○大内
委員 私はさきの二月十三日の
質問におきまして、実質成長率七%と並びます五十三年度の経済
運営の基本的な柱ないしは数字でございます経常収支の六十億ドルという数字が、単なる作文上の数字合わせではないかという懸念を表明をいたしました。そしてその数字の根拠を示すように政府に求めたわけであります。そして本日ここに「
昭和五十三年度国際収支の見通しについて」という政府側の資料をいただいたのでありますが、これを拝見いたしまして、残念ながら私の懸念というものが事実であったように思うのであります。恐らく
経済企画庁長官もこの国際収支見通しについて、経常収支六十億ドルは絶対大丈夫だという御確信はなかなかお持ちになれないのじゃないかと思うのです。
そこで私は、お伺いをする前に、なぜそういうふうに
考えるのかということを申し上げてみたいと思うのであります。
まず第一に、この経常収支六十億ドルという数字の算定は、これは政府が出した算定でありますが、昨年あるいは一昨年と大変な間違いを犯した算定方式そのままを踏襲されまして、単にマクロ計算に基づいてはじき出された数字にすぎないということであります。これは
経済企画庁長官もそうお思いになると思うのでありますが、たとえば鉱
工業生産指数一%が予想より狂いましても、もちろん一遍に崩れてしまう、つまりたくさんの不確定要素を前提として、その前提が狂ってしまいますと直ちにこの六十億ドルというのが崩壊してしまうという、言うなれば砂上の楼閣に立った、余り信憑性がない数字であるということが第一であります。
第二に、私が六十億ドルの基礎として求めたものは、過去の数字がどうなっているかということではなくて、その六十億ドルを形成する七八年度の輸出入の見通し、なかんずくそれは品目別の見通しというのが非常に重要なんであります。それからさらには、アメリカやEC、中近東など主要
地域の通関収支見通し、こういうものが必要であったわけでありますけれ
ども、今回政府から出されましたこの資料を拝見いたしましても、過去の実績は載っているのであります。一九七五年、七六年、七七年はどうであったということは載っておりますが、私の求めた数字というのは、むしろ七八年については大体どういう見通しになるのだろうかということをお伺いしたのですが、その肝心の数字が全く皆無である。したがって政府がここでも述べておりますように、貿易収支の三十億ドルの黒字の縮小を図る、あるいは輸出増は七%伸ばして五十五億ドル伸ばす、あるいは輸入増は八十五億ドルで十三%増を実現するといったようなそれらの数字というのは、いずれもマクロ計算でございまして、したがって積み上げられた信頼すべき数字では全くないということは、これは経企
庁長官もお認めになると思うのであります。特に経常収支六十億ドルを達成する上で重要な要素は、
一つはやはり輸出見通しなのでありますが、政府の言うように予定どおり七%に抑えられることが必要なのでありますが、それはやはり
一つは輸出プレッシャーをどういうふうに見るかということだと思うのです。その面を見ますと、内需がなかなかそう急に上がらないという情勢の中で在庫率が減らないという可能性の方がやはり強いのじゃないだろうか。もう
一つは、内需急上昇が見込めない状況のもとでは、企業の出血輸出というこれはなかなか激しい。現に繊維等を
中心にこれは相当の勢いなんであります。したがってこの輸出プレッシャーに対する見方というのがどうも政府は甘い。というごとはもうすでに数字で実証されているのです。というのは、たとえば昨年の、五十二年の十月から十二月の輸出というのは二百五億ドルでございました。このペースでいきますと、五十三年の一−三月の輸出予想額というのは大体二百二億ドル前後です。ところが、いまの実勢というのは、
経済企画庁長官もよく
御存じのとおり二百十五億ドル近辺いってますよ、いまのペース。つまり、政府が立てた五十三年の一−三月の見通しももう十億ドルも狂おうとしているじゃございませんか。これはやはりまず第一、輸出の見通しがもう春先から狂い始めている。
第二の問題は、やはり輸入の見通しだと思いますけれ
ども、輸入の八十五億ドル増を達成することは、まず主要国別の見通しというものを出さなければなりませんけれ
ども、これはもちろん経企庁の計算の
一つの方法論の中にないわけでございますから、したがってそういう主要な根拠が、六十億ドル達成すると言いながらやはり欠落しているように思うのです。思うのですじゃなくて、事実
関係がそうだと思う。それで資料は、輸出増
一三%を達成する内訳として、たとえば価格上昇分は五%ぐらいになるでしょう、数量増加分は七%ぐらいと見込んでおりますけれ
ども、その数量増加とは一体何でしょう。
一つは石油とか原材料でしょう。もう
一つは、たとえば鉄鋼みたいな主要原材料ですね。いま鉄鋼の在庫が減る条件ありますか。ないでしょう。この間、塚本
質問で半製品の
備蓄をやれと言って、では
検討しましょうと通産
大臣はおっしゃっておりましたけれ
ども、これを一挙にやるのはなかなかむずかしいでしょう。ですから、たとえばその在庫を減らす、つまり輸入素原材料の在庫率を減らすといったって、の在庫を減らすこと
一つ不可能じゃないでしょうか。とすると、輸入の
一三%増という数字もなかなか根拠が薄弱である。そういう意味から、輸入八十五億ドル増を達成するためには、たとえばこれまでの対米あるいは対ECの通商交渉
一つを見ても明らかなように、やはり相当政策
決定を必要とする。これはこの間の
委員会でも私は非常に強調したのであります。つまり、経済企画庁がやっているようなマクロ計算だけでは八十五億ドルの穴埋めというのはとうていできない。そして、もし自然の成り行きでそれをやろうとすれば、石油や原材料の輸入増でカバーしなければならない。そうすれば、アメリカやECとの貿易の不均衡、インバランスという問題がペンディングとして残って、私の見通しではまた夏ごろから再びこれが国際問題化してくるのではないかという懸念が非常に強い。そういう意味から言いますと、経常収支六十億ドルという数字は、経企
庁長官もおわかりのように、いまや国際信義にかかわる重要な数字なんでありまして、したがって、昨年の轍を繰り返すことは許されないと思うのであります。
ですから、そういう轍を繰り返さないためにも、日本が、経済企画庁が立てた経常収支六十億ドルの達成に向かって、通産省も農林省も運輸省も、政府、全官庁というものが挙げて
協力し合わなければできはしませんよ。
経済企画庁長官は、マクロの計算でできるでしょうと言ったけれ
ども、自信がないと思うのですよ。ですから私はそういう意味で、いまからでも遅くないから経常収支六十億ドルの積み上げ計算を各
省庁の
協力によって真剣に行い、この数字の信憑性というものを確立することが重要な条件だと思うのでございますが、
経済企画庁長官、
大蔵大臣の御見解をお伺いをいたしまして、私の
質問を終わりたいと思うのであります。