○原(茂)
分科員 私は、かねてから、防衛
施設庁の
北富士演習場にかかわる林雑補償金の支払いに関しまして、法的にもまた実態的にも多くの疑義を抱いてまいりましたが、きょうはこの問題にしぼりまして伺いたいと思います。
時間がありませんので、一括してまず質問をさせていただきます。
前に見ていただきました資料を見ながら、まず
防衛庁長官の総括答弁をお願いして、会計検査院の全体的な答弁をいただいた後に大蔵省、防衛
施設庁、
建設省などから答弁を順次いただきたい。時間がありませんので、時間切れとなりませんように御協力してくださって、要領よく短く答弁をしていただきたいと思います。不満足な答弁や再質問の必要なものに関しては、後日また決算委員会において引き続き補足をさせていただき、いずれにしても前々から申し上げてまいりましたように、何とかして年度がわりまでには
北富士関係の諸問題の解決をというのが私の念願でございますので、それを前提にしてこれからお伺いをいたします。
さて、この林雑補償に関しましては、すべてを
北富士演対協の会長に白紙一任をしなければならないとするいわゆる処理要領行政、これに対して、法的疑義というよりは、もう疑義の典型だというふうに私は
考えております。
だが、それにもまして驚くべきことは、その実態において、全く受給資格のない者へ林雑補償金の支払いが行われている、この点であります。私は、これらの点に関しまして、私の調査した結果に基づいて、防衛
施設当局その他に
説明を順次求めていきたいと思います。
第一に伺いたいことは、
昭和五十一年度分林雑補償金支払い手続に関して、周知のごとく、
北富士において林雑補償金を受け取らんとする者は、まず所属入会組合長に申請行為の代理を委任し、さらに組合長は、
演対協会長を副代理人とするということにおいて、林雑補償金を受け取ることができるようになっております。これがいわゆる処理要領に規定されている支払い手続であります。
ところで、この処理要領が策定された
昭和四十八年二月十七日以降の林雑補償金の支払い手続にあっては、申請者たる本人はその白紙一任の委任状にただ認印を押すとか、ひどい組合においては、本人の了解もとらずに、組合で保管している認印を勝手に押して、委任状を作成することをもって、林雑補償金申請行為がすべて自動的に完了することになっていたのが今日までの実態であります。
しかるに、去る一月三十日、
演対協会長は、傘下入会組合長に対し、五十一年度分の申請行為にあっては、いままでのように認印だけではだめだ、実印を押せという変更の命令を出しました。
ここで会計検査院にまずお伺いしたいのですが、国の補償金等の金員の支払い手続にあって、実印でなければその効力がないとするような例があるのか、
承知している限りで結構ですから、教えていただきたいと思います。
なるほど、公正証書の作成とか不動産登記にあっては実印が
使用されるということは、慣習上重要な取引であると
考えられて慎重な取り扱いをするために実印が押されているというふうに
考えております。
しかし、私が問題としているのは、国の補償金等の金員の支払い手続に限定してであります。この限定の枠内で、実印でなければならないという例があるのかどうかを教えていただきたいのであります。後で答弁をいただきますが、認印ではだめで実印でなくてはとするのは、きわめて特殊異例と
考えられております。
そこで、防衛
施設庁に尋ねますが、
施設庁当局は、かかる特殊異例な支払い手続をとることをみずから指示したのか、それとも
演対協会長独自の
判断でこのようにしたのか、そのいずれであるかを明らかにしていただきたい。また、
北富士以外、たとえば
東富士の場合は一体どうしているのか。もし
東富士が認印であるとすれば、どうして
北富士だけが実印にしなければいけないのかという問題が起きてまいります。
後での答弁になるので先に言っておきますが、いすせれにしても、申請人は実印を押すことを強制されているのが
現状であります。したがって、
施設庁は知らぬではまかり通らないと思う。当然知ってやっていると私は思うのであります。
言うまでもなく、防衛
施設庁の林雑補償金の支出の根拠は、林野雑産物損失補償額の算定基準(三十六年調達規第三十七号)で決まっておりますが、そこで明らかにしているように、
関係農民が入会慣行のある林野において事実上収益してきたいわゆる採取行為が、その林野を
演習場に提供することによって阻害された。したがって、現実にこうむる損失を補てんする必要があるということからこの補償制度が起きているところにあります。
このことは、
昭和三十六年十月十二日、故山本伊三郎参議院議員の質問に答えた内閣答弁書においても確認されております。すなわち、林雑補償の実損主義、つまり実損ある者のみが受給資格を有するとするのが林雑補償制度なのであります。
したがって、林雑補償の申請をなす者は、その申請につき、申請理由等を記載いたしまして、その実損の立証にかわるものとして、農家経営実態表を添付しなければならないということにもなっております。
しかし、私の調査したところによりますと、どう寛大に見ても林雑補償制度になじむ部落、すなわち農家経営上どうしても採草等のため
演習場への立ち入りを必要とする部落は、忍草、新屋両部落以外にありません。
しかも、特に重大な事実は、その採草等を必要不可欠とする忍草、新屋両部落においてさえも、現在は牛草刈り、屋根用のカヤ刈り、十六手切り等以外に立ち入りの事実は全くない。堆肥の
状況などは、青草堆肥は皆無であります。
また一方、そだについても、富士吉田市は都市ガスを主として、他はプロパン、石油。山中湖村もプロパン、石油。山村と言われた忍草ですら現在はプロパン全戸普及によって、いろりはあっても、そだの
使用は全くありません。
このことは、私が山中湖村、忍野村、富士吉田市内の二回にわたる調査及び
演習場内の草刈り、そだ切りの三回にわたる跡地調査、特にそのうち一回は防衛
施設庁の指定したその写真の——これをちょっと
長官のところに持っていってください。写真を一応ごらんいただきたいのですが、ここの写真にありますように、その写真の第一ページの図示のごとく、山中、忍草、新屋等の草刈りをしたと称する個所の跡地調査をしても、その写真のごとく採草の形跡は全くありません。同じく防衛
施設庁の堆肥のある家と指定した新屋部落の小俣英一、小俣末治両家の調査をしても、これまたその写真のごとくその形跡は全くありません。どの面からの調査をしても、野草、そだの採取行為がなされた証拠はないのであります。
したがって、実損主義の前提に立つ現在の林雑補償制度下にあっては、そのすべての
北富士農民は林雑補償受給資格者たり得ないことは疑う余地がありません。
その結果、かかる現況下、林雑補償の支払いを受けんとすれば、その申請について
要求される申請理由等記載事項、あるいは農家経営実態表等添付事項について、虚偽の事実を記載、添付し、申請するということで初めて可能となるのであります。
事実、すべての申請書は真実に反しております。
昭和四十八年以来、防衛
施設庁は林雑補償実損主義の原則をあえてみずから破って、現在すでに草刈り、そだ取りのための
演習場内への立ち入り許可日の立ち入り事実のないことを百も
承知の上で、林雑補償の支払いをしてきた疑いがきわめて濃厚であります。
そのため、これをつくろい、つじつまを合わせるために、横浜防衛
施設局係官は、
新聞報道やちまたの声のような行為、すなわち演対協を通じ、あらかじめ実態調査日を通告し、
関係入会組合がきわめて稚拙ななれ合いの演出を演じてきたことは、必要によっては公にしてもよいという了解を得ておりますエキストラを演じた本人の自白テープによっても明白であることを私は確信いたしております。この点については会計検査院の厳重な調査を
要求しておきます。しかし、もうそのようななれ合いの演出ではこの事実を覆い隠すことはできない状態になっております。
そこで、私が何としても承服できないのは、
先ほど指摘した実印強制問題であります。確かに一人で何個でも持つことのできるような認印よりは、実印を使わせると、その印影が申請者本人のものであること、申請書、営農実態表の作成者が本人に相違ないことになります。だが、それは同時に本人が法令違反の有無、法律行為の有効、無効、能力、資格、あるいは権限等を本人みずから慎重に調査検討の上で入会組合長や
演対協会長に委任したことになりますから、万一その違法な実態があばかれた場合は、そのような虚偽の申請をした途端に、本人は詐欺の着手となり、刑罰の
対象とされるのであります。
何となれば、この申請者の申請行為は現行林雑補償制度下では、前述のごとく、実損の一かけらもないからであります。
それを実は百も
承知の上で、なぜ一体
施設庁は素朴な農民に実印をもって申請させるのか、問題の核心はここにあるのであります。
思うに、それは第一に、
北富士農民は金の亡者だ、だから金さえやれば
演習場の永久化にも賛成するし、また
北富士演習場の最大のがんである
入会権擁護の闘いも本気ではしなくなってしまうだろう。それどころか、逆に
施設庁のかいらいとなって入り会いの鬼と言われる忍草入会組合に対する攻撃軍ともなる。それには、実損はなくともあるがごとくして金をばらまくこと、これが
北富士演習場安定
使用の最善の道であるとのうがった見方が住民に定着しつつあります。
第二に、万一の場合でも実印を押させることによって、行政当局の責任を申請者本人に転嫁させることができる。私は、
北富士の実態をこの目、この耳、この足でつぶさに調査した結果、どうしてもかく
判断せざるを得ないのであります。
一体、認印を実印に変更させた理由は何か。また、このように実損皆無の
現状においてあえて申請を受理する理由は何か。
さらに、現地
施設事務所の実損に関する報告はどのようになっているのか、
施設庁長官の正直な答弁をぜひ願いたいと思います。
第二に伺いたいことは、何ゆえに林雑補償にはいま
説明を求めたような実損ということが要件になっているかということであります。
現在の
施設庁当局の
考えは、
北富士における林雑補償は、
入会権その他社会的に承認された利益に対する補償の性質を持つものではなく、
北富士演習場において従来から野草またはそだの採取をしていた者が、
北富士演習場内への立ち入り制限によってそれらの採取が阻害されるので、行政措置として
防衛庁が見舞い金を出しているものなのであります。しかし、果たしてこのような理屈が法的にも行政的にも正しいと言えるだろうか。
そこで、大蔵省にまずお伺いをしたいのですが、一般的に言って、
国有地に無断で立ち入り、それを
使用することは、その
国有地上に何らかの権原を有する者でない限り、許すべきことではないと思うがどうか。これは法的に答弁していただく。
さらに、
国有地上の天然果実についても伺いたい。
国有地上に生育している野草、そだ、ワラビなどいわゆる天然果実は、一体法的にはだれの所有に属するものなのか。あくまでも土地から分離するときに、他に収取権者がいない場合を前提として答弁をしていただきたい。
今度は
建設省河川局にお尋ねしたい。
北海道十勝川の天然氷をとっている
人たちや、鉱毒事件で有名な旧谷中村、たしか現藤岡町下宮などの農民が調節池に生育しているヨシをとっているが、そのいずれも代価を納入していると聞いておりますが、その事実はあるのか。あるとすれば、採取許可や代価徴収の根拠は一体何か。
後からの大蔵、建設両当局の答弁で明らかになると思いますが、
国有地上の林野雑産物は、ほかならぬ
国有地上の産出物たる天然果実であって、土地から分離するとき、他に収取権者、たとえば
入会権者等がいない限り、土地所有者たる国の所有に属するものであると思います。
防衛
施設庁の見解は、
北富士農民は、
入会権もしくはその他の社会的に承認された利益は、これを有していないと言っている。したがって、当然のことではあるが、
北富士農民は、
北富士演習場内
国有地上の産出物、天然果実については適法な収取権者ではないのである。このことを端的に言えば、国の
財産の無断取得、言いかえれば窃盗になるのではないか。なぜ
北富士農民は窃盗にならないのか。
よしんば、
北富士農民が入会慣行を有するとしても、それは
施設庁の
考えでは、
入会権もしくは社会的に承認された利益、権利ではないはずだ。そうだとすれば、
北富士農民は、適法な林野雑産物収取権者では決してない。だから、
施設庁がこれらの
北富士農民を排除するか、排除しないまでも、その林野雑産物の採取については何らかの対価を徴収すべき義務が私はあると思う。
そこで、大蔵当局に伺いたいのですが、国の
財産は法律に特別の規定のない限り、適正な対価なしではこれを譲渡してはならないということになっていないか、法的に答弁をされたい。
恐らく、大蔵省は後での答弁で、財政法第九条第一項のとおりと答えると思うが、なぜ
施設庁は排除するなり、排除せず採取を認めるとするなら、財政法に従って適正な対価を取らないのか。
参考までに聞くが、かつて北海道の矢田別
演習場で農民の野草採取について対価を徴収していたのはどういうわけか。その根拠を明らかにしていただきたい。
法は、
国有地上に何らかの権原を有するものでない限り、その立ち入り、
使用、収益を禁じている。そして、矢臼別では対価を取り、
北富士では立ち入り、
使用、収益の権原はないと言いながら対価を取らない。それでいて
政府は、
昭和三十五年以降、数回にわたり、
北富士演習場における忍草入会組合の持つ旧来からの立ち入り、
使用、収益の入会慣習の存在を確認し、しかもこの入会慣習を「将来にわたって尊重する」との確約文書まで交付し、それどころか、当時の江崎、藤枝防衛大臣及び池田首相は、当時の忍草入会組合顧問である天野重知氏、また組合長である渡辺勇氏、天野茂美氏とかたい握手まで交わして、忍草部落との交渉を円満妥結した。一方、甲府地裁、東京地裁もまた仮処分事件において忍草部落の入会慣習、
入会権の存在を決定しました。
それなのに、
昭和四十八年、
政府は
北富士演習場には
入会権なしとし、さらに
防衛庁は社会的利益すらないと言う。それでいて、現実には採草の対価を取らないばかりか、採草、採薪の権原も、事実もなく、はっきりと林雑補償算定基準に該当しないのに、虚偽の申請をなさしめて見舞い金を交付している。この点に関しては特に会計検査院の厳重な調査を求めておきます。
そして、
施設庁は口を開けば、その措置を行政措置だと言う。一体行政措置とは何か。財政法規等の規定に反した行政措置なるものが存在するのかどうか。行政措置はあくまで法の枠内であるべきではないかと思う。
入会権も社会的な利益も、また何の権原もない者が国の
財産を勝手に取ることは、端的に言えば盗人である。また、それを別としても、実損がないのに実損ありとして、国民の血税をだましとることは詐欺と言って差し支えないと思います。どうして
施設庁は盗人に追銭になるようなことをするのか。また、どうして詐欺の共犯的
役割りのようなことをしなければならないのか。
最後に、どうしても納得できないことがあと三つあります。
その
一つは、
北富士関係林雑補償金交付の組合別、個人別の明細資料の提出を防衛
施設庁にいかに請求しても、個人の秘密に関するからと言ってがんとして出さない。この種のものは国政調査権の前には当然と思うが、再度提出を厳しく
要求しておきます。
〔
主査退席、谷川
主査代理着席〕
二つ目は、山中湖村浅間神社社地の借上料であるが、これまた林雑補償金同様、絶対に教えない。こんな国政調査権を侮辱した態度を放置するわけにはいかない。必ず出すことを求めます。
その三つ目は、同じ浅間神社社有地が、
演習には全く不必要な場所にありながら、どうして解除されないのか、直ちに解除すべきだと思うがどうか。
これで私の質問を終わりますが、最初申しましたように、これらはいずれも捨てておけないきわめて重要かつ重大な問題でありますから、まず
金丸長官の総括的答弁を願い、次いで会計検査院のこれに対する決意と今後の方針を伺い、順次
関係者の答弁を願って、終わります。