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沖本委員 同和問題につきまして関連質問させていただきたいと思います。
政府の出しております「同和対策の現況」こういう中におきまして、部落における
生活の実態を明らかにする指標として、「
生活保護の状況」を発表しております。それによりますと、今日の部落における
生活保護の状況は、
関係府県、
関係市町村平均と比べて、大体五倍から八倍の高率になっておるわけです。これは
政府の発表です。しかも、六九年と七〇年とを比べるときに、
関係府県、
関係市町村平均における保護率は減少の傾向を示しておるのに対しまして、部落の場合は逆に増加の傾向を示しておる、こういうことがちゃんと載っておるわけです。こういうことは、部落における産業や労働が不安定であって、劣悪な実態にあることと密接に
関係しておるということが言えるわけです。
また、全国の部落の戸数の中で約一割を占める
企業の実態は、その大半が生業と呼ぶべきもので、きわめて零細で不安定なものであります。「同和対策の現況」に発表されている資料でも、九人以下の従業員しか抱えていない
企業が、全国平均では八五・九%であるが、部落では九一・九%に達しているわけです。
時間の都合で、つまんで
二つの点をいま申し上げたわけですけれども、こういう問題を通して
考えてみましても、人権や
生活や産業、労働、教育、また命にかかわる健康という問題、あらゆる面において、特別措置法が残しておるところのあと一年間、こういう時点において深刻な部落差別の実態が存在しておるということが、この観点からでも指摘できるということになるわけです。
総理がこの間の御答弁でおっしゃっておられたことは、相当の
効果はあった、しかし相当のものも残っておることも事実だ、こういう点お認めになっておるわけで、協議会あるいは団体とか各党の意見を聞いて今後やっていきたい、こういうお答えであったわけです。
私は、この法律をつくるときにも参画しておったわけですけれども、振り返って
考えてみますと、この法律をつくるとき、私も含めて、全体の
考え方が甘かったのじゃないか。法律をつくって施行すればいい――各大臣の答弁で十二項目の附帯決議というものがつけられて、内容を充実していくということになるにはなったわけですけれども、しかし、それもなかなか現状では実効が伴っていない、こういう点が
考えられるわけです。
それから長期計画を見てみましても、この十年計画がスタートしてから調査に入っているということですから、前期と後期五年ずつ分けたわけですけれども、前期の五年が終わって大体わかってきた。これは
政府の調査でわかったということであって、それから各省がいろいろな具体的な問題を取り上げていきだした。そういうことですから、それまでの各年においてもいろいろ各大臣に御質問もしましたけれども、まだ調査ができていないので、計画についても実態についてもまだわかってないというのが、前期五カ年ぐらいの各大臣のお答えであったと言えるわけです。そういう質問を通して言えますことは、前期五カ年計画が終わって後期に入って一、二年してから、大体
政府の仕事が具体的なものがどんどん出てきたということが言えるのじゃないかと思うのです。ですから、その十年間の幅の中を
考えてみましても、十年の時限立法がスタートしてからそのままずっと計画的に進んでいったということは言えないわけです。そうしますと、十年の時限立法の中で、それまで各年予算はついておったわけですけれども、実際に
政府の手が具体的に入っていったと言えるのは、私の
考えでは二、三年、多くて四、五年ぐらいじゃないかということが言えると思いますね。そういうことから
考えていきますと、大体十年の時限立法ですから、毎年何かの計画があって、十年間ですべての面が終わるという計画であればこそ十年の時限ということがつけられるわけですが、ところがスタート時期にはそういうものが全然見られなくて、それがどんどん進んでいって、半分以上たってやっと法律が動き出したと言ってもいいような点からいくと、当然延長しなければならない、こういうことが
考えられると思うのです。
ですから、延長することが当然であるということになるわけですし、また、この問題が出てきだしてから、むしろいままで見えなかった問題がどんどん表面に出てきだした。出てきた問題というのは、
生活保護の実態もそういう中から、同和地域という指定があって、そこで実態調査をしていくから、
生活保護を受けている人がどのぐらいおるかという
数字も出てきたわけですし、こういうものがなかったら全国平均の中で見ていっているということになるわけですから、そういう点から
考えていくと、その面でもやはり
生活保護の問題が浮き彫りにされてきた。あるいは、いろいろな問題でいろいろな図書が出ているという問題も浮き彫りにされてきている。就職についてもいろいろな問題が出てきている。こういうことで、むしろこの法律が出てきてから差別問題が具体的に出てきている。それから浮き彫りにされてきている。また、認識も出てきた。だから、よけい差別について人権擁護
委員会の方へ問題を持ち込んでいくという問題も出てきている。
こういうことになるわけですから、こういう点からも、十年の問題がいま九年まで来ているわけですけれども、その問題が移行していっている中で、むしろ十年たってみてやっとだんだんわかってきたということになるのじゃないか、こういうふうに私は
考えられると思うわけです。ですから、総理のおっしゃる相当の
効果はあったという点は、やはり後期の辺で
効果があったといえばあったと言えるのじゃないか。だけれども、法律がそのまま効力を発揮して、そして十分な
効果を得ていってということは
考えられない、こういうことになってきますと、当然延長していかなければならない問題じゃないかと思うのですね。
私の甘かったという点はどうかと言いますと、いわゆる差別の問題を解決するということになると、大きく分けて物と心の面ということが言えるのじゃないかと
考えられるわけですけれども、物の面は予算をつぎ込んで仕事をどんどんどんどんやっていけば、あるいは解決が図っていけるかもわかりませんが、心の問題はなかなか解決する問題じゃないということが言えるわけです。
この同和対策審議会の答申には、「いうまでもなく同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、
日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。」という点を指摘しているわけです。そして、「これを未解決に放置することは断じて許されないことであり、その早急な解決こそ国の責務であり、同時に
国民的課題である」、こういうふうに部落問題の解決をきわめて重大な国家的課題であると答申しているわけです。また特別措置法の第四条には、「国及び地方公共団体は、同和対策事業を迅速かつ計画的に推進するように努めなければならない。」こういうふうに規定されているわけです。
ところが、いま御指摘したとおり、長期計画はいつ出発したのかはっきりしていない。年次計画というものもなかったわけです。ですから、同和問題の解決の
見通しが全然ついていないままで現状に来ている。やっと前期で実態をつかみかけてきた、前期五カ年計画で実態がわかってきだしたという時点にあるわけですから、総理のおっしゃっておられる、協議会あるいは各団体なり地方自治体なり、各党からの意見を十分聞いてから延長するかしないかということでなしに、むしろ国の責務という点に立って、団体側の方からとか、あるいは全国の知事会とか市長会とかあるいは議会筋から、どんどんどんどん決議したり、要請したり、延長してほしいということで、いろんな
問題点を指摘しながら出てきているし、各党もいろいろその点について動いて、そして
政府に要求している。むしろ逆ではないか。むしろ、いままで申し上げたようなそういう内容からいけば、
政府の方が強化延長するというふうなことを国の責任で決めておやりになるのが筋じゃないか。そうあるべきだ。私はそういうふうに
考えるわけですけれども、総理、どんなお
考えでしょうか。