○稲富委員 まず私は、与えられた時間がわずか十五分でございますので、要点を主体にいたしまして、二、三希望を述べながら、
大臣にお尋ねしたいと思うのであります。
まず、今回の
日ソ交渉に行かれる
大臣に対しては、本当に御苦労さまでございますということをしみじみ感ずるわけでございます。私はこの際、
大臣が
ソビエトに行かれるに当たりましてひとつ胸の中に入れておいていただきたいと思いますことは、私たちは日ごろより
ソ連、本当の名はいわゆる
ソビエト社会
主義共和国連邦でございますか、この
ソ連とは隣国でもあるということで、
善隣友好関係を保持するということに長く
努力をしてきたつもりでございます。国会におきましても、われわれは
日ソ議員連盟等をつくりまして、
ソ連との友好
関係をいかに保持していくか、またどう推進していくか、非常に
努力をしてきたつもりでございますが、果たしてわれわれのこの真意というものを
ソ連がどれほど理解していらっしゃるか、この点を私は非常に疑うと同時に、残念に思われるのでございます。
私はなぜそういうことを申し上げるかと言いますと、実は御
承知のとおり、昭和四十八年以来、
ソ連の漁船団がしばしば
日本近海において無謀な
操業をやり、
日本の
漁民に対して多大の被害を与え、あるいはまたその
日本近海の
漁場を非常に汚染せしめた、こういう事実があったものでございますから、これに対しましては、しばしば外務省を通じて抗議というものが申し込まれたはずなんです。ところが、これに対しても、われわれが聞くところによりますと、その
漁民の被害に対しましても何らの補償すらも行われていないということでございます。
私たちは、そういうようなことに対しては、日ごろより、外交
交渉の弱さという外務省に対する不満を持ちながら、またこういう無謀な
操業の
ソビエトのやり方に対しても、実は非常に不満を持っておりました。しかしながら、その不満を持ちながらも、われわれは
ソビエトとの友好
関係は崩していかないということから、本当に忍びがたきを忍びながら、昨年の
漁業交渉に対しましても、われわれの意に沿わないような結果になったけれども、これをわれわれは耐え忍んできたのでございます。
しかるに、先般来、農相の特使として
内村さんが
ソビエトに渡ってこの予備
交渉をなされているその結果を見ますると、私たちが考えますと、全くこれは余りにもひど過ぎるのじゃないか、こういう感じがしてならないのであります。
もとより、御
承知のとおり、北洋の
漁場というものは、古来より
日本人が開拓した
漁場であり、別な言葉で言うならば、この
漁場は全く
日本人の持っている既得権であると言っても差し支えないと思うのであります。しかしながら、
ソビエトが二百海里を制定したことによって、われわれが既得権と思っておったところもこの二百海里の中に入ってしまった。これをわれわれは実に耐え忍んだ。ところが、今回のこの
内村農相特使との
交渉の報道を聞きますると、従来の二百海里あるいは
アメリカの二百海里外の
水域に対する禁
漁区が設けられている、こういうことで、全く
日本の国民の死活に関する問題であり、
日本の
漁民の死活の問題だと私は思う。
そもそも、
ソビエトに限らず社会
主義国家というものは、全世界のあらゆる人民に対して幸福を与え、全世界の人類を救うというのが共産
主義の基本的な
考え方でなくてはいけない、かように私は解釈する。しかるにもかかわらず、何がために
日本に対してこういうひどい仕打ちをされるのであるか、私はこの真相さえわからない。
それで、外務省もおいでになっておるはずでございますから、今日まで外務省が外交
交渉を通じて、なぜ
ソビエトが
日本に対してのみこういうひどい態度をとられるのであるか、こういう真相がわかるならば、われわれもまた反省すべきものは反省をしなければいけないので、そういうことを知らしていただきたいということ。
さらにまた、今回の
漁業交渉に当たって
農林大臣は、われわれ
日本国民というものは
ソビエト敵対なんか考えていないんだ、本当に
ソビエトとは友好
関係を保っていきたい、かような
考え方、希望をわれわれは持っているにもかかわらず、こういうようなひどい仕打ちをされるということは、将来の
日本と
ソビエトとの外交
関係においても、国民感情の上においても非常に阻害する結果になりはしないか、こういうことをわれわれは憂うるんだ、この点を十分わきまえながら、忍ぶべきことは忍ばなければいけないけれども、
主張すべきものは堂々と
主張して、そして
日本国民の意のあるところを率直に
ソビエトに伝えていただきたい、私はこういうような考えを持っておるのでございます。
まず、私がいま申しました外交
交渉あるいは外交の
立場において、そういうようなことをなされるような状態がもしもあるとするならば、外務省
関係として御
説明を願いたい。さらに、これに対して臨むに当たりましての
大臣の決意のほどを承りたい、かように考える次第でございます。