっと間に合わしてやらなければいかぬ。それにはやはり基本方針をともかく立ててあげなければ、馬主と中央競馬会だけの話に任しておいたのでは困る。これはどうです。大臣判断はしなければいかぬ。——役人から耳打ちされてから物を言うような中川一郎さんじゃ困るよ。
  149. 中川一郎

    中川国務大臣 ファンが心配しているというぐらい重大なことだろうと思うのでございますが、ファンのみならず、競馬会も馬主もファン以上に一番競馬を心配しているのだろうと思うのです。でございますから、この専門家同士が話し合って、輸送方法について競馬が円滑にいくようにという話し合いはできるものだと私は思っているのです。そんなに原則論で突っ張っていないで、お互いに歩み寄れば、ここに円満な話し合いがつく、そして予定どおり移っていただくという方向でいま努力をしているものと思いますので、その努力の結果を見たい、こう思うわけでございます。
  150. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし、努力の結果を見たいとおっしゃいますが、四月にはともかく子供さんが学校を移らなければいかぬということがあるのですよ。だから早いこと結論を出してやらなければいかぬ。それでは中川大臣、あなたは馬主と競馬会との間に入って、あなたが公正な判断をいたしますか。
  151. 中川一郎

    中川国務大臣 いま話し合いを進めている段階で私が出ていくということはいささか失礼というか、物事を円満に解決する上においても適当でないのではないか。あくまでも両者間で話し合って、何とか円滑な移転、そしてまたスムーズな競馬開催という道はあり得るだろうと思うわけでございます。
  152. 井上普方

    井上(普)分科員 青嵐一郎というあだ名をとる中川大臣がそんなのんびりしたことでは困るじゃありませんか。四月には子供さんが学校を転学するというので、時期は非常に切迫しておる。話し合い話し合いでずるずるいってしまって、関係者の方々は困ってしまうんじゃないか。あるいはこの輸送問題一つを考えましても、問題は輸送時間なんだ。私はできるわけがないと思う。朝の四時半に馬をトラックに載せるのですから、それまでには馬場を一周してこなければいかぬ、普通なら。こういうようなことを考えますと、やはり九月まで延ばして、そしてやられるように強く大臣指導を私は要求いたしておきたい。そうして、きょうはもう何日ですか、三月に入っているのですよ。早いことしてあげなければ、これは両方が困ると思います。  時間もなくなりましたので、私、四、五日前ですか、「英国病の教訓」という、香山健一、これは自民党のブレーンの人ですな、この自民党ブレーンの人が一体どんなことを考えているのかと思って、実はこの本を買ってみました。拝見いたしておりますとおもしろいことが書いてあるんです。玉木椿園という人が英国に、農商務省、おたくの嘱託として勉強に行ったのです。そして明治三十八年に「明治百三十八年日本高等小学校教科書」という副題をつけまして「英国衰亡論」という本を書いているのです。これは私おもしろいなと思いまして、国会図書館に行って、この明治三十八年に書かれた「英国衰亡論」という本があるかと聞きましたところが、ないというんですね。そこで、主計官、この間も第一分科会において非常に問題になったんだけれども予算をけちるために国会図書館が本を買えないということを言っている。現に一つ出てきたですな、これは。日本の図書館のセンターなんだから、金をけちらぬように、あなたの方からもひとつ注意しておいてやってもらいたい。  そこで、この本を見ておると、おもしろいことが書いてあるのです。明治百三十八年には英国は衰亡しておる、その原因は一体何だということを書いてあるんですね。びたり合うんですよ、英国病に。しかし私らは、これを他山の石として考えなければいけない。この玉木椿園という人が九つの論点を挙げている。それは何かというと、まず第一番に「田舎生活よりも都市生活を好みて、其結果英国人の健康と信仰に及ぼせる悪影響。」「(1)体力が衰弱し、海外雄飛力を失う。」「(2)農業の衰退が国民を衰退に陥れる。」「(3)輸入のみに依存している。」、こういうようなことを列挙してあるんです。これが第一の論点だ。第二の論点として海洋のことを書いてあります。第三としては、これはまことにお恥ずかしい話なんだけれども日本の現状とよく似ている。「トルコ風呂が流行している。」「経営者の社会奉仕精神が衰微している。」なんて書いてあるのです。それから第四には「文学及び劇の趣味の衰頽。」として「俗悪な新聞、雑誌が国民の間に普及している。」青嵐会の言いたいようなことが書いてあるんですな。それから第五に「英国民の身体や健康の漸衰。」その中には「新聞雑誌は売薬広告で充満している。」まさに日本の状況と同じであります。それから租税の問題が書いてありますが、「公共難業は大規模となり財政上の破綻を起こす。」福田内閣のいまの場状。第八に教育制度のことを言っておりますが、これにつきましては「学校教育は職業を身につけるべきに文学に重点をおき、耕作、手工、労働を嫌う。」「子弟は勤労の尊さを忘れ、海を捨て、土地を捨て、手工を捨て簡業に走り、過当競争に向かった。」「男は田を耕さず、女は子供に哺乳しない。」ざっとそういうようなことが書かれてあります。  ここで、結局この玉木椿園さんの言わんとするところは、農業国家として英国が衰退しておるところにやがて英国は衰亡するであろうということを言っておるのです。私はここが大事だと思う。私はきょう漫談みたいなことを言うようなことになるかもしれませんが、日本農業はいかにあるべきか。これは、昭和三十年来自民党の農政というものは、いつも農政は曲がり角に来た、曲がり角に来たと言いながら、日本農業は衰退の一途をたどってきた。そして第二次産業は隆盛になった。このごろになってくると第三次産業に重点が置かれるようになってきている。この状況は明治三十八年以前の英国の状況と同じじゃないか。私はこの本の中で賛成しないところはたくさんある。しかし見ておるところは、これは自民党のブレーンですからね、なるほどおもしろいことを言っているなと思って、実は買ったのです。ひとつぜひとも御一読すると同時に、日本農政のあり方農業あり方というものを本当にきちっと決めなければ国が衰亡しますよ。どうでございますか。
  153. 中川一郎

    中川国務大臣 私も全くそのとおり思います。農業滅びれば国が滅びると思っておりますので、今度の輸入の問題などでも、農業を滅ぼしてはならない、悪影響を与えてはならぬという基本的態度で処理をいたしました。ただ、消費者、国民の間からも、日本の農産物は高い、外国から買えば安いものが食えるではないかという声もかなり強いわけなんです。かなり強いのですが、たとえば米にしましても、国際価格の六倍である。カリフォルニアその他から輸入すれば安く食えるという問題もある。肉はまさに四分の一、五分の一の値段で外国は食べられる。なおかつ日本で牛肉を生産し、さらにはまた米を過剰の中にも生産を続ける。まさに農業は国の宝であるというところから、消費者あるいは外国からいろいろ意見があっても、われわれは農業を守らなければいかぬということで、あらゆる努力、こういう少ない土地、恵まれない条件ではありますけれども、約一千万の農業人口、そして食糧自給率は総合的に約七〇%、こういうものを確保していくということは、農民そのものが日本民族の宝であると同時に、農業そのものが地域社会の健全な発展の上に欠かすことのできないものであって、もしこの農業から農家人口を減らして合理化すれば、国際競争力もつくでしょう。この間もあるところで議論があったのですが、農家人口を十分の一にして十町歩平均にでもしたら恐らく安くなるのじゃないか。それじゃその人口は一体どこで働く場があるのか。むしろそういう人が都市に集中するということになれば、公害の問題、社会が過疎過密というか、かたわな、ひずんだ日本の社会になってしまう。こういうところから、やはりしっかりと農村人口を守っていくということも必要である。こういうことから農政に取り組んでおるのであって、わが国の農業をこういう厳しい中にこれだけ守り得たというのは、長い農林行政がそれほど間違ってはおらぬ。ただ、現在は米が過剰だという異常な事態でございますから、農村の間に不安のあることは事実でございますが、私どもとしては、対外対策あるいは消費者対策等を配慮はしますけれども、やはり農業は守っていくという基本姿勢、少なくともつぶれる条件の中の一つ農業が入らないように、これはしかと、きょう御意見もありましたから、改めて決意をいたす次第でございます。
  154. 井上普方

    井上(普)分科員 しかし問題は、昭和三十五年以来国際分業論が大勢を占めたのじゃございませんか。ここに大きな原因があったと私は思う。そしていま畜産の問題をおっしゃる。畜産もやらなければなりません。しかし畜産は、あなたも御存じのように中間マージンが余りにも多過ぎるのでしょう。これにメスを入れなければだめなんですよ。これはもう再三にわたって質問があったと思いますので、私は申さない。これにメスを入れて、そして消費者と直結するようなことにする、このことによってできてくるのじゃございませんか。  私も冬物野菜の状況を見ました。市場で、ただでも引き取らないじゃないですか。そういうような状況がこの冬物野菜に出ておるから物価は余り上がらなかったんですけれども、しかし、この白菜にいたしましてもレタスにいたしましても、農村部に行ってごらんなさい、もう手間損だということでほってあるじゃありませんか。それを米を減反して、そして野菜に転換するというこの方法に、一体農民がついてくるだろうか。やはりそこには農作物に対する価格支持政策というものを導入しなければならぬ。そういうことをやってきてない。だから農村離れをいたしておるのであります。  それから、もう一つやはり私は土地問題があると思うのです。大臣昭和初年の恐慌の際に、農村問題を解決するにはどうしたらいいかと言ったら、いや肥料問題だと言った有名な農林大臣がおったようですけれども、やはり地価問題を抑制するということに力を入れなければ、いま農民は労働意欲を失ってくるのじゃございませんか。私らの方でも、一反歩当たり一千万、二千万という農地がたくさんある。その付近はというと、市街化区域ですよ。そうして農村振興地域に指定されているところでもそういう値段がついておる。そこで金利を考えたら一体働けるかという気持ちが農民に出てくるのは当然であります。この地価を一体どうするか。これを引き上げてきたのは日本の高度成長政策にあった。それに対して政府は何も手をつけなかった。そのためにともかくこういうふうに非常な高騰をしておるのですけれども、この地価の高騰を抑えると申しますか、鎮静というよりもむしろ下げるような努力をしなければ、これは農民それ自体にも働く意欲はなくなってくるのではないかと私は憂えるのです。特に、この本を私、四、五日前に見まして、これはゆゆしきことだ、考えなければいかぬことだ、われわれ政治に携わる者としては、やはり農業というものを重視しない国というものは滅びるのだということを痛感いたしておるのであります。大臣、いまの時点での小さい言いわけは幾らでもできます。しかし、大局に立って、大きい視野で一体日本農業はどうあるべきかということを考えるなら、私は一大転換をここでやらなければならない。すなわち、国内の自給率を高めるには一体どうすればいいか。価格支持政策を強力に導入する、そうして地価の安定のために農林省も協力してやっていく、この方法以外にないと思うのですが、いかがですか。
  155. 中川一郎

    中川国務大臣 数々の御指摘をいただきまして、本当にありがたいことだと存じます。  そこで、全体的に日本農業を見ますと、自給率が悪い悪いと多くの人が言うのですが、私も見まして、少なくとも自給率については、まず米は一〇〇%以上の力がある、野菜、果物についてもまずまず心配はない。それから豚肉、鶏の肉等についてもまずまず国内で生産がされる。足りないのは穀類とか、家畜のえさになります穀類、あるいはパン等の原料となります小麦、さらには甘味資源、こういったものの自給率は悪いわけでございますが、それ以外の基幹となるものはまずまず、これだけ狭い国土で一億一千万の胃袋を満たしておる。そこで今度は米が余りますから、約四十万町歩は、前回はこれは緊急避難で休耕ということをやったわけでございますが、休耕はやめて、そういった自給率の悪い穀類、麦、大豆、そういったものあるいは甘味資源、飼料作物、こういうものは重点的に、反七万円まで差し上げるという、相当の力を入れて転換をするいわゆる水田再編対策を講じたわけでございます。  その中にありまして、野菜の御指摘がございましたが、なるほど昨年暮れから暖冬異変という異例のことがありまして、それで出荷時期が早まって集中的に出る、それが異常な価格の暴落ということになっておりますので、野菜についても、長期的に見るならばそう不安定なものになってない。そこで、今回野菜は転作でまた洪水になって大変なんではないかという御指摘だろうと思うのでございます。  この点は、今度の転換作物は三つに分けてございます。一つは、いま言ったように、伸ばさなければならぬものはたくさん金を上げますからやってくださいという奨励作物、それから、これをつくられたのじゃ周りがまいりますからという、ミカンのような過剰生産のものをつくってもらっても転作作物とはいたしませんという禁止作物、それから一般の普通転作と言われる三つに分かれるわけです。  普通転作の中にまさに野菜が入るわけでございますが、野菜についてはそういう過剰生産にならないよう、その地域、町村、県段階において、需給の動向を見ながら作付面積を決めていく、こういう仕組みもありますし、また、野菜が暴落したときには価格安定対策事業でこれを見るとか、あるいは廃棄処分に対して政府が助成するとか等々の、野菜生産についても、国の政策もこれに並行してやっていきたい、こう思うわけでございます。  それから地価の問題でございますが、これもまさにいい農地が侵されては困るというので、例の線引きというのをやって、ここは農村ですから期待してもだめですよ。いま土地が上がっておりますのは都市化しそうなところが重点的に上がっているわけですが、その辺のところはやはり線引き政策をもっと実効あらしめませんと、線は引いたけれども税制面での措置がおくれている、こういう問題もありますので、そういった点も配慮しながら、五十四年度から本格実施になっておりますから、農林省としても一般のいい農地を守る意味からも線引きを実効あらしめたい、団体にも協力要請をして地価問題とも取り組んでいきたい、こう思うわけであります。
  156. 井上普方

    井上(普)分科員 いまのお話を承りまして、やはり旧来の農林省考え方は小手先細工の政策としか私には思えない。やはりここで政治家として大きな決断を出した農政の転換というものをやり、農業保護政策を十分にやらなければならない。それにはいまのようなお話では不十分です。われわれも日本農業のいま置かれておる状況というのは十分知っております。しかしその中において一体どうあるべきか、お互いに真剣に考えようじゃありませんか。小手先はやめよう、ひとつ根本的な対策をここで樹立するよう強く望んで、私の質問を終わります。
  157. 中島源太郎

    中島(源)主査代理 これにて昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算農林省所管についての質疑は終了いたしました。  以上をもちまして本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の特段なる御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができましたことをここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後一時四十二分散会