○
伊勢参考人 御指名によりまして、この
委員会で私
どもの
意見を開陳するということができることは、私
どもと同じ
考え方で鶏の
経営を進める者にとりまして大変うれしいことでございまして、こういう
機会をお与えくださいました議員諸先生に厚く御礼を申し上げます。
最初に、いろいろと話題になっております私
どもの会社につきまして、鶏の
振興に関する問題を申し上げる前に、ちょっと一言つけ加えて申し上げたいと思います。
私
どもの会社は、明治の終わりに始まりました
日本でも最も古い鶏の会社でございます。片田舎で親子二代にわたりまして無我夢中で鶏に取り組んでおりましたうちに、気がついてみますと、皆様方からあるいは新しく鶏の産業に加入なさった
方々から御批判を受けるというような状態に至ったということは感慨無量なものがございます。いろいろ御批判もございましょうが、われわれは一貫して
日本の鶏産業のパイオニアとして努力してきたと自負いたしておるわけでございます。
特に申し上げたいことは、私
どもの会社は
農民の会社であり、たくさんの
農民の集合体が
一つの会社の体裁をなしておるということを特に申し上げたいと思います。私自身も生まれつき
農家でございまして、多数の
農家と一緒にわれわれの会社の事業を進めておるわけでございます。たくさんの
農家と長い間一緒に仕事をいたしておりますが、ただの一例も
農家の皆様に欠損を与えたとか、あるいは御迷惑をかけたとかという例はなしに、仲よくいままで仕事を進めてこれました。これも
日本の
農業に対する政治が非常に適宜に進められたというおかげかとここに感謝申し上げるわけでございます。
なお、私
どもの会社を指して
商社養鶏というふうにおっしゃる方もございますが、
日本に
商社で
経営されている農場もございます。その農場の羽数を見ますに、現在
日本におります鶏の一%にも満たない少ない数でございます。私
どもは、たくさんの
商社あるいは
えさメーカー、あるいはここに御
出席の全農の皆様方と非常に仲よくおつき合いをさせていただいて仕事を進めておりますけれ
ども、特定の
方々、
金融機関以外からは資本的、
資金的な御
援助を受けて仕事をいたしたことは一度もございません。
日本の
養鶏の
発展期にはたくさんの
農家が
商社の
資金を利用して
発展されたという時期がございましたけれ
ども、私
どもの会社は、長い歴史の中ででも一度もそういうような
商社の皆様の
資金的な御
援助を受けるということはなしに、常に
農民として
農民の
立場で独立独歩
商社の皆様に対抗してやってきたという自負を持っております。今後も
一つの
商社とかメーカーに偏することなく、独立独歩でやっていきたいと
考えておりますので、何とぞ御支援を
お願いしたいと思います。
それから、つけ加えまして、私
どもの会社が
卵価の安定にいろいろと努力いたしておりますことを
一つ二つ申し上げたいと思います。
最近東京都内にたくさんのコンビニエンスストアと申しますか、非常に小型な店舗が千店ぐらいの
規模で広がっておりますが、余りにも小さい御注文でございますのでなかなか配送ができない、卵の配送ができないというような
現状でございましたが、私
どもの会社で配送システムを勘案いたしまして、完全に都内に配送し、コカコーラと同じようにいつでも都民の手近なところに安い卵があるというふうな努力をいたしまして、卵の
消費に非常に
協力いたしておるつもりでございます。
また、最近魚肉が非常に不足ということで、幾つかの魚肉の会社が仕事がないという事態が生じておりますけれ
ども、私
どもはその会社と共同開発で、魚肉にかわる卵の
消費の
加工品をつくっております。いろいろ各会社の努力を得まして、約二百万羽余りの卵の処理を
加工食品に回して
消費いたしております。少なからぬ卵の
消費にプラスいたしておるかと
考えておるわけでございます。
次に、
生産調整の問題を含めまして、鶏に対する私
どもの
考え方を多少申し述べてみたいと思います。
生産調整に該当すると思われる
農家は、約五千羽以上の
農家をとりますと、ことしの二月一日の
農林省の統計によりますと五千七百五十戸ございます。
日本に一億一千万羽の鶏がおりまして、
日本国民に卵の供給をいたしておるわけでございますが、そのうち九千二百万羽の鶏は五千七百五十戸の
農家で所有されて、
国民の
消費する卵の大部分はこの五千戸の
農家で供給いたしておるわけでございます。この五千七百五十戸の
農家が申し合わせをしまして卵の生産を制限し、卵の
価格をつり上げようということは、一億
国民に卵の供給をし、いままで物価の優等生ということで、われわれの努力で積み重なってきたことを、このような安易な方法で
国民に対し高い卵を供給するのはいかがなことかと存じます。大部分の心ある
養鶏家あるいは
国民の皆様には、こういうシステムは賛同を得られないのではないかと
考えております。
それから、
昭和四十九年に
生産調整をやろうということが発表されまして、現在に至るまでの五千羽以上の
農家の推移を見ますに、約三五%の鶏が五千羽以上の
農家の中でふえております。いずれもこの五千戸の
農家が、
自分の
経営を合理化するために増羽されたことだと思います。しかし、いま一部で申されるように、四十九年のころに鶏の羽数を戻せということになりますと、この五千戸の
農家のお持ちになる鶏の羽数の三分の一はカットしなければならないということであります。これは一戸二戸の
農家の
経営にとって重大なことでもございますし、卵の値段の大暴騰のみならず、
国民に卵を供給するという大事な事業に大混乱を来すおそれがございます。このような暴論は、言うことは簡単でございますが、
日本の国にとっては非常にマイナスなことではないかと
考えるわけでございます。
それから、
生産調整を強行しようということになりますと、私
どものような北陸あるいは東北で仕事をいたしております出おくれた
養鶏家と申しますか、辺地におる
養鶏家と申しますか、これから合理化して鶏で一家を支えていこうという情熱のある
農家の前途をふさぐものでございまして、現在五千羽だとか一万羽だとかの
規模の
農家が
自分の
生活の安定のためにもつと拡大、合理化したいという意欲に富んだ
方々の前途を、こういう
指導で摘み取ってしまうということは、鶏産業の活力にとっていかがなものかと心配するわけでございます。
農畜産物の中でただ
一つ国際競争力があると私
どもが
考えておりますこの卵につきまして、このままの形で
農家の創意工夫によって育てていくということに御
協力願えれば大変ありがたいと思います。大変勝手な言い分でございますが、安易な生産制限など行いましてみずから国際競争力をなくするということは、私
どもの先人の苦労に対しても非常に申しわけないことでないかと
考えるわけでございます。
そこで、
生産調整にかわる何か
養鶏経営を安定する案がないか。これにつきましていろいろ御
意見が先ほど出ておりましたが、私
どもの
考え方としまして
一つの見地を申し上げたいと思います。
現在まで五千七百戸の
農家が足並みそろえて卵の
生産調整をしようということで努力してまいったのですが、結果的には三五%も鶏がふえてしまったということは、これは言うべくして現実には行われないということが実証されておるわけでございます。私の提案いたしたいことは、
鶏卵生産用の初生びな、種卵、種鶏、そういうような
部門で
生産調整を
実施すればよろしいのじゃないかと思います。現在採卵用のひなを供給するふ化場が
日本に約百戸余りございます。
養鶏農家に比べまして非常に数が少のうございますので、監督、
指導あるいは協議などが非常に的確に行われるのではないかと思います。そしてもう
一つは、非常に安いコストで
生産調整が行われるのじゃないか。たとえば一割の種卵をカットする、あるいは買い上げして廃棄するという金額を計算いたしましても、約十億足らずの金額で
生産調整ができるわけでございますので、この方面も御勘案願えれば大変ありがたいと存じます。
二番目には、先ほどからも御
意見が出ておりましたが、
外国からいまたくさんの卵が
輸入されております。これは私
どもの努力にかかわらず年々卵の
輸入が増加し続けております。これは私
どもの正常と申しますか適確な市場に必要な
液卵をつくる努力が欠けておるわけでございます。ことしの一月、二月、三月、四月の卵の
輸入量を見ますに、約四百万羽分の毎日生産される卵の分が
輸入されておるわけでございます。これは五、六年前に比べますと約四倍近くにふえております。私
どもはここで安易に、よい卵、安い卵、よい
液卵をつくる努力をしない場合は、この四百万羽が一千万羽になり、三千万羽になり、五千万羽になり、ついに私
どもの仕事がなくなってしまうわけでございます。
日本の
鶏卵産業そのものがなくなるおそれがございます。これは夢物語ではございません。約十五年前に
日本に種鶏の産業がございまして、たくさんふ化場がひよこをとる種鶏を生産いたしておりましたけれ
ども、
企業努力を怠ったために、現在九五%まで
外国から
輸入して
日本のものに代替されておるという現況でございます。これに対抗するためには、先ほど申しましたように、
企業の合理化の努力が非常に必要であるとともに、お国の方で、いま
日本に少ない
液卵あるいは凍結卵、乾燥卵、これが市場の求める正常なものができる設備を
養鶏農家あるいは系統団体あるいは
流通団体の
方々に手厚い
融資補助などしていただいて、
外国製品に負けないものが
日本に十分できるように御助力願えれば大変ありがたいと存じます。
三番目に、
鶏卵の
流通部門いずれを見ましても、からつき、食卓に上る卵の形のままで保管するという倉庫が
日本に非常に不足いたしております。他の農水産物は豊富にそういう貯蔵をする施設がございまして、市場の値段により適時に出荷され、適時に保管されるということが行われておりますが、事
鶏卵は、その日に生んだ卵は大体二、三日のうちに市場に出てしまう。市場の
需要、不
需要にかかわらず全部市場に出るということがございまして、暴騰、
暴落を繰り返すということが行われております。これは私
どもが余りにも合理化を急ぐ余り、
流通部門のそういう保管、貯蔵に努力をしなかったということを反省いたしておるわけでございます。
農民団体あるいは
流通業者の
方々に、こういう卵を適時に保管し
国民の必要な量を適時に出荷するという施設をつくることに長期の
融資あるいは補助金をお出しくださるように
お願いするわけでございます。
このような手厚い国のお手伝いを得ましてでも、なおかつ
鶏卵産業に適合しない
方々が出ておることは統計の示すとおりでございます。この
方々が家庭
生活に傷をつけることなく他の新しい産業に転換できるように手厚い転業
資金などの制度を御準備くださいますと、この業界の近代化に非常にプラスするのではないかと
考えております。
以上、非常につたない
意見でございますが、私
どもこのような方向で努力してまいりたいと思っております。ここに御
出席の諸
先生方の御
指導で、戦後の
日本は世界でもうらやむようなりっぱな国にしていただきましたが、今後もお国のことは諸先生に全くお任せして、私
どもは卵づくりに励みたいと
考えておりますけれ
ども、一億
国民にどうして安い卵を供給するか、それは
養鶏農家の創意と工夫、
経営責任にお任せいただければ大変ありがたいことだと存じております。安易に生産を制限し、値段をつり上げ、そしてその始末を国の補助金あるいはいろいろなお世話をかけるということは、たった
一つ日本の農産物の中で国際的に自立できる産業が、そういう形に堕落あるいは滅亡していくか、いままでどおり
自分の力で立っていく独立独歩の
日本唯一の産業として残るかの分かれ道でございますので、この辺よく御勘案願いまして、正しい方向に
日本の
鶏卵産業をお導きくださいますように
お願い申し上げます。
御清聴大変ありがとうございました。(
拍手)