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1978-02-28 第84回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十八日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 美濃 政市君    理事 加藤 紘一君 理事 片岡 清一君    理事 平泉  渉君 理事 金子 みつ君    理事 武部  文君 理事 中川 嘉美君    理事 米沢  隆君       愛知 和男君    関谷 勝嗣君       中西 啓介君    中村  靖君       堀内 光雄君    鈴木  強君       西宮  弘君    野口 幸一君       長田 武士君    宮地 正介君       藤原ひろ子君    依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         公正取引委員会         事務局審査部長 野上 正人君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  柳館  栄君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         大蔵省銀行局中         小金融課長   吉居 時哉君         農林省畜産局牛         乳乳製品課長  中島 圭一君         水産庁漁政部長 矢崎 市朗君         通商産業省生活         産業局窯業建材         課長      大高 英男君         自治省行政局行         政課長     鹿児島重治君         自治省財政局財         政課長     関根 則之君         物価問題等に関         する特別委員会         調査室長    曽根原幸雄君     ————————————— 二月十三日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願武部文  君紹介)(第一一三九号)  同(西宮弘紹介)(第一一四〇号) 同月十七日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願佐藤観  樹君紹介)(第一一八〇号)  同(武部文紹介)(第一一八一号)  同(横路孝弘紹介)(第一一八二号)  同外二件(米沢隆紹介)(第一一八三号)  同(近江巳記夫紹介)(第一二二九号)  同(武部文紹介)(第一二三〇号)  同(美濃政市紹介)(第一二三一号)  同(近江巳記夫紹介)(第一二四三号)  同(近江巳記夫紹介)(第一二九五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一二九六号)  同(美濃政市紹介)(第一二九七号) 同月二十一日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願外一件(  依田実紹介)(第一三〇六号)  同(佐野進紹介)(第一三六五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一三六六号)  同(美濃政市紹介)(第一三六七号)  同(西中清紹介)(第一三九五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一三九六号)  同(荒木宏紹介)(第一四二五号)  同外一件(木原実紹介)(第一四六五号)  同(中村茂紹介)(第一四六六号)  同(西宮弘紹介)(第一四六七号)  同外一件(横山利秋紹介)(第一四六八号) 同月二十七日  ネズミ講禁止法立法化に関する請願荒木宏  君紹介)(第一五二二号)  同(春田重昭紹介)(第一五二三号)  同(荒木宏紹介)(第一五五七号)  同外十件(片岡清一紹介)(第一五九五号)  同(金子みつ紹介)(第一五九六号)  同外一件(水田稔紹介)(第一五九七号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第一六二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ————◇—————
  2. 美濃政市

    美濃委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀内光雄君。
  3. 堀内光雄

    堀内委員 私は、宮澤経済企画庁長官の当委員会におきますところの所信表明関係をいたしまして、自由民主党を代表して若干の質問をさしていただきます。  昨今の物価指数は、卸売物価小売物価ともに落ちついた状況で推移いたしておりまして、これは非常に御同慶にたえない次第でございます。  そこで、一月二十四日の閣議決定されておりますところの経済見通し、本年度の三月末の見通しとして、卸売物価年度平均プラス〇・六%、対前年同月比で〇・六%マイナスという数字、並びに消費者物価におきましては、年度平均七・六%以内の上昇、対前年同月比で六・九%以内の上昇にとどめるということが決定の中にございます。その後大体一カ月以上たったわけでございますけれども、本年度もあと一月を残すだけになってまいりました。年度平均卸売物価の〇・六%の上昇見込み、消費者物価の七・六%以内の上昇にとどめるという、この当時の一月の状況の、以内という表現、この数字がもう少し明確につかまえられるところまで来たのではないかというふうに感じられるわけでございますが、現時点での卸売物価並びに消費者物価年度末の見通しというようなものがお答えいただければと思うわけでございます。  同時にまた、新しく経済企画庁長官に御就任になられたわけでございまして、長官物価問題に対するお考え、基本的な方針あるいは重点的な取り組み方というようなもの、こういうお考えについてもあわせてお話しいただければと思うわけでございまして、その点についてのお答えをいただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま卸売物価及び消費者物価につきまして、おのおの年度平均上昇率年度中の上昇率につきまして、政府見通しと実績とがいまどのような感じになっているかというお尋ねでございました。それで、堀内委員も御承知のように、いわゆる年度中の上昇率と申しますものは、年度末と年度末を比べるという性格のものでございますので、無意味ではございませんけれども、三月なら三月という時点で何か非常に特殊な事情が起こったときにこの数字は大変に動き得る数字でございますので、物価情勢もこうなってまいりましたから、私としては、今後、年度中という一時点での比較というものを余り意味を持たせることはどうであろうか、むしろ年度中のずっと平均ということの方が国民生活にははるかに大きな意味を持つものでありますので、そういうことでこれからの見通しはいきたいというふうに実は考えておるわけでございます。これは余談でございましたが……。  さてそこで、まず年度中の上昇率、今回はともかくそういう見通しを六・九といたしておりますので、これはことしの三月に何か非常にとっぴな事情がどの程度に起こり得るであろうかということに大変に大きく左右されるわけでございますが、今日までの生鮮食料品中心とした暖冬による好影響というものの裏目が、なるべく三月に出ないようにとあれこれ努力をいたしておりますが、何がしかのことがあるといたしましても、しかし六・九というようなことまではもう恐らくいかないで済むであろう、六%台の低い方ぐらいのことは申し上げても間違いがないのではないかと思っております。  他方年度内、年度平均の七・六でございますが、七・六というところまではいかないので、仮に七がつきましても、六というのはかなり上の方の七でございますので、もうそういうことにはならずに済むのではないか。いままで、もうかなり毎月毎月の勝負は出ておるわけでございますから、三月によほどとっぴなことがありましても、平均値になるわけでございますので、まあ七%台であるといたしましても、この六というような大きなはしたがつくというふうには考えておりません。  それから卸売物価でございますけれども、ただいまマイナス一・五ぐらいのところを歩いておるわけでございます。これは、まず政府見通しの中に年度平均年度中もおさまることは間違いなかろうと思っております。
  5. 堀内光雄

    堀内委員 いま卸売物価消費者物価お答えをいただきましたけれども、大臣所信のあのお答えをいただけるのでしたら、お願いをいたします。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 失礼いたしました。  先ほど御指摘のありましたように、卸売物価マイナスという状況であり、消費者物価もかなり落ちついた動きでございまして、ことに消費者物価につきましては、五十二年度中に九%から始まりまして、いろいろ少しずつ高低はございましたけれども、九、八、七、六、四というところまで参っておりますから、落ちついた基調であると考えております。  そこで五十三年度におきましては、私ども、財政が主導になりまして、いわゆる生活関連等々の公共投資をかなり大幅にいたそうとしておるわけでございますけれども、やはりこれが順調に行われますためには、物価情勢が安定しておるということがきわめて必要であると考えております。したがいまして、公共投資を大いにやるから物価はどうなってもいいんだというような考え方は、実は公共投資そのものが順調に行われるということの指標になるわけであると考えております。それでございますから、五十三年度中におきましても、現在あらわれておりますような物価安定基調というものはぜひ大切に守ってまいりたいと考えております。  ただ、卸売物価につきましては、マイナス一・五というような現状は極端な減量経営の反映であろうと思いますので、これはとてもマイナスでなくてもいいというぐらいには存じておりますけれども、しかし、安定してほしいと考えておりますことには変わりございません。  それからもう一つは、公共投資を行いますときに、直接すぐに影響を受けますところの建設関連資材価格でございますが、これはいわゆる仮需要あるいは便乗といったようなことから極端な価格の高騰がございませんように、政府としても、先般来各省打ち合わせまして、いろいろ注意もいたし、また万一そういうことがありますときには、それなりの行政上の指導も必要であろうと存じますとともに、他方でそのような情勢になってまいりましたものについては、行われておりますカルテルでありますとか、あるいは操業短縮でありますとかいうものを徐々にやめていってもらうという方向になければならないと思います。しかし、全般的には、セメントにいたしましても、棒鋼にいたしましても、生産能力そのものは相当の余裕を残しておるわけでございますので、施策が誤りさえしなければ、大きな値上がりが正当化されるような、そういう情勢ではないというふうに考えておるわけでございます。
  7. 堀内光雄

    堀内委員 ただいまのお話の中にも、卸売物価についてマイナスというような状態は余り芳しいことではないというふうにお話しになりました。私も全くそのとおりだと思います。卸売物価の面では、マイナスというのは、やはり企業活動が非常に圧迫をされて産業活動の低迷化しているもの、これを物語っているのではないかというふうに思うわけでございまして、手放しでそう喜べることでもないような気がいたします。  しかし一方においては、円高による卸売物価引き下げというものが大分あるようにも感じられるわけでございまして、この点については、この委員会における政府からの御答弁でも、たしか卸売物価を二・五%ぐらい引き下げ効果円高が行っているというふうにも聞いているわけでございます。  そういう意味から考えてまいりまして、今度は来年度物価というものを考えてまいりますと、ことしは円高が昨年と比べて、同じ二月二十八日と昨日を比べましても、昨年の二月二十八日は二百八十三円三十銭から二百八十一円五十銭、昨日の数字のドルの取引は二百三十八円十銭から二百三十九円というような状態で、約一八%以上ダウンをしているということ、円にとっては切り上げになっているということでございます。こういう効果が二・五%の卸売物価引き下げに貢献をしているというふうに考えますと、五十三年度では、当初においてはこの効果が残っていくかもしれませんが、その先ではそれほど円高というものがことしのような極端なものが出てくるというふうにはちょっと考えていくわけにはいかないと思います。そうなりますと、非常に卸売物価の面でも厳しい点も出てくるのではないか。片方では、景気刺激策がどんどん打ち出されてまいりますので、そういう意味合いからも、今度の五十三年度というものは、卸売物価においても、またこの卸売物価消費者物価にも響いてくるということを考えてまいりますと、なかなか五十三年度物価というものは厳しい面を持っているように思われます。  そこで、一月二十四日の閣議決定の五十三年度経済見通しというものを見ますと、卸売物価が五十二年度対比二・七%の増加、消費者物価プラス六・八%というような数字になっておるわけでございます。そこで、こういう新しい状況円高効果がもうなくなってくるような状態片方では景気刺激策がどんどん打ち出されてきて、物価を突き上げる要因も出てくるというふうな感じになっているときに、現在は比較的物価は鎮静化している、安定をしているというような見方で余り問題にされていないような面があるような気がいたしますけれども、五十三年度はこういう点で考えますと、物価問題として一番重要なときになるのではないかというふうな気がいたします。同時に、非常にむずかしいときになるのではないかというふうに思うわけでございます。特にそういう事態の中で一歩かじ取りを誤りますと大変な状態になるのではないかというふうな気がいたします。それだけに、経済企画庁中心とする物価に対する監視、リードというようなものは、ぜひいままで以上にお取り組みをいただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。  そこで、昨日の二月二十七日に物価担当官会議というのが行われておりまして、ここでまとめられた当面の対策というものを拝見いたしたわけでございます。その中で第一は野菜の値上がり対策というものが出ておりまして、これとともに重要なものとして、第四項目に建設資材値上がり対策というものが挙げられております。私は、当面の最大の物価の問題というのはこの二つではないかというふうな気がいたしております。特に公共事業住宅建設、この二つが今年度景気対策の重要な柱になっているわけでございまして、そういう重大な柱になっているものに関連する建設資材に対しまして細かい配慮が行われないと、気がついたときは大変な値上がりをしているというようなことにもなりかねないと思うわけでございます。  ところが、建設資材というものを見てまいりますと、すでに値上がりが始まっているのですね。一つには、鉄鋼を見ましても、小形の丸棒あるいはH形鋼などが一月から非常に上がり始めておりまして、特に二月に入ってからは急上昇をいたしていると思います。たとえば、異形の値段を見ますと、昨年いっぱいは大体トン四万九千円から五万一千円ぐらいでずっと安定をしておりましたけれども、一月には五万三千五百円になり、その後二月になって最近の十日ほどの間には五万八千円にまで上がってきているというような数字が出てきているわけでございます。また、木材の方を見ましても、この間の経済企画庁輸入品動向調査数字を見ますと、非常にいい数字が出ておりまして、何か下がっているというようなことが出ているのでございますが、実際に末端の小口の需要家のところあるいは建築会社、こういうところへ参りますと、値下がりなんというのはほんの一部にあっただけで、全く恩恵には浴していないというような数字でございます。それどころか、ベニヤ板あたりはもうすでに上がり始めていたり、丸太についてはこれからの需要期に向かってどうも強気含みで動き出してきているというような話が出てきております。  こういう問題についてそれぞれ伺おうと思っていたのですが、時間が一時間から四十分に短くされてしまいましたので、この辺は少し私が申し上げるだけで割愛いたしますが、その上さらに一つ重要なことは、基礎建設資材としての生コンですね。生コンクリートについては少し問題があるような気がするわけでございます。  きょう委員長のお許しをいただいて資料をお配りいたしてございますが、この資料の二枚目のところをもとにしてちょっと御説明をしたいと思うのです。この資料は、生コン業者販売統一価格表というものをつくって、この値段で生コンを売るようにということで出している、各組合員に配布した資料そのものでございます。五十二年の八月に、関東地区の生コン業者協同組合法による共販制度というものを実行することになりまして、組合員統一価格表に基づいて販売をするようにということでこの価格表を配布したわけでございます。しかし、この価格は八月から十月までの間においては実際には守られておりませんでした。上の表にもございますように、実勢価格というのは、五十二年の八月以前では八千五百円から九千円程度になっておりますし、九月から十一月についても九千五百円ぐらいになっておりまして、この表では大体一万三百円から一万七百円で売るようにという数字が出ておりますが、それ以下で推移をいたしてまいったわけでございます。  この共販制度実施に移しましてから、並行して、今度は生コン協同組合メンバーと全く同じメンバーで構成されておりますところの生コン工業組合というのがございます。この工業組合がいわゆる団体法によるところのカルテル数量制限申請をいたしたわけでございます。そして十一月にこれは通産省認可になったということになっております。このカルテル認可になった途端にこの表が非常に効果を発揮して、この表の統一価格が守られることになってしまったわけであります。最初共販制度を敷いていって統一価格を決める、これは一つも問題になることでもないと思います。また、今度は中団法からのカルテルというものを一方で申請をいたしまして数量制限するということ、これも一つを取り上げてみれば問題ないことであると思います。それぞれ合法的なことだと思うのでありますが、この共販制度統一価格に追い打ちをかけて、数量制限するカルテル実施をしたというところによって、統一価格が本当に今度は完全に守られる状態になってしまったということ、これはちょっと問題が出てくるんではないかというふうに思うわけであります。このカルテル数量需給関係を、認可をとりましてからは組合全体ではシェアを全部分けまして、それぞれの業者シェアを超える分は組合で全部吸い上げて、ほかの足りない業者に配分をするというようなこともやっているわけでございまして、そういう感覚からまいりますと、窓口を一本化したり、完全な独占価格形態を行えるような状態になってきておるというふうに思えるわけでございます。  特に共販制度を行っている東京地区の場合をながめてみますと、協同組合メンバーは百四十七社、それと全く同じメンバー工業組合メンバーカルテル申請しておる。代表者が違うだけだということになるわけでございます。こういう一つ一つをとったならば合法的なんだ、しかし二つを合わせて一本という形になって考えてまいりますと、実質的に競争の制限を行うようなことが可能になり、現に行われてきてしまっておるということを考えてまいりますと、この共販制度並びにこのカルテルという問題はやはりちょっと問題があるべきものが存在するんじゃないかというふうに私は考えるのですが、公取の方の御見解はいかがでございますか。
  8. 橋口收

    橋口政府委員 協同組合共同経済事業としての共販事業の問題と、それから中小企業団体法に基づきます調整規定に基づく安定事業の問題と、問題は二つあると思うのでございます。まさに堀内先生もその問題を整理してお話しがございました。  まず最初協同組合による共販事業でございますが、生コンクリート業界に関しましては、最近共販事業が大変な勢いで普及をいたしておるわけでございます。もともと生コンクリート業界弱小企業の集まりでございますから、それが協同組合を形成して共同経済事業を行うということは、それ自体は合法的であると思います。またむしろ奨励すべきことであると思うのでございます。ただ、御承知のように、生コンクリートは商品の性質から申しまして、そう長い時間日もちがしないものでございますから、したがいまして、ある地域協同組合共販事業が行われて、しかもその地区シェアが高くなりますと、実際問題として生コンクリート共同事業というものが一種の地域独占性格を帯びてくるわけでございます。したがいまして、その地区におきます協同組合共販事業ウエートが小さい場合はよろしいわけでございますけれども、そのウエートが半分を超える、六割、七割ということになりますと、確かにおっしゃるような問題が生じてまいります。したがいまして、法律の規定によりまして、協同組合共販事業ではありましても、仮に不公正な取引方法による供給を行うとか、あるいは不当な価格のつり上げを行うという場合には、独占禁止法の適用ができるようになっておるわけでございます。ただ現実問題として、まだ共販事業普及の段階でございますから、実際問題としてその規定を適用した事例はないわけでございますけれども、一応たてまえとしては適用できるようになっているわけでございます。  それから調整事業の問題でございますが、これは関東中央生コン工業組合が昨年の十一月から調整事業を行っておりまして、生産数量制限をやっておるわけでございます。それがまさにいまおっしゃいました関東地区共販事業と累積的な効果を及ぼしまして、確かに数字で見てまいりますと、昨年の十一月以降値段が上がってまいってきております。そのほか、統一価格の強制とかいろんな問題を私どもも聞いておるわけでございまして、確かに問題があるのじゃないかという感じがいたしておりまして、ことしの二月になりまして、主務官庁である通産省に対しまして再検討をお願いいたしまして、通産大臣の御判断で、二月いっぱいで、つまりきょうで関東中央生コンクリート工業組合調整事業は打ち切りになるというふうに承知をいたしているわけでございます。
  9. 堀内光雄

    堀内委員 私は別に特に独占禁止法に触れるかどうかという問題を提起しているわけではないわけでございまして、コンクリだとか生コンだとか鉄鋼だとか木材だとか合板、いろいろこういう業者というものは、いままで、総需要抑制の後遺症というか、こういうものを受けて非常に気息えんえんとして苦しい経営状態を続けてきたものでございますし、景気対策でこういう業種が回復するということは結構なことだというふうに思うわけでありまして、これについて特にどうこう言うわけではないのですが、ただ景気回復に便乗してどんどん値上げをして高値安定をさせ、そして暴走してしまうようなことになっては大変なことになるというふうな心配を私はしているわけでございます。  そこで通産省に伺いたいのですが、共販制度というものを行政指導で行い、そして同時に共販制度によりまして、この表にございますように高値でもう一つの安定ができてしまっている。この共販制度の少ないところ、影響力の少ないところ、山梨県、静岡県のところを見ますと、現在、十二月以降一月、二月においてもまだ八千八百円、九千三百円というような実勢の値段で売られておりまして、この共販制度実施しているところは一万一千五百円、一万六百円というような値段で実行がされているということになっているわけでございます。ずっと需給関係も直ってきておりますので、こういう高値安定を仕上げるような行政指導をしてしまったこと、あるいは地域格差があるという問題、こういうような問題の現実というものをどういうように見られるかということと、一万一千五百円というか一万二百円というか、大体一万一千二百円ですね、その値段は適正な値段だというふうにお考えになられるか、その辺をひとつ承りたいと思います。
  10. 大高英男

    ○大高説明員 御説明申し上げます。  生コンにつきましては、たしかオイルショック以降需要が激減いたしたこともございまして、業界自体が大変な過当競争でございます。そういうこともございまして、私ども生コンをこのままの状態で放置することができないということで、五十一年ころより生コン業界とその再建策について検討してまいったわけでございます。その一つの方策といたしまして、先ほど来お話がございますように、協同組合によります共同販売事業によりまして、適正な価格まで値段を上げていくというふうなことを図っておるわけでございます。  先生御指摘の、東京都、その他山梨、静岡等の地域差があるというふうなお尋ねが一つございましたけれども、これは、生コンと申しますのは一つの非常に地域的な商品でございます。しかも材料の占めるウエートが非常に大きゅうございます。セメント、それから骨材——骨材につきましてはまさに地域差がございまして、東京地区とそれから甲府、静岡等の間には相当な値開きがございます。そういうことがまず値段の差のある一つの大きな一つの原因でございます。また、この共販事業を行うに当たりまして価格決定等を行うに際しましては、私どもの指導方針といたしまして、ゼネコン等のユーザー筋に十分説明を行って理解をとりつつ行うということと、それからその価格については行き過ぎのないようにということを繰り返し業界に対して指導しておるところでございます。
  11. 堀内光雄

    堀内委員 鉄鋼も東京と地方との値段が違うというようなことをいま言われましたけれども、いわゆる末端の需要家のところにまいりますと、大体去年までSR24の十六ミリというのは、五万四、五千円だったものが一月くらいから六万円に上がっておる、これは同じです。東京と地方とが差があるとかなんとかというお話ですが、そういうものでもございません。いまの生コンについては需給関係によってとおっしゃるけれども、そうじゃなくて、やはり共販制度があるかないかということによって、これだけの値段の安定ができるかできないかということになるわけなんでして、そういう言い方ではちょっと通用しないと私は思います。
  12. 大高英男

    ○大高説明員 骨材の値段で申し上げますと、東京地区が、建設物価数字でございまして三千百円というふうな値段でございますけれども、甲府では二千三百円、静岡では二千三百五十円、こういうふうな値開きが一つございます。それからもう一つは、まさにおっしゃるとおり、共販事業によりまして価格が上がっているという事実はもちろん私どもは存じております。
  13. 堀内光雄

    堀内委員 いまのその値段はどうなんですか、適正なものだと思われますか。
  14. 大高英男

    ○大高説明員 現時点ではこれは行き過ぎた価格だと私どもは思っておりません。
  15. 堀内光雄

    堀内委員 そうすると、地方の八千八百円が一万一千二百円まで上がるということは適正であるというふうにお考えですか。
  16. 大高英男

    ○大高説明員 そういうことではございませんで、生コン値段と申しますのは地域によって差があるというのが現実で、いま骨材の数字でも申し上げましたように、地域の差があるのは当然だと思っております。したがいまして、各地区の協組単位に考えましてそれぞれの適正な値段がある、こういうふうに思えるわけでございます。骨材と申しますのは、ちょっと補足しますと砂利、砂等のことでございます。それから山梨とか静岡の値段が東京並みになるのが適正かどうかということに対しては私どもはそうは考えておりません。骨材の値段が差がございますので、当然値段には地域によって差ができてくると思います。
  17. 堀内光雄

    堀内委員 余り時間もありませんのでそう論議をしているわけにもいかないのですが、ただ皆様方のところの資料に集まってきておる数字だけを信頼して考えられていると実際の値段実勢価格というものはどんどん変わってきている。特に皆さんのところは二カ月くらい前の数字が集まってくるんじゃないかと思うのですが、われわれのところは、毎日毎日の仕事を政治家というのは見ていかなければいけませんから、昨日は幾らであったか、おとといは幾らであったかということをつかまえていろいろ検討しているわけでして、その辺にもかみ合わない面があるんではないかと思います。そういう意味で、これからは非常に急ピッチでこの問題は進んでいくような気がいたしますので、二カ月前の資料ではなくて、毎日毎日の資料をつかまえながらこれに真剣に取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。  生コンだけではなくて、建築資材は、さっきも申し上げましたように、鉄鋼だとか木材もすでに値上がり基調にあるわけでございます。特に三月以降は、景気対策の面も住宅の面も公共投資の面も出てまいりますから、いわゆるシーズンになってくるというふうに思うわけでありまして、これが値上がりしないような対策を早急に強力に打っていかなければならないと思うわけでございます。  そこで、物価担当官会議の結果を楽しみにして待ってきのう見たわけなんですが、第三項の建設資材価格監視のところを見ますと、きわめて抽象的でございます。読んでいる時間がありませんのでお読みいただきたいと思いますが、実際問題として非常に抽象的で、これじゃ本当に監視ができるものかどうか、値上がりを防げるものかどうか非常に疑問になるわけでありますが、公共事業等の施行促進推進本部が中心になってということが書いてあるんです。しかし、公共事業等施行推進本部というのは、資材の供給だとかあるいは工事の消化、こういうものが円滑にいく方がやはり第一義になってくるのではないかと思うわけでございまして、資材の値上がり監視というものは多少第二義的なものになりかねないというふうな気がいたします。そして同時にもう一つ公共事業とともに景気対策の柱になっている住宅投資というものを考えましたときに、個人住宅がこれからどんどん着工して、希望を持ってこれを推進をしていく人が多くなってくる、そういう公庫融資を受けて家を建てようという人が、建てようと思ったらすでに資材が高くなってしまって高い家しか建てられないということになると、これは大変なことになると私は思うわけでございます。そういう意味で、建設資材の値上げを防ぐため、こういうことを目的に経済企画庁中心として、建設資材物価監視の役割りを果たすような組織、対策本部のようなものを設けていただいて、値上がりの防止対策を行っていくべきではないかというふうな感じを私はいたすわけでございますが、経済企画庁長官のお考えはいかがでございますか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は建設大臣ともお話をし合っているところでございますけれども、建設大臣御自身が、建設関係資材が上がってしまうと、結局所期の公共事業も予定の量だけ行い得ないし、住宅についてもお話のように同じことになるということはかなり明確に考えられておられまして、建設大臣御自身がその点御心配でございます。ただ、堀内委員の言われますように、それはそうでも、末端に行きますと、とにかくちょっと高くてもやるだけのことをやればいいという気持ちが起こりやすい、行政にはそういうところがございますから、よくそれは気をつけなければならないと思います。昨日も公共事業推進本部の会議がございましてこの問題も出まして、よくみんなで申し合わせたことでございますし、また、物価担当官会議でも特別の部会を設けておりますので、私どもできるだけ積極的にこの問題については関心を持ち、発言をして、関係各省の協力を得てまいりたいと考えております。
  19. 堀内光雄

    堀内委員 もう時間もありませんので、次に、二月二十三日に経済企画庁が発表なさいました輸入品の三十三品目についての調査結果、この中でマグロ、エビ、タコというものについては、輸入価格が下がったのに小売価格上昇してしまっているということで世論の批判を浴びていたものでございます。翌日の新聞には、水産庁では値下げを指導するというようなことが伝えられておりましたけれども、その具体的なものがきのうの物価担当官会議で出された資料のものでございますか。
  20. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 水産物の価格がこのたびの調査におきまして非常に芳しくない結果が実は出ております。実は水産物につきましてはいろいろと調査面の複雑な問題がございまして、一つは、たとえばマグロ、タコ等につきましては、その間でもって加工のための目減りが出てきたり、調理サービスが加わったりというようなことで、比較的小売価格の中に占める輸入価格のコストというのはたとえば二〇%程度になるというふうな問題が一つございます。それから、マグロもそうでございますが、エビ等の問題につきましては、同一種類の同一のサイズのものでも、産地の差あるいは品質の差でその日における価格形成自体も非常に食い違いが出てくる、調査の上ではつかまえられないような特色というのもいろいろあるわけでございます。そこで、このたびの調査をもとに、私どもとしてはその実態が現実どうなっているのか、エビならエビの品種別にその辺の動向というものをつかまえました上で、具体的な措置、指導というものには取りかかってまいりたいと思っておりますが、しかし、現実、すでにこうした調査の結果というものは業界にも詳細に伝えまして、できるだけそれを適正に反映した価格形成をするようにという指導はすでに始めております。  それから、いまお尋ねの、きのうの物価担当官会議におきます措置でございます。これは、実はすでにその前からこういうことは考えておりまして、昨年の春、夏以来、水産物につきましてはいろいろな諸要因が重なりまして急上昇いたしまして、御迷惑をかけた経緯があったわけでございますが、その後逐次鎮静化しているとはいうものの、現在でもいわゆる五十年を一〇〇とする物価指数で見ますと、一般物価に比べましてかなりの高水準にあるわけでございます。そこで、これは連日というわけにはまいらないまでも、消費者の需要の強い物資につきまして、日を定めて、できるだけのサービス販売実施するというふうなことをぜひ実施したらどうかというふうなことを私どもからも強く要請をいたしまして、業界とも相談の上で実施をしよう、こういうことで企画されておるものでございます。具体的内容は、いままさに詰めておる最中でございますが、このたびの調査結果の問題もございますので、それも踏まえて極力ひとつその一環として強くこの制度の実現を図っていきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  21. 堀内光雄

    堀内委員 時間もありませんので、申し上げるだけ申し上げたいと思いますが、いまからその内容、実情を調査してということでは非常にまどろっこしい話でございまして、国民の方は、新聞に、水産庁で検討するとか値下げの指導をするとか言われれば、それはすぐにお役所というものはやってくれるものだと思って大いに期待をいたしているわけでございまして、その場逃れのようなお答えをされると、ますます役所に対する信頼を失ってしまうようなことにもなりかねないというふうに思うわけでございます。そういう意味で、真剣に具体的な問題に取り組んで、一日も早くそういう対策を打ち出していただきたいということと、具体的な問題と同時に、この水産物については、流通問題に大きな問題点があるというふうに思います。こういう流通問題について、もしできましたら、問題意識をどのように持って、どのような指導を行っていきたいかということをお答えをいただいて質問を終わりたいと思います。
  22. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 ただいま先生の御指摘のありました流通問題も一つございますが、実は私ども、その前に現在の水産物の供給体制、これ自身が根本的に今後の物価関係価格安定上の問題としては最大の問題だということで、これに対しまして、とにかくできる限りの供給量を確保していくことをまず第一にということで、現在もいろいろ予算編成等も考えているわけでございます。  流通問題につきましては、確かに水産物の流通についてはまだ非常に複雑であり、かつ未整備の分野がたくさんございます。私ども、一つ一つそうした機能を産地流通確保センターのような形で整備しながら、さらにその過程におきます需給の面で価格形成に行き過ぎがないような、適時適正な価格指導を強化していくとともに、一時的なギャップにつきましては、品目によっては、やはり輸入面について弾力的な運用を図りながら、その場その時に応じます体制を整えていくことが必要だというふうに思っておりますが、同時に、これからのもう一つの面は、比較的これまで未利用な資源、特にサバでありますとかイワシでありますとか、こういった赤身の魚、あるいはオキアミのような資源、こういうものを何とか食用に供していく、そのための技術開発、食品開発と同時に、これの消費者への供給の流れというものを円滑にしていく、これがやはり今後におけるもう一つのポイントではないかということで、これにもひとつ力を注いでいきたいということで取り組んでまいっておる次第でございます。
  23. 堀内光雄

    堀内委員 以上で質問を終わります。
  24. 美濃政市

  25. 武部文

    武部委員 この間、宮澤長官の本委員会におけるごあいさつをお聞きいたしまして、このごあいさつの中で、当面をするわが国の物価の問題に触れていろいろと数字を挙げてお述べになりました。たとえば卸売物価円高その他によって大変下がっておる、消費者物価も同様に安定基調に向かっておるし、特に昨年の十二月の物価高は五年ぶりに四%台にとどまった。さらに本年度に比して来年度は六%台、これは正式には六・八%ということのようでございますが、そういうことが随所に出ております。したがって、現在政府は、この物価の問題について、きわめて安定的な基調をとっておるから大変好ましい事態である、こういうふうにお述べになっておるわけでありますが、まず私は、最初にこの物価問題の認識について長官の見解を承りたいのであります。  国民は、一体この物価というものをどう見ておるだろうかということを二つだけ例を挙げて申し上げてみたいと思います。  一つは、本年一月一日、元日の朝日新聞の世論調査が発表されました。他の全国紙もそれぞれ発表しておりましたが、この一日の朝日新聞に、いまの暮らし向きを考えて、景気が回復することか、それとも物価が落ちつくことかどちらを優先的に選ぶか、こういう世論調査です。これについて、物価が落ちつくことを選ぶというのが五六%です。景気が回復することを望むというのが三六です。その他五、答えなし三。これを見ると、五六が物価、景気が三六、これが朝日新聞の元日の世論調査です。  ついせんだって自民党の広報委員会が世論調査を発表いたしました。これは例の、象だとかサルだとかウサギだとかライオンだとか、ちょっと次元が低い世論調査でございまして、これはちょっと問題になるわけですが、これは余り次元が低いのでどうでもいいのですが、問題は、その中に、やはりこれと同じようなことを調査しておられるわけです。この調査による答えは、景気の回復が多少おくれても物価の安定をすることを望むという数字が五一%です。景気の回復を優先してほしいという答えが二七%です。ほぼ朝日新聞の世論調査と同様な数字が出ているわけです。これは、いかに国民が、政府物価を安定した、安定基調にあると言っても、現実にそのように考えておる。だからこういうふうにあらゆる世論調査の中に出てくる。私はこれが国民の物価問題に対する認識だと思うのです。あなたのこの説明と、国民の実感とはこのように違うというように私は思うのですが、長官のお考えはいかがでしょうか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 世論調査をいたしますと、物価の安定が第一に国民の関心として出てくるということは、武部委員の言われるとおりに私も認識をいたしております。これはもう以前から現在まで変わらないところでございます。それだけ国民が物価の安定に関心を持っておるということはもう明らかでございますが、現在の問題は、そのこと自身に変わりはございませんけれども、どちらかといいますと、勤労者は一定の収入をある意味で保障されておりますから、その上では物価の安定というものがやはり大切であると考える。自営業者は、農業、水産業はともかくといたしまして、商業等の自営業者は所得は保障されておりませんから、ある程度景気回復がないとなかなか生活が困難であるという意識を恐らくかなり持っている。しかし、数で言いますと勤労者の数の方が圧倒的に多うございますから、アンケートではいつもそのような結果が出てくるということであろうと思っております。  そこで、ただいま私どもが考えておりますのは、勤労者自身が実は御存じのような深刻な雇用の問題を持っておるわけでございますから、かつての高度成長時代のように、勤労者といえども一定の所得は間違いなく保障されているという状況ではございません。したがって、何とかわが国の失業を減らしていきたい。政府も従来、時として不況脱出、景気回復というようなことを申してまいりましたし、また、それが国民にとってもわかりやすいスローガンでありますけれども、実際には人間のために経済があるわけでありますから、なぜ不況脱出をしたいかといえば、やはり雇用情勢を改善をしたい、失業者を減らしたいというのが一番究極の目的であるというふうに私考えておりまして、現在の情勢は、勤労者といえども決して所得が保障されているというほど安易な情勢ではないので、何とかして雇用情勢を改善して、昔のように完全雇用といきませんでも、失業者を減らしていきたい、そのためにはどうすべきかということが今回御審議をいただいております政府の予算案の基本的な考え方でございます。  したがいまして、国民の最大の関心事が物価にありますことはよく存じておりますけれども、それと同時に、雇用状況を改善することがやはり政治としてはそれと同じぐらい大切な目標だ、目的だというふうに考えておりますので、あのような予算を御審議願っておりますが、さりとて、先ほども堀内委員に申し上げましたように、何が何でも景気が出ればいいのだ、その結果、国民生活自身が物価の面で脅かされるということがあってはならないわけでございますから、そこのところの兼ね合いは非常にむずかしい問題で、まさしく五十三年度はそういう意味では物価問題というのが非常にむずかしい。行き過ぎてはならないという要素をどの程度にきちんと両方立てるかという問題を持っておりますので、そういう意識でこの物価行政をやってまいりたいと考えておるわけでございます。
  27. 武部文

    武部委員 私も、雇用問題が非常に大切だということもよく理解できますし、そうでなければならぬと思いますが、同時に、物価の問題を安易に考えるべきではないということを申し上げたいのであります。  総理府統計局の発表する五%とか六%とかという数字、それはそれなりの意味を持っておるだろうと思います。いま総理府統計局の四百五十八の品目が多いとか少ないとか、とり方がどうだとか、事実と違っておるとかいろいろなことを私どももかつてここで論議をしたこともございますが、それはそれなりの意味を持っておるかと思うのですけれども、現実に国民の実感とは大変かけ離れておるのだということを申し上げたいのであって、それがいま申し上げたような世論調査の中に出てくる。四百五十八の中には指輪があってみたり登山ぐつがあってみたり、何年に一遍も買わぬようなものが統計上入っておるということもだんだん国民は知ってきたはずです。  そういう中で東京都の都民の意識調査というのがこの間行われました。生活実感に対する意識調査です。その意識調査で、物価上昇をどういうふうに思っておるかという問いに対する答えが東京都から発表されておりますが、それを見ますと、総理府統計局の数字の二倍ないし三倍の物価上昇感じておるという答えが出ておるのですね。これは、確かにおっしゃるように、生活中心とした物資が特に値上がりしておることに対する敏感な認識の中からこういう数字が出ると思うのですが、平均的な数字というものが一体どれだけ国民の生活に結びつくだろうかということを考えると、なるほど総理府統計局の数字は、さっきから申し上げるように、一定の評価すべきものがあるかもしれません。同時に、国民の大多数を占める庶民が、この物価にどういう不安を持っておるだろうか、実感を持っておるだろうかということを調査をし認識することが、今後の物価政策の中には欠くべからざるものだということを私は前から主張してきたわけですけれども、今日なおこの東京都の都民の意識調査においても、やはりそのような数字が出ておるということが言えると思います。  そうして、今後の物価上昇についてどう思っておるかという質問に対する答えは、いまよりももっと上がるだろう、これが九三%という数字になっておるのであります。先ほどの長官の説明でありますと六%台、それも六・八%という数字ですけれども、それよりも下回るかもしらぬというような大変結構なことですけれども、それと同時に、いま申し上げたように庶民の側では逆にそうではない、もっと上がるだろうという認識を片一方では持っておるわけです。これは紛れもない調査の結果の数字ですから、私どもある程度それを認識しなければならぬと思います。  いま一つは、いま長官がお述べになりましたように、いま審議中の超大型予算といいましょうか、この問題が今後の物価問題、インフレにどういう影響を与えてくるだろうか、これも私どもとしては大変心配するところです。特に歳入欠陥と十一兆円の赤字国債のツケというものは間違いなく国民の財布に回ってくる。今度の予算案の中にも、すでに国鉄運賃の値上げだとか、酒税の値上げだとか健康保険料あるいは医療費、さらにはきょう新聞に出ておりますが、公団家賃の五千数百円の値上げあるいは牛乳の四円の値上げとかメジロ押しに出てきておる。こういうふうに公共料金の値上げがすでに待ち構えておるわけです。そうなってくると、この公共料金の値上げにつれて、今度は地方自治体もこれにならってくるだろう、これも予想しなければならぬ、このように思います。  そうなってくると、公共料金が上がれば当然一般物価へ波及することはいままでの歴史がこれを示しておるわけです。したがって、この超大型予算というものはインフレへの非常に大きな危険を伴っておるじゃないかと考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理府統計局の物価指数につきましてのただいまの御意見は、長年武部委員が御主張なさっておられることでございまして、私もよく存じております。  ただ、統計局の調査そのものは、一定時点における国民生活の標準的な型をとって物価調査しておるわけでございますから、その調査自身は私どもは信頼していいと考えておりまして、消費者との感覚の違いで申しますと、やはり消費者は比較的何度も買いますものが上昇する、これは生鮮食料品などに多いわけですが、その頻度の多いものについての値上がりを統計よりは強く感じるという心理がどうしてもございますから、そういうことが一つあるのではないだろうかと思っております。私どもとしては、やはり統計局の調査が一番信頼できるものではないかと考えておるわけであります。  しかし、それにいたしましても、ただいま二つのことをおっしゃいまして、一つは公共料金の問題でございました、もう一つはいわゆる大型予算の問題でございました。公共料金につきましては昭和五十三年度どの程度消費者物価影響がございますか、まだ未確定のものもございますのではっきりとは申し上げられません。一応一・五ぐらいではないかと想像いたしますけれども、十分値上げの内容が固まっておりませんので推定をいたしておる程度でございます。五十二年度もほぼそれ以内であったと思いますので、過去の年に比べますとまずまず、五十二、五十三というのは、公共料金が消費者物価に及ぼす影響は、無論皆無ではございませんけれども、非常に大きいという年ではなさそうに私ども考えておるわけでございます。  それから、大型予算との関連はもう先ほども申し上げましたとおりで、公共事業中心に工事が起こりますと、とかく物価を刺激しやすいことはおっしゃいますとおりでございますので、私どもとしては、公共事業から来る雇用効果を十分に最大にしたいと考えつつ、他方物価についての影響を最小限にとどめていく。非常にむずかしい仕事でございますけれども、そういうふうに運営してまいりたいと思いますし、また、実際にわが国の鉱工業の操業度から申しますれば、施策を間違いませんければまだまだ生産余力はたっぷりあると申しますか、むしろあり過ぎるというのがマクロの現状でございますから、その点は、間違いなく行政をやってまいりますれば、大きな物価上昇につながるということはないというふうに考えておるわけでございます。
  29. 武部文

    武部委員 そこで私は、具体的な物価問題を二つしぼって申し上げてみたいと思います。見解をお聞きいたしたいと思います。  一つ円高差益の問題であります。福田総理がこの円高差益を物価安定に生かせというふうに閣議で発言されたのは、昨年の二月十八日です。ちょうどあれから一年たっております。当時の円レートは二百八十四円でございました。去年の二月に、二百八十四円の当時に、為替差益の問題を物価安定に役立たせろという閣議発言があって、大々的に報道されたのであります。あれから一年たって、今日、間違いなく円は高くなって、それも乱高下はなくて、先ほどもお話がございましたように、現在二百三十八円から九円という円高になっておるわけですね。ああいうふうに物価安定に役立たせろと言っても、一つも中身がないものだから、国民としては大変失望しておるわけです。現実にそのことはこれから申し上げますが、ほとんどこれは実現していないというふうに見てよかろうと思います。御異論があろうと思いますが、私どもはそういうふうに見るわけです。この円高によって大変に困っておる企業がある一面、笑いがとまらぬほどもうけている企業がある。その最たるものが石油であり、電力であり、ガスであり、麦であり、肉であるというようなことは、当委員会でもう何遍も論議をしたところです。  そこで、円高差益を政府側は一体どのようにとらえておるだろうか、最初にこれをひとつお伺いをしておかなければなりませんから、それをお聞きいたしますが、通産省お見えになっておると思いますが、石油は五十年十二月の標準価格のときは三百二円のレートであります。今日二百三十八円ないし二百四十円台ということになってきて、一円円が高くなると一キロリットル当たりで八十五円の差益が転がり込む、これはもう通産省も認めておるところです。これに対して一体どのくらいな差益が石油業界の手に入ったと見ておるのか。九電力、これは当時二百九十九円のレートで値上げが決まったわけですが、一円円が高くなるに従って一年間に三十三億円の利益を九つの電力会社は得る、これも通産省も認めておるところだと思います。ガスは二百九十六円のレートで決定しております。このレートで今日までの差益は一体どのぐらい出ておるというふうに見ていらっしゃるのか、これをお伺いしたいと思います。
  30. 古田徳昌

    ○古田政府委員 石油につきましての御説明をさせていただきたいと思いますが、石油の場合、為替差益をとらえます場合に二つのとらえ方があるわけでございます。一つは原油を買い付けまして船積みする時点と原油代金の支払時点との間に為替レートの変動がありますと、それがユーザンス差益あるいはユーザンス差損という形で経理的に把握されるわけでございます。それからもう一つは、円高あるいは円安になりますと、ドル建てで原油は取引しておりますので、当然のことながら円ベースでの原油価格が変動するという形での把握の仕方があるわけでございます。これは、いわば円高あるいは円安によります原価の逓減ないし逓増というふうなことになろうかと思います。  第一の点につきまして数字を御説明いたしますと、四十九年、五十年は円安傾向にあったために、両年を通じまして約千億円の為替差損を計上しております。五十一年になりましてからの円高傾向を反映しまして、五十一年度の実績では約千億の為替差益、それから五十二年の上期では約九百億円の為替差益というのが、石油産業全体としての経理的に計上されております為替差損ないし為替差益でございます。  それから第二の点でございますが、これにつきましては、ただいま先生御指摘ございましたように、為替レートが一円円高になりますと、キロリットル当たり、現在の原油価格を前提としますと八十六円コストが下がるというような形になります。それを前提としまして、五十一年度に対しまして五十二年度が、上期実績が二百七十二円の為替レートでございましたが、下期の動向を織り込みまして一応の試算をしてみますと、これは私どもの概算でございますが、業界全体として約七千九百億円のメリットが出るというふうになっております。  他方、これはいわばこれだけのコストの逓減効果ということになるわけでございますから、差益としてつかまえるためには、コストの方がどうなるかということを見る必要があるわけでございますが、このメリットに対応しまして、五十二年の一月と七月、二度に分けましてOPECの原油価格の引き上げがあったわけでございます。最終的には一〇%の値上げがあったわけでございますが、この原油価格の引き上げに伴いますコストアップ要因が約五千五百億円、そのほか、五十一年度になりましてから関税の引き上げとかあるいは備蓄義務の遂行のための費用とか、あるいは消防法の強化に伴います防災費の上昇等がございまして、約七千億円のコストアップ要因が見られるわけでございます。  この両者を比べてみますと差し引き、五十二年度につきまして約九百億円の為替メリットがなお残るという形になるわけでございますが、実は石油製品価格につきましては昨年秋以降低落傾向にございまして、特にことしの一月になりましてから、一部企業が全製品平均二千円下げるというふうな発表もいたしまして、そういう形でこのメリットの分も、石油製品の価格の低落ということで相殺されていくというふうに私ども考えているわけでございます。
  31. 武部文

    武部委員 いまの石油の差益の数字ですが、私はあなたと何遍もやったし、きょうはもっと詳しくと思って用意したわけですが、数字のとらえ方がやはりちょっと違うのですね。この辺が私企業に対してあなた方がどれだけの利益を——私企業といっても、どれだけの手を入れて調べておるだろうかということを大変疑問に思うのですよ。それでこれから申し上げることがどんなに違うか、ひとつ反論してみてください。  あなたがおっしゃったように、四十九年、五十年の円安は確かにそうでしょう、そして五十一年の円高で、そこでとんとんですね。五十二年度平均レートはおっしゃるように上期は二百七十二円ですね、これは三百二円ですから三十円高。これで輸入の数量を掛けて出てくる金額は三千三百九十二億円、こうなるのです。それで下期は平均レート二百五十二円として計算をいたします。これは五十円高ですね。したがって六千五百三億円という円高の利益が出てくる。合計九千八百九十五億円。いま二百四十円ですから、平均レートは本来ならば二百五十二円よりももっと少なくなるはずです。こういうふうに見てくると、ここで約一兆円近い差益が出てくるはずだ、こういうふうに思うのです。あなたは七千九百億とおっしゃった、そこで大分違います。  それから、おっしゃるように二回のOPECの値上げもあったし、あるいは備蓄とか防災コストも要るとか、あるいは販売の手数料も要るとか、いろんなことを言っておる。これは業界の言い分をそのまま受けたとして、そこにあらわれてきた数字は約六千五百億なんですよ。向こうの言うことを聞いたとしてもそういうふうになる。そうなってくると、ここに当然一兆円近いものから、六千五百億というものを仮に業界の言うなりにまるにのんでも、三千五百億という差益が石油業界にはあるはずだというふうに私どもは見るわけですが、あなたのいまの答弁は約九百億ということをおっしゃった、これはいかがですか。
  32. 古田徳昌

    ○古田政府委員 先ほど私御説明いたしましたのは、五十一年度に比べて五十二年度がどういう傾向にあったかということで御説明したわけでございます。ただいま先生御指摘の数字は、五十年の暮れに標準額を設定した当時のレート三百二円で計算した数字だと承知するわけでございますが、その計算は私どもの方でしてみますと、先ほど御説明しましたと同じような計算で円高メリットが一兆六百億でございます。それに対しましてコストアップ要因が七千二百億ということで、差し引き三千四百億円のメリット、これは五十年十二月の標準額を設定したときの数字に比べるとそういう形になります。他方、これに対しましては、先ほど御説明しましたような最近の石油製品価格の低落傾向といったものがあるわけでございまして、その辺を考えまして全体として見ますと、これは二月、三月の製品価格の動向はまだはっきりいたしませんけれども、大体全体としては相殺する方向にあるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  33. 武部文

    武部委員 この辺は見通しの問題等もありますから必ずしも金額は一致いたしませんけれども、膨大な差益があることだけは間違いないと思います。数字はもっと詰めてみぬと、お互いに、私の言ったこともあなたは認識できないだろうし、あなたのこともどうも私は了解できないからそれは別にしまして、相当の利益が出ていることも間違いない。  先ほど電力会社について私は一千億と言いましたが、間違いありませんでしょうか。
  34. 服部典徳

    ○服部政府委員 電力会社の為替差益のお尋ねでございますが、電力会社は御指摘のように五十一年度に料金改定を行いまして、その際に為替レートを二百九十九円ということで査定を行ったわけでございます。したがいまして五十二年度に入りまして上期は実績で二百七十二円でございました。下期の十月−十二月は二百四十八円、それから一月は二百四十二円でございますが、二月、三月も同様に二百四十二円ということで試算をいたしますと、御指摘のように五十二年度で為替差益としましては、OPECの原油価格値上げを差し引いた残といたしまして一千億、総括原価に対します比率は一・八%という数字でございます。  なお、ガスにつきましても同様の計算をいたしますと百八十億円、総括原価の二・七%という数字でございます。
  35. 武部文

    武部委員 電力とガスについては私どもの方の数字と大体一致しておるようです。  そこで長官お聞きいただきたいのですが、先ほど総理の発言を私がここでちょっと述べたわけですが、同時にこのときにこういうことを福田総理は述べています。円高相場が一年程度の幅をもって安定していくということになるとガス、電力、そういういわゆる公共的な性格を持つものの料金体系は検討を加えなければならぬということを述べておられるわけです。これは間違いなく福田総理の発言であります。それから長官の前の倉成長官と私どもがこの委員会でいろいろやりとりしたときに、私はここに書き上げて持ってまいりましたけれども、こういうことを言っております。倉成長官は、消費者は為替相場についての知識が乏しい、だから、輸入業者円高による利益を値段に反映させなくても消費者には対抗手段がないので、政府は厳しく監視する必要がある、こう答えておられました。ですから円高の差益というものに対する消費者、私どもも含めてそうだと思いますが、なかなかその実態をつかむことがむずかしいし、それがどう料金体系に反映しておるだろうかということも一般の消費者から見るとなかなかむずかしい、だから政府自身がこういうものに対して厳しく監視する必要があるのだということを述べておられました。私ども同感だと思って、ぜひそのようにやってほしい、そのためにこの輸入品の追跡調査をされたわけですね、一回三十六品目ですか。この間また十二月と一月におやりになった。結果は私たちもいただいております。個々に検討はいたしておりますけれども、まだ結論は出ませんが、少なくともこの中で一番国民の生活に直接結びつく、あるいは日本の成長にも大変必要な石油と電力とガスというものは、先ほどお述べになったように莫大な差益があるのです。これが一体料金体系にどう影響しておるだろうか、差益が還元されておるだろうか、これを調べてみると、ほとんどと言っていいほどこれは還元をしていないというふうに見なければならぬ。これは時間の関係で余り多くを申し上げることができないのですが、ただ単に値上げを延期するという程度のもので一体この差益問題というものを国民が理解するだろうか、こう考えていかなければならぬと思います。  たとえば電力の値上げのときのことをずっと私調べてみたわけですが、五十一年六月から八月にかけて二二・五六%の値上げをやっています。そのときのレートはさっきからお話が出たように一ドル二百九十九円のレートであります。そのときにこれは二年原価方式というのをとっているわけですね。三年間は現行のままでいく、値上げをしないでいくのだ、こういうことです。当時そういうレートでこういう原価計算ができておって今日一千億の莫大な為替差益を得ておる。それが、ただ単に値上げを延期するという程度のもので一体これを認めていいだろうかということに私は大変疑問を持つのですが、長官どうお思いでしょうか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 電力につきましては、ただいま武部委員の御説と政府委員からの御説明とは数字的にほぼ一致しておりますから、議論のベースはまちまちでないと思いますが、私自身が思っておりますことは、なるほど理屈の上ではこの千億の差益というものは、為替レートの変動が石油の値上がりをなお越えて生んだところの利益である、そこは間違いないと思いますけれども、どうも私のかなり長い間の経験で申しますと、公益事業の料金決定には、いわば年とともに上昇してくるということについて常々頭痛の種でありましたし、かと言って、エネルギーの供給は将来に向かって確保しておかなければならないという問題があって、最小限度のものは認めざるを得ないという行政をずっと続けてまいりました。今後といえども決してOPECの値上げがあることを私ども喜ぶわけではございませんけれども、石油価格が低落傾向にこれから入るとも一般的には思いにくうございますし、国内の電力の設備投資、ことに原子力などを考えますと、まだまだコストは上がっていくと考える方が恐らく妥当であろうと考えますと、ここで料金をひとつ一定期間安定をさせてもらうということのメリットは決して小さくはないというふうに私自身は思っております。  したがいまして、もしそのような差益があるならば、これは将来の供給予備率を確保するために、公益事業として十分有意義に使ってもらうということが望ましいのではなかろうか。これを消費者に少額ずつ還元するということも考えられないことではございませんけれども、むしろ将来の長い趨勢を考えますと、料金の安定ということを基本にして、そうして将来に向かって供給予備率を確保してもらいたい、総合的にはそういう政策の方がいいのではないかというふうに私自身は考えております。
  37. 武部文

    武部委員 私は、前の委員会でこういうふうに為替差益、円高差益のことについて発言をしたわけであります。それは、為替差益というのは普通の商取引によって得る利益とは根本的に違うものだ。したがって、特に公益性の高いものについては、この差益勘定というのは金額がはっきり出てくるわけですから、そういうものについて行政が厳重に監視を行うべきだ、そういうものを料金体系の中に生かすようなことを行政の面で十分行うべきであって、それが設備投資に回ったりして、あげくの果てに、また逆に料金を値上げするような役割りを果たしてもらっては困る、こういうことを特に要望したわけです。  いまお聞きしておりますと、電力やガスについては値上げを延期するという話ですが、まあ据え置きということですけれども、それは結構なことだと言って手放しで喜ぶことはできぬように私は思うのです。というのは、内容の説明を国民に全然しないで、ただ据え置きしたからということだけでは国民は納得しないと私は思います。あなたがいまおっしゃったように、電力業界の将来のビジョンとかそういうものを明らかにして、為替差益はどこにどうしたというふうなことでもって国民を納得させるなら話はわかるけれども、そういうことではなしに、ただ単に現在の料金を据え置きます、だから為替差益はそれに充当します、これでは納得できないと私は思うのです。そういう意味では、公益事業といういわゆる社会的責任のある企業なんですから、為替差益については将来のビジョンを明らかにしながら、国民の納得を得るようなことをしなければ納得できないというふうに私は思うわけです。  そこでもう一つ、この間通産大臣が苦しい答弁をいろいろしておられたようですが、景気浮揚策の中で、電力の設備投資について、三兆一千億を五兆円にという話が出ていろいろ物議を醸しておるわけですが、この電力業界の五兆円の設備投資というのは、経済成長七%を達成するためにはぜひとも必要だという通産大臣の強い意向があるようです。問題は、この五兆円という設備投資が行われて、電源開発に対する設備費用にどんどんいったり、金利負担にいったりということになって、逆にこれが将来の料金体系の中に影響を与えてくるようなことがあるならば、大変なことになると思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたが、電力の設備投資は、電源関係にしても非電源にしても、どうしても逐年上がっていくというのは避けられない傾向であると思っております。しかし他方で、供給義務がある公益事業でございますから、供給予備率がなくなってしまうというような事態は許すわけにはまいりません。したがいまして、ある意味で、将来必要な電力を確保するということになれば、残念なことですが、そのコストは下がるよりはやはり上がっていくと考えざるを得ないのでありますけれども、ただいま政府が五十三年度の設備投資で電力に考えておりますところの三兆一千六百億円、あるいはさらに繰り上げ発注等を加えまして、これがさしずめ将来の電力料金の値上げにつながるというふうにはただいまのところとしては考えておりません。
  39. 武部文

    武部委員 私はそういうことがあってはならぬということを申し上げたいので、これは将来のことですから、それ以上のことは言いません。  いま為替差益の問題を取り上げたわけですが、これは石油あるいは電力、ガスに限らず、この間もちょっと問題にしたわけですが、為替相場の下落によって、農林省は五十二年度予算の中で約九百億円という小麦の差益を得ておるわけです。その金は一体どこにいくのかと聞いたら、それは農林省の予算の中で適当に使います、結果としては小麦の売り渡し価格を据え置きます、こういうことで済んでしまったのです。少なくとも五十二年度の予算のときに、農林省の収支計算の中に九百億円の黒字が出るなんということは全然考えていない。それが後で出てきたということで、その金はもうけものです、だから勝手にどこへ使ってもそれは農林省で使いますという答弁なんですよ。私は、これもおかしなことだなと思ってそう言ったのだけれども、そうでございますというふうに言っておりますから、一度改めてやらなければなりませんが、そういう事態も片一方にはございますね。ですから、為替差益というものが起こした影響は非常に大きいわけでありまして、これをぜひ物価に生かしていただかなければならぬ。それにはやはり経済企画庁中心になって、厳しい行政監視と指導をやっていただく以外にはないと思いますので、それを特に要望して、時間がございませんから次に進みたいと思います。  もう一つは流通問題であります。私はある記事を読んでおって、なるほどうまいことを言っておると感じたのですが、ある有名な外国人の記者が、日本の経済体制に二つの重要な現象面がある。その一つは、片一方では非常に高度の効率の高い近代的製造企業群がある、いま一方には中世的な流通機構が温存されておる、こういうことを言っておりました。全くそのとおりだと思うのです。そこで、この流通問題というものは非常にむずかしいけれども、円高問題を契機にこれにメスを入れる時期が来たのじゃないかというふうに私は思います。流通問題は非常に複雑で、さっきの外国人の記者じゃないけれども、中世的な面が確かにあるように思います。  たとえば肉の問題だってそうでしょう。当委員会では大分肉で集中審議をいたしましたけれども、結果的には流通機構である。だから安く入っても高い肉になっておる。私が調べたのでは百グラムで最上の肉は市価で三千円です。これは現在三越に並んでおるのですから間違いない。それは霜降りでりっぱな肉ですよ。そんな肉が現実に日本の相場の中にあるということは、平準化で右へならえですから、どうしても高いものになってくることは争えない事実だと思う。ビールを飲ませたり、マッサージをしてつくった肉ですから高くなるかもしれぬけれども、いま流行の、外国から冷蔵肉を持って帰りますね、これは二・二キロで四千二百円、一キロが二千円ですよ。銀座三越のは百グラムが三千円ですから一キロ三万円、片一方は一キロ二千円です。こういうことが一体どうして日本にあるのだろうか、大変不思議です。  私どもは去年の暮れに本院から派遣されて行ったときにずっと肉の値段を調べたのですよ。ジュネーブの大使館の人が何と言ったか。私はこの間転勤してきたが、ジュネーブの肉は日本の十分の一だ、これは大助かりだ、肉をたらふく食べられる、こう言っておりました。南米のアルゼンチンは日本の二十分の一だといいます。肉の値段がどうしてこんなことになるのかといっていろいろやりとりすると、最後にぶつかるのはやはり流通機構です。どこかでだれかが転がしておるうちにとってしまっておるということになる。  先ほども魚の話がございましたけれども、魚もそうだと私は思います。去年、国会が済んでからわれわれは与野党そろって宮城県の塩釜に行って、魚隠し、魚転がしの実態を調べたことがございました。当時、流通機構の中にいろいろな問題があるということを指摘を受けました。今日、魚の問題がまた大問題になっておる。これは後でちょっと申し上げますが、そういうふうにして、流通機構というのがわが国の中では非常に大きな問題になっておることだけはだれもが知っておるけれども、なかなか手がつかない。  日本では、人口九十人に対して一軒の小売店がある。西ドイツは百五十人に対して一軒の小売店がある。これは私が何年か前にドイツへ行って調べたときにそう言っておりました。ドイツと日本とはよく比較されます。それはやはり流通機構の問題だと思いますが、小売店の数を調べてみてもそういうことになっておる。そして西ドイツの物価高は現在三%台、日本はいまおっしゃったように六ないし七%、西ドイツは半分ぐらいである。やはり流通機構というものが物価問題に相当大きなウエートを占めておることだけは間違いないが、なかなかこれに手を入れることがむずかしい。しかし、これに手を入れる必要があるのではないか。ちょうどいいチャンスが来た。円高で輸入価格がどんどん下がっておるのだから、経済企画庁はどこへその利益が消滅していくのかという追跡調査をおやりになっておるけれども、残念ながらいい結果にならない、こう言ってもいいと思うのです。  いま肉の話をいたしましたが、畜産振興事業団というのはいま全く怨嗟の的ですね。これはもう間違いない。ここへ呼んで何ぼやってみたってわけのわからぬことばかり言っておる。そこでいま何と言われているかというと、膨大な調整金を吸い上げて、ことしの年度末には畜産振興事業団の利益は四百億を超すのですよ。これも間違いない数字です、約四百億。そういう畜産事業団のやり方というのは国家的強盗事業だ、こういう批評さえ実はあるのですよ。国家的強盗事業と言われるような畜産振興事業団、これは私ども何とも言えませんが、事実そう言われても仕方がない。三百五十円に何で二百五十円を上乗せするか。みんな畜産事業団のふところに入るでしょう。それはみんな庶民の支払ったものですよ。そしてその金がどこへ行っておるかというと、何のことはない、たくさんの天下りの会社をつくって、そこにつまみで補助金や出資金だと言って出していますよ。これはいずれ一覧表にしてお見せをしておきたいと思いますが、そういうようなことを考えたときに、私どもは、この流通問題というものにもつとメスを入れるべきではないか、いいチャンスだ、こう思うわけです。  さっき小麦の話をいたしましたけれども、大豆だってコウリャンだって同じことが言えます。ましてや、現在のわが国における畜産物の生産コストの中でこの飼料穀物というのは七〇%を占めておるわけですから、畜産物の値段円高でこれだけ安く入るのだから、当然畜産物の値段にそれが反映しなければいかぬのに、卵だって豚肉だって鶏肉だって一つも下がっておりません。円高というものが全然反映をしておらない。これは一体どこで消えておるだろうかというような点について、政府自身が、特に経済企画庁は、この流通問題にもっと真剣に取り組む必要があるのじゃないか、そういう時期がちょうど来ておるじゃないかというように思うのですが、長官はどうお考えでしょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国の物価高の一つの大きな原因に流通経費が高いということがありますことは否定できない事実だと思います。  そこで、問題は幾つかあるわけでありますけれども、先般、私どもでいわゆる円高等がどれだけ価格に反映されているかという追跡調査をいたしましたときにも明らかでありますように、競争関係がはっきりしておりますところは、比較的早く円高のメリットが価格引き下げにつながっているということでございます。したがって、競争関係をつくり出すということが円高のメリットを実現する一つの方法であることは間違いないと思いますが、幾つかの農産物については、いわゆる自由化というものが可能でないということから、競争関係が十分に成立しないということもございます。しかし、仮に非自由化品目であっても、その中である程度の競争関係は可能ではないかということは十分考えられることでございますので、その点の着眼が一つでございます。  それからもう一つは、流通にコストがかさむということは、ある意味で自由な競争が行われておるといたしましても、ある意味でそこにそれだけの人間が生活をしておるということでございますから、そういたしますと、その人たちの生活をどうやって保障するかということになっていくわけであって、かつてわが国がいわゆる完全雇用になっておりました時代、ここから流通過程の合理化というものが恐らく行われていくであろう、そうでないと、雇用の不足で現在のような長い複雑な流通過程はもっていけなくなるだろうと期待をした時代がございました。しかし、現在のところむしろ事態は逆行しておりまして、失業者がいわゆる第三次産業の方へ吸収されていく、第三次産業にもいろいろございましょうけれども、流通がその一つであることは間違いはございませんから、どうもいまとしては逆の方に様子は流れていっているような感じがいたします。  ということになりますと、何とかして、さっきの問題に戻りますが、雇用機会というものをしっかりつくりまして、それによって複雑な流通過程からだんだん人がそれ以外の方向へ行くような、そういう経済情勢をつくるということが、多少時間がかかりますようでも、この流通問題を基本的に解決していく方向ではないだろうか、これが第二の着眼点だというふうに考えております。
  41. 武部文

    武部委員 確かにこの流通の問題というのはむずかしい問題でございまして、そう簡単に結論が出るものとは思いません。しかし、先ほどから申し上げますように、肉の値段がなぜこういうふうになったかということの第一の原因は、流通機構にあるということだけは私は間違いないと思っております。したがって、ようやくいまごろになって輸入肉の競争入札をするというようなことを言い出し始めたわけです。ということは、いままでの割り当て団体が横流しをしておった、いわゆる正当な入札でなかったということをいまごろになってようやく認めて、世論が厳しいものだから、いわゆる競争入札に踏み切るというようなことをいまごろ始めて、まあいいことですからぜひやってもらわなければならぬのですが、たとえば魚の問題にしても、きのう私どもがもらったわけですが、「輸入品品日別価格動向調査」、これのイの一番に「まぐろ」というのがありまして、これを見ますと、「輸入まぐろの価格動向」というのが、簡単なものですけれども、これは五十一年、五十二年六月、五十二年十二月とずっと円建てCIF価格は下がっております。関税も下がっております。諸掛かりも下がっておる。輸入コストも下がっておる。卸売価格も下がっておる。にもかかわらず小売価格だけが上がっておるのです。何でも下がっておるのに小売価格だけが上がっておる。一体どうしてこういうことになるのか。これは、先ほど申し上げるように、魚隠しだ、魚転がしだ、いろんなことが言われていくうちにこういうふうに上がっていったのだということを言うし、当時、魚転がし、魚隠しという言葉が一時は流行いたしましたが、ぱたっと消えた。消えたが高値安定でそのままになってしまって、いまごろになって、在庫がやれ百万トンを超して重荷にあえぐ水産業界だから、これでひとつ何とかしなければいかぬというので、大安売りを東京で一週間に一遍やって一体何の役に立つか、われわれはそう思うのです。一週間に一遍マグロを東京で、そんなものは私のところなんか一つ関係ありませんわ。水産庁は四千万円もPRの費用を出して、業界と一緒になって太鼓をたたいて魚の安売りデーだ、一体こんなばかな行政があっていいだろうかというふうに思います。  いつかも冷凍庫、冷蔵庫をつくるときに、かえってそのことが値段をつり上げる役割りを果たすじゃないかという論議をしたことがありましたが、間違いなくこの現実の姿はそうだと言ってもいいと思うのです。大型の冷凍庫や冷蔵庫に農林省が多額の補助を出してつくらせらせておいて、とったらみんなそこに入れておいて、そうして価格を操作する。それで高値安定になっているものだから、いつまでも高値が続くと思ってしまっておいたら、消費者の方が少し賢くなってなかなか買わぬものだから、置いておいてもぐあいが悪いからちょっと安売りだ、こんなばかげたことが、しかも四千万円も金を出して太鼓をたたいて一緒になってやる。消費者の方が少し賢くなっていますよ。肉だって同じことだし、魚だって同じことですが、こういう場当たり的な物価対策経済企画庁は一体どう見ておられるだろうか。いまの魚の安売りの問題についてどうお考えでしょうか。こんなばかげたその場しのぎのことは何の役にも立たない。むしろ消費者は、このマスコミの報道を通じて、ほら見ろ、やはりやっておったなというふうなことで賢くなって買いませんよ。私はそう思いますが、どうでしょうか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 魚、マグロとかというものについて私感じておりますことは、どうも二百海里というお話が、国民全体、これはもう大変なことである、大変なことには違いございませんけれども、そこで確かに片方で、そういうことを見込んでの魚転がしといいますか、退蔵と申しますか、そういうことが行われたであろうと想像いたしますけれども、消費者の方も何となく二百海里時代ですからと言われると、大変に物わかりがよくて、そうでしょうねという感じがどうもあったのではないだろうかというふうに思っております。  そこで、今度相当な予算をかけて云々というお話でございますけれども、私どもが先般発表いたしましたものも、消費者はそれを見られて卸売価格が下がっているんだなと、これは私は、消費者に対する広報活動としては大変に意味のあることだと思いますし、同時に、政府が相当の予算をかけて安売りをするということも、実は二百海里であるけれども、円が高くなってきていて、もとの価格というものは決して上がっていないんだということを消費者に知ってもらうという意味では非常に意味のあることではないだろうか、こう考えております。
  43. 武部文

    武部委員 一週間に一日や一カ月に一遍、しかも限られた東京のようなところだけでそういうことをやって、消費者の購入意欲というものが戻るだろうか。確かに、これを見ますと下がっておる。だから、高いのは買わぬようにという、消費者はみんなが見ておればいいわけですけれども、そういうわけにはならぬ。ですから、そういう意味では、抜本的にいま申し上げたような魚の流通過程というものをもっと追跡調査をして、そしてPRに四千万円もかけて、そっちの安売りのPRではなしに、むしろ魚の現状はこうだというようなことが国民にわかるように経済企画庁の方が指導すべきである。いま四千万円というのは水産庁が出すのですから、水産庁が水産業者と一緒になって魚安売りデーをやって協力するわけですから。そうではなくて、むしろ経済企画庁の側がいまの魚の問題等について、肉の問題等について、流通問題をもっと真剣に取り上げて、国民、消費者の側にPRするような、そういうことをやってほしいというのが私のお願いであります。  時間が来ましたから、もうこれでやめますが、一つだけ、長官はかわられたので、ぜひお願いをして終わりたいと思います。  この委員会はネズミを退治することで一生懸命やっておるわけですが、どうも向こうの方が悪賢くて、なかなかうまくつかまらぬわけですけれども、実は閣議でこの間サラ金の規制問題が取り上げられたわけですね。それで、これは大変重要な問題になって、どうするかというので、サラ金の問題を規制しようじゃないかといって取り上げられたが、所管する官庁はどこだろうかというので、結局のところ、わからずじまいということで決まらぬままになっておるということを私ども報道で聞いたわけです。このネズミの方も、実は一足先にそうなっておるのです。経済企画庁国民生活局長が必死になって、一生懸命になって窓口をやっておられるけれども、残念ながら所管官庁が決まらぬのです。そして、現実に被害はどんどんふえているというので、当委員会は小委員会までつくって一体どうするかということをやっておるけれども、所管官庁が決まらぬわけですから、やり方がつかぬわけですね。  そういうことで、消費者保護会議は三回にもわたってこのネズミ講の規制ということについて決定をしておるわけですね。にもかかわらず、一向にそういう動きがない。三年たっても所管の庁も決まらぬということで、私ども非常に不満に思っておるのです。したがって、もし政府側でネズミ講の規制についてどうしてもやらないなら、われわれ、議員立法しかないじゃないかということをいま与野党の中で相談をしておるところです。本来ならば、消費者保護会議決定ですから、それに沿って政府側がこの問題についてのはっきりとした態度をわれわれに示すべきだと思うのですが、このことについて長官はどうお考えでしょうか。初めてのことですから、ひとつ聞いておきたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ネズミ講の問題あるいはサラリーマン金融の問題というものは、実は政府でも、御指摘のように、正直に申しますと扱いかねておる問題でございまして、先般、サラリーマン金融については所管の省がどこであるかという問題を含めて、内閣官房で検討するということになっておるわけでございます。それは最近のことでございますけれども。しかし、どうも問題がなかなか簡単にめどがつきそうもないということで、私どもも頭を悩ましておる問題でございます。国会におかれまして、各党の間でいろいろお考えをいただいて、それによってこの問題に新しい規制の方法が生まれますならば、消費者行政関係しております私どもとしては、それはまことにありがたいことで、いろいろ御教示も仰ぎたいと思いますし、消費者保護のために一層の御施策を国会の側におかれましても御検討をいただければ幸せだと思っておるところでございます。
  45. 武部文

    武部委員 実は、私どもの中でこういうことを考えておる者もおるし、私もほんのちょっとだけれども、そんな気持ちがせぬでもありませんから、一つだけはっきり答弁していただきたいのです。  この三回にもわたる消費者保護会議決定、毎年のものをずっと読んでおりますし、そうして官庁が七省庁ですか、何遍も生活局長が答弁されておるように、集めていろいろやるけれども、いまだに決まらぬ。普通ならば何でも取り合いっこするのが、何でこれだけ違うのだろうかと不思議だ。これもなわ張り争いであって、要らぬ方ではねのけるが、一体何か原因があるだろうか、これは何ぞ政治的な圧力がありはしないかということすら、実はわれわれの中では話が出ておるのですよ。それは現実に金を持っておるのですからね。きょうはここではできませんから、これから法務大臣とあっちへ行ってやりますが、これから政界に出ると言いますわね。出ても結構ですよ。参議院へ出ようが衆議院へ出ようが、右からだろうが左からだろうが、それはどうでもいいですよ。何の目的でそういう者が政治団体をつくって政治の分野に出てくるか。これはその中ではっきりと言っているのは、財団法人という、そういうところをぶった切った現在の政治に対する抵抗だ、こう言っているのですね。私は、何かそういう圧力がかかって、ネズミ講の規制に対して逡巡しておるんじゃないかということを言われる。そういうことを言われるのはあなた方は心外だろうと思うが、そういうことがなければないで、この場ではっきりしておいていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことは一切ないように存じます。
  47. 武部文

    武部委員 結構です。終わります。
  48. 美濃政市

    美濃委員長 午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。     午前十一時四十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  49. 美濃政市

    美濃委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮地正介君。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 午前中にも若干論議を呼んでおりましたが、最近の建設資材の高騰につきまして、特に、さきの予算委員会におきまして、二月十六日に生コン、セメントなどの最近の異常な値上がりについて政府の対応策を伺ったわけでございますが、当日、特に建設大臣から、いわゆる最近の建設資材の高騰につきまして、適正価格を超えてさらに異常な値上がりが考えられるときには、石油ショック時に適用されました国民生活安定緊急措置法の発動についても検討をしたい、こういう答弁があったわけでございます。また通産大臣にいたしましても安易な不況カルテル認可、あるいは公取といたしましても今後厳重に業界を監視をし、便乗値上げあるいは独禁法の二十四条ただし書き、すなわち不公正な取引、不当な価格の値上げ、こういうことについては厳重に監視をし、対応していきたい、こういうお話がございましたし、宮澤経企庁長官も、私の冒頭の質問に対しまして、便乗値上げなどについては特に監視をしていきたい、こういう答弁を私はいただいたわけでございます。しかしながら、翌日の十七日に至りまして宮澤経企庁長官は、閣議後の記者会見におきまして、公共事業の拡大でセメントや鋼材などの建設資材価格が急速に値上がりしていることに触れまして、前日の予算委員会における政府の答弁を打ち消すがごとき発言が行われたわけでございますが、その真意を最初に私は伺いたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 宮地委員から、二月十六日でございましたか、予算委員会におきましてそのようなお尋ねがございました。それに対しまして櫻内建設大臣から、建設省内での検討ではあるが、国民生活安定緊急措置法というものが使えないであろうかという御答弁が確かにございました。私がこの日に宮地委員にお答えを申し上げておりましたことは、確かに建設資材の一部に値上がりがありまして、このことは、余り急速なあるいは便乗的なものであると問題であるという宮地委員の御関心は、私どもまことにそのように考えます、しかしながら、多少時間をかければ、セメントにしても丸棒にしても相当の減産の過程にあって、生産能力は非常に大きいものでありますので、行政がよろしきを得れば、非常な高騰を続けるというようなことは、現在の生産能力からいってないのではないかと存じますということを前提にお答えを申し上げておったわけでございます。したがって、私としては、現在でもセメントにいたしましても丸棒にいたしましても、まず相当大きな生産能力を持っており、非常に大きな減産をしておるわけでございますので、せんだって以来の御注意もあり、また政府も十分留意をいたしますれば、そのような事態を招くことはないであろうというふうに現在といえども考えております。  そこで、いわゆる国民生活安定緊急措置法でございますが、これに定めております要件は、御承知のように、いわゆる狂乱物価といったような、先ほどのお話しの石油危機のときに起こりましたような事態を想定いたしておりまして、そういう際には政府が相当の強い力をもって、私経済の原則をある程度変更させるというようなことまでも考えております法律でありますから、みだりに発動すべきものとは考えませんけれども、法律の考えておりますような状況がもし万一現実のものとなってまいりますときには、この発動を少しも回避するものではない、やぶさかではない。ただ、現在の状況はそのようなものではないというふうに私自身としては判断をいたしておるということでございます。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 公取委員長としては当日は、特にセメント業界に対する不況カルテルの第二次認可については需給の見通しに若干の甘さがあった、また通産大臣といたしましても同様な感触の答弁があったわけでございます。  そこで、私は、当日建設大臣から、異常な建設資材の高値が今後も続き、適正価格を超えるようなことがなお続くようであれば、いわゆる国民生活安定緊急措置法の対象として指定をしたい、こういう御答弁をいただいたものと私はいまでも信じておりますし、ただいまの長官のお話は、現在の情勢はまだそこまではいっていないにしても、しかし異常な高値が今後適正価格を超えてさらに続騰する、そういう状況にもしもなるならば、当然建設大臣と同様の国民生活安定緊急措置法というものの発動を十分に考え得る、そういう配慮がある、こういうふうに解してよろしいかどうか伺いたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国民生活安定緊急措置法で考えておりますのは、一つ二つの特定の資材の値上がりと申しますよりは、全般的な狂乱物価状態が出まして、それによって文字どおり国民生活の安定が危殆に瀕するといったようなことが法律の発動要件である、それが立法の趣旨であると考えておりますので、もしそのような事態が到来いたしますならば、これは法律を発動するのにやぶさかでないということでございますが、ただいまの建設資材の一部の値上がり等は、先ほど申し上げましたような事情によってそのような事態には立ち至らないであろうと考えますし、また立ち至りませんように政府として十分な行政措置をいたさなければならない、そういう前提のもとに私ども考えておるわけでございます。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 公取委員長としては、現在の建設資材の、特に生コン、セメント、小形棒などの価格の動向について、繰り返してこの委員会においても御答弁いただきたいと思います。
  55. 橋口收

    橋口政府委員 二月十六日の予算委員会お答えをいたしましたことをもう一回整理して申し上げますと、セメントにつきましては不況カルテル認可いたしました第二次の十月から十二月の分についての問題でございますが、これは認可時点のこちらの調査といたしましては、認可要件に該当しているということでこれを認可したのでございますけれども、宮地委員から御指摘がございましたように、十二月になりまして大変な増産が行われ、在庫率が急減するという事態に直面したのでございまして、その時点における情勢の判断にいささか心残りがあったということを申し上げたのでございまして、セメントにつきましては御承知のように十二月末で不況カルテルが打ち切られておりますから、あとは市場の自主制に任しておるのでございまして、宮澤長官からお答えがございましたように、生産能力にはまだ余力がございますから、これは大いに増産をしていただいて、値段の問題については市場において対処していただきたいというふうに考えております。  それから、小形棒鋼、生コンクリートの問題でございますが、生コンにつきましては、やはり二月十六日の委員会の質疑でも御指摘がございましたように、関東中央生コンクリート工業組合に対しまして、これは十一月から中小企業団体法による調整規定認可があったのでございます。その時点におきましても価格につきましてやや強含みの情勢がございましたけれども、やはり当時の情勢におきましては認可要件に該当いたしておりましたので、主務大臣認可をされ、当方に協議があって、協議に対して応じたのでございます。しかしながら、その後、それ以外の地区からやはり調整規定認可申請が内々通産省にあったようでございますけれども、その際、内々当方に御相談がございまして、これに対してはどうも適当でないじゃないかという判断を示したのが大体十二月時点でございます。したがいまして、それ以降、一月になりまして、具体的には二月になりましてからでございますけれども、やはり生コン調整規定のあり方につきまして調査する必要があるのじゃないか。それは他の調整規定をお断わり申し上げたというバランスの問題もございますけれども、やはり経済の実態を反映しての生コン価格の問題がございます。したがいまして、そういうことについての調査を進めてまいりまして、これも内々通産御当局と御相談をいたしました結果としまして、二月十六日の委員会通産大臣からお答えがございましたように、関東生コンにつきましてはきょう現在で調整規定の打ち切りをいたしたのでございます。それから以後の事態につきましては、これはセメントと同じような考え方で対処すべきものではないかというふうに考えております。  それから、小形棒鋼につきましてもいろいろ論議が交わされておる途中でございますけれども、やはり価格の面では相当大幅な高騰がございます。一方、原材料価格につきましても、主としてくず鉄でございますけれども、これが相当大幅に上がっております。同時にまた、生産もふえておりますから操業度も向上いたしておるわけでありまして、一体いまの時点で市場価格というものが生産費を下回っているのかどうか。既往の分につきましては明らかに損が出ておりますが、現在時点の注文について一体どうかというような問題等につきましては、現在通産当局と相談をいたしておる最中でございまして、予算委員会で、その後でございましたが、社会党の井上先生からの御質問に対しまして、再検討の時期に来ているというふうに申し上げたのはそういう趣旨でございまして、ただ、いまの調整規定はいろんな内容を含んでおりますから、これを再検討するということではございますが、いまどうするということをはっきり公正取引委員会として決めたわけではないのでございまして、これは通産当局とさらに篤と相談をしたいというふうに考えております。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいまも公取委員長からお話がありましたように、関東中央生コン工業組合につきましては本日付で打ち切り、いよいよあすからは協同組合法にのっとって、生コン業界がいわゆる不況カルテルに近い数量制限などをやっていくわけでございますが、さきの委員会でも御答弁いただいたように、通産省あるいは公取初め政府は、厳重にその監視と、独禁法二十四条ただし書きのようなことの事態が起きないように連携をとって対処を要望したいと思います。私も今後ともこの問題についてはさらに監視を続けてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  次に、経企庁が二月二十三日に輸入品価格動向調査を発表しておりますが、この問題についてお尋ねしたいと思います。  率直に言いまして、円高による為替差益の消費者還元は、経済企画庁としては第二次調査が第一次調査時よりも前進した、どうもこういう受けとめ方をしているように思えてならないわけでございますが、国民の側から見ますとまだまだ不満足な点は多々あるのではないか、こういうふうに感じるわけでございますが、各論に入る前に、まずこの第二次調査に対して、長官といたしましてどのような御見解を持っていらっしゃるのか、初めに伺いたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 第二次の調査が第一次の調査に比べまして、いわゆる円高の消費者還元についてかなりの改善を見せたということは、相対的に私はそのように感じておりますが、しかし、この点は考えようによりましては、円高の幅も大きくなりましたし、時間も過ぎましたし、むしろその程度のことは当然のことと申せば当然のことでございましょう。しかし、逆行はしておりませんで、確かにかなり前回よりは改善をしたということは申し上げられると思います。  それで、その中で、午前中にもちょっと申し上げたことでございますけれども、やはり競争条件が比較的整備されておるところでは消費者への還元が早いということが一つ申せると思います。そうでない場合にやはり一種の独占価格に近いようなものが発生しやすい。その場合にはなかなか還元が十分でないということでございます。  それからもう一つは、いろいろ事情もあると思いますが、マグロとかエビとかいうもののように、何となく二百海里ということで、これはもう上がるのがやむを得ないのだというようなぼんやりした認識が、消費者を含めまして関係者全部にあったのではないかというふうに疑われるものもありまして、これなどは、今回の調査によって明らかに卸売価格、輸入価格も下がっておるということを消費者に知っていただくことができましたので、このようなことは、消費者に事態について正しい認識を持っていただくのにこれからの問題として役立っていくのではないかと期待をいたしておるわけでございます。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいま長官お話しございましたが、私は特に今回の価格動向調査を見さしていただきまして、いろいろ問題の提起があったと思います。  第一点として私が特に疑問に思いますことは、水産物につきまして、魚転がしで魚価をつり上げただけでなく、今度は円高差益もがっちりふところに入れていたのではないかという国民の率直な御意見がちまたにたくさんあるということでございます。  その端的な例がいわゆるマグロ、タコ、エビの例でございました。もう皆さんの御発表のように、特にこのマグロ、エビ、タコが、円建て輸入価格がマグロについては一キログラム当たり五十一年の十二月と五十二年の十二月においては一六・九%も落ちておる。金額も六百八十五円から五百六十九円に落ちておる。それが今度は小売の段階においては五十一年十二月が三千三百三十円のものが五十二年十二月には三千四百九十円、逆に四・八%も上がっておる。タコにおいても二一・二%五十二年の十二月に前年度比で下がっていながら、小売価格では千七百十円と横ばいである。エビについても、一キログラム当たり五十一年の十二月が千九百三十円、五十二年十二月が千五百十三円、二一・六%も価格が落ちていながら、現実には小売価格で五十一年十二月には五千九百八十円から六千百五十円、二・八%の値上げになっておる。いろいろ事情はあるにせよ、当時の円の替為レートを見てみましても、五十一年の十二月には一ドル二百九十四円八十四銭、五十二年十二月には一ドルが二百四十一円五十六銭、EC方式を適用いたしましても約一八・一%の円高になっておる。そしてさらに、特にマグロなどにおいては、在庫の面から見ましても五十二年十二月、前年同月比でなんと二一二・九%、二万七千トンの在庫があるわけです。特にこのマグロで、輸入マグロの流通経路など見てみましても、輸入価格が五百六十九円、これは五十二年十二月現在、前年度マイナス一七%、それが卸売価格で八百八十六円で、前年度マイナス一一%、これが小売価格で三千四百九十円、約五%のアップ。いろいろと理由はあるにせよ、在庫の面、価格の面など、理由がつかないぐらいにマグロにおいてはおかしい。  この点について、まず水産庁から、この実態についてどういうふうに考えておられるのか、また経企庁としては、この実態を、調査結果に基づいてどこに原因があると考えられるか、私は、国民のいわゆる魚離れの一つの要因にもなっているのではないか、こういうふうに思うわけでございます。そういう点、今後どういうふうに対応していくのか、その点、あわせて水産庁並びに経企庁から伺いたいと思います。
  59. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 ただいま先生の方から、今回の調査状況につきまして御説明、お話がございました、そういう御指摘のような結果が出ております。マグロを例にとりましてお話がございましたが、マグロにつきましては、昨年とことしの状況をまず数量的な状況から申しますと、おおむね四十万トン程度というのがほぼ国内の生産量、これに対しまして輸入量というのが十万トンあるいはそれを若干超える場合もありますが、その程度状況というのが通常の場合におきます供給の現状でございます。昨年はマグロにつきましては非常に需要が大きいと申しますか、そういうことを反映いたしまして、売れ行き状況というのは非常によかったわけでございます。ことしに入りまして、特にこの夏以降、一つには輸出関係につきましてはほとんど成約ができないというふうなことから荷動きが非常にとまってしまう。加えまして、最近マグロの量が、特に韓国を中心としましてかなりの大きな輸入ということがございまして、御指摘の十二月時点で見ますと、在庫数量というのが、おっしゃるように一昨年に比べまして相当ふえております。これは一月以降につきましてはこの辺はかなり減少しておるようでございます。いまその辺の数量的な把握はいたしておるところでございます。しかし、いずれにしましてもマグロ自身の荷動きというものが非常に不活発になっているということはこれは全く事実でございます。  そこにおいて、ただいま御指摘のような小売価格の面にその点が一体どういうふうに反映しておるのか、特に輸入価格との関係で、そこのところが反映してこないというのがおかしいではないかというふうな御指摘であろうかというふうに思います。この点は、私どもも問題はやはりそこにあるというふうに見ておるわけでございます。  最近の動向を申しますと、マグロにつきましては、特に昨年の秋口以降、価格の面につきましてはある程度の値下がり傾向というのが実は出てまいっております。しかし、これもいまの需給動向を正確に反映しているかどうかという面につきましては、私ども自身もきわめて疑問だというふうに思っているわけでございます。そこで、輸入の今回の為替差益を観点にいたしました調査データによりましても、卸売価格まではマグロにつきましても輸入価格の低落を反映して低下をしてきて、それが小売価格の面で逆に値上がりをするという傾向になった、この調査データのとおりでございますと、問題は卸売段階以降の段階に何か問題があるのではないか、こういうことになるわけでございます。  そこでマグロにつきましては、実は水産物の中でも最も問題——問題といいますのは複雑な問題がございまして、御案内のとおりでございますけれども、マグロにつきましては一匹一匹がそれぞれ現実の目の上でもってせり価格で評価される。しかもそのうちの大部分、国内消費のうちの三分の二程度が業務用だと私見ておりますが、さらにその三分の一程度のものが小売店舗に回りましても非常に価格の差がある。マグロの一体の中からどの部位をとられるかということによって、また値段において非常な開きが出てくるという状況にございます。そこで、その辺の状況が現実にどうなっているのかという点につきましては、さらに調査データをいろいろ裏づけてみませんと確たることは本当は申せないような条件が中にはございますけれども、いずれにいたしましても、このたびの調査というものから推測いたしましても、一般の水産物の小売価格がかなりの高水準にあるということが仕入れ価格の面におきましても足を引っ張って、値下がりをおくらしているというふうなことは、多分にそうではないかというふうに考えられる状況だと思っております。  そこで、今回の調査データの対象になりましたものを中心に、もう少し多面的に現実の実情を把握してみようということで現在やっておりますが、同時に並行いたしまして、小売業者のための指導というものを、すでに適正販売における協力要請というふうな指導もいたしております。また、近くこれは特にサービス販売における価格によります提供というふうな制度もぜひひとつ実現させようということで、現在その具体化を煮詰めておるという段階にあります。
  60. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 今回の輸入品価格動向調査の中で、輸入価格が下がって小売価格が下がっていない、むしろ上がっているという六品目の中に水産物が三品目あったわけでございます。私ども、このマグロ、エビ、タコというふうなものについて、まだ品目別に具体的な事情についてさらに検討を要するかと思いますけれども、一般的なこの三品目を通じた印象は、昨年来の魚価の高騰というものが、漸次鎮静化しつつありますけれども、まだ残っている。そういう一般の魚価動向、この小売段階の価格に引きずられている傾向があるのではないか、いわば需給を反映していない価格になっているのではないかというふうに思うわけでございます。ただ、この魚の問題というのは、水産業の流通の問題にも深くかかわる問題でございますし、私どもとしても何とかこれが当面の小売価格に反映できないものかということで、農林省の方で進めておられる水産物についての特別販売事業というものを、私どもの方も一緒になってやっていきたいと思って現在その準備を進めておるところでございます。
  61. 宮地正介

    ○宮地委員 要するにマグロについての流通経路は、すでに御存じのとおりいわゆる輸入業者、そして卸売の荷受け会社、仲卸の仲買、小売、消費者、大ざっぱに言いましてこういう流通経路があるわけでございます。何かいま伺っていますと、水産庁にいたしましても経企庁にいたしましても、小売業者が高値を安定させているというニュアンスの答弁に私は聞こえたわけでございますが、小売業者よりむしろいわゆる大手の水産会社、この辺に問題があるのではないか。小売の業者が果たしてマグロを何尾保存できますか。私も魚転がしの問題が国会で話題になったとき塩釜にも調査に行きまして、あの冷凍庫の中にも入りました。スルメイカがスルメイカの箱に入っていないで、ほかの箱に入っているようないろいろな実態を私たちは目で見させていただきました。その辺の政府の基本的なねらいというものが甘いのではないか、こういう感じがするのですが、水産庁、もう一度その点についてどうですか。
  62. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 マグロにつきましては、先ほど供給の現在の姿について申し上げたわけでございますが、わが国の生産物の大部分は実はいわゆる中小のカツオ・マグロ業者が生産をしているわけでございます。輸入につきましては大手商社が大部分を扱っている。こんな感じで形成されているわけでございます。  そこで、ただいま私が申し上げましたのは、今回の調査結果だけについて見ますと、卸売価格は下がっておるのが小売価格に反映していない、そこで小売とは申し上げませんけれども、卸売段階以降にその限りでは問題があるという結果に調査データからはなってくる、こういうことを申し上げたのですが、ただ私は、その点からももう少し多面的に問題を煮詰めてみませんと、それだけの結果で小売がもうけている、あるいはその前の仲卸がもうけているというふうなことは必ずしも言い得ない非常に複雑な消費までの形態になっている、その点を十分に把握してみたい、こういうふうなことを申し上げたわけでございまして、決して小売が悪いというふうに申し上げたつもりはございませんので、その点はひとつ御了解いただきたいと思います。
  63. 宮地正介

    ○宮地委員 いみじくもあなたがおっしゃったように、今回の経企庁のいわゆる輸入品価格動向調査に限って、これがあなたの答弁のみそなんですよ。しかしマグロの小売価格の問題を云々するときには、あくまで動向調査というものはそれを一つのきっかけとして、実際の本体はどこにあるのかを調査し、メスを入れていくのが政府の仕事だと思う。そんな弱腰で、何か弱い者いじめするような感覚でこの調査データをもしとったとしたら、円高の差益が消費者に還元されない。国民の期待に沿ってやった調査が今度は両刃の逆手になるじゃありませんか。  もう一度伺いますが、この調査をもとにして本当のマグロの値段がなぜこんなに高いのだろうか、われわれ消費者の口になかなか入らない、この実態について、勇気を持って、輸入段階から小売段階のこの流通経路について調査をする意思があるかどうか伺いたいと思います。
  64. 矢崎市朗

    ○矢崎説明員 御指摘のような観点で私どもも調べたいと思っておるわけでございます。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 経企庁としてその点についてどういうふうにお考えでしょう。
  66. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 今回の価格動向調査というのは、きわめて短い期間にやったものでございますので、全般を律するようなことについてはなかなかむずかしい。一つの統計数字、さらには実際に調査した段階の数字をもとにしてまとめたものでございますので、こういうような傾向がうかがわれるわけでございますが、この内容についてさらに具体的な検討を深めていく必要があろうと思っております。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 いまのマグロは輸入が大体三割ぐらいと言われているわけですね。たとえばエビなどについては、国内の需要量の約七〇%以上が輸入なんです。ですから本来国内の価格の相場を動かす大きな要因になってしかるべきだ。しかし、そういうような状態でありながら、輸入価格、卸売価格が下がっていながら小売価格は上がっておる。タコにおいても、主産地はアフリカ沖と言われておりますけれども、これについても大体エビと同じような傾向にあると言われておる。いずれにいたしましても私が心配いたしますことは、最近、特に二百海里問題以後、魚離れということでなかなか消費者が魚に、俗に言えば近づいていけない。その点、今回のこの調査を貴重な調査データとして、経企庁にいたしましてもいろいろとイワシの食べ方をもっと食べやすくするようなPR雑誌をつくったり、国民生活センターを通じていろいろと魚を食べるようにPRなどをやっているということは私は十分承知をしておりますし、その努力には敬意を表します。しかし、今回のこういうような水産物の調査、輸入価格や卸売価格が下がっていながら小売価格が横ばいか上がっている、在庫もある。どうも流通経路に何らかの問題があるのではないか、こういう国民の疑問が率直にあると私は思うのです。それにつきまして、いま、水産庁は今後抜本的に調査をしていく、こういう御答弁をいただいたわけでございますが、ぜひ経済企画庁と連携をとりながら、これは事務レベルでなくして、商社あるいは大手水産業者となりますと、いろいろとまたなかなか抵抗も大きいでありましょうし、またいわゆる魚隠しも巧妙であろうとも思いますので、農林大臣と経企庁長官が本気になって話し合いをして、この問題に取り組んでいくぐらいのやり方をいたしませんと、単なる調査に終わってしまうのではないか。本当に国民のために安い魚を、質のいい魚を食べていただくんだ、経企庁にこういう意思がおありなら、大臣間におけるまず話し合いの中から、事務レベルに積極的な働きかけをしていくべきではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、この点について長官の御決意を伺いたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど水産庁の政府委員から御答弁がありましたように、この点は確かに解明を要する結果が出てまいりました。この結果が発表されましてから、すでに業界のある段階の人たちから、どうも事実はこういうところにあるのではないかというような意見を言ってこられる方々もありまして、この結果が出ましたことで問題の解明、問題そのものについて、生産から流通の各段階の人々が非常に関心を持つようになられたようでありますので、私どもとしては十分事実の解明を徹底的にやってみるつもりでございます。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 今回の調査を通じまして、もう一つの大きな疑問といいますか、国民の抱いている不安といいますか、そういう問題について私はお伺いしたいと思うのですが、流通マージンが考えられないぐらい異常な額になっている製品があるわけでございます。  たとえばイタリア製のハンドバッグなどにおきましては、輸入価格が二万一千二百五十円、関税三千百九十円、輸入の諸掛かりが八百五十円、そして何と流通マージンが三万七千七百十円、そして小売価格が六万三千円。こういうように、いわゆる流通マージンが輸入価格の約一・八倍から一・九倍ぐらい、約二倍ぐらいになっている。また、めがねフレーム、これは西ドイツ製ですけれども、輸入価格が四千八百六十三円、関税が九百七十二円、輸入諸掛かりが百七十円、そして流通マージンが何と二万六千五百九十五円、小売価格は三万二千六百円、さらに物品税四千八百九十円で、物品税を含んだ小売価格は何と三万七千四百九十円。めがねフレームが、輸入値四千八百六十三円のものが、流通マージンで二万六千五百九十五円、こういう異常とも言えるようなマージンが実際に含まれている。これは明らかに流通段階の改善なくして小売価格の国民に見合った形成というものはあり得ない。こういう実態を国民が見たとき、政府はどこまでこの流通機構の改善、改革に取り組むのだろうか、こういう国民の期待やらあるいは失望やらが含まれてあると思うのです。  そこで、このような流通マージンの異常な価格の実態を見られまして、経企庁としてはどういうようにこれをごらんになるか、まずお伺いしたいと思います。
  70. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 いまおっしゃった問題は、最終的な小売価格に対して、輸入の原価の比率が非常に低いということではないかと思いますが、共通して言えますことは、やはり輸入品の持つ高級品イメージというものが非常に強いもの、たとえば化粧品とかネクタイとかそういうものについて、輸入原価比率の低いものが多いわけです。いまおっしゃった中で、めがねフレーム等については確かに低いですけれども、これについては検眼料とか技術料などが入っているというような特殊事情もあるようでございますけれども、一般的に言えば大体そういう傾向がございます。  私ども今回の調査を通じまして、やはり競争関係、これは輸入品同士でもそうですし、国産品との関係で競争もあるというようなものについて、非常に円高効果が反映しているという傾向はございます。やはりそういう形でこれからの輸入品の問題を検討していくべきではないか。その一つの手段としては、ウイスキー等に見られますような並行輸入が行われていくことが、流通の一つの刺激剤になって価格の安定につながっていくのではないか。そういうようなことで、昨年の物価担当官会議で決めました円高対策のときも並行輸入の問題を取り上げているわけでございます。そういうようなことで輸入品のこれからの流通問題に取り組んでいきたいと思っております。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、今回の経済企画庁の発表しましたこの価格調査というものには大変な御努力もありましたし、またそれに対する成果について、私は一応の評価をしたいと思うのです。ただ、このデータをもとにして今後経企庁が、いわゆる主管官庁といたしまして、関係省庁に対して流通機構の改善の問題、あるいはただいまも局長お話しになりましたが、輸入手続の簡素化の問題、あるいはむしろ競争政策というものの整備の問題、こういうような問題を導入して、国民の期待にいかにこたえるか、こういうことではないか、こういうふうに思うわけです。そこで、これは単なる経企庁の発表したデータに終わらすのでなくして、むしろ流通を預かる通産省あるいは農林省などの関係省庁に対しまして、これはあくまでもいわゆる国民の、円高差益が消費者になかなか還元しないじゃないかというものの一つの入り口といいますか、その調査の結果を今度は本当にそういうふうにしていくために、具体的に関係省庁と連携をとりながら、まず流通機構の改善の問題などについても積極的にやってまいりますという連携、また連帯の行動があってこの調査が生きてくるのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、経企庁長官からその点について、今後、具体的にどのように国民の期待にこたえていくか、こういう点について御所見を伺いたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、この調査をいたしますにつきましてもいろいろ困難がございましたけれども、関係各省から非常に協力をしてもらいまして、ともかくこれだけのデータがわかったということでございます。十分各省が協力をしてくれたことに、私ども大いにそれを評価いたしておるわけでございます。  先ほどからお挙げになりました幾つかの品物の問題でありますが、たとえばマグロでございますと、これは水産庁の漁政部長が言われましたように、ずっと調べていきますとかなり事実がはっきりしてくるであろうと思いますので、それはぜひやっていただきたいと思っておりますが、先ほど言われましたイタリア製のハンドバッグのケースなどは非常に不思議なケースだと一見思われます。もう少し実は突き進んで調べられるものなら調べてみたいと思いますのは、なぜそんな大きなマージンが小売のところで発生するのであろうか、場合によっては小売の扱い数量が少ないために、そのものだけを扱っておるとすれば、これだけのマージンがどうしても必要なのであろうか、そうだとしますと、それは一種の独占輸入になっておるのでございましょうか、あるいはまたそうにいたしましても、メーカーとしては何ゆえにこれだけの大きなマージンを小売の方にやって、自分の方の取り分はあれだけでいいのか、その辺のこともちょっとなかなかよくわからないところでございます。メーカーがヨーロッパでございますから、あるいは個数の制限をして、そして自分のところは取るものを取れば、あとは売ってくれる人が適当にマージンを取ってくれ、そのかわりほかに代理店は置かないというようなことでもやっておりますのか、その辺になりますと、ヨーロッパのメーカーの物の考え方、商慣習も実はそこまでいくとわかってくるはずなので、非常にいろいろ参考になるところがあろうと思います。それが企業の秘密というものとの関連で、どこまでいけますかとは思いますけれども、実は知ってみたいケースの一つでございますので、これもやってみたいと思っております。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ経企庁はこのデータを生かして、今後の物価対策の貴重な資料としていただきたいことを要望したいと思います。  次に私は、特に私たちの身近な牛乳の問題について、この三月中旬ごろから二百cc入りが四円ぐらい値上がりをするのではないか、こういうことがマスコミで報道されているわけでございますが、特に乳価交渉の問題について、生産酪農家、乳業メーカーの間で最近ではストにまで発展したという事例もあったようでございますが、この問題については、今後抜本的な改善策を施していきませんと、今後生産酪農家にとりましても、あるいは乳業メーカーにいたしましても、また小売の販売店あるいは消費者、こういう段階におきましても、大変な状況になるのではないかということで、この乳価交渉に対してそろそろ何らかの改善策を政府としても考えていかないと、結果的には消費者にそのしわ寄せが値上げという形でくるのではないか、こういう心配もあるわけでございますが、農林省から、現在の乳価交渉の経過、また今後の乳価交渉の問題がどのように発展し、また価格影響してくるのか、さらに旧態依然たる乳価交渉を、何らかの形で一歩前進した改善策を考える用意があるのかどうか、その三点についてお伺いしたいと思います。
  74. 中島圭一

    ○中島説明員 ただいま御指摘のございました飲用乳価交渉の経緯でございますが、現在飲用牛乳の価格は、五十一年の一月以降二年以上にわたりまして据え置かれているところでございまして、昨年春以降、生産者団体は労賃、生産費機材価格のアップ等を理由といたしまして、生乳一キログラム当たり十五円の値上げをメーカー側に対して要求をしておるところでございます。  これにつきまして、昨年来、乳業メーカーの方は、現状において卸売価格の改定は困難であるということで話し合いが難航しておりまして、昨年の八月、生産者団体は、本格的な乳価値上げまでの暫定的な措置に要求をしぼりまして話し合いが行われたわけでございますが、この話し合いも難航いたしまして、御指摘のとおり、昨年の九月、生乳出荷ストという事態を迎えたわけでございます。  農林省といたしましては、当事者間の価格交渉でございますので、事態の推移を見守ると同時に、できる限り円滑に話し合いが進みますように努力を払ったわけでございます。特に、出荷ストというような異常な事態を迎えまして、これを回避するために、双方から個別的に事情を聴取いたしましたり、あるいは話し合いのテーブルにつくようにあっせん等の努力をいたしました。その結果、双方が話し合いのテーブルにつきまして、昨年の秋の段階におきまして、メーカーの負担におきまして一円九十五銭を四カ月間にわたって支払うということで一応の決着を見たわけでございますが、その四カ月間の期限がことしの一月で切れました。それ以降の扱いにつきましては、双方再度誠意をもって話し合うということになっておったわけでございます。  現在、生産者とメーカーの間で話し合いがあり、またごく最近におきましては、乳業メーカーから卸売価格の改定を販売店側に申し入れるという状況になっておりまして、これから交渉が本格化するという段階でございます。  今後の見通しにつきましては、まだメーカー側からの卸売価格改定の申し入れがあったという段階でございまして、販売店側の態度は必ずしも明らかでございません。今後の推移を慎重に見守ってまいりたいというふうにいま考えておるところでございます。  それから、乳価交渉のあり方にさらに改善するべきところがあるのではないかという御指摘でございます。飲用乳価の交渉につきまして、従来からこれを円滑に進めるためにルール化を図るべきであるという議論があるところでございます。飲用乳価につきましては当事者間の話し合いで決定するということになっておるわけでございますが、飲用向け乳価ができる限り円滑に決まるということはもとより望ましいところでございまして、農林省の中におきましても部内で種々研究を行ってきたところでございますが、国が飲用乳価につきまして介入するということにつきましては、実はいろいろとむずかしい問題があるわけでございます。国が指導価格とかあるいは一定のガイドラインを設定するということも考えられるわけでございますが、この点につきましては独禁法上の問題がございます。行政指導としてこれを行うということになりますと、独禁法上カルテル指導につながりかねないという問題もございますし、また、昭和四十二年の国民生活審議会消費者保護部会におきまして、政府指導価格を出すということは適当でないというような御指摘もございまして、指導でやるという点につきましてはなかなかむずかしい問題があるわけでございます。したがいまして、これのルール化を図るという点につきましては、何らかの立法措置が必要になるというふうに考えておるところでございますが、国が標準価格等を設定するというような立法例はないわけではないわけでございます。たとえば、御案内のとおり、国民生活安定緊急措置法とかあるいは石油業法に基づきます石油等があるわけでございますが、これらはいずれも価格が暴騰し、または暴落するおそれがあるような場合におきまして、国民生活に重大な関連がある、影響があるというような場合とか、あるいは基礎エネルギーにつきまして、いわば国家的な管理が必要であるというような観点から、当該業種につきまして許可制とか届け出制というような厳重な規制をかぶせて、その上で必要なときに標準価格を設定するというようなことでありまして、牛乳の場合にはいずれもこれらの場合に該当いたしません。そういうような立法化につきましても種々むずかしい問題があるわけでございます。  いずれにいたしましても、飲用乳価が円滑に決まるということは望ましいわけでございまして、引き続き農林省といたしましても関係者等の意見を十分徴しながら、慎重に研究を続けてまいりたいというふうに考えております。
  75. 宮地正介

    ○宮地委員 ただいま立法措置についても十分いろいろ検討しているということでございますが、加工原料乳については、御承知のように原料乳不足払い暫定措置法というのが適用されて、いわゆる不足払いが国の保証でなされているわけでございます。そういう点についても、いわゆる飲用向け原料乳、これは非常に国民の生活に定着をしてきております重要な一つの食糧であろう、私はこう思うわけでございまして、加工原料乳のような不足払い制度、これを準用するような方向というものは考えられないのかどうか、その点についての見解を伺いたいと思います。
  76. 中島圭一

    ○中島説明員 加工原料乳につきましては、生乳の取引面におきまして飲用牛乳ほど有利ではございません。まず、生乳が生産されますと飲用牛乳に向けられまして、残りが加工原料乳として乳製品に向けられるというような関係がございまして、取引面において不利がある。それから加工原料乳の生産地域は北海道等の遠隔の地にございます。マーケット、市場条件の点でも不利があるということから、これらを放置いたしますと、わが国の主要な酪農地帯であります北海道とか東北等の酪農の再生産の確保にも支障が生ずるということで、昭和四十一年度以来、加工原料乳につきましては不足払い方法が設けられまして、国が一定の不足払いを行っておるところでございます。  同じような考え方を飲用乳について適用できないかということでございますが、飲用牛乳につきましては米、肉類等から比べますと、まだ家計費に占める支出も実は低いわけでございます。また問題は、世帯とか地域によりまして飲用牛乳の消費量に非常に差があるというような実態がございまして、ひとり牛乳だけにそのような制度ができるのかどうかということもございます。  また、飲用牛乳の場合には製造、販売関係のコストに占めるシェアがかなりございまして、原料乳段階に不足払いが行えたといたしましても、製造、販売段階のコストアップによって吸収されるおそれがあるということもございます。また実際問題といたしまして、飲用牛乳の生産費は地域によって相当の差がございまして、全国一律の価格が設定できるのかという問題もございますし、また牛乳は非常に腐りやすい保存のきかないものでございますので、不足払いをいたしますと、一定の安定価格を設けまして、その水準に価格を維持するということがあわせて必要になるわけでございますが、需給操作の面で非常に問題があるということもございます。われわれといたしましては、わが国の酪農の生産基盤がなお脆弱でございますので、主要生産基盤の整備とかその他生産対策、構造対策等に財政支出その他強力に推進いたしまして、できる限り牛乳が安定した価格で消費者に供給されるように努力をいたしたいというふうに考えております。
  77. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、どうか乳価交渉については何らかの改善策を早急に検討していただきたいと思います。出荷ストなどといったようなことで消費者に大変な御迷惑にならないように特にお願いをしたい、この問題を要望いたします。  時間が参りましたので終わりますが、地価対策あるいは食品衛生問題などにつきましては、また次回の委員会で十分に質問をさせていただきたいと思います。関係政府委員の方には大変御足労をいただきまして申しわけないと思います。大変ありがとうございました。
  78. 美濃政市

  79. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 引き続きます不況とインフレの中で、国民の生活はますます厳しくなっております。景気の回復ということも国民生活を守ります一つの柱ではございますけれども、それとともに、もう一つの大切な側面といたしまして、政治経済の基本は民生の安定にあるということは絶対に欠かすことができない重要な問題であると私は考えます。私は、その民生の安定という角度から、きょうはサラ金の問題につきまして政府の御見解をお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  昨年の十月二十九日付の京都新聞は、「サラ金地獄」「子供も受難」といたしまして、京都府中央児童相談所の話としてこのようなことが書かれてございます。「サラ金で家庭が崩壊して、子供たちが施設入所するケース。例年二、三件しかなかったが、昨年は、施設入所百九人のうち一五%にあたる十六人にも増えた。」とあるわけです。また京都市の児童相談所も、「最近の傾向であるため、昨年度は正確な数字はつかめていないが、二十七、八人がサラ金関係で入所しており、今年度は、四月−九月末までの六カ月間に百六十件の養護相談があり、うち、五十二件がサラ金関係の相談で、三十九人が施設に入所している」、こういう報道を出しております。サラ金問題は単に大人の問題だけではなくて、いまや子供たちにまでその悪影響を及ぼしてきている。ですから、その対策が非常に急がれていると思います。  サラ金問題につきましては、昨年九月以来、六省庁の連絡会議で検討していらっしゃると聞いているわけでございますが、一体どのような検討がされたのか、経済企画庁からお答えをいただきたいと思います。
  80. 井川博

    ○井川政府委員 内閣審議室の方からお答えするのが筋でございますけれども、かわりまして私から御答弁をさせていただきます。  いまお話がございましたように、九月に関係六省庁ということでサラ金問題の検討の会合を設けたわけでございまして、総理府、警察庁、法務省、大蔵省、自治省、そして経済企画庁、そこでこのサラリーマン金融、貸金業問題についての協議連絡をやっておるわけでございまして、大体月一回ペースで集まりまして、各省庁からそれぞれの現在抱いている問題を出し合う、そしてこの二月には、現実に出資法等の施行をいたしております地方公共団体、あるいはまた出資法等に基づきますそうしたサラ金をやっております業者のうちの一部が結んでおります全国庶民金融業協会連合会といったようなところから、実態がどうなっているかということのヒヤリングをしているということでございまして、逐次検討を進めている段階でございます。
  81. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは、五十二年度に一年間でどのような対策を講じてこられたのか。経企庁、大蔵省、それから警察庁の各省庁から御説明をお願いしたいと思います。
  82. 井川博

    ○井川政府委員 経済企画庁は、御案内のように消費者に対する情報の提供、啓発というふうな関係を受け持っているわけでございます。特にそうした情報なりあるいは消費者教育という問題につきましては、御案内のように国民生活センターという機関でやらせておるわけでございますけれども、一般消費者に対するサラリーマン金融についてのPRといたしまして、まず一番目にテレビ番組「くらしとあなた」というのが御案内のようにございます。これで昨年の春と秋二回にわたりまして「サラリーマン金融と消費者」あるいは「サラ金地獄」というふうなことで放送をいたしてございます。ラジオ番組につきましては、昨年の間に三回それぞれの問題をとらえてPR、啓発をいたしたわけでございますし、テレホンサービス、電話をかけますと当該問題につきまして電話で回答するというのがございますけれども、これは昨年「あとをたたない悪質なサラ金」という名目でテレホンサービスを実施をいたしたわけでございます。なお月刊の「国民生活」という一般に配布いたします雑誌がございますけれども、八月号で「消費者金融と金利」、もちろんこの中には住宅ローンの問題も含めておりますが、別途サラ金問題も含めて特集をいたしてございます。なおそのほかに「生活行政情報」あるいは「くらしの豆知識」といったようなもので、一般の消費者に対してサラ金問題をPRないしは啓発をいたしているという実態でございます。
  83. 吉居時哉

    吉居説明員 サラリーマン金融を含めました貸金業の適正な運営それから不正金融の防止という点につきましては、先生御承知のとおり、貸金業の自主的な規制によるのが一番現実的であるという観点から、昭和四十七年にいわゆる自主規制法という法律が制定されまして今日に至っているわけでございます。そこで同法に基づきまして設立されております全国庶民金融業協会連合会に対しまして、大蔵省としましても民法上の主務官庁という立場から、いわゆるこの全金運が先ほど申し上げました自主規制法の目的に十分沿った事業を適正にかつ円滑に行い得るかいなかという観点から、また行い得るようにという観点から、毎年度の事業等あるいは業務につきましてその状況を把握し、また必要な指導を行っているところでございます。またこの一年間は、こういう通常の監督というだけにとどまらずに、さらに、しばしばこの全金連等と接触をいたしまして、特に金利の引き下げやあるいは協会員の会員数の増加等についての指導をさらに強化しているところでございます。  また、先ほど経企庁からお話がございましたように、昨年九月以来はいわゆる関係六省庁が集まりましていろいろ検討しているのでございますけれども、大蔵省といたしましてもこの場におきまして、本問題につきまして鋭意検討を重ねておる、こういう状況でございます。
  84. 柳館栄

    柳館説明員 警察庁の役割りは取り締まりをすることでございます。昭和五十二年におきましては件数で千二百四十五件、人員で千二百三十人を出資法違反で取り締まりをいたしておるわけでございます。  なお十一月には取り締まり月間というものを設けまして、集中的な取り締まりなどもいたしておるわけでございます。  昨年一年間も、例年もそうでございますけれども、事件の検挙があるたびごとにこれを報道機関等を通じまして広報する、そのことを通して一般予防効果を図るということをいたしておる次第でございます。
  85. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 経企庁はただいまお聞きいたしますと消費者に対する情報、啓発ということでございますが、それじゃそういう指導の中から、利用者の側から出されている実態、意見、これについて再度お尋ねをいたしたいと思います。  それから大蔵省は、いまお聞きいたしますと毎年の事業について状況把握をしたりなどしているというお話でございますので、それじゃ業者の営業の実態、こういう点でつかんでおられること、あるいは問題点、こういったことを御説明いただきたいと思います。
  86. 井川博

    ○井川政府委員 利用者側の問題点、あるいは意見、要望ということでございますが、あくまでわれわれPRないし消費者啓発をやりますけれども、反対に利用者としてそういう問題を言ってくるという場合は、国の場合は先ほどの国民生活センター、地方の場合は地方生活センターというふうなそうした機関へ持ち込んだ場合に、それらの人のいろいろな話が聞けるという状況でございまして、したがって、十分全部つかんでいるわけではございません。しかし、他面、われわれといたしましては、消費者啓発という立場からいたした場合に、利用者側においてもやはり問題があるんではないかというふうなことが報告の中から読み取れるわけでございます。たとえば、そういうふうな金融を利用する場合に返済の計画等を十分考えてやらない、無計画にやるということになると非常にいろいろ問題を起こす。それからもう一つは、借り入れる場合に一体それがどういう条件になるかということを余り調べないで、とにかく無担保、無保証で借りてくる。そういう場合は、無担保、無保証という以上は、やはり金利その他の面、そこらに目を向けなくちゃいけない。それから、いろいろ法規等があるというふうなことを十分勉強してもらいたい。あくまでわれわれといたしましては、消費者啓発という立場からいたしました場合に、こういう点が問題があるのではなかろうか。先ほど申しました国民生活センターを通じてのいろいろなPRの場合にも、そういうことを主体に啓発をいたしているという実情でございます。
  87. 吉居時哉

    吉居説明員 私どもがつかんでおりますサラ金等を含む貸金業者の実態でございますが、都道府県等を通じましてわれわれがつかんでおりますものでございますけれども、昨年六月末におきましては約十六万件という届け出数になっております。また、そのうち個人は十二万六千件、法人が三万四千件、こういうふうに相なっております。また、先ほど申し上げました各県の庶民金融協会に加入しております会員数は、これは昨年の十二月末でありますけれども、約一万三千件余り、こういうふうになっているわけでございます。また、金利等につきましては、従来から庶民金融協会を指揮、監督する各都道府県知事に対しまして、利用者の保護という見地から、できる限りその貸付金利を引き下げるようにという指導をしてきているところでございますけれども、最近の状況は大体日歩二十五銭程度というふうにわれわれは聞いております。
  88. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 サラ金が国会で問題に出されたのは一昨年のことで、昨年の通常国会の予算委員会でも取り上げられましたし、その実態についてはもう多くを語る必要はないくらいでございますが、各省庁ともまだほとんど手がつけられていないようでございます。最近の新聞を見ましても、サラ金による自殺者が相次いでおります。  大蔵省にお尋ねをいたしますが、業者指導監督、これは一体どこの省庁が担当をするとお考えになっておられるでしょうか。
  89. 吉居時哉

    吉居説明員 現在のいわゆる貸金業法によりますと、種々の規定がございますが、たとえば「貸金業の届出」、あるいは「報告及び調査」等の権限が規定されておりまして、これは大蔵大臣の権限となっておりますけれども、同時にこれらの権限はすべて政令によりまして都道府県に機関委任されておるというのが実情でございます。
  90. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 現在の消費者金融いわゆるサラリーマン金融というのは、出資法に基づいて届け出がなされているわけです。その出資法を所管をしていらっしゃるのは大蔵省だというふうに思いますが、それに間違いはないでしょうか。
  91. 吉居時哉

    吉居説明員 ただいま御指摘の出資等の取締法の所管は、大蔵省と法務省の共管と相なっております。
  92. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 これまで何回となく国会で問題になりながら、今日まで実態調査もしなかったというのはどういう理由によるのでしょうか。その調査は大蔵省がやるものだというふうにはお考えになっていないのでしょうか。
  93. 吉居時哉

    吉居説明員 確かにこれまでいろいろサラ金についての議論があったわけでございます。ただ、私ども考えますに、サラ金にかかわる問題の多くは高利あるいは暴力といったような社会的事犯が中心であったように考えておりまして、そういう意味からいきまして、いわゆる金融行政ということには必ずしもなじまないというような状況であったと理解しておるわけであります。そうは言いましても、サラ金等を含む貸金業者の実態ということを把握することは必要なことだというふうに政府も考えておりますので、今後なるべく速やかに関係各省におきまして、その方法あるいは範囲をどうするか、これは行政能力等の問題も勘案しなければならない問題でございますので、それらも含めまして連絡協議会におきまして検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  94. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 現在の出資法によりますと、報告を求めて、そしてさらに立ち入り検査の権限を持っているというのは大蔵大臣であるわけです。それを都道府県知事にただ委任をしているということになっているわけです。政府の立場で言いますと、大蔵省にその責任があるわけです。この報告や調査を拒めば、この第十二条には罰則規定もあるわけです。大蔵省はなぜこの規定を、この第八条をどうして使わないのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  95. 吉居時哉

    吉居説明員 確かにいま御指摘のように出資法第八条には「報告及び調査」という規定がございまして、これは大蔵大臣の権限を規定しているわけでございます。それから、同時に先ほど申し上げましたように、政令で各都道府県知事に機関委任されておるわけでございます。どうして一体これまで調査しなかったか、こういうお話でございますけれども、先ほども申し上げましたように、必ずしも金融事犯というものかどうか、むしろ暴力事犯、社会事案であろうというようなことも実はあったわけでありまして、そういう意味でこれまでは調査を必ずしも十分しなかったわけでございます。もちろん各都道府県におきましては、各都道府県独自にそれぞれいろいろ実情を把握しておられるというようなことがあったようでございますけれども、統一的な調査、統一的な指揮ということは、これまで必ずしもしてなかったのでございますけれども、先ほどもお話し申し上げましたように、これだけいろいろ問題もございますので、政府といたしましてもこの問題の実態を把握することの必要性を考えておりまして、その方法や範囲等につきましては、早急に検討したい、こういうふうに思っているわけでございます。
  96. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 都道府県知事に委任をしておられる、これは何遍も説明を聞くわけですが、その委任をした大もとの責任者はだれなのか、こう言ったら、大蔵大臣だ、これははっきりしているわけです。そうすると、委任をしっ放しで、そして仕事をさせておいて、都道府県なんかは調査も一生懸命やっておるということも認めておられる。それなのに、全体としての、いまこれだけ問題になっている大もとのところが知らぬ顔。いまやっと速やかにとかなんとかおっしゃいますけれども、一向に速やかになっていない。きょうの御答弁の中で、各省庁と連絡をとってとかなんとか、六省庁とかいろいろあるわけですけれども、大蔵省がこれを使える、調査を拒むというふうな事実があれば、ちゃんと法律までつくってある、罰則規定まである、ここまで明らかであるのにどうして逃げられるのか、その逃げておられる中でいま大変な問題がある。問題はおとなだけでなくて子供にまで及んでいる。自殺者が出ている。民生の安定の面からしたらこの問題、ゆゆしき問題であるし、本当に国民が景気対策と同時に安心して命と暮らしが守られる生活をしたい、こう願っている。それを全く無視してああだこうだ、ああだこうだということが続いているわけです。いまの御答弁も、速やかにと、こう言いながらこれから実態調査をするとかいろいろ問題があるからよそとも相談するとか、一向に速やかでないわけですけれども、本当に速やかにという言葉どおりに行っていただけるのかどうか、もう一遍明快に御答弁いただきたいと思います。
  97. 吉居時哉

    吉居説明員 先生御承知のとおり、サラ金にまつわる問題というのは非常に多面的でございますので、どういうふうな範囲の問題を、またどういうふうな方法でやるかということにつきましては、やはりこれは関係するところが多いわけでございまして、その辺を速やかに相談した上で早くやりたい、このように考えております。
  98. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 いままで何にもやってないわけですから、もちろんこれから相談をしてやらなければならないわけですけれども、その相談、そういったものはいつが期限になるんでしょうか。この予算委員会が衆議院で行われているときに手がつけられるのかどうか。この八十四国会が終わるころであれば五月ごろになってしまう。終わってからいよいよやりますというようなことですと、いま冬ですけれどももう夏になってしまう、こういうことでずっとずるずる来るわけですが、一体いつ期限を切られるのでしょうか。
  99. 吉居時哉

    吉居説明員 いまここでいつということをお話し申し上げられませんのは、関係各省それぞれいろいろ関係がございますから、速やかに関係各省と集まる場所を設けていただきまして、そこで検討の上できるだけ早く実施に運べるようにということを考えております。
  100. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それでは時間がありませんので、こればかりのやりとりでは進みませんので、いまおっしゃった速やかにということは言葉どおりだ、言明どおりだということでぜひとも早く手をつけていただく、責任を持って大蔵省がやっていただくということを確認をして次へ進みたいと思います。  私は、業者の実態について先日説明をしてください、こう言いましたら、非常に不十分なことしか報告ができないという状態なんです。警察庁は特別月間をつくって、一昨年から取り締まりに乗り出しているわけです。経済企画庁も不十分だとはいえ、消費者に対するPRをやっておられる、先ほど御答弁のとおりですけれども、業者の実態調査をやるべき大蔵省は、その権限を持ちながらそれをやっていない。まず実態がわからなければ対策も何にも立てられない、こう思うわけです。それとも大蔵省はそんなことはやらぬでも対策は立てられるのかどうか、いまから御相談されるということですけれども、それは対策ということで御相談になるのか、いまこういう実態がありますよという評論をなさるために集まられるのか、いかがでしょうか。
  101. 吉居時哉

    吉居説明員 確かに実際に実態、これはどこまでできますか、行政能力の問題がありますから、できる限りの実態の把握をするということは非常に大事なことでございますけれども、同時に、先ほどからお話がありますような昨年九月からの関係省庁との連絡の場におきまして、関係省庁が持っておられますいろいろな情報あるいは問題点、さらには、最近では実際にその営業に携っておられる方々からのお話というようなことなどもわれわれ聞いておりまして、それも参考にいたしたい、こういうように考えておる次第でございます。
  102. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私は、このサラ金の対策がおくれているのは、大蔵省が動き出さなかったからだ、その責任は一にかかって大蔵省にある、こういうふうに思うわけです。幾らこの届け出事務を都道府県に委任している、こうはいいましても、政府として業者に対する行政指導の責任は出資法の八条に明記してあるとおりです。ですから、総理が予算委員会で約束をされた実態調査、これも当然大蔵省が中心になってやらなければならないというふうに思うのですけれども、総理の答弁に対するすぐ後の手の打ち方ですね、そういうふうになっているのでしょうか。大蔵省としては、いつまでにこの総理の答弁に対して調査をやるつもりになっておられるのか。いかがでしょうか。
  103. 吉居時哉

    吉居説明員 政府としてそのような実態を把握する必要性ということはわれわれも認めておるわけでございまして、ただ問題は、サラ金を取り巻くいろいろな問題が大変多岐にわたっておる。つまり社会秩序の問題から始まりまして、消費者の保護という問題もございましょう。あるいは庶民金融のあり方といったような問題もあるわけでございまして、そういうふうな問題を多角的にとらえなければ実態はわからないというふうな問題でございます。そこで調査をするにいたしましても、どういうふうな項目をどういう方法でやるかということにつきましては、これはやはり関係省庁とよく相談して、皆さんの意見を伺った上でまとめるということが一番望ましいわけでございまして、そういう意味で、できるだけ早い機会に関係省庁の場を持ちまして、そこで検討いたしまして、その後の調査による実行に移りたい、こういうふうに申し上げている次第でございます。
  104. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 何遍聞いても全く事務的、官僚的なお答えだというふうに思うわけですけれども、大蔵省が何だかんだと言ってそして動き出さないのをよいことにして、どんなことが起こっているんでしょうか。悪質な業者は羽を伸ばして、泣かされている国民が、いまこう言っている間にもふえているわけです。いま政府に求められているのは、大蔵省が一刻も早く動き出すことだというふうに思います。いままでにもうすでにやっておくべきことがおくれているわけですから、せめていつまでにやるのかということぐらい国民の前にはっきりさせたらどうでしょうか。大蔵省いかがでしょうか。
  105. 吉居時哉

    吉居説明員 いつまでというはっきりした期限を申せませんことは先ほど申し上げたとおりでございまして、なるべく早く関係省庁の間でもって相談したい、そして実行に移したい、こういうふうに考えております。
  106. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 東京都や大阪府では相談のための窓口を設置をしているわけですけれども、大蔵省も地方にあります財務局、財務部に相談の窓口を設けるということを検討されてはどうでしょうか。いかがでしょう。
  107. 吉居時哉

    吉居説明員 恐らく実際としては、各財務局、財務部におきましてもいろいろな御相談の電話なりあるいはお客さんが来られていろいろ話をしているんだと思います。ただ、そういうふうな窓口を設けるということにつきましては、これは行政能力その他の問題もございますので、一つの方向かと思いますけれども検討させていただきたいと思います。
  108. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 実際にやっているであろうということの想像でございます。大蔵省がやっているであろうというふうな状態の中でもしもやっておられるとしたら、これを一生懸命やっている人たちは全く浮かぶ瀬がないというふうに思うわけです。きちんとこの窓口をつくり、業務として大蔵省にも認められて、そしてやっていることも評価されてそれでやるということが大事だと思います。多分やっているでしょうね、やっているか、やっていないか、それは勝手ですよというふうな中で一生懸命働いている労働者は全く浮かばれないというふうに思います。窓口をいますぐに設置をするかどうか返事をしてくださいとは言っていないわけですから、午前中に宮澤大臣も、いろいろこういった問題、サラ金の問題で案があれば提起をせよというふうな御答弁もあったのを私聞きましたのでこれを申しているわけですから、ぜひとも検討するのかどうか。いや、そんなこともこれから調査——調査をやるについてどうするのかこうするのか相談をいたします、多岐にわたっているから大変です、こうおっしゃるのか。それとも、これは一つの提案として窓口を財務局や財務部に置くということを検討してみるということかどうか、いかがでしょうか。
  109. 吉居時哉

    吉居説明員 繰り返して恐縮でございますけれども、報告の聴取等につきましての、あるいは調査という点につきましての権限は、大蔵省の行政能力とかあるいは行政体制というものを超えるものだということから、政令で各都道府県に実は委任しているのが現状であるわけです。各都道府県におきましては、先ほど御指摘のように相談所というものも設けて対応しておられるところもあるわけでございます。したがいまして、直ちに財務局、財務部に同じようなものを置くことが本当にいいのかどうかという点につきましては、ちょっといろいろ問題もあろうかと思います。ただ、御指摘の点も一つの方向かと思いますので、二、三検討させていただきたいと思います。
  110. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 大変小さい声ですけれども、検討するというふうに私は聞いたわけですが、それでいいわけですね。  じゃ、この問題での大蔵省の姿勢が如実にあらわれている点として、二月二十二日付の朝日新聞、皆さんもお読みになったと思いますけれども、こういう内容があります。主婦、サラリーマンなどの間で問題になっている「サラリーマン金融の大手業者に、大手銀行が八十億円近くの大口融資をし、最大級の金主におさまっていることが二十一日、近畿財務局、大蔵省銀行局などの調査で明るみに出た。」こういう記事がありました。この問題に対しまして、大蔵省の銀行局長の徳田博美氏はこうおっしゃっております。「自由主義経済の下で、銀行が自由な営業をしているのに、融資をストップさせることは大蔵省としてはできないと思う。銀行の良識にまかせるほかないだろう。」こういうふうに述べておられるわけです。サラ金業者は、九・五%の表面金利で銀行から借りたお金を七五%もの高利で利用客に貸して高い利益を得ていることになるわけです。これでは利用者は納得できないというふうに思うのは当然のことです。  そこで、都道府知事への委任ということに関連をしてお聞きをしたいと思いますけれども、各都道府県で、このサラ金を規制するために、たとえば届け出制を登録制にして欠格条項をつくるとか、営業内容などにつきまして利率その他を表示させるというようなことは可能かどうか、自治省の見解をお尋ねをしたいと思います。
  111. 鹿児島重治

    ○鹿児島説明員 ただいまお話がございました、都道府県が自主的な事務といたしまして、いわゆる貸金業者に対しましていろいろ規制と申しますか、その指導方針を定めるということは、指導方針であります限りは可能であろうと思います。
  112. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 それじゃ、条例をつくってもよいということですか。
  113. 鹿児島重治

    ○鹿児島説明員 問題は、その条例の内容になろうかと思います。仮に規制ということになりまして、現行の届け出制を条例によって登録制にする、これを強制する、あるいは現行の金利をさらに条例によって引き下げる、こういう形の規制を加えるということになりますと、現在の法体系のもとにおいてはそのような条例はつくれないのではなかろうか、このように考えております。
  114. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 そういうことができないから都道府県は大変困っているわけです。直接窓口になっているこれらのところは、東京、大阪などでは、相談窓口をつくったり、政府に対して規制のための法制化を要求をしているわけです。それに対しては、政府の対応は非常に手ぬるいというふうに思います。大蔵省は、サラ金の利用者というのは一体どういう人たちで、どういう理由で借り始めているというふうにお考えになっているでしょうか。まだ実態調査をしておられないから、正確にはわからないかと思いますけれども、たとえばマージャンですったとか、女遊びをしたとか、お酒におぼれているとか、そういう人たちだというふうにお考えでしょうか。いかがでしょうか。
  115. 吉居時哉

    吉居説明員 まあ、恐らくはいろいろな動機によって資金の需要があろうかと思います。普通であれば通常の金融機関もあるわけでございますから、通常の金融機関ではなかなか融資を受けられないような、そういうような動機による資金需要というものが多々あるのではないかというふうに推定しております。
  116. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 実態調査をしておられないから、いかに御存じないかというふうに思うわけですけれども、大阪被害者の会とサラ金の被害者の会ですね、こういう会の調べによりますと、生活程度が相当低い層にサラ金被害者が集中して多い。また、日本消費者金融協会の調査でも、次のように言っております。「今回の調査でもっとも特長的なことは、かつて圧倒的な地位を占めていたレジャー関連の用途が落ちて生活関連の用途が第一位を占めたことであろう」と、こういうふうに書かれているわけです。つまり、不況の中でこれを利用する人たちがふえた、しかもそれは、生活費などに充当するためというのがふえてきたということです。民生が安定してきていないということなんです。政府はこのことを十分理解してもらわないと因ると思うのです。東京都の実施したこのサラ金相談の中でも、次のような報告がされているわけです。町田に住む男の方で、本人がこう言っております。「腎臓病の医療費のために友人から五十〜六十万円借りた。その返済のためサラ金から借りた。退職金で一部清算したがまだ十五〜十八軒二百万残がある。借地を処分して返済にあてたい」とこうおっしゃっている。また「二年前、会社が不景気で減給となったことから生活費、教育費などを借り入れ、以後利息に追われ現在十二社から二百十九万円になっている。返済の意思はあるがとても生活が出来ない」というふうに、墨田に住む男の方本人がおっしゃっております。こういう相談が相次いでいるわけです。また、サラ金の問題の中で一様に指摘をされている問題の一つとして、金利が非常に高いという問題があるわけです。これも東京都の場合、相談の内訳を見ますと、約二割の人が利息が高いということで相談に来ております。法務省にお尋ねをしたいと思いますが、サラリーマン金融というのは一体幾らの金利でやっているというふうにお考えになっているでしょうか。
  117. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  法務省の立場といたしましては、出資法五条の高金利事犯ということで警察におきまして検挙されまして、検察庁において起訴されるという案件につきましてのみ実態を把握しておるわけでございますが、このような実態につきまして一応のところを概観いたしてみますと、おおむね出資法の〇・三%という制限をはるかに超えまして、その二倍ないし三倍近いような金利で融資をしておるというようなものが実態ではなかろうかというふうに考えておりますが、ただし、これはいずれにいたしましても違反をした業者についての、いわゆる悪質業者についての実態でございますので、一般のサラリーマン金融についての融資がどの程度の額で行われておるかということにつきましては、わが省としては把握いたしておりません。
  118. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 わかっているだけでも大変な事態だというふうに思います。大阪被害者の会の報告を見ますと、被害者の大半の人たちは、完済したいと、こういう意欲がありながら、いままで相談する人もなく、ひとり孤独の中であえぎ苦しんでいたこと、これらの人の一〇〇%が利息制限法という法律を知らなかった、また他の法律知識も皆無に近いことがわかったというふうに述べているわけです。先ほどもこの御報告の中で、無知だからもっと勉強してもらいたいという意味のこともおっしゃったわけですが、全くそういった面があるわけです。  こういう報告を見るまでもなく、多くの人たちが利息制限法という法律があるということを知らないわけなんです。したがって、借りたあるいは約束をした金利が高いか低いかというようなことは、銀行金利よりは高い、あるいは感覚的に非常に高いというふうなことになっている場合が大変多いわけです。業者の側から言いますと、ここのところにつけ込んでいる人たちも非常に多いわけです。先ほどおっしゃったとおり、国民が無知だというところにつけ込んでやっているという人たちも大変多いわけです。そういう点から言いますれば、国民向けに周知徹底する措置も必要だと私は思いますけれども、先ほど御答弁いただきましたが、一層、こういった利息制限法という法律があって、こうこうこうなんですよというふうなところまで踏み込んでのPRが大事だというように思いますが、その必要はいかがでしょうか。経企庁の方にお尋ねいたします。
  119. 井川博

    ○井川政府委員 先ほども申し上げましたとおり、担保、保証なくして金をその場で借りられるという利点がありますと同時に、金利も非常に高いものが、金利といっても利息制限法の問題と、もう一つ出資法における上限の金利という両方の問題があるわけでございますけれども、ここらあたりについても消費者としてはある程度の知識を持たれて、現実に借りる借りないという判断をしてもらいたいというような感じから従来もやってまいっておるわけでございまして、われわれといたしましては、今後ともそういうふうな消費者啓発は続けてやってまいりたいと思うわけでございます。
  120. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 金利の最高限度の引き下げについて、出資法以外の法律によって限度を引き下げてほしい、こういう主張をしておられるところもありますが、この主張に対して法務省はどのような見解を持っておられるでしょうか。
  121. 佐藤道夫

    佐藤説明員 お答えいたします。  出資法の五条は、御案内のとおり、金銭貸借に当たりまして一日〇・三%を超える金利につき契約をする、あるいは利子を受領する行為を禁止しておるわけでございます。これは一般の金銭貸借につきましてすべて適用のある基本的な原則でございます。いま問題になっております悪質業者のみに対して適用のある規定ではございません。一般の貸借すべてについて適用があるということでございます。これを引き下げるということ、具体的には日歩〇・二%あるいは〇・二五%という線が一応考えられるのかもしれませんが、それなりに一応検討に値する御提案ではなかろうかと思いますが、いずれにいたしましても、ただいま私申し述べましたとおり、一般の金銭貸借にも適用のある原則であるということ、それから日歩〇・三%というのが曲がりなりにも二十年来すでに一応の秩序として確立しておるような原則でございます。いまにわかにこれを改めるということにつきましては、やはり市中の銀行等におきます金融情勢等も背景といたしまして、その関連も十分に踏まえて、より慎重な検討が必要ではなかろうかというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、先ほど私が述べましたとおり、悪質な業者というものは一般に日歩〇・三%をはるかに超えるような貸借を行っておるということが現実でございまして、もちろん、かような悪質業者に対しましては、検察庁あるいは警察庁におきまして、それぞれ厳正な取り締まりを実施しておるところではございますが、いずれにしても、かような現状から考えますと、この〇・三%というのを悪質業者対策の一環として引き下げるということは余り意味がないのではないかという感じも率直にいたします。
  122. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 私、素人ですからそういうふうに思うのかもわかりませんけれども、それを業とするものには、一般国民、いわゆる仲間同士、親子関係、そういったもので貸し借りする、そういうことを行う場合よりも厳しい条件をつけるということがあっても、そう悪いことはないのではないかというふうに考えるわけです。もちろんこれについてほかのものとも関連がありますから、そう単純にはいかないという面はよくわかります。こういった点について、きょう提案したことについて検討していただくというふうなことも要るんじゃないか、何とかしなければならない、こう思うわけですから、素人の意見も玄人の意見もいろいろと検討して考えていただくということが、早くこれに手を打つ、何かの解決のめどが出てくる促進剤にもなっていくのじゃないかというふうに思います。こういう考え方について、先ほど法務省さんはそれはだめだという意味の御意見を言われたわけですが、いかがでしょうか。単純にはいかないということは私もわかりますが、一遍検討してみようかということにならないかどうか、法務省と大蔵省、いかがでしょうか。
  123. 佐藤道夫

    佐藤説明員 出資法五条につきましては、一般的な原則規定でもございますので、罰則という観点から、法務省としてその引き上げるあるいは引き下げるという問題につきまして取り組む考えはございますけれども、業種のみを対象にいたしまして、それの貸し付けにつきまして、その金利の特別的な規定を設けるかどうかということに相なりますれば、これはそれぞれ所要の諸官庁において対応すべき問題というふうに考えます。
  124. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 大蔵省、いかがでしょう。
  125. 吉居時哉

    吉居説明員 金利の最高限度をどうするかというお話につきましては、ただいま法務省の方からお答えがありましたし、法務省の方の問題かと思います。  私どもは、実際やっておりますことは、その最高限度はそうであるけれども、できる限り実際にはそれを低くするようにという意味で、各都道府県を通じましてその引き下げ方をお願いしておるという、こういう状況であるわけであります。
  126. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 では銀行の場合は、臨時金利調整法、これによりまして利息制限法とは違う利息が課せられているわけですから、サラ金についてはその方法などについても検討する必要があると考えるわけです。  それから次に、届け出制を許可制にするという問題についてでございます。大蔵省は許可制にして常時指導する、こういうことになると大変だというお考えがあるようですけれども、一体あなた方は、現実に営業している業者はどれだけあるというふうにお考えになっておられるでしょうか。
  127. 吉居時哉

    吉居説明員 先ほど申し上げましたように、届け出数は昨年の九月で約十六万件ということになっているわけでございますが、そのうち実際にどれだけが営業しているかという点については、必ずしもまだつぶさには私ども承知しておりません。ある者は三分の一ぐらいだと言い、ある者は半分ぐらいだと言い、いろいろあるわけでございますけれども、いずれにしても十六万件ということはないと思います。ただ、これは数万件というふうに大きな数であることは間違いございません。  そこで、先ほど先生御指摘のように、いまの届け出制を許可制なり登録制にしたらどうか、こういうお話でございますけれども、この点につきましては、これまた御説明するまでもありませんけれども、これだけ大きな数でございますし、しかも非常に小規模で日々変転する。開業、休業、廃業というような変動が非常に激しい、こういう業種でございます。かつまた、サラ金を含めました貸し金業者というものは、これは自己資金を自分の責任でもって運用するということを原則にしている業者でございます。こういうような貸金業者の実態やあるいは性格ということから考えますと、これが許可制ということになじむのかどうかという点については、若干疑義があろうかと思います。  そこで、むしろ私どもとしましては、先ほどから申し上げておりますように、現実的に対処する意味では、やはり自主規制法に従ってこれを規制していくというのが一番現実的ではないか、こういうふうに考えているわけでございまして、全金運やあるいは各県の庶民金融業協会の活躍というものを一層期待したい、こう思っているわけでございますけれども、ただ、これらの点も含めまして、いろいろな観点から、いかにしたらこのサラ金の規制に役立つかということで、現在各省庁でもっていろいろな知恵の出し合いといいますか、相談をしている、こういう状況でございます。
  128. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 京都府は、二年に一回ですけれども、届け出業者に対してアンケートを送りまして種々の調査をいたしておりますが、このアンケートが返ってくるのは二〇%台だ、こう言っております。もちろん、悪質な業者などは法律に基づく報告でなければ回答しないでしょうから、実際にはもう少し多いというふうに思いますが、届け出業者全部が営業しているわけではないというわけです。私は、この実態をつかむためにも、法律に基づく報告調査を一刻も早くやることが大事だというふうに思います。  そこで、もう少しお聞きをいたしますけれども、大蔵省は、登録制や許可制にすると責任はあるが、届け出制の場合は責任がないからというお考えなのかどうか。もし大蔵省に責任がないとするのだったら、それじゃ一体どこに責任があるのか。これはいかがでしょうか。
  129. 吉居時哉

    吉居説明員 私どもが、登録制や許可制導入の問題につきまして、まだ結論を出しているわけではございませんが、かなりむずかしいであろうというふうに考えております根拠は、非常に数が多いということが第一点でございます。つまり、登録制や許可制になりますと、どうしてもそういうようなものの趣旨にふさわしいような日ごろからの立入調査だとかあるいは検査ということをするのでなければ、そういう許可制や登録制を導入する意味はないわけでございますが、果たしていまの行政能力からいきまして、数万にも上る貸金業者について、適正な調査等ができるかどうかという点が問題でございまして、もし行政能力を越えるようなものであるとすれば、かえって利用者にとってミスリーディングが起こるのではないか。  これは、かつて昭和二十九年まで、御承知のように事前届け出制ということが行われていたわけでございますが、当時、約一万軒の貸金業者があった時代でございます。にもかかわりませず、やはり行政能力の面から必ずしも十分な把握ができなかったということで、かえって利用者にとって不便なりミスリーディングが起こったという経験をわれわれは持っているわけでございまして、そういう経験も踏まえまして、一体どのようにこの問題を行っていったらいいかということはかなりむずかしい問題ではないかということを申し上げているわけでございます。
  130. 藤原ひろ子

    ○藤原委員 京都府の府議会におきまして、昨年の十月ですけれども、定例の議会で、サラ金業の規制に関する意見書というのを採択いたしております。この中には、出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律、これを改正して、現行の届け出制を許可価に改め、金融業の許可基準や許可条件を厳格にすること、こう言っているわけです。  また、大阪被害者の会、これがまとめた報告書によりますと、サラ金業者等は常に国に許可をもらって利息を取っている、こう言っている。つまり、許可を受けているという言い方をしているわけです。幾らあなた方や私たちがここで、それは違うんだと、こう言っても、サラ金業者の中には、それで国民にそういうふうに説明をしているわけですから、国民もそれで納得するというふうな、それで言い含められてしまうというふうな関係になっているわけです。  しかも、この届け出制という制度によって暴力金融がはびこる余地があるということです。東京の報告がここにありますが、時間がありませんのでもう読みませんが、ぜひともお手元に取り寄せて目を通していただきたいと思うのですけれども、東京のいろいろな報告あるいは大阪被害者の会というところの報告では、取り立ての問題での調査、これの結果どういうことが起こっているかというと、電話で脅迫される、家庭訪問される、職場訪問、また契約の切りかえ、親やきょうだいに対する請求、これが、時間も相手の都合なども無視されてやられるわけです。手間暇かけずに、しゃにむに暴力と力で取り立てようとする、こういうふうに述べているわけです。これは、届け出だけで営業ができるというところに主要な原因があるということは明らかです。暴力事件を起こそうが、罪に問われているというようなことであろうが、そんなものは何にも関係がなくてこの貸金業は営業できるというふうなことになっているわけです。この点が非常に改善が急がれている。  また、取り立ての問題とあわせて指摘をされているのは、契約が大変ずさんだということです。私はここに幾つかの書類を持っているわけですが、まず、これは連帯借用証書というものです。これには金額も利息も何にも書かれていないわけです。ここに委任状もありますけれども、これも全く同じです。名前が書いてあるだけです。欄はあるけれども、空白になっているわけです。それから、これは通帳ですね。これには毎月支払うべき利息の額しか書かれていないという状態ですね。それから、ここに領収書を持っておりますけれども、この領収書は四万円領収したというふうに記されていますけれども、実際にはこの人は七万円払っているわけですね。七万円払わされて四万円の領収書しかもらえない、こういう状態があるわけです。  こういった件は、すでにもう地元の民主商工会、この人たちが入りまして、相当なエネルギーを使ったけれども、利息制限法なども使って解決したということですので、私はこの業者の名前は言いませんけれども、これがあたりまえになって、いま日本じゅうを横行しているわけです。これがサラ金の問題であるわけです。なお、これだけではなしに、他の人のも私は持っているわけですけれども、全く同じやり方なんですね。ひどいものです。借りた方は、一体幾ら借りて幾ら返済したかも定かではない。その上、領収書などくれなかったり、あるいはくれてもこのようなでたらめであったり、そういうもので商売とは言えないというふうに思うのです。大蔵省が手をこまねいている間に、こんな状態が大手を振ってまかり通っているという日本になってしまっているわけです。  私は、したがって、届け出制を改め、資格要件も質屋さんと同じぐらいにはする、また、契約方法についても規定をつくるということが必要だというふうに思うわけです。  そこで、もう二、三聞きたいのですけれども、持ち時間が終わっているそうですので……。こういう状態をずっと長官聞いていただいたわけでございますが、最後に長官からお答えいただきたいと思います。  いまの問題も含めて、昨年からことしにかけてサラ金による被害というのが激増している。政府として、一刻も早く実態を調査して、必要な制度改正を急いでもらいたいというふうに思います。もう問題点がたくさん出されているわけですから、要は政府がいつ動き出すのかというところにかかっているというふうに思います。消費者保護行政を担当する大臣としてどのようにお考えになっているのか、御決意——あるいは関係省庁とというお答えになると思いますけれども、私は、その中でもとりわけ大蔵省が責任ではないかというふうに言ってきたわけですけれども、そういった意味のことをぜひとも大蔵大臣とも御検討いただく、私が述べましたこの論旨に対して、そうじゃない、大蔵省じゃない、ほかのところだということであればそれを聞かしていただいてもいいわけですけれども、こういう意見があったということで、ぜひとも詰めたお話をしていただき、政府として手を打つということをぜひとも急いでいただきたい、そして本当に、景気対策、それと同時に国民の命と暮らしを守り、民生を安定させるという重要なことを直ちに行っていただきたいと思います。長官の御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆるサラリーマン金融というものが国民の需要にこたえている面がありますことは否定ができないのだと思います。先ほども藤原委員が言われましたが、それは必ずしもギャンブルとかいうようなことばかりでなく、このような経済状態でありますから、それ以外のものについてもどうしてもせっぱ詰まった需要があるというようなことも、私はそうであろうと思います。しかし、またこれがしばしば社会悪の根源になっておることも御指摘のとおりでありまして、昨年九月以来各省庁がいろいろ相談をしながら、実はそういったようなことをどういうふうに対処していくかということについて、正直のところ考えあぐねておったというふうに私は思っております。  ただ、先ほどからの御指摘に対する政府側のお答え、いろいろ私もここで伺っておりましたが、出資の受入等に関する法律の主務大臣は大蔵大臣、それから法務大臣であるということが明らかになり、しかも第八条によれば、報告徴収も立入検査も大蔵大臣はできるということになっている。この運用について、先ほど非常に用心深くは答えられましたけれども、大蔵省の中小金融課長は、この問題は機関委任をしておる問題ではある、しかし、藤原委員の御質問に対して、もとへ戻れば大蔵大臣の権限であるという答えをされたように聞いておりました。  そこで、中小金融課長が言われたことは、どのような調査がどの程度に可能であるかは別として、一応関係の各省庁と協議をしてみたいという答えをしておられます。そういたしますと、やはり私どもが出発点とすべきはそこのところだろうと思うので、つまり大蔵大臣関係各省庁に対して少なくとも現状についてどのような調査、把握をすべきかということの御相談があって、そして関係者でまずかくかくのことをすべきではないかということになり、それで現状認識が明らかになったところで、さあ制度の問題として関係法令をどのように改正すべきか、あるいはする必要がないかというところにいかなければならないのではないか。とっかかりは、やはり現状把握を主管大臣中心になって各省協力をして進めていくということから政府側の対処が動き出すということにどうもならざるを得ないのではないかと私は思いつつ、お尋ねと政府側のお答えとを聞いておったわけでございます。  ただ、これは私が承りました感想でございますから、ただいまの質疑応答は私からも大蔵大臣にお伝えをいたしますし、また、大蔵省の主管課長においても恐らく上司に報告をされることであろうと思いますので、その辺から、長年考えあぐんでおりました各省庁の連絡協議を一定の方向に進めてまいりたい、私としてはそのように考えております。
  132. 美濃政市

    美濃委員長 米沢隆君。     〔委員長退席、武部委員長代理着席〕
  133. 米沢隆

    米沢委員 大臣の時間の関係もありまして余り時間がありませんので、簡単に御質問いたしたいと思います。  まず最初に、五十三年度経済見通しに関しまして若干の質問をしたいと思うのでありますが、この問題につきましては、予算委員会におきましてもるる質疑が重ねられまして、かなり明らかになったところ、まだ明らかになっていない部分、たくさん残してはおりますけれども、ほぼ議論が終わったような感じがいたしております。しかし、整理をする意味におきまして、大臣の今日における御見解を承っておきたいと思います。  まず第一は、政府が七%経済成長を見込み、民間機関の予測算を見ますと、みんなそれは五十三年度経済見通し四%台の成長を見込んでおるわけでありまして、七%成長と民間機関の予測四%台の成長というふうに大きく分かれておるというのが今回の大変大きな特徴ではないかという感じがします。そこで、どこらがおかしいのだろうかと思いましていろいろ調べますと、この両者の違いは、民間活動の見方の相違にすべて起因しておるという感じがいたします。  政府は、御案内のとおり、公共投資を思い切って上期に集中するとともに、住宅ローンの減税だとか設備投資減税を背景として、民間の住宅投資、設備投資にもエンジンがかかってくる、前半は公共投資主導型、後半は民間の盛り上がりに期待をする、そういうシナリオの上に七%というものが書かれておるような感じがいたします。それに比べまして、民間は、低い稼働率、それから高い在庫率など、五十二年度経済は予想以上に冷え込んでおって、また構造不況の調整が著しくおくれていることなどのために、かなりの財政支出があったとしても、政府が期待するほどの民間の投資は盛り上がらない、そういう判断があるような感じがします。  そこで、民間の予測というものが政府の予測と過去においてそう大きく変わったようなことがあったのであろうかと調べてみますと、昨年の五十二年度経済見通しなんかにつきましても、民間の成長予測と政府の成長予測というのは、そう大きな差異はない。ところが、ことしに限ってこんなに大きな差異が出てきた。そういう意味で、予算委員会でもいろいろ議論になっておりますように、七%そのものがかなり政治的な、加算された経済成長率ではないかという疑問がわいてくるのでありますが、この点について、大臣の見解を聞かしていただきたいと思います。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 多くの民間の予測が昨年のうちになされたという事実がございまして、したがいまして、政府がこのたびこのような御審議をいただいております予算あるいはそれに伴う財投、税制等の、いわば異常な政府の決心というものが必ずしも民間の予測に反映していなかった、これは年内でございましたのでやむを得ないことでございますが、そういうことが一つあろうと思います。しかし、いまになりましてもなお政府見通しの方が明らかに高いと米沢委員が言われますことは、民間に比べてそうであろうと思います。それは大体ただいま言われましたようなことだと思いますが、つまり過去において、一年前にも政府公共投資主導の経済運営をやってみたが、その波及効果はなかったではないか、したがって今回も同様ではないかという、そういう経験的な考え方が一般に支配的ではないか、それが基本の理由ではないかと思っておりますけれども、これだけ昨年も、またことしは本当に異常な額でございますが、政府が経済の主導をするということの累積的な効果は、これは決して軽視はできない。過去において在庫がその波及効果を妨げたことは事実でありましたが、その在庫も、減量経営もありまして、いつまでも波及効果の道に立ちふさがるはずのものではない。いつかは必ず在庫というものは崩れていくわけでございますから、その対応、その時期の判断というようなものが、一つ私どもの考えと民間の予測とを分ける要因ではなかろうか。過去においてもこういうことは実は一度ぐらいはございまして、昭和四十七年でございましたか、一度ございましたのですが、こういう大きく経済が変わるというときには、こういうことが過去においても例が全くなかったわけではございません。
  135. 米沢隆

    米沢委員 そこで、これから先この成長率を達成するか否かは今後の経済の動向を見なければなりませんけれども、そのかぎを握りますのが、一つは、新年度の予算を議論する中で次の補正予算を議論するのはおかしいかもしれませんが、将来的には年度内に補正予算を組まねばならぬだろうというその議論と、もう一つは公定歩合の引き下げというものが大きなかぎを握っておるんじゃないかと思います。  そこで、この公定歩合の引き下げにつきまして、現段階で経済大臣として、するかしないか、するとしたらいつごろ、幅等について、いま御見解をお示しいただきますならばお聞きしておきたいと思います。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 補正予算と言われましたのは、五十三年度内にというお尋ねかと思います。私どもは、政府がすでに御提案をいたしました予算案が最善のものであると考え、また、このもとに七%の成長は可能だと考えておるものでございますけれども、各党間におかれまして、またそれについては違った御意見もあるということも承知をいたしておりますので、この点は、各政党間において合意のできますことであれば、政府としてはそれに従わざるを得ないということであろうと存じております。  それから、公定歩合の問題でございますが、これは基本的には申し上げるまでもなく中央銀行当局が決定をすべきことであろうと思います。私自身は、もしそういうことを中央銀行でお考えになるとすれば、やはり非常に効果の大きい時期にそういう決心をしていただくことがいいのではないだろうか、抽象的に申しますとそのように考えております。
  137. 米沢隆

    米沢委員 先ほど申しましたように、民間の予測と政府の予測の差は、おおむね民間企業の活力をどう見るかというそのあたりに焦点が当てられておるような感じがいたしておりますが、そこでまず第一に、民間設備投資の動向であります。  政府は、五十二年度実質〇・五%に対しまして五十三年度は実質で六・八%という数字を示しておられます。これは、投資減税があったといたしましても、果たしてそういう成長が可能なのかどうか、われわれは非常に疑問が大きいという見解を持っておるものでございます。  一つは、現在のこの円高のデフレ効果で、製造業の設備投資は下方修正を余儀なくされておるという事実、それから製造業の需給ギャップというものが平均二五%というふうに大変大きい現在、一部業種を除きまして、投資減税すら利用できない状態ではないかという認識、それから設備投資の柱であります電力、これも予算委員会等でいろいろ議論があったように聞いておりますが、公害問題から実施は大変おくれるんではないか。また財政投融資の政府系企業体、いわゆる国鉄、電電等も同じような理由でかなり実施がおくれていくんではないか、そういうことが危惧されておるわけでありまして、そういう理由によりまして、民間設備投資が昨年の〇・五%から五十三年度一挙に実質六・八%伸びるというのは、余りにも民間設備投資を過大に評価されておるんではないかという感じがしてなりません。したがいまして、この六・八%の伸びを見込まれた根拠につきまして、具体的に御説明いただきたいと思います。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、現在の製造業の稼働率から判断いたしますと、製造業の大きな設備投資を考えることは、この五十三年度中には無理であるというふうに私どもも思っております。これは名目値でございますけれども、製造業に対してはせいぜい三%くらいの設備投資しか考えておりませんで、むしろ非製造業でありますとか、この中には電力を含みますが、あるいは個人金融であるとかいうものの設備投資、このごろはまたそのウエートが非常に大きうございますので、その方に期待をかけておるということでございます。  それから、そのうちで電力はどうかということのお尋ねがございました。これも予算委員会でも申し上げましたが、三兆一千六百億という政府の積算の根拠でございますが、これから立地を決めるものというようなものはこの中にはほとんど入りませんで、すでに工事の進行しておるものあるいは立地が決定いたしておりますもの等々についての電源、非電源の設備投資でございますから、まずこの程度のものはできるのではないだろうかというふうに考えておりまして、総体として、製造業に大きな期待をこの五十三年度年度内においては寄せられないではないかということには、私どもも同様に考えておるわけでございます。
  139. 米沢隆

    米沢委員 それから、民間在庫投資の問題であります。  先ほど長官の御答弁の中にもありましたように、民間在庫投資をどう見るかというのが一つのポイントである。政府は、今春には在庫調整が完了してその後は積み増しに転ずるであろう、こういう予測のもとに約二〇%増、鉱工業生産の伸びを六・八%と見込んでおられる。しかし民間あたりの予測によりますと、この時期は、夏から秋にかけてかなりずれ込むんではないか。そしてまた企業そのものが在庫を積み増しに転ずるほど積極性は示していない。またそういう意欲もないであろう。同時に最終需要の伸びが大変低うございますから、そう簡単に在庫積み増しに転ずるはずはない、こういうことで大体政府の予測よりも約半分ぐらいの予測しかしていない、そういう意味では民間在庫投資というものがポイントを握るものであればあるほど、この民間在庫投資というものの今後の推移を確実に把握するということが、経済成長率七%を達成する重大なポイントになってくると思うのでありますが、この民間の在庫投資が民間予測と比較しまして相当多いという、これまたその根拠について御説明をいただきたいと思います。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに構造不況業種の問題もございますし、また非鉄でありますとか、紙でありますとか合繊でありますとか、あるいは石炭、石油でございますとか、なかなか在庫がそう簡単にはなくならないという業種もございますけれども、大勢としては、私どもは年度の変わるころには在庫調整というものはかなり進むのではないか。これは、しかし、もともと非常にしっかりした定義のもとに、しっかりした調整という言葉が使われておるわけでもございません。大勢としてというふうに私どもは考えておるわけでございます。  その次に、その大きな在庫の積み増しはしかし期待できないではないかとおっしゃる点は私もそう思います。つまり、政府公共投資の波及効果を妨げていたところの在庫の壁というものは、多分その時期には低くなる、あるいは崩れるのではないかというふうには考えておりますから、そこから波及効果はあるというふうに思いながら、そうかといって好況になって、在庫投資を大いに積み増そうというような民間の動きには恐らく五十三年度中にはならない、やはり積み増しの意欲はそんなに強いものではないだろうというふうに考えます。
  141. 米沢隆

    米沢委員 いまおっしゃったような見解のもとでは、二〇%増というのはちょっと見過ぎではないかという感じがしないでもありません。  それからもう一つは民間の住宅投資の問題でありますが、これも五十二年度実質四%に対しまして、五十三年度一〇%という約倍以上の達成率を予測されております。民間住宅建設につきましては、過去の例を調べてみますと、公庫融資の決定時期に著しく増加してその後はぱたっととまるという、そういう傾向を示しておるのでありまして、特にこのような不況感が全国的にまたは個人個人の心理の中に入ってまいっておりますと、民間で家でもつくろうかという意欲が、果たして自分のこととして考えたときでもそんなのが出てくるのであろうかという心配がないでもありません。特にいま指摘をされておりますように、個人所得の伸びについては先行きは決して安心できるものでもありませんし、実質可処分所得も完全に伸び悩んでおりますし、また雇用不安というものもございます。  特に指摘したいことは、持ち家を取得しようという層が年齢的にあるいは所得階層的に非常に低くなりつつあるという、この点が非常に重要ではないかという感じがするわけでありまして、実質五十二年度の倍以上の伸び率を期待するためには、かなりの思い切った施策、今度の場合住宅ローン等が考えられておりますけれども、それ以上に金利を下げてやるとか、あるいはまた利子補給をしてやるとか、そういうもう少し突っ込んだ対策というものがない限り、このように倍増するような民間の住宅投資意欲というものはわかないのではないかという感じがするのでございます。  特に、先般も新聞等に載っておりましたけれども、結局住宅ローンが払えずにアルバイトをして交通事故を起こすという、そういう例は民間にもたくさんございまして、先ほどサラ金の話もありましたが、奥さんがパートをやめさせられて結局支払いができなくなって、サラ金に手を出してかなりの大きな負担になって、ひいてはそれが売春にまでつながっていくという、本当に笑えない悲劇が起こりつつあるのでありまして、そういう状況を見ております中で、民間設備投資実質一〇%も伸びるという余地が、まじめに考えて本当にあるのだろうかという心配があるのでありますが、どのようにお考えでしょうか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 民間住宅につきましては、公庫融資の枠でありますとか、融資条件でありますとかが御承知のようにかなり改善されました上に、減税も新たに盛り込まれたということで、条件としては相当の改善をいたしたつもりでございますが、結局この成否というのは、金を借ります人あるいは家を建てようと思います人が、自分の将来の雇用あるいは将来の所得について、一定の自信を持ち得るか持ち得ないかというところで非常に大きく私は違ってくるのだろうと思っております。したがって、もし私どもの考えておりますように企業の稼働率が多少上がっていく、そして時間外労働も幾らかふえていく、経済全体の流れが多少変わってきたな、これである日突然首になるということはもうなかろうなという、そういう金を借りる側あるいは消費者全体の心理というものが、住宅を建てようかどうしようかという気持ちにかなり影響するというふうに見ておりまして、私どもは、そういう意味では経済全体の動向が明るくなるということが住宅投資を誘うのではないか、そういう要素が相当大きいと考えておるわけであります。  他方でしかしこの問題には土地の問題がありますし、いろいろの努力を政府としてもしなければならないと思っておりますけれども、そういう条件のもとではまずいけるのではないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  143. 米沢隆

    米沢委員 経済を担当される大臣の御見解でありますからけちはつけませんけれども、特に民間住宅投資につきましては、ほとんど可能性がないのではないかという感じがしてなりません。特に住宅ローンの減税にいたしましても最高たった三万円ですから、三万円減税してやるからといって、じゃ家でもつくりましょうかという議論には決してなり得ない、私はそういう性質のものではないかと思います。そういう意味で、先ほどおっしゃいましたようにこれには土地の問題も絡みますし、あるいはまたひょっとしたら五十年ローンみたいなものをつくって、親子二代で払っていくというそういう抜本的な対策をとっていかない限り、家は欲しいけれども実際できない、そういう層を残したまま社会の中にうっせきした部分をつくっていくのではないか。そういう意味で、今後もぜひもうちょっと前向きの御検討を閣内でもやっていただきたいということをお願いしたいと思います。  それから個人消費の問題でございます。御案内のとおり、景気の回復というのは、従来までの不況期から回復に至るあの過程と比べまして異常に鈍いというのが事実ではないかと思います。その原因の一つが御承知のとおり、GNEのうち約五三%前後を占めます個人消費の低迷にあることは、私は言うを待たないことではないかと存じます。そういう意味では、成長率七%の公約の成否を握るものは、まさに個人消費支出の行方であると言っても過言ではないのではないかと思います。  そこで、個人消費の低迷している実態についてでありますけれども、ちょうどオイルショック後の昭和四十九年から五十年におきましては、個人消費支出というものは、民間設備投資や民間住宅投資の沈滞によって急降下しておりましたGNEを下支えする役割りを果たしてきたという数字があります。しかしながら、昭和五十一年から五十二年になりますと、個人消費支出というものは、実質的に見ましても、その伸び率は国民総支出の伸び率を完全に下回っておりまして、いまや景気回復の足を引っ張りかねないのがこの個人消費支出であるというふうな分析ができると思います。その上、従来の不況のときと比べまして、今回の個人消費支出の回復は大変足取りが遅くなってきておるという意味でも、今回の場合は従来から比べまして異質でございますし、また五十一年の勤労者世帯の消費支出は御承知のとおり前年を下回りましたし、五十二年度の対前年伸び率も大変鈍うございます。中でも特に低調なのが、扶養家族を持った勤労者世帯の消費支出の伸びに非常に大きな停滞が見られるという事実ではないか、そう思います。  では、なぜ個人消費支出がそんなに低迷するのか、こう考えてみますと、いろいろな理由がありましょうけれども、一番大きな理由は実質可処分所得がふえない。昨年末にも日経連等は、来年度の大学卒の初任給据え置きというものを提言されておりますし、今春のベースアップも大幅な上昇は余り見込めない、そういう様相でありますから、今後も実質可処分所得はふえない、イコール個人消費支出は伸びないであろう、そしてもう一つは将来の見通しが完全に不透明であるということでございます。経済企画庁が発表されております消費者態度指数等の動きを見ましても、先行き不安で芳しくない状況が明らかに出ておるのでありまして、今後個人消費支出というものをてこにして景気を上向きさせるという意味では、可処分所得をどうしたらふやすことができるのか、将来の見通しに対して、どういうふうに政府が不透明な部分を明るい安心のできるそういうものを示すことができるのか、そこにかかっておるのではないかと思います。  しかし、政府も今度の五十三年度経済見通しにおきましては、このあたりをいろいろ参酌されたのでありましょうが、個人消費支出についてはそう大きく期待をされていないという結果が出ておるわけでありまして、逆に言わせてもらうならば、なぜこの個人消費支出そのものに刺激を与える対策というものを積極的に考えていかないのか、そういう疑問がわいてくるのでございます。その点いかがでございましょうか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、可処分所得の伸びは確かに非常に大きいというわけではございませんけれども、全国の勤労者について見ますと、前年同月に対しましては、一ポイントとか二ポイントずつ必ず上回っておるわけでございます。でありますから、問題はむしろ、先ほども言われました将来への不透明、不安定というものが消費を大変に慎重にさせておるのではないだろうか。現在までのところ、消費関係の指標は暖冬とかいろんなことがございましたけれども、余りいい指標はまだ出ておりませんで、私はひょっとしたら一番後になるのではないかと思っておりますけれども、しかし、私どもの経済運営の感じでは、何となくここで流れが変わってきたということになりますと、消費者もそう急に何でもかんでも買おうということにはこれはなりっこございませんけれども、雇用の先も不安定さがなくなった、多少ずつは時間外手当もあるというようなことになりますと、まあ普通程度の消費者のコンフィデンスというのは回復してくるのではないかと思っております。
  145. 米沢隆

    米沢委員 確かにその可処分所得の動きというものは決してマイナスには転じていない。ポイントは少しずつは上がっておりますけれども、よく経済論議でこのごろはやっておりますように、マクロ的にはそういう議論ができる、平均的な議論としてはそれができる。しかし先ほど申しましたように一番問題は、扶養家族を抱えて家も欲しいし、教育にお金がかかるというその世帯において、じゃ可処分所得は伸びておるのか、そういう意向が反映された一つの数があるのかと言いますと、これまたミクロの問題としては非常に大きな問題がある。差し引き計算して、平均的にはある程度の伸びがある。しかし、それは実際は鈍いのでありますけれども、しかしミクロ的には、特にそういう勤労者世帯の中で扶養家族を持つというものが非常に消費に憶病になっておる。そのあたりにやはり焦点を置いた物事の考え方というものが今後一層私は必要になってくるのではないかと思います。  そういう意味で、現在の可処分所得というものが実際どういうようなかっこうで伸びていくというふうに御判断をなさっておられるのか。同時に、消費性向の動向についてどういうふうに考えておられるのか。特にこの七%の成長率を計算される場合のいわゆる賃上げ率、ベースアップ率、この部分は、政府資料ではまだ白紙の状態でありますけれども、幾らかの賃上げ、ベースアップがあると見込んでこの政府案はできたはずでございます。何も民間で決めることでありますから、政府がどうのこうのという、逆にそんなのを発表しますと、ガイドラインがどうだという議論になるかもしれませんけれども、少なくとも、賃上げ率は大体これぐらいの予測でこういう計算になったというような指標は私はお持ちではないかと思いますので、可処分所得の動向、消費性向の動向、それから賃上げをどのぐらい加味されておるのか、御見解を聞かしていただきたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点も予算委員会で申し上げたわけでございますけれども、いわゆる春闘ベースアップと言われるものが所定内の給与であるのに対しまして、私どもがまず雇用者所得と言いますときには、それ以外に所定外もございますし、それからボーナスもございますし、さらに役員の給与、退職金等々がございます。そのような雇用者所得にさらに個人の自営業者の所得あるいは個人財産所得、資産所得等々がございますから、春闘と言われる部分は全体の三割ちょっとぐらいのところである、これはいつぞやも申し上げたところでございます。  そういうことを前提にいたしまして、私ども雇用者所得は一人当たり五十三年度は九・四%ぐらいかな、五十二年度には一〇・五%程度見ておったわけでございますから、その程度の大まかな雇用者所得のつかみ方をしておるということで、御指摘になりました、まさにそのような理由でひとつ御説明をそこでとどめさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  それから消費性向でございますけれども、昭和四十年ごろから石油危機に至りますまでのころには、消費性向が八〇を超えて八二ぐらいまで行った時代がございますが、オイルショックのときに非常にそれが落ちまして、その後少しずつ回復しておる、そういうときでございますから、五十三年度は前年度に比べてほんのちょっとぐらいの消費性向の増を見ても、私どもの経済の運営の見方からすればいいのではないか、ただし一ポイントも見るということになると見過ぎではないかというような、その辺の感触でおるわけでございます。
  147. 米沢隆

    米沢委員 次は公共投資効果の問題がありますけれども、公共投資がかなり大幅につけられる。前倒し発注等が円滑に進みますと、かなりその効果は期待できるのではないかと思いますが、あと問題として、その効果の効き方の問題であります。これもるる指摘をされておりますけれども、実際、この公共投資を大幅につけて前倒し発注等が行われようといたしております。その受ける地方公共団体の受けざら、地方財政負担分を消化し切れるだけの財源が本当にあるのか。前倒しをして契約したり実施するだけの事務処理能力が、地方公共団体にあるのかというその問題が非常に大きな問題です。政府の答弁なり自治省の答弁等を聞かしていただいておる限りにおきましては、そういうことを努力する、政府の共通目標であるから努力する、そういう心配がないようにしたいというような答えは返ってくるのでありますが、私たちが地元に帰って市町村あるいは県段階で話を聞く限りにおいては、非常にこの問題は心配といいましょうか、どうなるかわからないという不安が大変強いのです。そういう意味で、こちらはやりたいと言うけれども、実際地方公共団体においては、この問題について、安心してとは言わないまでも、かなり積極的な公共投資に受けざらとしては十分なものを用意できるということが言えない、そういう状況にあることが事実ではないかと私は思います。そういう意味で、自治省当局、これから先努力するという答弁に加えて、必ず受けざら分についてはめんどうを見ますというはっきりした御答弁を私は欲しいのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  148. 関根則之

    ○関根説明員 地方公共団体の投資的経費の総額は、地方財政計画上十二兆六千億ほど計上をいたしております。そのほかに企業会計におきまして三兆から三兆五千億程度の事業量が見込まれますので、全体で約十六兆程度の事業規模になるのではなかろうかと思っております。     〔武部委員長代理退席、委員長着席〕  ところで、その財源でございますが、公共事業の地方負担額につきましては、原則として九五%を起債をもって充当する、こういう仕組みになっております。残り五%につきましては交付税の基準財政需要額に還付して措置していくということでございますから、少なくとも公共事業の裏負担について、地方団体が財源を見つけるのに苦労するということはまずなかろうと思います。もちろん、起債の資金源につきましては、全額政府資金というわけにまいりませんので、民間資金も充当いたしております。したがいまして、その消化につきましては多少やはり問題がなきにしもあらずと考えておりますが、幸か不幸か、いま市中金融も少し緩んでおりますので、五十二年の実績からいたしますとほぼ順調に消化をされております。五十三年度においても格別困難を来すということは現在のところ見込まれないと私どもは思っておる次第でございます。  事務能力につきましては、こういうときでございますので、公共事業が伸びたからといってすぐに職員を増加するということになりますと、後々財政負担の問題も生じてまいりますし、第一、急遽技術者を雇い入れるということが実際問題としてむずかしい問題もあるものですから、できるだけ配置転換なり、あるいは民間への設計監理の委託などを活用してやっていただきたい、こういうことをお願いをいたしております。  先日発表いたしました私どもの集計によりましても、昭和五十三年度の都道府県におきます当初予算の投資的経費の計上状況は、五十二年度の当初に比べまして三六%増というような形で都道府県では積極的に協力体綱を組んでおりますので、私どもとしては、公共事業の地方負担分についての消化についてはまずまずそう心配はない、もちろん簡単にはいくとは考えておりませんけれども、大きな支障が出てくるというふうには考えていないわけでございます。いずれにいたしましても、財源的には、私ども計画いたしました事業の財源について地方団体に心配のないように、今後とも十分見守っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  149. 米沢隆

    米沢委員 しかと承っておきたいと思います。  それから、公共投資効果の問題に関連いたしましていまいろいろと言われておりますことは、公共事業そのものの投資の波及効果が過去に比較して大変小さくなっておるということでございまして、その波及効果を実際現段階でどういうふうに見ておられるのかという問題と、それから、これも予算委員会等でいろいろ議論がなされてまいりましたが、減税とか年金をふやしていく、そういうものの景気に与える影響公共事業が景気に与える影響、差は一体どこにあるのだろうかという疑問があるのです。  それは、たとえば公共事業投資をやるということで景気を回復する足がかりをつくる。マクロ的には、政府のおっしゃるように、数字だけ追うならば確かに公共事業投資の方が上であるかもしれません。しかし、ミクロ的に見ましたときに、数は小さいけれども、本当に国民全体に好況感をもたらす政策という意味では、逆に減税なりあるいは年金をふやしていく等々の施策の方が大変波及効果の上でも大きいのではないかという気がしてなりません。  特に、経済は心理学と言われますように、公共事業が行われて、土建屋さんに金が入る、それがまた資材屋さんに金が入っていく。しかし、そういうお金が、では農業をやっている連中とどういう関連があるのであろうか、サラリーマンとどういう関係があるのであろうか。そういう意味ではいろいろなコンピューターでも使って波及効果の計算はできるかもしれませんけれども、公共事業中心に投資がなされて仕事がはかどっていくものと一般の庶民とは大変感覚的にずれが大きい。そういう意味で、もうかるのは土建屋さんだけではないか。そしてまた現に、そう簡単に景気もよくなりつつありませんので、そんなのは波及効果なんて問題じゃないという議論も大変多い。しかし、国民全般、たくさんの者を相手にして施策を行い、そしてそれが心理的に好況感をもたらして、個人消費を刺激するという意味では、減税なりあるいは年金をふやしていく等々の施策の方が私はずっと上ではないかという見解を持つものでございます。減税なんかをやりましてもみんなふところに入って貯金になるという見解がありますけれども、これもよく言われますように、貯金をする理由は何かと問われたら、それは老後の不安であり、医療、もし病気になったときの対策であり、家をつくりたいということであり、子供の教育費をためておきたいという、まさしくこの四つの貯金をしなければならない理由そのものは、現在の政治に一番おくれておるものでありまして、そのあたりに活を入れながら、やはり景気刺激策を考えていく手段をもっとまじめに政府は考えても何もおかしくないことではないかという気がしてなりません。その点、ぜひ経済企画庁長官の御見解を聞かしていただいて、終わりたいと思います。
  150. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 公共投資と減税の経済効果につきましては、予算委員会でもいろいろ御議論されたところでありますけれども、一般的に公共投資の直接的な効果と申しますか、一次的な効果は、最初非常に限られた部門であらわれるというのは、御指摘のとおりでございます。たとえば、土建部門ですとか建設部門というようなところであらわれるわけでございますが、副次的な二次効果、波及効果等を含めてまいりますと、かなり全般的に広がってまいりまして、その効果は減税の効果よりは大きいというのが一般的に計算上出てくるところであります。  確かに、公共投資の波及効果は計測の期間によって違いまして、たとえば経済企画庁のSPモデルというのがございますが、SP17という石油ショック以前の数字をもとにいたしましたモデルでやりますと、公共投資の波及効果は一・八から九ぐらいでございます。しかし、石油ショック以降の期間を含めましたSP18というモデルでは一・三台まで低下をしております。これはいろいろの理由がございまして、追加需要が設備投資なり個人消費に波及する時期がだんだん長くなっているということがあるわけでございますけれども、恐らくその背景には、先ほども議論に出ておりました在庫の大きさというものがかなり影響しているのではないかというふうに考えております。  したがって、五十三年度について申しますと、これも先ほどお話がありましたように、在庫調整が、もちろん形態別、産業別に非常にばらつきはございますけれども、年度末にはかなり順調に進むというふうに考えられますので、公共投資効果が、従来の在庫が非常に大きかった時点に比べますとかなり出てくるというふうに期待されております。  減税につきましては、もちろん、これもそのときの消費性向が一般的にどうなっているかということによってかなり違うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、わが国の貯蓄性向が非常に高いという事実からいたしますと、減税の波及効果と申しますのは〇・七あるいは〇・八というようなことであろうかと思われます。もちろん、減税の効果というのは第二年度には大きくなるというようなことがございますけれども、全体として、ある期間をとってみますと、減税の効果に比べて公共投資効果はかなり大きいということではないかというふうに考えております。  なお、年金その他社会保障によって消費を刺激するという点でございますけれども、もともと社会保障と申しますのは景気対策というふうに考えるべきではございませんけれども、今年度の予算におきましては、年金制度については福祉年金の一〇%引き上げ、あるいは厚生年金の給付水準の引き上げ等、政策の改善を行うということにしております。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま申し上げたようなことでございますが、かといって、減税であるとかあるいは社会福祉の充実であるとかいうことが、経済の振興と申しますか、景気回復に役に立たないというようなことを私どもかつて考えたことはございませんで、政府としては、一定の財源のもとにどのようなプライオリティーを考えるべきかというときに、御提案を申し上げましたようなことが最善ではないかと考えて御提案をし、御審議を今日まで願っておるということでございます。
  152. 米沢隆

    米沢委員 終わります。
  153. 美濃政市

  154. 依田実

    依田委員 もう最後になりまして、大幅に質問時間もなくなりましたものですから、いろいろたくさん質問したいと思った中、三段論法の一段ぐらい論法を抜きますものですから、少し論法がぎくしゃくするかもしれませんけれども、ひとつお答えをいただきたい、こういうふうに思っております。  失業者の数あるいは失業率などについては、政府の御発表がございますけれども、しかし、実際これから失業、雇用の問題は本番にかかるのじゃないだろうか、こういうふうに思っております。造船とか鉄鋼、いわゆる不況業種、これはまだ解雇まではいきませんけれども、大げさな言葉を言えば、工場の草取りをさせながらも抱えておる、こういう状態だろう、こう思うのであります。こういうのがいよいよこれから顕在化をしてくる、こういうときになるのじゃないかと思うのですけれども、いわゆる余剰人員、過剰の労働力、こういうのがどの程度あるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  155. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過剰雇用がどのくらいあるかということは大切な問題でございますけれども、実は労働省のお立場から言いますと、その過剰というのが何かということの定義が必ずしも明確でないということもありまして、国としてかくかく考えるという数字を公には持っておりません。かつて河本通産大臣は予算委員会におきまして、民間の数字ではたとえば二百万というような数字があるがということを言われましたが、これは政府が持っております数字ではございません。ただ一つございますのは、日本銀行がやっております短期経済観測、短観でございますが、この調査では、企業者の中で、雇用の過剰感を訴える者が、そうでないと考えておる者よりもかなり多いということは最近の短観でも出ております。
  156. 依田実

    依田委員 それとまた、これまでは製造部門から吐き出された方々がいわゆる第三次産業、こういうところである程度吸収されておる、その数字もまたいろいろ見方がございますけれども、いま一説には、これから先第三次産業も吸収能力がない、こういうふうに言われておるわけでありますけれども、第二次産業から第三次産業への移動、これの見通しというのはいかがでございましょうか。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもマクロでつかまえておりますものですから、細かいことは申し上げられないのですが、五十三年度で考えておりますことは、仮に五十五万の雇用の増があるというときに、製造業の雇用の増は差し引きゼロと考えております。そして第三次産業の雇用の増が四十万ぐらいではないか。残りは建設業とかいうようなことになるわけでございますが、そういうマクロの観察はいたしております。
  158. 依田実

    依田委員 いずれにいたしましても、これまでは失業してもそういう第三次産業へ吸収される、あるいはまた失業の形態自体も希望退職とかそういう形で、どうせ定年になるならば二、三年前に割り増し退職金をもらってやめようか、あるいはまた会社の方も、首を切るならば下請関係だ、こういうようなことであったわけでありますけれども、これからいよいよ工場で言えば本工、そういう方々に失業の問題が振りかかってくるわけであります。  こういう中で大きい問題として一、二考えておるわけでありますが、一つは若い人の失業というものが外国のように日本でもこれから顕在化してくるのかどうか。ドイツでも相当若い方の失業者がある、こういうふうに言われております。そのほかの国もアメリカなどもそうでございます。こういう若い人の失業がふえてくると、いろいろな政治の形態もそれに伴って動揺する。つまりイタリア型であるとか西ドイツ型であるとか、いろいろそういうインパクトを与えてくる。日本も戦後若い人の失業がない、こういうことが非常に民主主義の健全な発展というか、いままで民主主義というものが行われておった。こういうものを脅かす、そういう要素になるのじゃないかと思うのでありますが、ことし大学卒など、私などもいろいろ就職あっせんなどをしていて非常に厳しい。いわゆる統計にあらわれている以上に若い人も苦しくなっておるのじゃないか、こういうふうな感じがするわけでありますが、日本の失業の中で若い人たちが外国並みになってくるのか、この辺の長期の展望というのはいかがでしょうか。
  159. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 調査によりますと、完全失業者について見まして、昭和四十八年には全体で一・三%であったそうでございますが、十五歳から二十四歳をとりますと二・二%あったそうでございます。五十二年におきましても、年齢計の全体の二%に対して、十五歳から二十四歳の層では三・五%であるというふうに、平均よりも重く出ております。  しかし、他方で今度は新規学卒者の就職状況を見てみますと、昭和五十二年三月卒の場合にも中卒で九九・四、高卒で九九・六という数字が統計に出ておるようでございます。  そうなりますと、二つのことがどういう関係になるかということですが、一つの観察によりますと、やはり学校を出て、さしずめ職業選択をちょっと誤ったと間もなく考える場合、あるいは労働条件がもう少しいいところがあってそっちへかわるというような場合、また最後に生活環境に順応ができずにUターンをしてしまう、そういったようなことではないかということでありまして、幸いにして、ただいまのところ欧米におけるほど事態は深刻化していない。それは私はいろいろな理由があると思います。やはり企業の方で比較的若い人を採りたい。それは賃金問題なんかがあると思います。そういうことも幸せをしておるのかもしれません。
  160. 依田実

    依田委員 もう一つの観点は、いままで下請とかそういう関係であった、これからいよいよ造船などでは本工が解雇されてくることが考えられるわけであります。いわゆるブルーカラーの失業になってくるわけでありまして、ブルーカラーというのはホワイトカラーと違いまして非常に地域に密着をしておる。ホワイトカラーですと、辞令一本で東京から大阪へ行く。簡単であります。また会社をやめてどこかほかのところへわりあい移動が簡単なんでありますけれども、ブルーカラーの方々というのは非常に地域に密着している。つまり長い間そこで親代々生活をしておって、奥さんがお店をやっておるとか、そういうことで自分の生活の足しをつくっておる。こういう方々が解雇をされてくる。あるいはまた造船所のある島などで、たとえば人口五、六万のところで造船所で二千五百人くらいの解雇が行われる。家族を含めて一万人。それで物を買う人口まで入れたらほとんどその地域の経済が麻痺してくる、そういうことが考えられるのじゃないか。昔の石炭の離職者が出たころと同じようなそういうことも造船などでは考えられてくる。ここで、雇用問題がむずかしくなったときに地域のことを考える、地域経済をどうやって救済するか、そういうようなフォローの仕方というのは考えられておるのかどうか、その辺を伺わせていただきたい。
  161. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにいま言われました大きな問題は、私は造船であろうと思うのであります。しかもまきに御指摘になりましたように、最近まで造船業で活躍していた人たちのかなりの部分が、かつては九州あるいは北海道の炭鉱にいたという人たちで、ようやく落ちついたというところでこういうことになりまして、その問題は心配いたしておりますが、公共事業をやりますときに、昨日も公共事業施行対策本部で決めたことでございますが、そういう地域の失業の状態をできるだけ勘案して、地域になるべくそういう考慮のもとに、公共事業を配分するということをことしはぜひかなり思い切ってやっていきたいと考えておるわけであります。
  162. 依田実

    依田委員 北陸の繊維商社で一村産業、これが行き詰まったときに、非常に地域に密接しておる、こういうことで救済されたわけでありますが、中小造船などの問題でもそういう行き詰まりが出たときに、地域に非常に密接に関係ある、こういうときにはぜひひとつ政策的にこれを救済するようなこともお考えをいただきたい、こういうふうに思うのであります。  ところで、雇用問題を考えるときに一番大事なこと、これはどういう方向から雇用政策を考えるか。つまり二つあるわけでありまして、一つは、企業が最近は減量経営に傾いておるわけでありますけれども、企業は減量経営、出てくる失業者政府が政策的配慮で救済していく、こういうやり方でやるか、あるいは賃金それから生活程度、こういうものをある程度下げるのもがまんをして、なるべくたくさんの人が雇用される、そういう方向で雇用問題を考えていくか、いまの政府の考え方というのはどうも前者でありまして、企業から出てくるのを政策的にいろいろ補助金を出して救済する、こういう方向であると思うのであります。そうしますと、これはいつまでたっても、景気のいいときはいいのでありますけれども悪くなると同じようなことを繰り返さなければならぬ、こういうふうになる。この辺の政府の長期展望といいますか、雇用というものをどういうふうにお考えになるか、ひとつ長官の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  163. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、基本的にはやはり企業と労働組合、労働者団体との具体的な物の考え方で決まっていくということではないかと思っておりますけれども、他方で雇用安定の審議会でございますか、あそこではたしか労働時間の短縮等々との関係では、やはり多少短縮をしても雇用をふやしていくことの方が本筋ではないかという基本的な考えを持っておられるように承っております。長い目で見ますとそういうことになってまいるのかと思いますが、具体的にはいまの段階では、やはりその企業における労使の具体的な関係ではなかろうかと存じます。
  164. 依田実

    依田委員 私などは、後者の方へなるべくウエートを置いていく方がいいんじゃないだろうか。御承知のように、長官は海外へいろいろ御見識が深いわけでありまして、日本人というのはどうも働き過ぎる、つまり働くことを目的にしている。外国人の方々は、働くということはそれで得た賃金で余暇なり自分の生活をいかに楽しむか、こういう考え方になっておる。これが日本と外国とのいろんな意味の経済紛争のもとになる。外国人がすぐ言う。日本人は週休二日制をやってないじゃないか、こういう短兵急なところへ結びつくわけでありまして、そうなるとこの経済理論では解決できない、つまり文化論的なことまで考えないと外国との間がうまくいかない、こういうふうに考えられるのじゃないか、こう思うのであります。  もう長官なんかもお読みのロンドン大学の森嶋さんの「イギリスと日本」これなどを見ましても、やはりイギリスの方は所得は低いけれども豊かな感じがする。ですから、そこはやはり日本のいまの雇用あるいは生産というものに対する日本人の考え方というものを変えていかなきゃならぬのじゃないだろうか、こういうふうに思うのでありますけれども、長官、いろいろ経済交渉に当たられまして、いまの日本のそういう生産第一主義、こういうものに対する批判、この辺を見聞きなさいまして、いまの日本人の考え方というものを変える必要があるかどうか、この辺いかがでしょうか。
  165. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結局、その点はおのおのの社会の持っております。まさに依田委員が言われましたように文化観といいますか、哲学ということになっていくのだと思います。わが国の場合には確かに非常に働くわけでありますけれども、その仕事の中に一つの生きがいを感じておる、そういう国民性が相当強うございますのと、他方で、今度は与えられました余暇を十分に有意義に活用していくという、そういう伝統が必ずしも確立をしておらない。また、社会的にそういう気持ちを生かすようないろいろな施設なり、物の考え方が整っていないというような、ちょうどそういう中間のところにいるような気がいたしておりまして、いまこのような不景気でございますと、なかなかそういうことも言っておられませんけれども、やはり長い目で見ましたら、これだけ賃金水準も十五年前に比べれば上がったわけでありますから、もう少し人生を有意義に、もう少し広く暮らすというような、少しずつ国民の考え方が変わってくることは、御指摘のいわゆる先進国の中におけるわが国のあり方からいいましても望ましいであろうということは、私も感じております。  それから、委員長、ひとつ訂正をさしていただきますが、速記の方でございますけれども、先ほど審議会の名前を申し上げましたのは、中央労働基準審議会でございますので、御訂正をお願いいたします。
  166. 依田実

    依田委員 なるべく後者の方へ誘導をする、そういうことが私は必要じゃないか、こういうふうに思いまして、そういう意味では外国などはもういわゆる労働時間をなるべく短縮する。この間、日本にも報道されたイギリスの消防士のストなどもございました。これなども、もちろん賃上げもそうでありますけれども、労働時間を短縮してくれ、こういうことで二カ月にわたるストライキを打ったわけであります。あるいはまた自動車産業などでも、全米の自動車労組あたりはいつも労働時間をなるべく短縮してくれ、こういう方向で交渉をするわけであります。日本はどうも自動車産業一つとりましても、いまだに一年二千時間の、トヨタ、日産あたり非常に好況なところでもそういう仕事の内容であります。また最近は、せっかく週休二日制をとった企業でも、研修とかいろいろな名目で土曜の休みを返上する、そういう傾向が強くなって、時代に逆行するような形になっておるのじゃないか。そういう意味じゃ一番簡単なのは、手っ取り早いのは、官庁と銀行を週休二日にするのが一番いい。そうすればほかの産業も付随してもうそうならざるを得ないことになるわけでありまして、その点ひとつどうでしょう、外国などでも銀行週休二日制にほとんどの国でしておるわけでありまして、日本も法律でもってそういうところから誘導をしていったらいかがだろう、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  167. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国家公務員につきましては、今回再び週休二日制の部分的なトライアルをもう一遍やろうということを先般閣僚間で決めたわけでございますけれども、ただ現在このような厳しい経済情勢で、民間に働かれる人が非常に苦労をしておられるのに、いま役所が先に出てということがいい時期かどうかということについて、閣内でいろいろ議論がございました。したがいまして、今回のトライアルはこの制度を本格化することにつながるものではないということで、もう一遍トライアルをやってみようということになっておりまして、人事院なんかの考え方は、長い目で見れば私はそれでいいのであろうと存じますけれども、やがては週休二日制に公務員が移行したいということのように承知しております。その国民的なコンセンサスといいますか、国民が受け入れてくれるような経済情勢になりますことが何としても先決ではないかというふうに私自身は考えております。  銀行の問題は、これはたしか銀行法の改正を必要とするわけですが、いまのところ民間の週休二日制がかなり普及いたしましたために、いわゆる預金でありますとかあるいは住宅ローンでありますとか、いろんな相談を土曜日に銀行に持ってこられる人が相当多いのだそうでありまして、そういうこととの関連を、やはり本当に、土曜はビジネスでなく休むというふうに一般の国民が考えていただくようになりますと、その問題も解消するのだと思いますけれども、ただいまのところ、そういう状況のようでございます。
  168. 依田実

    依田委員 もちろんいままでの日本人の慣習がございますから、そう一朝一夕にはこれはなかなかむずかしいだろうと思うのであります。しかしいずれにしても、失業者が出る、それを政府が救済する、こういうことの繰り返しだけですと、やはりこれからの日本の経済、特に外国との摩擦が多い中で果たして順調に伸びるのかどうか、そういうことが気になりますのでいろいろお聞きをしておるわけでございます。  一つの試算によると、たとえば三千二百万人の労働者が週四十二時間を四十時間、一人二時間ずつ短縮するだけで百六十万人くらいの雇用がふえてくる、こういうような試算も出ておるということで、みんなが働こう働こう、福田内閣ですから汗流してということも結構でありますけれども、しかしこういう高度成長がとまりました時代でございますから、少ないものを分け合ってなるべくみんなで楽しむ、こういうことも考え方としては必要じゃないだろうか。もちろん先ほど長官がおっしゃいましたように、それじゃ週休二日制になって、いまじゃ逆を言えば家で寝ている以外にない、お金がいままで以上にかかる、こういう制度になるわけでありますから、そういうことをやるにはそれに付随していろいろな公共施設、公園であるとかスポーツ施設であるとか、そういうところまで考えていかなければならぬという非常にむずかしい問題ではございますけれども、しかし、そろそろそういう前向きの考え方というものが必要になってくるのじゃないか、こういうふうに思うのであります。  ところで、これはアイデアというか、長官のお考えをちょっと伺わせていただければ、こう思うのでありますけれども、たとえば物価と雇用、こういうものもいろいろ連係プレーが必要じゃないか。  一つの例でございますけれども、灯油、これは御承知のように、いまたしか行政指導である価格に抑えられておるわけでございますが、石油精製の過程でいろいろなものが出てくる。灯油の値段をたとえば一かんについて十円ぐらい上げる、物価の上ではそういう意味じゃ問題になるのでありますけれども、それによってナフサの価格を下げる、つまり国際競争力に近いような形にもしなるとするならば、企業の方は経済活動をやりやすい、雇用がふえる、こういうことであろうと思うわけであります。また流通と雇用との関係も、これも非常に入り組んでおるのじゃないか。たとえばわれわれのワイシャツの糸は原価にすれば百円かそこいらのものでしょう。売られる場合には四千円ぐらいになってくる。そこで流通の部門に合理化のメスを入れて、値段は四千円だけれども、流通経費を落とすことによって、たとえば糸の原価を二百円ぐらいでももっと二倍か三倍でも売れるようにすれば、繊維会社もゆとりが出てきて雇用もいまのように窮屈にタイトにならぬ。いまの経済というものは高度成長の中で非常に経済合理主義が追求されたようだけれども、実はいろいろなしがらみの糸がもつれ込んでおる。そしてにっちもさっちもいかない、こういうふうな状態になっておるのじゃないかと思うのであります。いまの不況、こういうときにこそ本当はそのむずかしい糸を一本一本ほぐして、本当の経済合理主義というものを打ち立てる。いままではどうも日本人は不合理と甘えに頼っていたところがあるんじゃないかと思うのでありまして、本当の合理性というものを取り戻すことが必要じゃないか、こう思うのであります。  ひとつ最後に、雇用の問題から始まりましたけれども、こういういまの経済合理性、この不況の中でこれをどういうふうに糸をほぐしていくか、その辺の長官の基本的なお考えをちょっと伺わせていただきたいと思います。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 石油危機以来、国内経済がかなり混乱をいたしまして、一時は狂乱物価になったわけでございますが、それをわが国としては何年間かでなし崩してきょうに及んだということであろうと思います。大体のものが価格関係もほぼ市場経済に戻って、数倍になりました石油価格をわが国の経済がほぼ吸収し終わった、ほぼ終わったというふうに申し上げられるだろうと思います。そして国際収支の方も実はちょっと行き過ぎるぐらいな姿になって、石油を買うことに苦労はない、物価もまずまず落ちついてきたことでございますけれども、しかしその反面で経済活動が非常に沈滞をしておるという状況だというふうに考えていまして、したがいまして、ただいまごらんのような予算案を御審議願いまして、できるだけ早く、大きくなくてもいいが、まず確実な拡大均衡へ、それも余り政府が大きな今回のようなことを何度も、やれもいたしませんが、やらずに、民間の経済活動が主体になって拡大均衡に入っていって、そうして、かつて一度は完全雇用を実現したわけでございますから、そちらの方へ近ずいてまいりたい、基本的にはそういうことを考えております。  しかし、その中で少し長い問題といたしましては、先ほどから依田委員が何度もおっしゃいましたように、そういうことの中で、しかし結局人間あっての経済でございますから、日本人としての豊かな人間生活をどのようにつくっていったらいいか、これはかつてはお互いがかなり真剣に議論した問題でございましたけれども、大変なピンチになりましてしばらくちょっと忘れておりますが、やはり順調な拡大均衡に入りましたら、もう一遍そういう問題を追求していかなければならないというふうに考えております。
  170. 依田実

    依田委員 きょうは時間がございませんでしたから数字の部分を全部抜かせていただいて質問をいたしましたので、何か文化史論的な質問になりまして大変恐縮でございました。どうもありがとうございました。
  171. 美濃政市

    美濃委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会