○奥野
委員 問題のあることでございますから方針の確定が手間取っているのだろうと思いますけれども、せっかく昨年、
関係閣僚協議会も設置していただいたことでございますので、ぜひ推進していただいて、外務大臣がお述べになりましたように世界じゅうから批判を受けているようないまの態勢は、できる限り早くその誤解を解くなり、あるいは積極的に理解してもらえるような姿勢になりますことを期待いたしておきたいと思います。
いろいろ申し上げたいこともございますが、外務大臣が大変理解のある姿勢をおとりいただいているようでございますので、その御努力に私は期待をいたしておきたいと思います。
総理府総務長官はまとめ役でございますので、よろしくお願いを申し上げておきたいと思います。この手紙だけひとつ外務大臣に受け取ってもらいたいのです。
次に、在外公館の問題についてお尋ねをしたいと思います。
世界は政治、
経済その他で大きく変わりつつあります。南の北に対する影響力も漸次強くなってまいりましたし、ECの団結も強固を加えてきております。わが国が政策を決定するには、世界の情勢を的確に把握し、事態の変化におくれないように適時適正な判断を下していかなければなりませんし、時には相手国の
立場にも立って考えてみる努力も必要でございます。日米間の通商
関係は一応の決着を見たわけでありますが、そのころ外国から日本を見ますと、日本は安売りしている、ダンピングしている、そのくせ関税障壁を設け輸入抑制して国際収支の黒字幅を増大させている、黒字が世界の一方に偏らないように、そして世界の
経済取引が円滑を欠かないように苦労しているのに、日本は理解が乏しい、これでは保護貿易の主張を抑え切れない、西ドイツは黒字を利用して発展途上国への援助を厚くしているが、日本の援助は十分でない、日本は世界
経済の中に溶け込もうとしない、加えて防衛もただ取りだなどと批判されていた話を聞きました。反面、わが国では、外から円高を押しつけられている、輸出が抑圧されている、安くて質のよいものを利用し合う自由貿易に反する行動は人類の福祉につながらないとの反発も強いものがございました。
私は、このような相矛盾する風潮を見て、これまで日本の在外公館がどのような役割りを演じてきているだろうかと考えるようになったわけでございます。今日は情報過多の時代であります。海外にもマスコミや企業などの代表者もいますし、政治家相互の往来も頻繁であります。しかし、やはり在外公館が絶えず的確な情報の収集に努め、日本
政府がタイミングを失わず適時適正に判断を下せるようにする、また日本国民に世界の情勢を、海外に日本の考えを理解させるなどの任務は、依然として大切なことであります。また、国際
社会に生きる日本として、わが国の産業、
経済、防衛等の政策決定に時期を失せず果たす外務大臣の役割りは重要性を増していると考えております。また、そうした日本の政策決定のあり方でなければならないと考えているものであります。
なおまた、さきの日米通商交渉に触れて物を言いますならば、アメリカの国内にもろもろの意見が沸騰する、やがでアメリカ
政府が態度を決める、そうした態度を決定する前に、アメリカの諸情勢を日本
政府が理解し、それに対応して必要な対策を決定していく、先手を取っていく、それが政治だと思います。後追い後追いの交渉にはしない、そんなことにも役立つ在外公館であってほしい。アメリカ
政府が決定した態度を伝える以前にどのような活動をし、どのような情報連絡をしていたかということを重視したいのであります。しかし、私はもうこれ以上、さきの通商交渉を批判することはやめておきたいと思います。
戦後は、在外公館へ外務省以外の役所からの出向者が多くなりました。専門家のいることは心強いことであります。しかし、その反面、一部の在外公館では、大蔵省からの出向者は情報を日銀の出先を通じて、通産省からの出向者はジェトロの出先を通じて、有力な出先を持たない省の出向者は私信をもって、それぞれ親元の出身省に連絡する。ときには在外公館以外の場所で執務している出向者もいることがあります。大使は重要な
部分でつんぼさじきに置かれているわけでありますから、情勢の総合的な把握ができない、判断にも甘さが出てまいります。私は、縦割り行政を一切否定するものではありません。親元への通信に反対するものでもありません。しかし、同時に、横に連絡を十分とって、各分野を総合した上で大使がタイミングを失わず結論を出していくことの重要さを強く感じているものであります。在外公館は外務省の一機関ではありますが、対外的には日本
政府を全面的に代表する責任を持った機関であります。大使にはそれぞれの自覚を深くしてほしいと思います。大使は在外公館の内部はもちろん、外部についても常に横の連絡を保ち、総合的に情勢を把握して、日本
政府を代表する機関にふさわしい存在であってほしいのであります。
このような現状に対しましてある外務省のOBは、大使が出向組に責任を持たせてないのだ、大使館で重要な政策にかかる討議をする場合には出向者を加えないのだ、だから出向者が大使から離れていくんだ、大使自身に掌握力を欠いているところに問題があるのだ、こう私に教えました。また、ある外務省のOBはこれとは反対に、在外公館からの公信が少ないので出向者の私信を禁じたこともあるが、もはや何ともできない状態に陥ってしまっているのだと嘆いておったわけでございます。私は、外務省側にも、他の各省側にも、双方に責任があると言いたいものでございます。
戦前、内務省の持っておりました
府県知事の任免権を内閣に移そうという議論がありましたとき、内務省は、人事権なくして内政の責任は負えないと、強い姿勢でこれを拒否したことがありました。外務省は在外公館の人事権は全面的に持っているわけでありますから、各省からの出向者に対して、その執務の姿勢について厳しい態度をとってしかるべきだと思います。同時にまた、人材は得がたいかもしれませんが、時には大使に言論界、
経済界等から新しい血を入れ、あるいは外務省OBからも起用して刺激を与えることを考えてはどうかとも思います。在外公館の現状をどう認識し、また、その機能の充実にどう取り組み、外務大臣の職責をどのように果たそうとされているのか、お考えを伺っておきたいと思います。