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磯村参考人 御紹介いただきました
磯村でございますが、
国民の一人といたしまして、このような
機会を与えていただきましたことに敬意を表したいと思うわけでございます。
私へのお問い合わせば、現在通称同
特法と言われておりまする
法律を中心にしました
課題についての私の考えということと思うわけでございますが、私は、五月
末日まで
政府の
総理府にございまする
同和対策協議会の
会長という
立場がございますわけでございます。したがいまして、ここで御
意見を申し上げるに当たりましても、おのずとそこに
基盤がございますということも御了承をいただきたいと思います。と同時に、若干、私のこの問題に関しまして多年考えてまいりましたことについて、触れさせていただきますることもお許しをいただきたいと思うわけでございます。
先般
同和対策協議会の
任期が終わりまするに当たりまして、
総理府長官に
意見書をまとめましてお
出しをしたわけでございますが、
意見書の
内容につきましては、すでに御
案内と思いますので触れませんが、その
意見書の性格について、ひとつ申し上げておきたいと思うのでございます。
この
同和対策協議会は、いわゆる
審議会あるいは
調査会ではございませんで、
政府の最も重要な
行政の一つでございます
同和行政の
連絡調整を図るということが
趣旨でございます。したがって、
委員の大半は
各省の次官が
委員の席を占めておられるわけでございまして、お
出しした
意見書には
各省の
意見も踏まえてということで、最終的には
総会の
全員の御
同意を得たものであるということをひとつ御銘記を願いたいと思うわけでございます。
その
趣旨は、一口で申し上げますれば、同和問題が現在
日本の
社会体制の中において占めておる、これから申し上げる重要な
役割りを果たしているという面からいたしますと、当面同
特法の
延長はその線に沿っているのが当然であるという
全員の御
同意を得て、
長官に
意見書をお
出ししたわけでございます。この点が、単なる御
諮問を受けてそこの
特別委員会だけで
意見をまとめたわけではございませんで、最終的には
総会全員の御
同意を得た上でお
出しをしたということでございます。
それで、
国会で
法律の御制定以来九年を経過して、その間同和問題の
解決にこの
法律が非常に大きな
役割りを果したということは、
協議会としても、
委員でおられる民間の方も
学識経験者の方も
行政の方も十分認めておられるわけでございます。したがって、そういうことも踏まえまして、先般、昨年の十二月、
長官から改めてこの
法律の今後のあり方について
協議会としての
意見をという
お話がございまして、早急にいろいろな
調査をいたしました。
従来、
協議会としては
総理府の
同和対策室と協力をして、いろいろな
調査もしてまいりましたが、その
調査の実績も踏まえまして一番焦点になりましたことは、十二月に御
諮問がありましてから二ヵ月の間に、従来この
法律を
適用いたしていない
地方自治体について、一体この
法律がなくてもいいのか、あった方がいいのか、あるいはどういうのかということを、直接この
特別委員会が出向いてその
意見を聞いたわけでございます。
御
案内のごとく、
東京都は
同和対策特別措置法を
適用いたしておりません。おりませんけれ
ども、
現実に
東京都はもちろんのこと、各区はこの
対策を
相当の財政的な
配慮をして
実施しているわけでございます。したがいまして、
東京都についても現地の三つの区を訪ねてそこの区長、もちろん
東京都の
知事――副
知事か代理でこざいましたけれ
ども、二日、三日にわたって
調査をし懇談をいたしまして、最終的に
意見を集約いたしましたのは、ぜひこの
法律は存続をしてほしい、
適用を受けないような
状態の中でも
同和対策は
実施しなければならないのだから、むしろそれが広い
意味で
実施できるように強化をしてほしい、こういう
意見がございました。
同じように
名古屋市におきましても、やはり
同和対策特別措置法は
適用いたしておりませんが、今度は
適用したいから、速やかにこの
延長の
努力をしてほしいということでございました。長崎県の佐世保市もやはり法の
適用をしておりませんが、全く
名古屋市と同じ回答を得ております。
こういったことを踏まえまして、先ほど申し上げました
長官に対する
意見書といたしまして、
各般の
事情を考えてまいりますれば、
同和対策特別措置法の
延長につきましては、これはその路線で御
配慮をいただきたいという結論になったのでございます。
実はこの問題は、冒頭に申し上げましたように、いわゆる同和問題という
日本の
封建体制の何か残りといったようなふうに考える向きもございますけれ
ども、
現実においてはそうではございませんで、あるいは
行政あるいはマスコミの
動き等によりましては、さらに
差別を再生産するというむずかしい
状況の中にあると判断をしているわけでございます。今回、
国会におかれましては、国連がすでに十一年前に条約として御決定になりました
国際人権規約の批准に御
配慮があるそうでございますけれ
ども、実は同和問題はその
原点につながる問題でございまして、したがって、この問題は単なる
地域の
改善ということだけで処理することではない。
しかし、
佐藤内閣のときに
同和対策審議会を設けられまして、そしてその結果として生まれました
同和対策特別措置法が、この十年近くにわたりまして、
日本の
社会のいわゆる
人権の
啓発に当たってかなり大きな支えになりましたことは、これはかなりの
国民の方に認識をしていただいているわけでございまして、そういう面の
役割りも果たしていただいたのがこの同
特法であると私
どもは考えているわけでございます。
そういったような同和問題を背景にいたしました
国民のこの問題に対する
理解が
人権問題として進んでまいりますればまいりますほど、そこに若干まだこの問題の
理解が不足しているという結果があらわれましたことは、まことに遺憾なことでございまして、皆様も御
案内のごとくこの二、三年、二、三回にわたりまして明らかに
差別を再生いたしますような地名総鑑といったものが売られ、これが大変申しわけないのでございますけれ
ども私
どものような大学までもこの名鑑を買うなんというような
状態におきましては、この問題が
同和対策審議会がお決めになりました
国民的
課題になるにはまだまだほど遠いものがあるのではないかということを痛感しているわけでございます。
現在、文部省におかれましては、小学校あるいは中学校におきましてこの問題をはっきり教えていただいております。これは当然であると同時に、この問題が
国民の
理解に非常に多く役立っていると思うのでございまするが、遺憾ながら私
どものような世代になりますと、まだこの問題に対する
理解が非常に不足をいたしております。したがいまして、その結果が地名総鑑なりあるいはその他の不祥事をしばしば起こしております。したがいまして、この面におきましてもこの
法律の精神をできれば拡大していただきまして、
基本的人権という面からこの
同和対策というものが必要であるということで、さらにひとつ
国民の支えになるような方向が出るようになりましたならばまことに幸いだと思うわけでございます。
最後に、実はこの
法律を実際に分担しておりまするのは
地方自治体でございます。したがいまして、
地方自治体の
意見を聞きますると、
法律のあるないにかかわらず、
地方自治体はここ九年間かなりの
努力をしてまいられたのでございます。その
法律が現在
国民の広い
理解を受けて、ようやくこの
同和行政も軌道に乗るようなところになってきたというのが
地方自治体の御認識でございます。この点は私
どもも、その御苦心に対しては心から敬意を表し、この
法律の
実施に当たりまして非常な苦心をされていると思うわけでございます。したがいまして、以上のような
立場を考えまして、私は
総理府総務長官に、
意見を全体としてまとめまして、できますれば当面
延長の方向で御
配慮をいただきたいという
意見を申し上げたわけでございます。
私、ここに一言も積み残しという言葉を申し上げておりません。現在、同和問題というものは、いままでの
行政のレベルでこれこれの仕事が残っておりますという段階の問題ではないと私は思っているわけでございます。もっと高い次元でひとつ御
配慮をいただき、もちろんいままで継続してまいりました仕事に対しての完遂ということは当然のことでございますが、もし
法律に対して何らかの御
配慮がいただけるようでございましたならば、せっかく
人権擁護についての国際的な御決意をなさるこの
国会におきまして、
日本的なその
課題の中において中心になりまするこの問題につきまして格段の御
配慮をいただければまことに幸いだと思います。
長く失礼をいたしましたが、この辺で終わらせていただきたいと思います。