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1978-01-27 第84回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和五十三年一月二十七日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君   理事 小此木彦三郎君 理事 加藤 六月君    理事 栗原 祐幸君 理事 毛利 松平君    理事 山下 元利君 理事 安宅 常彦君    理事 大出  俊君 理事 近江巳記夫君    理事 竹本 孫一君       足立 篤郎君    伊東 正義君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    川崎 秀二君       笹山茂太郎君    塩崎  潤君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       白浜 仁吉君    田中 龍夫君       田中 正巳君    谷川 寛三君       根本龍太郎君    藤田 義光君       古井 喜實君    松澤 雄藏君       松野 頼三君    渡辺 栄一君       井上 普方君    石野 久男君       石橋 政嗣君    岡田 利春君       岡田 春夫君    川俣健二郎君       小林  進君    兒玉 末男君       藤田 高敏君    横路 孝弘君       坂井 弘一君    玉城 栄一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       古川 雅司君    大内 啓伍君       河村  勝君    荒木  宏君       瀬崎 博義君    寺前  巖君       大原 一三君    小林 正巳君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 村山 達雄君         文 部 大 臣 砂田 重民君         厚 生 大 臣 小沢 辰男君         農 林 大 臣 中川 一郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 福永 健司君         郵 政 大 臣 服部 安司君         労 働 大 臣 藤井 勝志君         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       加藤 武徳君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)     稻村左近四郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      熊谷太三郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         総理府恩給局長 菅野 弘夫君         警察庁刑事局長 鈴木 貞敏君         警察庁警備局長 三井  脩君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         経済企画庁調査         局長      岩田 幸基君         科学技術庁研究         調整局長    園山 重道君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁大都市圏         整備局長    国塚 武平君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      旦  弘昌君         厚生大臣官房長 山下 眞臣君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省年金局長 木暮 保成君         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農蚕園芸         局長      野崎 博之君         農林省畜産局長 杉山 克己君         通商産業省通商         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         運輸省海運局長 後藤 茂也君         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         気象庁長官   有住 直介君         労働省労政局長 北川 俊夫君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 大富  宏君         建設省都市局長 小林 幸雄君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治省財政局長 山本  悟君         自治省税務局長 森岡  敞君         消防庁長官   林  忠雄君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 一月二十七日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     谷川 寛三君   坊  秀男君     渡辺 栄一君   浅井 美幸君     玉城 栄一君   矢野 絢也君     古川 雅司君   河村  勝君     小平  忠君   津川 武一君     荒木  宏君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     正示啓次郎君   渡辺 栄一君     坊  秀男君   玉城 栄一君     浅井 美幸君   古川 雅司君     矢野 絢也君   小平  忠君     河村  勝君   荒木  宏君     瀬崎 博義君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第2号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2  号)      ――――◇―――――
  2. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十二年度一般会計補正予算(第2号)、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第2号)及び昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2号)、以上三件を一括して議題とし、質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋政嗣君
  3. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 きょうは、財政経済問題と防衛問題について御質問したいと思います。  まず最初に、経済問題の質問をするわけでございますが、国民は不安な気持ちを込めて、みずからの生活に深いかかわりを持っておるこの経済問題、予算案に非常に関心を持っておると思うわけです。そこで私は、この国民にかわって国民の知りたいところをお尋ねする、こういう基本的な姿勢を踏まえて質問をしたいと思っております。そのためには、何といってもわかりやすい質疑応答にならなければならないと思うわけで、そういう意味で私自身努力したいと思っております。事前にできるだけ詳しく質問事項を発表し、お渡しいたしましたのもそういう趣旨からであるわけでございますので、ぜひわかりやすい質疑応答をするという、この点での御協力最初にお願いいたしておきたいと思います。  そこで、最初総理にお尋ねしたいのは、正直のところ、一体日本経済現状総理はどう見ておられるのか、この点であります。  私、ここに、本年一月三、四両日にわたって各新聞社が掲載いたしました社説をちょっと書き取ってきたわけでございますけれども、一様に使っております表現は、灰色混乱危機といったような言葉なんであります。要点だけちょっと読み上げてみますと、A紙の場合は「昨年一年は経済福田にとって不本意な年であったに違いない。少なくとも経済については支離滅裂な年であり、その高価なツケをことし払わなければならないのである。」B紙は「ことしの日本世界経済展望灰色である。」C紙は「一九七八年は世界経済構造的変動背景とした戦後最大の不況のうちに明けた。危機からの脱出か、混乱への転落か、明暗二筋の道を分ける転換点に立つ年になろう。」D紙は「対立と摩擦、相互不信と先行き不安の中で世界経済は一九七八年を迎えた。」E紙は「日本経済は不安と意気消沈の深い霧の中で新しい年を迎えた。」――一致した論調です。  ところが、総理の、本会議における施政方針演説を初め、随所に出ております発言を聞いておりますと、いま申し上げたような各社の社説の中で強調されておるような、そういう深刻な状態にあるというふうに果たしてお考えになっておるのかどうか、私には疑問になってきているわけなんです。そこで、まず最初にこれをお尋ねしてみよう、こういうわけであります。
  4. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は、いま世界が、資源無限時代から資源有限時代に入った、そういうことを背景として大変大きな転換の時期に際会しておる、その転換苦悶の時期が今日の時代である、このように見ておるわけでありますが、その中におきまして、わが国もその世界の流れから外れるわけにはいかない。特にわが国は、石油ショック以前におきましては世界にぬきんでた高度の成長を継続しておった、それが低い成長時代に入る、こういうわけでありまするから、なかなかこれは厳しい試練の中に立たされておる、こういうふうに申し上げて差し支えない、このように思います。つまり一言で言いますと、世界が非常な転換期だ、その転換期の中に、わが国経済社会転換期につきまとうところの苦悶、その象徴、それが今日の社会現象であり、また経済現象だ、こういうふうにとらえておるのです。  そういう見方が、これが端的にあらわれておる。それは、いまわが国経済が非常に不振である、不況であるという感触社会に満ち満ちておるわけでありますが、それは何だといいますと、高度成長下で積み重ねました設備、これがいまや過剰な状態、これが大方の企業に見られる。それから雇用におきましてもまた、そういう同じような傾向が見られる。そうしますと、いま過剰の設備を抱えておる、その過剰の設備に対しましては資本の投下があったわけであります。その投下された資本は利益は生まないで金利の負担、そういうことだ。過剰の雇用に対しましてはまた、過剰の賃金の圧力というものを受けなければならぬ、こういうようなことになり、したがって、おしなべて言いますと、一つ一つ企業収益状態がよくない、もうからない、こういう状態にある。もうからないという事情が不況感という感触に大きくつながってくる、こういう状態だと思うのであります。  そういう認識のもとに立ちまして諸施策を進めておる、こういうことでございます。
  5. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 いまのお答えを聞いてもはっきりしないのです。私がなぜ最初にこの質問をするかといいますと、総理自身世界経済現状についてはずいぶん厳しい見方をしておるのですよ。これは施政方針演説の中でも出ております。たとえば「今日のこの状況を、一九三〇年代、昭和初期の様相になぞらえる人があります。私も、確かにそのような一面があることを痛感いたします。」これに代表されるわけですけれども、世界経済現状については非常に厳しい見方をしておるけれども、どうも日本経済現状についてはそうじゃないんじゃないか。まあ一般的に、先ほど私が読み上げたような論調も現にある。それを代表する世論というものもあるので、正面切ってそんなことはないよと開き直っちゃおらぬが、つぶさにあなたの発言を聞いておると、世界経済は大変だが、日本経済はそうでもないんだよというニュアンスがどうしても出ているような気がしてならぬのですよ。本心からそう思っておるとするならば、私は、この五十三年度予算というものが反省の中から、いわゆる政策転換という形で今度こそ誤りなき姿勢を打ち出すということで、どうしても不信を、不安を持たざるを得ない。だから、ここのところをはっきりさせようという意味でお尋ねしているわけなんです。  現にあなたは、日本経済は総体として世界第一の水準だ、こういう表現も使っておられます。それから、日本経済現状というのは世界の中でそんな悪い状態でないのですよ、世界では第二の奇跡が日本に起こっている、そう言っているぐらいですよ、という発言もございます。今度の施政方針演説の中では、物価は安定しているじゃありませんか、そういう発言もあります。最も代表的な表現は「われわれがその決意を固めて行動する限り、当面する困難は、すべて新しい飛躍への好機であり、次の発展の礎石に転化し得べき魅力ある課題となるのであります。」いまの日本経済不況だ何だと言って騒いでいるけれども、魅力ある課題となるのだ、これは施政方針演説の中の言葉ですよ。だから私のような疑問がどうしても生まれてくるのです。  現実に不況は相当深刻です。私が改めてここで指摘するまでもなく、昨年一千万円以上の負債をしょって倒産した企業の数は一万八千四百件、負債総額は二兆九千八百億円、製造業稼働率も非常に低い、企業収益も落ちておる。失業率は二%。どういう数字をとってみても、深刻であることは私は否定できないのじゃないかと思うが、しかしそれは一時的なものだ、一大して心配要らぬのだ、それどころか、もう一つ突っ込んでみると、円高ですら、これは日本経済の実力を世界が正当に評価してくれた結果なんで、喜ぶべきことなんだ、そういう見方すらしているんじゃなかろうか。実質成長率は五・三%とおっしゃっておりますが、これは後でお尋ねしますけれども、五・三行くかどうか知りませんが、とにかく、五・五%前後になりそうだが、これは成長率としては非常に高い、OECD加盟国の中ではもうトップを行っている、失業者百万人と言って騒ぐけれども、二%じゃないか、先進諸国に比べて低いことは確かであり、特に若年層失業は非常に少ない、こういう指標で見ていくと、不況であるにしても程度は軽く、景気停滞と言った方が適当だ、こういう評をなす人もおるわけですね、学者の中にも評論家の中にも。あなたも、本心はこの人たちと同じ見方をしているのじゃなかろうかと思わざるを得ないのですよ、こういう表現を聞くにつけて。だから執拗に私はお尋ねするわけだ。そういう姿勢の中からは新しい、正しい方針は出てこないと懸念するからお伺いするわけなんで、もう一度明確にひとつお答え願いたいと思う。
  6. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 石橋さんのお話を承っておりますと、私が楽観主義者であるというような先入観で私の言動を見ておられるというような感じがしますが、私は、日本現状をそんな楽観しておらないのです。さらばこそ、とにかく公債依存度実質三七%というような予算を組まなければならぬ、また、十五カ月予算というような発想でこの不況問題には直ちに取り組まなければいかぬというような具体的な行動までとっておるわけなのでありまして、とにかく、私のわが国経済に対する認識は、非常に深刻なんです。深刻でありますのは、わが国のよって立つところの世界経済状態が非常に深刻だ、その上に立つところの日本経済ですから、これはもう深刻たらざるを得ないのです。しかも、わが国時代の変わり目の前におきましては、高度成長という時代を経過しておるわけであります。しかも成長の高さが非常に高い。それが今度はにわかに低い成長に移っていく。ですから、転換苦悩というものは、わが国では非常に大きいのですよ。しかし、この苦悩試練といいますか、これに耐え得るか否か、これが非常に問題なんです。耐え得るように政府はあらゆる施策をこらして、この対応を助成しなければならぬ。これが私は、いまわが国が当面している課題であり、そういう認識を持って行動することが政府の責任じゃないか、そういうふうに考えておるわけでありまして、決して、世界は深刻である、日本は楽観していいのだというような甘い認識ではございません。
  7. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 もう世界経済日本経済とは深くかかわりを持っておるわけですから、これを明確に画然と分けることができないことは言うまでもないことなんです。そこのところを、私は、総理は逆手にとっているような気がするのですよ、はっきり言って。世界経済が最悪なんで、われわれがどんなにりっぱにかじ取りをやっても限界があるし、どうにもならない面があるのだ、今度の場合などもその典型的な例だ――現にあなたは何回もおっしゃっています。円高があったのだからしょうがない、こういう言葉の端々にも、私の疑いというものが生まれる原因があるわけなんですよ。  何度も申し上げるようですけれども、自分の見方考え方には誤りはないのだ、だから十五カ月予算というものの編成に当たっても、従来の政策延長線上、考え方延長線上に位置づけられるものであって、これは政策転換によるものじゃないのだ――あなたは、政策転換じゃないと本会議でおっしゃっています。本当にそういう立場に立って、そういう考えの上で十五カ月予算を組んでおるとするならば、私は、この五十二年度と同じ過ちを性こりもなく五十三年度、もう一回繰り返す結果になる、このように思うのです。  しかし、これ以上この問答を繰り返しても始まりませんから、具体的にお尋ねしていく中で、本当にあなたの気持ちはどこにあるのか、いま必要なのは政策転換なのかどうか、このことを明らかにしていきたいと思います。  第一は、五十二年度経済見通しなり政策には本当に誤りはなかったのか、第二は、間違いがあったとすればそれは何か、どこでどう間違ったのか、そして第三には、どの時点でどういう手を打っておけばこんなことにならないで済んだのか、ここをクローズアップさせるための質疑に私はしたいのです。そういう意味でも御協力を願いたいと思います。  あなたは、景気回復を目指して終始一貫、公共事業重視政策をとってまいりました。五十一年度の伸びは二丁二%、五十二年度は二一・四%、今度五十三年度に至っては三四・五%一挙に引き上げよう。そこで、この五十一年度、五十二年度の実績を、事実関係をまず振り返ってみたいのですが、一口で言うのは困難にしても、公共事業重点でやった。五十一年度は幸いに輸出に助けられて、目標成長率五・七%は達成した。ところが五十二年度、本年度においては逆に集中豪雨的な輸出が出てきて、今度はこれが災いになった。五十一年度は輸出に助けられたのだけれども、五十二年度は災いになって、これが円高を招き、成長率は五%前後に落ち込んでしまう。こういう事実関係は間違いないと思う。  そこで、問題の第一ですが、あなたは常に楽観的な見通しを述べてまいりました。参議院の選挙の前には、梅雨明けには景気は明るさを増す、必ず取り戻す、そして八月ごろには公共投資の影響が顕著に出てきて景気は必ず回復する、こういうふうに言い続けております。政府月例報告なども、昨年の年初から一貫して、景気回復のテンポが持ち直し傾向にあるということを繰り返しておられます。率直に言って、選挙対策上、腹の中ではそうは思ってないにもかかわらず、梅雨が明けたら、夏が来たらというふうに言い続けたのではないのでしょうね。本当に見通し自信を持っておられたのでしょうね。  そこで、そういう自信を持っておった上で発言をしたのだ、国民を欺いたのじゃない、票欲しさでいいかげんなことを言ったのじゃないということを裏づけるために、あの発言の当時どういう指標があらわれておったのか、何を根拠にそういうような楽観的な見通しを述べておられたのか、そこのところを私はまずお聞きしたいのです。それはどういう数字でも結構です。あなたが楽観的な見通しを立てた根拠になったその数字、具体的な指標、それをここで示していただきたい。  公共事業がこういうふうに成約されて、執行の段階に入ったら民間における需要がこういうふうに伸びてきた、在庫調整民間企業設備投資、こういうふうに指標伸びがはっきり出てきておった。輸出入の関係で言うならば、輸入はこういうふうに伸びてきて、輸出は漸減の方向にある、七億ドルの赤字という方向に確実に向かっている、外貨の保有高も着実に減っておる、そういうふうな明確な指標があった上で自信を持ってお見通しを述べておられたのかどうか、このところをひとつお教え願いたいと思います。
  8. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 このように御説明を申し上げさせていただきたいと思います。(発言する者あり)  六・七%を考えておったものが五・三%になるという、それがどのような理由でそうなったかというお尋ねでございます。そこで、ほぼ一・五ポイントの食い違いの御説明を申し上げなければならないことになると思います。  一・五ポイントのうち最初の〇・五ポイントは、これは経済の実勢といいますよりはやや技術的な理由になりますけれども、昭和五十一年度の国民所得暫定値から確報値にはっきりいたしてまいりました際に、実は暫定値の方が高過ぎた、確報値が低うございました。その結果としまして五十二年度のいわば発射台がそれだけ低くなりまして、これは石橋委員よく御承知のとおりの、例のげたという問題でございますが、この点が〇・五ほど関係をいたしておるようでございます。次の〇・五は、これは経済の実態に関係をいたしますが、民間経済活動、すなわち、消費が思ったより低かった、それから住宅投資が思ったほど進んでいない、これらのことから〇・五%の見通しの過剰があったというふうに考えられる。最後の〇・五%は、昨年の十月ごろからの円高によるところの景気の冷えと申しますか、都合、これで六・七と五・三のほぼ一・五ポイント分の御説明になるわけでございますが、最初の技術的な問題は別といたしまして、やはり国民経済全体における在庫の厚みというものについて判断の不正確さがあったのではないか。ことに、景気が冷えてまいりますと、適正在庫というものの考え方が自然にどうしても、すべての人々が物差しを低くするようになりますので、その点で、これがもう一つ、在庫の壁になってあらわれた。ただいま在庫と申し上げますのは、生産財、資本財、消費財等々、すべてを含めての広い意味の在庫でございますが、これが公共投資の波及効果をいわば吸収してしまったということ、概観いたしますとそういうことではなかったかと考えております。
  9. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 私、改めて総理と名指しをしませんでしたので黙って聞いておりましたけれども、同僚の議員各位が言っているように、私は総理にお尋ねしているのです。あなたが自信を持ってお答えにならないということになりますと、もう私は結論が出てしまうと思うのですよ。おれの考えは変わってないのだ、変わってないのだ、政策転換じゃないのだと自分で言っておきながら、実際には今度の予算編成のイニシアを、いま発言した宮澤経済企画庁長官や河本通産大臣にゆだねてしまった。あなたは、もう失敗したとじっと引っ込んでいる。まあ適当にやってくれ、高度成長論者適当にやってくれ、おれはどうも敗北だ、これをみずから裏づけることになりますよ。そうじゃないと言うならば、自信を持って、胸を張ってあなたが直接お答えになるべきだと私は思うのですよ。  しかも、いま私が聞いていることは、宮澤さんが言ったことじゃないのです。閣僚でもなかったのだ。あなた自身が国民に向かって大丈夫だと太鼓判を押したのですよ。それに期待を寄せて、参議院選挙で自民党に投票をした人がいっぱいいるのですよ。裏切っているのです。だましているのです。だましたのじゃない、私はこれだけの数字を基礎に置いて自信を持って行ったのですと、どうして言えないのですか。どうして言えないのです。お答え願いたいと思います。
  10. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 五十二年度の経済につきましては、輸出伸びが鈍化する、しかし、何がしかの影響は経済牽引力としては持つであろう。しかし、それも鈍化でありまして、微弱である。そこで、やはり財政が大きな役割りを演じなければならぬというので、御承知のとおり公共事業の早期執行、上半期集中という政策をとったわけです。  それで、七〇%は上半期に行う、その中でも四-六にウエートをかける、こういう方針、つまり五十二年度の景気というものは、やはり輸出にも若干の支えを求めまするけれども、四-六は財政に置いた、そういう形で運営する。そうしますと、四-六が済んだ段階ぐらいになりますとこの公共投資の影響も出てくる、こういうふうな判断をしたわけであります。私は、これがかなり出てきた、こういうふうに、実績から見て言えると思います。  ところが、輸出の方が案外そうふるわない、こういう状況がある。それから、いま企画庁長官が述べました在庫、これに対する見方につきましても多少見込み違いがあった、こういうようなことがありまして、四-六は財政が大いに活躍をしましたけれども、七-九になりますとややその勢いが鈍化するというようなことになってきた。  そこで私は、夏ごろになったら景気は上向きに転ずるということを申しておったわけでありますが、確かに四-六は上向きの調子をとったのですよ。ところが、七-九になってその傾向が非常に鈍化してきた。夏ごろになったら景気は上向くが、もし上向かなければ、これはひとつその際の手を打ちます。六・七%成長は必ず実現します。こういうふうに言ってきたのですが、どうも七-九の勢いを見ますと六・七%成長にいきそうもない。そこで、御承知のように九月に総合政策をとって六・七%成長を実現する、こういう構えをとったわけでございます。  ところが、そこへ円高というものがやってまいりまして、これはなかなか簡単に処置ができない。そこで六・七%成長はなかなかむずかしい、総合政策をとるにいたしましてもこれは五・三%くらいしかいくまいというので見通しの改定をする、こういうことになったわけであります。
  11. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 結論的にお尋ねしたいのは、公共事業の前倒しで全力を傾注していく、その結果、この公共事業の投資は必ず民需の喚起に結びついていく、こういう考え方、これはいまあなたが頭に描いている考え方なんですよ。同時に、去年の予算編成時においても同じような考え方をしておったのですよ。だから、去年うまくいったのかいかなかったのかということは大切なんですよ。去年うまくいかなかった。私たちから言わすれば、すでに試験済みの、しかも失敗という実績がはっきりあらわれている、そういうやり方を、ちょっと公共事業の量をふやして、もう一回ことしも繰り返そう、こういうことなんですね。危険きわまりないのです。そんな同じ過ちを、われわれも国民の負託にこたえるという意味から、野方図に見逃すわけにいかないのです。あなたの自信のある、根拠のある説得によって、なるほど、去年は失敗したが、ことしはそれなら大丈夫なのかという自信を私たち持たなければ、去年失敗したものをまた同じやり方を認める、そんな翼賛会的な議会になりたくないのですよ。大切な問題です。あなたも宮澤さんもお認めになったように、去年は明らかに失敗したのです。ことしも私たち、同じことを懸念して言っているのです。操業率が悪いのですから、在庫が多いのですから、多少刺激してもそちらの方を埋めることに精いっぱいで、新規の設備投資には回っていかぬじゃないか、民需の喚起につながりそうもないじゃないか。去年も言ったが、ことしも同じことを言わなければならぬ。そこにおいて、あなたの逃げ道は円高。去年は円高があったのだからしようがないとおっしゃる。では、ことしは絶対に円高にならないか、同じ道を歩まないで済むだろうか。私に言わせれば、あなたが責任を転嫁なさる円高という現象自体も、結局、あなた自身がつくり出したものじゃないですか。民需につながらない、逃げ道をどこに求めたか、輸出に求めた。五十一年と同じパターンです。六十四億ドルも伸びるはずの輸入が、目標を下回ってしまった。輸出の方は逆に四十七億ドル程度の増加を来してしまった。七億ドル赤字になるはずの経常収支、この目標が逆に百十億ドルの黒字になった。こんなことがかつてありましたか。計画や見通しというのは、必ずしも計画や見通しどおりいかぬというのは、特に経済問題では常識かもしれませんが、こんなでたらめな結果になった例がございますか。七億ドルの赤字になる予定だったのが百十億ドルの黒字になってしまった、これが見通し誤りなどと言えるものでございますか。こういう状況が円高をつくったのじゃないですか。あなたの責任ですよ。そこに逃げ込むなどということはできない。逃げ込もうとするならば、ことしもまた円高、去年と同じ形になる可能性が非常にあると私は思う。そのときもう一回逃げ込まれる。大変なことですよ。どうしてこんなことを私たちが見逃すことができますか、こう申し上げているのですが、いかがですか。そこのところを、去年と違うのだということをどういうふうに説明なさるつもりなんですか、お伺いしたいと思います。
  12. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 石橋さん、経済政策が間違った間違った、こういうふうに言われます。確かに、国際収支の見通し、これは間違いと言えば大変な間違いであった。これは大いに反省いたしております。しかし、昨年そういう間違いがあり、そしてまた、それにも関連を持ちながら円高という問題も起こってきておる、それにもかかわらず、締めてみなければわかりませんけれども、大体五・三%程度の成長ができる、そういうゆえんのものは一体何なのだと言いますれば、これは財政主導ですよ。五十一年の成長五・七%、これは輸出が大いに寄与した成長です。五十二年になると、輸出は多少の寄与はありますけれども、これはコンマ以下という程度の寄与です。この五・三%を支えるエンジンは一体何だというと、財政なんです。私は、この考え方は、五十三年度におきましても変わる性格のものではない。五十三年度におきましても輸出は一体期待できますか。これは五十二年度以上に輸出に期待することはむずかしいのです。これはほとんど期待ゼロぐらいに見ておかなければならぬ。  そうすると、一体ほかの要因、国内要因、これは設備投資はどうだというと、設備投資も、電力投資、こういうものは特にお願いをしておりまするけれども、一般にはそう大きな期待はできない。住宅投資、これは政府政策によって進めますが、主軸をなすのは、やはり五十二年度において見られたような財政の力によるところの社会投資、そういうことではなかろうか。そういうことで経済が活況を呈するということになれば、自然にまた設備投資にも圧力がかかってくる、あるいは個人消費の伸びにもつながってくる、こういうことになるので、私は、財政主導型の運営というその点につきましては、昨年においても間違いはなかったし、ことしにおいてもさらにこれを続けていってしかるべきものである、そういう認識でございます。
  13. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 私が申し上げているのは、公共事業に重点を置いて推し進めていく、まずできるだけ大きな予算を組む、そして上期に集中的に前倒しでつぎ込んでいけば必ず民需につながる、つながらなかったのですよ。そして輸出に向いていってしまったのです。その結果、大きな経常収支の面での見通しの狂いが出てきて円高になったのです。同じことをことしもやろうとしている。同じ失敗を招くおそれはないかと本当に心配してお尋ねしているのですが、親切なお答えがないのです。ことしは去年と違って必ず民需の喚起に結びつくのだと、何を根拠にそんな自信をお持ちになっているのか。公共事業の量が去年よりもふえたからですか、この問題はまた後でやりますけれども、簡単に言えば。そうではなくて、ことしは輸出に逃げ道を求めようがない、円高という現象が無限にあるのだからということなんですか。何はともあれ、親切にお答え願いたいと言っているのです。  しかし、そのことよりも、成長率五・三%は大丈夫だとおっしゃったが、私はもう一回念を押します。五・三%すらむずかしいのじゃないかという見通しもあるわけですよ。大丈夫だとおっしゃるなら、そのことを確認しておきたいことと、外圧が加わってきた、そして投機も交えて円高になった、その原因は、六一七%の成長率が五%前後にとどまったからということじゃないのですよ。やはり経常収支の見通しの過ちの方に問題があるのですよ。これは対外経済相という今度新しくできた大臣、はっきり言っておりますけれども、どちらかというと、こっちの方にウエートがあるのです。あなたがロンドン会議で、いわば国際的な公約ともいうべき成長率六・七%、経常収支は七億ドルの赤字、必ずいたしますと約束したのに、これを守らなかったがゆえに、外圧、投機、そして円高という現象に結びついていったことは、あなたはお認めになるのでしょうね。成長率七%と今度は言っているのです。六十億ドルの黒字幅に縮小すると言っているのです。特に、この六十億ドルの黒字幅に縮小するという、あなたのいわば国際的な約束が守られなかった場合には、もう一度繰り返すことは確実じゃないですか、そう思いませんか。このこともあわせてお答え願いたいと思います。
  14. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 くどいようですが、私が申し上げているのは、五十二年度五・三%成るかどうか問題だ、こういうお話ですが、いずれにいたしましても、五・三になるとして、あるはそれに変化があるにしても、それを実現する主力は財政だ、このことを申し上げているのです。その考え方を五十三年度において修正すべき要因というものは私は見当たらない、こういうことなのです  いま、それに関連いたしまして、ことし、五十二年の成長目標六・七、それから経常収支の赤、三角の七億ドル、これは国際的な約束をしたのじゃないか、こういうお話でありますが、これはよく申し上げておきますが、私は、六・七の成長をするということは、首脳会談でも堂々と言っておりますよ。しかし、三角の七億ドル、これにつきましては、経常収支の黒字幅は縮小するという考えだということを申し上げておるわけであって、そんな細かな数字を国際社会で申し上げておるわけではございません。そのことを念のため申し上げておきます。  しかし、五十二年度、つまり一九七七年という年は国際社会に非常に大きな変動がありまして、ドイツにおきましては、その席で五%成長ということを言ったのですよ。これがいまどういう状態ですか、二・四%成長と言っているじゃありませんか。半分を切るという状態です。それから、アメリカはどうだといえば、その席では六%成長と言っておる。これが五%を切る、こういうような状態になっているのであります。これはわが国もずいぶん努力した。努力して六・七%成長というのが実現できなかった。これはまことに私は残念でありますが、しかし、それにいたしましても、努力をして五・三%の成長を実現しよう、こういうのですから、この点は私は、そう国際社会から問題にされてはおらぬ、こういうふうに思います。  ただ、問題は経常収支、これが大いに縮小する、こういうふうに宣言したにかかわらず、逆にふえてしまった。これは本当に私は残念なことである、こういうふうに思いまして、思いを新たにしてこれが是正に努めなければならぬ、これが私の立場でございます。
  15. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 念を押しましたら、五・三%が少し揺らいできたのですけれども、五・三%は大丈夫と見通しをお持ちですか、五十二年度の成長率は。
  16. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 さように考えております。
  17. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 何度も申し上げますように、あなたも、経常収支が赤字になる、そういう見通しを立てておる、努力もするとおっしゃったのが黒字になったということは間違いだった、見通しを誤った、ここが一番ポイントですよと言っているのです。その間違いも、間違いなんという言葉表現できないような大変な、赤字と黒字の違いどころか、それも両極端の大違いというような結果を招いたことが問題だ。その原因は何かというと、公共事業に重点を置いてやれば必ず民需に結びついて新規の設備投資も起きる、需給ギャップを埋めるというだけにとどまらないという、その見通しそのものに誤りがあったということなのです。これはもう否定できない。お認めになったわけですね。いかがです。
  18. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 先ほどからるる申し上げているのですが、経済を動かす要因というものは、国民の消費もあります。設備投資もあります。住宅建設もあります。それから輸出、こういうもの、海外要因もあります。ありますが、五十二年度についてこれを見ますと、海外要因は、もう成長には非常に影が薄くなってきておるわけです。内需でこれを動かしておる、こういう結果になってきておるわけでありまして、その内需も一体何だと言いますと、これはもう設備投資なんか惨たんたるものであります。住宅投資もそうふるわなかった、ふるわないような傾向でございます。財政がこれを引っ張っているのですよ、財政が。そのパターンというものは、私は、五十三年度においてこれを変える必要のない問題である、こういうことなのです。一体、他の要因に財政支出がどういうふうな影響を及ぼすか、これは影響があるに違いはありませんけれども、それは別といたしましても、とにかく財政が中心になって経済を動かさなければ、五十三年度の経済は上昇が非常にむずかしい、こういう事態にあるということだけは間違いない、このように考えます。
  19. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 何回も同じことを言わなければならぬのは残念ですけれども、公共事業重点で一生懸命おやりになった、その結果穴一七%という成長率は達しなかったけれども、まあまあ五・三%ぐらいにはいく、その方の効果は私はあると思いますよ。  しかし、そのことよりも問題なのは、こういう日本経済現状を招いた一番の原因は、あなたもおっしゃるように円高円高なのです。円高を招いたのは何だ、経常収支の大幅黒字なのです。そうすると、ここの一点に焦点を合わせて私はお聞きしてもいいですよ。七億ドルの赤字になるはずだったのが百十億ドルの黒字になっちゃったということが問題。ことしは六十億ドルの黒字にまで縮小しょうというのが中心的な、いわば国際的な公約ですよ。これが達成しなかったならば、もう一度同じ運命をわれわれはしょい込まされるのです。これは否定しませんね。まず、くぎを打っておきます。否定しませんね。  そうすると、黒字幅を六十億ドルまで縮小しようと思うならば、輸入がどんどん活発にならなければいかぬ。輸出がただ多少落ちるというだけでは追っつかない。輸入はどんどん進むということになると、国内の需要というものが相当活発に起きなければならぬ。その方の効果というものが絶対に今度あらわれてこなければいかぬ。去年はだめだったがことしは大丈夫という根拠がどうもストンと落ちないと、私は言っているのですよ。どうも去年と同じようなことになりはしないかという懸念が、不安がぬぐい切れないと言っているのですよ。いまの総理説明で、私だけじゃなくて、みんなが、そうか、ことしはそういうことなら大丈夫だという自信を持つと思いますか。思わなければ、なおさらのこと、民間はついてきませんよ。先行き不安で、需給ギャップを埋めるので精いっぱい、もう少し模様を見ておこう、新規の設備投資なんかやったら大変だ……。あなたに自信がないというのだったら、一番大切なそこのところの問題解決にもならぬじゃないですか、ポイントじゃないですかとお尋ねしているのですから、もうちょっと親切にお答え願えませんか。
  20. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 いまの経常収支黒字六十億ドル、こういう問題でありますが、五十二年度は恐らく百億ドルを超える黒字になるのだろう、こういうふうに思いますが、それに対しましてかなりの圧縮ということになるのです。それは、非常に概括的に申し上げますと円高、これがかなり輸出入にともども響いてくる、こういうふうに見ておるわけであります。  それから、わが国一つ一つの産業をとってみまするときに、鉄鋼につきましてもアメリカとの間にいろいろ問題があることは御承知のとおりであります。これがいままでのような状態にはいかぬ。あるいはテレビをとりましても、これも御承知のとおりの状態であります。そういうことで、これも相当の減少を来す、そういうこと。それから船舶ですね。この船舶輸出、これもわが輸出の大宗でございますけれども、これもかなりの減少が見込まれるわけであります。そういうことを考えますと、これはかなりの輸出の減少。  それから輸入は、ただいま申し上げました円高関係もあり、同時にまたいろいろ、いわゆる開放体制としての問題もある。そういうようなことで、これはまたふえるであろう、こういうふうに見ております。  まあいま六十億ドル、こういう黒字を見積もっておりますけれども、大体そんな程度にはいくんじゃないかと思いまするし、これはもう国際社会に対するわが国の立場ということを踏んまえますと、どうしたってこれを実現しなければならぬというくらいに考えておるわけでありまして、できればそれをさらにめり込むというくらいなところに持っていきたいな、かように考えております。
  21. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 ここでまた円高が出てきたんですけれども、どうも輸出が落ちて輸入がふえるのは円高のおかげでございますと、まあ円高という災いを転じて福になすという考えなのか、もっと積極的に円高結構、あなたは、資本主義の市場原理にすべてゆだねてしまう、これは後で構造不況業種の問題を論ずる場合にもお尋ねしたいと思っているのですけれども、そういう考え方が根底にあるのではないかという気がし出、幸した。円高幸い、おかげで輸出伸びず輸入がふえるんだ、その円高に、今度は逆に頼みにしている節がありますね、いまのお答え聞いておりますと。それはそれでいいですよ。とにかく、あなたが見通しを誤ったということをお認めになりましたから、次に移ります。  もう一つ。かつて日本経済の病状をあなた診察されて、全治三年というメイ、どちらのメイか知りませんが、メイ診断を下されました。どちらのメイかは、結果は出たわけです。四年目に入ってもさっぱり快方に向かわないどころか、明るい展望が開かれない、兆しも見えない、こういうことになると、診断を誤った。いや、そうじゃないとおっしゃるならば、やぶ医者だったので処方を誤った、治療の方法を誤った、こういうことになるのか。とにかく、これはお認めにならざるを得ませんね、この見通しについては。これはいかがですか。
  22. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 まあ私が全治三年と言ったのはいろんな意味があるのですよ。一つの意味は、いままでの経済循環で行きますと、これは二、三年の好況、一年、一年半くらいの不況、そういう循環をずっと続けてきておるわけです。さあそういう循環を続けてきたところに石油ショックというものが起こった。そして大変な事態になったわけでございますが、そのとき私は、日本の財界が、あるいは日本国民が、過去の循環、一年半の不況、二年、三年の好況というような循環の一形態としてこの問題をとらえたら困る。まあ石油ショック来たけれども、一年、一年半ぐらいでこれは治せるんだ、こういうような認識を持ったら困るな、こういうので、これは長目の対策を要する、こういう考え方があったわけです。事態は一年半、一年で治るような、そんななまやさしい問題じゃありませんよ、もっともっと深刻なものだというので、まあ普通の倍以上の長さ、三年ということを言ったわけなんでありますが、しかし四十九年ああいう状態だった。国際収支は百三十億ドルの大赤字ですよ。物価は狂乱ですよ。成長はマイナスですよ。それが五十年-五十二年、三年経過した時点においては、国際収支は四十何億ドルの黒字になりますよ。物価の方はもう消費者、卸ともにかなりの安定基調ですよ。もう狂乱というような空気はみじんもないというような状態だ。成長は五・三%を実現する、こういう状態になっている。ですから、大局的に見ますると、かなりの成果を三年間でおさめた、こうも言えるのですよ。  しかし、いろいろ問題がある。今日なおトンネルの中におると私は言っておるのですが、まあ私が一歩譲りまして、私の診断が、三年と言ったのがちょっと延びておる、こう言ってもよろしゅうございますけれども、それは私のメンツなんか問題じゃありませんから、私が全治三カ年説を提唱したのはそういう趣旨であるということを御了知願います。
  23. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 そういう言葉の端々に、私が冒頭に提起した懸念というものが生まれる原因があるわけなんです。まあ、ああ言えばこう言うのという形はやめていただきたいと思うのですよ。  結局、いま私たちが解決しなければならぬことは、かつて福田総理も提起されましたように、物価の安定それから景気回復、財政の健全化、この三つの目標なんですね。これは言葉で言うことは簡単ですけれども、お互いに矛盾した内容を持っておる。だから、一挙に全部というわけにはなかなかいかぬ、そういう考えがあなたの頭の中に仮にあるとするならば、一体それじゃ、この三つの目標のうち、一番どこに重点を置いたのか。いや、景気回復は二の次に考えたんだ、さしあたりは物価の安定と財政の健全化に自分は一番重点を注いだのだというならば、それなりに一貫しますよ、これは。成功したか失敗したかは別として。物価の安定では成功したとおっしゃるかもしれません。私どもは七%を割ったからといって、物価が五%ぐらいになったからといって、それで物価が安定したとは認めませんが、鎮静の方向にあるという、そういう表現ならば認めます。  しかし、財政はもうまさに狂乱状態じゃないですか。あなたはかつて狂乱物価という言葉をつくりましたけれども、狂乱予算と言っていいような状態じゃありませんか。この点では完全に失敗です。景気回復に重点を置いたというなら、これはもう歴然として失敗。どっちにしたって逃れられないのですよ。まあ経済福田という、そういう異名を取っているというのか自称しているのか知りませんけれども、その経済福田経済見通しを誤って、対策がすべて後手に回った結果いまのような状態になったんだなんて言われると心外千万だ、その気持ちはわかりますけれどもね。まあ政治家は、最も得意とするところで失敗するとも言われるわけですから。やはり率直にこの反省がなければ、私は、先行き不安、この一番大切な国民の不安というものの解消、これにこたえられない。失敗したら失敗した、率直に認めて、今度は誤りなくやります。こういう姿勢があって初めて信頼は生まれるのですよ。ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うで逃げ回って、どこに責任があるのか、打った手が間違いだったのか間違いじゃなかったのかもあいまいにされて、そしてまた五十三年度予算を含めて十五カ月予算、今度は大丈夫ですなんてかけ声をかけたって、だれも信用しない。この信用を回復するかしないかということがこれからのかぎなんですよ。特に民需に期待するならばなおさらのこと、私は、メンツなどにこだわっているときではないと思います。誤りははっきりお認めになった上で政策転換を図る、そこに五十三年度の未来はある、展望は開かれる。そういうふうにひとつやっていただきたいと思います。  これはもう意見だけにしておいて、十五カ月予算質問に入りたいと思うのです。もちろん中心はもう五十三年度予算になりますが、これは後刻機会もありますし、同僚、先輩の各議員から本格的な質疑が行われると思いますので、私はポイントだけを、主として批判と要望を中心にやってみたいと思うのです。  まず第一、問題になっております五十三年度の経済成長率ですが、この達成が果たして可能なのかどうか、これはいま私は、前段の質問の中でも触れました。しかし、もう一度これは触れます。しかし、その前に、どうもむずかしいんではなかろうかということの私たちの根拠になっておるものの一つに、七%という決まり方がどうもおかしい、この成長率、目標自体の決まり方がどうもおかしい、こんな形で決まったのだからうまくいくはずがない、達成できるはずがない、こういう批判点があるんですよ。そこで、この決まり方、経過をひとつただしておきたいと思うのです。  最初経済企画庁を中心に事務レベルの会議で詰めた段階では、仕事の裏づけを持った具体的な数字として出されたものは五・八%だったと言われておりますが、間違いがあったら訂正していただきたいと思います。
  24. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 私が就任いたしましてからのことについて申し上げますけれども、就任と同時に、大蔵大臣と御一緒に、五十三年度の財政をどのようにされるかということを、基本的なお打ち合わせをいたしまして、基本的なラインとして、ただいま編成の結果あらわれましたようなラインを確認いたしましたので、それであれば相当の公共投資というものは見込める、そういうことで事務当局間の作業を始めさせました。ただいま言われました五・何%というような数字はその段階ではございませんで、六%以上の成長を確認できる、こういうのが作業の初めでございました。
  25. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 明確な数字はお答えになりませんが、とにかくその辺以下であることは間違いない。ずっと仕事の裏づけを持った数字としてはせいぜい五%台。そこで、あなたや河本さんやそれから村山さんあたり、三閣僚がおそろいになって討議をした段階から、相談を始めた段階から、これが、政治的な討議になるのは当然ですけれども、だんだん引き上げられていって、五・八から六・七になった。五十二年度と同じ目標に大体首をそろえた。それでもまだまだというわけで、牛場さんがアメリカから声をかけたかどうか知りませんけれども、七%というのがびゅっと飛び出してきた。政治的な決断、こういう形で七%に引き上がっていったという経過をたどっていることは、これまた間違いございませんね。
  26. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 三大臣が討議をいたしました段階では六・七、八%ということでありました。それにかんがみまして、投資減税でありますとか、あるいは電源の立地対策でありますとか、さらに、その段階では国債の発行をどのぐらいにするかということが未定でございました。いわゆる昭和五十四年の五月の歳入を取り込むということまではわかっておりましたけれども、国債発行限度額は未定でございました。その上にただいまのような施策考えることによって七%という作業仮説を置くことは無理ではない、こう私へ判断をいたしまして、財政当局及び経済企画庁に対して、税収の見積もりあるいは国債の発行等々をそういう作業仮説の上でやってもらいたいということを申しまして、結果といたしまして、この作業仮説は事実上の成長目標として設定することができる、こういうことで七%程度という決定をいたしたわけでございます。  この間、たまたま牛場国務大臣が米国で日米間の折衝をしておられました。この七%という作業が、米国における日米間の問題の折衝の最後の段階でちょうど間に合いましたことは、私はよかったことであると考えておりますけれども、それに間に合わせようという意識は私は持っておりませんで、大蔵事務当局を中心に年内編成をするとすれば、もうきょうあすのうちには作業仮説を設定してくれなければできないということでございましたので、設定をいたしましたようなわけでございます。
  27. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 経過だけははっきりしてきました。とにかく、主として事務的に仕事の量というものを詰めていって出された数字はせいぜい五%程度、それが最終的に七%というものまでにぐんと引き上げられたのは政治的な判断、決断。お互いに政治家ですから、そのこと自体、私はとやかく言うつもりはございません。後できちっとつじつまが合えばいいわけです。そこに無理がなければいいわけです。無理があるかどうかはこれからやります。  問題は、この肝心かなめの政治的な決断をどなたがなさったかということなんです。これがかぎなんです。福田総理がみずからなさったとは思えないのですよ。ここがかぎなんですよ。それまでの大蔵省中心の予算編成を見ておりますと、これは福田流です。非常に地道です。財政再建というものにウエートを置いて、各省庁の概算要求もできるだけ低く抑えて、あなたのペースで進められております。それが突如、七%というのがぼっと政治的決断とやらで決まった。それで合わせなければいかぬというので、大蔵省はどろなわ予算編成になっちゃったのですよ。あなたがきちっと、大蔵大臣も経済企画庁長官も完全にコントロールしておれば、こんな混乱は招かなかったと私は思う。そうじゃないのですか。  いま宮澤さんも、自分の責任で七%というものを押さえたようにおっしゃっておられます。私たちは、黒字減らしの外圧、それから長期不況に耐えかねた財界からの内圧、そういうものをいろいろ勘案して政治的に決まったと思うのですが、何度も言うように、政治的に決まったこと自体はとやかく言いません。だれのイニシアで決まったのか。そして、その無理はなかったのか。無理があったのです。どろなわ予算編成になったのだから。さあ大変だ、公共事業をもっとふやせ、何か仕事はないか、何でもいい、景気刺激に結びつくという名目さえ立つならみんな予算をひっつけてしまう。こんなことで実効が上がりますか。期待できますか。  二つの問題ですよ。だれのイニシアで行われたのか。あなたのイニシアで行われたというなら、私は明確に政策転換だと思います。あなたのイニシアでなかったというならば全くおかしい。責任回避だ。しかも、もう一つの問題は、突如決まっちゃったものだから、大混乱で、予算の編成に当たって一番考えなくちゃならない、重視しなくちゃならない効率化なんというのはどこかへ吹っ飛んじゃった。私に言わせれば、こんなことで大蔵省を預かる者が黙っている方が不思議ですよ。責任は全うできません、ただの一人もそんな声が出てこない。一体日本の将来をどう考えているのだ、こういう問題もある。いかがです。総理大臣。
  28. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 総理がお答えになる前に大蔵大臣としてお答え申し上げます。  大蔵省が、従来財政節度を重んずるという立場であったのだが、政治的に急に積極予算を組んで、そして予算編成の方針が変わったのではないか、こういうお尋ねでございますが、事実はそうではございません。  私が就任いたしましてから一番心配いたしましたのは、やはり現在の自由主義経済のもとにおきまして、なるほど、成長はかなりいいところに行っているわけでございます。御承知のように世界で最も高い水準にあると思います。下方修正はいたしましたけれども。しかし、中身を見てみますと、本来自由主義経済であるのだが、民間の需要が伸びてこない。これをいつまでもやっておったら大変だという認識が、もう私には最初にあったわけでございます。そして、できるだけ早く安定経済成長への路線に乗せる、そのことは、つまり、民間企業に活力をつけ、そしてまた、民間のメカニズムを通じまして設備投資意欲が、急には起きてはこないでしょうが、その手がかりをつくる、また、民間企業の収益の回復を通じまして雇用がオーソドックスの形で増大していく、あるいは企業の収益が回復していくということが最大の私の課題だったわけでございます。  そういう意味で、私は、円高の影響もあり、思い切ってこの際は、財政節度という問題もありますけれども、財政節度を思うなら、今年度はむしろ逆に経済成長あるいはミクロに力をつけるという方向に急速に行くべきである、それが長い目で見まして財政節度を保つ最大のゆえんだろうと思ったわけでございます。そういう意味で、私の方で実は、経済企画庁長官の要請を待つまでもなく、どれくらい一体ことしは公債の消化ができるであろうか、そこからスタートしたわけでございます。そしてまた、当然のことでございますが、消化能力にはおのずから限度がございます。したがって、景気浮揚に最も適しております公共投資、四条国債の方をできるだけ多く発行するということは当然のことだろうと思うのでございます。その反面といたしまして、経常経費を賄う特例公債は、また経常経費そのものはできるだけ圧縮していくということはやむを得ないことであろう、こういう考えに従いまして、後ほど申し述べます五月分の税収を取り込んだということも、言いかえますれば、地方税対策もありますけれども、結局は公共債の消化に限度がありますから、それをできるだけ多くするためにやったわけでございます。  で、私はそういうことを考えましたが、一方、反面におきまして、過去六、七回の景気変動がございます。従来の経験を見ておりますと、引き締めのときにいたしましても景気浮揚のときにいたしましても、なかなか初めは効いてこないのが実情でございまして、一年あるいは一年半ぐらいたって徐々に効いてくる。効いてくると加速度がかかることは御承知のとおりでございます。  確かに私たちが、少なくとも私が非常に心配いたしましたのは、あれだけの公共投資を五十二年度でつけながら、なおどうして民間の需要が出てこないのであろうか。言いかえますならば、私は完全に過剰在庫が最大の原因だと思うのでございます。特に素材関係における過剰在庫の問題、あるいは四十八年のあのピーク時以降の日本における設備投資というものが非常に大きかっただけに、それが大きな問題になったと思うのでございます。しかし、これは後ほど適当な機会に経済企画庁長官から御説明があるかと思いますけれども、私たちが見ておりましても、十一月にはすでに製品在庫率指数が約五ポイント下がりまして、一二九・九から一挙に一二五・一に下がっているのでございます。私は、もうそろそろ効いてきていると思うのでございます。  そしてまた、生産指数もかつてのピークは四十八年の十一月でございました。しかし、その後五年ばかりたちましたが、生産の状況はこのピークを超すことはなかったです。しかし、十一月にはすでにこのピークを指数が超しているのでございます。私は、もう一息だ、それをできるだけ早く回復することがいま財政に与えられた任務だ、かように考えまして、そして経常部門と投資部門を分け、ただいま言ったような観点からいたしまして、できるだけ急速に公共投資をふやすことによって早く安定軌道への回復を求めようとしたのでございまして、先ほどお話がございましたように、政治的混乱とか、あるいはごたごたしたことで大蔵省が無理やりに編成させられたということは事実に反しておりますので、その点だけ明確に申し上げておきます。
  29. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 そんなことを村山さんいまおっしゃったって、だれも信用しませんよ。新聞、ラジオ、テレビ、みんな見たり聞いたりして知っておりますよ、どんな予算編成が行われたか。ごまかしをしちゃいかぬと言うのです。あなた、まだ官僚根性抜けませんよ。そんなことをおっしゃるなら、十月の十二日、この予算委員会で総理はどんな答弁しておりますか。七%などという成長率を頭のすみっこのどこかに置いておったような発言していますか、国債発行の問題に関連して。七%の成長率を期して公共事業をうんとふやそうと思ったら国債をうんと増発しなければならぬというぐらいは、経済福田ならずとも、われわれ素人でもわかる。肝心の国債のことについてどんな見解をこの予算委員会で述べておりましたか、十月十二日。  読んでみましょうか。「いま財政が三〇%公債に依存をしておる、そういう形で動いておる、これは非常に不健全な形じゃないかと思うのです。先進諸国の中でも、そんな国はどこを探したってありはしません。」「この状態を放置しておきますと、財政は社会経済を支える一部にすぎませんけれども、その一部から社会経済の崩壊ということにつながってこないとも限らぬ、そのことを心配しておるのです。」「私は、これは非常に神経質に考えていかなければならぬ問題であるというふうに考えます。」賛成ですよ、私も。十月十二日と言えば、予算編成の中でどの辺に位置づけられるのです。  総理大臣、この時点でこれほど明確に意見を述べているのに、あなたがもっと早くから決まっておったようなインチキをおっしゃったらだめですよ。国会審議の権威のためにも、そんなことは許しませんよ。とにかく、一貫性というものが少しもない、指導性というものも全く発揮されない。こんなうやむやな形で七%というものが決まって、どさくさ紛れのような形で、効率もへったくれもない水ぶくれ予算が五十三年度予算、私はこう断定せざるを得ないのです。まず、その七%というものが決まった経過から言って、先が思いやられる、こう思うのが当然じゃないでしょうか。現に、七%成長が可能かどうか、可能だと言っているのは政府だけです。政府も全部ではなさそうですかね。民間はもう挙げて、とてもじゃない、そんな数字はもってのほかだ。これは予算編成が確定する前からのもののようですけれども、私ずっと調べてみましたが、一番高い成長率を見込んでおるものでも、せいぜい五%台です。四%が普通です。しかも、これは一兆円減税というものを見込んだ上での数字というのが、これまた否定できない事実です。もう時間がありませんから、どこがどういう数字を出しているなんということは申しませんが、みんなまゆにつばをつけて七%という数字を見ているということは否定できません。  私はいま、政府間の中ですら信じていない者がおるんじゃないかと申しましたが、新聞の報ずるところによりますと、大蔵省のある幹部すら、壮大なかけと評したそうです。まあ言い得て妙と言えぬこともありません。まさに壮大なかけ。しかし、当たるも当たらぬもなんという、そんな根性でやられちゃかないませんよ。かけには間違いないけれども、あなたの政治生命をかけてやらなければならぬ、かけならば。私はそういう意味で、言い得て妙と言いたいのです。そんな自信があなた自身にございますか。どうも、あなた自身もないんじゃないか。だから、ちょっと引っ込んでおいて、おい、しばらく経済企画庁長官、通産大臣、よきにはからえ、宮澤、河本頼むぞと言ってちょいと身をひそめているというかっこうにも見えるのですよ。根拠なしに言っているのじゃないのです。国際的公約かどうかというこの問題から、私はそういう疑いを持たざるを得ないのです。国際的公約じゃないと一生懸命逃げ回っている。自信があるなら、国の内外におれは約束したんだ、断じてやる、なぜこの気魄を示さない。アメリカとの共同声明の中でもはっきり約束しているじゃないですか。  私はここで言いたいのは、本年度、五十二年度の六・七%は国際的公約である、あなたは認めたことがある。何で、今度七%になったら、国際的公約じゃないと言い張るのですか。自信のなさのあらわれじゃないんですか、お伺いいたします。
  30. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 まず、この予算の編成の経過について石橋さんはどうも正しい認識を持っておらぬようだから、経過を率直に申し上げますが、これは何の特別な施策を講じなければ、さあ五十三年度はどういうふうになるだろうかという検討がまずあるわけですよ。その段階で五%とかなんとかと、試算はいろいろ出てくる。それはそれとして、しかし、五十三年ということを展望しますと、これは円高の影響等もあり、なかなか深刻な状態だ。これをどういうふうにさばいていくかということになると、財政が主導的な役割りを演じなければならぬ、こういうことに意識の統一がされまして、そして大蔵大臣から私のところに、こういう予算ですと報告があった。それが六・七%です。六・七%成長。そういう際には、公債は常のごとくはいきません、これだけの大幅な、三〇%を大幅に超える公債を発行しなければなりません、しかし、これだけのことをやれば、六・七%成長は間違いなく実現できますよ、こういう報告です。  そういう報告を受けて、なお企画庁長官から同様な話がありまして、こんな程度でしょうかと言うから、私は、さあ、いろいろ考えると、六・七という中途半端なことよりは、この際一挙に七%ということでいくことはできないものだろうか、大蔵大臣等とも相談してもらいたい。こういうことで四大臣の相談になりまして、そういうふうに決まり、それに従いまして、大蔵大臣から報告のありました財政の計画、これを修正増額をする、こういうことにいたしまして七%ということになったので、何か疑義を差しはさむような余地のちっともない、公明正大な形で決定になったということを申し上げます。  それから国際公約ということは、国際公約、公約という言葉に私はこだわるのです。公約というと、よその国に約束をしたのじゃないか、こういう印象になってくる。ことに日米交渉が行われているそういう過程での問題ですから、アメリカに押しつけられたとか、そういうような形で、これがアメリカに対する約束になったのだというような印象を与えるおそれがある。わが国は主権国家である。しかも主権という中で経済をどういうふうに運営していくか、その中で成長率、これは大変大事な問題だ。  私は、ここで経過を率直に申し上げておきますが、十一月の段階でアメリカの代表が私のところへ参りまして、そして、来年の日本経済は何%にしてもらいたいというようなことを言いかけたのですよ。私は、それはちょっと待った、来年の経済成長を何%にする、かようなことはわが国自体の決める問題だ、しかもこのむずかしい状態の中で何%にするかなんというのは、私自身としてもこれはなかなか決定のむずかしい問題だ、それをよその人が外の方から見て、そうして何%なんという議論はしてもらいたくないのだ、そんな議論をすることは国際社会の中でまことに奇異な感じを与える問題だという話をして、自来、アメリカはわが国成長論議というものを引っ込めたのですが、しかし、私が、七%成長という決定になったその後で、七%成長というのは国際公約だなんて言ったら、さあ見たことか、アメリカとのあの交渉で約束したんじゃないか、こういうようなことになる。これは事実とまた違うし、まあ石橋さんが仮に内閣総理大臣となられても、この大事な内政のかなめであるところの成長率を他国に対して約束するなんという、そんな不見識なことはしないと思う。それを私は、疑義をはさむというようなことになったのじゃ困るものですから、公約という言葉は避けるわけです。しかし、七%程度の成長ということは内外が期待しているのですから、これは政府が責任を持って全力を傾倒する、こういう考えであります。
  31. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 あなたが国際的公約と認めようと認めまいと、各国がすでに公約と受け取っておることは否定できないのですよ。単なる政策目標だったとしても、内閣が決めて、アメリカとの間で共同声明を取り交わしている。言うまでもないことですけれども、日本は七八年度七%成長を達成するため、合理的かつ適切な措置を講じる、こういう約束をしておる。そういう事実のある際に、わざわざ、最高責任者のあなたが言いわけがましい発言をするから問題になったんですよ。  そうすると、国際公約ともいうべき七%と言うならいいのですか。念を押しておきます。
  32. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 国際社会で大いに期待しておる七%程度の成長、こういうことで結構であります。
  33. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 私がわざわざいま言ったのは、意味のないことじゃないのですよ。あなた、自分がおっしゃった言葉だから、よもや忘れてはおらぬと思いますが、去年の十月六日、そんな昔じゃございません、この衆議院の本会議において答弁しておられるんです。官報をお持ちの方は四十ページを開いてください。「国際的公約ともいうべき六・七%を実現する、」こう言っているじゃありませんか。五十二年度の六・七%は国際的公約ともいうべきもの、今度の七%はそういう表現も困る、どうしてその差が出てくるかと私は聞いているんですよ。私は裏づけを持って聞いているんですよ。単なる表現として聞いているんじゃありません。これは間違いなく、あなたの言葉です。それも昔の話じゃない。去年の十月六日の衆議院本会議のあなたの答弁です。いかがです。
  34. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 その辺、私も注意深く申し上げているのですが、公約とも申すべき、こういうことで、公約と言っているわけじゃない。ことに今度の成長率七%程度ということは、あの日米交渉のさなかに打ち出されておるわけなんですよ。それで何かアメリカに対して、圧力をかけられてこういう約束をしたんだという印象になったのじゃ、これは私も困りますから、そこを厳しく分けて申し上げておる。  それから共同声明も、共同声明でありましで、アメリカとの間に合意したのは何かと言うと、インフレのない成長をお互いにひとつやろうということで合意した。これに関連してわが国の方からは、来年は七%成長を中心として経済運営をする、アメリカの方ではこれこれの政策をやるのだ、こういうふうにお互いに政策を述べ合っただけの話でありまして、合意いたしましたのは何だと言うと、お互いにインフレのない成長を実現をする、こういうことになっておるわけです。  私は言葉じりにこだわるわけじゃありませんけれども、とにかく公約といいますと、アメリカとの交渉のあるさなかのあの七%でございまするものですから、これはアメリカの圧力で、アメリカの主導のもとに決めたんだというような印象になってくるおそれがある。そうじゃないのです。わが国の主権的立場において決めたのだということを明瞭にする、こういう趣旨であります。
  35. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 十月六日というのは、自民党の久保田議員、久保田円次さんの質問に対する答弁なんですよ。「わが日本の責任は非常に大きい。その大きな責任を尽くしていかなければならぬと思いまするけれども、その責任を尽くす方途というものは、やはり成長政策というか、国際的公約ともいうべき六・七%を実現する、」こう言っているんです。だから、ともいうべきならいいんですかと私聞いたら、それもほかの表現に変えられるから、そういう態度ではあなたの決意が疑われます。疑われたら、こんな、どだい、だれが考えても無理だというような目標の達成は、もうそれだけで実行不可能でございます。言葉の問題じゃないのです。大切なポイントなんです。七%達成が可能か不可能かという場合の。経済は、特に専門家のあなたに私が、素人が言うまでもないことですけれども、心理的な要因というものが非常に大きなウエートを持つのですよ。あなたが逃げ回るような印象を、この言葉表現一つを取り上げて、そうじゃないんだ、ああだこうだなんて言っておれば、その決意が疑われる、信頼をかち取ることができない、そういう意味で、単なる表現の問題ではない、こう私は申し上げているのです。そうすると、去年と同じように国際的公約ともいうべき七%と言うならよろしいと言うから、そういうふうに受け取っておきましょう。私は、国際的公約と、ともいうべきと、どう違うのかよくわかりませんがね。  そこで、ちょっとお尋ねしておきたいのは、七%成長が達成されたら日本失業者は減りますか、失業率は改善できますか。これは経済企画庁長官ですか。
  36. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 やはり、五十三年度という単年度について考えますと、企業の抱えております遊休労働力がかなり生産的に稼働するであろうということ、及び若干の新規参入を消化できることは確かでございますけれども、総体における完全失業者の数となりますと、減りましても五万程度ではないか。つまり、単年度に関します限り完全失業者の数に大きな改善は見られない、こう考えております。
  37. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 率直なお答えをいただいたわけですが、大変至難な七%という目標を達成しても失業者は減らない。したがって失業率も改善されない。そのことは、達成されなかったら一体どういうことになるだろうか、想像に余りあるものがあるのです。まさに、異常な決意で取り組まなければならない問題だということは、その一点からだけでもわかるような気が私はするわけですよ。  次は、七%成長が達成できないような場合には、経常収支幅を六十億ドルの黒字にまで縮小するということも同時に困難、このこともお認めになりますね。
  38. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 達成されない場合のいろいろな形があろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、両方は密接に連関をしておる要素でございますから、傾向として、石橋委員の言われるようなことは、私はそのとおりであろうと考えます。
  39. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 したがって、七%が達成されないという段階では経常収支の黒字の縮小ということもむずかしい。そうすると、私が何度も指摘しておりますように、五十二年度と同様に、またもや円高という大変な危機に見舞われるおそれもある、これもお認めになりますか。
  40. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 円の将来につきましてとやかく申しますことは適当なことでないと考えますので、それについては申し上げませんが、七%達成を責任を持って最善を尽くしまして、そうして経常収支の幅をできるだけ小さくしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  41. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 とにかく、一つ一つ検討していくと大変なことです。いま日本が置かれておる、日本経済が置かれておる、そしてわれわれが置かれておる立場というものは非常に苦渋に満ちた時期というふうにとらえなければならぬと思うのです。したがって、総理の一言一句、やはり注目されるわけでございますし、ひとつ慎重に対処していただきたい。しかし、何よりも異常な決意を持って臨んでいただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  そこで、今度は七%が果たして達成されるのだろうかという観点に移りたいと思うのですが、去年も結局、大体在庫調整に終わってしまった、ことしも二の舞になるのじゃなかろうか、公共事業というものがこれだけ水ぶくれでつくられておるけれども、果たして消化できるものだろうか、不安は尽きません。さっきから申し上げているように、本格的な論議は今後行われますから、一点だけお尋ねしておきます。  この空前ともいうべき公共事業予算、消化できるのですか。抽象的にではなく、裏づけとなる土地の取得、資材の確保、労働力の確保、設計技術者の確保、地方自治体の受け入れ体制、すべての条件をこういうふうにつぶしてあるから必ず今度は消化できる、日本列島改造予算の二の舞はしない、こういうふうに、だれでもわかるようにひとつお答えを願いたいと思います。なるべく簡単にしてください、要点をよくまとめて。
  42. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いま四つのことを考えて、完全消化に全力を挙げておるところでございます。  その一つは、第二次補正予算並びに本予算をできるだけ早く上げていただくということをぜひお願い申し上げたいのでございます。  第二番目は、支出負担行為の承認、これを速やかにやりたいと思っております。  それから第三番目は、補助金の交付の決定並びにその手続の簡素化、こういったものをどんどん進めてまいりたいと思います。  それから第四番目には、途中の執行におきまして、私は、全体的には物価はそう上がるとはいまの状況から考えておりませんが、部分的にあるいは時期的に、やはり資材の問題あるいは労務の問題、土地の問題等が起きないとは限りませんので、関係省庁でその点を十分に連絡してもらいたい。  最後に、補助事業について申し上げますと、地方団体が公共事業の約七割を実施するわけでございます。したがいまして、地方団体の方の受け入れ体制を万全に整えていただく。そのために、いま財政的ないろいろな手段を講じておりますとともに、早く県会その他市会を開いていただくよう自治大臣からいまお願いしておるところでございます。できれば二、三カ月ぐらい早く、予算が成立すると同時に、早期設計、それから早期着手、契約、こういうものをやりまして、私は、それをやれば完全消化も不可能ではない、かように思っておるわけでございまして、いま関係省庁を通じまして、せっかくその努力を図っておるところでございます。  結論として申し上げますと、完全消化を全力を挙げてやりますから、どうぞひとつ皆さんも見守っていただきたいと思うわけでございます。
  43. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 これはさっき申し上げたように、本予算の方で予算案の審議の際に徹底的にやっていただきますが、仮に公共事業が一〇〇%消化されたとしても高度経済成長時代のようにいくものだろうか、一の投資が二倍近い波及効果を持つなんていうことが期待できるものだろうか、総需要の中で占めておるシェアというものが非常に小さくなっているわけですから。私たちは基本的にそういう疑問を持っております。しかし、それはいま申し上げたように、おきます。  そこで一点だけ。先ほどから問題にいたしました新しい設備投資の方にまではとても民間は余裕がないので、現在の操業率を高める、在庫を一掃する、そこでとどまってしまうのじゃなかろうかという不安、このことを知るために、まず第一に、現在の需給ギャップというものをどういうふうに押さえておるのか、操業率はどの程度、このこともあわせてひとつ御説明願いたいと思います。
  44. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ただいまの稼働率指数は、九月、十月あたりで申し上げますと八四、五でございます。これは実際の稼働率といたしましてはほぼ九掛けの稼働率とお考えいただいて間違いなかろうと思いますが、十一月になりまして八八という数字が出ておりまして、一これはしかし、多少分析を要するのではないか、ちょっと高過ぎるのではないかという感じもいたしますが、ともかく九月、十月、八四、五でございました。それで、私どもはそれを大体昭和五十四年の三月ごろには九二ぐらいに稼働指数として持っていきたい、持っていけるのではないか、こう考えております。したがいまして、電力等を除きますと、いわゆる製造業の新規の設備投資に多くの期待をこの単年度中にすることは困難である、そのように考えております。
  45. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 まあ八五前後というのが常識のようでございますけれども、どうもそういう現状に置かれているだけに、不安は去らないわけです。  経済同友会自体が、来年度予算規模を三十五兆円程度に拡大して、公定歩合をさらに一段と引き下げても、ちょっと民間設備投資・個人消費の冷え込み、さらに公共事業の執行能力上の問題などがあって、悲観的に見ざるを得ないというようなことを言っていますね。私も、どうしてもそういった不安材料を重視せざるを得ないわけですが、これもあわせて本予算の審議にゆだねたいと思います。  そこで、次に問題を移したいと思うのですが、住宅というものに非常に力を入れていただいていること、これは賛成です。詳しいことは、もう時間がありませんし、本予算の審議の際にゆだねます。言いたいのは、果たして金融措置、これだけで住宅の拡大がどんどんできるというようなことが期待できるのかどうか。もっと公共賃貸住宅というものに重点を置くべきじゃないか。それはわかっているけれども、問題は土地問題なんだ。個人住宅だって土地問題ですよ。住宅問題は土地問題と言ってもいいほどなんです。この土地問題、ちっとも解決されていません。これが解決されないで、住宅金融公庫の融資枠を広げてみたところで、利子をどうしてみたところで、私は家が建つとは思えない。現に、五百五十万戸というもので飽和状態だと、民間の金融機関が発表しているところもある。この土地問題ということと結びつけて何かいますぐやれるものはなかろうか、そういう観点でもっと真剣に考えなければ、幾ら住宅住宅と言っても私は本気にできない。  この一番のネックになっている土地問題を解決する方法があるんじゃないですか。一つの案として、国鉄用地というものをもっと活用できないのですか。とりあえずはここに重点を置く、そういう方法がどうして生まれてこないのですか。なわ張り根性ですか。これができれば肝心の宅地の確保ができる。しかも、国鉄の持っておる土地というものは非常に至便なところにございますから、交通事情の緩和にもつながる、職住近接という目的も果たされる、通勤時間もうんと短縮される、混雑緩和という役割りも果たす。それから、国鉄自体の赤字解消にもなるじゃないですか。一緒に商売やればいいのですよ。それぞれの役所がなわ張りを主張し合っておるから、こういうアイデアが出てこないんじゃないんですか。  どうです。総理、そういうときにこそあなたが主導権を発揮して、住宅を本気でやる、国鉄の所有地の活用も早急にやる、そういう決意をここでお述べになって、ちっとは本気だなと国民に信用させたらどうです。いかがですか。
  46. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 この住宅問題はすなわち土地問題であるというぐらいに考えておりますが、国鉄の問題につきまして、私は企画庁長官のとき、これの活用ということをかなり掘り下げて調べたことがあるのです。しかし、結論としては、木造の平家建てとか二階建てとかそういうようなものがかなりあるので、それを高層化するとかそういうようなことは考えられるが、その他の部面で考えることがなかなかむずかしい。土地はあるのですけれども、国鉄の用地で利用すべきものがあるのですけれども、これを住宅として活用する、これがなかなかむずかしい、こういう結論であったことを覚えておりますが、この問題はまた、住宅、それにまつわる土地の問題が非常に深刻になってきた、こういう際において再検討してしかるべき問題であろう、かように考えます。
  47. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 経済企画庁長官のときにちょっとさわってみたことがある、あなたはさわってすぐやめるからだめなんですよ。運輸大臣にひとつ決意のほどをお聞きしておきましょう。
  48. 福永国務大臣(福永健司)

    ○福永国務大臣 国鉄財政が危機的な状況にあることは、私も深く認識いたしております。現在、国鉄の用地として六万七千四百ヘクタールを持っておりますが、そのうちの三%ばかり、約二千ヘクタールは事業の用に供していない、これが現状でございます。先ほどお話のありましたごとく、こういうものを住宅の用途に供するというようなことは、国鉄のためにもよいし、国民の住宅建設のためにもよいというお話、私全く同感でございます。  そこで、なわ張り云々というような話もございましたが、少なくとも福永健司運輸大臣である限り、私の所管に属するものではそういうことを絶対させないつもりでございます。  そこで、すでに、たとえば東京では亀有、それから北海道では札幌郊外等で、住宅公団と話し合いをさせている部分がございます。恐らく私は、これは順調に進捗するものであることを確信するし、ぜひそうさせたいと考えております。  ただいまの御説のような考え方で、私の関係のところは、ぜひ赤字の王様としての国鉄というようなイメージを去って、真に国民から愛され信頼される国鉄にするよう、鋭意努力いたしたいと存じます。
  49. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 住宅公団がべらぼうに高い土地を買うなどということを考えたら、これはずいぶん有利な話だと思います。運輸大臣も相当の決意をもって臨まれるようですから、どんどん進めていただくことを期待して、もう一つ、住宅公団等が持っております住宅の中に、建てたは建てたけれども、空き家でほっぽらかしているというのがずいぶんあるんですね。こんなばかなことがどうして許されるんですか。遠いから、狭いから、家賃が高いから、こういうようなことで言われておりますが、ほっておくことの方が私は問題だと思いますよ。そんなことは最初からわかっているのに建てたんでしょう。大変な数ですね、これ、ちょっと私、資料を見てみましたら。この首都圏を見ただけでも、住宅公団関係で多摩ニュータウンなどを中心に一万四千五百二十二戸、建設費一千四百七十九億四千九百四万円、公社住宅など一千三百二十二戸、建設費百六十九億九千十六万円、埼玉、千葉などの十道県の公営住宅二千百五十三真建設費百五億五千百十五万円。以上のほか、公団住宅で、住宅の用に供することができないまま保守管理されている未募集の新築住宅の状況一万七千五行三十二戸 一千四百三十八億五千四百万円。  これはどういうことですか。こういう状態を知っておきながら何も感じませんか、政治家として。どんな理由があろうとも、こんなものをほっといて、住宅に力を入れます。白々しいと私は言いたい。どうです。この際思い切って福祉住宅にでも使ったらどうです。家賃補助しなさい。そうしてお年寄りや母子世帯や体の不自由な人たち、そういう人たちを入居させて、福祉住宅として生かしたらどうです。空き家にして家賃取らぬよりもいいでしょう。このアイデアについてはいかがですか。
  50. 櫻内国務大臣(櫻内義雄)

    ○櫻内国務大臣 ただいま御指摘のような工夫は私としてもすべきものであると思います。住宅公団の総裁も新任早々でございまして、十分いまのような御意見を踏まえて仕事をするにつきまして余裕がない点もあろうかと思いますが、私としては、いまのような御意見は早速に総裁の方にも伝えたいと思います。  しかし、現実に未利用住宅、空き家があるのでありまして、これについて公団自体がどう対処しておるかと申しますと、残っておるものが、大体は社会経済的情勢の変化に対応し得ないような住宅の状況にある。たとえば二DKのような狭いものである。したがって、これを二つ合わせて要請にこたえるようなものにしよう、そういう努力はしておるようでございます。  そこで、いまお尋ねの、これを福祉住宅にせよという点につきましては、これはちょっと法的規制の上から、これをたとえば東京都に渡してお話のような方々の住居に供するという場合に、一体、現行制度で補助金等が出せるかというと、それはいま制度上むずかしい点があるわけでございます。そういう点は私としても、せっかくの御意見がございましたから、十分検討させていただきたいと思います。
  51. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 私は、新築空き家と未募集の空き家について指摘したわけですが、そのほかにも、すでに発注はしたけれども、竣工はしてないけれども、空き家になるおそれのあるものもずいぶんあるそうです。五十一年度の決算を見ましても、これらの空き家に投じておる管理経費が八億円、それから金利相当額が四十七億円、収入減が六十六億円と言われているのです。放置する手はありませんよ。現行法規にどうしても支障があるというならば、それを直してでも手を打つのが政治家の務めだと私は思います。福田内閣としては建設大臣を中心に、ぜひ福祉住宅として活用できるように、そういう実績を踏まえた上で住宅対策には全力を尽くしますというふうに言っていただきたい。できたものをほっておいて、住宅住宅と念仏唱えたってだめです。  次は、個人消費の問題です。  政府の五十三年度経済見通しを見ますと、個人消費に非常に期待は持っているわけですね。結局、GNPの伸びと個人消費の伸びと、この経済見通しで私調べてみましたら、大体半分ぐらいはやはり個人消費の伸びに期待している。一体そんなに個人消費が伸びるのだろうか。賃金はなるべく抑える、公共料金は引き上げる。いま住宅の話をしましたが、今度は公団住宅の家賃も引き上げるというので非常に問題になっておる。ここで片づけておいてもいいわけですけれども、これだけ居住者の皆さんが真剣に値上げの問題に関心を持っておられる、そういうときに、そういう意見もろくに聞かず、国会の意見も十分に聞かずに、今月中にとにかく値上げを認可してしまうなどというむちゃなことは、建設大臣、よもやおやりにならないでしょうね。そのことをまず先にお尋ねいたします。
  52. 櫻内国務大臣(櫻内義雄)

    ○櫻内国務大臣 先般、建設委員会を衆議院側でお開きいただきまして、いろいろ御意見もちょうだいしました。なお、参議院の方におきましては月を越してからの予定でございまして、ただいまお尋ねの、今月中にどうか、そういうことは考えておりません。慎重に御意見を徴して最後に私が判断をいたしたい、こう思っております。
  53. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 ぜひ実行していただきたいと思います。敷金を三倍にするなんというのも極秘のうちにやるなんという、そんな態度はぜひ改めさせるようにしていただきたいと思うのです。  とにかく、賃金は抑える、公共料金は引き上げる、福祉水準も引き下げる、所得税減税はやらぬ、こんなことで個人消費の伸びが十二兆七千億円も期待できるのだろうか、ここにまた大きな疑問があるわけですが、これも本論は五十三年度の本予算案の審議のときにゆだねます。  関連して、福祉年金の引き上げをぜひやっていただきたい。これは本会議におきましてもわが党の代表から要請したわけですが、そのことと関連してひとつお考え願えないだろうかという問題が一つあるのです。それは軍歴十二年以上の人は軍人恩給の支給対象になっているわけですが、それ以下の人たちはほんの一時金で打ち切られておる、何の恩典にも、浴さない。こういう人たちのいわば軍歴の公的年金への加算、こういうことも一つの、いま不公平是正という一環で考えてやらなければならぬ問題じゃないかと思いますけれども、検討していただけるかどうか、これは総理府長官ですか、お答え願いたいと思います。
  54. 稻村国務大臣(稻村佐近四郎)

    ○稻村国務大臣 軍歴三年以上につきましては一時恩給が支給されておるわけでありますが、三年未満につきましては来年度から新しい一つの予算が組み立てられております。それは、たとえば二年軍役に服務いたしまして、その後休職いたしておりましてまた一年復帰をしたという場合においては、過去においてはそういう例はなかったのでございますが、来年度から新しい予算で、これも通算三年ということで一時恩給を支給するということになっております。ただし、三年未満については、これはいろいろ厚生省等との関係もあると思いますが、総理府としてはなかなかむずかしい問題であるということを御報告を申し上げておきたいと思います。
  55. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 とにかく、この福祉という問題にもっと重点を置いて、同じ公共事業でも福祉関係のものに重点を置く、こういう発想が根底にあってしかるべきだと私は思うのですよ。これも本予算の審議の方にゆだねます。  一番肝心の所得税減税というものを断行しなさい。公共事業に余り過重に期待を持つことは、同じ過ちを繰り返すゆえんですよ。この問題も本予算の審議にゆだねたいと私は思うのです。  そこで、さっきちょっと触れましたが、成長率七%というものを達成するということも大切だが、より大切なのは、しかも諸外国が一番関心を持っておるのは、経常収支の黒字を六十億ドルに縮小することだ、成長率七%というのはこの六十億ドルにするための手段だ、牛場さん、そう言っておられる。それくらい割り切っておられる。そうしますと、七%達成のために全力を尽くす、そのためには国内の需要の喚起を図る、それにすべてを一すべてということはないでしょうけれども、それがかぎだと言ってしまわないで――大蔵省あたりは言うわけです。公共事業中心の内需拡大だけではセメントや鋼材などの需要をふやすだけで、本質的な解決にならぬのじゃないかと言っても、いや、それが基本だ、こう言うのですが、私は、並行して、もっと黒字減らし独自の発想というものが出てこなければいかぬのじゃないか、こういう考え方を持っておるわけなんです。そこで、どうしてその黒字減らしをやるか、幾つかの案をここで出したいわけですが、時間の関係もありますからまとめて申しますので、ひとつ見解を述べていただきたい。  一つは、秩序ある輸出体制を確立するために一定のガイドラインを設けて、超過したものに対しては課徴金を課する。そこまで考えておく必要があるのではないか、これが一つ。  それから、開発途上国、社会主義国との貿易拡大のために政府輸出金融及び輸出保険制度の拡充を考えるべきじゃないか、これが一つ。  もう一つは、国際金融機関への出資金の大幅増額といったものを真剣に考えてみるべきじゃないか。  こういう、党としての考え方を提起いたしたいと思いますので、この点についての御見解をひとつお聞きしたいと思います。
  56. 河本国務大臣(河本敏夫)

    ○河本国務大臣 まず第一の輸出課徴金の問題でありますが、現在はそのようなことは考えておりません。ただ、一時期に一カ所に対して集中豪雨的な輸出が出るということは、これはその国に対して大きな影響がありますから、そういう場合には、行政指導によりまして、そういう事態の起こらないようによく注意していかなければならぬと考えております。  それから、輸出保険の問題でありますが、これは相手国の事情にもよりますけれども、できるだけ拡大して運用してまいりたいと考えております。
  57. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 もう一つ、大蔵省。
  58. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 お答えします。  国際機関に対する出資につきましては、日本は率先して払い込んでいるところでございまして、今後といえどもこの方針を持続してまいりたいと思っております。
  59. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 もう一つ、今度は構造不況業種の問題について。この問題が残っている限り、多少民需が起きてきても不況感というものはぬぐえない。これは福田さんもしょっちゅう述べておられることなんですね。構造不況業種の転換というものをここで本気で考えなくてはならぬのじゃないか。私もたくさん用意してきたのですが、時間がありませんから、たとえば、こういうものに対して転換したらどうだというものをやはり政治、行政の指導として示すということも考えていいのじゃないだろうか、そういう立場に立って、私いろいろと関心を持って各方面見ておりまして、これはいいんじゃないかというふうに思いますのがソーラー施設なんです。太陽熱による冷暖房装置、こういうものこそ省資源、省エネルギーという面から言っても時代に即応したものじゃないか。  そこで、政治、行政の立場から何かできるだろうか。公共施設にこれを取りつけさせる。学校を建てる、病院をつくる、研究所をつくる、老人ホームを建てる、あるいは官公庁の庁舎を建てるといったときに、冷暖房設備の予定がある部分についてはぜひこのソーラー施設をつくりなさい、融資の面でも援助しましょう、こういう具体的な指導なり援助というものがあってしかるべきじゃなかろうか。この間新聞を見ておりましたら、大分大学で今度はやったそうですね。その前に静岡県沼津市の老人ホームでもやったようです。現在はまだちょっとコスト高で、この程度の規模でしたら大体三億円程度かかるようですが、量産が進めばコストはうんと下げられるというのです。コストが下がれば個人住宅もどんどん採用していくことができるでしょう。大変な需要です。原発一つつくる、原子力発電所一つつくる思いをすれば、三億円かかったって一千のソーラー施設が完備できるのです。こういうところに目を向けるべきじゃなかろうかと思いますが、積極的に取り組んで、この不況業種の転換の一助にでも資する、そういう気持ちはないものかどうか、お尋ねしておきたいと思います。
  60. 河本国務大臣(河本敏夫)

    ○河本国務大臣 産業構造の転換ということは、いま日本の産業にとりまして最大の課題になっておるわけでありますが、それではどこに転換するかということであります。幾つか転換方向考えられますが、その一つといたしまして、いま御指摘の新エネルギーの開発利用、それから省エネルギーの開発利用、これは確かに一つの方向だと思います。政府の方でも数年前からこの新エネルギーの開発を進めておりまして、これをサンシャイン計画と呼んでおりますが、その中に太陽熱の開発利用ということがございます。これまで相当な成果をおさめておりまして、かつ民間でも、いま御指摘がございましたように、幾つか現実に建物、個人住宅等にいま利用を試みております。またアメリカなどでは、すでに御承知のように、大規模な民間住宅へのこれの活用を考えているわけでございます。  これまでの基礎的な研究段階もようやく終わりましたので、いま御指摘のように、これからは新エネルギーかつ省エネルギー、そういう面からも積極的に考えていかなければならぬ課題だと心得ますので、さらに十分研究をさせていただきたいと思います。
  61. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 本気で取り組んでいただきたいと私は言っているわけです。  時間がありませんからもう一つ。  一番心配しております。狂乱予算とも言われる原因ともなっております。国債発行高が異常にふくれ上がっているという問題です。本年度末の発行残高が四十三兆円を上回る、すべての公共債を含めると九十五、六兆円にもなるという大変な事態です。そこで、私たちが真剣に考えなくてはならないのはこの歯どめの問題です。  いままでは三〇%というものを歯どめにしてきた。一遍に吹っ飛んでしまった。中期的な財政計画をつくろう、財政収支予算をつくろう、つくったとたんにもう白紙に戻さざるを得ないような状態になってしまう。今度は経常収支の中に占める特例債の比率というものを新しい歯どめにしますなどとおっしゃっているが、一体、頭の中で描き、机の上でつくったそういう数字が歯どめになるのかどうか。結果は、ならない一はっきりしている。しかも、これは私たちが終始一貫主張してしてきたことです。国債というものは、特に赤字国債などというものは麻薬のようなものだ。一回味をしめたらちょっと断ち切ることはできないのだ。そのまま現実に数字となって、私たちの予言のとおりあらわれてきております。  そうかといって、私たちも放置するわけにいかぬ。本当の歯どめはなかろうか、私たちは私たちなりに考えざるを得ない。あなたたちの責任だと言ってほうっておいたら、悪性のインフレがやってきて、結局は国民が塗炭の苦しみを味わうのですから、そういう観点で本当の歯どめを考えているのかどうかお聞きしたいのです一党としても考えております。学者の皆さん方の意見も聞いております。その中で、これは私個人がいま関心を持っているものの一つですが、私は社会党の立場をちょっとおいてでも、いまが資本主義の世の中であるという前提で物を考えざるを得ない。そうすると、この資本主義の原理の中で、市場メカニズムの中で自然に歯どめがかかるという方法も真剣に考えざるを得ないのではないか。それは何だ。一つには国債管理制度の確立です。そして金融の自由化です。金利の自由化です。そういう中で自然に歯どめがかかる。出そうにも出せないような状況をつくるというようなことを考えるべきだというこの学者の意見というものも、あなた方の立場に立てばなおさらのこと考慮せざるを得ないのじゃないか、その時期に来ているのじゃないか。三〇%とか二四%とか一六・四%とか、どんな歯どめをつくっても、それが数字である限り一朝にして机上の空論になるという現実を見ておるだけに私はそういう気がするのですが、この点については総理、いかがお考えになります。
  62. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 国債、今後、五十三年度の調子でいくというわけにまいらぬと私は思います。将来の国債をどうするか、これは財政の非常にむずかしい問題点になってきておる、こういうふうな理解ですが、御説のとおり、国債管理政策、これは大いに検討し、これを完備したものにしなければならぬ。しかし、同時にやはり別の歯どめ、これも考えておく必要があると思うのです。  いま大蔵省では、予算を大体経常勘定と資本といいますか投資勘定とに分けまして、そして当分の間、投資勘定の方は国債でいかざるを得ない状態です。しかし、せめて経常勘定、これに国債を充当する、こういうようなことについては早くこれを切り上げとする、こういうことを考えており、そのためには一体どうするかというと、たとえば五十三年度、いま御審議を願っておるこの予算、その経常勘定の国債依存度は実質二四%だ、これをとにかく、だんだんと年次を追うて低目に持っていくというような考え方も一つの有力なる考え方になってくるのじゃないか、このように思いますが、いろいろなことを考えまして、国債が乱に流れて社会秩序の混乱というようなことにつながっていくことのないように、これは本当に真剣に取り組まなければならぬ、このように考えています。
  63. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 話になりません。十月の予算委員会で、三〇%も国債に依存しているような状態は、もうこれは実質的には破産状態だと言わんばかりの主張をあなたはしたが、二カ月もたたぬうちに実質三七%まで国債依存度が高まっているのに平然としている。そんな歯どめが何の役にも立たぬことを示したばかりじゃないですか。それなのにまた、経常収支の中に占める特例国債の比率二四%が歯どめでございます。白々しい。またあした変わるかもしれない。そういう事実を目の前にして、私はある意味では社会党の立場を超えて何とかならぬかと考えているのに、何ですか、のほほんとして、まだ数字を言っている。  私がいま言った傾聴に値するような気がするという一部学者の意見、この点についての見解を述べないじゃないですか。見解はないのですか。宮澤さん、それじゃあなた、見解を述べてください、あなたが今度はイニシアをとっているようですから。
  64. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 所管の事項でございませんので、一人のエコノミストという立場から考えますと、私は、おっしゃいますことはごもっともであると思います。すなわち、金融資産としての国債というものは、やはり市場においてその価格、発行条件というものは決まっていくという方が本来望ましいことでありますし、そのことはまたやがて金利の自由化というものにつながる糸口になる、こういう御意見を御紹介になったのでありますが、私はエコノミストの立場から言いますと、そういう考え方は十分理のあることだと考えます。
  65. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 宮澤さんの方がやはり経済をわかっているような気がしますね、福田さんよりはですよ。とにかく経済福田、そういうものに私は疑いを持たざるを得なくなってきた。しかし、とにもかくにも、あなたが総理大臣です。あなたが全責任を負って政治をおやりになっているのです。国民すべてがどういう目に遭うか、あなたの一挙手一投足によってその運命は決まるのです。  私は、何度も申し上げるようですが、本当に自信があるならば、もっと胸を張って説得しなさい、根拠を挙げて、こういう事実を踏まえて私は、大丈夫、任してくれと言っているんだと説得しなさい、こう申し上げたい。あなたにそれだけの熱意があり、決意があり、そしてそれを民間で真剣に受けとめて初めて七%、何とかなるかもしれぬという状況が生まれてくる。いまのような総理大臣の構えでは、まず信頼が持てませんよ。幾ら公共事業で前倒しで政府が金をばらまいてみたところで、死に金になるおそれがある。民間の需要の喚起などにつながらないおそれは十分にある。あなたに対する信頼がなければないほど、その可能性の方が大きいのです。私は、これからのこの予算委員会の審議を通じてもっと積極的に、熱意を込めて国民説明をするという姿勢を貫いていただくように、それなくして七%成長達成などということは絶対ないということを最後の言葉の結びとして、経済問題についての質問を終わります。  本当は防衛問題についてもっともっとたくさん時間をとりたかったのですが、残念ながら時間がなくなりました。そこで、きょうは糸口程度の質問にとどめて、本格的な防衛質問は後日に譲りたいと思います。  私が取り上げたいと思っておりますのは、近時、制服高級幹部の言動には目に余るものがあるということです。一言で言うならば。彼らの眼中にはもはや日本国憲法はない。さらに残念なことは、このような言動を制すべき立場にある政治家が、制するどころか、しり馬に乗って、このユニホーム諸君に媚態を呈しているかのごとき観がある。言語道断です。私は警鐘を乱打する意味質疑を行いたいのです。  第一に、栗栖統幕議長の発言です。ここに私は持ってきているのですが、一月四日の「WING」という新聞に栗栖統幕議長が一文を寄せております。この文章は当然に、総理大臣も防衛庁長官もお読みになっておると思います。新聞でも報道されておるのですから、関心を持たない、読んでないなどということは許しません。もしそういう態度があるならば、そのこと自体が許されません。これは憲法に対する挑戦であり、歴代自民党政府に対する挑戦ですよ。よそごとと思っているのじゃないですか。議員諸君は読んでない方もあると思いますから、私はこれを読んでみます。重要なところだけちょっとピックアップして読んでみますが、全部重要ですけれども、中でも特に問題な点を。「世に攻撃的軍備と防御的軍備とを区別して、前者は平和を脅威するが、後者は許容しうるものとする説がある。しかし、かくの如き区別は、所詮困難と言わねばならない。」まず第一です。攻撃的軍備と防御的軍備とがある。無理やりに区別してきたのはだれですか。自民党歴代政府ですよ。私たちじゃない。私たちは、そんなばかなことがあるかと言い続けてきた一それなのに、憲法九条があるものだから、あなたたちが、苦肉の策か何か知らぬが、憲法で禁止しているのは、それは侵略的な軍隊なんだ、防御的な自衛権の範囲のものならば、軍隊と言おうと言うまいと、これは許されるんだ――言ってきたのはあなたたちですよ。ナンセンスだと言っている。挑戦されている。考えてみれば、もともとこれは私たちと同じ主張に立つわけですけれども、あなたたちにしてみれば、まさに挑戦を受けているんですよ。こんなばかなことがあるか、こう言って挑戦をされているんですよ。認めるんですか。  時間がありませんから、ほかのところははしょって、大切なところをもう一つ読み上げます。「何時、わが基地や策源がやられるかも知れぬという心理的拘束力を相手方に与え得ない武力は、先方の攻撃企図を未然に防止する効果に乏しいものと言わねばなるまい。然らば、「専守防衛」と「抑止力保持」とは並存し難い概念である。」何ですか、これは。守り一辺倒の軍隊なんてあり得ない。このしり馬に乗って、金丸さん、あなたも、、外国に脅威を与えないような軍隊を見ないということを言っている。冗談じゃない。  私はいまから一つ一つ克明にやっていきたいと思いますが、こういういわば歴代保守党内閣に対する挑戦とも言うべき発言をお認めになるのですか。放置しているということは、認めているということなんですか。私はこの点から総理大臣、国防会議の議長として、自衛隊の最高指揮官としての総理大臣とそれを補佐する役割りにある防衛庁長官の見解を、まず最初に求めておきます。
  66. 金丸国務大臣(金丸信)

    ○金丸国務大臣 お答えいたします。  私は、先般、習志野の空挺部隊に参りまして、新聞に出ておった言葉を申し上げたわけでありますが、その前提の中で、日本は平和憲法を守らなくちゃならない、いわゆる侵さず侵されずという中で、防衛は、上陸してくる敵に脅威のない防衛はない、部隊は精鋭でなくちゃならない、その前言は、私はそれを踏まえておるわけでありまして、実は私は、ちょうど戦争たけなわのころ召集を受けまして、友達もあるいは親も甲府の駅に送ってきてくれたとき、友達が私に、軍隊というところへ行ったら殴られるぞ、こういうことを言ったから、殴られてもしっかりやるよと言ったが、その私の友達が言ったことについて、私は親のいる前で相当なびんたを受けたわけであります。そういう中から私はずっと軍隊の姿を見て、このように軍事大国になって、軍人でなければ日本人でないというようなことになったらどうなるんだろう。しかし、日本はいわゆる軍政のような状態に順次なって、この結果になった。私は本当にこのことを思いまして、もう絶対このような軍事大国にしてはならないという考え方が骨の髄まで私はしみておるわけであります。  そういう意味で、先般栗栖統幕議長の発言と、あるいはいろいろな発言もあるわけでありますが、自衛隊の幹部の中には、いわゆる自衛隊の隊員の社会的地位、評価というものを高めたいという気持ちもありましょうし、あるいは軍事的により優秀なものを導入したいというような願望はあるけれども、先般も私は幹部会で、こういうような考え充て国民に疑惑を持たれるようなことがあってはならない、現在の日本の軍備というものはあくまでも国民の十分な理解の上に立たなくちゃならない、そういうような考え方の中で、私は統幕議長にも、このようなことを発言するということは、自衛隊の威信にもかかわる、十二分に注意してくれという中で、現在の幹部の中に、いわゆる憲法を踏まえておらないとかあるいはシビリアンコントロールをわきまえておらないとか、そういう者は一人もおらないと私は確信をいたしますし、先ほど申しましたような精神で私は本当に監督もし、そしてその場面によっては私も責任を負っておるわけでございます。(「この発言はこれでいいのか」と呼ぶ者あり)その、ただいまの文章について、私は本人を呼びまして、このようなことを政府が答弁して国会の了承を取りつけておるのに、このようなことを言うことはまことにシビリアンコントロールからいっても許すことができない、今後十二分な注意をしてほしいという注意を私はいたしたわけでございます。
  67. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 政府の自衛隊に対する姿勢は、あくまでも日本国憲法、一このもとにある自衛隊でなければならぬ、同時にシビリアンコントロールのもとにあるものでなければならぬ、これはもうかたくそういうふうに考えているわけでありまして、今後ともこの考え方にもとるようなことは絶対にないようにいたしたいと存じます。
  68. 石橋(政)委員(石橋政嗣)

    石橋(政)委員 私は、これはきちっとけじめをつけなければいけない問題だと思って質問をしているわけなんです。最も基本的な問題なんですよ。自衛隊ができて以来、国会で何回も何回も論議された問題でもあるんです。私は相当その論議に参画いたしておりますから、今度も全部速記録を読み直してみました。この発想は、過去の国会における政府答弁、全否定ですよ。参考のために、少し古いのから一、二お聞かせしましょうか。  これは昭和三十六年四月十一日、私がこういう質問をしたのです。「自衛隊を持つという考え方の中には、もし侵略が行なわれたらこれにどう対処するかということが一つあると同時に、いわゆる戦争抑制力といったような働きをも持たせるのが、世界の通念だというふうに言われておる。特に源田さんあたりは非公式な場所でしょうけれども、これをさらに発展させて、仮想敵国が核装備を持っておるような段階に、核装備を持たずして何の自衛力か、それでは第一抑制力にもならないじゃないか、こういうことも議論として述べておられるように聞いておるわけですが、自衛力と戦争抑止勢力というものとの関係、この辺をどういうふうにお考えになっておられますか。」衆議院の内閣委員会で私が、三十六年の四月十一日に聞いているんです。どちらかというと、いま栗栖さんが言っているのは、これは私の立場ですよ。これに対して西村防衛庁長官が「たびたびお答えをしておりますように、あくまでも自衛力というものは消極防御でございます。従って防御ということ自体も私は、消極的な意味ではありますけれども、しかし同時に戦争を抑制するという力になる、こういう意味ではやはり抑制力であるとは思います。自衛隊が存在すること自体、やはり局地戦あるいは間接侵略を防ぐ存在自体が、こういう意味ではやはり自衛であると同時にそれは抑制力でございますが、しかしその抑制力というものはきわめて消極的な抵抗力と申しますか、抵抗力があるから同時にまたそれに対して攻撃を加えるものは抑制される、こういう意味ではやはり抑制力にはなっておると思います。」非常に消極ということにウエートを置いているのです。最近は専守防御という言葉に変わっているのですが、一貫しているのです。消極的なものにならざるを得ないんだ、憲法があるから一だから軍隊と名のれない自衛隊なんだ。一貫したあなたたちの立場です。それをナンセンスと言われて、ちょいと注意で済みますか、皆さん。この論法でいくならば、私がここで指摘しておる源田さんの理論なんですよ。私も、日本国憲法という立場でなく、純軍事論でやるならば、源田さんと一致するのです。強大な軍隊を持たなくてどうして抑止力になるか、仮想敵国が原爆を持っているならば、こっちも原爆を持たずしてどうして抑止力になるか、そこまで軍事論としてはいくのですよ。それを必死であなたたちは、憲法というものがあるから詭弁を弄してきているのかもしれない。詭弁だと彼は言っているのです。ちょいと注意しましたで済みますか。私は断じて許せません。そんな態度で、後の質問を続けるわけにはいきません。(「だめだ」と呼び、その他発言する者あり)
  69. 金丸国務大臣(金丸信)

    ○金丸国務大臣 お答えいたします。慎重にお答えをいたします。  わが国においては、自衛のための必要最小限度を超える防衛力の保有は、憲法によって否定されているところであります。  しかし、右の限度内の防衛力であってもそれなりの抑止効果を期待し得るものであり、さらに大きな防衛力によらなければ抑止し得ないような事態に対しては、日米安全保障体制による米国の力に依存するというのが政府の防衛に関する基本的な考え方であり、日米安保体制を堅持するとともに、これと憲法上許される範囲内で保有する専守防衛のわが国の防衛力とが相まってわが国に対する侵略を未然に防止することを防衛の基本構想としていることは御承知のとおりであります。  この点、統幕議長の発言説明不足のものであり、誤解を招き、不適当なものと考える。この点についても厳重に注意をいたしたわけでございます。(「厳重注意ぐらいではだめだ」と呼び、その他発言する者あり)
  70. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 ただいまの問題につきましては、後ほど理事会においていろいろと御相談申し上げることにしたいと思います。  これにて石橋君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩をいたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  71. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。広沢直樹君。
  72. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 私は、第二次補正予算並びに当面する財政、経済問題の質問の前に、先般の伊豆大島近海地震に関しまして早急な対策を要望すると同時に、地震に関する基本的な政府考え方をただしておきたいと思います。  災害は忘れたころにやってくるという言葉がございますが、日本は、忘れたころではなくて、いわゆる災害が多い国、毎年毎年大変な災害が起こっております。特に、地震に関しましても、日本列島は環太平洋地震地帯に位置しておりますし、地震の多発地域でございます。これまでにも幾多の地震がございました。また、いつ起きるかわからない情勢にもございます。今回の地震もある程度予測はされておりながら多くの犠牲者を出したことは、まことに遺憾にたえないところでございます。  一昨日、代表質問の冒頭にわが党の竹入委員長もその対策に触れておりますが、私は、この際、政府の災害に対する取り組む姿勢につきまして、まず総理にお伺いいたしたいと思います。  総理は、本会議やあるいは記者会見におきましても、全国知事会の要望等を踏まえまして立法を考えると言われておられますが、言われたからやるというのではまことに遅きに失したというふうに言わざるを得ません。四十九年の五月にも、今回とほぼ同様な地震が伊豆半島に起こっておりますし、犠牲を出しております。それから四年、政府は一体どういうような対策をとってきたのか。総理は防災会議の会長でありまして、いわゆる総責任者であります。こういう事態を再び目前にいたしまして、総理は、これをどう認識し、そしてどう対応していくのか、改めて所信を承りたいわけであります。
  73. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 政府は、昭和五十一年の衆議院の決議を受けまして、同年、内閣に地震予知推進本部、本部長は科学技術庁長官であります。この本部を、また昭和五十二年には地震予知連絡会に東海地域判定会を設置いたしまして、地震予知の推進を図るとともに、観測体制の強化、大都市における防災都市づくり等の施策を推進しております。  なお、今回の地震におきまして、がけ崩れなどの被害が多く発生いたしましたが、これらにつきましてもその原因を調査いたしまして、対策に遺憾なきを期してまいりたい、このような考えでございますが、とにかくわが国は地震国でございます。そこで震災対策、特に大都市の地震対策というものは非常に広範多岐でございまして、なかなか困難な問題でありまして、意進めども実がなかなか上がらぬ、こういうような状態でございますが、中央防災会議で決定されました震災対策全般にわたる基本方針であるところの大都市震災対策推進要綱を策定いたしまして、対策を総合的に進めておるわけでありますが、今回の伊豆大島周辺の地震、この機会にまた思いを新たにいたしまして対策に取り組みたい。  また、先ほどお話せられました、知事会が提唱いたしました予知を中心とする行政体制、これをどうするかということもいま検討しております。何とかして本国会に御提案をして、ひとつ御審議を願いたい、かように考えております。
  74. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 決意のほどはわかります。しかし、立法というのは非常にむずかしい問題であります。これまでの経済発展の中で、災害特に地震、それに取り組む考え方がどういうふうに考えられてきたのか。もしもこういう地震が大都会の中で起こったとしたならば、この被害ははかり知れないものがあったのじゃなかろうか。そういう産業発展の中でこの地震が仮に起こった場合、すぐに対応できるような体制がすでに組まれておるのかというと、いまもお話がありますように、改めてそういうことの対策を立てるためにそれぞれの会議をつくったり検討をやっているという状況にあろうと思うわけであります。したがって、法律だけをつくればいいというものではございません。防災会議の会長というのは、先ほど申し上げましたように全般を統括しているわけでありますから、そういうふうなお考えを持っておられるならば、そのお考えに対して具体的にどういうふうにそれが進んでいくのか。これは、起こってからああであった、こうであったという議論が絶えず行われますけれども、それよりも、おくれている対策に計画を立てて具体的にどう進んでいるかということ、これは一応はっきりしておかなければならないと思うのですね。その点についてどうお考えになるのか。これは所管大臣が具体的にそれを担当しておられると思いますので、国土庁長官にお伺いをいたしてみたいと思います。
  75. 櫻内国務大臣(櫻内義雄)

    ○櫻内国務大臣 地震はなかなか予測できにくい、そういう状況の中で大きな災害をもたらすものであります。しかし、いま当面する東海地震などについては一応の予知がいろいろな角度から行われておるわけでございまして、それらにつきましては私どもとしても細心の注意を払っておるわけでございます。  また、国会におきましても決議がございまして、その決議を政府としても具体的に実現をしてまいりたい、こう思いますが、一番肝心なのは予知情報であると思うのです。この予知情報については相当な的確性を持ってまいっておりまするが、予知情報だからといって、すぐそれに伴って余り神経質になって行動をする、方策をとる、こういうことになりますと、先般の予知情報による混乱などのような事態も起こります。したがいまして、これらの点につきましては細心の注意を払いながら、しかも、一たび問題が起きたときに地域住民に不安をかけないように対処していくべきだと思いますが、今回の地震にかんがみてみまするに、火災などが一件も起きておらないということは、これは静岡県における地震対策というものが相当徹底しておると見てよいと思うのであります。また、国土庁も参画いたしまして富士市における演習などをいたしておりますが、それらの効果も出ておると思います。御質問の御趣旨に沿いまして、万が一大地震が起きたときに対応するためのあらゆる努力を払っていくことにつきましてわれわれも努力をしでまいる考えでございます。
  76. 福永国務大臣(福永健司)

    ○福永国務大臣 国土庁長官から答弁がありましたが、その前の段階である予知、観測につきましては私が所管いたしますので、簡単にお答えをいたしておきたいと思います。  気象庁の観測体制としましては、大島、石廊・崎、網代、三島、こういうところに従来から各種地震計を配置いたしまして対処しておりますが、さらにその後、観測強化のため伊東市鎌田に高倍率の地震計を、また石廊崎と網代に体積ひずみ計を設置いたしまして、それぞれ気象庁本庁にテレメーターして常時監視しております。今後とも厳重な観測を行っていく所存でございます。
  77. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 国土庁長官は、非常災害対策本部長として、災害後現地へ行かれているわけでございます。そういう意味においていろいろお気づきになった点は多々あろうかと思います。いまも申し上げておりましたように、五十一年に災害対策委員会におきまして決議をいたしております。その決議をしたなりで、この対策がどの程度進んでいるのかということが明確にならなければならないと思います。  それから、予知に触れておられましたけれども、確かに予知という問題は非常にむずかしい問題である。関係者あるいは学者、専門家等におかれましても鋭意努力をしておられることはよくわかりますけれども、やはり自然に対する取り組み方でありますから、万全、こうだという結論がいまだに出ていないことは残念であります。したがって、それならば、災害を未然に防ぐ初歩的な問題と言えるかもしれませんが、人命を守る立場からそれに対応する対策というものがやはり立てられなければならない。ところが、一つの例が示しておりますように、予知を受ける、あるいは情報を流す、こういった問題でやはり混乱がある程度生じた。そしてまた、それらの連絡についても、静岡県知事、いわゆる静岡県の災害対策本部長ですが、国から何の指示も得ていなかった、こういうふうなことが言われております。したがいまして、それに対する万全な体制をしく以前の問題として、まずこういうような指揮系統の一本化といいますか、やはりこれは非常に大事なことじゃないか。混乱している中においていろいろな情報が飛び交いまして、混乱混乱を上乗せしていくような問題になっては大変であります。そういった点が、今回の状況の中からも、具体的に立てられているとは見受けられません。これは一番大事な、初歩的な段階の問題だと思いますが、この点に対してどういうふうにお考えになっておられるのか。一つの例が示しておりますように、二度とこういうような混乱があってはならないと思いますので、重ねてお伺い申し上げておきたい。  なお、具体的な問題につきましては、災害対策特別委員会も現地に参りましてそれに取り組んでおりますし、後日委員会が開かれる予定でございますので、そこにおいてまた質問させていただきたいと思いますが、いま申し上げました基本的な問題についてのお考えを承っておきたいと思います。
  78. 櫻内国務大臣(櫻内義雄)

    ○櫻内国務大臣 今回、予知情報の適切な扱いがなかったために混乱を起こした。これに伴いまして、われわれとしてはそれを貴重な体験と踏まえまして、今後再びこういう混乱を起こさないように努めたいと思います。  御承知のように、国会の決議を踏まえまして、五十一年には地震予知推進本部が設けられております。それからその後、五十二年には地震予知連絡会東海地域判定会というのを設けておるわけでございまして、観測体制も強化されておるわけでございます。東海地震説というのがいろいろ取りざたされておるこういう際でありまするから、極力こういう防災体制につきましては注意を払っておるところでございます。  そこで、具体的な措置といたしまして、先ほど総理からもお話がありましたように、中央防災会議で大都市震災対策推進要綱などもございまするから、それらを踏まえまして、今回のような予知情報による混乱などを再び起こさないように、それからまた、一たび問題があったときに万全の対策が講ぜられるように努めてまいりたい。  先ほど私が例に申し上げましたように、静岡県下で、これは富士市における演習などもいたしておる。また、そういう面からの効果もあって、幸いにして今回火災もなかった、こういうことでございまして、努力はしておるわけでございますが、災害はいつ起こってくるかわかりません。常に万全の対策を講ずるというその気持ちで対処すべきは私の責任である、このように踏まえております。
  79. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それでは、あと細かい問題は当該委員会に譲るといたします。  そこで総理に、基本的な姿勢の問題になりますが、お伺いしておきたいと思います。  総理大臣は、総力を挙げてこの難局に取り組むとおっしゃっておられますが、やはりその前提に立つものは政治に対する信頼ということでなければならないと思います。福田内閣が誕生して一年になるわけでありますけれども、国民がこの点をどう評価しているか、これは総理も、新聞等の世論調査を通じて理解はしていらっしゃるんじゃないかと思います。時事通信の調査特報によりますと、よくやったというのがわずか二割程度しかない。どちらかと言えばよくならなかったとか、全くよくやらなかったとかいうのが大半を占めている、こういう評価をいたしておるわけであります。  このことは何を意味しているかと言いますと、やはり昨年一年の経済の運営の失敗です。確かに年頭におきましては、働こう内閣だとか、あるいは経済はだんだんによくなるとか、いろんなことをおっしゃいました。それを言ったことが悪いということではございませんけれども、そういうふうな見通しを明らかにしておった。それがことごとく狂ってまいりました。さらに対外的にも、年の初めに首脳会議等々で約束というか話しておったことが大きく狂ってしまう。こういうような状況の中で、やはり国民の政治に対する不安あるいは不信というものが高まってきたのではないか。こういった大きな食い違いといいますか、これに対しては重大な責任があると考えるわけでありますが、昨年一年を振り返って、国民がいまの福田内閣に寄せているこういう一つの評価の仕方というものは、非常に大きな不信、信頼を欠いているわけでございます。その点をどのように受けとめておられるのか、まずお伺いしておきたいと思います。
  80. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 国民の関心は、これはいまいろいろありましょうけれども、最大のものは私は経済問題にある、こういうふうに思っております。その経済問題につきまして、私が昨年の年初来申し上げたことがそのとおりにいかなかった、それに対しましてはいらいらを感じておる、こういうふうに思います。私としては、とにかく世界が、地球が揺れ動いておるというその上で最善を尽くした、こういうふうには思っておりまするけれども、その実が私が思ったように上がらなかったということにつきましては、国民において不満とし、またいらいらを感じておる人がかなり多いのではないか。とにかく、いろいろ国際社会でも事が起こりまして、私が考えておる経済の安定路線、これがちょっと一年ずれた、こういうふうに思っておるわけでありますが、五十三年度、この年においては、ずれた経済の安定問題、これをぜひ決着をつけて国民に御安心を願いたい、このように考えております。
  81. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 総理は自分の考えとちょっと一年ずれたとおっしゃいますが、これは大変なずれであります。いろいろこれからも論議を重ねていかなければなりませんけれども、現在の政治に取り組む姿勢というのは、いままでのように、自分の考えが万全であるという考え方では、これは運用できない。国会の情勢も与野党伯仲、そしてまた世論調査に見られるように、国民の政治に対する期待も以前とは大きく見方が変わってきております。したがって、こういう難局に対応していくためには、どうしてもそこに総理が言われる連帯と協調、これは考え方がいろいろあると思いますけれども、そういう話し合いというものが十二分にそこに織り込まれていかなければならない、こういうふうに考えるわけであります。したがって、昨年も予算委員会のときに、一年間の予算を決めるわけでありますから、よりよいものをつくっていかなければならないということで、まず予算修正問題が取り上げられたわけであります。それに対して総理政府は、いままでつくったものが万全であるということをおっしゃっておられましたが、結論としては予算を修正いたしました。そういうことが今日の審議の大前提になっていかなければならない、このように思うわけでございますけれども、昨日までの本会議における代表質問の中においてもそのことが取り上げられましたが、それに対してはいままでと同じ姿勢の繰り返しにすぎません。この点について、やはりもっともっと、そういう現在の情勢を背景として、難局に対応するには総力を挙げるというのであれば、われわれの意見というものも十分に盛り込んで、そこによりよいものをもう一遍つくっていこう、考えていこうという開いた姿勢でなければならないと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  82. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は連帯と協調ということを強調しておりますが、国会の運営につきましてもそのとおりに考えております。やはりお互いに話し合って、そしてお互いに責任を分かち合おうじゃないか、こういう姿勢ですね。私は一年間ずっとそういう考え方でやってきたつもりでございますが、今後といえどもそういう考え方については、何ら間違った考え方ではなかったという認識のもとにやっていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  国会のいろんな議案につきましても、各党の御意見もいろいろ聞かなければならぬ。特に予算案、これは国の一年の経済問題のかなめをなすものでありますから、これは私は特に党首会談まで持ちまして各党首の御意見を承り、また大蔵大臣は各党の政審会長ともいろいろ接触をされて意見を伺いまして、そして私どもが考えまして、野党の皆さんの御意見の中でこれはいい御意見だなというふうに考えるものにつきましては、これを取り入れてきておるのですよ。ただ、党首会談のときに各党とも減税の話がありました。その減税につきましては、その席でも私は、これだけはひとつ御勘弁願いたいんだ、国の財政の状態、それから減税か公共事業かということになると公共事業の方がメリットが多いのですよ、乏しい財政、非常に厳しい財政ですから、これだけは御勘弁願いたいんだということをるるお訴えもいたしてきたわけでございますが、いま予算案の御審議を願っており、各党の御意見もできるだけ取り入れるような配慮でつくった予算であり、かつ、私どもといたしましては、いまこれ以上のことはなかなか考えられないのじゃないかというくらいに努力をした、その成果であるところの予算案なんです。ですから、修正が出たら応じるか、こういうようなお話でございますが、いまこの時点で私は、この予算案は私どもの考えられるベストのものを御提案申し上げておるんだ、こういう考えを持っておるわけでありますが、しかし、各党の御意見は篤とまた拝聴するというにやぶさかではございません。
  83. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それは、政府といたしましてはよりよいもの、ベストのものを出した、これは当然のことであり、私もそう思います。しかし、この段階ではということではなくて、だんだんその話を詰めていけばまあそれに応じるというくらいの尺度といいますか、やはりそれは持っていなければならないと私は思うのです。  ただ、いまお話がありました減税の問題につきましても、後からこの問題は具体的にまた触れますけれども、基本的な考え方が私は違うのじゃないかと思うのです。と申しますのは、昨年は政府が、三千五百億ですか三千億ですか、減税をすでに見込んで予算をつくられておりました。ことしは、先ほどもおっしゃっておられたように一年ずれちゃった。ですから、これは何とかしなければいかぬ、総力を挙げなければならぬとおっしゃるのであるならば、当然ここに何がしかの減税なり、昨年施した政策の上に上積みをして考えていくというのならば話はわかりますけれども、それを今度ゼロにしてしまったということであります。  私は、減税の問題についても考え方がいろいろあろうと思います。確かに一つは景気対策で考えていかなければなりませんが、長い間の不況の中における生活防衛ということも、国民の生活を守るのは政治の責任であります。したがって、それは考えていかなければならないわけであります。今回減税がゼロであれば、当然、これは累進課税をとっておりますから増税になってしまう。その分だけ圧迫されるということが起こってまいります。それは後の論議になりますけれども、いわゆる賃上げも低く抑えられるのじゃないかという予想さえ言われておりますね。個人消費支出、国民総生産の大半を占める、それが上がっていかなければならない。昨年や一昨年のように輸出に頼って、おっしゃるGNPを保つというようなことは当然考えられない。内需拡大によってやっていかなければならないということになれば、それが中心になることは当然であります。そういうことから考えても、減税の必要性はいや増してきていることは間違いないのであります。またそれが、いま私が申し上げました、一歩譲って考えていっても、生活防衛的な考え方も含まっているわけであります。もちろん、福祉の問題についてもそれは言えるわけであります。それは昔のような高度経済成長政策をとっているときであれば、投資が投資を呼んでいくという時代でありますから、中だるみがあったとしても、すぐに景気がV字型に戻って立ち直って進んでいく、それが次第に効いてきて個人消費も高まってくる、こういうパターンであったかと思います。しかし、今日はそうじゃありません。長い間の不況の中で国民生活をどうして守っていくか、そこにも政治の配慮があっていいのではないかと私は思うわけであります。  そういう意味から、今回は総力を挙げるのだ、国民もすべてが力を合わせろと言っているときに、ただ公共事業一本やりという、それは効果の問題ということだけをとらえて、それでいいのであろうか。もちろん私は、公共事業やめと言いません。どんどんやらなければいけません。財政が引っ張らなければならぬということは百も承知であります。その上にそういう配慮を加えていくだけの考え方を持ってしかるべきじゃないかと思うわけでありますが、減税問題はどうなるかということは後で触れるとしても、基本的に姿勢を伺っておきたいのであります。
  84. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私どもも、考え方の基本は広沢さんとそう変わるところはないのです。やはり国民生活を豊かにしたい、そういうことを念願しておるわけでありますが、それには一体どういう手段を使ったら最も有効であり、最も国家的であるか、こういうことになってくるのじゃないか、そういうふうに見るわけでございますが、そういう角度から考えますと、いまこの際は景気をまずよくしなければいかぬ、経済活動を活発にして国民のふところをよくする、そのことを考えなければならぬじゃないか、そういうことなのです。その手段としては、やはり景気波及力の強い公共事業というものに着目をしなければならぬだろう。財政が非常に窮乏しておる時代です。財政が豊かでありますればこれは何をか言わん、公共事業も減税もという考え方になりましょうが、財政が窮乏いたしているものですから、さあ限られた財政手段をもちまして増税か減税か公共事業かという選択をしなければならぬ。その選択ということになると、私どもの考え方、これをとることが妥当である、こういう考え方をしておるわけなのですが、私は国民福祉の向上、これを考えているのです。ただ、これを実現をするための手段、方法が、少し広沢さんの方と私どもは違っておる、こういうことじゃないかと思っています。
  85. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 基本的考え方で、入り口だけで議論しておっても始まりませんが、ただ一言申し上げておかなければならぬことは、昨年も総理は同じようなことを当初申されておったわけであります。私たちが減税要求をしまして、公共事業を削ってそこへ回したのかというと、そうじゃありません。その上に上積みをして、また、私たちの要求を全部入れたわけじゃありませんけれども、与野党合意してそこに結論が出てきた、こういうことでありましょう。ですから、私たちは、公共事業を削ってこっちへ回せということをいま申しておるわけじゃないのです。そうであるならば、当然やはり今年においてはこれは考えていくべきじゃないかと思うのですよ。財源問題をおっしゃるなら、それはまたほかに議論がございます。しかし、総理がひとり責任を持ってこれをやるんだ――いまの段階は、先ほど申されたように、見通しが狂ったんだということではもう済まされない。ですから、われわれも政治に対しては、国民の生活を守るためには責任を持たなければならないような情勢に入っているわけなんです。そういう意味におきまして、いま私たちが申しております党首会談を開いたり、あるいはまた、予算編成の段階において政審会長会談を開いていろいろお話しした。やはりその中心になっていくものは、国民生活をどう守るかという立場から、そしてその上に立った景気対策をどうするかという立場から、減税なりあるいは福祉の上積みなりということを申された。その肝心の柱については、昨年のパターンと同じ形をおとりになろうとしている。それは私は間違いじゃないかと思いますね。ですから、どこまでもそのことをおっしゃるならば、ことしそれが達成できなかったときあなたはどう責任をおとりになるかということを言わざるを得ません。また一年延びましたということを来年の予算委員会の冒頭に一それは景気のことですからわかりません。先ほど七%の話もありましたけれども、そのときはあなたは責任をおとりになるのですか。
  86. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は皆さんといろいろ議論もしてきておるわけです。おりますが、その立場は、もう政府がこういう提案をいたしましたから、そのメンツにかけてこれは通さなければならぬというような、そんなかたくなな考え方は持っておらないのです。そうではなくて、これはどこまでも日本国である、また日本国民である。日本国、日本国民に対して、どっちの考え方がいいのだ、こういうことだろうと思うのです。この考え方の方がより国家的であり、より国民的であるということであれば、それを相互理解の上に立って採用したらいいんじゃないか、そのように思いますよ。だから、私どもはいま、予算案につきましてはこれがベストのものである、こういうふうに申し上げておるわけなんですが、それに対して皆さんからも御意見もありましょう。ありまして、意見が相互に違う点につきましては、私どもは私どものベストであるというゆえんをるる説明しますから、福田の話を聞いたらやはりこれが国家的である、国民的であるというふうに判断されたらひとつ御賛成願いたい、このように思うわけなんでありまして、提案した以上、これはメンツにかけてもというような、決してそんなかたくなな考えでないということだけは申し上げておきます。
  87. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それじゃ申し上げますが、いま申されたとおり、メンツにかけて云々じゃない、よりよいものであるとこっちが思えばそちらの意見を聞け、ということは逆に言えば、昨年もありましたように、与野党折衝する、その中で与野党合意していく面があるならば、当然政府はそれを聞く。与野党合意ということは国民のすべての意見と考えて間違いありません。そのときでも、いや、これはベストなんだから変えないというようなかたくなな態度はあり得ないと思うわけでありますが、最後に一言、そのことをお聞きします。
  88. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 これは一般論を申し上げます。まだ、どんな修正だ何だという意見が出ておるわけじゃありませんから、そういうことでなくて一般論として申し上げますが、提案者としてのメンツにこだわること、そういう態度はとりません。どこまでも日本のために、日本国民のためにいいという、そのことで結論を得べきものである、このように考えております。
  89. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それでは次に、対外調整と今後の見通しにつきましてお伺いいたしたいと思います。  世界におきますわが国の立場というようなところから二、三お伺いしてみたいと思いますが、去る十三日、バーンズ米国務長官はロサンゼルスの国際問題評議会で、カーター政権の二年目の外交政策課題とその基本構想を明らかにいたしております。同長官はその演説の中で、本年は経済の年であるとして、世界経済の停滞からの回復と壊滅的危機からの回避を強く訴えておられますが、わが国政府は、一九七八年の世界経済の動向をどのように分析されておられるのか、また、それに対してどう対応しようとお考えになっていらっしゃるのか、その点からお伺いしたいと思います。
  90. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 私からお答え申し上げます。  概して申しまして、まず米国の景気経済は、七七年ほどでなくとも、まずまず堅調を維持していくであろうというふうに見ております。ただ、いわゆる石油輸入等の結果として出ております貿易収支の赤字は、さしたる改善はないかもしれないと考えております。  それから、ヨーロッパにつきましては、一九七七年が各国とも一様に実はよくない情勢でございましたが、それに比べますと、イギリス、フランス、西ドイツ等は、ちょっとイタリーがはっきりいたしませんけれども、多小明るい気分がある、こういうことではなかろうかと見ておりまして、世界の貿易の伸びはほぼ五%ないし六%程度であろうかと考えております。
  91. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 これは基本的な問題でありますので、具体的な問題はまた後からお聞きしますが、総理はその点、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  92. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 率直に申し上げまして、世界経済の展望というのは、非常に不透明ではございます。まあ、ことしは何とかよくなってもらいたいなという願望はありますけれども、七七年に比べてはかばかしくよくなるかというと、なかなかそこまでいくまい。しかし、いまみんなが努力しておりますから、落ち込みというような状態にもそう多くはなっていかないのじゃないかと思います。ですから、まあまあ七七年の継続というような状態世界情勢ではなかろうかと思うのですが、これは、これからもう小し世界経済の動き、様子を見ませんと、的確な判断はいたしかねる、非常に不透明でございます。
  93. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 いまおっしゃいましたように、昨年十二月末に公表されましたOECDのいわゆる七八年における世界経済見通しによりましても、 OECD諸国全体の七八年の実質成長率が三・五%になる、結果的には、七八年の失業者数もふえて千七百万人、完全失業率は五・五%になるという厳しい見方をいたしております。大体、総理がおっしゃった認識と一致しているのじゃないかと思うのですが、昨年の実績、いわゆる平均成長率三・五%から考えまして、本年は、各国が思い切った政策をとらない限り、やはりこういう暗い情勢というものはなかなか打開できないのじゃないか。そうなってまいりますと、いま大変問題になっております保護貿易の風潮というのが高まってくるのではないか。それと同時に、黒字国日本に対する諸国の批判、圧力というもの、再びそういう問題が起こりかねないということが懸念されるわけでありますが、それに対する対応といいますか見方はどういうふうにお考えでしょう。
  94. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 わが国は、世界経済の一環でございまするから、やはり世界に対するわが国の責任ということを常に踏まえて行動しなければならぬ、こういうふうに思います。そういう見地からいうと、昨七七年は経済成長という面からはかなりの努力をした、こういうふうに思うのです。実績はまあ予想のとおりにはいきませんでしたが、それにいたしましても、先進諸国の中では最も高い成長ということになってくるのじゃないかというふうに想像しておりますが、まあかなりの努力をした。ところが、国際収支、特に経常収支につきまして非常な黒字を出してしまったのです。日本が黒字を出す反面におきましては、赤字を出した国があるわけなんで、赤字を出す国は一体どういうことになるかというと、もう景気政策なんか、国際収支のことを考えれば、なかなかそう勇敢にはとれません。失業がふえるというようなことにもなってくる。そういうことを考えますと、わが国とすると、この経常収支の大幅な黒字を是正する、これは私は、五十三年度といいますか七八年におけるわが国の最大の責任事項である、このように考えております。それを実現する方途を探らなければならぬ。それには一体どうするかというと、やはり内需拡大をやってのけなければならぬし、同時に、いろいろな面におきましてわが国が国際社会において批判されるような封鎖体制につきましては、勇敢にこれを是正しなければならぬ、このように考えております。
  95. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 いずれにいたしましても、昨年後半はいわゆる円高問題、日米通商交渉ということで明け暮れたわけであります。いまも総理が申されておりましたように、その交渉の中でも、昨年の当初にありました三つのエンジンカントリーというのですか、そういうような体制でいこうとしたものが、向こうの言葉をかりれば、機関車が客車を切り離して勝手に走り出したということで、その体制が崩れてしまった。しかし、この交渉の中で感じられることは、黒字国の責任もそれは大きなものがあろうと思いますが、やはり赤字国の責任というのもこれは重大なものがあろうと思います。したがって、昨年の日米通商交渉の中における対応の仕方というものについては、アメリカのそういう、何となく日本に責任が集中しているがごとくにやっている行き方というものが如実にうかがわれたわけでありますが、その点、どうもアメリカが非常に高圧的じゃないかという感じさえ抱いている者が多いわけでありますね。やはりそれに対してわが国政府としては、赤字も黒字も責任があるんだという態度を明確にしていかなければならないと思うわけでありますが、その点いかがでありましょう。
  96. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 いま、日本の国の責任はどうかというお話ですから、黒字国としての責任ということを申し上げましたが、これは世界全体の立場からいいますと、黒字国は黒字国としての責任を感じ、また赤字国は赤字国としてその是正について責任を感じなければならぬ、このように考えます。  ことに、いま世界経済はいろいろな角度から揺すぶられておりますが、一つはやはり通貨不安という側面があるのです。まあ円高もその一つの現象でございますが、通貨不安問題がある。この通貨不安の最大の問題はどこから出てきておるかというと、これはアメリカの大幅な国際収支赤字、特に経常収支赤字に端を発しておると言っても過言でないわけであります。したがいまして、私どもは今度は世界的にどうしなければならぬのだということになりますれば、わが国としては、黒字国としてのその黒字を是正するという責任をとるとともに、赤字国、特に膨大な赤字を出しておるところのアメリカの赤字、これの解消を求めなければならぬ、こういうことでございます。昨年の秋以来の日米経済交渉でも、わが国は終始アメリカのドルの安定、そのための国際収支赤字の是正、またそのための石油輸入問題の処置、これを求めてきたわけであります。結局、日米共同声明にもありますが、日本は黒字の是正をやりましょう、アメリカの方は石油問題等を通じまして、そしてドルの安定に努力をいたしましょう、こういう双方の意見を述べ合うということになったわけでございますが、赤字国も赤字国として規律を正してもらわなければならぬ、これは当然のことであります。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  97. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 報道によりますと、総理は五月、予算が終わってから一応訪米される予定があるとか……。昨年の状況から言いますと、日米関係に、イコールパートナーとしての立場から何かひびが入ったのではないかというような見方も、憶測としてなされております。したがいまして、あの交渉のあり方から見て、やはり同じ立場で、いま赤字国と黒字国の責任のお話がありましたが、これは共同の責任という意味において合議され、話し合っていかなければならない、こう思うわけでありますが、この訪米の目的は何でありますか。
  98. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 わが国世界に臨む立場、これは何といたしましてもわが国はアメリカとの間に日米安全保障条約を締結しておる、それから経済関係から見ましても、わが国の貿易の四分の一はアメリカとの間のものである、こういうことを考えますと、やはり日米関係わが国外交の主軸たらざるを得ないと思うのです。その日米関係を踏まえまして世界各国と、これは本当にどの国という選別なしに友好親善関係を築いていかなければならぬ、これがわが国の外交の基本的な方針でございますが、その大事なアメリカでございますので、アメリカとの間には常時意見の調整、話し合い、認識の統一、そういうことが求められておるわけでございます。そのための事務レベルの往来はもうずいぶん頻激にあるわけでございますが、しかし、私、日本の首相といたしましてアメリカの大統領とじきじきに日米間の問題、また日米が世界に対してどういうことをなすべきかというような点につきまして認識の統一をするということは、大変必要なことである。ことに、いま世界の最大の問題は、経済混乱状態から脱出させなければならぬ、さらにまた、保護貿易主義の台頭に対しましては敢然と闘わなければならぬ、そういう大きな課題があるわけでありますが、そういう問題につきましても、アメリカはとにかく世界第一の経済大国である、わが国は自由社会で第二の立場にあるわけですから、この日米間で経済の問題、どういうふうに対処するか、この思想の統一をしておくことも世界のために大事である、こういうふうに考えますので、国会の都合の許すその時点において訪米し、カーター大統領との会談を行いたい、こういうふうに考えております。
  99. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 そこで、日米通商交渉の内容にちょっと触れたいわけでありますが、あの内容を見てみますと、わが国は具体的に対応策について述べております。たとえば経済拡大の問題にしましても、昨今問題になっております。%という、共同声明の中に盛り込まれておりますし、経常収支は大幅に、それは数字的なことは言えないと思いますが、とにかく大幅に縮小する、あるいは来年度以降均衡化、赤字でもそれを受容するというように明確に述べられておるわけですね。それから、双務的な形になっておるようでありますけれども、向こうの方は、その表現はドルの信任、それを回復するように努力する、こういうような抽象的表現になっている。それからまた昨今の、カーター大統領が議会へ出しました一般教書、経済報告、私はそれは内容を全部詳しく見たわけではありませんけれども、報道された内容からずっと見てまいりますと、それに対しての何ら具体的な問題は述べられておりません。  そういうことになってきますと、やはりこれは、ああいう公開の場所でそういうことが論じられ、それが共同声明の中へ具体的に盛り込まれ、そしてまた、それを持って帰った通商代表のストラウス氏の報告を聞いたアメリカの大統領はこれを評価して認めているということになれば、これは国際公約であるかないかという議論、それも大事でありますが、明らかにこれは国際公約として考えざるを得ないし、そのことがどうであろうとも、昨年一年はあなたが海外へ行ってそのことを同じようにお話しなさった、その話しただけでもあれだけの問題が起こっているわけでありますが、今回はそういうことで明記されたということで、これがもしも果たせなかったときの責任は重大だと思うのですが、その点については、公約であるとかないとかということよりも、責任問題がはっきりしてくるのじゃないかと思われますが、いかがでしょう。
  100. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 たとえば七%のあの問題なんか、公約かどうかという議論がありますが、これは公約だとこう言うと、これはアメリカに主権を拘束されたのじゃないかという議論をする人があるものですから、私は注意深く、あれは公約ではない、こういうふうに言っておりますが、しかし、これを実現することは内外の期待が集まっておる問題だ、こういうふうにいま考えますので、責任を持ってこれを実現をする、そのために全力を尽くします。
  101. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それから、牛場・ストラウス共同声明を一つの区切りとしまして、二国間の協議から多国間調整ということで、ガット東京ラウンドへ引き継がれておりますね。そのわが国の市場開放対策は、ECの関心品目を落とした形といいますか、それは抽象的には盛り込まれておりますけれども、アメリカへの優遇処置が約束されている。そのことについてはEC側に不満があるやに報道されております。ガット東京ラウンドに対する政府の取り組む方針でありますが、この交渉に対する見通しはどうなのか伺っておきたい。
  102. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 ことしの国際社会経済面での最大の課題は、やはり東京ラウンドの交渉を成立させることだろう、こういうふうに思います。これは先ほどから申し上げております保護貿易主義の台頭を抑える、こういう立場からも非常に重要な役割りをするであろうと思うわけです。わが国は、国際社会に重要な立場を占める一員といたしまして、この東京ラウンド交渉には積極的な役割りを演ずる、そういう基本方針でやっていきたい、こういうふうに考えまして、いまアメリカとの間では大方歩調がそろってきたわけであります。  そういういきさつを踏まえまして、いま牛場国務大臣がヨーロッパへ行っておる。ヨーロッパに対しましても、この交渉が円満裏に取り組めるようにということを大いにお勧めするという立場でいま話し合いをいたしておるというところでございます。
  103. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それではまた次の機会に私、聞く機会がございますので、具体的な問題は、牛場大臣が帰ったときにまたやりたいと思います。  そこで、今度は通貨情勢の問題についてお伺いいたしたいと思います。  昨年は、ブルメンソール米財務長官が円安だとしゃべったときから、火がついたように大変な円高傾向を示してまいりました。その後、ことしに入って同長官が明らかにしたところによりますと、米国の介入政策、昨年の暮れにはカーター大統領がドル防衛を発表しましたし、またことしの初めにもそれを言っておりますけれども、大幅な変動を鎮静させるという所期の目的はすでに達しておる、こういうふうな見方をしております。  それから、今回のこの介入政策、アメリカのでありますが、これが基本的な為替政策転換意味するものではない、昨今の向こう側の要人の言うことを聞いておりましても、基本的な政策の変更はしていない、こういう言い方はいまもってしております。  また、西ドイツの連銀とのスワップ協定による直接介入政策の目的は、あくまでも為替市場の混乱を排除し、投機圧力に対抗することにある、そこで目的は達成されているのだ、こういうような認識のようであります。  アメリカはそういうドル価値の維持だけで、積極的に介入する意図がない、こういうことを基本的に考えているようなのでありますが、その点はどのようにお考えでありましょうか。
  104. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 お答え申し上げます。  御承知のように、昨年初来、円がだんだん上がってまいりましたが、特に九月二十九日のブルメンソールの発言以来急速にわが国が上がりまして、年内を通じまして約二割ぐらい、それからブルメンソールの発言以来一割上がったわけでございます。それで、アメリカの方に対しましてもわが方はいろいろ言っておりましたが、幸いなことに年の暮れにカーター大統領が、やはりドルの全西安に対しても乱高下を防がなければならぬということを言いましたし、それからまた年が明けましてから政府の方でもやはり西独とのスワップの協定の話をいたしました。それ以来ずっとようやく落ちつきまして、二百四十一円程度をいまいっているところでございます。  先般、ストラウス氏が来たときも、石油政策、これの成否は米ドルのあれに大きな影響がある、自分としてはできるだけ早い機会にこれを通すことによりまして、そして基軸通貨としてのアメリカの責任を果たしてまいりたい、こういうことを言っておりましたので、私たちは大体落ちついてきたのじゃなかろうか、このように受け取っておるわけでございます。
  105. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 昨年まではあれだけ厳しい円高に見舞われたわけでありますけれども、この日米通商交渉が一応決着をした、こういう時点から、いま大蔵大臣おっしゃいましたように円高傾向というものが一服しているといいますか、落ちついた動きになってきている、こういうことであります。ということは、まあ見方もいろいろあるでしょうけれども、フロート制のもとでありますから、黒字がどんどん増加していけば当然円高になってくる、一般的にはそうなりますね。しかし、そのなり方がなだらかじゃなくて、あれだけ急激ななり方が起こったということは、アメリカの日本の一つのあり方に対する問題が指摘されたのじゃないか、その中でああいうことが起こってきた。それは通貨問題だけじゃなくて、いま申し上げました通商交渉という問題も含めて起こってきておりますね。ですから、そういうことで、これがこのまま安定したということがはっきり言えるかどうかという問題であります。  それで、日米交渉の内容を見てみますと、十月までこの状況がどう進んでいくか検討しようじゃないか、こういうことで、十月の時点でまた検討してみようということになっております。これだけが原因で安定しているとは言えませんが、少なくともそういう日米両経済大国の話し合いの中でそれが一つの大きな歯どめになっているといいますか、そういうことが考えられるのではないかと思いますが、その点いかがでしょう。
  106. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 おっしゃるように、為替相場は、実勢もありますし、またその実勢を反映して、少なくとも損はしまいという動きがあるわけでございますし、今日、御案内のようにいろいろなユーロダラーその他が相当あるわけでございますから、やはり実勢を中心にして動くことは変わりないと思うのでございます。そういった意味で、いろいろな通貨当局者あるいは責任者の発言というものが心理的に大きな影響を与えておるということは、今度の為替変動相場の推移を見たときにはっきり読み取れるわけでございます。  先般、日米交渉が一応の妥結を見て、来る十月ごろもう一遍見直そうということになりました。これもまた一つの小休止ではないだろうかと思っておるわけでございます。幸いに石油価格は一年くらい上がらないというような様子でございますので、それとまたドルの価値の問題というのも相互に関連してくるのじゃなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  107. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 いずれにいたしましても、わが国は昨年と同じようなパターンを繰り返しては大変なのであります。それだけに世界経済の通貨不安などを引き起こしてはまずいわけであります。そのための内需拡大、いま対策をとっているわけでありますが、それはもう基本的な対策ですから、当然やらなければいけません。それがきちっとならなければ、また通貨不安というものが起こる原因をつくることになるわけでありますから、当然のことだと思います。  それで目下、これはつなぎであります。介入するということは、その対策をとるまでのつなぎにやるわけでありますけれども、ドイツにおいてはアメリカといわゆるスワップ協定を結んでやっておりますね。わが国においてもいまそういう必要が生まれてきているのではないだろうか。日銀の総裁も、昨日そういう意味のことを申しておるようであります。委託介入ということをわが国もやっておるわけでありますが、委託介入ということはこちらが頼んでやってもらうということであって、やはり共同に責任を持って経済の基盤をなす通貨の安定を図るというこの考え方を確立していかなければならないだろう、私はそう思うわけでありますが、その点いかがなものでしょう。
  108. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 御案内のように、スワップ、これは日本も中央銀行間で結んでおることは事実でございます。ただ、アメリカとドイツの間では、今度はアメリカ政府と向こうの連銀との間に新たに結んだわけでございます。このスワップによるところの取引の為替変動による負担は折半するわけでございますし、それから、こちらから委託しますと、その損益は委託した側に帰属するわけでございます。  最近のアメリカ、ドイツ等の景気にもかんがみまして、日本といたしましても、いまアメリカの方にある種のアプローチをいたしておるということだけは申し上げて差し支えないだろうと思いますが、万々そういうことが心配がないように、いろいろの工夫をこらしているということだけ申し上げさせていただきまして、内容については差し控えさせていただきたいと思います。
  109. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 要するに、アメリカがマルクに限定したとはいえ、一応ああいう情勢の中でスワップ協定が結ばれてやっている。アメリカはどうもマルクと円と別扱いにしたのじゃなかろうか、そういう感じが強くするわけであります。したがいまして、いま申し上げたようなこういう情勢の中で安定した方向をとるように、これから努力してまいらなければならないのじゃないか。  そこで、いま盛んに問題になってまいりましたフロート制になってから五年ですか経過いたしておりまして、世界不況の中で、昨年の年頭に当たって、せっかく先進工業国の中で世界経済のために、アメリカにしても日本にしてもドイツにしても、責任を持とうじゃないかというお話があった。それがいま言うような通貨情勢のもとに大変狂ってしまったというかっこうにあります。そこでクローズアップされているのが、いわゆる通貨制度をここで見直したらどうだろうか、そういう時期にもう来たのじゃなかろうか、そういうことで、伝えられるところによりますと、アメリカとドイツにおきましてはいわゆるターゲットゾーンというのですか、そういうことの話も具体的に行われるやに聞いております。このターゲットゾーンの問題につきましてはいろいろ問題はございます。昨今ローザ、前の財務次官ですか、そのことについて具体的な話をしておりますが、もっともっといまのターゲットゾーンの構想から緩めた形で、いわゆる管理されたフロート制ということを考えた上で幅を持って考えていった方がいいのじゃないか。また、通貨当局者である日銀の総裁もことしの記者会見では、そういう方向に進んでいくことは十分考えられる、それはいつやったらいいとか、そんなことは言いませんけれども、そういうふうな見方をとっておりますね。いずれにしても、そういう方向でこれから検討すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  110. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いわゆるローザ構想が出されましてから、米、独、日本の一つのターゲットゾーンのようなものをつくってやったらどうかという趣旨でございますが、これにつきましては、一つの考え方ではあるけれども、現状から直ちにいけるかどうか。またそれによって引き起こすであろう、たとえばEC内部は一体どういうふうに、共同フロートはどうなるのか、あるいはまた日本にいたしましてもこの周辺との関係はどうなるのか、これはやはり実勢がどうなるかということによって決めていくべき性質ではないだろうか。したがって、それは一つの議論といたしまして、いまおっしゃったように幅を持った考え方で、すぐにそこにいくということではなくて、そういう可能性も考えながら為替の実勢を安定的に動かしていく、こういうことであろうと思うのでございます。
  111. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 大蔵省としては松川財務官が米国にいま行っておられるようでありますね。それはやはりそういった情勢を検討するといいますか、またいま申しておりましたローザ元財務次官にもお会いになるという報道がございます。大蔵省としては、すなわちそういうことを検討する時期に来たというふうに考えておられるのでありますか。
  112. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いまターゲットゾーンの問題だけでなくて、これからのアメリカが一体どういうふうに出てくるであろうか、アメリカでもいろいろな考え方を持っている人あるいは行政府あるいは連銀、さらには保護主義的な議員の動き、その他いろいろな考え方があるわけでございますから、その辺を広く情報を収集いたしまして、今後の通貨政策、特に為替政策をやる上に過ちなきを期したい、そういう意味でいま行っているわけでございます。
  113. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それでは次は、経済協力の問題について二、三お伺いいたします。  わが国は大幅な貿易黒字を出しながら発展途上国の経済援助が非常に立ちおくれている。OECDグループの中の欧米あるいは豪州などの各国から対日攻勢が非常に激化している。南側の発展途上国からの対日不信も非常に根強い。報道によりますと、年明けの一月六日にカーター大統領とECのジェンキンズ委員長会談でも、日本に対しまして政府経済援助の拡大が求められております。日本の対外経済協力はいまかつてない厳しい試練にあると思うのでありますが、政府はこれらの諸情勢をどういうふうに認識しておられるのか、まずお伺いしたい。
  114. 園田国務大臣(園田直)

    ○園田国務大臣 昨年の国際経済協力会議等で表明したとおり、今般、数年間にわたり援助の効果的かつサブスタンシャルな増大を図っていく所存であります。総理が施政方針で言われたとおり、今後五年間に倍増以上の援助の拡大に努力したいと存じております。  援助の基本的理念としては、今後とも開発途上国の自主努力を補完し、所得の向上及び人間の基本的要求の充足という目的にかなう協力を提供していく所存であります。このためには産業開発とともに、医療、教育等の分野において、開発途上国の発展段階に応じた援助を実施してまいりたいと存じます。
  115. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 昨年の暮れに外務省から「経済協力の現況と展望」、そして通産省からは「経済協力現状と問題点」、いわゆる経済協力白書と申しましょうか、そういうものが発表されております。一つのテーマについてこういう二つのものが出てくる、同時期にまた発表される、私は非常に珍しいケースだと思うのですね。今回初めて外務省が独自のこういうものをお出しになった目的はどこにあるのか、お伺いいたしたいと思います。
  116. 園田国務大臣(園田直)

    ○園田国務大臣 お答えいたします。  通産省から発行されております「経済協力現状と問題点」、これは白書ではございませんが、各省とも参画し、わが外務省も参画した、年々出しておられる白書に匹敵する権威あるものであります。わが外務省が今度出しましたのは、「経済協力の現況と展望」というものの概要を公にしたわけであります。実は、通産省の事務当局の方では、権威あるものをわが方が出しておる、外務省も参画しているじゃないか、それにそんなものを出したらまた国会等でやられるぞ、こういう話もあったわけでありますが、私は以下三点の理由からこれを出したわけであります。  一つは、政府、行政部内で意見が統一することも大事でありますけれども、私としては、このような停滞から混乱、新しい秩序をつくるという段階には若干のさざ波があって議論をした方がよいという考え方を持っております。  もう一つは、武力の背景なき日本の外交の武器は、経済と技術の協力であります。したがいまして、この経済と技術の協力について、国会なりあるいは関係のある通産省なり大蔵省、また広く国民に向かっても理解を求めたい。  もう一つは、今度の日米経済問題あるいはヨーロッパの問題等で私が一番感じましたことは、国内の産業構造と国際経済の動きと非常に差がございます。この点が非常な苦しみとなって出てきたわけでありますが、したがいまして、いろいろな世界経済、対外的な経済の問題では往々にして各省の意見がかけ離れております。今度、日米経済その他の経済問題で、農林、通産、大蔵、外務省の意見が、だんだん議論をするうちに、苦しんでいるうちに詰まってきた、こういうことを考えますると、わが外務省の第一の任務は、世界経済方向を現実に把握をして、これを国内に向かって反証程度までとはいかなくとも、ある程度の方向を示すことがわが外務省の仕事である、私はこのように考えておるわけでありまして、以上三点から、実は事務当局から、いかがいたしましょうかという大臣の判断を受けたわけでありますが、みんなが一生懸命苦労してやった、現場の体験からにじむ経験であるから出せ出せとあおった方でありまして、私や通産大臣が議論をしたり、総理の軍配をいただいたりするほどのものではなくて、横綱と幕下の下げいこのつもりで御理解を願えれば結構でございます。
  117. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 これは通産省が出して、いるいわゆる白書と言わせていただきますが、それにつきましては二十年来ずっと各省で、いま相談して出してきた権威のあるものであると外務大臣はおっしゃいました。やはりこれは、横の十分な連絡をとってお出しになってきたんだろうと思うんですね。対外的な問題に関する問題でありますから、いま大臣がおっしゃったように議論をし、よりよい方向に持っていくための見方を検討していくために出したんだということであれば、その方向では私は別に問題はないと思うのでありますけれども、やはり対外的な問題でありますから、それぞれ権威ある各省から出されますと、対外的にどういう認識を持つものであろうか、国内だけということじゃなくて、これはいろいろな誤解を招いてもいけません。そういう意味から、これは通産省、外務省もそういう担当部門を持っていらっしゃるわけですから、ここは十分にお話し合いをして将来これをまとめ上げていく。で、通産白書に盛られていない基本的姿勢だとか、いろいろなものはそれにプラスしていくとか、どっちがどうだということじゃなくて、一本の考え方に持っていく方が適当ではないかと思われるのですが、外務大臣、通産大臣、いかにお考えでしょうか。
  118. 園田国務大臣(園田直)

    ○園田国務大臣 御注意はごもっともであります。通産省の出されたものと外務省が概要を出したものとは、現実の把握については、理念、数字ともそう食い違いはないわけであります。ただ、外務省の出した方は中期、長期の展望について若干の差があるかもわかりません。しかし、こういう問題もよく通産省と話し合って、ただ、外務省が現場で体験をした認識、こういうものは、理解を求めるために将来皆様方に訴える場所だけは与えていただきたいと存じます。
  119. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 そこで、この対外経済協力問題について総理にお伺いいたします。  実は、総理がASEANですか、CIECですか、とにかく首脳会談でもお約束をなさっておられますね、五年間に倍増する、こういうことであります。そういうことについて外務省の展望の中では、こういうふうにやっていかなければならぬのだという一応の試案といいますか、これを出されました。総理が、これも日米共同声明の中にも織り込まれておりますけれども、これはそういうところでお約束なさってきたんですから、これは願望である、先ほど言った目標値である、こういう意味なんですか。それとも、これははっきり諸外国に対してコミットメントなさったことなんでありましょうか、お伺いいたします。
  120. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 わが国といたしましてそういう政策意図を宣言をいたしたわけでありまして、それに伴って、それは責任を持って実行すべきものである、このように考えています。
  121. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それで総理、いままでもわが国はGNPの一%に、おくれているものを引き上げるのだということは内外ともに明らかにしてまいりました。しかし、なかなかそういうことは守られなかった。いろいろな事情はあります。しかし、今回の場合は、これまた、総理が対外的な、あるいはまた公の場所でそういうお話をなさってきておられるわけですね。また、それに対しては国際信用の問題でもありましょう。そういうことで、やはり具体的なこの計画をお立てになるべきではないか。外務省のこの試算を見てみますと大体五年間というわけでありますから、八二年まで平均二〇・四%伸ばしていってやっと諸外国の平均になる、こういう試算がなされておるわけであります。ことしは予算はいままでにない大変な伸びようでありますから、それに近づいた形をとっておりますけれども、やはりわが国の、以前と違い大きな国際的責任が問われている立場でありますから、これに対しては明確な計画をおつくりになり、そしてそれに対して実行されるのが至当ではないかと思われますが、それにつきまして御意見を承りたい。
  122. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 まさに、それはそのとおりに心得ております。五カ年間に倍増といいますと、大体一五%ずつ予算をふやしていきますと倍増になるのです。ことしは一五%じゃありません。一五・八というところになっておるわけでありまして、私は、対外経済協力、これはわが国とすると非常に重要な問題だというふうに考えておるのです。つまり、平和ただ乗り論というのがありまして、日本世界の平和に貢献するところがないじゃないか、こういうようなことがありますが、やはり軍事力をもちまして平和に貢献する立場にないわが日本とすると、一番大事にしなければならぬ問題は国際経済協力である、このように考えておりまして、ことしの予算でもまず予算編成の当初から、五十三年度においては〇・三%ODA援助をするということを頭から決めまして、それを天引きして予算化する、こういうくらいな措置をとったわけでありまして、国際的に宣言いたしました、五年間に倍増以上ということは、着実に実現していきたいと思いますし、また、いけると思います。
  123. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それでは、時間の関係もありますので、次に経済、財政問題についてお伺いいたしたいと思います。  いま第二次補正予算が審議されているわけでありますが、五十二年度の経済見通し、これは政府が改定されておりますが、すでに民間におきましても、そこまでは行くまい、こういう見方になっておりますし、すでに経常収支におきましても改定を大きく上回ってきている情勢にあります。  そこで、経済企画庁長官にお伺いいたしたいと思いますが、果たして改定見通しのようになるかどうか。これは予測でありますからわからぬと言えばそれまでのことでありますが、すなわち、政府のそういう見方が狂ってまいりますと、これまた、この予算見方も狂ってまいるわけであります。したがって、その点をごく簡単で結構であります。内容にわたってそれがどうなったこうなったという論議をするつもりはありませんので、見通しについてひとつお伺いいたしたい。
  124. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 五十二年度の経済見通しを五・三%と改定いたしたわけでございますが、最近における在庫の状況、それから住宅着工の様子、それに御審議いただいておりますいわゆる十五カ月予算の影響等々考えまして、ほぼこの程度の目標を達成するものと考えております。
  125. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 そこで、総理にお伺いいたしたいと思いますが、総理は五十三年度の予算を編成するに当たって、昨年暮れから申しております。五十三年度はいわゆる十五カ月予算、そういうことを強く打ち出していらっしゃるわけであります。それは五十二年度の経済見通しが大きく狂い、実績が非常に落ち込んできた、ですから何としても五十三年度には、総理の言うトンネルを抜けて安定成長方向へ持っていきたいという、この意気込みはわかるのです。私は、その考え方そのものが誤りであるとかそういうことではありません。しかし、表向きはそういうふうに威勢よいように申しておりますけれども、第二次補正を組まざるを得なくなった、これは十五カ月予算を編成してそれに対応するためだというよりも、やはり五十二年度の経済運営の失敗が実勢的な姿でそこにあらわれてきて、やむにやまれず第二次補正予算を組まざるを得なかったのではないかと思いますが、どういう御認識ですか。
  126. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 確かに、広沢さんのおっしゃるような一面があるのです。あるのですけれども、第二次補正の主たる目的はそうじゃないのです。五十三年度において実質七%成長を実現する、そこに目標点を合わせているわけです。つまり、五十二年度補正は編成いたしますが、皆さんにいま御審議を願っておって、これを早く成立させていただくにいたしましても、月末ですね。それから契約をする、それから手をつけるということになるわけでありますが、五十二年度のうちにおきまして経済効果としてこれが実効をおさめるという面は非常に少ないと私は思うのです。ほとんど大部分が五十三年度において経済効果を発揮する、こういうことになる。  なぜそういうことを考えたかというと、五十三年度予算が三月いっぱいに成立をする、こういたしましても、年度初頭でありまするものですから、いろいろの準備は急ぎまするけれども、それにしても五十三年度予算が直ちに効果を発揮するという部面が少ないのです。ですから、五十二年度においてそれの先行予算をつくっておいて、それを動かしていく。それがことしの二月契約になる、三月契約になる、そしてまた実行に着手される、着手されたその実際の動きというものは四月、五月、そういうところで出てくるわけですが、それに乗って五十三年度予算がまた動いていくということになって、五十三年度は高い成長が実現される、こういうことを考えてお願いをしておるわけであります。
  127. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 いま総理説明されたように、確かに、公共事業を中心として組まれた補正予算が五十三年度の橋渡しをする、そういう一面はある。そういう向こうへ橋渡しをするという役割りがあることは認めます。しかし、財政運営の中で失敗したことも認めていただかなければならぬのですよ。失敗はなかったのだ、ただちょっと息切れがするからそこを継いでおかなければまずいのだ、こういう感覚というものはいかがなものかと私は思うのですね。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 ということは、この予算の中を見たらわかりますように、税収の不足が八千六十億。これは税収見積もりの間違いなんですね。そうして、そのために第一次補正のときには赤字を、ちょっとでありますけれども、減らしましたよ、こういうふうに言っておりましたね。ところが、いま、御承知のように、この補正のために赤字国債を一兆百九十億出さなければならぬ。そして、そのときまで盛んに言っておりましたいわゆる三〇%のめどというものも、もう突破してしまわなければならない。三四%になってしまった。それは、いまそうなったのじゃなくて、もうそういう状況にあったのです。総理は、先ほど午前中の質問の中でも、円高の影響によってそういうふうになってきた、こうおっしゃっていますね。確かに円高においてもそういうことはあったかもしれませんけれども、決してそれだけじゃありません。円高の影響というのは、実際に税収面それからいろいろな面に大きく出てくるのは、これは五十三年度に影響が出てくると思うのです。どうですか。  そういうことから考えていきましても当然――われわれは昨年も、すでに予算が成立した後、経済の実態からしてこれではなかなか景気回復しない、六月においては大型補正予算を組まなければならぬのじゃないかということも、わが党としては提案いたしました。そんなことを繰り返しても始まりませんが、その当時総理は、すぐによくなるだろうというような見通しでだんだんにおくれて、九月になって補正を出す決意を固められた。ところが、そのときの経済指標によりましても、いわゆる設備投資はもう計画が大きく狂ってマイナスになっていっている。四-六もあるいは七-九もそうですね。ですから、民間経済機関はどういう見通しを立てたかというと、あるところでは、景気はなだらかな回復過程どころじゃない、二番底に落ち込んでいくかもしれないという見通しを立てているところだってあったわけであります。そのときは円高が起こっておったかというと、そうではありません。その後のことなんですね。どうでしょう。この事実からして、これはやはり歳入欠陥を穴埋めするためにやむを得ず組んだ。数字というのは正直なものです。必ずこういう実態としてあらわれてくるから、どういう言い方をしようとも、そういう認識に立って五十二年度の予算編成あるいはそれの展望というものを考えていかなければならない。ただこっちへ引き継いでいく、その効果はないとは言いませんよ。その反省がないと私は思うのですが、いかがですか。
  128. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 広沢さん、いま十五カ月予算というお話だものですから、私は十五カ月予算、つまり公共事業、この予算のことだけを申し上げたのですが、第二次補正は、公共事業関係する十五カ月予算という考え方に基づく景気対策予算と、いまお話しの財源欠陥補てんのためという要素が主になっておるわけなのであります。財源欠陥の問題につきましては、これは円高が起こらなくてもかなりの欠陥が出てきたのだろう、こういうふうに思います。まして円高ということになりまして巨額の欠陥を出す、こういうことになったわけでありまして、その点は別に私は、お話の筋と違ったことを考えておるわけじゃございません。
  129. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 それでは、もう一点だけこの補正予算に関した質問をいたしたいと思います。  この中に決算調整資金繰り入れ二千億とあります。これは大蔵大臣にお伺いいたしますけれども、これは制度的にはいいかいけないかということになりますと、いろいろな議論もあるでしょう。外国にもそういった例もあるし、財政法上から見てもいろいろな議論もあると思うのですけれども、いまこういう制度をつくらなければならぬ、この基本的なところ、具体的な問題は、次の機会がありますから、また取り上げてお話ししますが、基本的な考え方が誤っているのじゃないかと思うのですよ。ということは、財政法第四条第一項、これは御存じのとおり、経常支出は経常収入で賄う、これは当然の話ですね。これを守っていれば赤字ということはなかった。しかし、これだけでは誤解されます。――これは財政ですから、時の経済情勢に合わせて弾力的に運用をしていかなければならないためにただし書きというのがついております。それは当然、私もよくわかります。経済変動に合わせて財政が弾力的な運用を図る、これは当然の話であります。しかし、これは総理が大蔵大臣のときだったと思うのですが、四十年に初めて公債を取り入れられましたね。ところが、それ以来ずっと、それが当然のことだという形のように、財政は公債依存型にだんだん傾斜していきました。五%なんという総枠のめどを示したりして抑えたときもほんの一時期ありましたけれども、それが歳入に占める割合が一〇%程度にだんだん上がってきた、こういうことであります。したがって、いまこういう財政の大変なときが来たときに弾力的な運用をやろうといってもなかなかそうはいかぬ。根っこがだんだんふくれ上がってきたわけでありますから、それがどうもいけない。そういうような意味からこれは見通しもあいまいになってくる。そこで、決算調整資金制度というものをつくって、その中で何とか調整しなければやっていけない、こういう形になってきたのじゃないか。  さらにもう一つは、これは五十三年度予算でのことでありますけれども、いわゆる税の年度区分をこれは五十四年五月分まで繰り入れて、いわゆる十三カ月、そういう見方をやっておりますね。しかし、これとて私はやはり問題があると思うのです。ということは、結局、法人税というのは、大体多くは三月末決算で、そして四月、五月に入ってまいりますね。それがいままで頭であればその調整は済んだでありましょうが、それが今度は年度の最後の税収として考えられるということになりますと、これは景気の変動で大きく動きます。そうすると、その調整も考えなければならぬというような意味も含まっているのではないかというふうに考えざるを得なくなってくるわけであります。したがって、時間の関係でまとめて申し上げますけれども、やはりこれは財政再建の一つのセットとして考えていかなければいかぬ。ただ、いまの財政法から、だんだん、これは仕方がない仕方がないという形で枠を広げていくことはいかがなものだろうか。それならば当局は一体、財政法を変え得ると考えているのか。もう仕方がないから変える。いや、そうじゃないのだ、これは守っていくのだ、こういう考え方であるならば、やはりこういういろいろな財政危機によって起こってきたその中においての対応というものは、時限的な問題で処理するという考え方があってしかるべきではないだろうか、そう考えます。簡単にお答えいただきたい。
  130. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 財政法の改正という問題は現在の財政制度の基本に触れる問題でございますので、現在のところは考えておりません。  それから、いま決算調整資金をつくるのは便宜的あるいは臨時的ではないかというお話なんでございますが、実はそうではないのでございます。御承知のように、わが財政法では、剰余金が出ましたときには、その剰余金の処理については規定するところはあるわけでございます。しかし、マイナス剰余金が出た場合の規定が実は欠けているわけでございます。これは本当を言いますと、財政制度としては、いままではとにかくそれでやってこれたからよかったわけでございますけれども、制度として考えてみるとどんなものであろうか。これに関して財政審の方でも、制度として問題にしておったところでございます。  それから、実際問題といたしまして、いままでは決算上赤字が生じたということはございません。しかし、やりくりをしてようやくやったという例は、四十九年に御承知のように、三升の年度末までに納税義務が発生して四月までに収納した分について、これを四千億ばかり取り込んだわけでございます。あのときが一番危険な状態であったわけでございます。  最近考えますと、高度成長時代はもう過ぎまして、そしていま減速経済、しかも変動下にあるわけでございます。その経済の変化というものが補正予算を組む段階で予見されればこれはよろしいのでございますけれども、こういう経済情勢でございますから、年度末が終了してから、これから生するということもあるわけでございます。具体的に申しますと、もう広沢さんよく御承知でございますが、税収の方は、一般の経済の動きから約半年以上ずれてくるわけでございます。今度出しました八千六十億というのも、内容を見てみますと、やはり所得税、それから法人税であるわけでございますけれども、これを考えてみますと、やはり円高によるところの、円ベースでのあれが非常に少なかったという問題、それから九月決算があのように減益になるということは、十月の段階では七月末の税収しかわかりませんで、あのときは進捗率は大体前年よりちょっと上であったわけでございます。そういうことがございまして、今後一月に入ってまいりますのは十二月のボーナスが入ってくるわけでございます。大部分の税収というやつは。これがなかなか見通せないのでございます。二月になりますと、十二月末の中小法人の決算の分が二月に入ってまいります。三月に来ますのは申告所得税が入るわけでございます。いずれもこの円高の影響なりあるいは最近における企業のミクロの悪さというのがどれだけ響くか、なかなかわからないところであるわけでございます。  そういったことで今度、いまの時点で見込みまして八千六十億計上させていただいておりますけれども、なお今後の経済変動というものをやはり考えなければいかぬ。その場合には、剰余金があったときだけどうするかということでなくて、マイナス剰余金についても恒久的制度として考えておく必要があろう、こういうことで今度設けさせていただいたわけでございます。  なお、先ほどの来年度の五月分税収取り込みとの関係でございますが、これは理屈で言いますと余り関係ないのでございまして、これはまた後ほど御質問があれば、それについて申し上げます。ただ、この五十四年度から三月末まで見通さねばならぬ、そういう意味で一月よけい、ある見積もり時点から見ると一月先を見なくちゃならぬという困難さがあることは、御指摘のとおりでございます。
  131. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 この制度的な問題は、大蔵委員会に法案が提出されておりますので、そこで議論がございましょうから、一応考え方を私は申し述べておきます。  そこで、五十三年度予算について、これも具体的な問題は、時間の関係できょう触れられませんので、後日に譲りたいと思いますが、私は、この予算の編成経緯から見まして、総理、非常に場当たり的ではないか。場当たり的にならざるを得なかったのかもしれません。それは、初めは財政再建緊縮型というのですか、ですから概算要求の範囲というのは一三%程度に要求を抑える形で作業が進められていた。九月の時点で総理方針を変えられて、補正を大型に組まれた。いわゆる財政再建と景気浮揚、こういう考えでありますね。それから、その後の円高によって、もう財政がすべてだ、経済がパンクして財政がというような考え方で超大型予算、それに対して総理は、異常、非常事態、こういう表現を使われておりますね。一体それは何に対して非常なのか、あるいはどこが異常なのか、そういう認識の問題も私ははっきりしておかなければならぬと思いますし、そういうことであればどういう形が正常であるか、これも明確にしておかなければならぬと思います。  そこで、本会議の代表質問におきましても問題が提起されておりますけれども、いわゆる財政の見通しは今後どうなるか、あるいは経済見通し、いわゆる計画はこのままでいいのかという問題の提起がございます。承りますと、これから五十七年、まあ五カ年財政計画を立てていく。財政計画、どういう形のものか知りませんが、出てこなければ論議になりませんけれども。ですから私は、ここでもう一つ申し上げておきたいことは、いままで五十一年度に出された、財政試算的なものはこんなものでございますよという数字を並べて、足し算と割り算を知っている、あるいは掛け算を知っている者があったらだれでも組めるような、この作業のために努力していらっしゃる方には申しわけないのですが、そういう形になってしまったのでは、これはもうえらいことである。やはりそういう計画は、この異常事態とおっしゃった、財政的にもそれは私はあると思いますから、それに対してどう対応していくのかという具体的な理念も含まれていなければならないと思うわけです。  それから、経済企画庁長官にもお伺いしておきたいのは、やはりこの五カ年のいわゆる計画、財政計画をお出しになるということになれば、当然その裏づけとなる経済計画も変えていかなければなりません。設計図があってその上に財政というものは立てられていく。財政がひとり歩きするなんということはあり得ないわけでありますから、そういう考えに基づきますと、いわゆる五十年代前期経済計画というものは、これはもう財政的に考えても変えなければならない。これは時間の関係一つ一つ、大いに狂っている点、大枠も、あるいは各項目においても大変な狂いが生じているという点を指摘いたさなければなりませんが、そういう面も考えましてこれは変えていかなければならない、こういうふうに思うわけであります。ですから、そういう異常事態というのをどういう認識をしているのか、それから、それに立って財政的に言えばそれをどう打開していこうかという計画はどうなっておるのか、それにつきましてお考えを承りたい。
  132. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 総理から御答弁いただく前に、私の方でいま中期財政収支試算をつくっておりますので、概略申し上げたいと思います。  いま経済が非常に異常な事態だと申しますのは、挙げて私はミクロ経済が、いろいろな経済指標からいいましても、また経常利益率からいいましても、経常利益額からいっても、まさに異常であると思うのでございます。その反映がまさに今度の財政にほとんどあらわれているということではないかと思っているのでございます。  四十九年から五十三年までずっととってみますと、歳入の方は大体実勢を反映しておりますので、伸びは年率九%でございます。歳出の方は従来の構造がありまして、やはりなかなか熾烈なサービスの要求がございますので、一九%出ておるわけでございます。その差が、当然のことでございますけれども国債の累増になってあらわれているわけでございます。一刻も早くこれを脱出するために思い切って公共投資をふやしていこうというのでございます。それで、これの効果に大きく期待いたしているのでございますけれども、しかし、残念ながら、そのことのために実質三七%、そのうち特例公債が二四%になるわけでございます。特例公債は、それが消化できょうができまいが一刻も早く脱却すべきものであろう、本来、企業会計の原則から申しましても国の会計でも大した違いはないわけでございまして、当然人件費とかそういうものでございますから、これは一刻も早く脱出すべきであろうと私は思っておるのでございます。もしこのままで脱出することができれば、現在の時点で公債の依存度は一八%になるわけでございます。しかし、これがなかなか一挙にできないことは、いずれ財政収支試算でいろいろ御討議を願い、その論議を通じて国民の皆様から御理解を得たいのでございます。  しかし、それはいま経済企画庁の方で前期の分の後ろの分、五十四年、五十五年の姿を描いていただいておりますけれども、その延長線上のやつも仮にいま描いていただきまして、それをもとにいたしましてわれわれの方は財政収支試算を考えているのでございます。これは今度は、もとより計画というわけにはなかなかまいりかねることは、そのときの経済情勢あるいは社会情勢によって決められることでございますので、計画を、いつどのような増税をやるとか、いつどのように歳出を切るとかいうことは申しませんけれども、しかし、姿は十分わかるようにお示しし、そして論議を深めていただきたい、こう思って、いろいろな極端なケースあるいはその組み合わせによるケース、こういったものを出しまして、少しでも実感が出るようにしたいと思って、目下一生懸命試算をやっておるところでございます。
  133. 広沢委員(広沢直樹)

    ○広沢委員 もう時間がありませんので、最後に一言お伺いしておきたいのですが、また、経済企画庁長官の答弁が残っておりますので後から一緒にお願いいたします。  私は、ああいう財政試算、前みたいなものを出されたのでは、これは審議するにしても問題があると思うのです。ただ、財政計画というもの、いままでのような、財政の運用の基本というものがどうあるかということも織り込んだ形での計画を立てるべきである。いままでは高度経済成長ですから、投資が投資を呼ぶ、投資型財政ということでやってきた。それはそれなりの効果はあったと思うのですね。ところが、四十八年から御承知のように福祉ということが強く言われて、それじゃ福祉元年にしていきましょう、今度は行政サービスという面に力を入れていこうという形だったのですが、いまのような状況になってきておりますね。ですから、今年度予算に見られるように、投資へ力を入れなければならぬという形になってきている。私は、これから五十年代後期、財政再建ということであれば、それと同時に、どういうふうな財政をお使いになるかということを含めて、これはやはり財政計画というものをおつくりになって国民に示すべきだ、こういうふうに考えるのです。ただそのときの試算で、間違えましたから延ばしますというようなことでは、これは国民のこれからの理解は得られるものではありません。それが政治不信につながっていくわけでありますから、十二分に御検討してそういうことをおやりになる計画があるのか、あわせてまず経済企画庁長官からお答えいただいた上でお願いをいたしたいと思います。
  134. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 昭和五十年代前期計画のうちで、雇用でありますとか民間需要あるいは財政等に相当大きな狂いが出てまいりましたことは、ただいま広沢委員の言われたとおりであります。しかし昨年末の経済審議会では、だからといっていわゆる長期安定路線のいろいろな課題というものは変わるわけではないであろうから、この際内需の振興を図ることによって路線へそういう狂いをだんだん戻していくことが必要ではないかということと、なおしかし計数的にはかなり違ってきているので、試算をする必要があるということでございました。ただいまその試算の作業を、幾つかのケースを想定いたしましていたしております。  それで、大蔵大臣の言われましたいわゆる財政の方の計画が、その試算のフレームの中ででき上がってくる、こういうふうな、その部分は共同の作業になっておりまして、やがてお目にかけることに仕事を急いでおるわけでございます。
  135. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 今度の予算は、これは臨時、異例、こういうふうに申し上げているのですが、この臨時、異例の形からどうやって脱出するか、これから先々の展望、これが非常に大事な問題になってくるわけです。  そこで、お話しのように、まず財政の背景であるところの経済が一体どうなるのだろう、こういうことで、前期五カ年計画を持っておりますが、二年経過しようとしておる。その二年の間にかなり実際と計画はずれておりますから、それを踏まえまして、これから残された三カ年がどういうふうに動いていくだろうかということを、いま試算をいたしておるわけです。それを背景といたしまして、財政の方の試算をする。しかし財政の方は、さあどういう政策をとるか、たとえば歳入の面におきまして税をどういうふうに制度的に変えていくか、増税をどんなふうに考えるかという大きな問題があります。それから歳出をどういうふうにするか、そういう問題もある。ですから、その歳入、歳出面のかじのとり方によりまして大きく動いてくるわけです。  そういうことで、計画と言って一つの展望というわけにはまいりませんけれども、幾つかのケースを想定いたしまして、そして試算をしてみよう、こういうふうに考えておりまして、いまなるべく早く委員会に提出いたしたいというので作業を急いでおる現状でございます。
  136. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 これにて広沢君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田高敏君。
  137. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私は、午前中の石橋委員質問につきまして、総理に対する質問から入る予定でありましたが、現職大臣の中に生々しい法律違反の言動をやっておる問題が起こってまいりましたので、その問題から、そのものずばりで質問に入りたいと思います。  実はきょうの発言表の通告の中には特に厚生大臣という要求はしておらないのでありますが、全大臣という要求でありますから、そういう枠の中で厚生大臣にお尋ねをいたしますが、小沢厚生大臣は去る一月十一日、仙台市でいま行われております仙台市長選挙に向けて仙台に参りまして、仙台市の市民会館で、横田陽吉君の選挙応援に行ったかどうか、またその演説会場で政治問題になるような発言をした記憶があるかどうか、このことをまずお尋ねいたしたい。
  138. 小沢国務大臣(小沢辰男)

    ○小沢国務大臣 一月十一日、仙台市で行われました党主催の演説会に出席をいたしました。なお、発言内容につきましては、その表現で、いまいろいろ反省をいたしますと、若干穏当を欠いたものがあったと思っておりまして、深く反省をいたしております。
  139. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 いまの段階において考えてみたときにいささか反省をしておる、いささか反省をしておる程度であるかどうか、ここに私はすでに問題があるように思います。  私は、時間の関係がありますから、ここに控えを持っております大臣のそのときの発言内容、ざらには、この発言それ自体につきましてはテープでとっております。これは後ほど必要があれば、厚生省の官房長の方にも渡しておるわけでありますから、私がいまから申し上げることはテープからとったことでありますので、そういうことを前提に御承知願いたいと思うわけであります。  それによりますと、この横田君という候補者に対して――実は今度の五十三年度の予算に関する発言をしておるわけでありますが、「横田さんがいるから厚生省の予算はみんな仙台へ持ってきたのだと、大体今度新しく国立仙台病院に救命、救急センターというものをつくることになっている、これは実は大阪と競争でやりました、大阪市は関西の雄都であるから、どうしても、大変ないま交通とかいろいろな問題が起こっているし大変だからぜひくれと、ところが私が着任して、大阪の経済界の巨頭が大ぜいそろって来まして、どうしてもつくれと言ってこられたので、なるほど東京につくったので、大阪にその次かなと思って、事務当局を呼んで聞いてみたら、局長以下、これはだめです。どこだと言ったら、いや仙台です。これは横田さんに言われて仙台に決めちゃったのです。大臣が言ったってこれはだめだと言うのです。いや、とにかく大変なものです。私が大臣で決めなきゃいかぬのに、私じゃなくてこっちが決めているのですからね、こんなひどい先輩あったものじゃないです。」さらに、「おまえさん早く市長になってどんどん持ってこい、そしたらうんと補助金やるから、がんばってやれと、こう言ったわけであります。」これはきわめて明確であります。  このような発言が、現職大臣であって、しかも私、非常に残念に思うことは、小沢大臣の過去の経歴を見ればわかりますように、小沢さんは国家公務員の地位にあった人です。したがって、このようないわば公職選挙法違反にかかわるような、そういう発言をやればこれは明らかに選挙法違反であるということを十二分に知っておる大臣が、こう言ったりこうやったら悪いということを知ってやるのは、私は一番悪いと思う。そういう歴然たる利益誘導の発言をしておるわけでありますが、私は、まずここで大臣に、私がいま紹介をした発言と変わりのない発言をしたかどうかということを、念のために確認をしておきます。  続いて自治省から、このようなことは当然、公務員等の地位利用による選挙運動の禁止の法律違反に該当すると思いますし、買収及び利害誘導罪の、これまた公職選挙法二百二十一条にも抵触すると思うわけでありますが、それに対する見解を量りたいと思います。
  140. 小沢国務大臣(小沢辰男)

    ○小沢国務大臣 私も、実はこちらへ帰りまして、ただいまのテープを念のため全部聞きました。それで、ただ、いまお話しになりました中で、一番最後の話は、私はどうもこのとおりの発言ではなかったという記憶でございます。それから、最初の点も若干違うような感じを持っておりますが、大体、趣旨としてはこういうような内容でなかったかと思っております。
  141. 加藤国務大臣(加藤武徳)

    加藤国務大臣 ただいま御指摘のございました集会が、去る一月十一日、仙台市民会館で行われたことは承知をいたしております。ただ、かような集会が事前運動になるのかどうか、また、演説の内容等が公務員の地位利用であるか、利害誘導罪であるか、かようなことにつきましては、正確な事実関係に基づいて判断をいたさなければならぬのでございまして、私は、ただいま、さような事実関係を把握いたしておりませんので、政府委員から答弁いたさせたい、かように存じております。
  142. 鈴木政府委員(鈴木貞敏)

    ○鈴木政府委員 お答えいたします。  先ほどの御質疑の件につきましては、宮城県警察におきまして慎重に判断いたしまして、主催者、これは自民党県連及び新しい仙台をつくる市民の会でございますが、それぞれの責任者の方に出頭を求めまして、事前運動の疑いがあるということにおきまして、一月の十八日にこの責任者に対しまして警告をいたしております。
  143. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 警察の今日段階までの調べではそういうことなんですが、それを前提にして自治大臣の見解はどうでしょうか。  また、私、時間の関係もありますから質問をかためてやりたいと思いますけれども、五十三年度の国の予算は、このようなからくりの中で決められたのかどうか。いま予算の重大な審議をやっておるわけですけれども、こんなことで予算が決められるということになれば、率直に申し上げて、私は真剣に予算を審議する気持ちにさえならないわけであります。全く下克上というか、ボス取引的なもので、大臣も知らない間にもう先に決めてしまっておる。こんなことでは大臣は、それでは、いつかだれかが言ったように、厚生省であれば厚生省の予算に対して盲判を押しておるのかということにさえなるわけでありまして、こういう形で予算が決まったのかどうかということを、ひとつ責任ある答弁を求めたいと思うのです。
  144. 小沢国務大臣(小沢辰男)

    ○小沢国務大臣 それは五十二年度の予算でございますので、五十二年度の実行上、国立二カ所でございますので、二カ所のうち一カ所は九州ブロック、それから一カ所は仙台国立病院で東北ブロック、こういう方針はもうすでに決まっておったわけでございます。
  145. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私は、いまの答弁を聞いておりますと、きわめてずるさがあると思うのです。いまここで審議しておるのは、五十二年度の補正もやっておるんですね。そうでしょう。五十二年度の補正は、五十二年度の本予算とのかかわり合いでわれわれは態度決定しなければいかぬのです。それでは、五十二年度であればこういう決め方をしておってもいいということですか。それでは私の方で五十三年ということは訂正しますが、五十二年はこういった、大臣が演説会で発言をしたような、そういう内容で決めたわけですか。
  146. 小沢国務大臣(小沢辰男)

    ○小沢国務大臣 大変そこが、実は最初におわびいたしましたように、私の理解が、たまたま五十二年度で九州と東北、東北地区のブロックとしては仙台国立病院、こういうふうに決まっておったものでございますから、それが一つのあれとして、私の頭の中にそういうような誤解ができまして申し上げたわけでございまして、まことに遺憾であると考えております。  決定の内容といいますか方針につきましては、それぞれブロックにおいて国立病院として十分な機能を備えているものに決定をされているわけでございます。また、今後ともそういうような方針になると思います。
  147. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 大臣はこの事実について、まことに申しわけがなかったと陳謝の意を半ば表しかけたような、そういう答弁でありますが、私は、この内容を見れば、われわれ法律の専門家ではありませんけれども、これはもう明らかに公職選挙法違反になるあるいはその疑い濃厚である発言だということは、もうはっきりしておると思うのですね。そういうことについては、どうでしょうか、もっと率直に、間違いは間違い、行き過ぎは行き過ぎ、そういう謙虚な態度がなければ、一国の重要な地位にある大臣として、政治に対する不信感というようなものもそういう不謹慎な態度の中から増大されてくるのではないかと私は思うのですが、今日ただいまの率直な心境を発表してもらいたい、こう思うわけであります。  そこで大臣に申し上げますが、いま披露しましたこの内容は、あなた自身がまじめに考えて、公職選挙法違反の疑いがある、こういうふうに御判断なされるかどうか、そのこともあわせてお聞きをしたい。  さらに、私は総理にお尋ねをするわけでありますが、こういう内容のものが公然と仙台において行われた、現職大臣においてなされた、こういうことになれば、私はこれはきわめてゆゆしいことだと思う。そういう点で、予算というものはこういう経過で決められたりする筋合いでないと思うのですが、総理の見解をお尋ねすると同時に、小沢厚生大臣の再度の意思表明いかんによっては、任命権者である総理として罷免の用意があるかどうか、このことについてまで、ひとつお尋ねをしておきたいと思うわけです。
  148. 小沢国務大臣(小沢辰男)

    ○小沢国務大臣 最初に申し上げましたように、私自身反省をいたし、深く遺憾の意を表明いたしたいと存じます。
  149. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 本件は、あの演説会のあった直後だったと思いますが、そういう話を聞きまして、厚生大臣から委細を承ったのでありますが、私も大体、藤田さんの御指摘のような筋の話のように聞いております。また、小沢大臣は、私の話に対しまして、遺憾の意を表する、こういうことでありましたので、私は、自今厳重に慎んでもらいたいという注意を発しておるわけであります。大変遺憾の意を表しておりますので、今後は厳重に慎んでいただきたい、かように考えています。
  150. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私の持ち時間から、この問題でこれ以上私も時間を費やすことはできませんが、しかし、本質的な問題として、そういう答弁があったからそれでは了承しようというようなものでもないと思うのです。したがって、私は、この問題の最終的な処理については理事会でひとつ検討してもらいたい。
  151. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 藤田君に申し上げますが、後刻理事会においていろいろと御相談をしてみますから、どうぞこの点を御了承願います。
  152. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 それでは私、本論に入りますが、けさ方来、石橋委員を初め同僚の委員からもそれぞれ質問がございましたが、私も、以下質問を申し上げる諸点は、主として財政問題、経済問題、なかんずく五十二年度の補正を中心として質問してみたい、この思うわけであります。  その前に、きわめて総括的な質問ですが、二点質問をしてみたいと思うのです。  その一点は、これまた、けさ方来の質問の中にもしばしば出てまいりましたが、総理の政治発言、なかんずく国会における発言に対する政治責任の問題であります。  私、ここのところ、福田総理の代表的な発言を、福田語録ではありませんけれども、少し拾ってみました。そうしますと、たとえば景気問題に関する発言としては、昨年の当初来、一昨年の補正予算から昨年の本予算、いわゆる十五カ月予算を含めて、あるいは公共事業の七割の前倒しをやる、こういうことによって景気というものは梅雨明けにはよくなるだろう、あるいは二兆円の補正予算を事業規模で組むことによって景気は決定的によくなるだろう、こういう見通しの問題でありますが、結果は違ってきましたけれども、重要な発言をなさっている。二つ目には、順序不同でありますが、成長率の問題については、特に六・七%の問題について、これは一次補正の国会審議の中でもしばしば総理は胸を張られて、何回となく、六・七%は実現できるんだ、こういう御発言をなさっておる。あるいは円高、緊急輸入の問題については、例の緊急輸入の三十億ドルの発言の問題、あるいはけさ方から特に問題になりました経常収支マイナス七億ドル、これが結果的には百十億ドルというようなことで、特にこの問題は円高問題を招来する大きな政治的な要因になりますと同時に、このことが、私、後ほど質問をいたしたいと思っておるのですが、日米通商交渉の中身にまで影響する発言になっておるわけであります。あるいはまた国債発行歯どめ論の問題については、もう繰り返しませんが、全く石橋委員と、同じように、私もここで問題を提起しようと思っておったわけでありますが、この三〇%のガイドラインを守らなかったら社会不安が起こりかねないとまで発言をしておるわけですね。  こういうふうに見てまいりますと、ごく最近のデノミ発言を含めて総理の政治的発言というものは、言ったことと結果がきわめて違っている。これは国民に対しても非常に大きな責任問題でありますし、かたがた国際的にも、国際信用という観点から重要な責任問題が起こってきておると私は思うわけでありますが、一括して私は、このような総理の政治発言、なかんずく、特に重視をいたしたいのは、国会で答弁をされたことがこのような結末になっていいのかどうか、このような結末になってもそれに対して何ら具体的な責任をとらない、こういうことで真の議会制民主主義というものが守られていくのかどうか、こういう観点から、私は、以上指摘をいたしましたような一連の総理発言に対する福田総理の見解を聞かしてもらいたい、こう思うわけであります。
  153. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は、五十二年度の経済につきましては、まあ夏ごろには上向きに転ずる、こういうふうに思っておったわけです。もしそういうことでなければ、そのときはまたそのときの手段をとる、こういうことをしばしば申し上げてきておるわけです。ところが、実際問題とすると、夏ごろには景気は上向きをしない、そういうことになった。そこで、九月に二兆円の事業規模の第一次補正をやる、こういうことにいたしたわけですが、あのときの時点におきましては、私は六・七%成長、これは多少おつりが来るのじゃないか、こういうふうに思っておりたわけであります。それが、これはまあ不明のいたすところでありますが、円高という問題が起こってきた、そこで六・七%成長が困難となり、これを五・三%と修正せざるを得なくなってきた、こういうことであります。  また、国際収支につきましては、経常収支をとにかく減らそうというふうに努力をいたしましたけれども、なかなかこれがそううまく実現できないのです。これが円高、ドル安、それの一つの背景にもなっておるということは、先ほど石橋さんなどにるる申し上げたとおりでありますが、とにかく全力を尽くしておりますが、国際社会が相当変動しておるんですよ。そういうことでありまして、私といたしましても、私が申し上げた見通し、そういうことにつきましては、これはもう何としてもそういうふうにいってもらいたいというための最善は尽くしておりますものの、なかなかそうはいかない。これは、どこの国でもそうなんですから、わが日本だけでない。こういうことも御承知おき願いたいわけですが、とにかく全力を尽くした。私が全力を尽くしていない、サボったということでありますれば、これは全く申しわけないわけでありますが、一番私が遺憾といたしておりますのは、経常黒字、これが百億ドルを超える、こういう結果になっておること、これは何としても是正しなければならない、かように考えております。
  154. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 後ほどの問題にも関連して触れたいと思いますが、経済予測の問題では、こういう流動しておる情勢下ですから、そこには狂いも事と次第によってはあるかもしれない。しかし、国債発行三〇%の問題等につきましては、この十月十二日の予算委員会の発言ではありませんが、これ以上、三〇%を超えたらどうなるんだ、こう言って質問者に開き直っておるんですね、総理は。そうでしょう。そこまで開き直られるような態度をとっておいて、そうしてことしの五十二年度の予算では、最終的には三四%、そして五十三年度は、税の二兆円の前倒しがなければ、これは三七%、こういうきわめて重大な、国債発行を中心とする財政方針の重大な変更をやっておるわけですよ。これは、いま総理が情勢が非常にむずかしいときだからというものと、この問題は直接的にはかかわりないんじゃないか。そういう点で、私、後ほど国債発行の問題でさらに質問をいたしますけれども、いま答弁なさったことでは承服はできないと思うのです。  それと、けさ方から聞いておってこれまた奇異に感じるのですが、総理はこの間から本会議の答弁で、アメリカにおいては大幅な減税をやっておるじゃないか、こう言いますと、アメリカはアメリカだ、日本日本だ、アメリカのカーターはカーターで、日本福田福田だ。これまた、この議事録と同じような開き直りをやっておるわけですよ。  こういう重大な問題について、都合が悪ければ外国もそうだ、こういう逃げを打たれることは非常に無責任政治のそしりを免れないと思うのですが、どうでしょうか。
  155. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 まず、三〇%問題ですね。これは、まあ当時の坊大蔵大臣もこれを死守する、こういう姿勢である、私はこれを援護するという立場をとったわけでございますが、三〇%でも、これは大変な赤字財政ですわね。これをさらに悪化させるということは重大問題だ、こういうふうに考えておったことは事実です。しかし、それはそのとおりであるにいたしましても、さあ経済の動きをその後見てみるとどうだ、こう言いますと、これまた、本当に異常な事態になってきておるわけです。これをほうっておいたら、失業はふえてくる、それから企業状態も悪化する、そういうようなことで、これを放置することはできない。そこで、これに対する対策を探すということになりますと、これは財政以外に道がない。そこで私は言っているのです。臨時異例の措置として財政政策大幅な拡大を考えなければならぬ、こういうことです。そこから、とにかく実質三七%公債依存ということが出てきておるので、私は本当に財政の前途を心配しているのですよ。そして、臨時異例とまで言っているような考え方をいたしておるわけで、それはひとつ、そういうように御理解を願いたいのです。私も心配しているのだ、このように御理解願いたい。  それから、アメリカのやり方はアメリカのやり方、わが国のやり方はわが国のやり方、これは私はそのとおりだと思うのですよ。アメリカにはアメリカの風土、また制度、そういうものがありますから、私は、アメリカがこうやったからわが国はこうやらなければならぬということはないと思うのです。アメリカで減税をする、こういうことになるようでありますが、アメリカといたしますと、公共事業景気というわけにはなかなかいかない事情があるのです。でありますから、わが国といたしましてそのアメリカを見習うという必要は私は感じない。これは私は率直にそう申し上げざるを得ない、かように考えます。
  156. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 こういった押し問答をやっておりましてもどうかと思いますから先に進みたいのでありますが、ただ、国債発行の三〇%の依存度の問題は、二カ月、三カ月前にこれだけ、三〇%以上やってどうするのですかとまで言った総理が、ここで、二カ月、三カ月後に豹変するようなそういう不見識な財政方針を出されることについては、私はきわめて心外だ、こう申し上げておきたいと思います。  さて、こういう不況下においては財政主導で景気をよくしなければいかぬのだということで、これまた、もう耳にたこが出るくらい聞いておるわけでありますけれども、いまの御発言を聞いておりましても、そういう国債発行が三七%になろうとも、景気を刺激しないことには失業の問題も雇用の問題も解決しないじゃないか、こうおっしゃるわけです。私は一般論、抽象論としては全くそのとおりだ。  そこで、総括的質問の第二点は、私はきわめて常識的に、国民一般のサイドから期待を持っておる質問をしたいと思うのです。それでは、総理のお言葉ではありませんが、成長率七%、国債発行三七%になろうと財政主導型でやるのだ、こういうことになりますと、失業者はこのことによってどの程度減るのか。経済企画庁長官は約五万程度減る、こういうお話でありましたが、いま一番問題は、もう去年からずうっと百万台べたづけの失業者が出ておるわけです。しかも、この失業者の内容たるや、一週間に一時間でも働いた者は失業者という枠の中に入ってない。いいですか、われわれの失業者という概念からいけば、そういうものじゃないですよ。そういうわれわれの概念からいけば、二百五十万であるか三百万であるかわからない。一週間に一時間働けば失業者という枠の中に入らない、そういう厳しい政府官僚統計によっても、百万以上がべたづきになっている。みんなが、七%だ、国債発行三七%以上やっても財政主導型で景気回復するんだ、こう言われるものだから、国民は、それではこの失業者はせめて半分ぐらいに減るのだろうか、構造不況業種でいま悩んでおる、七割になったり六割になっておる操業率が、全体としてどういうふうに上がってくるんであろうか。あるいは中小企業の倒産件数は、御案内のとおり、昨年の平均は月一千五百件以上に上っておるわけです。こういうものが、それでは、いま総理の言われておる方針に沿ってやれば三割程度でも具体的に減るのだろうか、こういうことを国民はやはり期待しておると思う。そういうものに対して具体的に、このようによくなるんだという処方せんなり回答がなければ、何のための経済成長なんだ、そうでしょう。成長率は七%にならなくても、ゼロ成長であっても、完全雇用が保障できた方がうんといま国民は喜ぶのじゃないでしょうか。私は、そういう観点から、この七%の具体的な効果というものはどういうふうに上がってくるのか、一般の国民が非常にわかりやすいメリットはどういうものかということを率直にお答え願いたいと思うのです。
  157. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 私からお答え申し上げます。  今朝も御議論がございましたが、結局、この七%というものが容易でないという世の中の批評の基本にございますものは、政府は何度か公共投資を繰り返してきたが、結局、国民経済に波及効果がなかったではないか、したがって、同じ手法であればまた同じ結果を招く可能性が高いのではないか、けさほどの御議論の基調も、一つはそういうところにあったと存じます。  それに対しまして、私どもは、過去の何回かの公共投資の繰り返しというものは決してむだではなかったと考えます。すなわち、わが国に在庫が非常に多うございましたから、そこで波及効果が吸収されてまいりましたが、今回の十五カ月予算も加えますと必ず累積的な効果はあらわれると考えております。そのような兆しは多少すでにあらわれております。こういうふうに実は申し上げ、考えておるわけでございます。  そこで、そういうことを基調にいたしまして、まず雇用でございますが、けさほど、完全失業者の数は単年度内、五十三年度内には遺憾ながら余り大きな改善は見られないであろう、大体五万人ぐらいの減少はあろうかと考えておりますけれども、それよりも前に就業総数で申し上げますと、五十二年度の見込みは五千三百五十万でございますが、五十三年度で五千四百五万ほど見ておりますので、つまり就業者の総数そのものはふえていく、これは新規参入がございますから当然のことかと思いますが、及び現に企業でいわばやや遊休的におられますところの雇用者の人々が、もう少し生産的な仕事に稼働率の高まりとともにつくことができるのではないか、その二つの問題がございますために、完全失業については五万程度の改善しか単年度では見込まれないのではないか、こういうことでございます。  それから、その他の要素について申しますと、稼働率でございますが、けさほど石橋委員にも申し上げましたが、大体五十四年の三月に九二ほどの稼働率指数を考えておるということでございます。と申しますことは、ただいまの水準から申しますと稼働率にかなりの改善がある。したがって、それは、やや遊休化しております労働にとってはいわばいい条件になろうと考えます。しかしながら、これもけさほど申し上げかけておりましたが、九二となりましても、稼働率といたしましては八一、二でございますので、そこからそれが製造業の大きな設備投資に結びつくというふうには、単年度のうちには考えられない。非製造の方にはかなりの期待をいたしますけれども、製造業の方はまだもう少し稼働率が進まなければ大きな設備投資にはなるまい、こういうふうに考えております。  すなわち、私どもとして七%成長というものを、いろいろ無理を期待して予想しておるわけでは決してございませんので、残念ながら、単年度のうちには完全失業者状態に大きな改善はない、また企業設備投資にも、製造業に関する限り大きな伸びは期待できない、そういうことは、事実としてそれ以上のものは望めないと考えつつ、なおしかし、こういう路線を推し進めることによりまして、やがてそれらの問題についての改善につながっていくであろう、このように考えておるわけでございます。
  158. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 七%成長率に基づく三十四兆円予算が現実のものになっても、単年度の中で解決できる国民的な素朴な要求には残念ながら余り効果はない、いま大臣が御答弁になられた程度のものだ、こういうふうに理解せざるを得ないですね。  そこで私は、この五十三年度の問題は別の日にさらに議論をやらしてもらいたいと思っておりますが、五十二年度の経過の中から見ても、けさ方来もいろいろ意見がありましたが、そういう蒸し返しをやっても非常に効果が薄いのじゃないかということ、それといま一つは、この七%の実現そのものがこれは非常にむずかしいのじゃないか。これはそれぞれ民間の研究団体、その策定の要素がありますけれども、名前は申し上げるまでもないと思うのですが、ある研究所、これは大体総合的にそういったことは言えると思うのですが、この七%の成長率を達成するため信は、予算規模で言えば、三十四兆円のものが三十八兆円ぐらいにならざるを得ないだろう。私ども、特に社会党は一兆円減税を強調しておるわけでありますが、減税の問題も、これは数字の上からいけばですよ、数字の上からいけば、この専門機関は、二兆四千億ぐらいな減税をやらなければいかぬだろう、さらには年度の途中で補正を組んで、いわゆる国債発行の追加をやってでも補正をやらざるを得ないのじゃないか、そういう手だてをやらなかったら、とてもじゃないが七%の成長はおぼつかないぞ、こういう結論を出しておるところも多々ありますね。私は、そういう規模の公債を追加しろとかあるいは二兆四千億の減税をやれと言っておるわけじゃない。この七%というものがいかにむずかしいか、むずかしいにもかかわらず、仮にやれたとしても、出てくる効果はこれだけじゃないか。  いま大臣が言われたようなものであるとすれば、私はもっと、わが国の今日の冷え込んだ景気回復の処方せんというものの手だてを変えていく必要があるのじゃないか。これは後ほど主張いたしますが、減税をてことするインフレなき景気回復といいますか、そういうところへなぜもっと政府は、野党の意見を率直に、謙虚に聞かないのだろうか、そういう野党の意見を率直に入れて、アメリカのことを言ったらまた総理は怒るから、もうアメリカのことは余り言いませんけれども、アメリカだって二百億ドルからの減税をやったのです。大体、日本経済の規模は、われわれ素人から見た場合にアメリカの二分の一だと考えたらいいと言われておりますが、それで言えば、百億ドルぐらいな減税は私はいまやれぬことはないと思うのですよ。そういう点から言って、なぜ率直に野党の意見を、連帯と協調を強調される総理として、福田内閣として、減税というものをもっと景気回復のてこに重要視しないのだろうかということを率直にお尋ねをいたしたい。  これはこの際、河本通産大臣、あなたは七%というか、この成長論者のトップを行っておる大臣だというふうに報道されておりますので、そのあたり、ひとつぜひ参考までに通産大臣の見解も聞かしてもらいたいと思います。
  159. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は、藤田さんのおっしゃるとおり、協調と連帯ということを旨として政治に臨んでいるのですよ。ですから、去年の暮れも党首会談をお願いいたしまして、予算編成に臨む御意見も承っておる。そのとき各党の党首から減税論が、皆さんから出たわけです。ほかのいろんな御意見もあったのですが。私どもも皆さんの御意見を謙虚に承りまして、私どもがこれはごもっともだなというものはできるだけこれを取り入れるというふうにいたしたのですが、減税問題につきましては、その席でも申し上げたのです。これは少し御勘弁願えませんか、こういうことだったのですが、その後もいろいろ考えてみたわけでありまするけれども、とにかく、いずれ今後の財政の見通し、これは申し上げなければなりませんけれども、これは非常にむずかしいところへ行くわけでございます。そういう中で減税といいますと、後にずうっと尾を引くのでしょう。そのことを考えておかなければならぬし、また、それだけ窮乏した財政でございまするから、後を引かないといたしましても、また財源上非常に大きな問題があるわけでございまするし、それから景気刺激効果、これは減税も公共事業もというのなら問題は別でございますが、財源が窮屈だから、減税か公共事業かということになりますればどうしても公共事業の方が景気波及という効果が高いわけでございまするから、これは減税という御意見もありまするけれども、公共事業中心でいくほかはないのじゃないか、こう存じまして予算案を御提案申し上げておるわけであります。  どういう御提案かまだ定かにいたしませんから、それに対して所見は申し上げられませんけれども、しかし原則論、一般論として申し上げますれば、私は、私どもが提案をしたこの予算案について十分御説明をして、こっちの方がいいんですよという主張をいたしますよ。それから、皆さんの方の御意見もよく承りますよ。それで、私ははっきり申し上げますが、提案者といたしまして、そのメンツにこだわってこの原案に固執する、そういう態度はとりません。これは本当に日本経済日本の財政、日本社会、こう考えまして、どっちが本当にいいんだ、日本のためにいいという方向を選ぶべきだ、こういうふうに思うのでありまして、私の基本的な考え方はそういう構えであるということだけを申し上げます。
  160. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 総理が強調されておることはけさ方来の繰り返しでありますが、公共事業万能主義的な景気回復策というのは試験済みなんですね。そこで、けさ方来石橋委員が、さすが、わが党の前書記長らしい堂々たる質問をやったと思うのですが、いろいろな観点から経済指標を出されて議論されましたので、私は重複することを避けて、二つの点から聞いてみたいと思うのです。  というのは、総理のいまの御答弁を聞いても、何だか公共事業景気回復するのはいいんで、減税で景気回復をやるのは――波及効果の問題はありますよ、若干専門的な問題点があるかもわからぬ。しかし、減税の方は何か悪いんだと言わんばかりに、非常に公共事業公共投資万能主義的な形でやってきたわけです。やってきたけれども、結果はどうでしょうかね。これは政府の方から数字を出してもらった方がいいと思うのですが、時間の関係で私から言わしてもらえば、たとえば、それだけ政府が強調されるのですが、政府の財貨サービス購入の資本支出、これは私から解説するまでもなく、国の予算でやる公共事業、あるいは政府関係各機関、公団や国鉄やそういったところがやる公共事業、あるいは自治体がやる公共事業、これはどうですか、五十一年度で言えば、当初の見通しと実績では一兆円から減っておるのですよ。一兆円から結果は少なくなっておる。この五十二年度の時点でいけば、当初十八兆二千五百億の計画をしたものが、三カ月前のあの一次補正のときには、この資本支出を政府の手によって約五千五百億ふやした。ふやしたところが、三カ月たってこの五十三年の一月時点の実績見込みで言えば、事もあろうに約八千億減っておるのですよ、公共事業関係で。一番正確に国及び自治体が積算をして狂いのないと目される政府の財貨サービスの資本支出の中で、これだけの狂いが出てきておるのです。こういう狂いが出てきたから、いまここで審議をしておる第二次補正予算で八千六十億からの歳入欠陥が出てくる。そして、後で触れます決算調整資金二千億、赤字公債だけでも一兆円からの、歳入欠陥を補てんするために赤字公債を、三カ月たたぬ間にこの二次補正で組まざるを得なくなっておるじゃないですか。こういうことがあるから、こういう結果になったから、いわば歳入欠陥が生まれてきておるのじゃないでしょうか。そういう具体的事実の上に立って、野党の意見を謙虚に聞かないで、公共事業をやれば景気がよくなるのだ、税金もたくさん入ってくるのだ、こう言わんばかりの主張は余りにも偏っているのじゃないか、私はこう思うのですが、どうでしょうか。なぜこのように減ったのかということを、これは経済企画庁長官なりあるいは自治大臣からも聞かしてもらいたいと思うのですよ。自治省が五十一年度の結果を発表しておりますね。あれからいくと、単年度事業なんかわずか二・四%しか上がってないのだから。それでもなおかつ公共投資万能なんて言ったって、まともに信頼できますか。具体的な数字で勝負しましょうよ。
  161. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 ただいま藤田委員が御指摘になられましたのは、政府の財貨サービス購入のうち資本支出、政府の改定試算では十八兆八千億であったが実績見込みでは十八兆になっておる、八千億落ちておる、こういうことでございます。御指摘のとおりでございます。この主な原因は、国鉄と電電におきまして実はいろんなことから値上げがおくれまして、したがいまして、予定どおりの事業規模が遂行できないということで落とした分が主な部分でございます。なお、地方財政にも若干そういうものがあるのではないかと存じます。
  162. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 自治大臣、どうですか。
  163. 加藤国務大臣(加藤武徳)

    加藤国務大臣 ただいま経企庁長官が答弁いたしましたように、地方財政にも若干あることは承知をいたしておりますが、ただいま詳細な資料を持ち合わせておりませんので、また答弁は後刻にいたしたいと、かように存じております。
  164. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 これだけ公共事業を中心に景気浮揚策を議論する予算委で、何ですか、こういう私がいま質問しておるようなことは、これは大蔵省や経済企画庁に任しておいたらいいのですか。むしろ公共事業は自治体でやっておるじゃないですか。それが、いまの大臣の答弁、何ですか。その程度の資料を持ってこないような態度でこの予算委員会に臨むということはきわめて不見識ですよ。それは資料を具体的に出してもらいたいと思います。  そこで、数字で勝負しましょう。都道府県の普通会計五十一年度の決算を去年の暮れにまとめておりますが、それを見ますと、単独事業費は前年比で二・四の減に落ち込んでおる。その原因は何か。これは財源難だ。地方自治体の財源難だ。幾ら国が公共事業をつける、橋や道路や、やれその他の事業をやると言っても、自治体には金がない、それをこなすだけの金がない。そういう実態が出てきておるじゃありませんか。この事実は自治大臣、御承知でしょうか。そういったことを御承知の上で、けさ方来総理が御主張になられておるようなことに、閣僚として賛成なさっておるのでしょうか、どうでしょうか。
  165. 加藤国務大臣(加藤武徳)

    加藤国務大臣 ただいま資料を取り寄せておりますので、後刻答弁をいたします。
  166. 山本政府委員(山本悟)

    ○山本政府委員 ただいまの御質問の資料、ただいま私持ってまいりませんでしたので、いま電話ですぐさま聞いておりますので、直ちに御返事を申し上げます。――どうも遅くなって申しわけございません。  ただいままでに都道府県の方は五十一年度決算が出ておりますので、それと五十年度の対比で申し上げますと、五十一年度の補助事業の都道府県分の決算は二兆七千八百九十五億、前年度対比六・九%の増。単独事業は九千九百七十八億、御指摘のとおり三角の二・四%、かようなことになっております。
  167. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 結局、政府の逃げは、地方自治体の単独事業だからそういうふうになってもやむを得ない、こういうふうに言われるかもわかりませんが、公共事業というのは、やはり単独事業もみんな入るわけでしょう。入らないのでしょうか、入るのでしょうか。
  168. 山本政府委員(山本悟)

    ○山本政府委員 ただいま申し上げましたのは、補助事業と単独事業に分けたわけでございますが、地方団体の行いますいわゆる投資的事業といたしましては両方含まれるものと考えるべきものと存じます。両方合わせますと三・九%の伸びということに都道府県の場合なっております。
  169. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 性格ははっきりしましたが、結局合わせて三・九程度しか伸びない。しかし、単独はいま言ったようにマイナスに落ち込んでおるわけです。  私は起債の問題もちょっと質問したい、こう思っておるのですが、政府は国債発行は三〇%から今度は三七%になるのだけれども、自治体の方はきわめてきつい締めをやっておるわけですね。「五十二年度における地方債許可方針の運用について」、その中身を見ますと、地方自治体が二〇%以上三〇%未満の起債を持っておる団体に対しては、いま問題になっておる一般単独事業及び厚生福祉関係の整備事業に係る地方債は、これはアウトなんですね。そして三〇%以上の起債を持つような団体になってくると、一般事業、いま二つに分けて説明のあったいわゆる一般事業、いわゆる災害を除いた、住宅であるとか教育関係の施設であるとか、あるいは産業廃棄物の施設であるとか、さまざまな事業までストップになるのですよ。そういう通達を出しておるのですね。出しておるでしょう。  私はここで一括して聞きますが、国の方は三〇%以上を超える。自治体はこういう締めつけをやる。それで自治省は十分、いまの政府考えておるこの公共事業をこなす自信があるのかどうか、これをひとつお尋ねします。
  170. 加藤国務大臣(加藤武徳)

    加藤国務大臣 国の財政における公債依存比率は、いわゆる歳入に関する率の問題でございますけれども、地方財政におきます公債比率は歳出に関する問題でございます。そして公債依存率、公債比率なるものは、一般財源の中におきます公債の元利償還がどの程度のパーセンテージを占めておるか、この率が公債比率であることは御承知のとおりでございます。  そこで、都道府県の平均を見てみます場合に、この公債比率は四%ないし五%前後でございますし、市町村の場合は八%台だ、かようなことでございます。そこで、起債を認可するに当たりまして二〇%なり三〇%の制約を設けておることは御承知のとおりでございますが、実際の問題としてはほとんどこの制約には該当いたさない、かように判断いたしておりますけれども、もし該当がありますような場合には弾力的に判断をしてまいりたい、かように存じておる次第であります。
  171. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 これは、もうきわめて抽象的な議論になりまして非常に残念です。私は、やはりこれはもう本当の予算審議ということになれば、そういう点できっちり、そういう財政基準の問題や財源、地方自治体と国が割り当てていく公共事業との関係を突き合わすぐらいなことをやらなければ、本当の結論が出ないと思います。しかし、いまの大臣の答弁で、運用は弾力的にやると言うんだけれども、私は、五十一年度のさっきの報告があったことを見ましても、ことしのように、さらに公共事業がたくさんふえるような、こういう公共事業万能主義の予算では自治体はようこなさないだろうということだけ、ここで指摘をしておきます。  私はやはり、私というよりも党の主張としては、そういう意味合いからも、こういう実績、過去の生々しいごく最近の実績を踏まえて、私は減税というものをもっと重要視すべきじゃないか。きょうはもう時間がありませんので、政府財貨サービスのところだけしか指摘できませんでしたが、これと同じような結果が、福田内閣の目玉と言われた住宅ですね、民間住宅の面にも約二兆円の、五十二年度は数字の上では見込み違い、マイナスが出ておるのですよ。いいですか、総理。一番中心になる資本支出、先ほどから指摘した面と、それと民間の住宅、その他の住宅もですけれども、住宅、この二つが公共事業の目玉だったんでしょう。この目玉が全部狂っておるのですよ、一番大きく。こういう実績を無視するというか、ほおかぶりして、そうして五十三年度の予算公共事業オンリーでなければいかぬのだ、これは世間をして納得させることができるでしょうか。総理、どうでしょうか。
  172. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 いま地方のお話がありましたが、五十一年度は確かに地方財政は非常にふるわなかったというふうに見ております。しかし、五十二年度になりますと、つまり本年度になりますと、かなりこれは充実してまいっております。それで、いま五・三%成長ということを申し上げておるわけでありますが、どうやってこの五・三%成長が実現するか、それを分析してみますと、個人消費が三・九、民間住宅が三・九ですね、民間設備投資が〇・九、それから政府支出、資本支出ですね、これが一六・一、輸出が五・一、こういうような、これは対前年度の伸びですね、それを総合いたしまして五・三、こういうふうになるのであります。やはり政府支出が五・三%を支えておる、こう申し上げて支障ないんです。でありまするから、公共投資は余り効果がなかったなという御批判でもありまするけれども、やはりこれが主軸になりまして、とにかく見込みは訂正しましたけれども、五・三%を支えておる、こういう形になっておるのです。
  173. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 総理御自身も認められたように、やはり五十二年度の景気回復に向けての公共事業の中心である二つの目玉がかなり落ち込んだことだけは事実なんです。この事実を確認した上で五十三年度のこの予算をわれわれは審議をしなければいかぬ。そういうことになりますと、私は、それ以上の数字をここで議論する時間がありませんが、どうでしょうか、一つは、政府がこういう形で予算案を出したから、やはりこれでいかなければいかぬのだというイージーゴーイングな形ではなくて、やはり野党全体が、まだ最終的には決まってないけれども、額が大体一兆円以上ということに固まりつつあるようですが、そういう野党全体の意向がまとまれば、総理としては減税というものを景気回復のてこにする御用意があるかどうかということが一つ。  それといま一つは、やはり私は、五十三年度の予算の中には、なるほど公共下水道を中心とする社会資本といいますか、生活環境をよくするための公共事業に重点を置いた、これは置いたというよりも余りにも日本のなにがおくれておるから、そこへ手をつけざるを得なかったのだろうと思うのですが、しかし、そのことはともかくとして、現実の問題としては、そこに重点的に予算を配置したということは、私は賛成です。ただ、この際、同じ公共事業と言っても、その内容を転換する必要があるのじゃないでしょうか。  その点では、私ども社会党が主張いたしております。たとえば高等学校の新設八十五校、あるいは大学や高専等の試験所の機械設備というものを根本的に更新をする、こういう設備を更新しますと、機械産業が興ってくるわけです。機械産業というのは、これは釈迦に説法ですけれども、一番人を雇用する、雇用を拡大する力を持っておるのです。そうでしょう。そういう観点からも、こういう試験所の機械設備を更新していってはどうか。あるいは農畜産物の安定供給用の低温冷蔵庫を、これはまあ概念としてはちょっと飛躍するかもわかりませんが、思い切って国営で、倉庫料ぐらいは無料でゴボウもニンジンも大根も、あるいは果物もイチゴも保管する、そうして安い新鮮な野菜や何かを国民に提供する、そういう中から国民の生活が安定してくる、国民の生活が安定すれば、やはり購買力がふえる、その購買力を経済回復のてこにしていく、こういう施設を充実さしていくとか、あるいは病院の医療器具の更新であるとか、これまた、わが党が要求をいたしております。災害復旧の三年間でやっておるのを二年繰り上げてやっていくとか、挙げますとたくさんありますが、そういうふうに、同じ公共事業でも内容をもっと雇用を造出していくような方向予算の中身を切りかえていくということが大事じゃないか。そういう観点からの検討というものは、大蔵省においても経済企画庁においてもなされたのであろうか、こう思うのですが、どうでしょうか。検討はしたけれどもというだけではなくて、積極的にそういう方向わが国予算の内容を改革していく御意思があるかどうか、このこともお尋ねしたい。
  174. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 お答えいたします。  藤田委員御指摘のように、公共事業につきましては大幅にふやしておりますけれども、雇用効果、こういった点を特に重視しているわけでございまして、生活関連の方を極度にふやしておるわけでございます。続きましては国土保全関係、それから一般のいわゆる大型という方はそれほど伸ばしていないのでございます。  それから、先ほどのお話は、五十一年度並びに五十二年度のお話がございましたが、われわれは地方財政は車の両輪として考えておるものでございますから、ことしは地方財政については本当に手厚くやったつもりでございます。特に、御案内のように補助事業で、市町村の補助事業につきましては政府資金で全額持つ、これをことしは決定いたしました。すなわち六・五%でやるわけでございます。市町村でございますと、金利が二本ありますと、どうしてもやりたがらぬのでございます。この点は、補助事業は全部市町村が持ちます。それから単独事業につきましても公営公庫、これに単独事業を多くやっていただくつもりでございまして、ことしもふやしまして、大体八千億のうちの三千数百億、これは公営公庫が持つことにしておりますので、その他すべて利子補給の方もやっておりますし、また交付税の方も措置をいたしておりますので、私は、ことしはさま変わりではないであろうかと実は期待いたしているのでございます。
  175. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は、まだ減税の御提案に接しておりませんから、この席で意見を申し述べかねますが、一般論といたしましては、しばしば申し上げているとおり、政府がこういう提案をしたのだから、それにメンツの立場からこだわるというような、そういう態度はとらぬ。本当に日本のために、日本経済のために、財政のためにどれが一番いいのだろうか、どういうふうにするのが一番いいのか、こういう立場で判断すべきものである、かように考えております。
  176. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 減税問題については、これ以上やっても、恐らく、具体的なものが出ない限りうんと言わぬでしょう。しかし、私は、きわめて政治的な言い方ですけれども、福田総理は、一票の違いで総理大臣になった福田さんだったですね。私は、一国の総理の指名に当たって一票の違いで総理大臣になったということも少しは考えて、野党に代表される意見というものを、政策の議論、政策の意見を尊重するということはやはり大事ではなかろうか、このことを申し上げておきます。  それと、念のために私からの素人としての御注意ですけれども、どうも減税を回避する人たちの頭の中には、依然として高度経済成長時代のそういう発想が残っておるのではなかろうか。それは、減税と公共事業の波及効果という点については、最近、専門家の中でも相当意見が変わってきましたね。高度成長時代のときには、投資が投資を呼ぶ時代には、公共事業の波及効果は大きい、こう言っていたのですけれども、こういう低成長時代になってくると、むしろ減税の方がその波及効果が大きいのではないか、そういう主張をなさる学者や専門家の意見もふえてきておるわけです。(「聞いてみたらいいじゃないか、追跡調査の結果を」と呼ぶ者あり)後ろの方から追跡調査の関係も聞いてみたらどうだという激励もありますが、実はそれは、もし時間があれば後日の減税問題のところでまた私、議論をいたしますが、その追跡調査の結果は、何らかの形でひとつぜひ御報告をいただきたいと思います。  そこで、私、次に進みますが、問題のこの十五カ月予算と称するものであります。これは本論からいけば、やはり十五カ月のうちの十二カ月の方の予算を議論しなければならぬと思うわけですが、私は、大変失礼ですけれども、この十五カ月予算ぐらい無原則、無定見、無責任な、財政民主主義の基本を踏み外した予算編成はないのではなかろうか、こう思うのですよ。それはなぜかと言いますと、この十五カ月予算の中で、あえて時間を区切れば、三カ月の二次補正の中には決算調整資金なんという、全く財政法の立場からいったら何を考えておるのだろうかと思うようなものが出てきておる。そうして、五十一年に公共事業の予備費ということで出してきたのだけれども、これは憲法八十七条だったですか、それと財政法何条だったですか、ちょっとこの条文は忘れましたが、大変な議論になった。そうして五十二年度は、それではそれはちょっとやめようかということで、公共事業の予備費が顔を引っ込めていた。ところが、それがまた今度の予算の中に出てきた。そして、その上に何が出てきたかというと、単年度主義ですね、財政の単年度主義の根本方針を打ち破って、来年の五月に入ってくる税金の二カ月の前倒し、先取りをやる。もう取れるものは、財政法がどっちを向いておろうと、憲法がどっちを向いておろうと、とにかくそんなことはもうお構いないのだということで、この三十四兆円の予算が編成されておると思うわけですよ。  私は、この点は、景気回復することもなるほど大事だろう、しかし、国の政治は、やはり憲法や特に財政法の基本的な精神というものを具体的に踏まえて政治をやっていく、財政を編成していく、これが中心でなければならぬと思うのですね。そういう点から私は第一に問題にいたしたいのは、この決算調整資金であります。これほど財政法の根幹にかかわる問題を、なぜ恒久立法でこういう制度をつくるようなことにしたのでしょうか。これは本来、いまの財政法のたてまえからいけば、こんなに予見できがたいものを想定をして、もしかすると歳入欠陥が、年度末までに二千億程度穴が出るかもわからない。穴ができなかったらそれはそのまま積んでおくんだ、歳入欠陥が起こったらその二千億はそこへ入れるのだ、こんな無定見な財政の収支見積もりなんてあっていいものでしょうか。そんなことを今日の財政法は許してないですよ。そういうことを今日の財政法が許しておるというのであれば、権威ある見解をひとつ聞かしてもらいたいと私は思うのです。
  177. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いま、決算調整資金制度、それから公共事業予備費、それから五月分税収のいわゆる前倒し、こういうことをやることは財政民主主義に反するのではないか、こういうお話でございます。  まず、決算調整資金について申し上げますと、むしろ単年度主義を的確にやるためにはやはり必要な制度であろう。これは前から財政審議会で言っているわけでございまして、剰余金が出るということも、ある意味で言えば税収の見積もりがやはり違っておったということなのでございます。同様に、決算調整資金を必要とするということも、マイナスの方向で税収見積もりが違っているということなのでございます。それで、高度成長時代のときには、これは大体において自然増収によって、弾性値が非常に高いものでございますから、プラスが出て何とか賄えた。唯一の危機は四十九年であったわけでございます。それは、御承知のように、年度内に納税義務が発生して四月中に収納したものを四千億ばかり前倒しいたしまして危機を脱しました。しかし、今日では、まあ二千億という金額は大きいかどうか、恐らく三十兆に対しての二千億でございますから、私は、それぐらいのことは許されるのではないだろか、むしろ単年度のために必要ではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから予備費の問題でございますが、予備費が設けられることにつきましては、すでに財政法で許しているところでございます。それで、むしろそのうちの一部を公共事業予備費といたしまして、政府当局がみずからその使途を限定しているわけでございますから、考えようによりますと、たとえば二千億と三千億を一緒にいたしまして五千億と出すよりも、二千億をある程度縛って自制していくわけでございますから、私はむしろ自制している予備費ではないかと思うのでございます。  第三点の前倒しの点でございますが、これは納税義務発生主義に徹したわけでございます。前は納期でやりました。その次は発生主義で、それから四月までの収入であったわけです。今度は出納整理期間までやったわけでございまして、言ってみますれば、従来はそれだけ余裕があったとお考え願えればいいのではないか。年度所属区分といたしましては十分成り立つ議論だと私は思うのでございます。  最後に、財政の民主化が破壊されるかどうか。それはそういうことでなくて、それぞれの必要があって国会の皆様方に御審議を賜り、そして国会の意思によってこれをつくるわけでございますから、仮にこれができたところで、財政民主主義が破壊されるというおそれはないものと、かように思っておるわけでございます。
  178. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私は、主として三つの問題を投げかけたわけですが、時間の関係がありますから、決算調整資金を中心にやりますが、それ以前にやはり公共事業予備費の問題ですね、これは、いまの大蔵大臣、村山大蔵大臣になって、国民の税金を何と心得ているのだろうか。それはなるほど、ことしの予算は二十九兆九千八百五十億か何ぼで三十兆円近い。それに比べたら二千億は少ないように見えるけれども、二千億という金は、全国の中どころの県の一年間の一般財源に匹敵するのですよ。大きいですよ、あなた。そういう感覚で、二千億ぐらいだったらええだろうということが頭の中にあってこういう制度が出てくることについては、私は基本的にいかがだろうかということが一つ。  それと二つは、公共事業の予備費につきましても、これはかねがね議論がありましたが、憲法の八十七条、財政法の二十四条、いずれも予備費のところに「豫見し難い豫算の不足に充てるため、」――いいですか、「豫見し難い豫算の不足に充てるため、」こうなっておるのです。公共事業というのは予見しがたいのですか。最初から目的がはっきりしているじゃないですか。こんな予備費ありますか。「豫見し難い」と、ここに書いておるじゃないか。公共事業というのはちゃんと予定しているじゃないか。はっきりしておるじゃないか。そういう考え方でいわゆる公共事業の予備費を、これまた二千億つくることは問題である。  そしてまた、決算調整資金の問題は、いまあなたが答弁になられたが、これは率直に私の素人の考えですが、ある意味では財政法の欠陥じゃないかと思うのです。私はやはり政府としては、特に財政当局としては、今日のこのような事態を迎えたときには、原則的な立場としては、歳入欠陥が年度末までに出そうだ、二千億出るかもわからぬというときには、理屈の上としては、歳入欠陥が出たときには補正予算を組んで臨時国会を開くというのが財政法のたてまえですよ。これが財政民主主義だと私は言っておるのだ。この基本を、理屈までも、原則までも全部踏みにじって、現実にはどうも二千億程度歳入欠陥が出そうだから、理屈は後でどこへでもつくという式でこういう議論をなさることは、私は問題があると思うのですよ。やはり原則というものをはっきり踏まえて、そして、どうでしょうかね、私ども社会党が中心になって、これは仮定の話ですが、いま皆さんの側に座ったとしても、今日のこのような事態を迎えて歳入欠陥が生じそうだ、どうしようか、財政法が大きな壁になっておるときは、恒久的な立法にするのであれば、私は、野党とも十分腹を割ってコンセンサスを求めるための議論をもっとやると思うのですよ。私は、ここに議会制民主主義の基盤があると思うのです。こういう原則を全部踏みにじって、そうして決算調整資金で、私がいま主張しておることまでも否定する立場でおやりになるということは、私は問題があると思う。  ですから、私が質問しておるのは、仮にやるにしても、これは一年だったら一年限りの臨時特例法的なものでやるというのであれば、まだ問題の提起の仕方としては相談の対象になり得るかもわからぬが、恒久立法でこんなものを出してくるなんという財政当局のセンス自身を私は疑いたいと思うのです。いかがですか。
  179. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 先ほどお話がありました、補正予算で対処してはどうかというお話でございますが、そのいとまがない場合に、経済の急激な変動が来たときにどうするかということについては、現在の財政法上どうにもならぬわけでございます。したがいまして、それは出しまして、後で国会の承認を得ることにいたしておるのでございますので、どうぞ御理解願いたいと思うのでございます。  それから第二番目の、公共事業予備費でございますが、ことし……(藤田(高)委員「決算調整資金を恒久法にした理由を言いなさい」と呼ぶ)  恒久法にしたということは、いま剰余金が出るのと同じように、マイナスになる場合があり、しかもそれが補正予算では間に合わない場合が今後十分予想されるわけでございますので、ちょうどプラスが出たときにどういうふうにそれをするかということを、いま剰余金の処分については二分の一を下らざる範囲で翌々年度の会計に入れろという規定がございます。同じように、マイナスが出たときにどうするかというのがある方がむしろ財政法の単年度主義を円滑に施行できる、これが財政審議会の制度論でございまして、そういう意味で今度は恒久法としてつくらせていただいたのでございます。  それから、公共事業予備費の関係でございます。合わせて五千億でございますが、各年度を通じまして、公共事業予備費という名前をつけようが一般予備費と言いましょうが、大体予算規模に対しては同じ額を持っておるわけでございまして、そのうち二千億は公共事業以外には使えませんよ、予見しがたい事情によって出た場合に、しかも予算に不足が生じた場合でなければいけませんぞ、こう言ってみずから制限いたしておるわけでございますので、むしろその発動を制約している、こういうふうに御理解願いたいのでございます。
  180. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 これは理解ができません。これは財政法の根幹にかかわる問題ですからね。これは政治的に言えば、政府の財政見積もりの誤りからこういう歳入欠陥が生まれてきておるのです。今度のこの補正だって一兆円余りの赤字公債、そうでしょう、建設公債を含めて一兆三千億の赤字で、世間体は、えらい福田内閣は公共事業公共事業と言っておるものだから、公共事業を中心に景気回復をするというのだったら何でも勘弁してくれるぐらいのなにが出ておるけれども、ここへ出てきておる第二次補正予算の中身を見ると、これは明らかに歳入欠陥の後始末の予算なんですよ。ある意味では内閣の重大な責任ですよ。こんなずさんな、高度成長時代のたとえばそういう税の弾性値を高く見て、そしてこのくらい入ってくるだろうといって組んでおいて、しかも補正は三カ月前に、九月、十月にやって、そうして一兆円余って出てくる。そして歳入欠陥が出てきて、その中で二千億程度が年度末までにはまだどんなことになるかわからぬなんて、全く無定見の後始末、どさくさにこんなことをやるなんて、理解せいという方が無理ですよ。もっと謙虚な姿勢で、私がいま言っておるように、同じなにをするのでも、恒久法として出すのではなくて、きわめて臨時特例的なもので、野党の皆さんどうだろう、予算委員会の皆さんどうだろう、法律をつくる大蔵委員会どうだろう、憲法、財政法にかかわる問題だからどうでしょうと、時間をかけて論議すべきことじゃないですか。国会が始まって予算委員会はきょう初めてでしょう。あした、はや、それまで含めて理解して承認してくれなどということは、何ぼ話のわかる野党でもそれはいけません。これはいけません。やはり妥協したり理解できることとできないことがある。その点で、大蔵大臣もっとしっかりしてもらわなければ困ると私は思うのだ。  ですから、私は、その公共事業の予備費の問題もあえてもう繰り返しませんが、予見しがたいものに予備費を充てる、その原則から外れておるじゃないですか、公共事業という特定な目的を持ってその財源を充てるのだから。だから、そういう意味で、私は決算調整資金に関する問題については、どうしてもここでというのであれば、これは留保します。  私は、そういう意味で少なくとも、結論はどうなるかわからぬけれども、一つの問題の提起の仕方としては、恒久法でなくて臨時特例的なものでどうだろうというくらいなことを出してくるのが、財政当局の良心的な問題の提起の仕方じゃないかと思うのですよ。この見解をもう一度お尋ねして、あとまだ三つ、四つやらなければいかぬものですから先に進みます。
  181. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 繰り返しになりますけれども、御承知のように、税収を見積もるということはなかなかむずかしいことでございまして、すべての企業の動向、あるいはベースアップの動向、賞与の問題、円高の問題、世界経済との関係企業が自分のことでもなかなか見通し得ない、それを全部税収ということで見積もるわけでございますので、したがって、それがいま決算の近くになって、臨時、補正予算を組むいとまがないというときに、どうしても赤字になってくる、そのためには、私はどうしても恒久的にその資金を設ける必要があると考えているわけでございますので、まげてひとつ御承認賜りたいと思います。  それから、公共事業は予見できる、こういうお話でございますけれども、そうではないのでございまして、たとえば世界的な経済変動によりまして、もうちょっと公共事業をやらないとこれはいかない、あるいは場合によりますと、物によりまして非常に促進するものと、それから公共事業も促進しないものもあるかと思うのでございます。そういったことは、これからの問題でございますので、二千億程度のものを、そのかわりに、予見しがたい原因で出た場合に限りまして使わしていただきたいということで、みずから縛ったわけでございますので、どうぞ御理解を賜りたいと思うのでございます。
  182. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私は、ある意味ではきわめて建設的な意見を出しておるのですよ。これは大蔵委員会とも関係ありますから、法律は大蔵委員会でやるわけですが、やはり恒久法でなければならないという積極的理由はないでしょう。財政法の基本にかかわるような問題で、初めてのことなんだから、時間をかけて野党を含めてのコンセンサスが求められるような手だてをやってはどうか、そのことについては何にもお答えにならない。そういう一方的な押しつけといいますか、そういう態度で予算の審議をすることは、私は建設的でないと思う。  私は、ここで申し上げておきますが、この点については、理解することも、承服することもできません。できることなれば、予算、大蔵合同の会議か何かをやって、そうして結論を出すべきものであろう、こういうことを申し上げておきます。  そういう意味合いにおいて、私は、二つのこの決算調整資金と公共事業予備費については保留をいたしたまま、次に進みたいと思います。  そこで、時間の関係もありますので、きょうは国債発行の管理政策の問題なりこの成長率七%、今後の、このことがインフレにどう発展していくのだろうかというようなことを少しやりたいと思いましたが、時間がありませんので、財政問題、国債問題でもう一つだけ、そのものずばりでお尋ねしますが、いまのこの国債償還計画を見ると、これは言うまでもないところですが、赤字国債の償還についても、この償還率というものは、六十年間で返済をする建設国債と同じようなテンポで、六十年で払っていく。ところが赤字公債は、言うまでもなく、十年間が来たら、十年ものですから、五十年に発行したものは六十年には現金で支払います。これは大蔵大臣がちゃんと、この国会の予算委員会でも答弁しております。ところが、償還は百分の一・六、それと利子で払っていく。そうしますと、建設国債の場合は、十年が来たら書きかえやるから、六十年でいきますから、それでいけば大体、大方六十年先には元金が払える。ところが、赤字国債の場合は、十年たって現金で返さなければいかぬときに、どれだけ償還財源があるかと言えば、その時点では六分の一しかないわけです。六分の五は、たとえば五十年に二兆一千百七十億の赤字公債、五十一年が三兆五千四百五十九億、五十二年が約五兆、ことし、いま予算審議の五十三年が約五兆円の赤字公債を出しますね。そうすると、これは十年先、全部、六分の一だけは償還される形になるけれども、その時点が来ると六分の五が全部裸で現金で返さなければいかぬことになるのです。  そうすると、これは政府の方から中期の財政収支表を出してもらいたいわけですが、新聞その他の報じるところによれば、大体、公債を発行しないで予算が組めるようになる年は昭和五十五年を目途としておった、ところが情勢が悪くなったものだから五十七年までずらしたい、こうなった。そうすると、あと、五十八、五十九、六十、三年、たったら、六十年の段階では、ここで一兆七千億の現金で赤字公債の元金を払わなければいかぬ。私は、全くこれは私の杞憂に終わればいいけれども、いまこの政府の計画からいくと、五十七年までは残念ながら公債を発行して予算を組まざるを得ない。そして六十年の段階が、もう中三年たったら、いま言うように赤字公債の元金を現金で返さなければいかぬ。中三年しかないのです。この間どうしてつないでいくのだろうかということになると、これはいまからやはり十分の一ぐらいな、建設国債と赤字国債の償還の仕方を変えるべきじゃないか。そうしないと、総理が常々言っておるような健全財政の基盤を確立することにならぬのじゃないかと私は思うのですよ。  そういう意味で、高度成長時代でありましたら税の自然増収がある。ですから、少々、二兆や三兆や、極端に言ったら、赤字公債を抱えておりても、税の自然増収でいけるじゃないかというぐらいなつもりでおったかもしらぬけれども、今日の状態からいけば、そういう物の考え方は許されないだろうという立場から、私は、この赤字国債の償還方式を、具体的に十分の一というぐらいなところを目途として償還していくような方式に改定してもらいたい、こう考えるわけでありますが、どうでしょうか。
  183. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いま藤田委員のおっしゃったことは、まさしく、その本質をついているわけでございまして、赤字国債は十年で借りかえなしに現金で返さねばならぬわけでございます。したがいまして、遅くとも六十年の九月になりますとこれは返さなければならぬということに相なるわけでございます。  それで、その前に、実はこのままでいきますと、先ほども申しましたように、自然増収の方は大体弾性値一・二ぐらいでございまして、大体九%ぐらいの年率でございます。歳出の方は一九%に伸びているわけでございます。したがって、中期計画を立てまして、まず赤字国債を出すことをとめることから始めていかなければならぬのでございます。そのためには、やはり歳出についてかなり思い切ってカットをしていかなければいかぬ。同時に、税負担も、やはり増税も避けられないところであろう、こう思っているのでございます。  そこで、償還がやってまいりますので、われわれとしては、少なくとも五十七年までには、それを、赤字国債の種になる、償還財源の種になるものをとめておきたい。そういたしますと、その後の、それをベースにしました自然増収あるいはその後の歳出カットというものがやはりずっと効いてまいりますので、そこで償還財源が生まれるのではなかろうか。五十年でびしゃっと押さえますと、それは償還財源が多分なくなると思うのでございます。われわれが、三カ年余裕を見て、大事をとって、そこまでにその償還財源のもとになる発行をとめようとしているのも、またそこにあるわけでございます。そういうわけでございますので、ひとつ収支試算を十分御審議願いまして、そして真剣な御討議を賜れば本当にありがたいと思っておるのでございます。
  184. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私は、たまたま赤字国債の限られた財源問題にしぼってなにしましたけれども、言うまでもなく、すべての公債をトータルすれば、五十三年度、ことしの末になれば四十三兆円の国債ですね。そして、これはもう非常に単純な私の推定でありますが、五十五年の段階が来れば、現在程度の予算規模で現在程度の赤字公債財源でいきましても、六十三兆円の国債額を抱えるわけですよ。その中で赤字国債をどう返していくかということですから、そうでしょう、六十三兆円ものこんな大きな借金を抱えて、その中で、いまから七年先が来たらもう現金で返していかなければいかぬ金が一兆七千億出てくるのだ。そうして六十一年になれば、約三兆円の現金で返さなければいかぬ赤字が出てくるのだということになると、ここでその場逃れのような議論ではなしに、私がいま提案していることは、わが国の将来の財政の基盤を、健全な財政基盤をつくるという立場からも、十分の一がいいかどうかはともかくとして、一つの発想としては、十年物ですから十年で償還していくぐらいなことを考えるべきじゃないか、こういうことであります。  なお、大蔵大臣になにしますが、あなたなんかは知恵者ですから、あっちこっち理屈をつけることはうまい。しかし、この数字的なものは抽象的な理屈ではどうにもならぬ事態が来るわけですから、そこが私は、数字というものは恐ろしいと思うのです。  そこで、財政収支の試算表を出してもらいたいと思うのです。そして、赤字公債の具体的な償還の計画案を出してもらいたいと思うのです。出してくれますか。いつまでに出してくれますか。
  185. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 五十三年度予算の審議が始まりますまでにつくってお出ししたいと思っております。つまり、償還の計画表までは出せるかどうかわかりませんが、赤字国債を消すというところまで。  それで、いま藤田先生のおっしゃったことはよくわかるのでございますが、赤字公債を消すだけでも大変なんでございます。それにさらに十分の一のあれをその期間に積めとなりますと、歳出カット率あるいは負担増の求め方がさらに急角度になりまして、これはなかなか大変だなという感じで、実は三年間余裕期間をいただいているのでございます。おっしゃることはよくわかるのでございますが、これは大変だ、こう思って期間で見ておるわけでございます。
  186. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 私が要求したうち、一つ、財政収支の試算表は、これは予算委員会の本予算の審議までには出す。自分のことばかり言うとおかしいけれども、私は少しばかり高等数学もやっているが、いまあなたがおっしゃられたような意味において、そういう大臣が言われたような意味からも、それはなかなか厳しい作業かもわからないけれども、私は、やらなければいけない課題だと思うのですよ。これは逃げて通らない方がいいですよ。そういう意味で、いまの私の提案による後者の案を直ちに出せということについては、若干時間をかさざるを得ないかと私は思いますが、ぜひそれも早く出してもらいたい。どうでしょうか。
  187. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いずれ収支試算を出してみまして、それでなお、その試算、非常にむずかしい試算でございますので、いまやっておる作業が一日までに間に合うかどうかということで、一生懸命やっております。ですから、またそれを見ていただきまして、それで十分の一のお話がありましたら、償還財源ですね、その余裕期間でどうなるかというものも検討してみたいと思っております。
  188. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 これは検討してみたいなんという、そういう性格のものじゃないと思いますよ。これだけ財政問題がやかましく言われてきて、そして国民の立場からも、もうことしの時点で年度末には四十三兆円からの累積国債を抱えるようになるという段階で、どんなにしてこの借金を払っていくんだろうか、これは国民には重大な関心事ですよ。この作業なしに、私はその作業がむしろコンスタントで、この土台の上にいま言う収支の、五十七年だったら五十七年までには赤字公債を出さないようにやっていくとか、そういう作業が一体のものとしてなされるべきじゃないですか。これは分離してなされるべきものじゃないですよ。そういう点では、それは当然出さなければいかぬ資料なんですよ。それこそ財政法のたてまえから言っても、償還計画というのは具体的に出さなければいかぬということは義務づけておるじゃないですか。いわんや、いま皆さん言われておるように、三〇%超えたら国がつぶれるんじゃなかろうかとまで言わんばかりの総理の御発言の中で、三七%まで枠がふえてきて、それを出せないなんて、検討なんて、極端な言い方をすれば何をふざけたことを言っているんですかと、こう思うのですよ。そういうものを出さなければ本予算の審議はできませんよ。
  189. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 実は経済見通しが非常にむずかしいわけでございまして、いま企画庁の方では、五十四年、五十五年の大体の経済見通しを立てていただきまして、それを特に五十七年までひとつ延ばしてやってくれないかということをお願いいたしまして、それに基づきましていろんな六つぐらいのケースを置きまして、それでいま試算をいたしているのでございます。(「試算いたしておるのか」と呼ぶ者あり)はい、それをいま試算しておるのでございます。  そこで、償還時期の六十年まで経済を見通すということはなかなかむずかしいことでございますので、ひとつその点は御理解いただきまして……(発言する者あり)ぜひひとつわれわれが出します試算をもとにしまして、そして見当をつけていただければ幸せだと思うわけでございまして、なかなか経済の試算は、六十年まで見通すということは非常にむずかしい作業になるわけでございますので、ひとつその点はまげて御理解を願いたいと思います。
  190. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 これはむずかしいということで理解したりすべき性質のものじゃないですね。これはむしろ国債の償還計画というものが具体的にコンスタントとして先に議論される、それとの直接的な、不離一体のものとして、五十七年だったら五十七年までには国債に頼らない健全財政にしていくというものが出てこなければいかぬですよ。そういう意味で、私はぜひこれは出してもらいたい。そうしなければ本予算の審議はできません。
  191. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 やはり私は、理屈から言いましても、まず特例公債をとめるということにあると思うのでございます。次が償還だと思っておるのでございます。ですから、まずとめることからやりませんと、どうしても償還が大きくなるわけでございますので、まずその作業をやらしていただきたい。それをいま懸命に一日までに間に合わしたい、こう申し上げておるのでございますので、まげて御理解を願いたいと思います。(「そんなばかな話はないですよ、財政法違反のことをして」と呼ぶ者あり)
  192. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 出さないと言っているんじゃないんだよ。非常にむずかしいと言うているんだ。――それは出さぬと言っておるんじゃないんだからね。(「だめだ、だめだ」と呼ぶ者あり)藤田君に申し上げますが、出さないと言っておるのではないのでありまして、なかなかむずかしいけれども、後刻適当な措置をとると言っておるのですから、どうか質問を続けてください。
  193. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 十五カ月予算ですから…
  194. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いずれにいたしましても、六十年には現金で償還しなければならぬのでございます。したがいまして、五十七年の姿を見ていただきまして、それで大体見当をつけていただきまして、相当やはりなお増税を必要とするかあるいはさらに歳出カットをするか、いずれにしてもこれは法律上決まっておるわけでございますから、どちらかでやらざるを得ないわけでございます。借りかえはできないわけでございますから、ひとつその点は、政府を御信用願いたいということでございます。これから七年先の歳出を(「信用できない」と呼ぶ者あり)それは要するに、五十七年の経済見通し、これもなかなかむずかしいのでございますが、いま企画庁にせっかく、五十五年から二年延ばしてやっていただいて、それをもとにしてやるだけでも大変な作業でございます。ですから、とりあえずは、事柄から言って特例公債を消す方が先決でございます。それから特例債は、いずれにしても必ず返さなくちゃならぬことは法律で決まっております。どんな無理してでもやらなければいかぬのでございます。だから、そういう決意を持っているということをひとつ御了承願いたいと思うのでございます。  藤田委員御承知のように償還計画は必ず出しているわけでございまして、今度の特例債を出しますと、その償還はいつ、十年後に返します。こういう償還計画は出しているわけでございます。問題は、いま先生が言っているのは、その財源関係をどうするか、そういうところでございます。ですから、いま七年先のを、まずとめることが先でございますので、その財源措置を含めた収支試算を出してまいりますので、その上でまたひとつ御判断いただきたいと思うのでございます。
  195. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 藤田君に申し上げますが、この件に関しては、後ほどの理事会で御相談をすることといたしまして、持ち時間に従って質問を御継続ください。(発言する者あり)後で相談して……
  196. 藤田(高)委員(藤田高敏)

    藤田(高)委員 そうしましたら、いま理事の方からお話がありましたような取り扱いで、保留するということで先へ進みますが、一つだけ、不規則発言の中で大臣がおっしゃられていたけれども、赤字公債は、十年ものは十年たてば現金で返すということになっているのですよ。なっているけれども、一つ抜け穴がある、大蔵大臣が予算委員会で言っておることには。それは健全財政になって、特例法か、公債から何から出さぬでもいいような場合は現金で出すけれども、一つ抜け穴があるのです。いま私、資料を探しているのだけれども、そういうようなことをおっしゃると、ますますもって不信感が私には出てくるのです。私も大蔵委員を五、六年やりましたから、そのあたりのことは少し心得ておるつもりなんですよ。それだけに私はこの問題は、どうぞひとつ、野党から責めるとか責められるとかという次元の問題ではなくて、前段私が申し上げたような立場で、財政事情がこういうふうにむずかしくなればなるだけに真剣に考えるべき問題じゃないか、こういう観点でひとつ自後の対策を考えてほしい。  そこで、あと何分あるのかね。――十分か。そうしましたら、私やはり、この問題は私自身も非常に重要問題の中の重要問題だと心得まして、実はきょうの質問の中でも、私のいわば目玉質問として対処した問題でありますだけに、保留して、時間を残さしてもらいたいと思います。自余の質問は。委員長、そういう資料がどういう取り扱いになるのかという結論が出ないうちは……。
  197. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 ただいまの藤田君の質疑に対しましては、十分間留保することにいたしまして、次に、竹本孫一君。
  198. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 私は、経済問題に入る前に一つ二つ、ほかの問題でも御質問をいたしたいと思います。  先般の伊豆大島近海の地震で大変な犠牲を出しまして、心からお悔やみを申し上げたいと思っておる次第でございます。この点につきまして、時間もありませんから国土庁の方に要点だけ五つ六つ伺います。最後に総理にもちょっと伺いたいと思います。  まず一つは、一月十八日の静岡県の余震情報パニックという問題があるのです。情報パニックと申しますのは、たとえばマグニチュード六の地震があるかもしれないという警戒の情報を出した。ところが、M6と書いてあるものだからPM6と間違えて、午後六時には地震があるんだということがずっと伊豆一帯に広がったんでしょう。そういう混乱がありましたので、今後の問題について、この混乱をどういうふうに反省をして取り組みをされるかということが一つ。  第二番目には、今度一番痛感したことは、その警報をいつ、何時間前に、だれが出すか、出した場合には何をすればよろしいかということについて国民に対して十分の指導が行き届いていなかった、この点をどうするか。  第三番目は、行政機構の問題になりますけれども、地震防災対策というものは、たとえば今度の予知情報の場合でも、五省庁六大学に関係がある、防災対策については二十三の省庁に関係があるということになりますと、これはやはり一元化するなり、少なくとも機能を一元化するということについてお考えをまとめてもらわなければ困るではないか。  なお、これに関連いたしまして、国道百三十五号の復旧作業というものは、いつきちんとでき上がるか。  五番目は、国土開発との関係でございますが、私は、危険個所の改造工事だけでなくて、やはり地盤と地質の調査というものを根本的にやり直す総点検をやるべきである、今後の国土開発というものはそうした地質、地盤の調査の上に立ってやるべきではないかと思う。  これらの点について、きわめて簡単で結構ですが、結論だけ御返答願いたい。
  199. 櫻内国務大臣(櫻内義雄)

    ○櫻内国務大臣 予知情報が地震に関係してきわめて重要なことは言うまでもございませんが、今回お話しのような混乱のあったことはきわめて遺憾であります。この経験を踏まえまして、よりよき予知の方法というものを速やかに決定をいたしたい、そういうものを内容とした特別立法をしたいと、いま作業中でございます。  それから次に、国道百三十五号の整備の問題に触れられましたが、これは御承知のように道路公団の所管でやっております。いま緊急車のみ通っておるのでありますが、これは災害の状況から見ましてなお若干の時日を要することを御了承いただきたいと思うのであります。  一つさかのぼりますが、これからの情報についての主体はどこであるか、伝達の経路や方法の具体的なことについてもちょっとお触れになっておられましたが、これらのことは法案立案の過程におきましてしっかりしたものを考えていきたいと思います。  それから、伊豆半島の地質の状況からいたしまして、この際地盤の総点検の必要があるのではないかという御指摘でございました。これはまさにそのとおりでございまして、これは非常に重要な問題でありますので、現在災害対策本部におきましても、担当官によりまして鋭意御趣旨のような線でいろいろ努力をしておるわけでございます。しかし、さらにもっと根本的な対策をする必要があろうかと思いますが、一応の点検の上で考えさしていただきたいと思います。  地質調査も同様のことでございまして、伊豆半島の特殊の状況というものにつきましては、数次にわたるこの伊豆の地震の状況から見て、明らかにこの辺が大きな問題点であるということには、私もそのとおりに踏まえておりますので、専門家による調査を進めてまいりたいと思います。
  200. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 総理にひとつお伺いしたいのですが、いまの地質調査あるいは地盤の調査の問題ですが、これからの国土開発というものは、原則としてそういう地質調査や地盤調査の上にこれを行うという原則を確立する御意思はありませんか。これが一つ。  それからもう一つは、先ほど来のお話にもありますように、混乱があります。したがって、今度は大地震の特別立法ができるそうでございますが、この法案はこの国会に出して必ず成立させるという御決意であるか。これが二番目。一それから最後に、この地震の問題だけではなくて、基本的に日本の非常事態に対処するというあり方が必ずしも十分でない。今日においては警察法七十一条ですか、その辺に一つの緊急事態の布告ができるということが書いてあるのだけれども、今度の特別立法とあわせて、日本の非常時、混乱の場合に対処する基本的、法的措置は考えておられるか、おられないか。  以上三つをお伺いいたしたいと思います。
  201. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 まず、大規模のプロジェクトを執行する、そういう際にあらかじめ地盤調査、地質調査をしてからすべきだという御意見でありますが、それはまことにそのとおりじゃあるまいか、さように考えます。  それから、いま、この国会で、地震予知情報が出た場合の対応措置につきまして特別立法を制定すべく準備を進めておるわけです。これはぜひこの国会に提案して成立さしていただきたい、かように考えております。  また、非常事態の問題につきましては法制局長官からお答え申し上げます。
  202. 真田政府委員(真田秀夫)

    ○真田政府委員 お答え申し上げます。  非常事態が生じた場合に対処する法制としてどういうものがあるか、また、それがよく整備されているかどうかというお尋ねだと思いますが、現在の法制の中に御存じの災害対策基本法というのがございまして、この中にかなりのことができるようになっております。  条文に即しまして内容を申しますと、六十条、六十一条というところに、市町村長なりあるいは警察官が避難の指示をすることができるという規定がございます。それから六十四条にまいりまして、必要な場合には応急措置を実施するために他人の土地、建物その他の工作物を一時使用することができるというような公用使用の権限、また、必要な場合に、民間の人に一定の仕事に従事させる、あるいは倉庫に物を保管させる、保管してある物を用いるというような権限もございます。  それから、その災害がきわめて著しく甚大でございまして、緊急を要する場合には、例の災害緊急事態に対処するための措置といたしまして、災害緊急事態の布告という制度がございまして、これは内閣総理大臣が布告を発します。そうしますと、そこで緊急災害対策本部というものが設置されることになりまして、そういう事態でありますと、今度は経済的な措置、つまり、取引関係につきまして、たとえば取引の停止を命ずるとか、あるいは金銭の支払いの停止、モラトリアムですね、そういうようなことが政令で措置できるという規定がございます。もちろん、これは政令でやりますから、すぐに後で国会の御承認を得なければならないという制約がございますけれども、とりあえず緊急の場合に対処する措置として、いま申しましたような経済上、取引上の制限を政令でやるという制度はございます。  それから、そういう場合には、大体、災害救助法も発動されることになると思いますが、災害救助法にも、先ほども申しました、物の使用とか、あるいは一定の業者、運送業者とか医療に従事する者とか、そういう人たちに、救助に必要な業務に従事しなさいという従事命令を出すという制度  それから機構の方といたしましては、そういう災害の場合には、例の自衛隊の災害派遣という制度もございます。  大体それが災害の場合の話でございますが、内乱とか治安の乱れた場合の非常事態、そういう場合には、先ほど御指摘になりました警察法の緊急事態の……(竹本委員「それでもういい」と呼ぶ)それで内閣総理大臣が全警察を掌握する、あるいは自衛隊が命令によりあるいは要請によって治安出動するという制度がございまして、その場合には警察官職務執行法が準用されまして、避難の指示というようなこともできるという仕掛けになっております。
  203. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 私が特に要望したいのは、戦争のアレルギーで、日本の国家の全体の治安なりあるいは混乱なりに対処するという意味では、いままだ法的にすべての体制が整ったとは考えませんので、十分に検討してくださいということを言っておるので、個々の法律のことはいま言わなくて結構です。  次に、外交、防衛の問題について一言だけ。  まず、要望を申し上げますが、いまアメリカのブレジンスキー補佐官ですか、あの人に「ひよわな花・日本」という著書があることは、総理も御存じのとおりだと思いますが、あれを読んで私が感じて、いまだに忘れることができない問題が二つある。  一つは、日本の外交路線は、アシビグイティー・アンド・インセキュリティー、あいまいもことしておる、どこに基本路線をつくっていくのかはっきりしないということが書いてある。もちろん総理も、アメリカとの関係を軸にしてということをよくおっしゃっているし、それがまた当然だと思います。しかし、その点で、ブレジンスキーさんでも、書いたときは大分前ですけれども、まだそれがはっきりしないというところに一つの問題があるのではないか。  それから第二は、恐らく日本は、アメリカとの協力を基軸にするであろう。しかし、その最後のところに、アメリカと一緒にやるんであろう、カンマを打って――私は一度申し上げたことがあるが、ビハインド・ザ・ユナイテッド・ステーツ、すなわちアメリカの後ろをついてくるような形において、とわざわざ書いてある。これは先ほど来総理が、一つの国民的、民族的プレスティージを持っていろいろ御議論になっておるが、われわれの威信から言っても余りありがたくない言葉でございまして、やはりアメリカに対しても対等なパートナーシップで、言うべきことはきちんと言ってもらいたいという二つを、私は要望しておきたいと思います。  そこで一つお伺いするのは、これからの世界経済混乱に対処するために、今度ドイツで行われるでありましょう各国の首脳会議の前に、総理がアメリカに行って日米の関係をさらに強化して、その上に立って国際経済にも、国際首脳会議にも対処しようというお考えのようでありますけれども、果たしてそうであるか。あるいは日米首脳会談をやるために、適当な時期に早く訪米をされる御意思はおありであるか、念のために伺っておきたいと思います。
  204. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 私は、昨年の三月訪米しまして、新政権をつくりましたカーター大統領と、新たに日本の首相になりました私という立場で会談をいたしたわけであります。その後、その会談を踏まえまして五月の先進国首脳会談に臨んだ。日米関係は、政治的にはいまだかつてないような、問題のない時期でありますけれども、いまは世界経済が非常に混乱をしておる。そういう中で、とにかく第一の経済大国であるアメリカ、それから自由社会では第二の立場にあるところの日本、これが緊密に話し合いまして、そうして意見の調整をしておくということは、世界のために非常に大事なことである、そういうふうに考えております。そこで、カーター大統領に日本に来てもらえぬかという話もしてみたのです。ところが、上半年中はいろいろ日程がふくそうしておりまして、ちょっとそういう時間がとれない、こういう話でございます。それじゃ私がアメリカを訪問するということにしようかと思いまして、私、国会の都合が許す、そういうタイミングですね、訪米してみようかということを申し入れ、いま両国間において協議をしておる、こういう段階でございます。協議することは、二国間の問題もあります。ありまするが、やはり世界の諸問題につきまして隔意なく話をしておくということが大事である、こういうことで、ちょうど夏ごろには首脳会談もある模様でございますので、その前に話し合っておくということはきわめて重要である、かように考えております。
  205. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 ぜひひとつ国益に立って、対等の立場で十分な話し合いをしていただきたい。要望を申し上げておきます。  外交、防衛の問題については、また別の、うちの専門家にやってもらうことにいたしておきたいと思いますが、一言、日中平和友好条約については、静かなる情熱を持ってひとつ前向きに取り組んでもらいたい。要望だけ申し上げておきます。  これに関連して、覇権条項という言葉そのものは、私は、官本も覇権を求めてはならないし、アメリカもソ連もどこの国も覇権を求めるべきではない、きわめてあたりまえな基本原則ではないか、こう思っておるわけです。  そこで、ちょっとそれに関連して、この間のソ連のコスモス何号とかいうのは、原子炉を積んで飛んで回っていたのがだめになって、カナダに破片が落ちて放射能が出そうだという問題がございますね。私は、日本の東海村の核サイクルの問題のときでも、前の科学技術庁の宇野長官に非常に健闘していただいてあそこまでこぎつけてもらったと思って、その努力を評価しておるのです。しかし、アメリカの態度自体は、われわれが核防条約を論議するところにいろいろ条件をつけたそのことから考えて、われわれの平和的利用には文句をつけながら、自分たちの核軍縮はさっぱりやらない。ますます拡大しておる。そして今度は軍事スパイ衛星まで、米ソおのおの打ち上げておる。そして、たまにはそれが落っこちてくる、放射能も散る。こういうことになりますと、私は、ある意味でこれこそ――アメリカは今度はやってないんだが、失敗したのはソ連だけれども、まあアメリカがまたやらぬとも限らないんだが、これらは一種のそれこそ覇権的な考え方である。そういうあり方に対して、日本政府としてははっきり抗議を申し込むべきであると思います。そこで、日本政府はソ連に対して、先般の問題については抗議を申し込むだけの決意があるかということが一つ。  それから、今日、ソ連とアメリカがそれぞれ原子炉を積んだ軍事衛星を幾つ打ち上げておるか、その二つだけ聞きたいです。
  206. 園田国務大臣(園田直)

    ○園田国務大臣 アメリカからは通報がありましたが、ソ連からは全然通報がございません。したがって、ソ連に対しては直ちにこれを抗議、及び情報その他の連絡等の申し入れの準備をしておるところでございます。
  207. 伊藤(圭)政府委員(伊藤圭一)

    ○伊藤(圭)政府委員 ただいま原子力によって飛んでおります衛星について申し上げますと、アメリカは、航法用あるいは通信用、宇宙探査用の衛星に原子力発電装置を搭載しております。ソ連につきましては、先般落ちましたコスモスの954号、これによって原子炉を搭載しているという事実がわかったわけでございます。ただ、アメリカの場合に、二十個ほど上げているわけでございますけれども、そのうち、この間落ちてまいりましたような原子炉を搭載しておりますのは一個でございまして、一九六五年に一度だけ打ち上げておりまして、そのほかはラジオアイソトープという出力の小さいものというふうに承知いたしております。ただ、ソ連につきまして幾つかということはわかりませんけれども、実は二十五日、アメリカのシュレジンジャー長官が、同じようなものを十二個以上上げている、というような報道があるようでございます。
  208. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 厳重抗議を申し込んでいくべきものはいっていただきたいと思います。  次に、北方領土の問題を一言だけ伺いたいのですが、園田外務大臣は、ソ連に行って、非常に民族の利益に立って大いにやっていただいたようでございまして、その努力に対しては敬意を払っております。そして、お帰りになりましてから、大体五年以内には北方領土の返還ができるようなお話があったようでございます。非常に私は期待しておるのですが、また、きのうかいつか、自民党の会議においてはそれを取り消されたような新聞も見ておるのですが、どれが真意でございますか。特に、五年以内にやるということは甘い判断ではないかという見方もあるでしょうけれども、一国の外務大臣の情熱としては、当然これは五年以内には片づけるというぐらいの熱意を持って取り組んでもらいたいと思いますので、それをお伺いしたい。  もう一つ、この北方領土の問題が解決しないと、佐藤さんの名語録によれば戦後は終わらないと思うのですね。この点については総理大臣からもお伺いをいたしたい。そのぐらいの信念で交渉していただきたいということです。
  209. 園田国務大臣(園田直)

    ○園田国務大臣 私がモスコーから帰りまして記者会見または懇談会等で、五年以内に北方四島が返されるだろうと確信があるということを言ったのは、事実とは違います。ただ、帰ってきてからお出迎えの方々に、北方四島の取り扱いについては相当両方に開きがあったけれども、しかし日本国民の信念が不変であり不動であり、これが一括返還されるべきものであるという確信のもとに、そういう背景にして粘り強くやるならば、これは遠からず――私、腹の中では、ソ連さえ実情認識をし、決意すれば、一年でも二年でもできることでありますから、遠からず、三年、五年といううちには必ず返るだろうという確信を持って努力いたします。こう答えたのが、私の帰ったときのお迎えの人に対するあいさつであります。  いま仰せのとおり、総意に基づき、しかも一括返還は不動のものであるという国民の総意を背景にして粘り強くやらなければなりませんが、しかし、と同時に、これは言っても返らぬものであるということではなくて、必ず返るという確信も、これは非常に大事でございますから、いま仰せのごとき覚悟でこれが解決に向かって努力する所存でございます。
  210. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 北方四島の返還は、私は、これは国民的な悲願である、こういうふうに認識しております。その認識の上に立ちまして、まあ、とにかくむずかしい問題でありまするけれども、粘り強くひとつ交渉いたしまして、そしてこの問題を解決したい。いまお話がありましたが、この問題が解決しなければ戦後は終わらないというくらいな決意をもって臨みたい、かように考えます。
  211. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 次に、稻村長官に一つお伺いしたいのだが、北方領土現地視察をされまして、これまた、その御努力を高く評価して、おります。そして、お帰りになってから、島を返せということでひとつ国民的な運動を展開したいというお話があったようですけれども、具体的な運動を起こさなければなかなかこの問題はむずかしいと思うのですが、どういう構想をお持ちでございますか、伺いたい。
  212. 稻村国務大臣(稻村佐近四郎)

    ○稻村国務大臣 お答えいたします。  北方領土の返還実現には、何と申し上げましても国民の総意を結集することが大切でなかろうかと思います。政府といたしましても、国民の理解を求めるべく積極的に啓発をしてまいりました。しかし、一部の地域におきましてはまだ十分に理解をされていないところもあると思いますので、今後は各種団体、公共団体等を通じてすみずみまでも行き渡るように啓発をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  213. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 もう少し具体的に、もう少し積極的な熱意を持って取り組まれるように要望を申し上げておきます。  次に、経済問題に入ります。  この国会は、とにかく、好むと好まざるとにかかわらず経済国会になってまいりました。いろいろと野党の追及も厳しいものがございまして、総理も、経済の運営には率直に言って失敗もあった、これからは失敗のないようにひとつやりたいという御答弁があったようでございます。これは要望になるかもしれませんが、私は、総理の国会における施政方針演説そのものの中に先取りをして、おれにも誤りがあった、しかしこれからはこういう決意でやるんだ、ひとつよろしくというようなごあいさつがある方が、野党が追及して、それから失敗があったと後から認めるというような形でなくて、先に言うだけの誠実さと謙虚さが望ましい。それでわれわれの気持ちががらり変わるのですよ。ですからその辺は、それこそ政治的に御判断、善処を願いたい。人間でありますから過ちがあることはあたりまえのことだし、特にいまのようなむずかしい経済情勢で、総理が私にも誤りが少しはありましたと言われるときに、なぜ誤ったと言ってがんがん言うというようなばかなことは言いません。だれがやっても御苦労さまですと、われわれも言いますよ。それで初めて芝居になるので、とにかく劇になりませんよ、これでは。だから、今後はもう少し誠意を披瀝してやっていただきたい。人は努力する限り過ちを犯すという、ゲーテの言った言葉がありますが、一生懸命やる、やれば過ちも出るのです。ですから、私どもは、過ちがあったということをそうめちゃくちゃに文句を言いません。それを率直に認めて次の反省のスタートを切るかどうかということの方が問題なんですから、これは要望申し上げておきます。  そこで私は、やはり経済政策福田さん専門家でもありますし、大いに期待もいたしておったのでございますけれども、この内閣だけでもなかったと思うのですが、本来、自民党さんの経済政策には、私は常に致命的な三つの過ちがあるということを言っておるのです。  それは、この前もちょっと申し上げたのですけれども、時間がありませんから簡単に申しますが、第一はツーレート、すなわち後手後手と言われる、余りに遅いということですね。アメリカの雑誌などを読んでみても、ツーレートということがよく書いてある。ですから、今後はおくれないようにやってもらいたい。私が友人のドイツ人に会いましたときに、失礼ながら、ドイツは物価政策その他常に日本より半年先に行っておる、こう言いましたので、いや、私は常に半年おくれておると言うからあなたと内容は同じだと言って握手したことがありますが、とにかく今度の大きな予算でも、思い切ったものはもう半年前、一年前に出すべきであった。ツーレートを今後は改めていただきたいと思っておるわけですね。  第二はツーリトルです。これは小出しに過ぎるということですが、予算にしても、減税にしても、あるいは公定歩合の引き下げ方にしても、常に小出しになる。これはある意味では、いろいろの情勢を勘案しなければならないという総合的な立場もありますので、慎重に考えられるという点もわかりますけれども、しかし、振り返ってみれば、たとえば公定歩合、日銀総裁もお見えになっておるけれども、二%下げろという声があっても、〇・五だ、一%だ、〇・七五だ、これを三回に分けなければ承知できないというようなツーリトルの取り組みは、結果的において失敗ではないか。タイムを読めば、日本のやり方はツー リトル ウイズ リトル サクセス、小出しをやって成功もさっぱりしない、こう書いてある。そのとおりである。  ひとつ日銀総裁に伺いたいのですが、いままでのやり方は、いま申しました、ツーレートもある、その上にツーリトルであったではないという点についてどういうふうに思っておられるか、伺いたい。
  214. 森永参考人(森永貞一郎)

    ○森永参考人 昨年、三回、公定歩合を下げました。その前、四回くらい下げたわけでございますが、私どもといたしましては、公定歩合の引き下げを必要とする、そしてまた最も効果の上がるような適当なタイミングにおいで、適当な幅において引き下げを決定するように努力をしたつもりでございますが、それにつきましてのいろいろな御批判がございますことは私どももよく承知しておる次第でございまして、ただいまの竹本先生の御意見も謙虚に傾聴をいたした次第でございます。
  215. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 もう一つ日銀総裁にお伺いしたいのですが、公定歩合を下げろという声がある。これも一応もっともな意見だと思いますが、公定歩合を今度の場合にすぐ下げるべきであるかどうかということについては、私は非常に問題がある。特に、こういうことを言ってはどうもはなはだ残念でありますが、今度の経済政策が、けさからもずいぶん議論がありましたように、必ずしも成功するとぼくは思っていないのです。後でいろいろ申しますけれども、成功すると思っていない。したがって、切り札というか決め手というか、最後の切り札を一つや二つ残しておかないと、いま持ち札を全部切ってしまったら、いざという場合に困りはしないかという心配をするわけです。そして、これは通産大臣も言っておられるようだけれども、六月なり七月なりに、外国からも文句が出る、国内からもこれでは七%危ないという危機感が出てくる心配がある。そういう場合も想定できるのだから、やはり慎重にやらなければならぬではないかと思うが、現段階において公定歩合について一体どういう取り組みを考えておられるか、伺いたい。
  216. 森永参考人(森永貞一郎)

    ○森永参考人 結論から申し上げますと、私ども目下のところ公定歩合を引き下げることは考えておりません。  経済情勢につきましては、まだ年明け後余り資料もそろっておりませず、確たることは申せませんが、先般、支店長会議で各地の情勢を伺ったのでございますけれども、円高についての混迷感みたいなものからはやや立ち直った感じがございますけれども、それがまだ現実の景気回復には結びついていない、依然として厳しい経済情勢が続いておるというのが会議の全般的な印象でございまして、何とかここで景気回復を着実なものにする必要がある。それには、何と申しましても財政面からの刺激、内需の拡大が必要だと思うわけでございまして、その意味で、いわゆる十五カ月予算の効果に私は大いに期待をしておるわけでございます。  金融の面からも何とか側面的にお手伝いをしていかなければならぬわけでございますが、幸い、金融は、量的には緩和がすみずみまで行き渡ってきつつございますし、また金利も、この数カ月、公定歩合の引き下げに伴いまして着実な低下を見せつつございます。特に短期金利につきましては、十一月以後、史上最低の金利が実現しておるわけでございます。もう少し市中金融機関の金利の引き下げの協力を受けたいというのがいまの段階でございまして、もちろん、いまの緩和した状態を今後とも維持し、景気回復に必要な資金の供給には事欠かないようにしなければならないと思いますし、また、ミクロ的な面での配慮もいろいろと必要でございますが、当面はそういうことで対処できると思っておる次第でございまして、公定歩合につきましては、今後の情勢の推移いかんにもよることでございますが、目下のところは引き下げを考えておりませんことをお答え申し上げたいと思います。
  217. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 大体そんなところではないかと思いますから、ひとつ慎重に取り組んでもらいたいと思います。  いまツーリトルがちょっと横道に行ったのですが、三番目の欠陥はツーロー、次元が低い、調子が低い、ロートーンであるということですね。これからの経済というものは、外に向くよりも内を見なければならぬ。ところが、けさほど来議論がありますように、内需がとかく軽視されておるという意味もあります。また第二には、内需を見る場合にも、下から景気を出していかなければだめなんですね。上から景気を出そうということはなかなかできない。野党が減税を言うのもその点だと思いますけれども、その点が、いろいろ次元が低過ぎるではないかという点のポイントでございますが、これに関連をして、時間もありませんので、総理、これは要望を申し上げておきます。  総理言葉考え出すのがなかなかうまいですね。これは私は非常に敬意を払うのだが、書物で言いますと、書物の名前だけ出るんだ。総論があればまあいい方だ。ところが、総論までいかないで、序文があるくらいの程度で、後が続かない。いままで総理が言われた言葉で私が非常に感銘をしておる言葉は、たとえば「昭和元禄」ですよ。「昭和元禄」というのは、戦後の民主主義の矛盾というようなものを鋭く指摘して、これからの日本経済に対するわれわれの取り組みの精神的な心構えを教えるという意味において、非常にいい言葉を言われたと思ったんですよ。ところが、これも言われただけで、その言葉は、私の理解においては、直ちに日本の教育の改革、日本人の精神革命というものまでつながっていかなければならぬが、それは余りない。きのうも参議院では、新自由クラブの有田さんがなかなかいい御質問をなさったようですけれども、そういう問題も含めて「昭和元禄」というのは、われわれの戦後のあかを洗い落として、本当の意味でもう一遍まじめな、しかも民主的自覚の上に立った日本国民として再出発をしなければならない、精神革命が要請されておると思うのだけれども、その続きの具体的なものがない。「物価狂乱」は、経済の計画化ということにつながらなければならぬと思うのだけれども、これもつながってこない。さらに、最近では「資源有限」ということを言われた。これは私、非常に感銘の深い、いい言葉だと思っておるのですけれども、われわれの理解においては、「資源有限」という言葉は直ちにそのまま、産業構造の改革並びに行政機構の改革、あるいはわれわれの消費生活の根本的な見直し、そういうことにつながらなければならぬ。ところが、石油の消費規制さえろくにできない。一体何のために「資源有限」を言われておるのかよくわからない。  これは要望にとどめておきますけれども、何とか二の辺で、言われた言葉をもう少し具体的に現実の政治の中に生かしていただきたい、それがなければ、ただ単語だけになってしまうではありませんかということを申し上げたいのであります。  次に、いよいよ補正予算の問題に入りますが、円高の問題につきましては、それを見通すことができなかったこと自体に問題があることを、けさほど来鋭く、いろいろ同僚の議員から指摘をされておりました。輸出がどんどんふえて、先ほど来、十一月十一月という話が出ましたが、十一月の統計を見れば輸出は二三%ふえた、輸入は二・二%だというようなことが問題を起こす原因でもある。それから、輸入の自由化という問題についてもこれから本当に取り組むのであって、いままでは私の言うステップ・バイ・ノー・ステップで余り進んでいない。これも本格的に取り組まなければならぬ。  そこで、ここでちょっと、東京ラウンドにはどの程度の決意と構想で取り組まれるかということを一言伺っておきたい
  218. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 東京ラウンドにつきましては、何といっても工業製品については、わが国は東京ラウンドが積極的にまとまりますことで一番利益を受ける国であると考えておりますから、できるだけカバレージを多く、またカット率も高く、場合によりましてはいわゆるディーパーカットというものを含めてやってまいりたいと思います。農産物につきましては、わが国ばかりでなくECにもいろいろ問題のあるところでございますから、これは別途の扱いをする。いわゆるNTBにつきましても同様に考えております。
  219. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 これは大体、東京ラウンドの問題だけでなくて、やはり輸入の自由化ということは、円高の問題と同じように、これを機会に日本経済体質のまずいところ、おくれておるところを切りかえるという発展的な契機にしなければならぬと思うのですね。     〔委員長退席、栗原委員長代理着席〕 それを、輸入自由化によって冷たい風が吹いてきたら困るから、さあ保護しろ保護しろというような迎合政治ばかりやっておると、日本経済は、いつまでたっても本当の意味での国際的水準には達しない。もうこの辺でそれこそ迎合政治というものはやめて、はっきりした経済の論理を貫いてもらいたい、要望を申し上げておきます。  そこで、いよいよ補正予算の本論に入りますが、大蔵大臣に伺いたいのですが、辞書を見ても学校の教科書を見ても、補正といえば減額補正あるいは増額補正という二つしかないはずだ。確かに今回も、五千六百二十二億円かの歳出の増加がありますね。しかし、これを歳出補正、増額補正というふうに受け取るのには、どうも私はためらいがある。何しろ大赤字が出ているのですから、穴のあいている大赤字を出しておきながら積極的な増額補正と呼ぶことができるかどうか。一体これは増額補正であるか減額補正であるか、それともまた、新しいものを考え出されたのであるか、どれですか。
  220. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 率直にお答えいたしますと、これは盾の両面だと考えておるわけでございます。円高その他によりましてデフレギャップがございまして、十五カ月予算のもとに一方やらなければいかぬ。また円高等、その他の理由によりましてミクロ経済が非常に悪くなっておりますので、税収が激減するのでございます。したがって、その穴を埋めるために、どうしても一方の公共事業については建設公債、それから、その反面であります歳入の不足につきましては赤字公債を出さざるを得ない、こういう両面が同時に出ていると思っておるのでございます。
  221. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 私は、両面があるなんというのはごまかし説明で、そんなとらえ方ではだめだと思うのですね。確かに公共事業が三千六百億なら三千六百億ふえた、総計として五千二百億ふえたというところもありますが、実態から見れば、大穴があいて、その穴をどう埋めるかというための補正予算ですよ。後から公共事業をくっつけたので、まあまあ補正予算という名前に値することになったというような、デコレーション、粉飾予算だ。赤字補正予算。そういうような新しい補正、初めてじゃないですか、いままでにこんな補正なんてありはしませんよ。減額か増額か、それにしても大体性格がはっきりしておる。一部はふえた、しかし大部分は大穴があいている。私は、今度の補正予算というものは全部赤字対策だと思いますよ、これからだんだんに申し上げますが。  まず第一に申し上げたいのは、所得税が五千六百十億円の減収でしょう、法人税は三千二百七十億円の減収でしょう、両方合わせれば八千八百八十億円の大穴があいているのですよ。それを埋めるために、特例公債だけでも一兆百九十億円の借金をするのでしょう。どこが積極予算だ、どこが増額だということを考えてみると、大穴のあいた予算ですよ、それの穴埋め、しりぬぐいをする予算だということでございます。  そこで私は、先ほど来、決算調整資金の問題も議論が出ましたから、ついでに申し上げますが、あれだって、八千六十億円の全体としての赤字が出ました、そして一兆円の赤字特例公債も出します。増収も図ります。しかしなお、場合によっては三月危機もあるし、もっと収入が減るかもしれぬということで、あわてて決算調整資金というものをつくったのでしょう。だから、これは正確にその性格を言えば、赤字決算調整資金ですよ。財政の一番大事な所得税と法人税は八千八百八十億円の赤字が出ておる。赤字特例公債は一兆円を超しておる。そして、それでもなお安心ができぬから決算調整資金をつくる。これは明らかに赤字決算基金であり資金であるというふうに思うのです。そうしてみると、これは全部が赤字補正ではないか、私の言う赤字補正予算だということに性格ははっきりしておる。  そこで、まず第一に決算調整資金の問題ですけれども、そんなけちな、後ろへ向いた赤字穴埋めの資金をつくらずに、これは先ほどもちょっと議論が出ましたが、一年特例、時限立法でやるというならまだわかりますよ。そうではなくて、こんな赤字決算資金をつくるというような不景気な話ばかりしないで、景気調整基金というものにして、これは後で申しますが、財政の五カ年計画、われわれの言う中期経済計画、それに見合う、より積極的な意味と内容を持つ調整基金にしたらどうか。私は、ドイツの一六七〇年の経済基本法、あの考え方に基づいて総理にも質問したことがあるし、総理から評価を受けたこともありますが、そういう積極的構想、いよいよこれから切りかえていかなければならぬのですから、幸い、こういう問題が出たのでここで切りかえて、ただ、ことしあるいは来年の穴埋めのための決算調整資金としないで、これから五年なり十年なりの中期の経済展望の上に立って、これを景気調整基金なり資金なりということにして、どうせ恒久的な立法なんですから、より積極的な内容を持たせる御意思はありませんか。われわれがそういう修正案を出した場合には応ずる御意思はありませんか、お伺いいたしたい。
  222. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いま竹本先生のおっしゃられたことは、静かに反省してみますと、高度成長時代、あの当時ずいぶん自然増収があったわけでございます。ほとんど減税と歳出の増に使ってしまいました。あの当時でございますと、まさに景気調整資金ということは言葉どおり当てはまると思うのでございますが、いま出しておりますのはそうではなくて、おっしゃるとおりに、決算時期に赤字になるかもしれない、そういうものに対する制度的な手当てを恒久的にやろうというのでございます。しかも、その財源は赤字国債でやるわけでございます。したがって、景気調整資金、こう申しましても、実際は決算の赤字に使うわけでございますので、なかなかそういうわけにまいらぬ、こういうことでございます。
  223. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 私が言うのは、五十三年度は確かに赤字の穴埋めだという本質を言ったわけだ。それで、いまあなたのような答弁でいくと、これから五カ年間ぐらいは全部自然増収は出てきませんから、当分赤字決算資金しか考えられないということになりますよ。私が言うのは、中期展望に立てば赤字が出る場合もあるでしょう、黒字が出る場合もあるでしょう、それをならしていく調整資金をつくって、これから財政というものは長い目で総合的、長期的あるいは中長期的な展望に立つのだというお考えはありませんかということを言っているのですが、総理いかがですか。
  224. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 その考え方は、こう世界経済が不透明であるとか、また国内にも変動要因が多いという際には、これは必要じゃないかというように私は思うのです。今度五十三年度につきまして御提案申し上げておる公共事業予備費、これなどはまさにそういう考え方のもとに立っておる、こういうふうに思うのです。景気調整ばかりじゃありません。これは予見しがたいいろいろの事態が起きてきた場合の措置でございまするけれども、景気調整というような意味ももちろんそういう中に入り得る、こういうふうに考えます。
  225. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 この問題は、法案が出た段階で改めてわれわれの意見を積極的に、より具体的に展開してまいりたいと思いますから、ひとつ十分留意していただきたいと思います。いずれにしても、来年の赤字をどう埋めるがということだけでなくて、せっかく法律をつくって、時限立法でなくて本格的につくるのなら、いまから五年先まで間に合うような法律をつくるのが知恵ですよ。そのくらいのことは考えてもらいたい。  ここでひとつ、けじめをつけておきたいと思うのですが、きのう大蔵大臣から予算説明がありました。私も真剣に聞き、かつ読んでみましたが、不思議なことに、あの説明は、主計局長もいらっしゃるが、局長さんが読めばいいのですよ、大蔵大臣としての見識も誠意も全然感じられない。特に私が憤慨をするのは、先ほど総理にも申し上げたけれども、八千八百八十億円の見込み違いの法人税、所得税が出てきた。足らないところが八千八百八十億円ありますと棒読みに読む、そんなことに何の意味がありますか、われわれは読めばわかるのだから。われわれが大蔵大臣に聞きたいことは、一番大事な税収、その税収の柱であるところの法人税と所得税、その二つだけでも八千八百八十億円の大赤字を出しました、これは大きな見込み違いでもありました、私は責任を感じております。ということですよ。それが一言もない。一体、そういう意味で事務員の報告みたいなものを出して説明して、予算説明になるのか。あるいは大臣は大臣の見識と誇りに立って、失敗をしたところは、失敗しました――しかし、総理、もし野党がもう少し強いか、あるいはこれが会社であってごらんなさい、これだけの赤字を出せば社長は首ですよ。野党がもう少し強ければ、これは内閣総辞職ものですよ。一兆円に及ぶ見込み違いをやって、見込み違いは八千八百八十億円でありますなんて数字を読んだだけで涼しい顔をされたのでは、政治になりませんよ。一体、責任感はあるのかないのか、どうなんですか。
  226. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 収入見積もりの違算をいたしたことにつきましては深く責任を感じているわけでございます。ただ、十月の段階でいろいろ考えて、私の就任前でございましたが、事務当局も検討いたしましたが、あのときは、こんなに大きな赤字が出るということは予見できなかった。(竹本委員「そこが問題なんだ」と呼ぶ)はい。当時、七月末までの税収入はわかっておりました。それが、昨年度に比べまして進捗率が一%か二%多かったわけでございます。当時また一般の新聞で、九月決算の見込みでございますが、まだ減益までは一般にいかなかったのじゃなかろうか、恐らく増益が減るというぐらいの予想ではなかったかと思うのでございます。そこに円高が来ました。神のごとき明察を持っておればそういったことが全部見通せるのでございますけれども、遺憾なことでございますが、大きな違算が出たことにつきましては、大蔵大臣として深く責任を感じておるところでございます。
  227. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 私は、福田内閣の閣僚に神様になれとは言いません。しかし、一つ伺っておきたいが、大臣も内閣改造でかわりましたが、税収は八千億円赤字が出ようが一兆円赤字が出ようが、政府には責任をとる人は一人もいないということになるのですか、ということが問題なんだ。その点はどうでしょう。
  228. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 何しろ、こういう世界的な変動の問題でございまして、見込み違いの点は本当に相済まぬと思っておるのでございますが、一人の能力をもってしては、あるいは組織といたしましてもなかなかむずかしい点があるということを御理解願いまして、われわれ、いまの御叱正を受けまして、今後ともこのようなことが再びないように戒心してまいるつもりでございます。
  229. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 私は、円高説明も、あなたが理解するぐらいのことは理解しておる。問題は、政治家として予算委員会で提案説明をする場合に、大蔵大臣としてもこんなに税収の見積もりを誤ったということは申しわけない――これはそろばんが一つ違ったというのじゃないのでしょう。経済運営、経済見通しの二つが間違ったからこれだけの赤字が出たのですから、それに対する責任ある陳謝なり申しわけないという一言なりがないということが私にはわからないということを言っておるのです。  総じて、私は、自民党内閣には四ない政治ということを言っておるのですが、覚えておいてください。四つないものがあるのだ。第一に、過去について反省がない。第二に、現在については認識がない。第三に、将来については展望がない。第四に、すべて物事に責任がない。これが四ない政治だ。この四ない政治を続けてもらっては困るということを言っておる。  次に進みますが、これからいよいよ予算の内容について具体的に、本来これは本予算の審議で論議すべき点であるから、少し遠慮しながら時間を省いて申しますが、私どもも、今度の予算福田さんの御努力も評価しておる。どういう点を評価するかということも念のためにちょっと申し上げますと、たとえば、一つは、われわれが常々言っておったような、七%成長をねらいとして大型予算を組まれた。これは評価する。中身については議論がありますが。第二番目は、十五カ月予算という発想も、これまた、私は非常に評価をしております。第三には、投資部門と経常部門と分けて、二つの部門を立てられた。これは非常な進歩です。  実は、われわれ民社党は、ずっと前から三本立ての予算編成をやってもらいたいということを要請して、私も何度か委員会で言ったことがありますが、これは三つなのです。  一つは、租税で賄うべき経常経費の部門、これは倹約が第一です。赤字を出してもらっちゃ困る。第二は、キャピタルバジェット、投資部門。キャピタルバジェットは公債を出すことにそうちゅうちょしなくてもよろしい。通産大臣がお考えになるぐらいの積極政策で結構だ。これはキャピタルバジェット。第三は、われわれの考えでは、福祉部門というものは単なる税金で賄うということになると、少し収入が減ると福祉部門は犠牲にされる。そこで別枠にすることを考える。同時に、民間資金の動員をして、たとえばみんなが健康で長生きするようになれば生命保険は利益が出るのですから、アメリカあたりではその生命保険の金をいかに活用するかということを考えているようですが、そういう第三部門もあってよろしい。そこまでいかなかったけれども、二つの部門ができたということは、われわれの考えの七割が実現しつつあることですから、これを評価しておる。  もう一つは、補助金の整理というものをいままでよりは積極的にやられたようでありますから、この点も評価しておる。  そういう意味で、私は悪口を言うのが専門ではありませんから、評価することは評価をいたしますが、しかし、まだその上でもなお問題が残るのは、先ほど来議論のありました七%成長その他の問題ですから、私は一言、これに触れておきたい。  まず第一に、けさほどから非常に問題になりましたのは、七%が国際的公約であるかどうかということについて、総理は、アメリカの圧力に屈して公約を結んだと言われるとわれわれのプライドを大いに傷つけるということを御心配になって、非常にこだわった答弁をしておられるけれども、先ほど総理からも御答弁がありましたように、自主的に判断をして七%をやるべきだし、やれるという判断に基づいて七%と言われたのならば、ちょうど国際条約を結ぶ場合に自主的に判断をして条約を結べば、何もこれは屈辱でも何でもない。ですから、公約と言われても何も差し支えないのじゃないかと思うのだけれども、これは議論になって時間がむだですから、私の意見だけ申し上げる。  自主的に判断をして、自主的に結論を出したと総理も言っておられる。それならば、自主的に判断して国際間に公約があって結構だ、条約もあって結構だ、何もためらいを感ずる必要はないじゃないか。また、そういうことを言っておれば、先ほど来もお話がありましたように、もしこれが達成されないときに外国に対して公約違反にならないということになりますから、なおさら外国は、また日本が、先ほど来のお話じゃないが、七億ドル赤字と思ったら、百何十億ドル、百二十億ドル黒字になるというようなことになるのじゃないかという疑惑をかえって大きくする。私は、先ほどの総理のお言葉で言うならば、公約と申すべき筋合いの約束だ。それでは今度は、違反をした、それが達成できなかった場合には、公約違反と申すべき違反の責任を負わなければならないということになると思うのです。総理、それはお認めになるでしょう。
  230. 福田内閣総理大臣(福田赳夫)

    福田内閣総理大臣 とにかく諸外国がこの日本経済計画に対しましては大変な期待をしておりますから、その期待にこたえるために責任を持って全力を尽くす、このように考えております。     〔栗原委員長代理退席、委員長着席〕
  231. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 次に、七%程度という言葉が使ってある。これはたしか初めはなかったのですね。初めの経済見通しなんかも七%、もちろん数字は一〇七・〇と書いてある。新聞も七%と言っておった。それがいよいよごく最近になりましてから、程度という数字が突然出てきた。程度とは何だ。七%前後という言葉を使われるときもある。前後があったり、程度があったりするから、私は総理の演説を聞いたときにジャパン・タイムズを開いてみて、ここでは何と言っているかと思っていろいろ読んでみると、アラウンド・セブン・パーセントと書いてある。その周辺だ。さらにまた、宮澤さんの演説をジャパン・タイムズは、経済成長のターゲットと書いてある。目標と書いてある。そこで、目標、周辺のアラウンド、前後、程度、一体どういう意味かわからぬが、これは本気でやったら一時間ぐらいかかりますから、結論として宮澤さんに伺いたいが、来年度の経済成長は四・一%だなんという人もおりますけれども、それは去年の皆さんの御努力の経済効果のあらわれることを計算に入れてない考え方じゃないかと思う。ドルが二百四十円でショックを受けた考え方に立っておる。そういう考え方からの結論ではないかと思いまして、私自身は、やはり先ほども議論が出たが、六%が精いっぱい、六・二%が精いっぱいだと思っておる。  そこで、宮澤さんに伺いたいのは、これがもし六・五%だった場合には、あなたが言われる、政府が言われるというのか、七%程度、前後、アラウンド、ターゲットに当たるかどうかということを聞きたい。
  232. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 正確には七%程度が政府の決定でございますけれども、世間でこれを七%と言われますことはよく理解のできることでございますので、私どもは余りそこにこだわっておりません。事柄の本質は時計の針のようにきちんとまいるものではございませんから、程度というものが正確であろうと思います。  それで、いま御設問のことでございますが、私どもが七%と申しておりますのは、まず大体の方がお考えになって、これなら七ということだなということでございませんと、それは六であったり五であったりすることになるのではないかと思いますから、まあ七%というふうにひとつ御理解を願いたいと思います。
  233. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 結局アラウンドの御説明でございましたけれども、六・五%程度では、われわれは七%程度と思いませんから、はっきり申し上げておく。  ところが、七%がむずかしいというのは、先ほどカーター号令だと新聞には書いてございましたね。見よ福田号令だと言ったら、だれかが、見よカーター号令だとごろ合わせをやっておったというのでございますが、それは時間もありませんからやめまして、通産大臣に一つ伺いたいが、私は、予算というものは、先ほども話がありましたように、下から積み上げていくものだと思うのですね。そうして、ここまで行けるという見当が出る。ところが、今度は必ずしも命令でやったか、号令でやったか、申し合わせでやったか、それは別として、七%という結論が突然出てきたことは間違いない。  実は、公共事業公共事業と言われますけれども、公共事業最初の概算要求と最後に認められた公共事業予算との間に、計算をしてみると大体七千億円の水増しというか、追加があると私は思うのですね。細かく言うと時間がありませんけれども、概算要求というものは、どこの省だって、福田内閣になってずいぶん姿勢が変わったようだけれども、なおかつ五%ぐらいは切られ料というものが入っておるはずだ。だから、概算要求から五%引いて、そうして最後に認められた五兆四千億の公共事業等をやってみると、仮に二千億円の先ほど問題になった公共事業の予備費、それを差し引いても、なおかつ七千億円前後の水ぶくれがある。仮に六・二%を七%まで持っていかれたということになると〇・八ですね。その〇・八を二百兆円で計算し直してみると一兆六千億になる。乗数効果が二倍としても八千億、大体八千億円水増ししてはいないかと思って公共事業予算を検討してみると、案の定七千九百何ぼある。細かい数字はどうでもいいが、その公共事業が果たしてこなせるかどうかということをわれわれは心配し、特に、やはりそこに、上から来たのではないか、横から来たのではないかというみんなの心配があるわけです。その一つの例として、通産大臣も力を入れておられるようだから伺うのだが、たとえばいま電力の設備投資、五兆円やってくれということになっているでしょう。本当かどうか、それを伺いたい。  電力会社が考えているのは、大体三兆一千億前後ですよ。九千億円くらい来年度のものを繰り上げてみても四兆円ですよ。あと一兆円というものは、これから無理して、どこからどう考えるかということが、いま電力会社の悩みの種ではないかと思うが、一体、設備投資の花形として期待をしておられるところの電力設備投資五兆円は可能性ありと判断しておられるかということ。なお、それに関連してみれば、去年あたりの電力開発は、これは地元の住民闘争等が行き過ぎもあるし正しいところもありますが、そういうものもありまして、去年の歩どまりは一六%でしょう。そういうことも踏まえて、なおかつ五兆円の設備投資ができて、それで七%成長ができるという確信が持てるかどうかを伺いたい。
  234. 河本国務大臣(河本敏夫)

    ○河本国務大臣 現在建設中の発電所が六十カ所あるのです。それから近く着工予定のところが百五十一カ所ございます。しかし、この百五十一カ所はなかなか立地問題がむずかしゅうございまして、思うようにこれまでは着工できなかったのです。そこで、今度地元に対する交付金なども若干増傾いたしましたが、もちろん、これだけでは、私どもは問題は解決するとは思っておりません。そこで、先般も総合エネルギー対策閣僚会議を開いていただきまして、電力投資、電力開発というものを内閣挙げて取り組んでいこう、こういうことを決定をしていただいたわけであります。と申しますのは、当面の景気対策上ももちろん電力投資は大きな影響がありますけれども、現状では二、三年後に相当大幅な電力不足が想定をされます。これじゃ困るというので、大きな課題として取り上げておるわけであります。  いろいろな工夫をしておりますので、現在、いまおっしゃるように、ほぼ確定しておりますのは四兆円投資であります。これはほぼ決まっておるわけでありますが、今後一年間を通じて、先ほど申し上げました百五十一地点の建設を進めることによりまして、政府も全面的に協力する過程におきまして、電力会社になお若干の追加をしていただこう、こういうことで、今後の課題として一兆円上乗せしていこう、こういうことを計画をしております。
  235. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 時間がだんだんなくなりますので困りますが、七%成長が、いまの電力の問題だけでなくて、果たしてできるかということについて私が心配をしておる点を申し上げます。  四%程度ではないということは先ほど申し上げましたが、七%はむずかしい、やはり六・二ぐらいが本当ではないかということですが、七%成長の困難性ということの第一は、政治不信です。これは総理にもひとつ真剣に考えていただかなければならぬが、最近では、政府景気が出ると言おうが何と言おうが、これは国際的にもそうかもしれないが国民がついてこない。そこまで政治不信に陥った。ツーレート、ツーリトル、この関係もありまして、とても政府の言うことを国民が信用しない。これは何としても近い機会に政治不信を一掃する大きな手を打っていただかないと大変なことではないかと思いますから、まず、その指摘だけを申し上げておきます。  第二は円高問題。円高があるので七%はむずかしい。もちろん、円高のショックを受け過ぎて、これで四%だという考え方は間違いだと私は思います。しかしながら、なお上半期には円高のショックが相当強いものがあるということも考えなければなりませんので、そこで申し上げるのですが、二一%円高になった、そのデフレ効果というものを一体どのくらいに見ておられるか。  円が五%高くなれば経済成長は〇・五%落ちると言う人もおるし、計算してみれば大体そんなふうです。去年の秋に考えられた二兆円の景気刺激政策も、乗数効果等も入れて考えて見ましても、大体今度の二一%値上がりで消されてしまった。ちょうど数字が合う。私は非常におもしろく見ておったのですけれども、財政審議会会長をやっておられる日経連の桜田さんが、従来三〇%を超えてはいけぬということを一生懸命言っておられた。それが急に変わって、三〇%を超えても思い切った財政をやって景気を刺激してもらわなければ困るということに、御意見が百八十度変わった。人はこれを呼んで桜田門外の変と言っていますがね。その急転回にはちゃんと理由がある。桜田さんの言われていることをずっと見ておりますと、なるほど、昭和の初めの金解禁のとき二〇%上がった、それこそ同じ二〇%前後の円高になったのだけれども、あのときの日本経済の事情、国際事情と、いまの事情とはまるきり違う。全治三年と言われた経済がもう四年、五年と続いて、くたびれ、まいってしまったときに二〇%上がったのだから、これは金解禁のときの様子とはまるきり違うから、ぼんやりしておっては景気回復はできないぞというので、百八十度変わって、三〇%にとらわれないで積極財政をやれと言って桜田さんが説を変えた。これは一つの見識だ。  いずれにいたしましても、円高のショックというもののデフレ効果をどう見ておられるか、ひとつ伺いたい。
  236. 宮澤国務大臣(宮澤喜一)

    宮澤国務大臣 経済が沈滞しておりますときと興隆期にありますときとでは、おのずからショックの度合いが違うのではないかと思いますので、一概に申し上げられないと思います。けさほど申し上げましたように、五十二年度で六・七%を五・三%に訂正いたしました際の一・五でございますが、その中で〇・五ぐらいを円高の効果というふうに判断しております。
  237. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 これは議論をしておると切りがありませんし、もう一つ円高の問題で、本当は輸出商品の損益分岐点をどの辺に押さえておられるか、これも本格的に一遍議論をしたいので、きょうは省きます。また、円高の利益還元の問題もありますが、これも後日に譲ります。  一つ、円が高くなったのは、先ほど来申しましたように内需不振である。日本はオーバーキャパシティー、したがってオーバープレゼンス、輸出がふえるのはあたりまえだ。その点についての反省がなかったということは先ほど来御指摘のあったとおりですが、しかし、日本だけの責任として今度の問題を全部福田さんにしょい込ませるのは、私はちょっと問題があると思うのです。これはアメリカに責任がある。一体アメリカは、ドル防衛ということについて何をやったか。また日本政府は、ドルは言うまでもなく世界の基軸通貨である、この世界の基軸通貨をあんなに――この間アメリカのタイムを読んでいたらフリー・フォリング・ダラーと書いてある。自由に落ちほうだいに落ちてよろしい、こう言うのです。それに対して、そんなにフリーにフォールされては困るのだ。第一に、世界の基軸通貨としての信認の問題がある、第二には、OPECがまた石油を値上げをする口実になる、第三には、それが日本経済のみならずEC経済にも打撃を与える。世界経済を一緒によくしようというときに何事だと言って、アメリカに対して文句を一遍や二遍は言ってよかろうと思うのですね。  そこで私はお伺いするのだけれども、申し上げるまでもなくドイツのシュミットあるいはスイスの中央銀行の総裁その他みんな、アメリカに対して相当厳しい意見を出しておるが、日本政府がアメリカに対してこの問題で強い意見を出されたということは寡聞にして聞いていないのだが、出されたかどうか。また、日銀総裁も総裁として、アメリカのドルに対してもう少ししゃんとしろということを言われたかどうか。  また、これからはアメリカを先頭に立ててローザ構想か何か知らぬけれども、とにかく世界の基軸通貨の価値は相当なところで守らなければいかぬ。ドルが価値を守って高くなれば、円は安くなって二百五十円になるかもしれないのだ。いかなる手を打たれる考えであるか。この二つをお伺いしたい。
  238. 森永参考人(森永貞一郎)

    ○森永参考人 いかなる国でも自国通貨の安定は大問題でございますが、なかんずくドルの場合には、ただいまお話もございましたように、世界の貿易、資本取引、その他あらゆる面に重要な地位を占めておるわけでございまして、一たびドルの価格が低落するということになりますと、経済界、通貨の上において混乱が起こるわけでございますので、私ども、特に昨秋以来ドルの低落が始まりました以降におきましては、直接間接アメリカに対しまして、なぜアメリカ政府はドルの価値の維持について適確な方策を講じないのかということを呼びかけてきておった次第でございます。声明その他の上ではドルの価値を維持するということでございましたのが、裏打ちになる介入その他の措置がおくれまして、ついに年末年始になってそれがようやく実現をしたということでございますが、その間、機会あるごとに呼びかけをしておったわけでございます。特に、毎月バーゼルで開かれます国際決済銀行の総裁会議におきましては、これは日本だけじゃございません、西ドイツ、スイスその他と一緒になりまして、アメリカの代表に対しましていつもそういう要請をしてまいっておったわけでございます。それがこの年末から年始にかけて腰がすわりまして、特に財務省がとかく介入には消極的でございましたのが、今度はドイツの連銀と直接財務省がスワップ協定を結び、連銀は昔からこのドルの価値維持について熱心でございましたが、財務省も交えてドルの価値維持について決心を表明されたということは、大変歓迎すべきことだと思っておる次第でございます。  今後、この介入その他の面におきまして有効な手段が講ぜられることを期待いたしますとともに、根本的にはアメリカの国際収支、あるいは日本の国際収支の問題でございますので、その面につきましてもアメリカの努力を期待し、また日本としても応分の努力をしていかなければならぬのが現状ではないかと思っておる次第でございます。
  239. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 これは総理、要望ですけれども、先ほどのソ連のコスモスにしても、このアメリカのドル防衛にしても、とにかくわれわれは覇権主義は反対だ、勝手なことは許さぬ、そういう意味において、抗議すべきものはアメリカにもソ連にも遠慮なくやっていただきたい。これを要望いたしておきます。  それから、七%成長は、政治不信によって、また円高によっていろいろ妨害をされるので、なかなかむずかしいということを言ったが、もう一つ、デノミ発言による経済混乱というものもやはり考えなければならぬ。私どもはそういう意味でデノミ発言は取りやめてもらいたいと思ったし、取りやめをいただいたので、その点は結構でございますが、一つだけ大蔵大臣に参考に教えておきます。  あのデノミ発言のおかげで一番騒いだのはだれと思われますか。一番騒いだのはだれが。これは産業界の話ももちろんありますよ。ただ、あなたに直接関係のある問題を言うと、証券会社に電話の聞き合わせが大変だったのですよ。どこが一番聞き合わせをやったかというと、お医者さんですよ。これはなぜか。不公平税制のおかげですよ。ブラックマネーを持っておる者が皆心配をして、まあ資産再評価なり新円封鎖なりで皆こんがらかって間違えた点もありますが、どうして自分たちの持っている金をいま切りかえるかということで、聞き合わせの電話が一番物すごくかかったのは、二、三聞いてみるとお医者さんだ。要するに、これはブラックマネーを持っておる巨頭だなということがわかったのです。そういう意味から言って、今度デノミを言われるときには、不公平税制を改正した後に言っていただきたい。いかがですか。
  240. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 御注意ありがとうございました。  言いました真意は、基礎研究をやっておって、実施準備などはしていないということを言ったのでございますけれども、いろいろな報道があって誤解を生じたことを深くおわび申し上げます。
  241. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 時間がなくなりましたので、本論――本当はこれから、われわれの民社党の提言をここで申し上げたいのだが、もう時間がないので一つ二つだけ、ちょっと簡単に申し上げます。  一つは、中期経済計画を、先ほども申しましたように、どうしてもつくっていただきたい。それから、雇用の安定と福祉の充実ということを柱にしてひとつやってもらいたいというふうに思います。経済安定計画化基本法というような法律をもって、われわれはこの中期計画の支えの法的柱にしたいということでございますが、結論だけきょうは申し上げておきたい。  そこで、また一方からは、これからの中期経済計画は、財政計画の問題は改めて論ずるといたしまして、積極面で三全総というものを本格的に取り入れてもらいたい。一つの柱にしてもらいたい。列島改造以来そういう考え方がなくなったわけでございますけれども、しかし、三全総は新たなる構想に基づいて、私はグリーンレボリューションという言葉を言っているのですけれども、とにかく日本のエコロジーも考え日本の緑を温存する大きな立場に立って三全総を強力に進めてもらいたいし、特に二百八十兆円のものを十年で割れば二十八兆円、公共事業に後から水増ししなくても、ちゃんと十年計画で三全総を実現していけば大きな柱が立つ。それといまのエネルギー、三全総とエネルギーを柱にして中期経済計画を立てるべきであると思いますが、そのことを一つ申し上げるだけにとどめておきます。  そこで、三全総に関連して、今度の三全総の一番終わりのところには遷都問題が書いてある。東京はこれでもう限界に来た、七十五年三千五百万人、とても収容できない、これから八百万人もふえたらどうするか、いろいろ書いてありますが、お伺いしたいのは、遷都問題についてはいろいろやり方もあります。問題がありますが、本当に遷都でいくのか、部分的に機能だけ一部分散をするのか、そういう問題について本気で考えておられるのか、ただ最後の方に書いてみたのかということについて、これこそ十年計画で取り組まなければならぬ問題だと思いますので、遷都問題は三全総の中でどう位置づけられ、どう具体化しようとしておられるかということが一つ。  それから、これはまた、大臣が違いますが、時間がなくなったので一緒に申し上げますが、私は三木内閣のときに銀行法の改正を叫び、いま金融制度調査会でそれを取り上げておられるのだが、これは大蔵大臣に伺いたいのだが、銀行法の改正は、あれからもう二年たっておる、かれこれ三年たっておる、そういうときに、一体何年たったら結論が出るのかということですね。それから、どういう方向で銀行法を改正しようとしておるのか。調査会のやり方を見ておると、まるで中学生への講義みたようにあらゆる問題を書いて、銀行とは何をするところかから始まっている。あんなことをやっていたら結論が出ませんよ。どういうポイントに取り組んだらいいかわからなかったら、金融のために拘束預金倒産をした経営者を呼んで聞けばすぐわかる。中小企業を呼べばすぐわかる。だから、問題意識がわからぬのならわかる方法もあるのだから、いつ取り組んで、いつまとめられるか、並びに、そのときには日本銀行法も一緒に改正をされるという取り組みをやっておられるのかどうかお伺いして、終わりにいたします。
  242. 櫻内国務大臣(櫻内義雄)

    ○櫻内国務大臣 遷都問題についてのお尋ねでございました。国土庁におきまして大都市圏整備推進経費の一部を充てまして、首都機能移転の可能性、問題点、効果等の基礎的調査をしておることは事実でございます。これに基づいて遷都がいいか分都がいいか、世論の動向を見きわめていろいろ調査の上での判断をする、こういうことでございます。
  243. 村山国務大臣(村山達雄)

    ○村山国務大臣 いま銀行法の改正は金融制度調査会で鋭意検討を進めているところで ございます。問題の中心点は、やはりいまの経済並びに金融情勢に合わせて経営の効率化という問題と、金融機関の公共的の立場をいかにして実現するか、こういう立場が主点でございまして、ポイントとしてはいま七つぐらい挙げておるわけでございます。そのうちの大体六つぐらいは済みまして、あと一つ二つやるわけでございますが、これができましても、大体それをまたレビューいたしましてやりますので、恐らくあと一年ぐらいかかると思っているのでございます。  さらに、日銀法の改正の問題でございますけれども、御承知のように日銀法は、いま政策的の問題といたしましては、ほとんど事実上日銀法の改正を待たなくても機能していると思うところでございます。しかし、銀行法の問題が片づきますとそういう問題もあるいは出てくるかとも思うのでございますが、この前、三十五年でございましたか、答申が出た経緯は御承知のとおりでございます。私たちは、実際から申しますと機能しておりますから、特に改正の必要があるかどうか、なお慎重に検討してまいりたい、かように思っております。
  244. 竹本委員(竹本孫一)

    ○竹本委員 終わります。
  245. 中野委員長(中野四郎)

    中野委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十八分散会