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中川国務大臣 農村の青年の声は、われわれも地方へ行きますと幾つか出てまいります。その中にも当たっているものもあるし、ちょっと間違っているなというのもあるわけです。しかし、総じて
農業が置かれている立場、地位が低い、これはもう認めざるを得ないのではないかと思うのです。それは、前から申し上げましたように、わが国は
高度経済成長、そして第二次産業、
工業製品を中心にして異常な発展を遂げたわけでございます。したがって、そういったところに働く労働者の賃金が、それらの
方々には御不満があるようですが、
農業者に比べると非常に上がっておる。それが公務員、国家公務員から地方公務員の教職員、役場に至るまで、すなわち
農村の周りどころではなくて、自分のところの働くお嬢さんの月給の方がお父さん、お母さんが先祖伝来の土地を大事にして汗水流した収入よりは多い、こんなばかなことがあるかという
気持ちがあることだけは言えるのではないか、こう思います。
そこで、私たちはいつも農政を展開する場合に、
高度経済成長についていけといっても、これはなかなかついていけない。毎年ベースアップが一〇%とか一五%上がるわけでございますから、それについて
農家所得を上げるといっても、これはなかなか大変だ。安定成長は、単なる
ドルの問題とか
日本の
経済とか資源の問題とか、いろいろあるけれども、やはり第一次産業と
バランスのとれた発展をとるという
意味においても安定成長というものが必要ではないか、この辺を直さなければとても
農村はついていけない、私は、根っこの問題についてこういうとらえ方をいたしておるわけでございます。
したがって、最近安定成長になり、むしろ不景気になってまいりますと、町で働く場所がない。いままではだれでも大学に入れて、だれでも就職ができるというところですから、
農村から離れていくということではありましたが、最近は安定成長となり、やはり
農村がいいかなということでUターン現象も見られるというぐらいに空気は変わっていくのではないか。そうした事情を
背景にして、これからひとつ
農村に日の当たるようにしていこうというのが、私のいまの決意でございます。
そういう大局的な中に、いろいろ御指摘ありましたが、野菜についても、先ほど
局長から答弁がありましたが、時期、場所によってはずいぶん上がったり下がったりいたしますけれども、われわれの統計によれば、消費者物価の値上がりと野菜
価格の値上がりというものはそう大きな違いはない、まずまず並行してというか、同じ傾向をたどって
価格は引き上げられておる。もちろん昨年暮れ以来の暖冬、しかも消費も減退をする、なべ物を食べないというところから、異常な値下げのときにはそういったことになりますけれども、またこれが高いときもあるというようなことで、野菜
農家が塗炭の苦しみを全国的にしているとは思わない、
部分的、地域的には、あるいは特に時期的にはそういうことがあっても、そう過酷な姿になっていないのではなかろうか。まあ昨年秋以来のことは非常に深刻な問題がありますから、これは対処いたさなければなりませんが、そう大きい目でひどい、先ほど御指摘のような物価は上がったが野菜は上がらないというようなことには、傾向上、
数字上はなっておらない、こう
認識しております。
それから、減反政策が
農村をいじめる最大のものだというふうにとられておるのですが、私は、これは
政府が減反をしなければならぬようなことをしてきたのではない、やはり社会の情勢が米を食べないという空気、また米が異常に生産されるということから来たものであって、減反政策が
農民を苦しめるのではなくて、社会の情勢がそうなったので、
政府がそれに対処をして
農民の理解と
協力を得て他に転換をするということであるので、この辺のところをすべて
政府に持ってくるというのはいかがかな。
それから、野菜の問題についても、これは消費者だけを考えて生産者を考えておらないという御指摘もあったようでございますが、私は、そういうことはない。むしろ、どちらかというと消費者の方からの不満の方が多いのではないか。われわれ台所にある野菜は高い、高い、安いという喜んだ言葉はないのであって、いまの
価格制度の
仕組みも消費者本位ではなくて、やはり下がったときに何とか
農家の生産がおかしくならないようにと仕組んだものではないのだろうかな、こう思うわけでございます。
また、豚についての御意見もありましたが、豚も、いまは大体えさも安くなり、夕方にはなっておらぬのじゃないかな。いまはまだ朝日が達した勢いのいいところまで行っておるかどうかは知らぬが、夕方を迎えておらない。豚
農家はいま安定しつつある。
総じて、私たちも地方を回りますが、世に言われるようなことをとらえて余り神経質になっている点もあるのではなかろうかなと私の経験からも考えるところであり、ただ相対的に、
高度経済成長下における
日本の
農村というものが全体的に弱い立場にあった。合理化なり所得の増大にはなかなかでき得ないものであった。しかし、安定
経済成長になれば、むしろ非
農家よりは
農家の方が相対的によくなってくるのではないか。このことは、蛇足でございますが、貯蓄率においても
農村の方が非
農村よりも多い。これは先々心配だから貯蓄性向が高いのだ、無理して貯金しているのだとも言われますが、外国に出ておられるお客さんの中でも
農村の占める旅行客が非常に多い等々、苦しい面もあるけれどもいい面もあるのではないか、こう思っておるわけでございます。
〔
委員長退席、羽田
委員長代理着席〕