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1978-02-27 第84回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    分科会昭和五十三年二月二十日(月曜日)委 員会において、設置することに決した。 二月二十二日  本分科員委員長指名で、次のとおり選任さ  れた。      小此木彦三郎君    塩崎  潤君       谷川 寛三君    中野 四郎君       松野 頼三君    井上 普方君       大出  俊君    近江巳記夫君       林  孝矩君    小林 正巳君 二月二十二日  塩崎潤君が委員長指名で、主査選任された。 ――――――――――――――――――――― 昭和五十三年二月二十七日(月曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 塩崎  潤君      小此木彦三郎君    谷川 寛三君       中野 四郎君    井上 普方君       大出  俊君    沢田  広君       飯田 忠雄君    草野  威君       林  孝矩君   平石磨作太郎君       小林 正巳君    兼務 上田 卓三君 兼務 小川 国彦君    兼務 川本 敏美君 兼務 小林  進君    兼務 清水  勇君 兼務 野坂 浩賢君    兼務 瀬野栄次郎君 兼務 渡部 一郎君    兼務 神田  厚君 兼務 吉田 之久君    兼務 山原健二郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君  出席政府委員         内閣法制局第二         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    角野幸三郎君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         総理府総務副長         官       越智 通雄君         内閣総理大臣官         房会計課長兼内         閣参事官    京須  実君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         総理府人事局長 秋富 公正君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         警察庁長官官房         会計課長    大高 時男君         警察庁交通局長 杉原  正君         行政管理庁長官         官房会計課長  田畑 正夫君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         北海道開発庁予         算課長     岩瀬多喜造君         科学技術庁長官         官房会計課長  劔持 浩裕君         環境庁長官官房         会計課長    高橋 盛雄君         沖繩開発庁総務         局会計課長   永瀬 徳一君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         外務省条約局長 大森 誠一君         厚生省援護局長 河野 義男君  分科員外出席者         人事院事務総局         管理局会計課長 斉藤 和春君         公正取引委員会         官房庶務課長  厚谷 襄治君         防衛庁経理局会         計課長     小田原 定君         防衛施設庁総務         部会計課長   大内 雄二君         大蔵省主計局主         計官      塚越 則男君         大蔵省理財局国         有財産第一課長 秋山 雅保君         文部省初等中等         教育局小学校教         育課長     澤田 道也君         厚生省医務局医         事課長     内藤  洌君         厚生省医務局管         理課長     北郷 勲夫君         厚生省薬務局企         画課長     新谷 鐵郎君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 川崎 幸雄君         厚生省援護局庶         務課長     吉江 恵昭君         厚生省援護局援         護課長     田中 富也君         厚生省援護局調         査課長     丸山 一雄君         農林省食品流通         局流通企画課長 牛尾 藤治君         農林省食品流通         局市場課長   渡辺  武君         運輸省航空局飛         行場部東京国         際空港課長   松尾 道彦君         郵政省電波監理         局放送部業務課         長       志村 伸彦君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         建設省道路局企         画課長     渡辺 修自君         自治省財政局地         方債課長    津田  正君         消防庁予防救急         課長      荒井 紀雄君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         参  考  人         (日本中央競馬         会理事長)   大澤  融君     ――――――――――――― 分科員の異動 二月二十七日  辞任         補欠選任   井上 普方君     沢田  広君   林  孝矩君     草野  威君   小林 正巳君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   沢田  広君     井上 普方君   草野  威君     飯田 忠雄君   依田  実君     小林 正巳君 同日  辞任         補欠選任   飯田 忠雄君    平石磨作太郎君 同日  辞任         補欠選任   平石磨作太郎君    林  孝矩君 同日  第二分科員清水勇君、神田厚君、山原健二郎君、  第三分科員上田卓三君、小林進君、野坂浩賢君、  第四分科員川本敏美君、第五分科員小川国彦君、  瀬野栄次郎君、渡部一郎君及び吉田之久君が本  分科兼務となった。     ―――――――――――――本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  〔内閣及び総理府所管経済企画庁国土庁を  除く)〕      ――――◇―――――
  2. 塩崎潤

    塩崎主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  私が本分科会主査を務めることになりましたので、よろしく御協力のほどお願い申し上げます。  本分科会は、昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算中、皇室費国会、裁判所、会計検査院内閣総理府及び法務省並びに他の分科会所管以外の事項、なお、総理府につきましては経済企画庁及び国土庁を除く所管について審査を行うこととなっております。  まず、内閣総理府、ただし、経済企画庁及び国土庁を除く所管について政府かち説明を求めます。稻村総理府総務長官。
  3. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 昭和五十三年度における内閣及び総理府所管歳出予算要求額についてその概要を御説明いたします。  内閣所管昭和五十三年度における歳出予算要求額は九十四億七千五万六千円でありまして、これを前年度歳出予算額八十八億八千百三十一万六千円に比較いたしますと、五億八千八百七十四万円の増額となっております。  次に、総理府所管昭和五十三年度における歳出予算要求額は四兆五千六百三十七億八千八百四十三万七千円でありまして、これを前年度歳出予算額三兆九千七百五十七億六千八十六万七千円に比較いたしますと、五千八百八十億二千七百五十七万円の増額となっております。  このうち、経済企画庁及び国土庁に関する歳出予算要求額については他の分科会において御審議を願っておりますので、それ以外の経費について、予定経費要求書の順に従って主なるものを申し上げますと、総理本府に必要な経費一兆二千五百二十七億三千四百四十七万四千円、警察庁に必要な経費一千二百七十三億九千三百二十九万一千円、行政管理庁に必要な経費百七十八億七千八百七十七万六千円、北海道開発庁に必要な経費五千八百三十四億八千二百二十五万六千円、防衛本庁に必要な経費一兆七千八十八億九千八百三十七万円、防衛施設庁に必要な経費一千八百四十六億二千九百八十八万三千円、科学技術庁に必要な経費二千五百十四億八千百四十八万五千円、環境庁に必要な経費三百八十六億七千六百四十万八千円、沖繩開発庁に必要な経費一千七百十一億四千百四十五万三千円等であります。  次に、これらの経費についてその概要を御説明いたします。  総理本府に必要な経費は、総理本一般行政及び恩給支給等のための経費でありまして、前年度に比較して一千五百九十三億三千三百九十一万九千円の増額となっております。  警察庁に必要な経費は、警察庁及びその付属機関並びに地方機関経費及び都道府県警察補助のための経費でありまして、前年度に比較して百四十九億三千三万二千円の増額となっております。  行政管理庁に必要な経費は、行政管理庁一般行政及び国の行う統計調査事務に従事する地方公共団体職員設置委託等のための経費でありまして、前年度に比較して十三億二千八百三十八万九千円の増額となっております。  北海道開発庁に必要な経費は、北海道における農業基盤整備漁港沿岸漁場整備住宅、下水道、公園、林道、造林等事業経費及び治山治水道路整備港湾整備等事業に充てるための財源の各特別会計への繰入金等経費でありまして、前年度に比較して一千百三十四億七千百九十九万一千円の増額となっております。  防衛本庁に必要な経費は、陸上、海上、航空自衛隊等運営武器車両及び航空機等の購入並びに艦船の建造等のための経費でありまして、前年度に比較して一千六百二十億四千八百八十八万二千円の増額となっております。  防衛施設庁に必要な経費は、防衛施設周辺地域生活環境整備等を一層拡充することにより、関係住民生活の安定、福祉の向上に寄与するための経費並びに基地従業員対策充実及び駐留軍施設整理統合等のための経費でありまして、前年度に比較して二百九十七億一千六百十五万四千円の増額となっております。  科学技術庁に必要な経費は、原子力開発利用宇宙開発海洋開発防災科学技術及び重要総合研究推進並びに科学技術振興基盤強化等のための経費でありまして、前年度に比較して二百九十一億三千三百八十万五千円の増額となっております。  環境庁に必要な経費は、環境保全企画調整推進公害健康被害の補償、大気汚染及び水質汚濁防止公害防止等調査研究推進並びに自然環境保全推進等のための経費でありまして、前年度に比較して三十三億七千十二万円の増額となっております。  沖繩開発庁に必要な経費は、沖繩における教育振興保健衛生対策農業振興に要する経費並びに沖繩開発事業に要する海岸、漁港住宅環境衛生施設都市計画土地改良造林等事業経費及び治水治山道路整備港湾整備空港整備事業に充てるための財源の各特別会計への繰入金等経費でありまして、前年度に比較して三百六十六億七千二百二十九万円の増額となっております。  また、以上のほかに継続費として、防衛本庁において一千十五億七千三百六十八万九千円、国庫債務負担行為として、総理本府において百七十二万七千円、警察庁において十五億九千六百十四万七千円、北海道開発庁において二百二億二千七百二十万三千円、防衛本庁において五千三百六十三億三千八百五十六万一千円、防衛施設庁において百八十六億八百四十三万六千円、科学技術庁において一千三百四十三億五百三十万円、沖繩開発庁において二十七億八千百十一万九千円を計上いたしております。  以上をもって、昭和五十三年度内閣及び総理府所管歳出予算要求額概要説明を終わります。  よろしく御審議くださるようお願い申し上げます。
  4. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 塩崎潤

    塩崎主査 これより内閣及び総理府所管について審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、ただいま日本中央競馬会理事長大澤融君に参考人として御出席いただいております。  参考人の御意見は、分科員からの質疑によってお述べ願いたいと思います。  小林進君。
  6. 小林進

    小林(進)分科員 総務長官にお伺いいたしますが、公営競技は、ここ十年以来非常に盛況になってまいりまして、現在一年間の売上総額が大体四兆二、三千億円、そこに動員される人員は延べ一億三千万人前後になっておるのでございます。しかも、その売上金の中からあらゆる地方団体、その他の公益団体、あるいは環境衛生教育、保育、そういう方面税金補助的役割りをいたしておりまする金額が大体四千億円から五千億円近く、大ざっぱに言ってたばこの専売益金の約半額以上がそういう方面に使用されておるのであります。したがいまして、これを従来どおりの形にとどめておくことは決して妥当ではないということで、私はこの予算委員会におきましても数回そのことを総理大臣以下関係閣僚に御質問申し上げてまいりました。  その結果、私の希望が入れられて、前藤田総務長官のところで公営競技問題懇談会なるものが設置をされたのであります。私はこの懇談会という任意の総務長官諮問機関であることに対して大変不満を持ちました。これはやはり総理府設置法を一部改正いたしまして、法的根拠を与えたもっと権威のあるものにすべきであるという主張を続けてきたのでありますが、前長官から、まず懇談会で発足をいたしまして、その経緯を見ながら適当なときに法的根拠を有する調査会に切りかえたいというふうな御発言があったのであります。これは速記録がここにございます。まずこの点について総務長官の御所信を承りたいのが一点であります。法的根拠を与える意思ありやなしや。  時間が限られておりますから急ぎますが、それから第二点といたしましては、その懇談会設置されてから今日まで一体何回会議が持たれ、どういう調査を進められているのか、懇談会調査進行状態を承っておきたいと思うのであります。  以上、二点であります。
  7. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点でございますが、前総務長官閣議了解事項として公営競技懇談会設置いたしました。その後十一月十一日を第一回といたしまして五回懇談会を積極的に進めておるわけであります。その内容等については、細かい内容でございますから、この機会には省かせていただきたいと思います。  第二点の問題ですが、やはりいろいろな面においていろいろな議論が出ておることも私もよく承知をいたしております。ということは、長沼答申時代から見れば、千何百億という時代からもうすでに四兆何千億、五兆円にならんとしているこういう公営事業あり方については、意見のあることもよく承知をいたしております。そういう意味から、この懇談会をいつまでも続けるという考え方はありません。少なくとも三月いっぱい、遅くとも四月いっぱいに結論を出していただく、こういうことに考えておりまして、その懇談会の結果を踏まえて、いま小林委員の御指摘のありました法的根拠を持つ調査会にするか、これはその懇談会の結果を踏まえてひとつ検討してみたい、こういうふうに思っております。
  8. 小林進

    小林(進)分科員 私ども懇談会総理府にお持ちいただいたことを一歩の前進ではあるというふうに評価をいたしておりますが、どうも懇談会では、その結論が出ても、政府にはそれを実行する責任が法的にあるわけでもございませんし、また懇談会自体もいま十七名のメンバーが任命せられて、その座長を法制局長官をやられた吉國君がおやりになっておるようでありまするけれども、私ども外部から見ておりまして、何か真剣にこれと取り組んで、第一回目の長沼答申に値するような価値ある作業を進められていくような、そう言っては失礼でありますけれども信頼感がどうもまだわいてこないのでありまするが、いま少しきちっとした結論をひとつ出してもらえないかという要望が強いものでありますから、あえてこれを申し上げたわけであります。  なお、御参考までに申し上げまするが、総務長官自体もいま現存している公営競技の現状をどう一体御認識になっておるのか、本当にこれを改革するという意欲があるのかどうかということも含めて私どもはまだ若干の危惧を残しておりまするが、それこれを含めまして、ひとつ議員の間で超党派的に公営競技調査研究議員連盟といいましょうか、というのをつくろうということで、いまもう趣意書も規約もでき上がりまして、各党に発起人その他をいま募集中でございまして、これができ上がりますと盛大に発会式をやる。その主たる目的はどこにあるかと言えば、現在行われている総理府の状況をひとつ厳重に監視をしながらいい結論を出してもらわなければならぬというのがわれわれの主張でありまして、言葉で言えば総理府の現在の作業の一面協力、一面監視、こういう形でいこうというのがいま結成されつつある議員連盟の趣旨でございますので、そういう点もお含みおきの上ひとつ精力的によい結論を出していただきたいと思うのであります。  なお、この問題だけにこだわっておりますると時間がございませんから私は言いますが、私の四年間にわたる研究調査といたしましては、この公営競技、四つのギャンブルというものはもう廃止することはできぬぞ、廃止ができないからこれをひとつ根本的に規制をして、一方に国民にひとつ正しいレジャーを与えながら、一方には売上金利益金というものは国民の納得する形で公平に配分をされなければならない。そういう意味において、振興費の受け入れ、これを支出する個所として公営企業事業団なるものを、こういう機関をひとつ政府外郭団体として設置していただいて、そこで一元的に金を受け入れて公平に配分をするという形をひとつつくり上げていただいて、それで振興費の出納は国会審議会計検査院の検査もちゃんと受けられるようなものにひとつしていただきたいというのが、われわれの研究の所産です。  それから、支出についても、いま申し上げましたように、公正な委員会設置して支出先を選択し、特に福祉充実、スポーツの振興充実文化施設自然環境整備充実等に最も効果的に配分をしていただく。いまのところは各振興会がそれぞれありまして、配分のケースが皆違っておる。中央競馬会国庫納付金、こんなものは実はやめたがいい。これはみんな一元的に支出するように持っていかれるのが私は正しいと考えております。  それやこれやを含めまして、いままでは競輪は通産省の関係、競艇は運輸省競馬農林省、しかも中央競馬地方競馬とその配分方法もまた違っておるというふうにばらばらだ。そこには大変ロスがあったり不公平がありましたり、詰めていけばいろいろの矛盾が出てまいっておりまするので、こういうものをひとつ一元化して、ちゃんと会計検査院その他国会審議も受けて、公正に、税金並みにこれが配分せられるように、ひとつ十分私は総務長官の方においてもそういうきちっとしたお考えを持っていただきたいと思います。それをひとつお願いをいたしておきまして、早く総理府設置法を改正いたしまして法的根拠を与えるようにやっていただきたいことをさらにお願いいたしたいと思います。  次に、私は中央競馬会のことについて、大澤理事長においでをいただいたのでございますから、一、二問御質問を申し上げたいと思いますが、われわれのところへ、いろいろ中央競馬会あり方について投書があったり陳情があったり批判があったりしてきておりますが、ここにも中央競馬馬主協会連合会なるものから「中央競馬会の体制及び運営の刷新について」などという書類が来ております。恐らく理事長もこういうのはごらんになっていると思うのでありますが、馬主協会から出されておりますこういうような陳情、請願に対して、どう一体お考えになっておりますのか、理事長のお考えをお伺いいたしておきたいと思うのであります。
  9. 大澤融

    大澤参考人 私も、内閣の方ですか、総理府の方へ馬主協会連合会から配付をされたということを聞いております。詳しい内容を私よく存じておりませんが、いろいろ御批判を受けることは私どものやっていることを改善していくという上においては大きな意味がある、こういうふうに思っております。
  10. 小林進

    小林(進)分科員 私の後には社会党で一番馬と競馬が好きだという井上普方代議士がまた質問することになっておりますから、私はこれは総論の程度にとどめておきますが、その中で主なものを見てまいりますと、これは馬主関係あるものとして、賞金あり方に一つ問題がある、それから厩舎の貸し付けに一つ問題がある、それから第三番目には調教師免許についても問題がある。特にこの調教師免許と、調教師の権力といいますか何といいますか、実力といいますか、これがだんだんと大幅になって、そこに非常にどうも暗い影が出ているということは、単に馬主協会だけではありません、方々からこれは入ってきておりますけれども、こういう問題に対して、理事長は一体どうお考えになっておるのか。  それから、番組の編成などについても、これはある程度馬主参与権といいますか、ある程度の発言権を与えてもらってもいいではないか、そういうことも来ておりますが、こういう問題についてどうお考えになっておりますか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  11. 大澤融

    大澤参考人 競馬につきましてはいろいろ問題がございます。  農林省の方でも、あれはたしか四十六年だったと思いますが、いま小林委員がおっしゃったような広い面での問題を取り上げて、競馬改善についての委員会といいますか、懇談会といいますか、そういうことをおやりになって、それの中間報告答申も出ております。そういうことを受けまして、私どもの方でもいろいろ問題がございますので、先生御承知だと思いますが、競馬会には運営審議会というのがございます。その中にといいますか、その下にといいますか、委員以外にも馬主さんあるいは調教師さん、厩務員の方、あるいは学識経験の方というような方に参加をいただいて懇談会を設けております。そこでやっておりますことは、いまおっしゃられた厩舎制度ですとか、あるいは賞金の問題ですとか――厩舎制度の中には当然調教師さんの問題も入りますが、そこで御議論をいただいて、厩舎制度についてはある程度の御答申を得て、それに基づきまして、諸種の改善を私どもの方でも図っております。  賞金の問題については、これはまだこれから御審議をいただくという段階になっておりますが、いろいろ御議論を願った上で、改善すべき点は改善をしていくというつもりでおります。
  12. 小林進

    小林(進)分科員 いまも運営審議会お話もございまして、それで各界各層専門家、学者を入れて研究答申をお待ちになっている、あるいは答申によって進めているというお話がございましたが、馬主協会の方からいいますと、昔はこの審議会の中にも馬主が多数を占めた、最近はだんだん馬主のメンバーや数が減らされて、この審議会の中における馬主発言権もだんだん弱まりつつある、こういうことが一つ。  それから、競馬というものは、イギリスを初めといたしまして、運営の仕方、やり方がどうも少し中央集権的ではないか、いま少し権限、権力というものを民間に移譲してもよいのではないか、こういうような声がわれわれのところへ来ておるわけでございますが、こういう問題についても、理事長どうお考えになりますかということをお伺いしておきたい。  それからいま一つは、先ほども言いましたように、この競馬も含めて、公営競技全般をひとつ洗い直したいというのが私の希望であります。  そういたしますと、先ほどから繰り返し申しますように、中央競馬だけは売上金の一〇%をすぐ国が無条件に持っていってしまう、ほかの方は、振興会なるものを設けて、その枠の中へ入れて、そこで、適当と言ってはなんでありますけれども、そういう言葉は適当でないが、配分をしている、やり方が皆違っております。一つの枠に入れて、そうして一元的にこれを公正に配分するような制度に改むべきだということに対して、一体理事長はどうお考えになりますか、そういうことも含めて私は御返事をいただきたいと思います。
  13. 大澤融

    大澤参考人 最初におっしゃられた運営審議会委員のメンバーですが、これは馬主さんあるいは調教師あるいは学識経験者、それぞれから出しなさいというような法律のあれがありますので、それに基づいて、私の方じゃございませんで、農林大臣の任命でございますけれども馬主さんの発言権がその中で十分あるように編成されているというふうに私、思っております。  それから、ある程度民間にというお話がございましたが、これは競馬の歴史は小林委員もお詳しいことと思いますけれども昭和十二年ころまではいわゆる馬主さんの倶楽部競馬をやっておったわけです。本当の民営であったわけです。それにいろいろ問題がございますので、いまの日本中央競馬会の前身とも言える日本競馬会が法律改正で昭和十二年にできたということでございます。非常に強力な、たとえば役員の任命なりあるいは任命することについての認可ですとか、あるいはいろいろ重要な事業について、あるいは予算の編成につきましても農林大臣が認可をする、あるいは会計についても会計検査院が検査をするというような、非常に厳重な監督を受けているのでございまして、そういう形の方が昔の民営に比べてもいいんだというふうに私は理解しております。  それから、いろいろな収益、これを私どもは、御承知のように、国庫納付金として売り上げの一割と利益金の半分を出すということになっておりますけれども、いろいろな公営競技利益金を一緒にして、何か政府機関をつくって、そこでやった方がいいかどうか、これは、私、余り大きな問題で、にわかに判断しかねると思います。
  14. 小林進

    小林(進)分科員 時間もだんだん迫ってまいりまして、私のお聞きしたいこともたくさんあるのでありますけれども、それじゃ時間がありません。  ただ、繰り返し申し上げますが、調教師の現在のあり方だけは、いま諮問中とおっしゃいますけれども、これはひとつ厳重にやっていただきたいと思う。いわば厩舎が少なくて、厩舎に入りたいという希望の頭数が多過ぎるということも、だんだんどうも調教師などという権力者を生んでくるかっこうになるんだと思いまするけれども、これはよろしい制度じゃありません。これはぜひひとつ改めていただきたいと思います。  それから、最後に私は申し上げたいのでありまするけれども、美浦のトレーニングセンターという問題なんでございます。これはなかなか馬主協会及び関係者の方からやかましく言ってきております。中山と府中の競馬場における付属の厩舎ですか、馬を置く場所を美浦に持っていって、そこに常置して、競馬があるたびにそこから朝運んできて、競馬が終わればまたその日のうちに美浦に帰ってくる。その美浦というのは、府中等から距離をはかると百三十キロもあって、大変遠い。その通るコースは、いまここに大塚さんもいらっしゃいますが、成田空港に至るメーンストリートを通っていくものでありまするから、交通障害になったり、交通の混乱を来したり、大変なことになって、どうも運ぶだけでも数時間かかるのじゃないか。また運んで帰るのでも数時間かかるのではないか。一日往復で八、九時間もかかるようなところを、あの大きなずうたいの馬を、あるいは馬に関係する人たちを運ぶということは大変な作業だ、大きなロスだ、事実上不可能だ。だから、これを少し何とか、成田空港ができ上がって、交通の整理ができ上がって、道路も輸送も完成せられた、その後までこれは待つべきではないか、こういう話がやかましく来ているのでございまするが、理事長は、強引にこの三月ですか、あるいは成田空港の開港を待たずして、あるいは開港と同時に馬の輸送、これも開始せられて、実行されるというようなことを承っておりまするけれども、実際、技術の面においてそれがスムーズにできる目算があるのかどうか、具体的にひとつお話を承りたいと思うわけであります。
  15. 大澤融

    大澤参考人 初めの方の調教師の問題でございますが、確かに馬が非常にふえて、厩舎が少ないという面から、馬主に対して優位な地位に立っているということは事実でございます。その点については、先ほど来お話ししておりますように、厩舎制度の問題の一つとして、そういうことのないような方向に持っていきたいという努力をしております。  それから、美浦の問題ですが、これは御存じだと思いますが、関西の方にはすでに栗東というところにトレーニングセンターがございまして、そこから阪神なり京都なりへ馬を競馬のある日に運んでやるという制度になって、非常にうまくいっております。現在は、その意味は、競馬競走馬を飼育管理するということと、競走馬を走らせるということがあるわけですけれども、その前者の方と後者の方を同じ競馬場でやっておったわけです。それを、前者の方はトレーニングセンターに持っていき、競走のみに競馬場を使うというふうな思想でやっておりまして、関西の方ではずっとうまくいっております。それと同じものを関東にもつくれということで、昭和四十年、もう少し後でしたか、話がありまして、美浦の地に競馬会関係者の御意向を聞きながら土地を選定して、そこにりっぱなものをつくったわけです。その工事が大体昨年の末ぐらいに終わりまして、いよいよ移るということになったわけです。約二千頭の馬と五千人の人間が移るわけですが、その家族には学校に行っている子供さんが大ぜいおるわけで、三月がそういうような学校の切りかえ時期でもございますので、三月の上旬から四月の上旬にかけて人馬ともに引き移るということを考えておるわけです。これについては、空港の方の移転というようなことにお邪魔をかけることがないような日程を組んで移動を考えておりますけれども、そうした学校の関係、それから地元での受け入れ体制をもう十分やってくれております。水道ですとか、あるいは国鉄のバスでありますとかいうようなことをやっておりますので、予定どおり移らないと教育上の問題、あるいはいま言った地方公共団体なり国鉄なりいろいろなところに御迷惑をかけることになりますので、空港がたまたま移転されるようでございますけれども、それには御支障のないようにというようなやり方を考えてやっております。  それから、馬主さんといろいろ調整すべき点がたくさんあって、必ずしもいまスムーズに移れるというようなかっこうではございませんけれども、円滑に移れるというようなことでお話し合いをいろいろやっておる状態でございます。
  16. 小林進

    小林(進)分科員 時間がまだ二分ばかりございますから、それではいま一応申し上げますが、いまおっしゃるように、二千頭、五千人の大移動、これは一時の移動でございますから、成田空港等に支障のないように、夜遅くとか朝早くでありましょうが、それが移った後で、今度は競技があるたびにやらなくちゃならないですな。それは一体どういうことになるかというと、馬を運ぶ特別の車、大体一自動車について四頭が入る。一日に出走する必要な馬は大体百二十頭。そうすると、馬を運ぶ車だけでも、大きなトラックが三十車。(「本当は五十だ」と呼ぶ者あり)専門家が後ろにおりますから、五十台。そのほかに、騎手その他の関係者を乗せる自動車が二十台ないし三十台、これが前後合わせて七、八十台の車が毎日成田空港と競合しながら行ったり来たりしなくちゃならぬわけでありまするが、それでもなおかつ、一体交通の支障にならないものかどうか、その作業がうまくいくものか。大塚さん、どうですか。ちょっと大塚さんにも聞いてみますかな、成田空港の親方がおりますから。そういうことを私はお聞きしたいのと、いま一つは、やはり馬主の方ともまだ煮詰めなければならない問題がいろいろあるといまおっしゃいましたけれども、そういうこともひとつ煮詰めていただいて、なるべくスムーズに円滑に事が運ぶようにひとつ御努力をしていただきたいと思います。輸送の問題はどうですか。
  17. 塩崎潤

    塩崎主査 時間がありませんので、簡潔にお願いします。
  18. 大塚茂

    ○大塚参考人 実は交通の問題は、空港公団の所管ではございませんで、運輸省が中心になりまして警察、道路公団、建設省等と調整をされております。ちょうど航空局の方から新空港課長が見えておりますので、そちらからひとつお聞き取りを願いたいと思います。
  19. 小林進

    小林(進)分科員 やむを得ません。時間が参りましたから、これで終わります。どうも失礼いたしました。
  20. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて小林君の質疑は終わりました。  なお、ただいま御答弁をしていただきました大塚参考人は、新東京国際空港公団の総裁でございます。参考人として御出席をいただいております。  参考人の御意見委員からの質疑によってお述べ願います。  井上普方君。
  21. 井上普方

    井上(普)分科員 小林大先輩の後を受けまして、少しお伺いしたいのでございます。  成田空港が完成いたしますと、一体どれくらい自動車、車両がふえる予定なのか承りたいと思うのです。といいますのは、一日片道五千台くらいの車しか動かない、こういうような計算のようでございますが、そのとおりしか計算しておりませんか。
  22. 松尾道彦

    ○松尾説明員 成田空港は、おかげさまで今度の三月三十日に開港することになっておりますが、開港に伴いまして、いわゆる道路交通といたしましては、いま先生の御指摘のございましたとおり、一日片道で約五千台、往復で一万台の輸送量と考えております。
  23. 井上普方

    井上(普)分科員 そこで、建設省にお伺いをするのでございますが、新東京国際空港の開港を三月三十日に控えまして、京葉道路でございますか、これが中心になるのだと私ども考えるわけであります。しかし、その京葉道路の状況を拝見いたしますと、非常に混雑が激しいものがある。東関東自動車道路それから京葉道路、さらにはまた首都高速七号線というようなのを見てみますと、東関東では二万一千台、これが宮野木と枕橋との間あるいはまた花輪と幕張との間では実に十万台に達する自動車が上下しておる。あるいはまた京葉道路におきましても十三万八千台と江戸川大橋付近においては自動車が混雑をしておる。したがって、これを緩和するためにいわゆる湾岸道路というものがつくられたのでありますが、この湾岸道路にいたしましても継ぎはぎであります。継ぎはぎでありますので、これを早く整備しなければならないと私は考える。そうでなければ、恐らく成田空港ができましても都心との交通は片道五時間ないし六、七時間かかるのじゃなかろうか、このように考えられる。したがって、一部の間においては、外貨も余っておるのだから、この際、百人乗りか二百人乗りのヘリコプターを輸入して、そして羽田と成田との間を輸送しなければ動きがつかないのではないかという議論すらあるということを聞いておるのであります。このことについて、一体湾岸道路はいつまでにできるのだということを建設省にお伺いいたしたいのと、三月三十日に開港いたしますと、先ほど申しました京葉道路、首都高速あるいはまた東関東、この自動車道においてはどれぐらいの混雑度を増してくるのか、この点ひとつお伺いしたいのです。これは、運輸省で建設省と同じように調べておるのですか、そこのところをまず第一に聞いて、それから御答弁願いたいのです。
  24. 渡辺修自

    渡辺(修)説明員 お答えいたします。  ただいま運輸省の方から片道五千台というお話がございましたが、私どもの方も、空港の直接関連といたしましては、このいただいた数字を使っておるわけでございます。  ただいま先生の御指摘のような東関東自動道あるいは京葉道路の混雑状況でございますが、幸いに湾岸道路を一月の二十日に通すことができましたので、私どもといたしましては、今後ふえますものをなるべく湾岸道路に誘導いたしまして、ただいまの首都高速七号線を含めました現状の京葉道路、東関東道、これを円滑に使っていくように最善の努力をいたしたいと考えておるわけでございます。  それからなお、湾岸道路の高速部分がまだできておりません。これにつきましては、五十六年度末ということでただいま計画しておるところでございます。
  25. 井上普方

    井上(普)分科員 あなた、そんなことをおっしゃっておりましても、自動車というものは、新しい道路がつきましても、それに誘導するには大体半年から一年かからなければ同じ平均値にならないのです。これはもう警察でも聞いたのだが、あなたの方も御存じのはずなんです。いま湾岸道路も、しかも継ぎはぎでしょう。これであなた方、自信があるのですか。いまのままでやって、ともかく都心と成田空港との間を何時間で来れるのです。自動車は一万台、ともかく往復するそうだが、私はまだそれよりもふえるだろうと思っております。少ない数でやっていると思うのですが、何時間かかるつもりなんですか。
  26. 渡辺修自

    渡辺(修)説明員 現状で湾岸道路が通りましたあとではかってみましたところ、従来に比べまして、京葉道路を使いまして首都高七号線を通ってまいります経路で、上りの方向が特に込むわけでございますが、大体十分程度短縮になっております。これは平常時でも混雑時でもほぼ十分ぐらいずつ短くなっておるわけでございます。したがいまして、新空港から箱崎に参りますのに、京葉道路を通って参りまして、通常のときで七十五分、それから渋滞時で大体百分というデータが出ております。  なお、湾岸道路につきましては、現状で約一万八千台ぐらい通っておるわけでございますが、これは国道部分が四車線でございまして、高速は六車線でございます。まだまだ容量的には余裕がございますので、今後ふえましたものを積極的にそちらに誘導することによって処置をしたいと考えておるわけでございます。
  27. 井上普方

    井上(普)分科員 あなた、混雑時に百分なんて言って、本当に行けるのですか。私は中山から東京の中心地に来ますのに三時間かかることはしょっちゅうあるんだ。そんな、ともかくごまかしと言いますか、都合のいいようなデータだけ並べられても、ちょっと私は信用いたしかねる。私自身が中山から東京へ来るのに三時間かかった経験が四、五回あるのだから、そんな計算でこの新国際空港の時間帯を考えられるのは、まことにもって迷惑至極だと思う。現にこの江戸川大橋の時間帯別の通行量なんか見ますと、朝の七時には一時間に五千台以上走っておるじゃありませんか。これでともかく動かないのに、錦糸町にいたしましても朝の七時に三千台以上、東関東の方におきましては、これはいまのところ比較的少のうございますけれども、しかしこれに五千台が加わるのでしょう。そんなので、とてもじゃないが、これは私は動けないと思う。国際空港というと、あらゆる点においてともかく行き詰まり、計画にそごを来して今日まで延びたのは皆さん御存じのとおりだ。また、交通でさらにさらにひどくなって、ともかく都心へ向かうのに世界でも有名な不便な国際空港になるのじゃないかと私どもは心配をいたしておるのであります。自信は本当にあるのですか。もしなければ、だれが責任をとるのですか。どこが責任をとるのですか。その責任の所在だけをはっきりしておいてもらいたい。
  28. 渡辺修自

    渡辺(修)説明員 先生が先ほど御指摘になりました、非常に時間がかかるとき、これも確かにあることは事実でございます。競馬がございましたり、あるいは夏場の海水浴シーズンあるいは潮干狩りのシーズンというものは、千葉の方に相当交通量が参りますので、そういう事態もございますが、先ほど申し上げました数字は、ある程度長い期間をとりました平均の時間でございます。開港に伴いましてふえますもの、これは私どもとしては、なるべくは東関東から京葉を通り首都高七号線を通って、スムーズに都心に入っていただけるようにしたいと思いますので、特に千葉から東京都心に入るようなもの、これはなるべく湾岸道路を使ってもらうように誘導してまいりたい。それにはいろいろ道路の上につける情報板等がございます。こういったものも整備しておりますが、なお最終的な交通処理につきましては、これは警察庁運輸省とも協議しながら、適切な手段をとってまいりたいと考えておるわけでございます。
  29. 井上普方

    井上(普)分科員 だれが責任をとるのだと聞いているのですよ。あなた方はそういうような計算をしているが、それでうまくいかなかったらだれが責任をとるのだ、こう言っているのです。
  30. 渡辺修自

    渡辺(修)説明員 非常に厳しい御質問でございますが、私どもとしましては、やはり道路の管理という面の責任がございます。それから警察庁においても、それぞれ応分の仕事をいろいろ持っておられるわけでございますので、いずれにいたしましても、私どもとしても、皆さんに御迷惑をかけないように最善の手を尽くすということを申し上げるしがなかろうかと思います。
  31. 井上普方

    井上(普)分科員 ともかく、それぐらい責任のないこの交通量の調査であると私は思っている。責任はだれがとるのだと言ったら、役人特有の分散をしてしまって、だれが責任をとるのかわけがわからなくなってしまう。これで成田国際空港ができて、この京葉道路並びに首都高速七号線も満杯になっちゃう。身動きもつかなくなる。遅速道路の最たるものになるんじゃないかと私は心配しておるわけであります。そこへもってきて、今度中央競馬会が美浦へセンターを移す。そうしますと、朝早く移すと言いますけれども、首都高速七号線に移る時間はどう勘定いたしましても六時か七時になってしまう。そういたしますと、やはり江戸川大橋付近で一万台のところにくっつかざるを得ない。そうすると、あなたのおっしゃった、中央競馬会はこのごろ、朝四時ぐらいに車を走らしてみたそうでございますけれども、非常にスムーズにいったので、これで安心だというようなデータを出されておるようですが、これじゃ渋滞にひっかかってなかなか動きがつかない。レース前の状況がそれだし、今度は帰りになってくると、さらに混雑が激しくなってくると思うのです。  協会の理事長、どうですか。美浦から府中まで何時間を予定しておるのですか。府中から美浦まで帰るのに何時間予定しておるのですか。この点をお伺いしたいのです。
  32. 大澤融

    大澤参考人 おっしゃるとおり、美浦に今度馬が移るわけで、競馬を中山なりあるいは府中でやるわけですが、土曜、日曜でございますので、またそれも早朝運ぶということになります。私ども何回か実験をやってみましたが、府中と美浦の間は、大体五時ごろ向こうを出発しますけれども二時間半。それから帰りは多少時間がかかりまして、三時間近くかかるというような実験をいたしております。  なお、おっしゃるように、混雑で、ことに空港ができてからどういう状態になるかというようなことについては、不測のことがあり得ますので、そうした場合に馬の早朝当日輸送ということだけではなくて、府中なりあるいは中山の方に何日か前に持っていって馬を置いておくというようなために厩舎を残しておくとか、いろいろな措置を、不測の事態の起こり得ることも予想して準備をしているというような状態でございます。
  33. 井上普方

    井上(普)分科員 恐らくあなたの方も栗東のような輸送状況ができぬということは予想されておるのだろうと思うのです。そうでしょう。それで、馬を府中なり中山にあらかじめ置いておくんだと言いますけれども、私が言うよりも理事長さん、あなたの方が御存じのとおり、非常に敏感な、微妙な動物であるのです。それに当日輸送するとなると、あなたのお話でありますと二時間半とおっしゃいますけれども、あと五千台加わって――五千台以上になると思うのですが、一体どうなるかということについては、私はまだまだ時間がかかるのじゃないかと思う。その心配があるからして、あらかじめ不測の事態を予測して府中、中山に置いておくのだとおっしゃいますけれども、これまた私はファンの一人といたしましても、どうも不安に思わざるを得ないのであります。したがって、子弟の学校のこともございましょう、しかし一応状況の落ちつくまでひとつ美浦への移転を見合わしたらどうです。私は国際空港と一緒にやるというのはどうも合点がいきかねるのですが、どうでございますか。
  34. 大澤融

    大澤参考人 そういうお考えの方もおられますけれども、私どもとしては、移転そのものはちょうど空港の移転の時期ともダブるようなことになりますが、空港の方の移転に障害にならないような日程に組んでおります。  さらに、移転を延ばすというようなお考えでございますが、移転をしてしまいまして美浦から中山なり府中なりへ馬を運んできた場合の、あるいは牝馬等でも実験をいたしましたけれども、特にそれによって馬の能力なり走り方に影響するとか、いろいろ医学的な、理論的な、技術的な検査をしたわけでございますが、そういう支障はないようでございますので、ファンの方に、向こうから運んでくるために別の考え方をとらなければいかぬというようなことにもならない、公正な競馬ができるというふうに私どもは確信しておる次第でございます。
  35. 井上普方

    井上(普)分科員 不測の事態があるかもしらぬから、府中あるいは中山に厩舎を残して、そこに一時置いておくというようなことも考えられるのだというくらい不安なのでしょう。ファンあっての競馬なのです。ファンがともかく不安に思っておるのであれば、これはやはり――国際空港と移転が重なることについて、私はさほど心配していない。これは順序よくやればできることだと私は思っています。しかし、その後のレースなのです。これはどの評論家に聞きましても、あれは無理ですなということをすでに言われておるのです。そう我を張らずに、素直にファンの意見を聞いて九月まで延ばしたらどうです。つくったからすぐに使わなければならないというような意地を張らずに、国際空港の混雑の状況を三月か四月か見て、その後考えられるのが当事者としてとられる態度ではなかろうかと私は思うのですが、どうでございます。まだ我執せられるなら我執せられるでよろしい。そのときにはそのときで、私といたしましても責任追及の場をもう一度持ちたいと思います。いかがでございますか。
  36. 大澤融

    大澤参考人 何度も繰り返して申し上げるようになるのでございますが……(井上(普)分科員「はい、わかった、結構です。同じならよろしい」と呼ぶ)まあそういうことでございます。
  37. 井上普方

    井上(普)分科員 それでは、われわれも、これから中央競馬会の今後の進め方につきまして国民の代表として十分に監視する、このことを申し上げておきたい。  一例を挙げるならば、もうすでに競馬会について私が不信感を持たざるを得ないのは、あの根岸の競馬場です。根岸に競馬博物館などというものをつくっておる。外人があそこに初めて競馬場をつくったのだからといって、あんな不便なところになぜつくるのか。馬事公苑の中につくればいいじゃないですか。それをわざわざああいうところへ持っていって、しかも中央競馬会の古手の人間ばかりをあそこの中に送り込んでいる。競馬会自体の運営だっておかしいと私は思っているのだ。これからわれわれとしても中央競馬会に厳重なる監視をすることを申し添えておきたいと思うのです。  総務長官、こんなことばかり言っておったらいけませんので、住宅問題に移りたいのですが、国家公務員の住宅がここ五、六年の間、建設が非常に低下してきておる。この理由は何ですか。
  38. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 公務員の財形住宅貯蓄……(井上(普)分科員「いやいや、違う、官舎です」と呼ぶ)官舎の建設が進まないということですか。――これは大蔵省の所管でございまして、大蔵省の方から……。
  39. 井上普方

    井上(普)分科員 そうじゃございません。おたくの方で国家公務員の福利厚生につきましては責任を持っておるはずです。それについて、どうしてこういうように減ってきたのか、理由をお伺いしたい。
  40. 秋富公正

    秋富政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、国家公務員の福祉厚生につきましては総理府所管いたしておりまして、この問題につきましては絶えず努力しておるわけでございますが、公務員宿舎につきましては大蔵省の方で所管いたしておりまして、その計画あるいは維持ということにつきましては大蔵省の所管でございまして、総理府はタッチいたしておりません。
  41. 井上普方

    井上(普)分科員 維持保管については大蔵省が持っておるかもしらぬが、国家公務員の宿舎というものはどれくらいなければならぬかということは、あなた方の方が責任を持っておるのでしょう。
  42. 秋富公正

    秋富政府委員 その需給関係、新設、すべてを含めまして大蔵省が管理いたしております。
  43. 井上普方

    井上(普)分科員 それはどうもおかしいと私は思う。それでは、あなたの方の項目の福利厚生の中から住宅を除くということを書いたらどうです。書いてないじゃないですか。法文上は書いてないよ。
  44. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいまちょっとあれでございますが、たとえば人事院の関係でございますとか、あるいは他の省庁に属するものを除きまして総理府人事局が所管するというのが大体のあれでございます。
  45. 井上普方

    井上(普)分科員 どうも各省とも、ともかく逃げの口実を大蔵省に持っていきよる。  大蔵省の主計局、おりますか。――大蔵省は、国家公務員と公務員住宅との比率をどれくらいにしていますか。各省との比率はどれくらいにしていますか。たとえば労働省あるいは厚生省と大蔵省の公務員の数と公務員住宅の数とはどれくらいの比率になっていますか。
  46. 塚越則男

    ○塚越説明員 お答え申し上げます。  公務員宿舎の関係は理財局の方で担当しておりまして、現在その資料を持っておりませんので、私の方からはちょっとお答えしかねます。
  47. 井上普方

    井上(普)分科員 私が調べたところによると、ここにデータを持っておるが、大蔵省の官舎と大蔵省の職員との比率というものを見ると、大体五五%が官舎に入れるようになっているのだ。ほかと違うのだよ。こういうことを、総務長官、あなた調整する必要があるのでしょう。私の方にも大蔵省官舎というりっぱなものが建っている。行ってみたら入っていない。そして片方には公務員住宅というのがある。つくりが大体違ってきておる。大蔵省というのはよほどエリートがおるからこういうことをするのかいなと思って、実は憤慨これたえないところなんです。  総理府、こういうことを直すのがあなた方の責任でしょうが。どうです。その理財局が持っておるというのを取り上げて、あなたの方できちっと直す必要を感じませんか。
  48. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 職員の福利厚生充実というのは、職員の士気を高揚するあるいはまた能率を向上するという観点からきわめて重要なことでございますので、取り上げるとか、そういうことは申し上げられませんけれども総理府としては今後一層努力してこれが調整を図るようにいたしたいと思っております。
  49. 井上普方

    井上(普)分科員 特に総理府の事務所管を見てみると、国家公務員全体の福利あるいは厚生については所管しておるのです。私は当然あなたの方が責任を持っておると思う。それを、住宅の大事なところは大蔵省の理財局に握られて物が言えませんというようなことじゃ困るのです。しかも、各省の間にアンバランスがある。こういうことは直してもらわなければ困ります。それが総務長官の任務だろうと思うのですが、いかがですか。
  50. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  これは各省には独立した権限というものがございまして、そういう意味で、閣議了解事項と申しますか、そういった形で了解されるならば、この問題については御指摘のとおりだと思いますので、積極的に進めるという決意を申し上げておきたいと思います。
  51. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて井上君の質疑は終わりました。  大澤参考人、大塚参考人には御多忙中御出席をいただき、まことにありがとうございました。  次に、草野威君。
  52. 草野威

    草野分科員 交通安全対策につきまして若干お伺いをいたします。  きょうは総務長官お見えになっておりますので、長官にまず伺いたいと思います。  わが国の交通事故は年々減少してきております。昨年は九千人を割っております。したがって、これ以上交通事故による死亡者を減らすということは、現在のいろいろな規制であるとか罰則をこれ以上強めてもいろいろな問題が生じてくるのではないかと思いますが、そういう中にありまして、交通事故の中でも特に死亡者を現在以上減少させていくためにどのような対策をお考えになっておられるか。まずこの点について、長官のお考えがございましたら、お伺いをしたいと思います。
  53. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えをいたします。  死亡事故については年々減少いたしまして、ピーク時代の半減、すなわち九千人台を割った。しかしながら、死傷者率においてはまだ本当に減少という程度でございまして、今後はやはり交通安全対策の整備であるとか、あるいはまたドライバーに対する教育であるとか、あらゆる施策を講じてこの被害の絶無を期していきたい、こういうふうに考えております。
  54. 草野威

    草野分科員 具体的なお話を何かいただけるかと思ったのですが……。  次に、消防庁にお伺いをしたいと思います。  現在の救急隊員でございますけれども、救急方法をマスターしたいわゆる救急専門の職員の数が非常に少ない、約三〇%くらいであるということも伺っておりますけれども、今後の救急隊員の教育計画はどのようになっているかという問題が一つ。  それから、事故が発生した場合、事故の通報があってから現場に救急車が到着するまでおおよそどのくらいの時間がかかるものか。これは東京、大阪のような大都市と地方の市町村とは違いがあると思いますけれども、その両方に分けてお答えいただきたいと思います。
  55. 荒井紀雄

    ○荒井説明員 お答え申し上げます。  まず最初の、救急隊員の教育訓練の計画でございますけれども、御承知のとおり、現在約三分の一程度しか百三十五時間の教育を受けた者がいないという現状でございます。そこで、消防庁といたしましては、救急隊員が迅速かつ的確な応急措置を施すことが救命効率を高めるという意味からも必要であるというふうに考えておりまして、教育訓練の基準を定めまして指導いたしておるところでございます。  具体的には、全国の都道府県に消防学校がございます。そこで専任の救急科というものをつくりまして教育内容充実改善に努力をいたしておるわけでございます。特に百三十五時間の課程を設けるように指導をいたしておるわけでございますけれども、いろいろな実情から百時間あるいは八十時間というふうな都道府県もあるわけでございます。そういった実態でございますので、百三十五時間未満のところをそこまで引き上げる、あるいは一年の回数を増加する、あるいは受講人員の拡大を図るというふうな方向で積極的に指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  財政措置といたしましても、五十二年度より救急課程の充実ということで講師の陣容なり講義時間なりを拡大すべく措置をいたしておるわけでございますが、さらに一層重点を置いて指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、消防大学校というのが三鷹市にあるわけでございますけれども、そこの救急科を卒業いたしますと指導員の認定が受けられることになっております。この消防大学校の救急科をさらに拡充強化すべく、従来は一年に一期で人員も四、五十人でございましたのを、五十二年度より二期にいたしまして六十人を対象として課程を組んでおるわけでございます。そういった各都道府県の学校なり消防大学校なりを通じましてこの問題を積極的に推進してまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、救急隊が現場に到着する時間でございますけれども、これは御指摘のとおり、全国の大都市あるいは地方都市によって違うわけでございます。東京、大阪等におきましては、事故を覚知いたしましてから大体三分程度で現場に到着するということを目標にして現実にやっておるわけでございまして、もちろんこれは道路事情とかそのときの交通事情等によって違いますけれども、大体そういうふうなことで迅速に対応しておるわけでございます。ただ、地方の田舎へ参りますと、やはり面積が非常に広大になりますので、若干この時間が延びる傾向があるわけでございます。いずれにいたしましても、これは人命に関する問題でございますから、できるだけ早く現場に到着をして適確な手当をするというふうなことを指導しておるわけでございます。
  56. 草野威

    草野分科員 消防庁に続いて伺いますけれども、東京消防庁からこういう「応急手当の手引き」という本が出ていることを御存じだと思います。そしてここに「だれでも知っていなければならない応急手当」、こういうことも書いております。これは恐らく東京都民を対象にして出されたものだろうと思いますが、私も一通り読んでみました。  そこで、消防庁としてはこういう本をどういう目的で出したのだろうか。「だれでも知っていなければならない応急手当」でございますので、大ぜいの都民、一人でも多くの都民に応急手当ての方法を知らしめたい、恐らくこういうことではなかろうかと思います。そういたしますと、まず一つは、この本に書かれておる内容は医学的に見て正しいものであるかどうかということ。もう一つは、この内容を見ますと、白いページと黄色いページと両方に分かれております。黄色いページの方が何かちょっとむずかしいのだそうでございますけれども、これを私どもいわゆる素人が読んでマスターできるまでに一体どのくらいの時間がかかるのか。また、特別に講師を呼んで講習を受けなければならないものであるのかどうか。この点いかがでしょうか。
  57. 荒井紀雄

    ○荒井説明員 東京消防庁でつくっております「応急手当の手引き」でございますが、この本は、東京消防庁におきまして、大学の教授等を中心といたしました一定のスタッフにお願いいたしましてつくったというものでございます。  医学的に見て正しいかどうかにつきましては、私どもとしまして公の機関にそれをかけたことはございませんけれども、東京消防庁の委嘱によりまして、この方面の権威ある人におつくりいただいたということでございますので、問題ないというふうに考えております。また、東消におきます過去の実際の例を見ましても、それによって弊害が起きたというふうなことは聞いておりません。  それから、中身の問題でございますけれども、白い部分につきましては、一般市民がこれを習得しても差し支えない、黄色い部分につきましては、応急処置というものにつきまして若干熟練的な技術を要するというふうに区分いたしまして、東消では指導いたしております。     〔主査退席、谷川主査代理着席〕  したがいまして、その指導に当たる者といたしましては、いわゆる百三十五時間の訓練を受けた者に、さらに隊長訓練というものをやっておりますが、この救急隊長の教育課程を経まして、さらに一般市民に普及するための特別の講座をつくりまして、それらの講座を卒業いたしました者を普及員といたしましてこれに当たらせている、こういうようなことでございます。
  58. 草野威

    草野分科員 そうしますと、この内容というものは、大学の教授など権威のある人につくっていただいているので、医学的に見ても内容は問題がない。それからもう一点は、この内容をマスターするためには、ある程度の訓練を受けた講師について習った方がいい、こういうことであると思います。  そういたしますと、そのようなことをやって、この「応急手当の手引き」に書いてあることをマスターすると、たとえば交通事故、またそのほかの一般の災害、そういう場合に非常に役に立つものであるか、人命救助に非常に効果があるものであるかどうか、この点はどうでしょうか。
  59. 荒井紀雄

    ○荒井説明員 これを十分に習得しますれば、それなりの効果は十分にある、こういうように考えております。
  60. 草野威

    草野分科員 さらに消防庁に伺いますけれども、交通事故が発生した場合、救急隊員の方が行った応急処置の状況につきましてお伺いをしたいと思います。  隊員の方が数々の応急処置を現場で行っておられると思いますけれども、これの件数であるとか、それからどのような内容の応急処置を行っているのか、伺いたいと思います。
  61. 荒井紀雄

    ○荒井説明員 救急隊員による応急手当ての現状でございますが、交通事故に限定させていただきますと、一昨年、五十一年の統計でございますが、約二十万人の方に二十六万件に及ぶ応急手当てをやっております。応急手当ての内容といたしましては、一番多いのが保温あるいは消毒が約十五万一千件、それから止血が六万木千件、それから副子を添えましたいわゆる固定でございますが、これが二万二千件、酸素吸入が一万一千件、そのほかに気道確保あるいは人工呼吸、心マッサージ等を行っておるわけでございます。
  62. 草野威

    草野分科員 厚生省の方に伺いたいと思いますが、いまの消防庁の方からいろいろお話がございましたように、救急隊員の方が交通事故の発生に対しまして数々の応急処置を行っているわけでございますね。救急隊員の場合には、このような応急手当てを行うということは、医師法に照らし合わせた場合に、緊急的な避難措置としてこれは問題ない、このように伺っております。  そこで、一般のドライバーの人が、交通事故に際しましてこのような応急手当てを施すということ、これもやはり緊急避難という意味で医師法には触れない、このように解釈してよろしいでしょうか。
  63. 内藤洌

    ○内藤説明員 お答えいたします。  医師法では、医師でない者がいわゆる医業をしてはならないということになっておるわけでございますが、いま先生のお尋ねのケースにつきましては、交通事故の際にドライバーが応急的に救急処置を行うという場合でございますけれども、これはいま先生がおっしゃいましたように、いわば緊急避難的なものと見られますので、一般に反復継続を行う意思をもって行ういわゆる医業には該当しないものと思います。したがいまして、医師法違反の問題は生じないと思います。
  64. 草野威

    草野分科員 一般ドライバーの場合にももちろん医師法に触れないというお話でございましたけれども、素人の人たちが何らかの形で応急手当てを行うということは、ある場合においてはかえってマイナスになる、そういう要素もあるわけですね。したがって、この自動車の運転者が応急手当ての講習等をきちっと受けていれば、これはもう非常にいいのではないかと思うのですけれども、こういうことに対する厚生省のお考えはいかがでしょうか。
  65. 内藤洌

    ○内藤説明員 ただいまの講習の問題につきましては、道路交通法に定めがございます救護義務の内容とも関連する問題だと思いますので、道交法を所管いたします警察庁の御判断によりたい、かように考えます。
  66. 草野威

    草野分科員 続いて厚生省に伺いますが、最近東京の個人タクシーの一部におきまして、救急医薬品を積んでいるタクシーがございます。これはNHKでこういう報道もございましたし、私どもも実際に車に乗って確認もいたしました。そういたしますと、これは現在は東京の一部の個人タクシーでございますけれども、今後国内の全営業車に拡大されていくことも考えられます。そしてまた、それだけではなくて、一般の自動車にも普及されていくということもあるかと思います。そういうことで、まず第一点は、このようにタクシーという営業車の中に救急箱を積んでおりますけれども、その中身について、現在は大体外傷用の薬が多いようでございますけれども、これはどういう薬が将来積み込まれるかわからない。そういうことで、この中身についてどういう薬を積んでも別に問題がないのか、また問題があるのか、こういうことに対する見解が一つ。  それからもう一点は、もし万が一事故に遭った場合に、運転者が乗客に対しましてその薬を使用して何らかの手当てをする、こういう薬を使うという行為、それから手当てをするという医療行為、まあこれは医療行為になるかどうかわかりませんけれども、そういう行為が薬事法だとか医師法だとかの関連において、それに触れるかどうか、そういう点についてお答えをいただきたいと思います。
  67. 新谷鐵郎

    ○新谷説明員 ただいまの先生の御質問の中で、薬事法に関連する部分についてお答えを申し上げます。  お話しございましたように、運転者が個々に救急箱等を救急の場合に備えて用意をしておるということ自体は、直接薬事法に触れる問題ではございません。ただ、そういう救急箱を設置いたしておりまして、事故等があった場合に実際にどういうサービスをするのかということで薬事法との関係が出てくるわけでございまして、事故等の場合、緊急避難的な行為としてその医薬品が使用されるという場合には薬事法上の問題は生じないと思いますけれども、ただ気持ちが悪いとか頭が痛いというような場合に、その運転者が安易に救急箱から薬を出すというようなことになりますと、そういう行為が反復継続して行われるというような場合には、薬事法上の販売業の許可というようなこととの関係が一つ出てまいると思います。  その辺の関係、実際にはなかなか線が引きにくいケースもあろうかと存じますが、私どもの一般的な考え方では、運転中にもしお客さんが気持ちが悪いというようなことがあった場合には、最寄りの病院なり診療所なり、あるいは薬局の方に連れていっていただく。したがって、救急箱については緊急やむを得ない場合に使っていただくというのが望ましいのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、救急箱の中身にどのような医薬品をあらかじめ用意しておくことが適当であるかという問題につきましては、もちろん強制できる問題ではございませんけれども、事柄の性格から申しますと、外用薬であるとか包帯であるとか、そういうものを中心に備えつけられるのが望ましいのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  68. 内藤洌

    ○内藤説明員 先生のお尋ねの中で医師法に関連する部分につきまして御答弁申し上げます。  その行為が応急処置的に行われるものでございます場合には医師法上の問題は生じないかと思います。ただ、反復いたしまして繰り返されるというようなことになりますと、やはり一つの業として見られるべき場合もあろうかと思います。そのような場合には、医業を医師以外の者がすることを禁じております医師法の規定に触れる場合もあろうかと思います。いずれにいたしましても、ケースによって、実態によりまして判断すべき事柄かと思います。
  69. 草野威

    草野分科員 ただいま厚生省にお伺いしました救急箱の件につきましては、その中身の問題、またその医薬品の取り扱いの問題につきましては、緊急避難という意味から言えば差し支えない、このように解釈してもよろしいと思います。  そこで、最後に警察庁にお伺いをいたします。  前回の委員会でございますけれども、道路交通法の第七十二条の救護義務ということに関しまして、同規定制定の目的は道徳の最低限であり、車社会の人命尊重を基本理念としたものである、このようなお考えを交通局長さんから示されたわけでございます。  そこで私は、きょうは、この救護知識の普及の必要性、また救護義務の内容の問題、こういう点につきましていろいろとその後検討をしていただいたと思いますので、その内容について伺いたいと思います。  まず第一点は、自動車の運転免許と応急手当ての講習の終了証明のない者は運転してはならない、このような考え方についての御意見を伺いたいと思います。
  70. 杉原正

    ○杉原政府委員 お答えをいたします。  昨年の委員会で、先生から非常に貴重な提案をいただきまして、私も基本的にこれからの車社会の中でドライバーが持つべき社会的な責任というものについては積極的に考えていかなければならぬというお話をしたと思います。  先ほどのお尋ねの件でございますが、いまの道交法の七十二条というのは、救護を義務として課しておるということが基本になっておりますために、一体、義務としてやらすべき救急の内容、こういうものはどこのところが最低限度であるかということについて、医療行政当局ともいろいろその後検討をいたしたわけでございますが、一般的に基礎的な医学的な知識がない者でありますだけに、少なくともいまの段階で考えられますのは、現在教則に盛られております止血だとか、いろいろ書いてございますが、これ以上のことは現在の段階ではむずかしいし、それ以上のことをやらそうとすると、やはり事後の医療処置上逆の問題が生ずるというふうなケースも出てくるのじゃなかろうかということでございます。現在教則に盛られておるということは、新規免許の際並びに更新時講習の際にこれを講習の内容にいたしておることでございますが、こういう内容、いまのマニュアルでいいのか、あるいはもう少し広げた方がいいのか、そういうこともあわせて検討しながらこの講習の推進に力を尽くしていきたいというふうに考えております。
  71. 草野威

    草野分科員 昨年の委員会のときの御答弁と余り前進がないように思われるわけでございますが、昨年、局長の答弁はこういういきさつがございました。オーソライズされた救急法であって医薬的見地からもいい、そしてまた、一般国民に普及させるべきだという内容であれば、救急医療体制の整備とともに推進すべきである、こんなようなお話があったと思います。  ただいままで、消防庁、それから厚生省のお話をいろいろ伺っておりまして、たとえばこのような冊子にしても、これから大いにひとつ国民の間に広めていきたいという意向ではあるし、医薬的に見てもこの内容は正しいし、そしてこれをマスターすることによって人命救出により効果がある、こういう意味お話もございました。また、薬品を車に積むということにつきましても差し支えない、そういうようなお話もありましたので、やはりこの問題につきましては、というのは、道交法の第七十二条の救護義務の問題につきましては一歩前進して考えるべきじゃないか、私はそのように考えております。  そこで、もう一点ひとつ伺いたいと思いますけれども、西ドイツの例などを引きますと、西ドイツの場合には、交通事故に際しましての救急処置法というものを習得していることの証明書がなければ自動車の運転免許の申請ができない、こんなような内容があるわけですね。わが国でもそこまで考えるべきであるかどうかという点。  それから、これはもう前回申し上げましたけれども、WHOの報告、これは交通事故が発生した際、いわゆる適切な初動処置が行われれば、いまの事故よりも一八%は少なくとも人命が助かる。また、アメリカの救急医療システムの報告によりますと、同じような趣旨で、少なくとも一〇%から二〇%は人命が助かる、こういうような報告もされているわけでございます。  そういうような観点からいきますと、やはり救護義務の内容は、止血の方法だけという消極的な考え方じゃなくて、もう一歩進めて考えるべきではないか。それともう一点は、やはり医薬品を積むという問題でございますけれども、これは応急手当て法の習得の義務づけと同時に、すべての自動車に応急医薬品を積むべきであるのじゃないか、そうしてこれは大いにこれから推進させていくべきじゃないか、こういうことを考えるわけでございますが、局長の御意見を伺いたいと思います。
  72. 杉原正

    ○杉原政府委員 二点の御質問についてお答えをいたしたいと思います。  この救急業務というものが普及されるということは、私どもも非常に必要なことであると思いますが、先ほど言いましたように、片方に、これは義務で、これをしないと処罰をされるという法体系になっておりますがゆえに、最低限の要請としてどこまでその範囲としてやらすべきかということについて、おのずとそこに限界が出てまいると思います。私どもいま決めていることは現段階で最小限だと、こう思っておりますが、一般の普及にあわせてその幅を広げていくということは、今後積極的に進めていきたいというふうに考えております。  それから第二点の、医療救急箱を備えつけたらどうかという御提案について、私は大賛成でございます。ただ、これも車に全部つけていることを義務づけるという内容の性質のものであるかどうか、あるいは人命尊重を基本にしたドライバーの務めであるというふうなことから考えて、私どもこれを、免許取得時の機会あるいは更新時等の機会がございますので、こういうものを備えていったらどうかというふうなことをこれから指導してまいりたいというふうに思います。  ただ、先ほどお話がありましたように、どういう救急箱を備えつければいいか、どういう内容のものがいいかというふうなことにつきましては、医療行政当局等の意見もこれから十分聞いていきたいと思いますが、この点につきましては前向きに措置していきたいというふうに思います。
  73. 草野威

    草野分科員 時間が参りましたので、これで終わりにしたいと思いますが、ともかく人命尊重を基本理念とした救護義務の完全実施を要望いたしまして、質問を終わります。
  74. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて草野君の質疑は終わりました。  次に、小林正巳君。
  75. 小林正巳

    小林(正)分科員 私は、同和問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  同和問題というのは、一口に言って日本社会の恥部であると言って差し支えございません。歴史的に、徳川家康の時代からと言われておりますけれども、同じ日本人、その一部の人たちが全くいわれのない差別に苦しんできた歴史というものがあるわけでございます。私は大変政治というのは恐ろしいものだと思う。徳川家康のつくり出した差別というものが四百年後の現代社会の中でその誤りを正さなければならない、こういうことになっておるわけでございます。しかも、その間、四百年の間に、そういう一部の人々が経済的にもあるいは社会的にも、また文化的にも非常に劣悪な条件下に置かれてきた、こういう事実でございます。こうした差別というものをやはり一日も早く日本の社会の中から取り除いていかなければならないわけでございます。  そこで、総務長官どこかへ行っちゃったな。――私はいまの前段の話を総務長官に聞いていただきたかった。この同和対策事業の特別措置法に関連して、全国の自治体あるいは議会から、何とか延長をしてほしいという陳情がたくさん参っておるわけでございますけれども総務長官の選挙区からは、一月三十一日現在、延長要望というものが県あるいは市町村から来ておらないようでございますね。あるいはそういった問題が長官の選挙区にはないのかもしれません。とすれば、余り関心がおありでないかもわかりませんけれども、こういった同和問題というものについて、総務長官、どういうふうにお考えになっておられるのか、基本的に同和問題とは何ぞやということを、総務長官の認識をまずお尋ねいたしたいと思います。
  76. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 同和問題については、私も長官になりましてから日が浅いわけでございますけれども、いろいろな御意見もあり、質問もあり、真剣に取り組んでまいっておるわけです。そういう意味から、新しい憲法下に認められた人権にかかわる重要な問題である、こういうふうに受けとめておりまして、これを延長するかどうかという御質問でございますが、人権的な差別というこういう意味から、同和というこの言葉を使うかどうかという、こういう問題については、私も大変心の問題として真剣に考えているところであります。  ただ、問題として、あらゆる施策は、過去の歴史を振り返ってみても、いろいろな事態を取り上げてみても、これはやはり手厚くあらゆる施策を講じていきたい、また講じなければならない。ただし、同和というこの言葉を使うことそのものがいいのか悪いのかという、百年先のことあるいは五十年先のこと、二十年先のこと、心の問題として大変私の心に大きく打つものがございます。  そういう意味で、この延長問題については、これはあらゆる自治体の御意見、それから対策協議会の御意見あるいはその他を踏まえて今後いろいろ検討してみたい、こういうふうに考えております。
  77. 小林正巳

    小林(正)分科員 実際、先ほど総務長官いらっしゃらないときに申し上げたのですが、四百年前の為政者のつくり出した制度というものが今日にその累を及ぼしておるということは、やはり政治というのは大変恐ろしいものでございます。私どももお互い、いま私どもがやる政治的施策というものが将来の世代に取り返しのつかない悪い影響を及ぼさないかという、そういうおそれをやはり抱きながら今日に対処していかなければならぬのじゃないかと思うのです。  そこで、いま総務長官は同和という言葉を使うこと自体にためらいを感じていらっしゃるというふうな心境を述べられたわけでございますけれども、やはり総務長官、この問題についてまだよくおわかりになっておられないような気がいたします。明治の初めに戸籍上の解放がなされたわけですけれども、今日でも事実上心理的な差別というものは依然として地域社会の中に根強く残っておる。たとえば結婚話なんということになりますと、すぐお互いに相手のルーツを探すというふうなことになるわけでございますね。そして、もし仮にそうだったなんということになりますと、相性が悪いというふうな理由で破談になるというふうなことも枚挙にいとまがございません。そうした陰にこもった差別というものが続いていくということに問題がある。やはり問題は、表に出してしまって、寝てる子を起こすことはないというふうなことでは、いつまでたってもこの差別という問題は社会的に解決をされない。もっと多くの全国民の中にそういった事実というもの、そしてそれが誤りであるということを知らしめることがこの差別を根絶するということにつながるわけでございます。ですから、そうしたためらいを感じられるということはわからぬでもないけれども、やはりこれはもっと堂々とこうした問題の所在について話し、論議をしていくことでないと、問題は陰にこもってしまうということを申し上げたいと思います。  そこで、同和対策事業特別措置法、同時に同和対策の長期計画によって四十四年以来同和対策事業が進められてきたわけでございますが、御承知のように、時限立法ですから、来年の三月で失効することになります。そういう意味で、この五十三年度の予算が一応最後にということになるわけでございます。しかし、依然として政府支出だけを見ても三千二百億ぐらい事業が残っておる。これは五十年の時価換算でございますから、実際には四千億以上になるのではないか、こう言われております。しかし、それは一応政府が五十年の時点でまあこれだけやらなければならないだろうという試算で出された金額でございまして、関係団体などの中にはなお七兆円ぐらい残り事業があるというふうなことを主張しておる向きもございます。  そこで、その残りの財政支出と一応離れて、予定の事業がなされたら一体それで十分なのかどうか。どういうふうに認識をされておるか承りたい。
  78. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 事業の詳細については政府委員から答弁をさせますが、いま、もちろん物価上昇を含めてはおりませんが、残工事が三千二百億に達しているということがございましたが、延長等々にかかわらず、いかにしてこれは施行できるか、また施行しなければと、こういう考え方であることをも御報告いたしておきます。
  79. 黒川弘

    黒川政府委員 いま先生お取り上げになりました昭和五十年の政府調査をもとにいたしましても、当時把握いたしました事業量が約一兆二千八十億、国費にいたしまして七千六百億円の金額を見込んでおるわけでございまして、これにつきまして昭和五十年度、五十一年度、五十二年度とすでに予算化いたしまして実施した分、それからいま御審議中の五十三年度予算で見込んでおります分を差し引きましても、五十四年度以降に三千二百億円という国費ベースでの事業残が見込まれております。この事業の見方につきましては、これも先ほど先生御指摘のとおり、いろいろ御意見のあるところでございますが、とにかく政府調査におきましても五十四年度以降相当程度の事業残が見込まれているという状況でございます。政府といたしましては、何らかの形においてこれらの事業が実施できるように努力してまいりたいと考えておりますところでございまして、これはただいま総務長官から申し上げたと同じことでございます。
  80. 小林正巳

    小林(正)分科員 特別措置法の延長問題で、総務長官は過般の予算委員会でございましたか、延長を含めて真剣に取り組んでいくというふうな答弁をなされたやに伺っております。この延長がなされなくても、法律自体はなくなっても、同和関係事業予算を組むことには差し支えないという考え方もあるようですね。しかし、それは政府としてはそれでいいかもしらぬけれども、自治体においてはやはりこの法律を背景として同和対策事業を進めてきておるわけでございます。しかし、実態は大変市町村財政を圧迫いたしておりますから、この特別措置法の延長によって政府の補助をちゃんと義務として守ってほしいという気持ちがございますのと、もう一つ、自治体も現在の負担がそれぞれの自治体財政にとって大変重荷であるところから、表向きぜひ延長してもらいたいということを言いながらも、内心では早くこの特別措置法が終わってもらったらいいというふうな気持ちを持っている部分もなしとはしないようでございます。  そこで、この法律の延長について、総務長官、もう一度ここではっきりと、どういうふうに取り組んでいくかという考え方をお示しいただきたい。
  81. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 この前の予算委員会のときに大蔵大臣が、延長にかかわらず概算要求はこれを受けますと、ここではっきり答弁をいたしております。そういう意味で、延長の有無にかかわらず概算要求はしなければならぬ、こういうふうに思っております。  ただ、特別措置法があるということとないということとは、これからの長い目で見た場合には私はやはりあった方がいい、こういう受けとめ方をいたしております。ただし、いまここで各政党間のいろいろな関係等もよく参考にしながら、先ほどおっしゃいましたように、地方自治体からもぜひ延長は頼むというその反面において財政問題について苦慮されておる、こういったこともかみ合わせながら、地方自治体あるいはまた中央の同和対策協議会あるいは各政党間の意見をも十分に参考にしながら、延長を含めてのこういう考え方で進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  82. 小林正巳

    小林(正)分科員 この法律自体が、政府提案という形はとっておりますが、当時の四党の合議によってつくられた、こういう経過がございます。でありますから、各政党ともよく話し合ってということはよくわかるのですが、各政党は政党として、政府の判断がどうかということを示していただくべきではないか。自治体に対して意見を聞く場合も、全く白紙で臨まれるのか、政府としては延長すべきだと考えるがどうかということで臨まれるのか、まず政府の態度が肝心でございまして、延長すべきなのかどうか、どういうふうに判断をしておられるのか、もう一遍伺います。
  83. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど申し上げましたように、小林委員から大変心を打つような御指摘がありました。たとえば結婚問題等についての具体的な問題をおっしゃいまして、行政の心として同和というその言葉を使うことがいいのかどうか。私は長い目で、できるだけ同化をされてこういう差別待遇というものを一日も早く取り除くような形で何かしらいい知恵がないものか、こういうふうにいま模索中であります。
  84. 小林正巳

    小林(正)分科員 いろいろ措置法に伴う財政的な面については、いままで予算委員会におきましても多くの議員から細かい数字を出しての質疑がございましたから、私はそれを繰り返す気はございません。  そこで、先ほどちょっと申しましたように、自治体における同和関係予算の負担というのは大変窮屈といいますか重荷になっておるということは、総務長官もよく御存じであろうと思うのです。そこで、たとえば十条適用の問題もございますけれども、それぞれの自治体の単独事業なんかについても、本来は私は政府が応分の補助をすべきである。こういうふうに思うのです。これは財政的にもとても大変だからとうていそこまではいかない、こうおっしゃるかもわかりませんが、この同和問題は、同和問題を抱えた地域、同和地区の存在する地域の自治体の問題だけではない。やはりこれは全国民的な問題であろうと思うわけでございます。さすれば、それぞれの自治体の単独事業についても、私は精神としては補助を出すべきである、こう考えますが、総務長官、いかがでしょうか。
  85. 黒川弘

    黒川政府委員 府県あるいは市町村におきまして、いわゆる単独事業として同和対策事業を実施しているわけでございますが、そのすべてを国の補助事業とするということは非常にむずかしいというふうに考えております。ただ、これまでも、従来国の補助対象にしておりませんでした事業を、毎年度予算の編成の段階で新たに国庫補助対象事業として取り上げまして、その数は逐年ふえているという状況でございます。
  86. 小林正巳

    小林(正)分科員 それぞれの補助事業についてはいわゆる十条適用というふうな道があるわけでございますが、この単独事業について、それではせめて起債の面、そうした償還の面なんかで特別の配慮ができないものかどうか。これは自治省の所管にかかわるところかもわかりません。自治省はそれぞれの自治体の苦しい財政事情はだれよりもよく承知をしているはずでございますから、自治省の方に伺いたいと思うのですが、そういった単独事業の起債に対する優遇措置というふうなものを前向きに考えるかどうか、お伺いをいたしたい。
  87. 津田正

    ○津田説明員 自治省といたしましては、先生もおっしゃられたわけでございますが、同和対策事業というものは、この特別措置法の趣旨にかんがみまして、原則としては国庫補助対象事業であるべきである、こういうふうに考えておる次第でございます。  このような見地からいたしまして、単独事業に充当した地方債の元利償還金に対する十条適用の問題でございますが、私ども自治省としましては、まず国庫補助事業の大幅な拡大を図ることが先決でありまして、このような措置に伴う地方負担額においてこの十条適用、元利償還金の交付税の措置、こういうものを考えていくべきものと考えておる次第でございます。
  88. 小林正巳

    小林(正)分科員 自治体の財政需要の中でこの同和問題というのは大変重荷になっておる。もうこれは繰り返し言うまでもありませんけれども、それというのも、この同和対策特別措置法の中に、国または県、自治体というものの責任ということになっておるために、そういった各地域の要望というものがそれぞれの自治体に強いプレッシャーとしてかかっていくという事情があるのだろうと思うのです。そうした意味でも、やはり国としてのこの問題に対する責任といいますか、政治としての責任というものをより重要に考える必要があると思います。先ほど申し上げたように、この問題は一地域の問題ではない。大変誤解が伝わるわけでございまして、同和地域のあるところでは、先ごろ社会教育などを通じてある程度この問題の理解が進んでおるようでございますけれども、全くぴんとこない地域がたくさんあるわけでございます。そうした地域では、ただ昔のそういった差別感覚だけが伝わっておる。そこからいろいろな悲劇が起きる可能性もあるわけです。こうした同和問題については、私は一部の学校の教科書の中にそういったいわれない差別というものについて出ておるというふうにも伺っておりますけれども、本来から言えば、小中学校などの課程の中にこの同和問題というものを堂々と取り上げて、そして正しい認識を国民に与えるようにする努力が必要ではないかと思います。  そこで、文部省の方に伺うけれども、この同和問題について、学校教育の中で、あるいは社会教育の中でどういうふうに取り組んでおられるのか。それはただ特定の地域だけに限られておるのか、あるいは全国的にそういった正しい理解を進めるための努力がなされておるのかどうか、その実態をお伺いいたします。
  89. 澤田道也

    ○澤田説明員 お答えをいたします。  先生御指摘のとおりに、この同和問題は憲法に係る基本的人権の徹底ということで、教育が非常に重要なかかわりを持つという認識は文部省として持っておりまして、同和対策地区だけでなく、いろいろな資料その他につきましてすべて、沖繩、北海道も含めていろいろな資料の提供その他努めておりますし、社会教育関係、それから学校教育関係を通じて、それぞれの指導者の派遣その他の便宜の供与はとっておるところでございますが、もちろん、特に社会教育につきましては、役所が社会を教育するということでなくて、あくまで自主的な住民の中の教育活動を助成するという立場から、そういうモメントが起きないところには若干の困難があることは確かでございます。  それから、学校教育につきましても、各教科、道徳その他の教育活動すべてを通じて、児童の発達段階に応じて教育を行っていくように、また教科書についても、いろいろな検定教科書の中でそれなりの取り上げ方が行われておりますし、それぞれの徹底を行っておりますが、教育についていろいろな考え方、また教育対象の地域のいろいろな違いということで困難もございますし、またこれについては、いままでのいわゆる残事業というような計算のできない領域でございますので、そういう困難がございますけれども、なお学力の実態的な差別、または一般地域その他を含めての心理的な差別の解消に教育のかかわりの重要なことをよく認識しながら、諸施策の徹底を図っているところでございます。
  90. 小林正巳

    小林(正)分科員 同和対策事業特別措置法、そして同和対策長期計画というものは、これができた時点、昭和四十四年において大変画期的な問題であったと思うのです。やはりこの法律を施行した時点の発想に立ってこの問題を解決すべく、今後も引き続き、何十年かかろうが、この日本の恥部を解消するための努力を政治がしていかなければならない、こう思います。  そこで、総務長官、最後にお尋ねをしたいのですが、先ほど私は、これでこの法律に基づく――法律に基づくというよりも、五十年時点のあと三千二百億で問題は済むのかというお尋ねをしましたね。一方では何兆円という残事業がまだ残っておるという主張をする向きもある。先ほどそれについてはお答えを具体的にいただけなかったわけですが、まず延長をするとすれば何年間か、こういう問題もございますが、大ざっぱに五十年時点の把握というものを、改めてここでもう一遍判断し直すといいますか、把握し直す必要があるのかないのか、その点を伺いたい。
  91. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年に実施いたしました調査をもとにいたしましていま計画を進めているわけでございますが、この時点で把握いたしました数字にいろいろな御批判があるということは承知しております。これは一つの課題ではあろうかと思いますけれども政府といたしましては、たとえば新たに調査をし直すというような考え方は持っておりません。
  92. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま政府委員がお答えをいたしましたように、五十年は全国調査をいたしたわけであります。これは今後の進め方の基礎資料ということで、これは参考にしていかなければならぬ。ただし、まだ未調査のところもございますので、市町村から申請がございますならば、五十年の調査に繰り入れてまいりたい、こういうふうに思っております。
  93. 小林正巳

    小林(正)分科員 総務長官、どうも御苦労さまでございました。お引き取りいただいて結構でございます。  行管の方はお見えになっていますね。いわゆる定員外の職員、これは一例でございますけれども、全国の国立病院とか療養所、これはここ数年来医療需要が大変増大をしておるわけでございます。ところが、これに対応する職員というのは、総定員法でくくられておる、あるいは定員の削減計画などによって非常な制約があるわけでございます。その制約がある中で、総定員法の枠内のやりくりで、比較的そういった医療職員への定員の移動といいますか、この参考の表を見ますと、昭和四十二年度末、そして五十三年度に至る定員の移動を見ておりますと、たとえば国立病院、療養所関係では六千四百人定員が増加しておる。これは他の役所に比べて大変多い数字でございます。そういったやりくりが行われておるということはよく承知をいたしておりますけれども、それでいて、なお現場にはいろいろな矛盾があります。たとえば、一つの例をとりますと、兵庫県の小野市の国立青野原療養所では、病院の業務というものを最初から定員外の職員で運営することを予定して、予算上は四十二人の定員外職員を認めておるわけでございます。その給与の日額は二千七百五十円で三百日分、こういうことになっております。また、期末手当などボーナスは二十五日分だ。三月、六月、十二月の三回に支給される定員内職員の五カ月分とは非常にほど遠い額でございます。やむなく、これをやりくりするために、この病院の経費をつづめてそちらに振り向ける。実際に常勤職員と同じ仕事をしておるわけですから、やはりそれに見合う賃金を出さなくちゃいかぬ。しかし、国から回されておる日額というものでは、実際にこの賃金職員を雇うことはできないわけでございます。  そこで、そういった実態に合わせて日額を三千二百円として三十四人、本来ならば四十二人分認めておられるかっこうでございますけれども、実際にはそういうやりくりのために三十四人採用をしておる、こういう現状で、それでも年間百万円くらい経費が足りないということでございます。その足りない部分は結局庁費にしわ寄せをされていく、医療サービスがほかの面ではやはり低下を免れない、こういう実態があるわけでございます。  そこで、まず厚生省に、全国の病院あるいは療養所などのそうした面での実態というものをまず御説明をいただきたい。
  94. 北郷勲夫

    ○北郷説明員 医務局の管理課長でございます。  賃金職員の数は、先生御指摘のとおり、最近大変ふえてきておりますが、処遇の面におきましても、御指摘の単価は二千七百五十円、五十二年度の単価はそのとおりでございます。それで、青野原の例でおっしゃいましたが、大体御指摘のような実態が全国にあるわけでありまして、予算単価二千七百五十円で、場所によりましてはこれで雇い上げができるところもあるわけでありますが、都市近辺におきましては、なかなかこの単価で雇い上げができないというようなところがございまして、そういうところでは御指摘のように若干上積みをしてその分人数が減る、こういうところも一部ございます。この単価につきましては、できるだけ上げますように毎年改定をいたしておりまして、五十三年度では二千九百三十円に単価を改定するように予定をいたしております。  それから、賃金の面はそういうふうなことで単価を若干動かして運用しているところもございますが、ボーナスでございます。ボーナスの面におきましても、本省あるいは地方局あるいは施設を通じまして、できるだけの処遇をいたしたいということで、それぞれの段階で努力いたしております。場所によりましては、全国的には大体二十五日分相当を支給するように指導いたしておりますが、これにできるだけ乗せるように各地方局、施設でいろいろ処遇を考えておる、こういうのが実態でございます。
  95. 小林正巳

    小林(正)分科員 そればかりではありませんね。定員外職員の場合は通勤手当、住居手当、被服費、そういった予算はもちろんない。あるいは社会保険は厚生年金、健康保険の加入であって、掛金は定員内職員の共済組合掛金よりも高いという実情、また健康保険には雇用主の負担分の予算措置がありません。こういったさまざまな面で、定員外職員というものは、同じ実態の業務をしながら劣った条件下で働かなければならない。しかも、これはどうしても医療サービス上必要な員数なんですね。そういった実情というものの中から定員というものを考えていかなくてはならぬのじゃないかと思うのです。  まあ、総定員法ということで、私どももできるだけ行政改革によって総定員自体も減らしていかなければいかぬ、あるいは非常勤職員はどんどん減らさなくてはいかぬというふうに一応主張をいたしておりますけれども。しかし実際に必要な職員というものは確保しなければならない。行管では、それは定員法の枠が壁になっているわけではないとおっしゃるかもわかりませんけれども、実際に厚生省なら厚生省所管でそれぞれの全国の実態を調査して、それでいまの一般職員と全く同じ条件で勤務についておるという人を洗い出すとすると、相当な人数になるのではないかと思うのです。そういった点で、厚生省はそういう実態を調査をされたことはございましょうか。
  96. 北郷勲夫

    ○北郷説明員 お答えいたします。  賃金職員の状況につきましては、労働組合のサイドでも非常に問題になっておりまして、それからまた施設当局でも常に施設経営上の問題として非常に大きな問題になりつつございますので、私どもも常に各施設からいろいろな情報をとりまして、たとえばボーナスでございますとかあるいは社会保険でございますとか、そういう状況はおおよそのことはつかんでおるつもりでございます。
  97. 小林正巳

    小林(正)分科員 恐らく厚生省としても、これをそういった実態に合わせて定員化していくということになりますと、大変混乱をするというふうなおそれもあるでしょう。あるいはまた、厚生省としては、まず看護婦さんの要員確保が先決であるという事情がございますから、まずそれを実現したい、こう考えられておるがゆえに、この一般病院従業員の非常勤職員、これは賃金職員と言われているようでございますが、この問題について、行管に対してそういった要請をためらっておられるような面があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、定員化防止の閣議決定が三十六年に行われた、そうしていまの定員というものが一応四十二年ですか三年に決められた枠のようでございます。それで、当時の日本の人口と今日とを比較すると、大体一年間に百万人くらいふえているわけでございますから、ここ十年間に大体一千万人人口がふえておる。一千万人人口がふえましたらそれだけ病人の数もふえるでしょうし、病人のめんどうを見る看護婦さんその他社会的サービスのための要員というものがふえることは当然のことでございます。まあ、仕事によっては三人分を一人でやってできないことはないという仕事もありますが、こういった仕事というものはとかく絶対数というものが必要になるわけでございます。物理的に必要だ、こういう面がある。私は、定員をふやすことを決して推奨するわけではなくて、定員はできるだけ削減をしなくちゃならぬとは思いますが、事実そういった要員が物理的に必要なんだということになればふえることもやむを得ない、こう考えるわけでございます。そこで、行管の担当の方に、その辺どういうふうに考えておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  98. 辻敬一

    ○辻政府委員 行政機関の仕事の中には臨時的、変動的な仕事もあるわけでございまして、そういう仕事につきまして常勤の定員内職員を充てるのは適当でございませんので、各所管省庁が業務上の必要性に応じて定員外の非常勤職員を雇用いたしておるわけでございます。つまり、定員内職員としては定員内職員の仕事があり、定員外の非常勤職員には定員外職員としての仕事があるわけでございます。  公務員の定員管理の考え方につきましては、先ほども小林委員から御指摘があったとおりでございます。いわゆる総定員法のもとにおきまして厳正に行っているわけでございます。しかし、一方において定員削減も行っておりますけれども、もちろん行政需要の強いところには増員を行いましてやっているわけでございまして、国立病院、療養所の定員につきまして、ただいま御審議をいただいております五十三年度予算におきましても、七百九十三人の増員、定員削減百八十九人を引きましても六百四人の純増ということになっております。先ほど御指摘のありましたように、四十三年度から五十三年度までとりましても六千四百人ばかりの増、沖繩を加えますと七千七十三人の増ということになっておりまして、この点につきましては私どもも重点的に配慮をいたしているつもりでございます。したがいまして、総定員法があるから、あるいは定員削減をやっているから非常勤職員がふえるというふうには考えていないわけでございます。  それから、非常勤職員の実態でございますけれども総理府人事局の資料によりますと、五十二年七月現在で非現業の職員として約二十三万二千人おりますが、大部分は統計調査の職員でありますとか、いわゆるパートタイマーの職員でございまして、日々雇用されて勤務期間が六カ月以上という職員はこのうちで一万五千人余りでございます。なお、厚生省につきましては、二十三万二千人の中で社会保険庁を除きまして一万一千百三千七人。そのうち医療関係職員が五千四百二十七人、そのうちで先ほど申しました日々雇用で勤務期間が六カ月以上の者が二千五百四十四人、こういう実態になっておるわけでございます。ただ、病院等につきましてもそういう仕事の繁閑というのがかなりあるわけでございまして、たとえば外来等は午前中に忙しいということがございます。そういう仕事をこなすために非常勤の看護婦さんを雇い入れるというような関係にあるわけでございます。また看護婦さんの方の立場からいたしましても、たとえば家庭を持っておりまして、夜勤はできないけれども昼間の勤務ならできるとか、あるいはパートタイマーならできるという方もあるわけでございますので、そういう潜在看護力の活用と申しますか、そういう点を加味いたしまして、このような非常勤の定員外の看護婦さん等があるわけでございます。  厚生省、国立病院、療養所関係の定員につきましては今後とも必要に応じまして適切な定員措置をとってまいりたいと考えておりますし、また非常勤職員の実態等につきまして、毎年の定員審査等を通じて十分注意をいたしておるわけでございますが、今後とも厚生省とも連絡をいたしまして、そういう制度の運用が一層適切に行われますように配慮してまいりたい、かように考えております。
  99. 小林正巳

    小林(正)分科員 大体お答えをいただいておるようでございますが、パートタイマーのことなんか私は申し上げておるわけではないのです。それは御理解をいただいておるだろうと思うのですが、要はこの常勤職員とは何かという定義、一日八時間労働で月に二十日間ですか、それが一年間連続して勤めたということによって、一般職員、定員内職員としての条件を満たす、こういうことがあるものだから、実際にはその条件を一日だけ満たさないようにわざわざ一日だけ休ませる、そしてインチキと言えばインチキですが、そういう作為的に、全く同じ定員内の職員と同じ仕事をさせておきながら、扱いはさまざまな制約によって賃金職員としておる、こういうことが実態なわけでございまして、そういう人たちがおるということについて余りごまかしをしないで、必要なものならふやせばいいじゃないか、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。  しかし、なかなか物事、そう何でも簡単にいかぬ場合もございましょうから、せめてそういった定員外職員が働いておる機関において、一般のそれと同様の仕事をしておる人に対しては、定員内の職員と実質的に差のないような、大体それに準じた扱いができるように考えていかなければならぬのではないか。これは行管の所管ではない。それぞれの各省の対応の問題であろうかと思います。行管の方から、そうした点についてこれからも定員内、総定員法の枠の中でできるだけ実態に合わせたやりくりをしていこう、こういうふうな話に承りましたので、これで私の質問を終わります。
  100. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて小林正巳君の質疑は終わりました。  午後一時三十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  101. 塩崎潤

    塩崎主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沢田広君。
  102. 沢田広

    沢田分科員 引き続いて質問をさせていただきます。  まず、長官にお伺いいたしますが、公務員の退職手当、退職金、両方言われますが、これについては総理府所管になっているということになっております。人事院においてはこれについてどういう立場になっているのか、その点、両者からひとつお伺いをいたしたいと思います。
  103. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 ただいまの御質問につきましては、政府委員より答弁をさせます。
  104. 秋富公正

    秋富政府委員 ただいま大臣から申しましたように、退職手当法の所管総理府人事局で扱っております。
  105. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 ただいま総理府の方からお答えがございましたように、いろいろないきさつもございまして、現在は退職手当法は総理府所管ということに相なっておりまして、人事院は直接には関係をいたしておりません。
  106. 沢田広

    沢田分科員 私がこれから聞こうとしていることは、現在の法の中において退職手当に関する法律は総理府設置法の第六条の三の四号に定められていることは承知をいたしております。しかし、また一方、国家公務員の給与、勤務条件の改善、あるいは任免、給与、分限、懲戒、こういう公務員の利益の保護に当たるという職務においては人事院が担当することになっているはずであります。  そこで、人事院としては、法律の区分けは別といたしまして、退職金は公務員給与の一部であるとみなすのか、そうでないと考えているのか、その点ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  107. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 給与というものの定義の仕方にもよりますが、現在のたてまえ上は、人事院といたしましては、退職手当自体は給与の中に入るというふうには考えておりません。
  108. 沢田広

    沢田分科員 では、これは昭和四十年でありますが、東京高裁で二月二十五日、「国家公務員等退職手当法に定める退職金は過去の勤労に対する報酬たる性格を有し、一種の後払い賃金たる性格を有するものである」、こういう判決が出ていることを御承知ですか。
  109. 秋富公正

    秋富政府委員 昭和四十年の東京高裁のあれは承知いたしております。
  110. 沢田広

    沢田分科員 とすれば、当然人事院は、この利益の保護といいますか、法律ではそう書いてありますが、その衝に当たり、しかも団体交渉権並びに罷業権を政令二百一号によって奪われた後の労働者の保護に任ずる人事院としては、当然の職務内容としてその改善あるいはその取り扱いを行うべき義務を担っているものだと思うのですが、もう一回御返答をいただきたいと思います。
  111. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 退職手当の取り扱いにつきましては、現行のたてまえでは先刻申し上げたとおりでございますが、広義の意味においてこれが勤務条件に該当するのかどうかということになりますと、これはおのずから問題が別個になってまいります。御承知のように、現行法のたてまえ上退職年金と退職手当というものにつきましてはその取り扱いが異に相なっておりまして、退職年金につきましては、これは法律のたてまえからも、人事院に意見の申し出その他の規定を設けておることは御承知のとおりでございます。それに対して退職手当法自体にはそういう規定はございません。ございませんので、その点のたてまえ上の相違、ニュアンスというものは当然あり得るかと思いますけれども、しかし非常に広義の意味におきまして考えまする場合におきましては、退職手当の性格づけということはいろいろあるにいたしましても、このこと自体がやはり公務員の勤務に関係のある一つの条件であるということは否定しようのない事柄でございまして、そういう意味からは、人事院は、現在総理府所管であるからと申しまして、退職手当のことは全くあずかり知らないのだ、全く関心も持っておらないのだというような冷たいと申しますか、無関心な態度をとるわけではございません。
  112. 沢田広

    沢田分科員 そうすると、いままでは別として、これからは人事官会議においては退職手当あるいは退職金の取り扱いについては検討を加える、あるいは検討を加える場合もあるし――ないということはないのでしょうから、検討を加えていく用意があるのだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  113. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 まだ現在のところ積極的にこれに取り組むという姿勢を示すという段階には至っておらないのでございますが、しかしながら民間の退職手当あるいは退職年金等との対比におきまして国家公務員あるいは地方公務員を通じていろいろ均衡問題等が論議をされておるわけでございまして、それらの一環といたしまして、人事院といたしましてもそれなりにやはり関心を持ってこの問題については取り組んでまいるということは今後の課題としてお約束ができるのではないかと思います。ただ、具体的に申して、どういうようなかっこうでどういうような方法でということになりますると、これはいまの段階はまだ申し上げる段階でございません。
  114. 沢田広

    沢田分科員 人事院の方は給与のベテランの方々がそろっていると思うのでありますが、退職金は労働の対償としての性格を有しない、特別の恩恵的なものだとか、そういうふうな判断はしてない、賃金の性格を持っているものだ、こういうふうにいろいろ言われておるのでありますが、先ほどの判例と同じように、当然これは後払い賃金、そういう性格によるとすれば、人事院の給与の一部を構成するものである、こういうふうに判断をして、いままではそうでなかったとしても、これからは当然そうなっていく、そういう必然性にあるのだと理解してよろしいですか。     〔主査退席、谷川主査代理着席〕
  115. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 退職手当の位置づけ、その性格というものは、これはいろいろ論議がございまして、むずかしい問題も残っておるわけでございます。判例のこともございますし、また学者その他の見解もいろいろございます。総理府のお考えというのはまた後ほど恐らく何らかお述べになられると思いますが、それに対してやはり勤続報償的なものであるというような考え方もあるわけでございます。われわれといたしましては、いま先生がおっしゃいました中で、賃金の後払い的というふうにこの退職手当を取り扱ってまいるということについては、大変な疑義を持っております。と申しますのは、人事院におきましては、毎年夏の時期に官民給与の格差というものを調査いたしまして、それの穴埋めという意味で勧告をやっておるわけでございまして、賃金はそれでもってやはり毎年勝負がついてきておるという考え方に立っておるのであります。均衡がとれてきておる。幸い国会におきましても完全実施ということでやっていただいておりますので、その点の保障は十分に講ぜられておるという考え方に立っておりますので、賃金を後払いできるという考え方に対しましては、私自身も疑問を持っておることを申し上げておきたいと存じます。
  116. 沢田広

    沢田分科員 これはまた異なことをおっしゃる。先ほど事務当局が述べたように、「国家公務員等退職手当法に定める退職金は過去の勤労に対する報酬たる性格を有し、一種の後払い賃金たる性格を有するものである」、こういう東京高裁の判決が出ているわけですね。それをいま否定なさっておられるような発言なのですが、疑義を持つことは自由だと思います。しかし、これは判例として出れば出たなりの効果を持つものだと思います。行政と立法は違う、こういう立場から見れば、行政がこの判例は別だ、これにかかわらず行政は行政としての取り扱いを行う、こういう考えであるとすれば、その答えで私も満足するのでありますが、いかがでしょうか。
  117. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 判例が出ておるわけでございますので、そこまで私から、行政の立場は別だということで決めつけるような考え方はいたしたくございませんし、またいたすつもりもございません。ただ、判例の趣旨その他も十分頭に入れておりますけれども、別の角度からいろいろこれについての論議があることは事実でございまして、われわれ現在の立場といたしましては、給与の勧告というものによって俸給その他の点は毎年是正の措置が講ぜられてきておるということでございますので、その観点に立って物事を考えまする場合においては、いろいろ論議があるということを申し上げておるつもりでございます。
  118. 沢田広

    沢田分科員 では、長官人事院総裁に聞くのですが、退職ということは採用ということがあって起こるわけですね。当然だと思います。それで、採用に関する分限あるいは任免、これは人事院がやっている。そのとき人事院は民法の六百二十七条、これによって採用するわけでありますか、そうでないのでありますか。民法六百二十七条の条項なのか、そうでなく、公務員というものはどういう条件で採用されるのか、どれによるのですか、一応お答えいただきたいと思います。
  119. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  御承知のように、公務員というは特別の身分関係をもって国あるいは地方団体に採用される特殊の性格を持った職員でございます。そういう意味合いからもちまして、この職員については特別に措置、規制をいたしまする法律が適当であるということで、国家公務員法なり地方公務員法ができ上がっておるわけでございまして、採用その他の面につきましても国家公務員法なり地方公務員法の規定による、これが優先をいたすことは申すまでもございません。
  120. 沢田広

    沢田分科員 雇用期間はどの程度と定めておるわけでありますか、定めないのでありますか。
  121. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 雇用期間は定めないのが原則でございます。
  122. 沢田広

    沢田分科員 原則ということは、別があるわけですか。
  123. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 職務の性質上、仕事のぐあいで、その仕事がごく臨時的または期間が限られて、当然ある期間が経過すればその仕事はなくなるというようなことが明確になっておりますような場合におきましては、例外的に期間を限るというような採用の仕方があるという意味でございますが、これはあくまで例外でございます。
  124. 沢田広

    沢田分科員 例外は法律に書いてあるから私もわかるのでございます。ただ、任免というのは、任用する以上、その人におまえの契約期間は幾らなんだという雇用の定めがなければ解雇がいつでもできるというのが民法六百二十七条の定めです。ですから、その民法から出てくる雇用関係というものと国家公務員の雇用関係というものとはどう違うのか。やはりある一定の期間継続をして勤務することを条件として採用することは間違いない。その一定の期間というものは、不当な事項が生じない限りはいつまでも続く。今日定年制が問題になっておりますが、定年制がしかれない限りは本人の意思に基づいて勤めることができるんだ、こういうふうに解釈してよろしいのでしょう。
  125. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 民間の場合よりも公務員の場合、その点むしろ公務の性質からまいるものでございますが、職員についての身分保障的な側面が強いというように解釈してよいのではないかというふうに思っております。したがいまして、雇用期間というものは原則としてつけないんだ、それは特別の場合に限るんだというたてまえをとっておりますのもそこから来ておるというふうに考えておる次第でございます。
  126. 沢田広

    沢田分科員 今度は長官の方へお伺いいたしますが、たとえば公務員が自動車の事故を起こす。常識的に言うと、事故の内容にもよりますが、これは起訴される場合があり得るわけでありますね。起訴されれば、これは休職になるわけであります。それで、本人としては正しいと信じている、おれは間違いがなかった。それでも検察当局から起訴されれば自動的に休職ということになる。この点は間違いないですか。
  127. 秋富公正

    秋富政府委員 起訴されました場合には、休職になるのでございます。
  128. 沢田広

    沢田分科員 そうすると、たとえば本人が自分は間違いがなかったという判断をして訴訟をする。そうしますと、これは当然起訴されましたから、あなたの答えでは休職になる。そして禁錮以上の刑、執行猶予がつけば、これは免職、失職という言葉を使われております。また地方公務員法では解職という言葉を使われております。そこで、失職と解職の違いをあわせてお答えいただきたいのでありますが、言うなればこれは懲戒ではないのか、いわゆる刑事事件というものを行政の中に持ち込んだものなのではないか。いわゆる分限令に基づく懲戒には訓告、戒告あるいは停職、減給、こういう懲戒の条項が決められております。しかし、失職という懲戒条項はありません。あるいは解職という懲戒事項はないのであります。そうすると、失職と解職とは果たして何ぞや、その点ひとつ解明していただきたいのであります。
  129. 秋富公正

    秋富政府委員 退職手当法におきましては八条で支給制限がありますが、その一つといたしまして、ただいま先生から御指摘の七十六条にあります失職、三公社につきましてはこれに準ずる場合でございますが、こういった規定で、この失職というのは同じく公務員法の三十八条の該当事項でございます。これが地方公務員法の解職とどう違うかということでございますが、御承知のとおり、公務員法の解釈、これは人事院において処置しておられますので、人事院の方からお答えいただくのが適当かと考えております。
  130. 沢田広

    沢田分科員 懲戒なのか、懲戒でないのかということ……。
  131. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 刑事事件でもって有罪の判決を受けてこれが確定をする、その結果公務員の身分を失うというのは、これは失職でございまして、懲戒ではございません。
  132. 沢田広

    沢田分科員 あなたが突然どこでどういう不幸が起きるかわかりませんけれども、とにかくまじめに三十年勤める、二十年勤める。今日、三千万台を超えている自動車があるわけですね。今日の自動車が道交法の上からいってどういう立場を占めるかは別の議論といたしまして、今日自動車は国民生活の中である意味においてはもう一台、二軒で三台の割合で持っているわけです。そういう状況の中で事故というものがある一定の限度公務員の資格要件まで失わせるべき内情を持っているのかどうか、その辺はどのようにお考えになっておりますか。
  133. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 他の種々の刑罰法規の中でいま御指摘になりましたような交通取り締まり法規というものは、いま先生もお話しになりましたように、他のものとはやはり違った性格を持っておる、そういう社会的な実態があるということは事実であろうと思います。ただ、この場合には、それはやはり罰則の規定の仕方であり、あるいは検察、裁判におきまするこれに対する量刑の態度の問題ではないかというふうに考えるわけでございます。その点、私の立場からいろいろ批判を申し上げることは差し出がましいことで、差し控えさせてはいただきますけれども、いまお話しになった三千万にもなんなんとする自動車ができてくる、それからまた運転免許を持つ者も非常にたくさんな数が出てくるというような事態が出てまいりますると、社会的な変遷ということからおのずからそういうものに対する評価というものがだんだん変わってまいることも予想せられるわけでありまして、そういうことに相なりますると、やはり取り締まり法規の規定の仕方なりあるいはこれの運用の問題なりということで、おのずからそこにニュアンスの差が出てくることが可能であろうかというふうに推測をいたします。  ただ、われわれの失職ないし懲戒の問題ということに相なりますると、その法規、法規の個別的な判断によって、この交通法規によるものは、禁錮というけれども、それは他の破廉恥罪の禁錮とはまた違うんだとか、そういうような評価をいたすこと自体がやはりなかなかむずかしい問題でございます。その点はやはり実体法、手続法のそのもとのところでもって調整を加えていただくということが適当なことではなかろうかというふうに考えております。
  134. 沢田広

    沢田分科員 まさにさっき私が判例を言ったが、その判例には疑義があるとあなたはいみじくも言われた。いわゆる刑事訴訟法なり刑法の方で処罰をされたことが公務員法の中でイコール処罰、まあ、失職は処罰でないというふうに言われるかもしれないけれども、営々として積み重ねてきた過去の勤務が一朝にしてそこで消え去ってしまう、こういう過酷な、言うならば私は懲戒だと思うのです。その連動を別個にすべきである。このケースにおいては、たとえば本人は正しいと思ったけれどもだめだった場合に、起訴されて処分を受ける。たとえば現実には公職選挙法関係の処分は免職になっていないでしょう、あるいはこれは現実には起訴もしていないでしょう。そういうこともあるわけですね。ですから、そういう立場において、いわゆる刑事罰をイコール行政に連動させないで、刑事罰は刑事罰としての軽重があるでしょう、あるいは社会的な諸条件に応じて刑罰というものが重くなったりあるいは軽くなったりしていることは、社会情勢の判断として司法権が持っているものだと思うんですね。だから、司法権は司法権として持っている。しかし、公務員としての処罰の中にそういう場合を連動して失職ということは、これは明らかに間違いじゃないか。それはそれで確立をして、その結果を受けて行政ではどういう処罰をするかあるいはどういう処分をするか、こういうのが行政と立法のたてまえでしょう。そういうふうに考えるのがこの公務員法としてのたてまえでもあるし、その退職金――私は退職金だけの問題を扱ったわけですが、それによって二十何年の退職金が一朝にしてなくなってしまう、路頭に迷う、そういう事態が果たして正しい行政なのかどうかという点について私はいまお伺いをいたしているわけです。そして罪もないと言っては悪いですが、それは被害者と加害者の関係はあるでしょうけれども、公職選挙法の場合は例外なんだ、これは起訴もしないのだ、あるいは罰金刑はあってもやめることはしないのだ、配置転換ぐらいで済ましてしまうのだ。現実に行政の中にはそういう乱れが出ているわけですから、私がいま言おうとしていることは、この失職という条項について今後検討してもらう、あるいは解職も含めて。だから、刑事罰を受けた者を行政の分野でどう処理するかは――失職というのは、公務員の資格、能力がなかったものとしてみなす、こういうんですね、この条項は。二十年間能力があるものと認めてきているんですよ。そして交通事故を起こしたら、もう能力がないものとして、そこでとにかくくたびれたぞうりのように捨てられてしまう、こういうことが不合理ではないと思いますか。不合理だと思うでしょう。どうですか。長官も、現実に扱っている状況において、時間がありませんから結論的にひとつお答えいただきたいのですが、こういう自分の職務上犯した罪でないものによって不当な損害なり犠牲を受けなければならぬ状況があるのだから、その点について法改正が必要なのか、人事院の通達が必要なのかわかりませんけれども、何らかその辺にもう少し温情というものがあってしかるべきではないか、こういうふうに思うのでありますが、最後に御答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  135. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 失職の規定は、先刻も申し上げましたように、これは実は公務員の資格要件等とうらはらに相なってまいるものでございます。すなわち、公務員になる入り口の場において、禁錮等の刑を受けておる者は公務員になれないということとの対応関係でそういうふうになっておるわけでございます。この点は先生もお詳しいから十分御承知のことだと思います。  ただ、事柄といたしまして、交通事故が起きた、そのためにいままで営々辛苦してやっておったものが一朝にしてなくなることはどうなんだという点につきましては、これは、法のたてまえ、現行の制度のたてまえはいたし方のないこととして相なっておりまするし、また先刻申し上げましたように、実体法規自体の立法政策の問題にも絡むというふうに私は思っておりまして、そっちから解決をしていただくことが先決だとは思いますけれども、しかしその点問題が全然ないのだ、私たちは何らそういうことについては意にもとめないのだ、そういう冷酷な態度はとるつもりはございません。それらの点も含めて今後ともやはり検討をしてまいりたいと考えます。
  136. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 人事院総裁並びに人事局長がお答えをいたしまして、いろいろ複雑な問題であると思いますので、今後人事院ともよく交渉いたしましてできるだけ御納得のできるような方向で持っていきたい、こういうふうに思っております。
  137. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて沢田広君の質疑は終了しました。  次に、渡部一郎君。
  138. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 沖繩県の問題を中心といたしまして、三ポイントばかり御質問したいと存じます。  まずは御担当局にお答えいただいて、最後は開発庁長官あるいは大臣にひとつ締めていただきたいと思います。  まず第一に、第二次中央卸売市場計画十カ年計画というのが五十一年三月十一日付で発表され、十三のマーケットが指定されておりますが、その後順調に進行しているかいないか。いないものがあるならば、それを挙げ、御説明をいただきたいと存じます。
  139. 渡辺武

    渡辺(武)説明員 お答え申し上げます。  先生御承知かと思いますが、中央卸売市場は、全国的な立場に立ちまして計画をつくってやるということになっておりまして、御指摘のように、いま生きております計画では、十三市場を中央市場がないところにつくっていくんだということになっております。  その整備状況でございますが、現在まで事業を行いました結果、整備がすでに完了いたしまして開場しておる市場が六つございます。また、施設整備が終わりまして、近々開場しようとしている市場が一つございます。また、施設整備をいま実施中という市場が三つございまして、計十につきましては、このように事業が行われ、かつ市場が開場したというような段階にまで至っておりますが、残ります三つの市場につきまして、まだ全く事業に着手されておらないわけでございます。  その三つの市場のうち、二つの市場、これは長野と堺市についての市場でございますけれども、これは、私たちの計画がもともと十カ年計画でございまして、この二市場につきましては、整備をもともと後半、だから五十六年以降に行うというように位置づけられているものでございまして、まだ事業は行われておらないということでございます。  残り一市場、これは沖繩でございますが、計画上、整備は五十五年以前から行われるということになっておるのでございますけれども、用地取得等の問題がございまして、いまだに整備事業に着手されていないという現状でございます。
  140. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 この整備計画の中には、現在問題になっておる神戸の中央卸売市場本場の整備計画については載っておらないようでありますが、これはどういうようになっておるか、あわせて御説明いただきたい。
  141. 渡辺武

    渡辺(武)説明員 お答えいたします。  整備計画には、先ほど御説明申し上げましたように、中央市場がいまないところについて置くんだという場所を決めて書いてあります。それが第一部分でございます。  第二の部分といたしまして、いますでにある市場につきましては、その部分的な改良、造成等になりますので、計画の後ろの方でございますが、一括して書いてあるということでございまして、当然神戸の市場についても中に含まれております。
  142. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 一番問題なのは、沖繩県の那覇・浦添中央卸売市場計画が非常に遅延していることでありまして、復帰以来足かけ六年目を経ているにもかかわらず、できない。私は、神戸におきまして卸売市場というのが二カ所あるのですが、非常に恩恵に浴しており、かつ大阪と比べて一五%近い物価の安さというものが神戸には存在する。それを考えると、中央卸売市場の整備というのは、沖繩のようなシステムが整わないまま本土に復帰したところには一番先に設置するのが当然であった、むしろ特別措置の中に入れてよかったと思うのでありますが、この沖繩の那覇・浦添中央卸売市場というものの計画が遅延している理由は一体どこにあるのか、現在どういう計画になっておるのか、その辺をひとつ伺いたいと思います。
  143. 渡辺武

    渡辺(武)説明員 お答え申し上げます。  神戸について、ちょっと答弁を漏らしたかと思いますが、神戸の市場につきまして、整備計画上位置づけております。大分古い市場でございまして、老朽化しておりますし、都市がその後膨大に拡張いたしておりますので、それに対応すべく、神戸市におきましては今後八年間で三百億円ほどの投資を行ってりっぱな市場に仕上げていくということが計画の内容になっておるわけでございます。  沖繩の市場につきましては、先ほども説明申し上げました整備計画の中に、私たちとしても位置づけております。第二次整備計画でございますが、その中では、五十二年度に用地を取得いたしまして、県が開設者となりまして、青果、水産に関します中央卸売市場をつくるんだ、こういうことになっております。五十二年度に用地を取得いたしまして、五十三年度、五十四年度に必要な施設整備を行いまして、五十五年度に開場するんだというのが計画の内容になっておるわけでございますけれども、現実には若干おくれてまいっております。  おくれておる理由といたしましては、中央市場をつくります用地の取得がおくれているということでございまして、安謝地先伊那武瀬という場所に埋め立てを行いまして、そこで市場用地をつくり出すということになっておるようでございますけれども、これが若干おくれておるというように理解しておる次第でございます。
  144. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 おくれている理由には、いろいろなことがあると思うのですが、PRも足らぬし説明も不足だという点もあるだろうと思うのです。地元では、中央卸売市場と地方市場というものとを混同して、中央卸売市場の方が地元負担が高いんじゃないか、だからこういうものを設置しない方がいいんじゃないかという議論が出始めておるようであります。これは実際のところどういうものであるか、政府側の御見解を承りたいと思うのです。
  145. 渡辺武

    渡辺(武)説明員 お答え申し上げます。  市場には、人口二十万以上の都市で中央卸売市場というのをつくり得るんだ、それだけの人口規模がないところでは地方市場というものしかつくれない。ただ、人口二十万以上のところでございましても、地方市場というかっこうで市場整備することもこれはできることになっておるわけでございます。これに対しましては、私たちの方からはその市場設備の建設につきまして補助を行うことになっております。その補助の国庫持ち分が中央市場と地方市場とでは若干異なっておりまして、中央市場の場合には最高限十分の四まで、地方市場の場合には最高限三分の一までということにいまなっておるわけでございます。
  146. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 そうすれば、負担率が中央卸売市場の方が高いというわけにいかないと思うのですね。ですから、今度は積極的に中央市場にすればどういうメリットがあるかということはよくPRされているのかどうか、地元の県あるいは住民団体等に対して説明が行われているのかどうか。どうも不足な感じがして仕方がない。ですから、私はその辺お伺いするのですが、中央卸売市場にすればどういうメリットがあるのか、この際、御説明をいただきたいと思うのです。
  147. 渡辺武

    渡辺(武)説明員 お答え申し上げます。  中央卸売市場ということで整備をいたします場合には、先ほど御説明申し上げましたように、国の負担分が地方市場の整備の場合より、若干でございますが有利になっておるというかっこうでのメリットが建設段階にあるのが第一点でございます。  それから、中央卸売市場として整備いたしますれば、市場の中の市場というような形でございまして、この商取引の中におきまして大きな信用力がつくということでございます。したがいまして、そこに収容されました業者といいますか卸売業者が、全国から荷を集めます場合にかなり信用度が高いものとして広く集荷ができる可能性があるというのが第二点でございます。  以上でございます。
  148. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 現に集荷が良好に行われれば、既存の中央卸売市場の例を見ましても、ひいてはその地域に良質の青果を供給しあるいは生鮮食料品を供給し、また価格としても非常に安定した価格で供給できるということはできると思うのですね。また、沖繩において小さな、生鮮食料品をつくっている皆さんが、それを卸売市場にかけないために、相対商売で地べたに並べて売っておるということのために経費が非常にかさんでおる、また大規模に売買することができないという状況がある。こういったことは野菜をつくる野菜業者を成長させるために非常にマイナスになっておるということが言えると思うのですね。私は、追加して申し上げるわけでありますが、これほどの機能を持つものであるならば、もっと積極的に政府推進されるのが妥当だと思うのです。     〔谷川主査代理退席、主査着席〕  要するに、埋め立てがおくれている責任はどこにあるのか、県にある市にあると言って済ましているわけにいかないと思うのですね。これは担当される沖繩開発庁が監督されなければいかぬと思うのです。また、その埋め立てをされる計画の外側に防波堤をつくらなければいけないのはわかっておるのですが、防波堤計画も全くおくれておるわけです。これは市場計画をつくれば、埋め立てができれば防波堤はすぐ問題になるのに計画にも上っていない、こうしたことについて開発庁は大きな責任があると思うのですね。その辺どう考えておられるのか。
  149. 美野輪俊三

    ○美野輪政府委員 お答えいたします。  ただいまの埋め立ての問題でございますが、実際の埋め立ては、公有水面埋立法の定める手続によりまして、港湾管理者であります那覇市長が運輸大臣の認可を得て事業者である、ちょっとややっこしいのでございますが、那覇市及び浦添市に対して免許をするということで、これは昨年の七月に免許になりました。現在那覇市及び浦添市において埋め立て事業を実施中でございまして、五十五年に完成される、このように聞いております。  港湾計画それから埋め立て計画等につきましては、すでに公示されてございますので、中央卸売市場の事業者、これは沖繩県になりますけれども、県の方としてもその辺の予定等はすでに承知されておることと考えております。  それからもう一つ、先生御指摘のございました防波堤の工事でございますが、私から申し上げるまでもなく、那覇港内を利用いたします船舶とか港湾の諸施設の安全を確保するということで現在鋭意進めているところでございまして、私ども聞いております限りにおきましては、埋め立て工事の進捗とは直接の関係がないというふうに聞いてございます。また、そのこと自体埋め立て竣工後の土地利用にも特段の支障になるものではないと私どもとしては聞いておるところでございます。
  150. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 局長、申しわけないけれども、それは誤解ですよ。あなた、この図面、そこから見えるでしょう。これが埋立地なんです。それで、こちら側から風が吹くのですよ。貿易風というか一定の方向で吹く。台風は反対側から吹くけれども、こちら側から吹くことがある。そうしますと、ここの埋立地はもろに波頭が崩れてくる対象地になる。現在でもリーフがあるから猛烈な波をかぶる地域なんです。だから、これが埋め立てられたときは、この防波堤ができていなければいかぬ、あたりまえの話なんです。関係がないのじゃないのです。小さな船舶――御説明するならよく説明して。局長はわかっていないのだから。――だから、こっちから波が来るときに、ここのところに船が着くのだ、実際は。こちら側に着くのですよ。だから、この船も行く、こちら側にもいろいろな小舟を着ける。そうすると、ここのところに波が正面から来ると大変なことになるわけです。だから、防波堤計画はこの埋め立て計画と一緒にやらなければいけない。ところが、こちらの方はどうせ建設省の所管でしょう、あるいは運輸省所管でしょう。そうすると、ここのところの埋め立ては浦添と那覇市がやっておるのでしょう、のろのろしたスピードで。  いまのあなたの御説明によると、那覇市長が免許取得がおくれて、そして那覇市がさっさと届け出しないからおくれたと言わんばかりの言い方をされておるが、沖繩県のことに関しては、沖繩開発庁が事実上の総合事務局をつくってあそこでいろいろ管理されて、あるいは相談に乗っておられるのですから、責任はむしろあなたの方にある。その振興局長がそんないいかげんなことを言ってもらっては困る、いけません。だから、これについてはちゃんと計画を、早く防波堤の方も打ち合わせる、埋め立ての方もさっさとやらせる、こうしなければいけないと思いますよ。いまあなたの言い方によれば、これは三年から四年ぐらいおくれてしまう。しかも、物価というのは毎日の生活の問題なんだから、計画が全部完成しなくたって、一部使って市場を開設することだってできないわけじゃない。便法も相談してあげなければいけない。その点、態度が全然不明確なのはいけないと思うのです。  また、中央卸売市場をつくるためには中間業者である卸業者等を育成しなければならない、教育しなければならない、それもいまから手をつけなければいけない問題でしょう。それも全部おくれているのだ。農林省の方は、埋め立てができたら私たちは出かけていって相談に乗りますと言っている。海の真ん中に、卸売市場ができたって、建物は建てようがないし教えようがないとさっきから叫んでおられる。それは全部だれが悪いのかというのだ。要するに、住民は迷惑する。そうすると悪いのは浦添市なのか那覇市なのか、運輸省が防波堤をつくらないからなのか、開発庁の振興局が何も振興しないからなのか、だれが悪いのですか。
  151. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いずれにいたしましても、市場建設計画、当事業者の連係が必要だと思いますし、また各省官庁あるいは県当局とも連絡を密にして速やかに促進を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  152. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 大臣が速やかに促進を図りたいとおっしゃるのを、私、それを否定する根拠はないし、御決意を了としなければいけないと思うのです。大臣はいま大まかに、大いに促進するとおっしゃいました。さあ、局長、答弁してもらいましょう。あなた、その促進はどの程度のスピードでやるおつもりなのか、細かく言ってもらいましょう。どうぞ。
  153. 美野輪俊三

    ○美野輪政府委員 先ほど先生の御指摘にございました防波堤との関連につきまして、若干事務的な説明になりますけれども申し上げますと、埋め立て工事をいたします場合に、先生御指摘のように、防波堤ができませんと波をかぶるような地形になっておるということでございますが、埋立地そのものの利用には支障のないように、そういう護岸工事等をやるということが埋め立て免許の条件になってございます。したがいまして、その計画に基づいて、現在那覇市及び浦添市においてその埋め立て工事を実施しておるということでございますので、そういう意味におきまして、先ほど直接防波堤との関係はございませんと、こう申し上げたわけでございます。  もちろん、防波堤としても那覇港湾整備計画の中に組み込まれておる重要な工事でございますので、私どもとしてその防波堤の工事を積極的に進めていくということは真剣に考えておるところでございまして、そのため、五十二年度におきましてもかなり、一次補正、二次補正等におきましても予算計上をいたしまして、また来年度もその関係の予算をできるだけ確保いたしまして工事を進めたい、このように考えておるところでございます。  あと、促進の問題、市場計画そのものの問題につきましては、前々から中央卸売市場の建設計画が特に県から出されておりまして、先生御指摘のように、五十二年から工事にかかる、こういうような経過だったわけでございます。ただ、土地問題が未解決のままにごく最近まで参ってしまっておるわけでございますが、幸いにしまして、昨年の七月には運輸大臣の認可を得まして港湾管理者からの免許が出されております。これによりまして三年計画、こういう形にされておりますので、予定どおり工事が進みますれば、五十五年の七月には遅くも完成するものというふうに私ども期待しておるところでございまして、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、非常に関係者が多数にわたってまいります。私どもとしては、関係省あるいは地元、県を初めとしまして、これらと連絡を密接にとってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  154. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 あなた、いま一生懸命説明されたんですが、私が言っているのは、埋め立てがもう二年おくれているでしょう。だから急いでやらなければいけないのでしょう。大臣はいま速やかにやるといっているのでしょう。だから、あなたがこの五十五年七月に期待しているのはわかっている、そんなことは。あなたの言っていることは、ああでもなければこうでもないというだけで、答弁になってないじゃないか。五十五年七月までに期待どおりスピードアップしてやりますというのか、至急調整を要すると思いますから調整をして、五十五年七月よりなるべくおくれを少なくしてやりますというのか、どっちかじゃないですか、そうでしょう。何ですか、いまの答弁は。答弁したことにならない、そんないいかげんな。はっきり言いなさい。何言っているんだ。
  155. 美野輪俊三

    ○美野輪政府委員 私どもとして、どこまでお答えしてよろしい問題かということで若干苦しむわけでございますけれども、中央卸売市場の整備ということにつきましては、これは県におきましても、県内の流通機構の整備という観点から、早急に整備をしたい。また、この所管農林省でございますが、農林省の方の中央卸売市場計画にも確定されておる、その間、各事業者の連絡を十分に行いながら、速やかに実現されるように私どもとしても努力してまいりたい、このように思います。
  156. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 申し上げますが、答弁になってないよ、本当に。こっちはちゃんと質問の通告までしたのに、何ですか、そんな答弁は。中央卸売市場はいいかげんな態度で二年も三年もだらしなく延びようとしているんだ。縮めようとしているんじゃないか。何でそんないいかげんな答弁ばかりするんだ。返事しなさいよ、できないならできないと。
  157. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 土地造成は五十五年までに完成をするということになっております。ただ農林省……(渡部(一)分科員「五十五年には全部終わることになっているのですよ」と呼ぶ)これから御説明いたします。そこで多少のずれは――中央市場の方は五十五年までに完成ということでございまして、私の方もこういったことを踏まえて、できるだけその期間に間に合うように努力をいたしたい、こういうふうに思っております。
  158. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 その期間に間に合うというのは、五十五年の七月に中央卸売市場は完成して動き出すことになっていました、それになるべく間に合うように計画をもう一回検討して報告されるという意味ですか。
  159. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま申し上げましたように、造成計画は五十五年ということでありますから、いま御指摘の中央市場の建設が五十五年ということでございますから、そのずれがあります。造成が五十五年、それからということになりますから、そういったことを踏まえて、できるだけ造成計画というものを短縮さす、こういうことにひとつ全力を挙げてみたい、こういうふうに思っております。
  160. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それじゃわからないんだよ。土地が五十五年にできる見通しだということをいまあなたは述べられた。しかし、造成が五十五年までかかるとは思えません。全力を挙げたらそんな時間がかかるものじゃない。もし急いでやろうとするなら、土地造成の時間も縮めるのはあたりまえなんだよ。そうでしょう。あなたは土地の方に触れないでおいて、建屋の方の部分だけ縮めようとなさるのだったら、それは計画を検討したことにならない、市民の要求にこたえたことにもならないじゃないですか。全部その造成の時間も建屋を建てるのもあわせて検討して、いまの調子でいけば恐らく五十八年ぐらいになるでしょう、それを縮めて検討いたしますというのがあなたの答弁でなければならぬでしょうが。何ですか。
  161. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 造成計画の方で完成がおくれるという、御指摘のとおりでございますので、いまどれだけを詰めるかという具体的なことを申し上げるわけにはまいりませんが、まず五十五年いっぱいはかからない、その先に造成を完成さす、こういうことだけをお約束を申し上げておきたいと思います。
  162. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 悪いですけれども大臣、すべて再検討されることを望みます。もうこれはめちゃくちゃですよ。それほど沖繩県民の生活に対して考えてなかったということを如実に示しておる。それから、責任者が決まってないのが失敗です。責任者が本当に責任をとらなければいけない。  大臣は非常に実行力のある方と承っておるから私はがあがあ申し上げたんです。これはもう本当にだらしがない。こんなことをしているなんて本当にもってのほかだ。  復帰してよかったと思わない人という県民のパーセンテージが八〇%に上っておる。その理由の第一は何かというと、物価の値上がりなんです。沖繩県民百万の人々に、復帰してよくなかったなどと思わせるような行政をすべきじゃない、私はその痛みが胸の中にこたえるような政治をあなたにやっていただきたい。あなたはふだんはわかる人じゃないですか。そしてあなたは実行力のある、早い人じゃないですか。何でこんなのろのろやっているんですか。私は大臣のいままでのやり方と違い過ぎるので驚いておる。きょうは私はちゃんとほめているんですよ。  それでは次の問題に移りたいと思います。  もう時間がありませんので、大幅にいろいろなものをまた次の委員会で申し上げたいと思いますが、この前、昭和五十二年の三月十一日の予算分科会において、沖繩県の南大東島で放映されているテレビの放映時間が二時間であるのを延長するように申し上げましたところ、NHKがどういう形でやるかわからぬけれども、放送の時間延長等の、差別の問題については改善するという旨、御答弁が小宮山大臣からございました。ところが、その後改善されておりません。これは私は約束が違っておると思います。  そこで申し上げるのでありますが、現地におきましては、文化的にも非常に大変なところでありますし、またNHK側が南大東放送試験局を設けておるという形にもなっておりますから、正規放送とは違うやり方で、サービス的な立場でやっておられるのも十分理解はできるのでありますが、この二時間の放送というのは余りにも短過ぎる、これは何とかして地元の言っているように四時間程度のものに検討していただきたい。そうして、カセットでいま地元に運搬しているそうでありますけれども、運搬して二時間分放送をするのとそれほど費用が違うはずでもないし、これはぜひとも地元の要望どおりやっていただきたい。また、時間も、四週間前の放送なんかやっておるわけでありますから、これはちょっと時間が長くかかり過ぎておる、そして質もよくない。ひとつこれは考慮されて、もうちょっとレベルの高いものに引き上げていただかなければいかぬのじゃないか。そうして、NHKの費用が赤字でとてもだめだというのなら、ぼくは開発庁が出してもいいと思います。その辺は御相談もしていただいて、ぜひともその辺の改良をしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  163. 志村伸彦

    ○志村説明員 お答え申し上げます。  南大東島は沖繩本島から三百六十キロという非常に遠いところにございますので、放送波による中継は不可能である。それでNHKでは、昭和五十年以来ビデオを空輸いたしまして、一日二時間の放送を行うということをやってきたわけでございます。  それで、この時間延長の件でございますけれども、NHKに検討を求めましたところ、現在、ビデオを輸送する――二時間のビデオで約八キロの重量があるわけでございますが、この重量枠を確保するのが非常にむずかしいということ。それから、現地におきます放送を実施するにつきましては、現地の村役場の職員に委嘱するということでやっておるわけでございますが、こういうような職員を確保するという問題がございまして、早急には時間延長をするということは困難であるということでございますけれども、これらの隘路が解決されましたならば、前向きに検討したいということでございます。
  164. 渡部一郎

    渡部(一)分科員 それでは最後ですから、大臣にこの件についても十分配慮していただいて、ひとつ早急に地元の要望が達成されるように御指導いただきたいと存じますが、いかがでしょうか。
  165. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 郵政省とも話し合いをいたしまして、できるだけ御期待に沿うよう努力をいたします。
  166. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で渡部君の質疑は終わりました。  次に、川本敏美君。
  167. 川本敏美

    川本分科員 私は、いわゆる部落差別の問題について、特に来年三月に同和対策事業特別措置法の期限が切れます。こういう押し迫った状態の中で、現在、部落差別の実態がどうなっておるのか、こういう点を指摘しながら、政府の方針をお聞きいたしたいと思っておるわけです。  最初に、法務省にお聞きしたいと思っておるのですが、御承知のように、地名総鑑あるいは特殊部落リストというのが今日まで何種類発行されて、それに対して法務省は今日までどのような対応をしてきたのか、このことについてまずお答えいただきたい。
  168. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 お答えいたします。  いわゆる地名総鑑等の差別図書につきましては、第一から第七まで判明しておりまして、それにつきましては、逐次調査いたしまして、すでに啓発の終わりましたものにつきましては勧告、説示を行っておりますが、まだ判明しない分につきましては調査中でございます。
  169. 川本敏美

    川本分科員 ただいま、第一から第七までの地名総鑑という差別図書が発行されておるというお話でございます。これまでの法務省調査の結果の報告書を私は私なりにこういう一覧表にまとめてみたわけです。  そこで、特に気がつきますことは、たくさん問題点があるわけですが、第一から第七までのうちで、第二の、いわゆる「全国特殊部落リスト」と言われる、これは昭和五十年二月ごろから五月ごろまでに労政問題研究所というところから発行された書物ですけれども、これについて法務省の発表によると、現在発行者は北沢隆、加藤昭三という名前になっているのですが、これは二人ともいわゆるペンネームで、本名は現在に至るもわかっていない。印刷した部数が幾らで、回収したもの、未回収のものが何部で、そしてその出版案内書はどこで印刷したのかということすら現在わからないという状態だと思うわけです。これは第二のリストだけの問題ではなくして、第一から第七まで大体通じて言えることだと私は思うのです。  第三の、いわゆる部落リストと言われるのは、これまた労働問題研究所というところから発表された。田中靖造という人が発行人で、これは行方不明で、現在まだ面接もできていない。何年間か行方不明ですね。これは昭和四十五年から五十年までの間に発行された図書です。ところが、これについても発行部数はまだ不明だ。あるいは出版案内書についてもすべて不明、こういうような状態です。  第五の部落リストあるいは第六の部落リストというものについても、これは「特別調査報告書」とか「日本の部落」とかいう書名だと思うのです。これも発行人すら不明のままで今日まで放置されておる。  特に第七の部落リストですけれども、これは「マル特分布地名」という本だと思うのですけれども、これについては、法務省当局がいろいろ調査の過程で、たとえて言えば、印刷所はどこかということを質問したのに対して、供述拒否をしておる。あるいは出版案内書についても供述拒否と出ておるわけです。そして、四部ほど本人が回収した、発行人が回収したと言っておるのですけれども、回収先はどことどこかということに対しても供述拒否をしておるわけです。これはそのとおり間違いないわけですか。
  170. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 ただいま御指摘の点は、こちらの方の報告書に書いてあるとおりでございます。
  171. 川本敏美

    川本分科員 これで人権擁護の行政というものが守れるのかどうか。調査しても不明だとか、供述拒否でこれ以上いかんともしがたいというのは、法務省がそれ以上さらに突き詰めてこの問題を調査してはっきりわれわれ国民の前に明らかにできないその原因はどこにあるのでしょう。
  172. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 先ほど、御指摘の点は報告書のとおりであると申し上げましたのは、この報告書の作成の時点におけることでございまして、その後、不明の点について調査を続けておることがございますので、その点をちょっと報告させていただきたいと思います。  第一の「部落地名総鑑」につきましては、未回収分が五十四部ございまして、そのうち五十二部は、発行者の坪田が焼却したものということが認定されました。これはその後の調査によりまして認定されたわけでございます。前の報告のときは、まだ確定は困難だと申しておりました。これが第一の関係でございます。  それから第二の関係、これは「全国特殊部落リスト」でございますけれども、これは先ほど御指摘のとおり、北沢、加藤なる者が仮名で、実在しておりません。そういう関係で、発行者について調査中でございますが、この点につきましては、労政問題研究所に関係があったと思われるすべての人物の情報を集めまして、現在、そのすべてにつきまして鋭意探索中でございます。  それから第三の、これは労働問題研究所発行「全国特殊部落リスト」、それからもう一つ、第四の、同じ研究所発行の「大阪府下同和地区現況」、これは関係者が同じでございますので共通で申し上げますが、先ほど御指摘のとおり、まずそのうちの一人の鈴木守立、これはもうすでに死亡をしておりまして、調査のしようがないのでございますが、もう一人の田中靖造でございますが、これは鋭意探索いたしまして、最近接触することができました。その関係で引き続き調査中でございます。  それから第五の「日本の部落」関係でございますが、これは発行者が姿をくらましておりまして、現在所在不明でございます。それで現在、発行者を把握するために根気強く周辺調査を行っております。  次に、第六のサンライズ・リサーチ・センター販売「特別調査報告書」でございますが、これは発行者が鈴木でございまして、すでに死亡しておりまして、調査不能でございますが、それ以外の点につきましてはすべて解明されております。  それから第七の、本田秘密探偵社発行「マル特分布地名」関係でございますが、この発行者本田は、先ほど御指摘のように、当初非常に非協力でございました。しかし、その後、根気強く説得いたしました結果、かたくなな態度がやや改まりつつございますので、現在引き続き調査中でございます。  そういう状況でございます。
  173. 川本敏美

    川本分科員 ちょっと大臣、座っておって聞いていてもらわぬと私は質問できないのです。  そこで、昭和四十六年から五十年ぐらいに問題になった書物が、現在まだ鋭意接触中だとか、調査中だとか、本人を説得中だとか、こういうような状態ですけれども、特にこの第七の「マル特分布地名」の問題については、購入先がほとんど探偵社とか興信所です。これは第一の「部落地名総鑑」発行人である坪田義嗣が部落解放同盟の人たちに糾弾会で説明しておる中では、一般に差別はまだ生きておるのだ、だから会社が従業員を雇用するとき、あるいは縁談が出たときに興信所へ皆調査を依頼してくる、そういうことのために興信所や探偵社はこういう本を必要としておるのだ、差別図書がなければそういう問い合わせに答えられないから、そういうところがまず必要なんだと言う。その坪田の言っておるとおりに、第七のこの図書は、全部興信所や探偵社が購入先になっておる。なぜこういうことを今日まで――これ以上調査が進まないし、延々として長時間かかっておるわけですね。これはやはり現在の人権擁護に関する法律に欠陥があるのじゃないか。本当にそれで法務省は人権が擁護できますか。差別のない社会をつくるために現行法で十分でございますと考えておるのか、その点はどうなんですか。
  174. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 お答え申し上げます。  確かに時間がいろいろかかりましたり、調査が難航した点がございますが、その原因につきましては、先ほど御指摘のとおり、関係者がかたくなに供述を拒否しているというようなことが原因である場合もございますが、それ以外に、調査時には関係者の記憶が薄れまして、裏づけ資料がなくなっていたり、あるいは先ほども申し上げましたような重要関係人が死亡しているというようなことがございます。それから、本件関係の冊子の中にはコピーがかなりあるのでございますが、複写機を利用して随時簡単にできるということで、このコピー部数の把握は困難であるという事情もございます。それから、この冊子の発行者、これが個人によるものが多うございますので、姿をくらましてしまう、その後の把握が困難であるというようなこともおくれた原因でございます。
  175. 川本敏美

    川本分科員 私は、法律にやはり欠陥がある、というのは、法務省そのものが人権擁護に関しては強制捜査も何もできない現在の法体系の中に一つの問題があるのではないかということを指摘しておきたいと思う。特にこれらの第一から第七までの地名総鑑のネタですね。そのネタはどこから出ておるのかということになりますと、これは私はやはり政府の責任だと思う。政府から出なければ、行政官庁から出なければ、どこも出るはずないわけです。これは現在でもはっきりしておるのは、第四の部落リスト「大阪府下同和地区現況」というのは、大阪府の同対室の資料がそのネタになっておるということははっきりしておるわけですから、私は、今後差別図書が発行されるたびに、そのネタの出先はもともと政府の行政機関から出ておる、このことをまず政府自身がはっきりとしておいてもらわなければ困ると思うのです。  特に、私は奈良県でございますけれども、奈良県でも、最近差別事件というのは年々増加の一途をたどっておるわけです。去年一年でも前年に比べて四件ばかり増加をしております。特にその差別事件の中で悪質なのが一つ、二つあるわけです。一つは宇陀郡榛原町におけるいわゆる差別暴行事件がある。何もしてない部落の人、善良な部落の人を散髪屋に呼び出して、そうしてその散髪屋で、おれはおまえの顔を見ただけで腹が立つんや、エッタにエッタと言うて何で悪いんやと言うて、殴ったりけったりしておるわけですね。ところがこれは、殴った、けったということは暴行事件として警察で処理できても、その人を殺すような言葉の差別、エッタにエッタと言うて何で悪いんやという、その人を殺すような言葉に対しては、現在何も行政面で措置することはできないのでしょう。差別された人たちが集まってその人を糾弾する以外に現在その人に罰は加えられないのでしょう、その点についてどうですか、法務省
  176. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 おっしゃいますとおり、暴行なればこれは刑事事件でございますが、ただ、発言の場合でも、公然侮辱ということでありますと、やはりこれは犯罪として処罰されることになるのだろうと思います。
  177. 川本敏美

    川本分科員 いままでそういう差別言辞のために若い青年が全国でもう何百人、何千人という人が自殺をしておるのです。殺されておる。言葉で殺されておる。そういう言葉で殺されるような差別事件というものが相次いで続発をしてきておる。このことを行政当局としては放置しておいていいと思うのかどうか。現行法でこれで十分だと思うのかどうか。総務長官所管の大臣としてひとつお答えいただきたいと思う。
  178. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 差別待遇というのはゆゆしき問題でございまして、基本的人権にかかわる重要な問題でございます。そういう意味から、先ほど来法務省の方からも御答弁がありまして、一つの事件として暴行を加えられたり何かという場合においては事件として扱うということはできるけれども、その他のことについては大変抽象的ではございましたが、この点についても、できるだけその古い傷と申しますか、そういう――――と申しますか……(川本分科員「――――とは違う、何が――――や」と呼び、その他発言する者あり)いや、差別待遇、差別ということ……。
  179. 塩崎潤

    塩崎主査 御静粛に願います。
  180. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 ちょっと発言を訂正さしていただきます。(発言する者あり)それは大変失礼いたしました。  差別待遇、こういった問題については、ひとつ慎重に考えてまいりたい、こういうように思っております。
  181. 川本敏美

    川本分科員 大臣はいま――――ということを言われた。大臣は部落差別、同和問題の部落差別は何差別だと思っておられるのでしょうか、まず聞きたい。
  182. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど来からもいろいろ御指摘がありましたように、差別待遇、こういうことの……(川本分科員「違う、違う。違う、違う。差別待遇とは違うんだ、これは。」と呼ぶ)社会的差別待遇……
  183. 川本敏美

    川本分科員 違う、違う。こんなもの、――――だと大臣が思って同和行政をやっておるのだったらおかしいと思うんだよ。――――は取り消してくださいます。
  184. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 それは取り消させていただきます。
  185. 川本敏美

    川本分科員 それなら、これは何差別だと思いますか。
  186. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 社会的、身分的差別、こういうふうにお答えいたします。
  187. 川本敏美

    川本分科員 これは歴史的ないわゆる社会的身分差別なんですよ。いわゆるあり得べからざる、いわれのない差別。そのことのために殴ったりけったりされるというのは、そんなら、それは許しておいていいと思いますか。現在の法律で、その人を殺すような差別発言を封じることはできますか、大臣。それで封じることができると思っているのかどうか。――大臣、答弁できませんか。それはまず大臣から答弁してもらいたい。
  188. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  これは、気持ちとしては当然私はできると思いますが、法の運用については法務省という、こういう関係でありますので、法務省と連絡をいたしたいと思っております。
  189. 川本敏美

    川本分科員 私は、これは、先ほど大臣が――――と言われたけれども、――――とふっと口から出たという、いわゆる言い間違いじゃないと思う。私はそうだと思う。やはりこの同和対策事業特別措置法の所管の大臣がそんな認識でおるようなことで日本の同和問題というものが解決しないのはあたりまえだと思う。しかし、今日、政府、自民党の部内に今日でもなおそういう間違った考え方に出発して同和問題を論じておることがたくさんある。このような問題を私たちは放置していてはいけないと思うわけです。だから、その点については今後の問題として留保しておくことだけひとつここで申し上げておきたいと思う。  そこで、もう一つ差別事件が起こっている。これは大臣、ちょっと見ていただいたらわかります。法務省の方も見てください。これは奈良で出された第一住宅というところから出ておる、いわゆる新聞への折り込み広告です。それは最近のものです。そこに「校区よし」と書いてある、一番上に赤で丸してあるところに。「校区よし」。この「校区よし」という宣伝文句は何を意味していると思いますか。法務省、今度は答弁してください。
  190. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 とっさのことでございますけれども、やはりこれは同和地区であるかないかということに関係がある表現ではないかという気がいたします。
  191. 川本敏美

    川本分科員 「校区よし」というのは、これは奈良県でも最近桜井市の西中学校の建設に関して問題が出ておる。いわゆる西中学校では、現在までは橿原市と桜井市の組合立の中学校であった。ところが、それを桜井市は西中学校を建設して、そしてそちらへ自分の市内の子供を通学させるという方針を決めたが、その地区内にいわゆる大福という同和地区があるわけです。そうすると、その同和地区の子供とうちの子供を一緒に勉強させることは反対だと言って、市当局が開いた説明会の席上で、PTAのお母さんが公然とあからさまに、そこへは通学さすことはできないということを言った。いわゆるそのことのために、越境通学。自分の校区を越えて、同和地区の子供のおらぬ学校へやる。同和地区の子供はこわい子や、おそろしいとこや、こういう間違った宣伝に基づく言葉から、校区よし、悪しという言葉ができてきたのです。このことをはっきりしてもらうために私はいま言っている。これは明らかに差別事件ですよ。こういう広告が出るということでも、明らかな部落差別の差別事件なのです。こういうことに対して法務省はいまどういうふうに対応できますか。
  192. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 やはり私どもとしては調査いたしたいと存じます。
  193. 川本敏美

    川本分科員 調査するだけで差別はなくならぬと私は思う。だから、やはり差別というものをなくするために行政が積極的にどのような対策をこれから進めていくべきかということに問題の焦点がしぼられなければならないと私は思うわけです。  時間がありませんので、私は話を前へ進めますけれども、ともかく現行法ではそういうものは調査の対象になっても処罰の対象にはならぬわけですね。法務省、どうですか。
  194. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 仰せのとおり、恐らく処罰の対象には現行法令ではなっていないかと存じます。
  195. 川本敏美

    川本分科員 そういうところに現行法の不備がある。だから、ただ単に同和対策事業特別措置法を延長すればいいという問題だけではなくして、こういう人権を守るためにはいわゆる特別立法が必要であるということを、昭和四十年に出された同対審答申の中でも明記されておるわけですね。それは法務省、御存じですか。
  196. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 答申の中にあることは存じております。
  197. 川本敏美

    川本分科員 それが今日まで立法化されずに放置されてきておるのは、どういうことなんですか。
  198. 鬼塚賢太郎

    ○鬼塚政府委員 立法はいろいろな問題がございますので、各省で検討されていると思いますが、これは非常にいろいろ困難な問題がたくさんある関係ではないかと思います。
  199. 川本敏美

    川本分科員 今度はどうやら国際人権規約の批准等がいろいろ問題になっておりますので、そういう中でこういう問題もあわせて検討されることと思いますので、私はこれ以上この問題は触れませんが、現行法では人権を守ることはできない。これは先ほど大臣が言われましたが、――――ではないのです。同じ国民で、私らと同じ血をうけた兄弟なのです。その兄弟で、ただ歴史的な、社会的な身分差別を受けておる、いわれのない差別を受けておる人に対して加えられておるそういう迫害、こういうものを除いていくというためには、これはもう行政が人権を守るためにいかなることがあっても勇気を出してやらなければいかぬ。私は、政治というものは、差別のない社会をつくるというのが本当の政治の目的だと思うのです。このことを踏まえていないような政治家は、政治家の端くれにもならぬような人間だ。利権ばかりあさるのが政治家じゃない。本当の正しいことを勇気をもってやる政治家、それが日本のいまの政府、自民党の中に欠けておるから、私は今日こういう状態で放置されておると思うのです。その点だけはこの際申し上げて、ぜひ人権を守るために断々固としてひとつ大臣、この際勇気を出してがんばっていただきたいと思う。  先日、二月の二十一日ですか、総理府に置かれておる同和対策協議会の特別部会ですか、そこからいわゆる同和対策事業特別措置法の問題について中間報告がなされております。これは同対協の磯村英一委員長から出されておるわけですけれども、現行法を改正した上で延長するかどうかというような問題は一応後の問題として、当面同和問題解決のために来年三月三十一日で有効期間の満了する同和対策事業特別措置法の延長は必然の方向にある、こういう中間報告をされておるわけです。これについてまず大臣の意見を聞きたい。
  200. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 中間報告はなされております。御指摘のとおりであります。今後延長を含めて地方自治体あるいは各政党間等々の意見を含め、検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  201. 川本敏美

    川本分科員 おかしいじゃないですか。これは十二月の十三日に総理府の秋山副長官が出席していわゆる諮問をされたわけでしょう。その諮問をされるときに、秋山副長官はどう言っておるのか。いわゆる同和対策事業特別措置法の延長を前提として御審議して結論を出していただきたいということで、答申を依頼しておるわけです。大臣、尊重するつもりですか、しないつもりですか。
  202. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  尊重いたします。
  203. 川本敏美

    川本分科員 尊重するということは、大体延長の方向は必然であるということに、大臣、いま心境として思っておられるわけですか。
  204. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 答申は尊重いたします。ただ、政府の進め方といたしまして、先ほど申し上げましたように、同和対策協議会あるいは地方自治体、政党間の意見をも参考にしながら進めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  205. 川本敏美

    川本分科員 政党間の意見と最後に言われました。もう時間がありませんのでやめますけれども、そんな――――だと思っておるような人たちの集まりの政党の意見を聞いても、正しい結論は私は出ないと思うわけです。本当に正しい勉強をしてもらおうと思ったら、一遍同和地区の現実を調査してもらいたい。大臣、いままでこの同和地区を視察されたことがありますか。
  206. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 同和地区を視察したことはございませんが、今年度は三月中にぜひ同和地区を視察をしてみたい、ぜひ御協力をちょうだいいたしたいと思っております。
  207. 川本敏美

    川本分科員 一遍、奈良県とか大阪府下、本当に差別に苦しんで、そしてみじめな生活をして環境の悪い、そういうところで苦しんでおる人たちの実態を見たら、大臣の考え方も根本から変わると私は思うわけです。早急に見ていただいて、その上に立って、先ほど尊重すると言われましたが、同和対策事業特別措置法強化延長のために大臣が全力をふるって、正義の心を燃やしてがんばっていただくように期待して、私の質問を終わりたいと思います。
  208. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で川本君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬野栄次郎君。
  209. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 戦後ソ連に強制抑留された者の補償等に関する諸対策について、安倍内閣官房長官に答弁を求めます。  私は、昭和二十年八月十五日、当時の満州国新京で終戦を迎え、その後幾多の苦境に遭遇し、辛酸をなめながら、同年十一月三日、満ソ国境である黒竜江に仮設された鉄舟による架橋を、千五百名の将兵とともに黒河からソ連のブラゴエに渡ったのであります。その後、バイカル湖を過ぎ、ウラル山脈を越えて十一月十七日アバカン地区第三十三収容所に到着し、さらにクラスノヤルスク地区第三分所に収容されたのであります。  このように、ソ連に強制拉致され、数年にわたる強制労働に従事し、主なる作業としては森林伐採を初め、工場、鉄道、発電所の建設、石炭採掘等、多岐にわたる重労働に従事したのであります。  当時、戦闘からソ連領移送までの間に、多くの将兵はすでに体力が著しく低下し、入ソ以来さらにふなれな生活環境下にあって強制重労働に従事したため、たちまち多数の患者が発生したのです。これらの患者は、主として栄養失調、肺結核、急性肺炎、伝染病、わけても赤痢・発疹チフス等で、私がいた第三分所でも、入所以来わずか三カ月半の間に百四十名の戦友が祖国に思いをはせながら不帰の人となりました。  抑留満三カ年、幾多の辛酸を経てようやく昭和二十三年十月十一日、ナホトカ港から高砂丸に乗船し、夢に見た祖国舞鶴港に着いたのが、同年十月十三日でありました。  私は、当時部隊長として第三分所最後の整理を行い、陸軍軍人軍属千九百六十八名、海軍軍人軍属二名、邦人十一名、日本人以外の者十九名、合計二千名の部隊員とともに、シベリアの異国の丘に眠る戦友二百四十四名の死亡者名簿を決死の思いで胸に抱き復員いたしました。そのとき必死で隠して持ってきた名簿は、ここに持ってきております。  死亡者名簿の一覧表は、幅八・七センチメートル、長さ二・五メートルの小さな薄い紙に、一、留守家族の住所、二、留守家族の氏名、三、死亡者名、四、死亡年月日、五、死亡時間、六、病名の六項目を記入し持ち帰り、帰国後直ちに復員連絡局に報告し、ラジオ放送や文書をもって、死亡確認書を作成し、各県民生部世話課や遺族に連絡をとったのであります。その後約三年間というものは、遺族の方々から死亡当時の状況の照会や各県からの死亡確認書の証明、また問い合わせに対する返事等で連日忙殺されたものでした。  その間、私はクラスノヤルスク第三分所におけるソ連抑留から幸いに帰国された戦友の住所を数年かかって探し求め、ようやく二百三十五名を掌握することができました。そして、空死をともにした者の将来と、いまは亡き戦友の遺族のことを考え生活福祉等諸対策を講ずる目的で「異国の友」という会を結成し、昭和四十四年二月十一日の建国記念日の日に第一回総会を逗子の中央大学葉山寮で行い、自来、例年この二月十一日の建国記念日を卜して総会を開き、今年で満十周年を迎えるに至りました。  さて、この例年の総会のたびごとに戦後における強制抑留補償等の問題が議題となり、特に今年は終戦三十三回忌に当たり、法要を営むと同時に、この機会に、補償もさることながら、このことは日本民族の歴史の上に永遠に明確に残しておくべきであるとの決議がなされたのであります。  私は、いまもシベリアの異国の丘に眠る戦友、同胞の遺骨を祖国日本に送還しない限り戦後は終わらないと、常に片時も忘れたことはございません。国会に議席を置く者として強く責任を感じ、心中深く刻み込んでいるものであります。  そこで、政府に対し逐次その所信をお伺いいたすものでありますが、まず最初にポツダム宣言第九項についてお伺いしたいのであります。  御承知のように、一九四五年七月二十六日に宣言されたポツダム宣言第九項には「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」とありますが、政府はこの九項の解釈についてどのように理解をされておるか、安倍内閣官房長官にまずお伺いしたいと思うのであります。
  210. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま瀬野委員がシベリア抑留の経験を持っておるというお話でございますが、私も戦中派の一人として当時のシベリアに抑留された方々の心中を思うときに、まことに胸の詰まるような思いがいたすわけでございます。われわれの周辺、私の友人等、やはりシベリアで抑留されて辛酸の生活を送った体験を多く持っております。私もこれらの方々から終戦当時からずっとそうした苦労の話を聞いておるわけでございます。まことにお気の権な次第でございます。  いまお話のポツダム宣言第九項の解釈を闘うということでございます。これは本来所管官庁であるところの外務省からお答えすべきでありましょうが、このポツダム宣言第九項は、いまお話がありました日本の軍隊に関する処置を決めたものでありまして、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」というふうに規定をしておるわけでございます。したがって、少なくとも犯罪人の処罰などに関する正当な事由なくして行われた日本人捕虜の抑留等につきましては本条項に反したものであったというふうに考えられるのであります。
  211. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 また、日ソ共同宣言、昭和三十一年十二月十二日、条約二十号で、同日批准書交換、発効いたしておりますが、その第一項に「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態は、この宣言が効力を生ずる日に終了し、両国の間に平和及び友好善隣関係が回復される。」とこうありますが、これについても見解を明らかにしていただきたいと思います。
  212. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日ソ共同宣言第一項の解釈でございますが、「日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態は、この宣言が効力を生ずる日に終了し、両国の間に平和及び友好善隣関係が回復される。」旨規定をされておるわけでございます。したがって、本項によりまして共同宣言発効の日である昭和三十一年十二月十二日に両国間の戦争状態が終了したこととなるわけであります。
  213. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 日ソ共同宣言の中でもう一つ、六項には「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国に対し一切の賠償請求権を放棄する。日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、千九百四十五年八月九日以来の戦争の結果として生じたそれぞれの国、その団体及び国民のそれぞれ他方の国、その団体及び国民に対するすべての請求権を、相互に、放棄する。」とありますが、これについても政府の見解を述べていただきたいと思います。
  214. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいまの件につきましては、外務省から答弁いたさせます。
  215. 大森誠一

    ○大森政府委員 お答え申し上げます。  日ソ共同宣言第六項には、先ほど先生がお述べになりました規定が置かれているわけでございます。先ほど来先生の御質問の抑留者の強制労働の関連で申し上げますと、抑留者の強制労働に関する問題は、結局請求権の問題となるわけでございますが、この請求権の問題につきましても、この日ソ共同宣言第六項第二文によりまして両国間においてはすでに決着済みである、こういうふうに考えております。
  216. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ただいまそれぞれ安倍内閣官房長官及び政府側から答弁がございましたが、ポツダム宣言第九項と日ソ共同宣言第一項、第六項との関係で強制抑留及び一切の賠償請求権等についてどのように関連して解釈すべきであるか、この機会にこの点も明らかにしていただきたいと思います。
  217. 大森誠一

    ○大森政府委員 わが国が終戦に当たりまして受諾しましたポツダム宣言第九項におきましては、先ほど来御指摘ございましたように、「日本国軍隊ハ完全ニ武装ヲ解除セラレタル後各自ノ家庭ニ復帰シ平和的且生産的ノ生活ヲ営ムノ機会ヲ得シメラルベシ」と規定されておるわけでございます。したがいまして、少なくとも犯罪人の処罰などに関しまする正当な事由がなくて行われましたソ連による日本人捕虜の抑留等につきましては、この条項に、つまりポツダム宣言の条項に反したものであったと考えられます。  しかしながら、この問題につきましては、両国間の戦争状態を終了させ外交関係を回復するに当たりまして日ソ共同宣言第六項におきまして、両国が戦争の結果として生じたすべての請求権を相互に放棄する旨規定されており、この問題につきましては、日ソ両国の間ではすでに決着済みの問題である、かように考えるわけでございます。
  218. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そこでお伺いしてまいりますが、ソビエト社会主義共和国連邦はポツダム宣言第九項に違反して、われわれ日本人を強制拉致し、強制労働に従事せしめたわけでありまして、先ほど政府見解をただしましたように、日ソ共同宣言第六項においては一切の賠償権を放棄しておる、こうなっておりますが、ソ連は、われわれに言わせますと、莫大な賠償金をわれわれの労働によって得ているということになる、こういうふうに判断するわけでございます。  そこで、ソ連抑留者は血と汗を流し、さらに体を張って、命をかけて作業に従事しました。また飢餓と闘って幾多の生命をなくしたのでございます。いわば国にかわってソ連に対し莫大な賠償金を支払ったということになると私は思うのでございます。すなわち、役務賠償を果たしたことについて抑留中の強制労働に対する労働賃金並びに慰謝料の支払いを政府はすべきである、かように思うわけですが、この辺の問題について政府はどのように今日まで考えておられたのか、また検討しておられるのか、その点を明確にしていただきたいと思います。
  219. 大森誠一

    ○大森政府委員 ソ連により抑留された方々が強制労働を強いられるなど、大変な御苦労をされた点につきましては、私どもまことに遺憾なことと考えている次第でございます。先ほど申し上げましたように、少なくとも犯罪人の処罰などに関します正当な事由がなくして行われましたソ連による日本人捕虜の抑留等につきましては、先ほどのポツダム宣言第九項に違反したものであったというふうに考えられるわけでございます。日ソ共同宣言第六項の趣旨といたしましては、ソ連が賠償請求権を放棄いたしますとともに、日ソ両国は、戦争の結果として生じたすべての請求権を相互に放棄するという規定でございます。したがいまして、この点は実際上はソ連がこのような強制労働により利益を得たという事実があったといたしましても、法的に申し上げれば、わが国としてはこれを賠償の一形態として認めたものではないわけでございます。
  220. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 わが国としては賠償の一形態として認めたものじゃない、こうおっしゃるが、そこが問題なんで、これを詰めるとこれだけでももう何時間とかかるわけですが、きょうは問題の提起を兼ね政府の見解をただしたわけで、続いて二回、三回とこれについては質問を続けることにいたす考えでございますので、一応見解としては承っておきますが、そういうなまやさしいものじゃございません。  そこで、時間の関係もあるので聞きたい問題を一通り聞いておきたいと思うのですが、後遺障害患者に対する医療費の全額国庫負担という問題がございますけれども、骨まで凍るような厳寒の地のシベリアにおいて無理な重労働に従事したため、近年年齢を増すにつれて後遺障害患者がだんだんふえております。その対策をぜひとも早くやっていただきたいという要請が強くなっているのが今日の状況でございますが、ちなみに昭和三十八年八月三日制定の法律第百六十八号、戦傷病者特別援護法という法律によって一応援護を受けている者もおりますけれども、本法適用外の者も数多くいるのであり、すなわち医療保護基準の適用外の者でございますが、これらの方々はシベリアの厳寒の地で命を賭して労働に服し、帰った者でございます。こういった方々に対しても、公平の原則から言っても、戦後三十三年たった今日、全員に適用せしめ、救うべきであると思うのですが、政府はどのようにお考えでありますか、これに対する御答弁を求めます。
  221. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 お答えいたします。  シベリアに抑留された方につきましては、先生いま御指摘のような戦傷病者特別援護法によりまして、軍人であろうと軍属であろうと、あるいは民間人につきましても特別未帰還者ということで、抑留に起因する負傷、疾病につきましては、これは全額国庫負担で医療給付を行っておるところでございます。ただ、抑留との間に相当因果関係が認められないという一般傷病については、これはこの法律の対象になっておらない。しかしながら、先生いま御指摘の事態も全然なきにしもあらずということでございますので、私どもは、そういう方が疾病の状態にかかられましたら、シベリア抑留との因果関係があるかどうかということにつきましては、誠意をもってお調べをして対処してまいりたい、かように考えております。
  222. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ただいまの、疾病があるかどうかということは、その因果関係についてよく調べた上で対処するということですが、当然そうしていただかなければなりません。安倍官房長官もよくお聞きいただきたいと思いますが、後でそういったことがちょっと出てまいりますが、そういった調査をぜひしてもらいたいと私は思うのです。  そこで、抑留中死亡した方々の遺族に対しては、当然のこととして慰謝料と補償金を支給すべきであると私は考えるのですけれども政府はどう対処する方針であるか、これもこの機会に明らかにしていただきたいと思うのです。
  223. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 先生いま御指摘の抑留中に死亡された方につきましては、軍人等いわゆる恩給公務員については扶助料、あるいは一般の方については遺族給与金という、若干言葉の呼び方は違いますが、全く同じ程度の国家補償を行っております。つまり、遺族年金または扶助料という形でこれらの方々に給付するとともに、そのほか各種の特別給付金とかあるいは特別弔慰金、弔慰金その他につきましても同様に差別なく一応現在の法体系でやっておるということを申し上げます。
  224. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そのような対策が不十分であるので私は政府の見解をただしたわけでありますが、またこの問題もかなりいろいろ時間を要する問題でございますので、一応承っておくことにしまして、いずれまた細部の問題については政府の見解をただして、また政府の対策を講じていただくということにしたいと思っておりますが、いま申し上げてまいりましたように、ソ連抑留者救済については、当然のことながら政府の対応の怠慢があったわけでもありますし、またこういった問題がいろいろ残っておりまして、だんだん年齢が増すにつれて、シベリアの地で無理したために、ああいう寒いところで無理しますと、若いときの無理はききますけれども、どうしても年齢が五十、六十になってくると、いわゆる神経痛とかリューマチとかいろいろな後遺症が出てくるということでありまして、生活に困る人がたくさん出てくるわけであります。そういったことで、戦後三十三年たちまして、この問題はどうしても歴史の上にも明らかにしておかなければならぬ。そしてまた、慰謝料その他も請求すべき権利があると同時に、実際には亡くなった人たちに対する慰霊もしてあげたい、記念碑も建てたいというようなことから、いま全国的にこういった問題が強烈に起きておるわけです。そういった意味で、漏れた人たちがたくさんおりますので、十分対策、調査をしてもらいたい。  そういった意味から、私は、戦後強制抑留補償について政府は立法化して救済すべきである、こういうふうに考えるわけです。これについては安倍官房長官、こういった問題、もう時間の関係で詳しく申せませんけれども、立法化するということで救うということをしなければならぬと思いますが、政府の見解を述べていただきたいと思います。
  225. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどから御答弁を申し上げておりますように、戦後シベリアに抑留された人々のうちで死亡した人やあるいは負傷した人に対しては、戦傷病者戦没者遺族等援護法によるところの援護を行っておるところでありますし、また旧軍人、一般公務員につきましては、恩給法によりまして抑留期間を割り増し評価した上で勤務期間に算入をしておるわけでございます。  したがって、先ほどからお話が出ました補償の問題でございますが、シベリアで抑留生活を送られた人々の御苦労にははかり知れないものがございますが、戦中戦後にかけましては、これはもう日本人が、程度の差はありましたけれども、しかし犠牲をそれぞれ払っておるわけでございまして、いわゆる戦争損害というものに対して補償すべき義務があるというふうには考えてないわけでございます。  また、政府としては戦後各種の戦後処理に関する援護措置法を講じてまいったわけでありますが、御存じのように、昭和四十二年の引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律の制定をもちまして、あらゆる戦後処理措置は終了したものというふうに考えておるわけでございます。したがって、先ほどからのお話はございますが、シベリア抑留者のために改めて立法措置を講ずるということは考えてない次第でございます。
  226. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 この問題については安倍官房長官からもいろいろ答弁ございましたけれども、全国的にいまいろいろ請願あるいは要請活動が起きてきているときでもありますし、それぞれの党で検討がいずれなされる時期が来ると思いますが、この問題についてはまたいろいろ議員の間でも検討を進めていきたいと思っておりますので、ここでそれを詰めてもそれ以上の答えがいまにわかに出るわけではないと思いますから、一応お聞きしておくということにしまして、ぜひとも将来立法化をして救うということでやってもらいたい。日本全土、もちろん南方においても北方においても、いろいろ戦争の犠牲になった方がおられることはよく知っております。ところが、シベリアには特殊な事情の抑留、いわば強制拉致という問題がございますわけで、もちろん全国的に救うことは当然でありますが、シベリアについては特殊な事情があるということを、ここで述べる時間はございませんが、お察しいただきたいと思います。  時間の制約もあるのであとははしょって問題点を指摘してお伺いしておきますが、ソ連本土抑留者等の概況についてお伺いいたします。私が承知しているのは、抑留者総数約五十七万五千人、このうちモンゴル約一万三千四百人を含むわけでございますが、その内訳は、帰還者数約四十七万三千人、うちモンゴル約一万一千七百人を含む。死亡推定者数五万五千人、うちモンゴル約千七百人を含む。病弱等のため入ソ後満州等に送られた者四万七千人。現在残留者数九十四人、うち三十数名は現地に残り、約六十名については調査究明中であるとわれわれは承知しております。この数について間違いないか、確認の意味でお尋ねします。
  227. 丸山一雄

    ○丸山説明員 ソ連本土に抑留されました人々の概況は次のとおりでございます。  抑留者の総数は約五十七万五千名、このうちモンゴルに持っていかれました者は約一万三千四百名、帰還者数約四十七万三千名、このうちモンゴルに持っていかれました者約一万一千七百名。  死亡推定数、これはソ連本土でございますが、約五万五千名、このうちモンゴルで約千七百名死亡しておられます。  病弱等のために入ソ後さらに満州、北鮮等に送られました者が、約四万七千名でございまして、現在残留しておられる数は九十四名でございます。この九十四名の内訳は、法律に規定されておりますところの未帰還者が三十九名で、自己の意思により残留しておられるという方が五十五名でございます。  なお、この残留しておられます九十四名のうちそれぞれの人は、ある時点での消息を把握いたしております。
  228. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 ただいまいろいろ答弁がございましたように、横井さんにしてもまた小野田少尉にしても、一人のために相当な金を使って調査をしたわけですが、まだこんなに、九十四人もの方がおられるし、満州から入ソ後満州へ送られた人たちも四万七千人おります。それから先ほどのいろいろな問題等もございますが、こういった抑留者の実態が必ずしも明確でないので、実態調査のための調査費を予算に計上して、徹底的に調査すべきだと思うのですが、政府はどうですか。
  229. 丸山一雄

    ○丸山説明員 お答えいたします。  未帰還者等の調査究明のために必要な経費は毎年度予算に計上いたしておりまして、昭和五十二年度は六百四十二万四千円でございます。それから五十三年度では六百三十二万一千円を計上いたしております。
  230. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 そのようなわずかな予算ではどうしようもないわけです。来年度においても徹底的に調査をするように大幅な予算の計上を特にお願いしておきます。  最後に、時間があとわずかでございますので、墓参の問題と遺骨収集についてお伺いしておきます。  ソ連抑留中、不幸にして死亡された約五万五千人の墓参についてでございますが、日ソ平和条約の締結いまだならず、また国情が異なるとはいえ、国民的感情から墓参は当然のことであります。私は今日、日ソ親善協会の常任理事に籍を置いておりますのも、平和及び友好善隣を重ねながら、何としても懸案の促進を図りたい一念があるからにほかならないのであります。私の記憶では、過去昭和三十六年からたしか六回その一部について行われたと思うが、ここ数年、大々的な墓参がなされていないわけでございまして、政府はソ連地区への墓参はどう考えているか、また、ソ連に対し今日までどのような努力をしてきたか、今後どのような方針で対処するか、伺いたいのであります。  なお、遺骨収集についても、政府昭和四十七年三月四日の閣議で、一、遺骨収集の年次計画を四十七年度で打ち切らず継続して行う、二、従来の遺骨収集計画を再検討する、三、計画を立て直し、積極的な新しい計画により生存者の捜索、救出に力を入れる等、政府の新方針が決定したことに伴いまして、私は全国戦没者遺骨収集促進団体協議会の顧問であり、世話人の一人である立場から、昭和四十七年三月十八日、予算委員会第三分科会で当時の斎藤厚生大臣に政府の方針を追及し、さらに翌四十八年三月三日にも、同じく予算委員会で厚生大臣に対し遺骨収集の早期実現を迫ったわけでありますが、ソ連本土で死亡した五万五千人の遺骨収集について政府はどう考えているか、またソ連に対し今日までどのような努力をしてきたか、今後どのような方針で対処されるか、あわせてお伺いしたいと思います。
  231. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 ソ連地区への墓参につきましては、ただいま先生もちょっと触れられましたように、私どもはソ連側から約二十六カ所の埋葬地、約四千人分でございますが、その通告を受けておりまして、そのうち二十一カ所につき過去八回にわたって墓参を行っております。残りの五カ所につきましては、ソ連側から墓参のための入域の許可が得られておりません。  それから、私どもは、帰還者の情報その他からしまして、そのほかにまだ多数の埋葬地があるものというふうに考えておりますが、これにつきましては、外務省の御協力を得まして、外務省とともに、事あるごと埋葬地の通報及び墓参について向こうにお願いしてきておるわけでございます。  なお、遺骨をこちらに引き取るかどうかということにつきましては、これはソ連側が過去に強い難色を示し、ソ連式の方法によってしかるべく弔意を表しておるということでございますので、これはなかなか困難であろうかと思いますが、とにもかくにも、私どもは今後とも埋葬地及びそれの墓参の実現については努力してまいりたい、かように考えております。
  232. 瀬野栄次郎

    ○瀬野分科員 時間が参りましたけれども、これは歴史的な問題を私、提案したわけでございますが、私もこうして墓参できるように、また埋めた個所も部隊長として一々番号を打って明確に場所も覚えて、こうして記録して持ってきております。それを含めまして、五万五千人の戦友のために、何としても今後墓参と遺骨の日本送還について最大の努力をしていただきたい、かように私は思うわけです。官房長官から一言最後に決意を述べていただいて、質問を終わりたいと思います。
  233. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま厚生省からも申し上げましたように、今後とも墓参の問題あるいは遺骨収集の問題等につきましても、いろいろ困難な問題はありますが、政府としても努力を続けてまいりたいと考えております。
  234. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で瀬野君の質疑は終了いたしました。  次に、神田厚君。
  235. 神田厚

    神田分科員 私は、現在非常に憂慮されております総合商社とその属する巨大企業集団、これによる企業の系列化、このことについて公正取引委員会に対しまして御質問を申し上げたいと思うものであります。  公正取引委員会は、第一回の「総合商社に関する調査報告」それから「総合商社に関する第二回調査報告」、この二つの報告の中におきまして、総合商社及び巨大都市銀行、これらのグループが企業の系列化を進めていることにつきまして大変憂慮を示しているわけであります。  まず順を追って申し上げますと、総合商社とその属する巨大企業集団による企業の系列化が特に目立っているのは、食料品、並びに化学工業、鉄鋼、金属製品、機械等の製造業及び不動産、倉庫、サービス業などだということを第二回の、一九七五年一月二十二日の総合商社に関する報告で報告されているわけであります。  そこで、それではこの巨大企業集団というのはどういうふうなものであるかということで考えていきますと、たとえば三菱グループの金曜会、あるいは住友グループの白水会、三井グループの二木会、富士銀行グループの芙蓉会、三和銀行の三水会、第一勧業銀行の三金会、こういう大きな企業集団が現在できているわけであります。この六大企業集団の総資産は総額約百五十兆を上回っておりまして、一つの集団の平均は二十五兆円余りであり、一企業にこれを平均しますと八千三百億円という巨額になってまいります。このように巨大な単位企業が集団を組みまして、その全部または一部がさらに連携を保って関係企業の垂直的な系列化を推進している、こういうことであります。  この点につきまして、第一回の総合商社報告の中では、公正取引委員会は、この巨大総合商社は多角的な商社機能と巨大な資金力を活用して、一つには取引先企業の系列化を推進し、二つには原材料輸入から製品販売に至るまでの過程を垂直的に組織化し、三つには関連事業者を結集して、資源開発などの巨大プロジェクトを推進し、そして事業分野を拡大している。こういうようなことを言いまして、新たに形成されつつある企業集団の中でその中核的な役割りを担う方向をとっている。こういう指摘をしているわけであります。そして問題点といたしまして、「流通市場の寡占化、取引先企業等の系列強化およびこれに伴う各種物資の価格形成への影響力の著しい増大等、公正かつ自由な競争秩序の維持の観点から、種々の批判を生んでいる」こういうように的確に分析をしております。第二回の調査報告によりますと、今度はこの巨大企業集団が競争から協調へと移行しつつあるという問題提起をしております。  それで、私どもが心配をしておりますのは、この巨大企業集団が競争から協調へと移行しているというその現状、これらに対しまして、現実に第二回の調査報告で指摘をしたとおりの憂慮すべき実態が現在あらわれてきているわけであります。  これらにつきまして公正取引委員会といたしましては、この第二回調査報告の中では、総合商社などの株式の保有の制限、銀行の大口融資の規制、不公正取引認定基準の設定、これらをさしあたって考えていく、こういうふうにしておりますけれども、これらが結局なされましても、企業集団が競争から協調に移りまして、そしてお互いに株式を、たとえば分散した株式を一括して個々の企業が持っていて、それで今度系列化を始める、こういうことになってしまうと、公正取引委員会が憂慮したとおりの形にいまなってきているのですね。ですから、こういういわゆる関連企業の系列化の傾向の著しい状況というものについて、この観点から公正取引委員会としてはどういうふうな考え方を持っているか、まず最初にお聞かせをいただきたい、こう思っております。
  236. 橋口收

    ○橋口政府委員 総合商社につきましては、いま御質問の中に御指摘がございましたように、二回にわたって調査をいたしておるわけでございまして、総合商社を中心にした企業集団の調査をすることにいたしました趣旨は、現在における独占禁止政策の問題点が最も直截な形であらわれている、こういう認識を持っておるからでございます。  もう少し敷衍して申し上げますと、いままでの独占禁止政策、あるいは諸外国における例もそうでございますが、企業の行動に着目をいたしまして、企業の行動の意図なりあるいは結果なりが不公正な方法であったり、あるいは一定の取引分野における競争を自主的に制限する、こういう形をとっております場合にこれを規制の対象にするというのが基本的な考え方だったのでございます。  しかしながら、最近におきましては、諸外国でもそうでありますが、日本におきましても、企業の行動のみではなくて市場構造、いまお話がございました企業集団もまさに市場構造でございまして、そういう寡占的なあるいは集中的な市場構造ができます過程におきましては、何ら不公正な行為もなければ何ら取引を制限するような行為もなくても、生じましたその寡占的な姿に対してメスを加えると申しますか、規制をするということでなければ本当に自由な企業の競争というものは確保できない、こういう認識があるからでございます。したがいまして、そういう企業集団の中心的な役割りを持ちますのが、いまお話にもございましたようないわゆる総合商社でございますし、また全国的な規模を持つ金融機関でございます。この金融機関のビヘービアにつきましては、これは大蔵省の方でお考えいただく問題でございまして、間接に承知いたしておりますところでは、いわゆる大口融資の規制につきましても何らかの措置が進んでおるようでございます。  問題は、やはり総合商社を中心とする一つの企業集団でございまして、そういう問題意識を持って調査をいたしました結果、昨年の改正独禁法の内容といたしましても、大規模な事業会社の持ち株につきましては、一定の規模を超えた金額につきましてはこれに制限を加える、こういう措置が成立をいたしたわけでございまして、当面はこの法制の運用によって対処するのが適当ではないか。ただ、それではその法律の運用だけで果たして十分かどうか、それから附帯決議におきましても、さらによく実態を調査しろという御注意をいただいておりますから、さらにそういう方角に向かって努力いたしたいと考えております。
  237. 神田厚

    神田分科員 ただいま委員長の方から話がありましたが、この市場構造の問題を第一にして考えていって、新しい観点から問題が出されました。その中で一定の株式の保有の問題が、いわゆる持ち株制限という形でこれをしたというふうな形でありますけれども、私ども考えておりますのは、企業集団というのは一つの企業ではないわけです。ですから、その企業集団のそれぞれの企業が少しずつ株を持っていって、それで一つの企業を系列下におさめていくという方向をとるような状況が見えている。こういう問題がありますと、いわゆる一つの企業の持ち株を制限しても効果がないということになるわけですね。このしり抜けといいますか、そういうふうな問題点についてはどのようにお考えになっているか、お聞きしたいのであります。
  238. 橋口收

    ○橋口政府委員 まさに大変鋭い問題の御指摘でございます。  確かに、いまの法制の枠内で行動いたします限りは、一つの会社が持つ株式についての制限だけが対象になっておるわけでございます。ただ、例外的に申しますと、金融事業を営む者につきましては相手方の株式の一定割合以上を持ってはいけない、そういう制限がございます。しかし、普通の事業会社の場合には、自分の資産との対応においての限度でございますから、したがって相手方の企業に対する支配力を強化するのを抑えるという形になりますと、金融機関その他の制約のような制約がないと十分な効果を上げ得ないという問題があろうかと思います。  それから、いまおっしゃいました一つの企業集団として少しずつ株を持って、全体としてある企業を支配するという形態、これも確かにおっしゃるような事情と申しますか、状況というものが日本の経済の中にあるだろうと思います。ことに日本の場合には、株式の持ち合いというものがかなり普遍化しております。したがって、持ち合い制度の結果として、ある意思決定機関ともいうべき企業集団というものがあって、それによってその系列内の小さな会社を支配する、あるいはその支配の強化されることによって他の集団との競争において強い立場に立つ、そういうことも起こり得ると思うわけでございまして、その点に関しましては、さっきお話がありました金曜会その他の企業集団のいわば総司令部と申しますか、そういうものが本当に一つの、一体としての意思決定の性格を持っているかどうか、これもある意味では一種の構造規制的な観点を入れるかどうかという境目の問題ではないかと思うわけであります。  ただ、よく考えたわけではございませんけれども、法制上の規制ということになりますと、法律行為として取り締まりの対象にするということになりますと、やはり個々の企業なり会社の行動なり、その構造というものに着目をしないとなかなか規制はむずかしいなという感じがいたしております。ただ、確かに一つの問題点でございますから、検討もしてみたいと思います。  それから、先生御承知だと思いますが、独禁法九条には、持ち株会社は設立してはいけない、それから会社は持ち株会社になってはいけないという規定がございますので、まさかいまのような事例が持ち株会社という形態ではないと思いますが、まあ仮に持ち株会社というような形態であれば、これは現行法でも取り締まりの対象になる、規制の対象になるということであろうかと思います。
  239. 神田厚

    神田分科員 大変残念ながら、第一回、第二回の総合商社の調査報告の指摘している憂慮すべき状況というものが顕在化しつつある、こういう中で、先ほど公取の委員長さんも御答弁なさいましたけれども、衆議院で独禁法の改正案を可決するに当たって附帯決議が付されました。その中で、企業の集団化による競争制限を初め、この弊害を除去するための株式の相互持ち合い、系列融資、人的結合等について、早急にその実態を把握し、必要な制限措置を検討すること、こういうふうなことがつけられております。  先ほどちょっと触れられましたけれども、私はここに含まれている問題が検討されまして、そして現在、それに沿ってどういう形でこういう問題について調査その他がなされておるのか、その点をひとつお聞きしたいと思うのであります。つまり、系列融資を初め、人的結合というのが非常に、後から具体例を申し上げますけれども、系列会社への役員の送り込み、そういうものを含めまして大変大きな問題を起こしているのです。ですから、この辺の問題につきましては、どういうふうにお考えでありますか。
  240. 橋口收

    ○橋口政府委員 附帯決議の趣旨につきましてはよく承知をいたしておるところでございますが、第一回、第二回の総合商社の調査をいたしまして、今日までその他二回ほどやっておりますから、全体として四回、そういう角度から、いわば企業集団に対する調査ということで、企業集団についての調査を四回やったわけでございます。まだその後は新しい調査をいたしておりませんが、附帯決議の趣旨もございますし、広範な問題でございますから、早急に計画を立てたいというふうに考えております。  ただ、いま先生のお話にもございましたように、株式の持ち合い、役員の派遣、系列融資等でございますから、これは日本経済の根幹にかかわる問題を含んでおりますので、私どもは慎重な態度で調査をしたい。昨年の十二月二日に改正独禁法が施行になってまだ二月余でございますから、まだ十分な成果を上げるに至っておりませんが、問題についての御指摘もございましたから、早急に計画について立案をいたしてみたいと考えております。
  241. 神田厚

    神田分科員 それでは、この系列化が非常に進んでおります食品の関係につきましてお尋ねをしたいのでありますけれども、わが国の上場食品会社は約九十社でありますが、私が調査しましたところによりますと、何らかの形で系列化されたものが六十四社、すなわち七〇%に達しております。そのうちの四十七社、すなわち五三%が総合商社によって系列化されておる、こういうふうにわれわれは調査をしているわけであります。  この調査自体につきましては、公正取引委員会の方のいろいろ御見解もあるでありましょうが、私は、少なくともこの食品という問題は非常に大事な問題であります。そして、こういうふうな形で、巨大資本が連合作戦をもちまして食品業界というものを制圧してくるような形になってしまいますれば、当然寡占による弊害が出てくるだろうし、寡占価格、管理価格が形成されて国民生活が圧迫されてくるのではないか、こういうふうなことも考えております。さらには、円高ドル安にある輸入食料の値下がり益の消費者還元、こういうふうな問題も、原材料の輸入から商品販売まで全部垂直的に系列をするやり方を野放しにしておいたら、差益の消費者還元なんということはとてもできないのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点はいかがでありますか。
  242. 橋口收

    ○橋口政府委員 いまお話がございましたように、それから先ほども委員会調査結果についてお示しがございましたが、企業系列化あるいは企業集団、グループ化と申しますか、そういう形態が顕著に見えます業種といたしましては、確かに膨大な資本力を要する装置産業にそういう傾向が強く見られると思うのでございまして、いまお話がございました食品産業につきましても、仮にそういう事態があるとしますと、やはり相当な資本力を要する食品加工業にそういう事態が生ずるのではないかと思うわけでございます。  国際的に見ましても、寡占化の趨勢と申しますか、寡占体制化の趨勢ということが憂慮されておるのでございまして、日本の公正取引委員会調査でも、寡占化の趨勢というものがそう顕著ではございませんが、逐次進んでまいってきておりますし、しかも寡占化の場合には、お話がございましたように、縦の寡占化と申しますか、いわゆるバーチカルな合併と申しますか、垂直的な寡占化が進むことによって、原料から製品までの一つの独占的な形態による支配力というものが生まれてくる。日本経済の中にこの寡占化の進んだ部分とそうでない部分とのいわば二極分化と申しますか、そういう姿があらわれているということは、これは学者の先生方からは御指摘をいただいておるところでございまして、したがいまして私どもの関心の的と申しますか、行政の重点というものは、やはりその寡占体制に対してどうやって措置を講じていくか。ただ、寡占体制、寡占化なりあるいは系列化という状態だけで、あるいはそういう事態だけで直ちに独占禁止法違反というふうにきめつけるわけにもまいらない面があるわけでございまして、寡占化あるいは企業集団化に伴う弊害、あるいは不公正な取引とか協調的な行為とか、こういう行為それ自体に着目して規制してまいる、あるいは取り締まりを強化してまいる、こういうことで対応するのが、いまわれわれに与えられました独禁法の姿であろうと思います。したがいまして、現状におきましては、そういう与えられた法律の範囲内で寡占なり系列化に伴う弊害規制ということで対処してまいりたいというふうに考えております。
  243. 神田厚

    神田分科員 食品業界初め、そういうふうなものでいま私が問題提起をいたしましたが、結局、現行独禁法は資本金百億円以上それから純資産三百億円というふうなことで決めております。これはやはりそのことの決め方自体に問題があるのではないか、こういうふうに考えまして、いわゆる業種別にもう少しこれを考えていくべきではないかというふうに思うのでありますが、対象企業の条件を業種別に設定するような形での考え方をお持ちでありますか、いかがですか。
  244. 橋口收

    ○橋口政府委員 御指摘ございましたのは大変重要な問題点であろうと思います。  先ほど申し上げましたように、昨年の十二月二日にようやく改正独禁法が施行になったのでございまして、その前数年にわたって朝野を二分するような大変な議論があった結果として、ああいう大規模会社についての株式保有制限というものが生まれたのでありますから、当面はやはりこの法律の規定を正確に実施するということがわれわれの使命であろうと思います。ただ、いま先生のおっしゃいましたように、これは構造規制でございますから、やはり市場の構造にマッチした、あるいはその企業集団の構造にマッチした規制をとるべきでございますから、おっしゃるような問題点につきましては、さらに調査を重ねまして、十分な自信を持ってあるいは十分なデータをそろえて世に問うという形でなければならないと思うわけでございまして、これは今後の課題として検討いたしてまいりたいと思います。
  245. 神田厚

    神田分科員 私は、これはやはりもう少し前向きに考えられなければならない問題だと思うのです。  それでさらに、農林省に来ていただいておりますので御質問申し上げますが、農林省関係の持ち株規制対象会社は、百に近い上場会社の中で約十二社にしかすぎないのです。ここでやはり独禁法を改定するような形で業種別規制条件をもっと厳しくして、重要食品産業の系列化を効果的に阻止すべきではないかという考え方も持っておりますし、こういうふうなことにつきまして、企業集団の連携作戦方式によって、企業の系列化が特に野放しにされているような状況を農林省としてはどういうふうに考えるか、ちょっとお聞きしたいのであります。
  246. 牛尾藤治

    ○牛尾説明員 先生御指摘の総合商社などと食品産業の結びつきの件でございますが、やはりその結びつきによりましては情報の収集であるとか安定的な取引とか、メリットもございます。それからまた、片や先生御指摘のあるいは先日の公正取引委員会の御調査のようなデメリットもあるわけでございます。農林省の立場と申しますか、農業政策あるいは食料政策の面から見ますと、やはり良質な食品を国民消費者の方々に安定的に供給するというのが食品産業の大事な使命でございます。その結びつきのやり方と申しますか、その程度によりましてはメリットよりもデメリットの方が大きくなる場合も予想されるところでございますが、もしそういうことでございますと、企業の自主性が損なわれるという問題もございますし、食品産業の大事な使命もかかわってくる問題でございますので、そういう観点から今後十分意を用いてまいる必要がある問題ではないか、このように考えております。
  247. 神田厚

    神田分科員 最後に、公取の委員長に御質問申し上げます。  いろいろ前向きな御答弁をいただきました。それで、この総合商社の調査報告及び衆議院の附帯決議によって提起された問題についてはいま検討中であるということでありますけれども、いつごろのめどでこういう問題についての御回答あるいは調査報告が出される見通しでありますか、ちょっとお聞かせをいただけたら、ひとつ。
  248. 橋口收

    ○橋口政府委員 どういう調査をいたしますか、総合商社二回調査をいたしておりますから、第三回目の総合商社について調査をいたしますか、あるいは別の角度から、もっと範囲を広げて調査をいたしますか、まず調査の方針についても検討いたしてみたいと思いますし、それから必要な予算措置の裏づけもございますから、これは方針を決めればいつでも調査できるという体制になっております。したがいまして、いまここでいつごろまでにどういう調査ということをちょっと申し上げかねるのでございますが、いずれにしましても附帯決議の趣旨もございますから、さらに調査を深めて、できればいい結果を得たいと考えておるわけでございます。
  249. 神田厚

    神田分科員 終わります。
  250. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で神田君の質疑は終了いたしました。  次に、小川国彦君。  ただいま新東京国際空港公団総裁大塚茂君に参考人として御出席をいただいております。  参考人の御意見は、分科員からの質疑によってお述べ願います。
  251. 小川国彦

    小川(国)分科員 成田空港の開港という問題が政府によって進められておりますが、その開港対策の一環としまして、空港の施設内に諸官公庁がそれぞれの部署を配置されるということになっているわけでございますが、現在、空港公団としましては、この空港敷地内外にわたって関係官公署の配置というものをどういうふうに把握しておられますか、総裁の方から御答弁をお願いしたいと思います。
  252. 大塚茂

    ○大塚参考人 成田空港の中には大体羽田空港と同じような関係官公署ができることになりますので、それらに対しましては、あらかじめ土地を提供いたしまして建物をそれぞれ独自に建てていただいた分と、それから公団で建てたものの部分所有という形で、一般会計でお持ちをいただいたところとございますが、そういうところにそれぞれ位置をしていただくということになっておりまして、その移転関係につきましては、公団が世話役的になりまして移転委員会という連絡会議を設けて、それぞれ連絡協議をいたしておる段階でございます。
  253. 小川国彦

    小川(国)分科員 その具体的な中身について、現在どのような官公署をそれぞれ予定されているか、その内容をひとつお答えいただきたいと思います。
  254. 大塚茂

    ○大塚参考人 具体的に申し上げますと、東京税関の成田税関支署、それから成田入国管理事務所、成田空港検疫所、動物検疫所成田支所、横浜植物防疫所成田支所、それから東京航空局新東京空港事務所、新東京航空気象台、新東京国際空港内郵便局、それから東京国際郵便局成田分局、そのほかに、これは国のといいますか、羽田から移転を予定されるものでございますが、新しくできるものとしては新東京国際空港警察署、あるいは電電公社の成田電報電話局の分局というものが考えられております。
  255. 小川国彦

    小川(国)分科員 さらに具体的になりますが、これらの官公署のうち、公務員としてこの中の勤務につくであろうと予想される人数は、どの程度に把握しておられますか。
  256. 大塚茂

    ○大塚参考人 これらの官公署に勤務いたします者は、大体千五百名というふうに聞いております。
  257. 小川国彦

    小川(国)分科員 この中で成田に住居を持つと思われる者は、大体どの程度に把握しておられますか。
  258. 大塚茂

    ○大塚参考人 それにつきましては、それぞれの官署でそれぞれ調査をし、手配をしていただいておるようでございますが、空港公団としてまとめてその住居のお世話までということはいまのところ考えておりません。
  259. 小川国彦

    小川(国)分科員 それでは次に、これは総理府の方に伺いたいのですが、いま公団の総裁から答弁ありましたように、それぞれの官公署で約千五百名と予定される公務員が、成田のそれぞれ新設あるいは移転される事業所に勤務をする、こういうふうになるわけでございますが、その大半が羽田の勤務地から来る方々が多い、こういうふうに私ども承知しているわけでございます。そうしますと、現在羽田の場合は調整手当が八%ということで支給をされておるわけでございますが、これが成田に移りますと一挙にゼロになってしまう。しかも羽田には中華航空が残るということになりますから、羽田に残る公務員と成田に参る公務員との差が大きく出てくる、こういうことが懸念されるわけでございます。この調整手当につきましてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いをさせていただきます。
  260. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  現在、一般職給与法、国家公務員の関係の給与でございますが、給与法に調整手当の異動保障という規定がございます。この規定によりますと、現在たとえば羽田でありますと調整手当が八%支給地域、俗に甲地と申しておりますが、その職員が現在支給地域でない成田に転勤いたしました場合には、前におりました地域のその八%をそのまま持ち込む、異動直後三年間保障するという制度がございますので、その間はいまのままで調整手当は落ちない、こういう関係になってございます。
  261. 小川国彦

    小川(国)分科員 私がお伺いしたいのは、むしろその後の問題でございまして、筑波研究学園都市の移転については給与法を改正して移転手当をつけて救済した、こういう前例があるわけでございます。成田もこの筑波と全く同様な状況にありまして、移転によって公務員の給与が下がること、これには何らかの手を尽くすべきではないか、こういうふうに考えるのでございますが、筑波でとられたような措置を成田にとり得ないものかどうか、その点はいかがでございますか。
  262. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 筑波の場合で申し上げますと、筑波研究学園都市、昭和四十五年でございましたが、これは非常に条件未整備のところに新しく大学及び研究施設をつくるということで、もう大分前の話で、いま思い出しますと、何といいますか、開拓者的といいますか、条件の非常に整備していないところに行くということで特段の立法措置がなされました上で、そういう赴任があった。現にまだ続いておりますが、そういう状況でございまして、したがいましてその地域に転勤いたします職種も空港の場合のような職種と違いまして、研究職とか大学の関係研究員が主でございます。これは職場といいますのが研究所とか大学に一定しておりまして、転勤もなければ何もない。もうそこにかたまっております。したがいまして、筑波に動きますともうそこでずっと勤務しなくてはならない。しかも大学ごと移ってしまう、そういう特段の事情がございまして、その点が成田の場合と違うんじゃないかという感じも一方でございます。これは航空官署でありますとか税関でありますとか、そういう勤務場所がふえましても異動がございます。ほかにこういう関係のケースがあるいはあるかもしれませんので、そういうことで制度上の均衡ということを考えましてよく検討いたしたいと思っておりますが、いずれにしましても国際空港が移転しますというのはいまだ前例がございません。初めてでございますが、いずれにしましても開港後は急激に周りの条件が変わってくるだろうと思います。そういうことで、調整手当が地域の賃金、物価という点で特段に高いということになるのか、どういう性格のものになるのか、その状況をよく見きわめたいと現在思っている次第でございます。
  263. 小川国彦

    小川(国)分科員 これは筑波と法的な問題は同じではないか。筑波学園都市が法律で行われたのと同様に、新東京国際空港公団法、いま総裁が見えていますが、そういう法律ができて空港の設置が決定され、その中にすべての方が勤務地を持つわけでございます。したがって、その中は羽田と同じような全く独自な地域を形成するだろうというふうに考えられるわけです。勤務地がそういう状況でございますし、それから居住地となるであろう成田ニュータウンにいたしましても、まだ都市的な整備がきわめて不十分でございまして、いわば成田の離れ島というような感じのニュータウンが居住地になる。  そのほか、これは成田の非常に特殊事情があるのでございます。私は成田に生まれて育っているので成田の事情は非常によくわかるのですが、成田山というお不動さんがございまして、年間一千万人の参詣客が来る。非常に物価が高いわけでございます。これはそう言ってはなんですが、行きずりのお客相手というような非常にゆがんだ因襲的な面がありまして、年の十二月暮れまでは三百円だったどんぶりが、おそばがたとえば正月は倍になってしまう、こういうので、住んでみますと非常に物価が高いということは、成田はときに東京並み以上じゃないか。東京の人が来て高いと驚くのでございますから、そういう非常な物価高の問題は、私ども住んでいる者が悩んでいる問題でございます。いま羽田の場合には一応東京都内の羽田ということになっておりますので、東京都についております調整手当がそのまま支給されるわけでございますが、成田に参りますと空港の中に入り、かつまた住むところがそういう非常に離れ島的な不便なところに住む。しかも、いろいろな日用品の購入は観光客を相手とした町へ行ってしなければならぬ、こういう点から見ますと、いろいろな面に隘路が出てくるのではないか。ですから、ぜひこの調整手当の問題については、羽田と同じ条件を成田についても確保されるということを人事院の御当局にお考えをいただきたい、こういうふうに思うのでございますが、その点もう一度重ねてひとつ御検討のほどを……。
  264. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  手当を新設いたしましたりあるいは既存の手当の適用範囲を拡大するという場合に、まずその手当の性格を決めるということから始まるわけでございますが、新国際空港の場合には、調整手当がいわゆる都会的な方向の手当であるのか、あるいは非常に不便なところでということで、そういう僻地といいますか特地的な方向の手当であるのか、性格をよく見きわめたい、そういうふうに思っております。先ほど申しましたように、国際空港でありますので、急激に条件が整備し、かつ変化していくだろうと思いますので、たまたま異動保障の制度が三年間ございますが、三年と言わずとも、状況は非常に変化していくと思いますので、その賃金、物価の関係を含めてよく検討してまいりたい、そういうふうに思っております。
  265. 小川国彦

    小川(国)分科員 千葉県の実情を申しますと、国立の習志野病院あるいは下志津病院、これは八千代市とか四街道の一部になるのですが、現在乙地指定ということで、これは職場指定で指定を受けているわけです。あるいは、いままでの前例でいきますと、小平市の建設大学校とか多摩市の農業者大学校などでは、小金井や田無など近隣する町の同様の施設との格差を是正するという意味で、別途たしか百分の八の指定をしてある、こういうような例があったかと思うわけでございます。そういう点で考えますと、成田の場合には、職域指定といいますか官署指定といいますか、成田空港の中に職場を持つということの中での指定ということでも一つ考えなければならないと思いますし、それから地域の面で見ましても、従来の成田町といいますか、成田市というのは非常に特殊な物価高の状況を持っているところ、それからまた住まいになるニュータウンが現実に離れ島的で諸施設がない、あるいは日常の購買施設もない。場合によっては空港の中で買って帰らなければならない。しかも、現実には、これは公団総裁御存じですが、成田に移動する店舗というのは、羽田の国際線がそっくり成田に移るわけでございますから、関連の店舗というものは羽田から移転するものが大半を占めるわけです。ですから、現実には東京都内の羽田空港の中のものがそっくり成田に移った、こういうふうにも考えていただいてよろしいのじゃないか。ですから、いま申し上げたいろいろな諸般の事情を考えますと、調整手当については官署指定でまいりましても地域指定でまいりましても、いずれにしてもこれはぜひ人事院で特別に――四月二日でございますか、三月三十日ないし四月二日という開港の状況で、恐らくその時点にはこれらの関係官公署の公務員の皆さんは全員移転、配置につかなければならぬ。政府も当然福田総理の号令でそれをやっていらっしゃるわけですから、その問題はその時点にある程度の政府としてのめどを立てていただかなければならない問題じゃないか、こういうふうに考えるわけでございまして、ぜひ人事院でもこの政府の方針に合わせたこの問題の検討を煩わしたい、こういうふうに思います。ひとつもう一遍その辺について御答弁をお願いしたいと思います。
  266. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 お答え申し上げます。  調整手当の地域の指定の仕方に、いま先生お話しのとおり、二種類ございまして、地域でもって指定する。その地域の民間賃金、生計費、物価が特に高い地域という形で、その中に官署があるという指定の仕方がございます。その場合には、その地域のそういう経済状況あるいは賃金状況の条件、データがどのくらい得られるかということにかかっておりまして、その点につきましては、いま先生がお話しの成田の物価、それからほかの民間企業の賃金、新しくできていきますそれがどういう状況になるかということをよく調査もし、注目していきたいと思っております。  それから、官署で指定するという行き方、これがもう一種類ございます。これは法律の規定にもございますが、そういう地域指定の中にある官署、さきに申しましたものでございますが、それと近接するところに所在する官署という法律上非常に狭い限定がございます。たまたまそれが使えるかどうかという非常に限定がございますので、これはそういう条件がそろった段階での話でございます。いずれにしても、そういうこれから変化します状況をよく注目していきたい、そういうふうに考えております。
  267. 小川国彦

    小川(国)分科員 いずれにしましても、この問題については政府の統一した対策ということの中にぜひお含めをいただいて、対処をお願いしたいと思います。  それから次に、大蔵省の国有財産の担当の方にちょっとお伺いしたいのですが、この関係で公務員宿舎が成田のニュータウンの中にそれぞれつくられるわけでございますが、現在、大蔵省の方としては各省関係の宿舎についてはどの程度用地の確保をされておられるか。それからもう一つは、この中でたとえば独身寮などを見ますと、大蔵省関係のいま出ました税関とか入国管理事務所とか、こういう関係の独身寮は用意されているとの話を伺っているのですが、たとえば農林省関係の独身寮はなくて、世帯持ち用のものを、たとえば六畳、六畳、四畳半あるものを三分割して、独身寮に使う、こういうような実態を伺っているわけでございますが、この点はどのように宿舎の問題について対処されているか、お伺いをいたします。
  268. 秋山雅保

    ○秋山説明員 まず、土地でございますけれども、成田ニュータウンには公務員宿舎用地といたしまして、正確に申しますと合同宿舎用地といたしまして約八万二千平米ほどの土地を確保してございます。それからなお、成田に勤務する職員のための宿舎あるいは宿舎用地と申しますと、必ずしもニュータウンに限らず、成田の周辺、近く、別なところでもいいわけでございます。  そういう意味で、私どもといたしましては、長作、東習志野の第一、第二、それから行田、こういうところに宿舎がございますので、その一部も成田に通勤する人のための宿舎に充てたい、かように考えている次第でございます。  それから次に、独身寮でございますけれども、ただいまお話がありました農林省につきましては、先方、農林省の方からのお申し出では、合計いたしまして六十三戸ほど世帯型の宿舎がほしい、こういう申し出がございました。したがいまして、私どももその数だけは配分したということでございますけれども、従来から独身寮につきましては各省がそれぞれつくる、こういう習慣になっております。農林省の場合、この六十三戸のうち果たして独身として何戸ぐらい必要であるかはちょっと存じませんけれども、比較的人数が少のうございますので、寮というちゃんとした建物をつくるほどのものではない、そのように理解しているわけでございます。
  269. 小川国彦

    小川(国)分科員 大蔵省については……。
  270. 秋山雅保

    ○秋山説明員 大蔵省につきましては、合同宿舎の割り当て、配分数、これは二百四十七戸でございますけれども、独身寮といたしましては百六十一戸ございます。
  271. 小川国彦

    小川(国)分科員 この百六十一戸は何省の関係の独身寮になるのでございますか。
  272. 秋山雅保

    ○秋山説明員 大蔵省でございます。
  273. 小川国彦

    小川(国)分科員 これはおたくさんの方で用地の手当てと建物の手当てと両方なさるのでございますか。農林省、大蔵省それぞれについてちょっとお答えいただきたいと思うのです。
  274. 秋山雅保

    ○秋山説明員 農林省につきましては、先ほど申しましたように、人数が少のうございますので、世帯型宿舎の一部を充てるということでございます。それから、大蔵省の場合は、人数が多うございますので、独身寮というものをつくる。いずれも大蔵省の方で土地、建物を手配してございます。
  275. 小川国彦

    小川(国)分科員 これは私は非常に不公正だと思うのですね。人数が多いとか少ないとかの関係じゃなくて、公務員は対等の条件を確保さるべきじゃないか。大蔵省の場合には世帯持ちは二百四十七戸あって、独身者のためには百六十一戸ちゃんと設けるのに、農林省はこの六十三戸の中に恐らく入っていると思うのですね。そういう世帯持ちの中に、六畳、六畳、四畳半の中に三人入れるというやり方は、独身者に対する対策じゃなくて、きわめて便宜的な対策ではないか。大蔵省が予算を持って、あなたの方で土地と建物を手当てするのなら、これは農林省についてもきちんと独身者用は何名必要なのかということを調べて、これは同等に確保すべきじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  276. 秋山雅保

    ○秋山説明員 特に成田につきましては、各省の要求の数字あるいは要求のタイプと申しますか、それをそのまま受け入れているというのが私どもの態度でございます。ただいま御指摘のように、農林省からそのようなお申し出がありますれば、それはそれで検討させていただきたいと存じます。
  277. 小川国彦

    小川(国)分科員 本来、これは申し出がなくても皆さんの方で、大蔵省というのは全部各省の予算を掌握しているところですから、大蔵省では独身者のものをつくるけれども農林省にはないのですかということを聞くぐらいの親切が大蔵省にあってもいいと思うのですよ。これで見れば、税関、入国管理事務所というのは大蔵省の所管でございますね。動物検疫、植物検疫、これは農林省所管ですよ。あと航空局、これは運輸省でございましょうか。それから気象台、これも運輸省になりますか。そういうものについて、いま私は端的な例で申し上げたのですが、一方には独身寮が確保される。一方は人数が少ないからというようなことではなくて、これは農林省でも相当数の独身者がおる、こういう報告を受けているのです。三十名おるということなんですよ。だから、三十名おれば、百六十一名と三十名とこれは同じだと思うのですよ。ですから、皆さんの方では、それでは要求があればこれは同様につくる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  278. 秋山雅保

    ○秋山説明員 農林省からそのような要求がございましたならば、十分に検討させていただきたいと存じます。
  279. 小川国彦

    小川(国)分科員 参考のために伺いますが、運輸省とか航空局、気象台、郵便局、こういう点についてはどうなっておりますか。
  280. 秋山雅保

    ○秋山説明員 それぞれの役所が独自に独身寮をつくっているという場合はちょっと私どもただいま把握しておりませんけれども、大蔵省といいますか、合同宿舎の配分の枠の中という点で申しますと、いずれも独身寮はございません。
  281. 小川国彦

    小川(国)分科員 そうすると、百六十一というのはあくまでも税関と入国管理事務所の大蔵省所管のものだけ、こういうふうで、運輸省とか気象庁、これは何省に属するかちょっとわかりませんが、それから郵便局は郵政省に属すると思いますが、そういう運輸省とか郵政省とか、そういうものについては大蔵省では考えていない、こういうことになるのですか。
  282. 秋山雅保

    ○秋山説明員 先ほどの百六十一戸は大蔵省、正確に申しますと税関だけでございます。  それから、そのほかの面につきましては大蔵省では把握してございません。
  283. 小川国彦

    小川(国)分科員 少なくとも成田空港の関連で千五百名もの公務員の方がいらっしゃる、それについて各省庁ともそれぞれの世帯持ちの宿舎、独身寮についてはそれぞれ苦慮されておるというふうに思うわけです。そういう点では、そういうものの確保について、さっき伺うと行印というのも出ましたが、行田というのは埼玉県なんですが、埼玉県の方にまで宿舎をつくるということになるのでございますか。
  284. 秋山雅保

    ○秋山説明員 行田は西船橋でございます。
  285. 小川国彦

    小川(国)分科員 その点はわかりました。  それでは最終的に伺いますが、公務員宿舎の問題については、大蔵省であると農林省であるとほかの省であるとを問わず必要な宿舎、それから独身寮についてはそれぞれの要求に対して大蔵省としては平等にこれを措置する、こういうことをはっきりひとつ御答弁願いたいと思います。
  286. 秋山雅保

    ○秋山説明員 仰せのとおりでございます。
  287. 小川国彦

    小川(国)分科員 次に、公団の総裁にまたお伺いいたしますが、成田空港の中に入る関係官公署の環境対策、これが非常に抜けている点があるわけでございますが、特に今度空港の中にできます動物の係留所、これは天浪に予定されているそうでございますが、そこには事務棟から宿泊施設、こういうものがあって、現実に四名の防疫官、民間人も泊まる、こういうことだそうでございますが、設計上のミスで防音設備がない。しかも、馬などは非常に騒音に敏感なので危険性も多い、こういうことが言われているのでございますが、こういうものに対する施設は公団がおつくりになったと思うのでございますが、この点の環境対策といいますか防音対策といいますか、その点はどういうふうに配慮されておりますか。
  288. 大塚茂

    ○大塚参考人 私も実ははっきりとはあれできませんが、多分農林省の方でおつくりになったはずだと思っております。
  289. 小川国彦

    小川(国)分科員 この中の公的施設はほとんど公団がおつくりになっていらっしゃるので、私もその点を最終的に確認しておりませんけれども、もし公団がつくったものであったとしたならば、公団のそれぞれ持たれている建物同様に防音対策を実施する、こういうことについては総裁の見解はいかがでございますか。
  290. 大塚茂

    ○大塚参考人 もし公団がつくったものであるということならば、当然防音工事をやらなければいけないというふうに思います。
  291. 小川国彦

    小川(国)分科員 大変時間がなくなってきて次の問題に移らせていただいて恐縮なんですが、時間がございませんでしたら次の地方行政の分科会でやりますが、これは総務長官がいらっしゃるので、いま全国で自転車置き場の問題がいろいろ出ておりまして、通称百万台と言われるくらい駅前に自転車が放置されている現状があるわけです。これに対して、総務長官も幅広くいろいろ社会的な事象をごらんになっていらっしゃると思いますが、こうした放置の状況に対して一体どうしたらいいか、どういうふうにお考えになるか、総務長官の御見解をちょっと……。
  292. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点につきましては、政府委員から答弁をさせたいと思います。  いま御指摘のように、やはり駅周辺が自転車置き場で大変混雑をきわめておる、こういうことはよく承知をいたしておりまして、各省庁に幾つかまたがっておりますので、各省庁等連携のもとに一日も早く解決をしていかなければならぬ。細部については政府委員から答弁をさせます。
  293. 三島孟

    ○三島政府委員 ただいま御指摘の駅周辺の自転車の駐車場問題につきましては、去る一月二十三日に関係各省庁の緊密な連携のもとに、駐車場の整備、駐車秩序の確立を総合的に図ることを内容といたします交通対策本部決定を行ったところでございまして、今後とも積極的に対処していく所存でございます。この対策本部の決定は、当面の方針といたしまして定めたものでございまして、一つには道路整備事業による設置促進及び補助制度の拡充、次には地方債の枠の確保、さらには公益事業振興資金の活用、関係省庁による連絡協議会の設置等の対策を講じまして、自転車駐車対策を強力に推進することとしておる次第でございます。
  294. 小川国彦

    小川(国)分科員 時間が参りましたので、あとは自治省の分科会でこの問題を質問させていただきたいと思います。
  295. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で小川君の質疑は終了いたしました。  大塚参考人には、御多忙中御出席をいただき、ありがとうございました。  次に、上田卓三君。
  296. 上田卓三

    上田分科員 私は、総理府長官に激しい怒りと抗議を込めて以下質問を申し上げたい、このように思うわけでございます。  と申し上げますのは、先ほどこの場におきまして、わが党の川本敏美代議士の質問の中で、いわゆる部落問題について――――云々という形で、許すべからざる部落に対する予断と偏見、差別言動をここで長官は発したわけでございます。即刻、川本議員なり傍聴しておりました私の方からの抗議もございましたし、とりわけ同和対策の窓口でございます黒川室長の方の助言等もあったやに思うわけでございます。直ちに――――云々の言を取り消しするという形で長官は行動をとったわけでありますが、少なくともこの部落問題が国会内外を通じていま大きな国民の関心になり、とりわけ同和対策事業特別措置法があと残り一年という状況で、今国会でぜひとも特別措置法の強化延長をしてもらいたい、そういう国民の願い、またきょうは午後一時から九段会館におきまして特別措置法強化延長を求めるいわゆる決起集会がございまして、全国の自治体あるいは行政、学者、文化人、宗教界、多くの国民各階層を代表する方々が熱心に討議をされ、いま国会の各会派の先生方に御陳情申し上げている。また先ほど、四時四十分から、安倍官房長官に対してその大会の決議を要請したところでございます。われわれの代表は非常に怒りを発して、官房長官に対して、担当大臣である稻村長官がこのような言動を発することはもってのほかである。大臣にあるまじき行動であるということで強く抗議をいたしたところでございまして、後からこの抗議文なるものが手渡されることになったわけでございます。  長官も御存じのように、同和対策審議会の答申では、いわゆる「この「未解放部落」または「同和地区」の起源や沿革については、人種的起源説、宗教的起源説、職業的起源説、政治的起源説などの諸説がある。しかし、本審議会は、これら同和地区の起源を学問的に究明することを任務とするものではない。ただ、世人の偏見を打破するためにはっきり断言しておかなければならないのは同和地区の住民は異人種でも異民族でもなく、疑いもなく日本民族、日本国民である」ということをはっきりしなければならぬ、このように言っておるわけであります。「すなわち、同和問題は、日本民族、日本国民のなかの身分的差別をうける少数集団の問題である。」こういうように明確にうたわれておるわけでありまして、これは私は同和問題のイロハの問題であると思うのです。そういう面で、軽はずみに長官が言ったという問題ではなしに、私は、基本的な認識の問題であり、担当大臣として不適格な発言であり、即刻責任をとってやめざるを得ない問題ではないか、このように思うわけでありますが、長官のこの問題に対する決意というのですか、私のいま申し上げた質問、抗議に対してどのように答弁されるのか、篤とお聞かせ願いたいと思います。
  297. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  川本委員の質問に対して、取り消しはいたしましたが、適当でない発言をいたしましたことは、まことに遺憾なことでございます。  同和問題については、この問題が憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるとの認識に立ち、対策の推進に努めてまいっておるところでありますが、今後においても誠心誠意、一層の努力を重ねいまいる所存であります。何とぞ御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
  298. 上田卓三

    上田分科員 長官、――――であるという認識は差別発言であるというように認識されているのですか、どうなんですか。基本的な問題なんですから。
  299. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 社会的差別、これはその差別という言葉自体にも大変抵抗を感ずるわけでございますが、先ほど来法務省との関係のもとで間違えたわけでございます。
  300. 上田卓三

    上田分科員 私は納得できません。これは恐らく全国六千部落、三百万と言われるわれわれの仲間やあるいは部落解放を願う多くの民主的諸団体、労働組合もそうでございましょうが、行政や議会の方々も納得するものではない、このように思うわけであります。わが党としても重大な決意でこの問題について予算委員会の理事会なりあるいは議運などで一定の行動があると思うわけであります。そういう点で、本当にいま長官は重大な差別発言をしながら、それに対する答弁でさえも一々同和対策室長のサゼスチョンを受けなければ答弁できないということ自身、私は大きな問題ではないか、このように考えるわけであります。そういう点で、果たしていまから私が質問する内容について大臣が本当に理解して答弁できるのかどうか、本当にこの同対室長なりの口移しでなければ、あるいは模範答案でなければ、そういう書いたものを通じてしか質問に答えられないというような態度について私は納得できないのですが、その点、責任を持って答えられるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  301. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 責任を持ってお答えをいたします。
  302. 上田卓三

    上田分科員 私はいろいろ質問したい問題がありますが、そういう点で、これはこの分科会が終わったら即刻予算委員会の理事会などで、われわれの理事の方からも自民党の主査あるいは政府に大臣を罷免してもらいたいという形で出ておりますので、私がいまここで云々する問題ではないというように思いますので、とりあえず質問し、答弁をしてもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。  大臣も御存じのように、先般の二月六日のわが党の湯山勇代議士の総括質問の中で、福田総理からも答えていただきましたが、とりわけ担当の大臣であります長官は、いわゆる特別措置法については延長を含めて今後真剣に努力する、こういうふうに答えられたわけでございます。延長を含めて今後真剣に努力するということは、延長を含めてなんですから、政府は事同和対策事業特別措置法の延長についてはしなければならぬという認識のもとで御発言されたと思うわけでございますが、その点について、御認識に間違いございませんか。
  303. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 さきの湯山委員発言で延長を含めてと申し上げましたが、延長を含めてということでございますから、今後いろいろな各市町村段階あるいは同和対策協議会あるいは政党等の意見、こういったことも参考にしながら進めてまいりたい、こういうふうにお答えをしておるわけでございますが、きょうもそのようにお答えを申し上げておきたい、こういうふうに思っております。     〔主査退席、谷川主査代理着席〕
  304. 上田卓三

    上田分科員 延長を含めて今後真剣に努力するということは、延長に真剣に努力しますということと同じだと私は思っているのです。ただ、あえて含めてと言うのは、われわれはただ単に単純な延長だけを言っているのではないのです。特別措置法のいわゆる強化の問題、あるいは法の問題だけではなしに、同和問題は法律ができたからといって解決する問題ではございません、そういう意味で、同和問題全般という意味で、いわゆる延長を含めてというふうにわれわれは理解しておるわけでありますから、そういう点で、少なくとも延長を含めてと言うならば、延長そのもの自身を政府自身がやはりしなければならぬという認識に立っておるからこそそういう発言があった、こういうように思うわけであります。いわんやいま長官がおっしゃったように、各政党間の問題とかあるいは同和対策協議会、確かに各政党間の問題については、いまやられておるやに聞いております。とりわけ自由民主党の中に若干の慎重論があることも聞いております。しかしながら、長官もすでに御存じのように、同和対策協議会の特別委員会でこの二月二十日に中間報告を出し、特別措置法の延長は必然である、こういう結論に達して、二十一日には政府に同対協の代表によって文書が手渡されている。この二月二日の日にも、会長の磯村私案という形で同趣旨のものが出されているのは御存じのことだろう、こういうふうに思うわけであります。  この強化延長につきましては、全国の市長会はすでに昨年の十月の六日に強化延長の決議をして、この二月の二十日に首相に申し入れをしておるわけであります。大阪の和泉の市長が全国市長会の特別委員長という立場で総理に文書で手渡されておるわけであります。  また、全国の府県を中心とした自治体で全同対という組織がございますが、ここにおいても昨年の十一月の二十四日、内容充実を含めた延長決議をし、二月の二十一日に、特に内容充実も含めた中間報告を了承しているということも御存じのことだろうと思います。  また、国会議員についても、自民党の先生方においても衆参ともに七十九名が強化延長について賛同され、合わせて三百四十一名がすでに署名され、間もなくすべての国会議員の過半数を上回ろうというような勢いであることも事実であります。  また、全国の地方議会において、同和関係地区を含む市町村が千四十一ございますが、その中ですでに九百十四の市町村が総理府にその要望決議をしているところであります。  また、いわゆる首長といいますか、市町村長についても六百四十九の代表が行政代表という形で要望書を上げている。  あるいは全国の大学の数が百十一であるかどうか、まだあるのではないかと思いますが、百十一の大学の教官七百六十八人、学長だけでも七十八人の署名がされて、決議が上がっておるわけであります。  同和対策事業特別措置法は四十四年に制定されました。このいきさつ等につきましては、各党の協議がまとまって、政府提案によって内閣委員会を通じて本会議で満場一致で日の目を見たことは事実でございます。しかし、私が言いたいのは、法律をつくるという問題は、少なくとも同和対策審議会が昭和四十年の八月十一日に政府答申を出した時点から歴代の内閣が同対審の答申を尊重します。こう言っているわけであります。その答申の中身が特別措置法をつくれということでありますから、そういう意味では、答申を尊重するということの中にもうすでに法律をつくることを了としておったんじゃなかろうか。ただ、法律の中身の問題があって各党協議があった、私はこういうふうに理解をしておるわけであります。ところが、その法律も十カ年があと一カ年を残すのみになったわけでありまして、五十年の春の五十年調査といわれる全国調査の中でもあなた方自身が認めておられるように、一兆二千億の残事業がある。あるいは、われわれは反対でございますが、もし五十三年度の予算が決定されたとするならば、五十四年度以後だけでも、あなた方の言をかりるならば三千二百億円の残事業がある。この問題については後から言及したいわけでありますが、そういうことを考えるならば、十年間で部落問題を解決しなければならぬにもかかわらず、政府の怠慢によって残事業ができたということになるならば、この法律を延長するべきかどうかということで各党とか協議会にいろいろ参考意見を聞くというよりも、政府みずからの責任でこの事業が残ったのでありますから、政府がまず最初に強化延長なら強化延長という態度を決めて、その上で各党どうですか、延長したいんですけれども御賛同いただけますかというふうに言うべき問題ではないか。それを言わないで、自分たちの責任をなすりつけて、各党でまとめてくださいとか同対協の結論を待って――その同対協ですらも延長は必然であるという中間答申が出ているじゃないですか。長官、あなたは先ほど重大な差別発言をしたわけでございますが、あなたがやめられるかどうか、これは今後の問題かもわかりません、大臣としてきょう一日かもわかりませんよ、あなたは。そういう意味で一国会議員、一稻村左近四郎として、あなたはこの問題に対して責任を持って答弁してもらいたいと私は思うのです。強化延長するのかどうかということを、はっきりと、ごまかさずに答えていただきたいと思うのです。
  305. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  私といたしましては、延長を含めてということでありますから、言うなれば大変思い切った発言をしておるつもりであります。そういう意味から、先ほど上田委員の御指摘がありましたように、やはりわが党内にもいろいろな御意見もありますし、それを調整する期間、こういうことで、含めてと、こう発言をいたしておりますので、その真意のほどはぜひひとつ御理解をちょうだいしたい、こういうように思っております。
  306. 上田卓三

    上田分科員 何を言っても、まず政府は、今国会で特別措置法を延長する、延長しなければならないのだ。十年間で解決しようと思っておったが、九年たった今日、まだ残事業がたくさん残っている、これは延長しなければならない。ただ単なる延長ではいけない、やはり強化の問題が問題になっておる。いままでの同和事業がなぜ残ったかということになりますと、やはり法の不備というのですか、助成の問題が、いわゆる超過負担の問題が出てくるわけであります。だから、そういう点で、いわゆる強化の中身については各党の協議とか、あるいは同対協なども十分に――どういう法律を強化すべきかということはわかると私は思うのです。私はそういうことは各党の意見も聞きたい、特に意見のあるところであるから。しかも、延長という問題については、これは延長しなければならぬことはもう明らかなんですから、延長を含めてと言っているのだから、私は恐らく延長するということと同じだと思うのですが、同じですか、どうなんですか、答えてください。
  307. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 何度も繰り返すようでありますが、上田委員とは個人的にもお話をしたこともございますし、きょうは少なくとも公の場所でございますから、延長を含めて、今後精力的に誠心誠意努力してまいりたい、こういうふうにお願いしたいと思います。
  308. 上田卓三

    上田分科員 長官は非常にかたい口であるわけですけれども、腹としては延長しなければならぬというように思っているんじゃないか、強化の中身についてはいろいろ意見を聞こうということではないか、あと一部の人たちの説得に苦慮しているんじゃないか、こういうふうに――うなずいておられるので、そうだということに確認しておきたいと私は思うのです。そうでなかったら首を振ってもらって結構ですから……。  やはりただ単に延長というだけじゃなしに、残事業が余りにも多過ぎるということですね。全国の市長会が、これは皆さん方自身も受け取っておられると思うのですけれども、五十二年度以降だけでも一兆二千億の残事業がある、こう言っているのですね。だから、政府の五十年調査で一兆二千億、なぜこんなに数字が違ってくるのかというような問題もあります。あるいはここに、具体的に言うならば、私の出身であります大阪府でさえも過去九年間で約三千億円の事業をした、五十四年以降の残事業は約三千億円あるということで、いままでの大阪府のやり方だけでもあと十年間かかるということが明らかになっておるわけであります。半分残っているということであります。また、和歌山でございますが、ここでは過去九年間に五百二十億円の同和事業しかされてない。これは物的なものだけを言っているわけですけれども。ところが、残事業が一千百二十七億円ある、こういうふうなことであります。あるいは福岡においても、過去において九百三十九億円、残りがその約三倍の三千百億ばかりある、こういうような数字が出てきておるわけであります。われわれ部落解放同盟を初めとする各団体でいろいろ調査し、あるいは推計も含めて、残事業だけでもあと、物的なものだけでも六兆円近くあるのではないかというように考えておるわけであります。  そういう点で、長官、あなた方が言うているところの残事業というものと、全同対、いわゆる府県とか市町村あるいはわれわれ民間団体の言うている部分と相当な食い違いがあるということであります。先ほど小林議員の質問に対してあなたは実態調査というか現地調査も約束されたようでございますが、私はそのようにちょっと聞いておるのですけれども、あなたはいわゆる部落へ入って実際の生の差別の実態を見るということだけじゃなしに――そのことは当然していただかなければならぬわけでありますが、それと同時に、やはりいまこそ残事業という意味で全国の実態調査というものをいま直ちにすべきときに来ているのじゃないか。あなた方は四千カ所ほどの未解放部落を言っておるようでありますが、昭和十年の調査でさえも五千数カ所が挙がっており、あのわれわれが糾弾し、けしからぬ文書だと言っているところの地名総鑑でさえも五千数カ所を挙げているのを皆さん方もすでに御存じだと思うのですが、その点について、現地の視察も含めてそういう実態調査の必要性を考えられているかどうか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  309. 黒川弘

    黒川政府委員 御指摘昭和五十年に全国同和地区調査を実施しているわけでございまして、一兆二千億という事業費をつかんでいるわけでございますが、この数字につきましていろいろ御意見があるということは承知しておりますし、いわば今後における検討課題という認識は持っておりますが、ただいまのところ改めて同和地区について調査をするという考え方は持っておりません。
  310. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま政府委員がお答えをいたしましたように、五十年度全国調査をいたしました。まだ未調査地区があるやに聞いておりますので、市町村から申請がありますならばこれを追加するというふうに考えております。  そこで、視察の問題でありますが、これは先ほど来もお答えを申し上げましたように、どの地区はという決定はまだいたしておりませんが、できるだけ現地に参りまして地域住民の方々の意見に耳を傾け、今後施策を推進する場合におけるところの大きな参考にしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  311. 上田卓三

    上田分科員 いつ調査されるのか、いわゆる現地へ入られるのかという日時の問題と、とりわけこの特別措置法があと一年ということでありますが、来年三月ではもう間に合わぬわけでありますから、内容の問題については十分討議していただいたと思いますが、百歩譲ってこの延長の問題はやはりこの予算委員会結論を出して、そして強化の中身については、当然、私が所属する内閣委員会などでも十分討議されなければならぬ問題だろう、こういうように思っております。  同和対策事業特別措置法の規定によりますと、同和対策事業は、政府が認めた場合に三分の二の補助というような形になっておりながら、たとえば自治省がみずから認めておるところですけれども昭和五十一年度の事業の状況の中で、いわゆる国の補助は何と三三%なんですね。いわゆる住宅を入れても五九・五%というような形で、大きな問題があり、いわんや地方自治体が過去の同和債などで元利償還で非常に苦しい状況にある。そういう点で、全国市長会などはこの元利償還を免除してもらいたいというような問題も出てきておるわけであります。私は、後で大蔵大臣に質問する機会がありますから、そういう点は申し上げたいと思うわけでありますけれども長官、やはりあなた、心あるならば、私が言うている意味というものを十分考えていただいて、何か同対室長調査できないとか云々と言うたらそれをオウム返しするのじゃなしに、あなたの言葉で、いま強化の中身については言うていただけませんが、延長と強化の問題についてやはり意のあるところを十分答えていただきたい、こういうように私は思いますし、とりわけそういうものの裏づけになるといいますか、あるいは今後の残事業を処理する上で重大な意味があるところの実態調査というものを、全国の市町村とも十分相談されて調査に乗り出すということが当然ではないか、こういうように思うのですけれども、どうでしょうか。
  312. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 各自治体から御指摘のような陳情が参っております。そういう意味から、調査が必要と考えるならば再度調査をすることもやぶさかではありません。  延長問題については、何度も何度も繰り返すわけでございますが、延長を含めていろいろな問題を参考としながら解決をしていきたい、こういうふうに思っております。
  313. 上田卓三

    上田分科員 あなたが重大な差別発言をし、ある程度改心も含めて前向きな回答があるものだ、私はそういうふうにかすかな期待もあったわけでありますが、残念ながら踏みにじられたようでございます。私は冒頭から申し上げましたように、あなたの発言というものは重大な犯罪的な差別発言であるという立場で、あなたがその発言を取り消したにもかかわらずまだまだ心底からこの問題を理解していない、こういうように判断せざるを得ないと思うのです。  時間が来たようでございますので、主査にも申し上げておきますけれども、この稻村長官が果たして福田内閣の同和対策の担当大臣としてふさわしいのかどうか、私はふさわしくないと言わざるを得ない、直ちに罷免すべきだ、そういう対象だというふうに考えているわけでありまして、ぜひとも理事会等でそういう処置をしていただくように強く要望し、また委員長にもお願い申し上げて、私の発言を終わりたいと思います。
  314. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて上田君の質疑は終わりました。  次に、山原健二郎君。
  315. 山原健二郎

    ○山原分科員 旧従軍看護婦の恩給適用の要求に関する問題について、一点にしぼって質問をいたします。  この問題は、もうすでに申し上げる必要もないと思いますけれども、日赤従軍看護婦が戦時中召集されまして、行き先も知らされずに日本陸海軍病院及び病院船に配属され、その命令に従い、兵と同じ生活をし、終戦後長期抑留の身となり、軍人と同じく捕虜生活を送ったりしながら、昭和二十八年から三十三年にかけて帰国し、その後召集解除となった人たちの問題であります。いわばまさに女性兵士としての取り扱いを受けておることは明らかでありますが、この方たちに対する処遇が全くなされていないということで、国会でも問題になりまして、私の調査したところでは、すでに請願の採択が三回行われております。また、五十年の十一月六日には参議院の内閣委員会におきまして、当事者である岡松八千代さんが参考人として実態の公述をいたしております。そしてこれらに基づいて、恩給法改正に当たりまして院において附帯決議がつけられ、救済措置を図るよう検討することが決議をされておるわけであります。  その後約三十名の議員が質問に立ちまして、これに対し政府は救済する方向で検討する、こういう答弁をいたしてまいりました。何とか救済措置を講じなければならぬという点では各党も一致しておりますし、政府の答弁も一致いたしておるところでございます。そうして、参議院におきましてはすでに法案も提出をされておりますし、衆議院の内閣委員会ではこの問題で恩給委員会がつくられまして、五十二年四月八日の小委員会では法案を出そうという準備も進められておりましたが、恩給局長発言によりまして、恩給法で措置できるかどうか、できない場合どういう救済方法があるか研究して速やかに何らかの救済措置を講ずる、こういう趣旨の発言があって、この衆議院内閣委員会では法案作成を現在中断しておるというのが実情でございます。さらに、前総務長官は、五十三年度中に何とか措置をしたい、こういう答弁を昨年度いたしておりますし、また先日、いま主査席に座っております谷川さんを含め私どもも稻村新総務長官お話を申し上げたところですが、稻村長官もいままでの御回答では、一つ一つ詰めて何とか前進をさせたいということでございます。これが経過であります。  しかし、聞くところによりますと、いろいろ進みなずんでいる状態があるようです。その点につきまして、まず最初に恩給局に対して質問をいたしたいのです。恩給局としてはどの程度に検討をし、どういう措置をとろうとしているか、簡明にお答えをいただきたいのであります。
  316. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生いま言われましたように、恩給局としましては、まずこういう看護婦さん等を恩給法の適用範囲に持ってくることができるかどうかという問題が基本でございますが、そのほか、直接恩給法でなくても恩給法の周囲と申しますか、周辺と申しますか、そういう問題も含めましていろいろな角度から研究をいたしてきたところでございます。  しかしながら、先生十分御存じのように、恩給法というのは百年の歴史を持っておりまして、それの一番基本でございます適用範囲という問題でございますので、大変むずかしい問題をはらんでおります。公務員の年金という性格を持った恩給法でございますので、そういう公務員歴を一日も持たないような方々がおやめになったときに恩給法なり恩給法の周囲において解決をするということは、いろいろな角度から研究をいたしておりますけれども、現在のところは非常に至難であるというふうな結論でございます。
  317. 山原健二郎

    ○山原分科員 恩給法上むずかしいということをお話しになっておるわけですが、その問題を含めて恐らく検討が進められておると思います。  次に、厚生省に対して伺いたいのですが、厚生省は戦後、旧陸海軍の業務を引き継いでいるわけです。最初は復員省といい、現在は援護局となっておりますが、そういう点から見まして、言うならば厚生省はこれらの人たちに対する使用者としての責任があるのではないか、こういう点を考えましたときに、厚生省としてたとえば日赤本社と相談をして何らかの救済措置を講ずる、あるいは研究をする、あるいはまた日赤本社の方からこういう人たちに対してこういう措置をとってもらいたいというような要請が来ておるかどうか。いわばどういう研究をし、どういう措置をとられようとしているか、伺っておきたいのであります。
  318. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 お答えを申し上げます。  先生御承知のように、厚生省におきましては、看護婦で病気なりけがをした人、それから亡くなった方の遺族につきまして援護法の体系で処遇しておるわけでございます。  それから、御指摘の陸海軍の軍属として従軍看護婦が戦争中活躍されたわけでございます。これらの人たちで生存者についての処遇が陸海軍の残務ではないか、そういう立場から厚生省は何らかの検討をしたか、こういう御指摘であろうと思いますが、陸海軍の残務につきましては、生存した看護婦についての事務というものはなかったわけでございます。それは先ほどお話もありましたように、恩給の問題とか、旧令共済組合の問題で大蔵省の問題、そういうところで所管されておるわけでございます。その意味におきまして、陸海軍の残務という立場から検討するというようなことは、厚生省といたしまして特に従来いたしておりません。  それからまた、日赤の監督官庁である厚生省の立場についての御指摘がございましたけれども、日赤の監督官庁の立場といたしましては、定款に定めております日赤の業務が適正に行われているかどうかという観点から監督、指導が行われておりまして、いま御指摘の問題につきまして、そういったことからの検討はいたしておりません。しかし、現在総理府におきまして生存看護婦の問題について検討が行われておると承知しておりますので、方針が決まりますれば、厚生省としても協力することはやぶさかではないわけでございます。
  319. 山原健二郎

    ○山原分科員 この方たちがどういう形で召集をされていったかということなんですが、ここにマル秘文書で「陸密第四五五七號」という写しの書類を持ってきております。これは、     日本赤十字社救護班派遣ノ件達   昭和貳拾年七月貳日              陸 軍 大 臣   日本赤十字社長殿  大東亜戦争ニ於ケル軍衛生勤務幇助ノ爲別紙要領ニ依リ其ノ社ヨリ救護班ヲ内地陸軍病院ニ派遣スヘシ  こういうものが出ているわけですね。それに基づいて、いままでもしばしばこの委員会で提示されましたいわゆる赤紙の召集状が来ているわけです。この赤紙の召集というのは軍人、そのほかにはこの救護看護婦の方たちに来ておるだけだというふうに聞いております。そうしますと、いま厚生省の答弁がありましたけれども、厚生省の答弁としては、それはもう恩給局の方で方針を出していただければそれに基づいて処理をするというお考えが最後に出されたわけです。しかし、給与を支払い、そしてこれらの人を使っておったのは陸軍省であり海軍省であるわけですね。そういう点から考えまして、厚生省としては使用者責任というものがあるのではないか。また日赤におきましても、日赤がまるで事実上の強制として救護班を編成して送り込んでいった場合に、日赤としても終戦処理をするという意味で責任があるのではなかろうか。それが何ら私たちには関係がないのだという言い方については納得できないのでありますが、もう一度御答弁をいただきたいのであります。
  320. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 厚生省の立場について先ほど申し上げましたが、厚生省の援護行政につきましては設置法に明記されておりますが、陸海軍の残務の引き継ぎとか、あるいは軍人、軍族あるいは準軍族等につきまして、戦傷病者あるいは遺族等について処遇をする、こういう任務を負っておるわけでございます。その範囲におきまして、いま先生御指摘の苦労された生存看護婦の処遇について厚生省の責任において検討するという立場ではないということを申し上げたわけでございます。しかし、いずれにしましても、現在検討されておりますので、検討の結果につきまして方針が決まりますれば、協力することは惜しまないわけでございます。
  321. 山原健二郎

    ○山原分科員 総理府の方、特に恩給局の方で方針が出れば協力するということでございますが、もう少し積極的に、日赤の方からもこういうことに対してはこういう処理をしていきたい、たとえばいろいろな方法があると思うのです。私自身が考えておる一つの方法としては、日赤が責任を持って処理方法を出していく、そしてそれに対して国の補助あるいは国の援助というものを要請する場合もあるでしょうが、ともかく何らかの形で措置するという方針が出てくる、またそれを積極的に厚生省として出させて、そしてそれを総理府恩給局の方へこういう処理をしてはどうだろうかというような積極的な立場をとるおつもりはいまのところないのでしょうか。
  322. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 日本赤十字社から「日赤救護員に恩給並びに共済組合法を適用していただきたい件について」ということで、これらの従軍看護婦についての処遇についての陳情、連絡を厚生省としても受けておるわけでございます。戦争中における実情その他は承知しておりますので、先ほど申しましたように、この要望の趣旨に従って協力するという立場は現在も変わっておりません。
  323. 山原健二郎

    ○山原分科員 もう一つ伺いますが、これだけ政治問題になっておるわけです。すでに二年、三年を経過しておる。国会の中でも、いままでずいぶん苦労されてこの方たち運動されておると思いますが、いまや政治問題化して、全員の気持ちは一致して何らかの措置をしなければならぬ、こういう状態でしょう。だから、日赤本社としてもこういう方法でやっていきたいというふうな案を当然持っておるべきだと私は思うのです。きょう日赤をこの席に呼ぶということは参考人としてちょっとできないものですから厚生省にお尋ねしておるのですが、そういう日赤の考え方というものは厚生省の方にはまだ出てきていないのでしょうか。
  324. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 日赤の要望につきましては、昭和三十八年九月十二日に、日赤の社長から援護局長あてに先ほど申しましたような「恩給法並びに共済組合法を適用していただきたい件について」ということで要望されておりますし、その内容承知しております。その後その内容につきまして変更あるいは修正ということはございませんので、そういった内容につきまして厚生省としても支援してほしい、こういう趣旨であろうというふうに理解しております。
  325. 山原健二郎

    ○山原分科員 そうしますと、三十八年にそういう要請が出てきておりましてそのままになっておるということで、全くいままで改善されていないというふうに受け取ってよろしいのですか。
  326. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答えを申し上げたいと思います。  いまの要望が出ました後、恩給局としてもいろいろな観点から検討したわけでございますけれども、四十一年だったと思いますが、そうやって日赤の方々がお帰りになった後いわゆる恩給公務員、官吏なり、たとえば県立病院なりあるいは国立病院なりにお勤めになりました判任官以上に相当する婦長さん以上の方々、そういう方々につきましては、後に公務員をおやめになるときに、戦時中に日赤の救護員として戦地でお働きになった期間は通算するという措置を講じました。そしてまた、先般さらに抑留期間もあわせて通算するという措置はとったわけでございますけれども、先ほど一番最初にお断り申しましたように、公務員の年金でございますので、そういう公務員期間を一日も持っていない方がおやめになるというのはおかしいのですが、そういう方々に退職に当たって公務員の年金を給するということはできませんので、先ほど申しましたような改正をいたしましたが、いま御要望になっておるような、お帰りになって公務員におなりにならないような方々については、残念ながら恩給法上は措置はできないということでございます。
  327. 山原健二郎

    ○山原分科員 みんなの気持ちは一致して、しかも国会では請願の採択をしてきておりますけれども、いまのお話を承りますと、恩給局としても厚生省としても、事務的レベルでは何となく壁が厚いような気がするのです。いろいろ困難な問題があることは私も知っておるわけでございます。しかし、だからといってこれを放置できない。ではどうするかということがいまや問われておると思います。  したがって、これから総務長官に対して御質問申し上げるわけですが、たとえば長官の決意の仕方あるいは政治的判断によって、私はやる方法が出てくると思っているのです。たとえば対馬丸事件の問題につきましては、御承知のように、特別支出金が去年の五十二年度の十月から出されておりまして、毎年これが支出をされていくわけですね。これはいわゆる特別支出金という形でございますが、その精神はいわゆる援護法の精神に基づいて、それに沿った形で特別な対策がとられておるわけですね。予算は沖繩開発庁から出ておりまして、こういうことも前例としてあるわけです。だから、これを一歩進めるためには長官が本当にここで決意を表明していただきたいわけです。たとえば研究にいたしましても、恩給局も研究されておるでしょう、また厚生省としても、たとえば日赤との関係研究されておるでしょう、また金を支出する大蔵省としても当然研究されなければならぬ問題ですが、問題を解決するためには、これは一歩どこで前進をさせていくか。ただ漠然と一つ一つ詰めてみるという形では進まないわけですね。これをどう進めるかということが長官に問われておると思いますが、長官はこの問題についてどういう対応をしようとしておるか、お答えいただきたいのです。
  328. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えをいたします。  各党の意見がこれぐらい一致しておるものはない、私はこういうふうに受けとめております。そこで、日赤の救護、すなわち看護婦の方々に対して恩給の適用というのがなかなかむずかしい、こういうふうに聞いておりますけれども、何らかの方法でこれは解決をしなければならぬ問題である、こういうふうに私は考えております。
  329. 山原健二郎

    ○山原分科員 その答弁がそこまでであれば、前の藤田長官のときでしたか、五十三年度中には何らかの措置をするというお話があっているわけです。そこからもう一つ進まないと、じんぜん日を過ごしておるということではいけないわけでして、すでにこれらの関係者の方は五十五歳を越して相当年配も高齢になり始めている状態ですね。そこで、本当にどうするか。一つはもっと実施を進めるために、いま私が言いましたような何らかの、恩給局は恩給局だけで困りながら考えておる、厚生省は厚生省で、おれの方ではないんだけれども恩給局が出せば協力しようという形で、それぞれの省あるいはそれぞれの関係局がそのままなずんでおるという事態を、どう総務長官の手前で見解を統一して、物事を前進させていくかということがいま問われていると思うのですね。その意味でどういうふうにされるかということなんですが、どうですか。
  330. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いま申し上げたように、恩給法の適用がむずかしいということになれば、何らかの方法で厚生省とも話し合い、全く短い期間に、実施の期間はいついつということを申し上げるわけにはいかぬと思いますが、これに対してどうするかというその結論は全く短い期間に結論を出したい、こういうふうに思っております。
  331. 山原健二郎

    ○山原分科員 全く短い時間に結論を出したいというお話でございますから、少なくとも今国会中にそれぞれの関係省庁あるいは局におきまして事務的の段階でも合い議をして、相談をしてこういう方法ならやれる、そしてこれに対しては国はこう援助するというような方針を出していただきたいと私も思います。ばらばらで検討しておるのではもう進みません。それは私ども経験でもわかるわけですね。ばらばらじゃなくて、関係しておるところが少なくとも集まって、一定の機関をつくるか制度をつくるか、それを総務長官が統括して最終的な方針を出していくという進め方にしていただきたいと思いますが、この点どうでしょうか。ぜひ今国会中に少なくとも実施の方針が出るというところまで持ち込んでもらいたいと思いますが、切なる願いとして、ぜひこの点お聞きしておきたいのであります。
  332. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど申し上げましたように、これほど各党の意見の一致を見ておることはないと私は思います。そういう意味から、実施というその時期は別といたしまして、その方向だけは今国会中に結論をつけたいと思っております。
  333. 山原健二郎

    ○山原分科員 総務長官のお答えとして、今国会中に方向が打ち出されるということでございますので、その経過を見ていきたいと思います。  もう五分程度時間がありますので伺っておきますが、これは本当に恩給法のたてまえから言えばむずかしいというお話が出てくるのは当然だと思うのです。横並びの問題とかいろいろなことがあるから。しかし、それも含めて恩給法を改正するという国会の法案もすでに出ておるというような状態ですね。だから、その問題も含めていくのだけれども、これをいつまでも引っ張っておったら、これはなかなかむずかしい問題なんだから、いつまでたっても解決しない。しかし、現実にはもうそれに見合うような支給をしていく、あるいは予算の支出をしていくということは、これは政府自体が決意をすればできることですし、たとえば総務長官が閣議に諮って、こういう方向でやります。あとの制度の問題については、時間はかかるかもしれないけれどももっと検討していくという措置は、もうぜひ必要になっておると思うのです。そういう意味で、恩給局長、いま長官が今国会中に方針を出すとおっしゃいましたので、その趣旨に従って恩給局長も精力的にやられるかどうか、それから厚生省もその点に従ってこの問題を必ず前進さすという決意を持って臨まれるかどうか、最後にお二人に伺っておきます。
  334. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答えを申し上げます。  恩給制度上は、公務員の年金であるという恩給制度のたてまえから非常にむずかしいということはたびたび申し上げたわけでございますが、あの方々が戦地で大変御苦労されたということは私も十分存じております。そういう意味で、これまでもいろいろな角度から研究してまいったわけでございますけれども、今後とも恩給局は恩給局の立場で勉強なり検討は深めてまいりたいと思います。ただ、今国会中というようなお話でございますと、これは非常に問題が、根が深いと申しますか、影響が広いと申しますか、そういう幅広い問題でございますので、私たちは恩給制度のたてまえから、そういう見地から精力的に、誠心誠意勉強させていただきたいというふうに思います。
  335. 河野義男

    ○河野(義)政府委員 従軍看護婦についての処遇の方針が決まりますれば、厚生省といたしまして協力を惜しまないつもりでございます。
  336. 山原健二郎

    ○山原分科員 最後に。恩給法の問題で処理する方法もありましょう。それはいま恩給局長のおっしゃったように、検討していただいていいわけですね。  それから同時に、もっと別の方法を考える余地もあると思うのです。私が言いましたように、たとえば日赤がそういう制度をつくって救済をする、それに対して国が補助をしていく、現実に兵と兵に準ずるといって連れていった人たち、しかも抑留されて兵と同じように捕虜として取り扱われてきた人たちでございますから、それに対してそれだけの特別な措置がとりあえずとられるということが大事だと思いますので、この点、ぜひ長官もその趣旨に基づいてこの国会中に方針を打ち出していただくようにしていただきたいと思います。再度その点をお伺いして、私の質問を終わります。
  337. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど申し上げましたように、その他の方法で処遇を考えていきたい、まあ今国会中に必ずその方向を決定してまいりたい、こういうふうに思っております。
  338. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて山原君の質疑は終わりました。  次に、清水勇君。
  339. 清水勇

    清水分科員 長官に、質問に入る前に一言ただしておきたいことがございます。  先ほど川本委員は、部落差別問題の本質は一体どういうように認識をしているか、こういう質問をしているわけでありますが、これについて稻村長官は――――の問題であると、こういうふうに答えていられるわけでありますが、一体長官は、そもそも部落問題の本質というものをどのように認識し、また理解をされているのか、改めてこの際に、簡明で結構でありますから、所信を披瀝をしていただきたい、こう思います。
  340. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど川本委員の質問に対しまして、即座に取り消しはいたしましたが、適当でない発言をいたしましたことは、まことに遺憾に存ずるところであります。  同和問題については、この問題が憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるとの認識に立ち、対策の推進に努めてまいっておるところでありますが、今後においても誠心誠意、一層の努力を重ねてまいる所存であります。何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  341. 清水勇

    清水分科員 いま改めて長官から所信が表明されましたが、この際きちっといま述べられた線に沿うてがんばっていただくように強く要望をしておきたいと思います。  さて、そこで長官にお尋ねをいたしますが、六日の予算委員会で、長官は、五十四年度以降にかかる同対事業費は、国費ベースで約三千二百億円と述べている。この数字は、総理府の五十年調査で出てきた約一兆二千億、このうちの国費分七千六十億から現在の五十三年度予算に計上されている分まで、いわばひっくるめた数字を差し引いたものだ、こういうふうに認識をいたしております。  そこで私は幾つかの点についてまず確認をしておきたいと思うのです。この五十年調査というのは、物的施設に限定した事業費をそれぞれ上げてきている、こういうふうに見ているわけでありますが、同時に、現行の国庫補助方式によって計算をしている、こういうふうに私は受けとめておりますが、そういう認識でよろしいか、まずただしたいと思います。
  342. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年調査によりまして把握された数字でございますが、まず第一に、これはいわゆる物的事業に限ったものでございます。それから、算定につきましては、当時におきます補助単価をもとにして積算いたしております。
  343. 清水勇

    清水分科員 そうすると、三千二百億という残事業費は、当然物的施設以外の事業費、たとえば教育であるとかあるいは雇用だとか、人権だとか、啓発だとか、挙げればまだ切りがありませんけれども、こうした予算は含まれていないというふうに見てよろしいわけですね。そうすると、私は、部落問題の解決を考える場合、いま申し上げたような個々の事業活動というものは非常に重要な要素を持っている、こういうふうに見ているわけでありますから、そういう点でぜひ聞いておきたいわけでありますが、三千二百億のほかに、いわゆる物的施設費以外の費用というものをどのくらい予定をしているのか、これは額でもいいし、パーセンテージでも結構ですが、この機会に明らかにしておいていただきたいと思います。
  344. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年において調査いたしましたこの関係につきましては、事業費としては物的施設の関係だけを調査しておりまして、その他の関係は把握していない状況でございます。
  345. 清水勇

    清水分科員 把握はされていなくても、たとえば物的施設費というものを全事業費から差し引くと大体その他の事業費というものが見当がつくのじゃないか。つまり、全体の事業量のうちの二割とか三割とかというようなパーセンテージが出せるんじゃないかと思うのですが、そういうことも試算はされておりませんか。
  346. 黒川弘

    黒川政府委員 直接のお答えにならないかもしれませんが、たとえば御参考までに五十三年度予算でどういう計算をしているかということを申し上げますと、五十三年度予算、現在御審議中の同和関係予算の総額は一千八百四十三億でございます。この中で、ただいまの関係の物的施設に充てられるべき予算というものは一千五百四十七億円余りというふうに計算しております。
  347. 清水勇

    清水分科員 いずれにいたしましても、そうすると、物的施設以外の事業費予算というものは当然に三千二百億円に上乗せをされる、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  348. 黒川弘

    黒川政府委員 物的関係以外の事業がこの三千二百億円のほかに見込まれるというその御指摘については、そのとおりであるというふうに思います。
  349. 清水勇

    清水分科員 もう一つは、いまだに未指定地区というものが大変な数に上っていると私は見ているのです。あの悪名高い全国地名総鑑にも約五千からの地区名が掲載をされている。また、古い話でありますが、昭和十年の全国被差別部落の調査によれば、五千三百六十五という地区数が報告をされている。したがって、総理府が五十年調査の上にその後百六の地区を追加指定をしてみても、長官が言うように四千四百八十にしかならぬわけでありますから、約一千近い未指定地区というものがなお存在をしているのじゃないか、私はこういうふうに思うわけでありますが、そのように確認をしてよろしゅうございますか。
  350. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年に調査いたしました同和地区調査におきましては、その当時四千三百七十四地区、その後、これはいわゆる窓口をあけておくという措置をとっておりますので、追加報告が百六地区ございました。  いま御指摘のそれ以前における調査等で把握された対象地域との違いでございますが、これは先生御承知のように、同和対策事業特別措置法におきましてこの法律の対象とするべき地域について定めてございます。したがいまして、過去に把握されました地区と違ってまいるという要素は、その法律の定め方の中に含まれているというふうに理解いたします。
  351. 清水勇

    清水分科員 いずれにしても、まだかなりの未指定地区がある、こういうことを確認することができるというふうに思います。  そこで、実はいままでこれらの未指定地区というのは同対事業の対象外に置かれてきている。したがって、これは国の責任なのでありますけれども、こうした未指定地区は、事業対象外に置かれているために、環境から始まって、すべてにわたって非常な惨状を呈している。これは私参考までに長官に見てもらいたいと思うのですが、惨たんたる劣悪な状態だ、こういうふうに言うことができると思いますが、少なくともこういう状態が放置をされているということは、これはもう許されないことではないか、私はそういうふうに思います。  そこで、当然今後はこうした未指定地区を指定する、そして対象事業を実施する、こういうものだと私は考えるわけでありますが、長官の所信をこの際承りたいと思います。
  352. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど政府委員が申し上げましたように、未調査地区がありますならば、各市町村から御報告がございますならば、これは追加承認をする、こういうことにいたしております。
  353. 清水勇

    清水分科員 報告が上がってくれば追加をし、指定をし、当然事業の対象にしていく、こういうことだと思います。いいわけですね。  そうすると、私はまだいまのところはXとしか言えませんが、いずれにしてもかなりの未指定地区がある。それを対象に新しく事業を起こすということは、当然に三千二百億以外の、以上のと言った方がいいのかもしれませんが、そういうものだと私は理解をするわけであります。  これはある機関の試算なんですけれども、過去約九年間、未指定地区なるがゆえに実施をされてこなかった、そういう部分までかさ上げして計算をしてみると、未指定地区に対する行うべき残事業というものが、大変大ざっぱな数字ですけれども、一兆円を超す金額になるのじゃないか、こういうような見方もございます。まあ数字のことはさておいて、この未指定地区に対する事業費というものは、先ほども触れたように、当然三千二百億プラスアルファということになるべきものだというふうに理解をいたしますが、そういうことでよろしいわけですね。
  354. 黒川弘

    黒川政府委員 約三千二百億円という金額は、御理解いただいておりますとおり、五十年度において把握いたしました数字でございまして、その後未調査地区という形で上がってまいりますれば、これはそのほかに立つ数字であるということになります。
  355. 清水勇

    清水分科員 同時に、ここで参考までにちょっと確認をしておきますが、先ほど申し上げた五十年度以降に追加になった百六地区、この分は例の一兆二千億という五十年調査の数字の上に具体的にプラスをされておりますか。私はどうもされたという話は聞いていないのですけれども、いかがでしょう。
  356. 黒川弘

    黒川政府委員 百六地区につきましては、一兆二千億のうちに含まれておりません。
  357. 清水勇

    清水分科員 そうすると、長官が二月六日、湯山委員の質問に答えて、残事業費は三千二百億だ、こういうふうに言われておりますが、少なくともいま申し上げたようなものもそれには含まれていない、新たに追加されるべきものである、こういうふうに理解をしてよろしいわけですね。
  358. 黒川弘

    黒川政府委員 そのとおりでございます。
  359. 清水勇

    清水分科員 ちょっと質問が前後いたしますが、よく考えてみると、五十年の調査というものは、物的施設の残事業費でありますが、主としてこれは地方公共団体のサイドから自由裁量されて提出をされてきていると私は理解をいたしております。ところで、その後たとえば部落解放同盟などとの間で、いろいろと事業の追加というような問題が出てきているというふうに思いますが、当然この分は五十年調査の別枠である、したがってさっきの三千二百億という数字の別枠である、こういうふうに見てよろしいわけでしょうか。
  360. 黒川弘

    黒川政府委員 約一兆二千億という事業費、これは昭和五十年において調査いたしましたその時点の事業費でございまして、それ以外の要素は含んでおりません。
  361. 清水勇

    清水分科員 ところで、長官にちょっとお尋ねをしたいことがございます。去年の十月、したがって長官がまだ大臣になられる少し前のことでありますが、全国市長会が「同和対策事業実態調査結果」というものを発表しております。これは長官、ごらんになっておりますか。
  362. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 見ておりません。
  363. 清水勇

    清水分科員 室長はどうですか。
  364. 黒川弘

    黒川政府委員 資料として拝見しております。
  365. 清水勇

    清水分科員 室長御存じのようでありますから、お尋ねをいたしますが、この調査によると、市長会は、全国二百四十一に及ぶ関係市の集計として、五十二年度以降の残事業総額は一兆二千八十一億七千万円だと報告をいたしております。しかも、この総額も物的施設に限定をしているわけでありますから、それ以外のもの、先ほどちょっと室長からの数字の報告がございましたが、仮にそれ以外を二〇%ぐらい加味するとしても、およそ一兆四千億前後というような規模になるのじゃないか。そこで、私は、この全国市長会の残事業についての実態調査の結果というものを政府としてどのように受けとめているのか、この点をまず明確にお聞かせをいただきたいと思います。
  366. 黒川弘

    黒川政府委員 市長会で調査されました数字は、五十二年度以降において事業費一兆二千億ということで算出されておりますが、その対象といたします事業等については、現在国が補助対象事業としておりますものとの食い違い等がございます。したがいまして、五十年調査政府が把握いたしまして残事業として考えておりますこれとは、大いに食い違う要素があるというふうに考えております。
  367. 清水勇

    清水分科員 食い違う要素があるかもしれませんが、そうしますと、たとえば五十二年度以降予想される残事業というものを、総理府の方では否定をなさいますか。市長会が出した数字を否定をなさいますか。
  368. 黒川弘

    黒川政府委員 市長会の数字を否定するということではございませんが、政府の把握いたしました調査と対比いたしますと、なかなか食い違う要素があるということを申し上げたわけでございまして、市長会の資料はまたその資料といたしまして、今後参考にすべきものであるというふうに考えております。
  369. 清水勇

    清水分科員 数字的には突き合わせてみなければならぬ要素が残っている、しかし重要な資料として参考にしたい、こういう理解でよろしゅうございますか。
  370. 黒川弘

    黒川政府委員 一つの資料として参考にいたしたいというふうに考えております。
  371. 清水勇

    清水分科員 そこで、私は、全国町村会としてまだ実態調査をやったという話は聞いておりませんけれども、仮にやるとすれば、傾向としては全国市長会と似たような残事業の状況が出てくるのじゃなかろうか、こんな感じがするわけであります。  そこで、私が長官にお尋ねをしたいと思いますのは、先ほども触れたように、二月六日に湯山委員に対し、残事業費は三千二百億円だとさりげなく答えておられるわけでありますが、しかし実質的に見ると、先ほど来私が確認をしてきたようなものを全部総合すると、これはとても三千二百億などという小規模なものではなしに、莫大な予算を必要とする、こういうものだと見るわけでありますが、残事業に対する総理府なりあるいは長官なりのとらえ方をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  372. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年調査によって把握いたしました事業費、それからその後の経過を経まして五十四年度以降に見込まれます事業費、これにつきましてはいろいろ御意見があるところであるということは十分承知いたしております。いずれにいたしましても、五十四年度以降に残ると見込まれております。政府調査によりましても三千二百億というふうに申し上げているわけでございますが、この事業については何らかの形で実施いたしたいと考えている次第でございます。
  373. 清水勇

    清水分科員 長官からこの点についての所信が述べられないのが大変残念でありますが、いずれにいたしましても、この際同和対策の強化というものが求められてきている。そういうことと照らし合わせて、たとえば米指定地区の実態とか、あるいはいま申し上げたような市長会調査に示されているそういう積み残し事業といいましょうか、今後やらねばならない事業の把握、さらには自治体の抱えている超過負担の問題、こういう問題点をこの機会に総理府は総ざらいをする、洗い直してみるべきだと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  374. 黒川弘

    黒川政府委員 同和対策事業特別措置法の扱いがいろいろ検討されているわけでございますが、関連いたします問題の一つとしてこの問題も当然今後検討されるべき課題であると認識しております。
  375. 清水勇

    清水分科員 そこで、いま申し上げたような総ざらいをし、現実的な実態の把握ということをやるべき時期に来ているというお話でありますから、これを強く進めていくことを期待しつつ、あわせてこの際長官にお聞かせを願いたいことがございます。  長官、世の中には非常に素朴な見方として、三千二百億程度の積み残しならば何も法律がなくたって予算措置で十分やっていけるんじゃないかという見方がありますね。しかし、この十年間で政府が達成をしようとしてきた同和対策事業が、いま指摘をしたように、かくのごとく積み残しをされている状況を素直に重視しなければいけないんじゃないかと私は考えるわけであります。いままでだって、法的根拠があったればこそ、不十分ながらある程度問題をここまで発展させることができた。法律によらないで予算措置でなどというようなトーンダウンをさせるということになると、これは同対事業にとって大変なマイナスになりはせぬかと考えるわけであります。特に、こうしたことに触れて、去る二十日には、長官も二十一日に受け取られたようでありますが、同対協からの中間報告が出されておりますが、この同対協の中間報告長官はどのように受けとめておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  376. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  御指摘のとおり、残事業を大変多く抱えております。また同対協の中間報告もありますので、とり方によっては大変いろいろあると思いますが、延長を含めて検討してまいりたい、こういうように思っております。
  377. 清水勇

    清水分科員 どうもただいまのお答えでは納得がいかないわけですが、私は近く最終答申をされる同対協の答申を予想してみるに、少なくとも同和問題解決のためには特別措置法の延長は必然の方向であるという、先般行われた中間答申といいましょうか、報告といいましょうか、これを一つの筋としてさらに肉づけがなされてくるもの、こういうふうに予想をいたしております。  そこで、そういうこととの兼ね合いで考えてみるときに、いつまでも延長の方向で慎重に云々というような態度ではなく、今国会において政府は延長の方向というものを具体化する、こういう決断を下すときではないのか。とりわけ総務長官は本問題についての政府のリードオフマンのはずでございますので、リードオフマンたるべき者がやや抽象的な態度で推移をするということでは、事態が前進しないのではないか。実は、きょうも全国の市町村長さんあるいは自治体の代表の皆さんが千人以上もこの忙しい時期に東京へ集まって、国会にも請願をなさっている。こういうこととあわせて、私はもうここで、今国会中に特措法の延長をやるべきときである、こういうふうな決意のほどを長官から承ってしかるべきタイミングじゃないか、こう思うのでありますが、いかがでしょう。
  378. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 清水分科員は個人的には重々おわかりだと私は思うのです。やはり一部政党の中でもう少し煮詰めてまいらなければならぬ点がある、こういうふうに承っておりますので、先ほど申し上げましたように、延長を含めてと、大変前進した発言である、こういうふうに御了解を賜りたい、こういうふうに思います。
  379. 清水勇

    清水分科員 私は長官の言葉を云々するつもりはないのですけれども、稻村長官はなかなか大胆で決断力に富んでおるというふうに実は見ておる。先人いずれも出席をすることのなかった建国記念日の祝典に参加をされる。こういう大英断を下し得る長官が、世上ほとんど延長は必然の方向だというふうに言っているのにもかかわらず、一部の政党の間にややもやもやしたものがあるから少し時間をかしてくれ。これはわからないことはありません。私も実情はわからないことはありませんが、しかし長官がいつまでもそういうことを言っておられると、タイミングを逸してしまうのではないか。だから、タイミングを逸しないという前提で考えれば、やはり今国会しかないんじゃないか。市町村長さんでも地方議会の皆さんでも、来年度予算の編成というふうなことを展望すると、どうしてもこの次の国会などというようなのんきなことを言ってはいられない、何とかしてもらわなければ困る、こういうことを強く訴えておられるわけですから、いかがでしょうか、もう一回。
  380. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 その件については決断をいたしておりますけれども、いま申し上げたように、一部各政党間の御意見参考にしながら、必ず延長を含めて善処してまいりたいと思っております。
  381. 清水勇

    清水分科員 長官の言葉を言葉どおり受けとめると、決断はしているけれども、なお一部政党の動きもあって時間をとらざるを得ない、しかしこれはもう前向きにやっていくんだ、文字どおりそういうふうに受け取ってよろしゅうございますな。――こっくりをされておられるので、そういうふうに理解をいたします。  私は、いずれにしても、地方議会の決議もたくさん上がってきておりますし、市町村長さんなども、知事を含めてもう六百五十人にも達するような方が強化延長の方向を期待されておる。あとは政府の決断にすべてはかかっている、とりわけ長官の決断が求められる、こういうことだと思いますので、せっかく長官が決断をなされることを強く要望したい。     〔谷川主査代理退席、主査着席〕  最後に、その点、だめを押すようですけれども、よろしいですな、先ほど私が申し上げたようなことで。
  382. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど申し上げましたように、各政党間のいろいろな御意見参考にしなければならぬということは、先ほど来何回も申し上げているとおりでございますが、いまの御指摘の点については決断をしておる、こういうことだけを申し上げておきたいと思います。
  383. 清水勇

    清水分科員 終わります。
  384. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で清水君の質疑は終了いたしました。  次に、飯田忠雄君。
  385. 飯田忠雄

    飯田分科員 私は、従車看護婦の恩給適用に関する法律問題について質問をいたします。  先般も、またきょうも、この問題につきましては同僚の議員からの質問がございました。にもかかわらず、あえて私が御質問申し上げますゆえんは、従来、法律問題があいまいにされておるということでございます。  そこで、まずお尋ねいたします。現在、兵は軍人恩給の対象となっております。そして、その法的根拠恩給法であろうと私は考えるわけでありまするが、兵が恩給法に言う公務員の中に含まれておりまするその法的根拠は、いかなる理由によって生じたのでございましょうか、お尋ねいたします。
  386. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 お答えを申し上げます。  先生の御指摘は、どういうところにその法的な根拠があるかということでございまして、現行法の御説明をまずさせていただきたいと思いますけれども恩給制度が始まりましてすでに百年たっておりますが、その当初から、兵を含めた軍人全体が恩給の対象になっているわけでございます。  それから、恩給法というのは、大正十二年の恩給法というふうな限定をしてまいりますとまた別でございますけれども、広くその後の改正法並びに改正法の附則を含めた恩給法ということでございますと、現在は、その大正十二年の法律には書いてございませんけれども、先生十分御存じと存じますが、昭和二十八年の改正法の附則に、そういう旧軍人についても、資格のある者については恩給を出すという規定があるわけでございます。
  387. 飯田忠雄

    飯田分科員 私の質問が要領を得なかったので申しわけございませんでした。私が御質問いたしましたのは、こういう恩給法ができました法的根拠をつくり上げたその根拠になるものは何か、こういうことです。兵に恩給を支給するに至ったその根拠となるもの、法理論でございます。
  388. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 これは兵だけではございませんで、軍人全体並びに適用される文官全体だと思いますけれども、それはやはり、国に対して忠実に長い間勤務をされたり、あるいは国のために公務に尽くして病気になられたりあるいは亡くなられたりした場合に、本人なり遺族なりにその生活の適当な支えをするために支給するというのが本義だと思います。
  389. 飯田忠雄

    飯田分科員 日本赤十字社令というのがございます。これは勅令でございまするが、この法律上の地位はどのようなものでございましょうか、お尋ねします。
  390. 味村治

    ○味村政府委員 赤十字社の根拠はどういうことか、法的地位はどういうことかというお尋ねでございますが、これは古くからの実態に即した御説明をしなければなりませんので、実は法制局としては適当でないかと思うのでございますが、聞くところによりますと、日本赤十字社は社団法人として発足いたしました。その後、明治三十四年に日本赤十字社条例というのができ、その後また新たに明治四十三年に日本赤十字社条例というのが新法としてできております。(飯田分科員「簡単にしてください」と呼ぶ)この赤十字社条例は昭和二十二年に廃止になりまして、新しく昭和二十七年に現在の日本赤十字社法ができておるわけでございます。旧法当時、戦前におきましては、やはり社団法人としての性格を持っておったものである。そして昭和二十七年に現在の日本赤十字社法ができるに至りまして特殊法人となったものであるというように理解をいたしております。
  391. 飯田忠雄

    飯田分科員 日本赤十字社令というのは勅令なんですよ。私がお尋ねいたしましたのは、この勅令はどういう性質を持つか、法律上どういう性質を持つかということをお尋ねしたのです。旧憲法の第九条を根拠とする独立勅令なのかどうかという問題です。お答え願います。
  392. 味村治

    ○味村政府委員 旧憲法九条に基づく勅令であろうかと存じます。
  393. 飯田忠雄

    飯田分科員 日本赤十字社令は言うまでもなく独立勅令でございまして、法律にかわるべき勅令でございます。  そこで、この日本赤十字社令の第八条に「陸海軍ノ戦時衛生勤務ニ服スル日本赤十字社救護員ハ陸海軍ノ紀律ヲ守リ命令ニ服スルノ義務ヲ負フ」こうあります。そしてまた、この救護員は、御承知だと思いますが、陸軍大臣の命令によるところの充員召集令状、こういう赤紙がございますが、これによって戦時に召集を受けたものでございます。したがいまして、この赤十字社の救護員というものは陸軍大臣の指揮下におる、そういうものであると私どもは理解するのですが、この日本赤十字社救護員の法律上の地位についてお伺いをいたします。
  394. 田中富也

    ○田中説明員 陸海軍の命令下に入りまして戦時衛生勤務に服する場合には、軍属という地位になります。
  395. 飯田忠雄

    飯田分科員 このいわゆる召集されました日赤の看護婦さん、この方々は陸軍大臣の命令で陸軍部隊に配属されて、そこで軍人と同じような勤務に服してきた人であります。しかもこれは、その法律上の地位は、明らかに日本政府の職員の地位にあると言わなければなりません。なぜなれば、陸軍大臣の命令で、その指揮下にある日赤本部がその支部に命じて召集状を出させる。しかも、出させること自体は陸軍大臣の命令であります。そして陸軍病院に勤務させるものであります。そうでありまするならば、明らかに陸軍病院に勤務しておるところの日本の公務員じゃありませんか。この点について御見解をお尋ねいたします。
  396. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 私からお答えを申し上げます。  先生が指摘されましたように、非常に広い意味においては、現在の感覚で申しますと、公務員ということに相なろうかと思います。ただ、私は恩給局だもんですから恩給の方から申し上げますと、現在のように非常に広い意味の公務員全部が恩給法の適用を受けていたわけではございませんで、いわゆる軍人なりあるいは官吏という地位を持った、身分を持った者に適用されていたのが現在の恩給法でございます。
  397. 飯田忠雄

    飯田分科員 広い意味では公務員ですね。そのことの御確認を得ましたので、それでその問題はやめます。  次に、赤十字令第十条によりますと「看護婦ノ待遇ハ兵ニ準ス」こういうふうに書いてあります。「兵に準ス」という言葉の法律上の地位ですね、「兵ニ準ス」とされておるところの職員の法律上の地位は何でありますか、お尋ね申し上げます。
  398. 味村治

    ○味村政府委員 ただいま恩給局長から公務員であるという御発言がありましたが、この問題はなかなか古い問題でございまして、私どもよく調査をいたさないとはっきり公務員だということは申し上げかねるのではなかろうか。つまり、日本赤十字社の使用人であると申しますか、日本赤十字社に雇われていた人であるということは間違いないわけでございますが、その方が戦地勤務をなさる、その際に軍の指揮下に入るということは確かにそうなんでございます。そういう意味で軍属としての義務を負うということも間違いがないわけでございますが、しかし日本赤十字社との間の関係というのは切れてないわけでございまして、これがどのようになるのか。非常に広い意味で公務のために尽くしているという意味では公務員でございますが、しかし日本赤十字社の使用人であるという一面も持っておりますので、そこがなかなかむずかしいところであろうかと思います。  そこで、ただいまの御質問の「兵ニ準ス」、こういう言葉でございますが、これは待遇を兵に準ずるのだということであろうかと思います。その待遇と申しますのは、これはまたどんな待遇があるのかということは当時の実態等を踏まえませんとちょっと申し上げかねるわけでございますが、たとえば給与なんかは、日赤の従業員でございますので、一応日赤の従業員の給与規程によるものであろうかと思われます。「準ス」という言葉でございますから、日赤の看護婦さんである特殊性はそのままにしておきまして、その特殊性にならいまして、その特殊性によって兵たる待遇を併用することがあるという、兵たる待遇そのものではございませんで、それが日赤の看護婦さんという特殊性によってバリエーションを与えられるということはあろうかと存じます。
  399. 飯田忠雄

    飯田分科員 兵隊さんが召集されるでしょう、会社の方と縁が切れますか。会社の職員のままで兵隊に召集されますね。そしてその兵隊に恩給が与えられるのですよ。そういう意味において、日赤の看護婦さんが陸軍大臣の命令で召集を受けて陸軍病院に勤務しておる、そうしておる以上は、これは明らかに兵隊と同じように、召集されたところの女の軍人と同じじゃありませんか。軍人と言っては差し支えがありますけれども、私はただいまのああいう御答弁はちょっといただきかねると思います。どうですか、兵隊は会社と縁を切らねばならぬのですか、お尋ねします。
  400. 味村治

    ○味村政府委員 私が申し上げましたのは、日赤の看護婦さんが戦地勤務につきますと兵に準ずるというあの規定がございますが、その待遇は兵に準ずるという意味は、兵隊さんそのものの待遇というわけではなくて、日赤看護婦としてその特殊性を持った準じ方である、こういうことを申し上げたわけでございまして、直ちに兵隊と同じ待遇になるということではないと存ずるわけであります。つまり兵隊の地位を取得するのだということにはならないということを申し上げたわけでございます。
  401. 飯田忠雄

    飯田分科員 この日赤社令の第十条を見ますと、ここに救護員の身分が書いてあるのです。そして理事員、医員とか、えらい人は将校相当官になるし、あるいは看護婦長であるとかそういう者は下士官相当になるし、「看護婦及看護員ノ待遇ハ兵ニ準ス」こうなっているのです。これは独立勅令ですよ。法律ですよ。法律でこのような規定が決めてある。法律内容なんです。これは単なるいいかげんな解釈の問題じゃありません。ですから、この問題について私はただいまのような御答弁では納得しかねるわけです。  ここに書いてある「待遇ハ兵ニ準ス」、なぜこういうことが出てきたかといいますと、陸軍病院の中で勤務しておる人たち、いわゆる昔で言いますと高等官だとか判任官だとか、そういうような人たち、そのほかに看護婦さんは召集されて、一般の人間が召集されてやってきた。そしてそこで勤務する地位は兵隊と同じ地位にするのだよ、だから給与も兵隊と同じようにそれに準じて与えるのだ。「待遇ハ兵ニ準ス」というのは別に給与とは限っていない。これは救護員の身分の問題です。そういう点を私は重大な点だと考えますが、この点についての御意見を承りたいと思います。
  402. 味村治

    ○味村政府委員 この勅令は独立勅令でございまして、旧憲法九条に基づくものでございます。ただ、旧憲法九条によりますと、独立勅令によりましては法律を変更することができないということになっております。したがいまして、恩給公務員は何びとであるかという範囲は恩給法によって決まっておりますので、その恩給法によって決められております範囲をこの独立勅令でもって変えるということは旧憲法上できないわけでございます。この勅令によります待遇と申します中には、先ほど申し上げましたように、実態等がはっきりわかりませんので、どういうものがあるのか、身分あるいは階級といったようなものもそれは入っていようかと存じます。
  403. 飯田忠雄

    飯田分科員 私がいまお聞きしましたのは、この日本赤十字社令という法律に相当する勅令、これで身分が決めてあるじゃないか。私は何もこの勅令で法律を変更するとは言っていませんよ。法律変更の問題ではない。当時の救護員の身分の問題を言うておるのです。明らかに当時の救護員は法律にかわるべきこの独立勅令で身分保障がされておる。「兵ニ準ス」と決めてある。このことを御承認なさいますかどうかということをお聞きしておるのです。どうでしょう。
  404. 味村治

    ○味村政府委員 要するに、身分も含めた待遇につきましては兵に準ずるということを規定してあるものであろうと存じます。ただ、その際に、先ほど申し上げましたように、日赤の看護婦であるという特殊性に基づくバリエーションがあり得ると思いますが、どういうバリエーションによってそういう待遇が変わるかということは、ちょっと現段階ではお答え申し上げかねますので、御了承いただきたいと思います。
  405. 飯田忠雄

    飯田分科員 じゃ、別の観点からお尋ねいたします。「戦時衛生勤務ニ服スル日本赤十字社救護員ノ取扱ニ関スル件」という陸軍省の通達がございます。これは陸軍大臣の通達なんです。この通達の中で第三条に、「宣誓シタル救護員ハ其ノ時ヨリ陸軍ノ指揮下ヲ離ルル時迄之ヲ軍属トス」と書いてあるんだね。明らかに「軍属トス」と書いてある。ところが、ここで皆さんちょっと注意していただかなければならぬことがあります。私はここでなぜこの軍属という言葉を出したかといいますと、日赤の救護員、看護婦さんは赤紙召集を受けた軍属なんです。ほかの軍属さんは赤紙召集を受けていない。赤紙召集を受けたというのは、兵隊とそれから看護婦だけなんです。そのことが私は重大だと思います。はっきりと軍属の身分を与えると書いておって、しかもそれは召集した軍属だぞということなんですね。ここにほかの軍属とは違った意味を持つし、地位があると解釈しなければならぬと思いますが、この点についてどうですか。もう時間がないから簡単にやってください。
  406. 味村治

    ○味村政府委員 軍属であるという点におきましては、恐らくそのとおりではないかと存じます。  ただ、赤紙を受けたという点につきましては、これは陸海軍大臣の方から命令がございまして、日本赤十字社の社長からの命令ではないかというように存ずるのでございますが、実態に関することでございますので、もし間違いがあったらお許しいただきたいと存じます。
  407. 飯田忠雄

    飯田分科員 この充員召集状というのは、日赤の命令じゃないのですよ。陸軍大臣が日赤の社長に出した命令、その命令に基づいて日赤の方で出したところのものです。普通の兵隊の場合でも、何も大臣の赤紙じゃありませんよ。全部市町村役場の兵事員が出したものじゃありませんか。だから、そういう意味において、日赤が出したからこれが価値がないだとかいうことになりません。明らかに、日赤は陸軍大臣の指揮下において戦時の勤務に服する任務を負うもの、こう法律に決められております。そういう点において普通の会社の社長の命令と同じように考えることは私はできない。これは明らかに軍の命令であります。この点についてそのように御認識願えるかどうか、お伺いします。
  408. 味村治

    ○味村政府委員 当時の実態に関するものでございますので、法制局から答弁いたしますのはいささか不適当かと存ずるのでございますが、当時の日本赤十字社救護員任用規則というのによりますと、救護員になりますと誓約書を出しまして、「救護員ニ任用相成候ニ付テハ貴社ノ趣旨ヲ体認シ諸規則厳重ニ相守ハ勿論召集ノ際ハ速ニ之ニ応シ救護ノ業務ニ従事可仕候也」として日本赤十字社社長あてに出てございますので、したがいましてあくまで約束と申しますか、救護員の約束は日本赤十字社に対して約束をしておるということではなかろうかと存ずるわけでございます。
  409. 飯田忠雄

    飯田分科員 ちょっとそれを見てください。命令がそれにちゃんとあるでしょう。
  410. 味村治

    ○味村政府委員 はい。これは陸軍大臣から日本赤十字の社長にあてまして、どれだけの人員を派遣してくれということを命令したものでございまして、それに基づきまして日本赤十字社の方で具体的に氏名を特定いたしまして、だれそれを救護員として召集するということを決定していたのではなかろうかと存ずるわけでございます。
  411. 飯田忠雄

    飯田分科員 日本赤十字社令の第一条に、「日本赤十字社ハ」「陸海軍ノ戦時衛生勤務ヲ幇助ス」ということが決められておるのです。陸海軍大臣はいつでも赤十字社の社長に、君のところの看護婦を陸軍病院に出せ、こういう命令が出せる。命令を受けた者はそのとおり実行しなければならぬ、それがこの赤紙なんですよ。こういうもので来ているのは兵隊と看護婦だけなんです。そういう点は御認識いただかなければならぬと思います。  いま私がここでやかましく言っておりますのは、いままでのは前段階の話なんで、これからが大事なんです。時間がないから飛ばしていきますが、こういう日本赤十字社の看護員の人たちは、明らかに日本の陸軍大臣の命令によって陸軍病院に勤務を命ぜられた、しかもそれは戦地における陸軍病院であります。そこに勤務を命ぜられました。この陸軍病院というのは、明らかに戦争で戦っておる兵隊を看護する後方勤務であります。衛生兵が勤務するところであります。だから、衛生兵と同じ仕事、同じ程度の仕事を従軍看護婦はやった。むしろ衛生兵よりもっときつい仕事をやらされた、そういう実態なのでございます。そういう実態において見ますときに、この日本赤十字社の看護婦さんは、これは召集された以上は兵隊と同じ任務に服し、兵隊と同じことをやってきたものであります。そうしますと、こういう人たちに対する現行法の解釈ですよ、昔の地位を考え、その地位からいくならば、いまの恩給法はどのように解釈しなければならぬのか、いまの恩給法はどのように改めなければならぬのか、こういう問題が生じてくるはずなんです。  そこで、私はお尋ねいたしますが、兵隊についてはいまの恩給を支給するという恩給法、従軍看護婦については支給しないという恩給法、この恩給法は明らかに性別による差別をしておると認めざるを得ないのであります。これは明らかに憲法の第十四条に反します。憲法の第十四条に反するような事態を今日まで放置しておかれた責任はどういうことになるでしょうか、お尋ねいたします。
  412. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 先生からいろいろお教えをいただいておりますけれども、私たちは旧日赤の救護看護婦の方々が兵あるいは軍人であるとは思っておりません。したがいまして、いまいろいろお話がございましたけれども、これは軍人そのものであればあるいはそういうことになるかもしれませんけれども、そういう見解でございますので、性別によってこれは区別しているわけではございませんので、憲法に違反するなどとは毛頭思っておりません。
  413. 飯田忠雄

    飯田分科員 憲法違反かどうかということは事実の問題ですよ。事実関係の問題で違法違反かどうかを見る。いまの法律が憲法違反かどうかという問題は、事実から見て憲法に違反するようになっているかどうかの問題なんです。これは御承知のように、私は何も看護婦が兵隊だとは言いませんよ。看護婦は兵隊と同じ環境に置かれた、兵隊と同じ境遇に置かれた、こういう人たちなんです。そういう人たちという事実がある。その事実に対して法律をつくる場合に、同じような待遇の法律をつくるのはあたりまえじゃありませんか。それを兵に対しては恩給を支給するといういまの恩給法、これが私は態度がおかしいと言っているのです。憲法の十四条に違反をする態度の立法じゃないか、こう申し上げたいのです。そういう点、どのようにお考えになりますか。時間がないから簡単に、私の言うことをお認め願えるかどうか。
  414. 菅野弘夫

    ○菅野政府委員 繰り返すようでございますけれども、もちろん憲法違反だと思っておりません  それから、先生いろいろ言われましたけれども、待遇は何々だ、そういうふうなものは戦前にはたくさんございまして、あるいはいまでもあるかもしれませんが、たとえば同じ看護婦さんでも、陸海軍のそもそもの雇用人である看護婦さんもおりましたし、その方々については、一般の看護婦さんについては恩給法を適用しておりませんし、それからまた文官のことで申しますと、たとえば雇いの人、雇員の人でも待遇は判任官なんだという待遇の方々がたくさんおられたわけでございますが、そういう方々についても、これは男女ともありますが、恩給法の適用をしておりません。以上のようなことでございますので、この日赤の救護看護婦の方だけを非常に性別による差別をしたということは全くないと思います。
  415. 飯田忠雄

    飯田分科員 そういうごまかす答弁をされては困るのですよ。事実関係をよく見てください。事実関係を見ていただくならば、明らかに召集された従軍看護婦、その人たちは召集された兵隊と同じような勤務に服してきたし、その期間も同じようにやってきた。非常に国のために苦労をしてきたところの広い意味における公務員なんですよ。陸軍病院に勤務するということは公務員でしょう。現在の法感覚ですよ。昔のことじゃありません。現在の法感覚でいって明らかに公務員なんです。その兵隊と同じような地位にある公務員、これにつきまして一方は恩給を支給し、一方は支給しないという現在の恩給法は、明らかに性別による差別をしておるではないか、こう申し上げるのです。もう時間が来ましたので、私はもっと言いたいのだけれどもこれ以上言う時間がありませんので、結論を言いますが、こうした明らかに憲法の保障する性別による差別をしておる恩給法は、速やかに改正をするかあるいは改正をしなければ、合憲的な解釈をしていただきたい、こう思うものであります。この点につきまして、大臣の御所見をお伺いいたします。
  416. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の日赤救護看護婦の方々につきましては、現在の恩給法によってはなかなかむずかしいわけであります。そういう意味から、先ほど来御指摘のように、任務、行動は全く軍人と同じであった、特に御指摘の点につきましては各党一致をした要求である、こういったことを踏まえまして、何らかの方法で処遇の方法を見出していきたい、こういうふうに考えております。
  417. 飯田忠雄

    飯田分科員 もう時間がありません。最後に一つだけ。  大臣のお言葉は非常にありがたいのですが、法律的にきちっと詰めませんと崩れてしまいますので私は申し上げるのです。どうか性別による差別をなくするような立法にしていただきたい。それができないなら、そういう解釈をとれるような措置をしていただきたい。これは最後にもう一回、念のためにお伺いします。
  418. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点でありますが、差別はいたしていないわけであります。先ほど申し上げましたように、いろいろ協議をいたしまして、別の処遇で解決をしてまいりたい、こういうように思っております。
  419. 飯田忠雄

    飯田分科員 時間が参りましたのでやめます。しかし、私は大臣の答弁は不満足であります。またいずれかの日にやらせていただきます。
  420. 塩崎潤

    塩崎主査 以上で飯田君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  421. 吉田之久

    吉田分科員 私は総務長官に、主としていま問題の同和対策事業特別措置法の今後のあり方について御質問を申し上げたいと思います。  きょうも御承知のとおり、この強化延長をめぐって九段会館で総決起集会がございました。私も行ってまいりました。全国から数多くの団体の代表、特に過去九年間この問題で鋭意努力を払ってこられた地方自治体の責任者や議会の代表がお見えになっておりました。大変盛大な集会でありました。しかし、何となく重たい感じの集会であったとも言えると思います。いまみんなが心配いたしておりますのは、いよいよあと一年しかないこの措置法、これが今後どうなっていくのだろうかという問題であろうと思います。  いま承りますと、先ほどの清水勇君の質問に対しまして、総務長官が大変前向きの御答弁をなさった。実は総務長官自身もこの問題の延長については決断している、しかし一部政党の中には依然として慎重論もあるので、その辺のところをさらに問題を解決しながら進んでいきたい、こういうふうにおっしゃったと承りました。  私は、その点につきましてさらに明快なお答えを聞きたいと思いますし、同時に物理的に考えまして、この措置法を延長するかしないかということを決めるべきタイムリミットというのが当然あると思うのです。前の総務長官はある交渉の席上で、五十三年中に決めます。それからまた訂正して五十三年度中に決めますということをおっしゃったようでございますけれども、仮に決まっても、ことしの暮れくらいに決まったのでは、もはや来年の予算措置ができなくなると思います。したがって、当然この問題については適当なぎりぎりのタイムリミットというものがあるはずでございまして、結論を出されるのはもちろん早いにこしたことはないわけでございますけれども、そういうタイムリミットをいつにお考えになっているか、なおまた、先ほど清水委員にお答えになりました点につきまして、もう一度詳しく御説明をいただきたいと思います。
  422. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 同和問題は基本的人権にかかわる重要な問題である、こういうように私は受けとめております。そういう意味で、この延長をするか否かという問題でございますが、しばしばお答えをいたしておるわけでございますが、総理もこの前の予算委員会の席上におきまして、延長を含めて、私もまた同様に延長を含めてと大変前向きの発言をいたしておるわけであります。ただ、政党間にまだいろいろな意見がございますので、この意見が煮詰まり次第決定をしたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  423. 吉田之久

    吉田分科員 延長も含めてというお言葉を、総理の答弁からも総務長官の答弁からも今日までの本会議委員会でわれわれも聞いているわけでございます。含めてというのは、ある見方によれば少し前向きのようにも受け取れます。しかし、厳密に検討いたしますと、大変あいまいな言葉でございます。含めてどうしようとか、あるいは可能性を含めてどうしようとかいうのが間々ある答弁でございまして、それだけでは確かな答えにならないわけでございます。  それから、総理の御答弁なんかでも、九年前この措置法ができるときの経過にかんがみまして、各党が十分話し合って決めたことでもあるので、したがって今度の延長についても各党の十分な話し合いの結果を待ちたいとおっしゃっております。私はそれはそれなりにわかります。しかし、一たんこの措置法が時限立法といえども一つの法律になった以上、しかもこの時限立法は最終的には議員立法ではなくて政府みずから提出された法律案でございましたから、したがってそういう点で、いつまでも各党の意見を聞いてその結果を見たいという考え方は、一面わかりながら、何か少し逃げ腰ではないか。政府みずからが九年間指揮してきた法律に基づく事業でございまして、したがってこれをもう法律としてやめてしまうか、あるいは引き続いて延長していくかということは、何よりもまず政府みずからが決めなければならない問題である。政府のそういう態度というものが決まる傍らにあって各党の意見はどうだろうというふうに聞かれることであるならば非常に明快でございますけれども、どうもその辺がきょうまでの答弁ではっきりしないわけであります。  いま一つは、先ほども申しましたように、そんなことを言っておりましてもだんだん時間はたっていくわけであります。したがって、最終のタイムリミットはいつなのか、その最終のタイムリミットに合わすためには、いまおっしゃるとおりのことをわれわれが肯定するといたしましても、各党の話し合いはどの時点で終わらなければならないかというふうな問題がきわめて具体的な日程に上ってくる課題だと思います。したがって、総務長官のただいまの答弁ではまことにあいまいもこといたしておりまして、私どもには納得しがたいわけであります。  ついでに申しておきますが、各党の意見、民社党もその一つの政党でございますけれども、わが党は九年前にもこの立法のために全力を挙げて前向きに参加した一つの政治勢力であります。後で申し上げますけれども、今日顧みて、まだまだその内容をさらに強化しながら延長しなければ、きわめて中途半端な問題に終わってしまうということを確認している政党の一つでございますので、そういうことも申し述べながら重ねて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  424. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えをいたします。  大体吉田委員の御質問のように、どの党という名前を挙げるというわけにはまいりませんが、相当話が急速に煮詰まりつつあるという、こういう御報告を聞いております。そういう意味で各党の意見をも参考にしながら決定をしていきたい。延長を含めてという、ここに大変意味がある、こういうふうにぜひ受け取っていただきたい、こういうふうに思っております。
  425. 吉田之久

    吉田分科員 重ねてお聞きいたしますけれども、延長を含めてということにかなりいまウエートを置いた、そういう御答弁だと了解いたしました。だとするならば、その各党の意見を聞きながら、かつ各党の意見が急速に煮詰まってきているとするならば、間違いなくスムーズに延長でき得る、そういう時間的な範囲内で政府は最終的な決断をなさることに間違いはございませんでしょうね。延長をしていく中に間違っても物理的な空白を生ずることはないというふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  426. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 煮詰まり次第その空白は絶対につくらないようにいたしたいと思います。
  427. 吉田之久

    吉田分科員 よくわかりました。では、そういう立場に立って今後総務長官がいろいろとこの問題の処理に当たっていただけることと信じまして、いろいろとさらに細部にわたって御質問を申し上げ、また私ども意見を申し述べてまいりたいと思う次第でございます。  そこで、何よりもやはり問題になりますのは、この措置法実施九年間の過去の経過を振り返ってみまして、大変多くの残事業量というものが存在するということが、これからどうしていくかということの一番大きな問題点であろうと思います。     〔主査退席、谷川主査代理着席〕  そこで、私どもがいろいろな資料を見ますときに一番腑に落ちない点がございます。それは、政府の方では約三千三百億ないしは三千二百億の残事業が残っておる。政府みずからが国費として支出しなければならない額でございますけれども、五十四年度以降、その程度の費用は必要である、こういうふうに何回か申しておられるわけでございます。しかしながら、たとえば全国の市長会が残事業額として発表いたしております額だけでも一兆五千九百八十一億だとわれわれは聞いております。それで、その他全国の町村から見た残事業額というものも二兆七千二百四十八億円ではないか。さらに、後でいろいろお聞きしたいと思うのでございますけれども、未指定地区の残事業額というものが場合によれば一兆三千七百七十億円程度ではないか。これらを合計いたしますと五兆六千九百九十九億、優に六兆円近い残事業額というものが試算されるわけでございます。政府が見ておられる残事業額というものは一兆数千億だと思います。私は政府が試算しておられるその残事業額よりも、同じ政府のもとにある全国の市長会が算定している残事業額の方がはるかに多いということは、一体どういうことなのであるか。他の町村の見積もり額とかあるいは未指定地区の残事業額は一応当然あるわけでございまして、それが幾らであるかは別といたしましても、同じ政府のもとにある市町村が見積もっている額と政府みずからが見積もっている額と、それだけでも政府の見積もっている額よりもはるかに上回る事業残があるということは、これは一体どういうことなんだろうか、どうしても腑に落ちないわけでございます。長官はその点についてどういう分析をなさっておられますか。
  428. 黒川弘

    黒川政府委員 昭和五十年に政府が実施しました同和地区調査によりましては、先生よく御承知のとおり、事業費として約一兆二千八十億、国費で七千六百億円という金額を把握しているわけでございます。その後五十年、五十一年、五十二年度、それから五十三年度につきましては予算をただいま御審議中でございますが、ここで見込まれております分を差し引きますと、五十四年度以降に約三千二百億円が国費ベースで見込まれるという状況でございます。また、御指摘の市長会等におきましては別な数字を算出しているということで、この数字につきましては私ども資料をいただきまして拝見しておりますが、たとえば市長会の算出の根拠には国のただいま補助事業としております事業以外のものをも対象として見込んでおりますので、なかなか一概には国の先ほどの調査と比較いたしがたい面がございますわけでございまして、その点に確かに食い違いがあるということはもちろん認めるわけでございますが、申し上げましたように、国の調査と比較してどうかというようなことはなかなか把握しがたいということを申し上げる次第でございます。
  429. 吉田之久

    吉田分科員 いま黒川政府委員のそれは、前にも湯山さんの質問に対するお答えの中でも申しておられるわけでございますが、私、どうも数字的に合点のいきませんのは、七千六百億から五十年、五十一年、五十二年、五十三年の計上分を引けばあと三千二百億だ、こうおっしゃるのでございましょう。ところが、そうはならないのですね。五十一年、五十二年、五十三年を引けばそうなるわけなんですね。五十年を引きますともっと減りますね。これはどちらが本当なんでしょうか。
  430. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年調査において把握いたしました金額から五十年度、五十一年度、五十二年度の予算、それから五十三年度予算、ただいま御審議中のこの数字を引きまして約三千二百億になるというふうに理解しているわけでございます。
  431. 吉田之久

    吉田分科員 そうですか。私の資料では、四十九年から五十三年までの総額は五千七百五十三億円でございますね。四十九年はわずかに六百一億円でございますから、したがって五十年から五十三年までを合計いたしますと五千億を超えるわけでございますね。七千六百億から五千億を引いたら二千六百億しか残りませんね。これはどういうことなんでしょう。
  432. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年調査事業費から五十年度-五十二年度分をまず差し引きますと、残りが四千八百十億余りになります。と申しますのは、五十年度から五十二年度までの三年度分の実施分は二千八百三十億でございます。したがいまして、いま申し上げました差し引き額の四千八百十億余りから五十三年度で予定しております約一千五百五十億を差し引きますと、三千二百億円余りが国費ベースで残事業として見込まれるという計算になるわけでございます。
  433. 吉田之久

    吉田分科員 五十三年度が一千八百四十三億じゃないのですか。
  434. 黒川弘

    黒川政府委員 一千八百四十三億はいわゆる同和関係の予算の総額でございますが、この中からいわゆる物的施設に充てられるべき金額が一千五百四十七億円余りでございます。
  435. 吉田之久

    吉田分科員 そうすると、この五十一年、五十二年に書かれている数字と五十三年の数字とは、中身の意味が違うわけでございますね。
  436. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年度から五十二年度までの実施分につきましても、これは同和関係予算のすべてではなくて、その中で物的事業に充てられるべき部分を差し引いて計算しているわけでございます。
  437. 吉田之久

    吉田分科員 その点はまた後日詳しく承るといたしまして、いま問題は、国が見ている補助事業と目しているもの以外の事業、これを市町村が随時計画していけば、そういう数字の食い違いは当然生じてくる、こういう御説明に聞くわけでございますけれども、きょうまでのこの九年間の経過の中で、あるいはこれから残されるいろんな事業推進の中で、市町村みずからが計画している事業というものは、政府が補助事業と目す、目さないは別として、一連の事業としてやらざるを得ない事業だとわれわれは認識いたしておりますが、政府はその点で、それはよけいなことをやっているのだ、それは自前でやる力があればやればいいんだという程度に認識しておられるのか。あるいは、きょうまでの九年間のこの事業の伸展を見て、そしてそういう見直しの中から、仮に措置法が延長されるとするならば、当然、補助対象事業というものを拡大しなければならない、こういう認識を持って市町村が計画している事業量を見ようとなさっているのか、ちょっとその辺のところが大事でございますので……。
  438. 黒川弘

    黒川政府委員 同和の関係でいわゆる国庫補助事業以外に事業が行われているということはもちろん承知しているわけでございますが、国といたしまして、すべての事業を国庫補助対象にするということはきわめて困難なことでございます。しかしながら、毎年予算の編成に当たりましては、国庫補助対象事業を拡大するということで、例年その拡大に努めてきているところでございまして、五十三年度予算におきましても、三事業について対象を拡大するという措置をとっている次第でございます。
  439. 吉田之久

    吉田分科員 実は、きょうも私どもの地元の方からも、各市町村長あるいは議会の代表がお見えになったわけでございますが、たとえば政府が補助事業として認めているのは、もちろんみんな了解いたしておりますけれども、実際に実施いたしていきますと、やはりそれだけではとどまり得ない、全体のバランスがあります。政府ではいろいろな基準を設けておられますけれども政府考えている程度のとおり同和地区というものが存在しているわけではございませんで、いろいろと地理的な条件とかがありまして、非常に距離がまばらになっているとか、あるいは村落の形成につきましても千差万別でございまして、そういたしますと、こういう問題を推進していくためには、ただ画一的に政府の命ぜられるままに進めていくだけでは問題は解決しない。むしろ大変地域的なアンバランスをつくったり不公平を生ずるおそれがありますので、やむを得ず基準外の仕事をしなければならない、こういうことになってきているように私は思います。そしてそれが今日の地方自治体の財政というものを大変圧迫してきているわけでございまして、これは総務長官もよく御存じのことだと思います。  この問題を今後延長して解決していくためには、やはり過去九年間に政府が指導し、また各市町村が実施いたしてまいりましたそういう経過と実績を尊重しながら延長していかないと、そしてその延長を、事実地方自治体の財政負担に十分たえ得るような内容にしていかないと、これは幾ら延長したところでますます苦しみが増すばかりでありまして、またまた途中で行き詰まり、破綻を来すおそれが非常に大きいと思うのです。  特に、ある小さい町でございますけれども、すでに地方債の額が二十億を超えておりまして、しかもその二十億のうちの十億が同和対策事業に見合う地方債で、半分でございまして、しかもその十億の地方債に対して十条適用をしていただけるものは一割にしか満たない、こういうことになってまいりますと、幾ら起債を認めていただいても、最終的にはその町や村は起債でいっぱいになってしまいまして、やがて財政は完全に破綻いたします。あるいは何とか今後続け得たとしても、その後、住民の怨嗟の的になるということが十分推測できるわけでございまして、したがってきょうまで市町村が本当に苦労しながら実施してきた経過を十分尊重しながら、そして今後の財政措置を親切に考慮しながら、この措置法を延長していく方法しか答えはないと私は思うわけでございます。この点につきまして総務長官のお考え方はいかがでございましょう。
  440. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 全く御指摘のとおりだと思っております。地方自治体等々の要望も大変強うございまして、延長を含めてという場合におきましては、こういった点も考慮に入れながら考えていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  441. 吉田之久

    吉田分科員 それから最後に、特に長官にお願いがあるわけでございます。  いまいろいろお答えいただきましたように、かなりこの問題を解決するために熱意あるお考えでおっていただけるものと私は確認いたしましたけれども、しかし同和地区の実態はさらにさらに悩ましい困難な多くの問題を抱えております。特に住んでおられる地域が非常に過密でありまして、私どもの存じ上げている地区でも、一たん火災が起こったときに消防車が入れるだろうかというふうな問題を考えましたら、本当に危険千万な状態ばかりの地域がいっぱいあるわけでございます。したがって、いま計画しておられる諸事業を仮に完成したとしても、それだけで問題がすべて解決するということにはならないと思うのです。  あるいは、就職の問題でも、依然としてなお多くの問題を残しております。私は一番根本的な解決は、就職のかきねが完全に取られることだと思います。就職のかきねが完全に取られて、本当に意欲ある青年たちが自由潤達にあらゆる産業部門で活躍できることが実現するならば、おのずからこの同和地区の問題も歴史的な流れの中で解決をしていくことになるだろうと私は思います。そういう点につきまして、今日、地名総鑑等まことに許しがたい問題が出てきているわけでございますけれども、一番責任ある総務長官として、その辺の問題、遠い将来の問題までを含めてどういう決意をお持ちになっているかということを、最後に承っておきたいと思います。
  442. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  社会的な不公平の是正、また社会的な差別、こういった問題はやはり取り除く方向として全力を注いでまいりたいと思います。  また、財政等々もきわめて大事なことでございますが、心と心の触れ合いと申しますか、最寄りの地域の住民の方々にもこの点の御理解をちょうだいいたしまして、社会的不公平の是正ということに全力を挙げてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  443. 吉田之久

    吉田分科員 ありがとうございました。
  444. 谷川寛三

    谷川主査代理 これにて吉田君の質疑は終わりました。  次に、野坂浩賢君。
  445. 野坂浩賢

    野坂分科員 総務長官にお尋ねをいたしますが、朝来から同和対策事業特別措置法の延長あるいは部落問題等に集中をして質疑がございました。そういう中で、あなたにまず確認をしておきたいと思いますのは、部落問題、同和対策、そしてこの措置法のできた趣旨、そういうことを担当責任者であります総務長官は十分に知悉をし、十分な御認識があろうかと思いますが、その認識、そのとおりに考えてよろしゅうございましょうか。
  446. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 よく認識をいたしております。
  447. 野坂浩賢

    野坂分科員 そういう認識があるにもかかわらず、同僚議員質疑の際にそういう――――というような発言があったと承知をしております。十分に承知をし、知悉をしながら、そのような発言は、担当責任者の長官としてはゆゆしき問題であろうと私は思います。そういう点について総理府総務長官、最高責任者であるあなたはどのようにその責任をとるのか、知らないで発言をしたということであればこれまた別でありますが、十分承知をしておる、その上でそのような発言をされたことはきわめて重大と言わなければなりません。その責任のとり方、たとえばどのようにされるのか、その点についてお伺いをしておきたい。
  448. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほど川本委員の質問に対して即刻取り消しをさせていただきましたが、適当でない発言をいたしましたことはまことに遺憾に存ずる次第であります。  同和問題については、この問題が憲法に保障された基本的人権にかかわる重要な問題であるとの認識に立ち、対策の推進に努めてまいっておるところでございますが、今後においても誠心誠意、一層の努力を重ねてまいる所存であります。何とぞ御理解を賜りたいと思うのであります。
  449. 野坂浩賢

    野坂分科員 同和対策事業を誠心誠意進めていきたい、それが私の責任をとる道だ、こういうふうにお考えのようでありますが、この問題については後刻理事会その他で十分議論をいたします。あなたのお考え方はわかりましたけれども、それを許容するという権利は私にはございません。一応あなたのお考え方を聞いたわけであります。  同和対策事業特別措置法はここ九年を経過いたしました。この法律に示されておりますように、「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域について国及び地方公共団体が協力して行なう」、こういうふうに明確に書いてございます。しかし、今日このような事業を進めるに当たりながら、地名総鑑の問題とか特殊部落リストとか、そういうものがわが国に出てくるというこの事態はきわめて遺憾としなければなりません。悪質になったということも一面言えると思うのでありますが、これらについて総務長官はどのようにお考えでございましょうか。
  450. 黒川弘

    黒川政府委員 地名総鑑というような問題が発生いたしましたことはまことに申し上げるまでもなく遺憾なことでございます。政府といたしましては、同和対策事業特別措置法を基本といたしまして対策の推進に努めてまいっておるところでございますが、なお一層、そういう事件が生じたということも頭に置きまして、今後対策の推進に努力すべきであるという認識に立っております。
  451. 野坂浩賢

    野坂分科員 事業はある程度進みましたけれども、そういう点については非常におろそかにされておる、こういうことが指摘できると思います。たとえば法的でないにしても、道義的にどのようにしていかなければならぬかということは、窓口である総理府の方で十分対応して、そして各省庁と連絡を密にしながらこれに対処していくというのが当然の義務だと考えております。それについてどのような対策、どのような対応を総理府関係省庁とされましたか。そしてそのようなものが刑事罰なり法的に、そういう問題があるとすればそれは措置できますが、そのような差別というものについての徹底をした措置というものができ上がっていないところに今日悲しむべき現状が起きておるということを理解されての対応策、それについてのどのような指示をし強調をされたか、お尋ねをしたい。
  452. 黒川弘

    黒川政府委員 特殊部落地名総鑑の事件が発生いたしたことに対しまして政府のとりました措置でございますが、少しさかのぼりますけれども昭和五十年の十二月には総務長官談話を発表いたしまして、認識の喚起に努めたところでございます。同じく十二月には労働大臣談話を発表いたしまして、同様、関係企業に対して反省を求めたところでございます。このほか、地方公共団体に対しましては、関係各省の事務次官名をもちましてその趣旨に立ちまして連名通知を出したところでございます。それから企業関係団体につきましても、その時期に関係各省の事務次官連名をもちまして要請をしたところでございます。  それ以外に、この問題は、国民のこの問題についての認識、啓蒙を図るべきであるということに当然つながるべき問題でございますので、政府といたしましては、総理府法務省を中心にいたしましてこの問題についての啓蒙、啓発に努めているところでございます。
  453. 野坂浩賢

    野坂分科員 いまだ不十分でありますから、今後このようなことのないような措置をされるように、特にお願いを申し上げておきます。  時間がありませんから、それらの問題を一応保留して次に進みますが、いまもお話があったように、来年の三月で期間が満了になるわけでありますから、残事業の問題が議論になっておりました。室長お話しになっておるのを聞いておりますと、大体三千三百億、三千二百億という言葉も出ますが、それだけの残事業があるというお話であります。その残事業があるということは承知をしておりますが、解放同盟の皆さんが調査をされた結果、いまもお話がありましたように、全国の市の残事業は一兆五千九百八十一億、全国の町村の残事業額は二兆七千二百四十八億、未指定の地区の残事業額は一兆三千七百七十億、合計で五兆六千九百九十九億と示されております。これについていろいろ御意見があるようでありますが、総理府総務長官はこの金額についてどのように評価をされておるだろうか、長官の御見解を承りたいと思います。
  454. 黒川弘

    黒川政府委員 昭和五十年に政府が実施いたしました同和地区調査によって把握いたしました数字は、御承知のとおり、当時、事業費で約一兆二千億、国費といたしまして七千六百億でございます。この数字自体についていろいろ御意見があるということは承っておりますし、市長会その他の団体におきましてまた別の角度からの、あるいは別な時点に立ちましての数字を積算していらっしゃるということも資料等として拝見しております。ただ、この二つの関連につきましては、対象としてとります事業等に食い違いがございましてなかなか把握しがたいわけでございますが、とにかく政府調査といたしましても五十四年度以降約三千二百億が見込まれるという認識は、当然のことながら持っているわけでございます。
  455. 野坂浩賢

    野坂分科員 私が聞いておりますのは、あなた方の三千二百億というのはわかっております。これについての、いまお話を申し上げました五兆六千億に対する評価はどうしておるのですか、どう評価しておるのですか。こんなものは検討する余地はないと考えておられるのか。どのような評価をされておるのかということを、あなたのお話はわかりましたから、長官にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  456. 黒川弘

    黒川政府委員 国が昭和五十年に実施いたしました調査につきましては、いろいろ御意見があるということは承知しております。この調査について、改めて新しい時点で調査を行えという御主張も承っておるわけでございますが、これはいわば将来における検討事項というふうには考えられますけれども、ただいまのところは、昭和五十年に行いました調査によって把握いたしました数字をもとにいたしまして対策を進めているわけでございます。
  457. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がありませんが、私が聞いておりますのは、あなた方の三千二百億というもので事業は進めておる。ここに改めて、昭和五十年ではなしに、未指定地域というようなものもたくさん出ておるという現状です。そして、同僚議員から、そういうものを踏まえて、それ以上に残事業があるということを先ほど確認をされておるわけですね。そういう点から見て、この五兆六千億というものは問答無用、この問題についていろいろと評価をすることはしない、こういう冷酷無残な言い方で処理をしようとしておるわけですか。
  458. 黒川弘

    黒川政府委員 市長会その他から、新たな視点に立った調査に基づく数字を資料としてちょうだいしております。これは、今後対策を考える上での一つの参考資料としては尊重いたしたいというふうに考えております。
  459. 野坂浩賢

    野坂分科員 それでは、各県から出された、各都道府県別に残事業はどの程度あるかということは、資料として提出をしていただきたいと思いますが、いいでしょうか。府県別ですよ。
  460. 黒川弘

    黒川政府委員 府県別の残事業につきましては、資料としてまだ掌握しておりません。
  461. 野坂浩賢

    野坂分科員 各府県別にどの程度あるかということを掌握しないで三千二百億と言うのはおかしいじゃないですか。だから、府県別に、市町村別に未指定地域を含めて同盟の皆さん方が資料として出されておる。そして、それぞれ市も町村も出しておるわけですから、それを集約して、各府県別に掌握をしなければ、これからの事業運営に差し支えるわけじゃないですか。
  462. 黒川弘

    黒川政府委員 昭和五十年に実施いたしました調査については、御承知のような数字を把握しているわけでございますが、この集計の段階におきましては、都道府県という段階での集計を行っていないものがあるということで、いま御要求の資料は持っていないわけでございますが、なお、この点につきましては、総理府だけで判断するのもなにかと思いますので、関係事業所管の各省と相談してみたいと思っております。
  463. 野坂浩賢

    野坂分科員 その辺が問題なんですよ。あなた方は、三千二百億というと各省庁別に集約をしてこうだ、しかし現実の問題としては、未指定地域その他がたくさんあった。これは否定できないわけですから、それらの点を含めて府県別に集約をしなければ実態把握ができぬじゃないか、こういうふうに私たちは承知をして、特に同盟の皆さん方が一人一人歩いて処理をされたわけですよ。それを各府県別には集約はでき得ないということであれば、もう一遍調査をしてやることが必要ではないかということに到達するわけですよ。それについては、当然やらなければならぬということに論理的になるじゃありませんか。総務長官、どうあなたはお考えですか。事務的な問題じゃなしに、政治的な問題に発展しておるわけですから、総務長官にお答えしていただかなければなりません。
  464. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  五十年度の調査は全国的に調査をいたしました。これは今後の対策を進める基本的な資料ということでございまして、事務的にはまだ各市町村別の具体的なものが挙がっていない、こういうふうに聞いておるわけであります。ただ、御指摘の問題について調査が必要であるというならば、調査をすることもやぶさかではありません。
  465. 野坂浩賢

    野坂分科員 調査が必要であるという認識の上に立って私は聞いておるわけですよ。後ろの方の事務官がいろいろなことをやらぬで、政治家の稻村長官がはっきりしなければならぬ。この問題については、たとえば同和対策室長も、参考として検討すると、たったいまおっしゃった。そうしてこのことの評価については参考とするわけですから、食い違いがあるということになれば調査をしなければならぬということに論理構成として当然なる。だから、必要であるのだ。必要であれば調査をするということでありますから、必要ですか、必要でありませんか。総務長官、どうですか。私は、必要であるかないかをあなたに聞いておるのですよ。そのくらいのことの判断は……。
  466. 黒川弘

    黒川政府委員 市長会その他におきまして、別な観点での調査を実施されまして、この結果につきましては、先ほど申し上げたように、一つの参考資料として尊重いたしたいというふうに申し上げているわけでございますが、政府といたしましては、先ほど申し上げましたように、五十年に実施いたしました調査に基づいて事業を進めているわけでございまして、この数字自体について見直す必要があるという御主張であるかというふうに受け取るわけでございますが、この点につきまして改めて調査をするかどうか、これは今後における検討事項であるというふうに考えている次第でございます。
  467. 野坂浩賢

    野坂分科員 それでは、やはり府県別に資料を提出していただかなければならぬ。その資料は提出はできない、そして三千二百億に固執をしておる。現状では五千六百億出ている、こういうことで、全くかみ合わない議論では先に進まないわけでありますが、しかし、三千二百億以上に残事業があるということはお認めになるわけですね。
  468. 黒川弘

    黒川政府委員 三千二百億は、昭和五十年における調査、同和地区数で言いますと、四千三百七十四地区を基礎にいたしまして算出いたしました数字でございます。その後、これも別の席で申し上げておりますように、地区数にいたしましても百六地区の追加報告が出ております。その百六地区について事業が実施されるということになりますと、その事業については三千二百億の前提になっております根拠数字の中に見込まれていないということは、そのとおりでございます。
  469. 野坂浩賢

    野坂分科員 百六というお話がありましたが、昭和五十年よりもっと古い、昭和十年の調査からいたしますともっと開きがあります。私は、残事業はそれ以上あるということは認められたわけですけれども総務長官にお願いをしておきますが、必要があれば調査をするということでありますけれども、現実の問題として、たくさんの食い違いがある。そうしてあなたも、できるだけ責任を持って同和対策事業推進のために全力を挙げ、死力を尽くす、こういうふうにおっしゃったわけでありますから、それらについての正当性なり調査、こういうことをぜひやっていただくように要望をしておきたいと思いますが、それに答えていただきたい、こう思います。総務長官の、一言でいいですから、御発言をいただきたいと思うのです。
  470. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 御指摘の点につきましては、検討いたします。
  471. 野坂浩賢

    野坂分科員 時間がありませんから進みますが、残事業もそれ以上にある。そして、あなた自身のあのような不謹慎な発言、そしてそれの責任を果たすために全力を傾けなければならぬ。いわゆる教育の問題も、地名総鑑あるいは特殊部落リストというようなものが出てくるという今日の現状、残事業量が非常に多いということ、そういうことを踏まえて、この措置法の強化延長は、どのように言われても延長強化をしなければならぬという結論になりますね、論理的に。  そこで、わが党は、本会議場でも質問をいたしました。その際に、福田総理大臣は「同和対策協議会、地方公共団体等の意見を十分参考にするとともに、皆さん方、各政党との間でもよく相談をいたしまして結論を得たい」という御答弁がありました。そしてあなたも、総括の予算委員会でいろいろとお話をされて、決断をするということであります。問題は、同和対策協議会も中間報告をされておる、あるいは国会議員も三百十四名にわたってすでに署名済みである、関係市町村も千四十一のうち九百十四が延長を強く言っておる、このように、それぞれの諸条件が整ったというふうに私どもは理解をしておるわけですけれども総理府総務長官は、そういう条件整備ができたと判断をして、この残事業なりあるいは今日起きておる差別発言なり、その他の問題等を含めて、延長はやるということになるだろうと思いますが、そのように御決断でございますか。
  472. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えをいたします。  延長を含めてと、まあ私は大変前向きな発言をしておるつもりでございます。ただ、一部政党の中でまだいろいろな意見がある、しかしこれも急速に煮詰められておる、こういうふうにお聞きをいたしておりますので、私といたしましては、きょうの段階では、延長を含めてと、この点は野坂委員の方でぜひひとつ御理解を願いたい、こういうふうに考えております。
  473. 野坂浩賢

    野坂分科員 委員会ですからはっきりしなければならぬと思いますが、大体煮詰まった、問題は一部政党の中で慎重論者がおるということですか、私たちが承知をしておるのには、社会党も、いまお話があった民社党も、公明党も、共産党も、それぞれ賛成であるというふうに承知をしておるわけですが、この一部政党というのは自由民主党ですか。
  474. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  一部政党、こういうことで承っておりますので、一部政党、こういうふうにぜひひとつお願いしたい、こういうふうに思っております。
  475. 野坂浩賢

    野坂分科員 私は聞いておるのですから……。ほかの党はみんな賛成であると言っておるのに、残されたのは自由民主党、あなたの所属のことですから、あなたがそれを説得をして、そして大体話が煮詰まってくるということであれば、その政党は知っておられるわけじゃないですか。知らぬのですか。一部政党とはどこの政党ですか。
  476. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いろいろ意見も急速にまとまりつつある、こういうふうに聞いております。そういう意味で、そのときには決断をいたしたい、こういうふうに思っております。
  477. 野坂浩賢

    野坂分科員 それは一部政党の一部分ですね。一部政党の中の一部の人ですか。
  478. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  いま申し上げたように、急速にその意見がまとまりつつある、こういうことで聞いておりますので、決断をしたい、こういうふうに思っております。
  479. 野坂浩賢

    野坂分科員 まとまりつつあるというのは、強化延長にまとまりつつある、その急速にというのは、大体いつごろまでというふうに御判断ですか。
  480. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 時間の問題は、いつ幾日というわけには、相手のあることでありまして、申し上げるわけにはまいりませんが、とにかく急速にまとまりつつある、それを踏まえて決断をいたしたい、こういうふうに考えております。
  481. 野坂浩賢

    野坂分科員 一部の政党の一部分の人、その意見も急速にまとまりつつあるということですが、それはどんな理由で慎重論を唱えておるのですか。それとも異論を言っておるのですか。どういう理由ですか。それを総務長官が説得をしなければならぬのに、知らぬはずがない。どういうことで異議を唱えておるのですか。
  482. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  同和対策にきわめて積極的な、好意的な一部意見があると、こういうふうに承っております。
  483. 野坂浩賢

    野坂分科員 よくわかりませんが、慎重論を唱えておるということですからそうだと思ったら、積極的に協力をするということだったら、反対する者は一人もいないじゃないですか。どうですか、総務長官
  484. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほども何回も繰り返しておりますように、政党間の意見が一日も早くまとまることを大変大きく期待をいたしております。そこで決断をしたいと、こういうふうに考えております。
  485. 野坂浩賢

    野坂分科員 おかしいですな、どうも。納得できぬな。対策協議会も公共団体も、みんな強化延長を言っておる。政党もほとんどがよろしいと。一部の政党というのは、推測するに自民党だろう。その中の一部だ。その一部分が異議を唱え、異論を言っておる。その反対の理由は何かと聞けば、そういう反対をしておる人はない。ないようですね、あなたの話では。どうかと聞くと、積極的に同和対策事業を進めようとしておる人たちだとこうおっしゃるわけですから、一人も反対がないじゃないですか。論理的にはそういうことになるんじゃないですか。まとまった、すべて世論になった、国会もそういう態勢になったということになれば、直ちに決断をしても、速断ではないということになるではありませんか。だから、決断をしなさい。もう条件はできた。条件がないというのは、どこにありますか、いまのあなたの御答弁では。どこにもないじゃないですか。
  486. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 いまお答えをいたしましたように、一日も早く各政党間の御意見をちょうだいいたしまして決断をいたしたい、こういうふうに考えております。
  487. 野坂浩賢

    野坂分科員 この同和対策事業の法案ができましたときに、佐藤総理がこう言っておるのです。「これはまだ緒についたというだけでありますし、国民全体がこの法律のねらうところをよく理解してもらわないと、なかなかいい成果を結ばぬだろう。」それから「また皆さん方も今日まで積極的に取り組まれたが、それぞれの立場の相違はあっても、大局に立つと必ず一致する。それを現実に示された。こういうことで私はほんとうにうれしいのです。」「この法律ができ上がれば、ぜひりっぱな成果をあげるように、この上とも御協力のほどお願いしたい。また政府を鞭撻していただきたい、かように思います。」と、一国の総理が言っておるわけですよ、政府は全力を挙げるようにしてやりますが、皆さんも鞭撻をして成果が上がるようにやっていただきたいと。いまわれわれはあなたを鞭撻しておるのです。残事業もあるんです。地名総鑑等の差別問題も出ておるんですと。この法律を強化延長する以外にこの法律の目標を達成することはできない。一国の総理も、そういう意味で、鞭撻をし、政府が全力を集中して引っ張ると、こう言っておるのに、われわれがやるのに、あなたは後ろ向きになって、決断はまだまだ、まとまらぬ、煮詰まらぬ、みんな積極的に賛成をしておるのに煮詰まらぬと、こういう物の言い方というものは納得はできませんね。一国の総理がそう言っておるんですよ、ちゃんと。できなければ延長せいとまでおっしゃっておるんですね、中身としては。それならば、あなた自身、政府としてはどのような考え方なのか、窓口である、最高責任者である総理府総務長官はどのようにお考えなのか、政府の見解を、すべて整っておると――政党間、政党間と言って責任をそっちへなすりつけるのではなしに、政府自体、総理府総務長官自体、あなたはどのように決断をしておるのか。やるというのか。  そして、もう一つ。時間がありませんから申し上げておきますが、私は、去年のこの予算委員会分科会で、当時藤田さんが総理府総務長官のときに質問をしております。そのときに強化延長についてこうお答えになっておる。「五十二年度中には各政党のそれぞれ担当の方と御相談申し上げて今後の措置は決定をいたしてまいりたい」、そしてまた私が質問すると、「何回も申し上げますように、国民的な大きな課題でございますから、解決をするという方向で善処いたしたい」、こうおっしゃっております。五十二年度中はあと一カ月程度ですよ。その間にやります。こうおっしゃっておるわけです。積極的に煮詰めてやります――それはやりますか。決断はその時期ですか。
  488. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほども申し上げましたように、決断はいたしておるわけであります。
  489. 野坂浩賢

    野坂分科員 五十二年度以内に決断をいたしておりますか。
  490. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 先ほども申し上げましたように、各政党間――私といたしましては決断をいたしております。
  491. 野坂浩賢

    野坂分科員 強化延長にですね。
  492. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 内容についてはその後検討を加える必要があろうかと思っております。
  493. 野坂浩賢

    野坂分科員 延長については決断をしておるということですか。何を決断しておるのですか。延長について決断をしておる、私はこういう理解をいたします。延長について決断をしておると私は理解しますが、もしそのとおりならば答弁は要りません。それに反論があれば御答弁をいただきたい。そうしなければ時間がありません。――反論ありませんか。――それでは、私の質問を終わります。
  494. 谷川寛三

    谷川主査代理 以上で野坂君の質疑は終わりました。  次に、平石磨作太郎君。
  495. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 稻村長官にお伺いいたします。  いま論議が交わされましたが、私も同和対策事業特別措置法の強化延長について大臣にお伺いしてみたい、こう考えるわけでございます。  同和対策事業特別措置法が昭和四十四年、同対審の答申に基づいて施行されてから今日まで、政府あるいは地方自治体等、この事業推進のためにそれぞれ全力を挙げてきたと思うのですが、これの解決のために大変役立ってきたかどうか、どのような評価を大臣はしておられるか、お伺いしてみたい。
  496. 黒川弘

    黒川政府委員 政府といたしましては、同和問題の解決のために同和対策事業特別措置法を基本にいたしまして諸般の対策を進めてまいったところでございまして、もちろん相当の効果を上げているというふうに評価できると思っているわけでございますが、なおこの時点におきまして問題が残っているということは承知しているところでございます。
  497. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 相当の効果は上がっておる、こういうふうに認識はいたしておりますが、まだ問題点が数多く残っておるということも承知いたしております。
  498. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 この法律の評価については、大体大臣もあるいは室長も評価をしておられる、そしてまだいろいろと問題点も残っておる、こういうお話でした。他党の質問とダブるかもわかりませんが、現在、残量といったものがどのくらいあるのか、お示しをいただきたい。
  499. 黒川弘

    黒川政府委員 昭和五十年に全国同和地区の調査をいたしまして、当時における五十年度以降の事業量を把握したわけでございますが、事業費といたしまして約一兆二千億、国費にいたしまして約七千六百億円というふうに算出したわけでございます。五十年度、五十一年度、五十二年度、さらには現在御審議中の予算において計上されておりますこの関係の予算の分を差し引きますと、昭和五十四年度以降におきまして国費として約三千二百億円が見込まれているところでございます。
  500. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 国費として三千二百億が見込まれておる、これは昭和五十年の実態調査を根拠にしたものだ、こういうお話でした。ところで、いまも論議がありましたが、この残量が五十四年に三千二百億も残ってくるということ、これはどういうことでこんなになったのですか。
  501. 黒川弘

    黒川政府委員 昭和五十年において調査を実施したときの考え方でございますが、これは必ずしも同和対策事業特別措置法の存続期間である昭和五十三年度までというふうに時間を限りませんで、昭和五十年度以降に各自治体が計画しております事業調査したという前提に立っておりますので、いま申し上げたような経過になっているということでございます。
  502. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 そうしますと、三千二百億の残というのは、五十二年度までの時限立法ということを考えなくて、五十年の実態調査に基づいて出てきた数字の残だ、こうおっしゃるわけですが、ところでこの数字は、いままで九年間政府の実施したいわゆる国費の面から見ましても、大体半分に当たる量が残っておる。いままで、四十四年から五十三年まで、今度の当初予算までを見ましても、総トータルにおいてざっと六千九百五十九億、七千億ということです。その二分の一に近い数字が残っておる。そういたしますと、先ほど大臣答弁にもあったように、三千二百億も後へ残ってくるということになりますと、これを処理するためには、やはり延長の問題に突き当たらざるを得ないということになりますか、そのように考えておりますかどうですか。
  503. 黒川弘

    黒川政府委員 五十年におきまして調査をいたしました一兆二千億は事業費でございます。国費にいたしまして七千六百億円ということは、先ほど申し上げたとおりでございます。したがいまして、五十年度以降五十三年度まで補助金の形で計上されます国費を差し引きますと三千二百億円が余るということを申し上げたわけでございますので、数字について改めて御説明申し上げた次第でございます。
  504. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 数字の上ではそう残っておるということですが、数字の上でそれだけ残っておるのであれば、やはりこれは事業に関連してくることですね。そうすると、五十四年、五十五年とこれを実施しなければ、いままで政府がつけてきた予算ベースから判断してみましても、とてもじゃないが、しまいはつかないと思うのですよ。だから、お金の問題は結局事業の問題にかかってくるわけですから、そうしますとやはり延長ということを考えなければ消化し切れない。また、答申にもありますように、また当初この法律の制定のときの趣旨から考えましても、このものを残しておくということはできないのじゃないか、そういう立場から延長というものを考えざるを得ない。大臣は先ほどなかなかシビアな答弁に終始しておりましたが、その点についてもう一言大臣にお伺いをしておきたいと思います。
  505. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  同対協の中間報告、その他各種団体の意見を聞きましても延長すべき方向である、こういうふうに私も受けとめております。そういう意味で、延長する、こういったことは決断をいたしておるわけでありますが、やはり政党樹の意見をも参考にしなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。
  506. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 大臣、延長について考えておられる、それから決意もしておられる、これはまことに喜ばしいことですが、これは政府の責任においてあくまでも解決をする、これがやはり基本になっておるわけですので、一部政党の中にそういった慎重論があったとしても、これは大臣、積極的に責任を持ってこれを説得し、そして当初四党においてつくった方向において、さらに延長について、いま時期の問題等もありましたが、早急にその作業をやっていただきたい。そして少なくとも今国会中においてそれの結論を得るように望んでおきたいのですが、どうですか。
  507. 稻村佐近四郎

    稻村国務大臣 お答えいたします。  法律の経過からいきまして、やはり各党との意見の中で生まれてまいった法律である、こういったこともよく承知をいたしております。そういう意味で、先ほど来何回も繰り返しておるわけでございますが、私としては延長すべきである、こういう決断はいたしております。各政党間の意見を聞きながら最終的な決断をいたしたい、こういうふうに考えております。
  508. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 大臣のその答弁を期待して、時間もございませんので余り詰めることもなりませんが、ひとつしっかり腹を据えて説得をし、早く結論を出していただきたい、こう要望をいたしておきます。  ところで、先ほどの残量の問題について数字が示されました。それから、この同対事業を進める上においては、もちろん特別の財政措置というものがなされておるわけでございますが、現在、現実に実施されておるそういった事業について国の国庫補助が三分の二、残り三分の一については起債でもって、さらに十条適用による基準財政需要額への算入による地方への交付、こういった形のものになっておりますが、現実の事業を見てまいりますと、そのようになっておりません。これはいままで政府が努力をしてきておるとは考えますけれども、十分なことになっていない。特にその中でひどいのはいわゆる実施単価と補助単価の差であります。これはどの事業を見てみましても、大体六割ないし七割程度しか補助単価を見ていないようですが、どういう都合でこんなことになるのか、ひとつお答えをいただきたいと思うわけです。
  509. 黒川弘

    黒川政府委員 補助対象事業の補助単価につきましては、できるだけ実情に合わせるよう毎年その改善を図っているところでございまして、五十三年度予算におきましても、たとえば保育所につきましては六・三%、住宅につきましては九・九%というような内容改善を図っているところでございます。
  510. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 ちょっと厚生省にお聞きしてみましょう。  いま六・三%といったような形で物価調整的なことになっておるようですが、私は全国的なことは余り資料として持っておりません。ただ、地元の高知のことについてちょっとお伺いをしてみたい。同和保育について高知市が昭和五十年度実施しております保育の総事業費というものが五千九百六十六万二千円。それで国の認証をもらったいわゆる認証が八百五十八万九千円。この総事業費の中には用地費が含まれておるので、用地費の三千百三十万八千円というのを差し引きましても、いわゆる建設物に対する認証が三〇・二%という形になっておるのです。これは三分の二補助というものでわずか三〇%しか国庫補助がなされていない。その一方、今度一般地区の保育園の設置について同年度で見てまいりますと、これは国の認証が五〇・八%という形になっておる。だから、一般事業の保育園設置の方がむしろこの表で見る限りは補助率が高い、こういうことが出ておるのですが、厚生省にその点お伺いをしてみたい。
  511. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 保育所の建設費につきましては、国の補助単価が実情にそぐわないといったような御指摘はかねてから受けておったところでございますけれども、従来からこの点につきましては各般にわたります改善策も講じさせていただきました。それから毎年度建築の上昇に見合うような単価の改善も図ってきたわけでございます。五十二年度におきましては、新たに補助対象としまして門とかへい等を加えました。あるいは初度調弁費の単価の改善を図る、こういったような改善を行ってきておるところでございまして、今後ともこういった点についての充実についてはさらに努力を払ってまいりたいと存じます。
  512. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 はっきり申し上げますが、朝倉に行われた若葉保育園、それから長浜で行われた長浜保育園、それから一般地区の塚ノ原、これは私いま数字を示したのですが、ただ一般的なお答えでは話にならぬ。なぜこうなっておるかをひとつお伺いしたい。
  513. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 ただいま御指摘をいただきました具体的な件につきましては、私どももちょっと資料といいますか、承知をしておりませんので、そこらの事情につきましては、ただいまお答えするという情報を持っていないわけでございますけれども、今後実情にそぐわない点については充実について努力をさせていただきたいと思います。
  514. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 この点については課長さんじきじきではなかったけれども、私は厚生省の方に話をしてある。通告を聞いておるはずですよ。だから、いま資料もございません、承知しておりませんでは、話にならぬ。私の言いたいのは、同和対策特別措置法によって三分の二というのが現実に一般より少なくなっておる。これでは残量も出てくる。事業も伸びない。そういうような、いままで同和対策事業について政府が特別に措置をする、そしてこの事業推進するのだ、責任を持って行政責任でやるのだと言っておりながらこういう結果になっておるが、これではどうもならぬじゃないか。だから、この点を私はお聞きしておるんですよ。答弁をお願いします。
  515. 川崎幸雄

    ○川崎説明員 御指摘の事例につきましては、同和対策対象地域におきます保育所の整備におきまして、相当充実した内容の保育所を整備されたという結果でなかろうか、結果的にそういうような数値になったのではなかろうかというふうに考えます。
  516. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 これは事前に厚生省へ私、指摘もしてございます。いまの答弁では納得できません。だから、これはまたさらに私、機会を見つけてお聞きをしてみたい、こう考えるわけです。  要は、このように補助金というものが三分の二と決められておりながら、実施の段階においてはこのような形になる。だから、実施単価については、それぞれの地域の特性もありましょうし、また物価の関係その他もありましょうから一概には申せませんけれども、このことは余りにもひどい。ここを指摘しておきたい。そしてこれはまた機会を改めてひとつお願いをしたいと思うのです。  それから、この共同作業場につきましても、これも厚生省の方へ私、申し上げておきましたが、やはり五八%ぐらいしか出てきていない、こういうことですよ。だから、これも三分の二という段階には至っていない。少ないのになりますと四八%しか出ていない。共同作業場も長浜と若葉と二つありますが、これも平均をとりまして五五%、こういう形での補助しか出ていないというようなことで、地方団体は非常な財政負担を強いられておるというのが現実であるということです。  だから、恐らく皆さん方のよその県もこういう状態になっておるのではないかということが考えられるわけでして、この資料を見てみますと、高知県の場合に国費が四三・二%、それから市町村の行った市単独の、いわゆる対象に入らないというものについても四七・一%。だから、同和事業を進めるについては、市町村の段階でもうすでに半分責任を持ってやっておる。それに県費を添えますと五八%というものが地方団体の負担になっておる、こういう結果になっておるわけですから、私は、今後さらに延長をして内容を強化する面については、こういった点を十分把握していただきたい、こう思うわけです。  それから、対象外につきましても、いま、門とへいが五十三年度から取り入れられました、こういう話がございました。いままで門とかへいとか、あるいは保育所につきましてもそういった施設が対象から外されておりましたが、これは取り入れられたということですが、取り入れられたとしても、補助単価がこのような状態では事業推進にはならない、こういうように考えられるわけです。したがって、この点についても十分今後の延長実施について政府部内で――最初の答弁にもございましたが、これは昭和四十四年六月の衆議院内閣委員会会議録ですが、このときに単価についてお尋ねがあっております。それを見てみますと、「予算単価を実質単価としなければならない点でございます。」そして「実質単価とせられたいと存じます。この点について、明確な御答弁を大蔵大臣より求めます。」という質問がなされております。それに対して福田国務大臣、当時の大蔵大臣ですが、「いま八木委員からお話のように、たいへん大事な歴史的な法案が、各党共同のもとに、このたび政府提案という運びになりましたことは、私も御同慶にたえません。財政当局といたしましても、この法案の趣旨が生かされるように、できる限りの御協力をしたいと思います。ただいま、具体的な問題として取り上げられました単価の問題でありますが、そういう趣旨において、実態に即するように処置をいたしますから御安心願いたいと思います。」こういう答弁がなされておる。この答弁から考えても、いまのような実施の状況ではどうにもならぬ。それから佐藤内閣総理大臣にもお聞きしておりますが、「もちろんいままで各大臣がお約束したこと、これを忠実に履行するその責任がございます。その点はもういまさらあらためて確認されるまでもないことであり、必ずいたします。」という答弁が六十一国会でなされておるわけでして、その点も十分お含みをいただいて、単価の引き上げについては努力をしてほしい、こう思うわけです。  次に、労働省にお伺いをいたしますが、同和対策事業特別措置法によって労働省もそれぞれの努力をなされておりますが、特にいまの不況、こういう長期の不況になりますと、企業はいわゆる減量経営とかなんとかいうようなことで、特に同和地区の皆さん方は不安定な職種についておられる。そして社外工であるとか、あるいは臨時工であるとか、あるいはパートであるとかいったような不安定な職種に働いておるわけですが、高知県におきましても新山本造船の倒産とか、あるいは今井造船の倒産といったようなことが過日生まれてまいりました。それで、これらの企業に働いておられる地区の方々はほとんどがそういった不安定な職種にあり、しかも、その下請企業の中にも特にこういう地区の方が多いわけです。     〔谷川主査代理退席、主査着席〕 今後こういった形で倒産がふえてまいりますと、失業という形になって出てきまして、生活はまさに破壊せられておる。これにどう対処していかれるか、ひとつお伺いしておきたいのです。
  517. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 お答えいたします。  同和地区の方々の就職の機会均等を確保する、これが同和問題解決の中心的課題であるという認識のもとに、私ども同和対策を進めさせていただいておるつもりでおるわけでございます。しかしながら、同和地区の方々の就業実態を見ますと、ちょっと数字で申し上げますと、全国平均が七・八%に対しまして、同和地区の方については、残念ながら二三・二%という非常に多くの方々が、先生御指摘のような臨時工であるとか日雇い労働者であるとかいうような不安定な就業状態に置かれておるわけでございます。このような状況から、こういう不況下になりますとどうしても不況の影響を受けまして、離職を余儀なくされる方が非常に多くなっているわけでございます。私ども、このような形で離職を余儀なくされた方々につきましては、御承知のように、先般の臨時国会で成立を見ました特定不況業種離職者対策法等によりまして一定の措置を講じたいと思いますが、さらに同和問題という観点から、企業に対する同和問題についての研修というものを強め、できるだけ雇用の機会を拡大していく。同時に、同和対策として私ども講じております就職資金の貸付制度であるとか、あるいは雇用奨励金制度であるとか、そういうような就職援護措置を積極的に講じながら、特にそのような地域におきましては、職業訓練というものを機動的に、かつ重点的に実施しながら、再就職に努めさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。  さらに、このような地域におきましては、どうしても雇用基盤そのものが脆弱でございますので、関係各省庁の御協力を受けながら、産業振興等による雇用基盤というものの整備を図りつつ、安定的な雇用の確保に努めてまいる、こういうふうに考えておるところでございます。
  518. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 いま一般的な話がありましたが、具体的にどうするかということが一番問題になってまいります。だから、そういった作業を進めていくについては、具体的にどのようにしていくかということをも私は示してほしいと思うのです。  それと、特に職場確保、生活の安定というような立場で、自治体の協力のもとに共同作業場が行われておるわけですが、これらの体質改善あるいは体質を強化するというような面からも、ひとつ労働省としても私はやっていただきたい。ここらに働いておられる地区の方々というのは、現実にいまのような時代になりますと締め出しを食いますし、さらに縫製工場その他で働いておられる方々も、その企業の体質が弱った、あるいは体質が悪化してきたというようなことから、離職せざるを得ないというような立場に追い込まれておる。それで、いま御答弁でりっぱなことをおっしゃっていただいたのですが、具体的にどうするか、もう一回お伺いをしてみたい。
  519. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 先生から具体的に御指摘をいただきましたけれども、確かにこういうような不況地域、特に同和地域におきましての雇用対策として、共同作業場というものが一定の役割りを果たしていると私ども考えているところでございます。  この共同作業場の運営につきましては、設立につきましては先ほど御指摘ございましたように、厚生省の所管でございますが、労働省といたしましては、この共同作業場に働く方々に必要な技能を十分付与したい、その技能を付与することによって企業としての健全な発展ができるようにという観点から、たとえば職場適応訓練制度というような制度によりまして、一定期間職業訓練手当を支給しながら技能を身につけていただくという方途も考えており、またこれを積極的に運営してまいりたいと思うわけでございます。  さらに、先ほど申し上げましたように、同和地区の方々は不安定な就業状態にあるということでございますので、この方々ができるだけ安定した雇用につけるようにということで、五十三年度からは安定した雇用につくための技能を身につけていただくという制度、従来の職業訓練制度とは違う職業講習制度も実施して、不安定な就業状態にある方々が積極的に技能を身につけていただく、そして安定的な雇用についていただくという対策も講じる予定にいたしておるところでございます。
  520. 平石磨作太郎

    ○平石分科員 時間が参りましたので、要望いたしておきます。  いまおっしゃられたように、特にそういった職業訓練あるいは適応訓練の手当をいただくということが従来なされております。おりますが、それらについてもさらに強化をしていただく、そして離職をした場合に、これから新たな職に再就職ということになりますと、技術的な面、技能的な面においても大変訓練が必要になってくる。その訓練期間中における手当とか、あるいは生活を支える面についても十分に配慮した手当てをしていただきたい、このことを要望いたしまして、時間が来ましたので、これで質問を終わらせてもらいます。
  521. 塩崎潤

    塩崎主査 これにて平石君の質疑は終了いたしました。  なお、先ほどの川本分科員質疑中、総理府総務長官が取り消されました言辞につきましては、会議録を取り調べの上、主査において適当の措置をいたします。  これにて内閣及び総理府所管についての質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時第一分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三分散会