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河村委員 願望を込められた試算ですか。これは
政府だけで決められることでありませんから、
政府の決定した方針でないということだけ確認して、これからの問題に移ります。
今回の国会の審議を通じて
総理は、昨年の
政策的な失敗というのは
国際収支の
見通しを誤ったことだ、そういうふうに述べられております。それは、そのとおり率直におっしゃったのは結構でありますけれども、ただ、
総理が本当に誤ったのは、
国際収支の
見通しを誤ったよりも、むしろ国債依存度三〇%、いまも早速願望という形でもって、一日も早く解消したいというような気持ちが出ておりましたけれども、とにかく国債依存度三〇%の枠をどうしても守りたい、そういう執念のようなものがあって、それが誤りのもとになったんだと私は思うのです。だから、去年の年度当初
国際収支の
見通しを誤った、それは仕方がないとは申しませんけれども、それはそれとしまして、途中で転換をする時期はあったし、途中で転換をすれば、今日ほど、内外の均衡の問題でここまではむずかしくならないで済んだかもしれない、私はそう思っているのですね。
私は、ここでもって
総理にもう一遍記憶を呼び起こしていただきたいのです。昨年の十月十二日、この
予算委員会の場で、私は民社党を代表して
質問をいたしました。その際二つの提案をしているのです。この十月の初旬というのは、ちょうどブルメンソールの発言がございまして、一ドル二百六十
円レートが崩れて、二百五十円台に突入した時期であります。その際に、あの臨時国会における二兆円規模の
補正予算を、国債依存度三〇%にとらわれないで、もっと拡大しなさいというのが一つです。もう一つは、この際――この際というのは、そのときでありますけれども、五十三年度、五十四年度、この両年にわたって
経済成長率七%を目標にする
予算をつくって、それで
内需を拡大するという方針を内外に明らかにした方がよろしい、そういう二つの提案であったわけです。
そこで、そのときに
総理大臣が何とおっしゃったかといいますと、私が、当時国内の不況の実態というものは
総理が考えていられるよりもはるかに厳しい、同時に、ちょうど
アメリカの攻勢が非常に強くなって、それで
円高の
傾向が急に強まった、こういう時期であるから、ぜひともその三〇%の枠を外して、それでこの二兆円規模の事業
予算というものをふやすべきであると言うのに対して、
総理は何とおっしゃったかというと、考え方の基本は、
河村さんのような考え方でいいのじゃないでしょうか、つまり社会経済あっての財政なのです。ここまではよろしいのでありますけれども、それから後がいけないのでありまして、いま財政が三〇%公債に依存しておる、これは非常に不健全な形ではないかと思う、先進国の中でもそんな国はどこを探したってありません、このままいけば社会経済の崩壊ということにつながってこないとも限らない、だから自分としては、世界の中における日本丸の運営といたしましてはとにかく三〇%というものはこの際守っていく、またそれによって健全な社会経済の維持、発展ができるんだ、こうおっしゃっているのですね。結果は、第二次補正で公債依存度三四%までなってしまった。それが結果であります。
それからもう一つは、五十三年度、五十四年度のことについて、いま申し上げたように、五十三、四年度はとにかく内外の均衡を達成するためにも調整期間である、同時に、五十五年以降くらいからは財政均衡を図らなければなるまい、ですから、それに対する期間でもある、だから五十三、四年度は七%くらいの
成長目標にして財政を拡大して、
内需を拡大する、同時に、この二年間に行政改革あるいは不公平税制の是正等をやって、五十五年以降恐らく増税時代に入る、その準備をなさるべきである、そういう主張をしたわけです。
それに対して、やはり
総理は同じような返事をなさいまして、大体考え方としてはそう変わっておらぬとおっしゃっておりながら、結局は、ただ、少しあなたと考えが違いますのは、財政というか、こっちへの配慮を、私は、いまの日本の公債依存財政、この姿を非常に心配しているのですよ、財政を膨張させよう、そのために三〇%というようなかんぬきを外してしまえ、このような話でございますけれども、それは私は非常に神経質に考えていかなければならぬ、こういう御答弁だったのです。結果は、やはり五十三年度については少なくとも七%
成長を目標にせざるを得なくなった。
私は、先見の明を誇るようなことを言って恐縮でございますけれども、しかし、もし十月当時から思い切って二兆円の枠を拡大して、
内需の拡大をもっとやる。同時に、ちょうど
アメリカとの国際的な交渉が七%
成長を約束するというのが一つのかぎになったように、当時、十月の時点で、五十三、四年度も七%
成長をやっていくんだというようなことを内外に宣明すれば、
状況はずいぶん変わったのではないか。それは、二百四十円までいかなくて済んだであろう、そういう偉そうな言い方はしませんけれども、かなり改善されたのではないかと私は思う。
そういう
意味で、
総理は、この時期においては
国際収支の
見通しはある
程度ついてきておったわけです。それにもかかわらず方向を誤ったというのは、やはり国債依存度三〇%の枠に
総理はとらわれ過ぎた。結局は、簡単に申せば、外圧によって
総理は
姿勢を変更されたんだと思うのです。そうであれば、いまでも、さっき単なる試算だとおっしゃりながら、衣の下によろいが出たような発言をされますように、依然としてそういう執念が非常に強くある。そうであれば、これから五十三年度の途中においても、五十四年度の
経済運営についても非常に心配があるんじゃないかと私は思う。その点、非常に懸念しております。そこで、
総理に、このいきさつを踏まえて、現在どういうような考え方でおられるのか、それを篤と承りたい。