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1978-02-08 第84回国会 衆議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月八日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       伊東 正義君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       川崎 秀二君    小島 静馬君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    白浜 仁吉君       関谷 勝嗣君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷川 寛三君       根本龍太郎君    藤田 義光君       古井 喜實君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    松野 頼三君       渡部 恒三君    井上 普方君       石野 久男君    石橋 政嗣君       岡田 利春君    岡田 春夫君       川俣健二郎君    小林  進君       兒玉 末男君    新盛 辰雄君       藤田 高敏君    横路 孝弘君       坂井 弘一君    坂口  力君       西中  清君    広沢 直樹君       二見 伸明君    大内 啓伍君       河村  勝君    寺前  巖君       藤原ひろ子君    山原健二郎君       大原 一三君    小林 正巳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君         国 務 大 臣 牛場 信彦君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      室城 庸之君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         総理府人事局長 秋富 公正君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         警察庁長官官房         長       山田 英雄君         警察庁刑事局長 鈴木 貞敏君         警察庁刑事局保         安部長     森永正比古君         行政管理庁長官         官房審議官   加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         北海道開発庁総         務監理官    吉岡 孝行君         北海道開発庁計         画監理官    大西 昭一君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      奥山 正也君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁大都市圏         整備局長    国塚 武平君         国土庁地方振興         局長      土屋 佳照君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省経済局次         長       溝口 道郎君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林省食品流通         局長      犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         水産庁長官   森  整治君         通商産業大臣官         房長      宮本 四郎君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省通商         政策局次長   花岡 宗助君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         運輸大臣官房長 山上 孝史君         運輸大臣官房審         議官      真島  健君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省自動車局         長       中村 四郎君         運輸省自動車局         整備部長    犬丸 令門君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         郵政大臣官房電         気通信監理官  江上 貞利君         郵政大臣官房電         気通信監理官  神保 健二君         郵政省人事局長 守住 有信君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 小林 幸雄君         建設省河川局長 栂野 康行君         建設省道路局長 浅井新一郎君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治大臣官房審         議官      砂子田 隆君         自治省行政局長 近藤 隆之君         自治省財政局長 山本  悟君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第三局長  松尾恭一郎君         会計検査院事務         総局第五局長  東島 駿治君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正興君         住宅金融公庫総         裁       大津留 温君         参  考  人         (日本住宅公団         総裁)     澤田  悌君         参  考  人         (日本住宅公団         理事)    江里口富久也君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         参  考  人         (地域振興整備         公団総裁)   吉國 一郎君         参  考  人         (地域振興整備         公団理事)   朝日 邦夫君         参  考  人         (宅地開発公団         総裁)     志村 清一君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   石原 周夫君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   結城  茂君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月八日  辞任         補欠選任   伊東 正義君     関谷 勝嗣君   海部 俊樹君     谷川 寛三君   正示啓次郎君     小島 静馬君   岡田 春夫君     新盛 辰雄君   浅井 美幸君     坂口  力君   矢野 絢也君     西中  清君   河村  勝君     小平  忠君   小林 政子君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   小島 静馬君     正示啓次郎君   関谷 勝嗣君     伊東 正義君   谷川 寛三君     海部 俊樹君   新盛 辰雄君     岡田 春夫君   坂口  力君     浅井 美幸君   西中  清君     矢野 絢也君   小平  忠君     河村  勝君   山原健二郎君     藤原ひろ子君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十三年度一般会計予算昭和五十三年度特別会計予算及び昭和五十三年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。兒玉末男君。
  3. 兒玉末男

    兒玉委員 時間の制約がございますので、関係閣僚答弁もひとつ簡潔にお願いしますが、まず運輸行政についてお伺いします。  たくさんございますが、第一点は、問題の成田空港問題についてでございます。本年三月三十日の開港を控えて多くの懸案事項が残っておるし、この件は昭和四十一年以来十年間、いろいろな紆余曲折を経てきた課題でございますが、まず、一昨日から、言われるところの第二要塞撤去をめぐりまして大変な紛糾が起きているようでございます。この問題は、全く無抵抗の農民六人の逮捕と、それから警察側強行作戦で大変な負傷者が出ておりますが、第一点にお伺いしたいことは、一体、運輸省当局公団側は、この撤去については、その設置地点が現実にはまだ公団買い入れ対象土地でないにもかかわらず、航空法違反というたてまえからこの強行撤去を図ったことは、せっかく問題の処理が円満に進む時点でいたずらに紛争を拡大するものではないか、こういうふうに懸念をするものでございます。これについて運輸省当局。  並びに、問題処理については、A滑走路の場合のように民事的な裁判手続を通して処理ができているという教訓もあるわけでございますが、ただ強権的にやることでなくして、第二要塞の場合も、ここに法務大臣もおいででございますが、そのような法的な手続処理することは決して不可能な問題ではないと考えるわけでございますが、この二点について関係閣僚並びに公団側見解を承りたい。
  4. 福永健司

    福永国務大臣 問題の全部について私が所管するというところではございませんので、別途、所管大臣からも答えはあると思いますが、まず、今次の事態について、私は前々からいろいろ憂えるところもございまして、総評以下十幾つかの組合の幹部各位ともいろいろ話し合いをいたしまして、労使間等においてもできるだけ円満に話し合いをつけて、望ましからぬ事態の起こらないように、こういう手配をしてまいったわけであり、労組各位も大いにそういう点においては理解も示してくれておったのであります。しかし、そういうこととはまた別に、先ほどお話しのような事態が起こるに至りました。  いま兒玉さんの御説でございますと、ああいうことをせずにした方がよかったのじゃないかというようなぐあいに受け取れる節もございましたが、私どもは、開港が近づいているのであり、鋭意速やかに対処しなければならぬという見地から、それなりの熱意をもって臨んだわけでございまして、この点についてはいろいろ議論もあるところかと思いますが、何とかして三月三十日の開港に備えなければならぬ、その前の暫定輸送等についても備えなければならぬ、こういうことを総合的に判断をいたしまして、ああいうことになったわけでございます。われわれが企図するところのものは、何とかして開港に備えるように対処する、こういう観点からのことでございます。
  5. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御承知のように、今回の事犯はB滑走路南端アプローチエリア内におきますいわゆる横堀鉄塔、かように言われているものでございますが、この鉄塔の構築は明らかに航空法第四十九条の違反であることは明確でございますことと、かつまた、公団からの告発もございまして、警察といたしましては千葉地裁裁判官の適正な令状の交付を受けまして処置をいたしたところでございまして、やむを得なかった措置である、かように判断いたしておるところであります。
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 成田の御指摘の問題は、いま公安委員長から御説明のとおりでありまして、航空法違反の事実がある、こういう告発に基づいて裁判所の令状をとり、証拠保全のために捜索、撤去した、こういうことでございます。
  7. 兒玉末男

    兒玉委員 確かに、法的な手続手順を踏んでいるように思えるわけであります。しかしながら、今後成田空港開港される条件には、B、C滑走路早期着工の問題、それに騒音公害の問題、あるいは関係輸送機関の問題、あるいは利用者の足の問題、さらに燃料輸送でも当初の鉄道輸送からパイプラインに関する土地買収の問題、あるいは用地買収でもまだかなりの未解決地が残っているわけでありますから、こういうもろもろの地元情勢というものを考え、関連する客観情勢解決を図るためには、これ以上過去のような紛争を繰り返す手段が適当であるかどうかということが問題であって、その処置を誤ると、恐らく開港時点においても相当の困難が予想されます。これは国際空港でありますから、対外的な諸問題もあります。  その点の詳しい点は、時間の関係で同僚の小川議員一般質問時点で質疑しますけれども、この関連する総合的な早期解決については、やはり七千億近い巨大な国の資金を使っております。そういう高度の政治性というものがこの際強く要求をされるわけでありまして、この点について特に総理としての高度な政治判断ということが強く要求されるわけでございますが、この際、総理見解をお伺いしたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 成田空港平穏裏に順調に行われるということは、これはひとり国内の問題ばかりではない、国際社会においても要請されている問題だ、このように思うのです。  御承知のとおり、羽田空港が大変な過密状態だ、これを放置しておきますと不測の災害が起こらぬとも限らぬ、早くこの処置をしなければならぬ、そういうことから羽田空港から成田空港へと、こういう発展になってきておるわけでありますが、何せこの成田空港は、その開港というか建設に着手する、もう十年を経過しておるわけです。しかも、着工してからも六年目になりますか、そのようなことであり、御指摘もありましたが、国費というか公的な資金が数千億円投ぜられておる、こういうことなんです。  そういう中において、政府は、三月三十日を期してこれを開港するということを内外に向かって宣言をいたしておるわけであります。これに支障が出るというようなことになりますと、これは本当に国際的に見ましても重大な問題になるだろう、こういうことで、政府においても、この開港が万全の態勢のもとに行われなければならぬということで、できる限りのことをいたしておるわけですが、数えてみるとあと五十日しかないのです。五十日のそういう短い期間の中で、あの第二要塞と言われるような問題がこの上どういうふうに処置されるかということを考えますときに、たまたま航空法違反というようなことにもなっておる、この際にそういう違反措置に対する法的措置というようなことも考えなければならぬかなということになってきまして、これは万やむを得ざる措置、こういうことでやったわけです。  願うところは、平穏裏にこれが順調に開港になるということでございますけれども、時間的制約ということを考えますと、もう待っているわけにいかない、非常に政府といたしましても心焦っておる、こういう状態でございます。やむを得ざる処置として御理解願いたい、このように考えます。
  9. 兒玉末男

    兒玉委員 もともとは、この空港開港宣言の時期というのは、そういう客観的な情勢、主体的な条件に対するところの認識の不十分さがこういう混乱を起こしておる。この際、私は、空港公団総裁並びに取り締まり当局自治大臣事件処理に最終的になる法務大臣、ひとつ手順を誤らないで、法的に十分な周到の配慮をしながら問題の処理に当たることを強く要求いたします。同時にまた、その他のその後の問題については、後日小川議員がやりますので、この件はこれで一応保留のまま次に移ります。とにかく、十分慎重な配慮をしなければ三月三十日の開港は不可能ということを肝に銘じて対応していただきたいことを強く要望いたします。  次に、航空行政に関する問題として、先般の厚木米軍基地ファントム戦闘機墜落事故をめぐりまして、この事故処理の問題について大変な疑問と不満があります。もちろん、これは所属はアメリカ空軍でございますけれども、被害を受けている横浜市民としては耐えがたい苦痛があります。  この事故報告書の作成の問題、あるいは事件当時の刑事責任追及の問題、さらにまた、これに関連する組み立て工程の問題、整備問題等について、飛鳥田市長からも強い要望がありました。事後処理としては、過密上空の航路を変更する問題、一定限度の以下は飛行させない問題、こういう問題の処理を誤りますと大変な問題が起きますが、これについての対応と見解をこの際明らかにしていただきたい。
  10. 金丸信

    金丸国務大臣 死者を出し、また負傷者も出し、多くの被害をあの厚木事故で出しましたことにつきましてはまことに遺憾で、私は心から、亡くなられた方に対しては冥福を祈り、負傷者の一日も早い回復を祈っておるわけでございます。  この究明につきましては、分科会をつくりまして、いわゆる専門家また民間専門家あるいは部内専門家等を入れまして、その詳細な調査を終わり、日米合同委員会の合意も得たわけでありますが、詳細につきましては政府委員から答弁をさせます。
  11. 亘理彰

    亘理政府委員 お答えいたします。  九月二十七日の米軍機墜落事故につきまして、鋭意、日米間で検討究明を続けておったわけでございますが、去る一月二十四日に事故分科委員会報告合同委員会で承認いたした次第でございます。  そこで、この原因究明の段取りにつきましては、日本側としても独自の調査検討を行うために専門的、技術的な知識が必要でございましたので、民間学識経験者及び部内専門家に委嘱いたしまして、これはいままでに例のないことでございますが、検討の体制をしっかり整えまして吟味をいたしたわけでございます。この専門家のグループは、米側説明資料を参考といたしまして、さらに厚木におきまして事故機エンジンその他の部品を調査し、また若干独自の実験も行い、また技術的事項につきまして日米双方専門家同士の討議も行いまして、これらの結果から、日本側としましても、本件事故原因左エンジンアフターバーナーのライナーの組み立て不良であるということを確認した次第でございます。  そこで、問題は、この後の再発防止対策でございますが、これにつきましては、第一点は、この事故の直接の原因となりましたアフターバーナーライナーの組みつけ不良の防止策でございます。これにつきましては、米軍はすでに組みつけ作業の際の注意事項を加え、また、組み立ての各段階で強力な白日光を使用いたしまして点検するということを内容とする作業手順の手引き、テクニカルマニュアルと申しますが、その改正をいたしております。  それからまた、部隊の整備施設、海軍及び海兵隊の整備施設に対しまして、このライナーの組みつけ不良から起こります結果並びにそれに対して緊急措置として先ほどの手順の改正を行ったわけでございますが、そういう対策の実施の必要性を述べた整備技術書を参考として配付し、さらに組みつけの作業工具を新たに検討いたしまして、これを備えるというふうな措置を講じておるところでございます。  それから、第二点といたしまして、事故分科委員会報告で、厚木周辺の航空管制の再検討が勧告されておるわけでございますが、この点につきましては、現在、厚木飛行場から出発いたします航空機の進入管制を担当いたします米軍の横田基地と、それから厚木飛行場の航空管制を行っております海上自衛隊の厚木基地との間におきまして、このレーダー誘導の経路につきまして飛行の安全に最大の考慮を払う、それから人口稠密地帯の上空をできる限り避けるということを主眼点といたしまして、現在鋭意検討いたしておるところでございます。一部試行を始めておりますけれども、そういうことで検討を進めまして、速やかに結論を得るように目下努力いたしておるところでございます。  それからさらに、この種の事故が起きました後の事後の対策につきまして、同じく事故分科委員会報告におきまして、基地ごとに事故が起きた場合の緊密な連絡調整に努めるようにという勧告がございますが、この点につきましては、私ども施設庁施設局が中心となりまして、基地ごとに関係の米軍、自衛隊あるいは警察、消防、自治体等の間で緊密な連絡体制を従来に増して整えるように、現在検討、準備を進めておるところでございます。
  12. 兒玉末男

    兒玉委員 防衛庁の対応するそれは一応了としても、九名の死傷者が出ておるわけです。これらの人たちの被害者の補償なり、刑事責任の追及なり、そういう問題の処理は今後一体どうするのか、その点をひとつこの際明らかにしていただきたい。
  13. 加藤武徳

    加藤国務大臣 御指摘米軍機墜落事故は、まことに残念な事故でございました。  そこで、公務中の事故であり、したがって、地位協定に基づきまして第一次裁判権は米軍側にあるのでありますけれども、警察といたしましては当然捜査の責務を持っておるのでございまして、鋭意捜査をいたしておるところでございます。同時にまた、真相の究明をいたさなければならぬのでありまして、航空機の専門家が中心になりましての意見の取りまとめができたのでありますが、専門家でありますだけに真相究明の上には大いに参考にいたす点があるのでありますが、しかし、あくまで刑事責任につきましては徹底して究明いたす、かような決意でございます。
  14. 兒玉末男

    兒玉委員 防衛庁に関連する問題としてもう一つ。  先ほど質問の中から外しましたが、成田空港に米軍の郵便施設を置くということで問題が提起されております。この点も当初の予定から経過を見ても、そういう施設は一切設けないということが地元と協定されていることを聞いているわけですが、特に担当責任の公団総裁並びに防衛庁、郵政関係はどういう対応をするのか、明らかにしていただきたい。
  15. 金丸信

    金丸国務大臣 米側から成田空港開港に当たりまして郵便取扱所を設置したいという要請があります。それにつきましては、ただいま先生のおっしゃったような問題もあるようでございますが、人道上の問題からいってもこれは設置すべきものじゃないかと私は考えておるわけでありますが、ただいま、関係機関と折衝をして一日も早く決定をいたしたい、こう考えております。
  16. 大塚茂

    ○大塚参考人 郵便取扱所の設置の問題につきましては、公団といたしましては、地元に対しまして、その計画をいたしておりませんという答弁を、四十六年と記憶いたしておりますが、いたしておりまして、現在までその方針に変わりはございません。
  17. 兒玉末男

    兒玉委員 先ほど防衛庁長官は各機関と協議するということを言っておるが、公団総裁は、直接の責任者として、聞いてないというようなごまかしでは通用しませんよ。これをどうするのか、はっきりしてください。
  18. 大塚茂

    ○大塚参考人 聞いてないわけではございません。私どもとしては、そういう要求が四十六年ごろから米軍からあるということは聞いておりますけれども、公団としては、それに対して場所を提供するというような計画は持っていない、目下のところ持っていないということでございます。これが地位協定上どういうふうになるかということは政府の問題でございまして、公団としては、ただ場所をそれの決定に従って提供するかしないかということだけを決めればいい問題だというふうに考えております。
  19. 兒玉末男

    兒玉委員 ひとつ運輸省並びに防衛庁、この点しっかり肝に銘じておいていただきたい。  やはり航空行政に関連する問題で、これは成田空港にも関係があるわけですけれども、問題の日米航空協定でございます。  これはたしか昭和二十七年に結ばれた問題でありますが、乗り入れ地点あるいは以遠権あるいは相互関係の供給対策、こういう点で大変な不平等、不公平が指摘されております。イギリスは、バーミューダ協定による不平等、不公平を、昨年の七月でございましたか、当初協定を破棄し、それを背景に有利な協定締結に持ち込んだという歴史的な具体的事実もあります。日本の場合は、航空協定といい、後で触れます日米経済交渉をめぐる肉類あるいはオレンジ輸入の問題等の経済戦争など、多くの問題が指摘されております。  聞くところによりますと、この航空協定交渉が三月に再開をされるそうでございますが、運輸省当局は、もう少し国益を尊重するという立場から考えても、当然この改定は、アメリカ側の要求をまるのみしないで、堂々と不平等、不公平を指摘しながら、公平なる協定が締結されるべきである。この点については外交上の問題もございますので、この際、運輸大臣と外務大臣の見解をお伺いしたい。
  20. 福永健司

    福永国務大臣 ただいまお話しの点については、御指摘のような、やや日本に不利な不平等等があることは多くの人の言うところでありますし、私もそういう感じでございます。そこで、いまお話しのように、三月にもあるし、またその後にもあることになりましょうが、その種の折衝等に当たりましては、わが日本としては積極的に国の利益、国民の利益を念頭に置いて折衝に当たるべきものである、そういうふうに思います。
  21. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおり、航空協定は乗り入れ地、以遠権の問題で不平等でございますので、昭和五十一年十月以来交渉をやっておりますけれども、この交渉は、わが国と米国との言い分に相当隔たりがあって、相当厳しいものがございます。先ほど言われましたとおり、三月再開の予定であります。イギリスの場合の廃棄のことなども言及されたようでありますが、日本とイギリスは立場は違いますものの、少なくともそういうような決意を持って、厳然としてこの交渉に当たる決意でございます。
  22. 兒玉末男

    兒玉委員 特に運輸大臣と外務大臣はこの航空協定の内容について相当勉強されていると思うのですが、たとえば一つの例としては、五十年の統計でも、日米間における航空収入は、アメリカ側は千七百七十億、日本側は八百七十億、この格差はさらに拡大しております。なお、日本からの訪米が七十五万、アメリカ側からの訪日が二十四万、恐らくこの数字も、三〇%の差が開いているという点等から考えても、この不平等、不公平をこの数字が明らかに示しておるわけです。これらの数字を根拠に今後の航空協定改定にはひとつ強い姿勢で臨んでいただくことを私は要望しまして、次の交通政策に入りたいと存じます。  第一点は、特に国内の交通の大きな問題である国鉄再建に関する問題でございますが、特に前国会で基本方針が確定され、運賃法定主義が緩和されたわけでございますが、現状から見ますと、五十一年度九千億、五十二年度八千億、五十三年度八千百億という累積赤字が見込まれます。五十三年の予算の展望を見ますと、この中で二千五百五十億の値上げを含めての予算構成がなされております。今日の国民経済の現状から、果たしてこの二千五百五十億という膨大な値上げによるところの増収が可能であるのかどうか、その見通しについて一体どういう見解を持っているのか。こういう情勢からも、当然私たちは次の問題提起をいたしますので、運輸大臣、自治大臣、大蔵大臣等の見解を承りたい。  第一点は、二千五百五十億の達成は可能なのかどうか。一昨年の値上げでも予定の六%しかできなかったという具体的事実があります。  第二点は、ローカル線の助成等が五十三年の予算でも、これは地域に協議会組織を設けて対応するということでございますが、少なくとも三分の一程度の対策では当然赤字路線、ローカル線の解決はできない。とするならば、自治体の受益者負担の問題、国からの助成の問題等は一体どうするのか。  第三点は、公共負担の見直しについては、昨年の国会で運輸委員会の決議として、当時の田村運輸大臣もこれを明確に答弁しておりまするが、今年の予算でもこの見直し対策が全然実行されておらない。これはもちろん財政上の問題もございますが、第三点として。  第四点は、やはり二兆五千億という膨大な累積赤字が見込まれております。といたしますならば、もちろん企業努力の問題あるいは国鉄全体の問題、そしてまた総体的な開発行為等の問題を通じて全職員が努力するところでございまするが、何と言いましても、さっき申し上げた二点の問題あるいは過去債務の問題等が積極的に処理をされなければ、五十五年度を目標とするところの問題解決は困難ではなかろうか。これからのエネルギー問題を含め、地方交通線の対策問題等も含めながら総合的な国鉄再建についての見解。  さらにまた、これは国鉄の問題でございますが、五十二年から五十五年までに約六百の貨物駅を合理化、集約します。ここで扱うトン数は大体三千五百トンから四千トンの貴重な貨物でございますが、下手をしますと、せっかくの経済性を考慮した貨物駅廃止が結果的には地域住民に不利益を与え、そして、せっかくの貨物がよその機関に逃げてしまうという悪い結果をもたらすことが多分に懸念されるわけでございますが、これに対する対策。  さらには、この前石橋書記長から運輸大臣あるいは建設大臣に指摘されましたところの国鉄の財産管理、処理についてもまだまだ収益性が十分考慮されるじゃないか。こういう関連事務についての対策をどう具体的に進めようとしているのか。  さらにまた、今回国鉄にも工事関係等々の予算がついております。二万一千キロという全国にそのネットを張っている国鉄の、特に基盤的な整備である線路保線ということについて、利用者から相当苦情が出ております。東北線、山陽、東海についても、余りにも動揺が激しい、振動が激しいという苦情。安全、的確、迅速、このような基本である基盤整備等については、やはり国の公共投資的な立場からの配慮があってしかるべきではないかと思うのです。  以上七点について、あなたの見解をお伺いしたいと思います。
  23. 福永健司

    福永国務大臣 幾つかの点について御意見の御開陳があり、御質問がございました。  運賃の改定につきましては予算上ある種の見積もりをしておることはそのとおりでございますが、果たしてこのとおりに国鉄が私のところへ上げてくるかどうかということは、また国鉄からもお答えをさせますが、御指摘のような大きな改革がなされた後でもございます。したがって、国鉄の赤字を解消するという上での積極性が当然必要でございまして、予算のごとき考え方でということは私どもも考えておるのではございますが、直ちにもってそれだけ運賃を値上げするということとは多少違うわけでございます。それの具体的実現ということにつきましては、これから国鉄当局ともよく相談して前進をいたしたいと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましてもある程度の値上げは考えざるを得まいというように私自身は考えております。  ローカル線の補助につきましては、いまおしかりもございまして、私も本当はもっと補助をさせたいというところではございますが、まあ最近のような法律改正等もあった直後で、財政当局もわりあいに一生懸命めんどうを見てくれましたので、今度は予算に示されているようなことになりましたが、なお今後とも一層これを増す方向へ進ませたい、そういうように考えます。  それから、いろいろの点についてお話がございましたが、貨物駅の問題につきましては、最近具体的に駅名等も示して、若干後の分も現地とも相談をいたしておるわけでございますが、国鉄の合理化という観点からはぜひこうしたいということと地域住民の要求というものは必ずしも一致をしない、そういう場合においてどうするかということでございます。私どもといたしますと、国鉄の公共性にも大いに考慮を払った措置も講じていかなければならない。その辺の調整をただいま急いでいるところでございます。  国鉄全従業員とともに関係者全部が努力をして、二兆五千億の赤字等についてもよく頭に置いて対処すべきであるという観点から、総合的な御意見の御開陳等もございました。もとより国鉄関係者全部がそういうことを頭に置き、特に政治の責任者は一層そうあらねばならぬと思います。そういう観点から、国鉄におきましても現実的ないろんな問題も大いに努力をするとともに、先を見た意味での努力もしなければならない。そういう観点から、まだ一般には余り多く伝わってはおりませんけれども、現在のようなエネルギーだけを使っているのでなくして、たとえばリニアモーター、これは磁石を使う――私も原理は余りよく知らないのでありますけれども、話を聞いてみますと、この種のものは世界のうちで日本の国鉄が一番先頭を行っているようでございますけれども、早く実現させて、これによる恵沢が国民全体に及ぶということになると大変結構なことだと私は考えております。現在の新幹線二百二十キロぐらいのスピードを五百キロぐらいには軽くできるというような話のようでもございますので、ぜひこれを急がせたいというようなこと、これはほんの一例でございます。この種のことに大いに意を注いでまいりたいと思うわけでございます。要するに、国鉄の公共性と、同時に公共性あるがゆえに赤字でいいというのでは断じてない。これを全部で合理化していく。この両方の要請を満たしていかなければならぬ。  あとのことにつきましては、政府委員等からお答えを補わせることにいたします。
  24. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいまお尋ねがございました中で、一つ、東北線あるいは山陽線で車両が揺れると申しますか乗り心地が悪いという御指摘がございました。これは私どももそういうふうに考えております。いろいろな原因があるわけでございますが、現在のように百二十キロ運転というのを始めましたのが昭和四十三年からでございました。約十年を経過いたしたわけでございますが、やはり九十キロ運転から漸次スピードを上げてまいりましたことと、しょっちゅう列車が走りますいわゆる走る頻度が高まってまいりましたことの影響がいろいろの面で出ておるわけでございまして、三、四年前からいろいろな角度から対策を講じております。  まず、路盤を強化するということであるとか、あるいは車両構造について漸次改善を加えるということだとか、いろいろやってきておりますが、これまでしばらくの間むしろだんだん悪い方へ向いておりましたのが、やっと横ばいのような状態でここ一、二年推移するようになったという状況でございまして、まだ上向きといいますか、よくなる方向までなかなかいっていないという現状でございますので、各路盤も、車両も、あるいはその他の面につきましても、少しずつではございますが、原因究明しつつ直すという方向に進んでおるわけでございます。  それから、貨物の駅の問題でございますけれども、約六百弱の駅を縮小いたしまして隣の駅へ集めるということで進めておりますが、このことは、その駅でいま荷物を載せていただいておりますお客様には当然御迷惑がかかるわけでございますけれども、その結果、全体といたしまして、ただ人手が少なくて済むというだけではございませんで、やはり到達時分も早くなるわけでございます。各駅にとまっている場合と、そしてまた、そこでつないだり離したりしている場合と比べますと能率のいい輸送ができるわけでございますから、遠距離のA地点からB地点までの輸送時間が短くなるわけでございますので、廃止駅のお客様にはどうしても多少とも御迷惑がかかるわけでございますけれども、全体として見ますと、むしろサービスは向上する面が大いにあるわけでございます。その意味で、単にコストダウンと申しますか経費節減と申しますか、そういう角度からだけでなくて、全体として見たサービスが上がるということも考えられるわけでございますので、私どもとしては各地域の御理解を得てこれを取り進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  25. 福永健司

    福永国務大臣 公共割引の問題について、いま国鉄の総裁は立場上それは言わなかったのかもしれません。私から補っておきたいと思います。  この種のものの性質によりまして一概には申せませんけれども、私といたしますと、いずれにしても公共割引というようなことで国鉄に大きな負担をかけるということについてはどうしても再検討しなければならぬ、そういうように考えておりまするし、その種の意をくんだ閣議了解等も行われておりますが、まだ予算等にあらわれてきてはおりませんが、できるだけ早く関係閣僚会議でも設けてこれに対処する方途を打ち出すことが必要であろう、こういうように考えております。
  26. 加藤武徳

    加藤国務大臣 国鉄ローカル線はもとより地域と密着をいたしている路線でもございまして、地域住民や公共団体が非常な関心を持っておりますことは当然なことでございます。そこで、公共団体といたしましては、たとえば近代化計画等につきましては公債の消化等に積極的に協力をいたしてまいりましたり、あるいは貨物駅の集約や無人化等につきましては出すべき意見は積極的に出してまいりますけれども、その必要性がはっきりいたしました場合には積極的に協力をいたす、かような体制をとってまいっておるところでございます。  ただ、だからといって公共団体が直ちに国鉄に公的な負担をなし得るかといいますと、それはなかなか困難なことでございまして、なるほど昨年十二月二十九日に閣議了解をみました国鉄再建の基本方針の中には、「公的助成を含む所要の対策を講ずる。」かようには書いてございますけれども、日本国有鉄道の性格からいたしましても、また地方財政の今日の厳しい状況からいたしましても、直ちに直接的に負担し得る状況ではないのでございますから、この点は御了解いただきたい、かように存ずる次第であります。
  27. 村山達雄

    ○村山国務大臣 国鉄の再建の問題は非常に長年の問題であり、かつ非常に大きな問題でございます。国会の御協力を得まして、昨年の末、国鉄再建に関する基本方針が決まったことは兒玉さん御承知のとおりでございまして、財政当局といたしましてはその線に従って考えているわけでございます。  すなわち、国鉄は不採算部門についてみずからできるだけ努力をして直す。また、昨年、運賃の法定化をある制限をもって外されまして、これが運輸当局の合理的な判断に任されたわけでございますから、運賃改定の適正化もまた期待しているところでございます。同時に、それらで賄えないところは財政的な助成をやっていく、この三本柱でございます。  そこで、具体的に申し上げますと、まず赤字問題でございますが、五十年度までに発生しました二兆五千四百億、これは御案内のように二十年間で元利均等で国が補てんいたしますということに決まっているわけでございます。その後、五十一年、五十二年、五十三年、年々七千から九千億ぐらいの赤字が出ているわけでございますが、この処理につきましては収支均衡時点までこれから策定するわけでございますが、その点については、運賃改定では残念ながらやれないことになっていることは御承知のとおりでございまして、国鉄の努力と助成でやる、これもまた決まっているところでございます。その間の利子補給につきましては、これはいま国が持っているところでございます。  赤字ローカル線、これが大きな問題でございまして、これから国鉄がどういうふうにその改善をやるか。最後に、恐らく適正な負担を求め、合理化をしても、なおかつ構造的欠陥として――どうしても適正な負担を求めてもなおサービスをしなければならぬのかどうか、これが大きな問題点の一つであろうと思うのでございまして、現在、運輸省における運輸政策審議会においてこれは検討されているところでございます。しかし、国といたしましては、五十三年度予算におきましては、それはそれといたしまして、以上の基本方針に従いましてできるだけの助成をしているところでございまして、赤字ローカル線についても六百五十六億円ぐらいやっているところでございます。  なお、先ほどお話のありました、国鉄の事業をやるときの関連公共事業につきましても、今年度から新たに予算を計上して何とか助成をやりたいということでございます。  いずれにいたしましても、これらの問題は、やはり受益者も利用者も、また国鉄みずからの合理化も、同時にまた国の財政も、これから根本的にこの五十三年度、五十四年度にかけまして検討いたしまして、国鉄の再建に当たらなければならない。非常に大きな問題でございますけれども、何とかその方向に沿いまして解決を図ってまいりたい、これがいま財政当局が考えておる、また希望しておる念願でございます。
  28. 兒玉末男

    兒玉委員 再度、運輸大臣と自治大臣、経企庁長官にお伺いしたいわけですが、運輸大臣は、今度国鉄が二千五百五十億は全面的に値上げするということではないという意味のことを言われましたが、恐らく値上げをするとするならば、言われている二千五百五十億という金額は六月期一四%が基準になっているわけであります。その問題について一体どう処理するのか。  それから経企庁長官にお伺いしたいことは、今日の国民経済の実情から推して、これは国鉄が上がれば、必ず私鉄、航空運賃の値上がりに波及することは必至でありますが、国民がこれに対応するだけの負担能力があるのかどうか、それについての見解。  さらに自治大臣と運輸大臣には、いま答弁されましたローカル線対策と公共負担については、前前からの国会の決議でもあるし、少なくとも今年度じゅうにはその方向を明らかにすべきだ、こういうように感ずるわけであります。公共投資の波で三百五十億の、当然線路を敷いても赤字だという路線がはっきりしております。この点についても負担区分等が明確にされないと、せっかくの線路の新設が回り回って国鉄につけが回ってくるということになりますと、同じことの繰り返しではないか、その辺についての歯どめをはっきりする必要があると思うのですが、これについての財政当局並びに運輸、自治大臣見解をこの際明らかにしていただきたい。
  29. 福永健司

    福永国務大臣 私が先ほど二千五百億余の金額との関連において申し上げましたゆえんのものは、運輸当局自体が値上げを打ち出すという立場でもございませんが、しかし、責任は大いにあるわけでございまして、国鉄の意見を求めて、この意見を大いに検討してまいらなければならないという意味で、その金額そのままとは申し上げがたいがということを申したわけでありまして、これだけ出すつもりはないという意味では必ずしもございません。いろいろ検討した結果、この辺が妥当であろうというような措置をとっていきたい、こういうように思います。  なお、三百五十億の方の話でございますが、私どもといたしますと、いろいろ事情はよく承知いたしておりますが、何としてもやはり公共性ということについては、私どもの立場は大いに意を用いていかなければならない。したがって、財政当局の意見等ともこれを調和するということに努力してまいりたいと考える次第でございます。
  30. 加藤武徳

    加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、地方団体といたしましては、国鉄再建のためにいろいろの面での協力は惜しまないことでございますし、これからもまた努めてまいるつもりでございます。  ただ、膨大な国鉄の赤字を埋めてまいります処置といたしましての昨年十二月二十九日の閣議了解事項がありますことは、御承知のとおりでございまして、その中に「公的助成を含む」云々、かような文言がございます。そこで、地方団体においてもしかるべき負担をしてはどうか、かような意見のございますことはよく承知をいたしておりますが、地方団体もきわめて厳しい財政状況下に置かれておりまして、五十三年度におきましても三兆円を超えますような財源不足が生ずる、かような状況でございます。かような財政状況からいたしましても、また、国鉄本来の性格からいたしましても、いま直ちに地方団体が応分の負担をいたすことはきわめてむずかしいことであり、そのことはまた了承が願えておる、かように存じておるところでございます。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国鉄、私鉄とも、ただいまの段階では関係省から御協議を受けておりません。けれども、私どもとしましては、基本的には、経営が合理的に行われているということを前提に、やはり原価主義、適正利潤というものを考えるべきではないかと思っております。ただ、その際、児玉委員が御指摘のように、国民生活全体との関係も十分に考えてまいらなければなりません。そのとおりでございますから、御協議を受けました段階で私どもの考え方を関係省に申し上げたいと思っております。
  32. 兒玉末男

    兒玉委員 国鉄問題で最後に総理にちょっと見解を伺っておきますが、いま関係大臣が努力することを言われたわけですが、いつまでもこれをほっておきますと赤字がふえて、もうにっちもさっちもいかない。しかしながら、二万一千キロの国鉄路線というのは、一日といえどもこれを、乗る人がいないから走らせないというわけにいかないわけです。そういう非常に高度の公共性があることを十分理解しながら、今後の財政処理も十分御配慮いただきたい。  同時にもう一つは、常に総理が、本年は公共投資が多いからその波及効果が多いということを言われるわけですが、たとえば建設部門あるいは国鉄関係等におきましても、この関係の工事費というのが大手の企業にほとんど吸収されて、地方に転在する中小の企業にこれが均てんしないうらみがあるわけであります。たとえばABCDとかいうランクづけがあっても、大手が名を変え品を変えて中小の企業に食い込んでいく。国鉄の場合でも五者協定というような協定を大手の企業が結んで、地方の中小企業の進出が阻まれている。こういう現状が具体的に指摘をされておるわけですが、せっかくの公共投資がそういう地域に広範に均てんするための関係企業のいわゆる調整、と同時に、最初申し上げた国鉄財政の処理問題について、最後に総理見解を承りたい。
  33. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、国鉄はこれからの国づくりの上で相当重要な役割りを演じていくのではないか、少し長目にながめてみますると、やはり大量輸送機関は非常に重要な役割りを演ぜざるを得ない、そのように思うわけであります。今日まだそこまで段階が行かないものですから、なかなか苦しい国鉄ではございまするけれども、私は、決して国鉄の将来というものに暗い見通しを持っていないのです。明るい展望を持っておる。その国鉄、この際何とかひとつそういう時期が来るまでつないでいかなければならぬし、また、そういう重要な役割りを演ずるための基礎ごなしをここでしておかなければならぬ、こういうふうに思うのです。  そういう意味から言いまして、私は、昨年の臨時国会におきまして、各党の協力のもとに国鉄再建についての基本方針というのが決められた、政府でもそれを閣議決定いたしておるわけですから、これは大変よかったと思うのです。一つレールが敷かれたというふうに思うのですが、要は、そのレールの上に国の諸施策を皆さんの御協力のもとにうまく滑らせていく、こういうことだろうと思いますが、こういう認識を持って国鉄再建には取り組んでまいりたい、かように存じます。  それから、今度は公共事業だという昨今の社会要請、また経済的立場からの要請、それにこたえまして、国鉄につきましてもその一環といたしましていろいろなことをやるのですが、それを執行する上におきましては、事業の性質上そう細かに割ったりできない部面が非常に多うございます。大きな橋梁でありますとか、あるいはトンネルだとか、それがいま非常に多いのです。そういうことにつきましてはなかなかむずかしい面もありまするけれども、できる限り中小の、またローカルの企業家、こういう方々に工事が均てんされるようには最大の配慮をしてまいります。
  34. 兒玉末男

    兒玉委員 時間の都合もありますので、次に進みたいと存じます。  あと、運輸関係で二、三点残っていますが、総合交通対策ということが非常に叫ばれておりますが、問題の一番焦点は、人口の集中する都市交通政策の大変な立ちおくれであります。というのは、現在のこのような交通機構を決定する基本理念というのが、地上権の上に立った事業者の申請をたてまえとするといういわゆる申請前置主義、これが古来の観念であります。そこで、これをいろいろと法的に規制しているのが鉄道営業法、地方鉄道法あるいは軌道法あるいは道路運送法。鉄道営業法は明治三十三年、地方鉄道法は大正八年、軌道法は大正十年、道路運送法が戦後制定されて、三十年の歴史であります。こういうような既成の法律から、今日のモータリゼーション、社会情勢の変化に対応するような法体系になっておらないわけであります。  特に、都市交通等の場合においても、先般、兵庫と大阪の間に中量軌道システムという初めての試みができました。これ等につきましては建設省と運輸省がなわ張り争いをしまして、建設省は軌道法がたてまえ、運輸省は地方鉄道法がたてまえで、真ん中から折半して工事を進めるといういびつな状態です。さらにまた現在、東京、大阪、横浜、名古屋、札幌、それに加えて京都、神戸、福岡等において地下鉄の整備が進められておるわけでございますが、これらについても、高度の公共事業でございますから、当然、国からのいま一段の補助額を引き上げた中で都市交通における機能が完備されるべきではないのか。これのすべてが、地下鉄は下をもぐっているから、当然レールを敷いて走るから鉄道法の適用を受けるべきであるにもかかわらず、なわ張り争いから、道路の上であろうが下であろうが、とにかくこれは建設省の所管だと、こんなおかしな話はないわけであります。その結果、工事が進まない。同時にまた単価が非常に高い。東京の地下鉄等は一キロメートルに三百億という巨大な金を投資をしなければできないという現状から考えましても、地方鉄道法、軌道法あるいは道路運送法等関連の法律を改正し、もう少し弾力性と機動性のある法律運用ができるようにすべきではないのかというのが第一点。  第二点は、高度の公共輸送の立場から考えましても、これらの機関を整備するのは――今日、地方公営企業は大変な赤字であります。しかし、これとても自治体が四苦八苦の状態であるわけでございますが、何といいましても、こういうふうな地方交通、都市交通の最高の責任は国にあるということをこの際十分理解をすべきではないのか。  第三点につきましては、御承知のとおり、このような都市交通を完備するために、あるいは整備するためには各企業間のセクトをやめて、国が前向きの姿勢でこの問題に取り組んでいくべきだ、いわゆる企業者の申請をたてまえとするこの方向から脱却をすべきではないのかということ。  それから同時に、補助率の問題をとりましても、すべてが、法律に基づく交通関係の補助ではなくして、要綱だとか、各省間の覚書とか、こういう点で補助金行政が行われているところにも大きな問題があります。たとえばアメリカ等の場合は、一九六四年、六六年、六八年に都市大量輸送法あるいは都市大量輸送補助法という法律を立てまして、これを根拠に公共交通の維持改善に努力をしております。そして助成の場合でも、たとえばイギリスなりアメリカなり、こういう先進国におきましては、常に六〇%以上の補助あるいは五〇%の国庫補助でやっております。日本の場合は形式的には四〇%程度の補助でありますが、これが政府側の出資なり補助が六年間という長期にわたる関係から、当然、関係する企業が金利償還まで負担しますと、驚くなかれ、実質的な国からの助成は一割そこそこという貧弱な状況に置かれているのが今日の都市交通に対する国の政策の実態であります。  その点から考慮いたしましても、私はこの際、運輸省、建設省等がこの問題の前近代的な法律の改正を思い切って断行すべきだと思うのですが、この四点についての関係各省の見解をこの際明らかにしていただきたい。
  35. 福永健司

    福永国務大臣 都市交通等について該博なる知識を御開陳をいただきましたが、今後ともいろいろ教えていただきたいと私は思っておるわけでございます。  最初にお挙げになりました点で、建設省と運輸省がなわ張り争い等をしているという御指摘でございますが、これは一部、ともに熱心であるからということがあったと思うのでございます。ですから、ともに熱心なのは結構だが、なわ張り争いにならぬように建設大臣ともよく協議をいたしまして、善処いたすことにいたしたいと思います。  大きく御指摘になりました中で、この種のことについては新たなるセンスを持って臨め、非常に古い法体系等のもとで、これの適用下にいろいろ問題を解決しようというのに間違いがあると、世界のいろいろの実例をお挙げになりましてのお話でございましたが、私は、原則的にそういう気持ちを持って対処すべきものであると、こういうように考えるわけでございます。この法改正等につきましては、相当大きな作業にもなりますし、私は研究させていただくことにいたします。いたずらに延びてもなんでございますが、これは若干時間がかかるということを御了承いただきたいと思います。  第二点の、地方公営企業が容易でないという点についてのいろいろなお話でございますが、全くそうだと思うわけでございます。これも先ほどからの答弁等で自治大臣等の話も聞いておりますが、よく相談をいたしたいと思います。  第三に、各企業間にかなり露骨なセクトがあって、これを廃止していかなければならぬというようなことで、補助率、助成等についての実例等を触れつついろいろとお話がございましたが、大いに参考にしていきたい、こういうように思うわけでございますが、最も大きな、先ほど触れました古い法制を新しい時代に適用することについて特に考えた措置をとれというお話につきましては、私も大いに研究をさせていただくつもりでございます。
  36. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 御意見拝聴いたしました。  建設省としては道路の維持管理の責任を持っておるわけでございます。そこへ軌道を敷く、あるいは地下に地下鉄をやる、こういうことになりますると、われわれの責任上から当然そこに意見が出てくることは、もう常識的にも判断ができることだと思うのです。  時代の進運に応じてということを考えますと、昔は道路は歩くだけ、それがいまでは自動車、それからトラック等の重要な輸送ということで道路の構造も著しく変化をしてきておりまするから、したがって、上の軌道、また地下の軌道、それぞれに対して私どもとして十分対応していかなければならぬということは御理解をいただけるものと思うのであります。いたずらになわ張り争いで地域住民に御不便をかけるような、そういう問題を起こしてはならないと思いますけれども、私どもの立場もまた御理解をいただきたいと思います。
  37. 兒玉末男

    兒玉委員 そんなあいまいな答弁答弁になりませんよ。もう少し真剣に考えていただきたいですね。  総理と大蔵大臣に聞きたいのですが、先ほど申し上げたように、都市交通が非常に混雑をしている十大都市。だから地上に通せば、いま建設大臣が言うように、これはおれの所管だ、あるいは物件の買収費がかかる。それでは空の方を走らせよといういわゆるモノレールも、これは建設省の所管だ。これは、交通というのは当然一元化すべきですね。しかも道路輸送は国が大体三分の二の補助金を出している。こういう大事な、公共性の高い、市民の利用の高いところの地下鉄なり都市交通には補助金の率が低い。とするならば、地下鉄、路面電車、あるいは先ほど申し上げた中量軌道システム、乗り合いバス、デマンドバス等については、この際広く国民の声を十分理解して、どういう方法が一番国民の足としての期待に沿えるかという、もう少し利用者の声を聞く機関をつくりながら、このような法制的な一元化の方向にこの辺で踏み切りをつけないと、交通緩和の問題、交通政策は前進しません。まさに百年河清を待つに等しいですよ。総理、大蔵は、むだな金を使わないで、公平に、投資効果があるように、この際ひとつ魂を入れかえさせてこの問題に取り組んでいただきたい。  補助金行政も法律に基づいてやるべきであって、運輸大臣と建設大臣がまあこういうふうにしようやという単なる覚書では困りますよ。法的な要綱、法的な根拠に基づいたところの補助金行政にこの際改革をすべきだ。この点について総理と大蔵大臣の見解をお伺いします。
  38. 村山達雄

    ○村山国務大臣 大都市交通の緩和の問題は非常にむずかしい問題でございまして、いま児玉さんがおっしゃったような各種の問題を含んでいるわけでございますが、一つは、どういたしましても利用者の声を聞くことがやはり大事な問題だと思っております。  大量輸送という観点から申しますと、私の私見でございますけれども、やはり輸送効率は鉄道の方が高いと一般に言われております。しかし、同時にまた、鉄道の方は一度敷きますとやはりこれは固定化する。仮にそれが不採算部門になりましても、ある人員を張りつけ、いろいろなことをいたしますから、どうしてもそれが固定化する関係があるわけでございます。これはあえて大都市交通に限らずその傾向が見られると思うのでございまして、それぞれ一長一短でございます。したがって、どこまで将来大量輸送が見込まれるか、将来の見通しにおいて計画を立ててどちらを選択するかということを、関係各省庁集まりまして、総合交通体系の立場から長期的な観点で選択すべき問題で、非常にむずかしい問題であろうと私は思っておるのでございます。  なお、補助金について法定化したらどうかという御意見でございます。ごもっともでございますが、何分にも西欧諸国のようにすべてが、社会資本そのものが成熟した社会ではございませんことは当然でございまして、いま激しく変化しておる日本であるわけでございます。そういったことを考えますと、いずれの時期にかその法定化という問題は日程に上ってくると思いますけれども、変化の激しいときには、やはりそれぞれ関係省庁が集まって、その間の暫定的な処理の仕方として予算措置でやるのもやむを得ないのかなと、基本的には児玉さんの御意見のようにしたいものとは思っておりますが、その点も若干検討させていただきたい、かように思っておるわけでございます。
  39. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 たとえばモノレールのように、運輸行政という立場、また道路行政というような立場が交錯する、重複するというケースが間間あるわけでありますが、それに対して運輸行政当局あるいは道路行政当局が責任を感じ、関心を示す、これはそうでなければならぬと私は思います。しかし、さらばと言って、その結果二重行政になる、あるいは重複行政になるということになって、国の経費の使用が非効率になったり、あるいは利用者の不便というようなことを来したり、そういうことになっては、これはなお困ることでございますから、そういうことがないように重複行政の調整をしていく、これは非常に大事なことじゃないか、このように思います。  御指摘の点はまことにごもっともだと思いますので、そのような方向で善処いたします。
  40. 兒玉末男

    兒玉委員 運輸大臣、あんたは交通の元締めでございますから、先ほど申し上げたような総合交通体系ということは、いつの予算委員会でも運輸委員会でも、やります。やりますと言っておるわけですが、やらないわけですね。いま申し上げましたような具体的な提起した問題について、やはりこの際、立法措置についてひとつ関係各省と協議して、早急に総合交通体系に対応する法体系の整備に努力すべきだと思うのですが、どうですか。
  41. 福永健司

    福永国務大臣 御鞭撻ありがとうございます。その気持ちで努力いたしたいと存じます。
  42. 兒玉末男

    兒玉委員 時間もかなり迫りましたが、やはり運輸行政の中で、とにかく造船、排ガス規制、沖繩交通法定の三つの問題がありますが、ひとつ答弁は簡潔にお願いします。  御承知のとおり造船関係では、運輸省の船舶局の予算では、建造能力一千九百万トンに対して大体六百五十万トン程度のいわゆる操業勧告であります。三分の二が仕事を休む。当然ここに働く労働者あるいは臨時労働者が職を失うということが明々白々であります。これに対応する対策は一体どうするのか。  それから、先般、船舶関係につきまして、ソ連の漁船の整備に関しましていろいろと問題が提起されておりますが、これに対して政府側が一項から七項目の「ソ連の漁船修理に関する日本側条件」というものを出されております。これは恐らく外務省なりあるいは運輸省、農林省も得ていると思うのですが、こういうふうな七つもの厳しい条件をつけますならば――実際に漁船の破損とかいうものは突発的に起きる事故が多いわけでありまして、これが恒常的な修理と違うところに意味があるわけであります。今日、日ソ関係は、この前、外務大臣も大変苦労されているわけでございますが、今後の友好関係を進める上においても、加えて日本の船舶事業はきわめて深刻な状況下に置かれているこの際、できる限り大幅な処理で、緊急性を含めながら漁船修理に対するところの対応策を緊急にとることが、不況対策の一環としても十分対応できる問題ではないのかということが二点。  第三点は、いまイギリスで、今週からでございますが、世界の海を汚しているタンカー船の構造の改善についての論議が展開されております。これは御承知のとおり、タンカー船のいわゆる油を持ってきた後、その内部を洗って、その排水を海に捨てる。これが海洋汚染に大きな影響を与えております。今度の国会でも、農林水産委員会にこの海洋汚染に関連する法律も出ておるようでございますが、その点からも、この際、タンカー船の改造に対応するところの二つの改良方式があるそうでございますが、もちろん海運業界も不況でございますから、当然、海洋汚染という高度の立場から、これらのタンカー船のいわゆる構造改善について積極的な取り組みをすべきではないか。  この三点について関係省の見解をお伺いしたいと存じます。
  43. 中川一郎

    ○中川国務大臣 ソビエト漁船のわが国寄港の問題につきましては、いろいろと議論のあるところでございます。  御指摘のように、緊急といいますか、修理を容易にしてやることは非常にいいことではないかと、一見そう見えますが、第一番目に考えなければなりませんことは、それではソビエトの方が日本の寄港を認めておるのか。これは寄港を認めておらないわけでございます。なぜ一方的に日本だけが寄港を認めなければならないのかということでございます。  なお、漁民感情として、そういう中にソビエトの漁船が漁獲をする上に非常に有利な条件を与える。今日漁村の厳しいときでございますから、そういった漁民感情も配慮をしなければならないということでございますから、門戸は開きたいとは思いますが、今日の漁民あるいは水産の現況から言って、そう簡単に門戸を開くというわけにはいかない。  しかし、前向きの御指摘でもありますから、今後双方の話し合いで、両方の漁民が満足できるような方向で研究はしてまいりたい、こう思う次第でございます。
  44. 福永健司

    福永国務大臣 汚染防止と関連して、いわゆるSBTの問題等につきましては、ただいまちょうど世界の会議もやっておりますが、すでに七万トン以上のものにつきましてはSBT構造にするということにはなっておりますが、まだ必ずしも明確にされてない小さい部分がございます。これらについては今度の会議で結論に到達するであろうというような見通しもあるわけでございます。  私どもといたしましては、先ほどお話しのごとく、海洋汚染を防止しつつ油の輸送に万全を期す、こういう観点から対処いたしたいと存じます。
  45. 兒玉末男

    兒玉委員 大臣、船舶不況に対する三分の一の操業短縮ということ。船舶については、操業度に対して三分の一しか運輸省は予算を組んでないわけですよ。これは船舶局の所管、運輸大臣の所管ですね。それについてどうするかということは答弁がなかったのです。  それから、農林大臣にお伺いしますが、私は、通常操業する漁船が日本の港に寄港するということを聞いたわけではないのですよ。故障を起こした漁船の修理について、なぜこういう厳しい条件でなければ修理をしてあげないのかということを言ったのであって、通常操業の漁船の寄港とチャンポンにしてもらっては困りますよ。物事を正しくとらえて答弁していただきたいと思っております。
  46. 福永健司

    福永国務大臣 船舶の関係での不況については、これはかなり深刻なものでございまして、私ども頭を痛めておる次第でございまして、鋭意これが対策を講じていかなければならぬところでございます。  予算三分の一という点につきましては、政府委員から詳しく答えさせることにいたします。
  47. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま言われました漁船の修理でございますが、過去においてもやっているところであり、同時に、御指摘のとおり、わが造船界も不況でありますから、逐次漁船の修理の方は進めていくように検討いたしておりますが、これは農林大臣の許可事項になっておりますから、農林大臣とも相談をして、修理については特別の便宜を計らうように検討したいと考えております。
  48. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私が申し上げたのは一般的な修理です。動けなくなったものをソビエトに持っていけなんということは無理なことでございますから、これは当然やらなければならぬ。それまでやらぬとは言っていないのです。しかし、ソビエトへ帰って修理すればできるものを日本の沿岸に揚げてやるということになれば、そうなれば日本の漁船も向こうにそういうことを認めてもらうということがやはり漁民の納得する上においては必要なことではないか。難破したものを、これを残酷無残に何もしないというようなことは申し上げておりませんので、ひとつ御了解を願いたいと存じます。
  49. 謝敷宗登

    ○謝敷政府委員 ただいまお話のございました船の起工量と予算の関係でございますが、予算等に関連いたしますのは、国内船の計画造船の開銀の融資と、それから輸出船の延べ払いにつきましての輸銀の融資の二点でございます。それ以外は世界及び国内の船主が自由に建造するということで、予算関連としては輸出船が延べ払い分二百八十五万トン、それから計画造船の分が五十五万トン、こういうふうに予定しております。
  50. 兒玉末男

    兒玉委員 運輸大臣、いま局長が数字を羅列しましたが、問題は、ここに働く労働者が、恐らく三月決算期ではほとんどが首を切られるという深刻な状況にあることをひとつ十分理解しながら対応していただくことを強く要請し、同時にまた、この企業の及ぼすところのいわゆる下請機関等、地域経済への影響も大きいので、ひとつ慎重な配慮と積極的な取り組みを要望しまして、次の問題に入ります。  時間の関係で排ガス関係を省略しますが、沖繩交通法が今度七月三十日から全面改正になります。総理府の所管でございますが、多くの課題があるわけでございますけれども、問題は、大変な交通混雑が予想され、同時にまた、昨年十月われわれは、社会党の交通部会でも現地の調査に行きましたが、七月三十日の期限では非常に困難だ。ということは、交通関係の道路の整備、あるいはバス停留所等の設置の問題、あるいは車両構造の改善、そして約五千台に及ぶ米軍関係の車両の運行規制――ここに立ち入りする数字は、一応新聞報道では二万九千両と言われておりまするが、もちろん、米軍といえども交通法規は国内法規に従うことになっておりますが、こういう多くの問題を抱えておること、さらにまた、今日特に沖繩における交通事故の大半が年寄りと子供が多いということが統計上もはっきり出されております。  こういう沖繩交通法の改正について、総理府としてはこのような多くの問題を抱えておりますけれども、この七月三十日の交通法改正に向けて自信があるのか。あるいはまた、交通法規の改正ということは、特に通勤、通学生あるいは幼稚園など、これは広範な問題でございますが、これに対していかような対策を講じ、七月三十日のこの交通方法の改正がスムーズにできる見通しがあるのかどうか。これについて、いま指摘した点について総理府側の御見解を承ります。
  51. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  昨年の九月に政令が出されて以来、支障がないようにと鋭意努力をいたしてまいっておるところであります。  工事の状況でありますが、直轄にいたしましては九割、それから県分にいたしましては六割、市町村がややおくれておりまして一割五分という、これが現在の進捗の状態であります。七月三十日に向けて各当事者の方々にもお願いを申し上げなければならぬと思っておりますが、私といたしましても万全の措置をとるべく全力を注いでまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。  それから、交通状態の問題でありますが、これは地位協定十六条によりまして米軍及び軍属、その家族、当然日本の交通規則を守っていただかなければならないことになっております。沖繩が交通区分を変更するならば、当然これに従っていただくことになっております。そのためには交通の教育あるいはまた施設の変更、それから車両の対策、こういうことにつきまして中央、現地、米軍と交渉を進めてまいっております。そういう意味から車両対策につきましても、この区分の変更によって混乱を来さないように万全の措置をとってまいりたい、こういうふうに考えております。
  52. 兒玉末男

    兒玉委員 総務長官、先般沖繩の現地から聞いた報告では、特に道路網の整備ということが非常におくれて、そして大変な渋滞を起こしている。長官としては、最高責任者ですから万遺憾なきを期す予定でしょうが、具体的に申し上げますと、米軍関係の交通方法等について具体的にどういうような取り決めをしているのか、これが第一点。  それから第二点は、現在の道路なりあるいはすみ切り等の問題あるいはバス停車場帯等の設置、沖繩というところは用地問題が非常にうるさいところでございます。そういう点等から、その進捗率は現在どの程度になっておるのか、その点だけをお聞かせいただきたい。
  53. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 進捗の状態については、いま申し上げたように、直轄関係は九割、それから県分の関係が六割、市町村関係につきましては第四・四半期にこれが集中して発注をされるということになっておりまして、七月三十日にはいささかの心配はない、こういうふうに考えております。
  54. 室城庸之

    室城政府委員 米軍との関係についてお答え申し上げます。  米軍につきましては、ただいま総務長官からお答え申し上げましたように、国内法に従う、同時に、米軍の基地内につきましてもこの機会に左側通行を適用するようにしたい、こういうふうにはっきりと申しております。それにつきまして米軍の軍人、軍属並びにその家族、これに左側通行になりました場合の運転上のいろいろな注意、そういったものになれてもらうための事前のPRあるいは教育が必要でございます。これにつきまして沖繩県の方々に私どもが事前にいろいろなことをお知らせいたしますと同じものを米軍の経路に流しまして、米軍側にも同じように周知徹底するような取り決めができております。また、必要な安全教育等につきましても、日本側で行いますことと同じことが米軍側にも行われるように軍が責任を持って実施をするということを約束いたしておりまして、その辺のことは外務省も含めて、日米合同委員会の場で細部にわたって交渉を進めながら連絡を密にいたしておりますので、実施に当たってそごを来さないようにさらに十分の連絡をとりながらやってまいりたいと思っております。
  55. 兒玉末男

    兒玉委員 総務長官、いま室長からお話がありましたが、過去におきましても米軍関係における死傷事故、交通上の事故等が非常に多いわけですが、いつも沖繩県民が泣き寝入りする。今回の交通方法の改正はそういう意味においても、交通事故によるところの死傷者ということはやはり相当予想されますから、その点は賠償責任の問題、国内法規と対日米行政協定の関係においては、相当事前に県民の理解と協力が求められるように万全の措置がとられることを私はこの際強く要望しておきます。  あと時間が二十分程度でございますが、先輩、同僚議員から言われました農政問題にここで若干触れて、見解を承ります。  まず第一点は、先般、川俣議員からもいろいろと問題も提起されましたが、昨年の十一月十七日に、社会党初め野党五党が新生産調整に対する五党間の一致したところの申入書を出しました。それは現在、世界の食糧が全体的に危機の状態の中で、なぜ減反をしなくてはいけないのか、国内の自給体制の強化の問題あるいは農業所得を国民所得平均並みに引き上げる問題、そういう総合的な食糧政策を中心に、できるだけ輸入食糧の依存から脱却する方法等について六項目の申し入れをいたしたわけでございますが、この申し入れに対して一体政府は、特に総理大臣と農林大臣にも申し入れをしているわけでございますが、五十三年の予算編成に対応しながらどのような処置をとったのか、この点の見解をまずお伺いしたいと存じます。
  56. 中川一郎

    ○中川国務大臣 野党五党からの申し入れの趣旨は、生産調整をやめて、そして輸入対策や価格対策や生産対策を講じて自給度を図りなさいという趣旨の御提案でございました。  そこで、生産調整をやめられれば一番いいのでございますけれども、今日の消費の動向、今後の見通しあるいは海外への輸出の検討等々ずいぶんとやったのでございますが、今日ではどうしても百七十万トン程度は生産調整をいたしませんと、過剰米の処理によって国民経済的にどうしても合わない、これは避けて通ることができないということでございますので、御指摘のありました水田総合利用対策ということで、昨年来御議論をいただきながら、これはひとつ農民の自主的御理解と協力という形で政府と一体となってやっていきたい、こういうふうに存じますし、そのほか、御指摘ありました六項目については、一々ごもっともな点も多数ありますから、それぞれひとつ取り入れて御要望にこたえたい、こういう姿勢で臨んでおるところでございます。
  57. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 米の生産調整についての五党申し入れ、これにつきましては、いま農林大臣から申し上げましたように、生産調整をやむべし、そしてこれにかわるに六項目を実行すべし、こういうことでございますが、この生産調整をやめる、こういうことについては、政府といたしましても、これは賛成いたしかねるのです。ただ、そのかわりにこの六項目をやれというその六項目の中には、生産調整と並行してやる、こういう意味合いにおいては、これはもう貴重な御意見も多多あるわけであります。麦の国内生産を大いに進むるべし、賛成です。米の需要拡大を大いにやるべし、これも賛成です。それから農業基盤、これを大いに進むるべし、これも賛成です。それから農家の所得と他の所得との均衡に配慮すべし、これも賛成。多々、そういう賛成の問題があるのですが、これをもって生産調整にかえてという一点だけは、私どもとしてはどうも賛成いたしかねる、このように御理解願います。
  58. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、農林省から「農業生産の地域指標の試案」というのをいただいております。これは昭和四十七年並びに昭和五十年の閣議決定によりまして、昭和六十年を目標とする短期的な展望に基づく試算が閣議決定されました。ところが、当然今回の、いま総理も言われました生産調整というのは、百七十万トンの米のいわゆる生産を抑える、四十万町歩の農地を転作する、こういうことを十年間続けるという構想ですね。そうしますならば、五十二年の十一月でございましたか、閣議決定のこの指標というものは当然変わってくるべきではないのですか。ところが、農林省のこの指標というのは、少なくとも四十七年の展望、五十年の閣議決定の際確認されました六十年の生産数量というのは一つも変わってないわけですよ。内容のすべての部分において全然変わっていない、これは一体どういうことですか。
  59. 中川一郎

    ○中川国務大臣 六十年の見通しでございますから変えなければならぬような事態も出てきましょうけれども、少なくとも今度の生産調整に当たりましては、地域指標に見合った方向に誘導すべく、約六つほど生産調整の配慮をしなければならない項目があるわけでございますが、一番大きく、三〇%程度というものをその中に加味して地域指標が実効あるようにしておる、こういうことでございます。  また、私たちとしては、生産調整は本来、御指摘のように無理なことでございますから、やらない方向で進むべきだ、そのためには消費拡大というものをこれから国民にお願いし、国会でもいろいろ御批判がありましたが、国会の問題として、今度の問題は農林省の問題ではなくして、政府として閣議了解をいただき、官庁みずからが消費拡大に努力をするということでございますから、目標はいかようにあれ、今後の消費動向その他によって生産調整が少なくてもいいというような方向もありますので、にわかにその数字を変えて、米は食わなくなるのだ、これは減るのだという目標をあえてここでつくることが国民的にいいことであろうかどうか、その辺は弾力をもって御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。
  60. 兒玉末男

    兒玉委員 大臣、私の質問は、少なくとも米の生産目標を減らして、それで他の作物に転換するというのがあなた方の今回の方向でしょう、とするならば、十年間これを継続すれば当然他の、たとえば野菜なりあるいは肉牛なりあるいは酪農なりあるいは豚なりあるいは麦等の生産指標というのが変わってくるのが至当ではございませんか、それが全く数字の調整も変更もしないままにこの生産調整対策をとったところに片手落ちがある、なぜこの指標を十分検討しないまま、十年前のをそのままここに出したかということが第一点です。総理も言われましたが、私はだれよりも農民を愛する、とするならば、少なくともこの指標は変わってしかるべきではないかということが第一点。  それから第二点は、私はここに資料を持っておりますが、現在の世界の穀物の生産の推移というものを十分考えながら国内問題を考えていかなければなりません。昭和三十三年、四十八年、そうして五十二年、そして本年、これを見ましても、日本の穀物の生産量というのは大変な落ち込みを示しているわけであります。一九七七年の主要国の生産トン数を見ても、アメリカの二億六千百五十万トン、あるいはEC諸国の生産量等々を含めても、とにかく日本の生産の十倍、二十倍、あるいはインド、中国でも三倍、五倍の穀物の生産量を上げているわけです。日本だけは、一九七七年の見通しでも、たった百十九トンというみじめな穀物の一人当たりの生産量であります。しかも予算の説明では、農村の後継者をふやすということが書いてあります。しかし、幾ら後継者をふやすといって鳴り物入りで唱えても、農家の所得の向上が確約されなければ、農民は政府の言うことを聞かないでしょう。  ちなみに、農家所得と一般所得の関係を比較しても、たとえば昭和三十五年は農家所得の中で五五%を農業所得が占めておりました。昭和四十五年には逆に農業所得は三六%、農業外所得が六四%、金額で農家平均百三十九万三千円、昭和五十年で農家所得が三百四十一万四千円、これを家族構成の四・六で割りますと、一人当たりの所得は六十万足らずであります。昭和五十年の国民所得の一人平均はこれの一・五倍であります。五十一年においても依然としてその傾向は変わらない。  そうするならば、これから農民が生きる道は、農業所得よりも農業外所得に依存する、この比率がどんどんふえていく現状を大臣は知っているのか。しかも、これから後、米の生産調整で百七十万トン、五千億の米の収入が農家所得から減るわけですよ。二千億の転作奨励金をして、果たして百七十万トンの農家所得に対応するところの所得の保障の見通しがあるのかどうか、その点のひとつ見解を承りたい。
  61. 中川一郎

    ○中川国務大臣 現在の長期見通しと百七十万トンの生産調整をやっていただく上での結果とは、それほど大きな違いがない。最近消費の動向が減ってまいりましたものですから、こういった過剰米という形になっておりますが、そう大きな狂いはないということが第一点でございます。  第二番目に穀物の御指摘がありましたが、私もアメリカへ行ってみて、約四時間ジェット機に乗って、四時間全部が牧草地帯である、麦地帯である、ああいうところと、耕して天に至るというようなこの日本で、牧草において、あるいは穀類において競争しろといっても、土地的条件からいっても競争能力はない。たとえば一俵の生産費についても、日本ではいま約一万一千円麦についてお支払いいたしておりますが、アメリカでは千三百円程度、言ってみるならば、約十分の一に近い生産費でできるところでございますから、これを全部アメリカにかわって日本で生産を賄えるようにしろといってもなかなかでき得ないことである。しかし、自給率は少しでも高くしようというので、飼料作物を中心として、そういったものの自給力向上について生産対策なり価格対策なりきめ細かくやりまして、できるだけの対応を図っていきたいということでございます。  それから農家経済の話がございましたが、確かに御指摘のように、兼業収入を含めてようやく最近、しばらく続いておりますが、勤労者所得よりは約一〇%近く上がっておる、こういうことで農村経済がもっていることは事実でございます。専業農家においては七、八〇%というところで、他の勤労者に及ばないという実態がございます。そこで、また今後、農家経済を安定させるために大いに努力を図って、いろいろな政策を行ってこの引き上げに努力をしていく。特に水田農家が今度米をやめて畑作にかわることによって大変、五千億に及ぶ被害があるではないか、私どももまさにそうだと思いまして、最低反四万円から最高七万円、場合によっては七万五千円ぐらいを転換農家に差し上げる。これは畑作農家から見るならば余りにも高過ぎるではないかというぐらい、北海道なんか畑作地帯と水田地帯の並んでいる地域では余りにも差があるではないかという御意見があるぐらい、水田農家の将来については配慮をいたしておるところでございます。  それでは、畑作農家も水田農家と同じだけやったらいいではないかということがありますが、これに消費者が協力できるか、あるいはそれだけの財政があるかということも配慮してみなければなりません。そこで、十分のことはできないにしても、麦については、昨年来御承知のように、奨励金と言っておりました二千五百円とか三千円とか、もう価格にするならば三〇%前後のものを価格そのものに取り入れて、畑作農家の価格水準も大幅に引き上げる、こういう措置もやりつつあるところでございます。  こういうことで、いろいろ御指摘はありますが、政府としても最善を尽くしてきたところであり、さらに国民食糧の自給度の向上あるいは国民生活の安定、のみならず、農村の持つ国家的意義ということを勘案いたしまして最善を尽くしてまいりたい、こう思う次第でございます。
  62. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、いまの大臣の答弁は、まことに非生産的な考えであり、農民の意欲を失わせる結果になると思うのです。特に農基法農政というのは選択的拡大ということで、われわれは、特に農民は米づくりから、麦づくりから転換して畜産なり果樹園芸に力を向けました。ところがどうですか。この前の日米経済交渉によってオレンジジュースあるいは肉の輸入、そういう問題をめぐっても農民は大変な反撃をしております。自民党の果樹振興議員連盟と畜産振興議員連盟が百数十名集まって、この日米交渉による輸入枠の拡大は承知できない、しかも日本のミカンの状態は予想よりも本年は四十万トンも増産、そういう状況、しかも果汁等については十五万トンを政府が補助金を出して調整保管しなくてはいけない、こういう現状から考えるならば、国内生産で問に合うものはできるだけこれを規制していく。もちろん一方的なことはできないにしても、もう少し国際的な舞台においてもそのような国内の自給度を高めながら――特に国民食糧の場合は、いま自給度は四〇%を割っているという現状であります。大臣は国土の開発利用についてはいま少し前向きに取り組むべきであり、少なくとも私は世界の人口が大変な増大を示していることに目を向けないわけにはまいりません。現在、一九七七年の推定では地球上の人口は四十一億二千四百万、一年間に七千万の人口がふえている計算であります。しかも、われわれが隣接するアジアにおいては特にその増加傾向が高いわけであります。現在、総理府の統計では、一九七五年で二十二億五千六百万がアジアの人口。そして七六年、七七年は、過去少なくとも十年間の統計から見ても、四千五百万から五千万の人口がアジアではふえております。  そういう状況に置く場合において、日本はいままでのように、アメリカ、カナダ等の小麦が、トウモロコシが、大豆があるから結構よろしいというそういう安易な姿勢では、大変な悔いを残すことになろうかと私は思う。アジアにおける人口増、世界における穀物の生産量の推移から見ても、これはまさに食糧の安全保障体制ということを真剣に考え、アメリカは常に日本の三十倍以上の耕地面積をフル生産している現状等を見る場合に、やはり食糧戦略というものも十分に配置をしながら国内における自給体制というものを考えていく必要があろうかと思うのですが、この点私は、特にこういう世界人口の推移、アジアにおける膨大な人口の推移が世界平均よりも高いということを十分配慮しながら、国内におけるところの穀物生産量を少なくともアジアにおける穀物の平均生産量まで高めるところの日本国土の利用ということが真剣にこの際考えらるべき問題ではないかと思うのですが、総理並びに農林大臣の見解をこの際承りたいと思います。
  63. 中野四郎

    中野委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますから簡単に。中川農林大臣。
  64. 中川一郎

    ○中川国務大臣 まず、輸入問題でございますが、私は農林大臣として、日本の農民に支障を与えるような輸入枠の拡大はやっておらないつもりでございます。  特に、御指摘がありますミカンとの対応でございますが、ミカンは三月でなくなるものでございます。これにかわるタンカン、夏カン等がございますが、これがあっても五月、六月。そこで、季節自由化ということでございましたけれども、六月、七月、八月はミカン、柑橘類、果物の非常に少ないときで、消費者の間からはこういう時期にこそ入れてくれという声も、アメリカから言われるまでもなく、非常に強いということでございます。しかも、この六月、七月、八月に入れます量が――月間大体百万トンに近い胃袋を持っておるわけでございます。その果物を食べる胃袋があるものを二十万トンとか三十万トンに下がっておるときに、三カ月間で二万数千トン入れて、一体果樹農家にどういう反響があるか。むしろ騒いで、大変だ大変だと驚かせる方が実質被害があるのではないか、こう思っておるところでございます。  それから……(発言する者あり)ちょっとお待ちください。肉については、決して増枠をして買い入れるということではなくして、日本で必要な肉の範囲内において、アメリカの関心である高級牛肉をふやせるものがあったらふやしましょう、こういうことでございます。ふやせるものとしては、ホテル枠が三千トンぐらいあるのではないか、さらに高級牛肉でアメリカから買えるようなものがあれば御協力しましょうと言ったのであって、決して日本の酪農民を圧迫して、その分だけ別枠にしようとしたことではありませんし、特に、輸入によって価格がおかしくなるということでございますが、畜産物価格安定法によって、下がったときには政府が買い上げる、上がったときには冷やすという仕組みがございますから、その仕組みについては変わっておりませんので御安心をいただきたいと存じます。  なお、自給率につきましては、これだけ国土の狭い、条件の悪い国で高度の土地利用をしている国は世界じゅうにないであろうと思うぐらい、自給率が大事であるから配慮しておるところでございます。今後も、将来に向かっての食糧事情を考えますときに、自給度の向上は大事でございますから、どうかひとつ、御指摘もいただいて、間違ったような方向には持っていきません、食糧事情の厳しい事情がありますから、相当の、世界に類例のない農政をやっていることも御理解をいただきたいと存ずる次第でございます。
  65. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 わが国の農政を考える場合に、世界における食糧の長きにわたっての需給、これを頭に置いてやらなければならぬというお話でございますが、それはそのとおりと思います。農政上の見地ばかりじゃない、わが国の安全というような立場から言いまして、その考え方は、私は、これはぜひ取り入れておかなければならぬ考え方である、こういうふうに思います。  ただ、だからといって、わが国の農業が自給体制でいかなければならぬという結論にはならぬと思うのです。私は、自給力といいますか、これはどうしても持っていなければならぬ、こういうふうに思いますが、それは国内において自給力を持つと同時に、どうせわが国が自給できるはずはないのです。自給せんとすれば、これは百年前のわれわれの生活に戻すほかはないのでございますから、そういうわけにはいかぬ。海外に安定的な食糧供給の体制を整えておく、これも非常に私は自給力という見地から大事なことではあるまいか、そのように考えます。  とにかく長きにわたっての世界の食糧の需給の趨勢、これは十分踏まえながら、わが国のためにどういう体制がいいかということで、わが国の産業全体の構造の一環といたしまして農村問題をとらえていかなければならぬ、さように考えます。
  66. 中野四郎

    中野委員長 これにて兒玉君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  67. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。井上普方君。
  68. 井上普方

    ○井上(普)委員 福田総理にお伺いするのでございますが、昨年、第八十国会における施政方針演説、あるいはまた、当委員会における福田総理の態度というものと、私が本年見る態度とは大いに違っておるように思うのです。去年の予算委員会におきます福田総理の御答弁は、まことに正面から、はぐらかすことなく御答弁になりました。いままで私は四人の総理大臣を見ておりますけれども、ある総理のごときは言葉の魔術師というのですか、どうでもとれるようなごまかしで終始した人もおる。駆け足でとっとことっとこ走って、ついには監獄の中へ入るような答弁をした人もある。あるいはまた、慎重といいますか、何を言っているのかわからないようなことを御答弁になるような総理もありました。しかし、福田総理の昨年の予算委員会の御答弁を聞きますと、まことに正直だな、率直にお話しになっておるなという感を私は深くしておったのであります。  ところが、昨年の臨時国会以来、この予算委員会の御答弁を拝聴いたしておりますと、どうも違う。何か、ともかく言い逃れに終始しておるのじゃないか、このような感がしてならないのであります。福田さんの本来の性質といいますか、私は、率直な方だと思うし、正直な方だと思っておるのですが、それがどうも、経済政策の失敗の結果かもしれませんが、はぐらかすような、あるいは顧みて他を言うような御答弁に終始されておるように思われてなりません。いやしくも、このたびの国会の施政方針演説におきましても、国民に対して訓話調の事柄を相当言われておるのです。ならば、総理は素直な、失敗は失敗とし、これからどうするんだという御答弁に終始していただきたい、そのことをまずお願いいたしておきたいのであります。  続いて、第八十四回の国会の施政方針演説と第八十回の総理演説とを、私は読み比べてみました。そういたしますと、一番先に目につきますのが、昨年の国会の冒頭におきまして、まず、変化する時代に対する対応策を総理はお述べになった。いままでの、つくりましょう、使いましょう、捨てましょうという大量消費時代はもはや去ったのである、これからは資源有限時代を迎えて、そして社会経済について考え方を根本的に見直さなければならない時代が来た、こういうことをまず申されたのであります。このことは私は正しいと思います。そして、そのときに、「成長はその高きをもってとうとしといたしません。成長の質こそが大事であります。」こうおっしゃられたのであります。  ところで、今度の施政方針演説にはそういうことは全然言っていない。この前には協調と連帯と、基本姿勢が第二項目に出ておった。これがいきなり一発目に出てきて、変化する時代に対応する姿勢というものが全然ないのでございますが、これはどういうわけなんでございますか、お伺いいたしたい。
  69. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 昨年の一月の私の施政方針演説、今回の施政方針演説、両方よくごらん願いますと、これはもう全く一貫しておる、こういうふうに思うのです。私は、資源有限時代ということを昨年は言った。ことしはそれを真っ正面からくどくど言わない。これはなぜかといいますと、そういうことをくどくど言う必要もない。もう皆様がよく私の考え方は御理解願っておるからという前提で、ところどころに資源・エネルギー有限時代ということを申し述べておるのであります。  それから、私は特にそういう世界情勢の認識の上に立って、いままでの世界情勢とこれからは大変変わってくるんだ、そうして、これからは世界的に、特にわが国はその中でそうでありますが、高い成長は望めないんだ、こういうことも力説しておったわけでありますが、今度もその点は非常に大事であるというふうに考えまして、私は、今度のこの予算を中心とする経済政策が進めば、これは五年越しのトンネルが日本経済、日本社会はやっと出口が見えるような状態になるんだ、しかし、国民の皆さん、トンネルの出口を越えたら一体どういう社会が待っているのかと言えば、これはもういままでの高度成長社会じゃありませんよ、私がかねがね言っているところ、安定成長社会ですよ、それは成長の高さというものをとうとしとしない、その質をもってとうとしとする、つり合いのとれた静かな活力にあふれた社会、そういうものが待っているんですよということもまた、そういう言葉をもって指摘しておるわけでありまして、決して私が考え方の転換をしたということはあり得ないことであります。  ただ、井上さんは、私の言動がどうも率直でないじゃないかというようなお話でございますが、確かにこの一年間ずっと経過してみますと、なかなか世界情勢にいたしましてもわが国の先々にいたしましても、どうも展望が不透明なことが多いのですよ。そういう客観情勢の変化があるものですから、私のお答えなんかにもそうきっぱりと割り切って申し上げかねるところもあるわけです。その辺はひとつその辺でお含みおき願いたい、このように存じます。
  70. 井上普方

    ○井上(普)委員 まあそのことはそのことと承っておきましょう。後々、昨年の施政方針演説とことしの施政方針演説の具体的な違いをお示ししていくことにいたします。  しかし総理、あなたは一年前の施政方針演説で「その対応を誤ることがなければ、より静かで、より落ちついた社会を実現できると信じます。」こうおっしゃられた。しかし、対応を誤っておるから現在はこれだけ沈んでしまったのじゃないですか。そしてまた、長い間のトンネルだと、先ほど来もこの前の国会においても言われたけれども、その長いトンネルをくぐり抜けたら新潟県第三区だったなんということにもなりかねないのです。高度成長政策、インフレ政策になりかねないのです。そこらはひとつ十分にお考え願いたいと思うのであります。  続きまして、いま経済の沈滞したときにおきまして、大量の公共関連事業をやろう、そして景気を回復しようという点につきましては、ある程度私は納得ができるのであります。しかしながら、出されております「昭和五十三年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」この数字を見ますと、果たしてこれで可能なのだろうか、五十三年度の経済は心配ないのだろうかという気がしてならないのであります。  宮澤長官にお伺いいたしますが、個人消費支出を五十三年度ではえらいたくさん見ておりますが、いまのこの雇用の状況、失業者はこれだけの公共投資を通じても五万しか減らない。あるいはことしの春闘相場というものが昨日の御答弁において大体示されてきた。しかも物価の上昇は御承知のように五・三といいますけれども、これはお天気に支えられているところがたくさんあるのですね。冬物の野菜が暖冬異変で非常に安い。だから消費者物価ははるかに現在、あなた方がしましたよりも野菜によって、生鮮食料品によって助けられているところが多いと私は思うのです。それやこれや考えますと、個人支出が果たしてこのように伸びるものだろうか、私は不安に思うのでございますが、いかがでございます。
  71. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 個人消費支出の中で、雇用者所得のほか、個人業主所得、個人財産所得等々がございますことは、すでに何度か申し上げましたので省略をさせていただきますが、雇用者所得につきましては確かに大きな伸びを見られない現状でありますけれども、個人業主所得、個人財産所得等については、昭和五十二年度より多少の伸び率の上昇を見ることができるのではないか。結局、井上委員の言われますように、経済全体が、このたびの政府の財政主導による予算、税制等々の結果、将来に対する見通しを明るいものに国民各位が感じられるかどうかという、そういうことに消費の動向もかかるという、それは私は言われるとおりであると思います。私どもは、財政がこれだけの努力をいたしますと、前々から申し上げておりますように、かなりその波及効果がある、そして後半には多少の民間経済活動も刺激する、こう考えております。  確かに完全失業というような面では、残念ながら五十三年度中には大きな改善は見られませんけれども、しかし、現に雇用に入っております人たちの中でいわば遊休的な状況というのはかなり改善される、そのことば稼働率指数の上昇によっても言えることでございます。  そういうことと、それから物価の落ちつき、確かに物価が落ちついております一つの要因は季節商品の動きでございます。それはもうそのとおりでございますが、しかし、そうでない商品が相当落ちついておる、これは卸売物価にもあらわれております。  等々考えますと、多少の消費性向の向上は見込んでもいいのではないか。もとより、貯蓄の傾向は高うございますので、一気に消費性向が上がるというようなことは、これは考えるわけにまいりませんけれども、多少のことは考えてもいいのではないかというのが、この程度の個人消費を見た理由でございます。
  72. 井上普方

    ○井上(普)委員 個人消費の伸びというものは、私は案外、大きな期待はできないのじゃないかと思うのであります。使い捨ての時代が終わった、これは確かに、そのような性向がもう国民のすみずみまで行き届いております。したがいまして、もうあの狂乱物価あるいは石油ショックの経験を経た国民というものは、いかにして老後を安泰にするか、生活を十分にするか、あるいは病気になったらどういうことを考えるかということをまず考えるのと、自分の居住生活を安泰にしよう、快適なものにしようという考え方に終始しておると私は思うのであります。その面において、あなたが、経済企画庁が今度大きな柱として民間住宅にウエートを置いて、国民総生産の大きなウエートとして民間住宅の建設ということに重きを置いたのは、あるいは当然かと思います。しかしながら、この民間住宅の建設も、果たしてこれだけできるのだろうか、私は大きな疑問を感じざるを得ないのであります。そして、この民間住宅の建設は、実は宅地政策を欠いておりますがために大きな欠陥を持たざるを得ない。住宅を建てるというのでありましたならば、少なくとも住宅に最も困っておる諸君、勤労者の諸君、これを中心にして物事を考えなければなりません。ただ単に経済的な面からのみ、家さえ建てればいいんだという感覚でこの住宅政策が本年は立てられておると思うのであります。私どもといたしましたならばはなはだ不満と申さなければなりません。  しかも、その民間住宅建設が、国民総支出の一三・六%にまでお考えになっておるけれども、この内容は、きのう、ちょっと河村先生の質問にお答えになっておられましたが、規模の拡大、質の向上で四%、あるいはまた百六十一万戸でございましたね、百六十一万戸をお建てになるといいますと、昭和四十六年、四十七年の住宅建設よりも多いのです。できるでありましょうか、いかがでございます。
  73. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 住宅建設の上で第一の要諦は、土地の確保だと思います。この土地の確保につきましては、開銀融資あるいは住宅金融公庫の融資などの条件を緩和いたしまして、そういう面から慫慂するように努めておるわけであります。それから住宅金融公庫の関係で、各種の条件緩和をいたしたことは御承知のところだと思うのであります。融資枠の拡大とかあるいは償還条件の緩和とか、いろいろいたしたわけでございます。それらのことを総合いたしまして、その結果が百六十万見当ぐらいにはいくのではないか、こういう推定に立っておるわけでございます。
  74. 井上普方

    ○井上(普)委員 宮澤経企庁長官に私はお伺いするのです。  五十年から建設戸数の波を見てみますと、こういうような波になるのです。宮澤さん、これは明らかに、住宅金融公庫の申し込みをいたし、受け付けをいたしますと、二カ月ないし三カ月には着工の数が多くなってくるのです。過ぎますと、すとんと落ちてくるのです。また、しょうがないということで、景気回復のためだというので五十年からまたやる、四カ月、五カ月たったらこの募集をやる、そうしましたらまたこうふえてくるという数字がこのグラフであります。  しかも、その上へもってまいりまして、こういう事態があります。昭和五十年までは、実はどういう階層が一番たくさん民間住宅を建てたか、これは住宅金融公庫の申し込みの分析に出ておるのでありますが、これは社宅におる方あるいは公務員宿舎におる方が、全世帯数の大体六%なんです。これが住宅金融公庫を利用しておるのが二四%だったのです。ですから、この比率から言いますと六・何かというように出てくるのですけれども、このごろになってまいりますと、その社宅におった、あるいは公務員宿舎におった二四%がずうっと下がってきまして、一八・幾らという募集の申し込み数になってきているのであります。社宅におる、あるいはまた公務員住宅におるという方は、家賃が低いものですから、貯蓄性向が強い。その方々が、ともかく自分の家をつくろうというのでつくっていったのです。五十年、五十一年まではそれで来たのですけれども、五十一年になってきたらそいつがぐっと下がってきているのです。そして所得が三百万円以下の低所得の方方、ともかくこの方々の申し込みが前は四%ぐらいであったのが、これが一五%ぐらいになってきているのです。ですから民間で、自分で家をつくれるという方々はある程度、全部とは申しません、もう満配になってきた。ですから、これから家を建てる方々は、ともかくある程度余裕がある方にはもう一巡したと見ても差し支えないんじゃないかと思われるのであります。  その上へもってまいりまして、公団住宅に住んでおる方々あるいは公営住宅に住んでおる方々が、これも数が減ってきたのです。自分の家をつくる方々。現に見てみますと、これは建設省、あるいは建設省でも私どもには言わないのでありますけれども、資料がないのでありますが、大都市圏における住宅戸数というのはべた減りに減っているのです。民間住宅でも大都市圏以外のところはふえているのです。  こういうような状況のもとで果たして達成が可能だろうかというのが私の大きな疑問の一つなんでありますが、いかがでございます。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私ども、このたび融資枠の拡大でありますとか融資条件の改善でありますとか税制でございますとか、税制も控除あるいは土地等といろいろにわたっておりますけれども、かなりいろいろな施策をいたしておりますので、国民の住宅に対する需要というものは、とにかくこれは、いずれにしても強いことは確かでございますから、経済の、ある程度落ちつきといいますか、先行きに明るさが見えればその需要というものはかなりのものではないかというような、実はマクロの見方からこういう見通しを立てておりますけれども、井上委員の言われますように、階層的に地域的に変化が起こっているということは、私どももある程度そうであろうというふうに考えますけれども、マクロとしてとらえますとかなりの、お示しした程度の需要増を見込んでもいいのではないか、非常に具体的な知識まで私持っておりませんけれども、建設省としてもそんなようなお考えであり、まあその辺は相当な見方ではないかと考えたわけでございます。
  76. 井上普方

    ○井上(普)委員 ですから、いままでは民間の銀行ローンを利用しておった方は、新しく建てる場合は全部住宅金融公庫の方に肩がわりしていく、こういう現象が出てくるのです。  これは建設省にあるのですが、昭和五十二年の四月から九月までの統計しか出ておりません。持ち家は前年度五十一年度と比較いたしますと、九月までは二・九%減っています。ふえておるところと言いますと、分譲住宅がふえているのです。これは二〇・四%ふえているのです。そして、あと公的資金による持ち家が一一%ふえているのです。ところが民間自力、民間資金によるところの住宅というものは、分譲住宅によるものはふえておるが、持ち家にいたしましても一二%減るし、借家にいたしましても一七%減っておるのであります。こういう現状なんです。  ところがこの分譲住宅は、買い手がつかないのです。大体いま東京近郊には、大手の不動産屋さんが分譲住宅をたくさんつくっている。建てて二年ないし三年、まだ放置してある住宅はたくさんあります。大体総数どれくらいつかんでいるのだと言って、先日も建設省に資料要求したのでありますが、そこまでは調べておりませんというお話でした。しかし、売れ残りになっている。  それでは一体、都内あるいは大都市に住むところの住民の皆さん方はどういうことをやるか。自分の家を持ちたい性向はわかる。公団といいましたならば、遠くて、狭くて、しかも家賃が高い。民間のアパート、借家に入ると、高くて、とても狭くてたまらぬというので、やむなく、いまはやっておりますミニ開発の住宅に入るのです。宮澤さん、あるいは建設大臣、ミニ開発というのはどんな状況か御存じですか。これは一例を申しますとこうなんです。総理も聞いていただきたいのですが、大体、宅地十五坪のところに敷地面積十坪の家を建てるのです。それを二階建てにするのです。そうしましたら、四メートルの道路に面している以上は建築基準法違反にならないのです。だからどんどん、宅地面積が十五坪あるいは十八坪、こういうような家がたくさん建って、建築基準法いっぱいの家が建っている。ちょうどようかんをちょんちょん、ちょんちょんと切ったような家が並んでいるのです。そのミニ住宅の家というものは、もう建っておるのでございますから、これは金融公庫の金は使えません。しかも、その家は一体どれぐらいするのだと言って聞きますと、大体、敷地十五坪で通勤圏、東京から五十分ぐらいのところで二千三百万から二千四百万ぐらいしているのです。これがまた地価をつり上げているのです。私もきょう先ほど、地価公示価格とどれぐらい差があるのだと言って、国土庁の役人のおる前で不動産業者に電話をかけて聞きました。そうしますと、東京駒沢、あの付近で住宅地で一番地価公示の高いのが平米当たり十七万円です。ところが実際に取引しているのは、一年前で十九万四、五千円についているのです。公示価格はこの間発表したやつ。公示価格とミニ開発、だから、このミニ開発が地価をどんどん引き上げていっているという実情にあるのです。  こういうような状況を考えますと、住宅に困っておる困窮者に対しての対策、これがない。現在、この五十三年度予算には、本当に住宅困窮者に対する政策というものが全然できてない。もう一つは、土地政策が全然ない。このまま進みますならば、地価ははるかに暴騰いたしますし、勤労者の諸君の住宅難はさらにひどくなる、こう思うのですが、いかがでございます。
  77. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 まず、ミニ開発の問題でございますが、これは、ただいま御批判がございましたように、四十九年度と五十一年度とを比較しても、一ヘクタール未満のものが四十九年度三六%、五十一年になりますと五〇・五%ということになっております。また、三大都市圏における百平方メートル未満の宅地の取得数の割合というのを見ますと、これは少し統計が古いのですが、四十八年では五六・八%というようなことで、この御批判のとおりだと思うのであります。  そこで、土地問題について御心配をされておるわけでございますが、この国土利用計画法による適確な運用によりまして、投機的取引の排除とか地価の安定に努める。これは国土庁のとっておる方針でございますが、実際上の需要に対してはどうするのか。これは住宅宅地関連公共施設整備促進事業、これを新たに新設することによりましてこの宅地開発を促進するということに努めておりますし、また、御承知の土地税制につきまして今回重課税を緩和するというようなことで、先ほど宮澤長官からもお話しのごとくに、いろいろと手段を講じておるわけでございます。したがって、井上委員は非常に御心配のようでございますが、私どもとしましては、この住宅金融公庫などの施策と相まちましてこの需要に応ずる体制は整いつつあるもの、こう思うのであります。
  78. 井上普方

    ○井上(普)委員 国土庁長官、あなた、ちょっとおかしいのじゃありませんか。といいますのは、市街化区域内における役所に許可条件を求めるのは、二千平米以上でなければ売買の許可は要らないことになっているのです。市街化調整区域は五千平米ですね。そうですから、もうミニ開発はこの網にかからないのですよ。これはもうかからないのです。国土利用計画法の網にかかってこれで抑えるなんて言ったって、できないのです。実際は、このミニ開発については。それで私どもは、この際土地政策を強硬にやらなければ地価の暴騰が起こってくるぞ。もうすでに公示価格におきましても三%前後上がっておる。土地公示は、大都市における住宅地の土地は、三%上がっているぞと言っております。実際、ミニ開発のところは、先ほども申しましたように四割ないし五割、一年間で上がっているのです。この一波が万波を呼ぶといいますか、これは総理大臣のお好きなお言葉のように聞いているのですが、一犬虚にほえれば万犬実を伝うという言葉がある。一たんその付近の値段が上がったならば、周辺の値段は上がらざるを得ないのです。土地の状況からいきますならば、住宅にこれだけ金をつぎ込む姿勢を示していきますというと、さあ、これは、土地対策というものが重要な意味を持ってきます。それは閣僚の中において地価対策協議会というものをつくっておりますけれども、一体どれだけそれの値打ちが、効果があるのだろう。私は疑問に思わざるを得ないのであります。  総理、昨年の総理大臣演説におきましても、地価安定を強力にやります。こうおっしゃられた。何やられたのです。いま、これから具体的に、地価をいかにして鎮圧するか、抑圧するか。このミニ開発を中心にしてひとつ御答弁願いたいと思うのです。わからなければわからないで結構なんです。
  79. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この都市計画法による開発許可の問題、先ほど出ました。これは確かにミニ開発のことを考えますと、千平米ぐらいに下げる必要がある、こういうふうに踏まえております。  それから、非常に全般的にいろいろ御心配いただきましたが、現在国土庁では、地価公示地点を、これは東京圏、大阪圏の既成市街地におきましては九百地点にふやしまして、閲覧場所の拡充をするとか、あるいは三カ月ごとに行っている中間調査地点数についても、ミニ開発を念頭に置いて地点増を図るとか、それからもう一つは、非常に土地が暴騰するとかいろいろな問題のある場合に特別区域の指定がございます。それにつきましては、事前調査を行う場合にミニ開発のおそれがあるかないかというようなことを念頭に置きながら、まさに御指摘のとおり、ミニ開発、これが非常に問題がある、防災の上から申しましても、環境の上から申しましても問題であるということは、われわれももう十分承知しておるところでありますので、ただいま申し上げたような施策を通じてミニ開発をできるだけ抑制してまいりたい、こういうことでございます。
  80. 井上普方

    ○井上(普)委員 櫻内大臣、私、言いたくないのですけれども、言わざるを得ないのです。そういう御答弁をされると。実を申しますと、この土地利用計画法で規制区域を設定することができます。しかし、その前には、土地利用計画あるいは土地基本計画というものが都道府県においてできていなければならないのです。ところが、東京都にそれがありますか。神奈川県にありますか。だから、これはもう手に及ばないのです。だから野放しにならざるを得ないのです。しかもミニ開発というものは、これは農家の諸君も土地を売った方が早い。二千万円までは無税になるけれども、それ以上になってくると総合課税で累進課税になっていく。だから二千万円までしか、あるいはその前後、せいぜい三千万円までですな、それしか土地を売らない、こういうことになってくるのです。そうしますと、どうしてもこの売る土地というものが、三千万円にいたしまして、坪八十万にいたしますと四百坪以上売ったらこれはもう税金が高くなるというんで、三百坪以下でともかく終始しているというのが現状なのです。だから……(「三億二千万円ですよ、八十万円の四百坪なら」と呼ぶ者あり)単位が少し間違いましたけれども、ともかく二千万円以上の所得の土地の売買をやりたがらない。だから土地というものがいまぐんぐん細分化されて、そしてそれが地価高騰を起こしておるのであります。その上へもってまいりまして今度は、さあ、家を建てるんだぞということでばっと住宅資金を流し込んでいく。一体どうなるのだろうかと私は不安でならないのです。総理、どうですか。どういうようにお考えになりますか。
  81. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いわゆるミニ開発、これは土地政策の上からも問題がありましょうが、これは防災対策、そういう点から見ましても、また市街地形成という見地から見ましても、また環境というような見地から見ましても、これはいろいろ問題があるのだろうと思って、従来その点にはずいぶん着目はしておるのですが、これはいろいろきめ細かな手が要ると思うのです。土地政策の面の配慮もありましょう。それから税の問題ですね、いま御指摘がありましたが。いま大方総合だ。二千万円以上ですか、これは部分総合する、こういう制度になっておりますが、あれなんかは、ミニ開発をどうするかということを考える上において非常に大きな問題だというふうに考えておるのです。ただしかし、あれを急に緩和するというようなことになりますと、また土地成金をつくるつもりかというような御批判も出る。ミニ開発をどうするかという点でいろいろ考える点はあるのですが、そう簡単にもいかぬというので苦慮しておるわけでありますが、何か建築基準というような方面からこの問題をとらえることができないかどうか、そのようなことなんかもなお検討すべき問題だ、このように考えます。
  82. 井上普方

    ○井上(普)委員 要は勤労者の諸君、苦しい低所得者諸君に対する住宅が不足しておるからこういうことになるのです。この前も、臨時国会で総理に、民間自力に中心を置かずに公共賃貸住宅に重点を置けということを、私はるる申し上げた。そうしたら、私の意見には全面的に御同調にはならなんだ。しかし、これは建設省の資料ですけれども、これを見てみますと、公団建設戸数は大都市地域においては計画の五四・五%、それから公営住宅は計画の五七・三%という数字を示しているのです。公共賃貸住宅はずっと計画の五〇%台でとまっておるのです。四十五年からですから、八年間ですか。ですから、庶民の知恵として、高いけれども通勤可能なところということで、ミニ開発を借金してでも買うていく。これはやむを得ぬことじゃないか。私は自衛手段だと思わざるを得ないのです。  ですから、ここで大事なことは、大変なことが出てきているのです。といいますのは、いままでの大手の宅造業者が、先ほど申しましたように、鎌倉ハイランド、あるいはまた湘南ハイランド、たくさんの住宅をつくりました。通勤距離大体一時間以内ぐらいのところに団地をつくっています。これが売れない。売れないものですから、このごろはどうしているかと言いますと、それじゃということで、大手の業者がミニ開発に手をつけ出した。七十坪買いまして、真ん中へ四メートルの道路をつくったら六十坪。四軒ミニ開発の家が建つということでやっているのです。大手の不動産業者の金がいまこれにどんどんと流れ込みつつあるのです。いま手を打たなければ何にもならないのです。地価はどんどん上がるのです。防災上の問題もあります。環境上の問題もあります。早急に政策として手を打たなければならないと思うのですが、いかがでございます。
  83. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 井上委員の御心配は、公営住宅、公団住宅などの供給が計画どおりにいっておらない、それがミニ開発の方の住宅に向かっておるんでないかという一応の御見解のように私受けとめたのでありまするが、公営、公団の方につきましては、これはもう井上委員も十分御承知のところで、現在通常三DKぐらいのところがいいのが、それ以下の狭いものが残るというような状況、したがって、これからの公団住宅や公営住宅をつくるにつきましては、そういう一般的な需要動向にふさわしいものをつくろうというように政策を切りかえておるところでありまするから、この未利用空き家についての批判を受けながらもこれからは需要に応じたものをつくる、こういうことでいきますので、必ずしも今後ずっと、公団や公営のものが非常にパーセントが低い状況になるようには私は受けとめておらないのであります。  それから、住宅金融公庫からの融資の状況を見まするに、今度の条件緩和などで相当持ち家政策は進んでいくのではないか。今回の一月に行いました三万戸の前倒しによる七万四千戸の希望状況を見ましても、募集後一週間ぐらいで満配になるというような状況でございますから、だから必ずしも、ミニ開発を大企業までがどんどんつくるんだ、そこへみんなミニ開発で結構だ、入るんだ、こういうものでない。恐らくミニ開発は、一応やむなく入る場合はあっても、とてもああいう環境のところへ長く住むものではないと私どもは受けとめておるわけでございますから、仮に井上委員のおっしゃるとおりとしても一時的な現象ではないか、こういうふうに私は見ておるんです。
  84. 井上普方

    ○井上(普)委員 認識が少し違うんじゃございませんか。建設省は、分譲住宅の売れ残りがどれくらいあるかということをお調べになっておられるのか。ミニ開発が一体どれくらいつくられつつあるのか、ミニ開発の実情を御存じですか。お答え願いたいのです。     〔中野委員長退席、小此木委員長代理着席〕 ミニ開発の昨年一カ年間の件数、どの基点からどの基点まででもいいです。調べておられるならおっしゃっていただきたい。
  85. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは五十二年六月の国土庁土地局の調査でございまするが、たとえば東京都の場合、一団地を一件として数えて、区部二百三十件、都下七十件、東京地区計約三百件、こういうふうな数字が出ております。
  86. 井上普方

    ○井上(普)委員 それで実態がつかめますか。先ほど申しましたように、七十坪あったら四軒つくれるんですよ。だから実際を握ってないんですよ、あなたは。
  87. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 一応の調査を申し上げただけでございます。
  88. 井上普方

    ○井上(普)委員 だから、この状況なんですよ。
  89. 山岡一男

    ○山岡政府委員 いま大臣が申されましたミニ開発の実態調査でございますけれども、全体の件数を実はまだ調査しておりません。したがいまして、実際のミニ開発の実態をつかまえるというために東京、大阪で国土庁で調査をいたしたものでございます。先生おっしゃいますように、非常に狭い面積のところに家をつくっているという実態がございまして、同時に価格等についても調べております。一五%ぐらい一般よりも高いという結果が出ております。  それから、先ほどの大臣御答弁のことにつきまして一言補足をさせていただきますが、規制区域指定の前提となります土地利用基本計画、これにつきましては全都道府県において作成済みでございます。ただ、現在手直し中でございます。
  90. 井上普方

    ○井上(普)委員 ともかく総理、こういうように、実際は調べていないのです。そうしますというと、土地政策をやらなければ、いまどんどん大手の業者が入ってきよるのです。しかも、その上にもってまいりまして盛んに、この間の土地開発に伴うところの適正利潤率二七%を今度外して、適正利潤額というんですか、率にすると二七%を今度適正基準価格に直すなんということになると、またまたこれは、大手不動産業者がこんなところに手をつけて、どんどんともうけてくるような結果に相ならないとも限らない。まさに福田内閣は、住宅政策ゼロと申しても過言ではないのであります。家さえ建てればいいんだ、それが景気を刺激するんだ、こういう考え方で大量にともかく金をつぎ込もうとしておりましても、なかなか国民はそうはいかないと思います。  しかも、先ほど申しましたように、住宅金融公庫に――ともかく、この一月に募集しましたら一週間で募集戸数は満配になった、そのとおりです。しかし、去年からのこの住宅金融公庫の申し込みのカーブを見てみますと、四月においては一・七倍、九月では二・〇倍、十二月におきましては一・四倍というように、この数カ年のカーブを見てみますと、四月を中心にしてカーブを持っているのですが、それがどんどんと下がりつつある。しかも、先ほど申しましたように、民間住宅ローンの金が肩がわりがこちらの方に行っている。だから、私は先ほど申しましたように、宮澤さんの願望であります百六十一万戸というのはむずかしいんじゃなかろうか。いかがでございますか。
  91. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから所管大臣からお答えがございますように、私どもとしては、今度新たな措置を設けたことでもあり、まず成就されるのではないかということで、このような見通しをしておるわけでございます。他方で、私ども、これは中で議論しておることでございますけれども、将来のいわゆる都市の整備というものと、とかくミニ開発になりやすいということと、やはり調整しておく必要があるという、そういう問題意識は、所管大臣はもちろんでございますけれども、私どももそれは持っております。
  92. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この今回とっておる住宅政策は、何遍も申し上げておりまするように、いろいろの過去の欠陥に対しましてはそれぞれ対応しておるわけですね。たとえば宅地開発に欠くるところがある、こういうことになりますれば、新たに公共施設整備促進の方策をとるとか、あるいは敷地整備の促進を図るとかということをやっておるわけですね。それで、今度住宅を建てる方につきましては、住宅金融公庫を中心にして、これも限度額を引き上げるとか条件を緩和するとかして進めておる、こういうことが総合されまして、そして一応百六十万程度の戸数がいけるものという推定で進めておるわけであります。  そして同時に、この一月の応募の状況などから見ましても、われわれはこの五十三年度におきまして、われわれの計画どおりに遂行し得るものと確信を持っておるわけでございまして、井上委員も確かに一月の応募はそのとおりだった、またそれ以上に条件のよくなる五十三年度でありますから、さらに進むということを私どもは確信を持っておるわけであります。
  93. 井上普方

    ○井上(普)委員 関連公共施設の国庫補助、これは、やることは結構なことです。私どもはそれは盛んに前々から、もう七年も八年も前からこのことは主張してきているのです。しかし、これはことしの間に合わぬのです。来年の間に合わないのです。家を建てるのには。三年ぐらい先のことには間に合います。言いたくないけれども、そういうようなおっしゃり方をすると、関連公共施設三百億をつぎ込むんだから、安い宅地が実際供給できるのは二年先、三年先なんです。いま直ちにはできないのです。そうしますと、それは先ほども、ことしの一月には一週間で公庫の申し込みは満配になった、しかし、過去のこのカーブを見てみますと、どんどんとやはり下がってきつつあるんです。それが今度の条件緩和によって、私はますます民間住宅ローンが、銀行のローンの方からこちらの方、金融公庫の方にかわってくるということが考えられる。拍車かけるでしょう。しかし、総戸数としての百六十一万戸というのは、これはむずかしい。  ひとつ聞いてみましょうか、建設大臣でなくて結構ですから。公団住宅は、これは昭和五十二年には六万戸つくるはずだったと思うんですけれども、一体幾らつくれるんです。五十二年度で。五十三年度はどうです。
  94. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 お答えいたします。  当初計画では、御指摘のとおり六万戸の計画を持っておりました。ところが、昨年来、いろいろ御指摘ございました空き家を抱えて、そして現在発注中の住宅も全部洗い直し、見直しをしております。したがいまして、本年度は発注も大幅におくれておりまして、鋭意公団努力しておりますが、最終的には、私どもは四万戸の達成は無理で、恐らく三万数千戸というような程度になるのではないかというように考えております。
  95. 井上普方

    ○井上(普)委員 五十三年度は幾ら計画しているのですか。
  96. 救仁郷斉

    ○救仁郷政府委員 五十三年度は、一応四万戸の計画にしております。したがいまして、五十二年度は、先ほど申し上げましたように徹底的な見直しを終えておりますので、五十三年度におきましては四万戸の住宅の達成が可能だというように考えております。
  97. 井上普方

    ○井上(普)委員 宮澤さん、ここだけでも変わってきているのです。公営住宅ももっと下がるんです。百六十一万戸、できますか。私はできないと思う。あなた方の百六十一万戸というのは、願望にすぎないのです。とするならば、私は先ほど来申しますように、五十三年度の経済指標、これを申しておるのでございますけれども、民間住宅やいろいろなものがこんなところに出てくるのも、国民総生産の中に民間住宅が幾ら幾らかかるなんていって経済企画庁に出てきだしたのも、ここ一、二年のことですね。いままでは、とにかく個人消費支出の中に全部ぶっ込んでおいたのが、新たに項目を出してきた。それほどまでに政府民間住宅に期待をしておるのだと私は思うのです。民間住宅の建設は案外経済効果が大きいものですから、やりたいというお気持ちは私はわかる。しかも、政府のお金を余り使わずに民間の金をたくさん使うのですから、政府はただ金融公庫の利子補給だけなんですから、安いものだということでやられておる、そのお気持ちも私は、現在の財政状況の中ではわかります。わかるけれども、これはちょっと見込みが多過ぎるのじゃないだろうかと言わざるを得ないのです。私は、民間企業設備につきましても、ほかのどの経済研究所の調べを見てみましても、企業設備、設備投資というものはこれほど多くないという数字も出ています。それから在庫にいたしましても、これはちょっと大き過ぎるのじゃないか、ほかの各銀行等々のものを見てみましても、これで一体できるのだろうか、願望じゃないのだろうかという気がするのですが、いかがでございます。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、従来から、一つ一つの項目について可能であるかどうであるかという御議論、当委員会始まりましてからずっとございまして、繰り返しの御答弁を申し上げては恐縮だと思いますので申し上げませんけれども、まず、私どもは、各需要項目とも、過大な見積もりは概してしていないように実は考えておるわけでございます。
  99. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 井上委員はよく御承知だと思うのですが、五十年、五十一年、五十二年の住宅建設の実績ですね、これを見ていただいて、そして五十三年度に、先ほど来種々申し上げておるような住宅建設促進施策をやる、こういうことになってまいりますと、無理だとおっしゃるのが私は無理なような気がするのです。五十年、五十一年、五十二年、大体百六十万見当のものをずっとやってきておりますね。なんでしたら詳しく局長の方から説明させますから……。
  100. 井上普方

    ○井上(普)委員 それはここに数字は持っています。しかし、分譲住宅が二〇%あるのです。昭和五十一年度もここにありますが、全部で百五十三万戸つくっているのです。その中の二〇%が分譲なんです。この分譲は一体幾ら売れているんだと言ったら、数字がおたくにはないのです。いいですか。分譲住宅は幾ら売れているんだと言いますと、建設省は調べておらぬのです。だから建設は、いかにも建つけれども、この分譲は今度はなくなるのですよ。うんと下がるのですよ。住宅と言ったって、空き家にしておいたってしょうがないのですからね。これは家を建てるだけだったら意味はありますよ。宮澤さんのように、家建ててくれ、福田内閣みたいに、住宅政策じゃないのだ、家建てることが目的なんだということであれば、それは建ちますよ。あるいは達成可能かもしれませんが、分譲住宅を一体何ぼ見ているのだ。これからだんだん減りますよ。現に減っているじゃありませんか。そうなってくると、この百六十一万戸というのもこれまたむずかしいし、最も建設省が力を入れなければならない公営住宅あるいはまた公団住宅は、予定よりもはるかに低いじゃありませんか。だから私は言っているのです。福田内閣は家を建てることばかり考えて、何も考えていない。しかも、それは分譲住宅が二〇%あるのです。これは売れないのです。こういうように小さく分析していくと、これは無理が出てくると私は言う。宮澤さんはうまいことおっしゃいまして、マクロ的に見ればいけるでございましょうとおっしゃったから、それは願望にすぎないと私は言わざるを得ないのであります。  そこで総理、この際、国民の住宅困窮者に対する政策をあなたは真剣になって考えませんか。私がいままで言ってきました、大都市に家を建てようじゃありませんか。どうでございます。三大都市圏にうんと家をつくる。通勤距離一時間以内のところ、ここに家をつくる。公共賃貸住宅をつくろうじゃありませんか。これが本当の住宅政策というものです。どうでございます。
  101. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 住宅政策と言いますが、これは結局、いまお話しのように三大都市圏、この対策がかなめである。ほかにも住宅問題はありますよ。ありますけれども、これは同じ次元の問題じゃないと思うのです。やはり住宅問題であり、住宅対策というものは三大都市圏を対象として考うべきものである。そういう立場から言いますと、これは非常に基本的に考えざるを得ないのですね。  三大都市圏に総人口が流入するという従来の傾向についてどういう歯どめをするか、こういう問題、それからまた、三大都市圏と言うけれども、一つ一つ見ますと、市街化した地域もあれば市街化しない地域もある。その市街化した地域の中に虫食いのように多数の農地でありますとか、そういう未宅地化の地域がまだかなりある。それから、市街化された地域に近接しておる市街化されない地域、これにも非常に有望な宅地候補地というものがあるわけなんです。そういうものをどういうふうに生かしていくか。やはり宅地の供給をふやすことが人口の流入阻止に次いで大きな問題だろう、こういうふうに思うわけでありますが、これをどういうふうにするか。  これは年来、政府におきましても、たとえば市街化地域につきましては、その中の農地をどういうふうに宅地化するかというような施策を粘り強くやってきておるわけでありますけれども、なかなかいろいろ障害もありまして、率直に申し上げましてそう効果を上げていないのです。しかし、そういう目標を追求しなければならぬ。  それから、市街化地域に近接した非市街化地域、これに宅地候補地がある。これに対しましては宅地開発公団というような構想を持ちまして、いまその開発を進めようとしておる。しかし、これもなかなかそう簡単にいかないいろんな隘路がありまして、てきぱきというような思ったような状態ではありませんけれども、とにかく、これを強力に進めておる。  それから第三に大きな問題は、私は地価の問題だと思うのです。地価は最近、大局的に見ますとかなり鎮静化してきておる、私はこういうふうに見ておりますけれども、これが需給のバランスがとれないままに建設が行われるというようなことになりますと、これはまた地価の暴騰を招くというような事態にもなりかねない、そのための歯どめを持たなければならぬわけでありますが、これはまさに土地利用計画法というものがありまして、そしてこれが、地価暴騰の勢いがあるというようなおそれがある地域に対しましては、その利用計画法の指定地域としての指定をすることによりまして地価のコントロールができるという仕組みになっておるわけです。いま地価の暴騰の勢いというものが見られませんから、その指定を発動するというところまでいっておりませんけれども、とにかく、地価の安定ということは非常に大事なことであるというので、この地価の勢いというものを注視いたしておるわけでありますが、いろいろ問題があり、特に井上さんが非常に関心を持っておられます公団住宅また公営住宅、これが非常に不振である。これはやはり土地というか立地問題の制約、これが非常に開発を阻害しておる、こういうことでございます。これはよほど、地域住民の御理解等も得る努力をしなければなりませんけれども、それにしても日照権の問題だ何だと、なかなか処置しにくい問題も多々ありましてああいう状態だというのでありますが、精いっぱい努力いたしまして、そして、先ほどお話がありましたけれども、五十二年度はしょうがないけれども、五十三年度は五十二年度の実績を上回る実績を上げるというために全力を尽くしてみたい、かように考えています。
  102. 井上普方

    ○井上(普)委員 私は、建設大臣に資料を要求したいと思うのです。先ほど申しました、大都市圏における分譲住宅がいかほど売れ残っているかの資料を提出していただきたいと思うのです。これは委員長において御処置願いたいと思います。
  103. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長代理 後ほど理事会において協議の上処置いたします。
  104. 井上普方

    ○井上(普)委員 明治三十八歳の生まれの方が五つのとき、英国のロイド・ジョージ、御存じですね、この方がこういうことを言われているわけです。「地価の騰貴、特に都市地区における地価の騰貴は土地所有者による資本投下なり、工夫によるものでなく、全くのところ、社会のエネルギーとその行なう事業によるものである。疑ひもなく現行土地制度のもたらす最大の害悪は、市民の共同の努力によって生じた利益を、その社会が刈り取る代りに常に社会が、土地所有者に対し、その所有地の価値を高めたことに対して重い罰金を払っていることにある。」ロイド・ジョージがこう言ったのは一九〇九年のことなんです。名言だと私は思います。だから、イギリスにおきましては、開発利益というものの吸収に懸命の努力をやっておる。政権交代が再三ありましたので、保守党、労働党によって土地政策は変わりましたけれども、三回目で開発利益を八〇%とることが最近決まったようであります。もう一九〇九年の当時からこういうことを言われてきている。  私ども社会党といたしましては、この後開発利益の徴収ということ、これを盛んに政府に迫ってまいったところなんです。全然やらなかった。これが地価暴騰の最大の原因であると私は思うのです。考えてごらんなさい。われわれが払った税金によって道路がつくられたら、とたんに何もしないのに周辺の土地がばっと上がる。この利益を社会に還元さすというのは公正な社会をつくるゆえんじゃないでしょうか、こういうような考え方で社会党はこれを要求してきたのです。これは知らぬ顔して今日までまいりました。だから私は、こういうような政策を抜本的にとる必要があるのではないか。  そこで、これは再三にわたって申すのですけれども、少なくともいま福田内閣ができる、しかも福田さんが発案いたしまして、行政管理庁の長官当時に、御自身が御自身に対して答申した宅地制度に対する答申があります。具体的に五つ出ていますね。あれを完全にいま実行できる立場にある総理として、やったらどうです。読んでみましょうか。
  105. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いや、知っていますから……。  あれはたしか四十八年ですか、高度成長時代でありましたが、日本の地価というものは比較的安定をずっと続けておったのです。ところが、四十七年下半期から土地の異常騰貴という傾向になりました。私はこの傾向を非常に恐れまして、これは何とか歯どめをしなければならぬ。特に地価の高騰は何に問題があるかというと、宅地問題に生ずる。つまり、住宅問題がこれでは執行できなくなる。そうなりますと、これは社会人心に非常に大きな影響があるだろう、こういうので宅地問題、こういう地価高騰の中で抜本的なことを考えなければならぬじゃないかというので、行政管理庁で行政監理委員会にお願いいたしまして、そのための方策いかん、こういう答申を求めることにいたしたわけであります。  私が一番その答申の中で、こういう答申が出てくれないかなと言って期待しておった要点は、ああいう地価暴騰の勢いの中でありまするから、三大都市圏につきましては地価の騰貴を凍結する、これを行政的な措置でやるか、あるいは税の措置でやるか、税の措置でやるということになる場合は一〇〇%課税ということでございますが、何かその辺の答申は出てこないかということを期待いたしながら諮問をいたしたわけです。  それに対しまして答申が出てきた。結局、税による地価凍結という方式も考えられるが、行政措置ということも考えられるじゃないか、そういうような答申でございましたが、そういう行政監理委員会の動き、これをにらみながら、政府の方におきましても国土総合開発法、これの立法というか法案の改正、これの作業が行なわれておりました。これは、ねらいどころは国土の総合開発でありましたが、行政管理庁のそういう動き等を考えますと、そういう性格のものでなくて、国土利用計画という考え方がいいんじゃないかという動きとなり、その間、私も当時の田中首相と十分意見の交換をし、そして三大都市圏については地価の凍結ができるような地価計画法でなければならぬということで意見が一致いたしまして、そういうことを内容とする土地利用計画法というものができたわけなんです。とにかく、そういう立法ができるということによりまして、行政監理委員会の目指すところの三大都市圏における地価の凍結、必要となればそれができるという体制になったこと、それで監理委員会の目指したところの答申の眼目、これは実現できた、私はこういうふうに考えております。  その他若干、具体的な提案がありまするけれども、その多くのものが実施に移されておる、このように考えております。
  106. 井上普方

    ○井上(普)委員 土地利用計画法の成立のいきさつにつきましては、大いに違うところがあります。しかし、それはそれといたしまして、あなたの提言せられておるこの冊子、「住宅対策のための土地行政の機構および運営のあり方についての答申」これは、あなたがいま行政の最高の責任者なんだ、やろうと思ったらできるのです。私は、先ほどロイド・ジョージの一つの言葉を申しましたが、まさに、この地価の騰貴というのは社会的不公正の最たるものだと私は思っている。恐らくそう思っておられるからこういうのを出されたのだと私は思う。日本におけるいまの行政機構の中において、行政管理庁の長官で出されたこの答申、これはやっていただきたい。  具体的な方針といたしましては、「1三大都市圏を中心として住宅・宅地需給の不均衡が拡大し、地価高騰の影響とあわせて一般勤労者が現在の所得水準において、住宅・宅地を取得することが著るしく困難となって来ていること、2地価高騰に伴い、土地の所有者と非所有者との間に社会的不公平が拡大しつつあること等にあると認められる。従って、土地問題に関する基本的課題は住宅・宅地需給の改善と地価の安定にあると考えられるが、これについては」と言って、一つずつ改善案を出されておるのであります。そして「土地の計画的利用に関する具体策」として、第一に市街化区域内農地等の宅地化について、第二に既成市街地の再開発の問題、第三には新市街地の開発について、それから第四に新公団の設立について――これは宅地公団の新設についてできています。  しかし、あとの事柄についてはできていないじゃありませんか。あなたはいま行政府の最高の地位にある。その方が、行政管理庁長官という、失礼ですけれども閑職に座りながら、日本の行政はいかにあるべきかということをじっとながめながらお出しになったこの勧告案、これをなぜ具体的におやりにならないのです。私は、いまやっても差し支えないと思う。どうなんです。これくらいのことはおやりなさいよ。貸してあげましょうか。具体案まで五つ出しているのですよ。それを、私が素直でないと言いますのは、さあ土地利用計画法ができたからいいんだなんということじゃだめなのです。あれじゃ役に立たないのです。だから私は、具体案としてここに出しておるこれをやりなさいと言っているのです。いかがでございます。
  107. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、土地利用計画法ができたから、その答申は全部その趣旨が貫かれたのだというふうには言っていないのです。土地利用計画法というものは、行政監理委員会の意見、これのねらうかなめ的な性格のものであるということを申し上げておるのです。  その他幾つかの提案をいたしておるわけでありまして、たとえば市街化された区域内における宅地の再開発の問題、これなんかにおきましても、そこでは意見も述べておりますが、それそのままではございませんけれども、それに近い制度が進められておる。それからまた、市街化されない地域におきまして新しい宅地の開発をする、これも意見具申をいたしておるわけですが、それにつきましては、宅地開発公団というものがいまとにかく仕事を進めておるということにつきましても、その答申が基本になってやっているのですから、これもそのように御理解願いたい。  それから、いまロイド・ジョージのお話がありましたけれども、まあそれに近いことはやっておるのですよ。法人の持っておる土地、これにつきましては、とにかく中央、地方を通じまして約五〇%課税をしておる。その上に分離課税二〇%、七〇%の土地売買差益というものを法人からは徴収をする。また、個人につきましてはどうだということになりますれば、二千万円を超えるものにつきましては、これはとにかく大部分の額につきまして総合課税する。総合課税を四分の三についてやるということになれば、これはもうほとんど法人並みに所得は国が徴収するということになるので、大体ロイド・ジョージ並みのことをやっておることになる。そしてしかも、それが今日、土地の流通を阻害しておるということで物議を醸しておる、こういう状態です。しかし、それにしても土地利益を、個人にせよ、法人にせよ、ふところにしてしまう、こういうことはいかがであろうかというので、物議があるにかかわらずその改正をしないでおる、こういうような状態で、大体井上さんのおっしゃるようなことをやっておるのです。おるのですけれども、何せこの土地問題というのはそう簡単なものじゃないというので、さぞ御不満も多かろう、こういうふうに思っておるという段階でございます。
  108. 井上普方

    ○井上(普)委員 ともかく、あなたが出しておるうちの一つだけでもやってみようじゃありませんか。私は、二つですな。すなわち、この市街化区域における農地の宅地化、これについては方法を全部書いています。手段、方法までお書きになっておるのです。市街化区域内農地の宅地化について、これをやろうじゃありませんか。これはずっと手段、方法を書いてあるのです。私は、福田さんが総理大臣になられたので、あの答申は必ず実行せられると思って一生懸命見た。五回ぐらい見ましたので、これは赤線も黒線も引っ張ってあるのです。あるいはまた、既成市街地の再開発もやろうじゃありませんか。具体的な方法としてお示しになっておるこの二つだけでもやることによって、宅地の供給は大いにできるし、地価の鎮静ができると私は思う。総理は、他の内閣のとき、ほかの人が首班のときにはこんなのを出しておるけれども、自分がなったらやらないんだ、情けないことだと思うのです。せめてこの二つぐらいはやろうじゃありませんか。一国の総理といえば、自分の抱負経綸ができるときでしょう。どうですか。ここらでこの二つぐらいやりませんか。
  109. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほどから申し上げておるとおり、あの答申の眼目とするところは、地価の万一の場合における凍結である。これはそういう制度ができたわけですから、私は眼目はとにかく貫かれておる、こういうふうに思っております。  それから、なおそれに付帯いたしまして幾つかの答申というか意見になっておりますが、市街化区域内における措置、これにつきましては、土地区画整理促進区域、市街地再開発促進区域などの制度がつくられておる。これをうまく実行するかしないか、こういう問題がありまするけれども、制度としてはできておる。それから、新市街地の大規模開発ということにつきましては宅地開発公団というものができまして、いま、かなり仕事を手がけておる。しかし、これもそう早急に実効を上げないといううらみはありまするけれども、それだけにむずかしい問題に取り組んでおる、こういうことであり、また、何というか、社会開発利益、これを個人なり法人が独占してはならぬ、こういう問題につきましては、法人に対しましては分離課税、それから個人に対しましては総合課税という方式が現在も適用されておるということで、大方これが実現されておる、私はこういうふうに思っておりまするけれども、これは私がずいぶん考えて答申したものでございまするから、私としてはぜひこれを実行したいという気持ち、これはもう井上さんから御指摘を受けるまでもない話でありますが、なおいろいろ御意見等も承りまして、これも抽象的な答申でありまするから、具体化につきましては積極的にやってまいりたい、かように存じます。
  110. 井上普方

    ○井上(普)委員 あなたは一生懸命考えたと言うけれども、具体的方針まで出しておりますね。そして、市街化区域内の農地の宅地化についてきちっと書かれておる。手段、方法、全部書いてあるのです。それから、既成市街地の再開発については都市再開発法があるなどとおっしゃいますけれども、いまほとんど動いてないじゃないですか。再開発法というのは職住近接をやらなければいかぬというのでつくったのです。これが答申される前の話なんです。あなたもこれほどまでに真剣になってつくられた――私は、福田行政管理庁長官の際につくられた答申のうちでこれが一番りっぱだと思って、高く評価しておった。福田内閣が誕生したときに、せめてこれだけはできるわい、地価問題はこれでうまいこといく、こう思っておった。そうしたら去年の施政方針演説でも、地価の安定、宅地供給の促進等対策に困難を伴うものにつきましても、一層真剣に取り組んで努力いたします。こうおっしゃられたから、私はできるものだと考えておったら、案に相違しまして、とうとういまのような御答弁、私は落胆の気持ちを隠すわけにはまいらないのであります。いろいろとありますけれども、本当にやっていただかなければならない。先ほど申しましたように、地価の高騰はもう目前に迫っている。一波が万波を呼んで、ミニ開発の土地はいま三割ないし四割上がりつつあるのです。これを抑えなければならないのです。具体的な方法がないようであります。はなはだ不満であります。  私は、これだけで時間が費やされると困りますので、次の問題に移ります。  公団住宅、公営住宅の家賃につきまして、これは欠陥があることは御承知のとおりであります。わが社会党は先般、公団住宅の欠陥につきまして、調査団を派遣いたしまして調べたのであります。調べましたところが、公団建設省は、いや、あれは欠陥がないんだなんと言って新聞発表しているが、ここに私は写真を持ってきておるのですけれども、こういうような状況なんです。これぐらい穴があいているのです。これは公団住宅の基礎が、地下へもぐったらこういうように穴があいている、すき間があいている。ここに至っては、木の柱が支えになっている。こういうようになっているのです。それで、これくらい穴があいている。すき間があいている。建設大臣、お見せしてもよろしゅうございます。  そこで、もうこれは私は多くは申しませんが、あなたの方は一たん、これは構造上差し支えがないなんて言って大みえを切ったようであります。しかし、どうです。わが党の調査員、これは議員が、床下にまでもぐり込んで写真を撮ってきたのです。こういうような実態を見ましたら、もう一度再点検する必要があると考えられるかどうか、やる御意思があるかどうか。会計検査院は来ておられますね。調査してみる必要があるとお考えになるかどうか、やるお気持ちがあるかどうか。両方からひとつお伺いしたいです。
  111. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先般来、欠陥住宅の御指摘がございまして、一応の調査をした結果は、ただいま井上委員の方から言われたように、私の手元には構造上特に欠陥はないという一応の報告を見ましたけれども、その後皆さんの方から御指摘がございまして、再度よく調査をするようにという段階にあるわけでございます。
  112. 松尾恭一郎

    ○松尾会計検査院説明員 従来、検査院といたしましては、住宅の建設、工事の経済的な施行に重点を置きまして、主として設計とか積算につきまして検査をしたわけでございますけれども、     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕 住宅の欠陥につきましては、予算の執行、居住者の安全の面から非常に重要な面と考えておりますので、今後、この方面につきましても厳重な検査をしてまいりたいと考えております。
  113. 井上普方

    ○井上(普)委員 それでは会計検査院、調査をやりますね。
  114. 松尾恭一郎

    ○松尾会計検査院説明員 はい、厳重な調査をいたしたいと思っております。
  115. 井上普方

    ○井上(普)委員 ひとつ早急に調査、再検討をせられることをお願いいたします。  委員長、お願いします。これはこの予算審議中に持ってくるようにひとつお願いしたいと思います。  それから、もう公団住宅の悪口を言うのはよそうかというぐらい、ともかく口を酸っぱくして住宅公団に言ってきたのです。先ほども申しましたように、計画戸数は達成できない、空き家はたくさんできてきておる、会計検査院が指摘しておるとおりなんです。計画戸数は達成できない、これはどこかで会計検査院が指摘しています。まあひどいもんです。これは。澤田さん、あなたはほかの方から入られて唖然とされただろうと思うのです。昔大蔵省におられたから金の計算をよくやられる方ばかりで、金の方からばかり公団の様子を見ておられるようですけれども、実際、計画戸数はできない、空き家はできる、募集しようと思っても上水道さえ完備してないというような住宅をつくっているのですから、全くひどいもんだと思うのです。あなたも行かれてしばらく時間がたちましたので、住宅公団の欠陥につきましては御存じだろうと思う。これは機構をもう少し変える必要があるんじゃないか、こう思うのですが、いかがですか。  一例を挙げますならば、福田総理、多摩ニュータウンというのは、計画では昭和五十一年までにつくらなければいかぬのです。それはその間に関連公共事業の問題があったでしょう。進捗できなかったという問題はあります。しかし、人口四十万の町をつくるのですから、学校をどうするか、あるいは公園をどうするか、道路をどうするか、その費用は一体だれが持つんだというようなことは、最初から考えなければいかぬ問題なんです。これは全部市町村が持ってくれと言ったって、市町村財政がパンクするのはあたりまえの話なんです。そういう計画性がなかったがゆえに、いま多摩ニュータウンは、昭和五十九年でなかったらできぬというのです。こんなところにも住宅問題があるわけなんです。  根本的に機構をひとつ考え直す時期が来ておる。と言いますのは、昭和三十二年でございましたか、住宅公団ができてから、これで二十年間続いてきておる。その間にはいろいろ功績もあっただろうと思います。しかし、マンネリズムに陥った弊害なしとしないと私は思う。だから私は、ここで真剣に――建設省やあるいは公団の内部においてこの論議を交わさしたところで、やはり自分の身についた何とかは臭くないという言葉が昔からありますので、どうも抜本的な対策をようやらない。ですから、これは外部から住宅公団の運営のあり方等々についてひとつ調べてみる必要があるのではないだろうか、こう思うのですが、いかがですか。
  116. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 住宅問題は非常に大事な問題になってきております。その中で住宅公団、これがいろいろ世の批判を受けているということも事実でありますから、これはいろいろ工夫をいたしまして、そして何とか住宅公団を中心とする住宅問題、これが適正に支持、推進されるようにいたしたい、さように存じます。
  117. 井上普方

    ○井上(普)委員 総理大臣、そういうような通り一遍の御答弁ではだめなような状況になっていると私は思っておるのです。だから、内閣補佐官でもおれば、キッシンジャーのごとく乗り込んで、あそこの欠陥はどうだと言って調べて総理に進言するような機関があればなあと思うくらいなんです。どうです。ひとつ調べてみる必要がある。総理はやられるということを御確認になったので、私は次の問題に移ります。  「公共事業等の施行推進を!!」というこんなパンフレット、えらい上質の紙――つくりましょう、使いましょう、捨てましょうの口なんですが、えらいいい紙のやつが公共事業等施行推進本部から出されておりますな。これは何のために、どんなところへ配るんですか。どんなところに配付するのかお伺いしたいのです。
  118. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これはかねがね申しますように、今度の消化は非常に重要な問題でございますので、地方団体を主として関係方面に配付する予定でございます。
  119. 井上普方

    ○井上(普)委員 これまた、大変なひどいことが書いてあるのですな。これでいかれるならば、財政措置等々たくさん書いてございますけれども、地方財政はたまったものじゃないですね。それの手当てはできておると言いますが、これだけの公共事業を、補助事業が八〇%ですな、直轄事業が二〇%、そして六兆六千三百億円のやつをやる。これは自治体は人間が要ってきますよ、設計ができませんよ。  ちなみに、昭和五十二年の十二月現在の公共事業の施行の実績を私ども拝見いたしますと、それはいかにも直轄事業あるいは補助事業とも、直轄事業は八七%の契約ができておる、補助事業は八四%の契約ができておる。しかしながら、一月末におきましては、地方自治体補助事業の方は四六%しか金を払ってないじゃないですか。直轄事業は六四%金を払っておるのです。地方財政が苦しいからこういうように差が出てきている。契約率は同じなんです。そして、いつごろ契約したかと思って、大体ずっと毎月毎月の契約のパーセンテージを見ていきました。大体同じです。まあ地方自治体も福田内閣の言うことをよく聞くものだなと思って感心したのです。契約だけは。ところが、金を払う段になるとそうはいってない。片一方、直轄事業は六四%金を払っている。補助事業の方は四六%しか金を払ってない。ここに私は地方財政の硬直性があると思うのです。それをカバーせんがためにこのPRをなさっておるのだが、そういう面からいたしましても、この公共事業を完全消化するというのはむずかしいのじゃないか、私はこう思うのですが、いかがです。
  120. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまの点にしぼって御答弁いたしますと、それでございますものですから五十三年度におきましては、財源手当てはもちろんの話、資金手当ても十分にいたしているところでございます。御承知のように財源不足が大体三兆五百億でございまして、そのうち一兆三千億、財源対策債にしているわけでございます。残りの一兆七千億のうちの千五百億は臨時交付金でもって入れまして、残りの一兆五千五百億は運用部から全部つけるわけでございます。一方、財源対策債につきましては、これは充当率を従来よりも上げまして九五%ぐらいまで、物によりましては一〇〇%ぐらいまで上げているわけでございます。  財源対策はそれでいっていると私は思うのでございますが、片や、資金手当てでございます。資金手当ての方はそこの表にあるいは出ていると思いますが、いま政府資金を大幅にふやしまして、たしか三二%ぐらいふやしているはずでございます。それから公営公庫の資金も大幅にふやしておりますから、純粋な地方資金の分は非常に減らしております。大体二四%ぐらいになっておると思います。  特に、問題になっておる縁故債につきましては、これは九%ぐらい実額におきまして去年よりも少なくいたしているのでございます。さらに、その縁故債につきましては、現在の公社債市場の流通からいいまして、われわれは銀行も督励いたしまして完全消化を図っているところでございます。  こういう次第でございますので、従来、とかく地方財政の方の受けざらはうまくいかない、こういうことでございますので、われわれは財源的にも資金的にも十分自治省と相談の上、万全の措置をとったつもりでございますので、今度の五十三年度予算は完全消化をねらっているわけでございます。
  121. 井上普方

    ○井上(普)委員 ともかく市町村の決算あるいは府県の決算を見てみますというと、公債費がぐんと伸びて財政は硬直状態にあるという報告が出ています。その上借金さすのですから、これは地方自治体も国と同じような赤字財政になって困ってくるのじゃなかろうか、硬直化して困ってくるのじゃなかろうか、この点を私は大いに心配するものであります。  この問題は、時間がございませんのでその程度にいたしまして、これは私が過去二回にわたりまして、昨年の八十回国会の予算委員会において質問したのですが、財形住宅貯蓄という制度をつくっております。ところが、これを国家公務員でやっておるところは、建設省と運輸省だけなんです。あるいは法律をつくった御本人である労働省がこれをまだやってない。ほかの省庁は全部やってない。最高裁判所と、さすがに衆議院の事務局と参議院の事務局はこれをやっている。あと全部やってないです。科学技術庁、あなたはにこにこ笑っているけれども、あなたのところはやってないんですよ。大蔵省、あなたのところ、やってないですよ。専売公社に対しましてやかましく言っておったところが、専売公社は去年の十一月に初めてやった。公社でやっておるのは専売公社だけ。公団でやっておるのは、十五のうちで四つしかやってない。公庫――金を扱うところはさすがに多いと見えまして、ここは十のうちで九つやっている。その他の特殊法人は八十のうちで二十三しかやってない。  どうしてこんなにやらないのです。主務官庁はどこなんです。私は労働省に聞きますといや、それは主管は総理府でございますと言う。先ほど廊下で総理府長官に会うたら、いや、あれは労働省で、うちじゃないと言う。国家公務員の一体どこがやっているんです。問題点はどこにあるんだ、なぜこれだけやらないんだということが一つ。  もう一つは、なぜこれが普及しないんだ。しかも、この法律におきましては、国及び地方公共団体はこれを奨励しなければならぬということを義務づけてある。その御本人たちがやらないのは、福田内閣は、貯金したら困ると思ってこんなことをやっておるのですか。貯金したらとにかく消費の方に回らないので、財形住宅をやらしたらいかぬと思ってこういうことをやっておるとしか思えぬですな。去年も指摘しておるのにかかわらず、全然やっていない。全然と言ったらしかられるな、建設省と運輸省だけはやっておるのだから。最高裁と衆議院の事務局と参議院の事務局と、そただけですよ。あと全部やってないのです。どうなっているのです。こんな法律をつくって。いかがでございます。だれが答弁するんです。
  122. 稻村佐近四郎

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  総理府も、職員の申し込みがございませんので実施をいたしておりませんが、ただ問題として、財形住宅貯蓄制度というのは一般の財形貯蓄制度と違いまして、税制面の恩典もございますし、また福祉増進という観点からも大変有効な制度であろうと私は考えております。  ただし、その反面に、利用者という面にいろいろな意見があることも聞いておりますので、各省庁の職員の意見等々も聞きまして今後積極的に進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  123. 井上普方

    ○井上(普)委員 この法律は「国及び地方公共団体は、この法律の目的の達成に資するため、勤労者について、貯蓄の奨励及び持家の取得を促進するための施策を講ずるように配慮しなければならない。」と、第三条にちゃんと書いてある。しかも、この法律をつくったのは、労働総覧にあるんだから労働省でしょうな。労働大臣、あなたのところでつくっていない。そして、一体だれが主管するんだと言ったら、労働省の役人が私のところへ来て、いや、それは総理府の人事局だと言う。鳴り物入りでつくって、どうなんです。これは。福田内閣が貯金さしたらいかぬということで公務員にやらせないのかと疑いたくなるんですな。これが一つ。  もう一つは……
  124. 中野四郎

    中野委員長 井上君に申し上げますが、申し合わせの時間がとっくに過ぎておりますので、きわめて簡便にしてください。
  125. 井上普方

    ○井上(普)委員 はい。もう一つ申しますと、この財形の利子が違う。五年以上になったら郵便局が一番いい。ところが郵便局はいじめられて、四十七年に発足したんだけれども、郵便局は、取り扱いは五十年からしか取り扱わしてくれなかったもので、シェアが非常に少ない。そして、ともかく郵便貯金はうんすけかせげといって、郵便局の職員のしりをたたいて六兆七千億円も金を集めさす。まことに気の毒だとは思うのでございますが、一体これは主管庁はどこなんだ。そして、先ほど総理府長官が申されました、やるについては非常な障害があるのでございますと言いました以上は、その障害はどこにあるんだ、それをどういうふうにして直すんだという方針を労働大臣から承りたい。  それから、利子が違うところについては、ひとつ銀行局の方から承りたい。
  126. 中野四郎

    中野委員長 簡便に答弁をしてください。
  127. 藤井勝志

    藤井国務大臣 公務員の持ち家住宅融資制度の利用が非常に少ないという御指摘でございまして、まさに……(「少ないんじゃなくて、ないんだ」と呼ぶ者あり)いや、公務員の場合はありますよ。(「労働省はあるかい」と呼ぶ者あり)労働省はございません。  そこで、実はこれは労働省としては去年、前労働大臣が、委員会において御指摘がございまして、現在、担当者を決めて、いよいよことしから実施するように準備を整えております。  ただ一つ、これは言いわけではございませんけれども、公務員の場合、共済組合による融資制度というのがありまして、これは率直に言いますと、その方が有利だということを労働省の方の関係者はある程度知っているといいますか、これは表向きにいきすと、いわば紺屋の白ばかまというようなことで遠慮している面と、両方が混在しているというふうに私は思うのでございまして、御指摘の点は今後十分配慮いたしまして、今度は財形貯蓄、特に勤労者の生活の安定という面から言うと、やはり賃金関係は相当向上して欧米先進国に……
  128. 中野四郎

    中野委員長 簡便にしてください。
  129. 藤井勝志

    藤井国務大臣 比肩するようなことになりましたが、住宅問題、これは今後大いに内容を改善をして御趣旨の線に沿うように、まず労働省が模範になるように努力したい、このように思います。
  130. 中野四郎

    中野委員長 これにて井上君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  131. 坂口力

    坂口委員 それでは、まず最初に大蔵大臣から御答弁をいただきたいわけでございますが、先日から有名になりました「所得税減税に対する考え方」というパンフレットがございます。このパンフレットの八ページをお開きいただきますと、そこに各国の個人貯蓄性向が書いてございます。ここに日本が二五・一%、アメリカが七・九%、イギリスが一一・二%、西ドイツが一四・五%、そしてフランスが一二・三%、こういうふうに貯蓄性向が書いてございます。  このパンフレットは、こういうふうに日本は貯蓄性向が非常に高い、だから、減税をいたしましてもそれは貯蓄の方に回りますぞということを言うているわけなんです。ところが、このパンフレットは、なぜ貯蓄性向が高いかということについては触れていない。大臣、これはどういうふうにお考えになりますか。
  132. 村山達雄

    ○村山国務大臣 あのアンケート調査をいたしますといつでも出てきますように、第一位が病気その他の事故が心配だ、第二番目が結婚とかあるいは教育、それから第三番目が家屋の取得、第四番目が老後、大体そんな順序で出ております。しかし、それは他国との比較でなぜ高いかという問題になりますと、そのアンケート調査は直ちにはいただけないわけでございまして、そういった意味でわれわれ考えてみますと、通常世間に言われておりますのは、一つは、日本はボーナス制度があるんじゃないか。ほかの国はボーナス制度はありません。これが貯蓄率を高めている一つの理由ではないであろうか、こういうことが言われております。  それから第二番目の問題は、いま終身雇用制で年功序列型賃金でございますので、大体子弟の教育を終えたところではわりと家計が楽になるわけでございますので、それが一つあるんじゃなかろうか、これがまあ普通言われているわけです。  それから、統計上言われておりますのは、個人貯蓄という範疇でとらえておりますが、実はこれには勤労者も事業者も入っているわけでございます。その統計の方から申しますと、わが国の場合、御案内のように個人事業者の数が、中小企業を中心としまして非常に多い。したがって、家計の貯蓄だけではなくて事業上の貯蓄、これがまじり込んでいるのじゃなかろうか、こういう点が一つ。  それから、アンケート調査からもう一つわかることは、住宅の関係があるかもしれぬな、大体そんなところが普通言われているところじゃないかと思っているのでございます。
  133. 坂口力

    坂口委員 私がお聞きいたしましたのは、いま大臣がお挙げになりましたような理由がなぜ起こるかということを、どうお受けとめになるかということをお聞きしたわけです。この問題はまだ引き続いてお聞きいたします。  続いて経企庁長官にお聞きをしたいと思いますが、昨年の経済白書を見せていただきますと、その中で「減速経済下の高貯蓄」という項目がございまして、ここで「家計貯蓄率の変動とその決定要因」というものについて詳しく触れておみえになるわけです。  この中で、いまいろいろのことが言われておりますが、この決定要因についていろいろあるけれども、これは一つの推計の式をつくることができるということをここで述べております。その式を決定する要因といたしまして、一つは、ボーナスやそういうふうなものじゃなしに、月々入りますところの恒常性所得比率ですね、月々入る恒常性の所得、この比率が一つの大きな要因になっている。それからもう一つは、これは消費者不快指数というものを出しております。この消費者不快指数というのは、これはたとえば住宅ローンなんかの返済を全体で何ぼしなければならぬか、これを非任意的な控除率と呼んでおりますが、このほか完全失業率、それから消費者物価の前年比上昇率、この三つを足しまして、幾何平均値をとりまして、この値を出しております。  いま申しましたような要因を挙げながら、それを一つの推計式をたどっていきますと、いままでの昭和三十九年から昭和五十一年までの間に日本の消費性向がたどった道は、非常によく説明ができる、この式に当てはめていくと大体よく似たカーブになる、こういうことを言っているわけです。  そこで、お聞きしたいのは、昭和五十三年度の消費性向というものをこの式に当てはめるとしたら、大体どの辺のところに行くのであろうか、どう思っているか。  もう一つ、ついでに申し上げておきますと、経企庁でお挙げになっておりますように、個人消費支出、一一・九%というところに行きそうなファクターがどうもそこにないと私は思いますので、お聞きしているわけなんです。お答えいただきたい。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう、ただいま御指摘のようなことを経済白書で申しております。それで、その不快指数等に当てはめて、昭和五十三年度あたりの貯蓄性向はどういうふうに考えるかというお尋ねでございます。  御承知のように、昭和四十年ごろからちょうど石油危機の前ごろでございますけれども、比較的わが国の経済が好調にございました時代は、どちらかと言えば、いまの不快指数が低いと申しますか、状況がよろしゅうございまして、消費性向が八〇を少し超えております。年によってちょっと下がっているときがございますが、四十年から四十六年ぐらいまでは八〇を超えておると思います。それだけ貯蓄性向が低かったことになります。石油危機を契機に貯蓄性向の方が非常に高まりまして、消費性向が落ちてまいりました。この一、二年、少しまた消費性向が盛り返しておりますけれども、まだ、四十年から石油危機までの八〇という水準には達しておりません。七六とかその辺のところでございますので、貯蓄性向から申しますと二三あたりのところ、大体そんなような感じのところでございます。  来年度も、今年度の五十二年度に比べますと消費者物価の落ちつきが深まるであろう。それから、私どもの考えでは、経済の多少の好転が見られる、完全失業者の数は大きな改善ではございませんが、しかし稼働率等は上がるということから、今年度よりは消費者不快指数が多少の改善がある、こう思っております。
  135. 坂口力

    坂口委員 どうも自信のない長官の答弁でございまして、この完全失業率を一つとってみましても、あるいはまた、消費者物価の前年比上昇率を見ましても、また非任意控除率というものを見ましても、それからこの恒常性の所得比率を見ましても、自画自賛しておみえになるこの経企庁の行き方でいきますと、この推計式に当てはめていくならば、来年はどうしてもそれほどこの消費性向というものは上がらない、こういうふうに結論づけざるを得ないと思うのです。ところが、実際の数字としては一一・九%は上りますぞということを言っておみえになるわけでございまして、この辺に非常に大きな問題点があるということを指摘しておきます。それは逆に申しますと、いま長官も言われましたように、これは貯蓄率という方が依然として高いということになるわけであります。そのことを指摘しておきたいわけであります。  しかし、経企庁の方は、その貯蓄率がなぜ高いかということについての分析も若干いたしておりまして、その中には、これから私が触れていきます年金等の問題にも触れておりまして、そうして、こう書いております。「老後生活については、今後とも、社会的な解決にまたなければならない面が多い。というのは、いまだ所得水準が低く、生活水準も低い時の貯蓄で社会全体の一般的な生活水準が上ったあとの生活を賄うということは不可能だという基本的な問題が存在するからである。」おっしゃるとおりでございます。これだけ書いているところは、大蔵省の何も書いてないのと比べると、まだ良心的だと私は思うのです。ところが、そのあたりで一つ気に入らないのは、「制度面ではすでに国際的な水準を実現しているものの」という言葉がある。これは私は気に入らない。これは後で触れることにいたします。  先ほど大蔵大臣が申されました、貯蓄に関する世論調査、私もここに持っております。この中には、先ほど大蔵大臣が言われましたように、いろいろのアンケート調査の結果が入っております。これを見ますと、日本の昭和五十二年におきますところの平均貯蓄保有額は三百五十四万円で、前年に比べて四十七万円、一五・三%、これは増になっているわけであります。過去一年間に貯蓄をふやした人は二二・七%、今後一年間のうちにさらにふやしたいと思っている人はどうかというと四七・一%、依然として五十三年度も貯蓄増というのは続きそうだという結果がここに出ております。貯蓄をどれだけしていきたいかという目標額、それは千五百二十三万円というふうにアップをしてきているわけなんです。いま大臣がおっしゃったように、目標は、病気や不時の災害に備えてというのが一番多くて三二・九%、その次に、子供の教育費や結婚式、それから土地、建物の買い入れや新増改築、そして老後の生活のためにということに続いている。昭和四十五年から昭和五十二年の八年間で、最もこの目的の中で伸びているのは、老後のためにというのと、子供の教育のためにという二つが伸びているわけなんです。この辺のところを全体としてひとつ理解をしておいていただいて、次に進みます。  この老後のためにというのを目的として貯蓄をする人が平均で一四・八%でありますけれども、五十歳以上ではこれが三割を超えてくるわけです。そして、職業によりましてはパーセントが異なりまして、農林漁業の人が一番全体で平均が高くて二〇・二%です。事務系の勤め人が一〇・五%。ここに二〇%、一〇%というかなり大きな差があるのが特徴でございます。  そこで、農林大臣、いま申しましたように、老後のためにという目的で貯蓄をしておみえになる人が、農林漁業従事者が一番多い、二〇・二%。四十七万円昨年伸びておりますから、その中で、もし二割方の人が老後のためにということで貯金をしておみえになるということになれば、もしもそう考えれば、農林漁業の人は約十万円貯金をしているという勘定にもなります。そこで農林大臣は、なぜ農林漁業に従事している人が貯蓄率が高いのだろう、こうお考えになったことはありませんか。
  136. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農村の人は堅実でございますから、やはり老後のことを一番考えるだろうということが一つ言えます。  それからもう一つは、農業者が確かに貯蓄率が非常に高い、一人平均六百万円でございますから、かなり高いところにあるわけでございます。  もう一つは、これは経営と個人生活が一緒になっておりますから、二重の意味での貯蓄ということが一つ言えると存じます。  もう一つは、貯蓄が多い反面、負債も非農家に比べて多い。こういうことが総合的に積み重なって貯蓄率が多いもの、こういうふうに見ておりますが、農業者年金ございますけれども、農業者年金については、まあ普通の国民年金よりはかなりよくなってはおりますけれども、こういったことに対するもっと改善というようなこともあるかもしれません。貯蓄傾向が強いのはそういうことだと認識いたしております。
  137. 坂口力

    坂口委員 各大臣とも一番核心のところは避けてお答えになっているわけでありまして、これは意識的に避けておみえになるのだろうと私は思います。  引き続きまして、私は大蔵大臣にお聞きをしたいわけですが、先日、さきのパンフレットと同じに「わが国の社会保障の給付水準は高い」というパンフレットをいただきました。ここで「わが国の社会保障の給付水準は、制度的には、既に、国際的に遜色のない水準に達しております。」こう書いてあります。これは大臣、本当に心の底から社会保障の給付水準は国際的に遜色のないものだ、こう思っておみえになりますか。
  138. 村山達雄

    ○村山国務大臣 制度としてはもうすでにそうなっているのじゃないかと思っております。
  139. 坂口力

    坂口委員 これはもしもこの「制度的には、」という言葉がなければ、わが国の社会保障の給付水準は、国際的に遜色のない水準に達しております。こう読めるわけです。ところが、その間に「制度的には、」という言葉を一つ入れて、いかにも水準に達しているような表現の仕方がしてある。ここが大蔵省の悪賢いと言うとしかられますけれども、手の込んでいるところだと思うわけですね。これは「制度的には、」というのは、言葉をかえれば、現在はその水準にありませんけれども、何年か先には高い水準になる制度となっております。こういうことですな、これは。厚生大臣、どうですか。厚生大臣は専門家ですから、この点ははっきりと明確にお答えになると思いますが、どうですか。
  140. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 そう間違った表現ではないと思うのですよ。これは現在、国民所得に対する社会保障の給付費の比較を先生も専門家でいらっしゃいますから御存じだと思うのですが、確かにこの点から見ますと、日本の方は大体五十三年の見込みでまあ一二ぐらいになるだろうと思うのですね。そうしますと、たとえばイギリスが一六、あるいはもう統計がちょっと古いですから、最近あたりは一七ぐらいになっているかもしれませんが、あるいはアメリカが一四ぐらいである。それから進んでいるところはスウェーデンの三〇とか西独が二五とかございますが、しかしこの数字の違いというのは、老齢化社会のその進度を見ますとうんと違うわけでございますから、したがって、このいま高い国の老齢人口とほぼ同じ時代になる場合を想定して国民所得に対する全体の社会保障の給付費を見ますと、日本は約二〇ぐらいと換算しなければいかぬわけでございますから、したがって、そういう面から見ますとそうおくれていない。また被用者年金である厚生年金等を見ますと、平均賃金で老齢年金を割っていきますと、大体各国ほとんど四一、二%でございますから、日本も大体この標準的な厚生年金の額がほぼ平均賃金の四一%になっておりますので、そういう面から取り上げて大蔵省の作文ができておるので、その他のいろいろなもろもろの制度を比べますと、まだ内容的にはおくれている面が確かにありますけれども、ほぼ水準としてそういう言い方を政府としてさせていただいてもまあまあ御納得いただけるのではないかと思います。
  141. 坂口力

    坂口委員 厚生大臣のお話も、これはいまから二十年ないし三十年して、ひょっとしましたら厚生大臣も大蔵大臣も私も死んでいなくなったころの年金のことを言っておみえになるわけで、われわれが議論しておりますのは、現在のこの社会における年金を言っているわけなんです。  では、もう少し細こう行きましょう。「わが国の年金の給付水準は、厚生年金でみますと、一〇・五万円(二八年加入標準年金)であり、」こう書いて、いかにも現在の年金の水準が十万五千円になっているかのごとく書いてある。ところが現在の厚生年金、平均でいきますと七万五千五百四十四円なんです。国民年金でいきますとさらに悪くて、三万八千二百五十八円なんです。いまの水準はそうなんですけれども、一番高いところの例をとって、そうしてこう書いてある。これはごまかしなんですよね。もう一つ、この裏の二ページを見ていただきますと、「振替所得の対国民所得比」というのがございますね。これを見ていただきますと、ここに日本の場合は一〇・八%、そして括弧して一九・八%と書いてある。これはいま厚生大臣がおっしゃったように、もっと老齢化が進んでこの制度も成熟をした後のことが括弧して書いてあるわけで、現在は一〇・八%と書いてある。ところが括弧の中をよく見ると、これは昭和五十年度、日本は昭和五十三年度が書いてあるわけですね。ほかの国のはみんな昭和五十年度です。日本だけは昭和五十三年度が書いてあるわけです。五十三年度もなかなかで、国民所得もなかなかわからないのに、もうそれがはじき出されてここに書いてある、一〇・八%と。このほかの米、英、西独、仏と、この外国と同じように昭和五十年度の数字をここへ比較して並べますと、これは八・五なんです。そうすると、八・五と一四・五、一三・八、二一・九、二六・一という数字を並べるといかに低いかというのがわかる。それを五十年度の数字は日本だけ出さずに昭和五十三年、まだどうなるか海とも山ともわからない数字をここへ出してある。いかにこのパンフレットがその辺のところで過ちを多くやっているかということをひとつ御理解をいただきたい。これは大臣、おわかりいただけると思います。  それで続いてもう一つだけ申し上げておきます。「したがって、現行制度のままでも、わが国の社会保障給付は、今後急増していくことは確実な事実です。その際、それを支える国民の費用負担も西欧並みの水準にまで増加せざるをえません。このような時に、長期的見通しもないまま、安易に給付の上乗せをすれば、将来、国民はその負担にたえられなくなります。」こう書いてある。このことは、いまの給付水準にさらに上乗せをすれば、その分だけ上乗せをしたままでずっと将来にいって、そして日本の年金が成熟しました、たとえば昭和七十五年に成熟するとしましょう、昭和七十五年のところでは、いまのままでずっとこれが高くなっていくのではなしに、それに上乗せされたままでずっと高くなっていくのですよ、これはこういうことを言っているのですか。大蔵省、もしもお答えいただくならお答えいただきたい。
  142. 村山達雄

    ○村山国務大臣 先ほど厚生大臣から申し上げました各国の比較でございますが、これは現在の標準ではなくて、実際の支給の平均額で比較いたしておるのでございます。すなわち、日本の場合は九万八千円、その場合西ドイツは八万九千円、フランスは五万二千円とか、スウェーデンは九万四千円とか、英国は五万七千円、アメリカは十万一千円でございます。年次は、日本の場合は七七年、西ドイツが七六年七月、フランスは七五年七月、スウェーデンは七六年十一月、英国は七六年十一月、アメリカは七六年十二月でございます。  それから、先ほどちょっと御指摘のありました、こちらがいつも新しい統計で向こうが古いものだという点は別に他意はございません。ほかの方の資料が入手できないわけでございまして、ただ、厚生大臣が言った数字、それが平均賃金に対しまして低いところで四一、日本は四二、西ドイツが四四だ、これはいずれも大体年次が日本と同じくらいでございまして、ほかのところは一年くらい古いところはございますが、これは資料の入手の関係でございます。
  143. 坂口力

    坂口委員 入手のできない、日本では五十三年度まで書いてあるということを私は申し上げているわけで、厚生大臣、いま大蔵大臣は御答弁になりませんでしたけれども、先ほど私が申しましたように、現在の上乗せをしたら、そのままで今後ずっとふえていくと考えておみえになるのかどうかということ、これは厚生省としてはどうですか。
  144. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先生がおっしゃる、いま上乗せをして、その上乗せ分が将来ずっと続くのかという意味は、たとえば年金の中で福祉年金のことなのか、あるいは国民年金のことなのか、あるいは厚生年金のことなのか、そこですが、私どもが非常に将来負担がふえると考えておりますのは、老齢人口がどんどん西欧並みになっていきます。一方、年金が成熟をいたしまして、現在のままでも、ずっと計算をしていきますと、御承知のように、今度物価スライドだけの改正をやるための法律改正案を国会に御審議を願うことになっておりますが、それにいたしましても、五十五年までの保険料を想定してお願いをしているわけでございますが、国民年金等の二十八年ないし三十年の方方が国民年金の給付を受けるようなことになる場合を想定していきますと、非常な国庫負担の増になってまいります。同時に、保険料の負担も相当増額しなければならない、こういうことになりますので、それ全体をひっくるめていまのような表現になっておる、こう思います。
  145. 坂口力

    坂口委員 ここのところで時間をとっておりますと、時間がなくなりますので私申しますが、決してそうではないのです。いま上乗せをしましても、たとえば成熟をしましたいまから二十年なら二十年先の、昭和七十五年なら七十五年に成熟をするといたしますと、そのころはいま上乗せをしても同じことなんです。その昭和七十五年に要ります額は。ちょうどカーブでかきますと、いま上乗せをせずにいまのままでいきますと、直線なら直線で急カーブを描いていくわけですが、上乗せをすれば、その直線の勾配が緩くなるだけで、同じところにいくのですね。それが、大蔵省のパンフレットを見ますと、いま上乗せをすると、いまでも将来えらくなるのに、これにさらに上乗せをして、さらにえらくなりますぞ、いかにもこういうふうにとれる。またこれはとれるように書いてある。だから、これは間違いですよということを指摘しておるわけなんです。時間がありませんから、それだけひとつ理解しておいていただいて、次に進みたいと思います。  本論でございますけれども、私は、昨年のこの予算委員会におきましても、年金制度の早期改正というものを訴えまして、総理も、これはぜひ早くやらねばならないけれども、諸般の事情もあるので、昭和五十二年から三年にかけてはぜひやる、こういうふうに御答弁になっておるわけなんです。実はもう五十二年、五十三年が来ておるわけであります。  そこで、まず厚生大臣にお聞きをしたいと思いますが、どういうふうな方向でこの改革というものをなさろうとしておるのか。もう少し具体的に申しますと、いまの制度、八種類に分かれております制度のたとえ部分的にしろ統合をする形において進めていこうとなさっているのかどうか、これが一つ。  それから総理には、社会保障制度審議会、総理の諮問機関でございますが、これが建議書を出しまして、その中で基本年金構想というものを出している。その基本年金構想を示しながら、それはいわゆる国庫補助でいきますぞ、そしてその上に保険の分を上乗せをしますぞという二階建ての行き方を示しておるわけです。その一階の部分の基本年金のところについての財源は、所得型の付加価値税の導入によっていきますぞ、こういうことを述べておる。これに対して大臣がどのようにお考えになっておるかということを承りたい。以上であります。
  146. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 先日川俣委員のお尋ねに対しましても私がお答えを申し上げておりますが、各制度それぞれその目的なり沿革なり、あるいは組み立てなりがそれぞれ歴史的にも違った経過をたどっておりますから、せっかちな一元化というものはまだ私は考えられないのじゃないか、しかし、業務の一元化は早くやっておきませんと、いろいろな意味で支給事務等について国民が不便を感ずるのではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。ですが、とにかく被用者とそれから国民年金というものと厚生年金というものは、これは当分の間やはり二本立てで進んでいかざるを得ないだろう。ただし、経過年金については、私どもとして何らか根本的な考え方で統一したものを打ち出していく必要があるのではなかろうか。  そこで、昨年坂口委員の御質問について総理も、五十三年の秋くらいを目途にいろいろ検討を進めますとおっしゃっておられました。それも私承知しておりますので、五十三年度いっぱいくらいはどうしてもかかるのじゃないか、私どもはそういうふうに思いますが、それは財政方式、すなわち負担をめぐるそういう点の方向をはっきりと見定めていかなければいけませんから、そういう意味で、いま鋭意年金懇談会、あるいはまたいまお挙げになりました社会保障制度審議会等の意見、あるいは各党でそれぞれ御提案をいただいておりますそれらを十分検討いたしまして、りっぱな方向をひとつつくり上げてみたい、かように考えておるわけでございます。
  147. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 各種年金制度ですね、わが国においてはこれが余り多岐にわたりまして複雑化し過ぎている、これをもう少し簡素化する、こういう必要があろうかと思うのです。いま厚生大臣が申し上げましたように、これを五十二年度中には何とか新しいレールに乗せたい、こういう努力をいましておる、そういう中で社会保障審議会が基本年金構想を打ち出しておるわけであります。これは租税負担を財源とする基礎年金、これを設定いたしまして、その上に保険方式の年金を積み上げよう、こういう考え方でありますが、私は、長期構想を考える場合におきましてこれも一つの貴重な意見だというふうに考えるのです。まあしかし、いませっかく今後どういうふうな体系がいいかということを構想している最中でありますから、これにしなければならぬ、こういうような意見は申し上げませんけれども、これは一つの貴重な構想であるということだけをお答え申し上げます。
  148. 坂口力

    坂口委員 それでは、重ねてこれは大蔵大臣とそれから厚生大臣、お二人にお聞きをしたいと思いますが、この年金制度をさらに前進させていきます場合の全く基本的な問題といたしまして、その位置づけを所得保障という形で位置づけるか、生活保障という形で位置づけるかという基本的な問題がございます。この辺のところはどのように位置づけをして今後その細かなことを進めていこうとしておみえになるか、この辺だけはいま決めていただいておきませんと、それも決まっておらぬというのでは、一体何のために内閣があるのかわからぬということになるわけであります。よく御答弁いただきますと、いまいろいろの審議会等でやっておりますので、その結果が出てからということでございますが、何もかも審議会にお任せするというのであったらおかしな話でございまして、厚生大臣要らぬわけでございまして、そういう意味でこの辺のところをひとつ、これだけは明確にしておいていただきたいと思います。
  149. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 やはり年金は老後の生活保障のために非常な関心と必要性を言われておりますけれども、年金制度自体としては生活保障じゃなくて所得保障ということで考えるのが本当ではないかと思います。内閣の制度審議会における基礎年金構想につきましても、生活に必要な費用の大体六割を年金としてのいわゆる所得保障として実現をしていこうという考え方のように見受けられますので、大体所得保障という考え方で進めているのは年金制度としてはやむを得ぬではないか、こう思います。
  150. 村山達雄

    ○村山国務大臣 大蔵省といたしましても厚生省と緊密な連絡をとっているところでございますが、やはり大体所得保障として年金というものは考えるべきではないか、かように思っているところでございます。
  151. 坂口力

    坂口委員 大蔵大臣ばかりいじめるようでございますが、決してそういうつもりはないのですけれども、問題の性質上、続いてお聞きしなければならぬのです。  それは、年金に所得税がかかっておりますね。今後は所得保障としていくということでございますから、これはある意味ではその所得税というものとの関係でおっしゃっているのかもしれませんけれども、しかし年金になぜ税金がかかるのであろうか。お互いが本当になけなしの金を預けながら、そしてそれで得られた年金に、しかもたとえば五十歳から五十五歳ですといま八十万円から税金がかかるわけですね。七十九万円までは無税、八十万円から税金がかかる、こういうことになっているわけですね。これは母子年金でございますとかあるいは障害年金の場合にはかかってないのです。この辺のところは、国の方がいろいろと財政的に苦しいということはよくわかりますけれども、しかし、いかに苦しくとも年間八十万円や九十万円の年金からまで税金は取らなくてもいいじゃないか、こう思いますが、どうですか。
  152. 村山達雄

    ○村山国務大臣 所得保障として考えるべきだということは、別に所得税と関連を持っているわけではございません。掛金が当然これは整合性を持っておりまして、在職当時の所得を基準にしてやっておるわけでございますから、整合性からいって当然そういうことになるだろうと思うのでございます。  それから、第二番目の、所得税はどういうことかという話でございますが、いま福祉年金あるいは母子年金の話が出ましたが、これは租税政策といたしまして、特に老齢者につきましてはいま七十八万円でしたか、そこまではやっているのは租税政策上の考慮でございます。御案内のように、所得税は本来でございますと掛金をどう見るかというところでございますけれども、これはいま全額引いているわけでございます。経費として見ているわけでございます。そして、後でもらったときには、これは当然年金でございますから給与所得の性質を持つわけでございまして、そしてその分は引いた残り、これは実は掛金のときはもう全額引いておりまして、そのときには給与所得控除をやっておるわけでございますから、普通の生命保険等に比べますと、これは社会保険だ、公的年金だということで、所得計算上はかなり有利に取り扱っておるところでございます。
  153. 坂口力

    坂口委員 われわれが月給の中から保険料を払いますときに、これは控除されますね。そのことをいまおっしゃっておみえになるのでしょう。保険料をわれわれが出しますときに、それは税金の方から控除されております。それが控除をされているぐらいなのに、それを今度は集めて、そして年金としてわれわれに返ってくるときにはなぜ税金をかけるのでしょうか、こういうことを申し上げているわけです。その整合性、決してないと私は思うのですよ。これはじっくりひとつ大蔵省の方で今後検討していただきたい。いまは国民年金なんかでまだ額が非常に低いものですから、税金を取られる方は少のうございます。ところが、これから年金額が徐々に高くなってきますと、どうしましても税金で引かれる額というのが多い。先日お聞きしましたら、いま三億四、五千万円が年金の中から税金として引かれておるということでございます。いま控除のことを申されました。もしいまわれわれの一般の場合を考えてみますと、課税最低限は二百一万四千円でございます。百歩譲って、控除があるからいいじゃないかという大臣の説をとったとしましても、年金をもらう六十歳から六十五歳の人は八十万円から税金がかかるわけですよ。この辺の整合性というものもこれは考えてみなければならないのではないでしょうか。これは全然整合性はないと私は思うのです。しかも昭和五十四年の十二月までいまのままのこの税制でいくことになっているわけですよ。昭和五十二年度もこれは九・四%ぐらい物価スライドしますね。それから昭和五十三年度どれだけになりますか、たとえば七%台のスライドをすることになっていますね、ほかの年金も。五十二年、五十二年とそういうことがあるのに、この年金に対する税額というのは五十四年の十二月までこのままでいくことになっているのですよ。だから百歩譲って、控除率があるからいいじゃないかという大臣の説に歩み寄ったとしても、なおかつこれは非常に酷な制度ではないか。これは、この辺も含めてひとつ早急に厚生省とお話を詰めていただいて、もう少しこの辺に配慮をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  154. 村山達雄

    ○村山国務大臣 所得税法の本来のたてまえからいうと逆なのでございまして、やはり年金はすべて給与所得の範疇に入るわけでございます。したがって、所得税法の基本的な考えで申しますれば、老人であろうが何であろうが、普通の給与所得控除だけをいたしまして課税するのは当然でございますけれども、特に老人対策ということで、租税政策の面から特別な配慮をしておるというふうに御理解願いたいのでございます。  それから、いま保険料を掛けるというのは、これは強制的あるいは任意と申しましても、事実上は生計費の一部を充てるわけでございまして、必要経費と見るか見ないか、大いに議論のあるところでございます。したがって、明治時代からやっておりますところの生命保険料、こういったものはやはり可処分所得、生計費の処分だ、こう考えておりますものですから限度を置いておるわけでございます。これに対しまして社会保険料については全額引いておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  155. 坂口力

    坂口委員 この年金を生命保険の方と比較されては困るのです。(「趣旨が全然違う」と呼ぶ者あり)ええ、違うのです。これは、いまも大臣おっしゃったように、所得保障として今後も見ていきますということなんです。だから、その辺のところをほかの一般所得と比べた場合においても、これは年金の面から言うならば非常に酷な形になっていはしませんか。控除があるとおっしゃいますけれども、それがいまのままの控除で昭和五十四年の十二月までいくわけでしょう。そうなんですよ。物価が毎年だんだん上がっているので、ほかの年金はスライドされているのですよ、九・四%とか。だけれども、こちらはそうじゃない。だから、その辺のところをひとつ含めて私は申し上げているわけなんです。  税金のことにつきましても私は異論がございます。所得税法に載っているじゃないか、確かに所得税法の二十九条に載っております。しかし、所得税法の二十九条に載っているからこうなんだという言い方は困るわけで、そこに載せていること自体がおかしいということを私は言っているわけです。大臣は所得税法の二十九条に載っているからそうなんだとおっしゃる。その辺のところに私と大臣との間の大きな違いがあるわけです。いかがですか。
  156. 村山達雄

    ○村山国務大臣 所得税法は、もう御案内のように、原則として所得は何らかの形で、一号から九号までの所得としてとらえておるわけでございます。それが所得税として公平の原理に合っておる。課税最低限をどれくらいにするか、あとは累進税率をどれくらいにするか、こういう問題であるわけでございます。先ほど申しました年金というものは、所得保障としてという意味は、生活保障ではなくて、先ほど言ったような整合性でありますから、所得保障としてやるということでございますけれども、年金そのものは所得であることには間違いないのでございます。それをどのようにするかという問題でございます。いまの控除額のお話は、恐らく七十歳以上の老人控除のお話ではないかと思うのでございますが……(坂口委員「六十五歳」と呼ぶ)六十五歳ですかね。その問題は、所得税法の本来のたてまえから言えば政策的にやっておる、こういうふうに御理解願いたいのでございます。
  157. 坂口力

    坂口委員 いや、六十歳からあるのですよ。六十歳から六十五歳と六十五歳から上とは違うのです。時間がなくなるので、私、はしょって言いますが、六十歳から六十五歳の間で、そのお一人の人は七十九万円までは税金がかかりませんけれども、八十万以上はかかるようになっているのです。これは六十から六十五歳の人の話です。それにはいろいろな控除があって、その残りがそうなるわけで、そこを一歩譲るとしても、その控除額の限度が昭和五十四年の十二月までいまのままでいくということになっている。だから、その辺のところも考えましたときに、ここはもう少し早期に改善を加えるべきじゃないかということを一つは申し上げておるわけなんです。その辺のところをもう一度お答えいただいて、次に移りたいと思います。
  158. 村山達雄

    ○村山国務大臣 よくわかりました。ことしは所得税減税をやらないわけでございます。例年ですと、物価調整減税その他というようなことで、基礎控除その他改定いたしますとやるわけでございますけれども、ことしはやらないものでございますから、やはりバランスの上からそれもやらない、こういうことでございます。
  159. 坂口力

    坂口委員 これはやるかやらないかまだ決まらないのに、私は言い過ぎた表現だと思いますよ。  総理大臣、いま私が申し上げましたのは、年金というものが日本の現在の経済を立て直していくためにいかに大事かという立場から実は取り上げているわけであります。先ほど大臣が御年五歳のときの話が出ましたけれども、一九二九年から三〇年、多分総理は二十四歳から二十五歳の紅顔の美青年であらせられたころだろうと思いますが、そのころのあの大きな世界不況、そのときに各国国がとりました政策、これはいろいろございました。その中で最も雇用率を早期に高めた国はスウェーデンとニュージーランドであったと思います。この二つは共通して不況克服のために福祉政策をその中に取り入れているわけであります。私は労働大臣に、どこが一番早く雇用不安を克服したか数字を出してくれということを頼みましたら、労働省にはそういう数字はないということでございますので、あえてもうお聞きをいたしませんが、そういう政策があればこそスウェーデンあたりが今日のあの福祉国家を建設しているわけであります。  たとえば「失業救済と景気回復のための組織的な公共事業がなされました。」これは日本でもなされております。「ことに学校・病院・鉄道・港湾建設および農林業で公共事業が大いに進められ、公共事業に雇用される労働者には市場賃金に相当する賃金が支給されました。そして第二に、国民大衆の全般的購買力を高めるために、社会保障その他の社会サービスと、労働者および農民の所得を高めるための措置がとられました。政府援助の広範な失業保険が作られ、老齢年金は増額され、家族数の多い世帯には住宅建築のための特別貸し付けが行われました。農民に対しては、農作物の価格保証や住宅改善のための補助金が支給され、農民に対する貸し付け条件も緩和されるといったぐあいでした。」「政策には膨大な財政支出が必要でしたが、」時の「蔵相は、赤字財政と公債発行をあえて行なって公共事業をまかなうとともに、」ここだけは似ております。「高額所得者および相続財産への課税によって社会保障関係の支出をまかなう方法をとった」。これはスウェーデンでございます。そして、一九三三年の十八万九千人、全労働者の二五%に及んでおりました失業者を、一九三七年には九千六百人、約二%へと急激に減少せしめることができた。  これはほかにもまだ数字がたくさんございます。私はいろいろな資料を集めましたが、確かにそういう数字が出ております。ですから、現在の雇用不安の中で、この不況の続きます中でこれを立て直していきます一つの大きな柱として、いかに社会保障が大事かということを私は申し上げておるわけでございます。  これからの大きな年金改革の問題とは別に二万円年金の問題がございます。これは各野党間の話も大体大詰めに来ておりまして、もう与野党の話し合い寸前に実は来ているわけでございますが、老齢福祉年金の額をこの際ふやそうじゃないか、一万五千円、今度上がって一万六千五百円になっても、これではいかんともしがたいじゃないか、一番低い層の人たちだけは何とかしてあげようじゃないかというのが、大体社会の一つの大きな合意事項になりつつあるというふうに私どもは考えているわけであります。以前とは大分状況も変わってまいりましたが、こういう与野党の話し合いというものが今後進んで合意がなされるということになるならば、総理大臣としても大きな決意をしていただかなければならないのではないか、私はこう思うわけでございます。最近のお気持ちをお聞きをさせていただいて、次に進みたいと思います。
  160. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私はかねがね連帯と協調、これは私の政治を運営する場合の基本的な考え方であります。こういうことはよく御承知のとおりであります。そこで、国会の運営につきましても、何も保革伯仲だからと言うのじゃないのです。前々から私はそう思っているのですが、これはやはり各党がよく話し合って、そして各党それぞれの立場ということでなくて、何が日本のために大事であるのか、日本のためにどういう選択をしたら一番国のため、国民のためになるのだというたてまえで結論を出していくようにしたらどうでしょうか、こういうふうに言っておるわけでありまして、今国会に臨む私の基本姿勢もそのとおりであります。日本国が、わが日本国民がどうすれば一番いいのだというところで施策は選択していくべきである。私は、福田内閣だからこう提案をした、メンツにかけてもこれを通すのだというようなかたくなな考えはとるべきじゃないと思うのです。野党もそうだろうと思うのです。野党も、こういう考え方を打ち出したから、これが通らなければ審議には応じられないという態度であっては相ならぬ、このように思います。お互いに連帯と協調、この精神で話し合って、そして日本国のために何が一番いいのかということで選択をすべきである、かように考えます。
  161. 坂口力

    坂口委員 われわれもどの道を選ぶのが日本国として一番いいのかという立場から主張しているわけでございまして、総理大臣がかたくなにこれを拒むものではないということをおっしゃいましたので、最近総理のお気持ちの中も大きく変化をしたものというふうに受け取りまして、次の問題に移りたいと思います。  医療問題の中で二、三お聞きをしたいと思いましたが、時間が大分なくなってまいりましたので、一点だけお聞きをしておきたいと思います。  これは二年ほど前に、私、この予算委員会に取り上げさせていただきまして、新潟県の青海町という小さな町にクロロプレンという合成ゴムの工場がございまして、その地域に肺がんの発生率が高いということを指摘をしました。そういうふうな時点から全国的な疾病地図、がん地図あるいは高血圧地図というようなものをつくってはどうかということを指摘をしてきたわけであります。そしてその中で、いま医療費が十兆円時代を迎えておりますが、その十兆円の中で最も大きな額を占めておりますのはやはりがんに対する治療でございますので、これは早期発見、早期治療によってこれを減らす以外にないわけでございますから、そういうものをつくって、ぜひこれを役立てていただきたい、こういうふうに主張してきたところでございます。最近そのがん地図が完成したということでございますので、いろいろあろうと思いますが、胃がんと、それから脳出血ぐらいなところで結構でございますが、どういうものができましたか、ひとつ見せていただきまして、そしてあらあら簡単で結構でございますから説明を加えていただきたいと思います。
  162. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 委員長、地図はよろしゅうございますか。
  163. 中野四郎

    中野委員長 どうぞ。いいです。
  164. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 お答えいたします。  新潟県の青海の地区の問題の御質問、ちょうど私環境庁長官のときに公環特で先生から御質疑があって、いろいろお答えをしたわけでございますが、わが国のがんの死亡率はまさに国際的に比較しても非常に高率でございます。四十四年から四十九年の六年間の死亡数から算出をいたしました死亡率の分布図というものをつくってみまして、それに見ますと、これ、きょう持ってまいりましたが、高血圧と両方調べたものがございます。大体色分けの地図をつくってみたわけでございますけれども、後で事務当局からよく説明をさせます。大体、東北、北陸、信越の地区が、しかも日本海岸において非常に高率である。関東と和歌山を除きました太平洋岸は非常に低率である。こういう傾向が出ております。これは赤の濃いのが高率の方でございまして、薄くなるに従って少ない、こういうことでございます。  なお、詳しいことは事務当局から説明をさせます。
  165. 坂口力

    坂口委員 大体わかりました。  それで、今後の対策として、私は、そういう地域でより多く発生しているのならば、その地域のたとえばがん検診車だとか、そういった予防処置というものをその地域により高率に行うということでなければ、全国同じようにがん検診車を配っているというような形では、その地域のがんの発生率あるいは死亡率を抑えていくということはなかなかできないだろうと思う。その辺のきめ細かな政策的な結果をひとつお示しをいただきたい。その結果は、私の聞いている範囲におきましては、アメリカにおきましてがんのものはございますが、脳卒中その他のものはいま世界にないわけでございまして、そういう意味で、厚生省がおつくりになりましたものは世界的な仕事であるというふうに受けとめておりますので、今後それに対する分析をさらに進めていただきますことをお願い申し上げておきたいわけであります。  そのぐらいにいたしまして、厚生省から何か言っていただくことございますか。――では、一言だけ。
  166. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 この分布図をつくります際には、厚生省の統計調査部はもちろん活用いたしましたが、やはり相当の学識経験者を集めました研究班をつくりましてやったわけでございます。したがって、この研究班の先生方にさらによく分析をしていただきまして、このせっかくできました資科を活用して、がんに対しては何といっても早期発見、早期治療しかいまのところはありません、したがいまして、検診その他についての対策にこの調査の結果を十分活用したい、かように思います。
  167. 坂口力

    坂口委員 それでは次の問題に移らせていただきますが、サラリーマン金融の問題に触れさせていただきたいと思います。  四十年代の高度成長とともに貸し金業者というのが急速に増加をいたしております。この増加した大半はいわゆるサラリーマン金融と言われる、健康保険証や給与証明書を持っていくだけでだれにでもその場で融資してくれるという金融であることは、もういまさら私申し上げるまでもございません。このいわゆるサラ金が急速に増加をいたしました背景は、高度経済成長の中で心より物、金という風潮が強まりまして、欲しいものは借金をしてでも手に入れるという生活やあるいは消費態度の変化、金融感覚の変化、これらの資金需要にサラ金業者が、むずかしい手続等を省き簡単に提供してきたというところにあると思われます。このことから、サラ金が国民の多様な資金需要の一分野を担ってきたことだけは事実でございます。しかしながら、余りにも簡便に資金手当てがつくというそのサラ金の特徴が、かえって、金利でありますとかあるいは契約関係の法律知識の乏しい利用者には、このことが借り過ぎあるいは返済不可能といったことになりがちでありまして、高金利と相まって深刻な事態に追い込まれる例が多く見られているわけであります。毎日サラ金をめぐります悪質な業者や利用者の自殺あるいはまた犯罪といったことが報道されまして、サラ金問題は大きな社会的な問題になっているわけでございます。  そこで、私は政府にお願いをしたいのは、政府は貸し金業、なかんずく消費者金融の一分野を担っておりますサラ金についての業者数や、それから貸付額あるいは被害等の実態をひとつ把握をしてもらいたいと思うわけでございます。現在のところ私の聞く範囲におきましては、そういう把握はないということでございます。もしあれば、ひとつ御指摘をいただきたい。この実態調査をやるという決意をひとつお聞きをしたいと思います。いかがですか。
  168. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いわゆるサラ金業者、これと実際は中小企業の町の金融業者、これが一緒になっておる数字はつかんでおるわけでございまして、大体現在十六万程度と言われているわけでございます。そしていわゆる消費者金融の方は、最近急に伸びてきたところでございます。現在、これに関する関係各省で連絡会議を開きまして、種々検討しているところでございます。  一つは、これのある程度の規制あるいは監督、そういうものが効くかどうかという問題、さらには、特に利息制限法との関係でどれくらいの規制が効くであろうか、あるいは出資、金利に関する規制を超えますと、これは刑事犯になると聞いておりますけれども、そういう場合はどうするのか、こういうことを検討しておるわけでございますけれども、この実態をつかむ、あるいはそれを監督するだけの能力は残念ながらいまのところ各省庁にないということでございます。したがって、なかなかこれは取り締まりといいますか、監督と申しますか、そういうものになじまないのじゃなかろうか。営業の自由で、いわば法律の枠内で自由営業をやっているわけでございますので、現在は全く自由営業であるわけでございます。  そういうことで問題はありますが、見てみますと、非常に高い金利でございます。したがって、この問題は、正規の金融機関の中で消費者金融というものがいま伸びないというところに最大の問題があるのじゃなかろうかということで、正規の金融機関に消費者ローンというものを早く進めるようにということで、いま進めておるわけでございますが、近々正規の都市銀行でこれを始めるという機運になっておりますから、だんだんそういう面から正常化を図っていった方がむしろ最終的には問題の解決が早いのじゃなかろうか、このように現在思っておるところでございます。
  169. 坂口力

    坂口委員 警察庁の方はお見えになっておりますか。警察庁の方で、昨年、一昨年でございますか、この取り締まり強化月間というものを設けられまして、そしてその違反者による被害状況について分析をなすったということでございますので、それをひとつお聞かせいただきたい。  それから、法務大臣に、最近三年間ぐらいの問で結構でございますが、サラ金を中心といたしまして裁判ざたになっている、あるいは現在進行形のものも含めて結構でございますが、どういうふうな状況にあるか、ひとつ御答弁いただきたい。
  170. 森永正比古

    ○森永政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘になりましたように、警察庁では毎年一カ月間を金融事犯取り締まり強化月間ということで取り締まりを実施しておるところでございますが、その比較について概要を御説明申し上げたいと思います。  いわゆる出資法違反につきましては、五十一年でございますが、月間では七百十三人を検挙いたしております。そのうち五百八十四人、八一・九%になりますが、これが高金利事犯でございます。五十二年の月間におきましては、出資法違反で八百十四人を検挙いたしております。このうち六百十九人が高金利事犯でございます。  これを比較いたしまして、その特徴、傾向でございますけれども、違反につきましては、高金利事犯が依然として多く、その手口も悪質、巧妙化していることは、五十一年、五十二年ともに同様の傾向でありますが、昨年は特に都市部の悪質貸し金業者が地方に進出いたしまして高利を取るという事犯が多発をいたしておるのが特徴でございます。  また、被害の状況を見ますと、年代別では、前回は四十代が三五%ということで多かったわけでございますが、今回は三十代が多くなっておる。いわゆる低年齢化の傾向にある。それから職業別では、主婦が前回は三一・八%でありましたけれども、今回は減少いたしまして、会社員、中小企業者と自営業者が多くなっております。それから、借り受け理由別につきましては、生活費が前回いわゆる五十一年度は四八%でありましたけれども、今回は減少いたしまして、若干ではございますが営業資金がふえておりますし、また、レジャー、ギャンブルがふえております。また、借り受け金額別では、前回は十万円未満が五三・三%でありましたが、今回はこれが減少いたしまして、十万円以上が多くなっておる。特に、一千万円以上のものがふえておるということでございます。  こういう特徴、傾向がございます。
  171. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いわゆるサラ金の問題で裁判所の方に関係があるものは、こういうお話でございますが、これはいわゆる出資法違反のものと、御承知のとおり取り立て等に暴力その他の刑法犯に非常に関係があるものとあると思いますが、事務当局からお答えいたさせることにいたします。
  172. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 出資法五条違反のいわゆる高金利事犯につきましては、昭和五十年度から非常に検挙件数もふえております。したがって、検察庁から裁判に回る数もふえております。過去三年間の数字を申し上げますと、昭和五十年が起訴いたしましたのが五百七十七件、五十一年が六百七十六件、五十二年が七百八十九件と、次第に増加の傾向を呈しております。
  173. 坂口力

    坂口委員 以上お聞きのように、警察の方での取り締まり月間の数もふえておりますし、特にその中で会社員や主婦が非常に大きな分野を占めてきている。また、いま裁判、あるいは進行中のものあるいは済んだものを含めましても、五十年、五十一年、五十二年とだんだんその数は増加の一途をたどっておる。大蔵大臣が言われる一般銀行の消費者ローンのお話もわかるわけでございます。それも大切なことではあろうかと思いますけれども、しかし、さりとて急激にいまのいわゆるサラ金、サラリーマン金融というものがだんだん縮小していくとは思えません。それだけの、簡単に借りられるというメリットがあるわけでありまして、一般国民の中にはそう走らざるを得ない人たちが多いわけでありますから、その消費者ローンを新しくつくるということだけでは解決がしていかない問題であろうと思います。  そこで、これに対する実態調査をしてほしいということを申しましても、各省庁が、それは私のところではないとみんなおっしゃるわけでありまして、大蔵省さんにお聞きをしましても、そんなちっぽけな貸金業は金融じゃない、銀行じゃない、こうおっしゃるわけであります。どこの省にお聞きをしましても、私のところではない、こうおっしゃるわけであります。この調査をしてくださいということを申し上げましても、どこが受けてもらえるのかもよくわからない。これは総理大臣に申し上げる以外にないわけでありまして、五者連絡協議会というものもあるようでございますしいたしますので、早急に、各省庁のお話し合いの中で実態調査というものをひとつお進めをいただきたいということを、まずお願いをいたしたいと思います。
  174. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 何はさておきましても、実態調査をいたします。
  175. 坂口力

    坂口委員 その次に、先ほど法務大臣のお話にもございましたが、出資法違反が多いということを言われましたが、出資法、この法律ができましたころは、現在のような一般の庶民がそういうサラ金に走るというような状態のまだなかったときでございます。したがいまして、この出資等取締法の中には年一〇九・五%という最高限度の利息の限度額が決められているだけでございまして、そのほかの細かな問題はここで取り上げられていないわけであります。もう一方におきまして利息制限法というのがございますが、この利息制限法は最高限度、元本が十万円未満の場合には二〇%、十万円以上百万円未満の場合には一八%、百万円以上の場合には一五%というふうに定められているわけであります。出資等取締法と利息制限法という二本立てのような形になっておりまして、利息制限法の方は民法の方でございますけれども、しかし二本立てになっておりますので、一般国民からしますと非常にわかりにくい形になっておる。サラ金の場合を調べますと、大体一〇九・五%というぎりぎりのところまで取っているのが非常に多いわけでございます。したがって一年すると倍になるというわけでございますから、あちこちでこれによる被害が非常に出るわけでございます。  何とかしてこれらのところを整理をしなければならないだろうというので、私ども公明党は昨年五月にサラ金問題に対処するためにサラ金規制などを内容とする貸金業法案というものを国会に提出をしているわけでございます。これは大蔵委員会に提出をさせていただいております。  この法律の目的は、貸金業を行う者を現行の事後届け出制から登録制として規制、監督を行うとともに、貸金業の公正な運営を確保して不正金融を防止をしていく。これをもう少し私どものような登録制からさらに進んで許可制にすべきだというような御意見もございます。私どもは登録制にいたしております。こういうふうな目的で、実はこれをつくって提出をしたわけでございますが、最近、与野党の議員の皆さん方の中にも、これは与野党で議員立法をつくろうじゃないかというようなお話もあるやに実は聞いているわけでございます。  どういたしましても現在の法律だけでは現状を救済していくことはできない、こういう現状にございますので、この取り締まりの法律をぜひつくらなければならないのではないかと思うわけでございますが、もしもおつくりをいただくということになれば、これはやはり大蔵省ということになるのでしょうか、その辺もよくわかりませんが、いかがでございますか。
  176. 村山達雄

    ○村山国務大臣 非常に率直に申しましてむずかしい問題だと思うのでございます。本来、職業自由の立場でできているわけでございまして、規制法としては利息制限法、出資、金利の規制法があるわけでございます。したがって仮に登録制度にしても、どんな角度からやるのか、それは取り締まり法なのかあるいは権威をつけるというのか、あるいは監督するというのだが何を監督するのか、その辺のところの視点をはっきりいたしませんとできないのでございます。  そういったことで、実態が明らかでないというのも実はそこにありまして、主として取り締まりの分野からいまある程度のケースはわかっておるわけでございますが、一般にはうわさを聞くぐらいのところでございまして、ほとんど実態がわからないというのが現状でございます。  もし下手にこれが登録制度になって国がオーソライズをした、今度はそれによる被害者の問題、これは一体だれの責任なのだ、こういう大変な法律問題、あるいは全体の問題として一体どういう位置づけをするのか、その辺を本当に根本的に考えないと、すぐその方が便利じゃないのかというようなことではなかなか路み切れないような感じが私としてはいたしているわけでございます。
  177. 坂口力

    坂口委員 警察庁の方からもお話がございましたが、連日新聞、テレビ等にもこの惨状が取り上げられまして、幾つか私の手元にもその例がございますが、これだけ多発をしてまいりますと、このままで捨てておけないということだけは事実だと思うのです。いま大蔵大臣がおっしゃるように、その法律をつくる上での技術上の問題はいろいろあろうかと思います。その法律をつくる立場によりましては、またいまおっしゃったようないろいろな問題も出てこようかと思います。ただ、しかし、この法律をつくること、そのことがむずかしいからというので、このままにしておいていいかというと、私は決してこのままにしておくわけにはいかぬと思うのです。このことについては大蔵大臣も思いは同じだと私は思うのですね。それはそうですね。だから、このままにしておいてもいいというお気持ちがあって、私は早く解決しなければいかぬという、ここに隔てがあるのだったら、これは意見はかみ合いませんが、そのつくり方というもの、その法律の内容の位置づけというものについてはいろいろ議論があるにしても、この現状を何とかして打開していかなければならないということについては同じではないかと私は思うのです。だからこそ大臣はその法律をつくる過程でのいろいろのむずかしさというものを御指摘になったのだろうと思うわけです。まだ大蔵大臣の所管になるということが決まったわけでもないのに大蔵大臣にお聞きするということも実はなかなかむずかしい問題でございますが、しかし、これだけのことがあります以上、このままで捨てておくことはどうしてもできない。これだけ大きな問題が全国津々浦々で起こって、そして愛知県とか新潟県とか、そういう県は自分の県で単独に新潟県貸金業対策実施方針でありますとか、あるいはまた貸金指導要綱でありますとか、こういったものをおつくりになって一時的に対処をしておみえになるわけでありまして、ぜひひとつ法制化に踏み切らなければならないと思いますが、総理、またひとつ総理に御答弁いただく以外にこれは正直なところちょっとないわけでございますので、ひとつその辺の御意見を伺いたいと思います。――法務大臣ですか。
  178. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 恐縮ですが坂口さん、これは法務大臣の個人的ないまの考え方ということでお聞き取りをいただきたい。この問題は、先ほど来大蔵大臣からもお話しのように、非常に複雑でむずかしいところがあるわけでございます。しかし、私は、治安と社会の安定を考えておる役職といたしまして、毎日のサラ金に関する新聞報道等いろいろな、報道だけです。私は実態を見ておるわけじゃありませんが、非常に頭を痛めておる、心を痛めておるような実情でございます。坂口さんのおっしゃることよくわかるのです。  そこで、これは余談でありますけれども、この利息制限法及び出資法、これは大体昭和二十九年にできておる法律であります。まあ、ある程度法律をわきまえておる、これは失礼でありますけれども、そういう人ならこれはよくわかるのですよ。一方の方は利息制限をこうこうしてある、それ以上は裁判ざたになっても払わなければいいんですよ、こういう趣旨なんですけれども、しかし一般に金を借りておる人はそういう考えにならない。そこにいろいろな苦しみがある。一方、出資法の方においては、さっきおっしゃったように、一日〇・三%という高い金利でやっておる。これも制限以上を超えると三年以下の懲役とか罰則があるわけでございますが、こういうことも一般の国民大衆の中にはなかなか御理解がつかないし、また仮に、借りてそれがわかっておっても、非常な苦しい状況で借りたのを、法律がこうですよというわけには人間社会ではいかないわけだ、そこにいろいろな悲劇が出てくるのだと私、見ておる。ですから、やはり何か、利息制限法、出資法というものの関係を、専門家だけじゃなくて、一般国民にもっとわかりやすくする必要があるのじゃないかと私は考えております。  と同時に、さっき余談でございますということを言いましたが、実は御承知のとおり、不動産取引というのは一般国民に対して非常に大きな弊害があった時代があるわけでございます。これは、戦後、いわゆる土地、建物ということが非常に大変な時期でありましたから、いまもそうでございますが、これは大きな弊害がある。いわゆる不動産業というもの、そしてその当時特別なきちんとした法律制度はございませんでした。これは昭和二十七年に不動産取引業法というものを時限立法でつくって、まだまだ十分ではありませんけれども、不動産業が大体軌道に乗ってきておる、国民の信頼を得るような状態になりつつある、こういうことを私は考えておるのです。  これは、いわゆるサラ金、貸金業もそれに似たような態様があると私は思っておる。でありますから、そういうことも考えあわせて、このままに放置しておくということは、私は政治にならないと思います。もちろんこれを利用する方々も大いに気をつけてもらわなければなりませんが、しかし社会がこれで相当の混乱を来しておることは事実でございますから、これは各省庁と真剣に相談をして、何とかこの方法を講じなければならない。どうかいい知恵がありましたらかしていただきたい。率直に、これは個人的立場ということでお聞き取りを願っておきたい。
  179. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 この問題は、これはサラ金という社会的必要がありまして起こっている問題なんです。これを何か法律をつくってやめてしまう、こういうことになりますと、また社会的必要に対して他にどういう方法で対応するのか、こういうことになりますが、いま大蔵大臣が申しましたように、銀行なんかでサラリーマン金融、そういうものを大いに進めようという動きになっておるという話でありますが、それとても私はなかなかいまのサラ金に見るような社会的必要に応じ切れないと思うのです。ですから、サラ金という社会的規象ですね、社会的需要、これを抑えちゃうという考え方は私は妥当じゃないと思うのですが、さてそれじゃ抑え切れないという問題でありますれば、それに伴ういろいろな弊害をどうやって排除していくか、こういう問題になってくるのだろうと思います。それがまたまた行政能力というような点からしてなかなかむずかしいので今日に至っておりますが、しかしこれだけまた社会的な問題をいろいろ引き起こしているということになりますと、これをそのまま放置しておくというわけにもいくまいと思います。ですから、関係各省、これは六省庁が関係するのですが、これはひとつ寄ってもらいまして、どういうふうに対処をするか検討をいたします。
  180. 坂口力

    坂口委員 ぜひひとつお願いをしたいわけでございます。私も総理がおっしゃいますように、このサラ金はそれだけの必要性があってあるわけでありますから、これをなくしてしまえというので抑えてしまうという方向のことをいま申し上げておるわけではございませんで、これに一つのルールをつくるべきではないかということを申し上げているわけでございますので、ひとつお含みおきをいただきたいと思います。  それでは、最後に三全総がらみの問題を取り上げさせていただきますが、昨年十一月にこの三全総の計画が発表になりました。その内容は、すでに開発されました大都市圏の再構築という問題と、それから人口増加に対処して新しい定住圏というものを形成していく、二つの問題をここに含んでいると思うわけでございます。きょうはもう時間もございませんので、一、二の問題をその中から取り上げまして、ひとつ関係省庁に質問をしたいと思います。  まず第一は、ことし環境庁から瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案というのが提出予定になっているわけでございますが、まずこの法律案なるものは必ずこの国会中に出るものと思いますが、これは環境庁長官、間違いございませんね。
  181. 山田久就

    山田国務大臣 瀬戸内海の環境保全臨時措置法でございますね。これはことしの十一月までということになっておりまするので、これに対処していくところのいわば後継法というものはどうしても必要であるということになっておりまして、したがって、その後継法を考えるということで準備いたしております。
  182. 坂口力

    坂口委員 特に、その中で新しく閉鎖性水域の問題が取り上げられることになっておるようでございますが、東京湾にいたしましても伊勢湾にいたしましても、その周辺に住まわれる方の数は年年歳々増加をしていることは事実でございます。東京圏を例にとりますと、昭和五十年に約二千七百万人でございますが、これが昭和六十五年になりますと約三千三百万人になるということが言われておりますし、また中部圏を例にとりましても、現在千六百万人でございますが、これが六十五年には二千万人になるというような計算もあるわけであります。そういたしますと、現在でも東京湾や伊勢湾は、死せる海という言葉がございますとおり、非常に汚染が進んでおりまして、どうしてもこのまま放置することはできないという事態を迎えているわけでございます。ちょっと長うございますけれども、瀬戸内海云々のこの法律案でございますが、この中で閉鎖性水域の問題としては総量規制を取り入れられることになっておりますが、そのほか、現在の閉鎖性水域をたとえば大体何年ぐらいで改善していくとか、あるいはまた現在の汚染状況を大体どのぐらいなところまで引き下げていくとか、そういうふうな、もう少し突っ込んだことがこの法律案の中に織り込まれるのかどうかということをひとつお聞きをしたいと思います。
  183. 山田久就

    山田国務大臣 御承知のように、いま御指摘になったような伊勢湾あるいは東京湾の閉鎖性水域、一般的にはかなり水の方も改善の跡がないというわけじゃございませんけれども、しかし、どうしてもこういう面についての水質を上げていくという点については、御承知のように昨年の十二月九日に公害対策審議会から答申も出ておりまして、また、先ほど御指摘になりました瀬戸内海の臨時措置法の中にも、こういう点についてこの次には考えるようにというような規定上の要請もあるものでございまするから、したがって、そういう点を踏まえてどういうふうにやっていくか。いま申し上げましたように、瀬戸内海の問題はどうしても後継法を考えなければいかぬ。それから同時に、いまの閉鎖性水域、これらについての水質汚濁防止法、この一部を改正して、できれば一緒にしてこれに対処していったらいいじゃないか、そういう考え方で目下準備いたしておるような状況でございます。したがって、今国会にこれを提出して……(坂口委員「もう少し内容を細かく。それだけしかわかりませんか」と呼ぶ)その細かい点については、もしあれでございましたら、事務当局から説明させたいと思います。
  184. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律という法案を今国会に提案すべく現在鋭意作業中でございます。その際に、瀬戸内海につきましては、ただいま大臣からお答え申し上げましたように、環境保全ということで水質まで織り込んだことを当然考えているわけでございますが、瀬戸内海以外にも、伊勢湾あるいは東京湾の水質が悪うございます。したがいまして、瀬戸内海のみならず東京湾、伊勢湾等にも総量規制が導入できますようにということで、水質汚濁防止法ということで対処をしたい、そして政令等によりまして東京湾とか伊勢湾というものを指定してやってはどうかということで、いま検討中でございます。  問題は、一体何年ぐらいでそこを達成していくかというような具体的なお話でございますが、これにつきましては目下検討中でございますが、いずれにいたしましても、環境庁が水質をよくしようというときは、公害対策基本法第九条に基づきまして、環境基準というものをそれぞれ海域に設定してございます。これを何とか達成したいというのが目標でございます。ただ問題は、ただいま先生からも御指摘ございましたように、人口等も今後相当伸びる、産業活動も活発化していくということでございますれば、汚濁負荷量がふえていくわけでございます。したがいまして、他方また、削減技術は進歩していくということとのかみ合わせにおいてその問題を見ていくということで、ある一定の期間、目標等を考えながら、環境基準の達成ということを長期的な行政上の目標ということで着実に進んでいくという方式でこの総量規制をやっていってはどうかということで現在鋭意検討中、こういう段階でございます。
  185. 坂口力

    坂口委員 出していただくことは大体はっきりしているようでございますが、そういう法律ができます場合に問題になりますのは、廃液の中に工場廃液と生活からの廃液とがございますけれども、工場廃液の方の大きいところにつきましてはいまも行われておりますが、これから中小企業の方の廃液につきましてもいろいろ制限をしていかなければならない問題が出てこようかと思います。それと同じ程度に、あるいはまたそれ以上にと申しますか、生活廃液の問題がございます。その生活廃液をどう解決していくかということが、その法律ができましたときに地方自治体は非常に困るわけでございまして、そういうふうな面から下水道の建設ということが最も重要になってくるだろうと思います。ことしの予算の中にも下水道建設はかなりな分野が占められておりますし、また下水道建設に対する国庫補助等も、ほかの分野に比べますとかなり有利になっている点もあることは事実でございます。しかしながら、下水道という非常に金額の大きい事業でございますので、自己負担分のパーセントは小さくても、実際に出さなければならない金額というのは各市町村あるいは都道府県はかなり大きくなる、これが実情でございます。  そこで、これからこういう法律ができてまいります場合に、下水道というものをさらに普及していかなければならない。現在まだわずか二四%で、世界から非常におくれているわけでございますが、これを回復していきますためには、特にこの法律ができるということになれば、東京湾あるいは伊勢湾というふうな閉鎖性水域・瀬戸内海はもちろんでございますが、そういった周辺における下水道建設というものがもっともっと進んでいかなければならないわけでございます。それに対して何らかの援助というものがもう少しその上になければ、やはりこれは達成していかれない問題であるというふうに思うわけであります。そこで、建設大臣に、その点のところを半ば要請、そしてまた半ば御意見をひとつ伺いたいと思います。
  186. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 閉鎖性水域の水質保全の上で下水道建設が不可欠であるということは、ただいまの御指摘のとおりでございます。そこで、下水道事業の推進をどうやっていくか、現在建設省で考えておりますのは、できるだけ事業量をふやしたい、その方が重点ではないかということで進んでおりますが、その場合に地方自治体の負担を一体どうするか。そこで、恐らくお調べであろうと思うのですが、現在、たとえば公共下水道の処理場を見ますると、三分の二の補助率でいっておりますね。それから、流域下水道の場合は四分の三の補助率でいっておりまして、地方債の充当率としては、公共下水道は八五%、流域下水道には、加算措置を入れると九五%ということになっておりますので、御質問の趣旨は、もっと補助率のかさ上げをしたらどうかということであろうかとお察しをするのでありまするが、おおよそ、いま申し上げたような補助率それから起債で消化していってもらえるものじゃないか、このように受けとめているわけでございます。
  187. 坂口力

    坂口委員 いま建設大臣、お答えいただきましたように、そういう補助率になっていることも実はよく承知をいたしております。ですから、先ほど申しましたとおり、地方自治体の自己負担分としましては、パーセントとしては、なるほど、いまおっしゃるように小そうございますが、全体の工事の額が大きいものですから、市町村にとりましては大変なことになるわけでございます。そういうふうな意味で、閉鎖性水域の周辺の都道府県がどうしてもこれから、より積極的に下水道建設というものを行っていかなければならないわけでございますので、私は、特にいま細かくどれだけというようなことを申し上げるわけではございませんが、そこには手厚い援助というものがなされなければならないのではないかということを申し上げているわけでございます。  そのことをもう一度御答弁いただきたいわけでございますが、それに重ねてお聞きしたいのは、どこでも、終末処理場をつくろうと思いましても、地域の住民の皆さん方の反対等がございまして、なかなか場所が決定されない、そのために下水道の工事というものが進まないという現実があるわけでございまして、このことについても何らかの方法を考えてもらわざるを得ないのではないか、こう思うわけです。  たとえば、発電用施設周辺地域整備法というのがございますが、これ等によりましては、原子力発電所その他ができますときにはその地域にいろいろの援助をするとか、見返りというものを行っているわけでありますけれども、下水道の場合にそれがそのまま通用するかどうかはわかりませんが、しかし、現状を考えますと何らかの手だてというものは必要ではないか。それは程度はいろいろございましょう。しかし、何らかの手だてが必要ではないか、こういうふうに思うわけでございますが、重ねて御答弁をいただきたいと思います。
  188. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 下水道の推進につきましては鋭意努めておるわけで、今回の予算措置でも最も大幅な増額であった、また、これが消化できるかどうかという御批判さえある折からでございまするが、ただいまおっしゃるような何か周辺地域整備のための見返り施策でも、こういうこと、これは私も考えないではないのでございまするが、ただ、現状では、公共下水道の方では三百九十二の処理場の中で問題がある個所が二カ所、それから流域下水道の方でありますと七十四の中で五カ所ほど、現在、地元住民との間でいろいろ交渉が重ねられておるということで、この数字をごらんになりますると、おおむね地域住民の理解を得て順調に進んでおる、こういうふうに見られるわけでございます。  そこで、私としては、下水道をできる限り早く普及しよう、二四%程度じゃ困るということで事業量の拡大の方で努力をしておるということで、きょう周辺地域の問題あるいは地方自治体に対する財政措置をもっとふやせということにつきましては、いまのところちょっと御意に沿いかねる点があると思います。
  189. 坂口力

    坂口委員 法律もできていないことでございますから、いますぐここで御答弁をいただくのもなかなかむずかしいと思いますが、御検討をいただきたいと思います。  最後に、時間が少なくなりましたが、この閉鎖性水域の問題とあわせてもう一つ地盤沈下の問題がございます。これも私、昨年の予算委員会で取り上げまして、各省庁の意見を集約してぜひ今国会に提出をしたいという、これは総理大臣からの御答弁もいただいたわけでございますが、とうとう昨年の国会におきましてはこの法案が提出されませんで、今日に至っているわけであります。  ところが、現在地盤沈下の進んでおります地域は全国で五十数カ所にも及んでおりまして、そこに多くの人たちが定住をしているわけでございます。最近、余り大きな台風が参りませんのでまだ救われておりますけれども、特に海岸沿いで地盤沈下の進んでいるところの人々は、秋の来るのが非常に恐ろしいというようなことで非常に心配をしているわけであります。ですから、各省庁がいろいろ御意見があって、そして意見がなかなか合わないという、そのこともあると思います。熱心であればあるだけにいろいろ意見も出るであろうと思います。たとえば地盤沈下の場合に、通産省でありますとか建設省の方がいろいろの御意見がある。これもそれぞれの立場がありますからそれはわかりますけれども、さりとて、そういうふうに意見が異なるからというのでこれをまとめずにこのまま放置するということは許されない。どうしても地盤沈下防止法をつくらなければならない時点に来ているのではないか。あの伊勢湾台風のときから比べましても、あの周辺におきましても、多いところは百七十五センチも沈下をしているわけでありまして、堤防等も非常に低下をしているわけでありまして、大きな事故が起こる原因というものがそこに存在するわけでございますから、これを出すという御決意を環境庁長官と、それから今度こそ何としてもこれをまとめないことには、これこそ福田内閣の地盤沈下が起こる、こういう大臣の御決意をお聞きして、終わりにしたいと思います。
  190. 山田久就

    山田国務大臣 坂口委員の非常な御懸念、御指摘のとおりに、この地盤沈下というのは公害基本法の典型的な公害の一つということになっているわけでございまして、一たび沈下するとなかなか回復困難だというものでございますから、したがって、地下水の採取個所の規制ということはどうしてもやらなければいかぬ。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 そういうことで、われわれは一生懸命になって実は取り組んでいるわけです。何しろ工業用水については工業用水法、同時に、ビル用のためには、これは建築関係の地下水用の水の規制法というようなものがございます。ただ、そのほかの、たとえば農業用というような水に対しても、これは地下水の問題いろいろあるわけでございまして、したがって、そういう関係のものを集めて、結局これは総合的に対処しなければいかぬ。これは坂口委員承知のように、そういうことで関係方面で熱心にやっているのですが、いま御指摘のように、熱心な余りと言われてみればあれですけれども、必死になって、まだこれは多少詰めなければいかぬ重要な点がそういう関係省の関係で残っているものですから、何とか一生懸命になってやろうというので、いま鋭意努力中ということでございます。どうぞそのように御理解いただきたいと思います。
  191. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地盤沈下対策法とも言うべき立法につきましては、いま環境庁長官から申し上げたような次第ですが、なかなか関係するところが多うございまして、これが調整は容易じゃございません。容易じゃございませんけれども、これは鋭意検討を進めまして、なるべく早く結論を出すようにいたしたい、かように存じます。
  192. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  193. 中野四郎

    中野委員長 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  194. 大出俊

    ○大出委員 冒頭に、急を要しますから、これは新聞のまま持ち込みまして恐縮でございますけれども、私ども神奈川、横浜、横須賀住民等に大変衝撃を与えております本日の夕刊の記事がございまして、これについて所見を承りたいのであります。  夕刊が報じておりますところによりますと、クレーター米海軍長官、この方が七日に米海軍の軍事委員会、これはプライス委員会でございます。民主党のプライスさんの委員会でありますが、ここで米海軍の軍事情勢報告並びに軍事予算の説明を行った。この中でクレーター海軍長官が、わが国の横須賀を母港としている第七艦隊の空母ミッドウェー、これが、米国の戦略抑止力の部分をなす核攻撃用空母あるいは核攻撃用航空機、これは、艦載機たくさんございますけれども、核積載能力を持つ機種がたくさんございます。これらを含めまして核攻撃用航空機の母艦の役割りを果たしてきた、こういうふうに説明をしております。  これは母港化問題をめぐって私も再三追及をしてきたところでありまして、横須賀へ入る前にどこかに核を置いてくるなんてばかなことはできるはずはないのでありますから、この点を再三指摘をしてきたわけであります。また、ミッドウェー所載の各種ミサイル等につきましても、核ミサイル装備をいたしておりますから、この点についても再三指摘をしてきたところであります。  さらにハロウェー海軍作戦部長、この人の報告書が出されておりますが、この中で、空母の艦載機はさまざまな核兵器で陸地の目標を攻撃できる、こういう言い方をしておりますし、さらにこの報告の中には、ソビエトの核戦力との比較を詳しく述べております。一つは、洋上で米ソの艦艇が戦闘を起こした場合に、双方が通常兵器で戦った場合は米海軍が優勢だ、ところが、たまたま双方ともに戦術核兵器を使って戦闘をやった場合、米国が多分優勢だと思われるけれども、相当な損害が起こるというところから始まりまして、だからソ連が核を使い、米海軍が通常兵器で戦うというわけにいかない、したがって、核装備を常時しておくということが制海権保持に不可欠だということを強調しているわけですね。しかも、これには十三隻の空母を挙げて、一様にそうなっておるということをつけ加えて、かつまた、ミッドウェーについては再三これは改造をしておりますけれども、攻撃的な核戦力の先端をいく、そういう役割りをミッドウェーは果たしているということを説明しているわけですね。  私は、せっかくこれはアメリカ側の公式な報告でございますから、また公式な場所における発言でもございますから、この点についてまず外務大臣、防衛庁長官、とりあえずお二人から御答弁いただきたいのであります。
  195. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの事件は夕刊で知ったところでありますが、その後、クレーター海軍長官の発言は入手をいたしました。なお作戦部長報告書は、事実を含めてただいま調査中でありますから、この点については新聞で知った情報でございます。  そこで、クレーター海軍長官の証言の関係部分をそのまま申し上げますと、次のように言っております。ミッドウェーはベトナム戦争における航空阻止のための場として、かつ、われわれの戦略抑止力の一部としての核攻撃用航空機のための場として、また、対潜水艦戦の場としての役割りを果たしてきた、こういう発言をしております。この発言からいたしまして、これは予算に関する証言の一部でありますが、海軍長官の証言は、航空母艦の有用性を一般的に説明するに当たって、航空母艦がいろいろな状況に応じて何をなし得るか、通常兵器、核兵器あるいはもろもろの兵器、こういうものを積んで陸地を攻撃する飛行機を載せることができるというような、状況に応じ何をなし得るかについて、すなわち空母の能力について一般的に述べたものであり、具体的に、ある特定時にミッドウェーが核装備しているか否かについて申し述べたものではないと解釈をいたしております。
  196. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま外務大臣が答弁いたした、私もその程度の新聞紙上あるいは政府の外務省からの情報を入手をいたしております。
  197. 大出俊

    ○大出委員 時間が大変貴重でございますが、事が事でございますから、この際、念のために防衛庁からひとつミッドウェー所載の艦載機、核能力を持ち得る機種を挙げていただきたいのであります。かつ、もう一つ、ミッドウェー所載のミサイルその他、非核両用のものもございますけれども、それを含めて主要兵器について簡単にここでお述べいただきます。
  198. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま詳しい資料を手元に持っておりませんけれども、まず、昨年の九月に事故がありましたように、ファントムが載っているわけでございます。ファントムは、御承知のように核爆弾それから核といいますか、核、非核のブルパップのミサイルを搭載することができるわけでございます。
  199. 大出俊

    ○大出委員 このファントム一例だけをお挙げになりましたけれども、これは私がかつて、ブルパップ論争と言われる論争をしたことがございまして、空対地のミサイルでございますけれども、明確にこれは核所載が可能であります。核爆弾積載、これまた可能であります。  時間がありませんから多くを申し上げませんが、以上のように、この作戦部長ハロウェー氏のお述べになりました中身の方が実は重要でありますが、ソビエトの艦船が核装備をしているのだから、洋上で常時アメリカの空母は、もちろん所載の艦載機を含めまして、核能力、これを持っていなければ制海権確保はできない、こう言い切っているわけでありまして、十三隻の空母、その中でミッドウェーだけは核能力がないと言っているんじゃない。したがいまして、これは長年の懸案で、私どもが再三取り上げてきた問題でございます。そういう意味で、ひとつ総理、これについての処置、これをしかと承っておきたいのでありますが、これは大変にセンセーショナルな、しかも正式な報告でございますので、いかがでございましょうか。
  200. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだハロウェー発言は参っておりませんが、それを取り調べる必要があると思います。しかし、ただいま判明しておる海軍長官発言、これにつきましては、先ほど外務大臣から申し上げたとおりの見解でございます。つまり、これは一般的に可能性というか空母の能力説明であるという、こういうわけでありまして、現実的にミッドウェーがどこの地点において、いつ核装備しておったかというような説明はいたしておらぬ、こういうふうに受け取っております。  アメリカ政府は、わが国の非核三原則、これをよく承知しております。また、わが国の核政策、これには協力をする、こういうふうに言っておるわけでありますから、もしその約束をはみ出るというような事態になりますれば、これは当然事前協議ということになる。その事前協議もまだ受けておりません。そういう次第でありますので、アメリカは、ただいま申し上げたように、海軍長官が空母の能力説明をしたにとどまって、わが国に入港するミッドウェー、そういうものにつきまして、その状態をその時点において説明したものじゃない、このように解釈します。
  201. 大出俊

    ○大出委員 これは、反戦米兵といわれる方々などもミッドウェーの中のこうこうこういう場所が大変警戒厳重で、つまりこういう色をした倉庫があってと細かく証言したこともあって、大論争になったこともあります。ここで見ますというと、アメリカ国防総省は記者の質問に対して「核についてはいわない」つまりミッドウェーについての質問が出て「核についてはいわない」こういうことになっている。したがって、言わない、申し上げない、こういうわけであります。にもかかわらず、外務省だけは勝手に否定をなさっているのですね。いまお話を聞きますと、ハロウェー作戦部長の発言要旨をまだお取りになっていないというのに、何と否定しているかというと、確かに核能力はあるだろう、しかし非核三原則がある、これをアメリカがよく承知しているのだから、日本の港に入ってくる、つまり横須賀に入ってくる場合にはどこかに核を置いてくるだろう。そんな非現実的なことを一方的に皆さんが言ったって、積んでいないという証明には断じてならない。だからこの際、この点を総理の責任においてひとつ、約束だとおっしゃるなら、その約束を必ず守るというはっきりした文書の回答なりを外交折衝の中でおとり願いたいと思うのです。大変みんなが心配するところでありますので、ぜひこれはお願いいたしますが、総理、いかがでございましょう。
  202. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 これは、もっとセンセーショナルな問題があった。ラロック証言です。あのときアメリカからはっきりしたアメリカ政府見解を受け取っておるわけでありまして、その後何ら事情の変化があるというわけじゃございませんので、ただいまの海軍長官の話があったからまたアメリカからアメリカの意図をただすというような必要は私はないと思うのです。あのラロック証言というものは非常にセンセーショナルな事件でありまして、あのとき特にアメリカの見解を求めたわけでありますが、あのとき非常に明快なアメリカの意思が表明されたわけであります。その意思は先ほど申し上げたとおりでございます。
  203. 大出俊

    ○大出委員 ラロック氏は退役の核専門家でございますけれども、当時世論がやかましくなりまして、皆さんがそういう手続をとられたのは、私も質問者でございますからよく知っておりますが、この種のことはやはりその都度その都度、問題が大きくなったときには、日本の政府として、対国民という立場から事の真否をつまびらかにして、こうこういうことだということを明らかにする責任が政府にあると私は思っているんです。だから、これは現職の海軍長官並びに作戦部長なんですから、そういう意味ではこれは明確にお確かめをいただいて、その上でいまの総理のおっしゃる、前回ラロック証言のときの日米間の約束を守るなら守るという念はやはり押していただかぬと、そういうことがこれだけ報ぜられたが、前に約束があるんだから知らぬ顔というわけにはこれは、国会もおまけに開かれているんですから、私どもの責任においてもそうですかとは言えない。いかがでございますか。
  204. 園田直

    ○園田国務大臣 作戦部長が核を持っているかいないかということを言わないことは当然でありまして、手のうちを見せることは潜在敵国に対して自分の戦力を知らせるわけでありますから、これは当然だと思います。われわれとしては、非核三原則及び事前協議の問題がありますから、向こうとわれわれとは立場が違うわけであります。ただいまの問題は、総理の発言されたとおりでございまして、ただいま長官の発言を入手をしただけで、作戦部長報告書その他は入っておりませんから、これが入ってから綿密に点検をした上で、事実を確かめ、真意を確かめ、その上でやりたいと考えております。
  205. 大出俊

    ○大出委員 ハロウェー証言が入ってから事実を確かめ、真偽を確かめ、その上ではっきりした意思表示をしたい、こういうわけでありますから、とりあえずはその段階にとどめさせていただきます。改めてまた議論をしたいと存じます。  ところで、少しどうも、総理のかぜがわが部会長小林さんにうつりまして、隣にいる私の方にまで流れてまいりまして、大変悪質でございまして、被害者でございますけれども、ちょっとお聞きづらい点が出てくると思うのでありますが、その点は御容赦をいただきたいと思います。  それで、ソウル地下鉄の問題に関しまして六回ばかり本題を離れて実は詰めてきたわけでありますが、これにはそれなりに私どもの立場からする理由がございます。その冒頭に総理の所見を承っておきたいことがございますが、アメリカのカーター大統領がつい最近、多国籍企業、これはもちろんアメリカのでありますが、この規制に関する法律という法律に署名をしているのであります。ロッキードの問題をめぐりましても、日本の多国籍企業のあり方なり、あるいは狂乱物価のときにもそういう問題等も出てまいりました。商売に何がしかのことがつきまとう、あるいは不可欠だとしても、これはやはり国民の許容する限度というものがございます。そういう意味で私ども何遍かこの規制という問題を取り上げたこともありますけれども、政府は一体ここあたりはどういうふうにお考えなのか、政策問題でございますが、総理の所見を承っておきたいのであります。
  206. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 多国籍企業問題は、これは一国では処置できません。そこで、OECD、こういうところで多国籍企業をどういうふうにするかという話がありまして、いろいろ問題が提起されております。わが国もこの問題には重要な関心を持っておるわけでございますので、そういう場において、他の国とも相協力いたしまして、こういう問題が適正に処理されるようにという努力をいたしたいと思っております。
  207. 大出俊

    ○大出委員 アメリカの場合、対外不正支払い規制法案という法案であります。いま国際的に協力し合ってという話があったわけでありますが、さきのロッキード事件というのもロッキード社コーチャン社長等をめぐる問題であります。今回のソウル地下鉄問題もその意味では似たような、ひっくり返したようなかっこうのものであります。したがいまして、アメリカがそういう考え方で進んでいる。署名をしたという。私は通るだろうというように思っておるのでありますが、そういう時期でございますだけに、このことを考え始めたってすぐ法律になるわけじゃありません。やはり何がしかそういう点を政府としてもお考えになるべきだろうと私は思っている。OECDがと言わずに、日本の多国籍企業のあり方について数々いままで議論されているのでありますから、そういう意味でもう一遍念のために承っておきたい。
  208. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 まだ私はアメリカでそういう立法を計画しているという話は聞きませんが、アメリカでそういうことがありますれば、これは重要な資料になるわけでありますから、取り寄せてよく検討してみたいと思います。
  209. 大出俊

    ○大出委員 大変短い時間でございますから、地下鉄問題をおおむねほとんどのところは調べ尽くした気がいたしておりますが、なお時間がありませんから後に残るだろうと思うのでありますが、そういう意味で、実はきょうは中心を政府の責任、こういう意味で承りたいと思っているのであります。  そこでまず、総理が、前の私の質問等に対しまして、地下鉄問題をめぐりまして、そういうふうなことはにおいもしない、影も形もない、こういうふうにお答えになっているのですね。においもしない、影も形もないということをおっしゃるのだが、昨年十二月十七日まで私調べてまいりまして、実はにおいどころではない、影、形もいいところでございまして、二百五十万ドル、まあ換算の仕方でありますが、七億八千万円近い金が韓国の、これは金成坤氏でございますけれども、そういうふうにその筋の諸君は言うておりますけれども、だから私もそうだろうと思いますが、渡されたという。時期的にも、実はガルフのボブ・ドーシー会長に資金請求をして渡した時期と相前後している、こういうこともございまして、まずそういうことであろう。よほど前回言おうと思ったのですが、できれば商社側から言ってもらいたいと思って差し控えましたが、もう故人におなりでございます。  つまり、そういうところまで明確になったわけでありますから、におわぬわけでもない。影も形もないのではない。したがいまして、いまこの時点総理は、一体さきの発言を踏まえてどうお考かを承りたいのであります。
  210. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私のそのにおい発言というのは、恐らく昨年の春ごろの話じゃないかと思います。その後、いろいろ大出さんなんかから御指摘がある。ありますが、私、日韓関係関係しているいろいろな議員の諸公ともいろいろつき合いもあります。それから韓国問題に関係しておる財界の人、そういう人ともおつき合いがある。そういう過程を通じまして、私、何か不正な動き、そういうものが財界において政界においてあったというような印象を受けないのです。私はそういう財界の人あるいは政界の人と相当多くのつき合いがあります。同時に、大蔵大臣というような立場にあった時期もあります。そして輸銀の融資あるいは基金の融資、そういうものに具体的には余りタッチしませんけれども、大方のそれの動きというものも承知しておりました。そういう中で、どうも不正の動きがあるなというような印象はいささかも持たなかった、そのことを申し上げてきたわけでありまして、私があのときそういう私のはだに感じたところを率直に申し上げて、においも感じないということには間違いはなかった、こういうふうに思います。
  211. 大出俊

    ○大出委員 いまの御答弁を聞いていますと、ソウル地下鉄を大変な高値で――後から申し上げますが、調べてみると、つくられた価格であります。高値で売り込んだ。そこで、チャンイルに二億二千万払っておりますが、これがどう使われたかはやがて明らかにしますが、両方合わせると約十億ばかりの金、つまり新聞によっては「アンコ」などと書いているのもありますが、これを含めて売り込んだ。ロッキードのコーチャンは、正当な価格の上に賄賂の分を上乗せしに行ったのだから、アメリカの国民には一銭も迷惑をかけていないと開き直りましたが、それでもこれは正しくないということで、実はアメリカはこの不正という言葉をわざわざうたって規制法をつくろうとしているわけです。総理のお話を聞いておりますと、何かどうも七億五千万あるいは七億八千万というのは正当だというふうに肯定されるような感じがするのですが、私はこれは韓国民にとってもゆゆしきことであろうという気がするので、そこのポイントをひとつ、どうお考えなのか。私は、いずれの国でも国民の許容する限度がある、こう思っているのですが、いかがでございましょう。
  212. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ソウル地下鉄の問題ですね、私はその問題に一言も触れておるわけじゃないのです。一般的に日韓が癒着だとかいろいろ言われます。言われますが、私が政治家としてずっと日韓関係というものをながめてきたその所感といたしまして、政界において、財界において不正の事実があってどうも癒着というような言葉で言われる、こういうことでございますが、そのような感触は受けなかった、こういうことを申し上げているので、地下鉄問題について私が所見を申し上げているわけじゃないのです。
  213. 大出俊

    ○大出委員 そうすると、地下鉄問題のこの七億五千万という金が、あるいは十億近い金がどうも別なところに行っている。それだけ高いものを韓国の国民は買わされたという、このことについて、日本側からすれば高いものを売り込んだというわけですが、この件に限って総理は一体どういう御所見をお持ちでございましょうか。
  214. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 地下鉄問題につきましては、大出さんなどから、これは少し高いものを売りつけておる、その裏工作が行われておる、その裏工作に高く売ったその余剰金が使われておる、こういうようなことを言われておるわけでございまするけれども、私もずっとその質疑の模様なんか聞いておるのです。しかし、全部が全部あなたが持っておる資料、それを承知しているわけでもありません。ここで表に出た論議を聞いておるわけでありますが、さあ、大出さんがおっしゃっていることがそのとおりであるのかどうか、私もとにかく責任ある立場ですから、その立場の者として大出さんのおっしゃることが、それが正しいのだとか、政府説明がどうも間違っておるとか、そういうことを言い切れない立場にあるわけです。願わくは何らかの形で大出さんのおっしゃっていることが正しいのかどうかということが解明されることだ、こういうふうに思いまするけれども、これとてもまた韓国の地下鉄に関係する問題であり、なかなかこれは解明がむずかしそうな感じがしてなりませんけれども、願わくはこれが解明されて、疑惑というか、それが本当に真実であったのか、あるいはそれは架空なものであったのか、そういう点が解明されるということが願わしいと思います。
  215. 大出俊

    ○大出委員 妙なことをおっしゃるんですがね。商社連合というのは四商社でございまして、商社の四人の社長さんがお見えになりまして、私が面と向かって御質問を申し上げて議事録に残っておりますが、全部個々の商社の粗利益を私の数字どおりお認めになって、その中からチャンイルに二億二千万払った、これは経費で落ちている、損金で。しかし使途不明金ということで、その当時の計算では七億五千万、合計二百五十万ドル、これは韓国の有力な財界人から二百五十万ドル出してくれ、そうすれば地下鉄は日本にやるということで、私どもはこの七億五千万の金をその方の指示に従って、何月何日ということで指示された銀行にお払いをしたと全部お認めになったのですがね。私は韓国の有力財界人、それでいいと思っておるのですよ。余りだれというところまで詰めたくない気がして、あれ以上私は踏み込まなかったのですがね。これは事実としてはっきりした。それに基づいて、今度は三菱、物産等に対しては税金を取ろう、こういうわけですね。――丸紅ですか、失礼しました。物産はなかったかもしれません。国税庁はそのことについて、この予算委員会の冒頭にも、いま税務調査その他をやっていて決着がついていない、しかしそういうことで進めている、こういうように話している。だから私は、この限りはっきりしたと思っておるのですよ。それは、韓国との関係はおありになると思いますけれども、どうもいい商法だとお認めになったということになると、ちょっと私は後に引き下がれないのですけれども、三菱の社長さんもいい商法だと言ってはいない。これはやむを得ない、何としても欧州に持っていかれたくなかったのだ、やむを得ざるものということで、一歩下がって物を言っておられるのですけれども、いかがでございましょうか。
  216. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 その三菱の社長の話というのは、私はここでは聞いてないのです。私はあなたやほかの皆さんと、政府委員やあるいは輸銀の総裁、基金の総裁、そういう方々との問答を聞いておるわけですがね。その他、私がここにおらなかったときの問答、これは新聞で見る程度でございます。その新聞で見る限りにおきましては、幾らでしたか、ソウル地下鉄当局の指示によってアメリカへ三菱から送金が行われた、こういうようなふうに私記憶しておりますが、さあその三菱が送金をした行為をどういうふうに評価するか、これはもう少し私も、三菱当局がどういうふうな立場でそういう送金をしたのかということを聞いてみないと、私としても判断できません。これは私が判断せいと求められてもなかなかむずかしい問題ですね。ひとつ御容赦を願います。
  217. 大出俊

    ○大出委員 この押し問答をしてもしようがありませんから。ずいぶん無責任な話で、議事録に全部載っかっていてお認めになっているものを、どうも見当違いなことをおっしゃっておるわけですから話が進みませんで、一遍これはこの次の機会までにお調べ願いたい、議事録にございますから。  そこで、重ねて総理に次々に承りたいのでありますが、私はこの問題は焦ってもおりませんで、ぼつぼつ真実を明らかにしていく、いつまででもやる、こう思っておるわけでございますので、時間がなければまた改めてやりますからいいのです。  そこで承りたいのですが、四十五年七月二十一日から二十三日に第四回の日韓定期閣僚会議がソウルで開かれております。それで、日本側から福田さんもおいでになっておりますね。これは大蔵大臣でございましたか。宮澤さんもおいでになりましたが、宮澤さんはこのときの通産大臣でございましたね。橋本登美三郎さんがこのときの運輸大臣でございました。  問題はここから始まるわけでありますが、七月二十一日から会議は始まったのですが、七月二十二日に橋本登美三郎さん、当時の運輸大臣と、白善燁という韓国の、日本流に言えば運輸大臣でございますが、交通部長官白善燁、この方との会談が持たれました。これは三カ月前の「よど号」事件のお礼を申し上げる、こういうことでありました。そして、日本側で何かお礼に御協力できることはしたいがということを話しました。これに対して白善燁交通部長官の方から、ソウル地下鉄に御協力をという話が出てきた。これが出発であります。橋本さんは協力を約された。それで、このときには原田昇左右さんという方が運輸省の参事官で橋本さんに同行されております。  さて、この後で橋本さんは日本に帰ってこられましたが、韓国の交通部長官白善燁さんが随員三名を連れて日本においでになりました。そして、この白さんはお帰りになってソウルで記者会見をなさって、橋本さんと地下鉄問題の話をしてきたことを記者に発表しております。向こうの新聞にもそういうことで載っているそうであります。実はこういうところから始まったわけでありますが、これが実は八千万ドルの地下鉄に対する借款、この問題はここから話が始まったわけですね。つまり、この間の借款をめぐります経緯、このときに当初は大蔵省が反対なんでございまして、大蔵大臣でおいでになったのですから、いにしえの大蔵大臣に承りたいのですけれども、そこのところいかがでございますか。御存じございますか。
  218. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 さあ、そのころソウルの地下鉄を日本で引き受けてやるというような話があったことはうろ覚えに覚えておりますが、その他大出さんがいまおっしゃるような経過につきましては、一切記憶がありませんです。
  219. 大出俊

    ○大出委員 その事の経緯を明らかにする意味で取り上げさせていただきますが、ここに四十六年二月二十日の読売新聞の朝刊がございます。この朝刊の中で「五千万ドルの“怪談”」、怪しい話というわけですな。「五千万ドルの“怪談” 不明朗外交に振り回される」という表題で、当時の新聞が書いております。  この中身はどういうことかといいますと、つまり「昨年末の日韓閣僚会議。ここで日本は一億五千九百万ドルの借款を韓国側に約束したことになっていたが、その実行段階にきて、あいまいだった五千万ドルの扱いに関係者が振り回されている。」この五千万ドルは、そのときは使途不明だった。「借款約束のうち使途がはっきりしているのは、まず重工業育成にあてられる五千九百万ドル。残り一億ドルのうち五千万ドルは農業、中小企業、輸出産業の振興に使うことになっており、」「残り五千万ドルは一応、バンクローン」市中銀行からということになっておって、使途が明らかになっていない、こういうわけですね。  ところで、ここで問題は、韓国側から五千万ドルのバンクローンを急いでくれということを言ってきた、実は四月の大統領選挙までにということであります。「金融機関や政府部内にも難色を示す向きが多い。」そこにもう一つ実は五千万ドルがでてきた。五千万ドルが一つでなく二つになった。それは何かというと「ソウルの地下鉄建設で、閣僚会議では調査だけを約束したことになっていたが、最近になって橋本運輸相が建設費の援助も“内諾”したという説が強まってきた。」こういうのですね。そうしたら、事務当局は何と答えたかというと「閣僚折衝はサシの話なので……」と。そうすると、このソウル地下鉄五千万ドルというのが何と密約ではないのか、隠密作戦ではないのか、こういうふうにここに書いてある。五千万ドル向こうから要求してきたら、今度はもう一つ五千万ドルがソウル地下鉄で出てきた。「五千万ドルの“怪談”」こういうわけですね。  それで、この件について当時の大蔵大臣でおいでになったのですから、まるっきりさっきのように記憶がないというのもおかしな話なんですが、もう一遍、御記憶ございませんか。
  220. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 輸銀、基金の行う個別の借款ですね、これについてはもうよほど問題がある案件でないと大臣まで来ません。一般的にはそうでありますが、地下鉄のことにつきましては、私は本当に記憶がございませんです。
  221. 大出俊

    ○大出委員 少しこの事の筋道を明らかにする意味で触れさせていただきますが、これは新聞社等が出しております韓国に関する大変大きな冊子の年表その他なんでありますが、細かく物が書いてあります。これを見ますと、さっき申し上げました四十五年七月二十一日の日韓閣僚会議、この後いま申し上げました橋本・白会談、そして八月になりますと東京で日韓協力委員会第四回常任委員会というのが開かれた。このときの日韓協力委員会というのは、できてそう長くない。ここに資料がございますが、岸信介さんが会長の時代の日韓協力委員会であります。日韓協力委員会というのは六九年二月に実は設立しておりますから、そういう意味で言いますとまだ二年くらいでございます。ここで地下鉄計画の具体的協力に乗り出すと、こういうことになった。そこで調査団等が派遣をされるというふうな経過がございました。そして韓国側は内資分、内貨分ということで、こっちから借款で地下鉄の車両だとか地上に必要な施設などを送る。ところが土木工事やなんかは向こうでやらなければならぬ。その分を当初五千万ドルと言ったり、後三千万ドルと言ったりしたのでありますが、五千万ドルプラス三千万ドル、合計八千万ドル、これを何とかしてくれという話になってきた。  ここで非常に大きな問題は、後の問題と絡むから冒頭に申し上げておきますが、三菱さんその他の商社の側は一生懸命やっている時期でありますけれども、何が一番キーポイントかというと、ソウルの地下鉄というのは有償、無償あるいは民間、つまり日韓条約に基づいてこちら側から借款供与する、これはおおむね決まりかかっていた。まだ幾らか残っている。地下鉄の順番というのは地の下の方、重工業の育成だとかたくさん上にある。この順番を上に引き上げて、韓国の方から地下鉄を上に持ってきて日本側にぶつけてくる。そのことを日本がのむというかっこうにならないと借款が決まらない。借款が決まるとタイドローン、つまり日本の製品しか買えなくなりますから、いやでも日本の商社の手に落ちる。だから下の方にある地下鉄を上に持ってくる、この芸当をどこかでしなければならないことになった。前後の経緯を細かく後から申し上げますが、そういうことであります。結果的に上に持ってきて、いま申し上げたように五千万ドル、三千万ドルという要求が出てきた。市中銀行の金までかき集めて最後には貸してやった、海外経済協力基金から貸した、こういうわけであります。そうすると、これはそのために韓国側の方で、つまり韓国が日本に要求するのですから、下の方にある地下鉄を上の方に持ってくる仕事をだれかがしてくれなければできない。ここに金成坤さんではないか、私はそうではないかと本当に思っておりますけれども、当時、民主共和党の財務委員長をおやりになっておりましたね。当然その話が出てくるのはあたりまえだ。  そして、実は時期的に見ますと、朴大統領さんと金大中氏の選挙は四十六年四月二十七日だ。大統領六百四十万、金大中五百四十万ということで接戦だったわけですけれども、この同じ月、四十六年の四月初め、こういうふうに三菱の田部社長はおっしゃっているのですが、韓国の財界の有力者のおっしゃる指示に基づいて金を百二十万ドル払った。二百五十万ドルの約半分近い金を四十六年の四月の初めに払っている。大統領選挙は同じ四十六年の四月二十七日に投票が行われて、結果はわかった。この大統領選挙が始まる同じ月の直前に、実は百二十万ドルを韓国財界有力人の指示に従って先払いしているのですね。  ここに一つ資料がございますけれども、アメリカのマックロイ報告その他でありますように、ちょうどガルフのボブ・ドーシー会長がチャーチ委員会で証言をしているのでありますが、ここでは前後二回、四百万ドル、百万ドルと三百万ドル、七〇年三百万ドル、六六年百万ドル、四百万ドルを、金成坤氏から要求があって大統領選挙資金ということで払った。ところが、六六年というのは前のとき、七一年になって大統領選挙に絡んで、民主共和党の財務委員長から一千万ドル(三十億円)出してほしいと言われた。しかし私が自分でソウルに乗り込んで、結局三百万ドルで話をつけた。九億円ですね。ちょうど同じころに、チャーチ委員会等の記録によりますと、ガルフ・オイルも同じように金を払っているわけであります。ちょうどこの時期であります。  つまりそのことによって急速に動いて、第五回日韓閣僚会議、これは八月でありますけれども、その前の七月に佐藤総理が朴大統領の就任式においでになったときに、地下鉄五千万ドルはまだ表へ出ていませんが内定をしていたように書かれておりますが、その上に内資分、韓国内で土木工事なんかやるために三千万ドルを乗せてくれということについて、佐藤総理がここでその協力をお約束をされた。かくて八千万ドルが決まったことになった。正式には第五回日韓閣僚会議で決まったわけですが、前にすでに明らかにされ、手続として決まった、実はこういう事情にある。  だから私は、田部さんがそこのところを、私は商売でございますから仕事をとりたいと思った、したがってその政治の方のことはとお逃げになりましたが、時期的にはやはりそこに結びつく可能性が多分にあるのではないか。現段階はそこまでしか申し上げませんが、そういうふうに思われる。実はこういう経緯があるのでありますが、総理は全く知らないというふうにまだおっしゃいますか、ちょっと一言だけお答えください。
  222. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、その輸銀だとか基金だとかの具体的な融資案件につきまして、当時大蔵大臣という立場にありましたけれども、よほど特別の問題がないという限りにおきましてはタッチいたしておりません。  それからソウルの地下鉄の問題につきましては、これは私は一切関係はというか、タッチしておらぬということを、これははっきり申し上げます。
  223. 大出俊

    ○大出委員 いまになると余りタッチしておらない方がいいのかもしれませんが……。  基金に承りたいのですが、基金、おいでになりますな。――二代目の基金の総裁は高杉さんだと思うのでありますが、この二代目の総裁高杉さんは、三菱銀行から三菱電機の社長さんをおやりになって、三菱電機の会長さんをおやりになって、相談役におなりになった。日韓全面会談、四十年一月であります。日本政府代表に任ぜられた。その後、日韓条約批准書交換の特命全権大使におなりになった。これは杉道助さんがお亡くなりになった後であります。当時の新聞には、岸さんの再度の御推薦があってというふうに記事が出ております。そして、四十四年三月に海外経済協力基金総裁をおやりになって、ちょうど四年間、四十八年三月退任。この間、さっきの全権云々では一等樹交勲章をおもらいになっておられたり、四十九年、地下鉄が全部片づいたところでゴールド産業勲章、これは人呼んで、地下鉄功労章と言う人がありますが、そういう方であります。そのことについて基金の方々は御存じだろうかという点をひとつ承りたいのと、あわせて、時間がありませんから、四十五年の十月から十一月にかけて韓国へおいでになった基金の高木広一さん、市川衛門さん、これは業務部次長さんでございました、秘書の清水則夫さん、四人でおいでになった。朴大統領にお会いになったり、総理にお会いになったり、副総理は当時金鶴烈さんでありますが、この方は経済企画院の院長をお兼ねになっている要職にあります。それからまた李厚洛さんの私邸に招かれまして、ここには当時問題のございます。つまり地下鉄をやろうとしているソウルの市長さんもお見えになっていた。金山大使も同席をされるというところで、この関係者のお話を承りますと、地下鉄の話をした、こういうわけであります。帰ってこられまして、市川衛門さんに命じて帰朝報告、つまりレポートを書かせた。政財界要路の方々にお配りになった。私、これを再三基金に確かめましたが、ファイルをし損ねたのか外したのか、そこが明確でないというお話でございますが、その文書の中身というのは、これまた調べたところによりますと、日本の国益、韓国の国益から考えて、この地下鉄工事が必要である。当時は、理事さん四人おりますが、理事さんの中には、大蔵省から行っている方もあって、反対をされていた方もございましたけれども、帰ってこられて、高木さん初め大変積極的におなりになった、こういうことであります。こういう事実があったはずでありますけれども、簡単で結構でございます。一言お答えいただきたいのでございます。
  224. 石原周夫

    ○石原参考人 お答えをいたします。  前段の高杉前総裁の略歴と申しますか、その点につきましては、私お述べになりました一々の事実につきまして確認をいたしておりませんので、そうであるというお答えをいたしますのはちょっと無理でございます。  後段のお話でございますが、四十五年の十月の下旬に、四日間になりますか五日間になりますか、ソウルに随行三人とともに出張されたことがあります。そこで会われました人についてのお話でございましたが、これもちょっと私いま一々確認をできる立場にございませんので、おいでになりまして、私の承知しておりまするところでは、ソウルには駐在員もおったことでありまするし、一般的な事務視察ということでおいでになったように聞いております。したがいまして、帰りまして特段に報告書をつくる、あるいはそれを各方面に配るというようなことの事実があったというふうには私聞いておりません。メモのようなものが何かあったかもしれないという話は、当時随行した役員から聞いておりまするけれども、それは今日存在を確認できない状態にございますので、簡単に申し上げますると、そういうことでございます。
  225. 大出俊

    ○大出委員 これは大変広範にわたって調べてございまして、メモとおっしゃられればメモかもしれませんが、報告書の形にはなっているものであります。時間がありませんから、またいずれ機会を改めて申し上げますが、確認だけ求めたいと思って取り上げました。  これはちょっと念のためですが、これは園田さん、外務大臣は御関係ないのでしょうね。ちょうどこのときに、十一月の初めですが、園田さんもこれまた、これは外務省ということで後から御質問申し上げたいと思っているのですが、韓国においでになっておられるわけでございますけれども、いろいろな方々と一緒においでになっていますが、これも事実でございましたね。
  226. 園田直

    ○園田国務大臣 韓国に行ったことは事実であります。用件は観光の用件でございます。ただ、かっこうが悪いので経済視察団と名前をつけよう、こういうことで名前をつけたわけであります。
  227. 大出俊

    ○大出委員 途中の駅から児玉譽士夫さんが乗り込んじゃったりしてなどという後のエピソード話まであるわけでありますが、まあ御縁があったのじゃないかと思いますので、後から質問をさせていただきます。  ところで、高杉さんがおいでになったことは、非常に大きく後のいろいろなことと絡んでまいります。なぜならば、基金中心にして進めてまいりましたLAの変更などという問題もございます。金額、これも問題がございます。ここらと非常に実は絡んでいるからであります。  そこで、基金に承りたいのでありますけれども、五千八百八十万円という数字、五八七九という数字もございますし、鉄道庁の方は少し数字が違うわけでありますけれども、通称契約FOB価格五八八〇、こう言っております。これは矢次一夫さんが、先般私がここに御提示をいたしました「新国策」という中に、韓国側から入手した資料ということで述べておられます。これは実は一両五千八百八十万円、こういう数字であります。基金はこの五八八〇という数字は御存じでございますか。
  228. 石原周夫

    ○石原参考人 ただいまのお尋ねは、ジャーツが提出した数字という意味でのお尋ねだったのでございましょうか。五千八百八十万円という金額は、正確に申しますと、五千八百七十九万円といのがFOBの最終的に決まりました金額でございます。その点は間違いございませんけれども、私ちょっと聞き漏らしたのでありますが、ジャーツが示した数字がそうであるかというお尋ねでございますれば、そういうふうには私は承知いたしておりません。
  229. 大出俊

    ○大出委員 それではもう一遍承りますが、片方は一両五千八百七十九万円ですね。それからもう一方が一両当たり五千八百六十二万円、こういうわけですね。五八八〇というのはジャーツが出した数字、これは五八八〇、五八七九、ほとんど違わないのですね、七九と八〇とどう違うかというと。どちらでもいいですが、この五八八〇というのはどういうふうにおとりになっていますか。どこの数字だというふうにおとりになっていますか。
  230. 石原周夫

    ○石原参考人 お答えいたします。  ジャーツと申しまする海外鉄道技術協会でございますか、これはこのソウルの地下鉄並びに鉄道庁の建設につきまして韓国側が、調達庁並びにソウル市が雇用契約を持ちましたコンサルタントでございます。したがいまして、コンサルタントとして基本設計とかあるいは実設計とかあるいは工事の監督のやり方とかいうようなことにつきましてのアドバイスをする資格でございます。したがいまして、私どもの方は、基金といたしましては、そのコンサルタント代が三億何がしございまして、それは借款の中に入っておりますから、その限りでの関係はございまするけれども、直接の関係は韓国側との間にございまして、私どもの方は、いまお話しのような数字がジャーツから出ているというふうには、先ほども申し上げましたように承知をいたしておりません。
  231. 大出俊

    ○大出委員 五八八〇、五八七九、そうすると皆さんの方は五八七九と言えばいいのですか。どうですか。
  232. 石原周夫

    ○石原参考人 五八七九という数字は、FOBの最終的な実際の数字でございます。
  233. 大出俊

    ○大出委員 そこで承りたいのですが、五八七九、この積算の基礎というのはどうなっていますか。
  234. 石原周夫

    ○石原参考人 お答えいたします。  五八七九という数字は、日本側が納めますCIFの価格から運賃以下を差し引きましたFOBの価格でございますから、それは数字で出てまいるわけでございます。しかし、どういう積算であるかということでございますと、それは、調達庁並びにソウル市が入札をいたしまして、落札者との間に価格交渉をいたしまして、輸出入契約を締結したいということで出てまいります。それに対しまして契約の承認をいたしました金額になるわけであります。
  235. 大出俊

    ○大出委員 それでは、積算の基礎は基金ではおわかりがない、こういうことですか。私はCIFとFOBの違いを聞いているのではなくて、積算の基礎を聞いているのですが、積算の基礎はおわかりにならない、こういうわけですか。
  236. 石原周夫

    ○石原参考人 私が申し上げましたのは、輸出入契約で決まりました額だということを申し上げたわけであります。これは先ほど申し上げましたような入札なりその後の値動きに関係がございますから、それで決まった数字でございます。ただ、私どもは審査をいたしまするから、それが果たして適正な価格であるかどうかという点の審査はいたしますけれども、私どもの方で積算をいたしまして決めた額ではございません。
  237. 大出俊

    ○大出委員 つまり、積算の基礎は知らない、また、当たってもみなかった、こういうことになるわけですな。
  238. 石原周夫

    ○石原参考人 先方から出てまいりました数字でございますから、当然私どもの方が審査いたしまして、その価格を、全体の契約そのものがうまく円滑に実行できるかという、いわゆる審査の一部といたしまして、その価格につきましての検討を当然いたしておるわけであります。
  239. 大出俊

    ○大出委員 時間がもったいないので確認はやめますが、前回の総裁答弁では、物価上昇その他を引き合いに出しておられますね。だけれども、原価計算的な形における積算はしてみたことがない、こういうことになっている。そういうわけですな。  それで、念のためにひとつ当時の、なぜこの価格になったかという積算の基礎をここでもう一遍言っておいていただけませんか、あなたの方が審査したときの。ここで述べておられるでしょう。
  240. 石原周夫

    ○石原参考人 お答えいたします。  大出委員承知であると思いますが、石原調査団というものがございまして、政府調査団で向こうへ参りまして、いわゆるフィージビリティースタディーでありますが、それをやりました結果が四千七百五十万円という数字がございます。これは御承知のように、七〇年価格をベースといたすということを言っているわけであります。この値段がその後上がってきておりますから、その上がり方を見ますのが一点、それからもう一つは、類似の取引の関係がどうであるかというようなことを見まして、大体先方の申します五千八百七十九万円という額はその程度でよろしかろうかということを申したわけであります。
  241. 大出俊

    ○大出委員 それでは、大体これで前段がそろいましたから承りたいのでありますが、いまお手元に資料を差し上げましたが、このお手元に差し上げた資料のA、Bと書いてある資料がございます。皆さんにおわかりいただきにくい数字でございますので、差し上げたわけでありますが、この皆さんのお手元に差し上げました資料、これは実は外務省に承りたいのであります。ここに原本がございますが、外務省経済協力局「韓国経済協力調査報告書」、いま石原総裁がお話しになった調査団であります。この百七十一ページと百七十二ページを抜き出して差し上げてあります。時間がありませんから少し早目に申し上げます。  この最初のAの方の(C)というところ、ここに六・八億ウォン――Wはウォンであります。この六・八億ウォンというのがまず間違っておりまして、不思議なことに、この調査報告というのは、地下鉄にかかわるところに五カ所大きな間違いがありまして、御丁寧につまり正誤表というのを出しておりますが、その中にも全然載っていない、間違いのまま。七十六・八億ウォンというのの七が落ちている。これは素人には全く見当がつかぬようになっているわけです。さっきおっしゃった四七五〇という数字はここで出てまいります。七十六・八億ウォン割る百八十六両、これは車両の数であります。割りますと四千百三十万ウォン。この四千百三十万ウォンを円レートに換算をいたしまして四千七百五十万円、いま総裁のおっしゃった数字であります。実はこの四千七百五十万円は間違っておるのであります。なぜならば、これは第一回の調査団の見積もりでありますから。第一回は交直両用ではない、交流だけでありますから、実はこれは七十四・四億ウォンでなければならぬ。その意味では四千六百万円くらいにしかならない。それで、第二次調査団の方で交直両用に直すというと、T車、M車等々に分けまして幾らになるかという計算をして、その割り掛けをすると、確かに四七五〇という数字は後からは出ますけれども、第一次調査団としてはこれは間違い。実は間違いだらけでございますが、時間がありませんから先に進みます。  七一年五月、第二次調査団見積りというのがございます。「(JARTS仕様書に換算)」と書いてあります。ジャーツ、海外鉄道技術協力協会、これは何物かを後でひとつ承りたいのでありますが、ここで四千七百五十万円プラス四百十四万円というのがございます。実はこの四百十四万円がジャーツの仕様に換算してふえた分だというのが外務省の説明でありますが、そういうことでございますか、外務省。
  242. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 お答えいたします。  ただいまの六・八億ウォンと申します数字が七十六・八億ウォンの誤りであることは御指摘のとおりでございます。  それから、その次の第二次調査団の見積もりの件につきまして、これは説明が非常に不十分でございまして、四千七百五十万円と申しますのは第二次調査団見積もりそのままの数字でございまして、それにジャーツ仕様書に換算した場合の四百十四万円が加わるということでございます。したがいまして「JARTS仕様書に換算」というのが括弧に入っておりますのは、若干誤解を与えたかもしれません。
  243. 大出俊

    ○大出委員 この四百十四万というのはジャーツの仕様に換算してふえたと言う。私どもからはまずこれは非常に疑義がある。そこで四百十四万という積算の根拠は何ですか。仕様書換算というのだから、換算する数式がある、算式がある。お答えください。
  244. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 私どもとしては、その根拠につきましては承知しないわけでございます。
  245. 大出俊

    ○大出委員 そんなインチキな報告がありますか。外務省がこの報告書に幾ら払っているかといいますと、私が聞いたら、国民の税金を四百万円払ったと言うんだけれども、四百万円払って、間違いがここに五つもあって、普通の人間には読めない。おまけに四百十四万、ジャーツの仕様書に換算して金がふえたと言うのだが、しかもこの調査団の目的は、四十八年に国会で問題になったので調べに行った。だから、二枚目のBを見ていただきたい。Bの線を引っ張ってありますところ、「わが国の国会でも問題になった後それを受けて韓国でも討議されたが、事情は、前述のとおりで現在ではむしろ、早期着手していたために更に高い現在のインフレを回避できたことの方が大きな意義を持つというのが当事者の意見であった。」国会でがたがた言われて高いと言われたけれども、インフレなんだから、このときにやっちゃったからむしろ安くついた、こう言っている。高値を正当化している。ところが高値を正当化しても、中に十億円近い、韓国の財界人に払った七億五千万円がアンコになって入っている。全くこれは国民の税金をかけて大変不当な高値肯定をここでPRするという結果になっている。しかも、そのポイントのジャーツ仕様換算四百十四万円というのは理由わからず、そういうばかげたことじゃ困る。あなた方はこの報告書のところに調査団名簿というのを載せておいでになる。しかも、これは国際開発センターというところに調査の委嘱をしている。ここに金を払っているんですね。そうすると、この中でこの報告書を起草した人がいる。どなたが書いたのですか。簡単で結構です。外務省。
  246. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 この報告書は調査報告ということで提出されたものでございますが、実際に起草に当たられた方は、リストの五番目に書いております鳥山さんという方だと聞いております。
  247. 大出俊

    ○大出委員 鳥山正光さんという方が起草したというんですね。そこで、四百十四万というのも、これを皆さんは聞いてみなかったのですか。わからぬままでここへ載っけておるのですか。そうでしょう。これはなぜ皆さんはお聞きにならなかった、四百十四万というのは一体どういう数字なんだということを。
  248. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 このジャーツの説明といたしましては、要するに仕様を変えましたので、その分の追加分がこういうことだという説明を受けただけでございます。
  249. 大出俊

    ○大出委員 外務大臣、国民の税金をかけて調査をさせて、そして報告書をお出しになった。間違いだらけ。それはがまんするとして、四百十四万という数字がわからない、これでは困ります。四百十四万という数字がどこから出てきたのかを申し上げますから、基金と外務省と、この原本を私にお出し願いたい。こんな不届きな、百八十六両だから四百十四万に百八十六倍してごらんなさい、べらぼうな額になってしまう。アンコなんか出てきてしまう。  いいですか、ここに、お手元に差し上げております資料一、これがこの原本であります。表題をとりました。人の名前ものけました。実はこの原本は三菱商事さんの紙に書いてありまして、部長さんの判こを押してあります。また妙なことになるといかぬと思って消してあります。私が要点筆記で書き直してここに出した。だからここでは申し上げませんからおとり願いたい、国民のために。  開業年度費用として、電車購入費用は交直両用の場合、百八十六両分で七十六・八億ウォン、さっきの数字であります。これが計上されている。ここに年月が書いてあります。それで、七十六・八億ウォン割る百八十六、四千百三十万ウォン、当時の円貨に換算すると四一三〇ウォン掛ける三百十三分の三百六十、これで実は四七五〇という数字が出る。端数が二〇〇〇とあります。  そこで、ジャーツ、海外鉄道技術協力協会、韓国との間に契約を結んで価格をおつくりになっている。つくった価格であります。後から申し上げますが、十億円ばかりのアンコの出てくるようにつくった価格であります。「車両購入仕様による七三年四月三十日レターの連絡の通り」、レターというのは三菱からのレターであります。これもお調べの上、お出しをいただきたい。MM一両平均二百二十万六千円、TC、TC車であります。一両平均八百万八千円、これは四M、二Tでございますから、四掛けるのと二を掛けるのと足しまして、その下の段でありますが、六で割りますとみごとに四百十四万円が出てまいります。  種明かしをいたします。あなた方は、こんな長い年月たって、何遍言ったって調べない。実はこれを知っているからです。アンコの出どころがわかるから。これを加えると四七五〇、これに四百十四万加えると五一六四、先ほど差し上げてあります資料の下の方の交換公文文書の上のところに五一六四と数字がございますでしょう。計算の基礎は明確にここにある。この文書を、三菱商事の部長の判こをついて原本を持っている方がいる。きちんと外務省で相談して出してください。もし出さぬと言うならば、やむを得ず後刻申さなければならぬと思いますけれども、これをひとつお約束願えますか。人の名前を言ってはお気の毒だから言わないんだから、はっきり言ってください。出さないなんてばかなことがありますか。(発言する者あり)
  250. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 いまお話しのそのジャーツの原本というのは、所在が実は私承知していないのでございますが、鋭意所在を探求することにいたしますので、よろしくお願いいたします。
  251. 大出俊

    ○大出委員 実は委員長、ここで審議をとめましても、後に人がおいでになりませんで御迷惑はかからぬはずなんでございまして、実はこれ、ここでがんばらぬとどうもお出しにならぬのじゃないかという気がするのだが、もうちょっと大臣その他と相談してくださいよ、事務当局だけでも呼んで……。(発言する者あり)
  252. 中野四郎

    中野委員長 ちょっと許可を得て……。  武藤局長
  253. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 鋭意調査させていただきたいと思います。外務省の調査にあるとございますが、この外務省の調査というのも、これはいわば実は川野ミッションの調査でございますが、これもそのまた聞きということで記載してあるようにも受け取られますので、その原本の所在につきましては、できるだけ早急に調査させていただきたいと思います。
  254. 大出俊

    ○大出委員 それでは、第一回の関門でございますから通過をいたすことにいたします。地下鉄がスムーズに走らぬと困るわけでありましてね。  そこで、もう一つここで承りたい。これまた資料でございますが、私は先ほど総裁がお出しになった五八七九、五八八〇でも一万円しか違いませんから、ちょいちょいチャンポンに使っておりますからどちらでもいいですけれども、「新国策」で韓国側の入札価格、FOBで五八八〇と矢次一夫さんのところが書いておりますからね。五八八〇でもいいです。どっちでも構いません。  そこで私は、おわかりやすいように五八八〇、実はこの原本が五八八〇と書いてある。実は二番目の資料、一枚あけていただきまして二というページがございます。A、Bでない方の資料、私が手書きで書いてリプリントしているものであります。これも明確に表題がついております。だが、この表題を申し上げると、またこれいつかのようなことができ上がりかねない。御迷惑はかけたくありません。よくよくならば出しますが、それまでは御勘弁をいただきます。皆さんがお調べになる責任があるから調べていただきたい。  読み上げます。「四十七年六月ジャーツが準備調査に入る」、面談をしているわけだ。記録がとられている。ジャーツが準備調査に入った。「ソウル大同ビルにジャーツ事務所を設けた。そこでソウル事務所長、他が赴任した。」これは括弧書きがありますが、この人たちはみんな国鉄の職員なんですよ。ジャーツだと言っているけれどもジャーツじゃない。現職の国鉄の職員。この方がジャーツのソウルの事務所長というのはどういうわけだ。わからぬ。国鉄の外務部所属でございます。ソウル地下鉄建設協力チームという名をつけております。ジャーツのこれは事務所長。  次にKNRというのが出てまいりますが、これは韓国鉄道庁のことであります。「KNR、ソウル市とジャーツが契約を結び、」どうも国鉄の所長さんがおって契約を結ぶというのも妙なことなんですが、「ジャーツがつくった基本計画、」つまりこれは仕様であります。これと「韓国側のものを平行してやり直した。」こう書いてある。「四十七年十月KNR、ソウル市が仕様に基づく」、仕様というのはスペック、いろんなところに何を入れるというようなつくり方であります。これが仕様であります。仕様に基づく値段を決めてくれと言ってきた。韓国鉄道庁がジャーツに対して値段を決めてくれと言ってきた。「仕様は一〇〇%固まってはいなかったが物価上昇、列車編成の違い等を考慮に入れて政府調査団の価格をもとにして五八八〇万円の価格を出した。ところがKNR」、これはエンドユーザーと書いてありますが、最後に使うところ、KNR、つまり韓国鉄道庁のことであります。「エンド・ユーザーは四千五百万円を固執した。」これは理由があるのです。四七五〇という数字が出ておりました。さっき総裁が言いましたが。わけがございます。必要なら後から申し上げます。向こう側は四七五〇でなくて四五〇〇でがんばった。それでやってくれ、一次調査団のときのものは四六〇〇じゃないか、だから四五〇〇ぐらいでやってくれ。「そこで意見が折り合わず、」つまりジャーツは五八八〇を出しておるのですから、「折り合わず、エンド・ユーザーの金額欄には数字を書き入れずに渡した。」きのうのどこかの新聞の記事の一番最後に先方の言い分を載せております。金額はとうとう出さなかったのだけれども、非公式に伝えたかどうかについては記憶がない、こう、非公式に伝えたように言っています。エンドユーザーの金額欄に入れないで渡した。ところがもう一歩これが先に進んであるのです。後から必要ならば証拠も出しますが、これも実は三菱さんがかんでいます。つまり、ここでは金額を決めないが、韓国側は四五〇〇でがんばった。ジャーツは五八八〇でがんばった。ここで金額は決めないが、契約のときには五八八〇と出してくれ、裏の話はこうだ。だから矢次一夫さんが「新国策」に、韓国側から入手したジャーツの資料によれば五八八〇という数字であると明確に書いてある。前回の臨時国会で私は資料を差し上げました。全部裏書きしております。「書き入れずに渡した。そこで、ジャーツ・ソウル事務所長は四十七年暮れから一月にかけて海外経済協力基金ソウル事務所長に」、いいですか、基金が知らないなんてうそを言ってはいけませんよ。ジャーツの事務所長、国鉄の技術屋さんですけれども、この方がソウルにある基金の事務所長に、「借款計画の数字ではできない、」借款計画を改定しなければできない、「技術屋としては言うべきではないが、車両の単価を上げなければできないと伝えた。」中身を全部伝えています。こういう数字でこうこうこういうわけだということを。九頭竜川のダム事件の映画「金環蝕」ではありませんけれども、技術屋さんはこういうことは困るのですよ。政治家からてっぺんから押しつけられて、高値に積算をしろ、下から少しずつアンコを入れていけなんと言われたのでは困る。だから、技術屋としてはこれは言えたことではないということを言っている。この方は大変良心的な所長さんですよ。技術屋としては言うべきではないがとはっきり言っている。しかし、仕方がない。いいですか。そこで、しょうがないから東京の基金に上げたのだ。高杉総裁のところへ。高杉総裁は三菱電機の相談役で、昼過ぎになると基金にいないのだ。全部三菱電機の相談役室に行ってしまっている。片っ方は三菱商事でしょう。これはツーと言えばカーでしょう。「東京の基金は韓国政府と再び協議して変更をした。」これが四回にわたってLAの変更をしている理由です。なぜあなた方はみんな隠すのですか。  もう一枚あけてください。説明が載っております。「国鉄技術陣としては赤字輸出はしたくない。本家の国鉄がかぶることは困る。そこで物価上昇の説明をしている」。それしか手がない。材料が一九七〇年九月、一九七三年七月から十月、これは車両屋さんが材料を買う時期である。国鉄の予算上では六ないし七%上がっている。私鉄は八%上がっている。これを利用されて、このくらい程度の値上げを見込んでこれを複利計算でぶっかけた。そうして五八八〇という数字を出した。つくられた数字であります。この資料もございます。これまた、外務省と基金で御協力願いまして、同じところにありますから、この二つ、お調べをいただきたいのですが、いかがでございますか。これがわかりませんと、皆さんからお出しいただけませんと、このからくり、七億五千万円を生み出した、二億二千万円をチャンイルに払った点が明確になりません。お出し願います。
  255. 中野四郎

    中野委員長 だれに要求していらっしゃるのですか、大出君。
  256. 大出俊

    ○大出委員 外務省と基金でございます。  同じところにございますからお調べください。
  257. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 契約の修正につきましては基金の方のお仕事でございますが、外務省と基金と協力いたしまして提出することといたします。
  258. 大出俊

    ○大出委員 時間の関係がございますからもうしばらくがまんをいたします。  そこで、ここで運輸省、国鉄に伺いたいのでありますが、ジャーツというのは一体何かということ。ここで幾つか申し上げますが、大変良心的な所長さんが苦労されている姿が、書いたものでよくわかります。ところが、私はここに国鉄の職員録を持っております。四十八年十二月二十日現在です。当時のちょうどそのころのものであります。この十ページをあけますと、韓国在勤、さっきの協力チームであります。地下鉄建設の協力チーム。国鉄の外務部所属のれっきとした国鉄の現職の職員の方であります。河村四郎さん、所長さんであります。橋脇一成さん、企画の関係の方であります。車両関係では川添雄司さん、大変この人は技術的に詳しい方であります。ほかにたくさんおいでになります。何しろジャーツの最盛期は六十名おりました。  そこで、時間がありませんから一気に申し上げますが、実は、このジャーツでありますけれども、このくらいどうも不明朗、不自然なところはない。ジャーツというのは、いいですか、ここにジャーツの原本をとってあります。克明に書かれています。どういうことになっているかといいますと、海外鉄道技術協力協会――ただし、私はジャーツをぶっつぶそうとかそんな意図は毛頭ないのですから、問題は運営の問題をよほど考えないととんでもないことになるということを申し上げたい。まさに日本株式会社でございます。総がかり、総ぐるみであります。これをもって構造何とかと言うのだそうでありますが、これは私の言葉ではありません。申し上げますと、日本の四商社も全部この会員であります。しかも車両メーカーも一軒残らず全部会員であります。しかも、ある車両会社のお話を聞きますと、年間四十万払っているとおっしゃる。数が多いのですから、書き切れないのですから、一社四十万円ずつ払ったってべらぼうな金になります。しかもここには理事制度がございまして運営しています。何とこの運営する理事制度の理事さんに、ほかならぬ三菱商事の社長、この間ここで御答弁いただきました田部文一郎さんが入っています。ジャーツというのは第三者じゃない。三菱商事の天下の社長さん田部文一郎さんがこの理事であります。理事会運営でしょう。ジャーツは、技術屋さんが苦労しても、さっき申し上げた「金環蝕」九頭竜川じゃないけれども、技術屋の良心なんというものは通らない。バックにおられるスポンサーのこの方々の言うとおりにせざるを得ない。これは電機関係から、鉄鋼関係から、重電関係から、車両から、鉄骨の橋のメーカーから、建設会社から、全部ジャーツに会員で入っていてそれぞれ分担金を払っておられます。しかも六十名ばかりおいでになるのです。構成を申し上げてもよろしゅうございますけれども、ここには、本当に私は恐れ入るのだが、利益代表と言っていい、つまり日本連合と言っていい姿が明確になっているので、この辺について国鉄と運輸省から御答弁いただきます。何で所長を国鉄の職員がやっているのですか。
  259. 福永健司

    福永国務大臣 私余り詳細には存じませんので、事務当局から正確にお答えさせることにいたします。
  260. 住田正二

    ○住田政府委員 ジャーツができましたのは昭和四十年でございます。この設立されましたときの経緯を申し上げますと、日本には鉄道の総合技術に関するコンサルタントはないわけでございます。一方、日本の鉄道技術というものが海外から非常に高く評価されておりまして、そのために技術協力の申し込みが非常に多い。日本の鉄道技術というのは国鉄あるいは地下鉄というような団体、公法人を中心に発展いたしてきているわけでございまして、そのためにやはり国鉄、地下鉄が中心となって海外経済協力に当たる必要があるということでこの法人ができたわけでございます。したがいまして、主体は国鉄あるいは地下鉄、鉄建公団というものの技術の人を使っているわけでございます。実際に海外からいろいろな要請がありましたときには、いま申し上げましたように民間にはそういう技術が乏しいわけでございますので、国鉄から派遣してもらって実際の業務に当たるということでございまして、先ほどお話がございましたように、ソウルの地下鉄につきまして国鉄、営団から人を出していただいているわけでございます
  261. 大出俊

    ○大出委員 時間がありませんから住田さん結構です。私がいまもう申し上げてしまいましたから、皆さんぴんときておわかりだと思うのでありますが、ジャーツというのは、このソウルの地下鉄の協力チームというこの時期に、国鉄職員がずいぶんたくさんおります。職員録を見ていただいて、韓国在勤と書いてあるのは皆そうですから、外務部です。みんな技術屋さんです。ほとんど。基金には、当時は技術屋は一人もいない。車両の専門屋は一人もいない。後から一人、私が文句を言ってから入れた。営団地下鉄、それから業者としてはパシフィック・コンサルタンツ、電気技術開発、交通機械設計、これらの方が少し入って最盛期六十名。だから、圧倒的に国鉄の技術者ですから、所長さんは国鉄から出ているのです。いいですか。そうなりますと、さきに運輸大臣が、田村元さんでありますけれども、国鉄は責任がないと言ったが、ないどころじゃない。国鉄がみんなこしらえたんだ、五八八〇を。だが、これは現場の人じゃないんだ。現場の人じゃない。背景にいてその価格をつくらせようとするところに現場の方は苦心するのです。泣いていますよ。だから私は名前を言わない。  そこで、もう一つ申し上げます。  基金は一体どうなっているのか。これは基金の職員録であります。ソウルの基金の所長さん、これまた明確にここにおいでになる。島田重弘さん、ずっとおいでになります。これが基金の所長さんであります。  そこで、国鉄の技術者がまとめた五八八〇という納得できない数字を、さっき私が読み上げましたこの資料に書いてありますように、基金のソウルの所長さんに説明をして渡しているのです。どうしようもない。基金が知らない、真っ赤なうそ偽り。何で物価、物価、物価と言っているかというと、ここでさっきの私の方の資料を出されてしまうと全部構成が崩れちゃうからです。つくった資料であります。そしてLAを四回も改定をした。このLAの改定もきわめてひどいことになっている。むちゃくちゃであります。地上設備なんというのは、車両の方に積み上げなければ十億出ないものだから、電柱を一セット引っこ抜いちゃった。こしらえない。そんなまねして地上設備を減らして、私は心配するんだが、みんな車両に積み上げている。五八八〇、五八八〇と合わせている。だから十億も出ちゃった。こういうやり方を放任できないと私は思うのです。これは本当なら審議したくなくなるけれども、がまんしながら私は進めておりますが、こういうジャーツのあり方だとか――つぶせと言うんじゃないのですよ、高い技術を評価している。技術者はまじめにやっておられるのですから生かしてやっていただきたい。ただしそれなりの筋道は立てていただかなければ、私がさっき申し上げた国民の許容限度がありますから、そこらのところ一体どなたかお答え願えませんですか。総理以下どなたでも結構です。実例を申し上げたのですが、反論がないんだ。――時間かございませんからもうちょっと申し上げて、ひとつ後で最後にまとめて御意見を賜ります。  部品という問題がございますが、これを少し、それから会計検査院の方にも承りたいのです。実は皆さんに申し上げますが、この部品、これはもうみんなとまってしまうようなことになって困りますが、がまんしてしゃべります。  日立を中心とする車両メーカーについて、幹事社は日立さん、三菱との間で五一五〇という契約をした、その数字は私が社長さんに言っていただきました。これは皆さんが御存じのとおりであります。ところが、車両メーカーはどこもかしこも全部大赤字。赤字だらけ。東急車輌なんというのは一億円近い。日本車輌八千万円の赤字、近畿車輌四千万円の赤字、東急車輌一億円の赤字、川崎重工はとんとんであります。それぞれ税務署に届けてあります。皆さんがお調べになればすぐわかります。ところが日立だけは純益で四億八千万円もうけている。どういうわけですか、これは。だから説明がつかない。この車両メーカーの皆さんに言わせれば、何と五千万ということが三菱商事と日立の契約だと思っていた。五千万。理屈があるのです。私は四八五系統の「雷鳥」とか「やまばと」とかいうああいういい車両、あの例を、実は二七五〇という数字で車体をつくったこのメーカーの方々などを例に引いた。電気回りは一六八〇、千六百八十万円、これは三八%。六二%、三八%の比率、車体が六二、電気回りが三八、これが国鉄なんです。民間の慣例を聞いてみると、大体車体メーカーが五五%、電気回り品が四五%くらいなら、まあ泣かなければならぬ。それで二%足らずの利益しか上がらないというのが車両メーカー、気の毒なんです。だから、五千万ならば車両メーカーの方は五五%、電気回りの日立さん、東芝さん等の方は四五%だから、まあ泣かなければならぬと思った。この席上で五一五〇と三菱の田部さんが言った途端に、かんかんに怒った、車両メーカーは。おれたちがこんな赤字だというのに四七%も取りやがる。あたりまえでしょう。だから出てくる。こんなばかな、みんな大赤字で、日立さんだけが四億八千万も純益を上げちゃって、粗利益いったら倍にもなった。一体その粗利益の半分どこへ行っちゃった、どこにアンコで入っていっちゃった、こういうことを言わなければならぬでしょう。そんなばかな話はないでしょう。だから、そういう意味で私は会計検査院の皆さんに承りたいのです。  私の差し上げております資料の一番最後に記載をされている計算が一つございます。御参考までに見ていただいて、会計検査院から実は私は御回答いただきたい点がございます。これはお願いを申し上げたい。会計検査院、今回の地下鉄問題でも一生懸命お調べをいただいておりまして、感謝申し上げます。  そこで、一番最後にある、大きい数字で書いてあります「国鉄が部外に引き渡す車両価格についての計算方式がある。ソウル地下鉄をこの方式で試算すると、」つまり国鉄がソウルならソウル、韓国鉄道庁なら鉄道庁から頼まれて車両をつくって渡す、この場合の計算方式、利益を見込んでおります。今回二七五〇というのがグロスの単価であります。日本車輌の天野社長がここで答えたとおりであります。この二七五〇、二千七百五十万円掛ける〇・〇一、国鉄の方式でありますが、二十七万五千円。交付材料千六百八十万円、電気回りであります。これ掛ける〇・〇五、八十四万円。それにDと書いてありますが、これは簡単に申し上げれば、つまり国鉄は車両を購入する車両数がございます。設計室で設計に、取りまとめ費から試験費から何から、電気料まで全部入れて計算した総額があります。それを車両数で割ります。割ると一両当たりが出てまいります。多いから少ないから、そう関係はございません。つまりそれがD。一両単価に関する比率であります。この比率でいきますと、〇・〇〇七掛ければいい。三十一万円。これだけで計算すると、日立の嶋井さんがここで答弁した二百万とかなんとかいろいろ、あの人ころころ変わるからわかりませんが、言っている数字は高過ぎる。百四十二万にしかつかない。研究費なんというものを特にここに入れてみても、これは国鉄に基準がありますから、〇・〇一入れても百五十五万にしかならない。大変に高過ぎます。これは会計検査院の皆さんに、これは私の試算でありますが、会計検査院も同じ筆法でお調べでございますから、日立はこの件に関しては高過ぎる、この部分について。どれだけ高いか、これは検査院が後刻スペック等を手に入れたときにお調べいただければいいのですけれども、私はどうしても、これは国鉄の技術者が行って、国鉄がやっているというのに国鉄の計算方式と全く――とんでもない方式でやりっこない。国鉄の仕様プラスアルファなんです。いかがでございましょう、検査院の局長さんに承りたいのですが……。
  262. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  国鉄は、直接部外から車両の製作を請け負うことはございませんが、仮に車両の調達、研究その他に費用がどのくらいかかるかということを試算いたしますと、いま先生ここにお書きになったように、車両については一%、交付材料については約五%の用品割り掛けというのがかかりますので、これが先般の日立さんの参考人の方がおっしゃった取りまとめ費用ということになればこの程度、あるいは先生Dと書いておられます設計費用を加えても大体百四十二万程度ではないか、そういうふうに試算できます。
  263. 大出俊

    ○大出委員 はい、わかりました。検査院の皆さんは、毎年、国鉄の車両その他についての会計検査をずっとやってこられている専門家でございます。私もちょいちょい御質問をして大変教えていただきました。  そこで、ここに私持っておりますが、この間嶋井さんがここで御答弁なさいましたけれども、私と河村先生と正森先生、三人に答えた中身が全部違う。私に対する答弁は、七百二十万、何で違うのだと言ったら、取りまとめ費用二百万でございまして、ATS、列車無線百八十五万でございます。合計三百八十五万でございます。これしか言わない。河村先生がお聞きになりましたら、取りまとめ費用二百万、ATS、列車無線百八十五万、仕様アップとこう言う。かっこうが少しアップしている、違うという。それが三百七十万出てきたですね。それで七百五十五万とこうおっしゃる。正森さんが聞きましたら、二百万の百五十五万の、今度はアレスター、パンタグラフなど追加機器が入っているので、これが三百万。それでは幾らになるのですかと言ったら、六百八十五万。私には三百八十五万、河村先生には七百五十五万、正森先生には六百八十五万、これでは何を言っているのかわからぬです。私の見るところ、何として七百二十万の差を埋めるかで大分苦労をされている姿が、意思がまとまっていないものだからつい出てしまう。こういう結果になっている。だから、いま対策本部か何かをおつくりかどうかは知りませんが、日立さんは一生懸命国会へ出す資料をつくっている。そんなものは遅いですよ。こういう現状なんですね。これでは、国民の税金を多額に八千万ドルも韓国に貸したのですから、しかも基金だって公的機関なんですから、ここで私は一つだけ、私の勇み足になるけれども、いささか私は腹に据えかねるから承りたいのだけれども、法務省の刑事局長さんにお見えいただいておりますが、アメリカならSECがと冒頭に私は申し上げました。本来なら基金というのは公的機関なのですから。そうでしょう。しかも、おつくりになっているのは国鉄の職員なのですから、ジャーツというのは名ばかりです。所長さんは国鉄の方がやっているのですから。それが、七億五千万だとか十億だとかいうアンコが入っている数字を百も承知でつくったんだとすれば、これは一体何になる。職権乱用どころじゃない。文書を麗々と出している。これは公文書だとすれば一体どうなる。こんなばかげたことを、ただ単に仕方がないで私は黙ってはいられない。だからお答えを願いたい。何になりますか、こういうことは。
  264. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在、この案件につきましては、先生の御質疑等がございまして、検察当局が深い関心を寄せておる問題でございます。それで、この問題につきまして、検察を一般的に指揮なさいます大臣を補佐する私が、何罪になるとかならないとか言うことは適当でないと思います。ただ、ただいままでのお話を私、役人の立場を離れて聞いておりましたが、何罪になるかというところがはっきり出てまいりません。よく勉強してみたいと思います。
  265. 大出俊

    ○大出委員 私も好んでこういう問題を、みずからの本業は防衛とかいっぱい持っておりますが、実はここまでいろいろな御批判もいただきながら進めておりますのは、国民の税金を八千万ドルも使っておることでもございますし、韓国の国民という立場から考えても、大変に上乗せされてあるものがあるという、政治も商売も金はかかりましょうけれども、国民の許容する限度はお互いにあるだろう。だから政策論として考えれば、冒頭に申し上げたようなことをぼつぼつ考えておかなければいけないのではないかということを考えておりますので、いささか勇み足のきみはございますけれども、口にしているわけであります。  そこで、検査院の方にもう二つ三つ念のために聞かせていただきたいのであります。  実は、日立さんはいろいろなことをおっしゃいますけれども、私が会計検査院の方に回答を求めたら、ここに返答がございました。モハ四八五系というこの国鉄の最高級の車両と韓国向けの車両。片っ方はスチール、鉄です。片っ方はステンレスにいろいろなものがなっています。こんなに落ちる。だが価格はそんなに違わない。そういうことでつくっていって、しかも、メーカーは五千万だと思ったら五千百五十万だという。それだけでも百五十万多いのです。日立は。そうでしょう。その上に実はモハ四八五の方には、皆さんが乗って御存じのとおり冷房機がついている。冷房機はこの四八五をつくるときからちゃんとついていたはずだ。検査院にお調べいただきましたら、ついていましたという。じゃ、それは幾らぐらいなんですかと言ったら、現在なら六百万ぐらい、当時でも三百万は超えるでしょうという。そうなれば、それだけでまた数字が三百万違うのです。私はもうわからぬことだらけであります。  のみならず、もう二点だけ検査院に承ります。実は、アレスターというのは何だ。アレスターというのは避雷針でございまして、避雷針というのは、検査院のお話じゃありませんが、棒を立ててアースをくっつけるだけだとこう言う。それが大変に違ったことになっているわけでありますが、そういうものであるとか、試験をやるのにぶつけて試験をやって車両をつぶしてしまった、そういう費用もかかったのだと日立さんは記者の方に言ったそうでありますが、ところが国鉄さんに聞いてみれば、そんなばかなことをまともな人間がしやしないという。何と試験というのは、ここに書いてありますが、試験の運転費や、つまり人件費や電気料金まで入れてみても、一車平均で三万円ぐらいしかかからないというのだ。日立さんはべらぼうにかかったようにお話しになりますが、そんなばかなことはあり得ない。しかも、これには、アレスターのみならず螢光灯までのっかっている。本当にわずかなものであります。それのみならず、ここにございますけれども、これは何とも私はふんまんやる方ないのでありますが、アレスター、ヒーターの接触器なんというものを大変価格が上がった中に入れている。ヒーターの接触器とは何かと言ったら、三段式ヒーターだ。日車の天野社長さんがそれにお答えになりまして、当社で買ってつけましたとこう言っている。ところが、その後の電気部門の方で、それを車両の壁面に、接触を避ける意味で、つまり、車体とヒーターをつなぐいわばプラグみたいなもの、これがまた幾らもしやしない。それから運転台の計器類だ。いま東京の地下鉄を走っている運転台にこう箱みたいに置いてあるやつ、あれです。あれも幾らもしやしない。それからパンタグラフ。パンタグラフというのはいろいろございまして、いろいろといっても価格の差はそうありませんが、これも大きなことを言っておられましたから、私、無理に頼んで調べていただきましたら、安ければ五十万円、高ければ五十三万円でございます。七百二十万を大きく埋めるようなものじゃありません。それから遮断器の抵抗器だという。高圧が入ってくる。国鉄でも同じであります。韓国と違わないとこう言う。リレー箱。リレー箱というのは、スイッチなんか入れて、箱でこう運転手さんが持って歩いている、あれです。そんなものまで入れて七百二十万の埋め合わせをしようとなさる。私は、どう言われてもこれは納得ができません。  それで、会計検査院さんにもう一遍承りたいのですが、これらのものを全部考えてみてもどうも疑問がある、私はそう思うのでありますが、いかがでございましょうか。言いにくければおっしゃられるところまでで結構でございます。先ほどの答弁いただいておりますから。
  266. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  先ほど先生、第一番目にございました冷房機がついているかどうかということは、先般御回答申し上げましたとおり、国鉄の四八五系にはついておりますが、ソウルにはついておりません。ただ、この価格につきましては、私はっきりわからなかったのでおおよそのところを言っただけで、これに対しては余り確信ございません。  それから特殊部品につきましては、これは私ども、国鉄の契約について検査しておりますので、いろいろ調査してみたわけでございますが、車体価格の中に入っておりまして、業者持ち価格ということになっておりますが、国鉄では個々の機器について積算しておりませんので、それを分離して把握することがなかなかむずかしゅうございますので、いま私ども、国鉄さんともよく相談して、もし分離できるようだったら大体の値段を今後ひとつ調べてみたいと思っております。
  267. 大出俊

    ○大出委員 先ほど総取りまとめ費の中に設計が入っているとすれば、日立さんのは高過ぎるとおっしゃいましたからもうそれで、大筋はそこなんですから、細かいことはよろしゅうございます。  そこで、途中でございますが、この辺で総理にもう一遍承りたいのであります。  それは、総理が二月の段階で私に答えている議事録がここにございます。何気なくおっしゃったとは思えない国会の議事録でございます。昭和五十二年二月の十四日、私がるる地下鉄問題をいろいろな方に申し上げてまいりました。鳩山さんにも申し上げました。田村運輸大臣にも申し上げました。その結果として、総理答弁でありますが、民間の人がいろいろなことを言う。韓国のことについてもいろいろ言う。「これは日本の政治の信用にかかわる問題ですから、」ここから読みます。「これは日本の政治の信用にかかわる問題ですから、これは政府としては調査をいたします。捜査ということは、調査の結果でないと捜査権は発動しませんから、その辺はお含みおき願います。」という答弁をいただいている。  いま伊藤さんから関心を持っているというお話がございました。調査というのは、通常の用語で言いますと、吹原産業事件の私の質問がそうでございましたが、調査中でございますと言わないで捜査中でございますということを刑事局長がおっしゃいましたから、私は畳みかけて、それならば告発がなければならぬと言ったら、そうでございますと答えて大騒ぎになりましたが、その意味で調査ならば内偵であります。捜査とは確かに違います。違いますが、関心をお持ちだとおっしゃっている検察当局もあるわけでありますから、この総理の御回答をいただいておりますけれども、私はその後調査をしたらどうだとか一遍も承ったことがない。これは去年の二月十四日のことでございますから一年近い。どういうふうに御調査をお命じになり――捜査というのは調査の結果だ、こうおっしゃる。もう一遍読みますが、「これは政府としては調査をいたします。一言い切っておられる。何ならごらんいただきます。「捜査ということは、調査の結果でないと捜査権は発動しませんから、その辺はお含みおき願います。」こういうふうにお答えになって終わっているのですが、ひとつその辺をお聞かせいただきたいのでありますが、いかがでございましょう。
  268. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そういうお答えを申し上げたことは記憶しておりますが、政府といたしましては調査をするといってもなかなか手がかりがむずかしいのです。そこで大出さんその他の皆さんから御指摘の点ですね、その御指摘を受けましていろいろ調査をしている、こういうことでございます。きょう質疑を聞いておりますと、まだ政府の方で御期待に沿うような調査がなかなか進んでおらぬ、こういうことでありますが、この上とも調査を鋭意進める、こういうふうにいたしたいと思います。
  269. 大出俊

    ○大出委員 答弁いただけましたから、そこで二つの点で承りたいことがございます。  これは新聞が取り上げている問題でございますが、実は私は私なりに調べてみました。それはどういうことかといいますと、チャンイルというところから何回にもわたって金が送られておりますが、西ドイツのジュッセルドルフ、五百万、五百万前後二回金が送られているようであります。この新聞に、あるレストラン形式のものについて触れておられますから、これはいいとか悪いとかじゃありませんけれども、こういうことは気をつけていただかなければいかぬという気がするので申し上げるのですが、日本の商社のトップクラスの社長さん、会長さん等が全部役員に名を連ねておられて、それぞれあるいは出資をなさっておられるのでしょう。一遍大きい問題になりましたのが、インドネシアのプルタミナのストウ氏が開いたレストランにトップメーカーの方、商社の方がずらり金を送ったことが大きく問題になりました。  名前は申し上げませんが、このレストランは――名前が書いてありますから申し上げますが、社長さんが川部美智雄さん、日商の植田さん、伊藤忠の越後さん、住友の加藤五郎さん、JAL、日本航空の伍堂さん、三菱の田部文一郎さん、新日鉄の永野重雄さん、日本鋼管の槇田さん、丸紅の松尾さん、社長さんです。三井物産の水上さん、トーメンの安本さん、監査役に新日鉄の稲山さん、もう一人村田恒さん、有名な方だそうでありますが、こういう方が並んでおります。外国のことですから日本料理店がないからというそれはわかります。わかりますが、とかくこういうことになっているとこの種の問題が起こると疑いの種になる。私は、これはやはり将来のあり方として考えなければならぬ気がいたします。これは私の意見でございまして、だからどうというんじゃありません。この辺のことについて、総理、まあそれはいいじゃないか大出君、とおっしゃられるのか。何か私はどうもすとんと落ちないものを感じるのですが、御所見があればいただいておきたいのでありますが、いかがでございましょう。
  270. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 ジュッセルドルフのレストランですか、それはいま伺ったところでは、ジュッセルドルフには戦後急激に日本の商社等が進出をした。そこで日本の飯もたまには食べたいという人も多かろうと思うのです。そこで、ジュッセルドルフに出社している関係会社が寄り合って相談して、レストランをつくろう、こういうことが自然に持ち上がることは想像できます。
  271. 大出俊

    ○大出委員 私も、だからとやかくは申しませんが、でも何かちょっと余り偉い方がずらり並んでいるものだからびっくりしましてね、どうも私どもには解せぬものですから取り上げただけでございますが。  それともう一つ国税庁に承りたいのでありますが、国税庁さんはこの間小林委員の質問にちょっとその後のことを言っておられますが、商社の方々に対する税務調査というのは一体どういうことになっているのですか。中身を少し申し上げたいこともあるのでありますが、とりあえず承りたいのであります。
  272. 磯邊律男

    磯邊政府委員 税務の調査の実施状況でありますが、この四社のうちの関西の二社につきましては、すでに調査は完了しております。それから東京の一社につきましては、現在調査中でございます。
  273. 大出俊

    ○大出委員 資料によっていますと時間がかかりますから、簡単に承りますが、昨年末だったと思いますが、国税庁が発表なさいました、発表といってもこれは各社が書いたから発表だと私は思うのですが、天下の大企業の使途不明金が二百何十億ある。これは一体どういうふうにお考えになっているかということと、この中に日立の使途不明金、皆さんのところの方々にお見えいただいて、日立さんの使途不明金はたくさんありますかと言ったら、そんなにたくさんな額じゃありませんと言う。これは非公式な話を出して申しわけないのですが、私の感じでは、やはりたくさんでなければ多少あるのだろうという気がするのですが、そこらお答え願える範囲でちょっと答えておいていただきたいと思います。
  274. 磯邊律男

    磯邊政府委員 使途不明金の問題でございますが、これはすでに発表されておりますのでもう一度申し上げますと、昭和五十一事務年度におきまして調査課所管法人、つまり資本金一億円以上の法人でありますけれども、その使途不明金の総額が二百九十五億円でありまして、そのうち使途が判明いたしましたものが二十八億円であります。  御承知のように、この使途不明金というのは、われわれとしては課税の公平上この行き先を追及しなければいかぬということで、できるだけ解明に努めておるわけでありますけれども、遺憾ながらまだ一〇%しかその解明ができていない。しからば残りの九〇%はどうかといいますと、これは経費性を否認いたしまして当該法人の法人税で加算しておるわけであります。  それから、使途がわかりましたものにつきましては、それぞれの性質に従いまして受け取った人たちに対する課税をする、そういうことをやっておるわけでございますけれども、ただいま御質問がございました日立の使途不明金でありますけれども、これはここで申し上げるのは御容赦いただきたいと思いますけれども、一般的に言いまして、こういったメーカーの会社の使途不明金というのは、きわめて少ないということを申し上げておきます。
  275. 大出俊

    ○大出委員 全く否定をなさいませんでしたね。まあその辺でよろしゅうございます。  ところで、最後でございますが、私、ここに一通の手紙を持っておりまして、この中身を見ると、日立さんというのはどうも少し閉鎖的、秘密主義的過ぎる感じがいたします。嶋井さん、この間お見えになりましたが、常務の方でありますが、あの方は知らぬはずはない。なぜかというと、山口県に笠戸という日立の車両工場がございまして、ちょうど韓国地下鉄の車両ができ始めたころに、ここの工場長の多賀さんという方が転勤をされて、後任に嶋井さん、いまの取締役常務でありますが、入ってこられた、着任をされた、その後の状況がございます。ここに書いてございますが、慣習として、同工場内での製品出荷の収支決算、この幹部会議が月に一ないし二回必ず持たれることになっていた。その席上で、どういうわけかソウル地下鉄の収支決算は全く公開されなかった。また聞いても審議不問に付された。工場長、経理部長あたりのみ、括弧、クエスチョンマークがついておりますが、で処理していたものと思われる。なぜソウル地下鉄のみ特別扱いであったのか、大変にこれは気になるところでありますというところから始まりまして、名前もいろいろ書いてあります。そして、事の真相を知っていたのは行元さんという技術部長さんと、竹田さんという車両部長さんと工場長嶋井さんだけだったのではないかというふうなこともここにございます。  そこで、私は、ここで参考人でおいでをいただいても、三人三様に違ったことをおっしゃる方に、どうも参考人というのはまことに困る。そこで、三菱商事の田部さん、これは実はきょうここで申し上げる時間がなくなりましたが、全部ここに資料を持っておりますが、丸紅との関係で、丸紅さんの私の質問に対する粗利益は六億三千万とおっしゃった。ところがこれは、実は五億一千万になっている。で、チャンイルに払う金の問題、その他いろいろ疑義がございます。  だから、三菱さん、丸紅さん、関係ございますから、もう一遍おいでをいただきたいと存じます。田部さん、松尾さん。  日立は、吉山博吉さんが実は――嶋井さんは笠戸の工場長だったのですから、当時のことを一番よく知っているのは吉山博吉さん、社長さん。なぜお逃げになるのか。まあ逃げると言っちゃ申しわけありませんから、御都合が悪かったのかしれませんけれども、おいでをいただかなければならぬ筋合いだろうと私は思う。責任上も、総取りまとめでございますから。  日本車輪は、天野さんにはおいでいただきましたが、当時の車両の責任者であった矢田正一さんが現在常務でございます。実は大変これは社長さんに怒られておいでになるようでありますから。ふたあけてみたら、こんな割りの合わぬ商売おまえ何で取ったんだという。おいでいただきたいのであります。  川崎重工の梅田善司さん、この方も責任者でございます。  近畿車輌の村松敏雄さん、これは専務の方であります。当時の責任者であります。  東急車輌の山岸久雄さん、これも専務の方で、当時の車両の責任者であります。  ジャーツ。ジャーツは、福崎直治さんという方が理事でございまして、当時の事情をよく知っておられます。そこに今回理事長で横山勝義さんが行っておられますが、この人はメーカーの車両部長等を当時やっておられた方でございまして、もし福崎さんがどうしてもぐあいが悪ければということで、いずれの方かにお願いをしたいのであります。  以上、実はこれらの方々の、私は、せっかくおいでいただいてもああいうふうに三者三様好きなことを言ってお帰りでは困るので、ひとつ証人に喚問をしていただきますように委員長にお願いを申し上げたいのですが、いかがでございましょうか。
  276. 中野四郎

    中野委員長 いずれ理事会において協議をいたすようにいたします。
  277. 大出俊

    ○大出委員 それでは、理事会で御協議いただくということで、時間が参りましたから終わらせていただきます。大変どうもありがとうございました。
  278. 中野四郎

    中野委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次回は、明九日午前十時より公聴会を開きます。  本日は、これにて散会をいたします。     午後六時五十五分散会