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今井政府
委員 昭和五十三年度農林水産関係予算について、その概要を御説明申し上げます。
昭和五十三年度一般会計における農林水産関係予算の総額は、総理府など他省庁所管の関係予算を含めて三兆五百六十七億円であり、前年度の当初予算額と比較して一五・八%、四千百六十六億円の増加となっております。
以下、予算の重点
事項について御説明いたします。
第一に、
食糧需要動向の変化に対応した
農業生産の再
編成に関する予算について申し上げます。
最近、
稲作志向がきわめて根強い一方、米に対する
需要が引き続き停滞しているため、米過剰の基調は一層強まっており、他方麦、
大豆、
飼料作物等今後
増産の必要な
農産物の
生産は伸び悩んでおります。
このような
状況を踏まえ、米の
生産を計画的に調整するとともに、農地利用の中核的
農家への集積を図りつつ、
水田の高い
生産力を活用して今後
増産の必要な
農産物の
生産を
拡大し、またその定着を図ることが肝要であります。このため、新たに
昭和五十三年度以降おおむね十年間の
対策として
水田利用再編対策を
実施することとし、
昭和五十三年度から
昭和五十五年度までをその第一期として、各年百七十万トンに相当する
水田を対象に転作等を推進することとしております。
また、本
対策の円滑な推進に資するため、奨励補助金の水準を適正に定めるとともに、都道府県が
地域の実情に応じて転作
条件を
整備するのに必要な諸
対策を機動的に
実施するための転作促進
対策特別
事業を創設するなど
水田利用再編対策として総額二千百十二億円を計上しております。
次に
農業生産基盤の
整備については、
農業生産の再
編成を図るとともに、あわせて
わが国経済特に
農山漁村の景気
対策にも配慮し、近年にない大幅な予算額の
増大を図ったところであります。特に、
水田利用再編対策と
畑作の
振興を強力に推進するため、圃場
整備事業、畑地帯総合
土地改良
事業、
土地改良総合
整備事業等を積極的に推進することとし、新たに水源工事を必要とする特殊土壌地帯を対象として
畑地帯水源整備事業を創設することとしております。また、
農用地開発事業の積極的な推進を図るため、補助
事業の採択要件の緩和を行うとともに、
農用地開発公団事業として、干拓地において
農畜産物の
生産団地を形成するための
事業を創設することとしております。これらを含めた
農業生産基盤整備費として、総額七千二百八十二億円を計上しております。
次に、主要
農産物の
振興対策について申し上げます。
まず、麦については、農作業の受委託、営農排水等営農
条件の
整備等を総合的に行う高度
麦作集団育成総合
対策事業等を引き続き
実施するとともに、新たに麦を取り入れた合理的輪作体系の
確立と
畑作麦の
担い手の
確保等を総合的に推進するための畑
麦作集団育成特別
対策事業を
実施することとしており、麦
生産振興対策として総額百七十三億円を計上しております。
また、
大豆、
甘味資源作物、特産
農産物については、それぞれ既存
事業の
拡充実施を図るほか、新たに、
地域の実態に応じた
大豆作の受委託を推進する
事業、簡易な
土地基盤
整備、栽培の機械化等を推進するサトウキビ
生産団地
育成事業、営農的
土地基盤
整備、省力機械の導入等を行う特産
畑作振興対策事業等を
実施することとし、総額百十三億円を計上しております。
養蚕
対策については、新たに桑苗主産地の
育成及び罹病桑園の
改善を推進する桑園
生産改善緊急
対策事業を
実施する等
施策の
充実を図ることとし、総額三十九億円を計上しております。
また、
野菜の
生産対策については、
野菜の
生産、
供給の安定を図るため、
野菜指定産地を
中心とする集団的な
野菜産地の
育成強化対策を進めるとともに、地方都市周辺の地場
野菜産地について、
水田における
野菜への転作の推進にも配慮しつつ、その維持
育成を図るため、新たに地場
野菜産地
生産流通
対策事業を
実施することとしております。なお、以上のほか、
野菜の合理的輪作体系の導入定着の促進を図るための
事業、園芸用廃プラスチックの適正処理を推進するための
事業等についても、引き続き
実施することとしております。
野菜の
価格対策については、
水田利用再編対策の推進に資する観点からも制度の
拡充を図ることとしており、指定消費
地域の
拡大、補てん率及び保証基準額の引き上げ等
価格補てん制度の
改善、都道府県段階で行われている特定
野菜の
価格安定
事業の対象品目の
拡大等を行うこととしております。
これら
野菜対策として、総額三百二十三億円を計上しております。
果樹の
振興対策について申し上げます。温州ミカンについては、その
需給及び
価格の安定を図るため、果実
生産出荷安定基金を活用して、
生産、
価格、流通にわたる総合的な
対策を講ずることとしておりますが、特に加工原料用果実の
価格補てん
事業につき保証基準
価格及び補てん率の引き上げ等を図ることとしております。また、新たに温州ミカンを
中心として栽培の省力化、品質の
向上等を図る柑橘産地の再
整備対策を
実施するとともに、果汁仕向け量の
増大に対応するため、果汁工場の主要施設の
整備を新たに
実施することとしております。リンゴ、桃、ナシ等の落葉果樹については、引き続き
生産振興対策を
実施するほか、オウトウにつきましては、内外の諸
情勢にかんがみ、
生産、出荷の合理化
対策を
拡充強化することとしております。これらを含めた果樹
対策として、総額七十六億円を計上しております。
次に、
畜産の
振興対策について申し上げます。
まず、
飼料対策については、既存の
畜産地域を
再編整備し、新たな
畜産主産地の形成を図る公社営
畜産基地建設
事業の創設等により草地開発
事業を積極的に推進するとともに、新たに
飼料基盤の脆弱な大家畜経営の健全な発展を図り、また
水田利用再編対策の推進にも資するため、
土地条件の
整備、
飼料作物の
生産利用の合理化施設の設置等を行う自給
飼料生産向上特別
対策事業等を
実施するほか、
飼料穀物の備蓄
対策及び配合
飼料の
価格対策を推進することとしております。
酪農、肉用牛、養豚の各部門についても、団地
育成事業を
拡充し、
地域の実情に応じて他畜種を組み合わせた畜種複合型の団地の
育成を図るとともに、牛肉
生産体制を緊急に
整備する必要があることにかんがみ、肉用牛団地
育成事業につき計画の繰り上げ
実施等を行うこととしております。また、家畜導入
対策、家畜改良増殖
対策の
充実にも努めることとしております。
畜産物の
価格、流通加工
対策については、肉用子牛の
価格安定
事業につき、保証基準
価格及び補てん率の引き上げ等を図るとともに加工原料乳に対する不足払いの
実施等
価格対策及び牛乳の
消費拡大対策を
充実するほか、牛肉をめぐる内外の諸
情勢にかんがみ、総合食肉流通体系の
整備を繰り上げ
実施するとともに、新たに部分肉の物流と取引の拠点としての部分肉センターの設置、食肉の小売店の協同組織による共同仕入れ、処理等を促進する食肉共同処理施設の設置等を行うこととしております。このほか、
畜産振興事業団の指定助成対象
事業においても牛肉の流通
改善を図るための
事業に要する経費を別途計上しております。
これらの
畜産振興対策として、総額千四百九十七億円を計上しております。
以上のほか、
農業機械の効率利用及び農作業の安全
確保を総合的に推進する等の
農業機械
対策、畑地の重粘土等の不良土壌を改良する耕土改良
対策等の地力
対策を
実施することとしております。
第二に、
農業構造の
改善と
地域農業の
振興に関する予算について申し上げます。
食糧需要動向の変化に対応した
農業生産の体制を
整備するためには、
長期的視点に立って、
農業への意欲と能力を有する
担い手の
育成と
後継者の
確保を図るとともに、これら
担い手、
後継者への
土地利用の集積による
農業生産構造の
改善を推進する必要があります。
このため、
地域の実情に即し、
担い手を
中心とした
農業の
組織化、
土地利用の
適正化、
生産条件及び
生活環境の
整備等を総合的に推進する新
農業構造改善事業を当面前期五カ年計画として総
事業費一兆円の
規模で発足させることとし、
昭和五十三年度は、計画樹立を行うほか、
水田利用再編対策の推進にも配意し、一部即着工を図ることとしており、総額五十六億円を計上しております。なお、第二次
農業構造改善事業については、これを計画的に推進することとし、総額六百五十三億円を計上しております。
また、意欲的に
農業に取り組む者の
自主性と
創意工夫を生かして
地域農業を推進し、
担い手の
育成、農用地の利用増進等を図るため、
地域農政特別対策事業等を
拡大実施することとし、百三十六億円を計上しているほか、
農地保有合理化促進事業の推進を図ることとしております。
農業後継者対策については、県の農民研修教育施設の計画的な増設を図るとともに、農村青少年活動促進
対策等の推進を図るほか、
農業後継者育成資金及び総合施設資金の貸付枠の
拡大を行うこととしております。
第三に、
農山漁村の
生活環境の
整備と福祉の
向上に関する予算について申し上げます。
農林漁業の
生産体制を
整備するためには、
生産の
担い手である
農林漁業者が居住する
農山漁村を、活力に満ち、豊かで
安定感のある
地域社会とすることが肝要であります。
このため、農村
地域を対象に
農村総合整備モデル事業の第三期
事業に着手するとともに、農村基盤総合
整備事業を積極的に推進するほか、新たに
林業及び
漁業集落の
環境条件を総合的に
整備する
事業をモデル的に
実施することとしております。
また、
農山漁村における就業
構造の
改善に資するため、
農業就業
改善総合
対策の推進に努めるとともに、新たに
生活環境の
整備、高齢者活動の
推進等を行う山村
地域農林漁業特別
対策緊急補足
整備事業を
実施する等
山村等の
振興対策を促進することとし、所要の経費を計上しております。
農業者年金制度についても、
農業者年金基金法を改正し、未納保険料の納付を特例的に認める
救済措置を講ずる等制度改正を行うこととし、三百八十四億円を計上しております。
次に、
農業者の健康の維持増進を図るため、
農業者健康モデル地区
育成事業等を推進するとともに、
生活環境改善対策の一環として、新たに
地域住民の共同作業により身近な
生活環境の
整備を行う手づくりのむら
整備事業を
実施するほか、農村婦人の福祉の
向上に資するため農村婦人の家の増設等を行うこととしております。
第四に、食品流通加工の近代化と
消費者対策の
充実等に関する予算について申し上げます。
農産物を適正な
価格で
供給し、
国民の食生活の安定に資するため、さきに申し上げましたように、
野菜、果実、
畜産物等について
生産、
価格、流通加工
対策を
拡充強化するほか、生鮮食料品の流通のかなめである卸売市場の
整備について百六十四億円を計上しております。また、新たに
食糧事務所の職員を活用して、食品の製造、流通段階における品質管理、
価格・
需給動向の予察等を行う食品流通
改善巡回点検指導
事業を
実施する等食品流通の
改善効率化等のための諸
施策を推進することとしております。
消費者保護
対策、食品産業等農林関連企業
対策、生鮮食料品等小売業の近代化
対策についても
施策の
充実を図っております。
第五に、農林漁業金融の
拡充に関する予算について申し上げます。
まず、農林漁業金融公庫資金については、新規貸付計画額を六千三百二十億円に
拡大するとともに、貸付限度額の引き上げ等融資内容の
充実を図ることとしております。また、さきに申し上げました新
農業構造改善事業について補助
事業のほか融資
事業を
実施するとともに、北海道及び南九州における
畑作営農
改善資金制度につき内容を
改善して延長することとし、所要の法律改正を行うこととしております。
以上の貸付計画に関連し、同公庫に対する補給金として七百五十六億円を計上しております。
次に、
農業近代化資金について、貸付枠四千五百億円を
確保するほか、
農業改良資金、
林業改善資金、漁業近代化資金について、それぞれ三百二十億円、四十三億円、千億円と貸付枠の
拡大を図っております。
第六に、森林、
林業施策に関する予算について申し上げます。
森林、
林業施策については、
林業をめぐる内外の諸
情勢に対処して、
国内林業生産の
振興と森林の公益的機能の発揮とを調和させつつ、その強力な
展開を図ることとしております。
まず、
林業生産基盤の
整備については、林道
事業として六百三十二億円、造林
事業として三百三十八億円をそれぞれ計上し、
事業の積極的な推進を図ることとし、新たに林道網の
整備と一体的に
林業集落の環境
整備をモデル的に進める
林業集落基盤総合
整備事業に着手することとしております。
国土保全
対策の
充実については、第五次治山
事業五カ年計画の第二年度として、治山
事業につき千百九十五億円を計上するとともに、森林開発公団による水源林造成
事業のための出資金百四十八億円を計上しております。
次に、
林業構造改善事業については、二百十億円を計上し、
事業の進捗を図るとともに、新たに
構造改善事業終了
地域等において、間伐促進等のための
生産基盤、
生産技術高度化施設等の
整備に重点を置いた特別
事業を
実施することとしております。
また、
林業の
担い手たる
林業従事者及び
後継者の
確保を図るため、新たに、
林業労働者の就労の実態に即した退職金共済制度の適用促進
対策を
実施するとともに、
林業普及指導
事業の一環として総合的な
後継者対策を講ずることとし、所要の経費を計上しております。
さらに、特用林産
振興対策については、シイタケ、ナメコ等の特用林産物の安定的
供給と農山村
地域における住民所得の安定に資するため、樹林造成、
生産、流通
改善施設の設置に加えて、新たに
生産基盤整備、広域流通基幹施設の設置等を含めた総合的な
対策として
拡充実施することとしております。
また、森林計画制度、保安林制度等の適正な
運用を図るほか、マツクイムシの防除を計画的に推進することとし、森林病害虫等防除
対策として五十二億円を計上しております。
以上のほか、木材の流通消費
改善対策等についても、
施策の
充実に努めております。
第七に、
水産業の
振興に関する予算について申し上げます。
二百海里時代の到来に対処して、
水産物の安定的
供給の
確保と
わが国水産業の
振興を図るため、水産関係
施策の大幅な
拡充を図るとともに、水産行政機構の
拡充強化を図ることとしております。
まず、
わが国周辺
水域内の水産資源の維持培養とその高度利用を促進するため、大陸棚斜面の未利用資源の
調査等を含め、資源
調査を大幅に
拡充するほか、沿岸漁業の
生産基盤である沿岸漁場の
整備開発を積極的に促進することとしております。また、栽培漁業の推進を図るため、栽培漁業センターの施設
整備等を促進するほか、沖合い養殖及び浮き魚礁等新方式による増養殖技術の開発を推進するとともに、サケ・マスふ化放流
事業等を
拡充することとしております。以上これらの
事業に要する経費として、総額二百十八億円を計上しております。
次に、遠洋海域の水産資源開発と遠洋漁業の新たな
展開の場を見出すため、海洋水産資源開発センターによる新資源、新漁場の開発
調査を
拡大実施するほか、漁業外交の推進、海外漁業
協力の
拡充等を図ることとし、これらの
事業に要する経費として、総額百五十一億円を計上しております。
また、水産資源の有効利用を図るため、イワシ、サバ等の多獲性魚、オキアミに重点を置いた利用加工技術の開発を推進するとともに、多獲性魚等の消費の促進を図ることとし、所要の経費を計上しております。
漁港施設の
整備については、第六次漁港
整備長期計画に基づき、沿岸、沖合い漁業の基地の
整備を重点としてその
整備の促進を図るほか、漁港の
整備とあわせて
漁業集落の環境
整備を行う
漁業集落環境
整備事業に着手することとし、漁港関連道の
整備を含めて、総額千三百十四億円を計上しております。また、沿岸漁業
構造改善事業についても、五十三億円を計上し、その計画的推進を図っております。
さらに、
水産物の
価格、流通加工
対策については、水産加工原材料の
供給事情の著しい変化に対応し、新たに水産加工業の原材料の転換等を促進するため設備の導入を推進する等
施策の推進を図っております。
また、最近の漁業を取り巻く国際環境の変化等の
情勢に対処して、
水産業経営の維持安定を図るために必要な長期低利の資金を融通するとともに、漁業近代化資金等制度金融を
拡充することとしております。
以上のほか、
農林水産業施策の推進のために重要な予算としては、試験研究費として八百三十六億円を計上するほか、
農業、
林業、
水産業の普及指導
事業及び
生活改善普及事業について、総額三百七十八億円を計上しております。
また、
農業災害補償制度の
実施について千二百五十億円、農林漁業統計情報の
整備充実に百七億円を計上しております。
次に
昭和五十三年度の農林水産関係特別会計予算について御説明いたします。
まず、
食糧管理特別会計については、
国内米、
国内麦及び
輸入食糧につき
食糧管理制度の適正な
運用を図るとともに、
国内産芋でん粉の
価格の安定並びに
飼料の
需給及び
価格の安定を図るため、所要の予算を計上しております。特に、米の
消費拡大を一層積極的に推進するため、米穀
需要拡大宣伝
事業の
充実を図るとともに、学校給食用米穀の特別売却の継続
実施に加え、学校給食米飯導入促進
事業の大幅
拡充等を行うこととしております。
食糧管理特別会計への一般会計からの繰入額は、調整勘定へ六千二十億円、
国内米管理勘定へ二百八十八億円、
農産物等安定勘定へ十九億円及び
輸入飼料勘定へ五十四億円を計上しております。
また、
農業共済再保険特別会計については一般会計から七百七十六億円を繰り入れることとしたほか、森林保険、漁船再保険及び漁業共済保険、自作農創設特別措置及び特定
土地改良工事の各特別会計についてもそれぞれ所要の予算を計上しております。また国有林野
事業特別会計については、国有林野における林道及び造林
事業につき一般会計からの繰り入れを行う等の措置を講ずることとしております。
最後に、
昭和五十三年度の農林水産関係財政投融資計画については、農林漁業金融公庫等が必要とするもの等総額六千八百九十九億円の資金
運用部資金等の借り入れ計画を予定しております。
これをもちまして、
昭和五十三年度農林水産関係予算の概要の御説明を終わります。