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1978-08-16 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年八月十六日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長代理 理事 小宮山重四郎君    理事 高鳥  修君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       小島 静馬君    玉生 孝久君       萩原 幸雄君    増田甲子七君       上田 卓三君    木原  実君       栂野 泰二君    安井 吉典君       山花 貞夫君    新井 彬之君       市川 雄一君    柴田 睦夫君       松本 善明君    中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君  委員外出席者         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         国防会議事務局         長       久保 卓也君         防衛政務次官  竹中 修一君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁長官官房         防衛審議官   塩田  章君         防衛庁長官官房         防衛審議官   佐々 淳行君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      奥山 正也君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局法         規課長     柳井 俊二君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 八月十六日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   松本 善明君     柴田 睦夫君   中川 秀直君     田川 誠一君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の防衛に関する件      ――――◇―――――
  2. 小宮山重四郎

    小宮山委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が所用のため出席できませんので、委員長の指名により、私が委員長の職務を行います。  国の防衛に関する件について調査を進めます。     〔小宮山委員長代理退席高鳥委員長代理着席
  3. 高鳥修

    高鳥委員長代理 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮山重四郎君。
  4. 小宮山重四郎

    小宮山委員 防衛庁長官がこの六月二十日欧米を視察されて以来、大変いろいろな問題が起きております。  まず、防衛庁長官から、時間がございませんので、簡単に欧米の視察の状況についてお伺いしておきます。
  5. 金丸信

    金丸国務大臣 お答えをいたします。  今回の私の出張は、欧米軍事事情を視察するため、諸外国軍事施設等を見学するとともに、国防関係者にお目にかかり、私自身のはだで外国国防体制の実態に直接触れる機会を持ちたいと考えたものであります。  日程につきましては、六月十三日に出発いたしまして、ヨーロッパを訪問の後、米国を訪れ、六月二十六日に帰国いたしました。  会談内容については、ヨーロッパで、ルンスNATO事務総長ヘイグ欧州連合軍最高司令官アペル西独国防大臣等要人とお目にかかり、先方からはこもごも最近におけるソ連の著しい……(「そんなものを読んだら日本防衛庁長官らしくないじゃないか」と呼ぶ者あり)まあ読ませてください、これだけは。報告のようなつもりで書いてきたわけですから。  最近におけるソ連の著しい軍事力増強状況を憂慮していること、通常兵器の面においては西側が劣勢にあり、これをカバーするため、さきにNATO長期防衛計画の決定が行われた旨の説明がありました。  米国では、ブラウン国防長官を初め、ブレジンスキー大統領特別補佐官等政府関係者並びにプライス下院軍事委員長、ウルフ下院アジア太平洋問題小委員長及びグレン上院東アジア太平洋地区小委員長ら議会関係者と懇談し、世界及びアジア軍事情勢日米相互に関心を有する安全保障上の諸問題等について率直に意見の交換をいたし、相互理解を深めてまいりました。  特にブラウン国防長官と私の会談においては、私から日米安全保障体制重要性を強調し、同体制信頼性をより向上させるため両国が相互に密接な接触と率直な対話を進めることが必要であると述べたのに対し、同長官は強く賛同の意を表するとともに、今秋予定されている訪日をぜひ実現したいとの意向を表明いたしました。  また、ブラウン長官は、いわゆる米国アジア離れを明確に否定するとともに、日米安全保障体制重要性を再確認し、アジアにおける軍事的プレゼンスについて、計画されている在韓米地上軍撤退を除いては、現在水準が維持され、在韓米地上軍撤退は朝鮮半島の安全を維持し得るスケジュールによってのみ行う旨述べました。  なお、駐留軍経費の問題については、私から思いやり立場地位協定範囲内でできる限りの努力を払いたいと考えており、現在具体的数字を挙げて約束することはできないが、ブラウン長官訪日までに防衛庁考え方をより詳細に説明できるよう努力する旨述べましたところ、ブラウン長官はこれを高く評価し、特に米側から要望はありませんでした。  さらに、沖繩日本人従業員雇用確保についてブラウン長官米側の配慮を要望したところ、これに対し同長官はできるだけの努力をする旨約束をいたしました。  私が成果として挙げたいことは、第一に欧米各国防衛関係要人とひざを交えて意見を交換することによって相互理解が深まったことであります。  第二に、私を初め同行の防衛庁の幹部が、各国軍事施設等を視察することによって見聞を広めることができたことであります。  最後に、最大の成果であったことは、いわゆる米国アジア離れが明確に否定され、日米安全保障体制重要性が再確認されたことであります。  わずか十日余りの駆け足的旅行ではありましたが、大変有意義であったと考えておる次第であります。
  6. 小宮山重四郎

    小宮山委員 いまの訪欧米報告の中で、ブラウン長官に対して駐留軍経費思いやり立場負担増意向を示したということが述べられております。また、ブラウン長官訪日までに防衛庁考えを詳細に説明できるよう努力する旨述べたということでございますけれども、来年度予算概算要求では、この点についてはどのようになっておるか、御説明願いたいと思います。
  7. 亘理彰

    亘理説明員 お答えいたします。  いま大臣の仰せられましたいわゆる思いやり在日米軍駐留経費負担の問題は、直接には防衛施設庁予算関連するわけでございます。ただいま私ども関係省庁とも協議しながら幅広く検討しているわけでございますが、そのすべてについて検討が終わっているというわけではございませんが、そのうち施設関係につきましては、たとえば家族住宅が各地で大変不足しておるあるいは隊舎が老朽化しておるというふうな問題も前々から出てきておりまして、これらについてはこの八月末の概算要求におきましてしかるべき金額要求を織り込みたいということで、いま最終的な詰めをいたしておるところでございます。今日ただいまの段階で具体的にその内容金額を申し上げることはできないのでございますが、この月末にはしっかり詰めまして、概算要求に織り込みたいと考えております。  施設以外の点については、労務費の問題があるわけでございますが、これについては地位協定に抵触しない範囲でどういうものを日本側は持つべきであるかどうかというふうな点については精細な検討を必要といたしますので、まだ結論に達してはおりません。施設関係については、申し上げましたように月末の概算要求に織り込みたいというふうに考えております。
  8. 小宮山重四郎

    小宮山委員 そのほかに、沖繩日本従業員雇用確保、最近また何か解雇されるというような新聞報道がございました。ブラウン長官との約束がありながら、このようなことになったことについてはいかがお考えですか。
  9. 亘理彰

    亘理説明員 在日米軍、特に在日米陸軍は、一昨年から再編成計画を進めておりまして、それに伴いましてその業務の一部を海兵隊あるいは空軍に移官するということに伴いまして従業員のある程度の整理が避けられないという問題がこの春以来出ておったわけでございます。これは恐らく米軍としてはできるだけ早く決着をつけたいという考えであったと思われるのでございますが、特に、最近におきます昨年後半からの異常な円高ドル安傾向等にかんがみまして、米軍駐留経費大変窮屈になっておるという事情関連がございまして、米側にはその経費節減の見地からもそういう強い意向がかねてあったわけでございます。  これにつきましては、先般、アメリカに参られた節にも、大臣国防長官初め会われた方々にあらゆる機会をとらえて、沖繩の深刻な失業情勢状況等にかんがみて雇用確保に最善を尽くしてもらいたいという話をされまして、米側もできるだけの努力をする。しかし、なかなか米側の内部にはまたむずかしい事情があるということで、私どもはこの情勢を厳しく受けとめておったわけでございますが、米側もこの大臣の要請を受けまして、いろいろ努力したと思うのでございますが、七月末に約八百人の人員整理を十月末に行わざるを得ないという趣旨発表があったわけでございます。  ただその発表におきましても、米側はなおこの雇用確保については引き続いてできるだけの努力を続ける、こういうことを申しておりまして、私どもも実際の解雇が一人でも二人でも少なく済むように最大限の努力をしなければならないということで、いま私ども事務レベル段階在日米軍と鋭意折衝しておるところでございます。いずれしかるべき機会に、大臣からも在日米軍首脳部に対して申し入れをしていただきたい。そしてできるだけの雇用確保ができるように図っていきたいというふうに考えております。
  10. 小宮山重四郎

    小宮山委員 またブラウン長官との会談で、長官日韓台運命共同体であるとか、これは国民政治研究会の七月三十一日の講演の中で発言をされている。その真意、またそういう発言ブラウン長官との間に行われたのか、その辺について長官から真意をお聞きしたいと思います。
  11. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題につきましては、私は、ブラウン長官米中正常化という問題についてアメリカが将来どのように考えるかという話の中で、向こうから台湾の問題については同盟国だから約束は絶対守るという話があったわけであります。守るという点につきましてはペルシャ湾航路あるいはハワイ航路、こういうものはアジア同盟国にとっても非常に大切なことであるから、この問題についてはアメリカ約束を必ず守っていくという話、私も防衛庁長官として、いわゆる台湾という問題につきましてはタブーにして口にすべきことでないというように言っておったわけでありますが、あえてアメリカがその話に触れたものですから、その話を政治研究会とかの会に行って講演を申し上げたわけであります。  ただ、その問題につきましては、その地域が、あるいは韓国がいわゆる非常に重要な地域であるという意味を含めて、私は、もし一つの国がおかしくなれば日本もおかしくなるし韓国もおかしくなるというような意味で、運命共同体と言ったことは間違いはありませんが、省みてこれは少し言い過ぎたというところで、その会で私はこの点につきましては訂正、取り消しをいたします。こう言ったわけであります。なお、記者諸君も大ぜい入っておりまして、出てまいりましたら、あれは取り消しをしてもしゃべったことだからだめだ、こう言う。  まあそういうことで、実は私が取り消しました真意というものは、いわゆる日中問題の話し合いの最中であるということも考慮し、あるいは台湾韓国を植民地政策的な考え方で将来日本は併呑するというような考えを持たれてもこれもいかないというような、あれやこれやを思って私は取り消しをいたしたわけでありますが、新聞に出てしまったことは確かであります。そこで、きのう閣議がありまして、これは私も心配いたしたのですが、閣議の終了後外務大臣の園田さんが私に、実はこの日中条約締結の話の途中において金丸防衛庁長官という名前が出た、はてこれは運命共同体かということで非常に心配をいたしたところが、五十三年度の防衛白書を見て、非常に筋金が入った防衛白書だ、なお、金丸防衛庁長官防衛の姿勢は筋が通ってまことに結構だという話があったということもつけ加えておきます。
  12. 小宮山重四郎

    小宮山委員 大臣、少し話がエスカレートされてくると、台湾という問題は防衛の上でどう扱うのかというような問題も出てまいります。しかし、もう一つお伺いしておきたいのは、日中平和友好条約締結ということの念願がかないました。これについて、国際情勢軍事情勢へ与えた影響というものについて長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  13. 伊藤圭一

    伊藤説明員 日本の安全にとりまして周辺諸国との友好関係というのが一番大事だと私どもは思っております。そういう観点から軍事情勢の分析を行っているわけでございますが、御承知のように、世界的に見ますると、超軍事大国でありますアメリカソ連が対峙しているという情勢がございます。しかしながら、この極東におきましては、アメリカ中国ソ連のいわゆる三極構造というような形になっていると思いますし、アメリカのいわゆる前方展開によりまして極東にはかなり強力な軍事力というものを展開いたしております。そういう情勢のもとではこの極東におきまして大きな紛争というようなものは抑制されていると思うわけでございます。このような軍事情勢に基本的な変化があるとは考えておりませんし、また日中平和友好条約締結によりまして日本中国の間の友好関係が確立されたということは歓迎すべきことだというふうに考えております。
  14. 小宮山重四郎

    小宮山委員 あと、思いやりとは何ぞやという話とかいろいろなことを聞きたいのですが時間がございません。先に進まざるを得ませんけれども長官が出られてから現在まで相当の問題、特に栗栖議長問題等々いろいろな問題がございますが、その問題に入らせていただきたいと思います。  まず第一に、栗栖統幕議長辞任に至った経緯をお伺いいたします。
  15. 渡邊伊助

    渡邊説明員 事実関係について、私から申し上げたいと思います。  今回の栗栖議長のいわゆる超法規的行動云々発言は、週刊誌のインタビューにおいて発言されたのがきっかけでございまして、七月十九日の記者会見で同じような趣旨発言をされた。翌七月二十日に新聞で一斉に報道されたということでございまして、この発言について、長官としては統幕議長発言としては適当だとは思われない、看過できないという趣旨の御意向栗栖議長に伝わりまして、この長官の御意向を聞いて、長官信任を失ったと判断をして進退伺い及び辞表が提出されたというものでございます。  その要旨は、いわゆる超法規的行動云々発言に関する報道によりましていろいろ世間を騒がせ、長官に御迷惑をおかけいたしました、これは大変慮外のこととはいえ遺憾にたえないところであり、長官信任を得られなくなったので職を辞したい、こういう趣旨のものでございました。これを長官が受理されたという経過でございます。
  16. 小宮山重四郎

    小宮山委員 栗栖発言の超法規的行動、そういうことで結局退職された。自民党の一部あるいは国民の大ぜいの方々が、栗栖議長発言を正しいことを述べた、本音を述べて退任せざるを得なかったというのは大変残念だ、防衛庁の中にはたてまえと本音があるのではないかというような言い方をしている方も相当いらっしゃいます。かつ防衛庁の高官の中では、防衛出動発令の前に奇襲を受けたとき現地部隊は撃ち返すな、逃げろということを言っている。つい最近テレビの中でティーチインという番組がございました。総評の太田議長栗栖議長発言中隊長的発言だと言っておりましたけれども、そのときに栗栖議長は、確かに中隊長的発言である。そういうことを言っておりました。これは現行法規の中では何も規定がない、ですから、現地部隊は撃ち返さないで逃げろというようなことであって、こういう敗北主義的なことでいいのだろうか、これでは部隊そのものの士気がどうなるのだというようなことがわれわれの感想の一部でございます。その点について長官からお答えを願いたいと思います。
  17. 金丸信

    金丸国務大臣 栗栖君の問題につきましていろいろの御批判があることは確かであります。ただ私は、いわゆる超法規行動という言葉林修三先生も使っておるということを聞かされました。しかし、林修三先生の言う超法規行動あるいはマスコミの方々の言うその行動、そういうことはその立場立場で言っても問題はないと思うけれども、いわゆる自衛隊最高責任者である防衛庁統幕議長が超法規行動ということを言っては国民に誤解を招くというような考え方で、また私は奇襲という場合、いわゆる内閣総理大臣命令の出る間、その間はどうするのだ、いまはそれに対する対応方法がないじゃないか。私ということでなくて、前三原長官がそういう問題については有事のときはどうするのだ、そのことについての対処方法あるいは法律考えろというようなこと。また私が防衛庁長官になりましてアメリカへ行く前に、防衛研究の問題あわせていわゆる有事のとき、栗栖さんが言わんとする心情は私は全くわかる、わかるけれども内閣総理大臣の命を受けるまでの間のそれをどうするのだ。たとえて言えば奇襲という問題がある。奇襲という問題が絶対ないような方法考えるということも私は一つであろう。また、その総理大臣命令を受ける二時間なりあるいは三時間ただ逃げろ、これは受けられぬ。しかし自衛隊が創立して二十四年ということを考えてみますと、まだ非常に歴史も浅い、また当時、三矢研究というようなことで制服だけでこの問題を論議して、いわゆるクーデターをやるのじゃないかとかあるいは総動員法令のようなものを考えるのじゃないか、いろいろな御批判を受けて、当時の防衛庁長官は非常に困惑した問題もあったと私は承知をいたしております。  そういうようなことをあれやこれや考えると、その研究もしなさい。そういう中に入っている栗栖さんであるとするならば、私に言うのであれば結構です。部内で言うことは結構だけれども、これをいわゆる外に向かって言う立場ではない。戦前の日本にしてはいけない、これが私の――まさにこれがシビリアンコントロールです。こういうような考え方でこの問題に対処いたしたわけであります。
  18. 小宮山重四郎

    小宮山委員 金丸長官栗栖議長を俗に言う言葉で言うと切られた、泣いて馬謖を切られたということであろうと思います。しかし、いま国民の中で大変問題になっておりますことは、超法規的行動有事立法とを混同しているような感じ、この辺の二つの仕分けというのはどういうふうに考えるのですか。
  19. 竹岡勝美

    竹岡説明員 栗栖統幕議長発言があって、それを契機として防衛庁有事立法研究を始めたような感触でときには聞かれておりますけれども、これは事実と違いまして、有事立法研究ということは、昨年の八月に三原長官指示を受けまして、また、昨年の十一月に金丸長官が着任されましてからも、金丸長官から改めてその指示を受けまして、有事法令勉強をせよ、このように言われたわけであります。  最近言われておりますこの有事法令二つの問題があろうと思います。一つは、有事法令というのは、現在の防衛二法以外の一般わが国法制でありますけれども、このわが国一般諸法制というものがいわゆる有事――有事というのは、この際、わが国に対しまして外部から武力攻撃があった場合、これをわれわれは考えておるわけでございますが、そういったわが国が侵略されたような場合にわが国がどうあるべきかということ、防衛二法以外の一般法制ではそういうことについて余り触れておりません。  そういうことで、防衛庁としましてはやはり防衛責任があるわけでございますから、もし万一わが国がそういった有事の事態になりますときに、国内で戦うわけですから、国民避難誘導なりあるいは恐らく自衛隊が率先して戦うわけでございますが、その自衛隊防衛活動等につきまして他の諸法制について現在欠陥があるかどうか、これで十分なのか、あるいはこれだけで足らないのかどうか、そういったわが国の諸法制全般につきまして防衛観点からよく研究しておけということで進めておりますのが、いわゆる有事立法研究でございます。  一方、われわれは前から防衛二法、これはまさに有事法でございますが、この防衛二法につきまして、もう二十何年たっておるわけでございますから、防衛庁だけでまた別個に、現在の防衛庁設置法あるいは自衛隊法、これだけで十分かどうかもう一度よく見直してみようじゃないかということで進めておるわけでございます。いまたまたま栗栖氏が超法規的行動をとらざるを得ない、これはまさに有事立法という問題ではなくて防衛庁設置法あるいは自衛隊法というわれわれの持っておる法律のいわゆる有事法防衛庁関連法の問題でございます。それに若干問題があるから超法規的行動をとらざるを得ないのじゃないかというような話を栗栖統幕議長は言われたわけでございます。  この防衛二法につきまして、自衛隊の運用上これで完璧かどうかということにつきましては、これは粟栖さんが指摘される前からも、制服とわれわれの方では前から問題意識を持っておりまして、防衛二法の見直しという観点からその面の勉強もしておるわけでございます。ですから、あくまでも栗栖さんの今回の発言契機にして有事立法勉強をせよと言われ、あるいは始めたというわけのものではございません。昨年の八月からわれわれは有事法令勉強をやっておるというように御理解願いたいと思います。
  20. 小宮山重四郎

    小宮山委員 昨年の八月から、三原防衛庁長官時代から研究をされている。しかし、有事立法というものが非常に広範囲に及ぶ。たとえば奇襲攻撃だけではない一つ混乱、国内的な混乱が起きても防災あるいは医療、食糧、人員の移動、輸送等相当の問題を含んでいる。それをただ防衛庁だけでやれるのであろうか。これは何か新しい機構をつくって、あるいはプロジェクトチームをつくってその法律的な研究をするのか、立法的な研究をするのか、また、それはだれが主宰するのか。国防会議というのは国防に関する問題でございます。ですから、なじまないものだろうと私は思っております。その辺についてはいかがお考えでございましょうか。
  21. 竹岡勝美

    竹岡説明員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたいわゆるわれわれの有事法令研究、これはまさに先生御指摘のとおり、各種の法令に問題があるわけでございますし、また、それぞれの法令はそれぞれの主管官庁もあるわけでございます。しかし、いまわが国の現状を見ますときに、そう差し迫った危機があるわけでもございませんし、いまあわててこれの立法手続をとらなければならぬというような事態でもございませんし、また、それだけの国民のコンセンサスがまだできておるわけではないと思うわけでございます。  ただし、防衛庁だけは、これは防衛責任を持っておりますので、長官からいわゆる現行の憲法の範囲内で――やはり最終的には恐らく、もしそういう事態が起こるようなことが予想されて国民の危機感が出てきた、国民に危機感がある、国民のコンセンサスでそういう有事立法を早く立法せよというような事態になりますならば、内閣の責任におかれまして高度の政治的判断で、各省庁に命じまして各省庁の主管法令の立法手続を言われることになろうと思いますけれども、現時点ではまだそういう事態ではございませんので、防衛庁自体が、いわゆる自衛隊の有効な活動のために、あるいは国民避難誘導のためということで防衛責任を持っておる防衛庁がゆっくりとその点の研究防衛庁自体で進めておくべきであろうという判断のもとで、研究をしておるということでございます。恐らくこれを立法手続をとれよとかあるいはどのようにしてやるかということは、そのときの内閣の判断で決定されるでありましょうし、あるいは防衛庁長官からわれわれに対してもそういう指示があろうと思いますけれども、現時点では防衛庁自体で研究を進めておるということでございます。
  22. 小宮山重四郎

    小宮山委員 新聞によりますと、内閣総理大臣から、あるいは官房長官からこの問題について研究するようにという指示があったやの報道がございますが、その点がどうだったか。  それからもう一つは、何か事が起こったらつくるということになりますと、あるいは憲法の基本的人権というような問題が侵害される大変大きな問題が出てくる。それよりも平時にこういうものをつくっていった方がいいのではないかという声もございます。いわゆる有事になったときに、それがためにぱっとつくられたということで大変大きな問題を提起し、かつ、それが憲法に触れるような問題が出てくる、そういうようなことがないように私は早くつくるべきだと思う。また、その機構をしっかりするべきだと思うが、その辺についてはどうでございましょう。
  23. 竹岡勝美

    竹岡説明員 先生の御指摘のまず最初の方でございますけれども、先月の二十七日に防衛白書の了解を得ますために国防会議の議員懇談会を開きまして、二十八日に防衛白書を出しますための説明閣議でございました。そのときに政府あるいは総理あるいは官房長官から有事立法勉強をせよという指示が初めてあったということではございませんので、先ほどからたびたび言っておりますとおり、昨年の八月、三原長官から防衛庁勉強しておけとわれわれに指示がありまして、このことにつきましては、当時から内閣総理大臣の了解を得ているというように聞いております。ただ、閣議なり国防会議議員懇談会のときに総理の方から、あの有事立法勉強はどうなっているかというような関心は示されたということは聞いておりますけれども、あのときに初めて総理から指示があったというものではございません。昨年の八月以来、防衛庁長官指示によってわれわれやっておることは、すでにそのときから総理も御了解いただいております。  それから後の方の問題でございますけれども、いつ立法手続をとるかという問題でございますけれども、おっしゃるとおりわれわれは、お互いに平静な平時のときに憲法の枠内で勉強せよという指示を受けておるわけでございます。事有事ということになりますと、この狭い国土で国民が非常に悲惨な目に遭うわけでございますから、そういう場合におきましてある程度の国民の権利、そういったものにもいろいろ問題があろうと思います。そういうことも含めて、こういう静かな平時のときにおきまして憲法の枠内でゆっくり考えておくことの方がプラスだと思います。恐らく有事のどたばたになって一挙に云々というよりも平素から勉強しておく方が正しいとわれわれは思います。  ただし、これの立法手続をいつするかということですね。何かいたずらに国民に危機感をあおるようなことがあってもいけません、何か日本が非常に危険になったというようなことではないわけでございますから。しかし、その判断は高度の政治的判断で、いつどの時点において立法手続をやれということが示されるであろうというように私は期待しておるわけでございます。
  24. 小宮山重四郎

    小宮山委員 要は憲法の範囲内で有事立法というものを進めていく。しかし、これは意見の相違でございますけれども防衛庁だけでやるということではいけません。もっと大きな組織を持って、常に公にいろいろな場合を想定して考えていく、その都度国民に問うていくというような方法の方が国民の方は非常に安心していく。  たとえば、いろいろな問題で外国の艦船に日本の漁船が不法拿捕された。これは非常にむずかしい認定ですけれども、そのとき自衛隊は何もできないというようなこと、あるいは航空機が入ってきた、そういうような問題についてどうも国民自衛隊に対しての不信感があるが、なくたっていいじゃないかというようなところまでいかれては困る。そういう事例についてやはり常々発表していくような形をとるべきではないか、私はそういうふうに思っております。たとえばいま漁船が拿捕された場合に、そばに自衛艦がいてもそれを救助できないと言われておりますが、その辺についてはいかがでございましょうか。
  25. 竹岡勝美

    竹岡説明員 いま言われましたような事例は、私先ほど言いましたように、まさに自衛隊法の方の、いわゆる有事法であります防衛関連法の方の問題であろうと思います。この内容につきましては、後で防衛局長が答弁いたすと思います。  それから当然諸官庁の法律が多いわけでございますから、われわれももし必要であるならば、やがては諸官庁とも勉強していかなければならぬとは思っておりますし、またできます範囲でありますならば、できるだけ国民の皆さんにもわかっていただきたい、このように思ってはおります。  あとは防衛局長が答弁いたします。
  26. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ただいま先生から御指摘がございました二つの場合、海上におきます拿捕の問題と領空侵犯の問題について御説明申し上げます。  御承知のように、いろいろなケースがありますときに海上自衛隊は何をしているのだというような一部の国民批判もございました。しかし、先生も御承知のように日本法律では、平時におきます領海侵犯に対する措置というものは、権限を持っております海上保安庁の任務になっているわけでございます。したがいまして、海上自衛隊の自衛艦がそのような状況を目撃した場合、たとえば殺されているというようなことでございますと、これは正当防衛というような範囲である行動がとれるかとは思いますけれども一般的にはその状況を監視しておきまして、その権限を持った海上保安庁の艦船がそこに来て事件を処理するというたてまえになっているわけでございます。  なお、領空侵犯措置につきましては、これはどちらかと言いますと、平時におきます警察行動でございまして、法律によりまして航空自衛隊の任務になっているわけでございます。  この領空侵犯の措置につきましても、これはいろいろな情勢のもとに行っているわけでございまして、現在は、この領空を侵犯しました飛行機に対しましては領域外に出るように命じたりあるいは着陸を命じたりするわけでございます。その際にも、正当防衛あるいは緊急避難という形におきましては武器の使用が許されていると私どもは思っているわけでございますが、その個々のケースにつきまして、ではどういう場合に正当防衛と判断できるかというのは、これは千差万別でございまして、一応私どもの内訓では、相手が攻撃姿勢をとったような場合、これはまさに正当防衛に当たるだろうというような考え方をとっているわけでございますが、その点先ほど申し上げたように領海侵犯の措置とそれから領空侵犯の措置、これに対する自衛隊の任務というものは違っているということを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  27. 小宮山重四郎

    小宮山委員 いまのは、領空侵犯のときに、正当防衛あるいは緊急避難の場合にはパイロットは相手機を撃墜することができるという意味ですね。そういう指示は出ているのですか、出ていないのですか。
  28. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは正当防衛、緊急避難の際には武器を使用することが許されております。武器の使用が許されているということは、場合によっては撃墜ということにもなろうかと思います。
  29. 小宮山重四郎

    小宮山委員 指示が出ているのかどうか。
  30. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは内訓の中でそういった指示は出してございます。
  31. 小宮山重四郎

    小宮山委員 超法規行動とか有事立法とか防衛研究とかいろいろな言葉が使われて、国民が大変に理解に苦しんでいる。たとえば防衛研究の中では三矢事件とはどう違うのだとか、その辺についてもお伺いしておきたい。大変混乱が起きておりますので、その辺についてもお伺いしておきたいと思います。
  32. 金丸信

    金丸国務大臣 自衛隊が憲法上云々というような問題もあります。あるけれども自衛隊が創立されてから二十四年間、二十七万の自衛官をいま擁しておるわけでありますが、現実の事実として自衛隊は何のためにあるのか。最小限の防衛で専守防衛ということが自衛隊の基本方針であるならば、この二十七万の自衛隊を維持していくために国民の税金一兆九千億を使いながら、一朝有事のとき、その対処の方法等を何も考えておらなかったということになれば、何のために自衛隊があるのかということになる。有事のために自衛隊があるということであるならば、その有事に対処する対処方法あるいは戦略の研究もやらなくてはならぬ。あるいは有事のときの立法の考え方も、これは当然政治優先でありますから、ある程度まとまったものができるならば国民の前にこれを出して、国民に十分審議していただくということは当然だと私は思っております。
  33. 小宮山重四郎

    小宮山委員 シビリアンコントロールが主体となって、有事のためにどうあるべきかという研究を昨年の八月からやられておる。ただ、二十四年たった自衛隊がやっと腰を上げたということ、それに対して私はもっと勇気を持ってやっていただきたい、またシビリアンコントロールというものを確保しながら憲法の中で堂々とやることが必要であろうと思います。  きょうは大ぜいの方々の質問がございます。最後に三点御質問申し上げますけれども、民間防衛という問題が出ております。防衛白書に出ております民間防衛という問題、この趣旨と進め方について、これは北欧諸国では大変研究が進んでいるようでございますけれども、この点についてお伺いすることと、それからもう一つ、最近多い事件の中で防衛庁の機密文書が大量に中国に流れておる、そういう新聞報道を見まして、まる裸の自衛隊そのものではないかというような感じがいたします。寒心にたえないという一語に尽きるのじゃないか、この事実関係。また防衛庁での秘密保全体制、こういうものは当然持たなければいけないと思いますので、その点について。この三点についてお伺いいたします。
  34. 竹岡勝美

    竹岡説明員 五十三年の防衛白書の中にいわゆる民防という問題を一応記述しております。これはあってはならないことでございますけれども、万一わが国有事という事態になりましたときには、これは国内で戦闘が行われるわけでございますので、そうしますと一億の国民、こういう多くの国民の皆さん方の救護、防護ということが非常に大事な問題になるはずでございます。諸外国ではこの民間防衛ということは、先ほど先生御指摘のとおり、それぞれ組織を持ち、あるいは国民にそういった教育、パンフレットを配るなどの措置をとっておる国が多いようでございます。国民避難誘導あるいは避難所の設置あるいは応急物資の備蓄、そういった問題を平素から取り上げておるようでございます。幸いわが国は戦後三十三年非常に平穏に来ておりますので、国民の皆さん方にもそういった有事というようなことにつきましては、まだお互いに差し迫った危機感はないと思います。しかし、もし有事の場合にはこういう民防は非常に大事な問題でございますよということで、防衛白書で問題提起をしたわけでございます。  これは一に防衛庁のみの責任ではございませんし、防衛庁はまさに戦う方でございますので、あるいは消防なり警察なりあるいは国土庁なり建設省なり各省庁お互いが将来考えなければならない問題ではないだろうか、このように思いますが、いま政府としまして、民間防衛につきましてどこがどうあるべきかということはまだ決まっておりません。ただし防衛庁といたしましては、先ほど申し上げました有事立法というような関連で、国民避難誘導はどうあるべきだろうかということの研究はしております。現在、たとえば災害対策基本法とか災害救助法、これは大きな災害のときにどうあるべきかということで非常によくできておりますけれども、こういったものを参考にしつつ、現段階においては防衛庁防衛庁自体でわれわれなりの一応の勉強はしていき、将来、高度の政治的な判断でそういう民間防衛はどうあるべきか、政府はどのように取り組むべきかというようなことが決まりました事態におきまして防衛庁研究がお役に立てば、このように思っておるわけでございます。
  35. 伊藤圭一

    伊藤説明員 最近新聞に出ました機密文書の大量流出という問題がございました。御承知のように、防衛庁におきましては以前に秘密文書が部外に出たことがございますので、私どもこれを調査したわけでございますけれども、今回出ておりますのは、諸外国の公刊資料の中から必要なものを翻訳いたしまして集めたもの、これをいま陸海空それぞれが毎月編集して出しているわけでございます。これは部内の参考資料として出しているわけでございますが、一部、もと防衛庁におられて、そして軍事問題についてその後も研究しておられる先輩の方々等にも差し上げているわけでございます。そういう資料がかなり大量に集められていたということがわかったわけでございます。  私どもの秘密区分といたしましては、秘密保護法、これはアメリカからもらっております装備品の性能あるいは構造、そういったものは、法律によってこの保管については厳重にやっておるわけでございます。一方、庁内の秘密というものがございます。これは訓令によりまして区分してございますけれども、この秘密の文書につきましては、取り扱いを厳重にいたしておりますが、なお一層その管理体制検討し、強めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  なお、今回集められておりました技術情報というものにつきましては、これは先生も御承知のように、現在各国が集めております情報というものは、その大部分が公刊の資料でございます。そういうものによって各国の軍事技術の動静あるいは軍事思想の動向といったものを研究しているわけでございますが、これにつきましても部内の参考資料として配ったものがそういうふうにかなり多量に出ていったということについては、私どももこの管理体制を強化してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  36. 高鳥修

  37. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、最初に、防衛庁長官に対する宿題について回答を願いたいと思います。  過ぐる本委員会で、択捉島におけるソ連軍の上陸演習進行中という栗栖統幕議長発言関連して、防衛庁長官は私に、この問題についての処置を報告すると約束をされました。あれから二カ月も経過していますけれども、私はまだこの報告に接してはおりません。まことに誠意のない態度だと言わざるを得ないのであります。この点長官は記憶しておられますかどうか、お答えを願いたいと思います。
  38. 伊藤圭一

    伊藤説明員 最初に先生におわびしなければなりませんけれども、その後の状況について御報告するということを先生に申し上げたわけでございます。実は私、大臣のお供をいたしましてアメリカに行った後、先生にも御報告いたしたいと思って一、二度御連絡したわけでございますけれども、連絡がとれなくて大変申しわけなかったわけでございますが、実は新たに御報告するような事情というのはその後も起こっていないというのが現在までの状況でございます。あのとき私が御報告いたしましたように、あるいは演習を行ったかもしれない、あるいは部隊が移動していったかもしれない、あるいは基地の建設の資材、要員が運び込まれたのかもしれない、その後どうなっているかということにつきましては、いまだに確認できる状況ではないわけでございます。  私が大臣のお供をしてアメリカに参りましたときにも、この点については質問をいたしました。向こうのアメリカ側の答えというのは、いま私が申し上げたような域を出なかったわけでございます。そこで、じゃその三つのケースの中でどれが一番可能性としては強いかということも聞いてみました。それもなかなか言える状況ではないけれども、現在の航空機、艦艇の動き等から判断すると、大規模な演習の可能性というのはどうもないようだというのが答えでございました。御承知のように、人工衛星その他によりましてその後の状況はつかめているのではないかということも考えたわけでございますけれども、実際問題として、あの辺の状況というものははっきりつかんでいないという状況でございまして、大変申しわけございませんけれども先生に御答弁申し上げました後、格別の変化、新しい事実というものはつかんでいないわけでございます。
  39. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題につきまして私から答弁しようと思ったのですが、防衛局長から答弁いたしたのですが、私もその話は十分承知いたしておりまして、この話はいま一度先生のところへ行って説明をしてこい、こういうことを言ったわけでありますが、ただいま防衛局長が、二度三度訪ねたけれどもおられなかったということでお許しを願いたいと思います。
  40. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 防衛局長が二度三度お訪ねになったというのは正確じゃないですね。私は訪ねられておりません。その点ははっきりしておきたいと思います。  そうしますと、要するに、防衛庁としては、択捉島問題については統一見解をいまだに持ち合わしていないということだと理解してよろしゅうございますか。
  41. 伊藤圭一

    伊藤説明員 何が起こったかという確認した統一見解、それはないということでございます。
  42. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直に申し上げて、国民にいろんな不安を与えただけではなしに、国際関係にも微妙な影響をもたらしているということは、私もこの前申し上げました。そしてそのことについてその事実を率直に認められました。そのような影響というものをもたらしたのは防衛庁――栗栖発言に端を発していますが、防衛庁がその問題に対する火元であります。そしてそれだけの国民的な不安や国際的な関係に影響を及ぼしたものについて、その後二カ月も経過していながら統一見解も持っていない。あれもあるかもしれないけれどもこれがあるかもしれない、結局大したことはなかったということをいま言わざるを得ないという経過について、私は非常に危惧を感ずるのです。つまり何か起こるぞ、何か起こるぞと、だから軍備を強めなければならないという論理、軍備増強のてこに使っていくというやり方をこの手口の中でもかなり露骨に示したものだと言わざるを得ません。  私は、国会でのやりとりで議事録になっている言葉の中で、いつか防衛庁長官からそのお話があるだろうということを信じて疑いませんでしたけれども、今日までそれがない。つまりそのことは私の問題ではなくて、国民に対して、この種の問題に対する防衛庁責任のとり方というものがきわめてあいまいであり、無責任である、こう指摘せざるを得ないわけでありまして、この点について、防衛庁長官からもう一遍御答弁を煩わしたいと思います。
  43. 金丸信

    金丸国務大臣 私がアメリカへ参りましてこの話を尋ねてみましても、まことにあいまいな面もあったわけであります。当時いろいろ御質問を受けまして、栗栖統幕議長のあれは判断ですから、全然演習ということも可能性が皆無ということでもない。また、その後防衛庁としての見解を国会で述べました。伊藤防衛局長の述べましたそのことも、私は可能性の一つだというように思って、そのときいろいろその責任はどうだというようなお話もありましたが、私はアメリカへ行ってまいりましても、それがなかなか判然としないという状況、これは先様のことでございますし、判断というようなことで国民に与えた影響というものは十分私も胸に刻まれておるわけでありますが、その問題、それだけでどうするということの判断は私にはつかない、どちらにも可能性があった。ただ強いて言うならば、栗栖君の発言というものは防衛庁の統一見解でなかったということだけは確かだと私は思うわけであります。
  44. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私の言いたいのは、国民に不安を与え、国際関係に微妙な影響を与えたという防衛庁責任ということを問うているわけであります。いま栗栖さんの発言についての統一見解であるかないかということを聞いているんじゃないんです。その点の長官の誠意ある、これは非常に政治的な意味を持っていると思いますが、反省の言葉なりあるいはまたそういう経過について率直に見解を述べていただきたいと思います。
  45. 金丸信

    金丸国務大臣 その点につきましては、私は、国民に不安を与えた、こういう点についてはまことに責任を痛感をいたしております。こういうことの二度とないように私は当時関係者を戒めたわけでありますが、今後もさようなことのないよう万全を期してまいりたい、こう思っております。
  46. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 栗栖統幕議長は、その後も例の超法規的行動という発言関連をして辞任させられました。先ほど人事局長から、辞表が提出されて云々という言葉がありましたけれども、世の中は、栗栖氏は解任をされたと受け取っています。それが正確だと思います。栗栖氏が、日本奇襲攻撃を受けたとき国会や政府が防衛出動を命ずるまで時間的空白が生まれる可能性があるので、その間自衛隊が独自で行動することもあり得ると言ったわけでありますけれども、これが憲法や自衛隊法立場を無視する発言であることは言うまでもございません。その立場から見て解任は当然だと私も考えます。自衛隊が政治の意思を離れて独自に行動することが許されないことは言うまでもありません。いま問われているのはシビリアンコントロールのあり方、つまり政治の軍事に対する優位の原則を確立することでなければならぬと思いますが、金丸防衛庁長官はこの問題についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、そしてこの事態について、これらの一連の経過についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、念のために承っておきたいと思います。
  47. 金丸信

    金丸国務大臣 シビリアンコントロールとは政治優先ということであります。私は制服は政治に関与してはならない、これは鉄則であるべきだと考えております。そういう中で栗栖君の心情は私は十二分にくみ取れるわけでありますが、あの統幕議長という立場であのような発言をするということは許されるものではない。戦前の日本にしてはいかないということを私はしばしば申し上げております。それがシビリアンコントロールだ。戦前の日本とは何だ、中央政府が知らぬ間に満州においていろいろな問題を提起しておる。それが第二次世界大戦にまで及んだ。この歴史をわれわれは十二分に踏まえながら二度とこういうことのないような日本をつくっていかなければならぬ、これが私の心境でありますし、また栗栖君の言う超法規行動というような問題については三原長官を初め、私が就任して以来、そういう問題の奇襲攻撃がないようにするためにはどのようないわゆる情報網をつくるとかレーダーをつくるとか、そういうようなことをして万全を期することを考える。しかし二十四年たった自衛隊はその装備が完全であるか、私は完全であるとは思いません。ですから、最小必要限度の防衛によって専守防衛ができるという、そういうようなことも考えながら、いわゆる超法規行動なんということは絶対ないような、いわゆる内閣総理大臣あるいは国会の了承のもとにそういうことが進めていかれるというような姿をつくることがまさにシビリアンコントロールだと私は考えておるわけであります。
  48. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、今後自衛隊は超法規的な行動というのは絶対に認めないし、あり得ない、そういうことをはっきり断言していただきたいと思います。
  49. 金丸信

    金丸国務大臣 自衛隊は超法規行動というものは絶対あり得ない、おっしゃるとおりであります。
  50. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま防衛庁長官が言った言葉、つまり軍部の勝手な行動を阻止できなかった、旧軍隊の行動が戦争を非常にエスカレートさせていったという経過があるわけであります。その立場に立って、その反省に基づいて、総理大臣の出動命令が出る前は動かない、これを基本原則としているのが自衛隊法であります。第二の点は、言うまでもなく、首相命令と国会の承認の関係、これが担保されていると言わなければなりません。  私は、いま取りざたされている事態の中で、シビリアンコントロールというのを制服を内局がコントロールするというふうに置きかえて、あるいはそういうふうに議論されている傾向というのを非常に危惧いたします。私が言いたいのは、シビリアンコントロールというのは、防衛庁の内局のコントロールではなくて、国会あるいは国民世論のコントロールだ、このように考えますが、防衛庁長官はその点についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  51. 金丸信

    金丸国務大臣 シビリアンコントロールとは制服を内局が抑えるということではないということは、しばしば私は国会で述べております。同等であります防衛庁長官を含め、あるいは内閣総理大臣、政府あるいは国会、この手続の中ですべてが決まるということであって、制服を内局が抑えることがシビリアンコントロールということは誤解もはなはだしいと私は思います。
  52. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、一部に、法解釈から見ると栗栖氏の発言というのは決して超法規的ではない、つまり自衛権の解釈、正当防衛、緊急避難の法理論から認められる理屈だという理論もあるわけであります。つまり自衛権が認められる以上、攻撃に立ち向かうことは法の精神から認められるのは当然だというような考え方があるわけでありますが、少なくともそういう考え方には立たない、防衛出動、つまりシビリアンコントロールのたてまえを原則にしていくことが防衛庁の正式な見解だというふうに理解してよろしゅうございますか。
  53. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいまおっしゃられたとおり理解して結構だと私は考えております。
  54. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 言うまでもありませんけれども自衛隊の最高指揮官は総理大臣であります。その指揮のもとで防衛庁長官自衛隊を指揮監督するということになっているわけであります。もし、総理大臣防衛庁長官自衛隊の指揮監督を十分に行って、自衛隊がこの指揮監督と言われるものに信頼を寄せているとすれば、栗栖発言のようなことは起こらなかったという見解もございます。一つの主張だと私は思います。  栗栖氏は例の認証官問題、あるいは「ウイング」紙の問題、あるいは先ほど指摘をいたしました択捉問題など、何回か問題を起こしてまいりました。私は、このことを前科三犯とこの前の委員会でも申しました。このような問題発言を長い期間にわたって何回か繰り返してこられたということは、そしてまたそのことによって国民に大きな不安を引き起こし、いろいろな問題を提起しておることは事実であります。  ということは、金丸防衛庁長官、あなた自身の自衛隊に対する指揮監督という立場から見た信頼関係といいましょうか、指揮監督の不十分さといいましょうか、シビリアンコントロールの不十分さといいましょうか、そういう点で繰り返しこのような発言を許してきた責任、このことは免れないのではないだろうかと私は思います。あなたは栗栖統幕議長を事実上解任させたという評価があるわけですが、その中で、あなた自身がその問題に対する責任というものをお感じにならなかったか、この点について御答弁を煩わしたいと思います。
  55. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛庁最高責任者として責任があるかないか。私は二十七万の自衛隊員の長である以上、できるだけ自衛隊が話し合いの中で、そして国民理解を得るような行動をとっていくことが筋だと考えておるわけであります。  そういう中で、たびたびそういうような問題を繰り返した。それはいろいろの見解があると思います。択捉島の問題等につきましても――私が防衛庁長官になってからの問題は択捉島の問題であります。その前の問題は、私が防衛庁長官になってからの問題ではないわけでありますが、私はあれやこれや考えまして、択捉島の問題は、栗栖君の考え方も可能性が絶対ないということではない、この程度のことで、本人は非常に誤解を生んだということで私に進退伺いがありました。しかし、そのときは私はそれには及ばずということで返したわけでありますが、今回の問題につきましては、これは将来の自衛隊の問題にも相当な重大性を含む発言だということで、泣いて馬謖を切るという言葉がありますが、やめていただくよりほかはなかった、こういうふうに感じておるわけであります。  その責任についてあるかないか、それは皆さんが責任がある、こういうことであれば、私は責任を感ずるわけであります。また現在感じてないか。そのような統幕議長が私の下におるということですから、この責任が皆無だとは考えておりません。ひとつその辺は御理解をいただきたい、こう思うわけであります。
  56. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 泣いて馬謖を切るというお言葉がありました。言ってしまえばあなたの部下です。そして一遍は辞表を出したものを慰留して二回目の問題だということであります。防衛庁自身の立場から言えば前科三犯ないし四犯というわけです。そしてあなたは栗栖統幕議長を解任させた後、二十七万の自衛隊員に対して一つのけじめを示すために訓示も行われたり、あるいはまたその後の不安動揺を食いとめるための努力をなさってきたということを聞いております。  しかし、私の言いたいのは、自分の部下の責任と言われるものをみずからの責任というふうにお感じにならないとすれば、かなり問題があるのではないだろうかと私は言わざるを得ません。その上に、これは七月三十一日でございますが、いわゆる日本韓国台湾運命共同体ということで発言をされました。日中平和友好条約の交渉が大詰めを迎えた段階で、故意かあるいは不注意かは別として、いろいろな説があるようでありますけれども、このような御発言をなすった政治感覚といいましょうか、私はこのことを問わざるを得ません。金丸長官は、その後、この発言をお取り消しになったそうでありますが、しかし、この言葉は、私の知っている限りにおいて、金丸長官の大変得意な言葉であります。これまでもあちこちでこの言葉を述べられています。長官がお取り消しになったのは、七月三十一日の講演会の発言取り消したのではなくて、あなた自身の持っているそういう認識をお取り消しになったのかどうか、その点を聞いておきたいと思います。
  57. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、ブラウン長官とお目にかかりましたときに、米中正常化アメリカの将来の考え方を聞きたいという話の中で、ブラウン長官から、台湾の問題については約束同盟国、これは絶対守りますという話もあった。また、ペルシャ湾航路あるいはハワイ航路というものは、アジア日本にとっても韓国にとっても台湾にとっても大切であるという話もあった。私もまさに防衛庁長官として、戦略的にあそこがもしおかしな姿になるということになったら日本の安全はどうなるか、アジアの安全はどうなるかということを考えることは当然だと思います。日中の問題も考えずしてやったかというと、日中問題につきましては、私は総理に、この問題を進めていかなければ政治になりません、当然やらなければ政治にならないということをたびたび進言をいたしております。  なぜか。それは国会において、衆参両院においてこの日中条約促進の決議案が出た、これがにしきの御旗じゃありませんか、見切り発車じゃない、どんどんやるべきだという考え方を私は持っておるということを御理解いただいて、あそこが重要な部分だという意味で、運命を同じゅうするような場面があっては困るというようなことで、たまたま運命共同体という言葉を使ったけれども、その運命共同体という言葉は誤解を生じやすいということですから、私の話の済んだ後、早速この問題については取り消しをいたしました。取り消しをいたしたところが、記者諸君が外に出てきて、あれを取り消すわけにはいかないということで、押し問答をいたしましたが、新聞記者諸君はそれを新聞に書いたということでありまして、言ったことは事実だ。取り消しても取り消しにならなかったという新聞の面があったわけですが、真意はその辺で御理解をいただきたいと思うわけであります。
  58. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、ブラウン長官が言ったからとか、新聞記者諸君取り消してくれなかったというようなことを言うのは長官らしくないと思うのです。  あなたは日中共同声明というのを知っていますか。一九七二年に日本政府は、中華人民共和国が中国の唯一の合法政府であることを承認するという立場をとっているのです。つまり、台湾中国の一部である、二つ中国という立場に立たない、これが常識になっているじゃございませんか。台湾の問題をアメリカが言ったから、金丸防衛庁長官がそれを日本でも言った、これでは日本の閣僚として、同時に国民責任を持っている者として、国際的に取り決めてきた共同声明という約束事をあなた自身が内政干渉的に踏みにじっていると言われても仕方がないじゃありませんか。言うか言わないかは別の問題です。私は、この問題点を正確に指摘しておきたいと思うのです。金丸長官台湾中国の領土の一部だという認識にお立ちになるかならないか、その常識のことをちょっと聞いておきたいと私は思うのです。
  59. 金丸信

    金丸国務大臣 日中問題が締結されまして、お互いに、善隣友好という立場から言いましても、また国会の決議案等から見ましても、非常に喜ぶべきことだと思うわけであります。私は、いわゆる台湾日本の外交ルートではないということは十二分に承知いたしておるわけであります。  ただ私は、私の発言真意をひとつ的確に申し上げたいと思いますが、日本安全保障という立場から韓国台湾を含む地域の安定について大変重大な関心を持っている。これらの地域日本の周辺でも特に近隣した地域であるので、わが国の運命というか安全というか、これに及ぼす影響が大きいという意味で申し上げたということでありまして、いわば日中問題をぶっ壊そうというような意図は毛頭ないことは御理解いただきたいと思うわけであります。
  60. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私はそのことを言っているのじゃないのです。台湾の国際法的な位置づけを日本がどう受けとめているかということについて長官は十分認識しておらないのじゃないか、ここを私は言いたいのです。運命共同体ということの意味は、いまあなたが朗読をされた言葉遣いで表現できるものじゃないのです。栗栖さんを解任したその人が、そして全自衛隊に訓示をたれたあなたが、自分のことはたなに上げておいてこのような重大な政治的発言というものを重ねてこられたことについて、私はむしろあなた自身の、人の首を切った人自身の責任を指摘しておかなければならぬ。日中平和友好条約が福田内閣の手によって調印をされた。その内閣の閣僚の一人として、一体内閣の一体性というものはどうなっているのだろうか、わが国外交の方針、とりわけ日中共同声明に背いたあなたの発言は追及されなければならぬだろう、私はこのように思います。この点について総理から何かあなた自身が指摘をされたことがございますか。
  61. 金丸信

    金丸国務大臣 総理からはなかったわけでありますが、安倍官房長官から、新聞に出ているけれども、あれはどういうことだという話がありましたから、ただいま申し上げました真意を私は申し上げました。安倍官房長官は、私が日中問題についていわゆる反対派だという考え方は持っておりません。あくまでも推進をすべきだという考え方を持っておるわけでありまして、実はあの問題は誤解を生じやすいし、私もいろいろ考えて、あれは講演の終わった後すぐ取り消しをいたしたということを言ったら、わかった、こういうことでありました。
  62. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ここに七月二十六日付の韓国で発行されている朝鮮日報という新聞の記事がございます。見出しは、「日、韓国安全に支援」「自由国家は共同運命」という大きな見出しであります。その中で「金丸信(日本防衛庁長官)は、二十五日「アジアの自由国家の中である一国でも動揺する場合これを対岸の火として見過ごすことはできない」と述べ、韓国日本アジアの自由国家はお互いに助け合い、協力し合わなければならないと強調した。」と報道されております。そして、「韓国に不幸な事態が発生した場合「日本は物、心両面の支援をすることは当然のことと考える」」と述べておられます。この「物心両面」ということの意味はどういう意味ですか。
  63. 金丸信

    金丸国務大臣 そういう発言を私も承知いたしまして、そういう発言をいたしたことはありませんから、防衛庁の広報課長をして抗議を申し入れております。
  64. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この新聞は、韓国では東亜日報に次いで二番目に大きな新聞だそうであります。新聞記者の責任というものに転嫁することも、あるいは簡単かもしれません。しかし、この前後のあなたの発言というものは、これと全く同じことを言っているのです。だから、私はそんなことを言った覚えがない、こう言ってみても、そこのところは水かけ問答だろうと思うけれども、まことに不注意な発言である。いや不注意どころか大変問題を含んでいる発言だと言わざるを得ません。その中で次に、「彼は訪米中、米太平洋軍司令官ウィスニ提督から今後一、二カ月間の間、北傀の」、北傀というのは朝鮮民主主義人民共和国のことでしょうけれども、「対南ゲリラ活動が予想されることを伝え聞いたとしこのように述べた。」というふうに言っていますが、そういう事実というものはあるんですか。
  65. 伊藤圭一

    伊藤説明員 そのような事実は私どもつかんでおりませんし、また大臣のお供をしてまいりましたときにもそのようなお話はございませんでした。
  66. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ブラウン国防長官に会った際に、「アジアの自由国家は共同運命体であることを強調、韓国はもちろんその他のどの国の安全に脅威を受けても、アジアの安定は維持できないことを力説し、駐韓米軍撤収に対する再考を求めたことを明らかにした。」というふうに指摘をされていますが、これも事実ではございませんか。
  67. 伊藤圭一

    伊藤説明員 私はそのブラウン長官との会談の席に列席させていただきましたが、その際大臣から申し上げましたのは、いま大臣から御答弁があったようなことでございまして、それに対しまして、ブラウン長官説明の中に、日本にとって朝鮮半島と台湾地域の安定というものの重要性というものはよく承知している、これから米中接近が進められていく段階になるんだけれども日本中国と国交正常化をし、友好条約を進めていく場合と違ってアメリカの場合には一つの問題がある、それは米台条約というものがあるので、それをどのように解決するかということについて今後研究しなければならないというお話があったわけでございます。
  68. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうすると、先ほどの韓国の朝鮮日報の記事というものは全部うそだ――単独記者会見をされたことは事実ですね。
  69. 金丸信

    金丸国務大臣 インタビューはいたしました。
  70. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題はまだ問題がございます。ただ、当然臨時国会などで防衛庁長官責任問題を含めて追及をしなければならない課題だろうと思いますが、この問題についてはきょうは、とにかく栗栖さんの首を切ったあなたが問題を起こしても、その発言を簡単に取り消せばそれでその地位に居座っていくことができるというような、昔の言葉で言えば時の気持ちをわきまえない防衛庁長官について、私は、二十七万の自衛隊の諸君はどう考えるだろうかということをもうちょっと、政治責任の重さという観点からも自覚をしてほしいものだ、こう思います。その意味では、その追及は当然臨時国会でも行われていくと思います。したがって、この質問はこの辺でとどめまして、後に残しておきたいと思います。いずれにせよ、防衛庁長官のそういう不注意な発言について注意を喚起しておきたい、このように思います。  続いて、有事立法の問題について承りたいと思います。  先ほども発言がございまして御答弁がありましたが、自衛隊考え有事というのは一体どういうことか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  71. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事という言葉で正確な定義があるわけではございませんが、事あるときということですから、自衛隊行動を起こすようなときというようなことが一般的には言われておりますけれども、われわれが今回有事法令勉強ということで言っておりますこの有事というのは、これは自衛隊法七十六条に言いますように、外部からわが国に対します武力攻撃があるような場合、そして防衛出動が下令されるような場合、要するに外国からの武力攻撃があるような場合、有事法令研究におきます有事というのをそのように定義しております。
  72. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 かつて久保防衛局長の時代に、平和時、緊張時、有事と三段階に分けて防衛問題を考える構想が示されたことがありますけれども有事というものをそういう位置づけの中でとらえていらっしゃるかどうか。
  73. 竹岡勝美

    竹岡説明員 そのとおりでございます。先ほど私が答弁しましたのもそのような趣旨から言っております。
  74. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 防衛庁は昨年八月以来、先ほども発言がございましたが、有事の際の自衛隊の任務遂行上に必要な法制上の研究を進めてこられたわけですけれども、今日の段階でその進捗の状態を明らかにされたいと思います。
  75. 竹岡勝美

    竹岡説明員 防衛庁内部で昨年の八月にそういう指示がありまして、ただし、その長官指示のときにも、もちろん憲法の範囲内でやれということと、同時に、これは国民のコンセンサスを得てやっていかなければいかぬから、いま余り事を急いでも、こういう時代ですから、かえって逆に国民のコンセンサスを失ってもいかぬ、だからゆっくり勉強しておけという御指示もございまして、私の方もそう事を急いでやっておるわけではございませんが、一応ことしの初めごろに各幕からも、各幕で考えておる有事法令でどういう諸問題があるだろうかというようなことを、各幕と一緒に、私らの内局の官房が中心になりまして一緒になっていろいろ討議してまいりました。  そして御承知のとおり、この有事法令勉強しますのには、一つには、先ほど言いましたように、有事の場合における一般市民の避難誘導、これも大きな問題であろう。それから当然国民の皆さん方が、それは自衛隊しっかりしろということで自衛隊行動というものを支援していただくだろう。そういう自衛隊行動を円滑にすること。それからあるいは自衛隊に対する官庁や国民の協力を得る。そういった三つの問題点におきまして現在の法制上どこに支障があるか、そういうことの勉強をすることにして、各幕からどういう問題があるか取り上げてみました。  ことしの一月ごろにそういう意見もお互いに集めまして、大体二週間に一遍の割合でその後進捗をしておりますが、とりあえずはわれわれは、まず交通関係の問題、この狭い国土で戦うわけでございますから、自衛隊の活動を円滑ならしめるための交通諸法令なんかの問題についてどういう問題があるだろうかというようなことを現在勉強しておるといった状況でございます。
  76. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大体有事ということをとらえて、これは当然有事立法とも深いかかわりを持ってくると思うのですけれども、そのためにつくっていると言っていいだろうと思いますが、自衛隊法第百三条の強制徴用にかかわる政令、それらとの関係で政令の未制定の部分やあるいは政令の不備な問題点、こういう点をすでに相当作業を続けておられると思うのですが、その点はそのように受け取っていいかどうか。そして、その中身をぜひ示していただきたいと思います。
  77. 竹岡勝美

    竹岡説明員 いま先生御指摘の問題は、まさに自衛隊法の問題でございますが、おっしゃるとおり自衛隊法の百三条、これはわれわれが言っております有事の場合におきます物資の収用等という条文がございまして、ここにも、御指摘のとおり、政令で定められる事項がございます。「長官又は政令で定める者」、この政令がまだ決まっていないことは御指摘のとおりでございますし、それからまた、防衛庁職員給与法というのがございまして、これにも有事の場合におきます隊員の災害補償なり出動手当なり、そういったものは別の法律で定めなければならぬというふうに決まっておりますが、この法律も決まっておりません。これもわが部内の法律ではございますけれども、やはり有事法令研究とあわせてこの問題を詰めていかなければならぬ。これは政令に定めることは非常に簡単なことでございますけれども、まだその面の勉強はしておりません。これは当然やらなければならぬ、このように考えております。
  78. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 百三条に関連をして、政令は未制定である。政令というのは国会にかけませんね。つまり防衛庁が勝手にやることができるわけですね、各省庁と連絡をとれば。ここに非常に大きな問題点が私は含まれていると思うのです。つまり国会の議決を経ないでも、あるいは審議を経ないでも、特に国民の権利に対して大きな制限を加えることになりかねない、こういう問題点を指摘をせざるを得ません。  それから、当然のことながら、自衛隊法の八十五条あるいは八十六条あるいは百一条あるいは百六条、こういう問題にかかわる適用除外規定の新設などについて検討をなさっておられるかどうか、あるいはこの関係で特別の立法というものを用意されるおつもりがあるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
  79. 竹岡勝美

    竹岡説明員 お答えいたします。  いま自衛隊法には有事の場合に相当の規定がございます。先ほど御指摘にあるとおりの百三条の物資の収用等いろいろございますが、この中でいま先生が申されました八十五条とか、八十六条、これは有事の場合におきます都道府県知事なり市町村長、警察消防機関その他の地方公共団体の機関は、相互に緊密に連絡し、及び協力するものというようなことがございますし、あるいは八十五条は、国家公安委員会、これはむしろ治安出動の場合ですから、われわれの有事関係はございませんけれども、こういった問題は別に政令で定めることはございませんが、一方、御指摘の後の雑則の方で、有事または平時におきます各種法律の除外規定、これがございます。  これはむしろ、現在の自衛隊の平時におきます活動を円滑ならしめるための適用除外例の方が実は多いわけでありますけれども、火薬類取締法の適用除外、航空法等の適用除外あるいは労働組合法等の適用除外、船舶法等の適用除外等々がございますが、この中で有事の場合の適用除外がありますのは、航空法と消防法なんです。これはございますが、ただし、先ほど言いましたように、有事法令勉強の中で、それぞれの所管関係の各種の法律相当手直しをするのかどうか、あるいはそのうちの一部分をこの自衛隊法で、航空法と消防法はございますけれども、それ以外、たとえば電波法とかそういったものの適用除外をさらにふやすべきかどうか、自衛隊法の中にそれを取り入れるべきかどうかということもあわせて研究してみたいと思っておりますが、まだ結論を得ておりません。
  80. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ある部分は政令部分で国会に諮らないでやる、あるところは、言ってしまえば拡大解釈をして、できるだけ適用除外をしていくというようなことを続けていく、そういう作業だろうと私は思うのですが、大変問題が含まれているように思われてなりません。しかし、たとえば戒厳令とか非常事態宣言とか、総動員法などという包括的な立法というのは、いま防衛庁の中では検討されていませんね。
  81. 竹岡勝美

    竹岡説明員 先ほども申し上げましたとおり、われわれ有事法令研究につきまして最も基本的な原則は、長官からの厳重な指示がありまして、現憲法の範囲内、現憲法秩序を超えるようなことは考えてはならぬ、現憲法秩序内、現憲法の範囲内でどれだけのものができるか、どういうことが必要かということを勉強せよということを言われておりますので、その範囲考えております。  たまたま御指摘のような戒厳令といいますと、これはまさに軍事が司法、行政を支配するようなことで、憲法の三権分立のたてまえから言いまして、これは確かに問題がございますし、かつての総動員法の中にも若干そういった現憲法の秩序に触れるような問題もあろうかと思います。そういった現憲法の秩序を超えるようなものは一切考えておりません。ただし、それぞれの各種法令で積み上げていくことになろうと思いますけれども、そういったものを横につなぐ手続的な法律が要るのかどうか、これは私わかりませんけれども、少なくとも現憲法の秩序を超えるようなことは、いまわれわれの研究の対象にしておりません。
  82. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 検討項目が各幕から出されて、それを幾つか集めて議論をしてきたそうでありますが、問題点というのは大体幾つくらいに集約されているのですか、いま見当として。
  83. 竹岡勝美

    竹岡説明員 各幕からもどういう問題点があるか、先ほど意見も持ち上げておると言いましたが、もちろん各幕の意見の中にもわれわれそういう制約がございますから、現憲法の秩序を超えるようなものは提案した事実はございません。  われわれその中で、たとえば自衛隊行動を円滑ならしめたい、あるいは自衛隊行動の準備をさらに容易にするために何らかの法令が要るのじゃないだろうか、あるいは一般市民の保護、それから自衛隊に対しまして他官庁や一般の協力を得ようとする場合に、いまの法律だけで足りるかどうか、あるいは部内隊員の特別処遇、有事の場合の隊員の処遇、それから自衛隊の任務というものについて、任務権限というようなものがいまの法律だけでいけるかどうかというような点、そういったものもいろいろ含めまして検討しておりますけれども、先ほど言いましたように、まず自衛隊行動を円滑ならしめるということで、交通関係の方から始めている、やがては災害救助とかそういったこともあわせて今後検討していきたい、こう思っております。
  84. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その検討項目と当該条令や法律について私どもの方へお教え願うわけにはまいりませんか、いま細かく全部言っていっても時間がかかって仕方がありませんので。
  85. 竹岡勝美

    竹岡説明員 具体的な項目になりますと、これは今後の研究にまたなければいけませんし、われわれ取捨選択もしておりますけれども、概括的にこういうことをやろうとしておるということにつきましては、また先生の方へ私から御説明に参ります。
  86. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いずれにせよ有事立法というのは、国民の権利義務に大きな影響をもたらす。その意味で私どもとしては重大な関心を寄せざるを得ません。そしてそれが、憲法が規定をしている立場から考えても国民に大きな不安というものを巻き起こすおそれを持っているわけであります。  問題は、先ほどシビリアンコントロールの議論をいたしましたけれども、何か防衛庁で何となく持っていて、三矢研究じゃないけれども、何かあるときにぽっと出していくということを考えていらっしゃるのじゃないだろうかというふうな感じを受けざるを得ない。これは参議院の内閣委員会で竹岡官房長が、有事立法というのは二日か三日あれば大体国会の皆様にも御協力願えると思いますというような言葉を、言葉じりをとらえるわけではないが、実は言っているわけであります。私としては、どうも有事のときに本当にどさくさでやってしまうという感じ方を一つ持っている。表に出ている部分は、まあ言ってしまえばあなたがおっしゃったようなものであって、総体として三矢研究に結びついているようなものをもう一遍つくり上げていくのだというふうにとらえざるを得ない。そういう点で、ぜひひとつその資料をできるだけ細かく拝見させていただきたい。このことを要請をしながら、問題点として、三矢作戦計画などとどのようなかかわりを持つのか、そんなことを承っておきたいと思うのです。
  87. 竹岡勝美

    竹岡説明員 われわれも、わが国有事ということは本当は絶対あってはならないし、それを望んでおるわけではございません。しかし、防衛庁責任として勉強しておるわけでございますが、もし万一こういう有事立法というのが必要になった場合には、当然内閣のレベルで、国民のコンセンサス、国際情勢その他を見て立法手続のゴーをかけられると思いますし、それは当然に国会で十分な審議を経ることを前提にして、国民の前に明らかにされてやられるであろうと私は思うのです。国民の協力がなければ絶対にでき得ないことでございますから、そういう立法手続におきましては国会の十分な審議を経てやられるであろう、このように思っておりますが、現在は防衛庁部内の研究でございまして、研究しておりますことについては、各省庁の法令との関係がございますから、各省庁の了解なしに勝手にいろいろな各省庁の法律に向けて口を出すことは私は僭越であろうと思いますけれども、こういった問題点を研究しておりますというようなことは、私、できます範囲で、この国会の場でお知らせするのがわれわれの義務であろうとは思っております。  先ほどの百三条の政令の問題でございますけれども、百三条は、御承知のとおり、かつてのそういった弊害といいますか、そういうものを反省しまして、原則的に都道府県知事がそういった対策をとるようになっております。そういう配慮もされております。これはただどういうものを決めるかということだけでございますけれども、そういった場合、政令の問題でありましても、これもできる限り国会では説明すべきだろうと私は思っております。
  88. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 安倍官房長官が早くまとめて次の通常国会あたりに出したいというふうなことをしゃべったということも漏れ承っておりますが、長官、そういうしろものですか。
  89. 金丸信

    金丸国務大臣 次の通常国会へ提案するようなことを安倍君が言ったようでありますが、私は、そんなに簡単なものではない、しかし、ただいまいろいろ御質問がありましたが、あくまでも平時のときに国会の皆さんにそういう問題も十二分に審議していただくことは必要だという考え方を持っておることも御理解をいただきたいと思うわけであります。
  90. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この点で、前総理の三木さんが、有事立法などを考えるよりも攻撃を受けないような、つまり平和の保障を探し求めていくことの方が大事だと述べられております。私はまさにそのとおりだと思うのです。そういう立場から言うならば、有事立法という問題を非常にセンセーショナルに取り上げていくというやり方には賛成できません。同時に、それだけに平和をつくっていくための努力というものが求められなければならぬことは事実でありまして、その点での慎重な配慮と同時に、国民に隠してやっていくようなやり方はお避けになった方がよろしい、そのことを求めておきたいと思います。  あわせて有事作戦研究について承りたいのですが、これは八月からスタートをされるわけですね、そしてその内容はどんなことをお考えになっていらっしゃるか、御説明をいただきたいと思います。
  91. 伊藤圭一

    伊藤説明員 防衛研究として八月から着手することになった研究のことでございますが、実はこの防衛研究というのは、いままでも全然やっていなかったわけではないわけでございます。御承知のように、自衛隊は現在持っております勢力でいま何かが起こったときにはどのように対処するかということを毎年研究いたしているわけでございます。しかしながら、いまの時点において従来のような研究のあり方でいいのかどうかという反省が私どもにはあるわけでございます。その一つは、従来の防衛研究というのはいわゆる防衛力の整備の過程、質量ともにふえていくという過程においての研究でございました。したがいまして、どういうところに問題点があるからそれはこの次の防衛力整備計画においてどのように措置しなければならないかというような形のものもあったわけでございます。  ところが、御承知のように防衛計画の大綱が決まりまして、一応防衛力の規模というものが決定されたわけでございます。したがいまして、その中において質の向上はございますけれども、それらのものを装備品によりましてどのように対処していくかという研究が必要でございます。同時に、いままでは、先ほども申し上げましたように防衛力整備との関連もありましたので、陸海空自衛隊がそれぞれの立場での対処の運用の研究といったものが中心でございましたが、これは特に金丸長官になられましてから、統合運用というものにもっと重点を置かなければならないのではないかというような御指示がございます。一方におきまして、中央指揮所のあり方というものを検討いたしまして、五十七年度を目途に情報を集め、長官の意思を部隊に伝達する、その指揮所の構想というものがございます。そういう時期に、この陸海空の統合的な運用を主体にした、最も有効に防衛力を発揮するのにはどうすればよいかということを研究するのは大変意義あることだというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、端的に申しますと、従来それぞれの自衛隊でやっておったものを統幕が中心になりまして統合運用的見地から、そして現在われわれに与えられております防衛計画大綱の勢力によって、さらには日米防衛協力の立場から共同対処の立場を踏まえて、どのような事態が起こる可能性があるか、それに対してどのように対処するか、そういうことを今後二カ年間にわたって研究していこうというものでございます。
  92. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題はいろいろな問題を含んでいると思いますが、研究は行ってもその結果というのは公表しない、こういう方針を決めていらっしゃるわけじゃないのでしょう。この問題は、さっき申し上げましたように、シビリアンコントロールと非常に深いかかわりがあるのです。たとえば防衛計画の枠内で本当にできるのかできないのか、そういう問題も含めて、ひとり歩きする可能性と危険性を持っているわけです。その意味でこれは防衛庁長官に要請をいたしますが、国会でもこの問題が議論できるような、国民がそのことを理解することができるような、そういう措置をとることを求めたいと思います。
  93. 金丸信

    金丸国務大臣 御案内のように、統幕議長有事のときでなければいわゆるその命令系統がない、統幕というものは存在の意義がないじゃないか、いわゆる平時から陸海空ともに一体となっておるところに有事にこたえられるという考え方、そういう意味でそういうような点も十二分に研究すべきじゃないか。なお、先ほどから申し上げましたように、これをひた隠しにして全然国会の理解を得ない、そういうようなことであってはならぬことは当然だと私も考えて、できるだけ皆さんに御審議をいただくようなことを考えていきたい、こう思っております。
  94. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 日米防衛協力小委員会の経過について、承るところによると、ガイドラインをまとめたという報道もされているわけですが、今日までの経過を御報告願いたいと思います。
  95. 伊藤圭一

    伊藤説明員 このガイドラインをまとめたということは実は必ずしも正確ではございませんで、御承知のように五十一年の八月三十日に第一回の防衛協力小委員会を開きました。それから累次研究を重ねまして、第七回目をことしの七月五日に開いたわけでございます。  実は、この間半年ばかり開いておりません。その間は何をしておったかということを申し上げますと、最初にこのガイドラインというものは一体どういう内容のものかというので、われわれはずいぶん議論したわけでございますけれども、なかなかイメージがつかめなかったという問題がございます。そこで、これを作戦部会、情報部会、後方――ロジスティックでございますが後方部会、この三つに分けまして、共同対処する場合にどういった問題があるかということを専門的に検討させましたわけでございます。これは部会でございまして、どちらかというと制服のサイドが主になりまして、もちろん内局の防衛課長あるいは外務省の安保課長が出席をいたしましてやってまいったわけでございます。  ところが、この共同対処をやるについての問題点をやるに当たっては、やはりいろんな問題がございました。といいますのは、一つの指揮という、コマンドという言葉一つにいたしましてもアメリカ側の概念とあるいは日本側の概念というものがなかなか一致しない点がございます。そういった点にかなり時間がかかりまして、それぞれの部会が――一応作戦部会におきましては、御承知のように指揮命令系統を別にして、そして整々と行動、対処するにはどういう機関が必要であるか、それから、どのレベルから意思を疎通しなければならないかというようなことがだんだんはっきりしてまいったわけでございます。情報につきましては、平時から情報交換はもちろんやるわけでございますけれども、緊迫した状況になった場合にはどのような内容のものをどういうルートを通じて交換しなければならないかというようなことが、徐々にわかってまいりました。それから後方支援につきましては、もちろんこれは日米責任を持ってやるわけでございますけれども、いわゆる同じような装備品を持っている場合に日本においてどのような支援ができるか、あるいは米側に期待するものはどういうものであるかということが徐々にわかってまいったわけでございます。それで、それぞれの各部会が、一つのガイドラインというようなものはこういう形ではどうだろうかということを第七回の会合におきまして報告がございました。  しかしながら、このそれぞれの部会というものは、やはり作戦関係の人、情報関係の人あるいは後方支援関係の人というものは、言葉遣いといいますか概念といいますか、そういったものもやや少し違ったようなところがございます。したがいまして、統一のガイドラインにした方がいいんではないかということで、その各部会の作業の結果を踏まえまして、現在防衛協力小委員会のメンバーで統一したガイドラインをつくって、日米安保協議委員会に報告する原案をつくっている作業の最中でございます。  現在までの経過はそのようなことでございまして、秋ごろまでには御報告できるように作業を進めたいと考えているわけでございます。
  96. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 続いて、ちょっと、これはミグ25事件のことが週刊ポストの八月二十五日号に報道されておりまして、この問題についてちょっと実は前後関係をただしておきたいと思いますので、お尋ねをしたいと思います。  週刊ポストによると、栗栖統幕議長はミグ25事件のときに、言うところの超法規行動があったというふうに言っておられます。そこで伺いますが、あったのかないのか、このことをまずお尋ねしておきたいと思います。
  97. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず、超法規ということは全くございませんでした。私が当時の総理大臣、三木総理のところに参りまして御報告を申し上げますときに御指示をいただきましたのは、国際法に違反するようなことをするな、それから国内法に従って対処しようという御指示がございました。したがいまして、関係各省との間でこの問題につきまして種々検討いたしまして、それに従ってやったわけでございまして、自衛隊自体が超法規的な行動というものはございませんでした。
  98. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 このときに第三種非常待機命令というものが出されているわけですが、それはどういう内容のものですか。そしてだれの権限によって発動されたものですか。さらには、これは長官並びに内局は発動前にチェックしていたかどうか。
  99. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この第三種勤務態勢といいますのは、これはおおむね全員が待機しておりまして、外出を取りやめるという態勢でございます。  あの事件がありましたときに、自衛隊として一番しなければならないのは情報をとることであり、警戒態勢を強化するということだと私ども考えました。したがいまして、当時の坂田長官のもとで制服並びにわれわれが集まりまして、いろいろ大臣の御指示をいただき、また大臣に補佐申し上げたわけでございますが、そのことによりまして陸海空が必要な警戒態勢をとっておく方がいいだろうということでございまして、このことは方面総監の命令によりまして、函館にありました第二八普通科連隊がこの第三種勤務態勢をとりまして、全員が外出をやめまして自衛隊の敷地内に待機しておったという状況でございます。
  100. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはだれの権限で出すのですか。
  101. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは長官命令を受けまして、方面総監の命令で出すことになっております。
  102. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 五十一年の九月八日、すなわちミグ25が函館空港に強行着陸をした二日後ですね、海上自衛隊の護衛艦が津軽海峡の東西に展開したということは事実でしょうか。
  103. 伊藤圭一

    伊藤説明員 当時はいろいろな情報がございまして、ソ連の艦艇が動いているような状況もございました。それから函館、津軽海峡の周辺でソ連の漁船がかなり大量に動いているという情報もあったわけでございます。したがいまして、大湊に配備されております艦艇を中心に哨戒といいますか、警戒の行動をいたしたわけでございます。
  104. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ミグ25の機体を百里に運ぶときに、F104が百里までミグ25を運ぶ米国のギャラクシーをエスコートしたというのは事実でしょうか。
  105. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それはいわゆる訓練でエスコートしていくという行動をいたしたのは事実でございます。
  106. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 訓練というのは、つまりこれはどういう訓練でしょうか。
  107. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この領空侵犯の措置で重要なことは、よくあることでございますけれども、飛行機が自分の機位を失うということがあるわけでございます。そういう場合にそれを指示するというようなこともあるわけでございまして、とにかくその訓練というのは、早く上がっていって目的の飛行機の近くで、領空侵犯の場合には相手の行動を監視するというのが重要な任務でございます。ギャラクシーが参りましたときには、早く行ってその飛行機をエスコートするというような形で、これは領空侵犯措置そのものの訓練ではございませんけれども、早く目的の飛行機の位置をつかまえ、そして行動を監視するというような訓練にはなるわけでございます。
  108. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ミグ事件が起きたときに、八戸の海上自衛隊第二航空群の対潜哨戒機P2Jが実弾を積んで哨戒に当たっていたということがあるわけでございますが、この辺を確かめてございますか。
  109. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは実弾は積んでおりません。対潜哨戒機が監視行動をしたのは事実でございます。
  110. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 通常海上自衛隊のP2Jは哨戒の場合どのような実戦的な装備をしているかということをお尋ねしておきたい。
  111. 伊藤圭一

    伊藤説明員 通常言われております武器というのは持っておりませんで、いわゆるソノブイ等は積んでおるわけでございます。ソノブイというのは、潜水艦の音を探知してその行動を把握するものでございますので、一般的には、善通飛んでおりまして、仮にこの辺に潜水艦がいるようだというような情報がありますと、その辺にソノブイを落としまして、潜水艦の所在等を監視するということをいたしておりますので、ソノブイその他は積んでおりますけれども、いわゆる武器、弾等は積んでいないわけでございます。
  112. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ところで、五十一年九月八日、訓練という名目で函館駐とん地の陸上自衛隊第二八普通科連隊に対して、いま防衛局長も言われた待機命令が出されている。そして、九月十日の時点で二八連隊にL90と六一式戦車二両があったということは事実でしょうか。
  113. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これはまさに偶然であったわけでございますけれども、函館の二八連隊の創隊記念行事が予定されておりました。したがいまして、創隊記念行事がありますと、普通科の連隊でございますと大した装備品がないわけでございますので、よその駐とん地から新しい装備品を借りてきて展示するということはよくやることでございますが、そういうことで、九月六日の二日前だったと思いますが、L90と戦車を函館駐とん地に運んでおったわけでございます。それをそのまま残しておいたというのは事実でございます。
  114. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 九月十日に、札幌からL90などの弾薬が函館に到着したという事実を知っていますか。
  115. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それは弾薬を運びました。
  116. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは訓練というふうに先ほどから述べられておられますけれども、実はいろいろな意味を持っていると私は思うのです。特にこのポストによれば、   午前七時三十五分、第11師団長が真駒内から到着。午後零時すぎ、L90対空砲の探知レーダーに、三方向から函館空港に接近する「国籍不明機」数機が映り、同駐も基地全体が緊張状態となる。直ちに高橋連隊長は師団長に“別れのあいさつ”を述べ、武装トラック十台、ジープ一台、戦車二両で函館空港に向けて出撃する態勢をとった。いざ出発の寸前、伝令が駆けつけてきて「国籍不明機は訓練中の航空自衛隊機と判明」と告げたため、危ういところで“出撃”は回避された。こうなっていますが、これは事実ですか。
  117. 伊藤圭一

    伊藤説明員 そういった具体的な事実があったかどうかは私どもは存じておりません。しかし、ここで先生に申し上げたいのは、栗栖発言でも問題になりました奇襲という問題がございます。あのときにはミグ25が領空侵犯して函館に着陸したという異常な事件でございます。その際におきまして、先生も御承知のように、専守防衛立場で一番大事なことは、有事即応ということでございます。したがいまして、ああいった事件の後というものは、あるいは最悪の場合には防衛出動が下令されるという危険もあったわけでございます。したがいまして、現在のそれぞれの駐とん地には弾薬を貯蔵する施設なんかも余りございません。したがいまして、いろいろな形で総理大臣命令が出ましたときに即応態勢がとれるという形で何らかの措置をしておく必要があると考えましたのが長官以下の考えでございまして、そういった意向は方面総監にも伝えてございまして、それに従ってある程度の準備はしておったというのが実情でございます。
  118. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 伊藤防衛局長一つ一つ肯定いただいた、そして確認をした事実というのは、率直に申し上げて演習であれ何であれ、国民が知らないところで実はこういうことが起こっている。今日までそれは余り明らかになっていませんでした。ここが問題だと私は思うのです。事実上私は有事立法の先取りではないかというふうにさえ言わなければならぬ。現実に弾薬が運び込まれて、そして言ってしまえば別れの杯であるかどうかは別として、行ってまいります。そして出かけた。もし事が起こっていたらどうなっていたのですか。その辺のことをお考えになったことがございますか。
  119. 伊藤圭一

    伊藤説明員 国民に隠してやっておったといまおっしゃいましたけれども先生も御承知だと思いますが、当時新聞社が状況を取材いたしまして、津軽海峡に出ました艦艇にも新聞記者は乗り込んでおりました。それから函館におります新聞記者もそのような第三種、いわゆる外出をやめて待機態勢に入っているという状況は当時も報道されておったわけでございます。私どもは決して隠していたというわけではございませんで、いま申し上げましたように、有事即応というのがやはり専守防衛では一番大事だと思っております。そのためにはそれなりの準備が必要でございます。したがいまして、命令を受けましたときに行動がとれるような最小限の準備をしておったということでございます。
  120. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この問題はいろいろな問題を含んでいると私は思うのです。つまり有事と言われる事態に対する自衛隊の対応というものが、実際は出先で、あるいはまた国会のコントロールなどというもの、国民の目というものを逃れて――逃れてという言葉はあえて使いませんけれども、見えないところでいろいろな問題が起こっているということを示す一つの事例だ、こういう点で非常な警戒心というか問題意識を私は持たざるを得ないのであります。その点だけを指摘しておきたいと思います。  官房長官がお見えになりましたので、もう時間もぼつぼつでありますから、締めくくりに入りたいと思うのですが、きのう私は本委員会で、総理大臣の靖国神社参拝について憲法二十条の規定に抵触するおそれがあるから中止されたいということを総務長官に要請をいたしました。これに対して総務長官は、あれは私的な参拝だと答えられたわけであります。けさの新聞を見ると、参拝を取りやめになるどころか、閣僚が随行して総理大臣の肩書きで記帳をしたということが報道されております。これに対する安倍官房長官の正式な御見解を承っておきたいと思います。
  121. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 昨日確かに福田総理が靖国神社に参拝をいたしたわけでございますが、この件については、私もかねがね総理大臣の靖国神社参拝を行う予定であるが、これはあくまでも私人としての参拝であるということを申しておったわけでございます。きのうの参拝は私が申し上げましたように、あくまでも総理大臣としてではなくて、私人としての参拝であったわけでありまして、この靖国神社への参拝は本来個人の宗教心をあらわす行為であります。したがって、特別国の責任で国の行事として行うということがなければ、その参拝は私人としての立場で行われたと解すべきものでありまして、その限りにおいてはもちろん憲法違反ではない、こういうふうに確信をいたしております。
  122. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 かねてからこの問題は国会でも取り上げられてきましたし、問題にされてきたわけでございます。  内閣法制局がこの問題について「神社、仏閣への参拝は原則として個人の宗教心の現れであり、憲法二〇条三項の宗教的活動にはあたらないが、公の資格で参拝するのは同項に触れる」ということを述べながら、だから私人でいい、こういうふうになったと思うのですけれども、公の資格とは何だというやりとり、これは新聞にも出ておりますけれども、こういう見解を示していますね。「もともと内心の問題であり、本人の心次第であるため、外形的な要件を総合的に判断すべきである」として、特に公用車を使用しない、二つ、玉ぐし料を国費から出さない、三、記帳には公職の肩書きをつけない、四、なるべく閣僚など公職者が随行をしないということを内閣法制局の見解として国会でも答弁をしておられるわけですが、このことを知っておられて、この四つの項目の中で、玉ぐし料だけは別としても、三つの項目について問題のある行動だということを知っておられて参拝をなすったかどうか、この点をお尋ねをしておきたいと思います。
  123. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 あくまでも私人としての立場であるから差し支えない、こういう判断で総理が参詣をいたしたわけでありまして、後で聞いてみますと確かに玉ぐし料も出しておりますが、これは福田赳夫個人としての玉ぐし料であることは当然でございます。  同時に公用車につきましては、昨年も公用車を用いておりますが、これは警備その他の関係で、私用等にも使う場合もあるわけでありますが、警備上の観点から、あるいは緊急連絡等の場合にも備えて公用車は使ったわけであります。  さらに記帳につきましては、内閣総理大臣の肩書きをつけて福田赳夫ということで記帳をいたしておるわけでありますが、これはその地位にある個人をあらわす場合にしばしば行われる社会的慣習と見られております。これまでの歴代の総理大臣もしばしば内閣総理大臣の肩書きで記帳いたしておるわけでございまして、この肩書きを付して記帳したことのみをもって公的参拝の証左と見ることは無理ではないか、こういうふうに考えております。  また閣僚の同行につきましては、確かに私は同行をいたしたわけでありますが、これは随行ではなくて同行でありまして、たまたま一緒に同行した、こういうことであります。
  124. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 安倍さんらしくないまさに三百代言みたいな言い方なんですよ。そうでしょう。警備の関係があるから公用車で行ったというのは、まさに警備の事情ということだけで公式な法制局の見解というものを踏みにじっているのですよ。そうでしょう。内閣総理大臣の肩書きについても、ここまではっきり述べられているのです。それをそういうふうに述べる。それは随行じゃない。これが随行じゃなくて何なのですか。多くの閣僚を引き連れて、しかもそこから武道館に乗り込まれたということも含めて言わなければならない。  前の総理大臣の三木さんは国会で、個人の資格と閣僚の資格というのは、閣僚の地位の重さから見て区別することは困難だというふうにはっきり述べておられる。そして御自身も参拝に当たって一遍家まで戻って自分の私用の車で参拝をされた。そのこと自身も、私は総理大臣の私的参拝ということについても問題指摘をせざるを得ません。しかしそこまでも世論というか、やはり謙虚な姿勢があったと私は思うのであります。にもかかわらず堂々と参拝をして、しかもいまの答弁というのは何としても私は納得できません。こういう行動について、けさの新聞も含めて報道されたことについていささかも反省する気持ちはないというふうにお考えですか。
  125. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは前々からも言っておりますが、あくまでも福田総理の私人としての立場で靖国神社に参拝するということでございますし、その筋を通したわけでございますから差し支えないことではないか、こういうふうに考えます。
  126. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、明らかに憲法二十条に違反するおそれがあるということをきのうも申し上げました。英霊を祭る意味というのは、きのうも言いましたけれども、いろいろな方法がある。靖国神社に参拝をする、そういう行事というのはやはり取りやめていただきたいというのが私の要求でございました。簡単に無視されたことは事実でありますが、いまやはりこの問題というのは相当尾を引く問題だろうと私は思うのです。ですから、少なくとも官房長官は、これだけ社会的な問題になっている事情について、あるいは法制局の見解があるという事実に基づいて、あるいはあなた自身が参拝に参加しているという、そしてそれは随行ではないと言ってみたところで、結局総理大臣に官房長官が随行したということを否定することはできない。それらのことについて軽率であったということまでは言わなくても結構ですが、やはり意識的にやったというふうに私は考えざるを得ないという立場に立って反省を願いたい、このように思います。その点での御答弁をいただきたいと思います。
  127. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどもしばしば申し上げましたように、福田総理大臣私人としての参拝でございますから、これまでの慣例というふうなこともあるわけでございますし、私はこの限りにおいては差し支えがないことではないか、こういうふうに考えるわけです。
  128. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 内閣法制局の明確な見解があるのですよ。それをあるいはお知りにならないで行ったんだろうと私は思うのです。そして後で、いま官房長官が読み上げられたように、事務当局がつじつまを合わせる言葉をつづって、あなたがいま読んでいるんだろうと私は思うのですよ。問題はここなんです。やはりこういう事態を重視しない、あるいは国民に対するさまざまな感情というものを全く逆なでするようなことをなすって、そして平然と憲法を無視していくというか、軽視していくというやり方をなさっていく、その姿勢が防衛問題についても栗栖発言を生み出しているのではないだろうか、私はこんなふうに言わざるを得ないのです。  いまもう官房長官忙しいところを飛んで来られたわけですから、私の質問時間もやってまいりましたから、この辺で質問はやめますけれども、この点についての見解を最後に、法制局おられますか。――この前の答弁をあなた方はお変えになるおつもりかどうか、この前の答弁が正しかったというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、その違いだけ承っておきたいと思います。
  129. 茂串俊

    ○茂串説明員 お答え申し上げます。  この前の答弁と申されますのは、恐らくことしの四月二十五日の参議院の内閣委員会におきます野田委員に対する真田法制長官の答弁であるというふうに推察しておるのでございますけれども、真田長官お答えといたしましては、靖国神社の参拝につきまして、あくまでも総理の場合であっても私人という立場で、いわば宗教心のあらわれという形で参拝されるということは、これは毫も問題がないわけでございまして、ただ特別な事情がある場合、たとえば国の公費をもって玉ぐし料を差し上げるとか、あるいはまた特別に国の責任で国の行事として参拝をされるというような場合であればともかく、そのような特別な外形的な事情が伴わない限りにおきましては、まず私的な行為であるというふうに考えてよいのではないか、こういう答弁をされておるわけでございます。したがいまして、先ほど安倍官房長官の御答弁とぴったりと合うわけでございます。
  130. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ごまかしちゃだめなんですよ。議事録になっている言葉をいまあなたは適当に解釈して物を言っていたんじゃだめなんですよ。なぜ四項目を私が細かく言ったかといえば、真田法制長官が答えているからなんですよ。それを部下であるあなたが適当につじつま合わせをしているというのは、法制局というのは一体何のためにあるのですか。事が起こったときにその都度解釈を変えていくために法制局というのはあるのですか。政府の行為を合法化するためのつじつま合わせをするために法制局というのはあるのですか。冗談じゃないですよ。こういうやり方で既成事実を一つ一つ積み上げていく、これは超法規的なものですよ。こういうことを政府が強く反省をすること、そしてやっぱり日本の民主主義とか――きのうは八月十五日で敗戦記念日です。終戦の記念日です。このことをもう一遍問い直していただきたい。それは日本の新しい歴史の出発点とも言われるべき、将来に向かって日本の平和を誓い合う、そして平和のあり方というものを問い直す、同時に戦争によるところの犠牲というものを一体われわれがどう考えるべきかということ、ここには見解の相違があることは私も知っています。知っていますが、そういう問題を含めて問い直す機会が八月十五日ではないかと実はきのう総理府総務長官に私は申し上げた。にもかかわらずこういうことを簡単にやってのける、この無神経さ、ここをやはり問わざるを得ません。  もう時間が来ましたから、私はやめますけれども法制局の答弁は率直なところ許せませんよ。これは安倍官房長官あなたも、総理の問題だけでなしに、あなた御自身も参拝をされて、そして肩書きつきで記帳されたわけです。これはあなた自身が、たとえば八月の初めに日本基督教団の諸君がお目にかかったときにそのこともはっきり言っているはずです。それは覚えていらっしゃると思いますけれども、こういう不安がある中であなたがあえてなすったということについての責任というもの、あるいは反省というものをこの際素直に承っておきたいものだ、こんなふうに思うのです。
  131. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かにいま岩垂委員から御指摘がございましたように、靖国神社の総理参拝に関しましては、その前にいろいろな団体からこの参拝は取りやめるべきであるというふうな御要請がしばしばあったことは事実であります。したがって、私といたしましては、総理の参拝につきましては慎重を期さなければならない、こういうことで法制局等とも打ち合わせた結果、私人としての参拝ならば差し支えない、こういう結論が出ましたし、前例等もいろいろと調べた結果、私人としてなら間違いないという結論が出ましたので、事前に私人として参拝をいたしますということを申し上げて、その結果として昨日の参拝ということに相なったわけであります。もちろん私自身もいわば戦中派に属するわけでございますし、八月十五日の意義は身をもって体験をいたしております。そういうことで毎年一回は靖国神社に参拝をいたしておるわけでございまして、たまたま総理が参拝される機会をとらえて私も同行して参拝したわけであります。
  132. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  133. 高鳥修

    高鳥委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分開議
  134. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の防衛に関する件について質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 初めに私は、過日十二日に日中の平和友好条約が調印をされたということにちなんで、この問題について少々お伺いをしたいわけであります。  大変に長い間懸案でありました日中平和友好条約が調印されたということは、わが国外交にとってまことに喜ばしいことであり、外務大臣を初め政府の関係者の努力を多とすることについてはやぶさかではありません。ここに日中の恒久平和関係の礎が置かれたわけでありますが、このことは、アジアのみならず、世界の平和に大いに貢献するものと確信いたしております。そういう意味において、一日も早く日中平和友好条約が批准されますように、私どもの党も努力してまいりたいと思っております。  そこで、今回反覇権が条約の中に入れられたのは、日中平和友好条約が実は最初であります。このことによって、いままでは精神的なもの、あるいは政治用語として使われてきた反覇権が、今回条約に盛り込まれたことによって、一つは実定法として、憲法の第九十八条の条約及び国際法規の遵守という規定のもとにおいてこれが批准をされるということになれば、まことに大きな意味を持つわけでありますが、そこでこの問題について、まず今回の反覇権ということは、実定法として、また国際法に認知されたことであるというふうに考えていいかどうか、その点について、まず外務省の方にお聞きします。
  136. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  反覇権という言葉は、実は米中共同コミュニケなどの諸般のコミュニケに使われております。また、諸国家の経済権利義務憲章、これは七四年に国連総会で採択されたものでございますが、これに採択されております。最近に至りましては、非同盟の外相会談においても宣言として採択されております。したがいまして、最近では非常に広く用いられるようになってきた、したがいまして、国際的にも広く受け入れられるようになってきたということでございますが、実定法的には、まだ広く概念的には使用されるに至っていないということでございます。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 将来反覇権条項を各国間の条約に取り入れられることが予測されますので、この反覇権の定義というものをこの際明らかにしておかなくてはならないのではないかと思いますが、今回日中において調印されました日中平和友好条約の反覇権という問題について、どのような論議がなされ、そしてまたその反覇権としての定義が取り決められたか、この点についてお伺いいたします。
  138. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  具体的にどのような行為が覇権を確立しようとする試みであるか、それは具体的にはそれぞれの状況に照らしてそれぞれの国が認定するわけでございますが、今回の日中条約交渉におきましては、事柄が非常に重要であるということで、お互いに意見交換したわけでございます。  まず、日中条約においての反覇権という言葉につきましては、定義は設けないけれども意見交換した中で、日本側といたしましては、一国が他国の意思に反して力により自己の意思を押しつけようとするがごとき行為は覇権を求める行為である、国連憲章の原則にも反するものであるという旨を中国側に明確に述べまして、中国側もこれに異議を差しはさまなかった。したがいまして、こういう考え方で双方の間に意見の相違はないというように了解しております。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは日中平和友好条約の中で、反覇権であるとかいう認定とかあるいは反覇権の取り扱い、具体的にはどういうふうになるのでしょうか。
  140. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  いかなる行為をもって覇権行為とするかは、それぞれの具体的な情勢に応じまして各国が認定するわけでございます。それでまた、いかなる行為をとるかも、これまた各国の認定によるわけでございます。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、尖閣諸島問題で最後に鄧小平副主席に園田外務大臣がお会いをいたしたときに、再び先般のような争いを起こすことはないというふうに述べられたというお話でありますけれども、それに対して日本側は了承をしたという形になっておりますが、このことは日中間で何らかの取り決めがあったのか、あるいは口頭での約束なのか、その点の感触、それからそのときの事情を、国民は大変に知りたがっている問題じゃないかと思いますが、その点についてちょっとお伺いしましょう。
  142. 三宅和助

    ○三宅説明員 八月十日に園田大臣が鄧小平副総理と会談されましたときに、園田大臣の方より尖閣諸島問題についてのわが方の立場について述べたわけでございます。そうして先般のような、すなわち四月の尖閣事件でございますが、二度と起こらないようにしてほしい旨を述べられたわけでございますが、それに対しまして鄧小平副総理は、先般の事件は全く偶発的であった、中国政府としては再びあのようなことを起こすようなことはないことを信じてほしい、こういう問題から抜け出したい、こう先方は述べたわけでございます。したがいまして、これで十分われわれの立場確保されたということでございます。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたが鄧小平の言われたことによって十分日本の主張は通った、こういう判断をされた根拠は何でしょうか。
  144. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えします。  御案内のとおり、尖閣諸島というものはわが国の固有の領土であるという日本の基本的な立場がございます。それと、かつ日本側が実効支配しているという事実がございます。それと、先ほど申し上げました鄧小平の言明、それを正式な形で園田外務大臣に伝えたということをあわせ見ますと、日本立場は貫かれたということでございます。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御存じのとおり、日本を敵国視した中ソ友好同盟援助条約の処理について、園田外務大臣の談話によりますと、鄧小平さんにお会いして、来年四月に同条約の廃棄のための処置をとるとのことであるが、このことは、同条約は一九五〇年に締結され、有効期間は三十年になっているわけであります。ただし、同条約を廃棄したいときには有効期間満了の一年前に通告するということになっております。つまり来年の一九七九年が一年前の通告のときになっているわけであります。そこで中国は、一九七九年に同条約の廃棄通告を行い、実際の条約の廃棄は一九八〇年となるのではないかと想像されるわけでありますけれども、その点、中国側の説明はどのようになされましたか、そしてわが方としてはどのように受けとめられましたか、その点についてお伺いしましょう。
  146. 三宅和助

    ○三宅説明員 やはり同じ園田・鄧小平会談におきましてこの問題に触れたわけでございます。そこで先方からかねてからの中国側の立場、名存実亡と申しますか、形は残っていても実際にはないのだという中国側の立場を明確に、しかも公式に園田大臣に伝えたということでございます。それからさらに、これらの会談を通じまして、基本的には中ソの同盟でございますけれども、園田外務大臣としましては、これが来年の四月に中国側としては廃棄のための必要な措置をとるという強い感触を得たということでございます。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 鄧小平とお話をなさっているときに、来年の四月にいわゆる廃棄をするという感触を得たというのですが、感触を得るということは、相手方が言ったからこちらがそういうふうな感触を得たのかという問題が出るわけなのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  148. 三宅和助

    ○三宅説明員 この問題につきましては、いろいろと中国側の立場についての説明があったわけでございます。したがいまして、そういう先方側の説明を通じてそういう強い感触を得たということでお察し願いたいと思います。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 本来ならば、きょうは晴れの舞台で、園田外務大臣をお呼びして、こういう問題についてははっきりしたいと思ったのですが、きょうは何かインドの外務大臣とお会いしているのでやむを得ないのですが、いずれにしても、政府の公式な見解を言っていただいたわけでありますが、さて、日中平和友好条約締結されることによって、わが国の国際的な地位はどういうふうに変化するというふうにごらんになっておりましょうか。また、実質的な日米中のいわゆる提携というのが諸外国に脅威を与えることになるのではないかという心配も実はあるわけでありますけれども、それに対してはどう対処されていくつもりでしょうか。
  150. 三宅和助

    ○三宅説明員 まず第一の御質問でございますが、日中の平和友好条約というものは、あくまでも両国間の友好関係を強固に発展させるということでございまして、わが国の国際的立場には何らの変化があったというものではないわけでございます。この条約の締結というものは、日中間に残されました懸案事項を処理いたしまして、さらに日中の友好関係を発展させるものでございますが、これによりまして日中の平和と安定というものが、東南アジアアジア、さらに世界全体の平和と安定に貢献するという考えを持っております。その立場というものは依然として変わらないということでございます。  それから、第二の御質問に対しましては、日米中ということでございますが、日本はあくまでも日中条約を通じまして両国間の安定、さらにアジア、その以外の世界の平和と安定を願っているわけでございまして、その基本的なねらいといいますか、そういうものが、米国がやはりアジアの安定を望んでいるということで、たまたま一致しているということかとも考えられます。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 福田内閣は、外交政策の基調を、日米関係を基軸とする全方位外交だとPRしておりますね。私は、実はよく理解ができないわけでありますけれども、それについてちょっとお聞きしてまいりたいと思っております。この政策は中立政策を意味しているのか、あるいはどの国とも仲よくという外交常識の表現なのか、その点についてはどうなんでしょう。
  152. 三宅和助

    ○三宅説明員 全方位平和外交とは、平和でいかなる国とも友好関係を結ぶという姿勢の問題でございまして、これは日本が中立とか、そういう具体的なことを意味しているものではないと解されます。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 どの国とも仲よくするという姿勢であるというならば、実際には何も日米基軸というふうに限定をしなくてもいいはずですね。そこに私は大変に問題があると思うのですけれども、たとえば日米関係を基軸とするというわけでありますけれども、もしそうだとするならば、ある国の対米関係が悪くなったときに福田内閣の言う全方位外交政策というのは破綻をするということもあり得るということですね。
  154. 三宅和助

    ○三宅説明員 私は、具体的に正確に御質問を把握しているかどうかわかりませんが、日米を基軸にしてという意味は、現在の日本外交というものが日米安保体制を初めといたしまして日米関係にやはり大きなウエートがかかっているという現実があるわけでございます。しかしながら、いかなる国とも体制いかんを問わず友好関係を結んでいくというその現実に立脚した姿勢を全方位外交という形で、そのための中身としまして日米を基軸にしてということに使ったんだろうと思います。したがいまして、それ以上、将来のいろんな問題があるかとも思いますが、なかなか想定したお答えというのはこの場で出しにくいわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米安保体制下の日米関係を基軸とする全方位外交というのは、実際には対米追随外交ということになるわけでしょう。わが国が独自の平和外交を推進するには、まずやはり日米軍事同盟を、それにかわる日米友好不可侵条約を結ぶことによって初めてわが国の全方位外交というのは実際には成り立つわけですね。日米を基軸として全方位外交、先ほども防衛庁防衛局長が言ったわけでありますけれどもアメリカとソビエトとが対峙をしているというわけでしょう。対峙をしているという中にあって、実際に日米を基軸として全方位外交と言っても、対峙をしている中にあってはなかなかそれは、全方位外交、仲よくやろうと言ったって思うようにならない。  だから今度の問題についても、いろいろ実は問題があるわけでありますけれども、そこで、安倍官房長官が十三日、テレビで全方位外交はいかなる国に対しても脅威を与えないと述べられておるけれども、実際にソ連を、軍事的にある程度の意識をしているアメリカにしてみるならば、果たして安倍官房長官が言う全方位政策、諸外国からそのまま受け取られるかどうかということについて大変に矛盾があるのではないか、私はそう思うのですが、あなたは、テレビでは日米を基軸とする全方位外交をとっているから、どこの国にも脅威はないのだ、与えないのだ、こういうふうなことをおっしゃっているのとちょっと矛盾があるのじゃないかと私は思うので、きょう来ていただいたわけですが、その点についてどうでしょうか。
  156. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 福田総理が言っております全方位上平和外交というのは、私の解釈ではこれは等距離外交とかあるいは中立外交ということではないわけであります。先ほどからお話が出ておりますように、日米を基軸とする全方位外交、すなわち日米を基軸としていずれの国とも仲よくするという外交の基本的姿勢を述べておるわけでございます。日米につきましては、先ほどからアジア局次長が申し上げましたように、安保条約も締結をいたしておりますし、特にわが国とは緊密な友好親善の関係にあるわけでございます。  これが前提となっていずれの国とも仲よくしているということでありますが、ただいまの御質問を承っておりますうちに、日米間で安保条約を結んでおる、こういうことが、全方位外交と言っている以上は、他国に脅威を与えるのではないかというふうな御質問にも受け取れるわけでありますが、この日米安保条約というのはあくまでもわが国アメリカとの緊密な関係を進めるための、そしてわが国安全保障確保するための条約であって、あくまでも防衛的なものでございますから、これは他国に対して脅威を与えるものではないし、またわが国の憲法に照らしても、わが国の外交方針、外交政策そのものはいずれの国に対しても決して脅威を与えるものではない、こういうふうに私は確信をしておりますし、またそういう外交でなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 安倍官房長官が言われた、日米基軸の全方位外交でどの国にも脅威を与えないということであるならこれは問題ないですが、やはりそう受け取っていない国も間々見受けられるだけに問題があろうかと私は思うわけです。これは問題を指摘しておきたいわけであります。  さて、私は実はきょう取り上げるつもりではなかったわけですけれども、終戦記念日の昨十五日、福田総理を初め安倍官房長官中川農林大臣、稻村総理府総務長官が靖国神社に参拝し、記帳に内閣総理大臣福田赳夫と肩書きをつけ、三大臣も官職名をつけて記載されたと報道されておりますが、これは事実ですか。事実であるかどうかということだけ聞かしてください。
  158. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 福田総理大臣以下閣僚が靖国神社に参拝をいたしました。あくまでも私人として参拝をいたしたわけでありまして、これは事実であります。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 内閣総理大臣福田赳夫、そして三大臣も官職名をつけられた、これは事実ですね。
  160. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 事実であります。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、私人とか公人とかいうことを実際にここで論議をしてみたって始まらぬ問題なんです。それはなぜかというと、この宗教という問題は心の問題ですから、あなたがどういうふうに思っていたかということはこっちはわかるわけないのだから、それよりも大切なのは、果たして憲法第二十条に規定されているところの信教の自由というその点において、客観的に見て、国民が見ておかしいというふうに判断された場合において、これは私人であるか公人であるかということについて実は判断される問題なんです。あなたは、私は私人で行きましたと言うに決まっている。そんなことを私はお聞きしたくもない。  ただ問題は、そういうふうなことが非常に問題になるのでと、法制局の方では実は御存じのとおり、先ほどもお話がありましたように、私人か公人かの資格という問題については、一つは公用車を使用しない、あるいは記帳には公職の肩書きをつけない、あるいは玉ぐし料を国からは出さない、なるべく閣僚など公職者が随行しないということを私人と公人の立て分け、これはどこまでもやはり客観的に見ての問題になるわけですが、そういうことを取り決めたわけですね。  いま私がお聞きしたいのは、要するに私人か公人か、私は私人の立場で行きましたとおっしゃっても、この四つの中で、たとえば公用車を使用したかどうかの問題、それからあるいは記帳に公職の肩書きをつけたということは、これはわかりました。玉ぐし料を国から出した、これは出したか出さないか、こちらが一々わかるわけがないので、そんなことを論議してもしようがない。それからもう一つは、やはり総理大臣に随行されていった方々、あなたは随行と先ほどおっしゃいましたね。私もたまたま総理大臣が行かれるので随行していった、こうおっしゃったでしょう。(「同行」と呼ぶ者あり)同行か、同行、こうおっしゃった。これを見ると、もう明らかにこれは公人としての資格をもって参拝したというふうに客観的に実はとられるわけであります。国民はそう思っているのです。だから、そういうことになりますと、これは大変に憲法二十条に抵触すると同時に、あなたも御存じのとおり、国務大臣並びに国会議員は憲法を遵守しなければならない、そういうのに抵触するんじゃないですか、その点はどうなんでしょう。
  162. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の福田総理の靖国神社参拝につきましては、事前に私からも公表しておりますが、私人として福田総理大臣は靖国神社に参拝をすると言っておるわけでありまして、その発表どおり私人として参詣をした。その場合にもちろんいろいろと憲法上の問題もありますから、法制局とも話をしたわけでありますが、私人として参拝をする場合は差し支えない、こういうことで参拝をされたわけであります。私も毎年参拝をしておりますから、総理がちょうど参拝をされますので、それに同行したということでございます。  なお、公用車を使ったということは確かにそのとおりでありますが、これは警護等の関係もございますし、総理大臣の場合は、そうした私人的な行為をする場合でも公用車を使う場合もあるわけでありますし、これは差し支えないのではないか、こういうふうに思っておるわけでありまして、全体的には、あくまでも事前に発表もいたしておりますし、総理も私人としての参拝ということで行っておるわけでありますから、私は、もうどういう角度から見ても私人以外ではない、こういうふうに考えます。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公用車を使うのはあれだとおっしゃるけれども、実際これは公私混同だ。もし私人であるとするならば、国民がそういうふうに受け取る心配があるのではないだろうかというふうに思うならば、少なくともそういう配慮はあってしかるべきではないのか。  そこで、法制長官にお聞きしたいのですが、こういうふうなことはまことに喜ばしいことだ、結構な話だ、そうお思いですか。これは憲法二十条の立場から言いますと、客観的に見てこういうふうなやり方はまことに結構だとあなたはお思いですか。
  164. 真田秀夫

    ○真田説明員 問題は、憲法二十条第三項の国の機関が宗教活動をやったことになるかならぬかということだろうと思うのですが、私人としてお参りになるということは一向差し支えないことなので、それを、記帳の際に内閣総理大臣という肩書きをおつけになったからこれは公的であろうとか、そういうふうに決めつけられるのがどうも私は腑に落ちないのです。  つまり神社にお参りするとかあるいはお寺にお参りするというのは、もともとが個人の宗教心のあらわれでございますから、特にそれを国の行事として行ったのだという何か、たとえば閣議決定をやって内閣を代表して行ってこいとか、あるいはそういうふうなことがあればこれは別でございますよ。そういうことがない限り、これはもう個人の行為、つまり私的行為として見るというのがむしろ自然な受け取り方でありまして、車が公用車であるとか、ほかの大臣も一緒に伴って行ったとか、そういうことをあげつらって、だから公的行為ではないか、憲法違反ではないか、九十九条違反であるとかというようにおっしゃることがどうも私は腑に落ちないというような感じがするのです。  ことしの四月に参議院の内閣委員会でもずいぶん私お答えしたのですが、そのときもいまの公用車の問題とかいろいろ出まして、その一つとして、福田総理大臣が靖国神社の例大祭にお参りになって何を祈ったかというふうに新聞記者から問われて、そしてそのとき総理は、それは日中問題がうまくいくようにとかあるいは成田の問題とかいろいろな政治向きのことを祈ってきたとおっしゃったので、それ見ろ、それだからこそこれは公的な行為と言わざるを得ない、私的な行為としてお参りになったのなら、自分が長生きするようにとかあるいは三枝夫人が長寿を保つようにということをお願いするのなら話はわかるけれども、そういう国事をお祈りしたなんということから見ても公的ではないかというふうにおっしゃった節もあるのですが、そういう一つ一つを取り上げまして、だからこれは公的だと言うのはおかしいので、もともとが神社にお参りするというのは私人の行為なんですよ。  私人の行為ですから、玉ぐし料はやっぱりポケットマネーでお出し願わなければ困るので、公費をお使いになっちゃ困りますというふうに私は申し上げておるのです。それから公用車の話も、これはいま官房長官もおっしゃいましたけれども、総理ともあられる方ですと警備の問題もあります。そしていつ何どき急用があってスケジュールを変更してほかの方へ回らなければいかぬということもあり得るわけです。だから靖国神社の手前まで行ったら乗り捨ててタクシーで行きなさいというのも少し実情に合わないのであって、乗用車が白ナンバーだからどうというようなことをそんなにあげつらう必要はないのだろうというふうに考えております。  むしろ私は基本的には、神社にお参りするというのは私的行為だと思っておりますから、望ましいとか望ましくないとかいうのではなくて、これは大臣であられようと総理であられようといつでもやっぱり神社へお参りできるというのが筋なんであって、在官中は神社をお参りしたら公私混同になるからやっていけないということになると、かえって憲法二十条第一項が保障している信教の自由がその間奪われるというようなことになりますので、そういう公私混同をあげつらって憲法違反になるのじゃないかというふうな感覚は私は持っておりません。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法制長官は法の番人なんですね。だから、現内閣あるいはこういう憲法の問題については厳密にこれを判定しなくちゃならないあなたが、常に内閣に伴って拡大解釈をする、そういう役目を負っている感じがしてならぬです。あなたの御答弁はいただけないというふうに私思います。  実は十五日の日に政府主催による第十六回全国戦没者追悼式が天皇、皇后両陛下の出席のもとに日本武道館で行われた。私も公明党を代表して出席させていただいたわけでありますけれども、これは全く宗教色はない。しかも、ひとしく平和への決意を新たに国民こぞっての式典として、国のために戦死された方、すなわち靖国神社に祭られている方も含めて、あるいはまた戦争のために犠牲になられた方々の追悼をさせていただいたわけでありますけれども、政府は、みずからの主催する全国戦没者追悼式典だけでは不満だというふうに思われて、そして靖国神社に行ったのですか。
  166. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 戦没者追悼式というのは政府の行事で、これは総理大臣以下全閣僚が公式に参列をしたわけでございます。靖国神社に対する参拝は、いま法制長官が申し上げましたように、総理大臣としての公式な参拝ということではなくて、総理大臣福田赳夫としての個人としての、私人としての参拝でございます。したがって、他の閣僚に一緒に行こうとか参列しようとか、こういう呼びかけをして行ったわけではもちろんありませんし、福田総理の個人的な宗教心に基づいて行かれたわけでございますから、ちっともその間には矛盾するものはない、こういうふうに考えます。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いずれにしても、これは国民がこういうふうな問題について客観的に判断する問題でありますから、少なくとも国会においてこういう問題が取り上げられたということ自体についてはやはり大変に問題を今後も残すものであろう、そう思うわけでありますが、安倍官房長官、大体質問の方はそういうことで終わりましたからお帰りになって結構です。安倍官房長官も御存じのとおり、福田内閣総理大臣の女房役として間違いのなきようにやはりいろいろと考えいかなければならぬ立場だから、そういう意味においては今後やはり十分に慎重を期してやってもらいたい、こう思います。結構です。  さて、防衛の方に今度は入らせていただきます。  先ほども防衛庁長官が、私は絶対に戦前の日本にしてはならない、こうおっしゃったわけです。これはもうしょっちゅうあなたはそこでおっしゃっているわけですけれども、その戦前の日本にしてはならないという具体的な認識を、どういうふうにお考えになっておりましょうか、その点をお聞きしましょう。
  168. 金丸信

    金丸国務大臣 私は大正の生まれでありまして、あの満州事変の始まる前、満州の権益を守るということで、またそういう中に、国内においては五・一五事件とか二・二六事件とか、そういうものをつぶさに私はこの目で、このはだで実感として持っておるわけであります。そういう中から盧溝橋事件とか、あるいは満州事変とかシナ事変とか大東亜戦争とか第二次世界大戦とか、そういう過程を見詰めて、また私が満州の関東軍に入隊し、その軍の教育を受ける中、そういうことをあれこれ思いながら、国民には自由は全然ない、こういうことを私はしみじみと思ったわけであります。骨の髄まで私はしみておる、こんな日本にしてはこれはいかないということをしみじみ私は思っておったわけでありますが、そういう意味で戦前の日本にしないということがいわゆるシビリアンコントロールだ、それを絶対守っていかなければいかないという考え方を常日ごろ私は持っておった、防衛庁長官になったからということではありません。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、率直に申しますと、戦前の日本にしてはならないということは現行平和憲法の基本精神を忠実に守るということに尽きると思うのですけれども長官の憲法についての認識をお伺いしたい。
  170. 金丸信

    金丸国務大臣 日本国民である以上憲法に従うことは当然であります。また、日本の憲法は平和憲法でもあります。また、現在の自衛隊はいわゆる敵に脅威を与えぬ最小限度の防衛ということ、専守防衛ということ、私は、この日本の憲法に当然従っていくことが国民の責務だ、こう感じております。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、栗栖発言の問題で防衛庁長官は更迭をせざるを得ないという状態になったわけでありますけれども、この栗栖発言は超法規的な行動云々という言葉があったわけでありますけれども、それは自衛隊があたかも現行法制を無視して行動する可能性があるかのようないわゆる錯覚を国民に与えたことは事実であります。となりますと、私は防衛庁長官に基本的な考え方を聞きたいわけでありますけれども自衛隊日本国憲法並びに防衛二法を根幹として管理、運営をされている以上、どんな場合でも法を無視して超法規的行動はないと理解してよいか防衛庁長官の見解を承っておきます。
  172. 金丸信

    金丸国務大臣 おっしゃるとおりであります。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回、栗栖統幕議長が超法規的行動をとり得ることもあると発言をしたということは、シビリアンコントロールを無視した発言であるばかりか、法治国家として基本的存立にかかわる問題としてまさしく重大な問題と言わざるを得ないわけであります。そこで、今回栗栖統幕議長の更迭、これは辞任ですね、辞任にしたという理由と、長官のこれに対する認識を伺っておきます。
  174. 金丸信

    金丸国務大臣 辞任の経緯につきましては、なお詳細に人教局長からも御報告をいたしますが、この問題につきまして私は、今回の超法規行動ということについては重大に受けとめなければいけないという話を事務次官にいたしたわけであります。そういう中で御本人から進退伺いが出ました。進退伺いが出ましたから、その進退伺いをいただいたところが、それでは辞表もとっていただきたい、こういうことでいただいた、こういう経緯でありますが、人教局長からなお詳細に説明させます。
  175. 渡邊伊助

    渡邊説明員 先ほども御答弁申し上げましたが、いわゆる超法規的行動云々発言につきまして、この発言統幕議長発言としては適当ではない、看過できないという御意向長官から示されまして、この意向は事務次官を通じて栗栖議長に伝えられました。栗栖議長はその御意向を受けて、長官信任を失ったというふうに判断をされて、進退伺い及び辞表を提出したという経緯でございました。  その進退伺い並びに辞表の要旨は、いろいろ世間を騒がせて長官に御迷惑をかけた、これは全く慮外のことではあるけれども、遺憾にたえないし、かつ長官信任を得られなくなったので職を辞したい、こういう要旨のものでございまして、長官はその辞表を受理された、こういう経過でございます。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁設置法の第二十七条において統合幕僚会議議長の地位というのが第二項で決められております。「議長は、専任とし、自衛官をもつて充てる。議長たる自衛官は、自衛官の最上位にあるものとする。」すなわち自衛隊という武装集団の長として、その言動については非常に影響力が大きいわけであります。しかもシビリアンコントロールという最も基本的な問題で更迭せざるを得なくなったということについては、私はまことに重大な問題である、こう思うわけでありますが、統幕議長の任命についてはだれがその権限を持ち、だれがその責任を負うことになるのでしょうか。
  177. 渡邊伊助

    渡邊説明員 統幕議長の任免権は、自衛隊法並びにそれに基づく防衛庁訓令によりまして防衛庁長官にございます。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、防衛庁長官がそういう方を任命したという軽率のそしりは免れないわけでありますが、今後どのようにこういう問題についてはシビルをきかせていこうというふうにお考えになっておりましょうか。
  179. 渡邊伊助

    渡邊説明員 統幕議長を含めて制服の高級幹部の人事異動につきましては、従来の慣例と申しますかやり方は、人事担当であります私を含めて内部部局におきまして一応の素案をつくりまして、これを両次官並びに長官に御説明を申し上げて御了承をいただく、御判断を仰いで決定をしていただく、こういうやり方をしておるわけでございます。その意味におきまして、補佐の責任は私にございます。  ただ、栗栖議長が昨年の十月に就任されましたときでございますけれども、従来統幕議長というものは、現職の三幕僚長の中から選任をするというのが慣例でございます。しかもただいま先生おっしゃいましたように、統幕議長は最高位にある、制服の最上位にあるということでございますので、なるべくならば三幕僚長の適任の者を選ぶというのが従来の慣例でございます。当時栗栖議長は陸上幕僚長を占めておられました。栗栖さんのこれまでの経歴あるいは識見その他これまでの業績等を見て、最もふさわしい者として素案をつくりまして、当時の防衛庁長官に御説明を申し上げて御判断を仰いで御決定に至ったということでございます。  ただ、私どもは、栗栖さんが憲法を無視したり、あるいはシビリアンコントロールを逸脱するというようなお考えをお持ちであるというふうには考えておりませんし、当時はもちろんそのとおりであります。その後いろいろな問題発言がありまして、国会等でも取り上げられた経緯がございます。これまでの発言につきまして個々に検討して国会で御答弁申し上げておりますように、あるいは説明不足の点があるということで、意図としては真意は十分わかるという程度のものでございました。しかし、今回の発言はやや意味が違う。これはただいま先生おっしゃいましたように、要するに、自衛隊が法を無視して行動するような可能性があるというような印象を世間に与えた、こういうことに非常に問題があるというふうに私ども考えております。選任当初におきまして私どもはふさわしい方として就任されたというふうに考えておりますけれども、結果的に見て、今回のような事態に至ったということはまことに遺憾であります。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 選任のときはそういう気持ちはなかったろうというふうにあなたは判断して、やったというわけでありますけれども、結果からいって、やはり政治責任を伴うものなんです。こういう問題は。政治責任というのは結果責任なんですからね。そういう意味において、人事局長ももちろん責任はあるでしょうけれども防衛庁長官は任命をする一番キャップなんだから、防衛庁長官責任は重大なんです。  そこで私は、統幕議長を権威づけるということは決して賛成ではないのですけれども、しかし、設置法の六十二条の第二項五号で「内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」の中において、少なくとも統幕議長は三軍の、言うならば最高位にある方なんですから、そういう意味において国防会議議長である総理大臣のシビルまできかした、言うならば任免という問題は考えられませんか。防衛庁長官
  181. 渡邊伊助

    渡邊説明員 防衛庁長官内閣総理大臣の指揮監督のもとに自衛隊を統括、管理する責任がございます。そういう権限もあり、かつ義務がある、これが自衛隊法の精神であります。  そこで、いかなる組織体でもそうでございましょうが、人事というものはやはり組織というものを統括する基本であるというふうに考えられます。したがいまして、防衛庁長官統幕議長なり高級幹部の人事権を持つということは、自衛隊の部隊を統括するという意味から全く適当であり、その方が妥当であるというふうに考えられるわけでございます。  ただいま先生おっしゃいました国防会議の問題でございますけれども、御承知のように、国防会議は主として、防衛庁限りではなくて、他省庁にわたるような事柄につきまして防衛上の問題を実質的に審議をされるという場でございます。人事という問題をそういう場においていろいろ議論をして決定するということにはややなじまないのではないか。しかも、国防会議というものは合議体でございますので、やはり統括権を持っておる防衛庁長官の専属権、こういうことが最も妥当であるというふうに考えられます。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それならなおさら防衛庁長官責任は重大だよ。これだけの問題を起こした責任は本当に重大だというふうに防衛庁長官認識されていますか。  それで、さらに少なくともシビルをきかす意味においては、国防会議議長総理大臣だから、そういう問題についてやはり一応、今度はこういうメンバーをということで諮ったっていいんじゃないですか、こんなことは。
  183. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、内閣総理大臣命令指揮下にあるわけでありまして、この問題について私独断でやるということはできないという考え方で、私は総理にも報告をして了承を求めた。御理解いただきたい。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年の六月に防衛庁では中央組織のあり方を検討する作業部会が設けられ検討されておるというが、具体的にはどういうふうな内容になっていましょうか。ちょっと御説明願いたいと思います。
  185. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 御承知のように現在の防衛庁自衛隊が発足しましたのは昭和二十九年でございまして、それから二十数年間この防衛庁の中央組織というのは基本的な変化がないわけでございます。しかるに、一方、自衛隊内容、規模というのは相当変わっておりますし、防衛庁をめぐる環境も変わってきております。そこで、今日的な目でこの中央組織、特に内局と統合幕僚会議でございますけれども、この辺を見直してみて、新しい防衛行政をもっと効率的にできないだろうかということで昨年の六月以来検討しているわけでございます。  具体的に申し上げますと、検討項目を大きく分けまして四つの作業部会というか、検討チームをつくっております。一つは、内局と統幕、各幕との関係を明確化する。これは御承知のように、内局は現在何々の基本というふうな仕事を持っております。たとえば内局は行動の基本、統幕会議は指揮命令の基本というふうな権限を持っておるわけですが、その関係を具体的にどうするかというようなこと。それから第二番目は、情報機能の強化、現在防衛庁でいろいろな情報をとっておりますが、その情報の収集処理、分析の体制を整備しよう、それから報告、連絡体制をよりいいものにしていこうというのが第二番目の項目でございます。それから第三番目の項目としまして、統幕機能の強化ということで、統幕というのはどういうことを有事になすべきであるかというふうなこと、先ほど申し上げたような指揮命令の基本というのを持っておるわけですが、その辺の手続要領も明確にしたい。それから第四番目は、内局組織の見直し、具体的に言えば局割りの見直しというふうなことが検討課題になりまして、現在事務的に検討を進めておりますが、まだここでもって具体的な結論を申し上げるような段階にはなっておりません。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうような内局と統幕及び各幕の関係はどういうふうになるのか、あるいは内局のシビリアン政策と軍事的な面をどういうふうに検討していくのか、あるいは各幕、統幕、幕僚監部はいかなる権限を持ち、長官に対してどのような権能を果たすのか、その見解を承っておきたい。
  187. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 具体的な項目についてはなお検討中でございますので、はっきり申し上げる材料がございませんけれども、内局も、それから統幕、各幕、それぞれひとしく長官の補佐機関でございます。そういう中で最も効率よく仕事をするにはどういう割り振りがいいかということをいま寄り寄り検討しているということでございます。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほども問題になりました、過日ソ連が択捉島で上陸演習をやったという情報がある旨の発言をして、内局の防衛局長はそんな事実は確認をしていない、これは栗栖さんが言われたことについてそういう発言をされたわけでありますが、実際国民はどちらなのかさっぱりわからないわけでありますが、制服と背広が一つの問題にしても全く意見を異にしている。これは平和時だから問題はないなんて、そんな簡単に済まされる問題でないと私は思うのですね。たとえば有事の場合においてその判断、情報の連絡、報告という点はもうまことに重大な問題なんですね。ところが、統幕議長がぽんとテレビでそう言う。それに対して防衛局長はそんなことは確認していないなんということを言う、そういう食い違いになるその組織の欠陥というものは必ずあるはずですよね。それに対して、一つの大きな問題として、内局と、言うならば制服との連絡、報告ということについての欠陥とか、そういうものに対して防衛庁長官、どういうふうにされておりますか。
  189. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題で防衛庁の内局と統幕あるいは三幕との関係がまことにばらばらじゃないかという御指摘でございます。この問題につきましては、栗栖議長のいわゆる択捉島の演習というような問題を判断で申し上げたようでございます。テレビ対談で。しかし、それは防衛庁の統幕、三幕あるいは制服意見統一でなくて、栗栖統幕議長個人の考え方として判断をいたした。それは実際は、後で防衛局長がいわゆる防衛庁考え方を統括したものを国会答弁にしておる、そこに問題がある。まさにそういうちぐはぐは何だという御指摘を受けるところに、私は、あらゆる面でそういうことのないような組織あるいは運営、そういうようなものをすべて研究しておかなければ国民の負託にこたえられないじゃないか、こういうような考え方でおるわけであります。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このところ、有事有事ということが盛んに言われているわけでありますけれども、反面、有事有事ということだけを意識的にあれするということは非常に危険な面もある、私はそう思うのです。いずれにしても、当然、武力攻撃を受けないように努力しなくちゃならないわけですから、平和的な努力をまず怠って有事なんということは、私は大変に問題を残すのじゃないかと実は思うわけであります。  そこで、ちょっと法制長官に承っておきたいわけでありますけれども自衛隊法第九十五条で決められております内容というのは、これは一つは緊急避難の問題と、正当防衛ということなんですが、その自衛隊法九十五条でなし得るいわゆる限界と、栗栖発言で、有事の場合、超法規的な行動をとることもあり得るというその考え方の違いについて、法制長官としてはどのような見解をお持ちになっていましょうか。
  191. 真田秀夫

    ○真田説明員 九十五条について御質問がございましたが、九十五条といいますのは、武器等の防護のために武器を使用することができるということを書いている規定でございまして、「自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬」云々、そういうものを警護するに当たって、「人文は武器、弾薬、火薬」云々等を防護するため必要がある場合には、相当な限度で武器を使用することができるという規定でございまして、ただいまおっしゃいました正当防衛、緊急避難というのは、その武器を使用することはできるけれども、緊急避難または正当防衛の要件に該当する場合でなければ、人に危害を与えてはならないという規定でございますから、そのただし書きがありますので、おのずからここでやれる、行えるその武器の使用というのは限度がはっきりしているだろうと思います。  それから、例の栗栖発言の中の超法規的措置としてやれるということとは、これは大分話が違うわけでございまして、栗栖さんの発言は、そういう国を守るための武力の行使、これを、現行法では七十六条で一定の手続要件が決まっているわけなんで、それが間に合わないときには、超法規的な理屈で、理論で、現地の部隊の指揮官限りの判断で武力の行使ができるのだというふうにとられるような話でございまして、これは大分、面が違うわけでございますので、混同なさらないようにお願いしたいと思います。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本国憲法及び防衛二法を根幹として行動する自衛隊が、法を無視して超法規的な行動が許されるはずはないということは明確であります。超法規的な行為としては、実は五十年の八月にクアラルンプールのアメリカ大使館の襲撃事件で犯人を釈放したという問題があり、あるいは五十二年十月一日のハイジャックした犯人の引き渡しの要求に屈して、言うならば超法規的な措置がとられた。また今回の栗栖統幕議長も、有事の場合は、これに対処するため、指揮官の判断によって超法規的行動をとることもあり得るというふうな発言をされた。これはいずれも性質的には大変に違う問題だろうと私は思うわけでありますが、法治国家において超法規的な行為がもうやすやす許されてなるものではないと思うわけでありますが、いかなる事態に対してこのような行為が許されるのか、また、だれがこの問題に対してその判断を下すのか、あるいはこの問題の違いと政治責任というものはどういうふうになるのか、こういうことについてはどうお考えになっていましょうか。
  193. 真田秀夫

    ○真田説明員 超法規的といいますか、超実定法的措置として、なるほどおっしゃいますように、一昨々年のクアラルンプール事件あるいは昨年のダッカ事件で、政府は犯人の不当な要求にやむを得ず応じて、既決、未決の囚人を釈放したということは確かにそのとおりなんですが、まことに遺憾なことであって、法治国家としてはこれをそうやたらにやっては本当に困るわけなんで、あの際は、数十名の乗客あるいはクルーの人命との比較においてやむを得ず、遺憾きわまりない次第でございましたが、ああいうことをやらざるを得なかった。  そこで、お尋ねは、そういうことが、クアラルンプール事件の際に刑事被告人なり既決の囚人を釈放したというような理屈を自衛隊法の運用についても当てはめて、超法規的あるいは超実定法的な措置として、七十六条に定められている手続要件に従わないで防衛出動的なことをやれるんじゃないかというような御懸念だろうと思いますが、それは私の方では、防衛出動が発令された際に行われるであろう武力の行使、それに匹敵するような行為は、これは国の命運にかかわる重大なことでございまして、超実定法規的な措置というような理屈を立ててもそういうことはちょっと許されないというふうに考えております。といいますのは、七十六条自体がやはり相当気を使って、原則としては事前に国会の承認を得て発令しなさい、しかし緊急やむを得ないときには事後でもよろしい、内閣総理大臣限りで発令して後ですぐ国会にかけるというようなことまで書いているわけですから、そういう法律自身の配慮をまた超実定法規的措置というような理屈で省略するというようなことは許されないというふうに考えております。  それから、最後におっしゃいました、超実定法的措置をとった場合の責任はどうかということでございますが、これはその超実定法規的な措置を決定した内閣が政治的責任を負うということでございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事の場合、自衛隊行動と国内法令関係についてはどういう点が問題になっておりましょうか。――有事の場合、自衛隊行動と国内法令ですね、国内法令でいろいろ問題があるというふうな関係が出てきたということですけれども、そういう点については、どういう点が問題なのかと聞いております。
  195. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事の場合の自衛隊の運用と自衛隊法といういわゆる防衛庁関連法以外の他の法令との関係でどういう問題があるかというような御質問の趣旨だと思います。  これは、いまわれわれがそういうことで有事法令研究ということを昨年の八月から長官指示でやっておるわけでございますけれども、たとえば最近われわれがやっております交通諸法規の問題等を見ましても、たとえば道路交通法なり海上交通安全法とか、いろいろ法律がございますけれども、そういったものはすべてわれわれが言う有事ということを想定してある法律ではございません。現在ありますそういう交通関係法律というものが、有事の場合の自衛隊が活動いたします場合に果たしてそれで完全なものかどうか、やはりそれだけでは不備があるんじゃないか、そういう意味検討をしております。たとえば道路交通法なら道路交通法でございますが、これには自衛隊の車というのはほとんど緊急自動車というような指定もございますし、そういった点から見ましてもそう大きな支障がないのかもしれませんけれども、これは現在検討中でございますので、いま直ちにお答えする段階ではございません。やはりいまの国内法令では若干問題点はあろう、こういうことで研究してみたいと思っております。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 有事立法ということで、憲法のいわゆる基本的な人権を侵害するような、たとえば徴兵制とか海外派兵とか交戦権とかあるいは軍法会議とか防諜法とか治安維持法とか、まさかそんなようなことを有事立法としてお考えになっているわけじゃないでしょうね。
  197. 竹岡勝美

    竹岡説明員 昨年八月に防衛庁長官から有事法令研究指示されましたときに、われわれの研究はあくまでも現行憲法の範囲内であるべきであるという指示を受けておりますので、現行憲法の秩序を超えるような、かつての戦前にありましたある種の法令とか、そういったものは全然研究の対象にしておりません。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 憲法の範囲内でおやりになるというならば、最高のシビリアンコントロールは実際には国会なんですね。国会にそういうふうな問題を出して、当然国民の前に明らかにして審議をすべきではないかと私は思うのですけれども、その点についてはどうお思いになるか、防衛庁長官。  それから、例のいわゆる国会に安全保障特別委員会というものをつくろう、そういうふうな動きがあったわけですけれども、何か自民党の方で反対をされているというような話も実は聞いたわけなんですけれども、そういうところにぜひ論議の場所をつくって、そしてこういう問題についてもやはりシビルをきかせるということは、私は非常に大切じゃないかと思うし、それが私は見識じゃないかと思うのですけれども長官どんなふうにお考えでしょうか。
  199. 金丸信

    金丸国務大臣 有事立法の問題につきましては、憲法の範囲内であることは当然でありますが、その問題も現在はたたき台をつくりつつあるということであって、たたき台が出ましたら、できるだけ速やかに皆さんに検討していただくことは当然だ。  また、後段のお話につきましては、私もかねてからつくることに意義がある。議運の委員長のときから一生懸命にやって何とかコンセンサスを得たいと各党の了解を得たら、野党はよろしいと言う。自民党の中に一部この問題について反対があるやに聞いておるわけでありますが、わが党の自民党がわからぬということであるならば、何をか言わんという感じが私はいたしておるわけでありまして、今後そういう場をつくるべく私も政治家の一人として努力をいたしたいと考えておるわけであります。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどちょっと話が出ましたけれども有事とか緊張時とかそれから平和時、こういうふうな三つの縦分けをしているというふうな話ですけれども、この判断の基準ですね、どういうふうにお考えになっていましょうか。平和時あるいは緊張時あるいは有事という判断の基準をどういうふうにお考えでしょうか。
  201. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この有事という言葉だけですと、いろいろなこともあるということでございますから、一応防衛関係での有事と言いますと、自衛隊が問題があって活動するような場合というようなことも広く言われるかもしれませんけれども有事法令研究ということでわれわれが言っております有事というのは、あくまでも外部からわが国に対する武力侵攻があるような事態、これが有事だ。それから平時というのは全く平和なときでございます。緊急時とか緊張時とかいう言葉もあるようでございますけれども、それはやはり外部からの武力侵攻がある以前の非常に緊張した、そういう危険性が多分に出てくるといった事態が常識的には緊張時とかそういう言葉で言われると思いますけれども有事はいま言いましたように、外部からの武力侵攻があるような事態、このように考えて、やっております。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる外部からの武力侵攻があったときが有事なんだとおっしゃいますけれども、じゃ、外部からの武力攻撃、または外部からの武力攻撃のおそれがあるというときはどうなんでしょうか。これは有事じゃないですか。あるいはわが国防衛するため防衛出動を命ずる必要がある、そういうのを考えたとき、これは有事じゃないですか。
  203. 竹岡勝美

    竹岡説明員 私、先ほど有事というのは外部から武力侵攻があるような事態、こういうように言っておりますけれども、現在それと同時に、自衛隊法七十六条によって内閣総理大臣から防衛出動が下令されるような事態、このように判断しておるわけでございますけれども、この七十六条「防衛出動」の中の「外部からの武力攻撃」、これは「外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。」ということで、その「おそれ」という言葉がございます。この「おそれ」というのは、やはり常識的なおそれというよりも、法律上の言葉でございますから、武力攻撃が非常に緊迫しておる、もう本当に間近にあるというような事態はこの「おそれのある」という中に含まれておると思いますので、いまの先生のおそれということは、この七十六条の定義の「おそれ」というように解しますならば、当然有事範囲内に入ると思います。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁は作戦面を中心にして防衛研究を八月から始めるというように言われておりますけれども研究の目的それから内容、作業の進め方、項目の内容、それから期間、どういうプロジェクトによって行われるか、その点を明確にしてください。
  205. 伊藤圭一

    伊藤説明員 防衛研究というのは部隊の運用研究でございまして、これは従来からもそれぞれの自衛隊におきまして部隊の運用研究というのはやっているわけでございます。すでに御承知のように防衛庁の各自衛隊というのは防衛計画と警備計画というのを毎年つくっているわけでございますが、これはその年度の防衛庁の各自衛隊の勢力をもって、有事といいますか対処すべき事態が起きた場合にはそれにどのような対応をするかという研究の結果、計画を持っているわけでございます。  過去二十年にわたってこの計画を進めてまいりましたが、御承知のように四次防までは質量ともに防衛力を整備する過程にあったわけでございます。したがいまして、その年度にこういう対応ができるけれども、ここの欠落を充実するともっとこういうような対応ができるというようなことも、当然その研究の中に入っておったわけでございますが、防衛計画の大綱によりまして、当面自衛隊の規模というものが政府によって決定をされたわけでございます。したがいまして、その内容の充実には努めるわけでございますけれども、その防衛力の規模をもって事態に対処しなければならないわけでございます。したがいまして、この陸海空の統合運用というようなものを主体に、最も有効に防衛力を発揮するための部隊の運用というものはどのようなものが有効であろうかというような研究をする必要がございますし、また一方、中央組織の検討の過程におきまして、あるいはまた、日米防衛協力小委員会のガイドラインをつくる過程におきまして、またこのガイドラインに基づきます今後の研究の過程におきましても、自衛隊自体の運用というものはさらに研究を進める必要があるということを考えたわけでございます。  したがいまして、長官命令をいただきまして、この際、陸海空が知恵を集めて、統幕が中心になって最も有効な部隊の運用というものを研究してみようではないか、これは一応二カ年ぐらいの期間を予定いたしまして、最初の一年間は基本的なわが国に対する武力攻撃、これは地勢的に見まして周りが海で囲まれている、それから周辺諸国があるわけでございますが、想定されるいろいろな侵略の態様、たとえば陸上部隊が上陸をしてくるような場合、あるいは海上における交通路が破壊されるような場合、あるいはまた航空攻撃によって侵略が最初に行われるような場合、そういったようないろいろな場合を想定しますと同時に、今度はわが方の態勢もあるわけでございます。防衛計画の大綱によりまして、必要な場合にはこの防衛力を円滑に必要な規模にふくらませるようなことを配慮しなさいということも決められてございますが、恐らくこの情報をとっている間に、きわめて短い期間にそういう侵略行動が行われるということも可能性としては考えなければなりませんし、またこちらが準備できるような期間以前にその意図がかなりわかるという場合もあるわけでございますが、そういういろいろな場合を想定いたしまして、それに対応ということを考えるわけでございますが、最初の一年間ぐらいはわが国の置かれております環境からいろいろな侵略の態様というものを研究いたしまして、後の一年におきまして、現在の自衛隊の規模、それから日米防衛協力によってこれにどのように対処するかということを研究してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁は、七月二十八日に四回目の防衛白書発表されましたけれども国際情勢の分析の中で、最近一年間の国際関係については基本的枠組みが大きく変わるような動きがなかったとして結論しております。そして五十一年十月に閣議決定された「防衛計画の大綱」の線に沿って自衛力を充実していけばよいという既定方針を再確認しておりますが、将来の見通しや施策に言及する部分がまことに抽象的になっているわけであります。当分の間、しかも今回、日中平和友好条約締結という問題もあり、国際関係情勢は変化はしない、現在のままで推移をしていくというふうに判断されておりましょうか。その点についてはどうでしょうか。
  207. 伊藤圭一

    伊藤説明員 軍事情勢の判断につきましては、もちろん日本安全保障、広い意味安全保障の中におきましては、単に軍事情勢だけではなくいろいろな情勢の判断というものが必要でございますが、防衛白書におきましては主として軍事情勢の動き、それから見通し等を中心に考えているわけでございます。ただ、軍事情勢の判断というものは長い期間にわたって的確にこの方向を判断するということはなかなかむずかしい問題でございまして、毎年一応判断をいたしますけれども、ここ数年間それほどいわゆる構造的な変化というものはないというふうに私ども考えているわけでございます。  ただ、一年間世界のいろいろな地方におきまして軍事的な動きがございました。それからもう一つ重要なことは、わが国の周辺におきましては、これは過去十年間同じようなテンポで続いているわけでございますが、ソ連軍事力が強化されているという事実がございます。その辺のところを御説明申し上げまして、基本的には変わらないけれども、現実に日本周辺の諸国の軍事力というものはこのようにふえているという状況を御説明したわけでございます。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 常識なんですけれども国際情勢の変化というものは平和時から有事にいきなり突入するというような事態、すなわち平和時からほとんど空間なくして有事という現実が果たして起こり得るかという認識についてはどういうふうにお考えになっていましょうか。
  209. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは、いま先生がおっしゃいましたように平時から突然有事に変わるという可能性はきわめて少ないと思います。と言いますのは、一方におきましてはこれだけ情報化が進んだ社会でございますので、世界の片すみで起きましたこともその日のうちに全世界がその事実を知るというような時代でございます。したがいまして、それぞれの国の考え方あるいは動きというものは刻々その情勢として判断することができますし、まして軍隊といいますか軍事力の移動あるいは集中、そういったものはかなり早く判断することができるわけでございます。  しかし、一方におきまして、御承知のように専守防衛といいますか守勢の側に立ちますと、常にそういったことについては注意を払っていなければ、いつでもそれに対応できるような態勢をつくる努力も必要であるわけでございます。したがいまして、急速に変わらないから、変わる状況が出た段階において何かすればいいではないかという考え方もあろうかと思いますけれども、私どもはこれだけ軍事技術の発達した時点におきまして一たび行動が起きますと、これは非常に速い速度で動くわけでございます。したがいまして、平時からそういうものに対応できるような力というもの、有事即応という考え方、それを持っているということが平和を維持する上に役立つものだというふうに考えているわけでございます。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米防衛協力小委員会では現在どういう作業をやっておられるのか、また具体的なテーマはどういうものなのか、いつまでをめどとして作業をされるつもりなんでしょうか。
  211. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは実は第五回だったと思いますが、部会の作業というのを始めたわけでございます。そして第六回を開きましてから約半年の間防衛協力小委員会を開いておりません。その間、それぞれの部会、すなわち作戦部会、情報部会、後方部会というところにおきまして、日米が共同対処するに当たって一体具体的にどういう問題があるのかということを詰めておったわけでございますが、その作業の結果というものは一応出ました。  たとえば作戦部会におきましては、日米共同対処するに当たって、指揮系統を別にして行う場合にはどのような調整機関が必要か、どのような問題について意思を疎通させておかなければいけないかというようなこと、あるいは情報部会におきましては、平時における情報の交換というものはややグローバルなものでございますけれども、緊迫したとき、あるいは有事になった場合にはどういうルートを通じてどのような情報を交換しなければならないかというようなことについてはっきりした基準をつくっておかないと、そのときには非常に混乱するだろうというようなことも考えられました。さらに後方支援につきましても、米軍自衛隊がそれぞれの部隊の補給の責任は第一義的に負うのだけれども、共同対処している間において相手の部隊に対する支援というものはどのような形のものがあり得るか、あるいはどのようなルートを通じてその協力関係というものを維持していくかというようなことがそれぞれ研究の結果が出てまいったわけでございます。  そのことを第七回、先月の会議におきましてそれぞれの部会から報告がございましたが、それぞれの部会の専門家というのがやや違う職域の人なものでございますから、表現の仕方その他につきまして統一されてないというような点もございました。そこでその報告をもとにいたしまして、現在防衛協力小委員会のメンバーの間で統一的なガイドラインというものをつくりつつあるわけでございます。これを、この秋に開く予定になっていると聞いております日米安保協議委員会に御報告いたしまして、そのガイドラインの御了承を得ましたら、それに基づきまして自衛隊米側でいわゆる行動についての計画をつくってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米防衛協力小委員会において、一つは「わが国武力攻撃がなされた場合、又はそのおそれのある場合の諸問題」とか、あるいは「極東における事態で、わが国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題」とか、あるいは「その他」の問題がいろいろと検討されているわけでありますけれども、これはそういう中において、やはり日本の国における有事の場合にいろいろ絡んでくる問題があるだろうからということで、有事研究というものが全く無関係で出されたのではないというふうに私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  213. 伊藤圭一

    伊藤説明員 日米防衛協力小委員会というのは、部隊の運用を中心にして研究をやっております。したがいまして、有事法制そのものと直接は関係はないわけでございますけれども、やはりその運用の研究の過程におきまして、いま防衛庁でやっております有事関係法制上、こういう点も考えた方がいいというようなことが出てくることもあり得るというふうには考えておるわけでございます。
  214. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 民間防衛体制づくりについて、福田首相が七月二十七日の国防会議議員懇談会で有事立法研究の一層の推進と民間防衛体制について、防衛庁検討するよう指示されておりますね。この問題は国民の権利義務にかかわる重大な問題でありますし、長官は総理の意を受けてこれをどのように受けとめ、どのようなスケジュールで作業にお入りになるお考えなんでしょうか。  また、実際、民間防衛体制づくりは防衛庁の任務規定あるいは所掌事務の中に入り得るものであるかどうか、その点についてはどうでしょう。
  215. 金丸信

    金丸国務大臣 五十三年度の防衛白書の中に民間防衛という問題を提案いたしておるわけであります。それは専守防衛という立場で、もしそのような場面になったとき国民の避難場所等をどうするのだというような問題、こういうことにつきまして、先般国防会議におきまして総理から話が出たわけでありますが、実際問題これを所管する官庁はいまもってないというような意味から防衛白書に提案をいたしたわけでありますが、私はそのとき、民間防衛の問題、シェルターの問題等について国防会議に諮問をしてどのようなことが出てくるのか、そういうことをしていただくことが結構ではないかと参考意見として総理に申し上げておったわけであります。
  216. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その民防体制を軍事的な防衛庁がお考えになるということが適当なのかどうかということは、大変問題もあるのじゃないかと私は思うのですけれども、それはともあれ、私も時間が間もなくなくなってしまうわけでありますが、最後に金丸防衛庁長官、あなたはアバウトと言って不用意の発言が目立つのですね。七月三十一日午後、都内のホテルで開かれた講演会で台湾日本韓国運命共同体であると思うという趣旨発言をされ、その後取り消しをされたわけです。しかし、長官自身は、御存じのとおり二十七万人の自衛隊の長である統幕議長のシビリアンコントロール無視の発言に対して、首を切られたわけですね。長官発言は、内外に及ぼす影響も非常に大きいわけです。また大きな誤解を招くことにもなるわけでありますので、シビリアンコントロールをする側の長として、不用意な発言、これに対しては責任を感じておられるのじゃないかと私は思うのですけれども責任についてはどういうふうにお感じになっていますか。
  217. 金丸信

    金丸国務大臣 運命共同体という問題につきましては、私が言ったことは確かであります。確かであるけれども講演の途中考えながら、これは誤解を招く発言だということで、講演が終わりまして、先ほど申し上げましたこの件につきましては私は取り消しをいたしますというように新聞社の皆さんと、それは取り消したのだからという話ですが、そういうわけにはいかないということで新聞に出た。このような発言をしたということについては今後みずからを戒めていかなければならない、こう考えておるわけであります。  ただ、私は、先ほどもお話し申し上げましたように、日本安全保障という立場から韓国台湾を含む地域の安定について大変重大な関心を持っている、これらの地域日本の周辺でも特に近接した地域であるので、わが国の運命というか安全というか、これに及ぼす影響が大きいというような意味で言ったのですが、誤解を招くというようなことにつきましては、今後とも十分自分を戒めてまいりたい、こう考えております。
  218. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後になりますけれども防衛庁長官防衛庁長官は、軍事的な意味から言いますと二十七万人の自衛隊の長であり、それを統括する立場にあるわけですね。そこで、防衛庁長官発言というのは軍事的にすべてとられるわけです。そうした場合に、運命共同体ということはどういうことなんでしょうか。
  219. 金丸信

    金丸国務大臣 ですから、運命共同体という言葉は、言葉の使い方を間違えたということで、それですから訂正したということで御理解をいただきたいと思います。人間のことですからときには間違いもあるが、しかしそれは間違いとしては許せないぞというおしかりも、私は十分わかるわけであります。
  220. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 運命共同体というのは、軍事的な意味から言いますと、戦争が起これば一緒にやるということなんですよ。あなた、そういう御認識でこのことを発言されたのですか、それともうっかり、それは全くうっかりだったというふうなことなんでしょうか。大変に軽率のそしりを免れないわけですけれども、それについて――戦争すれば一緒にやるというのですよ、あなた。それが軍事的な面における運命共同体なんですから。その点どうなんですか。
  221. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、侵さず、侵されず、専守防衛というような立場をいつも考えておるものですから、そういうような意味の中でそういうことを申し上げたわけで、一緒にわれわれは戦わなくてはならぬなんということは毛頭考えておらないことだけは御理解いただきたいと思います。
  222. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では、以上をもって終了いたします。
  223. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 受田新吉君。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 きょうは久しぶりにきわめて重要な問題が当委員会で審査されることになりまして、ちょうど田舎はお盆休みでございますが、祖先の祭りをする大事なときにいま国民のためにこうして熱心に審議をしているわけですが、その意味で政府当局も国民のために命をかけて審査に応じていただくようにお願いをいたします。  いまからお尋ねしますポイントは、国の防衛に関する問題でございますが、先般せっかく日中の間に新しい条約も締結されたことでございますので、まずこれに関連する問題を二、三ただして、防衛の方へ進むことにいたします。  せっかく園田外相、かなえの重きをなす戦果を上げてきていただいたのですが、懸案の解決という、国民としても喜びひとしおのいい答えを出して帰っていただいたのですが、疑義を抱いている点がございますので、その点をまず明確にさせてもらいたいのです。  今度のこの懸案解決、国民待望の日中平和条約なるものは、いま鈴切委員の指摘されたことにも関連するのですが、ある意味においては精神的、道義的な条約の要素を含んでいる。実体的な権利義務関係を定めた実体法のほかに、そうした要素を含んでおると理解してよろしいかどうかです。
  225. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  条約でございまして、権利義務関係を定めているものでございますが、同時に精神的、道義的な両国間の友好関係を進めようという面も含まれております。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 私もさよう理解をしておるのでございまして、両国の親善友好にちょっと変わった内容の条約ができておると理解をさせていただきます。  ところが、この条約を締結するに当たりまして、わが方は可能ならば無期限条約たらしめたいという意図を持っておったことを伺っておるのです。ところが、中国側はこれに対して十年を主張してまいりました。結果は中国側の主張が通ったのでございますが、わが国が無期限の提案をした理由、及び中国が期限十年を主張した理由を簡明にお答え願いたい。
  227. 三宅和助

    ○三宅説明員 お答えいたします。  どちらがどういう提案をしたかと申しますのは、実は相手のあることでございまして、ここで答弁を差し控えさせていただきたいのでございますが、結果的には、日本側といたしましては、本件条約は今後長期にわたる日中の友好関係を規律するものであるということを考えておりまして、十年の友好期間が定められたことでございますが、少なくとも十年の間は確実にこの条約を存続せしめよう、しかし趣旨は子々孫々にまでかかるものは続けらるべきである、少なくとも十年は安定させたいということになったわけでございます。どちらがどういう提案をしたかということは、先方の約束もございますので、その点は御了承いただきたいと思います。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 お約束があったとなれば、あえて追及をいたしません。  私は、そこで国の安全にも影響のある問題を指摘したいのですが、日中平和友好条約も調印された、そしてこれが日本安全保障にどのような影響を持つものであるかということが日本政府においては十分検討されてしかるべきものだと思います。御答弁をいただきたい。
  229. 三宅和助

    ○三宅説明員 この条約は、御案内のとおり、日中間の両国の友好関係を規定したものでございます。したがいまして、そういう見地からは、直接には安全保障という見地から規定されたものではないわけでございます。ただ、わが国は、御承知のとおり、日米安全保障条約を基軸といたしましてわが国の安全が確保されている。両国間の緊密な友好協力関係を維持させるとともに、いずれの国との間にも友好関係を維持発展させるということを外交の基本方針としております。したがいまして、日中条約もこのような基本的な方針に沿って締結されたものであるということでございます。先方も、一般的な意見交換の中で、日本が安保条約を必要としていることは理解するということを言っております。したがいまして、この条約締結後も、従来の方針、すなわち私が申しました点についてはいささかの変更もないということでございます。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 条約締結後、人民日報には、今回の条約成功は日中共同の武器ができたというような記事が出ていたように新聞で拝見をしたのでございますが、これは人民日報の記事というものは私のひが目であればそれでよろしいし、そういう記事があるように私伺っております。これは将来、日本中国のこの友好親善がやがて軍事協力、軍事提携とかいうものに進むものでないということはわれわれによくわかるのでございますが、しかし、その歯どめというものは常にびしっとしておかなければならないので、その点につきまして日本はどう対処しようとしておるか、御答弁をいただきます。
  231. 三宅和助

    ○三宅説明員 この条約につきましては、前文におきまして、まず、この条約の目的があくまでも両国の平和と友好関係にあるということを強調しております。それから国連憲章の尊重、共同声明の遵守というようなことをうたっておりますし、また、協定の第四条におきましては、それぞれの締約国の立場に影響を及ぼすものではない、すなわち日本の基本政策というものはこれによって影響を受けない。日本の政策は、先生承知のとおり全方位平和外交である、あくまでも平和的に問題を解決しようということでございますので、そのことは条約上からも非常にはっきりしているということが言えると思います。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 現に米国中国の間におきましては、いろいろな面で提携の説が流れております。軍事提携への方向を進むもののようでございますが、これは日本にとりましても大変な意味を持つものでございまして、たとえば情報の促進を図るとかあるいは武器というものに対する援助を検討するとか、こういうような説も流れておるわけで、米中軍事提携への流れを日本はどういう意味に把握するか、これは大変大事な問題、特に米国が今回の日中条約の締結について敬意を表しているという行きがかりから見るときに、この問題は軽視できないと思っております。
  233. 三宅和助

    ○三宅説明員 米中関係につきましては、上海コミュニケの線に沿いまして国交正常化を図るということで双方が努力しているということとわれわれ理解しております。また、実際問題といたしまして、いろいろな科学技術のミッションが先方を訪れている、あるいは文化交流が進んでいるということは承知しておりますが、米中間の直接の軍事提携につきましては、具体的な話では私ども承知してないわけでございます。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 このたびの日中間の新しい情勢の展開は、対ソ感情においてある程度マイナスをかせいでおるような情報も流れておるようでございます。そこで日本政府としては、今回の日中条約締結ソ連に対して決して間違った道を選んだものでなくして、対ソ感情においてますます友好を深めていきたいという熱情を示すために、条約締結のいきさつ等も踏まえまして、ソ連に対する特使の派遣、これはもう魚本大使にことづけをするようなことでなくて――魚本大使も、先般私も訪問したエジプトからソ連へ行かれたばかりでございまして、大使は大任を負うていらっしゃるわけですけれども、こうした世紀のすばらしい日中条約を締結した機会に、特に関係の深い問題点をはらんでおると向こう様では考えておるソ連に対して――しかも国境は中国よりも日本の方へ接近しておるのです。北辺は全く隣組です。向こうに見えるのです。ソ連の領土が。中国よりも近い国土関係にあるこのソ連に対して、特に向こう様に対して礼儀を厚うする特使の派遣、これは当然考慮していい問題だと思うのですがね。機を逸せずやるべきだ。これは全方位外交の一つのすばらしい成果を上げる意味からも私は提案したい。
  235. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 ただいまおっしゃいましたとおり、ソ連は私どもにとりましても中国と同じように大変重要な隣国でございます上に、かねてソ連はこの日中条約の交渉に大きな関心を示しておりましたことにもかんがみまして、条約が署名されました十二日の夜でございますが、私が外務省を代表いたしまして在京ソ連の臨時代理大使を呼びまして、署名されました条約文の内容を示しつつ、わが国のこの条約を結びました意図等について説明をして、正しい理解を求めたわけでございます。さらにその翌々日、この月曜日、十四日でございますが、モスクワにおきまして松原臨時代理大使からソ連外務省のフィリュービン次官に対しまして、同じような趣旨でこの正しい理解を求めるべく説明をいたしたわけでございます。  ただいま仰せになりました特使派遣の点でございますが、私どもといたしましては、この条約交渉の経緯及び結びました条約文そのものが最も雄弁に私どもの意図ないし外交方針を語るものと思いますので、園田外務大臣御自身も帰国されました直後の記者会見で、説明はするけれども、特使を出す必要はないと考える、このようにおっしゃっております。私ども事務当局もそのように考えております。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 考えの相違でございますが、外交は礼を厚うする――日本は礼を厚うする国です。東洋の哲学を実践する国がいま日本に残されているわけです。そういうものを、その経緯を知れば十分でございましょうなどとあっさり片づけられる性質のものではない。日本外交の拙劣な一面をいま御答弁で伺ったのでございますが、検討を重ねるべきであることを私から提案しておきます。  次に、防衛の問題に突入をいたします。  外務省、御苦労でございましたが、戦時法規の説明をされる人だけは残っておっていただきたい。戦時国際法の答弁はこれからお願いしなければならぬわけです。  金丸先生、連日御苦労でございますが、私はあなたのお人柄をよく知っておりますし、開放的で歯にきぬを着せない、政治家としてはすかっとさわやかなコカコーラ以上の感じのするすばらしい人格をお持ちである。     〔村田委員長代理退席、高鳥委員長代理着席〕 私は、その意味では金丸さんは非常に好きな政治家なんです。ところが、国の防衛という大任を担当される長官としてはいささか心配があるわけです。それは、長官の職責というものを非常に慎重に考えていただいて、常に自分は国土、国民を守るための自衛隊の最高指揮官補佐、最高指揮官のようなものであり、防衛庁の行政長官である、この使命感に生きるときに、一言一投足に非常に慎重を期して、国民の厚い信頼を一身に集められるような御努力をされなければならぬので、他の役所の長官とは違ってちょっと骨が折れるのです。これは建設省とかそのほかの役所の長官であれば、ちょっと発言されたことでもユーモアでいいということが、防衛庁長官であるとそういう理屈にいかぬのです。さっきせっかく釈明されましたけれども台湾を含むあの運命共同体の話などというものは、一九六九年の佐藤・ニクソン会談以来何回か変遷をした日本の外交路線の変化を全然御存じないようなかっこうで発言されておるのでございますので、これは軽々しく取り消されただけで済むわけでないのです。これは栗栖議長が不用意な発言をしばしば繰り返されたこととはもっと大きな、比重のある長官発言でなければならぬ。  先般八月七日でしたか、おくにの記者会見でしたか、おれは山梨県知事に立候補したいのだ、諸君の推薦があればというような御発言をされたように新聞にでかでか出ておるわけです。うちの長官はせっかく熱心に取っ組んでくれると思っていたら、今度山梨県知事の選挙に出るのじゃないかとなると、そこにおられる幕僚の皆さんだって大変な長官だなというふうになるんですよ。かなりの重きをなして金丸長官を中心にやろうと張り切っておった皆さんが、腕を撫して張り切っておった皆さんががくっと肩が落ちますよ。これはいかがでしょう。
  237. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛庁長官という立場は非常に発言も注意してやらなくちゃならぬという御注意、全くそのとおりだと思っております。  山梨県知事の問題につきましては、実はことしの三、四月ごろから与野党いろいろの立場で私のところに来て、田辺知事はいわゆる多選禁止論者で、前の選挙のとき四選はやらないという話があった、政治の倫理から言ってもやるべきでないという考え方、そういう考え方で与野党来ておったわけであります。そんな話はまだ当分向こうの話で、来年一月の選挙でありますから、私も余り耳を傾けてはおらなかったわけでありますが、欧米視察から帰ってまいりまして、いろいろ私のところへ来ますし、私も仕事が多いし、それじゃせめて私の後援会の全県下の幹部二百四名を甲府に集めたわけであります。そこで皆さんの意見を聞いてみたところが、四選、多選禁止論者である田辺君がそういうことを、人によりけりというような言葉では、これは許されぬじゃないか、政治倫理の上から言っても許されぬじゃないか、私もそれは好ましくないという考え方でおったわけでありますが、たまたま後援会の緊急幹部総会において四選は好ましくない、金丸信立候補要請という話がありました。  私も自分がきょうの立場になりましたのは、私一人でなったわけではない。後援会の皆さんがそれほどまで言ってくれるということであるならばそれは考えなければならぬけれども、知事職という職は私の後援会のものでもなければ金丸信のものでもない。そうするならば、自民党の県連に選対本部もある、私は現閣僚であり、また山梨県の各界各層のお話も承らなければ私は決意するわけにはいかぬじゃないですか。もし全県下の皆さんが金丸信よ出ろという態勢ができる、こういうことであるならば、私はそれにこたえることがあるいは政治家とも思う、こういうお話をしたわけでありまして、私はおれが出るぞと言っておるわけじゃありませんし、現閣僚であるということもありますし、後援会のものでもなければ金丸信のものでもない、こういういろいろの前置きをして言っておるわけでありまして、みずから山梨県の知事になりたいなんということは考えておるわけではありません。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 みずからなりたくないが要請があればなろうというお気持ちですか、どうですか。
  239. 金丸信

    金丸国務大臣 要請が、全県下の大勢がそういうようなことになるかならぬかという問題もありますし、なかなかその辺はむずかしい問題点だろうと私は思いますが、受田先生のおっしゃってくれるその言葉もありがたく私も胸に刻むわけでありますが、政治家の立場というものはなかなかむずかしいということだけは御理解いただきたいと思います。
  240. 受田新吉

    ○受田委員 幕僚の各位も長官の苦衷を――いま政治家の苦衷の開陳があったわけですが、せっかく補佐の任にある、防衛庁設置法第二十六条には皆さんの任務がずらりと並んでいる。制服のやることに対する長官の任務の補佐もやらなければいかぬという内局の参事官を代表して答弁を願いたいのでございますが、だれから答弁してもらいましょうか。官房長から答弁してください。  つまり長官をして本当に防衛庁長官として職責に邁進していただくべきときに、途中から知事に色気を出したりなんかするようなことがない立場を希望するんじゃないですか。これは士気に影響すると私は思う。防衛庁長官としては命をかけるんだという長官を自衛官も期待しておる、内局の皆さんも期待すると思うのです。それに対する感想をお述べ願いたいのです。
  241. 竹岡勝美

    竹岡説明員 金丸長官就任以来、非常に情熱を持って防衛問題をやっておられることはもう御承知のとおりであると思います。  金丸長官在任中は、われわれ参事官一同、身命を賭して金丸長官を補佐するつもりであります。
  242. 受田新吉

    ○受田委員 実にすばらしい部下が並んでいるじゃないですか。  ただ、私、いまから指摘したいことは、昭和三十年に防衛庁がスタートした。ちょうどこの内閣委員会に二十三年おるので、私の歴史とともにこの委員会があるわけだからよくわかる。その二十三年の間に防衛庁長官は何人かわったと思われますか。一年に一人ずつの割合でかわっておるのです。政務次官もかわっておる。軽々しくその席を離れていくというところに内閣人事の欠陥もあるわけでございまするが、防衛庁の仕事は、長期展望に立って国土、国民を守るための士気を高揚しなければならぬ立場にもあるわけで、軽率に防衛庁長官が交代するということは好ましいことでないということを長官おわかりでございますか。これは長官から御答弁願いたい。
  243. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいまは自民党の内閣であるわけでありますが、自民党の内閣である以上、自民党には私よりまさっておる人もたくさんおるわけでありまして、えらく長くやることが是であるか非であるか。しかし、よその国の状況を見ると、少なくも三、四年はやった方がうまくいくように私も聞いておるわけでありますが、まあ外国日本との政治形態、組織、その他いろいろな考え方は違っておるわけであります。  前に衆議院予算委員会において、そういう質問がありまして、私は、四、五年やることの方がベターだというお話をしたら、総理が、まあそれもそうだけれども、自民党には多士済々人物がおるというお話もしておりまして、そういうことを考えて見れば、その辺は調和のとれたことをやらなければならぬだろう、こう考えております。
  244. 受田新吉

    ○受田委員 防衛事務当局は、防衛庁のお仕事を遂行する上に、せっかく新長官のもとに企画運営がされつつあるときに、頻繁に長官や政務次官が交代することは好ましいことかどうかを御答弁願いたい。
  245. 竹岡勝美

    竹岡説明員 行政組織というものは長官がかわりましても一貫した連続性を持っておることは御承知のとおりだと思いますけれども、しかし、われわれとしましては、防衛庁長官というのは非常に大事な職責でございますので、余り頻繁にかわることは歓迎しないと思います。
  246. 受田新吉

    ○受田委員 明快なる答弁。そのとおりです。私はそういう意味で、長期展望に立つ日本の国土防衛計画というものに対して、比較的長期の長官や政務次官がい、また内局の皆さんは他省と頻繁に交代して出世コースに内局のポストを利用するような悪弊は、これは一掃しなければならぬ。最近はそれがいささか沈滞ぎみでありますが、もともと防衛庁局長のポストを大蔵省と交代、その他ちょこちょこっと腰かけに来る役人がいたのを御記憶ですね。ちょっとだけ腰かけた。つまり内局の人事もそうです。シビリアンコントロールをりっぱに実行するために、制服を抑えるために、頻繁にかわる長官及び内局の皆さんと、長期に最初から自衛官として筋金入りで来た制服とを比べたら、これは内局はシビコンの大きな期待にかかわらず屏息しますよ、それは。それに対する感想を竹岡官房長より御答弁願いたい。
  247. 竹岡勝美

    竹岡説明員 防衛庁という組織がまだできてから、他の官庁に比べますと非常に歴史が浅いということで、防衛庁でプロパーに採用しました内局の職員がまだ完全に局長、参事官クラスにまで成長するに至っておりません。そういう役所でありますので、これはやむを得ないことかと思いますけれども防衛関係に少しでも関連のあるような他省庁から、私を含めて応援に来ておるわけでございますけれども、私を含めまして、決して腰かけ的な、ここを出たからまた本省に戻ってえらい者になるというような、そういう腰かけ的な気持ちは毛頭持っておりません。これは、経理局長、装備局長、他省庁から来ておられます。来てすぐに国会で答弁するわけなんですが、それは必死になって勉強しているのです。みんな。本当に必死になって勉強しまして、防衛の問題を一生懸命マスターしようとして努力しております。われわれも何とかして、他省庁から来ましても、防衛制服の諸君と一体になりまして、そしてお互いに手を握りながら防衛行政に遺憾なからしめるために一生懸命に勉強しておりますので、御支援を願いたいと思います。決して腰かけ的な出世根性というようなけちな気持ちは持っておりません。出世主義とかそういうけちな根性は持っておりません。
  248. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。本当にりっぱな根性を持ってがんばっていられるわけです。  いま、ちょうど国防会議の事務局長もおいでになりまして、警察畑から防衛庁へも行かれ、いろいろと重い任務を経てこられた久保先生もおられますので、いよいよ核心に触れる質問に入ることにいたします。  真田法制長官、私は憲法第九条の論議を久しぶりにしてみたいのです。  これは、いまちょうど栗栖発言があって、この憲法第九条の法理論を解明しなければならぬ時期が来ておると思うのです。わが国は、憲法第九条において戦争を放棄した。しかし、放棄したけれども、国際紛争を解決する手段としての軍隊を保持しないのであって、その他の自衛のための部隊は持ってよいという解釈になっておるわけです。  したがって、ここに問題を提起したいのでございますが、この憲法第九条にあります第一項の「日本國民は、正義と秩序を基調とする」云々というところで、国際紛争を解決する手段としての戦力というもの、陸海軍というもの、そういうものをどうするかというこの規定、この規定の再検討の時期というのは、一の規定と二の規定――二項です。二項との関係において、二の方にありますところの「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」戦争を永遠に放棄します。戦争を放棄するが、同時に、二項で、前項の目的を達成するために陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。放棄して戦力を保持しない。「國の交戦権は、これを認めない。」と、こうあるわけです。だから、戦争放棄の一項と、それから陸海空軍戦力不保持の二項、それから「國の交戦権は、これを認めない。」という二項の後段の規定、この二項の「國の交戦権は、これを認めない。」というのは、二項へまとめてあるのですから、一項を受けてある規定と見てよろしいかどうか。第三項的な存在なら、三項に書かれていなければならない。二項へ一括して書いてあるということは、つまり陸海空軍その他の戦力を保持しないのは、国際紛争を解決する手段としての戦争放棄、それに伴う戦力不保持という解釈、だから自衛のためならよいんだということでいま自衛隊がある。それなら「國の交戦権は、これを認めない。」という方も一項を受けたとすれば、自衛のための交戦権は認めてもいいんじゃないかという解釈が成り立たないかということです。     〔高鳥委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 三項がないのです。二項へまとめてあるということは、法律の体裁の上からも、独立していないとなれば一項を受けた規定だと解釈していいのじゃないですか。
  249. 真田秀夫

    ○真田説明員 憲法第九条についての御質問でございますが、第一項では、いま先生は、国際紛争を解決する手段としての戦争は放棄したんだ、したがって、それとの関連において第二項後段の交戦権の否定もそれを受けているはずだから、国際紛争を解決する手段としての戦争の交戦権はこれは否定しているけれども、自衛のための交戦権は否定していないんじゃないか、こういう御質問でございますが、従来、私たちは、第一項で放棄しておりますのは、それは国権の発動としての戦争はとにかく放棄しているわけなんです。国権の発動としての戦争は放棄しておりまして、そのほかに、武力による威嚇あるいは武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、これはまた放棄している、こういう関係になるわけでございます。  それから、第二項の後段の交戦権の否認は、これはかねがね申しました、第一項に言う国権の発動たる戦争を放棄している、これの延長線にあるというふうにお考えになって結構だと思います。  それから、自衛のための交戦権はあるんじゃないかというようなお話でございますけれども、第一項で戦争は放棄しております。それから、第二項の前段で、陸海空軍その他の戦力は保持しないと言っておりますけれども、しかし、これは御承知のとおり、第九条の規定にかかわらず、わが国は自衛権そのものを否定しているわけではないので、独立国家として固有の自衛権はある、これはもう疑いのないところで、ほとんど異論がないわけなんでございますが、自衛権そのものはあるわけでございますから、その自衛権を実効あらしめるためには、自衛のために必要最小限度の実力行使は、これは第二項の前段も否定していないだろうというわけなんですね。それからまた、自衛権の行使そのものは、これはまた否定しているわけではないのでございますから、自衛権の行使として、自衛のための必要な最小限度の実力の行使は、これはできるだろうというふうにわれわれは考えるわけなんで、いま自衛のための交戦権とおっしゃっているのはそういう意味ではないかと思うのですが、それならば私は話がわかるのです。  ただ、自衛のための交戦権といいますと、いろいろ第二項の後段で交戦権は認めないと言っていることとの関係で、非常に誤解を招くのですね。ここで言っております交戦権というのは、これは自衛のために必要だとかなんとかというのではなくて、いわゆる国際法上交戦国が持っている、交戦国に与えられておる、占領地の行政をやるとか、あるいは敵性の船舶を拿捕するとか、そういうような交戦国に与えられておる国際法上の権利、それをひっくるめて交戦権と言っているわけですから、それの関係で自衛のための交戦権はあるんじゃないかというふうにおっしゃいますと、それは非常に誤解を招くので、私たちはそういう表現はとらないのです。自衛のために必要な最小限度の実力の行使はできる、これを自衛行動権と言っておりますけれども、それと非常に混同するということで、したがって、交戦権があるというような表現は私はとらないところでございます。
  250. 受田新吉

    ○受田委員 長官の御答弁で、自衛のための交戦権とはっきりとは言わないが、事実上それになる実力行使は認めるんだ、こういうことですね。そうでしょう。  そこで、防衛白書を今度拝見してみると、三-一〇七に出ているのは、「「交戦権」とは、国際法上、国が交戦国として認められている各種の権利を意味するのであって、」云々と書いてある。ところが、交戦権を裏づけとして戦争をする立場の交戦権と、それからいまのような戦時国際法上の権利義務関係を発する交戦権と分けて考えるときに、侵略部隊が日本へ襲いかかって、そしてこれに抵抗するために日本自衛隊その他が出動してこれを排除したというときは、これは一般的に自衛のための交戦権と見られる。これは外国から見る場合は当然そうなってきますね、日本が勝手に解釈して実力行使と言うだけであって。事実、安保条約第五条には、いずれかの締約国は、日本の施政権の範囲内に武力攻撃があったら共通の危険を排除するために行動すると言うておるのですから、同じ敵軍が上陸したところで、日本軍は自衛のための実力行使。米軍の方は一緒に戦いをしながら、これは戦時国際法上交戦権の発動だ。同じところで働きながら、一方は交戦権の対象として戦時国際法規の適用を受ける、捕虜その他の扱いも皆戦時国際法規の適用を受ける、日本はそれを受けないということであっては、それは日米共同行動に支障が起こるじゃないですか。したがって、戦時国際法規の適用を受けるために、いまの交戦権を認めなくとも道が開かれておるということになるのですか。戦時国際法規の適用を受けるためには、いかなる道が開かれておるのかを御答弁願いたい。
  251. 真田秀夫

    ○真田説明員 先ほど申しましたように、日本の憲法で認められているわが国の実力行使は、自衛のために必要最小限度の実力行使なんで、したがいまして、海外まで押し寄せていくとか、外国の領土を占領するとかいうようなことはできない、そういう枠があるわけなんですね。その枠の中だけの実力行使はできる。したがいまして、いまの枠に抵触しない範囲の行為、たとえば外国日本の領土に侵略して上陸してきた、それを排除するために物を破壊し敵の兵隊を殺すというようなことは当然できるわけなんですが、ただ、いま申しましたようないろいろな制約があるわけですから、そこで交戦権という言葉は使わない。しかし、自衛のために必要な最小限度の実力行使は自衛権の行使そのものですから、それは否定されておらないということになるわけなんです。  安保条約の五条を発動した場合のことをいまおっしゃいましたけれども、おっしゃるとおりなんで、共同して対処するわけなんですが、わが国自衛隊は、いま申しました憲法上の制約がありますから、アメリカ軍が何にもそういう制約のない形で対処する場合とは対処の仕方は若干違います。違いますが、しかし、いまの戦時国際法上、では自衛隊の行う行為については国際法は無縁かと言えば、それはそうじゃないのであって、国際法上の交戦国としての待遇は日本自衛隊だって受けるし、また、義務は守らなければならぬと思います。それは名前はわれわれは自衛行動権と言っておりますけれども、国際法の上から見れば、それはやはり普通の交戦国がやることと大体似たようなことを国内ではやるわけです。ただ、先ほど申しましたように制約がありますから、非常に制限を受けておって、したがいまして、これを交戦権という名前で呼ぶことははなはだ誤解を招くということで、われわれは使わない、こういう関係でございます。
  252. 受田新吉

    ○受田委員 長官、あなたは事実上交戦国と見られるといま言うのですね。事実上交戦国、戦争している国と見られる、しかし憲法の規定があるから交戦権という名前は使わないんだ。事実上軍隊だと見られておる、これは政府も一応認めておる。日本自衛隊は軍隊だと認めておる。外国が言えばそのとおり軍隊です。事実上交戦国と認めておる。侵略軍に対して米軍日本軍が一緒に戦いをしているときに、米軍だけが交戦国で日本は交戦国ではないと言えませんね。だから、事実上交戦国ですね。外国から攻めてきたものを防衛するときには、だから事実上交戦国になるのですね。
  253. 真田秀夫

    ○真田説明員 繰り返すようでございますけれども、憲法上認められている行為をする、その範囲内においては、それは国際法上は交戦権というふうな評価を受けるだろう、だけれども、ただ日本の憲法の制約があるから交戦権という言葉は使わないことにしておるというわけです。
  254. 受田新吉

    ○受田委員 事実上交戦権があると外国から見られる、しかし日本は憲法の制約があるから交戦権とは言わない、外国からは交戦権があると認められる、こういう御答弁です。そのことによって、交戦権があり交戦国である、つまり自衛のための交戦権があり、自衛のための交戦をやっている交戦国であると外国が見る。見ることによって、戦時国際公法のたとえば陸戦の法規、海戦法規、慣例というようなああいう条約は皆適用されるのですか。たとえ誤解を受けるおそれのある交戦国と言わぬでも、事実上交戦国というふうに見られておるから、戦時国際法規の適用を受けるのですか。
  255. 真田秀夫

    ○真田説明員 先ほど来申しております憲法の制約内における実力行使はできるわけでございますから、その実力行使を行うに際して既述されている戦時国際法規は適用があります。たとえば、侵略軍の兵隊を捕虜にした場合にはその捕虜としての扱いをしなければならないというようなことは当然適用があるということでございます。
  256. 受田新吉

    ○受田委員 しからば長官、はっきりしたのですが、われわれは事実上も交戦権は認めない、事実上も交戦国ではないというような政府の解釈のようにいままで考えてきたのですが、事実上は交戦国であり交戦権があると認められておる、それに伴うて戦時国際公法の適用も受けるということであれば、われわれの方が交戦権という言葉を遠慮し、誤解を受けるという意味で使わないだけであって、外国は交戦権があり交戦国であると認めておるわけですね。そのことは肯定するのですね。
  257. 真田秀夫

    ○真田説明員 実態はおっしゃるとおりなんであると思います。外国日本が交戦国であり、あるいは交戦権だと思うかもしれません。思うかもしれませんが、日本の憲法上の制約がある、その範囲内のことであるということをよく御認識の上でおっしゃっていただければ結構だと思うのですが、裸で交戦権があると言われると私たちはどうもやや抵抗を感じると言いますか、そういう表現は憲法九条の二項の後段の関係もこれあり、誤解を招くから用いないということです。
  258. 受田新吉

    ○受田委員 これはきわめてはっきりしておる。つまり長官は、事実上外国から侵略を受けてこれに対処する日本自衛隊、これは軍隊として戦っておる。これは戦争ですよ。自衛戦争だ。それは外国では交戦権であり交戦国であると認められておる。ただ日本は、憲法があるからなるべくそのような誤解を受けたくないという――これはこの際はっきり憲法第九条の第二項後段の規定は自衛のための交戦権で一項に係るものだという解釈にしても、いま長官がそこまで言い切ったのです。  いままでは、交戦権とか交戦国とかと外国が言うということさえ言わなかった。全然否定しておったのです。外国がそれを交戦権と呼ぶのは仕方がないとおっしゃるのだが、事実もうそこまで認められておるなら、第九条二項後段の解釈は自衛のためのという一項にひっかけて解釈していいのじゃないか、陸海空軍を持っているのと同じように。第三項で独立していないのですから、ひとつこの憲法第九条の自衛権問題をもう一度よく研究していただきまして、事実上お認めいただいておるのなら、これはもうそれに伴って戦時国際公法が適用されるというのですから、戦時国際公法は交戦権を認める国にしか与えないことになっておるのです。それを認めておるということは、つまり自衛のための交戦権を認めて戦時国際法規の適用を受けるという解釈になるのじゃないですかね。交戦権のない国は戦時国際法規の適用を受けないでしょう。交戦権を持たぬ国に戦時国際法規を適用するという規定がどこにあるのですか。
  259. 柳井俊二

    ○柳井説明員 お答え申し上げます。  先ほど来先生から、現在の国際法におきますところの戦時国際法の適用関係という非常にむずかしい、かつ重要な点の御指摘があるわけでございますが、憲法の解釈につきましては法制長官から詳細に御説明ございましたので、私の方からは担当の国際法という観点から二、三補足させていただきたいと思います。  いわゆる交戦権という言葉はいろいろな意味に使われておるようでございますが、その関連におきまして現在国連憲章のもとにおきましてはいわゆる武力行使、政策の遂行というようなもののための武力行使というものは一般的に禁止されているわけでございます。国連憲章のもとでは、国連そのものが行いますところの強制行動あるいは自衛権の発動という形での武力行使は認められておるわけでございますが、伝統的な国際法のもとで国家が持っておりましたところの戦争を行う権利と、それから戦争を行う場合の種々の手続、戦争状態に入ったときの国の権利義務というものは、現在の国際法では適用の余地がなくなっているというふうに考えるわけでございます。したがいまして、もし交戦権という言葉が伝統的な国際法で考えられておりました戦争を行う権利、あるいは戦争状態に入ったときの国家の権利という趣旨で用いられるといたしますならば、わが国の憲法では戦争を放棄しているわけでございますし、国連憲章でも禁止されているわけでございますから、かかる意味の交戦権というものはないと言わざるを得ないと思います。  ただ、現実の問題といたしまして、あるいは侵略に対する自衛権の発動という形で実際の武力行使、実力の衝突というものが生ずるということは、これは現実の問題としてあり得るわけでございますし、現にあるわけでございます。その際に、先ほどこれも法制長官からお触れになりましたけれども、捕虜の待遇でございますとか、あるいはその場合の兵器の使用の制限、害敵手段の使用の制限というような人道的な観点から適用される法規があるわけでございます。これもいわゆる戦時法規というものの中に従来分類されていたわけでございます。したがいまして要約いたしますならば、戦争を行う権利、それから戦争になった――その広い、昔の意味の戦争でございますが、戦争になったときの権利というものはいまやない。しかしながら戦争法規の中で、戦闘状態に陥ったときの害敵手段の制限とか、あるいは人道的な取り扱いというような法規は依然として適用があるという関係になっておるわけでございます。  なお、後者のいわゆる狭い意味の戦時法規でございますが、これは一九四九年のいわゆるジュネーブ諸条約その他条約がございまして、これはわが国も締約国になっておりますし、これらの条約に規定されましたところのもろもろのルールというものはわが国についても適用があるというふうに考えております。
  260. 受田新吉

    ○受田委員 交戦権を戦争するそのものを対象にすることと、いまのような戦時国際法規の適用を受ける立場二つに分けて、後段の御説明は、自衛のための交戦権がなくても、実力行使に交戦権が与えられるという解釈でいいですね。
  261. 真田秀夫

    ○真田説明員 日本の憲法の制約がありますので、われわれは交戦権という言葉を使わないわけなんですけれども、事実上戦闘状態に入ったという場合には、いまの人道的観点からする捕虜の扱いとか、あるいは市民に対する扱いとか、いまの害敵手段の制約とか、そういうものは適用がある。何も交戦権の有無がそうメルクマールになっておるわけじゃなくて、戦闘状態に入った上は、いま言ったような趣旨から、そういう戦時国際公法は適用があるというふうにお考えになって結構だと思います。
  262. 受田新吉

    ○受田委員 交戦権ということを明確にうたうべきだというので、中曽根総務会長も先般演説をやっておられるようだが、憲法を改正しなければ交戦権という言葉は用いられないのだ、自衛のための軍隊は持てても、自衛のための交戦権という言葉は誤解があるという、この解釈はちょっと矛盾がある。自衛のための軍隊が持てるというのなら、自衛のための交戦権もあってしかるべきだ。(「軍隊と言わない」と呼ぶ者あり)いや軍隊と言うておるのです。いまの自衛隊を軍隊と称して差し支えないという政府の答弁をやったことがありますね。御答弁を願います。
  263. 真田秀夫

    ○真田説明員 それはずいぶん前に軍隊と言っても差し支えないということは言ったことがあると思います。しかし、それは結局軍隊と裸で言っちゃまずいのであって、いろいろな憲法上の制約があるぞということを踏まえた上で、そういう名前を用いても差し支えないということを言ったことはあります。ありますが、その後やはり軍隊という言葉を使うことは非常に誤解を招くし、憲法を無視しているのじゃないかというような攻撃がございまして、それでまた、軍隊という言葉はもう禁句になっておるというふうに私は了解しております。
  264. 受田新吉

    ○受田委員 これについては防衛庁、官房長でも結構ですが、軍隊と見られてもやむを得ないという答弁のあったことが修正されたのですか。いつの間に訂正されたのですか。頻繁に訂正が行われるとなると問題がある。昭和三十五年の安保特別委員会で法制長官の答弁にある。
  265. 竹岡勝美

    竹岡説明員 その軍隊の定義にいろいろいままでも言われてきておったようでございますけれども、先ほど法制長官が答えられましたとおり、われわれは軍隊という言葉は使っておりません。
  266. 受田新吉

    ○受田委員 昭和三十五年四月二十八日の林法制長官の答弁、「自衛隊外国からの侵略に対処するという任務を有するが、こういうものを軍隊というならば、自衛隊も軍隊ということができる。しかし、かような実力部隊を持つことは憲法に違反するものではない。」こういう解釈ですね。そして、二十九年の十二月に大村長官も同じように、「自衛隊外国からの侵略に対処するという任務を有するが、こういうものを軍隊というならば、自衛隊も軍隊ということができる。」これがどこかで変更されたのですか。これは生きておるのじゃないですか。まだ生きているでしょう。その後どこかで訂正されたことを聞きません。いま交戦権については、初めて、事実上の交戦権を自衛のためならというような話を聞いたので。軍隊の方は二回にわたって国会で発言があっておるのです。この速記録は間違いですか。林長官や大村長官が言うたことはどこかで取り消されたのですか。
  267. 真田秀夫

    ○真田説明員 ただいまお読みになりましたように、自衛隊外国からの侵略を排除するということを任務としておるという点をとらえれば、そして、そういう点に着目してそれを軍隊と言うのならば、自衛隊もそういう任務を持っているのですから、軍隊と言っても差し支えないだろうという表現でお答えしているわけなんで、本心から言うと、そういう言葉は実は使いたくないのです。つまり、憲法上の制約がありますから、伸び伸びとした外国の軍隊とは違うわけなんで、そういう点をむしろ強調するために、われわれは自衛隊、自衛力という言葉を使ってきているわけなんで、そこで御質問がありまして、そういう任務を持っているものを軍隊と言うのならば、自衛隊も軍隊と言うことは間違いではないというような気持ちで言っているだけでございまして、本心はやはり軍隊とは思っていないわけなんです。  いつ訂正したかという話ですが、どうも私の記憶ではこれははっきり明文的に訂正したということはなかったのだろうと思います。ただ、その後軍隊とか海軍とかいうような言葉をお使いになって大変問題になったことがありますので、ますますわれわれとしては、軍隊という言葉をもう使わないということに肝に銘じてお答えしているわけなんです。
  268. 受田新吉

    ○受田委員 非常に奇妙なことになっておりまして、軍隊ということをかつての防衛庁長官法制長官とがはっきり言うておりながら、どうも言葉を使うのは本心的に困る、憲法の上からということですが、これは憲法を改正するということでなくて自衛隊を持っている政府としては、そういう見方をされる一面があるということはちゃんと言うておるのですが、これはいまどこかで取り消したとおっしゃる。取り消したのは私聞いておらぬです。国会の速記録というのは貴重なものでございますから、取り消したら取り消したで  防衛庁長官台湾を入れたのは、取り消したわけですね。これは取り消したのです。あれは取り消しでしょう。しかし、この問題については取り消しというのがないのです。私、もうこれ以上論争を避けましょう、時間がかかってしようがないから。  政府自身は、法制局も防衛庁も何か気がねをしながらやっておる。自衛隊が軍隊と言われるならそれでいいじゃないかとせっかく言うておるなら、それをそのまま用いればいいですよ。交戦権が自衛のためにある、そう事実上見られても仕方がないんだとおっしゃる。そうなれば、外国からそう見られても仕方がないと言うのなら、事実上認めたことになっておるのですから、余りむずかしく考えぬ方がいいです。  そこで今度は、問題が一つ防衛出動命令を発する発権者に及ぶと思うのですが、自衛隊法第七十六条の防衛出動命令は、内閣総理大臣が国会の承認を得て出す、国会の承認を得られない非常に急ぐときは、内閣総理大臣が出した後から国会の承認を得る、こういうことになっていますが、防衛出動命令はどういう手続で、だれが中心になってどう出されるのかを説明願いたいです。
  269. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは私が御答弁申し上げるのが適当かどうかわかりませんけれども国防会議の議を経た上、国会の承認を得て、自衛隊の全部または一部の出動を内閣総理大臣が命ずることになるわけでございます。
  270. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官防衛出動命令にどういう役割りを果たされますか。
  271. 伊藤圭一

    伊藤説明員 長官は、最高指揮官であります総理大臣に、情勢の判断に基づきまして意見を具申することがございます。また、命令を受けたときには、長官命令を受けまして、これを幕僚長を通じて各部隊に命ずるということになります。
  272. 受田新吉

    ○受田委員 国防会議に当然付議される事項ですが、国防会議で、つまり議員の一人が反対してもいいか、全員一致しなければならないのか、事務局長
  273. 久保卓也

    ○久保説明員 国防会議では全員一致を原則といたしております。したがいまして、反対がない状態で可決されると思います。
  274. 受田新吉

    ○受田委員 原則であって、例外があるかないかです。
  275. 久保卓也

    ○久保説明員 たしか国防会議の内規で全員一致ということになっております。そう思います。したがいまして、例外はないと思います。
  276. 受田新吉

    ○受田委員 国防会議の決定に基づいてやる。閣議に諮らなくてもいいですね。国防会議の議を経ればすぐ発動できる。
  277. 久保卓也

    ○久保説明員 国防会議内閣総理大臣に対する諮問機関でありますから、総理大臣に答申されるわけでありますが、しかし、事国会の御意見も伺うような重要な事項でありますから、私は、内閣総理大臣が単独でやられるのではなくて、内閣を代表した法的行為をおやりになるわけでありますから、内閣といいますか、閣議の決定を経て、その後に国会の審議を経るというのが手続であろうと思います。
  278. 受田新吉

    ○受田委員 法制長官内閣総理大臣国防会議の議を経て、つまり諮問機関の議を経て、最後には閣議にかけてこれの発動をするという久保事務局長の話です。内閣総理大臣とある。別に閣議を経てという意味ではない。内閣と書いてないのですがね。内閣総理大臣とある場合には、内閣という形でなくて総理大臣の名前で出す場合に、閣議をしなければ総理大臣の発動にならないかどうかです。
  279. 真田秀夫

    ○真田説明員 内閣総理大臣防衛出動を発令する際に閣議にかけなければならないという法律の規定はございません。ございませんが、やはり事の重大性から見て、これはもう当然閣議にかけて発令すべきものだというふうに考えます。  また、内閣の閣議付議事項というものが内閣部内でつくってあるわけですが、いま手元に資料はございませんけれども、これは恐らくほかの付議事項と比べても決して劣るようなものではないので、こういうものこそ内閣の責任において閣議で決めて、そして内閣総理大臣の名前で発令するというのが筋道だろうと思います。
  280. 受田新吉

    ○受田委員 はっきりした規定がない。つまり閣議に諮らなくても国防会議に――国防会議の付議事項であることは法律にあるのです。これはもう当然やらなければいかぬですが、閣議にかけなければならぬ付議事項というのが内閣法のどこかにあるのかないのか。法律の根拠が明確にないようなものを、重大だから閣議に諮るというような問題ではなくして、すべてこういう大事な問題は国の法律の根拠でやるべきもので、これは総理大臣が発動することができるようになっておるのですから、非常に戦争好みの総理大臣であったら、気に入らぬ国防会議の議員は処分してでもこれはすぐやるわけですよ。そのときに、閣議などのようなことをやる時間的な余裕がないというようなときに、総理大臣が単独にやっても法規違反ではないということかどうかです。これははっきりしておいてもらいたいのです。すべて国家の行為は法律を基礎にやらなければいけない。あいまいなことはいけませんです。
  281. 真田秀夫

    ○真田説明員 防衛出動の発令は内閣総理大臣の名前で行われるわけですが、その場合の発令権者である内閣総理大臣というその地位の性格は、これはもう総理府の長だとか、あるいは防衛庁自衛隊の最高指揮官であるというようなことではなくて、恐らくこれは内閣の長たる内閣総理大臣というふうに読むのが正しいんだろうと思いますから、なるほどそれは閣議にかけろという明文の規定はございませんけれども、それはやはりその事柄の性質及びいま申しましたその発令権者である内閣総理大臣の性格から見て、これはもう当然閣議にかけるべきものであるというふうに言わざるを得ないと思います。
  282. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、閣議の全員一致した答えが出なければ、国防会議の方も閣議の方も通らないということですか。それでは、これはちょうど先般、解散詔書で答弁願ったように、一人の閣僚が反対すれば内閣総理大臣防衛出動命令は発せられないとはっきり言うてください。
  283. 真田秀夫

    ○真田説明員 閣議の決定に至るまでの手続については、これまた明確な法律の規定はございません。ございませんが、閣議は全閣僚の全員一致で事を決めるというのが内閣制度ができて以来の長年のしきたりでございまして、だから全員一致で決定をして、そして内閣総理大臣の名前で防衛出動の発令をするという手順に相なります。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 防衛出動命令という非常に重大な問題に、一名の反対閣僚があっても発動ができない、これは法律解釈として、自衛隊法の七十六条をそう解釈する。普通は内閣総理大臣命令を出す。つまり内閣総理大臣というのは非常にえらくて、自分で何でもやれるんだというようないばった悪い癖があるんですよ。いまのように、防衛出動命令は総理の自己の考えだけではとてもやれないのだ、閣僚が全部、そして国防会議の全議員が賛成しなければ発動できないとなれば、総理大臣もこれは余りいばれぬわけなんだ。そういうことをいまはっきり答弁をいただいたわけです。  そこで金丸先生、あなたは内閣総理大臣の指揮命令を受けられるわけです。あなたは、総理大臣があなたを抜きに自衛隊命令を下すことができると思いますか。自衛隊行動に対して、防衛庁長官抜きにできるかどうか。
  285. 金丸信

    金丸国務大臣 私は法律的に詳細をつまびらかに知りませんが、防衛庁長官を抜きにして命令を出すことはできない、こう私は思います。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 内閣総理大臣は、三幕自衛官に対して命令を発する権限がある、防衛庁長官内閣総理大臣の補佐官である、だから、総理大臣自衛隊に直に命令を下すことが法律的には可能ではないのか。内局でもいいです。
  287. 竹岡勝美

    竹岡説明員 最高指揮官でございますけれども防衛庁長官内閣総理大臣の指揮監督を受けて隊務を統括するということになっておりますので、これは防衛庁長官を通じてでなければ指揮監督はできないと思います。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 防衛出動命令を出すときに、いよいよやるその作業に移るとき、防衛庁が実戦部隊の指揮をとるのでございますが、この実戦部隊に総理の指揮を受けた防衛庁長官命令を下すときに、防衛庁長官が腹痛でどこかで寝ておる、旅行先で行方不明だ、こういうときにはだれが後を引き受けますか。
  289. 金丸信

    金丸国務大臣 原則的に、防衛庁長官が行方不明ということはあり得ないと私は思っております。
  290. 受田新吉

    ○受田委員 いや、腹痛を起こして便所でかがんでいて、非常に緊迫した状態の中でどこへ行ったかわからぬという場合、つまり、個人の自由というものもある程度あるから、防衛庁長官をみんなが終始監視して行方を明確にするわけにいかないことがある。そういう事故があるんです。事故があるときには代理ができるという法律の規定があるんですから、別に行方不明でわからなくてもいいんです。だから、長官が行方不明あるいは病等であったときにはだれが代理しますか。
  291. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これは先生もう御承知のとおり、国家行政組織法で、政務次官が「あらかじめその機関の長たる大臣の命を受けて大臣不在の場合その職務を代行する。」とありますから、大臣不在の場合には政務次官がやると思います。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 政務次官もまた事故があった場合にはだれがやりますか。一応そういうことがあり得るのです。事実問題として。その次はだれですか。
  293. 竹岡勝美

    竹岡説明員 その場合には、私は機を失せず内閣の方で長官あるいは政務次官を――二人ともいない場合ですか。
  294. 受田新吉

    ○受田委員 そうです。両方ともいないのです。
  295. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これは……
  296. 受田新吉

    ○受田委員 いや、そういうことがあり得るのです。大体順番をつけておかなければならないです。序列はどうなっていますか。
  297. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これは防衛庁という組織におきましては、やはり長官ないしは政務次官だけだと思います。  だから、その場合にはもしだれもいない――これはわれわれが常に十分連絡をとる措置をとっておかなければならないわけでありまして、大臣あるいは政務次官以外にはその命令はできないわけでございます。
  298. 受田新吉

    ○受田委員 それだけ明確になってきておればこの指揮、権力団体の最高のものでございますから、しっかり筋をつけなければならない。  そこで、防衛出動命令の前に奇襲が行われて、ある特定の国から反乱軍みたいのが自分の国の命令に反して日本を襲いに来るというような場合もあるし、局地的な侵略があったときに、栗栖発言の問題にちょっと触れるのですが、奇襲があったときに正当防衛及び緊急避難において現地の部隊に武器の擁護その他をちゃんと平素から訓令がしてあるということでしたね。
  299. 伊藤圭一

    伊藤説明員 いま先生おっしゃいましたその奇襲ということの内容でございますけれども、反乱軍が来るとかどうとかいうことではございませんけれども、御承知のように航空自衛隊は領空侵犯措置という任務を平時から持っているわけでございます。したがいまして、その領空侵犯機に対しては、識別をした上、退去を命じたりあるいは着陸を命じたりするわけでございます。その際に、正当防衛あるいは緊急避難という際には武器を使用することができるということで、そのことは内訓で指示してあるわけでございます。
  300. 受田新吉

    ○受田委員 栗栖発言で私、当然栗栖発言がなくても、その奇襲を受けたときに、ある国のお国の精神、外交方針に反して、外交方針に憤りを感じた一部の部隊などがやる場合が起こることも、われわれは可能性の一つとして考えていいと思うのです。そういうものがやってきた、空襲してきたというときに、現地におる自衛官は当然正当防衛あるいは緊急避難の措置によって殺しに来るやつをこちらから反対に殺していいわけですね。黙ってすけておるのかどうか。長官、どうですか。命令を下すまでに奇襲を受けた現地の自衛官には無抵抗でその場で死ね、こう言うのかどうか。命令下達の前の栗栖発言の問題、これは大事な問題でございますからどういうことを、命令が出るまでは黙ってそのまま死んでもがまんせいということになっておるのかどうか、あるいはほかの対応があるのか。
  301. 真田秀夫

    ○真田説明員 防衛出動が発令になる前にそういう奇襲があった場合にどうなるかということなんですが、そういうことがどだいあるかどうか私よくわかりませんが、理論上の問題として、そういう場合には防衛出動の発令がまだないわけですから、自衛隊法の七十六条が予想しておるような武力の行使はできない。しかし、何にもできないのじゃなくて、正当防衛、緊急避難の要件に該当する場合には、その一人一人の隊員は当然それは自己の生命を守らなければならぬわけですから、相当範囲内で、つまり過剰避難とか過剰防衛にならない範囲内で防衛行為をとることはもちろん可能であります。
  302. 受田新吉

    ○受田委員 防衛庁長官、過剰防衛にならぬ範囲内で現地自衛官が生命を守るために敵に対して自己の生命を守る行為に出る、武器を使ってもいい。その場合は武器を使ってもいいのですね。それは正当防衛の手段として武器を使ってもいいのですよ。そういうことです。  それに対して、長官、大変重要なポストにおられるのですが、防衛出動命令が出るまでは自衛官は黙っておらなければいかぬという御見解のようですが、真田長官の正当防衛、緊急避難論で生命を守るために行動することは認めるべきだというこの理論に御賛成かどうかです。
  303. 金丸信

    金丸国務大臣 その問題は栗栖統幕議長の超法規行動という問題と関連のある問題だと私は思います。いま自衛権の問題で過剰な防衛でない限りは、正当防衛である以上、こういう法制長官のお話もありました。この奇襲という問題あるいはわが国へゲリラみたいなのが上陸してきたような場合、その対応は非常にむずかしい、考えなくてはならぬ問題だ。一発の銃声によって国民のコンセンサスも得ずにやることは果たして適切であるかどうか。私はそのためにいわゆる有事立法あるいは戦略、あるいは奇襲というものが絶対にないような情報網の完備とかレーダーの完備をして、奇襲をなからしめるために研究をやれ、こう言っておるわけであります。その研究をやれという中で栗栖君もその一員であり、そういうものを研究する。栗栖君の言わんとする心情、私はよくわかります。わかるけれども、あの立場であのような発言をするのは非常に国民の誤解を招く。法を無視してもよろしいというような考え方は、健全な自衛隊国民に誤解され、国民の負託にこたえられない。そういう意味で心情はわかるけれども栗栖君のあの立場でのあのような発言は誤解を招くという考え方で私はおるわけであります。
  304. 受田新吉

    ○受田委員 法制長官の理論は正当防衛でいくのですから、生命の危険にさらされた者がそのままじっとすけておれと防衛庁長官がおっしゃっても、それは事実問題として排除しないわけにいきませんよ。住民だってこれに抵抗しなければいかぬ。第一線の警察官はそのときどうなんですか。国民の生命、身体を守る警察官こそ自衛隊命令がなくても暴徒が来たらばっと出ていかなければならない。警察官はそのときどういう仕事になるのですか。警察御出身の官房長から御答弁いただきたい。それは警察官を動かすのです。
  305. 竹岡勝美

    竹岡説明員 警察官も国民の生命、身体を守る義務がありますから、当然国民の生命、身体を守るために警察官も恐らくやるだろうと思います。
  306. 受田新吉

    ○受田委員 そうです。  そうすると防衛庁長官奇襲があって防衛出動命令が出る前にすでに警察官も奇襲部隊を徹底的にたたく、それから自衛官もその場で正当防衛でやる、別に栗栖発言がなくても現実に命令が出るまでの間にはちゃんと法規に基づいた行動ができるのでございますから、栗栖発言の超法規の行動は、防衛命令が出る前は現在の法規で現実にできるじゃないか栗栖君を説得すればいいじゃないですか。それで解決する問題です。  有事立法というのは、例の百三条の具体的な政令をぴちっと出せば有事立法でできる。そして各省にまたがるいろいろな法規を整備すれば有事立法ができるのだというのであって、栗栖発言のような、防衛命令が出る前に超法規行動をするというような発言をさせぬでも、正当防衛論と警察の協力、住民の立ち上がりで十分現地でいくじゃないですか。栗栖発言は必要じゃなかった、私はさように思うのです。法制長官、どうですか。
  307. 真田秀夫

    ○真田説明員 警察官の職務なんですが、警察はなるほど国民の生命、身体、財産を守る責務を負っていますけれども、これはいわゆる警察活動なんですよ。そこで、外敵が来た場合にこれを排撃するのは警察活動というのじゃなくて、いわゆる国権の発動としての防衛活動なんです。だからこれは防衛庁自衛隊の任務であって、敵が侵略してきて、それを排撃するのは、自衛隊がその衝に当たるべきなんで、それは防衛出動の命令がなければ、自衛隊はそういう七十六条に言っているような武力の行使はできないわけなんですね。じゃ、できないときに警察がかわってやるかと言えば、それは私は警察の職務ではない。だから、敵が侵略してきて非常に混乱状態になった、そこで住民を避難させるとかそういうことを警察はやりますが、ピストルをもって敵を排撃するという職務はどうも警察ではないんじゃないかというふうに考えます。
  308. 受田新吉

    ○受田委員 私は一時間二十五分をこの間申し上げておったので、これは二十分に切り下げられているのですが、だから二、三分ほどいただきます。先生、一時間二十五分、この間申し上げたとおりお願いします。もう二、三分。  非常にこれは大事な問題を法制局も防衛庁もちょっと混同しているのですが、そういう奇襲があったようなときにこそ皆が立ち上がってこれを排除するのであって、自衛隊はじっと黙ってそれでがまんしなさいというわけにはいかぬ。自衛隊だって自分の生命を守るために、また当然の任務で、その周りの住民を殺しに来ればまたそれを殺さなければいかぬわけなんだ。そういう行動をすることは栗栖発言がなくても当然やれる行為である。だから余りむずかしく考えぬでもいいんだ。むしろ防衛命令が出た後の第百三条の具体的な規定を設けていけばその有事立法というものは解決するのであって、超法規行為であるという、奇襲から命令が下されるまでの間の問題はいま論議したところで片づくと思う。  長官、そういう意味で、軽く、この問題は余り厳しく考えぬで、栗栖発言というものを余り深刻に考えなくても、シビリアンコントロールに違反するという点、私は栗栖君の発言を聞いているとあなたと同じように危険を感じておるんだが、彼の心情は、そういうせっぱ詰まったときにわれわれがやらなければいかぬ気持ちがあるんだということ、何とか法規で適当な措置をつくってくれという要請であったとも思うわけですから、われわれはそれにこたえて、こういうときには防衛命令が出るまでは現地で正当防衛論で処理せよ、こういうところで片づけておかれればよい。  最後に一問。長官制服とそれから内局、どうかひとつみっちり連絡を取り合って、シビコンがりっぱに成り立つように、国防会議どもっと強大な付議事項もふやして、最後は国会が処理していくというかっこうを守るために、防衛庁長官のごく近くへ、五階の統幕議長の部屋を事務次官、政務次官の隣ぐらいまで持ってきてあげて、何回でも内局と制服防衛庁長官のところへ公平にいろいろと報告に行く、指示を受けるというようにしてあげる方が、長官としては、両方を握る、両輪をりっぱに果たすその大役を果たせると思うのです。そういうところを今後御工夫をいただきたい。部屋の割り振り等も考えて、制服のふんまんを抑えると同時に、内局がシビコンをりっぱに果たせるような強力な長官として任務を遂行していただきたい。それに対する決意を表明していただいて、私の質問を終わりましょう。
  309. 金丸信

    金丸国務大臣 貴重な御意見を拝聴いたしました。しかし私は、制服、内局、できるだけ融合していくというようなことを考えて、やはり幹部会も毎週金曜日にやっております。また、月に一回統幕議長あるいは三幕の幕僚長を入れて、昼食会をしながらいろいろ話をする。また、私のところにも外から面会人も相当あるわけでありますが、仕事が優先だということで、仕事の相談があるときはお客さんが来ておってもそれは後回しでよろしいというようなことをやっておるわけでありますが、なかなか人員も多いことでありますし、話をしたいという人もいままでのしきたりがいろいろあるようであります。しかし私は、努めて融合していくようなことを、今後とも最善の努力をいたしたい。
  310. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 松本善明君。
  311. 松本善明

    松本(善)委員 有事立法の問題がいま大変大きな問題になっておりますが、先ほど伊藤防衛局長有事立法の問題を日米防衛協力小委員会で、直接は関係がないけれども、出てくることもあるという趣旨の答弁をされました。これはまさに、日米防衛協力小委員会はこの有事の問題を二年前から詰めているわけですから、そういうことも当然出てくるのではないかと思いますが、先ほどの説明でいきますと、もうガイドラインの原案をまとめている段階ということであります。この関係ではもうすでに出てきておるのではないか。出てくることもあり得るということは、もう出てきたということの趣旨を話されたのかどうか。出てきたとすれば、どういうことが出てきたのか。そのことを説明していただきたいと思います。
  312. 伊藤圭一

    伊藤説明員 実はそのガイドラインをいま防衛協力小委員会の委員によってまとめておりますけれども、この段階では出てきておりません。私ども考えておりますのは、これに基づきまして今後それぞれ計画をつくる段階において、あるいはあるのかなという感じがするわけでございまして、ガイドラインというものは、いままでも総論として申し上げましたように、日米両国はそれぞれの指揮系統を別にして共同対処をするというようなこと、それから日本は憲法を前提にしたいろいろな条件がございますが、そのもとに行動するというようなこと、そういうようなことがガイドラインの中心になっておりますので、具体的にその行動そのものというものが入っておりませんので、いまの段階ではわかっていないわけでございます。
  313. 松本善明

    松本(善)委員 報道によりますと、今後は安保条約の六条に定めた極東の安全維持のための自衛隊の協力関係、これを協議していくということを日米双方が確認をしたということが報道をされておりますが、これは事実でありますか。
  314. 伊藤圭一

    伊藤説明員 日米防衛協力小委員会というのは、日米防衛協力をするための研究協議でございます。したがいまして、その自衛隊米軍だけの問題に限っていないわけでございますので、自衛隊米軍との共同対処というのは、いわゆるその第五条の関係でございます。しかし、広い意味での日米間の防衛協力のあり方といたしましては六条の関係もあるわけでございますから、その場合の協力のあり方というものも研究してまいりたいと思っているわけでございます。しかしながら、六条におきましては、自衛隊米軍の直接の協力関係というものはまずあり得ないというふうに私ども考えているわけでございます。
  315. 松本善明

    松本(善)委員 まず六条に関しての協力はあり得ないということでありますが、自衛隊極東の安全の維持のためということで自衛以外の目的で行動するということは憲法上許されない。だから、あり得ないというよりも、やってはならないことだ、こういうことではありませんか。
  316. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ただ、この第六条の場合に、基地の提供の問題なんかがあるわけでございますが、現実にたとえば現在自衛隊が使っている基地なんかを提供するというようなことの政府の御決定がございますと、たとえば基地の管理の問題なんかで、自衛隊の部隊もそこにいるわけでございますから、現在のいわゆる共同使用しているような形の場合があるのかなというような気もするわけでございますけれども、具体的にはそこまでの研究は進んでいないわけでございます。
  317. 松本善明

    松本(善)委員 基地提供の問題は、前にも防衛局長答弁をしていますけれども、これは自衛隊の基地のままということですか、それとも米軍の基地としていままでの自衛隊の基地を提供する、こういう意味ですか。この根拠、手続その他、話してほしい。
  318. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これはいろいろな場合があると思いますけれども、現在も共同使用というような形で米軍の基地を自衛隊が使わしてもらっているところもございますし、また自衛隊の基地で米軍がいわゆる一時的に使用するというようなこともあるわけでございますから、いろいろな場合があるかと思いますけれども、そういった点も研究していかなければならないかというふうに考えているわけでございます。
  319. 松本善明

    松本(善)委員 そうしますと、自衛隊と一緒にやるということになると、油だとか弾薬とかそういう補給ですね、あるいは労務の提供、そういうようなことで米軍自衛隊が協力をするということはありますか。これは、私はこの六条でそういうことは許されないと思いますが、どうですか。
  320. 伊藤圭一

    伊藤説明員 その場合に、直接自衛隊米軍がその六条のもとにおいて協力関係ができるというふうには考えておりません。
  321. 松本善明

    松本(善)委員 それでは伺いますが、防衛協力小委員会の第一回から五回までの会合について外務省が公表した討議内容がありますね。その中で各三つの部会  先ほどから問題になっている作戦部会、情報部会、後方支援部会、これが協議する研究・協議項目があります。この後方支援部会の協議項目の中の最後に「平時からの後方補給面における協力に関する事項」というのが入っています。この「平時」というのは、安保条約で言うならばいわゆる六条の段階だというふうに思いますが、そうでしょう。防衛出動との関係ではないわけだから、「平時からの」と言うとそういうことになると私は思うんですが、もし違えば説明してもらいたいと思いますが、「平時からの後方補給面における協力に関する事項」、これは六条段階のことではありませんか。
  322. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは六条関係ではございませんで、平時から、たとえば後方補給についてお互いが情報交換をしておくとか、たとえば五条で協力をする場合に、自衛隊側としてはどういう後方補給というものを期待するのか、あるいは米側はどういうものを期待するのかというようなことを、平時からお互いに協力し合って、それぞれの計画の中に持っておきたいということでございます。
  323. 松本善明

    松本(善)委員 それと関係をして、私は大変大事な問題がいま起こっていると思いますのは、沖繩駐留のアメリカ空軍第三一三師団、第一八戦術戦闘航空団の司令官を兼任しておるバクスター少将、この人が離任に先立っての記者会見で、アメリカ空軍と航空自衛隊との協力関係について、双方の指揮系統の統合が双方の指揮官と参謀が日常的に一緒に仕事ができるようにするためにきわめて優先的に行われるべきであるということを言ったということであります。アメリカ空軍と航空自衛隊との指揮の統合ということが話されたということであります。これはきわめて重大なことだと思いますが、そういうような問題が防衛協力小委員会で問題になり得る可能性がありますか。また、このバクスター少将の発言についてどう考えているか、見解を聞きたいと思います。
  324. 伊藤圭一

    伊藤説明員 このバクスター少将の会見の内容を詳しくは存じておりませんけれども、いわゆる米空軍と航空自衛隊が同じ指揮系統で行動するというようなことは、私ども全く考えておりませんし、これは航空自衛隊が発足いたしましてからの一貫した考え方でございます。  したがいまして、この指揮系統の統合というのがどういう意味かわかりませんけれども、たとえば御承知のように領空侵犯の措置がありましたときに、かつて航空自衛隊がまだ十分な力を持っていないときに在日しておりました米空軍が、この領空侵犯措置で協力をするという時期がございました。この場合も指揮系統はもちろん別々でございます。したがいまして、航空自衛隊がレーダーサイトの運用に当たりました際にも、この米軍の連絡官がそれぞれのレーダーサイトにおりまして、米軍機についての指揮というものはその連絡官を通じて行われておったということでございますので、いまこの本土におきましては米軍の要撃部隊というものがおりませんので、そういったものも現在おりませんけれども、実際に有事の際の防空作戦をやるときには、そういった形で指揮系統を別にして作戦するわけでございます。しかし、その場合に、やはりお互いに意思を疎通し合うということが重要だということは、これは当然なことであろうと私ども考えているわけでございます。
  325. 松本善明

    松本(善)委員 作戦、情報、後方支援ということで論議をされておるので、情報ということでお聞きしたいのですが、このP3Cの導入を決定しましたが、P3Cで得た情報を六条のもとで米軍に提供するというようなことは絶対ありませんか。
  326. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この情報の交換というのは、いわゆる日米安保体制におきましてはお互いに常時交換しているわけでございます。したがいまして、必要な情報というものは平時から交換をいたしておりますが、六条のもとでどういう情報を交換するのかわかりませんけれども、通常やっております情報交換のほかに、特に六条のもとにおいてやるということは考えていないわけでございます。
  327. 松本善明

    松本(善)委員 これはなかなか大事な問題で、六条というとアメリカ軍が戦闘に入っているという場合ですね。その場合にP3Cがいわゆるアメリカの敵国に当たる軍隊の原子力潜水艦などの情報、そういうものを提供するということになれば、これは事実上の参戦ということになりかねないと私は思うのです。そういう意味でP3Cの得た情報というものを六条のもとで提供するということはあるのかどうかという、私はやってはならないことだと思いますけれども、どうかということを聞いておるのです。
  328. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この六条の関係によりまして、いわゆる米軍が戦闘を行なっておる場所にもよると思うのでございますけれども、この情報の交換というものは平時から行っておりますので、六条のもとで特に何をやるか、六条だからこういうものが必要だということになればそれを直ちにやるということはないと思いますけれども、情報というのは常時交換をいたしておりますから、六条とかそういう関係なしに行われているのが通常でございます。
  329. 松本善明

    松本(善)委員 端的に聞きましょう。  原子力潜水艦の所在についてのP3Cが探知した情報、これは六条のもとで提供するのですか、しないのですか。
  330. 伊藤圭一

    伊藤説明員 六条で米軍行動をするために私どもの情報をとっているわけではございませんので、私どもは、私ども日本防衛に必要な範囲でその情報をとっているわけでございますから、六条の要請のもとに出すということはございません。
  331. 松本善明

    松本(善)委員 ややあいまいですけれども、一応その答弁を伺っておきましょう。  防衛庁長官に伺いますが、いま共同作戦の問題について防衛協力小委員会が日米共同作戦の問題についてずっと二年間詰めてきておる。それは六条との関係でもきわめて日本の安全にとっては、朝鮮の事態に日本の国土が巻き込まれるかもしれないという、これは日本国民にとっては重大な安全の問題なんで、聞いてきたわけですが、そういう状況の中で、私は、防衛庁長官がすでにこの委員会で朝から問題になっております日台韓運命共同体という発言をしたということはきわめて重大な問題だ、こういうふうに思います。しかしこれは長官取り消して、いまの御答弁では、この地域の問題が日本の安全、運命に影響が大きいという趣旨のことを言ったつもりなんだ、そういう真意なんだというふうに言われましたけれども、私の考えでは、福田内閣自身がやはり日米韓軍事一体という考えで政策を進めておるのではないかというふうに思います。これは単に防衛庁長官だけの問題ではなく、やはり福田内閣全体の問題であろう、改めて総理出席の場合などに追及もしたいと思います。  そこで聞きたいのは、この朝鮮との関係防衛庁長官もこういう発言をされたわけでありますが、この朝鮮半島での問題というのが日本の安全にとってはどういう意味からしてもきわめて大事な関係になっている。防衛白書も、今日、世界で最も軍事的な対立と緊張の厳しい地域となっているということを述べておりますし、それから伊藤防衛局長も、「朝鮮半島で紛争があった、それが日本に対して紛争が及んできて、日本が直接攻撃を受けるというような事態になれば、やはり自衛権の行使というのはあり得ると思います」、朝鮮半島の事態からいわゆる日本自衛隊行動するということが起こるということを六月六日の衆議院の委員会で答弁をしています。  また、ことしの三月まで西部方面の総監をやっていた塚本勝一氏が「朝鮮半島と日本安全保障」という本を出しました。その中では、「日本が万一侵略されるようなことがあるとすれば、朝鮮半島がこれに何らかの関連を持っているであろうことは、疑問の余地がない。一方、わが国は、ソ連のような超軍事大国と戦争するようなことは考えられないので、わが国に波及する紛争は、朝鮮半島により大きく関連していることとなるとみるべきであろう。」ということを述べております。  私は、このいわゆる有事というのは実際の場合にどういうふうに起こるのか、現在考えられるのはやはり朝鮮半島の紛争との関係で起こる、こういうふうに考えるのが当然ではなかろうかと思いますが、それについて防衛庁の見解を聞きたいと思います。
  332. 伊藤圭一

    伊藤説明員 私どもは、有事日本に対する侵略が行われる可能性といたしましては、どこを特定しているというわけではございません。しかし当然のことながら、日本周辺諸国の中で日本の領土に近接しているところに紛争が起きた場合に、あるいはまたそういった国々が日本に対して侵略の意図を持った場合に、侵略として起こる可能性というものは重視しているわけでございます。したがいまして、幾つかの場合を想定いたしまして毎年の年度の防衛計画におきましてその対処というものを研究いたしております。その中できわめて近い朝鮮半島の問題というものも考えていることは事実でございます。
  333. 松本善明

    松本(善)委員 これは朝鮮半島の紛争に米軍日本の基地から出動していく、こういう事態との関係で私は有事の問題が起こってくるのだと実際には思います。  防衛局長はことしの三月に衆議院の予算委員会の第一分科会で、難民救済ということで自衛隊が協力することは政府がやる場合にはあり得るという答弁をしました。その翌日に外務省の中江アジア局長が、韓国領海内に自衛隊が入って難民救済をするということもあり得る、そういう事態でどう動くかは自衛隊の判断する問題だという趣旨の答弁をしています。  そこで聞くわけですが、私は、韓国の領海内に入って難民救済をするということは、これは参戦ということに、アメリカのやっている戦争に参加するということにとられかねない重大な問題だと思いますが、そういうことをやるのかどうか、防衛庁の見解を聞きたいと思います。
  334. 伊藤圭一

    伊藤説明員 私どもはその領海まで出かけていって難民を救済するということは考えたことがございません。私が御答弁申し上げましたのは、先生も御承知のように、ちょうどシンガポールの船が長崎の近海で難破いたしましたその直後でございました。そのときに海上自衛隊の護衛艦が対潜訓練をやっておったわけでございますが、直ちにその救助に向かったことがございました。  したがいまして、私が御答弁申し上げましたのは、政府がその難民を救済するという方針を定めた場合に、まずおやりになるのは海上保安庁であり、警察であろうと思います。その際に、なお自衛隊の力が必要であるということになれば、それに御協力をするということはあり得るということを申し上げただけでございまして、これは私が考えておりましたのは公海であり、日本の領海というふうに考えておったわけでございます。
  335. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど来、奇襲対処、有事の立法という問題が問題になっておりますが、それで聞きたいわけです。  先ほど、防衛出動の下令前にも正当防衛、緊急避難に当たる場合は武力行使ができる、それで撃墜もできるという趣旨の答弁がなされました。これは自衛隊法八十四条の解釈としてできるということであり、それについて内訓がある、こういう趣旨でありますか、改めてお聞きしたいと思います。
  336. 伊藤圭一

    伊藤説明員 八十四条は、領空侵犯に対する措置として航空自衛隊に任務が与えられているということでございます。ここに書いてございますのは、必要な措置を講ずることができる、わが国の領域の上空から退去させるために必要な措置を講ずることができるということが書いてございまして、これは武器の使用というところでございまして、その際に、じゃ武器が使用できるかどうかということでございますが、この「措置を講じさせることができる。」ということだけでは武器の使用は許されないというふうに考えておるわけです。  私どもは、その武器の使用が許されるのは正当防衛であり、緊急避難の場合にその合理的な範囲で使用ができるだろう、したがって相手が攻撃態勢に入ったというようなときには、これは正当防衛ということで武器が使用できるというふうに考えて、内訓で定めているわけでございます。
  337. 松本善明

    松本(善)委員 先ほどもちょっと問題になりました、九十五条で武器等の防護のための武器使用というのが決められています。領空侵犯のときに武器を使用できるというのは、一体どの根拠からいくのですか。
  338. 伊藤圭一

    伊藤説明員 自衛隊機がスクランブルで上がっていきました場合に、自衛隊機に攻撃を加えてきたという場合には、この攻撃を避けるための措置といたしまして、その武器を使用することができる。これは九十五条に自衛隊の武器、弾薬、航空機その他を守るために武器を使用してよろしいということが書いてあるわけでございます。
  339. 松本善明

    松本(善)委員 航空機の領空侵犯のときの武器使用も九十五条でいく、こういうことですか。
  340. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは九十五条そのものではなくて、正当防衛、緊急避難の場合の武器使用ということでございます。
  341. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、それは自衛隊法の規定にはないけれども、正当防衛、緊急避難の場合には武器使用ができる、こういう考えでいくのだ、こういう意味ですね。
  342. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは自衛隊法には明文がございませんけれども、当然の措置というふうに考えておるわけでございます。
  343. 松本善明

    松本(善)委員 内訓をそういう趣旨で出しているということですが、正当防衛、緊急避難の場合に、この領空侵犯に対してはそういう措置、武器使用ができる、撃墜もできるというような趣旨が書いてあるだけですか。内訓の要旨を話してください。
  344. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この内訓は秘密でございますので内容を全部申し上げるわけにはまいりませんけれども、概要といたしましてこういう内容でございます。  領空侵犯機に対して自衛隊法八十四条の規定によって自衛隊としてとる措置といたしまして、まず第一に確認ということがございます。これは、緊急発進を行った要撃機がその領空侵犯機を捕捉し、その状況の確認、必要に応じて行動の監視を行うということがまず第一でございます。その次に警告がございます。これは、領空侵犯機を確認した場合には、その要撃機は侵犯機に対しまして領域外への退去または最寄りの飛行場への着陸を警告するという行為でございます。さらには、誘導しなさいということが書いてございます。領空侵犯機を着陸させる場合には、要撃機は航空総隊司令官の指示に従ってその飛行場に誘導しなさいということが書いてございます。そして最後に、武器の使用といたしまして、この要撃機が武器を使用する場合には、正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合に限って武器の使用が許されるということが書いてあるわけでございます。
  345. 松本善明

    松本(善)委員 これは秘密と言われましたけれども、これはやはり国民の大変な関心事だと思いますし、この内訓を委員会に提出をされたいと思うのです。
  346. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは内訓で、防衛庁の中で秘密区分の中に入っておりますので、このものを提出することはお許しいただきたいと思いますが、概要につきましては、いま御説明しました内容でございます。
  347. 松本善明

    松本(善)委員 この提出については後ほど理事会で御相談いただきたいと思うのですが。
  348. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 理事会で相談することといたします。
  349. 松本善明

    松本(善)委員 それから、いま領空侵犯の問題についてはそういう内訓があるということでわかりましたけれども奇襲対処についての法整備をしているという報道がありますけれども大臣いかがでしょうか。
  350. 竹岡勝美

    竹岡説明員 私の方で防衛二法と言うわれわれの防衛二法ですが、二十五年からたっておりますので、この防衛二法の見直しということをやっております。この防衛二法の中で、たとえば先ほどありました領空侵犯なんかの場合に正当防衛で武器使用ができると内訓で決めてありますけれども、こういったものも法律的にもっと明確に書いた方がいいのじゃないかというような意見も出ております。そういった意味での奇襲というような場合に、正当防衛、われわれは刑法上できるということを言っておりますけれども、法文上明らかにすべきではないかという説もございますが、防衛二法の見直しに当たりましてそういう点も勉強してみたい、このように考えておるところでございます。
  351. 松本善明

    松本(善)委員 いま、領空侵犯の問題についても武器使用を明文なしにやるわけですね、領空侵犯の規定はありますけれども。そうすると、その解釈だけでいわゆる正当防衛だということを一線指揮官が判断して、それこそ栗栖発言のようにやるという危険性はありませんか。
  352. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この正当防衛、緊急避難というのは、刑法上許されておることでございますので、これは、正当防衛行為は超法規的という行動ではないわけでございますね。いわゆる刑法上、わが国の国内法で決まった法規上の行動でございます。この正当防衛をやります場合に、個々の隊員が自己または他人の急迫不正の侵害に対して守るわけでございますが、その場合、過剰防衛になってはならないとかいう個々の隊員の判断基準というもの、これは非常に、確かに正当防衛上なかなか厳しいものがあろうと思いますけれども、現行ではやはり正当防衛ということで個々の隊員の判断でやるべきである、このように考えております。
  353. 松本善明

    松本(善)委員 私は、先ほど真田長官の答弁を聞いて大変気になっていたのですが、奇襲のときに個々の隊員が正当防衛、緊急避難に当たるときはできるという趣旨でありました。この武力行使ができるという趣旨、いまの官房長の発言もひょっとしてそういうことではないかということでちょっと心配をしているのです。武力行使が個々の隊員の判断でできるということになったら、これはまさに栗栖発言のとおりなんですよ。そういうことは非常に危険なことですけれども、それは大事なことですから、はっきり防衛庁としての見解を聞いておきたいと思います。
  354. 真田秀夫

    ○真田説明員 先ほどの私の答弁に関連しての御質問でございますので、私からお答えをいたしますが、先ほども私はその点は非常に気を使ってお答えしたつもりでございます。つまり、正当防衛の要件に該当する場合には武器を使用することができるというふうに申し上げたのでありまして、防衛出動が発令された場合に自衛隊法の七十六条が予想しているような武力の行使、これはできないだろうという趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  355. 竹岡勝美

    竹岡説明員 いま法制長官が答えたとおりでございます。正当防衛の場合、武器の使用という言葉でわれわれは考えております。武力の行使ではないと考えております。
  356. 松本善明

    松本(善)委員 その趣旨は、部隊としての武力行使はない、こういう意味ですか。
  357. 竹岡勝美

    竹岡説明員 部隊としての組織的な武力の行使ということはないというように考えております。
  358. 松本善明

    松本(善)委員 栗栖さんがまた発言をしているのですが、きのうの朝日新聞の夕刊で、そういう場合にどうするのだと言ったら、国際法や国際慣習に反しない範囲の武力行使を政府が現地に授権するのだという趣旨のことを発言をしています。これは、こういうことでいきますと、やはり第一線指揮官が実際に日本が戦争になるかどうかということの判断をするということになっていくわけです。重大な問題だと思うのですが、そういうことが考えられますか。
  359. 伊藤圭一

    伊藤説明員 その点が、いわゆる実力を持っている部隊が一線の指揮官の判断によって武力を行使するというのは全くいけないことでございます。それで、この防衛出動につきましては自衛隊法でも厳格にこの手続が決めてあるというのは、やはりそういうものに対しては政治の判断によって自衛隊行動するということをはっきり決めてあるものだと私ども考えているわけでございまして、部隊が組織的に武力を行使するというのは、内閣総理大臣命令がない限りはできないというふうに考えているわけでございます。
  360. 松本善明

    松本(善)委員 防衛庁長官に伺いますが、防衛庁長官栗栖発言真意を生かすのだ、心情は理解できるのだということを言いました。私は、その彼の要望にこたえるような立法をするという指示をされたのではないか、こういうふうにその言葉理解せざるを得ないのです。いまの話だと少し違いますが、どういう意味でそういうことを言ったのですか。
  361. 金丸信

    金丸国務大臣 私はその問題につきましては、ただいま防衛局長説明した部隊の行動というものはお答えしたとおりでありますが、問題は、いわゆる奇襲された場合、一時間なり二時間なり三時間なり時間がかかる、その間に超法規行動を行わざるを得ない、それが、私はいろいろな問題があるだろうと思う。そういういろいろな問題、たとえば奇襲などということを絶対なくすためにはどうすべきかという、平時に、頭のクリアなときにそういう研究をしておくことが当然必要であって、えらい緊迫した事態になってから、頭がかっかしているときにそんなことを考えてみても、国民のためにならぬようなことがいろいろ決められるというようなことになってはいけない、だからその前に一いわゆる超法規という言葉の中には、ただ逃げろということかというようなことのないようにやれと言っているのに、逃げるということのないような、いわばその間の時間的な問題等も十分に研究して、そういうことのないようにすべきだという考え方が、研究をやれ、本人もその研究の一員だ、そういう――そうでしょう、それはその二時間なり三時間という問題を本当にあの人は思い詰めて言ったと私は思うのだけれども、それを私に言うならわかるけれども国民に言うということは、これは誤解を招くもとだ。自衛隊は法を守らぬでもよろしい、そういう問題はレーダーあるいは情報網を完備するというようなことによって解消できるじゃないか、こういう発言というものは許されない、こういう意味でおるわけであります。
  362. 松本善明

    松本(善)委員 長官の言っているのは何を言っているのかよくわからないのだけれども栗栖氏の言っていることは間違っている、それから、一線指揮官に授権をするというようなことはない、いま防衛局長が言ったじゃないですか、はっきりそう言ってください。
  363. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、間違っていると判断いたしましたから本人の辞表を受け取った、こういうことであります。
  364. 松本善明

    松本(善)委員 それではいわゆる有事立法防衛出動が下令された後の問題について少し伺いたいのですが、自衛隊法の百三条などの不備をいろいろ研究しているというような趣旨もありましたが、自衛隊法百三条の一項は、物の収用、使用なんか、戦前の言葉で言えばというか、戦前の言葉でなくてもそうですけれども、徴発という概念だと思います。二項はいわゆる作業従事命令が中心ですが、これはやり方によっては、場合によっては徴用になる、これについて罰則がないから困るのだというような話が出ているかと思います。  たとえば朝鮮で紛争が起こる、そして米軍が出かけていって、その結果日本が攻撃されるというようなことで有事が招来をしたという場合に、これは、アメリカの朝鮮侵略戦争に反対なんだ、そんな戦争に協力するわけにいかないのだ、こういう人がこの命令で土木建築工事をやれとかなんとか言われて断るという場合に処罰されることになりかねないと思うのです。そういう罰則を研究しているのですか。
  365. 竹岡勝美

    竹岡説明員 自衛隊法百三条に物資の収用並びに業務従事命令等があるわけでございます。これは御承知のとおり災害救助法にあります条文をほとんどそのまま使っておるわけですが、これは非常に苦心されておりまして、自衛隊が直接やるということよりも、なるべくなら都道府県知事をしてやらしめろとか、あるいは物資の収用につきましても業者の扱っている物資の収用、あるいは従事命令にいたしましても医療その他そういう業務に当たっている人たちにつきましての同じような業務についての従事命令ということで非常に苦心された条文であろうと思います。ただいまこれにつきまして、災害救助法では罰則がございますが、これには罰則がございません。先ほど先生は朝鮮戦争云々と言われましたけれども、あくまでもこれはわが国に部外から侵攻があった場合、国民の命が危難に瀕するというような場合の防衛出動の場合でございますので、そういうことは直接当たらないと思いますが、これにつきましての罰則が要るかどうか、私は、そういうわが国に武力侵攻があったというような場合は、多くは国民挙げて戦われることになるだろうと思います。そういう場合にさらに強制的な罰則が要るかどうかということは、いろいろわれわれは今後考えていくべき問題であろう、まだ結論を出しておりません。
  366. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど伊藤防衛局長の答弁あるいはその他も引用して話したのは、朝鮮で紛争が起こってそれに米軍日本の基地から出ていく、それに対する反撃として日本が攻撃をされるというようなときもやはり有事になるのですよ。そのときに朝鮮戦争反対ということを考える人は当然にありますし、それから戦争反対というのはあたりまえの話なんです。だから私は聞いたわけですが、質問として聞きたいのは、この百三条の二項について罰則をつけるということを研究しているのかどうかということを端的に答えてほしい。
  367. 竹岡勝美

    竹岡説明員 先ほど言いましたように、同種の法規で災害救助法では罰則がございます。これには罰則はありません。それについて罰則を設けるか否か、私はできる限り国民挙げて応援していただくであろうという感覚を持っておりますので、罰則がなくてもいけるんじゃないかと思っておりますが、まだ結論は出しておりません。今後の検討にまちたいと思います。
  368. 松本善明

    松本(善)委員 元陸将補の宮崎弘毅という人がことしの「国防」の三月号から「防衛二法と防衛負担一般法令に対する適用除外等」という論文を発表しています。  その中で「昭和二八年一一月保安庁第一幕僚監部は「保安庁法改正意見要綱」を保安庁長官に提出した」ということが述べられております。そしてその中には「非常緊急立法を別に定めること――出動の場合必要とする非常戒厳、非常時徴発法等またはその他の国内法の適用除外、特例あるいは特別法については非常緊急立法として別に定めること。」ということがあります。そして「防衛出動における徴発法その他必要とする特別法については、政治情勢上提出せず、非常緊急立法として、別途研究するものとしたのである。」というようなことがあるのですが、これが結局自衛隊法百三条には実らなかったわけですね。それは「災害救助と異なり、防衛目的のための従事命令に違反する者に刑罰を課することが」憲法十八条、いわゆる苦役に従事をさせられないということ、それから三十一条、いわゆる法定手続、正当手続の問題に「関連し可能であるか否かの問題について結論にいたらなかったためであった。」これは戦争放棄をしている憲法のもとで戦争に協力をしろ、それに協力をしなければ処罰をされるというようなことになる。それが憲法十八条、三十一条、当時も当然に問題になったと思うのですが、これはとうてい許されないことだと思うのですけれども、現在の防衛庁の見解を聞きたい。
  369. 竹岡勝美

    竹岡説明員 いま先生の御指摘のことは百三条の罰則に限っての話でございましょうか。
  370. 松本善明

    松本(善)委員 そうです。いま聞いている点は。  それと同時に、ついでですから、この「国防」に出ているこういうことがあったのかどうかということについても伺いたいと思います。
  371. 竹岡勝美

    竹岡説明員 まず最初に、この「国防」に出ておる、当時第一幕僚監部ですか、からこういった要綱が出たということはわれわれも一応聞いております。この実物は残っておりませんが、この宮崎さんの本でわれわれも勉強したわけですけれども、こういうことがあったようでございます。  それと同時に、その罰則をやると苦役になるか云々という問題で、憲法上おかしいという話がありますが、これはわれわれ今後勉強していきたいと思いますが、この業務従事命令は医療、土木工事等、そういう業務に携わっている者が同種の業務に都道府県知事のあれによってつくわけですから、一概に苦役という言葉には私は当たらないと思っております。しかし、要するに罰則までつけて担保しなければならないかどうかというようなことにつきましては、今後の勉強にまちたいと思っております。
  372. 松本善明

    松本(善)委員 いま読みました「国防」三月号にも、戒厳という問題が当時、自衛隊法ができたときに問題になったということがありましたが、例の三矢作戦ですね。この委員会でも再々問題になりました。この三矢作戦では戒厳の問題が入っております。戒厳というのは、平時の法体系を覆すことになる。これは憲法の秩序に反するわけです。先ほど来この問題について質問をされますと、憲法の範囲内でという答弁が出てくるわけですけれども、私は、日本国憲法のもとで戒厳ということは考えられない、戦時だからといってこの憲法の諸権利を侵すようなことはできない、それが戦争放棄をした日本の憲法の特徴だというふうに思いますが、その点について、憲法の範囲内で考えているというような抽象的な答弁ではなくて、戒厳というものを考えているのかどうか、それが許されると考えているのかどうか、そこの点をはっきりお答えをいただきたいと思います。
  373. 竹岡勝美

    竹岡説明員 戒厳というのは、軍事のもとに行政あるいは司法というものを支配するのが一つの戒厳というように言われておりますけれども、そうしますと、まさに現行憲法の三権分立あるいは特別裁判所を設けないとか、そういった憲法の規定がございますから、現行憲法では戒厳令ということはあり得ないと思います。もちろんソ連やその他憲法で戒厳令を決めておるところもありますけれども、それは、もし必要ならば憲法を改正しなければならない問題だろうと思いますが、これはわれわれの研究範囲外でございまして、少なくともわれわれの研究が憲法の範囲内でやれという命令を受けております以上は、現行憲法に反するような戒厳というような制度をわれわれの研究対象にはしておりません。
  374. 松本善明

    松本(善)委員 「日本防衛戦略」という自衛隊を退役した将官などが書いたものがあります。そこで石隈という人が言っているのは、こういう非常事態には、隊員を確保するための募集制度、軍刑法的な特殊刑法及び裁判、治安を維持し得るような法体制、それから物品の徴収権限の問題、国民の不動産の徴収の権限の問題、輸送とか民間の通信、航空の有効な統制の権限に関する問題、海運統制の問題、民防組織の問題、こういうようなことが必要だ、こう言っています。これは全く恐ろしい、憲法体系に対する挑戦だと思いますけれども、こういうことは許されない、こう言っていいですか。
  375. 竹岡勝美

    竹岡説明員 われわれの有事立法研究一つの基盤としておりますのは、こういった有事の場合には、各行政官庁はもとより各地方自治体、国民の協力があるだろうということを前提にしての有事立法研究をしておるわけでございます。ただいま挙げられました中に、明らかにいまの憲法秩序を超えるもの、戒厳令、そういったもの、あるいは従来から徴兵制度というようなものも現行憲法上問題があるということで、憲法を超えるものとして、われわれは考えておりません。  ただし、土地の収用なりあるいは物資の収用、こういったようなものは現在の百三条でも収用ということができるわけですから、直ちに憲法秩序に反するとはわれわれ考えておりません。しかし、これをどこまで、どのような範囲まで広げるかというようなことは今後の勉強にまちたいと思っております。
  376. 松本善明

    松本(善)委員 竹岡官房長は四月十一日に参議院内閣委員会で有事立法内容を聞かれて、自衛隊を優先しなければならぬという趣旨の答弁をしました。これは一体どういうことですか。国民の権利に自衛隊を優先させるということですか。どういう意味を言いたかったのか、答弁をしていただきたいと思います。
  377. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この有事は、わが国に侵略があった場合、まさに国民の命が緊急事態に入るわけでございます。そういった外敵に対しまして、恐らく私は、多くの国民、ほとんど全部の国民の皆さんは、このためにこそ自衛隊があるわけでございますから、自衛隊しっかりしろ、早く行って戦えというような国民の多くの激励があろうと思います。  そういう場合に、自衛隊早く行け、何をおいても飛んでいけというようなことになりますと、やはり交通関係その他につきまして、他の車両よりも自衛隊の車両が早く行かなければ、これは国民の負託にこたえられないというような意味で、この狭い国土で戦います場合に、自衛隊行動につきまして、他の活動よりも、戦うためには優先的にやらせるという、恐らく国民の期待があろうと思います。そういった意味のことで勉強していきたいというように申し上げたわけでございます。
  378. 松本善明

    松本(善)委員 伺っておきますが、先ほど来申しましたように、一般的に日本が侵略されるというようなことではないのですね。現実の政治情勢の中で見た場合には、朝鮮との関係考えられるのです。それは朝鮮戦争、侵略戦争反対だというような世論が起こることも十分にあるのです。ですから、竹岡官房長が言っているようなぐあいにだけはいかないということだけ言っておきましょう。答弁としては聞いておきます。  ところで、法案の提出問題でありますが、官房長官は、これは通常国会にも提出するということを言いました。ところが、先ほど金丸防衛庁長官は、そんな簡単なものじゃないというふうに答弁をしたのです。官房長官、一体どうしますか。
  379. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、通常国会に提出するということは言っておりません。これはいま防衛庁から盛んにお話があったように、いま研究しているわけですから、その研究成果を見た上で取り扱いについては考慮しなければならぬわけで、立法化の方針、内容、時期等がすでに決定されておるということではございません。
  380. 松本善明

    松本(善)委員 それではもう少しはっきり言いましょうか。秋の臨時国会の問題にはならない、通常国会とはっきり言っているわけではないが、なるべく早く成案を得て国会に提出したい、こういうことですか。いまの話では、まだ研究段階のような話ですけれどもね。どうですか。
  381. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま申しましたように、はっきり言える段階でなくて、いま検討している、検討して成果が出なければ、これはいつ国会にかけるかということは言えないわけですから、まだそこまで成果は出てない、こういうことです。
  382. 松本善明

    松本(善)委員 竹岡官房長は、やはり四月十一日の参議院内閣委員会で、これは一日で有事立法法律が上がるのじゃないかというぐらいの自信を持っているということの答弁をしました。これは私は大変な答弁ではないかと思うのです。三矢作戦では、御存じのように、二週間で七十七件から八十七件の法案を委員会審査も省略して上げてしまうということが出ておりまして、これは大問題になりました。一日や二日で有事立法を上げるというのは、これはまさにクーデターですね。私は大変なことだと思うのですよ。こういうような答弁をするということを一体防衛庁長官は認めますか。
  383. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これは、私がそういうように発言いたしましたのは、わが国有事に陥った場合に、これは本当に大変なことになる。この狭い国土で国民の命を守るためにもし必要な法律ということがあるならば、恐らく国民の皆さん挙げて支援されるであろうという私の期待を込めて言ったわけでございますけれども、現実にはそういうことはあるべきはずはない。有事立法というのは大事な問題でございますから、当然政府の責任におかれまして立法手続をとりまして、国民の代表であります国会でこれは十分の審議をされまして、そうして国民の大方の支援、国会議員の皆さん方の支援によって、そういう有事に備えて通るべき法律だろうと思います。しかし、いまそういう時期ではございませんので、立法手続をやっておりません。先ほど御指摘の点は、私はそういう国家的に非常に大事な法律だから恐らく御支援があるだろうという期待を込めて言ったことでございまして、この発言は私も不適当だったと思います。
  384. 松本善明

    松本(善)委員 戦前のあの制限された帝国議会でも、国家総動員法が出たら、大問題になったのですよ。大騒動になったのです。一日、二日で――あなたも不適当だというふうに言ったけれども、はっきり男らしく取り消したらどうですか。
  385. 竹岡勝美

    竹岡説明員 私の期待を込めて言ったわけでございますが、これが事実的にとられてはいけないということでありますなら、私は取り消したいと思います。
  386. 松本善明

    松本(善)委員 それから、こういう研究段階でも、三矢作戦でもそういうことがあったし、官房長も取り消しはしたがそういう発言もしたので、国民は非常な不安を感ずるのですね。私は、こういう立法そのものは反対ですけれども研究内容そのものを公表すべきだと思うのです。そして、国民批判の前にさらすべきだ。こういうふうにやるお考えはないか防衛庁長官に伺いたいと思います。
  387. 金丸信

    金丸国務大臣 現在、たたき台をつくりつつあるという、つくりつつまで行っていないと思いますが、つくろうといたしておるわけでありますから、私は先ほども申し上げましたように、いわゆる平時、皆さん頭のクリアなとき、かっかとするときでないとき、こういう問題を十二分に国会で御審議をいただくことは私は必要だ、まさにそれがシビリアンコントロールということにもなると思う。そういう意味で、たたき台ができ上がって、その問題等を十分に審議してもらうというようなことについては、今後ともそのような考え方で進んでいきたい、こう思っております。
  388. 松本善明

    松本(善)委員 長官、私の申し上げているのは、それは法律ですから、国会へ出さにゃしようがないのは当然ですけれども、そうではなくて、研究段階でやはりこういう研究なんだということを公表すべきではないか、こう言っているのですよ。どうですか。
  389. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この有事立法研究は、先ほど言いましたように、防衛二法以外のほかの諸官庁のいろいろな各種法律というものが、有事の場合に、われわれの方に適用除外とかいろいろなそういう措置が要るのではなかろうか、そういうことについての研究でございます。これは、本来恐らく政府の高度の政治的な判断で、いよいよもし立法手続をとるようにというような判断がありました場合には、恐らくその所管官庁が防衛庁と協力して、その中心になって、それぞれの法律についての立法手続がとられるであろう。あるいは、法制局はもちろんのことでございますが、そういうことになろうと思います。  われわれは そういった意味では他の官庁所管の法律につきまして、防衛という立場から、自衛隊に対してどういった適用除外ができるであろうかどうかというようなことの研究をするわけでございますけれども、それでまだそういった立法手続という判断が、高度の政治的な内閣レベルの判断がない事態において、これこれの法律はこう直るのだ、こう改正するのだということは、他の諸官庁の立場もありますし、またそういう立法手続をとる段階でもございませんので、防衛庁としては、あんまり自分の考え方だけで言うのはいかがなものかと思います。しかし、こういう考え方でおりますとか、あるいはこういうような概括的なわれわれの考え方というような場合には、その場合において私は皆さん方の御審議を仰ぐことも必要であろうか、このように思っております。
  390. 松本善明

    松本(善)委員 やはり有事という問題を考えます場合には、私は再々申していますが、朝鮮で米軍が戦争をするというときに、日本が戦禍に巻き込まれないということが、最も重要な日本国民の安全を守ることだというふうに思います。そういう意味で、その有事立法考えるというよりも、日本の外交方針、政治方針そのものの問題だと思いますけれども、これはなかなかここの一回の審議では終わらないと思いますので、いまの問題はこの程度にして、官房長官に靖国神社の参拝について伺いたいと思います。  再々問題になっておりますので、ダブらないようにして伺いたいと思うのですが、官房長官参拝に行かれたわけですが、これはやはり識者のいろいろな批判が大きいです。憲法との関係も問題ですが、やはり太平洋戦争が侵略戦争だということについての反省がないのじゃないか。これは、この靖国神社は、戦前陸海軍両省の所管で軍国主義の精神的支柱の一つとなったわけですよ。天皇のために死ぬということが、軍人としての誇りなんだ、そういうことの象徴としてあったわけでしょう。そういうところへ、だからこそその憲法との関係もあって、公的な形で参拝をしてはいかぬ、そういうことになっているのだと思うのです。あなたも、いや私人だ私人だということで盛んに公人としてやったのではないのだと言って弁解をしておられるけれども、私はあなたに伺いたいのは、なぜ公人として行ってはいけないということになっておるのか、あなた自身この太平洋戦争についての反省をどう考えておられるのかということについて、あなたのお考えを伺いたいと思うのです。
  391. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 靖国神社の参拝につきましては、もちろんこれは私人として行ったわけでありますし、私は私なりに、松本さんもそうでありますが、私もいわば戦中派で、大戦の惨禍というのは身をもって経験をいたしております。そういう経験を踏まえて八月十五日という終戦記念日を思い、平和に徹した日本が二度と再びこうした惨禍を受けるような戦争に巻き込まれてはならない、こういう私自身の基本的な立場、そうしてまた私自身のこれはもう個人的な宗教心というものから個人として参拝をいたしたわけでございまして、それ以外の何物でもございません。
  392. 松本善明

    松本(善)委員 先ほど来のあなたの答弁でいきますと、私人として同行して行ったのだから別に随行して行ったわけではないのだという理屈でいきますと、玉ぐし料だけ払わなければ、内閣の大臣全部が公用車を連ねて行って、いや個人としてたまたま一緒に行ったのですと言っても、そして大臣として記帳して帰ってきても一向に差し支えないということに、理屈としてはそうなるのですね。だけど、それをやってごらんなさい。これは靖国神社にやはり公的な性格を与えたということになりますよ。幾ら私人だと言って弁解したって、今度の場合だって靖国神社に公的な性格を与えたということで受け取っている人たくさんあると思います。私は、実際上そういうことをねらっているのだというふうにさえ思います。官房長官、全閣僚がそういうふうなあなたの言ったような理屈で、行ってもいいということになりますよ。それでいいのですか。
  393. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 閣僚が私人として個人の立場で行くわけですから、これは昨日は数閣僚が行きましたけれども、全部の閣僚が行ったわけでありませんし、そういう事態が起こるか起こらないかは今後の問題でしょうけれども、しかし個人の立場として行くわけでございますから、これは一向に差し支えないわけでありますし、私が参拝をする場合においても、ほかの閣僚に対して一緒に行こうとかあるいは閣議等で総理大臣が行くからというようなことを発言したわけではないわけですけれども、あくまでもこれは私人という立場でそれぞれの判断に基づいて行ったわけでありますから、それ以上のものじゃないわけですね。
  394. 松本善明

    松本(善)委員 憲法の二十条は、宗教団体が国から特権を受けてはいけないということが一項、それから国側の機関が宗教的な活動もしてはならぬということもあり、いまのような形で私人だと言うけれども、全閣僚が行くというようなことになれば、これは明らかに何か特権が与えられたような感じになりますよ。私は憲法との関係考えるならば、やはりそういうことは当然に配慮をして、私人として行くなら私人らしく注意をして行くというのがあたりまえじゃないかと思うのですが、そういう配慮は、大臣はしないのですか。
  395. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今度の靖国神社の参拝については、福田総理が参拝をするという予定を立てておったわけでありますが、それに関連をして各方面からいろいろな私に対する要請等もあったことは事実であります。したがって、そういうことも踏まえて、私は事前に記者会見等で総理大臣が行く予定になっておるけれども、これは私人である、そういう私人の立場であるということをはっきり申しておるわけでありますし、その点につきましても「憲法の問題もあるわけですから、憲法は守らなければなりませんし、憲法に抵触するという事態が起こってはならないわけでありますから、法制局等とも打ち合わせた結果、私人として参拝をすることは差し支えない、こういうことで総理大臣の参拝が決まったわけであります。したがって、総理大臣がちょうど参拝をされるその時期に私もおったものですから、私も同行して参詣をいたした、こういうことであります。
  396. 松本善明

    松本(善)委員 私人としてというふうに言われるので、私聞くのですが、先ほど廊下で、一緒に行った森官房副長官にあなたは宗教何だと言ったら、仏教だと言う。あなたの宗教は何ですか。
  397. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も仏教です。
  398. 松本善明

    松本(善)委員 そういうことだと、あなた自身一体靖国神社を宗教と見ているのですか、どうですか。
  399. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の個人的な立場から言いますと、われわれ戦争に参加した者として靖国神社というものに対する崇敬の気持ちはいまも変わっておりませんし、私自身もそういう立場で毎年参拝をいたしておるわけであります。
  400. 松本善明

    松本(善)委員 私は長官のお考えとしても聞きたいのだけれども、靖国神社は公的な性格を持った宗教あるいは国家的な宗教というふうに見る考えはありませんか、あなたの中に。私は、本当に私人としての宗教心ということであれば、そういうような戦争反対の気持ちをもし持つならば、そんな形では表現されないと思うのですけれども、あなた自身にそういう考えはありませんか。靖国神社は公的な性格を持った宗教だとか、あるいは国家的な宗教だというような感じがありませんか。
  401. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、靖国神社が神道であるとか神道でないとかいうことではなくて、私にとりましては、いわば宗教を超えた、これはわれわれと一緒に戦った多くの同胞の英霊が祭られておる社である、こういうことで、いわば自分が仏教を信じているとか、あるいは神道を信じているとかいうことを超えた立場で、靖国神社に対しては非常に崇敬の心で参拝を続けておるわけです。
  402. 松本善明

    松本(善)委員 それが問題なんですよ。靖国神社はもうはっきり宗教団体なんです。あの人たちは、宗教団体でないと言ったら、そうでない、宗教団体だと言うのです。そういう宗教団体である神社に、大臣がそういうような考え方で出かけていくということ自体が問題なんです。私は、そういうようなことがいわゆる憲法二十条の立法趣旨に反する方向、言葉で言えば脱法行為というような形で行われているということを本当に憂慮いたします。それが先ほどの有事立法なんかとの関係でなされていくということも憂慮をするわけです。  時間がありませんので、それ以上の追及はいたしませんけれども、そういうようなやり方には反対なんだということをはっきり申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  403. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 中川秀直君。
  404. 中川秀直

    中川(秀)委員 大変、長時間、重要な問題について審議が行われているわけで、なるべく重複を避けたいと存じますが、問題の事柄は同じでございますので、私どもなりの立場から、きょうは有事立法の問題あるいは防衛白書の問題、その他若干の点につきましてお尋ねをしたいと存じます。     〔村田委員長代理退席、小宮山委員長代理着席〕  まず、大変広く国民の関心を集めております今回の有事立法の問題でございますが、私は、関心を集めたということと、本日もこうして当委員会で長時間の審議が行われたということ自体は大変結構なことだと思っているのであります。こういう問題がいままで論議をされずに来たということの中にも問題がございますし、これからももっともっと広く国民的な関心のもとに、国会の場においてこういった問題は論議をされていくべきだ、こう思うわけであります。  実は、この六月八日の当委員会におきまして、私は有事立法のことについてお尋ねをいたしました。そのときに、私はこう申し上げたわけであります。防衛というものはいざというときのための備えであるから、いざというときに速やかに対処することを可能とする、あるいは担保する防衛関係の法体系の整備をきちんとしておかなければいけない。いわゆる有事立法の問題は本当に急務だと思う、こうお尋ねをいたしました。そして、もし現状のままでいくならば、またしても超実定法的な措置あるいは超法規的な措置に頼らざるを得ないということになるわけです。簡略しますとこういうお尋ねを大臣にしたわけであります。そのときの大臣の御答弁は「おっしゃられるとおり、私も有事の場合のことも考え、十二分に検討してまいりたいと思う」、大変端的ですが、ずばりと御答弁をなさったわけであります。  私は、今回の統合幕僚会議議長辞任問題でございますが、議長自身の辞任という問題は、これはもう行政府の問題でございますから、私自身があれこれ言うことではないわけであります。しかし、栗栖さんがおっしゃった超法規約行動を現状のままではとらざるを得ないということ自身についての背景的な実際的な御認識というものは、現状のままでいくならば大臣御自身もお持ちなのではないか。前回の当委員会の御答弁で「おっしゃられるとおり」、こういうふうな大臣の御答弁もあるわけであります。私も辞任そのものは、率直に言って表現そのものについて若干の問題があることは認めるわけでありますが、しかし現実問題として、有事の場合の法制度の整備が不十分であるという御認識は、私は大臣御自身もお持ちだとそのとき以来受け取っていたわけであります。大臣いかがでございましょうか。
  405. 金丸信

    金丸国務大臣 私は再々申し上げていることでありますが、自衛隊というものは有事に際して必要であるということ、それで自衛隊というものがある以上、自衛隊がその有事に際してどのようなことも考えておらないということは、これは国民の負託にこたえられない。ですから、超法規という行動をとらなければならぬようなことのないように、あらゆるものを整備して、また国会でも十二分にこれを審議し、理解していただき、そうして立法するというようなことがいま必要だ。有事になって頭がかっかとしてからりっぱなものができ上がるものじゃない。私はそういう意味でこれは当然やるべきことだ、こう考えておるわけであります。
  406. 中川秀直

    中川(秀)委員 国民の中で議論をする場合に、いまの大臣の御答弁がごくあたりまえな常識論だと私は思うわけです。いろいろそれぞれのお立場からの議論はあると思うのですが、私は少なくともそう思います。また、私ども新自由クラブもこの問題につきましては、いまの大臣の御答弁、先ほど私がお話ししたこと、そういう線で、もう有事に一たん来てからこういうことを議論するという場合には、必要以上にいわゆる政府コントロールを強化してしまうとか、国民の権利を過度に制限しやすくなるとかいう事態が出てくるわけですから、当然平時にこの問題を議論しておくべきだ、こう思うわけであります。  加えていま一つ申し上げるならば、この問題は、先ほど来の御答弁、防衛庁の政府委員の御答弁にもございますように、各省庁に非常に広範にまたがる問題でありますから、防衛庁の中だけでの議論ではいけない。もちろん国会を含めて、あるいは政府の部内でいうならば国防会議も含めた議論に当然なっていくべきだと私は思うのであります。  それが私ども立場なんでありますけれども、今回発表された防衛白書あるいは本日の委員会での御答弁等をいろいろ総合してみますと、政府の御見解は、有事とは自衛隊法第七十六条の規定による防衛出動が命令されるような事態を考えているというのが第一、その研究は憲法や基本政策の範囲内で行うというのが二つ目、そして研究成果の取り扱いはその時点での政治的判断を待つ、しかし現在差し迫った危機があるわけでないし、有事立法が必要であるとの国民合意ができているわけでもないと判断しているのだ、したがって、いま直ちに国会に提出するということは考えていないのだ、以上、大体言いまして、こういうような四点のような気がするのです。  そこでまず第一にお伺いをしたいのは、いま申し上げましたように、この研究は非常に総合的なものであるから、防衛庁の中だけで議論していい問題であろうかどうであろうか。私は国防会議を含めた議論にしていくべきではないかと思いますが、その点についてはどうでしょうか。
  407. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、こういう問題は広く会議にかけ――国防会議にかけることも、あるいは各省庁の統合した意見をまとめてという問題もあるでしょうししますから、国防会議も必要かもしらぬ。あるいは各省庁との会議も必要かもしらぬ。そういうようなことをして衆知を集める。防衛庁だけでやるということは、これはできるものではないと私は考えております。
  408. 中川秀直

    中川(秀)委員 そういたしますと、国防会議の権能の中にもこういった問題について議論をするという項目があるわけでありまして、たとえば、第一項の「国防の基本方針」にも関連するかもしれません。あるいは第三項の「防衛計画に関連する産業等の調整計画の大綱」というのにも関連するかもしれません。あるいはもっとずばりと言えるかもしれないのは、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防会議に関する重要事項」、こういうものにずばり入るかもしれません。もし有事立法の成案を得た段階には、これを国防会議におかけになるのかどうか、いかがでございましょう。
  409. 金丸信

    金丸国務大臣 当然かけるべきものだと思います。
  410. 中川秀直

    中川(秀)委員 先ほどお話をしました四つにわたる本日の御答弁あるいは白書その他政府の有事立法に対する御見解の中に、第一点として、有事とは自衛隊法第七十六条の規定による防衛出動が命令されるような事態を考える、こういう御答弁が出ているわけです。  ではお伺いしますが、七十七条の防衛出動待機命令段階有事とは考えないのでしょうか。
  411. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この有事立法研究という場合の有事というのは、七十六条のいわゆる外部からの武力侵攻があるような事態、こういうように言っておるわけなんです。あるいは防衛出動が下令されるような事態、こう言っております。武力攻撃のあるような事態あるいは下令されるような事態、こう言っておりますので、あってからとまでは言い切っていないのですが、ということはこれから勉強していかなければいけませんけれども、差し迫った事前にそういう待機命令が出ているような場合にもそういった法律が生かされなければいけないような事態もあるのかもしれません。これは今後の勉強にまちたいと思いますけれども、私が言っておりますのは、少なくとも外部からの武力攻撃があるような事態、これはいま申し上げましたような待機命令時点までも含めなければならぬのかもしれません。これは今後の勉強にまちたいと思いますが、治安出動とかあるいは海上警備活動とかあるいは災害派遣とかそういったようなものについては、いま考えておりません。あくまでも武力攻撃の前後、そういった意味であります。
  412. 中川秀直

    中川(秀)委員 結局のところ「あるような事態」、「あるような事態」というのは、七十七条、「長官は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の全部又は一部に対し出動待機命令を発することができる。」つまり予測される場合において事態が緊迫をして――「あるような事態」というのはまさにこれですね。したがって、研究成果にまつと言うけれども研究そのものは、自衛隊法第七十七条の待機命令という事態、段階というものも含まれると理解してよろしゅうございますね。
  413. 竹岡勝美

    竹岡説明員 われわれの頭にありますのは、外部からのわが国に対する武力攻撃があるような事態を頭で考えながらやっていくわけですから、そうしますと当然その時点とか、それに切迫した事態とか、あるいはそれより少し先の話とか、そういうこともいずれも入るのじゃないかと思います。今後の研究にまちたいと思います。要するに、あってからというわけだけにはいかないのじゃないか、こういう感じがします。
  414. 中川秀直

    中川(秀)委員 はっきりさせておきますが、私どももそれは当然だと思うのです。研究し、そういう現行法制度の欠陥がある部分、整備が行われてない部分について整備を行うという場合には、出動待機命令段階からの準備をしておかなければ、出動待機命令と出動命令は本当に間一髪、紙一重の場合も当然あり得るわけですから、第七十七条の段階も含めて有事立法考えるべきだとわれわれは考えております。  そこでひとつお伺いいたしますけれども、この八月から防衛庁ではいわゆる陸海空三自衛隊有事の際にどのような行動をとるかという作戦面を中心とした防衛研究に取り組んでおりますね。この研究、これはもちろん長官指示によって、統幕会議や陸海空各幕僚監部のスタッフ、防衛局の防衛課等が参加をしておやりになっているのですが、私どもがお伺いをしている範囲では、大体二年程度を目標に防衛庁としての一応の結論を出す、こう伺っておりますが、間違いございませんか。
  415. 伊藤圭一

    伊藤説明員 今回の防衛研究というのは、いわゆる陸海空の統合運用を中心といたしました研究をやりたいと思っております。そのために二年間を予定いたしておりまして、最初の一年間にいろいろな侵略の態様を研究し、二年目にそれに対応する仕方というものを研究してまいりたいと考えておるわけでございます。
  416. 中川秀直

    中川(秀)委員 この防衛研究と、これからようやく研究が始まりつつあるのか、大臣の御答弁ではまだ、つつまでも行っていないのじゃないかということでございますが、有事立法研究と、これとの関連防衛庁いかがでございますか。たとえば有事の際にどのような行動をとるかという作戦面のいまの御研究、これと有事立法研究というものは、考え方によっては法体系と作戦ですから関係ないように見えますけれども、実際問題としては無関係ということはない、大変関係がある問題だと思うのです。片方の防衛研究は二年程度、いま防衛局長の御答弁でもございましたように、それを目標におやりになるということですが、それと立法研究、これは私は遅まきながら当然だと思うのですけれども、これとの関連、特に時期的な関連いかがですか。
  417. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事法令研究は昨年八月三原長官指示によってやりました。防衛研究、これは金丸長官の御指示によりましてことしの六月から始めました。われわれの有事法令勉強は、先ほど言いましたああいうような事態をわれわれは考えながら、法制上どういう適用除外なんかをやっていただくとか、いろいろな法制勉強するわけです。直ちに防衛研究成果と結びつけなければならぬというふうには考えておりません。しかし、防衛研究をせっかくやっていくわけですから、そういう時点で、その段階において、あるいはわれわれが考えている有事法令勉強なんかに対して注文があるかもしれませんし、こういう法制も要るのじゃなかろうかという話が出るかもしれません。そういう意味ではお互いに連携をとりながらやっていきたい、このようには思っております。
  418. 中川秀直

    中川(秀)委員 当然連携をとりながらでなければいけない問題だと思います。また当然連携することがたくさん出てくる。二百項目ぐらいあるというお話も一部に出ておりますけれども、これは当然連携をとらなければいけない問題だと思います。そうすると、防衛研究の方は二年程度をめどにやる。有事立法の方はいかがですか。それと連携をとるということになれば、当然同じころに一応の結論を出す方向でいかなければいけないのじゃないですか。いかがでしょう。
  419. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事法令研究の中で、いわゆる防衛二法、これは有事法ですけれども、これに対する見直しもやっておるわけです。これの方は私の方が主管官庁ですから、われわれだけの発議でできますからそう問題ないと思いますけれども、他の一般法令は、たびたび申し上げておりますとおりそれぞれの主管庁があるわけで、恐らく防衛庁長官から、あるいは内閣レベルで、いよいよ立法手続をやれ、各省庁も勉強せよという事態の政治判断があれば、これはまた各省庁と協力してやって立法手続までいくことになろうと思いますけれども、恐らく防衛庁長官の方も、いまそういった差し迫った時期でもないし、国民にそう危機感をあおるようなこともちょっとわれわれとして控えなければならぬのじゃないか、ゆっくり勉強していけ、こういう御指示もありますので、いま二年か三年かということはちょっと――われわれ、その後の政治的な判断にまちたいと思います。いずれにしても、われわれは研究だけを進めていくということで考えております。二年なり三年とか一年とか、そういった時限を限ってはおりませんけれども、われわれの研究そのものはできる限り早く進めたいと思っております。
  420. 中川秀直

    中川(秀)委員 確かにいまの御答弁の御趣旨もよくわかるし、大臣のいま御紹介がありました御答弁もわかるのですけれども、やはり先ほど言ったように、つまり相連携しなければどうにもならない問題、片や研究成果が出て、片や高度の政治的判断があるからといって期限なしにやっていくんだ、これでは私どもは困る、こう思います。当然、両々相まって二年なら二年というめどで研究を完結するような方向に行くべきだと思います。改めて御答弁いただきたい。
  421. 竹岡勝美

    竹岡説明員 立法手続以前の防衛庁部内だけの研究は、できる限り早くまとめ上げたいと思っております。それと同時に、防衛上法の研究成果もわれわれの有事立法研究の中に入れて考えていきたいと思っております。防衛庁自体の有事立法研究というものは、そう細かいところまではとても各省庁の法律ではできないと思いますけれども、概括的にどうあるべきかとかいった問題はできる限り早く詰めていきたい、かつ防衛研究成果というものもわれわれの研究の中に入れていきたいと思っております。
  422. 中川秀直

    中川(秀)委員 検討課題というものは大体何項目ございますか。
  423. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これはまだ各幕からもそれぞれ要望も出たりいろいろしておりまして、われわれも取りまとめて全般のアウトラインを引くというところはちょっと自信ございませんので、まずだれが考えても、たとえば交通関係の法規なんかの問題もあろう、あるいは災害対策とかそういった問題もあろうということからいま始めておりまして、全般的にどの辺までいくかというちょっとまだアウトラインまで全部つかんでおりません。これから研究を各幕一緒にやりながら、さらにこの方面も、この方面もというようなことになるんじゃなかろうかと思っております。
  424. 中川秀直

    中川(秀)委員 何項目かに分けまして具体的にお伺いをしてみたいと存じますが、たとえばこれは午前中の質疑でも出たようでございますけれども、かつてミグ25が日本へひょこっとやってまいりました。そのときにパイロットは日本側の調べに対して、絶対に撃ち落とされない自信があった、こう言っておるわけでありますけれども、いまの自衛隊の運営あるいは内訓等では、たとえばそういうようなわが国の領空を侵犯したような侵犯機がやってきた場合に、緊急避難あるいは正当防衛の場合は武力を行使することもある、してもいい、こういう内訓が出されておるという御答弁が政府側から出ておるわけであります。では、自衛隊法八十八条による武力行使ですが、これは自衛隊法防衛出動命令が出された場合の武力行使でありますね。先ほどお話しした緊急避難、正当防衛の上からの武力行使というものは八十八条の武力行使とは当然違いますね。この緊急避難、正当防衛内容ですけれども、たとえば非常に極端に言うならば、侵犯機が核爆弾を搭載している、いつそれを投下するかわからない、こういう状況がはっきりしている、この場合はどうですか。  この場合は緊急避難、正当防衛で、領空侵犯に対する規定もございますけれども、少なくともこれは領空外に出ていくような行動をとらなければいけないわけですが、現実になかなかそれも出ない。しかし核爆弾は明らかに搭載をしている、これがはっきりしている、もし落とされてしまったら飛行機を落としたって何にもならない、この場合はいかがですか。
  425. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず申し上げたいのは、核爆弾を明らかに搭載して一機が来ているかどうかというのはなかなか判断しにくいところでございます。したがいまして、明らかに自衛隊機に攻撃的な態勢をとった場合、あるいは爆弾を投下する姿勢を示したような場合には、正当防衛あるいは緊急避難というようなことになろうと思っておりますけれども、いま先生がおっしゃいましたように明らかに核爆弾を搭載しているというのは、これはなかなか判断しにくいところだろうと思います。  それから、先ほどのミグが来たときに撃ち落とされない自信があったというのは、これは通常の場合には、軍事的な単なる領空侵犯で、そして最初からそのものが、領空侵犯に対処する飛行機が上がってきたときにその言うことに従って着陸をしようと思っている場合には、現在の国際関係におきまして撃たれないことになっております。したがって、たとえば対峙している国の間でも、そういった亡命機なんというものは、通常、相手の指示に従って行動するということになると落とされないということになっておりますから、その辺は、日本の領空侵犯の態勢がなまぬるいからそんなことを言ったのだというふうには私ども考えていないわけでございます。
  426. 中川秀直

    中川(秀)委員 確かに私が申し上げているのは仮定の議論なんですが、しかし、それじゃいまの航空機の性能からいって、スクランブルがうまくいって爆弾を投下する姿勢に入ったか入らないかという判断がそんなに簡単にできるのでしょうか。いかがでしょう。
  427. 伊藤圭一

    伊藤説明員 それは、その個々の場合にどういう態勢に入ったかというようなことの判断というのはもちろん一概に申すことはできないわけでございますが、いま先生も一概に核爆弾を積んでいるかどうかというのはなかなかわからないだろうとおっしゃると同じような意味合いで、爆撃態勢に入ったか、攻撃してくるかということを判断するのもなかなかむずかしい点はあろうかと思います。しかし、領空侵犯に対処する戦闘機に対して明らかに攻撃的な態勢をとったりあるいは爆撃姿勢をとったと認められるときには、正当防衛、緊急避難でこれに対処できるというふうに考えているわけでございます。
  428. 中川秀直

    中川(秀)委員 仮定のケースを変えますが、局長、いいですか、防衛庁もいろいろな御調査、また情報はおとりになっていると思いますけれども、通常、核爆弾を積んでいる、あるいは相当の爆弾を積んでいる、こういう戦略的な空軍の爆撃部隊が、一機ではなくて二、三機来た、あるいは十機来た、これが明らかに領空侵犯をして侵攻してくる、こういうケースの場合に、これはどう考えても、さっき言った先般のミグ25のような、いわゆるこちらがスクランブルをかけて着陸をさせて素直に従うケースとはちょっと考えられませんね。  そういう場合でも爆弾を投下する姿勢が確認できるのかどうか。かなり早期警戒もしなければいけないし、あるいはそばに行くといったって、広い空の上であれだけの性能を持った戦闘機ないし爆撃機が展開をしてくるというようなことになれば、これは爆撃姿勢に入ったとか入らないとかいうことは、来たこと自身で判断するしかできないでしょう。そういうケースの場合もこれは正当防衛で、領空侵犯機でありますから撃ち落とすことができないのでしょうか。これは率直な国民の疑問なんです。いかがでしょうか。
  429. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず領空侵犯措置というのは、平時におきます領空を侵犯する措置でございます。したがいまして、通常の平常な状況におきまして領空侵犯をしてきた飛行機というものが、最初から攻撃の目的を持って来るということはまさに希有のことだろうと私ども考えております。情勢が非常に緊迫してまいりましたときには、そういった領空侵犯というよりは攻撃という形で、いま先生がおっしゃいましたような何機かが編隊をとって来るというような場合があるかもしれません。そういうときには、先ほど来申し上げておりますように、七十六条によります防衛出動命令のもとに行います。これはもう領空侵犯措置ではなくて防空作戦ということになろうかと思います。  したがいまして、そういったいろいろな情勢の変化に応じて私ども有事即応態勢というものを固めていくということが非常に大事なことであろうと思いまして、先ほど来大臣からも申し上げておりますように、その際の情勢の判断、それを早く最高指揮官である総理に上げるということ、そして総理の判断あるいは国防会議の判断を早くしていただくというような努力というものが大事ではないかというふうに考えているわけでございます。
  430. 中川秀直

    中川(秀)委員 言いたかったのは、私もまさしくそこなんです。局長。七十六条で防衛出動が出ているときは、これはもう領空侵犯と言ったって確かにそんな十機とかあるいは数機で来た場合は明らかに攻撃的な目的で来るわけですから、これはもう防空作戦になるわけですね。また、その出動になるわけです。ところが、それと、先ほど来お話ししているように七十七条の防衛出動待機命令、この段階におけるそういう行動というのは紙一重だと思うのですね。この紙一重の段階で、たとえば国内的なそういう手続が行われている間に、一線の部隊はまだ待機命令だという段階にそういうのが来た、これは当然もう武力行使しなければどうにもならないでしょう。そういうすれすれのケースというのは当然あり得るでしょう。有事なんてそんなものだと思うのです。それについての現行自衛隊法というのは、私はやはり不備があると思うのです。これ、正当防衛でやっぱりやっていくしかないと思う。これは案外核心的な議論だと思いますよ。核心というのは、物事の本質的な議論だと思うのです。いかがですか。
  431. 伊藤圭一

    伊藤説明員 確かにいま先生がおっしゃったのは、その防衛問題の核心であろうと思います。この奇襲というのが、たとえば陸上の部隊が突然忽然と落下傘で降下してきて奇襲攻撃をかけるということはきわめてまれな例だろうと思いますが、やはり航空からの攻撃というものが奇襲という場合には一番可能性として考えられると思います。そこで、先ほど来申し上げておりますように、情勢の変化あるいは出動の待機命令が出ておって、そして防衛出動に切りかえる手続あるいはその判断の時期を誤らないように情報を差し上げる、そういった最大の努力というものが必要になってくるかと考えております。
  432. 中川秀直

    中川(秀)委員 法制度の整備は要りませんか。そういうケースの場合でも、つまり待機命令段階での攻撃的な、明らかに攻撃的な行動と想定をされるような、そういう行動が相手方から起こった場合に、これはもう正当防衛で武力行使するんですか。その範囲で逃げるしかないのですか。それともこの八十八条の防衛出動時の武力行使に何らかの適用除外というようなものあるいはかなり歯どめをつけた武力行使、待機命令段階での武力行使というものも考える必要はないのですか。
  433. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず基本的には、この武力行使といいますか、いわゆる七十六条に基づきます組織的な武力行使というものは慎重にやるべきだろうと私ども考えております。したがいまして、その武力行使に至る以前のものというのはいわゆる正当防衛、緊急避難という形で武器の使用というふうなものを考えているわけですが、そこら辺の問題については、この自衛隊法ができたときからすでに二十年以上たっているわけでございます。その間にそれぞれ軍事技術の進歩というようなものもあるわけでございます。そういうものを踏まえまして、今後たとえばその防衛研究の場で研究するとか、それから現在の法体系で対処できるのかどうかというようなことはさらに検討してみたいと思っておるわけでございます。
  434. 中川秀直

    中川(秀)委員 要するにいまほど五分間か七分間か御議論していたこの待機命令段階での武力行使というような問題、緊急避難的な、あるいは正当防衛的な行動の武力行使という場合もやっぱり有事立法一つの項目として、結論がどうなるかわからないけれども研究はしてみる、こういうことでございますね。
  435. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ただ、この武力行使につきましては、現在の七十六条のもとにおけるいわゆる組織的な武力行使ということでございます。したがって、この武力行使につきまして安易にその法律を改正するというようなことはすべきではない。これはいわゆる実力を行使するということは、軍事技術的な、戦術的な面といたしましてはなるべく早く使いたいという気持ちは当然あるわけでございますけれども、この武力を行使するということの大きな政治的な判断というものも一方にあるわけでございます。したがいまして、安易にどうこうしたいということは軽々に申し上げるべきではないと思いますけれども、そういった七十六条あるいは待機命令の間にさしあたって武器を使用するというのが、現在の正当防衛あるいは緊急避難で大方はカバーできると思いますけれども、最近の軍事技術の趨勢などを考えながら研究はしてみたいというふうに考えておるわけでございます。
  436. 中川秀直

    中川(秀)委員 わかりました。それはもう非常に中心的な課題、問題ですから最初にお伺いしたわけですが、それじゃ、有事に備えて平素から法制整備をすべき事項が幾つかあろうかと思うのです。たとえばこの前の委員会でも申し上げましたが、部隊等の編成について自衛隊法では防衛庁長官に権限がある、こういうふうになっていますね。ところが有事、まあ待機命令段階を含めた有事、こういう有事の際に臨時に部隊を編成しかえなければならないという場合が当然出てくる、当然あり得る。それについての委任できる法制度は全くないですね。全くありませんね。これは当然検討の課題になることではないかと思いますが、いかがですか。
  437. 竹岡勝美

    竹岡説明員 いま中川先生御指摘の、その有事立法ということで主に言っておられますのは、まさに自衛隊法の運用上の問題で検討すべき点があるんじゃないかということで言っておられると思います。これもまさに有事の場合のことでございますから、われわれ、防衛二法の見直し、自衛隊法の見直しをいま進めておりますけれども、そういった中で、いま先生御指摘の点なども取り上げるべきだ、こう思っております。  ただし、いま部隊の編成等ございましたけれども、これは自衛隊法の二十二条で「特別の部隊の編成」、「内閣総理大臣は、」云々ということで「自衛隊の出動を命じた場合には、特別の部隊を編成し、又は所要の部隊をその隷属する指揮官以外の指揮官の一部指揮下に置くことができる。」というような特別部隊編成の、これは現在も第二十二条にございますけれども、そのほかの他の編成、いろいろな問題、これは防衛二法の見直しで、当然さらに有事によく対処できるような自衛隊法の見直しはやっていきたい、先ほど防衛局長が答えた点も含めましてやっていきたいと思います。
  438. 中川秀直

    中川(秀)委員 要するに検討の対象になりますね。  それからたとえば、非常に細かいことになるかもしれませんが、これは自衛隊法の見直しまでいくのかどうかわかりませんけれども、指揮権の行使及び継承という、こういうこと、あるいは指揮官の責任というもの、こういうものに対する規定。たとえば指揮官がもし死亡したという場合に、海上自衛隊等で言うならば、艦長が死亡して次の階級がもし軍医長か何かだったら、軍医長に当然いくわけですね。これでは作戦指揮ができないということにもなりかねない。これは当然検討の対象になると思う。  あるいは指揮官の責任というもの、これは前の委員会でも伺ったのですが、やはり指揮権というものはそれなりに尊厳を持たなければいけないと思いますが、この指揮官の責任というもの、これについては私は自衛隊法、場合によっては刑法、こういうものを含めた検討課題になるのではないかと思います。雫石事件でも、法的には本人の責任になって裁かれるわけですが、そういうことでは指揮官、指揮権というものの尊厳はないと思います。これはやはり自衛隊法上の検討課題になるのではないでしょうか。いかがですか。
  439. 竹岡勝美

    竹岡説明員 指揮の継承とかこういった点は確かに若干不備なものがあります。これは部内のレギュレーションとか規範とかそういったもので、ある程度のことはカバーできるのではなかろうかということで、現在防衛局の方でも検討しておるところでございます。  指揮官の責任につきましても、やはり内部の規範なりそういったものでできるのではないかと思いますが、法律上自衛官の服務の規定はございますけれども、指揮官のそういう精神の心構えというようなものまで法律で書くべきかどうかはちょっと私自信がございませんが、しかしいずれにしても、そういうものがもしないとするならば、いまありますけれども、レギュレーションその他でさらに必要かどうかは検討してまいりたいと思います。
  440. 中川秀直

    中川(秀)委員 これは案外大事な問題なんですよ。内部の規範だけで処理できる問題ではないと思いますよ。たとえばいま自衛官の場合は、雫石事件等が起きても当然一般の刑法で裁かれるわけですね。やった本人が裁かれるわけですね、刑法ですから。ところが、有事あるいは待機命令段階でそういう事故が起きたという場合には、これは当然指揮官を含めた責任が問われなければいけないはずですね。そうすると、やはり刑法の問題にも触れて、総合的な検討を加えた上、本人の責任あるいは指揮官の責任、この辺は何らかの適用除外があってしかるべきなんじゃないですか。
  441. 渡邊伊助

    渡邊説明員 私が申し上げることが先生の御質問に果たして的確なお答えになっているかどうかよくわかりませんが、実は指揮統率あるいは命令服従の関係、こういう問題に関連すると思うわけでございます。先生がいまおっしゃいました問題は非常に重要な問題で、つまり違法な命令に服従した場合にその行為を行った者が罰せられるかどうか、こういう問題に帰着するような感じがいたします。実は現在陸上自衛隊の服務規則というのがございまして、これには発令者の方の側と、それから受令者の方の側との心構えと申しますか、そういうものが規定されてございまして、「発令者は、いかなる場合においても法令及び上官の命令に反する命令を発し、又は自己の権限外にある事項を命令してはならない。」「発令者は、その命令の実行によって生起した結果に対して責任を負う。」こういう規定がございます。受令者に対しましては、「上官の職務上の命令は、忠実に守り、直ちに実行しなければならない。」「命令内容に不明の点がある場合には、直ちにこれを聞きただし、その実行に誤りがないようにしなければならない。」こういうような規定がございます。  ただ実際問題といたしまして、客観的に違法な命令であるということが明らかである場合以外に、一々命令内容について聞きただすということになりますと、部隊の統率というものがとれません。この兼ね合いをどうするかというのが非常に重要な問題だと思います。命令服従の関係なり指揮統率の問題について根本的な見直しをしなければならないということで年来作業を続けておるわけでございますが、現在まだ研究をいたしておる段階でございます。
  442. 中川秀直

    中川(秀)委員 一々やっておると非常に時間を食ってしまうのですが、要するにイエス、ノーで言っていただいて結構です。いまお話しのように、検討しなければならない問題が含まれておることは事実ですね。あるいはよく言われることですが、任務達成のために航空保安管制あるいは気象業務の根拠、当然、有事の際には航空保安管制等は自衛隊がある程度関与しなければどうにもならないと思います。米国あたりでは、日本の運輸省みたいな航空局と米空軍が共同オペレーションをやっておるわけですが、わが国の場合はそういうことはありません。     〔小宮山委員長代理退席、村田委員長代理着席〕 スクランブルをするにも一応運輸省のクリアランスを受けるというかっこうになっておるわけですが、これも有事になったら当然自衛隊防衛庁において何らかの根拠を持つ必要がありますね、気象業務。イエス、ノーで結構です。これも当然検討課題になるのではないですか。
  443. 竹岡勝美

    竹岡説明員 現在の自衛隊法でも、平時におきまして「自衛隊と海上保安庁、地方航空局、航空交通管制部、気象官署、国土地理院、日本国有鉄道及び日本電信電話公社は、相互に常に緊密な連絡を保たなければならない。」ということで、お互い官庁の協力関係というものを基礎にして考えております。これだけで果たして行けるかどうかということは、われわれの今後の有事立法勉強にはなろうと思います。
  444. 中川秀直

    中川(秀)委員 領空侵犯に対する措置、これは航空機及び乗員について必要な調査を行う権限、あるいは入国管理官と同等の権限を、たとえばそういう調査官というか警務官に与えるというような問題、あるいはそれに関連する自衛隊法、刑事訴訟法、出入国管理令、関税法等の適用除外、当然そういういろいろな問題が出てくると思いますが、これも検討課題にはなりはしませんか。イエス、ノーで結構です。
  445. 竹岡勝美

    竹岡説明員 イエスです。
  446. 中川秀直

    中川(秀)委員 挙げれば切りがありませんが、航空法等の適用除外、これも当然対象になると思います。対象になる航空機の範囲に対する規定、たとえばいま自衛隊機は適用除外が法制度で定められておる。自衛隊法でそう書いてありますけれども自衛隊に移管する前の飛行機ですね、これをすぐ使わなければいけない、こういう場合は、いまは除外はありませんけれども除外しなければならないということだって当然あると思うのです。あるいは情勢緊迫事項、いわゆる防衛出動、待機命令段階の航空法上の全面適用除外、あるいは防衛庁長官の権限に関する規定、これあたりも当然必要になってくると思います。  あるいは航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律というのがあるわけですが、これも、たとえば「過失により、航空の危険を生じさせ」云々というふうにあるわけですけれども自衛隊機がもし事故を起こしたらすぐこの法律でやられますね、当然対象になりますね。しかし、有事の場合に「過失により、航空の危険を生じさせ」云々、こういうようなことがどの段階で、つまりいまある現行法の対象になり、どの段階ではこれはもう防衛出動で、あるいは待機命令段階での行動でやむを得ぬじゃないかという部分もいろいろあるだろうと思います。この辺非常に不十分ですね。ここら辺も当然検討しなければいけない課題だと思いますが、いかがでございましょうか。
  447. 竹岡勝美

    竹岡説明員 その問題も検討しております。おっしゃるとおりです。
  448. 中川秀直

    中川(秀)委員 一々私がこうやってお尋ねをしていっても時間ばかりかかりますから、そろそろやめますけれども、その他どういう問題が検討課題ですか、おっしゃってください、時間がかかりますから。
  449. 竹岡勝美

    竹岡説明員 とりあえず、現在われわれで進めておりますのは、先般来答えておりますけれども、いわゆる交通関係法制、それからあと災害救助関係法制、こういったものから始めていこうということで、その先はまだちょっと見通しをつけておりません。アウトラインは今後もう少しゆっくり考えたいと思います。とりあえずそういうことで進めております。その中に航空法とか先ほど先生がおっしゃったような問題も入っております。
  450. 中川秀直

    中川(秀)委員 電波法はどうですか。
  451. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これもやっていかなければならぬ問題だと思います。現在、電波法の通用除外例もございますけれども有事の場合におきますさらにそういった適用除外が要るのじゃないかということも検討していきたいと思います。
  452. 中川秀直

    中川(秀)委員 まだまだたくさんありましょう。たとえば防衛準備、いわゆる待機命令段階でのいろいろな規定があるわけですけれども、この規定だけで果たして待機命令情勢に対応し得るようないろいろな行動がとれるのかどうか、この出動待機命令が余りにも大ざっぱ過ぎる規定ですから、これも当然精査しなければいけないでしょう。あるいは先ほど防衛局長も、当然研究はしてみなければいけないというお話がありましたが、情勢緊迫時における武器使用に関する規定、これもある程度考えなければいけないでしょう。あるいは防衛出動時における市民の安全措置に関する規定、これはおやりになる考えはないのですか、これも当然対象になるのじゃないですか。  前に、このことについては、災害対策基本法の条文やいろいろなことを出して、当委員会で議論をして、どこも所管官庁がない。たとえば、特にフォールアウトと言われるような大規模核爆発の放射能灰によるいろいろな危険、こういうものについては科学技術庁の調査に関する調整機構しか現在はないのです。どこの法律でどこの官庁がやるのか、いよいよどこも御答弁がなくて、たしか国防会議の事務局長が、個人的な意見ではあるけれども国防会議でやるべきだと思う、こういう御答弁をこの六月にはなさっておられる。こういうことも当然防衛庁においてもあるいは国防会議においてもやるべきではないのですか。いかがでしょう。
  453. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これは市民のいわゆる民防関係避難誘導関係でございますが、内閣レベルで高度の政治判断で立法手続をやるべき時期があるということで立法作業をやるような場合には、これは恐らく主管官庁がそれぞれ決められると思います。この民防につきましてどこが主管官庁であるということも内閣レベルで判断をされるべき問題だと思います。しかしながら、現時点においては、防衛庁自体におきましても、災害救助法なり災害対策基本法、こういったものの勉強も含めましてどういう措置がとられるべき問題だろうか。いまの災害救助法、災害対策基本法は相当よくできておると思うのです。ただ、あれは戦災という言葉はございません、普通の災害ですから。これも戦災とかということになれば相当のものができるのじゃないかと思いますけれども防衛庁自体でも勉強しておきたい、このように思います。
  454. 久保卓也

    ○久保説明員 先ほどお話しのように私答弁申し上げましたが、新聞にも出ておりましたように、先般の国防会議では防衛庁長官から、民間防衛についての所管が決まっていない、これを国防会議で審議してほしいという御意見が出まして、総理、議長からも、研究するようにというお話がありました。  そこで私どもといたしましては、現在の法制のもとでどの省庁にも属さないとなれば内閣審議室になるわけですけれども、審議室の方で扱わなければ事務局の方で担当してもよろしいというつもりでおりますが、現在、内閣審議室と私どもとで協議を進めている段階であります。そして、いずれ各省で協議を進めた後に、国防会議がやはり取り上げるべきであるという見解が行政部門で出てまいれば国防会議で御審議を願い、担当省庁を決め、そしてその役所が決まれば、いまお話しのような立法化措置が必要であるかどうか、その役所がまた判断するであろうと思います。
  455. 中川秀直

    中川(秀)委員 ぜひ早急に議論をして担当省庁も決め、検討を進めてもらいたいと思います。  有事立法のことをもっと事細かにいろいろお伺いをしたいと思っておったわけでありますが、時間もありませんから、やめさせていただきます。  災害対策基本法あるいは交通関係法制、こういうものだけで先はわからないという御答弁ですが、さっきから挙げているようにほかにもたくさんあるわけですね。これは平時の段階でも非常に関連の深いことなのですが、いまいろいろな防衛に関する情報、とりわけ、今度政府はP3Cを入れましたけれども、これの解析情報、たとえばソナー音の解析をするために情報が要りますね。幾ら優秀なコンピューターを積んでいても、その情報なしには役に立たない。こういう情報のことをエリント情報とかいろいろ言うそうでありますけれども、そういう情報に対する秘密保護に関する法律はありませんね。一応、装備、兵器そのものの日米安保条約に定められている、あるいは地位協定に定められている秘密保護の法律はありますけれども、情報に関する法律はないでしょう。ここら辺もいわゆる国家公務員法やいろいろなものの関連があるかもしれませんが、さらに深く検討を加える必要があるのじゃないかと思うのです。  その他いろいろ、挙げれば切りがない問題があると思います。したがいまして、きょうのお尋ねの中で、いわゆる防衛出動待機命令自衛隊法第七十七条の事態、そういうものも有事と踏んまえて研究をするということ、国防会議も前向きに取り組むということ、この成案が得られた場合には当然国防会議にかけるということ、そういう御答弁がいろいろあったわけでありますけれども、論議をし研究をする内容も災害対策基本法と交通関係だけだなどという甘いことを言っていてはいけないと私は思います。やはり総合的に考えるべきだ。それはもうしさいに検討を加えて、必要なものは必要なのですから、私は当然全般を含めて研究をしていくべきだと思いますが、大臣、お席にお戻りになったわけですけれどもいかがでございましょうか。
  456. 金丸信

    金丸国務大臣 有事立法研究という問題については当然やるべきだ。それは国民の負託にこたえるということだ。しかし、それはあくまでも国民理解の中でつくっていく。それですから、平時、冷静なときに、皆さんの御審議をいただきながら立法ができるのであれば立法をし、だめなものはだめということになると思うのですが、できるだけ国民理解を得る中でつくってまいりたい、研究もできるだけスピードをつけてやっていきたい、こういうように考えております。
  457. 中川秀直

    中川(秀)委員 もう時間が来たのでやめますが、最後に一つだけ大臣に御見解を伺いたいことがございます。  防衛庁がおつくりになって七月二十八日閣議で了承をしました「日本防衛」、これをずっと読ませていただきました。私はこの防衛白書というものについて、やはり国民理解を求めるためにひとつ考えてもらいたいことがあるのです。たとえば昨年来の国会で大臣にもお話をしたわけですが、私どもは、相互安全保障というものを考えいかなければだめなのだと、しょっちゅう口が酸っぱくなるほど言っております。たとえば相互安全保障というものにコストがあるとするならば、石油、原材料、食糧の備蓄もあります。あるいは石油、ウラン探鉱開発というものもあるかもしれない。新エネルギーの開発もあるでしょう。いわゆるODA、政府開発援助もあるでしょう。文化交流もある。及び防衛費、これが相互安全保障のトータルコストですね。それを計算してみますと、大体GNPの一・六%ぐらいにしかすぎないのです。これをやはり三ないし三・五ぐらいにしていくべきだ、これが私ども考え方であります。諸外国等に比べるとこの辺のコスト、GNP対比というものは非常に少ない。こういうものも当然日本安全保障という観点から取り上げていかなければいけない問題だと思うのです。  ちなみに白書というものは一応の限界があって、将来の見通しや施策に言及するときは抽象的、付随的に触れることにとどめる。具体的に触れるときは閣議の了解が要る、昭和三十八年の事務次官会議から出ているわけですが、そういう制約があるかもしれませんけれども大臣もこの総合安全保障ということについては前国会でも御賛同いただいた答弁をいただいているわけですけれども、今回の白書ではこういうことについては何も触れていない、全く触れていない。防衛庁だから日本防衛についてはそれの防衛に関することだけでいいということでは、私は本当の意味国民理解というのは得られないと思うのです。私は、場合によっては日本防衛というのは日本安全保障という見地で国防会議も加わって白書をお出しになったっていいと思う。そのくらいの努力が政府においても必要だと思うのです。そういう中で有事立法も語られるようにならなければ、本当の国民合意というのは得られないと思う。  私は、防衛というものは軍事的な議論だけでは絶対にだめだと思う。軍事的な議論以前に文化交流や経済援助やいろんなものが語られなければいけないと思います。そういう「日本防衛」なんて言わないで、日本安全保障という白書を出してもらいたい。それには国防会議も含まって本質的な議論をしてもらいたい。再三再四これについては提起をし、議論しているわけですが、最後にこの私ども意見に対する政府の御見解、大臣でも国防会議の事務局長でも結構でございますが、お伺いをして、質問を終わらせていただきます。
  458. 久保卓也

    ○久保説明員 ただいまの御意見は、私はきわめて正論だと考えます。そして日本防衛のあり方というのが外国と違いますので、特に総合的な見地での安全保障というのは外国よりより重要になると思うのです。外国ではもちろん国防白書がありますが、安全保障の白書はございません。ございませんが、いま申し上げたような意味合いで私どもとしては、一般のマスコミ側からの要望もあるのですけれども、将来はそういった日本安全保障というようなもので政府の見解を国民に示すのが適当であろうと思います。その前に国防会議の性格なり権限なりを少し是正をしまして、おっしゃるような問題に対する受けざらを明確にした上でそういう措置を講ずるのが適当であろうと私は思っております。
  459. 中川秀直

    中川(秀)委員 大変重要な御答弁ですが、言葉でなく、ぜひ行動でそれを早急にお示しを願いたい、このようにお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  460. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 安井吉典君。
  461. 安井吉典

    ○安井委員 かなり時間も回っておりますので、数点について要点だけお尋ねをしていきます。  まず初めに、今度締結された日中平和条約の関係は近く外務委員会も開かれますので、そこでの詳細な論議に譲りたいと思いますが、きょうはそれと防衛との関連の問題についてちょっと伺っておきたいと思います。  この条約の締結のさまざまな影響のうち、やはりソ連に対する問題が大きいのではないかと思いますが、日米中三国同盟形成の路線が敷かれたというような受け取り方をして、新条約の締結を軍事的に危険視する向きがソ連側にあると伝えられておりますが、このような誤解は一日も早く解いていかなければならないと思います。そのためにどのような努力を政府としてなさるのか、外務省の方から伺います。
  462. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 日本が中ソ紛争に介入して中国に加担し、あるいはこれと共同してソ連に当たるというようなことは政府として考えてもおりませんし、したがって行うこともあり得ないわけでございます。このことは日中の条約交渉の経過におきましても、あるいは条約の条約文そのものでも示したところでございますし、他方、ソ連に対しましては、本年初頭園田外務大臣が訪ソされましたときにそのような趣旨のことをるる説明をされたわけでございます。しかしながら、ソ連のこの条約に対します疑念、疑心暗鬼と申すべき懸念がなかなか晴れないことも考えましたので、条約署名直後に東京及びモスクワにおきましてソ連側にそのような意図を条約文の説明とともに説明をいたしたわけでございますし、今後ともソ連側の疑念を、疑念があればこれは晴らすべく説明もいたすつもりでございます。また、実際行動といたしましては今後ともソ連との間には平和的な実務関係を進めていくことによって、そのようなソ側の疑念を解消していくつもりでおります。
  463. 安井吉典

    ○安井委員 ソ連側が条約の締結に反発をして、日本周辺における演習を強めるとか、極東への軍備の配備を強化するとか、そういう具体的な行動に出るのではないかという当初の若干の予想もあったわけでありますが、そういう情報や兆しは政府としてつかんでおりますか。
  464. 宮澤泰

    ○宮澤説明員 ただいままでのところ、そのような情報ないし兆しを外務省としては把握しておりません。
  465. 安井吉典

    ○安井委員 防衛庁
  466. 伊藤圭一

    伊藤説明員 わが国防衛力というのは、「防衛計画の大綱」に示されておりますとおり、わが国防衛のための必要最小限度の自衛力でございます。したがいまして、そのようなことはないと思いますし、現在まで私どもの情報といたしましてそのようなことがあるということは把握いたしておりません。
  467. 安井吉典

    ○安井委員 この日中条約の締結機会日本の戦略が大きく変わるというようなことがあるのかどうか、たとえば自衛隊の配備の変更等、そういったようなことがこの締結から何か変化が出てくるのか、それについての考え方はどうですか。
  468. 伊藤圭一

    伊藤説明員 先ほども申し上げましたように、わが国防衛力というのは「防衛計画の大綱」に従いまして必要最小限度の防衛力、これを大綱の趣旨に沿いまして配備いたしているわけでございますので、今度の日中平和友好条約締結によってその防衛構想を変える考えはございません。
  469. 安井吉典

    ○安井委員 私はそうだろうと思うのですけれども、しかし、この間の栗栖発言あるいはきょう朝からずっと議論しております有事立法研究、こういったようなものの大きな国内的な防衛論争の動きの中に日中の平和条約というものが決まったわけですね。そういうような結びつきで、何か日本はこの条約締結機会に大きな軍事力の拡大の方向に進むのではないかという、そういう疑念が私は――これは関係ないはずですね、それらの問題は関係ないはずなんだけれども、それと結びつけられて考えられるというおそれは、私はソ連という言葉一つ言いましたけれども、西欧だって、あるいは東南アジアの国々だってないわけではないと思います。そういう懸念は必要がないのだということを私たちはこれから日本の政治の中であらわしていかなければいかぬと思うし、とりわけ日中の後、日本として取り組んでいかなければならない外交課題はやはり日ソの関係の改善だと思います。  そういう中で防衛庁のこの間の防衛白書を見ても、最近の論議をずっと見ても、ソ連だけがまさに敵国であり、その可能性が一番ある国だと言わんばかりの大宣伝をやっている。私は日中平和友好条約締結と次の新しい外交の課題、そういうものの中で、何かいま防衛庁が進めつつあるそういうようなことが非常に誤解を生むおそれがあるようにも思うわけであります。そういう私の懸念ですか問題提起に対して、どうお答えになりますか。
  470. 伊藤圭一

    伊藤説明員 この点につきましては、防衛白書にも書いてございますように、極東を含みますアジア地域におきましては、いわゆる米中ソの三極構造というような形になっております。そして米軍がこの極東地域に七艦隊を主力にいたしますかなりの兵力を前方展開いたしているわけでございます。したがいまして、ヨーロッパにおきまして東西が対峙している、それから極東におきましてはいま申し上げましたようないわゆる三極構造の中で米軍のプレゼンスというものがございます。そういう中で大きく情勢が変化するというふうには私ども考えていないわけでございます。  しかしながら、世界の軍事情勢を見てまいりますときに、やはり軍事力の増強に一番力を入れているのがソ連であるということもまた事実でございます。極東におきます過去十年間の勢力の推移を見ましても、やはりソ連の海軍力あるいは空軍力の増強ぶりというのは著しいものがあるわけでございます。したがいまして、これはヨーロッパにおきましても同じような状況があるわけでございますが、非常に軍事力の増強に努めているという事実も私どもは無視することはできないと思っているわけでございます。  しかしながら、いずれにいたしましても、日本の安全というものは隣国との友好関係を背景にしなければ成り立たないわけでございますので、そういった意味では友好関係を維持していく努力というものは当然続けていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  471. 安井吉典

    ○安井委員 軍事力の増大よりも友好関係を増進するということで日本の国を守っていくということ、私たちは平和憲法の教えというのはそこだと思うのですよ。そういうことで、いまソ連軍事力が拡大しつつあるという実態も事実かもしらぬが、しかし日本関係を改善することがいま一番強く迫られているのもソ連だ。このことも明確にして、これは外務省の方もそうだし、防衛庁の方もやはり考えていただかなければいかぬと私は思いますね。大臣、どうですか。
  472. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま日中問題等につきましては宮澤欧亜局長や、また防衛庁防衛局長からも話があったわけでありますが、日中条約が結ばれたこれを契機に、われわれはいわゆるソ連を敵視するというようなことは絶対考えてはいけない、あくまでも日ソ関係を改善するということがこれからの日本のやる仕事だ。先般、日中問題が解決する前に保利議長と会いましたら、保利議長自身も、これからの日本の政治は日ソ関係を改善する、そしてよりよくするということに最大の力を入れるべきだ。私も全く同感でありましたが、政府もそのような考え方で対処していくと私は確信をいたしているわけであります。
  473. 安井吉典

    ○安井委員 次に、アメリカのエルズバーグ博士が去る八日ニューヨークで、五〇年代の末から六〇年代の末にかけて岩国の米軍基地に戦術核兵器が持ち込まれ、貯蔵されていたと語ったという報道がありました。この人は国防長官の補佐官というような役割りにもあって、したがって、この発言にはかなりの信憑性があると私どもは思います。そして私たち社会党の軍事プロジェクトチームは、かつて岩国の核の疑惑の問題をずっと調査し続けて、いま党を離れましたけれども、四十六年の楢崎代議士の、疑惑の弾薬庫の存在を最初に取り上げたり、あるいは岩国基地の電話帳に核部隊の存在があることの指摘、あるいは五十年に動くNBC戦闘司令部の写真の公開等、いろいろな努力を続ける中で、この問題の追及をしてきたわけです。しかし、この指摘に対して、その都度政府は否定し続けてきたのですが、今度のエルズバーグ博士の発言、これが新しく出てきたわけです。これに対しても安倍官房長官や外務省筋は否定の談話を出しています。その政府の否定の談話を出す基礎は、いま新しく提起された事実関係米側について十分調査した上の発言なのですか、どうですか。
  474. 中島敏次郎

    ○中島説明員 お答え申し上げます。  これはたびたび国会において御論議の行われているところでありまして、その繰り返しになるわけでございますけれども先生よく御承知のとおり、核兵器のわが国への持ち込みはすべて事前協議の対象となるということでありまして、この約束アメリカは誠実に遵守してきたし、今後も遵守するということを、たびたびの機会に明らかにしているわけでございます。  御承知のように、事前協議はいまだ行われたことがないわけでございまして、したがいまして、わが国に核兵器が持ち込まれておるということは全くあり得ないことであるというふうに信じているわけでございます。ただ、ただいま先生の御指摘もありました岩国の基地に核の存在があるのではないかという問題が、昭和四十六年それから昭和五十年ごろにいろいろ御提起がありまして、その当時国会においても御議論があったところでございます。その議論につきましては私どもも十分心得ておるわけでございますが、そのときにも明らかにいたしましたとおり、当時の疑惑に対しましては、米側の確認を得て、そのような疑惑が全く根拠がないものであるということをお答えいたしておる次第でございます。  ただ、いずれにいたしましても、事前協議の約束を誠実に守るというアメリカ側の立場、これを基本的に信頼しておるという日本政府の立場からいたしまして、改めてあれこれについて確認をいたすまでもなく、核兵器は存在しないということを信じて疑わない次第でございます。
  475. 安井吉典

    ○安井委員 アメリカから事前協議がないので、したがって核の持ち込みがあるわけはありませんという答弁の繰り返しでは、国民はなかなか納得しないわけです。そうは言っても実際は何かあるのではないかという疑惑を持っているところへ、さらに今度の発言であります。これが事実なら大変なことだし、この発言がもし本当だとすれば大変なんですから、しかし間違いだとすればこれまた大変です。したがって、日本政府として、そういう発言は間違いですというようなことをこの発言者に対して言うか、あるいは米側に対してそういう事実があるのかどうか確かめるとか、何らかの措置が今度の新しい発言に対して必要ではなかろうかと思います。どうですか。
  476. 中島敏次郎

    ○中島説明員 多少事実関係になりますが、先ほどの先生の御指摘に関しまして、このダニエル・エルズバーグ博士は、一九六四年、六五年の当時、国防省の国際安全保障問題担当次官補の特別補佐官、こういう立場にあった人でございます。ただ、ただいまは、御承知のように官を去りまして全くの私人でございまして、エルズバーグ博士の今回の話も全く私人としての立場から行われたものでございます。  さらに、新聞記事によるそのエルズバーグ博士の話によりましても、彼自身が岩国でそれを見たとかどうしたとかいうような具体的な話ではなくて、当時そのようなことを聞いたという種類の話でございます。したがいまして、私どもといたしましては、そのような状況におけるこのような話に対しまして、特にこれを確認するというような必要は全く感じておらない。むしろ先ほど来申し上げておりますように、核の持ち込みはあり得ないということについては一点の疑いも持っていないという立場から、確認をする必要もないというふうに考えている次第でございます。
  477. 安井吉典

    ○安井委員 私はやはり、一つ発言があった以上、それが間違いか本当か明確にすべきだと思います。そのことを要求しておきます。  次に、防衛のいろいろな問題に入るわけですが、金丸長官、きょうの大変遅い時間にまでおつき合いをいただいているわけですが、きのうは旧盆の十五日できょうは十六日、地獄のかまのふたもあくというときに、何でこの委員会につき合わなければいかぬのか、そこに並んでいる皆さんもそうお考えのようですが、地獄の方に用がないものだから鬼が出てきて質問をしているのかもしれない。しかし私は、防衛問題に関する最近の動きを見るときには、やはり鬼にならざるを得ない心境にあるという事実を明確にしておかなければならぬと思います。  防衛問題の動きというのは、この間の通常国会以後、いままでと変わってきたと思うのです。そういう危機感が国民の間にあるのではなかろうか、私はそう思うわけです。今度の栗栖発言にしたってそうだし、更迭の問題もそうだし、金丸長官のこの間の日台韓運命共同体発言にしてもそうだし、それからまた、急に有事立法だということでの騒ぎが始まっているという問題、私はこれらは全体的に黙視することのできない方向ではなかろうかと思います。特に金丸発言に対しては、社会党は罷免を要求するという決定で官房長官に申し入れをしたという経過もあります。私はきょう、その問題をここで強く取り上げて結論を出そうとは思いません。しかしこの問題は、きょうの一日の審議で終わる問題ではなしに、次の臨時国会が開かれればその臨時国会の中で、それで解決がつかなければ通常国会の中でと、長く、さらに大きく拡大をしていく問題ではなかろうかと思うわけであります。  どうでしょうか、その金丸発言の問題についてもきょう、午前中もいろいろ議論があったから、私は同じことを繰り返しませんけれども取り消しをされたのは結構だと思います。しかし、取り消しをされても、その影響の大きさ、発言責任というのはなかなか取り消されない。発言責任というものは取り消されないわけです。もう少し発言は慎重であっていただかなければいけないと思うわけです。まず、この点についてのお考えを伺います。
  478. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題につきましていろいろ詰問をされておりますし、社会党から官房長官のところへ罷免要求があったということも承知をいたしておるわけであります。防衛庁長官というものは、軽はずみな言葉を出すということは十二分に慎まなければいけないということを考えさせられたわけであります。  ただ私も、この講演の後すぐその場で、講演中に早まったことを言ったというような考え方運命共同体という言葉を使うつもりでなかった、台湾地域がいわゆる重要な地域である、そしてそれがおかしくなれば日本もおかしくなる、あるいは韓国もおかしくなる、ひいてはアジアもおかしくなるというようなことを考えまして、そのような言葉が出た。しかし、取り消しても、おまえの口から出たのだから、こう言われれば何とも言いようがないわけですが、私の意のあるところも十分おくみ取り願いまして、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  479. 安井吉典

    ○安井委員 栗栖統幕議長の解任の問題についてもいろいろと論議があったわけですから、私は中身の問題についてあれこれは言いませんけれども、その後、週刊誌やその他でこの人が言っている言葉を見ますと、有事の際、自衛隊法律上何らなすべきこともなく退却をするのか、あるいは国家として生存するために何らかの行動をとるか、どちらかという言い方をしています。しかしわれわれは、自衛隊に国家としての生存を、日本の国がどう行くかという運命まで任せているつもりはありません。現地の自衛隊に戦争をするのか、戦争をしないのかという判断まで任すわけにはいかないわけです。そういうところにこの人の大きな認識の間違いがあるし、憲法感覚が全く失われていると言っても差し支えないと思います。  そこで、私が心配するのは、この人はずっと現地の隊長として指導してきた人であり、自衛隊の中にいざとなれば法律など無視してどんな行動をとっても構わないというような指導をこの人は今日までしてきたのではないでしょうか。そしてまた、自衛隊の中に同じような認識がかなり広がっているという報道を私は耳にします。栗栖さんの指導を受けた人以外にだってそういう人がいないわけではないし、そのことが今度のことでまた反発のような形で隊内に広がっていはしないか、そういうことも一つ心配であります。  ですから、これは問題提起なんですが、憲法や法律重要性ということをもう一度隊内に徹底すべきではないか栗栖更迭というこの一つの時点をとらえて、シビリアンコントロールというものはこういうものだということ、特に栗栖発言というものは全く間違いに満ちたものであったということを、もう一度隊内に徹底すべきではないかと思います。その点どうでしょうか。
  480. 渡邊伊助

    渡邊説明員 お答えいたします。  栗栖さんの発言につきましては、長官も申されておりますように、統幕議長発言としては適当ではない、これは私どももそのように考えております。ただ、栗柄さんが憲法を無視したりあるいはシビリアンコントロールを逸脱するというような意図があるというふうには私ども考えておりませんし、シビリアンコントロールというものは近代民主国家の基本原理であるという御認識もお持ちであるということは、御本人もいろいろな機会に言っておられるところでありまして、今回の発言は表現のところに問題があった、ただ、いままでの表現の問題とはやや性質を異にする、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、超法規云々というような考え方につきまして、奇襲攻撃を受けたときにどうしたらいいか、あるいは有事法令についてどうすべきかということは、年来防衛庁内部においても議論されているところでありますし、栗栖さんは防衛庁内部において、むしろ幹部の間で議論はされてはおりましたけれども、こういう事柄を直接隊員に指導しているというふうには聞いておりませんし、それから今回のことにつきまして、部隊内の空気については私一々全部に当たっているわけではございませんけれども、それぞれのしかるべきルートを通じて聞いておる限りでは、非常に冷静に受け取っておると聞いております。  それから私どもは、積極的に制服が物を言うということを歓迎する空気があるというふうには聞いておりますけれども、これは発言をし、いろいろ議論をすることを歓迎するということであって、このこと自体は問題とするに足らないというふうに考えます。ただ、法律を無視して行動するというような、その内容そのものについて支持をしているという隊員は一人もいないというふうに考えております。  いま先生おっしゃいましたように、今回の問題を教訓として、さらに憲法を遵守するという基本的な事柄について、さらに私どもも指導を徹底いたしたいというふうに考えております。ただ、全隊員はすべて隊法に基づきまして憲法を遵守するという誓約をしておるということでございますので、基本的な認識について誤りはないというふうに考えておるわけでございます。
  481. 安井吉典

    ○安井委員 大臣どうですか。
  482. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま人教局長から申し上げたとおりだと私は思うわけでありますが、こういう問題が二度と起きてはいけない、またそれが実行に移ってはいけないということについては、先ほど来から申し上げておりますように、私は大正の生まれであります。あの第二次世界大戦の敗戦を受けるまでの過程の中で、私ははだで、目で感じてきた、骨の髄まで感じてきた、戦前の日本にしてはいけないという考え方が、栗栖君のあのような発言が許せないという考えを私は持ったわけであります。
  483. 安井吉典

    ○安井委員 いや私が言うのは、その栗栖発言がよかったとか悪かったとかという後戻りの批判ではなしに、もう一度全隊員に対してシビリアンコントロールの重要性、それからまた栗栖発言のようなことが誤りである、超法規的な行動などをやってはいかぬということを、この際もう一度明確にすることが必要ではないか、そのことです。
  484. 竹岡勝美

    竹岡説明員 栗栖発言がございまして直後、七月二十九日付で、全隊員に対しまして金丸防衛庁長官の所信ということで、第一線部隊に通達を流しております。  その主たる内容は、   自衛隊は、創設以来今日まで困難な諸条件にもかかわらず、装備の充実、隊員の教育訓練等逐次その整備に努めて来たところである。   しかしながら、有事に必要となる法制等の検討については、種々の困難があったとはいえ近年まで進捗しなかった。   私は、昨年防衛庁長官に就任して、この問題の重要性に思いを致し、その解決を図るべき有事法制の研究をはじめ防衛研究等の推進を指示して来た。   私は、防衛問題は、国家国民の大事として国民的基盤に立つとともに、直接危険を冒してその任に当たる自衛隊員諸君の英知と経験を汲み入れるべきものと考えている。   隊員諸君は、大いに建設的な意見の交換を行い、有効適切な有事対処の施策の推進に寄与してもらいたい。   私は、諸君の国を想う真剣かつ切実な意見を期待し、歓迎するものであるが、外部に向かつて公の立場において意見を述べるに際しては、一般公務員と同様に、おのずから守るべき節度があることを忘れてはならない。公務にある者の言動は、その立場を踏まえて行うよう求めたい。  あとは、今後一層国民に疑惑を招くようなことがあってはならない、一致協力して国民に信頼される精強な自衛隊の発展を期して、より一層隊務に精励されることを望む、こういった趣旨のことで第一線に通達したところでございます。
  485. 安井吉典

    ○安井委員 それを先に言えばいいじゃないですか。そういう具体的なあれをやっているということを先に言わないものだから、時間がよけいかかってしまったわけですね。  しかしいずれにいたしましても、そんなあいまいな文章でいいのかどうか、私も耳にしただけでよくわかりませんが、現状はそう簡単なものではないと思います。この問題がそう悪い形で広がったりしないような措置を強く望んでおきます。  それからもう一つ、安保の防衛分担金という言葉は古い言葉でありますけれども、それに似たような考え方へ政府がどんどん行きつつあるという問題が、この間のいわゆる思いやりという金丸長官発言で、アメリカヘの約束その他ということになっているわけで、その点は私も前回かなり時間をかけてお尋ねをしており、私の考え方も申し上げているわけであります。  ただ明年度の予算の中に、先ほどもちょっとお話があったが、施設について家族住宅の不足や隊舎の老朽化への対策、それからもう一つは、労務費についても協定に抵触しない範囲で出せる道はないか検討している、そういう先ほどの答弁を私は聞いたわけでありますが、ただそれらの法的根拠はどうなのか、それが明確ではないのではないかということであります。予算化さえされればそれでいいのだというような言い方を当局はしていると新聞は報じていますけれども、法的な根拠のない予算は議決もできないし支出もできないはずであります。それを明確にすることが予算要求よりももっと先決問題だと私は思います。  いままでの私ども理解では、施設の問題についても、リロケーションは別として、それ以外はできないという前からの話があるし、労務費についてもこれが最後だということで、去年の暮れ決着がついているように思う。それを通り越した、法律根拠もない予算要求というのはおかしいのではないかと思います。この点について防衛施設庁なり外務省なり、それぞれのお考え、見解を示していただきたいと思います。
  486. 亘理彰

    亘理説明員 お答えいたします。  私どもは、現在の円高その他の状況にかんがみまして、米軍の駐留を円滑化ならしめるために、地位協定範囲内でできるだけのことをすべきである、こういう大臣のお考えのもとにいろいろ作業をしているわけでございますが、それについては、午前中お答えいたしましたように、施設関係については今月の月末までに概算要求を取りまとめて大蔵省に要求をするつもりでございます。その他の問題については、なお検討中でございます。  それで、いまお話しの国会の承認さえあれば何でもできると考えているのではないかということでございますが、国会は国権の最高機関でございますから、御承認があればできるわけでございますが、一方で地位協定というものがございまして、地位協定については条約として国会の御審議を経ておるわけでございます。したがいまして、予算化する場合にも地位協定に抵触するものであってはならないということはもちろんのことでございます。私ども予算を大蔵省に要求する。あるいは国会に政府予算として御審議をお願いする段階におきましては、そういう地位協定との関係において何ら間然するところがないという理屈を十分に詰めまして御審議をお願いするというつもりでおるわけでございます。
  487. 中島敏次郎

    ○中島説明員 ただいま防衛施設庁長官からもお答えがありましたように、この問題につきましては、日本側の自主的な立場から、米軍の財政的な窮状を救うために何かできることがあるかということを防衛庁においていま検討中ということでございます。当然のことながら地位協定との関係が出てくるわけでございまして、いまもお話がありましたように地位協定と抵触するような解決はなし得ない、そういう意味におきまして、防衛庁におきましてその具体的な案が立ちました場合に、その地位協定との関係という点につきましても私どもも御相談にあずかって検討を行うということになると思います。
  488. 安井吉典

    ○安井委員 そうすると、理屈がきちっと立って、つまり筋がすっかりできて、この分は地位協定に違反しないか要求するというわけじゃなしに、いまのところは数字だけが出て、後の汽車で筋は来る、話し合いは外務省とつける、そういうことなんですか。
  489. 亘理彰

    亘理説明員 そうではございません。私ども概算要求を提出する段階におきましては、防衛施設庁としまして地位協定との関係につきましても十分吟味いたしまして、地位協定に抵触しないということの自信を持って予算をお願いする、こういうことでございます。それで、施設関係については今月末に概算要求をお出しするというつもりでありますが、これについては地位協定上の問題はないと考えております。  それからそのほかの、たとえば労務費の問題につきましては現在鋭意検討しておるところでございまして、現在私どもが具体的な、何をどう負担する、しないという考えを公式に御説明するだけの用意をしておりません。が、この結論を得ました場合には、もちろん地位協定に抵触しない範囲ということで十分に筋道を詰めまして、そうして予算の、これは八月末には仮にやるといたしましても事務的に間に合いませんけれども、追って予算の組み替え要求というふうな形で、もし積極の方向で結論が出ればお願いする、概算要求を組み替え要求の形で行う、そうして年末か、あるいは来年初めの概算決定の段階におきまして政府決定がありました暁には国会の御審議をお願いするわけでございますが、その際には地位協定との意味合いについては十分御説明、御納得をいただける自信を持ってお願いしなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  490. 安井吉典

    ○安井委員 私は、この問題は、なるほどアメリカ軍が困っているのはよくわかりますよ。わかりますけれども、これはいわゆる円高ドル安という経済問題なので、それを単に思いやりだなどというようなあいまいな言い方で、防衛サイドだけで問題を解決しようなんというのは大体おかしいので、経済問題は経済問題としての本質的な解決を福田内閣はサボっているわけですから、それをきちっとやらせるということが本質だし、そういう中で地位協定のゆがんだ運営ということを私どもは許すべきではないと思います。もう少し具体的な状況がわかれば、その段階でさらにこれは議論をしていきたいと思います。  最後にいわゆる有事立法という問題なのですが、ついこの間まで平和時の自衛力の限界の論争を私たちはしていたと思います。ところが、いま、一転して有事における防衛問題というところに大きく飛躍をしているような状況であります。だから、国民が戸惑いするのも当然ではないかと思います。同じ防衛論争でも、全く質的な大きな転換がいま果たされそうな状況に来ているということではないでしょうか。なぜいま有事研究というようなものが必要なのかということから国民はなかなか納得しがたいわけです。その必要性をいまの段階で提起しなければならないそういう状況というのは整っているわけではないと私は思います。そういうところへもってきて、最近は、政府、防衛庁は、人為的に、いや、こういう問題があるのだということを、状況を無理やりにかき立てようとしている、そういうふうに考えられてならないわけです。  たとえば防衛白書でも、どぎつくソ連の脅威を強調している。それが今度の防衛白書の特徴だと思うのですが、有事への不安というものをことさらに駆り立てようとしている。必要以上に危機感をあふり立てている。そういう気がしてならないわけです。われわれが平和憲法を持っていて、したがって平和外交を進めていくということ、有事などということがないようにしていくということが私たちの大きな目標でなければならないのに、戦争の危機をあふり立てているというようなことで、これは戦前を思っても、日本の前途が非常に重大な危機に直面しているということの宣伝の中から軍備をどんどん拡充していって戦争に突入したといういつか来た道を私たちは歩んでいるような気がする。金丸防衛庁長官は先ほど来、私も大正生まれで、あの戦争はいやだ、こう言われたが、それは全くそのとおりのはずなのですけれども、いまのこのあふり方というのは、戦前のいつか来た道によく似ているわけですよ。私は今日の段階をそういうふうに見ることもできると思うのですが、その点はどうでしょうか。
  491. 竹岡勝美

    竹岡説明員 最近、防衛庁は、昨年の八月から有事立法研究長官から命ぜられまして、また、ことしの六月、防衛研究につきましても長官からの指示を得たわけであります。もちろん、いま先生がおっしゃいましたとおり、考えれば考えるほど、わが国はこの狭い国土にたくさんの人口がおるわけでございますから、ここで戦乱があるようなことは最もあってはならないことだと思います。また、国防の基本方針でも、第一に安全保障の最大のものは平和外交だということも言っております。そういう点は十分心得ております。いたずらにこういった場合に国民に危機感をあおってはならないというようなこともわれわれも心得ております。しかしながら、防衛責任ということを与えられております防衛庁としましては、やはり平素からいま申し上げたような二つのことは研究していくのがわれわれの使命ではなかろうかということで研究を始めたわけでございます。また有事立法研究につきましても、いまだから立法手続をしなければならぬ事態ではあろうとも思っておりませんし、そういったところは高度の政治判断で、内閣の責任でやられることだろう。ただし、われわれ防衛庁としましては平素からそういうことを、この平和時において万一のことを思って勉強していくことがわれわれの使命だろう、このような気持ちで進めておることを御了承願いたいと思っております。
  492. 安井吉典

    ○安井委員 それじゃ私は納得できないわけです。いま私は有事立法と、こう言いましたけれども、いわゆる有事立法研究というものは、きょうのずっとの御説明を聞いていれば、官房長の方で中心になっておられるようですが、本来の意味有事法令研究というのと、それから防衛局の方が中心というか、幕僚の方が中心ということになるのですか、防衛研究ですか、それからもう一つ防衛二法の改正というような、つまり三つのプロジェクトに分かれているような御説明のように聞くわけであります。これはそれぞれプロジェクトチームの名前はどういうふうについていますか。
  493. 竹岡勝美

    竹岡説明員 別にプロジェクトチームの名前をつけておるわけではございませんが、昨年の八月の三原長官から指示がありました有事法令研究です。これは防衛二法の研究も含めまして法制問題でございますから、官房の方で各幕の法規担当とあわせて検討を進めております。それから防衛研究の方は、これは防衛局とそれから統合幕僚会議、これは各幕僚、陸海空の幕僚監部からも人を集め、そして統合幕僚会議とそれから防衛局が並行して防衛研究を進めております。いずれも特別の名前をつけてはおりませんけれども防衛研究研究する班と有事立法研究班、こういうように考えております。
  494. 安井吉典

    ○安井委員 名前はまだないそうですか、名前なしのままで最後まで行くのですか。
  495. 竹岡勝美

    竹岡説明員 仮に有事法令研究チームあるいは防衛研究チームという名前をつけてもいいのかもしれませんけれども、それだけの人が集まってやっておりますから、ことさらに名前はつけてはおりません。
  496. 安井吉典

    ○安井委員 俗に有事立法という言葉の中には実はその二つが一緒になっているのですね。新三矢研究だというふうな批判の中にもこの二つが混在したもので理解をしているというふうに思うわけですが、中身についてもう少し議論したいのですけれども、それだけの余裕がありませんから、私は、これと日米防衛協力小委員会の作業との関連だけを一つ伺っておきたいと思います。  そちらも有事なんですね。ところが、そちらの小委員会の方はガイドラインをかなり早目につくろうという考え方だし、防衛庁の中の二つプロジェクトチームはその終点がまちまちであります。そういうことになると、日米防衛協力小委員会の作業の方が早目に決まってしまって、その結論を、つまりアメリカとの話し合いの中で決まったものが逆流して防衛庁の中の二つのチームの作業に影響を持ってくる、そういうことになりませんか。その辺はどうですか。
  497. 伊藤圭一

    伊藤説明員 その三つの関係が深いというふうにいま先生おっしゃいましたけれども、私どもは、この日米防衛協力の問題につきましては、いわゆる日米安保体制というものが安保条約の五条のもとで有効に発揮できるそのためのガイドラインをつくり、それに基づくそれぞれの、日米双方がそれぞれに計画を持つということを考えているわけでございまして、これが有事法令あるいは自衛隊の運用研究、それに直接関係があるとは考えていないわけでございます。
  498. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、お互いの影響がかなり出てくるのではないかと思います。日米関係の双方での有事研究が先行しているということに私はかなり気がかりな点を覚えるわけであります。  ちょっと時間が足りませんから、その辺の論議は別な機会に譲りますけれども、いずれにしても、その検討というのは相当時間がかかるということの先ほど来の説明がありましたけれども防衛二法の改正というのは、次の臨時国会は無理だと思いますけれども、次の通常国会に提案することはないと思っていいのですか。
  499. 竹岡勝美

    竹岡説明員 五十四年度の概算要求で、やはり海上自衛隊、航空自衛隊に若干の増員が要るのではなかろうかということで、いま概算要求段階でやっております。もしこれが最終的に予算が決まりまして増員が認められるということになりますと、この増員につきましては、これは法律の問題でございますから、どうしても出さざるを得ない。その増員との絡みでどう決まるかによっては、五十四年度に出さざるを得ない。五十四年度にもし出しますならば、従来単なる増員だけではなくて、当面必要な何らかの措置、考えられるもの、これから勉強してまいりたいと思いますけれども、加わるかもしれませんが、増員の見通しによっては五十四年度にも出さざるを得ないのじゃないか、このように考えて、いま勉強しているところであります。
  500. 安井吉典

    ○安井委員 増員がなければ、つまり内容にわたっての改正案は出ない、増員の見通しのあり次第だ、そういうことですか。
  501. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この増員がなければ、たとえば中央組織、統幕機構の問題とか、やはり防衛二法に関連する相当の組織上の問題がございますが、これはやはりしばらく時間をかけてわれわれ研究していきたいと思いますので、五十五年度にまとめて出したいという気持ちは持っております。増員がもしなければですね。これももうしばらく勉強さしていただきたいと思います。増員があるようでしたら、これは五十四年度に出さざるを得ない、このように考えます。その際に、統幕機構とか中央組織、しばらく長期をかけて研究しなければならぬような事案は、五十四年度には少し間に合わないのじゃないか、このように考えております。
  502. 安井吉典

    ○安井委員 いまのいわゆる有事立法研究というその動きの中で、私はこう思うのです。かつて四十年二月の国会で、社会党は三矢計画の研究なるものを問題点として大きく提起し、当時予算委員会の中に小委員会も置いて、時間をかけた検討を進めたということを思い出すわけです。しかしあの当時は、三矢研究というのは極秘のうちに制服組がやっていたということで問題が大きかったのですが、いまは制服だけじゃなしに全体の防衛庁の問題として取り組みをしているというだけで、有事立法プロジェクトチーム、それから防衛研究の方の。プロジェクトチーム、その二つの作業を合わせれば、昔の三矢計画と実質的には変わりないようなものになる。しかも昔の三矢計画なるものは極秘のうちに行われて、いわば衣の下によろいを隠した。そのよろいがちらちら見えて、それで国会でああいうふうな取り上げ方になった。しかし、いまはその衣そのものをかなぐり捨てて、よろいのままで防衛の問題を開き直った形で防衛庁は提起をしていると言って差し支えないのではないかと私は思います。その大きな防衛論争の違いというものを私はいまの段階理解し、これは大変だなという思いを強めるわけです。  そういう中で、やはり文民統制の強化ということがあくまで前提だということを確認していかなければならないと思います。防衛立法を研究しているということになると、何か防衛庁法律をつくっているような気がするわけですね。防衛庁法律をつくるところではありません。法律をつくるのは国会なんですよ。いわゆるシビリアンコントロールの本来の姿をやはり国会が取り戻すことが必要であるわけです。いま何とか研究してつくっておけば、国会は多数で押し切ってしまえばそれでいいんだという考え方がさっきの官房長の一日説で、お取り消しになりましたけれども、しかし私は、そういう物の考え方が恐ろしいと思うわけであります。そんなようなことで国会に対応しようとするのなら、私はこれはもうどんなことがあってもこういうようなものをつぶしていかなければならぬと思います。  ですから、あくまでも慎重な態度で問題に対応してもらわなければ困る。とりわけ、それぞれいま研究が進むと言われているその資料を、私はそういう意味でも国会に必ず提出していただきたいと思う。国会も本当にそれが必要なのかどうかということを真剣に考えていく、そういうことでなければ国民は納得しませんよ。どこかでこの前の三矢研究と違ってオープンにやりますよと言ったって、その中身が国民に知らされなければ同じことじゃないですか。何をやっているのかさっぱり国民に知らされない、それでオープンだとどこで言えるんですか。ですから、国会にもそういう資料を十分に提供して、それでわれわれもその問題の理解を深めながら勉強していくということなら、これは話はわかると思いますけれども、あくまでも何もかも非公開で、秘密のうちにやっていくという態度を私は許すわけにはいかぬと思うのです。大臣、どうでしょう。最後に……。
  503. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題につきましては、国会の御審議を得なくてはならぬことは当然でありますし、また国民のコンセンサスがなくしてこういうものがつくれるものではない。慎重にこれに対しましては対処していく考え方でありますし、またただいままだ研究の最初でありまして、いわゆるたたき台というようなものも出ておらないわけであります。そういうものが出てきたら、まあいろいろあろうと思うのですが、御審議願えるものにつきましては、これは一遍に幾つあるのかわかりませんが、私は相当数のものが出てくるだろうと思うのですが、逐次一つ一つ国会の理解の中で解決していく、こういうように私は考えておりますし、またそれが国民のコンセンサスを得る基本だ、私はこうも考えておるわけであります。
  504. 安井吉典

    ○安井委員 何もかも秘密で運ぼうというところに一つの大きな問題があるということを重ねて指摘して、終わります。
  505. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 木原実君。
  506. 木原実

    ○木原委員 大分夜も更けてまいったような感じですので、ポイントだけ幾つか聞きまして、後に譲りたいと思います。  今朝来、有事立法の問題がいろいろ問題になっているのですが、私も、安井委員の御発言を受けて、なぜいま有事なのか、その辺から伺いたいと思うのです。いま有事立法を急がなければならない、取り組まなければならない情勢あるいはその根拠、この辺をもう一度、官房長おっしゃってください。
  507. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事立法、これは国民にも非常に影響のあることでございますし、それぞれ主管法律を持った他官庁があるわけでございますから、非常に慎重にやらなければならない。これがいわゆる国会で審議され、日の目を見るというのは、まさに立法手続をとる場合だと思うのです。その立法手続をとるということは、いま果たして有事立法の立法手続をとらなければならぬほどの危険があるのかどうかということになりますと、私はないと思います。恐らく政府あるいは内閣が最終的にその有事立法手続をとる段階、すなわち、各省庁みんな一緒になってやれということを考えられるのは、わが国がそういうことがあってはならないと思いますけれども、非常に危機感がある、国民も非常に危機感を持ったというようなときに判断されることだろうと思います。だから、現時点で立法手続をとらなければならぬほどの差し迫った問題は、私個人では、ないんだろう。また防衛庁長官からも、そんなあわてることはないんだからゆっくり勉強しておけというように指示されておるのも、そういう趣旨だろうと思います。  だから、立法手続をとる段階は、まだまだそんな段階ではない、そういう危機感があるわけではない。ただし、防衛庁というのは有事のときに備えておる役所でございますから、平素からそういったことを自分なりに研究しておくということ、場合によれば防衛庁研究だけで、わが国が非常に平和で今後永久に要らなければ、これは非常に結構なことだと思います。有事立法というものが要らなければ結構だと思いますけれども防衛庁自体としましては、この役所の性格上研究を続けていく。それじゃなぜ去年の八月からやったか。これは私は、防衛庁防衛庁の使命から見ても、もっと早くから研究はしておくべき問題であったのじゃなかろうかと思いますけれども、いままでなされておりませんので、防衛庁自体での研究は進めておるということでございます。
  508. 木原実

    ○木原委員 幾つか問題がございまして、防衛庁としては、情勢はないけれども平時の間に一つ体制を整えておく、いわばビジネスとしての立法化に向けての勉強をするのだ。しかしながら、軍事というのは、軍事的な問題というのはビジネスだけでは終わらないわけですね。そういう動きをすること自体が、ある意味ではさまざまな軍事的な緊張を生む要因にもなる、国民の中に別個の不安を呼ぶ問題にもなる、私はそういうふうに懸念をするわけです。  ただ、こういうことは言えませんか。つまり、いままで不備であったいわゆる有事のさまざまな対応の法的な措置を講ずるだけの、まあ言ってみれば自衛隊体制が整ったのだ、こういう判断があるのですか、ないのですか。
  509. 竹岡勝美

    竹岡説明員 そういう有事法令防衛庁内部で研究するという余裕が大体できてきたのかという御質問でございましょう。(木原委員「できてきたというより、体制ができたのではないか」と呼ぶ)防衛庁自体がですか。私は、この有事法令研究は、仮に十年前であろうと、防衛庁内部で研究するつもりがあるならばできたと思います。しかし、恐らくその当時には、まだまだ国民のコンセンサス、防衛に関するコンセンサスというものについての非常な配意があったのだろうと思います。いまでもわれわれも配意をしなければならぬと思いますけれども、余裕ができたというよりも、一次防、二次防、三次防、四次防ということで、基盤的防衛力、国防計画の大綱というものが決まった。そういう意味では、こういう法令勉強するような余裕ができたと言われれば、そうかもしれません。それぞれ防衛力の整備計画がだんだんと整ってまいりまして、防衛計画の大綱という平時における計画というものが一応セットされました段階ですから、こういうものを勉強しようという余力ができた、あるいは余裕ができたと言われれば、そうかもしれません。
  510. 木原実

    ○木原委員 妙な言い方ですけれども、不備と言えば、日本自衛隊は軍隊じゃないわけですから、至るところ穴があいて不備な面があるわけですね。しかし、その不備な面があるところにまた自衛隊の特質もある、こういう関係で来た要素があるのです。ですから、国民の側としましては、やはり安井さんがおっしゃったように、平時における自衛隊の限界というのを、われわれもつい一、二年前のこの場で論議をしました。しかし、今度は百八十度やはり有事という、その辺の変換といいましょうか変化、これがなかなかっかみにくい。われわれだって疑惑や疑問を感ずるところがあるわけなんです。しかし、そのことはこれからもいろいろ出る問題ですからおきますけれども……。  もう一つの根拠を聞きたいのですが、今朝来いろいろな議論がありました。有事立法を整えていく一つの根拠になるのですが、これは自衛権の発動と連動をした体制をつくるということですか。
  511. 竹岡勝美

    竹岡説明員 ちょっといまの御質問の趣旨が解しかねるのですが、いわゆる有事立法研究するという、その有事というのは何を考えておるかと言われますならば、外部からわが国に対する武力侵攻があるような事態、こういうことを想定しまして、現行法体制で十分なのかどうかということの勉強をわれわれなりにやっておるということです。
  512. 木原実

    ○木原委員 言葉が足りませんでしたけれども、外部からの武力侵攻があった場合、それに対応して防衛出動が下令をされるわけですね。防衛出動が下令をされるということは、自衛権の発動ということに根拠があるわけですね、つまり、それに対応する体系をつくるわけですから。そうしますと、この有事立法の作業をされる根拠というのは、自衛権が発動されたそのときに見合った体制をつくる、体系をつくるんだ、こういうふうに理解をしていいのですか。
  513. 竹岡勝美

    竹岡説明員 自衛隊法七十六条にございますように、外部からわが国に対する武力侵攻があるような事態ということでございますから、その場合には当然わが国が自衛権を発動する、そして、その自衛権を発動するために自衛力を行使する、いわゆる自衛隊に武力の行使を命ずるということになろうと思いますけれども、そういう意味では、自衛権の発動の時期だと思います。
  514. 木原実

    ○木原委員 そこで官房長、その辺もう少し、ちょっと大事なことで細かく聞いておきたいのですけれども、自衛権の発動の要件、つまり外部からの武力侵攻があった場合、そういうときの事態に備えて有事立法をやるんだ。何か先ほど、どなたかの質問にあなたはお答えになりまして、あったという時点では遅いんだ、かもしれないという状態の中でそういうものに対応するものをつくるんだ、こういうようなことをおっしゃいましたね。もう一遍そのことをおっしゃってください。
  515. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事立法考えております有事というのは、治安出動とか災害派遣とかそういった意味のことを――あるいはこれは有事と言う人があるかもしれませんが、そういう場合のことを考えておるのじゃない。あくまでも外部からわが国に対する武力侵攻、武力侵略があるような事態ということで申し上げたわけです。そういう事態だけを考えておる。  そういうことになりますと、武力侵攻がいよいよありそうだというような場合に、あらかじめ物を備蓄しなければならぬというような準備も要るでしょうし、あるいは物資の収用とかそういった準備が要るだろうと思うのです。そういう場合にも、何らかの、いまでは足らない法制が要るのかもしれません。だから、武力侵攻があるような事態を考えておりますが、あってから適用される法律だということになりますと、ちょっとおかしくなります。やはり武力侵攻を前提にいたしまして、そういう前後、そういう事態における必要な法制と、こうなろうと思います。
  516. 木原実

    ○木原委員 そういう見解は、防衛庁、いつからおとりになったのですか、いまおっしゃったようなあなたの御見解は。
  517. 竹岡勝美

    竹岡説明員 去年の八月に有事法令研究をせよという長官の御指示がございましてから、この有事法令勉強ということのこの有事というのは、われわれは防衛出動、七十六条のああいった事態、そういうものを前提にして考えようということで、われわれはそう言っておるつもりでございますが……。
  518. 木原実

    ○木原委員 これは私は重大な方針の変更というか変化だと思うのですけれども、一九七〇年の三月の衆議院の予算委員会で、当時の外務大臣の愛知さんが、外部からの武力攻撃ということに関連いたしましてこういう御発言をなさっているのです。外部からの武力攻撃のおそれがあり、脅威があるとき、それだけでは自衛権を発動できないんだ、こう言っておられるのですよ。だから予防戦争などそういうものは排除されているんだ、こういう御発言をなすっているのですがね。
  519. 竹岡勝美

    竹岡説明員 お答えします。  御質問の趣旨がわかりました。先ほど自衛権の発動との関連と言われたのもそういう意味だったと思います。いわゆる自衛権を発動ということは、こちらも防衛出動が下令されまして、そして部隊が動くことが自衛権が発動されたということだろうと思うのです。発動されたということ。その自衛権が発動されるような事態、そういう緊迫した事態、そういうものも含めまして、私たちは有事立法に関します有事という想定をしておるのです。  これを特にそういうことを言いますのは、おまえたちは治安出動やら災害派遣とかあるいは海上警備活動とか、そんなことまで含めてこの有事立法考えておるのかという御疑問がございますので、われわれが考えております有事というのはあくまでも防衛出動、こういう事態を考えております。だから、あってからとか、防衛出動が下令されてからとか、そういった過去形とかそういうことを使わないで、防衛出動が下令されるような事態でございます。そういう有事考え勉強しております。このように申し上げておるのです。だから、自衛権が発動されたということじゃなくて、発動されるような事態ということになるんじゃないかと、こう思います。
  520. 木原実

    ○木原委員 そうすると、つまり、そのおそれのあるときも対応できるわけですね。
  521. 竹岡勝美

    竹岡説明員 まだ少し御質問の趣旨がわかりかねておるのですが……。
  522. 木原実

    ○木原委員 もう一遍言いましょう。つまり、出動下令がありますね。命令が出ますね。その命令は、自衛権の発動ということになるわけですね。
  523. 竹岡勝美

    竹岡説明員 自衛権が発動されたことになる……
  524. 木原実

    ○木原委員 発動されたことになるわけですね。自衛権が発動され、それから出動命令が出る。この出動命令を出すのは、愛知さんの答弁によれば過去形なんですよ。外部からの武力攻撃があったときと、こう言っているわけです。それだから、あらかじめ、攻めて来るかもわからない、攻撃があるかもわからない、そういうときにはそういうことはあり得ないんだ、だから予防戦争などということはあり得ないことなんだと、こう言っているわけです。
  525. 竹岡勝美

    竹岡説明員 どうも失礼しました。いまの七十六条はおそれのある場合も含んでおりますけれども、もちろん、防衛出動を下令されましても、自衛権の発動ということは、急迫不正の侵害に対して他に手段がない、で必要最小限度の行動をとるわけですけれども、武力――ちょっと意味がわかりません。
  526. 木原実

    ○木原委員 それではもう少し問題を、大事なポイントですから、お聞きしたいのですが、一つは出動が下令をされる条件、そのときの要件、つまり外部から武力侵攻があった、こう言われるのですが、武力侵攻だけですか。武力侵攻の中にもいろいろな対応がありますね。だから、総理大臣が判断をして出動を下令する、それを満たす要件というのは何かあるはずです。どうですか。
  527. 伊藤圭一

    伊藤説明員 防衛出動が下令されますのは、七十六条によりまして、外部からの武力攻撃があった場合、それから武力攻撃のおそれのある場合ということになっております。  これと、自衛権を行使する、すなわち武力を行使するということの間には差があるわけでございまして、自衛権の行使というのは、いわゆる自衛権の行使の三要件というのがございまして、急迫不正の侵害があるとき、それに対して他に全く手段がないとき最小限度の自衛力を行使するということになっているわけでございます。
  528. 木原実

    ○木原委員 私がこだわりますのは、これから有事立法についていろいろな作業が行われるということです。そういう際に、それは新しく作業をされる有事立法法律として生きていく場合に、それの実施の方法があると思うのです。つまり、出動が下令をされた。しかし、同じ出動の下令のときでもいろいろな態様があるわけです。そうしますと、全部強力にやる場合と、部分的にやる場合とか、この程度のときにはこれをやる。つまり、防衛庁でよく使われる、小規模侵攻のとき、中規模侵攻のとき、大規模侵攻のときといったようなことがあるでしょう。国民の方からすれば、いずれは権利義務をかなり縛られる法律が出るはずです。  だから、出動下令があった、当然自衛隊は全国的に出動下令下に入る、それに伴って、侵攻の規模いかんにかかわらず、大変厳しい有事法律が適用されるというようなことになると、国民の側としては、これは大変なことになるのです。そういうことが頭にあるものですから、皆さんが研究なさっていらっしゃる有事立法は何に連動をするんだ、自衛権の発動に根拠を置いて有効に働くものなのか、それとも出動が下令をされたときには、あるいはそのおそれがあるときにも、もうすでにそういう法律も連動して実施をされるものなんだ、その辺の前提になるけじめのところを明らかにしてもらいたい、こういうことを聞いているのです。
  529. 竹岡勝美

    竹岡説明員 これは、たとえば現在百三条の物資の収用でも、地域を非常に限ったりしておりますね。「当該自衛隊行動に係る地域」とか、あるいは「内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限り、」とかいうような、こういう制限もございます。そういうこともあわせて、いま先生が言われました各種態様を考えまして、慎重な研究をしていかなければならぬ、これはおっしゃるとおりだと思います。
  530. 木原実

    ○木原委員 私が一番その中でも懸念をしますのは、あなたがおっしゃったように、過去形ではなくて、やられてからでは遅いのだ、これはそうでしょう。しかしながら、武力出動については、ともかく予防戦争をやるようなことは排除されているんだ、こういう見解も元の外務大臣から出ているわけです。  そうしますと、言い回しの問題ではなくて、非常に微妙で、大事なところなんです。国民の側からすれば、かもしれないということで権利を広範に縛られるということは耐えられないことです。ある意味では軍事優先で縛られてしまいやしないかという疑問が起こるのは当然でしょう。上がってきたのなら、これは大変だということになるのははっきりしていることなんです。それからまた、侵略といったような、急迫不正のといったような形容詞のついた言葉もありますけれども、一体侵略というようなものはどういうことなのか、法律の体系としてもどういうふうに認識したらいいのか、何かお考えがありますか。
  531. 竹岡勝美

    竹岡説明員 侵略の定義には国際的な定義がございます。あれを普通われわれは取り上げておるわけですけれども、要するに組織的、計画的なわが国に対します武力侵攻、こういうように考えておりますけれども、いま、国際法規的に出ております侵略の定義はちょっと手元に持ってこなかったのですが、こういうものが中心になろうと思っております。
  532. 木原実

    ○木原委員 たしか国連憲章だったか何か、これは過去形でしたよ。受けた場合と、こういうことですね。ですから、急迫不正の侵略という場合には、その憲章に従うとすれば過去形でしか対応できませんね、わが国の場合。その辺はどうですか。
  533. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは先ほど来申し上げておりますように、急迫不正の侵害があった場合にいわゆる自衛権を行使するということでございまして、その予防戦争といいますか、前もってこちらが行使するというものではございません。
  534. 木原実

    ○木原委員 また言葉の問題で恐縮なんですが、確かに急迫不正の侵害ですね。それは侵略ではない、侵略の定義とは異なる、こういう認識ですか。
  535. 伊藤圭一

    伊藤説明員 私どもは、侵害というのは組織的な、計画的な武力攻撃というふうに認識をいたしているわけでございます。
  536. 木原実

    ○木原委員 そうすると、侵略と同じ定義だということですね。
  537. 伊藤圭一

    伊藤説明員 自衛隊法上は、侵略という言葉は直接侵略、間接侵略という言葉で使っております。自衛権の行使の場合には、通常、御説明は急迫不正の侵害というふうに申しておるわけでございますが、これは武力攻撃ということでございますので、概念的には同じようなものだと考えておるわけでございます。
  538. 木原実

    ○木原委員 具体的に聞きますけれども、たとえば日本の領空上でわが飛行機が銃撃を受けた、そういう場合はやはり侵略ですか、侵害ですか、同じことですか。
  539. 伊藤圭一

    伊藤説明員 その攻撃が組織的、計画的であれば直接侵略というふうに考えられます。
  540. 木原実

    ○木原委員 そうすると、偶発的な出来事、たとえばスクランブルをかけて、向こうが結果において従わなかった、しかしながら、何か音声が乱れたかどうかでこちらの意思が伝わらないといったような、ある意味では偶発的と考えられるような侵害を受けた場合、こういう場合は全然この対象になりませんね。
  541. 伊藤圭一

    伊藤説明員 いま先生がおっしゃいましたように、偶発的に入ってきて別に攻撃をしないという場合には、これは侵略あるいは侵害ではないと思います。(木原委員「いや、攻撃を受けた場合です」と呼ぶ)攻撃を受けた場合には、これは侵害ということに当たるのか、とにかく攻撃をされた、武器を使用して、武力を行使して、いわゆる組織的、計画的ではないかもしれませんけれども、攻撃をされたということは間違いないわけでございまして、この場合には、いわゆる正当防衛ということでございます。したがいまして、領空侵犯阻止というのは、平時におきます現状のような状況において入ってきた、そして武器を使用して攻撃をしてきたということでございますから、いわゆる組織的、計画的な侵略というふうには考えないわけでございます。
  542. 木原実

    ○木原委員 そうしますと、これは常識的に考えれば、当然のことですけれども、侵略行為がある、あるいはまた自衛権が発動される、出動が下令されるといったような状況というのは、別の言葉で言えば、あなたがおっしゃったように組織的、計画的な侵害もしくは侵略があったときに可能性としては初めてある、こういうことですね。
  543. 伊藤圭一

    伊藤説明員 そのように考えております。
  544. 木原実

    ○木原委員 公海上で艦艇が砲撃を受けた、その対象国との間にはかなり緊迫した政治的な事情があった、しかしながら、軍事的に対象国が行動を起こすような情報はほとんどなかった、しかしながら、ある日突然公海上で攻撃をされた、こういったような場合の判断はどうですか。
  545. 伊藤圭一

    伊藤説明員 向こうの艦艇が、ある日、公海上であるいは領海に入ってきて突然攻撃をしたということのお話でございますけれども、個々の具体的な事例に照らしまして判断するべき問題だと思います。したがいまして、ほとんど情報はなかったけれども、それがやはり組織的、計画的な攻撃であればこれは侵略でございましょうし、偶発的なものであればいわゆる侵略という言葉には当たらないかというふうに考えます。
  546. 木原実

    ○木原委員 ミグ25などという不幸な事件などがあって、奇襲といったようなもの、あるいはまた偶発と考えられるようなものについても大変神経がとがる、こういう状態があるわけですね。そして、なかなか情勢が把握されない、しかしながら現実に侵害を受けた、防衛出動の態勢を大急ぎでとらないと間に合わないのではないかといったような判断もありますね。そういう個々のケースを考えますと、自衛権の発動それから防衛出動の下令、それからさらに、それに伴って新しくできるかもしれない有事の態勢を整える、こういう形になると思うのですけれども、はっきりしたときは、これはまだいいと思うのです。  しかしながら、ひっかかりますのは、官房長が、かもしれないという段階相当に用意をしておかないとと、これでは判断あるいはその幅が大変広がりまして、国民の側からすれば、かもしれないで権利を縛られてしまう、かもしれないで収用をされてしまう。今朝来、長官が、私は大正の生まれだ、あの戦争がエスカレートしていく過程をよく見てきた、こうおっしゃるわけですけれども、かもしれないという、つまり予防的な措置で逆にエスカレートしていったという軍事の歴史もあるわけです。  それだけにこだわって申し上げているわけなんですけれども、しかしながら、どういうものができるかわかりませんけれども、少なくとも国民の権利を大幅に縛る、制約をする、そういうような法律ができるとすれば、これの適用という問題についてはさかのぼって、つまり軍事的な必要に基づいてこれもできるわけですから、その根拠というものを作業に入る前からきわめて明確にしてかかりませんと、これはわれわれの民主主義が不当に制限をされるという懸念が去らないと思うのです。ですから、再びこだわるようですけれども、官房長が、かもしれない、こういう状態の中での情勢に対応するものだと言うのは、もう少し慎重な発言に変えてもらいたいと私は思うが、どうですか。
  547. 竹岡勝美

    竹岡説明員 確かに、いまの第百三条につきましても「第七十六条第一項の規定により自衛隊が出動を命ぜられ、」云々というような言葉があります。そういった国民の権利義務に関しますような有事立法法令につきましては、その前提は法律上はっきり明確なものにしなければならぬということは、今後よく勉強の指針にしたいと思います。そうなければならぬ、先生のような御懸念があってはなりませんので、そういう前提というものは法律上はっきりしなければならぬ、このように思います。
  548. 木原実

    ○木原委員 こういう議論をしておりますと夜が更けてしまうので、もうやめますけれども、きょうは余り議論はしませんが、もう一つ防衛庁はそれなりに、それぞれ軍事的な見通しなり戦略構想といったようなものですね、そういうようなものをお持ちになって訓練をし、あるいは対応を考えていると思うのです。有事立法といったような場合にも、国民にとって一番関心がいくのは、一体なぜいま必要か。私がこういうことを最初にお尋ねしたのは、われわれの前には一体どういう形の侵略が考えられるんだ、あるいはまた、自衛隊はいまどういう戦略をもって日本列島を守ろうとしているのか。なるほど現状、二十六万有余の自衛隊がある。展開しているところもわかっておりますね。毎年大きな予算で新しい武器も買い込む。何から何をどのようにして守るんだ、これが防衛の基本だと思うのです。  しかし、それを使ってどのように国民を守るんだという、つまり自衛隊の戦略と言っていいかどうかわかりませんが、そういう戦略といったものが、われわれにも必ずしも明確にされない。高度な軍事的な秘密ということは言えるわけですけれども、しかし、そういうものを国民の前にある程度明らかにしませんと、予算を通すときならまだ国会の中のあれですけれども、しかし国民の広いコンセンサスを得るということになりますと、その辺が絶えず明確にされておりませんと、架空のもの、仮定のものに向かって何か自分たちが縛られるというように考えることは避けられないと思うのですね。今後の問題としまして、一体自衛隊いかなる侵略を予想をし、いかなるところにウエートを置いてそれに対応しようとしているのか、いま言えることだけでもあったらおっしゃってください。
  549. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず前提といたしまして、私どもは、現在の極東情勢のもとにおきまして、日本に対して侵略の意図を持って行動を起こす可能性のある国というのはないというふうに判断いたしております。しかし、軍事力というものをそれぞれの国が持っているのも事実でございます。私どもは、いわゆる防衛構想の選択といたしまして日米安保体制というものをとっているわけでございます。アメリカ日本防衛に対する責任を持つということを条約上明言しているわけでございます。したがいまして、日本に対する侵略というものは、やはりアメリカ軍事力というものに対決しなければならないという非常に大きな問題を抱えているわけでございますから、真正面から日本に対する軍事行動をとる国というものは考えられないわけでございますが、いわゆる日米安保体制が発動する以前のような状態でちょっと日本に対して攻撃を加えてくるという可能性が、これもまた全然ないというふうには私ども考えていないわけでございます。  したがいまして、防衛構想にございますように、小規模侵略に対しては自衛隊の力をもって、さらに大きなものに対しては米軍の協力を得てこれを排除するという構想を持っているわけでございますが、そういう考え方のもとに、現在持っております「防衛計画の大綱」に基づきます陸海空のそれぞれの勢力によって小規模の侵略というものに対処するというのが、まず日本として考えられる現在の侵略の様相としては――まあ侵略そのものがあるというふうには考えにくいわけでございますけれども、可能性の問題としてはそういうことであろうかというふうに考えているわけでございます。
  550. 木原実

    ○木原委員 私も長く防衛の論議を聞いてきましたけれどもわが国防衛庁は、できることなら小規模の侵略であってほしい、中規模の侵略であってほしい。しかしながら相手のあることですから、特にわれわれの国のように高度に発達した国に対して何か仕掛けてくるという場合には、何かその辺の海岸に小規模な舟艇で上がってくるというようなことは余り考えられないのですね。最悪の場合は核攻撃を受ける。たたかれるという場合にも、恐らく数百機の、第何波にもわたる空からの集中的な、しかも奇襲でやってこられるといったようなことが、どうも一番われわれが危機感を覚える点なんですね。そういうことは想定をなすっていますか。自衛隊としていま現状の中で想定をされる最悪の、つまり有事の形態といったようなものは、お考えになっていることがありますか。
  551. 伊藤圭一

    伊藤説明員 これは数年前に防衛研究をやりました際に、いわゆる幾つかの形態というものを想定したことがございます。一番高いのは、いま先生がおっしゃいましたように、核攻撃を含む全面攻撃でございます。それから、核は使用しないけれども日本全土にわたって相当の準備期間を持って攻撃をしてくるという可能性もないわけではないわけでございます。そういう幾つかの段階、たしか私の記憶によりますと八つぐらいの段階考えられたわけでございますが、一番あり得る可能性のあるものとしては小規模の侵略、しかもその小規模の侵略の前には、やはり日本の国内のいろいろな問題の発生によります間接侵略的なものから発展するような直接侵略、そういったものが考えられるということでございました。  ただ、いま先生もおっしゃいましたが、その最も強烈な核を含む攻撃というものに対しては、やはり核のバランスというものがございますから、その可能性としてはきわめて少ないと思いますし、また、日本の全土を焦土と化すような通常兵器の攻撃というものも、日本という国の、日本国民の持っている技術力あるいは工業力、こういったものを利用するということがやはりその一つの目的になるということを考えますと、焦土と化すような攻撃というものよりは、やはり日本に対する軍事的な圧力によってこれを意思に従わせるというような形のものが考え方としてはあるのではないかというふうに思っているわけでございます。
  552. 木原実

    ○木原委員 もうこの辺でやめますけれども長官に最後に一つ二つ伺っておきますけれども運命共同体論で大分批判をお受けになったわけですが、日中友好条約も大変にスムーズにいったという感じがいたします。わが国にとっても、防衛上の問題としてもかなり明るい側面が出てきたように思います。安井委員もこの点に触れて見解をお述べになりましたので、重複を避けますけれども、ただ、長官がいみじくもお触れになりました台湾の問題、こういうものがやはり防衛上の問題としまして何か残るような感じがいたします。  アメリカ台湾の間には、御承知のように条約がまだ存在をしておる状況がございます。われわれの日米安保条約も、いわゆる極東範囲の中に台湾が入っておるという事情もございます。それから、何か長官アメリカでお述べになったという報道がございましたけれども、こういう状態になって、たとえば第三国の基地が台湾に設置されるということになれば、わが国の南の方の防衛上の問題としても大変に懸念がある、こういうような御発言があったやに報道で承りました。それやこれや考え合わされまして、日中友好条約が出現をし、防衛上の問題としても中国に関する限りは大変穏やかな状態が出現をしたという状態の中で、防衛政策上の問題として、防衛対応上の問題として台湾の動向、台湾防衛上の位置の問題、御懸念があり、あるいはまた御心配なすっている面があるかどうか、その辺のことについてひとつ御見解を承っておきたいと思うのです。
  553. 金丸信

    金丸国務大臣 運命共同体の問題につきましては、朝から諸先生からいろいろの詰問を受けたわけでございますが、それにつきましては答弁をいたしてまいったわけであります。  私は、万々、台湾ソ連の基地ができるようなことはないとかたく信じてはいますが、しかし絶対ないと言えるかという、私はアメリカに参りましていろいろ話を承ってみると、私は素人ですが、そういう感じもいたしまして、あのようなことに言葉を出したわけでありますが、私は、その言葉を出したことについては、まことにこれは容易ならぬことを申し上げたと、こう思っておるわけであります。ただ、あの地域が重要な地域であるという意味で申し上げたわけでありまして、今後、アメリカ台湾との関係は同盟が結ばれているということでありますし、またアメリカ自体は台湾との約束は守るという話もいたしておりますし、米中正常化の中でその運営はうまくいくのじゃないかという大きな期待も持っているわけでありますが、今回の運命共同体という問題につきましては今後十二分に慎んでいかなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  554. 木原実

    ○木原委員 私が申し上げたいのは、台湾の問題はわが国の見解として中国の内政上の問題である、台湾中国の領土の一部である、こういう見解のもとに日中の国交が回復をされ、条約も締結されたわけですね。中国の領土の一部が不幸にして分離された形になるわけですけれども、ここに何か安全上にかかわる問題が発生したとき、日米安保条約との関連あるいは台湾アメリカとの関係、そういったようなものが相互に連動をしてこの防衛上の問題にはね返ってくる要件なりおそれなりというものがないわけじゃないわけですね。  それからまた、長官がお触れになりましたように、台湾が独自の動向で重要な別の行動を起こす、こういつたような場合に、外交上の問題はもちろんですけれども防衛政策上の問題としても大変にむずかしい局面になってくると思うのです。それらの問題についてここで見解を述べよと言うのも大変に酷な言い方ですけれども、しかし、念頭に入れておかなくてはならない事態になってきたわけです。その辺についてもし御見解があれば承りたい、こういうことなんです。
  555. 金丸信

    金丸国務大臣 台湾の問題については、非常に重要な地域であるということを私は認識しておりますし、また、中国台湾との関係につきましていま私がいろいろ口をはさむべきでもないと思っていますが、先生のおっしゃるように、重要な地域であるということだけは、また今後この問題についてはわれわれもいろいろの情報等を取り入れまして、関心を持っておく必要はあるということを私は思っておるわけであります。
  556. 木原実

    ○木原委員 これで終わりますけれども、これは官房長、中国との関係が改善をして条約ができたわけですけれども防衛庁もしくは自衛隊制服の人たちが中国から招待を受けているのですか。あるいはまた、訪問をされるという御計画がおありですか。
  557. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 多分昨年の話だと思いますが、中国から、ライフル射撃チームの派遣をしたい、またそれと引きかえに、折を見て自衛隊のライフル射撃チームを中国に招待したいというふうな申し入れが口頭でございましたことは事実でございます。
  558. 木原実

    ○木原委員 派遣をする御計画はおありですか。
  559. 夏目晴雄

    ○夏目説明員 ただいま外務省とも種々調整中でございまして、まだ派遣をするかどうかという態度は決めておりません。
  560. 木原実

    ○木原委員 終わります。
  561. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 上原康助君。     〔村田委員長代理退席、高鳥委員長代理着席
  562. 上原康助

    ○上原委員 どうも時間が相当たっておりますので、防衛庁長官初め政府委員の皆さん、お疲れかと思うのですが、あと一時間くらいおつき合いを願いたいと思います。  そこで、私もまず冒頭、有事立法問題について少しばかりお尋ねをしておきたいと思うのです。  そもそも、有事をめぐって議論をしなければいけないこと自体に私自身は疑問を感じているわけですが、いろいろ話題が出ておる以上は、けさから議論もありましたが、これはきわめて重要な問題でございますので、今後国会の場で改めて集中的といいますか、徹底的に議論を重ねていかねばいけない点も多いと思います。  そこで、きょう、有事とは外部から武力攻撃があった場合、受けた場合を言うのだという簡単な説明があったのですが、改めて、防衛庁の御認識は有事とはどういうことを言うのか、その定義というものをもう一度明確にしておいていただきたいと存じます。
  563. 竹岡勝美

    竹岡説明員 有事法令研究しますについての有事は、自衛隊法七十六条で言っておりますとおり、「外部からの武力攻撃に際して、わが国防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」すなわち、外部からの武力攻撃があって、これに対して防衛出動が下令されるような事態、このように考えております。
  564. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、有事立法範囲といいますか、いま研究を進めておられるというその課題は、自衛隊法第七十六条に関することだけですか。
  565. 竹岡勝美

    竹岡説明員 七十六条で言います。外部から武力攻撃があって、これに対して防衛出動が下令されるような事態、こういうことを前提として考えております。     〔高鳥委員長代理退席、村田委員長代理着席〕
  566. 上原康助

    ○上原委員 七十六条は当然前提条件がありますね、これはきょう細々と議論したくありませんが。いわゆる防衛出動については当然国会の承認を得なければいけないという前提条件がある。しかし、けさ来の議論を聞いてみますと、現在の自衛隊法関連する部門が相当あるわけでしょう。七十六条に限定をしたのが有事でない、有事立法範囲じゃない。一体なぜ現在の自衛隊法で、この七十六条に規定をされている、うたわれていることが有事である――有事であるとあなたはおっしゃったわけですから、であるとするならば、私たちは自衛隊法そのものにも疑問を持ち、同意をしている立場ではありませんが、議論をかみ合わすという意味考えた場合に、現在の自衛隊法なり防衛庁設置法あるいは法体系の範囲で、有事のことが万一あるとした場合にあっても、新たな特別立法を考えないでも、わが国安全保障、必要最小限度の専守防衛という防衛の基本構想に立つとするならば十分可能ではないかという率直な疑問を持たざるを得ないわけですね。このことを解明せずして、飛躍的に有事だということに問題を発展をさせてきたところに、より複雑で、政治的問題としていま国民が受けとめていると私は思うのです。この点の解明はどうなさるのですか。
  567. 竹岡勝美

    竹岡説明員 確かにこの現在の自衛隊法で、私が先ほど申しました有事における対処につきましては、あるいは百三条とかそれ以外の、航空法その他の除外例等、有事の場合、七十六条の場合にそういった除外例なんかも、この自衛隊法相当よくできておると私は思うのです。ということは、いわゆる有事の場合の自衛隊行動に対しまして、この自衛隊法というのは非常によくできておると思います。しかしながら、これだけで十分なのかどうかということを、他の法令関連もあわせまして、やはりこれだけで十分かどうかという勉強をしていきたいということで研究を進めておる、こういうことでございます。この自衛隊法には重大な欠陥があるとは思っておりません。
  568. 上原康助

    ○上原委員 しかし、現状はそうではないわけですね。もし防衛庁長官なり福田首相が、現在の自衛隊法範囲で、万一有事が起きた場合に対処できる防衛体制なり安全保障というものが考えられ得るかどうか十分検討してごらんということなら、国民の側からもいろいろと反対なり、また私たちもきょう議論されたような問題は指摘しなかったと思うのです。百歩譲って。しかし、あなたがいまおっしゃった答弁ではなくして、あたかもあすにも、一カ月後にも、現状日本を取り巻いて一さっきの防衛局長国際情勢の認識とは全然違う、そういうところに栗栖発言以降、あるいは先ほど出ました靖国神社への首相の参拝、いろいろな問題と絡んで、シビリアンコントロールということに対する国民の疑念を醸し出しているその政治的責任、これは私は、防衛庁は大なるものがあると思うのです。その点を私はまず問題点として指摘をしておきたいのです。  それともう一つ有事は七十六条に規定をされているということであるとするならば、明らかに出動待機命令段階までは、そうしますと有事でないわけですね。さっきの木原先生の質問と関連これをぼくはきょう本格的にやる考えじゃないのですが、そういう矛盾点というものもある。  もう一つ大事なことは、お尋ねしておきますが、あなたの御認識、防衛庁の認識の、いま有事、七十六条を引用なさいましたが、じゃ非常事態宣言とは違いますね。非常事態宣言とも違う。国家の危機管理体制でもないですね。皆さんが言う有事というのは、国の危機管理体制を言っているわけでもないわけですね。そういう面も非常事態とはどう違うのか。非常事態あるいは国家危機管理という面があるとすると、そういう面と皆さんが言う有事立法とはどう区別して考えておられるのか。こういう面もこれからいろいろ議論を深めていかなければいけない重要な点ですから、明確にしておいていただきたいと思うのです。
  569. 竹岡勝美

    竹岡説明員 この有事立法研究は、昨年の八月、防衛庁防衛庁長官指示によって始めておるわけでございますが、最近の情勢とか何か、急に有事が起こりそうな緊迫した事態であるというような認識は全く持っておらないわけであります。ただし、防衛庁自体の存在から言いますならば、一たん有事のときに備える機関でございますので、われわれの使命として研究を進めておるということでございます。  それから、たとえば警察法あたりにも緊急事態の布告というようなこともございますけれども、われわれはこの自衛隊法、先ほど言われましたように自衛隊法だけで完全なのかどうかという意味も含めて検討しておるわけですけれども、たとえば他の法令、道路交通法とかいろいろな法令がございますけれども、こういったものも、ほとんど有事というものを前提にしていないのがわが国の法体制でございます。だから、自衛隊法だけで果たして十分に自衛隊の活動が有事の場合にできるかどうかということをいろいろな面から検討しておって、やはり他の法令につきましても、自衛隊の活動を有効ならしめるための除外例、そういったものが要るんじゃなかろうかという意味での勉強をしておるということでございます。
  570. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと私が聞いている趣旨と違いますが、もちろん、それはいろいろ関連するでしょう。  もう一遍聞きますが、あなた方が先ほど来御答弁いただいている有事という概念といいますか定義といいますか考え方というのは、国家非常事態ということとかあるいは戒厳令、そういう国家が――国家という表現も私自身は用いたくありませんが、国が危機に陥った場合、あるいは非常事態に立ち入った場合を想定をした有事立法なのか、そこを明確にしておいていただきたいと思うのです。  有事というのは必ずしも防衛だけの問題ではないはずなんですね。国民の生活全体が何らかの社会的、法的規制を余儀なくされるのが有事なんですよ、一般的な概念から言うと。明らかに非常事態宣言を伴う一歩手前か、その状況に入ったのが有事だと思うのですね。それさえも明確にしないで有事有事だと言うところに問題があるので、そこいらの考え方防衛庁はどういうふうにお考えになっておるか。そういうことに対処していくための有事立法というのは、単なる自衛隊防衛出動とか待機命令とか、急迫不正の事態が起きたからという自衛権の発動とか行使でないと私は思うのです。国民生活という面から考え有事というのは一体どのように認識しているのかというのが、まずは優先して考えられなければいけない重要な点じゃないですか。このことはどうお考えなのかということを聞いているのです。
  571. 竹岡勝美

    竹岡説明員 私が先ほど言いましたわれわれの研究有事というのは、七十六条、外部からの武力侵攻があったような事態、これは確かにわが国にとっては非常な事態だろうと思うのです。あるいは緊急非常事態であるかもしれませんし、国家の非常事態であるだろうと思います。そういう場合に、法的に国家非常事態の宣言とか、他の国の憲法等にもございますが、そういうことを宣言しなければならないのかどうかということは、われわれはいま考えておりません。  それから、国民立場から見ましてのいわゆる有事、非常な危機管理といいますか大危機、これは単に部外からの武力侵攻、侵略されるような事態だけではなくて、非常に国家的な大地震があったとか非常な大災害があったとかというような場合には地域的に国民の危機管理というものもあろうと思いますけれども、われわれの考えております有事というのは、あくまでも外部からの武力侵攻の事態ということを考えております。それは確かに国家の緊急事態であり非常事態であろうと私は思いますけれども、それを法的に宣言しなければならないのかどうか、そういうことは、私どもの方ではまだこれからの研究にまちたいと思います。
  572. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、言葉をかえてちょっとお尋ねしておきますが、現在防衛庁研究をしているといいますか勉強をしておられるという内容は、あくまで自衛官を、そういう七十六条を適用しなければいかない状況においてどのように用兵をしていくのか、対処していくのか、そういうところに限定をされていると理解していいですか、あなたの御答弁からいたしますと。
  573. 竹岡勝美

    竹岡説明員 そういった有事の事態におきまして、いわゆる自衛隊の活動を円滑ならしめる方策ということも頭に描いておりますし、それから国民避難誘導ということも頭に描いておりますし、あるいは自衛隊に対します国民なりそういった者の協力というものにつきまして法制上、手を打つべき点があるのじゃなかろうか、こういった事態を考えております。
  574. 上原康助

    ○上原委員 そこが問題なんで、先ほどの答弁とはまた若干違ってきておる。  そうしますと、自衛隊法とは別の法体系、いわゆる特別立法をお考えになっている、有事ということをすべて想定をして、各関係省庁との分野を含めて包括的な有事特別立法を想定しているというふうに理解されますね。
  575. 竹岡勝美

    竹岡説明員 他の省庁のいろいろな主管法律がございますけれども、そういったものを全部ひっくるめて包括的な一本の法律でつくるかというようなことは考えておりません。それぞれの主管官庁の持っております各種の法律につきまして、先ほど言いましたように、自衛隊の活動を円滑ならしめるためとか、そういった事態から自衛隊につきましての適用除外があるんじゃなかろうかとか、あるいは有事に際しましての現在の各省の法律につきましてつけ足すことがあるんじゃなかろうか、そういった点の勉強をしておるということでございます。
  576. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、きょうは時間がありませんので、私はこの議論は後ほどにしたいのですが、ちょっとこれも念のためにお尋ねしておきますが、関連すると見られる省庁はどのくらいあるかということと、いま七十六条と百三条は引用いたしましたが、現在の自衛隊法との関係においては、どれどれが有事立法の場合に取り上げて、政令なりあるいは新しく皆さんの立場で補完をしていかなければいけない条文なのか、恐らくその程度は明確にできると思うので、やってください。
  577. 竹岡勝美

    竹岡説明員 関係する法律主管官庁はどれだけがあるかということは今後の研究にまちたいと思いますけれども、たとえば、いまわれわれの方でやっております交通関係等で言いますならば、道路交通法なりあるいは海上交通安全法なりあるいは航空法なり、こういったものは運輸省なりあるいは警察庁である、こういうところが持っておる法律も入っております。
  578. 上原康助

    ○上原委員 条文。
  579. 竹岡勝美

    竹岡説明員 まだ条文のところまでしさいには詰めておりません。
  580. 上原康助

    ○上原委員 そういう答弁ではいけませんよ。これだけ、有事立法だと内閣総理大臣まで閣議において指示をして、昨年の八月から、三原防衛庁長官時代から有事研究をやれということを言われて、いま八月でしょう、まる一カ年たっても、自衛隊法の条文さえもはっきりしないとは何事ですか。そういうでたらめなことで、あなた、こんな重要な法案を、国民を何と思っている。防衛庁長官、それは承服できませんよ。これだけ問題を提起して、いまこれは大きな政治問題になっているのですよ。重要な部分に入ろうとすると、いつもこういう手で国民の目をごまかして、野党をあしらって、既成事実の上にすべてをつくり上げようというその姿勢は納得しかねます。時間が遅くなっても、いまの答弁は納得できない。
  581. 竹岡勝美

    竹岡説明員 昨年の八月に長官からの指示がありまして、各幕僚監部から、どういう法律についてわれわれは勉強しなければならぬだろうというようなこと等についてお互いに意見を持ち寄りまして、そしてことしの一月から、私の方の官房と各幕の法規担当者とが集まりまして、二週間に一遍の割合で作業、勉強を続けております。その最初の方は、先ほど言いましたように交通関係法律について勉強を進めております。これはどの条文がどうだとか、一般的には、私はいまの感触では、道路交通法なりあるいは海上交通安全法なりそういった問題を全面的に変えなければならぬとか、そういうような結論はまだ得ておりません。まだ勉強中でありますけれども、多くは緊急自動車の指定とか緊急例がございますので、若干の除外例等があるならばできるのじゃなかろうかということで、まだ各条文までの詳細な詰めばできておりませんので、今後詰まりました段階では、また必要があるならばお答えしたいと思います。
  582. 上原康助

    ○上原委員 そういう態度はよろしくないですね。  そこで、ではこういうことではどうですか。いま、運輸、自治省あたり、郵政関係は引用しましたが、現在の自衛隊法で、皆さんが検討を進めているという有事立法をすると仮定をして、どういう条文が該当するのか明らかにしていただけますね。資料として提出してください。  同時に、どういう省庁と関連をしているのか。たとえば、私が考えてみても、運輸省は関係しますよね。航空法との関係がある。電波法もある。通産も関係しますね、恐らく。外務も関係するでしょう。労働省も関係してくるでしょう。厚生も関係してくるし、郵政、農林水産、経企庁、法務省、自治省、私の頭で考えても、大体こういうところとは関連してくるであろう。いまあなたは、包括的な法案ではなくして、それぞれの省庁と関連する法律検討するということであったのですが、私がいま引用したこの関係省庁のどの法律と、皆さんが考えつつあるという有事立法は連動し、関連しているのか、速やかにその内容と資料を提出していただけますね。これは防衛庁長官から御答弁ください。そうでないと、いまの御発言は私は納得できません。
  583. 金丸信

    金丸国務大臣 その問題につきましては、私の知るところでは、各省庁の関係もあることだから、これをまず防衛庁だけでひとまず考え方をまとめる、その仕事がようやく緒についたということであって、いますぐ何々を提出しろと言われてもできない状況だろうと私は判断をいたしております。
  584. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官、私はあえて栗栖統幕議長発言とか運命共同体論はきょうは省きますが、要するに有事立法が必要であると仮定をいたしましても、シビリアンコントロールの最大の権限を持つ、最高の権限を持つのは国会なんです。これは総理大臣でもなければ、防衛庁長官でもない。国会、国民なんです。悪い表現で言うと、国家存亡にかかわるいわゆる超法規的な立法を考えておると言われる段階において、でき上がって、こうですと、防衛庁だけでこそこそ研究してまとめて、何かのはずみに国会に出されて、ばっぱっと片づけられたらたまったものじゃないですよ、国民は。そういうことは、シビリアンコントロールのあり方として絶対にあってはいかぬ。少なくとも軍事大国にならないということで、立場は違っておっても、もし憲法の精神を本当に遵守するということであれば、そのくらいのことはやってはどうですか。  現在の段階でできないとおっしゃるならば、では、いつの段階でできますか。どのあたりで中間報告なり、いま私が申し上げたようなことを国会に明らかにして、ある日突然ということではなくして、相当時間をかけて、この法案の中身とかお互いの考え方というものを、相違点は相違点として、国民に明らかにし、わかりやすい方向で考えいかないと、私は、重大な過ちを犯さないという保証はないと思うのです。そういう懸念を持つ限りにおいては、やはり資料としては、いま申し上げた程度は逐次、出せる段階においては提出をしていただきたい。改めて要求いたします。
  585. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題は、防衛庁がひた隠しに隠して国民に全然知らせずして、これをいつの日か力で押し切っていくというような考え方は、毛頭私は持っておりません。ことに与野党接近のこの国会でそんなことは考えられない。また、そればかりではなくて、防衛という問題は国民一人一人のコンセンサスを得る、そこに防衛という問題があると私は思いますし、いわゆる軍事大国にしてはならぬということ、全く私もそう思っております。その問題につきましては、私も詳細の内容をまだ詰めておりませんから、次の委員会等におきまして御答弁するなりあるいは上原先生自体に直接詰めた結果を御報告いたしたい、こう考えております。
  586. 上原康助

    ○上原委員 もちろん、準備ができてないものをお出ししてくださいといって無理強いするつもりはありませんが、そういたしますと、長官の御答弁を一応了解というよりも、誠意のある御発言でありましたので、一定段階で、ある程度作業が進んで、大体このあたりで国会なり国民の前に明らかにしなければいけないという段階では、私が申し上げたような資料を提出することにやぶさかでないですね。これは官房長にも長官にも改めて御答弁をちょうだいしておきたいと思います。
  587. 金丸信

    金丸国務大臣 その段階になりましたら、先生のおっしゃるようにいたしたいと考えております。
  588. 上原康助

    ○上原委員 そこで、もう一点確かめておきたいことは、当然、憲法を逸脱するものでないという御答弁が返ってくるわけでしょうが、私たちの立場は、現行憲法下ではいま言うような有事立法というものはできないと思うのですね、それはもちろん、法制局なりみんなの意見も聞かなければいかないのですが。しかし、国の安全保障をどうするかという政治の話としては、国民の不安というものを解消しなければいかないということはまた別の話でもありますが、少なくとも憲法九条があり、この新憲法が制定をされた原点ということを考えた場合に、私は、やはり非常事態宣言とか、国民の基本的権利を著しく制約するであろう有事立法というのは、不可能だと思うのですよ。本来、そういう国づくりというのは日本の方向でなかったと私は思う。  そういう面から考えた場合に、国民の基本的権利の制限というものとのかかわりにおいて、きわめて私たちは関心を持たざるを得ないわけですね。きょうは法制局は呼んでありませんので省きますが、これは引用するまでもなく、憲法第十九条、第二十一条「集會、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」十九条は言うまでもない、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」第二十三条「學問の自由は、これを保障する。」第二十七条「すべて國民は、動勢の権利を有し、義務を負ふ。」そうして二項で賃金の問題が出ている。さらに第二十八条の「勤勝者の團結する権利及び團體交渉その他の團體行動をする権利は、これを保障する。」その他にもありますが、これだけ国民の基本的権利が明確に憲法で規定されている以上は、有事立法なり超法規的行動だとかいうような概念で規制をするということはできないと私は思うのです。少なくともこのような国民の基本的権利、思想、信条の自由、あるいは結社の自由、表現の自由等に制限を加えるような内容考えておらない、これは断言できますね。これは防衛庁長官からもお答えください。
  589. 竹岡勝美

    竹岡説明員 われわれの有事法令研究は、長官指示によりまして現行憲法秩序の範囲内であり、憲法改正を伴うようなことはわれわれはいま考えておりません。特に、旧憲法と違いましていまの新憲法は、絶対的な国民の基本的人権を保障しておる分野も非常に多いわけでございますから、この憲法の秩序内でわれわれの勉強を進めたいと思います。  それからもう一つ、先ほど先生から、資料とか、その場合場合における進捗状況など、できるだけ詳しくというお話がございました。これは先生承知のとおりに、有事立法というものが日の目を見るには立法手続が要るわけでございます。これは防衛庁だけでできるわけではございませんので、いつか、万一のそういう事態に必要だという内閣の高度の政治的な判断で立法手続をやれという乙とになりましたら、恐らく、そういう法律関係の主管庁も皆一緒になってやるだろう。そうして、そのやりました法律案というものが国会で十分に審議され、国民の前に明らかにされるであろう、それが本来の立法手続だと思います。それに至ります前の防衛庁研究というのは、防衛庁だけの研究でございますから、まだ、政治的な判断で各省庁と折衝しようという段階じゃございませんので、防衛庁だけの判断で各省庁の関連法についての勉強でございますから、余り事細かな、権威のあるものにはならないというようなことで、われわれのお示しします研究段階内容につきましても、そういう制限のあることも御了承願いたいと思います。
  590. 金丸信

    金丸国務大臣 私は防衛研究指示をいたしたわけでありますが、有事ということがないことを、願いながら、われわれは防衛という問題に対処いたしておる。こんなことは絶対にないことをわれわれは望みます。しかし、有事ということがあるから自衛隊というものがあるということ、それは憲法に抵触だというけれども、現実の事実として二十七万の自衛隊がおる。その自衛隊がいわゆる有事のときに対処する何物もないという、これは国民の負託にこたえられぬじゃないかという感じが私はいたしておるわけでありまして、いわゆる憲法の範囲内において十分なひとつ研究はすべきである、これが私の考え方一つであります。
  591. 上原康助

    ○上原委員 これはその程度にきょうはとどめておかざるを得ませんが、自衛隊があるから有事があるのですよ。有事があるから自衛隊がいるのじゃないのですよ。自衛隊がいるから有事にもなるのだな、それは。  そこで重ねて要望しておきたいことは、法案が固まってからこうなりましたということではいかないのですね、この点は。これは念を押しておきます。防衛庁段階の作業過程においても、逐次、明らかにすべきことを明らかにしていただかなければいかないということは、私は改めて要望と強く――そういうことさえもおやりにならないと、ますます栗栖さんを当て馬にして、この際憲法も自衛隊法もすべてということには、そう国民も受け入れないと思うのですね。われわれは、この問題はきわめて重要視いたしております。正直申し上げて。いま言う国民の基本的権利ということと、なぜ新憲法が生まれたかということを、改めてわれわれはいま問い直していかないといけない重要な段階だと思うのです。  日中平和友好条約ができて、もう五十年代のいわゆる冷戦構造下におけるわが国の外交姿勢なり共産主義国、社会主義国に対する対応姿勢というのは変わってきたのでしょう。なぜ、いまのこの国際情勢の中で、有事だの防空ごうだの国民防衛体制だのということが騒がれなければいけないのか。その政治のねらい、背景にあるものが何かということを、私たちはより重要視をしているのですよ、防衛庁長官。そのことを抜きにしてはこの問題はどうしても納得いきかねる、重ねてその点は指摘をしておきたいと思います。  そこで、時間がありませんので次に進みますが、これは先ほどもいろいろございましたが、きょうできれば九時半までにと思ったのですが、若干延びそうですか、いや、御答弁いかんによっては一時ごろまでやりますよ。一時というのはちょっと言い過ぎですがね。もう少しやるかもしれません。十時ごろまでかかるかもしれませんよ。  けさのお尋ねにもありましたが、去る六月に金丸長官御訪米をなされて、ブラウン米国防長官といろいろ、日米防衛問題といいますか、あるいは安保体制下における基地使用の問題などを含めて意見交換をされてきたようであります。その内容についてはある程度新聞報道その他で知っておりますが、特にきょうお尋ねしておきたい第一の点は、その日米防衛首脳会談において基地労務者の問題についてどういうお話し合いをしたのか、もう少し明確にしていただきたい。具体的に申し上げますと、日本側金丸防衛庁長官から何を提案なされたのか、また日本側からの提案に対して、米ブラウン国防長官からはどういう返事があったのか、それについて日米間ではどういう話し合いが今日までなされて、どういう結果になっているのか、こういう点を明確にしていただきたいと思うのです。
  592. 亘理彰

    亘理説明員 お答えいたします。  先生よく御承知のとおり、ことしの三月の十日に、沖繩における米陸軍の再編成計画とこれに伴う雇用の問題についての米側発表があったわけでございます。そこで、六月に金丸大臣アメリカに行かれまして、この問題については沖繩県知事さんその他の関係方々からの御要請もありましたし、それを受けまして、ブラウン国防長官あるいは国務次官、あるいは上下両院の各議員にお会いになる都度、この沖繩における深刻な失業情勢について事情を述べられまして、沖繩における米軍従業員雇用確保について最大限の努力をしてもらいたいということを訴えられたわけでございます。  これに対して米側からは、米側にもいろいろ大変むずかしい事情があるということをるる申しておりました。それは一つは、一般に海外経費の削減という米議会の方針もあるわけでございますが、特に、昨年来の円高ドル安状況等に伴って駐留軍の経費のやりくりが窮屈になってきておるということ、それからもう一つは、陸軍の再編成と申しますのは、この業務の一部を海兵隊あるいは空軍に移管することを含んでおるわけでございますが、軍によって仕事のやり方が違う。たとえば海兵隊においては、あらゆることをすべて兵隊がやるというふうなこともありまして、従業員の仕事がなくなるという面があるのだ、従業員の仕事がなくなった場合にこれに給料を払い続けるということは、仮に政府が考えたとしても議会がこれを許さないというふうな事情もあるというようなことで、米側の苦しい事情もいろいろ話があったわけでございます。  しかしながら、大臣並びに随行しました私どもは、沖繩における失業率がすでに大変高い状況にもある、その中にはすでに過去数年来、大ぜいの軍従業員の解雇された方々も含まれておるわけでございまして、そういう状況を踏まえて、米側にも苦しい事情はあるだろうけれども最大限の努力をしてくれ、米側もこれに対してできるだけの努力はするということを申したわけでございますが、具体的にその場で解雇のニーズがどうのこうのというふうな話に入ったわけではございません。  私どもは、東京に帰りましてからも、在日米軍と終始同じお話を繰り返してきたわけでございますが、御承知のとおり先月の末に、約八百人のMLC従業員が十月末をもって解雇をされるという発表があったわけでございます。これは正確には、県労管への通告によりますと、MLC従業員が八百二十七人、それからIHAの従業員が二十四人、二十四人のうち半数は再雇用されるということでございますが、その七月末の発表の際にも、米側はなお引き続き雇用確保についてできるだけの努力を続けるということを申しておるわけでありますので、私どもは、そういう発表はありましたけれども、実際の解雇が起きます十月末あるいはその前に、九月の下旬と予想されます個人別の通告までの間に、さらに精力的に在日米軍に働きかけまして、実際に生ずる解雇者の数が少しでも少なくて済むように、再雇用確保されるように、働きかけを現在鋭意行っている最中でございます。
  593. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官からお答えがないが、どういうお話をなさったのですか。
  594. 金丸信

    金丸国務大臣 施設長官が私とブラウン長官との話し合いに立ち会ってもおりましたし、専門家でもあるから、亘理長官にただいまの答弁をしていただいたわけでありますが、私はブラウン長官に、このことにつきましては強く要請をいたしました。ことに、私が出発前に沖繩県知事初め県議会の決議文その他関係の皆さんから、この問題についてはいわゆる失業問題、社会問題、政治問題になるということで、強くこの問題はブラウン長官にお話し申し上げましたところが、ブラウン長官も、できるだけの努力はいたします。しかしアメリカも非常に財政的に逼迫をしておる中で努力するということはなかなかむずかしい、そんな困難な話もありましたが、私はこの話は、本当に沖繩は失業率の高い県でもあるし、また米軍が基地等もたくさん持っておるというようなことも考えて、ぜひひとつこの問題については再考慮をしてほしいという強い要請をいたしましたし、会う人ごとに、すべて私はこの話を伝えてまいりました。先般その発表もありましたが、ただいま亘理長官が申し上げましたように、私も先頭になって、この問題については今後とも最大の努力をいたして御期待に沿いたいと考えておるわけであります。
  595. 上原康助

    ○上原委員 日米防衛首脳会談でそういう意思表示をなさった、それはそれなりの意義もあったでありましょうし、また当然だと思うのですが、にもかかわらず、いま約八百名とおっしゃったが、八百五十一人ですよ、もう約九百なんです。皆さんも国民も、もう少し基地労務者の実態ということについて、特に沖繩の現状について御理解をいただきたいと思うのですが、現在沖繩は、陸軍関係はたしか二千三百四十三人ですね、これは五月末現在ですか。今回の八百五十一人というのは、何と三六・三%に匹敵するのですよ。しかも、復帰後今日まで、解雇された基地従業員の数というのは約一万二千人、そのうち今日まで再就職が、これはいろいろ変動もありますが、昭和四十七年以降五十三年の六月までに一応再就職ができたという方々はわずかに二千四百九十人なんです。沖繩県の職安の資料によりますと。現在では、神奈川県よりも基地労働者の数は少ない。反面、余りこういう議論はストレートには結びつかないかもしれませんが、復帰後今日まで返還された軍事基地というのはわずかに八・六%ぐらい、こういう状況なんですね。  そこで、これはよく防衛分担問題とか基地、駐留費の分担問題とも絡んでなかなか政治的にはむずかしいでしょうし、私たちも立場は基地撤去なり安保に反対している以上、その原則を曲げようとは思いません。だが、政府は、考えていただかなければいけないことは、雇用主であるのですね。法律上の雇用主である。しかも基地労働者の平均年齢は四十五、六歳。四十五、六歳というのは、子供の教育や社会的に一番負担の大きい時期なんです。戦後十四、五年ないし二十四、五年間基地労働者として働いてきて、子供がようやく高校を卒業する、大学に行く、まだ中学にいるというような中高年齢に差しかかった段階において次々と解雇されていって、わずかに援護措置として特別給付金があるとかいろんなことを言いますが、首を切るなら再就職なり、この際最後までの保障を政府の責任においてやってくださいよ。  そうするなら、われわれもこの問題についてとやかく言いません。復帰後一万二千名も解雇しておいて、自然淘汰で二千四、五百名が再就職をした段階において、今日のこの不況、インフレの中で新たに八百五十一名も首を切っておきながら、それを人質にして防衛分担とは何事ですか。駐留費とは何事ですか。そういうのが米側に対する思いやりですか、防衛庁長官。そうではないのでしょう。もしアメリカ側に思いやりをやらなければいけないというのであるならば、あくせくとして、いろいろな意味で苦しめられて働いてきた労働者に対しても、政府はそこでそれなりの措置をやるべきじゃありませんか。それをやらないから私たちは問題にしているのです。この件についてアメリカ側とさらに詰めるというお話もいまありましたが、これ以上はくどく申し上げませんが、こういう実態について政治が責任を持たぬということは、この段階においては許されませんよ。どうしても政府の責任において解決してもらいたい。
  596. 亘理彰

    亘理説明員 私も、先生のおっしゃることはよくわかるのでございます。沖繩従業員が復帰時二万人、現在八千人でございまして、特に、四十七、四十八、四十九、五十一年度までは毎年二千人、三千人という大量の解雇者が出る。昨年は幸いにして比較的少なかったのでございますが、ここへ来てまた大量の解雇が出るということは非常に重大な事態であると受けとめておるわけでございます。私どもは、あらゆる手段を使って最大限の雇用継続の努力をしなければならないということで、いま鋭意折衝している最中でございます。私どもは、この段階で決して楽観的なことを申し上げることはできないと思いますが、しかしながら、沖繩雇用の実態、失業情勢等を考えれば、ここで何としてもこの実際の解雇者の数を最小限にとどめてもらわなければならないというふうに考えておるわけでございます。  この沖繩の陸軍の再編成計画は、御承知のとおり一昨年から始まっていることでございまして、今度の大臣の言われる思いやりの問題とはもちろん別個の問題でございますが、実際問題としますと、先ほど申し上げましたように米側事情というのは、一つ駐留経費のやりくりの窮屈さということにも関連がないことはないわけでございます。その辺も踏まえまして私どもはあらゆる手を講じて、米側に対して雇用の最大限の継続について、特に来月の下旬と予想される個人別通告までの間に、とにかく精いっぱいの努力をしなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  597. 上原康助

    ○上原委員 精いっぱいの努力といっても、八百五十一名すでに解雇通告されている。それは、では縮小の見通しがあるのですか。それと、端的にお尋ねしておきますが、よく新聞なり、きょうの安井先生の御質問に対してもあるいはそのほかの方々の御質問に対しても、現段階でまだ十分な検討をしていないとかいろいろ言っておりますが、私たちが推測する限りにおいても、これは明らかに政治的な絡みもありますね。私は、確かにこれだけのドル安円高という問題が出てきて、アメリカにはアメリカ事情があるというのはわかりますよ。しかし、日米安保体制というのが相互条約であるとするならば、皆さん、条約上の義務をよう守ると言うでしょう、条約上の義務を守ると言うなら、この際アメリカに決然と言ってみたらどうですか。持つべきものはおまえらも持て、その上でこれこれを日本政府もやるというなら、われわれも話を理解しないでもないのですね。  じゃかすかリロケーションをやる。今後また地位協定二十四条の解釈を変えて新規の住宅も建ててあげる。後で一百言いますが、基地の安定的使用という面では、私に言わせれば沖繩の基地は相当に再編、新装備されている。老朽化したのはほとんどない。地上物件にしても地下にしても、全部つくりかえている。そういう状況下で労働者だけをこれだけ苦しめていいはずはない。それは明らかに防衛分担問題とは別の話だ。この際、労働省と話をして政府独自の予算を組んででも――これはいわゆる生活ですよ。その面のことをやらぬで、基地労働者のものまで日本側負担しているとか、地位協定の拡大解釈だとか、安保の変質だというような議論は、私は事情をよく知っているがゆえにしたくない。  かといって、社会党がこういう問題を認めているという立場に私は立たない。これはやはり、それだけ働いてきた労働者の生活権という面で、当然、雇用主である政府が保障すべき事柄なんだ。労働政策の一環としてこの際解決しなければいけない問題。これに対してどうなさいますか。これはどうしてもやっていただかなければいけない問題なんです。そういうことをやらないでほったらかすという筋はないですよ、防衛庁長官。これを聞かなければ、あなた方の日米防衛首脳会談の話し合いが不誠実で終わったということになる。そういう面では責任を持って、もう少し腰を強くして対米折衝をやっていただかなければいけない。改めて、いま私が申し上げたような問題点を含めて、今後の雇用保障ということを含めて解決を迫られている問題であるので、これに対する大臣の決意のほどを伺っておきたいと思うのです。
  598. 金丸信

    金丸国務大臣 先ほど申し上げましたように、この沖繩の駐留軍労務者の雇用問題の先般の発表につきましては、いまいろいろのお話も承りましたが、しかし、思いやりということは、私は相互にやってもいいと思っています。向こうにばかり思いやりをやるということでなくて、向こうも思いやりというものがあってしかるべきだという考え方も持っておりましたし、そういう考え方を向こうに申し述べたわけでありますが、これはぜひいま少し時間をかしてください。私も最大の努力をして御期待に沿うようにいたしたい、こう考えております。
  599. 上原康助

    ○上原委員 これは私がいま申し上げたように、この種の問題については、切るなら切るで政府が後の保障もめんどうを見なさいと言うのですよ。そうでないと、いままでのやり方では合点がいきません。  では、具体的にお尋ねしますが、八百五十一名のうち暫定的解雇というのがありますね、プロピジョナルリムーバルでしたか、暫定的解雇というのが新しく出てきている。これはどういう意味なんですか。  いまの防衛庁長官の時間をかしてくださいというのは、この問題について改めて政府間レベルなり防衛庁長官として対米交渉をして、人員整理の撤回もしくは最大限に八百五十一人を縮小していくことをアメリカ側に申し入れるというふうに理解をしていいですね。
  600. 亘理彰

    亘理説明員 最初の御質問の暫定的整理、プロビジョナルリフと称されているものでございますが、これは意味が余り明確でございませんけれども、要するに、米陸軍が業務の受け入れ軍である海兵あるいは空軍との間でなお受け入れについての話し合いをしておって、最終的にまだ確定していない部分がある、そういう意味合いだと理解しております。  ただ、この二百余名の暫定的リフと発表されました者のすべてが調整可能であるかというところについては、それほど楽観はしていませんけれども、まだ調整の余地がある部分であるというふうに理解しておるわけでございます。  いずれにしましても、私どもは、この九十日前の予告と申しますのは、その後の配転等による救済措置ができるだけ円滑に行われるように余裕期間を置いてあるという趣旨であると思うわけでございまして、従来からこの調整も、実際の解雇の発効までにある程度行われておるわけでございますが、今回の場合は特にその努力を最大限にしなければならないということで、現に労務部長以下のスタッフはもとより、私も、在日米軍司令部の首脳部ともすでに話し合いをやっております。それから、座間の在日米陸軍司令部の首脳部とも近々に話をしたいと思っております。それからさらに、しかるべき時期に、私どもの事務的な話を踏まえまして大臣にも在日米軍の首脳に会っていただくということを考えております。とにかくあらゆる手を尽くして、実際に生ずる解雇が八百人の中で少しでも少なく済むように当面は最大限の努力をする、こういうことが私どもの務めであると思っておる次第でございます。
  601. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁長官、これは、日米政治会談というか防衛首脳会談まで持っていきますね。
  602. 金丸信

    金丸国務大臣 日米首脳会談と申しましても、日米首脳会談ブラウン長官がこちらへ来るという時期が十一月とか言っておるのですから、なかなかそういうわけにもいかぬと思いますが、対象としてはマンスフィールド駐日大使等と話をして向こうへかけ合ってもらうなり、あの手この手は使ってみたい、こういう考え方をいま持っております。
  603. 上原康助

    ○上原委員 そこで一つの案として考えられることですが、ブラウン長官が秋に来られる。いろいろあると思うのですが、少なくともブラウン長官が来るまでこの解雇問題について実施を停止させるとか、その間、場合によっては日米間で協議をするということぐらいはやってもらわなければいかぬと思うのですね。それを含めて御検討ください。
  604. 亘理彰

    亘理説明員 ブラウン長官の来日はこの秋ということでございますが、時日がはっきりいたしておりませんので、その時期まで待てと申しても、なかなかそれは容易でないことであろうと思います。私ども、具体的にはっきり聞いておるわけではございませんが、当初米側は、米側のこの会計年度つまり九月いっぱいにいわば決着をつけようということで考えておったと思いますし、人数もかなり大きなものを考えておった。それを金丸大臣の訪米のときの折衝によりまして、米側日本政府あるいは県その他関係者の要請を受けて努力をしたということが先般の発表でも言われておるわけでございますが、それが七月末の発表になったと思うわけでございます。しかしながら、私ども、この発表米側努力が十分であると認めるわけにはまいらないということで、とにかくできるだけの努力はあらゆる手段を講じていたすというつもりでおります。
  605. 上原康助

    ○上原委員 努力成果が上がることを期待をいたしますが、いま巷間言われているこういう八百五十一人の大量解雇をそのままにして、いわゆる人質にしたような形で労務費の新たな負担とか、あるいは言われているような駐留費の大幅増額というのは、私たちは断固としてこれは承認できません。もちろん、これが認められればそれを認めるという論理もとりませんが、少なくともこういう問題に対して、生首をどんどん切っておきながら基地だけは安定的に使用するというこのアメリカのエゴに対しては、幾らドルが安かろうが何だろうが、アメリカは大国です。私も一月に行ってみましたが、それだけのことができないアメリカじゃない。そうでなければ、全部帰ってみたらどうですか、正直に。大体、アメリカがいるから安全保障ができているという、その架空の上に立っているからおかしくなる。駐留しているのは、アメリカの国益に合致するから彼らもここに居座っている、と言ったら言い過ぎかもしらぬが、駐留しているわけでしょう。そうであるならば、やるべきことはやってもらわなければ困る。こういうことは私はやはり、日米円高ドル安の問題があったにしても、政治的にもう少し解決をすべきだと思うのですね。このことについて、ちょっとしつこいようですが、長官の決意のほどをもう一遍お伺いをしておきたいと思うのです。
  606. 金丸信

    金丸国務大臣 上原委員のおっしゃることも全く私もわかるわけでありまして、最大の努力をして御期待に沿うようにいたしたいと思っておるわけでございます。
  607. 上原康助

    ○上原委員 もうあと早目にきょうのところ終えますが、もう一点、アメリカの議会が、駐留軍労務費を凍結する法案を下院から上院に送ったという報道がなされているのですが、これについてはどういうふうに受けとめておられるのか、その真否のほどを。  さらに、米会計検査院の報告書というのが、たしか五月三十一日でしたか、作成されて議会に報告されていると思う。この内容についてはどのようにお考えで、どういうふうに対処していかれようとするのか、きょうのところ、簡単に見解だけお聞かせいただきたいと思います。
  608. 亘理彰

    亘理説明員 アメリカの会計検査院が五月の末に議会に提出しました報告書の内容は、御承知のとおり日本人従業員の給与が一般の慣行水準を超えている部分があるという指摘でございます。それを受けた形におきまして、アメリカの下院の歳出予算委員会におきまして、来年の四月以降一般慣行水準を上回る給与の支払いをしてはならないという条項が提案されまして下院を通ったということでございますが、これはまだ現在上院で審議中でございます。したがって、米議会として最終的にそういう方針が固まって成立したというものではないわけでございます。詳細、私どももいま情報を入手しつつ検討しているところでございますが、まだそういう段階でございますので、これについてコメントすることはこの際は差し控えさせていただきたいと思っております。
  609. 上原康助

    ○上原委員 これが報道されているとおりであると、いろいろまた問題が出てきますね。あるいは金丸防衛庁長官思いやりを向こうは先取りをしているのかもしらぬですね。そうすると、責任はますます政府にあるということになってしまう。これも含めていろいろとお考えにならなければいかない問題。したがって、私は、この労務問題というのは切り離して考えるべきだと思うのですね、切り離して。そうせぬと、あなた、犠牲になる人々だけにもつと犠牲が行きますよ、これは。その点を指摘しておきたいと思います。  そこで、あと一点だけ最後に。これは先ほども御質問があったようですが、在沖米空軍三一三嘉手納空軍基地の司令官が、去る十四日に現地で記者会見をしておるわけですね。いわゆる沖繩駐留米空軍と航空自衛隊との今後の協力関係について、双方の指揮系統の統合が、双方の指揮官と参謀が日常的に一緒に仕事ができるようにするためにもきわめて優先的に行われるべきであると述べた。これは想定できないことでもないし、日米防衛協力小委員会あたりでもいろいろ協議される可能性が私はあると思うのですが、こういうバクスター少将の記者会見がある。合同訓練をより多くすることが望ましいと述べ、指揮、装備、訓練の各面で自衛隊とのより緊密な協力態勢づくりを求めたい見解を明らかにした。これについて、一体政府なり防衛庁は事前にそういう協議をしておられるのか。  またもう一点は、航空自衛隊と米空軍の兵器の一元化、標準化が必要だということも強調されている。たとえばF15を今度購入する。嘉手納にも配備する。それだけじゃない。P3Cをもちろん買った。これも大変結構なことだ。AEW、いわゆる空中早戒機も将来購入する必要があるだろうというようなことをコメントしているわけですね。こういう見解に対してどのように防衛庁は受けとめておられるのか、見解を明らかにしていただきたいと思うのです。
  610. 伊藤圭一

    伊藤説明員 まず、安保条約の五条に基づきまして日米が共同対処するということは、日米防衛協力小委員会で研究をいたしておるわけでございます。いずれこのガイドラインができましたならば、それに従いましてそれぞれが計画を立てるということになろうかと思います。しかし、その際一番大事なことは、いわゆる指揮系統が別であるということでございます。しかし、整々と共同対処するためにはやはりその調整の機関というものも必要であろうと思いますし、また平時からいろいろな情報の交換をしたり、あるいはいわゆる装備品等についてもお互いに必要なものを知り合っておくということも当然必要でございますし、必要な訓練ということも平時からやっていくということも考えているわけでございまして、そういった内容につきまして、ガイドラインに基づきましてこれから計画をし、研究をするということになろうかと思います。
  611. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、この在沖米空軍三一三司令官の提案といいますか、そういう考え方防衛庁としても応じていく、歓迎をするというお立場ですか。
  612. 伊藤圭一

    伊藤説明員 ただいま申し上げましたように、まず、その会見が報道されるような内容でありますならば、統一指揮系統をやるなんということは全く考えていないわけでございます。しかしながら、整々とした日米共同対処ができるために、いろいろな形で今後日米安保体制というものが有効に発動できるような形には持っていくつもりでおるわけでございます。
  613. 上原康助

    ○上原委員 これも、前々から私たちが指摘をしておった方向に進んでいるわけですね。きょうは聞きおく程度にとめておきますがね。  もう一点、これと関連して、さっきの解雇問題とも関連しますが、いみじくもこういうことを言っているんですよね、この司令官は。私も二、三回お会いしたこともあるのですが、「私が司令官として駐在したこの二年間に嘉手納基地は機能、近代化、有事即応性など、あらゆる面で進歩した。韓国沖繩の米陸軍の規模縮小に伴い米海兵隊と空軍は一段と強化されたが、規模縮小による軍機能の整備統合は円高ドル安の破壊的局面を切り抜けるのに役立った」こういうことを言っているのですね。意味することは、合理化をうんとどんどんやって基地従業員も少なくなったけれども、基地の機能、近代化、有事即応態勢というものはあらゆる面ででき上がったのだ、これが私の滞在二年間の大きな成果だ。軍人の発言と言えばそれまでかもしれませんが、防衛庁長官、おたばこを吸うのも結構ですが、私の話にも耳を傾けていただきたい。  こういうふうに沖繩の基地機能というものは、あるいは復帰後の安保体制というのは――私は何も沖繩のことだけを言っているのではない、駐留軍問題というのは。これは全国的な、二万二千の労務者のことなんです。また現在の基地全体、先ほどの、核が岩国にあったということとも関連している問題でもあるわけですね。こういうふうに強化をされながら基地そのものは返還されない、にもかかわらず基地従業員だけはどんどん解雇していって、後は知らぬ顔ということではいかないと思うのですね。  もちろん、この軍事機能の強化ということに対しても私たちは納得いきませんし、これからいろいろ問題点を指摘してまいりますが、いまさっき言ったように、これだけ言い張っている司令官の見解と私が先ほど言ったような状態とをつなぎ合わせて考えた場合に、基地の存在というものが、実際に県民のメリットあるいは国民のメリットというものは少ないわけです。生活上の。このことに対しては、もう少し皆さんも真剣になって考えていただかないといけませんよ。改めてこの種の問題に対しての対処の決意のほどを伺って、きょうのところ遠慮したいと思います。
  614. 金丸信

    金丸国務大臣 労務問題につきましては、再三申し上げておりますように、本当に、ちょうど成長期の子供を抱えた人たちがやめていくということは大きな社会問題であります。社会問題であるということは大きな政治問題である。これは最善の努力をすることが政治でありますから、上原さんのおっしゃるように本当に懸命な努力をいたして御期待に沿いたい、こう考えております。
  615. 上原康助

    ○上原委員 どうも長い間おつき合い、ありがとうございました。終わります。
  616. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 本日は、これにて散会いたします。     午後九時四十二分散会