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金子(み)
委員 誤解しないでくれとおっしゃいましたが、誤解かどうかちょっと疑問だと思うのです。
それでは
一つ申し上げるのですけれども、最近保健所の運営が大変変わってきました。
大臣が考えていらっしゃるような保健所と違ってきたかもしれません。
一つ二つその例を申し上げてみますが、そのもとにこういうのがございます。社会、産業構造の変化に伴って過疎、過密、公害問題など、保健所に対する要請は多種多様になってきました。昔と違ってきたわけですね。ですから現行の保健所がそれらに対応しなければならなくなったのですけれども、対応し切れなくなったという分析もあるわけでございます。そういう分析に立ちますと、
日本医師会が言っておりますようないわゆる包括医療体系の中で保健所の改革を考えていくべきであるという考えが出てきているわけですね。その考えに基づいて今度の保健センターの構想も生まれたのだと私どもは考えているわけでございます。
そこで、ある県の保健所ですが、「母子保健事業を中心に
市町村へ業務が移され、四六年から保健婦駐在所をターミナル(医療保健情報収集所)の
一つとして、全県に網をはるME広域医療システムの検討と実施が着手されました。」そして、保健婦は何をしているかと申しましたら、「診療所や駐在所におかれた携帯用モニターテレビを持参して訪問し、「保健婦による医療活動の充実が図られ、医師の機能を保健婦が代行できる」」と言って、得々と学会に報告しておられるわけですね。こういうかっこうになってしまっている。
あるいはまた、ほかの県でも、「保健所業務が
市町村に移されつつありますが、同時に、県立保健所二一を一三に統廃合し、」このようにいたしております。その結果、「保健婦は情報の集め屋になり、コンピューターに振りまわされる」というような形になりつつあるという報告があるわけでございます。こういうようなことを一方で見まして、実際に保健所がどうしているかと言えば、いま対人事業、対人サービスですね、対人サービスであるところのいろいろな事業を民間の団体に移していっている。委託している。委託という言葉はいい言葉なんですが、押しつけているか任せているかわかりませんが、たとえばがん検診の問題なんかは対ガン協会、結核の問題は結核予防会、あるいは成人病の問題は成人病センター、そして各種衛生検査に関するものは検査センターをつくってそちらへ回すというふうなぐあいに、要するに保健所によるサービスというものをだんだん減らしてきて、そして何をしているかといいましたら、さっき申し上げましたような広域医療システムの実施を図っていこうというふうになっているように見受けられます。
戦後一貫して財政と人員の問題で保健所は弱体化してまいりました。このことは事実でございますから
大臣も御存じだと思いますが、だんだんとそうなってきた保健所が、先ほど来何遍も
お話が出ますように、身近な、そして頻度の高いというような言葉が使われて、そういう理由で、いま保健センターにその本質が乗りかえられるようなかっこうになっている。
大臣は先ほど移り変わろうとしているのではないとおっしゃいましたけれども、実態としては、保健所の中の大部分の、と申しますか、保健の本来の機能である対人保健サービスはなくなっていこうとしているわけですよ。保健センターに切りかわっていこうというふうになっている。こういうふうな実態があるということをお認めにならなければいけないのじゃないかと思うのです。だから公衆衛生学会の保健所問題
委員会なんかでもこんな中途半端な、健康診断のスクリーニングもできないような保健センターじゃなくて、同じ移行させるのなら
市町村に保健所の機能を持たせたらどうかという
意見も出ています。もちろん財政的な援助をした上でですけれども。そうすれば、スクリーニングだけでなくて本格的な身近な頻度の高い健康管理が可能になるのじゃないかというふうなことも言われているようでございます。そんなようなことをいろいろと考えてまいりますと、どうも保健所が弱体化され、形骸化されてきたような感じがいたします。
そこで、てこ入れをして、保健所を強化拡充するということが必要なのじゃないか。せっかくつくられようとしているこの保健センターですが、これの
指導をどこがするのかというのは問題なんです。いまの状態では、保健所には
指導、援助の能力がない。今度の構想を拝見いたしますと、保健センターの
指導につきましては地区保健推進協議会というものをつくって、それが運営をやっていくのだということでありますが、この推進協議会というのはいろいろな人
たちが入って協議会をつくるらしいのですけれども、中心的な
指導的な役割りを持つのが包括医療の名のもとに営利医療をやっておられる医師会のようでございます。そういたしますと、その枠の中で
地域保健活動をしていかなければならないようなかっこうになりますから、言葉をかえれば保健所は医師会の下請機関みたいになるし、保健婦は民間医療機関の手足にさせられてしまって、本当に住民が要求している、ニードに応じた保健活動というものはなくなってしまうのではないだろうかという心配をするわけです。そこで、そういうようなことにならないために、そうさせてはならないために、ぜひともここでしなければならないのは、公衆衛生の公共性を失わないためにも、保健所の充実強化ということだと思うのですが、保健所の充実強化に対してはどんな考えをお持ちでいらっしゃいますか。充実強化をなさるおつもりですか、どうですか。