○西宮
委員 私は、国会の図書館にある辞書でありますが、それを見ましたけれども、全くないというのが三つばかり。それから全編十三冊から成っている大冊の
日本で最も権威ある辞書があるわけでございますが、その中にはありました。ありましたけれども、これは「キョーシュ」と読むことになっております。「ゴーシュ」ではない。あるいは岩波の「広辞苑」、これには「ゴーシュ」と発音をしておりました。これは「
強盗罪を構成する行為」と説明がしてあります。それから滝川幸辰さんの「刑事法学辞典」の中には、「強取とは、暴行・脅迫により被害者の意思に反して財物を自己または第三者の占有に移すことである。」こういう説明がしてありました。ですから、私がないと申し上げたのは、最初の図書館に備えてある大きな辞書になかったので、ないということを申し上げたのですが、あることはありました。あったけれども発音の仕方が違う、あるいはまたいわゆる
強盗罪の構成要件であるとか、あるいは強取とは要するに財物を自己または第三者の占有に移す、こういうことだという説明でありまして、この法律に使っておりますような航空機を強取するというようなことは、仮にこの言葉を適用しても、実際問題としてあり得ないことであります。私は実は昨年の国会の審議の際もその点を強調したわけでありますけれども、お忙しいでしょうけれども、もう少し大臣なども法律をつくる前には、
日本の
国民が使っているかどうかというふうなことぐらいはぜひ見ていただきたいと思います。いまの法律の中にどういうふうに用語例としてあるかということをお尋ねした際に、刑事局長は、認識不足といいますか見当違いというか、そういう答弁をされまして、これは直ちに訂正、補完をされました。しかしその際、いやしくも刑事局長たる者がまことに申しわけない、こういうことを言って訂正されたわけですが、それほどまでこの言葉はわかりにくい言葉だと思います。したがって、これは今度の改正刑法の草案ではりっぱに訂正されているわけです。そのことを私が指摘をいたしましたけれども、これまた刑事局長は御
承知なかった。私も大変がっかりしたわけであります。ですから、これからは、法律用語ですから非常に厳密に区別をする必要がある、そういうために特殊な用語を用いるという場合があってもやむを得ませんけれども、しかしこの改正刑法草案等では明らかにそういう言葉は使わないことになったわけですよ。それは六十八ページに、いままでの航空機の強取等の
処罰に関する法律というのはその言葉は使わないで、今度は別な言葉を使うということになっている。それほど私は航空機の強取というような言葉は不適当な言葉だと思う。これは
強盗罪にはいいのですよ。さっきの辞典が言っているように、二つともこの辞典は正しいと思う。
強盗罪などにはいいと思うのですよ。これは全く適切だと思う。占有を移して所持する、あるいは
強盗して盗んだものをポケットに入れて持っていくというような場合にはいいと思うのだけれども、しかし
飛行機の強取、これは具体的にはどういう例を指すのだと言って去年の国会でお尋ねをしましたら、刑事局長の御答弁では、ただ
一つの実例は、昭和四十八年にベンガジ
空港で航空機を爆破したことである、こういう御説明であったのでありますが、航空機の爆破、炎上というようなことがいわゆる占有を移すあるいは所持する、そういう言葉で表現をされるというのは、私はまことにその実態に沿わないという気がいたしまして、これはぜひこれから大臣にもお願いしておきたいと思うのですが、本省の皆さんはいずれも
専門家でございますから、そういうことに慣れてしまって、
日本人が使うのだろうかどうだろうかというようなことさえも余り
考えておられないというふうに思われる。そういうことのないようにお願いしたいと思う。世の中は
専門家よりは素人の方がいつも多いわけです。だから素人にわかるような、あるいはこの程度の言葉ならば西宮の知能指数でも大体わかるのじゃないかというぐらいにレベルダウンをして
考えていただくということを特にお願いしておきたいと思います。
それから、今回の法律の、
人質による
強要行為等の
処罰に関する法律というので、私はこの「等」の字を問題にしたわけであります。これは局長の説明によりますと、この「等」とは第三条を指すのだということを言われました。そしてその御説明は、要するに第二条等に言うところの要求行為、それだけでは殺人ということにはつながらない、したがって、当然にいわば第三条は結果的加重犯にはならない、つまり、要求行為だけでは殺人ということは当然には出てこないので、したがって第三条は、そのために特に第一条、第二条とは別にもう
一つあるぞというので「等」という言葉を入れたのだ、こういう御説明でございました。ただ、私が指摘をいたしましたのは、それならば刑法の逮捕監禁罪、これはあの逮捕監禁の章でありますが、あれには全然「等」はない、こういうことを申し上げたわけです。そうしましたら、局長の御答弁は、要するにそれは法制局の方針である、あるいは法制局の慣例である、こういう答弁をされたわけであります。しかし、問答している中に局長はこういうふうに御答弁になっておられる。「仮にただいま御指摘の第三十一章「逮捕及ヒ監禁ノ罪」とありますのが二百二十条と二百二十一条のこの二カ条からなる法律をつくるといたしますと、やはり逮捕監禁等の
処罰に関する法律ということになるのじゃないかと思います。」こういうことで、だから今度の航空機強取のこの法律とそれから逮捕監禁罪と、本質的には何も変わっていないので、だからそう直すのがむしろ当然ではないかという
意味の答弁をされている。したがって、この点に関する限り私の述べてまいりました私の
考え方、これを局長はいわば全部承認され、同意をされたというふうに私は
考えるのですが、それでよろしいですね。