○鯨岡兵輔君 福田
総理大臣初め、このたび訪米御一行の皆様の御労苦に対し、私は心から御慰労を申し上げたいと思います。(
拍手)
日米関係を外交の基軸として、あらゆる国と親善を結ぶ全方位外交の方針をとってきた歴代
政府の考え方をそのまま継承した福田
内閣の外交方針を私は
理解いたします。
日米関係がわが国外交の基軸であればこそ、言わねばならないことは言わねばならないとして、たとえば、アメリカは三百億ドルの赤字を抱えていたのでは
世界に大きなことは言えないし、基軸通貨としてのドルの安定にもっと
責任を持って対処してもらわねばならないとの福田
総理の大統領に対する御発言を私は評価いたします。(
拍手)なぜならば、深い関係にあればこそ、なおさら歯にきぬを着せないで、言うべきことを言い、相手に十分考えてもらうことの必要と価値を私は痛感するからであります。
ただいま御
報告を承って、私は、これから、自由民主党を代表して若干の
質問をいたしますが、同じ理由で、歯にきぬを着せず、単に自民党を代表してというよりも、むしろ、長く混迷する経済に不安を感じている
国民を代表して、きわめて率直にお尋ねしたいと思いますので、失礼の点は前もって御容赦願いたいと思います。(
拍手)
政界には、人のやったことをことさらひねくれて解釈する悪い癖があるように私には思えてなりません。これは決して上品なことではありませんが、その声が大きくかつ反復すれば
国民は惑います。その
国民の誤解を解くために、私は、二、三の点についてお尋ねいたします。
すなわち、その第一点は、会談の時期についてであります。
カーター大統領の都合を大幅に退けて、あえてこの時期を選んだのは、福田
総理の強い希望を通した結果であって、福田
総理の胸中にあるものは、会談の
内容や成果よりも、むしろ大きく政権の帰趨に関するものであるとの考えについてであります。このくらいひねくれた考え、これほどの誤解を私は知りません。
戦後三十年、いまやわが国は、
国民の涙ぐましい努力の結果、
世界の政治と経済に大きな影響を与えるほどの力を保持するに至った、一見平和な経済大国であります。この大国日本が、混迷の度を加える
世界の政治と経済のために、アメリカと
協力して何をしなければならないか、それがこのたびの首脳会談のテーマであったはずであります。このように崇高にして意義深い会談の時期を、政権絡みの国内政情によるものではないかとは、誤解も誤解、国を過つ重大な誤解であるか、あるいは夫子みずからためにするためのものであると
総理はお思いになりませんか。この点について、私は、御本人の口から、明確に
国民に真実を披瀝していただきたく思います。
誤解はさらに第二、第三と続きます。あるいは時間が短かったとか、共同声明がなかったとかがこれであります。
総理、私は思います。どこの国とも仲よくしながらも、ことさらアメリカと事を構えるようなことがあったのでは、日本の外交は根底から崩れます。しかも、日本は、前述したように、
世界の政治と経済、特に経済に大きな影響力を持つに至りました。アジアの繁栄の中に日本の繁栄の道を求め、アジアの平和の中に日本の平和の道を求めなければならない日本は、このアジアの
地域に
歴史的に大きな影響力を持つアメリカと常に諸般にわたって
理解を深め、
協力し合わなければなりません。そしてそれは、両国のあらゆる機構の中で、実務上きわめて効果的に、毎日行われているに違いないと私は思います。
そのような間柄にある日米両国の首脳会談であれば、私はもっと気軽に行われてしかるべきと思うのであります。時間が長かったから重く、時間が短かったから軽いと、その用いられた時間の長短をもってその
内容まで評価するのは、少し単純に過ぎるのではないでしょうか。ただ単純であるというにとどまりません。彼が三時間と言い、われは三時間半と言うがごときことがまじめに論ぜられるとしたら、まことに枝葉末節、取るに足らざることだと言わなければなりません。(
拍手)
また、会談のたびに共同声明を出さなければならないものでもありますまい。出すもよし、出さぬもよし、出さなければならないとかたくなに考えるほど、そんなよそよそしい間柄ではないし、また、そうであってはならないと思うのであります。
しかし、
総理、口さがない
人たちの誤解は誤解を呼んで、軽くあしらわれたのではないかなどと言われたり、思われては、わが国のためには言うまでもなく、アメリカのためにも、さらには日米将来の協調のためにも、大きな害毒を流す結果となることを私は恐れます。
総理、この点どうお考えになりますか、お示しいただきたく、お願いいたします。
私は、参考のために、去年の共同声明を読み返してみました。去年の会談は、三月二十一日と二十二日の二日間にわたって行われました。そして発表された共同声明は、日米共通の課題から、
世界の政治と経済についてまで十項目にわたり、かなり詳細をきわめております。
このたびの会談の後行われた
総理の記者会見などよくよく承って、もし共同声明を作成したとしたら、去年のそれよりもかなり味の薄いものになったのではないかと私は考えます。(
拍手)どうしてだろうと思います。私にはそれがわかりません。
去年の共同声明では、第一項から四項にわたり、国際社会に対して日米両国が何をしたらよいのかを論じ、進んで科学、医学、教育、文化に論及し、経済に及んでは景気の回復、インフレの防止、貿易の均衡について
意見の一致を見、いわゆる東京ラウンドについて共通の結論に達しております。さらに南北問題に話を進め、エネルギー問題を論じ、ロンドン
会議についての期待について合意いたしております。
去年の共同声明の第五項では、アジア問題を論じ、日米安保
条約がこの問題に大きく貢献していることを確認し合い、両国の変わらざる決意を表明し合っておるのであります。またASEANの連合を高く評価し合い、朝鮮半島に論を進めては、南北の対話の促進についてまで話し合っておるのであります。
第六項では核軍縮について論じ、七項では国連に言及し、大統領が、日本は安保理事会の常任理事国になるべきであるとの米国の意向を表明すれば、福田
総理大臣は、大統領のこの発言に謝意を表しておられるのであります。
八項で原子力の平和利用や核の不拡散について合意し、九項に進んで両国の貿易、漁業、
航空に
意見の一致を見、去年の共同声明の最終の項では、福田
総理が、カーター大統領夫妻の訪日について日本
政府からの招待を伝達すれば、大統領は、これに感謝し、日米双方の都合のよい時期に訪日することの楽しみを表明いたしておるのであります。
ことしの会談をより実りあるものにするために、去年のそれと対比して、去年の会談とことしの会談の間にどのような相違があると
総理はお考えでございましょうか。(
拍手)この会談に当たっての彼のねらいとわれのねらいとの間に差異はなかったのかどうか。去年の合意に基づいて何が守られ、何が守られなかったとお考えでしょうか。合意に基づいて進展したものは何で、進展しなかったものは何だとお考えでしょうか。この点きわめて重要と思いますので、わかりやすく御
説明願いたいと思います。(
拍手)
このたびの会談の主要なるテーマは、
総理の言によれば、
世界のための日米の
役割りということであります。ドルは、
世界の基軸通貨であるのに、最近きわめて不安定であります。日本が国際的
責任を果たさんとする経済的努力は、ドル不安によってしばしば大幅に減殺されている現状を指摘して、このことに対する一層の努力を要請した福田
総理の発言は適切なものであったと、何人もこれを評価いたしますが、これに対して、具体的なアメリカの
対策と
熱意を聞くことのできなかったのは、残念でなりませんし、日本の不安は、なお残ったのであります。(
拍手)
そこで、日本の
役割りは何でしょうか。
総理は、米国議会の指導的
立場の方々との懇談の際に、私は、第一回の日米首脳会談に首席随員として訪米したが、そのときの
目的は、わが国が米国から三億ドルの金を借りることであった、今日、わが日本は、大幅な黒字を抱えているが、これは
歴史の皮肉であり、感にたえないとあいさつされたそうでありますが、この言葉を先方はどう聞いたであろうかと、私は、そのことに興味を覚えます。そこにこそ、日本の国内事情を超えた、
世界経済のための日本の
役割りがあるのだとアメリカは思わなかったか否か。
それにしても、会談の詳細を承って感ずることは、アメリカが
世界のための自分の
役割りと感じているのは、かなり先を見通した
世界の政治と経済にあるのではないかと私は思います。そしてそれは、エネルギー問題の将来を見通してのことと十分関係があるように思えてなりません。さらに、同様のことをソ連も憂慮して、これまたかなりの見通しを立てて、このごろ
対策に乗り出しているのではないかということと深く関連するように思えてならないのであります。
アメリカが国内的に油の節約を中心とした幾つかの
法律を準備したり、外交的にサウジアラビアやイランときわめて積極的に関係を持ったり、ソ連がそれに対抗するがごとく、シリアやイラクやリビアなどアフリカにまで手を伸ばして関係を求めたりしていることと、いまアメリカが考えるアメリカ自身の
世界のための
役割りとは深く関係しているのではないでしょうか。ここにアメリカの対ソ政策の基本があり、ここにアメリカの対中政策があり、ここにアメリカの積極的中東政策があると考えたら思い過ごしでしょうか。それは
世界のためというより先に、よりアメリカのためであると私は思います。日本もまた、
世界のためのというより、同時に将来を見通した、より日本のための方策を考える必要はないか、いやむしろその方が先なのではないかと私は考えます。(
拍手)
このたびの日米両首脳の会談の唯一のテーマであった
世界のための日米の
役割りについて、どんなことが具体的に決定したか、
国民にわかりやすく
総理、お示しいただきたいのであります。
総理、戦後三十年、
世界はいま羅針盤を失った船のように、この先どこへ進むのか、乗組員は不安と危惧の状態に陥っているようなものだと私は思います。日本も例外ではありません。それどころか、領土が狭く、人口が多く、資源は乏しく、それでいて短い期間に驚くべき発展を遂げただけに、その状態はいよいよ深刻だとさえ申せます。
軍事大国に失敗した日本は、廃墟の中から立ち上がって経済大国の道をひた走りに走って、もうこれ以上大きくなることは自分にも他人にも害を及ぼすというほどに大きくなったのであります。すなわち、目標を失いました。進むことも退くこともできない不安と危機の原因がそこにあることをわれわれは知らねばなりません。
しかも困ったことに、この
対策のために、従来の物差しでははかることのできない、新しいわけのわからない
事態になっているのではないでしょうか。不確実性の時代と言われるゆえんであります。わが国の進むべき目標は何か。福田
総理がよく好んで使われる比喩をもってするなら、日本丸にせよ、福田丸にせよ、それがどこに向かって進んでいるのか、
国民にはわからないのであります。(
拍手)だから不安なのであります。まず、それを示すことが政治の最高
責任者である
総理大臣の御使命ではないかと私は考えますが、いかがでございましょうか。(
拍手)それが決まらなければ、外交もまたできないと私は心配します。
日中平和友好
条約についてアメリカの支持を取りつけたと新聞は報じていますが、それがなければ、隣国との
条約さえも結べないのかと
国民をして思わしめたら、独立国としてまことに遺憾に存じますし、
外国からも軽侮を招きます。(
拍手)朝鮮半島の平和と統一のために、それなくしては、みずからの平和も保ち得ない日本のできることは何か。それは、この問題でアメリカと話し合う前に、日本みずからが覚悟しなければならないことではないでしょうか。(
拍手)
ことしの予算で、われわれは、長く続く不況を短期間で克服するために、財政に力を置かざるを得ませんでしたが、そのようなケインズ流の考え方は、もう本当は役に立たなくなったのだと言われております。しからば、新しい経済の指導原理は何か。