○沢田広君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和五十三年度における
公債の
発行及び
専売納付金の特例に関する
法律案に対し
反対の態度を表明し、
討論を行うものであります。
この
法案は、いわゆる赤字国債であります。本年の予算において十兆九千八百五十億円にも達し、史上最高のものとなりました。
本案は、このうち約五〇%を占める四兆九千三百五十億円にもなり、歳出対比一八・四%であり、予算の国債依存度はまさに三七%、三分の一は国債という異常の事態を生じたのであります。
このような異常の状態を生じた最大の原因は、積年の自民党
政府のとった施策に根本的な誤りがあったことを指摘せざるを得ないのであります。(
拍手)
その最大の原因は、高度成長を前提とした大企業擁護の財政運営にあります。いまやドル保有も二百九十億ドルを超えるに至りました。輸出一辺倒の政治と激しいインフレ下以降における適正な税制の確立を怠ったことに最大の原因があるものと存じます。この傾向はいまだ改まらず、さらに、財政破綻の道を歩むことは必至であります。
今日、戦後最長の不況下に陥り、回復の展望もなく、
国民生活は円高不況におびえ、失業、物価高、老後、医療、教育等々に悩み、苦しみ、
国民の多くの人々があすへの希望すら失いかけているのではないでしょうか。総理はこの現状を果たして御存じなのでありましょうか。
景気の回復はできず、これからはよくなる、今度はよくなる、今度こそは間違いないなどの
政府答弁のむなしさと裏切られている
国民感情は、福田
内閣の支持率二〇%に表現されているのではないでしょうか。
ますます政治不信を増大させ、富と所得の格差を拡大させ、寡占、独占の市場支配が行われ、賃金の抑制、省力化のもとの首切り、公共料金の引き上げ、福祉の後退となっているではありませんか。個人消費約一二%増も、拡大への何らの施策も講ぜず、
消費者物価六・八%上昇見込みの中への賃金すら低額に抑え込もうとしているではありませんか。
全野党の
要求した一兆円減税も、景気の回復、個人消費拡大の重要な要素であるからでありました。
政府・自民党は、これすら三千億円に圧縮し、みずから
政府公約七%成長を放棄しているものと言わざるを得ません。
この姿勢に対し、勤労
国民の多くは、大きな怒りとなってあらわれることは必至であり、強い権力がすべてであるという姿勢を速やかに改め、反省すべきと存じます。
私たちは、このような事態になることをおそれ、一兆円減税、企業優遇税制、特に特別
措置法の改正、利子配当の総合課税、高額所得の累進率の引き上げ、交際費課税並びに資産再評価税などを提案し、この実現を迫り、格差の解消、不公正の是正こそ今日の財政の最大の課題であると主張をしてきたところであります。
前三木総理ですら、今日の政治目標が「乏しきを憂えず、等しからざるを憂える」と問うたではありませんか。この積年の
政府の怠慢は許しがたいものと言わなければなりません。この立場から、
本案にまず
反対する最大の理由が存在するわけであります。
私は、以下、
公債発行並びに
専売納付金の問題点を指摘し、その
反対理由を明らかにするものであります。
その第一は、国債の累積とその負担の問題であります。
国債は
昭和四十年以降毎年増加の一途をたどり、いまや惰性となり慣習化され、国債の
発行が財政運営の上に恥ずべき状況にあることの認識に全く欠如し、また、財政法の本旨にも反するものであります。
この累積赤字の残高は実に四十兆円を超え、
昭和五十七年には百兆円を超えると言われております。赤ん坊からお年寄りまでが一人当たり四十万円あるいは百万円という莫大な負担を負うこととなるのであります。一方、
公債の償還の目途、計画は全く立たず、
国民はいつこのツケがくるか不安におびえているのが現状でありましょう。
政府は、この赤字脱却の道として、一般消費税などの導入を考えて、時至らばと企図しておりますが、断じて許されるものではないと存じます。
第二の問題点は、そもそも国債は
政府に対する信頼でもあります。
国民はみずからの生活に還元されることを期待し、市中消化が行われ、かつ、目減りの心配のないものでなければなりません。現状はその信用は失われ、個人消費は、公定歩合の引き下げ、郵便貯金の金利の引き下げなどによって、わずかに二〇%近くになったと言われますが、依然として金融機関の割り当てであり、企業保有がほとんどであり、その対応は全く
国民不在と言わなければなりません。
第三の問題は、財政運営の問題であります。
本年の償還額は三兆二千二百二十六億円にも達し、国債
発行高の三分の一を占めるに至っております。まさに財政の硬直化が始まっていると申せましょう。赤字国債の償還のために赤字国債を
発行するを得ないなどの批判が生まれるゆえんでもあると存じます。
また、不急不要の
行政の節約を行うことが必要であります。国債に対する歳出に当たる各省は、全くその価値、貴重性を感ぜず、割り当てされた予算を消化することだけにしか念頭にないことは断じて許されません。これらは各年度の会計検査院の
報告が例示し、示すところであります。
最後に、総理
大臣、現下の景気の回復に、雇用の
確保に、福祉に、生活水準の向上に役立ち、公約七%成長を果たして果たし得るものでありましょうか。この大量の
公債が市中に出回り、コストプッシュ、過剰流動性、投機、マネーサプライの膨張等々、インフレの懸念、不安が潜在的に進行している事実をどう認識されておられるのでありましょうか。
経済の福田と言われた総理も、いまや内外の施策から、不況の福田、後手後手の福田、スローモーの福田などと言われることは、単に福田総理の汚名だけではなく、
国民全体の生活にとってゆゆしい事態であります。その責任はまさに重大であると言わなければなりません。
一方、
専売納付金千五百六十九億円を
政府に納入する
内容は、
政府の失政のしわ寄せの一つであり、公共企業体の自主性を阻害し、労使の企業への熱意、努力を喪失させるだけであります。
借りるなら別であるかもしれません。法の名のもとに、御用金調達になることは許されるものではありません。加えて、民営移管などが流布されている今日、労使も将来に対する懸念、不安を一層増加させ、双方の信頼
関係を傷つけるものと言わなければなりません。今後、起こり得る専売
関係の紛争は一に
政府の責任に帰すと申せましょう。また、このことが、積立金の減少に伴い、たばこの値上げにつながることも予見しなければなりません。ゆえに、今回の提案を私たちは了承することができないのであります。
以上、
政府、
関係者の反省を強く求め、
反対の
討論といたします。(
拍手)