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1978-07-05 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年七月五日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 林  義郎君    理事 山崎平八郎君 理事 竹内  猛君    理事 馬場  昇君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       江藤 隆美君    加藤 紘一君       金子 岩三君    熊谷 義雄君       國場 幸昌君    佐藤  隆君       玉沢徳一郎君    羽田野忠文君       福島 譲二君    堀之内久男君       森田 欽二君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    野坂 浩賢君       芳賀  貢君    日野 市朗君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       山原健二郎君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 一郎君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         文部省体育局学         校給食課長   坂元 弘直君         農林水産政務次         官       今井  勇君         農林水産省経済         局統計情報部長 柳井 昭司君         農林水産省農蚕         園芸局長    野崎 博之君         食糧庁長官   澤邊  守君         参  考  人         (全国農業会議         所事務局長)  中村 広次君         参  考  人         (全国農業共同         組合中央会農畜         産部長)    小口 芳昭君         参  考  人         (全日本農民組         合連合会書記         長)      谷本たかし君         参  考  人         (北海道農民連         盟書記長)   佐々木茂一君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 七月五日  辞任         補欠選任   津川 武一君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     津川 武一君 同日  理事島田琢郎君同日理事辞任につき、その補欠  として馬場昇君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  農林水産業振興に関する件(米価問題等)      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事島田琢郎君より、理事辞任したいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの島田琢郎君の理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、馬場昇君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 中尾栄一

    中尾委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  本日は、午前、米価問題について、参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、全国農業会議所事務局長中村広次君、全国農業協同組合中央会農畜産部長小口芳昭君、全日本農民組合連合会書記長谷本たかし君、北海道農民連盟書記長佐々木茂一君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位に申し上げます。  参考人各位には、御多忙中にもかかわらず、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。米価問題につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から、忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、議事の都合上、まず、御意見をお一人十五分、中村参考人小口参考人谷本参考人佐々木参考人の順序でお述べいただき、その後、委員から質疑がございますので、これにお答えをいただくことにいたしたいと存じます。  それでは、中村参考人にお願いいたします。
  6. 中村広次

    中村参考人 全国農業会議所中村でございます。  国会の場で意見開陳機会を与えられましたことをまずもって御礼申し上げます。  ことしの米価でございますが、まず第一に、私どもが非常に憂慮をいたしておりますのは、米の過剰基調というものを背景にいたしまして、生産者米価を据え置くというような空気がかなり現在濃厚に流れていることでございます。米の需給問題につきましては、個々の農家はもとより、農業団体等におきましても正確に把握できないところでございまして、これは国自体で正確につかんでもらうほかないわけでございます。  ところで、今日まで農家は大きな苦痛を忍びながら生産調整協力をしてまいりました。この生産調整に余り協力しなかったということならば別でございますけれども、ほぼ毎年一〇〇%あるいは年によりましてはそれを超すような生産調整に対する協力をいたしながら、最近におきましては、ことしの秋には古米在庫が五百三十万トンに達する、そういうことを理由にいたしまして、これ以上米の生産を刺激するような米価引き上げはとるべきではない、こういうような意見がかなり流布されているわけでございますが、農家が米の生産調整に一〇〇%協力をしながら米が余るということは、これは言うまでもなく農家責任ではございませんで、そのときどきの天候がよ過ぎたというようなこともあるかもしれませんけれども基本的にはやはり政府需給計画が甘い、見通しを誤ったということに最大の責任があるわけであろうと思います。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕 したがいまして、米の過剰というものを背景として米価を抑制しようということに対しましては、私どもはとうてい納得できないわけでございます。  それから第二は、とは申しましても、現実に米が過剰基調にあるということは、これは疑いのないような事実でございます。その場合に、従来政府のとってまいりました一連の農業政策を見ますならば、最近におきまして学校給食への米飯の導入、あるいは種々の米の加工食品の開発、こういったような努力はされておりますけれども基本的にはやはり需要に対して生産を対応させるという姿勢が続けられてきたのではなかろうかと思われます。  しかしながら、今日におきまして、米だけは過剰ではございますけれども穀物全体をとりますならば、その自給度は五十一年におきまして三七%、四割を割る状況に至っております。農業基本法ができます前年の昭和三十五年当時は八割を超していたわけでございますから、皮肉ながら、基本法農政のもとにおいて穀物自給度が半減をする、しかも、国民の食生活はそういう事態に対しまして余り深刻な危機感を抱かずに、外国食糧への依存度を深めている。これはもはや単なる消費拡大ということで対応すべき段階ではなくて、やはりこの際、今度は生産需要を対応させる、そういう政策姿勢転換がもっと強力に図られてしかるべきではなかろうかと思うわけでございます。  この点につきましては、国といたしまして、国家百年の安全、食糧の大半は国内でもって賄うということの必要性国民に対して訴えますならば、十分にこれは国民理解も得られるというふうに確信するわけでございまして、やはりそういう確固たる姿勢といいますものを政府がとられるということを切望してやまないわけでございます。  ところで、現在、日本農業状態を見ますならば、米だけは過剰でございますけれども、それ以外の農畜産物につきましては、ただいまの穀物自給度三七%ということを筆頭にいたしまして、軒並みに低迷を続けております。しかも、農業構造につきましても、農業労働力のほとんどなくなった第二種兼業農家日本米生産の四四%を担うというような仕組みになっておりまして、もはや単なる価格政策あるいは奨励金等政策では米作の円滑な転換あるいは総合食糧自給度の向上も期し得ないというような矛盾に逢着しているわけでございますし、さらに、土地基盤整備の問題にいたしましても、いままでの土地改良が主として稲作機械化省力化に対応するものでございましたために、田畑輪換が一圃場ごとにできる水田が現在におきましても全水田面積の三割にも満たないというような状況でございます。しかも、従来農業所得低迷を辛うじて支えてまいりました兼業収入が、低成長のもとでだんだんと落ち込んでくる。さらに米以外の作物につきましても、畜産物におきましては、牛肉等は外圧に大きくさらされて不安に巻き込まれておりますし、養鶏にいたしましても、生産調整を実施しておりながら一部分は商社系等の不協力等もありまして、依然として低迷傾向を脱し得ない。あらゆる点から申しまして、農家はこれからはどうしたらよかろうかということで現在大きな不安を抱いております。こういう状態の中で、農家士気を鼓舞する、特に本気になって農業をやろうという農家層を勇気づけるということが一番肝要なことであろうと思っております。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕  ところで、ことしの生産者米価でございますけれども、私どもは従来から農協系統と統一いたしまして米価算定要求をしております。ことしの米価につきましては、従来と大きく違いまして、八〇%バルクライン方式によります米価要求ではなくて、平均生産費によります米価要求に切りかえております。私どもは、国民食糧基本であり、また国が直接管理しております米につきましては、基本的にやはり限界地生産費をとるべきであるということについては今日においても変わっておらないわけでございますが、現実問題といたしまして、従来われわれの限界生産費、八〇%バルクライン方式という要求が、実際の米価審議会あるいはその後の折衝等の場においても余り取り上げられずに済んできたというような事態等も勘案いたしまして、今日の段階では一歩大きく譲りまして、あえて政府の土俵の上に乗って、そして地代なりあるいは労賃評価なり企画管理労働、こういった生産要素改善ということに主眼を置いてわれわれの要求米価実現してもらおう、こういう態度になっているわけでございます。この点につきましては、統一要求米価でございますので、後で農協小口参考人の方から詳しくお聞き取りいただきたいと思います。  いずれにいたしましても、今日の段階におきましては、米が過剰であるということを背景としての対症療法に米価問題を考えるのではなくて、やはりこれから将来日本食糧問題をどうするか、あるいはこれだけ衰退した日本農業をどういうふうにして立ち直らすかという大局的な見地に立って、単に米価生産を抑制するということではなくて、これからの日本農業を大きく振興する、そのためには士気が現在大きく落ち込んでおります農家の意欲を当面米価でふるい立たせる、こういう大局的な観点に立っての米価対策をぜひお願いしたいと思うわけでございます。  意を尽くしませんが、私ども要求を大略申し上げた次第でございます。(拍手
  7. 中尾栄一

    中尾委員長 どうもありがとうございました。  次に、小口参考人にお願いいたします。
  8. 小口芳昭

    小口参考人 全国農協中央会小口であります。  委員長初め、先生方には常日ごろ農政推進のために真剣な審議をいただいておることについて心からお礼を申し上げるとともに、本日は、直面いたしております生産者米価について私たちの意見をお聞きいただく機会を与えられ、重ねて感謝申し上げる次第であります。  本委員会審査案件について系統農協意見を申し上げ、参考にしていただきたいと存ずる次第であります。  まず最初に、農協の本年の米穀対策運動の枠組みあるいは特徴といった点を若干申し上げて、米価問題に入りたいと存じます。  いま農業者が直面している深刻な課題は、申すまでもなく、第一に、今後十年にわたって行われ、かつ五十三年から五十五年までの三年間は全水田面積の一三・四%に及ぶ米の生産調整にいかに対応するか、そして新しい営農形態をどういうふうにつくり出せばよいのかということで大変苦労をしているところであります。  第二は、昨秋以来熾烈をきわめております海外からの農畜産物輸入圧力にどう対応するか、そして阻止するかという点が大変な心配事になっております。  第三は、長期不況のもとで農畜産物需要減ということもありまして、米を初めといたして、ミカン、卵、牛乳、野菜などの需給ギャップが出ているわけでございます。したがって、これらの農産物をどういうふうに調整をし、そして価格の安定を図り経営を維持していくかということについて、大変苦労をいたしているわけでございます。  これらいずれも日本農業基盤を揺るがす重要かつ基本的な問題でありますので、ことしの米価対策について、系統農協といたしましては、第一に農業基本政策をいまこそ確立し、長期展望のもとで営農を進めていきたいということが第一の問題でありますし、直面しております生産者米価についても、再生産所得を確保する米価実現のためにがんばらなければならないということで、基本政策の確立と要求米価実現を結合させて政府要求をしているというのがことしの大きな特徴であります。  特に、農畜産物輸入自由化枠拡大については、農家段階で大変心配しているところでありますし、御存じのようにミカンについては需給ギャップがあるものに対応いたしまして、国内で三万ヘクタールに及ぶミカン園の伐採をせざるを得ないといった需給対策を考えている中で、アメリカからオレンジの輸入枠が拡大されるということで大変心配しておりますし、東京ラウンドに向けてさらにアメリカから輸入枠拡大要求されてきているということにつき心配しているわけであります。そこで、農業者は、輸入自由化阻止運動要求米価実現という二つ課題を結合してことし運動を進めているというのが大きな特徴であろうというふうに考えるわけでございます。  次に、生産者米価について、系統農協要求の骨組みにつき申し上げてまいりたいと思います。  農協要求米価は、先ほど中村参考人が申し上げたとおり、農業委員会系統農協関係は統一いたしております。したがって、以下述べることは、農業委員会系統農協の統一的な考え方に即し進めているもの、そういう前提で見ていただきたいと存じます。  まず初めに、昭和三十一年以来二十年間にわたって要求基礎としてまいりました八〇%バルクライン方式を、今年度の要求米価の場合平均生産費方式に変更したことについてであります。このことについて、われわれ農協米中央本部中心に、過去二年半に及ぶ苦悩に満ちあふれた真剣な組織討議の結果に基づき修正いたしたわけであります。  すなわち、昭和五十一年産、五十二年産米価要求を取りまとめる段階組織内で常に二つ意見が交錯をいたしたわけでございます。一つは、従来どおり八〇%バルクライン方式でやるべきであるとする地区と、現実的な要求米価とするべきだとする意見であります。この両方の意見について、昭和五十二年産米価対策を進める際、米対の常任委員会では集約することが困難になり、これを全中会長に一任するという経過があったわけであります。これにより五十二年産は二万一千百円を基礎とし、諸般の情勢を踏まえ二万円以上ということで決定したわけでございます。  五十三年の要求米価については、このような過去二年にわたる組織討議あるいは体験を基礎といたしまして内部で徹底的な論議を行い、集約討議を繰り返した結果、原則的に四つの基準を決めまして、それで算定方式の修正に踏み切ったわけであります。  第一の基準は、従来どおり生産費所得補償方式によるということが第一であります。第二は、去年のように二万円というような算定基礎が明確でない方法をやめて、はっきりした算定基礎に基づく要求をしようというのが第二であります。第三は、全国統一米価ということで四十七県そろって統一要求米価運動を展開しようというのが第三であります。第四は、現実的切迫感のある米価としようということが集約内容でありました。  要するに、現実的切迫感ということに視点を置いて、それで内容の取りまとめに入ったわけでありますが、この具体的な中身として要約いたしますと、従来、農業委員会農協が進めてまいりました要求米価と、政府決定米価が大きく乖離をしたというのが第一であります。このことについて力関係だあるいは需給問題があったのだからということもありますけれども、高い要求米価を決めて、それで最終的に低い決定米価になるということについてそれぞれ反省があったわけでございます。いずれも政府及び国会に要請をする際、切迫感をもって説明することもあるいは受けとめることもむずかしかったのではなかろうかという反省もあり、要求に対して決定が低いということを通じて組織内でいろいろ問題があったことも御存じのとおりであります。  次に、われわれの、いま基本農政の確立なり、米の消費拡大なり、あるいは自由化阻止といったようなものについて、全国民的理解のもとで政府要求実現をするという視点に立てば、やはりわれわれ内容としては切迫感のある現実的な要求をすべきであるということで、平均生産費に修正したわけであります。結果的には、政府と同じ算定方式により算定要素改善を迫るという整理になったわけであります。  なお、このこととの関連で、八〇%バルクライン方式について農協としてはこれは誤りだとか否定するということではございません。本来的にはやはり限界地におけるコストで決定されるべきであるというふうに考えますが、先ほど申し上げた理由により平均生産費方式をとったというのが内容であります。  次に、われわれの要求米価についてその内容につき申し上げ、特に政府改善要求している算定要素中心に申し述べたいと存じます。また、ことしは生産調整百七十万トン、四十万ヘクタールに及ぶ水田面積で行われているという事態について特別に配慮すべきであるとする問題について意見を述べたいと存じます。  全中及び会議所算定要領は、先ほどから申し上げているとおり、五十年、五十一年、五十二年の三カ年の十アール平均生産費を三カ年の平均反収で割り返しまして、それに運搬費を加えたものを基本米価といたしております。これは政府平均生産費方式による算定方法と同じであります。違う点は大きく分けて三つございます。  第一は、家族労働評価であります。政府は、家族労働評価について、五人以上千人未満製造業賃金により評価いたしておりますが、私ども農業団体といたしましては、五人規模以上の事業所全国平均により賃金単価を計算いたしております。その基礎は、五十二年四月からことしの三月までの男女込み賃金の一時間当たり平均であります。その一時間当たり賃金は一千五十六円三銭というものでありまして、去年の要求米価の際採用いたしました家族労賃に比べ八・七%の引き上げになっております。これを千人未満ということにいたしますと約九百八十一円前後になりますので、われわれの要求する家族労賃の時間当たり単価よりも八%ほど低い賃金単価政府はわれわれの米価算定するものと想定されます。もとより昭和三十五年当時に生産費及び所得補償方式によって計算をするということを政府もやってきたわけでありますが、千人未満全国平均賃金では製造業従業者全体の賃金水準を示すものではないという立場から、やはり製造業平均賃金水準は五人規模以上全規模ということがわれわれの主張している点であります。特に最近の稲作労働稲作関係は、労働時間が減少し家族労働費の割合が低下して農家最終手取り分が総体的に減少するという状態もございますので、五人規模以上全規模ということで要求しているわけであります。  第二は企画管理労働評価であります。これは稲作に投下する直接労働以外に、最近、共同化が進み集団生産組織化が進んでおるわけでありますので、共同作業の打ち合わせあるいは簿記記帳など、間接労働といいますか企画管理にかかわる労働がございます。これについて政府は全く評価賃金を付与していないということでありますが、われわれとしては稲作に必要な労働としてこれに賃金を付与すべきであると考えております。この時間はわれわれの調査によれば三時間分ございますので、これをぜひ米価算定内容に入れていただきたい。  次に、地代算定が大きく違っております。政府自作地について統制小作料を採用し、小作地については支払い小作料をとっておるわけでありますが、わが方は平均支払い小作料によって全部地代算定すべきというふうに考えております。私の方の要求米価地代部分は二万二千百五十四円であります。農林省米生産費調査にあらわれる地代は十アール当たり二万六千七百六十六円であります。ところが、自作地地代について統制小作料を適用するために、五千六百六十四円で評価がえをいたしまして、結局加重平均した結果は七千四百二円となります。これは本来その地域で形成されている地代部分を無視し、統制小作料によっているという点が問題であります。しかも、現行農地法により昭和五十五年九月には統制小作料がなくなるわけであります。したがって、五十三、五十四、五十五とあと三年後には統制小作料がなくなり、これを基礎とする地代算定ができなくなるということでありますから、今年産米価からこのことを十分配慮すべきではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  最後に、私どもはことしの生産調整という事態米価算定の際十分配慮すべきであるとする意見を出しているわけでございます。このことは、御存じのとおり三十九万一千ヘクタールに上る生産調整を今年度やっているわけでございます。農林省生産費調査を見てもおわかりのとおり、いまや肥料費の二・七倍の農機具費が使われているわけで、最近の農家機械装備の比率は非常に高まっておりますし、物財費の中の最高はやはり農機具費など固定費部分であります。ところが、昭和五十三年につきましては、三十九万一千ヘクタールに及ぶ生産調整行政的指導のもとに行われているわけであります。したがって、去年の作付面積とことしの作付面積の推定によれば、全体で六・五%の作付面積が減ってまいります。したがって、固定費全体を去年までは二百七十二万町歩水田でしょっていたものをことしは二百五十四万町歩でしょわなければならないという面がございますので、機械その他固定費操業度低下分をことしの米価の中で配慮すべきであるとする意見であります。  以上、大きな算定要素改善について三点、プラスことしの生産調整との関連意見を述べた次第であります。十分御参考にし、生産者米価基本米価引き上げることにつき一層御審議をいただき、実現されることを期待いたしまして、お願いいたしまして参考意見の発表を終わります。(拍手
  9. 中尾栄一

    中尾委員長 どうもありがとうございました。  次に、谷本参考人にお願いいたします。
  10. 谷本たかし

    谷本参考人 全日農の書記長をしております谷本であります。  時間が制約されておりますので、三点について申し上げたいと存じます。  まず第一は、私ども全日農の要求米価についてであります。  私ども全日農は、ことしの生産者米価について六十キロ、一俵当たり正味二万七千三百円と決定をいたしました。こうした要求米価算定いたしました中での主な特徴は、次の二つの点であります。  その第一の点は、八〇%バルクラインによる生産費所得補償方式によって算定しているということであります。八〇%バルクラインによる生所方式を私どもが堅持をいたしておりますのは、災害農家など特殊な生産条件にあった農家は別といたしまして、正常な生産状態にある農家生産費は全部補償できるような米価でなければならないというのが私どもの主張したい点であります。申し上げるまでもなく、農産物価格は限界生産地の生産費によって決定されると言われております。そうであってみるならば、農産物価格決定のあり方からしても八〇%バルクライン、つまり限界地生産費生産費を決めていくというあり方は正当なあり方でないかと存じます。  第二の私ども要求米価算定上の特徴は、家族労働評価がえについて製造業百人規模以上の賃金を当てていることであります。米価要求は農民にとっての賃金要求に匹敵するものであります。その賃金要求としまして、あるべき正常な賃金は一体どの程度なのかということが問題だろうと思います。米は国の管理作物であります。今日公務員の賃金については、政府と公務員の間に人事院が設けられており、人事院が政府に対して公務員賃金のあるべきものについての勧告を行っております。その勧告の目安になっておりますのは、民間事業所の百人規模以上の賃金であります。そうであってみるならば、社会的に一人前の正当な賃金というのはほぼその水準ではないのかというような立場から、私どもといたしましては、公務員並み賃金という立場で製造業百人規模以上の賃金をもって評価がえをしているということであります。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕  以上二点の特徴を持った私ども要求米価は、そういう点では農民の生活要求にかなった米価だと思います。私ども全日農は、そうした要求米価を掲げながら今日米価運動を行い、またそれと同時に、多くの農政上の要求を掲げながら運動をしておるところであります。  次に、第二の問題といたしまして、低成長に日本経済が移りましてから価格要求は農民にとって一層切実になったということと、さらに、そのことに関連して若干の意見を申し述べたいと存じます。  申し上げるまでもなく、農家の主な所得は農産物販売代金と賃労働兼業収入であります。賃労働兼業収入は、日本経済が経済不況に入りましてから大変な状態になってまいりました。これを出かせぎについて見てみますと、製造業を初め、求人は高度成長時代に比較しますと激減するという状態であります。そういう状態の中でどんな変化が起こっているかということを申し上げますと、まず高度成長時代と違いますのは、就労の選択が不可能な時代に入ったということであります。そして、そのもとで、たとえば賃金について言うならば、土建業では日当五、六千円という安い賃金でありまして、それもここ三、四年据え置き状態になってきております。またさらに、最近は賃金の不払いもふえております。厳しくなったのは賃金条件だけではないのでありまして、就労条件もまた厳しくなってまいりました。たとえば年齢制限が強められました。五十歳以下でなければならないあるいは四十歳以下でなければ採用しないというような年齢制限が強まったということであります。またさらに、資本の側から就労期間の拡大が要求されるような状態も生まれております。出かせぎ農家は農繁期と重複しない形で就労を続けたいというのが要望であります。しかしながら、資本の、雇用者側から期間の拡大が要求されるために、出かせぎ農家は、農業を続けるか出かせぎだけにしていくか二者択一を迫られるような状況すら生まれてきているのであります。こうした出かせぎの実態は、また同時に地場の日かせぎ状態の中にも似たような問題が生まれていると申し上げなければならないと思います。高度成長時代と違ってまいりましたのは、農業がなかなか引き合わないから他の方に、賃労働兼業の方へ逃げていくというような形態がもはや今日ではとりにくくなったということなのであります。したがって、多くの農家は農産物価格問題についての要求を強めざるを得ない状態に置かれるようになってまいりました。  さて、それでは農産物の価格状態は低成長に移ってからどういう状態になってきているのか。申し上げるまでもなく、農民が農業生産に従事することによって得ている所得は、賃金の六割程度しかありません。それも昭和五十年、五十一年度当時で見てみますと、春闘賃上げ幅とほぼ同じ程度の農畜産物価格の上昇があったのでありますが、これが昭和五十二年以降大きな変化が生まれてきております。大きな変化とは、昭和五十二年の場合には農畜産物価格の上げ幅は春闘賃上げ幅の二分の一前後になったということであります。そしてさらに、ことしに入りましてから、加工用原料乳価格等々、主要農畜産物価格が軒並み据え置き状態になるという状態が生まれてまいりました。価格問題が非常に厳しくなったということであります。  その点を米価について見ますと、政府決定米価の性格が、これまでと違いまして大きく性格が変わってきたのではないかと思います。御承知のように、政府決定米価生産費所得補償方式算定されております。それも平均生産費方式であります。したがって、生産性が平均以下の農家については所得を補償することができないという矛盾を持っておるのでありますが、その際、これまで政府が説明をしてまいりましたのは、賃金のとり方を農村雇用賃金に切りかえて生産費方式で計算がえをすると、農家について見るならば、八〇%以上の農家生産費がカバーされているというふうに説明されてまいりました。ところが、昭和五十一年の場合で見てみますと、そういう状態ではもはやなくなってきているのであります。昭和五十一年の場合で見てみますと、五十俵以上の米販売農家でないと生産費がカバーされないという状態が生まれてきているのであります。米五十俵以上の販売農家は、戸数にしてみますと三〇・七%にしかすぎません。米の販売数量で見てみますと、五十俵以上の農家が販売しているものは全体の七丁三%でしかありません。食管法は、生産者米価は「再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ之ヲ定ム」というぐあいに規定しております。生産費方式で計算がえをした場合には、確かに再生産確保ということが言えるかと思いますが、昭和五十一年の米価について見るならば、政府がこれまで主張してまいりましたような条件にも合わないような米価になってしまっているということなのであります。五十一年の場合には米のできが悪かったという特殊な条件もあるのでありましょう。しかしながら、そういう状態になったということは、米価政策の変質を意味するのでありまして、低米価の徹底にほかなりません。今日、生産者米価が高いから米が過剰になった、生産者米価が高いから多くの農家が米の生産に集中してきたのだと説明されております。こうした事実を見てみますと、私は決してそうではないと思う。生産者米価も低い、そして他作物価格がこの生産者米価よりも不当に低いから、多くの農家が米の生産に集中せざるを得なかった。したがって、米の生産が、自給が一〇〇%以上というような状態が一方にできるということがあり、他方では、他の農畜産物生産が、自給がゼロに等しいような状態すら生まれるちんばな形というのは、こうした中から生まれてきたものだと言わなければなりません。生産者米価は抑制すべきではなくて、他作物の価格引き上げなければ、米過剰問題の根本的解決にならないというふうに申し述べなければならないと思います。  さらに、この際もう一つ付言をしておきたいと思いますのは、ことしは十カ年計画に及ぶ米の新生産調整が発足いたしました。生産調整を行った上、生産者米価についてこれを据え置きにするということは、私どもはとうてい納得するわけにはまいりません。米の生産計画については生産調整という形でやっておるのでありますから、他方で価格政策の中で需給調整のための需給事情を反映するとするならば、それは農家にとって二重の犠牲の強要だと言わなければならないからであります。  最後に、制度問題について若干申し上げておきたいと存じます。  制度問題の第一点は食管問題であります。食管制度があるからこそ、これまで農家は安心して米をつくることができました。そしてまた、そうであったからこそ、慢性的米不足国であった日本が、昭和四十年代以降それを解消することができたわけであります。しかしながら、最近多くの農家の間から食管制度堅持の声というのが非常に少なくなってまいりました。それとともに、米づくりの将来について不安を抱く農家の数がふえております。それはなぜか。たとえば米価について言うならば、米価保障が崩されてきているからであります。その点は先ほど申し上げたとおりでありますし、さらに付言するならば、今日の米価は、自主流通米価格、政府買い入れ価格、さらに超過米価格と三本立てにもなってしまっております。買い入れ制限も強化されるようになってまいりました。さらに売買逆ざやが、ことしを含めてあと三年程度で全面解消されようとしております。売買逆ざやが全面解消されるなら、農家立場から見てみるならば、米はどこへ売っても同じ程度に売れるという状態になることを意味します。業者からするならば、米はどこから買ってもほぼ同じ程度の値段で手に入れることができるということを意味します。これは何か。食管制度の部分管理化への移行、つまり間接統制化と言ってよろしいかと思います。  今日、先進欧米各国と比較いたしましても、日本の消費者米価は最低の水準であります。低いのであります。そうした安い米価が消費者にとって保障されておるのは、やはり食管制度あってのことと言わなければならないと思います。米の生産を、さらに自給を続けて、そしてまた消費も伸ばしていくというような立場からいたしますならば、食管制度の持つ価格上の機能、そしてまた流通上の機能、これを見直しながら、食管制度を一層充実したものにしていくことが大切になってきているのではないかということを述べたいと存じます。  さらに第三の制度上の問題の最後に、基本農政の確立問題について若干付言をさせていただきたいと存じます。  私どもは、農政の確立という点については、次の三つの点を柱にして要請を行っておるところであります。第一は、農畜産物価格保障であります。第二は、農用地の確保と外延的拡大であります。そして第三は、農業への投資の拡大であります。こうした三つの要請を柱といたしまして、私ども基本農政の確立について要請運動を行ってきておるところでありますが、これに最近私どもは農政の民主化問題をもう一つの柱として取り上げてきております。  具体的に申し上げますと、農畜産物価格は団体交渉で決めるようにしてほしいという要求であります。団体交渉で決めることができるようにしていくのには、幾つかの前提的条件の整備が必要でありましょう。たとえば、国が長期にわたる生産計画を決める、年次別の生産計画を決める、これを決めるに当たっても生産者団体と話し合いをする、国会で十分な審議をした上で決めるというような形が必要でありましょう。また、価格問題については、そうした生産をしていくための、生産条件を満たしていくための価格について、生産者団体と話し合いをしながら価格を決める、消費者価格については国会でこれを決めるといったような条件の整備等が必要かと思います。私ども農畜産物価格を団体交渉で決めるようにしていただきたいということを要求していることの中身は、そうしたことを前提としながらの要求なのであります。つまり、農政の主体を政府国会と農民、この三本柱に置くということなのであります。農政の運営というのが今日は役所中心であります。そういうあり方ではなしに、農民と国会政府とが一体となって農政が運営できる、そういう民主的なものに農政を切りかえていかなければならない。これまでも農政のあり方がそうした民主的なものであったとするならば、今日見るような日本農業の衰退はなかったと思います。  簡単でありますが、以上三点について申し上げたわけであります。  ありがとうございました。(拍手
  11. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、佐々木参考人にお願いいたします。
  12. 佐々木茂一

    佐々木参考人 私は、全農総連を代表いたしまして参りました、北海道岩見沢市で水田六・五ヘクタールの専業経営をいたしながら、北海道十二万農家戸数の中で八万戸が加盟しております北海道農民連盟の書記長をしている佐々木茂一であります。  今般、本委員会米価問題の集中審議を行うに当たりまして、直接生産農民に意見の公述につき機会を与えていただき、深く感謝申し上げているところでございます。私は以下四点にわたり意見を申し上げ、委員諸先生の御高配を煩わしたいと考えておるところでございます。第一点は、五十三年産米価決定についてでありますが、私たちは、今年の農業情勢の中で、特に外国農畜産物の輸入増大、米の減産強制、農畜産物価格の抑制の三点を非常に心配してまいりました。その結果といたしまして、五十三年度日本農業総産出額の減少を最も心配してきたところでございます。政府は、本年度の経済見通しと経済運営の基本的態度について一月の二十四日閣議決定された中で、農林漁業生産指数は減反政策を反映して二・二%の減少と記されておったところでございます。  現在おおよそ年間九兆円の日本農業生産額の中で、三兆円を超える米の価格がどのように決定されるかということは、農家経済を直接左右する重要なことであると考えるわけでございます。ぜひ、適正な米価決定によって、不況による就労の機会の減少、実質所得の低下から、農家経済を守っていただきたいと思うところでございます。  第二点は、生産者米価算定についてでありますが、本年、私たちは水田利用再編対策のもとで大幅な米の減産を求められています。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕 百七十万トン、金額にしておおよそ五千億円に近い米の減産、転作が全国米作農家に目標として課せられました。割り当ては、さきの農林省の発表によりますと、ほぼ消化される事態にあると申します。当然、この減産と転作による米生産のコストアップ分を本年産生産者米価に勘案し織り込んでいただきたいと思うところでございます。  私が営農しております北海道空知地方は、比較的大型水田経営が多く、稲作営農団地の形成も早くから取り組まれてきた地帯でございます。しかし、それにしても平均四ヘクタールほどの水田専業で二五%の転作を指示されました。北海道全体では水田総面積の三四・九%、八万八千八百二十ヘクタール。一戸平均三ヘクタールに満たない上川地方では、その四〇%を転作せよと割り当てられている状況でございます。転作奨励金十アール当たり平均五万五千円、計画加算二万円を加えても、所得の落ち込みは大変なものが予想されるわけでございます。  ある稲作営農団地では、本年度の機械利用料金設定の試算をいたしました。四十ヘクタールほどのその営農団地で三五%の転作目標を消化達成した場合、育苗施設から収穫乾燥調製施設までのいままでの施設、そして導入済みのいろいろな機械の遊休化を計算すると、固定経費だけでも五三%の利用料金アップをしなければならないという実態が明らかになっているわけでございます。  私自身の経営で、十アール当たりの年間償却費だけでも、トラクター、田植え機、育苗施設、コンバイン、乾燥調製施設など三万四千四百円となっており、農家によっては、転作による遊休分の償却費が二百万円を超えるという者も中にはいるわけでございます。土地改良費その他の負担金と合わせれば、転作奨励金の八割はなくなってしまうという実態でございます。これらは転作割り当てを消化した後の作付水田生産費を上昇させずにおきません。ぜひこれらを勘案算入いたしまして、米大幅減産による所得の落ち込みを、米価の適正な引き上げでカバーしていただきたいと存じます。  また、ただいま具体例をもって申し上げましたように、近年の農家経営への機械の導入は著しいものがございまして、かつて十アール当たり百数十時間を要した稲作の投下労働時間は大幅に減少いたしました。農林省統計情報部の調査でも、全国農協中央会調査でも、また私ども北海道農民連盟が青年部の活動家に委嘱し、過去十数年間行ってまいりました生産費調査でも、それは明らかでございます。しかし、それだけに労働の質は変化をし、効率的にあらゆる機械を駆動させ管理する総括的な企画や、それに習熟するための時間、天候その他の気象条件と地縁的共同慣行や制約による待機労働的時間が増加しておることを忘れては非常に困るわけでございます。  さらに、最近の水田地価の高騰による地代増高は、これまた農林省生産費調査の結果に明らかです。北海道でも、五十一年生産費で十アール当たり二万五百円、全国的にはさらに高いわけでございます。しかし、こうした地代の実態、企画管理労働評価労賃保障、労働の質的変化に伴う適正労賃の算入は十分行われているとは申せません。こうしたものの適正な算入、わけても生産年度の物価労賃、本年で言えば政府経済見通しの六・八%の物価上昇、そして五%以上の労賃などの算入をぜひ要望いたしたいと存じます。  そして、大幅な減産を指示されつつ、なお一億一千万人の国民にとって必要である一千二百十万トンの米生産は、条件の整った地域、農家だけの生産ではない現実、平たん部の大型水田機械をフルに使えるようなところばかりではなく、いまなお山間部や低湿地の悪条件下で営々と生産される部分を残すことに照らしまして、そうした劣悪ないわゆる限界的生産地の生産国民にとって必要であるわけでございますから、そうした地域の再生産が可能である米価とされるようにぜひとも要望いたしたいと思うところでございます。  それでなければ、巨額の資金を投じて圃場整備を行い、かつ機械化一貫作業体系が可能な機械施設も導入し、近い将来低コストの米を生産できる条件を備えた北海道空知、上川、石狩といった地域で三五%もの転作割り当てを当面消化する意味合いは全くなくなるわけでございます。  このような考え方に立って私どもが試算した米価は、全道価格といたしまして一俵二万一千七百八十三円、先ほど申し上げました、十数年来上川地方で青年活動家十八人がみずからの経営の生産費調査から出した数値でいきますと、一俵二万四千四十七円となっております。  ここで強調させていただきたいことは、十アール当たり生産費というものが、十俵とれるから多い、五俵しかとれないから半分だというものではない点、さらに十アール当たり生産費水準としてそう変わらず、地力の差で一俵当たり費用が変わるというわけでございまして、したがって、限界地の再生産補償はぜひ必要ということであります。  第三に申し上げたい点は、水田利用再編対策と農畜産物の輸入並びに国内生産のあり方及び農畜産物の総合価格制度についてであります。  さきに申し上げましたように、私たち北海道の農民は、本年、水田総面積の約三五%、八万八千八百二十ヘクタールの転作を割り当てられました。昭和四十五年以来、これまで全国的に見ても五十一年を除いては毎年政府需給計画に基づく米の生産調整数量は消化達成いたしました。この間、五十年以前は生産調整は緊急避難的なものと政府も言われました。農民もそう信じて協力をいたしました。北海道では、四十五年以来今日まで八万ヘクタールを超える水田が通年施工その他土地改良を行い、大型水田として将来の低コスト生産を目指したわけであります。五年間の生産調整期間を終えた、さて整備した水田に大型機械を入れ、設備を整えて、いざ生産というやさきに、水田利用再編だ、十年間で転作を定着せよということです。ただいま申し上げた八万ヘクタール余りの圃場整備は、本来米をつくるための大型水田としてであり、水路、排水設備はそういうものとして設計施工されております。  水田利用再編対策の実施のもとで、私どもは、先ほども述べたとおり、減産によるコストアップ分と、近代化を進める努力に見合った補償を、当面、価格引き上げでぜひ見ていただきたいと存ずる次第でございます。同時に、米以外の作物も、国民が必要とする農畜産物は、いずれもその労働の対価を他産業従事者の労賃で保障して、作物間の相対価格均衡を図り、総合的な価格制度のもとに置くようにしていただきたいと存じます。  また、数年来私どもは、家族労働、たとえば夫婦二人なら夫婦二人で年間の総労働時間が他産業従事者の年間総労働時間にほぼ等しい経営、現在の生産水準における標準的経営の一人当たり年間所得が他産業従事者の一人当たり年間所得と均衡するような方策をぜひお考えいただきたいと要望してまいりました。政府農業白書で言われる中核的自立経営の育成という方針や立場の具体的な方向をそうした中でお示しいただきたいわけであります。そして、短期的には外国から輸入するより割り高でも、長期的には自給度を維持し向上する必要があるものへの補償を行っていただきたいと望みたいわけでございます。  さらに、こうした観点から、国民食糧需給動向に即しつつ、食糧自給力向上のための農業再編成として、年次別の食糧需給計画を明らかにし、必要な措置、無理や犠牲を極力避ける政策的誘導を具体的に行ってほしいと思います。米の減産に見合った分を他の農業生産分野にどう振り向け、どう補償するかを明らかにしていただきたいわけであります。  少なくとも、農畜産物の輸入、当面特に穀物輸入は削減し、国内生産を伸ばし保障する。酪農畜産製品は国内生産の消流を優先する。そして輸入は供給不足の範囲にとどめていただきたい。そうした保障がなければ、水田利用再編対策は、私たちから農業生産という就労の場所、つまり雇用の場を奪い、労働の対価である賃金を低下させることを意味してしまうからでございます。  最後に、第四点といたしまして米の消費拡大について申し上げます。  繰り返して述べましたように、米価問題は帰するところ、生産者にとっては雇用と賃金所得の問題であります。大きくは国民所得再配分の問題につながると思います。また、国民の主食の消費構造をどのように政策誘導していくかに深くかかわるものであります。その限りにおいて、戦後これまで、特に十数年来の主食の消費構造の変化は、消費者の嗜好問題よりも政策誘導の結果ではないかと農民は考えております。麦製品一キロと精米一キロの比価は、昭和四十年代初めまで一〇〇対六〇で、現在は一〇〇対四〇になっております。これは米と麦の政府売り渡し価格の比が、かつて三十年代半ばに米一〇〇対小麦四六であったものが、四十年代に入って一〇〇対三五となり、三〇と変わり、現在では一〇〇対二二であることで可能となっているものと考えます。昭和四十八年の国際小麦価格騰貴の際、消費者米価の据え置き、小麦売り渡し価格大幅引き上げで、米の消費が一時的にせよふえたことは、示唆するもの大であると思います。  外国小麦の輸入を削減し、米の消費減少に歯どめをかけ、逆に米消費を伸ばす、加えて新規用途開発を行うために、この際、国民的合意形成と政策誘導の努力を積極的に実施されることを米価問題の重要な課題といたしまして訴え、私の意見を終わりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手
  13. 中尾栄一

    中尾委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  14. 中尾栄一

    中尾委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  15. 片岡清一

    ○片岡委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま御開陳を賜りました各参考人の皆様方に、若干の御質問を申し上げたいと存じます。  参考人の各位におかれましては、大変公私御多端の折にもかかわりませずおいでをいただいて、しかも大変実情に即したとうとい御意見を賜りましたことに対しまして、心から厚くお礼を申し上げたいと存じます。  まず最初に、農協関係小口さん、そしてまた谷本さんにちょっとお伺いしたいのでございますが、まずこの八〇%のバルクラインの問題でございます。農協関係では二十年来堅持してこられたこの八〇%バルクラインの問題を、先ほどの御説明によりまして、この意見を統一されるのに非常に苦労をされたことについては私も各方面から伺っておりまして、この問題について大きな決断をされたことに対しまして、私は心から敬意を表したいのでございます。  先ほどからの御説明によって大体わかったのでございますが、いままで農協で出しておられました要求米価が、結局決められました米価と非常に大きな差があった、こういうことから、せっかく運動をされても何か大きなむなしい感じを最後に残した。こういうことから、もう少し現実的な立場から要求米価というものをやっていこうという農協関係の幹部の方々の決意、これはまことに適切である。小農切り捨てにならないように八〇%を維持したいという原則についてのお気持ちは十分わかるのでございますが、そうかといって、今日米が非常に過剰基調にあるときに、依然として限界生産費、これをいつまでも主張していくということについては、やはり実情に即さないものがあると存じます。そういう意味で、私はこれに対して大変敬意を表するのでございますが、これはいろいろな立場から、そして最後に現実に即するように、そして余りむなしい感じを起こさないようなことで話をまとめたいというお気持ちからであったと思いますが、私は、やはり米が過剰基調にあるというときに、この限界生産費というものはどうしても下がらざるを得ない、五〇%に近いものにだんだんなっていくということはこれはやむを得ないことだと思うのです。  その点について、相当議論をされたと思いますが、小口さんがいろいろこれを指導されるときに、過剰基調の米の状態とこのバルクラインの問題をどういうふうに皆さんに御説明をされ、御納得いくように説明をされたのか、そういう点についての御見解を私は承りたいと存じます。  それから谷本参考人にお伺いいたしたいのは、谷本参考人は依然としてこの八〇%バルクラインというものを支持また固持しておられるわけでございますが、これについて、私は、やはり米の過剰基調というものを考えないと、結局食管制度そのものに対して非常に大きなひびを入らすことになると思うのであります。そういう意味で、私は、これについては相当、米の過剰基調というものに対して目をつぶることはできない、こういう立場から、しかももう一つ、日本農業がいま逢着しておる外国からの圧力、これは日本のような零細農業においては外国と太刀打ちするということは非常にむずかしいことであります。そのことはとてもやれるものではございませんが、そうかといって、これを全然無視して、そして日本農業生産物を全然外国のものを無視してやっていくということについては、これは将来やはりある程度考えていかなければならぬ、できるだけ競争力を持つように日本農業というものは体質改善していかなければならぬ、こういうことだと思います。  ところが、谷本参考人のおっしゃることは、非常によく一応は理屈に沿っておるのですが、これは、全然日本立場だけを考えた、そしてほかの、日本がいまや逢着しておる産業の低成長時代、こういうときに、農業だけが自分たちの考えだけで思う存分いけるという時代とは非常にさま変わりしてきた、そういう段階においてやはり考えなければならぬものがあるのじゃないかということを私は思うのですが、そういう点について基本的にどういうふうにお考えになっておるか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  16. 小口芳昭

    小口参考人 先生の御質問について、一つは農協平均生産費を採用した背景、その組織討議内容、それから八〇%バルクラインの要求について、それから最後に過剰基調とのかかわりについて、この三つございますので、それぞれについて申し上げてまいりたいと考えます。  第一の、平均生産費を採用した系統農協及び農業委員会背景については初め申し上げたとおりでありますが、実態的に申しますと、要求決定の乖離という問題について、運動の中でいままで組織が十分検討してまいったわけであります。昭和五十年には四七・六%の引き上げ要求に対しまして決定したのが一四・六、それから五十一年が三〇・九%の要求に対して六・五、五十二年、昨年は二二・二%の要求に対して四%の引き上げという状態だったわけでございます。これについて、そのときどきにおける力関係にあるものだとかいうこともございますし、その年の経済情勢や需給事情によって左右されるんだということもあって、やはり八〇%バルクラインで要求を続けてはどうだという意見もありますけれども、系統内部で米価運動に第一線で取り組んでいる実態からいきますと、要求決定の乖離について、農協農政運動についての無力感あるいは農協運動そのものへの不信感といったようなものが内部にそれぞれ出てまいりまして、やはりわれわれが要求に迫力を持って臨むためにはどうあるべきかという問題について、五十一年、五十二年、五十三年と二年半にわたって討議を続けてきたわけでございます。結局、相手の政府及び国会関係筋でも初めから切迫感を持って受けとめてもらえるようなきちっとした要求をすべきでなかろうかということが一つの大きな動機になっているわけでございます。  次に、われわれが、こういう低経済成長のもとで米価要求のあり方ということを考えた場合に、米価だけに焦点を当てて米問題あるいは農業問題が解決するというような状況ではもちろんないわけであります。申すまでもなく、米を初めとする食糧問題、あるいはその他農産物の自給問題、さらに米の消費拡大問題といったような問題を全国民的な合意の中で実現することを通じて農業の発展あるいは経営の安定を期していかなければならないということが組織内部で議論され、そういう意味では、国民全体の合意を得るための現実的な対応をすることが必要であろうということで、われわれは整理をしたわけでございます。  もとより、平均生産費によってわれわれは要求するわけでありますが、一部マスコミあるいは大蔵筋からのキャンペーンがございまして、過剰のための生産調整を行っている現在、生産刺激をするんだから米価を上げるべきではないとする意見もあるやに聞いておりますけれども、われわれは、米の生産をするのにこれだけコストがかかります。あるいは米を生産するのに投下した労働が都市勤労者とかく均衡しなければならない、そういう立場に立って、米の生産費所得を補償すべきとするわれわれの正当な要求米価を社会的に強く主張し、かつ政府に迫っていくという立場平均生産費をとったわけでございます。  八〇バルクにつきましては、本来、農産物価格限界地における生産費が補償されるべきであろうという考え方をわれわれ持っておりますし、それをいま否定するとか、あれは誤りであるという立場をとったわけではございません。したがって、先ほどから申し上げている二年半の組織討議背景及びその内容に即して、平均生産費を採用していくというのがポイントであります。  次に、米の過剰問題でありますが、大蔵筋から出ております資料によりますと、過剰である。これは、四十五年の七百二十万トン在庫という事態と五十三年の現在五百三十万トン以上の在庫、こういう状態はきわめて似ているし、当時は四十四年から三カ年、米価を据え置いた事態であった、したがって生産者米価は慎重に配慮すべきであるという文書が流れているわけでありますが、その点について、基本的認識に誤りがあるのではないかというふうに考えております。四十五年の七百二十万トン在庫については、当時生産調整を行わず、全量買い入れという段階でたまったものであります。四十六年から以降は生産調整を行ってまいりました。四十六年から五十年までは稲作転換対策として五年間、五十一年から五十二年は水田総合利用対策ということで二年間、そして今年以降は十カ年に及ぶ水田利用再編対策が進められているわけでございます。したがって、四十六年以降五十二年まで、五十一年の際に生産調整目標数量に対し九一%の達成率ということはございましたが、それ以外の年は九八、一〇八、一一二、一一一というふうに、それぞれ毎年目標数量を達成してまいっております。ことしも、五十三年について一〇四という達成率であり、全国中央会の調査によれば一〇六・八というふうに達成をいたしているわけであります。それでもなお在庫しているということは、これは三つの理由、一つは豊作であった、あるいは消費減があった、そして最終的には政府の需給見通しの甘さがあったということによるものであります。  それで、昭和五十三年から十年計画で行う水田利用再編対策を行うに当たり政府は五十三年、ことしまでの古米在庫政府責任において処理することを明確にし、いまつくっている米は五十四年以降の米穀年度にかかわるものでありますが、これは単年度需給するという前提に立っているわけであります。そういう立場に立って食管制度を堅持し、米の需給均衡を図るために農家に対して理解協力を求め、その結果が一〇四ということであります。したがって、現在の古米在庫等を理由として農業者に不利な政策決定をすることは、これは間違いではなかろうかというふうに考えておりまして、来年度、五十四年以降の米については単年度需給均衡するという前提に立つならば、われわれが主張いたします正当な生産費とそして所得を補償する米価実現すべきであるとする立場に立ち、政府にただいま迫っているところであります。  終わります。
  17. 谷本たかし

    谷本参考人 二つの点について御指摘がございました。  一つの点は、過剰基調の中で限界生産費の主張は実情に即さないのではないかという御指摘でございました。この点について私は二つの点を申し上げたいのです。  第一点は、今日の米過剰原因をどう見るかという問題であります。一つの点については、先ほど述べましたが、生産者米価が高いので米の生産に多くの農家が集中した、これが米の過剰原因の一つではないかとされております。しかしながら、先ほども申し上げましたように、今日の生産者米価水準は、生産費方式で見てみた場合でも、国民が必要とする米の総量を確保し得るような十分な米価にはなっていない。これは農林省の統計の数字を見れば明白であります。ということは、高米価であるがために多くの農家が米の生産に集中したのではなしに、米以外の農産物が米と比べると非常に農家にとって不利な条件にあった。とりわけ価格条件が低いというようなことが、多くの農家が米の生産に集中せざるを得なかった主要な原因だと言ってよいと思います。ですから、米価を抑えることが米の過剰原因を解決する道ではなしに、米以外の農畜産物をつくっていかに引き合うような状態にしていくかという問題解決を抜きにしては、私は今日の米過剰基調を解決することにはならないと思います。  それから二番目の問題として、過剰問題との関連で申し上げたいと思いますのは消費との問題であります。今日の日本の米消費の構造は、米不足時代の消費構造がほぼそのまま維持されていると言ってよいのではないかと思います。たとえば穀物について言うならば、かつて私どもの主食は米でありました。今日ではすでに米を一〇といたしますと、粉食の方が五になってきております。紛食が主食の王座にのし上がる状態になってまいりました。それじゃそういう粉食の拡大がどうして可能になってきたのか。これは米を食うよりも麦を食った方が安上がりだという価格政策がその主要な原因の一つだったのではないかと思います。たとえば百カロリーとりますのに、米で必要な代金を一〇といたしますと、うどん、パン——パンが一番高いのでありますが、パン、めん類などでは大体八〇から三五程度の代金を払えば百カロリーを摂取することができるという状態があります。こうした状態がどのようにしてつくられてきたかというならば、たとえば昭和二十五年の卸売段階の米麦の相対比は一〇対七・七でありましたが、昭和五十一年になりますと一〇対二・四というぐあいになってきております。つまり米を食うよりも麦を食った方が安上がりになるような価格政策が行われてきておる。そしてその価格政策というのは、アメリカ、カナダ等々から輸入する外麦、これの消費を拡大するような価格政策になっているというぐあいに申し上げなければならないと思います。そういう価格政策がとられてきたというのは、貿易上の関係もありましょうが、慢性的な米不足状態であったというところに、もう一つのそうした価格政策がとられたゆえんがあったと思います。  さらに、学校給食のあり方にいたしましても、本来的な教育授業の一環としての学校給食だとするならば、やはり米飯給食にならなければならぬと思いますが、これまでとられてきておるのは粉食中心主義でございましたのは申し上げるまでもありません。  あるいはまた、日本酒づくりの問題にいたしましても、今日の日本酒づくりというのは、私どもはインチキ酒と呼んでおりますけれども、アルコール添加によってつくられておるわけであります。かつては純米醸造であったのは言うまでもありますまい。そうした酒づくりの仕組みがつくられたのが第二次世界大戦中でございました。そうした酒づくりのあり方は今日もそのままになっておるのでありまして、そうして見るならば、米消費構造のあり方が米不足時代のあり方そのままになっておるというところに大きな問題があるのではないか。そしてその問題を解決していくのには、やはり業界関係の利益制限といったようなものが絡んでくることは避けられないと思います。そうした問題解決がされていないというところに、やはり米過剰の主要な原因の一つがあるのではないかと思います。  それから、もう一つの点として指摘させていただきたいと思いますのは、米の需給調整は何でやるのかということであります。統制作物ではなしに、政府管理作物ではなしに、一般の自由な農産物である場合は、価格によって需給関係調整されていくことは言うまでもありません。米の場合は食管法によって管理されておるのでありまして、したがって、政府はそういう立場から生産調整で米の需給コントロールを行っておるところであります。そうであってみるならば、価格政策の中に需給事情を反映をするというのは、農家の側から見てみますと二重圧迫というようなことを意味するのではなかろうかと存じます。  それから、御指摘のありました二番目の問題といたしまして、外国の農産物との競争関係、これも無視できないのではないか、そういう点についてどう考えるのかという御指摘でございました。日本農業が外国農業と太刀打ちできるようにしていくのには、やはり農業に対する投資の拡大や農用地の確保や価格の保障といったようなことが大切であろうと思います。価格問題について限定をして申し上げるならば、今日の日本農業の中で比較的生産性が高いのは何かと言うならば、やはり米はその代表的なものの一つと申し上げてよいのではないかと思います。かつてと違いまして、米生産機械化され合理化されるというような状態の生まれてきたのは何であったかと言うならば、それは米の生産価格が一定水準に保障されていたというような事情を見逃すことはできないと思います。やはり価格保障をきちんとすることによって、農家が資本装備ができるような状態をつくっていくということ、そのことが価格政策との関連からしますと、外国農業に太刀打ちできるような日本農業をつくっていく条件になっていくのではないか、こんなぐあいに考えます。
  18. 片岡清一

    ○片岡委員 次に、私は、このたびの米価決定について一番重要な要素として、先ほど中村参考人小口参考人その他からもございました転作問題に対して、農村の方たちが非常に真剣に協力をしていただいた。これは、みずから将来の米作問題を考えたときに、やはり政府の言うとおりな方策でいかなければ将来問題だということに対して、非常な御理解をいただいた、そしてその結果自主的な協力をいただいたということが一番大きな原因だったと思いますし、その結果が一〇四%という非常な進捗率になったわけでございます。  そういう点で、私は、今度の米価決定にはやはり農民に対する感謝といいますか、そういったような温かい気持ちがあらわれなければならぬ、こういうふうに思うのでございます。そういうときに米価据え置きということが新聞で言われておることに対していろいろ意見が出ることもやむを得ないことだと私は思っております。  そういう意味で、昨日発表になりました生産費の指数を見ますと、結局、いろいろの物財費はそれぞれある程度上がっておるけれども、やはり十アール当たりの収穫が非常に進んだということが原因で、六十キロ当たり生産費は上昇分が〇・一%ということになった。そういうことになったと思うのですが、私はこれに対して、ひどい、冷たい、そういう感じだけでなしに、やはりこれからも大いに生産調整に励んでもらわなければいかぬ。これはあくまで、いつも農林大臣が言っておられるように、強制的やあるいは法律によって強制すべきものでなしに、どこまでも農民の皆さん方の理解協力によってやっていくのだという立場でありますので、そういう点をぜひ考えて米価というものはある程度決定されなければならぬものだ、こういうふうに思うのです。  そういう点について、これは先ほどもお話がありましたのでもうお聞きする必要もないのですが、農業会議所事務局長であられる立場から、ひとつ将来の一〇〇%以上の成果をおさめていただくための農民心理、そういうものについて何か一言お話があれば承りたいと思っております。時間がありませんので簡単にお願いいたしたいと思います。
  19. 中村広次

    中村参考人 私は、先ほど申しましたように、現在の米の過剰問題と申しますものと今回の米価は、これは区別して対処するべきであろうと考えております。あくまでこれは単年度で需給するという前提で生産調整が行われておりますし、それに基づいて農民が協力したわけでございますから、やはりそれに協力した農家にこたえる道は、いろいろな奨励措置等も考えられるのでありましょうが、基本的に基本米価そのものでもってこたえていただきたいというふうに考えております。
  20. 片岡清一

    ○片岡委員 もう時間もありませんので、いろいろお伺いしたいのですが、最後に、農協関係小口さんにお伺いしたいのです。  今日非常に米が過剰になっておるという状況にもかかわらず、自己開田がまだ後を絶たない。そして昨年のごときは一万二千ヘクタールも自己開田の統計が出ておる、こういうことですが、これらの問題については、農業会議所の方も農協も、力を合わせて何とかひとつ自主的にこういうことの抑制、これらについてお力添えをいただきたいと思いますが、それができるかできないか。また、どういうふうにしたいという御決意があれば承りたいし、もう一つ、農協関係で、米の消費拡大のときに大いにやっていただかなければならぬのを、ラーメンや何か売っておられるということでありますが、そうでなしに、米の小売、こういうことがもう少しできないか。これは生産者でなしにそれ以外の員外利用ということになるのかもしれませんが、そういう点で何とか工夫できないか。そういう点について、最後に一言御返事をいただければありがたいと思います。
  21. 小口芳昭

    小口参考人 米の需給がこのような状態になっているということは、農協側も深刻に受けとめておりまして、米の消費拡大を含めて需給の均衡を図るべきであるというふうに基本的に考えております。そのために自己開田一万二千ヘクタールと言われておるわけでありますが、農協として自粛自戒、融資その他についてもチェックするということでやっているわけでありますが、結果的にはこのような事態になっていることを大変残念に思っているわけで、その他の措置についてはがんばっていきたいと思っております。  また、ラーメン、うどんを農協の店舗で売られているということでありますが、まず、農村内部あるいは農協関係の中で米の消費拡大を図ることが重要である、そして、農村あるいは農家段階で米の消費がふえて、それを周辺に及ぼしていくというのが本来の立場であろうということで、そういう基本的考え方、方針を決定いたしまして、自粛自戒、内部でラーメンなりうどんなりパンなりの販売を制限、自粛していきたい。  三つ目は、そうは言いましても、農協自体、日本の米を見直すあるいは日本的食生活のあり方の普及をするということで、見直し論とともに現代生活に対応するという意味で、全農を中心に現在レトルト食品の開発等を含めて普及を図ってまいりたいと考えておりまして、米の需給の現状については深刻に受けとめ、消費拡大対策を含め十分対応していきたいと考えております。  なお、学校給食等については、いま学校給食会から米が流れているわけでありますが、在所の子には、おやじさんがつくった汗のにじんだ米を村の自分たちの学校の子供に食わせるように、農協の倉庫から即自分の村の学校に行けるような制度の仕組みに改善してもらいたいということでいろいろやっておりますし、農協の卸、小売の体制についても強化を図っていきたいと考えております。  ありがとうございました。
  22. 片岡清一

    ○片岡委員 終わります。
  23. 中尾栄一

    中尾委員長 竹内猛君。
  24. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 日本社会党を代表して、参考人の皆さんに御質問をしたいと思います。  参考人の皆さんにはお忙しいところをおいでいただいて、貴重な御意見を提起していただいたことに対して、お礼を申し上げたいと思います。  まず最初に、私は、四人の参考人の皆さんの御意見を聞いておりまして、価格要求内容にはそれぞれ違いがありますけれども日本農業、農民、農村というものを考え、食糧の自給体制を確立するというその基本点においては特に一致をしておる、こういうぐあいに考えております。  そこで、農協小口さんにお尋ねをしますが、農協は、五十一年、五十二年、五十三年と物価が値上がりをしている中で、要求米価を下げてきました。それにもかかわらず、現在すでに伝えられるところによると、農林省はあしたの米価審議会に据え置きという諮問をする、こういうことであります。これに対して、要求を下げて切迫感を持たせながらなおそれが実現をできない状況にあるということに対して、その感想についてまず小口さんから先に伺いたい。
  25. 小口芳昭

    小口参考人 報道するところによれば、政府試算は非常に厳しい形で米価審議会に諮問されるのではないかというふうに報道されており、われわれも六月十日に要求米価決定し、自来、あぜ道から村へ、そして県へ、全国へと積み上げ、七月三日には農協大会、全国農協代表者大会を開き、今日まで対策を進めているわけであります。  いよいよあした米審が開催され、政府の諮問米価が諮問されるという時点でありますので、この事態を深刻に受けとめて、一層運動を強化していかなければならない、あるいはわれわれの要求を十分納得させなければならないというふうに考えております。  また、米審の中にも組織代表が入っておりますので、われわれの正当な主張というものを米審各位に知っていただいて、今年産米価が適切に決定されることを期待しているわけであります。
  26. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、以下たくさん質問をいたしますので、お答えの方も要点でお願いしたいわけですが、よろしくお願いしたいと思います。  全日農書記長谷本さんにお尋ねしますが、米価及び農畜産物価格の決め方について、いままでの状況からいうと、米価審議会なり、審議会方式をとっている。そして、最終的には関係大臣が決めるというような形でありますが、こういう決め方について、先ほどの御意見では、やはり国会並びに団体交渉、こういう形で、生産者と対等な形で決めていけという御意見でございますが、この点について、現在の決め方、あるいは審議会のあり方、こういうことについての御意見を、もうちょっと詳しく……。
  27. 谷本たかし

    谷本参考人 現在のあり方は、竹内先生から御指摘のように、審議会の議を経て決めるということになっております。私どもは、審議会の構成について、生産者、消費者、中立、これを三者平等というような形で構成していただきたい。そうであって初めて農民と政府との中間にあって、審議会なるものが、たとえば労働関係でいいますと中労委的な機能を発揮できるのではないかというぐあいに考えます。当面する要求として私どもはそうであるということでありますが、やはり基本的には、農家がつくった農産物について、相手任せではなしに、農家の考え方を入れた形で価格の決め方ができるようにしていただきたい、そういうぐあいに考えるわけであります。それは、生産者団体と買い手である政府との間で話し合いで決める、つまり、団体交渉をして決めるというぐあいにしていただきたいという考えであります。
  28. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 全農連の北海道農民連盟佐々木書記長にお尋ねいたしますが、米の価格を値上げしない、据え置きをする、こういうことをもうすでに政府機関では、大蔵省あたりでは六月二十七日にこのようなパンフレットを通じて報道をしている。新聞もこれを報道した。きょうはまた、明日の米価審議会に臨むに当たって、すでに据え置きという諮問をしようとしているということを報道しております。これはすべて米が余っているからだ、こういうことを前提にしているわけですね。農家の皆さんは、長い間政府要求するところの米の生産調整に、前段階でも協力したし、今度もまた、先ほど自民党の片岡さんは、農家が喜んでやっているというような意味のことを言ったが、私はそうは思っていない。いま突如として頭をたたかれたような気持ちで、あの強烈な四十万ヘクタール、百七十万トンというこの米の生産調整を受けたわけですね。これは農家責任ではないはずだ。にもかかわらず、これに対してさらに追い打ちをかけるように米価を据え置きにするということはとんでもない話だ。だから、米の過剰と米の価格決定というものは、農業会議所中村さんが言われたように、私は分離して考えるものであると思うけれども、米の過剰の責任はどこにあるかということについて、生産者である佐々木さんにお尋ねしたいと思います。
  29. 佐々木茂一

    佐々木参考人 ただいま竹内先生から御質問がございましたが、生産者農民の立場で、私は、米過剰そのものにつきましては、その都度国の言うことを忠実に守ってきたのは私ども農民だと考えております。したがって、このツケが、いま国内で米をつくるのは、悪者は農民だというような感覚さえ多くの消費者皆さんが考えているというような中で私ども生活していかなければならないということは、きわめて遺憾にたえないと考えております。  古い話ですけれども、私ども学校を卒業した当時、米が非常に不足した時分に、警察が来て、納屋から米を探して持っていった、こういう実態を、私どもまだ十五歳くらいのときでしたけれども、目の当たりに見てわかっているわけですが、こういう実態を本当にいま国民の皆さんが知っているのかというような怒りに満ちた気持ちでいっぱいでございます。  以上でございます。
  30. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いま生産者である佐々木さんの御意見のように、政府農業政策の中で、少なくとも日本農業生産物の中の九兆を超える、しかもその中で三六%という枠を占めている米の価格に関して、一方においては強烈な生産調整、一方においては米の価格の据え置き、一方では諸物価の値上がり、こういうような状態の中では、農業に希望を持てといっても持てないのではないか、これでは持たせること自体が無理だ。両方のほっぺたをたたいて、上からくつで踏んづけたようなかっこうでなお農業をやれということは非常に無理だと思う。農民組合の中心で活躍されている谷本書記長に、この点の気持ちを率直にお尋ねしたいと思う。どうしたらいいのかということについて……。
  31. 谷本たかし

    谷本参考人 私ども生産調整には賛成するわけにはまいらぬ。やはり米過剰原因というのは政府責任でありますから、政府自身の手で解決していただきたいというのが私どもの考え方の前提であります。したがって、米の生産調整、これは労働者にとってみればちょうど雇用問題に匹敵するような問題でありますが、これについてはやはり私どもは反対である。そしてまた米価についても、バルクライン八〇%方式の立場を堅持することによって要求米価運動を続けていく、そういう運動を強める中で、間違った農政のあり方が転換せざるを得ないような条件をつくっていきたいというのが私どもの考え方であります。
  32. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、全中小口参考人にお尋ねいたしますが、いま大蔵省から出されているパンフレットを見ても、あるいは今度農林省が諮問をするであろう内容を見ても、非常に要求と離れておりますね。大変離れておる。むしろ農林省の当初の計算では、米の値は下げるということを言わんばかりで、それを若干上げてやるんだという、またこの程度のものでも上げてやるんだという恩恵がましいことを言わんとしている。そしてある議員は、米価審議会の答申など出ない方がいい、後は自民党が生産調整資金と何やらを出してやっていくからいい、こういう形で、踏んだりけったりしてほっぺたをたたいておいてあめ玉をしゃぶらせて、それで終わりにしよう、こんなばかなことはない。少なくとも、農協切迫感を持って、従来の八〇%バルクを切り下げて、平均生産費によって出したぎりぎりの要求が通らなかったときには、農協としてはどういう責任を農民に対してとるか、この点はどうでしょう。
  33. 小口芳昭

    小口参考人 事態非常に切迫し、厳しい状況かと思います。したがって、私どもといたしましては、平均生産費、そういう方式をとり、算定要素の違いに中心を置いて政府と渡り合うという態度をとり、さらに身を切る思いで対応いたしました生産調整という実態に立ってことしの生産者米価決定されるべきであるということで、今後さらに運動を強めなければなりませんし、さらには米価審議会の中で十分この主張をしてまいりたいということで対応しているわけであります。もしなりせばという前提での取りまとめをまだいたしておりませんので、米価決定まで全力を尽くしてがんばりたいというのが今日の段階であります。
  34. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、米価の構成の内容について次々と質問をしていきたいと思います。  まず北海道農民連盟の佐々木さんにお尋ねいたしますが、管理労働の問題であります。  この農林省の計算の中には管理労働というものは考えられていない。中央会の方では三時間という形で先ほど御説明がございました。米の生産調整農家の求めるものでない。それを突如として昨年の暮れに指示があって、町村長が末端にこれをおろしてきた。恐らく何遍となく会合をされているはずです。そういう会合をしている中でなかなかまとまらない。このために使った時間というものは相当長い時間であろうと思う。恐らく三時間以上のものであろうと思うのですが、実際に末端で苦労されている佐々木さんから管理労働に対する経験なり問題なりをひとつ出していただきたいと思います。
  35. 佐々木茂一

    佐々木参考人 先ほど公述いたしました米価企画管理労働費をぜひ織り込んでもらいたいということに対する先生の御質問のようでございますが、実は私ども、米の転作にまつわる末端討議は、正直申し上げましてとてもここで何十時間というような表現であらわされるようなものではございません。多い地区では一カ月の間に約二十日間ぐらいこの論議に費やしたという町村もございます。そういう中で、今日全国的に見て一〇〇を超える数字になった、こういう全中の方のお話でございますけれども、そういうように末端では非常に論議を深めているし、さらにまた、これはわれわれが好んでしたものでもございませんが、ただこれを達成しなければ、連帯意識の中で村八分に置かれるというような現実がございます。これは、町村長からある種の集団としておろされて、集団の中でこれを消化しなければ集団全体がこの奨励金、契約加算金をもらえないというような実態、こういうことなものですから、いま先生御質問のとおり、会議は、何十時間ということでいま私がここで申し上げられるような時間ではございません、何十日かかっております。
  36. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 全くそのとおりだと私も思います。大変御苦労だと思います。これは自民党の方にも聞いていただきたいのですが、ちょうど徳川時代に五人組制度というのがありましたね。五人の中で一人が悪いことをすればあとの四人がこづかれる、共同責任をとる。同じことをやっているんだな。きのう実は社会党の農林部会が、四月に出した次官通達に対して、ペナルティーではないけれども調整をした者としない者との間では認可とか許可とかあるいは個人に対する融資まで考慮するというこういう通達が出ている。二十四項目ですね。あれなんかはまさに許しがたい問題だと思うのです。湿田地帯で、やろうと思っても転作のできないところで一番苦労しているところに、今度は土地改良の認可も許可も金も出ないといったら、いつまでたってもそれはできませんね。そういうことですから、この問題は大変御苦労だったと思います。こういう点について、本当に農業と農民というものを大事にするならば、もっとこれは考慮すべきではないか、こういうふうに思いますが、これは農協小口さん、それを担当する窓口としては、こういう点はどうでしょうか。そういう許可、認可というものに対して考慮をしていく、差別をするといういまの通達に対する感じですね。
  37. 小口芳昭

    小口参考人 私ども生産調整に対応する調査をいたしましたところ、全国の八割を超える農協が食管堅持のためにはやむを得ないという、言ってみれば需給問題を深刻に受けとめて生産調整に対応しているということであります。もとよりこの対策は理解協力ということが根底で、これ以外何ものもないわけであります。そういう趣旨からいって、農家の人に率直に訴え、需給問題を率直に受けとめてこれに対応していくということが、何よりも今後の稲作経営を安定させる基礎になるであろうというふうに考えております。そういう基本的な立場で、今後のいろいろな施策に対しては対応していかなければなるまいというふうに考えております。
  38. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 全国農業会議所中村事務局長にお尋ねしますが、先ほどの、算定の中に小作料の問題がありました。この小作料が統制小作料と実納小作料、この問題がかなり問題になっていますね。これは現実に問題になっている。今度の米価のとり方についても、その内容にいろいろな問題があります。同時に、五十五年の九月には農地法上における統制小作料、法定小作料も変わらざるを得ないということでありますから、その小作料の問題について農業会議としてどういうようなお考え方を持っておられるか。
  39. 中村広次

    中村参考人 家族労働報酬もそうでございますが、自作地地代も、いずれもこれは擬制計算でございます。したがいまして、どういう考えでもってこれを評価するかという考え方によりまして、評価の仕方が違ってくるわけでございますけれども地代につきましては、私どもは、統制小作料といいますものは、いわば農地改革当時たまたま運が悪くて在村地主の保有地に回ってしまった、これについては創設された自作農と同じ利益を享受すべきであるという立場でもって算定されているわけでございまして、現在発生しております小作地といいますものは、また別な考え方でもっていわゆる借地方式の規模拡大が行われておるわけであります。したがいまして、このわずかな適用しかされておりません統制小作料、しかも昭和五十五年の九月においてはもうなくなる、こういうものでもって、現在の自作地地代評価するということは、本質的におかしいのではないか。やはり地代といいますものは、あくまで実際に現在も支払われておる地代、これを前提として評価すべきであるというふうに考えております。
  40. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、やはり米の生産費の中で一番大事なものは、労賃部分だと思います。この労賃部分のとり方というものがいろいろ違っている。米は国が管理をしている、国が買い上げる。間接的な国の公務員的任務を農民が果たしていると考えても差し支えないぐらいに大事なものであります。  そこで、農民の労賃である米の生産費の中に入っている部分のとり方が、三つの団体でそれぞれ違っているというところが、実は結果的にいろいろな数字が出てくることであろうと思うのです。谷本さんの場合には公務員並みの賃金で計算をするという形でありますし、それから農協の場合には五人以上の青天井、こういうような形になっている。  そこで、これは小口さんにお尋ねをしますが、従来農協が計算をしてきた八〇%バルクで計算をしたとしたら何ぼになるかということが一つ。それから北海道農民連盟の方では、従来の八〇%バルクで計算されたものだと思いますけれども、その価格が出ておりますね。それから谷本さんの方では少し角度を変えた形で出ている。それぞれ三つの団体が違っているが、その労賃のとり方についてそれぞれからひとつお答えをいただきたいと思います。
  41. 小口芳昭

    小口参考人 五人以上全規模全国平均一時間当たりの現金給与によってやるべきであるということは、先ほど申したとおり、製造業の平均賃金というものは五人以上千人未満ではあらわせないことでありまして、製造業五人規模以上全体の平均で初めて平均賃金が得られるものという考え方でわれわれは主張しているわけであります。この方式は農林省も三十九年から四十五年まで七年間採用したものであります。それを四十六年以降改悪をいたしたものでありますので、われわれは、これをもとに復しなさいということで迫ってまいりたいというふうに考えております。  賃金差は、われわれの五人以上全規模でまいりますと一千五十六円三銭程度でありますが、これを千人未満で切りますと九百八十一円前後になりますので、多分八%程度賃金が安く計算されるものと考えております。  それから、第二で申しますと、八〇%バルクラインで計算すれば幾らになったか、こういうことですが、私の方はその八〇%バルクラインで計算をいたしておりません。推定するところ、去年と同じ程度の水準になるのではないかというふうに思っておりまして、去年と同じ程度といいますと二万一千面円をちょっと上回るかその前後というふうに推定をいたしております。
  42. 谷本たかし

    谷本参考人 米価要求というのは、私どもにとっては、先ほども申し上げましたように、労働者の賃上げ闘争に匹敵するようなものであります。そういう立場から、米作農業につぎ込まれた労働をどう評価すべきかについては、いろいろな議論があろうと思いますけれども、私どもが物差しにしておりますのは、社会的に一人前の正当な賃金水準とは何かということであります。そういう立場からしますならば、公務員給与というようなところがやはり社会的に一人前の正当な賃金水準じゃないのではなかろうかというようなことから、製造業の百人規模以上というような賃金をとっておる考え方はそこにあるわけであります。
  43. 佐々木茂一

    佐々木参考人 いまの御質問に対しましてお答えいたします。  私ども北海道農民連盟が本年算定をいたしまして出してございます米価のうちの労賃は、実は本委員会が始まる以前に印刷物で先生方のところにお配りをしてございます三番目の項にとり方についてのものを書いてございますので、ごらんをいただきたいと思うわけでございますが、私ども、実際働いている場合、なかなかこういう調査をきちっとやるということはきわめて困難なわけです。したがいまして、労働省の毎月調査いたしております報告に基づいて、五十二年の十一月までのものがどうなっているかということを算定基礎にさせていただいたわけでございます。さらに、その算定が一時間当たり千三十八円ということになったわけでございますけれども、先ほど来意見の中で申し上げでおりますとおり、これに企画管理労働費として一〇%を上乗せをさせてもらっているという考え方でございます。そういうもので北海道農民連盟の米価算定させていただいた、こういう経過でございます。
  44. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 米価におけるところの労賃算定というものは何といっても中心でありますから、やはりこの問題については、いま全日農からお話があったように、国の基本的なものであり、しかも国が管理しているものでありますから、やはり百人以上の規模で計算をするということが非常に正しいことではないかと私は思いますけれども、それがとうてい可能でないとしても、少なくとも標準賃金には見合うものをこれは補償しなければならぬということでありますが、いまの農林省の諮問はまさにゼロでありますから、去年と同じですから、これは言いようがないほど悲しむべき状態じゃないかということで、非常に残念だと私は思うのですけれども、こういう点について一言皆さんの御回答に対して私の気持ちを申し上げておきます。  それから、よく生産調整をやらなければ食管が崩れる、あるいはまた米の値を上げれば食管がどうかなる、こういうことばかり盛んに言う。大蔵省は財政主導主義で食管の赤字がどうのこうのと言うし、農林省内部にも、どうもこれは食管の方にばかり金を取られて土地改良基盤整備費がなくなってしまうんだというようなことを盛んに言って、食管からそっちへ持ってくればいいじゃないか、こう言うんだけれども、農林予算を見てみると、昭和四十八年のころには国の予算を一〇〇としたときに一二%近い農林予算があったはずだ。それが五十三年になるとこれは八・九%ですね。そのほかに若干の予備費のようなものはあることは知っていますが、八・九%だ。これは紛れもない数字ですからね。  そうすると、いろいろなことは言うけれども生産者の米価を抑えて、消費者米価を上げて、そうしてその間で浮いた金をほかの方へ持っていってしまうということになれば、これは生産者と消費者を犠牲にして、そして他の方に持っていってしまう。ある議員に言わせると、いや、そうは言っても公共投資やその他に使っているんだ。公共投資というのは建設省が大いにやることで、農林省の中で農林省の枠をとっておかなければならない。中川農林大臣は、この間私の質問に対して、一〇%は農林予算は確保しなければならないと言ったけれども、一〇%にはなっていない。あれやこれや計算をして、言いわけをすればなるかもしれませんよ。言いわけというのはここでわれわれは聞きたくないので、やはり率直に八・九なら八・九。三十四兆二千九百億という膨大な中の一〇%というのは大きいですよ。だから、そういうことから考えてみて、本当に農業を大事にし、農民を愛するのであれば、やはり農林予算の獲得に対して邁進をしなければならないと思う。そのときに、米価を上げたり生産調整にいろいろのことを言うと食管は崩れてしまう、こう言う。消費が伸びないなどと言うけれども、実際、縁故米とか自主流通米とかいろんな形で米がいわゆる食管ルート以外に流通してしまっている。実際は相当食べているはずだ。その問題が把握されているかいないか、これはいろいろ問題がありますが、これは小口さんにお尋ねするのですが、この食管というものが本当に堅持されているのかどうかということが問題だ。  それから、谷本さんの方にお尋ねしますけれども、大蔵省から出したパンフレットの中に、二重米価なんというのはけしからぬ、これは社会保障費だというようなことなんであれは問題外だ、こういうようなことも書いてある。なるほど大蔵省の出した資料によると、十九万円の生活をする家族の中で食糧費というのは二・七%になっている。十九万七千九百三十七円という一世帯の生活費の中の二・七%だ。十九万の生活——これは約二十万ですよ、二十万の生活というのはかなり高い生活ですよ。日本の全国のどういうところにそういう生活の数字があるのかどうだかということも私は問題だと思いますね。この辺についての感じをちょっとお尋ねしたい。
  45. 小口芳昭

    小口参考人 食管制度について、やはり国民食糧の大宗である米について、あるいは日本農業の経営の基礎というのを米プラスアルファという形で固めていることは御案内のとおりであります。そういう意味で、農家の経営、農村の経済というものに着目した場合に、そういう面から見ましても、国民食糧中心である米をいかに安定させていくかということが重要な課題ではなかろうかというふうに考えております。戦後の混乱期における食糧の確保、あるいは第一回のオイルショックで米が、ちり紙のように、トイレットペーパーのように騒がれなかったこともやはり食管制度というものがあったためであろうというふうに思います。穀物自給率、オリジナルカロリーで三七%と言っておりますが、米を除けば七%の水準だというふうに承知いたしております。言ってみれば、米あるがゆえに、われわれ国民生活というものが安定をし、あしたもまた食べられるであろうということになっているわけでありますので、食管制度は堅持されていかなければなるまいというふうに考えております。特に、きのう全国中央会が発表いたしました米生産調整になぜ取り組んだかという実態を見てみますと、八七・二%が食管堅持のためにやむを得ないという形でこれを受けとめているわけでございます。そういう意味で、この状況をしっかりと基本に据えて食管制度の運用を図っていく必要があろうというふうに考えております。  また、現実にいろいろな形で政府の売却量が減っているというのがございます。去年の十一月以降政府米の売却が前年同期に対して九〇%とか九一%とか、場合によっては八八%と一割あるいは一割を超えて急激に落ち込んでおります。それほど急に米を食わなくなったということではなかろうというふうに考えまして、食管制度の適切な運用がいま非常に大事だし、集荷段階ではそれなりに整備されておりますものの、配給段階も含め、消費拡大という側面に照らして今後十分検討し、対策を講じていく必要があろうというふうに考えております。
  46. 谷本たかし

    谷本参考人 二重米価はけしからぬと大蔵省は言うが、どう考えるかという御指摘でございました。私は二つの点を申し上げたいと思います。  一つの点は、二重米価というのは、税金の取り立てとの関係からしますと、曲がりなりにも日本の場合累進課税になっております。したがって、税金をたくさん納めない庶民にとっては金持ちの負担で安い米を手に入れることができる。そういう意味では、所得の再配分にかなったあり方だというぐあいに考えます。ただし、最近配給行政の方が非常に乱れてきております。とりわけ自主流通米登場以降そういう状態が生まれてきているのでありまして、二重米価というのが庶民にとって本当に機能し得ないような状態が生まれてきていることを残念に思います。  次に、第二の問題として申し上げたいと思いますのは、今日の食管制度というものの型はどういう型になっているか。私は事実上間接統制の型にすでになっていると思います。売り手の側から言いますと、すでにもう買い入れ制限が実施されており、年々強められてきておる。それから買い手の方から言いますと、配給制度はもうなくなってしまって、自由化同然に近い状態になってしまっております。そういう間接統制同然の型になっておるにもかかわらず、依然として米の流れが、売り手の方から言いますと、政府に売っている、買い手の方は政府からのものを買いながら消費者にこれを売っているというような形が曲がりなりにも維持されているのは何かというならば、価格関係が二重米価状態にあるからだと思います。つまり、消費者価格よりも生産価格の方が高い、生産価格よりも消費者価格が安いというような逆ざや的な状態があるから、政府主導型の米流通が維持されている、こう思います。したがって、二重米価が解消されるような状態になっていきますと、食管制度は文字どおり間接統制というかっこうになっていくのではないか、こんなぐあいに思います。
  47. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は非常に残念に思いますが、きょうはせっかく参考人の皆さんをお招きしたにもかかわらず、最も米価を決めるべき自民党の委員が、(「相談しているんだ」と呼ぶ者あり)参考人を呼んであるにもかかわらず片岡理事しかいないということ、これははなはだ遺憾です。参考人の皆さんに対する誠意がないと思うんです。農家の皆さんは自分の生活をかけて米価の問題をやっているんです。そのときに、参考人の皆さんをお招きしておきながら、片岡理事しかいないということははなはだ遺憾です。私はここに改めて遺憾の意を表明したいと思います。(「水産部会をやっている」と呼ぶ者あり)どういうことがあっても、この時間は公報でちゃんと公示された時間ですから、その時間に委員がおらぬということはまずいですね。
  48. 中尾栄一

    中尾委員長 竹内君、ちょっと委員長として申し上げますが、いま自民党の筆頭理事である山崎平八郎君も、さらにちょうど二百海里の問題で水産部会長である林君が水産部会を開いておりまして、たまさか筆頭理事山崎君も、常日ごろ、御案内のとおり出席をしておる人でありますが、そういう意味ではきょうは御案内のとおり出席できない。その他、またいま米価を決めていくときでありますから、全員がそういう方向で飛び歩いていることも事実でありますので、御了解のほどを願いたいと思います。(発言する者あり)
  49. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、国会におけるルールとして、公報によって告示をして参考人をお招きして、この時間とこの時間は参考人の御意見を伺って質問をします。各党がやるのですから、それについては少なくとも耳を傾けて誠意をもってそれにこたえていくというのが私は政党の任務であり義務だと思う。そういう点について各野党の方々はみんないらっしゃるのに、米価を決める与党の委員が一人しかおらないということは、これくらい軽視をしたことはないじゃないですか。こういうことが、米価が据え置きになったりそれからいろいろなことに問題が発展をする、こういうふうに私は考えるから、ここで改めて再度遺憾の意を表明しながら最後の質問をして終わりますが、最後は、全日農の谷本書記長の御意見に私は全く賛成です。日本農業というものを前進をさせるためには農業政策の抜本的改正をしていかなくてはならないと思うのです。そのために農畜産物価格の保障、農地の拡大、それから農業投資の拡大、なお農業における長期の計画、単年度の計画、そして重要農畜産物の位置づけ、そして地域的な農業の分担、そういうようなものを農民それから政府国会、こういうところでしっかり練り上げて、農家理解と納得のもとに自給体制をつくっていくということについて私は同感でありますが、これに対して、きょう御出席谷本書記長はそういう御意見ですから、それは私は賛成ですが、佐々木さんそれから小口さん、中村さんのそれぞれ団体を代表しての感想と御意見をちょうだいしたいと思います。
  50. 佐々木茂一

    佐々木参考人 ただいま先生から将来に向かっての農業のあり方についての御質問でございますが、私も働く農民の一人といたしまして、まず第一は、やはり安心して後継者に農業を継がせられるというような農政の確立、これは何としてもぜひ実現していただきたいと思います。こういうようないまの状態では、私も長男に去年の秋、嫁をもらったばかりなんですけれども、いまの状態を見ておって、長男が本当に真剣に農業に打ち込むかということに危惧を感じております。そういう点で、私は国会先生方にぜひ、ただいま竹内先生がまとめられているような方向で農業というものをきちっと位置づけしていただきたいということを、今後の運動としても北海道の農民連盟として全力を上げて取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
  51. 小口芳昭

    小口参考人 農協農業基本政策の確立を要請いたしているところでありますが、その第一点は、言うまでもなく、あるがままの農畜産物食糧需要に合わせて生産をするというのではなくて、日本の国土資源に立脚した国民生活の確立に政策誘導するということを前提に農畜産物需要拡大計画を策定し、それに対して国内でできるものは最大限国内生産し供給するという趣旨に沿った国内生産目標を設定することが何よりも重要であるというふうに考えております。この生産目標に沿って、一つは海外からの輸入農産物の調整国内農業生産とその流通の調整を行う需給調整の機能というものを十分強化する必要があるのではないかというふうに考えております。このことは農家が痛切に感じ心から願っていることでありまして、水田転作を乗り切り新しい営農形態をどのように築き上げるか、さらに、外圧を気にすることなく将来にわたって安心して農業生産にいそしめる体制をつくる、これが少なくとも基本ではなかろうかというふうに考えております。そういうことをしっかり根に据えて、以下価格政策なり流通政策なり農村に対する投資、生産体制の整備を図っていくことが必要であるというふうに考え、これらの基本政策をいま政府に要請しているところであります。
  52. 中村広次

    中村参考人 私も、大半の農家農業生産にいそしむよりも兼業収入によってかろうじて所得が維持されておる、これはきわめて危険な状態であろうと思っております。考えてみますと、いままでのわが国の農業の歩みといいますのは、結局、農業が犠牲にされてその結果として異常に工業生産が膨張し、それがまた外国からの農産物等の輸入圧力としてはね返ってくる、そして国民全体はそういう中でもって将来のことを忘れてうたかたの一時的な生活水準の上昇を味わっている、こういうことでございまして、いわば本当の意味での国家としての自主独立というものを犠牲にしての現在の状況でございますので、こういう状況といいますものは、基本的にいままでの経済政策を立て直して、やはり本当の意味での自主独立を堅持しての農業生産に切りかえていただきたいというふうに切望してやまない次第でございます。
  53. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 貴重な御意見ありがとうございました。  これで終わります。
  54. 中尾栄一

  55. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 米価問題について参考人四名の各位には貴重な意見を陳述いただきましてたいへんありがたく拝聴いたしました。私もさらに五十三年産米価決定当たりまして皆さん方に重ねて意見をお伺いし、きょうの午後並びに明日の当委員会における農林省に対する質問、また政府の考えをただすための参考に資していきたいと思いますので、よろしく御協力のほどお願い申し上げたいと思います。  私は、まず最初に全国農業協同組合中央会農畜産部長小口芳昭参考人にお尋ねをいたします。  政府は四日、今年度生産者米価、すなわち政府買い入れ価格を、六日から始まる米価審議会に据え置き諮問することを正式決定しました。このため米価は今後政治加算がどういう形で行われるかに焦点が移るということが一部報道され、また巷間伝えられております。自民党は米の生産を刺激する基本米価の上乗せを避けて、御承知かと思いますが一部情報によると、良質米奨励金積み上げで〇・五%、新たに生産調整奨励金を新設し、米の新生産調整で不要となる農機具の損失補償のため一・三%、合計一・八%実質手取りを引き上げるというようなことが内々検討されるということが当然かのように伝わっております。また一部には、今年の麦価二・一%がアップされたわけでありますが、この麦価を上回るわけにはいかないので二%ぐらいの政治加算を行って、七月八日政府折衝で正式決定するとの情報も流れております。  これらの政治加算については中央会としても当然耳に入っていると思いますが、どういうように情報が入っているか。また、こういった問題についてどう分析しておられるか。本年度要求価格のいわゆる全国農協並びに農業会議所農業委員会要求というものが、六十キロ当たり一万九千二百七十六円、一三・三%アップであるわけでありますが、これとはほど遠いものになっております。こういったことを踏まえて、今後中央会としては米対行動をどのように予定して行動されるのか、その点を、重ねて全国農民のあの熱気こもった七月三日の武道館における大会を想起されて、ひとつ考え方を述べていただきたい。
  56. 小口芳昭

    小口参考人 先生が指摘されるような報道は新聞紙を通じてわれわれも承知しているわけでありますが、全国中央会といたしましては、昨日も農林大臣と第四回の折衝を行った際、全中藤田会長から明快に申し上げましたのでありますけれども基本米価引き上げるべきであるという考え方一本にしぼっております。いまの段階で、奨励金であるとかあるいは生産調整を推進するための何かをつけ加えるとか、そういうことは全く考えておりませんで、基本米価引き上げるべきであるという考え方に即して強く要請をしているわけでございます。  今後の対応でありますが、われわれは初めから算定要素中心に闘うということを明らかにしてまいっておりますし、現在もまたそのことで進めているわけであります。先ほども御議論があったわけでありますが、先生の御質問に即して答えますと、家族労働評価については、政府も三十九年から四十五年まで認めていた方式をわれわれが主張しているわけでありまして、その後改悪されておりますけれども、これをいま復活をいたしまして、五人以上青天井で評価すべきであるとする要求であります。また、企画管理労働についても、農林省は四十二年から四十四年まで三年間採用したものであり、かつ米価審議会で当時の食糧庁長官が、直接労働以外のこの種の労働もやはり原価性ありとし、さらにまた、今後も無視するわけにもまいるまいというふうに明確に言われた、それらの要素であります。また、地代についても、四十二年に政府が採用したものでありまして、これらについて米価算定要素改善するならば、われわれの要求米価実現する、あるいはそれに近くなるはずであるということで、算定要素中心に今後もがんばってまいりたいし、米審会場ではそのことを強く主張して委員の了解を得、実現に迫ってまいりたいというふうに考えております。ただ、情勢は非常に厳しいということを腹に据えて、最後までがんばりたいというふうに考えております。
  57. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 全中としては基本米価引き上げるということで行く、こうおっしゃっておるわけでありますが、そのことは私も十分承知しております。ところが、御存じのように、すでに七月三日の日本武道館における全国米価要求大会の終わった翌日、四日には、先ほども申しましたように、今年度生産者米価については据え置きを諮問するということを政府は正式に決めた。もうすでに状況は変わってきたわけです。そこで、私は、全中がおっしゃることもわかるけれども、本年度の米価要求に対して、私、聞くところによると、全中の米対本部の中で一部米対本部員から、据え置き諮問の場合は内閣不信任案の運動を展開するとの強い意見が出たと聞いておりますが、この点はどうですか。この席で模様を明らかにしていただきたいと思う。
  58. 小口芳昭

    小口参考人 組織内部で、米価が非常に厳しい状態や、輸入農産物の自由化あるいは枠拡大といったようなものについて、じりじり後退を続けていくのではないかということで、農業基本に触れて、このままいくならばどうなるのだという心配があって、そのためにはどういう対策をすればいいだろうか、決議は何遍もした、大会も六回やった、それでもやられるということに憤りといいますか、本当の農政運動の決め手は何かという趣旨でいろいろの議論が出ております。あるいは全国一斉に抗議集会を開くべきではないか、あるいは署名運動をもっと展開すべきではなかろうか、それから、いまおっしゃいましたように、福田内閣不信あるいは退陣といったようなものについて組合員の署名を集めてはどうかなどなど、いろいろな意見が出ていることも事実であります。これらの問題を、まだ結果は出ておりませんし、今後これがどういう推移を見せるかというのを見定めながら、組織としては対応の方針を決めていかざるを得ないだろうと考えております。
  59. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今後全中組織を挙げての対応を注目するといたしまして、この点については一応了とします。  さらに、この機会全中に承っておきますけれども、一方では七月の東京ラウンドに向けて、これまた牛肉、果汁、オレンジ輸入についても農家は先行き大変な心配を持っております。特に西日本においてはミカンの三万ヘクタール以上に及ぶ伐採を強いられておるということで、苦境に立たされていることも御承知のとおりです。これに対しては中央会はどういうふうにいま進めておるか、簡潔でいいですから、それもこの機会にお答えをいただきたい。
  60. 小口芳昭

    小口参考人 確かに、七月十五、十六、十七日、ボンで開かれます先進国首脳会議、言ってみれば東京ラウンドの一応の決着に向けて、牛肉問題なりオレンジ問題なり果汁問題が大きな政治問題になっていることを承知し、それなりに対応してきておるわけでございます。これは昨秋以来の問題であり、一月初旬のストラウス来日を期して決定いたしました日米通商交渉に引き続く東京ラウンドの問題でありますので、深刻に受けとめ、対策を講じてまいっております。先般も牛場大臣にお会いをして、オレンジ問題については、国内で十五万ヘクタールのミカン園のうち二〇%、約三万ヘクタールを伐採せざるを得ないということで、組織内部で組合員とも話し合いながら生産調整に臨んでいる、まさに自分で育てた十何年あるいは三十年になんなんとする血の通ったミカンの木を切らなければならないという国内事情を無視して、これ以上オレンジの輸入が強行されるということは、まことに遺憾であるという立場で、篤とお願いを申している次第であります。そういう意味で、先生おっしゃるように大変な農家心配事でありますので、米価運動と完全に結合いたしまして、現在、農畜産物輸入自由化、枠拡大をしないようにという運動をしているわけでございます。  先ほどのことで若干補足しておきますが、いろいろの意見がありますけれども、その意見は、特に米価だけではなくて、輸入自由化あるいは枠拡大問題が根にあり、米価問題、輸入自由化問題と絡めて日本農業の将来を心配する余りのいろいろな意見であります。したがって、それらのかくかくの意見については、農業協同組合の組織の性格あるいは実態というものを踏まえて、十分対応の方式を考えていきたいと考えているところであります。
  61. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 七月三日の米価要求の大会でも私申し上げたし、機会あるごとに申し上げておりますが、米が余ったのは農民のせいではないのです。農民は、政府が言うとおりにまじめに生産調整に応じ、個々の農家協力してきたわけです。ところが、天候の関係もさることながら、全体的な米の需給または生産量を見るのは政府であります。農林省であります。農林省は全体観に立って生産調整を行い、いろいろと施策を講じてきたのであります。だから、農林省政府の見通しの甘さ、誤りが今日の過剰を来した、こういったことすら言うわけです。だから、農民は、まじめに生産調整に応じてきた、その上で超過米が出たものについては当然全量政府が買い入れるべきであるということを言うわけです。  と同時に、時間もございませんのでお聞きしますが、中央会にまずお聞きしますけれども、このお米について過剰過剰と、政府は口を開けばすぐ過剰を理由に——そればかりじゃありませんけれども、過剰を理由に今年度の米を生産抑制しなければならぬし、さらにまた米価の据え置きというようなことを言うわけであります。これが一つの大きな原因になっております。  そこで、藤田会長は、七月三日の日本武道館における一万人を前にした米価大会でも、過剰米対策に触れられました。その前にも私は各所で藤田会長ともお会いし、その都度お米というものは国の安全保障物資であるということをおっしゃってその考えを申されておりますけれども、中央会のその考え方について、小口参考人から代表して簡潔にお答えいただきたいと思う。
  62. 小口芳昭

    小口参考人 御指摘のとおり、米の過剰問題について大蔵筋からいろいろなキャンペーンを張るための材料が流されております。御指摘のとおり、四十五年七百二十万トンの在庫、五十三年現在五百三十万トンの在庫はまさに累卵の危機であるかのごとき報道を行い、その当時、四十四年から三年間米価を据え置いた、よってことしの米価についても慎重に配慮すべきであるとする文書が流れているわけでありますが、それについては本当に基本的に誤りがあると考えております。  四十五年の在庫増は、生産調整を行わずに全量買い上げの状態の中で米が在庫いたしたのでありますが、五十三年の在庫は、まさに生産調整を行い、農家は一〇〇%近く対応してきたものであります。したがって、古米在庫の累積は、政府も明らかにしているとおり、生産、需給の見通しの甘さというところに基本的な理由があり、それを具体化しているのが、作況指数一〇五という去年の状態やあるいは消費の減というようなことが重なり合って、これが在庫しているわけでございます。この古米在庫は、政府責任において処理するということを明確にした上、さらに、五十四米穀年度の需給を単年度均衡させるために百七十万トンの生産調整を要請してきているわけです。しかも、それは一〇四ということで、ほぼ目標を上回って達成をしているわけでありますから、現在の古米在庫あるいは来年の米は単年度需給均衡しているということなのですから、現在の古米在庫理由として農業者に不利になるような政策決定は全く行ってはならないと考えております。
  63. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 中村参考人にいまの問題でお伺いいたしますが、中村参考人も先ほど陳述の中で、米の余剰については、国家の安全のため国民にも訴えて理解を求めるというような意味のことをおっしゃいましたが、これについて見解をさらにお述べいただきたいと思う。
  64. 中村広次

    中村参考人 どこの国でも、その国の風土に最も適し、一番よくとれる穀物をその国民にたくさん食べさせる、主食とするという政策基本をとっているわけでございます。ところが、日本の場合は、今日、米の消費は減退する一方でございまして、かわりまして主として外国の小麦に依存する食生活がかなり増大をしている。このことにつきましては、やはり将来のことを考えました場合に、私はきわめて危険であるというふうに考えております。したがいまして、先ほども申しましたように、いままでの農業政策に流れていますものが、やはり需要の動向に生産を追随させるという方向にあったと思いますけれども、やはりこの段階になりましたならば、つまり、穀物自給度がもう三割台にまで低下をするという段階にありますのは、これは重大事態でございますので、もう少し積極的に価格政策等を含めて生産の方に需要を誘導するという政策が踏み切られていいんじゃないか、この点については、大局的見地に立ってやはり政府国民全体に理解を求めるべきであろうというふうに考えております。
  65. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 同じ問題を谷本参考人からお答えいただきたい。
  66. 谷本たかし

    谷本参考人 戦前の場合は、戦争をやっていくのには食糧自給を確保していかなければならないという考え方がございました。戦後になりましてから私は変わってきたと思います。平和を守っていくのにはやはり食糧の自給が必要だということだろうと思います。とりわけ食糧不足というのがやがて避けられない状態になるであろうことが取りざたされております。現に、牛肉について言うならば、FAOは昭和五十五年には五十万トン程度の不足になるであろうと言い、またOECDは昭和六十年ごろには百万トンの牛肉不足になるであろうということを予測しております。食糧不足というのは、やはりそういう点では長期的に見るならば避けられないわけでありますから、日本の平和を守り、日本の独立を守り、日本の経済を安定させていく上で、食糧の自給確保は大変必要なものではないかと存じます。
  67. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 同じ問題を佐々木参考人からもひとつ御意見をいただきたいと思います。
  68. 佐々木茂一

    佐々木参考人 私は一農民の立場から、この消費の拡大の問題で訴えたいと思うんですけれども、やはり食糧政策というのは、国民の嗜好がこうだから仕方ないということでなく、嗜好がどうであろうと、やはりその国で一番安心してとれる物、それがやはりその国の食糧ということにどこの国でもなっていることは先ほどの参考人の方々もお話ししたとおりでございます。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕 そういう意味から、やはり米の主食というものの徹底を、これは国民の嗜好だなんというなまっちょろいことでなく、政府政策でやはり誘導をしていただきたい、こういうふうに私は考えております。  その点で、私どももたび重なる中央要請の中で食糧庁長官にもその旨は御要請を申し上げた経過がございますが、いまの学校給食一つにいたしましても、やっと週二日米飯給食、こういうことでございまして、それすらまだ完全実施されていないといううわさも私ども聞くわけでございますけれども、戦後三十年間、粉食になれられてきたという形をもうここら辺で思い切って政策で変えてもらいたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。以上でございます。
  69. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に二点、簡潔にお答えをいただきます。  まず、小口参考人に一点ですけれども全国農協中央会は全農協を対象とした水田利用再編対策に関する農協の対応調査の速報をまとめられて四日に発表されました。それによると、達成見込みが一〇六・八%で、目標をオーバーしている。その取り組みの理由としては、先ほどもお答えありましたが、八割を超える農協が食管堅持のためにやむを得えない、こう言っておる。私は、これについて重要な問題はたくさんあるわけですけれども、一点だけお伺いしますが、ことしから生産調整が十カ年で始まり、初年度三年を第一期とするわけですが、農家はあくまでも緊急避難的な考えが強いというふうにわれわれは各アンケート調査等によって得ております。これをどういうふうに分析しておられるか。食管の堅持ということで八割と言いますが、来年も再来年もどのように協力できるかどうか。農家は相当な決意で今年度協力しておりますが、私は、この対策というものは一、二年を経ずして崩壊する、こういうふうな危険性をはらんでいる、かように思うわけです。一々理由は申しませんけれども、今度の調査によって三カ年、十カ年の今後の見通しについてどういうふうに分析しておられるか、その点簡潔でいいですからお答えいただきたい。  もう一点は、中村参考人にこれまた最後にお答えいただけばいいですが、先ほど陳述の中で中村参考人は、一番最後に、今後の米価対策について簡潔に申されました。いままでの答弁の中で若干触れておられますけれども農業会議所を代表して、具体的にどういう対策をすべきだということを、さらに突っ込んだ話を若干御披瀝いただければ幸いであります。  以上二点、簡潔にお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  70. 小口芳昭

    小口参考人 今後十年にわたる生産調整、これは米の需給均衡を進める上でわれわれとしては深刻に対応しなければならない課題であるというふうに思います。生産調整と言いましても、現実の姿は、水田の経営から畑作経営にどう移行するかという問題であろうかと思います。また、何をつくったらいいだろうかということが第一の取っかかりの問題になってまいります。そういう意味で、転作条件の整備なり今後十年を展望しあるいは五年先はどうなるかという意味で、新しい営農類型をどういうふうに自分のうちでつくり上げていくんだということがしっかりしなければ、生産調整にまともに対応していくというわけにはなかなかいかない。やはり緊急退避的な要素が出てこざるを得ないということだと思います。したがって転作条件なり新しい営農形態へ移るような土地条件の整備なり、あるいは転作した作物の流通なり価格対策というのが十分整備されざる限り、転作というのが経営の中で定着しないのではないだろうかというふうに考えまして、その点を最大の政策課題として今後詰めていく必要があるというふうに思います。  そのためか、ことしの場合二五%がともあれえさ作物ということになっており、その中の一万町歩が青刈り稲であるなど、きわめて場当たり的な状況も出ているわけでありますが、これもやむを得ない仕儀かと存じ、この実態を厳しく見詰めて、経営の中に転作が定着をし、新しい営農形態が仕上がるような条件整備こそがまず問われるべきであろうというふうに考えております。
  71. 中村広次

    中村参考人 当面の米価につきましては、先ほど申しましたように、現在農家の意欲が非常に減退しておりますので、これをやはり高揚するという観点に立ちまして、基本米価中心にして引き上げていただきたいということが基本でございますが、さらに、今後の基本問題といたしましては、国民食生活をやはり米を中心として再編成をしていくという大局的な政策が確立をするということと、それから、米以外の穀類等が現在自給率が非常に低下いたしておりますので、これの生産振興していく。その場合に必要なことは、これからそういう作物類について一体自給度をどの程度に設定をするのかということを明確にいたしまして、それにふさわしい価格政策を主要な農畜産物全体について確立をしていただきたいということだろうと思います。  この場合に問題になってまいりますのは、現在転作奨励金等の措置がとられておりますけれども、これはあくまで応急措置でございまして、いわば足腰を強くするための方便でございまして、この転作奨励金が打ち切られた後どうなっていくのか、あるいは現在におきましても、同じ作物をつくりましても、転作奨励金をもらってつくっている農家と畑作物でもってつくっている農家の間には大きな差がございます。したがいまして、やはり奨励措置ではなくて、早急に本当の意味での総合的な価格政策を充実していただきたいということだろうと思います。  それから先ほど申しましたけれども、現在労働力がほとんどなくなりまして、米ならつくれるけれども、米以外の作物は技術の点でも労力の点でも対応できないという兼業農家日本稲作の大半を担っているわけでございますので、やはりこういう点につきましては、さらに合理的な農地政策、あるいは水田田畑輪換等の土地基盤整備を急速に整備をするということで、他作物の生産に十分対応できるような、そういう農政を確立していただきたいということでございます。
  72. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 四参考人には貴重な御意見をありがとうございました。
  73. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  74. 神田厚

    ○神田委員 四参考人には大変貴重な御意見をありがとうございました。  私は、大変限られた時間でありますので、問題をしぼりまして簡潔に御質問を申し上げたいと思います。  まず最初に、やはり現在一番問題になっておりますのはこの米価の問題でありますが、それと同時に、米価を取り巻く農業の情勢というものにつきましてもそれぞれ御意見があったわけであります。  最初に、農業会議所中村事務局長に御質問申し上げたいのでありますが、先ほどのお話の中で、生産調整の行われた様子、それからそれに対しまして、この生産調整が各市町村段階に非常にことしの場合は無理な形でおりていったわけでありますけれども、それの消化についての問題、それから、生産調整にこれだけ協力したのだから、少なくとも米価についてはそれに見合った米価政府の方はやはり保障すべきではないか、こういう声もあるようでありますけれども、その辺のところにつきましてはどういうふうにお考えでございますか。
  75. 中村広次

    中村参考人 個々の農家にとりましては、国全体の米の需給がどうなっているのかということはつかみ得ないわけでございまして、政府が指示する生産調整の数量というものを農家が忠実に履行した以上は、米の過剰というものが発生するといたしましても、それはあくまで農家責任ではなくて、政府自体の需給見通しの甘さといいますか誤りといいますか、そういうものの責任だろうというふうに私は考えております。  それから、現在の米の生産調整は、やはり単年度で需給を均衡させるという前提で行われているわけでございますから、現在の米の過剰問題というものと、当面する米価といいますものは、やはり峻別をして、過剰問題と米価はやはり混合すべきではないというふうに考えております。
  76. 神田厚

    ○神田委員 米が過剰であるから米価を上げないということで論理を進めていきますと、それでは政府の米の需給計画というのは非常に甘いということをいま指摘されております。そうしますと、ことしも米価が低くなってしまい、来年も再来年もその米価を上げる要素というのは非常に少なくなってくるのです。私ども、そういうことからいいますと、米の過剰と米価の問題というものは、これはやはり直接的なダイレクトな考え方で結んではいけない、こういうふうな考え方を一つ持っているわけでありますけれども関連しまして、農林省が米の需給計画をつくっておりますが、これは昨日の参議院の農水委員会等でも非常に問題になりましたが、米の需給計画が非常に甘いという指摘を受けているわけであります。  そこで、農協中央会の小口農畜産部長さん、あるいは全日本農民組合の谷本書記長さん、さらには北海道農民連盟の佐々木書記長さんに、農林省の米の需給計画、このことについてどういうふうな考え方を持っていて、どういう点が問題なのか、その点についてそれぞれお聞かせをいただきたいと思います。
  77. 小口芳昭

    小口参考人 おととし五十二年の場合には、九十万トンの生産調整をすべきであるということで、千三百万トンの潜在生産能力に対して需要量千二百十万トン、差し引き九十万トンということでしたが、これは大変甘うございましたということで、生産は千三百四十万トン、四十万トン上に上げて、それで消費の方を逆に四十万トン減らして千百七十万トンというように上と下に開いて、結局五十三年については百七十万トンやってもらいたいというふうに見ているわけであります。  かように、一年間で四十万トンの需給の調整をして、それで百七十万トンやってくれ、こういうことを農家理解協力を求めるために申したわけでありますが、四十万トンといいますと、いま日本の一カ月の配給量を約五十万トンというふうに見れば、約一カ月の間違いということになって、十二分の一の需給計画の甘さというものが出てくるということは、これは甘さとはいえ、余りにも大きい甘さではなかろうかというふうに考えております。  ともあれ、その甘さをそのまま受け入れて、五十三年以降の水田利用再編については、四十万ヘクタール、百七十万トンの生産調整を要請し、かつ今後は三年間この生産調整目標数量は固定する、こう言ってきましたから、よしんば今後その甘さが顕在化したとしても、それはまさに、需要面での拡大でどう対応するかというのが米の需給均衡を果たす成否のかぎを握っているものであるというふうに思いまして、そのこと自体考えてみますというと、米の消費拡大につき万般の政策的努力あるいは可能性をどこまで追求するかという意味で、消費者サービスあるいは小売段階、卸段階の販売努力を最大限に発揮するというのが、今後三カ年のポイントであろうというふうに観念をいたしております。
  78. 谷本たかし

    谷本参考人 政府の見通しの甘さがあったというより、私は間違いだったと思います。どうしてそういう間違いが生じたのか、その背景にはやはり二つの事実が指摘されなければならぬと思います。  一つの点は生産事情の問題であります。米以外の農畜産物もつくれるような、そういう対策がないということ、ここのところに重要な問題の一つがあったと思います。またさらに消費の問題について申し上げますならば、依然として政府は米不足時代の消費構造を基本的にはそのままにしておいている。そういう状態をそのままにしておるのでありますから、したがって、米の消費の問題についても見通しの誤りが生じざるを得なかったのではないか、こういうぐあいに思います。
  79. 佐々木茂一

    佐々木参考人 私、生産農民の立場から申しますと、政府の言われていることについては、まず一〇〇%を超えて守っているわけですから、こういう余ったということが起きることが不思議なわけです。私ども農民のサイドから申しますと。したがって、やはり食糧庁が日本の国でとれる米の潜在生産量を押さえるときに大きな間違いを起こしていないか、あるいは予算組みのときにそういうものを意識的に低く押さえた計算をしているのではないかという不信をわれわれ農民の中では持っているところでございます。  しかしながら、どうあろうと、私ども生産者の立場から言うと、米が余ったからおまえたちこれでがまんしろ、こういうことを次にまたせいということは、もうこの辺で御免だというふうに考えておる次第でございます。
  80. 神田厚

    ○神田委員 次に、今度の据え置き諮問の大きな要素になるだろうと言われている政府生産費調査が出たわけです。この生産費調査につきましては、これは各団体なりあるいは農民組合なりでいろいろとその算定や何かにつきましてとり方が違うと思うのですが、政府が出してきました、ことしの米価に大きな影響を与えるであろうと言われるこの生産費調査について、どういうふうにお考えになって、どの点が問題であるというふうにお考えか、小口参考人、さらに谷本参考人佐々木参考人からお聞かせいただきたいと思います。
  81. 小口芳昭

    小口参考人 四日、政府が発表いたしました五十二年の米生産費調査を見て感じた点で申しますと、第一点は、やはり農機具費物財費の中の最高である。しかも、かつては物財費の中で肥料費というのが中心であったわけでありますが、その肥料費の二・七倍が農機具費であるというところが一つの問題点としてとらえました。  それから第二は、十アール当たりの小作料につきましては、二万八千六百二円というものであります。農林省調査いたしました笑納小作料が二万八千六百二円というものであります。これは、去年五十一年産について見ますと、二万六千七百六十六円ということですから上がっているわけでございます。これをもとにこれから政府米価算定をするわけでありましょうが、その場合に、先ほど申しました私ども家族労働評価の違い、それから企画管理労働評価の違い、あるいは特に地代については、これを統制小作料で抑え込むという操作をすることによって抑圧された米価が出てくるのではなかろうかということで、その生産費に即して改めて修正をした政府諮問価格というものに注目し、その矛盾をついていきたいというふうに思っております。  なお、もう一点、ことしの生産調整が、二百七十四万ヘクタールあった去年の作付面積、これがことし二百五十二万ヘクタールになるという、言ってみれば、政府の施策に基づく面積の減が六・五%ございます。その減った分で、しょうことを予定していた先ほどの農機具費など固定費部分を、残った九三・五%の水田がしょわなければならないわけであります。言ってみれば、操業度修正ということが、生産調整にまともに取り組んだ農民に対する対応ではなかろうかということで、それを基本米価に反映するように特に配意する必要があるだろうというふうに考え、今後の、あしたの諮問米価について十分分析し、今後の対応を推し進めていきたいというふうに考えております。
  82. 中村広次

    中村参考人 農林省生産費調査につきましては、われわれ団体側よりも多くの戸数をとっておりますし、それそのものとしてはやはり実態を反映したものであろうというふうに思っております。ただ問題は、やはりその擬制計算をせざるを得ない地代なり労賃評価でございまして、特に地代の問題につきましては、いまお話ございましたように、現実にこれから現在規模拡大をしているという農家にとりましては、もう二万円、三万円という地代を払わなければその借地ができないという状況でございまして、これをやはり統制小作料という、正確な数字はわかりませんけれども、大体現在十万から十一万ヘクタールしか対象になっておらない、その残存小作地について対象に適用されております統制小作料でもって、現実に二、三万払わなければ借地できない、こういう地代評価をするということはおかしいのではないかというふうに考えております。
  83. 谷本たかし

    谷本参考人 生産費調査の結果を拝見いたしまして感じましたのは、経済不況期における生産費の上昇率というのはやはり低くなるんだなというのが率直に申し上げて私の実感でございました。それでは、そういう状態というのがそのまま米価据え置きというぐあいに結びつけていいのかどうか、問題は私はそこにあると思います。現在の政府米価算式というのは、私どもから見れば、低米価にしていくために算定要素をずいぶん入れかえをしてきたというような経緯がございます。算定方式の中の要素をやはり改善をしていくということが大切だろうと思います。その要素としましては、これまでほかの参考人の皆さんからいろいろ御指摘があったとおりであります。  また、私の側からこの際一つだけ強調させていただきたいと思いますのは、労賃単価のとり方の問題、これを引き上げていくべきではないのかというぐあいに思います。生産性が向上すれば通常の、何といいますか、工場などにおいても労働者の賃金もそれによって引き上げていくというような状態があるわけであります。特に経済不況を克服していく上では、勤労国民の購買力を強めていくというようなことが大切なわけでありまするから、そうした点からいっても労賃単価の引き上げというのが大切ではないのかというふうに思います。
  84. 佐々木茂一

    佐々木参考人 私は、生産費調査の結果につきまして、一つは労働時間の認定がきわめて厳しい。現実農家が農作業だけに働くというだけが労働時間ではないわけでございます。先ほどの公述でも申し上げましたとおり、実は私の息子なんかはおとといからコンバインの運行講習のために一週間も費やして、いまたんぼの草取りをやめて講習に、勉強に行っているわけです。こういうものも私どもは当然農業労働費として算定の中に織り込んでもらわなければならないという考え方を持っています。  そういう意味では、先ほどから申し上げております企画管理労働費というものの上積みをぜひひとつ改めてもらいたいという考え方。さらに、収量のとり方につきましても、生産費調査を委嘱されている農家というのはきわめて記帳能力も高いし、それから経営も健全化されている農家に多いわけです。そういう農家が全国の農家の中からすぐられているわけですから、したがって、残された農家にそこまで到達できないという農家が数多くあるわけです。ここら辺のものをこの生産費調査の中でどう織り込んでくれるかという考え方、これはやはり真剣に考えてもらわなければ妥当な収量というものは出てこないのではないか、こういうふうに考えます。私ども北海道におきましても、生産費調査生産量とそれから全道平均の収穫量というのは、常に四十キロから五十キロくらいの隔差があるわけです。そういう点を見ても、生産費調査の対象になっている農家だけで物事を決めるということについては、きわめて危険性が高いということを農民の立場から主張していきたい、こういうふうに考えております。
  85. 神田厚

    ○神田委員 参考になりまして大変ありがとうございました。  以上で終わります。
  86. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  87. 津川武一

    津川委員 参考人の皆さんにはきょうは御苦労さまでございます。貴重な御意見を伺わせていただいて、きょう午後からあしたの一日いっぱいの質問で、さらにまた日本の農政を確立していく上に皆さんの御意見を反映させていただきます。ありがとうございます。  そこで、先ほどから伺っていましたけれども、端的にひとつ伺わせていただきたいのは、どうやら米価を据え置きと決めたらしい。これをどうお考えになってどう対処されるのか。これに対して政治加算をする、この政治加算をどう考えて、どう対応されるのか、四人の参考人から、私、先ほどお伺いしてわかっていたのですが、ひとつ明確にしていただきたいと思いまして、お伺いします。
  88. 中村広次

    中村参考人 やはり基本米価引き上げでもって対応していただきたい、それが中心でございます。その上でいろいろな奨励措置をなさるのは結構ですけれども、やはり本命は基本米価であるというふうに考えております。
  89. 小口芳昭

    小口参考人 算定要素改善並びに生産調整を行った第一年度であるという視点に立って、基本米価引き上げに重点を置いてというか、それ一本で対応してまいりたいというふうに考えております。
  90. 谷本たかし

    谷本参考人 どう対処するかという問題でありますけれども、私ども要求米価政府に出しておるのでありますけれども、私どもへ回答が来るのではなくて、米価審議会に試算という形で示されます。したがいまして、こうした据え置きについては、撤回要求生産委員を通じてやっていただかなければどうにもしようがないなというぐあいに感じたところが一つの偽りない実感であるというところであります。また同時に、私ども運動も、そういうことであるとするなら、これは抗議運動的な米価運動にならざるを得ないであろうというぐあいに思います。  なお、政治加算問題については、これはもう他の参考人も申し上げておりますように、基本価格一本でいくというのが私ども姿勢であります。
  91. 佐々木茂一

    佐々木参考人 さきの御三人の方からほとんど言い尽くされているわけでありますけれども、私もやはり、そういうお情けで米価が決められるということでなく、われわれの働いた姿が正当に認められて、米の値はこれだけですというものにぜひしてもらうために、今後米審委員の皆さん方にも訴えながら、残されたこの二日間がんばっていきたいと考えております。
  92. 津川武一

    津川委員 その次に、外国農畜産物の輸入の圧力ですが、実はきょうからサクランボが輸入解禁になって入ってきているのです。このサクランボの影響が、サクランボ生産農民と日本農畜産物にどんな影響を与えられるのか、これは小口さんと谷本さんからお答え願いたいと思います。
  93. 小口芳昭

    小口参考人 サクランボが陸揚げされまして、いま検疫に入り、自由化で間もなく店頭に出るということであります。一方、オレンジの季節枠が六、七、八と二万二千五百トン入ってありまして、通年の二万二千五百トンとダブって出ております。大変残念に思いますことは、日本の果物には影響を与えません、あるいは日本の果物全体の量からすればわずかですと言いながら、お店に立ちますと、お店の真ん中にオレンジがあるということで、日本国内産がわきにあるという状態でいま売りさばかれているという実態に即して、大変心配をいたしております。いまのところ輸入オレンジによってブドウとかスイカとかメロンとか、あるいは晩柑類などにどのような影響が出ているのかということは、まだ入って一カ月でありますので、市況の動きその他をもう少し見定めてから見なければならぬというふうに思っておりますけれども、山形のサクランボ地帯あるいはミカン地帯、晩柑類の出荷先ではオレンジの影響がやはり出ている、特にハウスミカンのところに出ているということもあって、今後の推移を見ながら、入った後の措置について、政府に必要ならば要請の措置を講じてまいりたい。言いかえれば、季節自由化調整措置についてもっと工夫するところがあれば工夫してもらうような要請をしていきたいというふうに考えております。
  94. 谷本たかし

    谷本参考人 サクランボの輸入は地域的に限定されているというふうなお話を私どもこれまで政府などから伺ってきているのでありますが、決してそうではないと思います。やはりサクランボが大量に輸入されてくるという状態になってまいりますと、直接的には他の果物への影響が出てくるであろう。そしてまた、いま米の問題について言うならば、米の転作というのが行われておるわけでありますが、こうした問題についてもやはりかなりの大きな影響が出てくるであろうというぐあいに思います。  なお、私どもといたしましては、山形の関係農民の間でブルガリアと橋渡しをやりまして、新しい品種の輸入をして、それで対抗できるような条件をつくっていこうというようなことなども進めておるのでありますが、そうしたことだけではもう限界があるわけでありまして、農産物の輸入問題、この問題を基本問題として私どもは問いかけていかなければしようがないのではないか、かように考えております。
  95. 津川武一

    津川委員 いま谷本さんが話されたように、局部の問題ではなくて、非常に大きな影響もあるし、輸入に反対してきた日本農民の気勢もここでそがれているので、私たちも皆さんの御意向を体してがんばってみたいと思います。  時間が少ないので、最後の質問ですが、去年の秋から米の消費拡大を進めるという、大声でもう大宣伝をやっていますが、依然として消費が拡大されていない、減っている一方ですね。これに対していろいろなことをいままで政府からも聞いたけれども、なかなか上がらないので、この際具体的にどうなさるかということを聞かしていただいて、私たち、あしたもこれからも参考にしたいと思うのでございます。この点で四人の御参考人から、具体的に皆さんお考えがありましたら処置をお伺いできればと思います。
  96. 中村広次

    中村参考人 学校給食で米飯の導入をふやす、さらに基本的には弁当持参にさせるということも大事でしょうけれども、もうその段階を過ぎたのではなかろうかというように私は考えております。つまり、もう積極的に価格政策で消費を誘導する、やはりそのくらいの政府姿勢、決意を国民全体に訴えるべき段階でなかろうかと思っております。具体的に申しますならば、たとえば麦の売り渡し価格引き上げるということも一つの重要な決め手になるかと思います。
  97. 小口芳昭

    小口参考人 学校給食を含めまして、消費拡大を広範に具体的に取り組んでいかなければならないわけですし、やっているわけでありますが、わが方としても、一俵十円というようなお金を農民自身が積み上げて消費対策を進めております。  学校給食について、米飯持参の給食を完全給食と同じような、国の助成措置同等に扱う要求や、あるいは先ほども申し上げたのでありますが、自分の村にある米を、言いかえればお父さんのつくった米を学校の子供が食べるという、在所の子に在所の米を、それは何かわけがわからぬ学校給食を通じて流すようなことよりも、もっと教育的価値があるし、そうして定着するのじゃないかというふうに思いまして、いろんな改善措置を要求しているところであります。  ただ、基本的には、やはり配給段階で卸、小売の新規参入を認め、消費者サービスあるいは店舗改善、販売努力といったようなものを可能な限りやっていくということに一つの大きなポイントを置いてやっていく必要があるのじゃなかろうかというふうに考えております。  なお、新規用途の開発等々についても、この前四十五年当時に比べれば広範にいろんな食品が開発されておりますので、それらを適切に今後われわれとしては扱っていく必要があろうということで、工場建設計画もいま一つありますけれども、今後三つぐらいふやすということで手をつけ始めておりますので、がんばっていきたいと考えております。
  98. 谷本たかし

    谷本参考人 先ほど来申し上げておりますように、一つには、やはり米麦相対比の是正というのが重要だろうと思います。何か伺うところによりますと、消費者米価の方はことし上げるのだというような話も出ております。現に私どもは大臣からそれらしい話を伺っておるのであります。やはり消費者米価は据え置くべきではないのか、できるなら私は値下げすべきなのではないかというぐあいに思います。また財源問題云々ということにしても、外麦輸入の差益金だって出ておるのですから、そういうものを消費拡大に使っていくということも必要だろうと思います。  そのほか、学校給食問題については、私どもは、現に米飯弁当を学校へ持参していこうというようなことで、幾つかの地域でそういったものを運動化しておるところであります。  なおさらに、この際もう一つつけ加えておきたいと思いますことは、標準価格米、これはやはりもっと中身を改善していただく。標準価格米というのはどうも余り品質がよくないという消費者の声が多いわけであります。標準というぐあいに銘打っておるわけでありますから、銘柄米も含めてもっと質を上げていくというようなことが消費拡大の道に通じていくのではないかというぐあいに思います。
  99. 佐々木茂一

    佐々木参考人 私のお答えするのが最後なものですから、いつも先の方がお答えになってしまうわけですけれども、私は、いま農民の立場で考えるならば、やはり麦の売り渡しの対米比価というものを変えてもらう。これ以外にちょっと消費拡大は、いま当面の問題としてはないのではないか。しかし、先ほどの公述で申し上げましたとおり、やはりこれはないときに農民から無理やり持っていったのだから、こういうときには、やはり皆さんにも食べてもらう方策を、政策でぜひ半強制的に米を食っていただくような方向転換をしていただくというのが食糧政策でないか、こういうふうに私は考えております。  以上でございます。
  100. 津川武一

    津川委員 ありがとうございました。
  101. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  この際、午後二時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  102. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について質疑を続行いたします。柴田健治君。
  103. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 与えられた時間、三十分でありますが、大臣に簡潔に御質問申し上げますから、簡潔にお答え願いたいと思います。  まず、きょうは農林省の設置法が変わって農林水産省ということで出発の日で、大きな期待をかけておるのですが、しかし農林水産省が農林衰退省になっては困るので、大いに中川大臣の真価をこれから発揮願いたい、それを前口上にして、まず、今年度の生産者米価はいまや論争のたけなわを迎えたわけでありますが、今年度三十九万一千ヘクタールの減反面積、そして生産調整数量は百七十万トン、これは単年度需給目標で、一つの需給均衡論という立場で数字が出て、生産農民に強要しておるわけでありますが、いまやその実績は面積にして一〇四%まで伸びるのではないか。農林省の示した三十九万一千ヘクタールが大きく飛躍して、岡山県の場合は一一七・六くらいいきました。非常に成績がいいので大臣は笑顔をしておられると思うのですが、それだけ農民が積極的に、泣く泣く協力したというのが実態なんでありまして、それにどうこたえていくかということでなければならぬと思うのですが、私がいつも考えさせられるのは、米価の時期になると過剰論、過剰米が論議の基本になっておる。過剰米と単年度の需給というものは切り離して考えるべきだと思う。  先ほど参考人意見も出ておったが、昭和四十六年から毎年毎年生産調整をやってきた、そして過剰米だ、こう言う。五十三年産米は、単年度需給目標ということで、三十九万一千ヘクタール、そしてまた数量百七十万トンを減したら過剰米にはならないという見通しで、今後十カ年の中で当面三カ年やってみる、こういうことで実施されておるわけです。この過剰米を今年度の米価のときにひっつけて論議するというのはおかしいと私たちは思うのですが、大臣はそういうことに矛盾も何もないと思われますか。
  104. 中川一郎

    ○中川国務大臣 今日の米をめぐる情勢はちょうど昭和四十三、四年ころと同じ状況でございます。あの当時も七百万トン、約一兆円の資金で、国の財政によって処理をした。あの当時はたしか四年ないし五年は米価は据え置かなければならない、そして、この過剰傾向を抑えなければならぬということで、農家の皆さんの血のにじむような二百三十万トンの生産調整をお願いしつつ、米価算定の方式にもいろいろと手心を加えさせていただいて、そして厳しい中に政府農家の皆さんの理解によってあの過剰米を処理すると同時に需給のバランスをとった。  今回も前回と同様、より以上厳しい状況にございます。すなわち、生産意欲は非常に強い、自力開田が年一万五千町歩も実績が上がっていく、食管とは関係なしにおれはつくっていくのだというのでつくっていく、そういう非常に生産意欲の強い傾向と、また消費の方は年々衰退をしていくということでございますので、四十六年に腹を決めたより以上の農家の皆さんの協力とわれわれ政府の努力と相重なってこの難局を乗り切りたいということであって、単年度の生産調整ができたから甘く見ていい、こういうものではないと存じております。四十六年当時以上の厳しさがある、こういった判断に立って、米価はいかにあるべきかということで決定しなければ先々大変なことになる、こう思う次第でございます。
  105. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣、この前七百二十万トンの古々米の処理について約一兆円の財源を使ったということで、納税者である国民の方から強い批判を受けて、農林省の方はその時点でもう二度とこういうことはいたしません、そういう強い意思表示をされて、その後厳しく、本当に需給の見通しを立てて、そして需給均衡という立場で毎年生産調整をやってきた。それに農民は不平不満がありながらも協力してきたのです。毎年毎年のそうした需給均衡をとる政策というものに農林省は余り熱心でなかったのではないか。ただ消費が伸びないのだ。たとえば、五十一年度から二年度を見ると一%また減ってきた。こういうように、消費拡大を言いながら、予算も消費拡大の予算をとりながら、十年近く消費拡大をやりますと言って予算をとって、そして消費拡大ができない。十年も予算をとって消費拡大をやってきたのなら、そこに矛盾と欠陥とどういう壁があったのか、なぜ伸びないのかという理由くらいは明確になると思う。それもはっきり言わないで、消費が伸びない、伸びない。質問をしてみると、一方では消費拡大をやっております。本当に消費拡大もやっていないし、それで問題は、面積を何ぼ押さえつけてみたところで、生産数量の調整をやってみたところで、農林省がもう少し基本的なものをやらなければならぬ面が手落ちになっているのではないか。それは潜在生産量というものの把握ができていないのじゃないか。それが誤ってくると縁故米がふえる、自由米がふえる、やみ米がふえるということで、そういう別の米というものが出てくる可能性がある。それから、潜在生産量というものの押え方、把握の仕方というものが基本的に誤っておるのではないか、こういう気がするのですが、大臣はその点はどういう考えを持っておるか。
  106. 中川一郎

    ○中川国務大臣 確かに政府においても甘かった点はあろうとは思います。思いますが、米が余りました理由は、予想以上に自力開田が多かった、生産調整をお願いする反面、米価がほかの作物に比べてよかったこと、それだけの理由ではないと思いますが、非常に自力開田が多かった。あるいはまた米価が高いからかどうか、それだけとは直接結びつきませんけれども、予想以上に消費が伸びなかった、むしろ減退をした。あるいは天候その他でよくなった等々のことがありましたが、政府が全部よかったとは申しません。反省はいたさなければなりませんが、ここでわれわれも反省すると同時に、農家の皆さんにも、消費のないところに生産はない、だから余り米価を上げますと大変なことになるということで、ラーメンは農協で売らないようにというぐらいの農協であってほしいということをしばしば言ってまいりましたが、ここで政府もみずから過去を反省すると同時に、これから農家の皆さんとわれわれとが一体となって、国民から批判を受ける余剰米が出ないということを心してやるべきだ、政府の悪かった点、甘かった点があったとしたら率直に認めておかなければならないと存じます。
  107. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 認めなければならぬというあいまいな言葉は、体裁のいい逃げの言葉だと思うのですが、政府が本当に責任を持たなければならぬ面が多いと私は思うのです。  先ほど申し上げましたように、本当に消費拡大をやろうと思えばやれないことはないのです。正直に言って。たとえば、流通の改革でも、いつでもどこでも米が買えるようにしようと思ったら、予算も何も大して要らない。あなたの命令でいまの流通でも変えられる。やろうと思えばやれないことはない。やらないのか、能力がないのか、われわれは判断に苦しむところなのです。消費拡大について、たとえば学校給食等でも、週に何回か閣僚会議が行われるなら、大臣は日本語のうまい人だし、迫力もあるし、文部大臣よりはるかに押しまくれる力があると思うのです。砂田さんより上だと私は思っておるので、閣僚会議で文部大臣を押さえ込むぐらいのことはわけないと思うのですね。それができないのは、やる気がないのか、おざなりになっておるのか。  大臣、学校給食をやっておる国々で、それを外国に依存しておる国がどこにありますか、ちょっとお答え願いたい。
  108. 中川一郎

    ○中川国務大臣 もちろん学校給食は米でやるべきことが正しい、しかし米がない時代にパンと牛乳で学校給食が行われたという経緯があるわけです。でありますから、これを改めるように週二日、週二日でも足りない、三日にし、将来は五日にしろ、これは文部大臣とも十分話をするところではございますけれども、わが国は民主国家でございまして、仮に文部大臣が私の言うことを聞いてくれたとしても、学校給食会なり父兄会なり学校の先生方が納得して、よしわかった、米でやってやろうという御理解がいただけないうちは、押しつけるわけにはまいらないものでございます。これも民主的に理解協力、血のにじむ努力をいたしておるところでございまして、圧力でできる仕掛けではないということだけは理解をいただき、われわれもそういう方向で給食会なり父兄会なり学校の先生方に、どうかこういった時代でもあり、日本の主食である米を食べていただくようにお願いをする。また、長い目で見て、学校で米を食べるということは、若い時代から将来に向かってなじむ、こういうことが必要であろうと思いますが、それ以前に農家の皆様方も米の消費拡大についてはもっと努力しなければ、そうした方々に対する説得力も足りないのではないか、農業団体にもしかとお願い申し上げておるところでございます。
  109. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 学校給食を実施している国で、よその国に食糧を依存してやっておる国というのは日本だけだとわれわれは理解しておる。本当にあなたが日本人ならやるべきだと思うのですが、それはこれ以上言いません。  何としても農民には生産調整、ことしは百七十万トンということになると、トン三十万円でも五千百億円、五百万農家は一戸平均十万円の減収、所得減ですよ。半ば、農民の月給を減俸措置するようなものです。減俸措置というのは、大体悪いことをした者が受けるのが日本の社会通念ですね。農民は何も罪、汚れもないのに減俸措置を食う。それを守らなければ、スポーツ用語のペナルティーという言葉ですね、押さえつけていこう。ことしは面積で抑え、数量で抑え、価格で抑え、どっちに転んでも、両びんたどころか、下から上から両方からどつかれるというやり方、こういうことで農民だけがなぜ犠牲にならなければならぬのか、そこに生産農民が非常に強い不満と疑問を持っている。それにどうこたえていったらいいのか。  政府が買い上げる八百三十万トンの米の価格は、三十万円としても二兆五千億ほどですよ。トヨタ自動車が六カ月間で生産するのが二兆五千億です。自動車をどんどこどんどこ生産調整せずに無制限に輸出させてドルをためて、そして農産物の国際価格論を引っ張り出して農民だけをいじめるというやり方はどう考えてもおかしい。農民にどう説明したらいいのか。過剰米がたまったのは農民の罪じゃない。何か気象条件の影響とか豊作論を言うてみたりしているが、やはり単年度で需給の見通しを立てて、これだけのことはやるから農民の皆さん協力してくださいよ、政府もこれだけのものを責任を持ってやりましょうと言って、本気でやったら米が余るはずがないのです。それを、食わないから、いや豊作であるからと、まるで人ごとのようなやり方ですね。こういうのを無責任論者とわれわれは言いたいのです。責任という言葉はどういうときに使うのか。自民党の皆さんは、口を開けばわが党は責任政党だと言う。責任政党論を言うなら、責任というものはどういう場合に使うのか。私は、大臣は根性があるし、日本人だし、特に民族意識の強い人だと思って評価しておったのだけれども、事米に関する消費拡大については、あなたはどうも日本人よりか、どこかまざっておるような気がする。あなたが大臣になったら途端に農産物の輸入がふえてきておる。どう考えても不思議だ。  それから、輸入の調整も考える、国内生産調整も考える、米以外の農産物の価格保証をどうやるかということも考える、消費拡大をどうするかということも考える、もう問題点はしぼられてきておるのです。だれに聞いても問題点はわかっておるのです。これから消費拡大をどうしていくのか、ほかの農産物の価格保証をどうするのか、輸入の調整をどうするのか、大体問題点はしぼられてきておるのだから、その問題点がわからぬというなら、それはこれから調査研究してみなければならぬということでしょう。調査研究しなくても、もう問題点は出ておる。簡単なのです。それをどう解決するかということが大臣の責任だろうと思う。それがもうわかってもらえぬということになれば、もはやわれわれはここで何ぼ論戦してもどうにもならぬ。  私は、過剰米と今年産価格とは切り離すべきだと思うのですが、大臣どう思われますか。
  110. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農家生産調整要求しておいて、また価格で抑えて、残酷物語のような話でございますが、私は、これほどめんどうを見ておる国は世界じゅうに断じてない、また国内においても過剰状態のときにこれだけめんどうを見ておる政策は断じてないと思うのです。たとえば、繊維業界がどんなになっているか、失業で泣かなければならない実態があるでしょう。ミカン農家生産過剰のときにどれだけ苦しんでおるか。食管制度があればこそ、仮に五千億の減収があれば二千億からの金を差し上げて、そこでとれるものと合わせれば、地域によっては違いますが、全体の所得計算をして採算の合う仕組みにし、それに必要な土地改良その他のこともやり、しかも残ったお米については再生産ができるだけの意欲の持てる価格で買い上げる、これぐらい手の行き届いた政策は、世界の農政を見ても、国内のあらゆる政策を見ても、食管があるがゆえにこそ、今日まで協力をいただいたからこそやっていることであって、これが残酷だと言われるゆえんは毛頭ないと私は思っております。  そこで、在庫米と生産調整関係でございますが、在庫米があるからだけではなくして、単年度約百七十万トンは——豊凶の差によっては違いはありましょうけれども、消費と生産の見通しを立てると、当分の間は百七十万トンの生産調整はしなければならないという見通しでありまして、単なる五百三十万トン、一兆円かかる、それだけで今回の需給関係を考えているわけではない、長期的に安定したものにしなければならぬ。特に、きょうから農林水産省として発足いたしましたが、これからは総合食糧自給率ということを改めて見直そう、多い米から少ないいわゆる飼料作物あるいは麦類、大豆に長期的に転換をする血のにじむ努力をしなければならないと決意をしておるのであって、単年の問題ではなく、長期的視野に立ってそういった政策を講じておるところでございます。
  111. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間がないから、あなたと論戦せぬけれども、今年度の減反政策は、生産調整に対して需給均衡論ということで新しい農政の方向を打ち出すとわれわれは思っていた。ところが、今度の価格問題の論争は過剰米が起点になっている。この過剰米は生産農民の罪ではない。農林省のそうした甘い見通しが大きく影響しておるのです。われわれはそう理解しておる。それを継承してしまうというのは、それはもう生産農民にとっては過酷というかむごいというか、ひど過ぎるという気がするわけですね。それから切り離して、ことしの米価については新しい角度から価格を決めていくのがいいのじゃないか、こうわれわれは思っているのです。それを大臣は、大蔵省のお先棒を担いでいるかどうか知らぬが、とにかく据え置き論で農民に迷惑というか、非常に心配をかけているわけです。  大臣、もう一つ聞きたいのですが、ことしは農業団体が一万九千二百七十六円、昨年は二万一千百円、ことしは下げた要求ですね。この下げた要求にはいろいろ論議がありますけれども、しかし下げざるを得なかった農業団体の気持ち、もはや後に引けない。去年並みというならまだ農民も理解する。しかし、去年より下げて要求するというのは、農業団体の幹部の苦悩がよくわかるわけですが、それに対して農林大臣はどうこたえようとするのか。下げて出すということだけで、農業団体の危機感というか悲壮感というか、今年こそはという最後の追い詰められた、窮鼠ネコをかむというか、もうこれでもらえなんだら日本農業団体は支離滅裂になるのではないかという一つの心配をわれわれはしておるわけです。  農業団体が昨年より要求額を下げたことに対して、あなたはどう認識しておるのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  112. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昨年の要求よりも下回る、すなわちバルクライン八〇%を政府並みの五〇%までおりられた姿勢は高く高く評価いたしております。また、生産調整に御協力いただいたことも高く評価はいたしております。しかし、現在の米の状態、さらに将来の米の状態を見通すときに、団体がおりられた値段そのものを取り上げるというわけにはなかなかまいらない。  ちょっと御説明申し上げますと、四十二、三年ごろ増産、増産のときに採用したいろいろな方式を四十五、六年ごろに一枚一枚綿入れを脱ぎ、いろいろなものを脱いで、昭和四十六年ごろの米価方式でまいりますと、現在の米価からもかなり下がらなければならないというような過去のいきさつもあり、いまここで過剰傾向にあるときに、さらに労賃地代の問題等をプラスで考えるということは、気持ちはわかりますけれども、残念ながらできる情勢ではない。むしろ四十八年ごろから一枚一枚重ねてきた着物をさらに一枚でも血のにじむ努力をして脱がなければ、これからの需要の動向、消費との関係において先々問題が残るのではないか、こういうふうに厳しく受けとめているところでございます。
  113. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 たびたび申し上げますが、生産費の問題で土地代、租税、物財費とかいろいろありますが、特に私は今年度お考え願いたいのは企画管理費、われわれは農民の立場から言うと、この企画管理費というのは営農技術の一つの経費だという考え方を持っておるわけです。企画管理労働ということについては、今年度生産調整に対して、農民がどれだけ苦悩を続けて、協力すべきか拒否すべきか論議に論議を重ねたか、その回数は非常に多く、会議に費やした時間は相当なものです。これを全然評価しないというのは私はおかしいと思う。この生産調整関連する会議労働時間、費やした所要時間というものは当然ことしの米価算定に入れるべきだ。そして減反をして、たとえば物財費の中で農機具の問題についても、いままで二ヘクタールでこれだけの農機具を持っておった、それが今度は一割なり一割五分の減反を受ける、それで償還をしていかなければならぬのですから、何としても米価算定してもらいたいというのは農民の切なる願いだと思うのです。  ですから、生産費の中でこの減反における物財費の加算をどう見るか、企画管理費の中で今度の生産調整に対する会議に費やした時間をどれだけ評価するかということを考えてあげないと、そういう点も全部無視するということになれば、農民を徹底的に軽視するというか、農民をばかにした一つの米価算定数字になってくるということも考えられるのですが、その点、大臣どうですか。
  114. 中川一郎

    ○中川国務大臣 いろいろ議論のあるところではございますが、そういう点もありますから、畑作農家もうらやむような四万から七方、七万五千までもこういうものを出しておるのであって、減反するために要した企画管理労働というのですか、相談した費用を米価に入れるというようなことはいかがかと思いますし、機械の目減りについても、そういったものを米価に入れるよりはむしろ生産奨励金、三年据え置くことになっておりますが、そういった事態があればそっちの方で見るべきであって、米価の方で見るべき性格のものではないと思います。
  115. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 大臣、われわれが言うと、あなたはじきに奨励政策の中で何とか考えるというような逃げを使うわけですが、われわれはあくまで奨励政策というものは場当たり主義だし、永続性もないし、農民にとっては余り好ましいことではない、本当は基本米価に入れるべきだという考えを持っておるわけですから、奨励政策で逃げていこうという考え方はとってもらいたくない、あくまで基本米価の中にそういうものは全部入れるべきだ、そう思っておるのです。  それからもう一つは、時間がありませんが、転作についてです。転作というものは地域農業に非常に強い面が出てくるわけですから、もう少し転作品目についての再検討というか、都道府県知事の認定したものについては追加していくという考えがあってしかるべきじゃないか。農林省の方で一律に何と何と何と言ったって、たとえば海抜ゼロ地帯には米以外につくれないところがたくさんある。海抜ゼロ地帯にはどんなに基盤整備をしてみたところで米しかつくれない。そこには何がつくれるかということを地域地域の責任者、都道府県知事はよく知っているわけですから、都道府県知事に権限を持たせて、知事の認定した品目は農林省が転作品目として認める、このくらいの幅があってしかるべきだと私は思う。そういう処置を早急にとれるのかとれないのか、大臣、一言だけお願いしたい。
  116. 野崎博之

    ○野崎説明員 原則として、いまのお話でございますが、需給上問題のない作物については全部奨励対象作物といたしておるわけでございます。
  117. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御承知のように、過剰傾向になりますと困る、いままで畑作をやっておった人方に迷惑をかける、こういうものは転作作物の対象としない。また、どうしても伸ばしてもらいたいというものについては戦略作物として加算金をプラスする。それ以外のものは一般奨励作物でやっておるということでございまして、その範囲内において知事さんがどの作物がいいよと御指導いただくことは結構でございますが、県によっても過剰であるものはこれは困るのであって、特にそういった個別の問題があれば相談には乗りますが、われわれの考え方と知事さんの考え方の中に大きな差はないと思います。もし、具体的にありましたら、十分いまの趣旨に沿いまして相談に乗ってみたいと存じます。
  118. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 終わります。
  119. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 松沢俊昭君。
  120. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣にお伺いいたしますが、いよいよあすからあさって二日間、昭和五十三年産米価決定に当たっての米価審議会が開かれることになりました。  新聞等によりますと、四日の日、政府の方では、大臣が中心になっておったと思いますけれども、ことしの産米の価格というのは据え置くところの方針を決められたということが報道されているわけなんであります。しかし、これはあくまでも新聞の記事なんでありますから、ことしの産米の価格決定するに当たって、もうあすなんでありますから、大体その方針は決まったと思いますので、その方針をまず明らかにしていただきたい、こう思うわけなんであります。
  121. 中川一郎

    ○中川国務大臣 四日に政府が決めたという御指摘でございますが、新聞にあったそうでございますが、そのようなことはありません。まだ現在に至りましても作業中でございまして、今夜遅く最終判断をしたいということでございますが、現段階におきましては、いつも申し上げておりますように、所得補償方式をベースとして、最近における、あるいは将来における需給事情を勘案して、再生産が損なわれない価格はいかにあるかということではございますが、農家の方々の御期待しているものと比べますならばかなり厳しくならざるを得ないかなという感じは持っておりますが、据え置くとか据え置かないとか、引き下げるとか引き上げるとかいうようなことはまだ決まっておりません。
  122. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大変厳しい結果になるであろうという御答弁でございます。私は、いま大臣が言われましたように再生産の確保、これは食管法の第三条にきちんと決まっているわけでありますから、仮に結果として厳しいものになろうとしても、再生産が確保されるところの最低の価格は補償されなければならないのじゃないか、こういうぐあいに思っておりますのですが、その場合、再生産という言葉の意味でありますけれども農家一戸一戸の再生産という意味もございますね。それから、政府が必要とするところの再生産、こういう意味というのもあると思うわけなんであります。  そこで、大臣に、再生産の確保というその言葉というのはどういう意味なのか、この際明らかにしていただきたいと思うわけなんです。
  123. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御承知のように、農家農家によりまして経営内容が違いますから、一戸一戸について米価を考えるという仕組みにはなっておりません。全体として必要なお米、国民食糧を供給するということを基本とした食管法のもとでは、必要な米が再生産できるということが再生産を確保する米価と、こういうことになるわけでございます。
  124. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 午前中も参考人に来てもらいましていろいろ御意見を聞いたわけなんであります。その際、全日農書記長谷本さんが——食糧庁が前広米審に出したところの「米価に関する資料」というのがございます。この「米価に関する資料」を見ますと、昭和五十一年産米の販売階層別生産費、これが明らかになっております。それによると、昭和五十一年の米価決定に際しての「求める価格」というのがございますですね。米価算定方式の中に「求める価格」というのがあります。これが一万六千二百八円になっているわけなんであります。それから、五十俵以下の販売農家の第二次生産費はこれよりも高いという状態になっております。それから、さらに売渡数量階層別というのが表になっておりますけれども、これを見ると、五十俵以上の販売農家の世帯というのは三〇・七%、それから、その数量が七一・三%、販売数量ですね、全体の中で七一・三%を占めている。つまり、去年の米価を見ますと、生産販売農家の三〇%程度しか補償を受けていない、要するに生産費の補償を受けていない。それから、量にいたしましても、米の量の七一・三%は、販売数量の七一・三%は、これは補償されておりまするけれども、残りの約三〇%というのは補償されてないという結果になっているわけなんであります。  そうなりますと、さっき大臣が言われましたように、再生産を確保するというのがやはり最低の米価の限界だということであるとするならば、三 〇%の米、そして要するに七〇%以上の人たちが補償をされないという、こういうような価格決定というのは私は間違いなんじゃないか、食糧管理法に照しても明らかに間違いなんじゃないか、こんなぐあいに考えるわけなんでありまするが、その点、大臣はどのようにお考えになりますか。
  125. 澤邊守

    ○澤邊説明員 ただいま御指摘になりました数字とあるいは若干違うかもしれませんが、五十一年で見ますと、戸数のカバー率は、平均生産費でのカバー率は四〇・三八%になっております。五十一年産米でございます。五十二年産米につきましてはいま急遽計算をしておるところでございますので、そのように申し上げます。  それから、販売量におきましては、平均生産費のカバー率は六〇・三一でございます。ただ、決定米価は、御承知のように、種々評価がえをしたり物価修正等をしておりますので、平均生産費で決めておるわけではございませんので、もっと高いところで決まっております。そういう決定米価によるカバー率は、戸数につきましては五十一年産におきまして五三%、それから販売数量におきまして七一・九一%、かような数字になっておるわけでございます。  したがって議論していただく際には、平均生産費というよりは、そのまま使っておりませんので、決定米価で御議論いただくのが適切ではないかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、もちろん一〇〇%はカバーしているわけではございませんが、この点につきましては、先ほど大臣からお答えいたしましたように、個々の、非常に生産費の高い農家のすべての生産費をカバーするというような考えで運用しているわけではございません。
  126. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私が言っておるのは、個々の農家というのは、これにももっと問題があるのですよ。これは販売農家なんであります。したがって、政府が必要とする量を生産をするその農家を指して言っているわけですよ。ですから、その数量を指して言っているわけなんですよ。だから、その数量というものが一〇〇%カバーされないということになれば、再生産の確保というのはできないのじゃないですか。だから、そういう点は食糧庁長官の考え方はおかしいのであって、販売農家、販売数量、これだけは一〇〇%カバーしてもらわなければならぬところの米価にならなかったら、法律の再生産を確保するという価格にはならないのじゃないか、違反なのじゃないか、こういうぐあいに私は言っているわけであります。  その点、大臣の方から御答弁願いたいと思うのです。
  127. 中川一郎

    ○中川国務大臣 せっかくの御指摘でございますが、販売農家のすべて、販売数量のすべてをもしカバーするとすれば、生産費というものの違いは農家によって倍も違うわけです。そうすると、一番低い方をカバーしたら一番高い方は倍の利得があるということになるわけです。そういうことではとてもとても生産意欲が強くなってしまって、新規開田がどんどん出てしまうわけです。ですから、平均的なところで、半分以上はカバーができて、半分以下がなかなか大変だな、全体としてまあまあというところに決めるのがこういうものの決め方でございます。これはいろいろなものを計算する場合にはやはり平均のところがまずやっていけるということで、全体がまずまずやっていける、こういう仕組みでございまして、販売農家のすべて、販売数量のすべての生産費をカバーするという仕組みにはとうていできないと申さざるを得ないわけでございます。
  128. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣、これで昭和四十四年、四十五年、四十六年と三カ年間米価据え置きをやったでしょう。それで問題になって、四十五年に農林大臣が被告になった米価裁判がいま続いているのですよ。つまり、こういう状態では法律違反なんじゃないかという裁判が八年間も続いている、こういう状態になっているわけです。  そこで、私が心配するのは、いまちょうど、四十五米穀年度、七百二十万トンという状態が出た、だから、また第二次の古米処理をやらなければならぬという状態になる、だから厳しいものになるだろう、新聞は、据え置きだ、こういう報道に実はなっているわけであります。しかし、やはり据え置き米価にしなければこれほどの開きというのは、カバー率はもっと上がってくるんじゃないかと私は思うのですよ。そういうことを考慮して米価というのは決まっていかなければならないのじゃないか、こう思いますので申し上げておるわけなんです。  そこで、時間がありませんから申し上げますが、五十二年産生産費調査が四日に明らかになったわけであります。これによりますと、反当たり五・七%、六十キロ当たり〇・一%生産費がよけいかかった、こういうことになっておるわけで、微増でございます。でありますけれども生産費及び所得補償方式ということになりますと、三十五年から始まったわけでありますが、それ以前はパリティ方式でした。それは昭和九年から十一年を基準にして物価指数を掛けて答えを出していく、こういう方式であったから、言ってみれば掛け算の方式であったわけです。今度、生産費及び所得補償方式、こうなりますと、反収を分母にしまして生産費を分子にして割って答えを出す、こういう方式に変わってきておるわけです。  そこで、五十二年の生産費調査によりますと、反収は五百十二キロになっておるわけなんです。いろいろ聞いてみますと、五俵以上の販売農家にし、そして二〇%以上の災害農家を除いて出したところの調査なんだ、こういうお話であるわけなんです。しかし、同じ農林省が出しておりますところの作物統計調査、これによりますと、これが四百七十三キロということになっております。ですから、この差が三十九キロ、半俵以上ですね。それから、三カ年の平均で割っていくわけでありますから、だから、いま申し上げましたのは昭和五十二年です。じゃ五十一年はどうであったかと申しますと、五十一年は生産費調査では四百八十六キロ、それから同じ農林省の作物統計では四百二十七キロ、この差というのは五十九キロ、約一俵の差が出ることになっておるわけです。要するに、高いところの反収を分母にして答えを出すということになれば、米価というのは下がってくる。低いところの反収を分母にすれば答えは大きくなる。どっちの統計が正しいのかというところにも問題があろうと私は思うわけなんであります。  そういう点で、四十キロも六十キロも年々差が出ている、この反収を調整するところの必要があるんじゃないか。そうしなければ正当な米価決定にはならぬじゃないか、こう私は思うわけなんでございますが、この点どうでしょうか。
  129. 柳井昭司

    ○柳井説明員 先生御指摘のとおり、作物統計の平均反収とそれから生産費調査農家における平均反収とは数%の違いがあるのは事実でございますが、それは先生もいまおっしゃられましたように、生産費農家におきましては、それぞれ平常年におけるところの平均収量を出すというふうな形で、一俵以上の販売農家、それから異常災害二〇%以上のものを除きました通常の米作農家平均反収を出しておるわけでございまして、やはりそこに性格の違いがあるのではないかというふうに考えるわけでございます。  それから、かかった生産費を何で除したらいいのかという問題になろうかと思うわけでございますが、その生産費でとっておりますところのいわゆる第二次生産費も同じ農家生産費をとっておるわけでございますので、その整合性という観点から申し上げますれば、それはやはり生産費調査農家平均反収をとるのが妥当なのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  130. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 整合性から言って生産費調査の反収をとった方が妥当なんじゃないか、こういうお答えでありました。それならば、たとえば地代の方は一体どうなるのかという問題です。去年まで地代というのは、本当の小作地の場合におきましては実納小作料です。それから、自作地が大部分でありますが、その自作地地代もやはり生産費調査調査がなされておるわけであります。その調査によりますと、五十二年は大分上がっておりまして二万二千三百四十六円、こういうぐあいに調査されているわけです。整合性という立場からするならば、この地代はそのままお認めになるのかどうかという問題であります。去年までの方式からいたしますと、統制小作料の五級地の小作料に置きかえて米価の場合には算定をしてきているわけであります。そうしますと、去年の場合におきましては地代というのは大変安くなるわけでありまして、たとえば五十一年の場合におきましては地代が二万一千五百七十七円というふうに調査は出ているわけでありますが、それを今度は五級地の統制小作料に切りかえるわけでありますから、七千五百三十六円というふうにまさに三分の一の地代に変わってしまっている。それならば、いま反収の面で言われたんですが、地代も整合性を考えるということになれば、こういう置きかえの地代というのはおかしいじゃないか。しかも、統制小作料というのは昭和五十五年になればなくなるわけであります。農林省の方では昭和四十五年以降、農地法の改正をやりまして、標準小作料というのを指導してきておられる。その標準小作料も相当上回ってきているわけであります。二万円以上であります。こういうふうに生産費調査に出ているにもかかわらず、なぜ地代の面は三分の一に値切らなければならないのか。反収と同じ考え方でいくとするならば、当然原生産費をそのまま採用すべきじゃないですか。どうでしょうか。
  131. 澤邊守

    ○澤邊説明員 先ほど統計情報部長がお答えいたしました反収についての整合性につきましては、分子と分母、割るものと割られる方が同じ経営といいますか、同じ調査農家でないとおかしいという意味で申し上げたわけで、現実の実際の平均した数字について申し上げていることでございます。  ところで、ただいま御質問のございました小作料のとり方でございますが、現在現実小作地になっておって経営外部に小作料の支払いがなされているものにつきましては私どもも実納小作料をとっておるわけでございますが、他方自作地地代につきましては実際には小作料の支払いということは行われておらないわけで、米価算定に当たっては所得付与という観点からどのように評価したらいいか、こういうような問題でございまして、いわゆる小作地地代とは経済的な性格を異にしているというふうに私どもは考えておるわけでございます。小作地は、御承知のように、作付地の七、八%を占めるにすぎませんので、このような一部の小作地で成立しております高い水準の実納小作料をそのまま自作地地代としてとるということは適当ではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。  地代は、御承知のように、本来米作収入から生産に要しました諸経費、家族労働費だとか資本利子なども含めた諸費用を控除した残渣、残りという性格を本来持っておるわけでございますが、統制小作料を現在農林省が定めておりますのもこのような考え方に立って求めておりまして、その場合の家族労働費につきましては都市均衡労賃をとっていることは御承知のとおりでございます。農村で現実に成立している地代水準が、いま申しましたような統制小作料より非常に高いといいますのは、農村では実際には家族労働が、私ども米価算定いたします場合に評価がえをいたします都市均衡労賃よりは低く評価されておるということによりまして、控除する部分が現実には低いということのために、家族労働を都市均衡労賃米価算定の場合では評価しているわけでありますから、それよりも低い現実家族労働費を前提として成り立っておる実納小作料というものは、米価算定の際にそれを用いるということは適当ではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  132. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それから、労働時間というのは、この生産費調査の中では約四五・五%、構成比としては非常に高いわけであります。政府の方では去年まで五人以上千人未満という製造工業労働者の賃金というのに置きかえた。ところが、これはその以前は昭和三十九年から昭和四十五年の間は五人以上青天井ということになっておったわけです。それを五人以上千人未満というふうにして一つの天井を決めてしまうということになりますと、これは農協の方で計算しておるわけでありますが、大分大きな一時間当たり賃金差というものが出てくる、こういうことになるわけです。昭和三十九年から四十五年まで青天井にしておったのを今度どうしてこれを千人未満にしなければならなかったのか、その理論的な根拠を明らかにしてもらいたい。  それからもう一つは付帯労働費ですね、企画管理費と言われますが、これも昭和四十二年にはちゃんと認めておったわけです。事実また農業経営をやる上においては企画管理というのは当然必要な時間であるわけであります。これがなぜ認められないのかということなんです。その理論的な根拠、これを明らかにしてもらいたいと思います。
  133. 澤邊守

    ○澤邊説明員 企画管理労働の問題の方からお答えいたしますけれども、よく言われます共同作業の打ち合わせとかあるいは研修費とか等、いわゆる企画管理労働に要する費用を労働時間の中に盛り込むべきである、こういう御主張がかねてからあるわけでございますけれども、この点につきましては生産費調査においてはそういうものは入れておらないわけでございます。と申しますのは、果たしてそれが生産原価かどうかということは非常に問題が存するところでございまして、確かに経営活動のために必要な労働であるということは申せますけれども、直接生産物を生産するために必要な生産活動とは必ずしも言いがたい面があるというような観点から、生産費調査の中で、諸学者の意見も聞いて現在用いておらないわけで、算入しておらないわけでございます。生産費所得補償方式というとり方をとっておりますので、私どもも原則としてはそのようなとり方をしておらない、算入をしておらないということでございます。  それからまた、現実企画管理労働はその内容なり態様は種々さまざまでございまして、実際にそれを把握するということは非常に困難である。確かに、かつて米が非常に不足をいたしました場合、政策的配慮から二・六時間を算入するということをやったことがございます。これはかなり問題があるけれども政策的配慮をもってあえて算入したということでございますが、今日のように米が非常に過剰で大幅な調整をやらなければならないというようなときに、そのようなことを復活するということは適当でないというふうに考えておるわけでございます。  なお、もう一点の例の都市均衡労賃評価がえいたします場合の製造業の規模の問題につきましては、これも私どもは現在五人以上九百九十九人以下というのをとっておるわけでございます。九百九十九人以下といいましても、これは一事業所単位でございますので、一企業単位ではないので、それ以上の大企業であっても、事業所規模として九百九十九人以下の場合には入っておるわけでございますので、相当高い水準をとって評価がえをしておるところでございます。この点につきましても、先ほど企画管理労働の後半で申し上げましたと同じように、確かに私どもも、非常に不足した当時には青天井という御要求のようなことでとったこともございますけれども、これはやはり当時の米の生産不足と、さらに一層刺激をして増産を行わなければならぬというような事態に即応した対策でございまして、現在のような過剰な状態のもとにおいてそのようなことをやることは適当でないというふうに考えておるわけでございます。
  134. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣、みんな聞かれたと思いますけれども米価のポイントになる部分というものを私はこの際聞いたわけなんであります。  それで、大臣は農民大臣とも言われるわけなんでありますから、農民に対しては人一倍の愛情を持っておられる大臣だということを聞いておるわけなんでありますが、こういうふうにして農林省の官僚が、たとえば反収の面において、作物統計においては五十一年においては五十九キロ、それから五十二年においては三十何キロというところの大きな差のあるものを、大きな方をとらえて小さい方を切り捨てて、そしてそれは整合性がございません、こう答える。それで今度、それでは生産費調査でやったところの地代の方はどうですかというと、これまたへ理屈を言って三分の一に切り下げてしまう。労賃の面においては、四十五年まで青天井でやっていたのを、これをやはり今度は千人で抑えてくる。こういうことによって、米価というのが逆算米価になるわけなんです。  農林大臣は農民のことをよくおわかりだということであるならば、最低、少なくとも再生産が確保されるところの価格ということになりますならば、物価も賃金もやはり依然として上がっているわけなんであります。そして、いろいろと政府の施策にも協力しているところの面もあるわけなんであります。したがって、こういう時期においては、単に生産調整が行われているからといって、それで抑えつけをやるというような考え方はやめてもらわなければ農民は助からないのじゃないか、こんなぐあいに考えるのですが、最後に大臣の御所見を賜りたいと思うのです。
  135. 中川一郎

    ○中川国務大臣 御指摘のとおり、過去採用したものを採用しなくなった、企画管理労働とか、青天井の問題は青天井でなくなったとか、いろいろ議論はあるのです。その中で、実納小作料を全部とらないのはおかしい。しかし、実納小作をしている人は実納は当然見なければなりませんが、小作料を一銭も払っておらないのに統制小作料を払うのはおかしい、こういうように、いろいろ議論はあるのです。議論はあるのですが、結論はこういうことだと思うのです。再生産が確保できるため、経済事情を勘案して決めていく、その経済事情をどこへ入れるかということになってきますと、やはり過剰傾向のときには、はっきり言ってやはりだんだん下がる方向に、足りないときにはふやす方向に、こういうことになるのだろうと思うのです。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕 その場合、御承知のように、昭和四十二、三年ごろまでは食糧増産をしなければならぬ、こういうときですから、いろいろな知恵を並べて、いろいろな着物を着せてきたわけなんです。言ってみるならば、寒い時代だったものですから、米をつくらなければならぬという厳しい時代ですから、そこでいろいろ下着から綿入れから帽子からえり巻きからつけていった。ところが、昭和四十五、六年になりまして非常に余ってきたというので、着せていた帽子を脱ぐとか、あるいはえり巻きをとるとか、オーバーをとるとか、綿入れをとるとかいうようなことをしてやってきた。そして、昭和四十八年ごろになりまして、物価狂乱もあり、生産調整もまあまあできてきた。そこでまた一回脱いだものを少しづつ足してきた。足してきたが、今日において足し切れないものが、確かに御指摘のように、青天井の問題もあれば企画労働の問題もある。しかし、いま五百万トンから余り、一兆円からの処理費がかかり、単年で百七十万トン余る時代に、さらにまた温めていかなければならない時代だろうか。むしろ、かつて厳しい四十六年ぐらいのときの条件に、一枚でも二枚でも脱いでいく時代ではないのだろうか、こういうことでございまして、確かに理屈を言えばいろいろ足す理由もあります。同じ価格でございますから、考え方によって農家の皆さんの要求も妥当であれば、政府のことも妥当である。しかし、足りないときにはふやしていく努力をしなければならぬし、余っているときにはやはりそういったものは脱いでいくということの結果、疑問が出てくるところでありますけれども、長期的に再生産が確保されるのはどの辺がいいのか。ここで過剰米を起こして消費者の反発を食って、いよいよ大変なことになって、食管制度がもたぬというようになっていっても大変だ。長期的に農家の方々が生産を維持できるというぎりぎりの線はどの辺かという政策判断も加えて米価決定していきたい、こう思うことでございまして、一つ一つ議論、御指摘がありますれば、それなりの理由はある、こう思う次第でございますが、政策的判断からどれをどう採用していくか、まさに議論のあるところでございます。
  136. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 終わります。
  137. 中尾栄一

    中尾委員長 武田一夫君。
  138. 武田一夫

    ○武田委員 五十三年度産米の政府買い入れ価格が間もなく決定する、その緊迫した状況の中にあるわけでございますが、若干の質問をいたして、政府の見解を伺いたいと思うわけでございます。  まず最初に、米価というのは、再三話がありましたように、食管法の趣旨にのっとりまして、再生産を確保できるというその基本を忠実に守り、適正な価格で決めるということ、それは農家にとっては生活を守るということにもつながると私は思うわけであります。しかしながら、最近のいろいろの報道等によりますと、食管の赤字の解消やあるいは米の過剰基調等の理由から、政府の一方的な考えによって米が据え置きであるというようなことも報道されるに及びまして、日本の津々浦浦の農家の皆さん方の心配は大変なものでございます。私の住む宮城県は世界一うまい米どころとして有名なところでございますが、特に米価に関しましては、命をかけて取り組んでいるという現実でございまして、これは農家の皆様方にとっては最大の関心事でもあり心配なことでもある、こういうような現実であります。  そこで、大臣に伺いますが、私は農業というのは、これはあらゆる産業の基幹産業であって、国の基ともなるべき重要な産業である、さらにまた、その産業である農業を支える多くの農家の皆さんというのは国の宝として大事にしなければならないという思想でございますが、長いキャリアのある、農業に造詣の深い大臣でございますから、そういうような気持ちは同じだと思いますし、また農業というものを滅ぼして国が栄えたためしもない。世界の歴史をみたときに、農業があって国力の充実ということも、これも事実であるということも御承知と思うわけでありますが、そういうような観点から考えましたときに、今後日本農業というものを本当に充実させ、振興さすという観点に立つならば、農家の期待するような米価というものを示すのが筋ではなかろうか、こういうふうに私は思うわけでありますけれども、大臣の所見をまず伺いたいわけでございます。
  139. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農村のわが国に占めるきわめて重要な地位、また農家生活を守らなければならないということ、あるいはまた食糧自給率というものは単なる経済ベースで考えるべきではないこと等々は御指摘のとおりでございまして、農村がおかしくなって日本はないと私も思っております。  しかるがゆえにこそ、牛肉について言うならば、外国からの安いものを食べたい、外国では四分の一だそうだ、五分の一だそうだ、十分の一だそうだ、なぜ国内の高いものを食べなければならぬのか、あるいはこういう米の余った時代になぜ食管が必要なんだ、外国では四分の一、五分の一で米はできるそうではないか、もっと配給を自由化して、食管をなくして、米を安く食べたい、こういう人もたくさんおるのでありますが、農村を考える立場からそういうことではいけないとして、食管を守り、日本の畜産を守り、そして生産を続けていき、消費者の協力とまた政府の助成によってその農村を守りたい。であればこそ、過剰傾向の時代でも、生産調整に対しては、国民の皆さんの理解を得て二千億円からの転換奨励金というものを差し上げて、もろもろの政策を行い、そして厳しい時代ではありますが、国民の必要な食糧生産をしてください、こうお願いしておるところでございまして、農村はどのようになっても構わない、そういう気持ちで対処しませんで、御指摘の趣旨で対処しておるつもりでございます。
  140. 武田一夫

    ○武田委員 私は、生産者の立場を忘れた米価というものは、これは問題だと思うわけでありまして、米価農家の生活というのは、これは分離して考えるわけにはまいりません。ですから、根本的には、値上げの根拠等というものは、生産者である皆さん方の実際の生活に基づいて身につけているものが出されているわけでありますし、それが結局要求となってあらわれているということを真剣に考えて、耳を傾け、その意見を聞きながら正しく判断して決めるというのは、これは必要欠くべからざるものだ、このように思うわけでございますが、そういうような観点からいたしますと農家の皆さんが自分たちのつくったものに自分たちで値段をつけたいという、そういう要求というのは強い。そういうことがいまの米価の中には十分に考えられていないということがまた不満でもあり、毎年の米価要求などという、本当に、私に言わせれば、大変な労力と金を使ってのそういう運動につながっているんじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、結局は、最終的にはそういう意見等が余り参考にされないで、米審等に至っては答申なども出せない、無答申の答申などというような、そういう結末で終わるということを考えますと、どうも農家の皆さん方の意見というのが十二分に反映しない米価が毎年のようにつくられている。ことしはそれもさらに強く打ち出されているというようなことに対してはやはり改めなければならない、こういうふうに思うわけであります。そして、現今の米価決定に当たるそういう姿勢といいますか、そういう行き方というものはこのままでいいのかというと、私はこれは改めていくべきだ、こういうふうに思うわけでありますが、大臣として、この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  141. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は、農家の皆さんの米価が間違っておるとは決して思っておりません。もし、これが非常に米が足りない場合ならば一俵百万円を出す人もあるかもしれません。しかし、これが余ってきた場合には一俵三千円でもいやだと言うかもしれません。でありますから、一俵二万円を切った値段、一万九千何がしの値段が無理なものだとは思いませんけれども価格というものは時の事情、余っているか余っていないかということが大きく左右するものである。本来ならばこれは消費者が決めるものでもありますけれども、食管制度でございますから、政府が介入して消費者価格生産価格も決めるのでありますが、何といっても、過剰の時代には過剰に対応する価格というものが出てくるのであって、しかも、それが農家経済に影響を与えない、米はもういやになった、やめたいというような値段であってはならない、どちらかというと、いまなお自力開田が政府の助成なしに行われるほど意欲的な価格である。あるいは北海道あたりでは四万から七万の奨励金を差し上げても、それでもなおかつ米の方がいいという米価は、これは畑作その他に比べて余りにも刺激的ないい価格ではないかと批判のあるぐらい、農家農家によっては事情が違いますけれども、全体としてそれほど悪い米価だとは私は思っておりません。どうかひとつ需給というものが米価には反映するものだということで御理解をいただきたいと存じます。
  142. 武田一夫

    ○武田委員 大蔵省にちょっとお尋ねしますが、米価決定を前にしまして、大蔵省でいろんな資料を出したり、農林省も新聞でいろいろなことを発表しているわけでありますが、それを見ますと、かなり農家の生活がいいんだという報道をしている。あるいはまた、生産資材等は余り上がっていないから横ばいである、余り大したことない、生活もまあ安心であるというようなことを強烈に訴えるようなものがやたらに目につくわけであります。大臣などもそれを非常に参考にしているようでございます。  そこで、こういうようなデータ、これは大蔵省で出したわけですが、最近六月ごろに出されたということですが、何のためにいまごろになって、何か意図的に出されたような気がしてならないと言って、農家の人たちが非常にかんかんですが、これはどういう理由でこういうものがいまごろになって出されたのか、しかも、どういうところに配っているのか、その点、簡単に説明をしていただきたい、こう思うのです。
  143. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答えいたします。  いま御指摘のパンフレットでございますけれども、これは省内の実務担当者の執務に供するということが第一点でございます。それから、毎年関係者の方々、特に記者クラブの方々からいろいろと御質問がございますので、その御質問の内容の中で特に言われているようなものにつきまして、両米価に関する事実関係につきまして、これを整理するということで配付いたしておるものでございます。  なお、私ども非常に忙しいものですから、一度に、新聞記者の方が来られたときに一々御説明するということも困りますので、これは過日、六月二十七日に記者クラブでまとめて私が、主計官が記者クラブの方々に御説明を申し上げた、こういうものでございます。
  144. 武田一夫

    ○武田委員 わざわざ、米価で神経のとんがらがっているときにそういうことをやるというのは、これはどう考えても、要するに米価抑制のための材料にしようという意図があらわれているというのは、これはみんな共通して認めているわけですから、そういうようなことを意図的にやること自体おかしなことだと私は思うのです。その資料によりますと、五十一年度における農家所得は一世帯当たり三百八十万円、世帯員一人当たり八十五万円で勤労者世帯の所得をいずれも相当上回ると出ているのですが、これはどういうところから相当上回るという感覚が出てきたのか。農業というものの実態を知っていての話であるのか。相当上回るというなら、向こうに大ぜいの農家の皆さん方が来ているから、上回りますかどうかと聞いて、呼びかけてみればわかると思うのですが、この点、どうしてこういう報告がなされたのか、私はまずひとつ伺いたいわけであります。
  145. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 この中の資料でございますけれども農家世帯の五十一年度の一世帯当たり所得は三百八十三万八千円でございまして、そのときの勤労者世帯は二百八十六万一千円でございます。百万近くなっておりますが、それをただ事実関係を御説明申し上げたということでございます。
  146. 武田一夫

    ○武田委員 農業というものの性格をよく踏まえた上でデータというものはよく説明をしてあげないと、これだけのデータでは、新聞社の皆さん方も非常に迷惑をした書き方をしているんじゃないか。農業というのは家族で就労する性格のものである、そういうことをよく根本に置いた上でのデータの説明を果たしてしたものかどうか。それを考えますと、就業者一人当たりで比較しなければならない。たとえば、就業者一人当たり所得農家と勤労世帯を比較すれば、明らかに五十一年度でさえも勤労者の七八・六%だという報告が出ているわけであります。五十年度に辛うじて八割台にいったけれども、それが落ち込んでいるという事実、しかも、農業一筋に、いわゆる専業農家と言われる方々におきましては、これはもうかなり低い生活の中で苦労している。年じゅう家族ぐるみで働いている。退職金もないのです。いまボーナスシーズンだといったって、ボーナスがあるはずもない。さらに、いろいろと厚生設備等々も非常に貧弱な中で一生懸命働いている。こういうときに相当上回っているなんということを言われますと、農家の皆さんは、あの高いコンクリートの中から下界をながめているようなデータを出してわれわれを挑発しているのか、こういう思いを心の中にうんと大きく持っているわけです。そういうことを言うなら、せめて大蔵省あたりでボーナスをはずむくらいの予算措置をしておいてもらいたいと思う。この点はどうですか。これはそういう事情を知ってのデータですか。
  147. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答え申し上げます。  各所得の比較ということでございまして、私どもはそのやっておられることの労働の価値を評価しているわけではございません。データに基づきましてその方々の所得というものを比べるわけでございます。そのときに、農家所得というものを家計単位で見る場合と、あるいは一人当たりの家族構成から見る場合と、それからいま御指摘のように、就業者当たりで見る場合がございます。通常、次に申し上げます理由から私どもは一人当たりなり一世帯当たりというものをとっておりますけれども農家の場合に、これは農家経済調査でございますけれども、どういうものが就業者かと申しますと、六十日以上働いた方は就業者とみなしまして、それで割ります。そういたしますと、それと実際に勤労者の場合と比較いたします場合に、勤労者の場合においてはある程度年間雇用的なものがあるということで、そこらのところにはいろいろ御意見があるかと思いますけれども、私どもといたしましては、数字を示します場合に、一人当たりなり一世帯当たりということが通常言われておるものですから、それを出したまででございまして、特に悪意を持ってやっておるというものではございません。
  148. 武田一夫

    ○武田委員 時間がないから、それくらいにしておきます。  次に、農林省で発表した五十二年産米云々という資料について、中を見てみますと、たとえば農業薬剤費を十アール当たり四千八百五十七円出しています。それから、農機具の償却費が二万二千六百九十七円というふうに出している。そして、トータル的にまあ〇・一%ぐらいだから、これはいわゆる横ばいの状態である、生産費はそう高く上がっていないなんというようなことを平気で言っているのですが、これはどういうところからこういうものが出てきたのか、ひとつ簡単に説明してください。
  149. 柳井昭司

    ○柳井説明員 その五十二年産米の生産費でございますが、これは五十二年の一月から十二月の間におきまして、大体標本農家としては、政府に売り渡している農家を代表する三千戸をとりまして算出したものでございます。その十アール当たり生産所得は、五・七%でございますが、五十二年の反収は五百十二キログラムということで、前年が災害年であった関係もございまして五・三%上がった。こういうことからいたしまして、六十キログラムの平均生産費にいたしますと横ばいになっておるということでございます。  このそれぞれの費目につきましては、農機具の償却あるいは修繕費等が前年に比しまして高くなっておるわけでございますが、高性能の機械の導入ということによりまして、それの償却費がふえておる。それから、農業薬剤につきましては、単価の上昇等によるものというふうに考えてございます。そのほか賃料、料金等が、作業委託の増加なりあるいは賃料、料金のアップというような形で伸びておるわけでございます。一方労働時間につきましては、いま申し上げましたような高性能機械の導入なり作業委託の増加ということからいたしまして七十三時間ということで、前年に比較しまして五・九時間減少するということで、これが労賃単価は九・一%上昇したわけでございますが、労働費としましては〇・九%のアップになったということが、六十キログラム当たりにいたしますと〇・一%の上昇ということになったという特色ではないかと考えております。
  150. 武田一夫

    ○武田委員 農薬の場合などは、こんな四千八百五十七円なんぞでやれるものならやってみろと言っているのですよ。どんなことを考えても、いい米をつくればつくるほどこれはかかるわけなんですからね。詳しくは聞きませんけれども、また次の機会にやりますが、どんなに見積もっても五千円はかかる。これは後でそういう試算的なものを提示しながら質問しますが、もうこんな四千何ぼなんというのではとても米は、七割か八割しかとれない、これが現実のデータだというのが農家の実際やっている方々の意見です。そのとおりだと私も思います。ここにありますけれども、これは時間がないからこの次にします。  次に、生産調整による所得の減収というのは明らかです。私たちの宮城県の場合、約千軒の農家を抽出して聞きましたら、多いところで三割の減収、最低でも一割は覚悟しております。聞くところによりますと、約一千億の収入の減収があるではなかろうか、こういうわけでありますけれども、何度も言われているように、これは涙ぐましい協力です。宮城県などは自主的に協力したとはいうものの、相互扶助といいますか、お互いが、しない人はした人に金を出してやるというような形で、ひどいところではもう十アール当たり十万円以上出して減反に協力しておる。三万円ぐらいはざらざらあるというような中で、一〇五、六%宮城県はいったはずです。こういうことを考えますと、この分の所得の減収というのはどこでわれわれは見つけたらいいのだ、働きにいくにしても、いま不景気の中で、もう使ってくれるところもない。その証拠に、出かせぎなどというのは三 〇%から四〇%減っているわけです。それに物価の上昇である。こういうようなことを考えましたら、一生懸命、政策として、国のそういう冷たい、厳しいやり方に最終的には報いたわけでありますから、その報いに対してどれだけ政府が本気になって考えてくれるんだということが、いまその米価決定する寸前に至って一層強まっているわけであります。これを正当に報酬として考えてあげるということをなさらなければ、われわれは今後のいろいろな活動の中で恐怖の報酬を上げなければならないとまで言っているのでございますが、この点について、こうした所得の減収をいかにして補えというのか、農林大臣にお伺いしたい。
  151. 中川一郎

    ○中川国務大臣 実は反当四万から七万五千円程度の転作奨励金と、そこから上がります収入と合計すれば、推計でございますが、米をつくった場合に比べて、全国的にはそう損失がないという全体的な見通しのもとに生産奨励金をはじいてございます。しかし、地域によりましては、農家によりましては減収になる面もあろうかと存じます。また、場所によっては転作した方がよかったかなというところもあろうかと存じます。  いずれにいたしましても、農家の皆さんが大変であることは事実だとは存じます。また、御協力いただいたことにも感謝いたしておりますが、全般的に、生産過剰というものがどんなに一般的には大変なものであるか。たとえば、ミカンの耕作農家ミカン過剰の際に、生産調整をやった分だけじゃなくて、全体が四割、五割の収入、あるいは生産過剰による合板業界や繊維業界が倒産、失業、こういう苦しい目に遭っているのに比較するならば、これだけの過剰傾向にありながら、まあまあの補てんを政府も一生懸命やっている、この点も御理解をいただきたいところでございます。これはわが国だけじゃなくて、諸外国においても過剰傾向でございますが、諸外国における農政に対する扱い方に比べましても、われわれとしては遜色ない、できる範囲内の協力をしたつもりでありまして、厳しいことは受けとめますけれども政府がこれまた一生懸命やっているということも御理解をいただきたいところでございます。
  152. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来たようですが、最後にもう一つ。  農家労働力の評価という点で、やはり農業の従事者が都会勤労者と均衡した生活を営む、これがわが国の農業政策基本であるという点から考えると、余りにこれは米の値段の中に重きをなしてないようなとり方をしているんじゃないかと私は思うのです。一つのデータから申し上げますと、三十五年と五十一年という二つの年を比較してみますと、米つくり労働費というのが、三十五年には十アール当たり九千九百六十三円、五十一年度には四万九千五百十一円です。ところが、製造業賃金を見てみますと、五人以上平均ですが、三十五年が八百四十七円、そして五十一年が七千九百六十七円、これは一日当たりでございます。この伸びぐあいを見てみますと、米つくりの場合が四・九七倍、それに比べまして製造業賃金の方は実に九・四一倍というように、倍近い賃金の伸びというのがこのデータから明らかでございますが、こういうような状態の中で労働力というものを確保するのに非常に苦労している農家の皆さん方にとっては、若い後継者の皆さん方にとっては、これはもう耐えがたい事実でございます。われわれの働きが悪いのか、低く見ているのか、農業というのは一番低い地位に置かれているのかというようなことを、一つのデータの中で本当に残念な思いで見ているわけでありますが、こうした労働力の評価というのを正当に、本当に働きがいのあるような、そういう算定の中で米価の中に組み入れることが、農業というもの、米づくりというものを、そして今後の日本農業というものを考える、また支える力を集める大きなかぎになると思うのですが、この点につきまして大臣から、労働力を正しく、正当に評価していく、そういうような見解等を含めまして決意を伺って、私は終わりにしたいと思うのです。
  153. 中川一郎

    ○中川国務大臣 私は、農村が明るい状態にある、いい状態にあるとは申しませんが、ただいまの数字は三十五年と五十一年の比較において十アール当たりの計算だそうでございますが、御承知のように、農業においては生産性向上ということによってそこに差が出てきておるんであって、その数字を単純に比較して農家が苦しくなったと直結した見方は、数字の上からは当たらないのではないか、こう思います。しかし、農家の皆さん方が苦労しておられるということはよく承知いたしておりますから、最善を尽くしたいと存じます。
  154. 武田一夫

    ○武田委員 それでは終わります。
  155. 中尾栄一

    中尾委員長 神田厚君。
  156. 神田厚

    ○神田委員 私は、午前中の参考人に対する質疑に続きまして、大臣に、まず現在の一番大事な問題であります米価の問題につきまして、御質問を申し上げたいと思うのであります。  まず最初に、七月三日の農業団体の集会におきまして、大平幹事長は次のようなことを言っております。農業がわが国にはなくてはならない産業であり、この産業は何としても保護をする、米価農業政策基礎であり、米価決定農家経済全体の安定であり、大会の標語にもあるとおり、あすの希望につなげる米価でなければならない、こういうように言っているわけでありまして、この点につきまして、私どもはこの言葉は非常に大事な言葉だと思うのであります。あすの希望につながる米価でなければならない。あすの希望というのは一体どういうことなのか。農家の人たちがあすの希望につながる米価というのは一体どういう米価を意味しているというふうにお思いですか。この点につきましては、政府・自民党の中でこういうことについての話が、きちんとした意思の統一みたいなものはあるのかどうか、その辺は大臣はどういうふうにお考えでありますか。あすの希望につなげる米価ということを考えたことについてはどういうふうにお思いになりますか。
  157. 中川一郎

    ○中川国務大臣 わが党幹事長が、米価大会において御指摘の御発言のあったことは聞いております。私も、米価に取り組むに当たりましては、あすから米はもういやになった、ほかの作物にでも変わろうか、商売変わろうか、こういう希望のない米価にはしたくない。どこに決まりますかは別としても、本当に米はいいなという希望のある米価にしたい、こういうことでございまして、そう現実と離れたことを言っているんではない。どこに決まりましても、私の責任において、やはりほかの作物つくるよりは米の方がいいな、こういう希望の持てる米価をつくりたい、こう思っておる次第でございます。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  158. 神田厚

    ○神田委員 ほかの作物に比べて米をつくった方があすの希望につながる米価だというのは、それはちょっと大臣御認識が違うのでありまして、私は、いままで米をつくってきたという日本のいわゆる農家の考え方からすれば、やはり米価によって結局支えられてきている、そういう中心的なものが何となくことしはどうも上がりそうもないというようなことで、何とかあしたにつなげるような米価を、希望につながるような米価をつくっていこう、こういうことで農業団体は熱心にやっているわけですね。ですから、これは大臣非常に大事なことなんです。  私どもはよくここで議論しますけれども政府の皆さんは現在の価格でも再生産は十二分にできるんだ、そういうような御認識をお持ちのようでありますね。ところが、私どもはやはりそれは違うのではないかという考え方を持っておりますから、あしたの希望につながる米価というものについては、大臣のそういうほかの作物ということではなくて、ひとつもう少しきちんとした考え方をお聞かせいただければと思います。
  159. 中川一郎

    ○中川国務大臣 その辺、議論のあるところでございますが、実は御承知のように、政府は開田は抑制をする、土地改良その他におきましても助成はしない、こういう中にありましても、自力で大変な費用をかけて開田が行われる面積が非常に多いということは、一つは希望があり過ぎるのではないか。あるからこそ助成なしでつくっているのではないかという見方を正直いたしておるわけでございます。もう一つは、北海道あたりでも反四万から七万、畑作で言うならば収益の全部を差し上げますからビートをつくってください、大豆をつくってくださいと言ってもまだ米の方がいいというのであるならば、これは相当希望のあるいいものではないか、こう判断しておるのでございまして、ほかの作物に比較して、総合食糧自給率を高めていくという場合には、この辺のバランスをとっていかなければならぬ。しかし、いや米はもういやになったからほかの方がいいというので米をなにするような価格であってはならない、こういう気持ちで対処いたしたいと思いますし、現実をそうとらえておる次第でございます。
  160. 神田厚

    ○神田委員 なかなか議論がかみ合いませんけれども、それはやはり大臣も、この農業状況を、ずっとこれから先も続いていきますから、そういう中で本当にいまおっしゃったようにいまの米価があしたの希望につなげる米価であるのかどうかということは、歴史がだんだん証明をしてくるであろうと思います。私どもは決してそういうふうには考えてないわけでありますが。  ところで、新聞等の報道によりますと、政府はいわゆる米価の据え置き、この諮問をするというような報道がされているようであります。この点につきましては大臣どうですか。現在そういうようなお考え方でおられますかどうですか。
  161. 中川一郎

    ○中川国務大臣 正直言って、まだ政府部内で腹を固めておりません。基本は、再生産が確保され、所得補償方式に基づいて、そして今日の需給の動向をどう反映して決定するかということでございますが、いろいろ研究はいたしますが、なかなか厳しい情勢であるということだけは言えると存じます。
  162. 神田厚

    ○神田委員 仮に米価が据え置きの諮問というような形になりますと、(「なったらしいよ」と呼ぶ者あり)そうですか。そういうような形でありますならば、私はそれこそ日本の多くの米作農民にとりまして、あるいは日本のこれからの農業にとりまして、大変な問題になってくるだろうというように考えているわけであります。  一つは、過剰が原因で、過剰であるから米価を上げないんだ、もしこういうような考え方を本当にずっと続けていくんであるならば、いま農林省のやっております需給計画が非常に甘いといういろんな批判が出ております。そして、この需給が甘いという中でさらに過剰であるために米を上げないということをやっていきますと、たとえば来年度の米価はどうなるのか、再来年度の米価はどうなるのか、やはりことしと同じように上げない、米価を上げる余地が少ない、こういうふうな話になってしまうのではないか、こういうふうに私どもは心配するのでありますが、その点はいかがですか、ことしの米価も含めてでありますが。
  163. 中川一郎

    ○中川国務大臣 昭和四十五、六年ごろ七百万トン余りまして、当時は据え置きが三、四年近く続いたわけでございます。そして、農家の皆さんも、血のにじむ努力をしながら生産調整価格についても汗を流していただいた。こういう努力の結果、曲がりなりにも七百万トンを処理し、そして需給のバランスは完全にはとれませんが、かなりいいところまで来たということでございますので、今後政府といたしましては生産奨励金を差し上げる等もろもろの対策は講じますけれども価格についてもやはり四十四、五年ごろ流した努力は政府とともにしていただかなければならないことではないか。ことし厳しくて来年はよくなると思われても困る。やはり過剰傾向のない、長期的な厳しさというものの中に農家の皆さんも対処していただきたい、こう思っておるわけでございます。
  164. 神田厚

    ○神田委員 これは非常に大事な答弁ですね。そうしますと、少なくとも来年、再来年あるいはもう少し先、米の過剰というものが解決しない限りは、米価というのは据え置きあるいはほとんどその値上げについてはこれが希望を持てないというふうに認識しますが、そういうふうにとってよろしゅうございますか。
  165. 中川一郎

    ○中川国務大臣 来年は来年の事情、再来年は再来年の事情によって決定はいたしますが、百七十万トンの生産調整を十年の計画の一環としてとりあえず三年はしなければならぬ、こういうところからいけば、そしてしかも、消費の拡大を図っていかなければならぬという面からいって、価格で操作をするということは、むしろ消費の拡大を抑制して、生産農家にさらにより以上の生産抑制というようなことになっても困りますし、また消費者米価をいじらないということになってまいりますと、食管会計でまず三百万トンから処分いたしますと、約一兆円近く金がかかる。五年で処理いたしましても、単年二千億はかかる。そうなってまいりますと、農林予算というものをしっかりしたものにして、土地改良とか構造改善とか、これから足腰の強い農政をやっていくに当たっては、財政上からいっても非常に厳しいということだけは受けとめていただけませんと、そう簡単ないま農政をめぐる米の状況ではないということだけは明らかに申し上げておかなければなりません。
  166. 神田厚

    ○神田委員 ことしの米価が据え置き諮問をされたというふうに先ほどちょっと聞きましたけれども、もしそういうことであり、さらに来年、再来年が米価が上がらないような状況であれば、これは非常に大きな問題であります。私は、このことはこれから先大変な問題になってくるというふうに考えます。一つには、やはり大臣の考えておりますように、過剰というものを問題にしているから米価が上げられないとかなんとかいう話になってしまうのであります。適正な米価は何かという算定の方式からきちんと割り出していけば、それはそういう来年、再来年にわたって米価が上がらないだろうというようなことは言えないのではないかと思うのであります。この辺のところは非常に大事でありますから、また時間をとって御質問を申し上げたいと思うのでありますが、きょうの大臣の答弁を聞いておりますと、ますます日本農業の将来とそれから米作農民に対する非常に大変な御答弁でありまして、このことにつきましてはこれから先なおゆっくり時間をかけて質問させていただきたい、こういうふうに考えております。  いずれにしろ、私たちはやはり非常に問題があると思うのであります。ですから、価格の問題あるいは生産調整、この二つ米価をやっていこうということになりますと、最終的には食管の問題そのものをどういうふうに考えるかという問題になってくるのですね。ですから、私はこのことにつきましても、たとえば五年間で食管の赤字をなくすというふうな方針をいまでも持ち続けるのかどうか、このことがやはりことしの消費者米価の問題、来年の消費者米価の問題、再来年の問題、こういうもの等を含めまして非常に大事になってくるのですが、この食管の逆ざや解消についての考え方、五年間というような考え方については、いまのところは私はこれは考え方を変えなければならないというふうに考えますが、いかがですか。
  167. 中川一郎

    ○中川国務大臣 食管における赤字は全体では一兆円ございますが、逆ざやによる赤字はたしか六千数百億だと存じます。そのうち売買逆ざやに相当します一六%、そして三千億近くだったと思いますが、これは解消したい。そして、これを農政費に使いたいという基本方針を二年ほど前に立てましてやってまいったわけでございます。  幸いにいたしまして、去年、おととしは消費者の皆さんの御理解もいただいてかなり逆ざやを解消することができた。一昨年はたしか逆ざやは不拡大だったと思います。昨年が逆ざやを縮小する。そこで、ことしの農林予算も土地改良初め相当いい予算で農業団体からも喜ばれたのでございます。ところが、ことしからの稲作水田再編両対策を行うに当たって、非常な過剰米が単年にあるというだけじゃなくて、潜在的に非常に強い、こういうときに逆ざや解消をまともに計画的にやっていけるだろうか。そうなってまいりますと、恐らく消費者の方から、こういった過剰時代、そして米を食べてくれという時代に何でという議論も必ず強いものとなってくるであろう。しかし、何とかこれは消費者の御理解もいただきながら、年数は長くなってもやっていきたいとは思っておりますが、なかなか厳しい。そして、農林予算も確保しなければならぬ、足腰の強い農林行政もやっていかなければいかぬと思いますと、農林大臣としては本当に消費者を考え、財政を考え、農民の皆さんを考え、日本全国から集まってああして火の叫びをしている皆さんのことも考えると、本当に頭の痛いところでございまして、どうかこの上ともいい知恵をお与えくださいますよう、私からもお願い申し上げる次第でございます。
  168. 神田厚

    ○神田委員 時間が来ましたので、これで終わりますけれども、これから先また当局に対する質問を残して、後でまたやりたいと思います。
  169. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 山原健二郎君。
  170. 山原健二郎

    ○山原委員 米価大会が開かれたのは、遠い過去のことではなくて一昨日のことですね。そこで、自民党という常に責任政党を名のっておる政党の幹事長、党を代表してのあいさつです。その中で、希望の持てる米価、こういう話ですね。新聞によりますと、大平幹事長はいつになく歯切れのよいあいさつをした、こう書いている新聞もあるわけです。この発言は、少なくともいま中川大臣がおっしゃっておるような、あすに迫った米審に対する諮問において据え置きなどというものを予想できるようなあいさつではなかったと思うのです。私は、農民の大会では歯切れのよいことを言って、しかし、一日しかたっていない、あすは諮問しなければならぬというときに据え置きなどというものが出てくるような党を代表してのあいさつ、そういうことを考えますと、まさか明日の諮問は据え置きなどというものではないと思いますが、この点はいかがですか。
  171. 中川一郎

    ○中川国務大臣 据え置きにするのか、引き下がるのか、引き上がるのか、どこになるかはまだ腹は決めておりません。しかし、どこにどうなりますかは別といたしまして、あすから希望がなくなって米作はやめた、全国でそういうことになり、食管で言う必要な米の再生産ができないというような事態のない米価決定いたしたいと存じます。
  172. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、まさに農協決定しました、一昨日の大会にも出ました一万九千二百七十六円という一三・三%という数字ですね。農民団体としてはまさに背水の陣という言葉を使い、県段階の大会においてはこの米価決定ぐあいによっては農協幹部の責任を追及するというような事態まで起こるような、いわば悲壮なぎりぎりの線を出しておるこの要求米価というものは、農林大臣の考えでありますと、正しいものではないとお考えになるわけですか。据え置いてもいいんだというようなお考えであれば、これだけもみにもんで、しかも昨年度よりも低い要求まで出してきておるこの農民団体の要求に対しては一体どう考えているのか。しかも、大平幹事長はそれに対して一定の希望を与えるような演説をしているわけです。各県段階でも各政党があれだけ賛成のような、われわれを激励するようなあいさつをしているんだったら、何でわれわれの要求が通らぬのだということが、どこの集会に行ってもどこの農民に聞いても聞こえてくる言葉です。しかも、日本最大の規模で行われた一昨日の大会において党の責任者がこういう発言をしているわけです。とても据え置きなどというものではないわけでございます。そういう点は、一体党内においてはどういう検討をされてあいさつをされておるのか、私はっきりとお伺いしたい。
  173. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農協の皆さんが戦後とったことのない八〇%バルクライン、昭和四十二年ごろが一番食糧を増産しなければいかぬということで毎年着物を着せてきた。最高の着物を着せたときでも八〇%バルクラインというのはなかったのです。今度はそのものが要求から落ちたということだけであって、それ以外にもずいぶんまだ着物を着せなさい、こういう要求でございますけれども、私は決してこれが悪い要求であったとは思いませんし、農協の真摯な態度にも敬意は表します。しかし、だからといって、今日の過剰、需給の事情からいって、さらに生産を刺激するような米価は、いかに何と言われましょうとも、食管を守り、農村を長期的に安定させるためにはどの辺が一番いいかなということで判断をしたいと存じます。
  174. 山原健二郎

    ○山原委員 実際、一昨日の大会、私、非常にこだわるわけですけれども、農民の皆さんは非常に不思議に思っているわけです。あれだけのことを各党が言い、しかも与党の代表があれだけのことを言ってなおかつ据え置きとは何事だ。これは偽らざる気持ちですよ。じゃ自由民主党の代表である、しかも党の幹事長が農民の前で偽りの虚言を弄したのか、粉飾の言葉で農民をだまそうとしたのかということすら出てくるわけです。この点はいかがですか。
  175. 中川一郎

    ○中川国務大臣 幹事長がだましたと受け取られても困る、私もそう言っているんですから。生産意欲の落ちるような暗い米価ではなく、あすに希望を持って生産ができる米価決定したい。幹事長がうそを言っているのじゃありません。私もそう言っているのでございますから、決してきのうからきょうになって変わったわけではない、そういう姿勢米価と取り組みたい、はっきり申し上げておるわけでございます。
  176. 山原健二郎

    ○山原委員 これはまさに農民の立場に立ち、また豊葦原の瑞穂の国と言われた日本農業立場に立った御答弁だとは私は思えないのです。この前、四十四年と四十五年にいわゆる米価据え置きをやったことで、都市労働者との労賃の問題では、その格差がいまだに続いて解消できないということを私はここで指摘したわけであります。仮に一%の値上げをいたしましても、これは大体一俵について百七十円程度ですね。一ヘクタール百俵として一万七千円、こういう状態ですから、一カ月にすると、一%の値上げをいたしましても千円そこそこ、一日にしたら三十円程度。それを据え置くというのですから、実際現在の物価の上昇率、おさまりつつあるとはいえ上がっていることは事実です。しかも、労働賃金だって、労働者の要求の中で一定の改善がなされているという事態で、農民に対しては据え置きとは何事か。据え置きなどというのはこの間の大会のあいさつでは出てくるはずがないわけです。あのときに、私も皆さんの要求はわかるけれども、ことしの米価についてはこれだけの困難なことがあって、なかなか、要望にはこたえることができないのですというくらいの誠実なあいさつがあればまだしも、何となく要求を聞き届けるようなあいさつをしておいて、たった一日たった明日まさに諮問を出さなければならぬときに、いまだに据え置きかどうかわからぬなどということは、実質は据え置きと新聞も書いているわけですね。自由民主党代表のあいさつはそんなあいさつではなかった、このことです。これについて責任ある自由民主党の態度を決定すべきではないかと思います。  そういう意味で改めてお伺いをしますが、この一連の大会、また一昨日の大会のあいさつから見て、まさか据え置きなどというものではないと思いますが、なおかつ農林大臣はこれについて答弁をあいまいにされるのかどうか、伺っておきたいのです。
  177. 中川一郎

    ○中川国務大臣 農村の皆さんからこういう発言があるのです。国鉄が、ああいう厳しい状態でも給料を上げたじゃないですか。国鉄に上げられて、どうして私たちに上げられないのですかという意見があるのです。国鉄はああいうことをしているから、もう解体して民営にしなさいというのが国民の中からほうはいとして出てきているのです。そういうことをすることが国鉄にとって親切心なのか。厳しいときには厳しくして、食管制度も堅持して、長期的に安心して生産ができるようにすることが希望をつなげることなのか、単に米価で言うことを聞いてやった方がいいのか、希望の持ち方の問題であって、値段を上げた下げた、どうだこうだだけで評価されるものではない。食管を堅持して、しかも消費者からも愛される農村、米作、米価、すべて長期的な意味でのあすの希望というものがあるのであって、据え置いたからどうの、まだ私は決めておりませんけれども、あすに希望がつなげて、また米が生産できて、食管制度が堅持できて、長期的な意味においてがっかりしない米価を決めていきたい、こういうことでございます。
  178. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が過ぎましたので一言。  過剰米の問題にしましてもそうですか、まさにすべて農民に責任を負わすような発言が出ていますけれども、何で過剰米が起こったのかというような問題も含め、しかも農民の諸君の要求を聞くことが農業の前進のために必ずしも役に立つものではないという言い方でございますけれども、一方は一三・三%の値上げを要求しておられる。しかも、背水の陣だと言っておられる。ところが、一方は据え置きだということがちらほらと出ているわけですよ。この差というのは全く大変な差ですね。要求を聞くというようなことでもない、全く聞かないということなんです。そうじゃないですか。最後にそれだけお伺いをして、質問を終わります。
  179. 中川一郎

    ○中川国務大臣 過去の米価のあり方、食管の過去のあり方、これからどうあるべきか、すべてを考えて食管制度が守られて、そして再生産の意欲が持たれる、希望を失わない米価決定したいと存じます。その決定米価がいかほどであるかはまだ判断しかねておる、まだ半煮えである、こういうことでございます。
  180. 山原健二郎

    ○山原委員 これで質問を終わります。
  181. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 柴田健治君。
  182. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 統計情報部長にお尋ねしたいのですが、五十二年産米の生産費の統計数字の中で、生産費の中で農機具だけ取り上げてひとつお尋ねしたいのですが、明日米価の諮問が出る、諮問は据え置き、こういうことはもう大体確定しておるようですが、その据え置き論の出てきた根拠というものは、統計情報部の資料が大きく影響している。統計学から言うと、何人にも恐れずに、公正に、真実に数字を出さなければならぬ、われわれはまたそういう考え方で信頼してきたのですが、どうもこの生産費の農機具の点を見ると、十アール当たりが二万四千八百三十四円、償却が二万二千六百九十七円だ。この償却の二万二千六百九十七円は、結局何と何と農機具の種類を、加わっておると思いますから、種類別にひとつ出してもらう。そして、農機具の大型か小型か、この小売価格は幾らか、耐用年数はこの品目には何年見ているか、具体的に説明してください。
  183. 柳井昭司

    ○柳井説明員 五十二年産生産費調査によりますれば、農機具は、先生御指摘のように、二万四千八百三十円ということになっておるわけでございますが、この種類、償却及び修理費及び購入額でございますが、これを農機具別に申し上げますと、主要な十一品目について申し上げたいと思います。  コンバインが四千七百二十七円、それから耕運機三千五百五十八円、乗用型トラクター二千九百十七円、農用四輪自動車二千三百六十三円、バインダー二千三百六十円、動力田植え機二千三百二十円、それから動力乾燥機千二百六十四円、動力脱穀機千百三十円、動力もみすり機五百三十円、それから動力散粉機四百五円、電熱育苗機二百四十五円で、この十一品目で二万一千八百十九円、約八八%をカバーしてございます。  これはいま申し上げました、それぞれ保有しているものにつきまして一定の方式に基づいて償却をしたものと、それから修繕費及び三万円未満の小農具の購入費を足したものが二万四千八百三十円でございます。  それから、先生御指摘の大型か小型かという点につきましては、この調査におきましては現実の原票と申しますか、調査簿にはございますけれども、いろいろ種類もございますし、いま現在のところ把握してございません。  それから、単価につきましては、生産費調査では、いま申し上げましたようなことで原票にしか記入されておりませんので、これを農村物価統計の五十二年度の価格で申し上げますと、全国平均でございますが、動力耕運機が、七馬力から十馬力のものでございますが五十三万三千五百円、それから動力田植え機が、二条植えでございますが二十三万六千百円、バインダーが、二条刈りでございますが三十七万四千四百円、コンバインが、自脱型でございますが百十六万二千円、通風乾燥機は、立型の循環式でございますが五十三万二千五百円、それから乗用型トラクターは、三十五馬力内外でございますが百九十万二千円、育苗機は、八百ワットの百二十箱内外でございますが八万三千百円、それから動力脱穀機は、自動送り込み式の二〇型でございますが十五万九千三百円、動力もみすり機は、ロール型の全自動三〇型でございますが二十三万三千六百円、四輪トラックが、千六百CCの一トン積みでございますが七十九万五千二百円、それから動力散粉機は、背負い型、ミスト兼用でございますが五万九千八百円というふうな形になっております。  それから、耐用年数につきましては、動力耕運機、動力田植え機、バインダー、コンバイン、それから育苗機、動力散粉機、これが法定耐用年数の五年をとっております。それから、通風乾燥機、乗用型トラクター、動力脱穀機、動力もみすり機、これが八年、それから四輪トラックが三年、こういう法定耐用年数をとっておるわけでございます。
  184. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 いま十一品目の小型か大型かということ、また性能、価格、耐用年数の説明をいただいたのですが、これだけの品目の金額を入れて、たとえば乗用コンバインの分は百五、六十万する。それが結局、たとえば二町歩、二ヘクタールの農家で計算をして——一町歩でもいいですが、たとえば一町歩の水稲栽培の農家がそれだけの機械を持った場合に、耐用年数あわせて果たして二万四千という数字が出てくるのか。どこでこんな魔術を使われたのですか、二万四千円。いまの説明で金額を計算して、たとえば一町歩であろうと二町歩であろうと、耐用年数を出して、そして六十キロ当たりの、十アール当たりの償却費、どう考えたって出ないですよ。これはあなたの方の基礎資料を改めて資料として出してもらいたい。本当にこの数字が間違いないのか、きょうはもう時間がないから答弁は要らないから、細かい数字を書類で出してもらいたいのです。
  185. 柳井昭司

    ○柳井説明員 資料はできる限り提供したいと思いますが、いま私が申し上げました評価額というのは、これは新規導入した機械評価額ではございませんで、それぞれの農家におきまして何台か年次を置いて導入しているものもございます。そういうものにつきましてそれぞれ一定の方式に基づいてその償却費を算出したわけでございますので、新規導入価格、それをただ単に五年なり何なりという法定耐用年数で割った額とはちょっと違うということをつけ加えて申し上げておきます。
  186. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 そんなばかな統計学がどこにある。ごまかしじゃないか。まあきょうは時間がないから論戦いたしません。もう今度は細かく論戦しないとあんたら数字をごまかすから、徹底して、たとえば農機具は何、農薬は何と改めて論戦します。細かく徹底的にやなぬと、生産農民をいじめるようなそういう統計数字を出してもらったんでは困る。  以上で終わりにいたしますが、園芸局長来ていますね。——今度の転作の奨励品目の中で、飼料作物ですね、われわれはぜひ入れてもらいたいと思っておるのですが、飼料作物の中でケール、シロビエ、ハトムギ、この三つは飼料作物として追加してもらいたい。これはもうぜひやってもらいたいと思うのですが、局長ひとつ明快な答弁を願いたいのです。やるならやると。
  187. 野崎博之

    ○野崎説明員 先ほど先生の御質問の点にちょっと答えたわけでございますが、需給上問題のある作物を除きまして、広く一般の作物を対象といたしておるわけでございますが、いま先生おっしゃいましたハトムギ等につきましては、やはり通常の飼料作物とはちょっと違いまして、ほかにも使う用途があるわけでございます。たとえば、薬用とかなんとかいろいろあるわけでございまして、私は先生の御意見も非常に傾聴に値する御意見だとは思っておるわけでございますが、現在もうこういう通常の飼料作物と異なるものにつきましては、地域の特性に適合して、また飼料用として利用されるということがはっきりしている場合には、都道府県知事が地方農政局長と協議をいたしまして、飼料用作物として認める道を開いておりますし、現に長野県ではそういうようなことで、もうすでに飼料作物として認めておるわけでございますので、今後そういう道を通じまして、ひとつ先生の御意見のようにスムーズに運ぶようにいたしたいというふうに考えております。
  188. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 もう局長の答弁、それこそ希望の持てるような答弁だからやや安心して、適切な処置をしてもらいたい、こう思います。  政務次官に考え方を聞いておきたいのですが、あすは諮問が出て二日間にわたって米審が開かれるわけですけれども、私たちはこの価格問題もそうだし、転作の農作物の価格保証という問題もこれからの問題として論議を深めていかなければならぬ、こう思っておるのですが、五十三年の減反面積と生産調整の数量百七十万トン、これを一方的に押しつけたのです。そして、いま全国平均でいくと目標額をオーバーして一〇六%ぐらいいくんじゃないか、いまのところは一〇〇何%だ、こういう目的がもう達成された。ところが、農民の方から言うと、そこまで協力したのであるから、今度はできた米は全量買い上げてくれるんでしょうな、こう言っておるのです。こういう質問が出る。これは与野党問わず出てくるはずだと思う。それは自民党の国会議員さんの皆さんにも、農村に出ていったら、ここまで面積で協力し、数量で協力したんだから全量買い上げてくれるんでしょうな、こういう問いが出てくる。それにどう答えたらいいのか。これは大臣に尋ねたかったのですが、時間の関係で尋ねることができなかった。政務次官は大臣代行なんだから、ひとつ明快に答弁を願いたいのです。
  189. 今井勇

    ○今井説明員 この問題は、前国会でも御質問がありまして、大臣からも御答弁がありましたし、私もお答えをしたと思っておりますが、生産調整に御協力を賜りましてなおかつ余った場合についての措置につきましては、自主流通ルートの買い上げに準じまして、ひとつせっかくおつくりくだすったものをむだにしないようにしたい、そのときに御協力を賜った方と賜らない方についてはおのずから差があるであろうということを申し上げたわけでありまして、そのとき私もお断りしておきましたけれども政府が買い上げるわけではございませんので、念のために申し上げておきたいと思います。
  190. 柴田健治

    ○柴田(健)委員 時間が参りましたから、いずれまたこの問題も論議をしていかなければならない問題だと思いますが、今度は米の消費拡大、私はもう何回となくこの消費拡大について農林省に見解を聞いてまいりましたけれども、やるやると言っても正直言って本気で消費拡大をやっていないのですよ。もうここまで来たら、日本の民族の立場に立って米を食う運動に全力を挙げなければならぬというときが来たと思うのですね。米が余ったら農民の責任だ、そう言わんばかりの言い方をして農民いじめをやっているのですから、米の消費拡大、たとえば炊飯器の改良を思い切って助成措置でもしてやりなさい。軟質米や硬質米用の炊飯器をつくらせるようにしたらどうですか。それから、流通においても自動販売機、うどんやラーメンが自動販売機で売られておるんですよ。米もいつでもどこでも買えるように自動販売機でやったらどうですか。無理に五升や一斗買わなければならぬ。いまは各家庭で米びつもないし何にもない。こういう状態、核家族の中でそういうことなんだから、二合でも三合袋でもいいからつくって自動販売機で売れる、二百円入れたら米が出てくる、こういうこと。また、あらゆる工場なりいろいろなところに、農林省も全部入れたら八万人もおるんだから、八万人が米を食う運動に全力を挙げる。どこの会合でも、自分のところの家族も、組内でも町内会でも休みのときにいろいろな会議に出たら、おれは農林省に勤めているんだ、みんな米を食うてくれ、このくらいの熱意を持って猛運動を起こしたらどうか。そのくらいの熱意を持ってやってなおかつ米が余るのなら、農民の皆さん頼む、こう言うべきじゃないですか。何にもせずにおいて米は過剰だ、価格は据え置き、生産調整をやる、こんな無責任政府がどこの世界にある。おとぎの国の政府じゃないか。  政務次官、その点、消費拡大についてどういう決意を持っておるか、もう一遍ひとつお願いします。
  191. 今井勇

    ○今井説明員 これはまことに同感でございます。先生、消費拡大をいろいろ言われますが、きのうの閣議でも大臣が発言されまして、例の学校給食の問題について、ちょうど農林大臣がおられないので持ち越しになったようでありますが、政府の中でひとつ強力に進めようということをしておるのも一つの例でございます。  そこで、一つお願いをしておきたいのですが、最近の情勢を見ますと、農村部における米飯の摂取量の減退の割合が都市部よりも多くなってきております。これはひとつともどもに御努力を賜りたいと思うのです。やはりつくる方々も一緒になってひとつそれを食べていただくような形の国民運動をぜひ起こしたい、このように思います。
  192. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 松沢俊昭君。
  193. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 いよいよあした米価審議会がありまして、政府は諮問なるものを出されるわけなんであります。その場合、去年と同じように試算米価というのをお出しになると思いますが、これは出されるのでしょうかどうでしょうか。
  194. 澤邊守

    ○澤邊説明員 参考資料の一つといたしまして、例年のように試算米価を出したいということで検討を進めております。
  195. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それで聞きますけれども、去年の「算定要領」がここにございますけれども、その「算定要領」はいま検討中だというお話でございますけれども、去年と違わせなければならないというところは、これには1、2、3と三つありますが、その一の中にさらにまた(1)から(7)まであるわけです。それで、違うという検討をしなければならない部分というのはどことどこですか。
  196. 澤邊守

    ○澤邊説明員 現在検討中でございますので、細部についてどういう結論を出すのかということを現段階で申し上げるわけにはまいらぬわけでございますけれども、これは先ほど来大臣が申し上げておりますような、需給事情が昨年からはさま変わりをしておるという事実がございます。何も需給事情だけを考慮してやるわけではもちろんございませんけれども、大きなファクターであることは間違いがない。そういう点で、算定要素についてどのようなとり方をするかをただいま最終的に検討をさしておるところでございます。
  197. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 長官、しかし米価審議会はあしたですよ。印刷に付さなければならぬわけですよ。その時間というものも考えなければならぬわけだから、そんなに隠しておくところの必要はないのであって、要するに幾らの答えが出るというようなことを聞いているわけではないのだ。去年と算定方式が違うというのは、どの部分とどの部分を違わせるか違わせないかいま検討中だ、これぐらいの答弁というのはあってしかるべきなんじゃないですか。それも知らされないということになれば、まるでこの国会では米価幕議会前の米価に対するところの論議ができないということになるじゃないですか。これは一体どういうことですか。
  198. 澤邊守

    ○澤邊説明員 せっかくの御質問でございますけれども、私ども、昨日生産費調査が公表になりましてから、急遽徹夜に近いような形で作業をやりながらいろいろな角度からの検討をやっておるところでございますので、検討の過程において誤解を招くような具体的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたい。例年のことでございますけれども、私ども国会が終わりますれば内部の相談をした上で大蔵省、企画庁等と最終的な詰めをするわけでございますので、必要ならば大臣折衝までいくというようなことでやっておりますので、最終段階の作業の過程でございますので、御理解をいただきたいと思います。
  199. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 そういう態度がやはり問題だと思うのですよ。  それはそれとして、私はきのう政府委員室の方がおいでになりましたのでこの点はきょう答弁してもらいたいということを言っておきましたのですが、昭和四十二年の算定方式でことしの米価算定した場合一体幾らになるのか、これはできるはずですからきょう答弁してもらうということになっているわけなんで、ひとつ御答弁願いたいと思います。
  200. 澤邊守

    ○澤邊説明員 ただいまの御要求を昨日いただきましたが、先ほど申し上げましたように、私ども明日の諮問案をつくるのに全精力を費やしております。先生の御要求は、四十二年度の算定方式で最近のデータを用いた場合どのような計算になるかという趣旨の御質問でございます。現在ただいま諮問案自体についての作成に全精力を費やしておりますので、残念ながら間に合いませんので申しわけないと思いますが、いましばらくお待ちいただきまして、できますれば明日の御審議にはぜひ間に合わせたいということで作業を督励したいと思いますので、御容赦をいただきたいと思います。
  201. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 大臣おられたとき質問したのですが、再生産確保の米価、やはりこういうことに最低決めるべきである、こういう質問を私はしたのですけれども、しかし、そういうふうにして全体の販売農家のすべてを補償するということになると大変膨大な支出になって高いところの米価になる、こういうお話であったのです。しかし、ここにも資料がございますけれども、たとえば五十一年の場合におきましては一万八千八百円ぐらいのところが第二次生産費の一番最高のところだと思うのです。そこに運搬費というのを足したのがつまり基準米価ということになるわけでありますから、したがって一昨年の農協要求米価というのが二万百二十円なのであります。だから、二万百二十円にならなくとも、大体一万九千円ぐらいのところまでいけばカバーされる、こうなるのじゃないかというふうにこの資料からいって私は考えられるわけなんです。ですから、再生産確保ということはもう最低の条件なんですから、販売の米は自主流通米と政府米、この二つ足した量ですね。この量の米の確保のための価格というものが再生産確保の価格、こうなると思います。そういう点からすると、そんなに大臣が言うようにべらぼうに高い米価にしなければカバー率一〇〇%にならぬなんてことは考えられないわけなんですが、この点はどうですか。
  202. 澤邊守

    ○澤邊説明員 細かい数字のお話でございますので、私も御質問の趣旨、全部理解し得なかった面がありますので、あるいは見当違いのお答えをすると思いますけれども、私どもといたしましては、食管法三条にございます再生産確保を旨として決定をするということの趣旨は、幾らでもつくって過剰なような状態の場合に、過剰を続けるような再生産を確保するための米価決定しなければならぬというようなことを義務づけているものではないので、やはり食管法第一条の目的から申しましても、国民食糧を確保するというのが食管法の目的でございますので、それに即して解釈をいたしますれば、国民食糧を安定的に確保するために必要な生産量を確保するために必要な生産費所得補償方式、これは法律には明文はございませんけれども、そういうような観点で米価算定していくべきものである、かような考えに基本的に立っているわけでございます。
  203. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 だから、ここに書かれている再生産確保というのは、その確保するところの米の量というのはあるわけでしょう。確保するところの米の量というのは、自主流通米と政府米を足した量というのが確保する米の策、こうなるでしょう。だから、その分はちゃんとカバーされる価格でなかったら困るんじゃないですか。それよりもよけいとれたところの面までも確保せいということになれば、それはちょっと無理だということになると思いますけれども政府米と自主流通米、その数量だけはちゃんとカバーできる価格でなかったならば法律に反する、こうなるのじゃないですか。
  204. 澤邊守

    ○澤邊説明員 今年度の生産調整をはじく前提としても考えております需給見通し、需給計画では八百三十万トンの流通を、自主流通米を含めて考えておるわけでございますので、具体的に申し上げれば通常の作柄の場合、八百三十万トンの流通が確保できるような米価を決めていかなければいけないということはおっしゃるとおりだというように思います。私どもとしては、これまでの経過を見まして、種々御意見なり御批判はあろうかと思いますけれども、必要な生産量を上回った結果として過剰な状態が発生しておるというような点も考えながら、あるいは先生は全生産農家生産費をカバーしなければいけないというような趣旨でのお尋ねではないかと思いますけれども、ただいま申しましたような趣旨から、平均的な生産者の生産費所得を補償していければ八百三十万トンの必要な流通量を確保する、再生産を確保するということは可能であるというような考えでこれまで決定をしてきたところでございます。
  205. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これで終わりますけれども、私その答弁はちょっとわからないのです。販売数量の七〇%ぐらいはカバーしているというんですよ。あとの三〇%はカバーされてないんじゃないですか。そうすれば、あとの三〇%もカバーされる価格水準を高めなければならぬじゃないですか。余るものは生産調整でやっているわけでしょう。だから、余らないことになっているわけですよ。百七十万トン生産調整すれば、余らないということになるわけだ。見通しを誤ったから四百六十万トンから五百三十万トンになった、これは政府責任なんですから、生産調整をやって、さらに米が余るからというところの理由米価を抑えるというのはおかしいじゃないかというんですよ。これは当然の話じゃないですか。生産調整をやらなかったならば、それは需給事情を考えて決めるというのもあり得るかもしれませんけれども、現にやっているんでしょう。こっちでやっているんですから。そうすると、政府計画が誤らない限りにおいては、八百三十万トンというのはちゃんと生産費が補償されるように値段を決めてやらなければならぬところの責任というものが、第三条の再生産確保というところの言葉なんじゃないですか。ところが、さっき質問をしますと、七 〇%程度の数量というものはカバーされているけれども、あとの三〇%はカバーされていないということになれば、あとの三〇%もカバーされるような価格にしなければ法律に反しているんじゃないかということを繰り返し質問しているわけなんですよ。どうですか。
  206. 澤邊守

    ○澤邊説明員 私の理解では、八百三十万トンの限界生産費をカバーしないと八百三十万トン確保できないのではないか、こういうような御趣旨かと思いますけれども、私どもといたしましては八百三十万トンの限界生産費で、一番高いところの生産費所得をカバーするような高い価格を決めますれば、それよりも有利な農家生産に一層意欲を注ぐということになりまして、八百三十万トンははるかにオーバーするというようなことになるのではないかという点を心配をしておるわけでございます。
  207. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 これでやめますけれども、豊作になると困るような話というのは、要するに日本農林省がやっていること自体というのに問題があるんじゃないですか。刺激をすると生産が高まるなんて、それじゃ凶作になった方がいいんですか。そんなばかげた話はないと思うのですよ。やはりちゃんと生産調整をやったならばやったなりの考え方を米価政策の中に出してもらわなければ困るということを私は申し上げているわけなんです。  時間が参りましたから、これで終わりますけれども、これは政務次官もおられますから、あす審議会があったとしても決定は八日か九日になるのでしょう、それまでの間にぜひ考えてもらいたい。どうでしょうか。
  208. 澤邊守

    ○澤邊説明員 私どもの見解はきょうお答えしたつもりでございますけれども、なお御疑問の点がございますれば、さらに私どもとしてもよくお伺いした上で、明日もあることでございますので、お答えをしたいと思います。
  209. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 武田一夫君。
  210. 武田一夫

    ○武田委員 私は、米の過剰基調についてちょっと尋ねたいんですが、十五分しかないですから簡潔に答えてください。  どうも米が余っているということをいろいろなところで報道していますが、事実昨年も二百六十万トンがいつの間にか三百三十万トンになり、そして三百六十七万トンとふえ、四百六十万トン、最近は五百三十六万トンというふうに、幾ら努力しても米が余っているということを、これでもかこれでもかと数を出して、それだから米の値段は上げられないとかいうことに持ってきているようですけれども、この問題について、先月七日の委員会でうちの瀬野議員が大臣に質問したときに、この米の過剰基調については政府、農民ともに責任があり、政府だけに責任があるのではない、こう農林水産大臣がお答えになったわけです。農家の人たちにとっては、これは何だ、農民ともに責任があるというなら、その責任の所在をどういうところで責任があるのかはっきり示してくれと非常にかっかと燃えているのですが、政務次官、これはどういうところに農家責任というのはあるのでしょうか。
  211. 今井勇

    ○今井説明員 かわって御答弁申し上げるのも大変失礼なことになると思いますが、察しますに、たとえば自己開田をされている場合もあったり、ともどもに都市部並びに農村部における食糧の摂取の量が減っておりますので、そんなことをも含めてあるいはおっしゃったんではなかろうかと思いますが、いずれにしても皆さんの御努力によって計画よりも天気のぐあいでよくできたとか、それから思ったほど食べてもらえなかったというものが積もり積もって余剰米、在庫となってきたことは間違いないことであります。しかしながら、その処分につきましては、政府責任において処分をしなければいかぬことは当然のことでございます。
  212. 武田一夫

    ○武田委員 そういうようないろいろ天候のぐあいもあったでしょう、消費が思うように進まないこともあったでしょう。しかしながら、われわれから見れば、これはあくまでも農林省としての需給の見通しがいずれにしても甘かった、あるいは見通しが間違ったという中での処理であって、たとえば自己開田云々したものがたくさん出てきたというのだったら、なぜそういうことをきちっと指導監督してやめさせなかったのか。いまごろまでほったらかしておいて——ちょっとだけそれはやっています。私もやっているのは知っていますけれども、それは全体の何%だとつかんでいるのですか。そういうものをことさら強調して責任農家にありというなら、私は据え置きなり二、三%しか上がらないとなったら、さっきも言ったけれども、恐怖の報酬というのは来るんだということを言ったのですが、責任農家にまでかけてくるというのはもってのほかだ。ですから、なぜもっと厳密に生産、消費の予測というものを判断できなかったのか。特にこの消費の拡大なんか見ていますと、五十一年の年間の消費量八十六ですか、五十二年が八十三とか下がってきている。これは毎年毎年下がってきていまして、農林省の皆さん方によれば二%前後だったのが急激に三%になったとかというようなことを言っていますが、そういう減る傾向にあるときにそれをきちっと事前にキャッチできないような農林省ではないと私は思うのですが、もしそうだとすれば、今後、これは農林省のどこでこういう消費の動向をちゃんと確かめているんだというようなことについてもっと深く追及していかなくてはならないんじゃないか、この点どうなんですかね。
  213. 澤邊守

    ○澤邊説明員 消費の減退の見通しが甘かったということが結果的に需給のアンバランスを拡大した一つの大きな要因である、生産面のことは別にしましてあるわけでございますが、御指摘のとおりでございます。そこで、私どもは過去の数字を見まして、四十四、五年ごろまでは一人当たりの消費量が大体三%前後で減ってまいりました。その後六、七、八、九、十というころが例の世界的な穀物不作、需給の逼迫というような背景に引き続きましてオイルショックで物価が高騰したというようなこともあり、もちろん生産者米価も上げたこともございますけれども、消費の減り方がやや減退をしてしまった、消費者米価を上げたこともありますけれども消費の減退が年率が下がってまいりまして、たとえて申し上げれば四十八年には一・七、四十九年には〇・八、五十年には一・二ということで鈍化をしてまいりました。ある意味では結構な傾向ではないかというふうに思ったわけでございますが、その後の経過を見てみますと五十一年は二・二、ごく最近の現米穀年度を見ますと、政府の売却の実績、それから家計調査あるいは農家の消費動向等各般の資料を総合して推定いたしますと、どうも三%台の年率の減少に戻ってきておるのではないかというふうに見られるわけでございます。これはもちろん確定値ではないわけでございます。そういう点で、私ども需給計画をはじきます場合、二年ぐらい前までの消費の減退がやや鈍化したというようなところを前提にして需要をはじいておるという面がございます。  また、率直に申し上げまして消費拡大の努力をしておりますので、その効果がもう少し出てこないものかというような希望的な観測を持って需要がふえるという計画を立てたこともございますし、また生産者になるべく生産調整の数量を減らして苦しい経営転換を少しでも少なくするという意味では、消費の拡大に希望を持ちたいという心理が、私どもの計算をする立場からいたしましてもどうしても働きますので、結果的に見て消費を過大に見たという結果になったのだというふうに思っております。
  214. 武田一夫

    ○武田委員 ですから、そういう希望的観測などでやったということは、明らかに農林省として本当に責任を感じなければならないと思うのですが、農林大臣がそれを転嫁しているのですから、農林大臣を皆さんで戒めてくださいよ。  それから、消費拡大についてちょっと聞きます。  まず、米飯給食あるいは学校給食の問題ですが、大体四〇%の学校でいまだ完全給食をしていないというのが現実ですね。それからまた、週三回以上の米飯給食をしている学校というのはわずか六%しかないというのも事実ですね。しかしながら、消費拡大に取り組もうとしている農林省は一生懸命の姿勢だし、国民もそれに協力しようとしているのですが、どうも聞くところによると、文部省が余り乗り気じゃないのではないか。だから、五十六年をめどにして週二回実施する考えである、それで十一万トンくらい消化するのだというような、まことに国の総力を挙げてやらなければならない消費の拡大について、どうも文部省としては非常に、一番しっぽの方からついてくるという感じがしてしようがないのですが、早く残りの四〇%を完全給食にしながら、せめて週五回くらいまで持っていくとするならば、最低でも四、五十万トンくらいは消化できるのじゃないかと私は思うのですが、そういう考えというのは文部省の中でないのでしょうか。
  215. 坂元弘直

    ○坂元説明員 御承知のとおりに、私ども学校給食に米飯を取り入れたのは昭和五十一年度でございます。それまでいろいろな経緯がございまして、パン給食を中心にして学校給食を推進してきたわけでございますが、昭和五十一年度から正式に学校給食に米飯給食を取り入れた。そういう経緯で、従来沿革的にパンになじむというよりもパンを中心にして牛乳の飲用奨励ということも考え、そして、それになじむ献立を中心にいたしまして学校給食を今日まで普及充実に努めてまいった関係もあって、昭和五十一年度から一挙にドラスチックに学校給食の中に大々的に米飯給食を取り入れていくというのは現場としてはなかなか対応できないであろうというようなこともございまして、私どもとしましては昭和五十六年度当初を目途に、とにかく全国最小限週二回の米飯給食を実施してもらおうということで、現在所要の財政措置を講じながら、米飯給食の推進を図っているところでございます。  幸いにいたしまして、その計画につきましてはほぼ達成できるような形で昨年度、一昨年度というふうに推移してきております。  先生御指摘の、一挙にいま週五回ということ、それから全部の小中学校にというお話ですけれども、中学校の完全給食というのは五〇%でございます。これは神奈川、京都、名古屋、大阪等の大都市を中心にいたしまして完全給食がまだ普及をいたしておりませんが、この点につきましては、先生の御指摘をまつまでもなく、私ども給食行政に携わる者といたしましては、従来から鋭意完全給食の普及につきましてはこれらの市の関係者に指導しているところでありますが、何分これらの大都市が大規模の学校、あるいは非常に多くの中学生を抱えておるということもあって、急激な財政需要をもたらす、あるいは非常に過密地帯でございますので、御承知のとおりに、給食調理室をつくるための土地の確保にも容易ではない、あるいは、むしろそういうことよりも、人口過密地帯でありますので校舎をつくる方が先だというような事情もございまして、なかなか完全給食の普及が今日まで至っておりませんけれども、私どもは極力完全給食を実施させるように努力してまいりたいというふうに考えております。  いずれにしましても、先ほど申し上げました計画につきましては、先生から文部省がやや消極的なんではないかというお話でございますが、この計画につきましては、私どもも極力、とにかく実施していくように最大限の努力をしているつもりでございます。  それから、ちなみに、先生から全部の小中学校に完全給食を実施し、それらが週五日米を消費するということになったらば、五、六十万トンになるのではなかろうかという数字の御指摘がございましたが、私どもで週五日全部の小中学校が米飯給食を行うという前提で数字をはじきますと、約三十二万六千トンばかりになります。
  216. 武田一夫

    ○武田委員 私は四十万トンか五十万トンじゃないかと言ったのです。よく聞いてちょうだいよ。五十万トン、六十万トンと言いませんよ。  それで、私は各地を歩きますと、自治体の村長さんや市長さんから、設備を新しくやりたいのだけれども補助が非常に少ない、あるところに行ったら、必要な経費の一割くらいしかこないのだと言うのです。これではどうしようもない。何でこういうときにもっと景気よく米飯の設備に対する補助をくれないのか、われわれはどんどんやりたいのだけれども、いまの状況では一割や二割でどないしたらいいのかという切実な悩みがたくさん聞かれるのです。だから、その点の配慮をまずしていただきたい、これはもう前々から言われているそうですけれども、この際、米の消費拡大というのは、要するに米を食べるというそういう習慣を広く深く浸透させるというスタートに、やはり学校給食というのは子供さん方が米になじむというそういう原点になるわけですから、それを受け入れようという市町村がこういうことでちゅうちょをしているということは、これはまことにゆゆしき問題だと私は思うのです。  この点、今後ひとつ十分にお考え願いたいと思うのですが、文部省のお考えと、あわせて、政務次官、時間が来ましたので、こういう問題についてはセクト的な考えをやめて、私は前の鈴木善幸農林大臣のときにお話ししたのですが、万が一どうしても学校給食というのが無理ならば、弁当給食ということでお握りでも持参する、たとえばノリなんか非常に安くて大変困っている、それをお母ちゃんが握ってノリを巻いて子供につくって持たせてやるという、その中に教育の一つの効果もあるのだ、また持っていけばおいしく食べる。私が知っている人などは、おやつにノリを巻いてお握りにして御飯を食わせているという人もいるのです。喜んで子供たちが食べていまして、パンよりもよっぽどいいやと言って帰ってくるのです。こういうような現実を踏まえた上での真剣な取り組みを私は要望して、その決意のほどを伺っておきたいと思うのです。
  217. 坂元弘直

    ○坂元説明員 先生御指摘の、米飯給食のための施設設備の補助金の問題でございますが、私どもとしましては、単価の改定、それから設備基準の改定等を若干ずつでも、なるべく超過負担を市町村にもたらさないよう、ここのところ年々努力いたしておりますが、これにつきましては最大限の努力を来年度以降の予算編成に当たりましてもいたしたいというふうに考えております。  なお、御参考までに、予算の配分につきまして、実は本年度は給食施設全般といたしましてほぼ二倍の申請がございましたが、私どもは米飯給食絡みの申請につきましては最優先でつけるようにいたしました。
  218. 今井勇

    ○今井説明員 今度の生産調整につきましては、先生御指摘のようなものも含めて消費拡大も必要である、やらねばならないということで、御案内のように、農林省だけではなくて、内閣の責任において、閣議了解という線でいたしておりまして、おっしゃるまでもなく、われわれとしては政府を挙げてこの問題に真剣に取り組んでおりますし、また取り組まなければならない、かように考えております。
  219. 武田一夫

    ○武田委員 終わります。
  220. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  221. 神田厚

    ○神田委員 先ほどに引き続きまして農林省にお尋ねしたいのでありますが、まず最初に、先ほどもちょっと御質問申し上げましたが、米の需給計画の問題でございます。  先ほど大臣に質問しましたらば、過剰傾向が続く限り米価は据え置きの基調だ、要約するとこういうふうな御答弁があったわけで、はなはだ心外な感じを持ったわけでありますが、そういう中で農林省がつくっている米の需給計画、これが現在その見通しが非常に甘いというようなことでいろいろ言われておりまして、現実に来年秋の問題でも、やはり米が多少余るのではないだろうか、こういうようなことが言われているわけでありますが、この問題につきましてひとつお答えいただきたいと思います。
  222. 澤邊守

    ○澤邊説明員 今年度、五十三年産米の需給計画といたしましては、潜在生産量千三百四十万トン、何もせずにつくりたいだけつくるということになりますと千三百四十万トンというのを前提にいたしまして、総需要量を千百七十万トンと予定をしまして、単年度需給均衡を図るためには生産もそれに合わせまして千百七十万トンというふうに数字を置いてみまして、千三百四十万トンの実力と必要な生産量千百七十万トンとの差百七十万トンの生産調整をする、それが三十九万一千ヘクタールである、こういうことで進めておるわけでございまして、幸いにして一〇〇%を上回るような見通しも得られておるわけでございます。  しかし、最近の需給状況を見ますと、今年産米、これから作柄が不作になるか豊作になるかによって違いますけれども、一応平年作を前提として見通してみますと、千百七十万トンの需要というのはかなり過大ではなかったかというように思うわけでございます。と申しますのは、五十二年度、一年前、これは米穀年度で申しますと昨年の十一月からことしの十月まで、現在ずっと続いております五十三米穀年度でございますが、これの生産を千二百十万トンというように見込んだわけでございますけれども、これが百万トン豊作のためにふえたということのほかに、需要が一千二百十万トンでございましたのが、最近の売却状況、それから家計調査農家の消費動向等から推定をいたしますと、年度途中でございますけれども、千百五十万トンぐらいではないかというように見通しておるわけでございます。したがいまして、五十二年度、すなわち五十三米穀年度におきまして九十万トンの生産調整をやりましたけれども、百六十万トンさらにギャップがふえるということのために五百三十万トンの在庫になるということを申し上げているわけでございます。現米穀年度の需要の千百五十万トンを上回る千百七十万トンを来年度の米穀年度に予定をしてことしの生産をやっておるということでございますので、千百五十万トンがこれまでの傾向だと毎年少しずつ減るわけでございますから、それが仮に消費拡大で努力して横ばいで千百五十万トン来米穀年度で需要があったといたしましても、千百七十万トンの間には二十万トンのギャップが出る、百七十万トンの生産調整が達成されてもなお二十万トンのギャップが出る。千百五十万トンの今年度の見通しが、従来の傾向をそのまま存続させましてさらに二十万トン程度、あるいは三十万トン程度来年度減少するとしますと、二十万トンにさらに二、三十万トンプラスした過剰が出る、百七十万トンの調整を行った上でなお出る、かような見通しが現段階で成り立つわけでございます。
  223. 神田厚

    ○神田委員 これはやはり需給計画そのものに問題がありますね。そういうふうなことで、しかも過剰になると米価が上がらないということになりますと、これはやはり農民にとりましては非常に気の毒でございますね。そのようなところはどういうふうにお考えですか。
  224. 澤邊守

    ○澤邊説明員 この点につきましては、過剰の責任はだれかという問題で先ほども議論がございましたけれども、私どもの見通しが結果的に甘かったということ、消費拡大等の面につきまして相当希望的観測も織り込みながら需給計画を立てた、その結果が甘かったということは率直に認めざるを得ないというように思っております。そういうこともございまして、過剰在庫がふえた分について、これを翌年度の生産計画を立てる場合の生産調整目標数量に在庫量というものを加えていくべきだ、こういう議論も一部になくはないわけでございます。通常の産業の場合には在庫量というのは当然供給量に入ってくるわけでございますけれども、そういうものは入れずに単年度需給で過剰部分は全部政府責任において処理をするということを前回七百数十万トンの過剰米処理のときもやりましたが、今回以降もそういう方向でやはり検討していかざるを得ないのではないか、かように思っております。
  225. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、このことによりまして三年間の生産調整——第一期三年やっていますね、そのこと自体の計画を変えるとかあるいは何かするということはありませんね。
  226. 澤邊守

    ○澤邊説明員 これは私から現段階で確定的なことを申し上げるつもりはございません、前提を置いてお聞きいただきたいと思いますけれども、昨年来の経緯からいたしまして、農林省といたしまして三年間転作目標数量は固定をするということを農家に明らかにしながら御協力を願った経緯がございますので、変更するのは妥当ではないのではないかというふうな見解を私自身は持っておりますが、農林省として正式に決めておるわけではございません。私どもといたしましては、できるだけ消費の拡大によって、先ほど申しましたようなギャップが少しでも少なくなるように努力すべきものだというふうに考えております。
  227. 神田厚

    ○神田委員 米の余るという状況は、三年間は依然として変わらないわけですね。変わりませんね。そうしますと、三年間米の余る状況が変わらないということになりますと、米価が上がる要素がだんだん少なくなっているというふうなこと、先ほど大臣も言いましたけれども、これはやはり非常に大きな問題ですね。この期間に消費拡大がどの程度できるか、これは非常にむずかしいと思うのです。この短期間に全部決めるというのは。私が一番心配しますのは、これから五十五年、五十六年度に向かいまして、全体的な経済もやはり増税基調、税金をたくさん取るような、そういう形になっていくと思うのです。そういう中で、今度は過剰米の処理というようなことにもし考えがいっているとしたら、これは国民の世論の支持を受けられないだろうと思うのですね。ですから、そういう面から考えますと、この過剰の問題に対するもっときちんとした方針を出さなければますます米の問題はにっちもさっちもいかない形になってしまうのではないか、私は非常に心配するわけであります。  時間もありませんし、あしたもまた質問の時間がございますから、その辺のところ、たとえばもう少し思い切って海外協力に出すとか、そんなふうなことができるかできないか、この辺はどうですか。
  228. 澤邊守

    ○澤邊説明員 海外に出すという話、これはすでにたまっております過剰米の処理としては一つの方法だと思って今後検討したいと思っておりますけれども、これから生産するものについて海外に輸出をするとか援助をするというようなことを目標にしてそのまま生産を続けていく、過剰生産を続けていくということは好ましくないというふうに考えております。
  229. 神田厚

    ○神田委員 好ましくないと言っても、何とかしなければいけないということなんですからね。一つの方向として多面的な検討をしなければいけないというふうに考えます。  時間がありませんので、最後に政務次官、この過剰の問題は何とかしなければどうにもならなくなると思うのですが、この辺の考え方、どういうふうに思っておられますか。
  230. 今井勇

    ○今井説明員 これは何としても国民一人一人に少しずつ食べていただいて、掛け算をして数が多くなることが最も望ましいことであろうと思います。学校給食の問題も盛んに議論されております。それも大変りっぱな一つの方策でありますが、要は一億一千万の方々に、俗説で言いますと三口食べていただければたちどころに生産調整が要らなくなるということを言われておるわけでございますから、そういったPR活動を通じて国民の皆さん方の御協力を賜るように政府は真剣に考えなければならぬだろう、こう思います。そういうことを基本にして需給バランスをとっていく、これは目下の農林省の最大の急務であろうと考えております。
  231. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  232. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 山原健二郎君。
  233. 山原健二郎

    ○山原委員 消費拡大に関する学校給食における米飯給食の問題についてちょっとお伺いします。  もちろん米が余ったから子供たちに食わす、こういう発想ではなくて、米飯給食の導入というのはいわば国民的な感情あるいは農民の感情でもあると思います。そういう意味で、子供たちの体力の問題また教育上の立場からも大変必要な問題で、これで現在の余剰米の解決がすべてできるなどというものではありませんけれども、この点について伺いたいのであります。  農林省の方に対しては、一つは学校給食用のお米につきましての三五%の値引きの問題ですが、これが果たして適切なパーセントであるかということと、これを五〇%値下げにせよという要求があるわけです。これを将来どういうふうにされるかということでございます。検討されておれば、お答えをいただきたいと思います。  もう一つは、弁当の持参に対していわゆる値引きの適用対象とするかどうかという点、この二つをお伺いいたします。  それから、ついでに時間の関係で申し上げますが、現在、農林省の米飯給食の導入促進事業費としてたしか八億三千万円が五十三年度に組まれておりますが、五十四年度はこの要求額をかなりふやすつもりかどうか、この点でございます。  それから、文部省に対しましてお伺いをいたしますが、学校の自校炊飯についての設備費、いま二分の一ですが、これが五十三年度に二十六億円と言われておりますけれども、今度の来年度要求ではこれを拡大をしていくお考えがあるかどうか。  それからもう一つは、高等学校の問題です。これは十六歳、十七歳、十八歳という一番の食べ盛りですね。現在、非常に様態は違いますけれども、たとえば清涼飲料水とパンだけかじって昼休みを過ごしておるというような状態で、これはいわば日本の青少年の体力の問題から考えましてもきわめて重要な問題だと思います。したがって、私は高等学校に対する給食問題、これは当然考えていい問題であり、場合によっては来年度の予算に調査費その他をつけて、これも前向きに進めるべきではないかという考えを持っておるわけでありますが、これについて文部省、検討されておりましたら、お考えを伺いたいのであります。
  234. 澤邊守

    ○澤邊説明員 農林省について三点お尋ねでございましたので、お答えを申し上げたいと思います。  まず、三五%値引き問題でございます。これはパン給食費と米飯給食費との父兄負担について均衡させるようにという趣旨で三五%値引きをしておるわけでございますけれども現実にわれわれ伺っておりますところは、先生御指摘のように、なお足らぬではないかというような御指摘がございますので、改めて私どもなりに検討をしてみたいと思います。これについては、もちろん文部省ともよくお打ち合わせをして、私どもなりに検討して、洗い直してみたいというふうに思っております。その結果いかんによって、足らなければ上げるという努力はもちろんしたいと思いますけれども、一応洗い直してみたい、予算要求に絡みまして、そういうふうに考えております。  それから、弁当持参につきまして、これは実は率直に申しまして、私どもは米飯弁当持参が、波及効果を含めまして米の消費拡大に大変役立つということで、食糧政策上は非常に消費拡大に役立つと思っております。ただし、学校給食は、他方、学校教育の一環でございますので、その立場からの御意見が文部省にございまして、現在一応のところでお話し合いをしておりますけれども、なお今後私どもとしては米飯弁当持参をさらに拡大するようなことについてお話し合いをしてまいりたいというのが率直な気持ちでございます。  それから第三点、来年度の予算の要求のことにつきましては、現在、予算要求を検討を始めておりますので、当然拡充する方向で検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  235. 坂元弘直

    ○坂元説明員 第一点の、米飯給食関係の施設設備の補助金の本年度の二十六億円を来年度は増額要求をするのかという御質問でございますが、最終的に現在数字は詰めておりますけれども、増額要求の方向で数字を詰めております。  それから第二点の、先生御指摘の高校生の昼食の問題ですが、これは単にいわゆる教育としての学校給食、そういう意味から申しますと、給食行政プロパーの問題というよりも高校生の健康管理の問題というふうにつかまえてよろしいかと思いますが。ちなみに私どもが昨年十月全国的に、これは抽出調査でございますが、しましたところ、都市部、郡部、農村部で持参状況は違いますし、同じ都市部でも非常に持参状況のいいところと、弁当を五割も持ってこない学校もあるというようなところで、まちまちでございますが、全国的な平均で見ますと、都市部では約二六%の方、それから中間部、都市と農村部の中間に位置する郊外地域は大体一七%が、それから農村部は一三%の生徒が弁当を持参してきておりません。  これらの生徒の昼食の状況を見ますと、大半がインスタントラーメンか、あるいはパンと清涼飲料水だけで済ませておるということから見まして、非常に高校生の健康管理の観点から問題ではなかろうかということで、私どももこの問題につきましては真剣に関係者と協議を加えていって、何らかの対策を見出していきたいというふうに考えております。そのことが結果として、広い意味で米の消費拡大にもつながるかと思いますけれども、その前の問題として、高校生の健康管理の観点から真剣に検討をしていきたいというふうに考えております。
  236. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がたちましたが、余りかわいそうなので、もう一問許してください。  今井政務次官がいらっしゃいますので、ミカン地の御出身でありますから、一言伺います。  実は一昨日の米価大会におきましても特別決議がなされましたオレンジの輸入の問題です。私の県の一番のミカン地の計算でいきますと、ハウスミカンにずっと転化しているわけですが、ことしに入りまして、一ケース五キロが六月一日には三万円内外しておりました。これは御祝儀価格でもあった関係で、かなりよい数字です。ところが、六月十三日になりますと、一万五千円前後を低迷し始めてまいりまして、六月十六日には一万円を割ってしまいました。その後、六月二十三日から六千五百円から七千円ないし八千円、こういう状態で、もうすでにオレンジの輸入枠の拡大の影響が出ているのではないか、こういう非常な心配が農民の間に起こっているわけでございますが、これは切実に政務次官はお感じになっておられると思いますので、こういう状態に現状はあるのかということと、このオレンジの輸入枠の拡大についてはもうすでに影響が出ているのだから、これに対しては何とかこれを規制するということで働いていただきたいと思うのですが、お考えを最後に伺いたいのであります。
  237. 今井勇

    ○今井説明員 突然のお尋ねで、現在ハウスミカンがどう動いておりますか、私つぶさに値動きを必ずしも明確に把握いたしておりませんが、先生のお話のようなことで、だんだんと影響が出ておりますように私も考えております。  そこで、これからの問題といたしましても、いままでの三倍の量を入れざるを得なかったという、このことから考えましても、しかもまた、これから温州ミカン等については三年かかって二割の生産調整をやろうと大変な決意のもとで進んでおります状況におきまして、対外的な圧力が高まることはございましょうが、ひとつここは政府一体となりましてその圧力をはね返そうということで進んでまいっておりまして、このようなかたい決意を今後とも続けてまいりたいと存じます。
  238. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十九分散会