○
武藤(山)
委員 私は、
日本社会党提案者を代表して、ただいま議題となりました
予算三案について動議を提出し、その理由及び概要を御説明いたします。
まず、動議の主文を朗読いたします。
昭和五十三年度
一般会計予算、
昭和五十三年度
特別会計予算及び
昭和五十三年度
政府関係機関予算については、
政府はこれを撤回し、左記要綱によりすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。
右の動議を提出する。
まず第一に、編成替えを求める理由について申し述べます。
経済の
福田を任ずる
福田首相は、就任一年にして
経済見通しの大幅な狂いを招く結果となり、不況は長期化する
情勢にあります。
福田内閣にはこれらの厳しい
経済に対処するための発想の転換も見られず、構造改革を迫る
政策のシステム化も放棄されている。
昭和五十三年度
予算編成は従来のパターンから抜け出せず、ただ公共事業費の大幅増額で、古い感覚に貫かれていると言わざるを得ない。政治家に求められる情熱、ロマン、勇気は片りんすら見られないのであります。
政府は、
予算編成に当たって広く
国民の意見を聞くと言いながら、野党党首の要求をほとんど取り入れておらず、五党共同の申し入れ事項についても配慮していない。
このため、
政府の
予算案は多くの矛盾と欠陥を持っているのであります。
一つには、
日本経済の現状を見ると、資本主義自由
経済の矛盾が多くの分野で露出をしております。したがって
予算額の膨張のみで今日の事態を克服しようとしても不可能であり、制度、構造、発想の転換が最も必要な時代となったのであります。しかしながら、
政府・自民党の
経済見通し及び
予算は旧来の惰性から一歩も抜け出ておらず、その
政策は展望のない、その日暮らしの後手後手に終始しております。
二つには、
政府が
財政運営に当たって最重点
目標としている七%の実質
経済成長は達成困難であるとともに、無理すれば物価上昇、
業種間格差の拡大など多くの悪
影響を引き起こす危険をはらんでおります。まして、今日大きな問題となっている
構造不況業種に対しては何らの救済にもなりません。しかも、公共事業支出の三四・五%増は、地方
財政の窮状、全体的施行能力などから見て消化不良となることが懸念されるのであります。
三つには、今日の緊急
政策課題となっている雇用対策として、わが党が提案した雇用創出プランにもこたえておりません。また、
産業転換についての
政策も前進が見られず、
中小企業、
農業は一層苦境に追い込まれる
予算であり、その上
円高の圧力はことしも起こりつつあり、この結果雇用不安は最悪の局面を迎える心配があり、特に失業多発地域に特別な措置が必要であるが、この点も
政府案には欠落をしております。
四つには、
政府案は
減税、社会福祉、
農業、
中小企業などに配慮が足りません。特に、酒税の引き上げ、国鉄運賃、健康保険料、大学・高校の授業料、公団住宅家賃等の値上げに加えて、石油税の新設などによって
国民負担増は一兆二千億円を超えるものとなり、庶民収奪の
予算と断ぜざるを得ません。
さらに一方、ドル減らしと不況
産業対策に便乗して防衛費を一二・四%増額し、きわめて問題の多いP3C、F15などに多額の血税を浪費することは許されないのであります。
以上のような展望なき
国民生活犠牲、庶民収奪の
予算を容認することはできません。
日本社会党は、ここに
政府が
昭和五十三年度
予算を撤回し、次の基本方針及び重点組み替え要綱に基づき、編成替えすることを要求するものであります。
次に、
予算編成替えの基本方針を明らかにいたします。
日本経済は四年間に及ぶ長期停滞が続き、倒産、失業は高水準にあり、構造不況に加えて
円高不況という二重の不況局面にある今日の
経済危機を克服するためには、中期的展望に立って富と
所得の再分配を行い、個人消費支出の増大、福祉の充実による
経済構造の転換、不公正な税
財政制度を改革する必要があることは言うまでもありません。特に、現在の需給ギャップはかなり長い期間均衡点に達しないであろうと予測されるのであり、そのため今日の
財政危機も、中期
財政計画を明示し、
計画的改革に着手しなければ打開できないのであります。
今後の
財政運営に当たってはこれらの課題に取り組むことを前提にしつつ、この三年間完全失業者百万人を超えるという深刻な雇用
情勢を踏まえ、当面の緊急課題として雇用確保、
国民生活防衛を基本
目標に置き、諸
政策を推進しなければなりません。
したがって、
昭和五十三年度
予算は、この基本
目標のもとに、次の基本方針に基づいて編成替えすることが必要であります。
なお、主な点について申し上げ、詳細はお手元の動議の文案を御参照されたいと存じます。
最初に、歳入
関係でありますが、公正公平な税制による
所得の再配分機能を十分に生かさなければなりません。特に不公平税制の是正と財源の確保が重要であります。
一つは、給与
所得控除のいわゆる青天井は高額
所得者優遇の制度であるので、控除限度額を百九十万円とする頭打ち制度を設けること。
二つは、高額
所得者、資産
所得者の課税を強化するため、
所得税の課税
所得一千万円以上の部分に対しては一〇%の付加税を課し、利子
所得、配当
所得の分離課税は廃止し、総合累進課税とすること。
三つは、会社臨時特別税を復活すること。
さらに、法人税制を改革し、大企業の税負担を強化するため、法人税率を
段階制に改める。
また、大法人の貸し倒れ引当金、退職給与引当金などを縮小するとともに、大企業が独占的に利用している準備金等は廃止する。なお、社会保険診療報酬課税の特例措置を廃止すること。
最後に、土地の含み益課税を行うため土地増価税を新設することなどで、歳入構造の転換を図る必要があります。
なお、国債については、年度末残高で四十三兆四千億円に達することにかんがみ、その発行を圧縮することが必要であります。
第二に、雇用確保を最重点
政策とし、雇用機会を創出し、雇用増加を図ることであります。
一つは、二十万人の雇用の創出を図るため、地方自治団体が雇用増大、新規雇用のための独自のプランを策定した場合には、国はそのプラン実施に必要な財源を全額保証する。特に、沖繩等失業多発地帯においては、失業者の救済、地域開発のための開発就労事業を興すことが必要であります。
二、公共事業支出は、雇用効果を重視して、生活に密着した公共施設の建てかえ等、用地買収費の少ない事業に重点を置くこと。
三、災害復旧事業は、改良復旧を基本に置き、初年度三〇%の方針にとらわれず、三年継続を二年に短縮するなど、年度内に可能な限りの工事を進めること。
四、
農業基盤整備事業を積極的に進め、雇用の創出を図る。また、沿岸漁場整備開発事業に関連する雇用対策事業を創設し、漁業離職者を優先雇用すること。
五、労働基準法等を週休二日、週四十時間労働に改正し、時短を実質賃金の
引き下げなしに実現すること。
六、失業給付日数を一律に九十日延長し、給付率を八〇%に引き上げ、広域延長、全国延長の発効基準を緩和することであります。
第三として、
国民生活防衛のため
個人所得税の
減税、社会保障の充実を進めることであります。
その
一つは、インフレによる実質
所得の目減りを補償し、あわせて個人消費の増大に資するため、
所得税
減税及び住民税
減税合わせて一兆円
減税を行う。なお、
減税方式は低
所得者層に効率の大きい税額控除で行い、住民税
減税財源は、国が地方独立税源を付与して措置すること。
二・
国民生活の防衛と年金格差の是正のために、福祉年金を五十三年四月分から月額二万円とし、五年年金、十年年金をこれに準じて引き上げる。無年金者に対して
国民年金制度による救済措置を講ずること。
三、医療保険及びその関連制度の総合的抜本的改革を図るため、差額ベッド、付添看護、歯科、薬価差額等に関する患者側の調査など、正確な実態調査を行うこと。
四、予防活動の拠点並びに健康・環境保障行政の拠点として、保健所再建五カ年
計画を策定し、保健所を再建すること。
五、高齢化社会に対応するため、国公立病院にリハビリテーション科を必置すること。
物価対策の強化については、
一、独占禁止法の適切な運用を行うとともに、独占価格、管理価格の規制、値上げに際しての原価公表の制度化等を図ること。基礎資材、日用品の在庫調査を実施する等寡占体制の監視を強化をすること。
二、物価に関する各種審議会の構成を民主化し、労働団体、婦人団体、農民団体、消費者団体、生協等の
委員を増員する。なお、
委員の創意性、発想をできる限り併記答申させ、官僚先行を改めること。
教育文化向上対策については、
一、公立高校新設について国は建設費の二分の一を補助し、起債についてはその枠を確保し、利子補給をすること。
二、私学助成をふやし、授業料の公私立間の格差を縮める。私大、短大、私立高校、幼稚園への補助率を引き上げ、学費値上げを抑えることであります。
第四には、内需を拡大して
景気回復を図るため、生活環境整備投資の増大、
農林漁業基盤の整備、
中小企業対策を強化することであります。
住宅、生活環境の整備については、
一、住宅難打開のための公的土地開発の推進、公共賃貸住宅建設用地の借り上げ方式の採用により、宅地の確保を図る。住宅公団への国費の投入、銀行住宅ローンの金利
引き下げ措置、関連公共施設への国庫補助の増額等、公共借家建設のネックの解消と
国民の高負担を解消すること。
二、上下水道、公園等生活環境整備のための投資を拡大し、文教施設、保育所、病院建設などを積極的に進めることであります。
公害、環境保全対策については、特に開発行政による公害、環境破壊を未然に防止するため、住民への手続と公開を原則とする環境
影響事前評価による開発事業規制法を制定することであります。
農林漁業の再建対策及び中小零細企業対策の強化については、
一、米問題解決のため、
一般消費拡大、酒米、給食米飯導入の拡大、酒米のアルコール添加抑制など
政府の
財政支出によって消費拡大を図ること。強権的な罰則を伴う百七十万トン減反
政策、買い入れ制限などをやめること。
二、林業の崩壊を防止し、国土と自然環境を保全するため、国有林野事業再建整備特別措置法を制定し、林野事業の健全化を図り、同時に国営分収造林法の制定、山林労働者の労働条件の改善等によって治山、治水の完備、木材の安定供給が図られるようにすること。
三、漁業の国際環境の急変に対応するため、沿岸漁業振興を図ること。
四、
中小企業向け官公需については、発注枠を当面五〇%まで拡大するとともに、受注者が下請発注を行う場合、下請単価、支払い手形等について監督する。また、競争入札指名業者の新規登録受け付けや審査制度を改善すると同時に、可能な限りの分離分割発注及び協同組合などの
中小企業者の自主的組織に対しての発注を行うこと。
五、
中小企業倒産防止共済制度への出資を増額し、連鎖倒産や販売不振、売掛金回収難による倒産など、外因性の強い倒産を防止することであります。
円高・構造不況・
産業構造転換対策としては、
一、
中小企業為替変動対策緊急融資制度による
政府系三機関の融資について、貸出金利の
引き下げ及び償還期間の延長措置を行う。また、
政府系
中小企業金融機関の既応貸付分の返済条件を緩和すること。
二、産地型輸出関連企業の非価格競争力をつけるため、技術やデザインの向上、新製品の開発に対する指導措置を行うことであります。
特に
産業構造転換対策は現下の急務であります。
その
一つは、屎尿、家庭廃棄物、畜産ふん尿、事業廃棄物を総合的に処理し、再資源化、土壌還元、再生利用、温室利用などを図る廃棄物総合処理資源化事業を国、自治体、民間で共同で行う体制を確立すること。
二、地域小
規模水力発電と地熱発電の開発を促進することは、現に
わが国にある資源の活用であり、地熱利用については、その賦存量は十億キロワットと推定されている。これに思い切った開発援助が必要であります。また、太陽、波力エネルギー利用の研究開発と実用化のための助成措置を講ずる。ソーラー施設の公共施設への積極的設置、省エネルギー施設導入に対する融資措置を行うことが重要であります。
三、住宅建設、都市再開発、プラント輸出等を積極的に促進し、知識集約型
産業の育成を図ることが必要であります。
四、
構造不況業種の過剰設備廃棄のための助成を行うとともに、事業転換のための助成を行うことといたします。
資源エネルギー
政策については、
一、省エネルギー対策を推進するため、エネルギー・リサイクル・システムの開発、省エネルギー技術開発を促進するとともに、
産業ごとのエネルギー有効利用基準の設定、低燃費交通自動車等の普及、耐久財や建築物の省エネルギー化を進める措置を実施すること。
二、総合エネルギーにおける
国内炭の位置を明確にして、石炭合理化法を廃止し、石炭資源活用法を制定し、
生産力拡大のための十分な
予算措置を図る。海外石炭の輸入の拡大を図るとともに、一手買い取り機関が行い、
国内炭とプールするなどの措置を行うことであります。
第五は、高度
成長型
財政構造を改めるため、既定経費の洗い直し、税制改革案を含む中期
財政計画を策定することであります。
防衛
関係費の削減については、防衛力整備
計画を中止し、兵器装備費、防衛増強費を計上しないこと。特に、問題の多いP3C、F15の購入費を削除すること。定員増、欠員補充を行わないこと。
不要不急経費の削減及び
予算の効率的使用については、
一、公共事業等予備費を全額削除すること。
二、高度
成長型
財政構造を改めるため、五カ年
計画で既定経費を洗い直し、初年度には五%程度の経費削減を行うこと。
三、補助金支出は、
予算補助を法律補助に改め、整理、改廃するとともに、
財政の民主化を図ること。
地方
財政対策の強化についても多くを語らなければなりませんが、一項目だけ申し上げることといたします。
一、地方交付税法にのっとり、交付税率を引き上げて総額を確保し、公共事業の自治体負担分の起債振りかえは行わないことなどであります。
財政投融資
計画の改革については、一、
財政投融資
計画の大企業
中心の運用を
国民生活優先の運用に改める。特に、主要な原資である年金積立金は主として福祉年金として活用し、社会福祉施設の整備などのため、地方自治体、年金福祉事業団等へ重点的に貸し付ける。なお、財投
計画は全体として国
会議決にすることを要求いたします。
以上、
日本社会党が提案いたしました
昭和五十三年度
予算につき撤回のうえ編成替えを求める動議の理由及びその概要を申し述べました。
これらは、多くの
国民が期待し要望するものであり、
政府はいさぎよく
予算案を撤回し、速やかに組め替えを行い再提出するよう強く要求いたしまして、趣旨弁明を終わります。(拍手)