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1978-04-19 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十九日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 野坂 浩賢君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       石川 要三君    加藤 紘一君       金子 岩三君    久野 忠治君       熊谷 義雄君    倉成  正君       國場 幸昌君    佐藤  隆君       関谷 勝嗣君    玉沢徳一郎君       塚原 俊平君    平泉  渉君       福島 譲二君    堀之内久男君       森   清君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       芳賀  貢君    日野 市朗君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君  出席国務大臣         農林大臣臨時代         理       安倍晋太郎君  出席政府委員         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      大場 敏彦君         水産庁長官   森  整治君         水産庁次長   恩田 幸雄君  委員外出席者         外務大臣官房書         記官      久米 邦貞君         外務省アジア局         中国課長    田島 高志君         大蔵省主計局主         計官      古橋源六郎君         水産庁漁政部漁         業保険課長   尾島 雄一君         海上保安庁警備         救難監     久世 勝巳君         参  考  人         (全国漁業共済         組合連合会専務         理事)     中里 久夫君         参  考  人         (漁船保険中央         会専務理事)  矢野 静男君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     関谷 勝嗣君   森   清君     石川 要三君   森田 欽二君     塚原 俊平君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     森   清君   関谷 勝嗣君     江藤 隆美君   塚原 俊平君     森田 欽二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第六〇号)  農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五八号)  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員  共済組合からの年金の額の改定に関する法律等  の一部を改正する法律案内閣提出第五九号)      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 本日から漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案について、本委員会における審議が始まるわけでございますが、きょうは、本委員会理事会並びに委員会の了承を得まして、この法律改正案審議参考人として矢野さんと中里さんをお呼びしたのでございますが、後ほど参考人にはそれぞれお伺いをいたしたいと思います。  いわゆる漁船積荷保険試験実施、それから五カ年間の延長が要請されておりますけれども、それが認められた場合における引き続きの試験実施から本格実施への問題、あるいは保険共済の三団体、三制度の統合一元化問題、こういったことについて法案の審議上必要であると考えましたのでお呼びをいただいたわけでございます。参考人大変御苦労さんでございますけれども、安倍農林大臣臨時代理は前半一時間おいでになられて、官房長官の要職にもあられますので、後ほど他の用務に行かれるというふうなことで、私もそれを了承しておるわけでありますが、したがって、最初漁業をめぐる国際環境問題から入りまして、それから五カ年間の試験実施経過試験実施をさらに五カ年間延長するとして本格実施への展望、こういった順序でお尋ねをいたしたいと思いますので、大臣初め政府委員の方から、ひとつ率直な御答弁をいただきたいと思います。  漁船積荷保険臨時措置法に基づいて、御承知のとおり昭和四十八年の十月から五カ年間の予定で今日まで試験実施がされてまいりましたが、御案内のとおり、最近のわが国漁業をめぐる国際情勢から見まして、特に昨年来の各国の相次ぐ二百海里漁業水域の設定によりまして、新たな漁業秩序の形成が急激に進展をするといったようなことから、本格的な実施の場合の保険設計上の基礎データをきちっとするためには、さらに五カ年間の延長をしてなるべく早い機会本格実施に移そうということで本改正案提案されておるわけでございます。  そこで、本法の本格実施のためには、申し上げるまでもなくわが国漁業をめぐる国際環境というものから当然触れてまいらなければなりません。そこで安倍大臣にお伺いしたいわけでございますけれども、きょうあたりの報道でも大々的に出ておりますように、日ソ漁業交渉がぎりぎりの大詰めにまいっておるわけでございます。中川農林大臣が訪ソされまして、今月の十二日以来きのうで七回目の中川農林大臣イシコフ漁業相交渉を通じて、漁獲高の問題あるいはソ連が新しく提起してまいりました禁漁区をぜひ縮小してもらいたいという問題、そういうことで精力的な交渉が続けられてまいりましたが、日本側から見て満足できる結果ではございませんけれども、高次政治判断をしなければならぬ段階を迎えておると思うわけでございます。  この機会に、日ソ漁業交渉経過の上に立って、政府としてどういう政治判断をしておられるか、こういった点を安倍大臣から御答弁を願いたい、こういうふうに思います。
  4. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の日ソ漁業交渉、大変厳しい環境の中で行われました。特に、ソ連側態度は非常にかたくて、中川農林大臣大変苦闘を続けてまいっておるわけでございますが、ようやく会談の方も大詰めに来ておる状況でございまして、昨日、中川農林大臣イシコフ漁業大臣と会いまして会談を行いましたが、その結果、ソ連側は、かねてから提案をしておりました四万一千トンの総漁獲量に、さらに千五百トンの上乗せをしてまいりまして四万二千五百トン、こういうことを提案をしたわけであります。この漁獲量につきましては、これまでの長い間の交渉の結果、これ以上ソ連側譲歩を求めることは困難であるという判断に立ちまして、四万二千五百トンを認めるということで妥結をしたわけでございます。まことにわが方から見れば不本意でありますし、残念な結果でございますが、これまでの経緯から見まして、やむを得ないということで決断をいたしたわけでございます。  ただ、漁区につきましては問題が残っておるわけでございますし、わが方としてもさらに主張しなければ大変な事態にも陥る可能性があるわけですから、この漁区の問題については、本日の会談でさらに詰めるということにいたしまして、ソ連側もこれを了承いたしまして、きょう中川農林大臣イシコフ漁業大臣との間で会談が行われて、最終的な決着を見たい、こういうふうに思っております。  漁区問題以外は、長期協定の案文あるいはその他の漁獲量、あらゆる問題は大体もう解決をして、今日の段階で残された問題は漁区をどうするかということだけにかかっておるわけでございます。われわれとしては、中川農林大臣がさらにソ連側交渉して、わが方の主張をできるだけ通すことに全力を尽くしていただくことを心から期待をいたしておるわけであります。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 日ソ漁業交渉の問題については、たまたま私ことしの一月下旬に訪ソする機会がございました。これは超党派議員団ソ連最高会議からの受け入れということを要請するという一つ立場がございましたけれども、ぜひイシコフ漁業相にも会いたいということでございましたが、イシコフ漁業相が日程の関係がございまして、ジガロフ次官、モイセーエフ氏等と日ソ漁業の将来問題についていろいろ隔意ない意見を交わしまして、中川農林大臣からも、イシコフ漁業相に会ったらぜひよろしくということでありましたが、その伝言をお伝えしたわけでございますけれども、とにかく大変苦労されて大詰めに来ておる。  しかし、考えてみますと、去年の段階は非常に厳しい状態の中で、当時の鈴木農林大臣が二月二十七日に第一次、四月七日に第二次、五月三日に第三次という訪ソの中で、超党派議員団の派遣までしながら、一方では二百海里時代に即応して領海法成立あるいは漁業水域に関する暫定措置法成立というふうなことで、われわれも大局的な立場から協力しながらやってきた経緯も去年はあるわけです。  しかし、ことしの場合、冒頭にサケマスについてソ連側から沖取りの抑止というふうな提案があり、その壁を、折衝過程譲歩を求めながら今日まできたという努力については、これは一定の評価をしなければならぬかと思いますけれども、いま大臣からお答えのように、四万二千五百トンで受け入れざるを得ないということになりますと、去年大幅な漁獲量削減減船という厳しい試練を乗り越えてきただけに、さらにもう一度、やる気十分のサケマス漁業者に相当厳しい減船を引き続き要請しなければならぬ。これに対して関係漁業者は、生活の問題としても地域経済の問題としても深刻な事態に置かれておると思うのです。そういうことで、これを受け入れたことによる、減船その他の問題も含めたこれからの対応政府としてどうやるのかということについても、ひとつお考えを述べていただきたいというふうに思います。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回四万二千五百トンで妥結をしたことに関しましては、ことしになりましてからの長い間の交渉経過、そしてまた、最終的には中川農林大臣の数次にわたるイシコフ漁業大臣との交渉が行われた結果、ソ連側からこれ以上の譲歩を引き出すことは困難である、このまま進めば無協定状態になってしまって、今後の日ソ漁業関係にまことに不測の事態が起こるかもしれない。公海のサケマス漁業については、日本ソ連との間に、秩序のある漁獲が今後さらに永続的に行われるということをわが国としても期待をいたしておるわけでございますし、そういう方向に努力をしなければならぬわけですから、そうした大局的な判断に立ちまして、いわば涙をのんだ形で四万二千五百トンを受け入れたわけでございます。もちろんこの量は、二年続きで大体半減ということになるわけでございますから、漁業者に与える影響はまさに深刻なものがあるわけでございまして、政府といたしましては、中川農林大臣の帰国を待ちまして、この四万二千五百トンの決定によって減船その他の問題が早速起こってくるわけでございますから、この減船問題に対する政府としての対策を決めなければならない、救済措置を含めた減船措置決定をしなければならぬ、こういうふうに考えております。昨年も減船措置に伴うところの救済を行ったわけでありますから、そうした昨年の例等もありますし、これに準じた形でわれわれとしては救済措置を行って、漁業者の皆様に対しても、国としてのできる限りのことをして差し上げなければならない、こういうふうに思っておるわけであります。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 いま安倍大臣からもお話しのように、いわゆる従来ありました日ソ漁業条約については、この四月二十九日で日切れになる。したがって、長期協定として日ソ漁業協力協定というものを結ばなければならぬということで、無協約状態は避ける。そのためには、高次政治的判断からいろいろ努力をして、最終的にこれ以上は進展しないというところで、四万二千五百トンのサケマス漁獲量についてはこれを受け入れる。さらに、きょうの折衝を通じて、折衝の結果出てくる禁漁区の緩和といいますか削減といいますか、そういった問題についても、折衝の結果に基づいて判断をしながら交渉妥結をするという運びについては、時間的な制約から見て当然そういうことに相なろうと思いますが、先ほどの大臣答弁とも関連いたしますけれども、それに伴う関係漁業者減船その他を含む問題、これは非常に深刻な問題でありますので、大臣からは昨年に準じて誠意ある対策をとるというふうにおっしゃいましたけれども、これは去年以上の大変な事態だというふうに思うのです。そういう点で、中川農林大臣が帰ってまいりましたら、そういった問題についても万般の遺漏のないような対策をぜひ関係者の要請に基づいて講じてもらいたいというふうに思っております。これはいずれ大臣がお帰りになったならば、本委員会としても、交渉経過、さらにまた日ソ漁業協力協定というものを中心にした論議の中でいたすことにしますので、日ソ漁業交渉に関する問題についてはこの程度で終わらせていただいて、次に、尖閣列島周辺水域における中国漁船領海侵犯事件という問題について関連して触れたいと思うわけでございます。  これは本委員会のみならず、外務委員会その他衆参両院関係委員会で問題が発生以来取り上げられておることでありまして、私自身は、積荷保険の一部改正というのが本論の法律審議でございますが、これが現実に起こっておるいまの事態でございますので、やはり少しくお尋ねをいたしたいというふうに思います。  前置きを省きまして、外務省からもおいで願っておると思うのでありますが、尖閣列島周辺水域における中国漁船領海侵犯事件について、外務省としてとってまいりました対応、それから外務省答弁に引き続きまして、海上保安庁からもおいで願っておるというふうに思うのでありますが、海上保安庁立場から領海侵犯事件として対応してまいりましたそれらの点について、それぞれ答弁を願いたいというふうに思います。
  8. 三宅和助

    三宅政府委員 お答えいたします。  外務省といたしましては、本件事件を非常に重要視いたしまして、まず種々の外交的な努力をしてまいったわけでございます。現地におきましてもまた東京におきましても数回の会談を続けまして、まず本件は非常に遺憾である。日本固有領土である、すぐに退去してもらいたい。第三点は、今後このような事件を再発してもらっては困るというようなことを申し上げてきております。  それで、いま現在、きのうの午後から領海から中国漁船は出ております。しかしながら、このような状況をあくまでも確保してまいりたいということでございます。先方側はこれはあくまでも偶発的な事故であって、故意、計画的に行ったものでないという説明をしております。そういうようなことから、先方といたしましては大局的な見地でこの問題を処理したいということを発言しております。しかしながら、すでに御説明いたしましたように、現在のところは領海から出ておりますけれども、依然として漁船が出たり入ったり流動的であります。政府といたしましては、現在のところこのような中国漁船動きを注意深く見ておりまして、今後いろいろな措置を、中国側の出方、漁船動き等を見ながら総合的に判断しながら対応してまいりたい、こう考えております。
  9. 久世勝巳

    久世説明員 お答えします。  尖閣諸島周辺海域巡視警戒中の海上保安庁第十一管区巡視船「やえやま」は、四月十二日午前七時三十分ごろ、先生御承知のとおり、レーダーによりまして尖閣諸島の北々西海域に多数の船影を認めて直ちに現場に急行したわけでございますが、同八時三十分ごろ、わが国領海の内外に約百隻の中国漁船を発見したわけでございます。この約百隻のうち十六隻がわが国領海内において漂泊、航走または操業中でございまして、これに対しまして巡視船は、拡声機垂れ幕等によりまして領海外退去を命じたところ、中国漁船当該海域中国領海である旨を主張しつつ、領海外への退去あるいは領海内への再入域を数度にわたって繰り返しましたが、先ほど外務省の方からも答弁があったとおり、十八日の午後二時十五分以降はすべての中国漁船領海外退去しているという現状でございます。  なお、ちなみに、昨十八日に海上保安庁航空機が視認した総隻数は二百隻余りとなっているわけでございます。海上保安庁といたしましては、各管区から巡視船及び航空機を応援派遣いたしまして、現在十隻の巡視船及び四機の航空機現場におきまして監視及び警戒を続行しているわけでございます。  以上でございます。
  10. 角屋堅次郎

    角屋委員 いまの外務省海上保安庁対応を受けて、安倍大臣にお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  申し上げるまでもなく、日中平和友好条約締結という非常に大きな政治課題政府も早急に処理をしたい、こういう立場におられると思いますし、われわれ自身も、日中の平和友好条約早期締結すべきである、こういうことを強く主張しておる立場にあります。たまたまそういう過程の中で、尖閣列島周辺におきます中国漁船わが国領海侵犯事件というまことに遺憾な事件が出てまいりました。約一週間以上この問題で国民の注目を集めておるわけであります。  そこで、政府もそうでありますし、われわれも尖閣列島日本固有領土である、そういう立場に立っておるわけであります。したがって、わが国固有領土に対する中国漁船領海侵犯は看過することはできない、領海からは退去してもらわなければいけない、正常状態に復してもらわなければいかぬという立場にありますと同時に、一部に尖閣列島問題たな上げ論あるいは日中平和友好条約とは別個問題という議論もございますけれども、これだけ問題が出てきました以上は、日中平和友好条約交渉をまとめる段階おいては、これを不問に付して避けて通るというわけにいかぬだろうというふうに、私は率直に言って思うのであります。  そういう点について、政府としては、尖閣三原則というようなことを政府首脳会議で決められ、きわめて慎重な態度対応しておるということは、私はそういうふうにすべきものだ。何か事が起こると、政府与党ともに、あるいは野党も渦中に巻き込まれるというのではなしに、やはり長期展望の上に立って事態には冷静に対応するという姿勢が、国際問題については必要であるというふうに私は基本的には思います。しかし、安倍大臣は、農林大臣臨時代理であると同時に、現在内閣のかなめである官房長官のお立場にもあられるわけでありますが、日中平和友好条約早期締結したいという姿勢の中で、今回起こっておる尖閣列島における中国漁船侵犯問題、これらを今後の推移を見ながらどういうふうに政府としては対応されようとしておるのか、そういった方針についてこの機会お答えを願っておきたいと思うのであります。
  11. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の尖閣列島中国漁船によるところの領海侵犯事件は、まことに残念しごくなことでありまして、これは明らかにわが国の主権に対する侵害であるわけであります。その後中国漁船侵犯は繰り返されておるわけでありますが、きょうの段階におきましては、入手した情報では、領海には入っておらない、しかし二百隻に余る中国漁船が依然として領海の外で集結をしておるということでございますから、今後どういう情勢になるか見守っていかなければならぬわけでありますが、政府といたしましては、この侵犯事件が起こりましてから、先ほど御指摘がございましたように、先週の土曜日に政府与党首脳会議を開きましてこの問題に対処する基本方針を決めたわけでございます。その方針一つは、尖閣諸島日本固有領土であることは明白であり、中国漁船が依然領海侵犯を繰り返していることは遺憾である。二番目としては、政府としては一刻も早く中国侵犯漁船退去させるよう全力を尽くす。三番目として、共同声明の趣旨に沿って条約締結に向かって努力するという方針に変わりはない。この三つ方針を決めたわけでございまして、われわれは、こうした三つ基本方針に従って今後この問題を処理していかなければならない、あくまでも沈着冷静に対処していくというのが現在の政府の基本的な考え方であります。
  12. 角屋堅次郎

    角屋委員 尖閣列島周辺水域における中国漁船領海侵犯事件については、日中平和友好条約締結という大道の上に立ちながら、なお当面起こっておる問題については日本立場おいてこれを的確にさばいて目標の実現のために努力をするということで、政府にさらに今後のいわゆる筋道の立ったさばき方を強く要請しておきたいというふうに思うわけでございます。  次に、ニュージーランドの問題に若干触れたいと思います。  これは、ことし鈴木農林大臣が二月に同国を訪れまして、同国首脳会談をして、漁業と貿易問題という立場から提案を行いましたが、結局物別れに終わるということで、日本側として四月一日から相手の二百海里の外に出ることになりました。ここは遠洋トロール、マグロはえなわ、イカ釣り、底はえなわ等十六万六千トン、約三百隻の操業による漁業実績が従来あったわけでありまして、非常に貴重な漁場でありました。これは結局鈴木さんの折衝を通じて話がまとまりませんでしたけれども、今後もう見込みがないというふうな判断なのか、情勢の変化によってさらにニュージーランドについても相手側対応いかんによっては話を始めようという姿勢なのか、その辺のところについてお答えを願っておきたいと思うわけでございます。
  13. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ニュージーランドに対しましては、かねがね漁業交渉再開を申し入れておるわけでありますが、同国漁業交渉と牛肉、粉乳、バター、木材等との貿易問題を絡めて応じてきてない。本年二月には鈴木農林大臣ニュージーランドを訪れまして同国首脳会談をいたしまして、精力的に問題の解決のために努力をされたわけでございますが、先方は依然として貿易問題につきましてわが方の提案に満足をしないで、あくまでも酪農製品等とも絡めて二百海里問題を解決するという姿勢を崩さないということで物別れになっておるわけであります。その結果として、四月一日からニュージーランドは二百海里の本格実施を行いまして、現在わが国漁船ニュージーランド二百海里水域外に出ておる状態でございまして、毎年大体十六万トンに余る漁獲を上げておりましたわが国漁業につきましては非常に大きな影響が出てきておる、深刻な打撃を受けておるという情勢でございます。  政府といたしましては、操業再開を確保するためには、今後ともニュージーランド政府を説得して、何とか漁業交渉開始糸口を見出したいということで現在粘り強く努力をいたしておるわけでありますが、なかなかまだその糸口を見出すことも困難であると思っておりますけれども、しかし、ニュージーランド政府も、このまま放置していこうということではないと私は思うわけであります。これまでの日本ニュージーランド友好関係から見まして、このまま放置していいとは考えておりませんので、あくまでも交渉再開のための努力を続けて、何とか二百海里内の漁業ができるように、これはもう全力を尽くしてまいりたい、こういう決意でございます。
  14. 角屋堅次郎

    角屋委員 いま大臣からお答えのように、ニュージーランドにおける問題というのは、非常に貴重な漁場一つでありまして、いろいろな問題が横たわっておるわけでありますけれども、漁業プロパーの問題から言えば、何とか問題を打開をして、再び貴重な漁場日本漁業漁場として活用できるように、今後とも努力をしてもらいたいと思います。  引き続き北朝鮮との漁業の問題でありますけれども、これは従来の経過は別として、御案内のとおり、日朝議連の交渉過程における御努力や、わが党も前年度代表団を派遣するというふうなこと等も含めて、昨年の九月五日に日朝漁業協議会の吉井代表と朝鮮東海水産協同組合連盟の金代表との間で漁業分野における協力に関する暫定合意書の調印が行われて、現在それに基づいて漁業が行われることに相なっておるわけであります。もちろん、この北朝鮮の問題については、相手国が軍事境界線として日本海側五十海里あるいは黄海側二百海里を設定しておること自身については、国際的な海洋法の立場おいて議論として私はあり得ると思うのでありますけれども、しかし、安全操業立場から言えば、話し合いで、しかもこれは未承認国ということもあって民間協定でやっておるという状態でありますので、現実に漁業者の生活の立場から言えば、話し合いのついたところで漁業操業をやるということは当然の推移だろうというふうに思います。ことしに入りましてから、党の立場になりますけれども、飛鳥田委員長参加の石川県における漁民集会というのに漁業サイドから私も出席をした際にも、六月三十日に期限切れになる北朝鮮との現在の民間協定、これを本格協定に切りかえるについて政府にも強く要請してもらいたい、またわが党にも積極的に協力してもらいたいという強い要請を受けてまいりました。政府としては、ある意味では議連あるいは各党あるいは漁業団体の話し合いをバックアップする立場であろうかと思いまするけれども、この北朝鮮の六月三十日に期限切れになる問題についてどういう姿勢でバックアップをし、漁業者立場に立つ民間協定ができ上がるようにやろうとされるのか、そのお考え方についてお伺いをしておきたいと思います。
  15. 三宅和助

    三宅政府委員 政府といたしましても、この地域における安全操業漁業量の確保につきましては非常に関心を持っております。したがいまして、先生御指摘のとおり、われわれといたしまして具体的に何ができるかということは、今後民間協定が進展いたしまして、われわれといたしましても、この種の民間協定が期限前にできまして、漁業量の確保ということが十分図られるということを期待しております。また、その段階政府としては何ができるか。政府保証を求められておりますけれども、まだ先方の意図が明確でございませんものですから、いまこの段階でどうこうという立場にはございませんが、その段階で具体的に検討してまいりたい、こう考えております。
  16. 角屋堅次郎

    角屋委員 水産庁長官、御答弁があれば……。
  17. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、民間の協定が結ばれるということでございまして、日本側の態勢も一応整備をし直すということ、それから、こういう交渉につきましては、いろいろ民間の外交的な経験が少ないわけでございますから、できる限りわれわれとしても内面的に御援助できる問題につきましては御相談にも乗り、積極的に円満な締結が図られるよう推進してまいりたいというように考えております。
  18. 角屋堅次郎

    角屋委員 北朝鮮との漁業の民間協定問題は、六月三十日の期限切れに向けて若干まだ時間的ゆとりのあるといいますか、若干間のある問題であります。われわれの党としても、もちろんやるべきことについてはやらなければならぬし、また議連としてもこれから当然御配慮されることと思うのでありますが、やはり政府としても、可能な限りより日本関係漁業者立場に立って協定が結ばれますように、情勢を的確に把握しながらバックアップをしてもらいたいということを要請をいたしておきたいと思います。  国際漁業の問題では、日ソ漁業交渉の前にすでに話がまとまりました日米加の問題その他各般の問題がございます。しかし、積荷保険試験実施から本格実施へという議論もしなければなりませんし、安倍大臣自身は、私の二時間の質問の前半の部分で他の用務で退席される、それは私も了承いたしておるわけでございますが、そういった関係もありますので、国際漁業の問題については、さらに中南米あるいはアフリカ、南太平洋諸国、こういった中には群島理論というのを提唱しておる諸国もあるわけですけれども、こういった諸国における漁業規制というふうな問題についての動向はそれぞれどうなってきておるかという点について、ひとつ簡潔に御答弁を願いたいというふうに思います。
  19. 森整治

    ○森(整)政府委員 端的に申しまして、南太平洋諸国、南太平洋フォーラム諸国と言っておるわけでございますが、これらのメキシコ、ガイアナ、パプア・ニューギニア、ギルバート、南アフリカ等十五カ国と、二百海里を実施している国あるいはもう決定をしている国ということでいままで交渉をいたしてきたわけであります。先ほど御指摘のニュージーランドにつきましてはまだいろいろ問題が残っておりますが、何らかの形での協定をつくりまして入漁が認められているという国々が、南アフリカ、モーリタニア、アルゼンチン、インドネシアの四カ国ということになっておるわけでございます。またそのほかにも、暫定措置でとりあえず入漁料の支払い等によりまして操業を確保しているという国が、パプア・ニューギニア、ギルバート、エクアドル、ガイアナ、チリというような国々でございます。大体こういう国々は、わが国のカツオ・マグロの漁場となっておる国でございます。現在その中でもパプア・ニューギニアと交渉を進めておりますが、いろいろな入漁料の条件がございまして交渉は難航はいたしておりますけれども、できる限りそれらの国々との協定を進めまして、漁場の確保に努めていくということで進めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  20. 角屋堅次郎

    角屋委員 いま水産庁長官答弁にもありましたように、先ほど来取り上げております関係国あるいはその他の中南米、アフリカ、南太平洋諸国等、わが国をめぐる国際漁業情勢というものを見てまりますと、いずれにしても、昨年来各国の二百海里漁業水域の設定によります新たな漁業秩序の形成の中で、わが国漁業をめぐる情勢というのはきわめて厳しい条件にある。そういったことから、積荷保険の対象になるような沖合い、遠洋漁業というふうな点で、減船とか漁場の転換等操業形態の変更を余儀なくされる事態がだんだんと起こってきておるという形で、結局いまの時点で、本格実施にはまだ保険設計上の整備をしなければならぬ、五カ年の延長をしてもらいたいということにつながるわけでありますが、この機会にさらに第三次国連海洋法会議の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  申すまでもなく、第三次国連海洋法会議は、第一会期は一九七三年十二月三日から十二月十四日まで、ニューヨークで百四十五国が集まって開催をされまして以降、第二会期、第三会期、第四会期とずっと続いてまいりまして、ことしは第七会期ということになっておるわけでございます。第七会期はことしの三月二十八日から七、八週間ということで、ジュネーブで公式統合草案の作成を目指して開催をされておるという状況でありますけれども、われわれ第三次国連海洋法会議の推移を見ておりますと、特に一九七四年六月二十日から八月二十九日までカラカスで開かれた第二会期というのは、漁業界にとっては、大変やはり日本漁業の危機であるということで、ある意味において大騒ぎをしたというと表現が悪いですけれども、てんやわんやの事態であった。  それから現実に、経済水域二百海里は、本会議で反対は日本の小木曽大使のみであるというような状態から、世界の大勢がとうとうと進む中で国際協調上受けざるを得ないというふうなことがあり、単一草案の作成あるいは改訂単一草案の作成等を通じて今日に来ておるわけでありますが、御案内のとおり、一昨年、特に昨年以来、国際海洋法会議のオーソライズされた草案が決定をされるという前に二百海里先行時代を迎えておる。まかり間違いまして国連海洋法会議がいつまでもじんぜんそのまま続いていくということになると、国際海洋法としてオーソライズされない形の先行状態が、既成事実となってそれぞれの各国間で結ばれていく。これは国際連帯、国際協調の立場から見れば、何といっても新しい第三期の海洋法体制というものは当然つくられなければならぬというふうに、基本的には私ども思うわけであります。  この機会に、まず外務省の方からお伺いをしたいわけでありますけれども、第三次国連海洋法会議経過も踏まえながら、しかも第七会期に今日臨んでおる、第三期の海洋法体制をつくるという立場からの情勢判断と、現在の時点における会議情勢等について御説明を願っておきたいと思います。
  21. 久米邦貞

    ○久米説明員 先生がただいま御指摘になりましたとおり、現在ジュネーブで第三次国連海洋法会議の第七会期というのが開かれております。海洋法会議におきましては、経済水域二百海里の問題を含めまして領海を十二海里にすること、あるいは国際海峡の制度、そういったものにつきましては大体方向が固まりつつあるわけでございますけれども、現在残されておる問題といたしまして、各国の管轄権に服さない、二百海里経済水域でもいわゆる大陸棚でもないその外側の公海の地下の、深海海底の鉱物資源をどういう制度のもとに開発していくかという問題が焦点になっておりまして、この問題につきまして開発途上国と先進諸国が激しく対立しているのが現状でございます。したがいまして、いま開かれております第七会期におきましては、まずこの問題を解決することに焦点が当てられているわけでございます。  見通しでございますけれども、現在第七会期が始まったばかりでございますので、確たる見通しをこの場で申し上げるわけにはいかないのですけれども、この深海海底の開発の問題というのは、非常に南北問題の絡んだ激しい対立が現在なお開発途上国と先進国の間で続いておりまして、昨年の夏、七月に出されました統合交渉草案をベースにいたしまして、現在両者の間の妥協案の作成の交渉が進められております。今回、この問題につきまして何らかの実質的な合意が達成されますれば、さらにこれを正式な案文にいたしまして、次の会期に引き継いでいくことになると思われます。
  22. 角屋堅次郎

    角屋委員 ちょっと歯切れが悪いという声が出ましたが、まさにそういう感じを持つわけですが、それは別といたしまして、安倍大臣も退席の時間が迫っておりますので、漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案の問題に関連をいたしまして、基本的な問題だけをひとつ大臣から御答弁願っておきたいと思います。  先ほど来審議を進めてまいりましたように、これは五カ年間ということで、今日まで積荷保険についても試験実施をされてまいりました。国際的な漁業条件の変化と、これにたえ得る保険設計上の整備という立場から、さらに五カ年期間を延長しようということでありますけれども、案外、試験実施五カ年間延長ということになりますと、五年もあるという安易な立場試験実施延長を受けてもらっては私は困ると思うのでありまして、やはり関係漁業者からすれば、きのう本委員会おいて採決を行いましたように、農業災害補償法については、畑作物共済、園芸施設共済については試験実施から本格実施ということで、ちゃんと本格実施の法案にして審議をし、これを本委員会としても採決を行う、こういう模範にすべき事例が先行して行われておるわけでありまして、漁業情勢は国際的に大きく激動しているわけですから、今回の五カ年間の延長というのは、これは保険設計上認めざるを得ないという立場にわれわれも立ちますけれども、しかし、いままでの既存の試験実施による知見というのもあるわけでありますし、それに新しい情勢に即応する保険設計上の基礎データの整備というのを急いで、この五カ年間の間には必ず本格実施に移すという姿勢をわれわれとしては強く望みたい。  同時に、大臣も御承知のように、この漁船積荷保険と、後からおくれて漁船船主責任保険試験実施としてすべり出しておるわけであります。たまたま漁船積荷保険が先に実施をされ、それからおくれて漁船船主責任保険試験実施に移される。それで、積荷保険の方はこれから五カ年の延長をしようとする。私は、漁船積荷保険についても、漁船船主責任保険についても、本格実施の場合には、できる限り同時にこの二つの問題は本格実施に移されるということが望ましいというふうに思っておるわけでありまして、そういう意味からいきますと、このものだけの試験実施だけじゃなしに、同時に、後からおくれてすべり出しております漁船船主責任保険も含めた本格実施への準備というものを進めてまいらなければならぬというふうに思うわけであります。  したがって、安倍大臣立場として、今回五カ年間期限を延長するに当たって、次は本格実施ということを前提にする毅然たるお考え方と、同時にもう一つ、後から試験実施されておるものについても、可能な限りこれを含めて、同時に本格実施としてスタートしたいというふうな基本的な考え方について御答弁を願っておきたいと思うわけでございます。
  23. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 漁船積荷保険につきましては、五年間これから試験期間を延長さしてもらうということでございますが、これについては、提案理由の説明の際にも申し上げましたし、いま御説明がございましたように、保険設計上の整備というものが必要であるということ、あるいはまた、二百海里をめぐる漁業関係が非常に激動して、この際実施に踏み出すということには問題がある、もっと見きわめなければならぬという立場で今回お願いをいたしたわけでありますが、漁船積荷保険漁船船主責任保険、これはいま御質問にありますように、大体軌を一にして実施すべきじゃないか、そうして五年間試験をした以上は、データ等も整備して、五年後にはちゃんと実施ができるようにしろ、こういう御意見でございますが、この漁船積荷保険漁船船主責任保険試験実施終了年次につきましては、御承知のように二年間のずれが生ずることとなっておるわけでありますが、両保険とも速やかに本格実施という方針のもとに、漁船に関する総合的な保険制度のあり方を早急に検討をいたしまして、基礎資料が整備されたものから順次本格実施に移行さしてまいりたいというふうに考えております。したがって、試験実施終了年次のずれをあらかじめ調整をしておく必要はないのではないか。ずれがありますけれども、整備され次第直ちに実施する、こういう基本的な態度方針で進みたい、こういうのが政府の考えでございます。
  24. 角屋堅次郎

    角屋委員 これはいま安倍大臣から御答弁があって、いまの時点で答弁をするとすればそういうふうに答えておいた方が無難であるというふうに私も思います。あるいはまた、実態としてそういうことになる可能性もあり得るというふうに思います。  しかし、いずれにしても、漁船保険制度研究会というのが、四十七年五月四日の時点で関係者いろいろ議論をして、漁船積荷保険、これは試験実施をする必要がある、あるいは漁船船主責任保険、これは試験実施をする必要がある、いずれもなるべく早い機会本格実施をする必要があるというのを、ある意味では農林省としては受けて試験実施がそれぞれ始まったという経緯があるわけですけれども、別にこれは、別々の時期に本格実施に根本的な正当な理由があるわけではないわけです。たまたま結果として時期的なずれができたということでありますが、しかも、これは本格実施する場合には、大臣おいでにならなくなってからまた議論しなければならぬ問題になりますけれども、いわゆる保険があり、再保険があり、その再保険を、漁船保険について言えばこれは国が再保険をするという立場本格実施が行われておりますが、積荷保険あるいは船主責任保険については、いまの段階漁船保険中央会がとりあえず再保険の引き受けとして現実に実施をしておる。これを本格実施の場合にはどこがこれを背負うのかという問題も、試験実施をしておる二つについては、そういう組織論、体系論という意味からも十分やはりこれから検討していかなければならぬ問題である。全然別の問題ではないということもありまして、そういう点で、可能な限り本格実施のときには同時にスタートしたらどうだろう、どうしてもそれ以外はだめだという意味ではありませんけれども、考え方としては、可能な限り同時にスタートしたらどうだろうというのが、これからの保険の、実際に運営していく組織の体系論、制度論というふうな意味からも申し上げておるわけであります。  そこで、大臣にさらにお伺いをしたい点は、これは大臣が退席されましても政務次官もおられるわけでありますけれども、前々から本格実施に向けて問題になっております保険共済関係の三制度、三団体というものの統合とか一元化というふうな問題については、きょうも参考人の方々からも意見を聞こうというふうに思って御出席を願っておるわけでありますが、大臣として、余り断定的でなくて、あらましこういう考え方で考えておるという点があれば、お答えを願っておきたいというふうに思うわけでございます。
  25. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと御意見があることは承知しておるわけでありますが、保険共済の三制度、三団体の統合一元化につきましては、現在、保険共済団体保険共済共同推進センターを設置いたしまして、保険共済事務の共同化に関する試験事業を実施をしておるわけでございます。この成果を待ちまして統合一元化に関する具体的な方策を検討することといたしたい、いろいろな意見を拝聴して一元化に関する具体的な方策を検討することとしたい、こういうふうに基本的に考えております。
  26. 角屋堅次郎

    角屋委員 大臣、約一時間ということで、退席されて結構でございます。  そこでお伺いをしたいのは、漁船積荷保険が発足した五年前、昭和四十八年の段階と現在とでは国際漁業環境というのは大きく変化をしてまいっておるわけでありますが、積荷保険実施していく立場から見て、対象であるとかあるいは漁業形態であるとかというふうなものがこの五年間のうちにどのように変化をしてきたのか、あるいは今後五年を試験実施過程展望します場合に、変化要因としてはどういうものが予測されるのかといった点からひとつ議論を始めていきたいというふうに思います。
  27. 森整治

    ○森(整)政府委員 四十八年に漁船積荷保険実施した時期と非常に大きく様相が変わってきておりまして、先ほど先生の御指摘のとおり、海洋法会議、あるいは二百海里時代ということで、いろいろ漁業をめぐります国際環境が変わってきておるわけでございます。  そこで、漁船積荷保険というのは、その性格上遠洋、沖合い漁業を中心に事業が行われているということで、したがいまして、こういう漁業の性格上いろいろ影響を大きく受けておるわけで、減船あるいは漁場転換、あるいは二百海里でいろいろ規制をされまして航海日数が非常にふえてくる、あるいは操業密度が非常に高まってくるというようなことで、操業の形態の変化が余儀なくされておるわけでございます。一例を申し上げますと、カツオ・マグロ漁業につきましては、国際的な規制の考え方についてはいろいろあるわけでございますけれども、先ほど申しました南太平洋諸国では沿岸国が管轄権を行使するということを強く主張しておりまして、カツオ・マグロの主要漁場でございますが、そういうところで、先ほどもお話が出ましたように、ニュージーランドから一応退去を余儀なくされるというようなことで、マグロのグループが漁場をいろいろ変えて操業しなければならないというようなことが出てきておるわけであります。このことは、ほかの遠洋底びき漁業その他この漁船積荷保険で対象にしておりますいろいろな漁種につきまして、それぞれにつきまして同様な事情があるわけであります。そういうものは一つ一つやはり新しい形態の中での保険の基礎資料を至急整備していく必要があるのではないか、こういう観点に立って今回の改正をお願いいたしている次第でございます。
  28. 角屋堅次郎

    角屋委員 漁船積荷保険試験実施をスタートさせた四十八年、それから五十年の十二の対象漁種についてのデータをそれぞれ持っておりますが、それで見てまいりますと、いわゆる母集団に当たる部分は、四十八年のときは七千三百六十四隻、五十二年の段階で九千百五隻、約一万足らずが母集団ということに相なろうと思うわけです。しかし、対象漁種についても、当初は十二漁種のうちで九つからスタートいたしまして、五十一年から北洋かご初め三つ対象漁種に加えるという経過が御承知のようにありますし、また、マグロはえなわを初め、対象漁種を見てまいりますと、いわゆるトン数について、マグロはえなわで言えば五十トン以上というのを二十トン以上ということでこれを引き下げるとか、あるいはまた、中小型サケマス流し網についても四十九年から対象漁船のトン数下限を五十トンからゼロトンに引き下げるとか、あるいはイカ釣りについても五十一年から対象漁船のトン数下限を五十トンから二十トンに引き下げるとか、いろいろ実態に即する対象漁種の拡大なりあるいはトン数の下限の引き下げなりが行われてまいりまして、その過程で、十二漁種については国際漁業関係減船がそれぞれ行われてきたりあるいは休漁が行われてきたりという厳しい情勢が資料の中にも明らかにされておるわけであります。そういう情勢の中で試験実施が行われてまいったわけでございますけれども、積荷保険試験実施のいままでの実施過程におきまして、いわゆる加入隻数というもののプログラムを立てなければならぬ、こういった加入隻数等のプログラムと実際の毎年度の実施をしてまいりました実績との対比等は一体どういうふうになっておるか、お話しを願いたいというふうに思います。
  29. 森整治

    ○森(整)政府委員 四十八年から五十一年までの計画に対します加入実績は、隻数で一二一%、契約金額で一二九%、純保険料で一〇四%ということで、いずれも計画を上回っておるわけでございます。  一方、保険設計の基礎となります損害率を年度別、漁業種類別に見てまいりますと、北洋のはえなわ刺し網漁業につきましては五十年に三四〇%ということになっておりますが、他の年度はゼロということで、振幅が非常にはなはだしいということで、この点は、必ずしもこれにつきましては安定した制度となっているとは言えないというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  30. 角屋堅次郎

    角屋委員 細かい数字は、時間の関係もありますから、その程度で了承しておきます。  それから、損害率、危険率等についても若干触れられたわけでありますが、損害率について言えば、四十八年から五十一年までの数字上でいきますと三八・三%、危険率でもそれぞれデータが出ておるわけでありますが、同種類の民保との関係おいて——民間でも同種類の形のものを実施しておるわけでありますが、民保の実態はどういうふうなことであるか、関連してお答えを願っておきたいというふうに思います。
  31. 森整治

    ○森(整)政府委員 民保の方の漁獲保険でございますが、これの四十八年から五十一年の累計を見ますと、加入隻数で三千四百四十四隻ということで、大体マグロはえな漁船が圧倒的に多い。次いでは、遠洋底びき網漁船が二百八十一隻ということで八%。申しおくれましたが、マグロはえな漁船は二千三百七十七隻、六九%ということになっております。保険料の収入と、いろいろございますが、損害率が八三%ということに相なっているようでございます。
  32. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど来聞いておりますように、漁船積荷保険試験実施の加入のプログラム、実際の実績、それから、試験実施過程におきます損害率、危険率、民保の同種類のものの損害率等についてお伺いをしてまいりましたが、いまお話しのように、これまでの積荷保険試験実施では、損害率三八・三%。民保の場合は、ほぼ同じ期間中の損害率が八三%、この積荷保険の同じ期間の危険率は〇・一五二ということに数字上なっておるわけであります。  申し上げるまでもなく、損害率そのものは支払い保険金を純保険料で割った数字であり、また、危険率は支払い保険金を契約金額で割った数字でありますけれども、これはやはり、さらに今後の試験実施データの整備によって、もう少し保険設計上の数字が固まってくると、より本格設計のための基礎データが整備するということになろうと思いますが、これと関連をして、この試験実施過程におきます事故の発生態様というものが御承知のようにあるわけであります。火災があったり、あるいは機関故障があったり、冷凍機械装置の故障があったり、操船上の問題でも、沈没があり座礁があり衝突がありというふうなことで、漁船積荷保険の発動に関連する事故がいろいろ発生をしてまいるわけでありまして、やはりこういう事故は最大限ないように努力はしてまいらなければならぬことでございますけれども、こういった試験実施過程におきます事故の発生態様について御説明を願いたいと思います。
  33. 森整治

    ○森(整)政府委員 試験実施の四十八年の十月から五十二年の三月までに生じました事故の原因別内訳を見てまいりますと、衝突、座礁等の操船上の過失によるものが六四%、それから冷凍機械装置の故障によるものが一三%、漁船の火災によるもの及び機関故障によるものがそれぞれ四%、それ以外の原因によるものが一五%ということになっておりまして、いずれも衝突、座礁等の操船上の、あるいは冷凍機の故障、そういうものが多いようでございます。
  34. 角屋堅次郎

    角屋委員 事故発生の態様とも関連して、この試験実施のときにもそうでありますが、いわゆる特約というのをやるわけですね。特約の契約の実態、これとの関連における事故発生の態様というものについても御説明を願っておきたいと思います。
  35. 森整治

    ○森(整)政府委員 五十一年の引き受け実績で見ますと、冷凍機の事故が高いということで、冷凍特約というのをつけておりまして、これが全体で引き受け千六百八十七件のうち、六百三十五件ということで、特約率というのは三七・六ということに相なっております。
  36. 角屋堅次郎

    角屋委員 数字はそれでいいのかな。別の数字を読んでおらぬかな。
  37. 尾島雄一

    ○尾島説明員 昭和五十一年度の漁船積荷保険の引き受けの中で、総引き受け件数の中の冷凍機特約分の実績は、引き受け実績全体で千六百八十七件のうち、冷凍機特約件数が六百三十五件ございまして、その特約率は三七・六%ということに相なっておるわけでございます。  それで、これは冷凍機特約をつけることによりまして冷凍機の事故の際の損害をてん補するということで実施いたしておるわけでございますが、したがいまして、それの事故につきましては、先ほど長官から御説明いたしましたように、冷凍機事故というものは、事故原因から見ますと第二の高率の事故原因になっているということでございます。
  38. 角屋堅次郎

    角屋委員 これから試験実施を引き続き五年やる場合に、やはり考えなければならぬ一つの問題は、とにかく母集団と加入の実際の隻数との関連問題というのがあるわけであります。五十二年で言えば、母集団として九千百五隻ということだと思いますが、実際の加入実績からいきますと、これは前からのもので言えば、四十八年当時八百三十二隻、四十九年が千四百六十三隻、五十年が千五百二十二隻、五十一年が千六百八十七隻と、加入隻数が逐年増加の傾向にありますけれども、そういう加入の隻数から得られるデータと、本格実施の場合の保険設計という点から見ますと、これからも加入隻数という問題についても、五年間の試験実施経過を踏まえた配慮が当然考えられるのだろうというふうに思いますが、その辺のところはどう考えておりますか。
  39. 森整治

    ○森(整)政府委員 加入率と申しますか、加入実績が逐次毎年ふえてきておりまして、結局母集団がふえてくるということは、保険の設計上当然歓迎をすべきことでありますので、積極的にこの加入実績をふやしていくということについて、今後の新しい期間につきましても促進をしてまいるということにしていきたいというふうに考えております。
  40. 角屋堅次郎

    角屋委員 せっかく漁済連の中里専務理事漁船保険中央会の矢野専務理事にも委員会の了承を得ておいで願っておりますので、大分お待たせをしたと思いますが、関係する部分について、それぞれ参考人から御意見を承りたいというふうに思います。初めて参考人に出られた方もあろうと思いますので、緊張ぎみかと思いますが、フランクな気持ちで、お尋ねの点について隔意ない御意見をひとつ出していただきたいというように要望しておきます。  そこで、先ほども、安倍大臣が退席される関係で、本来ならば、質問の順序からいけば順番にいかなければならぬところを、数点だけ先行させましたが、まず参考人にお伺いしたいということで御出席を求めましたのは、一つは、本格実施をやっていくに当たって、当然これは前々から議論があり考えていかなければならぬ三制度、三団体の統合一元化問題というのがございます。  これは、参考人も御承知のように、昭和四十年代から、必ずしも声がなかったわけでなくて、国会の舞台でもそういう議論をしてまいりました経緯を、私どもも直接取り上げた問題として承知をしておるわけでありますが、御案内のとおり、この漁業に関する災害補償制度検討会というのを委員十五人でつくられて、ここで、池尻さんも呼びたかったのですけれども、池尻文二さんや中里久夫さんや矢野静男さんや、傍聴席に見えております全水共の専務理事西村清俊さんなども含めて、いろいろ検討されたわけです。  そういうことで、三制度、三団体の統合一元化問題、余り責任ある立場だというので肩のこった御答弁ということでなしに、フランクな立場でひとつお答えを願いたいと思うのでありますが、これらの問題に委員としても参加をされ、またそれぞれの所属しておる団体立場も踏まえながら、どういうふうにお考えになっておるか、漁済連の中里専務、それから漁船保険中央会の矢野専務という順でお答えを願いたいというふうに思います。
  41. 中里久夫

    中里参考人 中里でございます。  いま、漁業におきましては三団体、三制度がございまして、それぞれ歴史的な発足をいたしまして充実成長しつつありますけれども、これはあくまでもその発生の由来が、歴史的な経緯を担ってそれぞれ機が熟して発足したということでございまして、発足当時にそれなりの物の考え方が十分整理されて発足したというわけではございません。そのために、この三制度、三団体が、歴史的な経緯はございますけれども、発展、整備されていく過程におきまして、いろいろな問題点が出てきております。たとえば漁具あるいは積荷等につきまして、いろいろな重複、競合が出てきていることも事実でございます。  私といたしましては、それぞれ三制度、三団体が縦割り的に漁民に保険共済事業を推進しているわけでございますけれども、それはそれなりに歴史的な経緯があって尊重すべきでございますけれども、他面、それを受けとめる漁業者側からいたしますれば、それは全部漁民の経営なりあるいは暮らしの安定を目的としておるものでございます。それぞれの保険共済の目的は微妙に違っておりますけれども、掛金を負担する漁民のふところは一つでございます。そういう意味で、漁民とすれば、今後二百海里を踏まえまして、経営なり暮らしの問題につきまして非常に大きな不安を抱いている、漁民に対する保険共済事業につきましても、高度な複雑な要望が出てまいっておること、これも事実でございます。  こういうような時代にかんがみまして、漁民からすれば、漁民に対する保険共済制度は、わかりやすくかつ総合的な整合性のあるものにしていただきたい、かつ、最も効率的な充実したものにしていただきたいということにつきましては、当然な要望でございます。こういうことを踏んまえまして、私どもといたしましては、この三制度、三団体は、できるだけ早い機会にあらゆる技術的な困難を克服して統合した方がよろしいと思います。  なお、あわせてこの三制度、三団体の統合の問題と関連いたしまして、漁業協同組合とのかかわりあいでございますけれども、漁業協同組合は、その歴史的な発展の経緯からいたしまして、この三制度、三団体と微妙なかかわり合いを持っております。現時点ではこの三制度、三団体とは実はかかわり合いがそれぞれ微妙な差がございまして、ある場合には全く第三者的、ある場合にはあっせん的な業務、ある場合には主体的に取り組むというようなかかわり合いになっておりますが、私は漁業協同組合の本来の目的にかんがみまして、三制度、三団体の統合をお考えになる際には、これと漁業協同組合の本来の使命とにかんがみまして、漁業協同組合の役割りにつきましてもう一度再認識いただきまして、この制度的なかかわり合いにつきまして、十分御検討願って処理していただきたい、こういうふうに考えます。
  42. 矢野静男

    矢野参考人 漁船保険中央会の専務理事をやっております矢野でございます。  本日は、私ども再保険試験実施を行っております漁船積荷保険臨時措置法延長につきまして、貴重な御審議をいただきましてまことにありがとうございます。  さて、角屋先生からお尋ね保険共済一元化の問題でございます。保険共済を一元化するということは、漁業者のより利便、より利益の増進を図り、もって漁業経営の安定に大きく寄与するというところに、保険共済を一元化することの意味があるものと思います。  そういうようなサイドに立ちますならば、私ども、これが災害に悩まされる漁業者の、それぞれの非常にまだまだ未熟な面も、いろいろばらばらでございますけれども、そういう前進なり充実につながるというような方向の一元化ならば、われわれは漁業者のために大いに賛意を表するものでございます。この一元化問題につきまして、とかく積極論、慎重論とかそういう見方があるようでございますけれども、私どもは、昭和十二年から始めまして四十一年になります。その間、漁業者の利益の増進、保険の徹底という意味で、昭和二十七年に損害補償保険に組みかえられまして、それ以来義務加入制度というものを軸にいたしまして、現在におきましては海面漁協の二千組合、海面漁協の大部分でございますが、この義務加入制度の開発、維持ということに全面協力をいただいております。したがいまして、漁船保険が今日何がしかの漁業者からの信頼をかち得ているのは、こういう制度、系統の漁協の全面協力によるものだと思いまして、われわれは系統の協力に対しては全面的に謝意を表している次第でございます。  それで、保険共済一元化の取り上げ方でございますけれども、先ほど申し上げましたように、本当にこれにかかわる漁業者の利益につながるような方策ありやなしや、その方策いかんという点につきましては、先ほど中里専務からもお話がありましたように、歴史的な違い、仕組みの違い、それからこの三制度に対する国の関与の違い、それから制度の普及度の違い、それから漁協を軸にしての一元化方式が、一部には出ておりますけれども、果たして漁協を元請組合といたしまして巻き込みましてやりました場合に、漁協自体の現状は非常に格差がございます。漁協の中にも、職員数などから見て、規模あるいは取り扱い量から見ますと、大変な格差がございます。したがいまして、いま一部言われるような漁協を元請にするということは、制度といたしまして、その中に一部たえる組合があるかと思いますけれども、大部分につきましては重荷になる。それから保険の面から見まして、保険の健全な発展を図るためには、元請段階におきまして相当の危険分散が図られる必要がございますが、これがそういうことになりまして、危険分散の細分化になりはしないか。それから非常に特殊な専門的な技術、いろいろな問題がございますので、事務的に漁協で、いまオール漁協を対象にいたして物を考える場合に、それがこなせるのかどうか等々、受け入れられる対象とされる漁協のサイドにおいても非常に問題を含んでおるとわれわれは考えておるものでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、災害に悩まされる関係漁業者のためになる改革、前進ということについては、全面的に賛意を表するものでございますが、いま申しましたような問題も含めまして、慎重かつ真剣にこれからこの一元化問題に取り組んでまいりたいというように考えておりますので、よろしく御指導、御支援をお願いいたしたいと思います。
  43. 角屋堅次郎

    角屋委員 いま中里さん、矢野さんからそれぞれ意見の開陳がございました。ありがとうございました。  まさにいま御意見の点が、漁業に関する災害補償制度検討会の中間報告ということで、五十一年の十月六日に、御両名とも入っておられる検討会の中で、この答えを中間報告として出されております。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 これは御案内のとおり、その中では、「三制度三団体の統合一元化問題については、将来的な方向であるとしつつも積極論と慎重論が並行し、両論が十分かみ合わない状態で推移したが、何れにせよ末端の漁業者及び漁協担当者のために事務運営面の改善、合理化を図って行く必要性については意見の一致をみたので、その具体策として別紙内容の「都道府県保険共済共同推進センター」の設置を提案するものである。」とありますが、先ほど一元化問題で大臣が御答弁になった中に、都道府県保険共済共同推進センター、こういうものの推移を見ながらという趣旨のお話があったと思うのでありますが、これは全国で五県で実施をされ、検討会としても、今後の運営については同センターが行う試験事業の成果を待って対処したいというふうに言っておるわけでありまして、いま御両名の御答弁の、いずれが積極的であり、いずれが慎重論であるかというふうなことについて、私からは触れませんけれども、公平の原則からということで言えば、全水共のここに傍聴でお見えになっております西村専務理事にも御出席を願わなければならなかったわけですし、きょう出張で御出席になれなかったわけですけれども、全漁連の池尻専務にも御出席を願って、いま元請問題で矢野さんが触れられた漁業団体という、一部に意見があると言われたそういう問題も、それぞれの立場から御意見をいただくのが、やはり今後どういうふうにするかという意味からの公平の原則だと思うのですけれども、本来参考人は、委員の質問の際に参考人というのは異例でありまして、私もそういう立場から御遠慮申し上げて、最小限のところでという気持ちで二人に限ったわけでありまして、関係者団体もあることは百も承知の上であることを、要請をいたしました私の立場からも申し上げておきたいと思うわけでございます。  審議は前後することになることを御了承願って、せっかく参考人に来ていただいておりますので、矢野参考人に引き続き……。  漁船積荷保険漁船船主責任保険を、いま試験実施の再保険を受け持ってやっていただいておるわけですが、本格実施の場合には、漁船保険は国が再保険をやっておる。試験実施ではこの二つの保険については漁船保険中央会でお願いをしている。本格実施の場合、三制度、三団体の統合問題もありますけれども、そういうことは一応そっと置いて、この二つの保険について漁船保険中央会でやれと言われれば、できると考えておられるのか。いや、試験実施は言われてやったけれども、本来、本格実施の場合にはこういうふうな形でやるべきものであるというふうに考えておられるか。その辺のところをひとつ矢野さんの立場お答えを願いたいと思うわけでございますし、さらに中里さんには、漁船積荷保険の今後の試験実施につきまして、対象漁種の拡大であるとか、あるいはトン数の引き下げであるとか、あるいはこれから本格実施に向けて漁船積荷保険実施される場合には、十分、漁業共済との振り分けといいますか、調整といいますか、そういうことは現実にやはり考えていかなければならぬ問題でございます。そういう立場から、先ほどもちょっと抽象的に触れられましたけれども、具体的にこの漁船積荷保険漁獲共済をやっておられる漁済連との振り分け問題について、中里さんの方から、矢野さんに引き続いて御意見を承りたいと思うわけでございます。
  44. 矢野静男

    矢野参考人 先生のお尋ね漁船積荷保険それから漁船船主責任保険でございますが、積荷保険につきましてはほぼ五年間の実績を経ようとしております。船主責任保険につきましては、年度にしまして二年度、年数にしまして一年半、二サイクル経験したということでございます。  積荷保険につきましては、民保が中、大型船に対しましてもう先駆的にかなり前からやっておりましたので、それのデータとかやり方とかということで相当な予備知識はあったわけでございますが、実施いたしまして、まあ民保との競合関係で始まったわけでございますが、実は積荷保険は当時の民保の料率の半分くらいの料率でやる、それから民保は選択加入的な取り扱いでございますが、漁船積荷保険は対象漁船、資格船は無差別にどの船でもはいれるというような試みをやりましたので、試験実施の一、二年というのは、その帰趨を実は担当者といたしましていろいろ気遣いをしたわけでございますが、ラッキーな面もございまして、いままでの段階では非常に順調に生育してまいっておると思います。ただ、これからの二百海里という新しい情勢の中でどういうふうに育っていくか、片や民保につきましては、かなり高い損害率ということで経営的に大分困窮しているようでございますが、そういう他の積荷保険情勢等も今後勘案に入れまして、慎重に今後の試験実施を続けていきたいと思いますが、いままでの私の経験、それから私の希望といたしましては、ここまで順調に育っていっておりますので、でき得ることならば、担当者といたしまして本格実施の際には中央会でやらしていただければと、船主責任保険につきましても同様の希望を持っておりますけれども、これは船体保険、国の再保険とのかかわり合い、それから中央会再保険というフォームと国の再保険というフォーム、二つあるわけでございますが、これに対して元請組合五十三組合ございますが、これがどういう対応を示すか、ここら内部のコンセンサスも得ながら、いずれの方向かに決めていただければ、個人といたしましては中央会にやらしていただければ幸いだというように考えております。  以上でございます。
  45. 中里久夫

    中里参考人 積荷保険試験実施に関連いたしまして、漁業共済、なかんずく漁獲共済との関係でございます。この問題につきましては、実はこの積荷保険試験実施が発足するに当たりましてこの問題を詰めた際に、この問題はやはり根本的には問題がある、これは調整されなければいかぬということでございました。しかしながら、この積荷保険試験実施でもあるし、特に試験実施開始時の考え方といたしましては、沖合い、遠洋漁船、たとえば五十トン以上の船について実施するということでございましたので、私といたしましては、まあ漁民のためになることであるということで割り切った経緯がございます。それ以来、先ほど角屋先生のお話にもございましたように、試験実施過程におきまして対象漁種が拡大してまいりました、トン数も引き下がってまいりまして、漁業共済との、なかんずく漁獲共済との振り分けの問題につきましては、実は最近現実的な問題が出てまいりまして、それは特に北海道の小型サケマス漁業者につきましては、漁獲共済にも入る、あるいは積荷にも入るというようなケースが、数少ないのでございますがそういう例が見つかってまいりまして、漁業者といたしましては、両方の制度に少なからざる掛金を負担するということでございます。両制度は言うまでもなく等しく国の管理監督する制度でございまして、かつ相当程度の国費を使っております。こういうことを考えまして調整されてないという、そういう部面があるということは、実は私は問題であると思います。しかしながら、当面これは試験実施でございますので、本格実施に移るまでの間に十分漁民の立場から配慮なさいまして、きっぱりとこの制度を、二つのかかわり合いを調整する必要があるということを私どもは痛感しております。  なお、前回の質問に関連するのでありますけれども、この両制度が将来制度的に統一されるあるいは調整されるという機会がございますれば、こういう問題もおのずから円滑に処理できるものではないだろうか、こういうふうにあわせて申し添えます。
  46. 角屋堅次郎

    角屋委員 せっかくお二方の参考人に来ていただいたのですが、お二方とそれぞれ質疑をやっておりますと、持ち時間の関係で、あとそれぞれ政府側にも聞かなければなりませんので、この程度で二人の御参考人についての私の質問は終わらせていただきますが、ありがとうございました。  そこで、今度は政府側にお尋ねをいたすわけでございますが、先ほども大臣御出席の際に、漁船積荷保険漁船船主責任保険との試験実施の終了年次のずれはありますけれども、それはやはり調整をしながら、本格実施は、私の気持ちとすれば、双方関連させながらできれば同時スタートということをすべきものだと考えておるわけでありますし、また、両参考人からそれぞれ御意見が出ましたけれども、三制度、三団体の統合一元化問題については、これはいろいろいまもお話が出ましたように、積極的な立場あるいは慎重論的な立場それぞれありますけれども、方向から言えば、統合一元化ということを前提にして、政府としてもこれから検討の上に立って準備を進めなければならぬというふうに私自身は考えておるわけであります。  そこで、これは先々のことになりますけれども、保険試験実施の二つの分野を、本格実施の場合に国がやるか、あるいは現在お願いをしておる漁船保険中央会でやるか。これは矢野さんの方からは、私の方でできればという御意見が出ましたけれども、しかし、御案内のとおり、漁船保険中央会は料率算定をもうやっておるわけです、また損害査定等の事業をもうやっておるわけであります。同時に、昭和四十一年に十二億円、それから昭和四十八年に三十五億円の交付金を受けまして、そして漁船保険振興事業というふうなものもやっているわけであります。ずいぶんいろんな仕事をやっておるわけでありまして、漁船保険中央会の性格というものをやはり整理し直さない限りは、次から次へ来るものを受け入れるということには、制度論として私はならないというふうにも思うわけであります。したがって、漁船損害補償法によって総括的にこれらのものを将来本格実施過程でやっていく場合には、再保険の受け入れをどこにするかということは、今後慎重に検討しなければならぬと思いますけれども、安易に漁船保険中央会でまた経験もあるからやらしたらよろしいということには、必ずしもならない。それらの点も含めた政府側の見解というものについて、この機会にお伺いをしておきたい。
  47. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生の御指摘の問題、恐らく元請についてはいろいろ問題があるにしても、一応漁船保険組合といたしまして、その再保険者の問題だと思いますが、これにつきましては、現在の漁船保険の体系から言いますと国、それから試験実施段階からのいまやっております実情から言いますと漁船保険中央会ということになる。そのほかにも、漁船保険中央会が再保険をいたしまして国が再々保険を行うという案も考えられるわけでございまして、いろいろ一長一短があると思いますが、いずれにいたしましても、試験実施の期間が終了いたします、また漁船の船主責任保険試験実施の終了期間が昭和五十六年ということになっておりますから、それまでにはいまの全体の体系づけ、特に再保険の責任をどこにするかということ、また中央会の位置づけということもあろうと思います、これらも含めまして十分検討すべき課題であるというふうに考えておるわけでございます。
  48. 角屋堅次郎

    角屋委員 海上保安庁に引き続き、お待ちをいただいておったかと思うのですけれども、日本の近海におきます漁船遭難等の問題について、最近の事情をひとつお答えを願いたいのと、午前来冒頭から質疑を展開しておりますように、新しい二百海里時代を迎えて、領海が十二海里になる、二百海里の漁業水域が設定されるということに伴いまして、海上保安庁の仕事というのはなかなか大変だと思います。人員も整備しなければならぬ、あるいは海上保安庁の業務遂行上のいろんな設備、艦船、その他の問題についても整備をしていかなければならぬ。尖閣列島の問題が最近出ておりますけれども、そういう場合にも、領海侵犯について日本立場からの業務を遂行していかなければならぬ、こういった任務から考えまして、そういう任務に予算的にも人員的にもまた機能的にもたえるような状態でもって逐次整備されつつあるのかどうかといった問題についても、ひとつこの機会に御答弁を願っておきたいと思います。
  49. 久世勝巳

    久世説明員 先生御指摘のとおり、私ども昨年七月一日以降、御存じのとおりわが国領海の拡張あるいは二百海里漁業水域の設定に伴いまして、これら広大な海域におきます領海警備あるいは漁業操業秩序の維持等の業務が飛躍的に増大したわけでございます。そしてこれらの業務を迅速、的確に遂行するために、外国漁船操業の実態等を勘案しまして、まずとりあえず、現有の巡視船艇三百十二隻あるいは航空機三十六機を重点的に各海域に配備することによりまして、この監視、取り締まり体制の万全を期しているところでございましたが、先ほど申し上げたとおり、新しい海洋秩序というものに対応するためには、この特に広大な海域におきます業務というものに的確、迅速に対処していくためには、これらの船艇では必ずしも万全の対策がとれないということが懸念されますので、その体制の強化を図ることは当然必要である、こういうふうに考えまして、このために、海上保安庁としましては、昭和万十二年以降、ヘリコプター搭載型巡視船あるいは千トン型の大型の巡視船、さらには三十メートル型の高速の巡視艇、大型飛行機あるいはヘリコプター、こういった巡視船艇、航空機の整備増強を図ってきておるところでございます。特に五十二年度及び五十三年度予算におきましては、皆様の御支援によりまして、ヘリコプター搭載型巡視船三隻、千トン型の大型巡視船十隻、三十メートル型高速巡視艇八隻、これはうち二隻は五十二年度にもう就役済みでございますが、さらに大型飛行機三機、中型ヘリコプター十機、このうち三機はヘリコプター搭載型巡視船に積むものでございますが、これらを整備増強するほか、美保航空基地、これは八管区でございます、それから北海道の釧路航空基地、これを新しく開設する。それから所要の航空基地に格納庫等の整備をすることにしております。  なお、今後さらに、最近の諸般の客観情勢を見きわめつつ、巡視船艇、航空機の整備増強ということを海上保安庁としては検討を進めていく所存でございます。  次に、漁船の遭難でございます。まず、最近四カ年間わが国周辺海域におきまして遭難当時救助を必要としました要救助船舶というものは、大体毎年二千五百隻前後でございます。そのうち漁船は約千二百隻前後というのが発生状況でございまして、この四、五年間はほとんど横ばいの状態でございます。やはり先ほども御議論が闘わされたように、その海難の種別というものは、機関故障あるいは衝突あるいは乗り上げ、そういうものが大半を占めておるという状況でございます。
  50. 角屋堅次郎

    角屋委員 大体時間が参りましたので、全体的な日本漁業をめぐる国際環境、あるいは試験実施過程、これから本格実施へ向けての基本的な構え、こういうことについて総括的に議論をしてまいりまして、細かく議論をすればまだまだ時間を要するわけでありますが、これは引き続き同僚議員から議論がなされますので、それに譲りたいというふうに考えております。  そこで最後に、政務次官にも発言の機会を与えなければいけないと思いますので……。  午前来議論してまいりましたように、漁船積荷保険について五年間の試験実施に引き続いて五年間の期限を延長してもらいたいという政府からの提案については、私どもも、それはいろいろな情勢から見て必要であろう。また、そういうふうにすることによって、諸般の整備をやりながら可及的速やかに本格実施に乗り出す、その点については、私自身は、きょうの直接の議題にはなりませんけれども、試験実施に滑り出した漁船船主責任保険も、可能ならば同時本格スタートということも含めて、組織論、体系論、制度論、そういうことで、安易に、五年期間延長になるからひとつゆっくりやろうかということじゃなしに、これはまさに、そういうことを考えてみますれば、この機会に真剣な構えで、制度の整備のために農林省としても対応してもらわなければならぬというふうに思うわけでありまして、最後に、政府を代表して今井政務次官から、今後の決意のほどを承って、質問を終わらせていただきたいと思います。
  51. 今井勇

    ○今井政府委員 先ほども御答弁申し上げたと思いますが、この五カ年延長につきましては、漫然と期間延長をお願いしているわけでもございません。条件整備を一日も早く終わりまして、しっかりしたものにして発足をいたしたいということが念願でございます。したがいまして、先生の御所論のように、一日も早く整備をいたしまして、これを本格実施に持っていこう、このようなかたい決心でございます。
  52. 角屋堅次郎

    角屋委員 これで質問を終わります。
  53. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  54. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。新盛辰雄君。
  55. 新盛辰雄

    ○新盛委員 漁船積荷保険臨時措置法の一部改正に関する法律案の提起に対して、本委員会での審議を通じて、質問そしてまた考え方について政府側の御答弁などをいただきたいと思います。  漁船積荷保険は、漁船に積載した漁獲物等の積荷について生ずるあらゆる損害を適切に保険するという制度確立を図ってきているわけでありますが、これまで四十八年十月以降、試験実施という形の中で、いわゆる漁船積荷保険臨時措置法に基づいて、漁船保険組合が元請保険者となって、漁船保険中央会が再保険者という形で現在まで推移しているわけであります。  しかし、今回この改正というのは、試験実施期間を諸般の情勢によってさらに五年間延長したいという結論的なことでありますが、そうした内容というのは、最近の各国の二百海里漁業水域設定によって新たな海洋秩序の形成が急激に進んできているし、漁船積荷保険の対象とする大部分が遠洋、沖合い漁業おいて行われておりますし、減船漁場の転換あるいは航海日数の変化などによって、操業形態に大きな変動を来していることなどから、こうした一連の積荷保険事故の発生度合い、態様が変化したという予想のもとで、いま直ちに本格実施に移すというわけにはいかないという、情勢の変化、弾力的な対処という面でこの改正の趣旨がなされているわけであります。  そこで、この情勢の変化、すなわち二百海里時代の新しい海洋秩序のあり方と展望について、漁船積荷保険にかかわる問題として、政府の見解を以下ただしてみたいと思うのであります。  大臣が二時からいらっしゃるそうでありますから、大臣の基本的なお答えをいただかなければならない部面もございますので、またその際に申し上げて重複をする面があるかもしれませんが、一応申し上げてみたいと思います。  基本的な問題として、最近、沖合い、遠洋漁業に対する操業規制が非常に厳しくなってきている。水産政策の上であるいは漁業外交の上においても当面の重要な課題として政府も受けとめておられると思います。漁獲量、入漁料、減船漁場の転換、操業海域の縮小、あるいは漁場を求めて操業日数の長期化など、今日の操業形態によって、今回のような漁船積荷保険などの保険設計にかかわる問題として、いままでの損害率やあるいは危険率の基礎データ、そうしたものについて、すべて今日次元における大きな形態の変化、そういうことについては、新しい海洋秩序の方式を将来展望として、あるいは漁業の再編成という問題も出ている今日であります。そういうことについて、政府は実態的にどうとらえ、どのように考えておられるか、また今後の対策として、基本的な姿勢展望等について、ぜひこの際、明確にお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 今井勇

    ○今井政府委員 先生お説のとおり、最近の二百海里水域の設定という海洋新秩序の形成によりまして、わが国が非常な影響を受けておりますことはそのとおりでございます。  そこでわが国としては、これに対応するために、これらの関係国と粘り強い交渉を行いまして、長年にわたりましてわが国の漁民が獲得してまいりました、その沖合いあるいは遠洋漁業操業というものを可能な限り維持することに努めることは当然でございますが、これと同時に、やはり国際協力を含めた漁業外交を積極的に展開をいたしまして、新漁場の開発ということに取り組みまして、少しでもいままでの実績を減少することを防いでいこうということをまず第一義的に考えております。  第二義的には、国民の貴重なたん白資源でございますから、これの著しい減少ということにつきましては大変な問題になりますので、そこで、わが国の周辺水域の積極的な活用を図ることという観点で、いわゆる沿岸漁場の造成あるいは増養殖の拡充ということで、自分の手でできる、自分の国の主権の及ぶ範囲内ということで、とれる魚は積極的にふやしてとろうじゃないかということをあわせ行いまして、水産物の供給をひとつ安定的に図っていこうじゃないかということが基本的な対策でございます。それに伴います具体的な諸方策につきましては、水産庁長官の方からまた追って補足の答弁をさせたいと思います。
  57. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いま次官の方からお答えいただいたんですが、基本的な考え方として、政府は、今日までの新しい海洋秩序の中における漁獲量の減少や減船、あるいはそれぞれ二百海里における入漁料の問題等も具体的な問題として出ているわけでありますが、そういう関係についても、今日まですべてが後手後手になっていたじゃないかというのは、一昨年来われわれが指摘をしていることであります。  そういう面での国際協力ということから見ても、日本漁業外交というのは非常に脆弱じゃないか。もっとぴしっとしたものがなければならないはずのものなんですが、行き当たりばったりで、もうすでに日ソ漁業交渉大詰めに来ているのでありますが、けさほどの角屋議員の質問等にございましたように、今日の日本漁業が立たされている立場、そうしてまた、これからどのように、漁民を納得させる、漁業者を納得させることのできる外交手段なりあるいは漁業の再編成というようなことについて、お考えになっているのかという基本的な問題を聞いているわけです。したがって、漁獲量や入漁料、減船という、もう差し迫った問題、あるいは漁場の確保を図るためにどうしなければならないかという沿岸水域におけるそうした新しい形態の中で、遠洋から沖合いに、沖合いから沿岸にというUターン現象を起こしつつある中における日本の水産政策は、まだこれとても緒についたばかりでありますし、実効が上がっていない。この現実をどうとらえておられるのか、そのことをお聞きしているわけであります。お答えいただきたいと思います。
  58. 森整治

    ○森(整)政府委員 先ほど政務次官からお答えをいたしたとおりでございまして、二百海里の時代に入りましてからも、それぞれの地域地域によりましていろいろ実情が異なっております。したがいまして、漁場の確保をいたすにいたしましても、それぞれの個別の国々との話し合いを通じまして、いろいろ事を処理していかなければならないということを強いられておるわけでございます。水産庁でも一度に三チーム、四チーム海外に人を出しまして交渉をしておる。現在もパプア・ニューギニアで交渉が行われております。そういう形でございまして、まあこれは一つ一つ粘り強く精力的に解決していくほかないわけでございますが、そのほかにも、結局、側面から入漁交渉に当たりまして、いろいろ海外の経済協力の事業団あるいは財団、それぞれを通じまして漁業協力の援助もする、そういうことも絡み合わせながらいろいろ話を進めておるわけでございます。  先ほど政務次官が申し上げましたのは、結局、沿岸漁業を振興するということももう一回見直すということで、これも相当な経費を今後、沿岸事業なり漁港なり構造改善事業なり、そういうものを通じてやっていくわけでございまして、また、増養殖あるいはそういう漁場を新しくつくっていくということも、時間がかかることではございますけれども、外で失われるものは中で取り返すという考え方、ともかく一千万トンの漁獲量はあくまでも維持していくという考え方で水産庁としては臨んでまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  59. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それでは具体的に聞いておきますが、日ソ漁業交渉の将来の展望、そしてまた、尖閣列島海域周辺の現状認識については、もう外務委員会その他あらゆるところで取り上げられておりますし、南太平洋フォーラム諸国の動向についてもいろいろ議論もございます。  そういう中で、具体的にお聞きしておきますが、今回の日ソ漁業交渉では、昨年の、あの八万トンの実績を誇っておったわが国が、交渉の結果二三%減らされて六万二千トンになったのです。そのときに独航船二千三百十七隻のうち二四%が減船になりまして、結果的には五百五十一隻、十隻の母船のうち四隻も減らされました。この減船になった船の補償、そしてまた減船しなかった船などの共補償を含めまして、これは総額、政府が交付した金として三百八十七億というふうに出ております。今回その六万二千トンがさらに三〇%漁獲量割り当てが減って四万二千五百トンになっている。これによってサケマス漁業の独航船二百四十五隻、中型流し網漁船二百九十八隻、小型流し網漁船八百三十二隻、計千七百六十六隻、これが三〇%から四〇%減船になるとすれば、政府の補償額もさらに計上されざるを得ません。試算をして五百億から八百億のいわゆる政府出資ということになるわけであります。  こうしたことに対する、減船の具体的な規模をどういうふうに把握をしておるのか、あるいは操業別の割合はどうなっているのか、そして政府が交付しなければならないこれらの資金はどのようにしなければならないのか。それこそ業界においては減船対策がもういま頭の痛いことであります。そして、北洋漁業はこうした大打撃を受ける反面、南の方の太平洋フォーラム諸国を中心にする、南九州すなわちカツオ・マグロの漁業を主力にしている基地も、当然その影響を多大に受ける結果になります。いま、こうした補償の具体的な問題については、これはまた政府が考えておられることでもありましょうし、けさほどの角屋議員の質問の中でも、ただ単に補償さえすればいいというふうなお答えを耳にしますと、まことにそらぞらしい。それも、一生懸命中川農林大臣がおやりになって少しは、目減りするものが逆に千五百トンぐらいは何とかなったんだ、そういうふうな効果を上げようとする、そういうものじゃないと思うのです。現実減らされているという最近の事情について、もっと認識を新たにして政府は取り組んでもらわなければ困る。そのことをどういうふうに政府として、これから先、展望としてお持ちになっているのか、お聞かせをいただきたいのです。
  60. 今井勇

    ○今井政府委員 先ほど大臣から御答弁を申し上げましたとおり、今回の日ソ漁業交渉につきましては、当初沖取りをいけないというのが、わが国の粘り強い交渉で一極をいたしまして、最終的には、先生お説のとおり四万二千五百トンということで妥結のやむなきに至ったということでございます。しかしながら、まだ今朝、続きまして最も大事であります漁区の問題につきましては、さらに最終の詰めといいましょうか、中川大臣が続行をしておられまして、それによってわが国漁船の打撃を少しでも少なくしようという努力を最後までやっておられるわけでございます。  いずれにいたしましても、今回のこの数字に対しまして、漁船減船というものが具体的な問題となってくることは、これは否めないことであろうと存じます。その細部等々につきましては、いずれ大臣が帰りましてから、精力的にひとつ各界とのお話し合いをして、御了解を得るように努力をいたさねばなりませんが、われわれといたしましては、去年のことに続きましてさらにまたことしこれをやらねばならないという大変な苦境にあるわけでございまして、関係漁民の皆様方の受けられます苦痛というものがひしひしとわかるわけでございまして、そのあたりにつきましては、ひとつ今後十分、過去の実績等もございますので、誠意を尽くしまして皆様方との交渉に当たりたい、このように存じております。
  61. 新盛辰雄

    ○新盛委員 同じところにとどまっておるわけにもまいりませんから、これは端的にお答えいただきますが、偶発的な事故、中国側がそう言っているのでしょうが、尖閣列島の海域周辺の現状認識の中で、領海十二海里とわが国が設定をしている尖閣列島、この中における漁場、すなわちいま中国船がたむろしているわけでありますが、そうしたいわゆる漁業の実態についてどういうように把握をしておられるのか。  二つは、韓国が四月三十日に領海十二海里を実施するとすでに新聞発表もなされております。これによって日本漁業にどういう影響が起こるのか起こらないのか。この二つについて明確にしていただきたいと思います。
  62. 田島高志

    ○田島説明員 お答えいたします。  現在の尖閣諸島周辺海域状況は、昨十八日……
  63. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その経過はいいから、現実の漁場はどうなるのか、そういう答えをひとつお願いいたします。
  64. 田島高志

    ○田島説明員 私どもは、わが国漁業の実態につきましては正確に把握いたしておりません。
  65. 新盛辰雄

    ○新盛委員 韓国の十二海里はどうなんですか。領海十二海里については、外務省は知っているのですか。
  66. 田島高志

    ○田島説明員 私、中国課長でございますが、私は存じておりませんので、恐縮ですが、いまこの場ではお答えできません。
  67. 森整治

    ○森(整)政府委員 尖閣諸島は、水深大体二百メートルの大陸棚の外縁付近というところに位置しておりまして、この諸島の付近はよい漁場を形成している。そこで、わが国の大中型まき網漁業、それから以西底びきの漁業、それから小型漁船による釣りはえな漁業が行われておりまして、十二海里というより大体二百海里の区域の中でございますが、五十一年では、アジ、サバ等、推定で約八万トンの漁獲を上げております。このほか、台湾の漁船操業がたまたまよくあったのですが、中国漁船操業というのは初めてであるというふうに認識をいたしております。  今後、今回のような問題が出まして、私どもも直ちに水産庁の監視船を派遣いたしました。中国漁船との紛争を避けるという意味で、現在この海域におきましていろいろ警戒に当たっておるというわけでございます。
  68. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この水域の、尖閣列島の十二海里、いわゆる領海ですが、広域水域という形の漁場としては確保されている、あるいは韓国の領海十二海里が設定をされて、その中におけるこれからの漁業交渉は、これは北鮮の関係もございますが、そうした関係おいては、日本漁業水域とは何ら関係ないということをおっしゃっているわけですか。
  69. 森整治

    ○森(整)政府委員 先ほど、もう一つ答弁を忘れましたけれども、韓国の領海十二海里を引くという問題につきましては、大体いままでの韓国の漁業専管水域というのがございますが、これが大体十二海里でございます。今後の領海の引き方いかんにもよるわけでございますが、ただいままで私どもが承知しております、韓国がもし十二海里を引いた場合には、従来の漁業専管水域のラインで大体おさまっていくのではないか、若干出入りはあるようでございますけれども。そういうふうに認識しておりまして、その問題につきましては、わが国と直接大きな変化があるというふうには認識しておりません。
  70. 新盛辰雄

    ○新盛委員 じゃ、それは確認しておきます。  そこで、南太平洋フォーラム諸国の動向について、政府は先ほどその認識を持っているというふうにおっしゃいました。また、これらの諸問題の規制、すなわち入漁料の問題等についていましきりと交渉が行われているわけであります。オーシャン、ギルバート、フェニックス、ラインズという四島からギルバートは構成されているというふうに言われておりますが、それに、パプア・ニューギニアの交渉も、あるいはまた、四月一日からそれぞれ二百海里の漁業水域を設ける各国々との間における交渉が行われているわけでありますが、一例をとると、ギルバートの場合はいま入漁料の問題で、当初カツオ釣り五十万円、あるいはマグロはえなわ六十万円、年間一万トンまではそれで漁獲量を一応何とか、あるいはその後さらに量がふえれば追加をするとか、こういうことで南九州の皆さんは非常に不安を持っておられるわけであります。こういう交渉がなかなか思うとおりにいかないし、また現実の問題として、もう少しこうした交渉を積極的に政府はおやりにならなければ、これからのカツオ・マグロの漁業に対して重大なる影響がある。これまで打った手は何であったのか、そしてまたこれからどうするのか。カツオ・マグロの入漁料についての交渉経過があると思いますが、どうなっているのかを明らかにしていただきたい。  パプアの場合でも、四月一日から二百海里宣言、日本漁船は今月いっぱいで全部締め出し、こういう強い姿勢も伺われています。今月いっぱい猶予を持とうというのです。こういう中で、先月中川農林大臣に、いろいろやりとりをしている中で、入漁料というのは経営体の中で漁業者が当然考えなければならない問題もあるけれども、どうもこの辺があいまいなんですが、入漁料は国が補償するのかしないのか、端的な話ですけれども、これを明確にしていただきたいと思うのです。交渉のいろいろなやりとり等によってあるいは漁業外交等によって確立されるものがあると思いますが、ちょうど大臣がお見えのようでありますから、これは大臣からもお答えをいただきたいと思います。
  71. 森整治

    ○森(整)政府委員 南太平洋フォーラム諸国のお話が出ましたから、これから先に申し上げますが、これはカツオ・マグロの漁場ということで政府間で交渉を行っておるわけでございます。この国々は発展途上国が多うございまして、御指摘のようにマグロ・カツオ以外に資源がないということから、入漁交渉に当たりましては相当高額な入漁料を要求している経過があります。ただ、そうは申しましても、パブア・ニューギニアとの話を例にとりますと、要するに漁場は一括して日本に提供してよろしい、そのかわりに入域料または入漁料、これが百万キナと言っているのですが、三億二千万円ぐらいになりますか、要するにそれをまとめて提供してほしい。一隻一隻から取るというやり方もある。一々船倉をあけまして、二百海里から出入りするときに漁獲量を勘定して、それに対して幾ら、こういう入漁料を取るやり方もある。ただ、これにつきましては先生御承知のように、カツオ・マグロは船倉をあけられると品物が傷むという問題もありまして、それは困る。じゃ、まとめてだれか払え、こういう話になっておりまして、その辺が交渉の問題として非常にむずかしいことになっておりますが、ただいまの見通しでは近く私どもは妥結できるのではないかと思っております。  それからギルバートのお話も出ましたけれども、これも一時交渉をやりまして、ただいま中断をいたしまして帰ってきておりますが、四月中にもう一回交渉再開いたすということで、これにつきましても積極的に妥結できるような方向でいろいろ考えてまいりたいと思っているわけでございます。  そこで、そういうものにつきまして入漁料の助成のようなものがどうだという御質問につきましては、私どもは直接そういうものに助成することについては消極的に考えております。ただ、そういう国々の沿岸漁業、向こう様の漁業を振興していくあるいは開発していくための漁業協力、あるいは漁船の提供、施設の提供、あるいはそれの資金援助、そういうようなことにつきましては積極的に考えてまいりたいと思っておりまして、そういうものと一緒にして全体のバランスをとるということが一つの考え方ではなかろうか。  それから、かつてアメリカに対しまして入漁料——アメリカの二百海里か最初に引かれましたときに、漁業者の負担軽減という趣旨から、大日本水産会に基金を設けまして一種の利子補給を暫定的にやった例はございます。いま南太平洋のようなところで言っております問題が——ただいまは暫定協定でございますが、恒久的な協定を来年からやらなければいかぬ。そういう場合に、漁場を一括提供してくれるかわりに反対給付として入漁料を一括払わなければいけない、こういうケースは初めてでございますので、これにつきましては、来年度の施策として何か知恵があればいろいろ考えてみたいというふうには思っておるわけでございます。とりあえずの交渉につきましては、何らかの形でつないでいくという考え方でいきたいと思っております。
  72. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣、いまお答えいただいたのですが、経過はよくわかりました。それで、技術援助とか新漁場をつくる場合、あるいは二百海里内に入って入漁して魚をとる場合の入漁料というのは、あるいは燃料代のことまで含めて漁業者の方では何とか国に補償してもらわなければ、もう大変なことになってぐる。すでに、カツオの例をとりましても、いまのように輸出がかん詰めとかその他規制を受けている際に、日鰹連が買い支えましても、二・五キロから四・五キロ級のカツオでも、一キロ当たり二百三十七円だったのが、先月来急激に二百十円、この値下がりによって、放出されたことによって大変なことになっているわけです。そうなってくると、一航海二千万円も金を使って帰ってきたところが、逆に何千万という赤字を出してしまったというのでは、もう仕事する気にもならないというのはあたりまえでしょう。いわゆる入漁料とか燃料代とかあれもこれもありますが、当面は、二百海里時代における外交政策の面で、入漁料というのは当然政府が補償しなければならぬ、そういうことを明確にしてもらわなければ困ると言っているわけですから、そのことについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 入漁料につきましては、二百海里を迎えて深刻な漁業情勢の中で、漁業者の皆さん方から、入漁料は国が負担すべきであるという声が強まっておることは私もよく承知をいたしておるわけでありますが、政府としましては、入漁料は経費の一部として漁業者が本来的に負担をしていただかなければならない、経営者の経営努力あるいは経営合理化等によってカバーしていただく筋合いのものである、こういうふうには考えております。しかし、いま水産庁長官が申し上げましたように、一時的に入漁料が漁業者にどっと降りかかってくる、こういう情勢の中においては、利子補給というような形で政府も一部の負担をいたしておるわけでございますが、これは今後とも二百海里がどんどん進んでいけばいくほど、入漁料の負担も漁業者には重くなってくるわけでございます。政府は、この入漁料が相手の沿岸国によって極端に高くなって、日本漁業者の負担が耐えられないというところにいかないように外交活動等を通じまして、いわゆる水産外交を通じて、相手の沿岸国の漁場の開発であるとか、あるいは漁港の整備であるとかというものに対しては、国の経済協力ということで相手国との円満な適正な入漁料が決まるように努力を続けていくわけでございますし、この入漁料の問題は、漁業者にとりましては今後とも非常に頭の痛い、重苦しい問題ではありますけれども、政府としてはできるだけの御協力は申し上げたい。ただ、先ほどから申し上げましたように、本来的には漁業者が経費の一部として負担をしていただかなければならない、そういう筋合いのものではないだろうか、こういうふうに思うわけです。
  74. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間がありませんから、議論はまた次回したいと思います。  そこで、漁船保険制度の確立、本来これは国の重要な水産行政の課題でもありますから、私どもも、この漁船積荷の臨時措置法に基づいて漁船保険制度をどうするかという面では、積極的にその内容を充実していきたいと思っているわけであります。  そこで、再保険者となっている政府、あるいは漁船保険組合や中央会が本事業をやってきているわけでありますが、赤字を計上するという事態、そうなっているかどうか、これはお知らせをいただきたいと思いますが、本来の漁船保険事業が赤字になってきた場合に、当然支障が起こるわけであります。四十八年の十月からこの試験的な実施の中で、今日の二百海里時代における問題としてこうして継続をされるということでありますが、本来ならば本格実施を早急に行わなければならない問題でもあります。そうした面についてお聞かせをいただきたいと思います。  それと、漁船保険中央会が再保険の支払いに不足を生じた事例がいままであったかということについて、これはなければないでいいのですが、そのことによってこれからの波及的な問題が出てまいりますので、お答えをいただきたいと思います。  これは原則的には国が再保険をするものでありますから、このような場合に、国が予算上国庫債務負担行為を行うということ、これはもうどうしても再保険立場から見れば当然のことだと思いますが、再確認の意味でお答えをいただきたいと思います。  以上、三つ続けてでございますが、お答えをいただきます。
  75. 森整治

    ○森(整)政府委員 漁船積荷保険の収支状況でございますが、いままでのところ大多数の保険組合はまず黒字ということになっております。  それから、赤字が出た場合ということでございますが、漁船保険中央会でそういう、もし赤字が出た場合の処理につきましては、逆に言えば、予測を上回る保険事故が発生をして支払い資金に不足を来すということになるわけですが、そういう事態はまだ出ておりませんが、保険設計上は、再保険金の支払い不足に備えまして、再保険保険料収入額と同額のものを限度といたしまして、国庫債務負担行為ということで、再保険の支払い資金を補助をするという形になっております。したがいまして、保険の設計の理論上赤字の発生はないと考えております。先ほどの漁船保険組合におきます支払い保険金の不足という問題につきましては、若干赤字が出ておるところもございますが、一応総代会の議決でそういう組合員のために行うものでございますから、またそういう組合の負担において処理するという責任ある事業の運営でございますから、十年の試験実施を通じて見る場合には、著しい赤字というものは生ずることはないだろうというふうに考えております。また、もし赤字になりましてどうしても動きがつかないということになりますれば、そういう事態が出ますれば、それにつきましてまた考えてまいりたいというふうに思います。
  76. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、保険設計についてお伺いしておきますが、保険設計を立てる展望として、五カ年間の試験実施期間がありましたし、損害率や危険率等の基礎データをこれまで見てこられたわけでありますが、四十八年十月以降五カ年間のこの実施の中で、将来の保険設計展望というものを当然持たなければ、本格実施という段階で大変なことになるわけです。そうしたことの観点に立って、漁船保険事業の体系に関して考え方、これは統一、統合しようじゃないかという問題もございます。その中で、とりわけこの加入率の問題であります。保険の引き受けの全漁業種類の加入率は一体どうなっているか、また漁業種類別に加入率が高い順位を持っているわけでありますが、その高い順から、お調べになっておったらぜひひとつお聞かせをいただきたいと思います。  これは言うまでもなく、漁業というのは自然現象の影響を強く受けているわけでございますし、その第一次産業という立場から、漁獲自体は魚をとる場合の海況の変化というのに左右されるのは当然でありますが、そういう不安定な中で、生産手段である漁船や漁具あるいは漁獲物等の積荷を、常に洋上では危険にさらされているから保険をつくろうということになっているわけです。そういう認識からいきますと、経営のリスクから考えても、保険制度をつくり上げていくことは経営の安定に資するという面でも私どもも位置づけておりますが、今回この加入率が、本当は私ども調べたところでは非常に低いと思っているのです。この行政指導等について欠落しているところがあるのではないだろうか。また業界の相互扶助の共済その他等がありますが、そういう全体的な支出の面においてどういうふうな指導をされているか、したがってこの加入率は一体どうなっているのか、そして加入率の高い漁種は何か、こういうことについて見解をお聞きしたいと思います。
  77. 森整治

    ○森(整)政府委員 最初の方の、今後の保険設計上いろいろ問題になる過去の損害率なり危険率はどうかということでございますが、四十八年十月から五十二年三月までの損害率が平均では三八%、これを年次別で見ますと、損害率の高いものでは四十八年度のマグロはえなわの一四五%、五十年度の北洋はえなわ刺し網の三四〇%、それから沖合い底びき網の二〇八%、イカ釣りの二八〇%というものがございます。それからまた、損害率の低いものでは四十八年の北洋はえなわ、大中型まき網等の損害率が〇%ということで、ばらつきが非常に大きい。危険率につきましても、同じ期間中の平均では〇・一五%、これは保険料の基礎になるわけでございますが、そういう結果で、比較的に低い結果になっておりますが、損害率の高低の著しさに反映をいたしまして危険率も高くなっているということで、相当ばらつきがあるという認識を持っておるわけでございます。こういう非常に不安定な状況でありますので、今後の二百海里時代に備えまして、さらに基礎データを加えまして正確な設計をしてまいりたいということで、いま法案の審査をお願いをしておるということでございます。  それから加入率の問題でございますが、積荷保険が一七%ということで加入率が低いわけでございます。これにつきましては、漁船保険そのものの加入率が五割でございまして、隻数で大きな割合を占めております無動力船とか動力船の五トン未満、それも一トン未満、そういうところに保険需要がないわけでございます。そういうものが見せかけ上の加入率を非常に低くしておるのではないかと私思っておるわけでございまして、むしろ五トン以上の動力船の加入率が八割強と相当高い加入率になっておるというところからそういう推定をいたしておるわけでございます。統計上、そういうように細かく一トン一トンで切るという操作がなかなかむずかしいものですから、表面的にはなかなか数字的に御説明できないわけでございます。  あと積荷保険は、その漁船保険にあわせて積荷にまで掛けていくという性格上、こういう一七%という加入率になっているのじゃないかというふうに思いますが、もちろんこれをさらにふやしていくということについて努力をしてまいるということにつきましては、今後とも精力的に続けてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  78. 新盛辰雄

    ○新盛委員 これは私の意見でもございますが、保険制度の改革について、いま試験実施期間でもございますが、将来のあるべき姿としてどうなければならないかということを考えてみた際に、今日のあらゆる産業に保険制度というのは導入されているわけです。災害や不慮の事故における損害に対してはカバーできるようにされておりますし、そのために経営の安定がなされているのが今日の現状でもございます。  こうした中において、漁業には特に海上の危険が伴っておる関係もあり、そうした漁業の場合、総合的な保険制度をとるべきじゃないか。けさほどの角屋委員の質問にもございました。この総合保険のあるべき姿としては、現在個別にばらばらになっているとまでは申し上げませんが、船体の保険積荷保険漁業災害保険、漁具保険、人身保険などございますけれども、こういうものを統合するべきではないかというふうに考えます。そのためには現在の漁業災害補償法あるいは漁船損害補償法を根本的に見直していく必要があるのではないか。農業災害補償法でもそれぞれ共済制度をつくっております。確かにそれとこれとは別個のものでございますし、現に共済制度も漁業の中にあるわけでございますが、そういう面でも、抜本的な考え方として、経営の安定を図っていく最良の手段として、特に洋上で危険にさらされている漁船積荷あるいは船主責任保険、こうしたものについてもあわせて考えていく必要があるのじゃないかと思うのです。そうしたものを総合的に統一をし、あるいは保険制度の抜本的な見直しをするという関係の中で、漁業許可の条件にそのことをしたらどうだろうか。今日、野放しとまでは言いませんが、漁業許可制の問題についてもいろいろと問題があります。そういうことの現状の欠陥を埋め合わせるためにも必要じゃないか。  一つは、加入率の向上を図るためにもう少し積極的にやらなければならない部面があるのじゃないか。そして、まず保険料の率を低くすること、いわゆる漁業者保険料負担軽減の方向、これは今後の検討課題でもありましょうが、そういうことについてどうするのか。三つ目には、国庫補助を適正とするいわゆる国の再保険制度、こうしたものもあわせてお考えをお聞かせいただきたいと思います。  私ども、こうした保険制度のあり方の抜本的な問題に触れるとすれば、現行保険制度をいまから向こう五カ年間また試験実施として延長されるのですから、本格実施段階で、この世の中はどんどん変わるかもしれません、そういう変動する形態に対応する体制も当然つくり上げていく必要があると思うのです。今後の保険制度というのは、いまのままで、ただ随時五カ年延長すればいい、そして本格実施をやればいい。政府が現行制度でお考えになっているというならば、それは少し問題がありはしないか。そういう角度で政府お答えをいただきたいと思います。
  79. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、漁民にとってそれぞれの経営につきまして一つの重要な支えになっておる制度でございますから、政府といたしましても、たとえて言えば保険料の補助も行っておりますし、今後、いまお願いしている延長に甘えることなく、そういう実績ができ上がりました段階で、それぞれの制度につきまして、先ほど角屋先生からもお話のございましたいろいろな制度の特徴を生かしながらこれをどういうふうにできるだけ総合化していくかという問題、これは過去にも二回にわたりまして議論が行われたわけでございまして、その際、統合一元化につきましては将来的な方向だという一応の見方は持っておるわけでございます。ただ積極論、慎重論というのが並行して、御承知のように、ただいま都道府県保険共済共同推進センターということで五十二年度から五つの都道府県で実施されている、こういうことの成果を見ながら、またいろいろ保険設計上の実績のデータが固まるのを見ながら、きょういろいろ出ました御意見を参考に今後私ども十分検討させていただきたいと思っております。
  80. 新盛辰雄

    ○新盛委員 時間が来ておりますから、あとの質問について大臣からもお答えをいただきたいと思いますが、各国の二百海里水域外操業している際に、不幸にして相手側の水域に入った、そして罰金あるいはまた拿捕されるという例が今日まで起こっているわけであります。その実態等については昨年も議論をいたしましたし、今日、漁業者がこうした二百海里という新しい海洋秩序の時代に来ている中で大変難渋しておられる。拿捕されたりあるいは罰金を払わなければならないというのは、漁業外交上の問題もあり、あるいは国内の水産政策の一環としてとらえてみれば、それなりに補償しなければならない問題があるわけであります。こういうことについて、政府がおやりになることじゃない、あるいは政府は冷静に厳正にその事態を見守っているかのごとき印象にあるわけですが、そういう中で、民間の漁業団体おいては、海外操業漁船損害補償というものについて前向きにいろいろと措置をしておられる。それも国が事務費的な補助を出してということに現実はなっているやに聞いておりますが、その辺のところをお聞かせいただきたいと思うのです。  そしてまた、将来の展望として、これは国が事務費的なものを補助して民間がそれを取り扱っているということじゃなくて、これから二百海里時代に向かっての大きなことでありますし、今後もそういう事態がたくさん発生するだろう、そういうことに対応する問題としてどういうふうにお考えになっているか。  第二の問題は、漁船積荷保険や船主責任保険などは実害の起こることに対する補償、安心して働けるようにという立場からの保険制度でもございますけれども、そういうことの以前に漁業の安全操業ということを図らなければならないわけであります。冒頭議論をいたしましたように、今日の二百海里設定によって、各国の間にあって私どもが日本の国益を守るという立場からも、そうしたいろいろな入り組みはございますが、安全操業ということについて政府はどういうように考えているのか、これは大臣からもお答えをいただきたいと思います。
  81. 森整治

    ○森(整)政府委員 私の方で先に御答弁いたしまして、後で大臣からお答えをいただきたいと思います。  拿捕等の問題は、最近の傾向としては実はふえておるわけでございます。ただ、この拿捕事件等の性格が変わってまいりまして、従来は二百海里ということでなしに、いろいろトラブルがあって拿捕事件があった。たとえて言いますと、北方四島のような、要するに両方の領土の認識の違いというところからいろいろ不幸な事件が発生した。そういうことのために、不当拿捕の損害を補てんするという意味で特殊保険なり乗組員の給与保険という制度があったわけでございますが、二百海里ということがそれぞれ公認をされるということになりますと、その中での拿捕事件ということが最近の大きな特徴になっておるわけでございます。  こういうことになりますと、国がやる保険になじまない、むしろ相互主義に基づく共済制度みたいな考え方の制度がふさわしいということで、新たに海外操業漁船損害補償事業というので、漁船保険中央会が中心になりまして、拿捕によっていろいろ損害を受けた漁業者の損害のうち、漁船の船体なり漁獲物、漁具の損害、あるいは抑留された場合の乗組員の給与、罰金、そういう費用について七〇%の範囲内で救済金を支払う事業を始めようということで、七月から発足する予定を立てておりまして、これについて国が事務費を補助していくというたてまえをとりたいということでございます。それにも増して、その前に、そういう損害が発生しないようにいろいろ指導もやってまいりたいと考えておるわけでございます。  最後に、安全操業の問題についての御質問がございましたけれども、二百海里体制ということで、先ほども日ソサケマスでお話が出てまいりましたように、操業に対するいろいろな規制がかぶってきておるわけでございます。われわれといたしましては、その国々の操業規制の内容につきまして、つまらないと思われるようなことでいろいろ事件が起きておるわけでございますから、通達説明会で徹底いたしまして、その指導に万全を期してまいりたいと考えておる次第でございます。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 二百海里時代に入りまして、わが国漁船相手の二百海里の中で操業する機会が非常に多くなった、そういうことで、拿捕されるあるいは罰金を科せられるという事件が頻発をいたしております。また、わが国の二百海里水域あるいは領海水域等においてもやはり外国の漁船等の侵犯が繰り返されております。最近の尖閣列島における中国漁船侵犯もその例でありますし、また昨日は、北朝鮮の軍事水域の中でわが国漁船操業したということで拿捕されている。わが国としては軍事水域を認めておるわけじゃないのですから、これは筋の通らない話でありますが、とにかくそうした事態がたくさん出ておるわけであります。  外国のそうした二百海里以内のわが国漁船の拿捕につきましては、いま水産庁長官が申し上げましたように、外国の法令、その国の国内法によって拿捕されるわけでございますが、わが国漁船等が出漁する場合に、そういう規制というものがよく理解されてない、わからない、外国の法令等も熟知しないで行って拿捕されるという例が非常に多いわけです。したがって、いま水産庁長官から申し上げましたように、そうした漁船に乗り組む諸君に外国の操業規制の内容等については熟知せしめて、拿捕を免れるという方向で指導していかなければならぬことは当然でありますし、そういう点についてはだんだんと努力をして、その成果も出てきておるというふうに考えておるわけでございます。  基本的には、こうした問題の続発を防ぐためには、両国の政府間でいろいろと話し合いをして、水産外交その他のいろいろな面で相協力関係を保って、できるだけ拿捕等の事態が起こらないように、そういう政府間の話し合いをもっと積極的に進めていくということが必要であると思うわけでありまして、そういう点については、今後とも積極的な外交展開によって努力してまいりたいと考えております。
  83. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  84. 中尾栄一

    中尾委員長 野村光雄君。
  85. 野村光雄

    ○野村委員 私はただいまから、昨日提案されました漁船積荷保険臨時措置法の問題に関して質問をいたしますが、まず最初に、その質問に先立ちまして、安倍臨時大臣並びに森水産庁長官お尋ねいたします。  目下モスクワにおい日ソ漁業交渉大詰めに入ってきておりまして、その大詰めの実態が昨日来の新聞報道等によって伝えられておりますが、当初の予想を大幅に下回った漁獲量、水域の制限問題、こういう問題で非常に多くの関係漁民がいま大きな衝撃を受けておりますので、留守を預かっております安倍大臣並びに水産庁長官に対してとりあえず三点だけ御質問をいたしまして、なおかつ中川大臣が帰国次第、また本問題に触れまして改めて質問を申し上げたい、こういう考えでおりますので、ひとつ御答弁をいただきたいと思うのであります。  まず第一点にお尋ねいたしたいことは、御存じのとおり、サケマスのモスクワにおきますところの漁獲量が四万二千五百トンという、昨年の六万二千トンから比較いたしますと、大幅な減退をいたしたわけでございますけれども、この漁獲量の大幅な減退並びに漁業水域の大幅な制約、こういう厳しい実態に対して、臨時大臣並びに水産庁長官としてどのように受けとめていらっしゃるのか、その点にまず御答弁いただきたいと思います。
  86. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の日ソ漁業交渉におきまして、中川大臣を初めとして代表団が奮闘これ努めておるわけでありますが、ソ連の壁が厚くて、ついに四万二千五百トンという漁獲高で合意をせざるを得ない状況に陥ったわけでございます。  当初は、公海における沖取りは全面禁止、こういう厳しいソ連方針が流れておったわけでありますが、その後三万五千トン、さらにまたソ連の第二次提案で四万一千トンということになったわけでありますが、わが方が粘りに粘った結果、最終的に千五百トン上積みして四万二千五百トン、しかし、これ以上ソ連譲歩を求めることは困難であるという結論に達しまして、中川農林大臣としてもついに涙をのんでこの線で合意をせざるを得なくなったわけでございます。  さらに、禁漁区域等につきましても、ソ連の主張する禁漁区域は、余りにもわが国漁業のこれまでの既存権益というものを損なうことはなはだしいわけでございまして、とうていわが方として容認することができないものですから、これまた粘りに粘って今日に至っております。  恐らくきょう三時ころからの最終会談に持ち越されたわけでございまして、私としては中川農林大臣の最後の努力期待をかけておるわけでございますが、全体的には昨年の六万二千トンに比べまして四万二千五百トン、そうして漁区も非常に制限されたということで、わが国の北方漁業に与える影響というものはきわめて甚大なものがあるわけでございます。そうして、これは恐らく相当量の減船を行わなけば対処できないという事態に追い込まれることは必定であるというふうにわれわれとしても覚悟いたしております。それに対する措置等は十分考えなければならないわけでありますが、今回の日ソ漁業交渉というものはいままでにない厳しいものであって、わが国としてはまことに残念至極のことでありますが、何としても交渉ごとでありますし、相手が支配権を持っておるという状況の中でありますので、これまた本当に残念至極でございますけれども、涙をのまなければならない、こういうことになったことは御理解をいただきたいと思います。
  87. 野村光雄

    ○野村委員 モスクワにおきますところの厳しい日ソ漁業交渉の結果を、ありのまま厳しく大臣も受けとめていらっしゃるようでございます。  実は私も昨年、日ソ漁業交渉の中でモスクワに訪ソさせていただきまして、ソ連というのがいかに一方的な考えでわが国の実態なり考えを無視した形で押しまくってくるのかということは、私自身もモスクワに参りましてはだで感じてまいった一人でございますけれども、ただ、私はこの際、このように昨年に引き続きまして年々大幅に漁獲量が激減されたり、また水域の厳しい姿勢に対して、わが国ソ連側をもっと納得せしめるところの科学的根拠というものが若干足りないのじゃないか、こんな懸念を抱いておるわけでございます。  一つの例を申しますと、ソ連あたりは盛んに最近は母川主義ということを言い出してきておりますけれども、これらの問題に対しましても、私は去る四日にも、中川訪ソ前に折衝の基本的姿勢の問題で、本委員会で考え方をお聞きいたしたわけでございますけれども、このサケマス問題は、もう半永久的にソ連と毎年毎年折衝していかなければならない問題でございますので、わが国の水産界としても漁獲量その他に関しても十分にソ連側を説得し得る科学的根拠というものをもう少し詰めて折衝する必要があるのじゃないかというふうに思っておりますけれども、この点に対してはどのように認識なさっていらっしゃるのか、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  88. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サケマスについては、ソ連だけではなく、アメリカもカナダもそうでありますが、遡河性魚類だという主張でありまして、もはやその彼らの主張にわが国としても従わざるを得ない、こういうことになって、カナダ、アメリカとの間の協定も結ばれたわけでございますし、ソ連ももちろん遡河性魚類であるということで母川主義を主張いたしまして、公海といえども、日本にはソ連サケマスをとる権利はないというのがソ連の主張でございます。しかし、わが国からすれば、二百海里から外の公海上の漁獲については、ここまでソ連が、あるいはその他の国が漁獲について制限をするということについては問題があるということをかねがね主張もいたしておるわけでありますが、大勢はいかんともしがたいということで、交渉しておるわけであります。  しかし、問題は、公海のサケマスについては、やはり資源という見地からお互いに合意を求めるということで、科学委員会や何かを設けて、お互いに資源の状況を相照らし合いながら納得のいく線で資源保護という立場からこれまでも合意を求めてきたわけでございまして、わが国の科学者等の精密な調査によっても、いまの資源の状況からは四万二千五百トンどころではない、さらにさらに漁獲をしても十分資源は温存できるという立場は、科学的な根拠から強く主張しておるわけであります。  これに対してソ連は、逆な立場といいますか、基本的にはとにかく遡河性魚類だからとる権利はないという立場でしょうが、資源の問題についても、ソ連は、資源が相当行き詰まっておるという観点で、ソ連流の主張を続けてきてこういう事態になったわけでありますが、わが国からすれば、何としても公海の漁獲というのは、わが国の、われわれの先祖が開発し、そして漁労を続けて今日に至って、いわばわが国の専売特許みたいなものですから、これを根こそぎ否定するということについては、どういう角度から見ましても納得できませんし、また資源の立場から見ましてもソ連の主張というのはとうてい納得することはできないわけでありますけれども、残念ながらソ連のそうした力といいますか、そういう力関係、最終的にはそういうところまでいかざるを得ないわけでありますが、行き着くところはそういうところまでいくわけでありますが、最後には、交渉の結果としてソ連の主張に従わざるを得ない。ソ連も多少の妥協はしましたけれども、われわれの主張を十分生かすことができない形でソ連の主張をのまざるを得ない、こういうような事態になったわけで、まことに残念至極でありますけれども、今後ともソ連との間ではいろいろな面での、漁業協力の面もまだ残っておるわけでございますし、やはりお互いに友好関係を保ちながら今後の公海における漁獲が維持できるように、日本漁業が維持できるような形で道をあけていかなければならない、こういうふうに考えて、今日の事態をわれわれはあえてのんだ、こういうことでございます。
  89. 野村光雄

    ○野村委員 次に、いまの日ソ漁業問題でもう一点だけ。先ほど臨時大臣は御答弁の中で触れておりましたが、減船対策の問題でどうしてもここでもう一点だけお聞きをいたしておきたいと思うのです。  去る四日の私の質問に対しましても、水産庁長官は、少なくとも減船にだけは追い込まれるようなことのないようにしたいと、非常に希望的観測でございますけれども、お話がございましたが、悲しいかな、ただいまの臨時大臣の御答弁の中にもございましたとおり、サケマス漁の漁獲量が大幅な減少をいたしました結果、昨年に引き続いて減船のやむなきに至るのではないか、こういう懸念が出てまいりました。そこで、私は、すでに昨年この問題で大きな衝撃を受けておりますさなかに、追い打ちをかけるようにさらに減船ということになっていくわけでございまして、昨年以上の混乱と深刻の度はきわめて深いものが出てくると思うのです。  そこで、この事態対応できるためへの、この減船に対する特別対策の本部等の機関を水産庁としてぜひ設置していただく考えはないかということと、もう一つは、その対策本部等は単なる水産庁の幹部のみで構成するのでなくして、当然これは各省庁との関連問題が出てはまいりますけれども、特に現地の関係漁民団体の代表等をこの中に網羅しながら最も的確な対応をしていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えますけれども、この対策本部の設置と基本的な内容、そして対策本部を設置する考えがあるとするならばいつごろをめどとして考えられるのか、この点についてお考えがございましたら御答弁をいただきたいと思います。
  90. 森整治

    ○森(整)政府委員 見通しが甘かったと言われれば大変申しわけないというふうに思いますが、それはそれといたしまして、こういう立場に相なったわけでございますから、御指摘の対策本部のようなものにつきまして、まだそこまで検討はいたしておりませんが、昨年は千隻に及びます北洋全体の問題がございました。サケマスだけでなしに全体の減船ということに迫られたわけであります。そういう意味で、昨年は確かに対策本部を設けましていろいろやった経験がございます。  そこで、ことしどうするかということでございますが、それぞれの団体の長が、あるいは幹部がまだモスクワにおるわけでございまして、今後交渉妥結されれば直ちに帰国をすると思います。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そういうことで関係団体と十分私どもは話し合いをいたしまして、まあこれもなまやさしいものではないと思います。まだこのショックが本当に腹に入っていないというふうにも見受けられるぐらいな状況でございまして、これからいろいろな話し合いが行われる。団体の中でもそういう話し合いが行われるし、私どもともこれから話し合いを行いたいというふうに思っておりますが、一応去年の先例がございますので、それを念頭に置きながら、できるだけ早い機会にいろいろな条件を決めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、いまのところこれからの作業ということに相なるわけでございまして、私どもとしては一日も早くいろいろ皆さんの御意見も聞かなければいけない問題でございますから、慎重かつ迅速にということに相なると思います。また、私どももいろいろ説得をする場面も相当必要だと思います。あるいはなかなか説得に応じないかもしれませんが、それらも全部含めまして、できるだけ早い救済金その他の問題につきましての処理をしてまいりたいというふうに考えております。
  91. 野村光雄

    ○野村委員 できるだけ現地の実態、実情を的確にひとつ反映しながら対応策を進めていただきたいことを要望いたしておきます。  次に、本題に入らしていただきますが、漁船積荷保険臨時措置法をさらに五年間延長、こういう御提案でございまして、私どもといたしましても、この法案のさらに五年延長に対しましては異議をはさむものではございませんが、ただ、若干ここで御質問をしておきたいことがございまして、ただいまからこの法案の質問に入らしていただきます。  まず、お聞きをいたしたい第一点といたしまして、すでに四十八年十月から試験的に実施をしてこられまして、今日までの経緯と実態、配付いただきました書類等を見てみますと、加入率が伸びていない、非常に悪い、こういう実態でございますけれども、この加入が遅々として余り進まない、こういう実態に対しては、この理由をどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、これが第  一点。  それから、この加入率が非常に悪い中で今後の加入率の引き上げ対策というものに対しては、どのような対策と、どのような見通しを持っていらっしゃるのか、これが第二点。  第三点として、漁業者保険料の負担の問題でございますけれども、現行の五年間やってまいりましたこの保険料を今後軽減する方向で検討する考えはないのか。  この三点をまず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  92. 森整治

    ○森(整)政府委員 まず第一点の、加入率が低いのではないかという御質問でございます。これにつきましては、試験実施ということで、需要者側のいろいろな意見を聞きながら実施をしておるということが一つ原因になっているかと思いますが、四年間を通じての加入率一七%ということで、これを類似の民間保険の方と見ますと、民間保険漁獲保険が一一%ということでございますから、それで両方合わせて二八%ということに相なるわけでございます。  ただ、それにいたしましても、もっと加入率を引き上げるということにつきましては、まさに御指摘のとおりだろうというふうに思います。そこで、それにつきましては、漁船保険中央会等を通じまして、十分いろいろ各保険組合等を指導して加入の促進に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから、保険料の軽減はどうであろうかということでありますが、ただいまのところ、漁船積荷保険につきましての危険率は比較的低く推移しておりますので、その危険率を見ながら今後軽減に努めてまいりたいというふうに考えております。
  93. 野村光雄

    ○野村委員 時間がございませんから、端的に順次質問していきます。  その次に、一応五年間さらに延長、こういうことが今回の提案でございますけれども、それでは、本格的な実施に対しての見通しというものは、仮に言いますと、これからさらに五年間延長しまして、その後において本格的な実施、こういう見通しの上で五年間延長なさるのか、五年間延長とあわせて本格実施の関連性、見通し、これをお聞きいたしたいと思います。
  94. 森整治

    ○森(整)政府委員 今回の延長の趣旨が、いろいろ二百海里時代に備えての操業形態の変化の実績を積み上げていきたいということでございますから、ある期間のデータの蓄積を図るということは必要であるというふうには考えておりますけれども、必ずしも五年間漫然と過ごすというつもりはございません。それ以前でも、合理的な保険設計が可能となりますれば、その段階で速やかに本格実施に移す。これは漁船の船主保険の期限とも関係がございますので、そういう時期に、もう一ついろいろな判断を加えながら検討していきたいというふうに思っております。
  95. 野村光雄

    ○野村委員 そうすると、水産庁、こういうふうに受けとめてもいいのですか。いまの御答弁からいくと、一応五年間延長という今回の提案だけれども、その実態と成り行きによっては、五年を待たずして本格実施に踏み切るということもあり得るんだ、こういうふうに受けとめていいのですか。
  96. 森整治

    ○森(整)政府委員 そのとおりでございます。
  97. 野村光雄

    ○野村委員 そうすると、本来ですと、五年間も延長しなくても、大体の見通しはついたんだけれども、しかし、本格実施ということに踏み切るのはもうちょっと具体的に不安な面があるから、とりあえず五年間延長させていただきたい、こういうつもりの御提案ということになりますね。
  98. 森整治

    ○森(整)政府委員 もう一回言い直しますと、今後五年間、二百海里時代の新たなデータの収集を行う必要があると一応思っております。ただ、それ以前でも、要するに五年間たたなくても、合理的な保険設計が可能な数字が出てくる、あるいはそういう見通しが立つということで、もう本格実施をしても差し支えないということがそれ以前に判断できれば、直ちに本格実施に移して差し支えなかろう、こういうふうに考えておりますということでございます。
  99. 野村光雄

    ○野村委員 その場合、ちょっと不安がございましてお尋ねしたいのですが、本格実施になります段階で、今後の過程におきまして、加入者も相当ふえていくでしょう。加入者がふえると同時に、事故件数もそれに伴って当然ふえていくだろう。さらに、現在置かれている諸条件、環境、こういうものからいきますと、二百海里時代、十二海里時代を迎えて、非常に海上における紛争、いろいろなことが巻き起こっているさなかでございまして、われわれ素人から考えますと、事故件数が若干ふえるような諸条件、傾向にあるんじゃないか。  こういうふうになった場合に、この収支のバランスというものが、ある程度、最悪になったとしても維持できる形態と、このように思っていらっしゃるのか。この点のバランスの問題。
  100. 森整治

    ○森(整)政府委員 これは保険の設計となるデータの集積を図っていこう、こういうことでございますから、今後損害率がどういうふうに相なっていくかということにつきましては、もちろん二百海里ということでいろいろな漁場の規制が行われてきている、それに対応して操業の形態が変わってきているということでございますから、今後の動向を予測するということは非常に困難だとは思います。したがいまして、危険の態様等に弾力的に対応できるような基礎資料の収集に努めていくわけでございまして、それなりの設計、データが整った上での保険設計を行えば、そこで保険収支の均衡が図られるというような合理的な設計を行っていくということによりまして、そういう不測の事態は回避できるのではないだろうかというふうに思っておるわけでございます。  また、再保険の制度を、責任をだれがどういう形で行うかということにつきましての問題はあるわけでございますが、考え方としては、あくまでも、保険中央会が現在やっております場合は、国が債務負担行為で再保険金の支払いを担保するという形をとっておるわけでございます。そういう意味で、結局国が後ろ盾でやっておるわけでございますから、そういう不測の問題というのはまず起こるはずはないというふうにお考えいただきたいと思います。
  101. 野村光雄

    ○野村委員 次に、漁船積荷保険本格実施いたしました際に、現在、各種の漁船保険事業というものがいろいろあるわけでございますけれども、この各種ある保険事業というものを、この際、全体的な体系を見直す必要が出てくるのじゃないか、私はこういう考えを持っているのでありますけれども、見直す考えはあるのかないのかということと、もう一つは、保険共済三制度の統合一元化、こういう問題に対してもあわせて再検討する考えがおありになるのかないのか、この点をあわせて御答弁いただきたいと思います。
  102. 森整治

    ○森(整)政府委員 第一の御質問でございますが、元請保険につきましては、従来から漁船保険組合がまずこの制度としては適当ではなかろうかと思っております。  そこで、再保険者の問題につきましては国が再保険をするという考え方が一つ、それから、現在のように漁船中央会でいいではないかという考え方が一つ、それから、漁船中央会がとりあえず再保険をいたしまして、再々保険を国がするという考え方もあろうかと思います。こういう考え方がございますが、それぞれ一長一短があるということで、この制度が終わるということよりも、また五年先ということよりも、船主責任保険が五十六年までで試験実施の期間が切れるわけでございます。そういう時期までに保険中央会の位置づけも含めまして十分検討をしていきたいというふうに思っております。  それからさらに、この保険なり共済制度につきまして三つの制度がございます。その統合一元化の問題につきましては、先ほど来いろいろ御議論がございますが、この問題につきましても一応前回の検討会の中間答申という報告を受けまして、五十二年度から保険共済団体によります都道府県の保険共済共同推進センターというのを五府県にわたりまして設置し、運営に対しまして助成をしておるわけでございます。これの成果を見きわめながら、この一元化問題についても検討をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  103. 野村光雄

    ○野村委員 最後に二点だけ質問いたしますけれども、その第一点といたしまして、御存じのとおり二百海里時代を迎えまして、去る四月四日の本委員会でも私はこの問題に触れたわけでございますけれども、御承知のとおり特にソ連の監視船によりまして昨年来不当な罰金をどんどん取られておりますケースがございます。これはこの間も御答弁ございましたけれども、全くもって漁民みずからの責任でない問題で一方的にソ連から罰金を取られたり何かしている、しかし、その大半は泣き寝入りで取られ損だ、こういう実態になってきておる。こういうものに対しては政府としては、いままで私としては、やはり内容によったら政府が立てかえ払いをするなり代替して払ってやれ、こう言っているけれども、一向にそういう考えは持っていないようでございます。さりとてこういう場合の保険というものは、別段このことによって金が支払われるような対応というものはなされていないわけでありますが、こういうケースに対して何らかの救済対策というものを講ずべきだ。一番いいのは、内容によっては、やはり政府側に今後責任があったり、または一方的にソ連の考え方違いによって取られた、こういうものに対しては政府が一時立てかえ払いをするなりの方法はあると思うのでありますが、これらの罰金によるところの被害を受けております漁民の救済対策、これを具体的にどういうふうに立てられようとしておるのか、この点をひとつこの際明確にしていただきたい。  それから特に外国漁船、すなわち一番多いのはソ連ないし最近は韓国漁船でございますけれども、再三この問題も私は触れておりますが、沿岸漁民が漁具、漁場等の著しい損害というものを受けております事犯というものは、水産庁よく御存じのとおりでございます。しかし、韓国の場合は、これは民事ですからお互いに交渉しなさい、しかし、いまだに一件も弁償というものは行われていない。ソ連ソ連で、非常に多額な、そして多くの件数の漁具、漁場の被害をこうむっております。これも先日の質問によりまして回答書をいただいておりますけれども、処理委員会でいま審議中で全くもってただの一件もただの一銭もこの損害の補償金というものはいまだにもらっていない、もらえない、こういう実態にあるわけです。  これらの問題は、ただ損害の受けっ放し、こういう事態でございますけれども、この問題に対しても、すでに東京の処理委員会からモスクワに送られた十数件だけは、いずれにしてもこれは水産庁として、どんな外交手段をとろうとも、やっぱり弁償だけはしてもらわなければならない筋合いの問題であります。ただ、一方的なソ連の考えでなかなか折衝が長引いているというだけである。しかし、これらの問題に対しては、とりあえず水産庁としてこの損害というものに対しては補償してやる、こういうような制度というものを今回の積荷保険とあわせながら、新たな段階として、現時点におけるこういう各種の事犯に対応する対策を講ずる必要があると考えますけれども、この二点に対して明快な御答弁をいただきたいと思います。
  104. 森整治

    ○森(整)政府委員 最初の拿捕あるいは罰金の問題でございますが、先般の当委員会におきまして私、答弁漏れがございまして大変失礼いたしましたが、後刻御説明いたしましたように、罰金を不当に取られたというのは当然取り返すということで、いろいろ処置をしておるわけでございます。今後もその努力は続けたいと思います。  ただ、今後は、やはり二百海里時代に入りまして、制度的に何かそういうものを考えるべきではないかということがございまして、一応海外操業漁船の損害補償事業というのをことしの七月発足の予定でいろいろ準備を続けておるわけでございまして、これにつきましては、相互の共済、互助活動ということで、漁船中央会が約一%程度のお金を集めまして、いろいろな拿捕事件が発生した場合の損害、漁船なり漁具なり漁獲物なりあるいは組合員の給与なりあるいは罰金の費用なり、そういうものについて七〇%の範囲内で救済金を支払ったらどうかということで、その制度化を急いでおるわけでございます。これにつきましては事務費等を助成いたしまして、事業の円滑な推進を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  次に、漁具等の被害の問題についてでございますが、確かにソ連との間に起こりました漁具の被害問題につきまして、東京の委員会、さらにこれはモスクワの委員会に送りまして、最終的にはそこで処理をするということで、最近は週一回あるいは二回ということで東京でも審議を急いでおる、済んだものをモスクワに送る。モスクワで非常におくれておるのは、いろいろの理由も先生に御説明したと思いますが、今後その促進を図って、確かに取るべきものは取っていかなければいけないというふうに思っております。  それから、韓国の漁船によります漁具被害の問題につきましても、五月上旬には両国間の合同の委員会を開きまして、被害の処理ルール、安全操業のルールというものを決めたいというふうに考えておるわけでございますが、そのほかに、いままで出ました漁具被害につきまして道庁がある程度めんどうを見る、そのもとをまた政府がめんどうを見るという形で、末端で無利子の融資が実現できるようにいま努力しておるわけでございます。それを政府が立てかえるということにはなりませんけれども、一応融資措置を講じまして利子の軽減をしながら被害漁民に対してとりあえずの応急的な措置は講じてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  105. 野村光雄

    ○野村委員 応急的な、無利子で金融を図りたい、こういう考えでございますが、これは結構なことですけれども、いずれにいたしましても、そういうことを対応するにしても、私たちの立場から言うと対応の仕方が、水産庁長官、遅いのですよ。ですから、私の言わんとするところは、いずれにいたしましてもこういう問題は余り何年間も放置されてからようやくおみこしを上げるんでなくて、時期というものが非常に大事でありますから、そういう点をひとつ早急に対応していただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  106. 中尾栄一

  107. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案について、政府当局に質問いたします。  本法は、漁船に積載した漁獲物等について生ずることのある損害を適切に保険する制度の確立に資することを目的として、漁船積荷保険臨時措置法に基づき、昭和四十八年十月から五年間の予定で漁船保険組合が漁船積荷保険事業を行い、漁船保険中央会が漁船保険組合の負う保険責任を再保険する事業を試験的に実施しておるわけでありますが、今後さらに五カ年間試験実施を継続し、新たな情勢のもとにおける保険設計に必要なデータの蓄積を図ろうとして本法提案に及んでいるわけですけれども、試験実施延長する理由について、まず政府の見解を冒頭求めるものであります。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  108. 森整治

    ○森(整)政府委員 漁船積荷保険は、性格上、遠洋、沖合い漁業が中心になっておるわけでございますが、相次ぐ二百海里の設定によりまして、いろいろ漁業を取り巻く環境が非常に変わってまいった。特に沖合い、遠洋漁業者は、御承知のように、減船を余儀なくされましたり、あるいは漁場の転換を図らなければいけないというようなこと、それから特にカツオ・マグロのように航海日数が非常にふえてきたりするという事情、あるいは操業の密度が高まってくるというような問題、そういうようなことから操業の形態が著しく変化を余儀なくされておるわけでございます。そういう時代にたまたま保険実施期間が切れるということでございます。これらの変化を今後さらに織り込んで、これらのデータを積み上げた上で、新しい本格的な実施の体制をとってまいりたいというふうに考えたからでございまして、その期間といたしまして、一応過去五年ということでございますので、さらにひとつ五年程度の期間を見たらどうであろうかということで、一応のお願いをしておるわけでございます。
  109. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五カ年間の延長であるけれども、先ほど同僚の野村委員に、その試験データの整備によっては五カ年を待たずして本格実施に移るというようなこともあり得るというような答弁があったと思うけれども、その点は間違いないか、そういうふうに理解していいですか。私も確認しておきたいと思うので、お答えをいただきたい。
  110. 森整治

    ○森(整)政府委員 保険設計をするに足るデータが出たという判断が下りますれば、当然そういう措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  111. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁船積荷保険の対象とする漁業種類及び漁船総トン数の下限の引き下げについてでございますけれども、たとえば現在追加対象の要望がありますカジキマグロの流し刺し網、すなわち大目流し網ですが、この漁業で使用する漁船の総トン数二十トン以上を追加するということについて漁民及び団体からの強い要請があっていることは当局も御存じだと思います。また、カツオ釣り漁業の使用する漁船の総トン数下限を現在の五十トン以上から二十トン以上とすることについても漁民並びに関係団体から強い要望がかねがね出ているわけでございますが、これらを漁船積荷保険の対象とすることについては検討の用意があるのか、その点もひとつ本法提案に当たって明らかにしていただきたいと思うのであります。
  112. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいまの制度発足から九漁業種類でございまして、それから三加えまして十二漁業種類ということで現在試験実施を行っているわけでございますが、御指摘のように、今後の問題といたしまして、カジキ等の流し網漁業の二十トン以上の船につきまして、そういう漁業を追加するということが一つと、それからもう一つは、カツオ釣り漁業のトン数の下限の引き下げを行うということにつきましていろいろ検討をいたしたいというふうに考えております。
  113. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 検討したいということは、いま私が申したようなことで、近い将来実行に移す、こういうふうに理解していいですか。
  114. 森整治

    ○森(整)政府委員 調査をした上で追加を検討したいということでございます。
  115. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ぜひとも早急な調査をした上で実行に移すように努力していただきたい、重ねて要求いたしておきます。  次に、漁船保険制度は、漁船本体の保険積荷保険、すなわち積荷に対する保険、さらには外部の危険をカバーする船主責任保険があることはもう御承知のとおりでございますが、これらはそれぞれ関連性があるわけでございまして、船主責任保険昭和五十一年より試験実施を行い、昭和五十六年までで終了することになっております。また、積荷保険は、昭和四十八年より試験実施を行い、さらに五十三年九月から昭和五十八年まで延期ということで対処される方針のようでありますが、積荷保険延長昭和五十六年まで三年にして一緒にスタートしたらどうかという意見が強いわけですけれども、これについてはどういうふうにお考えであるか、政府の見解を承っておきたいと思います。
  116. 森整治

    ○森(整)政府委員 試験実施の期間としては、やはり五年が一応の目標としては適当ではなかろうかというふうに判断をいたしまして、改正の案を御提出して御審議をわずらわしているわけでございますが、先ほど申しましたように、五年たたなくても、もし基礎的なデータが整いますれば、それはその時点でそれなりの本格実施についての検討もいたすということでございますから、必ずしも年次をあらかじめ合わしておくことの必要はないのではないだろうかというふうに判断をいたしております。
  117. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そうしますと、逆に言えば、調査データがそろわずに、どうしても五年間は試験実施が必要であるということになった場合は、船主責任保険昭和五十六年に終了するわけでございますので、さらに、この積荷保険と同じように昭和五十八年まで、逆にまたその時点で二年間延長するということも考えられるということになるわけですか。なるべくそういうことにならぬように早く実施をしてもらいたいと思うのですけれども、逆な言い方をすれば、そういうことも考えておられるのですか。
  118. 森整治

    ○森(整)政府委員 船主責任保険が五十六年で終わる段階は、再検討の一つの節目の時期ではなかろうかというふうには考えておりますけれども、いまその時期に必ず全部再検討いたしましてどうするというふうにはまだ考えておりません。
  119. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 変な尋ね方ですけれども、そうしますと、五年を待たずして、昭和五十六年ぐらいには本格実施に移る段階に持っていこうという積極的な努力姿勢はうかがえる、また、そのように努力していきたいという政府の考えは一応うかがえると思うのですが、そういう理解でいいのか。突っ込んだ話でありますけれども、その辺もお伺いしておきたい。
  120. 森整治

    ○森(整)政府委員 私が申し上げましたのは、あらかじめそういうことをいまこの段階で決めるということは無理でしょう、五十六年に船主保険の試験の時期が終わるということが予定されておるわけでございますから、その段階でデータ等がどういうふうな状況になりますか、それを見ながら一応その時期でどうするかということを検討する、これも一つの節目になるのではなかろうかと現時点で判断をいたしておりますけれども、今後のデータの積み上げ等がどういうふうになりますか、それによってまたその判断が変わってくるかもしれませんということをお答えしたつもりでございます。
  121. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 漁船保険料率の改定の問題ですけれども、昭和五十三年度が漁船保険料率の改定の年に当たっているわけです。漁船保険特別会計は昭和四十八年以降毎年赤字を計上しておるわけであります。ちなみにこの表を見ましても、四十八年が十二億六千七十六万円、四十九年が一億九千九十六万六千円、五十年が五億六千四百五十八万三千円、五十一年が四億五百八十万九千円、こういうように当期損益で赤字が出ております。昭和四十八年の法律改正によって漁船保険中央会に三十五億円が交付されたところによりましても三十三億四千万円あった繰越利益金も、五十二年度には九億二千万円に減少しております。純保険料率の算定に当たっては、漁船損害補償法第百十三条の四に基づく農林大臣告示によりまして、過去十年の実績データに基づき算定することとしておられますが、最近の赤字傾向がそのまま反映して料率アップにつながるということにはならないとわれわれも理解しておりますけれども、今後料率を改定するということを考えておられるのか、その辺もこの機会に明らかにしていただきたい。  また、漁船保険特別会計が赤字基調になった原因、いろいろ挙げておられるようですが、こういった原因について、事故は最近増大してきておりますし、また、その事故の原因も偏ってきているという傾向にあるのですが、それらもこの際明らかにしていただきたい。
  122. 森整治

    ○森(整)政府委員 確かに、御指摘のように、四十八年から損益が赤字になりまして、四十八年は四十七億ということでありますが、あとはそう大きな額ではございません。五十二年の見込みといたしましては黒字になるのではなかろうかと推定されておりますが、いずれにいたしましても、この赤字基調というか、赤字がなぜ出たかというと、いま御指摘のように、四十八年に再保険割合を変更いたしまして、繰り越しの益金が多いからこれを有効に使おうということで三十五億出したわけです。その出した後で、石油ショック等の問題、再保険割合を変えたり、石油危機以降の物価高騰ということで、分損事故の修理費が非常に上がってくるという事態がございましたけれども、最近は物価が鎮静化してくるとか、あるいは漁船の評価基準を変えることによって再保険料が上がってくるということもございまして、保険収支は次第に好転してきているというふうに見ておるわけでございます。  今後の保険料率につきましては、三年ごとに改定を行っておりまして、五十三年はその改定の年度に当たっておりますが、最近、収支は逆に好転してきているということ、また、最近の漁業をめぐる情勢からいたしますと、漁業者に余り負担を増大させることもいささかどうであろうかという判断もございますので、今回は保険料率はおおむね横ばいで据え置いていきたいということでございます。
  123. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府から提案された漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案の参考資料の五ページを森水産庁長官開いてください。「引受及び支払の実績」として、四ページ、五ページにわたりまして、昭和四十八年から五十一年までの四年間、その合計が出ておりますが、これについて少し説明をお願いしたいと思ってお尋ねいたします。  この「計」のところの加入対象、これは三万一千九百二十八隻、すなわち昭和四十八年から五十一年までの四年間の累計であると思います。年間おおむねどのくらいになるか、お尋ねしたいわけですけれども、昭和五十一年などは、加入対象は九千九百二十隻になっておりますが、多い年は一万隻近いものがあるというふうに理解しておるわけです。隻数は五千五百十四隻で、これは加入して引き受けた船ということだと思いますが、加入率はどのくらいになるのか。また、契約金額が二千五百六十七億九千九百万円、この金はもし損害があれば支払う金額ということだろうと思うのですが、その次の純保険料が十億二千七十六万九千円、これは保険料の収入ということになるのだろうと思っております。支払いの隻数はこの四年間で六十二隻、保険金は結局三億九千八十八万円、これはいわゆる事故があったために支払ったことになるのじゃないかと思いますが、大体私が言っていることに間違いないか、確認の意味でお答えをいただきたいと思うのです。
  124. 森整治

    ○森(整)政府委員 いま先生おっしゃったとおりで、この加入対象が三万一千九百二十八隻でございますから、平均いたしまして、引き受けが五千五百十四、これのパーセンテージを出しますと一七・三%、いわゆる加入率一七・三%ということになります。  それからあと純保険料が、先ほど御説明ありましたように、十億二千万円になりますか、それに対しまして支払いが三億九千万円ということでございますから、逆にこれを引きますと、剰余金が六億二千九百万円ということに相なるわけでございます。
  125. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 剰余金が六億二千九百万円ということでございますが、この六億二千九百万円というのは、事故が発生した翌年度中に当然支払わなければならないという、いわゆる事務手続ができていないのが、聞くところによると二千三百万円ばかりある。その他責任準備金、すなわち契約してから一年間は事故の可能性があるわけでございますから、五十一年の契約高は、五十二年支払い者が出てくるということから、未経過保険分の責任準備金というものが一億三千万ぐらいあるやに聞いておりますが、これらを引きますと、いわゆる正式の累計剰余金というものはどのくらいになるものか。  また、支払い備金という言葉があるのですけれども、支払い備金というものはどういうものを指すのか、これもひとつこの参考書類について政府説明をしていただきたいと思うのです。
  126. 森整治

    ○森(整)政府委員 もう少し正確に申し上げますと、先ほどの純保険料から支払い保険金を引きました六億二千九百万円、それの九掛け、要するに、再保険料分、責任分が九割でございまして、それに対応する再保険分が、漁船中央会の剰余金として出てくるのが、それの九掛け、五億六千六百万円ということになります。その五億六千六百万円から支払い備金の二千三百万円を引いたもの、支払い備金というのはもうすでに事故が決まっておって払わなければならない金になるわけですが、そういうものを引いたものが、未経過保険料の責任準備金一億三千二百万円、これをさらに引きました残りが準備金として四億一千百九十万円ということに相なるわけでございます。
  127. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 結局、そうしますと、四億一千百九十万円ですか、これが準備金として金が残っている、こういうことなんですか。
  128. 森整治

    ○森(整)政府委員 そのとおりでございます。
  129. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 なお次の表、六ページを開けてみてください。ここに「漁業種類別の損害率及び危険率」というのが出ておりますけれども、注の一と二に損害率、危険率の算定方式が出ております。これらは理解できるわけですけれども、四十八年、四十九年、五十年に比べて、五十一年の損害率が八%、危険率が〇・〇二九、こういうことになっております。四十八年から五十一年平均の損害率と危険率を見ますと、損害率が三八・三、危険率が〇…一五二になっております。だんだん事故が多くなってきているというふうにわれわれは政府から説明を受けておりますけれども、五十一年度は極端で、損害率が八・〇、危険率が〇・〇二九、こういうことになっておりますが、これはどういうわけでこんなに下がっておるのですか、その点ちょっと明らかにしていただきたいと思うのです。
  130. 森整治

    ○森(整)政府委員 五十一年はまだ全部の集計ができていないという要素があるのではないかということで、特に五十一年は、事故危険率なり損害率の数字そのものが不正確、そういうのをこのまま出しては申しわけないのですけれども、一応五十一年度の総締めの数字ではない。全部締めたところの数字というふうにごらんにならないでいただきたいという要素がございます。確かに御指摘のように、ちょっと異常な数字になっておるではないかということでございますが、まさにそのとおりでございまして、さらに集計をする必要がある。要するに、全部の集計が終わっている数字ではないということでございます。
  131. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 五十一年分がまだ集計が終わっていないということはちょっとどうかと思うのだが、こういう表を出されるからには、下に余白もあるわけですから、注なら注に、途中経過の数字だとか、この集計はいつごろ集計が終わるとか、丁寧に書いておくべきだと思うのですね。何か役人流で、こういった数字の書き方が不親切だと思うのですが、水産庁長官どうですか。
  132. 森整治

    ○森(整)政府委員 大変申しわけないと思っております。五十一年の欄に出てまいりますのは、五十一年の引き受けということで、五十一年度ということですから、五十二年の三月三十一日までに引き受けたものということに相なるわけでございます。したがって、そういう意味での注書きが確かに必要ではなかったかということで反省をいたしております。大変申しわけございません。
  133. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 今後ひとつ十分注意していただきたい。もう少し親切な説明をさらにしてください。  もう一点伺っておきますけれども、水産庁長官漁業関係保険共済制度の統合一元化の実施の問題ですね。これもいろいろ先年から問題になっておるわけですけれども、これについては本法提案に当たってどういうふうに考えて今後対処されるのか、この点もひとつこの機会に御答弁いただきたいと思います。
  134. 森整治

    ○森(整)政府委員 保険共済三つの制度がございまして、その統合一元化につきましては、二カ年にわたりましていろいろ漁業に関します災害補償制度検討会というのを五十年度から開催して、四十九年度にも関係団体の役員によります検討会を開催いたしました。こういうことでやっておるわけでございますが、この場合のこの検討会では、三制度、三団体の統合一元化ということは、将来的な方向ではあるということではございましたけれども、積極論と慎重論が並行するということで、とりあえず事務の運営面の改善合理化を図っていくという必要性につきまして意見の一致を見たということで、五十一年十月に中間報告の取りまとめが行われまして、そういう答申が出ておるわけであります。それに基づきまして水産庁といたしましては、保険共済共同推進センターというものを設置するということで、五府県にわたりまして五十二年度から設置、運営に対しまして助成をしておるという次第でございます。したがいまして、このセンターがいろいろ事業を行う、その成果を待って一元化の問題については検討をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  135. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本法については、以上数点について指摘をしてきたわけでありますが、しばしば申し上げましたように、今後五カ年間の試験実施期間を待たずして、できるだけ早い機会本格実施できるようにデータの集積または検討を進めていただいて、漁民並びに団体が要望しているこの保険について早期本格実施ができますように最大の努力をお願いしておきます。  私も、こういう機会日ソ漁業交渉その他について若干お尋ねをしておきたい、かように思います。  去る十一日に中川農林大臣は、政府を代表して、懸案中の日ソ漁業交渉のために訪ソされたわけであります。私はそのときの代表質問で、あなたは交渉でもし要求が通らなかったならば再び北海道の土は踏むなというような意味で激励をして送ったわけでありますけれども、いろいろな状況については、報道その他で流れてきていますし、また午前中からの質問でいろいろわれわれも一応理解しましたが、若干補足的にお尋ねしておきたいと思います。  操業禁止区域の縮小の問題でございますけれども、これについてはソ連側から東経百七十五度から百七十度に五度譲歩するというようなことが言われ、すなわち西の方に少しずらしたというようなことでございますが、そういう考え方がソ連から示されたんですけれども、私はもうこんなことじゃ手ぬるいし、けしからぬと思うわけです。中川さんもしっかりがんばってもらわなければいかぬ。すなわち、日本政府としてはこの程度ではこれは撤回を要求すべきである、かように思っております。一千トンや二千トンぐらいの漁獲量の積み上げぐらいとは全然これは比べものにならぬ問題であります。  こういったことで、私は、今回の交渉の中でもこれは重要な一つの問題でありますので、強力な政府の連絡方をひとつお願いし、大臣に伝えてもらいたいと思う。また、ソ連譲歩を強く迫ってもらいたいと思う。交渉の日程も延期されたわけでありますので、さらに交渉期間を延期してでもがんばるべきだ、こう思う。水産庁長官、どういうように考えておられますか。
  136. 今井勇

    ○今井政府委員 大変心強い御激励を実は賜ったのでございますが、この問題につきましてはなお最後の努力を傾注しようということで、本日、いま時分でございましょう、イシコフさんと中川大臣が最後の努力をされておるものと存じます。ただ、相手のあることでありますのと、今月の末には協定がなくなりますということ等々を勘案いたしまして、政府としても先生のお気持ちは十分体しますが、しかるべきときに妥結をすることはやむを得ないのではなかろうかということで、いま鋭意努力をしているところでございまして、先生のお気持ちをありがたくちょうだいいたしますが、さらにただいまやっておられます交渉の成功を私どもは希望をするものでございます。
  137. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この問題については、私たちも今度の交渉の中でも大きな問題としてわが党でも検討し、部会でも重大な関心を持っておりますので、ひとつこの上とも強力な指令を出していただくようにあわせてお願いしておきます。  さらに、四月一日からニュージーランドにおける二百海里設定に伴って、畜産酪農問題との絡み合いもあって日本漁船が入漁できないわけでございます。これまた日本漁業にとっては大変な問題です。漁種によっては漁期的にいまの時期が一番いいというものもありますが、多大な影響を受けておるわけでございまして、このことは、他の漁場へ移れといってもそう簡単には移れるわけはございませんし、かなり現地では打撃を受けておる問題でございます。  五十一年には、ちなみに申しますと、イカ釣り、マグロはえなわ、トロール、底たてなわで約三百五十隻、十六万トンの漁獲実績があったわけです。現在イカ釣りは一応百三十隻、幸い漁期が終わって帰ってはきておりますが、イカ釣りも、今回は被害はなかったとは言いながらも、ただし今後、次の漁期には必ずこの影響を受けるわけです。特に今回はマグロはえなわ、豪州のタスマニア沖の漁場またはアフリカのケープタウン沖の漁場、こういった問題が、いわゆるこれは移さねばならぬということで打撃も大きいわけですけれども、こういった問題に対して政府は、北方もさることながら、こういった南洋に対する補償問題等はどういうように考えておられるのか、この機会に明らかにしていただきたい。
  138. 今井勇

    ○今井政府委員 補償の内容等について、具体的な問題についてはまた水産庁の長官から答弁させますが、せっかく前農林大臣を特使として派遣をいたしまして私どもが条件を提示いたしたにもかかわりませずこの問題が妥結に至りませんでしたことは大変残念でございます。しかしながら、先生御指摘のように、この漁場わが国にとりましても大変大事な漁場でございます。したがいまして、今後とも機会あるごとに先方と誠意のある交渉をいたしまして、何らかの円満な妥結を見まして、ニュージーランドとの長い友好状況を保ちつつ、しかもまたわが国漁民の皆様方の安心のいくような努力政府としても続けてまいりたいと存じております。ただ、先方の言い分がなかなかきついものでございますので、ただいまのところは中断の形でございますが、これをそのまま放置することは決してございませんので、そのように御承知おきを賜りたいと存じます。
  139. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 なお、トロール船が約十五隻日本に帰港しておって係船しなければならないことになっておりますが、これらの補償についても十分政府は前向きに考えるということで検討しておられますか。
  140. 森整治

    ○森(整)政府委員 問題の十五隻は全部大手水産に属するものでございますから特にそういう措置は考えておりませんが、ともかく交渉再開いたしまして何とか入漁を図りたいということが第一点でございます。  第二点としまして、一応入れないでおるわけでございますが、これらの全般の漁船救済措置といいますか、今後の割りつけにつきましては、それぞれほかの漁場へ行ったり引き揚げたりしてきておるわけでございまして、そういうことの影響が経営にどのくらいに出てくるかというようなこと等を見きわめながら、必要に応じましていろいろ考えてまいりたい。また、離職者問題ということでいろいろ御要望もある向きもありますが、これは現実に離職者が出た段階で、また労働省なり運輸省と相談をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  141. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 南太平洋のフォーラム諸国についてもお伺いしておきます。  四月一日より漁業水域二百海里設定に伴いまして、今後これまた相当の影響があるわけです。たとえば、パプア・ニューギニアについては、四月中は日本漁船操業は現状どおり認めてはおりますけれども、五月以降の対策については何ら決まっていないわけです。入漁料を高く取りたい、こういうようなことで、話し合いがついていないようでございますが、こういった問題を含めて、南太平洋のフォーラム諸国についての問題、五月以降どう対処されるのか、この点もひとつ政府の見解を求めておきます。
  142. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、パプア・ニューギニアの交渉がまた再開されておりまして、いわゆる百万キナ、約三億二千万円の入漁料を一括支払ってほしいというのが向こうのたっての要望でございます。その問題をどういうふうに解決するかということで、ただいま代表が参りまして、水産庁からも参事官が参りまして交渉に当たっております。  その成否がどうなるかということでございますが、ただいまのところでは、私どもは、ここで一応交渉妥結できるのではなかろうかという見通しを持っております。そこで、今月いっぱいにその話をつけまして、五月から引き続き入漁できる方向で検討をいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 北海道漁民の韓国漁船との競合問題についてお伺いしておきます。  近年、と言いましても昭和四十九年から増大しているわけですが、韓国漁船が北海道周辺漁場操業いたしておりまして、沿岸漁業に数多くの被害が出ていることはしばしば当委員会でも問題にしたところでございます。特にソ連二百海里設定で締め出されることによりまして、五十年以降大型トロール船が多数進出してまいっている現況でございます。わが国二百海里は韓国には不適用でありますからなおさらのことでございまして、沿岸、沖合い漁業との漁船接触、漁具被害等が昭和五十年二月から五十三年二月まで千百七十七件、被害金額が四十億円、こういうふうに言われておりますが、こういった実態を政府はつかんでおられますか。また、これに対する政府救済措置等の対応策はどうであるか。さらに、被害補償等を韓国に請求しておるのか。もう一点は、二百海里水域を適用するというようなことについてはどう考えておられるのか、これらを含めてひとつお答えをいただきたい。
  144. 森整治

    ○森(整)政府委員 北海道沖の韓国漁船による漁具被害の問題でございますが、先生が御指摘のものは、北海道庁からの報告によります数字としまして、本年三月末までに件数千二百件、金額四億二千四百万円ということに相なっておるわけでございますが、昨年の領海法の施行後被害はかなり減少しておりまして、ことに三月に入ってからの被害は四件、被害金額約二百万円ということで、昨年その時期の被害が一億二百万円ということでございますから、非常に減っておるというふうに認識をいたしております。  この問題につきましては、一つは韓国船の操業の区域の問題、それから二番目は安全操業のルールの問題、三番目は被害処理の問題ということでございますが、区域につきましては両国政府間での話がまだついておりません。それから、安全操業ルール、被害処理につきましては、政府間あるいは民間でそれぞれ韓国側と折衝が行われておりまして、その結果一応まとまっておりまして、五月の上旬には両国合同の委員会を開催いたしまして、被害の処理ルールと安全操業ルールに関しまして具体的な取り決めが結ばれる予定になっておるわけでございます。  一番問題の操業区域の問題につきましては、国内の規制措置を韓国側にも守ってもらいたい。オッタートロールの禁止の区域があるわけでございます。そういう区域に入らないで、操業日本と同じようにやってもらいたい、こういう考え方を私ども持っておるわけでございまして、実は近く初村政務次官が韓国に参りまして、そういう交渉の皮切りをいたしたいと考えておるわけでございます。  あと、漁具の被害の問題につきましては、いろいろ融資措置によりまして、一応被害の救済融資ということを検討いたしておる次第でございます。
  145. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わりますが、これら国際問題については、来る四月二十三日の中川農林大臣ソ連よりの帰国を待ちまして、さらに二十五日の当委員会で緊急質問等を行いたいと思っておりますので、本日は、残余の問題は次回に譲りまして、以上で一応質問を終わることにいたします。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 中尾栄一

    中尾委員長 神田厚君。
  147. 神田厚

    ○神田委員 漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕  まず最初に、試験実施からさらに五年間延長するということでありますけれども、五年間というふうに期日を限りまして延長していく理由を簡単に聞かしていただきたいと思います。
  148. 今井勇

    ○今井政府委員 先生御案内のとおり、この保険につきましては、当初、試験実施期間を五年といたしておりました。その後、二百海里時代の到来等新たな漁業事情のもとにおきましても五年間の試験実施を行うことによりまして必要な資料の収集が可能であると判断されることから試験実施の期間を五年間延長することといたしたものでございます。しかしながら、しばしば御答弁申し上げますとおり、五年を待たずとも合理的な保険制度の設計が可能となった場合には速やかに本格実施に移行することにいたしたい、このように考えております。
  149. 神田厚

    ○神田委員 五年間延長の理由の中に、新しい海洋時代を迎えたものに対応していくというような理由も述べられているわけでありますが、その点に関連いたしまして、それでは、沖合い、遠洋漁業に対する操業規制の強化の実態はどういうふうになっているのか。さらに、操業形態の変化はどういうふうな形で推移しているのか。マグロとかサケマスとか遠洋底引き、そういうものにつきまして御説明をいただきたいと思うのです。
  150. 森整治

    ○森(整)政府委員 具体的に申し上げますとカツオ・マグロでございますが、これにつきましては海洋法会議でもいろいろな意見がございますが、南太平洋諸国では沿岸国が管轄権を持つ、こういう回遊性魚に対しましてもそういう主張をしておりまして、たとえて申しますと、ごく最近ニュージーランドから日本のカツオ・マグロ船が引き揚げざるを得なかったわけでございまして、その他メキシコ、スペインでも現在入漁交渉に至らないため入漁できないということになっております。それから、パプア・ニューギニア、ギルバートでただいま入漁料の交渉をしておりますけれども、これは近くまとまると思っておりますが、いずれもそういう問題がある。また、米国では、カジキマグロにつきまして、スポーツフィッシングの関係でいろいろ区域を設けましてそこでの漁獲を抑えるというようなこともやっておるというようなことで、カツオ・マグロ漁業で言えば、これは地域ごとにグループを組みまして、特定の漁場を組み合わせながら周年の操業をしているということでございますから、こういう漁場から締め出されたり漁獲の制限が行われますと、グループの再編成をしなければならないとか、あるいは漁場の組み合わせを再編成しなければならない、さらに航海の日数が長期化するというような事態が生じてくるわけでございます。  また、遠洋底びき網漁業について申しますと、御承知のように、北転船が米国の水域におきまして漁獲割り当ての削減を受ける、あるいはソ連水域におきまして減船する、あるいは漁獲量削減が行われるというようなことで、五十七隻の減船を余儀なくされたわけでございます。また、そういうほかに南氷洋のオキアミに十隻出す、天皇海山等への調査に六隻出す、計十六隻の漁場転換を行っておるわけでございます。したがいまして、従来から冬場はカムチャツカ半島周辺でスケソウをやりまして、夏場はベーリング海のメヌケなり赤魚漁、そういう操業形態をとっておったわけでございますが、そういう形態が崩れて新しい対応を迫られてくる。  サケマスにつきましても、先ほどいろいろ御説明がございましたように、対ソ問題あるいはカナダ、アメリカとの間でいろいろ漁獲の制限なり区域あるいは操業期間等の設定がございまして、あるいは隻数を削減せざるを得ないというような問題まで出てきておるわけでございます。  こういうふうに海がある意味では狭くなってしまいまして、二百海里時代を迎えました新しい操業形態の変化に応じたデータを収集いたしたいという考えでございます。
  151. 神田厚

    ○神田委員 操業規制の実態やあるいは操業形態の変化、これはよくわかりました。御説明でわかりましたけれども、それと漁船積荷保険との関連というのが何かもう一つ明確ではないですね。この辺のところをひとつ、私どもちょっとこれと保険法との関係というのをどういうふうに考えたらいいのか、ちょっと迷うところがあるのですが、その辺のところを教えていただきたいのであります。
  152. 森整治

    ○森(整)政府委員 漁業規制が強化されてくると操業形態が変化してくる、操業形態が変化してまいりますと保険設計基礎データに変化が起こるということでございまして、たとえて申しますと、先ほど申しました例から申しましても、非常に操業密度を余儀なくされるから危険度が上がってくるとか、あるいは航海の日数が非常にかさんでまいりまして、操業の日数が変化をしてくる、それから従来の漁場から転換をされるということで、今度は操業上なれてないという、そういうような問題で事故が多くなる可能性もあるというようなことが挙げられると思います。  そういうことと、それからもう一つ保険設計基礎データの変化の内容上どういう問題があるかと言えば、加入の母集団が減ってくる。要するに減船が多いということから言いますればそういうことにもなりましょうし、そういうことから逆に損害率、危険率に変動を及ぼす可能性は多分にあるというふうなことで、一つ一つそういう不安の要素がふえてきているのではないだろうかということでございます。
  153. 神田厚

    ○神田委員 試験実施の結果などを見ていますと、どうも海が狭くなってきたからおそれが多いというような説明はなかなか納得ができないのでありますが、それでは試験期間中の加入の状況、それから支払い状況ですね。先ほどもちょっと触れられておられたようでありますが、加入及び支払い状況、それから契約額に対する支払い状況、たとえば一億円の保険に入って何%まで払ったのか、全部払っているのか、そういうことについてちょっと御説明いただきたいと思います。
  154. 森整治

    ○森(整)政府委員 引き受け、支払いの状況から申し上げますと、引き受け隻数が五千五百十四隻でございまして、引き受けの契約金額が二千五百六十八億円、それから純保険料が十億二千万円、支払い保険金が三億九千万円ということになっておるわけでございます。  それで、損害率、保険設計の基礎となります引き受けの金額に対します支払い保険金額の率ということになりますと、年度別に見まして最高八六%、最低が三一%ということで、四十八年が八六%、四十九年は三一%ということで、五十年が五七%ということに相なっております。
  155. 神田厚

    ○神田委員 それらに対しまして、たとえば契約額に対する支払いの状況というのはどうなんですか。ケース・バイ・ケースですが、ほとんど契約額に対して全額支払われているような形になりますか。
  156. 森整治

    ○森(整)政府委員 大変恐縮でございますが、参考資料の先ほどの六ページにございまして、損害率が非常に高かったのは、五十年の北洋はえなわ刺し網の三四〇%というのが一応高いのが出ております。それから、同年の沖合い底びきの二〇七・八%、これはみんな契約金額に対する支払い保険金の比率でございます。それからあと左の方で四十八年のマグロはえなわの一四五%、この辺が一応高い数字として出てきておるわけでございます。ゼロというのが、これは危険がなかったということでございますから、危険率につきましても大体同様な傾向がありまして、全体の計としまして四十八年が八六%、四十九年が三〇%、五十年が五七%、五十一年はちょっとごらんにならない方がいいかもしれませんということで先ほど申し上げましたが、そんなことになっておりまして、結構ばらつきがある。逆に言いますと、そう安定はしていない。だから、保険が必要だということを逆に言えば言えるのかもしれませんけれども、そういう傾向になっておるということでございます。
  157. 神田厚

    ○神田委員 料率の問題は後でまた問題にしますけれども、それではこれを扱っております機構につきまして御質問申し上げますが、まず漁船保険組合、これの経営はどういうふうなことになっておりますのか御説明いただきたいのであります、業種別あるいはいろいろあるようでありますけれども。
  158. 森整治

    ○森(整)政府委員 漁船保険組合、いろいろ事業を行っておりますが、漁船損害補償法の損害保険事業、それから漁船乗組員の給与保険法の給与保険、それからこの積荷保険試験実施、それから漁船の船主責任保険、これも試験実施、そういうようなことを行っておるわけでございます。  それから、収支でございますが、これにつきましては財務状況は一般的に良好な状況で推移をしておる。それで保険組合、全国五十三組合ございます。その当期の利益金は十五億九千三百万円、一組合当たり平均が三千万円でございまして、個個の漁船保険組合について見ますと、いろいろ所属の漁船等の差もございましょうが、引き受けの規模の相違から、純資産におきまして三百八十万円から六億九千八百万円までの開きがございます。保険料収入につきましても三千六百万円から十二億九千三百万円、大きな差がございまして、組合によりましては財政状況、経常収支に非常に格差を生じておると見られます。
  159. 神田厚

    ○神田委員 この漁船保険組合のいま御報告いただいたようなこういう実態というのは、水産庁としてはどうなんですか、これはもう少し整理統合したいというような形で指導なさっていかれるのか。これだけ幅のある形になりますと、当然付加保険料の格差なんかの問題も出てくると思うのでありますが、その辺のところはどういうふうに今後指導していくつもりなのか、お聞かせいただきたいのであります。
  160. 森整治

    ○森(整)政府委員 整理統合はどうかということでございますが、これは地域組合でございまして原則として都道府県を区域として組織されておる、北海道あたりが大分分かれておるというような組織になっておるわけでございますから、その地区内の在籍船の規模またトン数、大型船だとか小型だとか、そういう問題も含めましての事業の分量が変わってくる、そういう性格を持っておると思います。そういう性格を持っておりますから、したがって規模に格差を生じ、また事務費としてはある程度まで固定的なものが要る。そうしますと、当然付加保険料の率も非常に幅が出てくるというようなことに相なっていると考えておりますが、これらの格差というのはある意味ではいたし方ない問題も含んでおると思います。したがいまして、この問題につきましては、私どもとしては、今後収支相償わないというような問題が非常に多いということでありますれば、今後の検討の課題といたしたいと考えておりまして、とりあえずの問題といたしましては、大きな、そういうことから何かせねばならないということはいまのところないのじゃないかと考えております。
  161. 神田厚

    ○神田委員 それでは次に、漁船保険中央会、きょう午前中専務理事が見えていたようでありますけれども、ここの経営の状況はどういうふうになっているのか、これをちょっとお聞かせいただけますか。
  162. 森整治

    ○森(整)政府委員 漁船保険中央会というのは、本来の仕事は保険料率を算出しましたり、漁船の損害調査をしたり、また損害の発生の予防なり防止を図る、そういう事項に対します調査、指導をやっており、それから漁船保険の普及宣伝ということが業務としての事業でございますが、そのほかに保険事業といたしまして、いま御審議いただいております漁船積荷保険漁船船主責任保険、それから漁船乗組船主保険、そういうものの再保険事業を行っているということでございます。  そこで、事業の収支状況は、一般事業につきましては、一応事業の実施以来各年黒字を計上して全般的に良好に推移していると考えております。  それから、資金の運用につきましては、系統利用を図るために中金、信漁連の預金を中心に運用が行われておるという次第でございます。
  163. 神田厚

    ○神田委員 この中央会に対しましては莫大な交付金が出されましたですね。これにつきましてこの前の委員会で附帯決議がついております。「漁船保険中央会に対する交付金の運用益の使途については、特に必要な事業に重点的かつ効率的に配分されるよう、中央会を指導監督すること。」このような一項目があるわけであります。こういうことも含めまして、漁船保険中央会の経営が黒字に推移している、それは一つの事実であってそれでよろしいのでありますが、その黒字であるということに関しまして、それでは、それを直接金を払っている漁船員の方にもう少し還元すべきであるというような声があるわけです。たとえば、料率の改定をすべきである、あるいは割り戻しをすべきである、こういうような意見があるわけでありますけれども、この点につきましてはどういうふうにお考えになりますか。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘の問題につきましては、黒字が多い少ないということにつきましても、いろいろ事業の性格によりまして判断をいたさなければならないと思いますが、全般的にできるだけ末端の船主の負担が過重にならないような軽減措置を講ずるということにつきましては当然私どもも念頭に置きまして、今後十分その線に沿って指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  165. 神田厚

    ○神田委員 ですから、もう少し末端に、いわゆる掛金を掛けている漁船員に対しましてメリットがあるような形に運用をさせなければいけない。たとえば、掛金を変えるとか割り戻しをするとか、そういうことについてはどういうふうに考えているか、あるいはどういう指導をなさるおつもりか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  166. 森整治

    ○森(整)政府委員 当然、いろいろ割引制度等につきましては、その制度というのは活用をしておるわけでございまして、保険の全体の設計運営上支障を来さない限りにおいては当然そういう考え方を進めてまいるということは必要だと思っております。
  167. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、この中央会の事業の中に、いわゆる漁船関係、いわゆる海の水産関係以外のものにそれが使われるというような事実はございませんか。
  168. 森整治

    ○森(整)政府委員 そういうことはないというふうに見ておるわけでございます。
  169. 神田厚

    ○神田委員 念を押しますけれども、ありませんか。
  170. 森整治

    ○森(整)政府委員 ただいま何か具体的に御指摘があって、何か調査をいたさないという感じを持っておりますが、いまのところ私ども思い当たるようなことはございません。
  171. 神田厚

    ○神田委員 この問題につきましては後日また調査をして質問をします。私はちょっとそういうふうな、ほかに使われているという話を聞いているのです。ですから、それはまた別にあれします。  次に、海外操業漁船損害補償事業、これについて御質問を申し上げます。  まず、まとめて御質問申し上げますが、この事業と特殊保険との関係、それからこの保険保険金の掛金の問題、支払い基準やあるいは救済金の最高限度額、さらにそれらの対象の漁船、それから三番目には免責条項の中におきます救済契約者または被救済者の故意、重過失による損害についてはこれを免責にするということであるけれども、この故意、重過失というのは一体どういうことを基準にこれを認定するのか、この三点について御質問申し上げます。
  172. 森整治

    ○森(整)政府委員 特殊保険とはもう一つ漁船乗組員の給与保険も含めてでございますが、一応外国の不当な拿捕、抑留等によって損害を受けた場合に損害をてん補するということで制度が設けられたわけでございますが、その後十二海里あるいは二百海里ということを設定いたしまして、これは相互に認め合う、その国の漁業規則ができる、そういうことでそれに従わなければいけないということになったわけでございます。その結果、その規則に違反して拿捕された、また損害を受けたような場合に、国が直接営んでおりますそういう特殊保険で補てんをするというのはおかしくなってきた、したがいまして、現在機能するとすれば、たとえば北方領土の四島、北方四島の周辺の海域でいろいろな事故が起こるというようなことにつきましては適用性があるわけでございますが、二百海里という中のいろいろな操業の問題につきまして、一応規則違反ということで拿捕されたりあるいは損害を受けた場合にはなかなかなじまないということになってまいったわけでございます。そこで、海外操業漁船保険補償事業というのを新たに設けたいということで、七月をめどにいろいろ準備を急いでおるということでございます。  そこで、第二のそれの救済金の最高限度等の問題でございますが、最高限度につきましては、拿捕等によりまして損害を受けました漁業者に対しまして、その損害のうちの漁船の船体、漁獲物、漁具の損害、抑留中の乗組員の給与、それから罰金等の費用の合計額または救済対象基準額のいずれか低い額の七〇%以内を救済金として支払うということにしておるわけでございます。救済掛金につきましては大体一%程度の額を救済対象基準額に応じて負担をするというふうに考えておるわけでございます。  それからあと、その損害の補償事業のいろいろの基準でございますが、故意または重過失による場合は支払いを免責をしたいということでございまして、その基準といたしましては、たとえば、ある一定区域のラインを侵犯をするという場合に、ちょうどその侵犯したラインが船位の測定器による測定誤差の範囲、たまたますれすれみたいな感じでございますが、そういう場合だとか、あるいはソ連の海域で日誌の記帳につきましていろいろ注文がついておりまして、そういう魚種の分類上の見解の相違みたいなことで事故が生じたというような場合等、軽微な過失による場合あるいはやむを得ない事情がある場合に支払うということで、無許可の操業で最初から明らかに違反をしているというような場合にはやはり免責をするということが適当であろうというふうに考えておるわけでございます。  ただ、そうは申しましても、いろいろ私が申し上げましたようなボーダーラインのケースもございましょうから、そういうものにつきましては漁船保険中央会に設置を予定をしております損害の審査委員会におきまして十分に審査を得た上で適正な救済が行われるように運用してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  173. 神田厚

    ○神田委員 時間も余りありませんので、次に、二百海里に関係しまして御質問申し上げます。  まず、現在の入漁料の支払いの状況、これを国別にわかりましたらちょっと教えていただきたいと思います。
  174. 森整治

    ○森(整)政府委員 入漁料の支払い状況でございますが、五十二年の国別の支払い状況は、米国に対しまして十七億一千三百万円、エクアドルが四億三千二百万円、ペルーが二千四百万円など、合計六カ国に対しまして総額二十二億五千万円の支払いを行っております。
  175. 神田厚

    ○神田委員 そのほか、南太平洋の諸国に対してはどういうふうになっていますか。
  176. 森整治

    ○森(整)政府委員 南太平洋、インドネシアも含めまして一千三百万円、これは民間取り決めでございます。それから、パプア・ニューギニア、これは暫定的でございますが一千万円というような状況になっております。それから、パプア・ニューギニアとギルバートがさらにただいま入漁料の交渉中でございます。たとえて申しますと、パプア・ニューギニアは漁場全部を提供するかわりに漁船一隻、一年当たり、これは長さによりますけれども、船の長さ掛ける三十キナというのですか、約一万円、いまのは入域料でございますが、入漁料につきましては全部で百万キナというのですから約三億二千万円まとめて払ったら全部漁場を提供する、こういうようなことを言っておりまして、これについての交渉がいま行われている最中でございます。
  177. 神田厚

    ○神田委員 先ほど農林大臣臨時代理の方から入漁料についての非常に前向きな御答弁がありました。私も、二百海里の問題というのは国策的なものでなっている問題でありますから、したがいまして、国の方で入漁料については支払っていくべきではないか、こういうような基本的な考え方を持っておるわけであります。入漁料の支払いあるいは契約の仕方でいろいろ問題があると思うのでございますけれども、そういう意味におきまして、国の方で入漁料を支払うという考え方がありますかどうか、大蔵省から来ていただいておりますので、大蔵省の方の見解もお聞きしたいと思うのであります。
  178. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答えいたします。  入漁料を国の方から払うかということは、結局税金を使うかということ、あるいはまた別の考え方として、そういうものは実際とった方が価格に転嫁して、それを実際に食べる人が負担をすべきかという選択の問題であると思います。  私どもは、入漁料につきましては漁業者みずからが負担をし、そして、それを価格に転嫁して、それを食べる人たち、そういう者が負担をすべきである、こういうふうに考えております。
  179. 神田厚

    ○神田委員 たとえば、過去、アメリカとの交渉で大日本水産会が基金を集めまして、その基金に対しまして利子補給というようなことをやった、こういう形でのものは現在はお考えになれますかどうですか。
  180. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 お答えいたします。  アメリカの場合に、入漁料のうち一部について大日本水産会に対して利子補給をいたしておりますけれども、これはアメリカの場合、とってまいります物がスケトウであるとか、そういう加工原料用の物でございます。当時、加工原料用の消費先であるところの冷凍すり身業者、そういうところが非常に苦境に立っておりまして、それは代替関係、それはいろいろ代替品目がございますものですから価格への転嫁が非常にむずかしい、そういうようなこともございますので急激に価格引き上げを行うことができない、そういうことでございますので、一年間に限りましてその分について利子補給を行った経緯がございます。  今度のパブア・ニューギニアのような場合、いろいろ物によりますけれども、マグロについてそういうことをやることが、税金をつぎ込むことがいいのか悪いのか、そういうような問題もございますし、現実にいま先生御指摘の点がパプア・二ューギニアのような場合でございますならば、現在これから交渉をする問題でございますので、その結果を見て検討しなければならない、こういうふうに考えております。
  181. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、考え方としたならば、二百海里問題というのは国の一つの政策の中で行われているものでありまして、日本対応がおくれたという国の責任もあるわけです。したがいまして、そういうものにつきましていま入漁料によって非常に苦しんでいる漁船がたくさんある。だから、せめて入漁料については国が見るとか、あるいはそれができなければ利子補給についてきちんと国の方で見ていくべきである、こういうような考え方を持っているわけでありますが、重ねて恐縮ですが、いかがですか。
  182. 古橋源六郎

    ○古橋説明員 せっかくの御提案でございますけれども、そういうものに税金を使うということの一般的な納税者の納得が得られるかどうか、こういうことにつきまして私どもは非常に疑問を持つ次第でございます。したがいまして、御提案でございますので検討はいたしますけれども、私どもとしてはそういうのは適当ではない、こういうふうに考えたいと思います。
  183. 神田厚

    ○神田委員 それ以上の話はきっとないのでしょうから、また改めてその問題につきまして御質問したいと思うのですが、私は、ここでひとつ発想を転換しましてやっていただかないと日本漁業もだめになってしまうというような考え方を持っているのです。したがいまして、そういうことも含めまして御検討をいただきたいと思います。  最後に、いま問題になっております尖閣列島の問題につきまして、これとの関連で日本中国との間で漁業協定を結んでおります。外務省から来ていただいていると思うのでありますが、この尖閣列島の問題につきまして、漁業協定との関係の中で二点ほど質問したいのであります。  まず第一点は、一九七二年に漁業協定が結ばれましたが、このときに尖閣列島はどういうふうな取り扱いになっていたのか、その点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  184. 田島高志

    ○田島説明員 お答えいたします。  日中漁業協定におきましては、第一条で、この協定が適用される協定水域を定めております。その南限は北緯二十七度の線であるということに規定されておりますので、尖閣諸島周辺の海域、これは北緯二十六度前後になりますが、その付近はこの協定水域内に含まれておらないという実情でございます。
  185. 神田厚

    ○神田委員 この協定は両方の海上における正常な操業秩序を維持するために友好的に結ばれたものであるわけであります。したがいまして、一九七二年の時点で一応触れなかったというのは、結局これはたな上げにされたというような状況であると思うのでありますが、この協定が今度改定をされる時期、これはいつですか、改定じゃなくて更新、これが終わるときですね。
  186. 田島高志

    ○田島説明員 この協定によりますと、協定が終わりますのは本年の十二月二十二日でございますが、その三カ月前に本協定を終了する通告をしない限り、自動的に延長されることになっております。
  187. 神田厚

    ○神田委員 それでは、今度のこの問題につきましてこれから先の方針として一点お聞きしたいのでありますが、今度の交渉におきましては、尖閣諸島につきましては日本領土であり、したがいまして、それに続く海につきましては日本領海であるということをきちんと主張を明確にする考えでありますか、あるいはこの条約を変える場合にそういうことを条文の中に明記させるような形をとるお考えでありますか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  188. 田島高志

    ○田島説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、本協定は、尖閣付近の海域は協定の対象水域となっておりませんので、今後もこの点については恐らく触れることにならないのではないかというふうに考えております。  それから、この協定は、いずれの締約国の側の領海等の問題についても規定することを対象とはしておりませんので、そのような点についても触れることはないものと私どもは考えております。
  189. 神田厚

    ○神田委員 最後に、私は、この尖閣列島侵犯しているのは漁船である、このことは重視しなければいけないと思うのです。漁船がそういうことであるならば、やはり漁業協定によりましてそれをきちんと解決できるような形での条約をつくっていかなければならない、そういう考え方を持っているものであります。その点につきまして、再度いかがですか。
  190. 田島高志

    ○田島説明員 漁業を安定的に操業するためには、この協定に限らずいろいろなことを考えていかなければならないと思っております。したがいまして、先生のおっしゃる点を含めまして、どういう形で、あるいはどういう方法により、そのような点を反映させていくか、考えていくかということは十分検討させていただきたいと存じます。
  191. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  192. 中尾栄一

    中尾委員長 津川武一君。
  193. 津川武一

    ○津川委員 今度の法律を延期するについて、提案理由の中に、試験実施延長という形で法案を御提案しております。各国の二百海里漁業水域の設定により、新しい海洋秩序の形成が急激に進展したことにより、漁船操業形態に変化が生じ、保険設計基礎データに大きな変動をもたらすおそれがあるので、五カ年間試験研究を継続する、こういうふうに提案されておりますが、そこで、提案されているように、日本漁業にどんな変化が起きているか、まずお尋ねしてみたいと思うのでございます。  サケマスではどういうふうな変化が起きておりますか。
  194. 森整治

    ○森(整)政府委員 サケマスの流し網、はえなわいろいろございますが、御承知のように、二百海里の前と後で、五十一年、五十二年に比べてみまして漁獲の割り当て量の減少、それから今後の問題、いろいろ議論がございます。それから、海域につきまして、ソ連の二百海里の操業が昨年全部だめになったというような事情がございます。それから、隻数につきましても、サケマスの流し網につきまして、五十一年から五十二年にかけて三百九十八隻の減船が行われておる。それから、サケマスのはえな漁業につきましては同じく七十六隻、それから二百海里内の操業が禁止されるということになっておるわけでございます。その他、カツオ・マグロ、遠洋底びき漁業、沖合い底びき漁業等、それぞれ漁獲量、漁法、海域、漁期、隻数、そういうものにつきましていろいろな制限、変化があるということでございます。
  195. 津川武一

    ○津川委員 アメリカとカナダの関係ではどうなっておりますか、日本サケマス漁業は。
  196. 森整治

    ○森(整)政府委員 従来、日米加の漁業条約で共同委員会がございまして、それでまいったわけでございますが、基本的に今回一応そういう日米加の漁業条約という形は残りますが、それから漁業の共同の委員会というのも残りますが、規制の中身が非常に大きく変わろうとしておるわけでございまして、まだサインは行われておりませんが、実質合意に達しておりますのは、西経百七十五度から以東の禁止ラインということで講和条約以来の形があったわけでございますが、それを東経百七十五度まで西へ十度移動をする、その水域につきましては、ことにその南部水域につきましては今後いろいろ調査をした上で入漁をさせるかどうかということを再検討しよう、とりあえずは入漁をしないでほしい、こういう形になってきておるわけでございます。
  197. 津川武一

    ○津川委員 そこで農林大臣、安倍さん、お聞きのとおりです。サケマスは二百海里問題でソ連からもひどく押されている、アメリカからもカナダからも押されてきている。かなり大きな減少が日本サケマス漁業に出てきているわけです。国益を守る立場から政府はどうなさるつもりでございますか。このアメリカ、カナダ、ソ連の攻撃、一方的に押し込められている状態から抜け出すために政府に何か見解が必要かと思いますが、対策お尋ねします。
  198. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このサケマスにつきまして、これは海洋法会議等で盛んに各国から主張されております。いわゆる遡河性魚類だ、母川国主義だ、こういうことで、サケマスは自分の河川から発したものはどこまで行っても自分の魚だ、こういうことを主張して、わが国としても、漁業の安定といいますか、漁獲を確保していくためにはそうした大勢には従わなければならない、こういうことになりまして、アメリカあるいはカナダとの間にも条約を結びまして、そしてこれは二百海里内のみならず公海においても、サケマス漁獲についても話し合いでわが国漁獲を決めていく、こういうことになったわけです。  これはソ連との間も、今回はそうした立場交渉を行っておるわけですが、ソ連から言わせれば、自分の川の魚をとるのだから、これは本来日本には権利がないのだ、ですから全部とらせないと言ってもやむを得ない、しかし日本漁業立場を考えて、これまで日本漁業が公海でサケマス漁獲しておったのだから、この立場を考えて、いま一度にそれを全廃するということは気の毒だから、話し合いによって少しはとらせてやろう、こういうことでソ連がようやく最終的には四万二千五百トンというところまで譲歩したわけです。  中川農林大臣は健闘はしましたけれども、大いにがんばったわけですけれども、ソ連の壁は厚くて、ついにソ連の第二次提案の四万二千五百トンで妥協せざるを得ない。公海のサケマスですから、二百海里の外ですから、これは人によっては公海上のサケマス漁獲は条約を結ばなくて自由にとれるじゃないか、無協約状態に入ってもとれるじゃないか、こういう一部の考えもあるわけですが、しかし、そういうことをやればこれは日ソが直接ぶつかるというふうなことになって、どういう不祥事態が起こるかもしれないし、それから、今後ともそうした公海で日本サケマスの魚獲を確保していくという見地からすれば、これはやはり今回は妥協せざるを得ないということで、漁獲量についてはまことに不満足でありますし、まことに残念でありますが涙をのんだ形でのんだということでございます。  はなはだ残念でありますけれども、やむを得ない、これからの漁獲を維持していくという上からはやむを得ない、こういうふうに考えておりますが、こうした規制は今後ますます強くなっていくのじゃないか。それだけに、水産外交によって漁獲の維持には努力いたしますが、反面、やはり日本の二百海里以内の漁業の開拓、漁場開発といったものを進めて、日本の二百海里以内で日本の国民が必要とする動物性たん白質の確保を図っていくというところにこれからの漁業政策の重点は置いていかざるを得ないのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  199. 津川武一

    ○津川委員 大臣の言われるように、泣き寝入りせざるを得ない、押されてあきらめる、こういうことも一つの方法ですが、この際なので、押されっ放しの、受け身一方の態勢から抜け出すために、北太平洋の漁業をどうするか、資源をどうするかという点で、日本から積極的にソ連、アメリカ、カナダなどに提案していって、一つの方策を模索する、こういう考えはございませんか。受け身一方でなく、こちらから何か積極的に問題を提起していく、こういう方針を持った方がいいと私は思うのですが、大臣どうでございます。
  200. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あっさりあきらめたわけでも何でもないです。押されっ放しというわけでも何でもありませんし、日本としてはできるだけの外交努力によって、中川農林大臣も今回はイシコフ漁業大臣と七回も会って、ソ連の間違った点を指摘しながらソ連譲歩を求めたわけですから、最大限の努力をしているわけですし、それから北太平洋の漁獲あるいは漁業秩序の維持については、これまでもとにかく日米加、あるいは日ソでしばしば話し合っておりますし、日本も積極的に提案をして、漁業資源の確保という面から、たとえば、ふ化放流事業等も日ソ関係で協力してやりましょう、そのかわり、資源が許すならば日本漁獲を行う、こういうことで何回もこれは提案もし、話し合いをしているわけですから、何にもしないで手をつかねて、もうまいったということで放棄したわけでは決してないのですから、その辺は誤解なさらないようにお願いいたします。
  201. 津川武一

    ○津川委員 誤解でなく、積極的に日本からも提案するなりしていくことを重ねて要求して、次の質問に入っていきます。  今度の提案理由の説明の変化に対して、スケソウやカレイなどの底びき漁業にどんな変化が及んでおるか、これを説明していただきます。
  202. 森整治

    ○森(整)政府委員 遠洋底びき、沖合い底びきでございますが、漁獲量はスケソウが大分削減をされまして、アメリカ、ソ連両水域で約四分の一の漁獲量削減が行われておる。それに伴いまして、いろいろ減船措置も講じられて、いわゆる北転船の減船問題ということが一つ、それから漁場の南氷洋のオキアミへ転換する、あるいは海山への調査船を出すというようなことの転換が行われる。そういうようなことで、従来のたとえて申しますと、アリューシャン、オホーツクのスケトウと、あるいはベーリングのメヌケと、そういう年間の入れかえてやっている操業形態が非常に変わってくるというような問題があろうかと思います。  それから、沖合いの底びきにつきましては、いろいろトロール問題の漁法問題につきまして、若干最近トラブルが出てきておりますが、そういうことも含めまして、漁獲量、隻数、いずれも減船あるいは漁獲量削減が行われておるということでございます。
  203. 津川武一

    ○津川委員 そこで、トロール漁業ですが、着底トロールについて日本ソ連との間に意見の食い違いが出ておりまして、大変な事態になっております。ソ連海域で操業中の日本の北転船や沖合い底びき漁業船に対して、最近ソ連側がまた難題をふっかけてきました。各トロール船が従来から実施してきた着底トロール漁法を禁止するという突然のソ連の通告で、北洋の基地、釧路、八戸、釜石などでは法外な罰金や拿捕を恐れて、北転船、底びき船が着々と帰港しております。八戸港で言うならば、所属の各トロール船はまだ魚をとり残しておる、割り当て量のうちで、とったのがたったの一四%、こういう状態であります。北転船で一四%、底びき船で一八%、これで拿捕や罰金を恐れて帰ってきております。  こういう状態になっておりますが、この着底トロールのことについて、この間の暫定協定ではどうなっておったのです。暫定協定で着底トロールは認められたのではありませんか、これはどうでございます。
  204. 森整治

    ○森(整)政府委員 三月中旬からただいまトラブルが起こっていることは御指摘のとおりでございますが、ただいまモスクワで交渉が行われておりまして、十八日まで取り締まりを行わないということがさらに延びまして、モスクワで交渉中の間は取り締まりの開始は見合わせるということで、いま鋭意調整中でございます。  そこで、御質問の、昨年以来、着底トロールに対してはいままで指摘がなかったわけでございますが、昨年の日ソの交換書簡におきましては、着底トロールが認められない場合は、特に離底トロールということで明記をされておりまして、その他の場合は各層トロールと表現されておったわけでございます。そこで、各層トロールには着底トロールが含まれるということは明らかでございまして、そういう見解をとっておるということでございます。  それから、ソ日の交換書簡におきましては、着底トロールが認められない場合は「各層トロール(着底トロールを除く)」と、括弧して(着底トロールを除く)という形で着底トロールを認めない場合は表現をしている。逆に申せば、認められる場合は、「各層トロール」と書いてあれば当然認められるということに相なるという解釈をとっておるわけであります。  いずれにいたしましても、この問題につきましては、先ほど申しましたように、モスクワで交渉が行われておりまして、近く問題の解決が図られる見込みとなっておるわけであります。
  205. 津川武一

    ○津川委員 この点で、モスクワにいる日本の代表団がどんな交渉をしておりますか。近く解決が見られると言っておりますが、どんな解決になります。この点答えていただきます。
  206. 森整治

    ○森(整)政府委員 話の筋は、着底トロールでソ連側が問題にしておりますのは、大陸だな資源のいろいろにつきまして資源上の保護をしなければいけないということ、そういう観点からの当然の指摘だと思いますが、そこで、従来争いのなかった問題について今回、年度の途中でそういうことを急にいろいろ指摘されても、それはそもそも協定の考え方を変えなければいかぬ、あるいは数量もクォータも変わってくるではないかということで、ことしについてはともかく一応のルールをつくって、それはやめる、今後の問題として、改めて着底トロールというものをどういうふうに規制を考えていくか、そういうことを別途協議をするという方向で一応話し合いを続けておるというのが現状でございます。
  207. 津川武一

    ○津川委員 長官のいまのことしというのと今後というのはいつですか。
  208. 森整治

    ○森(整)政府委員 要するに、いま暫定協定が一年延びている、その期間というふうに私どもは理解をしております。
  209. 津川武一

    ○津川委員 そこで、急にこれを通告してきたのが三月の十六日、それまではいいと言っていたのを急に三月十六日からそう言ってきたわけでございます。  そこで、四月の十一日に八戸の福島漁業部の第八十五惣宝丸、これがソ連沿岸警備船の臨検を受けて、直径五センチ程度のツブの破れたからと、五、六センチの天然の海草一本、ヒトデ一つついていただけで三百八十九万七千七百円直ちに支払えと言われて、そして、それをやられたわけです。この点で漁労長は、この前にも二回臨検を受けたが、そのくらいの雑物がひっかかっている程度は何らの注意も与えられないできた、監督官の気まぐれで罰金を科せられているようなもので、全くでたらめでどうにもならない、こういうことなんです。ソ連は中層びきでなければ違反だと言うが、着底底びきでなければ一匹もとれない海域では、もうこれから出漁する船はなくなると言っております。  この罰金はこのままで済まされるものか。まだ向こうでそう言ってない状態での罰金でありますので、政府がこの交渉はしてあげなければならないと思いますが、罰金が科せられないようにしなければならぬと思いますが、政府態度お尋ねいたします。
  210. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘の第八十五惣宝丸というんですか、この事件につきましては、これは着底トロールではなしに大陸棚資源の混獲禁止の規定にひっかかったというふうに理解をいたしております。要するに、たまたまかかったものは海中に戻せということでありますが、それが戻ってなかったということのようでございます。  いまの後段の問題、罰金を取り返すというか、そういう問題につきまして、まだそういう申請が上がってきておりませんが、もう少し事情をよく見まして、さらに調査をいたしましてどうするか検討をさせていただきたいというふうに思います。
  211. 津川武一

    ○津川委員 この船は前二回臨検を受けて同じような状態であったのです。たまたまついておったというだけでこうなる。これだと漁民が安心してできない。この点で政府ソ連と十分話し合わなければならないと思うのです。この点が一つなんです。たまたまこれで言うと、大陸棚だと言っているけれども、五、六センチの海草一本、ヒトデ一つですよ。こういう状態でいままで何ともなかったのを、ここに問題があるし、同時に政府に対する不信も出てくるので、ここいらはじっくりとソ連と話し合いをして、また本人からも政府救済方を申請してくると思いますが、そのときはひとつ必要な処置をしていただかなければならないと思います。  そこで、今度の法案の提案の理由の一つに、漁業の形態がかなり変わってきた中で、罰金、拿捕が多くなったということが一つの変化なんです。この罰金と拿捕に対して政府はどうするのか、方針を伺わしていただきます。
  212. 森整治

    ○森(整)政府委員 二百海里時代に入りまして、いままでの特殊保険なり乗組員の給与に対します保険、そういう保険をいろいろ国が行うということについて問題が出てきた。そこで、海外操業漁船損害補償事業ということで七月から漁船中央会に互助的な事業という形でいろいろ事業を行わせまして、拿捕等に対します漁船漁獲物、漁具、乗組員の給与、罰金、そういうものにつきましての費用につきまして七〇%の範囲内で救済金を支払うということで、積極的に政府も事務費を助成するということでこれを進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  213. 津川武一

    ○津川委員 七月一日から実施されると聞いておりますが、事務費を援助する、それだけでなく損害に対して国は幾らか出すのでございますか、損害補償する点について。
  214. 森整治

    ○森(整)政府委員 事業としては相互補助的な制度というふうに考えておりまして、保険料等につきまして国が助成をするということはいま考えておりません。
  215. 津川武一

    ○津川委員 こういうことが大きくなっていけば、日本の威信を損ねることになる。やらせないように全力を挙げてわれわれも漁民に訴えると同時に、自分に落ち度がなく、悪意がなくてやられた損害に対しては、事務費だけでなく国が何らかの補償をするべきだ、幾らか援助すべきだと思いますが、この点、国にその意思が全然ないのか、重ねてお伺いします。  時間がだんだんなくなったので、もう一つ伺いますけれども、拿捕された場合、これもこちらに手落ちがなくて拿捕されて、そのために魚、漁具、油などというものを向こうに持っていかれた、その場合にこの法律で損害を補償してやる対象にすべきだと思いますが、この二点お伺いします。
  216. 森整治

    ○森(整)政府委員 前段の御質問でございますが、特殊保険を現在国がやっておりますけれども、これにつきましても一応事務費しか見てない。その例をならったというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、後段の問題につきましては、今回の考え方というのはやはり国が直接いろいろやるということはちょっとなじまないのではないかという考え方から、漁船保険中央会の事業として仕組んでおるわけでございまして、このいろいろな成果を見まして、さらにいろいろ検討さしていただきたいというふうに思います。
  217. 津川武一

    ○津川委員 いま申し上げましたようなサケマスだとか底びき、こういう変化が出てきましたので、この漁船積荷保険臨時措置法の内容に将来どんな影響を与えるという見通しがあるのか、これが一つ。  第二の問題は、漁獲保険、これがございますが、この積荷保険との関係がどうなっているのか、将来これをどうするのか、この二点を質問して、答えによってはこれで終わります。
  218. 森整治

    ○森(整)政府委員 第一点の問題は、母集団等の影響が当然出てくるわけでございますから、そういう意味で当然保険設計上、損害率等にも影響があるものというふうに理解をいたしております。  後段の問題につきましては、民間の漁獲保険との関係でございますが、これはどうもカツオ・マグロの大型のものを中心に運営されておる。現在御審議いただいておる保険の方は、大型から小型に至るまでなべての制度ということで実施いたしておるわけでございますが、民間は民間として成り立っている限りは私どもとやかく言う筋はないのではなかろうか。むしろ零細な方々のための制度として漁船積荷保険というものをさらに伸ばしていきたい。両者競合するかもしれませんけれども、そういう考え方で臨んでまいりたいと考えております。
  219. 津川武一

    ○津川委員 終わります。
  220. 中尾栄一

    中尾委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  221. 中尾栄一

    中尾委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  222. 中尾栄一

    中尾委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  223. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、本案に対し、角屋堅次郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。角屋堅次郎君。
  224. 角屋堅次郎

    角屋委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して、漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     漁船積荷保険臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、我が国漁業をめぐる国際環境がきわめて厳しい現状にかんがみ、新たな漁業情勢に即した我が国漁業の健全な発展を図るため、強力な漁業外交等を通じて漁業実績の確保と新漁場の開発促進に努め、併せて沿岸漁場の整備開発、増養殖の推進等、我が国周辺水域における漁業振興対策を積極的に推進するとともに、本法の施行に当たり速やかに左記事項の実現に努めるべきである。     記  一、漁船積荷保険については、試験実施延長を安易に受け止めることなく、既往の保険設計上の知見と漁業事情の変化を見極めつつ、新たな基礎資料の整備に努め、可及的速やかに本格実施に移行すること。  二、漁船積荷保険保険料率については、保険収支の実態に照らし、漁業者保険料負担軽減の方向で検討すること。  三、漁船積荷保険の対象となる漁業種類及び漁船トン数の下限については、その拡大に努めること。  四、漁船積荷保険漁船船主責任保険試験実施の時期と期間は異なるが、双方関連させつつ本格実施に当たつては、漁船保険も含め、全体的な体系について十分検討すること。  五、漁業関係保険共済制度の統合、一元化の実施について事務共同化の成果をみつつ前向きに検討を加えること。  六、北方海域等における漁船の安全操業の確保のため、漁業者の指導、拿捕等に対する措置につき万全を期すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通して、すでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  225. 中尾栄一

    中尾委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に御発言もありませんので、直ちに採決いたします。  角屋堅次郎君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  226. 中尾栄一

    中尾委員長 起立総員。よって、動議のごとく決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府より所信を求めます。安倍農林大臣臨時代理
  227. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいる所存でございます。     —————————————
  228. 中尾栄一

    中尾委員長 なお、本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 中尾栄一

    中尾委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  230. 中尾栄一

    中尾委員長 農業者年金基金法の一部を改正する法律案及び昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。安倍農林大臣臨時代理。     —————————————  農業者年金基金法の一部を改正する法律案  昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  231. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業者年金基金法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  農業者年金制度は、御承知のように、農業者の経営移譲及び老齢について必要な年金の給付を行うことによって、農業経営の近代化及び農地保有の合理化に寄与するとともに、農業者の老後の生活の安定と福祉の向上に資することを目的として昭和四十六年一月に発足したものであります。  本制度につきましては、昭和四十九年度及び昭和五十一年度におきまして、その改善充実が図られるとともに、昭和五十二年度におきましては、年金額を物価の変動に応じて改定するいわゆる物価スライド制の実施時期の繰り上げ措置が講じられたところであります。  しかしながら、その後における社会経済情勢の変化、国民年金等の関連諸制度における制度改善の状況等にかんがみ、本制度におきましても、改善充実のための措置を講ずることが必要となっておりますので、今回、改正を行うことといたした次第であります。  本法律案の内容は、次のとおりであります。  第一は、昭和五十三年度における物価スライド制の実施時期の繰り上げでありますが、昭和五十四年一月から昭和五十三年七月に繰り上げて実施することといたしております。  第二は、保険料の特例納付措置であります。保険料の納付期限が過ぎて時効が完成したため、所定の期間に見合う保険料を納めることができず、年金を受給できなくなっている者等を救済するため、これらの者について、昭和五十三年七月一日から昭和五十四年十二月三十一日までの間に限り、保険料を納めていない過去の被保険者期間について一月につき三千六百円の保険料を納付することができるようにいたしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  次に、昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農林漁業団体職員共済組合制度は、農林漁業団体職員の福利厚生の向上を図り、農林漁業団体の円滑な運営に資するための制度として実施され、その給付内容も逐年改善を見てまいりました。  今回の改正は、その給付に関しまして、恩給制度、国家公務員共済組合制度その他の共済組合制度の改善に準じて、既裁定年金の額の引き上げ、最低保障額の引き上げ等により給付水準の引き上げを行おうとするものであります。  今回の主要な改正点は、次の四点でございます。  改正の第一点は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは退職年金等の年金額の算定の基礎となった平均標準給与を、昭和五十三年四月分以後、昨年度の国家公務員の給与の上昇率を基準として引き上げることにより年金額の引き上げを行おうとするものであります。  改正の第二点は、退職年金等についてのいわゆる絶対最低保障額の引き上げであります。これは恩給制度の改善に準じ退職年金等の絶対最低保障額を昭和五十三年四月分から引き上げるほか、六十歳以上の者等に係る遺族年金については、その絶対最低保障額を同年六月分からさらに引き上げようとするものであります。  改正の第三点は、遺族年金についての寡婦加算の額の引き上げであります。これは六十歳以上の寡婦または子がいる寡婦の遺族年金に加算されるいわゆる寡婦加算の額を昭和五十三年六月分から引き上げようとするものであります。  改正の第四点は、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  232. 中尾栄一

    中尾委員長 引き続き、補足説明を聴取いたします。今村農林経済局長
  233. 今村宣夫

    ○今村(宣)政府委員 昭和四十四年度以後における農林漁業団体職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  この法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  まず第一は、既裁定年金の額の引き上げであります。これは昭和五十二年三月三十一日以前に給付事由が生じた退職年金、減額退職年金、障害年金、遺族年金、通算退職年金及び通算遺族年金につきまして、その年金額の計算の基礎となった平均標準給与を、昨年度の国家公務員の給与の上昇率を基準として、当該平均標準給与の年額に一・〇七を乗じて得た額に千三百円を加えた額まで引き上げることにより年金額を引き上げることといたしております。なお、その改定時期につきましては、昭和五十三年四月といたしております。  第二は、いわゆる絶対最低保障額の引き上げであります。これは退職年金、障害年金及び遺族年金につきまして、年齢及び組合員期間の区分に応じ、その絶対最低保障額を昭和五十三年四月分から引き上げることといたしております。たとえば、六十五歳以上の者については、その退職年金の絶対最低保障額を五十八万九千円から六十二万二千円に引き上げることといたしております。また、この引き上げに加えて、六十歳以上の者等に係る遺族年金につきましては、その絶対最低保障額を同年六月分からさらに引き上げることといたしております。  第三は、いわゆる寡婦加算の額の引き上げであります。これは六十歳以上の寡婦または子のいる寡婦の遺族年金に子の数等に応じて加算される寡婦加算の額を、昭和五十三年六月分からそれぞれ年額一万二千円引き上げようとするものであります。  第四は、掛金及び給付の額の算定の基礎となる標準給与の月額の下限及び上限の引き上げであります。すなわち、標準給与の下限につき農林漁業団体職員の給与の実態、私立学校教職員共済組合制度との均衡等を考慮して六万二千円から六万六千円に引き上げるとともに、上限につき国家公務員共済組合制度に準じて三十六万円から三十八万円に引き上げることといたしております。  以上のほか、所要の規定の整備を図っております。  以上であります。
  234. 中尾栄一

    中尾委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  次回は、明二十日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会      ————◇—————