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1978-04-11 第84回国会 衆議院 法務委員会 第15号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
五十三年四月十一日(火曜日) 午前十時五十五分
開議
出席委員
委員長
鴨田
宗一君
理事
保岡
興治
君
理事
山崎武三郎
君
理事
稲葉
誠一
君
理事
横山 利秋君
理事
沖本 泰幸君
理事
高橋
高望
君 稻葉 修君
上村千一郎
君
中島
衛君
渡辺美智雄
君 西宮 弘君 飯田 忠雄君
長谷雄幸久
君 正森 成二君 加地 和君 鳩山 邦夫君
出席国務大臣
法 務 大 臣
瀬戸山三男
君
出席政府委員
法務政務次官
青木 正久君
法務大臣官房長
前田 宏君
法務省刑事局長
伊藤
榮樹
君
法務省矯正局長
石原 一彦君
委員外
の
出席者
警察庁刑事局調
査統計官
小池 康雄君
警察庁警備局公
安第三
課長
福井 与明君
外務省経済協力
局外務参事官
中村 泰三君
外務省国際連合
局専門機関課長
木島 輝夫君
法務委員会調査
室長 清水 達雄君
—————————————
委員
の異動 四月十一日
辞任
補欠選任
原
健三郎
君
中島
衛君 同日
辞任
補欠選任
中島
衛君 原
健三郎
君
—————————————
四月十日 民法第七百五十条の
改正
に関する
請願外
一件(
土井たか子
君
紹介
)(第二八〇九号) 法務局、
更生保護官署
及び
入国管理官署職員
の
増員等
に関する
請願
(
正森成
二君
紹介
)(第二 八一〇号) は本
委員会
に付託された。
—————————————
本日の
会議
に付した
案件
人質
による
強要行為等
の
処罰
に関する
法律案
(
内閣提出
第五二号)
——
——
◇—
——
——
鴨田宗一
1
○
鴨田
委員長
これより
会議
を開きます。
内閣提出
、
人質
による
強要行為等
の
処罰
に関する
法律案
を議題といたします。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
稲葉誠一
君。
稲葉誠一
2
○
稲葉
(誠)
委員
この
人質
による
強要行為等
の
処罰
に関する
法律案
の前に、
大臣
にちょっとお伺いしておきたいことがあるのです。 それは、この
法案
とは
関係
のないことなんですが、
政府
はこの前の
国会
に、
ロッキード事件
に関連をして、
贈収賄
の刑の引き上げと、したがって
公訴時効
の
延長
、それの
法案
を提出しているわけですね。これは
ロッキード事件
のようなものをなくするための
福田内閣
の一枚看板だとかなんとか言われておって、
出しっ放し
で、
法務省
としてもこの
法案
について通してくれという話も全然ないし、
大臣
としてはどういうふうなお
考え
なんですか。この
ロッキード事件
のための
贈収賄
、
公訴時効
の
延長
のこの
法案
、
内閣提出刑法
の一部
改正
が継続になっているのですが、これに対してどういうふうにお
考え
なんですか。早く
審議
をしてほしいという御意向なんでしょうか。
瀬戸山三男
3
○
瀬戸山国務大臣
ロッキード事件
に関連して、
政府
で、御
承知
のとおりこういうものに対する
対策本部
を設けて行政のあり方あるいはこういう
犯罪
の
防止対策
をいろいろ検討いたしまして、その一環として
贈収賄事件
の刑罰をもう少し重くして対応する必要がある、こういうことで
法務省
としては御提案申し上げておるわけでございます。
三木内閣
のときからでございます。もうすでに前に提案しておるのでありますから、早く
国会
で処理をしていただきたいと思っておるわけでございますが、
国会
の方でそのままになっておる、かような次第でございます。
稲葉誠一
4
○
稲葉
(誠)
委員
だから
大臣
としてもそれでは困るんでしょう。困るから、早く
内閣提出
の
刑法
の一部
改正
を
審議
してほしいというわけなんでしょう。
法務省
からさっぱりそういう声が出てこないのですよ。どういうわけなんだろう。
瀬戸山三男
5
○
瀬戸山国務大臣
法務省
から声が出ておる出ておらぬかにかかわらず、ずっと前に御提案申し上げておるわけですから、速やかに御
審議
、御決定いただければ幸せだ、かように
考え
ております。
稲葉誠一
6
○
稲葉
(誠)
委員
この
人質
による
強要行為等
の
処罰
に関する
法律案
について
質問
をいたすわけでございます。 この
資料
によりますと、「
過激派
による
人質強要事例
」として
昭和
四十五年の三月三十一日の
日航機
の「
よど号
」乗っ取り
事例
が挙げられておるわけです。五ページですね。この
事件
の概要はわかっていますからいいのですが、この「
よど号
」
事件
があって、そしてどういう
法律
ができたわけですか。
伊藤榮樹
7
○
伊藤
(榮)
政府委員
「
よど号
」
事件
の起きたことにかんがみまして、
昭和
四十五年五月十八日、
法律
第六十八号、
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
、これを御制定いただいております。
稲葉誠一
8
○
稲葉
(誠)
委員
いまの
航空機
の
処罰
の
法律
、それができて、
航空危険法
という
法律
はどういうときにできたわけですか。
伊藤榮樹
9
○
伊藤
(榮)
政府委員
航空
の危険を生じさせる
行為等
の
処罰
に関する
法律
、これは、この根幹は
航空法
の
罰則
の中にあったのでございますが、
ハイジャック条約
の批准に先立ちまして
所要
の
措置
を加えまして、
単独法
として
立法
されたわけでございます。
稲葉誠一
10
○
稲葉
(誠)
委員
そのいまの前の
法律
と後の
法律
、これは私もよくわからない、
研究
が不十分ですけれ
ども
、あわせて一本の
法律
にするわけにはいかなかったのですか。
伊藤榮樹
11
○
伊藤
(榮)
政府委員
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
の方は、いわゆる
ハイジャック対策
ということで、
航空機
に関する
強盗罪
の
特別類型
のようなものをまとめて
規定
するということで
規定
しておりますし、
航空
の危険を生じさせる
行為等
の
処罰
に関する
法律
の方は、
先ほど
も申しましたように、
ハイジャック
というものを一応念頭に置かないで、そのほかの方法によって
航空
の危険を生じさせる
行為
、これを網羅して
規定
しておる、こういうわけで、それぞれ
立法趣旨
が違いますので、一本の
法律
にはなっていない、こういうわけでございます。
稲葉誠一
12
○
稲葉
(誠)
委員
いま
刑事局長
が
ハイジャック
という
言葉
を使われましたね。
ハイジャック
というのはどこから出てきた
言葉
なのですか。
伊藤榮樹
13
○
伊藤
(榮)
政府委員
私も正確な出どころはわかりませんが、
昭和
四十六年ごろであったと思いますが、なおこの年の
関係
は間違っていれば後で訂正しますが、
東京条約
というのが結ばれておるのですが、そのときに初めて登場した
言葉
でございまして、当時
アメリカ
と
キューバ
の間で
航空機
が
亡命
のために乗っ取られた、これを俗に
ハイジャック
というふうにだれともなく言い出して、それが国際的な
慣用語
になったというふうに、私も当時
条約
の
政府代表代理
として出ておりまして、初めてそういう
言葉
を聞いたものですから、
アメリカ
の
代表
などに聞いてみますと、そういうことの説明でございました。なお語源的な探究はまだ遺憾ながらいたしておりません。
稲葉誠一
14
○
稲葉
(誠)
委員
いや、一番大事なことなので、
ハイジャック
というのは何だかわけがわからなくて、ただ
ハイジャック
という
言葉
を使っていたのではだめなんですよ。
後ろ
の
ベンチ
にいる人、よく教えてあげなさい。あれは
ハイウエー
において
ジャック
という人が
強盗
をやったということから始まったんじゃないの。そこら辺のところははっきりさせてください。
審議
が進まないのだよ。
伊藤榮樹
15
○
伊藤
(榮)
政府委員
ジャック
というのは私
ども
も多少の知識はありますが、
アメリカ
の
強盗
を
意味
する
俗語
でございます。それに
ハイ
がくっついた。その
ハイ
のくっついた
理由
はちょっとわかりません。
稲葉誠一
16
○
稲葉
(誠)
委員
それではこちらも、はいと言うわけにはいかないのだ。それでは、
ハイジャック
という
言葉
、
ハイジャッキング
という
言葉
も使っていますね、その
言葉
の
意味
をはっきりさせてください。しばらく待っていますから。
伊藤榮樹
17
○
伊藤
(榮)
政府委員
それでは今後、
航空機
強取というふうに申すことにいたします。
稲葉誠一
18
○
稲葉
(誠)
委員
航空機
強取と言うのはいいのですが、あなた、
ハイジャック
という
言葉
を使ったから、よくわからないから聞いているので、どこかへ聞いてごらんなさい。何か
ハイウエー
で
ジャック
という人が
強盗
したというところから始まったと言っていましたよ。そうじゃないのですか。これは
アメリカ
の
言葉
だよ、
アメリカ
のスラングだよ。ちょっと
ベンチ
の人、教えてあげなさい。
伊藤榮樹
19
○
伊藤
(榮)
政府委員
ただいまの御指摘にかんがみまして、
アメリカ
の
俗語
を使ったことは適当でなかったというふうに思いますので、私は
ハイジャック
という
言葉
を
航空機
強取という
意味
に解して使ったわけでございまして、現在
国際会議等
では
ハイジャック
、あるいは
ハイジャッキング
という
言葉
を
航空機
の乗っ取りという
意味
に使っておりますので、語源を探究しなかったのは怠慢だと言われればそれまででございますけれ
ども
、その点は鋭意
研究
をいたしておきたいと思います。
稲葉誠一
20
○
稲葉
(誠)
委員
鋭意
研究
するほどのことでもない。何か
ハイ
というのは
ハイウエー
なのか。
ハイウエー
だと
道路
でしょう。
航空機
だと
ハイウエー
じゃないですね。高いという
意味
なんでしょうけれ
ども
。
瀬戸山三男
21
○
瀬戸山国務大臣
私も歴史学的に
研究
したことはないのですけれ
ども
、これは
アメリカ
からはやってきたといいますか、出てきた
言葉
だと思います。
日本
では最近のことでございますが、
アメリカ等
では
高速道路
なんかで、あるいはその他でも、ああいう広い所でございますから車が通っておる、そうするとよく
アメリカ人
がハーイと言って手を挙げますね、そうして乗り込んで
強盗
を働くとかなんとかいうことが行われる、そういうところからきたのだろうという話でございます。
稲葉誠一
22
○
稲葉
(誠)
委員
大臣
が出るほどのことじゃないですよ。 そこでお聞きをしたいのは、
最初
に
航空機
強取法ができたときに、なぜ
人質
に関連することが
航空機
強取法の中に入らなかったのですか、こう聞きたいわけです。というのは、これは
質問
を詳しく教えてあるわけです。本当はここまで言わない方がよかったのですよ、
質問
の
内容
を教えない方がよかったのだけれ
ども
、「
過激派
による
人質強要事例
」の中に「
人質
の
解放状況
」として「明示の
要求行為
なし(ただし、警察官に対して、逮捕することなく安全に逃走させることを暗黙のうちに
要求
) 2
人質
は、二三名が福岡空港で解放され、」云々、こう
資料
に出ているわけですね。だから、この
資料
に出ていることから見ると
——
これは後からつくったのだろうと思うのです。この
資料
は恐らく今度の
法案
をつくるのでつくったのだろうと思うのですが、この
資料
から見れば、当然
最初
の
航空機
強取法ができたときに、
人質
に関連することがこの前のときに入ってなければならないのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その入ってなかったのはどういうわけなんですか。
伊藤榮樹
23
○
伊藤
(榮)
政府委員
お許しを得て
便宜ハイジャック
という
言葉
を使わしていただきますが、
ハイジャック
の歴史をちょっと振り返ってみる必要があるわけでございます。「
よど号
」
事件
が発生しました当時の
状況
を顧みるわけでございますが、「
よど号
」
事件
は、なるほど
人質
を乗せて
運航支配
して
国外
へ
脱出
をしたわけでありますが、その
人質
と引きかえに
国外脱出
以外の
特定
の
要求
をいたしませんでした。これが当時のいわゆる
ハイジャック事件
の特色でございまして、当時起きましたものをいろいろ調べてみますと、記録に残っております一番
最初
のころが、
昭和
四十四年の八月に
アメリカ
の
TWA機
が乗っ取られておりますが、これは
アメリカ
がイスラエルにファントムを供与したことに対する報復の
目的
であった、したがって何の
要求
もない。それから同年十月に
アメリカ
の
ナショナル機
が乗っ取られましたが、これは
キューバ
へ
亡命
する
目的
であった。それから同じく十月に
ポーランド国営航空機
が乗っ取られましたが、これは東独からの
亡命目的
であった。それから十一月にアルゼンチンの
アウストラル機
が乗っ取られましたが、これもウルグアイへの
亡命目的
であった。同月
ポーランド国営航空機
がやはり乗っ取られておりますが、これは
ポーランド
からの
亡命目的
。それから
昭和
四十五年一月に
アメリカ
の
デルタ機
が乗っ取られましたが、これはスイスへの
亡命目的
。同月
パナマ機
が乗っ取られましたが、
キューバ
への
亡命目的
ということで、「
よど号
」
ハイジャック事件
もこれと同じ
亡命目的
の範疇に属するものと思われるわけでございまして、当時の
状況
からしますと、
ハイジャック
というものは
亡命目的
で行われる場合がほとんどでありまして、
乗客
、乗員を
人質
にとって、そして不法な
要求
をするというのは四十七年以降に生じた現象であるわけでございます。したがいまして、その当時の時点としては、
航空機
の強取あるいは
運航支配行為
、これだけを当面
処罰
の
対象
とすればよろしい、こういう
考え
で制定されましたので、今回御
審議
いただいておりますような
人質強要行為
、これについては
立法
が行われなかった、こういう
経緯
でございます。
稲葉誠一
24
○
稲葉
(誠)
委員
四十五年というと、これは私が
国会
を休んでおったときですから、参議院が終わって
衆議院選挙
があるまでの間ですからね、無理もなかったかもしれませんけれ
ども
、とにかくそのときの
提案理由
には
人質
との問題は全然入ってませんか。
提案理由
どこにある、それをちょっと読んでごらんなさい。
最初
の
提案理由
。
伊藤榮樹
25
○
伊藤
(榮)
政府委員
私も確かめておりますが、それは入っておりません。当時の
提案理由
、いまここに持ってきてないかもしれませんが、そうすればおっつけ持参しまして読み上げます。
稲葉誠一
26
○
稲葉
(誠)
委員
いや、持ってこなくてもいいですよ、それは。そう無理を言うのもあれだから、そこまで通告してないからあれですけれ
ども
ね。そうすると、その当時は、「
よど号
」
事件
が起きて
航空機
強取法をつくるときに当然
人質
の問題は
考え
られたのではないのですか、全然
考え
られなかった。
伊藤榮樹
27
○
伊藤
(榮)
政府委員
先ほど
来私も
記憶
を喚起いたしましたが、
航空機
の安全に関する
東京条約
というのは四十五年でございました。まさにこの時期なんですが、その当時私も
会議
にずっと出席しておりましたが、
ハイジャッキング
というのはもっぱら
亡命目的
で、
アメリカ
−
キューバ
という間のような
亡命目的
のことだけが論ぜられまして、いずれの場合も
目的地
へ到達すると
人質
は解放されて安全にもとのところへ戻っておる、こういう
状況
でございましたから、その
人質
を盾にとって何かの
要求
をするというようなことを論じた人もなければ、それに対応すべき方策について述べた人もなかったと
記憶
しております。
稲葉誠一
28
○
稲葉
(誠)
委員
それは私も前のだれかの
質問
のときにその
答え
があったように
記憶
しておるのです。
——テレビ討論会
でだれかがそんなことを言っていましたね、
記憶
があります。それは。だけれ
ども
、そうすると今度の
資料
の中では
人質
と書いてあるじゃないですか。これは本当は
人質
なのかどうなのか。いまになってみれば
人質
だったということなんですか。そのときの
資料
には
人質
のことは書いてなくて、今度は
人質強要法
だからというのでそれを持ってきて、この
資料
の中に、いかにも
人質
のようなことになった一つの一番
最初
の例にして書いてあるのはちょっと首尾一貫しないようにもとれるのですが、あるいは首尾一貫するのかもわからない。どうなんですか。
伊藤榮樹
29
○
伊藤
(榮)
政府委員
確かにこの
資料
の中には一番の「
よど号
」の乗っ取り
事件
とかあるいは
浅間山荘
とかそういうように
特定
の
要求行為
のないのが掲げてございますが、いずれにいたしましても、
審議
の御参考ということで、
人質
をとったような
事案
で世上喧伝されております
事案
を網羅しておりますので、そういう
意味
で御理解をいただきたいと思います。
稲葉誠一
30
○
稲葉
(誠)
委員
何だかはっきりしないな。
人質
をとった
事例
を網羅している、この
事件
は
人質
をとったということになるの、この「
よど号
」
事件
は。ちょっとぼくもよく聞き取れなかったんだけれ
ども
、
人質
をとった例になるのかな。この「
よど号
」
事件
というのは、たしか強取法ができる前の
事件
でしょう。そうすると、強取法ができない段階でこの「
よど号
」
事件
というのは
法律構成
はどういう
法律構成
になるわけですか。
伊藤榮樹
31
○
伊藤
(榮)
政府委員
これは
航空機
の
強盗
、それから
強盗
の
機会
に
操縦士等
にけがをさせておりますから
強盗致傷
、それから
乗客
を乗せたまま連れていっていますから
国外移送拐取
、それから
国外移送監禁
、こういう罪名で処理しております。
稲葉誠一
32
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、それは全部
併合罪
になるのですか。
併合罪
になってくると
最高
どういうふうになるの。
伊藤榮樹
33
○
伊藤
(榮)
政府委員
一番重い
強盗致傷
の刑によっておると思いますから、
最高
が無期になると思います。
稲葉誠一
34
○
稲葉
(誠)
委員
そこで、いまの
航空機
強取法とそれから
航空危険罪
というのかな、そのどっちに入れたらいいかということで
議論
のあるような
案件
があったんじゃないのですか。
伊藤榮樹
35
○
伊藤
(榮)
政府委員
御
質問
の
趣旨
、必ずしも的確に理解できたかどうかわかりませんが、
航空危険処罰法
と
航空機
強取等
処罰法
とは、
先ほど
申しましたように
立法趣旨
が違いますから、どちらへ入れたらいいかというような
案件
はちょっといま
記憶
がございません。
稲葉誠一
36
○
稲葉
(誠)
委員
よく相談してよ、
後ろ
と。
ベンチ
と相談してください。
伊藤榮樹
37
○
伊藤
(榮)
政府委員
これは相談するまでもなく、そういうことはございませんでしたから。
稲葉誠一
38
○
稲葉
(誠)
委員
ああ、そうですか。あなたの方の
池田耕平
という人いる。これは何をやっている人。来ている、きょう。
伊藤榮樹
39
○
伊藤
(榮)
政府委員
刑事局
で最も若手の検事でございます。
稲葉誠一
40
○
稲葉
(誠)
委員
この人が、
法曹時報
の三十巻の第二号に「
航空機
強取等
防止対策
を強化するための
関係法律
の一部を
改正
する
法律
について」、この
資料
の中に出ていますよ。「
対策本部
における協議の
過程
で、
爆発物等
を
業務
中の
航空機
内に持ち込む罪の
新設
に関し、これを
航空機
強取法中に
規定
すべきか、
航空危険法
中に
規定
すべきかについて検討がなされた」こういうふうに書いてありますよ。これはどういう経過ですか。
伊藤榮樹
41
○
伊藤
(榮)
政府委員
私は
先ほど
の御
質問
を
人質犯罪関係
の
事柄
というふうに理解しましたから、失礼いたしました。
危険物
を
航空機
内に持ち込む罪を
航空機
の強取の手段として取り締まるという観点でいくべきか、それとも一般的な
航空
の安全というとらえ方でいくべきか、その点が一応
立案過程
で
議論
の
対象
になった、こういう
経緯
を記しておるものと思います。
稲葉誠一
42
○
稲葉
(誠)
委員
それで、いまの点は結局どうなったんですか。
伊藤榮樹
43
○
伊藤
(榮)
政府委員
昨年御
審議
いただきましたように、
航空危険処罰法
、略称いたしますが、その第四条として「
業務
中の
航空機
内に
爆発物等
を持ち込む罪」こういうことで
新設
を見たわけでございます。
稲葉誠一
44
○
稲葉
(誠)
委員
ちょっとよくわからなかったんだけれ
ども
、それは
航空危険法
の中に
規定
するのが最も適当であると判断されて同法中に
規定
することとされたというんじゃないですか。いまそういう
答え
でしたか。
——
いまちょっと聞き取れなかったのですが。そうすると
航空危険法
というのと
航空機
強取法というのとは、これは
片方
は運輸省の
所管
で
片方
は
法務省
の
所管
かな。これ、併合して一本にするわけにいかないの。
伊藤榮樹
45
○
伊藤
(榮)
政府委員
先ほど
も申し上げましたように、
航空危険処罰法
の方は
ハイジャック
と直接
関係
のないいろいろな
航空
の危険を生じさせる
行為
を罪として
規定
しておるのに対して、
航空機
強取法の方はまさに
航空機
の強取だけを
取り締まり
の
対象
としておりますので、これは仮定の問題でございますけれ
ども
、
航空危険処罰法
の方は、今後いろいろな
航空
の発達その他の
状況
にかんがみましてさらに細かい
罰則
が必要になってまいれば、これはどんどん手直しをされていくというような
性格
のものでございましょうし、
航空機
強取
処罰法
の方は、
航空機
の強取あるいは
運航支配
ということに限って、あるいはその周辺の
事柄
に限って
規定
をしていくという
立法趣旨
の違いがありますので、
立法
技術的にもあるいは
法律
の
性格
からいっても、なかなか一本になりにくいものだと
考え
ております。
稲葉誠一
46
○
稲葉
(誠)
委員
それでは別のことをちょっとお聞きしましょう。
衆議院
の
法務委員会
で
附帯決議
が付せられましたね。一から十一までの
附帯決議
がつけられたわけです。これは
法務省
だけのあれではないかもわかりませんが、これについてはその後どういうような
対策
を立てて、どういうふうに対処していったわけですか。
伊藤榮樹
47
○
伊藤
(榮)
政府委員
ただいまお尋ねに当たって御指摘いただきましたように、
附帯決議
十一項目の中には私
ども
の
所管
でないものもございますけれ
ども
、
日航ダッカ
・
ハイジャック事件
の後にできました
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
の
幹事
を私させていただいておりますので、他省庁の
所管
される
部分
につきましては、私が
対策本部
の
幹事
として
承知
しておる範囲でお
答え
をいたしたいと思います。 まず第一項について申し上げます。これは御
承知
のように、
政府
といたしまして昨年十一月八日、
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
におきまして「
ハイジャック等防止対策
について」という
対策要綱
をとりまとめまして、その後同
本部
の
幹事会
を恒常的に開催いたしまして、そこに掲げました各種の
対策
の
実施
あるいは
実施状況
の点検を行いますとともに、さらに必要な
措置
があれば新たに取り上げて講ずるという
措置
をいたして、鋭意
努力
いたしております。ちなみに昨年十月以降、
対策本部
は四回でございますが、
幹事会
は十一回開催をいたしております。 次に、
附帯決議
の第二項についてでございますが、国際的な
相互協力
の問題に関する
部分
でございます。この点についての私
ども
の
関係
の施策は次のとおりでございます。 去る三月三日、
日米逃亡犯罪人引渡し条約
が調印されたことに伴いまして、
犯罪人
の
引き渡し
に関する
国内手続
について
所要
の
整備
を行いますとともに、
犯罪人引き渡し
に関する
国際協力
を一層推進いたしますために、わが国に対して
引き渡し条約
に基づかないで
犯罪人
を仮拘禁することの請求があった場合の
手続等
に関する
規定
を
新設
することを
内容
といたします
逃亡犯罪人引渡法
の一部
改正案
を今
国会
に御提出申し上げて御
審議
をお願いしておるわけでございまして、これが成立すれば
国際的相互協力
が一層増進されることになろうと思います。 また、本年四月五日から、私
ども刑事局
に、
犯罪人
の
引き渡し
や
捜査共助
あるいは
司法共助
など
刑事
に関する
国際協力
を推進いたすために
国際犯罪対策室
を設置いたしました。また、
東京地方検察庁
にいわゆる
国際犯罪
に関する
資料
、
情報
を収集
整備
するための
国際資料課
を
新設
いたしまして、これらの新しい組織を中心として
国際的協力体制
の
整備
を図っているところでございます。 それから、第三項は
国連決議
の
実施促進
その他の
関係
でございますが、
外務当局
の
対策本部等
における報告によりますと、
国連
の場で精力的に未
加盟国
に対する
ハイジャック関係
三
条約
への加入の呼びかけを行っておるとのことでございます。また、未
加盟国
と
航空等
に関する
条約
、協定の交渉をいたします際、その他あらゆる
機会
を利用して、個々的に
ハイジャック
三
条約
に対する
加盟
を呼びかけていく
努力
をいたしておるとのことでございます。 さらにICAO、
国際民間航空機関
の
下部機関
でございます
不法行為防止委員会
において、
シカゴ条約
の
付属書
の改定を行って現在各国に承諾を求めておるというような
努力
がなされておるようでございます。 次に、第四項の
日本赤軍等過激派
の
捜査
上の問題でございます。これは主として
警察当局
が
外務省
と協力してやっておられるわけでございますが、
関係犯人
を
国際刑事警察機構
、ICPOを通じて
国際手配
をいたしますとともに、一方
外務省
においては、それらの者の
顔写真等所要
の
資料
を
在外公館等
あるいは外国の
当該機関等
に送付をいたしまして、
日本赤軍関係者等
の
情報
の把握に努めておる、こういうふうに
承知
いたしております。 第五項は、
暴力団犯罪
や
内ゲバ事件等
の非
人道的暴力行為
に対する
取り締まり等
の問題でございますが、かような
犯罪
につきましては特に厳正な
取り締まり
を励行しているところでございまして、単に表面にあらわれた
事件
の処理に終わることなく、その背後
関係
についても徹底した
捜査
を
実施
いたしますとともに、公判におきましても特に悪性の情状立証に力を注いで厳正な科刑の実現に努めておるわけでございます。 なお、この種の
事件
におきまして、訴訟法上のルールを無視することによって裁判、すなわち刑罰の実現を不当に遅延させている
事案
が一部に遺憾ながら散見されますことにかんがみまして、今
国会
に
刑事
事件
の公判の開廷についての暫定的特例を定める
法律案
を提出して、その速やかな成立を期待することによりまして
過激派
裁判の正常化を期したい、かように
考え
ておるところでございます。 第六項は、機内持ち込み品の検査等の問題でございますが、昨年十一月十四日に開催されましたICAO、
国際民間航空機関
の
理事
会におきまして、わが国は西ドイツとともに手荷物検査の徹底それからダブルチェックの
実施
、空港警備体制の強化など六項目の決議案を提出いたしまして、これが何らの反対なく採決されましたが、そのほか、昨年十一月から十二月にかけまして運輸省係官などが諸外国に派遣されまして、日航南回り線の寄港空港合計三十五空港の中の、空港警備体制に問題がないかというふうな観点から、要チェックと思われた十七空港を含めまして合計十九港について実情調査を
実施
いたしまして、外国空港における安全検査の徹底等を期しておるということでございます。 なお、これらの外国空港のうち、日航の手によるダブルチェックの必要性があると認められた七空港については、現在までにこれを
実施
いたしておるようでございます。 それから、第七項の国際的な
司法共助
の
関係
でございますが、この問題につきましては、現在すでに具体的な
事件
ごとに外交チャンネルを通じて
関係
国との間で協議の上
実施
しておるところでありますが、
先ほど
申し上げましたように、
国際犯罪対策室
が
新設
、発足いたしましたことに伴いまして、この
対策
室を中心に
司法共助
に関する各国
立法
例などをも調査
研究
いたしまして、あわせて御決議の中にございます国内法の
整備
の要否をも含めて検討を加えて、一層効果的な
司法共助
の実現のために
努力
してまいりたいと
考え
ておるところございます。 次に、第八項の逃亡
犯罪人
の引渡し
条約
の締結国を拡大する件でございますが、
先ほど
申し上げましたように、三月三日に日米
犯罪人
引渡し
条約
が調印されたわけでございますが、引き続きまして、その他の諸国とも可能な限りこの種
条約
を締結することが望ましいと
考え
ますので、現在、発足早々の
国際犯罪対策室
を中心に、相手国となるべき国の
法律
制度あるいはその運用ぶりについて調査中でございまして、今後、
外務省
とも協力をいたしまして、必要性の高いと認められる国から順次
条約
を締結するよう
努力
を尽くしてまいるつもりでございます。 それから、第九項の
ハイジャック関係
犯人の逮捕についての
努力
でございますが、
先ほど
もちょっと触れましたが、警察からの連絡によりますと、ダッカ・
ハイジャック事件
の釈放犯につきましては、すでにICPOを通じて手配済みであり、また、犯人のうち氏名を
特定
することができた者については、逮捕状の発付を得てこれに備えておるというような
状況
で、鋭意
捜査
をいたしておる、こういう
状況
ということでございます。 第十項は、旅券発給制限の運用についての問題でございますが、この点につきましては、御決議の
趣旨
を体しまして、
外務省
におきまして、昨年十二月十九日に御決議の
趣旨
に沿う旅券法第十三条第一項第二号の
改正
部分
についての取り扱い基準というものを定めて、これによって遺憾なきを期しておるようでございますが、
法務省
といたしましても、これに対応いたしまして、
外務省
に対して逃亡被告人あるいは遁刑者等を通知をする
関係
の手続を定めました
刑事局長
通達を発しまして、運用が過度にわたることのないよう特段の
措置
を講じているところでございます。 第十一項につきましては、
関係
の各省庁の人たちがすべてこの御
趣旨
を体して行動しておるものというふうに
考え
ております。
稲葉誠一
48
○
稲葉
(誠)
委員
この
人質
による強要罪を犯した者が
人質
にされている者を殺したときは、死刑または無期懲役に処して、その未遂をも
処罰
する、こういうふうになっておるわけですが、これは、
人質
による強要罪を犯した者が
人質
にされている者を殺害しない場合でも死刑または無期懲役に処す、こういうような
議論
が出てきておったのですか。
伊藤榮樹
49
○
伊藤
(榮)
政府委員
日航機
ダッカ・
ハイジャック事件
の直後の
関係
者の一部の間には、あのような天人ともに許さないような
犯罪
については、
人質
の生命に危険があろうとなかろうと死刑をもって臨むべきではないかという声があったことは事実でございます。しかしながら、改めてくどくどしく申し上げるまでもなく、死刑というものにつきましては、諸外国の趨勢あるいはわが国の法体系さらには死刑というものの重要性、こういうものから
考え
まして、その
新設
につきましては、やはり人の生命にかかわるというような問題を中心にしぼって
考え
るべきであろうということから、その一部の御
議論
は、私
ども
としては採用することができない、こういう立場で今回のような
法案
の形になっておるわけでございます。
稲葉誠一
50
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、そのいま言った
議論
はどこの方面からどういうふうに出てきたわけですか。
伊藤榮樹
51
○
伊藤
(榮)
政府委員
たとえば、当時、当
委員会
でもそういう御発言をなさった方があると思いますが、政党の内部において、ダッカ・
ハイジャック事件
が
議論
されたような際にそういう声も出ておったように
記憶
しております。
稲葉誠一
52
○
稲葉
(誠)
委員
それは、現在の法体系から見ると非常に異例なものである、こういうふうに
考え
てよろしいわけですか。
伊藤榮樹
53
○
伊藤
(榮)
政府委員
現在の法体系、さらには世界の趨勢を反映いたしまして死刑を極力減らすことにしております
改正
刑法
草案の立場、これがわが国がいま進もうとしておる立場を
代表
するものではないかと思うのでございますが、その立場、あるいは
人質
の生命に危険を及ぼさなかった
ハイジャック
行為
に対しては、われわれが知り得る限りの世界のどの国も死刑をもっては臨まないこととしておるというようなことを
考え
ますと、
ハイジャック
そのもの、あるいは
ハイジャック
人質
強要そのものに法定刑として死刑を設けることは、わが国の趨勢、諸外国の趨勢からしますと、やや行き過ぎの感がある、こういうことでございます。
稲葉誠一
54
○
稲葉
(誠)
委員
いま
質問
した
衆議院
法務委員会
で
附帯決議
が付せられておるのは一から十一までですね。このうちであなたの方に
関係
しているものはどれとどれで、いまちょっと聞きましたけれ
ども
、今後それについてはどういうふうに進めていこうというわけですか。
伊藤榮樹
55
○
伊藤
(榮)
政府委員
法務省
に
関係
のありますのは、第一項、これは各省庁にまたがっておりますから第一項、それから第二項、第五項、第七項、第八項、第十一項、これらが
法務省
に直接
関係
する
部分
だと思います。 それらにつきましての今後の
努力
の目標等につきましては、
先ほど
詳細申し述べたとおりでございます。
稲葉誠一
56
○
稲葉
(誠)
委員
この
規定
の中で、第八十二回の
国会
において
新設
された
航空機
強取法の第一条第二項の
規定
を本法中に取り入れることになった、これはどういうわけで本法中に取り入れることになったわけでしょうか。
伊藤榮樹
57
○
伊藤
(榮)
政府委員
若干の
経緯
の御説明を申し上げます。
先ほど
来申し上げております
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
におきまして、今後のその種非人道的暴力
事件
に対する
対策
がいろいろ検討されたわけでございますが、その
過程
におきまして、
人質
をとって無法な
要求
をするという
行為
に何らかの方法で対処すべきであるという
議論
が一致をいたしておったわけでございますが、さしあたりダッカ
日航機
ハイジャック事件
にかんがみますと、
航空機
強取犯人がその
乗客
、乗員を
人質
にとって無法な
要求
をするという
行為
についてまず真っ先に
立法
措置
を講ずるべきである、しかる後、
ハイジャック
以外の、妙な言い方で恐縮でございますが、いわゆるその他
ジャック
とでもいうようなものに対する
対策
もなるべく速やかに検討し、
立法
化すべきである、こういう結論に達したわけでございます。 そこで、そういう
関係
から、
航空機
強取犯人が
乗客
、乗員を
人質
にして無法な
要求
をする
行為
についての
立法
をまずいたすことになったわけでございます。その
立法
いたします際に、現行の
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
の第一条に
航空機
強取
行為
そのものに対する
罰則
がございまして、当時新たにつくろうといたします罪の形というものが、その強取
行為
を犯した者が
人質
を強要する
行為
であるということから、たった一条ないしは一項の
立法
でございますので、
航空機
強取法の一条二項として
新設
をいたしたわけでございます。ところで、その後一般的な
人質
強要の
新設
について検討いたしました結果、過激分子によって犯されることが多いそういう実態に即した刑罰法規といたしまして、今回御提案申し上げております第一条の
人質強要行為
というのを
新設
することにしたわけでございます。 そういたしますと、改めて
航空機
強取等の
処罰法
をながめてみますと、
先ほど
も申し上げましたように、
航空機
強取
処罰法
は
強盗罪
の
特別類型
という形で全体の構成がなされておりまして、一方、
人質
強要という
行為
はいわば強要罪の
特別類型
ということでございまして、明らかに罪質を異にするわけでございます。そういう
意味
におきまして、
人質
強要の一般
規定
のような形で御提案申し上げております
法案
の第一条を置きますということになりますと、強要罪の
特別類型
が
強盗罪
の
特別類型
を中心とする
法律
の中にはさまったような形になっております
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
一条二項を第二条としてこちらの方に取り込みまして、そして統一的に強要罪の
特別類型
として一まとめにした
立法
をいたすことの方が論理的にも通りますし、またこの
法律
をごらんいただく国民の立場からも御理解が得やすいのではないか、かように
考え
て、せっかく昨年御制定いただいた
航空機
強取法の一条二項でございますが、こちらの
法案
の方に取り込みまして理論的な整合及び理解の容易さを図った、こういうことでございます。
稲葉誠一
58
○
稲葉
(誠)
委員
前回の
国会
の質疑の中で当然
航空機
強取法第一条第二項の
規定
についていろいろ
議論
があったわけですが、これをこちらの方に取り入れるのではなくて、その
議論
があった八十二
国会
の中から当然新しい
法律
をつくるということは予想されておったわけですか。
伊藤榮樹
59
○
伊藤
(榮)
政府委員
当時御指摘もあり、私あるいは
大臣
からも御答弁申し上げておりましたとおり、いずれは一般の
人質
強要の
行為
についての
処罰
規定
を設けるつもりでございます。鋭意検討いたしております。こういうふうにお
答え
いたしております。
稲葉誠一
60
○
稲葉
(誠)
委員
この前の
国会
のときに今度のような
法案
がなぜ一緒に提案されなかったわけなんでしょうか。その間の
理由
はどういう
理由
でしょうか。
伊藤榮樹
61
○
伊藤
(榮)
政府委員
航空機
強取犯人が
人質
強要した
行為
についてはきわめて特殊な類型に属する
犯罪
でございますから急ぎ
立法
を見たわけでございますが、
航空機
乗っ取り以外の方法によります
人質強要行為
につきましては、
立法
いたします場合に
考え
得る幅が相当広うございまして、たとえば
改正
刑法
草案の三百七条にありますような広い範囲を可罰
行為
として拾い上げるものもございますし、あるいは要件をしぼって、
過激派
対策
として主として有効なものにしぼるということも
考え
られます。そういう、どの辺のしぼり方で
立法
するかという問題が一つと、それからもう一つは、身のしろ金誘拐という、現在の
刑法
に
規定
がございますが、それとの
関係
をどういうふうに調整するかというような、この点は技術的な問題でございますが、そういった種々の検討すべき点がございまして、八十二
国会
には遺憾ながら間に合わなかった、こういうことでございます。
稲葉誠一
62
○
稲葉
(誠)
委員
それはちょっとわからないといえばわからないのですが、その前の
国会
においてもいまのような場合などについては当然予想されたものですから、当然そのときに一本にして出すというか、それが筋だったのではないのですか。
伊藤榮樹
63
○
伊藤
(榮)
政府委員
そうできればよかったのでございますが、その
立法
作業の手順からしまして日数がとうてい足りなかったというのが偽らざるところでございます。
稲葉誠一
64
○
稲葉
(誠)
委員
日数が足らなかったからではなくて、あなたの方とどこというか、実際に
立法
に携わるものとの間に
議論
があって、それがまとまらなかったためにできなかったのではないのですか。
伊藤榮樹
65
○
伊藤
(榮)
政府委員
全くそういうことはございませんで、私
ども
法務省
部内でいろいろな
犯罪
のとらえ方をあれかこれかと検討して、最もベストだと思われるものにやっと到達したのがことしの一月早々ということでございまして、御指摘のようにどこかと
議論
しておった、こういうような問題ではございません。
稲葉誠一
66
○
稲葉
(誠)
委員
人質
による強要罪を犯した者が
人質
にされている者を殺したときは死刑または無期懲役に処し、その未遂をも
処罰
するというのが第三の条件になっているわけですが、これはどうして無期懲役までもするという形になっておるのですか。これは法体系として死刑だけという法体系というものは現在の
法律
の中にはないわけですか。 〔
委員長
退席、横山
委員長
代理着席〕
伊藤榮樹
67
○
伊藤
(榮)
政府委員
現行
刑法
におきましては、死刑または無期禁錮とか、死刑または無期懲役というのが多うございますが、例外といたしまして外患誘致、「外国ニ通謀シテ
日本
国ニ対シ武力ヲ行使スルニ至ラシメタル者ハ」ということで、これは死刑だけの
規定
になっておるようでございます。
稲葉誠一
68
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、
犯罪
に対する威嚇力というのですか、抑止力というようなこと、こういう
法律
ができればそういうようなものはなくなるんだ、効果があるんだ、こういうふうにお
考え
になっておられるわけですか。
伊藤榮樹
69
○
伊藤
(榮)
政府委員
およそどんな
犯罪
現象でありましても、刑罰を設けただけではそういう現象がなくならないことは当然でございまして、他のあらゆる諸施策と相またなければならぬわけでございます。しかしながら、そうかといって、刑罰について威嚇力ないしは
犯罪
抑止力があるというのも古くからの国民の伝統的な
考え
方でございまして、そういう信念の上に立って刑罰というものが定められ、もちろん刑罰と申しますからには、犯人の責任の度合いに応じた刑の量、あるいは
犯罪
の結果あるいは
犯罪
行為
そのものの悪性に応じた法定刑の量というものが
考え
られるわけでございます。反面その法定刑の持ちます威嚇力あるいは
犯罪
抑止力、こういうものを信じながら刑罰を設けるわけでございますので、そういう
意味
におきまして一応
犯罪
抑止力あるいは威嚇力というものがある、こういうふうに
考え
ております。
稲葉誠一
70
○
稲葉
(誠)
委員
それは、威嚇力なり抑止力があるということはある程度あるかもわかりませんけれ
ども
、それではまずこういうふうにお聞きしましょうか。確信犯というのは一体どういうふうなものだとお
考え
でしょうか。
伊藤榮樹
71
○
伊藤
(榮)
政府委員
一定の物の
考え
方につきましての確信を抱いておる、それで、自分の確信を貫き通すためには法に触れることもあえていとわないというようなものが確信犯の範疇に入ろうかと思います。
稲葉誠一
72
○
稲葉
(誠)
委員
すると、具体的な例を挙げるとどういうふうなことになるでしょうか。
伊藤榮樹
73
○
伊藤
(榮)
政府委員
具体的な例と申しましても、簡単に適切な
事例
を思い当たりませんが、たとえば明治の初めごろございましたいわゆる国事犯というような人はそういうものであろうかと思いますし、また戦前戦後を通じて一部の右翼の人たちがやっておるようなことも一種の確信犯であろうと思いますし、また自分たちの主張を貫くためには爆弾で人を殺傷するというようなこともあえて辞さないというようなものも一種の確信犯に、常識的な
意味
における確信犯の範疇に入れてもいいのではないかと思います。
稲葉誠一
74
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、そういうような確信犯というものと、本
法案
を犯すものとの通常の
関係
はどういうふうになるでしょうか。
伊藤榮樹
75
○
伊藤
(榮)
政府委員
通常の、たとえば
ハイジャック
を行って
人質
をとって無法な
要求
をするというような連中は、そういうことがおよそ法の許さないことであるということは知っておりますけれ
ども
、自分たちの
目的
を達成するためにはこれをあえて踏みにじってやるという
意味
において一部確信犯に似たようなところがあると思いますが、さりとて
人質
を皆殺しにするということをあえてしても自分の主張を貫くつもりであるかどうかという点に着眼いたしますと、必ずしも本当の確信犯でもないような色彩もあるのじゃないか。一概にはなかなか言えないのじゃないかと思います。
稲葉誠一
76
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、いろいろな問題が出てくるわけです。
昭和
五十二年十月四日に内閣に
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
ができたわけです。そこでいろいろなことが策定されたわけです。
航空機
強取等
防止対策
を強化するための
関係法律
の一部を
改正
する
法律案
の案ができてとかいろいろ書いてあるわけですが、これは具体的にはどういう
内容
で、どういうふうになったのでしょうか。
伊藤榮樹
77
○
伊藤
(榮)
政府委員
ただいま御指摘の
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
におきまして一応の締めくくりとして出しましたのが、昨年十一月八日の「
ハイジャック等防止対策
について」こういうものでございます。そこには第一から第七にわたりまして、およそ
政府
関係
機関として
考え
得るあらゆる
対策
を網羅して掲記されておるわけであります。その第七に「
法律
改正
」という
部分
がございまして、その1は「今臨時
国会
において
航空機
強攻等
防止対策
を強化するため次の3
法律
の一部
改正
を図る。」といたしまして、その1として「
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
」、2として「
航空
の危険を生じさせる
行為等
の
処罰
に関する
法律
」、3として「旅券法」こういうことがあったわけでございます。この点につきましては、御指摘のように第八十二
国会
において御可決いただいて、現在施行を見ておるわけでございます。 その2といたしまして「今後次の事項について検討する。」とありまして、1が「
刑事
訴訟の迅速化を図るための
刑事
訴訟の一部
改正
」、2が「
航空機
強取者の
人質強要行為
に関し死刑をもつて臨む場合を設けること。」3が「
航空機
以外の場における
人質
強要罪の
新設
」こういうことでございます。 この今後検討すべきとされましたうちの1の事項に対応いたしますのが、
刑事
事件
の公判の開廷についての特例
法案
でございまして、2及び3に照応いたしますのが、ただいま御
審議
いただいております
法案
、こういうことになるわけでございます。
稲葉誠一
78
○
稲葉
(誠)
委員
池田君が書いたものによると、
昭和
五十二年十月二十日
航空機
強取等
防止対策
を強化するための
関係法律
の一部を
改正
する
法律案
というのが出ているわけなんですが、これはどういうふうになったのですか。これに関連して説明を願えませんか。
伊藤榮樹
79
○
伊藤
(榮)
政府委員
先ほど
申し上げましたように、
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
、あるいは
航空
の危険を生じさせる
行為等
の
処罰
に関する
法律
、それから旅券法、この三つの一部
改正
を、ただいま御指摘の一本の
法律
でお願いをいたしまして、その一つの
法律
の制定の結果、ただいま申し上げました三つの
法律
のそれぞれ一部が
改正
された、こういう
経緯
になっております。
稲葉誠一
80
○
稲葉
(誠)
委員
前回の
衆議院
の
法務委員会
において
附帯決議
が付せられていますね。もうさっき説明がありました。それから参議院でも付せられていますが、これは大体同じ、多少違うものもあるかもわかりませんが、もし違うものがあればそれも含めて
——
もうさっき説明がありましたけれ
ども
、
衆議院
の場合は一から十一、参議院の場合は一から十ですね、これについて一つ一つ御説明を願えませんか。
伊藤榮樹
81
○
伊藤
(榮)
政府委員
参議院の方におきましては、
衆議院
で十一項に分けて御決議になりましたものを十項に整理をされて御決議になりましたので、
内容
においては出入りはないというふうに思っておりまして、したがいまして、
先ほど
御説明いたしましたことが参議院の御決議に対しましても妥当することでございます。
稲葉誠一
82
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、この中でたとえば「逃亡
犯罪人
の引渡し
条約
の締結国を拡大することについて
努力
をすべきである。」これはあなたの方の
所管
だということを言われました。 〔横山
委員長
代理退席、
委員長
着席〕 これは、いまは逃亡
犯罪人
は
日本
と
アメリカ
だけですか、どうでしたかちょっと忘れましたが、それをどういうふうにしようということなんで、どういう
努力
をされているわけですか。
伊藤榮樹
83
○
伊藤
(榮)
政府委員
御
承知
のように、現在のわが国の
逃亡犯罪人引渡法
は必ずしも逃亡
犯罪人
の
引き渡し
に
条約
の存在を要件とはいたしておりません。
条約
の締結のない国からの
要求
がありましても、相主主義の保障があり、かつその国の法制、社会事情その他から判断して相当と認めるときには、逃亡
犯罪人
を引き渡す手続を行うということが可能とされております。しかしながら、もちろん
特定
の国との間に引渡し
条約
が結ばれ得ますれば、
引き渡し
の条件等も明らかになりますし、またそれらの国との友好が一層増進されるわけでございまして、
国際協力
を深めるという
意味
では非常に望ましいことだというふうに思うわけでございます。 ところで、今回日米間の
条約
を他に先がけて、全面
改正
という形ではございますが、締結をいたしましたのは、
アメリカ
という国は、国内法におきまして引渡し
条約
のない国との間では
引き渡し
を行わないという法制をとっております数少ない国の一つでございます。したがいまして、
アメリカ
とわが国との間で
犯罪人
の
引き渡し
をやりとりいたしますためには、
整備
された
条約
の存在が前提となるわけでございます。そういう
意味
で、まず
アメリカ
との
条約
の改定、これをいたしたわけでございます。 今後の問題といたしましては、
先ほど
申し上げましたようにそれらの国との間に
条約
が存在することがきわめて望ましいと思いますので、まずもってわが国と法制あるいは社会環境、そういったものの似通った国であり、かつ両国の間に国民の交流、往来が多い国、こういうものを取り上げながら順次
条約
締結のための
努力
をいたしていきたい、かように思っております。もちろん、引渡し
条約
の締結自体は
外務省
の
所管
でございますけれ
ども
、
事柄
の性質上、
条約
交渉に至ります前のいわゆるおぜん立てば私
ども
がやらなければならぬ、こういう
意味
において今後
努力
をしてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
稲葉誠一
84
○
稲葉
(誠)
委員
すると、逃亡
犯罪人
の引渡し
条約
は、いまはたしか
日本
と
アメリカ
だけだと思いましたね。そこで、その
内容
について、
ハイジャック
というか何というか、これとの関連で、まず締結国の拡大と、それから逃亡
犯罪人
引渡し
条約
の
内容
の問題についてどういうふうに拡大をしていく、こういうふうにお
考え
なんでしょうか。
伊藤榮樹
85
○
伊藤
(榮)
政府委員
この
ハイジャック
の問題につきましては、
ハイジャック
防止
関係
の三
条約
におきまして、
ハイジャック
行為
というものは締約国相互間では
引き渡し
犯罪
とするというふうな
規定
がございますから、その
ハイジャック
三
条約
の効力のみによっても相互
引き渡し
は可能でございますが、今回の日米
犯罪人
引渡し
条約
におきましては、もちろんそれらを含めてきわめて広範な罪名を列挙いたしますとともに、その列挙に漏れましたものでありましても相互の
法律
によりまして長期一年以上の刑を法定刑といたします罪については
引き渡し
をする、こういうことになっております。
稲葉誠一
86
○
稲葉
(誠)
委員
それはわかっているのですけれ
ども
、引渡し
条約
の締結国の拡大、これはあなたの方の
所管
ではないかもわかりませんけれ
ども
、
外務省
かもわかりませんけれ
ども
、これについてはとりあえず一体どことどういうふうにしていったらいいというふうにお
考え
なんでしょうか。
伊藤榮樹
87
○
伊藤
(榮)
政府委員
何分
条約
締結の交渉の相手方のことでございますから、どこの国ということは私
ども
として現段階で申し上げられませんけれ
ども
、たとえばヨーロッパ大陸に存在しますわが国とわりあい交流の活発な国、こういうようなものがまず
考え
られると思います。
稲葉誠一
88
○
稲葉
(誠)
委員
だから、具体的にこれは
法務省
の
所管
ではなくて
外務省
ですね。だと思いますから余り聞くのも無理かとも思いますが、いまなぜこれは
日本
と
アメリカ
との間だけしかないわけですか。 それでその
犯罪
、これは一定に
対象
が決まっているわけですか。どういうふうになっているのですか。
伊藤榮樹
89
○
伊藤
(榮)
政府委員
現在わが国が
犯罪人
引渡
条約
を結んでいる相手国は
アメリカ
合衆国一国でございます。それで三月三日に新しい
条約
の調印が行われましたが、まだ
国会
の御承認を得て批准をいたしておりませんので、現在は明治十九年に制定されました旧
条約
が施行されておるわけでございますが、これは明治のそのころの両国の
犯罪
現象を前提にいたしました罪名列挙で
引き渡し
犯罪
が制限されております。殺人、
強盗
、放火というような伝統的な
犯罪
を限って
引き渡し
対象
にしておるということでございます。したがって、今回はその枠を大きく取っ払おう、こういうことで新しい
条約
が締結されておるわけでございます。
稲葉誠一
90
○
稲葉
(誠)
委員
新しい
条約
が締結されて、それでどういうふうにいま現在なっている
状況
ですか。
伊藤榮樹
91
○
伊藤
(榮)
政府委員
現在、批准承認のために
国会
へ提出されておりまして、
衆議院
の外務
委員会
でおおむね御質疑が終了段階というふうに聞いております。
稲葉誠一
92
○
稲葉
(誠)
委員
その前の「国際的
司法共助
の強化が必要であるから、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の
整備
を検討すべきである。」こういうのがありますね。これは
法務省
だけでやれることでないかもしれませんし、非常に問題が大きいですね。だから国内法の
整備
と言ってもなかなかすぐできにくい点があるかもしれません。
法務省
だけでなくて、
外務省
その他のあれに関連するのでしょうけれ
ども
、いまあなたは、これは七の点も
法務省
関連だと言われたから聞くわけですが、これについての国内法の
整備
云々とかなんとか、いろいろな問題はどういうふうになっているのですか。
伊藤榮樹
93
○
伊藤
(榮)
政府委員
国際的
司法共助
についての国内法の
整備
の問題、いろいろなアプローチの仕方があると思いますが、その一つは、当
委員会
におきまして横山
委員
が御指摘になりました問題でございまして、民事訴訟法には外国裁判所への嘱託の
規定
があるけれ
ども
、
刑事
訴訟法にはないのは不備ではないかという御指摘がございました。確かに、
考え
てみるとそれも真剣に検討いたさなければならぬ問題点であろうと思っております。一例を挙げますとそういうことがございまして、そのこと自体は、たとえば
刑事
訴訟法の
改正
ということになりますればまさに私
ども
の
所管
ということになりますので、その範囲でお
答え
しておったわけでございます。
稲葉誠一
94
○
稲葉
(誠)
委員
それは、恐縮ですけれ
ども
全体の中の一部で、この
附帯決議
にもあるように「これに伴う国内法の
整備
を検討すべきである」とあるわけですから、いま言われたのはほんの一
部分
ではないのですか。ですから、どういうふうに
整備
するかというのは後の問題になると思いますからここでは聞きませんけれ
ども
、どういう点が問題になるのだろうか。いま言われたことだけですか、ほかにもあるのですか。
伊藤榮樹
95
○
伊藤
(榮)
政府委員
最も手っ取り早いのは、なるべく多くの国との間に
司法共助
協定といったものを結ぶことであろうと思います。これは
所管
が
外務省
になりますが、私
ども
が
最高
裁判所事務当局ともよくお打ち合わせをした上で
外務省
と協力たて推進すべきことであろうと思います。そういったいろいろな国と共助協定というようなものを結びます場合に、たとえば
アメリカ
合衆国にありますような共助
関係
の基本
規定
というようなものが要るのか要らないのか、要るとすればどんなものが望ましいのか、こういうことも将来の課題として
関係
者で詰めていかなければならぬのじゃないか、かように思っております。
稲葉誠一
96
○
稲葉
(誠)
委員
だから、いま言った点の国内法の
整備
というのは、
考え
られるのはその程度のものですか。ほかにもいろいろありますか。
伊藤榮樹
97
○
伊藤
(榮)
政府委員
検討の
過程
でいろいろ出てくるかもしれませんが、現在のところ
考え
られるのはその程度じゃないかと思っております。
稲葉誠一
98
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、いまあなたが言われたことについては、いつごろ、どういうふうな形で実現の見込みがあるというふうに理解してよろしいでしょうか。
伊藤榮樹
99
○
伊藤
(榮)
政府委員
何分検討の緒についたところでございますので、
先ほど
来申し上げております
国際犯罪対策室
を中心としまして、諸外国の
司法共助
、国際
捜査共助
の実態等を把握いたしまして、なるべくスピードを上げて
研究
をやっていきたい、こういうふうに思っております。
稲葉誠一
100
○
稲葉
(誠)
委員
これもあなたの方の直接のあれではないかもしれないのですが、逃亡
犯罪人
引渡し
条約
の締約国の拡大問題は、あなたの方でも関連して当然相談を受けると思うのですが、これは現在、どことどこが締結しておって、なお拡大の見込みというようなものはあるのですか。
伊藤榮樹
101
○
伊藤
(榮)
政府委員
お尋ねはわが国との締約国の拡大のお話だと思いますが、
所管
は
外務省
でございますが、
事柄
の性質上、
法務省
の方から言い出さなければ進行しない問題でございます。
先ほど
申し上げましたように、現在は
アメリカ
としか
条約
がございませんが、その他の国々であって、これは
日本
が一方的に申し込んでもしようがありませんので、
日本
国との間に引渡し
条約
を結びたいという意欲のある国、これは大体わかっておりますけれ
ども
、そういう国を
対象
として、
条約
交渉前の、俗な
言葉
で言う根回し的な作業をいたしたい、こう思っておるわけです。
稲葉誠一
102
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、
ハイジャック
防止に関連いたしまする三つの
条約
がありますね。これは申し上げるまでもないことですが、
東京条約
、へーグ
条約
、モントリオール
条約
、これを
日本
は各批准しているわけです。この三つの国際
条約
の未
加盟国
というのは現在どのくらいあるのか。これは
外務省
に関連するのかもしれませんが、あなたの方でわかっている範囲で結構です。
伊藤榮樹
103
○
伊藤
(榮)
政府委員
国連
加盟国
のうちの三分の一、
条約
によって出入りがあるようでありますが三分の一からあるいは四割近いものが未
加盟
であると
承知
いたしております。その未
加盟国
の主なものは中近東、アフリカ諸国である、こういうふうに
承知
しております。
稲葉誠一
104
○
稲葉
(誠)
委員
この中にこういうのがありますね。「同
条約
の
整備
、改善並びに
人質
行為
防止に関する国際
条約
の成立をめざして格段の
努力
をなすべきである。」これは参議院の
附帯決議
の三にあるわけですが、これはどういうことを
意味
しているのでしょうか。
衆議院
の方には直接のものはないようですね。
伊藤榮樹
105
○
伊藤
(榮)
政府委員
これは、西ドイツの提案によりまして現在
国連
の中に
人質
行為
の防止に関する国際
条約
の草案をつくりますアドホック
委員会
ができておりまして、これにはわが国も作業メンバーに加わって現在検討いたしておるわけでございます。その作業のことを御指摘いただいた、こういうふうに
考え
ております。
稲葉誠一
106
○
稲葉
(誠)
委員
それから、
衆議院
の
附帯決議
の七です。これはあなたの方に関連しているのか、「国際的
司法共助
の強化が必要であるから、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の
整備
を検討すべきである。」こういうふうに七に出ているわけです。これはどういうふうに対処していかれるわけですか。
伊藤榮樹
107
○
伊藤
(榮)
政府委員
これは
先ほど
申し上げましたように、国際的な
司法共助
の体制を
整備
するために、
関係
のあります各国の
司法共助
の実態あるいは法制等を調査いたしまして、それらの国々との間にできれば共助協定を結ぶというようなことをまず中心として
考え
まして、これの
関係
で相手国に
所要
の
立法
が行われておる、その相互主義的な関連においてわが国においても国内法の
整備
が必要になる、こういうような場合には当然国内法の
整備
ということも
考え
ていかなければならない。また一般的に、
先ほど
申しましたような訴訟法上こちらから向こうへ共助の嘱託をいたしますための根拠
規定
が必要かどうか、必要があればどんな
措置
をすればよいか、そういうようなことを検討していくべきであろうと思っております。
稲葉誠一
108
○
稲葉
(誠)
委員
この
附帯決議
については、いま言われましたように、一と二、それから五、七、八
——
十一はまああれですが、それが
法務省
の
関係
になっておる、こういうふうにお聞きをするわけですが、これに関連して、
ハイジャック
防止対策
というのが第一次のものとして
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
というのができておるわけですが、これで第一、第二、第三、第四、第五、第六、こういうふうにありますが、このうち
法務省
に関連する
部分
としてはどれがあるわけですか。
伊藤榮樹
109
○
伊藤
(榮)
政府委員
第一から第六までの間で
法務省
刑事局
の直接
関係
する
部分
はほとんどございません。ただ第四のところに「出入国管理令を活用してわが国の公安を害するおそれのある外国人の入国を阻止する。」というのがございまして、これがわが
法務省
の入国管理局の
所管
事項に直接関連しておる、こういう
状況
であります。
稲葉誠一
110
○
稲葉
(誠)
委員
そこで
質問
を大体もとの方に戻すわけですが、あなたの方の言うのでは、一部過激分子という
言葉
を盛んに使うわけですね、一部過激分子。それから、新東京国際空港
関係
閣僚
会議
というのが五十三年の四月四日に開かれておって「新東京国際空港の開港と安全確保
対策要綱
」というのができておるわけですが、これに関連しては、こっちの方では第三が「極左暴力集団
対策
」となっておるわけですね。「極左暴力集団の不法
行為
に対しては、」云々と、こういうふうになっておるわけですが、そこで、どういうわけであなたの方の提案と、新東京国際空港
関係
閣僚
会議
、これは法務
大臣
も入っているのかどうか知りませんけれ
ども
、これとで文字の使い方というか、それが違ってきておるわけですか。
伊藤榮樹
111
○
伊藤
(榮)
政府委員
まあ文字の使い方につきましては、そのものを書きました主管者でございませんから的確なお
答え
はいたしかねるところでございますが、私
ども
がこの
法案
の適用
対象
としての典型的なものとして
考え
ております一部過激分子と申しますのは、要するに
ハイジャック
などをやって
人質
をとって無法な
要求
をするという、そのむちゃくちゃな
行為
をする連中を言っておるわけでございます。そういう
意味
でむちゃくちゃなことをやった連中だという観点から見れば、三月二十六日の成田において見られましたような行動をした者たちも同様ということにはなるかもしれませんけれ
ども
、私
ども
はその成田の周辺でいろんなことを起こした者、即ただいま御
審議
いただいております
法案
の適用
対象
となる
行為
者とは必ずしも
考え
ておらないのでございまして、物事のとらえ方がちょっと局面が違っておるために
言葉
が違ってきておるのじゃないか、かように思います。
稲葉誠一
112
○
稲葉
(誠)
委員
そのとらえ方の側面が違うというのは、どういうふうな点が違ってこういうふうに
言葉
というか何というか、それが違ってくるわけでしょうか。
伊藤榮樹
113
○
伊藤
(榮)
政府委員
法秩序にあえて挑戦をして、自分の主義主張あるいは
目的
を貫くためには法秩序を踏みにじるということをあえてするという点については両者共通しておると思いますけれ
ども
、現在私
ども
が御
審議
いただいている
法案
の
対象
として
考え
ておりますのは、
ハイジャック等
を行って
人質
をとって、それをカタにとって無法な
要求
をするというような、非常に影響するところの大きい、また凶悪、悪質な
犯罪
を犯す者ということを念頭に置いておるわけでございますが、ただいま御指摘の成田の問題については、ああいうむちゃくちゃなことをした連中というようなとらえ方をしておられるわけでして、そういう
行為
をした者をとらえるとらえ方において差があるというふうに申し上げるよりしようがないのじゃないかと思います。
稲葉誠一
114
○
稲葉
(誠)
委員
まだよくわからないのですが、きょうはこの
法案
の
審議
じゃないからそこら辺にしておきます。 そこで、この
法案
の
提案理由
の説明を読んでみますると、いろいろなことがずっと非常に長く書いてあるわけですが、そこで一つの問題になってくるのは「一部過激分子による」云々というような書き方で始まっておるわけですね。この「一部過激分子」という書き方というか理解の仕方といいまするか、それはどういうものを指して言っているわけですか。どういう人たちというか、どういうグループというか。
伊藤榮樹
115
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず頭にありますのが
日本
赤軍でございます。したがいまして過激分子というのは、極左的な
考え
方を持っており、かつそれを行動にあらわして法秩序に挑戦をするという人々を過激分子とここでは言っておるわけでございますが、そのうちの一部、すなわち主として
日本
赤軍というものを念頭に置いて、一部過激分子による
航空機
の乗っ取り、在外公館の占拠等の不法事犯が最近一段と過激化、悪質化しておる、こういう指摘をしておるわけでございます。
稲葉誠一
116
○
稲葉
(誠)
委員
その
日本
赤軍というのはぼくらよくわからないのですが、これは具体的にどういうのを
日本
赤軍と言うのですか。
伊藤榮樹
117
○
伊藤
(榮)
政府委員
みずから
日本
赤軍と称しており、かつ一般の人たちから
日本
赤軍に属しておると認められるものを
日本
赤軍と言っておるわけでございますが、実体は、重信房子というものを中心といたします約二十名から三十名の間の者が現在ヨーロッパあるいはその周辺で行動をしておるというふうに警察
関係
等の
情報
によって認められるところでございます。 なお、これを事実上あるいは心情的に支援するグループが数百という程度の数で国内に存在するというふうに推定されるというのが警察の見方でございます。
稲葉誠一
118
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、ここに書いてありまする「一部過激分子による
航空機
の乗取り」というのは、いま言う
日本
赤軍による
航空機
の乗っ取りという
意味
に理解していいわけですか、この
提案理由
説明書に書いてあるのは。限定してよろしいのですか。
伊藤榮樹
119
○
伊藤
(榮)
政府委員
わが国の国民によって犯されました
関係
においては
日本
赤軍というふうに御理解いただいていいと思います。ただしかしながら、世界的に見ますと、バーダー・マインホフというようなのが西ドイツにございますし、中近東を中心とするゲリラ活動もありますし、国際的にはそういうものをひっくるめて
考え
るべきだろうと思っております。
稲葉誠一
120
○
稲葉
(誠)
委員
そういうものに対する法的な
対策
としては、一体いままでどういうような
法律
によってそれが
対象
とされるわけですか。
伊藤榮樹
121
○
伊藤
(榮)
政府委員
刑罰的な
対策
としては、現行
刑法
を初めといたします各種刑罰法規があるわけでございますが、例の「
よど号
」の
事件
を契機につくられました
航空機
強取
処罰法
と申しますのは、まだ
日本
赤軍が分裂する前の赤軍によって犯されたものでございますが、その当時もある程度現在の
日本
赤軍に似た
考え
方を持っておる赤軍というようなものの存在、その
行為
を念頭に置いてつくられたという
意味
において、いわば過激分子に対する
対策
の
立法
という色彩を持っておったことは否定できないと思います。
稲葉誠一
122
○
稲葉
(誠)
委員
そこで、この
提案理由
の説明を読んでまいりまするというと、この前に
航空機
強取法の
改正
を提案をして「
航空機
強取犯人による
人質
強要に係る罪を設けることなどの
措置
を定めることとしたのであります。しかしながら、これらの
措置
は、この種事犯の再発防止のための抜本的
対策
の一環として法
改正
を要する
対策
のうち、早急に取りまとめの可能なものについてなされたものでありまして、」云々ということで、今度のやつで第一と第二とこれを出しておるわけですね、これは
提案理由
の説明にあるわけですが。 そこで、私がわからないのは、今度の「第一、
人質
による強要に係る
特定
の
行為
を
処罰
する
規定
を新たに設けること、第二、
人質
による強要罰を犯した者が
人質
を殺害した場合を特に重く
処罰
することの二点を中心として本
法律案
を取りまとめ、」というのですけれ
ども
、第一と第二の点については、なぜ八十二
国会
の中の
航空機
強取法の中に入らなかったのか。それがどうもちょっとよく理解できないわけなんですね。これはどうして入らなかったのですか。
伊藤榮樹
123
○
伊藤
(榮)
政府委員
先ほど
も申し上げましたように、要するに準備が間に合わなかったわけでございます。
稲葉誠一
124
○
稲葉
(誠)
委員
それは準備が間に合わなかったからに違いないけれ
ども
、どうして準備が間に合わなかったのか。本
会議
の時間の連絡が来ましたから途中でやめますけれ
ども
、どうして準備が間に合わなかったのか。そんなに重要なことなら、十分な
対策
というものを当然練っておられたわけじゃないのですか。どこが中心で練るのですか、この
法案
は。
伊藤榮樹
125
○
伊藤
(榮)
政府委員
法務省
が鋭意検討したわけでございますが、
先ほど
もちょっと申し上げましたように、
人質強要行為
といいましても、いろんな段階がございますから、当面の
対策
として、どの段階での
人質強要行為
を
処罰
の
対象
にするか、それから既存の身代金誘拐罪の
規定
との
関係
をどう処理し、解決するかというような問題等がございまして、そのために約二カ月半を要した、こういう事情でございます。
稲葉誠一
126
○
稲葉
(誠)
委員
いま本
会議
の連絡がありまして、一時十分から本
会議
だそうですから、後で聞きますけれ
ども
、なぜそんなに二カ月半もかかったのか、そこら辺のところは、きょうじゃなくて、別の
機会
に聞きますから、ゆっくり検討しておいてください。そんなものは二カ月もかかるわけはないので、二カ月もかかったということは、どこかにひっかかるところがあったわけですよね。どこかにひっかかる点があったのか、どこかに無理したのかどうかですね。なぜ二カ月半もかかったか、そこら辺のところを詳しく今度聞きますから……。
鴨田宗一
127
○
鴨田
委員長
午後二時再開することにし、この際、暫時休憩いたします。 午後零時三十五分休憩
——
——
◇—
——
——
午後二時四分
開議
鴨田宗一
128
○
鴨田
委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。 質疑を続行いたします。
稲葉誠一
君。
稲葉誠一
129
○
稲葉
(誠)
委員
これは重要な問題になってまいりますので、この前のときに
法案
を出しておるわけですが、それと別個にまた今度
法案
を出したわけなんです。 〔
委員長
退席、山崎(武)
委員長
代理着席〕 そのときに、あれこれあれこれいろいろ
法案
をつくるのに約二カ月ぐらいかかったという説明をされたわけですが、二カ月かかったものをここで二カ月かかって説明しろというのは無理ですからそうは言いませんけれ
ども
、そうですね、一時間ぐらいちょっと説明していただきたいと思います。
伊藤榮樹
130
○
伊藤
(榮)
政府委員
ダッカ
日航機
ハイジャック事件
が起きまして、これに対処するための
立法
が必要であるということで検討したわけでありますが、
先ほど
来申し上げておりますように、
航空機
強取
処罰法
の一条二項に入りましたあの
関係
の
規定
につきましては、極端に言えば夜を日に継いでの作業の結果、第八十二臨時
国会
に間に合わせたわけでございますが、遺憾ながら、この一般的な
人質
強要罪の
規定
につきましては検討すべき問題点が多岐にわたりましたので、同
国会
に間に合わなかったわけでございます。間に合わないということになりますと、次はただいま御
審議
いただいておるこの
国会
をめどに作業を進めることになるわけでございます。そういうことになりますと、夜を日に継いでその分だけにかかわっておるわけにもまいらぬわけでございまして、今
国会
にいわゆる前広に間に合うような手順をもって鋭意検討を進めた、その結果二カ月を要してことしの一月早々にただいまの案がまとまったということでございます。いま仰せられまして振り返ってみますと、昼夜兼行でいたしておればもう少し早くできたのではないかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても今
国会
のわりあい早い
機会
に御提案できたわけでございまして、一応私
ども
はそれなりの手順を踏んで作業を進めたというふうに
考え
ております。
稲葉誠一
131
○
稲葉
(誠)
委員
私の
記憶
に間違いがなければ、これは三月の七日か八日に提案したのじゃなかったですかね。どうして
国会
の冒頭に提案できなかったのですか。
伊藤榮樹
132
○
伊藤
(榮)
政府委員
私
ども
としては比較的早い時期に
事柄
の準備をいたしておりましたが、
政府
全体といたしまして予算
関係
法案
をどうしても先行させるというような事情があったと思いますが、政党内部における御
審議
とか法制局審査とかいろいろな手続がございまして、たしか三月七日の閣議にかけていただいた、こういうふうに思っております。
稲葉誠一
133
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると
法務省
内部でこれについてまずどのような主な
議論
があったわけですか。二カ月かかったというのだからいろいろ
議論
があったと思うのです。内部の問題でいろいろあると思うので、全部を言えというわけにもまいらないが、主な
議論
としてどういう
議論
がこの
法案
についてございましたか。たとえば
航空機
強取法に
規定
するものとか、
航空機
危険法に
規定
するものとか、どっちに
規定
したらいいかという
議論
を技術的にあったと思いますが、全体としてどういう
議論
があっただろうか、これを私
ども
は非常に知りたいわけでございますので、説明を願いたいと思います。
伊藤榮樹
134
○
伊藤
(榮)
政府委員
先ほど
も御説明いたしましたように、昨年秋の
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
におきます
対策要綱
の中に、ただいま御提案申し上げておる
法案
の
関係
では二つの検討事項の指摘があったわけでございます。一つは
ハイジャック
以外の方法による
人質
犯罪
に対処するための
立法
を検討することでありいま一つは、
ハイジャック
を含めてこういったものについて死刑をもって臨む場合について検討をする、こういう二つの事項があったわけでございます。 そこで、私
ども
は、その二つの事項を念頭に置きながら、
人質
強要罪の構成要件をどういうふうに決めていくべきかということをまず
考え
始めたわけであります。 その
人質
強要罪の構成要件を定めます場合の
考え
方として、大きく分けて二通りの
考え
方があるわけであります。一つは、
人質
強要一般を
処罰
する、そういう構成要件を定める方法であります。これは
改正
刑法
草案三百七条にあるような構成要件を
考え
る
考え
方であります。 もう一つは、それとは若干観点を異にしまして、最近の過激分子によるこの種事犯の実態に対応するための限られた構成要件を
考え
る、こういう
考え
方でございます。 この二つのいずれをとるべきかということをいろいろ検討しまして、その結果、
改正
刑法
草案がとっておりますような一般的な
人質
強要罪ということになりますと、およそ
人質強要行為
を犯した者に一般的に適用される構成要件ということになりますために、刑の上限から下限に至る幅を相当
考え
なければならないというような問題、あるいはその中には
犯罪
類型が具体的には千差万別でありますから、それらに一々応ずるためには、たとえば解放減軽のような
規定
が要る場合があるのではないかという問題等があるわけでございます。 一方、最近の事態に対応することをもっぱら当面の対処策といたしまして構成要件をしぼる
考え
でまいりますと、どういう要件でしぼっていくのが最も客観的に合理的であるか、かつ、そういう重い刑に処せられては困るような
案件
が紛れ込むような構成要件では困るということで、その構成要件のしぼり方についていろいろな
考え
方を拾い上げてみまして、それを消去法により、あるいはどれかを選択するというような方法によりまして、ただいまごらんいただきますように「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」という要件でしぼる、こういうことになったわけでございます。 なお、前者の広く
人質
強要罪一般を
規定
するということにつきましては、
刑法
全面
改正
の際になお見直すべき点が若干あるのではないか。すなわち、身代金誘拐罪との
関係
でありますとか、
人質
強要罪を
刑法
典中のどこに
規定
するか。そのことは罪種というものの
考え
方にも影響されるわけでございまして、そういう観点から現在のような案に落ちついたわけでございます。 もう一つの論点の、死刑をもって臨むべき場合という点につきましては、これもけさほどちょっと御指摘がありお
答え
申し上げましたように、一部の方の中には、
ハイジャック
、
人質
強要、それだけで、人の生命に危険が及ぼうと及ぶまいと、もうすでに死刑に相当する
犯罪
ではないかという御
議論
があったことをも念頭に置きまして、慎重に検討いたしました。その結果は、これもけさほど申し上げましたように、世界的な死刑制度に対する風潮、わが国の死刑の定め方の変遷並びに将来への動向、さらには実際の裁判における死刑適用の実態、こういうものを
考え
ますし、さらに
立法
技術的に多少無理をして死刑を設ける場合を
考え
るということにいたしますと、構成要件を何重にもしぼっていって、本当にぎりぎりのケースについて死刑を科するということが可能になるというふうな
考え
方があったわけでございますが、そういう
考え
方からいきますと、場合によりますと、構成要件をぎりぎりしぼることによりまして当該
犯罪
が一種の政治犯的な色彩を呈するという結果になることも予想されたのでございます。そうなりますと、この種テロ
行為
、テロ活動をする非人道的暴力過激集団あるいは過激分子、こういうものを政治犯扱いしないで一般凶悪
犯罪人
として扱おうとする国際的風潮にも明らかに背馳することになるわけでございまして、結局ただいまごらんいただいておるような死刑の
規定
の仕方に落ち着いたわけでございます。 これらの
過程
を経てこういう案になったわけですが、ただいま申し上げましたような問題というものは、
法律
専門家と申しますか
法律
専門屋と申しますか、そういう者
ども
が集まって
議論
をいたしますと、一つの
事柄
でも一週間や十日
議論
の尽きないテーマでございます。そういうことで慎重に検討作業を繰り返した結果ごらんのような案に落ち着いた、こういう事情でございます。
稲葉誠一
135
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、
人質
による強要罪の場合は、現行
刑法
ではどういう
規定
になっておるわけですか、どこへ入るわけですか。
伊藤榮樹
136
○
伊藤
(榮)
政府委員
現行
刑法
ではこれにぴったりする構成要件がございませんので、
人質
による強要
行為
を現行
刑法
の
規定
に当てはめて分解いたしまして、逮捕監禁罪及び強要罪ということになるわけでございます。
稲葉誠一
137
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、逮捕監禁罪と強要罪との
関係
はどういう
関係
になるのですか。牽連犯か何かになるのですか。これは一所為数法という形になるのか、あるいは
併合罪
になるのか、どういうふうになるのですか。
伊藤榮樹
138
○
伊藤
(榮)
政府委員
ちょっと私の説明が不十分でありましたので訂正いたしますが、御
承知
のように、強要罪は、わが現行
刑法
におきましては親族等に対する場合だけが
対象
になっておりまして、いわゆる
人質
によって全くの第三者に強要する場合はこれに該当しませんから、その場合には逮捕監禁罪だけで処置をするということになるわけですが、いずれにしましても、強要罪が成立いたします場合には逮捕監禁罪と強要罪が
併合罪
の
関係
になると思います。
稲葉誠一
139
○
稲葉
(誠)
委員
併合罪
になるというと、法定刑はどういうふうになりますか。
伊藤榮樹
140
○
伊藤
(榮)
政府委員
逮捕監禁罪の法定刑の上限が懲役五年でありますから、これの二分の一を加えました七年六月以下、こういう処断刑になります。
稲葉誠一
141
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、その処断刑をもってしては足りないということになってきて本
法案
が出てきた、こういう理解の仕方ですか。
伊藤榮樹
142
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず、端的に申し上げますと、
人質
をとって、これを盾にして無法な
要求
をするという
行為
は、それ自体非常に憎むべき
行為
でありまして、国民的な感情からいって厳重に
処罰
されるべきであるというふうに
考え
られるわけでありますが、これに正面から対応する構成要件がないという状態は改めなければならないということが一つであります。 もう一つ、そういう正面から取り組む構成要件がないために、既存の刑罪法規で対処いたしますと、ただいま申し上げました程度の刑で処断をせざるを得ないということになるわけでございますが、翻って、たとえばクアラルンプール
事件
とかいわゆるハーグ
事件
等を想起いたしますれば、それがその程度の刑をもって臨むところの構成要件にしか該当しないということでは、十分な刑罰の効果が期待できない、こういうわけでありまして、要するに、そういった悪質な
犯罪
に対して正面から取り組む必要と、それから適当なる量の刑が盛れるようなもので対処する必要がある、この二点から第一条の罪、これを設けておるわけでございます。
稲葉誠一
143
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、前に説明がありました「
よど号
」
事件
のときはまだこの
法律
はもちろんなかったわけですから、罪名の説明はありましたけれ
ども
、それを加減や何かしていくと、どういうふうな刑になってくるわけですか。上限は幾らになってくるわけですか。
伊藤榮樹
144
○
伊藤
(榮)
政府委員
「
よど号
」
事件
の場合には、
先ほど
も申し上げましたように
強盗致傷
、
国外
移送
目的
拐取、同移送監禁、こういうことになるわけでございまして、そのうち監禁と
国外
移送
目的
拐取とは一所為数法の
関係
になると思いますが、
強盗致傷
とその余の罪とは
併合罪
の
関係
になるだろうと思います。そこで、これらの罪の中で最も重いものを求めますと、
強盗致傷
の無期または七年以上の懲役であります。したがって、
強盗致傷
の刑に
所要
の
併合罪
加重をするわけでありますが、すでにして上限が無期でありますから、無期以下で処断をする、こういうことでございまして、現に共謀犯人の一名について判決が言い渡されております。
稲葉誠一
145
○
稲葉
(誠)
委員
そうすると、そういう場合には、今度できる本法の適用は別になくてもやっていけるわけですか。無期になるわけだし、どうなんですか。特に本法を適用しなくてもいいのじゃないですか。ただ、五年以上というところに引っかかるのかな。これはどうなるの。
伊藤榮樹
146
○
伊藤
(榮)
政府委員
「
よど号
」の場合にはまずもって五人の
乗客
等にけがを負わせでおりますからそういうことになるわけですが、けがを負わせていなければ有期懲役の範囲内で処断すべきことになる。「
よど号
」の場合は、
航空機
の機体そのものを占有奪取したという
意味
において
強盗罪
を適用しましたからいいわけでありますが、たとえば大使館占拠のような場合になりますと、
強盗罪
の適用はできない、すなわち逮捕監禁だけ、こういうことになると五年以下で処断をせざるを得ない、こういうことになるわけでございます。
稲葉誠一
147
○
稲葉
(誠)
委員
きょうは、まだ別の
機会
に
質問
するので
質問
を残しておきますが、この
法案
と暴力
行為等
処罰
ニ関スル
法律
との
関係
でお聞きをしたいと思うのですが、暴力
行為
のときは
提案理由
はどういう
提案理由
でしたか。あれはいつでしたか。できたのは大正十何年でしたかな。
伊藤榮樹
148
○
伊藤
(榮)
政府委員
大正十五年に暴力
行為等
処罰
二関スル
法律
が帝国議会に提案されたときの
理由
については、ただいま持ち合わせませんので、いずれ取り寄せて御説明申し上げます。
稲葉誠一
149
○
稲葉
(誠)
委員
じゃ取り寄せて説明をしてもらいたい。それは非常に重要なんですよ。
委員長
代理は笑っていますけれ
ども
、笑われることではないので、非常に重要なことです。なぜ重要かということを説明します。ということは、これは
答え
られますか。暴力
行為等
処罰
二関スル
法律
、これをいろいろ組み合わせしますと
——
数人共同して何とかしたとか威嚇したとかいろいろな組み合わせをしますと、一体構成要件として幾つぐらいできてくるのですか。これはむずかしいですよ。
伊藤榮樹
150
○
伊藤
(榮)
政府委員
とっさにお
答え
をして間違うといけませんから、よく計算をした上でお
答え
します。
稲葉誠一
151
○
稲葉
(誠)
委員
じゃその計算ができた上で今度の
法案
との
関係
その他についてお尋ねをしたいと思いますので、区切りがいいから、きょうはこの程度にして、次回に続行いたします。
大臣
に何も聞かないのは失礼ですから、
大臣
にもお聞きしたいと思いますが、
——
大臣
でなくて
刑事局長
にこれだけ聞いておきましょう。この
法案
がなかったら、この
法案
に当たるような
行為
は現行法ではどういうふうになりますか。
伊藤榮樹
152
○
伊藤
(榮)
政府委員
第一条の罪につきましては、典型的な
事例
を
考え
ると逮捕監禁罪だけであります。それから、それに関連して凶器を示しますから、銃刀法に該当する場合がある程度あると思います。それから、
言葉
が悪くて申しわけありませんが、バス
ジャック
とかいうようなことになりますと、バスそのものを乗っ取る
関係
上、
強盗罪
に当たる場合もあろうかと思います。 第二条の罪につきましては、
ハイジャック
処罰法
第一条第一項の
航空機
強取罪、それと逮捕監禁、以下銃刀法違反、多くの場合銃刀法違反、こういうようなことになろうかと思います。
稲葉誠一
153
○
稲葉
(誠)
委員
これで終わりますが、いまの点をもう少し詳しくこの次までに準備しておいてください。この
法案
がなかった場合に、この
法案
に該当する
行為
がどういう罪になるかということはなかなかむずかしいですよ。そう簡単に言えるものではない。いま言ったようなことであったとしても、いろいろな場合がありますし、その場合の法定刑、それに
併合罪
加重がつくと刑がずっと上がってきまずからね。減軽の場合はありませんけれ
ども
、そういう場合もありますから、そういう点についてもこの次にお聞きをしたいというふうに思います。 それから、まだいっぱいあるのですが、一体刑に威嚇力というものがあるのかないのかという問題ですね。抑止力というか威嚇力というか、こういうふうなもの。それから確信犯というものについて、これはフェリが言い出したんでしょう。確信犯というのは一体何か。この確信犯というものに対して、こういう
法律
をつくってどれだけ価値があるのか。価値というか、実効力があるかという点ですね。この前、だれか
質問
していましたけれ
ども
、いろいろな点、その他の問題を聞きます。それから、
刑法
二百四十条、あれは結合犯だと言われておりますが、あれと第三条との
関係
、いろいろな問題がたくさんあると思うのですよ。これはこの次に
大臣
に残しておきます。
山崎武三郎
154
○山崎(武)
委員長
代理 長谷雄君。
長谷雄幸久
155
○長谷雄
委員
ただいま議題となっております
人質
法案
に関連してお尋ねをしたいと思います。 今回この
法案
が内閣から出されておりますが、最近の国内法だけを見てみましても、
昭和
四十五年のいわゆる「
よど号
」
事件
をきっかけとして
航空機
強取法が制定されております。そしてまた
昭和
四十八年のリビア・ベンガジ空港における
日航機
爆破
事件
をきっかけとして
航空危険法
が制定されております。そしてまた、昨年の
日航機
ハイジャック事件
を契機として、
航空機
強取法等の一部
改正
の
法律
ができたわけでございます。 このように、
事件
が起きるたびに
立法
措置
がなされる、その後また新たな
事件
が発生をする、その後さらに法
改正
、
立法
措置
がなされる、こういうぐあいにめぐりめぐってきているのが実情ではないかと思います。今回の
人質
法案
も含めて、この辺でこうした非人道的な
犯罪
の再発を防止するための抜本的な
対策
を立てる必要がぜひともある、こう
考え
ます。 こうした
事件
は多数のいわれない
人質
の生命を危険にさらし、不法な
要求
をするものでありまして、法と秩序を無視し、国民共通の基盤である民主主義体制に対する敵対
行為
として断じて許すことはできない、こう
考え
るわけでございます。
立法
措置
ももとより大切ではありますけれ
ども
、何よりも現行法の執行についての行政の確固とした姿勢こそ重要ではないかと、こう
考え
ます。この点につきまして、去る三月三十日、
衆議院
の本
会議
におきまして私は
代表
質問
に立ち総理の所見を伺っておりますが、ここで改めて法務
大臣
の所見をお伺いしたいと思います。
瀬戸山三男
156
○
瀬戸山国務大臣
おっしゃるように、特に
航空機
の
ハイジャック等
について順次対応することとして刑罰等を制定しておるわけでございます。 最近このような悪質ないわゆる凶暴
犯罪
は、いまおっしゃるように、まさに、特にわが国の憲法下における民主主義体制といいますか、法治国家に対する大きな挑戦と言っていいくらいでありますから、これは断じて国民の認容するところでない、そういう
考え
方から対応いたしておるわけでございまして、抜本的というお話でございますが、逐次かようなことをいたしましたのは、情勢の変化といいますか、時勢の変化によって新しい
犯罪
類型が出てくる、これに対応していくということでございまして、あらかじめあらゆる場合を想定して法を準備するということは、実際上なかなか困難でありますし、また、かえって法に対する国民の理解を求めにくい、こういう点もあろうかと思います。しかし、たび重なることでありますから、これはあくまでもいま申し上げましたように、許すべからざる
行為
である、こういう
考え
方からわれわれは対応しよう、かように
考え
ておるわけでございます。
長谷雄幸久
157
○長谷雄
委員
こうした
事件
の発生原因につきましては、世間ではいろいろ言われております。そして、最近のこの種事犯は多発化の傾向にあるように思われます。 そこで、この原因をどのように法務当局は見ておられるか、お尋ねをしたいと思います。
伊藤榮樹
158
○
伊藤
(榮)
政府委員
法務当局の見方ということでございますのでお
答え
申し上げますが、もとより私
ども
役人という狭い視野で見ておりますから、あるいはもっと大所高所に立った御見解もあろうと思いますが、一応述べさせていただきますと、いろいろな原因があろうと思いますけれ
ども
、やはり最近、特に戦後におきますところの価値観の多様化、そういう現象の基盤の上に、何といいますか、国民的な目標というものが定かでないというような
状況
、こういうものを背景といたしまして、自分の主張を貫くためには法秩序というものを無視しても実現しようという風潮が社会の中に次第次第に浸透してきたというようなことがバックグラウンドとしてあるように思われてならないのでございます。特に
過激派
によるこの種行動を見てまいりますと、
昭和
三十年代の前半ごろから、国際共産主義運動の混乱というものに伴いまして、わが国におきますいわゆる新左翼と言われますものを初めとする過激な勢力が次々と出てまいりまして、以来激しい離合集散を繰り返す、組織自体が未熟でありますために離合集散を繰り返していく。そうしますと、それぞれ一つの派をなしましたそれらの過激勢力が相互に相拮抗して、みずからの存在意義を喧伝しようというようなことから争って過激な行動に出る、それが次第次第に競争のようにエスカレートをしてまいりまして今日の事態になってまいっておる。特に、その中の一部におきましては、世界的なゲリラ活動を是認するような
考え
の者と結びついたことによりまして、
日本
赤軍等のような特に過激な行動に出ておる、こういうふうにも思いますし、また一方、自己顕示欲の一つのあらわれかとも思いますけれ
ども
、それぞれの組織相互間の相克によりまして、陰惨な内ゲバ等の
事件
が多発しておる、こういうようなことではなかろうかと思っております。
長谷雄幸久
159
○長谷雄
委員
いまの御説明の中に、ゲリラ活動を是認する
考え
が一部にある、こういう御指摘がございました。私もそのとおりだと思いますが、この
事件
の防止のためには、こうした法的側面からの
対策
もきわめて重要でありますけれ
ども
、それと並んで、場合によってはそれ以上重要なものが、いわゆる国民に広く理解を求め、協力を得るということでなければならないと思っております。特に悪質なこうした
犯罪
であり、これは
先ほど
も申し上げましたように、法と秩序を破壊し、民主主義体制に対する挑戦である、こういうことから、これに対しては断固とした態度をとっていかなければならない。国民の中に一部迎合的な層もあるように思われますので、そこで特に、この問題を
所管
をしておられる法務当局におきまして、国民向けの広報活動について、今後どのような方向でなさるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
伊藤榮樹
160
○
伊藤
(榮)
政府委員
一般的な防犯的な
意味
におきます国民に対する啓蒙活動というのは、内閣、総理府なりあるいは警察御当局の御
所管
だろうと思いますが、私
ども
法務、検察の立場におきましては、具体的な
事件
の処理及びその裁判の場におきまして、国民の前に
過激派
の過激分子の実態を赤裸々にさらけ出すことによりまして、それをマスコミを通じて広く国民に知っていただくという
努力
を今後ともなお一層なすべきものだと思っております。 ことに、いつも問題になるわけでありますが、こういう過激な勢力に対して、心情的あるいは何らかの功利的な
理由
によって支援をし、資金援助をするというような人々がいることは否定できないところでありまして、そういった人々に対してこそ、特にこういったPRが必要であろう、こういうふうに思っておりますので、ただいま申し上げましたような場を通じて、今後、国民への認識の浸透に努めてまいりたいと思っております。
長谷雄幸久
161
○長谷雄
委員
さきの成田
事件
に関連してお尋ねをしたいと思いますが、この成田
事件
に関与した
過激派
の人たちがこうした
過激派
の運動に入るに至った
過程
について、法務当局の方で何か御
研究
なさったものがあれば、その
研究
成果をお伺いしたいわけでございます。 私もちょっとある大学の先生に伺った話でありますが、中にはきわめて善良な学生もおるけれ
ども
、その善良な学生が、当初学内の自治活動、小さな運動にしか入っていなかった、それがだんだんエスカレートをして大衆運動に関与するようになった、そして逮捕を数回重ねているうちに、こうした
過激派
運動に進んで参加し、場合によっては首魁者的な立場で活動するようになった、こういうような話も聞いたことがありますけれ
ども
、その点についてはどのように
考え
ておられましょうか。
伊藤榮樹
162
○
伊藤
(榮)
政府委員
そういった観点につきましては、警察御当局の方がより的確な御認識をお持ちかと思いますが、私
ども
が
事件
を通じて知っております限りにおきましては、ちょうど現在まで、この一週間ぐらいの間が各大学の入学式シーズンでございましたが、
日本
武道館などで入学式をやっております。見ますと、周りにヘルメットをかぶった諸君がいっぱいおりまして、新入生の諸君に追随いたしましてビラを渡す等の
行為
をやっておるのを目撃することができるわけでございますが、やはり大学新入早々の時期に活動家からいわゆるオルグをされると申しますか、されて入ってみる。そうこうするうちにデモ等に参加を慫慂されて参加する。ずるずると、いま御指摘のありますように、はまり込むという例が多いように私
ども
見ております。特に、大学の学部によりましては、学生自治会そのものがいわゆる新左翼の諸君の支配下にある場合がございまして、そういう場合には、学生自治会の資金そのものがそういう人たちの手に握られておるということもありまして、激しい受験勉強を通り越してほっとして、まだ思慮の定まっていない新入生諸君がオルグをされるということが比較的多いというふうに聞いております。
長谷雄幸久
163
○長谷雄
委員
この成田
事件
での被逮捕者の数について百六十六名と伺っておりますが、その被逮捕者の内訳でありますが、この中に、今回が初めてである人、二犯、三犯と段階的にあろうと思いますが、こうした各犯別の分類をした場合に、今回の成田
事件
に関与した動機ないし今回の
事件
における運動の役割りの違いが見られるでありましょうか。その点はいかがでしょうか。
伊藤榮樹
164
○
伊藤
(榮)
政府委員
御指摘のように、去る三月二十六日前後の成田
事件
によりまして百六十六名が逮捕され、そのうち重傷者一名が釈放されまして、百六十五名が身柄のまま検察庁へ送致になり、現在、全員勾留して取り調べ中でございます。 今日までのところ、ほとんどの者が完全黙秘でございますために、その身上等が必ずしも判明いたしません。ただいま判明しておるのが、九十人足らずの者がその身上が判明しておるように報告を受けております。大変大ざっぱな話で恐縮でございますが、その身上が判明しておるうちの半分足らずぐらいが検挙歴のある者である。かつ、そのうちに、現在確認したところでは三名、過去の成田
事件
で起訴されて保釈中の者がいる、こういうことでございます。 なお、それらの被逮捕者がどういう動機、縁由で運動に参加したか、あるいは参加の程度、参加といいますか意識の程度がどうかというような点は、ただいま申し上げますように、ほとんど全員が完全黙秘でございますので、いまだそこを究明するに至っておりませんが、検察も警察も全力を挙げていま取り調べにかかっておりますので、何とかその辺を知る手がかりを得たい、こういうふうに思ってやっておる次第であります。
長谷雄幸久
165
○長谷雄
委員
前科のある人も関与していたということでありますが、そういう
過激派
活動の役割りにも違いがあるとすれば、その違いに基づく
対策
というものは当然なされてしかるべきではないかと思うわけです。特に身柄を預かっている場合について、特に既決の囚人である場合については非常に矯正
措置
がとりやすいのではないかと思うのです。 そこで、お伺いをしたいわけですが、こうした
過激派
事件
の関与者が受刑者である場合、その受刑者と一般
事件
の受刑者との比較において矯正上何らかの違いが見られるかどうか。たとえば接見交通について違いがあるかどうか。あるいは、独房である場合は別として、相部屋である場合について何らかの配慮があるのか。その他、食事だとか運動時間とか、あるいは矯正の具体的教育
内容
について何らかの違いがあるのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
石原一彦
166
○石原(一)
政府委員
法規面の違いというのは、
過激派
であると一般の
犯罪人
であるとの間に変わりはございません。 ただ
過激派
の場合で、特に受刑者についてでございますので申し上げますと、
過激派
の物の
考え
方というのは、対監獄闘争がありまして、施設の秩序を紊乱しようとする傾向がございます。ただ現在入っております者について見ますと、必ずしも直接的にそうした行動を起こす者は少ないのであります。そうした行動に出ないというのは、いわば仮面をかぶっているのかあるいは真から改善更生の道に入ろうとしているのか、この点は必ずしも明確ではございません。
過激派
の施設収容の
状況
を見ておりますと、未決時代には相当騒ぐ、しかし既決になりましてからは必ずしもそうではないというふうに見られます。それが果たしていわゆる規範意識に目覚めて罪悪感を持つに至ったものであるかどうか、この点はさらに調査等を必要とするのでございますが、何分にも内心の意思に関するものでございますので、実際上はわからない点があるというふうに言っていいだろうと思います。 食事、運動等、生活の基本条件に関する面につきましては全然変わりはございません。しかしながら、御指摘のようにたとえば接見交通、面会等におきましては、そうしたものを守る会等が結成され、またそうした
意味
でのパンフレットの差し入れ等がございますので、その
内容
についての審査あるいは面会時における注意は怠りなくいたしております。 なお、雑居房に入っている場合でございますが、これはもとより同系統の者を一緒に入れることはいたしません。他の派の者が入るということでございますが、何分にも現在は数が少なく、各刑務所に分散させておりますので、同じ房に
過激派
同士が入っているというのはまだございません。 それから工場でございますが、やはり危険な物のある工場に配置することは非常に危険でございますのでこれは避けております。たとえば、内ゲバその他によって鉄棒を振り回したというときに、鉄の器具のある工場に配置することはとてもむずかしかろうということでございます。一般的には、知能程度が高い
関係
から計算二等に使っている、あるいは印刷の方に使っているという場合が多いわけでございます。いずれにいたしましても、たとえばダッカ
事件
における受刑者で所内成績は必ずしも悪くなかったのでございますけれ
ども
、
国外
に出るというときには、自分は革命家である、したがってお呼びがあった以上は行くのだというような例もございますので、こうした者の動静につきましては十分な注意をいたしたいと思っております。 最後に教育の点についてございましたが、この点は、やはり彼らの物の
考え
方を少しでも変えていかなければならないというときには、彼ら自身が読むような本以外の本も読ませなければなりません。したがって、カウンセリングあるいは読書指導というものを通じまして、一般の平均的な市民社会の者が読む本をも読ませるように勧めるという指導を行っております。
長谷雄幸久
167
○長谷雄
委員
成田
事件
の被逮捕者とダッカ空港等いわゆる
ハイジャック事件
の被逮捕者、これは逮捕者がいませんけれ
ども
、こういうことを実行した者、つまり
日本
赤軍と
過激派
との類似性の問題についてでありますけれ
ども
、世間一般では非常にわかりにくい。いろいろなセクトに分かれておって、どれがどうなのか、どのような分派を起こして今日のそういうグループがあるのか非常にわかりにくい。そこで一般世間では、成田等の
過激派
の
事件
に関与した人たちがいわゆる
日本
赤軍等の潜在的な予備軍ではないか、こういう見方もあるように聞いております。この点についてどのように見るべきか、全く同質なのか、それとも異質なのか、異質としても、それが将来こうした
過激派
運動をやっていくにつれて彼らが質的に転化して
日本
赤軍のようなそういうグループに入っていく可能性があるのかどうか、その辺の見方についてお尋ねをします。
福井与明
168
○福井説明員
日本
赤軍は共産同赤軍派の理論的な流れをくんでおります。しかもリーダーの重信房子はかつて赤軍派の中央
委員
の一人でございました。しかしながら四十六年の十一月ごろに両者は訣別をしておりますので、厳密に申し上げますと直接の組織的なつながりは国内の極左と
日本
赤軍はございません。 さっき申し上げました共産同赤軍派、これはその後幾つかに分かれておりますが、その赤軍派のプロ革派と称するのは今回の三月二十六日の成田での集会デモにも参加しておるというふうに私たちは理解しておりますが、ただ昨年の九・二八の
事件
の際に、京都大学構内で、一九八〇行動
委員会
といった名前あるいはただいま申し上げました共産同赤軍派のプロ革派の名前で、
日本
赤軍の犯行に同調すると申しますか、そういう
趣旨
の立て看等が出ておりますから、心情的にはある面で通じ合うものがあると申しますか、しかも行動をとってみましても、両者とも暴力をもってみずからの主張を貫こうとするわけでございますから、そういう行動の暴力性といった点では確かに通じ合うものがある、こういうふうに見ております。
長谷雄幸久
169
○長谷雄
委員
それでは、昨年の
ハイジャック事件
が起きた後、
政府
の中で
ハイジャック等
非
人道的暴力防止対策本部
が設置されておりますが、設置されて以来すでに六カ月を経過いたしておりますので、その
対策本部
の活動
状況
についてお伺いしたいと思っております。
対策本部
及び
幹事会
がこれまで何回となく開かれておると伺っておりますが、その具体的な成果を伺いたいのであります。まず項目の第一が「
日本
赤軍
対策
」となっておりますので、この
日本
赤軍
対策
について「
日本
赤軍に対する
情報
収集および取締りを強化する。このため早急に
所要
の専従組織を発足させる。」そして二番目に「
国際手配
に関し、ICPOを積極的に活用する。」そして「相互主義の立場から必要な法的
整備
の方策について検討する。」こう書かれているわけでございますが、これについて、具体的な成果があればお示しを願いたいと思います。
福井与明
170
○福井説明員 まず
日本
赤軍に対する専従組織の問題でございますが、昨年の十二月に警察庁に
日本
赤軍を専門に担当いたします調査官以下の組織を設けて、現在すでに発足しております。新年度から予算が認められましたので、さらにまたこれを充実していくことになるわけでございます。それから、警視庁初め大阪、京都等主要府県に
日本
赤軍の国内の支援勢力の実態を解明するための陣容を持っておりますが、これをやはり昨年十二月の時点で強化をしております。そこで、
日本
赤軍の国内の支援組織の実態解明と海外における
日本
赤軍の動向把握、これにつきましては
関係
諸国との
情報
交換なり
捜査共助
という形で現在進めておるわけでございます。 それから、ICPO制度等の活用について御
質問
でございますが、これについても外交ルートを通じて、あるいはICPOの組織を活用しての
情報
活動なり
捜査
活動面での強化と申しますか、そういう点にも配意をしております。その結果、九・二八
事件
につきまして、実行犯のうち氏名の判明いたしました四人、及び釈放犯の六人について
国際手配
をしておりますし、また外交ルートを通じまして、ことしの一月に
関係
国に対して
日本
赤軍
関係
者の手配書と申しますか、そういうものを配布して、
日本
赤軍の海外における実態解明について
努力
をしておるわけでございます。
長谷雄幸久
171
○長谷雄
委員
次に、第二の
国際協力
体制の強化についてお尋ねをします。 さきの八十二
国会
において、
航空機
強取等
防止対策
を強化するための
関係法律
の一部を
改正
する
法律案
が
審議
された際に、私は五十二年十一月九日、当
委員会
で質疑をしました。そのときに、その日現在の
国連
加盟
数が百四十九カ国である、ところがその
ハイジャック等
防止関連三
条約
のいずれにも
加盟
していない国が五十四カ国ある、こういう御報告を受けました。これらの国に対して
外務省
の
国連
局長は次のように述べておられました。国際機関の場を通じてこの
条約
への
加盟
を呼びかけることは十分にできるし、今後ともやっていく、このような御決意を述べておられたのですが、その後この御決意がどの程度実現したのかをお尋ねしたいと思います。
木島輝夫
172
○木島説明員 お
答え
申し上げます。 ただいまの昨年の十一月九日当
委員会
における先生の御
質問
がございました以降の動きでございますが、その後、衆参両院におきまして
附帯決議
等もございまして、
政府
としましては
国際協力
の面につきまして鋭意
努力
をいたしておるわけでございます。 若干敷征いたして申し上げますと、まず
国連決議
成立とともに
国際民間航空機関
、ICAOでございますが、その緊急
理事
会の開催を求めました。同
会議
において、
ハイジャック
防止関連三
条約
への
加盟
を呼びかけ、さらに引き続いて開催されました通常
理事
会におきまして、わが国は三
条約
加盟
促進を盛り込んだ決議案を西独とともに共同提案をいたしました。同決議案は十二月二日の
理事
会で採択されております。右決議に基づきまして、ICAOの事務局長は、未
加盟国
政府
に対しまして
加盟
を勧奨する公式書簡を送っておりますので、その調査結果が間もなく判明することではないかと思っておるわけでございます。 さらにわが国は、ICAO
理事
会の
下部機関
でございます
不法行為防止委員会
、わが国もそのメンバーになっておるわけでございますが、その場におきまして、各国による
航空
安全
対策
の遵守の確保を
目的
とする国際民間
航空
条約
、いわゆる
シカゴ条約
の
付属書
第十七というものがございまして、これが民間
航空
の安全を細かく
規定
しているものでございますが、その
付属書
の十七の改定と申しますか、その充実のために具体的な提案をしておるわけでございます。 さらにわが国は、
ハイジャック
防止関連三
条約
未
加盟国
との新規
航空
協定の締結もしくはすでにございます協定の改定という場を通じまして、未
加盟国
の
加盟
促進を図るという政策をとっておりますが、今日まで行いました
航空
交渉はすでに
加盟国
であるところが相手だったものでございますので、いままで未
加盟国
に二国間の
航空
交渉等を通じて働きかける場がございませんでした。今後そういう場がございますれば、鋭意その場を利用いたしまして
加盟
の促進を図りたいと
考え
ております。 その結果、昨年十一月九日に申し上げまして以降、現在までの三
条約
の
加盟国
数を申し上げますと、いわゆる
東京条約
が八十八カ国、これは昨年の時点と変わっておりません。ハーグ
条約
が八十三カ国でございます。モントリオール
条約
が八十二カ国、これが今年三月末の数字でございます。
長谷雄幸久
173
○長谷雄
委員
さらに、
国際協力
体制につきましては、国と国との友好
関係
の充実とあわせて民間外交もきわめて重要な柱であることは言うまでもないと思います。
外務省
におきましては経済協力局の
所管
で海外経済協力基金があるということを伺っておりますが、さらに文化事業
本部
というのがあって、そこで国際交流基金を管理しているということを伺っております。その出資金あるいは運用益についてどの程度の規模を持っておられるのか。その中で特にそうしたものの活動
内容
、それは特に中近東諸国、いわゆる政情不安定の国と申しますか急進国と申しますか、そういう国に使われている予算というものはどのような予定になっているのかをお尋ねします。
中村泰三
174
○中村説明員
外務省
の主管しておりますのは、
国際協力
事業団という技術協力を取り扱っている事業団がございます。それとももう一つ基金というのがございますが、これは経済企画庁の主管でございます。 お尋ねの件につきまして、まず借款で海外経済協力基金の
昭和
五十三年度の予算規模は二千八百二十億円でございます。それから
外務省
が専管しております
国際協力
事業団、これの特に技術協力分野での事業規模は約二百九十七億円でございます。そういうことで、
昭和
五十三年度の
政府
開発援助、つまり借款あるいは国際機関に対する出資、拠出、それと二国間の贈与、技術協力、こういうものをすべて含めました
政府
開発援助事業予算規模は約六千三百五十億円でございます。 それから、わが国の
政府
開発援助の中近東に対する支出の割合でございますが、これはあらかじめ幾らを中近東に振り向けるということはいたしておりませんで、開発途上国からの援助要請に応じまして、しかるべき
案件
について技術協力あるいは経済協力をしているというのが実情でございます。ただ実績で申し上げますれば、
昭和
五十一年度におきましては、ドルタームでございますが、
政府
開発援助は中近東諸国に対して五千九百万ドルという金が流れておりまして、
政府
開発援助の大体七・八%程度が中近東に流れているという実情でございます。
長谷雄幸久
175
○長谷雄
委員
法務省
にお尋ねをします。 これもやはり前回十一月九日でございましたか、この
法務委員会
の質疑の中で
刑事局長
の御答弁があったと思いますが、アジ研、アジア極東
犯罪
防止
研究
所というのがあって、そこから若手の優秀な検察官を海外に派遣をして
研究
に従事させる、こういうお話がございました。こうした活動というものは非常に重要なことであるので今後も鋭意進めていかなければならない、こう
考え
ております。特にわが国の国情を向こうに伝えるという
意味
で、中近東諸国に対するこうしたアジ研あるいはこれと類似のものがもしあれば、どのようなものになっているのかをお尋ねしたいと思います。
伊藤榮樹
176
○
伊藤
(榮)
政府委員
アジア極東
犯罪
防止及び
犯罪
者の処遇に関する研修所、俗にアジ研と申しておりますが、過去十五年間の実績を積み重ねてきておるわけでございます。ここでいまやっておりますことは、主としてアジアを中心とする各国、ときにアフリカあるいは中近東からも招いておりますが、こういう各国の
政府
職員に対しまして、
犯罪
の防止あるいは
犯罪
者の処遇の分野でいろいろな研修を行っております。十五年間でその総数が一千五百名に及んでおりまして、それらの人々が、ただいま申し上げました地域、各国の
犯罪
防止あるいは
犯罪
者処遇の職場における枢要な地位に次第についてきております。このアジ研の教官をしております
日本
人である職員が毎年それらの地域を回るわけでございますが、そういたしますと、そういう人たちがこぞって集まって同窓会をやってくれるというような
状況
でございまして、ここで研修しましたことの効果もさることながら、それらの地域に有力な
日本
に対する理解者を得ておるという点におきましては多大の成果が上がっておると思います。 研修の
内容
がいろいろな分野にわたっておりますけれ
ども
、たとえば一昨年秋に行いました三カ月研修におきましては、インドを初めとする十六カ国の
政府
職員合計二十三名が参加しまして、
ハイジャック
など
人質
強要
事件
その他悪質暴力事犯の防止、
処罰
あるいは犯人の処遇、これらの
関係
の
情報
交換等について活発な討議を行ったという実績もございまして、アジ研の活動はじみではありますが、そういう
意味
で、あらゆる
意味
で非常な成果を上げておるというふうに私
ども
は見ておりまして、そのことは
国連
自体によっても高く評価されておるようでございます。
長谷雄幸久
177
○長谷雄
委員
予算のことを伺ったので、ここで予算のことを一般に伺いたいと思います。 この議題となっております
人質
法案
はいわゆる予算を伴う
法案
ではないわけでございますが、しかし、これが実効を伴うためにはかなりの予算を実際必要とするのではないか、こう思っております。これもさきの十一月九日の質疑の中で私申し上げて、その中で
外務省
の場合、御答弁がございまして、在外公館警備強化
対策
費が五千八百四十二万九千円、そして外交官保護
対策
費が約三千万円、それから運輸省の方では空港警備
関係
予算として約十億、こういうようなお話がございました。 そこで、この
人質
法案
を実際
法律
として成立させて、将来こうした
事件
の再発を防止するためには相当な予算を必要とするのではないか、こう思うわけでございますが、
法務省
関係
の五十三年度歳出予算を見ますと、それが具体的にどこの項目に当たるのか余り明確でないように思います。増員として、
国際犯罪対策室
の
新設
等ということで事務官四名の増員を書いてあるくらいで、非常にわかりにくいのでございますが、この予算
関係
はどのようになっているのでございましょうか。
伊藤榮樹
178
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず、人員の点と経費の点に分けて御説明申し上げますと、
国際犯罪
対策
関係
で増員がございましたのが、法務本省の職員増員四名のうちの三名がその分でございます。室長自体はすでに存在いたします
刑事局
参事官のうちから一名をこれに充てることといたしまして、なお従来から小さな係としてございました国際係、これもこれに統合いたしまして、小さい数でお恥ずかしいのですが、当面六人で発足をさせていただいております。そのうちの三人が純増でございます。 それから、人員に関連いたしまして組織、機構といたしましては、ただいま申し上げます
国際犯罪対策室
を
刑事局
総務課に置くということが認められましたほかに、
東京地方検察庁
刑事
部に
国際資料課
の
新設
が認められて、それぞれ
課長
、係長等の増設が認められております。 それから、経費の
関係
でございますが、これは御
承知
かと思いますが、具体的
事件
が生じましたときに対応します経費は検察費ということで、それこそ
贈収賄
の
事件
から窃盗、交通違反に至るまで、いわばどんぶり勘定と言っては
言葉
が悪うございますが、一括して検察費の中に入っておりますから、それを機能的有効に活用して対処するということになります。 そこで、もう一つの観点から
国際犯罪
処理体制を確立いたしますための特別な経費というものを予算書からピックアップしてみますと、法務本省
刑事局
の経費の中で新規に約六百五十万円が認められております。これは
国際犯罪
に関します各
資料
の収集経費でございますとか、諸般の調査活動をする経費あるいは外国へ調査に行く経費等でございます。それから、検察庁におきましてこれに見合う金額といたしましては約二千六百万円が認められておる、こういうことでございますが、何分予算書の細目に隠れてしまっておりますのでおわかりにくかったと思います。
長谷雄幸久
179
○長谷雄
委員
いま御説明をいただきましたが、こうした予算
措置
で果してこうした
事件
の再発が防止できるのかということが国民こぞっての心配ではないかと思うのです。それで、予算には当然限りがあるわけでございますので、この予算の中で鋭意
努力
されて、
事件
の再発をぜひとも防いでいただきたい、このように切望をいたしておきます。 次に、
人質
法案
の条文について若干お尋ねをしたいと思います。この条文につきましては、すでにわが党の飯田
委員
が
質問
をいたしておりますので、これと重複しない範囲で申し上げたいと思います。 初めに、
人質
犯罪
の保護法益についての理解でございますが、この保護法益については、
人質
とされる被逮捕者等の保護とあわせて、不法な
要求
を強いられておる第三者の自由というものが保護法益と
考え
られると思うのですが、どちらに主たる法益を置いておるのか、そしてまた、この一条を見ますと結合犯的
犯罪
類型でございますので、基本的構成要件についてはどのような理解をしておられるのか、お尋ねします。
伊藤榮樹
180
○
伊藤
(榮)
政府委員
人質
による強要罪の構成要件、ごらんのとおりでございまして、
刑法
典で申しますと強要罪の
特別類型
となっておるわけでございます。したがいまして、まず第一義的には、無法な
要求
を受ける人の意思の自由、これがまず第一の保護法益になります。理論的には、第二に
人質
にされておる人の生命身体の自由というものが保護法益になってまいります。なお、例外的な問題といたしまして、この「第三者」というものの中には、個人のみならず法人あるいは法人格のない社団あるいは国家それ自体も含まれると
考え
られますので、仮に第三者が国家でありました場合には、国家の意思決定の自由というものが保護法益になりますから、その場合には国家的な保護法益の問題になってくる場合も時としてあろうかと思います。 なお、この第一条の書き方が結合犯的な書き方であるという御指摘でございますが、結合犯とか身分犯とかという言い方は、必ずしもはっきりしたそういう
言葉
の定義があるわけではございませんので、ややあいまいなお話になるかもしれませんけれ
ども
、ごらんのように「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者が」とこうなっておりますので、一種の身分犯的な書き方をさせていただいておるわけでございます。したがいまして、
人質
をとって不法な
要求
をする者が「二人以上共同して、かつ、凶器を示して人を逮捕又は監禁した者」であるということがいわば主観的要件である、こういう構成にさせていただいておるわけであります。
長谷雄幸久
181
○長谷雄
委員
この構成要件、一条を見ますと逮捕監禁のことが書いてありますが、御
承知
のように、逮捕監禁については、行動の自由を持たない嬰児等に対しては逮捕監禁罪が成立しないという見解がございます。この見解によりますと、こういう人たちを
人質
にする場合には第一条の構成要件には当たらないのではないか。そしてまた、欺罔を手段とする誘拐のように、逮捕監禁を伴わない
人質
事犯ではこの一条に当たらないということにならざるを得ないのではないかと思うのです。そこで、こうした条文の書き方では、せっかく
人質
犯罪
を新たに
立法
しても、所期の
目的
を達しない場合が出てくるのではないか。つまり漏れる場合があるのではないかということで、私はこれについて、
人質
をとる
行為
体系のすべてをとらえるためには、この第一条で書いてある「逮捕又は監禁した者が」という文言は削るべきが適当ではないか、こう
考え
ておりますが、いかがでしょうか。
伊藤榮樹
182
○
伊藤
(榮)
政府委員
ただいま幼児とかそういう者を、どういいますか押さえ込む、そういう
行為
は監禁に当たらないのではないかということを前提としてのお尋ねでございますが、現在判例のとっております態度は、意思能力がなくても監禁罪の
対象
たり得るということがおおむね確立されておると思います。そこで、そういうことを前提にいたしますと「人を逮捕又は監禁した」という
言葉
で十分であると思います。また、観点を変えまして、「人を略取、誘拐した者」というのが要らないか、念のため入れておく必要がないかという点の御指摘もあり得ると思うのでございますが、およそ二人以上の集団で凶器を示してやるということになりますと、もうかどわかしというようなものではなくて、逮捕監禁ということになることは火を見るよりも明らかでありまして、そういうふうに評価されるべき
行為
でございますので、この書き方でこういう類型の
行為
はすべて対処できる、こういうふうに
考え
ております。
長谷雄幸久
183
○長谷雄
委員
この一条を見ますと「
要求
したときは」と、こういう構成要件になっておりますので、
要求
したことで足りるわけでございますが、こうしますと、
要求
の意思表示が相手方に到達することを要する、つまり到達主義の原則は当然にこの場合もとられなければならない。そうしますと、たとえば
ハイジャック
の場合、管制塔の機械の故障などによってたまたま
ハイ
ジャッカーとの交信ができなかった、しかし犯人側としては
要求
している、しかしその
要求
の意思表示はこういう事情で到達をしていない場合、こういう
事例
はあり得ると思います。しかしその場合でも、犯人は
人質
である機長、この機長は
人質
であって第三者でないと思うのですね、この
人質
に不当な
要求
をしている。しかし本条に該当しないという
事例
が出てくるのではないか。そうしますと、ここで「
要求
した」という構成要件の決め方は、全部が漏れなく入るということではなくて、やはり漏れる
部分
があるのではないか。この
意味
で、客観的に
要求
する
行為
があればいいので、それが相手方に到達することまで
要求
するのは、ちょっと構成要件のしぼりがかかり過ぎるのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
伊藤榮樹
184
○
伊藤
(榮)
政府委員
確かに、おっしゃいますように、
要求
する
行為
をしたときは、というふうにする方法とか、あるいはこの
要求
の未遂、すなわち主観的に
要求
したけれ
ども
到達しなかったというものを未遂でとらえるとか、そういうことが観念的な問題として
考え
られるわけでございますが、この種
犯罪
の実態に照らしまして、
要求
したけれ
ども
到達しないというようなやり方で
要求
するということが実際問題としてほとんど
考え
られませんので、かようにしたわけでございます。たとえば、管制塔との無電交信が不可能になれば、窓から紙切れを落とすとか、あらゆる方法を使ってこの犯人は
要求
を到達させようとするわけでございますし、まず現実の事態といたしまして、
要求行為
が主観的にあったけれ
ども
到達しないという場合は
考え
にくいのではないかという観点から、このような
規定
の仕方をしたわけでございます。
長谷雄幸久
185
○長谷雄
委員
次に、同じく一条の中で、冒頭に「二人以上共同して」とありますが、これについてはすでに飯田
委員
が指摘をしておりますので私は簡単に触れたいと思いますが、二人以上で、単独犯の場合を除いていることになるわけですが、
航空機
強取法の場合は単独犯の構成要件になっておりますので、それとの兼ね合いでもやはり問題があるのではないかという気がします。 またもう一つ、たとえばこういう
事例
が実際起こり得るかどうかは別として、本来共犯でやるべきところを単独犯でやって、しかもあと共犯の手を実際器具で使う、たとえば爆弾をどこかに仕掛けて、単独犯のその人がボタンでも押せばそれが爆発するというような形で、実際に共犯でやったと同じ
行為
と結果をもたらすようなこういう
事例
というものは、やはり観念的にはあり得ると思うのですね。そういう他の刑罰
規定
との兼ね合い等もございますので、これを「二人以上」ということにする必要はないのではないか。単独犯でも十分にこういう凶悪な、凶暴な
事件
は起こり得ると
考え
られるわけです。この点について、飯田
委員
からも指摘がありましたけれ
ども
、私も観点を変えて申し上げたわけですが「二人以上共同して」という構成要件の文字は削るべきが適切じゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
伊藤榮樹
186
○
伊藤
(榮)
政府委員
すでに他の
委員
の御
質問
にもお
答え
申し上げましたように、要するに最近における過激分子によるこの種事犯の実態にかんがみまして
立法
をいたしておるわけでございますが、やはりそれらを見ますと、二人以上の集団で
人質
をとって、たとえば交代で見張りをして、そして他の者が
要求
をするというような
行為
が顕著でございまして、またそれでなければできないという
犯罪
の実態になっておるわけでございますので、それらの点をしぼって適用したいという
意味
でこの「二人以上共同して」という文言を置いているわけでございます。 今度は逆に裏から申しまして、この要件を取りますと、たまたま思慮浅薄な者が、果物ナイフなどを用いまして、俗にトイレ
ジャック
というような
行為
に出ましたときにもこれで処断をするということになりますが、それはいささか、この
規定
いたしました刑からもおわかりのように、過酷に過ぎる場合があるのではないか。私
ども
の
考え
は、そういう当該具体的事犯に対して、この罪で臨むことが過酷にわたらないようにという観点からの一つのしぼりをかけておるわけでございまして、ただいま仰せになりますようなことも、中にはそういう一人でやる場合でも危険な
行為
があるかもしれませんが、そういう問題につきましては、将来
刑法
全面
改正
の一環として十分検討してまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。
長谷雄幸久
187
○長谷雄
委員
この
法律案
につきましては、予備罪の
規定
がないわけですね。実際予備
行為
に当たる場合は十分
考え
得ると思うのです。たとえば、二人以上共同して、凶器を示して、第三者に対して、義務のない
行為
をすることまたは権利を行わないことを
要求
するための
人質
にする
目的
で人を逮捕監禁もしくは略取誘拐したとき、こういう場合は
要求行為
がないわけです。
要求行為
がない点で、いま申し上げたような
行為
の場合は第一条に当たらない。こうなると、逮捕監禁もしくは単純な略取誘拐にしかならない、こういう事態が起きてくると思います。しかし、それは
刑法
の身代金誘拐罪の
規定
、これの罰条との兼ね合いできわめて不均衡な事態になるのではないか、こう思います。そこで、こういう場合も十分想定されるわけですので、
人質
目的
の逮捕監禁もしくは略取誘拐は、第一条の前段階に当たるものとして予備罪の罰条
規定
を設けるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
伊藤榮樹
188
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず、ただいまごらんいただいております
法案
の第一条の罪につきましては、未遂の
処罰
規定
を置かないこととしておるわけでございますが、まず、そうでありますことから、論理的に未遂を
処罰
しないで予備を
処罰
するというのがおかしいということになります。それから第二条の罪につきましては、
航空機
強取法第三条にすでに予備罪が設けられておりますので、それで賄うことになると思います。 なお、御
承知
のように予備罪と申しますのは、既遂罪に比して非常に刑を軽くいたしておりまして、殺人のように死刑まである罪におきましても、予備罪は二年以下の懲役という程度で評価しておるわけでございますが、御指摘のこの第一条の罪について見ますと、逮捕監禁したということ自体が逮捕監禁罪で評価できます。これが五年以下の懲役ということになっておりますので、そういう
意味
での本
法案
第一条の準備
行為
につきましては、逮捕監禁罪で評価して評価し残りがない、こういうふうに
考え
るわけでございます。 それから、さらにもう少し手前の逮捕監禁の予備というようなことになってまいりますと、
事柄
が非常にまた微妙になってまいりまして、うんと軽い刑で臨むことになるだろうと思いますが、それが果たして効果があるかどうか。それは逮捕監禁罪の法定刑の問題としてまた別途検討すべきであろうと思います。
長谷雄幸久
189
○長谷雄
委員
これの三条を見ますと、
人質
が殺害されたときには死刑または無期、こういうことになっておりますが、この三条の
規定
は私は必ずしも必要ではない、むしろこういう三条は設けるべきでない、こう
考え
ます。というのは、
人質
に当たる人が殺害されたときには、一条もしくは二条と
刑法
百九十九条を適用すれば十分足りるのではないか、こう
考え
ます。やたらと刑罰
規定
が大きくなってくるということはやはり差し控えるべきではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
伊藤榮樹
190
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず、正面からのこの第三条の理解といたしまして、
人質
による強要
行為
というのが悪質な憎むべき
犯罪
であることは言うまでもありませんが、その全く不法な、自分の
要求
目的
を達成するためにその
人質
を殺してしまうというようなことは、まことに憎みても余りある
行為
でございまして、まさに
強盗
殺人に匹敵するような憎むべき
犯罪
であろう。そういう
意味
におきまして、これにつきまして
強盗
殺人罪がありますように、
人質
殺害罪を設けることは十分合理性があり、かつ国の政策としても適当ではないかと思うわけでございます。 もう一つ、観点を変えてみますと、
刑法
百九十九条の通常殺人罪を適用するといたしますと、刑の下限が第一条の場合は五年あるいは第二条の場合は十年というところへ下がってまいります。そういう範囲内で裁判所が量刑できるようにしておくのがいいのか、あるいは厳格な姿勢を示した方がいいのか、こういう政策の問題であろうと思いますが、その点は、
先ほど
御説明申し上げましたように、やはり憎んでも余りある
犯罪
行為
であるという観点から、法定刑を、非常に
言葉
は悪いのですけれ
ども
、足切りをするということで毅然たる姿勢を示す、こういうことが適当ではないかと思っております。
長谷雄幸久
191
○長谷雄
委員
次に、
事件
が発生した場合のことでありますが、
人質
事件
については、
先ほど
から申し上げておりますように事前の防止策をどう実効あらしめるかということがきわめて大事で、
刑法
的側面と行政的側面、その両面相まって
努力
が大事でありますけれ
ども
、それでもなお不幸にして
事件
が発生した場合には、
人質
の救出を第一義として、犯人との
関係
については、犯人の
目的
は達成できない、しかも、かつ絶対に犯人は逮捕されるということでなければならない、こう
考え
ます。 そこで、
人質
事件
についてこれまでの発生件数、未検挙件数、未検挙犯人数、それから未検挙である
事件
についての将来の検挙の見通しについて、
昭和
四十年ごろからで結構でございますが、
資料
がありましたら御説明をいただきたいと思います。
福井与明
192
○福井説明員
昭和
四十年以来の件数でございますが、百五十件発生しておりまして、うち百四十七件、百五十七人を検挙しております。 未検挙の
事案
でございますが、四十五年の三月三十一日の例の
日航機
「
よど号
」
ハイジャック事件
、それから四十八年の七月二十日の、やはり
日航機
ハイジャック事件
、それと昨年の九月二十八日の
日航機
乗っ取り
事件
、以上でございます。
長谷雄幸久
193
○長谷雄
委員
人質
法案
に関連しまして、不幸にして
人質
になった方が殺害された場合についての補償問題をここで取り上げてみたいと思います。 われわれが日常生活において生命身体が損なわれた場合については、その発生態様が労災である場合には労災保険、自動車事故である場合には自賠責等、こうした損害、被害の補償制度が、不十分ではございますが一応救済の制度はございます。ところが、通り魔的な
犯罪
あるいは無差別爆弾テロ、あるいはまた本件の
人質
法案
にある
人質
が殺害された場合のような、いわゆるいわれなき
犯罪
によって被害を受けた人たちは、どこからも救済を受けることができない。しかも、こうしたいわれなき
犯罪
というものは年々増加の傾向にございますので、何とかこの
措置
をしなければならない、こう私たちは
考え
ております。
犯罪
被害者に対する社全的な救済
措置
が極端におくれている現状がある反面、
犯罪
者の人権保障というものは
刑事
制裁の緩和、社会復帰
対策
の促進、収容施設の合理化及び近代化など、積極的にいま推進をされております。確かに
犯罪
者の人権保障の充実というものは憲法の
規定
に基づくものでありまして、当然のことであります。しかし、それならばなぜその
犯罪
被害者、しかもいわれなき
犯罪
被害者の人権保障を充実しないのかということが非常に問題であると思います。この
犯罪
被害者の人権保障もあわせて行うことが正しいこれからのあり方ではないか、こう
考え
る次第でございます。 こうした観点から、われわれ公明党は、すでに御
承知
のように
犯罪
被害補償
法案
を提案をいたしておりますが、これについて、
犯罪
被害補償制度を制度化すべきである、こう私は
考え
ておりますけれ
ども
、これについての法務
大臣
の所見をお伺いしたいと思います。
瀬戸山三男
194
○
瀬戸山国務大臣
犯罪
によって被害を受ける、これは理論的には
犯罪
者が求償の責任を負わなければならないわけでございますけれ
ども
、実際問題としては、それはなかなか実行を伴わない場合がたくさんあるわけでございます。そういうことで、近年の趨勢として、
犯罪
の被害者に対する補償の制度を確立しなければならない、こういうことはあるわけでございまして、公明党の皆さんからも提案をされていることは
承知
いたしております。
政府
としてもやはりこういう時勢に対応する、それにふさわしい制度をつくらなければならない、こういう乙とを検討していることはしばしば申し上げておるわけでございますが、さて実際、どういう程度の
犯罪
に一これは国民の負担上、全部というわけにはなかなかいきませんから、どういう程度のもの、どういう場合、こういうことをいま細かに検討しておりまして、どの程度の補償をすべきかということを検討しておりますが、できるだけ速やかにこういう制度を、完全でなくても、まず一つの制度をつくりたい、こういうことでいま進めておるわけでございます。
長谷雄幸久
195
○長谷雄
委員
法務
大臣
のきわめて前向きな御答弁をいただきましたので、次に進みます。 この
人質
法案
に関連しまして、
過激派
などの暴力
事件
により国または
政府
関係
機関の物的施設に損害を受けたときに、その損害の費用負担をどうするかという問題がございます。今日までこうした彼らの行動による被害について、
政府
はほとんど損害賠償の請求をしていないように思われます。こういう姿勢は、結果的に見て国家がその費用を負担することになり、結局、国民の血税による埋め合わせをすることにほかならないのではないか、それはきわめて遺憾である、こう思います。この点について、さきの成田の新東京国際空港襲撃
事件
により破壊された管制塔初め
航空
施設の損害の負担問題について、去る三月三十日の
衆議院
本
会議
で私は法務
大臣
の所見を求めましたところ、
大臣
は前向きの御答弁をなされておりますが、今後この賠償請求をめぐってどのように具体的に
措置
をなさるおつもりなのかをお尋ねしたいと思います。
伊藤榮樹
196
○
伊藤
(榮)
政府委員
成田の管制塔襲撃
事件
につきましては、被害を受けましたものが国及び公団両者でございます。国につきましては運輸省の
所管
、こういうことでございまして、運輸省も公団もこの損害賠償を求める決意を固めておりまして、現在当省の訟務局に両者が何回か来られて、具体的な提訴
手続等
についてお打ち合わせをしておるという
状況
でございますので、遠からず提訴が行われるのじゃないか、こう思っております。
長谷雄幸久
197
○長谷雄
委員
最後に伺っておきますが、具体的に直接
犯罪
行為
を行った
過激派
は当然でありますが、直接に手を下さなかった、しかし
後ろ
で指揮をしておった人たち、あるいはその共謀者たちについて、そのグループ自体あるいはグループの構成員全員について何らかの損害賠償請求も当然
考え
ていいのではないか。もちろん現在の法制では限界がございますが、その法制的な欠陥があるとすれば、その欠陥を直すこともまた私たち
国会
の立場であろうと思いますが、その点について
法務省
の方の御見解を伺っておきたいと思います。
伊藤榮樹
198
○
伊藤
(榮)
政府委員
その問題につきましては、まずもって実行
行為
者の背後にある者というものを確定する必要があろうと思いますので、この確定につきましては、やはり通常の行政調査でございますとかいうものではうまくいかない。したがって、
刑事
手続の間においてその実態を究明してその基盤をつくるということが、何よりも大事だと思っております。 具体的な例を申し上げますと「
よど号
」
事件
のときには、実際の実行
行為
者でない国内におった指揮者を数名起訴することができたわけでございますが、今後この種の
事件
につきましては、そういった背後
関係
の究明を徹底いたしまして、ただいま御指摘のございましたような線にいささかでも沿うような
措置
が可能になるようにしていきたいと、こういうふうに
考え
ております。
長谷雄幸久
199
○長谷雄
委員
終わります。
山崎武三郎
200
○山崎(武)
委員長
代理 正森君。
正森成二
201
○正森
委員
人質
による
強要行為等
の
処罰
に関する
法律案
について若干
質問
させていただきたいと思います。本
法案
については何人かの方が
質問
されましたので、なるべく重複しないようにしたいと思いますが、若干重複しますので、お許しを願いたいと思います。 すでに同僚議員がお聞きになりましたが、この
法案
の第二条というのは、
航空機
の強取等の
処罰
に関する
法律
の第一第二項と全く同じであるというように思いますが、それを改めて御
規定
になったのは、
人質
による強要罪という
犯罪
類型に着目して、それらを一括して
規定
するという
趣旨
のお
答え
があったと
承知
しているのです。ただ、そうだといたしますと、全く同じ条文がそれぞれ二つの
法律
に
規定
されているという、必ずしも体裁のいいかっこうにはならないわけで、それにはもう一つ
理由
がなければならないと思うのです。私が
考え
るところでは、この
法案
には第三条に「第一条又は前条の罪を犯した者が、
人質
にされている者を殺したときは、死刑又は無期懲役に処する。」というように、殺意を持って殺した場合には、通常の殺人罪ではなしに、死刑または無期だけである、こういう類型を定めておるという点で新しさを持っておるかと思うのですが、そういうこともあって、前の
法律
を
改正
するのじゃなしに今度の
法律
に一括したものであるということなんでしょうか。
伊藤榮樹
202
○
伊藤
(榮)
政府委員
前回の
航空機
強取法の一部・
改正
におきまして、第一条第二項として、今回御提案しておる
法案
の第二条と全く同文のものが加えられたわけでございますが、その当時からも、
ハイジャック
人質
強要以外の一般の
人質
強要についても何らかの
措置
をとることが必要であるということは
考え
られておったわけでございますが、いかんせん
立法
作業が間に合いませんで、
ハイジャック
人質
強要の
規定
だけをとりあえずということで
新設
することにしたわけでございます。それが、印刷の方法にもよりますでしょうが、その三行ぐらいのものでございます。これは
ハイジャック
行為
そのものを受けての
規定
でございますので、その当時存在した
法律
の中で
航空機
強取
処罰法
の一条の二項として加えるのが最も適当であろうということで入れさせていただいたわけでございますが、このたび、この
人質
による強要罪のうち、
ハイジャック
を前提としないものをも新しく
立法
することになりますと、
航空機
強取
処罰法
の方がもともと
強盗罪
の
特別類型
を
規定
した
法律
であったのに、そこにあれを入れた。ところが今回の
人質強要行為
と申しますのは強要罪の加重類型であるという点からいたしますと、今度この
法律
をつくるにつきましては、昨年
航空機
強取
処罰法
の一条二項として
新設
させていただいたものをこちらへ取り込む方が法体系としても合理的であり、またこれをごらんになる国民の立場からも理解がしやすいのではないか、こういうことでこちらへ移しかえることにしたわけでございます。ごらんいただいておりますように、本
法案
の附則の第二項におきまして
航空機
強取
処罰法
の一部
改正
も含めておるわけでございまして、この
法案
が可決成立いたしまして公布になりますと、
航空機
強取
処罰法
に昨年
新設
されました第一条二項が削られて、そっくりこちらへ移転をしてくると申しますか、そういう
関係
になるわけでございます。
正森成二
203
○正森
委員
私が最後に述べました、前の
法律
には、
人質
にされている者を殺したときはという
規定
がなかったですね。それが新たにつけ加えられたということも、本法を設ける必要性があったことに当たるというのではないのですか。
伊藤榮樹
204
○
伊藤
(榮)
政府委員
その点は全く
理由
となっておりません。なぜかならば、仮に第二条を
航空機
強取
処罰法
に残したままにしておくとすれば、第三条の文言を、第一条または
航空機
強取
処罰法
第一条第二項の罪を犯した者がと書きさえすればよろしいわけでございますから、そういう
立法
技術的な観点と申しますか、そういう観点からこういう形をとったわけではございません。
正森成二
205
○正森
委員
私が言っているのは、
立法
技術上そういう形をとったというのじゃなしに、前回の
法律
に比べて、この
部分
を新たに付加されたことになるのではないですか、こう言っているのです。
伊藤榮樹
206
○
伊藤
(榮)
政府委員
第三条というものが第一条、第二条両方を前提として置かれたという
意味
において、それを付加されたというふうに見れば見ることもできようかと思います。
正森成二
207
○正森
委員
そういう答弁があったからいいですけれ
ども
、付加されたと言えば言えると言いますけれ
ども
、明らかに違うのじゃないですか。従前のものだったら、人を殺した場合でも、そのことによって死刑か無期しか法定刑がないということではなかったわけでしょう。今度の場合には死刑か無期か、酌量減軽等があっても、ということになったんだから、本法における新しい観点、新しい
規定
であるということは言えるのじゃないですか。
伊藤榮樹
208
○
伊藤
(榮)
政府委員
その点はいまおっしゃいますとおりです。
正森成二
209
○正森
委員
法制
審議
会が
改正
刑法
ということで草案づくりをやっておりますね。法制
審議
会の
刑事
法特別部会のたしか第五小
委員会
で
議論
がされてきたというように思うわけでございますが、そこでは単に逮捕監禁だけでなしに、三百十一条だったかと思いますが「
人質
による強要」ということで……(
伊藤
(榮)
政府委員
「三百七」と呼ぶ)三百七か、はい。これは前のやつだな。逮捕監禁だけではなしに、略取し、誘拐しというのが入っているわけですね。講学上は、これは逮捕監禁と略取誘拐及び強要罪など結合犯類型をとったというように言われておりますが、略取と誘拐を抜いたのはどういうわけですか。
伊藤榮樹
210
○
伊藤
(榮)
政府委員
観念的には略取誘拐という場合も一般的な
人質
犯罪
としてはあり得るわけでございますが、この第一条の要件といたしまして、二人以上で凶器を示すというような
行為
による自由を制限する
行為
を言っております。そうでありますと、略取誘拐という概念に該当する場合というのはなくなってしまって、逮捕監禁というのだけが残る、こういう
意味
であえて略取誘拐を抜いておるわけでございます。
正森成二
211
○正森
委員
法務省
のおっしゃる
意味
は、凶器を示しという構成要件があるから、略取誘拐というのはそもそもこの
規定
の仕方だったら該当せずに、逮捕監禁ということだけでいくことになる、こういうお
考え
ですか。
——
しかし、仮に略取誘拐して、その後凶器を示して、監禁状態が続くというようなことをもし
考え
ますと、それは
併合罪
とお
考え
になるのですか。それとも後の方の罪だけでいくというように
考え
られますか。それともそもそもそんなことは起こり得ないと思われますか。
伊藤榮樹
212
○
伊藤
(榮)
政府委員
起こり得るか起こり得ないかは事実問題でございますから、
法律
論として
考え
れば、
最初
誘拐をしておいて、途中から刃物を示して監禁する、こういうことになれば
併合罪
が成立すると思います。
正森成二
213
○正森
委員
ですから、仮に起こった場合に
併合罪
で処理し得るんだから、構成要件として略取誘拐を入れない方が、凶器を示しという文言があるから、類型としてとらえるには妥当であるというように
考え
て、こういう
規定
にした、こういうように伺っていいですか。
伊藤榮樹
214
○
伊藤
(榮)
政府委員
二人以上共同して刃物を示して監禁するというような悪質な
行為
から始まるそういう
犯罪
類型をつかまえたい、こういうことでございます。
正森成二
215
○正森
委員
本件
規定
の仕方では、
要求
したということで構成要件を充足することになっているわけですね。身のしろ金を
目的
とした誘拐では、
要求
する
行為
をしたというようになっているのですね。あるいは強要罪の場合には、妨害した、こういうようになっているわけです。それぞれに違うわけです。そこで、
要求
する
行為
をしたとしないで、
要求
したというようにした
理由
について、もうほかの方がお聞きになったかもしれませんし、私もある程度は知っておりますが、念のためにお
答え
ください。
伊藤榮樹
216
○
伊藤
(榮)
政府委員
観念的な問題としてとらえますと、犯人が自分の主観では
要求
しておるけれ
ども
、だれの耳にも届いていないという場合が観念的には
考え
られるわけで、そういう場合を
処罰
しようとすれば、
要求
する
行為
をした者というふうに書くか、あるいは
要求
したときの未遂罪を
規定
するかすればよろしいわけでございますが、この構成要件で対応しようとしております
事件
の実態を見ますと、およそ犯人が届かないような方法で
要求
するということは
考え
得ない実態がございますので、その実態に即して、ただいま御提案申し上げておるような文言になっておるわけでございます。
正森成二
217
○正森
委員
したがっていまの答弁を裏返せば、
要求
する
行為
をしたじゃなしに、
要求
したというようになっているので、未遂罪を
規定
しなかったのである、ただ、未遂罪を
規定
したのは第三条のみに未遂罪を
規定
した、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
伊藤榮樹
218
○
伊藤
(榮)
政府委員
そのとおりでございます。
正森成二
219
○正森
委員
警察官等の逮捕を免れる
目的
であるが、それが明示ではなしに、黙示もしくは
行為
自体から逮捕を免れるというように認められる場合には、本法に言う「第三者に対し、義務のない
行為
をすること又は権利を行わないことを
要求
したとき」というのに当たるように
考え
ておられるのかどうか。
伊藤榮樹
220
○
伊藤
(榮)
政府委員
そういう場合にはこの構成要件に当てはまらないと
考え
ております。
正森成二
221
○正森
委員
そうしますと、たとえば
アメリカ
連邦
刑法
の千二百一条では身のしろ金、代償、その他
——
アザーワイズという
言葉
を使っておりますが、を
目的
として誘拐されたものを云々ということで、そのアザーワイズの中には逮捕を免れる
目的
も含まれるのである、というように解釈されておるようですが、わが国のこの
法律
はそういう解釈をとらないというように解釈してよろしいですか。
伊藤榮樹
222
○
伊藤
(榮)
政府委員
単に逮捕を免れるために
人質
を利用するという場合は当たらないと思います。
正森成二
223
○正森
委員
それでは重ねて伺いますが、わが国ではよくあることですが、たとえば
強盗
犯などが他人の家へ入っていって、奥さんを取っつかまえて、警官が寄ってきたときに、寄るな寄るなという程度のことを言うという場合には、本件の構成要件は充足しない、こういうように聞いていいですか。
伊藤榮樹
224
○
伊藤
(榮)
政府委員
さようでございます。
正森成二
225
○正森
委員
講学上、たとえば木村教授や大塚教授は、行動の自由を持たない嬰児や幼児の場合には逮捕罪とか監禁罪は成立しないという学説をとっておられるようであります。もしそういう学説を前提といたしますと、幼児に対して凶器を示すというのもおかしなものですけれ
ども
、しかしとにもかくにも凶器を持っておったといたしまして、それは内ポケットに入れておるのじゃなしに手に持っておったということで、幼児を連れていって実際上は一カ所に閉じ込めておるというような
行為
が仮にあって、そして第三者の憂慮に乗じて物事を請求するというようになった場合には、本法を適用なさるということなのか、それとも未成年者云々の別の法条で行われる予定なのか、そこら辺をお聞きしたいと思います。
伊藤榮樹
226
○
伊藤
(榮)
政府委員
確かに、おっしゃいますように赤ん坊に刃物を示すということは余り
意味
がないわけなんで、そういうことがあるかどうかは別といたしまして、私
ども
としては、現在判例がとっておりますし、かつ通説となっており、行政解釈としてもそういう解釈をとっておりますところの、意思能力の有無にかかわらず監禁罪の客体たり得るという
考え
方で解釈をすべきものだと思っておりますので、御指摘のような、ちょっとあり得べからざるような話でありますけれ
ども
、そういう場合にはこの構成要件に該当することになると思います。
正森成二
227
○正森
委員
罰則
の点について伺いたいと思うわけですけれ
ども
、いま
法務省
側はこれは強要罪の類型に当たるものであるという解釈をとられたと思います。強要罪の場合には、いまの
刑法
の
規定
の仕方では三年以下ということになっておるわけですね。ただ手段が「逮捕又は監禁」ですから、その場合には三月以上五年以下という刑がございますけれ
ども
、それにいたしましても本刑の場合は第一条が「無期又は五年以上の懲役」ということになっておるのは飛び離れて重いというように思うわけですね。この構成要件自体から見て、なるほど「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」というのは悪性である、こういうことなんでしょうけれ
ども
、しかしこの構成要件では、すべて
過激派
が社会的に見て非常に妥当でない
要求
のためにのみ行うということではないので、そうでない場合もこの構成要件に該当する場合があるわけですから、それを一挙にこういうぐあいに重くしたのはどういうわけですか。
伊藤榮樹
228
○
伊藤
(榮)
政府委員
第一条におきまして法定刑の上限を無期とし下限を五年というふうにしておるわけでございますが、クアラルンプール
事件
とかハーグ
事件
に見られるような
犯罪
類型に適切に対処する刑罰法規がないということにかんがみて
立法
されたわけでございますから、刑の上限はおのずからそれらのものにふさわしい刑を盛らざるを得ない。そういたしますと無期懲役という刑が出てくるわけでございますので、それを上限といたしておるわけでございます。 しかしながら
過激派
に対してしか適用しないという
法律
ではございませんから、御指摘のように、あるいは思慮浅薄な者が二人組みでちゃちな
要求
をしたというような場合もあり得るわけでございます。たとえば、やや大がかりではございましたが、先般の長崎のバス
ジャック
事件
というようなものも入ってまいります。そういたしますと、法定刑の下限はある程度ゆとりを持ったものにする必要があろう、それで何ほどが必要であろうかということで検討いたしますと、身代金誘拐罪の法定刑の下限が三年である、これをまず横目でにらみまして、さらに
強盗罪
の法定刑の下限が五年であるというような点を彼此考戴いたしまして、この種の
犯罪
に対しては下限につきまして
強盗罪
と同程度の評価をするのが妥当ではないか、そういう
考え
から五年以上無期まで至るという、比較的幅の広いと言えば広い法定刑を設定しておるわけでございます。
正森成二
229
○正森
委員
いまの説明は一応の説明にはなっているのですけれ
ども
、しかしたとえば、
法務省
の
刑事局
付の検事だった、いまは参事官をしておられるかどうかわかりませんが「いわゆる
人質
犯罪
について」という論文を浜さんが「警察
研究
」に書いているのですね。それなどを見ますと、やはり非常に重いと言えるのじゃないかという気がするのですね。これには、
改正
刑法
の草案では
人質
による強要の
罰則
、この基本類型は二年以上の有期懲役、それから傷害を与えた場合には三年以上、死亡させたときは無期もしくは五年以上、こうなっているわけですね。そうしますと、たとえ構成要件が「二人以上共同して、かつ、凶器を示して」となっておるにしても、
改正
刑法
草案についての
人質
強要罪でも刑が重過ぎるというようなことで必ずしも全員の意見の一致が得られなかったのに、そこで人を死亡させてしまった場合の刑が基本類型になっておるということで、殺した場合は死刑かまたは無期だということになりますと、これは二階級特進で重くなっておる。
改正
刑法
の草案をぴょんと飛び越えて、そしてもう一つ重いものを基本類型にしておるということになると思うのですね。その点はいかがですか。
伊藤榮樹
230
○
伊藤
(榮)
政府委員
改正
刑法
草案の三百七条に示されております
人質
強要罪といいますのは、
人質
強要についての一般法でございまして、一例を挙げますと、身代金誘拐罪に対する
関係
では一般法であり、身代金誘拐罪が特別法の
関係
になる、こういう
関係
になるわけでございますが、今回御提案しております第一条は、身のしろ金誘拐の特別
規定
となる場合もある、こういう
関係
でございまして、
改正
刑法
草案の三百七条の法定刑よりも身代金誘拐罪の法定刑は重く、それよりも今回御提案しております第一条はなお重かるべきである、こういう
考え
方が基本にあるわけでございます。
正森成二
231
○正森
委員
伊藤
さんはなかなかおつむのいい方で、重かるべしの方ばかり言われますが、軽かるべしの方は言われないのですね。なるほど
人質
強要罪は一般法でやる、それに対して身代金誘拐罪は
特別類型
でやり、そのまた
特別類型
がこの
法律
でやる、こうおっしゃいますが、しかしこの
法律
で包含される罪の中には、あるいは
犯罪
事実の中には、身代金誘拐罪に至らないような、そういう軽かるべしの方もあるわけです。ところが、そういう軽かるべしの方は
考え
ないで、五年以上にするということになっているわけでしょう。ですから、重い方はある程度重くしなければならぬ場合があるというのは、これはわからぬでもない。しかし、軽かるべしの方は少しも考慮をされていないで、二階級特進でやるということになりますと、これが
過激派
の、しかも大使館を襲撃するとか、そういうものだけに、しかもピストル等を持参してというようなものであるということであればこれは一定の妥当性を持っていると思うのですけれ
ども
、構成要件自体からは必ずしもそうなっていないわけですから、そうしますと、これは非常な厳罰を処しておるということで、不当に重過ぎるというように言える点もあるのじゃないか。しかも、結果として人を死にいたすとか殺したという場合には、それはそれで別に加重類型が設けられているわけですから、そこら辺についていかがお
考え
ですか。
伊藤榮樹
232
○
伊藤
(榮)
政府委員
人質
強要の
改正
刑法
草案三百七条の立場は全くの一般類型でございますから、たった一人の人を一人の人間がかどわかして、そしてわりあい小さい
要求
をしたという場合も当然あり得るわけでございまして、それに対処できるような法定刑の下限が一応
考え
られておると思います。ところが、この
法案
の第一条のものは、二人以上、凶器を示して行うということが前提となっておりますので、そういう
犯罪
というものは多くの場合、被害者の数も複数になるわけでございますし、また集団
犯罪
として凶器を示して行うというところに社会的な悪性も顕著に認められるわけでありますし、また、犯される
犯罪
の結果、あるいは
要求
の
内容
等も、一般的に
改正
刑法
草案三百七条の立場よりは悪質な罪になってくるわけでございまして、その
意味
で、法定刑の下限の五年というのはおおむね妥当な線ではないかと思います。
正森成二
233
○正森
委員
いまのような答弁がありましたから、私は次の
質問
に移る前に構成要件の問題を少し伺いたいと思いますけれ
ども
、その場合に非常に心配なのは「二人以上共同して」ということになりますと、これは二人というのは複数の最小限ですから、二人でないものはもう一人しかないわけですから、数人共同してというような別の
法律
での
規定
と違うわけですね。「二人以上共同して」ということになると、一人以外は全部もう二人以上になるわけで、これは仮に未成年者であっても、十六、七歳の子供を使っても、やはり「二人以上共同して」ということになるわけですね。ですから、その
意味
では、人数の上では、一人以外の中では一番最小限のグループで足りるということになっている。 それで、「凶器を示して」のこの「凶器」というのは、これはいままでの御答弁では、性質上の凶器ではなしに用法上の凶器だということになっているわけでしょう。また、この「凶器」というのは、たとえば銃砲刀剣類所持等取締法違反に言う銃砲刀剣類とか、あるいは爆発物取締
罰則
に言うところの爆発物とか、あるいは火炎びん等に言う火炎びんとか、そういうぐあいに幾つかに限定されておりますと、これはこういうものを使ってやるというのは、
過激派
の学生かあるいは暴力団か、そういうものでないといけないし、そうなると、非常に
事案
が重大であるから刑を重くするということについても大方の納得が得られる場合があると思うのですね。しかし「凶器を示して」の「凶器」が用法上の凶器であるということになれば、これはもちろん
過激派
もやるでしょうけれ
ども
、それ以外にもこれに該当する場合はあり得るわけで、そういうものを一括して基本類型が無期または五年以上の懲役であるということは、やはり
考え
てみる必要があるのじゃないですか。
伊藤榮樹
234
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず
最初
にお断りしておきますが、数人という場合には、二人も含むというのが大審院以来の確立した判例でございまして、しからば三人にするか五人にするかというような
議論
をすれば格別、一応単数の者が行う
犯罪
と複数の者が行う
犯罪
とでは、その罪質、その結果において質的な差があるというのが従来からの刑罰法規の定め方でございますので、そういう
考え
方をまずとっておるということを申し上げておきます。 それから「凶器」と申しますのは、確かに御指摘のように、用法上の凶器をも含むという概念でございます。したがいまして、ピストルとか爆弾とかそういうものでない、いわゆる用法上の凶器を用いる場合もこの構成要件に該当してくる場合があるわけでございます。したがいまして、そういう点も考慮いたしまして、法定刑の下限を五年というふうに下げてきておるわけでございます。その点、
ハイジャック
人質
強要の場合、下限を十年といたしましたのと比較いたしまして、相当ゆとりを持った法定刑が定めてある、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
正森成二
235
○正森
委員
いまの答弁ですけれ
ども
、
ハイジャック
の場合は、これは
航空機
という、飛んでいるときにおかしなことをやられたら全部墜落して死んでしまうというような特別の類型、構成要件が
規定
の中にありますから、私たちも、最下限が十年でありましても、飛行機を暴行または脅迫というようなことで乗っ取って、そしてその運航を実力で支配するというような場合には、これはきわめて重大な刑をもって臨むというのはやむを得ないという大方の理解が得られると思うのですね。しかし本件の構成要件というのは、なるほど「二人以上共同して」とか「かつ、凶器を示して」というのがありますけれ
ども
、これは
航空機
でないことは一見明らかなんです。別に
法律
がありますからね。そうしますと、それじゃ外国公館とか、あるいは太平洋の中の船とかいうものだけかというと、そうではないので、陸上の、何でもない、ありふれたところももちろん含むわけですね。そうすると、それをなお重くするというのは、これは「二人以上共同して」というのと「凶器を示して」という二つの構成要件があるだけである。こうなりますと、われわれは「凶器を示して」というところでやはり一定のしぼりをかけておく必要があるのではないか。もし場所的な、
航空機
とかそういう
特定
あるいは限定的な要素があるならこれはまた別でございますが、そうでないところに「凶器」というのを非常に限定的に解釈する必要があるのじゃないか、こう思うわけですね。 私がなぜこういうことをお話しするかというと、
刑事局長
には釈迦に説法ですけれ
ども
、よく御
承知
のように「凶器」という中には、用法上の凶器ということになりますと、いろいろ幅が広いですね。たとえば氷割りに使用するアイスピック、アイスピックというのは使い方によっては危険ですけれ
ども
、そのほかに玉突き棒とか洋がさの心棒とかあるいは野球のバットとか、それからかまの柄とかそういうようなものも用法上の凶器である、プラカードの柄、これは言わずもがな、これは闘争の手段にするという形を示した段階においてはこれはもう凶器である、こうなっているわけです。そうしますと、野球のバットだとかかまの柄とか、あるいは玉突き棒とか洋がさなんというのは、これはそこら辺に幾らでもあるありふれたものなのです。しかも、そういうものも、殴りようによっては人に重傷を与えるという場合はありますけれ
ども
、しかし、こういうもので逮捕監禁して、そして第三者に対して一定の
要求
をするという場合には、第三者の憂慮もまた違ってくると思うのですね。第三者が、
人質
が常時ピストルを突きつけられておるとか、
日本
刀を突きつけられて、おるとかいうのではなしに、持っておるのが玉突き棒であるということがわかっておれば、これは玉突き棒でも突きどころが悪ければどうかなるというようには思います。相手は洋がさを持っておるぞ、洋がさも突きようによっては、荒木又右衛門ぐらいが突けば、心臓一突き、死んでしまうかもしらぬけれ
ども
、まずまず洋がさなら、しばらくはいろいろ警察、検察庁においても手段をとる可能性があるということで、対応の仕方も違ってくる。あるいは
要求
を貫徹するための迫力も違ってくるということは事実であろうと思うんですね。ですからそういう場合には、やはり「凶器」という点についてしぼりをかけるということは、刑を無期または五年以上でなしに、
刑法
改正
草案のように二年以上の有期懲役とか、あるいは傷害の結果をいたしたときは三年以上とか、そういうものであれば、これはまた用法上の凶器を含むということもいろいろ問題になるかもしれませんけれ
ども
、主としてその他
ジャック
を
考え
て「無期又は五年以上」というように
考え
るならば、五年以上というのは非常に重い刑なんですから、だからやはり「凶器を示して」という「凶器」というのは一定のしぼりをかける必要があるのではないかというように思うのです。
伊藤榮樹
236
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず
最初
に、これはまた釈迦に説法でございますが、用法上の凶器と申しますのは、玉突き棒とかこうもりがさの柄がそこに転がっておるだけでは、あるいは持っておるだけでは凶器とならないわけでございまして、人の身体生命に対して危害を加えるような形で用いられたときに初めて用法上の凶器になるわけでございますので、その点をまず申し上げるわけでございますが、武器等を用いる場合は、もちろんそういう人を殺傷するに足りるような器具をそういう
目的
のために使用して人を逮捕監禁しておるという状態、これを
強盗罪
の構成要件にいいます人の反抗を抑圧してという構成要件と対比いたします。さらにまことに安危のほどがわからない
人質
の生命身体の安全を憂慮する第三者、これもまた意思の自由を奪われてしまうわけでございまして、両面にわたって、いわば
強盗罪
の構成要件的に言いますと、反抗を抑圧された状態に陥ってしまう、その結果、無法な
要求
に何とか応じなければならないのではないかというふうな配慮をせざるを得なくなる、こういうような状態を客観的に見ますと、
強盗罪
の刑というものの下限、それからこの罪の下限というものは、やはり差等をつけて
考え
るということが一般的におかしいのではないか、こういうふうにも
考え
られるわけでございまして、そういう
意味
において、この二人以上、凶器を示して人を逮捕監禁した上で
人質強要行為
に出るというこの類型からいたしますと、下限を五年よりもさらに下げるということは相当でない、かように思っております。
正森成二
237
○正森
委員
法務省
のいまの御答弁はもっともらしく聞こえるのですけれ
ども
、しかしこれは凶器を用いてといいますけれ
ども
、本当に用いてしまうわけではないのでしょう、示すわけなんですから。用いてしまったら、これはもう傷害の結果が出ておるか、あるいは死んでしまっておるかということになるわけで、それで、むしろそういう
意味
では用いないで、それで示す、こういうことですから、だからバットを示してそれでこの部屋にじっとしておらなければぶん殴るよ、これで示したことになるでしょう。頭を一つごつんとぶん殴れば、これは相当防備堅固な頭ならいざ知らず、普通はこぶの一つぐらいできますからね。そうすると、もう加重類型の方にいってしまうわけです。だから、基本類型としては「凶器を示し」というその「凶器」というのは、やはり示しただけで畏怖させるようなものでなければならないのじゃないか。私が言いますのは、たとえば兇器準備集合罪に言う凶器とか、それから暴力
行為等
処罰
ニ関スル
法律
違反の凶器とか、よく知りませんが、二つ、三つあると思いますが、そういう凶器というのは、兇器準備集合罪などというのは、これはそのことでこれから非常な暴力団同士の乱闘あるいは
過激派
同士の乱闘というものが行われようとする前に、集合した段階で取り押さえようということですから、この兇器準備集合罪の凶器というのを用法上の凶器ということで
考え
ていくということも一定の
理由
はあると思うのですね。しかし、これはそうではなしに、
人質
による強要罪で、示しただけで一定の畏怖を与える、そして逮捕監禁の事実を与えるということでしょう。そしてそれは非常に飛び抜けて「無期又は五年以上の懲役」ということで、普通の脅迫罪とか強要罪とかあるいは逮捕監禁よりも、二階級特進という
言葉
を使いますが、非常に重いということになりますと、やはり凶器というものは、いまお話になったような、用いられるわけですからと言いましても、本当に用いるのでなしに、示して用いるわけですからね。
伊藤榮樹
238
○
伊藤
(榮)
政府委員
バットを示しただけでは凶器を示したことにはならないわけでありまして、そのバットを凶器として使用する状態において示すことによって用法上の凶器になるわけでありますから、ただ慢然、ごらんなさいと言ってバットを示すようなことでは凶器を示したことにはならないわけで、たとえばバットでぶん殴るぞとか、これで殴り殺すぞというようなことで示せば、これは相当な危険性がもちろん客観的にあるわけでありまして、何かただバットを転がしておけば「凶器を示し」ということになるというようなことでごさいましたら
——
まさかそういうふうにはお
考え
になっておらぬと思いますが、用法上の凶器というものの性質についてのまた別個の御理解に基づくものではないかという気がするわけであります。
正森成二
239
○正森
委員
いや、幾ら私でも、バットがそこら辺に落ちておるからこれに該当する、そんなばかなことは言わないので、それなら王選手や皆、いつでもこれをやっている可能性があるんで、そんなばかなことは言いませんけれ
ども
、しかしバットで実際にぶん殴らなくても、いま言ったような、バットであなた殺すぞとか、あるいはぶん殴るぞと言わなくても、しかし判断によっては、何も言わなくても、バットがあってそれを振り回しておったとかいうようなことで逃げるのがちゅうちょされたというような場合は、やはり「凶器を示し」になるわけでしょう。ですから私はこの「凶器」というのは、やはり一定の
——
用法上の凶器というのでは幅が広過ぎるのではないか。それは法定刑が重いがゆえによけいしぼりをかける必要があるのではないか。ですから「凶器を示して」という方を用法上の凶器とするなら、「無期又は五年以上」という下限はやはり少なくとも下げる必要がある。もし下限を下げないで五年以上というので維持するなら「凶器を示して」の「凶器」というのにしぼりをかける必要があるという気がするので、あえて申し上げておるわけです。 なお、念のために伺っておきますが、あなた方の出しておられる「凶器」というのと、それから軽
犯罪
法の一条二項に一定の
規定
がございますね、これは一部の学説では、全く同じことを言うのであるという説があるようですが、
法務省
はどういう見解をとっていますか。
伊藤榮樹
240
○
伊藤
(榮)
政府委員
同じに解釈しております。
正森成二
241
○正森
委員
同じに解釈しておるということになりますと、そうするとやはり相当幅広く解釈しておられるということになると思うのですね。ですから軽
犯罪
法一条二項のあそこで
規定
されておる
規定
の仕方というのは、やはり相当長い竹ざおだとかそういうようなものもあれに入った例があるということを聞いておりますから、そういう点についていよいよ問題があるという点を指摘しておきたい、こう思うわけです。 そこで、そういう点を指摘しておいた上で、前の浜さんの論文に戻りたいと思いますが、浜さんはこう言っているのですね。念のために申しますと、下巻の方の六十五ページから六十六ページでありますが、これは第五小
委員会
でA案、B案あるいは別案というようにあったのに基づいて言っておられるのですが「A案においては、本罪が強要罪の
特別類型
であることに照らし、強要罪の法定刑とあまりかけはなれた刑を
規定
することはできないが、すでにみたように本罪が悪質かつ卑劣な
犯罪
であることにかんがみ、これにふさわしい重い刑を定めるべきであるということ、解放軽減の
規定
を設ける以上、その効果を期するためには基本類型をある程度重くする必要があること、本罪をみのしろ金
目的
誘拐罪と対比すると、みのしろ金
目的
誘拐の場合には、被拐取者の生命・身体に対する危険が著しく大きく、みのしろ金を
要求
される近親等の憂慮心痛も大きいなどの点で本罪とはいささか異なる事情があることなどを考慮したうえ、結局、基本類型の刑を二年以上の有期懲役、致傷罪の刑を三年以上の有期懲役、致死罪の刑を無期又は五年以上の懲役とするのが相当であると
考え
られたのである。」こうなっているのですね。これはむしろ論文の体裁としては、浜局付検事の個人見解でありましょうが、これを書かれるについては恐らく
法務省
の中での一定の見解をあらわしておる、こういうように思うのですね。そうだとしますと、当時のこの浜島付検事、現在参事官ですね、参事官に地位が上がられたから見解も局長に近く変わってきたかどうか知りませんが、当時少なくとも局付検事であったときには、その解放軽減の
規定
をするのに、そもそものが余り軽過ぎたのでは、これは無事に解放すれば軽くしてやるなんと言っても余り効果がないのではないか、解放軽減があるからもとのは少々重くしておるのだ、こういうことなんですね。ところが本法には解放軽減の
規定
がないわけでしょう。そうすると、いよいよ重くするというのは
刑法
改正
草案と比べて余りつろくがとれない。つろくがとれないというのは関西の
言葉
ですが、つまり均衡がとれないという
意味
ですね。そういう感を深くするわけです。 それから、身のしろ金請求との対比を言われましたが、ここでの浜当時局付検事の見解は、身のしろ金
目的
の誘拐というのは、
改正
刑法
の一般的な第三者強要に比べて身のしろ金誘拐の方がずっと悪質なのであるという見解をとっておられますね。その点は、今度のは
刑法
改正
のと違って「二人以上共同して」というのと「凶器を示して」というのが入っておるから同日には論じられないという論点も出てくるではあろうと思いますけれ
ども
、しかし
昭和
四十七年一月十日号「警察
研究
」ですが、当時の浜検事の見解というのは一定の合理性を持っておると思うのですね。私がいま指摘した点について御意見はいかがですか。
伊藤榮樹
242
○
伊藤
(榮)
政府委員
まず事実
関係
について一言申し上げておきますが、現在浜検事は東京地検の
刑事
部副部長をいたしております。 彼が書きましたものはもとより彼の私見でございますが、法制
審議
会第五小
委員会
における
審議
経過を客観的に
紹介
しておるわけでありまして、その限りにおいて第五小
委員会
の当時の御
議論
というものはわりあい正確に反映されておるのではないかと思います。ただ、当時の時点におきましては
人質
犯罪
というものが現在とは全く様相を異にしておった時代でございまして、正確な
意味
の
人質
強要
事件
ではないかもしれませんが、金嬉老という人物が寸又峡に立てこもったとかいう程度の
事件
あるいは女子高校生が
人質
にとられたような
事件
とか、そういうような
事件
が続発した時期でございまして、そういう事態にかんがみて
人質
強要罪というものを新たにつくるべきではないか、こういう
議論
が行われておったわけでございます。したがいまして、そこで
議論
されました場合の各
委員
の頭の中にありましたのは、身のしろ金誘拐、赤ん坊を誘拐して憂慮に乗じて金を取るというような
行為
に至らないような類型が主として頭の中にあって
議論
された、こういうふうに
承知
しておるわけでございまして、そういう
意味
で、今日ただいま最近における異常事態に対処しようとしておりますこの
法案
の
考え
方とは時点を異にする
関係
上、若干のニュアンスが違っておるように思います。
正森成二
243
○正森
委員
時代が変われば見解が違うのであるという御意見のようですけれ
ども
、しかし本法に解放軽減の
規定
がないというのは事実であります。浜検事が当時の第五小
委員会
の見解をある程度反映して、解放軽減の
規定
を設ける以上は基本類型がある程度重いのもやむを得ない、こういう書き方なんですね。 私が
承知
しておりますところでは、同僚
委員
の
質問
に対して解放軽減を
規定
しなかったのだという点についての答弁があったようですけれ
ども
、私は
大臣
に長らくお待ちいただいておりますから瀬戸山法務
大臣
に一言
質問
をさせていただきたい、こう思うのですが、
大臣
がお読みになりました
趣旨
説明、多分お読みになったと思うのですが、その中にはこう書いてあるのです。途中から読みます。「この種事犯の根絶を図る必要のあることが痛感されるのでありますが、不幸にして再度事犯の発生をみた場合には、国家自らが不退転の決意を持ってこれに対処し、
人質
の生命の安全を図りつつ、種々方策を講じて犯人に反省と悔悟の
機会
を与え、その
要求
を断念させた上で
人質
を解放させることがこの種事犯の再発防止の要ていであることを指摘せざるを得ないのであります。」こういう表現があるのです。そうしますと、これは、犯人に反省と悔悟の
機会
を種々方策を講じて行うということが
人質
の安全を保つ上でも大事だということを一般的な形で言っておられるわけですね。そういたしますと、犯人に反省、悔悟の
機会
を与え
人質
を安全に取り戻すという点からいいまして、解放軽減の
規定
を置いておいて、そして無事に解放した場合には刑も軽くなるのだということを内外に明らかにしておくということは、この説明
理由
から言っても妥当なことであるというように思いますが、局長は法理技術的にお
答え
になりますから、
大臣
にひとつ政治的な見解をちょっと答弁していただきたいと思います。
伊藤榮樹
244
○
伊藤
(榮)
政府委員
大臣
にお
答え
をいただきます前に、ただいまはしなくも仰せいただきました技術的な点を一、二申し上げておきます。 身代金誘拐罪をつくりますときに特殊な
刑事
政策的な配慮から、たとえば赤ん坊の行方が全然わからない状態に置いておいて不法な身のしろ金の
要求
をするという場合の赤ん坊の行方に対する不安、こういうものは非常に強いわけでございまして、身のしろ金を払ってもとにかく赤ん坊だけは無事に返してくれという特別な
刑事
政策的な配慮から解放減軽
規定
を置いたわけでございます。ところが、その身代金誘拐罪の一般類型としての
人質
強要罪、これをつくることになりますと、加重類型で解放減軽があるのに一般類型に解放減軽
規定
がないというのは権衡を失するという問題が一つあるわけでございます。 また、法制
審議
会の第五小
委員会
で
人質
強要罪が
議論
されましたころの
人質
犯罪
と申しますのは、
先ほど
申しましたような金嬉老
事件
とかそういったような
事件
でございましたけれ
ども
、最近におけるクアラルンプール
事件
等をごらんいただけばおわかりのように、
人質
を解放するにしても大変遠くまで連れていって、そこで置き去りにするという形でやっと解放するというような形態が顕著でございまして、当時とは全く
人質
の取り方、その取り扱いが異なっておるという点を、まず
考え
方を、私
ども
が決めます基本的な前提となりました事実
関係
として御説明申し上げておきます。
正森成二
245
○正森
委員
瀬戸山法務
大臣
にお
答え
いただくのも結構ですけれ
ども
、どうやらいまの
伊藤
刑事局長
の答弁は瀬戸山法務
大臣
のお
答え
になる前にその応援演説のきらいもあるようですから、私もそれに対してやはり一定の見解を述べて、それらをお聞きいただいた上で公正中立な瀬戸山法務
大臣
の御意見を承りたいというように思いますので、
大臣
よろしいですか、私がちょっと一言申し上げても。 確かにクアラルンプール
事件
その他で外へ連れていってから解放するというような例があるというように言われましたが、しかし当時の浜局付検事などがここに
資料
として載せておられるもの、あるいはその他の文献をちょっと持ってまいりましたけれ
ども
、解放軽減にはそれなりの要件を付せればいいのじゃないですか。その場合には解放する場所がどうであるとか、あるいは身体の安全が必ず保証されておるときとか、あるいは、
要求
して取るものだけを取って解放したのじゃこれはあたりまえの話ですから、
要求
して取らない前に解放するとか、一定の要件をつけるということをした上で、なおかつそういうぐあいに悔悟の情を示したら解放軽減するという
考え
をとるということは、私が繰り返し言いますように、この犯行を犯す者が確信犯であって、
目的
を遂げなければ絶対に解放しないという場合だけでなしに、
規定
の仕方自体は、
過激派
以外のいろいろな人であっても、たまたま思慮の足りなさからこういう犯行を犯したという者も入るわけですから、そして、そういう者にとってこそ解放軽減の
規定
というのは一定の
意味
を持つわけですから、そういう点を考慮して
大臣
に御答弁を願いたいと思います。
瀬戸山三男
246
○
瀬戸山国務大臣
私
ども
の立場は、応援演説じゃなくて
先ほど
刑事局長
から申し上げたような事情で、解放軽減の
規定
はこの際は必要でなかろう、こういう立場であります。いま正森
委員
の言われた
考え
方も一つの
考え
方だと思いまするが、現状の実態の
事案
を見まするとそこまでする必要はない、こういう
考え
でやっておるわけでございます。
正森成二
247
○正森
委員
私は、
大臣
に政治的にお話を申し上げたいのですが、私
ども
も、この
法案
に該当するものが
過激派
のみであり、あるいは非常に悪質な暴力団のみであり、そしてその
要求
が、たとえばこの間のクアラルンプール
事件
その他のように、国家等に拘束されておる犯人の釈放等を
要求
するとか、そういうものである場合なら、この構成要件で解放軽減がなくてもこれはあれですけれ
ども
、それ以外のものも含まれるような構成要件になっておるわけです。ですから、そういう点については、
刑法
改正
草案には解放軽減の
規定
が詳細に入っておるわけですから、
刑法
改正
草案にありますような解放軽減の
規定
を入れておく。それを抜いてしまって、今度の
法律
というのは一番きついところだけをえり分けて、二階級特進しあるいは三階級特進して、そしてそのエッセンスだけを
規定
しておるという危倶を非常に抱くのです。
法律
として
人質
強要罪の類型が必ずしも十分でなかったから
規定
する必要があり得るということは認めますけれ
ども
、そういう気がするわけですが、再度、
人質
強要罪についての、
刑法
改正
草案についてはそういうものが全部あったのに、その中の一番重いところだけをピックアップしているという点について
——
過激派
のあんなことがあるからと言われるけれ
ども
、しかし構成要件から、
過激派
だけに適用するとは書いてないわけですからね。
瀬戸山三男
248
○
瀬戸山国務大臣
先ほど
申し上げましたように、正森さんの御意見も一つの御意見として承っておるわけでございますが、実は最近の特に
ハイジャック事件
等は、御
承知
のようにまことに深刻な場面が出でおるわけでございます。でありますから、死刑論の話もたびたびここでも出ますが、あの当時も、こういう
犯罪
に対しては、やはり
要求
した段階で死刑に処すべき価値のある
犯罪
だという意見も
国会
でも相当出たわけでございます。われわれも、そういう御意見は御意見としていろいろ検討いたしました。しかし、これを
要求
した段階で死刑となると、実際問題としてそういうことがあるかどうかわかりませんけれ
ども
、しかし人間でございますから、これは最後のぎりぎりの死刑までするということは、やはり反省の
機会
を与える一つの材料としてでも、その段階では死刑にすべきでない。死刑に関する国際情勢といいますか、世界的な
考え
方等も入っておるわけでございますが、やはり人命を何とかして助けたいというのが大きなねらいでありますから、途中まではそうあっても、人命を殺さないようなことが一番の願いでございます。でありますから、
要求
しただけでは、殺さなければ死刑になるようなことはないんだ、こういうことで死刑は外した、これは解放減軽に入るかどうかは別問題として、そこまで
考え
て
立法
をしたということは御理解いただきたいと思います。
正森成二
249
○正森
委員
私がいま申し上げたようなことを言いますのは、
過激派
だけに適用があるのではなしに、やはり構成要件を充足すればそれ以外のいろいろな、思慮の若干足りない結果起こした人にも、これほど厳罰をもって臨まなくてもいい人にも適用があるというおそれがあるからであります。これはよく引用されておりますから申し上げるまでもないのですが、暴力
行為等
処罰
に関する
法律
が大正十五年に提案され、成立しましたときの江木国務
大臣
が「それから労働なり、小作なり、其他水平運動などを、此
法律
に依って取締る意思があるかどうか、是は全くさう云ふ意思を持って居らぬのであります」云々、「此
法律
の
目的
として、労働運動であるとか、或は小作運動であるとか若くは水平運動であるとか云ふが如きものを取締ると云ふ
目的
は、毛頭持って居らぬのであります」というように、たしか本
会議
だったと思いますが、二遍にわたって同じ発言をしておられるわけです。ところが、それにもかかわらず、暴力
行為等
処罰
に関する
法律
違反の
事案
を見ますと、暴力団等だけでなしに、一般の大衆団体に非常に適用されたケースがあるということでございますので念のために聞いておる、こういうことになるわけです。 私がいま江木さんの発言を読みましたが、
大臣
は、暴力
行為等
処罰
に関する
法律
が、暴力団あるいはそれに類するものだけでなしに、一般小作争議や労働運動に適用されたということは御存じですか。
瀬戸山三男
250
○
瀬戸山国務大臣
詳細なことを存じません。
正森成二
251
○正森
委員
法務省
……。
伊藤榮樹
252
○
伊藤
(榮)
政府委員
暴力
行為等
処罰法
が労働運動あるいは農民運動に関連して生じた暴力事犯に対して戦前において適用されたということは
承知
いたしております。戦後は、御
承知
のように労働基本権が憲法上保障されまして、労働運動に不当な干渉をするということはもちろん
政府
全体として努めて避けておるわけでございますが、労働争議の争議
行為
そのものではなくて、その争議
行為
をめぐって不当な実力行使による違法
行為
、こういうものが行われました場合には、時に暴力
行為等
処罰法
による共同暴行とか、そういう
規定
が適用された例が戦後も存在するということは
承知
しております。
正森成二
253
○正森
委員
警察庁、警察庁の「
犯罪
統計書」がございますね。「
犯罪
統計書」でおよその傾向を言ってください。
小池康雄
254
○小池説明員 暴力
行為等
処罰
に関する
法律
で検挙した検挙件数、検挙人員の四十一年から五十二年までの傾向を申し上げますと、四十一年は、総件数七千二百八十九件、人員一万四千四百七十九人でございまして、それが徐々に減少してまいりまして、五十二年では、検挙件数四千六百八十二件、人員で一万八百八十人、こんな
状況
になっています。
正森成二
255
○正森
委員
そのうち暴力団
事件
の件数と人員は幾らですか。
小池康雄
256
○小池説明員 お
答え
いたします。 四十一年中総件数七千二百八十九件のうち、いわゆる暴力団
事件
の件数は二千八百九十一件、人員で言いますと、一万四千四百七十九人の総件数に対しまして、暴力団
関係
が四千七十一人でございます。それから最近の五十二年では、総件数四千六百八十二件に対しまして、暴力団
事件
が二千五百十六件、それから人員にして、一万八百八十人の総件数に対して四千二百五十二人、こういう
状況
でございます。
正森成二
257
○正森
委員
私はここに少し古い
犯罪
統計書も持っておりますが、たとえば
昭和
三十八年というのをとってみますと、総件数が四千百十五件で、暴力団
事件
が二千六十三件、人員は九千二百四十二人で、暴力団
事件
は三千六百四十三人ということで、ここに全部統計がありますけれ
ども
、読み上げると時間が長くかかりますから全部省略します。しかし、こういうのを見ていきますと、大体
事件
の多い少ないはございましても、件数でほぼ二分の一が暴力団
関係
者である、人員で二分の一以下、ときには三、四割ぐらいが暴力団
関係
者であるということは統計上言えると思うのですね。ということは、それ以外の半数あるいは六割ぐらいは、初めの江木さんの
国会
での答弁にもかかわらず、暴力団
関係
者以外に適用されておるということになるわけです。ですから、本件も
過激派
の
取り締まり
に適用するということでございますけれ
ども
、しかし実際問題としては、
過激派
に適用されるだけでなしに、特に第一条については、それ以外の若干の思慮に欠けた、そして構成要件該当事実に触れるような
行為
をした国民に適用される可能性は依然として残っておる、こう思うのですね。ですから、局長に伺いますが、あなた方は本法を提出される
提案理由
には
過激派
対策
ということを非常に強調しておられますけれ
ども
、しかし
法律
はできた以上はひとり歩きするわけですから、できてしまった以上は、構成要件に該当する限りは、それが
過激派
であろうと何人であろうと適用するというように思っておられるのじゃないですか。それともかつての江木さんのように、そういうことはございません、
法律
制定の段階だけでも
過激派
にだけ適用いたしますというように答弁しますか。
伊藤榮樹
258
○
伊藤
(榮)
政府委員
刑罰法令でありますから、構成要件に該当する場合には適用がございます。たとえば、
過激派
でない者が犯しました最近の事象をとってみますと、長崎のいわゆるバス
ジャック
事件
、これは明らかに構成要件に該当すると認められますので、あのような
事件
が今後あればこれが適用になるものと思います。
正森成二
259
○正森
委員
長崎のバス
ジャック
事件
だけでなしに、およそ構成要件に該当する場合にはやはり適用するという
考え
でしょう、言うまでもないことですけれ
ども
。
伊藤榮樹
260
○
伊藤
(榮)
政府委員
適用するとかなんとかいうことよりも、構成要件に該当する
行為
があればこの条文によって
処罰
をされる、こういうことでございます。
正森成二
261
○正森
委員
大臣
、時間でございますから、御退席いただく前に一言だけ伺っておきたいと思うのです。 いま約一時間にわたっていろいろ伺いましたのは、いま
刑事局長
がいみじくもそう
答え
られたように、刑罰法規である以上は、構成要件に該当する場合には該当するものとして処置する、こういうことに当然ならざるを得ないわけで、幾ら
法案
の提案説明のときには
過激派
あるいはこれに類する凶暴な事犯というように言っていましても、問題によっては二人以上共同して凶器を示して、その凶器は用法上の凶器で、わりとちゃちなものもある、
要求
自体も歯牙にもかけるに足らぬとは言わぬにしても、非常に子供じみた
要求
もあるという場合でも、この
法律
は適用になるのですね。そうだとすると、やはり刑が一般類型として無期もしくは五年以上の懲役であり、解放減軽の
規定
もないというようなことは、政治的には問題があるというように私
ども
としては
考え
ざるを得ないのですね。これについて何らかの形でしぼりをかけられるお気持ちはございませんか。
瀬戸山三男
262
○
瀬戸山国務大臣
いかがでしょうか、私が
承知
しておりませんでしたけれ
ども
、
先ほど
ずっと以前の江木司法
大臣
の
国会
での答弁を引用されました。暴力
行為等
処罰
の
法律
ができて、これはそういうもののねらいでやるわけであります。したがって労働争議その他に適用すべきものではない、これはあたりまえのことでございます。ただし、労働争議であろうがほかのことであろうが、その
法律
に適用される、これは労働争議以外のことでありますから、適用されるような事態が起これば、
法律
としては取り締まらなければならぬ、こういうことになるのじゃないかと思います。 この
法律
でもそうでございまして、多くの事犯は
過激派
等によって起こる場合がある、これに対して
対策
を立てなければならぬ、対応しなければならぬ、そのための
法律
でありますが、いわゆる世間で言う
過激派
以外でも、これと同じような
犯罪
が起これば、これは取り締まらざるを得ないわけで、これは
過激派
以外だからいいのだというわけにいかぬ。ねらいは多くの場合、
過激派
がああいうことをやっておるから、これに対しては国家治安上といいますか、国民生活上これに対応策を講じなければならないが、その以外はこういうことをやってもいいのだというわけにはいかぬのじゃないでしょうか。
正森成二
263
○正森
委員
私の
質問
を必ずしも正確に御理解でないと思うのですが、私はいままで一度もこういうことをやってもいいというようなことを言ったことはないので、そういう聞き方をされておると困るのです。ただ、構成要件自体としては、
過激派
だけでなしに、思慮の浅いことからつい犯してしまったというものも入るのだから、そういうものについて「凶器」というところを厳重にするとか、あるいは構成要件の下限をもう少し
考え
るとか、そういう配慮が必要ではないかと言っているので、そういうことをやってもいいというようなことは一遍も言っていないのです。そんな
考え
違いをしてもらっては困る。
瀬戸山三男
264
○
瀬戸山国務大臣
やってもいいとおっしゃったとは言わぬのですけれ
ども
、そのほかに適用してはならぬようなことではないということでございます。 ただ、いまおっしゃったように、これはいつの場合でも同じでありますが、同じ形の
犯罪
でも、よく調べてみると、これは思慮が浅かったとか、えらいおかしなことだというような場合には、これは酌量減軽に応ずる一般
刑法
の原則があるわけでございますから、形が同じだから形が同じように罰しなければならぬということではないのじゃないかと思います。
正森成二
265
○正森
委員
これ以上論争はしませんけれ
ども
、幾ら酌量減軽をしようにも、下限が決まっておれば、酌量減軽では一回できる場合、二回できる場合がありまして、一定以上に重ければ幾ら下げようと思ってもそれ以上は下げられないという限度があるわけです。爆発物取締
罰則
の場合は七年以上の有期懲役、こうなっておれば、一度減軽しましても三年半で、その場合には、事情から言ってどれだけ執行猶予をつけようと思ってもつけられない、こういうことにもなり得るわけです。ですから、その点についての問題点を指摘しておる、こういうわけであります。 そこで、警察庁に伺いたいと思いますが、
過激派
による
人質
強要の犯人で、現在までにつかまったのがおりますか。
福井与明
266
○福井説明員 まず、四十五年三月三十一日の
日航機
「
よど号
」
ハイジャック事件
でございますが、これの実行犯九人は、
委員
御
承知
のように北朝鮮へ行っております。ただ、これの謀議等に参画しました人物七人を逮捕しております。それから、これの前段の、たとえば資金を得るための
強盗
予備とか犯人蔵匿等で六人を検挙しております。 それから、四十七年の二月十九日から二十八日にかけての
浅間山荘
の
事件
でございますが、これは二月の七日に榛名湖畔で不審な車を見つけたのが発端で一連の
事件
を検挙するわけでございますが、
浅間山荘
に十九日から二十八日の間、管理人の細君を
人質
にして立てこもった犯人五人を含めまして十七人を検挙しております。これは明示の
要求行為
はございませんけれ
ども
、やはり安全に自分たちをどこかに逃亡させろといった黙示の
要求
は含まれているだろう、こういう事犯でございます。 それから、四十八年の七月の二十日にパリ発東京行きの
日航機
が五人の犯人に乗っ取られております。これは残念ながら検挙者は出しておりませんけれ
ども
、この五人の中に一人
日本
人が含まれておるということで
捜査
をやっておりますが、
日本
赤軍の中のいわゆるコマンドとしてかなり名のある人物ではないかということで
捜査
をやっておる事犯でございます。 それから、四十九年の一月三十一日のシンガポール
事件
でございますが、シンガポールにありますシェルの石油製油所を四人の犯人が砲撃して、フェリーボートに立てこもって、このボートに乗っておりました五人の乗員を
人質
にして海外へ逃亡するための飛行機を
要求
する等した事犯でございますが、この四人の犯人の中には
日本
人が二人含まれておるということで
捜査
をしております。 それから、この
事件
に関連をしまして、まだこのシンガポール
事件
が進行中の時点で、二月の六日に在クウェートの
日本
大使館が五人の犯人に占拠をされる事犯がございました。PFLPと名のっているゲリラでございますが、一連の
事件
について
捜査
をやっておる、こういうことでございます。 それから、四十九年の九月十三日にオランダにありますフランス大使館を三人の
日本
人ゲリラが占拠をしまして、当時フランスに拘禁されておりました
日本
赤軍の古家優と名のる人物の解放を
要求
した事犯でございますが、これでは、その後にストックホルム
事件
で逮捕しました西川純の調べ等を通じまして三人の犯人を割り出しております。さらにこの実行犯以外に謀議に参画した重信房子、吉村和江、これも
国際手配
に付しておる、こういうのがございます。 それから五十年の八月四日に例のクアラルンプール
事件
がございましたけれ
ども
、これは
日本
赤軍と思われる五人の犯人が実行したわけでございます。これでは、その後の
捜査
で奥平純三を逮捕したわけでございますが、残念ながら昨年の九月二十八日の
日航機
乗っ取り
事件
で
国外
へ連れ去られた、こういうことでございます。 それから、一番新しい
事件
が昨年の九月二十八日の
日航機
乗っ取り
事件
でございますけれ
ども
、これでは実行犯五人のうち四人を割り出しまして
国際手配
に付しておる、こういう
状況
でございます。
正森成二
267
○正森
委員
この種事犯は
捜査
、逮捕が非常に困難であるということはわかりますが、いま御説明がありましたのを聞いてみましても、一部国内での共謀した者等を逮捕されたというのは非常に御苦労であったと思いますが、せっかくとっつかまえて起訴したのをまた
要求
されて釈放したり、実際上、
ハイジャック等
をやって
人質
で重大な
要求
をした者を国内で現実に
処罰
してしまうということができにくい状態であるということは非常に遺憾に思うのですね。 それで、時間が大分たちましたのでごく簡単にで結構ですが、この間の成田空港の管制塔の
事件
について、管制塔の十六階には約五人の管制官がいたのですね。あれが屋上へ逃げて、しかも屋上まで追跡してこなかったからよかったのですが、追跡してくればあの五人は
人質
になり得る可能性は否定できなかったのではないのですか。
福井与明
268
○福井説明員 これは現在
捜査
中でございますので、事実
関係
の詰めを残念ながら正確に時間を追って申し上げかねるわけでございますけれ
ども
、大体例のマンホールから出てきた犯人らが入っていった、一時ごろというふうに申し上げておきますが、これから始まるわけでございます。犯人が正門の入口から入りまして、エレベーターが三つございますが、一番左のエレベーターは三階までしか参りません。三階から十三階まで直行でございますけれ
ども
、どう入ってすぐにあったエレベーターに乗ったという
状況
がいままでの調べでは事実のようでございますから、そうしますと、右側か真ん中のエレベーターを使って、それも七階にはガードマンがおりますので
——
これは気がついておりません、恐らく八階まで直行したであろう、こういうふうに見ております。そうして後、階段を駆け上って、十六階に通じます十五階に実は電子ロックのかかっておるドアがございますが、恐らくそこへ行って入れずに十四階へ戻って、十四階の北側にあります非常口から彼らは外に出た。外に出た後、今度は警察官等が追ってこれないように、外側からとにかくあけられないような
措置
を講じた。こういう
状況
の後警察官が行くわけでございますけれ
ども
、火炎びん等が飛んでくることを警戒しながら階段を駆け上っておりますので若干の時間はかかっておりますが、警察官が行って十四階のマイクロ無線室のドア、二つございますけれ
ども
、
最初
のドアを引いて、すぐにあいたようでございます。それから中のドアは若干
——
今度は押すドアですが、これは若干あいておったということで、中が見える
状況
。すでに火炎びんが一部投げられておるし、中は若干荒らされておる
状況
であったようですが、それを見届けてすぐ今度は十六階に通ずる十五階のドアのところに行っているわけです。そこで警察官だからあけるようにということでやっておるわけです。その時点ではすでに応答がございませんので、恐らく管制官は離脱した後であったろう、こういうふうに見ております。 これのよしあしはなかなか論じられませんけれ
ども
、実は電子ロックをわれわれも過信をしておったわけでございますが、火炎びんを電子ロックのかかったドアの外側である程度投げられているようですが、その煙がドアの周辺に
——
いわゆる非常にがんじょうな、網戸というよりもっとがんじょうな鉄の格子みたいなものを御想像いただければよろしいわけですけれ
ども
、空気の流通をよくするための
部分
がございます。そこから煙が入っておりますが、こういうものを見て退避をされたようですが、電子ロックというものをわれわれも過信しておったように、非常にがんじょうなものであれば、まだその時点では、犯人らが入ってくるまでにはある程度の時間はあるわけでございますから、二十分程度あったのではなかろうかと思いますけれ
ども
、いや、このロックは大丈夫なんだから容易には入ってこれないということで、
人質
等にも容易には、この中にいる限りは大丈夫といった自信があればよろしかったであろう、こういうふうに思います。もっとも物理的にはがんじょうなものでして、犯人らもあけることができませんでしたし、われわれの方の機動隊がエンジンカッター等であけようとしてもあかなかったというほどがんじょうなものではございますけれ
ども
、心理的には不安になって、そういう時点で離脱をされた、こういう実態があったようでございます。
正森成二
269
○正森
委員
私の
質問
の
趣旨
も必ずしも正確でなかったと思いますが、いま御説明になりましたようなことは地方行政
委員会
、運輸
委員会
等で質疑がございましたので、私も一部傍聴に参って知っているわけです。私がいまここで聞きたかったのは、屋上へ離脱したでしょう。その後北側からいわゆる第四インター等の連中がハンマーでガラス戸をぶんなぐって入りましたね。それで管制官は屋上へ離脱したのですが、その屋上へ離脱する入り口というのは屋上からあけられないようになっていたのか。あるいは、十六階に入りさえすればそれがあくようになっていたら、第四インターの連中が屋上へ行って、おりてこいということでその五人を
人質
にするような状態はあり得たのか、こういうことを聞いているのです。
福井与明
270
○福井説明員 十六階から屋上へ出ますのは二重のハッチになっているようでございます。
最初
管制官五人おられたようですけれ
ども
、五人とも屋上へ出られてハッチを閉めようとしたら、下のハッチがあいておる。そのままでは閉められない。ですから、そのままの
状況
ですと、犯人らにここから屋上へ出たことを察知されるということで、管制官の一人がもう一度十六階へ戻られたようです。そうして、電気スタンドのコードでいわゆる一段目のハッチを縛って、それで引き上げて、結局一段目も二段目もふたをして、さらにその上に若干はしごか何かを載っけられたようですけれ
ども
、一見そこから上に出たことがわからないようなことをやられたようです。ですから、そういう程度の時間的な余裕はあったと申しますか、というのがいまつかんでおる事実
関係
でございます。
正森成二
271
○正森
委員
この
人質
処罰
の
法律
の
審議
の一環として、成田空港の場合も、一番大事なところの五名が
人質
になる可能性があったのじゃないか、そして、不法な
要求
をすれば、ただ中がめちゃめちゃにつぶれておるというだけ以上の重大な事態もまた発生したのじゃないか、こう思われるのでいまの
質問
をしたわけです。それに関連して、きょうは運輸
委員会
の
質問
や地方行政
委員会
の
質問
ではありませんから限度は心得ておりますが、しばらくの間私が疑問に思っていることを
人質
に関連して聞いておきたい、こう思うのです。 私が非常に疑問に思いますのは、地方行政
委員会
でいろいろ
質問
があり、すでに答弁も一部あるようですけれ
ども
、あなた方は一万四千人近い部隊を動員して、一番心臓部である管制塔の入り口付近に何名の部隊を配置しておられたのですか。あそこに一万四千人もおられるわけですから、私は警察の編成は知りませんけれ
ども
、最小限玄関口付近に一個大隊ぐらい置いておかれればああいう事態は十分防げたのじゃないんですか。
福井与明
272
○福井説明員 あの事態が起こりました時点での大まかな
状況
を申し上げますと、一つは、三里塚の第一公園に集まりました八千人、そのうちの四千五百人が極左暴力集団でございますが、それのデモが出発をしておる、こういう
状況
がございます。それともう一つは、菱田小学校跡に集まりましたインター等の集団、それが三つに分かれておるわけですけれ
ども
、途中は省きますけれ
ども
、七百人が旧星華学院のグラウンドの方へ行っておる、こういう
状況
がございます。それから四百人が横堀の方に行くわけですが、さらにそれが分かれて三百人が第五ゲートの方へ行って、例の
航空
保安協会の研修センターに火炎びん等を投げて機動隊員に規制をされるわけですが、そういう
状況
が一つあるわけです。それから、この四百人のうちの百人は横堀の方へ行きまして、これも部隊に規制をされて、二十五人が逮捕されております。 それから、星華学院の方へ行った七百人ですが、これのうちの一部九人が四台の車に乗って東峰十字路の方へ行って、その四台の車のうちの二台をそこで自分たちで焼いて、結局
道路
を一部通れない
状況
をつくってしまった。そうして残りの車二台で第九ゲートに入ってくるわけでございます。それから星華学院に集まった七百人、大体七百ということでよろしいわけですけれ
ども
、これが朝日台三差路の方へ来るわけでございます。この場所で部隊の規制を受けております。四百人が規制を受けて、そのうちの二十八人がそこで逮捕されておるわけです。ですから、その四百人は大体そこでこちらの規制を受けたということです。それで規制を受けて、前の方に残っておった三百人が車二台を先頭にして八の二ゲートから入ってくる、こういう
状況
があったわけです。 ですから、そういうデモに対する警戒、それから横堀方面のそういう警戒がございます。そういう
状況
の中で部隊の運用をやっておったわけですけれ
ども
、管制塔の付近には、管制塔を含めての警戒に当たっておる部隊が二百二十いたというふうに
記憶
しております。もっともこれは管制塔だけでございませんで、あの地域の警戒に当たったという機動隊でございます。ですから、管制塔そのものは、電子ロックを過信をしておったということがございますけれ
ども
、空港署の署員四十五人程度で警戒をしておった、こういう
状況
でございます。
正森成二
273
○正森
委員
私はいまの
質問
をしておりますのは、
法律
をつくることも非常に大事だけれ
ども
、それ以前に、警察としてそういうのを防止し、鎮圧するということがもっと大事ではないかということを一言申し上げたいために言っておるわけです。 それで、電子ロックを過信しておられたようですけれ
ども
、電子ロックは数カ所にあったようですけれ
ども
、十六階だけではなしに十三階にも非常に重要な機器があったようですし、それでいろいろな
過激派
が乱入してくるというのに、一万四千人もおる部隊の中の数十名しかそこにいないということは非常に問題があるわけで、全体で千数百名しかいないというなら、これはあっちゃこっち手当てをしなければならぬということはわかりますけれ
ども
、やはり今度の警備の点については、私は
最高
首脳部及び幕僚陣の方にむしろ重大な欠陥があったのではないか。個々の警察官はよくがんばったということは多くの場合言えるでしょうけれ
ども
、肝心の指揮をすべき
最高
指揮者と参謀に、戦争の何たるかを知らない、人を得ない点があったのではないか、あるいは手落ちがあったのではないかという気が非常にするわけです。そういう点は私の方から一言だけ申しておきたいと思うのです。 あと一、二点ですが、成田の青写真を入手しておったのじゃないかということで、コマンドたちが縦四十センチ、横七十センチの管制塔周辺の青写真を示して、マンホールから地下水道伝いの侵入ルートを説明したということで、前田という男が前日にそういうことをやっておる。これは空港内部に通報者がいたのではないかということが広く言われておるわけです。あるいはマンホールを出てから一直線に裏口に行って、その裏口のかんぬきが外れておったとかというような説もある。ということになりますと、そういう点については現在
捜査
中でしょうけれ
ども
、十分にその可能性があるものとして
捜査
をしているのですか。
福井与明
274
○福井説明員 前田というのが管制塔の十六階管制室へ侵入したと申しますか、あの十五人なり二十人ぐらいのグループのリーダーではなかろうかという推定は一応しておりますが、この人物、詳細をこちらに話すような
状況
ではまだございませんので、写真を示して云々というようなことを本人から聞ける
状況
ではございません。 それから管制塔裏の通用口云々というのがございますけれ
ども
、これは確かに彼らが出たと思われる京成空港駅の付近のマンホールから約七十七メートルいわゆる構内の三号線寄りと申しますか、二十メートル
道路
をこちらの方へ参りますと、三メートルばかりのフェンスが十八メートルばかり引っ込みまして、その
部分
に三メートル、三メートル、合計六メートルの外開きのいわゆる通用口がございます。これが確かに当時あいておったという
状況
があるようでございます。ですから、その
部分
から管制塔前の庭と申しますか、そちらの方へ行ったことは十分あり得ると思いますが、恐らくそうであろう、こういうふうには見ております。 それから、さっき部隊の全般的な運用に責任があるのじゃないかということでございましたけれ
ども
、さっき大まかな彼らの動きを申し上げましたが、それぞれ規制をしたり検挙をしているわけでございます。
航空
保安協会の方へ来た三百は規制しておりますし、横堀の方に行ったのは規制をして二十五人逮捕しておりますし、それから星華学院から朝日台三差路の方に来たのは二十八人を検挙しておりますし、八ゲのところで四人をまた検挙しておるわけです。 管制塔の中に入った、これは入られたことはまことに申しわけないと思っておりますけれ
ども
、十五人は逮捕いたしましたし、それから九ゲートから入ってきた九人はもちろん逮捕しておりますし、それから八の二ゲートから入ってきた車二台を先頭にした三百人も、三十四人は中で逮捕をして、あとは排除をしておるわけです。ですから、全体の部隊の配置に大きな誤りがあったというふうには
考え
ておりません。管制塔へ入られましたのは、この全般の運用とは別の、マンホールから出てきた組でございますので、これの実査は不十分であった、これは重々反省しておりますが、実際の部隊の運用とは別の、いわゆるマンホール組に入られた、こういう
状況
でございます。
正森成二
275
○正森
委員
最後に、マンホールの検索その他、その方のゲリラに注意を向けてなかった非をお認めになりましたから、あえて言いません。 しかし、
課長
、私は今度の
事件
を見ておりますと、桶狭間の戦いを非常に思い出すのですよ。あのときは、われわれは立川文庫その他講談で読みますと、今川義元が数万の大軍を率いていくわけですね。それで織田信長との県境で丸根、鷲津のとりでなどは落として、それぞれ数百人の織田勢を討ち取って勝利を上げるわけだけれ
ども
、肝心の今川義元の本陣は防備が薄くて、そして折からのあらしの中で警戒不十分だった。そこをわずか干名か、せいぜい二、三千の小勢に急襲されて、結局大将が首を取られてしまうわけでしょう。そしたら、結局上落しようというのはぐるっとひっくり返さなければいかぬ。あなた方は一万四千の部隊で第二要塞やら何やらいかほどやりましても、一番中心のところの首を取られたら、結局開港は一カ月なり二カ月なりおくれるということになるので、事の軽重を判断して部隊配置を行うという点で、やはり手落ちがあった。しかも、ゲリラがそういうぐあいに入ってくるマンホール等の検索を怠ったということとそれは相乗作用を起こしておるということは、やはり指摘せざるを得ないと思うのですね。法務
大臣
は国家公安
委員長
ではありませんから、答弁の責任は必ずしもないかもしれませんけれ
ども
、せっかくいままでおられたわけですから、
政府
の
関係
政治家として御意見を承りたいと思うのです。
福井与明
276
○福井説明員 五月二十日に開港日も設定されておりますので、ここでああだこうだと、あっちが悪かったこっちが悪かったということを、内部的な責任おっつけのようなことは厳に慎まなければならないことでございますが、ただ、管制塔に入られたという点につきまして重々反省をしております。 そこで、開港日に向けまして、運輸省なり公団なり
関係
当局との
関係
を一層緊密にしまして、しかも、そういう当局で、空港そのものなり関連の施設について、人的、物的な防護体制の
整備
をしていただく、これについては具体的な申し入れをしております。それと相まって、
所要
の警察部隊の警備を強化をして、とにかく三・二六
事件
を前向きに生かして、五月二十日の開港を万全の体制でやり遂げたい、こういうふうに
考え
ております。
青木正久
277
○青木
政府委員
直接の担当ではございませんし、また、いま
捜査
中でございますので、何とも申し上げられませんけれ
ども
、結果から見まして、管制塔にああいう人が乱入して機器を壊したということは事実でございますので、
政府
の一員といたしまして、やはりそれなりの手落ちがあることは認めざるを得ないと思いますし、また、責任も痛感をしておる次第でございます。
正森成二
278
○正森
委員
これで
質問
を終わりたいと思いますが、警察庁、最後に一つだけ御注意申し上げて、もし調べられるなら調べていただきたいことがあるのです。 それは、私はここに「三里塚闘争ニュース」という、連帯する会ニュース一九七八年三月二十七日号外のコピーを持っております。これは「三・二六空港突入、管制塔占拠!三月開港策動打ち砕く!」ということで、三重塚闘争に連帯する会というのが発行しているものですね。これには一面の一番上段の目抜きのところに「占拠され破壊された管制塔」という大きな写真が載っておるわけです。これは角度から見て、明らかにヘリコプターからでなければ写せないものであります。非常に奇妙なことに、それから三、四日たちました三月三十一日のある新聞の夕刊に、それと全く同じ写真が載っておるのですね。これは私は顕微境みたいなもので拡大してよく見てみましたけれ
ども
、屋上に立っております五人の管制官の位置及び太陽の影、それまでも全部そっくり一緒です。ですから、これは恐らくは同一の写真であろうというように思われます。そうだとしますと、当時第四インターその他の
過激派
の連中がヘリコプターを飛ばしておったということは証拠上認められないわけですから、この写真は新聞社から、あるいは新聞以外の同一の第三者がヘリコプターで撮って、それを新聞社と三里塚闘争に連帯する会に提供したというように見ざるを得ないと思うのです。そうしますと、私は、これは非常に
考え
てみなければならぬ問題を含んでおるというように思うわけであります。そういう事実をつかんでおられるのかどうか、もしつかんでおられるとすれば、どういうようにその
関係
をお
考え
になっているか、伺いたいと思います。
福井与明
279
○福井説明員 三里塚闘争に連帯する会と申しますのは、これはあの闘争に参加をしております市民団体の有力なものの一つでございますが、第四インター
日本
支部の影響力と申しますか、そういうものが強い団体である、こういうふうに見ております。そういうもののいわゆるビラに、しかも新聞に出るよりも早く写真が出るということは、まことに奇妙なことであるというふうに私たちの方でも実は注目をしております。ただ、こういうことは軽々に決断を出すわけにまいりませんので、しかも、開港日に向けて、いわゆる幅広い国民の理解と協力と申しますか、そういうものに立ってわれわれも警備をしていかなくちゃならぬわけでございますから、報道
関係
に対して協力を求めなくてはならぬ
部分
もいろいろ多いわけでございますが、事実は事実として、十分に調査を進めてまいりたい。 ただ、一般論と申しますか、この問題を離れまして、現地で反対運動に取り組んでおる人たち、あるいは極左暴力集団のところへ行って取材をするのに、彼らににらまれるとなかなか取材をしづらいという実態があるようでございますけれ
ども
、これはこの事実と別にしてそういうことがあるようでございますが、この写真のことについては慎重に検討してみたい、こういうように
考え
ております。
正森成二
280
○正森
委員
私は、報道の自由等にいささかも干渉しようなどとは思っていないのです。しかし、いま
課長
がいみじくも言いましたように、彼らのところへ取材に行くのに何かおみやげを持っていかなければいかぬと、そうはおっしゃいませんでしたけれ
ども
、にらまれては困るというような御発言がありましたけれ
ども
、福田総理も本
会議
の答弁の中で、いままで
政府
も国民も寛容過ぎたのじゃないかというような発言をわざわざしておられるわけです。ですから、いま非常に問題が一面であるのじゃないかという、構成要件で無期もしくは五年以上の懲役という非常に重い罪を基本類型として定めるということで、国民全体がそういう
政府
の要望にこたえていろいろやるべきことはやろうとしておるときに、写真をそういう第四インターの影響を受けたところへ提供するということは、これは私は何か違法
行為
に触れるとかなんとかいう
意味
で言っているのではないのですけれ
ども
、これは国民の一人として非常に疑問に思う。ですから、そういう点についても、もし報道の自由に干渉しない程度でわかることがあれば、これは無事に開港してからでも結構ですから、一度お知らせ願いたいということを要望して、私の
質問
を終わります。
山崎武三郎
281
○山崎(武)
委員長
代理 次回は、来たる四月十四日金曜日午前十時
理事
会、午前十時十分
委員会
を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。 午後五時三十分散会