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1978-03-23 第84回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 中尾 栄一君    理事 片岡 清一君 理事 羽田  孜君    理事 林  義郎君 理事 山崎平八郎君    理事 島田 琢郎君 理事 竹内  猛君    理事 瀬野栄次郎君 理事 稲富 稜人君       熊谷 義雄君    倉成  正君       佐藤  隆君    玉沢徳一郎君       羽田野忠文君    福島 譲二君       堀之内久男君    森   清君       森田 欽二君    柴田 健治君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       芳賀  貢君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君  出席政府委員         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 松本 作衞君         農林省畜産局長 杉山 克己君         農林水産技術会         議事務局長   堀川 春彦君  委員外出席者         農林大臣官房審         議官      佐々木富二君         農林大臣官房審         議官      小島 和義君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 三月二十二日  米の生産調整反対及び地域農業振興等に関す  る請願神田厚紹介)(第二三三七号)  同(菊池福治郎紹介)(第二三三八号)  同(島田琢郎紹介)(第二三三九号)  同(芳賀貢紹介)(第二三四〇号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二三八九号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二四四七号)  同(松沢俊昭紹介)(第二四四八号)  同(竹内猛紹介)(第二四八二号)  同(野村光雄紹介)(第二四八三号)  同(吉浦忠治紹介)(第二四八四号)  米の新生産調整反対及び農業政策転換に関す  る請願小川仁一紹介)(第二四四四号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第二四四五号)  国民のための国有林経営に関する請願岡田春  夫君紹介)(第二四四六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 中尾栄一

    中尾委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田委員 畜産の大変大事な、われわれ農民にとっては序盤戦ともいいます価格決定の時期が近づいてまいりまして、農林当局では鋭意この詰めを急いでいるところであろうと思います。  この際、審議会に諮問するに先立ちまして、考え方政府部内ではそれぞれ相当詰められてきている段階ではないかと思います。私も、積極的にこの価格決定に参加するという意味で、意見を随時述べながら考え方を聞かしてもらって、日本畜産酪農がようやくいま前に進みそうなそういう気配の段階に差しかかってまいりました重要な時期でございますから、ぜひひとつ決意を持って、生産者が喜んで生産に従事できるような価格決定全力を挙げてもらいたい、こういう激励の意味を込めて、おおよそ二時間にわたりまして質疑をさせていただきたい、こう思います。  例年ですと、一日ぐらいは畜産審議のために大臣がこちらに出席するということがならいになっていたのでありますが、ことしは残念ながら大臣出席が得られないというのは遺憾なんでありますけれども、しかし、せっかく政務次官もおられ、原局出席しておられますから、主として技術的な問題が後半はお聞きをしたい柱になってまいりますが、前半で、どうしても農林当局農政に十分の決意を持って臨んでもらわないと、畜産物あるいは牛乳価格決定でもわれわれが期待するような回答は出てこないのではないか。早くも農林省では、ことしは上げ要素がないといったような布陣をしきまして生産者制圧にかかっているという事態だけではなくて、私どもも、もろもろの状況を考えますときに、価格決定に当たってはなかなか容易ならざる事態にあるというふうに、同じような認識は持っているのであります。  しかしながら、それじゃそういう考え方で済まされるのかといいますと、そうはまいらない。何となれば、最近非常に心配されております第一の点は、わが国農業生産総体的に非常に停滞している、むしろ後退している、こういう情勢の中に置かれているからでございます。それは、私がいまここで申し上げるのではなくて、昨年国会に提出をいただきました昭和五十一年度の農業白書でもそのことが指摘をされています。多少例を引いてみたいと思うのでありますが、この白書の文中、こういう表現が用いられています。少し長くなりますが、白書の六十六ページに四十年代後半に入ってからの経過が説明され、特に四十五年から四十八年の間には、従来相当のスピードで農業生産が高まってきて、それがピークを越して、四十年代に入ってからは、「畜産物需要伸び鈍化や環境汚染問題の発生等もあって、」と前置きして、特に畜産伸びについて言及しているのでありますが、鈍化をし始めた。四十五年から四十八年になって年率二・一%の増加にとどまるという状態であった。それは農業生産総体的な落ち込みとも比較されるのだが、総生産増加に対する寄与度も〇・五%程度に低下した。果実、野菜生産伸びも四十年代前半から低下をして、これに米の生産調整が加わって、さらに農業生産年率〇・五%の増加にとどまった、そして「農業生産停滞色が強まった。」と、白書でも指摘をしているのであります。  農業生産増加するか停滞するかというのは、われわれ農民にとっては、つまり働く場所が広がるか狭まるかという大変大事な問題をここに含んでいるのでございます。したがって、農業生産がこのように落ち込んでいくということになれば、われわれのシェア、つまり農民の生きる範囲というのがどんどん狭められていくということが、裏返して言えば言えるのであります。これはゆゆしき一大事であります。こういう傾向に歯どめをかける積極的な政策が出てこないと、どんどん落ち込んでいって、やがて農業が総撤退を余儀なくされるということになるわけでありまして、これはとりもなおさずわれわれの就業の場が狭まっていくというだけのセクト的な問題だけではなくて、国民食糧に及ぼすきわめてその影響の重大なるを考えますときに、ほっておける問題ではない、このように私どもは、この白書を読んできわめて厳しい受けとめ方をしているのであります。  一九七〇年までは先進国農業生産に遜色のない伸びを示してきたわが国農業生産でありますけれども、七〇年代に入ってからどんどんこうした先進諸国との格差が広がる。これは石油危機国際的食糧需給の逼迫、そういうものを契機にして日本経済の成長が大きく鈍化をしたということとかなり大きな関連はあるのでありますけれども、しかし、四十九年度以降における農業就業人口減少率とかあるいは農地の非農林業用途への壊廃なども次第に四十年代の水準に戻っている、こういうことが言われている中で、農業者に対する就業の場が狭まっていくというのは、さらに一層今日の農業をめぐる状況を危機的な状況の中に追いやっているということも言えるわけでありまして、私は、こういう状況の中でことし打ち出された米の減反政策というのは、さらに大きくこれに拍車をかけるという心配があるということを、いままでこの委員会でも厳しく指摘をしてきたのはそういうことなんでありまして、そこで、こういう状態の、農業をめぐる状況の厳しい中で、ことしから三カ年区切りにして十年間減反政策を強行する、こういうことでありますが、私は、この米の減反に当たって政府が示しております考え方というものについても、非常に鮮明でないものですから、農民はこの先行きに対してきわめて不安と、そしてどうなっていくのかその方向がわからないままに動揺を覚えているというのが末端における現実の姿であると思うのです。そこのところ、私は、米の需給がバランス的に大変崩れかかっているということについて、これは認めている一人であります。しかし、それに対応する施策そのものが的確でないという点について、私は、やはり生産農民の一人として大きな不安を覚えているわけなんですが、そこで、五二年の十一月十九日に、米の五十三年度に対します政府考え方というのが、農林事務次官通達によって示されているのでありますが、こういう中に、このように述べているくだりがあります。  「元来、総合食糧政策は、需要面において我が国風土・資源に適した国内自給型食生活への誘導を図るとともに、供給面において自給力向上主力となる作目に思い切つて傾斜する農政の展開を意図するものであります。」続けて、「したがつて、今日の事態は、単に米の減産を目的とする後向きの緊急避難的なものではなく、総合食糧政策基本的考え方に立脚した農業生産の再編成を通じてこそ克服されるべきものと考えております。」こういうように述べています。  そこで、私は聞きたいのですけれども総合食糧政策の基本的な考え方というものが、いままでもずいぶん議論をしてきたのですけれども、必ずしも明らかになっていないという点を考えますときに、この際、総合食糧政策の基本的な政府考え方、それは「農業生産の再編成」、こういう言葉によって表現されていると私は受けとめているのですが、さて、それでは、こうした重要な作目は何と何を志向しようとされているのか、まずこの点を聞いて、そこから論議を進めたい、こう思います。
  4. 今井勇

    今井政府委員 大変基本的な問題にかかわる御質問でございます。  農林省といたしましては、かねがね当委員会でも何遍となく御答弁を申し上げておりますが、まず、日本国民食糧、特に主食の確保、これに焦点を当てまして、いかなる事態になろうとも国民に安心をしていただくために全力を傾注をいたそう。一方、わが国の気候、風土等から、相当な技術的な努力及び革新をやりましても、なおかつ自給をし得ない部門もこれあります。たとえば家畜等に対しますいわゆる配合飼料と称するものはその一例でありましょう。また、畜産の一部についてもそれが言われましょう。そういうものにつきましては、これを外国から安定的にしかもなるべく妥当な価格輸入をするということによりましてこれを確保いたそう、こういうふうに考えているものでございまして、その線に沿って、今回の米の生産調整につきましても、一方、先生指摘のとおり、過剰生産ぎみの米を減らすことに、同時に、減らすだけじゃなくて積極的に、在来外国から輸入しておりますものの中で、特に飼料作物、麦、大豆といった、そういったものを積極的にわが国の中で自給度向上していきたいというのが基本的な考え方でございます。
  5. 島田琢郎

    島田委員 政務次官お答えは、私の求めているものとは大変ほど遠いものなんであります。もう一度繰り返しますが、わかりやすく言えば、米の需給のバランスを失った、だからこの際米を減産させていこう、それは米の生産調整第一ラウンドでやったときのような、単純に休耕させるという方式ではなくて、今度はそれを有力な作目転換をさせていくというのが目玉である。いまおっしゃっている中にもそれが触れられているわけでありますが、さすれば、失った米にかわって何を主力に今後日本食糧を増産していこうとするのか、つまり失ったものを何で埋めようと考えているのかという点を私は聞きたかったのであります。  その中に畜産酪農が入っているのですね。重ねてそれにつけ加えてお聞きをしますが、     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕 そうすると、一体畜産酪農ではどれぐらいの、具体的な数字で言えば幾らぐらい畜産酪農に米で失った部分を求めようとしているのか。そうでないと、前段私が長々と言いましたように、農業の総生産がこんなに落ち込んでしまって、かつては、四十年代に入る前は、年平均増加率畜産で八・一%もあったのだ。まさにことし一年の牛乳増加率と匹敵するような年率伸びがあった。そういうものが、あるいは野菜とか果樹とか、そういう有力作目に支えられて、日本農業生産は全体的には何とかかんとか、やはり一つ水準を保ってきたのですけれども、四十年代中期から後半にかけてぐっと落ち込みが目立ったのは、これはゆゆしき一大事だ。つまり繰り返して言いますが、農業生産が落ち込むということは、われわれの就業の場がそれだけ狭められていき、職場が取り上げられていくということにつながるのですから、農業者としてはこれは危機感を持たないのがおかしいのであって、そういう危機感の中で今度は第二ラウンドで米もまたぞろ減反するというのですが、その失ったものは失っただけに終わってしまうのか。それをやはり農業生産総体を持ち上げていく思い切った施策に切りかえていくのだとすれば、そしてそれに畜産酪農が入っているのだとすれば、それはどういう方向でお考えになろうとするのか。ここのところが基本的にきちっとしませんと、これからはじき出そうとする乳価や畜肉価格にしっかりした考え方数字になってあらわれてこないから、私は、まずこの基本的な考え方政府からしっかり聞いた上でないと議論ができないという前提に立って、少し時間を長くかけてこの点を質問しているのでありますが、おわかりいただけたでしょうか、私の意図する質問趣旨を。御理解をいただいた上でお答え願いたいと思うのです。
  6. 今井勇

    今井政府委員 私も先生と全く同感でございまして、そのような趣旨で御答弁申し上げたと思いますが、まず主食用の穀物としての麦の問題に言及もいたしましたし、また畜産の問題についても言及いたしたつもりでございます。そういったもののために飼料用作物というものを大々的にやっていこうじゃないか、それによってわが国畜産を今後六十年目標に向かって着実に伸ばしていこうじゃないかということを申し上げたつもりでございまして、その数字等についてはまた政府委員の方から答弁させたいと思います。
  7. 杉山克己

    杉山政府委員 米の過剰ということから水田再編利用対策、そしてその再編目標として何を作目として取り上げていくかという場合に、政務次官から飼料作物ということを言葉としてお出しになられたわけでございます。これは別に畜産を否定したわけでも何でもなく、むしろ畜産のために必要な飼料作物ということでございまして、飼料作物畜産を支えていくための今後の日本における一つの大きな基盤であるというふうに考えているわけでございます。  御質問は、農業生産、米で失われたものをほかでもってどの程度カバーするのかということでございましたが、水田という観点で一番基盤になる土地についてお答えを申し上げたわけでございます。  そこで、飼料作物、その基盤となる単地につきましては、現在のところ八十五万ヘクタールそこそこの規模でございますが、これを六十年見通しでは百四十六万九千ヘクタールまで引き上げるということにいたしておるわけでございます。この飼料作物作付面積をここまで持っていくには、単に公共事業を増額する、大幅なそういう財政的な努力をするという、そちらの面だけでは足りなくて、やはり林地、原野の積極的活用、さらには水田から飼料作物畑への転換ということを必要とする、あるいはそれを大きな力として、てことして進めてまいるということになると考えておるわけでございます。  それから、そういう大型の飼料作物作付西横増加ということに対応して、畜産規模見通しでございますが、これは畜種別、物によって異なるわけでございます。肉について言いますと、これは牛肉豚肉、鶏肉と分かれますが、肉全体で見ますと六十年見通しにおきましては需要量を三百十九万三千トン、これは四十七年の基準年次に比べまして約五割の増ということで見込んでおります。年の増加率は約三・一%。それから牛乳、乳製品について申し上げますならば、六十年の見通し需要量全体で八百十四万二千トン、四十七年基準に対する伸び率は四二・四%ということになるわけでございます。年平均増加率は二・八%。鶏卵については、六十年見通しは二百二十万六千トン、伸び率は一九・四%、年の増加率は一・四%、かように見込んでいるわけでございます。  したがいまして、米の過剰、それに基づく水田の過剰という問題に対しましては、土地として草地に一部を振り向ける、さらにそういう草地によって生産される飼料作物を、当然、足りない流通飼料濃厚飼料につきましてはこれは輸入に依存いたすこととなりますが、自給飼料依存率を高めるという形での飼料供給形態をとってまいりまして、先ほど申し上げましたような畜産物全体の六十年見通しへの増大を図っていく、その水準まで振興政策としても図っていくということにいたしておるわけでございます。
  8. 島田琢郎

    島田委員 そうしますと、六十年見通しについていま数字を示して説明をしておられたわけでありますけれども、六十年見通しを策定する段階では、今日のような米の減反政策を頭に置いてこの計画が立てられたという経緯ではないと思うのですが、その辺は、いま局長説明された点と論理の上でも実際の面でも一致する、こういうふうに言い切っていいのですか。
  9. 杉山克己

    杉山政府委員 確かに四十七年以降の農業生産の実態というのはそれなり変化をしてまいっております。ただ、米の過剰問題につきましては、六十年見通しを立てる時点におきましてすでに相当程度明らかになっておったわけでございますし、水田からの転換ということはそれなりに検討されておったわけでございます。五十三年現在の今日のような形での水田再編利用ということまできちっと見通しておったかどうかということになりますと、全体としての米の過剰対策は念頭には置き検討をいたしましたにしても、今日のような姿であったかどうかということについては、そこは定かでないところは確かにあったと思います。
  10. 島田琢郎

    島田委員 そのように農政というのは、その時代時代の環境とか条件を受けて変化をしていくということは、これは私は否定しているのではありません。しかし、私が言いたいのは、この六十年見通しそのものだって、いま局長お答えになっているのは非常に苦しい答弁だと思うのですよ。実際面では、米のことは頭には置いておったけれども、具体的にはそれじゃ一体どうなるのかということになったら、それはあなただけじゃない、われわれもわからなかった、だれもわからなかったという、こういうことは事実なんですから、そういうことを考えれば、長期見通しというものに対して、しっかりとした基盤に立って考えておかなければならないのは、何と言っても総体農業生産というのを、先ほどから私は長々とくどくど言ってきましたけれども、それをどう確保し、どう守るのかというところをしっかりと踏まえた上で、そのときどきによって変わっていく変わり方を的確にその中で反映ができる、そういう全体の青写真というものは、これは動かしてはいけないことなんであります。  ですから、そういう中でやりくりをしていくわけでありますけれども、しかし、今日のような牛乳状態というものを考えますときに、それじゃ米の失った部分をどのように牛乳あるいは牛肉反映をしていくかということになると、なかなかこれは的確には判断しにくい面が確かにあるのだろうと思うのですけれども、しかし、少なくとも牛乳牛肉豚肉農業の総生産を確保していく上で果たしていく役割りとかシェアというものがどういう形でこの中で示されていくかというのは、われわれ腰輿にとってはきわめて関心の高いことでもあり、非常に重要なファクターになるわけです。ですから、私は、いまのようなお答えでは、それじゃ逆にこういうことでいいのかと聞きたいのであります。  六十年見通しそのものが、米に対してこのような事態が起こるということを的確に見通して立てられた見通しではない。そして、今日の牛乳に例を引いてみますと、政府が言うところの考え方から言えば、かなり生産が順調に伸びて、いや伸び過ぎた、こういうふうな表現になってあらわれているような状態にあるわけです。そうだとすれば、一体米で失ったものを牛乳に仮に置きかえるというようなことができるのかどうかという議論は、部内で当然起こっていいはずだと思うのですが、いまの御説明によると、それはそれで六十年見通しの上に米の分というのは上置きされた、こういうかっこうでこれから進められていくということでやむを得ないんだ、こういうふうに理解していいんでしょうか。政務次官おわかりですか。六十年目標というのは、いま示したような牛乳目標で立てられていますね。こういう状態で今後進んでいくのですと。六十年には八百万トンを超える牛乳需給ということになります。しかし、米で失ったものを畜産にも酪農にもシェアを求めて補って、総体農業生産を落とさないようにしていくとすれば、その分は上置きしなければ、六十年目標というのは修正しなければならなくなるんだが、それでもそういう方向でわれわれは理解して生産努力をしていっていいんですね、こういうことなんです。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席
  11. 杉山克己

    杉山政府委員 農業生産全体の水準の維持あるいは向上ということは、政策全体として図っていくべき話であろうかと思います。その場合に、単に畜産酪農でもってその分を新しく上積みとしてカバーするんだというようなことではなしに、先ほど私が土地利用の形として申し上げましたように、それぞれ六十年におきますところの見通しというのは立っておったわけでございます。その際に、水田からの転換は、目標を立てた年次状態よりはさらに進んで、米の過剰ということはある程度解消されておるように期待をしておったわけでございます。それが現実はそうなっていないという状況のもとで、その過剰分を全部——全部といいますか、酪農あるいは畜産上積みするのかと言えば、それは畜産なり酪農世界の問題もあるわけでございますし、それから、現に畜産酪農の分野ではそれなりに、上積みということは直接の関連はない形での増産、向上というものが実現されてまいっておるわけでございます。そういう全体の所得をあるいは農業生産を確保するということにも配慮は必要でございますが、同時に、いま申し上げました畜産酪農の問題それ自身の世界におきますところの需給問題も考えて、そこは六十年見通しとの間の調整を図っていくということが必要であろうと考えております。
  12. 島田琢郎

    島田委員 私は、なぜ畜産酪農について、そういう認識を持って臨まなければならないかということを述べてまいりましたものに補足して言えば、いまの酪農なんかは投下資本総額も非常に大きいわけですが、それに対して、手取りの所得というのは必ずしも他の作目に比べて高いわけでありません。ですから、かなり長期的にこれを見通してまいりませんと、短期的な視野でだけ酪農経営を論ずると、誤りを犯すからであります。ですから、六十年という目標を立てたことについて、私はこれを否定するものではありません。それの是非といいますか、金額の多寡についてはいろいろ議論がありますし、目標についての高い低いという問題はあるのでありますけれども、少なくとも酪農に対する経営理念という立場から言えば、その点しっかり政府側認識を持っていてもらわないと、米づくり野菜づくりなどと同じように考えることは、経営そのものの持っております体質からいっても形質からいっても同じようにはまいらぬのでありますから、そういう点で、基本的な論議をきちっと踏まえておきませんと、生産農家が納得する農政にはならない、こういうことを私は言いたくて、長い閥基本論議を続けてきたのであります。  重ねて私は申し上げておきますと、だれが何と言ったって、日本農業生産を支えてきたのは米であります。これは第一位。昨年、金額的に言ってもおおよそ三兆六千億を下らないものでありましょう。そしてその次第二位は、ずいぶん離れているのですけれども、やはり牛乳が第二位に入ってくるのでありましょう。米に比較しますと牛乳はとても比較にも何もなりませんが、おおよそ五千七百億くらいの総生産額になるのではないか。そうしますと、米で失う部分というのは非常に大きくて百七十万トン、単純計算でいきましても千五百億程度の生産額の落ち込み、こういうことになるわけでありますから、前段で申し上げましたように、総合食糧政策の展開という面で非常に有力な基盤と力を持っております酪農を無視して、米で失ったものをカバーすることはなかなか困難でしょう。一ころは野菜とかあるいは果物などでと、こういうことを言われましたが、その果物の王様と言われたミカンがあのような状態でありますから、とてもそれをカバーしようなんという考え方政府当局には生まれてこないでありましょう。ミカン農家にとってはゆゆしき一大事で大騒ぎなんでありますけれども政府部内におけるミカンに対する反応はきわめて冷たいというのが今日の状況でありましょう。酪農にも冷たいし、牛肉にも豚肉にも冷たいということになったら、一体農民は何にこれを求めていけばいいのかということになるのであります。少なくとも、いま脚光を浴びてようやく長い暗いトンネルから抜け出ようと努力している酪農畜産に、それを伸ばしていくという勇気づけをしてやるのが農政だ、私はそう思うから、その基本のところをしっかりと腹に据えて、私がこれから申し上げます点にお答えを願いたいと思います。  これは先週もわが党の芳賀委員から触れていた点でありますけれども、昨年の例を引くまでもありませんけれども、二年続きの限度数量オーバー、こういう状態に対して、それが新年度の乳価と絡まって、ややもするとだんごになってしまう、これは生産者の立場では大変いただけない話でありまして、これは本来、昨年といいますか、本年五十二年度におけるわれわれの努力に対して、限度数量オーバー分にはこのように政府としては考えているという答えがもう示されていいと思うのです。あと一週間しかないのですから、昭和五十二年度は終わりなんでありますから。その方針は部内においてもう明確になっているのでしょうか。
  13. 今井勇

    今井政府委員 限度数量オーバーの問題については、いま政府部内でいろいろ検討をいたしております。これは先生御存じのように、需要も伸びましたが、それ以上に供給サイドが伸びておること、また、そのために乳製品等が相当多量に供給過剰になりまして、事業団でも脱脂粉乳を中心に相当の量を在庫せざるを得ない状況にもこれあり、一方、確かに皆さんの御努力生産をしていただいたものでございますから、やはりひとつそういった生産農民のお気持ちにもこたえなければいけないということで、こういった国会の議論あるいはまたこれからお願いをする畜審の御議論等も踏まえた上でひとつ政府の腹を決めようじゃないかということで、ただいまいろいろと慎重に検討を続けておる最中でございまして、もうそろそろ決まっただろう、こういう御質問でございますが、いまそのような段階にまだ至っておらないということを御了解をいただきたいと存じます。
  14. 島田琢郎

    島田委員 まだ方針が明確になっていないというのは、一体どういうことなんでしょうか。芳賀委員の質問の中でも明らかになったように、こちらは親切に財源のある場所まで教えているのですね。そしてまた、不足払いの精神からいっても、それは法に規定するという点から言えば、いろいろ政府側の言い分というのはあるようでありますけれども、しかし、いま私が前段で三十分以上もかけてお話しをしてまいりました、日本のいわゆる農業全体を、後ろ向きではなくて前向きに展開していくのだというあなた方のおっしゃり方が、この米の減反政策の事務次官通達の中で明らかになっている点を取り上げて、こういう考え方でいくことに間違いありませんねとただしたのに対して、あなた方は、その方針でいくのだ、こう答えているのでありますから、そうならば、こういう問題だって、あなた方の考えているような立場からいっても、私は後ろ向きには取り扱えないはずだと思うのです。それをどういう方向で処理しようとするかというようなことがもう答えとして出てこないということ自体が、私はきわめて後ろ向きだと思うのですけれども、この際、この不足払い法そのものが、われわれから言わせればきわめて生産に限定を加え、そしてまた保証にも限定が加わり、限定不足払い、何もかも限定されて枠の中に押し込められてしまっているというような状態の中で、これからも、先ほど申し上げました米で失ったものを牛乳や畜肉で補っていくというのは、前向きな農政を展開していく上ではきわめてこれは不都合な法律になってしまうということを指摘しながら、少なくとも、ことしはその大事な年に当たっているのだから、昭和五十二年のせっかくの予想を上回る生産に対して、前向きにこれを処理していくという政府当局の考え方が示されてこないといけないのではないか。そして、多くの意見を求めながらと言いますが、この点については、農林水産委員会に少なくとも席を置いている議員諸公はみんな同じ考えだと私は思うのです。ですから、五十三年度乳価決定に当たって、五十二年度の問題についてもう区切りをつけておく時期ではないかと思うのです。どんな検討が部内でなされているのか、明らかにできるところをひとつ明らかにしてほしい、こう思います。  そして、私どもは、これも長年の議論でありますけれども、こんなに限定を受けており、さらにまた、先ほど私は限定保証だということを言いましたけれども、そもそも政府が支払いをする不足払いの補給金は、牛乳の取引のルールから言えば、これは三・二%の乳脂肪を基準にした支払いの方法ではなくて、あくまでも量目支払いでありますね。だんだん基準取引価格と保証価格との差が開いてまいりますと、ことしは二十四円五十八銭でありますから、この平均脂肪率と換算脂肪率との差額分くらいは払ってもいいんだ、私はこういうふうに思っている一人ですけれども、これだってばかにならない数字なんで、総体的には百五十八万トンに限定してこの脂肪の差額分を計算すれば、私なりの計算でも二十五億を下らぬと思うのです。それまで払えと私は言っているのじゃありませんが、少なくとも二十万トンの余剰分について正確に現金で支払うという考え方は、もうあと一週間しかない今日に至ってまだその考え方がまとまっていないというのは、私は納得できないのです。部内における論議の経過だけでも明らかにしてください。どんな御意見がその中にあったのですか。
  15. 杉山克己

    杉山政府委員 島田先生もおっしゃられているように六十年の見通しを立てる、そして長期的にその目標に向かって畜産振興を図っていく、酪農振興もその中で実現を図っていくということ、これは当然必要なことだと考えておるわけでございます。米からの転換に当たっても、その線に沿ってこれを政策の上に実現していくということ、これは当然私どもも心がけているところでございます。ただ、長期的に見ての話とそのときそのときその時点におきます需給問題との調整をいかにとるかということが、一つ政策上の課題として大きな問題になってまいるわけでございます。  今年の需給を見ますと、生産は九%台の伸びというふうに見込まれるわけでございます。それに対しまして需要もかなり伸びておりまして約六%強、これは生乳の生産と需要でございます。生乳の生産は昨年は七%台でございました。  これらの状況を考えますと、需要の伸びは期待できる。したがって、六十年見通しに向かって長期的にその振興を図っていくということ、これは何ら間違いないということは言えるのでございますが、今日現在の需給を考えますと、生産がかなり需要を上回っているということは事実でございます。そこで、私どもといたしましては、この上回り方が今日ただいま現在だけのものであるのか、長期的に一体どうなっていくのか、五十三年の生産と需要の見通しはどうなるのか、そこら辺の見定めをつけることが必要であるというふうに考えております。  その点、従来需要に対してむしろ生産が追いつかない、そういう時代には、確かに限度数量を、途中で生産増がありました場合はこれを後でまた追加的に処理をするということが行われたわけでございますが、今日は、先ほど政務次官からもお答え申し上げましたように、むしろ乳製品の過剰を脱粉の事業団買い入れというようなことで調整もいたしたわけでございます。  それらを考えますと、ことしの限度数量の超過分の取り扱いにつきましては、少なくとも五十三年の需給見通し、それからそれがその先どう展開していくかということについての一つの判断を持たないと処理できないという問題があるわけでございます。各方面からいろいろ御意見のあることは承知いたしておりますが、私ども、現在のこの不足払いの仕組みというのは、生産の合理的な指標を与え、その指標に沿って限度を設定するということを考えております以上、先生から御指摘がありましたが、やはり出たものを全部当然に後始末をするというようなことではなしに、いま申し上げましたような将来の需給の問題との関連においてこの取り扱いを決めていくべきだというふうに考えておるわけでございます。
  16. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、農林省内部ではまだ、いま局長が言われるような五十三年度以降の見きわめもついていない、こういう段階ですか。
  17. 杉山克己

    杉山政府委員 持っていくべき方向としてのあるべき水準というようなことは、六十年見通しをベースにしてスケッチが描けるわけでございますが、ことしの生産増加状況が、これがいかなる原因に基づきいかなる将来に及ぼす効果を持つのかということにつきましては、まだ残念ながら十分な分析はできておりません。
  18. 島田琢郎

    島田委員 すでに三月の十五日には、大事な五十三年度の畜産酪農の問題について、審議会の総会を招集して、ここに農林省当局の考え方というものが諮問されているのですが、そういうものは一切不問に付したまま審議会に審議をさせようとしているのですか。
  19. 杉山克己

    杉山政府委員 もちろん事務当局としては事務的な検討を進めており、それなり一つ考え方がないわけではございません。ただ、そういったものをお示しして、これで決めるんだということの的確な判断までは至っていないということで、むしろ材料をいろいろお出しして、審議会においてもその御議論はあるだろうという前提のもとに、最終的な決定はいたしたいと考えておるわけでございます。
  20. 島田琢郎

    島田委員 きょうは二十三日。二十九日には牛乳の諮問もやるわけです。いまの局長のおっしゃり方から言えば、この五日間で五十三年度以降の問題の詰めをやっていく、こういう作業手順になるということですか。
  21. 杉山克己

    杉山政府委員 そのとおりでございます。
  22. 島田琢郎

    島田委員 しかし、いままでに、あと五日間で詰めていく問題の素材は並んでいるはずであります。  それじゃ、結論は求めませんが、並んでいる問題点は何と何なのか、そこのところをひとつ示してください。
  23. 杉山克己

    杉山政府委員 一つは、五十二年の生産がこれだけ伸びたことの本当の理由は何であるかということの明確な結論でございます。これは、いろいろ言われます。その一つの大きな要素として、飼料の給与形態が少し変わってきたんじゃないか。あるいは五十二年度に限っての話かもしれませんが、変わったのではないか。具体的に申し上げますと、自給飼料依存率が低くなり、これは、国際的に飼料穀物の価格が下がった、配合飼料価格が安いということの結果に基づくのかもしれませんが、配合飼料の給与率が高くなっている。そのことが泌乳量の増加をもたらしたのではないかという考え方一つあるわけでございます。それからもう一つは、天候がよかった。その結果、牛によく吸収されて、これが泌乳量の増化につながったのではないかというような考え方もあるわけでございます。あとは、若干無理なしぼり方、いわゆる一腹しぼりみたいなこともやっているのではないか。およそ乳の出るものは、無理のきく限りこれをしぼり出しているのではないかというような意見も聞かれるわけでございます。これが確かに一時的な原因に基づいて五十二年の生産がふえたというものならば、五十三年は、これが正常な状態水準というのは具体的にどの程度かはなかなかむずかしいのでございますが、大体正常な状態に戻ることになるのではないか、そういう問題が一つございます。  それから、五十三年の需給見通しの問題になりますと、全体としての飼養頭数はふえておるわけでございます。泌乳量は一体どうなるのか。そしてそれが、五十二年、三年は仮に若干の増加があるにしても、これに伴って五十三年の需要が相当程度吸収し得るのではないか。特に五十三年は消費増大の大運動を起こす、そのための政府なり事業団なりの対策も予算的にも講じているということもございます。もちろん関係者の機運が盛り上がっていることが基礎になっているわけでございますが、そういうことを考えますと、消費も相当程度生産の増に見合って期待できるか、あるいはそうでないか、という問題があるわけでございます。それが、しかも五十三年だけでなしに、五十四年以降はどうなるかということ、さらに、今回仮に限度数量の問題について何らかの考え方をして、措置ができるとしました場合、これは先ほど島田先生指摘のように、財源的に、従来といいますか、去年やりました方式と同じことをやろうと思えば、金がないわけではございません。やろうと思えば金はございます。ただ、仮にそういう措置をしますと、来年同じ事態が起こらないであろうか。来年起こったときには一体どういうふうにそれを考えるのだろうか。一回限りの問題であるならばそれほど苦にする必要はないけれども、これが相当程度将来にわたっての供給過剰になる、またその引き金になるということであるならば、それはかえって酪農経営全体の上にも決していいことではない。農家の総生産あるいは所得をできるだけ高い水準に、これを政府としても手当てするということをそのとき限りでやったとしたことが、かえって酪農経営全体の上に悪い影響をもたらすことにはならないだろうか。そういうような、いわば需給の問題、これについての議論が数多くなされておるわけでございます。問題点としては、やはり基本的に需給の問題であるということを申し上げたいと思います。
  24. 島田琢郎

    島田委員 問題点がいま検討されている幾つかの素材として挙げられたわけでありますが、私は、前段でも言っておりますように、限度数量の五十二年度分の処理と五十三年度分の乳価とを絡めるという考え方に賛成でない。  そして、いま三つほど理由を挙げられたのですが、五十二年度の乳量の伸びの理由というものがかくかくしかじかの理由があるのではないかということを前提にいま検討を進めているというお話でありますが、たとえばこういう伸びた理由の中に、幾つかの、天候的な問題とかあるいはえさの食わせ方の問題とかいうようなものが含まれているのでありますけれども、私は、長期的な立場に立って見通した場合に、これが永続的にこういう傾向として続くというふうなことが仮にあるとしても、それはそれで——百五十八万トンという限度数量で抑え込んでおくという考え方を固執しようとすれば、確かにあなたのおっしゃったような問題が出ると思うのですよ。そして、需給の問題だと最終的におっしゃいましたけれども、それなら、ぜひこの際私は明らかにしておいてもらいたいと思うのですが、連年増加していくこの輸入の実態というものをどのように考えておられるのか。先週の芳賀委員の質問に対して、局長は、必要悪だという、に近い表現を使って、二百万トン以上にわたる異常なまでの乳製品輸入に対して一つ考え方を述べておられたようでありますが、私は、そんなことで片づけていくとしたら、国内の酪農あるいは畜産はとてもたまったものじゃない。毎回私どもが繰り返しておりますように、国内の農業を大事にし、国内の食糧自給率を高めていくということを政府はいろいろなところでおっしゃっているし、この白書でもそう言っている。農業生産の後退は大変困ったことだと白書でも言っている。一方では必要悪だとして乳製品の輸入は野放しだ。詰めていけば、これは自由化品目ですからとても私どもの手の及ばざるところですと、こう言いますが、私は、自由化というのは、そのときどきのいろいろな国際的な情勢、国内的な問題をはらみながらときによって対処せざるを得ない場合もあると思うのですよ。そのことについては、わが党は反対の立場を貫きながらも、現実の問題として国内の食糧の確保という面からいってやむを得ない場合についても反対をしてきたものではないのですね。ただ、私は、自由化されたものだから、それはわが行政の及ばざるところと言って澄ましていられるだろうか。行政的な責任は依然、自由化であろうと、非自由化品目を含めてあるのではないか、私はそう思うから、この点のところを野放しにしておいて、不足払いの二十万トンもとても払えないわ、来年の乳価も長期的な需給を考えたら上げられないわという話だったら、さっきの総合食糧政策を前向きに検討するという姿勢とは全くうらはらではありませんか。われわれは何によりどころを求めてこれから牛を飼っていけばいいということになるのでしょうか。また論議が逆戻りしてしまいます。  政務次官。あと一週間しかないのです。ぜひ、きょうのこの場所で、どういう方針でこの支払いをするのかというのは、いま述べられた検討課題なんというのは、こんなものはこれから時間をかけて結論を求めていかなければならぬような問題ではなく、明らかに数字的にもこうなっている。要は政府の決断一つにかかっている。その決断は、まさに日本農業総体的な落ち込みを防いでいくという考えがあるのか、後退に歯どめなしに転げ込んでいく農政でいいのだと考えているのか、もうこの時点では、この二者択一ではないでしょうか。その限りにおいて言えば、乳価や畜肉価格は全く議論外のものではなくて、まさに最も大事な目玉になるべき作目ではないか。その大事な時期に、いまだに方針が決まらない、こういう検討課題が克服されていないということだけ並べられても、私は承服できないのです。国会の議論は毎日続くのではありません。あとは二十九日にしかやれない。国会において多くの意見を聞きながらとさっき政務次官が、おっしゃった。そうだとすれば、私どもがこう言っている意見を、どのようにあなた方は今後取り入れて反映されようとするのかも含めて答えてもらいたいと思うのですが、政務次官、いかがですか。
  25. 今井勇

    今井政府委員 輸入の具体的な問題については局長から答弁させますが、私どもは、いま議論されておりますようなことを十分踏まえておればこそ大変苦悩をしておるのでありまして、前向きに日本畜産をどうするかということを考えれば考えるほど、ひとつここで重大な決断をしなければなりません。そのために私どもがいま呻吟をしておるというふうにぜひひとつ御理解を賜りたいと思います。  もう一週間だから決まっているのじゃないか、こう言われますが、私どもは、最後の瞬間まで最大の努力をして、そういった議論、皆さん方の気持ちに少しでもお報いをいたしたいという気持ちで苦吟をしていることをぜひ御理解を賜りたい、こう思います。
  26. 島田琢郎

    島田委員 そうしたら、多くの人の意見を求めてという政務次官言葉がありますから、私は意見として申し上げておきますが、意見としてというよりは、すでに局長原局の耳にも達しているはずでありますし、先週も議論がなされたというのは繰り返し言いましたが、生産者が期待をし要求をしておりますのは、二十万トンについても奨励金を含めて支払いをしてもらいたいという要求でありますが、こういうことも並べて検討しているということで理解していいですか。
  27. 今井勇

    今井政府委員 生産者の切なる叫びは十分私どもの頭の中に置いて検討をさせていただきたいという意味でございます。
  28. 島田琢郎

    島田委員 回りくどい説明でありますけれども……。  将来のことについても杉山局長から触れておりましたから、私は、将来というよりは、過去のことについて少し指摘をしておいて、将来の検討課題の中に加えておいてもらいたいと思うのです。  大事な牛乳生産、六十年の長期見通しを含めて、幾つかの政府酪農への長期見通し、近代化方針というものが示されてきました。酪農近代化第一次方針、そして引き続いて昭和四十四年に改定されました第二次近代化基本方針、そしてまた五十年に第三次の酪農近代化方針が示されましたが、過去はいずれもバーが高くてとても跳び越すことのできないような高い目標を掲げていたがために、実態がそれに追いつき得ず、鋏状的な開きで計画にそごを来したということの理由をもって、第二次も第三次もバーが下げられて、近代化とは名前ばかりで、目標はまさに何を目標にしているのかさっぱりわからないというような状態の中でこの近代化基本方針が進められてきていたわけです。ところが、酪農家は、近代的な装備は、計画にあろうとなかろうと、そのときどき、時代時代の要請に応じて自分たちの経営に取り入れていかなければならないですから、この近代化装備は、はしたな金じゃなくて膨大もない投資を強いられる。ようやくいま、近代化の経営の全体的な装備が一応の区切りがつけられて、これからは、そうした投下された資本を着実に返していかなければならぬという段階に入ってきたということを踏まえて、昨年の幾つかの条件を踏まえて牛乳の増産に励んだ。それがあなた方の言うところの、つまり需給のバランスを崩した五十二年の生産状態であった、こう言っているわけでありますが、私がこの近代化方針の中で指摘をしておきたいのは、過去にも、いま幾つかの理由を述べられて、それを検討の素材にして鋭意結論を求めつつあるという局長答弁の中にありました比較検討の材料としても、この酪農近代化のたどってまいりました過去における一つの事例というものはあるわけです。それは四十一年から四十三年、四十四年にかけて曲線が大変大きく上向いてまいりました。この傾向とやや似ているのではないかというふうに、私はこのグラフを見ながら今日の事態を予測しているのです。  そういうふうに考えてまいりますと、このグラフがその当時の状況と今日的な状況とが類似しているということだけではなくて、将来に向かってもややそういう傾向をたどるのではないか、酪農というのはそういう体質とそういう傾向をいままでも示してきました。酪農近代化計画が、あなた方が幾ら歯ぎしりしてがんばって、一三%の年率で伸ばしていくといっても、なかなかそうはいかなかった。第二次で補正をして八%の伸び率に抑えたけれども、それでもなかなかそのとおりにはいかなかった。今度は四・二%という大変低い伸び率を見越して、ようやくそういう近代化計画と実態とがそろそろ形として見やすい状態になってきた、こういうふうに言う人もおるわけでありますが、私は、これは計画そのものが計画という名に値しない、つまりこの実態に近づいて、そこに一つの目安を置いて単なる年率をはじき出してその目標を立てたにすぎないものであって、大して根拠がない。それは、先ほどこの六十年見通しについて局長からるるお述べになっていた点で、私はもう少し反論をしておきたかった点でありますけれども、そういうふうな余り頼りにならない計画に対しても、農民の立場で言えば、やはり一つのよりどころとして、この近代化計画を達成するための努力はせにゃならぬという意識は、経営の中で陰に陽に働いてくるものであります。  昨年は、そういう条件を受けて、近代化計画をオーバーするだけの努力をしたというふうな結論になると私は思うのであります。しかし、それがこういう曲線でもってどんどん伸びていくかという点については、私は、先ほど述べていた昨年のような天候がこれから先も何年も約束されるかというと、これは不可能であります。また後ほど、自給飼料化の立場で仕事をされている人たちに、率直にえさの問題について伺おうと思っておりましたが、われわれが、生産に大変有力な手だてとして、濃厚飼料つまり購入飼料のウエートというものは高いのでありますが、これについても、昨年は、石油パニック以来期待とはうらはらに非常に高値に推移をしてきたえさが、われわれの経営の中から言えばやや値下がり傾向にあったということは、これは一つの有力な生産の材料につながる、こういうことも言えたわけで、例年に比較して濃厚飼料への依存率がやや高まったというのは、否定し得ない事実でしょう。しかし、だからといって、米から転換をする場合には、濃厚飼料ではなくて粗飼料の生産に力を入れる、そういうことが功を奏してくれば、粗飼料に重点を置いたいわゆる酪農経営が志向されていくという、こういう行政上の指導と相まって、やはりノーマルな状態に移行していくということは、これは私は当然考えていいことだと思う。北海道のわれわれの経営の中で、三割も四割も五割も、半分も濃厚飼料に依存するような経営が、総体の経営を考えた場合に危険であるという考え方と思想というものが酪農家の間に定着しております。ですから、あなたが心配されるように、この先も濃厚飼料を三割も四割も使うような状態が続くかというと、私は続かないと思う。そしてまた、国際市場が、これから先も値下がりの方向に流れていくのだとすればこれは別でありますが、必ずしもそういう状況にはない。こうしますと、それらのすべては本年の限定された枠の中で理解しておかなければならないファクターばかりではないか、こういうふうに思うのです。  ですから、結論というのはそんなにむずかしく考えなくたって出るのじゃないでしょうか。いろいろなことをあなたはおっしゃっていますけれども、それは結局は、米の二の舞を踏みたくないという腹があって、先ほどいみじくも需要と供給の、いわゆる需給の問題でございますと言ったその需給の中の、いわゆる供給面における心配事をあなたは述べておられるのだと私は思う。それであるならば、外国からの輸入状態をこのような状態にしておいて、それで需給の問題でございますとは言えないのじゃないでしょうか。  くどいようですけれども、どうも問題の本質をわかっていらっしゃらぬようだから、私はこの点についてもう一回繰り返して指摘をしておきたいのですが、さてそこで、いまのこの輸入状態というものに少し言及しなくちゃいけないのですが、必要にして欠くべからざるものだというふうに局長は依然お考えなんでしょうか。その点もう一回、あなたの明快なる考え方と思想をひとつ披瀝願いたい、こう思うのです。
  29. 杉山克己

    杉山政府委員 全体的ないまの先生の御意見の中で、私どもも長期的に物を見なくてはいけない。それから、確かに五十二年の生産がこれだけ消費を上回ったのは、果たして一時的なものか、長期的に構造的に尾を引くものか、そこら辺の分析は、十分慎重になさなければいけないと思っております。その点、先生の御意見は、私どもにとっても非常に参考になるものというふうに受けとめられたわけでございます。  それから輸入についての御質問でございますが、私どもの基本的な立場は、やはり国内で生産できるものはできるだけ国内の生産で消費を賄うということを念願としているわけでございます。その意味で、現在輸入が一部行われているわけでございますけれども、この輸入について、何も無制限に、およそ国内でできるものもこれを排除して輸入に依存するのだ、ただ価格が安いから輸入がいいのだというような形で輸入を認めているわけではないのでございます。必要悪という言葉は別に使ったわけではございませんけれども、やむを得ない輸入もあるという意味のことを申し上げたわけでございまして、そのことを必要悪というふうに受けとめられたのかと存じます。  いまわが国で乳製品を輸入している量は、昭和五十二年でもって実量ベースで三十万トン、生乳に換算いたしますと約二百万トン強ということになるわけでございます。ただ、これらの輸入品の中身を考えてまいりますと、その主なものはナチュラルチーズでありますとか、脱脂粉乳、バター、乳糖等でございますが、これらについてその性格を見てまいりますと、まず第一に、国内生産力が全くないかあるいは非常に弱い状態にある、そのため旺盛な国内需要には十分対応できない、そういう需要と供給の実態からして、残念ながら輸入に頼らざるを得ないというものもあるわけでございます。その例としては、乳糖、カゼインそれからナチュラルチーズといったものが挙げられるわけでございます。  それから二番目に、児童の健康の増進でありますとか、福祉の向上、あるいは畜産振興といった特定の政策目的を達成するため、特に海外から安い乳製品を安定的に輸入する必要があるものというものがございます。これは、学校給食用の脱脂粉乳あるいは飼料用、えさ用の脱脂粉乳、そういったものが考えられるわけでございます。  さらにそれ以外のもの、若干の輸入をしているわけでございますが、バターとか食用脱脂粉乳、これは畜産振興事業団の一元輸入品目として、国内乳製品の需給を配慮して入れているわけでございます。したがいまして、食用脱脂粉乳はここしばらく輸入は行っておりませんし、バターにつきましても、昨年早い時期に量としてわずか二千トンを入れたというだけで、この輸入は行っておらない状況でございます。  こういった輸入の実態からいたしますと、国内の生産を抑え込んで輸入を図るというものでないということは、ひとつ御理解いただけるんじゃないかというふうに思うわけでございますし、特に、一元輸入を図っておりますところの畜産振興事業団の取り扱い品目につきましては、今後ともいま申し上げましたような国内の需給に見合わせてその売買操作を行っていく、輸入は当面できないという状況判断のもとに運営してまいるというつもりでおるわけでございます。
  30. 島田琢郎

    島田委員 五十一年に比べて昨年の一年間の輸入状態というのはどうなっておりますか。次に申し上げる品目だけでいいですから答えてください。脱脂粉乳、それからナチュラルチーズ、それから乳糖、カゼイン、そのほか国内で十分自賄いのできる全脂粉乳とか全脂加糖練乳とか全脂無糖練乳とか、バターは少ししか入れてませんなんて言っておりますが、これはあり余って困るぐらいたくさんあるのに三千五百トンも入れている。こういうことでありますが、どれ一つとってみても必要な品目ばかりですと本当に言い切れるのかどうか。いま申し上げた三品目だけ、五十一年と五十二年の比較で、いわゆるどれぐらいの量が輸入されて、その比率はどうなっているのか、ちょっと示してみてください。
  31. 杉山克己

    杉山政府委員 生乳換算の方がわかりいいかと思いますので生乳換算の数量で申し上げます。  全体として二百四万トン、そのうちナチュラルチーズが八十七万トン、それから飼料用の脱脂粉乳、ホエイパウダー、これが六十七万トン、それから乳糖が二十万トン、学校給食用等の脱脂粉乳が九万トン、食用の脱脂粉乳が五万トン、それからバターが四万トン、これだけが五十二年の乳製品の生乳換算の輸入量でございます。カゼインは量的にはこの下になりますので、ちょっといまの表では出ておりませんが、後ほどまた申し上げたいと思います。
  32. 島田琢郎

    島田委員 それは昨年に比べてふえていますか、減っていますか。
  33. 杉山克己

    杉山政府委員 これは五十一年の総量に比べまして、実量ベースでもって六%の増ということになっております。
  34. 島田琢郎

    島田委員 一、二年の、五十一年、正十二年の比較だけでもこれだけふえているわけですね。  この中には、十分国内で自賄いのできるものがある。それなのに、必要だとして輸入がされている。こういうものをほっておいて何が自給ですか。国内の農業を育て大事にするなどというような考え方は、みじんもこの中にあらわれていないじゃありませんか。  これはやむを得ないんだ、必要だし、行政的にも自由化品目なんだからやむを得ないんだなどというような、自由化品目でないものも含まっているのでありますが、そういう言い方が果たして許されるでしょうか。それが国内における生産を圧迫しているという事実につながっている限り、私は、この輸入問題というものについて、いまのような農林当局の姿勢は納得ができません。第一、乳糖、カゼイン、これらについて、輸入後、いわゆる国内に入ってきてから、この乳糖、カゼインというものがどのように使われているかについて、その実態調査をされたことがありますか。
  35. 杉山克己

    杉山政府委員 乳糖、カゼインについては、その用途がほとんど医薬品用、それから、乳児に不可欠な調製粉乳、工業用等、こういった原料に使われているものでございます。  それから、わが国ではこれらの乳糖、カゼインは全く生産がなされていないということを考えますと、自由化品目だからやむを得ないというような言い方もあるいはお気に忍さないところかもしれませんが、わが国の需要に見合ってある程度の輸入をせざるを得ないということ、これはまことにやむを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。  そういった乳糖、カゼインが、では用途目的どおりに医薬用そのほかに使われているかという、その追跡調査をしたことがあるかということでございますが、農林省として特段の追跡調査までやったことはございませんけれども、ただ、これにつきましては、昭和四十四年に厚生省の環境衛生局の通達でもって、これを牛乳でありますとか加工乳に使用するというようなことがあれば食品衛生法に違反するということを明確に示し、取り締まりを行うということが明らかにされております。ということは、それ以前はある程度牛乳とか加工乳に使用される実態もあったのかとも思いますが、四十四年以降は、こういう食品衛生法に違反するのだというような厳重な通達も出されていることで、私どもとしては、目的どおり当初の用途に充てられているというふうに理解しているわけでございます。
  36. 島田琢郎

    島田委員 乳糖、カゼインの主とした買い入れ業者はわかっていますか。
  37. 杉山克己

    杉山政府委員 ちょっとこの席では資料を持ち合わせておりませんので、後ほどまた……。
  38. 島田琢郎

    島田委員 委員長にお願いをいたしますが、これは輸入業者はどこでその買い入れ業者はどことどこだ、これをひとつこの委員会に提出してくださるよう、理事会にお諮りを願いたいと思います。
  39. 中尾栄一

    中尾委員長 はい。
  40. 島田琢郎

    島田委員 そのことは出せますね、農林省
  41. 杉山克己

    杉山政府委員 できるだけその方向努力いたしたいと思います。ただ、企業の秘密にわたるようなことに及ぶのかどうか、ちょっと検討させていただきますが、できるだけその方向で検討いたしたいと思います。
  42. 島田琢郎

    島田委員 いままでこの乳糖、カゼインについてお答えになっている局長答弁は、私は納得できない。あなたはこれは断定しておっしゃっているわけですね。断定しておっしゃっています。つまり、絶対に目的以外には使われていないという確信のもとに私に答えていられるのですが、この点についてはここで答えられないということは、つまりこの行き先について承知をしていないということじゃないのでしょうか。その点はどうなんですか。承知していても企業秘密だから教えられないということですか。
  43. 杉山克己

    杉山政府委員 通達も出されていることであり、私どもとしては、そういう目的以外のところに使われていることはないと確信はしておるわけでございます。ただ、実態がどうかということになりますと、一〇〇%絶対全くないというところまで私ども自身が確認したわけではございませんので、そこは、役所の立場としてそういうことがないというふうに思っているということで申し上げたわけでございますから、御理解いただきたいと思います。
  44. 島田琢郎

    島田委員 そのことは私は理解しているのですけれども、ただ、この問題は、私がきょうここで指摘をするまでもなく、農業団体あるいは農民代表が行ったら、必ず局長にこれは言っているはずなんです。しかし、あなたのおっしゃり方はきわめて断定的だ。そんなことはないですと。厚生省でこういう指示をされたからそういう心配はないんだというのとは違うのですね。それなら追跡調査の結果絶対にあり得ないという確信のもとに立っておっしゃっているということでないと、私は理解できません、こう言うのであります。ところが、そうでないようだから、いま委員長に、それじゃ改めて資料として調査の結果を報告してくださいと、これは私はきわめて親切に言っているのですよ。そうでなかったら、ここできめつけますよ、あなたの詭弁だといって。でも、そこまでは私は言いません。私は私なりの調査もありますけれども、それはまだしっかり詰めたものでないから披露するのを差し控えているのと、もう一つは、あなたに今後調査して提出してください、こう言っているのですから、余り断定してここで物を言わぬ方がいいんじゃありませんか。確信はないということじゃないでしょうか。だから、その点について言えば、私は去年だっておととしだって、この問題は何回も指摘しているのですよ、その前は私は局長でございませんでしたと言うかもしれないけれども。そうだとすれば、こういう問題についてきょうも私は聞きますということを通告してあるのだから、相当自信を持ったことをお答えになるためには、追跡調査の結果を報告するぐらいの前向きの姿勢でないと、行政的にあなたは怠慢だと言われたって言い開きはできないと思うのですよ。でも、そこまで私は追い詰めるつもりじゃないのです。ただ、これはもうほっておけないから、ぜひ追跡調査をしてください。そしてその結果、委員会にひとつその内容を報告してもらいたい。正式に委員長を通して私はお願いしているのですが、それはようございますね。企業秘密だなんておっしゃらぬでください。企業秘密なんていうようなものではありませんよ。
  45. 今井勇

    今井政府委員 御議論を拝聴しておりまして、大変重要な問題でもございます。先ほど局長答弁いたしましたとおり、どこまで御期待に沿えるか、これはこれからやってみますが、先生のおっしゃいます気持ちはよくわかりますので、極力調査をいたさせますので、しばらく御猶予賜りたいと思います。
  46. 島田琢郎

    島田委員 重ねて、しつこいようですが、この際ですから……。二百万トンを超える——限度数量は百五十八万トンということなのに、輸入品は乳量換算で政府が言うのでも二百万トンを超えている。また別な計算の方式によれば二百二十四万トンという正式な数字も新聞紙上で発表になっている。いずれにしても二百万トンを超えるという膨大な乳製品の輸入状況にございますから、これが今後の需給の上に大きな影を落とし、ひいてはそのため乳価決定にも大変大きなブレーキになるとすれば、これは生産者のわれわれとしてはほっておけないのです。ですから、この際、そのことを天下に明らかにして理解を求めるという意味で、すべての輸入されている乳製品の追跡調査をするということが必要だと思うのですが、この点はいかがですか。
  47. 杉山克己

    杉山政府委員 乳糖、カゼインの話もそうでございますが、全体についての追跡調査ということになりますと、私どもは、もちろんできるだけその行き先について、先生の御趣旨もわかりましたし、確かに把握する必要があると思いますので、行政の事務の許す限り最大限これは把握してみたいと思います。ただ、追跡調査をするといいましても、全体的な話になりますと、流通経路もきわめて多岐にわたります。事務的な能力の問題もありますので、一般的にこれを特に公表するほどのしっかりした調査ができるかどうかということになると、ちょっとここは自信のないところもあるわけでございます。できるだけ実情を把握するように努めて、先生にもその点は十分御説明できるようにいたしたいと存じます。
  48. 島田琢郎

    島田委員 出てきたものを見た上でまた議論をすることにいたしましょう。誠意を持ってこの問題に答えていただきたい。そういうことを重ねて要請をしておきたいと思います。  そこで、次は牛肉に入ってまいりますが、時間がなくなってしまいまして、計算の方式など、通告していたものがたくさんあるのでありますが、少し飛ばさせてもらいます。もう一回集中審議が行われる予定もございますから、せっかくですが、きょうはそこのところを割愛させていただいて次に進みます。  牛肉については、私も昨年来農林大臣ともかなり論議をいたしました。そういう中から、少し積み残しておきました点の質問をしたいと思うのです。  一つは、五十三年の牛肉輸入見通し一体どうですか。その中で、特に私ども警戒しているのはチルドビーフなんですが、チルドというのはフローズンと違いまして、国内の生産農家に、生産段階にストレートに影響を及ぼすものでありまして、これの輸入についてはわれわれは厳重に警戒をしているのでありますけれども、この点を含めて見通しをお聞かせ願いたい、こう思います。
  49. 杉山克己

    杉山政府委員 輸入見通しにつきましては、これは国内の需給の実情を見ながら半年ごとにその数量を決めるというやり方をとっているわけでございます。五十三年度全体については、そういう意味で、見通しというか、枠はまだ設定されておりません。上半期につきましては、まだ枠の決定はいたしておりませんけれども、一応の見通しといたしまして、一般枠は四万トン以上と考えておるわけでございます。  それから、その中でチルド肉の輸入についてどう考えるかということでございますが、チルド肉は、御存じのように市場の価格が高騰した場合に、これを冷やすのにきわめて即効的な効果があるわけでございます。そういう意味から、流通段階価格安定のためにある程度これを売却するといことは当然必要なことだと考えております。ただ、いま申し上げましたように、流通段階価格が高騰したときにおける鎮静化、引き下げに効果があるということは、価格引き下げを著しくもたらすような危険があるときは、その転入売り渡しについては慎重に扱わなければいけないと考えております。その意味で、従来フローズンに比べてチルド肉の方をむしろ多量に輸入しておったわけでございますが、五十二年もそうでございますが、現在はフローズンの方が数量的にはウエートが高くなってまいっております。
  50. 島田琢郎

    島田委員 事業団の輸入の一元化を図れというのは、畜安法の中に牛肉価格制度を取り入れましたときに大変大きな議論になって、法律の中でも、私が主張した点から見ると多少ぼやけた感じになりましたけれども、しかし、精神としては事業団の一元化輸入というのは一つの柱であると私は思っているのですが、それを徹底すべきである。そうでないと、アリの一穴という言葉もありますように、多少でもシェアが別なルートにあるということになりますと、そこで大事な柱が崩れてしまう危険がありますが、この点については改めて問うまでもありませんね。  また、売り渡しの方法の改善なんかについては積極的に取り組むということを大臣も言っておりますし、そもそも国内的な消費者の期待は、外国の安い牛肉を入れてくればたちどころに消費者価格は安くなるというふうに、きわめて素直に皆さん方が受け取っていらっしゃる。しかし、間々われわれが調査をしたり指摘をしてまいりました点で明らかなように、必ずしもそうストレートに、牛肉というのは安いものを入れてきたから安い価格で消費者に提供できるというような消費流通の経路にはなっていないという点が問題であるとして、その改善方を迫ってきたところであります。政府は、その点に対して、部分肉の問題とか直販施設の問題とか小売店の行政上の指導の強化であるとか、いろいろ言ってきましたが、これは当面大変大事な対応でありますから、この政府考え方について具体的に、国民の皆さん方が聞いてわかるようにこの際まとめて御説明願いたい。  そうでありませんと、私ども牛肉輸入に反対している、高いものを食わせることに賛成している、農林議員族と言われるのはそれが大体みんなの考えていることだというふうに間違って受け取られがちでありますが、私どもはそういうふうに考えているのではない。そもそもこの流通機構をこんな状態に置いておいて、幾ら安いものを入れてきたって安くならぬ。生産地があんな大変な大暴落の事態に追い込まれたって、小売り価格一つも下がらなかったということの事例を引いて説明をしているのでありますが、それは説明だけでは、今日はもう絶対消費者の皆さんは納得しません。こういうふうにするから、こういうふうにやればこうなるのですということが説明されないといけないわけであります。ですから、せっかくの機会でありますので、政府が考えております点を明確にする必要があると私は思いますので、あえてこれを質問するものであります。
  51. 杉山克己

    杉山政府委員 たくさんのことを御説明申し上げなければいけないので、あるいは落ちがあるかと思いますが、まず、牛肉輸入についてどの程度事業団が一元化の実力を持っているか、法律等との関連からその観点はどうかということでございますが、私ども先生がいま御指摘になりましたように、この価格安定制度の発足の際における国会での審議の経過はよく承知いたしております。事業団がその目的に従って一元的な運営ができるように、また有効に力が発揮できるように措置することにしておりまして、現在では輸入牛肉割当量のおおむね九割を事業団が取り扱うこととしております。一割程度が事業団以外のルートで扱われるということではございますが、九割を扱えば、事実上一元輸入、またその価格コントロールに十分効果をもたらし得ると考えております。  それから、牛肉価格の問題につきまして、消費者が単純に、安い輸入肉を入れてくれば安く消費者に提供されるのではないかという非常に単純な理解で受けとめているのではないかという御意見、正確に理解しておられる向きもあると思いますが、世の中に多くそういうような短絡した御理解をなさっている向きも確かにあると思います。私ども牛肉価格を安くするには、基本的には国内生産のコストダウンを図っていく、あるいはできるだけ引き上げを抑制していく、生産段階における生産性の向上努力ということが一つ必要であろうと思っております。しかし、申し上げるまでもなく、国内の牛肉生産は、国際価格に比べますればどう努力しても高いものにならざるを得ません。この高い国内産の牛肉生産を続けていくということにつきましては、将来の需給の動向を考えますと、牛肉はそう遠くない将来、国際的に需給が逼迫するであろう、供給の不足が懸念される、そのときの価格もまたかなり高いものになっていくのではないかと私ども考えております。  ちょっと話が長くなりますが、牛肉は大抵の国では——大抵の国といいますか多く消費する国では、自給自足的な生産が行われておりまして、国際商品化している数量はごく一部でございます。そういうことから、需要国の動向によってきわめて不安定な供給にさらされる。長期的には需要が相当確実なテンポで増大していくのに供給が追いつかないのじゃないかというふうに観測されますので、やはり国内的に自給を保っていく必要があると考えております。そういう御理解をまず消費者にしていただくことが必要ではないか。  そうして次に、生産段階である程度高いものにならざるを得ないけれども、しかし、いま申しましたような需給のもとではそれはがまんしていただき、さらに、生産者の方もできるだけ生産性を上げるように努めていくということと、それと並びまして、流通段階においてむだな経費のかからないよう、経済合理性を求めて、できるだけ流通経費を節減した形で消費者に提供するということが必要だろうと思います。流通段階、確かに改善すべき問題をたくさん抱えております。そこで、政府といたしましても、当面の問題、さらには長期的な問題、いろいろありますが、消費者に的確に安い牛肉がお届けできるよう最大の努力をしているところでございます。  たとえば、国産肉につきましても、週に一回特別売却というような形で、二割程度小売価格が安い価格で消費者にお届けできるような売り方を考える。これは具体的には、生産者団体と消費地の販売業者の団体との間でもって特別な契約のもとにその販売をさせるというようなことでありますとか、それからこれはまだ東京都だけでの話でございますが、いわゆる朝市と言われておる小売店の共同仕入れによる流通経費の節減というようなことも実現さしておるわけでございます。ここで、安定した価格でもって消費者に供給できるように、そのために必要な資金も事業団からこれを助成するというような形をとりまして、これは一割程度消費者価格が安くなるような形で提供されております。  それから、輸入肉の扱いにつきましては、一般的に枠を、枠といいますか売り渡し数量を需要の動向に見合わせてふやすということと同時に、特に、コストが安いものがそのコストに見合った価格で売られるようにするために、単に従来の流通機構をそのまま利用するというだけでなしに、特に指定店制度というものを設け、最近さらにこれを強化して、コストに見合った価格できちんと売られているかどうか、その報告を求め、かつモニターによる監視を行うというようなことによって、流通の不当なマージンが取られるようなことのないようにやってまいっておるわけでございます。  いま申し上げましたようなことは当面の対策でございますが、それらと並びまして、私ども長期的には、流通改善の大きな柱として、産地におきますところの食肉センターの整備、あるいは消費地におきますところの部分肉センターの新設というようなことを考えておりまして、五十三年度予算において、特に前者の増強を図るとともに、後者の新しい予算計上を実現しているところでございます。  そのほかいろいろ対策は考えておりますが、ごく思いついたようなところでございますが、一般的な話を申し上げたわけでございます。
  52. 島田琢郎

    島田委員 事業団輸入の一元化の中で、残りの一〇%というのは、これは事業団の一〇〇%一元化にはどうしても沿い得ない部分が残ったという意味ですか。
  53. 杉山克己

    杉山政府委員 これは貿易というもののたてまえから、完全一元貿易ということについては、各方面の御意見もあって、そういう形で一部民間貿易の形が残されたということでございます。
  54. 島田琢郎

    島田委員 一部の意見があってということでありますが、仮に十万トン輸入されているとすれば、一万トンというのは事業団以外のアウトサイダーで流れていくわけですが、これは私は、一万トンといえども、いま大変重要な牛肉に対する問題を含んでいるときでありますから、事業団に一元化するというのが法の志向するところでもあるのですから、そこに努力するということが必要だと思うのですが、いまの御説明では、一部の御意見があったということで一〇%のアウトサイダーをつくっているというのは、これは説明としては不十分だと思うのです。重ねてお聞きしますが、  一体どういう状況なのですか。
  55. 杉山克己

    杉山政府委員 一割の輸入につきましては、数量的にそれほど多くないということもありますが、これはやはり先生のおっしゃられるように、できるだけその行く先についても監視するということは必要だと考えております。したがいまして、輸入されたものをそのままどこへでも出していいということではなくて、これは特定のルートへ、つまり全国食肉事業協同組合連合会という食肉の販売網を通じての販売、それから加工業団体を通じての加工業者への販売ということで、そういう特定のルートへきちんと売却するようにさせておるわけでございます。その実績についても、事業団、それから農林省は、全量きちんと把握しておるところでございます。
  56. 島田琢郎

    島田委員 いまの特定な団体と言われた、そこが非常に問題になっている点でないですか。そのほかに、九〇%のインサイダーで事業団が輸入をやっている、この部分からの売り渡しも、特定団体として名前が挙げられているそういうルートもありますね。それは一元化するのはあたりまえじゃないですか。全部事業団が引き受けて輸入をして、そうして改めてこういう特定団体に流していくという、そういう明朗なやり方をしないから、いろいろ消費者側から、先般も厳しい注文がつけられているのはこの部分じゃないでしょうか。  この改善方法についてどのようにしますかと私はさっきお尋ねをしているのですが、これはいまの御説明によると、こういう考え方をこれから先も変える考えはない、変えるつもりはないというふうにおっしゃっているのかどうか、その辺も含めてお答えを願いたいと思います。
  57. 杉山克己

    杉山政府委員 問題は二つの段階に分かれているかと思います。  一つは、一割程度の輸入量について民貿に任されている、これはどこへどういう形で売られるか監視する必要があるのじゃないか。さらには、そういった監視を一層徹底させるということならば、事業団が直接売ったらいいではないかというこの次元の問題だと思います。  いま一つは、事業団が直接売る肉につきましても、その売り方、売られたものがどういう流通経路でもってきちんと末端まで届けられるような形になっているか、その監視指導を十分にやるべきであるという、その両方の問題があるかと思います。  前者の問題につきましては、いま行われております民貿をやめるというようなことは、いままでの長い経緯もございますし、全体的な観点からすれば、私はそれをやめるというようなことはなかなかできないと思うわけでございます。したがいまして、事実上そういうおかしなことにならないように、現在でも把握し指導をしているわけでございますが、その徹底に一層努めるということを心がけたいと存じます。  後者については、当然前者以上に、直接にやっているわけでございますから、いろいろ世の中一般からの御批判もある問題もありますので、その売り方、それから流通経路の監視等について十分配慮して、今後みずから努力するとともに、指導に努めたいと思っております。
  58. 島田琢郎

    島田委員 時間が詰まってまいりましたので、先へ進まざるを得ませんが、次は卵についてであります。  卵の生産費というものについて細かに調査をしたことがございますか。そうして、いまの価格というのがそれで十分生産費が償いがついているというふうな実態になっているのでしょうか。私は、この際、生所方式を徹底的にとるということで、生産費の調査をもとにして鶏卵の価格が保証されるような、そういう状態にしていかなければ、これは先般も問題になっておりますようなインテグレーションがどんどん進行していくという、しかも協定の網をくぐって不正なことをやるというようなことが野放しになっている現況の中で、なかなかこれも強制的に指導はし切れないと、この間聞いておりましたら政務次官はそんなことをおっしゃっているわけでありますが、これはインテグレーションをどんどん志向する方向で行政指導をやっていくという考え方なら私はこんなことを言いませんけれども、そんな考え方でいくというようなことであるならば、また別な角度からの論議が要るのですけれども、しかし、まじめに実は農家養鶏という形でもってやっている農家は、実際に卵の価格がとても間に合わない。えさが少し安くなったから、やっと青息吐息のところからは少し息ができるような状態になったという声は聞かれますけれども、どうも卵の価格というのは、政府も積極的にこれを保護するというような考え方がなかなか出てこない。こういうようなことを考えますと、現行の補てん率はもっと引き上げていかなくてはいけないのではないか、そうしないと再生産ができないのではないかと思うのですが、御見解はいかがですか。
  59. 杉山克己

    杉山政府委員 卵の生産費は、私ども十分調査して把握いたしております。百キログラム当たり大体二万六千円台でこのところ推移いたしております。  そういうコストに比べて現在の市価はどうかということになりますと、これは日々変動いたしますので、今日現在は承知いたしておりませんが、いずれにいたしましても、大幅にそのコストを下回って売られているという状況にございます。その意味できわめて憂慮すべき事態にあるわけでございますが、この原因の一つは——一つはといいますより決定的に、需要を上回る生産、供給がなされている、過剰供給という問題にあると考えております。  そこで過剰供給自体についての是正を図るということで、生産調整が必要でございます。生産者の組織によります協議会、この協議会によりまして生産調整が自主的に行われているわけでございますが、率直に申し上げましてなかなかうまくいかない、中に一部、特に大手の非協力者もあるというようなことで、卵価の維持には苦心をいたしているところでございます。役所といたしましても、当然その厳正な履行、適正な運営ということを心がけて指導に当たっているわけでございますし、先般御指摘ありましたような問題についても、個別の事例についても実態調査をするというような段階まで参っているわけでございます。単に中央で号令をかけているというだけでなしに、積極的に中央官庁も調査も進めるというようなことに入ってまいりたいと考えております。  それから、下がってしまったものについての価格補てんはどうかということでございますが、これは先般も三月の補てん基準基準価格を決めたわけでございます。キログラム当たり二百五十九円ということで決めたわけでございますが、この補てんのあり方、特に補てん率はどうかということでございますが、この補てん率は九割に引き上げたところでございます。それから、安定基金に対する政府の助成も、単価を引き上げるというようなことで、予算的にもそれから畜産振興事業団からの手当ての問題につきましてもそれなりに措置を講じて、安定基金制度の円滑な運営に努力しているところでございます。
  60. 島田琢郎

    島田委員 卵の問題はもう少し私も意見を申し上げて議論をしたいところでありますが、時間がなくなってまいりましたので、最後にえさの問題について少し聞いておきたいと思います。  海外のえさ市場の見通しというのは政府はどのように押さえていますか。物量的な問題あるいは価格見通し
  61. 杉山克己

    杉山政府委員 価格の方から申し上げますが、最近のトウモロコシなどの飼料穀物の国際相場は、これはブラジルにおきまして大豆が減産になった、それからドル不安のためにドルを物にかえたいというような意向、いわば換物志向といいますか、そういう傾向があらわれているというようなことから、いままで低価格水準にあったものが若干強含みに推移いたしております。そういう意味で、ここ最近ちょっと懸念される動きがありますが、しかし、長期的に飼料穀物の価格を決める一番の決め手は何といっても需給でございます。  そこで需給状況を見てまいりますと、昨年の飼料穀物生産は、主要生産国でありますアメリカが史上最高の生産を記録いたしております。それから西ヨーロッパも一般的に大幅な生産増加となっております。ソ連などは若干一昨年よりは昨年が不作であるというようなことはありましたが、それでも平年作程度の水準であるというふうに見られておりまして、全体的には一九七七、七八年度の世界の期末在庫、一九七八年九月ということでございますが、これはかなり潤沢な水準となるものと見込まれております。したがいまして、先ほど申し上げましたようなここ最近の飼料穀物の国際需給は、若干の変動はございますものの、当面安定的に推移するものと考えております。  なお、本年産の飼料穀物の作付、これは本年の後半から来年以降の需給あるいは価格の動向に当然影響してくるわけでございますが、これにつきましては、アメリカにおきまして新農業法に基づく一〇%の作付留保、これが決定されております。これがどう影響するかということをこれから注意して見守っていかなければならないのでございますが、アメリカ側の一月一日現在の作付意向調査などを見ますと、飼料穀物に基本的に需給に影響を及ぼすような影響はないというのが現在のところの評価でございます。したがいまして、結論的に言えば、まだことし、来年、いまのような安定した飼料穀物の需給及び価格の動向が続くというふうに見ております。
  62. 島田琢郎

    島田委員 海外の市場については一応そういう見通し政府としては持っている。こういうことについては、きょう議論をする時間がありませんので、お聞きをしておくということにいたしたいと思いますが、冒頭で、米の減反政策に伴う国内の転換作物について、政府当局からも、飼料作物について、将来、六十年目標で百四十六万九千ヘクタールを見込んだ飼料の増産をやるというふうなことを言っております。これは粗飼料についてのみではなくて全部含めてお話をされているのかと思いますが、いまの外国に依存をしていくという飼料穀物の状態の中でも、備えあれば憂えなしという言葉もございますが、こういう時期にこそ、国内の飼料穀物で自給し得るもの、また過去において相当の実績を持っているものについては、積極的にこれを自給をしていくという体制づくりが急がれる、これは政府の考えていることも私どもが考えていることも同じことであります。しかし、作物を選ぶとなるとなかなかむずかしい。小麦といったってなかなか思うようには伸びていかない。大豆についてはなおそうだ。しかしここに、しばしば私どもも問題にしてまいりました、いま輸入されておりますマイロとかあるいはコウリャンとかといったような名前に代表されております。国内においてはソルガム、総称してグレーンソルガム、こう言っておりますが、これは青刈り用のソルゴも含めて、国内的には自給度の面で果たす役割りの大変大きい飼料作物と言われてまいりました。なるほど調べてみますと、ソルゴ自体は今日も青刈り用として相当つくられているようでありますが、問題のグレーンソルガムというのは、その生産が非常に落ち込んでまいりまして、いまほとんど皆無に等しい。しかし、実験の成績を見ますと、米も及ばぬ多収穫の作物だ。十アール当たり一トン以上とっているのですね。驚異的な収量を上げております。そしてまた、これは配合飼料一つの穀物として非常に大事な地位を占めておりまして、それを裏書きするように、年四百万トン以上もアメリカを中心にして輸入されているという実態がございますね。だから、これもそんなに安いわけじゃなくて、相当いい価格であります。これを国内で自給するというようなことを真剣に考えていく必要があるんじゃないかということで、ずいぶん長い間、このソルガム、とりわけグレーンソルガムについて私も関心を払ってまいった者であります。こんな機会にこういうオーソドックスな議論をするという場でもございませんし、もう少し場所をかえて飼料の問題について真剣に議論する必要があると思うのですけれども、しかしこういう点について、口先だけじゃなくて、米の問題を言うなら、それにかわるべきものを具体的に何をやるんだというような、飼料作物百四十七万ヘクタールもこれから六十年目標でやりますといったって、それじゃ何をやるんですかと聞かれても、何もない。こんな状態政府が考えておること自体、この重大な局面を迎えて怠慢ではないかというふうにさえ私は思うのです。  こういう点についてしっかりした考え方を持つべきだと思うので、この際、技術会議の方では、グレーンソルガムなりソルゴなりの栽培に対して、技術的にも相当高い水準を維持しながら研究を続けているということが文献によって明らかにされております。きょうは局長がお見えですから、局長からこの点の今後の考え方について、畜産当局に示唆を与えるような意味で、あなたの考え方を堂々と述べてもらいたいと私は思うので、最後にあなたに発言の機会を求めておきたいと思うのです。
  63. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 お答えを申し上げます。  先生のお話は、主体がグレーンとしてのソルガムに置かれておるように受け取れたわけでありますが、グレーンソルガム、それから青刈りのソルガム、両方とも私どもの研究機関あるいはまた都道府県立の研究機関でも研究は進めてまいってきております。  先生のお話の中で、グレーンとしての収量が一トン以上というお話もございました。私ども、五十二年度からはこれに力を入れるために、特別に飼料用穀類の栽培適地の拡大と高位生産技術の確立を図るための特別研究というものを実施しております。五十二年度の試験成績はまだまとまっておりませんが、いままで五十二年で得られた栽培時期と収量との関係における成果を見てまいりますと、たとえば中国農試では一番高い収量を上げたもので八百五十キログラム、九州農試では八百三十キログラム、こういうのが報告をされております。そのほか、長野県農試においてやりましたもので最高収量で九百キログラムという例がございます。なお、これ以前の試験成績では、これは一例だけ承知をしているわけですが、新潟県の高冷地農業技術センターにおきます試験では千キログラム、一トンという例が一つございます。  青刈り飼料としてのソルガムにつきましては、現在栽培面積が一万九千ヘクタール前後ということでだんだんとふえてまいってきておりますが、飼料穀実としての利用も大事な問題であるというふうに考えまして、特にこのグレーンソルガムと飼料用麦類とのコンビネーションを考えて栽培体系をつくっていくことが重要であろうということに着目しまして、そういう観点での周年生産技術の確立、あるいはまたグレーンソルガムの栽培適地の判定条件をどう見るかというようなことについて、先ほど申しました試験研究の内容としてこれを組み込んで研究を進めておるわけでございまして、できるだけこれらの成果を得まして、それが飼料生産基盤の強化につながるように、私どもも、試験成績を上げてまいりたいと考えております。  ただ、グレーンとしてだけで考えてみますと、輸入物との間の価格の問題が非常にございまして、これは経済的な問題として別途考えていかなければならぬ問題であろうと考えるわけでございます。  なお、水田転換との関係で考えてまいりますれば、飼料作物の栽培につきましては特別に優遇した奨励金が出るということになっておりますので、そういう奨励措置との関連も考慮をして、具体的な奨励施策は進めていく必要があるというふうに思っているわけでございます。
  64. 島田琢郎

    島田委員 終わりますが、いまお聞きのとおり、政務次官、そういうもろもろの行政上の怠慢と言われない部分をちゃんと整理をしていかなければならないのではないか。そういう幾つか指摘をした点をそのままにしておいて、乳価を抑えるだの、肉価格を抑えるなどというようなふらちなことはお考えにならぬように、前向きに、日本酪農をさらに一層推進させていくためのブレーキにならないような農林当局の姿勢を明確に打ち出されるように、私は厳しく要求をしておきたいと思います。  以上で終わります。答弁は別に要りません。
  65. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時三十四分開議
  66. 中尾栄一

    中尾委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。芳賀貢君。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 最初に、昭和五十二年度の限度数量の問題について尋ねますが、前回の農林当局説明については、現行制度から見て根本的に間違いがあるように受け取られますので、きょうは明快にしてもらいたいと思います。  そこで、昭和五十二年の牛乳年度における加工原料乳の認定数量が大体もうわかっておると思うのですね。三月、何日かありますが、おおよそ判明しておると思うので、その点について数字を挙げてもらいたいと思います。
  68. 杉山克己

    杉山政府委員 認定数量は、五十二年の四月から五十三年一月までの実績、全国で百四十八万トンということになっております。これは限度数量に比較して九三・七%、この前年同時期、つまり五十二年四月から五十三年一月に当たるこの前年同時期の認定数量に比べまして、一一七・一%という実績になっております。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、年当初の告示された限度数量が百五十八万トンですから、結局年度末までの確実な推計で判断すると、やはり二十万トン程度年間の認定数量が限度数量を上回る、そう考えてもいいですか。
  70. 杉山克己

    杉山政府委員 はい。私の方も、現在のまま推移すれば、三月末でおおむね二十万トン程度認定数量が限度数量を上回るものと見ております。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなると、各都道府県知事は、いやでもおうでも、特定乳製品に供給された生乳の量が認定数量ということになるわけだから、これは確実に認定をして農林省に報告する。そうなると、どうしても認定数量と限度数量の差が二十万トン生ずるわけで、昭和四十一年から昨年までの間大幅に限度数量を上回ったというのは、昭和四十三年と昨年の五十二年の、この二カ年です。その間わずか一万三千トンぐらい超過した年もあるが、これは微量であるというので何ら対策を講じないで終わっておるわけですが、いずれにしても、二十万トン、認定するのが超過したということになると、農林省としてはこれを放任するわけにはいかぬと思うのですね。これに対する処理をどうするかということについては、五十三年度の加工原料乳の価格決定等が告示される前に、前年の問題だから、処理するのが当然だと思うが、その点については、何日までにこれに対する方針というものを固めて実行に移すかというめどがもうついておると思うのですよ。これは別に農林大臣に聞く必要もありませんが、畜産当局として、ぎりぎり何日までに処理をするという点について明らかにしてもらいたい。
  72. 杉山克己

    杉山政府委員 過去におきまして、加工原料乳の発生数量が限度数量を超過した場合、先生仰せられましたように、四十四年の数量が小さかったときを除いて、四十三年と五十一年度におきましては、処理の形態は異なりますが、措置はいたしております。  そこで、今回、五十二年度の枠をオーバーすると見込まれる分についてどうするかということでございますが、これは放置するわけにいかないではないか、十分検討しているだろう、その最終的な結論はいつかというお尋ねでございますが、私ども、過去の限度数量をオーバーしたときとことしとは、基本的な条件が違っているように考えております。特に、従来の場合と異なりまして、五十三年度あるいはさらに長期の全体的な需給との関連の中で、それを総合的に見てこの取り扱いを決めるべきであるというふうに考えております。  その意味で、これから畜産振興審議会に御諮問申し上げた問題についていろいろ御議論いただくわけでございますが、来年度以降の需給の問題についても御議論があるはずでございます。それとの関連においてこの限度数量の問題も御議論があるものと考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、直接諮問した事柄ではございませんが、それら全体の意見を参考にいたしまして、五十二年度の価格なりあるいは五十三年度の限度数量の問題を決定するときにセットにして決めてまいりたいというふうに考えております。
  73. 芳賀貢

    芳賀委員 昨年の場合は、前回三月十七日の当委員会において私が発言したわけですが、昨年三月十五日に衆議院の決算委員会が開かれて、この決算委員会農林省所管の決算の審議をしたわけです。たまたま畜産物等の価格決定の時期でございましたので、私から、時の鈴木善幸農林大臣に対して、昭和五十一年度の限度数量をオーバーしたおおよそ十四万トンに及ぶ認定数量についてはどういうように処理されるかということを質問をしたわけでございます。そのとき鈴木農林大臣は、率直に、農林省としてもおおよそ十四万トンの限度数量超過分があるということは把握しています。これの対策については、法律に基づいて畜産審議会の意見を聞いて限度数量の改定を行って告示をするという方法でなくて、この分については五十一年度の加工原料乳に交付される交付金の額、つまり二十四円七銭、これと当時の一円の乳質改善奨励金について、この超過分の全量に対して畜産事業団の助成勘定より支出する、そういう方針を農林省として固めております。決して生産者に対して迷惑をかけるようなことはいたしません。これはもう昨年の三月十五日ですからね。ちょうどことしの三月十五日は畜産審議会の総会が開かれた日であるわけです。同じ自民党の政府、同じ農林省大臣もいるし畜産局長もおる。においては昨年よりも六万トン程度さらに多いわけでございますが、これに対する処理の方針がいまだに決定できないということは、これは何らかの事情がなければならぬと思うのです。  われわれの判断では、金を出したくないということに尽きると思うのですよ。それ以外の理由はないと思うのですね。とにかく財源措置については、先日参考人として畜産振興事業団の太田理事長が出席いたしまして、財源的な面については十分ございます。交付金勘定関係だけでも大体九十四億円程度財源がありますということをこの席で明らかにしたわけですから、あとは特段の理由が認められない限り、その限度数量を正規の手続で改定をして支出をするか、あるいはまた昨年の前例に準じて完全な処理をするかという、この二様の方法しか私はないと思うのですよ。それ以外の方法はないと思うのですね。しかも、その超過分に対して何らの処置をしないということは、これは政府としても絶対に許されない問題ですから、だからこれについて、日を延ばしてももう何日も延ばせぬわけですから、その点をこの際率直に明らかにしておいてもらいたいのです。
  74. 杉山克己

    杉山政府委員 金がないから、財源的な措置ができないから、あるいは金を出したくないから措置をしないのではないかという御質問のようでございますが、確かに、先生御自身指摘されましたように、昨年と同じ方法で処理するとしたならば、それに必要な財源は畜産振興事業団で用意できる状況にございます。ですから、私どもは、財源的にどうこうということで現在までこの問題を処理決定していないということではないのでございます。それはやはり、昨年とはあるいはそれ以前とは、基本的に牛乳生産あるいは需要の事情をめぐる全体の条件が変わってきている。その変わってきていることをどういうように受けとめて、そして将来の畜産経営の安定につなげていくかという観点から、問題の分析をいたしておるわけでございます。  具体的に申し上げますと、昨年は百三十八万トンの限度枠でございました。それ以前は数年続いて百三十八万トンで、その限度内で実際の発生数量はおさまっておったわけでございます。昨年がこれをオーバーいたしまして……(芳賀委員「ぼくは一時間しか持ち時間がないから要点だけ」と呼ぶ)承知いたしました。それでは要点だけ整理して申し上げます。  昨年は全体として、事業団の乳製品の売却も行っておって、需給関係はそれほど供給過剰とか、需要不足ということはなかったわけでございます。ことしの全般的な事情は、生産が余りにも伸びた結果、需要を大きく上回る、その結果乳製品の在庫が多くなったということで、事業団が、実量にして一万四千トン、生乳換算九万五千トンの脱脂粉乳の買い上げを行っております。そういう状態のもとにおきまして、来年の限度数量を一体いかなる水準決定するか。ことしの生産伸び過ぎが一時的な原因に基づくものか、将来とも構造的にこういう状況になるものか、特に飼料の投与形態等の問題等もございまして、それらの原因分析と、先への影響ということを検討し、畜産経営に安定をもたらすような需給見通しての措置を決めたいということで考えているわけでございます。  したがいまして、やはり全体の需給見通しとの関連決定したいということで、財源的な意味でその問題の検討がおくれているということではございません。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなるとますます問題ですよ。まさか、昨年当初、国産の生乳の需給計画全体の中で法律に基づく限度数量というものを積算してあるわけですから、それまでも以前に戻って変更するという意味ですか。これは大事ですからね。
  76. 杉山克己

    杉山政府委員 昨年の限度数量は、いま申し上げましたような措置を行ったわけでございますが、それ以前の問題は、何といいますか、過去の問題として処理済みといいますか、まさに過去の事実として残っているだけでございます。  私が申し上げましたのは、むしろ五十三年あるいはそれ以降の需給の問題を、ことしの生産、需要の事情からしてどういうふうに判断するか、そういうことについて検討していると申し上げたのでございます。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、五十三年度ではなくて五十二年度ですよ。どうもあなた頭に入っていないようだが、それでは、五十二年度の限度数量の計算、積算というか、これはあなた知っているのですか、どういうふうにやったかということ。あなた、去年は局長でないから、わからぬければわからぬでいいですよ。無理する必要はないんだから。
  78. 杉山克己

    杉山政府委員 需給見通しについて細かい検討をして、全体の計数を定めてまいったわけでございます。その経過について、当時詳しく論議に参画しておるわけでございませんから、分析して知っておるというわけではございませんが、結果の数値については承知いたしておるわけでございます。
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、算式と数字をここで述べてみなさい。こういう算式によって百五十八万の限度数量ができた、それが明らかになるように。
  80. 杉山克己

    杉山政府委員 五十二年度の推計では、全体としての生乳生産の需要は五百六十一万六千トンと見込んでおったわけでございます。これは対前年三%の伸び率。それに対して供給の方は五百六十万九千トンと見込んでおりました。これは伸び率で四・四%ということでございます。全体の数量としては七千トン供給が需要に不足するという数量でございます。このうち飲用にどれだけ回るかということについては、需要は三百五十四万七千トン、五・六%の伸び率でございます。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いているのじゃないんだ。どういう算式で百五十八万トンが算定されたかということを聞いている。
  82. 杉山克己

    杉山政府委員 いま申し上げている過程の中で出てまいった……
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いているのじゃない。どういうわけで百五十八万トンになったかということを聞いている。
  84. 杉山克己

    杉山政府委員 乳製品の全体の合計が百九十五万八千トンという需要を見込んで、その中でその他乳製品が三十七万一千トン、これを差し引いたものが百五十八万トンということで特定乳製品の需要をはじいたわけでございます。この特定乳製品の需要の数量は伸び率を二・六%と見ているわけでございます。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いているのじゃない。数字を聞いているのじゃない。
  86. 杉山克己

    杉山政府委員 百五十八万七千トン、これを供給ベースで百五十八万トン、伸び率で一・九%の生産で供給できるということで百五十八万トンの数量が定められたのでございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 時間の関係でこちらから言いますから、間違っていれば間違っておるとか、そのとおりであればそのとおりと答えてください。  限度数量の算式は、まず推定生乳生産量、これが五百六十万九千トンで、算式のQですね。これからまず推定飲用向け生乳供給量、これはS1、三百五十四万七千トンを引く。次に推定その他乳製品向け生乳供給量の恥、これは特定乳製品以外の原料に供給する生乳で、三十七万一千トン、これも控除する。それから推定自家消費向け生乳量のS3が十一万一千トン。S1、S2、S3の三つの量をQの五百六十万九千トンから控除すると、残りは百五十八万トンしか残らないのですよ。だから、結局最後に残った数量を特定乳製品の原料乳ということで、法律上はこれは限度数量ということになっておるわけです。だから、残った分が限度数量ですから、米の買い入れ限度数量のように、ことしはこれだけしか国民が必要としないのでまず最初にその額を決めるというものと違うのです。いろいろ引いた残りがこれだけしかないのですから、たとえば二百万トン残ればこれはやはり限度数量ということになるのですよ、現行制度に基づく限度数量の算式ということになれば。だから、この限度数量に関する限り、予定よりも生産伸びたとか需要が伸びなかったというようなことは関係がないのです。それを、実態がわからないのであればまだ許すべき点があるが、承知の上でいろいろ理由をつけてこれから逃れようったって、これは農林省がつくった枠ですから、去年の三月末にさかのぼってこの算式を変えるというのであればまた別だが、それはできないでしょう。五十三年度はどうするかということは別にして、いかに農林省でもペナルティー通達みたいなわけにはいかぬですから、これは逃れようがないのですよ。  結局、それじゃ年当初の見通しあるいは限度数量を——不足した年もあるわけですね。これは三百六十五日前の見込みだからあり得るわけですよ。だから、この推定の算式から見ると、二十万トン残りが多くなったわけだから、これは年度末になって知事が認定して出してくるという場合にこの限度数量にぶち込む以外に方法はないのじゃないですか。将来の扱いはきょうは論ずる考えもないが、とにかくもう経過した五十二年の分については、やはり政府として、農林省として責任を明らかにして対処するというのが当然だと思うのです。これは役人の務めだと思うのですよ。今井政務次官局長考え方が同じですか。
  88. 杉山克己

    杉山政府委員 事務的なことを先にお答えさせていただきます。  先生の御質問意味、よくわかりました。算式自体は確かにそういう形で決まっておるわけでございます。その意味で、今日結果的に見れば供給が見込みを上回ったという事実がある。その場合、その算式自体をさかのぼって変えるかといえば、それは私は算式は変えられないと思います。それは事実として定まっている算式でございます。ただ、その算式に基づいて新しい数値でもって限度数量を算定するかということになりますと、これは昨年の場合も限度数量外の措置をしたというようなこともありますように、その算式そのものが機械的に絶対的なものとして限度数量を拘束しているというふうには考えないわけでございます。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 そんなことを聞いているんじゃない。よけいなことを言う必要はない、それを聞いていないんだから。
  90. 杉山克己

    杉山政府委員 それでは、算式をさかのぼって改定するということはないというふうにお答えするにとどめます。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 その場合、どうしても認定の報告が出るでしょう。きょう出荷された生乳も、これは乳業工場に運んでいるわけだから、搬入すればこれがバターとか粉乳にどんどん製造されるわけで、その限度数量を超えた二十万トンというものを保留してどこかへ保管しておるんじゃないのですよ。日々処理されておるわけです。それを当該県の知事が四半期ごとに認定をして報告をしているわけです。特定乳製品の原料乳としてこれはいやでもおうでも認定して報告されるわけだから、この二十万トンに対しては当然の交付金がいつ支給されるかという問題が結局残るのですよ。それはもう限度を超えたからだめなんですと言うことはできないのですよ。どこかへ二十万トンちゃんと保管しておいて、じゃこれはどうやったらいいだろうということを決めてから処分先を決めるのなら話はわかるけれども、もう全部方針どおりこれは処理されてしまっておるわけだから、それについて責任がないとか、勝手によけい生産したんだから構わぬなんというわけにはいかないでしょう。先日からそれを聞いているんですよ、これを一体どうする考えでいるのかと。
  92. 今井勇

    今井政府委員 この法律に基づきます限度数量の算出の方法につきましては、先生のおっしゃるとおりでございます。  十一条の本文を読んでまいりますと、認定をした数量が農林大臣が決めました百五十八万トンを超える場合には、その百五十八万トンの限度において交付金をしなさいというふうに書いてあると私は思います。したがいまして、政府がいわゆる不足払いをいたします限度数量につきましては百五十八万トンでございます。しかしながら、やはり先生のおっしゃいますように、現実にそれだけの加工原料乳ができておるわけでございますから、それについて何らかの措置を講じなければならない。その方法については、先生御案内のとおり、十一条の七項でございましたか、数量そのものを決める方法がございます。これについては大臣が、従来の経緯もこれあり、この数量をいまのところ変えるつもりはありませんというふうに御返答を申し上げたわけでございまして、したがって、残る道は、何らかの形で農民諸君の生産されましたものについてこれを処理をせざるを得ないわけでございます。  そこで、いま政府が非常に苦悩をしておりますのは、るる局長が申し上げますように、ことしの生産の数量のそごが、一時的なものであるのか、また恒久的なものであるのか等々についての分析を急いでおりまして、しかもまた、この問題は審議会先生方の御意見も聞かなければなりませんということで、英知を集めて、ひとつ生産者団体の熱烈な御要望にも何らかの形でお報いをしたいというふうな気持ちで、いま政府としても一生懸命検討をいたしておるところでございまして、そこらあたりの事情もひとつ御勘案を賜りたい、このように思います。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 今井さんの答弁は少しわかりましたよ。これはもう払う気がないと言ったわけじゃないのでしょう。ただ、十一条第八項に基づいて限度数量の改定をやって、それに対して補給金を払うという方法は、いまのところ政府としてはとる考えはない。しかし、畜産審議会の委員諸公の意見等も十分聞いて、何らかの方法で処理したいと苦慮しておる、そういうことですね。あきらめたわけじゃないのでしょう。
  94. 今井勇

    今井政府委員 あきらめておるならば、政府としてもそう苦労をしないわけでございまして、先生方のいまの衆議院における議論も踏まえまして、どういうふうにしたものかということで、いま苦悩をしておるというのが実情でございます。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 これはあきらめれば、少なくとも畜産局長の首ぐらいは飛びますよ。問題は、約二十万トン近く余分なものが全部工場へ出荷しておるわけだから。超過したものを無償で乳業会社に供給しろということになっていないでしょう。これが、限度数量との関係もありますけれども、特定乳製品の原料乳というのは、政府が決めた基準取引価格で、会社に対して指定生乳団体が供給しているわけですから、これは非常に安いのですよ、キロ当たり六十四円で供給しておるわけですからね。そのかわり二十四円五十八銭という補給金が別に出る。どうして会社に安く供給するかというと、安い原料で安定的に特定乳製品を製造して、そして国民に供給しなさいという意味で補給金というのは出ておるわけです。生産者にとっては、法律の冒頭で生産者の保証価格というものはちゃんと決めてあるわけだから、生産者の生乳生産の諸経費を計上して、そうして生乳の再生産が確保される価格でなければならぬということが法律で約束されて、それが現行の八十八円八十七銭のキロ当たり保証乳価ということになっておるわけだから、だからこれは構わぬとかあきらめたとかいうことになると、それでは超過した分の乳代というものは、会社はいままでどおり六十四円だけ払えばいいのかという問題が一つ出てくるわけですね。生産者に対しては、その価格でしか生産ができないということになれば、それでは保証乳価に対する国の法律上の保証措置というのは一体どうして放棄したかということになるのですよ。あるいはそうでなくて、会社に対しては、限度数量内の分しか安い乳は供給できない、残りの搬入した分については、これは政府の負担分もかわって八十八円八十七銭会社が支払いなさい、こういう積極的な指導をして、生産者には迷惑をかけないという、そういう考えもあるのですか、その検討の中には。六十四円二十九銭で生産者にあきらめさせるようにするか、あるいは会社に対して保証乳価満額を出せるようにするかですね。あとは従来やったような助成勘定から補給金の金額あるいはまた乳質改善の一円七十五銭を合算したものをちゃんと支出するようにするか、こういうことになると思うのですよ。大体どの方法でやりたいぐらいのことは固まっているのじゃないですか。
  96. 杉山克己

    杉山政府委員 事務的な検討はいろいろございますが、この段階でもって確定的なことを申し上げるのは、実は農林省だけで決めている話でもございませんし、それから審議会での御議論もこれからあるわけでございます。事務的な意見が全くないとは申せませんけれども、そこを詳細申し上げることはひとつお許し願いたいと思います。  ただ、御質問の過程を通じて、これは理屈あるいは需給云々とは別に、それ自身はそれ自身として検討が必要でございましょうが、この問題は、現実にそれだけ出ているもの、しかも農民が強いそういう期待を持っているもの、これを放置しておくわけにはいかないではないか、それに対して何らかの措置を考えろという御議論は、私どもとしても十分承知しているつもりでございます。抽象的な答弁で申しわけございませんが、いまの段階ではこの程度でお許し願いたいと思います。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 政務次官にも言っておきますけれども、私の言っているのは、このような事態になっておるのを、生産者に対して恩恵的に何とかしろと言っているのじゃないですよ。当然法律の規定に基づいて、行政府の責任において速やかにこれは方針を立てて善処すべきである。それが昨年に比べても非常に遅延しておるわけですね。だから、それはまことに遺憾なことであるので、熱意をもってちゃんと解決する意思があるかどうか、これが先決なんですよ。その考えがあれば、それは年度内にやるのか、あるいは年度を越えて四月になってから、正式な認定数量が出てきてから、それからちゃんと補給金あるいは助成金で出すかとか、何も無理なことを言っているわけじゃないのですよ。私の言うことは間違っていますか。間違っておればこの席で指摘してもらいたいと思うのですよ。
  98. 今井勇

    今井政府委員 くどいようでございますが、限度数量の問題につきましては、十一条の本文にありますとおり、認定をされたものと政府の決めました数量との差がある場合には、政府の決めました限度数量を限度として補給金を出すのだと書いてあるわけでございます。しかしながら、先生がおっしゃいますように、農民諸君の努力もこれありで、二十万トン余のものが現実に加工原料乳として出てくるわけでございますから、これについて考慮を払わなければならぬというのは、やはり政府の責任の一つでもあろうと思うわけであります。したがって、その問題についてどういうふうにこれをやるか、ひとつ積極的、と申しますより、誠心誠意この処理に当たりたいというのが現在の政府考え方でございます。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 くどいようですが、先日も私、大臣にも言いましたが、米の減反政策と混同して考えているのじゃないですか。  米の場合は、限度数量については、われわれは昭和四十六年の当時に、食管法に付随した政令改正だけで食管法を空洞化することを指摘して、強力に議論したわけですが、とにかく曲がりなりにも政府に売り渡すべき米穀に関する政令というのがあって、これによって毎年、米の生産者に対して都道府県知事から市町村長を通じて買い入れ限度数量の事前割り当てをやっておるのですよ。いい方法じゃないが、これはやはり約束事ですから、耕作開始前に、ことしは政府としてこれだけの米を必要とします。この必要量の範囲内で町村あるいは個人の生産者に対して、これだけの米を生産して政府に売り渡してください、この分については、直接買い入れでなくて農協等を通じて自主流通米として政府も協力するので販売するようにしてください。これは一種の約束ですからね。  今回の場合、約束がないでしょう。限度数量百五十八万トンというのは告示されているが、これ以上の数量というものは補給金の対象にしませんよ、超えた場合には、これを飲用に政府がしますとか、あるいは特定乳製品以外の原料に適正に向けますとか、そういう事前の約束をちゃんと行って、生産者も納得して五十二年の生産開始ということになった結果がこうなったというのであれば、これは議論の余地があるが、何にも約束してないでしょう。超過した場合はどうしなさいとも何も言ってないでしょう。法律上は、その場合には大臣審議会の意見を聞いて改定することができるという道がちゃんと開かれておるわけですから、政務次官がしばしば、審議会の意見も聞いてということであれば、それじゃこの問題については今後の審議会で、酪農部会は二十九日ですが、そのときに農林大臣として二十万トンの限度超過分に対してはどうしたらいいですかという意見を正式に求めるのですか。求めるか求めないかという問題と、審議会からそういう意見が出て、部会の決議というものが審議会総会の決議と同様であるということが審議会令にも書いてあるわけですから、審議会自身が決議を行って、その場合には答申でありませんけれども政府に対して建議とか意見を強力に行って、この分については改定してやるべきであるとか、あるいは助成勘定から出すべきである——こっちから能動的にやるか、審議会が言い出した場合に対応するか、それを期待しているのですか。もうぎりぎりですよ、二十九日だから。
  100. 今井勇

    今井政府委員 言葉足らずでございましたが、諮問をするとかいう筋合いのものではございません。審議会では今後の酪農あるいはまた畜産全般についての貴重な御意見を賜るわけでございますから、そういうふうな意味を申し上げたわけでございます。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 きょうはこの程度にしておきましょう。しかし、これは逃げ切るわけにいかぬですよ、いつまでたったって。四月一日以降になったからもう安心だというわけにいかぬですよ。いつまでたったって、二十万トンも生乳を農協が、単協それから指定集乳団体の連合会が集めて、もう会社に預けちゃったわけですよ。供給したわけだから、この事実というのはどこまでも残るわけですからね。責任不履行などということで逃げるわけにはいかない。それだけは覚悟して、しかし、できるだけ年度内にこれはやった方がいいと思うのですよ。たまたま来週二十七日にも当委員会の小委員会を開くことにきょう決めましたから、そのときまでに方針が決まれば、そこでまた報告をしてもらう。その後ということになれば、酪農部会の日、二十九日に委員長委員会を招集することになっているから、それが一番ぎりぎりの時期だと思いますけれどもね。  次に、新しい五十三年度の決定に当たっての重要な点だけ二、三申しておきたいと思います。  一つは、加工原料乳の保証価格を決める場合、一頭当たりの年間の生産費を計上してそれを百キロ当たりの価格あるいは一キロ当たりの価格に最後には計算をするわけですが、一頭当たりの生産費を年間の生乳数量で除して、つまり割って、そしてできた答えが百キロ当たりあるいは一キロ当たり幾らということになるわけですね。その場合、従来農林省のやっているのは、分母になる生乳の数量は、乳脂肪率が三・二%を基準にして、それを超えたものは三・二%に換算をしておるんですよ。ことしは大体北海道だけが法律で言うところの主要加工原料乳の生産地域となると思いますが、ならぬのであれば後また言ってもらえばいいですが、北海道の場合は、この資料によりますと、これは統計情報部、まだ三月の速報は出ていませんが、たとえば五十二年の一‐十二月ということになれば、北海道の生産量合計が百七十七万四千八百八十トンということになっております。これの平均の乳脂肪率は三・四四%ということになると、三・二%との差は〇・二四ということになるんですね、脂肪差というのは。その差額がちょうど七・五%になるんですよ、算術計算でやると。農林省において、そういう方式でなければどういう換算表を使ってやっているということを示してもらえばいいんですが、七・五%だけ実際の搾乳量よりも換算乳量の方がどうしてもふえるわけですね。ふえるということは、価格を計算する場合の分母がそれだけ大きくなるわけだから、そうすると答えは小さくなるわけですね。そういう計算方式を毎年毎年続けるべきかどうかということをこの際検討すべきだと思うのですよ。昨年の生産費、もう時間の関係で余り詳しく教えるわけにいかぬですけれども、去年の政府試算は第二次生産費までをとると八千三百二十八円ということになっておるわけです。これは百キロ当たりの生産費ですね。これは三・二%に換算した数量なわけです。換算しない実乳量で計算すると、ちょうど一キロにして三・二に薄めるわけだから、結局水を入れるか、脱脂乳でも入れているのです。それだけ量をふやすから答えが安くなるんだけれども、これが一キロ当たりにするとおおよそ七円五十銭違うのですよ。分母を水で薄めてふやして答えを出す場合と、実際に搾乳した実乳量だけでやる場合と、それだけ違うわけです。計算の方式によって、一キロ当たり七円の差が、毎年毎年三百六十五日出るということは、やはり生産者にとっては大きな損害なわけですね。  そこで、どうして三・二%というものを採用しているのかというと、これは市乳、飲用向けの牛乳の場合には、厚生省の省令によって、乳脂肪率三・二%というのが基準になっておるわけです。だから従来は、乳業会社は三・四なら三・四というものを三・二に薄めても構わないわけですよ。往々にして、水よりはましですけれども、脱脂乳を実際の乳に混入して薄めるわけですね。そうして処理して市乳として販売する。三・二というのはそこから出ているのですね。加工原料乳に使う場合は、何も三・二に薄める必要はないのですよ、そこからバターをとるとか脱脂乳をとるということをやるわけだから。わざわざ水で薄めて数量をふやして答えを小さくしなければならぬということは、どの点から考えてもそういう必要性というものはないのですよ。低乳価を実現する以外にこれは採用する必要のないところですからね。  ことしは農林省としても、実際に生産された搾乳量、これの一頭当たりの年間平均乳量を分母にして正確な答えを出すべきだと思うのです。会社の方は、三・二%を超えた分については、〇一%当たりわずか一円しか加算してないのですね。それが五年も六年も続いているのですよ。三・四四では、〇・二四%脂肪が多くても、これは〇・一%で一円だから二円四十銭しか合算されないのですね。水増しして割った場合も、搾乳そのままで持ってきても、脂肪分というのは変わりはないのです。これは一円なら一円というものは合算されるのが当然なわけです。三・四四%の場合、正式にやれば、水増しをしない場合はキロ当たり七円五十銭値段が高くなる。それに脂肪の多い分の二円四十銭を足せば九円九十銭、農家の手取り価格というものはふえるわけですよ。こういう計算の根拠というのは、生産費の場合、農林省の統計情報部は、毎年毎年何のためにやっているのかわからないのですよ。実乳量は幾らということを統計上明らかにして、そのわきに三・二%換算で幾らという、必要のない数字をわざわざ公表するでしょう。畜産局は得たりと、その方の換算数量を使って、いかにもこれがあたりまえだ、何が文句あるかというようなことで、これを使っておるわけですね。  とにかく農林省としても、値段が上がる余地はないとか、下がりますよとか、もう来年から余り生産してもらっても困る、米並みに生産数量を抑えますとか、盛んにおどかしているでしょう。その前に、正すべきものはちゃんと正すということでやるべきだと思うのですね。皆さん、座って聞いているからわかるだろうけれども、これが一つです。  その次は、北海道が対象ということになれば、えさですね。飼料費の内容というものは非常に変わってくるのですよ。恐らく統計情報部の部長も来ておると思いますが、北海道の飼料の割合は、自給とそれから購入の区分は、恐らく自給が六〇%を上回っておるのじゃないかと思うのですよ。この自給の大部分は粗飼料ということになるわけです。そうなると、えさ代の自給飼料あるいは粗飼料の適正な評価というのは、非常に価格を左右する大きな要因になるわけです。この自給飼料については、自給飼料作物生産に対する別の費用価計算でやっておるわけだから、購入飼料とは、同じ単位で計算すると全然価格が違うわけですからね。だから、たとえば統計の資料を見ても、北海道における牧草のオーチャードとかチモシーを収穫して、乾燥して、ちゃんと畜舎に収納するまでの経費が、乾牧草一キロ当たり約十五円ないし十六円ということになっておるのですね。ところが、これが同じ地域で販売された場合、生産者という立場で牧草を販売する、それから畜産農家がこれを購入するという価格は、一キロについて大体三十円ないし四十円になっておるわけです。そうすると、本来は購入しても自給であっても、飼料の価値に変わりはないわけですから、費用価計算だけによるところの半分ぐらいの額の低い飼料費を、そのまま加工原料乳やあるいは畜肉の生産費に計上するということは、非常に問題があるわけですよ。特に二十二日、飼料部会を開いたわけでしょう。その答申とかあるいは畜産局長説明の中にも、今後もできるだけ自給飼料の拡大を図る、あるいは米の転作関係についても飼料化の方向施策を講ずるということを言っておるわけですね。そういうことになれば、水田地帯で生産された牧草とか飼料、これはやはり経済価値を与えて販売するとか何かしなければ収益にならぬですから、こういう点についても、家畜の飼料としての自給飼料価格評価というものは、この際やはり根本的に理論づけをしてやる必要があるのではないか。私の以前から言っているのは、これは可消化養分総量、TDN方式によって、飼料の需給計画や何かも全部可消化養分に換算した場合は幾らというのが載っているわけだから、そういう計算のできる能力が農林省にあるわけだから、それを使って飼料費の計上というものはきちっとやる必要がある、そういうふうにできるだけ統一したものにしろということなんです。  その他、先般も言いましたが、北海道ということになれば、専業酪農家の固定化負債が非常に多額なわけです。去年も乳価を上げるかわりに、負債整理等についても経済局として相当な配慮をしたことは私も承知しておりますが、この借りかえ等だけで減るものではないのですね。だから、焦げついた酪農家の多額のもの、全道平均、一戸当たり千四百万以上ですからね。そういうものも、専業酪農家の場合には、生乳の生産とかあるいは畜肉の販売の中から元金を払うとか利子を払うということ以外に返済の道がないわけですから、生産費を計算する場合には、やはり実態を把握してきちっとやる必要があると思うのですよ。  最後になりますが、自家労働の計算にしても、自給飼料だけは別途の賃金評価をしているわけですから、これが畜肉とか生乳の生産手段の一環であるということになれば、その枠内において農家の投入した自家労働というものは、同二方式によって労賃を計上するのが当然だと思うのです。金額にしてわずか何十銭とか一円幾らとか、そういうことにこだわって一銭でも安くすればいいということは、農林省の役人である以上はとるべき姿勢じゃないと思うのです。  まだいろいろありますけれども、ちょうど予定の二時半ですから、きょうはこの程度にいたしますが、実効が上がらぬ場合はまた次回に質問をするし、答弁の足りぬところは後で資料で提出してもらいたいのです。  いま私の挙げた重要な諸点等について、畜産局長からあるいは関係局長から率直な答弁をしてもらいたい。
  102. 杉山克己

    杉山政府委員 ここで御答弁申し上げる必要がございますでしょうか、いまの項目全部について。(芳賀委員「いいですよ。わかっている点について」と呼ぶ)  乳脂率の問題については、確かに最近一般的に向上してまいって、三・二%を上回る実情にございます。ただ、中には三・二%を下回る生産者もあるわけで、国としては標準的なものでもって物をつかまえる、それで収量を見るということにならざるを得ない。その場合に、取引上の慣行として三・二%というものが支配的に行われているわけでございますし、厚生省でもそのように基準を定めていることもあって、三・二%で収量を計算するということにいたしておるわけでございます。これが水増しをしているのじゃないかというような御意見でございますが、議論にわたるところはまた後日もう少し詳しく御説明できるかもしれませんが、私どもとしては標準的なものとして三・二%を採用しているということを申し上げたいと思います。  自給飼料の問題につきましては、投下費用でもってその生産費を算定するというのがルールになっておるわけでございます。もちろん購入飼料より価格が低いのでございますが、購入飼料の場合は流通経費、運搬経費あるいはマージン、そういったものが含まれることもありまして、同一に評価するということはなかなかむずかしいのではないかと思っております。実際問題といたしまして、飼料の種類も多種多様でございますし、五十種類以上にも上るものについての流通経費をどう算定するかというような問題もございまして、技術的にもここはなかなかむずかしいという問題があるわけでございます。  資金の問題につきましては、特に酪農はほかの一般の農業に比べて固定負債の額が大きいということ、しかも北海道が中でも大きいということはよく承知いたしております。私どもが見た限りでも、北海道以外の都府県に比べて、北海道の酪農農家の借入金の額はおおむね三倍程度の大型な負債になっております。しかも、農協の一般資金に相当転嫁して借りかえているもの、焦げついているものがかなりあると承知しております。  そこで、実は昨年の乳価決定の際に、経営改善資金として五分資金を畜産振興事業団の方から措置をしたわけでございます。北海道につきましてはこの措置によってかなりな固定負債部分が五分資金に肩がわりできたというふうに見ておるわけでございます。  それから、自家労賃の問題につきましては、その地域におきます農村雇用労賃を平均的な労賃としてとっておりまして、飼育管理につきましても違う計算をしているではないかという問題がございますが、これは何も無理に価格を抑えつけるということではなくて、やはり労働の質なり従来の経緯ということもあって、飼育管理労働については別段の扱いをしているということでございます。  大変はしょった答弁になって申しわけございませんが、いずれまたきちんと、もう少し丁寧に、時間のあるときに御答弁させていただきたいと思います。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの答弁は当を得ていない点があるので、これは資料にして出してもらいたい。特に三・二の問題については、毎年加工原料乳の大臣告示があるでしょう。告示の末尾に注の一として、加工原料乳あるいは基準取引による生乳は、乳脂肪率三・二%と定めるということが書いてあるのです。これが基準だということを毎年毎年農林省は響いておりますね。しかし、水で薄めて取引数量にしなさいということは何も書いてないでしょう。実際は搾乳したままで持っていくわけだからね。会社は脂肪率の多い分については〇・一%で一円は合算して支払うが、政府は何もやってないでしょう。三・四%だって、では、交付金を三・二に換算して、その分だけよけい一円とか二円増額して交付するかといえば、やってないでしょう。やるのだからどうしろと言うならまだ話はわかるのですよ。これは乳脂肪率が〇・一%を超えるごとに何円会社は乳代を支払えとか、あるいは交付金の増額をするならするとか、もう少し親切にやればいいのじゃないですか。農家に水増しをして持ってこいと言うなら話はわかる、それも金になるわけだから。そうじゃないのでしょう。低乳価を導き出すためだけに数量をふやして、あとは何も使ってないわけだからね。  そういう問題もあるし、自給飼料の関係とか負債の関係とか、それはもう局長答弁では、私もわからぬし、同僚委員諸君も何を言っておるのだかわからぬから、ちゃんと整理をして、資料として提出するようにしてもらいたいと思います。これは委員長からもそう言ってください。
  104. 片岡清一

    ○片岡委員長代理 わかりました。  武田一夫君。
  105. 武田一夫

    ○武田委員 畜産という産業は農業の中で特に大事な部分だ、飢饉、災害等いろいろな状況に置かれたときに、そうした窮地から国民を救う大事な産業だ、こういうふうにある学者は言われています。そういうことを考えますと、これは国の繁栄あるいは国民の生命を守るという観点から振興の面には力を入れていかなければならない非常に重要な産業だと思うわけですけれども、現在政府のとっている畜産振興の実態、今後の動向、特に五年あるいは十年先をどういうふうに見ているのか、そういうことからまず説明をしていただいて、政府の取り組みの姿勢を聞かしていただきたいと思います。
  106. 杉山克己

    杉山政府委員 五年先、十年先、全体として将来の展望を畜産についてどう見ているかということでございますが、いわゆる六十年見通し、「農産物の需要と生産長期見通し」というのがございます。これは六十年を目標として見通しを立てているわけでございますが、この数字でもって若干申し上げますと、牛乳、乳製品につきましては、四十七年を基準としているわけでございますが、四十七年の需要量五百七十一万九千トンが六十年には八百十四万二千トンにふえるというふうに見ております。これは伸び率で四二・四%、毎年毎年の増加率は二・八%でございます。それから、肉類では牛肉豚肉、鶏、それぞれあるわけでございますが、全体を合計で申し上げますというと、四十七年の二百十四万七千トン、これに対して六十年は三百十九万三千トン、伸び率は約五割、四八・七%ということになっております。毎年毎年の増加率は三・一%。それから、鶏卵につきましては、四十七年の需要量は百八十四万八千トン、六十年の見通しが二百二十万六千トン、この伸び率は一九・四%でございます。毎年毎年の増加率は一・四%。もちろん毎年の増加率は平均しての話でございまして、この間におきます各年の出入りはあるわけでございます。  こういったような需要量見通しに対して、生産量は、物によって少しずつ差がございますが、できるだけ自給で賄うということで牛乳、乳製品の場合は、これは自給率で申し上げますが、四十七年の八六%を九四%まで上げるそれから・肉類については四十七年の八一%の自給率を八六%まで上げる。鶏卵については九八%の自給率を一〇〇%にするということにいたしております。  それから、いま申し上げましたような畜産物、これの基盤を支えるところの飼料の問題でございますが、飼料は相当量を外国からの輸入に依存せざるを得ませんが、その中でもできるだけ国内での自給を高めていく、そういう前提のもとに飼料についての見通しも立てておるわけでございます。飼料需要量の総量が四十七年は二千二十五万三千トン、これを六十年には二千九百八十七万八千トン、伸び率で四七・五%ということに見ておるわけでございます。年の平均しての増加率は三・〇%、この中で国内産のグラスでありますとか青刈りのトウモロコシでありますとか、そのほか粗飼料の自給率をできるだけ高めるということにいたしておるわけでございまして、四十七年の供給率が二三・四%、これを三一・〇%まで高めるということにいたしております。これに伴うといいますか、それを支える草地、これについては四十七年の面積が七十六万八千ヘクタールでございますが、これをほぼ倍の水準にした百四十六万九千ヘクタールまで造成するということにいたしております。  将来の展望として、六十年見通しで大体以上のような見通しを持っているわけでございます。
  107. 武田一夫

    ○武田委員 それにつきまして、いまのデータに沿った畜産農家の世帯の動向というのはどういうふうに見ているのか、また、それとあわせて所得一つの移行状況、要するにどのくらいの暮らしというものが考えられるかということは、畜産農家にとっては大事な問題ですが、その点はどう見ているわけですか。
  108. 杉山克己

    杉山政府委員 まず、畜産農家の数は毎年減少を続けておりまして、特に四十年代の後半は各畜種とも、これは牛、豚、鶏通じまして急速に減少しております。ただ、ここ一、二年はそのテンポは鈍化してまいっております。こういう過程の中で平均の飼養頭羽数、飼っておりますところの牛、豚、鶏のそれぞれの頭数は急激に増加を示しておるわけでございます。また、大規模経営も育ってまいりまして、酪農の十頭以上保有している農家、あるいは肉牛農家でも同様に十頭以上保有している農家といったものの階層のシェアは、一々数字は申し上げませんが、大分増加してまいっているわけでございます。  このような畜産農家の減少、特に中小規模層の農家の減少が著しかったわけでございますが、これはなぜかといえば、やはり土地の取得難、それから労働力不足といったようなこと、それから特に高度成長時代の兼業機会の増加というようなことから中小の畜産農家の数が減ってまいった、いわば階層分化という形が出てまいったのであろうかと考えております。  私どもとしましては、今後経営基盤の確立を図るための諸般の対策を実施して、できるだけ畜産農家の維持育成に今後とも努めてまいるという考え方でおるわけでございます。  それから、所得でございますが、所得は畜種によってかなり差はございます。ただ、最近の状況では、ごく一般的な傾向として、酪農が、先般来御議論がありますように、五十一年、五十二年の生産伸びた。単に絶対量としての生産水準が上がったというだけでなしに、その中で生産性の向上が顕著に見られます。頭数がふえたと同時に、一頭当たりの泌乳量、搾乳量が大幅に上昇しております。そのようなことからして経営は比較的好転してきている。過去ずっと苦労を続けてこられた酪農農家としては、いまは比較的いい環境のもとにあるのではないかと考えられます。  豚につきましては、一時価格の低落から、特に一昨年あたりは大分農家経営も混乱をしたというような状況がございますが、昨年いっぱいを通じまして、ことしにかけましてかなり価格も回復、安定をいたしてきております。経営としては比較的良好な状態。肉牛も、最近のいろいろ話題はございますし、特に最近におきましては子牛価格が若干下落傾向を見せているというようなことで、環境必ずしも十分によろしいというわけではございませんが、やや長期的に見て、かつての畜産危機を経験した時期からすればかなり立ち直りを見せているというような状況にあるわけでございます。  今後の問題につきましては、私、先ほど申し上げましたような畜産物全体としての需要の増が見込めるわけでございます。それに見合って経営規模なりあるいは生産性を上げていくということで、畜産農家のこれからは、もちろんそんなにすばらしい夢があるというふうにもなかなか申し上げがたいのでございますが、安定した経営が維持できるようになるのではないか。また、そういったことを支えるための農林省としての対策も十分講じてまいらなければいけないというふうに考えております。
  109. 武田一夫

    ○武田委員 いま畜産農家数がずんずん減少の傾向にある、これはやはり畜産農家というのは構造的な脆弱な基盤といいますか、構造的な弱い基盤というものが常につきまとっているのじゃないか。     〔片岡委員長代理退席委員長着席〕 四十八年以降、経済基盤変化の中で、畜産農家の階層分化というものは激しいものがあった、これは御承知のとおりだと思うのです。それで、こうした中小規模の経営をしている方々の安定的な発展と維持というのが大きな問題だと思います。国の方もそれはちゃんと心得ていろいろと手を打っていると思うのですが、こうした中小規模経営の安定的発展と維持のために、いま特に力を入れて、その効果が期待されるという事業はどんなものがいま国として考えられているか。
  110. 杉山克己

    杉山政府委員 階層分化の要因分析といいますか、なぜかということについて、先ほどの私の答弁では細かい分析までは申し上げなかったのでございますが、いま先生触れられましたように、畜産関係の労働というのは非常に苦労が多い、ほかの産業のようになかなか休みがとれないというようなこともあったりして労働力が確保しがたいというようなこともあるのかと存じます。最近はそのほかに環境問題、公害問題というようなこともありまして、なかなか畜産農家が育たないというような事情があるわけでございます。そういう中で階層分化が進む、それをそのまま放置しておいていいということはないわけでございまして、国としてはこれらの事情を踏まえまして、従来から講じてきたいろいろの施策がありますが、特に中小規模経営の維持育成を助長する、これをできるだけ大きなものに育てていくように手助けをするというようなことでは経営基盤の確立ということを考えておるわけでございます。  そのための具体的な事業としては、畜産団地の育成事業、酪農とか肉用牛及び養豚を五十二年から実施してまいっております。それから、特に五十三年度におきましては、新たに地域の実情に応じて畜種複合団地、牛だけなら牛だけということではなしに、馬はいま直接畜産の主要な畜種にはなっておらないのでこれは別にいたしまして、豚は豚、鶏は鶏といったような単独の畜種だけではなくて、それぞれの畜種を組み合わせた複合的な経営、そのための地域団地を造成していく、それらの対策の充実に努めるということにいたしております。  そのほか、特に公害問題に着目した畜産環境保全対策あるいは金融対策といったことについても必要な措置を講するということで対応してまいりたいと考えております。
  111. 武田一夫

    ○武田委員 一昨年ですか、酪農近代化基本方針というものを打ち出しましたね。あの内容、そしてこの意図するものはどういうものですか。
  112. 杉山克己

    杉山政府委員 酪農近代化方針は過去において三回出されているわけでございます。いま先生の御指摘になりましたのは、一番新しい第三次酪近というものであるかと存じますが、これは先ほど申し上げました六十年見通し、これと目標値を同じにおきまして、その間におきまして、地域別にどのような具体的な生産見通しを持つかということを基礎にいたしまして計画を設定いたしたものでございます。  現在、酪農につきましてもろもろの対策がとられ、あるいは需要なり生産の回顧、分析というようなことも行われておりますが、私どもとしては、いま申し上げましたこの第三次酪農近代化方針、これがそれの一番よりどころとなる、基礎となるものであるというふうに考えております。現在の実績といいますか、生産状況を見ますと、第三次酪農近代化方針をやや上回る良好なテンポで生産の増勢が続いているという状況にあるわけでございます。
  113. 武田一夫

    ○武田委員 さて、この加工原料乳保証価格あるいは豚肉牛肉の安定価格決定期を目前にしまして、生産農家の関心が非常に高まっているわけでありますけれども政府畜産振興に非常に力を入れている、大臣も、農業というのは足腰を強くしなければならないのだ、こういうことを言っているわけでありまして、足腰を強くするためにはやはり生産農家を守る、そうしたいろいろな施策、対策というものが十分になされなければならない、こういうふうに思うわけですけれども、こうした畜産農家が安心して生産に励める条件づくり、これはやはりあずかって国の力が大きいと思うわけでありますが、今回の価格決定に当たってはそうした配慮が十分になされているかどうか。どうもいろいろと巷間聞くところによりますと、そうした思いやりというのが欠けているのではないかということで非常な心配をしている。その点についての政府の現在までの取り組み、そして本当に生産農家を守るのだ、そういう姿勢が貫けるかどうか、その点について伺いたいと思います。
  114. 杉山克己

    杉山政府委員 それぞれの価格決定を行います畜産物につきましては、たとえば加工原料乳につきましては加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、あるいは牛肉豚肉につきましては畜産物価格安定法といったような根拠法規があるわけでございます。この法律に基づきまして適正な価格を決めてまいるということで、価格決定の基本的な考え方は法律の上にもうたわれているわけでございますが、生産事情それから需給事情その他の経済事情を考慮して定めるということになっておるわけでございます。これらの趣旨にのっとりまして適正に定めるということで目下作業をいたしておるところでございます。  ただ、先生指摘になりましたが、最近におきましては生産性がそれぞれかなり上がってきているということ、それから特に購入飼料、流通飼料価格が安定しているということなどがございまして、一般の観測でもなかなか価格は上げにくいのではないかということが言われておるわけでございます。そういう意味で、確かに私どもも環境は厳しいと思っておりますが、現在どのような結論になるかはデータを集めて検討している段階でございます。
  115. 武田一夫

    ○武田委員 東北、北海道、これはわが国畜産それから畜産物の供給基地として非常に重要な使命を帯びているわけでありまして、三全総などを見ても、そうしたことを明らかに国はうたっております。そういうような地域性、大事な供給源とも言うべき地域の方々が非常に不安に陥っているということは、これは許せないと思います。加工原料乳の生産地である東北、北海道は生産調整で非常に転作目標も高まったことも事実でありまして、米の減反によって失ったものは何によって埋めるか、これは非常に苦労している。昨今のこういう不景気の中では思うように仕事にも行けないという状況です。転作のマイナス分というのをカバーする作目を持たない農家が多いということは十分に政府も御存じであると思いますけれども、それをやはりカバーするだけの酪農畜産というものがあってしかるべきでないか、こういうふうに思うわけであります。そうした配慮を十分に考慮に入れた上で価格決定というものはしてもらえるものだと期待しておりますが、その点に対するお考えというか、決意というものをまず聞かしていただきたいと思います。
  116. 杉山克己

    杉山政府委員 価格それ自体につきましては、先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、生産事情なり需給事情その他経済条件を基礎にいたしまして、再生産の確保を旨として定めるということにいまなっているわけでございます。したがいまして、直接に直ちに米からの転換のことによる所得保障をその価格でもって手当てするというわけにはまいらないわけでございますが、価格といいますより、むしろ全体の畜産対策の中で生産対策を特に重点として米からの転換を受け入れるという形での対応が必要であろうかと考えております。その意味では、飼料作物は、転換先の農産物としては重要な麦だとか大豆と並ぶ農産物品目であると考えております。特に飼料の自給率を高めるという観点からも草地造成を重点に置いて公共事業等の実施を図ってまいっておるところでございますが、水田からの転換があることによって、さらに一層その草地の供給ということについてはこれはプラスになるというふうに考えております。
  117. 武田一夫

    ○武田委員 何か価格の問題については、あらゆるところで政府・自民党は、農業団体の要求どおりいくのは困難だといういろいろPRをしているようでありまして、えさが値下がりしたとかあるいはまた金利の引き下げ等々の要因を挙げているようでありますけれども、たとえばえさ代が安定している、あるいはまた粗飼料生産が豊作だった、こういうような条件はあるとしても、果たしてこれがそのまま続いていくかどうかという確固たる断定ができるものはないわけです。これはどうですか。そのままこの調子でいくという見通しを立てておるわけでしょうか。
  118. 杉山克己

    杉山政府委員 配合飼料、その原料となりますトウモロコシ、コウリャン、これにつきましては国際商品でございます。海外の需給事情に注意する必要があるわけでございますが、最近の生産事情を見ますと、アメリカは、トウモロコシについては昨年は史上最高の豊作となっております。そのほか飼料作物全体として史上最高の水準にあるというふうに考えられるわけでございます。それから、西ヨーロッパも比較的豊作の状況で推移しております。それから、大きく飼料需給に関係、影響を持つソ連が、一昨年よりはやや生産は落ちましたものの、ほぼ平年作並みの水準は維持できているというようなことで、全体としての飼料の一番ベースになるトウモロコシ、コウリャンといったものの供給事情は緩和傾向にあると思われます。  これからどうなるかということでございますが、アメリカでは過剰対策として一〇%の作付制限を行うということにいたしております。これらの影響もあるいは出てくるかとも考えられますが、一般の見通しとしては、直接、需給に大きく影響し、価格変動を急激にもたらすようなことはないだろうというふうに言われております。  それらの事情も考え、特に在庫が現在かなりあるというようなことも考え合わせますと、私どもといたしましてはなお当分、配合飼料価格は現在の安定した状態が続けられるものというふうに見ております。
  119. 武田一夫

    ○武田委員 いま局長から話があったように、国際的な事情によって左右されるのは日本配合飼料価格の宿命というか、そういうもののように思いますが、何かうわさによると、いま局長からも話があったように、生産調整を行うということで六月ごろにそれが出てくるのじゃないかということがちらっと流れているわけでありますが、そうした状況に対して農民の方々は非常に敏感ですから、これはまたやられるのじゃないかという非常な不安を持っております。その点どうでしょうか。
  120. 杉山克己

    杉山政府委員 ただいま申し上げましたように、基本的にはまだえさの価格は安定して続くというふうに私ども見ておりますが、ただ国際商品は確かにこわいところがございます。いつまでも本当に安定した価格が続くかということになりますと、先のことは余り楽観しない方がいいというふうにも思うわけでございます。さきの四十九年の経験にもかんがみまして、国としては、全体の安定的な供給確保を図るということの一環として備蓄も増強する、それからさらに価格が仮に上がるというようなことがあった場合、その場合は現実の流通している配合飼料価格には直接、極力影響を及ぼさないようにその価格調整をするため配合飼料価格安定基金というものを設けているわけでございます。これについては関係する業者がみずから行う通常補てんのための基金、それから国が一部財政負担をして行うところの特別補てんの基金があるわけでございます。これらに財源をかなり潤沢に用意してございますし、ここ当分、仮に上がるようなことがあったとしても、配合飼料価格の値上げに直接つながって、それが畜産農家に影響を及ぼすというようなことはまず避けられるような状況になっているのではないかと考えております。
  121. 武田一夫

    ○武田委員 その点について、とかくそういう問題が目の前にきたときに騒ぐ傾向がいままでいろいろありました、水産業においてもそうだし。ですから、こうした対策として事前に情報が早くキャッチできて、早く手が打てるような体制はとっているのじゃないか。ところが、とっていてもいざとなると、どうも目先にあらわれてきたときに大騒ぎをして、いつも後手後手というふうになる。ここにやはり農家の方々にとっては耐えがたい一つの政治に対する、国に対する不安というか、信頼できないというものもあるわけですが、こういう外国の問題、特に外交の問題については相手があることですし、そういうような関係の中できちっと事前にキャッチして対策を打てるような十分なそういう姿勢というものはありますか、その点どうでしょうか。
  122. 杉山克己

    杉山政府委員 飼料の輸入ソースの安定的確保ということになりますと、具体的にはアメリカがやはり最重点の相手になると考えられます。アメリカとの間では三年前にいわゆる安倍・バッツ書簡というのがございまして、基本的に必要な飼料の数量についてはアメリカ側も供給を約束といいますか、その責任を負うということ、また日本側もその購入については見通しを持って責任を持つということのお互いの誠意ある意見の交換がなされているわけでございます。そういうようなことを基本といたしまして安定的な取引関係を結ぶということに努力しているわけでございます。  ただ、確かに国際的な関係というのは相手方の事情によっていつどう変わるかわからないということもありまして、国内的にはそれほど大量のものでありませんから、全体の需給が逼迫したときにどの程度支えられるかという問題はありますが、できるだけ備蓄の増強も図るということにして、民間備蓄、政府備蓄、できるだけその充実に努めるということにいたしております。  それから、これもアメリカが大部分でありますのでそれほど量的に多くは期待できませんが、アメリカ以外の飼料供給国とも多元的な取引関係を結ぶ、それらの地域からの輸入もできるだけ安定的につなげるようにするということで努力をいたしているところでございます。  それから、そういう輸入せざるを得ないものについての安定確保の手だてをいろいろ講ずると同時に、むしろ大家畜、これは乳牛につきましても肉牛につきましても、牛については草あるいは青刈りトウモロコシといったような自給飼料の投与率を、国内で自給できるものによってできるだけこれを賄っていくという体制をとることが必要であろうと考えております。  そこで、現在はどちらかといえば国際的に飼料価格が安いものですから流通飼料に多く依存するような形でえさづけが行われておりますが、今後できるだけ自給飼料、粗飼料にこれを持っていくよう、傾斜をつけるよう行政としても指導してまいりたいと考えております。
  123. 武田一夫

    ○武田委員 生乳の過剰ということですけれども、これは政府は需要の伸びよりも生産増が大きいと言っているわけですけれども輸入を前提として判断しているのじゃないか。昨年の乳製品の輸入量というのは生乳換算で二百二十四万トン、こういうふうに言われている。これは無視できない量です。しかし、過剰というならこうした輸入規制というものによって削減する対策を講ずるのが、日本人として、農家としては当然それがまず先でないかと言うのは道理でしょう。そういう輸入畜産物の犠牲のもとでわれわれ日本畜産農家というのは、酪農家というのは苦しめられているのではないかという思いが先走っている。これはそのとおりだと思うのです。こういった点についてどう手を打って農家の方々に納得してもらえるか、この点は重大な問題だと思うのですが、どうでしょうか。
  124. 杉山克己

    杉山政府委員 酪農製品、乳製品の輸入につきましては、これを無秩序に野放ししているということはございませんでして、現在、政府の対策としてもかなりな規制を行っているところでございます。  内容的に輸入されるものを見てまいりますと、総量が二百万トンをやや超えるというようなことでいかにも多いように見えるのでございますが、これはなお実量でなくて生乳に換算した数量を申し上げております。二百万トンを超えるというようなことでかなり大きく見えるのでございますが、一つは、日本の国内では生産が全くできない、あるいはほとんどできない、あるいは品質的に使い物にならないというようなことでどうしても海外に依存せざるを得ない、こういったたぐいの商品がございます。乳糖とかカゼイン、それからチーズの大部分といったものがこれに当たるわけでございます。それから、特定の政策目的のため、これは学童に安価な栄養供給を果たす、あるいは畜産振興のためにえさを安く供給するというようなことから、そういう目的のために、特に安い外国の乳製品を輸入せざるを得ないもの、そのほかに食用の脱脂粉乳とかバター、これの輸入も行われるわけでありますが、これにつきましては、輸入の仕方を畜産振興事業団が一元的に管理するという形で規制を行っております。したがいまして、最近のような国内に牛乳あるいは乳製品が過剰気味でだぶついているという事態のもとにありましては、これらの輸入は行わないということで現在対処しておるわけでございます。
  125. 武田一夫

    ○武田委員 よく問題になるココア調製品等の擬装乳製品の輸入、これにつきましては、やはり成分の規格の基準の引き上げ、あるいはまた指定乳製品の事業団一元輸入の法規制に反しない、そういう措置をとるべきだということは、これは主張されておるわけですが、この点については、政府はそのとおりだ、そうしたいという意向でしょうか。
  126. 杉山克己

    杉山政府委員 ココア調製品につきましては、関税の分類上、ココアの含有割合は問わないということにされているわけでございます。これは確かにわが国の国内の畜産の立場からすると困るところでございますが、そういうことになっているところから、ココアを含む調製食料品の類、これは第十八類ということで分類されているわけでございます。第十八類の中で、ココア調製品、ココアを一〇%程度含むものが分類されておりまして、通常ココア一〇%に粉乳九〇%というものがココア調製品ということになっております。これらの関税分類につきましては、大蔵省の所掌にかかる事項でございますので、直接これをどうこうするというわけにもなかなかまいらないわけでございます。  また、もう一つは、このココア調製品、現実にはココアを一〇%程度含むものを分類しているわけでございますが、国際的な機関である関税協力理事会、それらの意見に基づいて作成されたものというふうにも承知しているわけでございます。  ただ、こういったココア調製品の類が無制限に入ってきていいかということになりますと、関税上の制約はともかくとして、私ども、やはりこれが無制限に入って日本の乳製品市場を荒らすというようなことがあっては、これは好ましくないというふうに考えております。  そこで、これの一番実需者団体である大口のチョコレート協会等に対しましては、その自主規制を求めまして、全体の枠について一定の限界を設けるというようなことで指導を行っているところでございます。
  127. 武田一夫

    ○武田委員 現在の生産過剰基調であるというのは、これはどうも非常に安易に輸入によって賄っているということから発生しているということは否定できないと思うのです。  政務次官にお尋ねしますが、畜産物輸入は国内生産で不足する量に限定する、その不足分を輸入するんだ、こういう原則というのをいつも政府としてはおっしゃっております。そして、あくまでも国内の自給度向上というものに努力する、こういうことをおっしゃっているわけでありますが、この点は、これは間違いなく今後も厳然と貫いていく、そういうお考えかどうか、まずその点ひとつ。
  128. 今井勇

    今井政府委員 局長から数量についての御答弁がございましたが、先生おっしゃるとおりでございまして、乳製品等につきましては、これは国内の足らざるところを補うということに厳然として方針が決まっております。したがいまして、あり余っているにもかかわらずこれを入れるなんということは毛頭考えておりませんし、また、あってしかるべきものでもない、そういうふうな法体系になっておりますことを申し上げておきたいと思います。
  129. 武田一夫

    ○武田委員 国内需給の実態というのを無視して牛肉等の輸入はしない、もちろん自由化などというのは考えていない、このことも間違いない、不退転の決意ですか。
  130. 今井勇

    今井政府委員 牛肉の話が出ましたが、牛肉は、先生御案内のとおり、国際的に見ますと、これはFAOの統計でもそのうち不足するであろうというふうなことが出ております。したがいまして、日本の国内で自給力を高めるということで、その足らざるところを補うという姿勢でまいりたいと思います。
  131. 武田一夫

    ○武田委員 最近、日本牛肉市場をめぐってアメリカ、オーストラリア等の関係者が相次いで来日しておりますが、何か日本牛肉市場にあわただしい動きが出ているようでございます。こうした一連の動きというのは国内の生産者に非常な不安を与えていることも事実でございますが、その点そうした不安はないと、こう生産者の方々に言えるでしょうか。その点どうですか。
  132. 杉山克己

    杉山政府委員 酪農品につきましてもそうでございますが、特に牛肉につきまして、オーストラリア、ニュージーランドあるいはアメリカ、そういった国々から日本の大量の輸入を要請する声が強まってきております。そのための交渉が再三再四行われている、その交渉の経緯が表に出ますと、実は私どもの十分な説明ができなかったというようなこともあったのかもしれませんが、若干誤解を招いて、日本の国内の牛肉生産者に不安をもたらしたというようなことがございます。ただ、私ども、先ほど政務次官からも答弁申し上げましたように、国内の自給を第一とし、足りないところを外国から入れるという基本的な考え方に立っているわけでございます。したがいまして、たとえばアメリカとの交渉におきまして、ホテル枠、高級牛肉三千トンというような枠を設定いたしましたが、これはまさに国際観光ホテルという特殊な分野だけの需要に限られるものでございまして、一般的な市場に流れてこの価格を乱すという性格のものではない、また、その程度の需要はホテルの中でこなしていけるというふうに考えているものでございます。  なお、これと別に、並行いたしまして、一般枠につきまして五十二年度の下期五千トン、それから五十三年度の上期は五千トン以上の枠を増枠するということを決めたわけでございます。このことが何か直接要りもしない牛肉あるいは国内需給上余分になる牛肉をアメリカなりよその圧力でもって入れたというふうに誤解を受けたのではないかと思いますが、この数量につきましては、むしろ輸入肉についての売り渡しを事業団が行ってまいりました結果、最近におきます在庫が著しく不足するようになった、その不足を補うため、ここ最近の需給を見て、その程度の枠は全体の需給には支障ないということで設定したものでございます。これらの事情を御理解いただければ、需給には影響を及ぼさず、また価格の面でもそれほど不利益をこうむるということはなかったものと思うわけでございますが、その過程におきまして若干騒ぎがあったというようなことは大変残念に思うわけでございます。  以上申し上げましたような趣旨は、私ども今後とも十分徹底を図って、皆さん方の御理解を得たいというふうに考えております。
  133. 武田一夫

    ○武田委員 政務次官に聞きますけれども、何かアメリカとオーストラリアが日本を市場としてなわ張り争いをするんじゃないか、日本というのは攻めれば折れる日本ということで、非常に攻めやすい相手だというようなことをいろいろなところで言っているようですが、そんなことは絶対にございませんね。
  134. 今井勇

    今井政府委員 ちょっと御質問の御趣旨がよく十分に理解できませんが、少なくともわが国は、畜産物輸入については、局長答弁しましたとおり、足らざるところを補うのでございまして、輸入につきまして特定の国を通してするというふうなことではございません。一定の枠の中でそれぞれの価格の競争をしていただいて、そして足らざるところを補っていこう、こういうことでございまして、そういう方針はいささかも変わっておりません。
  135. 武田一夫

    ○武田委員 次に質問を進めますが、昨年ですか、非常なブームとなって国会でも取り上げられました、輸入規制せよと行政責任が厳しく追及されたいわゆる生体家畜輸入というのが、また非常に量がふえているというようなことが言われておりまして、これもやはり国内の畜産農家には非常な心配の種のようです。五十年の千二百三十八頭が、五十一年には倍の二千三百六十六、五十二年には五千三百三十一というふうに何かふえているようでありまして、特に商社、スーパー、こういう連中がジャンボ機を使ってでも入れろというようなことも言っておりまして、輸入の拡大を見込んでいる、こういうようなことでありますが、こうした抜け穴的な輸入をそのまま放置しておいていいのかということが巷間話の中で出ております。農林省は、このまま放置して心配ないと考えているのかどうか、その点について。
  136. 杉山克己

    杉山政府委員 御指摘のように、生きた牛の輸入は最近増加を見せております。ただ、数量的に申しますと、昨年で年間五千頭程度でございます。これは肉に換算しますと千二百トン程度、いまの段階ではそれほど大きな数量とは思っておりません。  ただ、事柄の性格をどう理解するかということになりますと、実は生きた牛の輸入は四十六年以来自由化されております。そして、これに対してかなり高い関税でこの輸入を防ぐというか、国内にみだりに入らないようにという措置がとられているわけでございます。関税率は、成牛、親牛については一頭当たり七万五千円、それから子牛につきましては一頭当たり四万五千円ということになっております。ただ、この中に関税割り当て制度というのがございまして、農業者等が、具体的には団体ということになりますが、肥育のために入れるものについては無税という仕組みもあるわけでございます。現在入っておりますのは、無税のものはほとんどなくて、有税のものが五千頭程度ということでございます。  私どもの計算からいたしますと、これだけ高い、成牛の場合七万五千円の関税を払って、高い輸送費を払って、それから国内に入る前に検疫を必要としますが、この検疫にもかなりの経費が徴されるわけでございまして、それでなおかつ採算が合うというのは不思議なのでございますが、スーパー等では目玉商品あるいは品ぞろえといった観点から、必ずしも採算ばかりでなく、特殊な意図を持って輸入している向きもあるのかと思います。飛行機事故等のことによって、かえってそういう道もあるのかということで、入れたいという人が一部ふえてきたこともあるのかと思いますが、いまの状況では、私ども、そんなに心配するほどの大量の輸入が行われるというふうには見ておらないところでございます。
  137. 武田一夫

    ○武田委員 次の質問に移りますが、最近の農林省の統計情報でわかりますように、乳用雄肥育牛の一日当たりの家族労働報酬が前年度比五四・四%も下がっているとか、あるいは肥育豚でも六二・一%と大幅に下回っているというようなデータによって、農家の経営が依然として楽でないことを統計が示しているわけであります。こうした畜産農家の方々は、御承知のとおり、労働基準法でいえば全く違反行為をするような、年がら年じゅう働いていかなければならないという状況の中にありまして、こういうような方々の労働力は高く評価した上で畜産価格決定の要素として加味していかなければいけない、こう思うわけでありますが、この点について農林省としては適切な労働力評価はしているつもりか、農家の皆さん方が期待するような方向でそうした評価をしていると言えるか、お伺いしたいと思います。
  138. 杉山克己

    杉山政府委員 一般的に言いまして、農家の一日当たり家族労働報酬でございますが、水稲が一番ベースになりますが、五十一年の場合は、鶏卵は別でございますが、水稲に比べて畜産物はいずれもかなり上回っておるという状況はあったわけでございます。傾向的にこれがだんだん上昇してまいったということが言えるわけでございますが、五十二年につきましては、つい最近調査結果が出たわけでございますが、目下私どもその分析をいたしておりますけれども、いまの御指摘の点は素牛の価格が非常に高く生産調査上出たということのように聞いておりますが、この点については少し分析をしてまいりたいと考えております。
  139. 武田一夫

    ○武田委員 酪農振興というのは一時期の需給変化にとらわれてはならないと思う。すなわち、長期的な観点から価格を決める、これは大事なことだと思います。特に酪農は多額の資本が必要でありますし、しかも収益性が低いということを考えますと、やはりどうしても乳価引き上げ等で所得の確保を農家の皆さん方が期待するところでありますし、また、いま言った労働力の十分な評価がなされていないことを考えると、そうした配慮をした上で今後の畜産振興に力を入れていくのは当然のことだと思うわけであります。  その点につきまして、農家の生活を守り、日本畜産振興という面から私は政務次官に、今後こうした方々が安心して仕事に励める条件づくり、そのための努力を一層要望するわけですが、決意、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  140. 今井勇

    今井政府委員 畜産物全般につきましては政府としては六十年の見通しというのを持っておりまして、長期の目標としてそれを達成するという方針を堅持しているわけでございます。  毎年毎年の畜産物価格については、先生御案内のとおり、法の定めるところによりまして生産の事情、需給状況等を勘案して決めろと、こうあるわけでございます。しかし、私ども農林省の立場といたしましては、畜産振興という意味からいたしまして、生産農家の方々の事情を十分考えまして、しかも、そのときにやはり消費者というものもあるわけでございますので、両々考えて価格を決める方針で進んでおります。そのときに、今回のこのような国会における議論、また畜審におけるそれぞれの委員の議論を十分参酌をいたしまして、政府の責任において決めてまいりたい、このようなことを考えております。
  141. 武田一夫

    ○武田委員 いま消費者の話が出ましたが、非常に高い牛肉日本国民は食べているということで、いかにしてそれを安く提供し、食べてもらうかという努力はしなければならないわけであります。  そこで、コストを下げながら自給率を向上させる方向を考えていかなくてはならない。コストを下げるためには何が必要か。いろいろあるでしょうが、経営規模の拡大も必要でしょう、あるいは飼料価格の安定、そして自給率の向上ということも必要だと思います。こういうような点について、いま政府としまして、農林省としましてどのような対策を講じ、実行しているか、そういう実情を簡単にお話し願いたいと思います。
  142. 杉山克己

    杉山政府委員 いま先生自身が申されましたように、肉用牛の生産振興ということのためには生産コストのダウン、経営規模の拡大、こういったことにより肉用牛経常の安定を図るということが基本であると考えております。このための対策、措置といたしまして、私ども畜産局が食肉のために講じている行政すべてがそうだということになるのでございますが、項目的に申し上げますならば、第一に飼料対策、えさの対策でございます。これは国有林野の活用等による草地開発事業を積極的に推進する、さらに飼料作物生産利用の促進を図る、こういったことを通じまして飼料自給力の向上を図る。そういうことを一つの基本にしながら、国内的に安定供給を図るための備蓄の推進というようなことも進めてまいりたいと考えております。さらに、特に飼料価格という問題から言えば、配合飼料価格あるいは政府操作飼料価格、こういったものの安定によって畜産農家の経営安定に資したいというふうに考えているわけでございます。  それから二番目は、肉用牛団地の育成ということでございます。この団地育成事業につきまして、特に新たにほかの畜種、肉牛だけでなくて乳牛でありますとか豚でありますとか、そういうものを取り込んだ複合型の団地育成、これを推進するということを一つの重点として考えております。  それから三番目に、肉用子牛の需給価格の安定ということでございます。先ほど来御指摘がありますように、肉用子牛の価格が特に最近やや動揺しておるわけでございます。肉用子牛の価格安定事業につきましては、従来から政府としても力を入れて行ってまいったところでございますが、特に五十三年度におきましては保証基準価格を引き上げる、それから補てん率も引き上げる、対象頭数もふやすというようなことでその充実を図っているところでございます。  それから四番目には、肉用牛の導入ということでございます。肉用牛の経営規模拡大促進事業、こういったものを引き続き推進する、あるいは肉用牛の改良、導入するところの品種の改良を図るというようなことを講じてまいる。  これら一連の対策を通じて肉用牛の生産農家の経営安定を図ってまいりたいというふうに考えております。
  143. 武田一夫

    ○武田委員 いまの飼料の自給率の向上というところで話が出ました国有地の開放、国有林というのは何か利用を渋っているというような傾向があるのだ、そういうことを聞きますけれども、林地放牧促進事業の強化拡大をうたっているようですが、どうですか、それはうまく進んでおりますか。
  144. 杉山克己

    杉山政府委員 草地造成といいましてもなかなか適地が少ない。そういう観点からいたしますと、私ども畜産の立場からは森林原野の草地への転換開発ということを心がけているわけでございますが、その場合国有林というのが非常に大きな要素といいますか、ウエートを持ってまいるわけでございます。国有林につきましては国有林野の活用に関する法律というのがございますが、これに基づいて、昭和四十八年度同法の制定以来昭和五十一年度末までに国有林野の草地飼料畑関係への活用面積がかなり出ておりまして、二万八千八百ヘクタールということになっております。全体の活用面積のうち、畜産関係に向けられたものは、比率で言いますと、いまの面積は七六%ということになっております。そのほか、国有林野の畜産的利用としては、放牧共同林野として約二万七千九百ヘクタール、その利用が行われております。肉用牛経営にありましても、特に森林開発を伴わない飼料確保の方向として林地放牧、これを中心とした森林の畜産的利用が進められているところでございます。  ただ、こういったことをいろいろやってまいりましても、もっと活用したい、もっと草地造成を大幅に進めていくべきであり、そのための国有林活用がいまの程度では不十分であるという御意見がございます。過日の畜産振興審議会においても委員の方々からそういう御意見も出されまして、建議にもその趣旨のことがうたわれております。私ども、同じ農林省の中でもございます。林野庁にもお願いして、さらに積極的な国有林野の活用を実現してまいりたいというふうに考えております。
  145. 武田一夫

    ○武田委員 えさについては、価格の変動による経営の不安を解消してやるということが大事な要件です。そのためにやはり政府所管の飼料の拡大強化といいますか、これは考えていかなくてはならないし、考えるのが必然でありまして、またその配分の適正化ということは努力しなくてはいけません。  ところで、政府のそうした体制、備蓄体制等は万全であるかどうか、ちょっとお聞きしたいのですが。
  146. 杉山克己

    杉山政府委員 備蓄につきましては、配合飼料それから政府操作大麦飼料、ともに心がけているところでございますが、お尋ねの政府操作飼料につきましては、五十三年度末に三十八万トンまでに拡大するということにいたしております。  そのほか、供給の安定ということになりますと、数量的にいつでも供給できるものを相当程度余裕を持って予定するということのほかに、価格の問題があろうかと思います。価格の点につきましては、配合飼料の動向も考え合わせ、国際的な飼料価格の動向を織り込んで、先般大麦の売り渡し価格についても引き下げを行ったところでございます。
  147. 武田一夫

    ○武田委員 飼料の値段についてちょっとお尋ねしますけれども、これは一般の農家は大体農協を通じて購入しているようです。ところが、買っている皆さん方の中で、果たして適切な値段であるかどうかということに疑いを持っている方にぶつかるわけです。というのは、金のある人は直接大阪、東京から入ってくる業者から買っているというわけです。ところが、その農協から買った場合と直接買った場合ではかなりの開きがあるというので、話し合いの中で、われわれは農協で本当に適切な値段で買っているのかどうかということに疑問を抱くようになっているようです。たとえば、肉牛肥育用の飼料二十キロ入りが、あるところでは農協販売が千五十円、ところが業者から直接購入すると八百三十円である。二百二十円も高いとなると、一カ月五百俵使うとすると、月十万円もよけい金を払っている。現金を持っているのと借金しているのとの違いがあるというのはわかる。農協でも手数料とか利子とかというので取っているようですけれども、同じ飼料でこんなに差があっていいものか、われわれはどこかで余分な金を取られているのじゃないかという素朴な疑問を持っている。適正な値段というのはきちっと出していると思うのですが、こういうような疑問があっちこっちの話の中で出てくるというのはほっておけないと思うのですが、これはどうでしょうか。
  148. 杉山克己

    杉山政府委員 配合飼料価格につきましては、昨年の九月に全農の建て値で約五千円下げられております。一般の飼料メーカーもこれと同様の歩調をとっているわけでございます。それから、引き続いて本年の一月に約三千八百円引き下げております。この両者を合わせますと、引き上げ前に比べて約一五%の引き下げということになっております。  こういう価格水準からいたしますと、しかも、これはかなりコストを忠実に反映した建て値だということからいたしますと、末端で農家に直接売り渡される価格がそれほど競争余力があるというふうには私どもには思えないわけでございます。要するに身銭を切らなければそんなに安くは売れないはずだと思うわけでございます。ただ、現実価格形成は、やはり名業者間の競争関係が激しいとかなりコストを割ってでも売られるケースはあろうかと思いますが、経済問題でありますから、私、そういうことが仮にあるとしてもそう長続きするはずはないというように考えておりますし、いままでのところ、特別に乱売でもっておかしな状態になっておるというようには聞いておりません。今後そういう事態が目立つようなことがありましたら、それは適切な指導をするように考えてまいりたいと思います。
  149. 武田一夫

    ○武田委員 それはひとつ適切な指導を通して農家の皆さん方が心配ないような体制をお願いしたい、こう思います。  ところで、いま日本の生乳生産量は六百万トン時代を迎えておる、こう言われておりまして、牛乳というのは米に次ぐ国民食糧として発展してきているように思います。  そこで、今後の酪農の安定的成長を図り、酪農経営を改善していくために、その生産物である牛乳、乳製品の消費拡大を米同様真剣に考えていかなくてはいけない、こういうふうに思いますが、政府の消費拡大事業というのを具体的にお示し願いたいと思います。
  150. 杉山克己

    杉山政府委員 いま、特に五十二年の生産が需要を上回ったというようなことから、関係者の間では五十三年以降の需要拡大について真剣に努力しようという機運が高まってまいっております。私、これは大変結構なことだと思うわけでございます。まだ日本牛乳なり乳製品の需要は今後かなり伸びる可能性は持っていると考えておるからでございます。政府といたしましてもこの点については積極的にその方向努力するということで、事業団の金と合わせまして約二億五千万円の消費拡大運動のための助成補助をいたすということにいたしております。もとよりこれは金目でもってそのまま大きさというか、効果がはかられるものではなく、関係著聞の一致した協力、そういう機運をつくるということが最も大切であろうかと思っております。今後とも一層努力いたしたいと考えております。
  151. 武田一夫

    ○武田委員 その二億五千万の事業費で一般的消費宣伝をするとか、あるいは新技術の開発、宅配の拡大とかありますが、大体この三本の線がこの中で行われる仕事でしょうか。
  152. 杉山克己

    杉山政府委員 二億五千万円は補助の大きさでございまして、実際の事業費はその倍以上になると思います。関係者寄り寄り集まってこれから相談するところではございますが、いま先生指摘になりましたような項目も当然その中に含まれておると考えております。要は、一番効果のある具体的な事業、専門家の意見も聞いて、どういうことがあるかということでその展開を図っていくべきであると考えます。
  153. 武田一夫

    ○武田委員 その点については、英国ではミルク・マーケッティング・ボードによる消費拡大事業というのをやって、非常に効果が上がっている。国が挙げてこうした問題に対処しているというわけですが、こういうものを参考にしながら、やはり今後の消費拡大というものを実りあるものにしていく必要もあるのじゃないかと思いますが、それについてはどうお考えですか。
  154. 杉山克己

    杉山政府委員 私自身は、ミルクボード、イギリスの例についてはよく承知しておらないのでございますが、そういうものも参考にして、効果ある消費拡大の運動、事業を展開してまいる必要があると考えます。
  155. 武田一夫

    ○武田委員 中央酪農会議という社団法人でこういう本をちゃんと出していますから、よく読んで検討しながらひとつ消費拡大の一端に何かやったらいいのじゃないか、私も読んで非常に感銘した点がございますので、一言申し上げます。  ところで、時間も来ましたので、最後に、畜産振興事業団で調整金というものを取っておるわけですね。これは毎年どのくらい取っているのですか。
  156. 杉山克己

    杉山政府委員 年によって輸入の数量が大きく変動いたしますので、一概に申し上げられませんが、五十一年、五十二年いずれもかなり大きくて三百億を上回っております。むしろ五十二年は三百億をかなり上回って四百億に近いような調整金収入を上げるようにいまのところ見込まれております。
  157. 武田一夫

    ○武田委員 そのお金は一体どういう方面に使われておりますか。
  158. 杉山克己

    杉山政府委員 これは畜産生産振興あるいは流通の改善といった生産、消費の両面に使われているわけでございますが、主な事業といたしまして、畜産経営改善資金特別融通助成事業というのがございます。これは畜産農家の負債、特に固定負債、焦げつきになったものについてその対策を図るということで借りかえを行うものでございます。五分資金の融資を見るというようなことにいたしております。この事業は百十九億九千七百万円で、事業としてはこれが一番大きゅうございます。酪農、肉用牛、養豚等に分けまして総額約八百億についての融資を見る、そして末端金利を五%にするように利子補給をするという事業でございます。  それから、子牛の生産奨励事業でありますとか、乳用雄子牛の肉資源確保対策事業でありますとか、そのほかもろもろの肉牛を中心とする畜産対策に使っておるわけでございます。  それから、消費者対策として主なものとしては、牛肉の値下げルートの新設事業でありますとか、産直食肉販売店の設置実験事業でありますとか、消費者のお手元に牛肉を安くお届けする、できるだけ流通段階でのコスト節減を図るというような事業に対する助成を幾つか行っているわけでございます。
  159. 武田一夫

    ○武田委員 その中で、たとえばいま畜産農家の利子補給というような形でこのお金が使われているというわけですが、五十二年あるいは五十一年の例でどのくらい利子補給というものにこのお金が活用されているのですか。
  160. 杉山克己

    杉山政府委員 この利子補給はちょっと特殊な形をとっておりまして、毎年というよりは、五年間分について基金をつくって、それを前渡しする、そして五年間にわたって逐次償還していく、その問の利子の負担軽減の助成に充てる、五年たったときには使い切ってなくなってしまうということになっております。その総額は百十九億九千七百万円ということになっております。
  161. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、最後に一問、生乳の需給調整について伺いたいわけです。  農林省としてはこれはいろいろ考えていると思うのですが、一つは季節間の調整と地域間の調整というのが必要で、両方相まって調整をうまくやっていかなければいけない。特に地域間の調整について、いま各県ごとに指定生乳生産団体がありますけれども、これは需給調整の力というのは発揮してない。また、メーカーというのは商業ベースでしかやってないということになると、やはり地域間の調整というものに国がある程度介入してくる、これは必要じゃないか。ブロックあるいは地域ごとのそういう調整機能というものを国が力を入れていくことが大事であろうと私は思うのですが、その点に対しての当局のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  162. 杉山克己

    杉山政府委員 牛乳の流通については、確かに期間的、季節的に大きな波がございます。さらに、地域的にも波があるということで、特に今年度以降さらにそういう点が心配な事態が出てくるのではないかという問題もあるかと存じます。しかし、私どもとしましては、こういった調整はやはり当事者間でもってまず行うべきであると考えております。そういう調整は単に小さな地域で行っているだけでは十分な効果を果たし得ないということで、ある程度広い地域の需給調整を図ることが必要であろう。そのために五十一年度から、生産者、乳業者、これらの方々を構成員とする生乳広域需給調整協議会というものが持たれているわけでございます。その円滑な推進に資するよう、役所としても指導をしてまいってきているところでございます。  また、特に五十三年度におきましては、中央の生産者団体に対する委託事業といたしまして、生乳広域供給方式開発調査事業、名前はいかめしゅうございますが、要するにどうやったら一番うまくそういう季節的な、あるいは地域的な流通の混乱を防止できるだろうか、調整がうまくいくだろうかということを検討するための手法の開発、そのための予算を組むことといたしておるのでございます。
  163. 武田一夫

    ○武田委員 以上で終わります。  ありがとうございました。
  164. 中尾栄一

  165. 神田厚

    神田委員 私はさきの委員会においても御質問を申し上げましたが、主に基準糸価の価格決定に当たりまして、その点を中心に御質問を申し上げたいと思うのであります。     〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕  まず、基準糸価の価格の決め方でありますけれども、安定帯価格における基準糸価の取り扱いについて御質問をしていきたいと思うのでありますが、政府は五十二年度における繭の生産費については、家族労働の評価を従来の農業臨時日雇い賃金から農村雇用賃金に評価がえをしたことによりまして、前年に比べて約一四%引き上げたことになりました。しかし、一方基準糸価についてはわずかに八・二%の引き上げしがなかったわけであります。これは本年度における基準糸価の取り扱いを、従来の生産費イコール基準糸価という方式を、生産費の五%程度下の方に、一万三千百円ということでありますけれども基準糸価を置くという新しい方式をとったわけでありますね。  農林省は、新しい方式を採用した理由として、事業団による一元輸入の運用によって今後実勢糸価が安定下限に張りつくことはないとの考え方を当初持っていたようであります。しかしながら、昨年六月以降の糸価の推移を見ますと、一万三千百円の基準糸価を三回割る状況が続きまして、そのため、事業団によって国内生糸の買い入れ措置及び買い入れ枠の拡大措置が講じられ、糸価は長期にわたって低迷したのであります。  そこで、まず第一にお聞きしたいのは、価格低迷の原因、これは一体どこにあったのか。農林省といたしましては、その点については、価格が低迷した原因というものがどこにあったのかをまず第一にお聞きをしたいと思います。
  166. 小島和義

    ○小島説明員 生糸の価格の形成は、御承知のように、現在では中間安定帯の中で価格の安定を図っていく、こういう仕組みになっておるわけでありまして、そのときどきの需給の実勢を反映いたしまして安定帯の中で下の方に寄る場合もございますれば、ただいまのように比較的上の方に寄っておる、こういう事態もあるわけでございます。昨年の年当初におきまして、余り糸価の実勢が強くなかった事態にもかかわりませず、いま御指摘のように、基準糸価で前年対比千円ばかりの引き上げになったわけでございまして、そのときの糸価の実勢から見れば相当思い切った引き上げであった、こういうふうに私ども考えておるわけでございます。  ところが、需給の実勢は、一昨年あたりからそうでございますが、昨今の景気の沈滞を反映いたしまして、絹の末端需要というのは非常に停滞気味に推移をいたしております。なかんずく昨年におきましては、企業の在庫過剰あるいは信用的な不安といったものを背景といたしまして、企業倒産なども頻発いたしております。末端の需給実勢が悪いところに加えまして、そういう中間の生産関係者あるいは流通関係者の倒産といったような事情が重なりまして、実勢が非常に悪くなった、こういうことであったと理解をいたしております。
  167. 神田厚

    神田委員 いまお話がありましたけれども、私は糸価低迷の最大の原因というのは、多少触れられたようでありますけれども農林省需給見通しが非常に甘かった結果が一つあったんだろうというふうに考えております。需給見通しが甘かった、その点はどういうふうに考えておられるのか。さらに、本年度における糸価水準については、最初農林省が考えていた適正な水準と比較してどの程度の差が生じているのか、これを実際に農家の手取り価格を例にとってひとつ御説明をいただきたいと思います。
  168. 小島和義

    ○小島説明員 全体の需給ということになりますと、昨年のいまごろ現在では、その前の年あたりからの動向から見まして、四十二、三万俵からうまくいけば四十五万俵ぐらいまでの線はいくのではないか、こういうふうなことを実は頭の中で描いておった、こういうふうな経過はあるわけでございます。結果的に一年振り返ってまいりますと、大体四十万俵強というのが需要の実勢でございました。そういう意味におきましては、末端売れ行きが、昨年のいまごろ考えましたものよりははるかに下回っておった、こういうふうなことが蓄えようかと思っております。  それからもう一つ、農家の手取り価格といたしましては、昨年の基準糸価を繭価に置き直しますと、大体千九百十五円というふうなのが基準繭価になっておるわけでございますが、実際の手取り額はこれよりはかなり高目の方に推移をいたしまして、二千円近いものがあったんではないか、こういうふうに踏んでおるわけでございます。
  169. 神田厚

    神田委員 農林省が最初に考えていた適正水準と比較してどの程度の差があるのかということをお聞きしたわけでありますけれども、その点の御答弁がはっきりしませんでした。  さらに、農家の手取り価格につきましても、二千円程度だろうというふうなお話でありますけれども、地域の実態を見ていきますと、私は決して二千円というふうな価格で取引はされていなかった、それよりももっと安く買われていたというふうに考えているのですが、その辺はどういうふうに見ていますか。
  170. 小島和義

    ○小島説明員 昨年の、蚕期別の価格で申しますと、春蚕が千九百八十五円、これは協定ベースでございます。それから、初秋蚕が千九百六円、晩秋蚕が千九百二十五円、平均いたしますと千九百四十四円というのが繭価協定ベースの実績値でございます。
  171. 神田厚

    神田委員 こういうふうな形で、昨年の農家の手取り価格が、最初の農林省あたりで考えていたものが、思ったような形で推移していかなかったというふうに私は考えているわけですけれども、五十三年度における基準糸価の決定については、五十二年度と同様の措置を講ずるつもりであるのかどうか、五十二年度と同様な形でそれをお決めになるのかどうか、それをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  172. 小島和義

    ○小島説明員 その前に、一つだけ先ほどの答弁を補足さしていただきますが、先ほど二千円ぐらいと申し上げましたのは、繭価協定ベースでは先ほど申し上げたような水準でございますが、そのほかにもいろいろな形で実質的な支払いが行われる模様でございますので、それらを含めて二千円程度と申し上げたわけでございます。  それから、ただいまのお尋ねでございますが、基本的には前年のルールを踏襲いたしたい、こういうように考えております。
  173. 神田厚

    神田委員 そうしますと、またことしと同じような形で、生産費に対しまして非常に基準価格が下回ってしまう。そういう今年度起こったと同じようなことがもう一回起こるような可能性があるのではないか、この辺はどういうふうにお考えですか。
  174. 小島和義

    ○小島説明員 それは一つには、中岡安定帯をどういう幅に設定をするかという問題、これは現在の絹需給から見た実勢と、それから中間安定帯の設定の水準なり幅なりという問題とかかわってくる問題でございますので、ちょっと現段階でにわかにお答えしにくい面があるわけでございます。  ただ一つ申し上げたいことは、この五十二生糸年度の場合にも、確かに年度前半におきましては、基準糸価を割るような事態もあったわけでございますが、現在まだ生糸年度としては約二カ月ほど残しておるわけでございます。年度を平均して見ました場合の平均の糸価ということになりますと、かなりな水準になるのではないか、こういうことも見込まれるわけでございますので、年度全体としてながめてみますと、平均の糸価というのは、年度前半に比べてみますればかなり高いところに落ちつくのではなかろうか、このように考えております。
  175. 神田厚

    神田委員 本年度は、三回も基準糸価を割るような状況だった。つまり、そういう当初の決め方自体に問題があったというふうに考えられるわけですね。本年度も同じような形でそれをなさろうとすると、やはり同じような形になるのではないかということを私は非常に心配しているわけであります。この点につきましては、いろいろ議論も分かれるところでありますけれども、少なくとも生産費イコール基準糸価という形でずっとやられてきた方式を変えて、一年経過したわけでありますから、その結果が余り思わしくないということであるならば、この制度そのものを少し考えていかなければならないのではないか、こういうふうに考えているわけであります。     〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕  時間の関係で次に移りまして、たびたび触れられておりますけれども、中国、韓国に対する二国間協定、この問題について御質問を申し上げます。  五十二年度の二国間協定による取り決め数量は、中国が五万五千五百俵、韓国が三万九千五百俵で、五十一年に比べてやや増大をしております。二月現在における事業団の在庫数量は六万一千俵となっておりまして、このうち、外国産の生糸が四万八千四百四十七俵、国内産生糸が二万二千六百五十五俵、そのほとんどが外国産の生糸の在庫となっておるわけであります。一般に事業団の適正在庫と言われているのは約三万俵でありますが、これが現在は通常の二倍、これも五月末においては三倍近くなるだろう、こういうふうに言われております。  そこで、五十三年度における二国間協定の締結、この問題について、農林省は十五日から日韓貿易交渉を通じて交渉を始めているというように聞いております。この交渉の状況一体どういうふうなことであったのか、御説明ができればひとつ政務次官の方からお答えいただきたいと思うのであります。
  176. 小島和義

    ○小島説明員 五十三年度の二国間協定につきましては、五十二年度と同じような協定を結んでいきたいという考えを持っておるわけでございますが、内容的には、いま御指摘がございましたように、国内の在庫事情、また末端の絹事情というものがございますので、そういう点も十分考慮に入れながら交渉に当たる所存でございます。  現在まで行われました交渉としましては、三月の中旬の韓国との第一回の協議が行われただけでございますが、日本側としては日本側の実情を述べ、韓国としては韓国側の需給事情を述べ、それぞれ見解がかみ合わないままに第二回目の交渉を約して別れた、こういうのが状況でございます。
  177. 神田厚

    神田委員 交渉の内容についてはなかなかむずかしいところがあると思いますけれども生産者団体その他から、現在これだけ在庫があるという状況の中で、二国間協定の延長というのですか、在庫がなくなるまで輸入するのを少しやめてほしいという要望もたくさん来ているわけであります。そうしますと、これは新しい五十三生糸年度が始まりますまでに決着をつけていくようなことになるわけでありましょうけれども、この第二回、さらにそれから後のいわゆる交渉というのはどういうふうな形でなされていくおつもりなんですか。
  178. 小島和義

    ○小島説明員 交渉の具体的な展開のプロセスにつきましては、現在の段階で予測を申し上げるということはできないわけでございますが、先ほどお話がございましたように、国内も、とにかく事業団の在庫というものを非常に気にいたしておる段階でございますので、私どもとしましても、基本的には在庫をもうこれ以上ふやしたくない、できるだけ在庫を減らすような方向に持っていくというのが交渉の基本的な態度でございます。この交渉の展開といたしましては、向こう側にもいろいろな言い分もまたあるわけでございますので、その具体的な中身と申しますか、これからの腹づもりというのは、ちょっと私ども自身としても現在申し上げる段階にはないわけでございます。
  179. 神田厚

    神田委員 このことは、今年度の需給見通しに非常に大きな影響を持つわけですね。したがいまして、いま審議官の方のお話を聞いておりますと、在庫が日本側に大変あるという事情を踏まえた上で交渉を続けていくということでありますが、年々輸入をふやしておりますけれども、少なくともことしにおきましては、輸入の総量としてはこれをふやさないという方向を持つのかどうか聞きたいのであります。
  180. 小島和義

    ○小島説明員 おっしゃるような考え方で、私どもも交渉に臨んでおるわけでございます。
  181. 神田厚

    神田委員 次に、繭の増産対策について御質問を申し上げます。  五十年以降、繭の生産量が非常に減ってきております。そして、一番問題なのは繭の減少傾向がとまってないということでありますね。どうしてこういうふうな減少傾向が歯どめがかからないのか、その点につきましてはどんなふうな考え方を持っておりますか、ひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  182. 小島和義

    ○小島説明員 養蚕業の最近の不振と申しますか、その原因というのはいろいろあろうかと思いますが、基本的には養蚕というのは非常に労働多投型の作物でございます。桑園段階における作業、それからお蚕の飼育段階における作業、そういう両方が重なるわけでございますので、ほかの農作物に比べますと、何と言っても十アール当たりの労働時間というものはかなり高いものがございます。かつてはわが国の養蚕も、そういう中ではございますが、農村におけるかなりゆったりした人口と申しますか、それと非常に数少ない商品化作物であったというふうな事情もございまして、農産物の中で一つの重要な柱を占めておった産品であったわけでございますが、近年における農村人口の減少、さらにほかの競合する作物がどんどんふえてきまして、ほかにいわば現金になる作物が多くなってきた。そういう中において、養蚕がだんだん生産の面で減少する一つのきっかけになってきたというふうに思っております。  また、その需要の面からしましても、戦後の一時期におきまして絹の将来性というものについてかなり悲観的な観測というものが横溢をいたしておりまして、その中で養蚕の将来性というものについて見切りをつけてきたという方々もおられるというふうに思っております。  お話がございますように、昨今の繭減少というものをながめてみますと、一つには労働生産性はこの十数年でやはり飛躍的に向上したというふうに私どもも考えておりますので、人手不足に対する養蚕というふうな体制は曲がりなりにもでき上がってきているのではないかと思いますが、反面、省力化の過程におきまして反当の生産量というのがどうも伸び悩んできている、こういう傾向がございます。  したがって、一口に申し上げますならば、省力化を追う余りにかえって粗放化した、こういったふうな傾向もうかがわれるわけでありまして、繭増産を図ります基本といたしましては思い切った省力化を図りますと同時に反当の収量も上げていく、こういう努力が組み合わさりませんとなかなか繭の生産量がふえていかない、こういうことになろうかと思います。したがいまして、明年度におきましては繭の増産目標を一応九万トンと置きまして、政府の用意しておりますさまざまな助成策、その中の基本になりますのは、革新的な技術でありますところの桑園の密植促成栽培技術と稚蚕人工飼料育というものが一つの核になる技術であると私どもは考えておりますが、そういったものを広めてまいりますとともに、お話がございましたような価格の面からの環境条件をつくっていく、こういう努力をあわせ講じまして繭増産が今後ふえていきますように努力をいたしたいと思っております。  また、養蚕の担い手というふうな観点から申しましても、従来から養蚕をやっておりました比較的御年配の世代がだんだんリタイアする過程において養蚕が減っていく、こういう傾向もあるわけでございますので、若い人たち、農村の御婦人もいらっしゃいますが、農村婦人、さらには農村青年、こういう人たちが養蚕に意欲を燃やしていただく、そのためのグループづくり、こういったことについても力を入れてまいりたいと考えております。
  183. 神田厚

    神田委員 ただいまの答弁を聞いていますと、ちょっと私ども認識が違うのです。関東農政局管内の養蚕事例調査、これの四十九年から五十一年の二カ年間について調べたものがあります。それによりますと、農家の中止した理由の第一番は、収益性の問題から他の作物に転換したというのです。収益性の問題です。やはり一番根底にあるのは価格問題でしょう、それが四九%あります。その次は、後継者難あるいは老齢化によるつまり手不足の問題、これが一八%、さらに他産業に従事したというのが一五%、それから道路や宅地へ転換、壊廃したというのが一四%、その他が四%、こういうふうになっております。  関東農政局の管内でのきちんとした調査でもやはり収益性の問題、価格の問題が、やってもどうしても採算的にうまくないということでやめているのが一番なんでありますから、ただいまの審議官の話だけ聞いていますとそうでもないような話になりますけれども、基本はやはり価格問題なんです。これは繭を生産している農家が本当に再生産が確保できるような、そういう価格の取り決めをきちんとしなければ、養蚕農家というのはだんだんと少なくなってしまう、歯どめがきかなくなってしまう、私はこういうふうに考えているわけであります。ですから、その辺のところはひとつよくそういう御認識もしていただかなければいけないというふうに考えております。  さらに、時間もありませんので、六十年の長期見通しとの関連についてですが、六十年の生産量十三万七千トン、こういうふうになっておりますけれども、この長期見通しをどういうふうに達成していくのか、さらには今回の水田利用再編対策によりまして転作奨励補助金が交付されるのが三年間ということでありますが、この交付期間の問題、こういうことを少し前向きに考えていただかなければ日本の繭というのはだんだんとだめになってしまう、私はこういう心配をしているわけでありますが、ひとつその点をお聞かせいただきたいと思います。
  184. 小島和義

    ○小島説明員 六十年見通しの問題につきましては、私どももこれは努力目標というふうに考えているわけでございまして、そういう目標を達成するという見地に立ちましても、単に外延的な拡大だけではなくて、反当収繭量の増大ということをあわせてやっていかなければ目標の達成は非常にむずかしくなってまいる、こういうふうに思っておるわけでございます。  また、御指摘ございました収益性の問題というのは、価格の絶対水準ということにはもちろん関係はございますが、その水準のもとでどの程度の生産を上げていくのか、反当収量が下降傾向を描くという事態のもとで、それを全部価格で補っていくという価格政策をこの種の物資についてとるということはなかなかむずかしいのではないかと思っておりますので、そういう意味において両々あわせ講じて達成していく、こういう筋のものであろうと思っております。  それからまた、お話ございました水田利用再編対策におきます桑の奨励金交付期間の問題でございますが、これにつきましてはいろいろ御意見のあることは私どもも承知をいたしております。ただ、永年性の作物の中で果樹と桑、こういうことで比較をいたしてまいりますと、果樹も種類によりまして実のなるまでにいろいろ期間の差はございますが、これを五年といたしておるわけでございます。桑の方は収量こそ一年目、二年目ではそれほど多いものではございませんが、三年もたちますとある程度の収量を上げられるという実態がございます。特に最近推奨いたしております密植促成栽培技術ということによりますと、大体三年ぐらいたちますと一人前の桑園としての利用ができるというふうな実態もあるわけでございます。  それらのことを考えまして、先般、昭和五十一年からでございますが、水田総合利用対策ということで転作対策を講じましたときにも、桑については三年ということにいたしました経緯もございまして、今回の対策でも一応三年ということにいたしておるわけでございます。
  185. 神田厚

    神田委員 最後に、政務次官にお尋ねします。  この繭の問題、基準糸価の問題は、三十日に審議会が開かれて結論が出るようでありますが、ひとつそれに対する次官の考え方と、それから先ほどお話がありました日韓の貿易問題における輸入の問題について、こちらからだれが出ていってどういうふうな話をいつごろするのか、ひとつわかりましたらお答えいただきたいと思います。
  186. 今井勇

    今井政府委員 蚕糸価格の問題につきましては、いままでの先生の御議論にも出ておりましたように、生産者の再生産を確保する生産者価格というものを十分ににらみながら、しかもまた、消費あっての生産でございます。したがいまして、生産性の向上等を図ることによって、ひとつ生産者の方にゆとりの出るような政策もあわせ考えて、私は審議会の議を経て決めたいと存じます。  その節、先ほど先生の御指摘のありました輸入の問題につきましては、やはりきちっとした姿勢をしておきませんと、生産者の御納得をいただくことがむずかしかろう、かように考えております。したがいまして、第一回の会談で不調になりましたが、席を改めまして第二の会談を用意いたしておりますが、その事態の成り行きによりましては、さらにハイレベルの交渉もせざるを得ないのではなかろうかというふうなことも考えておりますことをつけ加えておきたいと存じます。
  187. 神田厚

    神田委員 終わります。  ありがとうございました。
  188. 中尾栄一

    中尾委員長 津川武一君。
  189. 津川武一

    ○津川委員 この間、三月十七日、全国養鶏経営者会議が六党要請を行いました。そのとき全鶏会議から見せていただいた航空写真、これを自民党では羽田委員も見てくださいまして、それが意外に反響を呼びまして、私たちの理事会でも、養鶏を農業として、畜産として扱っていかなければならぬ、育てていかなければならぬということに相なりまして、私は、そういう声もありまして、もう一度質問してみたいと思います。  一つに、私たちは、養鶏を日本の大事な畜産として育てていきたい、日本農業として育てていきたい、こう考えておりますが、養鶏に対する政府の態度を聞かしていただきます。
  190. 今井勇

    今井政府委員 先生お説のとおりでございまして、私どもも、養鶏というものは畜産の中の重要な一部門でもあり、なおかつグローバルな面から見ましても、日本が十分太刀打ちのできる産業であるというふうに理解をいたしております。
  191. 津川武一

    ○津川委員 農業基本法にもあるように、専業農家、自立経営農家を育てていくという大事な農業憲法がございます。そこで、農家的な養鶏を育てることが日本畜産の基本方針だろうと思います。その点は、後でまた政府の見解を伺わしていただくとして、この間問題になりましたヒヨコのイセの増羽状況ですが、どうなっておるか。この間の写真を見られて、政府で調べてみてくださったでしょうか。その点をまず答えていただきます。
  192. 今井勇

    今井政府委員 この間も私が御答弁申し上げたように、皆さんが生産調整をやっていこうじゃないか、そして生産者所得を確保していこうじゃないかということの中で、それに反するようなものが大々的に行われるということは社会正義にも反するものであるということで、その調査を確かにお約束を申し上げました。  それからまだ幾らも日がないものですから、ここでこうなります。ああなりますということの御答弁ができませんことは大変申しわけございませんが、農林省がその組織を通じまして実態を把握して、先生になるべく早く御報告できますようにお約束を申し上げたいと思います。
  193. 津川武一

    ○津川委員 ぜひそうしていただくことを重ねてお願いもし、要請もして、質問を続けていきます。  そこで、四十九年に出しました生産調整の通達は、当然ヒヨコのイセにも届いていると思いますが、この点はいかがでございます。政府が直接農政局を通ずるなり県を通ずるなりして、その指導はヒヨコのイセにもされていると思いますが、この点はいかがでございます。
  194. 杉山克己

    杉山政府委員 政府の通達は、当然その有効性が発揮されますように、必要なところには全部くまなく届くようにということで出しておるわけでございます。一つ一つ行き先まで確認はしておりませんが、当然、農政局あるいは県を通じて、先生が言われたような採卵を行っている企業体には届いているものと理解いたしております。
  195. 津川武一

    ○津川委員 今井政務次官が、政府を挙げて調べると言うからそれでいいのですが、六党に公開要請があって、航空写真が公表されて、日本農業新聞に載ったりしましたら、意外に反響が大きくなりまして、私もびっくりしたのです。  きょう、私のところに、養鶏関係者からこういう決算書が届いたのです。これはヒヨコのイセの決算書です。十五期。この決算書を見て私もびっくりしたのです。というのは、昭和五十年に卵の売り上げ額が百三億四千三百万円、そうして買った卵の価額が三千五百万円。これを売った卵の価額が百三億四千三百万円。したがって、自分で生産した卵の価額が百三億円。これは五十年の八月から五十一年の七月までで、五十一年の八月から五十二年の七月までに卵の売り上げ値段百二十六億七千五百万、このうちでよそから買ってきた卵が七千二百九十六万円、ここでも百二十六億円の卵は自家生産。私なりに卵の一つ当たりの重さだとか卵の売り値などというものを考えてここから逆算してみました。そうすると、羽数で言うと、私の計算からの推定です。五十年には二百六十二万九千羽、五十一年には三百十九万二千羽、この間の写真では二百十何万羽という航空写真が出たのですが、これでいくと、一年に増羽されているものが五十六万三千羽、対前年やみ増羽数が二一・四%になっております。  いま決算報告書を持っておりますので、委員長に見ていただいてから政府の方にも見ていただきますが、ちょっとお願いします。  こうなってみますと、イセの、しかもこれは連結決算書、委託経営も直営も入っております。もう彼らの決算書できわめて明らかになっている事態なので、やみ増羽していることは間違いないと思います。ちょっと目を通していただきます。それからまた質問をやりますから。  そこで、その決算書、これは写しでございます。写しの写しで恐縮ですが、農林省に差し上げますので、これもひとつあわせ検討願いたいと思う次第でございます。  もう航空写真から言ってもこの決算書類から言ってもやみ増羽していることは間違いないと思います。そこで、こういう国の方針に反してやみ増羽をしておる企業、イセに対して卵価安定基金から金を出してやってはいけないと思います。この間の答弁で、飼料安定基金からは法律上とめるわけにいかないからこれはいたし方ないと思いますが、これもやはり考えてみなければならない問題だと思います。農林漁業金融公庫からも出してはいけないと思います。近代化資金も出してはいけないと思います。農林中央金庫からも出してはいけないと思いますが、この間から調べていただいて、卵価安定基金からヒヨコのイセにどのくらい出ているか、飼料安定基金からどのくらい出ているか、農林漁業金融公庫からどのくらい出ているか、近代化資金からどのくらい出ているか、農林中央金庫からどのくらい出ているか、明らかにしていただきます。
  196. 杉山克己

    杉山政府委員 先般来御指摘がありますケースについては、先ほど政務次官からも答弁申し上げましたように、私の方でもって目下宮城県を通じて、差し当たってこの事案について調査したいのだが、どんな状況であるかということで報告を求めております。率直に申し上げまして、いま私ども畜産物価格決定の時期でもございまして、出張してこれを直接調査するというほどの余力はないわけでございます。そこで、目下照会をしているということをまず御報告申し上げておきます。  それから、いま御質問の卵価安定基金制度の問題でございますが、現在この制度の運営につきましては、鶏卵の生産調整関連づけて運用するということを基本のたてまえとしております。すなわち、生産調整を遵守している生産者でなければ卵価安定基金には加入して補てん金を受けることはできないということにしておるわけでございます。したがいまして、生産者は加入契約を締結しようというときは、市町村の鶏卵需給調整協議会が発行する生産調整を守っていますという旨の証明書を添付することにいたしております。  そういうたてまえのもとでイセグループあるいはタケクマグループ、先生指摘のところがどうだという話でございますが、これはグループの中が各地ごとに独立法人が設けられておりまして、数がきわめて多数あるわけでございます。農事組合法人のものもあれば有限会社のものもある、あるいは株式会社経営のものもあるというような形で多数ある。したがいまして、これらのものが個別に卵価安定基金に加入を申し込むということになるわけでございます。当該法人ごとに。グループとは言いましても、ただこのグループの中で現に生産調整を守っている、そういう証明書の発行を受けているものもあるわけでございます。それによって加入が認められているところは補てん金の交付を受けてもいるということになるわけでございます。ただ、いままで生産調整を守っていない法人は証明書が発行されないということで、卵価安定基金には加入していないという報告を受けております。でありますから、原則どおりの運用になっておるということでありまして、グループの中でも個別の企業体として生産調整に協力しているものは加入して補てんを受けている、そうでないものは入れないでいるというように私ども承知いたしております。
  197. 津川武一

    ○津川委員 畜産局長のいまの答弁だからやみ増羽をやられるのです。いいですか、だから私は連結決算をそこに提示したわけです。農林省はこれを言い分にして言っている。しかし、現実に五十年から二一%、五十六万羽というやみ増羽、これがグループごとにやられたことは認めるわけにいかない。そこで、そこにも上げたが、連結決算の各ブランチ、分野を農林省は速やかにとって、個々のどの企業がやみ増羽したのか、それに対して安定基金、出るはずがないと言っているが、養鶏者の皆さんは出ていると言っている。いいですか、畜産局長、だから局長を信用しないのです。養鶏行政の不信がここから始まった。  そこで、今井政務次官、この系統、私はそこではっきり連結決算書を出したのです。この連結の全体をつかまえて、局長は、やみ増羽しているのに行っているはずがないと言っているんだけれども現実に行っている。そこで、どのところがやみ増羽して、どのくらい安定基金が出ているかというところを明らかにしなければいけなくなったわけです。  同じことは農林漁業金融公庫、近代化資金、農林中央金庫、いかがでございます。出ていませんか。
  198. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 御指摘のありましたイセ及びその系列会社に対する農業近代化資金及び農林公庫資金の貸し付けについては現在調査中でございますけれども、現在のところ融資実績があるという報告は聞いておりません。  農林中金の融資につきましては、これは生産調整が始まる前から融資を行ったというようなこともございますし、それからまた、いままでにも鶏卵の生産調整に反しているのではないかというふうな批判があったことにかんがみまして、農林中金としてはこうしたことがないように再三警告をしておるというふうに聞いております。
  199. 津川武一

    ○津川委員 農林中金から出ているという事実は本当でございますか。
  200. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 農林中金と取引があることは事実でございます。
  201. 津川武一

    ○津川委員 どのくらいのお金が出ておりますか。
  202. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 個別の取引の内容につきましては、先生も御承知のように、金融機関の守秘義務というような問題もございますので、ここでは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  203. 津川武一

    ○津川委員 農林中金から出ています。  各県の信連から出ていることはありませんか。
  204. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 県信連につきましては、私どもまだ調査をいたしておりませんので、ちょっといまのところわかりかねる状況でございます。
  205. 津川武一

    ○津川委員 県信連から出ているか出ていないか、どこに聞けばわかりますか。
  206. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 各信連に照会をする以外にはないと思います。
  207. 津川武一

    ○津川委員 農林省から各県の信連に照会してくれますか。
  208. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 ただいまの件につきましては、調査はいたしたいというふうに思います。
  209. 津川武一

    ○津川委員 調査の結果はこの委員会に公表してくれますか。
  210. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 調査はいたしますが、先ほど申し上げましたように、守秘義務との関係もございまして、個別の取引の内容に立ち入ることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  211. 津川武一

    ○津川委員 商社系のインテグレーションが委託経営している養鶏、直接経営している養鶏、これに中金と県信連からどのくらい出ておりますか。四十九年の生産調整の通達が出てからどのくらい出ておりますか。お答え願います。
  212. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 ただいまの御質問でございますが、農林中金が融資を行っております商社系の業者の中には、養鶏業のほかに、ほかの事業を併営しているというようなものが少なくございません。したがって、これらにつきまして、養鶏業にかかる融資を分離して把握するということは困難でございます。  なお、商社に対する中金の貸付残高ということでございますれば、これは公表されております有価証券報告書で明らかにされている大手九商社の合計をとりますると、五十二年三月末現在で約九百二十億円ということでございます。
  213. 津川武一

    ○津川委員 有価証券というのは、中金の有価証券ですか。
  214. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 一般に公表されております有価証券報告書でございます。
  215. 津川武一

    ○津川委員 中金のですか。
  216. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 いいえ、各商社の有価証券報告書でございます。
  217. 津川武一

    ○津川委員 ヒヨコのイセの名は、有価証券報告書の中に出ていますか。
  218. 佐々木富二

    ○佐々木説明員 多分出ておらないと思います。
  219. 津川武一

    ○津川委員 それはどこに聞けばわかります。こんなことで、やはり中金に、個々のものがいけない、だめだと言うならば、インテグレーション、商社に対してどんな形があるかというのは明らかにしなければ問題が展開されません。ヒヨコのイセに対する、ブロイラーにどのぐらい出しているか、養鶏にどのぐらい出しているかは、資金を借りるときの申込書の中なんかにあります。個々のものはだめであっても、そういう点では、どうしても中金の人に参考人として来ていただいてこの問題を明らかにしてみたいと思いますので、委員長から次の理事会に諮っていただいて、次の委員会に呼んでいただくように取り計らいをお願いいたします。  そこで、意外に反応が多かったもう一つの問題は、こんな資料が私のところに届いてきたのです。これは農林省がいままで本当に農民の養鶏家を無視して、商社のインテグレーションの養鶏にかなり肩を入れている証拠です。こんなものが私のところに届いてきた。これの中に何が入っているかというと、イセグループのフラワー食品、約二十社から二十億円の借入金をしている。北陸銀行から四億円、高岡信金から四億円、群馬銀行から四億円、農林中金金沢支所から二億円、そしてこの間の私の発言だと宮城信連から八億と言ったけれども、この資料だと五千万円。そして、もっとはっきりしているのは、農林中金の金沢支所に四億六千二百五十万の根抵当が設定されております。こういう点で、このお金というものがいつ出たのかということにも問題がございましょうが、いずれにしても、農民の預金で、農民の金で農民の養鶏を苦しめる、つぶす、こういう役割りを果たしておったわけであります。  そこで質問ですが、養鶏を農業として、畜産として育てていく、農業基本法にもあるように、自立経営農家を育てていくわれわれの立場から言うと、農林省の育てるべき養鶏の経営家は農家であって、インテグレーションではないと思います。この間養鶏の全国会議の人たちに聞いてみましたら、インテグレーションなんかなければ、自分らの手で日本が必要な分の卵は、値段を上げることなしに育てていくことができるというわけであります。この立場を農林省がとるのかどうか、今井政務次官に答えていただきます。
  220. 今井勇

    今井政府委員 ちょっとその前に、先ほどの先生の御質問の中で、農林省が商社寄りに偏って行政をしておる旨の御発言がございましたが、これは私もちょっとそのままに聞き流すわけにはいかないと存じます。先生のお気持ちはわからぬでもございませんが、ひとつこの点については再度御考慮を賜りたいと思います。私どもは、少なくも国民農林省であることを自負いたしておりますので、いやしくも一部の商社に肩入れをしておるということを言われますと、まことに心外でございます。  それから、その次の御質問でございますが、いずれにしても養鶏の問題は、生産調整をしていかなければ、その企業が大であれ小であれやっていけないわけでございます。したがって、生産調整をやろうじゃないかということで、そのもとでのことを奨励をしておるわけでございますから、大であるからといってそれを守らなければこれは悪でございます。小であっても守らなければ悪でございます。したがって、そういうふうな気持ちで今後ともやってまいりたいと思います。
  221. 津川武一

    ○津川委員 今井政務次官答弁で安心しました。農林省は商社に偏っていないと言う。しかし、養鶏農民的養鶏農家は、かたい信念みたいなかっこうでそう思っているわけです。したがって、この間の航空写真で、きょうの決算書で私が指摘したことを調べて、それに対する監督、チェックのいかんによっては、私は今井政務次官と同じ見解になると思います。それまで少し見守っていきたいと思います。今井さん、その点で本当にがんばってください。  そこで、最後の質問ですが、この間の航空写真でもわかる、きょうの決算でもわかったように、やみ増羽していることは間違いない。そうすると、生産調整の前のところの羽数まで戻すべきだと思います。これに中金のお金が出ておったり、公庫の資金が出ておったり、これに近代化資金が出ておったり、安定基金が出ておったりすれば、それは取り戻すべきだと思うわけでございます。この二点、答えていただきます。
  222. 杉山克己

    杉山政府委員 いま政務次官お答えいたしましたように、農林省は別に商社寄りとか特定のグループに肩入れする、そういうような行政を行っているということは毛頭ないわけでございます。ただ、一般的な企業の立場からいたしますと、いま法律でもって規制を受けているわけではない、自由に活動すること、自分の責任においてやることがどこがぐあいが悪いのだというような開き直り方をされますと、実はこのような業界のお互いの協調でもって成り立つところの生産調整のようなことは、どこか限界が出てまいるわけでございます。これに対して、協力するようにこれを指導していく、地域でもって言うことが聞かれなければ県段階に上げ、さらには農政局、さらには農林省本省、本来なら直接個別企業についての指導というようなことは立場でないのでございますが、極端な事例が出ました場合は、そういうものもあえてやろうということは考えるわけでございますけれども、最後の最後の段階になりましてこれがどれだけ強制力を持つかということになりますと、それこそ本格的な生産調整を厳格に実施しようと考えるなら、法律でもつくらなければできないというようなところにまで来るわけでございます。  私どもは、いまの生産調整は、地域での関係者間での話し合い、協調というのをベースにして成り立っているものでございますから、その点につきましては、その企業自体が、自分がいいと思って、信じ込んでやっており、どうしても言うことを聞かないというケースが出た場合どうなるかということについては、全く前の状態に戻せるというところまでは、なかなか自信を持って言い切れないところがあるわけでございます。  しかし、そういう弁解の話ではなくて、要は、個別企業そこだけということではなくて、日本全体としての需給調整が効果的にうまく運営されるように導いていくことだと思います。そういう責任感でもってこの問題にも取り組んでまいりたいと考えております。
  223. 津川武一

    ○津川委員 問題は、この次の二十九日のこの委員会でどのくらい前進しているか、もう一回質問してみますので、十分検討していただきたい。  そこで、いまの畜産局長答弁がまたいけない。明らかにやみ増羽しておる人を現行法でもチェックできる。それは何かのときに基金を出さないこと、公庫のお金を出さないこと、近代化資金を出さないこと、中金からお金が出ないように指導すること、それを畜産局長は法で縛られないからいたし方ないと言っている。現行法でやれるものをやってみて農民的要求を守るとなぜ言えないのかということです。いまの答弁を聞いて私は唖然としたわけです。またやるなと思った。そういうことなんです。なぜかというと、皆さんは養鶏何十万羽あるところに、はいれないでしょう。どんどん増羽している。そこで協議会を買収しているでしょう。それを出しているからなんです。したがって、現行法をきちんとやることによって問題はかなり解決する。この現行法で徹底的にやって商社的なインテグレーションのやみ増羽を抑えるという決意があればよろしい。答弁していただきます。  それで、この間の六党の要請会に出ました自民党の羽田委員、見上げたものです。一生懸命政府にやらせてみて、だめならば法律で規制すると言うのだ。やれるかやれないかまずやってみると言う。ここのところに羽田さんの決意があるのだ。そこまでしなければならなくなったのは、いま言われたとおりのことなんです。この点を局長でも次官でもいいが、答えていただいて、詳しいことをまた次の二十九日の委員会でやりますので、その間いろいろ畜産審議会もあるでしょうけれども、問題がここまで来たので、もう少し進めていただいて、次の答弁をまた待ちますが、今井政務次官どうぞ。
  224. 今井勇

    今井政府委員 局長が御答弁を申し上げたその気持ちだけはわかっていただきたいと存じますが、いろんな制約のもとでいろいろ問題がありますが、しかし少なくも私が御答弁申し上げたとおり、社会正義に反するものをそのまま放置するということだけはないようにいたしたいと存じます。
  225. 津川武一

    ○津川委員 終わります。  ありがとうございました。
  226. 中尾栄一

  227. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほどの私の発言につきまして、時間の関係等によって大事な点が一部取り残されておりますので、この際、委員長の許可をいただいて発言をいたします。  すなわち、北海道の五十二年度の年間生乳生産量は百七十七万四千八百八十トンでありまして、これを生産した搾乳牛の頭数は三十六万四千頭であります。したがって、一頭平均の搾乳量は四千八百七十キログラムということになるわけであります。  これに対して、乳脂肪率は、平均いたしまして三・四四%でございますので、標準乳脂肪率の三・二%に比較いたしますと〇・二四%脂肪の含有率が高まっておるわけでございます。これを三・二%乳脂肪率で生乳数量を換算いたしますと、一頭当たり平均が五千二百三十五キロということになるわけでございまして、つまり先ほど申しました水増し数量というのが七・五%ということになるわけであります。  五十三年度の加工原料乳の保証価格等については、法律に基づいて、加工原料乳の主要な生産地域というのは恐らく北海道に限定されると思いますので、そうなると価格算定上の生産費の諸要素は北海道を対象にするということになるわけでございますので、この点は非常に重要と認めますので、この際発言をいたした次第であります。
  228. 中尾栄一

    中尾委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。杉山畜産局長
  229. 杉山克己

    杉山政府委員 恐縮でございますが、答弁の訂正をさせていただきたいと思います。  去る三月十七日、芳賀委員に対する答弁の中で、これは乳製品需要の答弁のくだりでございますが、「乳糖、カゼインの一部のようなもの」と申し上げましたのは、「不足払い対象外のいわゆるその他乳製品」ということの誤りでございます。  大変失礼いたしました。訂正させていただきます。
  230. 中尾栄一

    中尾委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十六分散会