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1978-02-27 第84回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十三年二月二十日(月曜日)委員会において、設置することに決した。 二月二十二日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任された。      海部俊樹君     栗原祐幸君      笹山茂太郎君    住栄作君      古井喜實君     川俣健二郎君      小林進君      広沢直樹君      不破哲三君     大原一三君 二月二十二日  笹山茂太郎君が委員長指名で、主査に選任された。 ————————————————————— 昭和五十三年二月二十七日(月曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 笹山茂太郎君        栗原祐幸君     住栄作君       上田卓三君     川俣健二郎君       只松祐治君     中西績介君       野坂浩賢君     貝沼次郎君       長谷雄幸久君    浦井洋君       小林政子君     大原一三君    兼務 井上泉君   兼務 兒玉末男君    兼務 新村勝雄君  兼務 有島重武君    兼務 池田克也君  兼務 神田厚君    兼務 小宮武喜君  兼務 中野寛成君  出席国務大臣    厚生大臣 小沢辰男君    労働大臣 藤井勝志君  出席政府委員 厚生大臣官房長 山下眞臣厚生大臣官房会計課長 持永和見厚生省公衆衛生局長 松浦十四郎君 厚生省医務局長 佐分利輝彦厚生省薬務局長 中野徹雄厚生省社会局長 上村一厚生省児童家庭局長 石野清治厚生省保険局長 八木哲夫厚生省年金局長 木暮保成君 厚生省援護局長 河野義男社会保険庁医療保険部長 岡田達雄労働大臣官房会計課長 加藤孝労働大臣官房審議官 谷口隆志労働省労政局長 北川俊夫労働省労働基準局長 桑原敬一労働省婦人少年局長 森山眞弓労働省職業安定局長 細野正労働省職業安定局失業対策部長 細見元労働省職業訓練局長 岩崎隆造分科員外出席者 警察庁交通局交通規制課長 福島静雄警察庁交通局運転免許課長 三上和幸労働大臣官房参事官 鹿野茂建設省計画局建設業課長 広瀬優————————————— 分科員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     中西積介君   小林進君       上田卓三君   広沢直樹君      貝沼次郎君   不破哲三君      津川武一君   大原一三君      永原稔君 同日  辞任         補欠選任   上田卓三君      小林進君   中西積介君      只松祐治君   貝沼次郎君      長谷雄幸久君   津川武一君      小林政子君   永原稔君       大成正雄君 同日  辞任         補欠選任   只松祐治君      野坂浩賢君   長谷雄幸久君     長田武士君   小林政子君      浦井洋君   大成正雄君      大原一三君 同日  辞任         補欠選任   野坂浩賢君      川俣健二郎君   長田武士君      広沢直樹君   浦井洋君       不破哲三君 同日  第二分科員池田克也君、神田厚君、第四分科員井上泉君、第五分科員兒玉末男君、新村勝雄君、有島重武君、小宮武喜君及び中野寛成君が本分科兼務となった。 ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算厚生省及び労働省所管) ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    笹山主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。  私が第三分科会主査を務めることになりますので、よろしくお願い申し上げます。  本分科会は、昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算厚生省労働省及び自治省所管について審査を行うことになっております。 なお、各省所管事項説明は、各省審査の冒頭に聴取いたしたいと思います。 まず、労働省所管について説明を聴取いたします。藤井労働大臣
  3. 藤井勝志

    藤井国務大臣 昭和五十三年度一般会計及び特別会計予算労働省所管分について、その概要を御説明申し上げます。  労働省一般会計歳出予算額は四千二百八十三億九千九百五十二万七千円で、これを前年度当初予算額三千七百五十四億三千百五十二万二千円と比較いたしますと、五百二十九億六千八百万五千円の増加となっております。  次に、労働保険特別会計について御説明申し上げます。  この会計は、労災勘定雇用勘定徴収勘定に区分されておりますので、勘定ごと歳入歳出予定額を申し上げます。  労災勘定は、歳入歳出予定額とも一兆百七十一億百五十九万三千円で、これを前年度予算額九千八百四十二億八千六百三十八万三千円と比較いたしますと、三百二十八億一千五百二十一万円の増加となっております。  雇用勘定は、歳入歳出予定額とも一兆三千四百七十五億八千八百四十八万三千円で、これを前年度予算額一兆一千三百二十四億六千七百七十八万円と比較いたしますと、二千百五十一億二千七十万三千円の増加となっております。  徴収勘定は、歳入歳出予定額とも一兆五千七百八十七億七千三百四十八万六千円で、これを前年度予算額一兆四千三百六十九億七千四百七十四万円と比較いたしますと、一千四百十七億九千八百七十四万六千円の増加となっております。  最後に、石炭及び石油対策特別会計石炭勘定中当省所管分としては、炭鉱離職者援護対策等に必要な経費として百六十八億一千四百六万二千円を計上しておりますが、この額は、前年度予算額百五十八億六千百三十二万二千円と比較いたしますと、九億五千二百七十四万円の増加となっております。  以下、この労働省予算重点事項について、委員各位のお許しを得まして、説明を省略させていただきたいと存じます。  よろしく御審議のほどお願い申し上げる次第でございます。
  4. 笹山茂太郎

    笹山主査 この際、お諮りいたします。  労働省所管関係予算重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じます。御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 笹山茂太郎

    笹山主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。     —————————————   〔藤井国務大臣説明を省略した部分〕  次に、その主要な内容について概略説明申し上げます。  第一は、安定成長下における雇用の安定と就労条件向上に必要な経費であります。  当面する最大の課題は、景気回復がはかばかしくなく、加えて経済環境の変動に伴う産業構造の急速な変化や最近の円高基調の高まりの中で、一日も早く景気回復を図り、かつ、きめ細かな雇用政策を講ずることによって、失業を予防し、不幸にして離職した方々の再就職促進を図ることにあります。  このため政府といたしましては、先の臨時国会で成立した特定不況業種離職者臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法完全実施雇用保険制度及び雇用安定資金制度の積極的な活用を図ることなどにより、失業の防止と円滑な職業転換等促進に全力を傾けることとしています。  また、高齢化社会が進展する中において、景気停滞影響を受けやすい高年齢者雇用の確保が一層重要でありますので、定年延長奨励金及び継続雇用奨励金大幅増額並びに高年齢者向け職業訓練コース増設を図るなど、高年齢者雇用対策強化を図ることとしています。  これらに必要な経費として一兆六百七十一億九千九百六十万五千円を計上いたしております。  第二は、労働者の生涯を通じての生活の安定と能力開発に必要な経費であります。  勤労者財産形成制度につきましては、勤労者の長期的な生活設計を容易ならしめるため持ち家融資制度拡充するとともに、進学融資制度を創設すること、また、事業主による勤労者財産形成援助促進するため勤労者財産形成基金制度を創設するとともに中小企業勤労者財産形成助成金制度拡充すること等を中心としてその整備充実を図ることとしており、このため、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたしております。  次に、職業訓練につきましては、勤労者技術革新産業構造変化等に対応して生涯を通じて職業能力開発向上を図るための条件を整備するとともに、厳しい雇用情勢に対応した職業訓練を機動的に実施するため、現行の職業訓練制度刷新強化し、民間公共一体となった生涯教育訓練体制の確立に向けて施策推進することとしております。  このため、事業主等の行う職業訓練振興を図る施策として、有給教育訓練休暇奨励制度及び職業訓練派遣奨励制度拡充地域社会における職業訓練振興の中核となる中小企業共同利用施設として地域職業訓練センター新設等推進する一方、離転職者に対する職業訓練を機動的、弾力的に実施することとしております。さらに、職業訓練制度刷新強化の一層の推進を図るため、職業訓練法の一部を改正する法律案を今国会に提出いたすこととしております。  これらに必要な経費として六百五十八億五千三百四十万九千円を計上いたしております。  第三は、生命と健康を守る労働者保護対策推進に必要な経費であります。  労働災害は逐年減少傾向を続けていますが、一方で、社会的に大きな関心を呼んでいる職業がんなどの新しい職業病の発生が見られ、その対策が緊急の課題となっております。  このため健康管理の始点である特殊健康診断の徹底を図るための中小企業労働者健康管理事業助成制度を一層拡充するとともに、産業医科大学の開校等により産業医学振興を図るなど予防、健康管理、治療、補償等施策を総合的に推進することとしております。  次に、未払い賃金の立てかえ払い事業につきましては、支払い限度額の引き上げを行い、制度の適切な推進を図ることとしております。  また、最低賃金制度につきましては、昨年十二月の中央最低賃金審議会答申の趣旨に沿ってさらに効果的な運営をしてまいることとしております。  これらに必要な経費として六千四百三十八億一千百八十七万八千円を計上いたしております。  第四は、男女平等、母性保護対策等充実に必要な経費であります。  国際婦人年を契機として婦人問題についての関心重要性認識が高まる中で、昨年一月には国内行動計画が策定されるなど、婦人地位向上のための施策の積極的な推進が強く要請されております。  このため、若年定年制結婚退職制等の解消のための行政指導中心に、雇用における男女平等の促進を図るとともに、職場における母性健康管理対策育児休業制度充実普及に努めるなど、多様化している勤労婦人の諸問題に即応する福祉対策を進めることとしております。  これらに必要な経費として四億三千五百二十九万八千円を計上いたしております。  第五は、特別の配慮を要する人々のための労働対策充実に必要な経費であります。  心身障害者雇用対策につきましては、雇用率達成指導強化と、身体障害者雇用納付金制度に基づく各種助成措置活用を軸に事業主の一層の協力を求めるとともに、職業訓練体制整備拡充を図るほか、心身障害者職業センターや、勤労身体障害者体育施設増設雇用奨励金増額等就職援護措置拡充などの施策を講じ、心身障害者雇用促進することとしております。  次に寡婦等に対する就業援助対策につきましては、就業に関する相談機能等強化を図るほか、新たに職場適応訓練制度を適用するとともに職業訓練制度充実就職援護措置拡充を図ることとしております。  また、失業対策事業につきましては、就労者賃金を五十二年度当初に比べ一〇・二%引き上げることとしております。  なお、建設労働者季節移動労働者及び積雪寒冷地における季節労働者駐留軍関係離職者炭鉱離職者沖繩失業者同和対策対象地域住民等のための雇用対策についてもこれを一層充実することとしております。  これらに必要な経費として一千二百四十億二千四百八十二万三千円を計上いたしております。  第六は、経済社会情勢に即応する合理的な労使関係形成促進に必要な経費であります。  今後の安定成長下におけるわが国経済社会にあって、労使関係の動向はひとり労使間の問題にとどまらず、政治、経済社会の各般にわたって大きな影響を及ぼすものと予想されます。  このため、産業労働懇話会等の場を通じて労使関係者相互理解を一層深めるなど安定した労使関係形成促進するとともに、労使紛争平和的解決に努めることとしております。  これに要する経費として七億三百二十四万四千円を計上いたしております。  第七は、国際環境変化に対応した労働外交の展開に必要な経費であります。  今日、世界はますます相互依存の度を強めており、労働問題の分野においても、このような国際環境変化に対応した施策を積極的に展開することが強く求められております。  このため、欧米先進諸国労働組合指導者政府関係者等わが国に招聘するなどにより、わが国労働事情に関する積極的な海外広報活動に努め、労働外交を通じて国際的な相互理解を一層促進することとしております。  また、発展途上国労働関係者との交流や国際技能開発計画推進に努め、発展途上国への援助協力を進めることとしております。  なお今後とも、ILO、OECD等国際機関の諸活動に積極的に参加、協力してまいることとしております。  これに必要な経費として二十三億九千七百九十万六千円を計上いたしております。  以上のほか、労働行政体制整備充実一般行政事務費等に必要な経費を計上いたしております。  以上、昭和五十三年度労働省所管一般会計及び特別会計予算について概略説明申し上げました。  何とぞ、本予算の成立につきまして、格段の御協力をお願い申し上げます。     —————————————
  6. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもって労働省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 笹山茂太郎

    笹山主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。「 なお、政府当局におきましては、答弁はできる限り簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西積介君。
  8. 中西績介

    中西(績)分科員 同和問題を解決するに当たって、労働問題が最も重要な位置を占めておると思います。  特に、同対審の答申内容の中にも明らかになっておりますように、「とくに注目しなければならないことは、同和地区住民は、不当な差別により就職機会均等が完全に保障されていないため、近代産業から締出され、いわゆる停滞的過剰人口同和地区に数多く滞留していることである。」とこの答申の中にも示されています。そこで「地区住民生活はつねに不安定であり、経済的、文化的水準はきわめて低い。これは差別の結果であるが、同時にまた、それが差別を助長し再生産する原因でもある。」「同和問題の根本的解決をはかる政策中心的課題一つとしては、同和地区産業・職業問題を解決し、地区住民の経済的、文化的水準向上を保障する経済的基礎を確立することが必要である。」とうたっています。  このように、いま同和問題を解決するに当たっては、この労働雇用すべての問題をどう位置づけ、解決していくかということがきわめて重要な課題になっています。  そこで、労働大臣お答えを求めますが、この労働問題に対する基本的姿勢を含めて答弁を願いたいと思います。
  9. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおり、私も同和地区住民就職機会均等を確保するということが同和問題解決中心的な課題だ、このように認識をいたしておるわけでございまして、そのために、就職に当たりまして、就職前のきめの細かい職業安定所による配慮、それから同時に職業訓練充実、そしてまた訓練を経た人の就職あっせん促進、こういったこと、それにまた事業主側のこれが就職に当たりましての理解、こういったことも積極的にやらなければならぬ、このように思います。  同時に、この世話をする立場の職業安定所に、就職あっせん促進する専任の就職指導員あるいはまた職業相談員、こういったものを配置いたしまして万遺憾なきを期したい、このように考えております。
  10. 中西績介

    中西(績)分科員 いまお答えをいただきましたけれども、この内容は私にとりましては大変まだ不十分なものではないかということを強く指摘したいと思います。  そこで、特別措置法制定以降におきまして九年が経過している今日、同和地区人々労働実態がどうなっているかということを十分認識しておらないところから、いまのような答弁になってはね返ってくるものと私は思うわけであります。ですから、労働実態がどのようになっておるかを具体的に明らかにする必要があろうと思います。特に、失業状況だとかあるいは不安定な就業状況だとかあるいは低賃金実態等を含めてその内容がどうなっておるか、労働省におかれまして調査し、そして、それが発表できるものがあるなら提示をしていただきたいと思います。
  11. 細野正

    細野政府委員 同和地域住民就業実態につきましては、先生も御存じのように、昭和四十七年の調査に続きまして五十二年にも調査実施して、現在調査結果についての分析中という状況でございます。  この五十二年の調査につきまして、大まかに現在把握している結果だけしか申し上げられないのでございますけれども、以下申し上げるような特徴点が見受けられます。  一つは無業者、つまり就業しておられない方の中で就業希望者というものが一般に比べてやや多い、こういう状況になっております。それから、雇用者のうちで臨時日雇い労働者割合一般より若干高いという状況にございます。それから、小零細企業就業している方の割合一般に比べて比較的多い状況にございます。それから、建設業従事者が多いとか、逆に事務従事者が少ないとか、そういうふうな点が一つ特徴ではないかというふうに考えられるわけでございます。  以上のように、臨時日雇い等不安定な就業状態にある方の割合が高い等、同和地区住民の方の就業状態につきましてはなお問題があるというふうに私どもは言わざるを得ないと考えておるわけでございます。
  12. 中西績介

    中西(績)分科員 労働省がこういう基本的な、しかも基礎的な資料を明確に把握をし得ないということが、いま言うようなまだ分析中であると言われておりますけれども、これがきわめて重要であるにもかかわらずまだ大まかなところでしか分析されておらない、またあるいは把握をされておらないというところに大変な問題があると私は思います。ですから、将来的にはこのことは本格的な調査実施をし、そして、この内容をつぶさに検討できる体制というのを早急に集約をしていただきたいと思うわけであります。  そこで、先ほど出ました問題とあわせまして、私の方から一、二の点について数的にお聞きしますので、その点についてお答えをいただきたいと思います。  その一つは、中学校、高等学校学卒者、新卒の就職先事業所規模が、先ほど言っておられましたように零細企業中小に偏っておるということが言われておりますけれども、全国的な平均値とそれから同和地域における平均の数値が、大体私のつかんでおるところでは、一人から二十九人、三十人未満のところにおきまして、この点は大体大きな差はありません。というのは、いわゆる自家営業零細企業というところで大体一致すると思います。しかし、それが今度は三十人から三百人程度までに人員が上がってまいりますと、ここに大きな格差が生じてまいります。そしてまた、この三百人以上の内容等を見ますと、特にその点が強く指摘できるのではないかと思うわけでありますけれども、この点についてはどうでしょう。
  13. 鹿野茂

    鹿野説明員 中学高校卒業者就職先状況でございますが、先生指摘のとおり、確かに二十九人以下の事業所就職した者の割合は、中学生で見ますと、同和地区生徒につきましては二四・四%、全国平均では二二・二%、それから高校生につきましては、同和地区生徒につきましては一二・七%、全国平均では八・五%と、高校生について若干同和地区生徒の方が小零細規模就職した者の割合が高くなっておりますが、中学生につきましてはほぼ同率になっておるわけでございます。  ただ問題は、先生から御指摘ございましたように、三百人以上の規模事業所就職した者の割合を見ますと、同和地区生徒では、中学で三七・三%、全国平均では四五%、高校生では同和地区の者が四〇・五%、全国平均では五六%と、三百人以上の比較的規模の大きい事業所就職した者につきましては、全国平均に比較しまして同和地区子供たち割合が低くなっておるというふうに言わざるを得ないと考えております。
  14. 中西績介

    中西(績)分科員 それと同じように、一般の場合の就職状況規模別に見ましてもやはり同じようなことが言えるし、しかもその内容を見ますと、特に百人から三百人以上等になりますと、一般に比べて大体四分の一程度に率が落ち込んでくるという状況が顕著に出ていると私は思うのですね。この点については否定できないと思いますが、いかがですか。
  15. 鹿野茂

    鹿野説明員 一般のいわゆる学卒者以外の者につきまして、確かに御指摘のとおり百人以上のものにつきましては、同和地区の者が一五・一%でございまして全国平均では四〇・二%と、学卒者よりも高い比率でその差が大きくなっているというふうに考えられます。
  16. 中西績介

    中西(績)分科員 それからもう一つ職種別状況等先ほど答弁がありましたけれども、その職種において大きな格差が出ておるということが言えるのではないかと思います。特に専門的、技術的職業だとかあるいは事務とか販売、サービス業、さらにまた特に農業なり漁業なりを専業とするこの部分等におきましては、一般地域に比べて大変低くなっておるという状況があると思います。さらにまた、逆に今度は技能工あるいは生産工程作業あるいはいろいろな日雇い的なものに関しては、約倍近くの率になっておるのではないかと思われます。  この点については詳しく申す必要はないと思いますが、私が言っておることに間違いないですね。
  17. 鹿野茂

    鹿野説明員 先ほど局長から御答弁申し上げましたように、現に就業している者の就業実態につきましても、先生指摘のとおり建設関係就業者が多くて、反面事務関係就業者が少ないということを申し上げたわけでございます。  さらにまた、安定所の窓口を通して新たに就職した人たち職種別を見ますと、技能生産工程作業就職した者が同和地区の者で六〇・七%になっておりまして、全国平均では三四・九%になっております。  同時に、これを事務関係で見ますと、同和地区の者で新たに事務関係の仕事に就職した者は八五%にすぎませんけれども、全国平均では一五・四%になっております。  こういうふうに、職種別に見ましても、先生指摘のとおり、全国平均と比較しましてまだまだ問題がある状況にあるというふうに考えております。
  18. 中西績介

    中西(績)分科員 そこで、同和地域住民の皆さんの能力開発だとか、あるいはいろんな施設での訓練等をずっと見てまいりますと、そうした場合に就労率あるいは就職率等いろいろありますね。その際に、労働省調査されている内容について見ましてもいろいろあると思いますし、私たち調査をした内容につきましても、一定の率にだんだん到達しつつあります。就職率もだんだん高まりつつある。そのことは否定できませんけれども、ただその場合に、労働省調査をなさる際に、その就職先の中身が先ほど出てきたような内容と一致する、そういう条件というものが私はあろうと思いますね。と同時に、一たん就職をしてその後やめられる、そして今度は失業状況になるというところ等も含めてやはり追跡調査をしていかないと、いろいろ就職しておるということだけで、一回こっきりの調査で終わらせたのでは大変問題があると思うけれども、この点はどうでしょう。
  19. 鹿野茂

    鹿野説明員 確かに先生指摘のとおり、就職時における調査のみならず就職後の状況についても調査は必要であるというふうに考えておるところでございます。  ただ問題は、就職された後について同和地区の方だけについて一定の調査をするということにつきましては、やはり技術的にも問題がございますし、またいろいろな問題もあろうということで、慎重に配慮をいたしているところでございます。  ただ、やはり就職した後の状況について何らかの結果をつかまなければならないというふうに私ども考えておりますので、その面については技術的な面も含めまして十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  20. 中西績介

    中西(績)分科員 その点は、就職そしてその後の調査についてはいろいろ問題があるということはわかりながらも、この点をやっていかないと、その内容が本質的なものが浮き彫りにされず、そして調査した結果が結果として終わってしまって、将来的にどうなっていったかということの追跡なしにこのことを論議したのでは私は大変誤りを犯すのではないかと思うわけです。ですから、何としてもこれは今後の課題として検討し、そして、むしろ積極的に取り組むべきではないかということを申し上げます。  時間がありませんから、次に入ります。  そこで問題は、雇用主に対する啓蒙指導、いろいろあります。あるいは雇用主の研修会だとかいろいろやっておるということを労働省、いろいろ私たちがお聞きしますと出てまいりますね。しかし、これがきわめて形式的であって、結果がどのようになっていったかということの分析がやはりここにはないと思います。  なぜ私がこのことを申し上げるかと申しますと、皆さんも御存じのとおり、地名総鑑が手がけられて、その後になって出てきたというこの事態、しかもそれを購入された企業が大変たくさんあったという事実、そして七回にわたって出された。これが今度は問題になったところが、いま企業主が購入するのではなしに興信所だとか探偵所だとか、こういうところにその手が移って、そこからまた再度調査をしていく。ですから、ここら辺がまた購入し始める、こういう現象が強まっています。きわめて悪質ですね。  ですから、先ほど私が申し上げましたように、形式的で、しかも中身がどう進行していったかという、このことの調査なり分析、これはどのようになさっておるのか、お答えください。
  21. 鹿野茂

    鹿野説明員 同和問題についての雇用主に対する研修、指導につきましては、特別措置法制定以来私どもいろいろ努力をしてまいったわけでございます。が、その後一定の反省と検討を加えまして、昭和四十九年度から新たに計画的な雇用主研修会というような形での研修を実施してまいったわけでございます。その研修の実績につきましては、四十九年度以降五十一年度まで開催回数にいたしまして五千四百九十四、それから対象雇用主にいたしまして約三十二万事業主になっておるわけでございます。  しかしながら、やはり先生の御指摘にございましたように、この同和問題についての雇用主研修というのはただ通り一遍の研修ではなかなか理解をしていただけないわけでございます。やはり十分な計画性あるいは継続性が必要であろうかというふうに思っておるわけでございます。そのようなことの面について、若干私どものそれに対する努力が不十分でございましたために、地名総鑑事件等のようなきわめて悪質な差別事件が起きたのではないだろうかというような反省を私どもも行っているところでございます。
  22. 中西績介

    中西(績)分科員 いま答弁がありましたように、これがやはり形式的にしかなされておらないし、しかも受け取る側の方もその形式的な手続、手段、それを一度経ればすべてが終わりだという認識に立っておるというところに大変な問題があるわけですね。ですから、この点を今後労働省としては継続的に強化をしていくなり、むしろ永続的にこれらが徹底するためにはどうすべきかということの研究調査、これがきわめて重要だろうと思います。この点は特に重要視する必要があるために、今後労働省としてはこの点を一つの重要課題としての位置づけを明確にしてほしいと思います。  そこでもう一点、具体的に細かくもうちょっと入りたいと思うのですけれども、私が調べてきたところにおきましても、いろいろ問題になっておりますのは、たとえば長崎県では、いままで同和地域というものの調査なりあるいは登録なり、これがずいぶんおくれておったところであります。ところが、実態としては六十一の地域が存在するということが明らかになってきております。  私たち調査に入ったときもそうでしたし、それ以前ですが五十二年の四月の十九日にも、新聞でもそういうことが報道されていますね。いま私は新聞で報道された面を一、二紹介しながら申し上げたいと思うのですけれども、この地域における状況というものは、対象者の中の五四%が失業しておるということが明らかにされています。そして、しかもこの就業中の者を職種別に見ましても、やはり先ほど出ておった率と全く変わらない状況にあるし、この対象者として挙げられた中には大企業あるいは官公庁に正規の職員として勤めておる者は一人もいない、こういう状況です。いわゆる三百人以上の企業には一人もいないし、官公庁にも一人もいない。それから年収、賃金を見ましてもどうなっているかというと、百万から百五十万が大体五〇%以上になっています。中には八十万円という年収の人も存在するわけであります。  こういうような状況等を見てみましても、さらにまた私のすぐ近くの地域における「築城町部落解放行政総合白書第一回答申」というものがその町で出されています。これを見ましても、やはり同じような結果が出ています。この中で明らかになっておりますのを見ますと、たとえば就業関係からいたしますと、人口比からいいますと大体一三・四%の同和地域の方の居住区があるわけでありますけれども、そうしますと、日雇い人夫の数からいたしましても一般の場合には六・六%、それから同和地域の場合には二二・八%という大変な高率を示しています。さらにまた、就業者の裏返しになるわけでありますけれども、生活保護世帯が大変な高い率になり、一三・四%しか人口比ではないにもかかわらず生活保護の人員というのは大体一般とこの地域とが同数になっておる。あるいは国民健康保険の加入状況を見ても、やはり結果的には同じことが言えるのではないか。特に農業をやっている地域ですから、奥さん方は別個にしまして国民健康保険に加入をするという状況が相当進んでおる地域なんですけれども、一般地域では四二・八%、それから、この同和地域におきましては六九・〇%という、こういう実態が出ておるのは、先ほど申し上げるその裏返しとしてこのことは明らかにされておると私は考えます。そしてしかも、この所得状況から見ますと、この地域では、一世帯の収入が十九万以下が一般の場合には二〇・六%、ところがこの地域におきましては五一・二%という半数以上が一世帯当たりこのような実態になっておるわけであります。ですから、もちろん二十万以上ということになりますと、大変大きく陥没をしておるという状況がここには見受けられるわけであります。  このように内容的に見てまいりますと、先ほど私が指摘をいたしましたように、まずこの常用雇用率が全国一般平均に比べて大変低いということが指摘できると思いますね。これは皆さんの調査の中でも一定的に出てくると思います。  それから、就業先のこの規模そのものも、先ほどから言っているように、大変小規模、ここに多くの者が就業をしておるということが言えると思いますし、そしてまた、この失業をしておっての求職活動がまた大変率が高くなっていることは、このことも否定できない。  もう時間がありませんから、お答え願うわけにはまいりませんけれども、いずれにしてもそのような実態というのがあることはここでは見落とすことができないだろう、この点については否定できないと思いますので、あえて答弁をもう求めません。  そこで、私はいま改めて大臣にお聞かせ願いたいと思いますけれども、このような措置法が出されてから九年経過をしました。そして、あと一年という時点にありながら、このようなきわめて深刻な失業の実態あるいは就労をしておってもその内容はきわめて問題のある状況にあります。この点をどのように深刻に受けとめられておるのか、これが将来いろんな措置をする際に大変重要な課題になってくると思いますので、その点を明確にしてください。
  23. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほどもお話を申し上げたように、雇用機会の均等ということが同和問題の中心課題であるにかかわらず、いま御指摘のいろんな問題、特にこの地名総鑑なるまことに悪質な行為が現に行われておったというこの状況を考えますと、特に同和問題の解決のための同和対策事業特別措置法の延長問題につきましては、今後とも大いに努力し、重ねて今後検討してまいらなければならない、このように思います。
  24. 中西績介

    中西(績)分科員 問題は、いま私が指摘をしてまいりましたように、内容としてはきわめて重要な課題が山積をされておる、このことはお認めになると思いますね。しかも、先ほどから申し上げるように、賃金についてもすべての問題がこういう状況にあるわけでありますから、この点を考えますと、その反省がなしにいままで九年間に皆さんが示されたこの行政的な措置、そして、それが実態がどう経過をしていったかという内容分析に立った上の反省がなければ、これからあと具体的なものを示そうったって示すことはできません、それは。これはおわかりでしょう。  ということになりますと、再度私は重ねて要求をしますが、まず第一点は、正確な同和地区労働実態把握を完全にやり遂げてほしいと思います。それから二点目、同和地区の階層別、地域別、年次別雇用計画の策定及び訓練計画の確立をどうするかというその計画を明確に示さなくちゃならぬと思うのです。そして、当然のこととして、五年なり十年先の到達目標を設定をしまして、これをどう実施していくかということを皆さんがこれから示さなくちゃならぬと思うのです。  ですから、以上申し上げた二点とあわせまして、特別措置法九年ですからあと一年です。ということになりますと、いま大臣がお答えになったようなことではだめなんです。具体的に、先ほど申し上げるように、その二点についてどうするのかということを明らかにしていただいて、その上に立って特別措置法がいまなお存続強化をされなくてはこういう問題については確立ができないという、こういう方向での表現なりを使わないと、いまの答弁では不十分だということを言わざるを得ません。その点についてもう一度御答弁ください。
  25. 細野正

    細野政府委員 先生指摘ございましたように、労働の実態をできるだけ正確に把握するということの必要は、私どもも十分同感に考えているわけでございます。ただし、いろいろまた同時にむずかしい問題があるということも、先生先ほどお話しございましたようにございますので、その点も関係の機関、関係団体等ともよくよく相談をいたしまして、実態の把握に極力努めてまいりたい、こういうふうに考えているわけであります。  それから、雇用計画、訓練計画のお話でございますが、これも事業主のこの問題に対する理解の深度という問題とも非常に密接に関連しまして、非常に画一的な計画を立てるということが可能かどうか、あるいはそれが有効であるかどうか、これもいろいろ問題のあるところでございますが、できるだけ私どもとしても、行政としての目標を進めるためにもそういう問題意識を持って対処してまいりたいというふうに考えているわけでござ  います。
  26. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま御指摘の問題点、私もお気持ちとして十分理解できます。ただ、具体的な方法論として、いろいろ実際これが実務を遂行するに当たって、私は結論は、やはり社会全体が同和問題に対する認識、同時に一番キーポイントである雇用機会均等という問題については、事業主側のこれまた認識という、こういった、ものが総合的に行われて初めて成果が得られるものである、このように思いますから、十分御趣旨を体して今後も努力いたしたい、こう思います。
  27. 中西績介

    中西(績)分科員 以上で終わりますが、特に最後に一言だけ。  この問題についてはいま言われましたように、雇用主、そして地域社会のそのことは重要であるということと同時に、行政として労働行政をどう進めていくかというその視点が明確に出されて、それを具体的に提示をし、推し進めていくということがなければ、これは永久に片づきませんよ。この点を銘記してやっていただくことを、そして、この措置法をさらに法律として存続をしない限りこれはできないわけですから、いままでだって十年あったにもかかわらずできないでおるのに、これが簡単になくなってしまったときにできる可能性というのはもうなくなるわけでしょう。その点だけは銘記しておいていただきたいと思います。その点だけ一言。
  28. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、この措置法につきましては、この問題を含めて総理府長官も先般の予算委員会答弁をされましたが、その線に沿うて労働省としても御趣旨を体して努力いたしたい、このように思います。
  29. 中西績介

    中西(績)分科員 終わります。
  30. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして中西君の質疑は終了しました。  次は、小宮武喜君。
  31. 小宮武喜

    ○小宮分科員 ここに労働省が発表した技能労働者需給状況調査結果報告書が出ておるわけですが、これはもちろん五十一年六月現在でございますけれども、これからいきますと約八十万の技能労働者が不足してきておるという数字が出ているわけです。ところが、一方では、この前の予算委員会でも質問したように、五十三年度は百十万の失業者が出るとか、あるいは五十二年度でも百十五万失業者が出る。一方では失業者がおる、一方では技能者不足が出ておるという、こういう実態の中で、どういう雇用対策をやっておるのか、どうも疑問に思いますので、労働省雇用対策というのは大体どういうことをやっておるのですか。
  32. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働省としての雇用対策をどのように進めておるかということ、これはもう労働省としていま一番大切な課題として真剣に取り組んでおるわけでございまして、何よりも大前提は、一刻も早く景気回復してもらい、企業の活力を復活してもらうということが前提であることは、私から申し上げるまでもないわけでございます。公共事業を大きく伸ばしていくというのもそういう趣旨でございまして、そのような背景の上に雇用安定資金制度というものを積極的に活用をしていくということ、そしてまた雇用保険制度をこれまた適切に運用していく、また先般成立いたしました特定不況業種離職者臨時措置法のこれまた弾力的、積極的運営、こういったことをやりまして、同時に、すでに予算委員会でもお答えを申し上げたごとく、来年度から新しく中高年齢層を雇い入れる事業主に対して、大企業は二分の一、中小企業は三分の二の助成をする、こういうことによって民間の力も活用しながらこれの対策を進めていく、このように考えておるわけでございます。  公共事業のことについては、地区を指定し、例の法律に定められた雇用制度というものを積極的に活用して、緊急避難的な雇用対策に万全を期する、こういったこと。  それから、ただいま指摘をされました技能労働者、確かに御指摘のごとく、一見矛盾した現象をわれわれは見逃すわけにはまいりません。これは一つは、日本の産業構造が大きく転換をしている現状に起こる一つ失業状態といいますか、不合理な状態ではないかと私は思うのでありまして、技能労働者において、御指摘のごとく八十万近くの不足を来しておる。いまお話がございましたような職種以外、鉄筋工であるとか配管工とか、こういう建築関係の技能労働者が非常に不足をしておる、こういうことでございますから、労働省としてはこのような状態にかんがみまして、公共職業訓練を積極的にやっていくとか、あるいは事業主等の行う職業訓練施設活用する、こういったことによって、現在求められておる職種に早く労働者が技術を身につけてもらうように、早急に職業訓練法の改正もやっていくということによって、現在の失業、片や技能労働者の不足という摩擦的な現在の雇用情勢を一刻も早く乗り切っていきたい、このように考えるわけでございまして、いずれ職業訓練法の改正も成案を得て御審議をいただくように準備をいま進めておるところでございます。
  33. 小宮武喜

    ○小宮分科員 いま言われるように一方では八十万の技能者不足が出ておる、一方では失業者が百十万人も出ておる、これは完全に吸収できれば失業者は三十万しか残らぬわけですよ。そういう面で、いま言われておるように、職業訓練のあり方についても問題があるのではないか。したがって、地域別にその実情に応じた職業訓練科目の選考をやっていただいて、いまのような状態で、一方では失業者が出ておる、一方では技能者が不足しておるという、こういうような奇異な現象を解消するように努力をしてもらいたい。  特にその意味では、各都道府県別にこれは出ているわけですけれども、ここを見ますと、いま言われておるように、たとえば長崎県でも、これは七千六百人の不足数が出ているわけですね。ということになりますと、長崎県ではこの失業者はどれぐらいおりますか。
  34. 細野正

    細野政府委員 先生御存じのように、総理府の完全失業者の統計には府県別の内訳がございませんので、そういう意味での失業者そのものの数を府県別に申し上げるわけにはまいらないのでございますけれども、なお雇用失業関係を把握する一つの指標としての有効求人倍率で申し上げますと、長崎県の安定所、全安定所でございますが、有効求職者数が約一万八千五百人、有効求人倍率は〇・四八倍、こういう状況になっております。
  35. 小宮武喜

    ○小宮分科員 失業者数がわからぬといっても、これはやはり各県の安定所で集計したものを中央で総集計されるわけですから、わからぬというのはおかしいと思うけれども、時間がないから次に移ります。  それでは、いま長崎では御承知のように非常に造船界が深刻な構造的不況に見舞われて、もうすでに下請協力工を中心にしてかなりの離職者が出ているわけですけれども、今後は本工に至っても大量の一時帰休の発生が予測されているわけです。そういうことを考えますと、現在の雇用調整給付金制度の造船に対する適用はことしの四月末で切れるようになっているのです。それは恐らくことしの後半から大量の一時帰休制度が発生することが予測されるし、また他の造船所でもこういう事態が発生することは明らかでありますから、そういう意味で、この雇調金制度の造船に対する適用期間をぜひとも延長してもらいたいということを特に質問したいと思います。
  36. 細野正

    細野政府委員 お尋ねの件でございますが、現在、中央職業安定審議会にお諮りした上で決めております指定の考え方からまいりますと、一度延長しますと三カ月のクーリングタイムがどうしても必要だ、こういうふうになっております。ただし、先生指摘のように、最近経済情勢もいろいろ変化をしてきておりまして、造船関係が中心である地域等において情勢が深刻になっているところは先生指摘のとおりだと思うわけであります。  そういう意味で、新たな要因が起きて、それによって指定をする場合には、先ほど申し上げました安定審議会の基本的な指定基準の考え方の例外を設けることもできるわけでございまして、そういうことに該当し得るかどうか、現在関係機関とも、あるいは実情につきましては労使団体等の御意見も聞きながらさらに検討さしていただきたい、こういうふうに考えているわけであります。
  37. 小宮武喜

    ○小宮分科員 雇調金制度にしても、やはりこういうような法律は実態に応じて検討していただかぬと、いまの制度がそうだから、あるいは法律改正までというむずかしい問題じゃないわけですから、そういう意味では、そういう事態が発生した時点でその人たちが救済できるように、ケースバイ・ケースで弾力的な運用をしてもらいたい。特にこの点、恐らくことしの後半ぐらいからかなりの一時帰休者が出ますので、雇用を維持するために、これは解雇するわけには絶対にいきません。そういう立場から一時帰休という問題が発生しますので、特に労働省の方針にも協力するわけですから、そういった、ただ法律一点張りじゃなくて、運用の面でも十分に柔軟性を持って運用してもらいたい。  それからもう一つ、今度一時帰休が造船関係では出るくらいですから、もう恐らくことしの四月以降は、下請協力工はほとんどが離職という結果になると思います。したがって、昨年の臨時国会で不況業種の離職者臨時措置法をつくったわけですけれども、この運用の問題についてちょっと疑問がありますので、また矛盾がありますので、お尋ねします。  労働省説明によれば、その企業が過去一年間に親企業に対する依存度が五〇%以上でなければならない、こういうふうになっていますね。しかしながら、そのために造船下請協力工として、たとえば依存度が三〇%とか、仮に三五%あるいは二〇%あるいは一五%になった場合、五年、十年、二十年と働いておる人たちがこの適用を受けられないということになるわけです。一方では、五〇%以上依存度があればよろしいということになれば、たとえば仮に五五%としますと、あとの四五%の人たちは、不況業種に指定された業種でないにもかかわらず、その企業が指定されることによってこの離職者法の適用を受けるわけです。一方では五〇%以下というだけで、それは弾力的運用もいろいろ労働省も考えておるようですけれども、たとえば三〇%、二五%になった場合、本当に純粋の意味で離職者が不況業種に勤めておりながら救済できないという矛盾がある。私に言わせれば、企業ごとに指定することもちょっと問題がありますけれども、やはりいままでの雇調金だってみんな業種別でしてきたわけですから、そういう意味では不況業種に指定されていない人まで、その企業が指定されることによって離職者法の適用を受けるということは、何としてでも理解できないし、それはもう皆さん方がそういうふうな不況業種に指定された人たちを仮に三〇%、二〇%、一五%でも救済するということならいいのですけれども、そういう本当に不況業種に指定された人が五〇%の枠にひっかかって救済できぬ、片一方では不況業種に指定されておらぬ人が、五〇%以上という依存度によって救済されるという矛盾、これらの問題をどう考えますか。
  38. 細野正

    細野政府委員 適用関係を判断いたします場合に、一般的に事業所単位でいくのか企業単位でいくのか、こういうことになるのでありますが、やはり事業所単位でやる方が、むしろ先生指摘のような実態には近くなるという考え方で、事業所単位で適用しております。  そのときに一つの問題として、それをどういう把握でもって当該問題の事業に該当するというふうに見るか。これはたとえば統計的にもそうですし、一般の法律運用の場合でも大体五〇%というものをめどにしてこれを運用していく、このこと自体は一般に行われておるところでございますし、それから社会的にも妥当性を認められていることでなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。ただ、それ以上ということになりますと、職種か何かに分解しなければなりませんので、非常に実態もむずかしいし、運用もむずかしい、こういうことになるわけでございます。  ただし、恐らく先生の御指摘の基本には、最近造船が非常に調子が悪くなっておりますから、そこで造船以外の仕事に極力努力をされて、仕事が造船以外の方にだんだん移ってきておる。そうすると、ここ一年だけで見ると五〇%を割っているけれども、過去を見るとほとんどが造船だった、こういうものを救わないのはおかしいじゃないか、こういうところに先生の御質問の基本があるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、その点につきましては、確かに一年間だけで見るのはどうかという御指摘のような問題があるというふうに思われますので、私どもとしましても、究極は労働者雇用の安定ということを十分配慮していかなければなりませんので、そういういま申し上げましたような実態のあるものにつきましては、その期間一年の方がむしろ問題があるのじゃなかろうか、そういう観点で関係の各方面ともよく相談しながら検討させていただきたいと考えております。
  39. 小宮武喜

    ○小宮分科員 たとえば、その企業がもともとから造船に依存しておる人が二〇%なら二〇%という場合と、この不況で脱造船ということで、親企業あたりの指導もあってとにかく雇用を何としてでも維持していこうという立場から、建築の仕事もやったり、ほかのいろいろな仕事をやっていく中でたまたま五〇%を切ってしまったというところもあるわけです。そういう意味で、過去の一年間の実績という問題もあるし、であれば、私は少なくとも三年間ぐらい実績をとりなさい、こういうことを言いたい。  しかしながら、それもひとつ検討していただくとしても、これは議員立法ですから、われわれが離職者法案の原案をつくっていく場合に考えておったのは、あくまで不況業種の離職者を救済するという精神に立っておるわけです。そうであれば、われわれの気持ちからいけば、たとえこれは三〇%であろうと二五%であろうと、極端な言い方をすれば一人であろうと、こういった人たちは救済すべきだと考えておるわけです。しかしながら、いまのような実態があるし、特に例を申し上げますと、造船所の構内にたとえばAという企業が仕事をしておる。しかし、本社工場は造船所の構外にある。そこではいままで造船の仕事をしておったけれども、いろいろ手を伸ばして拾い仕事でも何でもやってたまたま下がってきた。しかし、ここの構内におる人たちは、そのAという企業の出張所といいますか、そういう立場で、そこで三十人なり四十人なりの人が、長い人は十年、十五年、二十年、三十年と働いておるわけです。労働省は造船の仕事をしていたかどうかという認定の困難な問題もあろうかと思いますが、これらの人たちはもう構内でずっと十年、二十年やっているわけですから、そういう認定にむずかしい問題はないわけですよ。だから、そこにAという企業があって、構内で一つの出張所みたいにして長く従事しておる人は、その企業の依存度が仮に三〇%であったにせよ二五%であったにせよ、やはり救済すべきがこの法の精神だ、私はこういうふうに考えるわけです。  その点について、これが議員立法でできたという関係もあるし、またこれは準備期間が短かったという問題もあって、労働省としても——労働省は法律を出す場合は一年間ぐらいじっくり検討してそういう落ちこぼれがないようにいろいろやるわけですけれども、これは議員立法で出たものですから、労働省は拙速主義でやったのじゃないかと私は善意にも解釈するわけですけれども、やはりこの法の方針にのっとって、適用についてはできるだけ不況業種の離職者を救済するのがこの法律の趣旨ですから、そういう立場でひとつ運用してもらいたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  40. 藤井勝志

    藤井国務大臣 法の趣旨、精神に立脚して、これが運営は、御指摘のごとく、この不況による離職者を助けるという精神でありますから、御趣旨をよく踏まえて現実的に対応していきたい、このように考えます。
  41. 小宮武喜

    ○小宮分科員 そういう意味で、いろいろな問題が出てまいりますから、そういう中にあってこれはできるだけ救済するように、必要によっては省令を改正してもいいわけですから、それが一番最高ではなくて、いろいろな矛盾が出てくれば矛盾を一つ一つ解決して、この法の趣旨に沿って救済するという方向でひとつ御努力を願いたいと思います。  それから、ぼくは最近非常に不思議に感ずるのは、たとえば、労働省関係の最低賃金にしても、地域最低賃金にしても、あるいは中央の産別最低賃金にしても、あるいは職業訓練手当にしても、あるいは就職指導手当、いろいろな問題がありますけれども、これが生活扶助基準以下ということはどういうものかなと思うのです。生活扶助基準というのは、国が憲法二十五条に規定する理念に基づいて国民が最低生活を営むに足る保障をしておるわけですから、その意味では生活保護法第一条にもこれははっきり書いてあるわけです。憲法の理念に基づいて生活保護法が生まれ、それで、生活保護法の中でこの生活扶助基準が決められておる。五十三年度の予算を見ましても、標準世帯で一級地で十万五千五百七十七円、二級地で九万六千七百四十一円。そうすると、いまの最低賃金にしたって、どことは言わないが、安いところは二千円くらいですね。そうすれば二十五日働いて月五万円ですよ。こういう最低賃金制度というのは、生活保護法に照らしても憲法に照らしても、これで最低生活ができるのかということをやはり私は疑問に思うのです。だから、私は、生活保護法の問題よりは労働者の最低賃金が余りにも安過ぎると思う。だから、やはりもっと上げるべきだ。これは地方の審議会にかけるわけですけれども、しかし、この精神に基づいて、少なくとも最低生活を保障するという立場に立つならば、やはりこの最低賃金にしても、生活扶助基準くらいまで引き上げるべきだ。これは厚生省をきょう呼んでおりませんけれども、極端に言えば、たとえば二千円の最低賃金で月に二十五日働いて五万円とします。長崎でも二級地ですから九万六千円。そうすると、四万六千円は生活扶助基準より少ないわけですよ。この差額は、厚生省生活扶助の申請をすれば却下するわけにいかぬわけです。これは私、厚生省に質問して明らかにしておるわけですから。そうすると、そういう手もあるけれども、むしろそれよりは、やはり労働省が所管している最低賃金とかあらゆる手当、訓練手当や指導手当は少な過ぎるじゃないか、もっと引き上げるように努力しなさい、生活扶助水準くらいまで引き上げなさいということですが、どうでしょうか、大臣。
  42. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私も政治家という立場から、御指摘の問題点、ときどき矛盾を感ずる経験がございます。ただ、いま御指摘の最低賃金あるいはそのほかの労働省関係の諸手当と、それから生活保護基準、これは制度の仕組みが違うというところから、私は、結果を単純に比較するということはなかなかむずかしいのではないか。ただ出てきた結果の数字を比較すると、御指摘のような矛盾を感ぜざるを得ないような事実もあろうと思います。  最低賃金については、それぞれの審議会で毎年の物価の値上がりとかそのほかの賃金関係を勘案して結論が出されておるわけでございますから、問題は、最低賃金労働者生活を支える最低の線にいくように漸次改正するという、この点は私も必要だと思いますけれども、生活保護基準との比較、これは単純にそのままこれを比較して云々するということは私はちょっとむずかしいのではないか、こういうふうに思います。
  43. 小宮武喜

    ○小宮分科員 もう時間が来ましたので、最後に、長崎県の外海町池島に建設予定の産炭地労働者福祉センターの着工はいつごろになるのか、これまでも非常に労働省が努力していただいておることについては敬意を表しますけれども、もうちょっと具体的にお聞かせ願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  44. 細野正

    細野政府委員 お尋ねの施設でございますが、設計完了がおおむね三月中旬ころというふうに聞いておりますので、着工は三月下旬ないし四月ごろになるのじゃなかろうかというふうに聞いております。
  45. 小宮武喜

    ○小宮分科員 それから、先ほど申し上げましたけれども、長崎で造船から離職しておる人たちのためにも、各職業訓練所の入所の期日が年に二回というふうに決まっておりますので、訓練科目を地域に適合するようにやっていただくと同時に、入所期日を四月とか十月とかやられたって、そこまで待っておれぬわけですから、そういう意味で、弾力的に、年二回のものをたとえば三カ月単位で四回にするとか、そういうことも考えていただかねばならぬと思いますが、どうでしょうか。
  46. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のとおりでございまして、職業訓練法の改正もそれを考えて、いわゆる入校時の多様化といいますか、こういったことを積極的に取り入れていかなければならぬ。同時にまた、地域に密着した職業訓練、これもぜひ御趣旨に沿うたような線で実現をしたい、このように思います。
  47. 小宮武喜

    ○小宮分科員 いまの各都道府県別の技能者不足の数を見ても、非常にばらばらですね。そういう意味で、実際は不足をしておりながら一方では失業が出ておるという問題を考えた場合、画一的な訓練方法ではなくて、訓練科目も地域別に十分きめの細かい配慮をしてもらいたいと思うのですが、その点いかがですか。
  48. 藤井勝志

    藤井国務大臣 政府委員から答弁をしてもらいます前に、私も小宮委員のお考えと全く一致しております。その線に沿うように極力今後進めていきたい、このように思います。
  49. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま大臣からもお答え申し上げましたが、先生おっしゃるとおりでございます。したがいまして、私ども地域的にそれぞれ公共職業安定機関との連絡を密にいたしまして、不足職種というものの検討をいたし、そしてそれに対応して公共訓練施設のみならず、事業内訓練あるいはその他の民間訓練施設にも随時必要に応じまして委託訓練等もいたしまして、その地域の職業の安定のために努力をしてまいりたいと存じます。
  50. 小宮武喜

    ○小宮分科員 最後に要望だけします。  雇調金制度の造船に対する適用の問題、それから離職者法案の中で、私が言いましたように、落ちこぼれの人たちを最大限に救済するという精神に立って、いろいろ省令等もありましょうけれども、そこは法の精神に立脚して、弾力的な法の運用をぜひやってもらいたいということを強く要望しまして、私の質問を終わります。
  51. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして小宮君の質疑は終了しました。  次は、只松祐治君。
  52. 只松祐治

    ○只松分科員 きょうは厚生省の人を呼んでいませんが、しかし、労働省でもおわかりだと思いますが、いま日本人の平均余命、男女それぞれ幾らになっているか、ひとつお答えをいただきたい。
  53. 細野正

    細野政府委員 平均余命の数字はいま探しておりますが、平均寿命は、男が七十二・一五歳、女子が七十七・三五歳でございます。
  54. 只松祐治

    ○只松分科員 大体そういうことですね。これは、平均寿命と言うより平均余命と言うのです。  それで、これは聞くより教えてあげる。世界でも大体二番あるいは下がっているときは三番くらいに位しているわけです。それだけ日本は、医学なりいろいろな進歩によって平均余命が長くなりました。  そういう中で、定年制は何歳でございますか。
  55. 細野正

    細野政府委員 平均した数字がちょっと出にくいのでございますけれども、定年の年齢ごとの各企業の割合、これはわかっておりますので、それでお答えをさしていただきますと、これは五十一年の調査でございますが、まず五十四歳以下が〇・三%、それから五十五歳というのが四七・三%、それから五十六から五十九までの間が、これは年齢別に出ておりますので足しますと、大体一四、五%という数字になります。それから六十歳以上が三五・九%というふうな状況になっております。
  56. 只松祐治

    ○只松分科員 公務員は大体何歳なんですか。
  57. 細野正

    細野政府委員 御存じのように、公務員には国家公務員も地方公務員も定年制がございませんので、そういう意味での定年年齢というのはないと思います。
  58. 只松祐治

    ○只松分科員 なくたって、やめさせているでしょう。だから何歳ですかと聞いているのです。やめてないのですか。百歳まで働いていますか。
  59. 細野正

    細野政府委員 各省によって差があるようでございます。たとえば、私どもの職業安定局につきましては六十歳で退職の勧奨をしているという状況でございます。
  60. 只松祐治

    ○只松分科員 そんなことはないでしょう。大体早いところでは五十四歳で肩たたきをやったり、まあ遅くても五十六歳というのが肩たたきでしょう。国家公務員で六十歳というのはよほど特殊なところで、ここにも出てきているように、この数字もぼくは必ずしも正しいとは思わないけれども、約五〇%は五十五歳で首になっているというのがほとんどの現状ではないですか。地方公務員の場合は六十歳前後ですね。しかし、国家公務員の場合は五十五歳から五十七歳というのが平均じゃないのですか。違いますか。
  61. 細野正

    細野政府委員 先ほど申しました私どもの安定関係については、昨年まで五十八でございましたけれども、六十歳にいたしたということでございます。
  62. 只松祐治

    ○只松分科員 三十分で、くだらない論争する時間がありませんが、私は、十五年前この問題を取り上げて論議を始めているのです。あなたみたいなばかみたいな——ばかということが悪ければ、幾らだって怒りなさい。そういう答弁を十五年間あなたたちと繰り返してきているのですよ。十五年前に何とかいたしますということを大臣以下、ここに十五年前からの議事録がちゃんとある、それで答弁しておりながら、ほとんど努力をなさらない。いま私が、努力しろと言ったら、不況でございます。雇用対策が大事でございます。そういうことに恐らく答弁するでしょうね、先に教えておきますけれども。  しかし、高度経済成長のさなかに、人手の足らないときでもしなかったのですよ。議事録をごらんになればわかりますけれども、昭和三十九年二月二十一日、ここにちゃんと答弁があります。その後政府はどういう努力をなさったか、ひとつ答えてください。私がきょう質問するくらいのことはわかっているから、多少の読み返しくらいしているでしょう。
  63. 細野正

    細野政府委員 定年の延長の関係につきましては、従来から、一つには各種の定年延長奨励金その他の奨励制度をとっておりますことと、それからもう一つは、御存じの高年齢者について六%という努力義務の雇用率を課しまして、その雇用率の実現を中心に、いま申し上げましたような各種の援護措置でこれを刺激をし、かつ、この問題は御存じのように賃金雇用慣行と密接に結びついている問題でございますから、そういう意味での賃金体系の改善等についての労使の理解を深めていくということで、労使に対する各種の指導をやっているというふうなことを総合しまして、その延長に努めているという状況でございます。
  64. 只松祐治

    ○只松分科員 国内の問題の論争をちょっとおきまして、それじゃ、諸外国では定年者は平均幾らになっておりますか。主な国の状況を言ってください。
  65. 細野正

    細野政府委員 諸外国の場合の定年と言われているものは、日本の場合と大分性質が違うわけでございます。いわば自発的な定年の時期というふうな、制度的にというよりは慣行的なものでなかろうかというふうに考えるわけでございますが、それはおおむね六十三歳から六十五歳程度というふうに聞いております。
  66. 只松祐治

    ○只松分科員 ここには一覧表を持ってきておりませんけれども、ここの中を調べればわかりますよ。     〔主査退席、住主査代理着席〕 外国は一番若いので六十歳ですね。アメリカは高年齢で採用された七十五歳というのがありますね。平均して大体六十五歳くらいが諸外国の定年ですよ。労働省、そのくらいのことは知っているわけでしょう。知らぬとは言えませんよ、答えにくいから答えないだけでしょう。  というのは、海部君が労働政務次官になったときに、私が強く要望いたしました。そのときに、高年齢者の具体的な対策として、高年齢者雇用調査というものをやったわけです。一挙にはできない、そのくらいのことはだれだってわかっておる。十五年前に私はこの問題を提案している。一挙にはできない、したがって、高年齢者のいろんな雇用状態あるいは生活実態の調査から始めなさい、とりわけ年金その他の問題との関連の調査をしなさい、それは一年や二年でこれだけの問題ができるわけのものではない、こういうことを言って、政府はこの雇用調査をして、何回か発表いたしましたね。そういうことから始まってきているのですよ。それで、あなたがいま一つ二つ申しわけ的に言った、そういう若干の政策というものを進めてきた。田村君が労働大臣になったときに、労働大臣としては初めて、正式といいますか、具体的といいますか、六十五歳というものを労働大臣談話として発表したのです。発表した明くる日に私のところに来て、いやあ、こうやって発表した。新聞で見たと言った。それで、君も念願としてそう思っているから、努力したい。こういうことで努力を進められてきて、あなたが言ったような幾つかの問題が済んできている。私は、まだほかの人にもいろいろ要望したり、単にこういう委員会の席だけではなくて、具体的な対策を提示してきた。ところが、依然として過半数は五十歳、国家公務員というのはほとんど五十歳から五十七歳の間に肩たたきが行われておるというような状況ではありませんか、違いますか。
  67. 細野正

    細野政府委員 公務員につきまして、私ども直接の所管でございませんので正確なデータを持っておりませんが、先生のお話のような状況にあるやに聞いております。
  68. 只松祐治

    ○只松分科員 あるやにじゃない。労働大臣、どうです。
  69. 藤井勝志

    藤井国務大臣 定年制の問題につきましては、御指摘の最初の御質問の趣旨から考えましても、高年齢者社会になったきょう今日、もうすでに十数年前からこの問題を重視された只松委員の御見識、またいまの御意見、私は過去の経緯はただいま承知いたしたわけでございますけれども、できるだけ早い機会に、厚生年金の給付年次である六十歳をとりあえず当面の努力目標としてこれが実現するように——国家公務員の場合には総理府が所管しておるわけでございまして、この定年延長問題につきましてはすでに閣議で検討することに意見一致を見ておりますが、民間の企業につきましては、やはり労使の自主的な話し合い、特に年功序列制の賃金体系というものを改善をしていかないと、なかなか環境がそれにそぐわない、こういう問題もありますから、先ほど局長から御答弁いたしましたように、逐次高年齢者雇用制度活用し、同時にまた、定年延長奨励金を出す、こういったことによってあわせて賃金体系も変える、こういう環境整備によって、できるだけ早い機会に六十歳を目標に、これが民間企業において実現をするように労働省としては努力したい、このように考えております。
  70. 只松祐治

    ○只松分科員 せっかく森山さんが、お見えになっておりますから……。  そういう中で、女子の場合は、劣悪と申しますか、さらに不平等と申しますか、よく社会問題にもなるような、結婚したらやめなさいというような定年制がしかれたりいたしておりますが、実情についてひとつお話をいただきたい。
  71. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 定年年齢に男女の差をつけております企業は、定年制を設けている企業の約二四%でございます。このうち女子の定年年齢を四十歳未満に決めておりますものが約一%、四十歳から五十五歳未満のものが一五%、それから五十五歳以上のものが八%となっております。  また、女子につきましては、定年だけではございませんで、結婚、妊娠、出産等を機会に退職するというような、結婚、妊娠、出産退職制等の特別の制度がございますが、これがまだ残っております事業所が約八%あるという調査結果になっております。
  72. 只松祐治

    ○只松分科員 そういうことに対して、労働省当局は具体的にどういう御指導をなさっておりますか。
  73. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 昨年の二月に、総理府に置かれております婦人問題企画推進本部の手によりまして国内行動計画というものがつくられました。これは婦人の問題各般にわたるものでございますが、その中の労働問題、またその中でも、特にこの若年定年制と結婚等による退職制の問題については、ぜひ早急に改善をすべきであるという方針が打ち出されております。この国内行動計画を受けまして、労働省といたしましては昨年の六月に、若年定年制結婚退職制等改善計画というものを立てまして、いま鋭意改善のための努力をしているところでございます。
  74. 只松祐治

    ○只松分科員 労働大臣、社会主義国家においてはこういう男女の差というのはないことは、もう私が言わないでも御承知のとおりだと思う。資本主義的な国家におきましても、日本のいま御報告ありましたような極端な男女の差、女子をいわばべっ視するといいますか、そういう国もまたほとんどないのですよ。平均余命はこれだけ長くなった、あるいはGNPは資本主義国家で世界第二位だ、あるいは文化的には何とかかんとかと、大変特に皆さん方いばられるといいますか誇りにされますね。ところが、こういういわゆる雇用サイド、一つの典型的な問題である定年制問題、あるいはちょっと話がそれますが企業の公開制度。アメリカでは公認会計士が十七万人、その中で公認会計士を専業としているのは七万人おります。日本の場合には公認会計士がわずか五千三百人、公認会計士を業として飯を食える者は三千人足らず。いかに企業が非公開で閉鎖されておるか、陰湿であるかということを示している。  定年制というのは同じようなことなんですよ。いいですか。人を使うときに、いままでも、高度経済成長のさなかに、行動力、活動力のある者はどんどん使って、定年制は一つも延ばさないで使い捨てて、後は第二会社、第三会社、どこかに行け。いま恐らく、私が先に論議したからあれだけれども、問題を提起すると、不況でございますから雇用が重点です。こういうことになるわけだ。そうではなくて、政治のあり方、労働政策のあり方というものが基本にあるわけだ。これはやはり根本的に反省をしていかなければならない。社会主義たるとあるいは資本主義たると、イデオロギーを問う問題ではない、政治の基本的な問題だと思いますが、労働大臣は、今後どのようにこれと取り組むというか対処されるか。ここへ何回も、各大臣がみんな繰り返し答弁してきているのですから、十五年前から似たりよったりのことを言ってきているのですから、もうここまできて、十五年たってできないことは、極論すればしないのと同じだと私は思うのだ。  藤井さんは、私も大蔵委員とかで長いつき合いで、自民党の中にあってはきわめて民主的だと思いますから、これを抜本的に——雇用対策の一環だけではないのです。私は、時間があれば、課長補佐までしかいかない人たちがよく起こす汚職の問題、老後の問題、あるいはいろいろな問題を国家公務員としても内蔵しておるし、あるいは民間の場合には、五十五かせいぜい六十くらいで子会社に追いやられてしまう。子会社も倒産しかけている。こういうところに半分か三分の一の給料で追いやられる、こういういろいろな社会的な問題を内包しているのはこの問題。  確かに物事を変えるのに、やはり相当勇気が要りますよ。しかし、だれかがどこかで勇気を出してしていかなければならない。さっき概況だけは御報告になりましたけれども、やはり国家公務員なら国家公務員が六十歳というものをばんと打ち出すということになれば、民間も、まあ何といったってまだ官尊民卑が残っている日本でございますから、これは当然についてくるといいますか、指導力を発揮することはできる。ぜひひとつここで具体的というか、抜本的な策をお示しいただきたいと思います。
  75. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のことは、不十分でありますけれども、私も常日ごろから考えておったわけでございまして、憲法のもと、法のもとには平等であるというのが基本原理でございますから、男と女とということで差別扱いを受けては相ならぬ。ところが、いま御指摘のごとく、定年制の問題あるいは結婚、退職という関係で非常に女子が不利に扱われておるわけでございますから、これは先ほど局長から御答弁をしましたように、国内行動計画によって積極的に改善をしていくという姿勢を打ち出して、努力をしております。     〔住主査代理退席、主査着席〕  ただ、只松委員、長い日本人の生活様式といいますか、婦人が家を守り、第一線で働くのは男性だといったこと、これが最近は大分世の中変わってまいりまして、第一線に婦人が職業婦人として活躍する、こういったことでございますから、女子についても、定年制の問題については男子と差別のつかないように、今後年を追うて改善しなければならぬ、私はこのように思います。  それからもう一つ、別の問題としてお話がございました、定年制問題それ自体、国家公務員には御承知のごとく現在定年制がないわけでございますから、一応われわれは六十歳をめどに公務員の定年制を実施する、そしてこれと相呼応して民間の企業においても六十歳をめどに定年制の実現を図る、こういうことに全体が向かうように、主体は民間の労働者でございますけれども、労働省としては、そういった方向に今後努力をしていきたい。そのための積み重ねとして、雇用制度、奨励金制度といったものをやっていき、同時に年功序列の賃金体系を、労使の話し合いによって一刻も早くこれが合意を得ていただくような環境づくりをいたしたいと考えております。そういうことによって御趣旨を体して前進するように努力をお誓い申し上げます。
  76. 只松祐治

    ○只松分科員 ここで仮定の論議をちょっとしてみますと、国家公務員には法的には定年制がないわけですから、おれはやめない——ちょうどいま税金問題で減税闘争をやって、去年七万人所得税減税をしようという提案がありました。ことしは総評を中心に三十万人する。三十万人でも相当国税庁はいやがりますね。五十万人出たら、徴税機能は、麻痺までしませんけれども、相当混乱するでしょう。今度は、いまみたいなインフレが高進いたしますと、二、三年たてばさらに大幅なインフレが進む。いや、おれはやめない、こういうことで、国家公務員の人が何百人、何千人とやめなかったらどうなさいます。勧奨退職以外に法的規制はできないわけですから、私は一番最初、第一回のときからその問題を論争したわけでございますが、そのころは、高度経済が上り坂でございますからほかに行っても仕事があった。ところがいまはなかなか仕事がない。やめない。こういうことでがんばられたら、政府当局はどうなさいますか。
  77. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘の点、なかなかむずかしい問題提起でございまして、明快なお答えはなかなか私の力ではできかねるわけでございまして、そのような事態が起こらないように今後雇用対策に万全を期したい。それには、何といっても一日も早く日本の景気回復することが大前提であって、それに向かって政治は全力を尽くす、このように考えておるわけでございます。
  78. 只松祐治

    ○只松分科員 さっきから言っているように、景気、不景気とこの定年制問題は、全然関係ないとは言いませんけれども、違うのですよ。だから、世界に例を見ない高度経済のさなかでさえ定年を延ばさなかったじゃないですかということを前提として私は言っているわけです。したがって、いま不景気になったということで、あなたたち、私が先にくぎを打ったから逃げられなくなったけれども、定年制延長はやはりできない、腹の中ではこういうようにお考えになっていると思うのです。しかし、経済の好、不況にかかわらず、この問題は、いわゆる老人社会とか平均余命が長くなったとか言われておりますけれども、昔の平均余命四十五歳、明治の四十五歳のときの太政官布告以来の五十五歳の慣習がずっと続いているわけです。したがって、いま七十三歳や七十七歳になった場合には、当然にそれに対応するのは政治の政策ですよ。したがって、その政策に抵抗するために、私がいま一例を挙げた減税闘争というものを行っている。私はそれの議長をさせられているわけでございますが、今度定年制延長の議長をみずから買って出て、退職するなということで、私が何百人、何千人を組織した場合に、あなたはどう対処されますかということを聞いている。好、不況とかそういう問題とは全然関係ない。法律的な問題として、法律的にそれはできないならできない、いやそんなことをやったっておれはぶっ切っちまう、こういうならひとつ答えてください。
  79. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私があえて景気回復するという問題を取り出しましたのは、不況になるととげとげしくなる、こういうムードを変えていくためには、景気回復するということがその背景に必要ではないか、このように申し上げたわけでございまして、御指摘のとおり、高齢者社会になったきょう今日、五十や五十五歳で肩たたきでそしてほうり出されるということは、これは残酷物語であるというふうに私は思うのです。だから、一刻も早く定年制の確立をやる、できるだけ早い機会に六十五くらいまではいってもいいと思うのですが、とりあえずは厚生年金給付年次である六十歳に一応目標を置いて、そしてこれに全力を注いでいく。そういうことによって、いまなお公務員に定年制のないのをきっかけにして、おれはやめないぞということにならないように、いい方向にこちらも努力いたしますけれども、只松委員もひとつ御協力をいただきたい、このように思います。
  80. 只松祐治

    ○只松分科員 最後に労働大臣の方に一つお願いしておきますが、まあ私は目標は六十五歳だろうと思うのですよ、いろんな意味で。しかし、それを一挙に六十五歳というのはこれまたいろんな無理も出てくるだろうと思うのです。賃金体系その他も抜本的に変えていかなければなりませんから。いまおっしゃったように六十歳を目標に、これもまた十五年間やってきたってあれですから、少なくとも今年中に行動計画といいますか具体的な計画を立てて、閣議にも強く進言をし、六十歳を実現せよ。私は繰り返し言いますように、好、不況とは関係のない問題である。全然無関係とは申しませんけれども、別個の問題であるから、ひとつ努力するようにするということを明言をしていただきたいと思います。
  81. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御指摘のごとく、現在の景気状況がよくないという、こういうことによって定年制実現が速度を遅めてはならない、このように思います。ただ、いつまでにやるかということについては、労働省としてはやはり民間企業の労使の話し合いということが前提でございますから——前提といいますのは賃金体系の改正ですね。私は、この年功序列制の賃金体制の改定なくしては民間企業はなかなか踏み切りがつかないと思うのですね。そういう意味において、民間の労使の話し合いに対してこちらも積極的に話し合いができるような環境づくりをいたしたい、そして御趣旨に沿うように努力をすることをお誓い申し上げます。
  82. 只松祐治

    ○只松分科員 婦人の問題も先ほど二、三お答えになりましたけれども、これも時間がありませんから内容まではきょう論じないのですが、婦人平均余命が大変長くなった、あるいは男女平等になった、あるいは女子の高学歴社会になってきた、それから経済的な面でインフレーションが進んで男だけの給料では食っていけない、いろいろな問題があるわけです。その場合に、森山さんみたいにエリートの場合は、首切りは直接こないわけでございますが、一般の場合は、先ほどおっしゃったように、やはり四十歳以下というのがたくさんある、あるいは結婚したらやめなさいというのもあるわけであります。しかし、いま私が幾つか挙げました基本的な状況変化、それから社会生活変化、たとえばソ連の例をとりますと、ソ連はほとんど御婦人がもうお働きになっている、そのかわり男女平等が確立して、またそれも、私は今度大蔵委員会で離婚の税金の問題を論議するためにそういう点を勉強しているのですが、三人に一人が離婚というように離婚率が非常に高い。アメリカでも州によっては四人に一人と離婚率が高いわけですね。さっき大臣は、御婦人は家庭で働くというような慣習もあると言われた。しかし、その慣習も若い人に破られつつある、破らなければ生活ができない、こういう実態になってきた場合に、当然に定年制という問題も、また別個の角度から婦人の問題も取り上げていかなければならない。いままでの単なる婦人の定年制という問題からとらえてはならない。それでは根本的な問題の解決にはならない。いままで論じられておったのは主として男性の定年制延長でございましたけれども、大臣、ぜひひとつ婦人の問題もあわせて抜本的にお考えをいただきたいと思います。それから当面担当されておる婦人少年局におきましてもそういう角度からひとつ御努力をお願いしたい、こういうふうに思います。
  83. 森山眞弓

    ○森山(眞)政府委員 先生の御趣旨のとおりでございまして、私どもも同じ気持ちで取り組みをいたしておるところでございます。今後とも一生懸命やってまいりたいと思います。
  84. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして只松君の質疑は終了しました。  次は、上田卓三君。
  85. 上田卓三

    ○上田分科員 大阪に本社がございます永大産業の倒産につきまして若干御質問申し上げたいと思います。  二月二十日会社更生法適用申請によって明らかになりました永大産業の倒産は、その後、日を追うごとにその負債額の大きさ、社会的影響の深刻さの点ではまさに戦後最大の倒産としての様相が明らかになってきておると思うわけであります。関連子会社を含め千九百億円に上る負債を抱えての再建計画、三百社に上る関連下請会社の倒産防止、同社の住宅購入者や契約者などの顧客対策など、迅速かつ強力な対策が求められているわけであります。とりわけ永大産業と関連下請企業に働く労働者は、その数約五千人とも言われておるわけでありまして、その雇用問題が重大な問題として浮かび上がってきておるわけであります。  この問題について労働大臣に質問したいわけでありますが、具体的な質問に入る前に、この永大産業が倒産に至った背景として、合板、木材業界の不振が挙げられているわけであります。こうした合板業界の不況は、実は高度経済成長時の無秩序な設備拡大によってもたらされたものでありまして、それに対して何らの有効な指導も行わず、むしろそれを指導し、関連銀行、商社の業界支配とそれに引き続く業界再編をもくろむいわゆる計画倒産を許してきた自民党政府の重大な政治的責任を追及せざるを得ない、このように考えるわけであります。さらに、今日不況克服のための内需喚起がうたわれておりまして、今年度予算の目玉として住宅建設や雇用促進が挙げられた矢先の超大型倒産でございます。政府の不況対策の責任がいかに弱く、かつ独占と商社、銀行などの利益を優先したところの反国民的な欺瞞策であるかを暴露したものと受けとめざるを得ない、このように考えるわけであります。そういう点で具体的な問題につきましてお聞きしたいと思います。  まず一点は、二月二十日の、永大側は労働省に対して、「これまで希望退職募集の形で大幅に人員を削減してきているので、更生法適用を申請したからといって当面人員整理を実施する考えはない」、こういうふうに説明したということを二月二十二日の日本経済新聞朝刊で報道されておるわけであります。これは更生法適用を申請し、事実上倒産宣言を行い、法的管理のもとに置かれ、いわば当事者能力を失っている死に体の会社側の見解でありまして、これで雇用が守られるとはだれも信用しないわけであります。できないと思うわけであります。通常、こうした更生法が適用された場合の再建につきましては、人員整理や企業規模の縮小などは慣例になっておるわけでありまして、むしろそれを前提としない再建計画は認められないのが実情でございます。ましてや膨大な負債と多数の下請と関連企業を抱えた今回の倒産に際して、債権者の側から、ときには裁判所から、大幅な人員整理なり下請企業の切り捨てが強要されることは十分あり得ることだ、このように考えるわけであります。こうした状況の中で今後重大な危機が予想されるときに、政府労働省が示している対策はきわめて不十分なものであると言わざるを得ない、このように考えるわけであります。  現在までに政府なり労働省が明らかにしました対策中心は、下請企業の雇用調整のため雇用安定資金の給付と離職者に対する関係金融機関の取引先を通じた就職あっせんであります。これらはいわゆる離職、転業、新たな職業訓練という形での実質的な解雇、人員整理を前提としたものでありまして、そうした措置の以前に雇用の完全確保のための債権者を含めて強力な指導を欠落させることは、むしろこれらの措置が解雇、人員整理を促進、誘発するおそれがあると思うわけであります。そういう意味で、今国会労働大臣から、いかなる形においても人員整理を許さず、雇用の完全確保を行わせる万全の対策を講ずることをぜひとも言明していただきたい、このように思うわけであります。
  86. 藤井勝志

    藤井国務大臣 永大産業が会社更生法の申請、こういう不幸な事態というのは、不況のまだ回復をしない現時点においてまことに残念なことでございます。  ただ、いまの従業員、労働者の解雇問題でございますけれども、これは、労使の労働協約なり就業規則なりそういったことによって、いろいろそういう事態に対応した取り決めといいますか、そういったものがなされておるというふうに理解するわけでございまして、万一その問題が円満に解決しないということになれば、正式の仲裁機関である労働委員会、この決定ということによってこれが措置が行われるわけでございまして、労働大臣から、解雇をするとかさせないとかという、こういう性質のものではない、このように御了解を願いたいと思います。
  87. 上田卓三

    ○上田分科員 やはり労働省としては労働者の立場に立つべきでありまして、このような大きな社会問題としての永大の倒産ということでありますから、労働者の解雇なり人員整理が行われない——とりわけ、こういう不況時でありますから、不況の克服、雇用促進というのは、これはもう政府の目玉商品になっておるわけでありますから、そういう点で、命令とか命令でないということよりも、労働省としてそういう万全の対策をとるということをはっきりと国民に約束してもらいたい、労働者に約束してもらいたいと私は思うのです。
  88. 藤井勝志

    藤井国務大臣 この永大産業の倒産が報ぜられまして、去る二十日、早速労働省は永大産業の責任者を呼びましていろいろ事情を聴取し、労働者雇用の安定と労働条件の確保についてそれぞれ指示をいたしまして、万全の手配をいたしました。  その後、本省並びに出先機関においても、これが連絡を密にいたしまして、現在事態の推移を見守っておるわけでございまして、必要とならば、現地にまた現状を調査するための人間を送ろう、こういうことで現在事態を見守っておる、こういう状況でございまして、御指摘のような精神は労働省としても当然持っておりまして、現在の不況のさなか、多くの雇用者を抱えておる永大産業労働者雇用の安定、労働条件の確保についてはできるだけの努力をいたしたい、このように考えます。
  89. 上田卓三

    ○上田分科員 いずれにいたしましても、下請企業の雇用調整のための雇用安定資金の給付とか、あるいは離職者に対する就職あっせんというようなことよりも、やはり人員整理なり解雇がなされないように労働省として万全の措置をとるということがまず第一であるというように私は思うのです。そのことがとられないで第二、第三の措置をとろうとすることは、もう第一のものについて放棄したということにもなりかねないわけでありますから、その点はひとつ十分に含んでいただきたい、こういうように思うわけであります。  そこで労働大臣に、これは裁判所の問題だということになるかもわかりませんが、再建を目指す産業については、やはり一日も早く更生開始決定がなされて再建活動が開始されるということが第一であろう、こういうように思うわけであります。そういう点で、関係の裁判所に、早くこの決定がなされるように労働省として強く働きかけていただきたいと思うのですが、その点どうですか。
  90. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいまお話がございました雇用安定資金制度の指定業種としては、三月一日付決定をいたしまして、これが万全を期しておりますが、会社更生法の問題について、労働大臣から、ひとつこれが早く結論が出るようにということについては、むしろ通産省と連絡をとりまして御趣旨の線が生かされるような努力をいたしたい、このように考えております。
  91. 上田卓三

    ○上田分科員 関連しまして、通産省の方もお見えだと思いますので——来ていますか、お願いしてあったのですけれども……。それじゃ、ちょっと連絡してください。  それじゃ労働大臣にお聞きします。  いわゆる更生計画の作成に当たっては、常に関係労働組合と協議することが必要だと思うわけであります。更生計画の開始に当たっては、関係労働者賃金労働条件、諸権利等にかかわる問題については、当然のことながら、旧労使間の慣行として定着しておりました事前協議を引き続き遵守するよう関係者に指導されたい、このように思います。ちなみに、倒産以前においては、同企業の労使関係はきわめて安定したものでありまして、ただ一人の労働者の配置転換についても事前協議に基づいて行われてきたという慣例が存在しておるわけであります。ところが、更生法適用申請については組合との事前協議は全くなされておらず、一般に他の企業の労働争議においても、この点はことごとく踏みにじられておるわけでありますが、さらにこの更生法が適用された場合、非常事態という名のもとに従来の労働協約なりあるいは慣行が無視され、労働者の権利が否定されるケースが非常に多いわけであります。この点は、民事訴訟法と労働法の絡み合わせの問題として重要な点でありますが、時あたかも雇用促進が不況対策の柱として打ち出されており、非常事態の名のもとに労働者に犠牲を強いる再建策を絶対に許してはならぬと思うわけでありますが、その点について労働大臣の決意というものをさらに聞かせていただきたいと思います。
  92. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、永大産業の場合、これはもう本当に、労使が永大産業の現在置かれた立場に対する共通の認識を持つ、こういったことが絶対必要だと思います。そういった前提のもとにこれが再建計画を立てるという場合、いまお話しのような具体的な問題、労働組合等の意見を聞かなければならぬという、こういったことは、当然労使相協力し合って初めてこの置かれた難局を乗り切れるかぎだと私は思うのです。したがって、会社更生計画案の作成の段階から労働組合等と十分話し合いが行われることが、私は当然必要であり望ましいことだというふうに思うわけでございまして、労働省としては、このような考え方のもとに、関係各省と協力をいたしまして、必要な助言、そして指導に今後も努めていきたい、このように考えます。
  93. 上田卓三

    ○上田分科員 今回の倒産が、はっきり申し上げて、関係金融機関なりあるいは商社、関係行政——いわゆる行政でございますが、などが、大手債権者の問で周到な根回しをして、準備の上で計画的に行われたのではないかということは新聞などでも報道されておるわけでありまして、われわれは前後の関係を見てそのことは明らかだ、こういうように思っておるわけであります。したがって、すでにこの更生計画についてもその基本的なシナリオができ上がっているのではないのか、こういうように思います。その舞台回しというのですか、そういうものも十分できておるだろう、こういうようにわれわれは推測するものでありますが、そういう点で、政府なり行政機関が行おうとしている再建計画というのですか、更生計画というものについて、やはり労働者の権利と利益が排除されているのではないか、そういうことが前提になっているのではないかというようにわれわれは思うわけでありますが、そういう点について、絶対にこの会社更生については労働者の犠牲を強いる再建計画でないんだということを、くどいようでございますが、ここで言明していただきたいと思うのです。
  94. 北川俊夫

    ○北川政府委員 更生計画をつくるに当たりまして、すでに前に会社が労働組合と締結いたしております労働協約は遵守しなければならないということが会社更生法に明確にございます。したがいまして、協約はもとより、従来ございました労働慣行等も、新たに管財人に任命をされた方は、会社更生のためにいろいろの困難はございますけれども、組合と十分話し合いをして、その納得の上での再建の道を見出していかれるように努力されることを期待、かつそのような方向で十分な行政指導をいたしたいと思っております。
  95. 上田卓三

    ○上田分科員 そうおっしゃいますが、先ほど冒頭に私が申し上げましたように、会社更生法の申請自身が、いままで労働者とすべて協約というのですか話し合い、事前協議があったにもかかわらずこれがなかったということなんですから、そういう点で非常事態という名のもとで、今後そういう形で、特に裁判所あたりのそういう決定の中身というものもありましょうが、そういう点が非常に懸念されておるわけでありますから、そういう点で、それは労使の関係だと言えばそれまでかもわかりませんが、やはり十分に労働省としてひとつ御指導願いたい、このように思います。大臣からそのことを一言。
  96. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま労政局長からお答えいたしましたような趣旨でございますが、御趣旨の線に沿うて労働省としてはできる限りの努力をいたしたい。大きな社会問題としてこれは無視するわけにはいきません。全力を尽くします。
  97. 上田卓三

    ○上田分科員 通産省の方お見えでないようでございまして、建設省の方に来ていただいているということですので、関連して御質問申し上げたいのですけれども、永大産業とその関連下請企業の受注、工事請負者の作業等を減少させてはならないということで、特に第二次倒産を防止しいわゆる雇用を守る上で必要な措置をとられることが必要だと思うわけであります。特に、永大産業及び関連子会社を通じて事業契約を交わしている地方自治体に対し、これらの企業との契約の解除や、あるいは事業の打ち切り、方針の変更などが行われないよう強力な指導を行っていただきたい、このように思うわけであります。  現在、永大が確保している官公需の実態とその取り扱いについての基本方針について御説明願いいたいと思います。
  98. 広瀬優

    ○広瀬説明員 先生指摘の、今後永大産業が仕事を続けていくということは、まさに御指摘になられましたとおり、労働者の保護あるいは下請関連企業等の保護と申しますか、その意味でも絶対必要なことであろうと私ども考える次第でございます。  御質問の官公需がらみでございますが、現在、永大産業は住宅供給公社がらみで五件、あとその他国の出先であるとか共済組合がらみで二件、締めて七件の住宅新築工事を請け負ってございます。これらの機関のいずれからも、私ども現在把握しておりますことによりますれば、契約の解除通告等は行われておらない状態でございますし、また現在把握している限りでは、その他の公共機関につきましても永大産業に対して指名停止等の措置はとっていないという現状でございます。建設省といたしましては、各発注機関等とも今後よく連絡をとりながら、今後の事態の進展というものは十分重視してまいる必要がございますけれども、永大産業が更生手続の開始を申し立てたということだけで不利益な取り扱いということが何とかないように、各発注機関等に対しても御依頼申し上げてまいりたいというふうに存じておる次第であります。
  99. 上田卓三

    ○上田分科員 大阪通産局の中にいわゆる対策本部が設置されたということでございますが、関係の労働組合等と交渉し、また協議が保証されるように、その点についてひとつ労働省としてはっきりとそういうことにしなければならぬというふうに、先ほどからの大臣の話を聞いてもそうでありますが、そういうことをしますということを、指導するということをひとつお答え願いたいと思います。
  100. 北川俊夫

    ○北川政府委員 いま先生指摘のように、大阪通産局の中に局内の連絡会議を設けておるようでございます。その業務の内容としまして、関係行政機関及び金融機関との調整その他を挙げておりますけれども、先生指摘のように、今後再建のための具体的な更生計画等の作成に当たりましては、労働組合との協議あるいはその納得を得るための十分な話し合いはぜひ必要だと思いますので、そういう面につきましては地方の労政機関を通じまして十分趣旨が徹底するように通産省とも連携をとりたいと思っております。
  101. 上田卓三

    ○上田分科員 大臣、よろしいですか。
  102. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいま労政局長がお話を申し上げたとおり、ぜひ労働者雇用の安定のために万全を期したい、このように考えます。
  103. 上田卓三

    ○上田分科員 最後に、永大産業は時間の関係もありますのでその程度にしておきたいと思いますが、先般労働大臣に私からも御要請申し上げました国際人権規約の批准の問題でございます。  御存じのように、戦後問もなく世界人権宣言が発せられたわけでありまして、それをただ単なる宣言に終わらせてはならない。法的な裏づけとして国際人権規約の問題が大きく国連などで問題になりまして、そしてわが国昭和四十一年に国連でこの人権規約については賛成の一票を投じておるわけであります。そして、おととしの三月の二十三日にはこの人権規約が国際的に発効するということで、間もなく二年を経過するわけであります。去年の暮れにも、アメリカにおいてはカーター大統領が国連事務総長の前で批准の署名をするというようなこともございましたし、また批准のおくれておりますフランスにおいても、ヨーロッパ人権会議にも参加し、日本よりもはるかに人権の問題については深く追求して近く批准されるということであります。  そういう意味で、先進国と言われる中で一番おくれておるのは、ただ一つ残っておるのはわが日本でございまして、そういう意味では人権問題に対しては後進国と言ってもしかりだ、私はこういうように思うわけであります。  われわれはおととしごろからこの批准を迫る運動を起こしてまいったわけでありますが、外務省は当初から一日も早く批准をしたいということでありましたが、文部省なり法務省なりが相当いろいろな面で、国内法との問題で意見があったようでございますが、そういう問題が解決したように聞いておるわけであります。ところが、労働省がいろいろ問題があるんだという形で急にクローズアップして、何か労働省が人権規約の批准について抵抗しているというようなことも聞いておるわけでありますけれども、しかし、恐らくそういうことはなかろうというように思うのでありますが、そういう点、まあ外務大臣は今国会でぜひとも批准をさせたいということを予算委員会、外務委員会等で約束しておるわけでありますが、労働省としてはそれに対して全面的に賛成であるのかどうか、その点ひとつ声高らかに、国民は大いに関心を持っておりますので、明確な答えをしていただきたいと思います。
  104. 藤井勝志

    藤井国務大臣 国際人権規約の重要性につきましては、労働省としても十分、従来もそうでありますが、私も就任以来勉強をさせていただいております。ただ、問題は、この批准の担当省は外務省でございまして、外務省を中心に現在労働省を含めまして関係各省でいろいろ事務的な調査を急いでおります。労働省としては、外務省の方針に沿ってこれができるだけ前進するように協力をしなければならない、このように考えます。問題は、先ほど申しましたように、主管が外務省でありますから、私の立場としては、いろいろ事務的な報告も受けておりますが、この段階においてそれじゃどういうふうに持っていくかという具体的なお答えを申し上げる段階ではございません。国内法との調整の問題とかいろいろなものがあるようでございますけれども、要するところ、国際人権規約というものの重要性を十二分に認識をして、ひとつ日本もここまで国際的な地位が高まってきておりますから、世界の中の日本としての位置づけにふさわしい姿勢を示さなければならぬ、このように思います。
  105. 上田卓三

    ○上田分科員 大臣も国際人権規約の重要性について十分認識しているというお言葉でございますし、また関係の省、いわゆる担当の省が外務省であるということで、外務省とも十分外務省の方針に沿って協議云々ということでありますから、外務省が今国会に批准をする方針で努力されておるわけでありますから、ひとつ全面的に労働省として御協力いただくということで、その答えをいただいたということでよろしいですね。
  106. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御趣旨に沿って、先ほど申しましたように協力をいたします。御提案のとおりに努力をいたしたいと思います。
  107. 上田卓三

    ○上田分科員 どうもありがとうございました。
  108. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして上田君の質疑は終了しました。  午後一時から再開することといたし、この際休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  109. 笹山茂太郎

    笹山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生省所管について説明を聴取いたします。小沢厚生大臣
  110. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 昭和五十三年度厚生省所管一般会計及び特別会計予算案の概要について御説明申し上げます。  昭和五十三年度厚生省所管一般会計予算の総額は六兆七千七十六億円余でありまして、これを昭和五十二年度当初予算額五兆六千二百五十七億円余と比較いたしますと、一兆八百十九億円余の増額、一九・二%の増加となっており、国の一般会計予算総額に対し一九・六%の割合を占めております。  最近におけるわが国の経済情勢及び財政事情はまことに厳しいものがあり、そのため明年度予算景気回復をねらいとした臨時異例の財政措置として公共事業等の投資的経費について、大幅な規模の拡大が図られたところでありますが、厚生省予算は、各方面の絶大な御理解と御協力によりまして前述のとおりの結果を見るに至りました。この機会に各位の御支援に対し衷心より感謝申し上げますとともに、責任の重大さに思いを新たにし、国民の健康と福祉を守る厚生行政の確立に一層努力をいたす決意であります。  昭和五十三年度の予算編成に当たっては、社会保障に関する各種施策について優先度の厳しい選択を行うとともに、真に必要な分野に重点的に、かつ、きめの細かい配意を加え、その質的向上を図ることといたしましたが、この際私の特に留意した点を申し上げたく存じます。  第一は、国民の健康の保持増進に関する施策をより一層推進するため、生涯を通じての体系的な健康づくりの施策を講ずるとともに、市町村保健センター等を計画的に整備し、あわせて健康づくりのための啓蒙普及活動を積極的に展開することとしたところであります。  第二は、低所得者階層、心身障害児・者及び老人等社会的、経済的に弱い立場にある人々に対する福祉施策について、在宅福祉サービスの強化生活扶助基準の引き上げ、母子福祉資金等の貸し付け原資の増額、社会福祉施設運営の改善を図るほか、民間社会福祉事業に対する助成の強化を図ることとしたところであります。  第三は、国民の保健医療の確保について、救急医療、僻地医療体制の計画的な整備、特殊疾病対策等の強化、看護婦等医療従事者の養成確保と処遇の改善、医療保険制度に対する財政措置の充実等を図ることとしたところであります。  第四は、年金制度について、物価スライド実施時期の繰り上げ、厚生年金及び船員保険における在職老齢年金等の改善、国民年金における無年金者対策及び福祉年金の額の引き上げを図ることとしたところであります。  以上のほか、公共投資の一環としての生活環境施設の大幅な整備、医薬品、食品等の安全確保対策、原爆被爆者、戦争犠牲者のための対策、環境衛生営業の振興等についても、その推進を図ることといたしております。  以下、主要な事項について、その概要を御説明申し上げるのでございますが、委員各位のお手元に資料を配付いたしてございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、本予算案の成立につきましては、格別の御協力をお願いいたす次第でございます。
  111. 笹山茂太郎

    笹山主査 この際、お諮りいたします。  厚生省所管関係予算の主要な事項につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 笹山茂太郎

    笹山主査 御異議なしと認めます。よって、さよう決定しました。     —————————————   〔小沢国務大臣の説明を省略した部分〕  以下、主要な事項についてその概要を御説明申し上げます。  第一は、生活保護費であります。  生活扶助基準については、五十三年度経済見通しによる個人消費支出及び物価の動向等を勘案し、前年度当初に比し一一%引き上げることとしたほか、級地差の改善、教育、出産、葬祭等の各扶助についても所要の改善を行うこととし八千三百八十二億円余を計上いたしておりますが、これは前年度予算に比し一千百五十五億円余の増額であります。  第二は、社会福祉費であります。  老人福祉については、老人の生きがいを高め、社会参加の促進を図るため高齢者能力活用推進協議会の設置等老人就労あっ施事業の拡充、老人クラブ助成費の増額、福祉電話の増設、家庭奉仕員派遣事業の充実等を図るほか、新たに在宅の寝たきり老人のための短期保護事業を設けることといたしております。  心身障害児・者の福祉については、福祉手当、特別児童扶養手当の額の引き上げを行うとともに、新たに在宅重度精神薄弱者訪問診査事業、身体障害者福祉バスの設置を図るほか、地域活動促進費の大幅な拡充等従来からの施策についても、その充実に意を用いた次第であります。  社会福祉施設の整備については、特別養護老人ホーム、心身障害児・者施設、保育所等の整備を進めるとともに、基準面積の改善、大規模修繕に対する補助等の措置を講ずるほか、老朽民間福祉施設の改築促進等のため、社会福祉事業振興会からの借り入れについて、元金返済の一部免除制度を新たに導入することといたしております。  また、社会福祉施設の運営については、中小規模施設や保育所に対する特別管理費の支弁、重度の施設における介助員の配置、業務手当の改善及び保育所事務職員雇い上げなどの措置を講ずることといたしております。  児童の健全育成については、児童館、母親クラブ等の拡充を図るとともに、児童手当については、低所得層に対する手当額の増額、児童の健全育成事業に資するための福祉施設の設置等を行うことといたしております。  このほか、母子福祉貸付金、世帯更生資金の原資の増額、児童扶養手当の額の引き上げ等を図るとともに、都道府県、市町村社会福祉協議会における専門職員の増員等民間福祉活動推進、さらに同和対策等についても、それぞれ所要の措置を講ずることといたしております。  以上申し上げました社会福祉費の総額は一兆九百七十億円余でありまして、前年度に比し一千三百九十億円余の増額となっております。  第三は、社会保険費であります。  まず、社会保険国庫負担金でありますが、厚生保険特別会計及び船員保険特別会計への繰り入れに必要な経費として九千百四十八億円余を計上いたしております。  厚生年金保険及び船員保険の年金部門については、物価スライドの実施時期を六月に繰り上げ、在職老齢年金の支給制限の緩和、在職老齢年金の七十歳改定及び遺族年金の寡婦加算額の改善の措置を講ずることとし、これに要する経費として四千百八十億円余を計上いたしております。  政府管掌健康保険については、診療報酬の引き上げ、保険料の改定に伴う国庫負担率の引き上げに要する経費を含め四千九十三億円余を、船員保険の疾病部門については、十二億円を計上いたしております。  次に、国民年金国庫負担金でありますが、国民年金特別会計への繰入に必要な経費として一兆四千三十二億円余を計上いたしております。  このうち、拠出制国民年金については、物価スライドの実施時期を七月に繰り上げるとともに、いわゆる無年金者対策として、保険料の特例納付を認める措置を講ずることといたしております。  福祉年金については、老齢福祉年金の月額一万五千円を、八月から一万六千五百円に引き上げるとともに、障害福祉年金及び母子、準母子福祉年金の月額についても、これに準じた引き上げを行い、また、本人所得制限及び恩給等との併給制限についてその緩和措置を講ずることとし、所要の経費を計上いたしております。  国民健康保険助成費については、総額一兆七千二百十一億円余を計上いたしておりますが、このうちには、療養給付費補助金、財政調整交付金、国民健康保険組合臨時調整補助金及び臨時財政調整交付金などの経費が含まれております。  なお、健康保険組合に対する給付費臨時補助金については、十二億円を計上いたしております。  以上申し上げました社会保険費の総額は四兆一千百九十五億円余でありまして、前年度に比し七千三百四十九億円余の増額であります。  第四は、保健衛生対策費であります。  まず、国民の健康づくりの推進については、従来からの妊婦、乳幼児、成人、老人に対する各種の健康診査等の充実を図るとともに、新たに家庭婦人を対象とした貧血、肥満防止のための健康診断等を行うこととし、乳児から老人まで一貫した体系的な健康診断、検査等の保健サービスが実施されるよう配慮したところであります。  なお、がんの予防検診については、子宮がん検診の対象年齢を拡大するとともに、乳がんの自己検診の普及に要する経費を新たに計上いたしております。  また、これら健康づくり施策の基盤を確保するため、全国の市町村に計画的に市町村保健センター等を整備するとともに、保健婦を設置し、対人保健サービスの充実強化を図ることといたしております。  さらに、健康づくりのための国民運動を体系的に展開するため、すべての市町村に推進協議会を設置するとともに、啓蒙活動の積極的な推進のため、国民健康づくり推進基金を創設することといたしております。  以上のほか、健康づくりのための民間活動に対する助成措置の強化等とあわせ国民の健康づくり対策に要する経費として、総額二百一億円余を計上いたしております。  次に、救急医療対策については、休日夜間急患センター、救命救急センター等を年次計画に従い整備することといたしております。  また、僻地医療対策についても、僻地中核病院、巡回診療車等の整備を計画的に推進することといたしております。  看護婦確保対策については、看護婦等貸費生貸与金の額の引き上げ、養成所の整備等の拡充を図ることとし、また、看護婦の処遇改善については、夜間看護手当の引き上げを行うことといたしております。  難病対策については、調査研究の推進、専門的医療機関の整備を図るとともに、特定疾患治療費の対象疾患の拡大、小児慢性特定疾患対策における対象疾病の拡大等の措置を講ずることといたしております。  このほか、国民の健康づくりに関連している循環器疾患対策、がん対策については、それぞれ専門医療機関及び研究所等の整備を行うとともに、公的病院等に対する助成についても、所要の経費を計上いたしております。  原爆障害者対策については、健康管理手当の支給対象疾病の拡大、各種手当額の引き上げ、所得制限の緩和措置等を講ずることといたしております。  予防接種対策については、予防接種の対象疾病の拡大、各種の予防接種事故救済給付に係る手当額の引き上げを行うことといたしております。  なお、ラッサ熱等国際的な特殊感染症対策については、所要の医療機器、患者輸送車等の整備を図ることといたしております。  以上のほか、腎不全対策、結核、精神等の対策費を含めて、保健衛生対策費は、総額三千五百九十三億円余でありまして、前年度に比し三百五十七億円余の増額であります。  第五は、戦傷病者戦没者遣族等の援護費であります。  戦傷病者戦没者遺族等に対する年金については、恩給法の改正に準じた額の引き上げ、対象範囲の拡大、支給期月の変更を行うこととし、戦没者の父母等に対する特別給付金の支給については、国債の最終償還を終えたものについて、第三回目の給付金を支給することといたしております。  さらに、遺骨収集、戦跡慰霊巡拝の実施、沖繩の戦没者墓苑の建設、中国等からの引き揚げ者に対する援護措置の拡充を行うこととし、遺族及び留守家族等援護費として合計一千百七億円余を計上しておりますが、これは前年度に比し百四十七億円余の増額であります。  第六は、環境衛生施設整備費であります。  まず、水道施設整備費については、公共投資の一環として事業費の大幅な増額を図るとともに、新たに水道水源開発事業における遠距離導水路の整備等を補助対象に加えることとして七百八十六億円余を計上いたしております。  廃棄物処理施設の整備については、第四次整備計画による所要の事業量を確保するとともに、大都市圏域における廃棄物処分場に係る基本構想のための調査を行うこととして四百七十二億円余を計上し、環境衛生施設整備費は、合わせて一千二百五十九億円余となり、前年度予算に比し三百六十五億円余の増額となっております。  以上のほか、日常生活の安全確保対策については、医薬品、食品及び家庭用品の安全性確保のため、情報収集体制強化調査研究費の増額、試験検査体制の整備等について、所要の経費を計上するとともに、新鮮血液確保対策推進、麻薬覚せい剤対策強化などに要する予算の確保にも努めたところであります。  なお、医薬品の副作用による被害については、所要の調査を行うことといたしております。  以上、昭和五十三年度厚生省所管一般会計予算案の概要を御説明申し上げました。  次に、昭和五十三年度厚生省所管特別会計予算案について申し上げます。  第一に、厚生保険特別会計については一般会計から九千六百五十六億円余の繰り入れを行い、各勘定の歳入、歳出予算を計上いたしております。  第二に、船員保険特別会計については一般会計から二百十五億円余の繰り入れを行い、歳入、歳出予算を計上いたしております。  第三に、国立病院特別会計については一般会計から七百二億円余の繰り入れを行い、各勘定の歳入、歳出予算を計上いたしております。  第四に、あへん特別会計については、歳入、歳出ともに十六億円余を計上いたしております。  第五に、国民年金特別会計については一般会計から一兆四千三十二億円余の繰り入れを行い、各勘定の歳入、歳出予算を計上いたしております。  以上、昭和五十三年度厚生省所管特別会計予算案について申し上げました。  何とぞ、本予算案の成立について、格別の御協力を賜りますようお願いする次第であります。     —————————————
  113. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして厚生省所管について説明を終わりました。     —————————————
  114. 笹山茂太郎

    笹山主査 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。貝沼次郎君。
  115. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 厚生大臣出席のもとで質問できるというのは私はめったにございませんので、私はほとんど大蔵委員会の方へ行っておるものですから、きょうは絶好のチャンスと思って質問をさせていただきたいと思います。  初めに、最近問題になってきております排卵誘発剤の使用の問題でございます。もう新聞等で、四つ子が生まれた、あるいは五つ子であるとか六つ子であるとか、日本人の歴史からながめて恐らくこういうことはいままでそうあったものではないと思うのですね。こういったところから、子供に恵まれない方々からはコウノトリ的な存在として受け取られておるわけでありますが、一方、この問題はさまざまな検討事項を実は与えておるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  たとえば一つは、いろいろ報道とかあるいは海外の情報などによって言われておりますように、可能性の問題としていろいろな副作用が心配されておる。私は、これから申し上げるのは、何もこの排卵誘発剤を使用するのがいけないと言っているわけではありません。これはもろ刃の剣でありますから、使用するに当たってさらに研究なり留意なりをする必要があるのではないか、こういう意味で実は取り上げておるわけでありますが、たとえば極小未熟児とかあるいは小頭病であるとか、また蒙古症、腹水あるいは流産が多くなるとか、卵巣腫瘍とか血栓症など、可能性としてこれはゼロとは考えられないというようなぐあいだと思います。こういうような方向が一方あるかと思えば、少々の危険を冒してもやはり子供が欲しいということで、この排卵誘発剤を使用しておる人もおるわけであります。こういう点を考えますと、やはり使用の指導徹底というものが非常に大事ではないか。  それからもう一点は、家族計画の面から子供は一人欲しい。四人とか五人とか、一遍で親の二倍も子供が生まれるということはどうしても経済的にむずかしいというようなところから、主婦の方が非常に心配をしておるわけですね。先日も私のところにある主婦の方が参りまして、そういう誘発剤を使っておるけれども、その点が心配だということを言っておりました。こういったことが頻繁に起こってくると、非常に悲惨な、最悪の事態が起こってからでは遅いのではないか。一人ならよかったけれども、四人にもなったら困るから、たとえば処分するとか、そんなことがもし考えられるようになったら大変でありますし、また、一人の子供が欲しいからお願いをした、ところが四人も五人も生まれたのでは願いと違うものであるというようなところから、これは薬害によるものであるというようなことで、訴訟問題も起こりかねないという内容を含んでおると思います。  それからもう一点は、病院の方も、恐らく初めから何人も生まれるということを予想するわけではありませんので、未熟児をそれだけ一時に育てる施設というものが、能力が果たしてあるのかどうかという問題、多胎児出産が珍しいというばかりではなしに、こういった現状もよく把握していかなければならないのではないか。  わが国においては、すでに排卵誘発剤については、四十三缶に厚生省の認可がおりておりますし、五十年には健康保険扱いが認められておるわけであります。このようなことを考えたときに、フランスの面だけを見るのではなしに、マイナスの面の心配をなくする使用方法なりあるいはそれに対する指導徹底、さらに、一人ではなしに何人も生まれておるこの現状にかんがみて、それが期待するような結果ができるような研究の推進、こういったことがやはり問題として出てくるのではないかと思います。したがって、ここで真っ先に大臣のそれに対する所信、これを伺っておきたいと思います。
  116. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 排卵誘発剤は、御承知のとおり、不妊症の婦人に対しまして妊娠の機会を与える医薬品として、世界で広く使用されておりまして、関係専門家の問でもその有用性というものは高く評価をされているわけでございます。しかし、おっしゃるような問題点が種々あることも委員御指摘のとおりだろうと私は思います。  ただ、副作用につきましては、先天性のいろいろな異常というものの発生率は、一般の医薬品、あるいは普通にこれを飲まない方の妊娠の場合の状況と比べてみて、そう特別にこのために発生率が高いというようなデータはいまだにございません。また、軽い程度の副作用が間々人によって起こっておることも把握はいたしておりますが、それほど重篤なものではないわけでございます。ただ、おっしゃるような点の配慮もいろいろしなければならぬものですから、これの使用に当たっては十分医師の指導を受けまして、医師が十分それらの点についての慎重な検討を行っていただくようにお願いをし、かつ、この薬の使用上の注意というものをきめ細かく記載をさす等の方法によりまして、委員おっしゃるような、副次的にいろいろな問題が起きないように指導していかなければいけない。いま直ちにそういう面から考えまして、排卵誘発剤というものを禁止するわけにもまいりませんので、十分よく指導徹底し、また医師に、相手方に対する十分な注意を喚起していただくようにお願いする等の施策をとっていく必要があろう、かように考えます。
  117. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 私は、これを禁止せよとか、そういった意味で言っているのではございません。この点ははっきりしておきたいと思います。ただ、そういうものを使用する人がかなり多いわけですね。したがって、そういった人が不安を持たないで使用できるようにしなければならないのではないか。たとえば現在の指導のあり方、現在の厚生省の態勢ですね、指導をしておるとか、あるいはいろいろな条件がありますけれども、そういうことだけではやはり物足りないだろうと思うのですね、現実に四つ子や五つ子が生まれておるわけですから。したがって、いままでとは違った、もう一歩進めた対策といいますか、そういったことが必要になるだろうと私は思います。  したがって、ただこれは留意すべき問題だというだけではなしに、いまこういうような事態が起こっていることであるから、これをいま一歩進めた施策をやってまいりたいというように、それは具体的にどういうことを大臣は考えておられるのか、この点について答弁を求めたいと思います。
  118. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生指摘のとおりに、この種の薬物は、昭和四十三年以降三種類製造承認が行われておりまして、それぞれの薬によって異なりますが、現在それが年間一万人とか七万人とか二十万人というふうな、非常に多数の妊産婦に投与されていることは事実でございます。  現在のところ、使用上の注意を非常にきめ細かく定めまして、先ほど大臣から御説明いたしましたように、たとえば適応を特定の不妊症患者に限定するとか、あるいは過剰な刺激による多胎妊娠のような副作用を避けるために必要な検査を実施する、あるいは多胎妊娠の可能性があるということをあらかじめその妊産婦の方に十分御説明をしてその了承を得ておくとか、あるいは内分泌系の専門医師の管理のもとに使用するとか、そのようなきめの細かい使用上の注意を現在行っておるところでございます。  ただ、いわばこの薬の本来の効用と申しますか、その結果として多胎妊娠の発生率が非常に高いということは、いわばある意味では薬の効き過ぎという現象でございまして、これをどのようにうまくコントロールをし得るかということについては、この薬物の使用法、あるいはより的確なコントロールの可能な薬物の開発等、薬物の観点からいたしまして十分今後さらに研究を進めまして、このような多胎妊娠の確率のより低いような使用方法あるいは薬物の開発等に努力をしていかなければならない、かように考えておるところでございます。
  119. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 そういう主婦の非常に深刻な不安がありましたので、きょうは取り上げさせていただいたわけでございます。  それから、時間が迫ってまいりましたので次の質問に移りたいと思いますが、これは先天性四肢障害児の問題であります。この先天性四肢障害児につきましては、実は非常に深刻な問題が出てきておりまして、きのうかおとといだと思いましたが、新聞の投書欄を見ましても、たとえば「「先天性障害児に安楽死を」に思う」というので、生命はとうといなどということはこういう子供を持った親にはむなしく聞こえるだけである、本当に持った人でなければわからないというような、安楽死の問題まで実はきておるわけであります。そういう面では非常に大きな問題を提起していると思いますけれども、この先天性四肢障害児が現在、難病には指定されていないわけですね。これはどういう理由によるものでしょうか。
  120. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 難病対策は大きく分けると二つに分かれているのでございますが、大人の難病を公衆衛生局が所管しております。またいわゆる子供の難病は、小児特定慢性疾患として児童家庭局が指定をいたしております。またそのほか、それから外れたものについて医務局において特別な対策も講じております。  先天性四肢障害児につきましては、確かにそういった難病としては指定はしてございません。しかしながら、いろいろと福祉の手当もあり、医療の手当もあるわけでございまして、難病に指定していないというのは、特にその病気に限って調査研究をしていないということではないと思うのでございますが、子供の方の発達障害の研究というのは児童家庭局でいたしております。また、その程度が重くて適正な医療が必要だというような場合には、育成医療の適用が児童局の方で行われていると思います。また医務局の方といたしましては、そういった育成医療の指定医療機関の一部として、国立病院が指定されておりまして、医療を担当すると同時に、重度のものにつきましては、国立療養所の方で入院をさせてお世話をするということもいたしております。
  121. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 答弁が長いので時間がどんどんたちますけれども、簡潔にひとつお願いいたします。  それで、これは恐らく厚生省にも行っておると思います。「四肢障害児と親は訴える」、先天性四肢障害児父母の会ですね、この中にいろんなことが実は出ております。もう時間がありませんので私の方からかなり一方的に申し上げたいと思いますが、この障害を持つ子供の出生が年によってだんだんふえておるということなんですね。たとえばこの表によりますと、三十五年、三十六年ころは二百四十八名中一という数字になっておるわけですけれども、昭和五十年ごろになりますと四十五というふうになってくるんですね。こういうふうに年々ふえておる。単なる先天性のものだけであるなら、日本人そのものがうんと変わってきたのかわかりませんけれども、とにかくふえておるということは、何らかの原因があってやはり起こっておると見てよろしいだろうと私は思うのですね。  それで、父母の会の人たちがいろんなことを調査しております。どういう人たちにこういう子供が生まれたか、妊娠中にどんなことがあったのかということをいろいろやって、もちろんこれが原因だと断定しているわけじゃありませんけれども、いろいろやっております。このときに「特に目立つのはホルモン剤の服用と風邪をひいていたとする母親の多かったこと」ということを言っております。こういうホルモン剤が果たして原因になったのかどうかわかりませんけれども、非常に服用率が高かったそのホルモン剤も主に黄体ホルモン剤であったということなんですね。これについては、この会はホルモン剤のみを優先させて追及しているんではないかという批判も一部あったようですけれども、決してそうではなしに、調べた結果そういう人が多かったという単なる意見として実は述べておるわけであります。そしてそのホルモン剤について、心配なものですからあちこちの情報を調べてみると、アメリカではすでにこれは使用禁止をしておるものであったというふうになっていますね。  この文章を読みますと、「アメリカでホルモン剤と四肢障害の因果関係についてある種の指摘がなされたのは、一九七三年、米コロラド大学のノラや、ニューヨーク州衛生部のジャニリッチらの研究によるもので、それらに基き、アメリカではFDAの警告によって、全ての妊娠初期の女性にホルモン剤を使用することを禁止したとされている。その理由は黄体ホルモン剤はある種の流産以外は一流産予防には無効であり、しかも催奇形性の副作用がある、」というふうにここには書いてあるわけであります。そういったところからアメリカで使用を禁止しているのに、日本ではやはり使うから、その辺も心配だなという程度のこれは問題を提起しておるわけでありますが、こういう先天性四肢障害児の原因究明ということは、一体厚生省はどういうふうにやっておられるのかということですね。  たとえば本日の報道によりますと、アメリカでは、主にこれはサルで実験をしておりますが、これは先天性肢体不自由児になりそうだという場合、母胎からそれを取り出して手術を加えて、再び胎内に戻して、そして正常出産ということで非常に効率が上がった実験があるということで報道されて、アメリカでは積極的にこういう問題に取り組んでおる様子がよくわかるわけでございますが、日本の場合はこれを一体どういうふうにとらえて、しかもいまどうしてこれを解決されようとしているのか、この点についての厚生省の見解を承りたいと思います。
  122. 石野清治

    ○石野政府委員 先天性四肢障害に対します発生予防の研究でございますけれども、これは心身障害研究費という特別の予算を計上いたしておりまして、実は五十年度から五十二年度にわたりましても約十八億六千万円の研究費を投じております。もちろんこれは先天性四肢障害だけではございませんで、いわば心身障害の発生全体、いろいろな問題がございますので、それらについての原因の究明、それから予防並びに早期発見の治療に関しまする研究、そういうことでございますが、実際に研究をやっておりますのは、全国の大学の医学部でございますとかあるいは病院の専門家によります研究班を結成いたしまして、そこにおいてそれぞれの研究を行っております。  なお、先天性四肢障害だけについて申し上げますと、五十一年では、先天性四肢障害の疫学調査と診断基準の作成の問題、それから五十二年度におきましては、先天性四肢障害の病因と疫学調査、診断基準について研究を行っているとごろでございます。
  123. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 どうでしょうか、大臣は長い問厚生省におられて専門家中の専門家でありますが、こういう先天性四肢障害児を持たれた親に直接会って意見を聞いたことはございますか。
  124. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いまだ私、着任来そういう経験はございません。間接的にはよく聞いておりますけれども……。
  125. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 実際私も写真や何か見まして非常に大変だなと思います。それから親の嘆きというものは、子供に対してサリドマイドのようにこういう原因だからなったんだよという説明が全然できない。しかも、その子供がだんだん大きくなっていった場合に、今度は結婚問題とかそういう問題が出てくるし、手袋をして子供をおんぶしておればほかの子供から、寒くもないのに何で手袋をするのかと言われて答えようがないというような、これは非常に社会的な問題を含んでおり、さらに、ああいう子供が生まれた家からは、というので、結婚問題にまで影響してきておるわけでありますので、非常に嘆きは大きいと思います。かといって、そういう社会問題を含んでいるので、なかなか実態の把握というのはむずかしいと思うのです。  私の友人にも実は、こういう子供がおる人がおるわけでありますけれども、そういったことを考えたときに、せめて父母の声を一度でいいですから、大臣が直接聞いてあげるというチャンスをひとつつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  126. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 結構でございます。時間があればいつでもお会いします。
  127. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 それから、この先天性四肢障害児につきましては、具体的にたとえば研究機関をつくってもらいたいとか、あるいは実態を正しく把握してもらいたいとか、またそういう子供が生まれた場合に相談できる医師の養成であるとか、いろいろ出ております。その辺はよく御存じだろうと思いますのでくどくど申し上げる気持ちはございません。ぜひひとつそういう対策をお願いしたいと思います。  それから、障害児の保育事業に関する国庫補助の問題でございます。あるいは保母の指導研修体制の確立ということでありますが、従来の考え方と変わったという点、それからさらに、こういったものを充実をさせていく場合に、どうも話によりますと、軽度の者については除くというふうになっておるようでありますけれども、こういう軽度の人についてもやはり対象にすべきではないかと実は私は考えておるわけであります。  それからもう一点は、新方式に完全に移行してしまうと、軽度のみの障害児しかいなかったところは補助額ゼロになるのか、この辺のところを、技術的な問題だと思いますが、お答え願いたいと思います。  それから、障害児が一人でもいれば補助金は出るのかどうか。実はこれは人数でこれからいくようになるそうでありますが、人数でいくということは、確かに一面結構なことだと思いますが、少なくとも施設は必要だということも別に考えていかなければならぬと思いますので、この辺のところの施策をお願いいたします。
  128. 石野清治

    ○石野政府委員 四つございましたので申し上げます。  第一点は、従来の方式と今度の方式の変わった点はどうかということでございますが、四十九年度から指定保育所制度をつくりまして、軽度の障害児について保育所に措置をいたした場合に一定規模のものについて助成をする、こういうことでおったわけでございますが、これを四年ほどやってまいりましていろいろな問題点が出てまいりました。五十三年度も従来方式をさらに延長させるべきかどうかという議論もございましたけれども、この際さらに一歩踏み込んで、指定保育所制度からいわゆる保育単価を上乗せしていくような形で進めてみたらどうか、こういうことで、試験的に五十三年度では方式を変えたわけでございます。  五十三年度におきましては、一応御案内のように、中度の障害児を受け入れた場合に一定額の助成を行うという形で、軽度につきましては外れておるわけでございます。これは、どの程度の障害児を入れた場合に保育所の方が特に保育に手がかかるかという問題につきまして、いろいろな議論がございます。たとえば小指がない場合だけでも障害児じゃないか、それを入れた場合に加算制度をとるのかとか、いろいろな問題がございます。そういうこともございまして、一応私どもの方は、特別児童扶養手当法という法律がございまして、それによって障害の認定がされております。そういう認定を受けた者でかつ保育に欠ける児童を入れたらよかろうという形で、人数もしぼっておりますし、そういう場合にだけ入れる、こういうふうにいたしたわけでございます。もちろんこれは現在過渡的な問題でございまして、はっきり申しますと、軽度の者でもまたいろいろございます。どの程度どういうふうにすべきかということにつきましては、いろいろな議論がございますので、さらに検討を進めていきたい、こういうふうに思っております。  それから第三点の、これは現実的な問題でございますけれども、従来の指定保育所制度をとったものが今度の方式に切りかえることによってゼロになるではないか、こういうことでございますけれども、これについては経過措置をとりまして、一応方式を切りかえましたけれども、従来の指定保育所の方が従来の予算よりも少なくならないような措置、そういう経過措置を五十三年度においてはとりますので、その御心配は要らない、こういうことでございます。
  129. 貝沼次郎

    ○貝沼分科員 以上で終わりたいと思いますが、労働省の方にはせっかくおいで願ったけれども、時間がありませんので失礼させていただきます。どうもありがとうございました。
  130. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして貝沼君の質疑は終了しました。  次は、神田厚君。
  131. 神田厚

    ○神田分科員 私はまず最初に、厚生省が今度の国会に予定をしておりました、そして国民の多くも大変期待をして、また薬害に苦しんでいる人たちが待望しておりました薬事救済法、それから、副作用などの薬品の安全性の明文化を規定するために現行の薬事法を改正して、救済制度に見合った内容に薬事法を改正するというこの薬事法の改正の問題、これらが何かいろいろな事情によりまして今度の国会で提案できずに見送られてしまいそうである、こういうような報道があります。これに対しまして大臣はどういうようなお考えをお持ちになっているのか、お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  132. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 薬害救済制度につきましては、まず今国会で御審議を煩わしたいという気持でいろいろ検討を進めてまいりましたけれども、やはりこれに関連しまして薬事法の大幅な改正等も必要になってくる面が多々ございます。  それともう一つは、この薬害というものについての、現実にいわば被害を受けた方々に対してこれを適用する場合の認定の仕方を一体どうしたらいいのか。これは救済基金制度を設けまして、この基金でいわばそういうものをやっていくよりは、一歩進んで、何か国がこれに関与して、相当権威あるものにしていかなければならないのじゃないかというような考え方等も出てまいりました。そういうような点、また全般的にこの副作用というものを将来予見といいますか、予想し得るようなものだけに限っていくのか、既存のといいますか、現実にいま問題になっておりますすでに起こった薬害というものにまでこれを広げていかなければならぬのか、この場合に裁判との関係はどうなるのか、そういう点もございますので、実はいろいろな面から検討いたしますとまだちょっと準備が不足なものですから、とてもこの四月いっぱいまでには問に合わぬだろう、こういうことで、しかし、あきらめたわけではありませんで、もうできるだけ早く成案を得るようにいま努力をいたしておるわけでございます。
  133. 神田厚

    ○神田分科員 大臣の方から大変御丁寧なお話がありまして、国として権威のあるものにしていきたい、さらにそういう意味ではもっと責任のある形でこの法案を出したいということで、検討しているということでありますが、気になりますのは、すでに起こった薬害についての問題も考慮し、現在進行している裁判の問題も考慮している、こういうことを考えますと、すべてずっと後に延ばされていってしまうのではないかという考え方を私ども持つわけですね。ですから、これはすでに起こっている薬害の問題と、それからそういうものについての裁判の進行の問題については、それはそれで一つの見解を出していただいて、さらにそういうものもカバーできるような形での法案を出していただければ一番いい。そういう前向きの考え方を大臣御自身は心の中にお持ちなんでしょうけれども、ひとつ御見解を述べていただければと思うのです。
  134. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 決して私どもはこれでずっと逃げていくつもりはございませんで、できるだけ早く成案を得まして、でき得れば来るべき通常国会には何とか問に合わせたいと考えております。
  135. 神田厚

    ○神田分科員 来るべき通常国会にということになりますと、現在進行している裁判とは一緒になってしまいますね。いま幾つかの薬害の裁判が行われておりますけれども、そういう点はどういうふうにお考えになりますか。
  136. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 それは神田委員おっしゃるように、既存のものについて、現在裁判あるいは和解その他進行中のものについて、これを切り離すということで、法的な面のいろいろな主張、争いというものはそれはそれとして続けながら、現実に起こった患者の救済をどう考えるかという点は、この法案の検討とは別に対策を進めていかなければならないわけでございますので、これはもうこの救済法を出そうと出すまいと当然考えていかなければいかぬ問題でございます。  ただ、救済法を出します場合には、それらの方々のこともこの救済制度の中に取り入れでいくべきなのか、あるいは取り入れるとした場合に、今後起こるであろうという救済の仕方とどう違ってくるのか、こういう点も相当よく検討していかなければいかぬものでございます。したがって、先ほど言うように救済法案の検討の一つのテーマとして申し上げたわけでございまして、それがゆえに現在起こっている事件について全く投げやりにするとか放置するという考え方はない、こういうように御了承いただきたいのです。
  137. 神田厚

    ○神田分科員 ですから、お話を聞いていますと、大臣は非常に前向きな考え方をお持ちのようなんですね。ところが、どうしてこの法案が出されてこないのかなというものを持つのですね。いままでの御答弁を聞いておりましても、この法案を出してこられない事情というのは一体どこにあるのか。大臣自身は非常に前向きな感じを私は持つのですが、それはどうなんですか、どんな問題なんですか。
  138. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いや、第一回目に私が神田委員に御答弁申し上げたようないろいろな問題点を整理して、そして法案をつくる、それに関連する薬事法の改正まで含めたものをお出しするには、今国会ではちょっと間に合わない、こういうだけの話でございまして、決して私ども前向きの考え方を捨てたわけでもありませんし、誠心誠意私の考えを率直に申し上げているわけでございまして、できるだけ早く成案を得たいと思っておるわけでございます。
  139. 神田厚

    ○神田分科員 仄聞するところによりますと、いろんな人たちの、政府の部内での意見も統一できなかった、それから各製薬会社やあるいは医療関係の方たちのそういうあれも統一できなかった、そういうものがやはりこの法案が出せなかった一つの問題だというふうに言われておりますから、私は、やはり厚生省が責任を持って、これからのそういう薬害問題についてこれをなくしていくんだという姿勢を明確に出した上で、ひとつその指導性を発揮してやっていただきたい、こういうふうに思うのでありますけれども、ただその準備期間だけの問題ではなく、やはりいろんな関係するところとの連携もとりながら、これを早く国会に前向きに出していただきたい、再度お願い申し上げます。
  140. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私ども、他の圧力団体のいろいろなあれによって消極的になったような、そういうあれは一切ございません。もちろん医療担当者側とのいろんな問題点の調整もしなければいけません、意見も聞かなければいけません。しかし、いまだかつてこれを出しちゃいかぬぞ、反対だというようななことを私が受けたこともございませんし、まだそこまでの——問題点の整理をやってみて、そして成案を得る過程でそれぞれいろんな話し合いをするわけでございますから、これはもう十分話し合いをしていかなければいけない。そうでなければりっぱな案ができません。私どもは、鋭意前向きで努力をしていることは信頼をしていただきたいと思います。  それからもう一つは、こういう救済をしなければいけないような事態を起こすこと自体の方がむしろ問題でございますので、薬の製造承認に当たりましては、従来よりも一層慎重に実はやっております。したがって現在、副作用の報告義務というものを、今日の科学的な知見から言いますと絶対大丈夫だなと思っても、やはり三年間はその義務づけをやりましてやっておるわけでございますが、これもある程度期間を延長するなりして慎重を期した方がいいんじゃないかというような考え方もあったりいろいろいたしますので、この点は従来よりも一層、製造承認のときに副作用がいやしくも起こらないようにいたしたい。その薬自体の問題から起こらないように一層慎重にいたしておるところでございますが、不幸にしてどうしても予見しがたいようなものもございます。したがって、救済制度は一方においてつくっておかなければいかぬだろう、この両建てで私どもは前向きに進んでおりますことだけはひとつ御信頼をいただきたいと思います。
  141. 神田厚

    ○神田分科員 時間がありませんので、余か突っ込んだ議論になりませんが、次に、いま薬の話が出ましたね。  厚生省は、薬価基準を引き下げて、そして薬価改正をされました。ところが、この薬価改正の問題につきまして、現場の方でまた別な混乱がいろいろ出てきているようなんですね。これはどういうことかと申しますと、薬価を銘柄別のものにとりましたけれども、今度は先発メーカーと後発メーカーとの薬価の差が、やはり薬価だけの問題ではなくて、納入の価格の問題にまである程度目を向けていかないと、同じ効く薬であっても、非常に何かわけのわからないような、全然いままで出てなかったような薬がどんどんいま一般のかかっている人たちに使われているというような状況があるんですね。  これはどういうことかと言いますと、たとえば一つのAという薬品が五十八円で入ってくる。それが先発メーカーの薬品だとしますね。後発メーカーの薬品がやはり同じように五十八円ぐらいに上がって並べられておりますので、それが来ますと、納入の価格が、先発メーカーが五十八円のやつを五十円かそのぐらいで入れる。後発メーカーのやつは、それを極端な場合は十円か五円ぐらいで入れてくるというような、そういうものがありまして、薬価改定に伴ってかえってそういう非常に混乱がいま起きていますね。こういうような実情につきましては、基本的な薬価改正というのは一体どういうふうになされたのか。さらに現在、薬価改正がされた後のこういう問題点について、厚生省はどういうふうな実態把握をしているか。この納入価格などの問題についてはどういう行政指導をしているのか。この問題についてお聞かせいただきたいと思います。
  142. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生御承知のとおりに、現在の保険医療に使われます医薬品の価格、いわゆる薬価基準は、今回二月一日から改定されたわけでございますけれども、これは一昨年の四月取引分の実際の市場における納入価格を基礎といたしまして、その後の薬価の実際の市場における変動等を反映させて決められたものでございます。  その際に、先生指摘のとおりに、もともと同種同効のいわば同一成分の医薬品につきまして、御承知のとおりに激しい市場競争がございまして、高値で納入されているものもあり、安値で納入されているものもある、こういう実態がございます。これに対して、いわゆる九〇%バルクライン方式によりまして薬価を決定いたしまして、今回は、それを銘柄別に九〇%バルクで薬価基準の策定をしたというところが従前と異なった点でございます。これは、そのこと自身にはいろいろメリット、デメリットもあるわけでございますが、これにつきましては、中医協における御審議の結果、そのような方式で薬価を決めていこうということで、今回初めてこれが実施されたということでございます。  なお、その後二月以降現実に銘柄別の薬価が決まりまして、実際におけるメーカーの、あるいは卸の市場における行動がどのようになっておるか、荷動きがどうであるか、あるいはどの銘柄にたとえば取引が集中しているかというようなことにつきましては、なお、薬価基準が二月一日からの実施でございますので、その実勢は、現在のところまだ把握しておりません。直前の状況におきましては、むしろ荷動きがとまってしまったというふうな事情もよく聞いております。今後の事態の推移を見定めまして、それがまた次回の薬価基準の改定に反映されるということになろうかというふうに考えておるわけでございます。  なお、納入価格についての指導云々のことでございますが、厚生省といたしましては、実際の市場の実勢価格を薬価基準に反映するという立場をとっておりまして、納入価格についての特段の、たとえば価格のあり方といったような意味での行政指導につきましては、現在のところそのような行政指導は行っておらないところでございます。
  143. 神田厚

    ○神田分科員 この納入価格の指導をもう少ししてもらわないと、これがやはり一番問題なんですよ。いまいい薬、どんどんお医者さん使わなくなってしまいまして、それで納入価格の安い、薬価との差額のある薬ばかり使い始めているという状況一つあるんです。そうしますと、一番そういう被害を受けるのは一般の医者にかかっている人たちでありますから、ひとつその納入価格などの問題についても、やはりもう少し適正な形でそれが行われるような指導なりあるいは見解なり通達なり出していただかないといけないと思うのですが、いかがですか。
  144. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 これは神田委員のお話でございますが、いままでは同一のものは同一価格にということで、実勢価格に合わせて毎年薬価基準を下げてやっておったわけです。今度銘柄別になった。これは、私ども行政の立場から勝手にやったわけじゃありませんで、中医協においてむしろその方が合理的だという考え方のもとに決めていただいたものですから、それに従っているわけでございまして、ことしから初めてそういうことになったものですから、中医協の御意見がいま神田委員のおっしゃるような弊害が出てくるのかこないのか、この点もこれからでございますので、これをよく見ました上で、中医協の御意見を聞かなければいかぬ場合には聞いて直していかなければいかぬと思いますが、せっかく銘柄別の登載をやれということを特に、中医協のあらゆる各界の代表が出ておられる席で決められたわけでございますので、診療報酬の、しかも最高の権威機関であるこういう中医協で決められたものを、まだその実績等が全然わからないうちにこれを軽々に批判をするということはいかがと思いますので、しばらくひとつよく私どもは見まして、いろいろな弊害があればこれをさらに再検討してもらうように中医協の先生方とも御相談したい。いまはこういう態度しかとれないわけでございます。
  145. 神田厚

    ○神田分科員 それでは、次に移ります。  医療保険制度の問題で、大臣は非常にいろいろな積極的な御発言をなさっております。それで、この医療保険制度の中の一つの問題は、結局新しい医療制度をつくらなければならない、こういうことでございますね。その中で、私はやはり問題になりますのは老人医療の問題、これについて大臣はいろいろお話をしておりますけれども、明確な御答弁、御見解が出されていません。老人医療については、大臣お考えの医療保険の新しい制度の中ではどういう位置づけをして、どういうふうな考え方をお持ちになっているのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思うのです。
  146. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 老人医療につきましては、御承知のように現在、老人医療無料化の対象になっている方々は、これはもう自己負担分を全部公費で負担するという制度になっているわけでございます。ところが、ある保険は七つ、いま名称だけで言いますと八つ、実体は七つの体系に分立しているわけでございます。職域関係。その中でも、老人の比重の非常に高い保険者の方と非常に少ない保険者の方とございます。一番多いのは、国保の被保険者に圧倒的に多い。そういたしますと、これはやはり老人医療というものを別建てにして、そしてそれぞれの保険者、国も公共団体も保険者も負担をしながら、あるいは老人自体の負担のあり方をどうするかは今後の検討でございますけれども、そういうふうにしていきませんと公平が保たれないおそれがございます。  そういうことでございますので、老人の無料化というこの老人医療の制度というものは別建てにしたい。そのときに、保健並びに治療、それからリハビリまで含めた老人医療、保健医療サービスの一元的なものにせっかくつくるならしたいという気持ちもいまございます。来年の通常国会にはどうしても成案を得て御審議を煩わしたいと考えておるわけでございます。したがって、いまこの中で国庫負担のあり方、あるいは老人保健医療サービスの体系の中に入ってくるお年寄りの被保険者の負担のあり方、あるいは地方公共団体の公費の負担のあり方、あるいはまた事業主といいますか、それぞれの保険者の拠出の割合等、まだ検討しなければいかぬ点がたくさんございまして、現在まだ具体的に、この点はこうする予定だというようなところまでいっておりません。何とかこの十二月までには間に合わせまして、そして来年の通常国会に成案を得たいと思っておりますので、要するに地域保険、職域保険と並んだ大きな別建ての保健医療制度にしたい、こういうことでございます。
  147. 神田厚

    ○神田分科員 ことしの十二月までに別建ての老人医療の問題を整備して法案として出したい、こういうふうなお考えであるわけですね。そうしますと問題になりますのはやはり負担の問題ですね、いま大臣おっしゃっていました。これは受診をする御老人に個人の負担が及ぶような考え方をしておられるのかどうか、この辺はどうですか。直接的な話で大変答えにくいかと思うのですが。
  148. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 実は、その点も含めて検討中でございますので、いま、どういうふうに決めたわけでもありません。所得の違い等も非常にあるわけでございます。しかし、老人自身を考えてみますと、老人の方々に対する福祉、保健サービスという面から考えて、その中の態様のうちでどういうものが、ある程度負担にたえ得るものか等もいろいろ検討してみなければいけません。あるいはそれが無理ならば、これはもう個人負担というものは考えられないで、保険者なり国なり地方公共団体でやっていくのか。それからまた、いかに老人保健といえども、他の地域保険の被保険者あるいは職域保険の被保険者とのバランスを余りひどく失してもいけません。たとえば年齢をどの程度にするかによって、その一年前の人は全然別になるわけでございますから、そういう点もありますので、いま鋭意いろいろな角度からそれぞれ検討中で、まだ検討中であるのに、おまえ、どうする気なのだと言われましても、なかなかここでお答えできないのです。
  149. 神田厚

    ○神田分科員 少なくとも、それに該当するお年寄り個人が負担をするような、過重な負担になるようなものは避けるべきである。やはり老人医療は個人については無料という基本的な考え方に沿って成案を煮詰めていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  150. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いま御承知のように所得制限はありますが、その所得制限以内の方は無料化になっておるわけです。老人のための保健医療、アフターケアまで含めたサービスの法案をつくるのに、いま無料の方がまた負担が多くなるというような制度は、いろいろ理屈から考えて何だかんだという理屈があっても、なかなか実現できるものじゃないということはよくわかっておりますから、そういう点は今後の検討にまつべき問題ではありますけれども、基本の考え方は神田委員おっしゃるとおりだろうと思うのです。そういう意味で、恐らく検討してみた結果でも、いま無料の対象になっている人に、先生がおっしゃいましたような、負担にたえられないような者に、また負担をかけるようなことにならぬと私は思っておりますが、いろいろ検討中の問題なものですから、いまここで明確にお答えできない、こう申し上げておるわけであります。
  151. 神田厚

    ○神田分科員 私は、負担にたえられないということではなくて、これは無料であるのが基本であるという考え方を述べているわけであります。  いろいろきょうは質問を用意したのですが、どうも細かくわたりませんでしたが、最後に一つ心配なものがあるものですから質問させていただきたいのです。  私は去年のこの分科会におきましても、いわゆる脳卒中、心臓病、そういう成人病と、それらにおけるリハビリの問題、こういうことをいろいろ質問しまして、そういう整備を急いだ方がいいという質問をいたしました。しかし、その中で、そういう整備が少しずつ進んでいるようでありますけれども、実際に今度はリハビリならリハビリ関係に従事する作業療法士なり理学療法士の充実度が非常に悪いんですね。非常に少ないんです。この点を何とか、大臣ひとつお考えをいただきまして、現場で直接的にやっておる作業療法士や理学療法士それから言語療法士、こういう人たちをもう少し充実させる方向性を出していただけないかどうか。何とかこの辺をお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  152. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 PT、OTの養成については日本は世界に比べますと非常におくれております。したがって、これは最重点でやっていかなければなりませんが、遺憾ながら、看護婦養成施設みたいに、国が補助金を出して一遍に何十カ所もつくるというわけにはいかないのは、PT、OTを養成する、またその先生自体がいないという悩みがございまして、しかし、これは最重点に私も考えていかなければいかぬと思っておりますから、今後一層努力いたします。
  153. 神田厚

    ○神田分科員 終わります。
  154. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして神田君の質疑は終わりました。  次は、野坂浩賢君。
  155. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 私が質問を通告しておりますのは保育園の問題なり同和対策の問題でございますので、まず、それらの点について厚生省の見解をただし、そして、できるだけ前向きにすべての問題を進めてまいりたい、こういうふうに思います。  まず最初に、お尋ねをいたしますのは保育所の保母の定数の問題でございます。いまは零歳児といいますか乳幼児は特別の対策がございまして低所得者の場合は大体三名に一名、未満児は六名に一名、三歳児は二十名、こういうふうになっておるわけですが、田舎の方に参りますと、乳幼児等はできだるけお母さんにめんどうを見てもらって、三歳児あるいは四歳児ということになりますが定員が六十名というのがありますね。六十名の場合には三児歳と四歳児がそれぞれ三十名ずつおった場合は保母さんの人数はどの程度になりますか。
  156. 石野清治

    ○石野政府委員 三歳児でございますと二十対一でございますので、三十名でございますと一・五という数字になります。それから四、五歳児になりますと、これは御存じのとおり三十対一でございますので一名、こういう基準になろうかと思います。
  157. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 総員は幾らになりますか。
  158. 石野清治

    ○石野政府委員 数字的には二・五でございます。
  159. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 ことしの厚生白書を読んでみますと、保育行政を非常に前進的に進めておる、また保母の資質向上についても十分配慮して研修会その他を行っておる、こういうふうに書いてございますが、この六十人保育の場合に、研修というのは、それほど大がかりに白書に書いてあるほどやっておるだろうか、こういうふうに思うのですね。大体、予算では年間何日間とっておりますか。
  160. 石野清治

    ○石野政府委員 予算上はたしか三日間か四日間だと思います。数字を持っておりませんので、ちょっと失礼いたしますが……。
  161. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 三日間ではなくて一年間で一日ですよね。そうじゃなでいすか。局長はえらい人ですから、そういうことを把握できていないかもしれませんけれども、一年間で一日間だけの研修で、これだけ激しい時代の移り変わりに対処でき得るだろうか。また、厚生白書に載せるほど、それほど十分にやっておるという数字になるだろうか、こういうふうに私は思うのです。だからその点、三日というふうに局長は考えておったけれども、それを厚生大臣が削減をしたのかよくわかりませんが、一日ぐらいではだめだろうという認識が、あなたにもおありのようですね。最低三日ぐらいは必要だと考えていらっしゃるわけですか。
  162. 石野清治

    ○石野政府委員 大変不勉強で失礼いたしましたが、一年にたしか一日でございます。確かに研修日数というのは、これは一年に一日でいいというものじゃございません。余裕があれば、できるだけ研修させることが一番望ましいわけでございますので、いまはそうなっておりますけれども、今後は大いに努力をいたしたいと思っております。
  163. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 それでは来年度、余裕があればと言いますけれども、予算を組まなければ、措置費というのは非常にわずかなものです。本当にわずかなんです。保育園というのは華やかなようで非常に弱い面を持っております。だから、そういう点については、あなたが原案を示されたわけですから、そのような方向で努力をされたいと思うのですけれども、余裕があれば、もっとやりたいということですけれども、あの白書の中にも、あなたがお書きになったかどうかわかりませんが、代替要員、あるいは年休に対する代替要員とか、あるいは研修とかということですが、六十人の保育所でありますと三人程度ですね。悪ければ二人ですね。どうやって研修できるかということです。現場を歩かれたかどうかわかりませんが、私はずっと僻地もほとんど歩きました。それではとても研修ができないというのが現場の声なんです。一人で六十人も食事のめんどうを見たりして、その間、一人が行くということは現実の問題として不可能に近くなってくる。そうすると資質が落ちるという、厚生白書を裏から見た、そういうふうな面が非常に多いということを私は痛感をしたのです。これについてはやはり善処をしなければならぬじゃなかろうか、こういうふうに思いますね。それが一点。  それから、いまの日本の国の保母の年休の平均というのはどの程度になっておるかということをお尋ねをします。
  164. 石野清治

    ○石野政府委員 まず、前段の問題でございますけれども、確かに年休の制度につきましては五十二年度で八日を十日に訂正いたしたわけでございますが、研修なりあるいは年休なり病休といろいろございますので、そういう面で確かに小さい施設の場合はなかなか動きにくうございますので、五十一年度から御存じのとおり六十人以下の小さい施設につきましては、定数のほかに常勤の一名の増員をいたしております。それは、あくまでもそういう研修なりそういうものに対応できるような形を考えながら、実はやってきたつもりでございますけれども、この数字につきましては実態に合っているかどうかにつきまして問題もございますので、さらに改善については検討いたしたいと思います。  なお、第一点のお尋ねの点でございますが、年休の実態を見ますと十二日というふうになっております。
  165. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 年休の権利があるのは十二日間ですよね。それなのに予算は十日なんです。だから、その実態に合わせて予算に組むべきものではないか。十二日あるのに十日間で、あとの二日間は一人でやれ、残された者でやれ、こういうことでは今日の保育行政に重大な支障が出るのではないか、私はそう考えておりますが、厚生大臣はどのようにお考えだろうか。  そしてまた、研修を三日にするということについても、思いだけではなしに資質の向上を本気でお考えなら、これからの時代を背負って立つ子供さん方のためにも、それらの対策はもっと必要ではないかと思うのですが、大臣はどうお考えでしょうか。
  166. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御指摘の点、よく拳々服膺しまして努力いたします。
  167. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 努力するということは、実績を踏まえて、そのことに対応する措置をとりますよ、こういうふうに確認してよろしゅうございましょうか。
  168. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 そういう意味で努力をいたします。
  169. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 ありがとうございました。  それから代替要員なんですけれども、県の教育委員会等でやっておりますのは産休に伴う代替要員とか、あるいは国内研修に出る代替要員とか相当ありまして、二カ月はこの学校に行っても次はちゃんとあるというふうに、そういう点でわりあいスムーズに要員確保はできますね。ところが保育園の代替要員というのは、町立なものですから町単位で、非常に知りにくい面がありますね。それは短い間の資格者という問題は資格がなくてもよろしい、こういうことに措置としてなっておるわけですけれども、たとえば予算は十日あっても、それがすぐに対応できにくいという面がございますね。その十二日あるけれども十日しか予算上措置がないというのは、私はそういうことがあるために措置をしておるのではないかということを思いますし、実態としてはそうなんですが、それなれば指導基準として二町なり三町なりで代替要員を確保して回していくという方法をとらなければ、予算はあるけれども実体がないという結果に陥るし、これからの教育研修の場合に、一年に一遍というようなけちなことをやらないで、もっと本格的にやる必要があるだろう。そういう意味で、代替要員の確保対策というものの指導をもっとはっきりした方がいいのではないか、こういうふうに思うのですけれども、それについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  170. 石野清治

    ○石野政府委員 現在、保育所を持っております市町村というのは、大体一カ町村で三つ、四つという形で、昔の部落単位になっておると思います。したがいまして、一町一保育所ということはほとんどないわけでございまして、町全体の中で見ますと数保育所について一応プールしてやっているというのが実態だと思います。したがいまして、代替要員の確保がなかなかむずかしいから数カ町村で保育圏みたいな形を設定してという御意見だと思いますけれども、まあこれは実際上なかなかむずかしいのじゃないかな、考え方はよくわかるのですけれどもむずかしいんじゃないかなという感じがいたしております。しかし、なお研究いたします。
  171. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 局長さんにお尋ねしてもいいが、大臣、いまのやりとりをお聞きいただきまして、なかなか権利があってもそれを行使することができ得ない。また、厚生省がお考えになっておるように一年に一回の教育研修というようなことでは不十分だ、余裕があれば、もっと自主的にやるべきだという局長の御意見もございますが、そうはなかなかなりにくい。だから、余裕がないというのが現状でございますから、余裕があるようにするために、保母の定数の基準について、未満児といいますと大体六人に一人ですね、いまごろ、五人子供が産まれても日本じゅうがひっくり返るような大騒ぎになるわけですが、それを一歳児を六人も預かっておるわけなんですね。同じことなんです。御飯を食べるときなんかはこぼしますし、お母さん、いわゆる保母さんはとても大変ですよ。三歳児になれば二十人。この辺は、未満児はやはり乳幼児と同じような取り扱いをして、以上児、三歳児以上の児あるいは四歳になっても大体二十人程度、三歳も若干の基準を減らす、こういうことでないと本当の意味の保育というものはやりにくいのじゃなかろうかというふうに、私は見ながら痛感をしておりますし、保母さん方もその基準を下げてほしいという声がございます。ただ、大臣の諮問機関でございます審議会等で、なかなか結論が出ぬようでございますけれども、米でも、ほかのものの値段を決めるときなんかは、省がこういうふうにしたらどうかということですから、審議会から来るのを待たないで十分部内検討をされて、この定数の改善をし、真の保育ができるように、本当に子供たちが喜んで保育行政というものに協力をする、そういう体制、まず厚生省が福祉国家を目指す中では一番そういう福祉政策、子供の保育、教育ということが必要なんですから、大臣としては、この基準を下げて、もっともっと保育が十分に行き渡る、そういう姿をとっていただきたいと思うのでございますが、大臣のお考え方はいかがでございましょうか。
  172. 石野清治

    ○石野政府委員 私、ちょっとその前に。  実は去年の分科会でも、たしか先生といろいろ御議論をしたと思います。保母の配置基準のうちで三歳未満児の問題について、先生は前から六対一は三対一にすべきだ、こういう御意見だったかと思います。同時に、四歳、五歳児についてもこれは是正すべきだ、こういうお考えでございましたけれども、この間も御答弁申し上げましたけれども、私の方は、中央児童福祉審議会の答申をいただきまして、その線に沿って最低基準をつくっておるわけでございますが、それについては一応満足させておるわけでございます。しかし、そうはいっても、現実に先生のおっしゃるようないろいろな御意見もございまして、最低基準は最低基準といたしまして、そのほかに、たとえば六十人未満でございますと一人の常勤保母を配置する、あるいは六十一人以上については九十人までは五時間の非常勤保母を来年は八時間にする、あるいは、それ以上につきましても五時間の非常勤保母を配置するという形で、実情に沿うようにできるだけ措置してきたつもりでございます。  基準そのものを改正しろというお気持ちはわかるのでございますが、私の方は保育所だけではございませんで、たとえば養護施設でございますとか、あるいはゼロ歳児、一歳児を預かっております乳児院の問題、それの配置基準とのバランスの問題もございます。それから、ちょっと違いますけれども、保育所と似たような形の教育をやっております幼稚園の配置基準、これとのバランスの問題も考えなくてはいけない。あれこれ考えてまいりますと、せっかくの先生の御提案でございますけれども、この基準を根本的に改正するのは実は非常にむずかしいという考え方を持っております。しかし最低基準は最低基準といたしまして、そういうアウトサイドの方から内容を改善できるような方向が一番いいのじゃないかという形で、今後とも努力を続けてまいるつもりでございます。
  173. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 保育問題はこれで終わりたいと思うのですけれども、いまお話しになったように、たとえば幼稚園は四十人に一人じゃないかという御反論もあることもよく承知をしておるのです。それについても、これから十分御検討いただくようでございますから検討していただきたいと思うのでございますが、言うなれば、いまお話があったようにアウトサイダーといいますか、補完をするという措置、六十名のときは別に常勤者を一名設置をするとか、あるいは九十名の実態から見て、さらに全体を見るための常勤者を一人設置するとか、補完措置を講じていただきますように、そして全体の資質が向上しますように当面の対策としてぜひ実現をしていただきたい、こういうふうに思いますが、最後に厚生大臣の頭も、よく理解したとおっしゃっておるようですから、ちょっとそれに対するお考えをお聞きしておきたい、こう思います。
  174. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 根本的な基準の改正等に至るまでの問、補完的な措置で、できるだけ保育内容充実を期すように、保母さんの充実を図っていくということについては、私も今後一層努力をしてまいります。
  175. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 ありがとうございました。  それでは、次の質疑に入りますが同和対策事業についてお尋ねをいたします。厚生省の関係で同和対策事業特別措置法は、いわゆる来年の三月で終わるわけでありますが、いま問題になりますのは積み残しの事業が金額にしてどの程度あるだろうかということ、五十三年度、全部できるという見通しは、いまの予算審議状況からないわけでありますから、どの程度積み残し量はあると御判断でございましょうか。
  176. 上村一

    ○上村政府委員 五十年に調査いたしましたもので五十四年度以降の事業量を見てまいりますと、物価アップなり追加分を含めないで、国費ベースで約四百二十億円あるというふうに推定しておるわけでございます。
  177. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 それは国の関係分ですね。
  178. 上村一

    ○上村政府委員 はい。
  179. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 いまお話がありましたように、昭和五十年に調査をしておるわけですね。それから五十年、五十一年、五十二年、五十三年、四年間で、当時から見ると千二百七十三億程度あるけれども、国が三分の二持つという関係分では四百二十億でありますから、そのほかにこれから出てくる未指定地区の問題やあるいは府県の問題や物価上昇とか算定の基礎とかいろいろございますが、いままでならそうだ、だから事業量はもっとふえるわけですけれども、隣保館の建設費というのは大体どの程度でございますか。
  180. 上村一

    ○上村政府委員 現在、隣保館は五十一年度末で六百九十二ございます。それで本年度約六十カ所ぐらいつくるわけでございますが、いま御質問は隣保館を一つつくるのにどのくらいかかるかということでございますが、一カ所当たりの費用はいまちょっと手元にございません。——どうも失礼いたしました。一平米当たり五十三年度の予算案では鉄筋で十一万八千円、ブロックで約八万九千円、それで大きさによっても違うわけでございますが、総額で大体二億四千万ぐらいでございます。
  181. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 隣保館の設置は、示されておりますように大体五十世帯以上の地区に建てることになっておりますね。五十世帯以上の地域というのは私どもは大体千九百あると推定をしております。あなた方もそういうふうな御認識ですね。いまお話があったところでは、いままで大体六百二十五建ったし、来年度は六十カ所で六百八十五カ所。私たちは大体七百七十カ所くらいじゃないかと思っておったのですけれども、六百八十五カ所ということです。そうすると大体千百三十ぐらい残りますね。千二百ぐらい残ると、これを一年間で五十ないし六十カ所建てるとしましても二十年くらいかかるということになるようですね。しかも一カ所建てれば二億円程度ということになりますと、あなたの場合は、いや、あっちもこっちも集めて、こういうふうにまとめておるから、もっと少なくなるのだという反論をしたいと思っていらっしゃるでしょうけれども、単純計算すると二億円で千二百というと大体二千億円くらいかかるということになりますね。それらの点については、隣保館の設置についてどのように進められておるのか。四百二十億程度ではなしに、隣保館一つ見ても、その程度はかかるのではございませんかと申し上げたいわけですけれども、どうでしょうね。
  182. 上村一

    ○上村政府委員 先ほど、どうも舌足らずな点がございましたが、五十一年度末で隣保館の数は六百九十二でございます。それで、いまは五十二年度でございますが、五十二年度中に約六十カ所できるわけでございますから、五十二年度末に大体七百五十くらいになる。  そこで、どう考えるかということでございますが、隣保館の仕事というのは生活上のいろいろな相談とか保健衛生あるいは社会福祉上のいろいろな相談をするのが仕事でございますから、一つの地区に一つということは必ずしも必要がない。それぞれの地区が一緒になって一つ施設をつくる場合もございますし、隣保館でないほかの代替的な施設で隣保館のような機能を果たし得る場合もあるわけでございます。したがいまして、単純計算でそのままというわけにはまいらないというふうに思うわけでございます。むしろ、われわれとしましては市町村から申請があれば、隣保館の事業というものはきわめて重要なものであると考えておりますので、今後とも積極的に助成するように進んでまいりたい。  それから、はなはだ失礼でございますが、数字でミスをいたしましたので訂正をさせていただきたいと思います。さっき二億何千万円と申し上げましたのは二十億でございます。五十二年度の六十カ所分でございまして、一カ所は約三千万円というふうに訂正させていただきます。
  183. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 そうしますと単純計算でなしに入り会いでやるわけだから、厚生省はもう何カ所だというふうにお考えなんですか。
  184. 上村一

    ○上村政府委員 隣保館の仕事というのはいろいろ多種多様でございますから、いま直ちに五十四年度以降何カ所必要であるかにつきましてはつまびらかではございません。
  185. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 その辺の詰めができていない。だから五十年度やって四百二十億あるとおっしゃっても、これを計算して、たとえば半分に見ても、それだけで二百億近くあるわけですから、全体から見て積み残しはもっとあるな、こういうふうにわれわれは把握をしておるわけです。  もう私の時間は三分しかないそうですから多くを申し上げることはできませんが、大臣に最後にお願いしたいのですけれども、総理府が発表しておる数字によりますと、同和対策事業の対象地域の方々は、たとえば生活保護を受けていらっしゃる方は一般地域に比べて約六倍なんです。これらは厚生省が取り扱うということになるわけですが、そういう実態からして、環境の保全なりあるいは環境の改善なり、こういう隣保館なり、たくさん問題を残されておるわけです。しかも、いまお話があったように、五十三年度では完成ができないで、完結しないで将来に送るんだというような局長のお話でございますが、そういう事態を踏まえて、いまの同和対策事業特別措置法の延長問題というものがどうしても絡んでくる、こういうふうに思うわけですね。大臣としては、この積み残し分、また新たに指定される問題あるいは物価上昇分、こういうものを踏まえて善処してもらわなければならぬと思いますが、その方法と、あるいは法律に対するお考えがあれば、あなた自身の考え方、厚生大臣独自の考え方でお話しいただければ非常に幸いだ、こう思うわけです。
  186. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 この法の延長問題等を含めまして、主管の各省庁と十分連絡を密にいたしまして、今後とも、私どもに課せられました仕事につきましては、その推進に全面的な努力をいたしたいと思います。
  187. 野坂浩賢

    ○野坂分科員 これで終わるわけでありますが、積極的に前向きにやるということは、法律を延長しなければなかなかやりにくいだろうと思うのですけれども、それらの点についても積極的に、窓口であります総理府総務長官の方に厚生大臣の方からは御意見がちょうだいできるものと考えて、私の質問を終わりたいと思います。もし異議があれば立って御答弁をいただければ結構ですし、異議がなければ、これで終わります。
  188. 笹山茂太郎

    笹山主査 野坂君の質疑はこれで終了しました。  次は、有島重武君。
  189. 有島重武

    有島分科員 厚生省所管に係りますわが国の薬の生産量につきましては、昭和四十九年が一兆七千億円、五十年が一兆八千億円、五十一年二兆一千六百億、そして五十二年の見込みは二兆四千億円とされておりますけれども、間違いないでしょうか。確認だけ先にしておきます。
  190. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 御指摘のとおりでございます。数字は正確でございます。
  191. 有島重武

    有島分科員 二月一日から医療費が九・六%上がったわけでございまして、五十三年度の国民の負担する医療費は大体十兆四千億円と見込まれておる、この数字はいかがですか。
  192. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生指摘のとおりでございます。
  193. 有島重武

    有島分科員 なお、この医療費の中の大体四〇%が薬剤費である、こういったことが言われておりますけれども、この見当はいかがですか。
  194. 八木哲夫

    ○八木政府委員 最近の推計によりますと三七%程度であるというふうに承知しております。
  195. 有島重武

    有島分科員 私、昨年第八十国会の当予算委員会の第三分科会におきまして、わが国における薬の使用、砂糖の使用が多過ぎるのではないか、国民の健康に関して、これはかえって害があるのではないかという点。それからもう一つは、薬はもらったけれども、それを使用しないで捨ててしまう量がばかにならないのではないだろうかということを申し上げたわけであります。その推計は五十一年度で大体六千億円程度であろうということを申し上げて、そのとき皆さんで合意した記録がございますけれども、五十一年度でその程度でございますので、本年度は約一兆円を超えるであろう。一兆円が、せっかく薬はもらったけれども飲まないで捨てられるであろう、そういう見当になるわけであります。大体この見当はいかがですか。
  196. 八木哲夫

    ○八木政府委員 昨年も先生の方から薬の飲み捨てがかなりあるのじゃないかというお話がございましたけれども、現実問題としまして、なかなかその実態というのはわからないわけでございます。その後、健保連等の調査等もございましたけれども、中医協等におきましても、かなり薬の飲み捨てがあるのじゃないかという御議論がいろいろございましたが、現実問題としては、その辺につきましてはなかなかむずかしいところでございます。
  197. 有島重武

    有島分科員 私は、去年は大体数字の上で言っていたのですけれども、実は私、昨年二週間ほど、ある病院に胃潰瘍で入院したのです。それで、すぐよくなってしまったのですけれども、退院のときにいただいてきたお薬は、こんな箱に入っているんですよ。実は持ってきたのだけれども、これはいま、ここでは出さないことにいたします。目に物を見せると、わあっとだれでもびっくりするほどいただいているわけです。それが私が治ってしまったものですから、まるまる残っているわけなんです。残っているものをどういうふうに始末したらいいか、私は困っているわけです。これは病院にお返しすると、せっかくやってくださったお医者様に面当てみたいな感じにもなりますし、これはやはり捨てるのかなとも思いますが、大臣、こういうのはどう始末したらいいのですか。まあ私は生々しい経験を持っているわけですが、お子さんのある家庭ならば、かぜを引けばすぐに相当な量を持ってくる。まあ、子供は一カ月とか二カ月に一遍かぜを引きますから、かなりたまっている。どこの御家庭でも、これはあるわけでありまして、数量的に統計として捕捉はしがたいけれども、この薬の始末はどうしたらいいと思いますか。
  198. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 もし私があなたの立場であれば、病院にお返しいたします。
  199. 有島重武

    有島分科員 それでは次にいきましょう。  こうした薬の大量な使用及びそれのむだな使用というようなことは、これは現行医療で行われております点数制にも、避けがたい一つの矛盾点があるんじゃないかということを御提議申し上げたわけです。それで昨年私は、矛盾点があるから、直ちにどうこうせよということは申し上げないけれども、矛盾点のあることを医療関係者、当事者がそれぞれ認識した上でもって対処するのが至当なんじゃないだろうか、その上でもって是正すべきではないかと提案申し上げたわけです。  その後、厚生省から文書をもちまして、現行の診療報酬体系における点数制の矛盾点について八項目にわたる御回答をいただきました。これらのことについては小沢厚生大臣もすでにお聞き及びであろうかと思います。御了承済みであろうかと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  200. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 有島委員との間に、そういう質疑があったことは承知いたしております。
  201. 有島重武

    有島分科員 それで厚生省の方から八項目にわたっての御回答をお出しになった、そのことについてはいかがでございますか。
  202. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 担当の者から聞いております。
  203. 有島重武

    有島分科員 本日は、これを踏まえまして医薬分業について御質問申し上げたいと思うわけでございます。  医薬分業は四十九年十月に処方せん料を百円から五百円にした、そういうような経過もあって、もう三年になろうとしておりますけれども、なかなかはかばかしくは進捗しておらない。その実態は後で承るとして、厚生省としては医薬分業を本気でもって推進していこうとしておるのか、何か奥歯にはさまったようなことがあって手かげんをしながら進めておるのか、その辺の腹、厚生省としての行き方を承っておきたい。
  204. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 医薬分業は私は賛成の方でございます。決して腹に別の問題があって、とめておるということではございません。
  205. 有島重武

    有島分科員 医薬分業の進捗状況はどうなっておりますか。多分あれが始まりましたときには、数年にして五〇%を処方せんでもって処理していく、そういうような目標であったのではないかと記憶いたしておりますけれども、いかがですか。
  206. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 昭和四十九年十月から先生指摘のとおりに処方せん料が五倍に引き上げられまして、その直前の時点と現在を比較しますと、処方せんの発行枚数は約四倍に増加をいたしております。また、定期的にこの処方せんを受け入れますところの取り扱い薬局数も約二倍に達しております。しかしながら全体といたしまして、外来患者に対する投薬全体を分母といたしまして処方せんの発行による分業率を計算いたしますと、現在では、まだ依然としてわずか三%という水準にとどまっております。
  207. 有島重武

    有島分科員 東京都の例なんかを見ましても、東京都は大田区が大変定着しておるようでございますけれども、荒川区、江戸川区、これは去年から大変意欲的にこれを始めております。それから全国的には長野県の上田が有名で、私もその事情を少し聞いてまいりましたけれども、全般的に医薬分業がなかなか進まない。進まないといいますか量にすれば三%、これはゼロから始まったみたいなものですから飛躍的に大きくなってきたようにも思いますけれども、目標を達成するというおつもりがあるのか、それともこの五〇%までというのは、これはやり出してみてちょっと無理であるというようなことであるのか、それが一つ。それからもう一つ、医薬分業の進捗を阻害している要因はどういうことであると御認識なさっていらっしゃるか、この二点を承っておきたいと思います。
  208. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 現在のところでは急速に処方せんの発行枚数が増加いたしておりますし、現に薬局と地域の医療施設との間におきまして定期的な処方せん受け入れについての話し合いが進んで、もうすでに引き受けているものを数えますと、薬局について見ますればほぼ五〇%方が、すでにそのような受け入れをしているか準備中であるかという数字が出ております。したがいまして、現在までの急カーブの伸び率というのは今後も順調に上り坂の経緯をたどるものというふうに判定をいたしているわけでございます。しかしながら、五十年時点を第一年度といたしまして五カ年計画で五〇%という数字は非常にむずかしい。五〇%への到達はある程度先の話になるのではなかろうかというふうに、いま心配しているところでございます。  この医薬分業の進行と申しますか推進に対して、客観的な条件といたしまして、それがなかなかはかばかしくいかないという原因といたしましては、ほぼ三つぐらいのものが考えられるかと思いますが、まず第一には、患者側の長年の日本医療慣行の中で培われましたところの医療機関から投薬を受けるという習慣、その便利というものから患者側においてもなかなか抜け切れない面があるということが一つ。それから第二には、現に、薬局の約半分のものが定期的な処方せん受け入れにつきましての実際の心構えなり意欲なりを、いまだ持ち合わせていないという、いわば受け入れ側の意欲あるいは体制の問題がございます。第三番目には、やはり何と申しましても薬価基準価格と薬の実勢価格の間にある程度の幅がございまして、この経済的な薬価差という問題も推進一つの阻害要因になっているというふうに考えておるところでございます。
  209. 有島重武

    有島分科員 いまお挙げになった阻害要因の中で一番大きい要因と思われるものは何ですか。
  210. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 正直に申し上げまして、経済的な側面、薬価差の面も大きいかと思いますけれども、やはり受け入れ体制、あるいは患者側の利便、希望という要素も無視できない大きな要素ではなかろうか、そういうふうに考えておる次第でございます。
  211. 有島重武

    有島分科員 そういたしますと、厚生省としては医薬分業に対しての意欲がある、阻害要因も分析しておる。では、その阻害要因を除去する努力をどのようにしていらっしやるか。どのくらいのお金をかけて、どのようにやっていらっしゃるのですか。
  212. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 実際の患者側のいわば長年の医療慣行の中で培われましたところの医療施設において投薬を受けようという慣行、これ自身はなかなか一朝一夕に——現実の患者側の利便の問題でございますので、これについては啓蒙活動という以外に、なかなか有力な解決手段というものを求められないかと思います。  薬局側の受け入れ体制につきましては、これは当然に薬剤師会を中心といたしまして御努力を願う、あるいは地域の医療施設との間において十分なお話し合いなり、受け入れ体制の整備についての前向きの主体的な努力を積み重ねていただく、こういう感じのことになろうかと思います。  三番目には、いわば経済的な側面といたしまして、処方せんの発行に伴う医薬施設側に対しての医薬分業そのものの刺激と申しますか推進の手段、方法を考えるということにつきましては、保険点数上の、たとえば処方せん料、先ほど御指摘の五百円の問題であるとか、実際の薬局における調剤料と院内調剤の問の技術料に相当大幅な差をつけるとか、そのような方法が経済的な誘導策としては考えられているというふうに申し上げられるかと思います。
  213. 有島重武

    有島分科員 それでは、第一番にお挙げになった啓蒙ということ、それから薬局側、薬剤師と医師との問の話し合いを進めていくというようなこと、こういったことについて厚生省としては何をしていらっしゃるんでしょうか。
  214. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 これは予算的にはごくわずかな金額でございますが、結局、啓蒙普及あるいは医薬分業についての指導者の講習会あるいは調剤技術の実務研修その他啓蒙費的なものについての補助金予算をそれぞれ計上をいたしております。しかし、これは事業の性格からいいまして、主として薬剤師会の活動に依存するもの、あるいは薬剤師会と地域の医師会との話し合いに依存する部分が大きいものでございまして、役所として行っておりますのは、これに対する多少の補助予算の計上という限界にとどまっておるところでございます。
  215. 有島重武

    有島分科員 幾らぐらい計上していらっしゃるのですか。
  216. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 合計といたしまして、五十三年度におけるこの種の補助予算の総計は千六百六十七万八千円でございます。
  217. 有島重武

    有島分科員 大臣、お聞きになったけれども、最初に申しましたように、国民の医療費の中で三七%ですか、八%ですか、大体四兆円近いものが動くわけでございますね。それで一千六百六十七万と、これは何か万と億と間違えたんじゃないかと私は思いますけれども、これは大臣としてどう思いますか。私は少ないと思う。
  218. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 診療担当者側も医薬分業については反対をいたしておるわけでありません。原則として医薬分業を進めようということは御了解をいただいておるわけでございます。  いま阻害原因を三つばかり局長が挙げましたが、私は、被保険者側も、やはり処方せんだけもらった場合に、どうしても気になるのは、恐らく有島委員も病気のとき、そうだったろうと思うのですが、自分が果たして胃潰瘍だけなのか、もっとそれ以上何かあるかということは非常に心配をされると思うのですね。たとえば胃潰瘍だと言われて薬を飲んで、これでまあまあ大体いいよと言われて、ようやく安心をするということです。したがって、被保険者というものは、処方せんを見たときに一体いかなる病気なんだろうかということを相当真剣になって考えるんじゃないかと思うのですね。そうすると、それから出る医師の診断の病名についての患者に与える問題等いろいろ考えなければならないと思うのです。で、近所の薬局に行きまして処方せんで薬をもらうときに、一体どういう病気なんだということをお医者さんに聞いても、なおかつ、その薬の態様を、何かえらいむずかしい名前がいっぱい書いてあるようだがということで心配になることがあると思うのですね。そういう診療上の機密というものについての問題点、これはどうやって解消するかという問題もひとつ考えていかなければいかぬと思う。  それから、患者さんは、治してもらうのはお医者さんだ、自分の信頼する先生だということがありますので、その先生の投薬ということに、処方せんなら同じじゃないかといわれましても、やはり信頼度というものが違ってくるのじゃないかと思うのです。それが日本においては医薬分業を阻害している一番大きな原因じゃなかろうかと私は思うのです。  薬価の実勢価格との違いということがありますが、これは私は、医薬分業をやって果たして実勢価格との違いというものを完全に解消し得るか。実勢価格を調べたときに、薬価の維持操作というものが医薬分業の場合にはより内輪の、いわゆるオール医薬品取り扱い者の中で容易に行い得る危険性があるではないかという感じもいたします。一方、処方せん料は今日のままでは、オンコストの問題等も考えますと、診療報酬として、もし医薬分業を完全に実施する場合にはさらに引き上げを図っていかなければ、医師の、いわゆる診断をやり、これに投薬何日分という場合に十分ではないと言われましたときには、なかなか十分だと反論するだけのものではないと私は認識をいたしております。そこへもってきて、一方調剤手数料というものがございますから、医薬分業になれば当然そうなります。それを相当大幅に必要とする事態が起こるだろう。そうなると、保険財政としては二重の負担になるおそれがあるわけでございます。  あれやこれや考えますと、理論的には医薬分業というのは正しい方向だし、私どもも推進しなければいかぬと思いますけれども、これらの問題点を十分よく検討して、そして整理した上で、厚生省としては相当強く出ないといかぬ問題でございますので、環境整備に徐々に力を入れまして、また一方、今度の抜本改正についてまだ成案を得ておりませんが、この抜本改正によりますいろいろな点も勘案いたしまして、今後ひとつこの推進のやり方等についてはわれわれとして一つの考え方を整理していきたい、こう思っているわけでございまして、できるだけ医薬分業が先進国並みに行われていきますように、今後、いま申し上げましたあらゆる角度からいろいろな検討を加えて、条件を整えていって、実現を一歩一歩前進させていきたい、かように考えておるわけでございます。
  219. 有島重武

    有島分科員 最初に患者さん側がいろいろ不都合なこともあるであろうということですけれども、これはじかに患者さんからいろいろなお話を聞いてみますと、病院でもって診ていただく時間というのはごくわずかである、それでお薬をいただく、その順番を待つというのが非常に長い時間である、そういうことを大変よく聞きます。それから、ほかの薬屋さんに行って買ってもいいのですかと言うのですね。これは大病院なんかの場合でも、処方せんを出されても、その病院でなければいけないんじゃないだろうか。町のお医者さんの場合にも、これはお医者さんがちょっとお漏らしになって、あの薬局で買いなさいと言うことがある。そこでなければいけないんじゃないか、ほかのところではいけないんじゃないかというような、何か誤った認識を持たれておる。それからまた、自分の病名が気になるからいろいろ聞くというようなこと、これは処方せんのみならず、神経質な人は恐らく何人かのお医者さんを回っていって診てもらうということもあり得るでしょう。  それでもう一つの、薬の多量使用であるとか、薬価のこともちょっとお触れになりましたけれども、最初に確認したのはまさにそういったことにあるのであって、去年厚生省の方からいただきました点数制の矛盾点八項目、これは大臣、もう一遍、それは聞きました、耳には入れましたと言うのか。これは非常に常識的な内容でございます。お医者さんも患者さんもみんな大体知っているようなことでございますけれども、了承をする、その上でもっていまぼくはこうやって話を始めたものですから。ただ聞いた程度と言うのですか、それとも大体内容としてはこれは常識的な話である、そういうような了承をしていらっしゃるのか、その点どうなんですか。そうでないとまた何かの機会にやらなければならない。
  220. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は先ほど申し上げましたように、先生との質疑応答でこういう点があったということを聞きまして、その八項目も見ました。ただ、私自身いろいろ考えてみますと、その八項目の一つ一つには、厚生省の見解とするにはまだ問題点が大分あるだろうと思うのですよ。そういうような意味で、私が知っておると申し上げましたのは、全部八項目については全く異議はない、それが全部先生のおっしゃったような原因であるというふうに断定までには私はまだ検討しておりませんので、ここでそういうふうに御理解していただくと、少し私の勉強がまだ進んでおりません。そういう八項目の答弁があり、こうしたという話は聞きました。項目は見ましたが、ただし、それについて私が、その原因は八項目間違いないというふうに断定をして答弁しているというふうに御理解いただくと困りますので、その点だけは……。
  221. 有島重武

    有島分科員 小沢厚生大臣が勉強がどうのこうのと言われると私は本当に痛み入ってしまうわけでございますけれども、八項目が原因であるということはどこにも厚生省の方ではおっしゃっておりません。それじゃ、そのことにつきましてはもう一遍検討を加えていただくということだけお約束くださいませ。  それで、もう時間がございませんから最後のことを言いますと、厚生省はお医者様に向かって指図をする立場ではない。ないけれども、厚生省所管の国立病院におきまして医薬分業の範を示す、これは可能なことじゃないかと思うわけです。きょうは時間がもう三分と言われちゃったから、厚生省所管の大学病院における医薬分業の状況を報告していただくつもりだったのだけれども、省略をいたします。もう御承知だと思いますが、東京でも大阪でも京都でも、数年前からこの処方せんをどんどん出しているわけですね。そしてこれは院内用の処方せん、院外用の処方せんなんて区別してないわけです。それで間違いなくずっとやっているわけでございますけれども、ひとつ国立病院でも、院内処方せん、院外処方せんの区別を排して一本化なさるお考えはないか、そうしたことを御検討いただけないか。これはやはり国立病院でもこうなったということで非常に大きい影響力を持つと思うのですよ。これはひとつぜひともお約束をいただきたい。お願いを申し上げるわけでございます。
  222. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 国立病院の院外処方せんもだんだんふえてまいりまして、四十九年と五十一年を比較すると二・二倍に増加しております。また、たとえば熊本病院だとかあるいは浜田病院、福岡中央病院等、非常に熱心なところは院外処方せんと院内処方せんの統一の検討をすでに始めております。そういった点につきましてはさきに五十年三月の院長会議で指示をいたしましたけれども、この三月にございます国立病院長会議で再度強く指示をいたしまして、具体的な検討に入りたいと考えております。
  223. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私も、おっしゃるように国立病院が率先してこういう体制をとるべきだと思いますので、今後努力いたします。
  224. 有島重武

    有島分科員 終わります。
  225. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして有島君の質疑は終了いたしました。  次は、見玉末男君。
  226. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 最初に厚生大臣にお伺いしますが、一昨日の新聞でございましたか、大新聞の一ページを割きましたところの、日本医師会長名による言うところの闘争宣言みたいな広告が載っておりました。この点は大臣はお読みになっているかどうか。同時に、医師優遇税の問題等を中心に来年度からこれの検討に入るという問題も予算委員会では確答されておるわけでございますが、これは、われわれの目から見ればまさに今日の医療行政に対する挑戦状的な個所もかなりの部分あったやに見るわけでございます。この重大な声明行為に対して厚生大臣は黙して語らずということでは困るのではないか。この点について大臣の御所見をまず承りたいと存じます。
  227. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 大変恐縮ですが、私、見てないのでございまして、新聞に何か抗議声明が出たというお話でございますか。——全然見ておりません。
  228. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 こういうふうな重大な広告を全然見てないということは、厚生省としてもあるいは大臣としてもちょっと注意が足りない、私はこう感ずるわけでございますが、いかがでございますか。どなたか、局長でも結構ですが。
  229. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、本当に私は注意が足りないと思います。私、新聞を見ているつもりですが、広告欄は余り見ないので、広告欄でございましたら見落としたと思います。
  230. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 広告は見ないといいましても、大新聞の一ページを割く広告が目にとまらない、あるいは厚生省当局の幹部の皆さん方が数多くいらっしゃるわけですが、少なくともこれが目にとまらぬようでは、これは大変なミステークじゃないかと私は思います。ひとつこの際十分この内容をお読みになっていただいて、今後の対応策を、この予算委員会の終わる段階でも結構でございますから、明らかな所信を示してもらいたいということを要望申し上げまして、次の問題に入りたいと存じます。  第一点は、特に現在、戦後すでに三十余年でございますけれども、かつての太平洋戦争なりあるいは支那事変なりの戦闘に参加した傷痍軍人あるいは遺族の対応措置について、援護局を中心に大変な御苦労を願っていることには心から敬意を表するわけでございますけれども、この処置につきまして、私の手元にも、これは最近のものでございますが、このようにたくさんの陳情書が来ているわけです。この内容を見てみますと、関係の市町村段階におけるところの援護事務の取り扱いについてであって、戦争によってけがをされたりあるいはいろいろな環境の方々はほとんどが五十歳以上の年配者が多いし、交通の便あるいはいろいろな形で、このような傷痍軍人恩給の問題、年金の問題等の取り扱いについて、ともすれば関係の行政機関の対応が非常に不十分ではないか、こういうふうに理解をするわけでございますが、この点について、いまの制度を根本的に改めることはできないにいたしましても、数多い該当者の処理について今後どういうような対応をしようとお考えになっておるのか、見解をお伺いします。
  231. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、傷痍軍人恩給あるいは遺族年金等の請求につきましてはなかなかわかりにくい面もあるわけでございますが、この問題につきましては、そういった方々の立場に立ちまして指導を従来からやっておるわけでございます。その方法といたしましては、文書による都道府県あるいは市町村の指導はもちろんでございますが、毎年各都道府県の担当者の研修会を開くとか、あるいは戦傷病者相談員あるいは戦没者相談員を配置いたしまして、こういった方々について適切な指導をしてまいっておるわけでございます。今後とも申請者の立場を十分踏まえまして助力をいたしていきたいということで、関係都道府県あるいは市町村あるいは相談員の方々に一層の配慮を促すように指導していきたい、かように考えております。
  232. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 いま局長の御答弁がありましたが、大臣、これは厚生省の援護局等はかなり専門的な知識がありますけれども、末端の市町村段階におきましてはこの事務処理に対して非常に理解がないといいますか、もちろん若い世代でございますから無理もないと思うが、そのため、旧軍人等がそういう援護事務の肩がわり的といいますか、便宜的な一つの相談所を設けて、何がしかの口銭等を取りながら現在やっております。そのために、経済的に困っている人等はなかなか行けない。二遍も三遍も行くことは往復の足代だけでも大変だ。そういう点等から、市町村の窓口に、戦後三十年、戦後処理としてもまだまだたくさんの課題が残っておりますが、われわれ国会議員なり政治家にこの問題の処理を持ってこなければ処理ができない。これは非常にいびつな状態であるわけでございまして、もちろん自分たちも頼まれた以上はこちらから足を運んでその事情を細かく聞いて、それを今度は県なり市町村段階を通して書類の提出等、数多くめんどう見ておるわけでございますが、その点、厚生省としていま少し手の行き届いた処置をこの際検討する段階ではないか、こういうふうに理解をするわけであります。最高責任者としての大臣、ひとつ御見解を承りたい。
  233. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 兒玉委員おっしゃるとおりだと思います。したがって、事務取扱について、まず経由機関として当初にその事務に当たります市町村を含めた事務当局を指導し、できるだけこれを助けていきまして、必要な資料の整備等について遺憾なきを期すように、また、委員がおっしゃいますように、遠いところから何遍も足を運ぶということはなかなかできませんので、そういう点について一層強力な指導をいたしまして、おっしゃるように戦後三十年のいわば後始末でございますから、戦傷病者等の方々について公平な取り扱いを失することのないように、できるだけ私どもも努力をいたします。
  234. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 私は具体的にいま提起したいわけですけれども、県は従来の世話課の方が見ますが、市町村の場合、あっちへ行け、こっちへ行け、そして最後は県へ行って聞きなさいというふうな取り扱いをする例がたくさんあります。そういうことが専門的に取り扱いできる窓口を制度化することを私はこの際検討すべきだと思いますが、その点、局長、御専門でしょうから、いかがでございますか。
  235. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 御指摘のように、市町村の窓口に行って適切な指導が受けられる、そういう体制が必要であることはもちろんでございます。その意味におきまして市町村の指導を重視いたしております。相当な県におきましては巡回指導といったこともやっておりますが、そういった方法をますます普及いたしまして、個々の遺族年金あるいは傷痍軍人の方たちの指導を徹底していきたい、かように考えております。
  236. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 それから、傷痍軍人あるいは旧軍人等で恩給の支給年限に達しない人は一時恩給で処理をされておるわけですが、そういうような手続等についても案外申請することを忘れておる。あるいはまた傷病軍人等で手帳の交付を受ける手だてを知らない。この場合、私は国鉄の出身ですが、恩給傷病手帳をもらった場合は国鉄の運賃等が無料になるわけですね。この辺のことがいまだに徹底していない向きがたくさんありますが、こういう点等のいわゆる指導、処理について。  それからもう一つは、このような恩給をもらうに至らない皆さん方が、恩給者の場合は国民年金との併給がたしか法的に認められている、ところが一時恩給等の場合はこの年金との通算といいますか、関連について、全くその恩恵がないということは不公平じゃないかという意見が、私たちの手元にも実は陳情書が参っております。もちろんこれは法律の関係でございましょうけれども、恩給適用者と、わずか二カ月、三カ月あるいはちょっとの差で恩給の適用を受けられない方と、年金との関係において不合理があるように私は思うわけですが、この辺の処理はどういうふうにすべきであるのか。また、通算ができなし法的な根拠というのはどこに起因をしているのか。まずこの二点について見解を承りたいと存じます。
  237. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 恩給の問題あるいは遺族年金等の問題あるいは傷痍軍人につきます交通機関の無料の取り扱い、そういった制度上のいろいろな問題がございますが、これにつきまして、まず関係者に正しく理解してもらうという必要があろうと思います。この点につきましてはPRを十分いたしまして、関係者に十分制度理解してもらうという努力をまずいたしたいと思います。そうしてさらに、そういった関係者についていろいろな手続の問題につきましては、先ほど申しましたように、市町村あるいは関係の相談員あるいは関係の機関を十分活用いたしまして、手続が円滑にいくように今後一層努力していきたい、かように考えております。
  238. 木暮保成

    ○木暮政府委員 御質問の後段の点でございますが、先生お話ございましたように、軍務に服した場合には、准士官と将校は十三年で恩給がつきますし、それから下士官、兵の場合には十二年で恩給がつくわけでございます。それに至りません場合には、実在職期間が三年のときには一時恩給が出る、こういうたてまえになっておるわけでございます。一方、私どもの国民年金でございますが、昭和三十六年に制度が発足しておるわけでございますが、二十五年間掛金をしなければ老齢年金が出ないというのが制度のたてまえでございます。しかし昭和三十六年のときにすでに高齢の方には二十五年の掛金を掛ける期間がございませんので、年齢に応じまして、五年でいい場合、十年でいい場合、それから十一年から二十四年、年齢に応じて軽減措置をとっておりまして、年金に結びつくような措置をいたしておるわけでございます。仮にいまお話のございましたような軍歴期間もこれに見たらどうかということでございますが、国民年金の場合は、国籍があること、それから日本に居住しておること、その条件だけでやっておりますので、軍歴のある人だけを取り上げるということはまた一方で不公正にもなるということで、私どもは通算は適当ではない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  239. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 たとえば、全期問の通算ではなくても、その軍人期問なり従軍期間等の三分の一とか半分とか、そういうような制度をこの際検討することはどんなものかという意見として私は申し上げますが、いかがでございますか。
  240. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ただいま申し上げましたように、国民年金は一般国民の掛金を主としてやっておるわけでございます。したがいまして、軍歴関係の方は当時召集されて弾の下をくぐったという特殊な事情にあるわけでございますけれども、国民年金の中で処遇するのはどうであるか、こういうふうに思っておる次第でございます。
  241. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 これに関連をいたしまして、これも先般陳情を受けたわけでございますが、官立の無線電信の講習所を出まして、そうして軍関係の仕事に携わるということでもって陸軍予備生徒という制度が、私も初めて知りましたが、あったそうでございます。この学校が焼けたために、やはり軍の命令でしょうが、一時帰郷の命令が出て、その帰省の途中空襲でやられて、それがもとで負傷後二週間で亡くなったという事例があります。ところが、いろいろと厚生省の方で聞いてみますと、これは遺族援護法の適用外であるということで何らの措置もとられていない。少なくとも陸軍予備生徒という辞令をもらった以上は、軍に関連する通信の事務に携わっておったというふうに理解をするわけでございますが、この対象はかなりあるのではないかと思っております。そういう点等はやはり昔の陸軍通信学校とか、私も航空隊におりましたが、これに準ずる問題として私はこの際ひとつ検討する必要があるのじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  242. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 いまお話のありました陸軍予備生徒は、陸軍補充令に規定がございまして、航空機乗員養成所あるいは無線電信講習所高等科、そういう特定の学校に在籍する生徒につきまして、陸軍が選考試験をいたしまして、それに合格した人を陸軍予備生徒として登録するわけでございます。そうしてその学校を卒業いたしますと、陸軍に入りまして陸軍予備候補生になりまして、そこで初めて陸軍との実態的な関係ができるわけでございまして、そうして軍務につくわけでございます。援護法の体系は、陸海軍の軍人で、そういった軍務についた場合のいろいろな事項について援護の対象としておるわけでございまして、現在の制度からいたしますと、陸軍予備生徒を援護法の対象とすることは困難であるというふうに考えております。
  243. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 これは何も自分の子供を失った親が物もらい的な立場から言っているのではなくて、やはり軍の要請により、恐らく、中学校か小学校か知りませんが、かなりの成績でなければ入れない学校だということを聞いておりますが、これは現在の法律でできないとするならば、その制度を変えて、何らかのそこに、少なくとも遺族の一時金等の処置はとられてしかるべきではないかというふうに感ずるわけであります。そういう点等からも、やはり制度の問題でございますから、これはひとつ大臣——このような対象の生徒がどれだけあったか、私もわかりません。しかし、軍の要務の一環としての予備生徒であったことは間違いない、私はこのように理解するわけでございますが、制度の問題でございますのでひとつ十分検討してしかるべきではないかと思うのですが、大臣、どうですか。
  244. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 現在の援護法等、恩給法なりいろいろなたてまえを見ますと、大変めんどうな問題だと思うのです。援護法というのは、陸軍なり海軍なりに採用になった軍人さんの戦傷病あるいは戦没という事例を対象にして援護法の体系が成り立っている、こういうことですから、非常にめんどうだと思いますが、先生がおっしゃるような予備生徒、あるいは他にも恐らくそういう種類の方々が相当おられたんじゃないかと思いますので、ひとつ、いま援護の対象になる人、なっていない人を全部きちっと当時のあれによって調べてみまして、どの範囲までが、なるほどいまおっしゃったようなつながりを理由づけて何とかその援護の対象にできるのかどうかという点を検討させていただきます。ただ、先ほど言われました年限の足らない人、これを国民年金の通算期間というお話は、国民年金制度の方に持ってこられても困るのでありまして、これはむしろ恩給法の一連の関連の中で恩給法で該当する人としない人の取り扱いをどうやったらだんだん公平になるかという問題でございますので、これを年金の方で救うという考え方は、これはちょっと制度的に無理ではなかろうかと私は思います。ただ、後段の援護法の対象者を、未処遇者としてどの程度の範囲まで今後検討するかということは、全体のあれをずっと調べてみまして、その中で濃淡がいろいろあると思いますので、検討させていただきたいと思います。
  245. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 だんだん戦争のときの苦労というのが国民の間から忘れられかけているわけです。自分も約四年間戦争へ行ったわけですが、たとえば南方での抑留生活あるいはシベリアでの抑留者、多くの戦友が亡くなったわけであります。そういうような点等から考えれば、いまたまたま大臣が言われましたように、遺族年金等なりあるいは恩給等についても、現在の第一線地の加算制度を若干修正することによってこの適用の範囲が拡大できるという道も開かれるのじゃないか。恐らく該当者というのが、率直に言って何百万人もいるわけじゃございませんし、相当数が遺族も死んでしまう、とするならば、現在残された者だけでもそっちから幾らか救済できるとするならば、一線の加算制度を一カ月なりあるいは〇・五カ月なり加算することによってその不合理の是正は可能だろうというふうに私は見るわけですが、その辺の点はいかがですか。
  246. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 それは御説のとおり恩給制度の中で考えなければいけませんので、援護法の対象ではないわけでございますが、国務大臣として御答弁を申し上げるといたしますと、その点、あの制度をつくりますときに一対三の比率でいくのがよかったのか、その比率をもう少し変えることによってできるだけ幅広く救うことができるようにした方がよかったのか、いろいろの問題があると思います。ただ、先生の御意見のようにいたしますと、今度加算を入れて十二年までは救われた。すると今度は、先生の御意見のようなのを入れて若干修正することによって十年まで入ったといたしますと、じゃ九年五カ月の人はどうなったと、またこういう問題が出てきまして、どうしても恩給制度というものはどこかに線を引いていかなければいかぬわけでございますので、なかなか、ここでいま私は国務大臣として、ごもっともで、ひとつ何とか検討しましょうと言うだけの、主管でもありませんから言う気はないわけでございますが、おっしゃる問題点、われわれ政治家として十八年間やってきて、ずいぶんと聞く問題でございます。したがって、いまの恩給の対象にならない、戦時加算をつけてもならない方々について一恩だけの処遇でいいのか、何らかのそのほかの処置をしなければいかぬのかという問題は、全体的にひとつ考えさせていただきたいと思うわけでございます。
  247. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 もうあと時間が少なくなったのですが、次に、重身障者や精神薄弱者に対する施設の問題でございますが、現に私の地区でもこれに対する要望が出ているわけでございます。制度的な問題と予算の問題、いろいろあるわけでございますが、このような施設の設置に当たりまして厚生省としてはどういうような御指導をなさっているのか。先般これに関連する法律の抜粋もいただいておりますが、地域における問題としてもいろいろな隘路があるようでございますけれども、それについて、現に私のところでは二人の人たちが競願といいますか、もちろん出した人は別々でございますが、二つ出たためにどっちもだめになったという例もあります。その点はずばり申しますと、私の後輩が現に重身障者の施設を一昨年からやっております。今度新たに強度の精薄者に対してぜひひとつ施設をつくりたいということで出したところが、何も社会党系の人ばかりやらぬでもいいじゃないかということで、じゃまといいますか、ではおれもつくるんだということで、実は両方とも県の方が出すわけにいかぬということで却下された事例があるわけでございます。これなどは私は非常に不合理千万だと思うわけで、せっかくそういうふうに精薄児等のためにやろうというその意思がそういう形で抹殺されることは忍びがたい限りだと考えますので、このような対策について見解を承りたい。
  248. 石野清治

    ○石野政府委員 おっしゃるように、精薄者の対策、重度の身体障害者の対策は非常におくれております。特に、精薄者の中でも重度の精薄者の対策というのがどうしてもおくれがちでございましたので、特に一昨年ぐらいから、重度精薄者あるいは重度身体障害者に対します施設整備については最重点に実は予算編成をいたしておりました。五十二年度の例で申しますと、各県の方から御協議のあったものにつきましては全部国庫補助をいたしました。ただ、自転車振興会とかあるいは船舶振興会の方で助成がされておるものにつきましては、それぞれ船舶振興会なりあるいは自転車振興会の方でいろいろな事情がございまして判断をいたしておるようでございますけれども、これにつきましても、私の方はいまの対策は非常におくれておるわけでございますので、全面的にやっていただくように特に強くお願いをいたしております。特に、県のことを申しますとなにでございますけれども、やはり県の負担という問題もございますので、私の方は県の負担をできるだけ少なくするために、実際上従来も施設の面積でございますとかあるいは内容についても相当の充実をいたしまして、実際上県が負担しなければならない費用については法定上の数字になりますように努力をいたしております。したがいまして、重度身体障害者の問題あるいは精薄者の問題につきましては、今後飛躍的に施設の数も増加いたしますし、内容についてもさらに改善を加えていく、こういうことでございます。
  249. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いま先生から承りますと、二つ競願したからだめになるというような指導を県がされたという話でございますが、重度の精薄関係の施設は国全体として非常に足らない点でございます。私どもは重点的に取り上げようという気持ちでございますので、県にも指導いたしまして、とにかく一つでもできるだけ早くつくっていただいた方がいいと思いますから、私どもはひとつよく指導に気をつけてまいりたいと思います。
  250. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 時間ですから最後に、これもなかなかむずかしい問題だということでございますけれども、老人の医療給付の改善という点で、何か二年前に診療報酬の関係で小児加算の制度が新設をせられたそうでございますが、私の方の自治体の病院でも最近は老人の入療者は多いわけでございまして、そのために、設備の改善なり維持のために相当の資金的な需要がある。だからこの際、小児加算と同様な老人の診療報酬の制度の新設といいますか、こういう点について格段のひとつ御配慮をいただきたいという強い要望に接しておりますが、厚生省としてはどのように対応されようとするお気持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  251. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生指摘のように、乳幼児につきましては、乳幼児がいろいろな面で、診断にしましても治療にしましても、医療技術の面でなかなか困難性があるということで、すべての乳幼児に乳幼児加算が設けられているわけでございます。ただ、御指摘の老人の問題につきましては、やはり老人個人個人、いろいろ患者の症状、年齢等必要度がありまして、一律にというわけには、なかなか乳幼児みたいにはいかないということで、非常にむずかしい問題であるというふうに理解しております。
  252. 兒玉末男

    ○兒玉分科員 どうもありがとうございました。
  253. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして兒玉君の質疑は終わりました。  次は、池田克也君。
  254. 池田克也

    ○池田(克)分科員 公明党の池田克也でございます。  私は二つの問題、大枠でくくりますと、一つは身体障害者の方々の自動車運行に関する問題、もう一つ厚生省が今日建設を進めております国立衛生試験所の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、身体障害者の福祉厚生、厚生省が所管をし、それを運営していらっしゃるわけでありますが、昨今の社会状況の中で非常に自動車の普及というのが目覚ましくなってきております。これは当然身体障害者の方々も御利用になっていらっしゃる。そして、これを御利用になることによっていわゆる社会復帰というものが推進をされ、職業につかれ、大変喜んでいらっしゃると私たち聞いております。     〔主査退席、住主査代理着席〕 これは私は望ましいことだと思うのですが、大枠として、今後厚生省としてこうした身体障害者の方々の自動車活動というものを推進していかれるかどうか、大臣から大枠のひとつ見解を伺いたいと思います。
  255. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 自動車の利用につきましては、身体障害者の社会復帰に非常に大きな役割りを果たすと思いますので、私どもは今後積極的に推進をしていくつもりでございます。
  256. 池田克也

    ○池田(克)分科員 積極的にというお言葉をいただきまして、私は本当にこれを実のあるものにしていただきたい。  データの問題ですので担当の方で結構ですが、今日、身体障害者で免許を取得していらっしゃる方はどのくらいいらっしゃるか。警察庁、もしおいででしたら……。
  257. 三上和幸

    ○三上説明員 運転免許の保有者の関係でございますが、身体障害の方で免許を取得しておりますのは、五十二年末で八万四千七百六十人になっております。
  258. 池田克也

    ○池田(克)分科員 八万四千七百六十人、かなりの数でございます。  さて、こういうような八万四千人の方々が免許をどうやって取ったか。今日、いわゆるノークラッチの自動車というものが普及されましたから、改造しないでそのままという方もあると思います。しかし、かなりの多くの方々が改造された自動車で運行しているわけですね。ところが、問題は、いわゆる民間の、自動車免許を取得するための教習所、こういうところで果たしてこういう身体障害者の方々が教習が受けられるような情勢になっているかどうかですね。私の方でも調べてみましたが、もしこちらの方にデータがあるならば、今日全国の何カ所で身体障害者用の特殊車両を用意し、その方々に対応して、免許取得ができるようになっているかどうか、これがあったら聞かしていただきたいのです。
  259. 三上和幸

    ○三上説明員 自動車教習所で身体障害者用の車を用意いたしまして教習を行っている教習所の数でございますが、昨年末で全国で二百五十八カ所ございます。これは、身体障害者の方々の定型的な肢体不自由者の方につきましては、ノークラッチ等の教習車両が備え得るわけでございますが、身体障害のいろいろな態様に応じた教習ということになりますので、現在千三百ほどございます指定教習所では、持ち込みの教習車両につきましてこれを積極的に指導するように私どもの方としても指導いたしておるところでございます。
  260. 池田克也

    ○池田(克)分科員 持ち込みの車両ですね。結局、持ち込みができればいいです。しかし、免許を取るのは今日至難のわざである。健全な方々でも大変苦労していらっしゃるし、特に年輩者においては普通の教習所でも大変である。先ほど二百八十というデータでしたか、これは全部が公認ですか、非公認ですか、その内訳を聞かせていただきたい。
  261. 三上和幸

    ○三上説明員 私ども、公安委員会として指定をしております指定教習所の中で二百五十八カ所ということでございます。
  262. 池田克也

    ○池田(克)分科員 私はぜひとも厚生省あるいは警察庁にもお願いをしたいのですが、やはりその教習所に車というものが用意されている、そしてそれによってそういう人たちが教習を受けられるようにすべきだと思うのです。持ち込むということは、だれかが使っている車を借りてきて教習を受けるわけですね。——大臣がお帰りなったので先ほど来の経過をお話ししますと、身体障害者で免許を取っている人は八万人を超えておる。その方々が免許を取るのに大変苦労している。いま、警察庁のデータによれば二百数十カ所についてそういう対応である。あと残るところは、持ち込んだ車でもうまくそれを対応していないわけですね。そうなりますと、持ち込むということ自体大変な困難で、だれかが使っている車を借りなければならない。もう足です。完全な自分の足で、それがなければ行動の自由というものが非常に狭められるような方々でありますから、私は願わくば、この改造につきまして、大した金額はかかりませんので、これをもっともっと普及されまして、助成でも結構でしょう、全国のほとんどの教習所でこういうような構造の若干の変更をして、身体障害者の方々がスムーズに免許が取れるような、こういう施策というものを方向として、すぐに全部やれとは言いませんが、やはり進めていくべきじゃないか。いま持ち込みだけなんです。やはり設備をしていただきたいと思うのですが、どんなものですか。
  263. 上村一

    ○上村政府委員 まず、企業としての自動車教習所に身体障害者用に改造した車を設置する助成というものは、なかなかむずかしいように思うわけでございます。ただ、一つは、さっきも大臣からお答え申し上げましたように、肢体不自由な人にとりましては自動車は足がわりであるという点から、肢体不自由者の更生施設で身体障害者が自動車の運転訓練が受けられるようにいろいろ指導してまいっておりますのと、もう一つは、四十九年度から身体障害者用の自動車改造事業というのを実施いたしまして、体の不自由な方が働きに出る等の事情で自動車を取得する場合、その改造に要する経費につきまして助成等を実施しておるわけでございます。五十三年度の予算案におきましても、従来にも増してその台数をふやしておる、こういうふうな措置をとっておるわけでございます。
  264. 池田克也

    ○池田(克)分科員 おっしゃるとおり、予算には二百台から三百台、身体障害者用自動車改造助成費というものがある。千二百万円ですね。三百台で割りますと一台四万円です。個人個人あるいは施設に入っていらっしゃる方々について四万円の補助をして自動車を改造する。教習所に一台改造して置いておけばみんなが使えるわけですよ。こんな効率のいいことはないと思うのです。この問題は改めて、余り時間を長くこだわるわけじゃないのですけれども、私はその方向を、いま大臣のおっしゃったように、積極的に身体障害者の社会復帰を目指してそういう政治施策をおとりになるということですから、ぜひお考えいただきたい。いますぐにとは言いません。その方向をぜひ教習所の方にも……。  いま非公認が多いですね、手近にあるところは。そこで習っても、やはり東京の場合は府中とか鮫洲とか、そういうところへ行ってまた試験を受けなければならない。大変な負担です。ただでさえいろんな制約のある方々にとって負担です。しかも、免許試験場には階段も多く、車でなかなか上がれない。府中なんかに行ってみても階段だらけです。本当にそういうような状況というものが、自動車を持つ身体障害者用に施策がずっと整合性を持って整えられていないということを私は指摘をしたいのです。局長、いかがでしょうか。大臣でも。
  265. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 教習所に全部置くことにつきましては、これはなかなか容易でないと思うのですね。これはなぜかといいますと、身体障害者の方々だけの車というわけにいきませんね。それぞれ態様が違いますから、その態様に応ずるものを全部教習所に置いておけということはちょっとできませんで、むしろこの改造費の助成の予算をもっと大幅にふやしまして、そうして、そういう免許を取りに行きたいという人は将来必ず自分が車に乗りたい人なんですから、この助成によってそういう車を自分で用意していただいて、それで行くということしかないのじゃないかと思うのです。そこで、そのためには相当台数をふやしていかなければいかぬ。全国的に見ましても、いまおっしゃるように用意できる、持ち込みでないところもあるわけですから、それらをよく考えながら、何台ふやせば徐々にそういうところの要望にこたえられるか、いろいろよく検討してみます。
  266. 池田克也

    ○池田(克)分科員 いま大臣から、助成するのを大幅にふやすということでございましたので、ぜひこれを具体的にしていただきたい。  そこで、この問題の一つの路線の上なんですが、駐車の問題です。昭和三十九年ごろから各県の条例で、身体障害者、特に足の悪いような方々については公安委員会が駐車禁止の区域でも駐車取り締まり対象から除外する、こういうふうな制度をつくっているわけなんですが、今日の社会的な状況から非常に生活圏が広がって、東京の人間は神奈川に親戚がいる、埼玉にいるというようなことで広がっているわけです。ですから、自動車を持っている人たち活動というのは非常に広範囲になっている。たとえば神奈川県に住居を設け東京に通勤するということもある。これは警察庁の管轄だと思いますが、身体障害者の方々の生活を守るためにぜひとも広域的に駐車を認めてほしい、こう私は願うのですが、実情はどうか、お伺いしたいと思うのです。
  267. 福島静雄

    ○福島説明員 歩行困難な方々の使用する車両につきましては、御質問のように、現在駐車禁止・規制の除外標章の交付によりまして駐車の特例を認めているわけでございますが、この駐車規制の除外標章を全国共通化してもらいたいという御要望につきましてはかねがねいただいておるところでございまして、私どもも十分その必要性を認識しております。そこで警察庁といたしましては、他の都道府県公安委員会の発行した標章を掲出している駐車車両につきましても、現場の措置といたしましては取り締まりは行わないというふうな方針をとるように各都道府県警察にすでに指示をいたしてございまして、御趣旨のような運用を図っておるところでございます。
  268. 池田克也

    ○池田(克)分科員 大変望ましいことだと思うのです。ただし、そのことがちゃんと法文化され、あるいは通達、政令、さまざまな形できちっとフィックスされていない。取り締まりの課長さんの会合でそういう方針でいっても、末端の交通警察官の方々まで十分浸透しているかというと、私が調べた範囲ではまだまだだと思うのですね。やはりそういう点では当事者は心配しているわけです。特に今日駐車違反については取り締まりも厳しい。そういう状況で、ぜひともこれはきちっと文書で通達を出して、安心してその人たちが運行できるようにしてもらいたいのですが、どうでしょうか。
  269. 福島静雄

    ○福島説明員 今後の措置といたしましては、先生指摘のように、これは具体的には法律改正は必要ではございませんが、各都道府県の公安委員会規則を改正させるという手続が残っているわけでございます。これにつきましても、できるだけ早期にこれを行うというふうに措置いたしたいと考えております。
  270. 池田克也

    ○池田(克)分科員 早期と言われますが、大体めどはどんなものでしょうか。
  271. 福島静雄

    ○福島説明員 警察庁の通達といたしましては、ここ一、二カ月ぐらいのうちに出したいというふうに考えます。
  272. 池田克也

    ○池田(克)分科員 一、二カ月のうちに出していただけるということで私は了承します。しかし、いま口頭でもそういう行政の末端にまで話が行っているというわけですから、安心して身障者の方々はそういうことをやってもいいわけですね。
  273. 福島静雄

    ○福島説明員 御指摘のとおりであるというふうに考えております。
  274. 池田克也

    ○池田(克)分科員 さらに、足の悪い方だけではなくて、手の悪い方、上肢障害者と言うのですか、こういう方々がいまのところまだその恩恵に浴していないのです。しかし、やはり荷物をお持ちになることも間々あるものですから、同じようなことで、上肢が不自由であるということは相当な困難を来しているようで、ぜひともここにもその恩恵がきちっと行き渡るような、こういう配慮をしていただきたいのですが、どうでしょうか。
  275. 福島静雄

    ○福島説明員 御質問のように、上肢障害の方々の中にもこの措置を必要とするという事情の方々もおられるというふうに考えております。ただ一般的には、上肢障害の場合には歩行困難の場合とやや事情が異なる面もあるというふうに考えておりまして、一律に除外措置をとるかどうかについてはなお問題もあろうというふうに存じております。そこで、さらに具体的な研究を進めまして、できるだけ実際の必要性に対応できるような特例措置をとるということにつきまして、今後よく検討してまいりたいというふうに考えております。
  276. 池田克也

    ○池田(克)分科員 なお、いまの問題に付随して申し上げたいのですが、身体障害者使用自動車の運行に要するガソリン税及び重量税の免税、あるいは有料自動車道の通行料金の割引、きょうも建設の方でこの話が出て、検討していただけるというようなお話だったのですが、ぜひともこれは厚生省としても身障者側に立って、大蔵その他関係各省庁と連携をとって、ガソリン税や重量税のそうした軽減についても、本当に気の毒な、そしてまたさまざまな状況の中でがんばっていらっしゃる方のために温かい施策、措置というものをしていただきたい。これは要望いたしたいところなんですが、御答弁いただきたいと思います。
  277. 上村一

    ○上村政府委員 身体障害の方が自動車を取得される場合の物品税の問題とかあるいは自動車税等の問題につきましては、これまでも努力してまいっておるわけでございます。その他の税制につきましては、税制全般との関係があると思いますけれども、いまお話しの趣旨を踏まえまして検討させていただきたいと思います。
  278. 池田克也

    ○池田(克)分科員 この件は終わりまして、別の問題に移りたいと思います。  厚生省の所管しております国立衛生試験所の問題でございます。これはすでに建設が始められておりまして、東京の世田谷区の上用賀というところにございまして、要するに、さまざまな食品公害等が発生をいたしました、そうした経緯からさらにそうした公害防止のための研究をする、こういう趣旨で現在建築中とわれわれは聞いております。ここでどういうことが行われるのか。一つは、細菌性のものに対する検査が行われるのか、あるいは劇毒物の使用等について、住民からもかなり不安の声が上がってきているわけですが、大まかで結構ですからこの検査の内容、そしてまた、そこで生物が実験用に使われるわけで、私が聞いたところでは、一番多く入れた場合三万匹ぐらいのラットとかマウスとか、こういうものが使われるというふうに聞いておりますが、それが正しいかどうか、お伺いしたいと思います。
  279. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生指摘のとおりに、医薬品、食品あるいは家庭用品等の安全性の問題が当面厚生行政の重大な課題一つになっておるわけでございまして、この医薬品、食品あるいは家庭用品の安全性のための試験のセンターを、直接の所属は私ども薬務局にございますけれども、環境衛生局の問題領域も含めまして一括をいたしまして安全性試験を行うため、国立衛生試験所の構内に御指摘のような建築物を現在竣工間近の状況になっておるわけでございます。ここにおきますところの業務の内容といたしましては、いま先生の御疑念のような、たとえば病原菌であるとか毒劇物等の試験を行うことでは全然ございません。繰り返しになりますが、日常われわれの身辺にございます医薬品、食品あるいは家庭用品の安全性確認のためでございまして、いわばその安全性確認のために、やはりこれも先生指摘のとおりに数多くの、また多種類の実験動物を使用いたします。これによりまして、薬物あるいは食品、家庭用品の安全性の確保、長期にわたる試験をするということがその実態でございます。  したがいまして、その結果といたしましては、動物の実験に伴う死体等の問題は当然ございますが、これにつきましては、たとえば低温でこれを凍結いたしまして、外部に安全な処理を委託する等の配慮をいたし、また、その構内における廃棄物そのものにつきましては鉄筋コンクリート二階建ての廃棄物処理施設を独自に設け、そこからの排出物につきましては東京都の公害に関する条例に適合するように厳重にこれを管理いたすという配慮をいたしておるわけでございます。決して先生指摘のような病原菌あるいは毒物、劇物の試験をするということは事実でございません。そういうことでございます。
  280. 池田克也

    ○池田(克)分科員 いまお話を伺いまして、病原菌等はない。しかし、そういう動物の数量的な御答弁がちょっとなかったのですが、一番多いときは三万匹ぐらい、これはどうでしょうか。
  281. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 現在のところ実験動物といたしましての収容能力、新しいセンター完成の際の実験動物の収容能力といいますか、その予定といたしましては、マウスが一万一千五百二十匹、ラットが七千九百匹、犬、サル、ウサギ等、その他相当数ございます。予定といたしましては、たとえば実験結果のラット、ウサギ等の死体がどの程度出てまいるかというふうな問題につきましては、一ヵ月におきまして大体——先ほど御説明しましたように凍結をいたしまして保存をいたし、これを外部の業者に委託処理をするわけでございますが、これを月二回と考えまして一回平均ラットにいたしますと大体四百八十匹、ウサギ、サル等平均的に百キログラムから百五十キログラムの動物の死体がたまるわけでございまして、これは先ほど申し上げましたように厳重に凍結いたしまして安全な方法で外部業者の処理施設に委託処理する、こういうふうに考えております。
  282. 池田克也

    ○池田(克)分科員 そういうようなさまざまな配慮をされているが、私たちとしては付近住民の方々の心配、この間に立って調和というのは大変むずかしい。たとえば工事についてさまざまな苦情というものが今日まで出ました。これは私も近所におりまして客観的な状況を私自身も確かめてみましたが、既存の建物の取り壊し等にまつわって亀裂を生じたとか、あるいは二階建ての新築家屋のはりが落ちたとか、鉄球を使って一時やっておったそうでありますから、そうした被害といいますか、周辺に及ぼす工事に伴うそうした問題も起きてきている。これに対して、住民の方々が当該試験場に赴いて、何とかしてほしいというような要請が繰り返されております。  私は、これからのこうした国の施設というものが一つ地域に建つ場合に、非常に柔軟な姿勢でそれらのさまざまな被害といいますかそういうものに対応していかなければならない。私が聞くところでは、そうした被害についてもきちんと対応し、必要があれば補償する、こういう姿勢であるというふうに伺っておりますが、それで正しいかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
  283. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生指摘の問題、実は多少の経緯がございまして、当センターといたしましては、当初より近傍の住民の方々のお考えなり御要望なりを承るようにきわめて柔軟に対処いたしてきたつもりでございます。この対策委員会がいわば近傍の町内会の連合会を単位に結成をされて、その対策委員会とは十分に円滑にかつ柔軟にお話し合いをしてきたところでございますが、たまたま電波障害その他ごく近傍の住民の方々の御要望等もございまして、そのようなごく地理的に近い住民の方々の御要望もまた別途に出たということもございます。これに対応いたしまして薬務局といたしましては、そのような御要望も含め、近傍の住民の方々の御要望に対してはできる限りの努力をいたしまして、逐次問題を解決するようにというふうに指示をいたしております。また、今後もそのような姿勢を守るつもりでございまして、また、住民の方々の不安を除くためにも内部の公開とか視察とか、そのようなことにも十分弾力的に応ずるようにというふうに指図をいたしておるところでございます。
  284. 池田克也

    ○池田(克)分科員 私の手元にある資料では、当該地域において建設を施工している業者が、建設省の関東地方建設局に対して、そうした被害等について当該工事に起因することが確実なものについては誠意をもって話し合う、建設会社がそういう約束をしているわけです。私は、建設会社と住民の間のそうしたやりとりというものが行われるよりは、当事者である、設置者である厚生省もこの問題に積極的に対応していただきたい。いまの御答弁で、町会ぐるみの一つの動きがあります。また、その人たちと違う考えの人たちも中にはおります。いろいろな考え、いろいろなグループがありますが、要は、その住民がそうした要望を持つ場合には個々にそうした意見をくみ取って、それに対して本当に円滑かつ柔軟な対応をしていただきたいということを要望したいと思います。  また、いま御答弁がありましたような疑念、これはそうした検査、試験場ですから、試薬が出るんじゃないか、水銀が出るんじゃないか、あるいは動物等が地震その他の災害によって飛び出してきたらどうだ、さまざまなそうしたものが渦を巻くわけです。これまた私は当然のことだと思うのです。そうしたことに対して、随時見たい、あるいは話し合いたいというようなことに対して積極的に対応していただきたい。今日でも何とか祭りというのをやらして開放して融和を図っていらっしゃることは大変結構なことだと思うわけです。私自身、さらに一歩突っ込んでそうした住民の御要望というものに対して理解を示し、それを受け入れていく、こういう姿勢を要望したいのですが、よろしくお願いしたいと思うのです。
  285. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 今後とも御指摘のように地域住民の不安あるいは苦情等に対しましてできる限りきめ細かく対応してまいりたいと存じます。
  286. 池田克也

    ○池田(克)分科員 最後になりますけれども、これは大臣にお願いするのですが、こういう国の検査機関等は、将来は願わくは密集した住宅地じゃなくて近郊に持っていって、こういう問題を——場所は確かに学問の世界との連携がありますから、大学やそうした専門家と連携が必要だから近いところ、それは私も大事だと思います。しかし、なるべくならば住民にそういう不安を初めから持たせないような方向で進んでいくべきだ。将来の問題です。さらにここがもっと拡充されることがまた起きてくるかもしれません。いま新築中です。これですぐ黙っておさまっているかというと、またさらにもう一つ建つ、もう二つ建つということになってくるとさらに問題が大きくなってしまうので、この地域に関してはもうこれっきり、この次増築するときはどこかへ移す、こういうふうにいかないかと思うのですが、大臣、どうでしょう。
  287. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 大臣の御答弁の前に一言申し上げますが、現在の衛試の敷地は非常に手狭でございまして、現実問題として、多少の空き地はないことはございませんが、あの地域におきましてこの種の安全センターを非常に大規模に拡大するということは技術的にむずかしいかと思います。
  288. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 基本的には先生の御意見のとおりだと思います。できるだけ密集地帯を避けていくべきでございますので、この点は十分拳々服膺してまいります。
  289. 池田克也

    ○池田(克)分科員 終わります。
  290. 住栄作

    ○住主査代理 以上で池田君の質疑は終わりました。  次に、小林政子君。
  291. 小林政子

    ○小林(政)分科員 私は、身体障害児の進路と今後の対策という問題について、厚生大臣にお伺いをいたしたいと思います。  現在の深刻な雇用失業者が多発をしておりますこういう情勢のもとで、障害者の就労の機会というものはとりわけ困難になっておりますけれども、この三月の卒業期を目前にして、養護学校の教師はいま、高等部を卒業する生徒の進路に必死でございます。卒業後一般の企業や官庁に就職のできない、非常に障害の程度が重くて、そして通常と同じ仕事をやることが困難である、こういう障害児に対しまして、やはり一定の仕事と集団の中で生活が——生きがいというものを持たせてやりたい、こういう施設が非常に不足をしているということが現状だろうというふうに思います。施設が足らない、行くところがない、こういうために結局は在宅障害ということになって、そして家に閉じこもり、友人もなくさびしい暮らしを送っていくという傾向が最近非常に顕著に出てまいっております。  というのは、これは東京都の教育委員会が都内の養護学校の高等部卒業生の進路状況というのを、四十七年から五十年にわたって調査をいたした資料がございますけれども、それによりますと、就職は、肢体不自由児の場合には、四十七年度は一四%就職ができたんですね。ところが、五十年度はこれが一〇%に落ちております。それから、精神薄弱者の場合には、これもまた——いろいろと精神薄弱者の場合には、就職といっても、一般の企業、民間というのは、たとえば城北養護の場合ですと二人であって、あとは授産所だとか福祉作業所だとか都のセンターだとか中伊豆のリハビリティーだとか、こういうところを全部進路というふうに言っておりますけれども、こういうものを含めて、四十七年に七八%であったものが、五十年には五九%ということに落ち込んでいるという数字もはっきりと出ておりますし、また、国の授産施設だとかあるいは更生施設、こういうところに入所をいたします数字も発表されておりますけれども、肢体不自由児の場合には、四十七年には七四%であったものが、結局五十年にはこれが逆に八六%という統計数字が出ております。在宅が、卒業生に対しまして四十七年には二六・六%であったのが、四一・八%と増加をいたしておるわけでございますし、精神薄弱の場合についても、やはり四十七年二一%であったものが、五十年には四〇%にこれがふえておりますし、在宅も一・九%から一〇・二%というこの数字があらわしておりますことは、就職は減るという傾向がずっと出てきております。それに反して授産施設や更生施設への入所あるいは在宅がふえている、こういう結果が東京都の調査の中で出ておりますけれども、私は、この問題について、都がこれらの卒業してこれからの進路をどうするかという子供たちについて、具体的にどのような対策を今後お立てになろうとしているのか、まずこの点についてはっきりとした見解を伺いたいというふうに思います。
  292. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 詳しいことは局長からお答えいたしますが、私どもは心身障害者の更生施設は、いまたとえば福祉工場あるいはまた通所施設、更生施設、授産施設等が大変おくれていると思いますので、社会福祉施設の整備としては、この方面に重点的にやってまいりたいと、努力を大いに今後ともしなければならない、かように考えております。
  293. 小林政子

    ○小林(政)分科員 五十四年度は養護学校の義務化ということが言われておりますときに、実際に現状の授産所なりあるいは更生施設、こういったものでは、精神薄弱者あるいはまた福祉法に基づく精神障害者の方は、結局行く先がますますなくなり、在宅というものがふえていくのではないか、私はこのように非常に危惧をしております。この問題について、ただふやしていくということは結構でございますけれども、ぜひふやしてもらいたいと思いますけれども、その場合に、具体的な計画というようなものをこの義務化に伴って行う用意があるのかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  294. 石野清治

    ○石野政府委員 確かに、養護学校を卒業してもなかなか就職できないという実態がございます。五十四年度はちょうど養護学校の義務化の問題がありますので、実はそれを見越しまして、五十二年度から新しい対策といたしまして精神薄弱者の通所援護事業というのを始めたわけでございます。  これは、考え方はいろいろございますけれども、やはり地域社会で見守っていかないと、こういう子供さんたちはなかなか生活援護と申しますかそういうものはむずかしい、そういう基本的な考え方を持ちまして、まあ市町村がやることも一つでございますけれども、むしろ精神薄弱者の場合でございますと、幸いに育成会という親の団体がございますので、その親の団体と地域社会それから市町村、国と、こういう四者が一体となってこの問題を解決しなければならない、こういう考え方に立ちまして、実は五十二年度に十五カ所の精神薄弱者の通所援護事業というのを始めたわけでございます。  これはあくまでも各ブロック、現在でございますと八ブロックに分けまして、そのブロック単位に大体二カ所程度つくりまして、それを呼び水といたしまして各地方につくっていただく、こういう考え方に立っているわけでございます。これは五十三年度にはさらにそれを倍にいたしまして、三十カ所という形にいたして逐次これを伸ばしていけば、現在先生の御心配の点は少しずつ解決できるのじゃないか。  ただ問題は、基本的には労働雇用の問題だと思うわけでございまして、身体障害者の場合は身体障害者雇用促進という法律がございますが、精神薄弱者の場合についてはそういう義務規定がないわけでございまして、非常にやりにくいわけでございますけれども、厚生省の立場からすれば、できれば少しでもそれを前進させてほしいという気持ちがございます。ただ、現実に各企業の方はこれを受け入れるというのはなかなかむずかしゅうございますので、かたがた私の方としましては、福祉のサイドから、できるだけいま申し上げましたような地域で、しかもきわめて近い地域でその子供さんたちを見守っていく、更生をさせていく、こういう考え方に立っているわけでございます。
  295. 小林政子

    ○小林(政)分科員 通所援護施設というものを昨年十五カ所、今年の予算で三十カ所、これを地域の中で実際につくっていけば何とか解決の方向が出るのではないかということでございますけれども、これは育成会に対する補助事業といいますか、育成会に補助をして、そして行うという形態をとるようでございますけれども、それはそれなりにそういったものも積極的に進めていく必要があるだろうと私は考えております。しかし問題は、これらの子供たちの仕事の確保も含め、あるいはまた、すべての障害者と障害児が人間として尊重され、その能力に応じて教育と訓練を受け、そして指導されることによって非常に大きな発達が保障されるという立場から、この問題についてはもっと積極的にこれらの施設を国の責任でつくっていくことが大事ではないか、私はこのように考えております。     〔住主査代理退席、主査着席〕 これについて授産所と同じように東京都の福祉作業所、これは単独事業でやっておりますけれども、先日見てまいりました。非常に明るい施設で、しかも多くの子供たち、六十名おります。私が見に参りましたのは足立区の綾瀬にあります東京都の福祉作業所でございましたけれども、ここの所長さんは婦人の所長でございまして、そして六十名の子供たちが本当に生き生きと楽しげに作業に打ち込んでいる姿を見てまいりました。そして職員がいろいろ地域の中で具体的に仕事を民間から求めてまいりまして、おもちゃだとか消しゴムに目を入れるというような単純作業でございますけれども、やはり仕事をしているということに非常に生きがいも感じるし、何か表情もとても明るく、私は生き生きと仕事をしている姿を見まして、こういった問題こそ今後国がもっと積極的に力を入てやっていかなければならないんじゃないだろうか、在宅にだけは絶対にすべきではないと私は考えております。  私自身この城北養護の子供たちの実態を調査した「自己自主度の実態調査」というものも見せてもらいましたけれども、食事だとか、排便だとか、洋服などを着たり脱いだり、こういうことが自分ひとりでできるか、介護を必要とするかという調査でしたけれども、この中で、食事では正常に近い状態で、あるいは少しこぼすけれども自分で食べられるという人は小学生の段階では六三%でございますけれども、中学生になりますとそれが七四%になり、高等部になりますとほとんど、九六%が食事がひとりで、介助なしでできるというふうになっておりますし、また、排便も小学校の生徒は六三%が介助を必要としますけれども、高等部ではもうほとんど八八・五%の子供たちが介助を必要としない、自分でできるという状態になっております。衣服を脱いだり着たりという問題についても、小学生のときには三七・四%だったものが、高等部になると七三%は一人で脱いだり着たりが自由にできる。この城北養護の場合には五〇%からの子供たちが車いすでございますので、こういう実態の中で十二年間の生活機能訓練というものが非常にその子の機能を向上させている。こういった実態を私見ましたときに、この生活機能訓練と教育というものが本当にどんなに子供たちのために大事であるか、そしてそのために集団の喜びや、作業に打ち込んでいる明るい表情を見ましたときに、進路がなく在宅ということだけは、これはせっかく訓練をいたしましたものが機能がとまってしまうか、あるいは後退をしてしまうという結果を招くわけでございます。  したがって、これに対していままでの十二年間にわたる具体的な成果を上げております訓練や教育の結果について、これが在宅ということになれば、これは私は重要な問題だろうと思いますけれども、厚生大臣のお考えをまず私は伺いたいと思います。——これは大臣にお聞きしたいと思います。
  296. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、私どもは、生活指導や作業指導について行う通所援護事業というものはこれからも大いに伸ばしてまいります。国としても積極的に助成を図っていきたいわけでございます。ただ、在宅をゼロにしろという御意見については、これはやはり在宅ということの意義等についても福祉関係の方々は一つの見解を持っておられる面もございますので、恐らく先生もそういう意味でおっしゃったんではないだろうと思うのでございまして、在宅でいても一日じゅううちにいて何もしない、訓練もしないというようなことではいかぬから、通所援護事業の方へ通わせながら在宅でやっていく、すなわち施設の収容と対比した意味での在宅ということをおっしゃったんだろうと思いますが、そういう方向で今後も一層努力していきたい、かように考えております。
  297. 小林政子

    ○小林(政)分科員 通所援護施設の場合には、これは何と言っても子供の数も十五人程度、あるいはもう少し大きいところもできるのかもしれませんけれども、非常に数も少ないし、また入所の子供の数も結局は少ない。しかもそれは運営については育成会を通して、地域の障害児を持つ親がいろいろと努力をしたり、運営をしていかなければならない。こういうことは私は、障害の程度によってこれはこれで必要であろうと思います。しかし問題は、国の責任でこれをどうしていくのかということが最も重要な問題ではないか、私はこのように考えております。現在精神薄弱者は、特に十八歳以上では十八万六千三百人といわれておりますけれども、その中で現在更生施設なりに収容されている人たちはわずか一万五千四百人にすぎません。そして結局は、あと授産所とかその他ということになるんでしょうけれども、これで収容とか、あるいはまた事足れりというようなことには私はならないと思うのです。ですから、それに対して通所援護施設だけこれから進めていけばこの問題の心配はなくなるんだ、大臣はっきりそういうふうなことを言い切れますか。私はやはりもっと国が責任を持って、これらの子供たちのための積極的な計画も立て、そして機能を伸ばしていくためのこういう施設というものが必要ではないか、こういうことを検討していただきたい、このように質問しておりますので、その点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  298. 石野清治

    ○石野政府委員 ただいまお話がございましたように、在宅の精薄者は約十七万人おります。これをすべて在宅のままで援護授産といいますか通所援護事業の対象にしようということではございませんで、中にはやはり現在の制度でございます授産施設あるいは更生援護施設、そういうものの拡充はもちろん国の責任でやっていかなければなりませんので、これは各都道府県の整備計画、経営計画を十分参考にしながらさらに整備していきたいと思います。  それから同時に、やはり一番いいのは、先生おっしゃるように、在宅のままでできるだけ近いところに通いながら訓練を受け、そして自立できるのが一番望ましい姿だと思いますので、そういう意味で私の方はとりあえず通所援護事業の整備という形でやってきたわけでございますけれども、これで足れりとするわけではございませんで、もっといい方法があればさらに検討を進めなければなりませんし、それからなお現在の制度そのものはさらに拡充していきたいと考えておるわけでございます。
  299. 小林政子

    ○小林(政)分科員 ただいまのは精神薄弱者の場合でございますけれども、やはり重い障害を持っております身体障害者、この問題もまた、最近地域で体の不自由な人たちが、自分たちで共同作業所を設置して、この施設づくりを行っていきたい、このようなところに力を合わせていろいろと運動をされておりますけれども、これらの問題についてもやはり具体的に国が積極的な助成措置をおとりになる必要があるのではないか。いま障害者の就職問題がきわめて困難に到達しているときに、やはりこういった共同作業所などに国が今後どのような対策をおとりになろうとしているのか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  300. 上村一

    ○上村政府委員 重い身体障害者の対策でございますけれども、一つは、更生援護施設というものを整備して、障害の種類なり程度に応じた訓練をやる、それからもう一つは、身体障害者の授産施設とか福祉工場を整備するといったものが厚生省として行います身体障害者の社会復帰対策であるというふうに考えるわけでございます。  御質問は、各地域で小規模施設を多数つくろうとする動きがあるけれども、それに対してどう対処するかというふうなお話でございますが、現在身体障害者の施設につきましては、施設の設備の面なりあるいは配置する職員の面で一定の基準を設けておりまして、それを改めまして小さな規模のものを認めることというのは、何といいますか、入所者に対します指導の効果なり——と申しますのは、いろいろな専門職員を確保するとか、あるいは集めて指導することが効果があるとかといういろいろな面があるわけでございますので、これはすぐに踏み切るということは容易なことではないのではないかなというふうに考えるわけでございます。
  301. 小林政子

    ○小林(政)分科員 身体障害者の場合も、十八歳以上は百三十一万四千人という数字が出ておりますけれども、この中で実際に働いている者五十七万人、そしてあと、いろいろ体に障害があったりして働けない人が四十二万人程度ということが言われておりますので、結局、その他の三十二万からの人たちが何らかの形でやはり就職ができない、あるいは仕事につけない、何らかの形で困難に陥っているわけです。  私はそういう中で、それじゃ先ほどおっしゃいました福祉工場ですか、これの具体的な計画をどのようにお立てになっているのか、そしてまた、それだけではなくして、いま共同作業で本当に働く場をみずからつくろうとする人たちに対して、積極的にこれを助成していくという態度をおとりになることが非常に大事なことではないか、このように考えますけれども、この点についてはいまのところそういう考え方はないということなんでしょうか。
  302. 上村一

    ○上村政府委員 重い障害者に対しましては、先ほどから申し上げておりますように、重度身体障害者の授産施設と申しておりますけれども、それを相当数整備しつつあるわけでございます。それから福祉工場は、まだ数は十三ほどしかございませんけれども、これも今後伸ばしてまいりたいというふうに考えておりまして、国がその施設整備に予算措置を講じ、それから運営について予算措置を講じますのは、そういったたぐいの施設に重点を置くべきではないかというふうに申し上げたわけでございまして、小規模施設の存在を否定するつもりはございません。
  303. 小林政子

    ○小林(政)分科員 大臣に要望をいたしておきたいと思います。  とりわけ就職困難と言われるような、一般の人でも失業者が出るというこういう情勢のもとで、一番やはり働く喜びとか生きがいを感じさせなければならないというふうに私ども考えております障害者の方々、この人たちに対して私はむしろもっと国が積極的な姿勢で臨んでもらいたい、このことを強くお願いをいたしておきたい、このように思いますけれども、御答弁をちょうだいいたしたいと思います。
  304. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 これは私どもとしてはちっとも異議はございません、できるだけきめ細かく対策をとっていかなければいかぬと思いますので、今後とも努力をしてまいります。  あるいは先生の先ほどの御意見は、何らか作業につき得る程度の障害の者で就職ができない者が三十数万人おるから、この方々に対する対策を忘れるな、こういう御意見じゃないか、場合によったらそれらの方々が少数でも集まって、自分たちで自立の施設を持ちたいという場合に、国が何か積極的な援助をしないか、こういうことのように承ったのですが、先ほど申し上げましたように、一般的には相当の規模がありませんと、専門職を置く等、あらゆる点で指導をする、生活指導と作業指導と両方ありますから、なかなか小規模ではそれがうまくいかないのでしょう、そういう意味で局長がとりあえずは先ほど申し上げました施設を重点的に考えていく、こう申し上げたわけでございますが、自主的なそういう自立更生の動きというものの芽を摘まんでしまうことは、これは政策としても悪いと思いますから、もう少しよく具体的に検討させていただきまして、そういうものが何らかのちょっとでも助成があれば実現が各地で行われていくようなことがあるのか、これはやはり親たちとの関係、連携というのも考えつつ、もしそういう必要性といいますか、その有効性がありましたら、われわれもひとつ積極的に検討させていきたいと思いますので、なおまた具体的なそういう御提案については詳しく承って、将来施設充実を図る意味で必要な対策が十分地域的にも行き届くようにわれわれも研究させていただきます。
  305. 小林政子

    ○小林(政)分科員 時間がございませんので、最後に一言。  結局この五十四年度の養護学校の義務化ということに伴いまして、養護学校に入ってくるお子さんも比較的重度化の傾向がこれからは強まっていくであろうというふうに見て差し支えないように考えております。したがって、この入り口は養護学校の義務化ということで非常に広がるわけでございます。いままで家庭の中だけで、就学猶予ということでおうちの中にいたような子供も、結局この義務教育ということで養護学校に入学をするということになるわけですし、私は、それはそれなりに子供たちの機能を伸ばしていく上で非常にこの義務化ということが重要なことでもあり、大切なことだというふうに思っておりますけれども、入り口は広がるけれども、出口の方は本当に根本的な対策がなく、そしていままでのものを単に若干補充するような延長というようなことになりますと、これは十二年間の訓練を受けて、教育を受けてきた子供たちの機能をさらに伸ばしていくというような方向に発展させることが不可能になります。入り口を広げれば、したがって卒業する出口の対策も抜本的に検討をしていくべきではないか、このことを最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  306. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、もうだれが考えても当然のことでございますから、私どもは、この養護学校の来年からの義務制の結果、高等教育まで終えた方々をどういうふうにさらに社会復帰を促進していくかということについて、いままでの制度制度として伸ばしながら、一方において新しくひとつ検討をいたしまして、必要な対策があればとっていきたいと思っております。
  307. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして小林君の質疑は終了しました。  次は、長谷雄幸久君。
  308. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 私は、公明党の長谷雄幸久でございます。  健康で長寿であることは、人間として共通の願いであります。憲法は、健康で文化的な生活を規定し、これを国の責務としております。そして国民は、一日も早く憲法が目指す福祉国家の実現を願っております。  さて、国民の平均寿命は、医学の進歩や公衆衛生の向上などにより、年々伸長いたしております。しかし、こうした明るい傾向のある反面、国民の健康については、生活環境の悪化などの事情により、必ずしも良好でないというのが実情であります。その傾向は特に大都市生活者に著しい状況であります。この健康や医療に対する国民の声は、これまで各種の世論調査などにあらわれておりますが、たとえば昭和五十一年十一月に東京都で行った都民の健康に関する世論調査によりますと、医療衛生対策についての要望が物価問題に次いで第二位に挙げられております。そして、その健康問題の中でも、救急体制充実、そして公立病院や保健所の充実が、それぞれ第一位、第二位に挙げられております。そこで私は、この救急医療体制充実と国立及び公立の病院及び保健所の充実問題について、質問をしてみたいと思います。  まず、救急医療体制について質問をいたします。  交通事故で重傷を負ったらどうしようか、あるいは子供が夜中に急に高熱を出したら、こうした不安はだれしもあることであります。これに対処する救急医療体制の整備がきわめて重要視されなければならない。しかし、なかなか現実は完備していないということから、国民の不安は絶えないところであります。  ところで、お伺いをしますが、救急車の出動回数は年間相当数に上ると思われますが、過去一年間の数字を掌握しておれば御報告を願いたいと思います。
  309. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 ただいま手元に資料を持ち合わせませんが、五十一年の消防庁の発表では年間百六十万件を若干上回っていたと思います。
  310. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 そのうち特に転送された数を掌握しておれば、転送回数何件というぐあいに御報告を願いたいと思います。
  311. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 転送回数でございますが、何回というふうに分かれておりますけれども、三万八千件と報告されております。
  312. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 それでは私の方でつかんだ資料から申し上げますと、転送の数は、一回ないし三回が三万七千八百七十三件、四回ないし六回が百三十一件、七回から十回は四件、合計三万八千八件、これは昭和五十一年度の実態でございます。そのことは、救急医療体制の整備がおくれていることの証拠であると思うわけでありますが、ここで私は、昭和五十二年十一月四日閣議決定がなされた第三次全国総合開発計画、いわゆる三全総計画の中で、救急や休日夜間医療について地域保健医療計画により体系的に救命救急センター等の整備を図る必要がある、こう言われているわけです。  そこで、厚生省では、これを踏まえて昭和五十三年度の予算に救急医療対策として相当額の費用を計上しております。そのこと自体はそれなりに評価できるわけですが、この三全総計画に先立って、実は東京都ではすでにその実施段階にございます。これまでの国の施策のおくれに対して批判があるわけですが、おくればせながら整備を急ぐ必要があるわけです。  そこで私は、特に人口急増地域として整備のおくれが目立つ東京都下の三多摩地域における救急医療体制の整備について、三全総計画の中でどういう計画を織り込もうとするか、御計画なのかをお尋ねします。
  313. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 東京都におきましては、四十八年に一たん都内の救急医療計画を作成いたしまして、実施に移りました。そのときは、東京都下が全部で六ブロックに分かれていたと思います。しかし、五十一年度から厚生省の救命救急センター、第三次救急医療センターの整備計画が始まり、また、五十二年度から……(長谷雄分科員「ちょっと答弁を正確にしてもらいたい、私は三多摩地域における状況について聞いているのですから」と呼ぶ)それで、はしょって申しますと、現在東京都の救急医療対策協議会において計画を練り直しております。現在私どもが聞いておりますものは、まだ最終的に固まったものではございませんが、休日夜間急患センターは十一カ所つくっております。ただ、このうち夜間を担当しているところは四カ所でございます。また、その管内の、十の郡市医師会、地区医師会は全部当番医制をしいております。これはいわゆる第一次救急医療の体制でございます。  次に、第二次の救急医療の体制は、三多摩地区をさらに三ブロックに分けて実施をいたしております。具体的に申しますと、西多摩ブロックでは、いわゆる休日の昼をやるものが三病院、休日の夜をやるものが五病院、また南多摩ブロックでは昼をやるものが八病院、夜をやるものが五病院、北多摩ブロックでは昼をやるものが七病院、夜をやるものも七病院というふうになっておりますし、そのほか、例の消防法に基づく救急告示の病院、診療所も八十四カ所ございます。  問題の第三次救急医療センターでございますが、計画としてはこの三つのブロックに一つずつということでございますが、すでにでき上がっておりますのは武蔵野日赤病院だけでございます。なお、前に申し上げましたように、この地区のさらに具体的な計画についてはなお本決まりではございません。
  314. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 いまの答弁で必ずしも十分でないわけですが、この救急医療については、公立病院の不採算の大きな要因になっているところでありますが、救急医療体制を前進させるために、公立病院に対する補助対象の拡大、補助基準額の引き上げ等、現場の実情に応じた改善をするなど、国の助成措置の強化が必要であります。  次に、昭和五十三年度実施予定の市町村保健センターについてお尋ねをします。  保健所は、公衆衛生行政における地域保健機関として、多種多様な役割りを果たすものでありまして、その整備の充実が叫ばれているところでありますが、その整備の一環として、十カ年目標で昭和五十三年度より予算化をみている市町村保健センターについて、これもやはり人口急増地域一つである東京都下の三多摩地区については特に保健行政のおくれが目立っているのが現状であります。その整備はその住民の切なる願いであるわけでございます。  そこで、三多摩地域におけるこの市町村保健センターの構想はどうなっているかをお尋ねします。
  315. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生指摘の市町村保健センターでございますが、私ども百カ所、全国の市町村に建てるという来年度の予算案でございます。ただ、そのうち、それをどこに建てるかということにつきましては、これはそもそも市町村におきまして衛生の仕事を進めていく上にそれを助力しよう、こういうふうな考え方でございますので、市町村におきましてこういうところへこういうのを建てたい、こういうふうな要望を承った上で、どこそこにつくるというふうな配分の仕方をいたしたいと考えております。そういう意味合いで、三多摩地区からもし御希望があるならば、いろいろその内容を伺いまして対処をしたい、こういうふうに考えております。
  316. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 前向きな答弁をいただいているので次に進みます。  このセンター内に主に家庭の主婦を対象とした相互扶助健康診断を制度化することをぜひとも将来考えていただきたい、こういう要望が地元住民から大変強いものがあります。さらに助産婦等を置き、短期入院を可能とする施設を検討する必要もあるのではないか、こういうことでございますが、いかがでございましょうか。
  317. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生から御指摘婦人問題でございますが、婦人の健康問題につきましては、やはりこれは五十三年度予算の中に織り込んであるわけでございまして、全国で百二十地区を定めまして、そこにおきまして婦人の健康診査、それから健康診査の結果、問題がある方についてはいろいろな御指導を申し上げるという予算を組んでございます。さらに、それぞれの地域におきまして自主的な地域組織の活動をするのを援助するという予算も組んでおるわけでございます。ただ、先ほど申し上げました市町村保健センターができたところでやるとは必ずしも決まっておりませんが、できているところでは、当然そこが中心になってこういった活動をやられることになろうかと思います。
  318. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 次に、母子保健と関連して産院の施設運営などについて申し上げておきたい。  昭和四十年の夏、東京の新宿にある日赤産院に入院中の乳児が集団で結核にかかった事件がありました。東京都衛生局は厚生省国立公衆衛生院、国立予防衛生研究所などの結核専門医を動員して乳児結核調査委員会をつくり、原因を調査し、病院内での感染であると断定をし、裁判ざたにもなったことがございました。新生児は感染に対して抵抗力がないと言われております。しかるに、その母子が同室であるという傾向が進む病院がかなり多くなっております。また、その取り扱いも各病院によってまちまちであります。しかし、生後二十四時間から三十六時間で六人部屋のところで母親がいる。そこに新生児が四六時中退院まで同室をさせておくということは、たとえば見舞いに来た訪問客などの出入りの中で母子、特に新生児の保健衛生上問題があるのではないか、このことを注意を喚起をしておきたいと思います。  ここで幾つかの提言を交えて意見を申し上げておきたいと思います。  初めに家庭看護指導でございます。家庭看護指導についてはすでに自治体で実施しているところもありますが、厚生省としては今年度から実施の予定と聞いておりますが、この点について東京都下の保谷市にある社会福祉法人東京老人ホームでの在宅寝たきり老人に関する昭和五十二年十月一日実態調査報告書によりますと、老人専門病院の必要性を強調しているわけでありますが、老人専門病院の実施を図る考えはあるかどうか、さらに短期入院制度を創設してはどうかということであります。  次に、訪問看護制度の提唱をいたします。この制度は、病院で治療後一定の状態に回復した後に患者を家庭に戻し、看護婦が定期的に家庭へ訪問をして病院内で看護しているのと同じ内容の看護を実施するという趣旨であります。この制度実施しますと、現在の医療機関の効率的な運用を図ることができ、しかも多くの患者を治療できるということのメリットがあり、さらに医療制度がなお不十分な現状が改革されない限り、将来の高齢化社会に対する限定された医療施設の有効な活用システムである、こう考えるわけであります。さらに差額ベッドや付添看護料の解決に一歩前進になる、こう考えているわけですが、この点についてこれを実施する考えがあるかどうかをお尋ねいたします。
  319. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず第一の御提案の老人専門病院をつくったらどうかという問題でございますが、確かに東京都立の養育院のような専門病院がございます。しかし、私どもは、老人の病気というのは急性期もあれば慢性期もございます。急性期の場合にはやはり一般総合病院に入れて各科の総合診療をすべきである、こう考えるわけでございます。それで非常にマイルドな慢性期になれば、これはすでにございます特別養護老人ホームに移っていただく、そういったことでいいのではないかと考えております。したがって、先ほども御提案がございましたけれども、たとえばフランスのように病院の隣に特別養護老人ホームがある、患者さんは病院へ行ったり特別養護老人ホームへ帰ったり、そういうふうな形が望ましい姿ではないかと考えております。  次に、訪問看護の問題でございます。すでにたとえば川崎市だとか神戸市あたりでは一部モデル的、実験的に訪問看護をいたしております。しかし、この問題はやはり患者の病気の種類とか病状だとか、家庭の状況だとか、あるいはまた主治医の問題とかいろいろございまして、そう簡単にはまいりません。現在においては、やはり保健所の保健婦さんがときどき御指導に行く。ふだんはヘルパーさんが行ってお手伝いをしている。また、日赤等の一部の大病院では、退院なさった老人の家庭を日赤の保健婦さんあるいは看護婦さんがときどき訪問指導するというふうなこともやっておりますけれども、これはいろいろな問題を十分に慎重に検討した上の将来の問題になろうかと考えております。
  320. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 次に、共同保健協議会の設置の提唱をいたします。国の救急医療体制を円滑に進めるに当たって、地域の医療需要に即した医療体制を確保するために関係機関の有機的連係の確立が必要であることは言うまでもありません。私がここに提唱するこの共同保健協議会の設置については、すでにわが公明党の福祉トータルプランの中にも提示をされているところであります。これに類似する制度をいち早く地方自治体の中で実施に移しているところも現在ございます。また、厚生省昭和五十三年度実施予定の家庭看護指導制度についても、いま申し上げた共同保健協議会的な発想に立つことが必要ではないか、こう考えております。  そこで、お尋ねをしたいのは、将来厚生省においていま申し上げた共同保健協議会の設置、この制度をぜひ実現をしてもらいたい、こういう希望でございますが、それについてはどのようなお考えを持っておられるか。
  321. 松浦十四郎

    ○松浦(十)政府委員 ただいま先生が御提案になられました共同保健協議会というのでございましょうか、少しずれることになるのでございますが、私ども公衆衛生を担当する公衆衛生局としまして、昭和五十三年度に各市町村に健康づくり推進協議会というのをつくっていただこう、それについて補助をいたしましょう。これはどういうことかと申しますと、その各地域地域で、救急医療とかそういう問題とはちょっと外れると思うのでございますが、いわゆる健康を守っていくという問題につきまして、ここへ医療の専門家の方あるいは学校の方、保健所の人あるいは地区組織の方々に入っていただきまして、その地域の衛生を向上させるためにどうしたらいいかというようなことを検討していただくということを予定いたしております。
  322. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 この実現に当たって、いまちょっと触れられましたが、この協議会の構成員や運営形態などについて、特に医療、看護、保健、福祉関係等のいわゆる専門家はもとよりのこと、当該地域住民の参加を求めて、各地域の意見を尊重していくことが大切ではないかと思っております。  こうした各種の提案を交えて意見を申し上げましたが、最後に質問申し上げましたこととあわせて、大臣の方から所見を伺いたいと思います。
  323. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 地区における婦人団体の方や、あるいはまた地区衛生組織の方々といいますと一般住民が参加しているわけでありまして、あるいは保健所長とか医療機関の代表とかそういう広範な、あるいはその地域において相当の学識経験を有するような方々等、全部くるめまして協議会を構成していただきまして、そしてその地域における健康づくりを推進していく、必要な場合は治療に対するいろんな指導も病院とつなぐ、あるいは診療所とつなぐというようなこともやってまいりますし、婦人と老人の場合は特にいろいろ手厚いケアをやっていきたい、こう思っておりますので、おおよそ公明党さんの福祉トータルプランの中にありますあの構想と大体近い線でございます。これは全市町村において将来ひとつ国民の健康づくりに大いに役立てたいと考えておりますので、御意見は十分拝聴いたしまして、今後ともわれわれは努力をしてまいりたいと思います。
  324. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 大臣、最後にお尋ねをしたいのですが、その実現のめどというのはどのくらいの時期に置かれておるか、もしおわかりになれば。
  325. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 五十三年度から推進してまいります。
  326. 長谷雄幸久

    ○長谷雄分科員 終わります。
  327. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして長谷雄君の質疑は終了いたしました。  次は、中野寛成君。
  328. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 私は、在日外国人、特にその中でもきわめて特異な今日までの歴史を持っております在日韓国人のわが日本国内における社会保障等を含めまして、本当に日本の国が誇り得る制度のもとで生活をし、そして日本という国が本当に人権を守り、あらゆる人々を幸せにするために最大の努力を払っている、そのことが世界にまさに証明をされる、そういう状態でなければ、わが国がまさに民主主義の、そして人権の上での先進国としての意味がない、そういう観点からこの在日韓国人の問題について若干のお尋ねをさしていただきたいと思います。  なかんずく、日本は平和を維持し、また世界の平和に貢献をする、そのことの中で栄誉ある地位を占めたいと憲法の前文にも記されておりますけれども、そのことを本当に実現をし具現化していくためには、これらの諸問題が積極的に解決されなければいけないのではないかというふうに私は考えるわけであります。  そういう意味で、韓国人に限らず、日本に住むすべての国々の人たちを大切にする行政というものが常に心がけられなければいけないと思うわけでございまして、ちなみに韓国人に関して申し上げれば、日韓の間に結ばれました法的地位協定の中にも「大韓民国国民が日本国の社会秩序の下で安定した生活を営むことができるようにすることが、両国間及び両国民間の友好関係の増進に寄与する」ということがはっきりと明言されているわけであります。このことについては、当然厚生省としてもまた大臣としてもその趣旨を心がけておられると思うわけでありますが、基本的な姿勢につきまして、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  329. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、一般的には在日韓国人につきましてわが国の社会保障の諸給付が行われるようにすることがいいことである、これはもうそういう考え方でございます。したがって、現在は御承知のように被用者保険、国民健康保険あるいは生活保護法あるいは公衆衛生に関するいろいろな給付、社会福祉関係の給付あるいはまた各種身分、医師とか歯科医師とかそういう身分の取り扱い、それから取り締まりの法規、薬事法等、日本人と同様にこれらは全部同じような取り扱いをしているわけでございます。ただ、たとえば公務員となることができるという条件を持っておりますような民生委員とか特殊な公務員、これは公務員の方の取り扱いと同じようにしておりますから、適用しておらない。あるいは遺家族援護、これは適用外になっている、これは御了承いただけるだろうと思うのです。  問題は、国民年金とかその他福祉年金の関係だろうと思うのでございまして、これは御承知のとおりこの法律のたてまえが日本に居住をするという条件がございます。したがって、そういう面からはいままで在日韓国人には適用になっていないわけでございます。  先進国云々のお話がありましたが、国際人権規約に加入しておる先進国においても、それぞれの国とのお互いの双務協定を結びまして、それによって実行をいたしておりますので、そういう面から言いますと、私どもはそれぞれの国との協定を結んでいくことになるだろうと思うのでございますが、現在のたてまえが、法律要件が全然違うものでございますから、そういう面では直ちに実行するということは困難でなかろうかと思っております。  基本的には私どもはやはり、国際人権規約等を将来批准するかどうかは、外務省を通じて政府全体の問題でありますけれども、その批准の方向で日本としても十分対処していかなければいかぬという基本的な考えを持っております。そういうようなことでございますが、現在の年金関係のすべての立法のたてまえが、居住をしているということが条件でございますので、そういたしますと、たとえ国籍は日本人でも居住していない者は適用しないわけでございますので、これは平等に取り扱いをしていかなければならない、こういうふうに考えます。
  330. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 まさに日本に居住しているということが条件というふうに大臣はおっしゃられました。これはいわゆる属地主義の問題であります。私は、むしろいろんな国籍をお持ちの方が日本に住んでおられると思います。しかし、まさに日本人と同じ歴史を持っておられます。そういう意味で、日本に住んでいるということ、それと大臣は御答弁なさらなかったけれども日本人であるということ、その二つが条件になっておることは私も承知をいたしております。しかし、日本人であるというそのことについて、この地位協定の中で「教育、生活保護及び国民健康保険に関する事項」は、言うならば特別に妥当な考慮を払うような項目になって、その部分についてはある程度の保障がなされているわけであります。そのことも私は承知をいたしておりますけれども、少なくとも今日永住許可をもらっておられます皆さん方のほとんどは、またその親、祖先は、むしろ日本国籍を本人の意思にかかわらず持たされておった人たちであります。戦後の一つの経過の中で、彼らはその国籍をまさに一方的に剥奪をされているわけでありますけれども、そういう経過があるからこそ、この日韓の地位協定というものが結ばれたと私は思うのです。  大臣の御答弁の中で、一番最初に、でき得る限り前向きに考えることが基本的には必要だとおっしゃられたわけでありますけれども、私は、こういう歴史を考える中で、この地位協定で「教育、生活保護及び国民健康保険」と書かれているから、それだけに限ってしまうんだということではなくて、むしろその範囲を——この協定が結ばれた時代より大分年月もかかっているわけです。日本人自身に対する社会保障制度も、厚生省の皆さんの御努力によって変わってきている、進歩している。そういう進歩の度合いに合わせて、やはりこれが進められていくべきではないのかというふうに実は私は思うわけであります。  ちなみに、御答弁いただきますまでに、若干長文ですが、ここに在日韓国人の皆さんの率直な気持ちを代弁するであろうと思われる文章がございます。これをあえて読ませていただきたいと思います。  「世界人権宣言は「すべての人間は生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と人類の理想を高々とうたいあげています。属地主義に立脚したこの宣言は戦後、民主主義の規範として、世界の国々に迎え入れられ、日本でも同宣言の理想を具現化すべく民主主義の道を歩み、今日を形成したのであります。しかしその中で、在日韓国人七十万人の尊厳と権利については完全に無視され、放置されてきました。」彼らの気持ちとしては、そういう気持ちになってもやむを得ないのではないかと思われる今日までの条件があります。続いて読ませていただきます。「私たち一般外国人とは異なる特殊な歴史的背景を持ち、また地方住民としての、あるいは、“国民的”な義務は果しながら、」たとえば「“国民的”な義務」とは、納税の義務にその中身が代表されると私は思います。ここにこういう試算があります。在日韓国人の皆さんの総生産は、おおよそ五千億円ぐらいにも及ぶのではなかろうかと言われております。また同時に、その中から皆さんが納税をされます額は、国税、地方税を合わせて一千五百億にも及ぶと言われている数字があります。そして納税の率が、日本人の国民平均はおよそ一三%です。しかし、先ほど申し上げた数字から計算をすれば、在日韓国人は実に二八%を負担していることになるわけであります。そういう「“国民的”な義務は果しながら、権利については何ひとつ保障されていないのであります。これは私たちに対する差別であり、日本の現状を“病んだ民主主義”と指摘せざるを得ない原因なのであります。私たちはすでに、子孫末代までにわたって日本に永住する決意を表明しております。そして、日本政府も私たちの「生活安定」を約束しました。」まさにこの法的地位協定において、そのことを日本国は約束しているわけであります。「それなら、当然、日本政府は私たちに、日本国民と同等の義務を果すとともに、権利をも保障し、“内国民待遇”すべきなのであります。それが戦後民主主義、即ち属地主義の在り方ではないでしょうか。現実面から見ても、公営住宅に入居できない、児童手当・国民年金制度の適用を受けられない、国民・住宅金融公庫など各種国庫融資が受けられない、教育の道が閉ざされ、地方公務員はじめ就職の道も閉ざされ、その他二百余項に及ぶ法律、条例」この「二百余項に及ぶ法律、条例」の具体的中身は、事前に大阪府で調査をいたしましたものをお渡しをさせていただいておりますし、いまここにも持っておりますから指摘をさせていただきます。そのような条項が、「私たちをその対象外に置いており、いまや生存権さえ危ぶまれている状態なのであります。また、樺太(サハリン)抑留韓国人帰還問題、韓国人被爆者問題、韓国人戦没戦傷者年金問題など植民地統治下という韓日両国の非相互時代に派生した問題は当然、日本政府の責任下で解決されるべきであります。日本ではすでに「戦後は終わって久しい」といわれていますが、これらの問題を放置しては戦後はまだまだ終らないのであります。」  このように、まさにこの文章は在日韓国人の皆さんのお気持ちを率直に表明したものだと私は思うわけであります。ゆえに、単に法律でこうなっておりますという現状の御説明ではなくて、今日までの歴史を踏まえ、そして現在の社会保障や国民生活の動向、現状、そのようなものを踏まえながら、より一層法改正も含めて前向きに取り組んでいただくことが、日本の、また日本人の誇りをより一層高めることになるというふうに私は考えるものであります。  そういう意味で、どうかそれらの諸問題につきまして大臣の方で、また厚生省の方でより一層具体的に、たとえ一つでも二つでも前向きにそれに対処がなされていくことがいま必要なのではないかと思うわけでありまして、今後の御姿勢についてお聞かせをいただければと思います。
  331. 木暮保成

    ○木暮政府委員 先ほど先生おっしゃいました在日韓国人の法的地位協定締結の際でございますが、実際には、生活保護、国民健康保険、義務教育について日本政府が妥当な考慮を払うということになったわけでございますが、その時点におきましても国民年金の取り扱いをどうするかが当然議論になったというふうに聞いておるわけでございます。その際、生活保護とか国民健康保険を適用することができれば在日韓国人の方々の生活の緊急性のある問題はそれでもって処理できるのではないだろうか。一方、国民年金につきましては二十五年間掛金をしなければならないという条件がございまして、過去非常に歴史的な沿革からずっと日本におられても将来の問題がございまして、そういう観点からして国民年金の適用はしないという結論に両国間の折衝でなったというふうに聞いておる次第でございます。この問題につきましては、その後四十六年にも日韓実務者会談が開かれまして、国民年金の取り扱いについて議論がなされたわけでございますけれども、基本的には昭和四十年の法的地位協定締結の際と同じような判断で終わっておるようでございます。  今後の問題でございますが、在日韓国人の方々が日本に長く居住されておるという沿革もあるわけでございますけれども、年金という立場から考えますと、ほかの外国人の方とも同じ取り扱いをしなければならないという問題があるわけでございまして、そういう観点からいたしますと、長期の掛金を条件とするということがございますので、一部のスウェーデンとかデンマークでやっておりますように、二国間協定で処理をしていくというのが実際的な処理ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  332. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 今日までの交渉の経過は御説明がございましたけれども、これらの問題について基本的な姿勢の問題と技術的な問題ともちろんあると思います。それで結局厚生省の姿勢といいますか、前向きに御検討いただけるという御姿勢があるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。  同時にこの機会に、いつも問題になりますのが国籍条項でございます。ただ、これは地位協定の第四条で「妥当な考慮を払う」という申し合わせがなされておりますからできたものかもわかりませんけれども、たとえば現在実施されております生活保護というのは、一九五四年五月八日付の厚生省社会局長通達によって実施されているわけですね。それから教育でも一九六五年の十二月に文部次官通達でかなり具体的な内容実施されているというふうなことで、運用の面でかなり前向きに取り組んでこられておるいままでの実績もあるわけです。むしろ厚生省としてのそういう基本的な姿勢の中でこの技術的な面もかなり克服できるのではないかというふうにも私ども感ずるわけでありまして、そのことにつきましてもあわせてお答えいただければありがたいと思います。
  333. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 基本的な問題についてだけちょっと私敷衍をいたしますが、先ほど私は居住条件だけを申し上げて大変恐縮いたしましたけれども、国籍条件と居住条件と二十五年という長期の年限というこの三つが基本的な要件になっておるわけでございます。したがって、韓国人に対して適用いたします場合には、国籍が日本国籍でありませんので、一般外国人にもこれは当然考えていかなければならぬ問題となります。そうなりますと、長期的な掛金を必要とし給付をしていく国民年金制度等について考えますと、権利の保全等について十分コンクリートなものになっていないと、年金という長期の掛金を要し、その掛金によって将来相当の給付をしていくという場合にはなかなか困難でございますので、この権利保全関係の配慮というものがどうしても出てまいります。  しからば、ほかの外国人はやめて韓国人だけにしたらどうだという御意見になるわけでございますが、一般の外国人に適用されていない制度を特にある特定の外国人について適用をするという場合には、当然その国とのいろいろな協定によってやっていく、こういうことになりますので、この前の経過も申し上げましたように、非常に生活の緊急避難的なもの、病気になったときの保障とか、あしたから食えなくなったから生活保護をとか、そういうものについては適用しようということになりましたが、地位協定等のいろいろな実務者協定の問でも、なるほど年金等についてはそういう問題があってめんどうだなということで、現在まで未適用になっているわけでございます。  私の前向きにということは、国際人権規約の批准については国務大臣として政府全体で前向きにと申し上げたわけでございまして、それがもしできました場合に、その規約の中で当然外国人すべてについての問題が出てまいります。そういたしますと、これはそれぞれの両国間の協定、二国間協定で処理しているのがいままでの先進国の例でもございますので、厚生省としてもそういう二国間協定によって——これはもし話ができるのならばでございますけれども、他の外国人と別に韓国と二国間協定でということでございますが、ただ遺憾ながら、二国間協定の場合は双務協定でございますから、在韓日本人に対する取り扱いというものがまた問題になってまいりますので、これが現在の段階ですぐできるかどうかわかりませんけれども、そういう基本的な方針で臨まざるを得ない。今日の国民年金の長期的な財政の数理計算等を考えてみましても、その権利の保全ということを被保険者の立場から考えていった場合でも、そう軽々にいま私どもが即断できない面がたくさんありますものですから御了承をいただきたい、なお検討をさせていただきたい、こう言っているわけでございます。
  334. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 大臣の御答弁の中に相互主義、相互にという問題がございましたけれども、在韓日本人は、もちろんわれわれ日本人の立場からしてまさに守っていただきたい、この気持ちは当然でございます。しかし、相互主義というそのことは、他の国々また他の外国人の皆さんについては当てはまると思いますけれども、少なくとも今日までの経緯からいって、在日韓国人の皆さんについてその言葉をお使いになるということは私はどうかと思う。相互主義ではない、むしろ彼らの歴史的な現在までの地位、法的な地位も含めて、そのことのためにこういう措置が韓国人については行われているのではないのか、こう思いますので、そのことを改めて確認をさせていただきたいのと、もう一つは、二国間協定の問題ですから、だとすれば韓国サイドからはこれについての前向きな意味での要請はないのかどうか。  それからもう一つは、特に永住者の皆さんは、先ほど読み上げました文章の中でも申し上げましたように、子孫末代まで日本に永住すると決めているわけです。もちろんそれが根拠がないとおっしゃられるとすれば、その根拠をつくることはできると思います。そういうことも総合的に含めまして、再度お尋ねをさせていただきます。
  335. 木暮保成

    ○木暮政府委員 在日韓国人の方がほかの外国人の方と違った歴史上の沿革があるということは十分承知しておるわけでございますけれども、年金の問題を考えますときに、やはり外国人一般の問題として考えていかざるを得ない、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから、韓国の方のその後の要請状況でございますが、先ほど申し上げましたように、四十年十二月の法的地位協定を結ぶときに国民年金の問題が課題となったわけでございます。さらに、これも先ほど申し上げましたけれども、四十六年四月の実務者会談におきましても国民年金が議題になったわけでございますが、最近では五十一年十一月にやはり実務者会談が開かれまして、韓国から同じような提案がございましたのですが、結果的には前と同じ結論になっておる次第でございます。
  336. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 韓国から要請があった、しかし日本ではそこまでの決断ができなかった、こういうことだろうかと思うのでございますが、大臣、いかがでしょうか。やはりこれは非常に深刻な問題です。そして彼らは永住するのです。コンクリートされている。そのことの条件を踏まえて今後本当に前向きに御検討いただくというわけにまいりませんか。
  337. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 大変恐縮なんですが、今日の段階では年金関係を含めて適用するということは、先ほど申し上げましたいろいろな理由からどうも先生の御希望に沿いかねるわけでございます。今日現在ではそういうことでお許しをいただきたいのです。
  338. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 国の段階ではそういう状態の中で非常にちゅうちょをされておられる。大蔵省が財政的にいろいろな難色を示されるとすれば、これは話がある程度わからないでもないですけれども、むしろ厚生省サイドの立場からすれば、私は日本に住むすべての人々の健康な生活というものを保障する意味からもっと前向きに御検討がなされるものだというふうに実は今日まで感じておりました。  ちなみにここにこういう表があります。お手元にもそのコピーをお渡しさしていただいておると思います。これは私が居住いたしております大阪府下の各市町村で、九十七項目にわたっていろいろな社会諸施策が適用されているか否かの状況調査したものであります。それぞれの市町村が独自の財源の中で、児童手当にしても、ある市では、国の児童手当制度の中に適用されないから、そのために外国人のための児童手当制度というものを独自でつくって、そしてそれを支給していくという努力をさえしている町があるわけであります。  このようにして市町村は直接そこに住んでおられる住民の皆様の生活を考えながらむしろ前向きに考え、前向きにすでに実行に移されているわけであります。これは一つ一つを御検討いただいて、これらの中でもっと国として制度的に総括的に適用していけるなという問題をむしろ見ていただきながら前向きに対処されてこそ、私は近い将来、世界人権規約等が調印されるにしても、やはり日本らしさというものが生まれてくるというふうに思うのでございまして、一点そういう意味でのお尋ねを再度、くどいようでございますが、させていただきたいと思います。
  339. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 それぞれ地方団体がそこに長いこと住んでおられる人について住民として一定の処遇を与えるということについての問題と、それから国が責任を持って加入者全員のために非常に長期的な年金問題を考え、かつそれぞれの拠出者の権利の保全等を考えていかなければならぬという問題とは、おのずから私は別だと思うのでございまして、そういう意味で、いろいろ各町村においてはそれぞれの考え方から児童手当等についての支給をあるいはやっているところがあるのではないかと思うのですが、いまこの表をいただいて、この中でこれとこれは何とかできるなというような、実は金目でできる、できないの問題ではないのでございまして、先ほど財政当局はというお話がありましたが、そういうことでなくて、やはり制度自体の本質問題として外国人に適用できるかどうかの問題でございますものですから、いま直ちに——私この表をいま初めて拝見しまして、このうちでどれが適当であると思うかと言われましても、一般的に前段で申し上げたような考えしかございません。国際人権規約の批准問題がいずれかに明確になったときに、またひとついろいろと検討させていただきたいと思うわけであります。
  340. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 時間が参りましたから、最後に一点だけ。  いまおっしゃいました世界人権規約、これは厚生省サイドとしては——もちろん大臣のお立場からは政府全体の問題としてのお答えをしなければいけないかもしれませんが、厚生省の部門としては、あの世界人権規約について何ら保留をしたりそういうことなしに賛同、調印の方向へ向かって踏み出すことができるというふうに、いま大臣の御答弁から私はそう察しましたけれども、そういうふうに受けとめさせていただいてよろしゅうございましょうか。  それからもう一点。いまの内容を、各地方自治体でいろいろ努力しておりますが、それらの諸施策について御検討いただき、また別途の機会に御返答いただけますかどうか。  その二点を最後にお尋ねして、終わりたいと思います。
  341. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 国際人権規約については、外務省が政府部内の意見の統一を図っているところでございますから、私からいまそれを政府として批准に踏み切ったとか踏み切らぬとかというお答えはできないのですが、私どもとしては、実は国際人権規約が調印され、批准にまいりましたときには、問題になる点は国民年金、厚生年金の問題でございまして、したがってそういう面から見ますと、これはいま現に制度が適用になっていないものでございますから、われわれから積極的に国際人権規約を——制度がそうなっていないものを私どもが推進をするという立場にある厚生省ではないわけでございますけれども、しかし、総体的に国全体の立場に立って考えますと、先進国がそれぞれ調印し、承認し、批准をしているものを、日本としてこれを阻害するということもいかがと思いますので、外務省の方で政府部内が統一されてまいりましたときに、私の方から足を引っ張る意思はない、そういう意味においては協力を申し上げる、こういうことでございます。
  342. 山下眞臣

    ○山下政府委員 在阪韓国人に適用される各種の制度先生の資料をちょうだいいたしておりますので、よく調査をいたしております。この中でたとえば生活保護でございますとか、老人医療でございますとか、これを国としては適用するという方針になっておるものが掛け印になっておるような部分もあるようでございます。適用する方針になっておるものが適用されていないようなものにつきましては、指導をいたしてまいりたいと思います。
  343. 中野寛成

    ○中野(寛)分科員 国が適用するように言っているのに、地方自治体が適用していない。これは該当者が住んでいないかもしれません。そういうところがあるわけですから、そういうところだけを見て、あと自治体でやれと言いますという、そういう答弁ではなくて、自治体でさえやっていることなら国もやりますと、こういうふうにむしろ前向きにぜひ御検討いただきたいと思います。これは時間がありませんから、答弁もお願いしません。ぜひそのようにお願いします。  それから最後に、大臣から、世界人権規約、この成案ができてきたら厚生省サイドから足を引っ張る気はありません、この御答弁をいただきました。そのことを私自身もよく銘記をして、質問を終わらせていただきます。
  344. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上で中野君の質疑は終了いたしました。  次は、浦井洋君。
  345. 浦井洋

    ○浦井分科員 まず、国立療養所の重心施設、重症心身障害児施設について大臣にひとつお尋ねをしたいわけなんです。  私、この間、茨城県の東海村にある晴嵐荘病院に行ってきたわけであります。これは国立です。国が開設をしておる重心病棟があるわけなんです。ところが、実情はきわめて憂慮すべき状態で、これでは重症心身障害児の人々が人間として尊重をされて、心身の発達、成長を助けられて人格を高めていくための施設にはほど遠いというふうに遺憾ながら感じたわけです。その大きな問題としては、医師の問題であるとかあるいは勤務人員の問題などがあるけれども、同時に、早急に改善をしなければならぬ施設の問題、設備の問題があるわけです。そこで、ひとつその問題に限ってきょうはまずお尋ねをしたいわけなんです。  いま写真をお渡しをいたしました。その最初の一枚目、二枚目が入浴のときの浴槽の写真であるわけなんです。それを見ていただいてもよくおわかりだと思うけれども、収容されておる子供さんが人間として扱われておらないというふうに言わざるを得ぬわけであります。というよりも人員の関係で扱えない。ごらんになっておわかりになるように、残念ながらそこに男の子も女の子も混浴になっておるというような問題があります。裸になって浴槽の横に寝転がって順番を待っておる。そして、その浴槽の下の床は暖房の装置があるのかと言ったら床暖房はない。そこの浴槽の構造を見ていただいてもわかりますけれども、職員の意見からいけば、浴槽が斜めに中側へ入り込んだ方が浴槽の中に入っておる収容児を扱いやすいわけですね、介護する側の体の状況からいけば、人間力学的に言えば。だから、こういう点を早急に——私は医師の問題だとか人員の問題はいま言いません。しかし、少なくともいますぐやれる、そういう設備の改善はやはりやらなければならぬのではないか、こういうふうに思うわけです。  それから大臣、三枚目、四枚目の写真を見ていただいたらわかりますけれども、今度はトイレの問題があります。三枚目、四枚目はトイレでしょう。確かに施設ができた当時はかなりなレベルであったかもわからぬ。しかし、子供は大きくなってきます。成長します。であるのに、トイレはまだ子供用、小児用であるわけなんです。私がここで強調したいのは、だんだん子供さんが成長してきている。女の子もおる。生理があるわけなんです。私調べてきたのですけれども、三つの病棟があるわけなのです。四十定員で三つ病棟がある。その中で、Aという病棟では、女の子十三名中九名がもう生理があって自分で自覚できるわけなんです。それから、Bという病棟では九名中六名、Cという病棟では六名中三名、合計すると二十八名中十八名は自覚ができるわけなんです。だから、差恥心もあるだろうと思う。であるのに、その現状はきわめてオープンですよ。小さいし、オープンである。しかも、生理があるのではって急いで行かなければいかぬ。そうすると、ベッドからトイレの間で、体が不自由ですから、擦過創、すり傷をつくったりあるいは頭やら手足をぶつけたりということで、私もその場所をちょっと見ましたけれども、全くこれは早く改善をしなければならぬ人権上の問題ではなかろうかというふうに思うわけなんです。  だから、私大臣にお願いしたいのですが、早急に実情を調べていただいて改善をしていただく、設備の改善をするという言葉をひとつそこに入っておられる重症心身児の皆さん方にこの場所からプレゼントしていただきたいと思う。
  346. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 重症心身児のために各国立療養所にずいぶん前から病棟等をつくりましたものがございまして、それが成長に応じて合わなくなったり、あるいは施設が前のものは近代的な設備になっていなかったりしますので、これらはひとつ各療養所とも早急に調査をいたしまして必要な整備はやっていきたいと思います。あに晴嵐荘のみならんやと思っておりますので、これはもう私の責任のもとで管理運営している療養所でございますので、早急に調査をしてみたいと思います。
  347. 浦井洋

    ○浦井分科員 調査し、整備をしていきたい、厚生大臣の責任のもとでやりたい、やるということであります。そこの院長先生が言うには、その先生は少しお年を召されておるので甲乙丙を使うのですが、国立の重心病棟は乙の上だと言うのです。まあ中の上ということですね。だから、これは全国的にひとつ早急に調査をしていただきたいと思う。  もう一つだけ例を出しておきたいのです。その晴嵐荘の話でありますけれども、施設が鉄筋ではあるけれどもかなり古くなってゴキブリがわいてくるわけですよ。そして、退治をするにも、業者を頼んでも、目張りをきちんとしてその場所、そのときだけおらなくなってもすぐまた出てくる。ところが、重心施設でありますから、今度はそのゴキブリが寝たきりの子供さんの顔やら体をかむ。それから今度は、知恵おくれの子供さんがもちろんおられますから、そういう人がそこらにゴキブリがおれば拾って食べるというような、そういう状況が、これはもう別にそこだけに特別な事情ではないだろうと思うが、起こっておる。  だから、そういう点で、いま大臣は調査をし、整備をしたいということでありますけれども、単にある時期に建物を建ててベッド数をふやせばそれでよいのだということではなしに、やはり総合的にこういうところについてはきちんと温かい目を行政の方も注いでいただいて、そしてやっぱり経過を追ってそれに対応した対策をとっていただきたい。  どうですか、大臣。
  348. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 もうおっしゃるとおりだと思いますので、全国の重症施設についてはよく調査をいたしまして、必要な整備をやってまいります。ただ、一遍にできるかどうかわかりませんが、どれくらい出てまいりますか、建物もずいぶん古いところもあるようでございますから、重点的に考えてまいりたいと思います。
  349. 浦井洋

    ○浦井分科員 そこで、重心施設の改善をぜひやっていただきたいと思うのですけれども、それから話を発展させますと、重症心身障害児というのは、大臣もよく御承知のように、やはりその子供さんが母体の中におるときの影響であるとか、あるいは分娩時のアクシデントであるとか、あるいは分娩直後の処置が不適切であったために起こるというのがかなり大半を占めているわけなんです。厚生省が調べて出したデータによっても、心身発育障害の原因となり得る因子ということで分類をいたしますと、妊娠経過中の異常が一二・五%、分娩経過中の異常が一六・四、出生直後の異常が二五・三、合計三つで五四・二%、過半数。遺伝的な原因というのは一五・六と、ぐっと少ないわけなんです。だから、こういう時期に国の力できちんと処置をする。幸い医学も発達してきておりますから。だから、少なくともいま国としてやれるのは、分娩直後から直ちに適切な処置をとっていくということをやれば、いままで、そのまま異常新生児なり未熟児で生まれた赤ちゃんが死んでしまうとか、あるいはたまたま寿命があったけれども心身障害児になるというようなことがかなり防げるということが、こういう厚生省の調べられた数字でもはっきりしておるわけなんです。  だから、そういうふうにきちんとやれば、専門家がよく言っております後障害、後の障害なき生存ですね、健全に生存していける、こういう状態が可能になってきておるわけなんです。だから、五つ子、四つ子というようなことがいまどんどん社会の非常によい朗報として国民の話題になっておる。一方では、今度は逆に未熟児網膜症が裁判ざたになって、世間の人たちの逆に関心を呼んでおるという時期であるわけでありますから、国としてもやはり率先して重心施設に対しても手をつけていただかなければいけませんし、同時に、その原因になるような未熟児を含んだ異常新生児対策、これについても特に国立病院なんかが率先してやはりモデル的にやっていかなくてはならぬのではないかというふうに私は思うわけでありますが、ひとつ簡単に、異常新生児を含む未熟児対策、国の施策の現状とこれからどうされるかということをちょっと聞いておきたいと思います。
  350. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 厚生省といたしましては、いわゆる未熟児を含んだ小児医療対策については四十一年ごろから強力な手を打っているのでございますが、四十年にできました国立の小児病院をナショナルセンターとして全国的なネットワークを敷こうということにいたしております。また、補助金も四十六年度からは建物、設備等に対してかなり増額をするようになりました。  そこで、現在三十三の小児医療の強い病院がございます。そのうち、いわゆる小児専門の病院というのは、でき上がっておるのが八つでございますが、近くでき上がると思われるのが二、三ございます。そのようなことでございますが、御指摘のように、確かに未熟児のICU、NICUと申しますか、この部門は日本の一番弱いところでございます。五つ子とか六つ子ができたときに果たしてそれを生かせる病院が幾つあるか。また、現在アメリカ、イギリスではもう妊娠二十週ぐらいで五百グラムあれば生かそうという努力をしておりますが、日本ではまだそこまでまいりません。大学の一部だけであろうと思います。  従来もいろいろ力を注いでまいりましたけれども、今後も特にそういった未熟児の医療とかあるいは新生児の緊急手術の医療といったものには特に力を入れたい、また国立病院もできるだけ率先垂範をいたしたいと考えております。
  351. 浦井洋

    ○浦井分科員 医務局長非常によいことを言われるわけなんですが、大臣にこれも御報告をしておきたいのです。  率先垂範したい、ところが現状の国立病院はどうなのかということなんですが、私はここで茨城県の国立水戸病院の例を挙げたい。国立水戸病院というのは、水戸であるとか土浦の辺のいわゆるセンター的な役割りを果たしておる病院で、未熟児医療についてもそうなんです。ここでちょっと数字を申し上げますと、五十二年、去年の四月から十二月まで九カ月の間に、取り扱い延べ数が、国立水戸病院が千六十九、保育器が七台、それから県立病院が八百六十、保育器六台、日赤病院が八百四十二で保育器七、済生会が五百十四で保育器五、農協立の協同病院が延べが七十七で保育器一。さらに、国立水戸病院に入ってきた未熟児を含む異常新生児ですか、この数が、国立水戸病院で生まれた赤ちゃんが二十七人で、他の病院から搬送された赤ちゃんが三十二人だ。だから、かなり積極的にこの地方では他の医療機関から受け入れておるわけなんです。だからこれは、国立としては当然のことだし、その中で医師や看護婦というのはかなり献身的に努力しておるというふうに私は見受けたわけです。もうそういう人たちの犠牲によって未熟児医療が成り立っておると言っても過言ではないわけなんです。  ところが、これは人員の問題ですが、その国立水戸病院の医師、看護婦というのは、よく話を聞いてみますと、毎日の未熟児医療、薄氷を踏む思い、不安で不安で仕方がないと思いながらやっておるわけなんです。何でかというと、結局はそこでは、異常新生児、未熟児を含めて、一般の小児病棟に一緒に入っておるわけなんです。そして、その病棟として二人夜勤という状態になっておるわけなんです。ですから、どうしても異常新生児、未熟児と病室が別ですから、部屋を出てしまうと、未熟児には目が届かぬ。これは別に特別の日をとったわけではないのですけれども、たとえばアトランダムに任意の日の勤務表を私そこで取り上げてみたわけなんです。夜勤看護業務実施時間割というのを。そうすると、去年の十一月二十七日の午後五時から翌日の午前九時まで十六時間の間に、未熟児から目を離す時間が十六時間のうち十時間五十五分になるわけです。ここに計算した表がありますけれども、二人夜勤でやれば、どうしても機械的に、物理的にこうなるわけなんです。しかも、一般小児病棟と異常新生児とが同じ病棟にあって同じ勤務体制が組まれておるわけですから、だから、さあ何か異常だというふうに気づくと、本来未熟児室というのは無菌の状態でこちらも入っていかなければいかぬ、消毒をして。ところが、そんなもの構っておられぬということで、だあっと飛び込んでいってそして処置をするというような状態がしばしばで、非常に不安で不安で仕方がないというふうに言っておるような状態なんです。  だから、そこで看護婦さんはどう言っておられるかというと、せめて適切な未熟児の看護をするために新生児室というようなかっこうで別にして、これは産科の方の新生児室は別にするにしても、異常新生児であるとか未熟児、こういうものは一緒にして独立した設備にして、そこは独立した看護単位でやってくれぬだろうか、こういうことなんです。それがすぐにはできなかったら、せめて三人夜勤にしてくれ。いま二人夜勤であります。そういうようなことを言って、それだけの人数が欲しい。現在四十床の小児病棟を十五人の看護婦さんで勤務しておるわけです。せめてこういうことができぬだろうかということを強く要望されたわけであります。やはりこの地方のセンター的役割りを果たしておる病院でありますからぜひ私はそうすべきだと思うのですが、大臣、どうですか。
  352. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 技術的な問題について、私からお答えいたします。  方向といたしましては先生の御指摘のとおりであろうと思います。ただ、国立病院も現在九十五ございまして、そのうち七十一は未熟児を扱っておりますけれども、未熟児室などを独立させておりますのはまだ数が少のうございます。世田谷の小児病院、それに岡山病院、それに長崎中央病院で、近く大阪病院が新しくオープンいたします。そういうふうな状況でございます。  それで、なかなか独立はむずかしいわけでございますし、またそれまでの問二・八をせめて三・八にしたらどうかという御要望でございます。私どももできるだけ早くそのようにいたしたいと思っておりますけれども、この地域におきましては筑波大学とのいろいろな関係もございまして、そういった問題も考えながらいま調整を図っているところでございます。
  353. 浦井洋

    ○浦井分科員 局長の方はそういう御意見なんですが、大臣の方でひとつ政治的に判断をしていただきたいと思うのです。  こういう手紙が私どもに来ておるのです。これはいま医務局長が言われた独立しておる病院の一つから来たわけなんです。ここでは確かに異常新生児を含めて独立しておるわけなんです。国立水戸病院に比べたらスタッフもかなり充実しておるというふうに言われておるわけなんです。しかし、そこでもミルクを誤飲して、その発見がおくれて、もうちょっとで未熟児が窒息しそうになった。あるいは点滴が漏れて、それの観察が不徹底だったために壊死状態、潰瘍状態が腕に起こったり、あるいは人工呼吸中の気管内のチューブが自然に取れてしまって、それを監視するのがおくれたためにもうちょっとで赤ちゃんが植物人間になりかけたり、あるいはいま言われておる未熟児網膜症、目が見えなくなりそうになる、これもスタッフ不足が一つ原因になるだろう、こういうアクシデントが治療上も看護上も起こっておる、こういう内部からの正直な告白であります。だから、そこのスタッフが言うのには、異常新生児が小児病棟の一部として存在をしてケアされておるというような施設では、新生児ケアの五大原則であるところの、ちょっと専門的になりますけれども、呼吸の確立であるとか体温の管理であるとか感染の予防であるとか綿密な観察であるとか穏やかな取り扱いというような、この五大原則を守ることは至難のわざである。私、ほかの未熟児施設へも行ってきたのですが、兵庫県立こども病院というようなところへ行っても、専門家は、異常新生児は少なくとも独立した看護単位にすべきであるというのがもうあたりまえの話になってきているわけです。  だから、やはり私が言ったように、一般病棟から切り離して独立をした看護体制をとる、あるいはそれができないなら、その前提として三人夜勤、三・八制度をとるというようなことを優先的に措置すべきではないかと私は思うわけですが、ひとつ大臣から、その辺一遍よく調べていただいて、そしてすぐやるというような前向きの御決意を承っておきたい。
  354. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、どうも国立病院、療養所は特に看護婦さんあるいは医師等の医療従事者の定員が窮屈でございまして、私ども非常に困っております。これは総定員法の関係で、私どもは毎年増そうと思っても、どうもなかなかそうはいかないのです。そこで私は、医療の従事者はどうも総定員法から外すべきじゃないだろうかと思っているのです。これはことに皆さん方から週休二日制をやれと言われたって、現在国立病院、療養所ではもう労働組合を含めて反対でございます。現実問題として反対なんです。労働組合も反対ですよ。それだけ人員のやりくりがつかないということですね。そうかと言って、休日で医療のサービスを低下させることはできませんから、定員問題でみんな非常に悩んでいるわけでございまして、私どもも金で済むことならあれですが、人の問題というのは総定員法がらみでどうしてもなかなか自由がきかないわけでございます。したがって、将来は定員を現場の者についてはどういうふうにあるべきかを根本的に検討して解決の方途を何らか見出さなければならぬと考えておる、責任者としてそう思っているわけでございますが、いま、したがって、そういう現状の中でここだけをとらえてすぐ改善をする、こう言えと言われましても、なかなかできないのです。率直にできない。だから、できるだけひとつ努力はしますが、根本的な解決について国会の皆様の方でも御理解をいただきたいと思っております。
  355. 浦井洋

    ○浦井分科員 もう一つだけ数字を挙げておきたいと思います。  国立小児病院の新生児病棟のベッド数が三十六で、スタッフは医師が常勤が二名、看護婦さんが十九名、ここ十年間変わらずということであります。ところが、私が住んでおります兵庫県の県立こども病院ではベッド数が二十一、常勤医師が二名で、看護婦さんが二十四名。十九名と二十四名、しかもベッド数が半分近いですね。こういう状態で、いかに国立の職員の皆さんが献身的な努力をしておるかということはよくおわかりだろうと思うのです。県立こども病院に行っても、まだ少ないと言っているんですね。そういうことなんです。それはひとつ大臣、思うだけでなしに、大臣がやっておられる問に具体的に日の目を見させていただきたいと思うわけです。要望しておきます。  それから最後に、そういうことで厚生省が五十一年度の事業として、去年の一月に新生児緊急医療システムに関する研究班が発表しておるわけなんです。これの調査によると、未熟児や低体重児の大体四分の一ぐらいが一応設備、スタッフのそろった専門医療機関に収容されておるにすぎないわけなんです。だから、残りは一般の医療機関にかかっておるので、先ほど私が言ったように、どうしても身体障害児を産む原因にもなるし、それから死亡率も高いというようなことが、厚生省がつくった研究班のデータによっても明らかになってきておるわけなんです。これは去年の一月の実施であります。だから、私時間がないから要望だけ申し上げて御返事をいただいておきたいのですけれども、どこの未熟児施設へ行っても、国がしっかりやってもらわぬと、地方はどうしても国を見習うので、国がしっかりやってほしいということなんです。だから、少なくとも、この間私予算委員会で老人の問題について大臣に要望しましたけれども、こういうような未熟児あるいは異常新生児の実態をつかむ調査を国がやはり早急にやることが必要ではないかということが一つであります。  それから二番目には、いま国立小児病院であるとかあるいは国立岡山病院とかいろいろな名前が出ましたけれども、やはり先進的なそういう仕事をやっておる既存の国立のものを、人も設備も含めてきちんと充実させる、そしてその地方のセンター的な役割りを果たさせることが必要ではないか、そのことをぜひやっていただきたいと思う。  それから第三点としては、この点ではある程度実績のある県があるのです。たとえば、先ほどから再々申し上げておる兵庫県立こども病院とかあるいは神奈川県の県立こども医療センターというようなところはかなり国を上回って充実しておるわけです。そういう施設を持っておる県をモデル県に設定して、そしていま医務局長言われたNICU、こういうものの可能な新生児医療センターをつくり上げるように国として指導をしていただきたいし、必要なら助成をするということをぜひやっていただきたいと思うわけでありますけれども、その三点についてひとつ大臣の方からお答えを……。
  356. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 初めに実質的な面についてお答えいたします。  まず第一の調査でございますが、実は全国的に調査をいたしたいと思いましたが、まずさしあたって国立病院からということで、昨年の秋調査をいたしまして、現在その結果を解析中でございます。  それから二番目の、国が率先垂範するということでございますが、御案内のように世田谷の病院はいま大改築中でございますが、そのようにだんだんとやっております。  それから三番目の県立病院でございますが、これに対する建物、設備の助成単価がそれほど高くはございませんけれども、できるだけ御要望に沿って補助金を出すことにいたしております。
  357. 浦井洋

    ○浦井分科員 大臣、技術的な答えはわかったのですが、政治的な……。
  358. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃることを私ぜひひとつ考えたいと思います。
  359. 浦井洋

    ○浦井分科員 医務局長は、国立小児病院改築中で、いかにもよくなるというふうなことを、言われなかったけれどもそういうニュアンスであるわけです。ところが、大臣、確かに五十三年の十月に国立小児病院の改築が完成するわけですが、スペースが大きくなるだけでやはり四十床であるし、スタッフもそのままだというのが向こうの責任者の観測であります。だから、それはごまかされぬようにしていただいて、大臣はやはり率先垂範、充実のために邁進をしていただきたいことを要望して私の質問を終わりたいと思います。
  360. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして浦井君の質疑は終了しました。  次は、井上泉君。
  361. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 ここの分科会は非常に時間に寛大であることをうれしく思います。  そこで、厚生についてベテランの大臣にこういうことを質問するのはどうかと思うわけですけれども、いろいろと教えていただきたいと思います。  一つは、看護婦さんが戦地で死亡したとか傷害を受けたとかいう場合には、厚生省の援護局の方で戦傷病者等の援護法で年金を支給しておるわけですが、これはどういう位置づけで従軍看護婦さんをこういうふうにしていただいておるのか、その点をまず……。
  362. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 日赤の従軍看護婦につきましては、軍属または準軍属として処遇されております。その待遇につきましては、看護婦は兵に準ず、看護婦長以上は下士官、こういう基準になっております。
  363. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 それは非常に結構なことですが、大多数の死んだ人あるいは傷ついた人にはそういうふうな扱いをしておる。ところが、そういうこともないいわばやっと命を長らえて帰ってきた従軍看護婦さんの方はそういう取り扱いがされてないのですが、この人たちは軍属と認めてないのかどうか、その点。
  364. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 軍属または準軍属であります日赤の従軍看護婦につきましては、援護法上は、戦地でけがをした場合、病気をした場合あるいは亡くなった場合に遺族に対して障害年金または遺族年金を支給しておるわけでございまして、生存しておられます看護婦につきましては、援護法上の処遇は制度的には考えられておりません。
  365. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 だから私は問うておるのですよ。援護法の中で処遇されていない。ないが、しかし、死んだ方あるいはけがされた方は援護法で処置する。それで、援護法で処置されてない——処置されないとしておるからしてないのであって、援護法で処置するようにするのか、あるいはそれができなければ同じような扱い方にするような法的な措置が必要じゃないか。これは常識ですよ。大臣、どうですか。
  366. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 援護法のたてまえとしては入っていないことは先生御承知のとおりでございます。これは、戦地にいた方々の恩給が、いわゆる軍人恩給としてやっておりますね。たとえば戦地加算を入れて兵なら十二年以上とか准士官以上は十三年とやっておりますが、それと同じになっていないので、いま、ぜひ取り扱いを一緒にしろ、こういう御要求なわけでございます。したがって、私どもは、援護法の対象ではないのでございますので、総理府の方で一般の軍人恩給と比較をいたしまして、その恩給制度に乗り得るかどうかということを従来検討してまいった、こういういきさつでございます。援護法は、少なくとも今日現在では、一般の生存してお帰りになった方々はこの従軍看護婦さんのみならず対象にしておりません。そういうことでございますので、たてまえが違うものですから、援護法の方では取り扱っていない、こう言っているわけでございます。
  367. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 そうです。援護法に入っておれば私何も質問しないのです。援護法の中には入っていないけれども、戦傷者の方も戦争で亡くなられた方も、この従軍看護婦の方は軍属である。それなら、やっと生きて帰ってきた方は軍属でなかったかということになる。いま法的に軍属としてお認めになっていないのじゃないか。これは不合理ではないかということを私は指摘をしておるわけで、そのことは総理府の恩給局で、恩給法の改正でと、こういうことを言われておるわけですけれども、そういう同じような仕事をされてきた方が、いわゆる法の恩恵を平等に受けないということは、これはやはり私は行政として、あるいは政治としても差別だと思うわけですが、大臣は国務大臣でありますし、そうしたことについては識見もあろうと思うわけですが、きょうは総理府は呼んでないが、そういう区分すべき性格のものではない、同じ軍属であるから、これは総理府の方で早くするなり、あるいは総理府がいかぬのなら厚生省の方で——もう七十の方もおるわけです。私のきょうだいなんかもう七十過ぎておるのですが、そういう方もたくさんおるわけで、本当に、金銭的なものではなしに、そういう苦労に対する一つの栄誉的なもの、名誉的なものもあるわけなので、早く軍属としてのきちっとした位置づけをすべきだと私は思うわけです。その点、閣議等でがんばってもらいたいと思うのですが、どうですか。
  368. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私の所管ではありませんが、私はこの問題については非常に理解を持っている一人でございますので、総理府の方で検討の過程で、国務大臣として応援団の有力な一員になるつもりでございます。
  369. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 そのことを強くお願いをしておきます。  大体、同じ境遇にありながら、この法に入っていないからこの人は当てはまらないというようなことは、官僚の言葉であって、政治家はそういうことを言うべきではない。法に入ってなければ入れてやるのが、私は本来の行政のあるべき姿だと思う。大臣は次々にかわるからだめですけれども、やはり援護局の局長なり何なりは、そういうことを頭に入れて行政というものをしてもらわぬと、この法律だけがおれのところの領分だ、この法律からはみ出したものは一切知らぬ、しょうがないという無責任な業務のあり方というものは、これは私は問題だと思うのですが、大臣のいまの言を私は信頼をして、この従軍看護婦の軍属としての取り扱い方を厳重に私も側面から督促してまいりたいと思います。  次の問題ですが、政治家はいろいろと結構なことを言うのは、これは選挙する者の通例ですが、一番最たる例としては、厚生省が大規模年金保養基地構想を打ち上げてからもう数年になるわけです。高知県でも大変な騒ぎをしたわけです。これによって土地を買われた。そうするとその町村は、厚生省は厚生年金の保養基地としては百万坪しか要らぬから、あとはおれは知らぬとかいうようなことで、県の財政の上にも、それから地元の上にも大変迷惑がかかっている。そういう土地問題はいろいろな形で終着をしたわけですけれども、まだまだ終着をしていない一ところがあります。  ところが、この年金保養基地構想は、一カ所二百億か何かで打ち上げて、国内で十カ所とか十一カ所とかいうことになっておるわけですけれども、一向工事が始まらぬが、これは一体どういうことですか。
  370. 木暮保成

    ○木暮政府委員 大型保養基地は、昨年の三月でおかげさまをもちまして土地の買収が全部終わった次第でございます。その後、経済情勢の変化がございますので、地元が早く開設してほしいという希望もございますけれども、若干スローダウンをしていかなければならないかというふうに思っておりますけれども、一番先行しております兵庫県の三木基地につきましては、つい先日土木工事の着工を始めるところまで来ておる次第でございます。
  371. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 兵庫県のなにはやっておるけれども、それも予算的にはわずかでしょう。二百億の構想の中のほんの微々たるものでしょう。だから、こういうふうなところがまだあるわけです。景気浮揚の中で公共事業を大幅にやるということですが、これは予算とは関係のない厚生年金の基金でやるのですから、こういう計画の渋滞ぶりを、大臣、どうお考えになっておられますか。
  372. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 実は、あなたのところの横浪基地よりも、私の出身県の新潟県の津南の地域が一番早く指定されて、一番早く土地を買われて、地元も協力して全国一安い土地を提供したのですが、いまだ何らその着手になってないのです。設計もまだできてない。これは実はこういうことなんです。  厚生年金の金はだれが出しておるかと言いますと、被保険者と事業主でございます。その団体はどこかといいますと、総評の関係の方々やら、あるいは他のいろいろな労働団体の方々、それと日経連の方、こういうことに団体としてはなっているわけです。この方々が、やることはいいけれども、経営に赤字をうんと出して、その金をまた被保険者や事業主がめんどうを見なければいかぬような事態になると困るぞという念押しをされておるわけです。そうしますと、その実際の建設に当たる年金福祉事業団では、実は非常に困っているわけです。したがって、やはり三木というものをやってみて、その経営状況を見た上で逐次全国に及ぼしていかないと、もしこれを、十二カ所も一遍にどんどんやって、膨大な赤字を出すようなことになったら、これは責任をむしろ持てなくなるから慎重にしているというのがおくれている原因なんです。それだけなんですよ。したがって、そういう面から見ますと、被保険者や事業主の貴重な掛金を使うわけでございますから、慎重にしなければいけないことは御理解いただけると思うのです。  ただ、一方において、先生指摘のように、それぞれ各地区においては、土地の協力をしたり、もう土地の取得が三年も前になり、私のところなんか五年も前になる、こういうような状況で、しかも、そこに至る公共事業の整備を、県が道路の整備をしたりいろいろやっているわけでございますから、それをいつまでも放置できないという現実もある。この二つの面から、実は厚生省も直接やる年金事業団も非常に苦慮しているというのが現実の姿なんです。これは御理解いただきたいのです。  しかし、できるだけこの十二カ所については、被保険者のために整備を何とか隘路を打開しつつ努力をしていきたい、かように思っておりますので、しばらくごしんぼう願いたい。
  373. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 これは本当にもうどうにもならぬわけですが、こういう構想を打ち出したときには、そういうふうな見通しというものは全然立てずに、厚生年金にはどっさり金があるから、この金をひとつ活用して、そうして被保険者に対するお返しをしよう、サービスをしよう、そういうふうなことが打ち出してあったわけですが、それが、そういうふうなことをして、いわゆる地方の自治体に対して大きな協力をさせて、これは大臣はその当時にも自民党の主要なポストにおった方だと私は思うわけで、恐らく大臣としてもこれを推進した側ではないか、こう思うわけです。そういうふうなことから考えても、もうこれは金利だけでも大変な問題ですから、できなければできないで、もう所在の府県に払い下げするなり、あるいは無償で貸与して、そこのところはそこでまた計画するなり、もう今年度じゅうには——来年の分科会なりあるいは委員会で同じことを質問する必要のないように、今年度じゅうには何らかめどを大臣としてはつけてもらいたいと私は思うのですが、大臣どうですか。
  374. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように、何年もこのままの形で放置はできないと思います。規模を縮小をして、そうして時勢に合うようにしていくのか、あるいはまた、いま先生がおっしゃったように、一部は地元の方にできるだけ相談をして他に転用を図るのか、これらについては早急に私も検討いたします。ことしじゅうに全部を結論づけられるかどうかはわかりませんが、そうしなければいけないとは思っております。やるのかやらぬのか、あるいはやるとしてどの程度にするのか、あるいは全部でなくて一部をやめるのか、その辺のところは早急に方針を決めなければいかぬと思っております。しかしなかなか、おまえのところだけやめるぞというわけにはいかない問題でございますので、これは全体を考えますと、やはり規模を縮小して経営の不安のないような行き方をやり、その他の土地はどういう活用を図るかということも考えていかなければいかぬかなと思っておりますが、いずれにしても、ことしいっぱいかけて、おっしゃるように何らかの方針を決めていかなければいかぬと思っております。
  375. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 その大臣の誠意を了として、この質問は終わります。  その次に、今度の予算は、御承知のとおり景気浮揚、雇用の拡大ということが大きな柱になっておるわけでありますが、その雇用の拡大ということになって、この間も建設委員会でいろいろ質疑をしたわけですけれども、その一番の建設労働者、つまり俗に言う土方に従事をしておる人たちの保険の加入というものが非常に少ないわけです。ましてや政府管掌の健康保険に加入しておる業者なんというものは、これまた非常に少ないわけですが、こういう点で、厚生省としては、いわゆるこの健保の担当の省としては、建設業者の健保の加入の状況について調査をされたことがあるかどうか、まずその点。
  376. 八木哲夫

    ○八木政府委員 建設関係労働者につきまして、いろいろな態様があるわけでございますけれども、常用労働者について見ました場合に、政管健保の適用状況は百二十三万人、それから組合健保が二十九万三千人ということで、被用者保険では百五十二万人でございます。それから国保については二十四万一千人という数字でございます。それからあと・日雇い労働者の関係につきましては、日雇い労働者健康保険に二十七万二千人、それから国保に十万九千人。それからいろいろな態様がございまして、一人親方等の自営業者につきましては、国保組合ということで、大部分が国保組合に二十八万六千人加入しているという状況でございます。合計いたしまして二百三十万を超す数字だと思います。
  377. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 それで、いわゆる企業というか、建設に従事をしておる労働者の数は一体どれだけおると推定しておるのですか。
  378. 八木哲夫

    ○八木政府委員 大体二百万人が対象になっております。
  379. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 二百万なんという、そんなことがありますか。今度の雇用の拡大でさえ十七万人ふえるというのに。
  380. 岡田達雄

    ○岡田政府委員 五人未満も入れますと、総数で五百十五万人に相なります。ただ五人以上常時使用するというのが政管の対象になっておるわけでございますが、五人以上使用のものを対象にいたしますと二百二十四万人ほどでございます。
  381. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 私は、日雇い健保も労働省の関係であるということは百も承知しておるわけですが、厚生省は、生まれてから、まだ生まれる前から死ぬるまでお世話するところであるし、特に健保という労働者にとっては非常に大切なことを担当しておるわけです。それだから、法律で五人以上については政府管掌の健康保険に入らなければいかぬという義務づけもされておるということから、自分のところのなわ張りだけ掌握をした形でおるから健保も赤字になると私は思う。保険も掛けない者が——この問建設委員会でなにすると約五百五十万か六百万おって、そのうち日雇い保険からいろいろな保険に入っておる者は四割そこそこしかない、あとの労働者というものはほとんど無保険の状態の中にあるわけだ。こういう状態を放置をしておいて、雇用の拡大と言うても何で実証するのか。雇用問題は労働省の問題だ、こう逃げられるかもしれませんけれども、しかしながら、政府管掌の健康保険の加入の状況から見ても、五人以上雇用しておる建設業者が一体何人おって、それがどれだけ入っておるか、こういう調査ぐらいは厚生省としてもする必要がありはしないか。また、それをしなければ、本当に政府管掌の健康保険の恩典に浴する労働者というものは、いわばらち外にほうり出されておる、こういう状態であるわけですが、厚生省の方としては、そういう調査をされる意思があるかどうか。
  382. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生おっしゃることはよくわかるのです。現在のままの制度でいくとしますと、これは当然調査をして、できるだけ被用者保険の方に適用するように持っていかなければいかぬと思うのですが、私ども近く国会に健康保険の抜本改正をお願いをしたいと思っておりますが、その中では、国保も健保も給付については同じような給付の公平を図りたい、こう考えておりますので、そうなりますとこれは問題が解消してくると思っております。  ただ保険料の負担の問題について、事業主負担がある、ないという問題が出てまいりますので、これらについては、被用者保険のグループに入れるものを適当とする者がどの程度あるのか、これはおっしゃるように十分調査をいたします。これは関係各省とも連絡をいたしてまいります。ただ、給付の点では公平を期するように今度の抜本改正では考えたいと思いますので、どこの保険にあろうと大体公平にいく、こういうふうになるだろうと思っております。
  383. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 その健保の改正については大臣も情熱を燃やしておるようでありますが、この成り行きはどうなることか別といたしましても、現在ある制度の中で、この法の制度の中で、これが恩恵にあずからずに、ただ公共事業をやった、それなら公共事業をやって雇用が十七万人拡大するあるいは何十万人拡大する、こう言っても、そういう労働者というものが身分的に何ら法的な雇用関係が結ばれることがないわけですから、そこに雇用が拡大されると言うても、拡大のつかみようがないわけです。これは本来労働省の担当の委員会で質問すべきことか、こう思うわけですけれども、労働省の方では割り当てがなかったので、厚生省の方で、特に政府管掌の保険に限って質問するわけですが、大体五人以上の労働者を常時雇用しておる人たちに対する健保の方の適用については、これは申し出以外には別に調査なんかはしてないですか。
  384. 岡田達雄

    ○岡田政府委員 御存じのとおり、五人以上常時使用する事業所につきましては、建設業におきましてはこれは強制適用でございます。社会保険事務所におきましてはその実態を絶えず把握いたしまして、法律に規定されるとおり適用すべきものは当然適用されるという考えのもとに進めておるところでございます。  ただ、問題は、常時五人以上、これにつきまして、雇用者が建設業は非常に変動が激しいといったような事情が一つございます。それからなお事業主の御協力の問題等もあるようでございますけれども、これは私ども社会保険事務所といたしましては全力を挙げまして、そういったおしかりを受けないように今後とも努めてまいりたい、かように存じておるところでございます。
  385. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 そういう調査をされておるとするならば、常時五人以上使用しておる建設業ではどれだけの者が登録されておる、こういう書類というか、資料はあるのですか。
  386. 岡田達雄

    ○岡田政府委員 先ほど申し上げましたように、政府管掌健康保険におきましては、五十二年九月末現在におきまして百二十三万一千人が現在被保険者として適用されておる状況であります。
  387. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 事業所の数は。
  388. 岡田達雄

    ○岡田政府委員 これは先ほど申し上げましたのと時点が若干違いますけれども、昭和五十年度でございますが、八万三千七百十一事業所でございます。
  389. 井上泉

    ○井上(泉)分科員 八万三千の事業所という数と建設業者の登録数とは、これは恐らく大変な違いだと思う。私はその違いがどれだけでどうということをここで質疑する時間はないわけですが、少なくとも、よその省の所管でなくてもいいのですから、厚生省所管の政府管掌の保険に当然加入すべき義務があるのにもかかわらず加入してない業者というものがたくさんある。それをしてなければ、常時定まらぬのは日雇い保険を掛けなければいかぬ。ところが日雇い保険の人数にしてもわずか二十七万しかない、こういう数字でしょう。そうすると、建設労働者の数というものは、今日あらゆる産業労働者の中で一番大きいと思う。大きいし、しかもまた造船が不況だ、それならそこへ公共事業を起こしてその雇用を拡大をする、そういうふうな話をされておるわけですけれども、それを実証するものが何もないわけなので、その点については、やはり私は、厚生大臣が健保と国保のいろんな違いから健保の改正をやろうとする、そのことは理解をいたしますけれども、やはり現在の法の中で当然保護され、守られねばならない労働者が、その厚生省の保険のらち外にあるということは非常に不都合な行き方だ、こう思うわけなので、そういう点について厚生省がなお一層調査をして、総点検をする。いま各社会保険事務所にやらしておる、こう言いますけれども、私の知る限りにおいてはそういうふうな社会保険事務所の動きというものは感じないわけなので、その点ひとつ大臣の見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  390. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 建設省ともよく連絡をとりまして、いやしくも五人以上の強制適用事業所で適用漏れがないように、最大の努力をいたします。
  391. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして井上君の質疑は終了しました。  次は、新村勝雄君。
  392. 新村勝雄

    ○新村分科員 私は、まず、現在の医療制度のあり方について伺いたいと思うわけです。  人間らしい生活を願う人たちにとって、健康というものは何にもかえがたい重要な問題であり、関心事であるわけでありますが、それには、国民の健康を守るべき医療制度が国民本位に確立をされていなければならないわけであります。現在の医療制度は必ずしも国民の願うような形にはなっていないわけでありますけれども、まず、現在の医療制度の現状認識について、概要をひとつ伺いたいと思います。
  393. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 医療制度のうち、医療供給制度につきましては、すでに、たとえば僻地医療対策は五十年度を初年度として五カ年計画で発足しております。また、救急医療対策も五十二年度を初年度として三カ年計画が発足しておりますし、また、その根幹となります看護婦の確保対策といったものは、四十九年度から五カ年計画で始まっております。また、医師の確保対策につきましても、御案内のように経済社会長期計画に基づいて文部省が計画を進めております。その進捗状況でございますけれども、救急医療対策はまだやっと初年度が終わったところでございますが、僻地医療対策につきましても、また看護婦確保対策、医師確保対策にいたしましても、おおむね計画どおり進んでおります。
  394. 新村勝雄

    ○新村分科員 当局としていろいろ御苦労されていることはよくわかるのでありますけれども、いま医療荒廃というようなことが言われておりまして、福祉国家としての骨組み、医療供給制度、これは一応の完備を見ておると思うわけでありますが、これに対する供給の体制が必ずしも十分ではないわけであります。この制度とそれから医療供給体制、これが両々相まって初めて国民はその恩恵を受けることができるわけでありますが、そういうことになっておらない。特に、厚生省御当局あるいは医師会、それから国民、この三つが一体にならなければいけないわけでありますが、お互いの問の不調和というか、不信というものがどうしても感じられるわけですね。こういう問題についてひとつ、どういう御認識であるか、大臣に伺いたいと思います。
  395. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のように、国民皆保険制度ができましてから社会保険の国民総加入ということが実現をいたしまして、したがって、一応医療の不安というものは、一部患者負担等もありますし、また給付率等が各制度それぞれまちまちだという点もございますけれども、最低の医療保障の経済的な裏打ちの体制ができたということでございます。ところが一方、これはマクロで言えばそういうことなんでございますが、医師の数、医療機関の数からいいますと先進国並みに万対幾つというふうになっておりますが、地域的にはまだ無医村が数千あるというような現状でもありますし、そういうことを考えますと、医療供給体制については必ずしも十分ではない。したがって、皆保険下においてまだ医療を十分保障されない国民がたくさんいる、こういう事態は私どもは確かに重要な問題だと認識しておりまして、いま局長が申し上げましたような諸施策を計画的に推進してまいっておるわけでございます。  医療の荒廃と言われますが、私どもは、各国と比べてみましてわが国の医療保険制度は遜色あるとは決して思っていないのでございます。ただ、それぞれ保険の対象が低所得者から高額所得者まで一本で運営をされてないところがございまして、また、老人医療というものが老齢化社会を迎えた今日、保険財政を非常に圧迫をしてきておりますから、国民健康保険等については十分に財政の健全化を図り得ない。したがって、医療面における給付も健康保険並みにまだいかないというような面もございまして、まだまだ日本の医療保障については制度的に根本的に見直しをして立て直していかなければいけない、再構築しなければいけないという感じを持っております。したがって、そういう認識のもとに、国会の御意思等もございますので、今度ひとつ健康保険全体を通ずる抜本改正をぜひ皆様に御審議を願っていきたい、かようにいま考えておるところでございます。
  396. 新村勝雄

    ○新村分科員 大臣おっしゃることはよくわかるわけですが、私の申し上げるのは、医療荒廃というのはもっと基本的な問題として、まあ日本は福祉国家であります。その列に入っているとは思いますけれども、この福祉国家であるところの日本の中における医の公共性というか、医の位置づけというか、これが、医師会のサイド、国のサイド、患者のサイド、国民のサイドから合意に達していないというふうな感じがするわけですよ。すべての問題はここから発生するわけでありまして、現在の医者に対する悪口は大変あります。私自身医者じゃありませんけれども、医者は医者なりにかなり努力をしておる面はあると思うのです。失礼ながら、まだ公共施設としての救急医療は完備をいたしておりません。ですから地域における、たとえば夜中の急病人、これに対しては要求があり次第、大体において開業医が夜半過ぎでもその要望に応じて駆けつけるという姿があるわけであります。また国民は国民で、現在の整備された制度のもとにあってかなり重い負担を甘受しながら協力をしておるわけですね。また行政当局としても、いまおっしゃったようなもろもろの施策を進めておられるわけでありまして、それなりに皆努力をしておるわけでありますけれども、三者の合意、国民的な合意というか、まだ福祉国家の中における医の公共性という立場からの合意がないように思うのです。  そういう点で、ひとつ大臣におかれては、医師会を初めとして関係者あるいは国民に対する医の公共性、それからまたそういう中で医師はどういう責任と犠牲とを負うべきであるか、また患者は患者でどういう、もちろん患者は医療の供給書ける方でありますからこの要求に限りはないと思いますけれども、そういう中にあって現在の福祉制度をどう理解をして対処すべきであるかということが望まれるわけでありますね。それから行政の御当局としては、これらを強制をして、いやしくもかつて行われたような保険医総辞退というような不祥事を再び繰り返さない。また税制についての問題がありますけれども、こういう問題についても、十分医師の納得のもとに国民の理解が得られるような税制に移行させる、あるいは制度に移行させるということが必要だと思いますけれども、そういう点での大臣の御決意なり御方針なりがあったらひとつお伺いしたいのです。
  397. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思います。したがって、お説のような点を十分踏まえまして——私も新しく厚生大臣になりましたので、いままでは継続中の健康保険の審議をお願いをしたり、それから懸案でありました医療費問題を解決したりしてまいりましただけで、根本的ないまおっしゃるような点から物事を考えてどうあるべきかという対策に取り組む余裕がなかったのでありますが、これからはおっしゃるような方向を踏まえつつ、各界の合意を得て、りっぱな医療保障制度といいますか、社会保険制度充実さしていきたい、かように考えます。
  398. 新村勝雄

    ○新村分科員 大変頼もしい御答弁をいただいたわけでありますが、大臣、ひとつその御決意で、毅然たる態度で邁進をしていただきたいわけでございます。ややもすると、いままでの医療行政は医師会に牛耳られているという感じを国民は持っているわけでございます。点数の改定にいたしましても、あるいはまた税制の問題にしても、常に医師会に先んぜられるという印象を受けるわけでありますが、やはり行政当局としてはもっと毅然たる態度ですべてをリードする、引っ張っていくという御決意と態度が必要ではないかと思いますので、ひとつ大臣の今後の決断と実行を特に御期待を申し上げるわけでございます。  次に、具体的な点の二、三についてお伺いをしたいのですが、まず地域医療の問題でございます。  何といっても、国民の命と暮らしを守るのは、地域医療がどう合理的に組み立てられているか、それがうまく機能しているかということにあるわけであります。最近、医師の数も次第にふえまして、そういった面では医療供給体制はかなり改善はされていると思いますけれども、実態は必ずしもそうではなくて、先ほど大臣おっしゃられましたけれども、医師の数はふえているけれども、統計によりますと無医地区がややふえておるということがありますね。こういうことがあるわけでありますけれども、それらをこれからどう解決をなさっていこうとするのか。  それからまた、自治体病院協議会というものがございますけれども、この協議会の報告によりますと、僻地の小規模の病院あるいは診療所、これは閉鎖の報告が毎年数件ある、こういうことが言われておるのでございます。これは非常に重大な問題でありまして、医療供給体制の最大の問題ではないかと思うわけであります。その一つの例でありますけれども、民間の病院、これは毎年一割程度増加を見ておると思います。ところが公立病院については、これは四十七年からずっと五十一年までの統計がありますけれども、四十九年が九百四十五、五十年が九百五十、五十一年が九百五十二ということで、全くの横ばいですね。これは、人口増加あるいは地域的な人口動態の変化ということを考えた場合には、実質的には減であると言わざるを得ないわけですが、こういった現象についてどういう認識をお持ちであるか、またそれに対してどういう対策をお考えであるかを伺いたいと思います。
  399. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず僻地医療の問題でございます。本当に小さな十人、二十人といったような地域を入れると、先生がおっしゃられるようなことになるのかもしれませんけれども、厚生省の基準では五十人以上を基準にして僻地の実態調査をいたします。それで見ますと、三十一年から対策を講じておりますが、年々地区数もまた地区内の住民数も減ってまいっております。なおこれにつきましては、新年度予算が認められれば五回目の実態調査をやって、新五カ年計画の第五次五カ年計画を立てる予定でおります。  また、病院とか診療所の増減の問題でございますが、確かに民間の方はかなりの増加を示しております。しかし、三十年代に比べますと四十年代の増加は落ちてまいりました。また一方、御指摘のように国公立の公的病院の場合には、三十年代に一たんふえましたものが四十年代は横ばいになってまいりました。人口急増県では御指摘のようにむしろ減少と言った方がいいかもしれません。しかし、私どもは、病院、診療所の数自体はもうそろそろいいところに来たのじゃなかろうか、むしろ内容充実がこれからの問題ではなかろうかと思っております。たとえば、病院はもうすでに八千四百近くになってまいりました。診療所は七万四千近くになってまいりました。今後の問題は、むしろ内面整備の問題に移ってくるのではないかと考えております。
  400. 新村勝雄

    ○新村分科員 いまのお考えは、公的機関と開業医との混同がございまして、これは大変困るのじゃないかと思うのです。僻地医療あるいは過疎地域の医療というのは、これはもう開業医に依存できないわけでありまして、全面的に公的医療が担当すべき分野であります。ところがその地域施設が横ばいである、あるいは減っておるという事態ですね。これは大変重大な問題ではないかと思います。それから、いいところに来たとおっしゃいますが、これは民間と公的機関とを合計した数からすればいいところに来たかとは思いますが、分布の状態、特に公的医療機関についてはまだまだです。私は千葉県でありますけれども、千葉県は首都圏、東京周辺の、どちらかというと恵まれた地域のはずであります。その地域において公的病院、特に国立の病院が幾つあるとお考えですか。
  401. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 国立病院、療養所、合わせて十カ所ぐらいあったと思います。
  402. 新村勝雄

    ○新村分科員 この地域の分布の状況を見ますと、地域の人口を考えた場合決して楽観できないわけですよ。ですから公的病院についてはまだまだ力を緩めるわけにはいかない。  それと、公的病院の持っておる大きな問題は財政の問題だと思うのです。これは自治省との関係もございますし、予算措置等については自治省と御相談なさるかと思いますけれども、自治省あるいは大蔵の方針としては、公的病院もあくまで独算制でいけという方針のようですね。こういうことのために、現在公的病院に累積をされております欠損金が二千百七十六億、これは五十年から五十一年で一〇・六%の増加ということです。それから累積欠損金を持っておる事業所、この数は四百七十五事業所でありまして、これは公的医療機関の数の六六・八%が累積欠損金を持っておるわけです。さらにそのうち不良債務は千六十億、これまた前年度に比較して百二十二億円の増加というようなことでありまして、その事業所の数は三百十五事業所、全事業所の四四・三%、こういうふうに公的病院の財政状況が非常に悪化をしておるわけですが、悪化をしているというのは、公的病院の性格を国の方では取り違えていらっしゃるのではないかと思うのです。ほかの公共事業もそういう性格がありますけれども、特に医療機関について独算制を強要するというのは基本的に間違いでありまして、そういう考え方は、医の公共性といいますか、特に公共医療機関の公共性を放棄する発想だとわれわれは思うのです。そういった点で、これらの問題を解決してかからなければ僻地医療の解決はないというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  403. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 公的医療機関が赤字を抱えておるということについては、これは現実でございますから、したがって何らかの対策をとらなければいかぬだろうということを私どもも考えますが、現在、医療経済といいますか、これは全部社会保険でやっておる。民間でうまくいくものがなぜ公的医療機関でうまくいかないか、特別なサービスを公的にやっているのか、いろいろこういう検討をしてまいりませんと、ただ一概に赤字だからこれを何とか国でめんどうを見なければいかぬということにはならない。それぞれの努力というもの、どこに原因があるかも十分調べてみなければいかぬと私は思うのですが、確かに公的医療機関が赤字で悩んでいることは事実でございます。しかるがゆえに、公共団体等が当然埋めていかなければいけない、地域的な病院、診療所の要求にこたえることができない、病院はどうせつくれば赤字になるのだからもう病院には手を出すな、こういうようなことになって、いまの地方財政の現状ではその穴埋めがなかなかできないわけでございます。しかし、先ほど医務局長が申し上げましたように、私どもが僻地医療対策のある計画的な整備を考えまして逐次やってまいりましたのは、交通機関等も普及してまいりますから、無医地区だからそこに全部診療所がなければいかぬ、あるいは病院がなければいかぬということではなくて、地域全体をカバーできるような中核医療機関をつくって、そこが一定の広域医療圏を担当していくという考え方に立っていま計画的な整備を進めているわけでございます。地方団体に対するそういう場合の国の協力度合いというものも今後検討してまいりまして、医療供給体制に欠けることのないような全体のバランスのとれた国民のための医療というわけでございますので、社会保険で経済の裏打ちだけはありましても現実には医療の供給体制が整備しなければだめなわけでございますから、今後ともできるだけ善処し、努力してまいりたいと思います。
  404. 新村勝雄

    ○新村分科員 これは地方自治の問題でもありますし、地方財政の問題でもあるわけですが、現状のような制度ですと、地方自治の中でいかに住民から医療施設の整備を要求されましてもこれはとうていできないわけです。これは私の近所の一つの例でありますけれども、ある市長さんが一大決意を持って市立病院を設置したわけです。これは七十億程度かかっておる。ところがそのためにその市の財政が非常な圧迫を受けまして、その市長さんはりっぱな業績を上げた模範的な、まさに福祉国家における名市長であったわけでありますけれども、財政の破綻——破綻ではありませんけれども、非常な財政の圧迫によってその市の財政の状況が悪くなった、それを選挙でつかれて落選してしまったという事態があるわけです。これは地方自治にとって大変悲しむべき現実だと私は思うわけであります。こういう実態、これは一つの例を申し上げたわけですけれども、そういうことで、現状のような財政措置ではとても地方自治体の中における医療供給というものはできない。従来からある施設を維持するのがやっとでありまして、新しい機関をつくるなんということはとうていできないわけでありますから、これは自治大臣と御相談をいただいて、自治体病院の抜本的な財政的な再建、それから制度の見直しということを特にお願いしたいと思うわけであります。  あと、時間がありませんので、もう一つお伺いしたいのですが、それはいま大変問題になっております不公平税制の問題、医師税制の問題でありますけれども、これは総理が五十三年度限りで打ちどめだというふうにおっしゃいましたが、大臣としてはどういうお考えでございましょうか。
  405. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 政府・自民党では、この優遇税制については五十三年度末まで存続することとする、その問に所要の措置を検討する、こういうことになっております。したがって、その方針に基づきまして、今年いっぱいかけまして医師税制のあり方を検討する。私どもも意見があれば大蔵省に出そうというので、医療の担当である私どもの方が、税制はもちろん大蔵省の所管でございますけれども、その特殊性というものをいかに反映するのが合理的であるのか、これらの点について十分検討してまいりたいと思っております。同時に、医療担当者側の御意見も十分聞いた上で——御承知のとおり三木内閣時代に医師優遇税制についてという閣議決定がございますが、この閣議決定に基づいて専門委員会という機関ができたわけでございます。その一つの重要なテーマとして医療経済という項目がございますので、この専門委員会でも早急に医師税制についてのあり方を検討していただくようにお願いをしたいと思っております。皆様のお知恵をかりて、公共性のある医療というものの特殊性をいかに税制の中に反映できるか、皆保険体制下において、しかも診療報酬という一つの統制下にあって、しかも公共的な国民医療を担当する医療機関側にどういう税制がその特殊性から考えて適当であるか、こういう点を十分検討させていただこう、こう思っておるわけでございまして、いま具体案はございません。これからそういう趣旨で検討してまいりたい。そして五十二年度いっぱいで何らかの成案を得て改正をいたしてまいりたい、かように考えております。
  406. 新村勝雄

    ○新村分科員 この問題は国民としても非常な関心を持っておりますし、同時にまた医師としても、医師会としても最大の関心事であろうと思います。しかし、これをどう改正するにしても、医師会の理解を得て、医師会、政府、国民のコンセンサスのもとに行わなければ、これはかつてのような医師のストライキというものを誘発しては大変でありますので、十分万全の御準備をなさって実施していただきたいわけでありますが、いま何にも準備あるいは構想がおありにならないということですと、五十三年度打ちどめということは非常にむずかしいのじゃないか。前年度の所得から徴税するわけでありますから、五十三年度打ちどめ、五十四年度からということになると、五十五年度からしか徴収できないということになりまして、だんだん先に延びますね。なるべく早くこの制度に対する政府としての対処の仕方、仮にこの税制を改めるとすれば、代替措置が必要でありましょうし、この制度そのものは諸状況の中に存在するわけでありますから、周りの状況を整備しなければ、ぽんと税制を変えたからといってこれは大混乱になるわけであります。そこらを十分御検討いただいて、国民の期待に沿えるような、社会福祉国家の中における医の公共性、大臣、医師、国民、この三者が一つのコンセンサスに達するような医の秩序をひとつ確立願いたいということをお願い申し上げまして終わりたいと思います。ありがとうございました。
  407. 笹山茂太郎

    笹山主査 以上をもちまして新村君の質疑は終了しました。  本日は、長時間ありがとうございました。  次回は、明二十八日火曜日午前十時から開会し、厚生省所管について審査いたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時十二分散会